2014年3月8日土曜日

御坂妹「アクメツ……?」 1

1とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 16:30:11.42 ID:b0/xX/o0
SS初チャレンジですがHKBと言われたのでやってみます。
アクメツ×禁書ですがアクメツさんが禁書キャラを悪滅したりは基本しません。
タイトルから分かるように?科学サイドメインです。
書きながら&遅筆なので非常に遅い進行が予想されます。
一部設定に独自解釈を加えています。(素で勘違いしてるケースもあるのでツッコミありで)
文才ないです。とりあえず三巻ぐらいまでやってみて様子を見ます。
ではよろしくお願いします。
2 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 16:31:41.82 ID:b0/xX/o0
20××年 冬 首都近郊

――その男は怒っていた。

何に? と問われれば色々としか言いようがない。

例えば、半年かけて仲を育んできた異性とちょっと『イイ雰囲気』になったので
口づけを交わそうとしたら、やんわりと拒絶された事、とか。

例えば、傷ついた心をチューリップでも愛でて癒そうと思って訪れた遊戯施設で「もしも用休憩代」
どころか一週間分の生活費を花の肥料にしてしまった事、とか。

例えば、帰路の途中で脳ミソの足りてないオニイサン達に絡まれ、無い物ねだりされた事、とか。

例えば、そのオニイサン達に気に入っている髪型を『白菜』呼ばわりされて、無駄な運動をした事、とか。

例えば、ようやく帰りついた自宅の前で家の鍵の紛失に気づいて今来た道を戻る羽目になった事、とか。

例えば、久しぶりに『兄弟』から連絡があったかと思えば、とんでもない野暮用の知らせだった事、とか。

今日だけで色々と腹の立つ事はあったが……まぁ、一番はコレだろうとも思う。

『何処かのバカが、首相官邸地下のクローンプラントの跡地に侵入した事』だ。
4 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 16:41:24.21 ID:b0/xX/o0
まず最初に知っておいて欲しいのが、この男『椿生(つばきしょう)』は普通の人間ではない。

生身の人間を切るより気楽だからという理由で司法解剖専門の医師をしているアレな人間ではあるが……

とりあえず、見た目は普通だった。そこそこモテる程度には。

だが問題なのは、その『普通の見た目』と同じ姿形をした人間が複数いる事である。

世の中には似た人間が三人はいるとか、ビッグダディの家に五つ子が生まれたとか、そんな生易しいレベルではない。

遺伝子レベルで同一の存在が、当人達の与り知らぬ所で数十人存在していたのである。

――そう『椿生』はクローン人間であった。

何故、そんな存在がいるのか……とりあえずそれは置いておこうと思う。
5 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 16:51:08.86 ID:b0/xX/o0
夜の街を駆けながら生は叫ぶ。

生(椿)「なんで今更、あんな所に入りこむんだよ!?」

焦りの感情を隠す訳でもなく電話越しの相手にぶつけてしまう。

生(?)『俺が知る訳ないだろう、ネズミに会ったら直接訊いたらどうだ?』

返って来るのは自分の声。
暮らす環境や機械越しである為か……多少の違いはあるにせよ、慣れ親しんだ自分の声。

生(椿)「そもそも、あそこにはもうプラントは残ってないんだぞ!? クローニング技術狙いにしては的外れすぎる!」

生(?)『例のクーデターの時にプラント自体は移設済みだからな。侵入方法は謎だが』

生(椿)「だからって、一条の……お前冷静と言うか……呑気過ぎるだろ、警官の癖に」

生(一)『……そもそも、もうすぐ10年だぞ?』

焦る椿に対し、一条がどこか真剣になれないのはそれが理由だった。

生(一)『仮にクローニング技術を狙う輩がいるにしても、何故、今なんだ?』
6とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 17:16:17.95 ID:b0/xX/o0
生(一)『プラントの移設に気付く可能性のある人間は既にこの世には一人もいない』

……そうだ。

『悪滅』に参加していた他のクローン達。

同じ顔、同じ声、同じ宿命、同じ信念。同じ怒り。同じ悲しみ。

悪を滅するというエゴを享受し、自らを死によって罰することで
『悪のW処刑』『一人一殺』を行い政府に、日本に、世界に波紋を投げかけた『兄弟』達。

その波紋によって起きた、政府機能マヒの隙を突いた悪党達による裏新政府設立。

多くの友、多くの仲間、多くの『兄弟』達の犠牲の果てに裏新政府に加担していた人間は駆逐された筈だ。

その事は、各々の事情で『悪滅』に直接参加出来なかった『残留組』の自分達が念入りに確認した。

共に命を賭けて戦えない以上、後始末くらいは、と。

そう念入りに。念入りにだっ!
7 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 17:35:48.15 ID:b0/xX/o0
連鎖するように椿は思い出す。『後始末』の内容を。

仲間達の遺体も何体、解剖したか分からない。

あの時は、事後調査やら関係者の護衛やらを任された他の『残留組』を羨ましく思ったものだ。

マスクに仕掛けられている爆弾によって、頭部こそないが、自分を……自分と同じ肉体を切り裂くという感覚。

仕事とはいえ、やらねばならない。他の誰かに任せるなんて出来なかった。

彼等の遺体をよからぬ目的で入手しようとする人間がいないかどうか、
それを監視する為にも彼がやらなければいけなかった。

残された者達の平穏の為に。

悪を滅する為ではなく、滅する悪が現れぬように。

生(椿)「でも、このままじゃ……」

生(一)『どこかの馬鹿に平穏を壊されるかもしれない?』

生(椿)「……ああ」

生(一)『大丈夫だ。本命が狙われたなら別だが、旧プラントを調べたところで何の手掛かりもない』
8とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 17:59:09.01 ID:b0/xX/o0
そもそも、クーデター事件で廃棄された後もプラントはそのままにされていた。

破壊されたセキリュティや防衛システムだけは復旧させて、だが。

その目的はクローニング技術を狙う輩に対する疑似餌である。

城壁だけは立派に修理しておき、中の城も健在に見せ掛けて実はハリボテ、という訳だ。

つまり今回の侵入者はまんまとそれに釣られた獲物である訳だが……

生(椿)「けどよ、プラントには神宮寺……オリジナルの遺伝子を持った存在じゃないと侵入は不可能だろ」

生(一)『言っておくが、生き残っている『残留組』とは全員と連絡が取れた』

生(椿)「10年前と違って誰かが捕まったって訳じゃないのか……だが、ならどうやって?」

生(一)『セキュリティとは言っても、所詮は機械だからな……故障か……あるいは』フム

生(椿)「あるいは? 何だよ?」

生(一)『ネズミさんは電子戦が得意なのかもな』

生(椿)「おいおい、ver.1の俺にポケモンか何かと戦えってのか……?」オイオイ

思わず、不幸だとでも呟きたくなる椿であった。
9とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 18:39:21.23 ID:b0/xX/o0
~首相官邸地下通路~

かつて、アクメツ達の文字通りのライフラインとして機能していた旧クローンプラントは首相官邸地下300㍍の秘密施設にある。
よりにもよってそんな所にプラントを建造した神宮寺の発想というかセンスには色々と言いたくなる。

……嫌いじゃないが。

生(椿)「ところでアクメツマスクは着けたほうがいいと思うか?」

懐から鬼のような角を持った漆黒の仮面を『2つ』取り出す。

生(一)『死にそうになったら着ければいいだろ。一度着けたら外せないんだぞ』

言われて想像する、日常生活で仮面を着けた己の姿。

……少しゲンナリした。

生(椿)「とりあえず即死しないように首と心臓だけは死守する事にする……」

言いながら『本来の機能』の付いてない模造品のアクメツマスクを装着した。
果たして、これで顔を隠せるかどうか『残留組』の椿としては常々疑問であったが、こんなものは気分である。
10 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 18:46:37.29 ID:b0/xX/o0
生(一)『あと、イヤホン通話に切り替えろ。さすがに片手が塞がったままは不味い』

生(椿)「そうだな……それにしても便利になったよなぁ、ここ数年で」

言われて椿は携帯を操作し耳に小型のイヤホンをはめる。

生(一)『学園都市……だったか? あそこの技術が少しずつ外にも影響してるらしいな』

生(椿)「あそこで暮らしてる安達のが言うには学園都市の中と外で20年は差があるって話だろ?」

生(一)『それだけ技術が進んでるなら、クローンだっているかもしれないな』

生(椿)「いやいや、さすがにそれはないだろー」ケラケラ

一条の言葉に腹の底から笑う椿。

生(一)『おい、笑いすぎだ。気づかれたらどうする』

生(椿)「スマン、でも神宮寺以外にこんな技術を極める奴なんか、そう簡単にいてたまるかよ」

……これは笑い話だった筈なのだ。この時までは。
12 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 19:12:40.69 ID:b0/xX/o0
生(椿)「しかし、すごいなこりゃ」

生(一)『何がだ?』

生(椿)「侵入者だよ。防衛系の設備が見事に潰されてる。焼け焦げて……ショートしてるのか?」

破壊された機器から黒い煙が立ち上って、ただでさえ淀み気味な空気をさらに悪くしている。

生(一)『監視カメラも侵入者を確認した時点でシステムごとまとめて潰された。中々の手練だな』

生(椿)「……その割には扉についてるDNA認証は壊れてないな」

生(一)『やはり電子戦も得意なようだな。ハッキングされた可能性が高い』

生(椿)「んで、そのD3ピカチュウは何処まで入り込んだんだ?」

生(一)『第三層までの侵入は確認したが、以降の動きはないな』

生(椿)「おいおい、第三層なんて序盤の序盤じゃないか。幸せの箱どころか鉄の金庫だって取れやしないぞ」

生(一)『何の話だ……結構なことじゃないか、潜る手間が省けて。……もうすぐだな』

第三層の認証扉を開き、息を殺して中へと侵入する。

生(椿)「………………?」

生(一)『椿? どうした?』

生(椿)「……侵入者は一人なんだよな?」

生(一)『確認できたのは一人だけだが……いたのか?』

生(椿)「……なんか、女子中学生が倒れてるんだが」

椿は時間が止まった音を聴いたような気がした。

生(一)『……………………はぁ!?』
14 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 19:43:30.79 ID:b0/xX/o0
時間が動き出してから最初に投げかけられた言葉は病人を案ずるような声音だった。

生(一)『おい、医者の不養生とか笑えないぞ。眼科へ行け、眼科へ』

生(椿)「だって、倒れてるんだから仕方ないじゃん!?」

あまりの事態に社会人になってから出てなかった共有の口癖までも出てしまう始末。

素数を数えたくなる心理状態を慌てて落ち着かせて、倒れている少女を観察する。

肩まである茶色い髪。倒れていてよく分からないが、かなりの美少女だと思う。
冬には少し不自然な白い半袖のブラウスにサマーセーター。
倒れてるせいで色んなモノが見えそうで見えない状態のプリーツスカート。

それらを電話越しの一条に伝えていく。

生(一)『本当に女子中学生っぽいな……?』

生(椿)「なんか暗視ゴーグル? みたいのを着けてるから、この娘が侵入者だとは思うんだが」

生(一)『しかし、どう考えても不自然だろ。なんで中学生がプラントに侵入するんだ』

生(椿)「あぁ……あと」

生(一)『何か気になるコトでもあるのか?』

生(椿)「割と好みのタイプだ」

生(一)『おーけー、自首扱いにしてやる』

生(椿)「少し胸が足りない感じだが、中学生だと逆にそれがっ!」

生(一)『よし、麗子さん伝えといてやる。面会には行かなくていいと』

生(椿)「うるせー! どうせ麗子さんとは少しアレになっちまったよ!」
15とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 20:21:00.91 ID:b0/xX/o0
なんかゴメン、と急に真剣になる一条に悲しくなるから素は止めて!? と涙目になって椿が咆える。
そんなやりとりをしていると、目前の少女の体が少し動いたように見えた。

生(椿)「っ!?」

思わず駆け寄って抱き起こす。それは侵入者に対しての動きではなく……
アクメツである前に一人の医者としての本能的な行動だった。

生(椿)「おい、しっかりしろ!」

?? 「……その……仮面は……」

いかん、これじゃ傍から見たら仮面の変質者みたいじゃないか、とか。いやでも侵入者だったら……等と思考が混乱する。

?? 「ようやく……見つける事が……とミサカは……」

生(椿)「ミサカ? それがお前の名前か?」

ミサカ「はい……正確には……フル……チュー……グと呼称される……個体が……ミサカです、と……」

酷く衰弱しているのか言葉の端々が聞き取れない。……見る限り、どうも侵入の際に傷ついた訳ではないようだが。

生(一)『個体? なんだ、その表現は……? ……椿、目的を聞き出した方がいい、それも早急に』

生(椿)「ミサカ、君はどうして此処に来た? 何が目的だ?」

ミサカ「………………て」

生(椿)「え?」
16とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 20:22:42.55 ID:b0/xX/o0
ミサカ「助けて……ください」

生(椿)「(命乞い……? いや、違う…!)」

ミサカ「これから……量産される……ミサカの妹達を……その生命を……助けて……」フラッ

生(椿)「お、おい!? しっかりしろ!」

生(一)「椿! 今すぐにその娘をプラントに連れて行けっ!」

生(椿)「プラントって……俺達のか!? どうしてだよ!」

生(一)「一応、医者のお前なら俺よりもよく解るんじゃないか? ……その娘はきっと……」

ああ、解ってる。

医者がどうのこうの以前に判ってしまう。

目の前にいる少女がどういう存在なのか。

己がそうであるが故に痛い程、感じてしまう。

同じだと。

そうきっと…

――彼女は誰かのクローンだ。


第一節 『同胞来たる』完
17 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/04(火) 20:30:10.35 ID:b0/xX/oo
どうも専ブラからですが失礼します。
とりあえずここで一区切りとさせていただきます。
とは言っても書く作業はしてるので、今日でも場合によってはまた投下しますが。

少し補足をば。
※椿生&一条生
アクメツの『残留組』で10年前(アクメツ本編)の悪滅に直接は関与しなかった生き残り。
関与、つまり死亡→復活→入れ替わりがないのでver.1のまま。ちょっと健康なぐらいの体。
苗字は某平成ライダーで仮面の人を補佐してくれた医者と刑事さんから拝借。
椿のアレになってしまった恋人の名前もそこから。

22 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 20:51:43.70 ID:b0/xX/oo
※ミサカ
禁書詳しい人は解ると思うが、登場したのは設定だけしかない例の個体。
設定を拾って上手く組み込もうと画策してるがどうなることやら。
現状の時期は禁書どころか超電磁砲前の冬。

ちょっと質問ですが、これらの展開がアリかナシかだけ教えて欲しいです。

1,黄泉川「……じゃん」 生「……じゃん」
2,流れ板海原×流れアステカ海原
3,様々な漫画に登場するプロフェッショナル達に弟子入りにいく復活妹達。(リクエスト○)
4,悪滅されてしまう絶対能力進化計画の鬼畜研究員達。
5,アクメツ「はーまづらぁ」orアクメツ「よーみかわぁ」

あと、HKBって早く書けバカ的な意味で、『変態!この、バカ犬』の略じゃないよね?
聖☆おにいさん×禁書の小ネタ書いた時も言われたんだが…
五条さん×禁書でSSにハマった素人なんでルールとかよく分からんし…
23 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011![sage]:2011/01/04(火) 21:00:56.47 ID:VaMwZgso

3以外ならやって欲しい
っていうか4は突き進むとアレイ☆まで行っちまうんじゃね?
HKBはHKBだHKB
24 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 21:11:48.89 ID:lkVm2oU0
1、アリ
2、アリ
3、アリ
4、ナシ
5、ナシ
25 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 21:39:48.10 ID:b0/xX/oo
都内某所

~アクメツクローンプラント~

クローンプラントで合流を果たした椿と一条を出迎えたのは白衣を着た「自分」だった。

男の名前は東生(あずましょう)、かつてのクローンプラントで管理人をしていた男である。
とは言っても、東本人は既にクーデター事件で死去しており、彼はその役目と名、そして記憶を引き継いだver.3のクローンである。

生(東)「久しぶりだな、椿、一条」

椿&一条「「久しぶり、俺」」

いつものブラックな挨拶をこなした所で、東は椿の背負った少女を見やる。

生(東)「……その娘が?」

生(椿)「あぁ……頼めるか?」

生(東)「ふっ……俺を誰だと思っている?」

椿&一条「「俺だろ?」」

同じ顔をした三人は誰からでもなく苦笑した。
26 :とある複製の妹達支援2011/01/04(火) 22:09:29.83 ID:b0/xX/oo
レクリエーション室で待っていた二人の前に東が戻った時には既に二時間が経過していた。
既に日付が変わってしまっている。

生(東)「とりあえずだが、容態は落ち着いたぞ」

生(椿)「そ、そうか! よかった……」

生(一)「……だが治る訳じゃないんだろう?」

生(椿)「一条!?」

生(東)「……確かにこのままだと長くないだろう」

生(椿)「そんな……じゃあ、やっぱり……あの娘は」

生(東)「俺達と同じクローンだ。いや、俺達よりも遥かに劣った、な」

生(一)「劣った……?」

生(東)「根本的にクローンとしての目的が違うんだろうな。個体への配慮なんてまるでない。
    俺達が生まれた最大の原因は神宮寺の不老長寿への渇望だが、彼女は違う。
    とりあえず作って、一定の年齢まで強制的に育てさえ出来ればいい、というスタンスだな。
    俺達の技術より優っている点があるとすれば『量産しやすさ』ぐらいだろう。学園都市も底が知れる」

研究者としての立場から、何か思うところでもあるのか東は非常に饒舌だった。
……そしてどこか怒っているようにも見える。

生(椿)「いや、待て。学園都市? なんで学園都市が出てくるんだ?」

生(一)「おい、まさか…」

ミサカ『はい、ミサカは学園都市で製造され、そこより逃亡して来たのです、とミサカは衝撃の事実を語ります』

部屋の中央に設置されたモニターから、そんな声が聴こえてきた。
27 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011![sage]:2011/01/04(火) 22:15:17.99 ID:whfC1Q2o
( ◇)<虚空陣奥義…!
( ◇)<ズェェェェ

Σ ( ◇)<!?
28 :とある複製の妹達支援[27採用]:2011/01/04(火) 23:00:58.96 ID:b0/xX/oo
モニターに映しだされたのは治療室のベットで横になるミサカと名乗った少女の姿だった。
先程までの制服?姿ではなく、東が用意した病衣を身につけている。

ミサカ『改めまして、こんばんわ。私は学園都市で七人しかいない超能力者である『御坂美琴』の体細胞クローンであり、
    量産能力者(レディオノイズ)計画の試験個体であるミサカ00000号……
    通称、フルチューニングと呼称される個体です、とミサカは少し照れながら自己紹介します』

生(椿)「フルチューニング……?」

生(一)「(照れてる……?)」

ミサカ『はい、とミサカは研究員以外の人に個体名を呼ばれる感覚に戸惑いながらも肯定します』

生(椿)「えーっと、じゃあ、試験個体(フルチューニング)と呼ばせてもらうが……」

ミサカ『はいどうぞ、とミサカはいやー名前を呼ばれるのって本当にいいものですね、と歓喜に震えます』

生(椿)「試験個体は、助けて欲しいって言っていたが……それは俺達が『君と同じ』だからか?」

ミサカ『端的に言えばそういう事になります、とミサカは私よりも先に誕生していたクローン体に敬意を払いながら肯定します』

生(一)「俺達がクローンだと……いや、その前にプラントの場所はどうやって知った? 誰かに聞いたのか?」 

ミサカ『簡単な推理だよアクメツ君、とミサカは名探偵風に突き付けます。
    10年前に皆さんが起こした数々の事件、それらの詳細と後に起きた縦浜北高校クーデター事件と並行して起きた
    官邸での武力衝突……それらから皆さんがクローンであり、その管理施設のようなものが官邸近辺にあることは類推できます」

生(椿)「つまり、過去の資料から推理したってことか?」

ミサカ『その通りです、とミサカは肯定します。
    後は現場付近まで来て、不自然な電力供給が行われている施設がないかを能力で調べるだけで済みました、とミサカは補足します』

まさか、官邸の地下に施設があるとは予想外でした。とモニターに映る少女は困ったように笑った。
30 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/04(火) 23:48:40.09 ID:b0/xX/oo
そういえば稼働中は自家発電で賄っていたはずだが、現在は首相官邸の方から電気を引いていた筈だ。

生(一)「セキリュティや防衛システムを突破出来たのは、その能力とやらのお陰か?」

ミサカ『ミサカは電撃使い(エレクトロマスター)ですので、電撃を飛ばしたり電磁波を発したり、
    スキミングや電子ロックの解錠ならお手の物なんですよ、とミサカは自己主張の少ない胸を張ります』

生(東)「正式には欠陥電気(レディオノイズ)と呼ばれているそうだ」

生(椿)「欠陥……?」

生(東)「オリジナルに比べて、という事なんだろうな」

生(一)「………………………ほおー」

椿&東「「(めちゃくちゃ怒ってるんだろうなー……俺もだけど)」」

もしも、これが過去にあった『民自党二大総裁選候補大激論ジャック事件』の最中であれば、偽アクメツの頭は既に爆発している。

ミサカ『事実、ミサカの能力はオリジナルが超能力者(レベル5)であるにも関わらず、
    強能力(レベル3)に到達するのがやっとでしたから、とミサカは自らの能力の限界を吐露します』

生(椿)「学園都市にも兄弟がいるから、少しは知識として知ってるんだが……レベルの差ってのはそんなにも絶対的なのか?」

生(東)「比べる事自体が困難な程の力の差があるらしい……むしろ、そこで話が終われば良かったようだが」

生(椿)「……どういう事だ?」

生(東)「彼女の造られた目的が『超能力者の量産』なんだよ。
    だが聞いての通り、彼女の能力は強能力止まり……でオリジナルの1%程度。
    だから、そこで計画は頓挫…………製造されるクローンも彼女一体の筈だった」

生(一)「……だった、ときたか」

ミサカ『ええ、その筈でした。ですが、ミサカは知ってしまったのです。ミサカの同胞……妹達がどのように再利用されるのかを』
33 :とある複製の妹達支援[31採用]:2011/01/05(水) 00:36:50.07 ID:Pwogntko
学園都市に七人しかいないとされる超能力者。

その中でも最強の能力者である第一位を超能力者(レベル5)から絶対能力者(レベル6)へと進化させる実験。

その内容が「20000通りの戦闘環境で量産能力者(レディオノイズ)を20000回殺害する」事であるという。

学園都市が保有する樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)なる演算装置が導き出した進化への軌跡は死と血によって彩られていたのだ。

生(椿)「イカレてやがるっ! そのフザけた機械も、それを実行に移そうと本気で考える研究者もだ!」

ミサカ『それを聞いて、ミサカは焦りました。そして調べました、妹達を救う方法を。探しました、生存への可能性を』

生(一)「それで……俺達を……?」

ミサカ『皆さんの事を調べる事よりも、学園都市を脱出する事の方が遥かに困難でしたが……ミサカにも一応、協力者がいましたので』

案外、やろうと思えば何とかなるものですね、と少女は続けた。

生(椿)「君は俺達にどうして欲しいんだ……?」

生達は、自分の中に何か熱く、燃え上がるような強い感情が沸き上がってくるのを感じていた。
何かに拍子に爆発してしまいそうな……怒りだけではない、強い感情。

ミサカ『正直に言って、ミサカにも分からないのです、とミサカは告白します。
    先程は助けて欲しいと言いましたが、本音としては先輩に教えを請いに来た、というのが妥当でしょうか』
34 :スマン、33最初の二行入れ忘れた2011/01/05(水) 00:38:57.84 ID:Pwogntko
試験個体の開発を担当していた研究者達が話していた内容を偶然、立ち聞きしてしまった。
そんな可愛げのある状況とは裏腹にその内容は彼女が……そして、それを又聞きしている生達を戦慄させるのに十二分だった。
37 :とある複製の妹達支援[BLAZBLUEって面白いの?]:2011/01/05(水) 01:30:00.62 ID:Pwogntko
生(椿)「先輩……?」

ミサカ『なんでも普通の人は困難に直面した時、人生の先輩や似たような経験を持つ人に助言を貰い、
    解決法を模索するとか……と、ミサカはギョロ目女から得た知識を披露します』

確かに、アクメツ達はクローンであり、彼女よりもよっぽど長く生きている。
確かに、アクメツ達は[ピーーー]だの殺されるだの、そういう世界で生きていた。

生(椿)「そうか、確かに俺達は君の先輩だな……なら、最高のアドバイスをしないとダメじゃん?」

場合によっては、それを批難されていると感じるかもしれない。
だが彼女の言葉にそういった感情は含まれてはいない。

生(一)「兄弟達と相談して、きっと君の役に立つアドバイスをさせてもらう……だから」

単純にそういった感情を表現できるほど成熟してないのかもしれない。
だが、それでも生達は違うと感じていた。

生(東)「今は少しでも体を休めなさい……ここは安全だ。軍隊が攻めてきても守りきれる」

同じ境遇であるが故の共感。そして、親愛。
それに応えるには、どうすればいいのか?

ミサカ『……では、お言葉に甘えて少し眠る事にします、とミサカはおやすみなさいを言います…………』

しばらくして少女が静かな寝息を立てているのを確認すると東はモニターの電源を切った。

生(椿)「……一条、東、どうすればいいと思う?」

生(一)「そんな事は決まって…………いや、こういう時はアレだな」

言いかけて何かに気づいたように一条は部屋を出ようとする。
一条が近づくと、音を立てずにドアが開く。

そこにいたのは。

現在、生き残っているアクメツクローン……『残留組』の全員、24名であった。
39 :とある複製の妹達支援2011/01/05(水) 01:46:50.43 ID:Pwogntko
なるほど、と椿は思う。一条は全員の無事を確認したと言っていた。
その時の連絡を受けて、こいつらは心配して全員集まった訳だ。こんな真夜中に。

……さすがは俺だ。最高に気が効いている。

となると、どうせ今の話も聞いていたに決まっている。
それも話の最初のほうから……何しろ俺はそういう奴だ。

生(一)「よし、じゃあ」

――結局、今まで俺達は一度だって間に合わなかった。

生(椿)「多数決をとる事にします」

――桂木を救えず、小高を守れず。

生(一)「色々と不明な点や疑問はあるとは思いますが……」

――ヒーローを超える力を得た後も悪を滅ぼすことしか出来ず。

生(椿)「試験個体の『助けて』という願いをきいて」

――兄弟を奪われ、恋した女性も一度は死なせてしまった。

生(東)「学園都市で生まれようとしている『妹達』の支援を行った方がいいと思う者は……」

――所詮、俺達は『悪滅』で誰かを救うヒーローにはなれはしないのだと。

生(椿)「挙手願いま~~す」ホイ

――なぜそんな幻想を抱いてしまったのか。諦めてしまったのか。

生(一)「……」バッ

――だったら、そんな幻想抱いたまま道連れに爆死してやる。

生(東)「……」バッ

――そして生まれ変わって本物のヒーローになればいい。

バッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッ

生(椿)「いやあ……さっすが俺達。
    正に身も心も一緒って奴だねぇ」


――全員一致じゃん!


第2節 『学園都市の妹達』完
49 :とある複製の妹達支援2011/01/05(水) 21:26:01.08 ID:Pwogntko
――それから生達の行動は迅速だった。

まずは各々の近況報告。

『兄弟』とは言っても、しばらく会っていなかった生も多い。

同窓会のように互いにどうしていただの、転職しただの、実は結婚しただの、このリア充仮面着けて爆発しろだの、と旧交を温め合った。

それがある程度済んだら、実際に『行動可能』な人員の選抜を始めた。

現時点で試験個体から聞けた情報は少ない。

容態が安定したら、もう少し詳しい話を聞くつもりではあったが……
だが、そんな今の状況でも一刻も早くやらなければいけないことがある。

――『学園都市』への侵入方法の確保である。

これから先、試験個体からの情報を次第で、慎重に行動を決めていかなければいけないのは当然だが、
どんな情報を得た所で、『妹達』の支援を行う為には学園都市への侵入or潜入が必須になる。

詳しく言えば案としては、二つ。

一つは正規の手続きを踏んで、『仕事』の名目で学園都市に潜入、滞在する事。

もう一つは、学園都市の警備網を掻い潜って、力尽くで侵入する事。
50 :とある複製の妹達支援2011/01/05(水) 21:44:42.58 ID:Pwogntko
どちらにせよ、その為の下準備は少しでも早くからしておいたほうがいい。

生(椿)「潜入の段階では、あまり事を荒立てたくない……『仕事』で学園都市に入り込める奴を選んだほうがいいな」

いざとなったら強行策も辞さいない、と暗に一条は表明しつつ周りの兄弟達を見る。

この場合、選ぶと言っても誰が行くかを決める相談ではない。
誰の『プロフィール』を使うか、という話である。

何しろ、DNAレベルで同一の個体なのだ。入れ替わった所で判別は不可能に近い。
よほど派手な行動でもして注目されたりしない限り、ただ顔が似ている人間同士の関係を調べられる事もないだろう。

――であれば、万が一の場合の戦力的にも現時点で最強のアクメツであるver.3の投入は当然の帰結と言える。

学園都市に送り込むので最適な『人材』は誰か、という話は学園都市で学生をやっている『安達生(あだちしょう)』の意見を聞くことになった。
ちなみに彼は『能力開発』とやらの調査……というよりも『本当のオリジナル』蘇生への可能性を模索する為、
東が学園都市へ送り込んだver.3の個体であり、『残留組』ではない。

こちらの状況を知る由もない安達は、学園都市外部からの突然の連絡に困惑していたが、
椿がこちらの事情を話すとすぐに協力を確約してくれた。
万全を期して、連絡には以前『悪滅』の際にアクメツ同士の連絡に使用していた特殊な端末を使用した。

生(安)『狙うとしたら、学生を支える立場の職業がいいだろうな。
     こっちで出来た知り合いにそういうのを融通してくれそうな変わった医者がいるから、彼に頼めば医者もいけると思う』

生(椿)「本当か!?」

安達の言葉に椿が反応する。
51 :とある複製の妹達支援[辞さいない→辞さない]:2011/01/05(水) 22:41:57.76 ID:Pwogntko
生(一)「医者なんかと何処で知り合ったんだ?」

なんか、という言葉に現在進行形で医者の椿が顔を顰める。

生(安)『いや~、ついこの前、郵便局強盗に足首砕かれてさ。それで軽く入院したんだが、その時の主治医だったんだよ』

生ズ「「(いや、足首砕かれたって……)」」

生(安)『そんで、話は戻るけど学園都市ってのは、内部の情報が外に漏れる事には異常な程、警戒しているんだが……逆はそうでもない』

生(椿)「侵入は容易って事か?」

生(安)『技術スパイなんかは割とすぐに捕まるけど、目的が分からない場合であれば放置されるケースが多いらしいぞ?』

生(一)「そういう情報は、一般的な学生が入手できるものなのか……?」

生(安)『ウチの高校に警備員(アンチスキル)やってる先生がいるんだが、その人から『個人的に』少し聞く機会があって……』

警備員(アンチスキル)とは学園都市における警察的組織であり、
学園都市特有の次世代兵器で武装した教員によって構成されている、との事だった。

――だが、それにしても。

生ズ「「(コイツの学園都市での生活はどうなってるんだ……?)」」
52 :とある複製の妹達支援2011/01/05(水) 23:05:27.39 ID:Pwogntko
生(安)『医者、教師、警備員、あと……料理人もいけるだろうな。 ついでに俺の親戚って事で2、3人なら平気じゃないか?』

生(一)「最低でも10人は学園都市内で動ける状態にしておきたいが……」

生(安)『まぁ、学園都市の中だけで大概の職業は揃ってるからな。上手く時期をずらせば10人ぐらいなら誤魔化せるさ』

生(東)「細かい人選はこちらで済ましておくが……安達には他に頼みたい事がある」

生(安)『なんだよ?』

生(東)「学園都市で人を二人探して欲しい。一人は見つけ次第、すぐに接触。もう一人は動向を探るだけでいい」

生(安)『なんか、嫌な予感というか……不幸な予感がするんですが』

そういうのは級友のツンツン頭の専売特許の筈なのだが、何やら、ものすごい無理難題を吹っ掛けられそうな気配を感じていた。

生(東)「そう、試験個体の協力者と、彼女のオリジナルだ」

――接触対象・長点上機学園二年、布束砥信(ぬのたばしのぶ)

――監視対象・常盤台中学一年、御坂美琴(みさかみこと)
58 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 14:20:44.07 ID:hGnrcw6o
学園都市第七学区

~とある高校の学生寮~

生(安)「……マジで?」ピッ

通話を終え、明かりの消えた部屋の中で一人呟く。
なんというか……至って平凡である事が最大の特徴であるような高校に通っている自分が関わるとは到底、思えない学校の名前が出てきた。

生(安)「どっちも超が付く程のエリート校じゃん……幾ら何でもそんな所の生徒とのパイプなんかないぞ……?」

自分の交友関係と言えば、

学園都市に来てから同じクラスになった三馬鹿とか、

自分に絡んできて返り討ちにしたスキルアウトの三馬鹿とか、

自分の馬鹿のせいで怪我した時に知り合った医者とか、

馬鹿な生徒は割と好きじゃん? と言って良くしてくれる学校の先生とか、

……って全部、馬鹿絡みじゃん!? とあまりの情け無さに深夜だというのに大声で叫んでしまう。
59 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 14:29:44.61 ID:hGnrcw6o
すると、ベランダの方から何かを軽く叩くような音が聞こえた。
何だろう? と思ってそちらを見ると隣の部屋に暮らしている、級友の顔がベランダの堺から覗いている。

級友の名は土御門元春。安達と同じ高校に通う男子高校生である。
女にモテたいからという理由で金髪+グラサンのヤンキースタイルを頑なに崩そうとしない猛者である。

土御門「ショウセンセー、こんな夜中にどうかしたのかにゃー? そういうのはカミやんで間に合ってるぜい?」ヤレヤレ

土御門は逆隣の部屋に住んでいるツンツン髪の級友を思い出しながら肩をすくめる。

生(安)「あー、五月蝿かったか? スマン、今少し自分の交友関係が庶民的すぎる事に絶望してたんだ」

庶民的交友関係の一角である金髪グラサンにそんな事を言ってみる。

土御門「……何でまた?」

そうだ、モノは試しで聞いてみようか? と、そんな考えが頭をよぎる。色々と変なことに詳しい奴だし……

生(安)「土御門って、常盤台とか長点上機に知り合いっている?」

土御門「センセー……」

返って来るのは憐れむような視線。

土御門「さすがにそれは無謀ってものですたい……」

生(安)「へ?」

土御門「いくら女っ気に飢えてるからって……狙うにしたらもう少し普通の所にした方がいいと思うにゃー……
     さすがのオレでも、あのクラスの学校と合コン組むのは不可能だぜい……」
60 :とある複製の妹達支援[堺→境]:2011/01/06(木) 14:45:42.62 ID:hGnrcw6o
生(安)「あーいや、そういう訳じゃないんだけど……長点上機に少し『お知り合い』になりたい人がおりまして…」

土御門「……オンナ?」

何だろう、土御門は玩具を貰った子供のような目をしている。

生(安)「まぁ、そうだな」

土御門「……どんな娘?」

言われて、端末に送られてきていた接触対象の画像を表示する。
何でも試験個体の記憶から画像データとして出力したらしい。……科学って凄い。

量産能力者(レディオノイズ)計画の研究者であり、試験個体の協力者でもある布束砥信。
白衣の部分を指で隠して、上手いこと顔だけを土御門に見せる。

土御門「少し目付きが悪いけど中々の美人さんかにゃー……? センセーも隅に置けないぜい」

何やら凄い勘違いをされているようだが、事情を説明する訳にもいかないので、敢えて否定はしないことにする。
61 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 17:01:18.83 ID:hGnrcw6o
生(安)「名前と学校……あと顔が分かってても、一般人じゃ書庫(バンク)使って調べる、って訳にもいかないだろ?」

書庫(バンク)というのは学園都市の総合データベースであり、学生のデータであればほぼ全て網羅されていると言ってもいい。
とはいえ、アクセス可能なのが風紀委員や警備員といった特殊な立場の人間に限定されているので一般人が触れる機会は皆無だ。

土御門「そうだな……何とかしてもいいが、一つ条件がある」

それまでの緩い空気が一瞬で消え、声のトーンが落ちると共にサングラスの奥の瞳が冷たく光る。

生(安)「な、なんだよ? 急に真面目な顔して」

土御門「上手くいったら、その娘に長点上機の子を紹介してもらって、合コンしないかにゃー?」

が、すぐに弛緩する空気。だからそういうのではないんだが……と、言いそうになったところで気になったことがあったので聞いてみる。

生(安)「お前、舞夏はいいのか?」

途端、ブフゥ!? と盛大に土御門は吹き出した。

土御門「せ、センセーは一体、な、何を言っているのかにゃー?」アセタラリ

生(安)「え……普段の感じから、まさかと思って聞いてみたんだけど……マジ……なのか?」

土御門「ま、マジって何が? まさか、このオレが義妹にマジでLOVEとか……? そんな幻想、カミやんに殺してもらった方が……!」ガクブル
62 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2011/01/06(木) 17:53:39.49 ID:axoZCMwo
まだ実験が始まってないなら、時系列的に安達や土御門達はまだ中学生じゃ?
63 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 17:59:50.53 ID:hGnrcw6o
やっちまったああああああああああああ!?
超電磁サイド考えすぎて魔術サイド疎かになってた・・・そういや一巻で1年だった…
その前だから中3やね。リテイクしていい?
ついでに誤字直そうかな・・・
 
65 :割と致命的なので50よりリテイク2011/01/06(木) 18:29:17.67 ID:hGnrcw6o
椿が自ら学園都市に乗り込もうとすることは、他の生にも分かっていたので、そこには触れずに話を進める。

生(一)「医者なんかと何処で知り合ったんだ?」

なんか、という言葉に現在進行形で医者の椿が顔を顰める。

生(安)『いや~、ついこの前、郵便局強盗に足首砕かれてさ~? それで軽く入院したんだが、その時の主治医だったんだよ』

生ズ「「(いや、足首砕かれたって……)」」

実際は、小学生ぐらいの少女2人を庇って負った名誉の負傷なのだが、『男は背中で語れ』を信条とする安達は多くを語ったりはしない。

生(安)『そんで、話は戻るけど学園都市ってのは、内部の情報が外に漏れる事には異常な程、警戒しているんだが……逆はそうでもない』

生(椿)「侵入は容易って事か?」

生(安)『技術スパイなんかは割とすぐに捕まるけど、目的が分からない場合であれば放置されるケースが多いらしいぞ?』

生(一)「そういう情報は、一般的な学生が入手できるものなのか……?」

生(安)『知り合いに警備員(アンチスキル)やってる先生がいるんだが、その人から『個人的に』少し聞く機会があって……』

警備員(アンチスキル)とは学園都市における警察的組織であり、
学園都市特有の次世代兵器で武装した教員によって構成されている、との事だった。

――だが、それにしても。

生ズ「「(コイツの学園都市での生活はどうなってるんだ……?)」」

生(安)『医者、教師、警備員、あと……料理人もいけるだろうな。 ついでに俺の親戚って事で2、3人なら平気じゃないか?』

生(一)「最低でも10人は学園都市内で動ける状態にしておきたいが……」

生(安)『まぁ、学園都市の中だけで大概の職業は揃ってるからな。上手く時期をずらせば10人ぐらいなら誤魔化せるさ』

生(東)「細かい人選はこちらで済ましておくが……安達には他に頼みたい事がある」

生(安)『なんだよ?』

生(東)「学園都市で人を二人探して欲しい。一人は見つけ次第、すぐに接触。もう一人は動向を探るだけでいい」

生(安)『なんか、嫌な予感というか……不幸な予感がするんですが』

そういうのは級友のツンツン頭の専売特許の筈なのだが、何やら、ものすごい無理難題を吹っ掛けられそうな気配を感じていた。

生(東)「そう、試験個体の協力者と、彼女のオリジナルだ」

――接触対象・長点上機学園二年、布束砥信(ぬのたばしのぶ)
――監視対象・常盤台中学一年、御坂美琴(みさかみこと)

……どちらも一筋縄ではいきそうにない相手であった。
66 :とある複製の妹達支援リテイク中orz[sage]:2011/01/06(木) 18:34:24.79 ID:hGnrcw6o
学園都市第七学区

~とある中学の学生寮~

生(安)「……マジで?」ピッ

通話を終え、明かりの消えた部屋の中で一人呟く。
なんというか……至って平凡である事が最大の特徴であるような学校に通っている自分が関わるとは到底、思えない学校の名前が出てきた。
来年進学する予定の高校だって、レベル0から強くてもレベル2ばかりの『普通』の高校なのだ。
身体能力では肉体強化系レベル4に匹敵するver.3のアクメツクローンが普通かどうかは別にしても、
生徒全員がレベル3以上の常盤台中学やそれに匹敵する一芸を有した生徒の巣窟である長点上機学園とでは格が違いすぎる。

生(安)「どっちも超が付く程のエリート校じゃん……幾ら何でもそんな所の生徒とのパイプなんかないぞ……?」

自分の交友関係と言えば、学園都市に来てから同じクラスになった三馬鹿とか、

自分に絡んできて返り討ちにしたスキルアウトの三馬鹿とか、自分の馬鹿のせいで怪我した時に知り合った医者とか、

馬鹿な子供は割と好きじゃんよー? と言って良くしてくれる警備員(アンチスキル)のお姉さん?とか、

……って全部、馬鹿絡みじゃん!? とあまりの情け無さに深夜だというのに大声で叫んでしまう。

すると、ベランダの方から何かを軽く叩くような音が聞こえた。
何だろう? と思ってそちらを見ると隣の部屋に暮らしている、級友の顔がベランダの境から覗いている。

級友の名は土御門元春。安達と同じ中学に通う男子中学生である。
女にモテたいからという理由で金髪+グラサンのヤンキースタイルを中学生の時点で頑なに崩そうとしない猛者だ。
普通、こういうのは高校に上がってから『高校デビュー』でやるものだと思うのだが…

土御門「ショウセンセー、こんな夜中にどうかしたのかにゃー? そういうのはカミやんで間に合ってるぜい?」ヤレヤレ

土御門は逆隣の部屋に住んでいるツンツン髪の級友を思い出しながら肩をすくめる。

生(安)「あー、五月蝿かったか? スマン、今少し自分の交友関係が庶民的すぎる事に絶望してたんだ」

庶民的交友関係の一角である金髪グラサンにそんな事を言ってみる。

土御門「……何でまた?」

そうだ、モノは試しで聞いてみようか? と、そんな考えが頭をよぎる。色々と変なことに詳しい奴だし……

生(安)「土御門って、常盤台とか長点上機に知り合いっている?」

土御門「センセー……」

返って来るのは憐れむような視線。

土御門「さすがにそれは無謀ってものですたい……」

生(安)「へ?」
67 :とある複製の妹達支援リテイク中orz[sage]:2011/01/06(木) 19:03:33.92 ID:hGnrcw6o
土御門「いくら女っ気に飢えてるからって……狙うにしたらもう少し普通の所にした方がいいと思うにゃー……
     さすがのオレでも、あのクラスの学校と合コン組むのは不可能だぜい……」

いや、さすがに中学生が合コンってのもどうなんだ……と安達は嘆息する。

生(安)「あーいや、そういう訳じゃないんだけど……長点上機に少し『お知り合い』になりたい人がおりまして…」

土御門「……オンナ?」ワクワク

何だろう、土御門は玩具を貰った子供のような目をしている。

生(安)「まぁ、そうだな」

土御門「……どんな娘?」

言われて、端末に送られてきていた接触対象の画像を表示する。
何でも試験個体の記憶から画像データとして出力したらしい。……科学って凄い。

量産能力者(レディオノイズ)計画の研究者であり、試験個体の協力者でもある布束砥信。
白衣の部分を指で隠して、上手いこと顔だけを土御門に見せる。

土御門「少し目付きが悪いけど中々の美人さんかにゃー……? センセーも隅に置けないぜい」

何やら凄い勘違いをされているようだが、事情を説明する訳にもいかないので、敢えて否定はしないことにする。

生(安)「名前と学校……あと顔が分かってても、一般人じゃ書庫(バンク)使って調べる、って訳にもいかないだろ?」

書庫(バンク)というのは学園都市の総合データベースであり、学生のデータであればほぼ全て網羅されていると言ってもいい。
とはいえ、アクセス可能なのが風紀委員や警備員といった特殊な立場の人間に限定されているので一般人が触れる機会は皆無だ。

土御門「そうだな……何とかしてもいいが、一つ条件がある」

それまでの緩い空気が一瞬で消え、声のトーンが落ちると共にサングラスの奥の瞳が冷たく光る。

生(安)「な、なんだよ? 急に真面目な顔して」

土御門「上手くいったら、その娘に長点上機の子を紹介してもらって、合コンしないかにゃー?」

が、すぐに弛緩する空気。だからそういうのではないんだが……と、言いそうになったところで気になったことがあったので聞いてみる。

生(安)「お前、舞夏はいいのか?」

途端、ブフゥ!? と盛大に土御門は吹き出した。

土御門「せ、センセーは一体、な、何を言っているのかにゃー?」アセタラリ

生(安)「え……普段の感じから、まさかと思って聞いてみたんだけど……マジ……なのか?」

土御門「ま、マジって何が? まさか、このオレが義妹にガチでLOVEとか……? そんな幻想、カミやんに殺してもらった方が……!」ガクブル
69 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 19:24:57.41 ID:hGnrcw6o
生(安)「その……まあ、アリじゃないか? そういうのも」

垣間見えてしまった友人の特殊な家族関係に軽く戦慄を覚える安達ではあったが、とりあえずフォローを入れる。

土御門「いや、事実としてフォローされても困るんだが……ともかく、この娘の事は調べといてやるにゃー」

生(安)「そっか、じゃあコレが名前な。よろしく頼むぜ?」

土御門に布束砥信と書かれたメモを渡す。

土御門「ま、二、三日で何かは分かると思うぜい? 乞うご期待だにゃー」

メモをひらひらと振って土御門は自室へと戻っていた。

生(安)「一応、後で自分でも調べてみるとして……問題は超電磁砲(レールガン)の方だよな……」

レベル5であり、試験個体やこれから量産される妹達のオリジナルである少女。
まさか、去年までランドセルを背負ってた女の子が自分のクローンを作る計画や
そのクローンを虐殺させる計画に関与しているとは思えないが、動向は探っておかなければいけない。

なんでもレベル1から努力を重ねてレベル5にまでなったという話だ。
きっと、自分の能力に対して並々ならぬ誇りと自負を持っているに違いない。
彼女が善人にしても悪人にしても自分の遺伝子を利用した実験が勝手に行われていると何かの拍子に知ったら……

下手をすると、自分達の妹達への支援への障害になってしまう可能性すらある。
その為にも布束への接触を急ぎ、支援の為の地盤を固めなければいけない。
70 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 22:07:32.38 ID:hGnrcw6o
その機会が訪れたのは、それから二日後のこと。
土御門から布束の簡単なプロフィールと彼女の行動エリアについての情報を得た安達は、早速彼女がよく行くという喫茶店へと向かっていた。
そんな情報を土御門がどうやって入手したのかに関しては気にしない。

――布束砥信

幼少の頃から生物学的精神医学の分野で頭角を現し、
第七薬学研究センターでの研究機関を挟んだ後に、長点上機学園に復学。

生(安)「(そして、量産型能力者計画に参加していた研究者の一人。洗脳装置(テスタメント)を用いた妹達の脳内情報の入力の監修を行っていた女)」

試験個体の話では、一時は研究チームを外れていたが、絶対能力進化計画の発案と共にチームへと戻されたらしい。
試験個体以降の妹達の人格形成も洗脳装置とやらで行う予定ということは、妹達をクローンとして『自覚』させるのは布束の筈だ。

その彼女が何故、試験個体の協力者になり、彼女が学園都市からの脱出を手伝ったのか……

ふと、ある女性の記憶が呼び起こされる。
生達が『本当のオリジナル』として敬意を払う『パーフェクトONE』が誕生するキッカケを作った研究者の女性。
先代の『東生』の育ての親でもある彼女は、バージョンアップ後のクローン達にとっては、『共通』の初恋の相手のような人だ。
継承された擬似記憶であるにも関わらず、彼女を想うと暖かい感情が湧きあがる。

……果たして布束砥信は、自分達にとっての彼女のように、『妹達』にとっての救済者足りえるのだろうか?
73 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 23:28:20.04 ID:hGnrcw6o
学園都市第四学区

生(安)「……なんだ、アレ」

思わず声に出して呟いていた。
土御門情報の喫茶店に来てみたところ、幸運にも布束らしき少女が店内にいた。

――それはいい、歩きまわる手間が省けたのだから。

が、アレは何だ?

試験個体経由の例の画像データでは、布束は学校の制服の上から白衣を着ていた。

が、アレは何だ?

生(安)「ゴスロリ……だと……?」

見る人間が見れば、『甘過ぎず辛過ぎず』を体現した見事なコーディネートと賞賛するのであろうが、
そう言った方面への知識の少ない安達にしてみれば『何か黒くてフリフリしている』程度の認識しかない。

『残留組』の中には、そちらの方面の知識に明るい生もいるにはいるのだが、
彼が死ぬ予定はないし、既に安達はver.3として、この世に生を受けているので、その知識が共有される事はない。

生(安)「(って、私服のインパクトで視界に入らなかったけど、一人じゃないのか?)」

優雅にカップを傾けるゴスロリ研究者の対面には、一人の男が座っている。

二人を観察できる位置に座り、注文を取りに来た店員に「コーヒー」とだけ告げる。

一旦、布束から視線を外して、対面に座る男の方を観察する。
ひ弱さと神経質さが同居したような鬱屈した表情をした成人男性だ。

生(安)「(あの男の顔、追加で送られてきた画像データで見たな……)」

この二日間でクローンプラントで治療中の試験個体から得られた情報の中に男の名前があった。

――天井亜雄(あまいあお)

試験個体(フルチューニング)……ミサカ00000号を作った男だ。
74 :とある複製の妹達支援2011/01/06(木) 23:56:54.96 ID:hGnrcw6o
――試験個体が助かる見込みはない。

それが彼女の治療を任されていた東の出した結論だった。

確かにクローン体として不完全な彼女は、そのままでは長い時間を生きられないのは分かっていた。
だが、アクメツクローンプラントの技術を使って『再調整』を行えば、普通の人間と同程度の寿命を取り戻すことは容易な筈だったのだ。

しかし、彼女は不完全なクローン体であるが故の短命以外にも致命的な問題を抱えていた。

量産能力者(レディオノイズ)計画の最初の個体である為に。

『強能力者(レベル3)』の限界をどうにかして引き上げるべく。

完全なる『超能力者(レベル5)』へと到達する為に。

彼女の肉体は、度重なる投薬や改造などの措置で、助けようのない状態だった。

――あそこにいるクソ野郎によって。
76 :とある複製の妹達支援2011/01/07(金) 01:02:32.04 ID:ZuIy50Uo

店員「こ、こちらコーヒーになります……」カタカタ

『悪滅』時に匹敵する殺気を放つ安達の姿にコーヒーを持ってきてくれた店員の手が震えていた。
慌てて黒い感情を引っ込めて愛想笑いを浮かべる。

生(安)「あ、どうも~」

コーヒー啜りながら再び天井と布束を見やる。

天井は焦りの表情を浮かべ、頻りにテーブルを指で叩いていた。

天井「布束、聞いているのか!?」

布束「………………それで?」

天井「だから、試験個体が逃げたのは君の所為じゃないかと聞いているんだ!」

布束「何の根拠もなく他人を疑うというのも、研究者としてどうかと思うわ」

天井「しかし、洗脳装置の監修を行っていたのは君だろう!? 何か余計なモノでもインプットしたんじゃないのか!?」

布束「indeed 無能な研究員の見分け方でも入力すれば、貴方の元から離れるのも理解出来るけど」

明らかに挑発している。
やはり実験に大して良い感情を持っていないのか、言葉の端々に毒がある。

天井「っ……ただでさえ私の立場が悪いのは知っているだろう……?」

布束「……知ってるいるけど……?」

素知らぬ顔でカップを傾ける布束は、それがどうかしたのか? とでも言わんばかりだ。
どうやら研究者として実力はともかく、人間としての格は布束の方が上のようだった。

が、少しばかり挑発しすぎたのか天井の表情が明らかに怒気一色に染まる。
今にも布束に掴みかかりそうな天井の姿に安達の脳は高速で考えを巡らせる。

ここで布束が天井との関係に亀裂が入ると、後々の『自分達』の行動に影響が出る。
彼女には『実験には積極的』というポーズを維持し、実験の中核部分に居座って貰わなければいけないのだ。

その為には極自然に仲裁に入り、この場を収めて、
なおかつ天井には気付かれないように『自分が試験個体の味方』である事を布束に伝えなければいけない。
77 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/08(土) 01:37:23.15 ID:eQpzOiIo
天井「布束……君はっ……!」

――オペレーション『OMBK』発動。

生(安)「砥信さん、遅れましたァ! ごめんなさい!」

布束「………………え」キョトン

生(安)「いやー、そこでスキルアウトに絡まれちゃって~。あ、普段の『白衣』姿と違って私服も可愛いですね!」

天井「だ、誰だい君は!?」

布束「………………?」」

突然の闖入者に天井は動揺しているが、それは声をかけられた布束も同じで、その特徴的な目を大きく見開いている。

生(安)「あ、もしかして砥信さんのお父さんですか!? いやー初めまして。
     僕は御宅の『お嬢様』と『お付き合い』をさせて頂いている『安達生』と申します!」イゴオミシリオキヲ

意図的に幾つかの単語を強調し、布束へメッセージを送る。

布束「………………」mm

天井「付き合っ……!? いや、そもそも私は彼女の父親じゃ……!」アタフタ

言われなくても知っている、似ているのは目付きの悪さぐらいだ。
そんな事を考えながらも天井の手を握り畳み掛ける。

生(安)「お父さんの心配は分かります、目に入れても痛くない『一人娘』が『家を抜けだして』こんな若造と付き合っているなど。
     『何万回殺したって』許せない、そのお気持ちは重々承知しております!」

布束「………………!」
78 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/08(土) 01:41:07.36 ID:eQpzOiIo
天井「いや、だから……」

…というか卑屈な目なだけの天井と違って、布束の方は愛嬌があっていいじゃないか。

生(安)「しかし! だからこそ怒りをぶつけるのは僕だけにして娘さんを叱るような事は! 何卒!」ドゲザ

天井「だから違うと言っているだろう! 布束! なんだこの男は!?」

布束「…………恋人だけど?」

――通ったか!?

天井「な、何だと!?」

布束「dear 私に恋人がいるのがそんなに驚き? ねぇ、生君?」

自然に生の名前を呼ぶ布束。先程、名乗ったのは当然ながら、これが狙いだ。
土下座を辞めて演技を再開する……確認を交えながら。

生(安)「まぁ、恋人と言っても、まだ付き合い始めて『一週間も経ってない』んですけどね~?」

布束「そうね、まだ『五日』ぐらいしか経ってないかしら」

生(安)「(試験個体がプラントを訪れたのは二日前だけど、学園都市から脱出したのは五日前……!)」

完璧だ、彼女はこちらの意図を完全に理解している。

天井「…………五日前だって?」

布束「そうよ? だから貴方の気にしているような事に関わっている暇なんてないのよ、実は」グイッ

言いながら布束を生の腕を掴むと、天井に見せ付けるように自分の胸元へと引き寄せる。

生(安)「(い、意外とあるっ……!? いや、そうじゃなくて、演技、演技!)」

布束「これからデートの約束があるのよ。だから貴方の愚痴を聞いてばかりもいられない」

生(安)「そうなんですよ~。って、お父さんじゃないとするとコチラの方は誰なんですか?」

天井「あ、いや私はだね……」

布束「……私の『昔の職場』の同僚よ」

天井「そ、そうなんだよ。第七薬学研究センターで少しね」

布束の決意表明とも取れる言葉を助け舟と勘違いしたのか天井はそれに飛びついた。

生(安)「……本当ですか?(あーまい、意外と嘘も上手いじゃん~?)」ニヤリ

布束「あら、妬いているのかしら?」ニヤリ
79 :とある複製の妹達支援[辞める→止める]:2011/01/08(土) 01:56:28.90 ID:eQpzOiIo
天井「わ、私はこれで失礼させてもらうよ……ははは」

色んな意味で疑いの目線を送られた天井は慌てて席を立った。
逃げるように会計を済ませ店を出て行く。

間男のような天井を視界の端で見送ると、生は今まで天井の座っていた位置に陣取り、改めて挨拶を交わす。

生(安)「こんにちわ、布束砥信さん」

布束「……一応、お礼を言ったほうがいいのかしら?」

生(安)「彼を追い払ったことになら、ご自由に。ですが『お嬢さん』については、まだ何も成し遂げてないので、止めておいて下さい」

布束「…………そう。なら前の方にだけ感謝しておくわ」ジー

生(安)「……どうしたんです?」

布束「indeed 興味深いわね」マジマジ

試験個体以外に初めて見るクローンが、という事だろうか。

生(安)「……これからどうしますか?」

布束「……?」

生(安)「デートの約束があるんでしたよね、確か?」ニヤリ

布束「そうだったわね。じゃあ、場所を変えるとしましょうか」ニヤリ

テーブルに五百円を置いて布束に付いて店を出る。

――オペレーション『お父さん、娘さんを僕にください』完了。

……さて、これからが本番じゃん?

第2.5節 『二人の研究者』 完

83 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/10(月) 14:09:13.09 ID:J4nMwAALo
~アクメツクローンプラント~

生(椿)「東、学園都市の安達から『妹達』のDNAマップと、彼女達の本来あるべき健康時の想定データが届いたぞ」

生(東)「そうか、協力者との接触は上手くいったようだな……これでプラントの培養器を『妹達』用に改造できる」

生……アクメツ以外のクローンの生成。
それはかつて多くの兄弟達が望んだ技術であり、10年前のクーデター事件の最中、先代の東生が完成させた技術。
10年前は、緊急時であった為に肉体生成の為の素材がなく、最後のアクメツ『迫間生』が自らの肉体を犠牲に一人の少女の命を救った。

現在では肉体生成用の素材の問題はクリアしているが、万全な状態でクローン体の製造を行うには対象者のDNA情報の入手は必須といえる。

生(東)「試験個体の肉体は限界が近い、その前に『乗り換え』の準備は万全にしておきたいからな」

――試験個体(フルチューニング)が助かる見込みはない。

確かに東はそう結論を出した。

だが、クローン技術において学園都市を遥かに凌駕する彼等の技術に常識は通用しない。
ある一定の年齢まで、強制的に肉体を成長させている点では『生達』も『妹達』も同じだが、
その根幹にある『設計思想』とでも言うべき点には大きな差異がある。

不老不死への野望から生まれた彼等の技術は、クローン体であっても寿命に関しては『問題なし』のレベルへと到達している。
だからこそ今、新たに万全な『妹達』用の肉体を用意し、そちらへと試験個体の記憶を引き継がせる計画を進めていた。

生(椿)「今、このプラントにいる試験個体はいいとしても、学園都市の方で生まれてくる『妹達』はどうするんだ? 
     俺らみたいに仮面付ける訳にもいかないだろ?」

生(東)「……それはそれで見てみたいような気もするがな」

二万人のミサカクローンがアクメツマスクを被っている光景を想像する。

……なんかもう、それだけで実験が中止されそうな絵面だ。

ミサカ「やめて下さい、とミサカは未来に起ころうとしている戦慄の光景に体を震わせます。
     というか実験の阻止という選択肢はないんでしょうか、とミサカは問いかけます」

そして彼女の疑問はこの数日間、生達の間で幾度も話し合った議題であった。

生(東)「難しいだろうな、それは」

そう答えながら、東は兄弟達との会議の内容を思い出していた。
84 :とある複製の妹達支援2011/01/10(月) 14:39:43.31 ID:J4nMwAALo
☆会議に参加した生クローン一覧☆

東……二代目クローンプラント管理人

一条……元長野県警・現在本庁勤務刑事

椿……関東医大病院勤務・医師

桃井……AMジャーナル・特派記者

由良……SS企業に所属する民間ボディガード

菊池……クリーニング店経営

海堂……流浪のストリートミュージシャン

三原……養護施設運営

烏丸……元アクメツ用特殊装備設計者・現義肢装具士

白井……ノンフィクション作家

風見……高校教師

田所……蕎麦屋経営
85 :とある複製の妹達支援2011/01/10(月) 14:46:42.33 ID:J4nMwAALo
――例えば、実験の中核にいる『一方通行(アクセラレータ)』を説得し、実験への参加を止めさせる、というのはどうか?

最初に出た意見はごく平和的な作戦だった。

生(一)「これだけの計画だからな……仮に第一位とやらに、その気が無くなっても誰か別の人間が実験を遂行するだろう」

――ならば、一方通行を撃破してしまえばいいのではないか?

生(椿)「けど、絶対能力(レベル6)に到達出来るのは、その第一位だけって話じゃないのか? なら第一位をどうにかすれば……」

生(白)「どうにか出来るかどうかは別にしても、そのレベル6云々って話が胡散臭いじゃん」

生(桃)「機械の弾き出した『答え』の信憑性って事か?」

生(田)「まぁ、樹形図の設計者とかいう天気予報機がどれほどか高性能か知らないが、話自体が不自然すぎる」

――本当に絶対能力者を誕生させる事が目的なのか?

生(椿)「なぜ第三位のクローンなのかって事か?」

生(東)「それもある。だが、それ自体は元々あった計画の再利用だからかもしれないし、第一位と第二位の能力が特殊だからかもしれない」

生(三)「能力の桁こそ違うが『電撃使い』という点では割と学園都市ではポピュラーな能力らしいからな」

生(菊)「でも、本気で第一位を絶対能力者にしたいなら、もっと他に手段がありそうじゃん?」

生(東)「確かにレベル3程度の『妹達』を二万体も[ピーーー]よりも、適当なレベル4でもぶつけた方が経験値という意味ではレベルアップは速そうだな」

生(海)「魔王のレベル上げにメタルスライムを大量に用意するみたいなものだもんな……面倒にも程がある」

生(椿)「例えはアレだけど、確かにそうだな」

生(由)「そもそも、2万人を『二万通りの戦場』で[ピーーー]って何日かかるんだ?」

生(一)「……とりあえず一ヶ月で実行できるようなマニフェストではないな」

――どうすれば『妹達』を本当の意味で『解放』出来るのか?

生(鳥)「むしろ、『妹達』二万体を製造する為の建前と言われた方が自然なぐらいだ」

生(椿)「実験をどうにかして止めても、何らかの目的に利用されるって事か?」

生(東)「どうだろうな。実験と銘打っている以上、ある程度の数を『殺害』する事すら計算の内なのかもしれない」

生(田)「……つまり?」

生(一)「普通に『助ける』だけじゃ、学園都市側の思惑の中である可能性が高い、って事だな」
86 :すまん、saga入れるの忘れてた。脳内補完よろ[saga]:2011/01/10(月) 14:57:41.24 ID:J4nMwAALo
生(海)「実験が潰されることも計算の内ってことかよ!?」

生(東)「特定のタイミングで中止させるのか、何らかの妨害すら考慮に入れてるのか……」

生(菊)「それって、どうあがいても本当の意味で妹達を『自由』にはしてやれないって事にならないか……?」

生(東)「いや……一つ、手がある」

生(一)「……それしかないのか?」

生(海)「だけど……」

学園都市の思惑から『妹達』を解放する手段……それは……

――『妹達』を実験によって殺害『させた』上で学園都市外部で再生させる、という方法だった。



ミサカ「……そう簡単な話ではない、とミサカも理解はしていましたが……こういう身となると辛いものがあります、とミサカはため息をつきます」

生(東)「恨んでくれても構わない。罵詈雑言をぶつけて、責められて、それでも私達は君に……君達に頭を下げないといけない」

死んでも生き返れるから、黙って殺されてくれ、要するにそういう事なのだ。
死の先があるとはいえ、一度はその恐怖を苦痛を彼女達に与えなければいけない。
それは、自らの為に二万人の『妹達』を犠牲にしようとしている少年よりも傲慢で恐ろしい行為かもしれない。

88 :とある複製の妹達支援2011/01/10(月) 18:08:49.63 ID:J4nMwAALo
ミサカ「そんな事はありませんよ、とミサカは安心させるように微笑みます。
     私の体に関しては、もうどうしようもないのは自覚してます。
     ……そもそも、他の妹達は死に対して思う所は無いように調整されるのでしょう、
     とミサカは実験動物としての在り様を肯定してしまう『妹達』の悲哀を語ります」

生(椿)「だが、君には個性というか……感情のようなものがあるように見えるんだが?」

ミサカ「私の場合は、試験個体であるが為に能力開発なども多岐に渡りましたし、割と長く生きていますので……
     だから、そういうのが芽生えたのかもしれません、とミサカは質問への回答を述べます」

ベッドの上でそう語る試験個体は、何処か誇らしげで自信に溢れていた。

生(東)「君のその感情を『妹達』と共有できればいいのだがな……」

ミサカ「止めた方がいいでしょう、MNW(ミサカネットワーク)が稼働状態になれば、それも可能ですが、
     それは私の所在が学園都市側に露見する事を示します、とミサカは自分の存在が先輩方の危機を招く可能性を危惧します」

生(東)「MNW……妹達の電気操作能力を利用して作られた脳波リンク、だったか」

ミサカ「『妹達』の脳によって構成される並列コンピューターとも言えますね、とミサカは補足を加えます。
  これによって、『妹達』間で情報や経験レベルでの技術の共有が可能になります」

生(椿)「俺達が仮面でやっていることを『妹達』の脳の中だけでやるって感じか……」
91 :とある複製の妹達支援2011/01/13(木) 23:28:56.06 ID:z0xnBQBbo
生(東)「…………ふむ」

生(椿)「東、どうかしたのか?」

生(東)「いや……『妹達』の記憶継承の手段なんだが、彼女達の脳波リンクをうまく活用できないか、と」

ミサカ「活用、というのはどういった風にでしょうか、とミサカは疑問を投げかけます」

生(東)「俺達の仮面は神経に直接繋げることで死亡時に長期記憶のシナプスを外部へ電気信号として発信して、
     それを人工衛星経由で新しいクローン体へと引き継いでいるんだが……」

生(椿)「死の瞬間から、新しい体で目覚めるまでの記憶は連続しているし、各々の『個』を失ったりはしないって事だったな」

ver.1である椿にとっては、他の『残留組』と同様に死、そして再生の経験はないのでver.3個体から聞いた話でしかないのだが。

生(東)「バージョンアップが行われる場合は他の仮面を装着して死亡したクローンの経験や記憶も擬似記憶として継承され、
     武術などの経験がある場合は、それらを『使用可能』な状態になるように自動的に肉体の調整が行われる訳だ。
     そして元々、電気能力を利用して記憶の共有が可能な『妹達』なら、シナプスを電気信号に変えて発信する部分を
     行う仕掛けを用意するだけで、同じことが出来る筈……だと思う」

生(椿)「じゃあ、仮面を『妹達』用に改造するって事か?」

いつぞやの偽アクメツの時は頼まれたって特注の仮面を作りたくはなかったが、彼女達の為であればそれも吝かではない。

ミサカ「いえ、ですからあの仮面を付けるのは嫌なんですよ、とミサカは……」ガクブル

生(東)「おいおい、あんな目立つ物を付けさせたら学園都市を誤魔化す所じゃないだろう……?」

ミサカ「そ、そうですか……とミサカは安堵の溜息をつきます」ホッ

生(東)「試験個体が着けていた、軍用ゴーグルがあっただろう?」

ミサカ「ミサカにはオリジナルのように磁力線を視認する能力がありませんので、それを補うための装備です、とミサカは枕元に置かれたゴーグルを指さします」

生(椿)「と、いうことは……これから生まれる『妹達』にも標準的に装備されるって事か?」

ミサカ「そうなる予定です、とミサカは研究者達の会話を思い出しながら肯定します」

生(東)「よし、それなら上手くいきそうだな……」

生(椿)「これを改造するのか……?」

試験個体から軍用ゴーグルを受け取りマジマジと眺める椿。
92 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/13(木) 23:34:48.38 ID:z0xnBQBbo
生(東)「と、いうよりも数が数だ。向こうも大量生産する筈だから、製造の段階で設計図に細工をすれば、学園都市が勝手に下準備してくれる」

ミサカ「……そんな事をして気づかれないでしょうか? とミサカは不安を顕にします」

生(東)「恐らく気づかれる可能性は低い筈だ。
     ……他の『妹達』のゴーグルには実験のデータを取るための機構が備えられるはずだ……そこに紛れ込ませる」

実験のデータ発信がMNWやゴーグル経由で行われ、それがデジタル情報でやりとりされることは想像に難くない。

――そこに付け入る隙がある。

細工と言っても、少しばかり送信する情報が増えるだけの事。
……しかもそれが行われるのは、死の刹那。
ある意味で消耗品と言える軍用ゴーグルに注意を払う人間は少ないだろうし、仮に居たとしても布束にフォローさせれば誤魔化せる範囲内。
とはいえ……これは学園都市側に警戒心を抱かせた時点で頓挫する可能性が高い計画である事は確かだ。

……だが『妹達』を殺させるという、生達の常軌を逸した奇策がそれを許さない。

仮に生達が大々的に実験に対し、妨害行動を取れば、自然と相手側に警戒心を抱かせ、計画露見の危険が高まるだろう。
しかし、表面上は予定通りに進む実験に疑問を抱く人間はいないだろう。

生(東)「設計図は完成次第、潜入班の誰かに預けて、安達と布束とやらに渡るようにしよう」

生(椿)「なら俺が直接持って行こうか?」

特出した戦闘スキルの無いver.1であるものの、椿も医師として学園都市にある病院への潜入が決まっていた。

生(東)「それでもいいが……万全を期してver.3の誰かに持たせるさ」

生(椿)「そ、そうか……」ガクッ

生(東)「何を落ち込んでるんだ」

生(椿)「どうしてだろうな………………いや、試験個体の為に何かしたいって事なんだろう、と生は自分で分析してみる」

ミサカ「ミサカの口癖を真似しないでください、とミサカは先輩の素直な言葉に喜びを覚えながら、自らのアイデンティティを守るべく指摘します」

生(椿)「そういえば、その口癖はいつからなんだ?」
93 :とある複製の妹達支援2011/01/14(金) 00:01:20.49 ID:j8Vkne1ho
ミサカ「…………いつからでしょう? 最初の頃は普通に喋っていたような……と、ミサカは過去の記憶を呼び起こしながら答えます」

生(東)「ほぉー、興味深いな」

ミサカ「やはり、変なんでしょうか? ……とミ……いえ、何でもないです」ウズ

生(椿)「いや、無理して止めなくても」

ミサカ「…………いえ、これでも超我慢強い女なんです……」ウズウズ

生(東)「……何やら別の口癖が顔を覗かせたが」

そんな試験個体の姿は、少し珍妙というか……とても……そう……とても人間らしい姿だった。
必死に口癖を止めようとする彼女の姿に東と椿は改めて、その決意を強固なものへと変えていた。







――だが、そんな彼女が、その命を落とすのはこの日から僅か3日後の事だった。







そして時間の針は進み、舞台は再び学園都市へ。

時期をずらし学園都市に侵入した『生クローン』達は妹達支援の為に各々の潜入場所で学園都市に関わっていく。

ある者は学園都市を守護する若き力の集結点へ。

ある者は子供達を導く者として、とある学び舎へ。

ある者は無力を嘆き、闇の表層を徘徊する糞餓鬼共の巣窟へ。

ある者は医療という名の戦場で生きる伝説の戦士の傍らへ。

ある者は学園都市の狂気を垣間見ながらも、表の世界で幻想を[ピーーー]少年の学友を続ける。

ようやく、少しばかり長いプロローグは終わりを告げようとしていた……


――果たして悪を滅する者達は、善を救う者になれるのであろうか?


第3節 『再誕への道標』 完
94 :とある複製の妹達支援2011/01/14(金) 00:09:04.74 ID:j8Vkne1ho
引越しついでの投下完了。
毎度ながら遅筆でご迷惑をおかけしております。……またsaga忘れてるし。
とりあえずこの第3節までで序章が終了ってところでしょうか。
2.5節の方が3節より長い気がするけども気にしない。
今後の展開ですが、各地に散った生クローンの話を挟みつつ、基本は超電磁砲ルートと言ったところでしょうか。

……下の下である爆弾に手を出してしまった愚かな青年は、果たして無事に電撃姫に説教されることが出来るのか……
 
 
 
96 :とある複製の妹達支援[見たいのがあればリクエストお願いします]:2011/01/15(土) 01:49:38.71 ID:lZhSLE2vo
ミサカネットワーク掲示板は移転しました。
http://mnw.vip2ch.com/radionoise2/

番号  タイトル                                レス
1    実験で死んだと思ったら学園都市の外にいた件【その7】   569 
2    クローンな先輩方にお礼を言うスレ【その5】          435
3    白もやしに恨み言を吐くスレ                    130
4    お前らアクメツについて語ろうぜ                 873
5    雑談                                  756
6    蘇生によるミサカネットワーク移転について【必読】       893
7    学園都市にいる他の連中を心配するスレ            444
8    今日のご飯【リクエスト】                        54
9    健康っていいよな                          921
10    自分達のクローニング技術に絶望した!            315
11    研修に行った『妹達』の報告を聞くスレ【その4】        666
12    ちょっと山篭りして強くなってくる【その2】             129
13    試験個体発見報告                           87
14    なぜ一方通行に勝てなかったのか真剣に考察するスレ    423
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/15(土) 02:04:40.65 ID:wscc1CeSO
正直全部見たいが、敢えて選ぶなら1、4、12かな
98 :とある複製の妹達支援2011/01/15(土) 02:20:11.33 ID:lZhSLE2vo
ちょっと覗く感じに仕上げるので、一つ一つはそんなに長くはしません。(ツール使わないのでMNWネタで長いのは無理)
リクエストと言っても、どれを優先して書けばいい?という意味合いなので気力が持てば全部書けます。
とりあえずシナリオ上必須なのは書きますが、ネタ系は皆様の反応次第です。
100 :とある複製の妹達支援2011/01/15(土) 13:00:53.34 ID:lZhSLE2vo
実験で死んだと思ったら学園都市の外にいた件【その7】

569 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05963

                            
                    
                  
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『実験で一方通行に殺されたと思ったら、
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        いつのまにか学園都市の外の施設で裸でいた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    超スピードだとか催眠術だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


570 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
なんていうか、このリアクションにも飽きてきた

571 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
なにしろ、5963回目だからね……

572 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
>>571
ごくろーさん

573 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001
>>572

【審議中】
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ
 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'


574 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04675
>>572
嫌いじゃないわ!
101 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/15(土) 13:03:26.58 ID:lZhSLE2vo
575 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05050
てか、おまえら説明してやれよ……テンパってるんだから

576 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
そういう訳でフルチューニングさんお願いします

577 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
またわたしなんだ……?

578 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05963
きみはゆくえふめいになっていた、フルチューニングじゃないか!

579 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
この反応にも飽きたな……

580 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001
>>579
おまえだって生き返った時に同じリアクションしてたじゃん……

581:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00721
てか、5963号培養器から出たばかりで今全裸じゃないのか? 誰か東呼んで来いよ

582:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05050
>>581
さんをつけろよデコ助野郎
もしくは博士(プロフェッサー)と呼べ

583:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01919
おれも実は、全裸なんだ……

584:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001
>>583
DA・MA・RE

585:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05050
軍用クローンに自由を与えた結果がこれだよ!

586:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00721
わたしは今下着だけだよ……?

587:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
おい、お前ら感覚共有するなよ!?絶対だぞ!?

588:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05050
いつからMNW2は変態の巣窟になってしまったんだ……?
102 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/15(土) 13:05:31.33 ID:lZhSLE2vo
589:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001


   ___
  / || ̄ ̄|| ∧_∧
  |.....||__|| (     )  どうしてこうなった・・・
  | ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
  |    | ( ./     /


590:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
と、とりあえず東さんを呼んで5963号に説明しに行くよ……


591:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05050
運営代理乙

592 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332

        /≦三三三三三ミト、          .  ―― .
       《 二二二二二フノ/`ヽ       /       \
       | l  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∨{ミvヘ      /      ,   !l ヽ
       ト==   ==彡 》=《:ヽ     ′ ―‐ァ!l / ̄}
         /≧ァ 7¨7: :ァ.┬‐くミV!ハ    |    (__   _ノ    |
       ′: /: イ: /': :/ |:リ  ヽ }i! : .     |  _j_   ツ    |
      i. /: il7エ:/ }:/ ≦仁ミ ト:.i|: i|   |    d   __ 、、   |
      |:i|: :l爪jカV′´八ツソ Vミ :l|   |   ノ  - ノ    |
      |小f} `   ,    ´  ji }} : .{    {   ┌.  ー ´    }
       }小    _      ,ムイ|: :∧    .    |/   ヨ
       //:込  └`   /| : :i i : :.∧   、  o   ―┐!l /
        /:小:i: :> .    .イ _L__|:| :li {∧   \    __ノ /
.      /′|从 :|l : i :爪/´. - 、 〈ト |ト:ト :'.   /       く
            N V 「{´ /   ヽ{ハ|   `\ /        ヽ
           | }人ノ/   li  V    _.′贈  惜  と  '
       i´ }    //} i′′ ハ 、|   `ヽ.   り   し  ミ   !
       { {     〃ノ {l l!  } :  {     }  ま  み  サ  |
   rー‐'⌒ヽ  ,イ   i{| |   i      |  す  な  カ
   〉一 '   ∨n     ∨   ′  ハ      |      い. は  }
   `r‐‐ ´   V    |       |      !      >>591   ′
    ‘r‐‐ ´    \   }/i⌒ヽ   {      .      乙    /
      `¨¨` ー .、  ` < ` |    `ト、 }     ヽ     を
         }}\      ̄ `ヽ ト ソ      \     /
         ノi  \        } }         ` ―‐ ´
          //     > .     | ノ
103 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/15(土) 13:07:28.62 ID:lZhSLE2vo
593 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
つーか、大変だな試験個体も。なまじ最年長なだけに

594 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00002
そう思うなら代わってやれよ次女w

595 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00003
そう思うなら代わってやれよ三女w

596 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001
分かり難っ!号数と次女とか一つズレてるから、半端なく分かり難いっ!?

597 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
ここまでテンプレ

598 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05964

                            
                    
                  
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『実験で一方通行に殺されたと思ったら、
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        いつのまにか学園都市の外の施設で裸でいた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    超スピードだとか催眠術だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


599 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001
はーい、一名様追加でーす
104 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/15(土) 13:09:37.79 ID:lZhSLE2vo
600 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
こう言っちゃ何だが、白もやし飛ばしすぎだろww一日に何人殺る気なんだww

601 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02001
一桁台の余裕すげー

602 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00002
まぁ、生き返ってしばらく経つし、正直一方通行とかどうでもいいレベルに到達しつつあるな

603 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
確かに恨み言スレの伸びもイマイチだしな

604 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00003
恨みが無い訳じゃないが、そもそも奴がいなければ、わたしたちは生まれてすらいないし、
外の世界が面白すぎて恨みとか、そういうので色々と浪費したくないっていうか……

605 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00721
カッコ良すぎて濡れた

606 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
>>605
突っ込んでもらえるとは思うなよ?

607 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01919
放置プレイとか胸熱

608 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka03332
くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
そういう意味じゃねえええええええええええええええええ!!

609 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05964
え、何このカオス

601 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
>>609
見ちゃいけません!
……しゃーないから、わたしが着替えの追加持っていくわ。

105 :とある複製の妹達支援2011/01/15(土) 22:55:37.67 ID:lZhSLE2vo
ちょっと山篭りして強くなってくる【その2】

129:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
何だかんだで、ムサシが山に篭って、2ヶ月が過ぎた訳だが

130:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
今北産業。ってかムサシって誰っすか?ww

131:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01000
ムサシってのは、634号の事な
もやしに格闘戦を挑んだ猛者という名の馬鹿

132:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
格闘戦が通用しなかった
せっかく健康体で生き返ったので修業してくる
いつの間にか2ヶ月←いまここ

133:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
>>131-132
ありー

134:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05093
安直でも名前のある奴って羨ましいな

135:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
>>134
ゴーオクサーでいいじゃん

136:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05093
人間じゃない……だと……?
ロボですら乳揺れるのにミサカは……と言う意味の皮肉なら後で屋上

137:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
仮に皮肉でもサイズ的には全員同じな件wwww

138:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01000
いや、1919号とか721号とかは少し育ってるらしい……理由は察してくれ

139:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
>>138
そ、そんな馬鹿な……ノストラダムスの大予言にはそんな事書いてなかったぞ……!?

140:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
>>139
おまえ、いい加減に占いとか予言に頼るのやめろってww
106 :とある複製の妹達支援2011/01/15(土) 22:58:25.14 ID:lZhSLE2vo
141:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01000
スマン、何か余計なこと言ってしまった。話を戻すがそもそも、もやし相手に格闘戦ってのもどうなん?

142:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
スレ違い。考察スレでやれ

143:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
>>142
少しぐらい別にいいだろ、軌道修正しようとしてくれてんだよwwww
>>141
貧弱に見えるけど能力のせいで防御は完璧だもんな……

144:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
姐御どうしてるのかな~?

145:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
あ、姐御?

146:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
製造された研究所が同じで付き合い長いんだけど、634号って何か姐御肌でさ……
ふと気付いたら姐御って呼んでた

147:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
二ヶ月前は盛り上がったなーww
いきなり『これから崖を飛び降りて人間の限界を超える』って言い出した時wwww

148:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
必死に止める奴と煽る奴とで軽くパニックだったからね……
絶叫マシン気分で感覚共有してた連中は勇者ってレベルじゃない……

149:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
そういえば、あの時のエンドルフィンで1919号が変な覚醒を果たしたんだったな……

150:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
わたしとしては、無事で帰ってきてくれることを祈るばかりです

151:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
>>150
なんか可愛いwwwwちょっとキュンってなったww

152:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
今北。ちょっと、いいかな?

153:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
あれ、AMジャーナルで研修中じゃなかった?

154:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
その研修中に他社の新聞を見たんだが、ムサシ?らしきミサカが載ってるんだけど……
107 :とある複製の妹達支援2011/01/15(土) 23:24:00.59 ID:lZhSLE2vo
155:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
!?

156:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
!?

157:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
!?

158:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
ほ、本当!? 何の記事!?

159:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
『女子中学生が熊に遭遇』って記事なんだけど……

160:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
熊さんに出会ったwwww

161:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
あ、姐御は無事なの!?

162:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
無事。つーかどうも倒したっぽい

163:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
く、熊を?

164:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
記事では触れないようにしてるけど、その熊は死んだみたい
そして、熊の写真に打撃と感電が合わさったような痕跡が……

165:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

166:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
あの娘はどこを目指してるのよ……?

167:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
とりあえず、オリジナルのお姉様よりも少しだけ強くなれればいいかなー

168:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
姐御!!

169:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
おお、噂をすれば

170:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
いやー、久しぶり。まだスレ残ってたんだね
あと、635号ただいま。心配かけたみたいだな
109 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 13:47:04.77 ID:q+HoWarNo
171:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
あ、姐御……

172:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
なんだこのイケメンwwww2828wwww

173:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
おかえり、それで熊に遭遇した話を詳しく

174:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
あ、聞きたい? なら、記憶共有しようか?

175:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
……おっと、ハードルが上がりましたよ。

176:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
まさかのタイムシフト放送ktkr

177:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
オレはあえて逝く!

178:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
じゃー共有するぞー? 心臓弱い奴はやめとけよー?

~共有中~

179:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
で、でけえええええええええええええええええええええ!?

180:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
写真と迫力違いすぎるだろ!? 軽く2メートルはあるぞ!?

181:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
ロードワーク中に遭遇してさー?
いやー、熊避けの鈴忘れてたのが致命的だったわーwwww

182:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
忘れちゃだめえええええええええ!
ところで視界の端にチラチラ見える白いの何?

183:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
犬……にしては大きいかも?

184:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
あーそれは、犬だよww
お世話になってたペンションで飼われてるハチって犬

185:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
てか、ビビって離れすぎだろwwww
飼い主にどんな教育受けてんだwwww
110 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 14:00:29.16 ID:q+HoWarNo
186:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
とか言ってたら攻撃きたあああああああああああ!?

187:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
こええええええええええええええええ!!

188:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
あー、でも攻撃は見切れてる感じだね?

189:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
そりゃ、一方通行とか夜叉猿の方が動きは早いし……

190:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
何か気になる名前が出てきたけど、お前らスルーな

191:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
つーか、ムサシの動き速すぎないか? 特に反応速度が尋常じゃねー

192:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
姐御は反応速度上げるために脳内の神経伝達の電気信号を能力で加速させてるから……

193:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
>>192
何それ凄い

194:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
おっ、綺麗にカミナリワンツーが熊の眉間に!

195:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
連打ぱねえwwww何この無呼吸連打wwww

196:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
熊さん弱ってきたな(´・ω・)カワイソス

197:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
こっちが襲われてる筈なのにな……

198:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
って、ムサシ熊に組み付いたぞ!?

199:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
ま、まさか

200:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
大雪○おろし……?

201:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
帯電しながら振り回してるから、サンダースイングだろ
111 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 14:31:59.10 ID:q+HoWarNo
202:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
>>201
どっちでもいいが、ムサシのパワー異常だろwwww何で熊を振り回せるんだ!?wwww

203:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
姐御は筋力不足を補うために体のツボを電流で刺激して瞬間的にパワーを上げてるから……

204:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
>>203
何それバーロー?

205:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
あ、投げた

206:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
そのまま、サイクロンドライバーだと……!? しかも、あの体勢は!?

207:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05656
もうやめて! 熊さんのライフはもうゼロよ!

208:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
お姉さま、アレを使うの!?

209:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
>>208
ええ、その通りよ……って、10号は634号より姉じゃないかwwww

210:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
倒れた熊の延髄目掛けて、イナズマキック……だと

211:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
確実に仕留めにいってるじゃないか……

212:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04343
……なんだろう、命って儚いな

213:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01999
ああ、生きてくって大変なんだな

214:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
何か大切な事を学んだ気がする……

215:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
>>212-214
おwwwwまwwwwえwwwwらwwww

216:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00635
ところで倒した熊はどうしたんですか?

217:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00634
あーそれはね……



~熊はミサカが鍋にして美味しく頂きました~
112 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 14:48:16.17 ID:q+HoWarNo
とりあえず、ここらで一休み一休み。
……いやー死亡した妹達生存ルートだと各人のキャラ付けが難しい……
今までにも(現在進行形含む)妹達生存ルートのSS書いてる人いるけど
細かく妹達にキャラ作ってる人って少ない感じだし……
10032以降ならSSでは有名所のミサカとかいるからいいけど死亡組なんて
ほとんど手付かずの状態だからセンスないオレとしては、無限の開拓地に放り出されたみたいで困る。
遅筆に呆れず読んでくれてる人がどのぐらいいるか分からないけど、頑張りますよー。
次は⑧⑨⑬あたりを書き進めようと思ってます。
……ところで、ふたなりミサカがいるって話を聞いたんだが、どこにいるんだ?
117 :とある複製の妹達支援[saga ]:2011/01/17(月) 17:28:36.41 ID:q+HoWarNo
今日の御飯【リクエスト】

54:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
今日も、何人かのミサカがこっちに来たから誕生日会的なのを開こうと思うんだけど……

55:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
ある意味では葬式だけどね。
でも、そんな優しいフルチューニングさんが私達は大好きです

56:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
いや、ちょっと晩御飯を豪華にするぐらいなんだけどね?///

57:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
毎回ガチパーティは無理だもんな~人数が人数だし……

58:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
とりあえず、クローンプラント常駐のミサカ達で用意するって事でいいの?

59:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
そんな感じで。……それで何食べたい? ってアンケートを取ってみたり

60:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
工夫次第で豪華に出来て、尚且つ手間が掛かり過ぎないのがいいね

61:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
……あるのか、そんな料理?

62:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
熊鍋……?

63:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
>>62
なぜ熊鍋ww
ってか、お前が常駐してるのはプラントじゃなくて、ニコニコ動画だろww

64:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
>>62
他スレの話題を持ち込んじゃダメだってww
>>60
それなら、カレーでいいと思うんだけど

65:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
>>64
それだ!!
118 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 17:32:06.58 ID:q+HoWarNo
66:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
妥当なメニューだね

67:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
でも普通のならともかく、少し豪華なカレーの作り方なんて分かるのか?

68:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
…………わかんないよぉ…………

69:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
泣くな泣くなww
ほら、流れ板の生さんに聞けばいいんじゃないか?
最近では和食以外も得意らしいし

70:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
海原さんな。
……けど、あの人は学園都市潜入組だから駄目だろ

71:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
どっかのカレー屋さんで働いてるミサカいた筈だが

72:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
ああー、ヒグマと戦った事があるって噂のカレー屋さんね

73:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02525
ヒグマwwwwwwwwwwwwwwwwこれはもう、カレー味の熊鍋作るしかwwwwwwwwwwwwww

74:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
>>73
少し黙ってなさいwwwwわたしも想像しちゃったけど!wwww

75:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
>>71
呼んだー?

76:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
きたー!

77:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
最後の希望舞い降りたー!
119 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 19:39:03.61 ID:q+HoWarNo
78:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
んで? カレー作るの?

79:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
頼むよ、カレー大将!

80:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
手伝うのはいいんだけど、材料とかは? プラントに備蓄あったっけ?

81:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00808
足りなければウチの野菜届けるよ

82:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00298
足りなければウチの肉も届けるよ

83:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
>>81-82
お前らの反応速度wwwwこの商売上手wwww

84:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
と、いうわけで材料は豊富になる予定

85:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
そっか、それでレシピを知識共有すればいいのかな? それとも私が一度作ってみるのを感覚共有すんの?

86:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
どうせなら身に付けたいから感覚共有でお願いします

87:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
分かった、快心の一食をお見舞いしたるワ

88:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
え、何その台詞

89:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
何か店長が料理作る前によく言ってる。せっかくなので拝借した
120 :とある複製の妹達支援2011/01/17(月) 19:42:29.36 ID:q+HoWarNo
~共有中~

90:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
うわー手馴れてるねー

91:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
……ん? これ何咥えてるの?

92:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
シナモンスティックだよー

93:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
もしかして、これも店長さん経由?

94:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
そだよー、これ咥えてると集中出来るんだー

95:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
何かラブ臭がするぜ……

96:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
ねーよwwwwカレー馬鹿だし、彼女いるからwwww

97:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
なーんだ、つまんねーの

98:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
友達以上恋人未満な感じらしいけど、傍目からは明らかに相思相愛に見える
最近だとむしろ、店長より彼女の方と仲いいよ。一緒にB級映画とか観に行く

99:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00721
超キマシタワー

100:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
>>99
結局、帰れって訳よ

101:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
何やら、スパイスの香りで胃が……

102:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00003
お、お腹空いたってミサカは主張します

103:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
一杯食べさせてくれると嬉しいなとミサカは……

104:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
>>102-103
MNW内で口癖が出るほどにかwwww
126 :とある複製の妹達支援2011/01/18(火) 11:04:33.56 ID:nvjKIa5Vo
105:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
もうすぐ完成だけど、私が食べた所でみんなの空腹は満たされないという……

106:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
味の共有は出来てもお腹は膨れないからね……満腹感だけなら得られるけど

107:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
なんかダイエットには使えそうだ

108:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
すごく有用な使い方だけど、今は仮初の満腹感でもいいから……はやく……

109:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
お腹と背中がくっつくという言葉の意味を初めて理解した気分だ……

110:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
ごめんね、みんな。完成まで見届けたら私もすぐに作るから……

111:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00003
フルチューニングの優しさが空きっ腹に沁みるぜ……

112:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
完成したけど……どうする? 共有したまま味見する?

113:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
カレーだけで三種類……すげえ……

114:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
あと、サフランライスとナンも用意したよ

115:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
ナン……だと!?

116:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
先生、カレーが食べたいです……

117:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
それじゃー食べるよー?


~試食中~

 
127 :とある複製の妹達支援2011/01/18(火) 11:29:04.58 ID:nvjKIa5Vo
118:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00002
うーーまーーいーーぞーー!!!!!!!!

119:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
な、なぜか大阪城と合体する映像(ヴィジョン)が見えた……

120:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
これが食べることの素晴らしさか……!

121:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
生きていることに感謝したくなるな……!

122:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
それが、いまここにいることの喜びか……!

123:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
そ、そこまで喜んでもらえると作った甲斐があるけど……///

124:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00010
あの短時間でキーマ、チキンとほうれん草、エビと三種類のカレーを作ってしまうとは……

125:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
本当なら、カレーに合わせてヨーグルトも用意したいところだけど、今回は時間もないし、少し高い市販品でいいと思うよ

126:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
わ、分かった! これから頑張って作るよ!

127:以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01926
おう、頑張ってなー



~ちなみにカレーの残りはカレー大将のスタッフが美味しく頂きました~


140 :とある複製の妹達支援[スポバショットが木原神拳的な効果を発揮しそうな予感]:2011/01/19(水) 21:26:47.71 ID:WJ9vaSMQo
7月17日 

学園都市・第二学区

~風紀委員訓練施設~

――そこまで!!

練武場に響く明朗な声。

それを合図にその場を包んでいた緊迫感は消え、穏やかな物へと変化していく。

安達「ありがとうございました!」グッ

額を流れる汗を道着の袖で拭いながら、安達は周囲に倒れ伏した試験官達に一礼する。

試験官A「お、お疲れ…………」ゼエゼエ

試験官B「なかなか……やるじゃないか……」ハアハア

試験官C「これだけやれれば……じょ、上出来じゃないか……?」グデーン

言葉とは裏腹に余裕の欠片もない試験官達が、畳に倒れたまま賞賛の声をあげる。

安達「それで…………合格ですか?」

その問いに答えるのは、少し離れた場所から、その様子を観察していた試験官の男性だった。

試験官D「ああ、座学の成績に問題はないし、捕縛、格闘共に十分な実力がある事を見せてもらった。……文句なしの合格だ」

安達「やった! ……これで正式に風紀委員として活動出来るんですよね?」

試験官D「適性試験には全てパス。4ヶ月の研修も問題なく終了した……そして、今回の試験結果があれば無能力者(レベル0)である事は問題にならないだろう」

加えて告げられる採用への確約。

『妹達』支援の為に布束との協力体制を築いていた『安達生』であったが、高校へと進学してからは『風紀委員(ジャッジメント)』になる為の研修に明け暮れていた。

――しかし、何故、わざわざ安達でないといけないのか?

それは、現状では多くのアクメツクローンが学園都市に潜伏しているが、正式な『学園都市の学生』は、安達ただ一人しか居ない事に理由がある。
と言うのも、他の職業であれば、確かに他のクローンとすり替わる、という若干卑怯な裏技も使える。
だが、本来なら能力者だけで構成される『風紀委員(ジャッジメント)』となるとそれも難しくなるのだ。
風紀委員になる為に受ける13種の適性検査には、身体検査(システムスキャン)が当然ながら含まれている。
つまり、遺伝子情報等は、安達と他のクローンと同一だが、学園都市で受けた『開発』の有無だけは誤魔化しようがない、という事。
141 :とある複製の妹達支援2011/01/19(水) 21:55:27.33 ID:WJ9vaSMQo
安達「な、長かったじゃん……」

感極まって熱いものが込み上げてくる。

最初は平凡な学校生活で訛っていた体を鍛え直すぐらいのつもりで研修を受けていたのだが、これが予想以上に厳しかった。
ある種の超人であるver.3の安達が言うのだ、その苛烈さは想像に難くない。
まぁ、こんな苦労も採用されるまでの辛抱という奴なのだが。

試験官D「早速、と言ってはなんだが君には午後から第一七七支部で正式に風紀委員としての活動に入ってもらう」

安達「きょ、今日から……ですか?」

試験官D「少し事情があって、風紀委員に欠員が出ていてな。正直かなりの人手不足で、使える人間を遊ばせておける状況じゃないんだよ」

安達「そうですか……分かりました」

試験官D「既に配属先の風紀委員を呼んであるから、さっさとその汗臭い道着を着替えて来なさい」

安達「は、了解であります!」ダダダッ

言うやいなや、安達はロッカールームへと駈け出した。
倒れていた試験官達もヨロヨロと立ち上がって、それに続いた。

試験官D「終わる時ばかり無駄に返事が元気な奴だな…………で、どう見る?」

へばった試験官達と入れ替わるようにしてやってきた眼鏡の少女に声をかける。

???「凄い、としか言いようがありませんね。私も少しは格闘技に自信がありますけど……
     格上3人を同時に相手して、それを圧倒なんて不可能ですよ」

試験官D「あれでレベル0だと言うのだから恐ろしい。この上に能力を得たらどうなるんだろうな」

???「そ、そうですね…………でも、彼って何か武術でもやってるんでしょうか?」

試験官D「そんな話は聞いてないが……だが確かに無型に見えたが、隙は無かった」

???「一見すると素人っぽい動きなのに無駄がないし……リラックスしてるって言うんでしょうか」

試験官D「君の能力で『透視』したらどうだ、何か分かるかもしれないぞ?」

???「で、できませんよ! 道着だけの時に透視なんかしたら全部見えちゃうじゃないですか!?」

試験官D「ん? 普段から色々と透視しているのかと思ってたが」

???「男性と同じにしないでください! 透視と言っても敵の筋肉の動きとか、不審者の持ち物ぐらいしか見ませんよ!」

試験官D「ハハハ、確かに『透視能力』と聞くと、男には覗きしか思いつかなくてイカンな」
142 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/19(水) 22:17:04.03 ID:WJ9vaSMQo
安達「あれ、楽しそうですね?」

試験官D「おお、早かったな」

安達「……あ、そっちの方が?」

試験官D「そうだ、お前が配属される第一七七支部の固法だ。
      先輩というか、上司のようになる相手だからな、今のうちに胡麻を摺っておけよ?」

固法「いや、胡麻って……」

安達「よろしくお願いします、安達生です」

固法「あ、固法美偉(このりみい)です、よろしく」

お互いに自己紹介をして軽く握手を交わす。
手元から視線を上げていくと、ふと目の前の少女の少々『凶悪なブツ』に視線がいってしまい、慌てて顔を逸らす。

安達「えーっと、固法先輩、とお呼びしても?」ポリポリ

それを誤魔化すように聞いてみた。胡麻擂りではないが、これから一緒に働くのだから良好な関係を構築したい所だ。

固法「いいですよ。えっと……安達さん」

安達「あ、そこはさん付けなんですね……」

基本、友人には名前を呼び捨てられてばかりの安達としては、苗字+さんだと少々距離を感じてしまう。

試験官D「固法は少しカタいというか……今いる風紀委員の後輩にも基本さん付けだからな」

安達「そうなんですか?」

固法「はい、どうも人を呼び捨てにするのが苦手で……」

なるほど、どうも他意はないらしい。そういうお人柄なんだろうか。

試験官D「それじゃ、コイツの事をよろしく頼む。盛大にこき使ってくれて構わんからな」

最後に余計なことを言って試験官は練武場を出て行く。

安達「…………お手柔らかにお願いします」

固法「さて、どうしようかしら?」

そう言って、意地悪く微笑む固法『先輩』。

――どうやら、休む暇などなさそうだ。
143 :とある複製の妹達支援2011/01/19(水) 23:35:31.18 ID:WJ9vaSMQo
第七学区


固法「…………システマ?」

第一七七支部のあるビルへと向かう途中、「何か武術をやっているのか?」という率直な固法の質問対し、安達は特に隠すこともなく、その名を告げた。

固法「知らない名前だけど、どこの格闘技なの?」

安達「ロシアの軍隊格闘技なんですが……」


システマとは?


それは、ソ連崩壊まで、謎に包まれていたロシア武術の一つなんだよ!
ロシア武術共通の目的である全局面における白兵戦での生存率を上げることに主軸に据えて、
ナイフ、槍、棍棒などの武器に関する攻防技術が多く盛り込まれた、『一対複数』において、かなり有効な格闘技なんだって!
不良が三人以上だと逃走するしかない、と豪語するツンツン頭の少年の路地裏喧嘩術とは対極にある武術、と言えるかも!
          
固法「ぐ、軍隊……? どこでそんなのを覚えたの?」

今でこそ、ロシア版合気道と呼ばれたり、護身術として一般向けにセミナーが開催されたりしているシステマだが、
その本質が創始者自身が経験した戦闘、人質奪還、武装解除、カウンターテロ作戦等から得たノウハウを取り込んだバリバリの実戦格闘技である事には変わらない。

安達「あー、システマを習得していた兄がいたんですが、その人に習ったというか……なんというか」

固法「いたって……お兄さんは……もう?」

安達「えっと、もう10年ぐらい前になりますかね」

固法「そうなの……って、10年前って貴方まだ子供じゃない!?」

正確には10年前に死亡した『迫間生』が体得していたのをクローン再生の折に継承したのだが、さすがにそのまま言う訳にもいかない。

安達「いやー、スパルタな兄だったんですよー(棒)」

固法「(明らかに棒読みだけど、話が話だけに迂闊に指摘できないっ……!)

どうも嘘臭いが、亡くなったなんだのという話に対して「嘘だろう」と言えないのは彼女が常識人であるが故か。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/01/20(木) 02:04:58.53 ID:fJ4FQaa60
ドヤ顔のイン雷電さんの解説シーンで止まるとか胸が熱くなるなw
145 :とある複製の妹達支援2011/01/20(木) 12:39:58.06 ID:yiaZ30HQo
『風紀委員活動第一七七支部、JUDGMENT 177 BRANCH OFFICE』


安達「おお、ここが……」

固法「まず、入室の前に認証の登録をしないといけないから、少し待ってね」

扉の横には硝子盤が設置されており、そこで入室者の生体データを確認するようになっているらしい。

――そして、生達の狙いもここにある。

固法「よし……それじゃあ、ここに指を当ててくれる?

――チェックされるのは指紋・静脈・指先の微振動パターンの3種類。

安達「はい」グッ

――そう、全てクローン間で共通のデータだ。

ロック解除を知らせる電子音が響く。

――これによって、全ての生達が支部への入室が可能になった。

固法「さ、ここが私達の『城』よ」

その言葉と共に安達は学園都市の『盾』の最前線へと足を踏み入れる。
146 :とある複製の妹達支援2011/01/20(木) 14:16:29.41 ID:yiaZ30HQo
――部屋に入るとそこは、お花畑だった。

いや、目の前にあったのが、謎の花だっただけなのだが。

花畑?「固法先輩、お帰りなさい! そちらが新人さんですねー!」

さすが学園都市だ……人語を解する植物が存在するとは……20年進んだ技術は伊達ではない、という事だろうか……

固法「初春さん……もしかして、ドアの前でずっと待ってたの?」

安達「(人だと……!?)」

よく見ると、確かに人だ。文字通りの意味で頭がお花畑の少女が、自分達を笑顔で出迎えてくれている。

初春「いやー、ついに私も先輩になれるかと思うと、居ても立ってもいられなくて」テレテレ

固法「安達さん、高校生だけど……それでも先輩気分って味わえるものなの?」

初春「そ、そうですよね!? 後輩扱いなんて失礼ですよね!」///

安達「いや、構いませんよ? えっと……初春『先輩』?」

言いながら、そっと手を差し出す。
その安達の呼びかけに初春の頭の上の花飾りが満開になった……ような気がした。

初春「はい! よろしくお願いします、初春飾利(ういはるかざり)です!」ガシッ

握手のつもりで安達が差し出した手を初春は両手で握ると上下にブンブンと振る。
容赦のない上下の動きに視界が揺れる。

安達「あ、安達生です……」グワングワン

???「初春……はしゃぐのも結構ですが、大事な後輩が目を回してますわよ?」

横合いから呆れるような声。
そこにいたのは黒髪ツインテールの……見覚えのある制服に身を包んだ少女だった。
147 :とある複製の妹達支援2011/01/20(木) 14:47:21.80 ID:yiaZ30HQo

初春「白井さん……? ああっ!? スイマセンっ、私ったら!」パッ

黒子「先輩扱いされたいのでしたら、そのような振る舞いから変えていきませんと……」

安達「だ、大丈夫……気にしてないから。
   (なるほど、常盤台の制服……彼女が噂の『心も体も切り刻んで再起不能にする最悪の腹黒空間移動能力者』か)」

黒子「お初にお目にかかります……わたくしは白井黒子(しらいくろこ)……この初春と同様に今日から貴方の同僚ですわ」ペコリ

そんな噂で語られる、悪名高い風紀委員の登場に安達は、自分達の作戦が順調に進んでいることを確認する。
彼女と知り合い――この場合は同僚だが――になれれば、その噂に付随している人物との接触も難しくはない。

安達「(だが、何だ……?)」

悪名の割に実に『お嬢様』らしい振る舞い以外にも何か違和感がある。

黒子「どうかなさいましたの?」

妙に気になるので、その違和感を言葉にしてみる。

安達「白井さん……俺と、どこかで会った事ないか?」

初春「……うわ……」

固法「さすがに安達さん、それはないわ……」

黒子「……あの、口説き文句にしては少々、古臭すぎますわ」

次々と女性陣から批難の言葉がぶつけられる。

安達「え、いや、そうじゃなくて……というか、初春先輩にも何やら見覚えがあるような……」ウーン?

最初に初春を見た時は特に違和感を感じなかったが、
白井と並んでいる姿を見ると、何かを思い出せそうな気がする。
しかし、見た目は普通の白井はともかく、こんな珍妙な花畑を忘れるとは思えないが。

固法「……もしかして、それって去年の冬じゃないの?」

黒子&安達「……………………あ」

初春「……???」

――そう、確かに去年の冬に安達生は二人に会っていた。
148 :とある複製の妹達支援2011/01/20(木) 23:03:55.19 ID:yiaZ30HQo
――昨年の冬に発生した、郵便局強盗事件。

その場には数人の民間人と郵便局員、そして巡回中だった風紀委員が二名。

その二名の風紀委員というのが固法美偉と、まだ実戦経験の無かった当時小学6年の白井黒子。
そして、強盗に巻き込まれた民間人の中に中学三年だった安達生と、黒子と同じくまだ小学6年の初春飾利もいたのだった。


学園都市・第七学区

~郵便局内~


郵便局に入ってから、順番待ちをするでもATMを使うでもなく、局員の位置や目ばかりに注意を払う、その男は明らかに不審だった。

男の挙動に不審を覚えた固法は『透視』によって男が拳銃を所持している事を確認。
男が行動に出る前に警備員(アンチスキル)への連絡を行おうとしたが、結果的に犯人は上空に向けて銃を発砲、後手に回ってしまった。

その男は銃の扱いに慣れていないのか、或いはそもそも強盗を遂行するだけの度胸がなかったのか、注意散漫だった。
必要以上に局員を威嚇し、発砲するなど、明らかに冷静さを欠いている状態。

そんな犯人の姿を見て、黒子は自分でもやれる、と判断する。

黒子「(訓練通りにやれば……!)」

だが、その判断はベテランの風紀委員である固法にしてみれば無謀でしかなく。

固法「バッ…」

ある意味で犯罪のプロフェッショナルである、安達から見れば迂闊だった。

安達「なっ…」

そんな二人の驚愕をよそに黒子は犯人の死角より姿勢を下げて急接近。

強盗「?」キョロ

ガンッと小気味よい音と共に強盗の足が踏み抜かれる。

強盗「ぎっ!? っんだ、テメェは!?」ブン

振り払うように迫る男の左手を交わしながら男のパーカーを掴み、膝を背後から蹴り飛ばす。

強盗「おっ、おぉ!?」ガクン

体勢を崩された犯人は床へと倒れこみ、手に持っていた拳銃を落とした。

強盗「このガキっ、ぶぶぶ ぶっ殺してやr……」ググッ

呻きながら拳銃を取り戻そうとするが、それを黙ってみている程、黒子は愚かではない。
胸に容赦のない蹴り。そして、拳銃をカウンターの方へと蹴り飛ばす。

強盗「ゴフぁッ!?」

その衝撃に胃液が散り、空気が肺から強制的に排出される。
白目を剥いて完全に沈黙した強盗を見て、黒子は息を切らしながらも初めての実戦での勝利を確信した。

黒子「(何だ、簡単ではありませんの)」ハアハア

――が、それは最悪の形で裏切られる。

初春「きゃあっ!!」

黒子「(初春!?)」

???「チッ、何ガキにノされてんだ! クソがっ!」チャキッ

局内に潜んでいた、もう一人の犯人によって初春飾利が人質に取られるという事態によって。
151 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/21(金) 19:18:25.28 ID:QlxVcfF/o
固法や安達にしてみれば、犯人が複数の可能性は真っ先に考えていた。
強盗やハイジャック等を行う犯人が、人質の不測の動きを警戒して、予め現場に仲間を潜ませておくのは常套手段だからだ。

だが予想していたとはいえ、人質を取られてしまった以上、その場の主導権は完全にもう一人の強盗犯に握られてしまった事には変わりない。

――そして、状況はさらに悪化の一途を辿る。

金を奪われる事を恐れた局員の一人が、警報装置を作動させたのである。

防犯シャッターが閉まり、密室へと変貌する郵便局。
これによって、巻き込まれた一般人へのリスクが急激に高まったのは言うまでもない。

『セキュリティ信号ヲ 受信シマシタ 侵入者ヲ排除シマス 武器ヲ捨テテ 床ニ伏テクダサイ』ウイーン

さらに警報装置に連動して、人質への配慮など持たない機械の番人が動き出す。

固法「(警備ロボ!? 人質がいるってのに……最悪!!)」

強盗B「チッ、面倒な事を…………」ゴソ

けたたましく警報音が鳴る中、強盗が動きを見せた。

固法「(右手から何かを取り出した!)」ギュン

強盗犯が何かをしようとしているのは明白だったが、黒子は再び迂闊なアクションを起こしていた。

強盗犯に接近する警備ロボの背後に隠れるようにダッシュして、突入を仕掛けたのだ。

だが、それは強盗犯が警備ロボに向けて『何か』を放ったのと同時だった。

固法「(ダメっ!)」バッ

咄嗟に固法は黒子を庇い、床に伏せた。
一方、強盗犯が放った『何か』は、ゆっくりとしたスピードながらも前進を続け、警備ロボにめり込み、貫き、喰いちぎり、破壊し――

ドボンッ!

そして――爆ぜた。
152 :とある複製の妹達支援[例の問いは微修正しました]:2011/01/21(金) 19:22:11.94 ID:QlxVcfF/o
爆音と共に警備ロボはその体を構成する機械の贓物をまき散らす。

黒子「……っ、な、何が……?」

ゆっくりと、黒子を庇った固法の体が崩れ落ちる。

爆風によって加速した部品達はそれだけで十分な――凶器だった。
黒子を庇った彼女は、その背中に爆散した部品を浴びていた。

黒子「そんな……どうして……?」

固法「手の内が……わからない間は……突入しない…………おぼえときなさい……?」

黒子「し……しっかりして……!」

そのまま気を失った固法に必死で声をかける黒子。

――必死であるが為に、致命的に判断が遅れた。

ガッ、と黒子の顔に強盗犯の蹴りが突き刺さる。

強盗B「オマエ、警備ロボに隠れて妙なコトしてやがったな」ズンッ

なんの躊躇もなく、床に倒れ込んだ黒子の左足首を踏み砕く。

黒子「あぎっ……あぁあぁアッ……!」

強盗B「あのバカみたいに俺もヤれるとでも思ったのかよ?」グリッグリッ

メキメキ、と黒子の骨が軋む音が響く。

黒子「あっ……あぁああっ……」

初春「白井さんっ! 白井さんっ!」

呻く黒子の名前を叫び、その背に手を伸ばそうとする初春。
だが、強盗犯に腕を捕まれ、その手は彼女に届かない。

力不足に悩む自分を笑うでもなく、その志に賛同し、励ましてくれた同い年の少女。
まだ出逢ったばかりだけど……きっと、素敵な友人になれると思った。

そんな彼女が今、傷つけられ、踏み躙られているのに、自分には何も出来ないのか。

強盗犯に人質にされている恐怖よりも、彼女を喪うことが怖かった。

もし、自分に力があったなら。

――家族を、隣人を、大切な人達を、苦しめる悪を滅ぼす力を持ったら、悪を滅ぼしますか?

ふと、誰かの問い掛けが聞こえた気がした。
154 :とある複製の妹達支援2011/01/21(金) 21:00:45.34 ID:QlxVcfF/o
安達「その足を退けろ」グイッ

強盗B「…………おい、何の真似だ坊主」

背中に押し当てられた『それ』の感触に強盗犯の黒子への攻撃が止まる。

安達「何度も言わせるなって……その足を退けろって言ってるじゃんよ」

――まぁ、最初は放っておくつもりだった。

どうせ金を奪った所で、この強盗犯達が逃走中に警備員(アンチスキル)に捕縛される事は確実だ。
だから、人質に手を出さずに金だけ持っていくというのなら『見逃してやって』いいとすら考えたのも事実だ。
きちんと『ルール』と『リスク』が機能している社会において、自分のような存在が介入するのは……間違っていると思っていた。

だが、あの小さな風紀委員の少女を見ていたら――気づいた時、彼女が蹴り飛ばした強盗犯の拳銃を握っていた。

さすがに自分でも単純だと思う。これじゃあ、ツンツン頭の級友の事を笑えそうにない。

安達「……その足は、お前なんかが踏み躙っていい足じゃない」

実戦を切り抜ける判断力も甘い。

相手の力量を測る観察力も拙い。

自らを律する冷静さも足りない。

安達「その娘の足は、この先多くの人を救える足だ。……誰かの願いの支えになれる足だ」

だが、正義を為そうとする彼女の気持ちは、間違っていない。曲がってもない。弱くもない。

強盗B「おいおい、風紀委員にでもなったつもりか……? だいたい、ガキにそんなモノが扱えると……」

安達「――安心しろ、急所は外してやるじゃん」

銃の使用に問題はない……何しろ、体が識っているのだから。

強盗B「っつ……!?」

研ぎ澄まされた殺意。
学園都市の学生としてしか生きていない安達にも、それは確実に刻み込まれている。
ver.3であるが故に継承されたアクメツ達の『殺しの記憶』は、彼にも一流の殺戮者の気配を纏わせていた。

強盗B「わ、分かった……足を退ける」スッ

安達「次は、髪飾りの子を解放しろ」

強盗B「……いいだろう……」ゴソッ

安達「待て」グリ

強盗B「な、何だ……?」

安達「今、右手に握った物を出せ。……ゆっくりと右手をポケットから出して、腕を上げろ」

先程の警備ロボの爆発は、この男が『何か』を投げた事によるものだ。
一部始終を見ていた安達に油断はない。

だが、認識が足りなかった。

アクメツとしての共有記憶から、人が人を害そうとする手段に精通していても。

――強盗犯は、言われた通りに手をポケットから出し、宙に上げる。

自らが無能力者(レベル0)であるから、スキルアウト等の犯罪行為は理解していても。

――そして、左手で拘束していた初春を解放して、安達の注意を一瞬、逸らし。

能力を持った人間が、こんな郵便局強盗なんて陳腐な真似をするとは思ってもいなかったのだ。

――そして、ゆっくりと……安達の右足目掛けて『何か』を落とすように放った。

安達「なっ……ぐああああぁあああああぁあああ!!?」ガクンッ
156 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/22(土) 11:03:43.20 ID:pRtB1Rnho
強盗B「――ハッ、馬鹿がっ!」

安達の銃口から逃れるように距離をとる強盗犯。

安達「(て、鉄球!?)」

強盗犯の放った鉄球は、安達の足にぶつかったにも関わらず、それを問題にしないように下方へと進み続ける。

メキッメキッメキッメキッ

不快な音と共に足に走る激痛。

安達「(動かせないっ!?)」

一定の速度で進行を続ける鉄球によって、安達の足は床に縫い付けられたように動きを封じられてしまう。

黒子「初春っ!」

解放された初春を背後に庇いながら、黒子は手を鉄球へと翳す。

シュン!

安達「(消えた!? この娘、『空間移動能力者(テレポーター)』か!)」

唐突に足を襲っていた圧力が消え、体が自由になる。
だが、数瞬の遅れは、戦闘において致命的だった。

強盗B「これで形勢逆転だな、坊主」チャキ

安達のこめかみに突き付けられる鉄の凶器。

安達「誰も一挺だけとは言ってない……か」

強盗B「あぁ、そういう事だな」

安達「今の鉄球は……アンタの能力か?」

強盗B「……そうだな、冥土の土産に教えてやろうか」ヒュン

勝利を確信した笑みを浮かべながら、鉄球を横へと放る。

強盗B「『絶対等速(イコールスピード)』っていってな。俺が投げたものは動きはニブいが……」

鉄球を一定のスピードのまま、止まらずにガラスを割り、防犯シャッターを破り、封鎖された郵便局に風穴を開けた。

強盗B「前に何があろうとも同じ速度で進み続ける。俺が能力を解除するか投げた物が壊れるまでな」
157 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/22(土) 11:06:10.74 ID:pRtB1Rnho

安達「……防犯シャッター程度では封じ込められないって事か」

絶対等速「警備員が来たところで大した問題ではないし、それまで時間を稼ごうとしても無駄って事だ……さて、と」

銃口を安達へと向けたまま強盗犯は、その視線を奥の黒子へと向ける。

絶対等速「まさか、空間移動能力者だったとはな……おっと、後ろのガキを逃がそうなんて思うなよ? そんな事をしたら……分かるな?」

言いながら手元の拳銃をチラつかせる。

黒子「くっ…………」

絶対等速「オマエの能力で、ATMから金を取り出せ……時間短縮って奴だ」

黒子「(どうする……? ここで了解しなければ、彼は間違いなく、あちらの方を撃ち殺す……抵抗しようにも、後ろには初春もいる……)」ギリッ

安達「従わなくていいじゃん」

銃を突き付けられているとは思えない口調で黒子に告げる。

黒子「なっ!?」

絶対等速「……おい、坊主。オマエ、自分の置かれた状況が理解できてないのか?」

安達「いいか、君の力はこれから先、多くの人を救える力だ。
    そんな将来有望な風紀委員の君が、こんな三下如きにいいように使われる必要はないじゃん」

絶対等速「おい、死にたいのか!?」

安達「安心しろ、こんな状況になっても中学生一人も殺せない、ただの小悪党だ。君のガッツには到底及ばない」

低レベルとも言える露骨な挑発。
だが、多くの不測事態で苛立ちが頂点に達していた彼を激昂させるには、それで充分だった。

絶対等速「オマエぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」カチャ

パアッン!

――乾いた発砲音が局内に響き渡る。
158 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/22(土) 11:08:34.40 ID:pRtB1Rnho

その場にいた誰もが、目を閉じ、少年の頭に風穴が空いた姿を想像した。

だが、二人の少女だけは、何が起きたのか見届けていた。

安達「やっぱ――三下じゃん、アンタ」

初春「(ひ、左腕で)」

黒子「(わざと銃弾を受けた!?)」

安達「――オレを殺したいなら、22口径じゃ小さすぎるんだよ!」ブン

一気に立ち上がり、その場で体を一回転させる。
足の痛みで、どうしても甘くなる踏み込みを回転で補う為に。そして、その遠心力が右手に集中するように。
振り下ろされるのは、拳銃が握られたままの右手の裏拳。
その渾身の一撃が、強盗犯の横っ面に叩き込まれる。

絶対等速「がァああああああああああああああああッ!?」

その場に拳銃を落とし、絶対等速の体は斜め後方へと吹っ飛ばされる。

安達「浅いかっ!?」

手応えから、そう判断した安達は追撃を行うべく前進しようとするが、落ちた拳銃に足を取られ、体勢を崩す。

絶対等速「この、クソ坊主がああああああァァあああああっ!!」ゴソッ

その手に握られるのは5つの鉄球。

安達「(複数同時に使えるのか!?)」ダッ

広範囲をカバーするように放たれれば、恐らく回避は不可能な必殺の一撃。

――しかし、絶対等速は忘れていた。

黒子「させませんっ!!」ブン

――自分の敵は一人ではない事を。

この時、あえて黒子は自らの能力ではなく、単純な投擲を選んだ。
得物は、安達が踏んづけて、偶然手元へと転がってきた絶対等速の拳銃。

黒光りするそれを、今まさに鉄球を放とうとしている絶対等速の顔に目掛けて、思いっきりぶん投げたのだ。

絶対等速「なっ!?」サッ

直撃寸前で、飛んできた拳銃を辛うじて避ける。
だが、その回避運動によって、その手を離れつつあった鉄球の『狙い』は大きく逸れた。

上下左右、あらぬ方向へと一定の速度で飛んでいく鉄球達。

安達「――いやはや、ナイスなアシストじゃん」

思わず、賞賛の言葉が口を衝いて出る。

これなら、鉄球を躱す必要すらない。
安達が最短距離で、絶対等速の懐に入り込んだ時、既に拳銃はトンファーのように逆手に持ち替えられていた。
そして、絶対等速の顎に叩き込まれる、意識を刈り取る為の一撃。

絶対等速「がァっ!?」

安達「あの娘に免じて『悪滅』は勘弁してやるじゃん…………って、もう聴こえてないか」

もう一人の強盗犯と同じように白目を剥いて絶対等速は気を失っていた。
159 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/22(土) 13:10:17.47 ID:pRtB1Rnho
~再び現在~

『風紀委員活動第一七七支部、JUDGMENT 177 BRANCH OFFICE』


安達「そんな事もあったなぁ…………」シミジミ

固法「……安達さんが二人の事は覚えていて、私の事は完全に忘れてたというのが気になるのだけど?」

黒子「まぁ、固法先輩はあの時は既に気絶なされてましたし……」

フォローというには、あまりにも無防備な言葉だった。

固法「そうね、誰かさんの独断専行のお陰で」ギロリ

自分に言葉の刃が突き刺さる、という意味で。

黒子「うっ…………や、薮蛇ですの」グサッ

初春「けど、私てっきり安達さんが『肉体強化』か何かの能力者かと思ってました……」

まぁ、確かに普通の人間が拳銃の弾を腕で防ごうとはしないだろう。

安達「これでも……鍛えてますから」シュッ

黒子「わたくしも、後で色々とお話したかったのですが、現場からは居なくなってしまうし、調べても能力者に該当者はいなかったので……」

安達「それは、警備員(アンチスキル)の人に説教された後、病院に強制入院させられてたからじゃん……」

結局、安達が入院していた事を含め、事件の事後処理のゴタゴタで、黒子と安達が話す機会はなかった。

安達「(そういえば、黄泉川先生と知り合ったのも、あの時か)」

到着した警備員(アンチスキル)の中に黄泉川が居て、無茶な行動を盛大に叱られ、それが縁で色々と気に掛けてくれるようになったのだった。
何やら彼女と話してると妙な親近感があるのも、交友が続いた理由かもしれない。
加えて、進学した高校に彼女が教員として務めているのを知った時は世間の狭さを実感させられた。

固法「でも無能力者で……しかも、当時は一般人なのにそんな無茶をしたのは問題よね」ギロリ

安達「こ、こっちも薮蛇じゃん……」

固法の眼鏡の下から向けられる視線は、氷のように冷たい。というか、怖い。

初春「でも、あの事件がキッカケで私は風紀委員になる覚悟が決まって、白井さんとの付き合いも始まった訳で……」

そう悪い思い出ばかりではない、と言いたい初春だったのだが、

固法「白井さんにとっては、初めて始末書を作った事件でもあるわね」

白井「もう止めてくださいですのー!!」

妙に機嫌を損ねてしまった固法の前に敢え無く散る。

白井「この話は止めにしましょう……わたくしも、あの一件で色々と反省した訳ですし、これ以上黒歴史を掘り返されるのは耐えられませんの……」ヨヨヨ

固法「まぁ、白井さんをイジるのはこれぐらいにして、今日の仕事の話なんだけど……」

初春「うぅー、私にとっては大事な思い出なのに……」

安達「よしよし」ナデリナデリ

初春「……慰めてくれるのは嬉しいんですけど、子供扱いしていませんか?」ムー

安達「(;・3・)~♪」
161 :息抜きに>>160に捧ぐ2011/01/22(土) 15:10:17.14 ID:pRtB1Rnho
小ネタ①

椿「よし、晩飯が出来たぞ……」

オモイニーモツヲーマクラニーシタラー

椿「ん? 電話か……」

ピッ

00428号「もしもし、これから焼肉を食いにいきませんか、とミサカは椿医師を財布として招集します」

椿「――おい、色々と正直すぎるだろ。……仕方ない、これは明日食べよう」


小ネタ②

00428号「すみません、コレを私のに入れて欲しいんです……と、ミサカは椿医師に上目遣いでお願いします」

椿「……何だこのCDの山は」

00428号「これを私のiPodに入れてくださいとミサカはry」

椿「その為だけに来たのか!?」

~転送中~

00428号「…………」|M0)ジー

椿「何を見てるんだ……」

00428号「洗顔器ですが、何か?」
164 :とある複製の妹達支援[週末しっぽりが素晴らしすぎる件]:2011/01/22(土) 19:59:41.06 ID:pRtB1Rnho
固法「――それで、今日の仕事だけど、とりあえず巡回の方は白井さんと安達さんの二人でやってもらえる?」

黒子「それ自体は別に構わないのですけど……あの、固法先輩は?」

固法「例の事件の捜査の為に他の支部と合同で会議があるの……だから、大事な新人を『貴女』に『任せて』もいいかしら?」

あの頃とは違って、もう一人前なのだから、と。

黒子「そこまで言われたら、この白井黒子……全力で彼の面倒を見させてもらいます」フンス

固法「……新人と一緒なら、そんなに無茶も出来ないでしょうし」ボソ

さらっとアレなことを言われたのだが、黒子には聴こえてないようだ。

初春「……あはは」

黒子「さぁ、安達さん! 早速、学区内の巡回に向かいますの!」グイグイ

安達「おい、そんな引っ張らなくても……」ズルズル

初春「頑張ってくださいね~」



~第七学区・木の葉通り~


黒子「――と、いう訳で巡回中ですの」

安達「誰に向かって言ってるんだ……?」

黒子「それにしても」ジー

足元から頭まで、品定めでもするかのような視線。

安達「……そんな見つめられると照れるじゃん」

黒子「違いますの! ……予想以上に貴方が強かったので驚いているだけですの」

勤務初日だと言うのに、ここまでの巡回中、事件が立て続けに起きた。
事件と言っても、普段からよくある、スキルアウトもどきの不良によるカツアゲや小競り合いだったのだが……

そんなある意味でいつもどおりの事件を黒子は安達に任せた。
改めて、安達の風紀委員としての手並みを確認する為に、だ。

勿論、いざという時は自分が尻拭いをするつもりだったのだが、その必要はまったく無く――


――どこぞの不幸な少年よろしく複数の男に絡まれていた少女を逃してあげたり、

――カツアゲされていた眼鏡の少年を助け、何故か悪態をつかれたり、

――絶賛喧嘩中の不良グループをまとめて叩き伏せて、グループに誘われたり、

――安達を『仲間の生』と勘違いした、第七学区のスキルアウトにフレンドリーに差し入れを貰ったりした。

さすがに最後のは黒子の追求を誤魔化すのに苦労したのだが。(前に絡まれたのを返り討ちにしたら舎弟みたいになった、という事にしておいた)
165 :とある複製の妹達支援2011/01/22(土) 20:50:20.53 ID:pRtB1Rnho
黒子「あんなに簡単に片付けられては、黒子の仕事がありませんの……」

安達「まぁ、相手が無能力者ならスキルアウトだろうが、武器を持ってようが、ものの数じゃないな」

――そもそも、そういう状況を想定した格闘技がシステマである以上、たかが不良レベルの相手に負ける訳にはいかないのだ。

黒子「ですが、能力者が問題を起こすケースもありますの。その時はどうするつもりですの?」

安達「――その時は頼りになる『大能力者(レベル4)』の先輩に助けを求めるとするじゃん」ニヤリ

黒子「それはつまり、面倒な仕事だけわたくしに押し付けるつもりだと……」ギロッ

安達「じょ、冗談じゃん…………ある程度の能力者なら、俺でも対処出来ると思う」

何しろ、単純な身体能力的には肉体強化系の能力者並とカエル顔の医者に太鼓判を押されている。
相手の能力の種類次第ではあるが、『異能力者(レベル2)』ぐらいならば、対抗できるだろう。

だが、それでは足りない、とも安達は考える。

安達「(いつか俺は……いや、俺達は最強の能力者に相対しなければいけなくなる)」

黒子「自信があるのは結構ですが…………独断専行なんて許しませんので、覚悟しておいてくださいですの」

安達「――それはツッコミ待ちと考えていいのか?」

黒子「……もう言わないでくださいまし」ムスッ

いかん、どうも機嫌を損ねてしまったらしい。

安達「……あー、クレープでも食べるか? これからよろしくって事で奢るじゃん?」

通りの反対側に見えるクレープの屋台を指差しながら、黒子の顔を窺う。

黒子「…………わたくし、そんなに安い女ではありませんの」プイッ

安達「いらないのか?」

黒子「……いりますの」
166 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/22(土) 21:46:41.84 ID:pRtB1Rnho
~公園入口付近~


店主「ラッシュアワースリー!」

安達「――と、いう訳で白井を公園のベンチに待たせて、クレープを買いに来たんだが」

店主「……兄ちゃん、誰に言ってるんだい?」

クレープ屋の店主からツッコミが入るが、ツッコみたいのはこっちの方だった。

安達「…………んで、何をしてるんだ、海原の」

海原「俺の完璧な変装を見破るとは……さすが俺!」デデーン!

何一つ変装などしておらず、普通に自分と同じ顔をぶら下げてるようにしか見えない。

安達「自画自賛に聞こえるから止めてくれ……つーか、海原って板前じゃなかったのか?」

自分の一流料亭でも通用する料理の腕は、彼が死亡した時に継承されたモノだった筈だが。

海原「え? ……見ての通り、板前の服装してるじゃないか?」アレー?

流れ板の生こと、『海原生(かいばらしょう)』は、何が変なのか理解していない。

安達「だ・か・ら! それが変だから聞いてるじゃん!?」ウガー!

何処に板前の服装でクレープを焼く奴がいるというのか。

海原「いや、俺も最初は板前として学園都市に来たんだがな?
    何しろ、ここって学生の街だから料亭の数も少ないし、客の入りもイマイチでよ。
    せっかく、生き返った訳だし……どうせなら、多くの人相手に料理したい訳さ、俺としては」

安達「……それでクレープの屋台なのか?」

海原「料亭と違って、女子高生とか一杯来てくれて楽しいんだよな~
    この前も中学生の女の子と仲良くなってさ、メアド教えてもらっちゃったぜ」

安達「だ、駄目だコイツ……早くなんとかしないと……」

風紀委員を呼んだ方がいいかもしれない、と本気で悩む。
167 :とある複製の妹達支援2011/01/23(日) 02:13:40.15 ID:3h3ejS8bo
海原「風紀委員はお前だろ……それで、注文は?」

安達「えーっと、白井のが『夏のフルーツ』で……何だ、この『上海風』だの『広東風』ってのは」

海原「ふふふ……それこそが当店オリジナルの衝撃のメニューだ……!」

安達「――どうせ、また美味しんぼだろ」

海原「」

安達「図星かよ……けど、それでいいか。ハズレって事もないだろうし。俺はあえて『広東風』を選ぶぜ」

海原「分かった、今蒸してやる」

安達「蒸す!? クレープなのに!?」

衝撃を受ける安達を他所に、流れ板・生改め、流れのクレープ職人・生は『広東風』クレープの調理に入った。

容器の中に水で溶いた米の粉を1センチほどの深さに入れ、鶏肉の細切りを味付けして、容器ごと蒸し器に入れる。
火が通ると米の粉は半透明になるので、それを端から手早く丸める。そして、酢と醤油と唐辛子で味をつけたタレをかける。

しかも、『広東風』を作りながらも、同時に『夏のフルーツ』も着々と作り進めているのが恐ろしい。

安達「見た目はクレープだが、完全に別物だな……」

海原「はいよ、『広東風』と『夏のフルーツ』出来上がり。……俺割り引きって事で500円でいいぜ」

安達「同じ俺のよしみって奴か」⊃500

やたら香ばしい匂いをさせたクレープと対照的な甘い香りのクレープを持って、黒子の元へと向かう。



~公園内~


黒子「……遅いですの」

安達「悪い、少し店主と話が弾んじゃって……」

言いながら、献上の品を差し出す。

黒子「ありがとうございます……って、クレープ屋さんと何の話を?」パクリ

安達「この学区の防犯意識について、ちょっと……」

黒子「なるほど、一般の方への注意を促すというのも大事ですの」アムアム

安達「……物騒だからな、ここ最近……強盗とか爆弾とか」モグモグ

黒子「発火能力者による連続銀行強盗は昨日、わたくしとお姉様が捕まえましたので、後は爆弾魔の方ですの」
170 :とある複製の妹達支援2011/01/23(日) 13:32:09.15 ID:3h3ejS8bo

ベンチに座って仲良くクレープを頬張ってる姿は実に平和的なのだが、会話の内容は真逆にも程があった。

安達「(お姉様……ね)――そっちも能力者の仕業なんだって?」パクパク

黒子「……連続虚空爆破(グラビトン)事件と呼称されていますの」

ベンチの横に転がっていた空き缶を拾い、三角形のマークを指さす。

黒子「アルミを基点にして、重力子の数ではなく速度を急激に増加させて、それを一気に周囲に撒き散らす」

安達「ようするに『アルミを爆弾に変える能力』って訳か」

黒子から空き缶をヒョイと取り上げて、自販機横のゴミ箱目掛けて、放り投げる。

ガコッ!

黒子「ナイスゴールですの」パチパチ

安達「で、容疑者は?」

黒子「犯行を実現可能なのは一人。ですが、実行可能なのは一人もいませんの」

安達「というと……アリバイか?」

黒子「『量子変速(シンクロトロン)』の大能力者(レベル4)――釧路帷子(くしろかたびら)という女生徒なのですが……
    ……最初の事件が発生するよりも前に意識不明で病院のベッドの上ですの」

安達「そりゃまた面妖な。『書庫』で該当したのはその釧路さんだけなのか?」

黒子「そうですの……だから捜査も難航……その間に事件の発生は続いて、風紀委員に負傷者も出てます」

安達「それで研修終了直後の俺が補充要員として選ばれた訳ね」

黒子「それなりに有能な後輩が出来たのは不幸中の幸いという奴ですの」

安達「………………」///

黒子「…………なぜ、そこで黙りますの」

安達「いや、別に…………さて、クレープも食べたことだし、巡回を再開しますか」




海原「……リア充爆発しろ」ボソ

そんな一部始終を目撃していた海原が、そんな洒落にならない台詞を吐いたのは仕方が無いことである。
171 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/23(日) 13:37:58.54 ID:3h3ejS8bo
~第七学区・木の葉通り~


安達「午後に入ってから、少し人通りが増えてきたかな」

黒子「もうすぐ夏休みですので、浮かれ気味の学生も多いですの。要注意、ですわよ」

安達「そうだな―――――――――――――え?」


通りの少し先。

何かの建物から出てきた、その少女の姿に刹那、安達の思考が停止する。


黒子「どうかなさいました――――の!?」

突然、立ち止まった安達の視線を追うように、前方を注視する黒子。

黒子「あ、あれは!!」シュン

そして、気付く。
それが誰なのかを。

そして、彼女は飛翔する。
彼女だけの現実から生まれる超常の能の力で。

そして、叫ぶ。
一応は、彼女だけに許された呼び方で。

黒子「お・ね・え・さ・まあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」ガバアアアッ

テレポートによって斜め上方へと転移すると、その少女の胸に飛び込むように突撃した。

安達「………………」

その光景に言葉を失う安達。もちろん白井黒子の突然の奇行にではない、彼女に飛びつかれた少女の顔にだ。

???「ちょ、黒子!? は、離れなさいってば!」グイグイ

――似ている。『妹達』に。

……正確には逆であることも安達にはすぐに分かった。

だが、先に出逢ったのが彼女達である以上、そう感じるのも当然ではある。
それにしても瓜二つだった。

――その茶色の髪も。

――常盤台中学の制服も。

違いがあるとすれば、彼女には溢れんばかりの感情あることか。

学園都市の外で蘇生された妹達にも確かに若干多様すぎる個性と共に感情は芽生えつつある。
だが、それはまだ幼く、拙く、弱い。

今、目の前で白井黒子の過剰なスキンシップを受けて、慌てている彼女と比べるのは酷なのだろう。
172 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/23(日) 13:39:50.21 ID:3h3ejS8bo
安達「おい、白井『先輩』。その辺にしてくれないか?」ムンズ

殊更『先輩』を強調しながら、一向に少女から離れようとしない黒子の首根っこを掴んで引き剥がす。
傍目から見ると、イタズラした猫が飼い主に確保されたように見えなくもない。

黒子「ちょ、何をなさいますの!? いくら同僚とは言え、わたくしとお姉様の逢瀬を邪魔するなんて……」ジタバタ

???「…………?」

今にも黒子に電撃を浴びせそうだった少女は、突然の闖入者……もとい、救済者を興味深げに観察する。

???「(腕章を付けてるって事は風紀委員よね……? ……高校生……アイツと同じぐらい……?)」

安達「俺だって邪魔するつもりはないが、公共の場でそういう事をされると対応に困る。……初日から同僚を不純同性交遊で逮捕なんて嫌じゃん」ヤレヤレ

黒子「そんな容疑聞いたことがありませんわ!? そもそも、不純とは何事ですの!?」ムキー

安達「不純でも本気でも、どっちでもいいが人目のある所では自重するじゃん。ヤりたいなら二人っきりの時にすればいいだろ」

ある意味、身も蓋もない言い方にさすがに静観していた少女もツッコミを入れる。

???「いや、ヤらないから。あと、二人きりの時だって断固として拒否させてもらうから」

そんなー!?と絶叫する黒子。

???「……それで? その腕章で同僚って事は風紀委員なんだろうけど、黒子の所では見たことない顔よね?」

安達「ああ、一七七支部に配属されたのが今日からなんだ。要するに補充要員って奴でね……『安達生』だ」

そして、その少女の名前を呼ぶ。

――ヨロシク、御坂美琴さん。

そして、心の中で呟いた。

――初めまして、オリジナル、と。
173 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/23(日) 13:43:48.83 ID:3h3ejS8bo
美琴「あれ……私、名乗ったっけ?」

安達「超能力者(レベル5)の中でも色々と有名だからね、君は」

――『妹達』の件から、知っているのは当然だし、自分が風紀委員になったのは彼女と接触する機会を得る為でもあるのだが。

黒子「さすがはお姉様ですの!」

美琴「そ、そう?」///

黒子「……ところでお姉様? 今日はこのような場所で何を?」

美琴「へ? ……えーっと」

ふと、彼女が出てきた建物を見る。

――24時間営業のコンビニエンスストアだった。

黒子「また、立ち読みですの……? あれほどいつもお止め下さいと申しておりますのに……」

美琴「い、いいじゃない。誰に迷惑をかけてるって訳じゃないんだから……」

彼女が読んでボロボロになってしまった漫画雑誌を買う羽目になっている不幸な高校生がいるのだが、それはまた別の話だ。

安達「ほぉー、常盤台のお嬢様でもコンビニで漫画の立ち読みとかするんだなー」

安達の呟きは単純な感想に過ぎないのだが、それを叱責と受け取ったのか、

美琴「うっ…………」

美琴は苦い顔をしていた。

黒子「ですから言っておりますのに……」

美琴「こ、今回は別に漫画雑誌を読んでた訳じゃないんだから!」

黒子「……でしたら何を?」

美琴「……学園都市の都市伝説」ボソ

黒子「そこで女性向けファッション雑誌等を期待した黒子が愚かでしたの」

美琴「うっさいわねぇ……」

安達「そうか? 面白そうだが」

黒子「いえ、初春に以前聞いた話ですと、どれも眉唾モノばかりで信憑性とは無縁ですの」

安達「……例えば?」

黒子「確か……使用するだけ能力者のレベルが上がる道具?、とか」

安達「欲望というか願望がダダ漏れな都市伝説だな……他は?」

黒子「全ての能力を打ち消す能力を持った『能力者』がいる、とか」

美琴「………………っ!」ビクッ

――美琴は自分の知っている一人の少年の姿を思い浮かべ、戦慄する。

黒子「あら、お姉さま……どうかなさいましたの?」

安達「意外と馬鹿に出来ないじゃん、都市伝説」

――安達は、自分の知っている少年の右手を思い出しながら、納得する。

美琴「………………え? 今アンタ、何て……」
174 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/23(日) 13:51:22.99 ID:3h3ejS8bo

ウーンナニカメジルシニナルヨウナモノオボエテマセンカネ-?


美琴「!?」

安達の言葉の意味を問おうとした美琴だったが、

美琴「今のは――こっちか!?」

ダダダダッ

ふいに聞こえてきた声に反応して、急に駈け出す。

黒子「ちょ、お姉様!? どちらへ行かれますの!? くっ、安達さん追いますわよ!」グイッ

安達「…………何だろう、猛烈に嫌な予感がするじゃん」

通りの先に消えた美琴を追って、駆け出す風紀委員二人。

黒子「……?」ダダダダッ

安達「いや、妙に聞き覚えがある声だったもんで」ダダダダッ


ヨービリビリチューガクセー

ビリビリイウナ! ワタシニハミサカミコトッテナマエガアンノヨ!


まの抜けた男の声の直後に何やらヒートアップしているらしい美琴の声。
どうやら、声の発生源はすぐそこだ。


そして、現着。

黒子「お姉様、急に走りだしてどうなされましたの!?」

安達「…………やっぱりか」

予感というよりも確信に近かったのだが、その人物の顔を見て嘆息する安達。

――そこにいたのは、

???「風紀委員……?」

――目の隈がひどい研究者風の女性と、

???「あれ、生じゃねーか。どうしたんだ、こんな所で? ……今日、欠席してたのに」

――安達の顔を見て、親しげな笑顔を向ける、ツンツン頭の少年。

美琴「私をスルーするな! って、アンタ達知り合いなの!?」

――ついでに、何やらご立腹な様子の御坂美琴嬢。

安達「なんつーか…………高校生になっても不幸なのな、上条」

――知り合いというか、中学の頃から同じクラスで同じ寮の腐れ縁なのだが。

学園都市に無能力者(レベル0)の烙印を押された、不幸の代名詞、自らを偽善使いと卑下する高校生、上条当麻(かみじょうとうま)がそこにいた。


第一話 『学園都市の正義の盾』 完
175 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/23(日) 14:02:35.79 ID:3h3ejS8bo
毎度お世話になっております。
昨晩、美味しんぼ80巻と超電磁砲1巻とアニメ版4話を見ながら書いた分の投下は終了です。
いつもながら遅筆で申し訳ありませんです、はい。
皆さんのレスとツッコミが私のエネルギーです!

アクメツとフルチューニング邂逅~アクメツ学園都市侵入開始までがプロローグなので
MNW2ネタを除いた今回までが第一話、という扱いになります。

くっ……自分で言うのもあれですが仮面装備のアクメツさん戦闘までの道のりは遠いようです。

次は、再びMNW2ネタを二本程挟んで、二話へと入ろうと思います。

ちなみに、このSSでは超電磁砲関連の話は、アニメと漫画の中間ぐらいの流れで進行してます。


179 :とある複製の妹達支援[saga ]:2011/01/23(日) 22:20:55.08 ID:3h3ejS8bo
蘇生によるミサカネットワーク移転について【必読】

1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
私、ミサカ00000号……通称・試験個体(フルチューニング)の死亡、及び蘇生された現時点よりMNW2が稼働に入ります。
各種、注意項目を参照の上、疑問点がありましたら、当スレ内で質問してください。
可能な限り、それに答え、皆さんの不安を払拭したいと思う所存です。

①既存MNWからの隔離について。

総勢二万と一体によって構築された、旧MNWですが、それにリンクしているのは生存している個体のみであり
死亡した個体の記憶は電気的な信号として、残ったミサカ達に共有されるものでした。

ですが、此の度、私達の支援を行ってくれる方達の技術提供によって、
学園都市にて実験で死亡した個体を学園都市外部にて蘇生する事に成功しました。

ですが、そのまま蘇生したのでは自動的に旧MNWへとリンクが復旧されてしまい、我々の生存と位置が露見する事になります。
その為、皆さんは一時的にMNWから隔離され、残りの個体からは死亡したように認識されています。
私の場合は少し違うのですが、それは後述に回したいと思います。

②新規MNW開設について

ですが、単純に隔離しただけでは、逆に大事な情報が共有できず、各々の混乱を招く危険がありました。
その為、暫定的に私――つまり、00000号を新規ネットワークの『核』として規定し、蘇生された個体との間にリンクを行うことで
従来と同様にMNWを使用可能にしました。
その為、私は現存する個体からは、『生存している筈なのにMNWからは寸断されている』状態で認識されています。

③旧MNWとの互換性

旧MNWとMNW2は、いわゆる『ラジオの局が違う』状態であり、チャンネルを変えれば、旧MNWへとリンクが可能です。
ですが、実験が継続している現状では、それは危険であり、誠に勝手ながら私の権限なしではアクセス不可となっています。

④今後の皆さんについて

皆さんは一度は死に……文字通り、生まれ変わりました。
本来ならばある筈のない人生を再び歩む事が出来るのは、とても幸福な事です。
ですが、生き返ったばかりの皆さんには、それは分からないかもしれません。

だからこそ、これから皆さんは知らなければいけません。
生きるという事の意味を。

それをするだけの時間は充分にあります。
それを助けてくれる方達もいます。

不安になるのは当然でしょう。
いえ、むしろ不安に思ってください。

それも生きることの一部です。

けど、きっと大丈夫です。

私達には同じ境遇の姉妹がいて、

そして何よりも、

――私達は繋がっているのだから。
183 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/24(月) 14:19:51.23 ID:GJPTUOaIo
健康っていいよな

921 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
実感するのは日常生活でだよね

922 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04949
毎日の食事が美味しすぎて、しばらくは体重計に乗れそうにない……

923 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00753
>>922
健康なんだから、運動しなさい

924 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
学園都市での食生活なんて、栄養素オンリーの味気ない奴だったからな

925 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
あっちだと、研修してるか、調整してるかどっちかだったもんね。
食事は必要最低限だしさ……
そういえば、調整が必要ないってのは重要だと思う。かなり使える時間が増える

926 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
けど、時間あっても別にすることないんだよな……

927 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
>>926
クリーニング屋さんの手伝いはどうしたの?

928 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
>>927
心配すんな、ちゃんとやってる。でも趣味とかないから休憩時間とか退屈なんだ……

929 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00312
そんな、貴女にエクササイズ!

930 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00193
それは素晴らしい

931 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00753
是非ともやりなさい
184 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/24(月) 14:22:25.29 ID:GJPTUOaIo
932 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00315
>>929-931
それは自分達の趣味だろww

931 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
>>929-931
賞金稼ぎのお前らはいいとしても、
クリーニング屋手伝いの俺に何処を鍛えろというのか……

932 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00193
>>931
そういう呼び方は好きじゃない。正義の味方と呼びなさい

933 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
アイロンかける筋肉じゃないの?

934 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
>>933
そんな局所的に鍛えたら、せっかくのプロポーションが……

935 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01919
締まりが良くなるように腰回りから腹筋あたりの筋肉をだな……

936 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
>>935
ふらっと来て、下ネタ投下するのやめろww

937 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
休憩時間の暇潰しといえばゲームだろjk

938 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
モンハンやろうぜ

939 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
モンハン……? 興味ねーよ

940 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
>>939
俺もゲームは興味ないけど、そんなんだから趣味が出来ないんじゃないか……?

941 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
確かに俺にはやってみよう、って感じの積極性が足りないかもしれない……
でも、趣味のない俺でも、みんなの趣味を守る事は出来る!

942 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
何その無駄な決意ww

943 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04949
なんか、カッコイイww
185 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/24(月) 14:26:23.41 ID:GJPTUOaIo
944 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
ゲームで思い出したけど、銭湯っぽい名前とキノコ混ぜたようなゲーム会社で働いてるミサカいたよね?

945 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
なにそれ???

946 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
番台……滑子(なめこ)?

947 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
>>946


948 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
>>944
お前の記憶力に深刻な問題が見つかった訳だが

949 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
え、違った?

950 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
一文字違うだけで、なんかヌルヌルな感じになったなww

951 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01919
ナメコ汁ヌルヌルプレイか……新しいな

952 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
>>951
屋上

953 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
ゲーム画面もヌルヌル動けばいいな

954 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
>>953
ゲーム興味ないくせに上手いこと言いやがってww

955 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
滑子なのに滑らないとはやるじゃねーか……

956 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05103
>>955
なんで、上手いこと言うみたいな流れになってるんだよww
>>949
そんで、そのミサカがどうしたんだ?

957 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00960
そのミサカから、自社ゲームに『妹達』を出してみたって話を聞いたんだけど

958 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
なん……だと……?

959 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
そういえば、どっかで聞いたような気もする

960 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
そんな目立つことしていいのか……?

961 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00765
なんか話題になってるので、参考画像うp

http://gamesquare.up.seesaa.net/image/o0800045310766919179-thumbnail2.jpg
187 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/24(月) 19:57:37.86 ID:GJPTUOaIo
962 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
おおー本当だww

963 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
ゴッドイーター……だと……?
くそっ、モンハンに操を立てている私を誘惑しようと言うのか……

964 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00765
一方通行も用意したので、奴を手足のように使ったり、
わざとアラガミにボコボコにヤラれてみたり出来るよ!

965 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
せっかくゲームするのに、そんな暗い楽しみ方は嫌だ……

966 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
そうだな、変顔にキャラメイクするぐらいで勘弁してやろうぜ

967 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
お前ら楽しそうだな……ゲームってそんなに面白い?

968 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00064
キターー!!

969 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00360
こちら側に引き込むチャンスだ!
>>967に携帯ゲーム機とソフトの詰め合わせを送りつけろ!

970 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00765
>>969
任せろ!

971 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00555
ちょ、ええ? 



~数日後、現実世界のネット掲示板に『ウチのバイトがゲームばかりで働かない』というスレが立ったとか、立ってないとか~
191 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/25(火) 01:27:22.46 ID:FcfrBSxNo
~第七学区・木の葉通り~


上条「どうしたんだよ、生……遅刻は常習でも、滅多に欠席はしないお前が急に休むから、みんな心配してたぞ?
    何故か小萌先生は、妙に嬉しそうだったり、心配そうだったり、一人で百面相してたし……」

安達「さらっと失礼なコトを言う奴だな………………休みの理由は、こ・れ・だ」クイッ

風紀委員の腕章を少し引っ張って、上条に見せる。

上条「それって……まさか、風紀委員になったのか!?」

安達「そういうことじゃん……採用の為の試験が午前中にあってな。午後からは既に風紀委員として活動中って訳」

何しろ、急に採用の為の最終試験を行うことが決まったので、今日は授業を休むしかなかった。

本来なら、授業のない日や時間帯を相談の上で試験を行うはずなのだが、風紀委員から多くの欠員が出てる現状では、
即実務への投入可能な人員の確保は、よほどの急務らしい。……出来れば、欠席したくはなかったのだが。

上条「お前が風紀委員ねぇ……?」ジロジロ

安達「やっぱ、似合わないか?」

上条「いや、いいんじゃねーの? 結構、様になってると上条さんは思いますよ?」ニカッ

これで、安達が女性だったなら不要なフラグが立つのだろうが、彼は一応は普通の男子なので、そういうことはない。
まぁ、友人に肯定的に見られるというのは嬉しいものではある。

安達「サンキュー……あと、小萌先生には理由が理由だから、ちゃんと事前に連絡したんだけど……」

上条「あー、それでか……風紀委員として生徒が頑張ろうとしてるのは嬉しいけど、やっぱり心配だったり……って感じか」

安達「見た目あんなだけど、中身は完全に熱血系教師だからな」

上条「だよなー」

共通の話題で盛り上がる男子二人。
付き合いの長い、クラスメイトであるが故の盛り上がりの為、他のメンバーは完全にシャットアウトされつつあった。

美琴「(ふーん、コイツら……仲いいんだ。ってか、私の事は完全にスルーだし……)」ムムム

黒子「(もしや、この殿方がお姉様と度々いざこざを起こされている……? でも、見た目は無害そうですわね……)」ウーン

???「(…………それにしても、熱いな)」パタパタ
192 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/25(火) 01:56:25.24 ID:FcfrBSxNo
安達「んで、上条さんはこんな所で何をしてるんでしょうか?」

上条「あ、そうだ! 風紀委員になったんなら、この人が車を止めた駐車場探すの手伝ってくれないか!?」

言いながら、自分の隣の女性を指す上条。
それにしても凄い隈だった。

安達「……駐車場?」

???「いやー、車を止めた駐車場が何処にあるのか分からなくなってしまってね……」

安達「……それは、風紀委員の仕事なんだろうか……?」

上条「俺、これから行かなきゃいけない所があってさ……最初はビリビリに頼もうかと思ったけど……な?」パチン

美琴「だから、ビリビリ言うな! ……ってか、何でコイツに頼むのよ! 私に頼もうと思ったんならそうしなさいよ!」

彼女の脳内で、どのような展開があったのかは極めて謎だが、
彼女が辿り着いた最終的な感情は『上条が自分へ求めた役割が横取りされた事』への憤慨である。

上条「ええっー!? 何故、そこで怒られないといけないんでせう!? せっかく風紀委員がいるんだから、そっちに頼んだ方がいいだろ!?」

理不尽な叱責に叫ぶ上条。

美琴「何よ、それ!? 私じゃ力不足だって言うつもり!?」ピリッ

黒子「お、お姉様……仰っている事が支離滅裂ですの……」

安達「(……なんだろう、超能力者(レベル5)のイメージが、急激にウチのクラスの馬鹿騒ぎレベルに近づいていく……)」ホロリ

現実なんてこんなもんだ、と自分の中の冷静な部分が言っているが、妙に悲しいのは何故だろうか。

???「誰が手伝ってくれても、別に私としては構わないのだが…………いやー、それにしても熱いな」プチプチ

パサッ――シュルシュル――

そんな馬鹿騒ぎの中、何を思ったのか突然、シャツを脱ぎだす女性。

上条「ぬわっ!?」///

それに対し、上条はたじろぎ――

美琴「……え? な、何を……しているんですか……?」///

美琴は顔を羞恥の赤に染めながらも、疑問を投げかけ――

黒子「な……な……な……」アングリ

黒子は愕然とし――

安達「おおー…………これは中々」

年齢の割には人生経験豊富な安達は素直に女性の肢体を賞賛する。
193 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/25(火) 02:05:55.37 ID:FcfrBSxNo
???「炎天下の中、随分と歩いたからね……汗びっしょりだよ……」

美琴「ちょっと、アンタ! な、何よこの人!?」

上条「い、いや俺も先刻知り合ったばっかりだし……! と、とにかくシャツを着てくださーい!!」グイッ

女性の方を見ないようにしながらも、シャツを着るように促す上条……が、しかし。

キャーオンナノヒトガオソワレテルー!

エーアノオトコノヒトガヌガシタノー!?

イッショニイルジャッジメントハナニシテルンダヨ!

遠巻きから向けられる痛い視線と叱責の声。

上条「え、いや……これは違っ……」オロオロ

黒子「と、とばっちりで風紀委員にまで批難が!?」ガビーン!

安達「……さすがじゃん、上条」ボソ

なんというか、誤解の受け方が既に奇跡的だ。
これだから、奴の友人は辞められない。

――当人には悪いが、面白すぎる。

そして、周囲の視線に耐えられなくなったのか、上条は握っていたシャツを美琴に押し付けて――

上条「ご、誤解だああああああああああああああああああああ!!!」ダダダダッ

もの凄いスピードで逃走を図った!

美琴「ちょ、アンタ待ちなさいってば!!」

逃げる上条と、渡されたシャツの間で視線が何度か往復する。
この状況を放置して追うべきかどうか迷っているのだろう。
確かに、この場に自分しかいなかったら事態を放置しての追尾は不可能だった。
しかし、美琴は忘れてはいなかった。

――だって、今この場には自分が『もっとも信頼する後輩』がいるではないか?
194 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/25(火) 02:16:05.52 ID:FcfrBSxNo

美琴「黒子!! その人をお願い!」グイッ

黒子「お、お姉様!?」

上条から美琴へと押し付けられたシャツは、さらに黒子へと押し付けられる。

美琴「ついでにアンタも来なさい! アイツと仲が良いんなら、色々と知ってるんでしょうし!!」

ガッ! と美琴に腕を掴まれる安達。

安達「え、俺!?」

せっかく出来た同僚を置き去りにするのは心痛いのだが……当初の目的を考えれば好都合だろうか?

美琴「アイツ、今日こそは逃がさないんだから!!」ダダダダッ

そんな安達の逡巡を他所に駆け出す美琴。

安達「し、白井さん――後は頼んだ――!!」ピュー

そんな美琴に引っ張られるというよりも中空を舞う凧のように連行される安達。

黒子「そ、そんな!? 安達さん!?」

そして残される哀れな子羊・黒子。



???「……もう見えなくなった……凄いな」

残されたのは、上半身下着姿の『脱ぎ女』と、それの対処を押し付けられた薄幸の風紀委員、白井黒子。

そして、ざわめく通行人という名のギャラリー達。

黒子「ふ、不幸ですのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

――少女の絶叫が夏の空に反響した。
203 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:02:02.77 ID:37Qky1eyo
――30分後。


美琴「――み、見失った……!」ゼハーゼハー

安達「……あのー、御坂さん……?」ゼハーゼハー

美琴「な、何よ?」

安達「ウチの上条とは普段から……このような、お戯れを?」

美琴「」

沈黙する美琴。
なんというか、自分でもアレだという自覚はあるようだ。

安達「なんでまた……」

美琴「だ、だって、アイツいつも適当なコト言って逃げるし、人のこと煙に巻いてロクに戦おうとうもしないし!」

安達「た、戦うって……上条は無能力者(レベル0)だぞ!? なんで超能力者(レベル5)の君が…………あ」

通常ならば、レベル5と0の間で勝負など成立しない。
だが、その間には逃走すらも難しい程の力の差があるのだ。
単純に逃げ足の速さだけで、回避できるものではない。

――そう、彼にはそれを可能にするだけの『理由』がある。

美琴「ふーん……そこで思い当たる節があるって事は――知ってるのね? アイツの能力を」ニヤリ

安達「知りたいのは……それか?」

美琴「話が早くて助かるわ……たーっぷりと、訊かせて貰おうかしら?」

有無を言わさない迫力。彼女のクローンである『妹達』からは感じ無かった、『圧倒的な実力』に裏打ちされた自信。
だが、自信を感じる反面で、それが揺らいでいるようにも感じられた。

――それが、彼女を焦らせている。

安達「…………人から話を訊こうってのに立ち話か?」

美琴「むぅ――じゃあ、そこのファミレスに行くわよ」

安達「おーけーおーけー」

思えば、安達は朝食以降、クレープしか食べてなかった。
この際なので、遅い昼飯を取ることにした。
204 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:09:57.87 ID:37Qky1eyo
~Joseph's店内~


二人が選んだのは店の奥にある隅の席。
ここならば、通りからは見えないし、話の途中で余計な邪魔も入らないだろう。


安達「さて、注文も済んだし……上条について話す前に俺から質問してもいいか?」

美琴「何よ?」

安達「上条と最初に出会った状況と、御坂さんと奴の『今まで』を全部」

美琴「な、何で、わ、私がそんな事を教えないといけないのよ!?」

安達「おいおい、これでも俺は上条との付き合いは長いんだぞ? 少なくとも、今日……それも先刻、出会ったばかりの君よりも、だ」

美琴「…………信用ってこと?」

安達「端的に言うと……そうだな。『戦う』なんて単語を聞いちまった以上、迂闊に上条の……友達の情報は渡せない」

美琴「聞き出したかったら、信用させてみろ……ってことね」

安達「そして、現状で君が俺を信用させる為に出来るのは……『自分の持っている情報』の開示しかない。
    まぁ、白井が信頼してるらしいって事や、君の武勇伝だけでも信用してもいいんだけど……」

美琴「――確かに第三者からの評価や、風評で判断されるってのもね。結局は他人というフィルターを通した『御坂美琴』に過ぎない訳だし」

安達「そういう事。さすがは、第三位……頭の良さもトップクラスかな」

本音を言えば『上条当麻』に接している時の『御坂美琴』が既存の情報との間に明らかなズレがあるからだ。
そのズレが、どこから来たモノなのか知る為には、彼等の関係性自体を知らなければいけない。

美琴「おべんちゃらはいらないわよ――最初にアイツと会ったのは……そうね、一ヶ月前ぐらい。
    少し夜の街を歩いてたら、馬鹿な連中に絡まれてね」

安達「ナンパ?」

美琴「まー、そういう類の連中だったわ」ヤレヤレ

思い出すのも不愉快だ、と言わんばかりの美琴。

安達「その時って……常盤台の制服、着てたのか?」

美琴「着てたわよ? 外出時には制服着用って決まってるし」

安達「本当に馬鹿だな、その連中」

在学の最低条件に強能力者(レベル3)である事が含まれる常盤台の生徒をナンパというのは……軽く馬鹿を通り越している。
もしかしたら、自分の顔なり、ナンパの技術なりに余程の自信でもあったのだろうか……?
しかし、自信のある奴は群れてナンパをしたりしないだろう、とも思う。

――結論、やはり馬鹿だ。
205 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:14:03.33 ID:37Qky1eyo

美琴「それで、道行く人は見て見ぬ振り……ま、当然よね」

安達「――スマン、全部話せとか言っておいて、アレだけど、もう展開が読めた」

美琴「へ?」

安達「助けに入ったんだろ? 上条が……例えば、御坂さんが自分の『連れ』みたいに振舞って」

まるで、眼に浮かぶようだった。
さも美琴を探していたように悪漢?達の間を掻き分けて、ドサクサに紛れて美琴を連れて離脱しようとする上条の姿が。

美琴「な、何で分かるのよ!?」

まるで見ていたかのようにピタリと言い当てる安達に狼狽する美琴。

安達「ドンピシャかよ……アイツがよく使う手だからな、大人数から助ける時に」

――成功している所を見たことはないが。

一対一の喧嘩であれば、上条が負ける事はないと思う。彼は、あれでもかなり喧嘩慣れしている。
だが、特別な格闘技を修めた訳ではないし、相手が複数で武器を持っていたりしたら、事実上お手上げなのだ。

でも、それでも彼は助けに入るだろう。
それが彼が彼である所以であるし、彼の友でありたいと思わせる理由なのだ。

その為に選ぶ手段は、少々格好が悪いが――彼なりに必死に考えた結果なのだろう。
必要以上に争ったりしなくても済むように。

美琴「よく使うんだ…………」ショボーン

安達「何で、そこで落ち込むんだ?」

美琴「お、落ち込んでなんかないわよ!? あ、アイツが私以外に誰を助けてようが、私には関係ないじゃない!?」

安達「(なんだ、この珍妙な生物……)」

これほどまでに感情というか、本音がダダ漏れなのに当人に自覚がないというのが恐ろしい。

美琴「た、確かにそういう風にアイツは助けに入ったわよ? でも、すぐにバレて……」

安達「当たり前だな」
206 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:15:21.25 ID:37Qky1eyo

美琴「――それで、色々とあって私が電撃出しちゃって……」

安達「いや、ちょっと待て。いきなり話が飛んだぞ?」

美琴「だ、だって、アイツったら人のこと『まだガキ』だの『反抗期も抜けてない』だの言いたい放題で……!!」

安達「あぁ…………なんとなく分かった。御坂さんは上条の『演技』に合わせなかったんだな?」

そもそも、助けなど必要としていないのだから、上条の下手(見なくても分かる)な演技に合わせる理由はない。

美琴「うん」

安達「それで、上条が『せっかくの演技が台無しじゃねーか』的な事を言って」

美琴「そう!」

安達「売り言葉に買い言葉で、御坂さんも上条に文句言ったりして」

一応は年上である筈の自分や上条を『アンタ』『アイツ』等と呼んでる所を考えると、彼女の目上への態度は良くはない。
常盤台のお嬢様なのだから、その手の礼儀作法は体に染み付いている筈なのだろうが……上条にペースを乱されてしまったのか、素がこうなのか。

美琴「そうそう」

安達「そして、馬鹿共が上条に因縁つけて……逃げ切れないと思った上条は、馬鹿共を一喝する訳だ」

美琴「そうなのよ!」ウンウン

安達「言ってる内にヒートアップした上条さんは、御坂さんの逆鱗に触れるような台詞を言ったりして」

元来、デリカシーの足らない男ではあるが、相手が『口生意気な年下』だったりすると、相手の心情に配慮した発言は、さらに期待出来ない。

美琴「そう、それよ!」ビシッ

我が意を得たり、と言いたげに頷いたり、安達を指差す美琴。
207 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:17:10.73 ID:37Qky1eyo
安達「それで、イライラが頂点に達した御坂さんの雷が落ちる訳だな、文字通り」

美琴「その通り! なんでそんなに分かっちゃうのー? もしかして、読心能力者だとか!?」キラキラ

安達「いや、無能力者(レベル0)だけど」

美琴「そうなの……? でも、今の私は無能力者だって言われて、はいそうですかって額面通りには受け取れないのよね」

安達「無能力者である筈の上条に、何故か電撃が効かなかったから?」

彼の右手は『特別』だ。
確かに学園都市で彼は『無能力者(レベル0)』に区分されているが、彼のそれは本来の意味での『無能』ではない。
そもそも、強度(レベル)は学園都市の規格で測れる力の有無と強弱をランク分けしているに過ぎず、本当の『規格外』は省かれているだけなのだ。

美琴「―――――――うん、そうなの」ドヨーン

安達「とりあえず、出会いは分かったけど……それからは?」

美琴「え、いやだから……それから街で見かける度に戦いを挑んでるんだけど、いつも適当にあしらわれて……」

安達「――それだけ?」

美琴「そうよ?」

安達「出会ってから一ヶ月の間、ずっと?」

美琴「そ、そうよ!」

安達「(だ、駄目だ、この娘―――!?)」

低レベルだ……あまりにも低レベルな諍いだ……! と、安達は驚愕を隠せない。
超能力者(レベル5)が無能力者(レベル0)に挑む、という異常事態にも関わらず、その動機には緊迫感の欠片もない。

単純に自分の能力が通用しなかったのが、気に入らないのだろうか?
だが、それだけで一ヶ月もの間、一人の男を追い掛け回していると言うのだから、呆れた話だ。
どうせ追い掛け回すなら、もっとマシな理由がありそうなものだが。
208 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:18:57.46 ID:37Qky1eyo
安達「(……いや、待つじゃん)」

――マシな理由? それは本当に無いのだろうか?

単純に彼女は上条が気に入らなくて、上条を追い掛け回しているのだろうか?
彼女自身も自覚していない、本当の理由があるのではないだろうか?

――それは、一体何だ?

安達「…………それで、御坂さんは上条をどうしたいんだ?」

――分からないならば、確かめてみればいい。

美琴「どうしたい……?」

そう改めて訊かれると、自分はあの少年をどうしたいのだろう? と美琴自身にも明確な回答は出来なかった。

安達「例えば――殺したい、とか」

突然に飛び出した凶悪な単語に美琴の顔がサアーっと青くなる。

美琴「なっ!? そ、そんなこと思う訳ないじゃない!!」

安達「どうして?」

美琴「どうしてって……だって、そんな……この歳で前科持ちなんて嫌だし……」

安達「それは社会的な倫理感であって、君の感情とは無関係だ――よく、考えて欲しい」

美琴「…………」

安達「御坂さんは、レベル1から努力でレベル5になったんだろ? 自分の能力への誇りは誰よりも強い筈だ。
    その能力が、只の無能力者らしい奴に通用しない……それでも憎くない?」

率直というよりも、容赦なく訊かれて、初めて『それ』について考えてみる。
果たして、自分は『あの少年』を憎んでいるのだろうか? それで、勝負を挑んでいるのか?

美琴「――やっぱり、違う。腹が立つことは一杯あるけど、別に私はアイツを憎んだりはしていない」
209 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:23:32.31 ID:37Qky1eyo
安達「おーけー、認めよう。じゃあ、次だ…………負かしたい?」

次は割と簡単に答えが出た。

美琴「……電撃が効かない時に、そう思うことは多い、かな……でも、それだけじゃない、と思う」

安達「なるほど……少し、方向性を変えてみよう。上条と話していて、どんな時に腹が立つ?」

言われてみて、美琴は先程の上条とのやりとりを思い返す。

美琴「『ビリビリ中学生』呼ばわりされた時とか…………あと、無視っていうかスルーされると、ムカつくかも」

答えながら、何故、自分はこんなにも素直に質問に答えているのだろう、とも思う。
安達の質問の仕方が上手いのは勿論なのだが、それとは別に感じていることがあるからだ。

質問に答える度に自分の中にある『もやもや』としたモノが確かな輪郭を帯びてきている。

安達「……それは簡単に改善されると思うが……」

要するに印象とタイミングの問題だ。
彼女の名前よりも『ビリビリ』が上条にとっては印象深く、
また美琴が上条に挑もうとする時間帯は、彼にとっては特売という戦場へと赴く途中だからだ。

美琴「ど、どうすればいいの!?」

安達「とりあえず、それは後にしてくれ………次は、そうだな――『上条当麻』に『御坂美琴』を認めさせたい」

――カチッと、何かが噛み合った音がした。

美琴「…………思ってるかも……しれない」

何だろう、駄目な生徒を諭す教師のような心境になって来た。
今度、小萌先生に労いの言葉をかけよう、と密かに決意を固める。

安達「少し、掘り下げようか。……どうして、認めさせたいって思う?」

美琴「………………から」ボソ

安達「?」

美琴「私の電撃が効かなかった……から」

安達「――――おーけー、分かってきたじゃん……」

確かに彼女は上条が気に入らないようだ。
だが、それは能力が通用しなかった事への単純な怒りではない。
210 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:25:31.51 ID:37Qky1eyo
安達「御坂さん」

美琴「何よ」

安達「これから俺は、君が『上条当麻』に対して抱いている感情をズバリ、言う。
    ……もしも、これが正しければ、俺は君に上条の事を教えてもいいと判断する。
    仮に間違っていても、ここまで話してくれた事への感謝と信頼として、上条の事を話そう。
    だから、間違っていたらハッキリと言ってくれて構わないし、気に喰わなければ電撃を浴びせてもいい」

美琴「いいわ――言ってみなさいよ」




――『御坂美琴』は、自分よりも『強い』かもしれない『上条当麻』に自分を『認めさせたい』

――そして、逆に自分を『侮っている』ように『感じられる』、上条の態度が『気に入らない』

――だから、『能力を使って』でも、上条に『勝ちたい』し、『負けたく』ない。




美琴「―――――――――――――――――――――ふーん」

安達「…………どうだ?」


自分よりも高い能力や権力を持った人間と出会った時に、人が覚える感情は多くはないし、それに伴う行動も限られている。

嫉妬、羨望、投影、理解、拒絶、肯定、絶望、希望、焦燥、憎悪。

ある者は相手との力の差に絶望し、

ある者は相手を目標に自らを高め、

ある者は相手の立つ場所を狙い挑み、

ある者は相手と対等に並び立とうとし、

ある者は相手に肯定され、認められようとする。

少女が少年へ求めたのは、果たしてどれであったのか。

……確かに能力が通じない事への対抗心も過分にあるのだろう。

でも『御坂美琴』という、多くの尊敬や畏怖、嫉妬を向けられて生きている少女が求めているのは、
自らを認め、対等になれる存在ではないのだろうか? 

対等とは、言い換えれば互いに過不足がない、という事だ。
相手に期待する訳でもない、相手に気遣われる訳でもない。
余計な荷物を下ろした、一対一の個人と個人の、人間同士の等身大の関係。


――そして、その可能性を持った人物が現れた。

213 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 16:58:20.59 ID:37Qky1eyo

だが、その相手にそういった気配はなく、認めるどころか自分を子供扱い。
その不満を彼女は能力をぶつけることでしか、表現出来ないのではないのか?

しかし、その能力は通用しない……また、腹が立つ。
無自覚の感情から起こる、負の連鎖。

美琴「ムカつくわね…………」

――だが、今……少女は自らに潜む『正体不明』の感情を理解する。

美琴「心理掌握(メンタルアウト)じゃあるまいし……」

――でも、少女は気付かない。『正体不明』の中には、他の感情もあることに。

美琴「自分でも理解してないことを他人に気付かされるなんて……超能力者の名が泣くじゃない」

――安達は、気づいていながらも、言わない。それは彼女が育て、芽吹かせ、名付ける感情だから。

美琴「でも、何だか……そう、スッキリした! そんな感じがするから不思議」

――今は種に過ぎない。名も知らぬ種から何が育ち、何を咲かせるのか? その楽しみは後に取っておくべきだ。

安達「それは良かった……のかな?」

美琴「良かったんじゃない? これで、アイツに挑む覚悟が決まったわけだし?」

         
ただし、それは今までのように、がむしゃらな挑戦ではない。
単純に力で負かすだけでは、自分が求めているものは手に入らないから。

美琴「それで――――結局、アイツのこと……教えてくれるの?」

安達「――ああ、いいよ」

そう笑顔で答える、安達の元に注文したハンバーグセットが運ばれてくる。
214 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 17:00:57.26 ID:37Qky1eyo
ファミレスを出ると、何時の間にか空は澄み切った青から寂しげな赤へとその色を変えていた。

美琴「……すっかり夕方になっちゃったわね」

安達「大丈夫、この時間帯なら――まだ会えるはずだ」

美琴「この教えてもらったエリアで張ってればいいのよね?」

安達「作戦を忘れるなよ? あと、戦うのも程々にな」

美琴「ちゃんと手加減するわよ、アンタの大事な友達なんでしょ?」

安達「……御坂さんにとっても、そうなるのを願ってるじゃん」ニヤニヤ

美琴「なっ……わ、私もう行くから!!」///

安達「頑張るじゃんよー」フリフリ

二人は、一時間の綿密な『作戦会議』を終え、ファミレスの前で別れた。

一人残された安達の側に一人の男が近寄る。

???「青春だな~」
215 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 17:10:38.11 ID:37Qky1eyo

安達「茶化してやるなよ……じゃあ、迫間の、後は頼む」

迫間「分かってる――あー、本日は晴天なり」ゴホン

頷きながら、男――『迫間生(はざましょう)』は耳に着けたピアスを指で軽く弾いた。

迫間「本日只今より、『オリジナル』は監視下に入る――学園都市内部に潜伏中の『失われた妹達(ロストナンバーズ)』は、電磁波を感知されないように留意せよ」

あえて、事務的な口調で通達する。そして、耳に着けられた小型のイヤホンから、さらに事務的な返答が返って来る。

???『了解です、とミサカ00110号は通信に応えます』

???『注意します、とミサカ00777号はお姉様の予想進路から距離を取ります』

???『晴天というほど晴れてませんがね、とミサカ00913号は不要なツッコミを入れます』

安達「……俺は一度、研究所に顔を出してから帰るから」

本当なら、風紀委員の支部に顔を出すなり、連絡するなりしてからの方がいいのだが、それは別に『安達生』である必要はない。
研究所に待機してる、誰か暇な奴に代理を頼めばいい。

迫間「おう、布束ちゃんにヨロシク」

安達「――どういう意味だよ」

迫間「いや? 深い意味はないじゃん」ニヤニヤ

安達「(くっ、自分の顔なのにムカつく……!!)」

ほんの少し前に自分も美琴に対して似たような表情をしていたのだが、それに気付く余裕はない。

迫間「ほらほら、後は俺に任せて行くじゃん」

安達「分かったよ、けど迫間も蘇生されたばっかりなんだから、無理はするなよ」

迫間「これでも、お前より長くクローンやってるっての……心配すんな」

安達「――じゃあ」ノシ

迫間「――おお」ノシ
216 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/26(水) 17:26:32.75 ID:37Qky1eyo
か、書き溜めたのがもう尽きた……ようやく迫間を出せたというのに……
これからは再びゆっくり進行ですの。
今回の投下したのは、『御坂と上条』の関係を原作よりも『良好』にする為のテコ入れ部分になります。
あくまでも『良好』であって、現時点では『親密』ではないので、ご注意を。
まあ、要するに御坂さんへのフォローその1です。
出会ったばかりの御坂さんの上条さんに対する感情は、恋愛とは少し違うんだろうなーという私の独自解釈ですね、はい。
『好き』だの『ツンデレ』などの単語を使わない事で木山先生ルートと違って、御坂さんが必要以上に感情に踊らされないように展開させていく予定。

――むしろ、躍らされるのは上条さんになる予定です。
229 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 13:35:44.30 ID:jxp6Yvtso
~とある複製の監視映像より~



自販機の側面に背中を預けて、正面に通りを見据えて、歩いて来る人々を注視する。

上条「うう……二時間もかけて並んだのに……貴重なタンパク源が全滅とか……不幸だ」ドンヨリ

そして、目的のツンツン頭を確認すると、その相手にも聴こえるように呟く。

美琴「――やっと来たわね」

上条「げっ…………またお前か、ビリビリ中学生」ヤレヤレ

美琴「(………………駄目、ここで怒ったら今までの繰り返し……!)」ムカッ

――とりあえず、名前で呼ばれないのは実際に『ビリビリ』して、上条に印象を刷り込んでしまっているからだ。

それが安達が美琴に与えた最初の助言。

『私には御坂美琴って名前があるのよ!』

そう言って、上条に名前をアピールした所で、直後に電撃を浴びせてしまえば、
彼の中では『結局、ビリビリじゃねーか!?』という印象が名前の印象を上回る。

――ならば、どうすればいいのか?

美琴「アンタ……いつになったら、私の名前を覚えてくれるのよ……?」

今、学園都市の頂点に座す、一人の少女は、その能力とは別次元の武器を獲得しようとしていた。
231 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 13:38:17.35 ID:jxp6Yvtso

すなわち――女の武器。

その新たな兵器は標的を駆逐せんと、確実に効果を発揮していた。

上条「(………………………え?)」

どうせ、また電撃が飛んで来るんだろうな~等と、これまでの経験から上条は、それを予測――
いや、期待していたと言ったほうがいいかも知れない。

そして、自分の右手で電撃を打ち消して、『不幸だぁぁ!!』と叫びながら、相手をこちらのペースに巻き込んで、適当なタイミングで逃走する。
作戦というよりも対処法として、彼の中にあったそのプランは容易く瓦解する。

上条「(ビリビリって言っただけで……なんでこんな……)」

いつもの雷光と共に表現される怒りでもない。
悲しみとは違う、不満を訴えてくる表情。

――だが、どこか愛らしさを感じさせる抗議の表情。

上条「(今、俺――ちょっと可愛い、とか思っちまった……!?)」///

自分が彼女を『ビリビリ中学生』と呼び、それに怒った美琴が電撃を浴びせてくる。

暗黙の了解、とは少し違うが、上条当麻と御坂美琴が出会った時に発生する『お約束』が崩されたことに上条は動揺する。

動揺の中で上条が選んだ選択肢は、彼女の期待するそれであった。

上条「え、あの……ビr…………えっと、み、御坂?」アセアセ

美琴「……何よ」プイッ

美琴「(こ、こんな簡単に御坂って……!)」

御坂美琴は負けず嫌いな少女だ。
それは当人や彼女の後輩達もよく知っている所ではあるが、それでも彼女にとって、こういう『戦い』は初めてである。

真の勝利を収める為に必要だと言われても、あの様な表情を『異性』に見せるなど、完全に未体験の領域なのだ。

だが、彼女は知ってしまった。
それがどれほど、自分の求めていることを獲得するのを容易にするのかを。
232 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 13:42:24.75 ID:jxp6Yvtso

上条「べ、別に上条さんは御坂さんの名前を覚えてない訳じゃないんですのことよ?」アワアワ

美琴「だって、いつもビリビリって…………そんなに私の名前を言いたくないの?」

   
作戦にはなかったが、彼女はレベル5特有の学習力と卓越した応用力で、さらなる追撃を行う。

猛烈な恥ずかしさと、それによって得られた成果を天秤に掛けて、彼女は『味を占めた』のだ。
男を手玉に取るという、あまり教育的にはよろしくない、大人の階段への第一歩を……少女は、この時、確かに踏み出した。

上条「(な、なんて顔しやがりますか、この娘はぁーーー!?)」

美琴の追撃は色んな意味で直撃した。

今まで、ずっと『ビリビリ中学生』呼ばわりしていた自分が、とんでもない大罪人になったかのような罪悪感が上条を襲う。
そもそも、女性にこのような表情を『させた』という経験(本人の意識する範囲内で)のない上条にしてみれば、現在の状況は軽くパニックに近い。

上条「そ、そんなことはないから! もうビリビリって言わないから! ちゃんと御坂って呼ぶから! な、な?」

美琴「……本当?」

上条「あ、ああ…………そ、それにしても御坂、俺に何か用事があったんじゃないのか?」

どうにかして会話の主導権を握らないと、何か取り返しが付かない事になりそうだった。

美琴「――私と戦ってほしいの」

上条「…………え」

その一言に崩されたままだった上条のペースは、ようやく通常運転に戻ろうとする。

なんだ、いつも通りじゃないか、と。

だが、その幻想は殺される。
233 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 13:47:54.85 ID:jxp6Yvtso

美琴「お願い、私と戦って――?」

いつもの『相手をしろ』だの『逃げるな』だの『戦いなさい』といった、高圧的な要素を全て排した言葉。

上条「なっ……!?」

もしも、美琴の言葉に一片でも命令するような『傲慢さ』があれば、いつものように戻れた筈だった。

――必要以上に戦いたがらない方がいい、普通に頼めば案外、簡単に奴は引き受けるじゃん?

だが、美琴についた『軍師』は、そんな上条の甘い期待通りにさせたりはしない。

元々、上条当麻は優しい――いや、優しすぎる少年だ。

それは普段の行動からも分かる事だし、礼には礼で応えるぐらいの器量もちゃんと持ち合わせている。
だからこそ、それなりの態度で接しさえすれば、彼は彼であるが故にそれに応えるしかない。
しかも、ただただ真っ直ぐに、何よりも素直に純真にぶつけられた、どこまでも純粋な『お願い』を誰が拒めるのか。

上条「どうしても……なのか?」

美琴「うん……私は、私が私である為にアンタと戦いたい……そして、確かめたいの」

そこまでは言葉にし、残りの気持ちは心のなかに仕舞い込む。


――そして、何よりも、アンタに私を認めさせる……私というを存在を……『御坂美琴』を『上条当麻』に刻み付ける。


上条「分かった――そこまで言うなら、今日……俺は御坂から逃げない――それが望みだって言うんなら」

上条「――相手になってやる」

――この時、この瞬間。

――御坂美琴の『本気』の言葉によって、上条当麻もまた彼女に挑戦に対して『本気』になったのだった。





236 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/27(木) 14:05:07.42 ID:jxp6Yvtso
スマン、ミスった。

×私というを存在を~
○私という存在を~です。

あと、かなり前だからバレてないと思うけど、
黒子初登場時に

黒いリボンで髪をツインテールにした~
って書くつもりが、何をどう間違ったのか、黒髪ツインテールって書いてしまっていた……マジで恥ずかしい。///

ご安心ください、このSSでも黒子さんはちゃんと茶髪で変態です。
242 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 22:57:34.32 ID:jxp6Yvtso
学園都市・第七学区


~とある河川敷~


上条が戦いの場に選んだのは、モノレールが走る橋に程近い河原だった。
辺りはすっかり夕闇に包まれ、川は鈍色の光をたたえている。

上条「――ここなら、周りに迷惑かかんねえだろ……いつでもいいぜ? 掛かって来な」

目の前にいるのは、自分よりも強いかもしれない男。
そして、その男の視線は己に釘付けになっている。
ただそれだけで、背筋を電流が走るような愉悦に襲われ、頬が緩みそうになる。

美琴「(でも、私が手に入れたいのは……欲しいのは『この程度』じゃない)」

目標を改めて見据え、表情を引き締める。

――上条の右手には『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なんていう、異能の力であれば神様の奇蹟だって打ち消せるらしい力が備わっている。

彼の能力……その得体の知れなさ、未知への恐怖は既に無い。

あるのは期待。

自分の力はどこまで彼に通用するのか?

彼の力は、そんな自分の幻想をどこまで殺してくれるのか?

――さぁ、確かめよう。

ここからは答え合わせの時間だ。

まずは第一問。

この程度で点数は落として欲しくはない。

美琴「言われなくても――」バチンッ

帯びるは白光。

美琴「私はこの時を――ずっと、待ってたんだから――っ!」

放つのは雷撃の槍。

それに対して上条は、その右手を正面に掲げ、まるで避雷針のように――
243 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 23:17:12.65 ID:jxp6Yvtso

バキン!!

何度、この音を聴いただろうか?

雷撃を打ち消されるたびに響く音。どこか爽快感があるのが、また憎たらしい。
そんなガラスが砕けるような甲高い音と共に、雷撃の槍は、容易く打ち砕かれる。

雷撃の余波で土煙が舞い上がる。
その向こう側で恐らく、上条は『偶然、防ぐことが出来た』と考え、冷や汗を流しているのだろう。

風が吹き、土煙が流され、再び上条の姿が顕になる。

美琴「(やっぱり無傷か……!)」

どこか安心する反面で、『幻想殺し』の存在を改めて確認する。

だが、彼の右手の『性質』を知った美琴は、上条当麻の本当の『脅威』を理解する。

美琴「(アイツ、右手を突出させて、避雷針の代わりにしてた――!)」

超能力の産物とはいえ、その本質が純粋な高圧電流であることは変わらない。
ならば、右手を突出させておけば、性質上、雷撃がそこに引き寄せられるのは当然だ。

勿論、ただ必死に右手で防いでいるだけなのかもしれないし、
仮に狙ったのだとしても、彼自身、それを意識している訳ではないだろう。

――だが、だからこそ恐ろしい。

光速で飛来する雷撃相手に『理想的』な防御方法を考えずに選択した、それだけで充分に驚異的なのだから。

美琴「やっぱり電撃は効かない、か……なら」パリッ

二問目は応用問題。

学園都市では比較的ポピュラーな電撃使い(エレクトロマスター)の中で、なぜ自分が頂点に立っているのか。
基礎がしっかりしてるからこそ、応用力で実力が問われるのだ。

……操るのは、ここの磁場。

――ザッ、ザザザッ!

手元に集めるのは、大地に……地面に……土に含まれている砂鉄!

上条「……は? 何?」

目の前で舞い上がった漆黒の粒子。
それらは手元に集まって、高速で振動しながらも、棒状を維持し続ける。

さながら、砂鉄で作った高振動ブレードって所だ。

上条「ちょっ……御坂サン……? 得物使うのは、ズルいんじゃないかなーって……?」アワワ

そんな慌てた声も、自分が出させているのだと思うと格別だ。
とんでもない問題で生徒の度肝を抜くってのは、なかなかどうして快感らしい。

美琴「能力で作ったものだもん」ブンッ

砂鉄と一緒に舞い上げられたのか、宙を踊っていた木の葉が一枚ひらりと降りてくる。

木の葉「♪」

引き寄せられるように砂鉄の剣の上に舞い降り、

木/葉「(結局、これが私の運命なわけよ)」スパッ

小さな音を立てて両断される。
244 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 23:25:30.90 ID:jxp6Yvtso

上条「――げっ」

美琴「……砂鉄が振動して、チェーンソーみたいになってるから――」

砂鉄の剣を両手で握るように構え、駆け出す。

美琴「――触れると、ちょーっと血が出たりするかもねっ!」ブンッ

一気に距離を詰めて、大振りで横に一閃。

上条「って、どう考えてもそれじゃ済まないと思うんですけどっ!?」バッ

だが、心得のない素人剣術で捉えられる程、上条の逃げ足は遅くない。
しかし、捉える必要もない。

美琴「安心しなさいっ! 当てる気はないから!」ブンッ

――何故なら、この攻撃の目的は、上条の体力を削ぐ事にある。

上条「なら、使うなよっ!?」バッ

転げまわるように回避しながらも、抗議は止めようとしない上条。

美琴「――でも、全力で逃げないと、『うっかり』当たっちゃうかもしれないわよ!?」ブンッ

――単純に勝つだけなら、右手が使えないような状況に追い込んでしまえばいい。

例えば、右手で処理しきれない、圧倒的な物量で攻める。

例えば、右手で防御する間も与えない程の高速で攻撃する。

例えば、右手で防げない角度、死角を狙う。

例えば、右手を最初に切り飛ばしてしまう。

だが、そんな方法で勝って何の意味があるのか。

――そうじゃない。私が欲しいのは単純な勝敗ではない。
245 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 23:37:10.24 ID:jxp6Yvtso
美琴「ちょこまか逃げ回ったって……」

さて、三問目。

二問目と同じ式を使っていても、手法を変えるだけで、まるで別の問題に見えるものだ。

砂鉄の剣を振り上げて、その形状を変化させる。
思い描くイメージは剣から鞭へ。
前に読んだ剣客漫画に出てくるような、蛇のような刃。

美琴「コイツにはこんな事もできるんだからあっ!」

蛇のように蛇行しながら、弧を描く砂鉄の鞭。
来るのが分かっていても、見切れるような攻撃ではない。

上条「剣が伸び――!?」

狙うのはギリギリ回避、或いは防御の可能な角度。

もしも、回避しきれなかったり、防げそうになかったら、能力を解除するつもりだった。

だが、上条は体を捻って、砂鉄が正面に来るように体勢を変える。

――まるで、死角から迫る砂鉄の描く軌跡が見えているかのように。

美琴「(鞭の軌道が読まれてるっ!?)」

そのまま上条は右手を伸ばし、その掌で砂鉄を迎撃する。
砂鉄の鞭は分解されたように空中に飛散し、そのまま手元の砂鉄までもが一気に崩壊する。

美琴「(強制的に砂鉄に戻された……!)」

制御下を離れてしまった砂鉄は風に乗り煙のように流されてしまう。

上条「い、今のはヤバかった……!」

美琴「(――よく言うわよ!?)」

――完全に見切られてた。

247 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 23:44:43.94 ID:jxp6Yvtso
殺しにいってないだけで、手を抜いたりはしていない。
正真正銘、全力で放った攻撃なのだ。

そう容易く見切れるような代物ではない。

――ならば、何故見切られたのか?

美琴「(防がれるのは予想通り……でも、『磁力線』から攻撃を予測されるなんて――!?)」

上条の目にも見えている攻撃のヒントと言ったら、これはもう砂鉄によって視認可能になっている『磁力線』の流れしかない。
自分のような高位の電撃使いには、磁力線の視認する能力もある。
だが今なら、美琴の操る砂鉄によって、その『大まかな流れ』程度なら無能力者でも視認出来るはずだ。

――ここまで見事に対処されると逆に気持ちがいいくらいだった。

美琴「(コイツの凄さは、右手の能力じゃない……それを最大限に活かす反射神経や判断力!!)」

もし、自分に彼のような右手があって、それを同じように使えるかと言われれば、正直言って不可能だ。

上条「おい、御坂……そろそろいいんじゃねーか?」

既に美琴は、目の前の少年を認めつつあった。――自分よりも強い存在として。

美琴「そうね……次で終わりにするわよ――」バチン

さて、最終問題は、先生の全力が生徒にどれだけ通用するのか、だ。

布石は既に打たれている。操るのは、空中に撒き散らされた砂鉄。

風が唸り、周囲を舞っていた砂鉄が、中空にて黒い渦を作る。

上条「なっ……風に乗った砂鉄までっ……!」

砂鉄の渦から、一筋の奔流が、上条を目指して突撃する。

上条「こんな事、何度やったって同じ結果じゃねえかっ!」バキンッ

どれほどの量の砂鉄であろうと、右手の一振りで砂塵へと還される。

――だが、砂鉄の奔流で上条の視界は塞がれた。
248 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/27(木) 23:47:28.85 ID:jxp6Yvtso
死角から急接近し、振り抜かれた『右手』を掴む。

美琴「――捕まえたわよ、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』」
上条「御坂、お前、それをどこで――!?」

少女が知るはずのない、自らの右手に宿った能力の名前。

だが、何よりも不思議なのは……その能力を知っているのなら、何故『右手』を握ったのか――?

直接、体に電流を流すつもりであるのなら、『左手』を握れば、それで勝敗は決するというのに――?

美琴「どこだっていいでしょ――今から、私は全力でアンタに……この『右手』に電流を流し込む」

上条「いや、俺の右手は……」

美琴「分かってる!」

上条「御坂……?」

美琴「それでも逃げるわけにはいかないのよ――さぁ、覚悟しなさいっ!!」




――そして、静寂だけが場を支配した。
249 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/28(金) 00:10:04.31 ID:9GAsCHwNo

美琴「」

上条「み、御坂……?」

上条の右手に触れた途端、能力が使えなくなった。
当然ながら、触れた手から電流は流れていかない。

美琴「――あーあ、やっぱり勝てないのか……」

少女は、その結果を恥じるでもなく、ただ残念そうに笑う。

美琴「ズルイわよね……何なのよ、このデタラメな右手。これでも私は超能力者(レベル5)なのよ?」

上条「おい、御坂……」

美琴「でも、こうも簡単に完封されると逆に爽快よねー……アンタ、誇っていいのよ? 超能力者の私を……」

上条「御坂!!!!」

一方的に捲し立てる美琴に不安を覚えた上条は、思わず大声で叫んでいた。

美琴「な、何よ……急に大声出したりして……ビックリするじゃない」

上条「なぁ、今日のお前……なんか変だぞ? 昼間に会った後……何かあったのか?」

美琴「別に悪いことなんてないわよ――ちょっとした心境の変化があっただけ」

上条のそんな心配も逆に嬉しく感じてしまう。
『今日のお前』そんな言葉が出てくるくらいには、御坂美琴という存在は上条当麻の中に根づいている訳だ。

上条「心境の変化……?」

美琴「今、私にはどうしても欲しいモノがあるの……それを自覚したってこと」

上条「欲しいモノ?」

美琴「たぶん、私はずっと前から『それ』を求めていたんだと思う。
    でも、簡単に手に入るようなシロモノじゃないから、いざ目の前に『それ』が現れて、
    自分でもどうしたらいいか分からなかった――」

少女の独白を上条は黙って聞いていた。
自分は、これを聞かなければいけない、そんな気がして。
250 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/28(金) 00:12:22.84 ID:9GAsCHwNo

美琴「どうしたらいいか分からないから、やたら電撃を浴びせちゃったりして……
    私を認めさせたくて、何度も勝負を挑んだりしてさ……ホント、自分でも迷惑だなって思う」

――さすがの上条でも、ここまで言われれば彼女が『誰』について語っているのかは分かる。

まぁ、少女が抱いている感情の方向性や、その真意に関しては、まるっきり理解出来ていないのだが。

上条「…………いや、そんなことは」

ない、とは言い切れない。
毎度毎度、直撃すれば死にそうな強さの電撃を浴びせさせられ、逃げようとしても、しつこく追いかけてくる。
その所為で特売に遅れることも多々あったし、追いかけられた日はヘトヘトだった。

美琴「いいのよ、自分でそう思うんだから――でもさ、その度に思い知らされるの」

雷撃が防がれ、平然としている少年の姿を見る度に、また別の日に変わらぬやりとりを交わす度に。

美琴「私がどれだけ、強くなっても……仮に逆に弱くなったとしても、『それ』と私との力関係は絶対に変わらないのよね」

――それが、どれだけ稀有で……ありがたい存在なのか、アンタに分かる?

握られたままだった右手に力と熱がこもる。

上条「…………お前」

美琴「アンタの右手にかかれば――私は、ただの女子中学生になっちゃうのよね。
    でも、アンタはきっと……その右手が無くても、私をただの『御坂美琴』として見てくれる」

それは右手があるからではなく、彼が上条当麻だから。

そして、少年の右手を離した少女は、ゆっくりと目の前の少年を指さして、決定的な一言を告げる。




――私は、アンタが欲しい。




上条「」

この瞬間、純朴な男子高校生である上条当麻の思考は完全にフリーズした。

255 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/28(金) 01:00:29.14 ID:jhVn8uNHo

女子中学生が言い放った、最大級の爆弾に上条の脳は思考活動を放棄しかけた。

美琴「私はアンタと――――友達になりたい!」

その言葉に辛うじて意識が戻る。

上条「と、友達!?」ハッ

もしも、その言葉があと少しでも遅れていたら、上条の理性は塵芥になっていただろう。

美琴「な、何よ! 嫌なの!?」///

上条「えっと……御坂さんの仰る友達と言うのは……致死クラスの電撃を浴びせても平気な相手という意味でしょうか?」

美琴「ち、違うわよ!? 電撃浴びせてたのは悪かったって言ってるでしょ!?」ウガー!

上条「じゃあ、普通に……友達になりたいのか? 俺と?」

美琴「」コクコク///

上条「(つ、つまりどういう事なんだ……?)」

まだ先程の爆弾発言で低下してしまった思考力が回復していない。

とりあえず、この一ヶ月の間、散々ビリビリされてきたが彼女に嫌われている訳ではない、という事は理解できた。
嫌われていたら『友達になりたい』等と言われたりしないだろう。

――それは、なんというか、凄く……ホッとした。

上条「(つーか、言い方を考えろよっ!? なんだよ、アンタが欲しいって!?)」

あの台詞から連想される関係は、友達だとか、そんなレベルじゃない。
思わず、刹那の間に色々と想像してしまった気がするが、慌てて脳内から追い出す。

間を置いて、ようやく頭が回転し始める。それも冷静さを取り戻すべく、高速で。

そんな頭の中で、今のは意図的に狙った台詞ではないのだろう、と上条は推理する。
それまでの『欲しいモノ』の会話の流れから、『上条と友達になりたい』という事を端的に表現した、というのが妥当だろうか。

――だとしても、本当に勘弁して欲しい。勘違いしてしまいそうになるではないか。

267 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 11:50:54.93 ID:588OCXfAo
上条「(じょ、状況を整理しよう……なんで、御坂は『俺』を選んだんだ?)」

友達、というカテゴリーとは言え、それを直接相手に伝えるというのは、かなり異例だろう。
でも、彼女は面と向かって、上条に対して『友達になりたい』と宣言した訳だ、それはどれほどの覚悟なのか。

既に回答は彼女の言葉の中に示されているはずだ、後はそれをちゃんと拾い上げてやればいい。

上条「えっと……御坂。――俺は友達なんて、なろうと思ってなるもんじゃない、と思うんだよ」

日々の何気ない交流の中で何時の間にか、そういう存在になる相手。
或いは、短い時間の関わりでも、そうなっている事もあるだろう。

美琴「…………うん」

上条「だから、お前に『友達になりたい』って言われて、正直、どうしたらいいのか分からないんだ」

上条の言葉に美琴の顔が曇っていく。

美琴「……………………そう」








上条「――――だって、もう友達じゃないのか?」
268 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 11:52:51.12 ID:588OCXfAo
美琴「…………え?」

完全な予想の外から飛んできた言葉に美琴は面食らった。
対する上条は、困ったような不思議そうな顔をしている。

上条「俺と御坂って、友達というか……既にケンカ友達みたいなもんだろ? 改めて、友達になろうなんて……変じゃないか?」

美琴「な、何言ってるのよ!? 私は今までアンタに散々迷惑かけて! 一方的にケンカ売って! でも、アンタは私に指一本触れないで……それなのに」

美琴が一方的に攻撃し、上条は反撃などしないで守りに徹する。
ケンカ友達と言っていいのかすら分からないほどの一方的な関係。

これのどこか対等な関係なのだろうか。

上条「いや、確かに迷惑だと思ったことがない、とは言えないけど…………別に嫌だと思ったことはないんだよ」

美琴「……な、何でよ」

上条「お前が『全力』だったから」

彼女の度々の挑戦が、悪意から来るものではないのは理解していた。

もしかしたら、もの凄く嫌われているのでは? と考えた事もあったが――

上条「御坂の電撃は、いつも『遠慮』が無かったから」

仮に嫌われていても、この少女は隠し事や打算のない、損得や世間体も無視して、ただ純粋に感情でぶつかってきた。

――その単純明快さが、どこか気持ちよかったのだと、上条は語る。

今まで、その右手を理由に多くの理不尽を見て、味わってきた彼だからこそ、
掛け値なしで付き合える他人が、どれほど大事なのか――その価値を知っている。

上条「もしも、御坂が俺と同じように思ってくれていて……だからこそ、俺と友達になりたいって、言ってくれるなら」スッ

微笑んで、『左手』を差し出す上条。

彼女への信頼を示すように。

この幻想のように優しい現実が、自らの右手で殺されないように。


上条「――俺達はもう友達だ、御坂」
269 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 11:56:14.58 ID:588OCXfAo

ふいに、美琴の目頭が熱くなった。
駄目だ、ここで泣くのは――さすがに情けなさすぎる。

美琴「……アンタ、本当に馬鹿よね。私みたいのを友達にして、後悔しても知らないんだから」

潤む瞳と、赤く染まった顔を逸らしながら、ゆっくりと上条の左手を取る。

憎まれ口を叩きながらも、しっかりと自分の手を握る美琴。
素直じゃない小動物を見ているような、そんな愛おしさが……上条の中に込み上げて来る。

上条「後悔なんかしねーよ。それに、こんなに可愛い友達なら、上条さんは大歓迎ですよ?」ナデナデ

気付いた時、上条は自然に美琴の頭を撫でていた。

美琴「………………ふ」

上条「ふ?」

もしも、差し出した手が右手だったなら。

もしも、撫でていた右手を頭から離さずにいれば。

――こんな事にはならなかったのに、と後に上条は安達に語った。



美琴「ふにゃ~~~」///



バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!

色々なものが限界に達してしまった、『ビリビリ中学生』から危険なスパーク音が炸裂する。

そして、夜の河原を朝が来たかと錯覚するほどの雷光が包む。



――この日、上条当麻は御坂美琴に初めて『痺れた』のであった。

270 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 12:11:49.62 ID:588OCXfAo
~数十分後~


覚醒した上条が、最初に目にしたのは、申し訳なさそうな顔をしている御坂美琴だった。

どうやら、電撃で痺れて気絶していたらしい。
だが、どうやら体に不調はないようだ。……むしろ、調子がいいくらいだった。
見た目こそ派手だったが、威力自体はそんなに無かった、という事だろうか。

上条「(って、アレ? この体勢は……)」

頭や頬に感じる柔らかい感触。そして、人の温もり。

――これは、いわゆる膝枕という奴だろうか?


上条「ちょっ、御坂――!?」///

美琴「起きちゃ、だめ」ギュウ

慌てて起き上がろうとするが、美琴に強引に抑えつけられてしまう。
271 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 12:15:06.64 ID:588OCXfAo

上条「あのー、御坂さん?」オロオロ

美琴「――ゴメン、何も言わないで」

上条「いや、でもこの状態は」

美琴「今、情けないやら恥ずかしいやらで、死にそうなの。……お願いだから、ね?」

お願いされてしまったが、どうしよう? と上条は頭の裏に感じる、女性特有の柔らかさを意識の外に追い出しながら考える。
というか、この体勢は自分の方が、嬉しいやら恥ずかしいやらで大変なのだが。

――いかん、追い出せてない。

上条「あーその、何ていうか……あの電撃は、わざとじゃないんだろ?」

美琴「わざとじゃないなら許されるってもんでもないでしょ……?」

上条「でも、俺は許すぞ?」

美琴「…………何で、そんなに優しいのよ」

上条「友達なんだろ? このぐらいの事でいちいち腹立てたりしねーよ」

美琴「――その友達にうっかり電撃浴びせた私はどうすればいいのよ」

今までは故意に浴びせてきたわけだが、それとこれとは話が別なのだ。
しかも、幻想殺しに防がれずに直撃したのは今回が初めてな訳で。

上条「俺が急に御坂の頭撫でたりしたから、ビックリしちまったんだろ? なら、悪いのは俺じゃねーか」

美琴「」フルフル

上条「でも」

――確かに、それが原因であるのは事実だが、それを責める気は毛頭なかった。

美琴「だって、嫌じゃ……なかったし……」///

上条「…………そ、そうか」///

妙な沈黙が二人の間に流れる。
272 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 12:21:21.81 ID:588OCXfAo
一方その頃。


上条と美琴のいる河原から、少し離れたビルの屋上で一人の男が吠えていた。

迫間「何をしてんだよ!? そこだ! そこで、もう一押しじゃん!」ムムム

集音器から聴こえてくる音声と、遠視スコープから見える二人の様子に一喜一憂している、迫間生がそこにいた。

そして、その傍らには、同じ顔をした少女が三人。

00913号「何が悲しくて、こんなラブコメみたいな場面を監視しなければいけないのでしょう、とミサカは自らの任務を嘆きます」

00110号「今すぐにでも不純異性交遊の現行犯で、警備員に通報したい所です、とミサカはそれでも監視を続けます」

00777号「何やら、歴史的な場面に遭遇したような気がします、とミサカは自らの幸運に感謝します」

それぞれの感想を好き勝手に言いながらも、決して監視は止めようとしない『妹達』の三人。



――生まれ変わったばかりの彼女たちだが、色々と興味の尽きないお年頃なのであった。



さらに一方その頃。


そんな学園都市に潜伏して任務を遂行する『妹達』と感覚を共有していた、一部の学園都市外部の有志達によって、
『私達のお姉様(オリジナル)が、こんなに可愛いわけがない』という新たなスレが、MNW2内に立てられたのは、また別の話。
273 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 15:57:18.83 ID:588OCXfAo

自分達を見て、そんな物語が展開しているとは知る由もない二人。

上条「さ、さすがにもう平気だからさ……お、起きてもいいか?」///

美琴「えっ…………あ、うん」///

言いながら、立ち上がる上条を美琴は少し残念そうに見つめていたが、上条はそれには気付かない振りをした。

上条「うーん、気が付いたら完全に真夜中になっちまったな…………飯、どうしよう」ポリポリ

結局、特売で獲得した食材は、道中に起きた不幸で犠牲になってしまった。
新しく買いに行くにしても、スーパーはもう閉店しているし、コンビニで食材を揃えるというのは経済的によろしくない。

美琴「あ、あの!」

上条「ん?」

美琴「こ、これ!」バサッ

美琴が差し出したのは何やら重そうな袋。
……主婦なんかが、レジ袋代節約の為に持っているような買い物袋だ。

そこには、卵はもちろん、肉や野菜などの食材達が。
しかも、普段上条が購入している食材の2ランク以上は高い食材ばかりだ。

上条「み、御坂さん……こ、この食材の山は一体?」

美琴「えっと……お詫び?」

上条「なんで疑問形なんでせうか……?」

美琴「だって、アンタ困ってるみたいだし……? 必要なのかなーって」

上条「もしかして、わざわざ買ってきてくれたのか……?」

上条には、目の前の少女に後光が差しているように見えた。

美琴「ま、そんな感じ……かな」

冷静に考えれば、今まで上条に膝枕をしていた美琴に食材の調達など不可能なのだが、
見たこともないような高級食材に目が眩んでいる上条には、そこまで考えてる余裕はない。

美琴「そ、それでね……?」

上条「……ん?」

何やら、猛烈に嫌な予感がした。


美琴「――い、今から、アンタの家に行って、御飯作ってあげるからっ!」


上条「」チーン


この日、上条は二度目の思考停止を味わった。
278 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/29(土) 17:55:20.12 ID:588OCXfAo
~遡ること二十分前~



美琴「うぅ……なんで、あの場面で能力を暴走させちゃうのよ……」

気絶した上条を介抱しながら、美琴は自らの失態を嘆いていた。

???「おーい」

河原の上の土手から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

美琴「あ、アンタは!」

迫間「いやー、派手にやったなー? 遠くからでも、君だって分かったじゃん」

美琴「……ど、どうしてこんな所に……」

美琴の勘違いというよりも誤認を利用して迫間は話を進める。

迫間「ちょっと、上条に渡す物があるじゃん」

言いながら持っていた袋を美琴に渡す。

美琴「何よこれ……食材?」

迫間「どうせ上条は、特売の戦利品を無事に持って帰れる筈ない、って判ってたからな……目が覚めたら渡してやってくれ。
    この際、君からのプレゼントって事にしていいじゃんよ」

美琴「ど、どうして私が!?」

迫間「――男を落とすには胃袋じゃん!」

美琴「お、落とっ!?」///

言いたいことは理解出来る。
この食材を口実に何か作ってやれ、という意味だ。
だがそれは、上条の家に突撃しろ、という意味でもある。

迫間「電撃浴びせてしまった、お詫び……とか言えば、余裕じゃん?」

確かに、これ程の失態を演じてしまっては、何かしらの詫びをしないと美琴も気が済まない。

美琴「いや、でもそんなっ!?」

ここまで、散々恥ずかしい行動や言葉を使い、乙女のキャパシティは既に限界だ。
そして、いくら『大事な友達』とはいえ、友情?を確かめった、その日に家に押しかけるというのは、さすがに無理がある。

迫間「あれー? 常盤台のレベル5は、自分を受け入れてくれた『友達』に借りを作りっぱなしで平気なのかなー?」カカカッ

美琴「なっ!?」グサッ

迫間「こんな遅くまで付き合わされて、上条のお腹はペコペコだろうなー?」

美琴「うぅっ」グサッ

迫間「この後、家に戻って疲れた体で料理なんか出来るのかなー?
    結局、カップラーメンかなんかで、悲しい食卓になるんだろうなー」

美琴「あうっ」グサッ

容赦なく、言葉の刃が美琴に突き刺さる。
何というか、美琴にしてみれば、生が昼間会った時とは別人のように感じられる。

――実際、別人なわけだが。

迫間「後で借りが増えすぎて、返済できなくなっても知らないぜー?」ボソッ

美琴「そ、そこまで言うなら、やってやろうじゃない!!」

迫間「さすがじゃん! あー、それと、どうせ介抱するなら膝枕を推奨するじゃん」

美琴「なっ!?」

あまりの恥ずかしさに必死に拒否していた美琴だったが、迫間の口車に乗せられ、踊らされ、
最終的には、まんまと挑発に乗せられた形になった。


290 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/30(日) 18:05:03.36 ID:tChDbqZFo
学園都市・第五学区


~某研究所地下区画・アクメツクローンプラント~


生(迫)「――ってな感じで、二人を煽ってきたぜ☆」

『秘密基地』に戻ってきた迫間は、安達に一連の様子を報告していた。
監視任務についていた『妹達』は他の個体と交代して、既に別室で休んでいる。

生(安)「……迫間に後を頼んだ事を軽く反省している」

生(迫)「え? 何でだよ?」

生(安)「いや、だって……背中押すにも限度ってのがあるだろ……?」

――だって、もう……それはカップルだろう、傍目から見たら。

安達としては、二人が平和的に徐々に仲良くなっていくのを期待していたのだが……
話を聞く限り、既に予想の数倍のスピードで接近している気がする。

それでも、鈍感や朴念仁の代名詞である、上条当麻が容易く陥落するとも思えないが。

生(迫)「――青春なんて、楽しめるうちに楽しんだほうがいいんだよ。後悔しないようにさ」カカカッ

愉快そうに……でも、どこか寂しげに笑う迫間。
彼の表情の理由を安達は知っている。
いや、自分の身で理解している。

生(安)「(アンタに……それを言われたら、もう何も言えないだろうが……)」

自分の中に共有されている『迫間生』の記憶。


――この赤ワイン、血税の味がするじゃん


結局、甘い青春を謳歌する前にアクメツに身を投じた。


――ファイナルアンサーって、やつだなあ


恋した少女を守る為に最初のアクメツとして、人を殺した。


――やっぱ悪だな、死が妥当じゃん


生き返ってからも多くの戦いに参加し、同胞の戦いを見届けた。


――この世の中にいる悪人が全て死んだら、世界は平和になるでしょうか?


そして、少女の命を救う為に、自らを材料として捧げた。

そんな彼を新たな戦いの為に生き返らせた身としては、何も言えない。
例え、記憶や経験を共有する、『自分自身』の事であっても、踏み入れない領域がある。
291 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/30(日) 18:45:43.85 ID:tChDbqZFo

生(迫)「――ところで、先刻から気になってんだけどさー?」

生(安)「……何だよ」

安達にも迫間が聞きたいことは、何となく分かっているが……自分から、それについて語りたくはなかった。


生(迫)「――何で、お前まで膝枕してる訳?」ピキピキ


生(安)「いや、これは……それなりに深い訳が」

冷や汗を流しながら、自分の膝に頭を預けて寝息を立てている少女を見る。

布束「………………………………」スヤスヤ

生(迫)「つーか、普通は逆じゃねーの? まぁ、逆だったら逆でムカつくけどさぁー
     確かに、俺も「布束にヨロシク伝えてくれ」とは言ったよ? でも、誰がヨロシクやれと言ったよ!?
     何なの、当て付け!? 長澤と会いたくても会えない、俺への当て付けなのか!?」

生(安)「ちょ、迫間の落ち着け! 布束が起きちゃうだろ! 疲れてんだよ彼女!」アワアワ

生(迫)「チクショー、どいつもコイツもイチャイチャラブラブしやがって……
     長澤に会いたいなー、10年近く経ってるから、今は女盛りなんだろうなー」シクシク

生(安)「(そんなに会いたいなら会えばいいんじゃ……)」

確か、どこかのテレビ局だかに就職したとか、風のウワサ……というか、生達のウワサで聞いた。

生(安)「(アナウンサーか記者なら、テレビに露出する機会も多いだろうから、その気になれば会えるだろうに……)」

――だが、直接『悪滅』に参加していた迫間としては、色々と思うところがあるのかもしれない。

何しろ、『参加組』のクローン達は、村瀬総理とのマニフェストを律儀に守り、『残留組』によって蘇生される事を拒んでいたのだ。
……余程の『緊急事態』にならない限り、自分達を蘇生させるな、と。

生(迫)「んで? どうしてこうなった、キリキリ吐くじゃん」ゴゴゴゴ

何やら、変なスイッチが入ったらしい迫間によって、安達は事情説明を余儀なくされた。 
300 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:03:57.79 ID:G8R+kwKzo

~また少し、時間は遡る~


ファミレスで美琴と別れ、後を迫間に任せた安達は、学園都市にある、自分達の拠点へと向かっていた。


――金崎大学付属・筋ジストロフィー研究センター


表向きは筋ジストロフィーの研究施設だが、実際は『絶対能力進化実験』に関係している施設である。

幼少の御坂美琴が、かつてDNAマップを提供した……『妹達』誕生の地といえる場所。

そして、現在では『アクメツ』達の学園都市での拠点であり、生命線として機能している。

施設は布束を含む、一部の『実験』に反対だった研究員と、そちらの分野に強い『生』によって運営され、
その地下にはクローンプラント……つまり、『生』と『妹達』の蘇生用に調整された培養器が十基ずつ、建造されている。

――なぜ、そんな事になっているのか?

というのも、学園都市に潜入した生達が、事前の調査を終えて最初に行ったのは、この施設の制圧だった。
目的は『絶対能力進化実験』の詳細なデータの入手と学園都市内での大規模な拠点確保。

そして、この制圧作戦はver.3の個体、総勢10名によって行われた。

制圧といっても圧倒的な武力で一網打尽にしたのではなく、
必殺仕事人のように研究員達を一人一人、闇に紛れて狩っていったのだが。(当然だが、悪滅はしてない)

好都合だったのが、『妹達』の実験に関する実験区画が、表向きには分からないようになっていた事。
お陰で制圧作戦で実験に無関係な一般人を巻き込まずに済んだし、その後の『工作』も容易であった。

――邪魔な研究員達を隔離して、表面上は『何の問題もない』ように実験に参加する。

しかし、その裏では自分達の準備を着々と整えていた。

つまり、研究所の地下での『第二のクローンプラント』建造である。
準備に一番手間取るはずだった、培養器の建造も『妹達』の設備を流用することで短期間で終了した。

木を隠すなら森の中。
秘密基地を作るなら、秘密基地の中。

そして、人は異常には敏感に反応するが、一見して普段通りならば、案外鈍い、という事だ。
301 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:09:49.75 ID:G8R+kwKzo
研究所の外周に作られた秘密通路から、地下へと潜る。

ここも本来のクローンプラント同様、『生』のDNA情報がないとセキュリティを解除できない。
なので、協力者の研究員がプラントに入ろうとする場合、『生』の同行が不可欠になる。

これは、万が一の『裏切り』への警戒を兼ねていた。
……ちなみに時期が来れば、『妹達』のDNA情報でも解錠が可能にする予定だ。

いくつかのチェックと認証を済ませ、安達はプラントの中を進んでいく。
目当ての部屋に入ると、中央に備え付けられたモニターの正面にいた女性が、ゆっくりと振り向いた。

???「あら、いらっしゃい――風紀委員(ジャッジメント)としての初仕事はどうだったの?」

安達「ぼちぼちですかね……あー、偶然ですけど、オリジナルの……御坂美琴に会いましたよ」キョロキョロ

別れ際に迫間に妙な事を言われた所為か、つい『その人物』の姿を探してしまう。

???「そう、初日で出会えるなんて、幸運なのかも…………どうかした?」

安達「芳川さん……えっと、布束さんは?」

女性の名前は芳川桔梗(よしかわききょう)、現在では生達に協力してくれている『絶対能力進化実験』に参加していた、研究員の一人だ。
化粧っ気のない女性だが、なかなかの美人だと、一部の生の中では高評価だったりする。

芳川「隣の部屋で烏丸君と学習装置の点検してるわよ。キミ達のバージョンアップのシステムの効率化するとか……
    それにしても、最初に訊くのは彼女の事なの?」クスクス

安達「――じ、実験の進行状況は?」

猛烈な恥ずかしさを顔に出さないようにしながら、部屋の隅に置かれたソファに腰掛ける。

芳川「18時の時点で第九六〇〇次実験を終了……こう毎日、実験の様子を見ていると、さすがに欝になりそうよね」

安達「スミマセン、嫌な役目を押し付けることになって……」

芳川「……そういう優しい言葉は、優しい人間の為に取っておきなさい? ……こんな甘いだけの人間に言う必要はないから」

安達「ですが――」

言いかけた安達を芳川は片手で制する。

芳川「私は実験に不快感を持っていながらも、それを受け入れていた。『妹達』を救おうとする訳でも、実験に抵抗するでもなく」

安達「けど、今は俺達に協力してくれているじゃないですか」

芳川「それだって、『受け入れた』だけの話よ。だから、私は……賞賛されるべきは、実際に行動を起こした布束さんや、キミ達であるべきだと思う」

安達「俺達は――彼女達が『一度死ぬ』のを看過しています」

――それで賞賛なんて受けるつもりはない。それは生の……『彼等』全体の共通認識だ。

芳川「……そうね、キミ達には覚悟がある。『妹達』に恨まれてもいいから、『一度死なせて』でも彼女達を救うという覚悟が」

安達「」

この女性は、自分に何を伝えようとしているのか。

芳川「――布束さんには、優しくしてあげなさい」
302 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:15:19.37 ID:G8R+kwKzo

安達「えっ……?」

言葉の意味を問おうとするが、隣の部屋とを繋ぐ扉が開き、話の渦中の人物が現れた。

その少女は、いつぞやの私服と違い、今は学園都市の最高峰、長点上機学園の制服の上に白衣を着ている。

『妹達』の最大の『味方』である布束砥信。
布束は安達の姿を見つけると、眠そうだった表情を柔らかい微笑に変えた。

布束「……あら、来てたのね」

安達「あ、えっと…………はい」

――何故か、畏まった口調になってしまった。

布束「………………? どうかしたの?」

そんな安達の様子を訝し気に見つめる布束。

芳川「――私、少し仮眠取ってくるわ」ニヤニヤ

頑張ってね、と言わんばかりの顔で退出する芳川。

布束「芳川さんと……何かあったの?」

安達「いや、俺にもよく分からない……かな」

本当に、彼女は何が言いたかったのか?

布束「――そう」

これ以上、追求しても無意味だと思ったのか、あるいは興味自体がないのか、彼女の質問はそこで終わった。
その代わり、スタスタと安達の座っているソファに近寄ってきて、何も言わずに隣に陣取った。

――そして、小さな欠伸を一つ。
303 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:18:35.12 ID:G8R+kwKzo

安達「(……よ、読めない人だ……)眠そうですけど、徹夜……続いているんですか? 学習装置の調整をしてるって聞きましたけど」

布束「――リアルタイムでリンクしている『妹達』と違って、貴方達の場合、仮面を装備して、一度死なないと『記憶共有』が出来ないでしょう?」

安達「ええ、まぁ」

クローニング技術こそ優っているが、そういう点では能力を生かしている『妹達』には敵わない。

布束「それだと、少し不便だから。
    学習装置を利用して、『生きている』状態での『記憶共有』が出来るようにしているの」

安達「確かにそれは助かりますけど……それで、布束さんに体を壊されたりするのは嫌ですよ?」

芳川に言われたからではないが、自然と彼女を気遣うような言葉が口を衝いて出ていた。

布束「――」///

安達「布束さん?」

布束「無理はしないから、心配はいらないわ。――でも」

安達「でも?」

布束「――私、枕が替わると眠れないタイプなのよ」

安達「(えーっと、冗談……なのか?)」

彼女の場合、基本的に無表情なので、本気なのか冗談なのかの判断がつかない。
とりあえず安達は、冗談だろう、と特に根拠もなく予想して、軽く返すことにした。

安達「じゃあ、俺の膝枕でも使いますか? なんて――」

布束「indeed その発想は無かったわね……お願いしようかしら」イソイソ

安達「え」

冗談ですけど、と言う前に布束は横になって、寝やすい体勢を模索しだした。

布束「ほら、さっさと私に膝を貸しなさい」

――既に退路は絶たれたようだ。
304 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:26:37.01 ID:G8R+kwKzo

布束「これは案外……イイかもしれない……」

安達「(ど、どうしてこうなったー!?)」

何やらご満悦の布束と対照的に安達は軽くパニックである。

布束「フフフ……これで安眠出来そうだわ……」

安達「(なんか、気に入られてるー!?)」

何やら悪い感じの微笑が怖い。

安達「まぁ、気に入ってもらえたなら幸いです、はい」

布束「しかし、これだと君にメリットが特にないのが問題かしら……?」

安達「――いや、別にいりませんけど」

同年代の女性に膝を貸すのが、割と嬉しいとは口が裂けても言えない。

布束「……そうだ、悪戯したくなったらしてもいいわ」

安達「い、悪戯!?」

寝ている女性相手にどんな悪戯をしろと言うのだろうか。

布束「胸を揉むくらいなら、許可してあげるから」

安達「ちょ、布束さん!? 何言ってんの!?」

布束「あら、これでも自信があるのだけれど……?」

初めて会った時に、腕に『それ』が当たった際の感触が『鮮明』に蘇った。

安達「いや、それは知って……って、そうじゃなくて!?」アタフタ

布束「」クスクス

安達「あの…………からかわないでくれます?」

布束「割と本気」

安達「……………………くっ」///

もう駄目だ、どうにかしてこの話題から離れないと、色々とヤバい。
305 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:28:35.60 ID:G8R+kwKzo

安達「えっと、聞いていいですか?」

布束「……スリーサイズ? ――上から、」

安達「違いますよ!?」

普通にスリーサイズを言おうとする布束を慌てて止める。

布束「教えたところで、減るものじゃないんだけど……」

――いや、減る。間違いなく理性とか、精神的余裕とかが減る。

安達「止めて下さい。……その、布束さんが……『妹達』に味方するようになったキッカケって、何なのかなと」

布束「――聞きたいの?」

安達「ええ、かなり」

話題を逸らす、という目的もあったが、元々聞いておきたい話ではあった。

布束「それなら……膝枕のお礼という事で、話すとしようかしら」
306 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:34:28.62 ID:G8R+kwKzo

そして、ゆっくりと彼女は語り出した。

量産型能力者計画の凍結に伴い、研究チームを外れた事。

妹達が絶対能力進化計画に引き継がれた際に呼び戻された事。

だがそれは、綱渡りであるこの計画が、もし頓挫した時の責任を押し付ける、都合のいいスケープゴートとしての招聘である事。

再会した、天井亜雄製であるミサカ00000号が、予想しないほどに情緒的な成長していた事。

彼女が、初めて嗅ぐ空気の匂いに、初めて感じる風の感触に、初めて浴びる太陽の熱に、初めて見る外の世界の眩さに感動を示した事。

――それがキッカケだったのだと、布束は言った。

布束「我ながら単純だと思うのだけど……あの時から、私は彼女達を造り物とは思えなくなった。
    世界が歪んだ醜いものにしか見えてなかった私よりも……」

――ずっと、人間らしく見えたから。

安達「……今でも、世界は醜いものに見えますか?」

布束「どうかしら? ……今は探しているのかも知れないわね、この醜い世界の中でも……綺麗なものを」

――『妹達』を救えたなら、その一端を垣間見れるような気がしているのかもしれない。

安達「(悪を滅して、一度、器を空にしても……そこに注がれるのは、綺麗な水とは限らない)」

綺麗な清水か、汚れた泥水か。

どちらを注ぐか選ぶのは、結局は人の意思だ。

だが、選ぶことこそが、人間に与えられた権利だ。

それが、生きる事であり、自由の意味だ。

しかし、選択権を与えられず、無理矢理に泥水を注がれている者もいる。

――ならば、その選択権を与えてやるのは、自分達の役目だろう。
307 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:54:32.29 ID:G8R+kwKzo

安達「……もしかしたら、『妹達』の方が先に見つけてくれるかもしれませんよ?」

布束「そうね……そうだといいわね」

安達「けど、布束さんが先に見つけたら、あの娘達にも教えてあげてください……それに、俺も知りたいから」

布束「………………っ」

安達「布束さん?」

布束「――『さん』はいらない。呼び捨てで構わないわ」

安達「え、いや、でも……布束さん、年上だし……長幼の序は守らないと……?」

むしろ、その手の社会的な常識は布束の方が厳しかったはずだ。

布束「however 人生経験という意味では私よりも長い時間を経験しているのでしょう?」

安達「いや、そうは言っても、実働年数的に言えば生まれてから3年も経ってないんですけど……」

他の生に比べて、単純な年齢で言えば、安達はまだ幼児である。

布束「ここまで言っているのに nevertheless 私と距離を取りたいのかしら?」

安達「――そう思ってたら、膝なんて貸さないじゃん」ポリポリ

第一、こんなに密着しているのに距離を取るなんて言っても意味が無い。

布束「そう……なら、これぐらいで勘弁してあげるわ」

安達「そうしてくれると助かるじゃん……布束」

布束「……………………」スヤ

安達「って、このタイミングで寝るのかよ……」オイオイ

腹が立ったので、布束の無防備な頬を指でつついてみる。

――ぷにぷに。

安達「………………やわい」

その感触と共に布束の先程の発言が想起される。

――悪戯したくなったらしてもいいわ

安達「…………ハハハ」

――胸を揉むくらいなら、許可してあげるから

安達「いやいや、しませんよ? さすがにそれはしませんからね?」

その想像を振り払うように独り言で否定する。
そして溜め息を吐いて、一言。

安達「――年下をからかうのも、程々にして欲しいじゃん……本気にしちまうぞ?」ツンツン

布束「…………」///

一分が十分に感じられるような、妙に流れるのが遅い時間は、部屋に迫間が入ってくるまで続いていた。


第二話 『想いを重ね、道を束ねる』 完
308 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/01/31(月) 21:57:03.93 ID:G8R+kwKzo
おまけ

生(迫)「いや、そこは揉んどけよ!? 布束アピールしてくれてんじゃん!?」

生(安)「え、いや、そう思う……?」

生(迫)「ってか、それで何もしないとか……お前じゃ勃たないって言ってるようなもんじゃん!?」

布束「(…………そ、そんな!?)」

生(安)「何で、そうなるんだよ!? 俺がどんだけ息子を宥めるのに苦心してると思ってんだ!?」

布束「(……)」///

生(安)「だいたい、疲れて眠ってる女性に悪戯するとか有り得ないだろ?」

生(迫)「そりゃ、電車とかで肩に寄り掛かってきた女の乳揉んだら犯罪じゃん……完全に痴漢で逮捕で、ついでに悪滅じゃん?」

生(安)「悪滅もされるのかよ……ってか、お前もそう思うんだろ? だったら――」

生(迫)「けど、これとは状況が違うだろうが!? 年上女子にお触り許可貰っといて、ノータッチとか馬鹿なの!? なら俺と代われよ、揉むから!」

生(安)「ふざけんなっ!? 指一本触れてみろ、道路の中に埋めるぞ!?」

布束「(…………どうしよう、起きるタイミングが分からない……)」///

309 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/01/31(月) 22:11:43.53 ID:G8R+kwKzo
とりあえず、ここまでで二話は終了でせう。

布束さんの膝枕の下りの元ネタが分かった人はこっそり耳打ちしてください。
いや、俺あの作家さんの漫画好きなんだよね……主にストーリーが。

次回予告!

ついに連続虚空爆破事件が、その牙を生達へと向ける。
重力子の爆発的な加速が観測されたのはセブンスミストと『もう一箇所』!?
果たして、風紀委員として、アクメツとして、生はこの事件を解決する事が出来るのか!?

???「結局、サバを使ったクレープなんて、ある訳ないのよ」

生(海)「――――あるよ?」

???「これは、超ピンチです!」

黒子「犯人の狙いは観測地点周辺にいる風紀委員ですの!」

生(安)「よりにもよって、下の下を使いやがって……」

美琴「今名乗り出れば、ヒーローよ?」

上条「みんな……いや、お前が無事だったんだし、それでいいじゃねーか」


第三話 「アクメツ、虚空に散る!?」


次回も見ないと……アクメツするじゃん? 

323 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/02(水) 22:28:25.06 ID:PyoMswU+o
試験個体発見報告


87 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
生き返って、最初にフルチューニングに会った時はびっくりしたよね

88 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
ずっとMNWとは断絶されてた個体だからな、おまけに行方不明だったし

89 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01276
一桁台の頃にフルチューニングの葬式してたって本当?

90 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
そういえば簡単な奴だけどやってたwwあれにはビビったww

91 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
フルチューニング、自分で自分の葬式に参列してたからなww

92 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
それはシュールだ……

93 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
ボタン押すだけで量産可能、って触れ込みだけど割と一定まで育つのは時間かかるよね、私達。

94 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01276
それに比べて、生さん達のプラントの蘇生?速度が尋常じゃない

95 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
死亡→送信→蘇生だもんな

96 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
そりゃ、死体を弔う前に蘇生されてちゃ、葬式にだって参列できるよなww
324 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/02(水) 22:30:31.76 ID:PyoMswU+o

97 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
つーか、あの葬式の空気は何かオカシイ

98 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00003
本人いるし、普通に生きてるもんね。悲しめばいいのかすら判断つかない

99 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
スマン、フルチューニングの遺体の顔に着けられてた装置見たとき、爆笑した

100 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
あー、あのアクメツマスクのプロトタイプっていう装身具ね

101 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00583
新倉さんが事故で死んだ時に使ったらしいね。前に高杉さんが言ってた

102 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00002
いや、アレでも良い方だろ。もしもアクメツマスクだったら……

103 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01276
……フルチューニングが生き返ったばかりなのに悶死する羽目になるよね

104 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00583
あのマスク、生さん達が着ける分にはカッコイイけど、見た目は女子中学生の私達が装備するには……

105 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
ゴーグルで良かったな……

106 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00002
そういえば、実験に入る前から妙にゴーグルが丈夫だなーとは思っていた

107 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
死ぬ前に外れたり、壊れたりしたらアウトだから、丈夫にしてくれたらしい
325 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/02(水) 22:32:22.35 ID:PyoMswU+o

108 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
それも凄いけど、もっとヤバいのは東博士だろ

109 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
どういう意味?

110 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
今、私達がゴーグルを外した状態で死んだら、どうなるか知ってる?

111 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
ん? それで終わりじゃないの?

112 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
いや、蘇生できるらしい

113 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00002
な、なんだってー!?

114 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
今の私達って、MNW2に繋がってるだろ?
その状態で死んだ場合、本来なら機械で行うはずの長期記憶のシナプス送信をMNWが代替するんだって。
そして、誰かが装備しているゴーグルから、信号が送信されてプラントで蘇生されるらしいよ

115 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
す、すげえ……
でもそれって、全員がゴーグル外してたらアウトって事じゃないの?

116 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
それはないだろーww何人いると思ってるんだww
326 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/02(水) 22:34:27.02 ID:PyoMswU+o

117 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
しかし、私達のMNWまで使って、そんなシステムを構築出来るとは……

118 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
東博士、学園都市の研究者よりも優秀じゃない?

119 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
だろー?

120 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
でもまー、もう死にたくはないな

121 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
当たり前だろ
生き返れるからって、命を粗末に扱ったら……

122 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
フルチューニングに泣かれた挙句、生さん達に説教くらう流れだよね……

123 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
あの娘、私達が合流してから情緒的すぎると思うの

124 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
私達とは一線を画す感情の豊かさだよね

125 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00394
一方通行に殺されてない、って所では私達と違うんだけど……
本当の意味で死を味わったのが、フルチューニングだけだからかもな

327 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/02(水) 22:39:08.39 ID:PyoMswU+o

126 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
死の恐怖とか苦痛に対する感情の有無って事かな?

127 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00007
なるほど、死を恐れるほど私達には感情が無かったし、基本的に瞬殺されてたもんね

128 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00008
徐々に弱っていく自分の体とかさ、末期の時の息苦しさみたいのを味わった訳だろ?
死の恐怖ってのは、それ自体よりも、それを待つ時間にあるんだと思う。
で、そういう経験があるからこそ、生き返った私達に優しくなれるのと違うかな?

129 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00001
1号の私ですら、油断してると『お姉ちゃん』とか『お母さん』とか言いそうなる

130 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00004
小学生の授業中かよww

131 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
分からないではないww

132 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00005
実際に呼んだら、嬉しくて泣くに一票

133 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00009
お母さんは嫌だろwwという訳で、その場合は怒るに一票

134 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00003
別の呼び方を要求する、に一票

135 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00006
あえて逆の妹扱いを要求する、に一票を投じる


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






180 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00000
……みんなが元気なら、呼び方なんて何でもいいよ、に一票♪

335 :とある複製の妹達支援[今日も一本投下しませう]:2011/02/04(金) 21:19:56.46 ID:hfcgsAxzo
私達のお姉様(オリジナル)が、こんなに可愛いわけがない


1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
777号と感覚共有してたらニヤニヤが止まらなくなって立てた。後悔はしていない

2 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04579
可愛いなぁ、お姉様

3 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00823
デレデレだったな

4 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
私らとは違って、戦闘力もすごかったな

5 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
さすがレベル5って感じだったね

6 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00823
つーか、それを右手一本であしらう、あのツンツン頭は何者なんだwwww

7 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
安達さんのクラスメイトらしいな

8 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
能力無効とかチートだろwwww

9 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04579
その割にはアホっぽかった気がする
336 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/04(金) 21:21:17.17 ID:hfcgsAxzo
10 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
安達さんと同級って、高校生だろ? 年上かー

11 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04579
俺らから見れば、大概は年上だけどな

12 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
>>11
いや、オリジナルのお姉様から見ればって事ね

13 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
あの調子なら、学生結婚も夢じゃないな

14 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
でも、結婚式には呼んでもらえないな

15 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka04579
そもそも、俺らの存在を知らないからな、お姉様。
まさか、自分のクローンが2万体もいるとは思うまい

16 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
実験のこともあるし、知らずに済むんなら、それでもいいんじゃないかなって思う
少し、寂しいけどさ

17 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
なんか楽しそうだもんね。
……私達の事を知ったら、その幸せが壊れるかもしれない

18 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
お姉様の御蔭で生まれた私達が、お姉様を不幸にする訳にはいかないよな

19 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00823
いかん、湿っぽくなってしまった。
少し話題を変えるか
337 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/04(金) 21:22:42.02 ID:hfcgsAxzo
20 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka06941
だったら、結婚式に関して、聞きたいことがあるんだけど……いい?

21 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
軽く、結婚式の話してたしなww
いいんじゃないか?

22 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
>>20
お前、蝶みたいな名前の会社のブライダル課で働いてなかったか?
ミサカの中で一番詳しいはずだろww

23 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka06941
>>22
蝶って……ああ、アゲハね。
確かにそうなんだけど、元々が電機電子メーカーだし、仕事も機械操作がメインだし……

24 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00823
なるほど、で何が聞きたいんだ?

25 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka06941
結婚式で、よく話される『三つの袋』って何?
会社の人が話してたんだけど、常識らしくて何のことか聞けなかった……

26 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
>>25
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って知ってる?

27 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka06941
だから今、聞いてるんだけど

28 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00794
>>26
お前の負けだなww

29 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
くっ……ぐうの音も出ない……

30 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
夕飯を食べたばっかりだしね
338 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/04(金) 21:25:38.77 ID:hfcgsAxzo
31 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka06941
それで、気になって眠れないから教えて欲しい

32 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
おーけー。
結婚した後、気を付ける、というか大事にしないといけない『袋』が三つあって、それが――

33 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00296
それは私だ。

34 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01296
それは私だ。

35 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05296
それは私だ。

36 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
>>35
お前は違うだろww何で、フォークデュオが結婚に必要なんだよww

37 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka05296
だって、million filmとか結婚式向きじゃないか……!

38 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka01296
ケーキ入刀の時なら、永遠にともに一択だろうが

39 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka02828
>>38
あぁ、お笑い芸人の新郎が弾き語りをした……
って、そのカップル離婚したじゃねーか!?

40 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka06941
お袋と胃袋は分かったけど、最後の一個って何?
眠たくて、軽くイライラしてきた……

41 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします:ID:misaka00216
>>40
お前が今、切れそうになってる奴だ!


342 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 17:46:40.41 ID:FRRMevh8o
7月18日


学園都市・第七学区


朝の日差しを浴びながら、二人の少女は連れ立って歩いていた。
しかし、少女達の様子は対照的で、一人は眠そうに欠伸をし、もう一人は徹夜明けの様な妙な元気さだった。

黒子「…………」フアー

美琴「大丈夫ー、黒子? 昨夜も遅くまで虚空爆破(グラビトン)事件のこと調べてたんでしょ?」

黒子「いえ、確かにそれもありますが……正直、仕事でもしないと、眠れる気がしませんでしたの」

美琴「何でよ?」

黒子「心労ですの! あの後、わたくしがどれほど『あの女性』に振り回された事か!
   所構わず服を脱ぎだして、淑女としての自覚が皆無ですのよ、あの方!
   それにお姉様は、安達さんと一緒に、あの殿方を追って――結局、朝になるまで戻って来なかったではありませんの!?
   しかも、安達さんとは、あの後すぐに別れたとか……つまり、その後はお一人だった、という事ではありませんか!
   寮監を誤魔化すだけでも一仕事ですのに、お姉様の身を案じて黒子は心休まる暇がありませんでしたの!」

昨日の不幸の鬱憤を晴らすかのように捲し立てる黒子。

美琴「そんな、帰りが朝方になったくらいで大袈裟な……」

――そもそも、超能力者(レベル5)である私にどんな身の危険が振りかかるというのか?

黒子「……普段のお姉様なら、これほど心配は致しませんの」

美琴「ど、どういう意味?」

黒子「あの殿方が絡むと、お姉様は少々、非常識な行動が増えるようですので――(黒子は嫌な予感が止まりませんの)」

美琴「(れ、冷静になって考えると否定出来ない……)そんなことは……ないと思うなー?」

黒子「まぁ、それはいいですの――それで、結局……昨日の晩はどちらでお過ごしになったのですか?」

美琴「そ、それは…………」

――言えない。男の部屋に行ったなど、絶対に言えない。
343 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 17:49:34.04 ID:FRRMevh8o
やましい事はないのだが、それをこの後輩に言ったら、どの様な展開になるのか想像したくない。

美琴「(けど、結局……アイツの家にまで御飯作りに行っちゃったんだよね……)」///

安達(本当は迫間)に唆されたから、というのもあるのだが、それでも実行に移したのは最終的には自分の意思だ。

美琴「(でも、アイツだって最初こそ戸惑ってたけど……料理自体は美味しいって、喜んでくれたし……)」///

男の部屋に入ったのも初めてだし、異性に手料理を振る舞ったのだって、反抗期前に父親に作ったのが最後だったと思う。
まぁ、あの頃とは常盤台中学で学んだ分、料理の腕にも大きな開きがあるのだけれど。

美琴「(帰りだって、女の子一人で夜道を帰す訳にはいかない、って寮まで送ってくれたり……)」///

そんな何気ない気遣いも、これまで通りだったら――侮られていると思って、怒りを感じてしまっていた筈だった。
素直に彼の気遣いを受け入れている時点で彼女は大きく変わった、と言っていいだろう。

美琴「(また、作りに行っていいかって訊いたら、喜んでくれてた……よね?)」///

黒子「お、お姉様?」

昨晩(実質は今朝)の事を思い出す度に美琴の顔が朱に染まる。

美琴「え、いや、いつも通りよ!? 一晩中、あの馬鹿を追いかけまわしていただけで……!」///

むしろ、ようやく捕まえたのかもしれないけども。

黒子「(いつも通りでは無かったことがバレバレですの、お姉様)」

誰よりも御坂美琴という人間を見てきたと自負する黒子は、彼女のその表情だけで嘘を見破る。

だが、こんな事で嘘を付かれるというのも、黒子にしてみれば複雑だ。
これが単純な照れ隠しの類ならば、それでいい。しかし、真実を話す必要のない相手だと思われているのなら……

黒子「(日頃のスキンシップが裏目に出ているのでしょうか……?)」

スキンシップというには過激で、基本的に欲望がダダ漏れな黒子ではあるが、それで美琴の信頼を失いたいとは思っていない。

仮に、美琴に『そういう相手』が出来た時、それが彼女にとって最良であるならば自分は間違いなく、彼女の味方をする。
だが逆に、相手が碌で無し(美琴に限ってそれはないと思うが)だったり、美琴を泣かすような人間ならば、容赦なく排除するだろう。

――それが、御坂美琴の露払いである自分の役目である、と黒子は思っている。
344 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 17:53:21.10 ID:FRRMevh8o
美琴「……黒子?」

黒子「――お姉様、昨夜に何があったのか黒子は知りません。
    ですが、それがお姉様にとって心から良かった、と思えることなら黒子は祝福致しますの。
    ……ですから、その様な下手な嘘は止めてくださいまし」

――黒子は、憧れの少女が誰かに『手篭め』にされてしまった事態すら想像して、悲壮な覚悟を決めた。

美琴「黒子……」

黒子「黒子は……覚悟が出来ていますの……」プルプル

美琴「――そうよね、アンタは私のパートナーだもんね?」

黒子「お、お姉様!(ま、まさか本当に!?)」

美琴「あのね…………実は昨日…………」

黒子「」

美琴「あ、アイツと友達になったの!」

黒子「――――ハイ?」ポカ-ン


~事情説明中~ 


美琴は上条の家に突撃したことは伏せつつ、昨晩の事を説明した。

黒子「そ、そうでしたの――あの殿方と御友人に……(ですが、素直には喜べませんの)」ホッ

美琴「うん、アンタの同僚になった安達さんのおかげでねー」ニコニコ

黒子「(あの白菜頭、余計な真似をおおおおおおおおおおおおおおお!?)」ギャース!

――あの野郎、後で支部で会ったら、どうしてくれようか。

美琴「だから、これからは夜中まで追い掛け回したりとかはしないから……心配しないで、黒子」ニコニコ

黒子「……それは安心ですの(友人になっただけ、と言う割には表情が緩みすぎですの)」

美琴の声音から、これは嘘ではない、と黒子は判断する。
だが同時に、言葉そのままの状況ではないのだろうとも確信してしまう。

黒子「(このままでは、いつ友人の先の関係になっても不思議じゃありませんの……!)」ガクブル

こう言っては何だが、彼女のデレっぷりは尋常ではない。
なんというか仕草や反応の一つ一つに、驚異的な破壊力がある。
それこそ、事情を説明されてる間に黒子が美琴に襲いかからなかったのが奇跡なぐらいに。

欲望を強靭な理性で抑えている自分でさえ、こうなのだ。
これが年頃の――言ってしまえば誰もが『狼』である殿方が相手だったなら……?

――黒子としては、まったく安心出来そうになかった。
345 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 17:59:01.73 ID:FRRMevh8o

だからと言って、上条当麻を排除する、という訳にもいかない。

黒子「(お姉様の欲していた、対等に振る舞える御相手……そのような方が現れたことは、お姉様にとって素晴らしい事ですの)」

美琴がその事を心の底から喜んでいるのは、見れば分かる。

黒子「(それを邪魔なんて……わたくしには出来ませんの……)」クッ

後輩として――彼女の側にいる事を選んだ自分が、選ばなかった立場。
いや、選べなかった立場は……既に空席ではなくなった。
それは嬉しいことであると同時に、悔しいことでもある。

美琴「でも、心配させちゃったのは事実だし……昨日のお詫びも兼ねて、どこかに買い物にでも行かない?」

黒子「お、お姉様とお買い物ですの!?」

それまでの複雑な表情を一変させ、笑顔で応じる黒子。

黒子「…………あー、でも、折角のお誘いですが、事件の調査もありますので……」

さすがに事件が未解決なこの状況で遊びには行けない。

美琴「やっぱ、そう? ……でも、あんまり根を詰めてもイイ結果は出ないと思うわよ?」

黒子「う゛ーん、それでしたら……佐天さんに連絡して、一緒に初春を連れていってくれませんか?」

美琴「初春さんを?」

黒子「私よりも余程、根を詰めてますの、あの娘。
 今までは、欠員による人手不足を初春が得意の情報処理で補ってくれてましたの……ですから」

美琴「――分かった。佐天さんにメールして、初春さんを気分転換に連れていってあげればいいのね?」

黒子「『使える新人』も入ったことですし、今のうちにリフレッシュさせてあげて欲しいんですの」

――初春が抜けた分は、あの白菜頭を馬車馬のように働かせればいい。

黒子「(色々と覚悟してくださいまし、安達さん……?)」グフフ

美琴「……黒子の笑顔が怖い……」
346 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 18:06:14.38 ID:FRRMevh8o

~一方その頃~


とある高校の教室


朝のHR前の教室には、まだ生徒も疎らである。
しかし、いつもなら時間ギリギリに登校してくる二人の男子生徒は珍しく席についている。




安達「――」ブルッ

高校の男子寮からではなく、とある研究施設から直接、登校したので普段より早く到着した安達生。

上条「どうした、生? 風邪か?」

とある衝撃的なイベントの所為で、朝までよく眠れずに結局、早めに学校に来てしまった上条当麻。
ちなみに登校中にビリビリ中学生に追い掛け回される危機が去った為か、実に平和的に登校した彼は、
眠気覚ましにコンビニで買った――誰かが買い占めたのか一本だけ残っていた――缶コーヒーをちびちびと飲んでいる。

安達「いや、何か悪寒が走ったじゃん……」

???「あれやね、きっと何処かで生センセーの死亡フラグが立ったんや」

そんな無責任かつ物騒な予想を言うのは、クラスメイトの青髪ピアス。
ちなみにこんな見てくれだが学級委員(男)である。

土御門「あー、あれか。自分の与り知らぬ所で浮気がバレた、みたいな感じかにゃー」

青髪ピアスに同調するのは、同じくクラスメイトの土御門元春。

安達「そんな馬鹿な……浮気も何も、俺には付き合ってる相手なんて……」

青ピ「それはそんなんやけどね」

土御門「あれ、例の長点上機学園の女の子はどうしたんだにゃー?」アレー?

安達「つ、土御門!?」

まさかの裏切りっ! 背信っ!

青ピ「長点上機学園!? 生センセーいつの間に、そんなエリート校の女子と!?」

上条「俺も初耳だぞ!?」

土御門「わざわざ、オレに調べてさせてまで、お近付きになりたかったんだもんにゃー?」ニヤニヤ

安達「こ、この野郎!?」

級友は、その背中に刃を二度刺すっ!
347 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 18:08:34.84 ID:FRRMevh8o
青ピ「土御門クン、どういうことなん!? 詳しく教えてーな!」

上条「おいおい、水臭いぞ……そんな相手がいたなら教えてくれたっていいじゃねーか」ニヤニヤ

安達「お、お前ら……」プルプル

このままでは、この馬鹿野郎共に根掘り葉掘り聞き出されて、後にはペンペン草すら残らないだろう。
……どうでもいいが、根堀りは分かるが葉掘りって何だ。

安達「(この状況を打破するには、俺の話が小さく思える程の爆弾を投下するしかないじゃん!)」

安達「……そういう上条だって、俺達に話すことがあるんじゃないかなー?」

上条「は? いや、別にないけど……?」キョトン

缶コーヒーを飲みながら、何の話か分からない、という顔をする上条。
よし、可哀想だが彼には尊い犠牲になってもらおう。

安達「――女子中学生の手料理の味はどうだったじゃん?」ボソッ

上条「て、テメェ! それをどこでっ!?」

ちょうど、上条の前にいた青髪ピアスに上条の吹き出したコーヒーが直撃する。

青ピ「な、なんやて……!? カミやん、どういう事なん……?」ゴシゴシ

かかったコーヒーをセクシーなお姉さんが描かれたハンカチで拭きながら、上条に殺意の満ちた視線を送る青髪ピアス。
348 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/05(土) 18:11:17.94 ID:FRRMevh8o

上条「え、あの、それはですね……」

安達「おいおい、自分の家の隣に誰が住んでるのか忘れちまったのかー?」

と、上条家の隣人Aは笑う。
本当は迫間からの報告で知ってるだけなのだが、一番それらしい理由……
『隣家なので気が付いた』が、さも真実であるかのように安達は振舞う。

土御門「そういえば、深夜にカミやんの部屋から、女の声がしてたような気がするぜい」

と、上条家の隣人Bは追従する。
恐らく、彼はそんな声など聞いていないのだろうが、ここは安達に合わせた方が面白い、と判断したらしい。

青ピ「ま、まさかカミやん……自宅に女子中学生を連れ込んで、食事の後にその娘をデザート代わりに美味しく頂いて……?」ワナワナ

上条「ふ、ふざけんなっ!? 確かに家には上げたけど、やましい事は何もして…………あ」

青髪ピアスの下品な妄想を否定するのに本気になって、まんまと自宅に女子中学生を招いた事を認めてしまった上条。

安達「もうちょっと、上条は駆け引きを覚えたほうがいいと思うじゃん」

土御門「カミやんも遂に年下の魅力に気付いた訳か……」

青ピ「嘘や……こんなの嘘や……頼むカミやん、その右手でこの幻想を殺してーな……」シクシク

上条「お、お前等……好き勝手言いやがって……!」プルプル

温厚な上条さんでも限界ですよ!?とばかりに袖を捲り臨戦態勢に入る上条に対し、
いいぜ上条、幻想殺しなんて捨てて掛かって来いとばかりに青髪ピアスも拳を握る。

土御門「――で、正直なところ、長点上機の娘とはどうなってるんだ?」

安達「……それなりじゃん」

朝の風景としては、少しばかり刺激的な戦いが展開される中、争いの火種を作った張本人二名は呑気に会話を続ける。

???「はいはーい、HRを始めますよ~……って、何してるんですかー!?」

すると、見た目十二歳の担任教師、月詠小萌が教室に入ってきて、戦う馬鹿二名の姿に悲鳴を上げる。

結局、その悲鳴を聞きつけた生活指導のゴリラ教師が乱入してくるまで、二人の死闘は続いていた。 
351 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/08(火) 00:34:52.79 ID:zRu/Fo0Ro

――放課後――


第七学区


用事の方向が同じだった安達と上条は、放課後の賑やかな街を二人で歩いていた。

上条「まだ首が痛い…………不幸だー」

安達「何で、あの無差別級な体のサイズで卍固めとか出来るんだ?」

ゴリラ教師によって、物理的に黙らされた上条は大きなダメージを負っていた。
ちなみに先刻、学校で別れた青髪ピアスも同様である。

上条「あの筋肉猛獣(マッスルバースト)なら、相手がレベル4ぐらいでも余裕で制圧出来るんだろうな……」

安達「けど、そうでなきゃ、この街で生活指導の教員なんて無理だと思うじゃん……黄泉川先生なんかも相当、鍛えてるし」

上条「とは言え、ウチの高校は無能力者(レベル0)ばっかりだし、強くてもせいぜい異能力者(レベル2)だろ? それを考えると強すぎるだろ、あのゴリラ」

安達「……確かに過剰戦力な気もしないでもない」

上条「だろー? …………けど、大丈夫なのか?」

安達「何が?」

上条「生も格闘というか、喧嘩が強いけど、俺と同じで無能力者(レベル0)だろ? 本当に風紀委員なんて、やって平気なのか?」

超能力者(レベル5)をあしらえる上条を無能力者に分類していいのかは疑問があるが、彼の言うことも間違ってはいない。

安達「まぁ……俺だって、強能力者(レベル3)ぐらいなら何とか相手に出来るし、
    所属している支部には優秀な風紀委員も多いから、いざとなれば協力し合えばいいさ」

こう言っては何だが、生の場合は最悪死んでも、仮面さえ持っていれば問題はないのだ。

352 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/08(火) 00:41:56.77 ID:zRu/Fo0Ro

上条「そっか……そういえば、昨日の昼に会った時に一緒にいた女の子も同僚なのか? 茶髪でツインテールの」

白井の事だな、と安達はすぐに気付いた。それにしても短い邂逅だったのに、よく見ている。

安達「さすが上条、あの短時間で、女子のチェックを欠かさないとか……」

上条「おい、青髪ピアスと一緒にするなよ……で、どうなんだ?」

安達「同僚だよ、白井黒子……大能力者(レベル4)の空間移動能力者(テレポーター)で、ウチの支部のエースって所だな」

総合的に見て、固法もかなりの実力者だと安達は思うが、やはり能力者としての強さを踏まえると、黒子に軍配が上がるだろう。
……頭が上がるかどうかは別問題にしても。

上条「大能力者(レベル4)か……凄いな……そういや、常盤台の制服来てたもんな」

安達「常盤台の制服は見慣れてるもんなー?」ニヤニヤ

上条「うぐっ…………きょ、今日はずいぶんと絡むじゃねーか」

安達「まぁ、からかうのはこれぐらいにして……だけど、上条。
    白井って、御坂さんと親しいらしいから――上条も会う機会があると思うぞ?」

上条「御坂と?」

安達「あー、でも、白井は御坂さんにゾッコンだから、背中を刺されないように気を付けろ」

上条「だから、御坂とはそんなんじゃ……………………って、え、そういう趣味の人なの? やっぱ、女子校だから?」

安達「いや、白井が変なだけじゃん」


――――――――――――――――――――――――――

~風紀委員活動第一七七支部~


白井「くちゅんっ! …………安達さん、なかなか来ませんの」グズ


――――――――――――――――――――――――――
353 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/08(火) 00:45:09.63 ID:zRu/Fo0Ro

安達「――じゃあ、俺はこっちだから」ノシ

上条「おお、また明日な」ノシ

支部へと向かう十字路に差し掛かった所で、上条と安達は別れた。

安達「特売、頑張れよー!」

上条「任せとけー!」ノ

財政難への理解のある友人からのエールに上条は片手を上げて応える。

上条「(御坂の奴、また料理を作りに……なんて言ってたけど、流石にそれをアテにして、自炊を怠る訳にはいかないよな)」

料理の腕を考えたら、御坂の料理の方が圧倒的に上なのだが、それで彼女をアテにするようでは、何だか負けな気がした。
何がどう負けるのかは上条にも分からなかったが、本能の声という事で強引に納得する。

――男を落とすには胃袋から、というある少年の格言が、現実問題として上条に襲いかかっていた訳である。

上条「(けど何か、お礼とかした方がいいのか……?)」

お礼という事で、何処かに食事に行く、というのはどうか――いや、経済的にも精神的も厳しい。

常盤台のお嬢様に相応しい場所に行ったりしたら、上条の財布は夏真っ盛りなのに氷河期に突入するし、
仮に行ったとしても、二人で食事に出掛ける、という行為自体が、あまりにも『デート』っぽいので、危険な感じだ。
これまた、何がどう危険なのかは上条には分からないが、本能の声には従うのみである。

上条「(むしろ、腕を上げて逆に御坂に御馳走してやろうかな……?)」

それなら、何とかなりそうだ――と、ぼんやり考える上条の視界に一人の女の子の姿が映る。

上条「(……迷子、か?)」

小学校低学年、といったところだろうか。その少女は周囲をキョロキョロと見回して、困ったように項垂れている。

上条「…………特売、間に合うかな……?」

不幸そうに呟きながらも、少女の方へと向かう上条の歩みに迷いは無かった。
354 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/08(火) 00:53:02.51 ID:zRu/Fo0Ro

第七学区・公園入口付近


安達が風紀委員の支部へ向かってる一方で、暇に悩まされているクローンがいた。
流れの板前から、流れのクレープ職人へと華麗なる転向を遂げた、海原生である。

海原「何故、客が来ないじゃん……?」

だが、そのクレープ屋の屋台は閑古鳥が鳴いていた。
既に多くの学校では夏休み直前で、早めに放課後になっているというのに、客が一向に来ない。
少し前に眼鏡の男子学生が海原に熱い視線を送ったり、屋台を覗いたりしていたが、その学生も結局、注文をしないで立ち去ってしまった。

海原「折角、新たに和風のクレープを考案したというのに……」

ちらり、と屋台の隅に置かれた蒸し器を見やる。
だが、そのクレープ屋としては異質な蒸し器から発せられる熱が、客を遠ざけている事に気付かない海原。

海原「この暑さだと、クレープよりもアイスなのか……?」ウムムム

唸りながら頭を抱える海原。
この際、アイスクリーム屋に鞍替えした方が、売上げが見込めるのではないか? 等と消極的な考えも浮かんでくる。

???「店長さん、何を超唸ってるんですか?」

ふいに声をかけられて顔を上げる。
すると、そこには見覚えのある十二歳ぐらいの少女がいた。

海原「おぉ、いらっしゃい…………えっと……モアイ……だったじゃん?」

???「も、モアイ!? 最愛(さいあい)ですよ! さ・い・あ・い! この前、超メアド交換までしたのに、どうして間違えるんですか!」

海原「え、ハクサイ?」

白菜?「それは店長の頭でしょう! モアイよりも名前から超遠ざかってるじゃないですか!?」

海原「で、絹旗ちゃん、今日も映画鑑賞の帰りなのかい?」

少女の名前は絹旗最愛(きぬはたさいあい)、海原にとっては……友人兼アドバイザー、といった所だろうか。
本人が言うには中学生らしい。

絹旗「超ワザとですか……あ、そうだ、今日は友人を連れて来たんですよ! ほら、フレンダ」クイッ

絹旗に引っ張られて、前に出てきたのは、金髪碧眼の女子高生だった。

フレンダ「えっと、初めまして……フレンダです……?」
355 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/08(火) 01:01:37.21 ID:zRu/Fo0Ro

何故、超疑問系なんですか、と呟く絹旗に対し、フレンダを見た海原は震えていた。

海原「……絹旗ちゃん」プルプル

絹旗「何ですか?」

海原「――超GJ!」ガシッ

絹旗「……これで、クレープが超無料という事ですよね?」ニヤリ

海原「約束だ、いくらでも御馳走させてもらいヤス!」

フレンダ「……結局、絹旗がどうして私を連れて来たのか、説明して欲しい訳よ」

何やら、知らぬところで密約が交わされていたらしい事を知ったフレンダは不安そうだ。

絹旗「こちらの店長さんとは、前に映画を観に行ったときに超知り合ったんですが……」

フレンダ「またB級映画? 絹旗も好きだねー」

絹旗「いえ、あれは理想のC級映画でした……今でも興奮が超冷めません」ウットリ

海原「まぁ、色々と凄かったな。あの映画は」

有事の際の対処要員として、学園都市に潜伏している生の場合、仕事をしていない時間帯は基本的にフリーになる。
だが、いくら暇でも大っぴらに学園都市を彷徨く訳にもいかないので、時間の潰し方は、自然とインドアなものに偏ってしまう。

そして、それは海原も例外ではなく、暇潰しに映画を観に来た彼は、映画館の前で絹旗に声をかけられた。
最初は「まさかの逆ナン!?」と喜んだ海原だが、話を聞いてみると、どうも違うらしい。

絹旗が見ようとしていた映画は『20001人の狂宴』というタイトルで、18歳未満の観覧は禁止の作品。……内容に関しては、今は伏せよう。

そして、海原が絹旗に頼まれたのは『年齢確認』の保証であった。
どう考えても、彼女の身分証は偽造なのだが、それを言ったら、自分だって似たようなものである。
絹旗のB級映画への熱意に押された海原は、小さな悪の片棒を担がされ、それを機に二人の親交は始まった。
356 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/08(火) 01:13:59.93 ID:zRu/Fo0Ro

海原「――こういう店を構えてる身としては、若い女の子の意見ってのは大事じゃん?」

絹旗「それで、色んなクレープの試食を超頼まれたんです。忌憚のない意見を聞きたいって。
    でも、私の意見ばかり参考にしても超駄目ですよね?」

フレンダ「そりゃーねー……で結局、私を連れて来たと……?」

絹旗「多少、味覚がアレな人の意見も超参考になると思いまして」

フレンダ「アレ!?」ガーン!

絹旗「フレンダは超サバ缶中毒じゃないですか」

フレンダ「……だって、好きなモノは仕方ない訳よ」

海原「フレンダちゃんは、サバが好きなのか?」

フレンダ「サバというか、サバ缶が好きなんだけど……でも、結局クレープ屋じゃ、サバ缶の出番は期待出来ない訳よ」

絹旗「いえ、そう悲観しなくても超平気ですよ?」

フレンダ「へ? いや、まさかサバ缶を使ったクレープなんて……ねぇ?」

海原「――あるよ?」

高級料亭でも通用する腕を持つ、海原の至高の料理に不可能はない。

サバ缶を開けて、水気を切り、フライパンにあける。菜箸でほぐしてから、生姜を加えて炒め始める。
水分が飛んできたら、砂糖、醤油、酒を加えてフレーク状になるまで、さらに炒める。
パチパチと音がしてきたら、仕上げに煎り胡麻を投入して、それを薄焼き卵と、そば粉クレープで巻けば完成。

海原「見るがいい! これが『サバはいつもキミのソバにクレープ』だっ!!」ジャジャーン

フレンダ「…………」プルプル

絹旗「ふ、フレンダ?」

――その後、公園内に女子高生の歓喜の叫びが響き渡ったのは言うまでもない。 
374 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 18:16:26.23 ID:3YFFV5oTo

~Seventh mist店内~


白井黒子との約束通りに御坂美琴は二人の友人と共に買い物に来ていた。

???「こっちこっちー!」ノシ

美琴「初春さんは何か見たい物とかある?」

初春「特に決めてないんですけど……」

女三人寄れば姦しい、という言葉がある。

???「うーいーはーるー! ちょっとちょっとー!」ノシ

その少女は、三人分の賑やかさを一人で賄いそうな程にハイテンションであった。
ちなみに場所は女性用の下着売り場である。

少女の名前は佐天涙子(さてんるいこ)。
花を模した、極普通の髪飾りがトレードマークな黒髪ロングの女子中学生である。

初春「もう、何ですかー?」

佐天に対し、極普通ではない花の髪飾りがトレードマークなのは『風紀委員』で同じく中学生の初春飾利。
そんな彼女は、テンション右肩上がりの親友の呼びかけに困ったように駆け出す。

美琴「(佐天さんは、いつも元気ね~)」

某ルームメイトのセクハラや、某高校生が相手の際には、佐天以上のテンションである美琴だが、
性格的に普段から全力ではしゃいだりはしないし、出来ないだろう。

だから、佐天のこういう元気さが眩しく見える時がある。

佐天「じゃーん! こんなのはどうじゃー?」

  ――佐天が差し出した下着の色は情熱の赤。
375 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 18:25:39.42 ID:3YFFV5oTo

初春「む、無理無理、無理ですっ! そんなの穿ける訳ないじゃないですかっ!」///ワタワタ

      
差し出された下着と同じく、その顔を朱色に染める初春。

佐天「これなら私にスカート捲られても、堂々と周りに見せ付けられるんじゃない?」

初春「見せないでくださいっ! 捲らないでくださいっ!」///

スカートを捲られて、その中身を堂々と周囲に見せ付けるようになったら、それは既に乙女ではない、と思う。
絶対に、彼女のスカート捲りに『慣れ』てしまわないようにしよう、と心に決める初春だが、
そのいつまでも『慣れ』ない初々しいリアクションが佐天を喜ばしている、という真相には辿りつかない。

佐天「ありゃ、残念。あ、御坂さんは何か探し物あります?」

美琴「え? ……そうねぇ、私は……パジャマとか」

初春「あ、だったらこっちですよ!」

先頭に立って二人を誘導する初春の姿は、さながらベテランの店員のようであった。
その見た目は服屋というより花屋なのだが。
376 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 18:29:18.88 ID:3YFFV5oTo

~寝間着売り場~


美琴「色々と見て回ってるんだけど、中々いいのが見つからないのよねぇ~」

店内を眺めながら呟く。

美琴「…………あ」

一目惚れ。

美琴「………………ぅゎぁ」//

彼女がその花柄のパジャマを見た時の表現として、それ以上に妥当な表現があるだろうか?

美琴「ね、ね、コレ、すっごく可愛――」

早速、後ろの友人達と、このパジャマの可愛さについて語り合おうとする美琴。

佐天「アハハ、見てよ初春、このパジャマ!! こんな子供っぽいの今時着る人いないよねー?」

初春「小学生の時までは、こういうの着てましたけど……流石に今は……」

去年までランドセルを背負っていた現中学一年生によって容赦のない評価が下される。

 
377 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 18:41:50.18 ID:3YFFV5oTo

美琴「そ、そうよね!? 中学生になってこれはないわよね!」///ウンナイナイ

超能力者(レベル5)のプライドか、或いは自らのイメージを守る為か、年下の少女達に『表面上』は賛同する現中学二年生の美琴。

佐天「ん? ……あ、あたしチョット水着の方見てきますねー」

初春「水着ならあっちにありましたよー?」パタパタ

佐天「ほんとー?」パタパタ

離れた売り場へと駆けていく二人を軽く涙目になって見送る美琴。

美琴「(いいんだもーん、どうせパジャマなんだから、他人に見せる訳じゃないし……)」

パジャマを見せる他人……ルームメイトの口煩い後輩には色々と服装について言われるが、断固として無視だ。

チラリ、と初春と佐天の位置を確認する。

美琴「(初春さん達は向こうにいるし……一瞬、姿見で合わせてみるだけなら……)」

初春や佐天ばかりに注意を払っていた所為で、美琴はそれに気付かなかった。
自分の姿を見かけた『友達』が声をかけようと近づいて来ていたことに。

美琴「それっ!」バッ
















上条「――何やってんだ、御坂?」

ツンツン頭の高校生、上条当麻が姿見の向こう側――つまり、美琴の後ろに立っていた。
378 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 18:46:15.91 ID:3YFFV5oTo

~風紀委員活動第一七七支部~


安達「――それで、初春さんが休みな訳か」

黒子「そういうことですの。休める時に休むのも優れた仕事人の務めですので」

お前らの本業は学生だろ、というツッコミは野暮なのでしない。

安達「……そういう事なら、白井さんも俺に任せて休んでくれていいのに」

黒子「配属されたばかりの新人一人を残して、わたくしにも遊びに行け、とおっしゃいますの?」

安達「――やっぱり、駄目かな?」

黒子「はい。……それに、どうせ虚空爆破事件が解決しなければ、休みを貰っても満喫出来そうにありませんの……」

安達「なら、さっさと解決させて、白井さんに休暇をプレゼントするじゃん」

黒子「ふふっ、それなりに期待してますの」

安達「……とは言ったものの、見事に手詰まりだな……過去の爆破の現場に関連性はなし、時間も場所も共通しない」

これまでの事件の資料を眺めながら溜息をつく。

数多くの人間を殺害してきた経験を総動員しても、犯人の狙いが読めない。
そもそも、『犠牲なき悪滅』を信条としていた彼等にとって、他者を害する手段で『爆弾』というのは最も嫌悪する手法である。

確かに爆弾自体の知識や解体方法は専門家だった兄弟達の遺産として、彼等の『共有記憶』の中に存在する。
だが、それを使う人間の思考まで理解している訳ではない。
しかも、今回のケースでは爆弾は能力の産物。普通の爆弾の知識は役に立たない、と言っていいだろう。

安達「よりにもよって、下の下を使いやがって……」ボソッ

一応、無能力者として学園都市で底辺寄りの生活を送る安達からすれば、
折角の能力をテロ紛いの使い方しかしない犯人の行為は『宝の持ち腐れ』にしか思えない。

黒子「安達さん?」

安達「……何でもないじゃん」

黒子「もう少し、手掛かりがあれば容疑者の絞り込みもできますのに~」ムムム

安達「遺留品を読心能力(サイコメトリー)で調べてみても、空振りだったんだろ……?」

黒子「そうですの……これじゃ、入院されている多くの風紀委員の方達も、安心して療養できませんの……」

安達「………………ん?」

――何かが意識の端に引っ掛かった。

安達「俺の配属が急に決まったのは、風紀委員の欠員が増えすぎた為だったよな……?」

黒子「ええ、固法先輩はそうおっしゃってましたが……?」

安達「――欠員は何人だ?」

黒子「確か……一連の事件で負傷した風紀委員は……九人…………あ!」


――いくらなんでも多すぎではないか?

380 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 19:48:33.01 ID:3YFFV5oTo

~Seventh mist店内~


美琴「な――た――で――こ――こ――っ!?」アワワ

よりにもよって、他人……それも『年上』の『異性』の『友達』にパジャマを選んでいる場面を目撃された美琴の脳は混迷を極めた。

上条「落ち着け、御坂。はい、深呼吸! すってー」

美琴「???」スウ-

混乱しながらも、何故か素直に深呼吸をしてしまう美琴。

上条「はいてー」

美琴「…………」ハア-

上条「すってー」

美琴「…………」スウ-

上条「はいてー」

美琴「…………」ハア-

上条「…………」ウズッ

あまりにも美琴が素直に言うことを聞くので、上条の中に不穏な感情が芽生えた。

上条「はい、ヒッヒッフー(笑)」

美琴「ヒッヒッ……って、何やらせんだゴラァァァァァァァァァァァ!?」ドガッ

上条「ごふっ!?」

ツッコミと共に放たれる強烈な左ボディに上条の体がくの字に曲がる。
381 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 19:52:53.28 ID:3YFFV5oTo

上条「ス、スマン…………素直に深呼吸する御坂が何か……可愛くて?」

美琴「か、カワっ!? 何言ってんのよアンタは!? ってか、何で疑問形なのよ!?」///

上条「はて? 何故か上条さんにも分かりませんのことよ……?」

美琴「まったく……で、何でアンタはこんな所にいるのよ?」

ツッコミを入れたことで、結果的に落ち着いたのか、美琴に冷静に質問するだけの余裕が戻っていた。

上条「いちゃいけないのかよ……」

美琴「そ、そうじゃないわよ! けど、急に現れたらビックリしちゃうじゃない……」

上条「……まぁ、確かに愉快な驚きっぷりだったけどな」ニヤニヤ

美琴「なっ!?」///

???「おにーちゃーん! ……あれ?」トテトテ

美琴「……あ、カバンの……?」

駆け寄ってきた少女には見覚えがあった。
数日前に美琴が勘違いで風紀委員として働かされた時にカバンを失くして困っていた女の子だ。

鞄の少女「やっぱり! トキワダイのおねーちゃんだー!」

上条「御坂と知り合いだったのか?」

鞄の少女「うん、わたしのカバンをみつけてくれたの!」

美琴「あはは……」

てっきり例の事件の爆弾だと思って必死に探していたのだが、流石にそんな恥ずかしい勘違いを上条にまで説明しようとは思わない。
382 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/13(日) 19:56:27.71 ID:3YFFV5oTo

上条「へぇ……?」ジッ-

美琴「な、何よ……?」///

上条「いいとこあるな~と思いまして」

美琴「う、うるさいわねぇ! ……って、お兄ちゃんってアンタ、妹がいたの!?」

数テンポ遅れて、その単語の重要性に気付いた美琴。

上条「違う違う、俺はこの子が洋服店探してるって言うから、ここまで案内して来ただけだ」

美琴「(……昨日は駐車場で今日は洋服店……しかも、相手はどっちも女……でも、この子はまだ子供だし……)」ムムム

上条の行動を端的に表現すると『困っている女性に手当たり次第に声をかける男』になる。
下心あっての行動ではない、と思う美琴だったが、何故か理由の分からない不安に駆られてしまう。

鞄の少女「あのね? おにーちゃんにつれてきてもらったんだ~
       それで、わたしもテレビの人みたいに、およーふくでオシャレするんだもーん」ニコニコ

美琴「そうなんだ、でも今でも充分、オシャレで可愛いわよ~?」ナデナデ

上条「…………そういう御坂も、随分と可愛いパジャマをチョイスしてんだな」

上条の指摘に慌ててパジャマを背中に隠す美琴。

美琴「あ、こ、これは! いや、ちょっと合わせてみただけで、べ、別に欲しい訳じゃ……!」

上条「そんな慌てて否定しなくても……」

美琴「だ、だって、どうせアンタも子供っぽいとか思ってるんでしょ!?」ウルッ

上条「(何故か涙目だし……)はぁ? 何でだよ? 別にいいじゃないか、そのパジャマ」

美琴「――――ほ、本当?」

上条「妙に疑り深いな……似合ってると思うぞ、俺は。
    それに寝る時なんて、リラックス出来る服装が一番なんだから、御坂が着たい服を着た方がいいに決まってるじゃねーか」

美琴のスカートから、短パンが覗く度に、騙されたような裏切られたような気分になる上条当麻であるが、これに関しては本音である。
というのも、上条の感覚からすれば中学生なんて『まだまだ子供』であって、少しぐらい子供っぽい服装でも歳相応、という感じがするからだ。
断じて、美琴が目の前のパジャマを着ている姿を想像して、普通に可愛いだろうな、と思ったからではない。

……断じて違うはずである。
383 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/13(日) 20:01:22.56 ID:3YFFV5oTo

美琴「そ、そうよね! 自分が着たい服を着るのが一番よね! …………えへへ」///

上条「(今鳴いたカラスがもう笑った……)」

鞄の少女「ねぇねぇ、おにーちゃん」クイクイ

服の裾を遠慮がちに引っ張られ、横の少女へと意識を向ける。

上条「ん? どうした?」

鞄の少女「もしかして、トキワダイのおねーちゃんと『こいびとどうし』なの?」

上条&美琴「「こ、恋人!?」」

予想外の質問に二人の驚愕の声が重なった。

美琴「ち、違うわよ!?」

まず否定の言葉を発したのは美琴。

上条「そ、そうだぞ!? 俺と御坂は友達であってだな……別に恋人とか……そ、そういう関係じゃないぞ!?」

それに上条も追従する。

美琴「な、なんで、そんな力一杯否定すんのよ!?」///

上条「えぇっ!? さ、先に否定したのは御坂じゃねーか!?」///

美琴「だ、だって……!」///

鞄の少女「……よくわからないけど、すごくなかよしな友達なの?」

上条と美琴の珍妙な関係を理解するには、まだ幼すぎたのか、少女は自分の理解できる範囲の言葉で『それ』を表現した。

上条「そ、そういう事にしといてくれ……」

美琴「そ、そうね……そういう事にしておきましょう」

鞄の少女「んー?」

上条&美琴「「アハハ……(何やってんだろ、俺(私))」」

二人の渇いた笑い声が寝間着売り場に響く。

上条「そういえば、御坂は今一人なのか? もしそうなら、この子の洋服選ぶの手伝ってくれないか?」

美琴「ええっ!? ……あ、えーっと、実は今……友達と来てて……」

上条「そ、そうか……(な、なんで残念な気分になってるんだ、俺?)」

美琴「そ、そうなのよ……(うぅ……折角、誘って貰えたのに……え? あれ、なんでそんな風に思ってるの、私?)」

上条&美琴「「(あれー?)」」

噛み合ってるような、すれ違っているような気持ちを互いに抱く、思春期真っ只中の若人二人であった。














佐天「な、何なんだろう、あのピンクな空間……?」

初春「さ、さぁ……?」

隣の売り場の棚の影から、二人の少女が、そんな一部始終を目撃していた。



403 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/20(日) 20:52:02.11 ID:QhNXSFGuo
~Seventh mist店内・女子トイレ~


美琴「」

バシャバシャと水で顔を洗って、未だに抜けない熱を強引に沈静化させる。

美琴「何してるんだろ、私……」

上条とのやりとりを一部始終、初春と佐天に目撃された美琴は、二人から芸能リポーター顔負けの質問攻めを受けた。

その男子高校生とのご関係は?

友達? ならそのお名前は?

どうやって知り合ったんですか?

ついでに能力の強度(レベル)は?

それらの質問に美琴は顔を羞恥に染め、混乱しながらも何とか答え、
何故か、ノリノリで女子中学生の質問に受け答えする上条に軽く電撃を浴びせたりしていたのだが……

――戻ってきたら御坂さんが『子持ちの学生カップル』になってて驚きましたよー?

という、佐天の一言によって色んな感情が決壊し、女子トイレへの逃亡という情けない事態に陥っていた。

美琴「うぅ……何でアイツが絡むと、冷静になれないのよ……?」

上条と友好的な関係を結んだと言うのに、未だに理由の分からない感情に振り回されている。

美琴「これじゃ、前と変わらないじゃない…………ん?」

トボトボと女子トイレを出ると、目の前をヌイグルミを持った男子学生が通り過ぎた。

美琴「(ゲコ太!?)」キュピーン!

ゲコ太とは?
学園都市内のメーカーであるラヴリーミトン製の、カエルのマスコットだ!
髭を生やしスーツを着用している、ケロヨンの隣に住んで居るおじさんで、乗り物に弱く直ぐにゲコゲコしてしまうからゲコ太と呼ばれているらしいぞ!

美琴「(……じゃないか……つーか、全く似てないわ)」

だが、しかし。

――あの人は、こんな所でヌイグルミを持って何をしているんだろう?
404 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/20(日) 20:59:20.85 ID:QhNXSFGuo
~風紀委員活動第一七七支部~


黒子「やはり……虚空爆破事件の人的被害は風紀委員に集中していますの……!」

安達「間違いない、犯人の狙いは風紀委員……」

ALERT!ALERT!

安達&黒子「!?」バッ

パソコンの画面に表示される危険信号。

安達「衛星が重力子の加速を確認……!?」カタカタカタ

黒子「場所はどこですの!?」

表示されているポイントは、どちらも第七学区内。

安達「セブンスミストと……中央公園……?」

どちらも爆弾が爆発すれば、多くの人間が巻き込まれる可能性がある場所だ。

黒子「同時に二箇所……犯人も本気ですの……! ですが、重力子加速のスピードを見る限り、爆発は公園が先……」

安達「現場近くの警備員(アンチスキル)に連絡して、避難をさせないと……」

黒子「時間がありませんの、ここは二手に分かれて直接現場に移動しながら連絡を!」

現場……?
セブンスミストという場所は知ってはいるが、行ったことはない。
だが、中央公園は昨日、黒子と一緒に行った場所だ。

黒子と一緒に……そう、一緒にクレープを食べた。

待て、あのクレープを作ったのは誰だった……?

安達「っ………………白井さん、セブンスミストに向かってくれ。公園には俺が行くじゃん」

黒子「いえ、爆発まで時間がない以上、空間移動(テレポート)の使える私が公園に行ったほうが……」

安達「いいから行けっ!!」

有無を言わさない怒声に黒子の肩がビクっと震える。

黒子「は、はいですの!」ヒュン

安達「……もしかしたら……」ダッ

空間移動で、黒子が支部を離れたのを確認した後、安達も走って支部を飛び出した。
405 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/20(日) 21:04:33.65 ID:QhNXSFGuo
第七学区・公園入口付近


海原が屋台と一緒に持ち運んでいる、簡易式のテーブルセットに座って、二人の少女がクレープをパクついている。

フレンダ「うまうま♪」モグモグ

満面の笑みで鯖クレープを口に運ぶフレンダ。

絹旗「超ご機嫌ですね、フレンダ」

そう言って笑う絹旗も、クレープを食べる度に頬が緩んでいた。

フレンダ「結局、いい店を教えてもらったって訳よ! まさか絹旗がB級グルメにも詳しかったなんて……」

絹旗「いえ、映画と食べ物のB級とは違うと思いますが……それに、ここのクレープは間違いなく超A級ですよ」

海原「おいおい、嬉しいこと言ってくれるじゃないの……はい、追加」

煽てられて、気を良くしたのか次々とクレープを焼き上げる海原。

絹旗「今度はフルーツですか、超美味しいです」アムアム

フレンダ「でも、いいの? こんなに美味しいのにタダで」モグモグ

海原「まぁ、試作だし……美少女二人が美味しそうに食べてくれるだけで集客効果はあるじゃん」

絹旗「その割には超閑古鳥が鳴いてますね」

周囲を見渡しても、放課後の公園には人が殆どいない。

フレンダ「例の爆弾事件の所為じゃないの? 結局、みんな怖がって外出を控えてる訳よ」

自分が事件に巻き込まれたりはしないだろう、と根拠のない自信で街を彷徨く人たちも、
犯人の狙いが不明な現状では、さすがに用もないのに人が多そうな場所を率先して訪れようとはしないようだ。

絹旗「可哀想に……フレンダ、早く自首してください」

フレンダ「いや、私じゃないって訳よ!?」
406 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/20(日) 21:08:18.06 ID:QhNXSFGuo

絹旗「いつもヌイグルミに超爆弾詰めてるじゃないですか」

フレンダ「一緒にしないで欲しい訳よ! ってか、店長さんの居る前で何を言ってるの!?」

海原「あー、やっぱりフレンダちゃんは、爆弾使うのか?」

フレンダ「ええっ!?」

絹旗「大丈夫ですよ、フレンダ。この店長はその辺を弁えている人です」

フレンダ「(ど、どういう事なの? まさか、自分から暗部組織の人間だって話したの!?)」ゴニョゴニョ

慌てて絹旗に耳打ちするフレンダ。

絹旗「そんな事しませんよ、見破られただけです」

あっけらかんと言い切る。

フレンダ「それでも大問題な訳よ!」

海原「偽造の身分証持ってたり、女子高生が火薬の匂いさせてる時点でバレバレじゃん」

むしろ、隠しているつもりがあったのか?と鼻で笑う海原。

絹&フレ「がーん!?」

フレンダ「む、麦野に怒られる……」オロオロ

絹旗「大丈夫ですよ、フレンダ。サーモンクレープを食べさせれば、麦野だってこの店の超リピーターです」

フレンダ「いや、それもどうなのよ……?」

むしろ、店ごと店長を抹殺するような超悪質なクレーマーになりはしないかと心配でならない。

絹旗「でも、この店長は私やフレンダが暗部の人間だと気付いても……それでも尚、私達を超歓待してくれているんですよ?」

海原「まぁ、どんな仕事をしていたって、店に来てくれる人は大事なお客様だからな。その麦野?って奴も来てくれるなら大歓迎だ」

絹旗「暗部と言っても、私達は『暴走』や『裏切り』への超抑止力ですから。別にバレても口外されないなら困りませんし」

フレンダ「――絹旗が常連になるのが、理解出来たって訳よ。……それにしても店長は結局、何者なの?」

海原「さてね、俺は極普通の流れのクレープ職人だぜ……?」ニヤニヤ

フレンダ「流れのクレープ職人なんて、聞いたことない訳よ」

絹旗「ほら、アレですよ。
    一流のスイーパーの超行き付けの喫茶店やバーのマスターが、元傭兵だったり元殺し屋だったりする感じですよ、きっと」

海原「おいおい、誰が海坊主だよ」ケラケラ

フレンダ「いつから学園都市は、シティハンターのいるデンジャラスな新宿になったの……?」ドヨーン
407 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/20(日) 21:15:21.37 ID:QhNXSFGuo

海原「(けど、意外と鋭いな、絹旗ちゃん)」

フレンダ「結局、深く考える私が馬鹿みたいな訳よ…………ん?」

絹旗「どうかしましたか?」

フレンダ「イスの下に何か落ちてる……うわっ、何これ」

引きつった声と共に、足元からフレンダが取り出したのは、贓物の飛び出した動物のヌイグルミだった。
     
絹旗「何ですか、それ……超悪趣味ですね」

海原「誰かの落し物かな……?」

だが、今日は特に客も来なかったし、落し物をするような人自体に心当たりがない。

ダンダンキニナル-キノナイ-フリシテルノガ

ふいに着うたが響き、海原はテーブルを離れて屋台の裏手に置いてあった携帯電話を取る。

海原「(メール……安達から?)」

メールの内容を見た海原が駆け出すのと、
フレンダの持っていた、その人形が『歪んだ』のは、ほぼ同じタイミングだった。
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/20(日) 21:21:03.16 ID:D67ZX9XO0
海原Δ
409 :とある複製の妹達支援[saga ]:2011/02/20(日) 21:23:05.64 ID:QhNXSFGuo
~第七学区・木の葉通り~


人通りの増え始めた道を縫うように駆け抜ける。

安達「(犯人の狙いは風紀委員……!)」ピピピッ

走りながらも携帯を操作し、学園都市に潜伏中の同胞達へとメールを一斉送信。

--------------------------------------------
【From】syou-adati@akumetu-pl.ed.jp
【To】 指定アドレス
【Sub】 第七学区内にいる奴返信くれ!
--------------------------------------------
虚空爆破事件の次の標的は、
第七学区内の洋服店セブンスミスト&中央公園だ。
風紀委員が狙われている可能性がある、
外出している奴は注意してくれ
--------------------------------------------

安達「(もしも、犯人が……)」

――風紀委員である『安達生』と間違って『他の生』を標的にしているとしたら…!?

皆が変装の類をしている訳ではない以上、遺伝子レベルで同じ顔をしている生同士を見分けるのは……

安達「くそっ!」

――不可能に近い。

現場へと走りながら、兄弟達からの返信を待つ。

ブルブルブルブルッ

一斉に返信が届くが、一人だけ、いる筈の人物からメールが届かない。

安達「(海原……!)」

心の中で、その名を呼ぶ。


ドオオオオオオンッ!!!!!!!!!!


だが、それすらも掻き消すように爆音が轟いた。 
416 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/27(日) 18:10:58.78 ID:YD5ityavo
~Seventh mist店内~


上条「一人で大丈夫か?」

鞄の少女「うん、へいき!」トテトテ

上条「――それにしても、どうしたんだろうな……御坂の奴」

一人歩いて行く少女を父親のような心境で見送りながら、ふと呟く上条。

初春「(佐天さんが変な事、言うからですよ?)」ゴニョゴニョ

佐天「(いや~、あんなに顔真っ赤にした御坂さん初めて見たよ……)」ゴニョゴニョ

上条「二人とも、どうかしたのか?」

初天「「いえ、何でもないです!」」

上条「そうか?」

佐天「で、でも上条さんって凄いですね!」

上条「……ハイ?」

他人から賞賛された経験に乏しい上条としては、この娘さんは何を言っているんだろう? といった心境である。

佐天「だって、超能力者(レベル5)の御坂さんの事を堂々と友達だって言えて……」

上条「それって、何か凄いのか? 佐天さんや初春さんも御坂の友達だろ?」

異性の間で純粋な友情が成立するか、とか。
女子中学生と男子高校生で、友達と言っていいのか、とか。
改めて考えると色々と問題がある気もするが、ここはスルーだ。
417 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/27(日) 18:12:57.72 ID:YD5ityavo

佐天「……確かにそうだし、私もそうありたいと思っているですけど……何だか、遠慮しちゃうんです」

初春「もしかして、佐天さん……強度(レベル)の事、気にしてます?」

佐天「だって、相手は学園都市に7人しかいないレベル5だよ? しかも、常盤台のお嬢様。
    それに比べて、私は何の能力もない無能力者(レベル0)で、ただの普通の中学生。
    そんな私が御坂さんの友達なんて、おこがましい……とまでは思わないけど、少しは……ね」

上条「……無能力者(レベル0)って事なら、俺だってそうだぞ?」

右手の所為で、身体検査(システムスキャン)も無効化されているだけで、厳密に言えば上条は無能力者ではないのだが。

佐天「だから、凄いんじゃないですか。上条さん、御坂さんに対して、すごく自然だし……遠慮とか全然なくて」

佐天から見て、上条と美琴には互いのレベル差に対する気後れなど、微塵も感じなかった。
そして、上条もそうだが――美琴も照れたり、混乱したりはしていたものの、極自然体で肩の力が抜けていたように思えた。

上条「(まぁ、最初の頃は、ただのビリビリ中学生だし……正直、遠慮してる余裕なんか無かったからな……)」

加えて、昨晩の河原での一件。
どうやら、彼女は自分との「遠慮のない」関係が御所望らしい、というのは上条にも理解出来た。
なら、それなりに友好的な関係を築けた今、改めて遠慮をするというのは不自然だろう。

上条「第一、御坂だって相手のレベルとかを気にして、付き合い方を変えるような奴じゃないぞ?」

佐天「分かってますよ、友達ですから。
    ……結局の所は、私の心の問題なんです」

初春「佐天さん……」

今にも泣き出しそうな初春の声と表情にようやく佐天は、この場の空気に気付いた。

佐天「あ……。
    ヤメヤメ! こんなの私らしくないわ! 上条さんもゴメンなさい、急に変なコト言っちゃって!」ペコリ

暗い感情を吹き飛ばすように快活に笑う佐天。
どこか痛々しさの残る佐天の姿に上条と初春は胸を痛ませた。
419 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/27(日) 18:18:10.61 ID:YD5ityavo

上条「(こればっかりはな……)」

強度(レベル)に関しての苦悩というのは、学園都市で生きていく上で、学生達が避けては通れない問題だ。
学園都市の根源的な部分関わっている、この手の問題を解決させるのは、能力の成長か、当人の意識の変化しかない。

上条「(同じ無能力者(レベル0)と言っても、厳密には違うし……今日、出会ったばかりの俺が口を挟むのも……」

自分以外に佐天の助けになれる人物がいないというなら、また話は別だし、
万が一にも彼女が間違った道を選びそうだったら、例え初対面でも、止める覚悟はあるのだが……

だが、彼女は幸い友人には恵まれているから大丈夫だろう、とも思う。
御坂が、この手の相談に向いているかは別にしても、あれは友人を見捨てるような薄情な奴ではないだろうし、
彼女の親友らしい初春は、本気で佐天を案じているように見える。

上条「(レベルなんかよりも、そっちの方がずっと価値があると思うけど……)」

しかし、結局の所……それで『自らを救う』かどうかは、佐天涙子自身の考え方や、生き方に依る部分が大きい。

上条「気にしないでいいって、佐天さん。
    よーし……折角、二人と知り合えた訳だし、ここは上条さんがジュースでも奢ってあげよう!」

少し強引だったが、気分を変えようと奢り宣言してみる。

初春「あ、じゃあ『いちごおでん』を」

佐天「早っ!? 早いよ、初春!?」

初春「へ?」

何か問題でもあるのか、とキョトンと首を傾げる初春。

佐天「ここは上条さんの気遣いに感謝しつつも、少し遠慮とかする場面じゃないの!? そして何なの、そのチョイス!?」

初春「いやー、人の好意は素直に受け取るべきじゃないですか。
    それに結構、好きなんです『いちごおでん』。おでんの出汁がいちごに染みて」

上条「も、猛者だな、初春さん……佐天さんは? 何がいい?」

佐天「じゃあ、お言葉に甘えて……『ヤシの実サイダー』をお願いします」

上条「あぁ、御坂がよく飲んでる奴だな」

覚えのある銘柄で出てきたので、ついそんな事を口走っていた。

初天「「…………へぇー」」ニヤニヤ

上条「――――――――あ」

よく見てるんですねー? と言わんばかりの女子中学生二人の熱い視線が上条に注がれる。

上条「あ……えっと……その……ご、誤解だあああああああああああああああ!!!」///ダッ

まるで、少し前の美琴のように上条は涙目になりながら逃亡した。
420 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/27(日) 18:58:41.40 ID:YD5ityavo

美琴が初春達の元へ戻ると上条と鞄の少女の姿が無かった。

美琴「あれ……? あの子と……あ、アイツは?」

佐天「あの子なら、少し前に御手洗いに……上条さんはジュースを買いに、外に行かれましたよ」

美琴「(……行き違いになっちゃったのか)」

初春「(でも、上条さんの逃げ方、御坂さんに似てませんでした?)」ゴニョゴニョ

佐天「(似てた、似てた! あれかな、似た者カップルって奴なのかなー?)」ゴニョゴニョ

美琴「ん? 二人とも、何かあった?」

初天「「いえ、何も!」」

美琴「……怪しいわね」ボソッ

セ-カイニヒ-トツダ-ケノハ-ナ

佐天「あれ、初春……ケータイ鳴ってない?」

初春「みたいです……はい、もしもry」ピッ

黒子『初春ッ!! 今どこにいるんですのっ!?』

最大ボリュームの同僚の声に思わず耳を押さえてしまう。

初春「し、白井さん!? あー、もしかして自分だけ仕事なのが、やっぱり嫌になって――」

黒子『虚空爆破事件の続報ですの!』

初春「ええっ!?」

黒子『先程、衛星が重力子の爆発的加速を観測しましたの!』

初春「か、観測地点は!?」

黒子『場所が二箇所なので、今、わたくしと安達さんが二手に別れて急行しておりますの。
    勿論、現地付近の風紀委員や警備員にも動くように手配中です。折角の休暇中ですが、あなたも現場に――』

初春「白井さんの向かってる観測地点は!?」

黒子『第七学区の洋服店『セブンスミスト』ですの!!』
421 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/27(日) 19:01:38.56 ID:YD5ityavo

初春「セブンスミスト……ラッキーです! 私、今ちょうどそこにいますっ!!」グッ

思わず小さくガッツポーズをする初春。

黒子『なんですって!? 初はry』ピッ

電話の向こうで、黒子が危機的事態に戦慄するが、意を決した初春が通話を切ってしまう。

初春「――二人とも、落ち着いて聞いてください……虚空爆破事件の犯人の次の標的が分かりました……この店です」

美琴「この店……!?」

初春「そうみたいです。御坂さん、避難誘導に協力してもらえませんか?」

美琴「おーけー、わかったわ」

初春「佐天さんは避難を」

佐天「っ………………うん」

善意の筈のその言葉が、小さな痛みを伴って佐天へ刺さる。

初春「佐天さん?」

佐天「何でもないよ……初春も……気をつけてね?」

自分の痛みが悟られないように取り繕いながら、友を案じる言葉を紡ぐ。

初春「はい!」

親友と尊敬する人の背中を見送りながら、一人残された少女は思う。

風紀委員である初春が民間人である佐天を案じて、避難するように言うことは何も間違ってはいない。

佐天「(けど、御坂さんには協力を頼んだ)」

意識しての行動ではないと思う。

――でも、だからこそ、そこには逃れられない真実が紛れている。

友人で民間人で女の子なのは変わらない。

御坂美琴と佐天涙子の差。

超能力者と無能力者としての差。

その絶対的で絶望的な差が、刃の様な冷たさと鋭さを持って、再び佐天に突きつけられていた。
424 :とある複製の妹達支援[saga ]:2011/02/27(日) 22:45:02.91 ID:YD5ityavo

第七学区・公園入口付近


安達「風紀委員です! 危険ですので、近づかないでください」グイグイ

爆発の直後、重傷を負った海原の姿を見た安達は、すぐにでも駆け寄りたい衝動を堪え、集まってきた野次馬達を制し、現場を封鎖していた。

野次馬A「おい、また爆発だって!」

野次馬B「怪我人がいるってよ!」

野次馬C「は、はやく救急車を呼ばないと!」

ピ-ポ-ピ-ポ-ピ-ポ-ピ-ポ-ピ-ポ-

野次馬ABC「「「え、早っ……!?」」」

爆発から三分も経たずにやって来た救急車に野次馬がどよめく。

救急隊A「どいてっ!」ダダダダダッ

救急隊B「どいてどいて!」ダダダダダッ

救急隊C「そこのけそこのけ鬼嫁が通るぜ!」ダダダダダッ

人混みを掻き分けるようにして救急隊員達が現場に到着した。

救急隊A「大丈夫ですか! もう安心ですからね!」

海原「…………早いな、おい」

正直、話せるような状態ではないのだが、思わずツッコミを入れる海原。

救急隊B「(安達のメールを見て、ヤバいと思って、すぐに出動したじゃん)」ボソッ

海原「……流石、俺」ニヤリ

救急隊C「(もういい、喋るな。仮面も持ってきてる、救急車の中で装着するから、それまで意地でも死ぬなよ)」

海原「……あぁ」

駆け付けた数人の救急隊員が、倒れている海原や気絶した少女達を担架とストレッチャーに乗せ、颯爽と運び去っていく。

救急隊B「我々は彼等を病院まで搬送しなければならないので――失敬!」(`・ω・´)ゞ

演出過剰気味に敬礼までする救急隊員に野次馬も流石に違和感を覚えるが、状況が状況なので気付かれない。
そんな中、チラッと安達は駆ける救急隊員の一人とアイ・コンタクトを交わし、意思疎通を図る。

安達「(――頼んだじゃん)」

救急隊A「(ああ、そっちもな!)」

ガラガラガラガラガラッ!

バタンッ!

救急隊員達は少女二人と、海原とを別々の救急車に乗せ、発進する。

救急隊C「さぁ、椿のいる病院に直行だ!」

救急隊B「頼むぜ、ドライバー!」

運転手「任せなっ!」b

そう言ってサムズアップしたドライバーも、運ばれる怪我人と同じ顔であった。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/02/27(日) 23:47:18.28 ID:Yv5O4UiIo
wktk
426 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/28(月) 00:26:42.82 ID:OoobhoO1o

~Seventh mist店内~


『お客様にご案内申し上げます。店内で電気系統のトラブルが発生した為、誠に勝手ながら、本日の営業を終了させて頂きます。係員が――』


ざわ……ざわ……

客A「故障って、何?」

客B「来たばっかりなのにー」

初春の要請で店側が流したアナウンスによって、パニックにならないように避難誘導を行う。
数分後、人気の無くなった店内には、初春と美琴だけが残った。

美琴「よしっ、とりあえずこれで全員……」キョロキョロ

上条「御坂っ!」

美琴「あ、アンタ! どこまでジュースを買いに……」

上条「あの子、見なかったか!?」

美琴「嘘っ!? まだ戻ってないの!?」

上条「人が多すぎて、よくわかんねーけど、多分まだ……」



そんな遣り取りをしている二人から、少し離れた場所で、初春は連絡の為に黒子に電話をかけていた。

黒子『初春!?』

初春「白井さん、全員の避難、終わりました!」

黒子『今すぐにそこを離れなさい!』

初春「ふぇ?」

黒子『過去の事件の人的被害は風紀委員だけですの! 犯人の真の狙いは観測地点付近にいる風紀委員!
    ――今回の標的はあなたですのよ、初春っ!!』

初春「え……!?」
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/02/28(月) 00:32:28.49 ID:OoobhoO1o

鞄の少女「おねーちゃーん!」

一瞬、確かに止まった世界が、少女の声で再び動き始める。

上条「よかった、無事だったみたいだな……」ホッ

少女の声に上条と美琴も気付いて、そちらを見遣って、安堵の溜め息を吐いた。

初春「(良かった……)」

パッと見るだけでも、何処にも怪我等はないようだ……だが。

美琴「(あれは……先刻の?)」

初春「その人形……どうしたの?」

少女が持っていたのは、相撲取りのようにマワシを着けたカエルの人形だった。

鞄の少女「あのね? メガネをかけた、おにーちゃんがおねーちゃんに渡してって!」

初春「メガネをかけた……?」

疑問に感じながらも、吸い寄せられるように人形へと初春の両手が伸びる。

美琴「初春さんっ!! ダメ!!!」

全てに気付いた美琴が叫んだ刹那――人形が、その自らの中心へと向かって歪んだ。

初春「っ!?」

咄嗟に人形を放り投げて、少女を抱きかかえるように庇った。

初春「逃げてくださいっ! あれが爆弾です!!」

――逃げる? 有り得ない。

美琴「(超電磁砲(レールガン)で、爆弾ごと!!!)」

爆弾と初春達との間に躍り出た美琴は、スカートのポケットからゲームセンターのコインを取り出そうとする。

美琴「しまっ!?」ポロッ

だが、咄嗟の事で手元が滑り、コインは美琴の手を離れ、無情にも床へと落下する。

美琴「(間に合わないっ!)」

初春が少女だけでも守るべく、目を閉じ、彼女を強く抱きしめた。

美琴は、自らのミスに戦慄し、それでも決して、爆弾から目を逸らさなかった。

だからこそ、美琴だけが、『その背中』を見ていた。

――爆弾から、少女達を守護するかのように立ちはだかる、その少年の背中を。
428 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 00:35:48.84 ID:OoobhoO1o

ドオオオオオオン!!!!!!!!!!



爆風とガラス片が舞い、店から非難していた客や通行人から悲鳴があがる。

通行人A「キャーー!!」

通行人B「何だ!? 爆発!?」

通行人C「例の連続爆破テロだって!」

通行人D「逃げ遅れた人がまだ中にいるみたいだぞ!」

通行人E「風紀委員の子を見たって……」

佐天「(初春……!)」

???「…………ククク」

騒ぎ立てる通行人の中、その少年は勝利者の笑みを浮かべていた。

彼の名前は、介旅初矢(かいたびはつや)。
一連の虚空爆破事件の犯人である『量子変速』の能力者である。

介旅は、ゆったりとした歩みで人混みを離れ、路地裏へと入っていく。

だが、犯行直後で一種の興奮状態になっていた彼は、気付かなかった。

――自分が尾行されていた事に。
429 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 00:44:12.96 ID:OoobhoO1o

~アクメツクローンプラントin学園都市~


筋ジストロフィー研究センター地下に新たに建造されたアクメツクローンプラント。

有事の予備として、個人所有の衛星とは別に勝手に拝借した某大国の人工衛星。

そこを経由して送られたデジタル信号が、プラントに用意された培養器へと到達する。

数分のダウンロード時間。

――そして、彼は『蘇生』される。

情報の通信を知らせる電子音が鳴り響く。

……ピピピピッ

BIOGRAPH

>>BRAIN-MOVE 
          ...clear!
>>BRAINWAVE
          ...stability!
>>HEART-MOVE
          ...clear!
>>THERMO-GRAPH
          ...clear!
>>MEMORY-SHARING
          ...clear!
>>ver.3.98-INSTALL
          ...clear!

Carpe diem quam minimum credula postero.
This power exists for the friend who lost and neighbors who love by living in now.

Happy birthday!

『OPEN』
430 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 00:51:10.36 ID:OoobhoO1o

ピシッ

培養器が開くと同時に、中を満たしていた培養液が排出される。

生(海)「がはっ……!」ゴホゴホ

生(烏)「――災難だったな、海原」

プラント常駐の烏丸生(からすましょう)が、海原の誕生を出迎えた。

生(海)「ああ……でも前の死に方よりかは、格好良く逝けたから良しとするじゃんよ……」ケホケホ

体中に貼りつけられた電極やコードを外しながら、溜め息を吐く海原。

生(鳥)「確か前は……新倉の担任に撃たれたんだったか?」

アクメツに感化され、偽物の仮面を自作してまで自らもアクメツを名乗ったのにも関わらず、
遠距離からの狙撃、爆弾の使用等で無関係の人々に被害を出しまくった善滅野郎、黒沼春近。
自らが暴力団黒沼組組長の息子であった為か、偏った正義感を持ち、数多く現れたニセアクメツの中でも最低の部類に入る奴だった。

生(海)「おいおい、思い出させないでくれよ……結構、気にしてんだから……」

本物が間に合い、仮面を装備して逝けたから無駄死にならなかったとは言え、どうせなら悪滅の果てに死にたかった海原としては複雑である。

生(烏)「まぁ、今回は人助けだったんだ、誇っていいだろう」

生(海)「そういえば、あの娘達は……?」

生(烏)「椿のいる病院に搬送されたよ。簡単に検査したが、二人とも大きな怪我はないそうだ」

生(海)「そうか……良かった」

あの爆発の瞬間、フレンダを庇ったのは正解だったらしい。
431 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 00:57:20.11 ID:OoobhoO1o

生(海)「(絹旗ちゃんが防御力の高い能力者だって、知らなかったら……咄嗟に動けなかったかもな)」

前に一緒に映画を観た時に自慢のように話していたのを覚えておいて、本当に良かった。
……無論、その能力名や、細かい特性までは教えてもらってなかったのだが。

生(海)「――爆弾犯はどうなった?」

生(烏)「もう一箇所の……セブンスミスト? とか言う場所に新倉と藤崎が行っている」

生(海)「おいおい、よりにもよって、その二人か」

生(烏)「ん? 何か問題でもあるのか?」

生(海)「いや、だって、藤崎だろ? 前にニセのシュークリーム爆弾で死んだの」

詳しく言うと、差し入れのシュークリームの箱の中に仕込まれ、掴んだシュークリームを放すと爆発するという奇怪な爆弾であった。

生(烏)「……そうだったか?」

生(海)「烏丸も参加してた科学班の作ったスクランダー着けて、空中で爆散したって聞いたじゃんよ?」

生(烏)「爆弾犯、無事に捕まるといいが……」

完全に忘れていたらしい。

そして、烏丸の言う『無事』とは、何事も無く捕まる、という意味なのか。
或いは、犯人の無事を危ぶんでいるのか……。

生(海)「他人事かよ……」

生(烏)「仮に犯人がアレな目にあっても、私は謝らないぞ?」キリッ

生(海)「……俺としても、ある程度はいいんだけどな」

――自分を殺した爆弾魔の心配をせずにはいられない海原であった。
432 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:05:40.47 ID:OoobhoO1o

~ACP・モニタールーム~


芳川「キミ達の蘇生……この目で見たのは初めてだけど……本当に凄いわね」

モニタールームで、生蘇生の一部始終を見ていた芳川が、その圧倒的な技術に感嘆する。
芳川の隣には、一人の生がいた。

この生の名前は早坂生(はやさかしょう)。

アクメツ時代には、記者クラブに潜入し、悪滅の活動の為の情報収集を主任務とし、
今もまた学園都市での情報収集、並びに各地の生の連絡係を請け負っている。

生(早)「素体の生成に少し時間が掛かるが、それさえやっておけば、記憶の継承や肉体の調整は短時間で終了するからな」

ちなみにクローンである生の素体……その生成には約170時間を要する。
つまり、一週間の準備期間が必要になるのだ。

布束「…………それはともかく、いつまで彼は裸体を晒しているの?」

これ以上は耐えられない、という風に呟く布束。

生(早)「これは失敬」

機器を操作して、培養器の並んだ部屋へマイクから音声を送る。

『おーい、海原の。早く服を着ろー、女性陣が困ってるぞー』

その声を聞いて、モニターの向こう側の海原が慌てて水色の手術着を身に纏う。

芳川「別に私は平気だけど」

布束「however 私は平気じゃないので……」

芳川「ああ、何しろ遺伝子レベルで同じだものね? ……誰の裸体と重ね合わせているのかしら?」

布束「…………………」プシュー///

生(早)「芳川さん、そのぐらいで」

芳川「あら、そう?」

生(早)「まったく……俺は椿の所に海原の遺体を引取りに行くんで、後をお願いしますよ」

目の前でピンピンしている人間の遺体の話というのも奇妙だが、何時までも預けておける代物でもない。

芳川「……行ってらっしゃい」

命を落とした、その肉体すらも素体の養分として、後の個体の糧とする。

――どこまで完成されているのだろうか、彼等の技術は。

芳川「死の商人と呼ばれた、悪の天才…………神宮寺寛の遺産……か」

しかし、これほどの技術を学園都市は本当に知らなかったのだろうか? 
435 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:14:00.13 ID:OoobhoO1o

第七学区・裏路地


介旅の姿を捉えていたのは、安達からのメールで駆け付けた、生の一人だった。

第七学区を拠点にしているスキルアウトに潜伏中だった、新倉生(にいくらしょう)である。

新倉「(あいつ……だな)」

爆発を目撃したにも関わらず、驚くのでも、恐怖するのでもなく、ニヤニヤと笑っていた野次馬の一人。
さながら、放火現場で炎が燃え上がるのを見て喜ぶ放火犯のような、その異質で特徴的な姿を見落としたりはしない。

――俺達が、これまで何人の悪を見てきたと思ってる?

悪を見たら鼻血が出るなんて便利な特殊能力は必要ない。
あの程度なら、一目見れば分かる。

新倉「(まぁ……一応、確認しときますか)」

懐に忍ばせた仮面の中から、カプセル状の薬剤を取り出す。

新倉「(擬似的記憶共有薬ぅ~~~~~~!)」テテテテッテテ-!

その名のとおり、他者の記憶を擬似的に共有させる薬剤だ。
これもアクメツ時代……いや、その前から使用していた慣れ親しんだアイテムの一つである。

『擬似的記憶共有薬』

某国諜報部で使用されていた、記憶を消去、操作する薬剤を発展進化させたもので、
神宮寺超人化計画の過程で生まれた新技術だ。

新倉「(とは言っても、10年前の最新技術だから、探せば学園都市にも似たようなのはありそうじゃん)」

この薬剤は、死亡した人間の記憶データを元に精製され、服用した人間はビデオ再生のように記憶を『見る』事が出来る。

今回の場合は、救急車の中で絶命した海原生の記憶。
海原が装着した仮面から発信されたデジタル信号は、人工衛星、プラントを経由して、全ての仮面へと、その情報を伝達する。
そして、各自の仮面の中で精製されるのが、今、新倉が飲んだ擬似的記憶共有薬である。

新倉「(海原、お前の記憶を見させてもらうじゃん……)」ゴクンッ

――思い出すのは、約一時間前。クレープ屋。客。ヌイグルミ。

いくつかの単語をキッカケに、芋づる式に記憶が想起される。
少しばかり、記憶を『思い出す』のにコツがいるが、『統合』前の記憶共有手段としては割と便利だ。

新倉「(眼鏡、音楽プレーヤーとヘッドフォン、髪の色は灰色、ショルダーバック…………ビンゴ!)」

目の前を歩く少年と、海原が目撃していた犯人らしき少年の姿が完全に一致する。

――標的確認。
436 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/02/28(月) 01:21:26.34 ID:OoobhoO1o

その『悪』は、悲鳴をBGMに、自らの所業に酔いしれていた。

介旅「(いいぞ……! 今度こそ逝っただろう……)」

今までは、怪我人こそ出たものの、威力が足りずに標的を殺すことは出来なかった。

介旅「スバラシイ!スバラシイぞ、僕の力!! 徐々に強い力を使いこなせるようになってきたッ!!」

新倉「(おいおい、声出てるじゃん……)」

興奮する『悪』は、背後に『悪滅』がいる事に気付かずに、歓喜に震える。

介旅「もうすぐだ! あと少し数をこなせば、無能な風紀委員もアイツらも、みんなまとめて……」

新倉「(はい、言質っと……)」テクテク

数歩下がって、助走距離を取る新倉。

介旅「吹き飛ばッ――!!!???」

高らかに自供した介旅の背中に、タップリと速度をつけて飛び上がった新倉のドロップキックが突き刺さった。

介旅「がっ――がっ――げふっ!?」ガシャーン

周囲のゴミ箱を巻き込みながら、ボールのように転がっていく。
437 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:24:25.33 ID:OoobhoO1o

介旅「ぐっ……??? な、一体、何が……!?」

新倉「はーい? 久しぶりじゃん、この野郎」

満面の笑みで立っている新倉の顔を見て、介旅は驚愕する。

介旅「なっ!? お、お前……どうして生きて……!(昨日の風紀委員……公園にいた筈なのに!)」

昨日、自分をさっさと助けに来なかった無能で不愉快な風紀委員。
今日は、公園でアルバイトでもしていたのか、クレープなんて焼いて、可愛い美少女を侍らしていた憎きリア充野郎だ。

新倉「ほぉー? ……やっぱり、お前か爆弾魔は」

介旅「い、いや、何の事だか……僕には……(くそっ、爆破させるタイミングを間違えたか……!?)」

新倉「おいおい、この後に及んで白を切るとか……あー、そっか。
    アレだけやって、怪我人もいないんじゃ、恥ずかしくて認められないか?」

介旅「ば、馬鹿な!? どっちも僕の最大出力だぞ!!」

新倉「――いや、馬鹿は、お前じゃん」

まんまと語るに落ちた介旅を呆れた顔で睨む。

介旅「い、いや……外から見て、そう思っただけで……あの威力だと、助かる人もいないんじゃないかと……」

新倉「安心しろよ、爆弾魔。確かに怪我人はいなかったが、それは尊い一人の犠牲があっての話じゃん」

介旅「ぎ、犠牲……?」
438 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:28:17.77 ID:OoobhoO1o

新倉「それは……『俺』だあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」ブンッ

咆哮と共に振り抜かれた蹴りが介旅の顔面を捉え、へし折れた鼻から鮮血が散った。

介旅「ごっがあああああああああ!?」

新倉「爆弾なんて下の下で俺を殺しやがって……ただで済むと思うなっ!!!」スチャ

溢れんばかりの怒りオーラと共に新倉の懐から黒光りする二つの物が取り出される。

アクメツマスク(偽物)と、某ルートより入手した拳銃である。

介旅「な、何だよそれ!? それで僕をどうする気だよっ!?」

新倉「さーて、どうすると思う?」

介旅「う、撃つのか……お、お前、風紀委員の癖に僕を……!」

新倉「おいおい、言っただろう? 俺は死んだって……だから、『人違い』じゃん」

仮面を着け、ゆっくりと拳銃の遊底を引く。

介旅「な……」

新倉「それにこの仮面を着けてる時は、俺は『アクメツ』って名乗る事にしてるんだよ」

介旅「アクメツ……悪……滅……?」

新倉「そう、アクメツ。だーかーら――」

パパパン!! 
440 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:31:59.79 ID:OoobhoO1o

何故か引き金を一回引いただけで弾丸が三発連続して発射された。
強烈な銃の反動で、爆弾犯の足元を狙った弾丸が、上方に大きく逸れる。

三発の弾丸は爆弾犯のこめかみをかすめ、眼鏡とヘッドフォンを吹き飛ばして路地裏の奥へ飛んでいく。

生(新)「(って、何で三点バースト!?)」

脅すだけのつもりだったのだが、危うく当ててしまう所だった。

介旅「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

落ちた眼鏡を拾って、転がるように逃走する爆弾犯。

生(新)「あ、逃げた」

だが、新倉の顔には焦りはない。
何しろ、今の新倉にとって裏路地はホームグラウンドと言っていい程に慣れている場所だ。

見失う可能性は皆無だし、こちらは一人ではない。
既に奴に逃げ場はないのだ。

この際、風紀委員か警備員にでも捕まるまで、たっぷりと恐怖を味わって、自分の行いを悔やめばいい。

生(新)「つーか、あの馬鹿忍者、また懲りずに銃に変な改造を……」ピポパ

携帯を操作して、仲間の生へと連絡しながら愚痴る。

生?『どうした、新倉の』

生(新)「よお、藤崎の。犯人の奴、そっちに行ったから頼むじゃん」

生(藤)『おいおい、逃がしたのか……捕まえて適当に脅せばいいのか?』

生(新)「殺すなよ~? 警備員か風紀委員に引き渡すんだから」

生(藤)『りょーかい』ピッ

生(新)「さて、どうなるかね……」

介旅が拾い損ねたヘッドフォンを拾い上げて、くるくると指先で弄びながら新倉は呟いた。
441 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:38:54.60 ID:OoobhoO1o

新倉から距離を取った介旅だったが、未だにその精神は混乱の中にいた。

介旅「な、何なんだよ……!? どうしてこんな……!?」

殺した筈の男が生きていた事。
突然、男が得体の知れない仮面を着けた事。
その男が自分に対して何の躊躇もなく発砲した事。

――それら全てが、異常。

勝利の頂きから、恐怖のドン底へと叩き落とされた介旅の心理状態は、完全な袋小路だった。

介旅「こ、殺される……? アイツ……風紀委員じゃなかったのか……?」

路地を駆け、角を曲がれば表通りへと戻れる。
そんな安堵からか注意が散漫になっていた介旅は――

――どんっ、と誰かにぶつかった。

その衝撃で眼鏡が落ち、視界が歪み、ぶつかった相手の顔すら判別出来なくなる。

???「おっと、大丈夫じゃん?」

介旅「あ、ハイ。すみません……」

???「ところで少年、殺されるとは穏やかじゃないな……?」

介旅「え、あ、いや……その」

???「おっと、先に眼鏡をどうぞ」

介旅「あ、ありがとうございます」

男?から眼鏡を手渡され、それをかけた介旅はようやく周囲の風景を認知する。

???「ところで、アンタを殺そうとしてる、風紀委員ってのは……」

――そして、自分がぶつかった相手の顔も。

生(藤)「こーんな、顔だったかい!?」ニタアッ

介旅「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」
443 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:58:22.75 ID:OoobhoO1o

むしろ、介旅が失神せずに回れ右して、再び逃亡出来た事を評価してあげて欲しい。

生(藤)「意外と逃げ足速いな……さて、追いかけて……ん?」

介旅が逃げた路地の先。

そこに前髪から電気をバチバチと走らせた女子中学生が仁王立ちで、介旅を待ち構えていた。

生(藤)「」ピポパ

生(新)『どうした? 捕まえたのか?』

生(藤)「今、爆弾犯が雷様に捕まりそうです、どうぞー」

何しろ、一心同体の生達である、それだけで全てが伝わった。

生(新)『……余波で携帯が壊されないように気を付けろ、どうぞー』

生(藤)「ついでにヘソも隠します、どうぞー」ピッ

充分に脅した事だし、後は彼女に任せて問題ないだろう、と藤崎生(ふじさきしょう)は、自分の携帯電話を死守すべく撤退を開始した。
444 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/02/28(月) 01:59:52.85 ID:OoobhoO1o

ここは学園都市だ。
そこの秩序は、そこに暮らし、その治安を守る者によって維持されるべきで、自分達が必要以上に干渉するべきではない。

それが学園都市に潜入する前に生達の間での共通の考えだった。
第一、ここを訪れた目的は、妹達への支援の為だし、既に自分達の『悪滅』は10年前に失敗という名の成功に終わっている。

だが、目前に何らかの『悪』が現れた時、自分達はどう動くべきか。

――その『悪』の性根を『滅』してやればいい。

少なくとも、あの少年が爆弾魔として、再び犯罪に走る可能性は低いだろう。

更生出来るかどうかは知った事ではないし、自分達の役割でもない、と思う。
それこそ、風紀委員なり警備員の仕事の筈だ。

だから、俺達は……あの少年を殺さない。


457 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/03/01(火) 03:46:54.92 ID:xngX6jKVo

~Seventh mist店内~


『KEEP OUT』

爆発の起きた一角は、風紀委員と警備員によって封鎖され、鑑識作業が行なわれていた。

風紀委員「あの……容疑者の少年を確保した模様です」

黒子「……了解ですの」

初春「白井さーん!」パタパタ

その声に黒子が振り返ると、そこには鞄の少女を連れた初春と佐天の姿が。

黒子「初春! 心配させて……でも、どうやら無事だったようですわね」

佐天「本当、爆発した時はどうしようかと思ったよー」ムギュウ

初春「もう、佐天さんってば……苦しいですよー」///

黒子「しかし、この被害の中、よく無事で……」

初春「御坂さんのおかげです!」

鞄の少女「トキワダイのおねーちゃんが助けてくれたの!」

初春&少女「「ね~?」」

黒子「お姉様が……?」

黒く焼け焦げ、破壊され尽くされたフロアを眺める。
だが、フロアの一角のみが何事も無かったかのように綺麗なままだ。

黒子「(初春達がいた場所だけ、全くの無傷だなんて……能力をどう使ったら、こういう風になりますの?)」

まるで、能力が『消された』ような現場に黒子は疑問を募らせるのであった。
458 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/01(火) 03:53:30.26 ID:xngX6jKVo

話の渦中の御坂美琴は、同じくセブンスミストの一階にある、正面入口とは別の出入り口にいた。

美琴「(まだ正面の方はゴタゴタしてるから、出てくるならこっちだと思うんだけど……)」

――あの時。あの爆発の瞬間、美琴の超電磁砲は間に合わなかった。

美琴「(実際に初春さん達を助けたのは……)」

上条「~♪」

その少年の姿を確認すると、その進路を阻むように向き直った。

美琴「(――コイツだ)」

上条「あのー、御坂サン?」

美琴「何よ?」

上条「何故に、RPGのボスキャラみたいに待ち伏せの上、通せんぼしてるんでせう?」

思わず、誰がボスキャラよ!? と電撃を飛ばしたくなった美琴だが、流石に我慢して本題を伝える。

美琴「……このまま黙って帰るつもり?」

上条「えっと、あの子は初春さんに任せたし、帰っちゃ……ダメですかね?」

補習を言い渡されそうな駄目生徒のような表情で美琴の様子を窺う上条。

美琴「そっちじゃないわよ。
    ……なんか皆、あの場を救ったのは私だって思ってるみたいだけど?」

上条「それがどうかしたのか?」

どうでもいい事かのように聞き返す。

美琴「だーかーら! 今、名乗り出ればヒーローだって言ってるのよ!」///

上条「えーと……御坂は、俺にヒーローになって欲しいのか?」

美琴「ち、違うわよっ! 何だか、アンタの手柄を横取りしたみたいで嫌だし……アンタが……その」
459 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 03:56:00.96 ID:xngX6jKVo

上条「俺が?」

美琴「アンタが……せ、正当な評価を受けてないのが……何かムカつくのよ!!」

上条「えぇー……何、その理不尽な怒り……」

美琴「だ、だって……アンタ、本当は凄い奴なのに、何故かいつも不幸だし、基本的に無能力者扱いだし……」

上条「あの凄いかどうかは別にしても…………改めて、不幸だの無能力だの言われると、結構ツライんですが……」

容赦のない言葉に上条の繊細な心は軽く傷ついた。

美琴「う、ゴメン」

上条「……でもなぁ、別に誰が助けたなんて本当にどうでもいいだろ?」

美琴「…………」ムムム

上条「実際、御坂が何とかしてた場合を考えてみろよ。
    多分、お前だって…………そう言うだろ?」

美琴「…………かもね」

上条「(大体、特別扱いしない相手として俺と友達になった癖に、何で俺の周囲からの評価を気にするかね?)」ジー

美琴「な、何よ? ジッと見たりして……」

――その時の上条は何かしら変だった。

それは早く帰りたいからこそ、美琴を説得して話を終わらせたかったかもしれないし、
対等を望んでいた筈なのに、何故か自分を特別扱いしたがる、美琴に対して少し苛立ちにも似た感情が湧いたからかもしれない。

上条「……俺としてはさ」

美琴「うん?」

上条「みんなが……いや、お前が無事だったんだし、それでいいじゃねーかって思うんだよ」

460 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 03:57:10.95 ID:xngX6jKVo

美琴「な、な、な、何を……」///

上条「自惚れじゃなければ、御坂とも少しは仲良くなれたと思うし……そんな友達をあんな事で失いたくない訳。
    あの子や、初春さんとは知り合ったばっかだったけど、それでも知ってる人や身の回りの人が傷つくのは御免だしな」

『あの子』や『初春さん』という単語が無かったら、美琴は精神の均衡を保てなかったかも知れない。

美琴「う、うん……」

上条「で……みんなが無事なら満足だし、
    それらが守られるなら、別に実際にやるのは俺じゃなくてもいいって思うんだけども……」

美琴「……けども?」

上条「御坂が、どうしても俺が評価されないと気が済まないって言うんなら――お前が褒めてくれよ」

美琴「ふぇ? …………ほめ……て……って、私が!? な、何でそうなるのよ!?」///

上条「いやー、基本的に誰かに褒められる経験とかないから、大勢にどうこうされるのは嫌だし……
    なら、『御坂だけ』が理解してくれて、個人的に俺を評価してくれてりゃ充分かなーって」

大勢に賞賛されたいとは思わないからこそ、特に意識せず口から出た発言だったのだが、その破壊力は甚大だった。

美琴「(御坂だけ……御坂だけ……御坂だけ……?)」///

その色々と強烈なフレーズが美琴の中で幾度もリフレインされる。

上条「み、御坂? どうした?」

美琴「…………ほ、褒めればいいのよね?」

461 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 03:59:23.26 ID:xngX6jKVo

上条「え、あ、そうだな……?」

ここに来て、上条は何かとんでもないミスを犯したのではないかと気が付いた。
それに対し、何やら意を決したらしい御坂は、ちょんとつま先立ちになって、上条の頭へと手を伸ばす。

上条「(ちょ、顔近っ……!?)」///

美琴「え、えらい……えらい……」ナデナデ

上条「(あ……れ……? な、何だこの状況……?)」///

『アンタにしては、よくやったんじゃない?』的な一言を貰って話を終わりにしようと画策していた上条は大いに混乱した。

上条「あ、あの御坂さん、上条さんとしては一言、お褒めの言葉を戴くだけで充分だったんですが……?」///

美琴「え、嘘っ!? だ、だって私だって、小さい時にお母さんに褒められる時はこんな感じでっ!!」///

上条「何で、母娘の心暖まる場面を年上の男相手に再現してんだお前は!? 恥ずかしいってレベルじゃないぞ!?」///

上条の指摘に辛うじて維持されていた美琴の何かが決壊する。

美琴「………ふ、ふ……ふ」///

上条「(あー……また、このパターンかー)」

――上条は、既に理解していた。これは例の言葉の準備が必要だと。

美琴「ふにゃ~~~」///

バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!

上条「不幸だあああああああああああああああああああああ!!」

爆弾に続いて、今度は停電騒ぎがセブンスミストを襲ったのであった。
462 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 04:00:55.08 ID:xngX6jKVo

第七学区・公園入口付近


風紀委員の固法が連絡を受けて、爆発の起こったという公園に駆け付けたときには、全ての処理が終わっていた。

公園の入口には警備員(アンチスキル)のものらしき数台の車が停まっている。


『KEEP OUT』


そこから少し進んだ場所にある、爆発現場は黄色のテープで野次馬が入らないように規制されていた。

固法「風紀委員です、現場を見せてもらって構いませんか?」

警備員「お疲れ様じゃん、どうぞ中へ」

現場を封鎖している、警備員の一人に風紀委員の腕章を見せて、中へと入れてもらう。

固法「(あれ? 今の警備員の人……誰かに似ているような……?)」

気になりながらも奥へ行くと、屋台の残骸らしき黒く焼け焦げた物体の側に見知った顔がいた。

固法「安達さん!」

安達「あ、固法先輩……お疲れ様です」

固法「爆発の被害は?」

安達「爆弾が仕掛けられていた、屋台が全壊、周囲の木やベンチなんかも木っ端微塵ですね」

固法「……人的被害は? 何人か巻き込まれたって聞いたけど……」

安達「屋台の店主が、爆発時に来店していた客を庇って、重傷。……今は病院です。
    ……幸い、客二名の方には怪我はありませんでしたが、念の為にこちらも別の救急車で病院へ搬送させました」

さらっと安達は嘘を吐いた。
463 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 04:02:36.10 ID:xngX6jKVo

安達「(皆が救急車で来てくれたから、海原の記憶移送は間に合ったけど……)」

破壊された屋台の店主である、海原生(かいばらしょう)は、至近距離で爆風を受け、背中に重度の火傷を負い、病院への搬送中に死亡した。

固法「……この程度で済んで良かった、という所かしら。
    『向こう』は御坂さんの御蔭で、怪我人も出てないし……犯人も確保されたそうよ」

安達「……そうですか」

病院まで持たなかった海原に対し、来店していた客の二人は、爆発の衝撃で気絶こそしていたが、二人とも無事だった。

まず、海原が庇った金髪の女子高生は、少し熱風を吸い込んでいたが、それ以外は特に大きな怪我もなかった。
もう一人の中学生くらいの女の子は、高位の能力者だったらしく、あの爆発の中でも、ほぼ無傷。
恐ろしいことに病院に運ばれる途中に自然に目を覚まして、金髪の少女に付き添っていた。

安達「(海原が居なかったら、無関係な人間に被害が出てたな……)」ギリッ

自分が、風紀委員になった為に海原が標的にされ、その店の客まで巻き込まれた――そういう想いもある。

だが、安達は……というよりも生達は、その手の自分を責める感情で悪への追求を弱めるような真似はしない。
ここで中途半端に自分を責めたりすると、相対的に犯人への追求や怒りが弱くなってしまうからだ。
最も責任を問われ、かつ罪を贖わなければいけないのは、あくまでも虚空爆破事件の犯人なのである。

連絡では、新倉達が『かなり』脅した上、超能力者(レベル5)の鉄拳制裁を喰らったらしいので、少しは溜飲が下がるが。

固法「それにしても、犯人の狙いが風紀委員だったのだとしたら、ここの屋台はどうして標的にされたのかしら?」

安達「……え」ギクッ

固法「だって、そうでしょう? セブンスミストの方は初春さんが標的だった訳だし……ここは風紀委員とは無関係じゃない」

安達「えーっと……逆恨みで、風紀委員を狙うような奴らしいですから……ここで何か気に触った事でもあったんじゃないですか?」

固法「そうかしら……?」

安達「こ、ここは警備員に任せて、俺達は白井さん達と合流しませんか!?」

固法「うーん……そうね、考えても仕方ないし。後は警備員の取り調べの結果を待ちましょうか」

安達「は、はい!(危なかったぁぁぁ!?)」ホッ

先へ進む固法の背後で、安達はこっそりと安堵の溜め息を吐いていた。
464 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 04:08:01.45 ID:xngX6jKVo

~とある学生マンション~


その後、合流した風紀委員達が事務処理や犯人の身元調べ等に追われている頃。

事件後のゴタゴタから解放され、初春や白井よりも一足先に帰宅した佐天は、自室でパソコンに向かっていた。

佐天「御坂さん、格好良かったな……爆弾犯相手に、あんな風に啖呵を切って……」

一日を振り返り、思い出すのは超能力者(レベル5)の勇姿だった。
セブンスミストから避難した時、偶然にも佐天は路地裏で美琴が爆弾犯を捕える場面を目撃していた。

――例え、低能力者(レベル1)のままだったとしても、私はアンタの前に立ち塞がったわよ

佐天「(きっと、御坂さんは本当にそうしていたんだろうな……)」

レベルなんて問題にせず、許せないモノに立ち向かっていく。
レベルに固執してしまう自分に……そんな強さが持てるだろうか?

佐天「……無理だよね」

美琴の言葉と同じように介旅の叫びも佐天の心に暗い影を落としていた。

――力のある奴なんてのは、皆そうなんだろうがっ!!

力への羨望。
自分の無力さへの絶望。
あの少年は救われたいと思いながらも、救われない現実を憎み、恨んで、破壊を撒き散らしていた。

佐天「(……きっと、そういう気持ちは私の中にもある)」

でも、だからこそ同じにはなりたくなかった。

――目指す頂上と、望まない末路。

それらを同時に見せ付けられて、佐天の焦りは一層、大きな物へと変わっていた。

佐天「(多分、今のままだと私……駄目になる……)」
465 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 04:09:34.26 ID:xngX6jKVo

あるかどうかも分からない能力の為に、報われるかどうかも分からない努力をする。
何のアテもなく背負うには、自分にかけられた期待は、少し……重かった。

佐天「(学園都市の都市伝説……幻想御手(レベルアッパー)か……)」

前に授業で習ったが、学園都市にいる無能力者も厳密に言えば、
開発を受けた時点で「観測出来ない程弱い能力者」なのであって、通常の無能とは意味合いが違うらしい。

佐天「(噂だと、能力者のレベルを引き上げるって事らしいし……)」

ならば、噂の幻想御手とやらを使えば、
自分の中にあるかもしれない、『それ』を確かめる事ぐらいは出来るだろう。

――強大な力なんていらない。

友達が……初春が困った時、彼女を助ける為の力が欲しい、とは思う。
でも、そんな手段で得た力で、それを為した所で待っているのは後悔だけだ。

佐天「(せめて、私に本当に能力の才能がないのか知りたい……)」

自分の為の努力、自分の為の勉強、自分の為の開発。

だが、今の佐天は――その自分が信じられない。

佐天「(私は、幻想御手が欲しい……)」カチカチ

――幻想でも構わない、こんな弱い自分を支えてくれるなら。

自分が自分らしくある為に。

心が折れて、倒れてしまう前に。
466 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/01(火) 04:12:32.97 ID:xngX6jKVo

佐天「見つからないなぁ……」カチカチ

何しろ、能力者のレベルを引き上げる道具、という事しか分かっていないのだ。
何処かの学者が残した論文だとか、料理のレシピだとか、噂の形もバラバラ。
きっと、そんな僅かな情報だけで探す方が難しいのだろう。

佐天「やっぱり、ただの噂なのかな……?」

そんな風に考えて、また気分が暗くなってしまう。

佐天「……よしっ、気分転換に何か新曲でも入れておくか!」カチ

お気に入りの音楽ダウンロードサイトへいき、新曲紹介へとカーソルを動かす。

佐天「…………あれ?」

画面に表示されている『News』の文字。
その『News』にカーソルを合わせた時、佐天はそれに気付いた。

佐天「隠しリンク……?」

導かれるように、リンクをクリックする。

TITLE:LeveL UppeR
ARTIST:UNKNOWN

佐天「これって……」

自分が渇望した物が目の前に現れ、佐天は小さく息を呑む。


――こうして、佐天涙子は幻想御手(レベルアッパー)を入手した。


第三話 『アクメツ、虚空に散る!?』 完
467 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/03/01(火) 04:15:59.46 ID:xngX6jKVo
大体分かった、な感じの次回予告!


路地裏を中心に絶賛不良として活動中の新倉生。
所属するスキルアウトのリーダーから幻想御手の売買している他チームの調査を頼まれた新倉は活動を開始する。
そして、売買の現場で新倉は悩める一人の無能力者と出会う。

???「遂に念願の幻想御手を手に入れたぞ!」

???「……そんな得体の知れないブツは、ノーだぞ……」

佐天「もっ、もうやめなさいよ!」

???「何の力もねぇ、非力なヤツにゴチャゴチャ指図する権利はねーんだよ!」

新倉「悪いな? ウチは女子供には優しいのがポリシーじゃん」

佐天「私、弱くて……結局、何も出来なかった……!」

新倉「――佐天は、充分に強いって」

佐天「ふふっ……これで、共犯になっちゃいましたね?」


一方で介旅の能力強度の不自然さから、幻想御手に着目した美琴と黒子も独自に覆面捜査を行って……


新倉「(面白そうだから、黙っていよう……)」

美琴「ダメ……かな?」ウルウル

黒子「」Ω\ζ°)チーン

上条「(あのビリビリ娘は、何をやってるんだよ……?)」///

美琴「全部、忘れなさいっ! じゃなきゃ、アンタの記憶を物理的に消してやるんだからっ!!!」///

上条「不幸だあああああああああああああああ!?」

???「まさか、あの子が学園都市に逃げこむとは……少々、困った事になりましたね」

???「関係ないさ、僕らの役目はいつだって……変わらない。変えられないんだ」


超人として戦った少年と凡人として生きる少女が出逢った時、物語は動き出す?


第四話 『少年少女達は神の御手に幻想を見るか?』


次回も見ないと……アクメツするじゃん? 
473 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/03(木) 21:03:58.10 ID:WVU6kz38o

学園都市には闇がある。

底知れぬ闇。

普通の学生が街を歩いた程度では、その闇が顔を覗かせる事はない。

だが、ほんの少し道を外れただけで、闇は哀れな生贄を欲して、その触手を伸ばしてくる。

絡め取られ、その深き穴に引きずり込まれたなら、後は堕ちるだけ。

堕ちた先では、人間の命なんて軽い。

本来は悲劇である筈の人の死が、道端の石ころの様に転がっている。

――ならさ、落ちないように支えてやらないか?

腐ってる、狂ってる、驕っている。

なんだ、この街は?

変だろう?

可笑しいだろう?

誰だって、生きていたい。

誰だって、平和で穏やかな暮らしがしたいさ。

――ならさ、守ってやればいいじゃん。
474 :とある複製の妹達支援[saga ]:2011/03/03(木) 21:05:20.70 ID:WVU6kz38o

例えば、無能力者狩り。

強者による一方的な弱者への暴力。

許せるか?

学園都市から無能の烙印を押され、挙句は能力者が自分の力を試す実験台扱い。

俺達はマウスか? 違うだろう? 人間だろう?

――ならさ、立ち向かえばいいじゃん。

その男の言葉は、青臭かった。

この学園都市で通用するとは思えない、甘ったれた考え、生き方。

だが、男は強かった。

実際に無能力者狩りを行っていた能力者にその身一つで立ち向かい、撃破してみせた。

奴は証明してみせた。

それから、少しずつ、少年達は変わった。

いや、気付いたのかも知れない。

本来、その想いは皆が持っていたのだ。

ただ、のしかかる現実の前で、それを捨てなければ生きていけないと、勝手に限界を決めて諦めていた。

――どうせ、馬鹿やるならさ。誰かの為に損の出来る馬鹿になろうぜ?
475 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/03(木) 21:12:53.70 ID:WVU6kz38o

俺達は不良だ。

それは変わらない。いや、変わらなくてもいい。

無能力者のままで、ゼロのままでいい。

だが、マイナスにはならない。誰かのプラスになってやれ。

ほんの少しだけ力の向ける先が変わっただけだ。

どうせ、喧嘩を売るなら、相手はデカイ方がいい。

それでこそ、男が立つってもんだろ。

特定の個人ではない。

言わば、環境への反逆。

――俺達自身を……多くの無能力者達を……学園都市から、そこに潜む悪意から、守ってみないか?

寡黙でありながらも、優しき心持った男がいた。

不良でありながらも、熱き心を消せずに燻っている男がいた。

軽薄な仮面で、その実力と生き様を隠す男がいた。

男達の本質を見抜いた、一人の超人がいた。

そんな馬鹿野郎共に惚れ込んだ男達が集まった。

今、第七学区最大規模を誇るスキルアウトは、無能力者達を不当な暴力から守る、強固で強大な防波堤へとなりつつあった。
476 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/03(木) 21:25:42.20 ID:WVU6kz38o

7月19日


第七学区・木の葉通り


学生達からは「ケンカ通り」と呼ばれる、第七学区の三九号線にそのジムはある。


~Led Scorpion~


とはいえ、既にジムは潰れていて、見た目は完全に廃屋である。
ジムを象徴する、赤い看板は傾き、電飾の類も壊れっ放し。
窓ガラスには木の板が打ち付けられ、隙間にもガムテープで目張りがされている。

???「(もう少し、どうにかならないのかよ……)」

ドアノブの歪んだドアを開けて、ジムの中に入る。

その外見とは対照的にジムの中は掃除が行き届き、ある程度の清潔さが保たれていた。
壊れたまま放置されていたトレーニング器具も修理され、ソファや冷蔵庫などの家電も持ち込んで、ちょっとした秘密基地といった風情である。

???「(内装との差が激しすぎるだろうが……)」

何故こうも、外と内で違う状態になっているのか?

その理由はただひとつ。
このジムがスキルアウトの拠点(アジト)だからである。

???「(いつの間にか、随分と健康的な集団になっちまったな)」

自分達の拠点を訪れたスキルアウトの少年、服部半蔵(はっとりはんぞう)は、
ジムの中でトレーニングに励む仲間達の姿を複雑な思いで見つめながら回想する。
477 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/03(木) 21:32:18.55 ID:WVU6kz38o

半蔵「(やはり……一月のアレからだな)」

一月の第三金曜日にやったATMの強奪。
直接動いたのは、リーダーの駒場利徳(こまばりとく)と、スカウトしたばかりだった浜面仕上(はまづらしあげ)と、自分。

結果から言えば、アレは失敗した。

原因は過激で巨乳な警備員と、ハリウッド映画のスタントドライバー並に運転技術が卓越した警備員の二人だ。
何やら拡声器で二人して「じゃん」を連呼していたのを覚えている。

それはともかく、盗んだ車は大破するわ、奪った金も灰になるわで散々だった上、自分達は留置場入りで計画は大失敗。
なんとか娑婆に復帰した後も活動資金は底をつくわ、拠点にしてた路地裏が再開発されてビルに変わってるわ、災難が続いた。

半蔵「(……奴が俺達に接触して来たのは、そんな時だ)」

まるで『粋の良い馬鹿』がいる、と誰かに紹介されたかのようなタイミングであった。

半蔵「(その是非は別にしても、奴が来て……スキルアウトは変わった)」

ただの馬鹿から、少しだけ格好の良い馬鹿になった。

元々、このスキルアウトはリーダーである駒場利徳(こまばりとく)の人柄というか、人徳のような物に自然と集まった連中が多かった。
能力者による、無能力者狩りを防ぐ為、そして無能力者達を守る為に駒場は動いていたが、
それでも仲間達の多くは、ただの不良に過ぎず……単純に能力者への反発心から協力していたに過ぎなかった。

半蔵「(奴は、本気で駒場に賛同していた……そして、仲間達の意識を根刮ぎ変えてしまった)」

気がつけば、皆が駒場と同じ想いを抱いている。

半蔵を含め、スキルアウト達は下らない幻想を見ているのかもしれない。
しかし、今のところはその幻想が消える様子はない。

目的を得た彼等の瞳には活力がある。
そして、活力を得た少年達は強くなった。

ただ燻っていた時よりも、ずっと。
478 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/03(木) 21:34:52.55 ID:WVU6kz38o

半蔵「(意識だけじゃない……どこからか、このジムを見つけて来て、数日で今の状態に改造しやがった)」

ボロボロだった壁を直す姿は本職の左官屋もビックリの腕だった、と駒場が評していたのを思い出す。

加えて、運び込まれた家電も、元はゴミとして捨てられる筈の代物だ。
だが、修理された今は新品かと勘違いしそうな程、元気に稼働中である。

スキルアウトの少年達は目標に続いて、居場所を得た。

半蔵「(……資金面の問題も解消された)」

今までは、駒場が「女子供には手を出さない」というスタンスから、
「鉄板盗んでスタコラサ」という、実に情けない手段で資金を確保していた訳だが……
現在は実入りの良いアルバイトが見つかって、犯罪行為に手を染める必要が無くなってしまった。

半蔵「(奴のバックには大掛かりな組織があるのか……?)」

スキルアウト達に紹介された仕事は、『街の噂や情報を集める事』だった。
ただそれだけで高額のバイト代が出る。
ATM強盗に比べれば少ないが、犯罪のリスクと天秤にかけた場合、迷うことの無いぐらいの金額である。

半蔵「(……俺達は、誰かの目であると同時に草という訳か)」

世界に社会に集団に溶け込み、己の目的を遂行する。
その在り様は――まるで。

半蔵「(――忍者)」

ほぼ確実に何らかの目的に利用されているという認識がありながらも、『その人物』に対して半蔵は明確な敵意を持てない。

半蔵「(相手がアレでは……警戒する気にもならないが)」

ちらり、とソファに座って仲間達と話している『その人物』を見遣る。









新倉「だから、バニーにはシルバートレイじゃん!?」

スキルアウトA「いーや、あみタイツだね!?」

スキルアウトB「いやいや、人参だろう!?」

半蔵「」ガクッ

何故か仲間達と「バニーにつけるオプション」について、激論を交わす新倉生(にいくらしょう)の姿に半蔵は脱力する。
479 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/03(木) 21:38:24.18 ID:WVU6kz38o

新倉「トレイの上で股開かせて、トレイに反射した肢体を眺めるのが楽しいんだろうが!?」

スキルアウトA「そんなモン、あみタイツを破る快感に比べたら……」

スキルアウトB「下の口に食べさせるのが楽しいんだよ!」

内容は最低だが、当人達は至って大真面目に語り合っていた。

半蔵「(は、果てしなくどうでもいい……)」

「「「おい、半蔵はどう思う!?」」」

そんな半蔵の思考を知ってか知らずか、馬鹿共は半蔵の意見を求めてきた。

半蔵「え、俺? ……全部付ければいいんじゃね?」

呆れながら、適当にそう答える。

「「「お前、天才かよ!?」」」

さらなら燃料を投下され、野郎共の下品なトークは続く。

480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/03/03(木) 21:41:26.53 ID:WHeuS93Ao
その発想はなかった!
481 :タイプミスです。さらなら→さらなる[saga sage]:2011/03/03(木) 21:51:12.32 ID:WVU6kz38o

新倉「……ナンパじゃ無理だろー?」

スキルアウトA「合コン開くにしても、面子がなぁ……」

スキルアウトB「最近、知らない女からメールが届くんだが……」

新倉「いや、それは止めというた方がいいじゃん」

馬鹿共の話題が「バニーにつけるオプション」から「どうやってバニーを着てくれる女の子を落とすか?」に移り始めた頃。

???「お前等! 大ニュースだぞ!!」

そんな台詞と共に、一人の男がアジトへとやって来た。
男の名前は浜面仕上(はまづらしあげ)。

新倉「おお、ハマー! 遅かったじゃん!」

スキルアウトA「やっと来たか、バニーキング!」

スキルアウトB「待ってました!」

浜面「え、何だよ、この空気。つーか、バニーキング言うな! 俺は別にバニー萌えじゃねーよ!?」

「「「いやいや、そんな事言わずに語り合おうぜ、バニー」」」

浜面「愛し合おうぜ、ハニーみたいに言うなよ……」

半蔵「バニーは置いといて……浜面、何が大ニュースなんだ?」

浜面「あ、何? 知りたい?」ニヤリ

半蔵「」イラッ

「「「いいから、話せよバニーキング」」」

浜面「ひでぇ」orz

仲間からの容赦のない言葉に膝をつく浜面。
482 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/03(木) 21:56:45.91 ID:WVU6kz38o

新倉「んで、どうしたじゃん?」

浜面「いやさ、最近……急にというか、妙に能力者が力をつけてきてただろ?」

半蔵「能力者狩りも増えてきてるな、昨日もリーダーが一人馬鹿を黙らせたし」

浜面「それで、能力ってのは一朝一夕で強くなるようなもんじゃないだろ?」

スキルアウトA「伸びねえから、俺らスキルアウトやってるんだもんな」ケラケラ

スキルアウトB「噂の幻想御手(レベルアッパー)が実在してれば別だけどなー!」ケラケラ

半蔵「……おい、浜面まさか」

浜面「その通り――」

ジャージのポケットから音楽プレーヤーを取り出して、一言。

『念願の幻想御手を手に入れたぞ!』テレレッテレ-

全員「「「「いや、いらねーだろ」」」」

浜面「ですよねー!?(泣)」orz

予想通りの返答に再び膝をつく浜面。

半蔵「少し前なら、欲しがる奴もいたかも知れないが……今、ウチのメンバーでそんなのに手を出す奴は一人もいないだろ」

スキルアウトA「そこらの能力者には負けないくらい強くなったしなー」

スキルアウトB「この上に能力まで手に入れたら、逆に卑怯なレベルだろー」

???「……磨いた五体以外の何ものかに頼みを置く……そんな性根が技を腐らせる……」
483 :とある複製の妹達支援[sage]:2011/03/03(木) 22:01:10.25 ID:WVU6kz38o
いかん、またタイプミスだ。

能力者狩り→無能力者狩り。

急いで書くと駄目だな……ちょっと公園で戦って頭冷やしてくるぜ……


491 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/06(日) 00:03:53.55 ID:p+ZxaKzJo

どこぞの公園最強の生物風の台詞と共に現れたのは、このスキルアウトのリーダーである駒場利徳(こまばりとく)。

半蔵「リーダーも意外というか、案の定というか……格闘漫画好きだよな」

駒場「……愛読書なのでな……」

あー、見た目は完全にアッチ系だもんね、と納得するスキルアウトの面々。

新倉「それで、浜面は幻想御手をどうやって入手したんだ?」

浜面「――これか? 
    実は、ここに来る途中にカツアゲされてる奴がいて……」

駒場「……していたのは、ウチのメンバーじゃないだろうな……?」

浜面「いや、やってたのは知らない奴だったんだけど……思わず、助けに入っちまってさ」

スキルアウトA「きゃー、はまづらさーん!」

スキルアウトB「すてきー! 抱いてー!」

仲間達から、からかうような歓声があがる。

浜面「うるせーよ」///

新倉「で、見たところ怪我もないようだけど……ちゃんと勝ったのか?」

浜面「勝ったには勝ったんだが……どうも、カツアゲじゃなかったみたいで……」

半蔵「……はぁ?」

駒場「……幻想御手の売買の現場だったのか……?」

浜面「お、流石は駒場さん!」
492 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/06(日) 00:08:23.26 ID:p+ZxaKzJo

新倉「成程、勘違いで売人を倒したついでに幻想御手をかっぱらって来た、と」

A&B「「浜面、あんまり格好良くない……」」

浜面「いや、だって……気弱な男と人相の悪い奴が路地裏でコソコソとやってたら、カツアゲだと思うだろ?」

新倉「……確かに勘違いも仕方ないじゃん」

半蔵「しかし、幻想御手が音楽ファイルだったとはな……リーダーは知ってた?」

駒場「……いや……最近、他のスキルアウトが学区内で『何か』の売買を行なっている、というのは聞き及んでいたが……」

新倉「浜面は、どうするんだ?」

浜面「どうするって……何が?」

新倉「使わないのか? 幻想御手」

浜面「え? いや、皆も使わないって言うのに使うのも……それに俺だって結構、強くなったと思うし……なんか卑怯だろ、そういうの」

極自然に使わない、と答える浜面に仲間達は賞賛の口笛を吹く。

駒場「……それ以前に……そんな得体の知れないブツはノーだぞ……」

新倉「ふーん……じゃあ、貰っていい?」

全員「「「「え?」」」」

その場にいた全員が驚きの声を漏らす。

駒場「……調べるつもりか……?」

そこで「使うつもりか?」という発言が仲間から出ない事が、スキルアウトから新倉への信頼の証明であった。
493 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/06(日) 00:12:42.32 ID:p+ZxaKzJo

新倉「まー、そんな所だな」

半蔵「そういうのは、風紀委員か警備員の仕事じゃねぇのか? ……何で、お前が動くんだ?」

新倉「んー、昨日のセブンスミストと公園の爆発は知ってるよな?」

浜面「あぁ、虚空爆破事件の……そういえば、犯人も捕まったって話だっけ」

新倉「その犯人なんだが……どうも『書庫』のデータと能力の強度に開きがあったらしい」

これは警備員(アンチスキル)に潜伏中の風間生が、犯人である介旅の事情聴取の前に『書庫』から得た情報である。

半蔵「……開き?」

新倉「データでは、異能力者(レベル2)だったのが、事件の際には大能力者(レベル4)クラスになってたらしいじゃん」

浜面「な、なんだよそれ!?」

言い換えれば日常生活であれば便利、というレベルから軍事的な価値を持つレベルになった、という事である。

駒場「……それが、幻想御手の効果である、と……?」

前回の身体検査から、急激に力を伸ばした、という可能性もあるにはあるが……現実的ではない。

新倉「その可能性があるじゃん。
    ……仮にその犯人が幻想御手を使用していたとして……このまま幻想御手を放っておいたら、どうなると思う?」
494 :風間書房の本探してたから間違えたww風間生→風見生です[saga sage]:2011/03/06(日) 00:17:04.00 ID:p+ZxaKzJo

浜面「どうって……」

駒場「……宝くじに当たるようなモノだ……転がり込んできた金は使いたくなる……」

新倉「そう、楽に手に入れた力は、使ってみたくなる。……試したくなるじゃん」

武道家が、反撃も抵抗もしない藁人形や瓦相手に力を試すように。
だが、大した心構えのない子供達が、標的に選ぶのは物言わぬ物質とは限らない。

例えば、反撃する力のない無能力者。

半蔵「無能力者狩りの加速……しかも、相手は高位能力者か」

浜面「げ……それはヤバいな」

新倉「ネットの噂では……幻想御手を使用すると、体感で1、2レベル上がるって話じゃん」

駒場「……俺達の相手は異能力者(レベル2)程度が殆どとは言え……それでも、2レベル上がれば大能力者(レベル4)か」

浜面「逆に無能力者の俺達が、幻想御手を使ったとしても……せいぜい、異能力者(レベル2)が限界だろ?
    相手が大能力者(レベル4)クラスじゃ、差があり過ぎる……幻想御手の拡大自体を抑えないと駄目って事だな」

半蔵「しかも、日頃から虐げられている無能力者だって、能力を得た途端に虐げる側に回らない保証はないぜ?」

駒場「……確かに、放置は出来ないな……」

新倉「――そんな訳で、少し調べて流通を止めておくじゃん」

浜面「いや、止めるってそんな簡単に……」

駒場「……出来るのか……?」

新倉「皆が協力してくれれば、かな」

駒場「……いいだろう、人を動かす……半蔵……」

半蔵「分かってるよ、リーダー。
    直接、幻想御手を売買してる連中を探らせればいいんだろー?」

駒場「……ああ」
495 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/06(日) 00:21:24.11 ID:p+ZxaKzJo

新倉「――浜面、その売人がどこで幻想御手を入手したとか……大元の発信源は分かるか?」

浜面「いや、聞こうと思ったんだけど、その前に逃げられて……
    幻想御手を買おうとしてた奴から、どこかのサイトから配信されているらしいってのは、聞き出せたんだけど」

新倉「と、なると……取引の現場を押さえて、強引にでも吐かせるしかないか……?」

風紀委員もいずれ、そのサイトを発見する筈だが、幻想御手の流通を抑える為には、
サイトの封鎖後にダウンロードした幻想御手を販売している売人を確保する必要が出てくる。

新倉「(路地裏に関しては風紀委員よりも、こっちの領分じゃん。……後手に回る前にやれるだけやっておくべきだろうな)」

スキルアウトの面々に紹介した情報収集のアルバイトも、本来の目的は風紀委員や警備員に潜伏している生達の仕事のサポートにある。
それに加え、小さな情報でも……そう遠くない未来に学園都市に相対する際に役立つものがあるかもしれない、というのもあるが。

半蔵「売人を捕まえて、『釘を刺す』のはいいが……発信源を見つけたところで、俺達に出来ることはないぞ?」

新倉「その後は――風紀委員にでも通報すればいいじゃん。治安維持の観点からも動いてくれるだろ?」

半蔵「(……やはり、風紀委員や警備員にパイプを持っているのか?)」

言葉の端々から、新倉への疑いを深める半蔵だったが、当然ながら新倉もそれには気付いている。

新倉「(おー、疑ってるなぁ……)」ニヤニヤ

馬鹿な不良、という『いかにも』な姿を隠れ蓑に、見事に自分の実力を隠しているのだと新倉は睨んでいる。
そもそも、学園都市の『裏』の調査の為にスキルアウトに接触した新倉の実力を見抜き、最初に認めてくれたのは、リーダーの駒場ではなく半蔵だった。

新倉「(ハマーなんかは、実際に仕事するまで疑ってたっけ…………駒場は表情が読めないから、よく分からんかったけど)」

新倉は、かつて悪滅をしながらも、学校に通っていた頃の自分を思い返す。
当時の自分の姿と、現在の食えない仲間の顔を比べてみる。

……少しだけ、似ているような気がした。
496 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/06(日) 00:24:00.13 ID:p+ZxaKzJo

駒場「……確かに、学園都市の治安維持は連中の仕事だ……しっかりと働いてもらうとしよう……」

浜面「けど、この幻想御手……本当に効果あるのか?」ポイッ

音楽プレーヤーを新倉へと放り投げながら浜面は疑問を投げかける。

新倉「――いざとなれば、試しに使ってみるってのも手だな」パシッ

半蔵「おいおい……どんな副作用があるか分からないんだぞ?」

新倉「――まぁ、いきなり死にはしないだろ? なら、大丈夫じゃん」

――最悪、仮面を装着する余裕さえあれば、副作用で死んでも構わない新倉は軽く言ってのけた。

実際問題として、副作用の有無を調べる為には、使った人間を精密検査するのが一番早い。

だが、捜査する側に風紀委員が効果を確かめる為に幻想御手を使用する可能性はないし、
幻想御手を使用した不良や無能力者が、大人しく病院で検査されたりはしないだろう。

なら、自分が幻想御手を使用し、椿生のいる病院なり、プラントなりで検査を受けて、その結果を安達に伝えれば、捜査も一気に進展する訳だ。

浜面「あー、何だか新倉は殺しても死にそうにないしな」

駒場「……否定は出来ないな……」

半蔵「そういえば、最初に会った時『俺は不死身の男じゃん』って言ってたっけなー」

新倉「いやいや、本当に不死身だから、殺しても死なないから」

全員「「「またまたー」」」

新倉としては、一切の混じりっ気のない真実を語っているのだが、
日頃の行いというか……普段の態度の所為か、不死身に関しては一向に信じてもらえない。

新倉「(う~ん、何故に信じてもらえないじゃん……?)」

もしかして、信用されてないんだろうか、と新倉は密かに落ち込むのであった。 
501 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 17:18:16.90 ID:QlNzaqhpo

学園都市第七学区立柵川中学


~とある一年生の教室~


明日からは夏休み。

最後の日ぐらいは授業が無くてもいいじゃないか、と生徒の大半が思っている。

佐天「(………………幻想御手かぁ……)」クルクル

そして、それは自分の席で上の空でペンを弄ぶ佐天涙子も同様であった。

???「――以上の事柄から、学園都市で行なわれている能力開発カリキュラムにおいて、
     最も重要なのが……『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』の獲得、って事になるのは分かるじゃん?」

だが、現実は非情である。
昼前には学校が終わるからこそ、ギリギリまで時間を使って授業をするのだ。

既に半ば夏休みモードへと移行している生徒達にとって、これは拷問に近い。
しかも、最後のホームルームでは通知表が渡されるという、嬉しくないイベントが待ち構えている。

……蝉ばかりが元気に過ごす猛暑の中、生徒達がやる気を出せないのも当然と言えた。

???「これは、超能力と呼ばれるものの基盤に他ならない(あーあ、早く終わらないかなー)」

ついでに教師として学園都市に潜伏中の風見生(かざみしょう)が授業にやる気を出せず、教壇の上で嫌な顔しているのも当然なのだ。
502 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 17:21:27.86 ID:QlNzaqhpo

風見「えー、そして……パーソナルリアリティを理解する上で避けて通ることの出来ないものが……(終われー終われー)」

ちなみに、この風見生は『残留組』のver.1の個体本人ではなく、彼のプロフィールを拝借したver.3のクローン体だ。
これは通常の教師としての技能だけでは警備員(アンチスキル)を兼ねる、学園都市の教師は務まらない、という判断からである。

だが、学園都市の外部で蘇生された『妹達』の情操教育を嬉々として行っている教育馬鹿な本人と違い、彼は授業に関しては素人同然。
こうして自然に教師として振舞えているのは、布束砥信監修の学習装置(テスタメント)の恩恵に依る所が大きい。

しかし、いくら学習装置を使用した所で、教育への熱意まではカバー出来ない訳で――

風見「――ハイゼンベルグが提唱した、不確定原理を元にする量子論じゃん(黒沼の苦労が初めて分かった気がする……)」

表面上は真面目に授業をしながらも――この教室内で最もやる気のないのは生だった。

だが、教室の一番前にいる風見と同じぐらい、教室の一番後ろの窓際の席にいる佐天も授業に集中していなかった。

佐天「(初春、微熱だって言ってたけど……本当に大丈夫かな……?)」

熱を出して欠席した親友を案じ、教室内で唯一の空席……自分の正面の席を見る。

風見「パーソナルリアリティと量子論、両者に共通するのは、どちらも確率論に根ざした――(ん? 佐天の奴、上の空だな……)」

佐天「(……相談したい事、あったんだけどな……)」

風見「佐天! 佐天涙子!」

佐天「え、あ、はい!?」ビクッ

風見「初春が心配なのは分かるが、授業はちゃんと聞いとくじゃん」

佐天「す、すみません……」
503 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 17:24:28.25 ID:QlNzaqhpo

風見「一応、言っておくが、お前達もだぞ? どいつもこいつも、もう夏休みに入ったみたいな顔しやがって……」

特に授業に身が入ってなかった生徒達へ視線を送りながら注意を促す。

風見「――俺だってな、本当は授業を終わりにしたいんだぞ!?」

……ついでにオチとして、教師の本音を添えるのも忘れない。

生徒A「先生、ぶっちゃけすぎー」ケラケラ

生徒B「だったら、終わりにしようよー」

風見「そうしたいのは山々だが、最近は授業の進行度とか厳しくてなぁ……(ただでさえ、本職じゃないから遅れてるし)」

キーンコーンカーンコーン

風見「なっ……そんな事を言ってたら、終わってしまったじゃん!」

生徒C「やった、終わったー!」

生徒D「夏休みだー!」

風見「こらこら、帰ろうとするんじゃない。まだ通知表の配布という、教師陣の楽しみが残ってるじゃん」

生徒C「俺達は楽しくないでーす」

生徒A「そうだそうだー!」

風見「フフフ……お前達が、たかが数字の羅列に一喜一憂する姿が、最高の清涼剤じゃん……?」ニヤリ

変装の為につけている伊達メガネの奥で目を輝かせ、生徒達へ死刑宣告を言い渡す。
途端に、教室のあちこちから「鬼!」「悪魔!」「この鬼畜!」等の抗議の言葉が飛んでくる。

風見「(∩ ゚д゚)<アーアーきこえなーい~♪ 大圄先生が居ないから、副担任の俺が配るぞー?」

だが、風見は抗議なんてどこ吹く風、といった様子で通知表を配り始める。

風見「そうだ、佐天! 悪いんだが初春の通知表を届けてくれないか?」

佐天「あ、はい! 分かりました(……どうせだから、薬局で薬とか買ってから行こうかな)」

どの道、様子を見に初春の家に行くつもりだった佐天は、風見の要請を快諾した。
504 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 17:27:31.35 ID:QlNzaqhpo

第七学区・中央公園



多くの学校で授業が終わり、夏休みに入った所為か、多くの学生達で賑わっている。

美琴「なんかもう、この公園で爆破事件があったとは思えないぐらい賑わってるわね……」

とは言っても、既に爆破の痕跡は綺麗に消され、進入規制も解除されている。
犯人が捕まったニュースも流れたので、安心して公園を訪れているのだろう。

黒子「……そう……ですのね」ウーン

美琴「どうしたのよ、難しい顔して……成績でも落ちた?」

黒子「違いますの。……お姉様、昨日の虚空爆破事件の犯人、本当にお姉様が捕まえた男で正しいんですの?」

美琴「そうだけど?」

能力を使って抵抗しようとしたし、自供も引き出している。誤認という可能性は無い筈だった。
美琴にしてみれば、後輩が何故そんな事を言い出したのか分からない。

黒子「犯人……介旅初矢(かいたびはつや)は、『書庫』の登録データでは異能力者(レベル2)判定となってましたの」

美琴「うそっ!? 明らかに大能力者(レベル4)クラスの破壊力だったわよ……?」

黒子「ええ、ですからこれはつまり…………」

ミーンミンミンミーン

美琴「…………」

ジリジリジリジリ

黒子「うーん………」

シャクシャクシャク

黒子「――ドウ゛イ゛ウ゛コ゛ト゛ナ゛ン゛デショウ゛ネ゛?」

美琴「いや、今それを私が訊いてたんだけどね……
    ――そうだ。煮詰まってるなら、一度休んで頭を切り替えましょ?」

黒子「へ?」

美琴が指差した先には、かき氷の屋台。
505 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 17:30:33.00 ID:QlNzaqhpo

二人が屋台を訪れると、見覚えのある人物がちょうど店員からかき氷を受け取っていた。

美琴「……あ」

黒子「あら、安達さん」

安達「――よぉ、お揃いで」

黒子「安達さんもかき氷ですの?」

安達「まぁ、そんな所じゃん(……本当は、海原に敵情視察を頼まれたんだがな)」

本人は蘇生されたとは言っても、屋台は全壊なので、営業は不可能。
後々、公園で屋台を再開しても、その頃には他の屋台に客を取られている可能性がある。

そんな訳で安達は建前上、病院を動けない海原に公園内の他の屋台の視察を頼まれたのであった。

美琴「…………」キョロキョロ

安達「御坂さん、言っておくが……一緒じゃないぞ?」

美琴が目当ての人物は、成績の事でロリ教師に説教されているか、悪友達と街へ繰り出しているかのどちらかだ。

美琴「な、何のことよ!?」///

黒子「?」キョトン

安達「さてね……そういえば、昨日は御活躍だったらしいじゃん? 色々と言われたと思うけど、俺からも礼を言わせてくれ」

美琴「いや、昨日の事は……」

安達「あー、大丈夫。爆弾の件は、アッチに礼を言っておいたじゃん。御坂さんに言いたいのは犯人確保の礼」

美琴「そう……それなら、素直に受け取っておくわ」

考えて見れば、上条の右手の事を自分に教えてくれたのは安達である。
彼ならば、爆発の現場を見れば、すぐに上条の仕業だと理解出来て当然なのだ。

黒子「お二人は先程から何の話をなさってますの……?」

「「あはは、気にしない気にしない!」」

黒子「(何やら、わたくしだけが蚊帳の外ですの……)」ショボン
506 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 17:54:55.37 ID:QlNzaqhpo

美琴「イチゴにしようかな~♪ 黒子は何にするー?」

黒子「……お姉様と同じ物を」

安達「(別のにした方がいいと思うじゃん)」ゴニョゴニョ

特に考えもせずに言った黒子に、こっそりと耳打ちする安達。

黒子「はい? ……それじゃあ、レモン味で」

美琴「? じゃ、イチゴ味とレモン味をください」

店員「ありがとうございまーす」

チリンチリーン

黒子「不思議なものですわねー。風鈴の音を聴くと、少し涼しく感じますの」

美琴「あぁ、共感覚性って奴ね」

黒子「共感覚?」

安達「(教官覚醒……? 背中からビームでも出るのか……?)」パクパク

見当違いの想像をしながら、かき氷(ブルーハワイ)を口に運ぶ。

店員「お待たせしましたー。イチゴとレモンですね」

美琴「一つの刺激で、複数の感覚を得ること……あ、ここ割り勘だからね」

黒子「えぇ? お姉様が誘ってくださったのに……」ジー

安達「(何故、そこで俺を見る)」

黒子「」ジー

期待の込められた視線が、容赦なく安達の横顔に突き刺さる。

安達「はいはい、分かったじゃん……俺が奢ればいいんだよな」⊃1000

根負けして、千円札を店員に渡す。

美琴「あ、じゃあ私もー」

安達「って、おい!?」




507 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/08(火) 19:19:22.24 ID:QlNzaqhpo

屋台から少し離れた木陰のベンチに座り、かき氷を楽しむ三人。

安達「(ふ、不幸だ……)」

美琴「つまりさー、赤系の色を見たら暖かく感じたり、青系の色を見たら冷たく感じたりするでしょ?」

黒子「暖色、寒色と言いますものね」

安達「赤い部屋にいると時間の流れが早く感じたりするのもそうじゃん」

美琴「そして、このかき氷はイチゴの赤」

黒子「なるほど、赤いシロップに果物のイメージをプラスしてますのね」

美琴「そういうこと」パクッ

かき氷を口に運ぶ美琴をお約束のアイスクリーム頭痛が襲う。

美琴「~~~~~~~~~~~っ」キーン

黒子「お姉様ったら……」パクッ

安達「(確か、関連痛だったか?)」

この症状は、咽頭神経が刺激される事により発生した信号を、後頭部またはこめかみの痛みと誤認知する事によって起こる。

黒子「~~~~~~~~~~~っ」キーン

安達「二人して何してんだか……」

美琴「ふむ……レモン味も美味しそうね……黒子、一口貰ってもいい?」

黒子「へ? ……いいですけど」ヒョイ

反射的にかき氷をすくって、美琴へと差し出す。

美琴「ありがと」パクッ

黒子「(こ、これはまさか!? 間接キス!? 間接キスですの!?)」

自分のスプーンを咥える美琴の姿に、ようやく今置かれた状況の真価に気付いた。
508 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/08(火) 19:22:42.99 ID:QlNzaqhpo

美琴「お返しに、イチゴ味食べる?」ヒョイ

黒子「食べますの!」パクッ

ふいに訪れた、食べ比べという名の間接キスイベントの発生に黒子は歓喜に震える。

黒子「(黒子は! 黒子は幸せですのっ!)」キーン

こめかみの痛みすら感じない程の圧倒的な幸福感が黒子を満たす。

――だが、少し待って欲しい。

もしも先程、美琴と同じイチゴ味を注文していたら……?

黒子「(と、とんでもないミスを犯すところでしたの――ま、まさか!?)」ハッ

その時、黒子に電流走るっ!!

安達「(良かっただろう? 別の味にして)」ドヤ?

ざわ……ざわ……

黒子「(す、全て計算の内だったと!? 安達さん……あ、貴方という人は……!)」フルフル

この時、黒子が安達に抱いた感謝の念は、去年の郵便局強盗の時に助けられた事よりも大きかったそうな。

黒子「安達さん、わたくし……これほど殿方に感謝した事は初めてですの……!」ウルウル

安達の両手を握り、感動の涙を浮かべる黒子。

美琴「こらこら」

なんとなく、黒子の考えている事が分かったらしい。

安達「いや、まさかそこまで喜ばれるとは……予想外じゃん」

???「indeed なかなか顔を出さないと思ったら、こんな所で女子中学生を侍らして、ご歓談中だったのね」

安達「…………………………」

完全に予想外の人物の声が聴こえた気がして、安達の思考が一時的に止まる。

ゆっくりと、声のした方向へと顔を向ける。

安達「ぬ、布束?」

――何やら大層、ご立腹な様子の布束砥信がそこにいた。 
514 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/09(水) 21:38:21.82 ID:yJs0uVLQo

安達「ぬ、布束!? 何でここに!?」パッ

慌てて、自分の両手を握っている黒子の手を解く。

布束「――悪いんだけど、そこの彼を借りていってもいいかしら?」ギロッ

黒子「あ、はい、どうぞ」ススッ

有無を言わせぬ、その視線に安達を布束へと差し出す黒子。

安達「ちょ、おまっ!?」

布束「――ありがとう」ニコッ

ギュウゥゥゥゥゥッ!!!

安達「痛っ、ぬ、布束!? そんなイイ笑顔で耳を引っ張らないでー!?」

耳を引っ張られながら、連行される安達。

美琴「(ねぇ、黒子、あの人が着てるのって、長点上機の制服よね?)」ゴニョゴニョ

黒子「(そのようですの。どういった関係なんでしょうか……)」ゴニョゴニョ

安達「し、白井さん、固法先輩に遅れるかも、と伝えてくれると助かるじゃん……っ!」ノシ

黒子「――御無事でしたら、また後ほどですの」ノシ

ずるずると引き摺られていく安達を見送る二人。

美琴「彼女さん……なのかしら?」

黒子「まぁ、高校生なんですから……親しい女性の一人や二人ぐらい、いて当然なのでは?」

美琴「……高校生……いて当然……!?(アイツと同じ学校で、同じ高校生で……ってことは、アイツにも……!?)」

黒子「お姉様?」

美琴「な、何?」ハッ

美琴「……まさかとは思いますが、例の殿方に親しい女性がいるかも、と不安になっているんですの?」

美琴「な、ナニイッテンノヨ!? ソンナコトアルワケナイジャナイ!?」///

黒子「動揺しすぎですの……」

仮にいるとしても、その筆頭に上がるのは美琴だろう、とは思っても決して口にはしない黒子である。
515 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/09(水) 22:02:20.16 ID:yJs0uVLQo

美琴や黒子から見えない位置まで来て、ようやく耳が解放された。

安達「ち、千切れるかと思った…………あ、あのー、布束サン?」

布束「………………」ギロッ

安達「(怒ってる! めちゃくちゃ怒ってるじゃん!?)」

ただでさえ目付きが良いとは言えない布束だが、怒気が込められた視線はそれだけで人間を殺傷出来そうな程に怖い。

布束「……誤解だと頭で分かっていても、ああいう場面を見せられれば……私にだって、それなりに思うことはあるから……」

安達「」

布束「……その顔は、何?」///

気付かぬうちに、ニヤけていたらしい。

安達「いや、何でもないです、ハイ。
    …………それで、何か俺に用があったんじゃ……?」

布束「新倉さんから、プラントに『幻想御手』のサンプルが届いたの。これから少し調べるから、同席してもらおうかと思って」

安達「今朝、メールで書いてた件か……それにしても、噂だけだと思ってたのに……」

布束「彼……拡大を防ぐ為に動いてるけど、第七学区のスキルアウトだけでは不可能だから、早い段階で風紀委員を動かして欲しいそうよ」

安達「けど、虚空爆破事件の犯人が幻想御手を使用していた確証もないし……
    何よりも実際の効果を立証しないと、上を動かすのは難しいじゃん。とりあえず、実態調査が先決だろうな」

実在すると分かった以上、学生達へ注意を促したい所ではあるが、迂闊な情報開示は逆に幻想御手の拡大に繋がる可能性がある。
516 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/09(水) 22:07:09.93 ID:yJs0uVLQo

安達「ところで、要件ってそれだけ?」

布束「――どうして?」

安達「今のが要件なら、俺がプラントに来るのを待つか、メールか電話で済む話じゃん……で? 本題は?」

布束「……そんな所ばっかり鋭いのね。……渡したい物があっただけよ」スッ

不機嫌そうな布束が差し出したのは小さな紙袋。

安達「……開けてもいい?」

布束「好きにどうぞ」

安達「袋の中身は、何だろな~っと」ゴソゴソ


――袋の中に入っていたのは、一本のチョーカーだった。


安達「……え、何? 主従プレイ?」

スパンッ!

……無言で殴られた。

安達「いてて……冗談なのに……」

布束「still 冗談の種類を選びなさい」

安達「で、これは……どういう趣向じゃん? 色々と細工がしてあるみたいだけど」

最初に見た時点で、単純なアクセサリーとしてのプレゼントではないのは分かった。
何しろ、電極のような物が取り付けられているのだ、どう考えても普通の品ではない。

布束「保険、かしら」

安達「保険って……何か心配させるような事、あった?」
517 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/09(水) 22:11:31.38 ID:yJs0uVLQo

布束「because 昨日、海原さんが……その……死んだでしょう?」

その言葉だけ聞けば、深刻な事象なのだが、そうでもないから困りものである。

安達「死んだと言っても、今はバリバリ健康体だから、病院で美人看護師相手にナンパでもしてるんだろうけど」

一応、事件に巻き込まれた被害者という立場なので入院してもらったが、蘇生されたばかりの肉体なので、実際は擦り傷一つ無い新品状態。
大人しくベッドで寝てろというのも酷な話である。

布束「茶化さないで……それで、もしも貴方や、他の生達が間に合わなかったら……
   『海原生』という『個』は失われていたかもしれない……そうでしょう?」

布束が言っているのは、仮面の装着が間に合わなかったら、という意味だ。

安達「あー、もしかして……これはそういう?」

布束「出来ることなら、肌身離さず――身に着けていて欲しい」

細かい説明をされなくても、どういう効果があって、彼女がどういう想いでこれを渡したのかは理解出来る。
もしも、仮面を持っていない時に危険に巻き込まれても、『安達生』が消滅しない為の保険。

安達「――分かった。ずっと着けとくじゃん」

断る理由は何処にもなかった。

自分達がクローン人間である、という自覚に加えて蘇生が可能な存在であるという事実。
生達には、この2点から、己の命の軽く考えてしまう傾向がある。

これは命自体を軽視しているのではなく、他の生命に比べ、自分達を低く見ている、という事だ。
そこに元来のポジティブに性格が合わさって、生達が自分達の体や命を気に掛ける場面は少ない。

『妹達』への教育上、良くないのは分かっているのだが、こればかりはアクメツ時代からの『癖』に近い。

安達「(――心配されるってのも、良いもんじゃん)」

かつての生達が、経験した「それ」とは別の……『安達生』にとって、初めての……感慨であった。

布束「……そう」

返ってきたのは、たった一言だったが……布束の表情が柔らかくなったのが見て取れた。

安達「――それじゃ、プラントに布束を送ってから、風紀委員支部に行くとしますかね」

布束「そんなに風紀委員の支部が好きなの?」

安達「へ? い、いや、そんな事は……一応、俺に割り振られた役目だし……?」

布束「…………動物用の首輪も着けさせた方がいいかしら」ボソッ

安達「え」

割と本気っぽい布束の言葉に、安達の首筋に冷たい汗が流れた。 
519 :とある複製の妹達支援 もうちょっとだけ書いとくんじゃよ[saga sage]:2011/03/09(水) 23:35:16.49 ID:yJs0uVLQo

第七学区・未開発地域


薬局からの帰り道。
佐天は初春の暮らすアパートへと急いでいた。

佐天「(初春、大人しく寝てるかな……?)」

親友が熱にうなされる姿を想像し、無意識に歩くスピードが上がった。

ソンナ! ハナシガチガウジャナイカ!?

佐天「」ビクッ

誰かの揉める声に、佐天は咄嗟に曲がり角に隠れて様子を窺う。

そーっと、声のした方を見ると工事が途中で中断されて、そのままにされた廃ビルの前に数人の男達がいる。
肥満気味のおかっぱ頭の学生と、数人のスキルアウトらしき少年達。

学生「10万で幻想御手を譲渡すると言ったじゃないか、冗談はよしてくれ」

不良A「悪いがついさっき値上げしてね」

不良B「ひ~ふ~み~」

不良A「コイツが欲しけりゃ、もう10万持ってきな」

学生「なっ」

その学生が愚かだったのは、これを正当な取引だと考えていた事に尽きる。
幻想御手によって、レベルが上がった不良達。
元々、ただで入手した幻想御手に10万もの大金を払う無能力者など……彼等にすれば、ただのカモに過ぎない。

学生「ふざけるなっ! だったら、その金を返してくれ!」

抗議の言葉と共に、立ち去ろうとする不良達へ掴みかかる。
520 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/09(水) 23:37:45.43 ID:yJs0uVLQo
――正しく、状況を認識しているのであれば、そのまま行かせるべきであった。

不良B「ガタガタうるせーんだよっ!」ガッ

学生「がふっ!」

学生の腹に不良の膝がめり込んだ。

そして……一度、反抗的な態度を取った相手に対して、彼等は容赦などしない。

不良A「10万ぽっちで誰がやるかっての!」ゲシッ

不良B「金がねーんなら、さっさと帰れ、このデブっ!」ドゴッ

学生「ふぐっ、い、いたい、たすけっ」

???「オウ、そいつ……立たせろ。
     お前等のレベルがどれくらい上がったか、実験台にしてやれ」

その様子を遠巻きに見ていた、リーダーらしき男が紫煙を吐き出しながら、男達へ告げる。

不良B「……マジかよ」

男達に逡巡の色が見えたのは一瞬で、それはすぐに狂気へと変わる。

不良A「うわ、キッツー! オマエ今日で死んじまうかもなぁー!?」ゲラゲラ

学生「か、勘弁してくれー……」ゲホゲホ

――逃げるべきだ。

そう、自分の中の何かが警鐘を鳴らす。

この場を離れて、風紀委員か警備員へ通報する。

それでいい。
それがいい。
それが最善だ。

相手は、いかにもな三人組。
自分は数ヶ月前まで、小学生をやっていた無能力者の女の子。

何が出来る?
出来る訳がない。

絡まれているのは、自分とは何の面識のない赤の他人。

助ける義理なんてない。
助けられるかも分からない。
きっと、助けられないに決まっている。

だから、今すぐに回れ右をするべきだ。

――それなのに。

……どうして、私は。

佐天「――や、やめなさいよ!」

どうして、彼等の前に立っているんだろう? 
523 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/10(木) 22:08:32.79 ID:QI6hAzfJo

佐天「その人、怪我してるし……!」

一度、吐き出してしまった言葉は戻せない。

佐天「す……すぐに警備員が来るんだからっ……!」

???「はぁ?」

ガァァン!!!

リーダー格の不良が、廃ビルを取り囲んでいるスレート板の壁を蹴って、激しい音を鳴らす。

佐天「ひっ」

???「おい、今……なんつった?」ガシッ

佐天「い゛っ」

髪を掴まれた佐天から、苦悶の声が漏れる。
震えは止まらず、恐怖によって足が縛られる。

???「ガキが生意気言うじゃねーか。
     だがな、何の力もねぇ、非力なヤツにゴチャゴチャ指図する権利はねーんだよ!」

佐天「――――!」

その言葉を否定する力を持たない非力な少女は、絶望に揺れる瞳の奥で、何を思うのか。
524 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/10(木) 22:20:54.91 ID:QI6hAzfJo

自分と同じ中学生で。

自分と同じ年齢で。

自分と同じ女の子なのに。

自分とは違う世界に住んでいる人達がいる。

無能力者と能力者では、何もかもが違う。

――だからこそ、心だけは。

そう思ったのに。

……弱者はそれすらも許されないのだろうか?




――だけど。



もしも、この男の言葉が、

どうしようもない現実で。
クソッタレな真理であるのならば。

今は強者として、暴虐の限りを尽くす彼等も。

さらなる強者の前には、口を噤まなければならない。

――それが、力の論理を振りかざす者が背負うべき、危険(リスク)って奴だろう?







新倉「おい、そこの三馬鹿」

思い上がったケダモノに「それ」を教える為に――本物の怪物が牙を剥く。 
526 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/10(木) 22:53:06.94 ID:QI6hAzfJo

仲間のスキルアウト達によって集められた、幻想御手の取引が行なわれる可能性のある場所の情報。

第七学区全域に渡る、不良達の捜査網。少しでも可能性のある場所は全て巡って、約半日。

だが、どこもかしこも空振りで、新倉の不満は溜まりに溜まっていた。


――そして、最後にやって来たのが……この場所だった。


そこで新倉は目撃する。

『いかにも』な不良三人と、怪我をした学生、そして今まさに乱暴されそうな女の子。

各々の姿や立ち位置、様子を一瞬で観察し、おおよその状況を把握した新倉は、方針を決める。


新倉「――この学区で女子供に手を出すってのは、どういう了見じゃん?」


――手加減無しで叩き潰す、と。


不良A「なんだ、オマエ? どこのヒーロー気取りだ?」

不良の一人が、何の警戒もなく新倉へと近づいてくる。
そして、右手で新倉の胸ぐらを掴もうとして――その手が空を切った。

不良A「は?」

疑問は一瞬だった。

ボギンッ!!!
527 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/10(木) 23:18:28.01 ID:QI6hAzfJo

不良A「ああああああああああああああああああ足がああああああああああああっ!!」

不良の足が、そして本人が激痛に悲鳴をあげる。

油断し、意識の外から攻撃を受けた不良と違い、離れた場所にいた佐天と残りの不良達はその一部始終を見ていた。

佐天「(すごい……!)」

新倉は掴みかかってくる不良を流れるよう躱し、そのまま背後へと回って、横スネを斜め上から体重の乗せて――踏みつけたのだ。

新倉「――さて、次に『何の力もない非力なヤツ』に倒されたいのはどっちだ?」

あまりの痛みに沈黙した不良を尻目に、残りの不良達へ宣戦布告。

???「(コイツ……?)」

不敵に笑い、余裕を見せる新倉だが、態度と裏腹に構えには無駄はない。

乱れること無く、穏やかに続けられる呼吸。
徹底的に脱力しながらも、その姿勢は真っ直ぐに保たれ、即座に動ける状態が維持されている。

不良B「言ってくれるじゃねーか……!」

不良が手をかざすと、工事現場に散らばっている鉄柱や、建材が浮き上がった。

佐天「(すごい、鉄柱があんなに……!)」

不良B「腕におぼえがあるみたいだが……その高慢な態度、ムカツクぜ……!」クイッ

指の動きに合わせて、鉄柱達が不良の手元へと集まり、新倉へと照準を定める。

不良B「その高く伸びた鼻……ヘシ折ってやるぜぇ!!!」ヒュン

佐天「危な……っ!」

鉄柱が飛び、佐天が思わず声をあげる。
528 :とある複製の妹達支援 ミス ○流れるように ×流れるよう[saga sage]:2011/03/10(木) 23:26:46.10 ID:QI6hAzfJo

新倉「ほぉー……念動力(テレキネシス)か」スッ

だが、ただ直線的に飛来する物など、わざわざ大きく避ける必要はない。

元の位置から、半歩。

それだけで、鉄柱は新倉の体を外れてしまう。
その姿は回避と言うよりも、隙間を通り抜けたと言ったほうがいい。

不良B「はぁ!?」

中途半端に手に入れた能力が、男の動きを、攻撃の手段を単純化する。
それは手枷であり、足枷であると言える。


持っているから、持てるから、それを使う。


――それは、確かに正しい。

だが戦闘において自由ではない事が、どれほど危険なのか。

新倉「(普通に投擲した方が、まだマシだったな)」ダンッ

動揺する不良へと接近し、握った拳で顔を狙う。

不良B「うわっ」バッ

咄嗟に上半身を仰け反らせて、目を腕で庇うが、新倉はその腕を取る。

囮の仮当によって崩れた体勢を利用しての背負い投げ。

そして不良の視界が回転し、逆転する。

不良B「がはっ!?」

硬いアスファルトに叩きつけられ、呻く不良の顔を先程と同じように――踏みつける。

不良B「がぁ―――――!」

新倉「――能力が上がって、悦に浸るのは結構だが……能力の前に人間としての性能を少しは上げてからにするんだな」
529 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/11(金) 00:52:15.36 ID:y4LkD5hso

???「カカカカカッ! やるじゃねーか!」

新倉「残ったのは、お前だけだぞ? 随分と余裕だな」

???「――オマエ、駒場の所のヤツだな?」

新倉「……それがどうした」

???「俺達と同じスキルアウトが……何故、こんな人助けみたいな真似してやがる?」

――同じ? 何処が? 何が?

新倉「……一緒にするなよ、ジャンキー野郎。
    確かに俺達は不良だ、スキルアウトだよ。学園都市の爪弾き者だ。
    だが……得た能力を、そんな事に使っているお前達は、それ以下だ」

???「驚いたぜ……まさか本気で正義の味方ごっこやってるとはな……マジで殺してぇよ」

新倉「――出来るのか? お前に?」

言葉に込めて返すのは、嘲笑と侮蔑。

それを受けて男は、ナイフを取り出して応じた。

???「殺すっ!」

殺すという宣言は、そんなに軽いモノではない。
例え、自分が死んだとしても、絶対に完遂する。

それほどの覚悟を持ってのみ、放つことを許される言葉だ。

新倉「(それを――教えてやるっ!)」

生達が習得し、近接戦闘で多用しているロシア武術システマ。

このシステマにおいて、相手が武器を所持している状態での戦闘を想定するのは基本とも言える。
軍事格闘技という本質、そして日本の合気道と同じように護身の要素を強く持っているという性質。
そして、あらゆる場面で生存率を上げる為には、自分が不利な状況である場合をより重点的に考えなければならないからに他ならない。

相手がナイフを持っている状況――当然、想定されている。

その気になれば、両手が塞がってる状態で相手のナイフを逆に相手に刺す事も可能なのだ。
そして、万全の状態である新倉が、男の攻撃を喰らう筈は無かった。
530 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/11(金) 01:35:53.05 ID:y4LkD5hso

――だが。

ザクッ!

新倉「ぐっ!?」

右腕が切り裂かれ、鮮血がアスファルトを染める。

新倉「(左からの攻撃だった筈だ……!)」ズキッ

新倉から見て、男は左側から迫っていた。
だが、攻撃を受けたのは右側からだった。

新倉「(――過程と結果が噛み合わない)」

驚きこそするものの、それは動揺や焦燥には繋がらない。
精神的には、常に臨戦体勢を維持しながらも、肉体的にはリラックスしていなければならない。

実に対しては虚で。

剛に対しては柔で。

重きに対しては速さで。

自らの力の消費は最小限にし、相手の力を最大限に利用する。

それがシステマの最大の武器であり、利点なのである。

???「――どうした、顔から余裕が消えたぞ?」

新倉「迷彩……いや、錯視か?」

偏光能力「へぇ、よく分かったじゃねーか……俺の能力は偏光能力(トリックアート)
       自身の周囲の光を捻じ曲げ、誤った位置に象を結ぶ能力だ。
       ……だが、分かった所でどうしようもないだろ?」

確かに目に見えている位置が正しくないのなら、こちらの攻撃を当てることも、相手の攻撃を防ぐことも出来ない。

新倉「いや――そうでもないじゃん」

そう言って、新倉は……その両目を閉じた。
531 :とある複製の妹達支援[saga sage]:2011/03/11(金) 02:20:50.75 ID:y4LkD5hso

佐天「(め、目を閉じた!?)」

偏光能力「何の真似だ? 諦めて、サンドバックにでもなってくれるのかよ?」

新倉「――どうだろうな? いいのか、絶好のチャンスだぞ?」

偏光能力「……いいぜ、それが望みだってんなら切り刻んでやるよ!」ヒュン

銀色の光が一閃される。
しかし、現れるのは銀色のみで、赤色の現れる気配はない。

佐天「どうして……?」

男の能力によって、目を誑かされている佐天には、何が起きているのか分からない。

偏光能力「(あ、当たらない!?)」

しかし、能力を使用している当人は戦慄するしかない。

自分の攻撃が何一つ当たらない。

突いても、切りつけても、殴ろうとしても。

――全て、紙一重で避けられる。

偏光能力「う、嘘だ……!?」

先にも言ったが、システマでは不利な状況を打破し、生存する事が重視される。

例えば、相手が武器を持っている。
例えば、相手に地の利がある。
例えば、相手が複数である。

これらは、相手が有利であるが故に、自らが不利なケースである。

だが、不利なケースには逆の場合も存在する。

例えば、自らの肉体の状態に問題があり、万全の力を出せないケース。


――例えば、自分の視覚が封じられてしまっている場合。


新倉「……お前の位置ぐらい、見なくても分かる」

――目隠しをした状態で戦闘の訓練を行う格闘技だって、この世には存在するのだ。

足音、気配、匂い、ナイフの風切り音、情報はいくらでもある。

わざわざ、当てにならない『視覚』を利用しようとするから、敵の術中に嵌る。

ならば、最初から目を閉じていれば済む話。

偏光能力「クソがああああああああああああああ!!!」

男は、それでもがむしゃらにナイフを突き出すが――既に勝敗は決していた。




546 :とある複製の妹達支援[saga]:2011/03/21(月) 12:08:11.75 ID:vIBaSnKco
心配させました、1です~。
いやぁ、実は宮城県仙台市在住でして……大変でした。
幸いにして五体満足、家も健在、家族も無事です。家の中は物が散乱して大惨事でしたが。
電気は少し前に復旧したんですが、回線は切れてたのでリアル生存報告が遅くなってしまいました。
今まで、近所のスーパーに並んだり、倒壊した自室の本棚&大量の本(何故か禁書と金田一は微動だにせず無事だった)を整理したりして生活してました。

通ってる大学の開始が一ヶ月ズレて五月からになったので、かなり暇です。就活無理だし。
そんな訳で、書き溜めが増える……かも?

電気節約のために投下感覚はかなり開くと思いますが、1は元気ですので~
ではでは~ノシ 
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)[sage]:2011/03/21(月) 12:14:19.86 ID:LKBCNyFuo
安心した。同じ宮城民だが頑張ろうぜ
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/03/21(月) 12:17:36.72 ID:3/IwEXQvo
よかったよかった
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)[sage]:2011/03/21(月) 12:54:49.77 ID:xpPneY8AO
無事でよかった… 
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2011/03/25(金) 09:36:59.32 ID:gKpTv5gOo
月曜日までには、何とか4話を書き上げたいと思っている>>1です。

時間稼ぎを兼ねて、
ざっくりとサブタイトルの予定を晒す事で、自分を追い込み、かつ皆さんの妄想を刺激してみる。

今、迷っているのは『歩く教会』を破壊するかどうか……んー、どうしよう。
6:4で壊さない方がいい気がしてます。壊れなくても当面の話の展開は変わらないんだよね。

ここのインデックスさんは、上条や美琴や迫間に猫可愛がりされるポジなんで……三人がかりなので食費も安泰だね!

以下、予定サブタイトル

本編 御坂妹「アクメツ……?」 禁書×アクメツ

第一話   『学園都市の正義の盾』
第二話   『道を重ね、想いを束ねる』
第三話   『アクメツ、虚空に散る!?』
第四話   『少年少女達は神の御手に幻想を見るか?』
第五話   『魔術師来たりて、南天に星が輝く』
第六話   『電撃姫は、友と共に幻想の獣に立ち向かう』
第七話   『偽悪VS悪滅&偽善』
第八話   『勝ち得たモノ、失われたモノ』

外伝 佐天「宝石から力を引き出す能力……?」 禁書×ADAMAS(世界観を共有し、アクメツを含む)

第一話   『風信子石の宝石使い』
第二話   『世界一のイイ女』
第三話   『スパイダー&スコーピオン』
第四話   『揺れる学園都市』
第五話   『ゼピュロスと呼ばれた少女』

以降は、あるか不明の将来的な予定サブタイトル。適当なのは(仮)

『クローン達の事情』
『第○九九八二次実験』
『アクメツver.4』
『お前にリスクを負う覚悟があるか?』
『マニフェスト』←この辺までは是非とも書き上げたい。

『迫間in新倉、新倉in迫間』
『偽物だらけの夏休み』
『好きな方を撃つといい』
『同じ殺し名を持つ女』
『上条当麻vs迫間生』
『俺達の生き方』
『御坂妹「……アクメツ?」』 

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