2013年2月12日火曜日

あまくさっ♪ すんどめ。 - 2

50VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな :2011/11/01(火) 19:07:12.57 ID:LnzJmGBD0
そんじゃ投下します。安価形式で行こうか
51 :第二話(19話)―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/01(火) 19:35:28.19 ID:LnzJmGBD0
 ―――とある日、PM06:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)、マンション屋上・・・・・・





人道・魔道の違いはあるとはいえ、魔術師とて人である。鍛錬修行無くして進歩は無いし、成長もしない。
更に僕の様に歳若く、魔術師としての歴史が浅い家柄の出身は人の倍修行をせねばならないだろう。


香焼「―――はぁ……はぁ」グッ・・・

ステイル「身体能力に頼り過ぎだ。それでは中長距離(アウトレンジ)に対応できまい」ブンッ・・・ボッ!

香焼「わっ」ヨロッ・・・


只今、同年代のステイル=マグヌスに稽古を付けて貰っている。
彼は所謂『天才』。僕では足元にも及ばない。

いや、彼だけではない。他にも仲の良い同年代の魔術師達は皆僕の先を行っている。
アニェーゼ=サンクティスは約250人の部隊長で、更に自身もエーテル(第五物質)の象徴武器を使用出来る程凄腕魔術師。
エーテルを扱うと同時に、他の四大元素全ての武器としても使用できる、という特色がある。

サーシャ=クロイツェフはロシア成教のエリート部隊『殲滅白書(Annihilatus)』所属メンバー。
膨大な魔翌力量と四大元素の『水』を駆使でき、退魔戦闘においても秀逸している戦闘修道女。

レッサーは所属としては僕ら(天草式)よりも小規模な結社予備軍(新たなる光)出身ではあるが、実力は秀才級。
自分が唯一周り以上と自負している近接戦闘と同等の武術、そして身体能力に引けを取らない均等魔術(アベレージ)。

アンジェレネは僕と近い立場で戦闘能力は低いとはいえ、『十二使徒マタイの伝承』を基にした、魔術を使用できる。
補助・索敵能力などは僕らの中では随一だろう。


ステイル「―――遅いぞ馬鹿!」ガッ!

香焼「え…―――…あがっ!!」ゴンッ!

五和「ちょ、こ、コウちゃん!!?」ギョッ・・・


ステイルの放った火球が直撃。見事なボディブロー。


香焼「げほっ……ご、ごめん」タラー・・・

ステイル「はぁ……今日は此処までだ」クルッ・・・テクテク・・・

香焼「ま、まだ出来るっすよ」スッ・・・

ステイル「ヤダ。雑念ばかりの子供に稽古を付ける程暇じゃない」テクテク・・・

香焼「っ」グッ・・・


ばれていた様だ。

52 :第二話(19話)―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/01(火) 20:05:08.29 ID:LnzJmGBD0
一寸後、部屋に戻り治療を受ける。軽度の火傷と多少の打撲。
五和が溜息を吐きながらテキパキと薬を塗ってくれた。


五和「まったく。修行中に余計な事考えないの」ハァ・・・

香焼「……ん」ムスー・・・


ベランダで煙草を吹かしているステイルが此方を向かずに、呟いた。


ステイル「魔術師にもタイプがある。大きく分けて3つだ」プカプカ・・・

香焼「え」チラッ・・・

ステイル「戦闘魔術師、研究魔術師、それから逸れ(はぐれ)モノ。僕達必要悪の教会(ネセサリウス)は主に一つ目だ」

香焼「そんなの、言われなくても」

ステイル「分かってるだろうな。だけどそうは見えない」フンッ


言いたい事は分かる。所詮、僕は木っ端者だ。


ステイル「正直、君達(天草式)の『不殺(ころさず)』の理念は好きにはなれない。戦闘魔術のそれではないからな」チラッ・・・

香焼「…………、」ジトー・・・

ステイル「まぁそれを今議論するつもりはない。そして百歩譲ってそれを良しとしよう」ジー・・・

香焼「……で?」

ステイル「『不殺』。その理念は何よりも難しい。魔術師の世界では尚更だ。意味が分かるか?」


魔術で相手を納得させる必要がある、と。


ステイル「綺麗な言い方だな。実質は喧嘩のそれと変わらない……圧倒的な魔術(暴力)で敵を黙らせる。まさにこれだ」フンッ

香焼「それは違うだろ。実力派もいれば技巧派もいる。戦い方によって」

ステイル「同じ事だ。腕の立つ魔術師であれば技巧も実力も関係無い」


そう言って、喫っていた煙草を燃やしつくした。


ステイル「教皇の神裂本人は別に構わん。『力』が有るからな。何とでも言える」

香焼「そ、そんな言い方!」ギロッ・・・

ステイル「黙って聞け。そこの五和も同じだ。まだ未熟とはいえ、実力はそこそこ。教会内でも屈指のホープだろう」チラッ・・・

五和「……はぁ」ポリポリ・・・


それは分かっている。彼女と比べれば実力・努力共に僕は劣っている。
だから、何だ?

53 :第二話(19話)―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/01(火) 20:30:16.50 ID:LnzJmGBD0
はっきり言おう、と部屋の中に入って来るステイル。


ステイル「人の倍、理想が高過ぎる」チラッ・・・

香焼「力不足って言いたいんだろ? だからそれを補う為に、稽古を」

ステイル「追い付けると思っているのか? 君の目標は神裂……つまり『聖人』級だろ」

香焼「別に、女教皇様ほど、強くならなくても」ムゥ・・・


呆れ顔。


ステイル「理想の丈の割には……はっきり言って、弱いよ。これが全てだ」

香焼「…………、」

ステイル「縦(よ)しんば君が丈に合った実力を付けたとしても、それは何十年後の話だろうね」


分からない。でも、何もしない訳にはいかない。


ステイル「はぁ……君と理想云々の話をするのは無駄だと分かっているけどね」ヤレヤレ・・・


言葉に詰まる。何も言えない。コイツの言う事は正論だ。
だけど、それを認めたら、誰も救えない。

暫時無言が続く。堪え切れなくなった五和が何か言おうとした時、玄関が開いた。


神裂「ただいまー」テクテク・・・

浦上「ふー。やっぱこの時間帯のスーパーは込みますネ」テクテク・・・

五和「―――ぁ……と、おかえりなさい」ポリポリ・・・

神裂「ええ。って……ん?」チラッ・・・チラッ・・・

香焼・ステイル「「…………、」」


重い空気。五和が姉さんに説明をした。


神裂「―――はぁ。まったく……ステイル」チラッ・・・

ステイル「ん」スッ・・・

神裂「意地悪しないで、何を如何したら良いか教えてあげれば良いでしょう」

ステイル「分かってる……だから意識改変を先にだな」

神裂「それを意地悪と言っているのです。意識理想云々なんて、修行の場では二の次でしょう」

ステイル「だが……しかし」ウーン・・・

神裂「香焼も。雑念を持ったまま修行に臨んだら身が入らないのは分かっているでしょうに」チラッ・・・

香焼「……はい」コクッ


ご尤も。ウェイトを置く場所を履き違えていた。
兎角、飯にしようという事でステイル交えての微妙に気まずい夕飯を取る事になった。

54 :第二話(19話)―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 20:56:21.93 ID:LnzJmGBD0
夕飯後……ステイルがメモ紙を用意し、僕に渡してきた。
何やら考えがあるらしく、姉さんと一緒に今後のプランを練ってくれるそうだ。


ステイル「まず、自分の戦闘スタイル、使用できる魔術を書け。それから長所と短所もだ」


言われた通りにする。
・スタイル:ナイフ、短刀を使用した近接戦闘メイン。鋼糸(ワイヤー)や投刃(ダガー)などの中距離サブ。
・魔術:あくまで基本のモノ(着火や軽度の身体強化、鋼糸に魔力を流し操作)。
・長所:近接戦に有利。
・短所:長距離戦に不利。


ステイル「ふむ……神裂。正しいか?」

神裂「ええ。概ね」コクッ

香焼「おおむね?」キョトン・・・

神裂「はい。貴方に一番向いている戦闘スタイルが書いてませんね……気付く必要はありませんけど」ジー・・・


何だそれ?


ステイル「素直に教えてやればいいじゃないか」チラッ・・・

神裂「いえ。この子自身が望まないでしょう。確実に嫌がります」

香焼「……教えて欲しいっす。聞くだけ聞くってのもダメっすか?」ジー・・・

神裂「…………、」チラッ・・・


何故か五和と浦上の方を向く姉さん。2人は苦笑するだけ。


神裂「では……貴方が今書いたそのスタイルはあくまで『基礎』です。近接とかダガーとか、それは得物の話でしょう」

ステイル「僕であれば炎の剣とルーン魔術。神裂でいえば長刀と鋼糸という事だ」

神裂「スタイルというのはですね……例えば、私であれば『斬り込み』でしょう。五和と浦上も得物的にコレですね」チラッ・・・

ステイル「僕は何でも出来るけど、得意なのは『掃討』だね」


圧倒的火力による一掃か。じゃあ僕は?


神裂「それは……ふむ」ジー・・・

香焼「はい」コクッ

神裂「……えっと」タラー・・・

香焼「……はい」コクッ

神裂「……あー」ダラダラ・・・


はっきり言って下さい。それに応じて今後の鍛錬を極めていくんで。


55 :第二話(19話)―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 21:11:37.21 ID:LnzJmGBD0
数分悩んだ末、姉さんは僕にこう言い放った。


神裂「やっぱり、駄目です」ハァ・・・

香焼「ええぇ」ジトー・・・

神裂「いや、だって絶対『嫌だ!』って言いますよ」タラー・・・

ステイル「良いから言ってやれよ。判断するのは彼だ」チラッ・・・

神裂「……これでも?」カキカキ・・・スッ・・・

ステイル「ん?」ジー・・・


メモに何かを書き、ステイルに渡す。


ステイル「……ぷっ」クスクス・・・

香焼「な、何だよ!?」キョトン・・・

ステイル「い、いや……確かにどちらも、君向きだ」プルプル・・・

香焼「……そのメモ寄越せ」ジトー・・・

神裂「だ、駄目です!」アタフタ・・・


そんなに嫌な事書いてるのか? ふと、ドサクサに紛れて五和と浦上がステイルの背後に回り、メモを覗いた。


五和・浦上「「あー……ぷふー!」」クスクス・・・

香焼「な、何だよ! 本当に!」ムキー!

五和「そ、その……どっちもコウちゃん嫌がるよ」プルプル・・・

浦上「でも、これは、えっと……同年代の子達の誰よりも秀い出るね」プルプル・・・

ステイル「ああ。多分、一つ目は極めれば僕以上だろう……二つ目は、これは、うん……ぷっ」クスクス・・・

香焼「な、何だよ!!」ウガアアァ!!


さっさと教えろ!


神裂「ええっと……ではこうしましょう。これを見たら、貴方にはこれの鍛錬をしてもらいます。絶対にです」ジー・・・

五和「えっと、確実に嫌がる内容よ?」タラー・・・

ステイル「だが極めれば……何よりも、危険な存在になるだろう。まぁ特命を出しても良い程に」コクッ

香焼「危険? 特命?」キョトン・・・

浦上「如何する? 試す?」ジー・・・


4つの視線が僕に集まる。
とても危ない香りがするけど……新たな可能性を拓けるのであれば、それに乗らない手は無い。後悔しても未練を残すな。

僕は頷き、姉さんから渡されたメモを開いた―――

56 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 21:37:52.40 ID:LnzJmGBD0
 ―――とある翌日、AM10:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・・



週末。
やはり聞くべきではなかった、と後悔の念を持ちつつ、件の修行に入る事となった。


神裂「今更、『やっぱ嫌だ』は無しですよ」メッ

香焼「言いません。でも……はぁ」グデェ・・・


大きく云えば『潜入(スニーキング)』スタイルだった。確かに、僕の様に小柄で身軽な小僧には向いているだろう。
だがしかし、極めるべき『2つ』に僕は納得がいってなかった。


香焼「変装と、暗殺」ハァ・・・

五和「確かに同年代では、極め方次第で随一だろうね」フムフム・・・

浦上「うんうん。基本、皆派手な魔術とかばっかだからネ。能力者の友達もそうじゃない? 軍覇くんに最愛ちゃん」ウンウン・・・


いや、でも……変装って。しかも『不殺』の理念があるのに、暗殺だぞ。


神裂「先日言ったでしょう。意識理念云々は修行の場では二の次だ、と」コクッ

香焼「……でも明らかに『殺し』っすよ」ウーン・・・

神裂「やれやれ……いいですか、香焼。私の魔術もどちらかといえば『殺し』専門です」ジー・・・


確かに姉さんの魔術で『相手を傷付けない』のは至難の業だ。力量を間違えれば高確率で死ぬだろう。


香焼「……でも、決して殺しなんかしないっすよ」ウーン・・・

神裂「そういう事です。例えが悪いかもしれませんが、核と同じですよ」

五和「宛ら戦略兵器ですか」タラー・・・

神裂「ええ。この街の超能力者(レベル5)だってそうでしょう……話が逸れましたね。兎角、それを覚えるのは無駄ではありません」

香焼「はぁ」ポリポリ・・・


使うか使わないかは、本人次第か。でも……修行になるのだろうか。


神裂「貴方は少し頭で考え過ぎです。行動してなんぼでしょう」

香焼「はぁ」ポリポリ・・・


というわけで、『変装』と『暗殺』の修行が始まった。

57 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 21:49:06.66 ID:LnzJmGBD0
とは言いつつも、何を如何修行して良いモノか分からない。


神裂「ええ、そうですね。正直、申し訳無いのですが私達3人はそれに向かない」アハハ・・・

浦上「いや、やれって言われれば出来るんだけど……得意ではないし、香焼に教えるそれは無いんだよね」ポリポリ・・・

香焼「……企画倒れ?」タラー・・・

五和「いやいや! ちゃんと考えてるわよ。指導者って意味でだけど」ポリポリ・・・


指導者?


神裂「とりあえず行きましょうか」コクッ

香焼「え、あ、はい」コクッ

五和「そんじゃ、まずは……―――


①麦野(+α)

②海原(+α)

③必要悪の教会から???(縮図巡礼で英国に飛びます)

             >>60

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 22:01:57.10 ID:7KY9MGXBo
2つっち

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中部地方) [sage]:2011/11/01(火) 22:14:00.46 ID:f5137eND0
②海原と土御門
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/01(火) 22:14:56.04 ID:T1SKaolVo
②の海原つっちーペア

63 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 22:20:42.43 ID:LnzJmGBD0
 ―――とある翌日、AM11:30、学園都市第7学区、とあるファミレス・・・・・・



場所を移動し、第7学区。中央道沿いのファミレスにその人は待っているという。
とりあえずは一人で行って来いという事なので、バスを乗り継ぎ、目的地へ向かった。


香焼「此処『Joseph's』じゃん」タラー・・・


此処はよく最愛達(アイテム)が屯しているファミレスだ。まさか……彼女達に指示を仰ぐのか?
もしそうだったらすぐ帰ろう。セッティングしてくれた姉達には申し訳ないが、『救うべき対象』の師事を受ける様な真似はしたくない。

店内に入り、辺りを見渡す。


香焼「奥に……良かった。居ない」ホッ・・・


いつも座っているという窓際に最愛達の姿は無かった。では一体、誰が……


結標「あ! 来た来た! おーい!」ブンブンッ!

香焼「あ、淡希さん!?」ギョッ・・・


なんか予想外の人が僕に向かって手を振っていた。
こっちこっちと急かすので、止むを得なく彼女の方へ向かう。


結標「はいはい、座って」フフフッ

香焼「はぁ……って、土御門?」キョトン・・・

土御門「おう」グデェ・・・


思いっきり身内ですけど。


土御門「しゃーねぇだろ。ねーちんに頼まれたとあっちゃー無碍に断れないにゃ」ムニャー・・・

香焼「えっと……暇なんすか?」タラー・・・

土御門「……否定はしないが、腹立つな」ジトー・・・

結標「良いから良いから。さ、何食べる? お姉さん奢っちゃうぞ♪」ニコニコッ


やっぱり、淡希さんは目的を分かってない気がする。


結標「もー。分かってるわよ。とりあえず先に腹ごしらえって事」コクッ

香焼「はぁ」ポリポリ・・・


とりあえず、飯を食いながら話を聞こうか。

64 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 22:45:38.78 ID:LnzJmGBD0
ドリアを食べながら土御門の話を聞く。
なんでも僕が『潜入任務(スニーキング)』について学びたいと悩んでいた、とか何とか。別に悩んでませんけど。
まぁそこはコイツを納得させる為に話を盛ったのだろう。僕としては微妙に不満だ。


土御門「―――いや、しっかしねぇ……暗殺の勉強したいたぁ、よくねーちん破門にしなかったな」ハハハ

香焼「ぶっ!!?」ダラダラ・・・

結標「ホント、ビックリよねぇ。でも良いわ。そういう事ならミッチリ教えてあげる。と言っても、私は暗殺得意じゃないんだけどね」フフッ

香焼「ちょ、待……えっと」タラー・・・

土御門「何だ?」チラッ・・・


いや、待て。此処は黙っておいた方が良いのか。
多分、『学ぶだけ』とか中途半端な事言ったら即行で見限られるだろう。言葉は選ぶべきだ。


香焼「……とりあえず、修行プランを聞きたいんすけど」コクッ

土御門「うんうん……でもその前に、坊っちゃん」ジー・・・

香焼「坊っちゃ……な、何すか?」タラー・・・

土御門「この店の中に魔力反応は?」モグモグ・・・

香焼「え? うーん……自分を抜けば、無しっすよ」コクッ


土御門は『能力』の関係上、極力魔術を使わない。
内包している魔力については如何なのか分からないが、何らかの形で抑えているのだろう。


土御門「ふむふむ……そんじゃ答え合わせだ」コクッ

香焼「はい?」キョトン・・・

土御門「おい。こっち来い」チラッ・・・

香焼「は?」ポカーン・・・


何を言ってるんだ……と思った刹那、隣のテーブルに座っていた女性3人が此方に向かってきた。


香焼「……え?」アタフタ・・・

女A「ふふっ。こんにちわ」スッ・・・

香焼「こ、こんにちは」ドキッ・・・


隣に座り、いきなり僕の太腿に手を置く高校生くらいの女性。


結標「ちょ、何やってんのよ!」ムキー!

女A「あら? 嫉妬ですか? みっともないですよ、結標さん」ニコニコッ

女B「馬鹿か……気持ち悪いぞ、エツァリ」ジトー・・・

女C「師匠、フザケが過ぎます。とミサカはショチトルと共に貴方をジト目で睨みます」ジトー・・・


え……あんだと?

65 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 23:06:06.08 ID:LnzJmGBD0
呆気に取られる僕の顔を見て、クツクツと笑う道化師。
頼むから現状を説明してくれ。


土御門「ハハッ。言ったろ。答え合わせだって」ニヤリ・・・

香焼「え……ぁ」チラッ・・・

女A(エツァリ)「ええ。そういう事ですわ」ニヤッ・・・

女B(ショチトル)「まったく、リハビリがてら付き合えなんて……こんな事ならトチトリと部屋で本でも読んでいた方がマシだ」フンッ

女C(御坂蛇)「そう言いつつ、貴女は彼の居ない所でデートだ何だとニヤけてむごおおおぅ!!」ジタバタッ!

女B「だ、黙ってろホムンクルス!!」カアアァ///


良く分からないけど……魔術師か。


土御門「ああ。正解は俺ら以外に2人だ。『蛇』はただの変装だぜぃ」チラッ・・・

女C「……ばれないものですね、とミサカ17600号は自己評価します」ウンウン・・・

女A「私と此方の少女は共に魔術で変装してますよ。一応、土御門から呪符を貰って魔力漏れを防いでいますしね」コクッ

香焼「……はぁ」ポカーン・・・

結標「私にゃ何が何だか分からないわ」ハハハ


とりあえず……変装についてか。


土御門「そういう事だ。そんじゃ場所を変えよう。急の任務も無ぇから仮眠室(レストハウス)に移動すっか」テクテク・・・

結標「アイツ居んじゃないの?」

土御門「構わねぇよ。とりあえず会計は俺が払っとく」スタスタ・・・


そそくさと会計に向かう土御門。因みに、請求書貰って宛名を『神裂様』にしてた。あざといヤツめ。


女A「さぁ。私達も行きましょう」スッ・・・ギュッ

香焼「え、あ、は、はぁ」ドキッ・・・

結標・女B「「海原ぁ(エツァリぃ)!!」」ガー!!

女C「やれやれ。複雑ですね、とミサカは実況します」ハッ


海原さん。例え変装でも心臓に悪いのでくっ付かないで下さい。

66 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/01(火) 23:26:52.83 ID:LnzJmGBD0
 ―――とある翌日、PM01:00、学園都市第7学区、とあるホテル一室・・・・・・



土御門に案内され、一流とはいかないまでもそれなりに立派なホテルに移動する。
彼らのアジト(?)だとか何とか。


土御門「さて、と……ん?」チラッ・・・

結標「あー……やっぱ居るじゃない」ジー・・・


仲間、か。見覚えがありそうでなさそうな男性(中性的だが多分、男?)がソファで横になっていた。


一方通行「……あン?」チラッ・・・

結標「何で此処で寝てるのよ。家帰れば良いでしょ」ハァ・・・

一方通行「うっせェ。あそこは喧しいのがゴロゴロ居ンだよ。テメェみてェなのがな」グデェ・・・

結標「ぐっ……相変わらず性根ヒン曲ってるわね」ジトー・・・

一方通行「オマエ程じゃねェよ……ンで? 団体様で何の御用だ?」ジトー・・・

土御門「悪いな要り用だ。任務じゃないが、金が入る予定なんでね」ジー・・・

一方通行「……あっそ」グデェ・・・


再び横になる白髪もやしさん。


香焼「えっと……土御門。彼、居ていいの?」チラッ・・・

土御門「宜しくない。ついでにソレも」チラッ・・・


淡希さんも『魔術サイド(此方側)』じゃないからなぁ。


女A「土御門。此処は……、」ゴニョゴニョ・・・

土御門「ん……そうだな。おい、結標。一方通行」ジー・・・

一方通行「あ?」チラッ・・・

結標「何よ?」ジトー・・・

土御門「出てけ」クイッ

一方通行・結標「「ヤダ」」キッパリ・・・


この2人、仲良いんだなぁ。


一方通行「おい、ガキ……言葉選べよ」ギロッ・・・

結標「香焼くん。例え貴方でも言って良い事と悪い事があるわよ?」ギロッ・・・

土御門「と、まぁ見ての通り以心伝心の仲だぜぃ」ニヤリ・・・

一方通行・結標「「死ね!!」」ウガー!


やっぱ仲良いなぁ。

67 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 00:01:40.36 ID:hu4Zwcev0
結局、金と権力(土御門の方が立場が上なのか?)で2人を無理矢理追い出した。
『デートでも別のホテルでも好きなとこ行って来い』とか馬鹿な捨て台詞を吐かなきゃ、ボコボコにされずに済んだだろうに。


土御門「痛てて……あんの馬鹿能力者共」ハァ・・・

香焼「自業自得でしょう」タラー・・・

土御門「はいはい、私が悪ぅござんした……さて、と……海原。そろそろ術を解け」チラッ・・・

女A「あら。もう? 結構気に入ったのだけど」フフッ

女B・C「「気持ち悪い」」タラー・・・


仕方ないなぁと詠唱(3カウントくらい)呟き、女の容姿が見る見る変わる。
ベリっと剥がれる様な……脱皮とはまた違う。粉が取れる感じだ。


エツァリ「―――……ふぅ。まぁこんな感じですよ」ニッコリ

ショチトル「―――……はぁ。久々にやると疲れるな」ポリポリ・・・

土御門「御苦労さん。香焼、今のがコイツらの変装だ」チラッ・・・

香焼「はぁ」タラー・・・


もはや別人。正直まったく分からない。


香焼「自分に、今のをやれと?」タラー・・・

土御門「いんや。無理だ。術式が違い過ぎる」フルフル・・・

エツァリ「確か貴方のところの術式(天草式)は偶像特化型でしょう? 我々は魔術・霊装を用いた術式です」


道具に頼るという点は同じだが『日常』と『神秘性』の違いがあるという事か。


エツァリ「勿論、式の組み方次第では変装魔術も可能かもしれません。ですが、流石に僕の知る所ではありませんね」コクッ

香焼「はぁ……そっちの女の子も、海原さんのお仲間で?」ポリポリ・・・

エツァリ「ええ。貴方と同い年くらいでしょう……ショチトル」チラッ・・・

ショチトル「何で挨拶しなきゃならんのだ」フンッ

エツァリ「こらこら」メッ

ショチトル「……ショチトル。エツァリ(コイツ)と同じ逸れ魔術師だ」フンッ・・・

エツァリ「やれやれ……気を悪くしないでください。彼女はシャイなだけですから」フフッ

ショチトル「う、うっさい! というかエツァリ貴様、その気色悪い喋り方をするのは止めろ!」ギロッ・・・

エツァリ「と、言われても……癖です」ハハハ・・・


それから暫くトム&ジェリー宜しく、2人のコントを見せられた。此方も仲良いなぁ。

68 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 00:23:35.01 ID:hu4Zwcev0
さておき、真面目な話に戻る。


エツァリ「―――では先に、先程貴方には無理と告げた理由をお見せしましょう」チラッ・・・

女C「……はい」スッ・・・


未だ変装を解いていない女性(確か御坂蛇さん?)からシガレットケースの様なモノを受け取る海原さん。
それを開き、中に入っていたのは……え?


エツァリ「これが何か分かりますか?」スッ・・・

香焼「い、いや……何すか?」タラー・・・

ショチトル「人の皮だ。此処」トントンッ

香焼「っ!!?」ギョッ・・・


自分の面の皮を指差すショチトルさん。まさか……面の皮を剥いで!?


エツァリ「ははは。そこまでグロテスクではありませんよ。皮であれば何処でも可能です」コクッ

土御門「そんじゃー『割礼』で切り取った皮でも良ぶべらぁ!!?」ゴガンッ!!

ショチトル「だ、黙れ変態!!」カアアァ///


※割礼……気になる人はググってみよう!


エツァリ「ええっと、とりあえずこれは触媒です。この皮は普段の『海原光貴』のモノ」スッ・・・

香焼「ぁ……そ、その……提供、して貰ってるんすか?」タラー・・・

エツァリ「ええ。一応、『協力関係』にありますからね」ニヤリ・・・


その笑みは絶ッッッ対嘘だ!


エツァリ「ま、とりあえず見ていて下さい―――」


そう言うと……何とも形容し難い感じで……『変身』した。普段の海原さん、その人。


海原「―――……こんな感じですよ」フフッ

香焼「は、はぁ」タラー・・・

土御門「相っ変わらず気持ち悪いな」ジトー・・・

海原「余計なお世話です……とりあえず、この術を教えるには魔術回路の書き換えから始まってしまいます」チラッ・・・

香焼「え?」ギョッ・・・

海原「しかし、それは貴方が望む所では無いでしょう。アマクサの術式は魔力生成に関してはこの業界でも屈指ですからね」コクッ


天草式は術者の魔力(オド)が足りなくなった際に、周囲の偶像で魔力を練れる。
自然界の魔力(マナ)程ではないが、生成偶像さえ持っていれば幾らでも魔力を蓄えられる……らしい。

69 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 00:36:51.19 ID:hu4Zwcev0
兎角、捨てるには惜しい魔術回路(というか魔力生成術式)だそうだ。


海原「それに宗派を鞍替えさせるのも可哀想ですしね」フフッ

土御門「甘い事を」フンッ

海原「とりあえず、自分達の変装云々については此処までです」コクッ

香焼「えっと……それで、自分は如何すれば?」キョトン・・・


まったく本題に入ってない気がする。


海原「そうでしたね……ではスネーク」チラッ・・・

女C「はい―――」スッ・・・


まだ変装を解いていなかったらしい御坂妹(蛇)さん。
顎の下に指を挿入れ……はい?!


御坂蛇「―――……ほっと」ベリベリベリ・・・

香焼「」タラー・・・

海原「はい、以上です」コクッ


様は●パン3世の変装(それ)だ。


御坂蛇「人工皮膚。毛先結合型ウィッグ。部位矯正パッド。変声機。などなど、とミサカは解説します」コクッ

ショチトル「科学技術も侮れないな」ムー・・・

香焼「え、えっと……土御門?」チラッ・・・

土御門「そういう事だぜぃ。お前に覚えてもらうのは今のヤツだにゃー」ハハハ

香焼「ま、マジっすか!?」ダラダラ・・・


何を如何覚えろと!? というか魔術は何処に!?


土御門「話は最後まで聞け。勿論、これだけの為なら俺や海原が居る必要はないだろう」ウンウン・・・

香焼「じゃあ……何故?」キョトン・・・

土御門「始めに言ったろう。『変装』と『暗殺』だって」ジー・・・

香焼「あ……そうっすね」ポリポリ・・・


色々あった所為で忘れていた。しかし、何度聞いても物騒な響きだなぁ。

70 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 01:00:48.37 ID:hu4Zwcev0
土御門の説明が再度始まる。


土御門「覚えているか? 俺はさっきファミレスで魔力反応の話をした」チラッ・・・

香焼「はい……あの店には自分の反応しかなかった。でも実際はそこの2人も魔術師だった」コクッ

土御門「そうだ……何を言わんとしてるか、察しがついたか」ジー・・・


成程……気配遮断か。


土御門「その通り。流石理事校生」フフッ

香焼「偏差値云々は関係無いっすよ……それで?」

土御門「ああ。まず俺はお前に『呪符』の作り方を教える。なぁに、簡単なモンだ」コクッ

香焼「呪符? 陰陽道のっすか?」ポカーン・・・

土御門「ああ。結界みたいなものだ。『外』に向けての結界ではなく、『内』に向けての結界だぜぃ」クイッ


外向き結界とは『人払い』や『索敵』、『トラップ』的なモノ。
内向き結界とは天草式でも良く使う『魔力蒐集』や『吸収(ドレイン)』、『固有時制御』的なモノらしい。


土御門「まず見た方が早いな……よいしょっと」ヌギヌギ・・・

ショチトル・御坂蛇「「っ!?」」ギョッ・・・

海原「……土御門。一応、レディの前ですよ」ハァ・・・

香焼「ああ、悪い悪い……とりあえず、ほれ」ポンッ・・・


胸中に札が貼ってある。


土御門「これを取ると……ッ」ドクンッ・・・

香焼「つ、土御門!?」タラー・・・

土御門「ま、魔力を……生成……げほっ……一度、回路を開いた人間は……嫌が応にも、オドを、作るからな」ハァハァ・・・


かなり辛そうだ。というより……何という魔力量。
普段使わない魔力が躯体(器)から毀出(キャリーオーバー)しそうなのか。
もう良いだろうと土御門は再度胸に札を貼り付けた。


土御門「うぃ……だるい」ハァ・・・

香焼「……それは、えっと」タラー・・・

土御門「魔力をシャットダウンさせる。言っておくが魔術師としては文字通り『最悪の手札』だ」コクッ


確かに……それを張れば魔術を使えなくなる(?)みたいだ。というかそれ攻撃にもつかえるんじゃないか?

71 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 01:20:21.88 ID:hu4Zwcev0
しかし、僕の問いに土御門はノーと答えた。


土御門「そんな都合の良いモンじゃねぇよ。あくまで『魔力漏れ』を防ぐ呪符に過ぎない」

香焼「……でも、それじゃさっきの変装魔術に対しては?」

土御門「変装魔術ってのは、コレと同じ内側に向けての魔術だ。外に漏れはしない」

海原「これも見せた方が早いですね……ショチトル。魔術で攻撃をしてください。なるべく軽いヤツで」チラッ・・・

ショチトル「……『穴』で良いか?」スッ・・・ニヤリ・・・

海原「いや、それ強力……っておわっ!!?」バッ!!


ショチトルさんの指から放たれた小さな黒い球場の魔力体を、海原さんが魔力壁で防いだ。


御坂蛇「師匠。相当ショチトルに恨まれてますね、とミサカは苦笑します」

海原「まったく……さて、では……はい」ゴソゴソ・・・スッ・・・

ショチトル「ああ、そういう事か……蛇。背中に張ってしまったから取ってくれ」チラッ・・・

御坂蛇「はいはい。こちょこちょー」スッ・・・ガサゴソ・・・

ショチトル「ちょ、止め! あはははははっ!」キャー!

土御門「眼福眼ぷぐわっ!!」ゲシッ!

ショチトル「み、見るな変態! お前もだ、ちっこいの!」カアアァ///


カチンとくる娘だなぁ……さておき、2人は身体に張っていた呪符を取り出した。


香焼「あれ? 破れてる?」キョトン・・・

土御門「ああ。今2人は外に向けて魔力を使用したからな」コクッ

海原「ショチトルが放出系の魔術。僕が障壁系の魔術を展開しました」チラッ・・・


つまりこの呪符は、メリット:魔力反応を消せる。  ・デメリット:外向きの魔術を使用できない。


土御門「蛇口に張った紙だと思え。貯水タンクの中を幾ら掻き回しても紙は破れない。だが、蛇口を捻れば紙が破れる」

香焼「はぁ……使い処次第っすね」コクッ

土御門「だが、潜入には持ってこいだぜぃ」フフッ

香焼「ええ。だけど、自分に作れるんすか? 陰陽術なんて、自分は」ウーン・・・

土御門「大丈夫だ。陰陽術ってのは天草式と似ていて、多角宗教融合型だ。まぁ基督教思想は取り入れちゃいないがな」コクッ

香焼「……了解っす」コクッ


とりあえず覚えるだけ覚えてみよう。無駄ではない筈だ。

72 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 01:44:10.31 ID:hu4Zwcev0
一寸後、大量の資料を渡される。
呪符について今日はコレを呼んで来るだけでいいらしい。直接指導は明日以降だとか。


土御門「さて、今のは魔力遮断であって気配遮断ではない」

香焼「はい」

土御門「暗殺や潜入に必要なのは、あくまで気配遮断だ。それを俺と海原、あと……そこの妹達もか。3人で叩き込む」

ショチトル「むっ……私は?」ジトー・・・

海原「ええっと、ショチトルは……、」タラー・・・

ショチトル「私だって一、戦士だぞ」ムンッ・・・

土御門「確かに凄腕の暗殺者(アサシン)かもしれないが……人にモノを教える事、出来るのかにゃ?」チラッ・・・

ショチトル「うっ……えっと」タラー・・・


凄腕の魔術師が、凄腕の指導者とは限らない。
確かステイルが言っていた。ロンドンの魔術師養成の最高学府に居る『とあるロード』は実力はそこそこだが、指導にかけては天才的だとか。


土御門「あー……プロフェッサーかぁ。懐かしいなぁ」ハハハ・・・

海原「あの有名人ですか。第二世界(アメリカ大陸)でも名を馳せていますよね」コクッ

土御門「ぶっちゃけ、俺らみたいな魔術師より、そっちから師事仰いだ方が良いけどな」ハハッ

香焼「へー……その内、尋ねてみるっす」ポリポリ・・・

土御門「無理だな。忙しい人らしいし……話が逸れたな。兎に角、気配遮断についてだ」コクッ


これまた資料を渡してきた。


海原「手っ取り早いのは『音声遮断(ミュート)』の魔術。これについては天草式の身内に聞いてください。誰かしら使えるでしょう」

土御門「但し、これは先の呪符と併用出来ない。何故か分かるな?」

香焼「外向きだからっすね」コクッ

土御門「ああ。そして音声遮断魔術で消せる音は『声・衣擦れ音・足音』が大抵だ」

海原「あくまで『自分が接触しているモノ』に対してですからね。それ以上は『結界』の域です」

ショチトル「謂わば、大衆の『聴覚』から自分を消すからな。大規模になってしまう」ウンウン・・・


成程。では『視覚』に訴えるのは駄目なのか?


土御門「可能だが、これも呪符と併用は出来ない。加え『透過・不可視魔術』は結構レベルが高いぞ」

海原「学園都市風にいえば『視覚阻害(ダミーチェック)』の強・大能力者(レベル3,4)くらいでしょうね」

御坂蛇「よく分かりませんが、その例えならミサカ達の電磁波索敵に引っ掛かりますね。とミサカは口を挟みます」ウンウン・・・


完璧な『気』配遮断となると、中々難しいモノだ。

73 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 02:00:42.45 ID:hu4Zwcev0
とりあえず、天草の術式で五感を消せる術を勉強しろとの課題が出た。これなら直ぐ調べられるだろう。


土御門「問題は……第六感だ」

香焼「え? それって魔力とは違うんすか?」キョトン・・・

土御門「全然違う。ぶっちゃけ五感ってのは魔術じゃなく『武術』でも消せるだろう? まぁ完璧には無理だがな」ピッ


現に女教皇様や建宮さん、五和クラスの『達人』になれば魔術抜きで『縮地』や『猫足』、『蜘蛛』、『蝙蝠』の動きが出来る。
僕や天草の他の衆も一通り出来るとはいえ『達人』の域には程遠い。


土御門「だが殺気や気配ってのはそう簡単に消せない……いや、お前は殺気に関しては大丈夫だな」コクッ

香焼「え?」キョトン・・・

土御門「簡単な話だ。殺気を出せないだろう?」フンッ


良い事の筈だが、馬鹿にされた気がする。


土御門「だが怒気や焦燥、危機、嬉喜は漏れてしまう」

香焼「えっと……そうなんすか?」ポリポリ・・・

海原「土御門。この話は難しいですよ……実際体験体感させないと」チラッ・・・

香焼「そうだな……うん。それじゃあ課題を出そう」コクッ


オルソラさんもビックリの速記でメモを僕に渡した。


土御門「こんな所だ……あとは後日だな」コクッ

香焼「はい。あれ? 変装については?」チラッ・・・

海原「そうそう……スネーク。如何しますか?」チラッ・・・

御坂蛇「え……私に一任を?」キョトン・・・

土御門「ああ。俺らには教えられない技術だからな」コクッ

御坂蛇「了解です……ふふっ。これでミサカにも後継者が……、」ニヤリ・・・


何か、悪寒が走りました。
その後、これまた大量の資料を渡され今日はお開きという事に。明日までに全部読み切って来いとの事。
色々大変そうだが、良い糧になる筈だ。嫌がらず頑張ってみよう。

74 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/02(水) 02:17:08.56 ID:hu4Zwcev0
 ―――とある翌日、PM07:00、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』、香焼宅・・・・・・



大量の資料を持って帰宅する。
夕飯の準備は終わっている。どうやら僕の帰りを待っていた様だ。


五和「お帰りー。先ご飯食べちゃってね」テクテク・・・

香焼「うん。ただいま」テクテク・・・

浦上「それで? 如何だったん?」チラッ・・・

香焼「とりあえず今日は勉強してこいだって」スッ・・・

もあい「にゃー」コロコロ・・・


もあいを膝に乗せ、ソファに座る。


神裂「如何いった内容を?」チラッ・・・

香焼「あー……秘匿しろ。だそうっす」ポリポリ・・・

神裂「成程。漏外せずですか。潜入のそれっぽいですね」フフッ

浦上「なーんかツマンナイなぁ」ブーブー

香焼「仕方ないだろう。自分はお前達みたいに天才肌じゃないんだからコツコツせこくやるしかないんすよ」フンッ

神裂「そう自分を卑下しないの……兎角、先にご飯にしましょう」コクッ


それが良い。身体的な疲れは無いが、正直精神的にかなり疲れた。
ご飯を食べて、風呂に入って自室でゆっくり勉強しよう。


香焼「―――と、その前に……姉さん。これ、土御門からっす」スッ・・・

神裂「手紙ですか?」

香焼「明日の鍛錬に必要だから、とか何とか。自分は読んでないっす」


頭を捻りながら手紙を開く姉さん。そして一寸後……苦笑。
何事かと思ったが、僕に見せる前に五和と浦上に見せてしまった。2人……腹を抱えて爆笑。


香焼「な、何だよ!」タラー・・・

浦上「ひゃひゃひゃひゃ! こ、これは……遂にというべきか!」ケラケラケラ!

五和「ひー……腹痛い……ってか全然貸す。ていうか私達が教える!」ダハハハ!

神裂「ははは……まぁ、その……一緒に練習しましょうか。私も苦手ですし」ハハハ・・・


奪う様に手紙を掴み内容を読む。そこには―――


香焼「じょ……女装、してこい……だと」チーン・・・

もあい「なー」フシフシ・・・


―――一番危惧していた事が、書かれていた……―――


80 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 20:31:47.02 ID:3lmzf4Tn0
 ―――とある休日、PM03:00・・・・・



人には誰しも必ず一つくらいは、コンプレックスというものがある。
特に僕は他人に比べ多い方だと自負している。魔術の実力然り、身長然り、童顔然り、声質然り。

故に、それを馬鹿にされた弄られたりするのが苦痛で堪らない。しかし……しかしだ。


香焼「どうして、こうなった」ハァ・・・


仮の師匠の命により『それ』を強制的にさせられる羽目になるとは。


五和「さーてコウちゃん! メイク覚えないとね!」ニコニコ・・・

香焼「……いやだ」ボソッ

浦上「仕方ないじゃん。修行の一環でしょ?」フフフ・・・

香焼「…………、」ウルウル・・・

神裂「ええっと、あんまり事を荒げるのはよくありませんよ」アハハ・・・

もあい「にゃー」フシフシ


海原さんと蛇さん曰く、『特殊メイクを使わずの男装女装は変装の基本』だとか何とか。


五和「とりあえず私達のメイクじゃそんなに手本にならないし、此処はメイクの先生に頼りましょうか」フフッ

香焼「いや、別にいいよ。あんま広めないで……あ、そうだ! 対馬さんに教わればまだ穏便に」ハァ・・・

浦上「残念! 対馬さんは今本部(九州)に帰ってますヨ」ニヤリ・・・

香焼「うっ……じゃ、じゃあ他の女性教徒に」タラー・・・

五和「コウちゃん。教わるならプロ級の人に教わっとこうよ」ウンウン・・・

神裂「ふむ。確かにその意見は一理ありますね。折角覚えるなら極めた方が良いのやもしれません」コクッ


聞こえは良いが、実際コイツらは楽しんでるだけだろ。


浦上「まま、兎に角先生んとこ行きましょ!」グッ!

香焼「ったく……一体誰なんすか?」ポリポリ・・・

五和「先生とは!! なんと……―――


 ①むぎのん(学園都市組)      ②オリアナ姐御(英国組)


            >>82

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 20:45:55.20 ID:AQyjpgoIO
1
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 20:55:05.16 ID:pEWHkHIDO
83 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 21:33:06.13 ID:3lmzf4Tn0
五和「―――はい多分予想通りの人です!」ドンッ!


予想通りっていうか、この街に居るプロ級スタイリストの知り合いってこの人以外いないじゃん。


神裂「第3学区の個室サロンを借りてるらしいので向かいましょう」コクッ

五和・浦上「「はーい」」ワーイ

香焼「ちょい待ち」ピタッ

五和「なーに? 今更行かないは無しよ」ンモー


確認だが……その場に最愛は居ないだろうな。


神裂「うーん、分かりません。ただ固法さんは居ますよ」ウンウン

香焼「……淡希さんは?」タラー・・・

神裂「麦野さんが呼んでいれば居るでしょう」ピッ

五和「何々? どったの?」フフフ・・・

浦上「最愛ちゃんと結標さんに見られるの恥ずかしいの?」ニヤニヤ・・・


当たり前だろう。最愛は兎も角、淡希さんに見られた日には飽きるまで玩具にされかねない。


神裂「まぁまぁ。一応、配慮して貰える様メールは入れておきますから」ポンッ・・・

香焼「…………、」ムスー・・・


気は乗らないが、セッティングしていましまった以上は仕様があるまい。
しかし如何しても納得いかないのが……お前らだ。


五和「え? 何が?」ポカーン・・・

香焼「何で付いて来るんだよ」ジトー・・・

浦上「そりゃ勿論面白s…ゲフンゲフンッ…手伝いを」ウンウン・・・

香焼「必要無い!」ギロッ・・・

五和・浦上「「えー」」ブーブー

香焼「姉さんも何か言ってやって下さい!」ムンッ

神裂「あ、えっと……それじゃあ、うーん……あ、そうだ! 女装したままこの家に帰ってくれば良いんじゃないですか」ピーン!

香焼「な、ちょ、馬鹿じゃないんすか!?」ハァ!?

五和・浦上「「それならおk」」ビシッ!

もあい「にゃー」コロコロ・・・


結局、メイクの練習最中に邪魔されるのと、終わって尚恥を掻くののドチラがマシかという事で……前者を選んだ。
せめて最愛と淡希さんがその場に居ない事を願う。


84 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 22:03:07.15 ID:3lmzf4Tn0
 ―――とある休日、PM04:00、学園都市第3学区、某個室サロン一室・・・・・・



カラオケボックスを豪奢にしたような第3学区に在る、ブルジョアジーな雰囲気を醸し出す建物。
手軽に秘密基地を借りられるため上流階級のお子様に人気らしい。『監視の目が完全に無い場所』として重宝されてるのだとか。
その5階の一室に僕達は足を運んだ。


神裂「此処ですね……失礼します」ガチャッ・・・

麦野「あいよ。いらっしゃーい」ゴロゴロ・・・


丁度ウチのリビングぐらいの広さの個室。テレビ、パソコン、カラオケ、ゲーム機何でもアリだ。


五和「おー! 凄いですね!」キラキラ・・・

浦上「パーティーにも使えそうですしホテル代わりにも使えそうですヨ」キョロキョロ・・・

麦野「実際そういう施設だからね。宴会会場にもラブホにもなるわ。美偉、今度旦那と2人で来てみたら?」ニヤリ・・・

固法「ば、馬鹿言わないの!」ンモー!

麦野「大丈夫大丈夫。もう一ランク下げればちょっと高めのモーテルくらいの価格で一泊できるから」フフフ・・・

固法「お金の心配してるんじゃないわよ! いいからさっさと本来の目的に入りなさい!」ジトー・・・

麦野「はいはい。おっかねーなー、私達のお袋さんは」フフッ


部屋を見渡し……安堵する。最愛と淡希さんは居ない様だ。


麦野「最初はあの子とフレンダ、滝壺居たんだけどねぇ……火織が坊やの為に配慮してくれっていうメール送ってきたから追っ払ったわ」コクッ

固法「それから結標さんはバイトが忙しいみたいで今日は来れないそうよ」コクッ

香焼「そうっすか。ありがとうございます、助かりました」ペコッ

麦野「んな感謝される様な事じゃないわよ。それより……、」ジー・・・


僕の顔をジロジロ見る麦野さん。何か、怖い。


麦野「童顔だとは思ってたけど……まさか本当にコスプレしたいとはねぇ」ジー・・・

香焼「ハァ!?」ギョッ・・・

固法「あれ? 今度舞台で女生徒役で出るからじゃないかったっけ?」ジー・・・

香焼「な、何それ……はっ!」バッ!


姉さんの顔を見る。困った様に苦笑していた。僕の女装についての言い訳を考えた結果、適当な事を言ったのだろう。
まったく……やはりこの人は何処か抜けてる。

85 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 22:33:53.80 ID:3lmzf4Tn0
お願いだから理由云々は放っておいて貰いたい。兎に角、女装の話に入ってくれ。


麦野「あーはいはい。そんじゃまず……如何したいの? メイクだけ? 服装は?」チラッ・・・

香焼「一応、どっちもっす」コクッ

麦野「あいよ。とりあえず最初は私が全部やっちゃって良い?」ジー・・・


お任せか。確かに最初はその方が良いかもしれない。
僕自身をマネキンにしてもらって、それを目標にして後々メイクをすれば良いだろう。


麦野「うん。まず服脱ぎなさい」ビシッ

香焼「……え」キョトン・・・

麦野「服。脱ぐの」ホレホレ


周りを見る。苦笑する姉さんと固法さん。ニヤニヤする五和と浦上。


香焼「えっと……此処で? 何で?」タラー・・・

麦野「色々寸法図るわ。ちゃんとした女装なんでしょ?」コクッ

香焼「……と、トイレで制服とかに着替えてくるんじゃ駄目っすか?」ダラダラ・・・

五和「男子トイレで女子制服に着替えて出てきたら変態さんだよ」ニヤリ・・・

香焼「で、でも……その」モジモジ・・・

麦野「男子っつっても丈の長さとか胴回り胸回りあるでしょ。早くなさい」フンッ


そういう問題じゃないんです。


麦野「ったく……剥かれるのと自分で脱ぐの、どっちがいい?」キラン・・・

香焼「ぬ、脱ぎます! で、でも、その……人が居過ぎっす!」アタフタ・・・

麦野「ホンット、女々しいわね」ハァ・・・

神裂「こほんっ……少々席を外しましょう。行きますよ」テクテク・・・

浦上「えー。色々見たーい」ブーブー・・・

神裂「お黙る。五和も」グイッ

五和「ぐへぇっ!」ズルズル・・・

固法「それじゃあ終わったら呼んでね」ガチャッ・・・


大人が2人居て良かった。
さておき、上着とズボンを脱ぐ。それではと麦野さんのチェックが始まった。

86 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 22:59:34.69 ID:3lmzf4Tn0
メジャーで肩幅・胸囲・胴回りを図り、その後身体をジロジロ見回して、気になった部分をメモに書き残していく。


麦野「んー……やっぱ何だかんだ言っても男の身体ね」ジー・・・

香焼「は、はぁ」ポリポリ・・・

麦野「腋毛はまだだけど、脛とか足の毛はちょいちょい来てるみたい。如何する? 剃るの?」チラッ・・・

香焼「出来れば剃りたくないっす」ウーン・・・


ただでさえ女々しいのに、脇や脛の毛まで無かったらと思うと虚しくて堪らない。


麦野「あっそ。えっと……うん、準備してあった。タイツとニーハイね」スッ

香焼「……サイズ、合うんすか?」キョトン・・・

麦野「絹旗と同じサイズ買ったから大丈夫。それに厚めのデニールだから伸ばしても毛は目立たないわよ」ホレ・・・

香焼「し、下着は?」タラー・・・

麦野「……ショーツ穿く? 一応あるわよ」ニヤリ・・・

香焼「い、嫌っす! 絶対嫌!!」カアアァ///

麦野「冗談だって。第一『収まらない』でしょ。でもなるべくブリーフかボクサー穿きなさい」フフッ


今日はボクサーなので助かった。


麦野「んで、タイツとニーハイどっちが良い? 選ばせてあげるわ」

香焼「それじゃあ……―――


 ①黒タイツ        ②黒ニーハイ        ③その他(別色、スパッツ、オーバーニー、ガーターなど)

           >>89

87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) [sage]:2011/11/03(木) 23:06:51.08 ID:1AnrU/QFo
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 23:08:34.96 ID:/qR3D8QKo
ガーター
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/03(木) 23:09:23.32 ID:0WfZj5cO0
③ 生足
90 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 23:40:56.76 ID:3lmzf4Tn0
>>89・・・お前こんにゃろwwwww


 ***********************


香焼「―――……うーん。どれが目立たないんすかね」ウジウジ・・・

麦野「早く決めなさい」ンモー・・・

香焼「タイツはスポーツ用タイツなら……でも違和感有るかなぁ。でもニーハイは男として」ウーン・・・

麦野「…………、」イライラ・・・

香焼「はぁ……どっちにしろ恥ずかしいなぁ。どうしよう……あ、スカート穿かなきゃ良いんじゃないかな」ピンッ!


その提案をしてみよう!


香焼「あの、麦野さん。レディースパンツとかで誤魔化せれば」ウンウンッ

麦野「……ハァ?」ジトー・・・

香焼「あ、えっと……そんなに、恥ずかしくない、かなぁって」モジモジ・・・

麦野「……あのさ」テクテク・・・グイッ!

香焼「うわっ!!?」ドンッ!


いきなりソファに押し倒された。


麦野「正直理解し兼ねるわ。何がしたいの、坊や」ピタッ・・・ツツツ・・・

香焼「ひ、ぁっ!!? む、麦野さん!!?」アタフタ・・・///


両手を掴まれ、太腿をなぞる様にして触る。


麦野「男のくせに女装したい……でも男らしい恰好が良い……何それ」ツツツー・・・

香焼「え、あ、その……色々、理由が……っ!!」ビクッ・・・

麦野「別に理由なんて知らないわ……でも……折角女の子みたいな身体付きしてるんだし、もう私で勝手にやっちゃうわよ」ピタッ・・・ジー・・・

香焼「ふぁあっ!!?」ビクンッ!


艶妖に僕の身体を撫でまわす麦野さん。足、腕、胴、脇……全てを念入りになぞる。
一体このまま何をされるんだ、と恐怖の念が過った。


麦野「……こんなところで良いわね」フンッ

香焼「ぁ……ふぇ?」ドキドキ・・・

麦野「何よ? エッチな事してもらえるかもって期待した?」フフッ

香焼「し、しないっすよ!!」カアアァ///

麦野「あはは。嘘吐けー。真っ赤だぞー」クスクス・・・

香焼「くぅ」カアアァ///


兎角、今の行動に意味があるのなら説明してくれ!

91 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/03(木) 23:54:36.59 ID:3lmzf4Tn0
やれやれ、と面倒臭そうな表情をする麦野さん。ビシっと僕の足を指差した。


麦野「自分で触ってみなさい」フンッ

香焼「え………………………………………………………………えっ」ピタッ・・・ビクッ・・・


何故か、とても、卵肌。


麦野「そこだけじゃないわよ。身体中全部触ってみなさい。勿論シャツの中もよ」ホレッ


先程麦野さんが撫で回した部分、全てを触ってみる……完璧な卵肌だ。


麦野「そうじゃないのはパンツん中くらいでしょうけど……流石にアソコまで剃毛したら可哀想だしね」フフッ

香焼「な……何したんすか!?」バッ!!

麦野「産毛、全部焼いたわ。多分毛根から殺したから生えて来ないわよ」ニヤリ・・・

香焼「え……わけがわからない」ダラダラ・・・

麦野「だーから。私の能力で産毛焼き払ったの。大丈夫よ、被爆なんかしてないから」ウンウン・・・


原子崩し(メルトダウナー)の能力応用。除毛アイロン……ってそうじゃなくて!


香焼「何でそんな真似したんすか!!」アタフタ・・・

麦野「あーもーうっさい! ウジウジ女々しいからよ! これで踏ん切りついたでしょ! 生足でいなさい」フンッ!

香焼「」チーン・・・

麦野「まぁもし生えて来なかったら埴毛するなり何なり勝手にしろ。兎に角これで坊やはスベスベお肌」ナデナデ


僕は、男としての尊厳を、一つ無くしてしまった。


麦野「喧しい。次は服。メイクは後にするわ着替え面倒だからね」

香焼「……足、見られたくないっす」ウジウジ・・・

麦野「駄目! シャキっとしなさい、シャキっと」ポンッ


もうお婿にいけない。

92 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 00:05:33.14 ID:8y3EFKzo0
さておき、今はさっさと服を着よう。


麦野「制服は持ってるのよね?」チラッ・・・

香焼「……はい」スッ・・・


AK○風ブレザー&赤基調のチェックスカート。
以前サーシャが都市に来た時(※)、一緒に買った(買わされた)モノだ。       ※(『ただいま』:第⑥話参照)


麦野「ホント今風ね……何でそんなの持ってるのよ」タラー・・・

香焼「女装用にって、無理矢理、買わされました」ドヨーン・・・

麦野「そ、そう……どうしましょうね。それ着たい?」チラッ・・・

香焼「着たくないっす」ハァ・・・


というか、ぶっちゃけ女装したくありません。


麦野「それじゃあ……絹旗の服か」スッ・・・

香焼「え」タラー・・・

麦野「種類は色々あるから安心なさい。さて……どんな服がいい?」チラッ・・・


それじゃあ……―――


 ①制服で良いっす      ②最愛の服の中から選びます(本編中絹旗が着てたの)      ③その他(ブっ飛び過ぎない程度で)

               >>94

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 00:16:26.85 ID:KnLSn4G90
③ 普段の火織ネエさんの、左右非対称カッティング
94 :sage :2011/11/04(金) 00:18:55.68 ID:DrZLoNSM0
常盤台の制服
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県) [sage]:2011/11/04(金) 00:19:34.00 ID:DrZLoNSM0
死のう
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 00:21:08.73 ID:OSTLEJZDO
② 絹旗が浜面にパンツ見せたミニスカセーターワンピ
97 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 00:38:43.45 ID:8y3EFKzo0
―――……なんかもう恥ずかしくなきゃ何でも良いや。


麦野「吹っ切れやがった。それじゃ……ん?」ピタッ・・・

香焼「何すか」ハァ・・・

麦野「潜にゅ…ゲフンゲフンッ…仕事で絹旗に着させようとしたヤツ残ってた」スッ・・・


見覚えがある制服……常盤台中学の?


麦野「昔、これ着て常盤台行って来いっつったんだけど……あの子の性格上、無理でしょ」ハハハ

香焼「絶対無理っすね。学舎の園入った時点でテンパります」コクッ

麦野「だから袖通さないまま残ってたヤツだわ。これ着たら? 結構大人しめでしょ」コクッ・・・


まぁこれくらいなら大丈夫だろう。部屋の端でイソイソと着替えた。


香焼「……下、スースーするっす」モジモジ・・・

麦野「んー……腕の袖弄ってないからダボダボね。まぁこれはこれで可愛いとして問題はスカートかぁ」ジー・・・

香焼「あ、あんまり……見ないで下さい」ムゥ・・・

麦野「……ボクサー見えるか見えないかギリギリの位置まで捲るか」ガシッ・・・キュッ・・・

香焼「ひゃぅ!!?」ドキッ・・・

麦野「動かないの……よしっ」フンッ


常盤台の冬服。膝上10cmくらいのスカート。生足。


香焼「……恥ずかしいっす」カアアァ///

麦野(ふむ……こうして見ると、やっぱ可愛いわね。多少は結標の気持ちが分かったわ)ニヤニヤ・・・

香焼「な、何すか!」モジモジ・・・///

麦野「ふふっ。何でもない。それじゃあ外の連中呼びましょう」クスクス・・・

香焼「わ、え、ちょっと……待って!」アタフタ・・・

麦野「待ちませーんよっと」カチカチ・・・パタンッ


携帯を開き、わずか10秒足らずでメールを打ち終える。
僕は急いでソファの後ろに隠れた。一寸後、4人が個室に戻ってくる。


神裂「準備できたのですか?」ガチャッ

五和「って、あれ? コウちゃんは?」キョロキョロ・・・

香焼(ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ……、)ガタガタガタガタ・・・

麦野「ったく……怖気づきやがった」ハァ・・・


やれやれと呆れながら、僕に近付く麦野さん。そして、襟首を掴み……猫の様に持ち上げた。

98 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 00:49:13.35 ID:8y3EFKzo0
4人と目が合う。ああ、神は死んだ。


麦野「はい御披露目よー」スッ・・・

香焼「」


無気力のまま、ソファに座る。


神裂「こ、これは……なんと」タラー・・・

固法「着る物変えるだけで、こんなに違うとは」タラー・・・

浦上「って、しかも生足だし! 香焼、こんなに足綺麗だっけ!?」オー・・・


死にたい。


五和「か……可愛いいいいいいいぃっ!!」バッ!!

香焼「」チーン・・・

五和「ぎゅううううぅ」グググ・・・

香焼「」

浦上「拒絶反応起こさない程憔悴してますネ」ハハハ・・・


もうヤダ。


麦野「はいはい。とりあえず、次はメイクするわよ。五和ちゃんウェイトウェイト」ポンッ

五和「ハッ……こ、これは……愛玩(チャーミング)の魔術に掛った様な衝撃!」ヨロヨロ・・・

香焼「……もう、如何にでもなれ」グデェ・・・

浦上「ねぇねぇ。写メ撮って良い?」ニヤリ・・・


そんな事してみろ。明日の朝刊に男子中学生自殺の記事が載るぞ。


麦野「撮るならメイク終わってからにして」ヨイショッ

五和・浦上「「はーい」」ワクワク・・・

固法「止めたげて。本当に死に兼ねないわ」タラー・・・


さっさと化粧終わらせて帰りたいです。

99 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 01:03:55.71 ID:8y3EFKzo0
とりあえず、五和から借りた化粧道具を準備。そして用意してあった鏡台の前に座らされた。


麦野「そんじゃ……坊やの担当は美偉ね」チラッ・・・

香焼・固法「「え?」」キョトン・・・

麦野「私はコッチ」ポンッ・・・

神裂「……はい?」キョトン・・・


何それ?


麦野「アンタねぇ。坊やと一緒にメイクの勉強したいっつーから許可したのよ。忘れたの?」ジトー・・・

神裂「あ」タラー・・・

固法「え、えっと……私が教えて良いの? 私だってそんなに上手くないわよ」タラー・・・

麦野「そのくらいの歳の娘がする薄化粧で良いわよ。その歳で厚化粧は変だから」コクッ・・・

固法「確かに……それじゃあ、任されました」フフッ


という訳で、二手に分かれた。


五和「麦野さーん! 私にもメイク教えて下さーい」ワー

麦野「貴女はそれなりに出来るじゃない」チラッ・・・

五和「まぁその、麦野さん流のメイクアップを学びたい訳ですよ」フフフ・・・

浦上「あ、じゃあ私もー」ニヤリ・・・

麦野「やれやれ。そんなに期待しないでよ」フフッ

神裂「……はぁ」グデェ・・・


アッチは盛り上がってるな。


固法「さて、それじゃあ始めましょうか」コクッ

香焼「はい……お願いします」ハァ・・・


正直乗り気はしないが、此処まで来たのだ。仕方あるまい。
それに麦野さんに比べ、固法さんなら幾分楽に行えるだろう。

100 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 01:29:28.03 ID:8y3EFKzo0
それじゃあ、と一礼し固法さんと対面になった。


固法「んー……そんなに濃く化粧する必要は無いから、まず手入れする所からかな」ジー・・・

香焼「手入れ?」キョトン・・・

固法「香焼くん、まゆげは弄ってる?」

香焼「いえ。床屋で切ってもらうくらいっす」

固法「うんうん。それじゃあ……眉の長さを整えるのと眉下を剃るくらいかな」ジー・・・


眉手入れ用のハサミとレディース用のT字剃刀を準備。


固法「ホントは大胆に削っちゃって、眉抜いたり書いたりして整えた方が良いけど嫌でしょ?」ハハハ・・・

香焼「はい……なるべく最低限で」コクッ

固法「仕方ないわ。それに眉無しのまま学校行ったら怒られるものね」クスッ

香焼「風紀委員的にアウトでしょう」ハハハ・・・

固法「そうね。さて、最初はまゆげの形だけど……如何する?」

香焼「お任せします」

固法「分かった。ベースは私が作ってあげるから、あとは自分で抜いたり整えたりしてね」スッ・・・


毛が制服に落ちない様移動する。そして固法さんがハサミを持ち、僕のまゆげに近づけた。


固法「コンタクトはしてないわよね?」ジー・・・

香焼「はい」

固法「じゃあ関係無いか……目瞑ってて。眉下も切るから―――」パチッ・・・


暫時、お任せコース。


固法「―――全体の長さはこれくらい。一度鏡で見てみなさい」スッ・・・

香焼「……なるほど」フムフム・・・

固法「長過ぎず短過ぎずね。次はラインを決めて眉下だけど……今日は剃るだけ。伸びてきたら自分で抜きなさい」

香焼「抜くのって、痛くないんすか?」

固法「そんなに痛くないわよ。安心して」コクッ


再び、お任せコース。なんだか瞼がくすぐったかった。

101 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 01:56:34.14 ID:8y3EFKzo0
一寸後、まゆげのセットが終了。顔を洗った後鏡でまゆげを見る。


香焼「おー……シュってなってますね」ジー・・・

固法「このくらいなら自然な筈よ。男の子でも普段から整えておくのもアリだと思うわ。周りの友達はまゆげ整えたりしてない?」コクッ

香焼「うーん……如何だろう」ハテ・・・


天草式の男衆はそんなに弄ってないかもしれない。若衆はあまり良く見た事がないな。軍覇も弄ってないな。
弄ってる知り合いといえば……そういえばステイルが整えてたか。


固法「土御門くんとかも弄ってるでしょう。あとは上条くんも長さくらいは整えてるみたいだし」ウンウン

香焼「なるほど。因みに固法さんの知り合いは整えてるんすか?」

固法「まぁ高校生くらいになれば大半はまゆげ弄り出すわよ。完璧書いてる子もいるしね。麦野さんだって殆ど書いてるわよ」チラッ・・・

香焼「へぇ。男の人でも?」

固法「男子でも。ま、中学生から眉弄ってるのはおませさんかもね」フフッ


なんか恥ずかしいな。


固法「とりあえず定期的にカットすること。それから眉下を抜くか剃るかすること。これで最低限のセットになるわ」コクッ

香焼「了解っす」

固法「もう少し弄りたい時は……一回、大胆にカットしちゃいなさい。それから形決めて切る剃るすれば勝手にそのスタイルに収まるから」

香焼「ふむふむ」メモメモ・・・


女装とか関係無しに参考になった。


固法「さてと。それじゃあ次は……いよいよメイクね。麦野さんが用具貸してくれるから足りないものは無い筈よ」コクッ

香焼「……いっぱい有ってこんがらがりそうっす」ウーン・・・

固法「ふふっ。安心して。クレンジング……メイク落としが必要無いナチュラルメイクにするから。中学生からゴダゴダしたのはちょっとね」

香焼「それなら……はい」ホッ・・・


ゲーセンで見かける女子高生みたいなゴダゴダメイクは勘弁願いたかった。

102 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 02:22:42.87 ID:8y3EFKzo0
一通りの化粧品・用具の説明を受け、今回使用するモノを渡される。


固法「それじゃまずこの二つね」スッ・・・

香焼「えっと、マスカラとビューラーっすね」コクッ

固法「用途はさっき説明した通り、まつげの化粧よ。因みにそのマスカラはお湯で落ちるタイプだから安心して」

香焼「はい……このビューラーってのはまつげを上げるヤツっすよね」スッ・・・

固法「ええ。まずは試してみなさい」


グリップに指を掛け……まつげを挟む。


香焼「……えっと」タラー・・・

固法「まずは瞼から挟む。そこから根本の方にカールするイメージで引っ張って」

香焼「……こう」スッ・・・

固法「うん。だけど根本でキープしなきゃダメ。瞼、真ん中、毛先で止めるイメージでカールさせるの」


言われた通りに、瞼で挟み……持ち上げる様にカールさせ……キープ。


固法「そんな感じよ。毛先に行けば行くほど挟む力を強めてやると上手くいくわ……掴んだ? その時、顎を上げながら目線を下にする」

香焼「了解っす」ウーン・・・

固法「そこから顎を下げながら、手首を上に返す……そうそう、その調子」コクッ


反対側も、アドバイスに気を付けて……セットする。


香焼「……如何っすか?」ジー・・・

固法「うん、初めてにしては上手上手。元からまつげ長いのに、よりパッチリして見えるわよ」フフッ

香焼「喜んでいいのか、嘆くべきなのか」ハァ・・・

固法「はいはい、一喜一憂しないの。次はマスカラしちゃうわよ」スッ・・・


マスカラを渡される。化粧品を顔に塗る……とうとう一線を越えてしまうのか。

103 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 02:55:19.57 ID:8y3EFKzo0
キャップを開け、ブラシの部分を持ち上げる。


固法「フィルムタイプ、お湯で落ちるとはいえ何度も塗っちゃうとビューラーでセットしたのが無駄になっちゃうから気を付けてね」

香焼「はぁ……それで、如何すれば?」

固法「まずブラシの部分を容器の口で掃く様に動かすの。ちょっと貸して。こう……液体を落とす感じで」

香焼「へぇ」ジー・・・

固法「こうしないとマスカラが玉(ダマ)になって、まつげの乗っちゃうの。そうならない様に少しで良いわ」


やってみて、と再びマスカラを渡される。
言われた通りに液体を口で捌け、なるべくブラシが均等になるように整えた。


固法「先っぽも残っちゃうから気を付けてね。さて、次は塗っていくんだけど最初のポイント」

香焼「はい」

固法「まずまつげを三等分にするの。真ん中、目頭、目尻。始めに塗るのは真ん中ね」

香焼「了解っす」スッ・・・

固法「あ、ちょっと待った。まず鏡の位置直しましょう。根本を見せる為に、少し下から写すと良いわ」キュッ・・・


準備完了。化粧品を……肌に当てた。もう引き返せない。


固法「その時、根本で少し擦る……歯磨きで横にブラシするように動かすの」

香焼「……くすぐったい」ウーン・・・

固法「そうそう。そしたら上にスッと抜く。それを2,3回したら……次は目尻よ」

香焼「はい。こっちもまた横にブラシを?」

固法「ええ……ただ抜く時に、今度は髪の付け根の方に持っていくの。イメージとしては扇形になる様にね」


同じ要領で目尻を2,3回ブラシし、今度は目頭に。此方も同じく抜く時は鼻筋の方を引き、2,3回ブラッシング。


固法「そうそう。あとは縦に持って、ちょっとズレた所をバランス良く微調整するの」

香焼「……はい」カキカキ・・・


一通り終了。今度は反対側……此方も終了。


固法「うん、綺麗よ! 御坂さんより女っ気あるわ」フフッ

香焼「ははは……、」タラー・・・

麦野「おー、マスカラは出来たのね。初めてにしちゃ出来が良いわ」ハハハ

固法「ええ。麦野さんに教わった様に教えたわ」フフッ

麦野「感心感心。今度は坊やが絹旗にメイク教えてあげんのよ」ハハハ


アチラが一段落したのか、此方の様子を伺いに来た麦野さん。
冗談止めて下さい。普通最愛にメイク教えるのは貴女でしょう。それから自分がメイク習ったって事は内緒ですよ。

104 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 03:21:22.75 ID:8y3EFKzo0
ジロジロと様子を僕のまつげをチェックする麦野さん。補う点はあるだろうか。


麦野「それじゃ、最後に下まつげにもマスカラ入れちゃいなさい」コクッ

固法「塗っちゃって良いの?」

麦野「フィルムタイプなんだから塗っても平気よ。前に教えたでしょ」

固法「分かった……それじゃ、今度は下ね。ブラシを縦に持って。あと目元に指を当てて、あっかんベーの時みたいに下に下げる」

香焼「はい」

固法「そしたら目頭側から目尻側にずらしていくの。あまり強く塗る必要はないからね」


軽くブラシを掛けながらスライドさせていく。


香焼「終わりました……でも、何か汚れちゃったっす」

固法「大丈夫。すぐ取れるから……コレで拭っちゃって」スッ・・・


渡されたのは綿棒。


固法「すぐ乾くからすぐ取れるわ」

香焼「……あ、はい。取れました」

固法「うんうん。そんじゃ反対側も同じ要領でね」

香焼「了解っす」スッ・・・

麦野「やりながらで良いから補足ね。アイメイク(目周り)の順番はシャドウ→アイライン→ビューラー→マスカラよ」

香焼「え? でもアイシャドウとアイラインは」キョトン・・・

麦野「付け加えればその前に下地→ファンデーション→コンシーラー→パウダーがあるもの。下地くらいは塗ったの?」

固法「ええ。一応、日焼け止めタイプのメジャーなヤツを」

麦野「うん。兎角、そのベースメイクの後にシャドウとラインは乗せなきゃいけないの」


つまりクレンジングが必要という訳か。


麦野「その通り。とりあえず今回はそういうの無しでって事だから、ナチュラルに中坊くらいの簡単メイクよ」コクッ


成程、と言ってる間にアイメイク終了。


固法「おー……うん! OK! お目々パッチリ!」フフッ

麦野「いや、メイク抜きにしてまつげ長ぇなぁ……まぁ男には見えない」ハハハ


もうその言葉に一々反応しません。半分、諦めました。

105 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 03:56:29.44 ID:8y3EFKzo0
それでは次に、とリップクリームとマスカラに似た容物を渡される。


固法「リップグロスよ。派手なのはちょっとアレだからラメ無しね。殆ど透明色だから丁度良いと思う」

香焼「口紅とかリップクリームとは違うんすか?」

固法「艶を出すのよ。まぁ塗り方次第だけど……麦野さーん。グロス如何するー?」チラッ・・・

麦野「あー……一番簡単なヤツで。真ん中周辺にして」

固法「はーい。それじゃ……始めましょう」


キャップを開け、グロスを取り出す。


固法「それじゃ、ぷっくり唇を出す塗り方ね。単純に真ん中周辺に塗ってあげるの」

香焼「……こんな感じっすか?」

固法「うん。広げ過ぎちゃダメよ。2,5cmくらい塗れば立体感出るから」

香焼「はぁ。上下に?」

固法「上は少なめ。人間の唇って上の方が出てるでしょう……もし多過ぎるかなぁって思ったら油取りで拭ってあげればOKよ」


ササッと塗り終える。


固法「うん……あとの仕上げは麦野さんね」フフッ

香焼「……なんか別人っす」タラー・・・


鏡を見たくない。ぶっちゃけ気持ち悪い。


麦野「坊や、こっちおいで。グロスの別の方法も教えとくから」

香焼「あ、はい……って姉さん?」タラー・・・

神裂「……香、焼……まるで別人ですね」チラッ・・・


貴女もですよ。


麦野「無駄口叩かない。んでグロスだけど……まず下唇に多め、上はちょこちょこ……これだけで雰囲気変わるわ」パパッ・・・

香焼・固法「「おー」」ジー・・・

神裂「あ、あまりジロジロ見ないでください」ムゥ・・・

麦野「そんで、さっき妹ちゃん2人に注意&教えた方法だけど……今度はベッタリ塗っちゃうの」ヌリヌリ・・・

固法「え? そうすると下品になるって前言ってなかったかしら」キョトン・・・

麦野「ええ。だけど……これを油取り紙で全体ポンポンとやっていくと……こうなる」スッ・・・

五和「おお! 全体に艶が乗った!」キラキラ・・・

浦上「ちょっと大胆ですけど、大人っぽいですヨ」キラキラ・・・

麦野「火織とか美偉みたいに大人っぽい女性ならこれで印象変えてやるのもアリね。ただ童顔の子は坊やみたいな塗り方で良いと思うわ」


成程なるほど……流石プロ並のカリスマ超能力者さん。頼りになるスタイリストだ。

106 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 04:18:23.09 ID:8y3EFKzo0
さて、最後の仕上げだ。


麦野「クマとか肌荒れがあるなら、やっぱファンデとかコンシーラーとか使った方良いんだけど……大丈夫ね」ピタッ・・・

香焼「ええ。あんまりゴダゴダしたくないっす」ポリポリ・・・

麦野「それじゃチークとかも要らないし……もう髪弄っちゃおうか」スッ・・・


髪質を調べているのだろうか、僕の頭をペタペタ触る麦野さん。


麦野「変に癖は無いし、普通の真っ直ぐね。ただやっぱ男の子の髪型だわ……ワックスとか使うの?」ムー・・・

香焼「使った事はありますけど、普段は特に使わないっす。いつも風呂上がって、ドライヤーかけて軽くブラシして終わりかな」コクッ

麦野「アイロンとかは?」

香焼「前に浦上が持ってきたやつ掛けた事有るっすけど……そんなに変わんないっすよ」

麦野「んー……じゃあムースタイプかワックスでフワッとさせるくらいしかないわね」テクテク・・・


必要なモノを準備する。


麦野「まずはコレだけで良いわ」ホレッ

香焼「ヘアピン?」

麦野「片方だけコレで留めなさい」

香焼「はい……こう?」スッ・・・


一同、感嘆の声。


浦上「うわ……こういう子居る……冗談抜きで女の子」タラー・・・

固法「というか常盤台の制服で片留めのヘアピンだと御坂さんみたいね」ハハハ・・・

香焼「……ハァ」ドヨーン・・・

麦野「よし。んじゃ次はムースね。ワックスの使い方は知ってるんでしょ?」


プシューと泡を出して、僕の髪に纏まった泡の塊を乗っけていく。


麦野「そんで、これを馴染ませる感じでフワフワさせて……衿足を浮かせて……うん、どうよ?」チラッ・・・

神裂「ほぉ……もはや原型がありませんね」アハハ・・・

五和「ちょいパーマなコウちゃん可愛い! てかマジで女の子!」パアアァ!


鏡で姿を見る……そこに、僕は居なかった。

107 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/04(金) 04:40:01.35 ID:8y3EFKzo0
一寸後、姉さんの方も終了しメイク教室が終了する。


固法「お疲れ様。本当に見違えたわよ」フフッ

香焼「嬉しくないっす……さっさと元に戻したい」ハァ・・・

五和「えー。勿体無ーい。今日一日はそれで居ようよー」ブーブー!


僕に死ねというのか?


神裂「まぁまぁ……とりあえず必要な事はメモしたのでしょう。それなら良しとしましょう」

浦上「うんうん。いつでも女装出来るんだしネ」フフフ・・・

香焼「お前らの前では絶対しないよ」ジトー・・・

麦野「でも、普段から練習しときなさいよ。身体で覚えるのが一番なんだから」コクッ

香焼「……はい」ハァ・・・


気乗りしないが、修行の一環だと思って頑張ろう。


麦野「さーてと、全部終わりだけど……如何する?」チラッ・・・

固法「7時前かぁ……ご飯食べに行きましょうか」

五和・浦上「「さんせー!」」ワーイ!

香焼・神裂「「……え」」タラー・・・


この恰好で? 
ちなみに姉さんは艶っぽいメイクを上、黒のセーター、ブーツカットパンツ。そしてウェーブの掛ったストレートヘアである。これまた別人。


麦野「どうせ第7学区帰らにゃならんし……第4学区辺りで飯食って帰るか」オー

神裂「……それでは、私達は着替えるので少々お待ちを」テクテク・・・

香焼「じ、自分も……何処か空き部屋見付けてこっそり着替えてきます」テクテク・・・

五和・浦上「「待った」」ガシッ!

香焼・神裂「「ぐっ!!」」ピタッ・・・


待て待て……冗談キツいぞ。


五和「カオリ姉さん……貴女女性でしょう? 何で貴女が恥じる必要あるんですか?」ジー・・・

神裂「し、しかしですね。普段というモノがありまして」アタフタ・・・

麦野「却下。その恰好は絶対よ。文句つけんな」ガシッ!

神裂「…………、」チラッ・・・

香焼「む、無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理っ!!」ジタバタッ!

浦上「ふむふむ……折角だから、そのまま女性のしぐさとか話口調の勉強もしましょうネ」ニヤリ・・・

固法「それは大事かもしれないわ」フムフム・・・

香焼「」チーン・・・


神は死んだ……結局、終始誰にも『男』だと気付かれないまま外食を済ませてしまった。
不幸とかそういうレベルじゃない。もう心が痛いです……―――

108 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな [saga]:2011/11/04(金) 04:46:05.40 ID:8y3EFKzo0
はい此処まで。このメイクの下り必要有ったのか……自分でも疑問ですw


次回もちょくちょく安価で進むよ
予定としては香焼の女装で知り合いにばれない様騙していくって感じ。都市もカルテッ娘も出すと思います

特に騙して欲しいキャラがいればリクエストください。例えば上条さんとか、カミやんとか、とうまに……フラグを、建てられるみたいなw
117 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな [saga]:2011/11/05(土) 20:26:58.00 ID:60sXmEK00
こんばんわ。ボチボチ投下します。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 20:45:34.88 ID:WNdCkDxIo
待ってたぜ
119 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 20:50:57.34 ID:60sXmEK00
 ―――またまた翌日、AM11:00、学園都市第7学区、ファミレス『Joseph's』・・・・・



メイクの勉強から数日、土御門達から渡された基本的な資料も読み終えた。
この日は、第二回目の講義という事で『女装したまま』、誰にも気付かれる事なくファミレスに来いという指示が出た。

言われた通り、恥を忍んで買い揃えた化粧道具を使って『貌』を変える。
幸か不幸か五和達がゴロ寝してる内に自室でメイクを終えたので、そのままこっそりと家を出る事に成功。
因みに、服装は先日貰った常盤台中学の冬服である。

さぁバスを乗り、目的地へ。


香焼(しかし……気付かれないもんだなぁ)ハァ・・・


バスに乗っても、道を歩いていても何一つ『違和感』がない。
変装・潜入としては嬉しい限りだが……男として、ぶっちゃけ悲しい。


香焼(まぁ文句言っても仕方ないし、さっさと行こう)テクテク・・・

店員「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」ペコッ

香焼「あ、えっと……連れが来てる筈で」アハハ・・・


自分で探すと言いつけ、店内を歩く事に。
海原さんや蛇さんは分かり辛いが、土御門なら一発で確認できる筈だ。


香焼(……あ、居る)テクテク・・・

土御門「―――」

青年男性「―――」

老婆「―――」


多分、青年男性が海原さん。老婆が蛇さんかショチトルさんだろう。
しかし……さて如何しよう。普通に声を掛けるべきか。それとも意趣を凝らして驚かそうか。


香焼(隣のテーブルに座って、気付くかの待とう)フフッ


気付かれなきゃ面白いという期待半分。男として勘付いて欲しいという願望半分で隣に移動した。

120 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 21:16:48.33 ID:60sXmEK00
席に座りメニューを開きながら、隣のテーブルに耳を傾ける。


土御門「―――しっかし、結標のヤツ面倒臭ぇにゃ」ハァ・・・

青年「『私もついて行きたーい!』って、まるで子供の駄々の様に……案外精神年齢低いですよね」ハハハ

土御門「自称、カリスマ(笑)だな。黙ってロリコン野郎と留守番しとけっつの。ロリショタお似合いカップルなんだから」ハハハ

青年「そういえば、最近気付いたんですけどね……結標さん、ロリもショタも好きみたいですよ」フフフ・・・

土御門「うっはwwww幼児嗜好wwwwwきめぇwwwww」プギャー!

青年「どうします? これで彼の方も男子が可愛いとか言い出したら」ニヤリ・・・

土御門「だぁはははっはっはっ! そん時はある事無い事、ネットに書き込もうぜ! 『超能力者第1位はペドフェリア』とか!」ハハハ!


陰口で盛り上がってる2人。やはり青年男性が海原さんか。
しかし、この人達は平然と身内の悪口言うよな。例え本人が目の前に居てもこういう事言うんだろうね。
あと、ロリとかショタとかペドとか……言葉選べ。多分、子供に優しいだけだと思うぞ。


土御門「はー……でもさぁ香焼、どんな感じだと思うよ? 所詮メイク程度じゃたかが知れるだろうぜ」フムフム・・・

青年「いや、化粧は人間を変えますよ。学校の先生やクラスメイトのスッピン見た事あります?」コクッ

土御門「俺のガッコは殆ど皆スッピンだぜ。茶目っ気無ぇのなんのって……まぁそこが可愛いんだけどにゃ」フフフ・・・

老婆「……気持ち悪いですよ」ジトー・・・

青年「では、そうですね……あの服屋の前の女子高生数名。もし彼女達が化粧を拭ったら如何なると思います?」ジー・・・

土御門「……いや、何か想像したくない」タラー・・・

青年「誇張かもしれませんが、目の大きさが3分の2くらいになるでしょう。それからまだ若いのに肌を傷めていると見えます」ジー・・・

土御門「うわぁ……夢もへったくれも無いな」タラー・・・

青年「ま、そのくらい化粧は人を化かすんです。何れ貴方の義妹さんも意中の男性の気を惹く為に」

土御門「無い」ガタッ・・・

老婆「は?」タラー・・・

土御門「舞夏は、そんな事しない」ボソッ・・・

青年・老婆「「うわぁ」」タラー・・・


シスコン、怖い……それはさておき、そろそろアクションを起そう。

121 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 21:38:00.14 ID:60sXmEK00
とりあえず、こっそりとメールを入れる。


土御門「―――でな……ん?」Prr・・・

青年「彼からですか?」

土御門「おう……『もう着きました』だって……店内に居る?」キョトン・・・

青年「え……入口には居ませんよ」キョロキョロ・・・

老婆「恥ずかしくてトイレに逃げ込んでるとかでは?」フム・・・

土御門「……アイツ、男女どっちトイレ入るんだ?」フム・・・


そういえば考えてなかった……後で相談しよう。


香焼(そろそろ……良いかな)スッ・・・


魔力を練る。嫌が応にも気付くだろう。


青年「っ!? 魔力反応……彼でしょうか」キョロキョロ・・・

土御門「分からん……やっぱトイレからか?」フム・・・

青年「いえ、近い……貴女は、何か掴めませんか?」チラッ・・・

老婆「……メールを返信すれば早い話では?」

土御門・青年「「……おぅ」」ポリポリ・・・


何でもかんでも魔術とか己が身に頼ろうとする、魔術師の悪い癖。
一寸後……メールが来る。今度はあからさまに分かる様、テーブルの上に携帯を置き、着信を気付かせた。


土御門「……ん?」チラッ・・・

青年・老婆「「え」」チラッ・・・

香焼(それじゃ、そろそろ挨拶を)スッ・・・

土御門「……それらしいヤツ、居たか?」キョロキョロ・・・

青年「居ませんね。もしや店内とは言いつつ、天井や床下、厨房に隠れているのでは」フム・・・

老婆「やれやれ。潜入の勉強とはいえ、始まる前からそんなに張り切る必要は無いのですけどね」ハァ・・・

土御門「面倒臭い。もう電話掛けてやる」Pi!


あー……コイツら、わざとか?


土御門「……早く出ろっつの」Prrrr・・・Prrrr・・・・・

香焼「……はい」Pi!

土御門「もしもし、オマエ今何、処……に……、」ピタッ・・・

香焼「…………、」ペコッ

土御門「」

青年「」

老婆「……Oh」


遅ぇよ。

122 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 22:04:57.20 ID:60sXmEK00
野郎2人が何故か固まったので、老婆さん(?)と話をする。


香焼「えっと、こんにちわ。蛇さんっすよね」ペコッ

老婆「ええ。17600号です……しかし、これはまた」ジロジロ・・・

香焼「あはは……あんまり見ないで欲しいっす」タラー・・・

老婆「いえいえ。見事に女の子ですよ、とミサカは……ふむ」ジー・・・


結構、恥ずかしいです。


老婆「とりあえず一本取られました。女装に関しては合格です」ビシッ

香焼「ありがとうございます。それで、今日は何をするんすか?」キョトン・・・

老婆「それは師匠に……って、イツまで固まってるんですか」バシッ

青年「                                    あ」ピクッ

土御門「                                       え」ピクッ

老婆「馬鹿野郎、とはまさにこの事ですね」ハァ・・・


なんで固まるのさ。


土御門「い、いや……香焼?」ジー・・・

香焼「それ以外の誰で?」

青年「いやいや、それ以外の『誰か』ですよ」タラー・・・

香焼「そんなに別人かなぁ」ウーン・・・

土御門「元から童顔だとは思っていたが……これは、予想以上だな」タラー・・・

青年「だから化粧で化けると言ったでしょう……些か、化け過ぎですが」ジロジロ・・・


喜ぶべきか、嘆くべきか。


青年「褒めているんですよ。兎角、移動しましょう。このレベルなら一気に次のレベルまで飛ばせます」フム・・・

香焼「次のレベル?」キョトン・・・

青年「ええ。修行ですから……土御門、勘定を」スッ・・・

土御門「お、おう」タラー・・・


良く分からないけど、所詮『女装』は修行の一環に過ぎない。師事して貰ってる以上はお任せしよう。

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 22:10:02.22 ID:IH+5JIbP0
つっちーデザインの、男の娘チラメイドの出番が……!?
124 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 22:27:34.01 ID:60sXmEK00
 ―――またまた翌日、PM00:00、学園都市第7学区、とある学生寮、土御門宅・・・・・



適当に昼飯を購入し、土御門宅に移動。
海原さんと蛇さんは変装を解き、いつもの恰好へ戻る。


海原「さて。変装の入門編はお終いです。次は潜入……暗殺の入門に移りましょう」

香焼「はい。それじゃ着替えて良いんすか?」

海原「……は?」

香焼「え」

海原「何で着替える必要が?」


いや、何故女装のままで居る必要が?


土御門「まぁまぁ。今日一日はそれで過ごして貰うって事だにゃ」ニヤリ・・・

香焼「はぁ」ドヨーン・・・

御坂蛇「師匠、次に進む前に数点注意したい点が。とミサカは進言します」

海原「どうぞ」

御坂蛇「では……まず、容姿に関しては完璧です、とミサカは妹(妹)弟子1号を褒めます」フム・・・

香焼「せめて弟(おとうと)弟子でお願いします」ハァ・・・

御坂蛇「しかし、言葉使いや仕草がまだまだ甘い。その点は常に心掛けて下さい、とミサカは忠告します」

海原「そうですね。これは女装に限った事ではありません。老若男女諸々の『キャラ』に応じて変更しなければならないでしょう」


言葉使いに仕草か。
仕草は追々学んでいけば大丈夫だろうけど、言葉使いや人称は癖付いちゃったから中々直らないと思う。


御坂蛇「とりあえず普段と違う言葉使いを心掛けて下さい。女性であればやはり綺麗な丁寧語が好ましいでしょうね、とミサカは助言します」

香焼「はい」

土御門「それから少々声色変えた方が良いぜ。ボイスチェンジャー使えば別だけど、それ抜きでも今はまだ高い声出せるだろ?」

香焼「ん……こうっすか?」ウーン・・・

海原「こう『です』か?」

香焼「こ、こう……ですか」タラー・・・

海原「ええ。宜しいかと」フフフ・・・


『○○っす』を『○○です』に変えちゃったら、もう香焼(僕)だと判断出来ないな、これ。

125 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 23:25:58.26 ID:60sXmEK00
色々諸注意を受けた所で、本題に入る。


海原「それではレッスン1です……まずその恰好で挨拶をしてきてもらいましょう」

香焼「え?」キョトン・・・

土御門「ウチの隣の住人に、だ。あくまで『自然』に挨拶してこい」


土御門宅(此処)の隣の部屋って……嘘!?


香焼「む、無理無理無理無理無理っ!!」ダラダラ・・・

土御門「まぁ勿論お前一人で行かせたりはしない。オレがカミやんに紹介するって形で挨拶する」

香焼「ぜ、絶対ばれるっすよ!!」アタフタ・・・

土御門「俺らが分からなかったんだから絶対ぇばれねぇよ。ましてやあの朴念仁に……あと口調」チラッ・・・

香焼「う……い、今はそんなの良いでしょう」タラー・・・

御坂蛇「ふむ。これは調きょ…ゲフンゲフンッ…多少強引でも教育が必要ですね、とミサカは思案します」ジー・・・

香焼「え、今、物騒な事を」タラー・・・

海原「そうですね……では、コレを貼らせて貰いましょう」スッ・・・


シップ、というよりはICチップを大きくした様なモノと、針の様なモノを取り出す海原さん。


海原「これは電気信号で神経を弄る事ができる医療具です。此方は飛雷針の応用で無線代わりに電気を飛ばすコントローラーです」カチッ

香焼「……それを、何に?」

海原「ドチラも主に理学療法等に用いますが……スネーク。どうぞ」ガシッ!

香焼「え!?」ギョッ・・・

御坂蛇「はい。では失礼します―――」ペタッ・・・

香焼「なっ?!」ジタバタッ・・・

御坂蛇「―――えいっ。とミサカは妹弟子に貼り付けたチップに電気を流します」ビリリリ・・・

香焼「ひゃ、あああああぁっ!! や、止めっ!! ひいいぃあああぁっ!!」ビクンッ!!


痛い様な、熱い様な、冷たい様な、くすぐったい様な……兎に角気持ち悪い刺激。


御坂蛇「ふふっ……ふふふふふ……貴女の鳴き声は、ミサカの嗜虐心をくすぐりますね」コウコツー・・・

香焼「ふぁ……め……れす」プスー・・・

土御門「マジで女の嬌声だな……まぁ良い。兎に角行くぞ」クイッ

海原「くれぐれも口調や人称に気を付けて下さいね。さもなくば……自分はスネークを止められませんよ」ニヤリ・・・

御坂蛇「……ふふっ」キランッ・・・


何この拷問に近い修行!? てか修行じゃないよね! アンタら楽しんでるだけだよね!


御坂蛇「……ほぅ?」スッ・・・

香焼「や、やります! やれば良いんでしょ!」ウエーン!


こうして半ば虐めに近い修行(?)が始まった。

126 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/05(土) 23:50:56.66 ID:60sXmEK00
土御門「良いな? 打ち合わせ通りだぞ」

香焼「分かってるっすよ……後ろ怖いっすから」チラッ・・・


海原・御坂蛇「「……ふふふ」」ニヤリ・・・


土御門「ま、『その時香焼に電流走る』みたいな状況なりたくなかったら上手くやってみせろ」ニヤリ・・・

香焼「はぁ」グデェ・・・





 <上条宅>


 ピンポーン・・・・・


禁書『はーい。とうまー、お客さーん』ジタバタ・・・

上条『はいはい、今行きますよ」』パタパタ・・・

香焼(うわ……禁書目録も居る)タラー・・・

土御門「大丈夫だ、自身持て……ぃよう! カミやん」ガチャッ

上条「おう、どうした?」

土御門「舞夏のお裾分け持って来てやったぜ。感謝しろー」ハハハ

上条「おー! 助かる! インデックス、今日の昼飯はキャベツ丼以外にもう一品出せるぞ!」

禁書「わーい! 豪華なんだよ!」キャッホー!

香焼(キャベツど……今度、普通に差し入れ持ってこよう)ブワァ・・・

土御門「にゃはは、流石貧乏学生……あ、そうだ。紹介しとくぜ」クイッ

香焼「っ!!」ドキッ・・・

上条「え……と、知り合いか?」チラッ・・・

土御門「ああ。ねーちんの親戚だ。今度学園都市に入学が決まった。しかも『実力』でだ」

禁書「かおりの親戚? 美人さんだけど……あんまり似てないね」ジー・・・

上条「こらこら。土御門と舞夏だって似てないだろ。色々有るんだろう……そういう事言うもんじゃありません」メッ

土御門「カミやんの方が相当失礼だにゃ……まぁ良い。挨拶しろ」

香焼「は、はい! え、と……その」アタフタ・・・

上条「ははは。そんなに緊張しないでくれ……あー、じゃあ俺から。土御門のクラスメイトの上条当麻だ。んで、コッチが居候シスター」チラッ

禁書「そういう言い方失礼なんだよ。私は禁書……インデックスって呼んで。かおりの『友達』なんだよ」ニカッ!

香焼「……よろしく、お願いします」ペコッ・・・

127 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 00:27:21.98 ID:EmJ+Gkyk0
土御門「……ほら、挨拶しろ」トンッ・・・

香焼「こう……神崎(こうざき)……香(かおる)っす」ペコッ

上条・禁書「「え」」アレ?


しまった!


御坂蛇「言葉使いを違えましたね。オシオキだべー、とミサカは……えいっ」ビリリ・・・


その時、香焼に電流走る・・・ッ!!


香焼「ひゃあああああああああぁっ!!」ビクンッ!!

上条「な、何だ!?」ギョッ・・・

禁書「だ、大丈夫!?」ギョッ・・・

香焼「こ、神崎! 神崎香っす!! って、いぁあああぁっ!! 香『です』っ!! ですううぅっ!! でしゅうううぅ!!」ビクビクッ!!

上条「きゅ、救急車あああぁっ!!」アタフタ!

禁書「と、とうま! もしかして魔術師の仕業なのかも!」アタフタ・・・

上条「な、何だと!? だったら俺の幻想殺し(右手)で!」バッ!

土御門「(ヤバい! それだと呪符が破かれる!)ま、待てカミやん! コイツはそういう病気持ちなんだ」ダラダラ・・・

上条「びょ、病気!?」ポカーン・・・

土御門「と、突発性電気発作アレルギー症候群。新種の科学病みたいなモンだ」ダラダラ・・・

上条「そ、そう……アレルギーで発作で症候群なんだ……そんなのあるのか」タラー・・・

土御門「説明し辛い。言っとくが、コイツは魔術とかそういうのは関係無いんだ。この病気を治す為に都市への入学も許可された」ボソッ・・・

香焼(嘘……吐け……この、道化師め)プスプス・・・

土御門「常盤台の制服を着ているのは治療の時に超電磁砲(レールガン)の協力を云々―――魔術の事は話しちゃダメだぜぃ」アーダコーダ・・・

上条「む、難しい事は良く分かんないが……幻想殺しは効かないのか?」

土御門「分からんが、突発性だからな。発作を止める事は出来るかもしれん」チラッ・・・

御坂蛇(……OK)ニヤリ・・・スッ・・・

香焼「ま、待て待て待て! 待ってぇ! 無理! もう無理っす! って、いやあああぁっ!!」ビリビリッ!!

上条「っ!! カオルちゃん!」ギュッ・・・ソゲブ!!

御坂蛇(むっ……無効化されてしまいましたか。運の良い子)ジー・・・

香焼「は、ぅ……あ、りがと……ございます」プシュー・・・

禁書「こら、とうま! かおりの親戚にベタベタするなんて! いつわも合わせて三姉妹丼なんて私が許さないんだよ!」ギロッ!

上条「そ、そんな馬鹿な事言ってないで水とか持ってきてやれよ! 大変なの見りゃ分かるだろ!」ハァ・・・

土御門「(まぁカミやんに『香焼≠香』の印象を持たせる事には成功したな)……大丈夫だ。なぁ、香」チラッ・・・

香焼「は、い……すいません。お世話掛けました。その……離して下さい」タラー・・・

上条「おう……何かあったら頼ってくれよ。連絡先、神裂から聞いといてくれ」コクッ

香焼「はい……ありがとうございます。上条さん」ペコッ・・・///

禁書「とうまがね、新しい子に、フラグをね、また建てたよと、呟いてみる……インデックス、心の短歌」ガブッ!!

上条「んぎゃああぁっ!!」フコーダー!

スフィンクス「なー」ジー・・・ハテ?


土御門(カミやん……男にフラグ建てんなよ……って、香焼も満更じゃねぇ顔すんな! てめぇは『カミやん側の男』だろ!)タラー・・・


128 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 01:13:38.73 ID:EmJ+Gkyk0
一寸後、再び土御門宅。
ぶっちゃけもう帰りたい。修行とか言いつつ、僕を玩具にして遊んでるこの人達から離れたい。


土御門「まぁまぁ。ちゃんと意図有っての事だし」ニャハハ

香焼「嘘吐け。絶対嘘だ」ジトー・・・

土御門「ホントだって。真面目な理由だ」コクッ


真剣な声。


土御門「まずお前と……いや『神崎香』と『香焼○○』を、上条当麻の中で別人とした。ついでに禁書目録ともな」

香焼「……それが?」

土御門「動き易くなる。ヤツは嫌が応にも『全ての中心』に居るからな。だから香焼という存在から乖離させた」

香焼「よく、分からない」

土御門「……まぁ良い。兎に角、必要行動だ」


電流云々は納得いかないが、意味があるというなら今は黙って従おう。


海原「まぁ確かに、スネークがやり過ぎた所もありました」コクッ

御坂蛇「自分だってノリノリだったくせに、とミサカは呟きます」ボソッ・・・

海原「こほんっ……次の行動に移りましょう。今度こそ、貴方が納得する修行を課します」

香焼「……本当っすね」ジトー・・・

海原「ええ。あと先程も言いましたが、切り替えはしっかりしておきなさい。今は良いですが、表に出たら口調を変えるんですよ」


蛇さんに恐怖しながら、海原さんの説明を聞く。


海原「それでは、貴方にはこれから『その恰好』に相応しい場所へ行って貰います」

香焼「この恰好……ま、まさか、常盤台に!?」ギョッ・・・

海原「いえ、そこまでハードルは上げませんよ。向かって貰うのは『学舎の園』です」


学舎の園……第7学区南西端に存在する、常盤台中学を含む5つのお嬢様学校が作る共用地帯だ。
並みの学校の一五倍以上の敷地面積を持ち、内部は極めて小さくはあるが『街』となっている。
周りは大きな柵が張り巡らされており部外者を寄せ付けない。道路標識や信号機も外とは違うデザインという徹底ぶりである。

当然ながら敷地内には5つのお嬢様学校に関わる『少女』しか居らず(教職員は不明)、門番、警備員、バスの運転手までもが女性。
また、敷地内には全2458台もの監視カメラが配備されていると聞く。


土御門「まさに男子禁制の園だぜぃ」ニヤリ・・・

香焼「で、でも何でそんな場所に」

海原「言ったでしょう。これは修行です。勿論、女子の荒波に揉まれて来いとかそんな理不尽な事ではありません」


ホッとしたのも束の間、海原さんはトンデモ無い任務を僕に課した。

129 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 02:14:38.98 ID:EmJ+Gkyk0
一枚の写真を僕に見せる海原さん。
そこに写っていたのは、今の僕と同じ制服を着た金色長髪の女性。お姫様、女王様を思わせる様な雰囲気。


海原「彼女を知っていますか?」

香焼「……一応」コクッ


超能力者第5位『心理掌握(メンタルアウト)』こと、食蜂操祈(しょくほうみさき)。
天草式若衆独自の調べでも名前と能力くらいしか分かっていない。


土御門「まぁそうだろうな。正真正銘『常盤台の女王蜂』に、魔術サイドはそう易々と近づけないぜ」コクッ


彼女の能力『心理掌握』は、謂わば魔術師にとって困る能力だ。
心理・精神の分野は魔術サイドと科学サイドにおいて、非常にアヤフヤな立ち位置にある。ぶっちゃけ、対処法が難しいのだ。


土御門「俺が天草の若衆にヤツの詮索を命じなかったのはその為だ。実力派である筆頭五和でも、捨て駒にし兼ねんからな」

海原「第6位第7位同様、彼女もまた暗部にとって扱い辛い存在です。多分、理事会も手を焼いているのやもしれませんね」

香焼「はぁ……でも、何でそんな話を?」キョトン・・・

海原「今回の修行(任務)は……彼女との接触です」


え……あんだと?


香焼「な、そ、そんなの! 修行にならないっすよ! レベルが違い過ぎっす! 五和や土御門が相手に出来ない人を自分が」アタフタ・・・

海原「話を聞いて下さい。要は接触で良いのです。何なら一目見るだけでもいい」コクッ

香焼「……い、意味が分からない」

土御門「腹を割って話してやる。正直言って、これは魔術師としての探りだ。暗部は関係無い」

海原「はい。超能力者の中で彼女と削板軍覇ほど厄介な人はいない。故に、誰かが接触して情報を得る他無いのです」

香焼「で、でもそれなら海原さんの変装でも」アタフタ・・・

海原「いえ、怖い話ですが……多分、彼女に対して暗部の情報は筒抜けです。自分の存在も、もしかしてドラゴンの存在すらも」ボソッ・・・


良く分からない単語が出てくる……話が大きくなるにつれ、恐怖心が増した。


土御門「あわよくば、友好関係で有りたいんだ。一方通行や御坂美琴、麦野沈利、削板軍覇とはそれなりの関係を維持できてる」

海原「無論、そこに自分達が『魔術師』であるという存在を伏せているという優位性があります」

香焼「それを……食蜂さんにも」ウーン・・・


何とも気が遠くなるような話。やはり修行としては荷が重過ぎる。

130 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 02:33:24.93 ID:EmJ+Gkyk0
暫時無言……承諾し兼ねる重責の提案。
真面目な目を向けそれを『修行』と告げる2人を余所に、沈黙していた1人の女性が言葉を発した。


御坂蛇「……私にも、良く分かりませんが」フム・・・

香焼「…………、」チラッ・・・

御坂蛇「所詮……『その程度』でしたか、とミサカは吐き捨てます」フンッ

香焼「っ」


言葉は続く。


御坂蛇「師匠。この修行で、彼が死ぬ可能性は? または相応のデメリットは?」チラッ・・・

海原「死にはしないでしょう。ただデメリットは……最悪、彼に対する記憶の改竄(かいざん)」

香焼「き、おくの……、」タラー・・・

御坂蛇「……まるで怖くありませんね、とミサカは切り捨てます」

土御門「それは、お前が人形(クローン)だからだ。並の人間は恐怖するもんだぜぃ」

御坂蛇「それこそ甚だ勘違い。人形は人形でも殺戮機械(キラーマシーン)の類だと、ミサカは自負しています」


これ以上捨て去る記憶が存在しない……弄られても恥じるという感情が沸かない、という意味か。


御坂蛇「まぁ……此処で立ち止まるのも手でしょう。ただし、言葉通り貴方は以降も『此処まで』です、とミサカは予見します」

香焼「……嫌、だ」ボソッ・・・

御坂蛇「……ふっ」ニヤリ・・・

海原「あー……無論、この話を持ち出したのはある程度の勝算有りきですよ。その点は安心して下さい」

香焼「先に、その説明が欲しかったっすよ」ハァ・・・


彼女の能力は学園都市最高の精神系能力。記憶の読心・人格の洗脳・念話・想いの消去・意志の増幅・思考の再現・感情の移植など。
精神に関する事ならなんでもできる十徳ナイフのような能力だ。

ただ、それを防ぎ得る方法があるというのであれば、それを教えてもらいたい。


海原「彼女の能力は確かに強大だ。貴方が想像している力を『深く』と表現するなら、更に『広く』も付け加えられる」

土御門「所謂、集団催眠なんかも遣って退ける訳だぜぃ」クイッ

海原「しかし……これを破った者も、数名居る様です」


それは、僕が知る得る人達の名前だった。

131 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 02:52:15.89 ID:EmJ+Gkyk0
同じく、常盤台中学の超能力者(エース)……御坂美琴。


海原「心理掌握は、能力を使用する際『リモコン』を使用するそうです。それが如何いう仕組かは未だ知り得ない」

香焼「……それを御坂さんが?」

海原「ええ。きっとこう察したのでしょう……媒体がリモコンであるなら、もしや電磁波・逆電波に弱いのでは?」

香焼「まぁ確かに……それで?」

海原「はい。見事、電磁障壁(バリア)を張ってそれを凌いだそうです」


成程……でも何でそんな情報を知っているんだ? 彼女に対しての情報は不透明ではなかったのか。


土御門「残念ながらその通り。だが、今話したのは『御坂美琴』の情報だ」

香焼「え?」ポカーン・・・

土御門「ハハハ。海原(コイツ)は御坂美琴の情報だったら何でも持ってる変態(ストーカー)野郎だぜぃ」

海原「土御門。言い方があるでしょう? 僕はいつでも彼女を見守っているだけです」フフフ・・・

香焼「…………、」タラー・・・

海原「兎角、此処で仮説をたてました。この電磁障壁を張る事さえ出来れば記憶改竄を恐れる必要はないのでは無かろうかと」


チラリと蛇さんを見遣る。


海原「ええ。スネーク……妹達(シスターズ)を必ず、サポートに回しましょう」

香焼「それは頼もしいっす。でも、蛇さん達が常に一緒に居てくれるんすか?」

海原「ふふふふ……いえ、貴方を監視して尚補助できます。その為の『チップ』です!」

香焼「な、何だって!? そんな意図があったんすか!?」ギョッ・・・

海原「まぁ試す前では有りますが、先程の様に電流を流せば洗脳される事は無いと思います」


理論的には、外に向けて障壁を張れなくても体内(内側)になら張れるとの事。
先日の『結界』と似た方法だ。


海原「あとはこの話に乗るか乗らないかです。如何します……弟子よ」ニヤリ・・・

香焼「…………、」


此処まで言われて、引き返したり出来ない。僕は引き続き彼に指示を仰ぐ事を選んだ。

132 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 03:24:44.20 ID:EmJ+Gkyk0
さて、決意はしたが具体的な色々が分からない。
まず学舎の園内への侵入方法。それから食蜂操祈の居所。そして何より……接触して如何するか。


海原「順にお答えしましょう。まず一つ目……これを」スッ・・・

香焼「……学生証?」キョトン・・・

海原「ええ。一応僕は『海原光貴(理事長の孫)』なので、こういうのを準備出来るんですよ」フフフ・・・

土御門「つまり、女装したお前の証明写真を使って理事校に次ぎ『2つ目』の学籍をゲットする」

香焼「え、えええぇ!? できるんすか!?」

土御門「おいおい。お前ら天草若衆をポンと学園都市に引き入れたのは誰だ?」ニヤリ・・・


成程。この為の土御門(多重スパイ)か。


土御門「次回までには俺が戸籍を準備し、海原が学籍を準備する……神崎香(もう一人のお前)のな」

香焼「存在しない『コウサキカオル』って……すぐばれないっすかね?」ハァ・・・

土御門「容姿については問題無い。完璧だ。ぶっちゃけその姿で魔力と殺意消して近付いて来られたら一発で刺されるだろう」

海原「暗殺について、容姿は重要ですよ。例えばアイテムの絹旗最愛の様な見目『ただの子供』が『殺人鬼』だと誰が思いますか?」

香焼「…………、」

海原「実際、幼いとか可愛いとかそういった見た目の輩は、暗殺者に向くんです」

土御門「しかもお前みたいに素早く小柄で、短刀なんてモンを得物にするタイプは尚更。窒素装甲なんて派手で目立つ能力よりもずっとな」

海原「彼女を悪く言うのではありませんよ。ただアレは……壊し屋です。第4位が『可愛い暗殺者』と重宝している様ですが、暗殺、ではない」

土御門「その点、お前は完璧だな。誇っていいぞ」


初めて親しい同年代より優れていると言われた。しかも大能力者(レベル4)たる最愛よりも可能性があると言われた。
だが……まったく、嬉しくない。


土御門「ったく……相変わらず甘ちゃんだな。アレはそういう生き方しか出来ないと何で言えば分かる」フンッ

香焼「もう、最愛の話はしないでください」

海原「……分かりました。次の疑問に答えましょう」


そう言って、土御門の部屋に在ったノートパソコンを開き……学舎の園のマップを映した。

133 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 04:03:43.76 ID:EmJ+Gkyk0
5つの学校を主に、他にも様々な施設・店が並んでいる。


海原「十中八九、常盤台中学に居ます」ピッ

香焼「学生証さえ出来てしまえば侵入は可能っすけど……自分は白井さんや御坂さんに顔が知れてるっすよ」

土御門「だから心配すんなって。今のお前は絶ッッッ対に香焼某(それがし)だと気付かれない」

海原「それにですよ。この学舎の園内では、ぶっちゃけ魔術を使い放題です」

香焼「はぁ!?」

海原「あはは。まぁ言い過ぎですね。同業者(魔術師)が居ないので、結界や気配遮断の術を気兼ね無く使えるという意味です」


つまり人目につく派手な術以外は使えると言う事だろう。


土御門「そういえば先日調べておけっつった『5感』を消す術式見つけたか?」

香焼「聴覚と味覚と嗅覚を消すのは見つけたっす」

海原「うーん、味覚嗅覚は要らなかった……ドチラかと言えば視覚を消せる術が欲しかったですね」

香焼「有ったには有ったんすけど電磁レーダーとか監視カメラ、赤外線装置には引っかかっちゃうみたいっす」

海原「となると……スネーク」チラッ・・・

御坂蛇「私の光学迷彩とチャフを貸せと? お断りします。そんなモノに頼っては修行に成りません、とミサカはそっぽ向きます」フンッ


光学迷彩なんてモノ持ってるんだ。学園都市凄ぇ。


土御門「まぁまぁ。だが嗅覚を消せるのは大きいかもしれん。警備用の犬が居たりするからな」

海原「因みに、聴覚を消すのは如何いったタイプの魔術ですか?」

香焼「自分が触れているモノ……声、吐息、衣擦れ音や足音限定っす」


例えば自分の手から離れてしまったモノに対しては無意味な術だ。
加え、触れているからといって手を繋いでいる人間の声は消したりできないし、ナイフで何かを削ったら金属音は鳴る。


海原「十分かと。後は実戦で使えるかどうかですね」

土御門「視覚に関しては……俺らが『死角』について教えていこう。多分、ねーちんも詳しいから聞くと良い」


確かに詳しいだろうが、姉さんはあまり『死角』という言葉は好きではない筈。
魔術師なのに武士道騎士道を重んじるタイプの人だから『止む得なし』の状況下にならねば、『死角』なんて使ったりしない。


海原「ですが、潜入・暗殺者としては大事な所です。覚えていて損は無い」


まぁこれは追々だろうし、深くツッコむ必要はないか。

134 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 04:42:30.47 ID:EmJ+Gkyk0
兎にも角にも、常盤台に入ってしまえば嫌が応にも食蜂操祈の居所は分かるらしい。
その辺は自分で情報収集するのも潜入(スニーキング)の基本だと蛇さんが忠告した。


海原「では三つ目ですね……これはお任せします」

香焼「お任せって、そんなアバウトな」

海原「監視だけでも良いし、挨拶くらいの言葉を交わしても良い。貴方が『香焼某』だとばれなきゃOKです」

香焼「接触というか、彼女を見つける事さえ出来れば問題無しという訳っすね」

海原「ええ。ま、別にお話したければしても良いですよ。存外、話してみれば面白い女性かもしれませんからね」クスッ


いや、でもまったく素性の知らない人と如何話せば良いか。


土御門「その点は問題無いだろ。カミやん病患者だし……近付けば勝手に『縁』が生まれんじゃね」ニャハハ

香焼「は?」

海原「ふふっ、そうですね。それで友好関係を築ければ尚良し。期待しましょう」

香焼「……はぁ」ポリポリ・・・


最低限は発見監視。ベストは友好関係を築く事か……では中間を取って挨拶程度を目標に置こう。


海原「それでも良し。では説明は此処までです」

土御門「あとは先日言ってた呪符の制作と、覚えてきたっつー3感を消す術を見せてもらう事にしよう」

海原「あ、それと『第6感』についても本格的に講義しましょう。少々休憩を挟んだら開始です」

香焼「了解っす」コクッ


土御門が立ち上がり、冷蔵庫からコーヒーを三本、此方に投げてきた。


御坂蛇「どうも……そういえば」フム・・・

海原「何か?」

御坂蛇「いえ、特殊メイクについては如何しますか? 準備を忘れたので正直今日は……とミサカは口籠ります」

海原「構いませんよ。多分、まだ特殊メイクを覚えるのは早い」

香焼「ボイスチェンジャーとかウィッグとか、覚えなくて大丈夫っすか?」

海原「うーん……毛先結合タイプのウィッグは次回にしましょう。ボイスチェンジャーは、貴方に必要有りません」

御坂蛇「それより、胸や股間は如何しますか? とミサカは妹弟子の貧相な胸を見遣ります」チラッ・・・

土御門「にゃはは。パッドとブラでもするか? あと去勢する?」ニヤリ・・・

香焼「じょ、冗談じゃないっす!」アタフタ・・・

海原「あはは……まぁ大丈夫でしょう。まったく胸囲の無い娘は居ますし、股間については現状目立ちませんから」

土御門「勃ったらどーすんだ?」ハハハ

海原「……勃たない様に、頑張れとしか言えませんね」ハハハ・・・


ええ、死活問題なので頑張ります。

135 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 04:55:00.80 ID:EmJ+Gkyk0
ではもう数点、と蛇さんが続ける。


御坂蛇「やはり口調が気になりますね、とミサカは妹弟子を威圧します」ジトー・・・

香焼「うっ……で、でも、いきなり直せって言われたって」ウーン・・・

土御門「んー……香焼。蛇の事『お姉ちゃん』って呼んでみろ。それから海原を『お兄ちゃん』だ」

海原「……は?」ポカーン・・・


意味が分からない。


香焼「……お姉ちゃん?」チラッ・・・

御坂蛇「っ!!? お、ぅ……こ、これはっ!?」ギョッ・・・

香焼「……お兄ちゃん」チラッ・・・

海原「はぁ」ポリポリ・・・

土御門「ははは。耐性有る無しの違いか」


心成しか蛇さんの息が荒い。あと目が更に怖い。


御坂蛇「い、いけない……こほんっ。と、兎に角! 口調は変えなさい、とミサカは再三注意します」メッ

香焼「はい、蛇さん」コクッ

土御門「蛇、お姉ちゃんって言え」ボソッ・・・

香焼「え? あ、えっと、分かりました。蛇(スネーク)、お姉ちゃん」コクッ

御坂蛇「」プシュー・・・

海原「はっはっはっ。これはこれは」ニヤニヤ・・・


何だこれ?


土御門「まぁそうだな。さっきも言ったが切り替えだ。自分の中にスイッチを作れ」

香焼「スイッチ?」

海原「ええ。自分すら騙す。まさに『役者』、『仮面』の如くですよ」

香焼「成程」フム・・・


そういうのは道化師たる土御門や浦上、猫被ってる五和が上手そうだ。

136 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 05:15:09.35 ID:EmJ+Gkyk0
休憩時間で有っても必要な事をメモし、今後に活かす。
例えそれがどんな些細な事であってもだ。


御坂蛇「くっ……危なかった」グイッ

海原「あ、戻ってきた」

御坂蛇「この程度でやられる私ではありません、とミサカは意地を張ります」ムムム・・・

土御門「にゃははは。目覚めちまえば楽だぞー」ニヤリ・・・


一体何の話をしてるのやら。


御坂蛇「す、スイッチの話でしたね。例えば身につけるモノで意識を変えれば良いのです、とミサカは助言します」

海原「本来、女装した時点で簡単に切り替わる筈なんですが……何故でしょうね」フム・・・

土御門「普段がコンプレックスの塊だからだろうな。女々しいだの何だの……正直、女装に嫌悪感しかないのだろう」フフフ・・・


他人にそれを言われるのは腹が立つな。


海原「では眼鏡やピアスなどで切り替えるとか」

土御門「無駄だろうな。女っぽい上に、更に拍車を掛けたこの恰好で有る以上は何しても意味がないだろう。無意識に嫌なんだにゃ」

香焼「むぅ……努力します」

御坂蛇「意識的に直そうと念じれば変わるモノですよ。さて、では気になっていた事ですが……とミサカは妹弟子を見遣ります」

香焼「はい?」

御坂蛇「貴女、一人称は?」

香焼「え?」

御坂蛇「先程から人称無しの話ばかりです。如何するのです?」


そんな事言われても……特に考えてない。


土御門「お前、普段は海原と同じく『自分』が一人称だよな」

香焼「はい」

海原「成程。それを変えれば口調は変わるかもしれませんね。普段と異なる人称に言葉が引っ張られる可能性もあります」

香焼「でも、これも口調で」ウーン・・・

御坂蛇「お黙る。私とかアタシとか……兎角変えなさい、とミサカは命令します」ビシッ

香焼「えー」タラー・・・

御坂蛇「…………、」スッ・・・ビリ・・・

香焼「わ、分かりました! 変えますよ!」アタフタ・・・


『口調』かぁ……存外難点だな。
その後『自分』のスイッチの切り替えを探りながら3人の師事を受け、この日の修行は終わった―――

142 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 22:05:59.60 ID:XQuGVyxX0
 ―――はたまた別日、AM07:30、学園都市第7学区、学舎の園、常盤台中学・・・・・




とある平日。現在『学舎の園』東門前。

修行――という名の調教――をこなし、遂に任務結構の日。
女教皇様や五和達にも内緒で、二つ目の戸籍と二つ目の学籍を手に入れ、名門常盤台中学へ潜入する。

女装(メイク、ヘアセット)は完璧。ついでに黒のタイツとを穿き、藍色のシュシュ(※)を腕につける。
これは一種の自己暗示。自分の中から『男』を消しさる。                      ※ただいま。第⑥(17)話参照。

門に入る前に、専用に渡された携帯を手に取り、土御門達へ連絡を入れた。


土御門『おう。準備は良いか?』Pi!

香焼「…………、」コクッ・・・

海原『校門で妹達(シスターズ)の一人が貴方を待っています。学校外では共に行動してください』

香焼「蛇さん?」

海原『いえ、別の妹達です。スネークを遠目から貴方を監視兼サポートします……5時の方向、後方の茂みを』


振り返る……林の方でライトらしきモノが2,3回光った。


御坂蛇『―――今回、私は師事(指示)側です。連絡はメールで行いましょう。その方が自然です、とミサカは助言します』

香焼「了解」

土御門「良し。それじゃ行って来い」


通話を切り、門へ向かう。女性の守衛さんに一礼し……如何にも『普通』に園へ侵入した。
まずは連絡係の妹達と合流しないと。確か『御坂丸』さんって、蛇さんが言ってたな。メールで合流ポイントを確認しよう。


香焼「……ポプラ並木通りの噴水近く、かぁ」チラッ・・・


ポプラ並木通りは常盤台へ続く道だった筈。言われた通り、其方に向かうと……発見。
道行く女子達から『ごきげんよう、御坂様』とか『おはようございます、御坂さん』とか挨拶されている。

多分、御坂さん本人(オリジナル)と間違えているのだろう。


香焼「……って、そんな事考えてる場合じゃない。アッチに行かないと……―――……おはようございます、御坂丸さん」チラッ・・・

御坂丸「―――ええ、おはよう―――うん、おはようございま……って、あら?」ピタッ・・・

香焼「おはようございます。蛇の使い……です」コクッ

御坂丸「やっと来ましたか……とミサカは安堵します」ホッ・・・


御姉様(オリジナル)のイメージを崩すまいと健気に挨拶を続ける御坂丸さん。


香焼「……移動しましょうか?」チラッ・・・

御坂丸「そうですね。御姉様と鉢合わせるのも拙いですから……とミサカは常盤台校舎の方を指差します」クイッ

香焼「了解……です」コクッ・・・


とりあえず、校舎付近の目立たない辺りへ移動する事にした。

143 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 22:30:18.90 ID:XQuGVyxX0
学校の敷地内に入り、人気の無いプール脇の方へ移動する。
ただでさえ『御坂美琴』の容姿は目立ってしまうのだ。ぶっちゃけこの任務の協力者人選はミスってる気がするが、仕方あるまい。


御坂丸「ふぅ……やれやれ、人気者は辛いですね、とミサカは御姉様の偉大さに苦笑します」ハハハ・・・

香焼「お察しします」ペコッ・・・

御坂丸「さて、では自己紹介です。個体番号10039号、通称『御坂丸』です。よろしく、神崎さん」ペコッ

香焼「え、あ……はい」コクッ・・・


神崎と呼ばれた……もしかして、僕が『香焼(男)』だという情報は行ってないのか?


香焼「あの、御坂丸さん。今回の件は何処まで聞かされてますか?」

御坂丸「学校外での貴女をサポートする事。と命を受けてます、とミサカは質問に応えます」

香焼「僕については?」

御坂丸「貴女について? って……僕っ娘!?」ギョッ・・・

香焼「え」タラー・・・

御坂丸「ちょ、待……―――(MNW中)―――……プロスネーク! 何で今まで黙ってたんですか!」ガー!

香焼「あ、あの、御坂丸さん?」タラー・・・

御坂丸「で、伝説の僕っ娘だなんて聞いてません! こんな可愛い娘に『僕』なんて言われたら百合っ子じゃなくともドキンと来ます!」


一体、一人で、何を言ってるんだ?


御坂丸「あーもう……こほんっ……すいません。少々取り乱しました、とミサカは謝罪します」ペコッ

香焼「い、いえ……それで、僕の事は何処まで?」

御坂丸「はい……神崎香、13歳、A型、148cm、37kg。3サイズは70・58・71。処女。強度(レベル)は強能力者(レベル3)の―――」

香焼「……え?」タラー・・・

御坂丸「―――……おや? 何処か間違っていましたか? とミサカは確認します」


何、その、詳細? ソースは何処?


御坂丸「ソースはMNW(ミサカネットワーク)と海原光貴(スネークマスター)です、とミサカは返答します」

香焼「そ、そうなん……ですか」アハハ・・・


自分が知らない所で勝手にステータスが作られてる。あの人達怖い。
とりあえず、この人は僕が『香焼(男)』だって事は知らない訳か。成程、この人達にも隠せと……無理難題を仰る。

144 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 22:51:35.99 ID:XQuGVyxX0
さておき、これからについてだ。


御坂丸「既に聞いているでしょう。貴女は彼(か)の学校に所属こそしていますが、クラスに割り振られていません」

香焼「一応、一年生の特殊学級という扱いらしい……です」

御坂丸「故に、好き勝手行動できますがそれでは確実に怪しまれます、とミサカは忠告します」

香焼「知らない人が僕を見たら、不審がりますからね」

御坂丸「かと言って、同じ場所に居座り過ぎても不思議がられますね。気を付けて下さい」コクッ・・・


食堂、図書館、人気の無い場所を定期的に行き来すれば大丈夫だろう。
もしくは空き教室に人払いの結界を張ってしまえば問題無しだ。この学校に魔術師は居ない筈。怪しまれる事は無い。


御坂丸「揉め事は起きないとは思いますが、何かあった場合はスネークに連絡を。最悪、突入してサポートします」

香焼「了解……です」コクッ・・・

御坂丸「OK……それにしても、中一でお化粧とはおませさんですね、とミサカは微笑みます」フフフ・・・

香焼「駄目……ですか?」

御坂丸「いえいえ。まぁそのくらいの薄化粧なら教師から文句は言われないでしょう、とミサカは推測します」コクッ


メイクを落とせなんて言われたら一発アウトだからな。


御坂丸「しかし、人の事は言えませんが独特な喋りですね。『です』の前に間が空く。敬語が苦手ですか?」

香焼「ええ、まぁ。得意ではない……です。変でしょうか?」コクッ

御坂丸「いえ。この街には色んな口調の人が居ます。貴女はまだ落ち着いている方でしょう、とミサカは自身と比較して苦笑します」ハハハ


これは無理矢理矯正した結果だ。
どうしても『○○っす』になってしまうので、それなら一旦矯めを作り『○○……です』と話すようにしたのだ。


御坂丸「さてさて。そろそろチャイムが鳴ります……ご武運を。ミサカは外でお待ちしております」ペコッ

香焼「はい。ありがとう、御坂丸さん」コクッ


物陰へ去っていく御坂丸さん。さて、これから校内へ潜入する。


香焼「……任務開始」スッ・・・


チャイムと同時に、上履きへ履き替え、散策を開始した。


145 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 22:55:25.84 ID:XQuGVyxX0
さて、まずは何処へ向かおう?


香焼「結界作りも良し。気配遮断をしながら校内見学するも良し……それじゃあ―――


①図書館

②保健室

③食堂

④その他(具体的に)

              >>148

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 22:58:17.35 ID:AtN4yq44o
ksk
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 23:02:27.54 ID:xT42R8+po
ksk
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 23:04:34.49 ID:bIvoVY1DO
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 23:04:42.25 ID:ZCftqlJWo
150 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 23:41:02.88 ID:XQuGVyxX0
―――この時間、人気が無いのは食堂か。
僕も一応、昼飯はそこで取るって話だったし、行ってみよう。


香焼「……それにしても、広いなぁ」キョロキョロ・・・


学舎の園の中でも一番の敷地面積を持つ常盤台。
僕が主に通う理事校も大きい学校なのだが、其方はビルタイプ。ドチラかといえば広いではなく『高い』校舎だ。
だが、此方は駄々っ広い敷地に万遍無く校舎施設が並んでいる感じで……ぶっちゃけ、新鮮で移動するのが楽しい。


香焼「えっと……此処っすね」ウィーン・・・


自動ドアを潜り、食堂に入る。これまた広いの何の。
予想通り人気は無く、閑散としている有り様。


香焼「食券とか買うのかな?」チラッ・・・


しかし券売機は存在しない。直接注文タイプか?


??「そこのお嬢様。何をしているんだー?」

香焼「っ!」ビクッ・・・


ヤバい。人が居た。


香焼「え、あ、その……えっと」アタフタ・・・

??「お昼はまだ早いぞー。授業耽(ふけ)るのは構わないけど、今はまだ掃除中&準備中なんだよー」

香焼「す、すいません」アタフタ・・・

??「……何か、珍しいタイプのお嬢様だな」フム・・・


拙い。怪しまれたか?


??「……何年生?」

香焼「一年生……です。貴女は、給仕さんでしょうか?」

??「あら? 知らないのかー。繚乱の生徒だよー。繚乱家政女学校」


繚乱家政女学校……確か給仕(メイド)養成学校だ。
一部のエリートメイドは学園都市内を縦横無尽に『実地研修』していると聞く。まぁお嬢様校たる常盤台に居ても可笑しくないだろう。
しかし、従属者を育成する学校があるっていうのは驚きだ。ぶっちゃけ人種差別だろう。

でも、聖人のシルビアさんも給仕してるし……メイドって何なんだろう。昨今じゃ差別職業・用語じゃないのかな。


??「おーい、聞いてる?」

香焼「あ、はい。すいません。繚乱さん……ですね。お話は伺っています」

??「ふーん……名前は?」

香焼「え? えっと……神崎香といいます。貴女は?」

舞夏「私は土御門舞夏だぞー。よろしく、香」ニカッ

香焼「…………土、御門?」キョトン・・・

舞夏「うん」コクッ

香焼「……あー」タラー・・・


例の『義妹』殿か。こりゃ色々拙いな。

151 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/06(日) 23:56:45.99 ID:XQuGVyxX0
これ以上、彼女と接触するのは危険だと思う。
急いでこの場を離れようと考えた瞬間……海原さんからメールが入った。


香焼(な……『コネを作れ』って、彼女と?)チラッ・・・


蛇さんの監視が、直接海原さん達にも通じているのだろう。
しかしコネって……と悩んでいる最中、今度は土御門からメール。


香焼(『即行離れろ。てかお前、後で覚えてろ』……ぼ、僕悪くないよ!)アタフタ・・・


偶然って怖いですね。


舞夏「どうしたんだー?」

香焼「ど、どうもしませんよ……えっと、この時間帯で人気の無い場所って何処かあります?」

舞夏「んー、色々穴場はあるけど、何で?」

香焼「えっと……その」ポリポリ・・・

舞夏「ふふーん……成程なるほど。香ちゃんは不良生徒って訳かー。校舎裏で煙草喫かしちゃうタイプかい?」ニヤリ・・・

香焼「ち、違いますよ!」アタフタ・・・

舞夏「ふふふ。良き哉佳き哉。一人くらい悪(ワル)が居た方が楽しいぞー。御坂とか白井も結構悪だしー」ハハハ


知り合いの名前が出てきたが、スルーで。


舞夏「そうだ。案内してあげよう。掃除も粗方片付いたしー……香ちゃん、面白そうだしなー。色々話聞きたいぞー」ハハハ

香焼「…………、」ダラダラダラ・・・


拙いマズいまずい!


香焼「や、やっぱ大丈夫……です。一人で移動します」タラー・・・

舞夏「良いではないかー。良いではないかー」ニヤニヤ・・・ガシッ

香焼「いっ!!」ビクッ

舞夏「うふふふ。何なら事務室に案内してやっても良いぞー。お茶の一つでも出してやろう」ツンツン・・・


危ない! 主に、土御門のボルテージがヤバい気がする!


香焼「ま、舞夏! 上司さんに怒られちゃいますよ!」ダラダラ・・・

舞夏「私の上司も大概不良だからねー。ほらほら、合瀬とイこうじゃなーい」グイグイッ・・・

香焼「あわわわわ」ダラダラ・・・


殺される……土御門に殺される!


152 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 00:10:36.11 ID:+eWsEaMZ0
舞夏さんに腕を引っ張られ事務所に引き釣り込まれそうになる。
如何してこの人はトラブルを起こそうとするんだ。別世界では最愛に義兄妹愛の素晴らしさ訴えて、僕の事抱かせようと(!?)するし。


香焼「ま、舞夏! ぼ、僕これから用事があって!」アタフタ・・・

舞夏「…………、」ピタッ・・・ギギギ・・・

香焼「わ、分かってくれた……ですか」ホッ・・・

舞夏「僕……僕っ娘、だと」チラッ・・・


目が、怖い。


舞夏「ねぇ……香。これから、私の事を舞夏お義姉ちゃんと呼ばないか?」ギュッ・・・

香焼「な、なんでさ!? お、お姉ちゃん!?」ギョッ・・・

舞夏「私は香より一つ上だぞー。最近、義弟か義妹が欲しかったんだよー……ぶっちゃけ義兄だけじゃ飽きてねー」ハァ・・・

香焼「ど、如何いう事!?」ダラダラ・・・

舞夏「それにぃ……百合百合ってのも、最近興味有るんだよー。ちょっと白井に影響され過ぎちゃった所為かなー」ハハハ・・・


遠くで、シスコン軍曹が吐血した気がした。


香焼「ま、舞夏はメイドさんでしょ! お嬢様に手を出したら駄目……ですよ!」アタフタ・・・

舞夏「ふふふふ……禁忌の愛程燃えるモノは無いんだなー、これが」ニヤリ・・・


これはもうピンチの域だ。土御門……お前の教育の所為じゃないか、これ?
兎角、応援を頼みたい……―――


①蛇or御坂丸or土御門or海原に要請

②通りすがりの誰かを待つ

③現実は非常である()

                      >>154

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 00:12:55.03 ID:UW4fXYdIO
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(東海・関東) [sage]:2011/11/07(月) 00:13:32.08 ID:e+hcNEnAO
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(福島県) [sage]:2011/11/07(月) 00:17:00.47 ID:AkCZidLf0
さて、どこまで現実は非常なのか。
156 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 00:41:07.86 ID:+eWsEaMZ0
―――大声を出すのは拙い。自身を危険に晒すのもさる事ながら、舞夏さんまで立場を悪くしてしまう。
いや、ぶっちゃけこの人が捕まるのは自業自得だろうけど……義兄さんが怖いからなぁ。

やっぱ海原さん達に連絡を――


舞夏「こっちこっち」グイッ・・・

香焼「おわっ!?」ビクッ!

舞夏「事務所、行くぞー。それとも食堂裏の人気の無い階段の方が良いかなー」フフフ♪

香焼「な、何でそんな場所に!?」ドキッ・・・

舞夏「何でって……さっき、言ったぞー。二度、言わせるのかー?」ペロッ・・・


舌舐めずり。土御門……お前の義妹はキ○ガイか?


香焼「だ、駄目駄目駄目……です! 色々、有り得ません!」カアアァ・・・///

舞夏「真っ赤になっちゃってー。実は期待してるんじゃないのかー?」ニヤリ・・・

香焼「違います。そういう問題じゃない……ですよ! 好き合ってないのに、そういうのは駄目なん……です!」アタフタ・・・

舞夏「ふふふ、ウブなんだねー。可愛いぞー。ところでその口振りからすると、百合的なアレには抵抗無い訳だー。流石常盤台の生徒」フフッ


ありまくりすてぃー! 同性愛とかマジ勘弁!


香焼「ぼ、僕は、クリスチャン……です。だから、不貞は許せません!」ジタバタ・・・

舞夏「……ますます、燃えるぞー。背徳の限りだねー」フフッ・・・

香焼「ゆ、歪んでる……っ」タラー・・・


抵抗しても良かったが、傷付けた瞬間……土御門の式神がブっ飛んできそうだったので、結局無抵抗のまま事務室に運ばれた。


舞夏「大丈夫……私に、任せちゃえー。その様子だと、勿論初めてでしょー?」フフフ・・・

香焼「だ、駄目! 初めてとか初めてじゃないとか関係無く、犯罪……ですよ!」ジタバタ・・・

舞夏「ああ、犯罪……素敵な言葉」コウコツー・・・


もはや普通の貞操観念が無いのか……土御門め。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!


舞夏「安心しろー。処女まで奪わない……ふふっ。でもちょっと痛いかもしれないなー」ニヤリ・・・

香焼「……っ」グッ・・・


仕方ない。こうなったら土御門の折檻覚悟で、気絶させてでも―――

157 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 01:01:56.61 ID:+eWsEaMZ0
 **********<HQ(本部)>************


御坂蛇『拙い! 香をロストしました、とミサカは報告します』タラー・・・

海原「これは……如何しましょう」タラー・・・

土御門「……スネーク、やれ」ボソッ・・・

海原・御坂蛇「『え」』ピタッ・・・

土御門「自業自得だ……死んでも構わん。電流流せ」ギリリ・・・

海原(いやいやいやいや! 悪いのアンタの義妹ですよ!?)ダラダラ・・・

御坂蛇(し、師匠! どうしましょう!?)アタフタ・・・

土御門「流せと言っているッッ!!」ガンッ!!

海原「っ!! す、スネーク! 確かに急場は凌げるかもしれません! 許可します!」タラー・・・

御坂蛇「ら、了解―――」スッ・・・


 **********<香焼side>***********



―――……初歩的な暗示の術式を掛けて、寝かせよう。


舞夏「ふふふ……胸もペチャん娘だなー。全体的に線が細い……お人形さんみたいだねー」ススス・・・

香焼「っ」グッ・・・///

舞夏「ストッキングを少しずつ、破いてくのも……まぁそれは後にして、キス、しちゃう?」スッ・・・


眼と眼が合い、顔が近付く……此処だ!


香焼「セット」ピッ・・・

舞夏「……え」キョトン・・・

香焼「―――、―――……ごめん」グッ・・・

舞夏「へ? 何を?」ポカーン・・・


後は三節加えれば―――って―――その時、電流走る……ッ!!


香焼「いっ……あああああぁっ!! や、止めええええぇっ!!」ビクビクッ!!

舞夏「え、な、ちょ!?」ギョッ・・・

香焼「つ、つち、つちみか……らめええええぇっ!! じ、自分、悪く、な、い、あああああぁっ!! ひゃあああぁっ!!」ビクンッ!!

舞夏「か、香!? だ、大丈夫か!?」アタフタ・・・


あの、馬鹿、何で、痛い、ヤバい……電流……自業……違う、変、気持ちいい、悪い……苦しい、快感、激痛、死にそう。


舞夏「ま、待ってろ! 今、保健医連れてくる!」アタフタ・・・

香焼「しょれ、だめえええぇっ!! じ、自分でいくううううううぅっ!! ひ、ひぁああああぁっ!!」ビリビリ・・・

舞夏「だ、だってヤバいぞ!?」ダラダラ・・・

香焼「し、死ぬ死ぬうううぅっ!! とめ、止めてええええぇっ!! ごめ、ごめんな、しいいいいいぃっ!!」ブルブル・・・

舞夏「だ、誰かーっ!! 担架持ってきてー!」ギャー!


もう、記憶……真っ暗……真っ白……あ、御坂、さんの顔……もう……駄目……―――

158 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 01:24:03.78 ID:+eWsEaMZ0
 ―――はたまた別日、AM11:30、学園都市第7学区、学舎の園、常盤台中学・・・・・



目が覚める……真っ白な天井。真っ白なカーテン。真っ白な部屋。


舞夏「お? 目が覚めたかー?」スッ・・・

香焼「っ!!?」ビクッ・・・

舞夏「あはは。そんなに怯えないで欲しいなー。自業自得なんだけどさー」ポリポリ・・・


此処は?


舞夏「保健室。私と御坂で連れてきたんだぞー。感謝しろー」エヘンッ!

香焼「御、坂?」キョトン・・・

舞夏「そう。常盤台のエース。超能力者第3位超電磁砲こと御坂美琴だー」フフフ・・・


俄かには信じられない。


舞夏「しっかし、いきなり悶え出して気を失ったからビックリしたぞー」ウーン・・・

香焼「……っ! な、何も、変な事してない……ですよね?」タラー・・・

舞夏「あれれ? やっぱ期待してたー?」ペロッ・・・

香焼「し、してません!」カアアァ///

舞夏「ははは。冗談冗談。流石に気絶してる相手の貞操奪う程落ちぶれちゃいないからなー。死姦の趣味は無いぞー」フフッ

香焼「し、死んでない……ですから」タラー・・・

舞夏「ふふっ。いやーそれにしても……さっきのは一体何なんだー?」ジー・・・

香焼「えっと、実は……―――」


事前に決めといたマニュアル通り、架空の『突発性電気発作アレルギー症候群』の説明をした。


香焼「―――そういう病気を持ってる……です」コクッ・・・

舞夏「新種の科学病ねー……何それって言いたいけど、実際見ちゃったから何ともなー」ウーン・・・

香焼「あはは。僕も困ってます。(考えたのは貴女のお義兄さんっすけどね)」タラー・・・

舞夏「……まぁいいやー。困った時は頼って頂戴なー。さっきのお詫びと、さっきの『続き』を兼ねてねー」ニヤリ・・・


背徳云々は、もう勘弁ですってば。

159 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 01:48:50.73 ID:+eWsEaMZ0
その後、舞夏さんの連絡先を交換し、彼女は仕事に戻った。
因みに『気絶してなきゃ保健室プレイもアリだったねー』と舌舐めずりして出て行った辺り、まだ僕の貞操を諦めてない様だ。

兎角、保険の先生は居ない様なので、書き置きだけ残し部屋を後にする。


香焼「……とりあえず、連絡しよう」Pi!


人が居ない中庭の隅の方へ移動し、海原さんへ電話を掛ける。


香焼「……もしもし」Pi!

土御門『死ね。那由多回死ね。いや、殺す。何回殺して欲しい?』

香焼「……絶っっっ対謝らないぞ」ジトー・・・

土御門『ほぉ良い度胸だ。笑ったり泣いたり出来なくしてや―――ってちょ、まだ電話中――』

海原『もしもし。とんだ災難でしたね』ハハハ・・・

香焼「……いえ」ハァ・・・


土御門はもう冷静じゃ居られないだろうから、外してください。


香焼「それより、現状を」

海原『はい。彼の義妹さんに犯されそうになった際に、電流を流しました。これに関しては謝りませんよ。必要行動です』

香焼「……はぁ」タラー・・・

海原『因みに、貴方を保健室に運んだのは御坂丸(10038号)です。無論、御坂さん本人ではありませんよ』


成程。ついでに舞夏さんを騙してくれた訳か。


海原『ええ。では今後の指示を……とりあえず、放課後まで食蜂操祈(ホシ)との接触は控えましょう。ま、状況次第ですが』

香焼「了解っす。放課後までは如何しましょうか」

海原『任せます。ですが、先程の様な事態は避けましょう。色々危険です』

香焼「ええ……それじゃまた連絡します」

海原『はい。土御門は此方で宥めておくのでご安心を。それでは』Pi!


宥めておく、か。まったく、とばっちりも良い所だ。
さて……次は如何しよう―――


①昼食(売店)

②昼食(再び食堂に)

③食蜂操祈の確認

④その他(   )

                       >>161

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 01:50:51.77 ID:SgNJkPxbo
ksk
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中国地方) [sage]:2011/11/07(月) 01:55:15.05 ID:p9rKxv5T0
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/07(月) 01:55:25.30 ID:6oT+ugMjo
163 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 02:17:58.55 ID:+eWsEaMZ0
―――……一度、本人の確認をしておいた方が良いだろう。
接触さえしなければ、海原さん達も許可してくれる筈。


香焼「それじゃあ教室かな……って、そういえば……あれ?」


食蜂操祈って、何年生?


香焼「女王なんて呼ばれてるから一年生では無い筈だけど……どうしよう」ウーン・・・


とりあえず二年の学舎と三年学舎に行ってみよう。人だかりが出来ていればその中に彼女が居る筈。
再び広い敷地を移動し……2,3年の教室の方へ向かった。


香焼(なるべく御坂さんと白井さんには合わないようにしないとね……あ、白井さんは一年か)テクテク・・・


それにしても……女子女子女子。女の子ばっか。
普段からアニェーゼ達や最愛達と一緒には居るけれども、こういう如何にも『お嬢様』だらけの環境は初めてだ。
普通なら清々しい所なのだろうけど……一周して、空気が重い。


香焼(いけないいけない……今の自分は女なんだ)テクテク・・・


兎角、一際多い人混みを探そう……って、何やら廊下が騒がしい。もしかしてホシか?


舞夏「―――!」アーダコーダ!

御坂「―――!?」ハァ?


うわっ……何かヤバいモノを見てしまった。此処は一時撤退を―――


舞夏「――だから、さっき私と一緒に……あ、ほら! あの子だー!」ビシッ!

御坂「何言ってんだかサッパリ分かんないんだけど……どの子?」チラッ・・・

香焼「げっ!?」ビクッ・・・

舞夏「あの小っちゃい、目ぇクリクリした栗毛っ娘だぞー! おーい、香ー!」ノシノシ

御坂「……はぁ」ジー・・・


見つかっちゃった……此処は逃げたら追い駆けられるだろうし、怪しまれるな。
止むを得まい。サラッと挨拶してすぐ逃げよう。


舞夏「ほら、御坂来いってー。香ー。さっきお前を助けてくれた人だぞー」ニカッ

御坂「だから助けてないってば……ええっと……多分、初めましてよね?」ペコッ

香焼「ええっと……はい」コクッ


此処は上手く白を切ろう。さっきの記憶が無いって言っとけば大丈夫な筈だ。

164 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 02:42:49.71 ID:+eWsEaMZ0
とりあえず『御坂美琴』その人は、存在だけで目立ってしまう。加え特定の誰かと一緒に居るなんて事がばれたら、色々と目が痛い筈だ。
人が多い廊下からは離れる事にして、食堂脇のテラスの方へ移動した。


御坂「……それで? 私が彼女を運んだと」フーン・・・

舞夏「ホントだぞー! 何なら保健医に聞いたって構わないからなー」ムゥ・・・

香焼「あ、あの……その、良く分からないけど、ごめんなさい」シュン・・・

御坂「あーいや、別に貴女が悪いって訳じゃないわよ……ただ私自身、ちょっと理解できない事があって」

舞夏「んもー……御坂まで記憶喪失かー? それとも御坂に化けた狐か、御坂のドッペルゲンガーかでも現れたのかー?」ジトー・・・

御坂「……っ……まさか」フム・・・


気付いたか……でも僕は知らないフリを継続しますよ。


舞夏「んー……まぁ良いや。香、コイツが御坂美琴だ。何かあったら頼れよー」ポンポンッ

香焼「あ、はい。えっと、御坂、美琴って……、」ジー・・・

舞夏「有名人だぞー。サイン貰っとけ、サイン!」フフフ・・・

御坂「ま、舞夏……えっと、コイツの言う事は気にしないで。御坂美琴よ。よろしく」コクッ

香焼「よ、宜しくお願いします」アタフタ・・・

舞夏「そんなにビビる事無いってー。こう見えてコイツ、友達少ないからってあ痛ぁ!!」ゴツンッ!

御坂「ッ~~~余計な事言わんでいい」ジトー・・・


有名人だからビビってるんじゃなくて……身元ばれが怖いんです、はい。


御坂「ったく……それで、貴女は?」チラッ・・・

香焼「はい。ぼ―――」


白井「お姉さま! こんな所に!!」ヒュンッ!!


香焼「―――……ぇ」ピタッ・・・

御坂「うわっ……黒子。いい加減空から降って来るの止めなさい」ハァ・・・

白井「酷いですの、お姉さま! 私(わたくし)を置いて食事に行ってしまうなんて……しかも! 別の娘と!」ギロリ・・・

香焼「あ、あははは」タラー・・・

舞夏「まぁまぁ。白井、これにはやんごとなき理由があるんだぞー」ポンポンッ


今、手元に救難信号を出せる装置があれば、即行で作動させてます。
海原さーん、蛇さーん、御坂丸さーん。助けてー。

165 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 03:06:47.11 ID:+eWsEaMZ0
舞夏さんが白井さんに、僕が此処に居る経緯を説明して、彼女も同席する事となる。
微妙に睨んでるっぽい……これ、気付いてる目じゃないよね?


白井「ふんっ……私はお姉さまの露払いをさせて頂いてます、白井黒子ですの。それで、貴女は?」ジー・・・

御坂「黒子、そんな邪険にしないの。ごめんなさいね、今はちょっと落ち着いてないだけだから」

舞夏「ほら、さっき言っただろー。百合ん百合ん通り越して、ガチレズの娘が居るって……コイツだよー」フフフ・・・

白井「ンマー! 土御門さん! 物には言い方ってモノが有るでしょうに! 私はプぅラトニッッック'sな愛でお姉さまを!」ビシッ!

御坂「はいはい、黙ってろ」ゲシッ!

白井「ンァふぅっ!!」グヘッ!

舞夏「……見ての通り、真正の変態だぞー」ハハハ・・・


お前が言うな、と言ってやりたいが……彼女の御坂さんに対する情熱(変態)っぷりは存じ上げている。
確かに貴女以上の変態ですよねー。多分、レッサーもドン引きしますよ。


御坂「話を切って悪かったわね。自己紹介の続き、して貰える?」

香焼「はい……僕は神崎香。一応、常盤台(此処)の一年生……です。よろしくお願いします」ペコッ

御坂・白井「「ぼ……僕っ娘?!」」ピキリーンッ・・・

香焼「……へ?」タラー・・・

舞夏「ふふふふふ……お前らもやはり、漢女(オトコ)よのぅ。喰い付きおったかー」ニヤリ・・・


なぁにそれー。超怖いんですけどー。


御坂「は、初めて見た……僕っ娘って、都市伝説じゃなかったんだ」タラー・・・

白井「そ、それはキャラ作りの上で? それとも天然産!?」キラキラ・・・

香焼「あのー……怖い、です」ダラダラ・・・

舞夏「コイツは十中八九天然だぞー。どんな時でも、例え動揺してでも『私』って言わなかったからなー」フフフ・・・

白井「成程、生きる伝説とは……同じ学年に居るのにも拘らず、気が付きませんでしたわ」ガーン・・・

香焼「はぁ。如何反応すれば良い……ですか?」ウーン・・・

御坂「いやー……これは自慢できるわね。帰り暇? 一緒に喫茶店(風紀委員第177支部)行かない?」フフフッ


その発言は固法さんを泣かせますよ。兎に角、困ったもんだ……また目的を果たせなくなる。
海原さん、指示くれないかなぁ。

166 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 03:32:01.97 ID:+eWsEaMZ0
その後お昼を食べながら、クラスは何処だとか出身は何処だとか強度はどのくらいだとか……質問攻め。
結構適当にこなしたのだが、何故か満足してくれた。なんでさ?

とりあえず、彼女達にも『香焼≠神崎』の式は成り立ったかもしれない。その点は良しとしよう。


御坂「―――特別学級、ねぇ……希少能力者(レアスキル)なのかしら?」ジー・・・

香焼「僕自身、良く分かってない……です。だから此処に」コクッ

白井「へぇ。しかし、希少能力者の開発といえば霧ヶ丘や長点上機の十八番ですのに、常盤台(ウチ)が受け持つなんてこれまた珍しい」フム・・・

香焼「(えっと、こういう時のマニュアルは……)……知人の、お兄さんが進めてくれた……です」

御坂「知人? お兄さん? 女子校なのに?」キョトン・・・

香焼「はい……海原さんと言います」コクッ

御坂「う、げ……マジ?」タラー・・・


遠くで海原さんが泣いてる気がする。


白井「海原、といえば……学園理事長の?」フム・・・

香焼「はい。海原光貴お兄さん……です」コクッ

御坂「…………、」ジトー・・・

舞夏「あー。噂のカンニング坊っちゃんなー」ハハハ


止めたげてよぉ! 本人聞いてんだから!


香焼「(仕方ない。フォローしとくか……)……あんまり、お兄さんを悪く謂わないでください」ペコッ

御坂「……え」

香焼「確かにちょぴっと意地悪……です。でも、優しい所も沢山あります」コクッ

白井「あら、知りませんでした。あの成金坊っちゃんにも長所がねぇ」フーン・・・

香焼「僕が霧ヶ丘や長点上機に入学しようとした時、止めてくれました。『あそこに入ったらモルモットだぞ』って」

御坂「……彼が?」フム・・・

香焼「はい。『入学するなら常盤台(ウチ)か一般校にしておけ』と忠告されました……『頼りになる、素敵な女性も居ますよ』とも」コクッ

御坂「…………、」

舞夏「あらあら」チラッ・・・

白井「まぁまぁ」チラッ・・・


まぁ嘘ですけどね。ポイント稼いだんだから感謝して下さいよ、海原さん。

167 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 03:59:32.32 ID:+eWsEaMZ0
師匠(仮)の評価上げも程々にして、此処らで少し自分の目的も果たしておこう。


香焼「あの、少々お聞きしたい事が」コクッ

御坂「ん、何かしら」チラッ・・・

香焼「簡単な事……です。多分、この学校の生徒なら誰でも知ってる事かと。御坂さんなら尚更」

御坂「ええ。応えられる範囲なら教えてあげるわ……あと私もお姉ちゃんって呼んで良いわよ」ニコッ

香焼「え」タラー・・・

舞夏「あー、ズルいぞー! それじゃー私も舞夏お義姉ちゃんって呼べー」ブー!

御坂「アンタは『姉』って柄じゃないでしょ。私はお姉ちゃん属性あるから良いのよ」フンッ

香焼「は、はぁ。(妹達って意味っすか?)」ポリポリ・・・

白井「ふむ。では私の事も黒子お姉さまとお呼びになって」フフフ・・・

香焼「し、白井さん、僕とタメ……ですよね」タラー・・・

白井「いえいえ。私もそろそろ妹分が欲しいなぁと……お姉さまが本妻なら、その次の側室的な意味で」ジュルリ・・・

舞夏「駄目だぞー! 香の初夜権は私が約束してるんだからなー!」ブーブー!


してません。あと白井さん、無駄に張り合わないでください。
てか御坂さんも2人止めて下さい。絶対オカシイ話っすよね。同性っすよ。


御坂「いやぁ、貴女に気が向いてくれれば私の貞操の危機が薄れるかなぁなんて期待しちゃった」ハハハ

香焼「ひ、酷い……です! 僕はノーマル……です!(あ、この場合のノーマルって『香焼(男)』にとってアブノーマルっすよね)」タラー・・・

御坂「まぁまぁ。うん、貴女なら黒子とは違って抱き枕にしても害は無いかなー」フフフッ

白井「んぁあなああぁっ!! キィイイイイイイイぃええええええぇいいぃっ!! (声に鳴らない叫び)」ガンガンガンガンッ!!

香焼「し、白井さん!?」ギョッ・・・

舞夏「みーさーかー! だから私のペットだぞー!」ムゥ!

香焼「い、イヤ……です!」ダラダラ・・・

御坂「ほら、嫌がってるじゃん。私なら平気よねー。コイツらみたいに危ない事しないし」フフッ♪


あ、殺気。しかも二つ分。


香焼「ええっと、兎角、質問しても良い……ですか?」タラー・・・

御坂「あ、ごめんごめん。どうぞ」コクッ

香焼「はぁ……えっとこの学校には、御坂さんの他にもう一人超能力者が居るって話を聞いた……です」コクッ


瞬間、3人の空気が止まる。もしかして禁忌(タブー)だった?

168 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 04:24:42.56 ID:+eWsEaMZ0
3人は一度、僕から視線を逸らしてから、逆に尋ねてきた。


白井「何故、そんな事をお聞きに?」ジー・・・

香焼「え? いや、純粋に興味……ですけど」

舞夏「あー……止めとけ止めとけー。アレは駄目だぞー」フイッ

香焼「そんなに嫌われ者……ですか?」

御坂「嫌われ者って訳じゃないけど……私達は、あんまり好きじゃないかも」ンー・・・


そういえば海原さんが、常盤台(此処)には派閥があるとか言っていたな。
もしかして3人は別派閥なのか?


御坂「派閥云々は私達の知った所じゃないけど、彼女達が勝手にそう思い込んでるみたいね」ハァ・・・

白井「私は、お姉さまがその気になれば御坂美琴親衛隊(SS)を作っても構いませんけど」チラッ・・・

舞夏「ははは。それは良いなー。アイツらにデカい顔されるよりは御坂に先導立って貰った方が助かるぞー」フフッ

御坂「勘弁してよ。私はそういうの興味無いって言ってるじゃない」フンッ

香焼「でも御坂さんなら、一派閥作れるのでは? というか嫌が応にも貴女に付き従う人達が集まれば、派閥になるのでは」フム・・・

御坂「世間一般から見ればそうかもしれないけど、結局派閥ってのは指導者が立たなきゃ形に成り得ないでしょ?」

白井「しかし、気は乗りませんが婚后光子達を含めればそれなりの勢力にはなるかと」チラッ・・・

御坂「だーかーらー……嫌だって。常盤台で覇権取ったって、所詮は猿山の大将よ。食蜂(アイツ)はそれで悦に浸ってるだけだって」ハァ・・・


成程。この人なりの考えがあるのか……しかし、それは違うと思う。
力を持つ者が周りから支持を集めているのにも拘らず立たないのは卑怯である。理事校で学んだ事だ。
例えそれが小山の大将であっても、そこにコミュニティーは存在する。それを統括しないのはズルいと思う。


御坂「成程……貴女は結構正義感強いのね。嫌いじゃないわ。その理屈は正しいと思う」コクッ

香焼「……じゃあ、何故?」

御坂「そうね。元からの信条もあるけど……私が尊敬……うん、尊敬する人は派閥とか何とか、そういう難しい事考えないの」コクッ

白井「…………、」

御坂「カリスマにも種類はあるけど、やっぱり必死になって突っ走って、その心意気に皆が引っ張られて、自然と塊が生まれる」

舞夏「……ふーん」ニヤニヤ・・・

御坂「そこにリーダーなんて必要無い。いや、もしかしたらソイツがリーダーなのかもしれないけど……自分からは決して威張らない」


僕は、その人を知っている。


御坂「『英雄(ヒーロー)』って言ったら大袈裟だけど……兎に角、それが団結でしょ」フフッ

香焼「……そう、ですね。素敵だと思います」コクッ


そうして、自然に、勢力に成る。
勢力なんて言い方は『彼』は嫌がるだろう。だけど、それが『彼』が歩んできた『道』だ。

彼女もそれを体現しようとしている。そして僕もまた憧れている『道』だ……無粋な事を言ってしまったな。

169 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/07(月) 04:50:16.80 ID:+eWsEaMZ0
生意気を入れた事を謝罪し、再度ホシの話に戻ろう。


御坂「あはは。気にしないでね。考え方は人それぞれだし、それを押しつけるつもりも無いから」コクッ

香焼「いえ、御坂さんは強い人……です。恰好良い……です」ニパー

御坂「ふふっ、可愛いヤツめ。それで……食蜂操祈の事だっけ?」フム・・・

香焼「はい。差し支えなければ御教え下さい」コクッ


一度、大きく『うーん』と唸ってから厄介そうに告げた。


御坂「見方は人それぞれだけど……ごめん、私はあんまり良い印象持ってないわ。客観的な判断も出来ない」

香焼「それでも良い……です。教えて下さい」

御坂「……まぁ、一言で言えば『女王蜂』よ。しかも雌しかいない巣のね。更に寄生蜂の類だわ」ハハハ・・・

香焼「き、寄生って……自分では動かない、と?」

御坂「ええ。お嬢様の中のお嬢様って感じ。知り合いにもう一人お嬢様タイプの超能力者が居るんだけど……正直、ソイツより嫌い」


流石、トム(麦野さん)&ジェリー(御坂さん)。喧嘩するほど何とやらだ。通じる所は有るのだろう。


白井「主に能力の所為ですわね。こういう言い方は宜しくないのかも知れませんが……『自分は本当に自分か』的な状態かと」コクッ

香焼「洗脳……ですか?」

御坂「対抗手段が無いとそうなるわ。もしくは相当な⑦(根性)持ってないと、無理ね」

舞夏「あの取り巻き共の内、何名がマジで陶酔してる事やら」ハァ・・・

白井「例え、本気で陶酔しているとしてもそれは恐怖と彼女の派閥に居るという安堵感故に過ぎませんわ」

御坂「そういう意味では立派な君主ではあるわよ。些か、暴君な気もするけど」


暴君か……苦手なタイプだな。


御坂「無為な接触はお勧め出来ないわ。もし、如何してもっていう時は私を頼って。私と黒子は彼女に対抗できるから」コクッ

白井「ふんっ! あの程度の洗脳……私のお嬢様に対する情熱を消したければ、あと3倍の効果を持ってこい!!」ドヤァ・・・

香焼「超能力の3倍って絶対能力(レベル6)以上……ですね。では、舞夏さん達メイドさん的には?」ハハハ・・・

舞夏「うーん……あの人自身は良く分からないけどなー。あの派閥が嫌なんだよー」ムー・・・

白井「そうそう。全員高飛車で……謂わば『自分は最強の指導者の取り巻きだぞ! 敬え!』って感じですわね」ハァ・・・

舞夏「そういうのが一番面倒なんだよなー。腰巾着、金魚のフンのくせに威張ってんの……その点、御坂は誰からも愛されキャラだぞー」フフッ

御坂「あはは……ありがと」ポリポリ・・・


成程。厄介なのはホシ自身もさる事ながら、その派閥(コミュニティー)もだという事か。
それなら……可能であれば、個人的に合うべきだな。

170 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/07(月) 05:15:29.28 ID:+eWsEaMZ0
兎角、何となく雰囲気は掴めた……多分大丈夫な気がする。


香焼「ありがとうございました。参考になります」ペコッ

御坂「如何いたしまして。この程度で良ければいつでも聞いて」フフッ

舞夏「中々面白い話だったぞー。香は楽しい子だなー。結構賢いしー」ポンポンッ

香焼「や、止めて下さい。子供じゃない……です」ムゥ・・・

白井「ほぉ……お姉さま、やっぱりこの子、部屋にお持ち帰りしちゃダメですか?」チラッ・・・

御坂「私が優先的に可愛がって良いなら許可するわ」フフッ

白井「むむむ……卑怯な」ジトー・・・

舞夏「3[ピーーー]とかダーメー! だったら私が兄貴の部屋に連れ帰って3人で『愉し』むぞー!」ジュルリ・・・


その性的な目を向けるな。3人とか有り得ません。てか土御門も一緒って……恐ろし過ぎます。


舞夏「まったく、ガードが堅いなぁ。こんな美女三人が誘ってるのに物ともしないなんてー」ムゥ・・・

香焼「同性……です。あとクリスチャンだと言ったでしょう。不貞は許容できません」ハァ・・・

白井「あら、珍しい……しかし神崎さん。馬鹿にしている訳ではありませんが、この街ではあまり宗教云々は口にするべきでは無いですよ」

香焼「分かってます。しかし、それ抜きにしても、貴女達2人は不貞の極み……です」ジトー・・・

白井・舞夏「「失礼な」」ムッ・・・


本気でそう思っているのだろうね。面倒臭いなぁ、もう。


御坂「ふふっ。じゃあ私だったら良いのかしら?」クスッ

香焼「え、あ、いや、そういう意味じゃない……です! み、御坂さんだって伴侶以外の人は抱けないでしょう」アタフタ・・・

御坂「は、伴侶……そ、そうね」アハハ・・・///

白井「くっ……はっ!! お姉さまが恋する乙女モードに……んんのぉ類人猿がぁ!! ォンンッジェエラスィイイイイィッ!!」キー!

舞夏「あーあ。ツマんないのー……そういえば、香は女子寮住みじゃないのかー?」

香焼「えっ……あーその」タラー・・・

御坂「そういえば寮では見ないわね。何処住んでるの?」キョトン・・・

香焼「ええっと……第1学区の、親戚の家……です」

白井「第1学区? 随分とまぁ微妙な距離を。しかも地価の高い所に。存外、神崎さんもお嬢様ですのね」

香焼「そういう訳じゃない……です。僕は貧乏……です。親族の恩恵を受けてるだけなので、はい」ポリポリ・・・


実際、そうだ。あのマンションは僕の実家のレベルでは到底住めない場所である。
天草と英国の恩恵を受けているからこそ、住んでいる場所なのだ。だから嘘は言ってない。

171 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/07(月) 05:35:17.16 ID:+eWsEaMZ0
兎角、時間も時間なのでそろそろ解散しよう。


御坂「そうね。楽しかったわ。あ、そうだ。神崎さんの連絡先教えて」スッ・・・

白井「私も。神崎さん、よろしいですか?」コクッ

香焼「はい。あと、馴れ馴れしいかもしれませんが、もっと気軽に呼んでもらって大丈夫……ですよ」

白井「では土御門さんと同じく香(カオル)と呼びましょう」

御坂「香ちゃんね。りょーかい」


正直、『さん』付けはあまり好きではない。だったらまだ『くん』や『ちゃん』の方がマシだ。


舞夏「うんうん、みんな仲良し嬉しいぞー。そんじゃー私は仕事に戻るよー。またねー」ノシ

御坂「戻るって、あの子今の時間帯が一番忙しい筈なのにね」ハハハ

白井「土御門さんは結構自由奔放ですものね。メイドなのに」タラー・・・


きっと兄貴の影響だろう。碌でも無い義兄の影響。


白井「では私達も……香は一年校舎に?」チラッ・・・

香焼「いえ、僕は特別カリキュラムがあるので其方に」コクッ

御坂「特別、か……もし、ちょっとでも何か危ない薬とか実験を勧められたら私か海原先輩に言いなさいよ」ジー・・・

香焼「え? あ、はい」コクッ

御坂「この学校は余所に比べてまだ綺麗かもしれない……でも所詮は研究機関。生徒をモルモットにしようとする研究者は居るからね」ジー・・・


きっと妹達の事だろう……やはり、この人も上条さんに負けず劣らず正義感に厚い人だ。
最愛の事を邪推にしてるから色々苦手だったけど、真面目に話してみればやっぱり良い人なんだと思える。


御坂「……それじゃまた後でね。帰り暇だったらどっか遊びに行きましょう」ノシ

白井「ごきげんよう、香」コクッ

香焼「……ごきげんよう」ペコッ


本来の目的はこなせなかったけど、有益な情報と心強い味方を手に入れた。結果オーライだろう。
さて……では放課後に向けて、もう少し頑張りますか―――

172 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな :2011/11/07(月) 05:37:59.27 ID:+eWsEaMZ0
はい、お疲れ様でした。次回で二話は終わらせたいね。
174 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな :2011/11/07(月) 22:24:59.19 ID:+eWsEaMZ0
こんばんわ。続き投下!
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(中国地方) [sage]:2011/11/07(月) 22:25:41.94 ID:p9rKxv5T0
リアル遭遇ktkr!
176 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/07(月) 22:49:30.71 ID:+eWsEaMZ0
 ―――はたまた別日、PM01:30、学園都市第7学区、学舎の園、常盤台中学・・・・・



御坂さん達と別れた後、再び人気の無い教室に人払いの結界を張り、次の行動を考える事にする。
とりあえずは海原さん達に連絡しよう。


香焼「……もしもし」Pi!

海原『はい……先程は随っ分と楽しそうでしたね。土御門ではありませんが、思わず殺意が沸きましたよ』ハハハ

香焼「え」タラー・・・

海原『まぁ色々考えてくれた様なので、非っ常に微妙な心境ですが……この際嫉妬心とか色々は我慢しましょう』


負のオーラが電話越しに伝わって来る。あと海原さんの後ろで土御門が恐ろしい事を口走ってるのも聞こえる。
情報収集の為なんだから仕方ないだろうに。多めに見てくれ。


海原『はいはい……それで?』

香焼「これからのプランっす。何か指示はありますか?」

海原『うーん、出来れば貴方の自主性に任せたいですね。一応修行ですから』

香焼「それはそうなんすけど、奈何せん放課後まで時間が余ってて」ポリポリ・・・

海原『……では助言程度。観察か、引き続き情報収集をしてみては』

香焼「情報収集?」

海原『ええ。彼女の、何かしらの資料を調べてみたりしてみては如何でしょう』


何かしらの資料……思い浮かぶのは能力開発の資料や身体検査の資料、あとは成績云々といった所か。
そうなると職員室や、再度保健室に侵入する事になるな。


香焼「……あんまり気乗りしないっす。プライベートとかも知っちゃいそうだし、それに態々虎穴に入るのは好ましくないかと」

海原『前者の甘い考えは貴方らしいといいますか、阿呆臭いといいますか……しかし後者の判断は正しいでしょう。ま、貴方にお任せします』

香焼「了解っす。また連絡します」Pi!


やはり情報収集は……色々な意味で乗り気はしない。
先程述べた様に身体検査等女性のデリカシーゾーンにまで首を突っ込むのは、必要以上の行動で褒められた事じゃない。
それに多分、成績・教師評価云々は彼女の能力で『書きかえられてる』可能性が高い。彼女を知る上で信憑性は低いだろう。

そうなると、次にすべきは。


香焼「観察っすね」スッ・・・


気配を遮断しながら。2,3年のクラスを見渡せる位置まで移動しよう。

177 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/07(月) 23:11:47.39 ID:+eWsEaMZ0
人に見つからない様一度外に出る。
気配遮断の術式だけでは『もしも』の際に危ないので、何枚か拝借したプリントの束を抱えて移動。

ふと、校庭を見遣る。生徒達が体育の授業を行っていた。どうやら体力作りのマラソンらしい。
能力開発だけではなく、心身共に伸ばし育てる。流石世界的にも名高い、トップクラスの教育方針を持ったお嬢様校だ。

さておき、そそくさと職員・事務棟へ移る。此処の非常用階段なら校舎の全クラスが丸見えだ。
望遠術式を展開。まずは此処から食蜂操祈の所属学級を確認しよう。


香焼「2年の教室は……うーん、死角が有るなぁ」ジー・・・

御坂蛇「…………、」スッ・・・

香焼「あ、御坂さんが居る……って、おわっ!? こっちにも!!」ギョッ・・・

御坂蛇「シッ」ピタッ・・・


口を押さえられた……良く良く見ると、額にバンダナ。この人は蛇(17600号)さんか。


御坂蛇「……観察ポイントとしてはまずまずだ、とミサカは妹弟子を評価します」b"

香焼「はぁ……何か報告っすか?」チラッ・・・

御坂蛇「いえ、忠告を。確かに此処は全体を見渡せる良いポイントではある。しかし……逆も然り、とミサカは注意します」コクッ

香焼「い、一応、鉄骨に隠れながら観察してるっすよ」

御坂蛇「貴女は授業中暇な時、窓の外を無駄に広くボーっと眺めたりしなかったか? とミサカは質問します」

香焼「あ」

御坂蛇「やれやれ。まだまだ甘い……もし観察点を設置するのであれば……アソコとか」ピッ


職員室の隣の相談室を指差す。


御坂蛇「アソコなら生徒が居ても自然だし、2,3年の学級と同じ高さで物を見れます。ミサカなら其処にポイントを置きますね」コクッ

香焼「な、成程……参考になるっす」メモメモ・・・

御坂蛇「……それから、いつ何時誰に会話を聞かれているか分からない。常に口調は気をつけなさい、とミサカは『香』に忠告します」ジー・・・

香焼「は、はい」タラー・・・


流石、海原さんの一番弟子なだけはある。伊達に『蛇』の名は語っていない。

178 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/07(月) 23:31:51.49 ID:+eWsEaMZ0
それでは早速、蛇さんに教えてもらった場所へ移動し―――


御坂蛇「駄目」キッパリ!


―――……え?


御坂蛇「それでは貴女の為にはならない。自分でオリジナルのポイントを見つけろ、とミサカは説教します」ジトー・・・

香焼「はぁ……確かに」ポリポリ・・・

御坂蛇「……今此処で決めろ。良し悪しを図ってやる、とミサカは姉弟子としてのお節介をやきます」


優しいんだか、厳しいんだか。


香焼「うーん……同じ高さ、不審じゃない点と言えば……喫煙室?」ジー・・・

御坂蛇「……お馬鹿」ペシッ

香焼「す、すいません。それじゃあ……職員室内、かな」チラッ・・・

御坂蛇「微妙な所だ。反対側の生徒達から見れば『一、生徒が用事で職員室に訪れた』くらいにしか思われないかもしれない」クイッ

御坂蛇「しかし、貴女の顔は教師達に知られていないだろう。中には警備員(スキルアウト)も居る職員室に、侵入するのはお勧めできない」

御坂蛇「不審者と思われたら間違いなく拘束されるな。逃げるのは容易では有るが、デメリットとして校内指名手配にされる」

御坂蛇「無論、その場に留まり即席の学生証を見せ、師匠(海原)の名前を使えば言い逃れは出来るが……無駄に時間を食う」

御坂蛇「……まだまだ抜かってますよ、香。とミサカは溜息を吐きます」ヤレヤレ・・・

香焼「す、すいません」タラー・・・


この人は凄い。多分、妹達の中でも五本指には入る実力なのだろう。
もしかしたら状況次第で御坂美琴(オリジナル)より上かもしれないな。


御坂蛇「御託は結構。良いから別の手を考えろ、とミサカは貴女を急かします」フンッ

香焼「は、はい」コクッ


職員室が駄目となると職員・事務棟で同じ高さの場所は無いな。
他の棟舎に行けば、或いはだけど……全て、何かしらで使用している。


香焼「むぅ……やっぱり蛇さんの観察ポイントお借りしちゃダメっすか?」チラッ・・・

御坂蛇「駄目。あと口調……仕方ない。ヒントをあげるか、とミサカは自らの甘さに苦笑します」フフッ・・・

香焼「お、お願いします」コクッ


ぶっちゃけ、面倒なんでさっさと教えて下さい。

179 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/07(月) 23:48:12.81 ID:+eWsEaMZ0
『まずは』と喫煙所を指差す蛇さん。


御坂蛇「変装して、職員として忍び込む。そうすれば不自然ではない……だけどまだ貴女にはそこまでの技術は教えてないな」クイッ

香焼「……やれというのであれば、即席で」

御坂蛇「変装はそこまで甘くない。光学迷彩や変装セットを持ち合わせているならまだしも、今の貴女は化粧道具すら持っていないだろう」

香焼「……すいません」ペコッ


随分厳しい御指摘だ。
蛇さんは何処からともなく煙草を取り出し、それを加えながら『では』と続ける。


御坂蛇「校舎に忍び込め、とミサカは指示します」クイッ

香焼「え!?」ギョッ・・・

御坂蛇「何も不自然では無かろう。お前の見た目は学生だぞ、とミサカは香の肢体を見詰めます」ジー・・・

香焼「で、でも、今授業中でしょう。怪しまれます」タラー・・・

御坂蛇「確かに一年生なら尚更な。各棟舎に守衛も居る……しかしだ」ピッ・・・


プリントの束を指差す。


御坂蛇「それを持って行けば教師の使いと言って侵入出来るだろう。そこは貴女の誤魔化し方次第だがな、とミサカは推測します」

香焼「な、成程」コクン・・・

御坂蛇「もしくは5限と6限の合間に、生徒の並に流れて突っ込めば余裕で潜入可能だろう、とミサカは不出来な妹弟子に助言します」

香焼「さ、参考に成ります」カキカキ・・・

御坂蛇「やれやれ……結局、ミサカが指示してしまいましたね」ハァ・・・


すいません、不出来な弟子で。


御坂蛇「まったく、これでは修行に成らないな……やはり5限終了前に潜入しろ、とミサカは命令します」

香焼「え!? で、でも危険じゃ」タラー・・・

御坂蛇「だから貴女の腕次第だろう。さっさと行って来い。さもないと……、」スッ・・・

香焼「っ!!? い、行きます!! 即行します!!」タタタタ・・・

御坂蛇「ふぅ……まだまだ、だなぁ」カチッ・・・フゥ・・・


流石に電流は勘弁です。
という事で……煙草を喫かす蛇さんを後目に、僕は任務強行に移った。

180 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 00:11:32.13 ID:CaHLyxQH0
人目に付かない様、2,3年校舎の生徒玄関まで移動する。守衛事務さんは……一人。
もしかしてこっそり通過出来たりしないだろうか。


守衛「……ん?」チラッ・・・

香焼(あ、ヤバ)ピタッ・・・


留まって考え過ぎた。先に守衛がこっちを向いてしまうとは……不覚。


守衛「貴女、どうしたの?」ガラッ・・・

香焼「あ、あの……これを」スッ・・・

守衛「ん? プリント?」ジー・・・

香焼「先生に持って行ってくれって、お使い頼まれました」ペコッ

守衛「あら、授業中なのに?」ジー・・・


拙いな。疑いの眼だぞ。


香焼「えっと……何でも緊急の資料だそうで、保健室帰りの私に押し付けられちゃいました」ハァ・・・

守衛「あはは、そうなんだ。災難ね。急いで届けなさい」クスッ

香焼「はい、お手数おかけします」コクッ


結構、あっさりと入れるもんだ。
まぁ確かに『セキュリティ完璧の我が校に不審者なんて居る訳無い』と思いこんでいれば、そうなってしまうのだろう。
まさにトロイの木馬。一度敷地内に侵入してしまえば疑う必要は無い。優秀な防犯故の盲点だな。


守衛「あ、そうそう。そういう理由なら一応学生証通して頂戴ね」スゥ・・・

香焼「え」タラー・・・

守衛「面倒臭いと思うけど、私も仕事だから。授業中の行き来は一々確認しなさいってね」ハハハ・・・


すんなり行き過ぎてたな。
常盤台の学生証はカードタイプだ。その中に個人情報が詰まっている。因みに、クレジット代わりや交通系乗継カード等にもなるらしい。
まぁ理事校の全指紋認証には劣るけどね。アレはもはや厳重過ぎて面倒なレベルだ。


香焼(そういえば……このカード、大丈夫なんすかね。海原さん次第っすけど)タラー・・・

守衛「はい、此処のリーダーに通してね」トントン・・・

香焼「…………、」スッ・・・


…………。


守衛「神崎……香さん。一年生っと……一年生?」アレ?

香焼「ま、まったく、先生も酷い……ですよね。学年違うのに資料届けてくれなんて」アハハハ・・・

守衛「あ、そうなの。貴女も大変ね。それじゃ行って良いわよ。あ、帰りは挨拶してくれるだけで良いからね」フフッ


気前の良い人で助かった。お嬢様校だから職員は皆ガチガチにお堅い人達ばっかだと思っていたが、そうでもないのか。
兎角、先へ進もう……此処からが本番だ。

181 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 00:37:40.02 ID:CaHLyxQH0
さて、侵入したのは良いが彼女は何処だろう。

校舎内にも監視カメラが数点並んでいるので、あまり不審な動きは出来ない。
こんな事ならさっきの守衛さんに彼女の教室を聞くか、下駄箱で名前を見つければ良かった。


香焼(とりあえず迷ったフリをして、散策っすね)キョロキョロ・・・


2年のクラス廊下に置いてある、外ロッカーの名前を確認しながらを歩く……どうやら此処には無いらしい。
次の渡り廊下を挟んで対面側の棟、3年のクラス廊下……此処にも、無い?


香焼(どういう事だ?)タラー・・・


もしかして1年生? 
いや、それはない筈だ。彼女の写真を見る限り同い年とは思えない。何より1年が女王を語るのは変だろう。
手詰まったので海原さん達にメールを送る。


香焼(返信来た……『別の手段を見つけなさい』……厳しいな)ウーン・・・


教室を覗いて回るのは危険だろうし、やはり守衛さんに聞いた方が早いかもしれない。
急いで玄関に戻って、事務室の戸を叩いた。


守衛「あら、もう終わったの?」ガチャッ・・・

香焼「いえ、あの、お恥ずかしい話……ですが、クラスが分からなくて」ウーン・・・

守衛「え? 指示されてないの?」キョトン・・・

香焼「はい。食蜂先輩へ渡せと投げっ放しで無理矢理」ウーン・・・

守衛「食蜂さん? じゃあ能力開発科の先生か……あー……貴女も災難ね」タラー・・・

香焼「え?」キョトン・・・

守衛「いえいえ。コッチの話よ。彼女のクラスは■組だけど……居れば良いわね」

香焼「もしかして外か別教室での授業……ですか?」ポカーン・・・

守衛「ん……ううん。今彼女のクラスは英語だから教室だと思うけど……というか、貴女彼女の事知らないの?」ジー・・・

香焼「え、す、すいません……目立つ人って知ってましたけど、噂程度にしか……接点無かったから」シュン・・・

守衛「あー別に怒ってる訳じゃないのよ。ただ忠告っていうか……コレ、私が言ったって他の人に漏らさないでね」コソコソ・・・


何やら彼女の情報を得られそうだ。これはとんだ儲け話(モノ)。

182 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 00:58:10.89 ID:CaHLyxQH0
よっぽど暇していて与太話をする相手を欲していたのか、それとも単に口が軽い人なのか。
どちらにしろ、守衛さんの話が始まる。


守衛「彼女、兎に角自由奔放、自己中心、自分勝手な人なの」ボソッ・・・

香焼「はぁ。噂には聞いてます」コクッ

守衛「この規則に厳しい常盤台の中で超と言っていい程浮いてるわ。まぁ超能力者って理由もあるけどね」コソコソ・・・

香焼「ええ。凄い……です」コクッ

守衛「能力は精神系で至高。有る意味人望も厚い……でも具体的に言っちゃうと最っ悪なのよ。特に教職員からしてみれば」ハァ・・・

香焼「え?」

守衛「だって……気持ち悪いでしょ」タラー・・・


気持ち悪い?


守衛「心、弄ったり覗いたりするのよ。私だっていつ弄られてるのか心配で堪んないわ」ゾゾゾ・・・

香焼「…………、」

守衛「もし彼女が品性良好な人格者なら、まぁ仕方ないとするわよ。うん、確かに表向きにはそうなのかもしれない」グデェ・・・

香焼「表向き?」

守衛「結局、私達が彼女に植えつけられてる感情かも知れない。でも私は知ってるもの……彼女の素行不良」ハァ・・・

香焼「…………、」

守衛「私は守衛の立場だから校舎内監視してるんだけどさ……あの子、授業中普通に立ち回るし、教室出てくのよ」

香焼「ADHD(注意欠如・多動性障害)……ですか?」

守衛「有る意味そうなのかもね。でも、それより性質悪いわ。だって、彼女教室出てく時、周りの人間注意しないどころか気にもしないのよ」

香焼「せ、先生も?」

守衛「ええ。精神操ってんだか、周りが皆捨て置いてるのか知らないけど……ホント、気味悪いわー」タラー・・・


一応言い過ぎたと反省したのか、しかし自己弁護するように『因みに、これ皆思ってる事だからね』と守衛さんは付け足した。
まったく関係無いが……悪いけど、僕は貴女とは仲良くなれそうにないです。


守衛「兎に角、気を付けてね。さっさと資料渡して逃げた方が良いわ」ハァ・・・

香焼「…………、」ペコッ

守衛「あ、もし教室居なかったら図書館か食堂か屋上居ると思うわよ。もしくは何処か空き教室ね」

香焼「はい」チラッ・・・

守衛「とりあえず監視カメラ無さそうな場所探しなさいな。彼女、カメラは嫌いな筈だから」フフッ


有力な情報を得た。本来なら多大なる感謝と賛辞を述べるべきなのだろうが……僕の心は、怒気に包まれている。
そうしても、守衛さんに頭は下げたくない。

加えて……最愛と初めて会った時の様な、そんな憐れみの感情も渦巻いていた。

183 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 01:20:21.92 ID:CaHLyxQH0
教えてもらった教室に着く。音声遮断術式を用いて、こっそりと教室のドアを開ける。
前からは……彼女が見つからない。では後ろから……居た。


香焼(見つけた!)ジー・・・


後ろの席でダルそうに爪を弄っている。まさに中学生。
一寸後、机に突っ伏し……寝たか?


香焼(いや……ペン動かしてる)ジー・・・


板書を書き写しているのだろうか……いや、無いな。多分落書きでもしているのだろう。
これまた一寸後、彼女の列が前から順番に当てられている。次は彼女の番だ。


香焼(応えるのかな……って、え?)キョトン・・・


突如、リモコン(?)を取り出す。そして適当にチャンネルを回すかの如く、ボタンを押した。
すると……教師は彼女の順番を飛ばし、隣の列の先頭を指名した。
いきなり当てられた少女は戸惑っていたが、食蜂さんの手がもう一度動くと同時に、何事も無かったかの様に質問に答える。

成程、アレが噂の『心理掌握(メンタルアウト)』か……多分、その一角に過ぎないのだろう。

これまた一寸後、彼女は面倒臭そうに椅子に寄り掛かり大きく欠伸をした。


香焼(素行不良ね……どっちかっていうとADHDっすよ)ウーン・・・


授業崩壊しないのが不思議でならない。
その後も少々監視を続けたが……紙飛行機を飛ばして誰かに当てたり、立ち歩いて自分のロッカーから雑誌を持ち出したり、
窓を開けてベランダに出たり、隣席の子の鞄からお菓子を取り出して食べ始めたりと……好き放題だ。

しかし、誰も注意しない。誰も気に止めない。誰も彼女と……目を合わせない。それが極々自然な在り方とでもいう雰囲気。


香焼(変、だ)ムゥ・・・


彼女がリモコンを振った時は勿論、クラス全体が『何も無かった』状態になるのだが……振るわなかった時も、そうなるのだ。


香焼(『気持ち悪い』、『気味悪い』、『恐怖』……『これ皆思ってる事だからね』……か)ジー・・・


僕の中で……沸々と、とある感情が浮かんできた。

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 01:36:55.12 ID:Ilfvw8WSO
>>183
差別発言はよくないぜぃ
185 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 01:57:57.93 ID:CaHLyxQH0
暫時、心此処に在らずのまま監視を続けていた。


香焼(……ん?)ピタッ・・・


また彼女が立ち上がる。しかし先程とは様子が違った。
手提げ鞄を持ち、一度に3つくらいリモコンを振ってから後ろ扉(此方)へ――


香焼(こ、コッチ来た!? ヤバい!!)アタフタ・・・


――急いでその場を離れる。
絶対に入らない様にしてたのだが、この際女子トイレへ逃げ込むのも止むを得まい。


食蜂「―――ハァ……だる~い」ガラッ・・・


扉も閉めずに何処かへ歩き出す。何やらブツブツ独り言を言ってる様だが此処からじゃ聞き取れない……兎角、尾行せねば。
海原さん達にメールを入れて、追跡開始―――


 ***************************


海原「おや……遂に見付けましたか。スネーク、貴女の方から見えますか?」Pi!

御坂蛇『肯定。赤外線スコープで2人の動向を把握している、とミサカは報告します』

土御門「アイツ、大丈夫かにゃ……もしかして気付かれてるんじゃないか?」フム・・・

海原「彼女は取り分け実戦向きではないでしょう。気配遮断の術式を使っている限り、目視でもしなければ気付きませんよ……多分」

土御門「でも、仮にも超能力者だぜぃ? 半径何m以内は確認できるとかレーダーみたいなの張ってんじゃね?」

海原「うーん……正直、あまりに情報が少ない。スネーク、兎に角彼のサポートを徹底して下さい」

御坂蛇『了解。一応チップがGPS代わりにもなっているので動きは把握可能、とミサカは説明します』

海原「……もし、彼が不審な動きをした時は洗脳されたと判断するべきでしょうか」ムゥ・・・

土御門「かもしれないにゃ……大丈夫だとは思うが、スネーク。馬鹿な行動したら軽く電流流せ。『気付け』になるだろう」

御坂蛇『それに電磁防壁(バリア)代わりにもなるかと……とりあえず、ミサカも移動します』スッ・・・

海原「よろしく。最悪、君の判断で突入を許可します。気を付けて」Pi!


土御門「やれやれ、前途多難だぜぃ……まぁ元々、無理難題吹っ掛けたんだがな」ハァ・・・

海原「『食蜂操祈と友好関係を築け』……しかし、例え究極に困難な条件でも……貴方は、期待しているのでしょう。土御門」ニヤリ・・・

土御門「まぁヤツも人間。可能性は0じゃねぇ……それに」ジー・・・

海原「彼だから、ですか」フム・・・

土御門「ああ。あの『甘ちゃん』だからこそ……俺らに出来ない『何か』を期待しちまう……カミやんとはまた違う『何か』をな」コクッ

海原「ええ……賭けてみましょう」フフッ

土御門「『雑兵で女王を狩る(ローリスクハイリターン)』作戦……頼むぜぃ、香ちゃん」ニヤリ・・・

186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 02:32:38.49 ID:8qt4W2CDO
>>184
差別用語ってADHDの事? 別に差別でも無くない?
それにこの行動読んでる限り、正しい判断ってか考察だと思うぞ

まぁSSで障害云々書くなってんなら別だけどね
187 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 02:56:00.02 ID:CaHLyxQH0
 ―――はたまた別日、PM02:30、学園都市第7学区、学舎の園、常盤台中学・・・・・



丁度5限と6限の間の休み時間になったので、誰に気にされるでもなく自然に移動を済ませた食蜂さん。
守衛さんの話通り、図書館へ入っていったが6限は出ないのだろうか。


香焼(超能力者ともなれば出る必要無いんすかね)ウーン・・・


それに、教師の記憶を弄れば出席日数もパッと改竄出来るのかもしれない。
それはさておき……如何接触しようか。いきなり声を掛けたら怪しまれるだろうし、かといって此の機を逃したら放課後だ。
海原さん達は放課後接触するのも手だろうと言ってはいたが、正直取り巻きが居る状況かでは、個人的に話が出来なくなるだろう。

一度相談すべきか、と考えた瞬間……アチラから電話が掛って来た。物陰に移動して電話に出る。


香焼「はい」Pi!

海原『どうやらチャンスの様ですね』

香焼「ええ……如何します?」

海原『少々お待ちを……此方の予想だと、もう少しで図書館は彼女一人だけになるでしょう』

香焼「え?」キョトン・・・


言われた通り図書館の入り口を観察する……すると、まさに仰る通りの展開になった。10人弱の生徒がゾロゾロと外に出ていく。


海原『スネークがライフルの赤外線スコープで確認しました。どうやらリモコン(?)を振った様です』

香焼「暗示魔術……じゃなかった、能力を使ったんすね」

海原『気を付けて下さい。彼女の能力は並の洗脳魔術の数倍強力でしょう』

香焼「す、数倍って……大丈夫なんすか?」タラー・・・

海原『……スネークがサポートします。打ち合わせ通り「体内」に電磁防壁を張りましょう』


つまり……また『電流を流される』という訳だ。背中のチップを擦り苦笑する。


海原『一応、スネークには加減をするよう注意しました。先程までの大きな刺激とは違い、静電気が痺れが走る程度だと考えて下さい』

香焼「そうじゃなかったら会話できないっすよ」タラー・・・

海原『ええ……ですが、食蜂操祈(ホシ)の能力が予想以上に強大だった場合は覚悟して貰いますよ』

香焼「ううー……根性で乗り切ります」ハァ・・・

海原『その粋です。ふふっ、まるで⑦(第7位)思考ですね。貴方は脳筋タイプでは無いと思ってたんですけどね』クスクス・・・


そりゃまぁ最近はしょっちゅう一緒に居ますから。


海原『気を付けて……接触後の会話は「全て」お任せします。貴方の好きな様にしてください。それでは幸運を』Pi!

香焼「了解……さーて、行こうか」グッ・・・


扉の向こうには彼女が待っている。やれるだけやってみよう。

188 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 03:12:29.37 ID:CaHLyxQH0
いざ行かん、と図書館の敷居を跨いだ刹那―――




                              え




     っ!?           あ、れ……ぁ             か    ぅそ          
 き                                                          ッ
                    へ                       ヤ
    な                                                 で



                  さ                  び




―――いきなり…――思考が……真っ白、に―――***



御坂蛇『むっ……師匠。香の様子がいきなりおかしい、とミサカは実況報告します』

海原『能力の範囲を広げてある種の「結界」を構築してる訳か。その「境界」は入り口……スネーク! 急いで!』

御坂蛇『了解!』スッ・・・



***―――ッ……刺激、と共に思考が、元に戻る。


香焼「な……なんで」タラー・・・


携帯が鳴った。メールだ。


香焼「……け、結界!?」タラー・・・


海原さんの考察が書いてある。
この図書館は既に食蜂操祈の『工房』になっている。この空間に足を踏み入れたら最後、外に出るまで洗脳は免れない。
仮設急造とはいえ、常にフルオープンチャンネル状態。要は超能力者の『胎内』だと表現している。これは参ったな。


香焼「マジで、電流……覚悟しないと」ダラダラ・・・


覚悟を決め学生証(カード)をリーダーに通し、先へ歩を進めた。

189 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 03:49:40.04 ID:CaHLyxQH0
甘ったるい様な、ピリピリする様な……兎に角気持ち悪い感じだ。
前者は超能力の影響で、後者は蛇さんが常に微電流をながしてくれている御蔭だろう。

さて……この甘ったるい感じの大本は何処に居る?


香焼(そういえば、カメラに映らない所って言ってたな)キョロキョロ・・・


監視カメラを見つけた。入口に1台、真ん中を随時回転しているのが1台、カウンターに一台、きっとそれ以外にも置いて在るだろう。
よくよく考えたら僕もこれに映ってしまうのは拙い。そうすると、まさかとは思うが隠しカメラの存在も怖いな。

こんな事ならチャフの一つでも持ってくるんだった。そんな大袈裟な事を考えた瞬間、蛇さんからメールが入る。


香焼(『動体反応:司書室に1つ  邪魔カメラ:入口、センター、カウンター、東西両奥、南通路中央カウンター向き』……なるほど)フム・・・


司書室ならカメラは無いしリラックスできるだろう。お茶や菓子も置いてあればサボるには持ってこいの場所だ。
そうと決まれば話は早い。思考をフル回転させ……最良の行動を考える。

西側通路から一冊小説を抜き出し、あたかも普通に本を借りに来たフリをして……カウンターに持って行く。


香焼(この場合、変にコソコソするより図書館の利用者として振る舞った方が自然っす)


後でカメラを確認された際『何故、食蜂操祈の能力に引っ掛からなかったのか?』と怪しまれそうだが、
そこは海原さんが作った捏造書類上の『解析未明の希少能力者(レアスキル)』という立場を使わせて貰おう。


香焼「(良し……)……あのー、すいませーん。誰か居ませんかー?」オーイ


餌を捲く。すると予想通り……司書室から一つの影。


食蜂「―――ん……あれ?」キョトン・・・

香焼「あ、えっと、こんにちは」ペコッ・・・

食蜂「……へ?」ポカーン・・・


不思議そうな表情。予想通りだ。


香焼「あの、本を借りたい……です」コクッ

食蜂「んー……あれれぉ? 可っ笑しいぞぉ?? 何でかなぁ???」ジー・・・ウーン???

香焼「え、と……本、借りれますか?」ポカーン・・・

食蜂「能力聞いてる筈なんだけどなぁ……如何してかなぁ? もしかして貴女ってば電気使い系か精神操作系(同業者)さん??」ジー・・・

香焼「はい?」キョトン・・・

食蜂「むむむっ!? 違うっぽいケドぉ……何事かぁ」ウーン・・・


会話が進まない、というか成立しない。正直シンドイ。
しかし超能力者――軍覇に限る――のぶっとび会話(通訳相手)は慣れてるつもりだ。根負けはしないぞ。

190 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 04:14:17.67 ID:CaHLyxQH0
兎角、会話のペースを掴もう。


香焼「司書さんじゃない……ですよね?」ジー・・・

食蜂「ハァ、やれやれぇ。面倒臭いけどぉ……直接退場願いましょ★」エイッ♪

香焼「え……ぁ―――」




また……ま、白―――今度、さき―――ょ―――力……ッ―――ょ……―――


食蜂「んもぉ……さっさと出っててチョウダイなっ。私のサロンだぞぉ」プンスカッ!




香焼「       ―――          ぅ         ……        ひゃ、ぃあああぁああぁっ!!?」ビクッ!!




食蜂「っ!!?」ギョッ・・・


―――……ッ、蛇さん……ありがとう。


香焼「……え……あ、な、何っ!?」アタフタ・・・

食蜂「んー……あるぇ?? そんじゃもぉ一丁★」ポカーン・・・ビシッ



※以下、同じパターン × 3



香焼「ゼェ……ゼェ……あ、あの、な、何が、起きてる……ですか?」ダラダラ・・・グデェ・・・

食蜂「……嘘ぉ」タラー・・・


もう勘弁して下さい。


香焼「し、司書さんじゃない……ですよね?」

食蜂「え? あ、ウン。見て分からないのん? というかぁ……もしかしてぇ私のコト知らないとかいう驚愕オチ??」ムゥ・・・

香焼「い、いえ。知ってますけど、まさかこんな場所に居る訳ない……ですよねって、思ってしまいました」ハハハ・・・

食蜂「それはコッチの台詞だよ~ん。一体何ぞぉ???」ムーン・・・


我ながら名演技。流石、五和(猫被り)と浦上(女道化師)と一緒に生活してるだけの事はあるな。


香焼「食蜂先輩……ですよね? 超能力者の」キラキラ・・・

食蜂「ウン、正解です☆ それじゃ貴女は一体何者さん??」ムゥ・・・

香焼「え、はい。一年生の神崎といいます。神崎香……です」ペコッ

食蜂「そういうコト聞いてるんじゃなんだケドぉ……まぁ良いやっ♪ 覗いちゃえ★」ビシッ♪


※また、同パターン → 絶叫

191 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 04:39:36.69 ID:CaHLyxQH0
それから同じやり取りを繰り返し、数分後……頭の中が可笑しくなってきた。
途中、マジで『僕の本名、香焼だっけ? 神崎だっけ?』とか考えてしまった。そろそろ本格的にキツいぞ。


香焼「あ、あの! もしかして……僕に何かしてますか!?」ダラダラ・・・

食蜂「あ、れぇ……ちょっとぉ……変だなぁ」ポリポリ・・・

香焼「食蜂先輩、話聞いてますか?」ハァ・・・

食蜂「んー、聞いてるケドさぁ。なーんか納得いかないなぁ」ムゥ・・・


ええ、僕もですよ。お願いだから会話して。


香焼「もしかして、僕に能力使ってます?」ジトー・・・

食蜂「ウン」コクン・・・

香焼「うわぁ、随分正直」タラー・・・

食蜂「だって変だもーん……私の能力が落ちてる訳無いしぃ。そぉなると、原因は貴女だぞぉ」ツンツン・・・

香焼「をわっ! い、意地悪しないで下さいよ……僕、本借りに来ただけなのに」ショボーン・・・

食蜂「……ふーん」ジー・・・


良し。興味を持ったか。


食蜂「ねぇ。名前、何て言ったっけ?」ジー・・・

香焼「え? 名前……ですか」キョトン・・・

食蜂「ウンウン。もう意地悪しないから教えて♪」フフッ

香焼「はぁ。神崎香……です。一年生……です」ペコッ

食蜂「香ちゃんね♪ ねぇ。ちょっと奥でお話しない??」ポンポンッ

香焼「っ!! え、えっと……その」ドキドキ・・・

食蜂「ふふっ。そんなに緊張しなくても良いぞっ☆ 危ないコトする訳じゃないんだから。あ! もしかしてレズっ気ある系かなぁ?」ニヤリ・・・

香焼「ぼ、僕はノーマル……です! 意地悪しないって言ったじゃない……ですかぁ」アタフタ・・・

食蜂「あららぁ。僕っ娘でロリっ娘でレズっ娘なんてぇ……イケない子★ お仕置きしちゃうぞぉ」フフフ・・・

香焼「や、止めてくださいよぉ。もうあの気持ち悪いのは嫌……です」キュゥ・・・

食蜂「あはぁ。可愛いぃ♪ 俄然興味沸いちゃったぁ! おいでおいでー。お喋りしましょ☆」クスクス・・・

香焼「本当に……意地悪、しませんか?」ジー・・・

食蜂「しないしないっ☆ あ、でもぉ……悪戯はしちゃうかもぉ。嗜虐力ってヤツぅ?」ニヤリ・・・


マジで勘弁してくれ。ビリビリとか真っ白とか女装ばれとか……そろそろガチで死にそうです。

192 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな :2011/11/08(火) 04:53:23.84 ID:CaHLyxQH0
すいません、眠い……次回、『みさきちと香ちゃんの密室ラブラブ百合百合展開♪(嘘)』
何にせよ、明日で終わらせます

※ADHDについて:不快に思われたなら、すいません。以後気を付けます



アンケート! 第三話について!


①アンジェレネ回

②浦上主役で、英国組同年代(15~6歳)の話

③ステイル&削板回

④その他(具体的に。ただし以前メインでやった人物並びに不可能なキャラはパス)



一応、次回も取るけど第一回目としてご協力下さい

それじゃ主にアンケ回答よろしく。あと適当に質問感想意見罵倒コメ下さい! ノシ”

193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長崎県) :2011/11/08(火) 05:07:15.75 ID:nX6z661Qo
④香焼の修行INイギリス聖教女子寮編
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 05:35:16.33 ID:8qt4W2CDO
④黒夜回!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/08(火) 07:25:21.64 ID:nqT0Y3DAO

ここの浦上結構好きなんだよね

ADHDはまあ……能力で好き勝手好き勝手やってる状態を揶揄した感じであって、ADHDのこと自体を深く掘り下げる話ではないし……

敏感な人はいるだろうけど
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 08:09:48.03 ID:rJyFS1b80
1縺九↑
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 14:25:54.28 ID:C4ONDF+IO
①も捨てがたいけど
④神崎香のイギリス女子寮潜入作成
でwww

あと>>178
警備員(スキルアウト)
があったのが気になったwww
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 14:43:03.85 ID:3Z38kYTIO
イギリス女子寮に香ちゃん放り込むとか猛獣の群れに放り込むようなもんじゃねーかww


④イギリス女子寮in神崎香
199 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな :2011/11/08(火) 19:12:36.93 ID:CaHLyxQH0
こんばんわ。続きです。
アンケですが……何故か女子寮編が多いよ!? 勿論、香ちゃんでかwwwwww
一応今回もアンケは取りますけど、これ如何すんだ(苦笑)


・警備員(スキルアウト)→(アンチスキル)、ですね。凡ミスすいません。


そんじゃ続き開始! 
 
201 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 19:40:33.70 ID:CaHLyxQH0
 ―――はたまた別日、PM03:00、学園都市第7学区、学舎の園、常盤台中学・・・・・



時刻はそろそろ6限が終わろうとしている頃合い。
しかし、僕を司書室へ連れ込んだ彼女……食蜂操祈さんはまるで時間を気にしていない。
今は鼻歌を歌いながら、勝手にお茶を沸かしていた。


香焼「あ、あの。時間大丈夫……ですか?」チラッ・・・

食蜂「ダイジョブダイジョブ♪ もしかして香ちゃんは用事とかあるのん?」フンフフ、フンフフ、フンフーフーン♪

香焼「いえ。僕は心配要らない……ですけど」ジー・・・

食蜂「なぁら、良いじゃん☆ はい、お茶ですよぉ。紅茶じゃなくてホージ茶。コレしか無かったのん。我慢してねーっ」コトッ

香焼「あ、ありがとうございます……話を戻しますけど、放課後掃除とか利用者で図書館に人が来るのでは」ウーン・・・

食蜂「知ぃらない! ま、ソレは図書館(此処)に人が入って来れたらのオ・ハ・ナ・シよんっ★」フフフ・・・


この結界を抜けれるのは、高い強度(レベル)の電気使い、または彼女と同業者(精神操作系)の能力者だけだ。
自分の私利私欲の為に能力を行使するか……この人といい麦野さんといい、やれやれだな。まさにお嬢様。


食蜂「ねぇねぇ。そんなコトよりお喋りしましょ」ニコニコッ♪

香焼「あ、はい……僕なんかで良ければ」オドオド・・・

食蜂「んもー。緊張しないでって言ったのにぃ。ま、ソコが可愛いんだけどねぇ☆」フフフッ

香焼「か、可愛いって……そんな事無い……です」モジモジ・・・

食蜂「うふふふふっ♪ まったくぅ。やっぱ香ちゃんのコトぉ、頭の中グチャグチャにしてでも覗いちゃいたいくらいわぁ★」キュンキュンッ

香焼「え、ええぇ!?」ギョッ・・・

食蜂「あはぁ♪ 良い反応っ。じょーだんだから安心なさい」クスクス・・・


冗談に聞こえません。


食蜂「ホントホント。だってぇよく分かんないケドぉ……香ちゃんってば私の能力効かないんだもんっ!」ムムムッ

香焼「へ?」キョトン・・・

食蜂「無理っ矢理弄くっちゃっても良いんだケドさぁ。そしたら多分、廃人なっちゃうゾっ★」ツンツンッ

香焼「っ!!?」ビクッ・・・

食蜂「だぁからしないってばぁ。ビビり過ぎぃ。リラックスリラックスぅ♪」プニプニプニッ

香焼「ふぁふぇ?!」ムギュゥ・・・

食蜂「あはははぁ♪ 可っ笑しぃ!」ムニムニッ


僕の頬っぺたを突っついたり抓んだり撫でたりする食蜂さん。メイクが落ちないか心配だ。

202 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 20:45:38.63 ID:CaHLyxQH0
一寸後、気が済んだのか頬から手を離してくれた。
さてと、これから如何したものか……とりあえず質問してみよう。


香焼「食蜂先輩」チラッ・・・

食蜂「そんな堅い呼び方ないでよっ。愛情込めてぇ『ミ・サ・キ』ちゃんって呼んで♪ もしくは『みさきち』って☆」フフッ

香焼「い、いえ、年長者……ですから、そんな生意気言えませんよ」タラー・・・

食蜂「ヤレヤレ。香ちゃんってば存外硬派ねぇ」ブーブー

香焼「はぁ……それじゃあ、操祈さんで」ペコッ

食蜂「んー別に『ちゃん』付けでも良いのにぃ……まぁ仕方ないかぁ」プニプニッ


随分とフランクだ。いや、子供なのか。


香焼「それじゃあ操祈さん。ちょっとお聞きしても良い……ですか?」ジー・・・

食蜂「何々?? 恥ずかしい事聞いちゃう?? えっちぃコト聞いちゃう??」フフッ

香焼「ち、違いますよぉ!!」カアアァ///

食蜂「よぉし、お姉ちゃんが特別サービスで手取り足取り教えちゃうぞぉ!」ニヤリ・・・

香焼「か、勘弁して下さいっ」アタフタ・・・///

食蜂「あはぁ♪ 真っ赤っかぁ! 可愛いぃ」ニコニコッ

香焼「……んもぅ」ジトー・・・///

食蜂「めんごめんごっ。質問ねぇ……良いわよーっ。でも私も質問するからねっ★」ツンツン・・・

香焼「ええ。応えられる範囲なら答えます」ペコッ


さて、それは何から聞こう……とりあえず此処で何してるか、か。


香焼「食……操祈さん此処で何してる……ですか?」ジー・・・

食蜂「何ってぇ……んもぅ、えっちぃ」キャー

香焼「え」ダラダラ・・・

食蜂「……言わせるのぉ? それ何て羞恥プレイ??」ツンツン・・・


あれ? 僕変な事聞いたっけ? 会話が成り立ってないぞ?


香焼「あ、あの……はい?」タラー・・・///

食蜂「ふふっ……ヒ・ト・リでぇ」ニヤリ・・・

香焼「一人で……え?」アセアセ・・・///

食蜂「うんうん。ソ・ノ・ト・オ・リっ♪ 一人で、こっそり、誰にも見つからない様にぃ……気持ち良ぉく……ネ☆」ニコニコッ

香焼「…………っ……、」カアアァ///

食蜂「……あ、香ちゃん今えっちぃコトぉ考えたでしょっ?? へんたぁいっ★」キャー

香焼「なぁっ!!? ちょ、え、だ、だって今そういう感じで話を!」アタフタ・・・///

食蜂「気持ち良ぉくサボってただぁけ。まったくもぉ、香ちゃんったらムッツリさん♪ 見事に私の誘導力に引っ掛っちゃってぇ★」ニヤニヤ・・・

香焼「あ、ぅ~~~~ッッ」カアアァ///

食蜂「ほらほらぁ。今何考えちゃったか操祈お姉さんに教えてごらんなさぁい♪ どんなコトぉ想像しちゃったかなぁ??」ムニムニ・・・


この人、怖い。レッサーと同じベクトルだけど彼女より何枚も上手だ。
結局口に出すのはアレだったので、紙に二文字漢字を書き……超からかわれた。蛇さーん、助けてー。

203 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 21:25:44.48 ID:CaHLyxQH0
とことん(主に頬を)弄られた後、クタクタになりながら一息吐く。
如何にかして真面目に会話を続けたいものだ。


香焼「ええっと、お話続けても良い……ですか?」ハァ・・・

食蜂「はいはい。さっきの○○話かなぁ?? 香ちゃんも好きねぇ★」ニヤリ・・・

香焼「ち、違います! もぅ……サボりって」ジー・・・

食蜂「ああ、ソッチかぁ。うーん、言葉通りなんだケドぉ何か可笑しいかしら?」

香焼「……寧ろ、可笑しくないと?」キョトン・・・

食蜂「だってさぁ……ぶっちゃけぇ私此処で学ぶコト無いしぃ」アハハ

香焼「え」タラー・・・

食蜂「所詮、中学校レベルでしょう? そんなの小学校中学年で終わってるわよん♪」フフッ


成程。『天才』だから暇か。


香焼「それじゃあ何故常盤台に」ジー・・・

食蜂「何故かぁ……学校側がどぉしても席(学籍)置いてくれって五月蠅いから残ってあげてるのよ」コクッ

香焼「え?」

食蜂「要は欲しいんでしょ? 超能力者(レベル5)が居るっていう『誇り』と『看板(広告)』が」ビシッ

香焼「それって変……です」ムゥ・・・

食蜂「そうねぇ。私も変だと思うわ。でもぉ……ま、ビジネスかしらん? 御蔭で私は『ミス・アンチェイン(繋がれざる者)』なの♪」


良い二つ名だ。まさに貴女らしい。


香焼「でも、学校って勉強だけじゃない……です」ムゥ・・・

食蜂「ええ。だから私なりに好き勝手楽しませて貰ってるわよん☆ 常盤台って施設としては最高級だもの♪」フフッ

香焼「そういう意味じゃなくて」タラー・・・

食蜂「んー……ま、言いたいコトは分かったわ。香ちゃんって良い子なのねぇ」ジー・・・

香焼「いえ……そんな事無い……です」シュン・・・

食蜂「でもねぇ。私に御坂美琴みたいな『優良児』さを求めるのはぁ、甚だ可笑しいわよ。まぁ能力使っちゃえば優等生に変わりないけどねぇ」

香焼「…………、」ムゥ・・・

食蜂「あららぁ。何かご不満? 持てる力を最大限に発揮してぇ、自由奔放してるだけなのだけど」コクコクッ

香焼「……僕からは、何とも」


多分、今の彼女に僕の言葉は届かない。
下手に物言いすれば疑われるだけだし、徐々に崩していかないと、こういうタイプは折れないのだ。

204 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 21:46:46.41 ID:CaHLyxQH0
黙りこくった僕の表情を見て、彼女は苦笑する。
それから一服入れ……口を開いた。


食蜂「それじゃあ、私も香ちゃんに質問ね♪」ツンツンッ

香焼「え、あ、はい」コクッ

食蜂「貴女はぁ……何者なのかなぁ???」ジー・・・


またその質問。


香焼「えっと……如何答えれば良いのでしょうか。漠然とし過ぎてて」ウーン・・・

食蜂「そうね。ごめんなさい。普段相手の頭の中勝手に覗いてばかりだから、順を追うコトを忘れてたわん★」フフフ・・・

香焼「っ」タラー・・・

食蜂「だから怯えないのっ。香ちゃんの頭の中は弄らないってばぁ。やっても無駄だって分かったしぃ」クスクス・・・

香焼「……はぁ」ポリポリ・・・

食蜂「うんうん。無理矢理覗いて廃人にしちゃうのは勿体無い娘だもんねぇ★ ちゃぁんと質問しまーす♪」ムニッ

香焼「っ!」ドキッ・・・


僕の頬を抓み、微笑む彼女。『男』としてはこれ以上ないくらいドキッとしてしまう。


食蜂「そんじゃぁ……貴女はホントにぃ……常盤台(ウチ)の学生さん???」ジー・・・

香焼「えっ、はい?」ドキッ・・・

食蜂「質問の意味分からないかなぁ? 常盤台の学生さんなの??」ジー・・・

香焼「勿論……です。何でそんな事聞く……ですか」タラー・・・

食蜂「ふーん……学生証は?」ジー・・・

香焼「……はい」スッ・・・


学生証を取り出し手渡す。彼女は僕の頬を抓んでいない方の手で、それを受け取った。


食蜂「どうも♪ 何々……『一年三組 神崎香』……三組??」ハテ?

香焼「えっと、特別学級……です」シュボーン・・・

食蜂「特別……なぁにそれぇ?」ジー・・・


海原さんの作った『マニュアル』を説明する。


食蜂「―――ふぅん。希少能力者ねぇ……常盤台が預かるなんて珍しいわよん」ジー・・・

香焼「他の方にも言われました。普通は霧ヶ丘か長点上機だろうって……でも、知人の薦めで此処に」コクッ

食蜂「知人って??」ジー・・・

香焼「海原光貴さん……です」アハハ・・・

食蜂「へぇ……あの陰湿坊っちゃんがぁ……行方不明なのにぃ?」ジー・・・

香焼「え!?」ギョッ・・・


この人は……何を言ってるんだ?

205 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 22:22:20.80 ID:CaHLyxQH0
僕の『何言ってるんだコイツ』的な表情を見て、何やら考え込む操祈さん。
それから一度天を仰ぎ……再度此方に向き直った。


食蜂「うーん、本当に知らないんだぁ……ってコトはぁ、暗部の遣いじゃ無かったのねぇ」ボソボソ・・・

香焼「…………、」ポカーン・・・

食蜂「んー……でもそうなると、何で偽物がこの子を常盤台(ウチ)に入学させたのか分からない」ボソボソ・・・

香焼「あのー……操祈さん?」キョトン・・・

食蜂「純粋に善意? いや、でも……え、あ、あははは、ゴメンなさぁい。ちょこぉっと独り言よん♪」ニコッ・・・

香焼「はぁ」タラー・・・


海原さんの予想通り、この人は『海原光貴(本人)』と『エツァリ(別人)』の事を知っているっぽい。
今のは僕が未熟で、偶々反応に戸惑っただけだったが……もし『ヤバっ!』的な表情をしてたら、強引に頭を弄られてただろう。


食蜂「ええっとぉ、まぁ海原孫については如何でも良いとしてぇ。その希少能力ってのについてぇ分かる範囲で教えてっ♪」ニコニコッ

香焼「はい……といっても、僕自身さっぱり」ポリポリ・・・

食蜂「えー??」キョトン・・・

香焼「火が出せたり、風を起こせたり、筋力を上昇させたり、色んな事出来る……です」ウーン・・・

食蜂「嘘ぉ……多重能力(デュアルスキル)?? 有り得なぁいっ!」ジー・・・

香焼「ええ。先生達にもそう言われました。だから原因を解明させる為に開発(研究)をする、と」

食蜂「『原石』か、もしくは脳のキャパシティが異常に有って多才能力(マルチスキル)になってるとかぁ……分からないわねぇ」ウーン・・・

香焼「多分、脳についての専門家たる貴女(その手の権威)が居るからこそ此処に来た……って考えたら、ドラマチック過ぎ……ですか」ハハハ

食蜂「あらぁん……可愛いコト言ってくれるじゃなぁい? そんな蟲惑力使っちゃう子はぁ食べちゃうぞぉ★」ガオー♪

香焼「あはははは。それは困りました。どうしましょう」クスクスッ

食蜂「ふふっ。やっと砕けてきたわねぇ。みさきち嬉しいぞっ♪ まぁでもぉ……私じゃお役に立てないかもねぇ」ポリポリ・・・

香焼「え?」キョトン・・・

食蜂「香ちゃんを廃人にしても良いなら可能かもしれ、な……ぁ」ピタッ・・・


突如、静止する操祈さん。そしてまた何かを呟き始めた。


食蜂(だから、アイツは此処にこの子を……もしかしてトンデモ無いパンドラの箱なの??)ボソボソ・・・

香焼「操祈さん?」ポカーン・・・

食蜂(成程ぉ。彼女を『壊して』、アイツらは『何か』を得る。そしてついでに、私にこの子を壊した『罪』を担がせる気かぁ)ボソボソ・・・

香焼「え、と……如何しました?」タラー・・・

食蜂(何も知らない子を生贄に……ふーん、そういうコトねぇ。だからアイツらのやり方は汚くて嫌いなのよん★)フンッ

香焼「…………、」アタフタ・・・

食蜂(でもぉ、此処で見捨てたらこの子は自ずと研究者共の『玩具』になっちゃうわねぇ……ゲスぅい。スマートじゃなぁい)ジー・・・


何だか勝手にトンデモ発想してそうだ。
頭の回転が速過ぎて、一度思考が何処かに向かうと引き返せなくなる……所謂『どつぼに嵌まった』状態。天才の欠点だな。

206 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 22:41:59.15 ID:CaHLyxQH0
それから一寸後、何やら勝手に自己解釈・自己納得したらしい。
視線を僕に合わせ……優しく微笑む。


食蜂「―――ごめんなさいね。ちょっと考えゴトしちゃった」テヘッ♪

香焼「あ、いえ」コクッ

食蜂「ねぇ香ちゃん。貴女が海原光貴を如何思ってるかは分からないケドぉ……気を許しちゃダメよん」ジー・・・

香焼「え?」キョトン・・・

食蜂「それから常盤台(ウチ)の教師達にも、同じくね……何かあったら相談なさい」ジー・・・

香焼「あ、えっと……はい」タラー・・・


目が笑ってませんけど、一体どんな解釈したんですか? 


食蜂「私を見かけたらいつでも話しかけて貰って大丈夫だからねっ☆ 気軽に『みさきち~』って寄ってらっしゃい」フフッ

香焼「あ、ありがとうございます! あ、でも……あの」モジモジ・・・

食蜂「ん~? なぁに? まぁだ私のコト信用出来ないのん? こんなに優しいのにぃ……操祈ちゃん悲しいよぅ」エーンエーン・・・

香焼「あ、ええっと、その、み、操祈さんは信用してますし、好き……です! そうじゃなくて」アタフタ・・・

食蜂「きゃっ! 告白されちゃったぁ☆」クスクスッ

香焼「うぇええぇ!? あ、いや、えっと、そのぅ……んもぉ~~~ッ」カアアァ///

食蜂「あはぁ♪ 香ちゃんってばぁやっぱりイジり甲斐があるわねっ!」ツンツン・・・

香焼「くうぅ~~~っ」ムスー・・・///

食蜂「ごめーん、機嫌直してっ♪ ほら、チョコあげるから☆」コロッ

香焼「……はぁ」グデェ・・・


この人の相手、五和並に疲れる。


食蜂「それで? 何を言おうとしてたのかしらん??」ジー・・・

香焼「はい……操祈さんは優しい人……です。でも、その……皆の憧れだから」ムゥ・・・

食蜂「え?」キョトン・・・

香焼「僕が、声掛けたら……迷惑かなぁって。周りの人に怒られてしまいます」ウーン・・・

食蜂「あー……そういうコト気にしてたのねぇ。お馬鹿な娘」フフッ

香焼「すいません。あとは、えっと、操祈さんはいつも沢山のお友達と一緒に居らっしゃるので……近付きにくいといいますか」ポリポリ・・・

食蜂「……友達?」ハァ?


『何言ってんの?』みたいな顔された。情報で『常に取り巻きが居る』と聞かされていたんだが、違うのか?

207 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 23:19:56.33 ID:CaHLyxQH0
操祈さんは少々悩んだ素振りを見せた後、小首を傾げ可愛らしく告げた。


食蜂「ああ、あの子達ねぇ。私の周りにウジャウジャ居る連中のコト言ってるんでしょう??」ジー・・・

香焼「え、はい」キョトン・・・

食蜂「もしかしてぇ……香ちゃんもあの中入りたいとか考えちゃう系の娘なのぉ??」ジトー・・・

香焼「い、いや。申し訳ない……ですけど……ちょっと怖いなぁって」タラー・・・

食蜂「あらぁ良かった♪ あ、除け者って意味じゃないわよん。香ちゃんのコト嫌いじゃない上でそう言ってるの☆」フフッ


如何いう意味だ?


食蜂「あのさぁ……私の周りに居る連中がぁ私の友人に見えるのん??」フムフム・・・

香焼「え、と……僕の口からでは、何とも」アハハ・・・


御坂さん達が言っていた。
操祈さんの取り巻きは『恐怖と彼女の派閥に居るという安堵感』故に、彼女についている。
言い方は汚いが『腰巾着、金魚のフン』のくせに威張ってる。そして『自分は最強の指導者の臣下だぞ。敬え』と高飛車。

そして極めつけは……


香焼「もしかして……洗脳してる……ですか?」タラー・・・

食蜂「……香ちゃんから見ても、私ってそんな人に見えるかぁ。まぁ自業自得よねぇ」ハハハ・・・

香焼「っ……ごめんなさい」アタフタ・・・

食蜂「あはぁ。いいのいいの。私の能力は絶対嫌われる能力だから★」フフフ・・・

香焼「……ごめんなさい」シュン・・・


昔話で出てきた『覚(サトリ)』という妖怪を思い出す。


食蜂「でもねぇ。実際あの子達は勝手にベッタリ付いてきてるだけよん。誇りに賭けても洗脳で引き連れたりはしてないわ」ジー・・・

香焼「……でも、派閥が如何こうとかいう話も聞いた事があります」チラッ・・・

食蜂「ハァ……そもそもぉ、その考えがチャンチャラ可っ笑しいのよ」フゥ・・・

香焼「え、と」ポカーン・・・


噂は嘘だったのか―――


食蜂「この学校は『私のモノ』なのに派閥云々言ってるのが変なのよん♪ 違うかしらぁ???」ニコニコッ♪


―――ああ、成程。真正の『暴君』だったのか。納得しましたよ。

208 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/08(火) 23:41:24.83 ID:CaHLyxQH0
女王、寄生蜂、ミス・アンチェイン(繋がれざる者)……目の前に居る可憐な少女がその『暴君』なのだ。やはり一筋縄では行かない人。
しかし視点を変えてみる。彼女は……孤高の王なのだ。故に朋友は無い。また、誇り故に救いを求めたりしない。

以前固法さんか白井さんが言っていた。『超能力者(お姉さま・麦野さん)は一人で悩む』と。
確かに、軍覇の姿を見ていてもそうだ。アイツは見目明るく振る舞っている。決して弱音を吐かず、助けも求めない。


香焼(昔の女教皇様と同じっすね)ムゥ・・・


強者は独り。


食蜂「んー……なぁに難しい顔してるのん? 小皺が出来ちゃうぞっ☆」ペチッ

香焼「あ痛っ」ビクッ

食蜂「言いたいコトは手に取る様に分かるわよぉ。顔に出てる♪ 分かり易い子ねぇ」フフフ・・・

香焼「あ、ぅ」タラー・・・

食蜂「もしかしてぇ香ちゃんってば共産主義者(アカ)さん??」ニヤリ・・・

香焼「きょ、極論過ぎます!」アタフタ・・・

食蜂「あはぁ。めんごめんごっ♪ でもぉ『皆仲良く平等に争いなく平和に』とか願っちゃうタイプでしょ??」ツンツンッ


否定はしない。


食蜂「優しいのね……嫌いじゃない……っていうか『嫌いになれない』タイプねぇ。あまりに綺麗で崇高過ぎるから」クスクス・・・

香焼「なんだか馬鹿にされてる気がします」ムゥ・・・

食蜂「うぅん。良いのよ。私とか他のが『歪んでる』だけだから。ただぁ貴女のその考えは独裁者タイプにはキッッツいのよ」フフフ・・・

香焼「はぁ」ポリポリ・・・

食蜂「ねぇ。香ちゃんはよく『甘ちゃんだね』って言われない???」ニヤリ・・・

香焼「うぐぅ……な、何故、それを」ダラダラ・・・

食蜂「あはぁ♪ だって甘ったるいもんっ☆」アハハハ!


悔しいがこれも否定できない。流石精神学の権威。人を見る目がある。
まぁ……僕が分かり易過ぎるだけかもしれないが。

209 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 00:17:03.22 ID:TIBWJjB20
ふと、時計を見ると既に4時を回っていた。喋り耽ってしまうと如何も時間の間隔を忘れてしまう。


香焼「あの、もう放課後……ですよ」チラッ・・・

食蜂「そうねぇ。私はもう少し構わないケドぉ……香ちゃんは用事あるの??」ジー・・・

香焼「いえ、無い……です。でも僕達以外にも図書館使いたい人が居るんじゃないかって思って」コクッ

食蜂「ふふっ、真面目ねぇ。分かったわ……場所を移しましょう☆」スッ・・・


鞄からリモコンを取り出す。そして一振り……―――


香焼「あ……うっ」ビクンッ・・・

食蜂「え?」ギョッ・・・

香焼「ぅ、ぁ……何、した……ですか?」グッ・・・

食蜂「何って……図書館(ココ)で使ってた広範囲暗示を切っただけなんだけどぉ」ジー・・・


―――……動悸。


食蜂「うーん。多分、相性悪いんじゃないかしらぁ。私が能力行使するだけで香ちゃんが苦しむのねぇ」ムゥ・・・

香焼「はぁ……すいません」ペコッ

食蜂「なぁんで謝るのよぅ……まぁ良いわ。極力使わないで居てあげる♪ 特別だぞっ☆」クスクス・・・

香焼「ありがとうございます」ペコッ


赤外線スコープで僕らを見張っている蛇さんが、僕に能力を掛けたと勘違いして電流を流したのだろう。
機敏な動きで助かるが、それが早とちりと化してしまうと……正直困る。


食蜂「さぁてと。それじゃあ空き教室でも見つけてお喋りの続きしましょ☆」ニコニコッ

香焼「はい」コクッ


彼女が能力を切った所為か、図書館に人がボチボチ入って来始めた。
その中を自然に進む学校の女王様に道行く人が目を留める。しかし操祈さんは総スルー。


香焼「あ、あの」アタフタ・・・

食蜂「取り巻きのフリしちゃいなさい。何も言わず黙々と私の後付いてくれば大丈夫だから♪」フフッ

香焼「はぁ」タラー・・・


言われた通り偶々居合わせた取り巻きの一人を装い、彼女の後に続いた。
しかし……驚きだ。まるでモーゼ。歩けば人が端に避ける。そこには尊敬と畏怖の目。

やはり彼女は孤高なのだ。

210 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 00:46:40.55 ID:TIBWJjB20
この調子でさっさと移動してしまおうと考えたのも束の間、いきなり問題発生。


????「―――さま……食蜂様!!」パタパタッ

香焼「うわっ!?」ギョッ・・・

食蜂「……あーあ」ハァ・・・


ゾロゾロと此方に向かってくる集団。大体20人近くは居る……アレが取り巻きか。
その中でも一際目立つ縦ロールの生徒が一歩前に出て、操祈さんに話しかけた。


縦ロール「食蜂様! 一体何処に居らしたのですか!?」ズイッ

食蜂「んー……何処でも良いでしょー」テクテク・・・

縦ロール「良くありませんわ! 食蜂様は我が校の女王(エースオブエース)! 下人の一人もつけないで出歩くなど以ての外です!」

香焼(うわぁ。騎士団長(ナイトリーダー)みたいな事言ってる)タラー・・・

食蜂「まったくぅ……付添なら此処に居るわよぉ」ポンッ

縦ロール「はぁ? ドチラに?」キョトン・・・

食蜂「だからぁ、この子」ポンッ

香焼「えっ!? あ、いや、その」アタフタ・・・

縦ロール「むっ。小さ過ぎて分かりませんでしたわ」フム・・・


カチンときたね、これ。


縦ロール「しかし、下人は下人でも人を選んで貰わねば困ります。何故(なにゆえ)この様な木っ端娘を」ジトー・・・

食蜂「あらぁ……文句吐けちゃう系???」ジー・・・

縦ロール「い、いえ、そういう訳では……そこの貴女っ!」チラッ・・・

香焼「は、はい!」ビクッ

縦ロール「学年学級名前は?」ジー・・・


威圧に負け答えてしまう。


縦ロール「一年ですってぇ……教育係! 一年担当の教育係は居ますか!?」ギロッ・・・

片眼鏡「わ、私(わたくし)です」タラー・・・

縦ロール「集会でもないのに一年を食蜂様の侍女に付けるとは如何いう事ですか! 教育が成ってませんわよ!」ギロッ・・・

片眼鏡「い、いえ、その」ジー・・・

縦ロール「口答えしない! 二年教育係! 後で話が有ります!」チラッ・・・


あー、このノリ知ってるぞ。体育会系ってヤツだ。
チラリと操祈さんの顔を見る……心底面倒臭そうな表情をしていた。心中お察しします。

211 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 01:13:35.00 ID:TIBWJjB20
何やら取り巻き同士でゴダゴダやってる様だ。もうこの隙に先進めないかなぁ。
とか考えた刹那、一年教育係とかいう役職を受け持った片眼鏡の女性が口を開いた。


片眼鏡「せ、先輩! お言葉ですが……私はあの子を存じ上げません!」ダラダラ・・・

縦ロール「何ですってぇ……未だに名前を覚えられませんの!? それでもこの派閥、栄えある教育係を受け持つ一員ですか!」ギロッ・・・

片眼鏡「し、しかし……あ、貴女達も知らないわよね!」チラッ・・・

サイドポニー「え、ええ。私は……分かりませんわ」タラー・・・

白タイツ「わ、私も。というか見た事、ありませんわね」タラー・・・

姫カット「神崎、さん……やはり聞き覚えがありません」タラー・・・


他数名も頷く。縦ロールの取り巻きは一寸固まり……ギチギチと変な音を立てながら、僕の方を向いた。
あ、コレはヤバい。


縦ロール「……貴女、何者ですか?」ギロリ・・・

香焼「え、あ、その」ダラダラ・・・

縦ロール「崇高なる我が派閥に入りたい気持ちは分かります。しかし! 食蜂様に直接取り入るなど言語道断!」ズイッ!

香焼「ひ、ぁ」タラー・・・

縦ロール「各クラスに一人は我が派閥の人間が居る筈です。何故其方に話を通さないのですか! これは最早不敬罪ですよ!」グイッ!

香焼「ご、ごめんなさいっ」ダラダラ・・・

縦ロール「ごぉめんなさぁいでは済まされません!! 直ちに罰則を!!」ガアアァッ!!


後ろの取り巻きからも『そうですわ!』とか『卑怯ですの!』とか『羨まs…ゲフンゲフンッ…けしからん!』とか声が上がる。
正直、逃げ出したい。海原さん、蛇さん助けて―――




食蜂「えいっ★」ブンッ




―――とか、心中弱音を吐いた瞬間……操祈さんの腕が上がった。手にはリモコンを持っている。
一瞬の動悸の後、周りを見ると……興奮状態にあった取り牧たちが、全員呆けた状態になっていた。


食蜂「はぁ。まったくぅ……香ちゃん、ごめんなさいねぇ♪」フフフ・・・

香焼「い、いえ……助かりました」タラー・・・

食蜂「んもぅ。相っ変わらず融通きかない子達ねぇ……ほいっ★」ブンッ・・・

香焼「うっ……ハァハァ」ビクッ・・・

取り巻き's『――――、』ボー・・・

食蜂「さぁて。オ・シ・オ・キも済んだし★ さっさと行きましょう♪」ニパー!

香焼「は、はい……あ、えっと……すいません」ペコッ

食蜂「茫然状態の子達に謝罪なんて……まったくぅ無駄に律義なんだからぁ」フフフッ


僕らはさっさと先へ進んだ。
余談だが、後で聞いた話によると……その場に居合わせた全員の体重が3kg増えてたらしい。操祈さんマジ怖ぇ。

212 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 01:40:19.65 ID:TIBWJjB20
 ―――はたまた別日、PM04:30、学園都市第7学区、学舎の園、常盤台中学・・・・・







西日の刺し入る教室。窓からは校庭で部活動に励む生徒達の姿が見える。
丁度良く人一人居ないその教室に操祈さんは僕の手を引き入った。そして例の如く軽くリモコンを一振り。

これで人が近付く心配は無かろう、と微笑んだ。


食蜂「ふぅ……さっきはごめんなさいねぇ」ポンッ・・・ナデナデ・・・

香焼「ふぇっ!?」ドキッ・・・

食蜂「こぉんな可愛い娘に寄って集って……流石の操祈ちゃんもプンスカ来ちゃったぞっ」ムンッ・・・

香焼「い、いえ。えっと……僕の方こそ、ごめんなさい」ペコッ

食蜂「だからぁ、なぁんで謝るのかなぁ……香ちゃんは悪くないでしょっ」ムニムニ・・・

香焼「……ふぇふぉ」ウーン・・・

食蜂「でももテロも無ぁいのっ☆ ほぉら。こっちおいで♪」ギュウッ・・・

香焼「にゃっ!!?」ドキンッ///


腕を掴まれ、引き寄せられた。そのままぬいぐるみでも抱くかの様に僕をホールド。
割と長身の彼女。チビの僕に抱き着くと……丁度、胸が。

いや、デカ過ぎでしょ。五和以上はあるぞ。ホントに中学生ですか?!


食蜂「うふふふ♪ 初のぅ初のぅ☆」ニヤニヤ・・・

香焼「は、離れて下さいっ!! は、恥ずかしい……です!!」カアアァ///

食蜂「あららぁ? 同性に抱かれて恥ずかしいのぉん?? ノーマルって言ってたくせにぃ」ニヤニヤ・・・

香焼「(『男』なんすよおおおおぉっ!!)ち、違、む、胸がっ!!」ムガガガァ///

食蜂「んー??? あらぁ。めんごめんごー★」フフフ・・・


まるで『気付かなかったぁ★』とでもいう様な顔。絶対態とだ。


食蜂「んふー♪ おっぱい気になるのん? 香ちゃん、やっぱりえっちぃわねぇ」キャー

香焼「だ、だからぁ……もぅ……意地悪しないでください」ウルウル・・・

食蜂「あはぁ♪ たぁのしっ! その泣き顔見てるとぉゾクゾクと……ハッ! もしかしてそういう能力(魅惑)なのかもよぉ!」パアアァッ!!


いや、ねぇよ。

213 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 01:59:10.80 ID:TIBWJjB20
兎に角一旦離れてもら―――おうとしてのだが、放してくれない。ホント困った。


食蜂「んふふっ♪ それにしてもぉ……香ちゃんは『ちっぱい』ねぇ」ジー・・・

香焼「(有る訳無いでしょ……胸筋はもう少し欲しいけど)べ、別に良いでしょう」タラー・・・

食蜂「んー……えいっ★」ガシッ!

香焼「ひゃんっ!?」ビクンッ!!

食蜂「あららぁ?? ブラしてない。最早ナイ胸レベルかぁ……よぉし! 操祈ちゃん特製ほーきょーマッサージをしてやろぅ★」モミモミッ!

香焼「(冗談キツいぞおおおおぉっ!!)い、いやっ!! 止め、てっ!!」ビクッ!!

食蜂「良~いではないかぁ♪ 良いではないかぁ♪」モミモミ・・・

香焼「(これ、は……大ピンチ!!)み、みさ、き、さん……ぁ……止め、てっ」ビクンッ・・・

食蜂「そうは言ってもぉカ・ラ・ダ・は正直だぞぅ★」グヘヘェ♪


何処のオヤジですか……って、これ、マジで拙い。主に股間が―――***



御坂蛇「……性欲を持て余す、とミサカは監察します」タラー・・・

海原『スネーク? 現状を』Pi!

御坂蛇「大ピンチ以上の何か、とミサカは食蜂操祈(ホシ)の理解不能な行動に言葉を失います」アゼーン・・・

海原『え?』キョトン・・・

御坂蛇「胸を……揉んでますね」タラー・・・

土御門『あんだとっ!?』ガタッ!

御坂蛇「落ち着け近親相姦者……揉まれてるのは香の方です、とミサカは冷静に状況を伝えます」フム・・・

海原・土御門『『』』チーン・・・

御坂蛇「アレは……拷問じゃないですよね? 如何しましょう、とミサカは師匠らに指示を仰ぎます」

海原『え、と……良く分かりませんが』タラー・・・

土御門『……もう電流流しちゃっても良いんじゃないかにゃー』フンッ

御坂蛇「了解。一発デカいの(マックス)ブチ込んでやる、とミサカは張り切ります」ニヤリ・・・

海原『ほ、程々にね』Pi!


***―――もう誰でも良いから助けてと叫ぼうとした瞬間……最悪の助け(?)が『走った』。

214 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 02:22:42.78 ID:TIBWJjB20

御坂蛇「スイッチ……オン!」スッ・・・バッ!


 *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



もうね……適切な言葉が見つからないけどさ……とりあえず先に言っておこう。





               …不幸だ…






食蜂「ふふっ……あぁちょっとヤバいかもぉ★ 私も変な方向(レズ)に目覚めちゃいそうかなぁ―――」

香焼「いぃッ……ぅああああああああああああああああぁっ!!」ビクンッビクンッ!!

食蜂「―――って、ちょ、え、待っ!? な、何!!?」ギョッ・・・

香焼「や、止め、止めぇんっ!! いぃやあぁああああああぁっ!! い、ぃ痛あああぁっ!!」グンッ!!

食蜂「か、香ちゃん!? わ、私そんなに強く揉んで無いわよ!?」アタフタ・・・バッ!!

香焼「ひゃめぇっ!! いひゃっうっ!! へ、へびひゃあああぁんっ!! ふぁめえええてえええぇっ!!」ジタバタッ!!

食蜂「も、もぉ手ぇ放したじゃないっ!!?」アワワワ・・・


そういう問題……違ぅ……これ……もう、痛い……げき、痛で……。。。


香焼「んんんんんんぅっ!! ら、めぅあっ!! ああああぁっ!!」ガタガタガタ・・・

食蜂「か、香ちゃん!!」アタフタ・・・

香焼「ぁ……あが、ぁ……みひゃ、ひやぁぅ!! みひゃあああ、ぃでええええぇっ!!」ブルブルブル・・・

食蜂「っ……能力で強引に止めるしかないのん???」タラー・・・


そうい……問……じゃな……ねが……見ない、で……。。。



 *   *   *   *   *   *   *   *   *   *


御坂蛇「むっ……少々やり過ぎたか。アレは一回りして命の危険だな……とミサカは反省しつつ電流を止めます」スッ・・・ピタッ


215 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 03:07:57.16 ID:TIBWJjB20
意識が半分飛びかけた時……電流が止まる。正直、感電死及び窒息死するかと思いました。マジで慰謝料請求するぞ。


香焼「ッ……ハァ……ハァ」ビクッ・・・ダラダラ・・・

食蜂「止まった!?」ハラハラ・・・

香焼「ゼェ……すぃ……ませ……ごめ、なさ」ヒューヒュー・・・

食蜂「い、良いから黙ってて……う、動かなくて良いからねぇ」アタフタ・・・


無駄に心配を掛けてしまった。おまけに机の整列がグチャグチャになるまでのた打ち回ったぞ。
まぁ結果として操祈さんから離れられたとはいえ、何で電流流されたんだ? 攻撃されたと勘違いした?


食蜂「ビックリしたわぁ……もしかして香ちゃん、癲癇(てんかん)持ちとかだったりするのん??」タラー・・・

香焼「い、ぇ……でも、病気は……あります」ハァハァ・・・フゥ・・・


息切れ動悸が治まった所で、例の偽病を説明する。


食蜂「はぃ? 突発せー電気発作アレルギーしょーこー群?? なぁにそれぇ???」ポカーン・・・

香焼「自分でも良く分からない……です。でも、今みたいになります」ハァ・・・

食蜂「うーん……意味不明なんですケドぉ……兎に角ぅ大変なのねぇ」ムゥ・・・

香焼「……これも、治して貰えるかもしれないって事で常盤台に入りました」コクッ

食蜂「な、何故にぃ??」キョトン・・・

香焼「身体っていいますか、神経の中の電気信号が乱れるだかの病気なので……電撃使い(エレクトロマスター)の権威に」ジー・・・

食蜂「あーなるへそぉ。副交感神経か自律神経、脳の信号の問題かしらん……何にせよ、色々興奮しちゃうと起こるのかもねぇ」ウーン・・・

香焼「どうでしょうか」ポリポリ・・・

食蜂「でもぉ……彼女でも面倒見れる病気か如何か」ムゥ・・・


絶対無理でしょうね。だってそんな病気存在しませんから。


食蜂「でもさぁ。先に行ってくれれば良かったのにぃ。そうすればぁさっきみたいなえっちぃの我慢したんだぞっ★」ジー・・・

香焼「……そういうの抜きにしてもやらないで下さい」ハァ・・・

食蜂「てへっ★」ペロッ♪


油断も隙もならん。とりあえず机を元の位置に戻しつつ、気持ちを整えた。

216 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 03:29:09.58 ID:TIBWJjB20
それから暫く、下らない話が続いた。
勉強について。休日の過ごし方について。流行のファッションについて。人気のスイーツについて。住んでるマンションについて。

とても下らないけど……貴重な時間。こういう当たり前な話がしたかったのに、随分と時間が掛ってしまった。


食蜂「―――ふふっ♪ 香ちゃん、可愛いのに女子力あんまり無いのねぇ。駄目だぞぉ☆」クスクス・・・

香焼「あはは。頑張ってる……ですよぅ」フフッ


気がつくと西日もかなり傾き、教室内は赤く照らされていた。


香焼「そろそろ、下校時間……ですね」ジー・・・

食蜂「そうね……私はもう少し時間大丈夫なんだケドぉ。香ちゃんは??」チラッ・・・

香焼「うーん、すいません。今日の夕食当番僕……です」ペコッ

食蜂「そっかぁ。残念ねぇ」ムゥ・・・ツンツン・・・


頬を突かれる。


食蜂「……ねぇ香ちゃん」ジー・・・

香焼「はい。何か?」キョトン・・・

食蜂「真面目に……明日から、私のペットね☆」ジー・・・

香焼「え」ピタッ・・・


何言ってんだ、この人。


食蜂「うーん、始めは面白半分でからかってたんだケドねぇ。けっこー愛着沸いちゃった♪」フフッ

香焼「え、あ、あの……その」アタフタ・・・

食蜂「私の能力効かない希少な人間だしぃ。超電磁砲(御坂美琴)みたいにガミガミしてないもんっ。何より可愛い☆」ナデナデ・・・

香焼「ええっと……うーん」タラー・・・

食蜂「まぁまだまだ色々と『隠してるコト』多いみたいだケドぉ……合格点あげるよぉ♪」ニパー!


言葉に困る。


香焼「あ、の……ぺ、ペット?」タラー・・・

食蜂「うん、そぉよ♪」ポンポンッ

香焼「え、ぅ……な、なんか怖い……です。操祈さん」タラー・・・

食蜂「なんでよぉ? まだ私が怖いのん?? あ、それともアレかなぁ? 取り巻き連中の妬みとかが怖いとか???」ブーブー!


どっちもです。

217 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 03:44:34.15 ID:TIBWJjB20
現在、心の中で深入りし過ぎたと反省中。これではもう逃げるに逃げられない。


食蜂「ダイジョーブっ。取り巻きには貴女の存在を『気付かせない』からぁ★」ニヤリ・・・

香焼「そ、そういう問題じゃなく……むぅ」ダラダラ・・・

食蜂「……なぁに?」ジトー・・・


何を言えば良い。素直に『嫌だ』と断ってしまったら、それまでだ。
それは拙い。今までの積み重ねが水の泡。目的も果たせない。

何より……彼女との縁を切ってしまいかねない。


香焼「操祈さん。ペットって、オカシイ……ですよ」ジー・・・

食蜂「へ??」キョトン・・・

香焼「僕は人間……です」ジー・・・

食蜂「……あー。そゆコトぉ」ハハハ


何が可笑しい。


食蜂「あのさぁ。例えばウチでワンちゃんを飼ってたりするわ。あ、ネコちゃんでも良いわよ。飼ってるんでしょ?」ジー・・・

香焼「はい」コクッ

食蜂「うんうん……でね。そのネコちゃんってぇペットなワケじゃない。香ちゃんはネコちゃんを蔑ろにするのん??」フフフ・・・

香焼「しません。する訳が無い」

食蜂「ええ、そうでしょうねぇ……飼い主はペットを愛するわ。それもぉ時には家族や友人以上にっ☆」ニャー

香焼「……僕に、そうなれと?」

食蜂「ええ。自分で言うのもなんだけどぉ、女王の寵愛を受けれるのよんっ♪ それって凄くなぁい?」ナデナデ・・・

香焼「…………、」

食蜂「取り巻き共だったら涙枯らすホドに喜ぶわぁ。それは香ちゃんが独り占めっ☆」フフフッ

香焼「……操祈さん」

食蜂「あー返答は要らないわよん。決定事項だから★」ニコニコッ♪


正直言おう……心底、呆れた。

218 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 04:26:55.18 ID:TIBWJjB20
ただニコニコと天使の様な笑みを浮かべ、僕の頭と頬を撫で続ける小悪魔。
頭の中で色々思う所があったのだが……僕は一つの決断を下した。


香焼「……操祈さん」ボソッ

食蜂「うん。なぁに??」フフフッ

香焼「お手洗い、行ってきます」スッ・・・

食蜂「ふふっ。一緒に行こうかぁ?」ニヤリ・・・

香焼「……一人で行きます」テクテク・・・

食蜂「……そう。行ってらっしゃい♪」ノシ


教室を出てトイレに向かう。そこにはもう、女子トイレだから恥ずかしいとかいう羞恥心はない。
個室に入り……携帯を取り出す。


香焼「……もしもし」Pi!

海原『はい。スネークからの連絡を聞く限りではかなり良好な関係を築けている様ですね。いやぁ予想以上の成果ですよ』フフッ

香焼「…………、」

海原『……ふむ。何か問題でも?』

香焼「彼女に……ペットになれ。そう言われました」

海原『え……あ、そ、そうですか……うーん。無茶苦茶言いますねぇ。流石我儘女王』ハハハ・・・


後ろから土御門の苦笑も聞こえる。だが、僕の心にそんな余裕はない。


海原『アドバイスですか? そうですねぇ……ま、承諾して良いのではないでしょうか。表面だけそう付き合っておけばアチラも納得す――』

香焼「海原さん。『緊急マニュアル:γ』を」グッ・・・

海原『―――る、で……は?』タラー・・・

香焼「許可を」

海原『え、な……はい?』


緊急マニュアル……彼女との接触の際に、命の危機や正体がばれそうになったりする『ピンチ』があった時のマニュアルだ。
因みに、先程の強力な電流は『α』プランである。


海原『……此処でそれを切る必要は無いかと。所詮は上辺の付き合いですよ』

香焼「お願いします」

海原『香焼さん……忘れたのですか? 今は修行中であり、且つ任務中ですよ。如何して私情を――』

香焼「……教義故」

海原『――……はぁ』


救われない者に、救いの手を……それは誰しもに均等に与え得る機会。

219 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 05:01:01.27 ID:TIBWJjB20
そして暫く説得という名の僕の我儘訴えを続け……海原さんの許可を取り付ける。


海原『―――まったく、とんだ頑固者ですね』ハァ・・・

香焼「すいません」

海原『まぁどんな意図があるにせよ……関係を壊す事が無い様に』

香焼「ええ。承知の上っす」

海原『……では、良い結果をきたいしてますよ』Pi!


電話を切る。そして再び……教室へ。


香焼「すいません。お待たせしました」ペコッ

食蜂「うぅん。快便だったかぁい?」フフフッ

香焼「お下品……ですよ」ハハハ・・・

食蜂「こりゃ~失敬しましたぁ♪」クスクス・・・


彼女の前の席に座る。


香焼「……操祈さん」ジー・・・

食蜂「なぁに改まってぇ? あ……愛の告白タイムとかぁ☆ ノーマルって言ってたのにぃ♪ それを覆しちゃう私の魅力が憎いぞっ★」キャー!

香焼「……愛ではないけど……そう……ですね。告白タイム……です」ジー・・・

食蜂「あら……此処で隠しゴト暴露しちゃうとかぁ?」ジー・・・

香焼「隠し事……うん。多分、隠し事って言えば隠し事……です」ボー・・・

食蜂「うーん……それってぇ。私が不快になる様なコトかなぁ? だったら言わなくて良ぃよぉ」チラッ・・・

香焼「分かりません。僕の話を如何捉えるかは、操祈さん次第……です」ムゥ・・・

食蜂「はぁ。私は香ちゃんとはこの距離が良ぃのだけどぉ……ヤな予感しかしないなぁ。それ聞いたら『オシマイ』になったりしない??」

香焼「……分かりません。でも僕はこれ以上、操祈さんにこの事を言わないのは辛い」グッ・・・

食蜂「折角良ぃ関係だったのになぁ……まぁ良ぃや。言って御覧なさい」ポンッ・・・


懺悔を聞く修道女の様な微笑みを僕に向ける。しかしその中には少しの哀愁が籠っていた。
だからこそ……そんな顔も出来る彼女だからこそ……僕は覚悟を決め、緊急マニュアルを実行する。


香焼「僕は……―――



①男と告白(香焼ではなく、あくまで『神崎香』として)

②『裏』の存在だと告白(男という事は伏せ、香焼として)

③スーパーカミやん病説教タイム(その名の通り、食蜂操祈に物申すっ!)

              >>223

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※すいません。PCが低スペックで更に遅筆な所為で、書くのが遅れます。
  とりあえず今日は此処まで。第三話のアンケですが、④が多いので後ほどもう一回取り直します。

  それでは適当にコメント下さい。ではまた次回! ノシ”

220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/09(水) 10:02:51.48 ID:s4pFNzyAO
うわ責任重大な安価な気がしてならない
③を選びたいが
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 10:45:50.07 ID:4mDN9k3H0


いつ柵川中組が出てくるんだろう? 佐天さんの……スカート捲りが……!?
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 11:48:50.63 ID:8e2A8cvIO
①だと、むしろ都合が良いわぁ、な展開になるかも
③はみさきちの人格の根っこ次第になりそうだ
②はどうなるやら

③、次点で①が妥当かね?
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/09(水) 12:33:05.06 ID:GDiOalLno
3

226 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 19:59:15.56 ID:TIBWJjB20
彼女の目を見て、はっきりと宣言した。


香焼「―――僕は、貴女のペットにはなりません」

食蜂「……だぁからぁ。それは貴女が決める事じゃないわよぉ。拾われる野良ネコに決定権は無いでしょっ★」ムー・・・

香焼「僕は猫じゃない。人間……です」

食蜂「あのねぇ。さっきの話聞いてたかしらん? ペットも謂わば家族であり恋人以上の関係だってぇ」ハァ・・・

香焼「詭弁でしょう」

食蜂「むっ……、」ピタッ・・・


明けら様に不機嫌な表情。だが、気持ちは僕も同じ……いやそれ以上だ。


食蜂「……何故、保護を受けないのかしらん??」ジー・・・

香焼「そもそも、そういう物言いがオカシイ……です。保護って何……ですか」

食蜂「そのままの意味なのだケドねぇ。今の香ちゃんは野良ネコだもの」ピッ・・・

香焼「だから、そういう例えをしないで下さいっ」

食蜂「話を聞きなさい……さっきまでの貴女の話を聞く限りぃ、現状はまさにそれよ」ジー・・・

香焼「……え?」

食蜂「要はモルモットさん。常盤台の研究者達に壊れるまで弄られるのがオチだわねぇ」ハァ・・・


マニュアル上の希少能力について言ってるのか。


食蜂「アイツらは香ちゃんっていう『珍しい玩具』を見つけて手に入れたわ……じゃあ、如何なっちゃうか分かるわよねぇ?」ジー・・・

香焼「っ……そ、そんな非人道的な事!」

食蜂「……ほら。無防備」ヤレヤレ・・・

香焼「え」

食蜂「非人道的? だからなぁに? まさにこの街を知らない人間の言葉よねぇ」フゥ・・・

香焼「で、でも常盤台は!」

食蜂「……ええ。周りに比べれば大分マシかも。でも『マシ』なだけー。結局は此処も『研究機関』なのよん★」チラッ・・・


勿論、知っている……学園都市(この街)は素敵な所だが、それと同時に、途轍もなく腐っている事くらい分かっている。

227 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 20:36:43.76 ID:TIBWJjB20
操祈さんは何も言わないまま立ちあがる。そのまま静かに歩き出し、教卓へ座って僕を見下した。


食蜂「問題はそれだけじゃなぁい。誰の庇護も受けずにぃ、どうやって地位を築く気なのん?」ジー・・・

香焼「そういう考えが歪んでるって、思わない……ですか?」

食蜂「世間一般じゃアウトローよねぇ……でもこの街、そして高飛車なお嬢様ばかり集まったこの学校では私の方が賢い考え♪」フフフ・・・

香焼「っ……立場なんて、要らない!」

食蜂「はぁ。うーん、薄々分かっていたけどぉ……どぅやら、私達は『根っこ』から違う様ねぇ★」ポリポリ・・・


僕は最初から分かっていた。


香焼「だけど……それでも……僕は、操祈さんを嫌いになれません。根っことか何とか、関係無い!」

食蜂「……その考えよん。香ちゃんは賢いくせに、感情的過ぎるっ☆」ハハハ・・・

香焼「逆に貴女は、達観し過ぎ……です。勿論、色んな意味で僕は若輩者……ですけど、操祈さんは上から目線過ぎる」

食蜂「あはぁ♪ 怒ってるのん??」ニコニコッ

香焼「見れば分かるでしょう!」


真面目な話をしているのに、全て受け流されている。態と怒りを誘っているのか?


食蜂「ええ。怒った顔も可愛いもんっ☆」フフッ

香焼「ッ」

食蜂「ふふふっ。ま、カワイソだからコレくらいにしとくかぁ♪」ニコニコッ

香焼「操祈さんは……僕の話を、聞いてくれないの……ですか。耳を貸してくれないの……ですか」

食蜂「ううん。ぜぇんぶ聞いてるわよ。可愛い可愛い香ちゃんの正論(綺麗ゴト)だもの★」フフフ・・・


足を組み変え、舌舐めずり。僕の全身を撫でる様に見回す……まるで透視能力者に見透かされてるかの様な感覚。


食蜂「それじゃあ……私も百歩譲って、命令ではなく『交渉』に切り替えてお話してあげるぅ」ペロッ・・・

香焼「…………、」

食蜂「ペットになって私の庇護力を受ければ、立場は絶対的なモノ。常盤台どころか都市全ての研究者が貴女に手を出せないぞっ☆」フフッ

香焼「だから立場なんて!」

食蜂「お話は最後まで聞ぃく。更にぃ改竄翌力を持ってすれば成績は学年トップ。もぉっと嬉しい恩恵としてぇ……奨学金マシマシだぁ♪」ビシッ

香焼「それは卑怯(ズル)……です!」

食蜂「いいえ。私のペットなんだから正当な『恩恵』。能力を余すコトなく駆使してる証拠よぉん★」ニコニコッ

香焼「っ……お断りします」

食蜂「んもー。破格の条件なのにぃ……ウチの派閥の連中じゃなくても尻尾振って喰いつくんだケドねぇ」ムムムゥ・・・


僕は……金で買える娼婦(女衒師)じゃない。

228 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 21:01:40.73 ID:TIBWJjB20
もしペットが欲しいなら、いくらでも買える筈。もし娼婦や女衒師の慰めが欲しいなら、いくらでも手配出来る筈。
この人は僕の事を、それと同等に見ているのかもしれないが……真っ平ゴメンだ。


食蜂「そ、それは違うわよぉ。香ちゃんを売女扱いするワケないじゃなぁい! 寧ろ逆々ぅ」ウーン・・・

香焼「でも僕には、そう聞こえてしまいます」

食蜂「んー、そう聞こえちゃったならゴメンなさぁい。でもホントに違うのよっ☆」スッ・・・


教卓から降りて、再度此方に歩み寄って来る。


食蜂「色々な意味で特別なのぉ。私の能力に耐性あるみたいだしぃ、だけどぉ変に媚びないしぃ。でもそれでいて、とぉっても良い娘♪」フフッ

香焼「素直にそう思ってくれてるのは嬉しい……です。だけど、ペットなんて嫌」

食蜂「はぁ……あんまりこういう手段は使いたくないんだケドなぁ……仕方なぁい」スッ・・・ナデナデ・・・

香焼「……何か?」

食蜂「私にぃ……目を付けられたらぁ学校に居られなくなっちゃうぞっ★ 意味、分かるよねぇ♪」ムニムニッ

香焼「っ」


今度は強請りか。だがそれは効かない……元々僕は『此処』の人間じゃないのだから。


香焼「……構いません。もしそうなったら、実家に帰ります」

食蜂「…………、」ピタッ・・・

香焼「その方が良いでしょう。操祈さんが僕を嫌いになったなら、顔も見たくないだろうし」

食蜂「……呆れた」ポカーン・・・

香焼「僕はさっきから呆れてます」

食蜂「此処まで思い通りにならないのは他の超能力者共に邪魔された時以来ねぇ」ハァ・・・

香焼「光栄……です」


僕は苦笑。操祈さんは心底溜息。
暫時、無言が続き時刻は既に6時半過ぎ。僕も彼女も頭の中でグルグル次の言葉を考えている。

ふと、彼女が視線を下に降ろす……鞄を見ているみたいだ。もしかして今日はもう帰りたいのかもしれない。


香焼「あの―――」

食蜂「どんっむーぶっ★」バッ!

香焼「―――……え」


リモコンを取り出し……僕に向けた。

229 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 21:37:59.01 ID:TIBWJjB20
一瞬、呆気に取られたが……理解する。


香焼「……無理矢理……ですか」

食蜂「ええ♪」フフッ

香焼「じゃあ何故すぐに、能力を使わないの……ですか?」

食蜂「選択よぉん」ニコニコ・・・

香焼「……え」

食蜂「私が強引に能力を行使しちゃえばぁいくら香ちゃんに耐性があるといってもぉ……最悪、廃人になるわ★」ジー・・・

香焼「っ」


脅しだ。


食蜂「だーかーらー選択。保護(ペットの話)を受けるかぁ……私の綺麗な貴女(思い出)のまま『お人形さん(廃人)』になるか」ジー・・・

香焼「…………、」

食蜂「さぁ……ドッチかなぁ??」ニヤリ・・・


蛇さんの……電流が走らない。緊急手段を使った以上、自分でケジメを付けろという事か。

任務を全て擲(なげう)って、此処から逃げるだけなら可能かもしれない。魔術を使った僕に、彼女は追い付けないだろう。
しかし、それでは僕自身納得しない。僕はこの人から逃げたくない。


香焼「ど、どうしてそこまでして……僕をモノにしたいの?」タラー・・・

食蜂「ふふっ。さっき言ったじゃない……特別だって♪」ニコニコ・・・

香焼「そんなの絶対オカシイ……です! 僕はこんなにも、操祈さんに楯突いてます!」

食蜂「この程度は微風(そよかぜ)だよ~ん。私の寛容力を嘗めないでねぇ☆」フフッ

香焼「っ……そうやって、人を馬鹿にする」

食蜂「馬鹿になんかしてないわよぉ。大きな心で香ちゃんを受け止めてるのんっ☆」クスクスッ

香焼「……僕が、操祈さんの事を嫌いになったと言っても?」

食蜂「ええ。私が気に入ったコトには変わりないものぉ……尤も、そうなっちゃったら『お人形さん』決定だケドねぇ★」ニヤリ・・・


分からない……この人の気持ちが。


香焼「如何して……僕なんか」

食蜂「んー……容姿はベリベリキュートでしょぅ♪ それからねぇ……なぁんか、ポカポカするの♪」ニパー!

香焼「意味、分かりません」

食蜂「その優しさ……悪く言えば甘さに惹かれちゃうのぉ……だから、ねぇお願い」スッ・・・

香焼「…………、」

食蜂「私に……能力(リモコン)を、振るわせないで」フッ・・・


ああ、そうか……何となく、分かった。

230 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 22:25:26.25 ID:TIBWJjB20
僕を一寸、目を瞑り……今度は決して彼女の目から逃げぬ様覚悟を決め、瞼を開いた。


食蜂「さぁ……そろそろ答えを頂戴なっ★」スゥ・・・

香焼「……操祈さんは」ボソッ・・・

食蜂「んー……そういう目は止めてくれないかなぁ。誰も憐れんでくれなんて言ってないんだケドぉ」ムッ・・・

香焼「うぅん……操祈さんは、優しいね」

食蜂「…………、」ピタッ・・・

香焼「始めは冷たい人だと思ってました……我儘で残酷で適当で自分勝手で……兎に角、好印象を持てる気がしませんでした」

食蜂「……んー?」キョトン・・・


でも、実際は冷たくなんかない。
確かに自己中心でカオスかもしれないが、その在り方は決して『悪』ではない。寧ろ『中庸』を越して『善』の有り方だ。

派閥云々は従う者が勝手に広げる。統治秩序も下のモノに任せるが、彼女は決して従者を見捨てたりはしない。
もし従者の誰かが研究者の手に掛りそうな時は絶対止めに掛り、派閥から……強いては常盤台(この学校)からを犠牲を出さない様にする。


香焼「操祈さんは暴君……です。だけど、だからこそ常盤台(この国)は他に比べて平和なの……です」

食蜂「香ちゃーん。カリスマ論が聞きたいんじゃないのだけどぉ」ウーン・・・

香焼「でも……っ……貴女には、人の心が分からない!」

食蜂「っ!!?」ギョッ・・・


精神学の専門家に、言い放った。


食蜂「ぅ……あ、あのぉ……香ちゃん、誰に何言ってるか分かってるかなぁ??」アハハ・・・

香焼「はい……そして、操祈さんはその事に気付いてるのにも関わらず……人の心を知ろうとしない」

食蜂「…………、」ピタッ・・・

香焼「人の心は、理屈じゃ語れない……です。僕も十分理屈っぽい人間だけど、心については論じる事なんてできません!」

食蜂「……私なら、深層心理まで理解できるわ★」ジー・・・

香焼「その言葉が、分かってない証拠……です」


昔の僕なら言わなかったであろう言葉。だが1人の『超能力者』と出会ってから、気付かされた。


香焼「もし人の心が分かるのであれば、能力なんて使わなくても相手の気持ちを『思い遣れる』筈……です! だから―――」

食蜂「もういい」バッ!

香焼「―――ッ……、」

食蜂「香ちゃん……貴女の精神とは、さようなら。でも安心して。私の一番近くに置いといてあげるから」ジー・・・

香焼「ぁ……っ」

食蜂「毎日ちゃんと『お手入れ』するし、貴女用のお部屋も用意する。可愛い服と美味しいお菓子も……沢山可愛がってあげるね★」ニコッ・・・


満面の笑みだが、とても淀んだ目。『それじゃあ……バイバイ♪』と彼女の指が……―――

231 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/09(水) 22:51:14.91 ID:TIBWJjB20




食蜂「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!」ビクッ・・・





―――動く前に、彼女の手首を掴む。


食蜂「そ、そんな事してもぉ相手の脳に信号さえ送るコトが出来れば」スッ・・・

香焼「脳(ソッチ)じゃない!」

食蜂「っ」ピタッ・・・


頭に向けられているリモコンを、下方に引き寄せる。


香焼「コッチ……です!」グイッ!

食蜂「な、お、同じコトでしょぅ??」アタフタ・・・

香焼「伝えたい事があるなら、心(コッチ)に訴えて下さい!」

食蜂「っ……第7位みたいな事を」タラー・・・

香焼「軍覇みたいだろうが麦野さんみたいだろうが御坂さんみたいだろうが、何でも良い!」グッ・・・

食蜂「え」チラッ

香焼「ペットだとか、人形だとか……そんな悲しい事言わないでくださいよぉ」ギュゥ・・・

食蜂「……香、ちゃん」ジー・・・


もう冷静ではいられなかった。

232 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/09(水) 23:24:38.98 ID:TIBWJjB20
色々溢れだしそうで爆発しそうなモノを堪えながら、想いをぶつける。


香焼「簡単な事……です! 一言で済む!」グッ・・・

食蜂「な、何が??」タラー・・・

香焼「ああ、そうだ……何を躊躇ってたんだろう。僕が言えば良かったんだ」ジー・・・

食蜂「え、と」アタフタ・・・

香焼「操祈さん。矮小な僕が言うのはおこがましいかもしれません……でも、言わせて下さい」コクッ・・・


もしそれで、駄目なら……僕の精神を殺して貰っても構わない。


香焼「ずっと孤高の現実主義で居るって事の方が『幻想』……です!」

食蜂「わ、ワケが分からなぁい」タラー・・・

香焼「真面目に聞いて……時には逃げて良いの……です。ずっと強いままで居る必要なんてない……です」

食蜂「わ、私はいつも好き勝手やってるだけで、強がってなんかいないわよぅ」アタフタ・・・

香焼「嘘は止めて下さい……もしそうなら、戸惑わず僕の精神を殺してる筈……ですよ」

食蜂「っ」グッ・・・

香焼「だから……お願いします……っ……強情に、ならないで」グスンッ・・・

食蜂「……香ちゃん」


何故か分からない。だけど……感情がオカシナ方に入った所為か、涙が毀れそうになった。


香焼「操祈さん……人間は……っ……ペットとか、従者とか、人形とか……そんなのじゃないよぅ」ウルウル・・・

食蜂「…………、」

香焼「もっと、正しい言葉が……うぅ……ある、でしょ」ポロ・・・ポロ・・・

食蜂「……泣かないで」スッ・・・


僕が言う……僕から、言う。


香焼「貴女が、如何思ってるか分からない……ですけど……っ」ポロポロ・・・

食蜂「……うん」ポンッ・・・

香焼「自分は……操祈さんの事を……っ……もう『友達』だと思ってるんすよ!」グッ!

食蜂「とも、だち」キョトン・・・

香焼「年下のくせに生意気だって、思われたらすいません……でも、それでも……うううぅ」ポロポロ・・・

食蜂「……ともだち?」ポカーン・・・

香焼「ううぅ……っ……はい」ポロポロ・・・


言葉にしなければ伝わらないというのであれば、何度でも言ってやる。


香焼「操祈さん……ぇぅ……っ……と、友達になってくださいっ!」グッ・・・

食蜂「…………、」


操祈さんが固まってしまった。教室には……僕の嗚咽だけが響いていた。

233 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/09(水) 23:55:55.48 ID:TIBWJjB20
どれくらい2人で止まっていたかは分からないが……ふと、僕の頬に彼女の手が添えられる。
涙の跡をなぞった後、彼女は鞄からウェットティッシュを取り出して苦笑した。


食蜂「……マスカラ。落ちちゃって大変なコトになってるわよ」フフッ・・・

香焼「え……ぁ……っ!」アタフタ・・・///

食蜂「落ち着きなさい……拭いてあげるから」スッ・・・ギュッ

香焼「ぁ」

食蜂「化粧。落としちゃうケドぉ……良ーぃ??」ジー・・・

香焼「あ、えっと……はい」モジモジ・・・


直ぐにでもトイレに行ってメイクし直すべきなのだろうが、もう諦める。ばれた時は、ばれた時だ。


食蜂「んもぅ。こんなになるまで熱くなっちゃってぇ……女の子なんだから気をつけなきゃダメだぞっ」フキフキ・・・

香焼「す、すいません」ジー・・・

食蜂「……はいOK♪ あららぁ? 化粧しなくても可愛いじゃない。一年生なんだからメイクなんてしなくてもダイジョブよ☆」フフッ

香焼「あ、ぅ」///


なんか恥ずかしい。あと、メイク落としたのに可愛いって言われたのが『男』として悔しい。
さておき……話の続きを―――


食蜂「あー……ほれほれぇ。みさきちお姉さまのお膝に座りなさいなっ♪」スッ・・・ポンポンッ

香焼「み、操祈さん!? ええ、と……その……あぅ」アタフタ・・・///

食蜂「さっさと座るのぉ☆」グイッ!

香焼「わぅっ!!」ヨタヨタ・・・

食蜂「あはぁ♪ つっかまっえたぁ☆」ギュウウゥ・・・ニコニコッ!

香焼「ッ~~~~~っ!!?」ドキドキドキ・・・///


―――しようとした瞬間、お姫様抱っこみたいな形でホールドされた。これは……また拙いな。


香焼「あ、あの、み、操祈さん!!」ダラダラ・・・///

食蜂「なぁに??」ナデナデ・・・

香焼「えっと、うぅんと……放して下さいよぅ。恥ずかしい……ですってばぁ」アウアウ・・・///

食蜂「駄ぁ目っ。私に生意気言った罰よ~ん★」フフフッ


生意気って……分かってくれなかったのか。

234 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/10(木) 00:39:53.85 ID:xOd7jG9J0
だが、先程までのピリピリした雰囲気とは違った。
先程までは、抱き着かれて照れる僕の表情を見て楽しんでいるだけだったが……今は別の温もりを感じる。


食蜂「はぁ。まったくぅ」ギュッ・・・

香焼「……操祈さん」チラッ・・・

食蜂「子ネコちゃんの類かと思ってたケドぉ、ライオンとかトラの類だったかぁ」フフフ・・・

香焼「え?」キョトン・・・

食蜂「なぁんでもないよ……このっこのっ」ムニムニ・・・

香焼「ふぁんふぇ!?」ムガガァ


手袋越しにも伝わる手の柔らかさ。


食蜂「友達かぁ……ふふっ♪ 友達ねぇ」クスクス・・・

香焼「むぅ」ジー・・・

食蜂「友達っていうのは対等な人のコトをいうんじゃなくって??」ツンツンッ

香焼「……その定義は、分かりません」ウーン・・・

食蜂「あらぁ? じゃあさっきのは適当言ったのん??」ジー・・・

香焼「い、いえ、そういう訳じゃなくて……その、何ていうか……うーん」アタフタ・・・

食蜂「ふふふっ。ダイジョーブ、言いたいコトは何となく分かるから」ナデナデ・・・

香焼「……すいません」

食蜂「なぁんで謝るのよっ。謝るの禁止だぞぅ☆」ペチペチッ


共に苦笑。


食蜂「ふむふむぅ……理屈じゃない、かぁ。ま、言わんとするコトは分かるんだけどねぇ」ボー・・・

香焼「はい」コクッ

食蜂「でも、それを認めちゃうと私の『自分だけの現実(パースナルリアリティ)』が覆されちゃうのよんっ★」アハハハ・・・

香焼「……はぁ」

食蜂「精神とか心って、結局アヤフヤなモノじゃない……だから私のやり方は第2位に似てるの。あ、第2位って知ってる?」ジー・・・


超能力者第2位『未元物質(ダークマター)』垣根帝督。噂は色々聞くが、操祈さん同様、正体不明な人だ。


食蜂「アイツの能力は、能力名通り『ワケ分かんないモノを理論付けて操る』って感じなのよ」ピッ

香焼「はぁ……訳が分かりません」ポカーン・・・

食蜂「まぁそうよねぇ。でも第7位のヤツみたいに『無理矢理根性で扱ってる』ワケじゃないの……私の能力も似た様なモノかなぁ」

香焼「『ココロ』……ですか」

食蜂「ウンウン。それってさぁ、物質じゃないけど『未元』じゃん。私なりに解釈したんだぞぅ☆」エヘンッ!


豊満な胸を押しつけて威張って来る……すいません。マジ色々ヤバいので、それだけは勘弁して下さい。

235 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/10(木) 01:13:04.65 ID:xOd7jG9J0
兎に角、操祈さんはさっき僕が言った様な事を許容出来ない訳だ。
だけど無論、理解は出来てるらしい。そりゃそうだろう。自分の『ココロ』を考えてみれば分かる事である。


香焼「うん……でもね、僕は操祈さんの『ココロ』が知りたいの……です」ジー・・・

食蜂「あらぁ……えっちぃ」ブーブー

香焼「うん。エッチで良い……です」フフッ

食蜂「…………、」フム・・・

香焼「何でも良い。面倒な事、退屈な事、厄介な事、辛い事、嬉しい事、楽しい事、驚いた事……話して下さい」コクッ


そんな下らない事をダラダラ喋れる関係が、友達なんだと思う。


食蜂「……ふぅむ」ボー・・・

香焼「もしその『友達』ってのが生意気だなぁって思ったら、仲良い後輩とかそういうのでも構いません。ペットとか人形以外なら何でも」コクッ

食蜂「うぅん。気にしなーいよっ。香ちゃんは特別だもんっ☆」ナデナデ・・・

香焼「……ありがとうございます」フフッ

食蜂「あ、でも良い呼び方思い付いたぁ! 妹ってのは如何ぉ??」ニヤリ・・・

香焼「はぇ!?」キョトン・・・

食蜂「あーそれ良いわねぇ♪ 我ながら天才かもぉ! ほら、超電磁砲のトコの白黒おチビちゃんに対抗してさぁ☆」フフフ・・・


僕に『お姉さまぁ(ハート)』と呼べと?


香焼「か、勘弁して下さい。僕には実際姉が居ますから。しかも3人も」ハァ・・・

食蜂「あらぁ。それじゃあ私が4人目なのぉ??? うーん、1番目が良いなぁ」ムゥ・・・

香焼「いや、だから姉は……はぁ」タラー・・・

食蜂「ふふっ。ジョーダンですよぉっと★ 呼び方ドーコーは置いといてぇとりあえず私は私、香ちゃんは香ちゃんね♪」ポンポンッ

香焼「……はい」フフッ


漸く……目的達成。
勿論まだまだ浅い関係だが、これからコツコツ関係を積み重ねていこう。

さて、ではそろそろ時間も時間なので帰路に着こう。流石にもう風紀委員や警備員が下校指導を始めてる時間帯だ。


香焼「……それじゃあ、操祈さん。もう7時過ぎなので――」チラッ・・・

食蜂「んー……そういえばさぁ。なぁんで香ちゃんはハグしてくれないのん??」ムゥ・・・

香焼「――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」ピタッ・・・


最後の最後で、何故爆弾投下しやがりますか。

236 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/10(木) 01:43:04.56 ID:xOd7jG9J0
何とか逃げられないモノか脱出を試みるが、ギッチリ両手とたわわに実った高級メロンでホールドされていた。


香焼「み、操祈、さんっ!?」アワワワ・・・///

食蜂「だぁってぇ一方通行の愛情表現って、なぁんか変じゃーん」ブーブー

香焼「だ、だから僕はノーマルで!」アタフタ・・・///

食蜂「私だって一応ノーマルだぞっ☆ ま、香ちゃんが如何しても『交わりたい』っていうなら考えてあげても良いケドぉ」ウフフフ・・・ペロッ・・・

香焼「っ!? え、ぁ……ふ、不純……ですっ!」カアアァ///

食蜂「大袈裟だなぁ。フランクにハグするだけだぞぅ? なぁんでそんなに抵抗するのん?? みさきち悲しいよぅ」エーンエーンッ

香焼「え、あ、あぅ……く、クリスチャンで」ダラダラ・・・///

食蜂「へぇ。そうなんだぁ……でもぉだったら尚更大丈夫じゃないかしらぁ? 何処の十字教でも挨拶でハグしたりするよん?」ジトー・・・

香焼「うっ……あの……えっと」モジモジ・・・///


ぶっちゃけよう。今日は厚めのタイツと卸したてで堅いパンツ穿いてきたのでまだ良かったものの、現在かなり『危ない状態』です。
操祈さんに『当たらないか』如何か冷や冷やしてます……言葉の意味は察して下さい。


香焼「っ……お、お気持ちは、嬉しい……です。本当は、僕も……ハグしたい」ドキドキ・・・///

食蜂「ハーイ♪ どーぞぉおいでー☆」バッ!

香焼「ッ……で、でも……あの……ごめんなさい」ダラダラ・・・///

食蜂「……んもぉ」ブー・・・


本当にごめんなさい。とうか、抱き着かせてごめんなさい!


食蜂「ふふっ……ま、簡単に手懐けちゃったら面白くないもんね☆ でもぉいつか香ちゃんからダ・イ・ビ・ン・グしてきてよっ♪」ギュッ・・・

香焼「っ……あはは」ダラダラ・・・///

食蜂「それからぁ……香ちゃん、まだまだ私に隠しゴトしてるみたいだしぃ」ジー・・・

香焼「っ!」ドキッ・・・

食蜂「……そっちも、いつか教えてねぇ♪」ハムハムッ!

香焼「ひゃいっ?!」ビクッ!!

食蜂「はむはむっ。あむあむぅ……香ちゃんのお耳、美味しぃ☆」ニコニコッ

香焼「」プシュゥウゥ・・・///////////////////////////////////////////////////////////

食蜂「あ。フリーズしちゃったぁ★ おーい。起きないとぉ、もっともーっとイ・タ・ズ・ラしちゃうぞっ♪」ニヤニヤ・・・

香焼「」アウアウ・・・オキマスヨ・・・・


下半身に手を伸ばされたりしたら何もかも終ってしまうので『色々』押さえながら立ち上がった。
そして一度トイレに行った後、教室の机を整頓して玄関に向かった。

237 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/10(木) 02:16:37.34 ID:xOd7jG9J0
 ―――はたまた別日、PM08:00、学園都市第7学区、とある道路・・・・・








操祈さんは学生寮ではなく自分で借りたマンションに住んでるらしい。
何でも『窓のないビル』近くの高級マンションだとか。故に、第1学区住みの僕と帰る方向が一緒になる。


食蜂「それじゃあ此処らでタクシー拾いましょ。香ちゃんも一緒に乗りなさい☆」チラッ・・・

香焼「え、でも」

食蜂「お金は気にしないでチョーダイなっ。私が引き留めちゃったんだしぃその拘束料よん」フフッ

香焼「いや、その、そういう問題じゃなくて、ちょっと寄る場所ある……ですよ」ムゥ・・・

食蜂「あららぁ? こんな時間にぃ……もしかしてぇ彼氏さんトカぁ?? あ、だから他人とハグするの抵抗あったのかぁ」ニヤリ・・・

香焼「ち、違いますよっ! え、と、一度姉のアパートに行かなきゃいけない……です」ペコッ

食蜂「此処ら辺なのん?」フム・・・

香焼「はい。姉2人は僕と同じく学舎の園内の学校なので」コクッ

食蜂「へぇ……その内ご挨拶しないとねっ♪」フフッ


止めて下さい。長女はまだしも二女三女は絶対に、止めて下さい。


食蜂「うーん。ま、そういうコトなら仕方ないなぁ。ぶっちゃけ私のマンションに連れ込もうと思ってたのにぃ……無念なり~っ★」テヘッ♪

香焼「あ、あははは……、」ダラダラ・・・

食蜂「でも、その内遊びにいらっしゃいね♪ 私も遊びに行くからっ♪」フフッ

香焼「ええ、その内に」コクッ


一寸後、分かれ道。僕は此処から土御門宅に向かわねばならない。


食蜂「此処でお別れかぁ……それじゃーまた明日ね♪ 家着いたらぁメールするわん☆」ポンッ・・・

香焼「はい。あ、そうだ。今更……ですけど、言っておかなきゃいけない事がありました」ピタッ・・・

食蜂「なぁに??」フムフムッ

香焼「僕……学校に来るの、衆に1、2回……です。最悪、来れない週もあります」シュン・・・

食蜂「えーっ! そうなのぉ!?」ムムムッ!

香焼「はい。病院とか常盤台付属の研究所を回るので……だから、その……言うの遅れてごめんなさい」ペコッ・・・

食蜂「むぅ……病院は何処の?」ジー・・・

香焼「(そこまでマニュアル書いてないぞ……)……あの……カエル顔の先生が居る病院……です」タラー・・・

食蜂「冥土帰し(ヘブンキャンセラー)の……じゃあ私が如何こう言えないわねぇ」ハァ・・


適当言ったのだが納得してくれた様だ。やっぱあの先生凄い人なんだなぁ。

238 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/10(木) 02:35:33.01 ID:xOd7jG9J0
でも、と真剣な目で僕を見詰める彼女。


食蜂「付属研究所の方は……信用しちゃダメよん。常に疑って掛りなさい。変な薬とか実験とか勧められたらぁ私に相談なさいよ」ピッ

香焼「はい。ありがとう、操祈さん」フフッ

食蜂「ウンウン。素直でよろしい☆ 因みにぃ土日は忙しいのん??」ジー・・・

香焼「週によりますけど、大抵は忙しい……です」ウーン・・・

食蜂「そっかぁ……残念」ショボーン・・・


あー……月に二回くらい、プライベート(神崎香として)で操祈さんと会う日作ろう。


香焼「とりあえず、学校行く日はメールか電話で連絡します」ペコッ

食蜂「りょーかいっ♪ それじゃあ……―――」スッ・・・

香焼「え」ピタッ・・・




僕の、額(おでこ)に……柔らかい感触。




食蜂「―――……まぁたねっ! 香ちゃん☆」ノシノシ"

香焼「」カアアァ//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


トンデモない置き土産を残し、大通りへ歩いて行った。
彼女の後姿が見えなくなるまでお見送りし……完全に消えた後、やっと肩の荷を下ろす。


香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ」グデェ・・・


口から魂飛び出しそうだ。かーなーりー疲れたぁ。


御坂蛇「いやはや……ホンット役得商売だな、とミサカは香の一日を振り返ります」ガサッ

香焼「おわあああぁっ!? ビックリしたぁ!!」ギョッ!!

御坂蛇「下校時刻は過ぎてるんだ。静かにしろ。警備員が来たら如何する……とミサカは気を抜いている香を注意します」メッ!

香焼「も、もう香は終わりっすよ」タラー・・・

御坂蛇「シャラップ! 家に帰るまでが任務だ、とミサカは兵士の基本を講釈します」フンッ


兵士じゃないですよ……まぁ兎角、土御門宅に向かいましょう。

239 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 [saga]:2011/11/10(木) 02:55:03.54 ID:xOd7jG9J0
一寸後、土御門の方から電話が入る。何でも舞夏さんが居るから今は来るな、だとか。
もう少ししたら此方から近くの公園向かうから、そこで待っててくれとの事。

止むを得ないので、いつものイカレ自販機在中の公園でホットドリンクを飲みながら待つ事に。


香焼「ところで、海原さんは?」チラッ・・・

御坂蛇「師匠は各種機関に手回し中だ。予想だと、今晩食蜂操祈は『神崎香』について調べ始める」ジー・・・

香焼「え、あ……なるほど」フムフム・・・

御坂蛇「折角繋がった縁だからな。そう易々と切らせる訳にはいかない、とミサカは遠まわしに香の成果を褒めてみました」フンッ

香焼「あ、あははは。ありがとうございます」ポリポリ・・・


そうか……僕は、単独機密の任務に成功したんだ。


御坂蛇「ええ。任務は完璧だ……しかし! とミサカは甘ちゃん香を小突きます」トンッ!

香焼「ふぇ!?」ドキッ・・・

御坂蛇「修行としては半分行くか行かないか。確実に赤点だ、とミサカは評価します」ジトー・・・

香焼「あ、ぅ」タラー・・・


確かに……内容は結構酷いモノだった。
暗殺の仕事では無いにしろ、隠密性や移動面を見れば酷いモノだろう。


御坂蛇「折角容姿は完璧なのに挙動不審な点が多過ぎる。アレでは朱に黄色を交ぜた様なモノだ、とミサカは妹弟子を注意します」ジトー・・・

香焼「す、すいません」メモメモ・・・

御坂蛇「良いですか? そもそも潜入というのは隠れる事よりも周りに暱(なじむ)事の方が優位に動けて―――」


それから土御門が来るまで野外講義が続いた。
しかも気分がノリ出した蛇さんは『あの眼鏡の警備員を追跡してこい!』と言い出すし……困ったものです。

さておき凡そ三十分後……夜なのにアロハサングラス野郎が現れた。


土御門「いぃよう! 変態女郎!」ハハハ!

香焼「ぐっ……言ってくれる」タラー・・・

土御門「まぁ色々言いたい事はあるが……その様子だとスネークが大分説教したみたいだにゃ?」フフッ

香焼・御坂蛇「「肯定(はい)」」コクッ

土御門「結構結構。ま、成果としては『良くやった』の一言。評価としては『まだまだ甘いぜぃ。精進しろ』の二言だ」クイッ


御尤もです。努力します。

240 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 03:27:37.43 ID:xOd7jG9J0
その後、簡単に今後の計画と修行の予定を確認し……今日の全行程を終えた。


土御門「―――……って事でお疲れさん。スネークもありがとにゃー」ハハハ

御坂蛇「いえ、報酬さえ頂ければ」コクッ

土御門「あいよ、さぁて……そんじゃ、次にぃ」チラッ・・・

香焼「え」

土御門「私情だがぁ」ジトー・・・

香焼「……謝らないっすよ」フンッ

土御門「黙れ糞ガキ。舞夏がいきなり『兄貴……3[ピーーー]とか興味無いかー?』って聞いてきたんだぞ! マジざけんなっ!!」ギロッ!


いや、それ僕のセリフだから。あとサラッと近親相姦暴露してんじゃねぇよ外郎。


土御門「本当なら泣いたり笑ったり出来なくなるくらい滅茶糞にしてやりてぇが……生憎、舞夏が『神崎香』を気に入っちまったからな」フンッ

香焼「自分は舞夏さん、マジ苦手っす」タラー・・・

土御門「うっせぇ黙れカス。手前ぇの意見なんか聞いてねぇ駄阿呆」ギロリ・・・

香焼「……じゃあ何すか? 私刑にでもするんすか?」ジトー・・・

土御門「ふんっ……まぁ今回は許す。だが次回は無いぞ。もし3[ピーーー]なんて事になったら貴様の穴に野菜ブチ込んでやる」グルルルゥ・・・

香焼「馬鹿じゃないの?」タラー・・・

御坂蛇「……気持ち悪い」ジトー・・・


いや、僕はそんな事望んでませんからね。この変態ですよ。


土御門「チッ……早く帰れ……あと、まぁそれとは別に今回の報酬がてら二つ『プレゼント』を送っといた」フンッ

香焼「え?」キョトン・・・

土御門「家に届いてると思うから有効に使え……じゃあな」テクテク・・・

香焼「あ、ちょ……行っちゃった」ムゥ・・・

御坂蛇「ふむ。アレがツンデレとかいうヤツか……とミサカは……あ、でも御姉様(本家ツンデレ)とはなんか違う?」ウーン・・・

香焼「そういう事言わないでください。色々危険っす」ハァ・・・


その後、蛇さんの煙草一本分の時間を拘束され、互いに帰路へ着く事に。
早く帰って風呂に入りたいよ……―――

241 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 03:42:09.76 ID:xOd7jG9J0
 ―――はたまた別日、PM09:15、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・・



そういえば学校の宿題終わってないなぁと考えながらバスを乗り継ぎ、マンションへ到着。
今日はカオリ姉さんしか居ない筈だから伸び伸び寝れる……と思ったのだが、甘かった。
駐輪場に見覚えの無いバイクの隣に、見覚えのあるビックスクーターが置いてある。


香焼「はぁ……面倒臭い」トボトボ・・・


まず女装してるから弄られるだろうなぁ。『写真撮らせてー!』とか『こっちの服着てー!』とか。
宿題やったり、報告書書いたり、明後日英国に行く際の荷造りしたかったんだけどなぁ。


香焼「いっその事、明日学校サボっちゃおうか……って、ん?」ピタッ・・・


部屋の前で歩を止める。何やら必要以上に……声がするぞ。
もしやと思い、カオリ姉さんに電話を入れた。


香焼「……もしもし」コソコソ・・・

神裂『おや……お勤めお疲れ様です。まだ仕事中ですか?』Pi!

香焼「いえ、もう終わりました。今家の前っす」

神裂『え? では入って来ては』

香焼「……声、多くないっすか?」タラー・・・

神裂『ああ、はい。今日は麦野さんと結標さんと絹旗さんが来ていましたよ。勝手に上げてすいません』


最っ悪だ。


神裂『え……拙かったですか?』

香焼「……こっそり入って風呂場に行きます。誰も入れないでください」ボソッ

神裂『え、あ、今は―――』Pi!


勘弁してくれ。こんな『醜態』、大勢に晒して堪るか。

242 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 03:50:51.29 ID:xOd7jG9J0
こっそりとドアを開けて、すぐ右にある風呂場へと―――


五和「……ん?」チラッ・・・

香焼「」チーン・・・


―――……何で、玄関に、五和が、居るの?


五和「…………、」ジー・・・

香焼「」アタフタ・・・

浦上「お姉ぇ。どった、の……さ……、」ガチャッ・・・


そして何ぁ故に風呂場から下着姿の浦上が出てくるかなぁ!!?


香焼「」ダラダラ・・・

五和「…………、」チラッ・・・

浦上「……ふむ」コクッ・・・


ヤバい! 逃げろ!!


五和「フィイイイイイッシュッ!!」バッ!!

香焼「いやあああぁっ!!」ガシッ!!

浦上「お姉ぇナイスキャッチっ!!」パチパチパチッ


鋼糸(ワイヤー)に捕まった! テメェこら! 任務で使う道具で遊ぶな!


五和「うふふふふ……そんな大声出して良いのかなぁ? 皆にコウちゃん帰ってきた事言っちゃうよぉ?」ニヤリ・・・

香焼「ぐっ……何が望みだ」ダラダラ・・・

浦上「いえいえ。ホント、簡単な事ですヨ……今はさっさと部屋へ逃がす手伝いしてあげますから、その代わりにぃ」ニヤニヤ・・・

五和「今度ぉ……着せ替えごっこね♪」ウフフフ・・・


そうなると思ったよ! こん畜生!!

243 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 04:02:58.67 ID:xOd7jG9J0
だがしかし、止むを得まい。
最愛や淡希さんに見つかる前に着替えてしまいたいので……さっさと手伝ってくれ。トンデモない衣装以外は着てやる。


五和「ヒャッホーうぃ! よし、ウラ! リビング監視して!」グッ!

浦上「合点承知だヨ!」ニパー!

香焼「ったく……不幸だなぁ」テクテク・・・


靴を脱ぎ、急いで移動を―――


もあい「にゃー」トコトコ・・・

香焼「……もあい。ただいま」チラッ・・・

浦上「あ、ヤバっ! ちょ、最愛ちゃん!」ギャー!

絹旗「もあいー。ブラッシングの最中で、す……よ」ピタッ・・・

五和「あ」ダラダラ・・・

香焼「」チーン・・・

絹旗「……え」キョトン・・・


―――……神は、我を見捨てたか。


絹旗「……香、焼?」ジー・・・

香焼「」ダラダラダラダラ・・・

もあい「なぅ」フシフシ・・・

絹旗「常盤台の、制服……え……な?」ポカーン・・・

香焼「あ、ぅ」カアアァ///

五和「ああああぁさ、最愛ちゃん! 最愛ちゃんは初めましてだったね!」アハハハハ! チラチラッ!


僕と浦上に目配せ。そういう事か……って、まさか、まだ続けろと!?


絹旗「え?」キョトン・・・

浦上「こ、この子、カオリ姉様の親戚の娘なんだヨ! ほら、自己紹介して!」ダラダラ・・・

香焼「(こ、このやり場の無い怒りを何処へ……)……こ、神崎……香……です」アタフタ・・・

絹旗「え、あ、ひゃい! えっと、その……あの……っ」アタフタ・・・


今だけは、最愛が極度の人見知りで良かったと思いましたよ、はい。

244 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 04:22:00.03 ID:xOd7jG9J0
そんでもって、結局……どうして、こうなった。


香焼「―――……神崎、香……です」ペコッ・・・

結標「あらぁ。可愛い子じゃない。全っ然アンタの親戚に見えないわね」フフッ

神裂「よ、余計な、お世話、です……よ」プルプルプル・・・


コッチにもばれる訳で。


麦野「こ、神崎……香、ちゃん、ね……くくっ」プルプルプルプル・・・

固法「か、可愛い、わね……ええ……ぷふっ」プルプルプルプル・・・

絹旗「……麦野と神裂さんと姉貴さんは如何して超震えてるんですか?」キョトン・・・

五和「あーえっと……何でだろうねー」ハハハ・・・

浦上「さ、寒いんじゃないかなぁ? 最近冷え込んできたし」アハハ・・・

絹旗「はぁ」ポカーン・・・

もあい「みー」コロコロ・・・


僕にメイクを教えてくれた人達にも見られました……てか何で固法さんまで居るんだよ!


神裂「す、すいません……アチラも電話中でベランダに居たので、目に着かず……ぷっ」プルプルプルプル・・・

香焼「……はぁ」グデェ・・・

結標「んー……ねぇ五和。あの子も『お仲間』なの?」ボソッ・・・

五和「あー、ある意味そうで、違います。あの子は一応……能力者? らしいので」タラー・・・

結標「へぇ。そんじゃ純粋に入学してきたんだー……ふふっ。良い娘見つけちゃった」ニヤリ・・・


うわぁ結標さんが危ない目を向けてきてる。


絹旗「うーん……神崎は、香焼とは仲良いんですか?」ジー・・・

香焼「うぇ!?」ギョッ・・・

神裂・五和・浦上・麦野・固法『ぶふっ!!』プルプルプルプル・・・

結標「は? どったのアンタら?」ポカーン・・・


その質問は哲学ですか?


香焼「え、と、あー……双子、みたいな感じ……です。アッチがお兄ちゃん、かな?」タラー・・・

絹旗「……ふーん」ジー・・・


ねぇその目気付いてないですか? 分かっててやってないですか?

その後……最愛には終始疑いとか邪推っぽい眼で見られ続け、結標さんにはセクハラされかけたりして、散々だった。

え、味方? 居ませんよ、そんな人。もう全員僕見て腹抱えて笑い堪えてましたからね、うん。まぁとりあえず……


香焼「もう、ヤダ……助けてステイル……助けて軍覇」ウワーン!!


男の人。僕を助けて下さい……―――

245 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 04:43:19.13 ID:xOd7jG9J0
 <おまけっ!>


 ―――数日後、風紀委員177支部……



御坂「―――じゃーん! この前言ってた僕っ娘連れてきたわよー!」スッ・・・

白井「食蜂操祈から半ば強引に奪ってきましたからね。明日はきっと全面抗争ですの」フフフ・・・

香焼(どうしてこうなった)タラー・・・

初春「おおぉ! これが噂の……初めまして。初春飾利です。此処の風紀委員の一人ですよ。よろしくお願いします」ニコニコッ

香焼「は、はい……神崎香……です。よろしく」ペコッ・・・

春上「春上衿衣なの。初春さんと佐天さんと同じ柵川中なの。神崎さん、私と同じくらい小さいの! ナカマーなの♪」フフフ・・・

香焼「は、ははは……よ、よろしく。(素体が『男』の僕に対する嫌がらせっすか?)」ヒクヒクッ・・・

白井「それで、此方がウチのリーダー且つ人妻兼お色気枠の牛乳おっぱい固法先ぱぁあべしっ!!」ゴツンッ!!

固法「……ふふふっ。『初めまして』……香ちゃん」ニヤニヤ・・・

香焼「は、はははは……どうも。(助けて下さいよおおおおおぉ!! アンタ分かってるくせにいいいぃ!!)」ピクピクッ・・・

御坂「そんなに緊張しなくても優しい先輩よ。そんでもってコッチが佐天さんね」チラッ・・・

佐天「…………、」ジー・・・

初春「佐天さん?」チラッ・・・

佐天「…………、」テクテク・・・スッ・・・

香焼「あ、え……こ、神崎……です」タラー・・・

佐天「失礼」ペタッ・・・

香焼「ひゃぁっ!!?」ドキッ!!

一同『っ!!?』ギョッ・・・

春上「む、胸触ったの」タラー・・・

佐天「……更に失礼」サスサス・・・

香焼「や、ちょ、な、待ぁっ!! 何々何……ですかぁ!!?」アタフタ・・・///

佐天「ふむ……ってうをっ!?」ジトー・・・バシッ!

初春「さ、佐天さん! 風紀委員の支部内でセクハラ現行犯逮捕ですよ!! 何身体中触りまくってるんですか!!」ウガアアァ!!

佐天「あ、あははは……ごめんごめん」ポリポリ・・・

御坂「ずるーい。私も触ってみたかったのにー」ブー!

白井「んぉおお姉さまあぁあっ!! 黒子というモノが有りながらあああぁっ!! 私でしたら存分にモフらせて差し上ゲフゥぅ!!」グンッ!

御坂「近付くな変態っ」ビリビリ・・・

佐天「……んー、神崎さん。ちょっと来て。変な事しないから」グイッ・・・

香焼「うわっ!? ちょっ!?」アワワワ・・・

初春「佐天さん、現行犯なんですってばああぁっ!!」コラー!

固法「……あら、もしかして」タラー・・・

246 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 04:53:13.08 ID:xOd7jG9J0
 <更衣室>


 ガチャッ・・・・・


香焼「さ、佐天さん、何を!?」アタフタ・・・

佐天「ねぇ」ジトー・・・

香焼「は、はい」ダラダラ・・・

佐天「何やってるの? 香焼くん」ジトー・・・

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぎっ!!?」ギョッ・・・

佐天「いや、てか何で皆気付かないの?」タラー・・・

香焼「あ、え、と、その」アタフタ・・・

佐天「……まぁ良いや。後で理由聞かせてね」ハァ・・・

香焼「い、いや、何で、分かったの?」アタフタ・・・

佐天「だから見た目……まぁそれは可愛くなってるけど、身体付きがねぇ……小柄とはいえ完っ璧男の子じゃん。触れば分かるよー」ジー・・・

香焼「あ、あはは」タラー・・・

佐天「それに早朝ランニングで本人の身体触ってるんだから、尚更ねぇ」フフフ・・・

香焼「そ、そうだよね……えっと、その……お願い! 今は黙ってて!」ダラダラ・・・

佐天「……ふふふ。今度その恰好でデートしてくれるなら考えよう」ニヤリ・・・

香焼「っ~~~~~~ッ! 鬼! 悪魔! 佐天さん!」ムキー///

佐天「はっはっはっ! 何とでも言えー! しかし約束を守らねば皆にばらすぞぉ?」ニヤニヤ・・・

香焼「く、ぅ」グヌヌ・・・

佐天「ふふっ。まぁ悪い様にはしないからっ♪ さささ、戻りましょー」クスクスッ

香焼「……不幸だ」タラー・・・



固法(……あー。やっぱバレてーら)ハハハ・・・  ← ※透視能力使用中。

247 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 05:05:34.09 ID:xOd7jG9J0
 <再び執務室>


 ガチャッ・・・・・


春上「あ。戻ってきたの」チラッ・・・

佐天「ごめんごめん、お待たせー」テクテク・・・

美琴「佐天さーん。独り占めはズルいわよー」ムー!

佐天「ははは。すいません、ちょっと確認したい事があったので」ハハハ

初春「監禁及びセクハラで逮捕ですー!」ヤンヤヤンヤ!

白井「初春。テンションが明後日の方向に逝ってますの」タラー・・・

固法「こう……崎さん……とりあえず座って。お茶でも出すから」スッ・・・チラッ・・・

香焼「あ、はい」コクッ

春上「ねぇねぇ神崎さん。色々質問したいの! 聞いても良ーい?」ニパー!

香焼「はい、応えられる範囲なら」コクッ・・・

御坂「あ、じゃあ私も質問!」ハーイ!



 がやがや・・・・・



佐天「……にやり」キランッ・・・



 がやがや・・・・・



白井「―――いぃよっしゃあああぁっ!! 胸囲で勝っちましたのおおおおぉっ!!」グッ!!

御坂「黒子より小さいなんて……ホントにロリっ娘で僕っ娘なのね」ヘェ・・・

香焼「は、はは……ははは」タラー・・・

固法「ふふっ、楽しそうね。お茶入ったから飲みながらお喋り続けて」スッ・・・

春上「ありがとうございますなの、先輩」ペコッ

香焼(此処での事、姉さん達にリークしないでくださいよ)チラッ・・・

固法(……どーしよっかなぁ)フフッ・・・

248 :第二話―――ステイル「はっきり言って、弱いよ」 香焼「……」 :2011/11/10(木) 05:28:04.94 ID:xOd7jG9J0
 ――一寸後・・・・・



初春「―――あ、そろそろ時間も時間ですね」チラッ・・・

御坂「そうね。それじゃ解散か」ヨイショッ

固法「相変わらずのカフェ扱いね……そろそろお金取ろうかしら? 一人一時間500円で如何?」フフッ

白井「うわぁ、がめつい。旦那が金にダラしないと嫁が守銭奴になっちゃうんどぅえええぃがっ!!」ゴンッ!!

春上「白井さんは先輩に対していつも一言余計なの」ハァ・・・

香焼「あははは……それじゃあ私も」スッ・・・

佐天「…………、」ジー・・・

御坂「ん? 佐天さん? どうしたの?」チラッ・・・

佐天「んー……ねぇ、香(こう……崎さん」ジー・・・

香焼「はい―――」

佐天「えいっ★」バサッ!!


 ふわっ・・・・・


香焼「―――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」フワリ・・・

一同『……っ!!?』ギョッ・・・

香焼「ぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で、僕の、スカート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・浮いてる……ですか?」キョトン・・・

初春「た……逮捕おおおおおぉっ!! 私のも含め前科162犯で逮捕おおおおぉっ!!」ゴラアアァッ!!

佐天「いや、これで193回目のスカート捲りですが何か」ドヤァ・・・

白井「い、いや……アウト」ビシッ

香焼「い……やああああぁあああああぁっ!! な、何考えてるんすかぁ!!(ばれたら如何すんのぉ!?)」ダラダラダラダラ・・・///

春上「神崎さんタイツの上に、更にスパッツ穿いて……って、え?」チラッ・・・

香焼「(ヤバっ……口調が……)……し、信じられません! 人間のする事じゃない……です!」アワワワ・・・///

御坂「佐天さん……流石に初見の人にそれは拙いよ」タラー・・・

佐天「あははは。神崎さんなら初春並に大丈夫だよ……ねー?」ニヤリ・・・

香焼「っ~~~~~~~くぅ」プルプルプルプル・・・

初春「先輩っ!! 私は兎も角、今のは絶ッッッ対現行犯ですよね!」ギャーギャー!

固法「あははは……まぁその……佐天さん。普通の人は恥ずかしいんだから駄目よ。神崎さんみたいに『シャイ』な子には尚更、ね?」チラッ・・・

佐天「(あ、先輩も分かってるんだ)はーい」フフッ

春上「神崎さん、寒がりなの? 毛糸のパンツ編んであげるの!」ニパー!

香焼「け、毛糸……あ、あはは……ありがとう。(もうどうにでもなれ)」トホホ・・・





冷蔵庫「おわれ~~~」カンッ!!

249 :VIPにかわりまして建宮がお送りするのよな :2011/11/10(木) 05:40:03.70 ID:xOd7jG9J0
はい。お疲れ様でした! 思ったより長引いたなぁ。
てかこれから『神崎香』を如何使っていくかが問題ですww


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