2013年9月5日木曜日

上条「白いワンピース」 2

413 ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/19(火) 02:15:31.25 ID:ShqNV/GLo


お知らせ

次回、三巻終了
その次は四巻ではなく、二巻です。やってないので




ついに上条さんが……!
やっと>>142の上条さん最強SSが始まりそう

オリジナル設定どんどん出てきますがご了承ください


ではおやすみー

414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/02/19(火) 21:07:35.27 ID:bcYhi4J1o
期待してます
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/02/20(水) 00:15:43.17 ID:j4eVesVe0
上条くんの。力で。私の出番を。増やしてほしい。 
 
418 : ◆KONAYUKI7I[sage]:2013/02/20(水) 07:48:32.89 ID:5X6kGOcFo




「誰だ」

もう一度聞く。

「いやあ、素晴らしい説得だったよ。あれで第三位も大人しくなってくれると有難いんだがね。いくら私でもそうそう何回も停電を起こされると困るんだ」

「……」

……何だこいつは。
まるで俺らの行動を見ているかのような……。

土御門のサーチ魔術みたいなものか?
419 ◆index//3x.[sage]:2013/02/20(水) 07:49:10.24 ID:5X6kGOcFo


……いや、あの時オリアナはサーチに気づいてたはずだ。
ということは、もし魔術なら俺も気づきはしなくともその魔翌力か何かに触れるはず。
そもそも俺は御坂の能力を預かるために力は放出しておいた。
右手以外にしか効かないように手を加えてある魔術だって今となっては意味がないはずだ。
それでも相手には見えている。

……と、いうことは監視カメラか?
ここは学園都市。
さらっと見た程度では見つからないところに監視カメラがあるかもしれない。



ただ、音声まで拾うとなると……。
420 ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:49:42.71 ID:5X6kGOcFo


「ん? 聞こえていないのか? 確かに音声は入っているはずなんだが……」


それにこいつからは今まで感じたものよりもずっと強い何かを感じる。
電話をしている、ただそれだけなのに。

それだけなのに足が震えてくる。
神の右席と、ローマ正教と戦ったあの時


いや、あの時以上かもしれない。
421 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:50:10.13 ID:5X6kGOcFo


「だ、誰なんだよ」

「……これは申し訳ない、私の名前はアレイスター=クロウリー。何、怯えることはないさ」

「アレイスター……?」



聞いたこともない名前だった。


「そうだ、一応学園都市の統括理事長をしている」

「統括理事長ぉ!?」

「そんなに驚くことか?」

「あ、いや……。で、統括理事長様が何の用だ?」


警戒は、さらに増す。
拳を握りしめる。
422 ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:50:48.37 ID:5X6kGOcFo


「拳を握ってそんなに警戒する必要もない。君は忙しいな」

「なっ……!!」

「ふむ……。こっちから君の様子が見えていることは今の君なら分かってると思ったんだがね」

「何処から見ている……?」

「それは今気にするべき事じゃないだろう?」

「……いいから答えろ」

「……」

「……」

「……」

「……」

「君の逆剥けの数でも数えればいいのかな?」

「やめろ」

「親孝行はしないといけないな」

「余計なお世話だ」

……何だこいつ。
キャラが掴めない。
423 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:51:17.96 ID:5X6kGOcFo


「そんなことよりもっと聞きたいことはあるはずだろう?」

「……お前は魔術師か?」

「……君は私の話を聞いていたのか? 仮にも科学のトップが魔術師な訳がないだろう」

「本当か?」

「君の行動を見て、もう少し賢いと思っていたんだが、そうでもないようだ」

余計なお世話だ。
二回目の経験と初めての経験とでは話が違うんだよ、お前と話すのは初めてなんだ。
しかも話をうまいこと交わされてペースすら掴めない。
424 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:57:51.21 ID:5X6kGOcFo






……ん?

俺の行動を"見ていた"?


「……おい」

「何だ? 聞きたいことか?」

「お前は何で俺の行動を"見てきた"んだ?」

「私は学園都市の統括理事長なのだよ、ここの住人の生活を把握していても何ら不思議ではあるまい」

「本当にそうか?」

「どうした?」

「わざわざこんなLevel0のしかも能力の発現の可能性が確実に0である俺まで把握できるほど学園都市は進んでいるのか?」

「実際君には私が何処から見ているか分かっていないじゃないか、それぐらいの技術は持っているつもりだが」
425 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:58:17.27 ID:5X6kGOcFo


「俺が聞きたいのはそこじゃない、"本当に俺はただのLevel0"なのか?」

「それは自分が一番知っているんじゃないのかね?」

「確かに俺は自分のことをただのLevel0だと思っていたよ。御坂や一方通行はもちろん、御坂妹がやってる演算だって俺には理解できるか分からないくらい馬鹿だってのは分かってる」

「私もそれは把握している」

「黙れ」



いちいち腹の立つ奴だ。
こいつは人を馬鹿にする才能でもあるんだろうか
426 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:58:54.60 ID:5X6kGOcFo



「俺もさっきまではそう思っていた」

「急に賢くなったとでも?」

「だからそっちじゃねえよ!」

「何だ、もう少し簡潔に話してくれないか」

「……。本当にただのLevel0がこんなにたくさん魔術師と関わることがあるのか?」

「……君が関わった魔術師は3人だと把握しているが」














…………。それもそうか。
427 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:59:21.36 ID:5X6kGOcFo



「じゃあ質問を変える。ただのLevel0が統括理事長なんかとこうやって電話出来るのか? 噂じゃLevel5だってそうそう会えないらしいじゃないか」

「私達だって会ってはいないさ」

「屁理屈はいい。どうなんだ?」

「どうなんだ、とは?」

「本当にただのLevel0なのかってところについてだ」

「……」

「Level0の方が"動かしやすい"からLevel0なんじゃないのか?」
428 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 07:59:48.62 ID:5X6kGOcFo


ずっと気になっていた。
何で俺はこんなに自由なのかと。
土御門のように仕事とかそういうわけでないのに、いつも学園都市や、その周りにいる魔術師と俺は関わってる。
上の連中と言われる奴らの言う通りに動いたこともある。


御坂や一方通行ならもっと簡単に倒せた敵もいただろう。
そりゃ中には幻想殺しがなければどうしようもなかったかもしれない奴らもいたかもしれないけど。

でも何で俺みたいなLevel0に……。

そう思っていた。






だけど、違う。
"Level0"だからこそ動かされてきたんだ。

今、分かった。
429 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:00:36.22 ID:5X6kGOcFo


「……いや、凄いじゃないか。やはり少し賢いようだ、これはLevel1くらいにならしてもいいかもしれない」

「……そりゃどーも」

「その質問については正解だと言っておこう。もっとも今日の話は君の能力に関わるものなのだが」

「……!?」

俺の……能力?

「その前に、一つ話をしよう」

「話?」
430 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:01:27.44 ID:5X6kGOcFo


「君は魔術師のことをかなり知っているような口ぶりだったが、うちのLevel5についてもよく知っているのかね?」

「Level5……? 俺が知ってるのは御坂と一方通行だけだが」

「いや、少しだけ知ってるというのでもいい。何なら噂でもいい」

「噂……。第二位はこの世に無い物を操るとか第四位は電子でビーム撃つとか、そんなパッとしないようなものばかりなら」

「……続けてくれたまえ」

「第五位は御坂と同じ中学で、何やら女王っぽいらしい。第七位は原石?とか言う能力者で、もしかしたら俺もその原石とかいうものなのかなって思ってたり……」

「ふむ。原石、か。それはひとまず置いておいて、だ。第六位については何も知らないか?」

「……いや、第六位には噂がありすぎてどれがそれに近いのかも分からない。だから他のLevel5とは違って本当に噂でしかないのかなって」

「なかなか鋭いな。じゃあ何故第六位だけ噂でしかないんだ?」

「それは……お前らが必死に隠しているからじゃないのか?」

「確かにそれもあるな。しかしボロと言うのは出てしまうだろう? 事実、他のLevel5の噂についても大方合っている程度でしかない。しかし逆に言えば間違ってはいないということだ」

「……」

「よく考えてみるといい、実に簡単なことだ」
431 :>>419 saga忘れ、魔力 ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:02:38.69 ID:5X6kGOcFo












「"いない"んだよ、第六位は」









432 :>>419 saga忘れ、魔力 ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:03:04.82 ID:5X6kGOcFo


「……は?」

「聞こえなかったか? 第六位はいないと言ったのだが」

「お、おい。いないってどういうことだよ。学園都市にはLevel5が7人いるんじゃないのかよ?」

「正確には、学園都市にはLevel5が7人いる"予定"だ」

「予定……?」

「そう、予定だ」




予定……。
だからってなぜ俺にそれを言う?
どこに言う必要があったんだ?
魔術師と関わってたりする、ということなのか?
433 : ◆IoH/Hpd1z6[ saga]:2013/02/20(水) 08:04:07.32 ID:5X6kGOcFo



「私としても、こんなに予定が早まるとは思っていなかったんだがね」

「……どういうことだ」

「おめでとう、今から君が第六位だ」

「…………は?」

「君はどうもさっきから耳が悪いようだな」



え? 俺が……?
俺が第六位?
第六位ってなんだ?







……なんだただのLevel5か。







「ってはぁぁぁぁぁああああああ!?」
434 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:04:54.27 ID:5X6kGOcFo



待て待て待て!
理解が追いつかねえ……。

「もう少し落ち着けないのか君は」

「だってLevel5ってしょ、しょ……」

「しょ……?」

「奨学金凄いんだろ? マジかよ!?」

「……驚くところが大分ずれていると思うんだが違うか?」

「いやーこれでインデックスに飯をたくさん食わせてやれる……」

「おい……」

「ほぅ……」

「おい」

「♪」

「……」
435 : ◆IoH/Hpd1z6[ saga]:2013/02/20(水) 08:05:41.32 ID:5X6kGOcFo




ドゴッ!!!





「ぐっふぉ!!」

「こちらの話も少しは聞いてくれないか」

「痛え……。で、何だよ……?」

「第六位になったこと自体にはあまり驚かないのか?」

「いや、十分驚いているさ。でも」

「でも?」

「同時に今はLevel5に匹敵する力が俺には秘められていることも分かってる。だからと言ってそれをそう何回も振りかざすつもりは無いんだけどな。それ に今ならお前が予定が早まるって言った意味も分かる。俺もいつかはこうなるはずだったのが、予想以上に早かったってことだろ?」

「……そうか、では今後のことだが」

「……」

「今まで第六位についてはトップシークレットということになっていた。だから君には基本的には黙っていてもらいたい」

「そのくらい守るさ」

「ただし、そうだな……。君の順位である"6"。6人までは言ってもいいこととしようか、流石に全員に秘密というのは、やりにくいこともあるかもしれない。言う人はよく考えておくといい」

「インデックスに言ってもいいのか?」

「ふむ、魔術サイドには黙っておいてもらいたいところだが、同居しているというのなら仕方ない。しかし言った相手には他言無用と言っておけ」

「分かった。……この長電話の要件は以上か?」

「一応だな」

「一応?」
436 : ◆IoH/Hpd1z6[ saga]:2013/02/20(水) 08:06:11.80 ID:5X6kGOcFo


「少し話は遡るが、第三位───御坂美琴について君はよく知っているようだな」

「……まあそこそこは」

「じゃあ彼女がどのような能力者かについては?」

「電気系統の能力者で……、あとは……。そうだ、唯一努力でLevel5になったとか。俺の学校でもよく取り上げられる」

「確かにその性質から学園都市といえば彼女、というところがあるのは知っているな?」

「それが?」

「しかし君は本当にそう思うか?」

「? どういうことだ?」

「御坂美琴が本当に努力でLevel5になったと思うか?」

「そりゃ……あいつが嘘をついているようには見えないし。まあ多少の才能ってのはあると思うけどさ」

「では、おかしいとは思わなかったのかね? 努力してLevel5になれるのならもう少し数が多くてもいいのではないかと」

「それだけあいつが凄い努力をしてきたってことだろ」
437 : ◆IoH/Hpd1z6[ saga]:2013/02/20(水) 08:06:39.28 ID:5X6kGOcFo


「……そうか、分かった。では、長い間済まなかった。と、言っておこう。もうそちらの話し合いも終わるようだ。実験は破棄。御坂美琴のクローンは今日は君が入院した病院へ預けておけ、私が連絡を入れておく」

「……分かった」

「そして君とはまた連絡をとることがあるかもしれない。その時を楽しみにしてるよ」

「……俺はもうごめんだけどな」

「ついでに御坂美琴には停電をそう何回も起こさないでくれとも言っておいてくれ」
438 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:07:56.82 ID:5X6kGOcFo







プツッ






電話が切れる。







……。
439 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:08:23.12 ID:5X6kGOcFo


"御坂美琴が本当に努力でLevel5になったと思うか?"






……どういう意図があって言われたか分からないが、
自分がLevel5になったなどという事や、最後のちょっとした冗談?より、その言葉だけが頭に残る。

何か妙な不安を感じるのだ。
440 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:08:52.81 ID:5X6kGOcFo


「終わったわよ。悪かったわね、待たせて。……って何してるの、アンタ」

「ああいや、別に。ちょっと電話が掛かってきただけだ」

「……ミサカは満足です」

「そっか、そりゃ良かった。一方通行はどうだ? ……ってお前…………」

「……」



頬が明らかに変色している。
赤じゃない、青にだ。

……よっぽど強く殴られたようだ。
441 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:10:21.47 ID:5X6kGOcFo


「んじゃこの後どうするか、だけど、御坂妹は近くの病院に行ってもらう。話はもうついてある。……道順は分かるか?」

「はい、この辺りの道順は一応記憶しています、とミサカはミサカネットワークから周辺情報を引っ張り出します」

「それは覚えているうちに入るのか……? まあいいや本当は送って行きたいんだけどちょっとこの後用事があるからダメなんだ、悪いな」

「あ、じゃああ私が送るわよ」

「いや、俺はお前らに用があるんだ」

「え、私?」

「ああ」

「ではミサカはもう行った方がよろしいのでしょうか?」

「ごめん、悪いな。何かあったら俺の家に行ってくれ。インデックスも電話は持ってるし何とかなるかもしれないからな」

「了解です、とミサカはミサカネットワークから引っ張り出した情報を元に歩き始めます」

「気をつけてな」
442 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:10:58.75 ID:5X6kGOcFo




っと、行ったか。



「さて、もう一度ベンチ戻るぞ」



三人でベンチに腰掛ける。


「で? 用って何?」

「あ、いや、そんな大したことではないんだけど、お前らには聞いておいてもらった方がいいと思って」

「……さっさと要件を言え」

「……お前ら、Level5の繋がりってのはあるの?」

「いやあ、私はコイツの他に一人二人顔知ってるかなーっていうくらいのもんよ?」

「俺も三、四人顔が分かる程度だ。それが?」

「……じゃあさ、第六位については何か知ってるか?」

「第六位……そう言えば聞いたことないわね」

「……」

「それがどうしたっていうのよ?」

「今から言うのは冗談じゃないからな?」

「勿体ぶらずにさっさと言え」








「第六位、俺なんだって」
443 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:11:37.01 ID:5X6kGOcFo





「……」

「……」

「……」

「ってはぁぁぁぁぁああああああ!?」

俺と同じ反応ありがとうございます。

「……」

こっちは意外と冷静。

「どういうことよ!? 第六位って……」

「まあ俺の場合科学とも言い切れないみたいだし俺自身本当にLevel5って実感もないんだけどな」

「ちょ、ちょっと待って! ……それは誰から聞いたの?」

「統括理事長」

「…………んんんんんんん!?」

「……まァ、そンだけイレギュラーなら別に不思議ではねェが…………。ヤツは他には何か言ってこなかったのか?」

「何かって?」
444 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:12:03.78 ID:5X6kGOcFo


「俺やオリジナル、クローンのこととかよォ、何か言われたっておかしくねェ。ヤツのことだ、その電話で何か企ンでいる可能性もある」

「ん? ……ああ実験は破棄だってさ」

「他には?」

「他は特には……。……いや、一つだけある。でも一方通行じゃなくて御坂に、だけどな」

「そォか、ンじゃ俺は帰る。オリジナルの処理はちゃンとしとけよ」

「処理ってお前……。あ、そうだ、俺のLevelのことは他言無用でよろしくとのことらしいから」

「ケッ、言う必要もねェよ」

「そっか、じゃあな。気をつけて」

「……」
445 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:12:35.36 ID:5X6kGOcFo


一方通行も帰って、今は御坂と二人。
統括理事長と聞いて頭がついていかなくなったようだ。

「おーい御坂ー」

「ハッ……! 私は何を……」

「もうみんな帰ったぞ」

「そ、そう……」

「……どうした?」

「……聞かないの?」

「何を?」

「さっきのこと」

「いや、いい。お前らだけで済ませたいことだってあるだろ?」

「そ、ありがと」

「……」

「……」

「……」

「……」





会話が続かない。
446 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:13:07.13 ID:5X6kGOcFo


「なあ御坂」

「何?」

「俺のLevelのことは他言無用でよろしくとのことらしいから他の奴には秘密な」

「そ、分かった」

「あと、そう何回も停電を起こさないでくれとも言われた」

「そんなに起こしてないわよ! ……多分」

「多分って……」

「……」

「……」

「……」

「……」






また、会話が途切れる。
447 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:14:03.84 ID:5X6kGOcFo


"御坂美琴が本当に努力でLevel5になったと思うか?"

"ヤツのことだ、何か企ンでいる可能性もある"




「なあ御坂」

「何よ?」

「Level5に"なった"時のことって覚えてるか?」

「もちろんよ。あんなに嬉しいと感じたことは無かったわ」

「そっか……。あのさ、良かったら俺に話聞かせてくれないか? 御坂が頑張ってきた話。クローンのことも含めて」

「……分かった」



少し間を開けて、御坂は話し始めた。

「私がまだ小学生の時─────────」
448 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:14:39.84 ID:5X6kGOcFo
おそらく、嘘もついてないし、隠してもないだろう。

懐かしく思いながら、同時に悲しむ。
そんな優しい表情で話してくれた。
449 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:15:13.53 ID:5X6kGOcFo



「……ずるいわよね、アンタって」


話が一区切りつくと、御坂はそんなことを言った。

「?」

「アンタがそんな奴じゃないのは分かってる。でも今まで頑張ってきたこっちとしては何もしてないのに自分より上に行っちゃうヤツがいるってのは辛いのよ……」

「……そうだな」
450 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:15:40.88 ID:5X6kGOcFo



……悪い、御坂。
俺はお前をもっと傷付けないといけないかもしれない。

このことは言うべきか、そうでないか?
……俺には分からない。

なら俺はどうしたい?
俺は……、



俺はこの一連の、クローンことについては真実を知って欲しい。
なら、もう迷わない。
451 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:16:12.52 ID:5X6kGOcFo



「なあ御坂」

「……」

「ありがとな、たくさん話してくれて。嬉しいよ」

「……」

「おかげで一つ分かったことがある」

「……?」


御坂は本当に色々話してくれた。




そう、
452 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:16:42.44 ID:5X6kGOcFo






「お前がLevel5になることは、ずっと前から決まっていた、かもしれない」








自分がLevel5を目指している"途中"で研究者にDNAマップを渡していることも、包み隠さずに。
453 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:17:09.86 ID:5X6kGOcFo


──────────
──────
────
──





あれからどうやって御坂に説明したか、どうやって御坂をなだめたか覚えていない。
でも、ずっと御坂の頭を撫でていたことは覚えている

後、声が出せないほどの驚きと、自分の信じてきた道が崩れてしまったことの悲痛が混ざったあの顔は忘れることができないだろう。
454 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:17:42.66 ID:5X6kGOcFo


「……少しは落ち着いたか?」

「……うん」

「悪かった、昨日の今日でショックなことばっかりで」

「いや……大丈夫」

「言わなくても良かったかもしれないけど。だけど、このことも含めてやっと前に進めると思ったんだ。だから言ってしまった、本当にごめん」

「……言ったことを後悔してるの?」

「……」

「……」

「……今この瞬間、後悔してるかって言ったらしてるかもしれない。けど、こっちの方がいいと思ったから言った。それは後悔してない」
455 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:18:33.99 ID:5X6kGOcFo


俺がそう言うと
御坂は久しぶりの笑顔を見せて、

「そ。それなら謝らないで。私も後悔してない。してるとしたら、それはこのことを自分で気づけなかったことよ」

俺も御坂の笑顔に応える。
自然に笑みがこぼれた。

「そっか。じゃあそろそろ帰るか

「……ジュース」

「うぐっ……」

「Level5の第六位サマなら財布に余裕あるわよね?」

「いやーあのー、別に今すぐ財布が分厚くなるわけじゃないんだけどなー」

「約束は約束よ、お金なくても買いなさい。誰かさんに泣かされて喉がカラッカラなのよ」

「お前は痛いところを……」
456 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:19:09.17 ID:5X6kGOcFo




こんな冗談まじりの会話をしながら、ゆっくりと常盤台の寮に向かって歩いて行った。
御坂とこんなにゆっくり話したのは初めてかもしれない。

とても落ち着いたその空間はとても気持ちのいいもので。
いつの間にか目的の場所に到着していた。


「じゃあな、気をつけて」

「気をつけるも何も帰るのはそこよ、何もあるはずないじゃない」

「ならいいんだ」

「あの……ほ、本当に今日はありがとう!」

「ん」


あの、プライドの高そうな御坂が頭を下げた。
いつもの俺なら、そんな感謝されることなんてしてない、自分のやりたかったことをやっただけだって言うはずなんだけど
こんなに感謝されたら、それはなんか違うんじゃねえかとも思う。
だから特に余計なな謙遜はせず、ただ手を振って自分の家へ向かう。
457 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:19:38.99 ID:5X6kGOcFo


……何事もなく家に着いてしまった。
本当にこれで良かったのだろうか。

自分の選んだ道に後悔はない。
考えたってしょうがないか……。



でも、




でも、俺は一体

誰と、何と戦えば良いのだろう……。



答えは出ないままドアを開ける。
458 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:20:18.19 ID:5X6kGOcFo





「ただいま、インデックス」




でも、これで俺は日常に帰れる。
インデックスに"おかえり"と、そう言ってもらえることで。
459 : ◆IoH/Hpd1z6[sage saga]:2013/02/20(水) 08:20:51.39 ID:5X6kGOcFo




「おかえりなさい」




























「と、ミサカは家主の帰りに返事をします」
460 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:21:27.20 ID:5X6kGOcFo






「お前かよ!!!」



もう無理……何か疲れた………………。


とうま、とうまー!! ちょっと、しっかりしてーっ!!
という声を聞きながら、安心しきってしまった俺の意識は途絶えた。 
 
461 : ◆IoH/Hpd1z6[sage]:2013/02/20(水) 08:21:59.83 ID:5X6kGOcFo


以上でーす

次のレス、後書き的な何か
462 : ◆IoH/Hpd1z6[saga]:2013/02/20(水) 08:44:48.39 ID:5X6kGOcFo

改めておはようございます

さて、三巻が終了しました。
さっさと終わるつもりだったのにこんなに長く……。
二巻もさっさと終わるつもりなのに長くなるかもしれないなあ。
でも上条さんの方の準備は全部整ったので、サクサク敵を倒して行って欲しいです。



一方通行が上条さんとアレイスターの電話にやたら噛み付いて来た理由。
それはオチと関係があったり。

あの後一方通行は病院に行って、上条さん家に御坂妹を強制送還。
もちろん、近くの病院とはカエルのところなんだけど、一方通行は知らないから、というわけで。

御坂も、このSSでは上条さんが絶望を与える役、と言いましたが
そのことで頭を下げる、にまでなりました
最後の帰り道は長年の親友のようなイメージです。
確かに>>411にある通り、慕われる存在になったのかも。
慕う、と言っても恋愛でない方の恋しく。いい仲間、という意味での。

今後どうなるかは未定だけど、今のところこんな感じではないかなと。



一方通行も御坂美琴も、徐々に成長していく、という話でした。




saga忘れたり、どっかのレスの最後"。"が抜けてたりまだまだですがこれからもよろしくお願いします

最後になりますが、

>>418>>419でトリップ変えてみました。
粉雪、とインデックスです。
粉雪には苦い思い出が……。今はちゃんと打ててるよね?
インデックスの方もそのあとサンクスと読めなくもなく、なんか好き。

どっちがいいのかな……変えないって選択肢もあるのはあるけどさ



では、長々とごめんなさい、一区切りの三巻終わり!
次は二巻、その時までー!
>>415の本人の要望通り、出番が増えるといいな


ではー

463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/02/20(水) 09:07:38.37 ID:p+PZZBsao

そんなトリップをよく見つけてきたもんだwwww

第六位はいいけど、他言無用ってなると学園都市的にはどういう扱いになるんだろ、LEVEL5は制限が多いし
具体的に言うと学園都市から出るときとか 申請時に第六位として扱うと「不在」の噂も含めて大変なことになるのでは…

464 : ◆IoH/Hpd1z6[saga]:2013/02/20(水) 09:22:39.67 ID:5X6kGOcFo

そこについて何も言ってなかったな、ごめん


他言無用、今まで通りのトップシークレット
つまり、基本的には第六位は秘密で上条さんは表向きただの無能力者
当然、アレイスター以外には、第六位幻想殺しの名前で会話、交渉は出来ない
学校もそのままだしLevel5らしい面倒くさそうな制約も無し、もちろんIDも書庫もそのまま
今まで通り上条さんを利用するための「他言無用」
「今まで第六位は秘密だったから今後も黙っておいて」っていうのは嘘
言われるとその制約とかが面倒だからということです

何がやりたかったかっていうと
ただ上条さんが強くなって欲しかっただけで、ちょうどLevel5に空きがあったから入れただけ

んじゃ


483 : ◆index//3x.2013/02/27(水) 00:47:36.67 ID:T5nCE3yEo

ここまでのまとめ

7/20
上条さんがタイムスリップで戻って来た日
インデックスと出会い、神裂、ステイルと話し合いをし、インデックスを助ける

7/21
カエル病院から始まって、ビーム出して樹形図の設計者破壊、妹達に遭遇
一方通行と遊ぶ、うざ条さん爆発
インデックス、一方通行、御坂妹とお泊まり会

7/22
お泊まり会二日目
実験当事者達の話し合い
途中、逆さま様から電話、上条さんLevel5の第六位になると同時に上条さんには逆剥けがあることが判明
電話終わってLevel5二人には自分のこと話す、残り4人
話を聞いた一方通行が御坂妹を上条家へ強制送還
御坂、成長


こんなかんじかね


ところで、よくよく考えたら2巻って8/8なんですね……
今まとめてみて思ったけど、あんだけ2巻先やるって言っといて4巻やることになるかもしれないなあ

その空白の2週間の後に4巻ってなんかおかしいしね

時系列は4巻が先だけど書くのは2巻が先っていうこともできるけど、どうしよう

散々2巻やるって言ってしまった以上、期待してくれてる人がいるかもしれないし、姫神さんに関しては本人が降臨してしまってるから迷ってる

どっちがいいですかね?
流れ的にこっちの方が……でもよし、どっちが見たいかを単純に答えてもらってもよし

何か書き込んでいただけるとありがたい

ではー 
 
487 : ◆index//3x.[sage]:2013/02/27(水) 12:16:39.44 ID:T5nCE3yEo
>>437訂正

「……そうか、分かった。では、長い間済まなかった。と、言っておこう。もうそちらの話し合いも終わるようだ。実験は破棄。御坂美琴のクローンは今日は君が入院した病院へ預けておけ、私が連絡を入れておく」



「……そうか、分かった。では、長い間済まなかった。と、言っておこう。もうそちらの話し合いも終わるようだ。実験は破棄。御坂美琴のクローンは今日は君達がこの間診察して貰った病院へ預けておけ、私が連絡を入れておく」

に変更
上条さん入院してないしね 
 
 
492 : ◆index//3x.2013/03/12(火) 23:31:12.93 ID:ZDKaBtObo




「待ちやがれええええええ!!!」

「ああもう不幸だあああああ!」


上条当麻は不幸な人間である。
Level5になろうがそれは変わらない。

不良たちに絡まれている女の子を助けようと思ったら、今度は俺が絡まれてしまっていた。






そんな今日は7月25日。
493 : ◆index//3x.2013/03/12(火) 23:31:42.09 ID:ZDKaBtObo


────────
──────
────
──




……ふぅ。
やっと巻くことに成功した。

今は補習帰り、時刻は昼。とにかく暑い。



さて、これまでのことを少し。
494 : ◆index//3x.[saga]:2013/03/12(火) 23:32:44.72 ID:ZDKaBtObo


あの日、玄関でぶっ倒れた俺は、そのままインデックスと御坂妹にベッドに運ばれたらしい。起きた時はもうすでに夕方になっていた。
インデックスは「大丈夫?」と言いながらお粥を作ってくれていた。風邪じゃないけどとてもありがたかった。
それを食べ終えた後、御坂妹に何でここにいるのか聞いた。
俺は何かあったら来いとは言ったけど、その時にインデックスに連絡して貰うようにも言ったはずだ。
なのにインデックスからの着信はなかった。だから不思議に思ったのだ。

御坂妹によると、特に何事もなく病院に着くことは出来たらしい。
じゃあ向こうの患者とかがいっぱいだとか先生が忙しかったとかなのか? と聞いてみると御坂妹は違うと言った。
495 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:33:19.13 ID:ZDKaBtObo


「一方通行に連れてこられました、とミサカは懇切丁寧に説明します」

……は? と思ったがすぐに納得した。
何でアレイスターとかいう奴の電話のことにあんなに噛み付いてきたのかが不思議だったけど、こういうことだったのか。
あいつも前に進んでくれているのかな? そうだと嬉しいと思う。

「白いお友達がね、いいからこいつ預かれっていきなり言うからびっくりしちゃったんだよ」

インデックスの言葉に俺は苦笑した。
それがあの日起こったこと。
496 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:34:29.33 ID:ZDKaBtObo


御坂妹が帰ったあとには、俺がLevel5になったこと、それは他の人には黙っていて欲しいということも言った。
インデックスは凄いね、と喜んでくれたけど、危ないんじゃないか、とも心配してくれた。
今度奨学金が入ったらお腹いっぱいご飯を食べさせてあげれたら嬉しいなと思う。

次の日からは溜まっていた補習だった。
溜まっていたって言ってもこの頃は学校を休んでたってことはなかったから、そんなに状況が厳しいわけではなかった。
それが23日、24日。

24日にはインデックスと銭湯に行った。
前は行けなかったから、同じ日に行くことができて良かったと思う。

そして今日だ。
午前中に補習を終えて、帰る途中。
女の子が絡まれているのを見つけ、話は戻る。
497 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/12(火) 23:35:45.25 ID:ZDKaBtObo


……少し歩くと、目の前にはコンビニがあった。

ちょうど喉も乾いたし、飲み物でも買おう。
そう思ってコンビニへ入る。

「いらっしゃいませー」

まず飲み物コーナーへ。
こんな時は炭酸が飲みたくなる。
炭酸ジュースを一つカゴにいれる。

……そういえば最近は勉強もしている。
これから何が起こるか分かっている分、早く終わらせないとヤバイのだ。

「コーヒーも買っとくかな」

夜必要になるかもしれないしな。
ブラックとかのが効果はいいのかね?
498 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:37:05.01 ID:ZDKaBtObo


「……って一つもねえ!!」

おいまじか……。
どうしたらコーヒーのブラックだけが全部なくなったりするんだよ……。
しゃーない。微糖で我慢だ。

よし、レジへ……っとアイスをインデックスに買ってくか。
もしかしたら御坂妹も来てるかもしれないし、このでかい奴でいいか。俺も余ったら食えるかもしれないしな。

「550円になりまーす、ありがとうございましたー」

外に出るととても暑かった。
コンビニが涼しかっただけに、余計に暑く感じる。

早く家帰ろう。インデックスも待ってるし、暑い。

そう思って近道となる路地裏へ入っていった。
499 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:37:57.59 ID:ZDKaBtObo


「あー。涼しいし一石二鳥だな、これ」

と思いながら歩いていると、案の定見つけてしまった。
不良集団である。誰かを囲んでいるようだ。
……また走んなきゃなんねえかな、人数多いし。
いやまあこうなるとはちょっと思ってたんだけどね。


そんなことを考えながら近づいてみると、会話が聞こえてきた。
500 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:38:49.07 ID:ZDKaBtObo


「お前、Level0に負けたらしいじゃねえか」

「うそ、マジかよ? じゃあ俺らもいけんじゃね?」

「こいつ倒したら俺らの強さってもんを証明出来んじゃね?」

「……面倒くせェ…」

何だ何だ? 何の会話だ?
Level0が能力者を集団で襲ってるってことでいいのかな?
とりあえず助けに入ってみるか。

「おーい、どうしたんだよこんなところでー……ってお前かよ!!」

「……まァた面倒くせェのが」

「面倒くせえってひどいなお前」

そこまで言って気づく。
こいつの持ってるビニール袋の中に大量のブラックコーヒーが入っていたことに。

「お前か! 俺の缶コーヒーを買って行った奴は!」

「……はァ?」

「上条さんはお前のせいでブラックが買えなかったんだよ!!」

「知るかよ。……っていうか後ろ」

「は? 後ろってお前……」
501 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:40:14.11 ID:ZDKaBtObo


「……お前何の用だ。こいつを知ってるような口振りだがこいつは俺らの獲物だ、どけ」

「獲物って……。でもこいつLevel5だぜ? しかも第一位の」

「んなことは知ってんだよ。こいつを倒したら俺らの強さの評価も上がるってもんだろ?」

「出来んのかよそんなこと」

「お前知らねえのかよ。なんでもこいつLevel0に負けたらしいじゃねえか。こいつを肩に担いでるやつを見たってやつがいるんだよ。じゃあ俺たちでも勝てるってことだろ?」

「あー……」

一方通行の方を見る。

「……」

目を逸らすな!

「今の反応見たかよ!? やっぱり噂はマジなんじゃねえか!」

「おいおいマジかよ!」

「やめとけって」

「うっせえな、こんなチャンス滅多にねえだろうが!」

「でもLevel0に負けたからってこいつが弱くなった訳じゃねえだろ?」

「……関係ねえな、というかお前さっきから何様のつもりなんだよ。まずはお前からやるか?」

「やめろって」

「……何でこいつこんなに余裕ぶってんだ? ……ってあ!」

「おい、どうしたよ?」

「なあ、Level5に勝ったLevel0ってやつの特徴覚えてるか?」

「……たしかツンツン頭で、ウニみたいだとかなんとか…」

「ウニじゃねえよバカ野郎!」
502 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/12(火) 23:41:15.32 ID:ZDKaBtObo


「……」

「……」

「……あ」

「……何やってンだ」

「おいお前ら、まずはこいつからだ! こいつを倒したら第一位を倒した男の更に上だぜ! 今日はラッキーだな!!」

「よっしゃあああああああ!!!」

「ちょ、ああもう一方通行!!」

「ほら、オマエの欲しがってたブラック一本やるから頑張って逃げろ」

「ふざけんな!! ……不幸だああああああ!!!」

今度会ったら絶対ビームしてやる……。
そんな感じで本日二回目の逃走。
503 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:43:11.62 ID:ZDKaBtObo


────────
──────
────
──

また、何とか巻いて。
炭酸はもう物凄いことになってたから捨てて、家は目の前。

「ただいまー……」

「おかえりー……ってすごい汗かも!?」

「まあ、ちょっとな……」

「……だいたい分かったんだよ、お疲れ様」

「いや、今回は俺が追いかけられたんだ」

「? 昨日もそうじゃなかった?」

「今日は標的が俺だったってこと」

「何でなのかな?」

「俺が一方通行を倒したLevel0ってのがばれたんだよ」

「え、でもとうまは今……」

「他言無用、って言ったろ? 俺はその辺ではいつもと変わらぬLevel0なんだよ」

「それじゃ外に出るのも危ないかもしれないんじゃ……」

「かもな。まあ何とかなるだろ。いざとなったら一方通行を連れてくる。ふふふ、あいつ覚えとけよ……」

「とうまがなんだか黒いオーラを……」
504 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:43:49.61 ID:ZDKaBtObo


「あ、そうだインデックス。アイス買ってきたから溶けないうちに冷凍庫いれといて」

「わあ、おっきいの買ってきたんだね」

「御坂妹が遊びに来てるかもしれないと思ったからな」

「今日は来てないね」

「そっか、まあまた来た時にでもあげてやってくれ」

「了解なんだよ!」

さて、どうすっかな……。
……とりあえず宿題しよう、焦っても仕方がないしな。
505 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:44:54.52 ID:ZDKaBtObo


昼食をとった俺は早速宿題に取り掛かることにした。

「とうま、お勉強?」

「ん? ああ、学校の宿題な」

「テレビ消した方がいい?」

「いや、気にすんなよ」

「ありがとう。……宿題見せてもらってもいい?」

「いいけど……」

「うーん」

「どうした?」

「よし、この教科なら何とかなりそうだね」

「?」

「とうまがね、学校に行ってる間暇だったから本棚にある教科書見せてもらったんだけどね」

「あーなるほど、全部覚えちまったってことか」

「うん。だから私も手伝おうと思って」

「マジ?」

「うん、ついでに英語も教えてあげるんだよ」

「それはありがたい、英語話せるようになんねえと今後困るしな」
506 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:46:12.20 ID:ZDKaBtObo


「その今後っていうのはいつ? 社会に出てからってこと?」

「いやもうすぐだけど?」

「……やっぱりやめようかな、とうま危ないことしに行くみたいだし」

「お、おい。頼むってインデックスさん!」

「……じゃあ約束。何があっても絶対帰ってきてね」

「ん、もちろん」

何を今更。
こっちは最初からそのつもりだ。
507 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:46:40.08 ID:ZDKaBtObo


『じゃあ今から英語で話すんだよ、ちゃんと話せるようになろうね、とうま』

「英語でいきなり話されてもわかんねえよ!!」

「甘いんだよとうま! 教科書見たけど、あんなのできたところでろくに話せないかも。逆に言えば、話せたら学校の授業なんてちょちょいのちょいなんだよ!!」

「だからっていきなり……」

『さあとうま、頑張ろうね? ……ところでお腹空いたんだよ』

「晩ご飯まで我慢しなさい」

「……え? 聞こえてたの?」

「さすがの上条さんもそれくらいは分かるわ!!」
508 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:48:00.09 ID:ZDKaBtObo


『ふーん、まあいいけどとうまはバカだからね。もう一回繰り返すけどバカだからこれくらいの英語だともう何言ってるか分からないんじゃないのかな? …… この際不満をぶちまけてあげるんだよ。まず何で夏休みなのに学校行ってるのかな!? それに帰りには女の子を助けてばっかり……。ここ3日間毎日汗だくで 帰ってきちゃってさ。見てるこっちの身にもなって欲しいんだよ。ああまたかって思っちゃうよね!! 危ないことにもすぐに首を突っ込む癖も何とかならない のかな?』

なんか分からんがインデックスの動きから馬鹿にされていることだけは分かる。
英語も大事だけど、ボディーランゲージも大事なんだなとしみじみ思った。

『って聞いてるのとうま!? 聞いてないみたいだね……。もう文句はいいんだよ、聞いてないなら……』

はあ、不幸だ……。

『いつもありがとう。恥ずかしくて英語でしか言えないけど、いつも感謝しています。ずーっと一緒にいてね。大好き、とうま』
509 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:49:10.80 ID:ZDKaBtObo



……いや、そんなこともないかもしれない。
そしてやっぱりお前は俺を馬鹿にしてるな?
俺だって"I love you"の直訳くらいは分かるぞ、インデックス。



「ありがとうな、インデックス。英語と暗記科目はインデックスに教えてもらうことにするよ」

「分かったんだよ」

「アイス食べながらでもいいぞ、とって来いよ」

「いいの? とうまはどうする?」

「俺の分もインデックスが食べてもいいぞ、ほんのお礼だ 」


いつか、今のセリフが全部聞き取れるようになれるといいな。
インテックスの母国語で、インデックスの伝えたいありのままのニュアンスで本音が聞けるようになりたい。


「ほんとに!? ありがとう、とうま!!」

「どうだ、おいしいか?」

「うん!! えへへ……」
510 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/12(火) 23:49:40.43 ID:ZDKaBtObo


だから、ちょっと頑張ってみようかな。

インデックスの頭をなでながら、そう思う。
ありがとう、インデックス。 
 
513 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:03:37.92 ID:wY3r+NiNo


prrrrrr……

……っと、誰だよこんな時に。



「げっ……」

「どうしたの? とうま」

「ああいや、電話だよ電話」





ディスプレイには何も書かれていなかった。
514 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:05:21.85 ID:wY3r+NiNo


「……今度はなんだよ」

『君は本当に馬鹿だな。よくも余計なことをやってくれたものだ』

「…お前もか!!」

「……英語の勉強になると思ったんだが……迷惑だったか」

「ああ迷惑だね!! で、用件は?」

「さっき言っただろう」

「は? ……ってだから英語分かんねえって」

「君は本当に馬鹿だな。よくも余計なことをやってくれたものだ。と言ったのだが」

「はあ?」

「心当たり、あるだろう」
515 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:06:18.77 ID:wY3r+NiNo


「そんなもの……」

ねえよ、と言いかけて気づく。

「……あ」

「気づいたか」

「……俺、学園都市で生きていけるかな」

「全く。自分から名乗り出るとはまるでウニのような奴だな」

「うるせえ!! なんだよウニみたいなやつって!!」

「……まあいい。このままでは君の顔が学園都市で一番有名になる日が近いかもしれない。一旦学園都市の外に出てきたまえ。時期も夏休みだ、ちょうどいい」

「で、でも俺補習とかもあるし……」

「なんだ、君は自分の命より補習が大事だと言いたいのか」

「いや、そうは言わねえけどさ」

「では、その件に関してはこちらで何とかしておこう。行き先、許可証などを含めてすべての連絡は明日学校で聞くといい」

「……わかった」

両親には悪いけど、連絡はしないでおこう。
またあんなことが起きては困る。

「こちらの用件は以上だ。出発は明日。何か聞きたいことは」

「特にはねえよ」




ブツッ。



電話が切れる。
516 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:06:47.61 ID:wY3r+NiNo


「……ふう」

「……誰からだったの?」

「学園都市のお偉いさんだよ、明日から学園都市の外へ旅行だと」

「旅行!? どこに行くのかな?」

「うーん、知らされてねえな」

「なんか楽しみだね!」

「そうだな……」



海、なんだろうか……。
517 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:07:33.64 ID:wY3r+NiNo


────────
──────
────
──



次の日。

「いってきます」

「いってらっしゃーい」


午前7:30、俺は家を出た。もちろん学校へ向かうためだ。
今日の朝が早かったために、まだ用意はしていない。
というかそもそも旅行期間がどれだけなのか聞くのを忘れていたから、昨日から用意が出来ていないのだ。
一応2、3日分は用意しておいたけど、情報の隠蔽にどれだけかかるか分からない。
何しろ今回は噂でなく、本人(俺)が直々に認めてしまったのだから。

そんなことを考えていると、学校に……
518 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:08:05.38 ID:wY3r+NiNo


というほど学校が近いわけでもなく、ふと殺気を感じて振り返ると後方に見つけたのは不良様方。
前方じゃなくて良かった。非常によかった。



と、いうわけで、今日も




「不幸だああああああああ!!」



夏休み何回目か分からない、鬼ごっこ。
519 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:09:04.47 ID:wY3r+NiNo


「はあはあ……あー」

「……随分と走ってきたようね」

「ん? ああ吹寄か。……って何でここに?」

「何よ。あたしがいちゃ悪いって言うの?」」

「いや悪いとかじゃねえんだけどさ。吹寄、補習ないだろ?」

「自習のために来たのよ。家にいてもサボりがちになっちゃうでしょ」

「へー」

「で、貴様はどこへ行くの? そっちは教室じゃないと思うんだけど」

「ちょっと職員室にな」
520 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:09:50.13 ID:wY3r+NiNo


「何、貴様また何かやらかしたの!?」

「またってまだ何もしてねえよ」

「本当かしら」

「本当だよ!」

「まあいい。ちょうどあたしも月詠先生に用事があるし、一緒に行ってあげる」

「えー……」

「文句言わないの。何かやましいことでもあるの?」

「いやねえけどさ……」

今回のことはあんまり知られたくねえんだよな……。
特に今回小萌先生には俺の事情話そうと思ってるし。
521 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:10:58.43 ID:wY3r+NiNo


「ならいいじゃない。……ところで上条。貴様は噂聞いた?」

「噂?」

「第一位をLevel0が倒したって話」

Levelがアップするとかいう食べ物などに興味がある吹寄だ。
こんな話、やっぱり気になるのだろう。

「あー……」

「やっぱり知らないの、貴様は」

「いや、知らねえっつうか……」

「何よ、はっきりしなさい」
522 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:11:49.16 ID:wY3r+NiNo


6人、だったよな、俺が俺のことを言っていい数って。
インデックス、一方通行、御坂。
そうするとあと三人。
で、今回小萌先生には言うつもりだから、後二人として。
……吹寄には言うべきか?

確かにクラスメイトには一人知ってもらった方がやりやすいし、それなら吹寄が一番いいと思う。
土御門は俺と同じく学校にいない時が多いからな。

でも本当にいいのか?

小萌先生はなんだかんだ言って見逃してくれているところがあった。
魔術も一応体験したために、俺が何かをしていることはわかってくれていたようだ。
今回は魔術のことなど何も知らないと思うけど、それでも見逃してくれそうではある。
ただ、吹寄は違った。何も知らないがために、逆に深くまで入り込んで来る。
ここで教えてしまったとして、さらに深く調べようとしてしまうかもしれない。
それでは非常にまずい。


ただ、クラスに一人だけでいい。自分の事情を知ってくれている人がいたら、どんなに楽か。



「……どうしたのよ?」

「……なんでもねえよ。多分職員室でその話も出るだろうから、その時に全部話すよ、全部な」
523 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:12:39.44 ID:wY3r+NiNo


……決めた。

全部話した上で、守る。


……何迷ってんだ、最初に決めたじゃねえか。
今回は自分も含めて笑顔でいる、と。自分だけが犠牲になればいいってのは俺を待ってくれている人が悲しむからって。

だから、話そう。
俺の事情を知ってもらって、それでいてこっち側には来させない。
それだとまた俺が犠牲になるから、俺の仕事は、自分を犠牲にせずに敵を倒すこと。

難しいがやるしかない。
学校では小萌先生、吹寄を始め、クラスメイト。家ではインデックス。

俺の居場所は何があっても守る。




絶対に────────。
524 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:13:26.15 ID:wY3r+NiNo


「「失礼します」」

「あ、上条ちゃんに吹寄ちゃん、おはようございます」

「おはようございます、先生。今日補習の後教室を使わせて欲しいんですけど……」

「了解なのですよ、じゃあ開けておくのですー」

「じゃあ次俺なんですけど……」

「上条ちゃん、何をしたのですかー? 上条ちゃんに一週間の学園都市の外への外出届、そして補習の免除。そんなの聞いたことないのです!」

「……まあいろいろあるんですよ」

「……貴様本当に何もやってないの?」

「そ、それなんだけどな……」
525 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:14:47.41 ID:wY3r+NiNo


一旦唾を飲み込む。
深呼吸をして……

「小萌先生は、第一位がLevel0に負けたって話、聞いたことありますか?」

もう、戻れない。

「あ、はい。聞いたことあるのですよ。それがどうかしたのですか?」

「……そのLevel0が俺って話です」

「……は?」

「ちょ、ちょっと待つのです!! それはいつのことなのです?」

「つい最近ですよ、噂が出始めた頃です。当たり前だけど」

「貴様、ふざけてるの?」

「大真面目だよ」

「でも貴様何も能力ないじゃない。Level5、しかもその中の第一位なんてどうやって倒すのよ」

「能力ないっていうか……。正確には学園都市の機械じゃ測れないっていうか……」

「……どういうこと?」

「俺の右手には幻想殺しってのがある。どんな能力かっていうと、どんな異能の力でも打ち消すって能力だ。だから学園都市の機械じゃ測れないし、打ち消して しまうからどんなに能力開発したってそれが芽生えることはない。ちなみに第一位の能力だって消せる、例外なくな。だから倒せたってわけ」
526 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:16:19.01 ID:wY3r+NiNo


「……それが本当だとして、何で学園都市の外へ出ないといけないのです?」

「今では第一位って友達なんですけど、あいつと話してた時にあいつを狙おうとしてる奴らに俺のことがばれちゃって……。俺の命が危ないからって避難命令ってことらしいです」

「じゃあその前に何で第一位なんかに喧嘩売ったのよ。まさか貴様もその第一位を狙う奴らの一員だってこと?」

「それはねえよ。詳しくは話せねえが、あいつや第三位の──御坂美琴の妹を助けただけだ」

「貴様第三位も知り合いだっていうの!?」

「まあな」

「か、上条ちゃんがどんどん遠い存在になっていくのです……」
527 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:18:19.53 ID:wY3r+NiNo


「で、もう一つ。さっきはLevel0って言ったけど、第一位を倒した後、統括理事長から電話があってさ。Level5の第六位になったんだ」

「……」

「……どこから突っ込めばいいか分からないんだけど」

「でもそこの外出届が何よりの証拠だぜ? 何かあいつが全部用意してくれたらしいし」

「……まあ確かに」

「……というわけでお願いなんですが、このことは秘密にしておいて欲しいんです。他言無用って言われてるんで」

「じゃあ何であたしに言ったのよ」

「先生には元から言おうと思ってたし吹寄にはクラスメイト代表として知っておいてもらいたいと思ったんだ。実質クラスまとめてるのってお前だろ? だからそういう人に言った方がいいと思ってさ」

「……そ」

「あと先生。学園都市の能力かすら分からない俺の能力ですけど、ちゃんと開発の授業も受けますしそれの補習も受けます。ただ、俺の事情だけは知っておいて欲しかったんです。開発はできないってことを」

「……分かったのです」

「あともうひとつ。連絡しないで学校休んでしまうことがあるかもしれないけど、それについての補習もちゃんと受けるつもりですから心配しないでください」
528 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:19:32.32 ID:wY3r+NiNo


「どこか行くつもりなの?」

「困っている人がいたら手を差し伸べる、ただそれだけだ」

「……何を言っても無駄そうね」

「悪いな、必ず帰ってくるから大丈夫だ。クラスのこととか多少手伝えなくなるかもしんねえけど……」

「分かってるわ。サボったりやる気がないとかじゃないならいいの。それくらいならあたし達だけで何とかできる。その代わり絶対にその困ってる人達は助けて、貴様は元気に帰ってきなさい、約束。いや、命令よ」

「分かった、必ず守るよ」

「……先生にも約束してください。危なかったらちゃんと先生に言うのですよ?」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ上条ちゃん、今日ももう帰っていいのです」

「今日の補習も無しってことですか?」

「はい。明日からの準備もいろいろあると思うのです」

「……ありがとうございます」

「……じゃああたしは教室行きます。上条も職員室出るわよ」

「はいはい。じゃ、先生。迷惑かけますけど……」

「任せるのです。それよりも明日はご両親も来てくださるそうなので今日はしっかりと体を休めてくださいね」
529 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:20:10.43 ID:wY3r+NiNo




「……え?」

「はい早く行くわよ」

「ちょ、吹寄! 引っ張んなって!! こ、小萌先生! その話詳しく……」

「失礼しました」






ピシャリ。







「……じゃ、上条。家に帰る時に死なないようにね」

「……妙にリアルなこと言うなよな、んじゃ」
530 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:21:01.28 ID:wY3r+NiNo


……ややこしいことになってしまった。

今から両親にくるなというのはおかしい気がする。
いや、それでもあんな術が起きてしまうよりはマシなはずだ。



携帯を手に取る。


prrrrr……

「もしもし、当麻さん?」

「あ、母さんか? 今どこにいる?」

「今は……ええっと、近くのスーパーかしら。とりあえず買い物を済ませて、刀夜さんが帰ってきたら向かうつもりだけれど……」

「ということは、もう家出てるんだな?」

「はい、そうですよ」

「分かった、ありがとう。じゃ」


やばい。
二人とも出ているとなると手遅れだ、魔術が発動する可能性がある。
今さら止めたところで変わらない。


……じゃあやることは一つ。


インデックスがあんな悲惨なことになってはいけない!!


家に向かって全力で走る。
531 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:22:00.60 ID:wY3r+NiNo


……この時俺はインデックスの悲劇を思い浮かべて焦っていたが、大切なことに気づいていなかった。
父親は仕事で家をあけている。ここまではいい。
その時に母親は絶対に家にいるのかと言われたら、そうではない。さっきのように買い物に行っている可能性もあるのだ。

つまり何が言いたいかというと。



あの時のが別にいつも通りの行動だった場合、あの時来るのを止めておけばまたこんな魔術は起こらなかったかもしれなかったということだ。


だって週に何回も世界に影響を与えるような大魔術が起きたりはしていないんだから。


それに気づいたのは土御門から俺の家に起きた魔術の詳細をもう一度説明されてからだった。
532 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:25:45.22 ID:wY3r+NiNo


「インデックス!!」

「おかえり、とうま。早かったんだね」

「無事か!?」

「……何が?」

「良かった……」


急いで家に帰った俺はまずインデックスの状態を見た。
良かった、何もなってない。
533 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:26:57.13 ID:wY3r+NiNo


「……どうしたの、そんなあわてて」

「いや、何もなかったならいいんだ」

「変なの」

「ところでさ、何か大魔術が起こりそうな予感とかしない?」

「うーん……特にはね。何、なにか起こるの?」

まあ確かにこの間の時も気づいてなかったみたいだしな、などと考えながら伝えるべきことを伝える。

「おそらくもうすぐ起こる。いいか、インデックス。旅行は一週間だ。俺たちが準備したのは2、3日分。だから今から用意をする」

「う、うん」

「そこで俺は対策として今から力を俺とお前の周りに放出し続ける。だから」

「歩く教会は入れない、着ない?」

「そういうこと。悪いな、足りなかったら向こうで買えばいいし母さんに買ってきてもらうこともできる」

「そっか、分かったんだよ」

「じゃあ準備するか」

「うん」

「ちなみに行き先はここ。海だってさ。水着も買わないとな」


先生に貰ったプリント類を全部見せる。
場所はこの前と同じ。


「うわあ、何か良さそうなところだね。……って何このとうまのサインだらけの資料」

「Level0でも学園都市の外へ出るのは大変なんだよ」
534 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:27:27.66 ID:wY3r+NiNo


それからしばらく用意をして、終わったので寮を出る。
タクシーはあらかじめ呼んでおいた。

「じゃあインデックス。忘れ物ないか?」

「うん、もともと持ってくるものも少ないからね」

「おう、じゃあ行くか!」

「うん!」
535 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:27:58.92 ID:wY3r+NiNo


タクシーに乗り込む。
行き先はと聞かれたのでとりあえず学園都市の外の駅名を言っておいた。
そこからは電車だ。

学園都市は普段はあまりそうは思わないが、こう車で移動したりするとやはり小さい。
思っていたよりもすぐにゲートのところまで来てしまった。
インデックスともそんなに話していない。


……まあそれもそうか。景色の話をしようにも、まだ見慣れた景色なのだから。


インデックスのゲストIDも難なく認められ、駅到着。
ここからは電車だ。

インデックスと電車に乗るのは初めてだ。


「電車まだかな?」

「遅れない限りもうすぐだ。……ほら来たきた」
536 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:29:04.95 ID:wY3r+NiNo


電車は割とすぐに来た。
乗り込むと、ちょうど二人席が空いていたので、座る。

「ふいー。ねえとうま、電車ってどれくらい乗るの?」

「うーん、着く予定時間から考えて一時間半から二時間くらいじゃねえかな」

今は12:30。着くのはちょうど暑い時間帯の予定だ。

「それよりインデックス。腹減ってない?」

「とっても減ったんだよ」

「正直俺も何か食べたいんだよな……。弁当もう食うか」

「それがいいと思うんだよ!」


海の家に着いたら何か食べれると思っていたが、一応作っておいた弁当。
あり合わせのものだけど、インデックスは美味しそうに食べてくれる。

「おいしいんだよ、とうま!」

「そりゃ良かった。向こうついたらもっとうまいもん食おうな」

「うん!」


さて、俺も食うか。
……あ、容器はちゃんと使い捨てのやつです。
一週間も上条さんのバッグに弁当箱入れておいたらどうなるか分かったもんじゃない。それに荷物にもなるし。
537 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:29:50.04 ID:wY3r+NiNo


「「ごちそうさま」」

「食べ終わっちゃったね」

「だな、どうしよう……暇だな」

「そうだね……」

「何する?」

「にゃにしょ……」


……そういえば、さっきから周りに変化がない。
まだあの魔術は起こっていないようだ。
一応対処法は考えてあるにはあるんだけど……。

……まあ今は考えたって仕方ないか。
両親は二人とも家を空けてるみたいだし、もうすぐなのは確かなんだ。





それよりも今は

「なあインデックス。またちょっと英語を教え……」
538 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:30:16.50 ID:wY3r+NiNo




ぽすん





「すぅ……」

インデックスの頭が俺の肩に乗る。
心地よい香りがする、とても落ち着く。



俺まで眠たくなってくるが、経験からしてここは絶対に寝てはいけない。
寝過ごすかもしれないし、何より一番怖いのは起きた時俺の肩に寄りかかってるのが青髪ピアスだったらと思うとゾッとする。

……想像したら眠たくなくなってしまった。
これはこれで結果オーライ。
インデックスの頭をなで続けて到着を待つ。
539 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:30:46.37 ID:wY3r+NiNo


────────
──────
────
──



「おーい、インデックス。起きろ、次の駅だぞ」

「……うにゃ。……はっ!? ごめんね、寝ちゃってて……。暇だったでしょ?」

「いやいや。確かに暇だったけどインデックスの寝顔見れたからそれはそれでオッケー」

「うー。またとうまはそうやって恥ずかしいことを……」

「あれ、俺何か恥ずかしいこと言った?」

「いいや、別に何もないかも」

「そ、そうか」

「あ、……とうま!! 綺麗な海が見えるんだよ!!」

「ああ、確かに綺麗だな」

さっきから俺は見てるけど、なんて言ったら今度こそ怒られるに決まってる。
540 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:31:18.22 ID:wY3r+NiNo


「さて、降りるか」

「うん。楽しみだね、とうま!!」

「ああ。とりあえずまず駅前のこのデパート行くか。インデックスの水着買わねえとな」

「え? いいの?」

「何言ってんだ、せっかく海に来たのに入れないなんて嫌だろ?」

「えへへ……ありがとう」


……何か照れる。


デパートはそこら辺にあるものとほとんど変わらず、女性用の水着売り場はすぐに見つかった。
男子高校生の上条さんとしては、下着売り場に続いて入りにくい店だ。


「ねえとうま、どれがいいかな?」

「好きなのにしろよ、一応お金は多めに持ってきたから」

「むう。そうじゃなくてとうまに選んで欲しいの!」

「……いいのか? 俺のセンスを当てにするなよ?」

「とうまが選んでくれたのなら何でもいいの!」

「わ、分かったよ……」
541 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:31:57.57 ID:wY3r+NiNo


インデックスは譲ってくれそうもないので、ここは引いて俺が選ぶことにする。
つってもなあ、水着映えする体型とはお世辞にも言いにくいし……。
あと数年もしたらどうなるかは分からんけどさ。
ふむ……。


「……何か失礼な目線かも」

「い、いやあ、そんなことはないぞインデックス。……ほ、ほらこれなんかどうだ?」


たまたま手にとったのを渡してみる。


「うーん……何か微妙かも」

「微妙ってお前……。インデックスが選べっつったんだろ?」

「そうだけど……」

「何か気に入らないのか?」

「うーん……」


お気に召さないようだ。
別にインデックスならどれ着てもちゃんと似合うと思うんだけどな。





……あ?
542 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:32:27.31 ID:wY3r+NiNo


「ちょっと待っててインデックス」

「ん? どうしたの?」


……見つけた。
前にインデックスに買ったのと同じ。
たまたま向いた方向でこれを見つけるとはなかなか運がいいかもしれない。
よし、これにしよう。前も可愛かったし、きっと気に入ってくれるだろう。


「インデックス、これこれ。これなんかどうだ?」

「わあ、可愛いかも……」

「良かった……。それにするか? それともまだもうちょい見てく?」

「いや、これにするんだよ」

「そっか、じゃあ早速レジ行くか」


インデックスの水着、無事購入。
543 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:33:45.30 ID:wY3r+NiNo


さっきは母さんに頼めばいいやと思っていたが、どうせデパート来たんだからとインデックスの服と下着を買った。
それにしてもやっぱり下着売り場は恥ずかしかった。
インデックスは下着も俺に選ばせようとしたが、それは丁重にお断りさせていただいた。


「インデックスの肌のこととかはき心地とか、本人じゃないと分からないだろ? 俺が変に選んだせいでインデックスがはけないなんてことがあるかもしれないからな」


っていう言い訳は、今後も使えそうだ。我ながらナイスだったと思う。
代わりに服は全力で選んだ。
これも我ながらナイスだったと思う。インデックスは俺が選んだものにとても満足してくれた。

そうこうしている内に一時間半はデパートの中にいて、出たのは15:30過ぎだった。
544 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:35:07.86 ID:wY3r+NiNo


そこからは宿まではまあまあ近いので、そこまで盛り上がった会話もなく。
わあ綺麗だね、くらいのもんで目的地に到着。




「……うーん! やっと着いたか」

「ねえとうま、いっぱいご飯食べれるかな?」

「多分な、とりあえず入ろう」
545 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:35:37.00 ID:wY3r+NiNo


「すいませーん!」

「あ、これはこれは」

「あの、予約してた上条ですけど……」

「はあ。……失礼ですがお客様は5人だと」

「あれ、まだ両親は来てないんですか?」

「まあ、はい。連絡取りましょうか?」

「いや、部屋に行ったら自分達で連絡することにしますよ」

受け答えをしてくれたのは、御坂妹になるはずのあの人だ。
二階の部屋に行き、自分達の荷物を置いて、早速電話をかける。
546 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:36:05.11 ID:wY3r+NiNo


「あ、母さん?」

「あら、当麻さん。どうしたんですか?」

「あ、いや俺今着いたからってのを一応連絡しておこうと思って」

「そうなんですか? ……えーっと、困りましたね。まだ刀夜さん帰ってないのだけれど……」

「いやごめん急がせるつもりはないんだ。俺の報告したかっただけだし」

「そうかしら。じゃあ刀夜さんが帰ってきたらまた連絡しますね」

「はいよ、んじゃ」
547 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:37:07.74 ID:wY3r+NiNo


「お母さん?」

「え、まあな。上条詩菜ってんだ。父さんは上条刀夜。5人って言ってたからあとは多分従妹がくるはず」

「ふーん……」

「……?」

「あ、いや、ごめんね。何でもないんだよ」

「……あ。大丈夫だよ、インデックスも俺の家族さ。な?」

「……ありがと」

「……じゃあ両親はまだみたいだし、海いくか?」

「いいねそれ!」

「んじゃあ上条さんは脱ぐだけだから、インデックスはゆっくり着替えてから来いよ」

「分かったんだよ」

「じゃ、先行ってる」

「うん」


そっか……。
俺の記憶は無くならなかったし、インデックスも助けられたけど、それでもあいつは一年以上前のことは覚えてないんだもんな……。

これからはいろんなところ連れて行って、いろんなもの食べて、たくさん楽しもう。
548 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:37:41.53 ID:wY3r+NiNo


海に出て浜辺でパラソルを立てていると、インデックスはやってきた。

「おまたせ」

「おっ、早かったじゃねえか……って」

「何……? そ、そんな見なくても……」

「あ、いやごめん」

「……どう、かな?」

「似合ってるよ、かわいい」

「ほんと!?」

「ああ、さすが上条さんが選んだものなだけある」

「えへへ、ありがとうね」

「ほら、いいから遊んで来いよ。俺は見てるから」

「えー。とうまも遊ぼうよ」

「でもなあ……」

「一人じゃ寂しいかも」

「分かったよ……」


こうして海へと連れられる俺。
出来れば何も起きませんように……。
549 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:39:47.05 ID:wY3r+NiNo


特に何が起こるわけでもなく、気がつくとすっかり日も傾いていて、この季節だと18:00前といったところだろうか。

「インデックス、そろそろあがるぞ。もう海も冷えて来るし晩飯もそろそろだろ」

「晩ごはんどんなだろうね?」

「さあな。……あー腹減った」

「とうやとしいなはまだかな? 見たことないけど」

「んー、まだっぽいな。とりあえず中入ろうぜ」

「あ、あの……」

「ん? あ、はい」

「えーっと、お連れ様がもう1時間もすれば到着なさるようです」

「あ、どうも」

「夕食はどうなされますか?」

「あー。インデックス、どうする? 先食うか?」

「……いや、みんなで食べる方がおいしいんだよ」

「んじゃ、待つか」

「では二人ともお連れ様が到着なさってからということでいいんですね?」

「はい、よろしくお願いします」
550 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:40:20.88 ID:wY3r+NiNo


「おい、インデックス。よかったのか、先食べなくて」

「いいんだよ。さっきも言った通り、みんなで食べる方がおいしいから」

「じゃあどうする? インデックスは風呂でも入ってくるか?」

「そうするんだよ。汗と海水でちょっとベタベタだからね」

「確かにな。んじゃ風呂。ちょうどいい時間になってるだろ、女の子はお風呂長いと思うし。家ではあんま気にしてなかったけどさ」

「分かったんだよ。じゃあいってくるね」

「おう、ゆっくりして来いよ」


インデックスが風呂へ向かうのを見て俺も風呂の入り口までは向かう。力の範囲はまだいまいち分かっていないからだ。
でもここは男湯女湯の区別がないから入りはしない。
インデックスが上がった後、まだ時間があれば俺も入ればいい。
551 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:40:48.55 ID:wY3r+NiNo



インデックスは髪も長いし洗い流すのも大変そうだが、40分ほどであがってきた。
浴衣のインデックスもかわいい。

そもそも、俺は10分もあれば流すことは出来るので、結果として二人とも両親が来る前に風呂にはいることができた。

「ふう、二人とも入れて良かったな」

「そうだね」

「あとは両親を待つだけか……って噂をすれば」
552 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:42:37.33 ID:wY3r+NiNo


「やあ当麻。久しぶりだな」

「こんばんは、当麻さん」

「おっす」


インデックスはぺこりと頭を下げる。


「……こちらは?」

「あんまり深くは話せないんだけど、こいつは両親とか身内がいないから俺が一緒に住んでる」

「……名前は何ていうんだ?」

「……インデックス、なんだよ」

「……」

「……」
553 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:43:44.96 ID:wY3r+NiNo


「……そうか、インデックスちゃん、か。私達のことを親だと思って頼ってくれていいからね。そのかわりといってはなんだが、当麻と仲良くしてやってくれないか」

「も、もちろんなんだよ! ありがとう……」

「……いやあ、それにしても当麻もこんな可愛らしい外国人の娘を連れてくるなんてなあ」

「あらあら、刀夜さん?」

「か、母さん。今のは息子が連れてきた女の子に対するただの感想じゃないか……」

「ふふふ、冗談ですよ。さあ当麻さんにインデックスちゃんも中へ入りましょう? 待たせてごめんなさいね」

「あーやっと飯だ。……ところで母さん」

「何ですか?」

「予約は5人って言ってたけどあと一人誰が来るんだ?」

「あれ、言ってませんでしたっけ? 従妹の乙姫ちゃんが明日の朝遅れて来るって」

「ああやっぱり。いや、5人って聞いた時から何となくそうじゃないかなって思ってたんだけどな」

「そうですか、では夕飯をいただきましょう」
554 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:44:28.10 ID:wY3r+NiNo


晩飯も食べ終え、家族みんなでゆっくり話したり。
まあ何だかんだで基本的には母さんとインデックスが話してたのを見てただけだけど。
それもすっかり長くなってしまって、自分の部屋に入ったのは23:30を過ぎた頃だった。
かれこれ三時間以上は話してたのか。


「あー、いっぱい話せて良かったんだよ」

「それはよかった、楽しかったか?」

「うん、まあね。でもちょっと疲れたかも」

「一週間もあるんだ、早く寝てもまだ時間はあるから大丈夫だ」

「……とうまは寝ないの?」

「まあな、いつ魔術起きるかわかんねえし」

「そっか……。じゃあ私も起きてるんだよ」

「い、いや、無理しなくていいんだぞ?」

「ううん、大丈夫かも。電車の中でも寝たからね」

「そうか? じゃあまあ無理しない程度でな」

「うん」

「んじゃとりあえず布団に入るだけ入るか」

「私こっちにする」

「じゃあ俺こっち」
555 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:45:00.58 ID:wY3r+NiNo


ごそごそ




「電気消すぞ」

「うん」





パチッ








……ってあれ?
さっきからずっと気にしてなかったけど、何でインデックスとおんなじ部屋なんだろう……?

んーと……










うん、分からん。
556 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:45:50.32 ID:wY3r+NiNo


「……」

「……」

「……」

「……」

「……なあインデックス」

「……なあに、とうま」

「明日の朝、俺に向かってあの御坂美琴が飛び込んできても、御坂妹がここの宿の従業員でも、ステイルがここの店主でも、絶対に驚くなよ」

「……? ごめん、さっぱり意味が分からないんだよ」

「そのまんま言った通りだよ。ちなみにそのことについて突っ込んだらこっちが変人扱いされるからな」

「んー、分からないけど分かったんだよ。とにかく何が起きても驚いたらダメなんだね?」

「おう。まあ明日になりゃ分かるさ。……っともうすぐ明日だな」


携帯の時計を見ると23:59とディスプレイには表示されていた。
それをインデックスにも見せようと思い、インデックスに携帯を見せながら言う。
557 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:46:19.57 ID:wY3r+NiNo


「ほら、インデックス。もう日付変わるぞ」

「ほんとだ、今変わっ……」






バキン!!







「……ったんだよ?」

「……インデックス、大丈夫か?」

「う、うん。それより何が……。魔術の気配もなかったのに……」

「ちょっと電気つけるぞ」
558 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:47:04.04 ID:wY3r+NiNo


パチッ



電気をつけて、インデックスの顔を見る。
声が変わってないから大丈夫だとは思うんだけど……


「よ、よかった……」


ぎゅうっ


「ちょ、とうま!? どうしたの?」

「いや、ほんと良かった」

「ちょっとよく分からないし苦しいかも」

「あ、ごめん。……いやあでもマジで良かった」

「だから何なのか教えてほしいかも!!」

「朝になりゃ嫌でも分かるって。とりあえずもう寝ようぜ」

「むううぅぅ……。……分かったんだよ」

「んじゃ、おやすみ、インデックス」

「おやすみ、とうま」
559 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:47:41.86 ID:wY3r+NiNo





パチッ







さて、母さんは誰になっているのだろう?

おやすみ、インデックス。








……いやあほんとに良かった。
560 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:48:58.02 ID:wY3r+NiNo


────────
──────
────
──




「おにーちゃーん」




「……結局こいつなのか」


目が覚めると、御坂美琴が一階で甘々ボイスを出している。
前は本人に言ってしまったが、普段のイメージがイメージだけに、あいつが媚び声を出すと果てしなくムカツク。


でも実際はあいつじゃないんだ、あいつじゃない……。


そう自分に言い聞かせて隣で俺の袖を掴んでいるインデックスを起こす。
561 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:49:31.05 ID:wY3r+NiNo


「……おいインデックス、起きろ」

「……。……あ、おはよう」

「おう、おはよう。今からよく聞いとけよ」

「? ……何を?」

「いいからいいから」

「むう、とうまは昨日からなんだかケチかも」

「いやだからもうすg……」
562 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:50:00.54 ID:wY3r+NiNo


「おにーちゃーん、おーきろー」






「ん? あれ?」

「……」

「え……。短髪?」

「いや、あいつは昨日言ってた俺の従妹だよ」

「で、でも声が」

「もうすぐ部屋入ってくるだろ、まあ見とけ」


そう言って布団の中へ入ってスタンバイ。
563 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:50:30.65 ID:wY3r+NiNo


ズバーン!!



扉が開く。
女の子らしい、体重の軽い足音が近づいてきて……


「ほーら、いつまで寝てんのよう、おにーちゃん! 起きろ起きろ起きろ起きろ!」


そう言って飛び込んでくる。











……が、俺は避ける。










ドシャ
564 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:51:09.16 ID:wY3r+NiNo


「へぶっ!!」

「……ふん」

「……え?」

「いたた……。ちょっとー、せっかく起こしに来てやった妹に何するわけ? 起きてるんなら起きてるって言ってよ!」

「ああ悪かった、悪かったよ」

「……え?」

「……で、この女の子は?」

「俺の家族?」

「ふーん、彼女?」

「いや、違うけど」

「……一緒に寝てたのに?」

「おかしい?」

「おかしいよう! っていうか彼女じゃないなら私がこうやって抱きついてもいーよねー?」

「暑い。分かったからとりあえず一階へ降りよう。ほら、朝ごはんだ。さっさと行け」

「なにおう! 私はお邪魔ってわけ?」

「俺ら着替えてすらないだろ? 着替えたらすぐ行くから」

「……ふーん、じゃあ早く一階に降りといでよ!」

「はいはい」


たったったっ、という足音とともに去って行く御坂美琴(仮)。
565 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:51:36.37 ID:wY3r+NiNo


「……え?」

「ん? どうした?」

「何、今の」

「だから俺の従妹だって」

「……短髪が?」

「いや、御坂じゃねえよ、あれは」

「え、でもどう見ても短髪だったんだよ!!」

「だから何があっても突っ込むなって言ったろ? そんなテンションだとツッコミが追いつかねえぞ、俺の経験からして」

「う……」
566 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:52:03.45 ID:wY3r+NiNo


「朝から元気だな、二人とも。おはよう」

「おう、おはよう。父さん」

「んー……おはよう、とうや」

「もう朝飯だってよ。俺らも着替えたら行くから先行っといてくれよ」

「わかった、じゃあ私は母さんを起こしたら行こう」

「ん、じゃあ」



部屋に戻る俺達。
567 : ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:53:58.12 ID:wY3r+NiNo


「……とうやは何ともないんだね」

「まあな。いろいろあるんだよ」

「どういうことなの、これは」

「魔術で外見が入れ替わってるんだよ」

「魔術で外見が? っていうか、とうまの口ぶりからして前も起こったんだよね。じゃあ私も前は誰かと変わってたの?」

「……ああ、うん。まあな」

「誰々!? 気になるんだよ! 背の高い美人さんとかかな!?」

「……いやそんなキラキラした目をされても」

「何で、教えてよ!!」

「えー……」

「むう、ケチ!」

「ケチで結構です」
568 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:55:00.11 ID:wY3r+NiNo



ガラッ





「あらあら、当麻さんはインデックスちゃんに意地悪くするのが好きなのかしら」

「……え"、ちょっと待て、その声」

「ああ、あ、あ……」

「? 当麻さんがケチって聞こえたのだけど……どうかしたのかしら?」

「……ひ」

「……ひぁ」

「あらあら、私何かしちゃったのかしら。母さん悲しいわ」

「……」

「……」

「とりあえず二人とも早く着替えてくださいね。刀夜さんも先行ってますし、私も行きますから」

「お、おう……」

「……」





ガラガラ
569 :>>568訂正 ◆index//3x.[ saga]:2013/03/13(水) 00:57:18.64 ID:wY3r+NiNo


「あらあら、当麻さんはインデックスちゃんに意地悪くするのが好きなのかしら」

「……え"、ちょっと待て、その声」

「ちょっとドア開けますよ」




ガラッ




「げっ……」

「ああ、あ、あ……」

「? 当麻さんがケチって聞こえたのだけど……どうかしたのかしら?」

「……ひ」

「……ひぁ」

「あらあら、私何かしちゃったのかしら。母さん悲しいわ」

「……」

「……」

「とりあえず二人とも早く着替えてくださいね。刀夜さんも先行ってますし、私も行きますから」

「お、おう……」

「……」





ガラガラ
570 :>>568訂正 ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:58:08.21 ID:wY3r+NiNo


「……」

「……」

「……なあインデックス。お前が誰に変わってたか知りたい?」

「……何かとてつもなく嫌な予感がするけど一応聞いとくんだよ」

「誰であっても嫌がるなよ?」

「うん……」

「……」

「……」

「……」

「……」





「……今母さんを名乗ってた奴」
571 :>>568訂正 ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 00:58:39.40 ID:wY3r+NiNo











「いやぁぁぁぁぁあああああ!!」










572 : ◆index//3x.[sage]:2013/03/13(水) 01:03:36.35 ID:wY3r+NiNo

いじょー

思ったよりだいぶ長かった
とりあえず、4巻入りました
詩菜さん可愛い、けど口調難しい……
まあ大体です
というか刀夜さんも乙姫ちゃんも口調難しいですね

ところで詩菜さん4巻で一回当麻ちゃんって呼んでてかわいすぎる

というわけで、ここから解決編へ向かって行きます
次回で完結はしないと思いますけど

ではー
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/03/13(水) 01:15:23.06 ID:Zg8bZVcK0


え? 一体誰なんだ……?
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/03/13(水) 01:28:44.91 ID:OVgIpRCH0
青ピェ・・・


590 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:40:41.48 ID:MCStqSido


父さんは新聞を見ながら気になるニュースが聞こえてきたらテレビを見る、ってことをやってるし、合間合間に母さんと話したりしている。
御坂美琴(仮)はテレビのニュースを見ている。
もちろんテレビをつけていいか店主ステイルに聞いたのは俺だ。
テレビの中ではちっこいピンク髪の古森というアナウンサーが現場から火野神作の脱獄を伝えている。
「へー怖いねー」なんて他人事のように言っているが、「そいつはここに来るぞ」なんて言ったらどんな顔をされるんだろうか。
591 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/06(土) 23:41:08.37 ID:MCStqSido



「……」

「……」

「「ごちそうさま!!」


早くこの場から離れたかった俺達は、めちゃくちゃな速度で朝飯を食べ終えていた。

「あらあら、二人とも食べるのが早いのね。若い子達だからかしら」

「母さんもまだ若いじゃないか」

「刀夜さんったら」
592 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:41:42.55 ID:MCStqSido


確かに母さんは見た目より若いし綺麗だと思う。
自分の親だから贔屓するとか卑下するとかではなく、第三者から見ても綺麗なんだろう。
父さんの言葉に照れているところなんかは、まだまだ年をとったって言うには早い気もする。








ただ。
593 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:42:09.72 ID:MCStqSido


今は違う、断じて違う。
早く逃げたいもう嫌だ。
その顔でその声で照れんなと文句を言いたい。

本当に気持ちが悪い。
自分のクラスメイトが親になってるってだけでも違和感だらけなのに、母さんが男、しかもその中でも体格的にはクラスでも大きい方、さらには野太い声なんてもうやってられない。
"違和感だらけなのに"とかじゃなくて違和感しかない。

とりあえずせっかく早く食べ終わったので、俺らは早速逃げることにした。
594 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:42:47.14 ID:MCStqSido


「じゃ、じゃあ俺らは部屋にもどるわ」

「何だ、当麻。海へ行かないのか?」

「俺らは昨日も行ったからな」

「そうか、じゃあインデックスちゃんも部屋に行くのかい?」

「そ、そうさせてもらうんだよ」

「もったいない。せっかくみんな集まったんだ。疲れているなら海には出なくていいから浜辺くらいには来なさい。それなら遊びたくなったらすぐ来れるだろう?」

「……分かった」


とても断りにくい提案だったので、従うことにしてしまった。
無理を言ってでも断っておけば良かったと、後から後悔した。
595 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:43:31.74 ID:MCStqSido

「……さて、部屋に戻ってきたわけだけど、どうするよ?」

「……さあ」

「いくら浜辺にいてもさ、観光客のいない海であんなでっかいやつとか普通に目立つよなあ……」

「だね……」

「……はあ。しゃーねえ、行くか」

「……うん」


ぶーぶー文句ばっかり言っていても仕方がないので、とりあえず浜辺にパラソルをたてにいった。
もうそこでずっと待機してよう、俺はそう思った。インデックスもきっと似たようなことを考えているだろう。
596 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:44:04.49 ID:MCStqSido


「おう当麻にインデックスちゃん。場所取りご苦労さん。といってもまぁ、他に客がいないから労力ゼロか」


ただぼーっとしていただけの俺達は、何の用心もせずに父さんの方を振り返ってしまって






凍りついた。
597 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:45:08.94 ID:MCStqSido


そわぞわと鳥肌がたつ。
もう気持ち悪いの一言しか出てこない。
父さんが、ではない。もちろん隣に立っている訳のわからん奴が、だ。

俺達二人があまりにも苦痛の表情をしていたからなのだろう。
母さんはそんな俺らを見て、

「あらあら。当麻さんとインデックスちゃん的にはこの格好は納得いかないのかしら……」

とか何とか言っている。
水着よりお前の外見が納得いかなくて仕方が無いと言ってやりたい。
598 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:45:44.16 ID:MCStqSido


「こら当麻。母さん哀しそうな顔してるだろ」

「いや、目のやり場に困るというか……」

主にあなたを見たくないというか……ということを伝えたかったのだが、どうもこの両親には違う風に聞こえたらしい。

「あらあら。当麻さん的にはこんな年齢の母さんもまだまだ若く見えるのかしら」

「こら当麻。母さん嬉しそうな顔してるだろ。……いやあそれにしても母さんもまだまだいけるじゃないか。当麻がそういうのも頷ける」

「あらあら」

「……」
599 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:46:25.03 ID:MCStqSido


「……なあインデックス」

「無理」

「……助けてくれないか? そっぽ向いてねえでさ」

「無理」

「……泣いていい?」

「叫べばいいと思うよ」

「インデックスも一緒にするか?」

「……やる」

「よしわかった。……いくぞ、せーのっ」
600 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/06(土) 23:48:26.38 ID:MCStqSido





「「不幸だあああああああっ!!」」 
 
 
607 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:36:42.45 ID:X7oBo55wo


────────
──────
────
──



「……」

「……」

「……」

「……」
608 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:37:11.08 ID:X7oBo55wo

俺とインデックスは心に深い傷を負いながら体育座りでパラソルの下で宿の方を向いて座っていた。
特に何もせず、救助待ちをしている。
今回も父さんが変わっていないということは、やっぱり俺は中心点として土御門のようなこの魔術に気づいた魔術師に追われるのだろう。
今待っているのは、その土御門だ。
それ以外なら殺されかねないが、まあ何とかなるだろう。
609 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:37:37.77 ID:X7oBo55wo


「……来ねえなぁ」

「誰が?」

「土御門」

「お隣の?」

「そ。前も言った、舞夏の兄貴」

「どんな人なのかな?」

「それも前言ったみたいに、とにかく変わってる奴」

「へえ。変わってる人かあ。……あ、もしかしてあんな感じの人?」

インデックスが指す方向を見て、頷く。

「そうそうあんな感じの……ってあれ!?」
610 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:38:14.31 ID:X7oBo55wo


「うにゃーっ! カミやーん、やっと見つけたんだぜーい!」



「もしかしてあんな感じの、じゃなくて、あの人」

「どうやらご本人のようだな……」

「あれがお隣さんか……。って何でここにいるのか気になるかも。学園都市から出るにはとうまみたいにいっぱい書類書かないとダメなんだよね?」

「まあそうだけど……。ほら、お前も学園都市に無許可で入ってきただろ? あれの逆だと思えばいいよ」

もしかするとインデックスが学園都市に入って来たのも仕組まれていたのかもしれない、という考えが浮かんだが、それは却下した。
詳しく無許可で学園都市から脱出する方法は未だによく分かっていないからだ。
それにインデックスと出逢えたおかげで俺の友人も増えたし。
別に悪いことは特になかったのだから、いちいち細かく考える必要もない。
611 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:41:21.09 ID:X7oBo55wo

訂正



「うにゃーっ! カミやーん、やっと見つけたんだぜーい!」

「もしかしてあんな感じの、じゃなくて、あの人」

「どうやらご本人のようだな……」

「あれがお隣さんか……。って何でここにいるのか気になるかも。学園都市から出るにはとうまみたいにいっぱい書類書かないとダメなんだよね?」

「まあそうだけど……。ほら、お前も学園都市に無許可で入ってきただろ? あれの逆だと思えばいいよ」

逆じゃないかもしれないが、詳しく無許可で学園都市から脱出する方法は未だによく分かっていないから気にしない。

もしかするとインデックスが学園都市に入って来たのも仕組まれていたのかもしれない、という考えも浮かんだが、それも却下した。
それにインデックスと出逢えたおかげで俺の友人も増えたし。
別に悪いことは特になかったのだから、いちいち細かく考える必要もない。
612 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:41:47.70 ID:X7oBo55wo


「おっす、土御門」

「……カミやん、お前何をした?」

「……は?」

「いいから答えろ」

「ちょ、ちょっと待て! 何のことかわかんねえからちょっと考えさせろ!!」
613 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:42:14.56 ID:X7oBo55wo


待て、本当に何のことだ?
前は俺は魔術を起こせるはずがないと俺の身の潔白を変わりに神裂に説明してくれたくらいだ。
何で今は俺を疑うような目つきなんだ?


……もしかして俺のことじゃない?



となると、インデックス。
……いやあ、別に何もねえしな。

チラッとインデックスに目を向ける。


ほら、いつも通り銀髪碧眼で……
614 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/07(日) 23:42:42.14 ID:X7oBo55wo


「あっ!」

「……思い出したのか?」

「何だ、それなら心配ねえよ。なあインデックス。お前はこいつがどんな格好をした人に見える?」

「どんなって……。金髪にサングラスでアロハシャツで……」

「な? インデックスは何にも変わってねえ」

「だからそれはどうやってしたのかを聞いてるんだ」

「どうやってって……インデックスは別にいつも通りだぜ?」

「……まあいい、話を変えよう。そっちの女の子は?」

「はあ? 前も言っただろ? 銀髪シスターでお前が頭に思い浮かべた人物だって。もしかしてお前が思い浮かべたのこいつじゃなかった?」

「……」

「俺はそっち側についてはあんまり知らないけど、インデックスってそっちじゃかなり有名なんだろ? しかもお前はこいつと同僚じゃねえか。なあ、"必要悪の教会"の土御門元春さんよ」
615 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/07(日) 23:43:14.48 ID:X7oBo55wo



カチャリ。







銃を構える音がする。



「嘘はいけないぜいカミやん。本当はどこまで知っている?」

「嘘はいけないってお前に言われてもなあ。お前も嘘つきまくりだし」

「……屁理屈を」

「……」

「……」
616 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:43:58.15 ID:X7oBo55wo


「……分かった、分かったよ。冗談だ今のは。いつもからかわれてばっかりだからたまにからかってみようと思ったらこれだ。お前についてもあんまり知らねえよ、今言った以外で知ってることなんてほとんどねえしな」

「……本当か」

「ああ。それにお前とケンカするつもりもさらさらねえ。こればっかりは信じてくれとしか言えねえけどな」

「分かった。……まあ俺もカミやんに秘密にしてることなんてたくさんあるからにゃー。これからも仲良く頼むぜい」

「おう、もちろんだ」

「……ところで神裂は来てねえのか?」
617 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:44:29.72 ID:X7oBo55wo


「ねーちん? ねーちんならカミやんの後ろに」

「は!?」

「上条当麻! あなたですか!!」

「待て待て待て! まずは落ち着け、な? 大丈夫、俺もインデックスもお前は神裂に見えるから」

「……そうですね。……では、もう一度。この魔術を起こしたのはあなたですか?」

「違う」

「え、でも……」

「俺はどうも中心点? らしいけど、違うぞ? お前も見ただろ? 俺の幻想殺し。俺は学園都市の能力すらそれによって開発出来ないのにこんな大魔術起こせると思うか?」

「それは、まあ……」

「俺もこれについてはちょっと知ってんだ。対策も一応考えてある。とりあえず落ち着いて話せる場所へ行こうぜ?」
618 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:44:58.21 ID:X7oBo55wo


こうして場所を変えた俺達四人。
インデックスはさっきから何か考え事をしているようだ。
この魔術について考えているんだろう。
なんせ今までに起きたこともないような魔術らしいし。

「……さて、一応そっちから話して貰おうかな」

「……上条当麻。今回もあなたはもしかしてほとんど知っているのでは無いですか?」

「ん? ああだから素人向けじゃなくてインデックスに分かるように説明してやってくれ。俺では入れ替わるとか天使とかやっぱりピンと来ねえよ」


実際、二回程本物の天使を見たものの、やっぱり魔術サイドでない俺には実感がわかないのだ。
神裂がインデックスに説明している間、土御門が俺に小声で尋ねてきた。
619 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:46:56.47 ID:X7oBo55wo

「なあカミやん。さっきも聞いたが禁書目録が入れ替わってないのはどういうことだにゃー?」

「あれ、お前俺がインデックスを助けた時のこと聞いてねえの?」

「いや、結果については右手の幻想殺しで倒した、としか聞かされてないぜよ」

「ふーん、まあ今日分かるさ」

「じゃあ今回の対策ってのは?」

「それも多分今日分かるぜ?」

「んじゃ最後。……本当はどこまで知っている?」

「……お前のことなら本当にほとんど知らない。多角スパイだとかなんとかってことくらいかね、あとは」

「そうか。カミやんをこっちにはあまり関わらせたくはないんだがにゃー」

「大丈夫。誰かに漏らすつもりもないし、お前の守りたいもののためにやってることを邪魔したりするようなことをするつもりもねえ。そのために死にに行くな んて考えてたら別だけどな。……ま、俺のことは"お前までとはいかなくとも、偏った知識の情報屋"、ぐらいに思っておいてくれよ」

「一応分かったことにしておくぜい」

「じゃあ俺からは一つだけ。"天使"ってのは"天使の力"とかいう力の塊なんだよな?」

「そうだぜい。それが?」

「いや、ちょいと気になっただけ」

「そうか」
620 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:47:53.86 ID:X7oBo55wo


「土御門」

俺らの話が終わるとほぼ同時に、インデックス達も話し終えたらしい、神裂が土御門を呼んだ。
インデックスはやっぱり何か考え込んでいる。

「なんだにゃー?」

「いえ、こちらの話も終わりましたよ、と言いたかっただけです」

「そっかそっか、こっちも終わったぜい」

こちらの話"も"……?
聞こえてたのかな?
まあ神裂も知ってるだろうことでそんな大した話もしてないからいいけど。
621 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:49:35.05 ID:X7oBo55wo


「では、今回の魔術───"御使堕し"の件についてですが……上条当麻。先程対策は一応考えてある、と言っていましたけどどうするんですか?」

「今はまだだ。今夜の22:00浜辺で全員集合。それで解決させる。その時間ならお前らも隠れて出ることは出来るだろ」

「ですが、早いうちから対策をとっておかないと……」

「大丈夫。それより早く準備なんてしたって意味がないんだ。なんせ主役が来ないんだから」

「主役?」

「まあ予想はつくと思うけどな。そいつが来たら始める」

「……ここはカミやんを信じてみようぜ、ねーちん。いくらオレ達でもこれに関しちゃ情報が少なすぎるぜよ」

「……分かりました。では今夜22:00に浜辺ということでよろしいですね?」

「ああ、それでいいよ」

「じゃ、オレは失礼させてもらうぜい。あんまり長居するとバレる危険性もあるからにゃー」

「おう、じゃあまたあとで」
622 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/07(日) 23:51:34.65 ID:X7oBo55wo


土御門は会話を終えるとすぐにどこかへ行ってしまった。
誰にも見つからない場所に隠れに行ったのだろう。


「では私はあなた方の警護も兼ね、ここに少しお世話になることにしましょうか」

「おう、分かった。ただ……」

「ただ?」

「風呂は早めに入っとけよ。みんなが入る時間帯に入ったらややこしくなるに決まってる」

「……そうですね。では準備が出来次第湯浴みをさせていただくとしましょうか」
623 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/07(日) 23:52:27.89 ID:X7oBo55wo


トラブルは、回避。
神裂がみんなに挨拶して、風呂へ行こうとした時にインデックスが



「私もかおりと一緒に入るんだよ!」



とか言い出して全員がポカンとなったのはまた別のお話。 
 
 
648 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:04:03.37 ID:c7oZWYFko



────────
──────
────
──



7月27日 22:00。もちろん海辺には俺ら3人をのぞいては誰もいない。
今はどこかに隠れているであろう土御門を待っている。
649 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:04:48.20 ID:c7oZWYFko


「……遅いな」

「何かしてるのかな?」

「さあ、どうでしょう? 特に変わった音も聞こえませんが……」



噂をすれば、何とやら。
というのは本当にあるみたいで。


「にゃー。遅くなってすまなかったにゃ─」


俺らが噂をしたすぐ後、噂の対象の猫男は……








……なんかおっさんを連れてやってきた。
650 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:05:15.06 ID:c7oZWYFko


「……何ですか、それは?」

「それっていうのはひどいぜい、ねーちん」

「……火野」

「神作……」



俺は一回見たことがあって。
インデックスは朝のテレビでチラッとでも見たのだろう。

とにかく俺ら二人には見覚えのある人物が土御門によって連れられてきていた。
651 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:05:56.12 ID:c7oZWYFko


「おお、知っているのか二人とも」

「朝、ニュースでやっていたんだよ」

「……」

「で、その火野神作がどうしたんです?」

「いやあ、こいつが何やら影からねーちん達を狙ってたからにゃー。そいで捕まえさせてもらったってわけですたい」

「……そうですか」

「ところで、なんだが……」

「……?」

「何やらこいつは俺とゴタゴタやってる時にどうも聞き逃せない単語を言っててな」

「どんなです?」
652 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:08:42.17 ID:c7oZWYFko




「「……エンゼルさま」」







「「「なっ!?」」」

「……何土御門まで驚いてるんだか」

「何ってそりゃあカミやん。お前のその得体の知れなさにぜよ」

「じゃ、じゃあこの火野があの魔術を!?」

「いや、でもこの人からは魔力が出ていないかも!」

「……ま、そういうことだ。インデックスの言うとおりこいつは犯人じゃない」

「で、でもとうま。朝ニュースで出てきたこの人の顔、変わってなかったよ? 防ぐのにはとうまみたいな力がないととても……」

「それも含めて説明するさ。とりあえずそいつは警察に行かさねえとさ、また脱獄するぞ」

「い、一体どうなっているのでしょうか……」



数分後、火野を追って近くまで来ていた警察に火野を引き渡し、また4人で浜辺まで戻ってきた。
653 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:09:43.45 ID:c7oZWYFko


「……さて、説明してもらおうか、カミやん」

「……ああ。まず、インデックス。あいつの身体から魔術師の要素となりそうなものは何も見つからなかったんだよな?」

「うん」

「じゃあもう一個。朝のニュースで火野の写真はちゃんとあいつのだったか?」

「もちろん。そうじゃないと私があの人の顔を知っている訳がないんだよ」

「分かった。……じゃあ次は土御門。あいつは本当に"エンゼルさま"、そう言ったか?」

「勿論だぜい。カミやんもそのことは言ってただろ?」

「まあな。今のは確認程度だよ」

「じゃあやっぱり火野が犯人のセンが……」

「それは違う」

「何故です?」
654 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/22(月) 00:11:05.09 ID:c7oZWYFko


「……二重人格」

「え?」

「……二重人格だよ、聞いたことあるだろ? つまりだ。火野には人格Aと人格Bがあったとする。どちらかはエンゼルさまの人格だ。そしてこの魔術によって……」

「AとBが入れ替わっただけ。そういうことだね、とうま」

「そういうこと。なにしろ前例がない魔術なんだろ? あり得ない、非現実的だ、とは言わせねえぞ」

「……それは、そうですが。しかし、これではまた振り出しです」

「大丈夫だ。いるだろ? あっちに。お前らみたいな戦闘のプロが俺の周りにいてくれてるから何とかなってるだけで、お前らがいなかったら俺を簡単に殺しそうな目でさっきからこっちをみてるやつが、さ」
655 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:12:16.05 ID:c7oZWYFko



そう言って指を指した先には鋭い視線の少女。
俺が指を指したことでバレたことに気づいたのか、彼女は俺の視界から消えると───








俺の喉元にノコギリの刃を押し付けていた。
……今回も神裂は動けなかった。つまりはそういうこと。

少女はもう他のプロの魔術師には目もくれず、平坦な声で俺に問いかける。
656 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/22(月) 00:13:39.56 ID:c7oZWYFko


「問一。"御使堕し"を引き起こしたのは貴方か」

「……いいや、違う」

「問ニ。それを証明する手段はあるか」

「……まず、俺は学園都市の人間だ。つまり能力開発されている。だから魔術は使えない」

「……」

「ああっと、それじゃ弱いか。……そこの金髪は学園都市の人間なのに魔術師だ。こいつには魔術の副作用で内出血の跡やらがいっぱいあるけど、俺にはない。確認してもらったっていい」

「……」

「……じゃあ最後。俺の右手には"幻想殺し"って能力がある。これは異能の力なら何でも消す能力。つまり俺は学園都市の能力も、魔術も。異能の力を操ることはできない。……どうかな」





「……。数価。四○・九・三○・合わせて八六。照応。水よ、蛇となりて剣のように突き刺せ」


俺の説明を聞き終えるなりそう唱えた少女は背後の海から水の柱を出現させ、それを蛇のようにうねらせてこちらへ飛ばしてきた。
柱はその後、何本にも枝分かれし槍と化し、迫ってくる。
657 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:15:08.33 ID:c7oZWYFko


「なあ、土御門。見といてくれよ、インデックスが無事な理由をよ」


迫る水流に俺は右手を、




……出さずにただ突っ立っているだけ。
神裂とインデックスは別に何ともなさそうな中、土御門だけがちょっと焦っていた。いい気味だ。ここでちょっといつもの仕返し。
658 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:17:28.07 ID:c7oZWYFko


バキン!!


俺の体に触れた水は、全て弾け、元の海水となって砂浜に染みわたる。

「正答。少年の見解と今の実験結果には符合するものがある。この解を容疑撤回の証明手段として認める。少年、誤った解のために刃を向けたことをここに謝罪する」

「いや、別にいいさ。……それより土御門、これが俺の力だ」

「カミやん……お前何者なんだ」

「世界でおそらく一人の幻想殺しだぜ、これくらいできてもおかしくないだろ?」

「そう言われるとそうなんだがにゃー……。何ともやりにくいぜよ」

「はは、まあとにかくこれで全員揃ったんだ。この一件の解決のため、手を組もうぜ、みんな」

「問三。それに対する私のメリットはあるか」
659 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:18:11.56 ID:c7oZWYFko


「それなら私が答えましょう」


しばらくぶりの神裂はどこか嬉しそうだ。


「まず、今回のターゲットが同じだということ。それに今回は天使がこの世界に人間の姿でいるということです。つまりは天使が人間の姿である以上、私達のようなイギリス清教の者と協力した方が得策かと思われます」

「……賢答。その問い掛けに感謝する」


そういうと、少女はその小さな手をにゅっと神裂の方へ差し出した。神裂は一瞬面食らったような顔をしたが、それが握手を求めている事に気づくと小さく笑って手をとった。
660 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:18:39.05 ID:c7oZWYFko


「あ、私も私も」

これまたしばらくぶりのインデックスは、いろんな意味で嬉しそうに握手をした。

「……」

土御門は警戒しているようだが、一応握手はしていた。その短い間で相手を見極めようというのだろう。
最後は俺。
661 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:22:15.59 ID:c7oZWYFko



彼女は一瞬ビクッとなると、右手を下ろして左手を出してきた。
……しかし構わず俺は右手を差し出す。



土御門もそうだが、俺も負けず劣らずなかなかいい性格をしてるなと最近思う。
彼女は何か戸惑っているようだ。
俺も戸惑うふりをする。


勿論対人間のプロはすぐに異変に気づく。
だから俺は諦めて、幻想殺しの範囲は右手だけのまま、左手で握手をしにいく。

彼女は、俺が左手に変えたことに一瞬ためらったが、ぎゅっと小さな手で俺の左手を掴む。
662 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:23:36.45 ID:c7oZWYFko



「よろしく、俺は上条当麻」



……ところで、土御門がこの少女を必要以上に警戒していた訳。



「君はロシア成教"殲滅白書"のメンバー、サーシャ=クロイツェフさん、だよな」



それはきっと────



「あ、いや。今日に限っては……」



尋ねられなかったとはいえ、名前を名乗らなかったからだろう。 
 
 
663 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/22(月) 00:24:04.35 ID:c7oZWYFko








「ミーシャ=クロイツェフ、でいいのかな?」



705 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:45:39.71 ID:0D7/XWbKo


「ミーシャ=クロイツェフ、でいいのかな?」

そう俺が言葉を掛けた後。



右手でミーシャを捕まえに行く前に、
土御門が俺の言葉に怪訝な顔を向ける前に、
インデックスが危ないと俺に言う前に、
神裂が俺の元へ走ってくる前に。
706 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:46:05.30 ID:0D7/XWbKo


目の前の少女は自身の莫大な力を隠そうともせず、いつの間にか海の上の空に浮かんでいた。
誰一人行動が追いつかなかった。
目の前の俺ですら何も見えなかったのだ。
つまりはやっぱりそういうこと。

こいつは今、"人"ではない。
707 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:46:53.51 ID:0D7/XWbKo


「……主役ってこういうことですかい」

「すぐ終わると思ったんだけどなあ、避けられちまった」

「まさかあなたあれを倒そうとしてるのですか!?」

「うん」

「ばっ……!」


そんな会話の間に飛んできている氷の槍は、俺の5m程まで近づいてくると勝手に砕け散る。
当然全員その範囲内にいる。
708 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:47:23.51 ID:0D7/XWbKo


「とうま、あれは人じゃないんだよ!? 天使、つまり莫大な力の塊なんだよ!?」

「そうです、人の身で倒そうとするなど……」

「……それはお前らの中の話だろ?」

「どういうことです?」

「俺は魔術はやっぱ良くわかんねえけどさ、確かお前らが魔術を使うのにああいう天使の力を借りるんだろ? だから勝てない。そうだろ? つまりだな……」

「まさか……。いえ、それでも無茶です!」

「十字教徒がやるよりましさ」

「ぐ……」

「それに、お前ら忘れたのか?」

「「?」」

神裂とインデックスが首をかしげる。

「俺の右腕だって人の身を越えてるってことをよ!!」
709 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/30(火) 00:48:05.93 ID:0D7/XWbKo


グオォォォォオオオオオ!!!






「……」


俺の右腕は一瞬にして竜の顎となる。
ふと土御門を見ると、俺の事は理解できていないようだった。

それでもさすがプロというだけはあって。


少なくとも、状況は理解していた。
710 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:48:35.92 ID:0D7/XWbKo


「……カミやん、オレ達は何をすればいい?」

「土御門! 彼を戦闘に巻き込むというのですか!?」

「勿論だ」

「彼は戦闘に関しては素人です! そんなことはプロの魔術師として……」

「神裂」


俺が神裂を呼ぶ。


「……何です?」

「大丈夫だから。ここは任せてくんねえかな」

「……」

「お前は優しいから。だから素人の俺が自分じゃ勝てないような相手と戦うと傷ついてしまう。なら自分が……とか思ってんだろ? それならお前はバカもいいところだよ」

「なっ……」
711 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:50:12.72 ID:0D7/XWbKo


「お前はさっき自分で言ったじゃないか。"天使が人間の姿である以上、私達のようなイギリス清教の者と協力した方が得策かと思われます"って。つまり専門 分野はそれを専門とするやつがやる方が得策ってわけだ。確かに俺は素手で喧嘩したら土御門に負けるし、ましてや神裂なんてとてもじゃないが無理だ。何で かって言ったらお前らは対人間のプロ、戦闘のプロだ。不良のケンカ程度の俺なんかが勝てるはずねえよ。そんなお前らが勝てない相手。それはもう人間じゃな い、化け物だ。その化物に勝てるのは。天使が天使の姿である以上は。───異能の力を消すことが専門の俺に任せた方が得策だって、そう思わないか?」


そう、化け物に勝つなら俺に任せてくれればいい。
現に俺はこの世界で二度も化け物に勝っている。
インデックスに、一方通行。
二度と見たくない二人のあの姿は、両方とも間違いなく"化け物"だった。
712 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:51:02.71 ID:0D7/XWbKo


「……」

「……決まったな。さて、カミやん。もう一度聞く。オレらは何をすればいい?」

「そうだな、まず神裂は俺の家族の護衛を。心配ならそれをしながら俺の方を見てくれて構わないさ。土御門とインデックスは儀式場を見てきて欲しい」

「儀式場?」

「ああ、そうだ。場所もわかっている」

「……もう驚かないにゃー。で? その儀式場ってのはどこにあるんだ」

「場所はここから車で二十分ほどにある○○って町にある」

「? 民家か何かなのか、カミやん」

「ああ、その民家の名前はな……」








「上条ってんだ」
713 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:51:45.43 ID:0D7/XWbKo


「は?」

「え……」

「とうまそれって……」

「そうだ、俺の家。術者は俺の父さん、上条刀夜。この魔術が起きた理由は偶然」

「待て、偶然で起こるような簡単な魔術じゃないぞ」

「それも含めて見てこい。逆に偶然じゃなきゃこんな魔術は起きないだろうさ」

「……分かった。他に何かあるか」

「電話だけいつでも出れるようにしておいてくれ。やばくなったら俺が電話かけるから家ごと破壊してくれたらいい」

「……じゃあオレは早速禁書目録と向かわせてもらうぞ。ほら、禁書目録」

「う、うん」

「ねーちんも、いい加減諦めて護衛に行ってこいよ。刀夜氏が術者ならあの化け物に狙われるぞ」

「……ええ、分かってます。………上条当麻。私は護衛へ行かせていただきますが、少しでも危ないと思ったら私もこちらで戦闘に参加します。いいですね?」

「ああ」
714 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:52:12.17 ID:0D7/XWbKo


こうして俺たちは、それぞれの役割へ向かって行く。

インデックスと土御門は、俺の家へ。
神裂は俺の家族、主に父さんの護衛へ。

そして、俺は─────
715 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:52:40.51 ID:0D7/XWbKo


「……待たせたな。ずっと攻撃ばっかりで疲れたんじゃないか?」

「……」




「さて、さっさと終わらせようじゃねえか!!」



今回の主役、天使のもとへ。
716 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/30(火) 00:53:22.25 ID:0D7/XWbKo


ドォォオン!!!!





竜の顎が放った殺息は、正確に天使の翼を撃ち抜く。
片方の翼を失った天使は、バランスを崩し海の中へ落ちる。




が、これで終わるはずもなく。
海から出て来た天使は完全に元どおりになっていた。
717 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:55:26.25 ID:0D7/XWbKo


……そうだ。あの天使は前に戦ったのと一緒。
つまり水と夜が得意なのか。いや、月だったかもしれない。

でも今ここで重要なのは、
下が海で、時間は夜。おまけに月までのぼっているということだ。

相手が有利すぎるのは仕方ない。



こうしている間にも天使は次から次へと羽の一部を槍として飛ばしてくる。
どれも速すぎてギリギリ避けられるかどうかという速さだろうが、それらは全部消せるレベルであるというのは運がよかったのかもしれない。
718 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:55:54.90 ID:0D7/XWbKo


「くっ……」


幻想殺しを自由に使うには演算などはいらないが、それなりの集中力がいる。
正直昨日から何回も使っていたからきつい。

そこまで考えたところで天使は動きを止めた。
……なんだ?

よくわからないがこれはチャンスだと思ったので羽を撃ち落とす。
719 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/30(火) 00:56:21.41 ID:0D7/XWbKo







それが、間違いだった。







720 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:58:53.00 ID:0D7/XWbKo


ザバァッ!




水から上がって間も無く天使は羽をこちらへ飛ばしてくる。
勿論、水しぶきに隠れてやら動きが速いやらで俺なんかにはその挙動が見えない。


それでも分かったことが一つ。





ドゴッ!!!




という音が砂浜に響く。
そう、俺の幻想殺しの範囲外に羽を撃ってきたのだ。
721 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:59:25.41 ID:0D7/XWbKo


「やばっ……」


慌てて身を伏せ転がるも、勢いのついた砂は結構痛いもので。


「ぐあっ!!」



それを見た天使は


「……」


表情なんてあるのか知らないけど、"やっぱりな"という顔をこちらに向けてきていた。
722 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 00:59:55.01 ID:0D7/XWbKo


────────
──────
────
──


それから何分経っただろう。
いや、何時間かもしれないし、もしかしたらまだ一分程度しか経っていないかもしれない。

とにかく俺は砂を避けつつ天使を撃ち落とすだけ。
それでも相手にはかすり傷程度のようなものらしく、ダメージを食らっているようにはとても見えなかった。

そしてそんな俺の状態はというと。


「はあ、はあ……」
723 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 01:01:24.12 ID:0D7/XWbKo


完全に余裕がなくなっていた。
しかし神裂が来てしまうと、幻想殺しによって魔術が使えない分、正直に言って足手まといになる可能性が高い。
今の俺が言えた状態じゃないのは分かってるけど、俺と異能使いは共闘するには相性が悪すぎる。
だから傍目から見れば大丈夫に見えるように取り繕うので精一杯だった。



……くそ、あんなに自信満々に言っといて、結局俺ではみんなを守れねえのか?
土御門に魔術を使わせたくなかったから、俺が勝てばいいと思っていたんだけど……無理なのかな。
……しゃーない。俺も体力と集中力が限界だ。
こんなに集中力がねえならもうちょっとちゃんと勉強しとくべきだったかな?

そんなことを考えながら携帯電話を取り出そうと、ポケットに手を入れる。




……その隙を天使が見落とすはずもなく。
724 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 01:01:56.75 ID:0D7/XWbKo


「うおっ!?」


パリィン!!

一枚目は右手で壊し。



ドスッ!!



二枚目は何とかよけて砂浜へ突き刺さる。


……あれ? 携帯どこ行った?


「ヤバイ!!」
725 : ◆index//3x.[sage]:2013/04/30(火) 01:02:25.92 ID:0D7/XWbKo


見渡すと、すぐそこに落ちていた。
距離にしてだいたい5m。
それが今、とても遠い。

俺はそれを取りに走る。


「……よし」


携帯電話を拾い上げて、上を見上げる。
726 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 01:03:38.98 ID:0D7/XWbKo















俺の視界は、夜の光を受けて黒曜石のような色をした氷で一杯になった。











ズドンッ!!
727 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 01:04:36.28 ID:0D7/XWbKo



………電話、しねえと。



ダメだ、体は元気なはずなのに、体力が持ってくれねえや。
ごめん、土御門。連絡は神裂から受けてくれ。
それで神裂、後は頼んだ。悪いな。


ふと空を見上げると、天使は何かをしていた。
一度見たら忘れられない、あの術式の名前は……。


「いっ、そう……?」



空一面が明るくなる。



「ダメ、だ。それをしちゃ……ダメ…………」


俺の意識は、そこで途絶えた。
728 : ◆index//3x.[ saga]:2013/04/30(火) 01:06:17.70 ID:0D7/XWbKo






「……ふぅ、疲れたぜ。全く、あの時封印した癖に使ったりするからこうなるんだ。ま、ここは自分がやっといてやるから、しばらく寝ときな」






そして俺は、変な夢を見た。 
 
 
739 : ◆index//3x.[sage]:2013/05/01(水) 00:34:42.44 ID:7ikJ9Gf8o


───そして俺は、変な夢を見た。




まず、俺は宙に浮いていた。
下を見ると、砂浜には"俺"が倒れている。

ただ、そいつには右腕がない。
何故だろうと近づいてみようとするも、体がいうことを聞かない。
空を見てみると、ずいぶんと明るい夜だった。

そうだ、そういや自分天使にやられて倒れたんだっけか。
明るいのは一掃の術式のせいか。

ということは……。

ふと声が聞こえたので、そちらを向くと、すべての元凶がそこにいた。
740 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:35:20.02 ID:7ikJ9Gf8o


そこからはぼやけてしか覚えていない。


まず始めに真上に殺息を放った後、ほえた覚えがある。
それだけで空一面の魔法陣は消え去って。

そこからは自分に有利な一方的な展開だったと思う。
殺息で両翼を破壊したあと、海に落ちてゆく天使に噛みついたような気がする。
それだけでもう天使は瀕死になっていて。
俺が次に噛み付いた時には完全に消えてしまっていた。
741 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:36:30.26 ID:7ikJ9Gf8o


「……ま、当麻!!」

「ん……」


目を開けるとそこには夜空が広がっていた。
体を揺すっていたのは俺の父さん。

「あれ……?」

「よかった、当麻。体は大丈夫か? どうもしてないか?」

「ん、ああ。大丈夫大丈夫」

「よかった……」

「なあ、父さん」

「ん? なんだ?」

「俺が何で今ここに倒れてるか分かる?」

「何でか……か」

「頼む、隠さず教えてくれ」

「いや、隠すつもりはないんだけどなあ。何というか、説明しにくいんだ」

「見たまんまでいい。ゆっくり教えてほしい」

「……分かった」

「……」

「まず、父さんは部屋で当麻の友達の赤毛の子と話していたんだ。彼は見かけによらず丁寧でね。当麻の向こうでの生活を尋ねたりしたら、親切に答えてくれたのさ。"とてもお人好しで、頼りないけど頼れる人だ"って」

「へえ……」


これは意外だった。神裂が俺を評価してくれていることは、素直に嬉しい。
742 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:37:46.79 ID:7ikJ9Gf8o


「その後もいろいろ話したんだが……。これは後回しにしよう。……それでまあいろいろ話してたわけだ。すると私の後ろの空が突然眩しくなってね。驚いて振 り向いてみると、何か分からないけど人の姿をした何かが翼を生やして空を飛んでいた。そいつの顔の向きから察するに砂浜を見ている。するとどうだ、そこに 倒れていたのは当麻じゃないか」

「……よく、分かったんだな。あんなに遠いのに」

「そりゃあ分かるさ。私は当麻の父だ。それにお前のような髪型のやつもなかなかいないだろう」

「はは……」

「当麻を見つけた私は急いで駆け寄った。そしたら今度は当麻の肩から何かが噴き出ているのを見た。それは竜のような形をしていて、一瞬で宙に浮いていた人 を食ってしまった。私は驚いて声も出せないでいたら、その竜のようなものはまた当麻の肩へと戻っていった。それで我に返った私は当麻を起こしたというわけ だ」

「……」


……なるほど。
俺が夢だと思っていたあれは夢じゃないのか。
743 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:38:50.79 ID:7ikJ9Gf8o


『こいつは自分に任せておけ』



『……ここでは黙ってろ。こいつは俺が片付ける』








"あの時"俺が閉じ込めたはずのものは、幻想殺しの本体のようなもの、ってことなんだろうか。
744 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:39:33.24 ID:7ikJ9Gf8o


「当麻、何なんだ、あれは。教えてくれないか?」

「……その前にまず、父さんがさっき後回しって言ってた話をしてくれないか?」



たぶん、同じ話題に繋がるのだろう。



「……分かった。私が当麻の友達と話してた内容だったな」

「ああ」
745 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:41:24.14 ID:7ikJ9Gf8o


「私はどうしても否定して欲しかったんだろうな。"当麻は元気でやってますか"と聞くべきだったのに、彼に"当麻は最近不幸ですか"と聞いてしまった」

「……」

「……聞いてはいけない話題だとは分かってる。怒ってくれたって構わない」

「……いや、続けてくれ」

「そしたら彼は言ったんだ。"ええ、確かに彼は不幸です"と。……どうしようもない気持ちでいっぱいだった。科学の街に当麻を送ろうと、当麻の不幸は消え ることは無いんだと。そして彼に腹を立ててしまった。せっかく答えにくい質問に答えてくれたのに、八つ当たりもいいところだ。そんな自分が嫌になっ た。……ただ、彼の言葉はまだ終わっていなかったんだ。彼はこう言ったよ」

「……」
746 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:41:58.29 ID:7ikJ9Gf8o





「彼は確かに不幸です。まだ付き合いが浅い私でも気の毒に思うようなことだってあります。ただ……。ただ、彼はそれ以上に幸せに見えます」



747 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:43:00.11 ID:7ikJ9Gf8o


「……ふふ」

自然と笑みがこぼれた。
その通りだ、当たり前だ。

「何かおかしなことを言ってしまったか?」

「ああ、父さんの言葉があんまりにも的外れで笑っちまったよ」

「……どういうことだ」

「……父さんさ、見ちまったんだろ? 竜のようなもの」

「? 突然どうした」

「確かに見たんだよな?」

「あ、ああ……」

「昔から父さん達が心配してくれてる俺の不幸だけどさ、あれが原因なんだ」

「なん……」
748 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:43:33.57 ID:7ikJ9Gf8o



俺はやっぱり素人なわけで。
一度見られたならそれを隠すなんてことは出来ない。
土御門のように上手く立ち回ることはできないんだ。


だったら正直に全てを話す。


そう、全て。
749 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:45:04.02 ID:7ikJ9Gf8o



「俺の能力は"幻想殺し"っていって異能の力なら何でも消すって能力なんだ。ただ、これは学園都市の能力開発で得たものじゃなくて、どうも俺が産まれた時から持ってたらしいんだ」

「……」

「こっからは信じ難い話だと思うけどさ。学園都市は超能力を開発している、それとは反対に"魔術"ってものがこの世にはあるんだ」

「そんなもの……」

「あるわけない、とは言えないだろ? 現にさっき見ちゃったもんな」

「……」

「俺がここに連れてきたインデックスも魔術側の人間でさ、その中でもあいつは魔術の知識じゃ誰にも負けないような人物なんだ。だから俺は聞いてみた。"何 で俺はこんなに不幸なことばっかり起こるんだろう、そして俺の能力は何なんだろう"って。そしたらインデックスは"とうまの能力はよく分からないけど、そ の幻想殺しっていうのが本当なら、それはきっと運とかそういうのまで全部まとめて消し去ってるんだろう"って言ったんだ」

「それじゃ……」




「そう、俺の不幸はどうしようもないんだ」




「く……」

「……父さん」

「……なんだ?」














「それでも俺は幸せだ」
750 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:47:39.39 ID:7ikJ9Gf8o


「……」

「俺の不幸のおかげで学園都市へ行けた、親友もできた。俺の不幸のおかげでインデックスと出会えた。あいつはある問題を抱えていたんだけどさ、俺の不幸の おかげであいつの問題に遭遇しちまって、あいつを助けることができた。他にもいろいろあるさ。不幸にも大事件に巻き込まれたおかげで、そいつらを助けるこ とができた。今回だってそうだ。不幸にもあんな化け物に出会ってしまったせいで、世界を助けることができた」


まあ、最後のは俺であって俺じゃねえけどな。


「これからも、俺は不幸によって何かと巻き込まれると思う。でもその分俺には力がある。困ってる人を助けることのできる力が。……ほら、俺の友達が俺のこ とを"お人好し"なんて言ったらしいけど、そんなお人好しにはこれ以上ないくらい幸運な能力だと思わないか? そんな俺を産んでくれた父さんと母さん ───上条刀夜と上条詩菜には本当に感謝してるよ、ありがとう」
751 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:48:46.19 ID:7ikJ9Gf8o


「そう、か」

「ああ、そうなんだよ」

「お前は今も幸せな訳だ」

「そう、幸せだ」

「そっか、そっか……」

「……」

「それ、は……本当に良かった……。ありがとう、当麻」

「こちらこそだよ。……ところで父さん」

「……ん?」

「だから、さ。もうお土産にお守りとかはいいよ。母さんに何かプレゼントを買ってきてやった方が喜ぶに決まってる」

「……そうだな。はは、そうするよ」
752 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:50:35.64 ID:7ikJ9Gf8o


「あと、今回のことなんだけどさ……」

「うん?」

「父さんが見た翼の生えた人間っていうのは、天使っていうんだ」

「天使?」

「そう、さっきも説明した魔術によって無理やり天使のいる世界から引きずり降ろされたんだとさ。俺にもよく分かってねえけど」

「当麻が分からないのに私が分かるはずがないだろう」

「はは、まあそうか。問題はそこじゃない。父さん、よっぽど必死に俺の事を考えてくれてたんだな」

「何を。当たり前だろう?」

「お土産の置く位置とか、風水っていうのを勉強して置いたりしたんだろ?」

「……そんなこと良く分かるな」

「まあな。……魔術を使うための力ってのはお守りにもほんの少しだけ含まれているらしいんだ。で、父さんはそれらを全部きちっと位置も考えて並べた。風水にも魔術的な意味があるらしくてさ」

「……すまん。よく分からない」

「俺にも分からないさ。ただ、大事なのは……」

「……」






「……。天使がこの世界へやってきたのは父さんが買ってきたお土産達によって、偶然起こってしまったってことなんだ」
753 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:51:56.47 ID:7ikJ9Gf8o


「……え」

「つまりこの魔術を起こしたのは父さんってことだ。……まあ、それを被害なくして俺が止めることができたってのは本当に嬉しいことだよ」

「私のお土産の、せいで当麻があんな風に……?」

「せい、なんて言わないでくれ。父さんにその気は無かったんだし、俺のためにやってくれたことなんだ。そんなことを言って欲しくてこんなこと言ったんじゃない」

「……」

「まあ、何が言いたいかっていうと」







「子供のためなら何でもしてくれて、それがちょっと失敗に繋がっても、最後まで子供のことを考えて行動できる。そんな、父さんのようなバカで頼りないのに頼れる父親ってのになりたいって思うよ、俺は」
754 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:52:25.97 ID:7ikJ9Gf8o


「……ははは。お前も大抵バカだな、当麻」

「な、何でだよ!」

「今から頼りない父親を目指してどうする。当麻は自分の信じた道をまっすぐ進んで、頼れる父親になりなさい。それが私というのなら少し恥ずかしいな……」

「ははは」



夜風がとても心地よい。
いつか俺が父親になった時は、またここに来て俺の子供と話そう。

そう、思った。
755 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:53:02.74 ID:7ikJ9Gf8o


「ところで当麻」

「何だよ?」

「砂浜に打ち上げられている、あの少女は当麻の知り合いかい?」

「……は?」


父さんの指差す方向を見ると、一人の少女が砂浜で倒れていた。


「おいバカ、何でもっと早く言わねえんだ!!」

「わ、私も今見つけたばかりなんだ、仕方ないだろう」
756 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:53:57.95 ID:7ikJ9Gf8o


「……神裂、神裂!!」

「何でしょう」


遠くにいても、あれだけ叫べば神裂なら聞こえると思ったが、予想通り、神裂はすぐにやって来た。



「今すぐ海の家にサーシャを連れて手当てを。怪我はないかもしれないけど、体温と飲んだ海水とかが心配だ。一応見てあげてくれ」

「はい、ではすぐに」


本当にすぐに行ってしまった。









「……あの綺麗なお姉さんも当麻の知り合いかい?」

「ん? ああ、まあな」

「本当に当麻は顔が広いんだな」

「ああ、それだけは自慢できるぜ」
757 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:55:02.17 ID:7ikJ9Gf8o



「……あ」


神裂を見て、思い出した。



「……どうした?」

「土御門に連絡しねえと」

「当麻の友達か?」

「そう、クラスメイト。……っと、もしもし?」

「にゃー! ずいぶん遅かったにゃーカミやん」

「悪いな、いろいろあったんだよ」

「ところでオレらはこの家をどうすればいい?」

「一応天使はもう倒したんだが、まだ何か起こりそうか?」

「そりゃ何かなんてもんじゃないぜい、こんなのほっといたら地球が破滅するぜよ」

「ん、分かった。じゃあ俺も今から向かうからあと30分ほど待っててくれ」

「分かったにゃー」

「悪いな、じゃ」
758 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:56:02.47 ID:7ikJ9Gf8o


「……どこかへ行くのか?」

「上条家だよ、置き物の配置が変わるだけで今度は違う魔術が発生するかもしれないんだってさ」

「それは危ないものなのか?」

「んー。地球が破滅するくらい、らしい」

「……」

「んじゃ俺はちょっといってくるぜ」

「待て、当麻。私には正直さっぱりなんだが、その対処法はあるのか?」

「まあな、あいつらに家ごと破壊してもらえば簡単なんだけど、そんなの絶対嫌だしさ。せっかく俺の能力があるんだから、それで置き物の力だけ壊してしまおうかなと」

「……私も行く」

「ここに戻ってくるの遅くなるかもしれないぜ?」

「当麻の自慢の力というのを見てみたいんだ。その不幸で幸福な力を」

「……分かった」
759 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 00:59:03.79 ID:7ikJ9Gf8o


神裂に儀式場の破壊をしに行ってくると伝えた後、父さんの車に乗り込む。
……よくよく考えたら、俺一人でどうやって家まで行こうとしてたんだろう。
タクシーだったら絶対30分では着かなかっただろうに。

父さんと雑談をしながら車に揺られること約20分。
上条家と土御門とインデックスが俺達を待っていた。

「ごめん、遅くなった」

「それはいいんだがにゃー。何で刀夜氏まで着いてきてるのかってのが気になるぜい」

「ケリを、つけにきたんだ」

「ケリ、だと?」

「ああ。私は何も知らないとは言え、どうもみんなに迷惑をかけていたらしい。正直、天使だとか魔術だとか何のことだか未だに分からない。ただ、原因は私にあって、その原因を壊してくれるのが私の息子だというのは理解できた。なら私はそれを見守らなければいけない」

「……カミやん」

「悪い、今回のことは全て話した」

「刀夜氏、これは絶対に口外したらダメだ」

「ああ分かってるさ、口外するにはもったいない話も聞かせてもらった、そんなことは出来ないよ」

「……じゃ、カミやん。始めてくれ」

「……分かった」
760 : ◆index//3x.[sage]:2013/05/01(水) 01:01:45.35 ID:7ikJ9Gf8o


力をまず体全体に行き渡らせる。
……なるほど。俺の中のあいつが何なのかはサッパリだけど、あいつが出てきてからは力の流れをイメージしやすくなっている。

続いて竜の顎を出現させる。

こちらも楽になっている。集中力を全然使わない。

しかしこれで家ごと飲み込むには小さすぎる。

……どうするべきか。
761 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:02:22.08 ID:7ikJ9Gf8o


分かった。簡単なことじゃないか。

俺の体に大量の力を放出して、それで包み込むようにして覆えばいい。


……よし、順調。


まだ、まだいける。


まだだ、家を全て覆うには小さい。


「くっ……」


もう少し、もう少し。
ここまでくるとさすがに体力と集中力の消費が激しい。


「ぐああああっ!!」











パキン!!!
762 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:04:33.50 ID:7ikJ9Gf8o


「え?」

「「「……」」」


いつも俺が何か異能の力を消す時に響く、甲高い音が鳴り響いた。


「あれ? おかしいな……」

その途端、俺の身体にかかる負担もなくなった。
……幻想殺しは出し過ぎると壊れる風船みたいなもんなのかね。


仕方ない、もう一回やろうか。
763 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:08:04.50 ID:7ikJ9Gf8o


また、力を放出し始める。

力は順調に大きくなって、俺の体表を覆った。

……そこまで行って気づく。

そうじゃない、もっとなにか大きな力が俺の周りに充満している。

「一体、何が……」

前を見ると、インデックス、土御門、それに父さんまで俺を見ていなかった。
その視線の先は俺の後ろ。


つられて振り返る。


そこにあったのは、
764 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:08:32.86 ID:7ikJ9Gf8o








大きな、六枚の、真っ白な翼。










765 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:09:16.61 ID:7ikJ9Gf8o




……えええええええええ!!??




幻想殺しすげぇ……。
いや、確かにあの夢のような感覚だった時、翼で飛んでたよ?

でも、力を放出しすぎると翼になるなんて聞いたこと……













あった。
766 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:10:34.95 ID:7ikJ9Gf8o


そういや一方通行との2回目の戦闘の時にはあいつ翼生やしてたな。
ベクトル操作、という能力なんで力の放出が上限を越えた、とかじゃないんだろうけど、何か未知のベクトルを操ってたんだろう。

アレイスターにLevel5について聞かれた時、第二位、第四位、、第五位、第七位について何も知らなかったから詳しく調べた時には、第二位の操る物質は、どうも翼として操っているらしいことが噂になってた。



つまりなんだ、こういうことか。
767 : ◆index//3x.[sage]:2013/05/01(水) 01:12:38.78 ID:7ikJ9Gf8o




"未知のものを操ると、その物質のある世界での形に変わる"







一方通行も第二位も俺も。
"翼"は、人の身を超えた象徴なのかもしれない。

よって、俺達が使っているのは、この世界にはない物質なんだろう。
768 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:13:44.95 ID:7ikJ9Gf8o


……そんなことは今はいいか、また第二位に会った時にでも話をしよう。
一方通行が現時点で翼を生やしたっていう話は聞いたことがないからな。





じゃあ、とりあえず仕事を終わらせますか。



翼を手にいれたと同時に、力の扱い方が分かってきた。


六枚の翼を我が家へ叩きつける。
破壊されるのは幻想だけ。

翼を動かした時も、翼が家を叩いた後も。
俺に翼の重さは感じられず、さらに、音もしなかった。
769 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:14:15.16 ID:7ikJ9Gf8o








音のない真っ白な空間で消されるのは幻想のみ。









……なんだか幻想殺しの本質を見た気がした。
770 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:14:57.01 ID:7ikJ9Gf8o


「……よし!」

「……いや、よしじゃないんだよ」

「帰って寝ようぜ、俺もう無理」

「カミやん、オレは今人生で一番驚いてるぜい」

「だろうな、俺もだよ」

「そうは見えないにゃー」

「……妙に馴染んでるんだよ、この力が。"新しく身につけた"じゃなくて"使い方を思い出した"ような感じ。だからこれも普通にあった俺の能力なんだろうなって」

「……当麻、お前凄いんだな」

「そりゃ、何てったってあの母さんから産まれた子供だからな」

「そうかそうか、確かにそうだったな。はは」
771 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:16:01.31 ID:7ikJ9Gf8o


「んじゃあ帰るとするかにゃー」

「はーい」

「ああ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

「……何だにゃー?」
772 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:18:15.87 ID:7ikJ9Gf8o


「当麻の力を見ていてつい忘れてしまっていた。……ええと、インデックスちゃんに、土御門君、だったか」

「あってるぜよ」

「そ、そうか。……あの、今回私はみんなに大きな迷惑をかけてしまった、すまない」

「終わり良ければすべて良し、なんだよ!」

「……。それと、当麻のために集まって、そして、力を貸してくれてありがとう」

「……」

「ま、今回の件はテキトーにごまかして報告するから刀夜氏は犯人だとかそういうのは気にしなくていい。終わり良ければすべて良し、禁書目録の言う通りだ」

「……そうか、それはありがたい」
773 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:19:27.92 ID:7ikJ9Gf8o


「……そうだ、土御門、せっかくお前元に戻れたんだから一緒に泊まらねえか?」

「それはいい考えだ。お金はこちらに任せてくれたらいい」

「あいにくオレとねーちんは仕事だからにゃー」

「そ、そうか……」






「……だから三日後には向こうに行かなきゃならない。それまでよろしくお願いしますにゃー」

「……分かった、任せてくれ!」

「じゃあ、行くか!」

「うんっ!」 
 
774 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/01(水) 01:24:08.38 ID:7ikJ9Gf8o

いじょー

4巻一旦おしまい
次の投下は何でもない日常回になると思います
その次からやっと2巻!

3冊でここまできちゃうのはほんとに予想外だったな……

何てったって構想なんて関係なく思いついたまま書いてるからなあ
翼なんて1時間前まで生やすつもり全くなかったってのがいい例
その場の気分だけでこのSSは続いています
これからもよろしくお願いします!


789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]:2013/05/05(日) 01:34:49.28 ID:Tq3vTX5ro

訂正

>>739
誤:そうだ、そういや自分天使にやられて倒れたんだっけか。

正:そうだ、そういや"自分"天使にやられて倒れたんだっけか。


>>740
誤:俺が次に噛み付いた時には完全に消えてしまっていた。

正:自分が次に噛み付いた時には完全に消えてしまっていた。
 
 
792 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:26:39.04 ID:Tq3vTX5ro


八月八日。

俺は朝、普通に目を覚ました。
違う点と言えば、今の時刻が10:00を過ぎているぐらい。


「ふわぁ。……おはよう、インデックス」

「あ、おはよう。顔洗ってきたら?」

「んー」

「ついでにもうすぐご飯なんだよー」

「んー」

「大丈夫かなぁ……」


あれから俺達は家事を当番制にした。
今日はインデックスが朝飯を作る番だ。

ところで、あれから、の「あれ」とは、もちろん御使堕しのこと。
ここであれからのことを少し。
793 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:27:04.80 ID:Tq3vTX5ro


上条家から海の家へ向かった俺達を、神裂と元気になったサーシャが迎えてくれた。
神裂のことは、さっきまでの赤毛と入れ替わりでやって来た友人、ということにしておいた。
その時点でもう日付は変わっていたので、俺達はそれぞれ部屋に入って寝ることにした。

次の日から三日間、ちょうどイギリス清教組が帰るまでは、未成年6人でワイワイと遊んでいた。
未成年は6人。ここは重要らしい。
794 : ◆index//3x.[sage]:2013/05/05(日) 23:27:45.09 ID:Tq3vTX5ro


特に印象に残っているのは、インデックスが乙姫とサーシャにお姉さんをしていたこと。
……お前ら年変わんねえだろ、と突っ込みたかったが、家で家事などを手伝っていたインデックスはどこかお姉さんっぽかった。
俺と神裂は離れたところからそれを微笑ましく見ていたのだが、

「ふふん、私は家事のお手伝いとかしてるもんねー」

「わ、私だってとうまのお手t……。いや、私は一人で料理だって出来ちゃうもんね!」

「だ、第三の質問ですが、それは本当ですか?」

「ほんとなんだよ! こうトントントンって」

「ぐぬぬぬ……」

「今度会ったら私の料理を食べてみるといいんだよ!」


とかいう会話をし始めた。
795 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:28:13.22 ID:Tq3vTX5ro


「……あれは本当ですか?」

「いいや、あいつが丸々全部料理を作ってくれたことはないなぁ」


そのセリフを言った途端、インデックスは首がグリンと回転させ殺気を発しながらこちらを睨んでくる。聞こえてたのかよ、こわいこわい。


「……まあ、いつも手伝ってはくれてるし。そのうち作れるようになれたらいいんじゃねえの?」

「ふふっ、そうですね」


と、いうわけで寮に帰ってからインデックスが、「う、嘘ついちゃった! これは一大事かも!!」とかなんとか言い出したので、当番制となったのだ。
796 : ◆index//3x.[sage]:2013/05/05(日) 23:30:21.74 ID:Tq3vTX5ro


「まだ数日しか経ってねえのにずいぶんうまくなったな、インデックスの料理」

「まいかは教え方が上手いからね、当然なんだよ」
797 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:30:49.95 ID:Tq3vTX5ro


一人で作った料理を俺に食べてもらいたいらしく、当番制になってから俺が料理を教えることはなくなった。
でもそれはそれで正解だったかもしれない。
一人暮らしの俺が作っていたような、いわゆる男料理のようなものではなく、結構本格的なものを作ってくれる。
それが俺は実は嬉しかったりする。
798 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:31:31.17 ID:Tq3vTX5ro


その話は置いといて。
土御門達が帰った後、残ったのはサーシャ。
四人になった未成年を見て、母さんも水着装備をしてきた。
それまでは子供が多かったので遠慮していたけど、実はウズウズしていたらしい。

あの水着を着る母さん。
いや、母さんとかではなく、あの水着を女の人が着るということにドキドキしてしまった。
今までは青ピだったのだ、この反応は当たり前だと思う。
だが、何も知らない両親にはマザコンだのなんだの言われていた。

隣のインデックスも母さんを見て顔を赤くしていたのが横目で見えていたので、仲間だと思い助けを求めてみた。

インデックスはこちらに気づくと赤い顔で母さんをチラチラ見ながら「……マザコン!」と、照れ隠しに言ってきた。
思わずふざけんなと突っ込むところだった。
799 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:31:57.46 ID:Tq3vTX5ro


そんな感じで帰ってきた俺達。
そして、今日は待ちに待った八月八日。
……この日は姫神が脱走しているはずなのだ。

「さてと、朝飯食ったら適当にぶらつくか」

「でも外暑いよ?」

「今日はとある事件が起こるからな。それまでのただの散歩だよ」

「なるほど」

「何なら途中でアイスでも買ってくか?」

「行く!」

「現金なやつだなぁ」
800 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:32:23.96 ID:Tq3vTX5ro


会話のあと、それぞれ用意を済ませた俺達は、外へ出た。


「あっづー……」

「あつーい……」


アイスは、コンビニで買っていくつもりだ。
……わざわざ閉まってる店へ行ってインデックスに怒られて喜ぶ趣味はない。



「すずしー」

「あーすずしーんだよー」



アイスを食べるために、近くのベンチに座った。


「うめー」

「おいしーんだよー」


そして。




「にゃー」





ネコを見つけた。
801 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:32:56.70 ID:Tq3vTX5ro


「……」

インデックスはキラキラとした目で見ていた。

「……飼いたいのか?」

「……あ、ううん。何でもないんだよ」

「そうか?」

「う、うん……」

「……インデックスはどうしたい?」

「え? え?」

「ちゃんと責任もって飼えるか?」

「も、もちろんなんだよ!」

「じゃあ、ウチで飼おう。上条さんとしても長い間過ごしたこいつと離れるのはなんか寂しいからな」

「前も飼ってたの?」

「おう」

「じゃあ名前はそれにしようよ」

「いや、インデックスが決めてくれていい」

「ほ、ほんと!?」

「ああ」

「よかったねースフィンクス。スフィンクスの名前はスフィンクスに決めたんだよ」

「ははっ」

「ん? どうしたのかな、とうま。名前おかしかった?」

「いや、インデックスらしいな、ってな」

「ふーん……」

「だいたい。変わってねーんだよ、バーカ」

「よくわかんないけどバカって言ったー!!」

「言ったけど言ってない!!」

「あ、逃げちゃダメなんだよとうま!」

「捕まったら何されるかわかんねえだろうが!!」

「とーうーまー!!」
802 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:33:26.17 ID:Tq3vTX5ro


────────
──────
────
──



「はあ、はあ……」

「つ、疲れた……」

「もう、とうまを、何かする、気力も、ないかも……」

「……ふー。走ったから暑いな」

「誰のせいだと思ってるのかな?」

「……さあ?」

「むー!!」

「あっれぇ? インデックスさん、怒っちゃっていいのかな?」

「どういうこと?」

「目の前にはファストフード店があります」

「うん?」

「俺はここでシェイクを飲んで行こうと考えています」

「うん」

「インデックスがその気なら俺は一人で行きます」

「ごめんなさい、すぐ行くんだよ!」

「やっぱり現金なやつだなあ」

「……あ、でもスフィンクスどうすればいいかな」

「こいつならそこらへんに置いといても大丈夫さ」

「じゃあそうするね」

「じゃあ、多分満席だから俺は先注文してくるよ」

「あ、じゃあ私バニラとチョコとイチゴ!」

「はいはい、分かってますよ」



変わんねえなあ。
そう思いながら店内に入る。
803 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:34:02.39 ID:Tq3vTX5ro


「いらっしゃいませ─。ご注文は?」

「シェイクをそれぞれ一個ずつ。俺はコーラで」

「お持ち帰りになさいますか?」

「……いや、相席でいいんでここで」

「ではあちらの席でよろしいですか?」

「……はい、大丈夫です」

「それでは、850円になります」

「……とうまー。頼んでくれた?」

「おう、今払うから待ってくれ。……あ、じゃあこれで」

「ちょうどお預かりしますねー。ごゆっくりどうぞー」

「……じゃあ行くか」
804 : ◆index//3x.[sage]:2013/05/05(日) 23:34:30.80 ID:Tq3vTX5ro


「あれ、満席っぽいよ?」

「あそこだよあそこ」

「どこ? とうま両手ふさがってるから分かんない」

「あそこ。巫女さんがいるところ」

「……とうま、今からでも遅くないんだよ。帰ろ?」

「いやいやいや、何を言いますかインデックスさん。彼女はいずれあなたの友達となる人でしてね……」

「……ほんとに? なんだか胡散臭いんだよ」

「まあお前の想像してる巫女さんとは違うし。あれはコスプレだ」

「ふーん」

「まあとりあえず今回はあいつが絡んでくるんだ。俺は行くぞ」

「じゃ、じゃあ私も!!」





そして、巫女さんの前に立った俺達は。
805 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:35:00.00 ID:Tq3vTX5ro


「……相席していいかな?」

「く、─────」

「あん?」

「──────食い倒れた」

「はあ……」


そうかよ、こいつも変わらねえなあ。
はは。
806 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:35:27.07 ID:Tq3vTX5ro


「え? え? どういうこと??」

「まあ落ち着け、な?」

「う、うん」

「……とりあえず、何があったのさ?」

「一個五十八円のハンバーガー。お徳用の無料券がたくさんあったから。とりあえず三○個ほど頼んでみたり」

「お徳すぎだ馬鹿」


今回もやってしまった。
思わず突っ込んでしまった。

また、気まずい空気が流れる。
807 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:35:54.91 ID:Tq3vTX5ro


「……あー。言い方がまずかったかな」

「やけぐい」

「おう、それは見たら分かるぞ」

「帰りの電車賃。四○○円」

「ちょっと待って、コーラ飲む」

「それで。全財産が。……あ。どうぞ。ゆっくり飲んで」

「……」

「……」

「……はい、続きどうぞ」
808 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:36:24.01 ID:Tq3vTX5ro


「うん。それで。今。全財産。三○○円」

「OKじゃあ俺の家へ行こう。ここから近い」

「!? げほげほっ。待って、とうま! 私まだ飲んでない!」

「あ? ああ、ゆっくりでいいよそれは。何なら家で飲んでもいい」

「私は。そこまでしてもらう必要はない」

「……いや、こっちは急いでんだ」

「さっきと。言ってることが逆」

「お前のことは急がないとなんねえんだ。迎え……っつーか追っ手?が三沢塾からくる前に帰っちまわねえとな」

「何でそれを」

「……ここは学園都市だ。いろいろあるもんさ」

「……そう」

「そういうもんだ。さ、早く行こうぜ」
809 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:36:53.13 ID:Tq3vTX5ro


「はい、こっちもシェイク装備完了なんだよ!」

「……あのなあ。両手塞がってたらどうやってスフィンクス連れて行くんだよ」

「あ……」

「ほら、持ってやるから」

「あ、ありがとう……」

「……ふふ」

「ん? どうした?」

「いや。ありがとう」

「まだまだ礼を言ってもらうには早いさ」
810 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:37:23.62 ID:Tq3vTX5ro


それから十分ほど歩いて、俺らの住む寮に戻ってきた。
インデックスは途中でシェイクを全て飲みきったので、俺の手には何も握られていない。


「さて、到着ー」

「ほら、スフィンクス。新しいお家なんだよー」

「……案外。ぼろっちい」

「そりゃ高いLevelの能力者がいるような学校ではないからなぁ」


適当に会話をしながら中へ入る。



「……あ。でも。中は意外と綺麗」

「そりゃ上条さんは綺麗好きですからね」

「……上条。くん」



最後の姫神の言葉はよく聞こえなかった。
聞き返そうと思ったところで、インデックスが、声をあげた。
811 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:38:13.60 ID:Tq3vTX5ro


「とうま!」

「……どうした?」

「……、何だろう? 近くで魔力の流れが束ねられているみたい」

「あー……」

「……属性は土、色彩は緑。この式は……地を媒介に魔力を通し、意識の介入によって……。……、ルーン?」



ダッ、という音を立てて走って行こうとするインデックスの手を掴む。
812 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:38:41.19 ID:Tq3vTX5ro


「はいストップ」

「なに?」

「残念それはステイルのルーンだ」

「……」

「……ちなみにそれはブラフ。本当は人払いでここからインデックスを何処かへやろうと思っているのでしたー」

「何で?」

「そりゃあ今からさっきから言ってる事件に行かなきゃなんねえもん」

「……大丈夫?」

「大丈夫」

「……そっか」

「おう」

「……じゃあ私は何をすればいい?」

「そうだな……。とりあえず人払いにやられないように、この部屋から出るな。それだけ意識しといたら大丈夫だ」

「それだけ?」

「うーん。……じゃあイギリス清教に電話しておいてくれ。この間土御門に登録してもらっただろ?」

「何を言えば?」

「『姫神秋沙の"吸血殺し"を封印する何かを作っておけ。歩く協会と同じ原理で何とかなるだろ』って」

「ひめがみあいさ?」

「……じゃあ俺はもう行ってくる。何か知りたかったらそこの巫女さんに聞きな。あ、あと絶対部屋出んなよ!」

「え、ちょ!! とうま、待って、ねえ待ってよー!!」
813 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:39:06.16 ID:Tq3vTX5ro






バタン。







ドアを閉めて、鍵をかける。
内からはもちろん簡単に開けられるが、何もしないよりはましだろう。
814 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:40:02.77 ID:Tq3vTX5ro


「上条くんは。とうまって名前」

「そう、とうま」

「そう。上条当麻。貴方は一体何者……?」

「まあ変わってるかもね、とうまは」

「だいぶ」

「ところで、ひめがみあいさって何?」

「それは。私の名前」

「ふーん、じゃああいさって呼んでいい?」

「……貴方も。変わってる」

「ええ!? 私は普通なんだよ!」

「彼と。そんな風に信頼関係を結べている時点で。変わってる」

「じゃああいさもそのうち変わり者の仲間入りだね。……とうまはそういう人なんだよ」

「やっぱり。変わった人」
815 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:40:37.95 ID:Tq3vTX5ro


しばらく歩いてみると、やっぱり人はどこにも見当たらなかった。





「そろそろ出て来いよ、ステイル」

「……相変わらず君はよく分からないね、上条当麻」

「そりゃどーも」

「あまり君と長く居たくないからこちらとしては早く説明したいんだけど」

「ご勝手に」

「受け取るんだ。"三沢塾"って進学予備校の名前は知っているかな?」

「知ってるから封筒は普通に渡してくれねえかな」

「……。ほら、ちゃんと読むといい」

「ま、読んだところで分からないと思うから僕が説明してあげよう」

「はいよ」
816 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:41:08.57 ID:Tq3vTX5ro


「簡単にいうと、だ。そこに女の子が監禁されてるから、どうにか助け出すのが僕の役目なんだ」

「……"吸血殺し"」

「……なぜそれを?」

「今俺の部屋にいる女の子の能力だよ」

「な……」

「まあ、つまりそういうこった。俺らがここにいる以上、もしかしたらもう連れ去られてるかもしれないけどな。だから早く行って倒さねえ……と」

「どうしたんだい?」

「やばい、走れ!!」

「さすがにそんな短時間で攫えはしないだろうけど?」
817 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:41:39.22 ID:Tq3vTX5ro


早く行かねえと。
三沢塾の内部を思い浮かべることで思い出した。
俺達の前にローマ正教の連中が戦闘に行っているはずなのだ。



「違う、そうじゃねえ! このままだと死人が出る!」

「は?」

「ローマ正教の連中が先に行ってるはずだ」

「連中? 今回の敵はアウレオルス=イザード。彼ただ一人だ。それなのに……」

「ああもう、長い説明はいい! とりあえずこれだけは言っといてやる。あいつの錬金術は完成してるんだよ!!」

「バカな、どうやって!?」

「知るか! 素人の俺に聞くくらいなら本人に聞け! ほら行くぞ!!」
818 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:42:07.78 ID:Tq3vTX5ro


それから何分か走って。


「ここだな」

「はあ、はあ。僕は運動は得意ではないんだけどね……」


三沢塾に到着した俺達は、そこでローマ正教の連中を発見した。
819 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:42:54.33 ID:Tq3vTX5ro


「おい」

「……何だ?」

「お前ら、ローマ正教ってことでいいんだよな?」

「いかにも。私はローマ正教一三騎士団の一人、"ランスロット"のピットリオ=カゼラである。……何だ貴様ら。いや、もう片方はイギリス清教か」

「そうだよ。悪いけど、僕達は学園都市から直々に依頼されてるんだ。そこをどいてくれないかな」

「これは我々の───ローマ正教の問題である。よって我々が今から戦闘へ行く」

「学園都市で起こっている以上、学園都市の問題でもあると僕は思うけどね」

「そうだ。それに、お前らあいつの実力を分かってんのかよ」

「勿論である。そのためにこちらもそれなりのものを用意している」

「因みに、ナントカの聖歌隊とかいうやつで攻撃しても無駄だぜ?」

「な……!?」

「……君は本当に毎回どこから情報を得ているんだか」

「と、いうわけで。お前らはしばらく休んでてくれよ」
820 : ◆index//3x.[ saga]:2013/05/05(日) 23:43:23.02 ID:Tq3vTX5ro





そして。









バラバラに砕け散った武器や鎧を見て唖然としている彼らをよそ目に、俺達二人は戦場へと足を踏み入れる。 
 
 
846 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:47:58.72 ID:Ip+fMPzso





入口。
そして自動ドアを抜けると、そこはもう戦場。



……なんて気配は全くなく。
騎士が倒れているわけでもなければ、俺が三沢塾の生徒に認識されていないということもない。
847 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:48:55.64 ID:Ip+fMPzso


「……さて。北棟の最上階、校長室とかいうところだったかな」

「ん? 何のことだい?」

「そりゃアウレオルスがいるところに決まってんだろ」

「……、そうかい。僕はもう何も言わないよ」

「こっからじゃ遠いな……。エレベーター登っていくか」

「上条当麻?」

「ん?」
848 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:49:30.70 ID:Ip+fMPzso

「ここは結界が張ってある。言うなれば空間をコインの表と裏に分けるようなね。まあ説明するより体験した方が早いと思うけど。周りを見てみろ、誰も君の存在に気づいてはいな……いことはないようだね」

「まあ、俺今無理やりコインの表にいる状態だろうしな」

「つまり周りから見ると君は今独り言を言っているように見えるわけだ」

「え……、あっ!!さっきからジロジロ見られるなと思ったらそういうことかよ!!」

「そんなこと言ってると余計に……」

「あ……。なんか気まずいな。ま、気にしてたらやってられねえか。俺は先に行くぜ?」

「はあ……。勝手にしろ、僕はゆっくり正規ルートで行かせてもらうとするよ」
849 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:50:03.79 ID:Ip+fMPzso


こうして。


俺は今北棟の最上階にいる。
校長室は多分もうそこのはずだ。


「……呆然。少年、ここへはどうやって来た」

「ん? ああ、ダミーか。いや、普通にエレベーターに登ってきただけだぜ?」

「必然、いかなる外敵もそのようなことはできないはず。自然、貴様はただの生徒か。そして、ダミーとは何だ」

「質問するなら一つづつにしてくれねえかな」

「泰然、それなら前者から聞こう」
850 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:50:40.59 ID:Ip+fMPzso


「分かった。……ところでお前は誰かがお前の魔力を消しながら歩いていることに気づいたからここに来たんだよな? だったらそれはそういうことだよ」

「……唖然、少年、ただの一般人ではないな」

「また質問か? ま、いいか。後者については言葉の通りだ」

「言葉の通りとは?」

「そのままの意味だってことだよ。お前がアウレオルス=イザードじゃないってこと」

「悄然、私はアウレオルス=イザードだぞ。そんなことあるはずない!」

「ああ分かったわかった。ここに校長室への扉があるだろ? ここを開けたら全てが分かるさ」

「ふむ……。よし、いいだろう。必然、扉を開けよう」
851 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:51:10.38 ID:Ip+fMPzso







ガチャ─────。







「……判然。まさかダミーを連れてくるとは」

「愕然、あれは誰だ!?」

「いや、だからあいつがアウレオルスなんだって」

「断然、その通りだが。少年、しかし何故それを」

「俺はとある情報通だからな」

「悄然、何だこれは……!? 私は一体どうすれば」

「消えろ」



アウレオルスが一言、そう言っただけでダミーは消えてしまった。
なかなかひどいことをするもんだ。
852 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:52:28.43 ID:Ip+fMPzso


「さて、少年。話を聞こうか」

「……ちょうど俺も聞きたいことがあるんだ」

「自然、こちらが質問する以上、その条件をのもう」

「じゃあ俺から。俺から聞きたいのはただ一つ。何で俺の許可なくインデックスと姫神をここへ連れてきた」

部屋の端にいるインデックスと姫神を見る。
インデックスは寝かされている。
多分姫神はあまり抵抗しなかったから眠らされなかったのだろう。
それに対してインデックスは最後まで抵抗したために気絶させられた、とまあこんなものだろう。

そのことに腹が立つ。助けたいと思う相手に手をあげることが俺には納得できない。
もし自分が今後そういう立場に立ったらやってしまうかもしれないし、そんなことに腹を立てるなんて子供じみてるとも思う。
それでも俺はなんか嫌で、腹が立った。
853 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:52:58.45 ID:Ip+fMPzso


「酒然、彼女たちを連れてくるのに何故貴様のような奴の許可をとる必要がある」

「この二人は俺の家にいたはずなんだから当然だろ」

「なるほど」

「で? お前はそいつら連れ込んで何がしたいんだ?」

「依然、それこそ答える必要のない問いだ」

「……ふーん。じゃあいいや。次はお前の質問でいいぞ」
854 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:53:45.26 ID:Ip+fMPzso


「では少年。貴様は何をしにここへやって来た」

「はあ? お前が何がしたいか答えねえのに何で答えなくちゃなんねえんだよ」

「自然、それは交渉決裂ということでいいな?」

「あーはいはい、答えます、答えますよ。誰かさんがインデックスを吸血鬼にしようとかアホなこと考えてるから止めにきただけだ」

「な……!!」

「お、何か知ってんのか?」

「憤然、最初から全て知っていたということか」

「うーん、何のことだかわかんねえなあ」

「貴様……」

「あ、でも一つだけ言っておくの忘れてた」

「は?」
855 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 07:55:05.87 ID:Ip+fMPzso


「インデックスは。吸血鬼になんかしなくたって、もう記憶を失うことはないぜ?」

「な、に……?」

「つまりだ。インデックスは───




「彼女は、そこの腹の立つ話し方をする日本人に助けられた、ってことさ。つまり、この馬鹿は君に喧嘩を売っているようだね」

「……!!!」

「あーあ……」

「フン」



「ふ、ふざけるな……。それじゃ、私の……私の、今まで……。あぁぁぁぁぁあああああ!!!」





……。この野郎。
こっちはなるべく穏便に済ませるつもりだったのにこれだ。
856 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:02:26.48 ID:Ip+fMPzso


「いや何。一回くらい痛い目見た方がいいと思ってね」




俺の睨みつけるような視線に気づいたステイルが言う、ふざけるな。





「……痛い目なんて見てやんねえよ、ばーか」

「……間然、貴様にゆっくりと喋っている暇があると思っているのか!!! 窒息せよ!!」



パキン……
857 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:02:57.15 ID:Ip+fMPzso


「……」

「……」

「……」

「……は?」

「……うん、まあそういうこった。インデックス返せ」

「うるさい、黙れ!! 感電死絞殺圧殺! 死ね!!!」
858 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:03:23.83 ID:Ip+fMPzso


「……」

「……」

「……」

「……あ、うん。なんかごめんな?」

「悄然、貴様何か結界を貼っているのか!? ……ならば物理で攻めるのみ」

「……まあ頑張れ」


こうなることは分かっていた。
アウレオルスやステイルなど、魔術のみで相手を倒そうとする奴に対してはこうなる。
そんなことはもう分かっていたのだ。
859 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:04:30.92 ID:Ip+fMPzso


「銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は一つで十二分。人間の動体視力を超える速度にて」


もちろん今からくるであろう攻撃も同じ。
これはステイルの炎剣と同じタイプ。
ステイルの魔術で作った剣、アウレオルスの魔術で作った銃。
……結局はこういうことだ、それ自体が物理であろうと関係なく効かない。

その魔弾とやらで床を崩壊させる、とかならまた別の話だけど。

「射出を開始せよ!!!」



バシュ、という音と、パキン、という音が同時に聞こえる。
こんな近距離で人間の動体視力を超えるらしい速さで撃ったのだからそりゃそうなるだろう。
860 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:05:50.21 ID:Ip+fMPzso


「な……に…………?」

「一つだけ教えてやるよ」

「黙れ!! 我が黄金錬成に逃げ道などない! 断頭の刃を無数に配置。速やかにその体を切断せよ!」



今度はパキンとも鳴らなかった。
つまりそれは。

俺が部屋中に力を充満させたからあいつが魔術を使えなかった、とかではなく。





……アウレオルス自身が自分を信じられなかったということ。
861 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:06:16.99 ID:Ip+fMPzso


「……もういいか?」

「ひ……」



勝敗は決まった。

だから俺は、ありったけの皮肉を込めて。
そして、いつかと同じように演技をする。


「お前じゃ俺には勝てねえよ」


「ぅ……ぁ」




セリフも、いつかと同じ物を。
862 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:07:35.98 ID:Ip+fMPzso



「……じゃ、帰るか」

「……んん?」

「……え?」

「……すまない、僕にも分かるような日本語で話してくれないかな?」

「はあ? だから家帰るっつってんだよ」

「君の意図が全く読めないんだけど」

「こっからは俺の仕事じゃねえよ。お前らの仕事だろ? 何かやったら素人がーとか言うんだしお前に任せるよ」

「甘いな、実に甘い」

「甘くて結構、俺は基本的には平和主義なんだよ」

「……。そうかい、じゃあこちらで処理させてもらうよ」

「ただし。もう戦う意思はないのに傷をつけるのはダメだぞ」

「どうしろと」

「知らねーよ、お前らで考えろ」

「……はぁ」

「こいつも。……こいつも、ちゃんとインデックスと話し合って仲直りしなくちゃなんねえんだよ」

「……ふーん」
863 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:12:35.24 ID:Ip+fMPzso


「じゃ、インデックス。帰るか」

「……うん。ありがとう」

「いやいや。今度、ちゃんと話し合おうな」

「もちろん」

「……思い出せなくても、もう一回やり直せるんだ、きっと。な?」



あのロシアで記憶喪失を告白した時のように、今の俺でいいんだと認めて貰えたあの時のように。
また、きっと。



「うんっ!!」


インデックスは元気良く笑顔で返事をした。
それを見たステイルの顔がすこし緩んでいるのを見てしまった。


「……チッ」

「はは」

「……まあ、今回は君に従ってやるとするよ」

「……おう!」


こんな感じで、俺達の今回の戦いは幕を閉じた。
864 : ◆index//3x.[sage]:2013/06/10(月) 08:13:06.45 ID:Ip+fMPzso


「……そんで、もう遅いけど昼飯どうするよ?」

「食べに行きたいかも!!」

「はいはい、分かったよ。俺も疲れたからな」

「帰りは買い物行かないとね」

「どっかのバカが飯ばっか食うからなー、ははは」

「むう、またバカにしたね!?」

「さあなー。それに、今日は多めに買わないとな」

「? 何かするの?」

「ん? つまりこういうことだ」

「……?」

「姫神、帰るぞ」
865 : ◆index//3x.[sage]:2013/06/10(月) 08:13:33.54 ID:Ip+fMPzso


「え。あの」

「……それはつまり。第二弾、するの?」

「おう、楽しいだろ」

「うーん……。まあね」

「じゃ、決定」

「あの。何を」

「ん? そんなの決まってるだろ?」

「そうだよ、あいさ」


「「お泊まり会、第二弾 開催!!」」
866 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:14:06.47 ID:Ip+fMPzso


「第二弾……」

「そうなんだよ、第一弾は白いお友達とクールビューティー。あいさが第二弾」

「へえ。でも。本当にいいの?」

「もちろん。ね、とうま?」

「こっちから言ったんだから当たり前だろ? それに、頼んだ霊装が来るまではウチにいた方が安心だろ、その能力だって抑えられるし」

「じゃあ。遠慮なく」

「どうぞどうぞ」

「じゃ、改めて。まずは昼飯、行くぞ?」

「うん!」

「うん……」
867 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:14:40.77 ID:Ip+fMPzso


「よし!」

「……さっさと行ってくれると嬉しいんだけどね」

「悪かったよ、じゃあな」

「ふん、君とはもう会わないことを祈るよ」

「まあ無理だけどな」

「……」

「じゃ」
868 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:15:21.25 ID:Ip+fMPzso


そして、戦場を後にする。


「あ」

「何? あいさ」

「一つ。言いいたいこと忘れてた」

「何だ?」

「……その。ありがとう」

「いいさ、困った時はお互い様だぜ?」

「ふふ。そう」

「まーたとうまは……」

「何だよ、インデックス」

「何でもないかもー」

「あ。もう一つ。言い忘れてたことがある」

「なあに?」
869 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:15:58.41 ID:Ip+fMPzso


「これは。コスプレじゃない。私。魔法使い」



「聞こえてたのかよ!! ってかいつの話だよ!?」

「適当なこと言っちゃって!! あいさとは一回ちゃんと話さないといけないかも!!!」









「───ふふ。ありがとう。本当に」
870 : ◆index//3x.[ saga]:2013/06/10(月) 08:20:18.70 ID:Ip+fMPzso

いじょー
2巻終了!

次は5巻、まだ5KB程度しか書けてないです
今回のように、どんだけ考えても思いつかないって時以外はなるべく週一くらいで来たいとは思ってます
その時は日曜日になるかと
890 ◆index//3x.[ saga]:2013/06/17(月) 21:10:03.73 ID:Bk4mIF25o

こんばんはー

上条「虹色の最終日」

ごめんなさい、朝のこと知らない人もいるんでしたね、配慮が足りませんでした
いろいろミスったのでたて直させてもらいました

もう次スレいってしまうのは、5巻が100レス以内で終われるか分からないからです

新スレでも早速誤字ってますが、よろしくお願いします!

あ、このスレもしばらくは誘導用として残しておくので、自分に何か用があったり、小ネタ書きたいなどあったら自由に使ってください

ではー 
 
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2013/06/28(金) 01:02:18.23 ID:q+U2oQLjo
 

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