- 1 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 19:52:56.59 ID:RuiFdFo0
これは英雄の物語ではない・・・・・・
ここ学園都市では、能力の強さによって6段階のレベル分けがなされている。
レベルの最高位は5、学園都市にたった7人しか存在しないレベル5は羨望の的だ。
なぜ最高位が5なのにレベルの区分は6段階なのか?
答えは簡単だ、能力開発を目的とする学園都市にも、能力を使えない者
レベル0が存在するからだ。
私、佐天涙子もその1人だ。
- 2 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 20:01:45.23 ID:RuiFdFo0
- 「はぁ、うまくいかないなぁ……」
にらめっこしていた能力開発の本から顔を上げる。
私はこうして能力を得るために勉強している。
学園都市に来た目的は能力開発の為なのだから、当然と言えば当然だ。
幻想御手事件以来、私は以前にもまして能力開発の勉強に力を入れている。
しかし、それでも私はレベル0のままだった…
ふと時計を見ると、時計の針はすでに10時を回っていた。
「明日も早いし、もう寝ようかな…」
私は明日の学校に備えて、早めに寝ようと立ち上がった。 - 4 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 20:15:23.04 ID:RuiFdFo0
- 「んっ?」
ふとテーブルの上のコップに目をやると、中の水が揺れていた。
「なんだろう?地震かな?」
どうやら地震のようだ、規模はさほど大きくない。私は別段慌てることもなく
地震が収まるのを待つ。
(随分と長い地震だな~…)
揺れ始めてからもう1分は経っている。それなのに一向に収まらない揺れに私は
首を傾げる。
その刹那、部屋が大きく揺れ、部屋の中に轟音が轟いた。
「きゃあぁぁ!」
突然の大きな音に私は咄嗟に頭を庇いながらその場に蹲った。
大きな音が鳴ったのは一瞬だけだったが、私の体は金縛りにでもあったかのように
動かなかった。
<ぬ、ぅぅぅ…>
ふと、私の耳にうめき声のようなものが聞こえてきた。
その音の正体を確かめるために、私はおそるおそる顔を上げた。 - 5 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 20:27:52.30 ID:RuiFdFo0
- 今のところ正宗だけの予定です。
あんまり出しすぎると収拾付かなくなりそうなので。
私が顔を上げると、そこには人間程の大きさの天牛虫(カミキリムシ)が居た。
「うわぁ!何これ!?」
あまりの出来事に私は腰を抜かしてその場に座り込む。
<ぐぅ…、ここはどこだ?なぜ吾はこのような場所に……?>
そのカミキリムシが言葉を発する、
どうやらうめき声の正体はコレで間違いないようだ。
私は改めてそのカミキリムシを見る、虫、というには余りにも大きすぎる。
何より異様なのは、その体が、まるでロボットのように金属の光沢を放っている事だ
あまりの事態に私が言葉も発せずにいると
<御堂!おらぬのか!?御堂!!>
とカミキリムシが叫んだ。
みどう?何かを探しているのだろうか? - 6 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 20:38:52.00 ID:RuiFdFo0
- <ぐぅッ!?体が動かぬッッ……!>
ロボットの体がよろめく、よく見るとその体にはいくつかのヒビが入っていた。
私が茫然としていると、遠くからサイレンの音が聞こえて来た。
どうやら音に驚いた近所の人がアンチスキルに通報したみたいだ…
正気を取り戻した私は、助けを求めるために部屋の外へと飛び出した。
数分後、私は到着したアンチスキルに事情を説明する。
アンチスキルが部屋の中に入り、あのカミキリムシを運び出そうとする。
どうやらカミキリムシは抵抗しているらしく、部屋の中からは言い争うような声と
激しい物音が聞こえて来る。
私はここは危険だという事で、アンチスキルの詰所に避難させられた。 - 7 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 20:51:25.35 ID:RuiFdFo0
- アンチスキルの人の話では、まだ異変が起こる可能性があるという事で
私は部屋には帰れず、詰所の仮眠室を借りて、一泊することになった。
「はぁ~、なんかついてないなぁ……」
ベッドに横になると、溜まっていた疲れがドッと出て、私はそのまま眠りについた。
「おーい、早く起きないと遅刻するじゃん!?」
ドンドンという音が聞こえて来る。誰かがドアを叩いているようだ。
「もう…なに~?こんな朝早くから……」
起き上がり周りを見渡し、、ここが自分の部屋で無い事に気が付く。
「あれ…?ここどこ?」
私が寝ぼけ眼のまま状況を把握できずにキョロキョロしていると
ドアが開き女の人が入って来た。
「寝ぼけてる場合じゃないじゃん、早くしないと遅刻するじゃん」
そこにはいつかのアンチスキルの黄泉川さんが居た。
「あれ?どうしたんですか?こんな朝早く…」
「はぁ…、とりあえず、顔洗ってくるじゃん…」 - 8 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 21:04:35.14 ID:RuiFdFo0
- 顔を洗い、頭がすっきりすると昨日なにがあったかを思い出した。
「これから君の部屋に行って、学校に必要な物を取ってくるじゃん」
昨日の事件の後、部屋にはもう異常が無い事が確認されたが、念のためという事で
黄泉川さんが護衛として付いて来てくれるらしい。
私は黄泉川さんの運転する車に乗り、部屋へと向かった。
「お手数掛けます」
「ははっ、そんなに気を遣う必要ないじゃん!」
そう言って黄泉川さんが笑った。
それから少し真面目な口調になり
「あれから調子はどう?能力開発頑張ってる?」
と聞いてきた。
「あはは、あれからも頑張ってるんですけど…、まだレベル0のままなんですよね」
私は努めて明るく言ったが、なんだか言っていて悲しくなって来た。
「そっか、でも、諦めない事が肝心じゃん?」
そういって私に笑い掛ける。
「そうですよね…」
私も同じように笑顔を返す。 - 10 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 21:18:24.87 ID:RuiFdFo0
- そうこうしているうちに、車は私の部屋のあるアパートの前に到着した。
「まずはあたしが入って様子を見るから、何かあったらすぐに助けを呼びに行くじゃん」
まあ、大丈夫だとは思うけど、そう言って黄泉川さんは部屋の中に入って行った。
昨日の今日だし、私は大丈夫なのかと心配になった。
「おーい!大丈夫だから入ってくるじゃん!」
私の心配とは裏腹に中から黄泉川さんの暢気な声が聞こえてきた。
「うわぁ~~…」
部屋の中に入ると、あのカミキリムシの現れた所なのだろうか、床に木の板で
応急処置がしてあった。
その周りも、現れた時の衝撃なのか、運び出されるときに暴れたせいなのか
小物などが散乱していて、まるで台風が来たみたいな状態だった。
「これどうしようかな~」
私は部屋の惨状を見て溜め息を漏らした。
しかし、考えていてもしかたない、そう思い学校へ行く準備をはじめる。 - 11 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 21:30:47.73 ID:RuiFdFo0
- その後、準備を終えた私は、黄泉川さんに学校の近くまで送ってもらい
そこで黄泉川さんと別れた。
「佐天さん、どうかしたんですか?なんだか顔色が悪いみたいですよ…」
学校に着くと、私の様子を心配した初春が話しかけて来る。
「ああ、昨日はあんまり眠れなくてね…」
「へぇ~、めずらしいですね。何かあったんですか?」
「部屋にスッゴク大きい虫が出てね、そのせいで…」
「え゛!虫ですか…?」
初春が少し引き気味に言う。
「あはは!冗談だよ、冗談!」
「もぉ~、佐天さんたら…」
初春が頬を膨らませて抗議の声を上げる。
余計な事を言って初春を心配させたくないし、それに本当の事を話しても
信じてくれるかわからなかった。
その後も初春と他愛もない会話をしているうちに、先生が来てホームルームが始まった。 - 12 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 21:41:08.13 ID:RuiFdFo0
- ホームルームはいつも通り滞りなく進んでいった、が
「最後に、佐天、お前はこの後、職員室まで来るように。以上だ、日直、号令」
最後にそう言って先生は教室を出て行った。
「職員室に呼び出しだなんて…佐天さん、なにかしたんですか?」
初春が心配そうに私に尋ねて来る。
「さぁ?なんだろうね…」
私はそう言って誤魔化したが、理由は1つしか思い浮かばない。
あまり気乗りはしないが仕方ない、私は職員室へと向かった。
「失礼します。佐天涙子です」
職員室に入ると待っていた先生に、応接室へと行くように言われた。
呼び出しの理由を聞くと、先生も詳しい事は聞かされていないらしい。
私は応接室の前へ行くと、意を決して扉をノックした。 - 13 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 21:54:06.12 ID:RuiFdFo0
- 「どうぞ、お入りください」
中から返事があり、それに従い応接室の中へと入る。
「失礼します」
中に入ると、そこにはスーツをきた細身の男性が座って居た。
「佐天涙子さんですね?」
「はっ、はい!そうです」
応接室なんて入った事無かったから、緊張して声が上擦ってしまった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、私は稀少能力研究所で主任をしております
木原という者です。どうぞよろしく」
そう言って、その人は名刺を差し出した。
(稀少能力研究所?聞いたことないなぁ…)
私はその人が胡散臭いと思いながらも名刺を受け取る。
「あの、今日は私にどんな御用で?」
答えは予想出来ているけど一応尋ねてみる。 - 14 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 22:05:00.30 ID:RuiFdFo0
- 「はい、昨晩の事件の事で少々お話があるのですが…」
やはり予想通りの答えが返ってきた。しかし、私は昨晩何が起こったのかすら、
よくわかっていない。
「実は私…、昨日の事は、何が何だかわからなくて、教えられる事なんてほとんど
ないんですけど…」
私は正直に打ち明ける。すると木原さんはそう言われるのを予想していたかのように
笑みを浮かべた。
「どうかお気になさらず、あのような事が起こっては混乱しても無理はありません。
私がここに来たのは昨晩の事に付いて、あなたに説明するためです」
「え?」
完全に予想外の答えに私は目をパチクリさせてしまう。 - 15 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 22:17:34.26 ID:RuiFdFo0
- 「私に説明…ですか?」
「はい、すみませんが、ここでお話できるような話ではないので、私と一緒に研究所の
施設までご同行願えませんか?」
またもや予想外の申し出に私は困惑してしまう。
「で、でも学校がありますし…」
正直これ以上の面倒事はごめんだし、私はなんとか断ろうと必死になる。
「ご心配なく、もう学校へは話を付けていますので」
学校にまで話してあるのなら、多分断る事はできないだろう…
「わかりました…」
私は観念して、木原さんに付いて行く事にした。
木原さんに付いて駐車場へ行くと、高そうな車が止めてあり、私達はそれに乗り込んだ。
「どこへ行くんですか?」
「そんなに遠くではありません、うちの研究所が所有しているビルです。
そこにあなたに会わせたい人が居るんですよ」
私に会わせたい人?それが誰なのか、皆目見当もつかない。 - 17 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 22:31:27.82 ID:RuiFdFo0
- 考えているうちに目的地に着いたらしく、車がゆっくりと停車する。
車を降りると、目の前には立派なビルがあった。
私は木原さんの先導でビルの中に入り、会議室のような部屋の前まで案内された。
部屋の中に入ると、そこには昨日のカミキリムシが居た。
<むッ、お主は昨日の娘か…>
カミキリムシが私の姿を確認するとそう言った。
「ど、どうも」
突然の出来事に私は動揺を隠せなかった。
「あの、私に会わせたい人って…」
「はい、驚かせてすみません。彼の名前は正宗、そんなに警戒しなくても、
彼は危害を加えるような事はしませんよ」
木原さんの答えを聞いて、私は困惑した、つーか会わせたい人って、
どっからどう見ても人じゃないし… - 20 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 22:47:04.06 ID:RuiFdFo0
- <おい!木原とやら!なぜ吾をこんなところへ呼んだのか、早く説明せぬか!>
私が抗議の声を上げる前に、カミキリムシ…正宗が苛立たしげに抗議した。
「これは失礼しました。それではお話しましょう、佐天さん、どうぞこちらに
お座りください」
完全に抗議をするタイミングを逸してしまった私は、木原さんに促されるままに
椅子に座った。
「まずは、彼……正宗の事からお話ししましょう」
木原さんが言うには正宗は大和という国から来たのだということだ。
つまり、こことは別の世界から来た、ということらしい。
それだけでもにわかには信じられない話だが、さらに信じられないのは、彼は元は
人間だったのだという。
正宗の居た世界には劍冑という兵器が存在し、それを作る者は自分自身の体を劍冑
にする。
そして、そうして出来た劍冑は能力者の能力の様な超常の力を備えているという事だ。 - 21 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 22:58:29.29 ID:RuiFdFo0
- 「……」
私はその話をすんなりと信じることはできなかった。別の世界だとか、そんなオカルト
じみた事を信じる人間は、この学園都市にはそうは居ないだろう。
<話は終わりか?ならば今度は吾の要求を叶えてもらおう>
それまでおとなしく話を聞いていた正宗が声を上げる。
<吾がここに来たのも、貴様が吾の仕手となる者を紹介すると言ったからだ>
仕手?また聞きなれない言葉が出てきた。
「仕手とは劍冑の、つまりは正宗さんを使う人間の事ですよ」
木原さんがそう答える。
彼を使う人間を紹介する…、呼び出されたのは当の正宗本人と私だけ…
「それって、もしかして…」
「お察しの通り、我々は佐天さん、あなたに正宗さんの仕手となってほしいのです」 - 22 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 23:14:28.18 ID:RuiFdFo0
- 「なんで私なんですか!?私なんかじゃなくて能力者の人に頼めば…」
「残念ですが、それは出来ないんですよ」
そう木原さんは言う。
「能力者は自分だけの現実を確立することで能力を得ます、自分だけの現実を確立
している人間には正宗という幻想を受け入れるスペースがありません。
なぜなら彼の仕手となるという事は新たな能力を得ると言う事と同義だからです。
彼の仕手となれるのは、デュアルスキルとなれる者、もしくは無能力者しかいない
という訳です」
能力を得る、その言葉を聞いて私の心が揺れる。
<………>
正宗は何かを考えているようで、黙り込んでいる。
「でも、私…」
「なにも今すぐに結論を出せ、というつもりはありません。しばらく考えてから
結論を出してくだされば結構です」
「わかりました」
「しかし、彼の仕手となればあなたは能力者になれます。悪い話ではないと思いますが」
最後に木原さんはそう言った。 - 23 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 23:27:18.52 ID:RuiFdFo0
- 話を終えて、私達は部屋の外に出る。
「ここでの話は機密事項ですので、くれぐれも他の人間には話さないように
お願いします」
木原さんが私にくぎを刺す。
「わかりました」
「それではご自宅までお送りします、外に車がありますので…」
私はそのまま外へ出ようとする。
<しばし待て>
いままで黙っていた正宗が口を開く。
<娘、お主と話がしたい、少し付き合ってもらうぞ>
突然の申し出に困惑する。
「話ってなんですか?」
私の言葉を聞いても正宗は答えず、木原さんの方へ視線を向ける。
どうやら正宗は木原さん達を警戒しているようだった。
「もしよろしければ、話をするついでに正宗さんに街を案内して差し上げては
いかがでしょう?」
木原さんはその視線の意味に気付いたのか、そんな突拍子もない事を提案した。
(さすがに正宗もこんな提案、賛成しないでしょう…)
<それはいい、吾もこの学園都市というものに興味があったのだ>
「ええっ!!?」 - 24 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 23:38:41.49 ID:RuiFdFo0
- まさかOKするとは思わなかった。
というかこのカミキリムシと2人(?)きりというのはちょっと遠慮したい。
それに正宗が歩いていたら騒ぎにならないだろうか?そんな疑問が浮かぶ。
「ご心配なく、正宗さんは研究所で開発されたロボット、ということになっていますから」
木原さんは私の反論を先回りするかのようにそう言った。
「連絡をいただければ我々が正宗さんを引き取りに向かいますので…」
木原さんの連絡先を受け取りながら、私は今回も断る事は出来なそうだ、と嘆息した。
街に出ると案の定、正宗は奇異の視線を浴びたが、さすがは学園都市、ロボットか
なにかだと思っているのだろう、別段大きな騒ぎは起きなかった。
私は隣を歩く劍冑の事を考えていた。
まさか自分が無能力者という理由で必要とされるなんて思ってもみなかった。
(でもなぁ…)
私はこの得体の知れないロボットの事が信用できなかった。
(やっぱり、他の人を探して貰おう…)
そう結論を出すと、私は隣を歩くロボットに話しかける。
「あの~……」
声を掛けた矢先、周囲に爆発音が響いた。 - 25 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/25(金) 23:51:30.07 ID:RuiFdFo0
- 「うわ!?何!?」
音のした方向を見ると、銀行から火の手が上がっている。
周りの悲鳴から察するにどうやら強盗が入ったようだ。
「どうしよう!ジャッジメントに通報しないと…」
そう思い私は携帯を取り出そうと鞄に手を伸ばす。
<娘!吾を装甲するのだ!!>
いままで口を開かなかった正宗の呼びかけに、私は驚いた。
<あの煙、そして周囲の悲鳴、無法の輩が狼藉を働いておるのであろう。
この正宗悪行狼藉をみすみす見逃すわけにはいかん!!>
「で、でも!ジャッジメントとかに任せた方が…」
<何を暢気な事を言っている!この悲鳴が聞こえぬのか!今、この時も悪に怯える
力無きものがおるのだぞ!!>
確かに周りは騒然としている。しかし相手は強盗かもしれない、そこらの不良相手に
するのとは訳が違う。相手が能力者だったら、私が行ってもなんの役にも立たないだろう。 - 26 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/26(土) 00:01:53.60 ID:IpDDeKA0
- <ええい!あの程度の相手、吾を装甲すれば取るに足らん!急げ、娘!
これ以上、彼奴等の悪行を見過ごしてはおれん!>
周囲からは悲鳴と散発的に爆発音が聞こえる、おそらく警備ロボが応戦しているのだろう
彼の言っている事が本当ならば、私でもこの騒ぎを鎮める事が出来るのだろう…
戦うのは怖い…、それでも思い出す、勇敢なジャッジメントの少女を、そして…
私を助けてくれた英雄(ヒーロー)を……
心の底ではいつも思っていた、強くなりたいと、彼女達の様な英雄になりたいと。
そこまで考えて思い至った、正宗も同じなんだ、悪い事をする人を…、
苦しんでいる人を放っておけない。
私の心は決まった…
「わかりました、やります!あなたと一緒に戦います!」
ならば私も戦おう、正宗が正義を貫けるように、彼女達のような英雄になるために… - 27 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/26(土) 00:13:04.54 ID:IpDDeKA0
- <その意気や良し!ここに契約は成った!さあ!吾を装甲するのだ!娘、いや御堂!!>
「装甲?どうすればいいの!?」
<手を前に掲げ、装甲の構えをするのだ!あとはおのずと理解できる!>
正宗の言葉通り手を前に掲げる。すると正宗の体が分裂し、宙を舞った…
<御堂!誓約をするのだ!悪を断つ、吾等の誓いを!!!>
正宗の声が響く、同時に頭の中に語句が浮かんでくる。
「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」
「ツルギの理ここに在り!!」
- 28 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/26(土) 00:24:31.46 ID:IpDDeKA0
- 甲高い音が響き、目の前が光に包まれ、私は思わず目を瞑る。
そして、おそるおそる目を開けると…、私の体は濃藍の鎧に包まれていた。
「なに…これ……?」
自分の姿に目を見張る。
(力がドンドン湧いてくる!)
まるでテレビの変身ヒーローにでもなった気分だ、これならどんな敵にも負けない!
<行くぞ御堂!吾等の正義を為しに!>
「うん!」
正宗の言葉に頷き、地面を蹴りつける。甲鉄に包まれた体が地を駆ける。
私はすさまじい勢いで跳躍し、警備ロボの残骸の前に立つ強盗の前に降り立つ。
「何だこいつは!?新型の警備ロボか!?」
装甲した私を見て強盗が驚愕の声を漏らす。
「構うこたねぇ!やっちまえ!!」
強盗が銃を発砲する。 - 29 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/26(土) 00:33:58.93 ID:IpDDeKA0
- 「きゃっ!」
銃声の驚き思わず頭を押さえて目を瞑る。しかし、私の体には何の衝撃もこず、
聞こえたのは銃弾が弾かれる乾いた音だけだった。
「ちっ!銃が効かないぞ!」
「おい!もう時間がねぇ、そんなのほっといて逃げるぞ!」
強盗がバイクに乗って逃げようとする、そこに正宗の声が響いた。
<御堂よ、呆けている場合ではない!奴らを追うのだ!>
「う、うん!」
普段の私では、考えられないような速度で私は疾走する。
あっという間に強盗の乗ったバイクを追い抜くと、その進路を塞ぐように立ちふさがる。
進路を塞がれたバイクが急停止する。
「この野郎!なめんじゃねぇ!!」
強盗の手に炎が発生する。あの時と同じだ、私が御坂さんに初めて会った日と…
あの時は何もできなかったけど今なら! - 30 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/26(土) 00:46:23.18 ID:IpDDeKA0
- <こやつも陰義を使えるのか!だが御堂!あの程度の炎なら吾には通用せん!
迷わず突っ込め!>
私は正宗の声に押し出されるように、強盗に向かって疾駆する。
「くらいやがれ!」
強盗が炎を投げつける、私はそれを両手で防ぐ、炎は私になんの痛みも与えず、
虚空へと消え去った。
「なに!?」
「くらえぇぇ!!」
驚愕の声を上げる強盗に私はそのまま体当たりをする。
強盗はバイクごと吹き飛び、気を失ったのか動かなくなった。
「やった…、勝った……」
いままでの私では到底敵わなかった相手に、能力者にこんなにも簡単に勝利した。
<悪に報いあり!正義に勝利あり!世の心理は今!ここに在り!!」
正宗が咆哮する、その言葉がとても心地いい。
そうだ!私は英雄になれたんだ、いままでの私じゃない!
御坂さんみたいな英雄に!!
その時後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ジャッジメントですの!!」
- 32 : ◆JZzNmabVtI :2010/06/26(土) 00:48:40.26 ID:IpDDeKA0
- 今日はここまでにして、また明日続きを書きます。
もし見て下さった方が居たら、ありがとうございます。
- 33 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/26(土) 00:52:04.46 ID:/gYlzQSO
- 佐天さんに正宗か。
まあ善悪相殺よりは扱いやすいかな。ハラワタとか肋骨ぶちまけることになるけどwww - 34 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/26(土) 01:09:29.16 ID:VPPyyiw0
- 面白かったぜい
次も期待してる~ - 35 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/26(土) 01:13:08.95 ID:wbz3qn.0
- >>31
元ネタ 俺もしらんので調べた
ニトロプラスの「装甲悪鬼 村正」
これはまだ買ってないや 興味でたので中古屋でさがすか - 36 :sage :2010/06/26(土) 12:41:27.82 ID:qsgR4SQ0
- 金神さまにでも飛ばされたのか正宗……
>>35悪い事言わないから体験版やってみてからにしたほうがいい
- 39 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 19:56:57.33 ID:FIGMvYY0
- 振り向くと、そこにはジャッジメントの腕章を嵌めた白井さんがいた。
「あっ、白井さん…」
「その声は…、佐天さんですの……?」
普段の私とはかけ離れた私の姿を見て、白井さんが驚く。
「正宗、これってどうすれば元に戻るの?」
いつまでもこんな目立つ姿でいる訳にはいかない。
<今、装甲を解く>
正宗がそう言うと、鎧は消え去り、私は元の姿に戻る。
「佐天さん、どうしてあなたがこんな所に居るんですの?それに
先程のお姿はいったい…」
「それは、まあ色々ありまして……」
私は言葉を濁す。まずい事になった、まさか白井さんに見つかるなんて…
どうにかしてこの場をうまく切り抜けなければ。私はなにかいい方法がないか
考えを巡らせる。
そんな私の様子を見て、白井さんは顎に手を当てて唸って
「佐天さん、すみませんが少し話を聞かせていただきますの」
と言った。 - 40 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 20:12:23.57 ID:FIGMvYY0
- 私は白井さんと一緒に風紀委員一七七支部へとやって来た。
「あ、いらっしゃい、佐天さん」
初春がこちらに気付いて挨拶をする。
「あの後戻ってこなかったから心配してたんですよ?何かあったんですか?」
「いや、別になんでもないよ…」
初春に嘘をつくのは気が引けるが、本当の事を話すことはできない。
「初春、私は少し佐天さんとお話することがあります、少々席を外して
いただきますわ」
「話って何ですか?」
初春が白井さんに尋ねる。
「それはプライベートに関わる事なので秘密ですわ」
「? わかりました、それじゃあ私はこっちで仕事をしてますから用があれば
呼んでください。」
そう言って初春はパソコンの方へ歩いて行く。 - 41 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 20:24:26.87 ID:FIGMvYY0
- 「それでは佐天さん、先程の姿は何なのか、説明して貰いますわ」
初春が居なくなったことを確認すると、白井さんは私に詰め寄って来た。
「それは…、そのですね……」
なにかうまい言い訳はないか、そう思い必死で考える。
「実験…、そう!実験をしてたんですよ、え~と駆動鎧の研究の協力をする事に
なって、さっきのは実験の途中だったんですよ…」
なんとも苦しい言い訳だ、自分でもそう思う。
案の定、白井さんはこちらに疑いの視線を投げかける。
「実験~?あんな街中で、ですの?」
白井さんが追及してくる。
「え~とっ…」
冷や汗が出て来る。
ひょっとするとさっきよりも状況が悪化したかもしれない。
切羽詰まった私は、どうする事もできずに視線を逸らした。 - 42 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 20:40:15.32 ID:FIGMvYY0
- 「はぁ…」
そんな私を見て白井さんが溜め息を漏らす。
「これ以上詮索しても、無駄のようですわね…」
(諦めてくれたのかな?)
どうやら諦めてくれたようだ、私は安堵の息を漏らす。
「佐天さん」
「は、はい!?」
不意に白井さんが真剣な声で話しかけてきた。
「理由がどうであれ、今日のような危険な行動は謹んでほしいんですの。
今回のように事件に遭遇したら、ジャッジメントかアンチスキルに通報して
速やかにその場を離れるようにしてください」
白井さんの言う事はもっともだ、常識的に考えればそれが正しい対応だろう。
昨日までの私なら、きっと白井さんの言うとおりにしただろう。
「それって、目の前に困ってる人がいても、それを放って逃げろって事ですか?」
私は反論する、白井さんが正しいのは理解できる、それでも納得できなかった。 - 43 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 20:59:25.16 ID:FIGMvYY0
- 「放っておけ、なんて言ってはいませんわ、佐天さんは一般人なのですから、
わざわざ危険に飛び込むような真似をする必要はない、そう言っているだけですわ」
「私も戦えるようになったんです!だから誰かの為に戦いたい、ただそれだけなんです!
それが間違っているんですか!?」
私は思わず大声を出す。その声に驚いた初春がこちらを向く。
「間違っている、間違っていないの問題ではありませんわ!佐天さん!あなたは
一般人なんです、戦う力が有ろうと無かろうと関係ありません!」
白井さんも私に負けじと抗議する。
「ど、どうしたんですか?2人とも落ち着いてくださいよぉ…」
初春が私達を止めようと、割って入る。
「あ…、ごめん、初春。白井さん、私もう行きますから……」
そう言って私は2人に背を向け、支部から出て行こうとする。
「佐天さん、力があっても、中途半端な気持ちで戦おうとすれば…
きっと後悔しますわよ?」
その声を背に受けながら、私は支部から出て行った。 - 44 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 21:18:00.80 ID:FIGMvYY0
- <御堂>
私が外に出ると、正宗の声が聞こえてきた。
「正宗?どこに居るの?」
<御堂の出てきた建物の屋根の上だ、今は金打声(きんちょうじょう)で
話しかけておる>
「きんちょうじょう?」
<吾と御堂の間での通信とでも考えればよい>
テレパシーのようなものだろうか、近くに正宗の姿を確認することは出来ない。
<そんなことはどうでもよい、それよりも御堂とあの娘の会話のことだ>
「やっぱり私、間違った事言ったかな?」
<何を言う!御堂の言葉は正しい、力無き者の為にこそ正義の力は振るわれるべきだ!
御堂を仕手に選んだ吾の目に狂いはなかった!>
正宗は私の言葉を肯定してくれた、こんなにもうれしい事はない。
「そうだよね…、私間違ってないよね?」
<ああ、これからも共に正義を為すために戦って行こうぞ!>
「うん!」
正宗に私の考えを肯定された事で、私はさっきまでとは違い、軽い足取りで
帰路についた。 - 45 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 21:34:44.21 ID:FIGMvYY0
- その夜、私は正宗の仕手となった事を伝えるため、木原さんに電話を掛けた。
私が仕手になった事を告げると、木原さんはとても喜んでくれた。
街中で装甲した事に関しても気にしなくていいとのことだった。
「それで佐天さん、早速で悪いのですが、明日にでもあなたの能力値を測定
したいのですがよろしいでしょうか?」
私はその言葉の意味をすぐには理解する事が出来なかった。
「それって、もしかして…」
私は思わず聞き返す。
「あなたを能力者に認定するという事ですよ」
「能力者になった…、私が…」
念願の能力者になった、本当なら飛び上がるくらいにうれしい事だ。
しかし、私はそれを純粋に喜ぶ事が出来なかった。
なぜならこの力は私自身が努力をして得たものではない、そんな思いがあったからだ。 - 46 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 21:48:33.72 ID:FIGMvYY0
- 「それでは明日、研究所で測定を行います、学校へはこちらで連絡を付けて
おきますので」
「わかりました、それじゃあお願いします」
電話を切る、明日の朝、研究所の人が迎えに来てくれるらしい。
<御堂、どうかしたのか?>
正宗の声が響く、私は明日、研究所に行く事になった事を伝える。
<ぬぅ、またあの男か……>
正宗は少し不満そうだったが、私が頼むと了承してくれた。
ベッドに横になり、今日一日の事を考える。まるで嵐のような一日だった。
正宗に会い、彼の仕手になり、能力者になった…
この力は自分自身で得たものではない、その思いは消えない。
それでも、やはり私は能力者になったという事実に喜びを感じているのだろう。
その日は興奮してなかなか眠る事が出来なかった…… - 47 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 22:00:36.64 ID:FIGMvYY0
- 翌日
研究所に到着し、測定を行う施設へと案内された。
そこは学校の体育館よりも広い空間だった。
「まずは運動性能の測定をします。出て来るターゲットを破壊してください」
スピーカーから木原さんの声が響く。
<なぜ吾がこんな事を…>
正宗が呟く。
「ごめんね、こんなことに付き合わせて」
<御堂の為だ、協力せぬ訳にもいくまい>
「ありがと…」
正宗の返事を聞き、私は正宗を装甲する。
目の前が光に包まれ、私と正宗は一騎の武者となる。 - 48 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 22:11:30.57 ID:FIGMvYY0
- <御堂、的を壊すのなら、刀の方がよかろう>
正宗が私に助言する。
「刀かぁ……」
正直、刀を持つのは少し怖かった。腰の刀は包丁なんか比べ物にならないくらい
大きいし、それになんだか怖いオーラのようなものを纏っているように感じるからだ。
(でも…)
私のわがままに付き合ってもらってるんだ、これ以上わがままを言う訳にはいかない
意を決して私は刀を引き抜く。
刀を、人を殺すための道具を見て動悸が激しくなる。
私はそれを無理矢理落ち着ける。
「ふぅ~…、準備出来ました」
木原さんに合図を送る。
「それでは始めます」
ブザーの音が鳴り響きターゲットが現れる。 - 49 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 22:25:08.90 ID:FIGMvYY0
- 「たあっ!」
地面を蹴り、ターゲットに向かって走る。そのままの勢いで刀を振るう。
ターゲットはいとも容易く真っ二つになった。
「よしっ!」
私は喜びの声を上げる。
<気を抜くな、御堂ッ!次が来るぞッ!>
それからも次々と現れるターゲットを順調に破壊していく。
「次はっ!」
目の前のターゲットを破壊し、次を探す。
<後ろだ、御堂!>
後ろを見ると、随分と離れた場所にターゲットが出現する。
普通に走ったのでは、とても間に合いそうにない。
<御堂ッ!合当理を使え!>
「どうすればいいの!?」
<吾の言うとおりにすればよい、行くぞ御堂ッ!>
正宗の言うとおりに集中すると、装甲の背中からブーストのようなものが
吹き出し、私の体が宙に浮く。 - 50 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 22:41:57.26 ID:FIGMvYY0
- 「すごい!飛んでる!」
もはや変身ヒーローというよりも、ロボットアニメのロボットのように
私は空を駆けて行く。
そうして瞬く間にターゲットに接近すると、それを両断した。
同時に実験終了のブザーが鳴り響く。
「高度な飛行能力、パワーも申し分ありませんね」
木原さんがそう感想を述べる。
「正宗さん、よろしければ次はあなたの持っている陰義という能力を
見てみたいのですが…」
<それはできぬ>
「どうして?」
正宗に答えに、私は質問を投げかける。
すると正宗は私だけにしか聞こえないように、金打声で話す。
<奴らはどうも信用ならん、それに己の手の内を晒すような真似をする
訳にはいかぬ>
「それなら、しかたないね」
木原さん達を信用していない訳ではないが、正宗の意見を尊重する事に決めた。
「すみません、今日はちょっと無理みたいです」
私が正宗に代わって説明する。
「どうか、お気になさらず。それでは休憩を挟んで次の測定をしましょう…」 - 51 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 22:54:06.19 ID:FIGMvYY0
- それからいくつかの実験をこなす。
「あれ?なんか体が重いような…?」
<おそらく熱量を使い過ぎたのだろう>
私の呟きを聞いた正宗がそう言った。
「熱量?」
<体力のようなものだ、劍冑を使うには熱量を消費する。長時間の行動で
御堂の熱量が足りなくなっているのであろう、そろそろ切り上げた方が得策だろう>
「わかった」
私は木原さんに事情を話し、今日の実験はそれで終了となった。
「今日はご協力ありがとうございました。結果は後日お知らせしますので、今日は
ゆっくりお休みください」
「ありがとうござます、それじゃあ失礼します」
研究所を後にし、帰路に付く。
部屋に帰ると、疲れが一気に出て、私は倒れ込むようにベッドに横になると
そのまま眠りに付いた。 - 52 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 23:04:27.06 ID:FIGMvYY0
- 次の日私はいつも通りに学校に登校する。
「涙子、なにかあったの?一昨日呼び出されてから戻ってこないし、
昨日も学校に来なかったし、心配したんだよ」
教室に入るとアケミ達が話しかけてきた。
「いや、呼び出しはたいした用事じゃなかったんだけどさ、その後気分悪くなって
そのまま帰って、昨日も部屋で寝てたんだ」
「そうなんだー、心配して損しちゃったよ」
そう言って笑うアケミに私は罪悪感を覚えた。
放課後、そう毎日実験がある訳ではなく、初春とも一日気まずくて会話が出来なかった
私はする事がなく、早々と部屋に帰った。
昨日の疲れがまだ抜けきっていないようで、部屋で休んでいるとチャイムが鳴った。
「はーい」
ドアを開けるとそこには白井さんが立っていた。 - 53 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 23:20:16.19 ID:FIGMvYY0
- 「どうしたんですか?」
一昨日あんな言い争いをしたばかりなので白井さんに会うのは少し気まずかったが
私は努めて冷静に応対する。
「ジャッジメントの支部に佐天さん宛の手紙が届きましたの」
「私宛のですか?」
「ええ、封筒にはわたくしに佐天さんに渡してほしいと書いてあったので、ちょうど
仕事も無かったので持って来たんですわ」
そう言って白井さんが封筒を差し出す。確かにそこには白井さんの手で私に
渡してほしいとのメ―セージが書いてあった。
随分と妙な話だ、はじめから私に届ければいい訳だし、それに渡すにしても同じ
学校の初春に頼んだ方が効率がいい。
「もしよろしければ、今開けてみてくれませんか?危険物ではないとは思いますが
万が一ということもあり得ますの」
白井さんに促されて封を切る。
「中身は…地図と写真?」
私はその写真に写っているものを見て愕然とする。
「どうしたんですの、佐天さん?なっ!これは…」
私の様子を見て不思議に思った白井さんが写真を覗きこみ
驚きの声を上げる。
写真には拘束されたアケミが写っていた。 - 54 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 23:32:11.13 ID:FIGMvYY0
- 「まずい事になりましたわね…」
白井さんが考え込む。
「下手に動く事は出来ませんわ、とりあえず固法先輩に連絡してみますの」
白井さんが電話を掛ける。
私はどうすればいいのか考えていた。
「佐天さん、その私はその地図の場所へ向かいます。佐天さんは部屋で待機
していて下さい」
電話を切った白井さんは私にそう告げ、背を向けようとする。
「待って下さい!」
白井さんを呼び止める。
「私も行きます」
「駄目ですわ、前にも言った通り、佐天さんは一般人ですの。誘拐犯の
所になんて行かせられませんわ」
白井さんが私の意見を否定する。
「それでも!友達が危険な目に遭っているのを放っておくなんて出来ません」
私はそれでも食い下がる。
「正宗!」
私が名を呼ぶと、まるで瞬間移動でもしてきたかのように正宗が現れた。
「もう何を言っても聞かないのでしょう?それならわたくしと行った方がまだ
安全ですわ…」 - 55 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 23:40:18.90 ID:FIGMvYY0
- 「それじゃあ…」
「ただし!わたくしの指示に従う事!これが条件ですわ!」
白井さんの了承を得た私は、正宗を装甲するために装甲の構えをとる。
正宗が分裂し宙を舞う。その光景を見て白井さんが息をのむ。
「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」
「ツルギの理ここに在り!」
「行きましょう!白井さん!」
「え、ええ…」
私の呼びかけで平静を取り戻した白井さんがテレポートで移動する。
私も合当理に火を入れて飛び立つ。
日も暮れ始め、紅く染まった空を濃藍の武者が駆けて行く・・・ - 56 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/26(土) 23:54:50.44 ID:FIGMvYY0
- 地図に記された場所に行くと、そこには使われなくなったビルがあった。
(アケミ!)
中を覗くと、アケミは眠らされているのか、ピクリとも動かない。
「部屋の中には6人、人質の隣には1人しかいませんわね…」
私達は、アケミを救出する事を優先して、作戦を立てた。
作戦はシンプルなものだ、私が犯人達の前に姿を現し、それに気を取られている隙に
白井さんがテレポートでアケミを救出する。
「白井さん、アケミを助けたら、アケミをテレポートで安全な所へ運んでください」
「それでは佐天さんはどうなりますの!?」
私の提案に白井さんが抗議の声を上げる。
「他に方法がありません、アケミを助けることを優先しないと…」
白井さんは少し考え
「わかりました、彼女を安全な場所に運んだらすぐに戻りますわ。
ですからくれぐれも無茶はなさらないでください…」
「わかりました、それじゃあ白井さん、お願いします」
「佐天さんも、お気をつけて」
白井さんがテレポートで姿を消す。
そして私は正面から犯人達の前へ姿を現す。 - 57 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 00:12:08.54 ID:BG1dyvY0
- 私の姿を見た犯人達がざわめく。
「お、お前が佐天涙子か…?」
「そうよ」
その答えを聞いて犯人達に動揺が走る。
「お、おい!どうゆうことだよ!?無能力者って話だろ!?」
「知るかよ!俺がわかる訳ねぇだろ!」
私が犯人達の気を引いているうちに、白井さんがアケミの隣に居る男の後ろへ
テレポートした。
「なっ!?てめえ、どこか・・・ぐはっ!!」
白井さんの放った蹴りが男の頭部に炸裂し、男は意識を失った。
「白井さん!アケミは無事ですか!?」
「大丈夫、眠らされているだけのようですわ」
私はそれを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「おい!お前ら何してやがる!早くあいつをぶち殺さねえか!」
「でも相手は能力者ですぜ?無能力者だって言うから、手を貸したのに…」
男が情けない声でリーダーらしき男に言う。
白井さんはその隙をついてアケミを連れてテレポートで脱出した。
「うるせぇ!先にお前から殺されてえのか!?」
そう言ってリーダーは部下に銃口を向ける。
「う、うああああ!」
銃で脅された部下達が私に向かって突っ込んでくる。 - 58 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 00:21:40.44 ID:BG1dyvY0
- 「はっ!」
私は出来る限り手加減して迎撃する。
「ぐはぁっ!」
瞬く間に突っ込んできた男達を片付ける。
「残ってるのはあんた1人よっ!」
残ったリーダーに言い放つと、地面を蹴り、突撃する。
「この野郎!」
持っていた銃を発砲するが、正宗の装甲には通用せず、銃弾は乾いた音を立てて
弾かれる。
「なっ!?」
私は愕然とするリーダーを殴り飛ばす。
リーダーは殴られた衝撃で瓦礫の山に突っ込み、動かなくなる。
「これで終わりかな?」
あとは白井さん達が来るのを待って、この人達を引き渡せば終わりだ。
そう思い胸を撫で下ろす。 - 59 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 00:31:52.65 ID:BG1dyvY0
- <御堂、なぜ刀を抜かん?>
不意に正宗が話しかけて来る。
「だって…刀で切ったら死んじゃうかもしれないし…」
<何を甘い事を…、悪党等いくらいくら殺しても構わん。奴らは力無きものを
苦しめる、今回もか弱い少女を人質にとるような輩だったではないか。
そんな奴らに情けをかける必要などない>
「でも…」
<御堂ッ!お主は甘すぎるぞ……>
正宗は不満そうに言った。
「私…」
<御堂!何か来るぞ!油断するな!>
私が言葉を発しようとした矢先、正宗が警告を発する。
次の瞬間、ビルの壁が吹き飛んだ。
「新手!?」
私は立ちこめる煙の中、敵の攻撃に反応できるよう身構える。
<御堂ッ!外へ飛び出せ!早くッ!>
正宗が叫ぶ、私はその言葉に従い、合当理を吹かし外へ飛び出す。
その刹那、私の元居た場所が爆発した。
- 62 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 00:44:55.59 ID:BG1dyvY0
- 「まさか、能力者!?」
これ程の爆発を起こせるのなら、レベル4はあるだろう。
煙が晴れていき、新たな敵が姿を現す。私はそれを見て我が目を疑った。
通常の車を上回る大きな車体、そしてそこから延びる堂々とした砲門…
煙の向こうから現れたのは戦車だった。
「戦車!?なんであんなのがこんな所に!?」
さすがにあんなもので撃たれたらひとたまりもない。
しかし、機動性はこちらが遥かに上回っている。私は戦車の後ろに回り込もうとする…
「!」
後ろに回り込もうとして気付く、戦車はビルを背後に陣取っている。
ビルが邪魔でうまく動く事ができないし、もし相手の攻撃が急旋回して攻撃
すればビルが崩れるかもしれない、そうすれば中の人間が命を落とすかもしれない…
「くっ!」
私は戦車の砲撃の影響がビルに出ないように、左右に撹乱するように飛び回る。 - 63 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 00:59:30.35 ID:BG1dyvY0
- 「どうしよう、逃げた方がいいかな?」
<何を弱気な事を言っておる!あのようなものを野放しには出来ん!>
たしかにそうだ、あれが周囲に被害を出すような行動をとらない保証はない。
それにここには白井さんが戻ってくる。
「破壊するしかないか…」
でも方法が無い、さすがに刀で戦車を切る事は出来ないだろう。
<御堂ッ!吾に考えがあるぞ!>
正宗が言う。
「考え!?それで戦車を壊せるの!?」
<ああ、あんな戦車など木っ端微塵にしてやろう>
「木っ端微塵…、あっ!中の人はどうするの!?」
戦車を破壊したら中の人が死んでしまうかもしれない…
<ええい!まだそんな甘い事を!心配するな、あれにはどうやら人間は乗って
おらぬようだ、あの戦車から人間の反応は感知できん!>
人間が乗っていない?自動操作、または遠隔操作なのだろうか?
言われてみれば動きがやけに単調だ無人と言われれば納得が行く。
「わかった、じゃあやって!正宗!」
<心得た!右手を奴へ向けよ!>
正宗が叫ぶと、私の右手首の辺りから筒のようなものが顔を覗かせた。
<行くぞ!御堂ッ!>
<? うあぁぁぁああああああ!!?」
正宗の声と同時に私の体をとんでもない激痛が走った。 - 64 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 01:15:27.56 ID:BG1dyvY0
- 突然の激痛に混乱する、視界が白熱し、油断すれば気を失ってしまいそうだ。
それでも気力を振り絞り、右手の照準だけは外すまいと歯を食いしばる。
<正宗七機巧が一!飛蛾鉄砲・孤炎錫!!>
<DAAARAAAAAHHHHHHHH!!>
正宗が咆哮をあげる、同時に筒から弾丸が射出される。
その攻撃の直撃を受けて戦車が爆発炎上する。
私は痛みと戦いが終わった安堵とで、体から力が抜け、
そのまま地面に叩きつけられる。
地面に落ちると装甲が解ける。
「ぐぅう!!痛い…!攻撃は受けてないはずなのに、どうして!!」
目の眩むような痛みに意識が朦朧とする中、私は痛む右手に目を遣った。
「あっ・・・・・・・・・」
見なければよかった、そう思った。でも、もう遅い。
そこには手首から上が無くなった私の腕があった・・・・・・ - 65 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/27(日) 01:28:40.76 ID:BG1dyvY0
- 「ああああああああああああああああ!!!」
あまりの事態に私は半狂乱になり、地面の上でもがく。
「はぁはぁ!佐天さん!!無事ですか!?」
白井さんが戻って来た。
「これは…!佐天さん!気を確かに持って!今応急処置を!」
白井さんが私の腕に応急処置を施す。
「どうしてこんなことに!!」
<先の砲撃の材料に御堂の体を少し使っただけだ。案ずるな手など
すぐに元通りになる>
正宗の声が聞こえる、この傷の原因は正宗だと彼は言う、それなのに彼は少しも
悪びれず、それが当たり前であるかのように言い放った。
「ふざけてるんですの!!!こんな…こんなことをするなんて!!」
白井さんが激昂する。
「佐天さん!すぐに救護班を呼んできます!もう少し耐えて下さい!!」
白井さんの声を聞きながら、私の意識は深い闇へと沈んで行った・・・
- 77 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 19:51:32.84 ID:ArzDmgo0
- 今から投下します。
あと、いくつか説明をします。
作中に出てきた研究員の木原は、本編に登場する木原数多ではありません。
研究員のキャラを登場させる際に、いい名前が考え付かなかったため、原作に研究員として
複数名登場した、木原姓を使用しました。
正宗の台詞にある御堂という言葉は、劍冑が自分の使い手を呼ぶ際に使用する言葉で
作中では佐天涙子を指しています。
また多少、時系列に矛盾が生じていますが、そこはご容赦ください。
- 78 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 20:03:41.91 ID:ArzDmgo0
- 私が誘拐犯達と戦った日から数日が経過していた。
あの後、私は病院へ搬送され、集中治療室に運び込まれた。
「すごいね君の体は、私もたくさんの患者を見てきたが、無くなった手が生えてきた
患者は君が初めてだよ…」
私を治療してくれたカエルみたいな顔の医者がそう言った。
そう、正宗の言った通り、数日で私の手元通りになっていた。
手は元通りになったが、私の心には拭いされない恐怖が生まれていた。
気付いてしまったから、戦うという事は自分さえも傷つけるという事に…
心のどこかでは思っていた、自分は傷つかないと……
きっと誰かが守ってくれるって…
いままでがそうだったから。白井さんが、御坂さんが、危なくなっても誰かが私を
助けてくれたから。
だから今回も、何かあっても正宗が私を守ってくれる。そんな風に考えていた。
でも違った、正宗は戦うためにはその使い手さえも犠牲にする、諸刃の剣だったのだ… - 79 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 20:17:27.10 ID:ArzDmgo0
- (白井さんの言ってた通りだな……)
白井さんには覚悟がある、自分が傷つく覚悟が、それでも誰かの為に戦う覚悟が。
私にはそれがない、だから傷を負っただけでこんなにも恐怖している。
借り物とはいえ、力を手に入れて舞い上がっていた。
私のしたことは正義の為の戦いなんかじゃなかった。
憧れていた人に近付けた、そんな勘違いをして、英雄ごっこをしていただけだ…
「おっと、どうやらお友達が来たようだ。私はこれで失礼するよ、それじゃあ
お大事に…」
そう言い残してカエル顔の医者は病室から出て行った。
それと入れ替わるようにして、初春達が病室に入って来た。
「みんな、また迷惑掛けちゃったね……、ごめんなさい…」
私は開口一番に謝罪する。私のせいで、またみんなに迷惑を掛けてしまった。
「いいんですよ、そんなことよりも早く元気になってくださいね?」
初春が私に微笑む、私が病院に搬送された時は、治療室の前で泣きじゃくっていた
らしいが、今はもう大丈夫なようだった。 - 80 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 20:27:37.33 ID:ArzDmgo0
- 「そうですわ、早く元気になる事が先決ですの」
「みんな無事だったんだし、気にすることないわよ」
白井さんと御坂さんも私を気遣う言葉を掛けてくれる。
白井さんは私を気遣ってくれているのか、私の事を怒るようなことは何も言わなかった。
<御堂>
不意に窓の外から声がした。
部屋の中の全員がそちらを向く。声のした方を見ると窓の外に正宗が居た。
<邪魔するぞ>
そう言って、正宗は部屋の中に降り立った。
「あら、これは正宗さん。何の御用ですの?」
白井さんが刺を持った言い方で正宗に言い放つ。
<御堂、もう傷は癒えたのであろう?ならば再び吾と共に正義の為に戦うのだ>
正宗は白井さんの声を無視して、私にそう言った。
「なっ!?」
白井さんが驚きの声を上げる。
「あなた!佐天さんをあんな目に遭わせたのに、また同じ事をするつもりですの!?」
白井さんが正宗に食ってかかる。 - 81 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 20:38:01.75 ID:ArzDmgo0
- <無論だ、御堂は吾に正義の為に戦うと宣言した。ならば御堂は戦わねばならぬ、
この正宗と共に、この世に悪のある限り!>
正宗がそう答える。
「佐天さん……」
初春が心配そうに私を見つめる。
「私は…もう、戦いたくない……」
私はそう呟いた、それを聞いた初春が安心したように微笑む。
「だ、そうよ?悪いけど他をあたって頂戴」
そう言って御坂さんが正宗を睨みつける。
それを聞いても正宗は何も答えず、部屋の中が沈黙で満たされる。
誰も言葉を発さない、それからどれだけの時間が経っただろう?
長かったかもしれないし、もしかすると10秒にも満たない短い時間だったかもしれない。
<あくまでも…>
最初に口を開いたのは正宗だった。
<あくまでも戦わぬと、そう言うのであれば…、御堂!その首、この正宗が
貰い受けるぞ!!> - 82 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 20:48:04.98 ID:ArzDmgo0
- 部屋の中の全員が正宗の言葉に絶句する。
「うそ…だよね……?」
私はあまりの事態にうまく言葉を発する事が出来なかった。
それでも理解できた、正宗は本気で私を殺すつもりだ。
彼の体から発せられる殺気が、それを言葉よりも如実に表していた。
<嘘ではない!吾の御堂は正義の為に戦い続けなければならん!それが臆病風に
吹かれて逃げ出すなど、許せるわけがない!!>
正宗が激昂する。その迫力に初春は泣きそうになりながら私の服の裾を握りしめる。
<御堂は吾に誓った、正義の為に戦うと!それを反故にしたければ、この正宗と戦い
打ち倒す他に手はないぞ!?>
正宗は今にも私に飛びかからんばかりの勢いだ。
「やめてください!!」
初春が私と正宗の間に立ちふさがる。
「もう…、これ以上……佐天さんを傷つけないでください!!」 - 83 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/06/29(火) 20:49:31.11 ID:aX/BOck0
- 村正漫画版読みたいのにRED売ってねえええええええええええええええ!!!
おまけか! おまけの所為かああああああああああああああ!? - 84 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 21:06:10.15 ID:ArzDmgo0
- 初春が叫ぶ。恐怖に必死で耐えているのだろう、手を白くなるほどに握りしめ、足は
ガクガクと震えている。
<そこを退け小娘!どかぬならお主から斬って捨てるぞ!!>
「待ちなさい!」
私達を庇うように御坂さんが前に出た。
その手にはコインが握られ、いつでも超電磁砲を放てる構えをとっていた。
「さっきから聞いてれば、全部あんたの勝手な理屈じゃない!そんな理由で
これ以上、佐天さんを傷つけさせないわ!」
<ええい!黙れ!吾は御堂と話をしておるのだ!!>
正宗の怒声が部屋の中に響く。
「黙るのはそっちよ!佐天さんはあんたのせいで傷ついたのよ!あんたの都合で
戦わされて、あんな大怪我までさせられて。今度は命まで取ろうっていうの!?
なにが正義の為に、よ。やってる事はそこらの悪党と変わらないじゃない!!」
正宗の怒声を真正面から受け止めても、御坂さんは微動だにしなかった。
<お主は吾が悪党と同列だと、そう申すのか!?>
「そうよ!自分の都合を押しつけて。佐天さんを傷つけて、挙句の果てになんの罪も
ない佐天さんや初春さんを殺す?そんなあんたの、どこに正義があるっていうのよ!?
あんたなんて、ただの人殺しじゃない!!!」 - 85 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 21:15:55.47 ID:ArzDmgo0
- <な…なんだと……?>
御坂さんの言葉を受けて、正宗の纏っていた怒気が、瞬く間に消えて行く。
<吾が、吾がただの人殺しだと…?莫迦な、それではあの蒙古共と同じではないか…?>
正宗が初春を見つめる。そして、わたしの方へと視線を投げかけた。
「っ……!」
私は思わず顔を伏せた、正宗の視線を受け止める事は、私にはもう出来なかった。
<御堂……>
正宗はそう呟くと、窓から外へと飛び立って行った。
「よかった~」
安堵の声を出して、初春がその場に座り込む。
「ふ~っ、大丈夫だった?佐天さん。」
御坂さんが私を気遣うように声を掛けて来る。 - 86 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/06/29(火) 21:18:28.65 ID:00Y.KvAo
- >>73
レールガンつっても電磁抜刀だったり電磁景明さんだけどな - 87 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 21:25:01.88 ID:ArzDmgo0
- 「とりあえずは一安心ですわね。それでもまた来ないとも限りませんから、しばらくは
警戒が必要ですわね」
白井さんが考え込むように言った。
私は正宗を裏切り、正宗は私の元を去った。
それは私の戦う力の喪失を意味していた。
気付けば、私には戦う力も、覚悟も、信念もありはしなかった……
だから、もう御仕舞いだった…
佐天涙子の戦いは、終わった――――
- 88 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/29(火) 21:40:21.53 ID:43LqH9I0
- それから数日後、私は無事に退院した。
あれだけの怪我の後という事で、しばらくは自宅で療養する事になった。
学校も無く、する事がない私は、まるで魂が抜けたようになっていた。
ふと、携帯に目をやると。初春からメールが届いていた。
気分転換に街を歩かないか、といった内容のメールだった。
あの日以来塞ぎ込んでいる私を元気づけようとしてくれているのだろう。
「このまま、こうしててもしかたない…か……」
私は起き上がり、メールに記されている待ち合わせ場所へと向かった。
- 96 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/30(水) 04:18:44.85 ID:Rwb.YCE0
- 「あっ!佐天さん!よかった、来てくれたんですね!」
待ち合わせ場所に到着すると、初春が私の所へ駆け寄って来た。
「佐天さん、あれからずっと元気がないんですもん。私、心配したんですよ?」
「ごめんね、色々考えちゃってて……」
「いいんですよ、もうあんな得体の知れないモノのことは忘れちゃいましょう!」
初春の言葉に罪悪感を覚えた。彼は私を必要だと言ってくれ、私はそれに応えた。
それなのに私の勝手な都合で裏切ってしまったから……
それでも、私の心には安堵の気持ちが広がっていた。
初春と街を歩く、学校であった出来事や、御坂さんや白井さんの事、他にも
他愛もない話をしながら歩いた。
「佐天さん?」
初春が心配そうに私の顔を覗きこんでくる。
「大丈夫、ちゃんと聞いてるよ」
そういって初春に笑い掛ける。
「ふふっ」
「えっ?何かおかしかった?」
おかしな所でもあったのだろうか?私は少し戸惑った。
「いつもの佐天さんだな……って、そう思って…」
ああそうか――――――
「ただいま、初春…」
私は日常に帰って来たんだ。 - 97 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/06/30(水) 04:30:38.76 ID:Rwb.YCE0
- それから数日、すっかり元通り、とはいかないまでも、元の調子を取り戻した私は
再び学校に通い始めた。
その日は初春はジャッジメントの仕事があるらしく、私は真っ直ぐ家に帰る事にした。
その帰り道、前方に見覚えのある後姿がある事に気付いた。
「お~い!御坂さぁ~ん!」
前を歩く御坂さんの後ろ姿に声を掛ける。
御坂さんにはまだキチンとお礼を言っていないから、キチンとお礼を言わないと…
私の声を聞いて、御坂さんが振り向く。
「申し訳ありませんが、どこかでお会いしましたか?とミサカは尋ねます」
「えっ?」
こちらを振り向いた御坂さんに少し違和感を感じた。
よく見ると、御坂さんは頭に普段つけていない大きなゴーグルのようなものを
着けていた。
- 103 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 18:56:17.68 ID:/NZLDQE0
- 何かの冗談なのだろうか?御坂さんは私の顔を見て、誰だかわからないという風に
首を傾げた。
「もしかして、お姉様のお知り合いの方ですか?とミサカは尋ねます」
「お姉様?」
彼女の口から出たお姉様という言葉の意味を考える。
「それって、御坂さんの妹さんってことですか?」
これだけそっくりなのだから、常盤台の後輩というわけではないだろう。
「はい、御坂美琴お姉様は、ミサカのお姉様です、とミサカは答えます」
そういって彼女は頷いた。
「私は佐天涙子、御坂さんの友達です」
「そうだったのですか…、私の名前は……、美春…、御坂美春です、とミサカは少し
考えて自己紹介をします」
御坂さんの妹さん、美春さんは少し考えるようにした後、そう答えた。 - 104 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 19:06:43.13 ID:/NZLDQE0
- 「お姉様に何か用事でもあるのですか?とミサカは問いかけます」
「いや、用事って程のことではないんだけど…、まあちょっとお礼を言いたい事
があって」
「よろしければ、お姉様にお取次しましょうか?とミサカは提案します」
「いえ、妹さんにそんな手間掛けさせる訳にはいきませんよ。自分で連絡しますから
気持ちだけ受け取っておきます」
さすがに初対面の人にそんな手間を掛けさせる訳にはいかない。
「そうですか…、それではミサカは用事があるので失礼します、とミサカはお辞儀
します」
「うん、じゃあお気をつけて…」
そう言って妹さんは歩いて行った。
その日の夜、私は御坂さんにメールを送った。
内容は何かお礼がしたいので、一緒にどこかへ出かけないかといった内容だ。
メールを送るとすぐに返信が返って来て、明日にでも出かけようということになった。
次の日、私は御坂さんと喫茶店に居た。
- 106 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 19:17:23.12 ID:/NZLDQE0
- 「すみません、お礼を言うの遅くなっちゃって…」
御坂さんに謝罪する。
「別に気にしなくていいわよ、大した事なんてしてないし。それに私達、
友達なんだから、助けるのは当たり前でしょ?」
御坂さんは笑いながら答えた。
「まあ。元気そうで安心したわ。これからも困った事があったら、私達にどんどん
相談してくれていいんだからね?」
やっぱり御坂さんはスゴイ人だ、他人の為に体を張って、それを大したことないと
言ってのける。
私がこの人みたいになりたいだなんて…、最初から無理な話だったんだ……
「それに私も佐天さんに会いたかったしね。あんな事があったばかりだから心配で、
黒子もあれからずっと、佐天さんの事気にしてたんだから…」
「そうなんですか…」
それを聞いて嬉しくなる、私をこんなにも心配してくれる人が居る、それだけで
元気が出る。 - 107 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 19:28:33.53 ID:/NZLDQE0
- その後も御坂さんといつも通り話を続ける。
ふと、昨日会った御坂さんの妹さんの事を思い出した。
「あっ!そういえば、昨日御坂さんの妹さんに会いましたよ」
「えっ……?」
「妹さんが居るんだったら、私達にも紹介してくれればよかったのに…」
そこまで言って、御坂さんの様子がおかしいことに気がついた。
「どうかしたんですか?」
「佐天さん…、その妹って、どんな奴だった?」
「え~と、御坂さんにそっくりで…、あと、頭にゴーグルみたいなの付けてましたよ」
私がそう答えると、御坂さんは難しい顔をして考え込んだ。
「具合でも悪くなったんですか?」
「えっ?ううん、大丈夫よ。そいつに何か言われたりしなかった?」
「いえ、なんか用事があるみたいで、すぐに行っちゃいましたけど…」
「そう、それならいいんだけど……」
それ以降、御坂さんは何度も何かを考えるように黙ってしまう事が多かった。 - 108 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 19:39:53.99 ID:/NZLDQE0
- それから、私はまた元通りに学校に通うようになった。
怪我の事は学校がうまく誤魔化してくれたのか、学校に行っても、なんやかんや
言われる事も無く、私はいつもの日常に戻った。
ある日の放課後、私は初春と一緒に新しく出来たという洋服屋に行くために街を
歩いていた。
すると見覚えのある姿が目に入って来た。何かを探しているのか辺りを見回している。
(ゴーグルをしてるから、妹さんの方かな?)
「御坂さんの妹さんですよね?こんな所でどうしたんですか?」
私は妹さんに声を掛けた。
「あなたは、佐天涙子さんですね。とミサカはあなたの名前を思い出します」
「御坂さん…?」
妹さんを見て、初春が少し怪訝そうな顔をする。
「初春、この人は美春って言って、御坂さんの妹さんなんだよ」
「あっ、そうなんですか…、どうも初めまして。初春飾利です」
私の説明を聞いた初春が自己紹介をする。 - 109 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 19:49:36.75 ID:/NZLDQE0
- 「こちらこそ初めまして、御坂美春です。とミサカは自己紹介をします」
妹さんはお辞儀をした。
「お姉様と同じ、御坂では呼びにくいでしょうから、私の事は美春と呼んでください、
とミサカは提案します」
「わかりました、ところで美春さん、さっきから何か探してるみたいにキョロキョロ
してましたけど、何か探しものですか?」
私は美春さんに尋ねた。
「実はミサカは、つい先日学園都市に来たばかりで、地理に疎く、目的地がわからず
困っていたところです、とミサカは恥を忍んで打ち明けます」
美春さんは恥ずかしそうにそう答えた。
「もしよかったら、私達が案内しましょうか?初春もそれでいい?」
「はい、私は構いませんよ」
私は美春さんにそう提案した。 - 110 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 19:58:39.94 ID:/NZLDQE0
- 「しかし、ご迷惑なのでは?とミサカは恐縮します」
「いいんですよ!御坂さんにはいつもお世話になってるし」
「そうですか、それではお言葉に甘えさせていただきます、とミサカは頭を下げます」
「それでどこに行きたいんですか?」
初春が美春さんに尋ねる。
「ここの新しく出来た洋服屋に行きたいのです、とミサカは地図を差し出します」
「あれっ?ここって…」
差し出された地図に記されていたのは、私達が行こうとしている洋服屋だった。
「ちょうど私達も同じ所に行こうとしていたんですよ」
初春が言った。
「それは奇遇ですね、とミサカは偶然の一致に驚きます」
「それじゃあ、行きましょうか」
私達は美春さんと一緒に目的の洋服屋へ向かった。 - 111 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 20:07:28.95 ID:/NZLDQE0
- 洋服屋に付いた私達は、その後も美春さんと行動を共にした。
それからもいくつかの店を美春さんと一緒に回った。
「今日はありがとうございました、とミサカはお礼を述べます」
「別にいいですよ、来たばかりじゃ、色々大変でしょう?何かあったら力になります
から、困った時は連絡してください」
そう言って私は美春さんと連絡先を交換する。
「何から何までありがとうございます、とミサカは深々と頭を下げます」
その日以降も何度か私と初春、それに美春さんを交えて遊びに出掛けた。 - 112 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 20:19:09.32 ID:/NZLDQE0
- 今日は日曜日で、朝から初春と美春さんと一緒に遊んでいた。
「そろそろお昼にしませんか?」
初春がそう言った。時計を見ると、針はもう12時を回っていた。
「美春さん、なにか食べたい物ある?」
「そうですね、今日はお蕎麦を食べたい気分です、とミサカは自分の食べたい物を
提案します」
「お蕎麦かぁ~、今日は暑いですし、ちょうどいいですね。佐天さんはそれで
いいですか?」
「うん、それでいいよ」
私達は近くにあったお蕎麦屋さんに入る。
「それではミサカはざる蕎麦にします、とミサカは注文します」
「佐天さんは何にします?」
「う~ん、じゃあ私は…、冷やしたぬきにしようかな…」
「お客様、当店では冷やしたぬきなどという反人類的な代物は取り扱っておりません」
「えっ?反人類的?」
まさか蕎麦屋に入って、反人類的なんて言葉を耳にするとは思わなかった。 - 113 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 20:33:18.98 ID:/NZLDQE0
- 「何を言っているのですか佐天さん?天かすを冷たい汁につけるなどという行為が、
人類に許されているはずがないでしょう?そんなことアウストラロピテクスまで
遡ってもあり得ません、とミサカは力説します」
今度は美春さんがトンデモないことを言い始めた。
というかアウストラロピテクスの頃には冷やしたぬき自体存在しないから……
意気投合したのか、美春さんと店員さんが蕎麦談義に花を咲かせている。
それだけならまだいいが、時たま私にも話が振られるので、それに相槌を打って流す。
それが10分を越えると、さすがにしんどくなり、未だに一言も喋らない
初春に助けを求めようと声を掛ける。
「初春~…」
「……」
初春の方を見ると、初春はメニューで顔を隠し、自分に話が振られないようにと
必死で気配を消していた。
「初春、この2人どうにかしてよ~」
「……(ちらり)」
初春はメニューの横から2人を盗み見る。
「……(サッ)」
この場は静かにする事が賢明だと判断したのだろう、初春はまたメニューに
顔を隠し、また押し黙ってしまう。
「この裏切り者ぉ~~…」
「聞いているのですか、佐天さん?とミサカは話に集中しない佐天さんに憤慨します」
ますますヒートアップする2人の前に抵抗は無意味だと判断した私は……
考える事をやめた… - 114 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 20:43:04.48 ID:/NZLDQE0
- それからしばらくして…
店員さんが店長に呼び戻されることで、その蕎麦談義は終わった。
「失礼しました、自分でもなぜかは分からないのですが、ヒートアップしてしまって…
とミサカは謝罪します」
「は、はは。いいんですよ」
ぐったりしながら私は答えた。
「そうですよ、気にする事ないですよ」
「あんたがそれを言う訳?」
私は初春に恨みがましい視線を送る。
「うっ!ごめんなさい」
「まあ、いいよ。それじゃあ、食べようか?」
蕎麦屋を出た私達は、その後カラオケや、店を回ったりして、その日はお開きとなった。 - 115 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 20:53:43.07 ID:/NZLDQE0
- また別の日、今日は初春はジャッジメントの仕事でいないので美春さんと私の
2人だけだ。
「そういえば、美春さんっていつも制服ですよね?」
隣を歩く美春さんにそう質問する。
「実は、ミサカは制服以外の着用を許可されてはいません、とミサカは事実を
打ち明けます」
やっぱりお嬢様校はそういうのに厳しいんだろうか?
「それじゃあ、アクセサリーはどうですか?ちょっとしたものなら大丈夫でしょう?」
女の子なんだし、アクセサリーくらいしてても怒られる事は無いだろう。
そう思い私は提案する。
「そうですね、アクセサリー程度なら大丈夫でしょう、とミサカは予想します」
「決まりですね!それじゃあ買いに行きましょう!」
私はそう言って、美春さんの手を引っ張る。 - 116 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 21:03:37.67 ID:/NZLDQE0
- アクセサリーショップに到着した。
「美春さん、何がいいですか?」
「顔に似合わず、結構強引なんですね、とミサカは突然の行動に驚きを隠せません」
「はは、ごめんごめん。でも美春さんこんなに可愛いんだから、もっとおしゃれ
するべきだよ」
「面と向かって可愛いと言われると、さすがに照れますね、とミサカは言います」
美春さんはそう言った。
「それで、何がいいかな?」
私は再度美春さんに問いかける。
「そうですね、佐天さんのような髪飾りは可愛いですね、とミサカは正直に言います」 - 117 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 21:14:38.38 ID:/NZLDQE0
- 「髪飾りか~」
美春さんの答えを聞いて、私は彼女に似合いそうな髪飾りを探す。
「これなんてどうですか?」
私は花を模した髪飾りを手に取る。
可愛いけれど、子供っぽくなく、とても美春さんのイメージにピッタリだと思う。
「とてもいいですね、とミサカは感想を述べます」
「それじゃあ、これは私から美春さんへのプレゼントってことで」
「えっ?そんな悪いです、とミサカは躊躇います」
「別に大丈夫だよ、友達になった記念ってことで!」
私がそう言うと美春さんは
「ありがとうございます、とミサカはお礼をいいます」
と言った。 - 118 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 21:31:38.01 ID:/NZLDQE0
- アクセサリーショップを出る。
私は買った髪飾りを美春さんの頭につけた。
「うん!やっぱり似合ってる!」
「そうですか?とミサカは少し照れますながら言います」
それからしばらく歩き、公園の近くへと差し掛かると、目の前に一匹の猫が
飛び出してきた。
「猫だ、可愛いな~」
私は猫を抱き上げる。
猫は人に慣れているのか、暴れるような素振りを見せない。
「美春さんも触ってみれば?」
私の言葉に美春さんは首を振った。
「ミサカの体からは能力の影響で微弱な電磁波が出ています。その影響で動物に
触ろうとすると逃げられてしますのです、とミサカは自分の体質を嘆きます」
能力の影響、やっぱり御坂さんの妹だもの、美春さんも能力者なんだ……
「そう…なんだ……」
「どうかしましたか…?とミサカは心配そうに尋ねます」
「いや、やっぱり美春さんも能力者なんだって思って…」
「あっ、すみません、あなたの気持も考えず、とミサカは謝罪します」
「やっぱり、能力者って才能で決まっちゃうのかな?私は能力者になる才能が
ないのかな?」
涙が溢れそうになる、そこへ美春さんが近づいてきた。 - 119 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 21:41:13.63 ID:/NZLDQE0
- 私の抱いていた猫が逃げ出す。
それに構わず、美春さんが私の頭を抱く。
「大丈夫です、佐天さん。あなたにはあなただけの可能性がきっとあります、
とミサカは断言します」
「あるのかな?そんなの……」
学園都市に来ても能力者になれなくて、レベルアッパーに手を出し、たくさんの人に
迷惑を掛けて。
そんな私になんの可能性があるというのだろうか?
「必ずありますよ、あなたはこの世界で、たった1人のあなたなのですから、
とミサカはあなたを励まします」
そういって美春さんは微笑んだ。
「ごめんね、いきなり取り乱しちゃって…」
「いいんですよ、とミサカは言います」
「そうだ!お詫びに美春さんが動物に触れるように、協力しますよ!」
「えっ、しかし、私の体からは電磁波が…、とミサカは再度言います」
「大丈夫ですよ!美春さんが私を応援してくれたみたいに、私も応援しますよ!」
そう言って美春さんの手を引き本屋へと向かう。 - 120 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 21:49:23.89 ID:/NZLDQE0
- 「ここで動物に関する本を探しましょう!」
私は本屋に入ろうとする。
「すみません、電話のようです。恐縮ですが、私はここで待っています。とミサカは
謝罪します」
そんなに時間のかかるような事ではないし、美春さんがあとから入って来て、入れ違い
になったら困る。
「わかりました、それじゃあ待ってて下さいね」
「お気をつけて……」
「あれ、美春さん?」
本屋から外に出ると、そこには美春さんはいなかった。
「おかしいなぁ、どこにいったんだろう?」
ふと横の路地の入口に目をやる。
「あれ?これ…美春さんの携帯?」
私はその路地へと入って行く。
「美春さ~ん!どこですか~?」
路地を歩くと前方に人影が見えた。
「美春さん?」
その人影に近づく。
「遅かったじゃねェか?英雄さんよォ?」
美春さんではない、白髪の男がこちらを振り向く。 - 121 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 21:55:50.56 ID:/NZLDQE0
- (なに?この人…?)
尋常ならぬその気配に、私は気押される。
よく見ると、その男の足元に、血溜まりが出来ていて人が倒れている。
(やばい…!)
私にはもう戦う力がない、それに倒れている人はピクリとも動かない。
辺りの血の量から見てもう手遅れだろう。
だから私が危険を冒す必要はない、逃げて通報すればいい…
そう言い訳をして、その場から逃げだそうとする。
(……!)
でも、気付いてしまった……
男の足元の人影が常盤台の制服を着ている事に…… - 122 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 22:03:44.06 ID:/NZLDQE0
- 「あ――――――」
その瞬間理解した。男の足元の物体が何なのか…
見覚えのある茶色の髪
そしてその頭に―――
私のあげた、髪飾りが――――――
「うあぁぁぁぁぁああああ!!!」
頭の中が真っ白になる、思考が正常に働かない。
そんな中で目の前の男に対する殺意だけが私の体を突き動かす。
「よくもおぉぉおおおおお!!!!!」
何も考えられず、無我夢中で男に殴りかかる。
仕手となったことで私の身体能力は向上している、こんな細身の男ならば苦も無く
殴り飛ばせるはずだ。
男は避ける素振りも見せず、無防備に立っている。
その体に私の拳が触れる。
その刹那、甲高い音と鈍い音が響いた。 - 124 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 22:11:53.43 ID:/NZLDQE0
- 殴られたはずの男は微動だにせず、殴ったはずの私は、衝撃で弾かれていた。
「ぐうぅぅぅ!?」
手に激痛が走り、私の体は無様に地面に転がった。
すぐに態勢を直し、立ち上がろうとする。
「なンだよ?大した事ねェなァ?」
不意にすぐ近くで男の声が聞こえた。
顔を上げると、目の前に男の拳が迫っていた。
「がッ!?」
顎を思い切り殴りつけられる。
私が立ち上がるまでに、それ程多くの時間を費やした訳ではない。
それなのに男は瞬時に私の目の前に移動してきた。
(身体能力を向上させる能力?)
それでは最初に私が弾き飛ばされた理由にならない。
たとえ私の拳を弾くほどの強度まで身体能力を上げても、私の体が吹き飛ばされる
ことはありえないだろう。
よろめく私の腹部に強烈な蹴りが見舞われる。
私の体はそのまま吹き飛ばされる。 - 125 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 22:20:02.52 ID:/NZLDQE0
- 「あ~あ、つまんねェなァ、そろそろ終わりにするかァ?」
男が私に近づいてくる。
(私って…ホントにダメなやつ……)
たくさんの人に迷惑掛けて、誰の役にも立てなくて…
美春さんの仇もとれずに……
こんな所で死んでいくんだ…
(ごめんなさい、初春、美春さん、御坂さん、白井さん……)
死を覚悟し目を閉じる。
(ごめんなさい…正宗……)
<ぬおおおおおおお!!>
死を覚悟し目を瞑った、その刹那。聞き覚えのある声と甲高い音が路地に響いた。
「ちッ!」
目を開けると、そこには正宗の姿があった… - 126 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 22:30:37.90 ID:/NZLDQE0
- <無事か!?御堂!!>
正宗の頼もしい声が響く。
男は正宗と距離をとるように飛び退っている。
「チッ!面倒な事になりやがったなァ…」
男は何か思案しているようで、追撃を仕掛けてこない。
<御堂!掴まれ!!>
それを見た正宗が私に声を掛ける。
私は最後の力を振り絞り、正宗の背中にしがみ付く。
<振り落とされるでないぞッ!>
正宗の体が飛び上がる。
男はなんの行動も起こさず、ただ私達を見送るだけだった。
<ここまでくれば、もう大丈夫であろう…>
私はいつかの病院の近くで降ろされた。
地面に降り、安心すると体から力が抜けていく、どうやらもう限界だったようだ…
「ま・・さ・・・むね・・・・・・」
最後に私が見たのは、背を向けて去っていく正宗の後姿だった…… - 127 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/02(金) 22:36:03.63 ID:/NZLDQE0
- 次に私が目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
見覚えのある病室だ、どうやら私は助かったらしい…
「正宗…」
私を助けてくれたのは正宗だった…
なぜ彼は自分を裏切った私を助けてくれたのだろう?
私が考えていると、病室のドアが開き、誰かが中に入って来た。
「ケガは大丈夫ですか?とミサカはあなたを心配します」
中に入って来た人を見て、私は驚きを隠せなかった。
「美春さん……?」
そこには御坂美春が立っていた――――――
- 133 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 19:38:08.49 ID:feJoL6c0
- いや、美春さんは死んだはずだ…、ならこの人は御坂さんだろう。
しかし、頭にはゴーグルを着けているし、雰囲気が違う。
「このミサカは御坂美春と名乗ったミサカではありません、そして御坂美琴でも
ありません、とミサカは説明します」
私の疑問に答えるように、彼女はそう答えた。
御坂さんでも美春さんでもない?
それでは彼女は誰なのだろうか?同じ顔の人間がそう何人も居る筈がない。
「言葉で説明するよりも、見せた方が早いでしょう、とミサカは合図を送ります」
彼女が合図を送ると、部屋の中に御坂さんとそっくりの少女が数人入って来た。
「なに…これ…?」
私は現実離れした光景に、そう呟いた。
「私達は、レベル5、超電磁砲のクローン、『妹達』(シスターズ)です」
「妹達?」
「はい、そしてこのミサカは、番号10032号です、とミサカは自己紹介します」 - 134 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 19:49:33.08 ID:feJoL6c0
- レベル5のクローン?
あまりにも突拍子のない話に私は混乱する。
「妹達はある実験に参加しています。あなたが目撃したのは、その一環です、
とミサカは告げます」
アレが実験?
「美春さんが殺された事が、実験だって言うんですか!?」
思わず声を荒げる、人の命を奪うような実験なんて聞いた事がない。
「はい、学園都市の第一位、一方通行をレベル6へ進化させるために、2万人の
妹達を殺害させる。それがあの実験です、とミサカは答えます」
唖然とする、1人の人間のレベルを上げるために、2万人もの人を犠牲にするなんて…
「そんなの…、馬鹿げてる……」
「これが学園都市の暗部です。人の命など、大した価値を持ちません、とミサカは
言い放ちます」
「私は偶然実験に巻き込まれたって事?」
「いいえ、それは違います、とミサカは否定します」 - 135 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 19:59:56.09 ID:feJoL6c0
- 思いもよらぬ答えが返って来た。
私はその実験に関与した覚えはない、それなのに今回の事は偶然ではない?
「今回の御坂美春、いえ、10031号を使った実験には2つの目的がありました。
1つは、一方通行をレベル6へと進化させる実験。
そしてもう1つは、佐天涙子さん、あなたに学園都市の暗部を見せる事です、と
ミサカは告げます」
私に学園都市の暗部を見せる?そんなことになんの意味があるというのだろう?
「あなたは未だに、自分が無能力者でなんの関心も持たれていない。
そう勘違いしているようですが、あなたは異世界の劒冑という存在に関わった
貴重なサンプルなのです、とミサカは言います」
たしかに、正宗は異世界からの来訪者、そして異能の力を備えている…
研究者からすれば、これ程の研究対象はそうはないだろう… - 136 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 20:12:07.91 ID:feJoL6c0
- 「おそらく今回の指令は、あなたが研究に協力せず、正宗とも距離を取ったため、
研究が続けられない事に業を煮やした人間が仕組んだ事でしょう、とミサカは
推測します」
研究者としては、すぐにでも研究をしたいだろう。しかし私がそれを放りだして
逃げてしまったのだから、そう考えるのもわからなくもない話だ…
「あなたが死に、正宗が新たな仕手を探しに動けばそれでよし。また、万が一
あなたが生き延びた場合には、研究員が取引を持ちかける手筈になっていました、
とミサカは説明します」
「取引?」
「はい、親交を深めた10031号を目の前で殺害することで、あなたがその犯人、
一方通行に対し、復讐心を持つ。そうすればあなたは力を求め正宗に接触を図る。
計画の発案者はそう考えたのでしょうね、とミサカは推測します」
私は黙って、10032号さんの話を聞く。
私が美春さんの死を目撃したのは、私の復讐心を煽る事が目的だということだ… - 137 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 20:23:32.64 ID:feJoL6c0
- 「しかし、あなたは復讐の対象が誰だかわからない。そこで犯人探索に手を貸す事を
条件に、研究への参加を促す、これが今回の指令の内容です、とミサカは真実を
明かします」
その話を聞いて、1つの疑問が浮かんだ。
「もし、私が復讐を望まなかったら…?」
殺害現場を見ても、私が復讐を望むとは限らない、恐怖して、家に閉じこもって
しまうような可能性だってあるはずだ…
「この計画には、まだ先があります、とミサカは補足します」
10032号さんは一度言葉を区切った
「あなたが復讐を望まず、正宗と接触しなければ…、第2段階として、初春飾利を
殺害する、これが計画の次のステップです、とミサカは説明します」
頭の中が真っ白になる。
もし、私が研究に参加しなければ。今度は初春の命が失われてしまう…… - 138 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 20:33:15.84 ID:feJoL6c0
- 「この計画の発案者は、なんの益も生み出さない存在をいつまでも生かしておくような
人間ではないでしょう。これはあなたにとってのラストチャンスです、誰でもいいので
速やかに再び研究に参加する旨を学園都市の研究者に伝えて下さい、とミサカは
促します」
確かに、そうすれば私達は助かる事ができるだろう…
しかし、彼女たちはどうなのだろうか?
「美春さんは…、いや…、あなた達はこのままでいいの?あんな実験に付き合わされて…
あれじゃあ、まるで……」
「実験動物みたいではないか?そう仰りたいのですね?」
私が詰まらせた言葉の先を10032号さんが補足した。
「実験動物みたい、というのは正しくありません…」
そう言葉を区切り
「私達は実験動物なのですから、とミサカは訂正します」
と言った。
その言葉を聞いて、グワン、と視界が揺れたような気がした。 - 140 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 20:47:00.63 ID:feJoL6c0
- 「そっ、そんなの間違ってる!あなた達は実験動物なんかじゃない!
ちゃんとした人間じゃない!」
私はその言葉を否定する、そんなのは間違ってるから、認めたくないから…
「間違ってなんていません、ミサカ達は実験動物です。あの実験のために
生かされている…。あの実験は、ミサカ達の存在意義そのものです。
ですから、あなたがミサカ達の事を気に掛ける必要はありません、自分の身の安全を
優先してください、とミサカはあなたを諭します」
彼女の言葉を否定したい、実験動物なんかじゃないって…
しかし、それを彼女達自身が否定させない……
「もう、妹達のことは忘れすべきです…、とミサカは忠告します」
そう言って、私の前に何かを差し出した。
「10031号は死亡し、我々が関わることはないでしょう。ですから、
これはお返しします…」
それは、血で汚れた髪飾りだった…
「それでは失礼します、とミサカは別れを告げます」
10032号達が部屋を出て行く。
最後に10032号が振りかえり
「命は大事にしてください…、妹達とは違い、あなたは世界でたった1人しか
居ないのですから、とミサカは微笑みます」
そう言って、美春さんと同じように笑った。 - 141 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 20:57:45.28 ID:feJoL6c0
- そのまま夜が明けた…
私は昨晩の事をずっと考えていた。
彼女たちを実験から解放したい。しかし、実験を中止させるのならば、第一位との戦いは
避けられないだろう。
昨日の事を思い出す、あの不可思議な力、正直第一位と戦って勝ち目があるなんて
思えなかった…
それ以前に、当の妹達自身が、実験の中止を望んでいない…
ならば私に余計な事をする権利なんてない…
私にできることは、自分と初春の命の為に、再び研究に参加することくらいだ。
しかし、私は未だに決心がつかなかった、研究に復帰することを木原さんに伝えようと
携帯を手に取るが、それをまた放りだす、という行為を何度も繰り返している。
「佐天さん!」
私が悩んでいると、部屋のドアが開いて、初春が中に飛び込んできた。
「う、初春?どうしたの?そんなに血相変えて?」
突然の来訪者に戸惑ってしまう… - 142 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 21:08:50.82 ID:feJoL6c0
- 「どうしたの?じゃないですよ!また、こんなケガして、心配したんですからね!?」
初春が詰め寄ってくる。
「う、初春…、佐天さんは怪我人なんですから、そう大声を出しては…」
あとから入って来た白井さんが初春をなだめる。
「だって…、だって、心配したんですよ?あんな大怪我したばっかりなのに…
また入院なんて…」
初春が少し涙声になって答える。
「ごめんね、心配掛けて。今回は大したことないから、明日にでも退院できるよ…」
「ホントですか?」
「うん、ホント…」
初春が安堵の笑みを浮かべる。
ふと、初春と白井さんの後ろに、隠れるように御坂さんが居る事に気が付いた。
「ごめん、2人とも、御坂さんと話したい事があるんだ…。だから2人きりにして
くれないかな?」
「話、なんの話ですの?」
白井さんが疑問を口にする。
「いいのよ、悪いんだけど、2人とも席を外してくれる?」
「わかりました、それじゃあ私達、ジュースか何か買ってきますね」
そう言って、初春が白井さんの手を引いて外へ出て行く。 - 143 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 21:19:02.11 ID:feJoL6c0
- 部屋の中には私と御坂さんだけが残された。
「佐天さん…」
御坂さんが何かを言おうとする
「知ってたんですか…?」
「えっ?」
私はその言葉を遮り、御坂さんに質問を投げかける。
「美春さんの事、妹達の事知ってたんですか?」
「佐天さん…、知っちゃったんだね…」
「質問に答えて下さい!」
私は声を荒げる。
「知ってたわ、妹達の事、実験の事、全部…」
その答えを聞いて、頭に血が上る。
「知ってたんなら!どうして止めないんですか!?御坂さんはレベル5なんでしょう!?
なんだって出来るのに、あんなに強いのに、それなのに…、どうして!?」
そこまで言って気が付いた。
御坂さんが血が出るほど強く手を握りしめている事に…… - 144 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 21:30:59.38 ID:feJoL6c0
- やっと気が付いた。
御坂さんが辛くないはずがないということに…
御坂さんが、あんな実験を放っておくはずがない、それなのに実験は続いている。
それはつまり、御坂さんでも止める事が出来なかったということではないだろうか?
「御坂さん…私……」
御坂さんに謝罪しようと口を開く
「佐天さん、ジュース買ってきましたよ~」
「お姉様、ただいま戻りましたの」
私が謝罪するより先に、初春達が部屋の中に入って来た。
「あれ、どうかしたんですの?」
部屋の中の空気を感じ取り、白井さんがそう言った。
「ううん、なんでもないわよ。ごめんね、佐天さん、私、用事思い出したから先に帰るね」
そう言って、御坂さんが部屋を出て行こうとする。
「御坂さん!」
私は御坂さんを呼び止める。
「黒子は、佐天さんにと一緒に居てあげて。佐天さん…、佐天さんはもう心配しなくて
いいから…」
御坂さんはそう言い残して部屋を出て行った。
「用事?何なんでしょうね?」
残された白井さんが首を傾げた。 - 145 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 21:42:07.14 ID:feJoL6c0
- その日は、初春と白井さんが付きっきりで私を看病してくれた。
「初春、そろそろ面会時間も終わりですわ。帰りますわよ」
白井さんが初春にそう呼び掛ける。
「帰りません…」
「へっ?」
初春の答えに白井さんが間の抜けた声を出す。
「帰りませんって…、ここに泊るつもりなんですの?」
「そうです!佐天さんが、もう無茶しないように見張ってるんです!」
「そんなわがまま、通る訳ないでしょう?第一、寝るところはどうしますの?」
「そんなの!床で寝ます!」
2人が言い争っていると、カエル顔の医者が中に入って来た。
「別に構わないよ、それに彼女がケガをしないように見ていてくれるというのは、
こちらとしてもありがたい。このままでは彼女がこの病院の出戻りの最短記録
保持者になってしまうかもしれないからね…」
カエル顔の医者の一言で、初春が今夜、病室に泊ることが決まった。 - 146 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 21:51:48.80 ID:feJoL6c0
- しばらくして、初春がお泊りの準備を整えて戻って来た。
初春の寝る場所は、ベッドが大きいこともあり、私と一緒にベッドで寝ることになった。
「むにゃ…、佐天さ…ん……」
消灯時間が来て、部屋の電気を消すと、初春はあっという間に眠りについてしまった。
「正宗…聞こえる…?」
初春が寝た事を確認すると、私は正宗に呼び掛けた。
だが反応がない…
(やっぱり愛想尽かされちゃったかな…?)
<御堂…>
そんな事を考えていると、正宗の声が聞こえてきた…
<すまぬ御堂、吾が御堂を巻き込んだばかりに……>
正宗が私の知っている彼とは違う、労わるような口調で言った。
「正宗は悪くないよ…」
悪いのは私の方だ…
「ねぇ…、正宗?正義ってなんなんだろうね…?」
正宗に問いかける。 - 147 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:02:39.87 ID:feJoL6c0
- 以前の正宗ならば、間髪いれずにその問いに答える事が出来ただろう。
<すまぬ…、御堂よ、吾には正義とは何かが…、わからぬようになってしまった……>
しかし、返って来たのは、かつての面影の無い、よわよわしい声だった…
<吾は如何なるものを犠牲にしても悪を討つ、それが絶対の正義だと信じていた。
だが、あの髪の短い娘の言葉を聞いて、疑問が浮かんだ。吾は正義のためと言って、
御堂を傷つけた。それは正しい行いなのだろうか?年端もいかぬ娘を傷つける行為は
吾の憎んだ悪と同じではないのかと……>
「正宗…」
私はなにも言えなかった…
私には自分の正義なんてものはないから、彼の助けにはなれない……
私達の間を沈黙が満たす。
<もしかすると…、善悪相殺…、あれこそが世の心理なのやもしれぬ……>
「善悪相殺?」
聞きなれない言葉に、私は聞き返す。 - 148 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:11:51.55 ID:feJoL6c0
- <吾の敵、村正という劒冑の理だ、1人の敵を殺せば、1人の味方を殺さねばならぬ
という呪い…>
善悪相殺、その言葉の意味を考える。
私にとって、一方通行は憎むべき敵だ。
しかし、妹達、10032号さんの言葉が真実ならば、一方通行は彼女たちに
存在理由を与えてくれる存在…
実験を行っている研究員にとっては、レベル6という彼らの夢とも言うべき目標を
実現させてくれる人物。
つまり、一方通行は完全な悪とは言いきれない…
一方通行がどれほどの悪人でも、どれだけの人道に反することを行っていても…
彼は絶対悪ではない……
きっと…、絶対悪なんて、この世には存在しない…
だから、正宗の絶対正義も存在しないんだ…… - 149 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:19:47.56 ID:feJoL6c0
- なぜなら人は、正義と悪の両方を併せ持っているから…
1つの悪を断つということは、1つの正義を諸共に断つということだから…
ならば、善悪相殺が正しいのか?
否
それが世の心理だとしても…
隣ですやすやと寝息を立てる初春の頭を撫でる。
私に自分の大切な人を殺める事が出来るだろうか?
私にはそんなことは出来ないだろう……
ならばどうすればいい?
善悪相殺でも、絶対正義でもない…
私だけの戦う理由を見つけなければならない。 - 150 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:31:59.72 ID:feJoL6c0
- ふと、私の中に1つの考えが浮かぶ…
善悪相殺は否定できない世の心理
絶対正義はすべてを犠牲にしても正義を貫く英雄の志
最初から、私にはそのどちらも受け入れることはできないものだったのだろう…
そして、私は佐天涙子の正義を見つけた…
それは自分の大切なものを守るために、他者の大切なものを否定するということ……
そこには大義なんてものはないし、とても正義なんて呼べたものじゃない……
それでも、これが佐天涙子の導きだした正義だ…
私はいつも身に着けていた髪飾りを手に取る。
そして、それをへし折った… - 151 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:39:51.78 ID:feJoL6c0
- 何度も何度も、粉々になるまで砕く。
そうして粉々になった髪飾りを見つめる…
これは、今までの佐天涙子の象徴だ。
無能力者である事を嘆き、能力者に憧れ、傷つくことを恐れていた、弱い少女
しかし、友達を想い、誰かのために戦うことを夢見ていた、優しい少女
それを捨て去ることはできない…
誰かへの優しさまで捨ててしまえば、私はただの殺戮者になってしまう……
捨てることはできない、でも決別しなければならない―――
だから―――
私は、それを飲み込んだ――――――
- 152 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:50:32.06 ID:feJoL6c0
- 口の中が切れて、血の味が広がる……
それでも、そのすべてを飲み下す…
優しさを失くさないために…
新しい佐天涙子になるために…
そうして、私は頭に血の付いた髪飾りを着ける。
「正宗…、聞いて、私の正義を……」
私は正宗に自分の見出した正義を告げる。
<御堂、それは…>
正宗が言葉を詰まらせる…
「これが私の導きだした正義…、これだけは譲れない…」
<ならば、今度は吾から御堂へ問おう、御堂にその正義を貫く覚悟はあるか?
その身を裂かれ、血を流し、手足を失い、命を失っても…、その正義を貫く覚悟が
あるのか!?>
正宗の言葉を聞く。
戦うのは今だって怖い、傷つくのだって怖い、でも……
「それでも戦う、私には…、守りたい物があるから!」 - 153 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 22:58:49.47 ID:feJoL6c0
- <承知した、御堂にそれ程の覚悟があるというのなら…、吾も力となろう、御堂の命が
尽きるまで!>
正宗がそう答える。
<御堂、綾弥一条よ、お主が今の吾を見れば、軽蔑するやもしれぬな…
だが、吾は決めたのだ、この御堂、佐天涙子の正義を信じると……>
正宗が何かを呟いた
「どうしたの?正宗…」
返事が聞こえる前に、私の耳に風切り音のようなものが聞こえた。
「佐天さん!」
窓の外を見ると、そこには白井さんが立っていた。 - 154 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 23:07:10.95 ID:feJoL6c0
- 「白井さん?」
言葉を発するより早く、白井さんが部屋の中に現れる。
「佐天さん!お姉様を知りませんか!?」
白井さんが血相を変えて、私に問いかける。
「御坂さん?どうかしたんですか?」
「どうかしたんですか~」
私達の声を聞いて、初春も体を起こす。
「お姉様が居なくなってしまったんですの!こんな書置きを残して!」
私の前に、一枚の紙が差し出される。
私はそれに目を通す。
【黒子へ ちょっと出かけて来る、もしかしたら戻れないかもしれないから…
その時はごめんね?
初春さんや佐天さん達にも、よろしく言っておいて…
それから佐天さんに、もう心配はしないでって、伝えておいて…】
手紙にはそんな事が書かれていた…
「もしかしたら、佐天さんがお姉様の行き先を知っているのではと思い…
ここまで来たのですけれど……」 - 155 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 23:19:05.14 ID:feJoL6c0
- 手紙を読んで理解した。
御坂さんは第一位の所へ行ったのだと…
「正宗!」
私は正宗を呼び、部屋を飛び出した。
急いで病院を飛び出す。
病院の入口の前には、もう正宗が来ていた。
「行くよ、正宗!御坂さんを助けに!」
<承知したッ!遠くで大きな力を感じる、おそらく奴らはそこであろう…、
行くぞッ、御堂!吾等の正義を為しに!>
私は正宗を装甲しようと構えを取る
「どこへ行くんですか…?」
そこへ初春の声が聞こえた。
「御坂さんを助けに行く……」
私はそう答える。
「どうして佐天さんが行くんですか!?御坂さんはレベル5なんですよ!?
佐天さんが力になれる事なんて…!!」 - 156 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 23:31:48.24 ID:feJoL6c0
- 「御坂さんじゃ勝てないかもしれないから…、私が助けに行く……」
「御坂さんが勝てない相手に、佐天さんが敵う筈ないじゃないですか!?
また大怪我するかも、ううん、今度こそ死んじゃうかもしれないんですよ!!?」
初春が普段の姿からは想像もつかないような大声で捲し立てる。
「初春……」
追いついてきた白井さんもあっけに取られていた。
「私…、佐天さんに、行ってほしくないんです…」
初春が私の服の裾を掴んだ。
「嫌な奴って、思われるかもしれません…。でも、私、佐天さんに傷ついてほしくない、
死んでほしくないんです!」
最後はもう泣き叫ぶように初春が言った。
「それでも…、私は行くよ。これが私の出した答えだから…」
そう言って、初春の手を振りほどく。
「佐天さ…ん……」
初春がその場に座り込む
装甲の構えを取る、正宗の装甲が宙を舞う
「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」
さあ―――
始めよう、佐天涙子の本当の戦いを――――――
「ツルギの理ここに在り!」
- 157 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/03(土) 23:40:09.56 ID:feJoL6c0
- 「私は行きます、白井さん、初春をお願いします…」
私は後ろを振り向き白井さんに声を掛ける。
「わかりました…、佐天さん、どうか無茶は…、いえ、違いますわね…
わたくしの言うべき言葉はこれではありませんわ……」
白井さんが一呼吸置く
「佐天さん!どうか、ご武運を!!そして、お姉様をお願いします!」
その言葉に頷き、空へと駆け上がる。
「さあ行こう、正宗。私達の本当の初陣だよ…」
<ああ!行くぞッ!御堂ッ!!>
藍色の星が、漆黒に染まった空を一直線に突き進む
佐天涙子の本当の戦いへと向かって―――
- 168 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 19:31:09.11 ID:.uvLnpk0
- 第十七学区にある操車場
普段なら、この時間になれば静寂が支配するであろうこの場所に、
激しい戦いの音が木霊する
「くぅっ!」
御坂美琴は歯がみする
(やっぱり、私の攻撃が通用しない!)
先程から何度も電撃を放っているが、一方通行には届かず、弾かれてしまう
そんな美琴の姿を一方通行が嘲笑う
「何度やっても無駄なンだよッ!テメェの能力じゃあ、オレの能力には敵わねェンだよ!」
(どうにかして、あいつの能力の正体を突き止めないと…)
それさえわかれば勝機を見いだせるかもしれない!
それから何度も攻撃を繰り返す、しかし結果は変わらなかった…
逆に一方通行からの反撃を受け、美琴は地面に転がった - 169 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 19:42:52.30 ID:.uvLnpk0
- そこへ、10032号が駆けよって来る
「お姉様、もう充分です。お姉様では一方通行には及びません、ですからすぐに
ここから立ち去ってください、とミサカは進言します」
そう言って、10032号は一方通行の方へ向かおうとする
(何がレベル5よっ!私…、自分の大切な人達すら守れないじゃない……)
美琴の目から涙が溢れ出る
その時、美琴達と一方通行の間に、1つの影が降り立った
「大丈夫ですか?御坂さん?」
その異形の影が美琴に声を掛ける
「佐天…さん…?」
「オイオイ、おとなしく研究に参加すりゃ生き残れるってのによォ…。
なンでこンなとこまで出しゃばって来るンだよ?あれか?英雄気取って苦しンでる
人は放って置けませンー、なンて言うつもりかァ?」
御坂さんが言葉を失っているうちに一方通行が嘲るように言った - 170 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 19:52:19.18 ID:.uvLnpk0
- 「英雄ごっこは、やめたわ…」
私はそう答える
「そうだよなァ、これは妹達が自分の意志でやってる事だもンなァ?
誰にも止める権利なんてねェ。だったらよォ、なンでお前はここに来たンだよ?」
一方通行が私に問いかける
「この実験を止めるために…」
その問いに対して、そう言い放つ
「ギャハハッ!なンだよッ、そりゃあ!?」
一方通行が笑い声を上げる
「あいつらはなァ、オレをレベル6にするために生きてンだよッ!?
この計画を否定するってことは、あいつらの存在を否定する事にもなンだよッ!」
なおも一方通行は続ける
「実験を止めるだァ!?なンの権利があってそンなことができんだよッ!?
こいつらが頼んだ訳でもねェ、誰も頼んでねェのに、なンの権利があってオレの
邪魔ができンだよッ!?」 - 171 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 20:03:49.25 ID:.uvLnpk0
- そう、一方通行の言うことはもっともだ、妹達に助けを求められた訳ではない…
それどころか、私のやろうとしている事は、彼女達の存在理由を否定する事かもしれない
それは彼女達にとっての正義ではない…
「権利なんて、ないわ…」
それでも私はそう答える
「権利なんてない、だけど、この実験を続けさせるつもりもない……」
彼女達が実験体としての生を望んでいても…
「私のやろうとしている事は、とても正義なんて呼べない…」
私は認める事ができない、誰かの都合で生み出されて、誰かの利益の為に生き、
そして殺されていくなんて…、許す事が出来ない
なにより、私の大切な人が傷つくことが許せない…
「それでも私は…」
たとえそれが正義と認められなくても、悪鬼の所業と言われても構わない
「私の信じる正義(邪悪)を貫く!!!」
それが私の答えだから、自分の大切な何かを守るために…
誰かの大切な何かを否定する……
それが佐天涙子の正義 - 172 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 20:13:45.56 ID:.uvLnpk0
- 私は刀を引き抜く、これは覚悟の証だ
誰かの命が、自身の命が失われるかもしれない、そんな戦いへ身を投じる事への、
私の覚悟の証明…
「ああ、そうかい…、あくまでもオレの邪魔をするって事かよォ…」
一方通行が私へ明確な敵意を向ける
「佐天さん!そいつには攻撃が効かないのよ!そんな相手に勝てる訳ない!
私の事はいいから、早く逃げるのよっ!」
御坂さんが叫ぶ
「私は大丈夫です、だから、御坂さん達は下がっていてください」
たとえどんな能力が相手でも、退く訳にはいかない…
「でもっ…!」
御坂さんがさらになにか言おうとする
「そろそろ行くぜェ?こっちにも予定があってなァ、いつまでも三文芝居に付き合って
やれるほど暇じゃねェンだよォッ!」
いうやいなや、一方通行が疾走する
私は咄嗟にそれを迎え撃つ
「ぐぅッ!」
刀が一方通行の体に触れた瞬間、勢いよく弾かれる
<ぬぅ!やはり攻撃が通らぬかッ!>
正宗が唸る - 173 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 20:24:26.82 ID:.uvLnpk0
- 攻撃を弾かれ、態勢を崩した私の体に、一方通行が拳を叩き込んだ
「うわッ!?」
威力こそ大したことないものの、素手で劒冑を殴るという行為に驚愕する
攻撃が通じなくては埒が明かない。私は、一方通行の攻撃から逃れるために
空へと舞い上がった
「なンだよ、なンだよ、なンですかァ!?逃げてるだけじゃあ、何万年掛かっても
オレを倒すなンざ出来ねェぞッ!?」
そう言うと一方通行は地面に置いてあった鉄骨を蹴りあげた
それを見て私は咄嗟に回避行動をとる
一方通行に蹴りあげられた鉄骨は、まるで弾丸のような速度で私の横を掠めていった
次から次へと鉄骨が飛来する
だが、避けられないほどではない
おそらく、一方通行は慢心している… - 174 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 20:36:51.98 ID:.uvLnpk0
- 一度破った相手だから、というのもあるだろう…
しかし、最大の理由は己の能力に対する絶対の自信だろう
いかなる攻撃も防ぐ、その能力の存在が彼にそのような行動をとらせている
「まったく、冗談きついよね…」
回避行動をしながら、私はそう愚痴をこぼす
一方通行の能力の正体、それがわからないことには、私達に勝機はない…
なぜ一方通行には攻撃が通じないのか?
それについて1つの仮説を立てる
それは一方通行の能力が斥力を操る能力である場合だ…
さっき一方通行が正宗の装甲を殴った時、ちらりと見えた彼の拳は傷一つなかった
身体能力向上系の能力では、いくらレベル5の力と言えど、劒冑を殴って無傷とは
いかないだろう…
しかし、それが斥力なら説明できる
私の攻撃が当たる、拳が正宗の装甲に当たる瞬間に、斥力を発生させて私を吹き飛ばす
だが、それには疑問点がある
斥力は互いに反発する力、だというのに、なぜ私だけが吹き飛ばされるのかという疑問だ
それに美春さんが殺された日、あの時彼を殴った私の手からは血が出ていた…
つまり、一方通行の能力は斥力ではない…… - 175 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 20:49:11.07 ID:.uvLnpk0
- また振り出しに戻ってしまった…
いったい一方通行の能力の正体はなんなのだろうか?
<御堂ッ!来るぞッ!>
「――ッ!」
しまった!一方通行の能力の正体を見破ろうと、思考を巡らせることで
死角からの鉄骨の接近への反応が遅れたッ!
私は飛来した鉄骨の直撃を受けて、地面に叩きつけられる
「ガ、ハッ――!」
すさまじい衝撃を受けて、私は咄嗟には立ち上がる事が出来なかった
「はッ!まったくよォ…、その程度でしゃしゃり出て来るンじゃねェよ、
この雑魚がッ!」
一方通行がそう吐き捨てる
マズイッ!今、追撃されれば防ぐすべがない!
「もうやめて下さい、とミサカは一方通行を制止します」
そこへ、10032号さんが割り込んで来た
「このまま攻撃を続け、正宗が壊れてしまえば面倒なことになりますよ?
正宗は破壊するな、あなたはそう指示を受けている筈ですが?とミサカは指摘します」
「確かにそうだなァ。でもよォ?実験の障害になるンなら、ぶっ壊しても文句は
出ない筈だぜェ?」
「そうですね。しかし、彼女はあなたとの力の差を痛感した筈です。
これ以上の戦闘を続けはしないでしょう、そうではないですか、佐天涙子さん?
とミサカは問いかけます」 - 176 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 21:00:28.48 ID:.uvLnpk0
- 10032号さんが私に問いかける
「――諦めない…」
その言葉に10032号さんが目を見張る
「私は、諦めない…。たとえ相手が無敵の存在だとしても…、私は諦めない!!」
私は、この実験を止めたいから、御坂さんを、妹達を助けたいから…
絶対に諦めない!
「どうして…、諦めないのですか?とミサカは…、ミサカは…」
彼女が言葉を詰まらせる…
「この実験を止めたいから。たとえ今は、この実験以外に生きる道がないって思ってても、
それは気付いてないだけかもしれないでしょ?他の生きる道に…。
だから私はあなた達を解放したい、そして見つけてほしいの、自分の手で自分の生きる道を!」 - 177 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 21:11:15.76 ID:.uvLnpk0
- 彼女は絶句する、こんな自分達を、実験動物に過ぎない自分達をここまで思ってくれる
人が居る…
しかし、だからこそ……
「ミサカ達は、あなたの生存を望んでいます。ミサカ達を人間として扱ってくれた
あなたの、ミサカ達のために命を賭けてくれているあなたの生存を…
とミサカはミサカ達の総意を伝えます…」
「それでも、私は戦うよ。自分の正義を貫くために……」
彼女にそう宣言する
「わかりました、ならばもう止めません…。しかし、最後に助言を。
第一位、一方通行の能力はベクトル変換です、あらゆる力を操る能力。
彼に攻撃が通じないのは、ベクトルを反転させ、反射に設定しているからです。
とミサカはあなたに希望を託します」
ベクトル変換…
それが第一位の能力……
「はッ!最後の悪足掻きってことかァ?そンなことしてもオレの最強は揺るがねェ!
奇跡なンざ起きねェんだよォ!!」
一方通行が近くにあった鉄骨を投げつける
私はそれをすんでのことで回避し、そのまま空へ駆け上がった - 178 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 21:21:56.38 ID:.uvLnpk0
- 一方通行に攻撃が通じないのは、彼が攻撃の力を反転させ相手に返しているからだ
攻防一体の無敵の盾…、それが彼の自信の源だ
普通に考えれば彼に対抗する手段はない
なぜならどれだけ大きい力でも、反射されれば意味がない…
それどころか、大きい力ほど反射された時のダメージが大きくなる
(どうすれば…、あの鉄壁の守りを崩せるのッ!?)
何も打開策が思いつかない、そこへ正宗の声が響く
<御堂ッ!吾の陰義ならば、奴の防御を崩せるやもしれんッ!>
「本当ッ!?」
私は正宗の言葉を信じる、正宗の持つ異能の力…
それにすべてを賭ける!
<まずは、奴に攻撃し、奴の術をその身で受けるのだッ!>
「わかったッ!」
正宗の言葉を信じ、私は一方通行へと向かって突撃する! - 179 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 21:34:53.92 ID:.uvLnpk0
- 私は一方通行に一撃を見舞うため、拳を振りかぶり、突進する
「なンだァ?」
万策尽きた果ての無様な特攻と思ったのだろう
一方通行は無造作に手を前に出し、それを受け止めた
「クッ!」
突進の勢いも相まって、またも吹き飛ばされる…
そのまま反転し、地面に降り立つ
「このあとはどうすればいいのッ!?」
<吾が陰義を発動させるッ!御堂はもう一度、奴の体に一撃を見舞え!>
その言葉に、私は再び合当理に火を入れ、突撃する!
<善因には善果あるべし!悪因には悪果あるべし!>
<害なすものは害されるべし!災いなすものは呪われるべし!>
<因果応報!天罰覿面!!>
正宗が呪文のようなものを唱える
それを聞きながら、一直線に一方通行に向かい疾駆する! - 180 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 21:46:23.29 ID:.uvLnpk0
- 「ッ!?」
一直線に向かってくる、佐天涙子の姿を見て
一方通行は初めて、恐怖のような感情を抱いた…
(ヤベェ――!!)
あれを受けてはいけない!そんな予感が頭を駆け巡る!
一方通行は攻撃を避けようと、回避行動を取る
しかし、もう遅かった
佐天涙子の拳が、回避しようとしていた一方通行の肩に触れる…
その瞬間、甲高い音が響いた
「ぐぅッ!」
「ガァッ!?」
両者の間に衝撃が走った
佐天涙子の体は衝撃で仰け反り、一方通行は衝撃で吹き飛ばされた
<見たかッ!これが吾の陰義、『陰義返し』だ!> - 181 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 21:55:49.47 ID:.uvLnpk0
- 「陰義返し?」
<左様、相手の陰義とまったく同じ力を再現できる、それが吾の陰義だ!>
そうか…、同じ反射の力同士がぶつかり合うことで、私達は磁石の同じ極のように
弾かれた…
そして、行く場を失くした力が拡散し、双方にダメージを与える
しかし、劒冑に身を包んだ私と、華奢な一方通行の間には防御力に圧倒的な隔たりがある
それが、この結果を生みだした…
「佐天さん!」
私が一方通行を破ったのを見た御坂さん達が駆けよってくる
「すごいわっ!あの一方通行を倒すなんて!これで妹達は救われるわっ!」
御坂さんは飛び上がらんばかりに喜んでいる - 182 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 22:09:23.94 ID:.uvLnpk0
- 「負けて…、たまるかよォ……」
「ッ!」
その場の全員が声のした方向を見る
そこには一方通行が立っていた
先程の攻撃で骨が砕けたのだろう、その左肩は力なく垂れていた
「もう終わりよ、あなたの無敵の盾は敗れた。あなたが実験をやめるなら、
私は、これ以上戦わない…」
そう一方通行に宣言する、御坂さんは何か言いたげだったが、それでも黙って
彼の返事を待つ
「オレが…、ここでやめちまったらよォ…、妹達はどうなるンだよ?」
思いもよらぬ答えに私は驚いた
「大丈夫、私がなんとかするわ、実験が無くなったからって処分なんて、絶対に
させない!」
御坂さんがそう言った、彼女は一方通行が憎いだろう
しかし、妹達のためにそれを抑え、一方通行にそう約束した
「そうじゃねェよ…」
「?」
またも妙な答えが返ってくる、妹達の処遇でなければ、なにを気にしているのだろう?
「オレが、降りたら、いままで死んだ妹達はなんなんだよ…?」 - 183 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 22:21:47.77 ID:.uvLnpk0
- 一方通行は思い出す、この実験の始まりを……
◆
この実験に参加する切っ掛けはレベル6になりたい…
ただ、それだけだった…
実験の詳細を聞いて躊躇いはしたが、実験から降りようとは思わなかった
レベル6になることは自分の目標だったから…
そうして、実験が始まった―――
最初の実験は驚くほどあっけなく終了した
人を殺すのは初めてではなかったし、能力差は圧倒的で傷を負うことはなかった
それでも、胸に言いようのない苦しさを覚えた…
それは当然のことだった、妹達に恨みなんてなかったし、第一これは戦いなんて
呼べるものではなかったから…
それでも殺した、1人、また1人と、実験は順調に進行していく
実験を続けるうちに一方通行の中に1つの疑問が浮かんだ
このまま実験を続けていいのだろうか?
こんな非道な事をしなくても、別の方法があるのではないか?
それにこの実験自体、レベル6になれる確証がある訳ではない…
だから実験から降りよう…、そう思った……
ふと、目の前に倒れている少女に目を遣る
物言わぬ屍となった少女、この手で命を奪った少女
もし、自分が実験を降りたら
彼女はなんのために死んだのだろう…?
- 184 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 22:32:40.86 ID:.uvLnpk0
- 一方通行は気付いてしまった
自分の背中に降ろすことのできない十字架が背負われていることに…
それからも一方通行は苦悩した
実験を続けることは正しいのかと?
しかし、実験を止めれば死んでいった妹達の犠牲が無駄になる…
答えは出ないまま、時間だけが矢のように過ぎ去って行く
まるで濁流のように、彼の苦悩をのみ込んで…
彼の前に死体の山を築いていく
(誰か…)
もう自分の意志では止まれない…
(誰でもいい、オレを止めてくれ…)
一方通行は願う、非道を行う自分の前に、物語から抜け出したような英雄(ヒーロー)が
現れて、自分を殺してくれることを… - 185 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 22:44:18.71 ID:.uvLnpk0
- そんな彼の前に、御坂美琴が現れる
一方通行は歓喜した、自分と同じレベル5、もしかしたら彼女ならば自分を
止めることが出来るかもしれない…
そして、御坂美琴と激突する
結果は望んだものではなかった…
御坂美琴は一方通行の前では、妹達と同じ程度の無力な存在でしかない…
時は流れ、運命の日が訪れる―――
「それでは、これより第一〇〇〇〇次実験を開始します」
実験の折り返し地点、ここが“引き返し不能地点”だ
一方通行の苦悩など知る由もなく、10000号は苛烈に攻撃を仕掛ける
「チッ!」
「どうしたのですか?とミサカは疑問を投げかけます」
10000号が立ち止まる
「なンでもねェ…」
まさか実験をやめるなどとは言いだせない
「そうですか、それでは手早く実験を終わらせましょう、とミサカは突撃します」
10000号が、銃を乱射しながら突進してくる
「ッ!」
弾が体に触れ、反射され、10000号目がけて飛んでいく
その一発が―――
彼女の首筋に吸い込まれていく――――――
- 186 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2010/07/04(日) 22:44:38.30 ID:EZLeOh20
- 超みてるよー
しえ - 187 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 22:52:15.11 ID:.uvLnpk0
- 「――――――」
彼女の首から鮮血が迸る―――
反射で血は付着しないが、血のシャワーが一方通行の視界を赤く染める
一方通行は動くことが出来なかった
ただただ、倒れて行く少女を見つめていた―――
どれくらいそうしていただろうか?
倒れている少女の首からは、もう血は噴き出していない
正常に働かない頭が、ただ1つの事実を認識した
ついに、殺害した妹達が1万人を越えた―――
(もう、止まれねェ―――)
自分の背には1万人の命が背負われているから
もう、どんな英雄が相手でも負ける訳にはいかない―――
だから――――――
◆ - 188 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 23:04:00.92 ID:.uvLnpk0
- 「オレが降りちまったら…、いままでの妹達の死が無駄ンなっちまうだろうがァ!!!?」
一方通行が絶叫のような叫びを上げる
その言葉を聞いて、御坂さん達が言葉を失う…
私は、一方通行の戦う理由が、自分の欲望のためだと思っていた
でも、違った、彼はもう引き返せなくなってしまったんだ
1万人を越える妹達の命を奪ってしまったから
レベル6になることで、彼女達の死に意味を与えようとしている
それを頭から否定することはできない―――
「それでも―――」
「それが残りの1万人を殺す理由になんかならない!!!!」
佐天涙子もそれに応えるように咆哮する
互いに譲れない理由がある
いままでの1万人の死を無駄にしないために―――
残った1万人を死なせないために―――
譲れぬ想いを胸に、二つの正義が激突する――――― - 189 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 23:15:53.58 ID:.uvLnpk0
- 「ガァァァァァ!!」
一方通行がその能力を発動させる
周りにあった資材、石ころ等が次々と飛来する
その攻撃の勢いは先ほどとは比べ物にならない
「くッ!」
私は攻撃を避けるため、三度空へと飛翔する
「佐天さん!」
「お姉様!ここは危険です!」
どうやら2人は難を逃れたようだ…、それを見て安堵する
安心したのもつかの間、攻撃が間断なく私の体に降り注ぐ
<これは、避けきれぬぞッ!?>
鉄骨等の大きいものは避けれるが、石などの小さなものまで避けきることはできない
「ッ!太刀がッ!」
飛来物に当たり、太刀を落としてしまう
<御堂ッ!再び陰義で攻撃を仕掛けるぞッ!>
「でも、近づけないよッ!?」
私の言葉に正宗が沈黙する
<あの攻撃、すべてを吹き飛ばすには、七機巧を使うしかあるまい…>
正宗の言葉に心臓が跳ねる、七機巧…、あれを使わなければ近づけない…
<どうする、御堂?>
答えは決まっている、もう決めたから、何があっても正義を貫くと
「やるよッ!正宗ッ!!」 - 190 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 23:31:42.16 ID:.uvLnpk0
- <それでこそッ!吾の御堂だッ!!>
右手首から筒が顔を覗かせる―――
体に激痛がはしる―――
「ギッ!アァァァァアアッ!!」
やっと気付いた、この痛みは正義を行う事への罰だ
正義のためにと、誰かを傷つける
たとえ正義のためでも、誰かを傷つけることは罪だから
だから七機巧は、苦痛を強いる、斬られる者の痛みを知らしめるために
仕手が独善に酔わぬように、無為に誰かを傷つけることを戒めるために―――
「ふッ――」
だから私はこの痛みを受け入れる
正義のための痛みだから、私の決めたことだから―――
「正宗七機巧が一!」
<飛蛾鉄炮・孤炎錫!>
<DAAARAAAAAHHHHHHHH!!>
弾が飛来物を巻き込んで爆発する
飛来物をまとめて吹き飛ばし、一方通行への道ができた - 191 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 23:41:14.56 ID:.uvLnpk0
- 私は爆発でできた隙間を、一方通行目指して突き進む
そして――
拳が一方通行に触れる―――
反射で弾かれた勢いを利用し、距離を取り、地面に降り立つ
<まずいッ!御堂ッ!>
正宗が切羽詰まった声を上げる
何事かと、私は前を向く
一方通行は、私が自分の前に姿を現すことを予期していたのだろう…
彼の手には、螺旋状に捻じられ、鋭利な杭と化した鉄の棒が握られていた
「しまッ――!」
私は咄嗟に回避を試みる
だが、まるで雷撃のような勢いで、それが投げられる
それは寸分違わず、左腕の関節部分の隙間に命中し、私の体を後ろにあった
コンテナに縫い付けた - 192 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/04(日) 23:52:01.05 ID:.uvLnpk0
- 「―――ッ!」
私の口から声にならない悲鳴が漏れる
杭が螺旋状になっているせいで、それを引き抜くことができない!
「はッ!バカのひとつ覚えが、このオレに通用すると思ったのかァ?」
一方通行が笑みを浮かべる
落ちている、鉄パイプを手に取る
「さすがにこれじゃあ、そいつの鎧は貫通出来ねェかァ?」
そう言って、それを投げ捨てる
「急がねェと、またハエみたいに飛びまわられたら厄介だ…」
なにかを見つけたのか、一方通行の顔に喜びの色が浮かぶ
「イイもんがあるじゃねェか…」
一方通行が手にしたのは、私が落とした正宗の太刀だった
<イカンッ!吾の太刀ならば、吾の装甲を貫通せしめるぞッ!>
正宗が警告の声を上げる
だが、腕はまだ縫い付けられている――
私はこの窮地を脱するために、ある方法を思いついた
「正宗ッ!左手の装甲だけ解けるッ!?」
<何ッ!可能だがそんなことをして…>
「早くッ!」
もう時間がない――― - 193 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 00:01:16.10 ID:u6rikw.0
- <承知ッ――!>
正宗が応じ、左腕の装甲だけが解ける
そこには杭でコンテナに縫い付けられた私の左腕がある
私は右手で腰から脇差を引き抜き、当てる―――
「こいつでゲームセットだッ、あばよ英雄―――!」
一方通行が正宗の太刀を投げる態勢をとった
もう猶予はないッ!
「ふッ―――!」
私は覚悟を決め、脇差で左腕を切断した――― - 195 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 00:12:41.95 ID:u6rikw.0
- 切断された腕から鮮血が迸る――
「なァ!!?」
私の行動に一方通行が驚愕の声を上げる
「正宗えぇぇぇ!!」
束縛から解放された私は、一方通行へ向かって疾走する!
<応ッ!!>
<善因には善果あるべし!悪因には悪果あるべし!>
<害なすものは害ざれるべし!災いなすものは呪われるべし!>
正宗が再び陰義を発動させる――
「チィッ―――!」
正気を取り戻した一方通行が私に狙いを定めて太刀を投げつける
「ハッ!!」
飛来する太刀を脇差で弾く、しかし、あまりの勢いに太刀と共に脇差も後方へと
飛び去る
構わないッ!
これで――、勝負を決める!
<因果応報!天罰覿面!!>
「はああああああああああ!!!」
陰義返しが発動する、一方通行に迫る
そして―――、私の拳が一方通行の体に触れる―――― - 196 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 00:23:03.66 ID:u6rikw.0
- 一方通行の体が吹き飛んで行く――
その刹那
「遅すぎンだよ――、英雄――――」
そんな声が聞こえた気がした
一方通行は今度こそ動かなくなった
戦いに決着は付いた―――
「あ…、れ……?」
視界がぼやけていく、どうやら私もすでに限界のようだ…
装甲が解け、私の体は崩れ落ちるようにその場に倒れる
激しい痛みと疲労のなか、私の意識が朦朧としていく
それでも、今回はそれが心地よかった…… - 197 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 00:32:48.53 ID:u6rikw.0
- あの後、私は御坂さん達の手で病院まで運ばれた
数日後、病室で目を覚ました私を待っていたのは、カエル顔の医者の苦笑いを浮かべた
顔だった
「おめでとう、君は紛れもなく当病院の出戻りの最短記録保持者だよ」
呆れ顔でカエル顔の医者はそう言った
「なにせ、入院期間中に抜け出して、さらなる大怪我をして返ってくるんだからね…
君に記念楯を贈呈したい気分だよ…」
「すみません…」
この人には最近迷惑を掛けっ放しだ…
「いや、半分は冗談だよ。でもね君のお友達にあまり心配を掛けてはいけないよ?」
「はい…」
「それじゃあ、お友達が待っているみたいだし、これで失礼するよ」
カエル顔の医者が出て行くと、入れ替わりに皆が入って来た
御坂さん、白井さん、ゴーグルを着けた妹達も1人部屋の中に入ってくる…
「みんな…」 - 198 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 00:43:03.87 ID:u6rikw.0
- 「佐天さん…」
最初に口を開いたのは御坂さんだった
「私の代わりに妹達を救ってくれて、ありがとう。佐天さんにはどれだけ感謝しても
足りないわ」
「気にする事ないですよ、だって…、私達、友達じゃないですか…」
私は笑顔でそう返す、それに御坂さんも微笑み返してくれた
「わたくしからも、お礼を申し上げますわ、お姉様達を助けてくれて本当に
ありがとうございます」
白井さんがお辞儀する、私はそれにも笑顔で返す
「今度はミサカの番ですね…、ミサカは番号10032号です、とミサカはあらかじめ
言っておきます」
彼女はそう断りを入れた
「あなたのおかげで実験は中止され、ミサカ達は世界中の施設で面倒を見てもらえる
事になりました、とミサカは報告します」
「そうなんだ、よかった…」
私は安堵の息を漏らす
「これからは自分自身で、自分の生きる道を決めたいと思います、
とミサカは宣言します」
「うん、頑張ってね」
そして、部屋の中に初春の姿がない事に気がつく…
「初春は…?」 - 199 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 00:54:27.26 ID:u6rikw.0
- 「あれ?さっきまで一緒に…」
白井さんが辺りを見回す
「あっ!初春!そんな所にいないで、さっさと中に入りなさい!」
白井さんが初春を部屋の中に引っ張ってくる
「初春…」
私は初春になんて言葉を掛けていいかわからなかった
「佐天さん…」
初春は目を伏せている
「初春、ごめんね…」
私は初春に謝罪する
初春の手を振りほどき、戦いに赴き、とても心配させてしまっただろうから…
「佐天さんが謝る事なんてありません!」
初春が顔を上げる
「謝るのは、私の方です。佐天さんが必死で悩んだり、傷ついたりしてるのに、
私はワガママばっかり言って…、佐天さんに嫌われちゃったんじゃないかって…」
初春が涙を流しながら答える
「そんなこと、絶対ない!初春は…、私の、とっても大切な親友なんだからっ!」
私はそう答える
「佐天さ~ん!」
初春が私の胸に飛び込んで泣き出す
まだ左腕がないが、それでも離すまいと抱きしめる
だって、この人達を、この温もりを守るために戦ったのだから――― - 200 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 01:04:20.05 ID:u6rikw.0
- 数日後、私は病院を退院した
今日は私の退院祝いと言うことで、初春達と待ち合わせをしている
待ち合わせ場所に近づく、どうやらみんな揃っているみたいだ…
「佐天さん」
不意に後ろから声が掛かった
「木原さん…」
そこには木原さんが居た
「どうも、お久しぶりです。あの後どうやら大変なことになっていたみたいですね…」
木原さんがそう言った
「さて、早速ですが、あなたにいい知らせを持ってきました。学園都市はあなたを、
なんとレベル5に認定するということです!」
木原さんがやけに大袈裟な素振りでそう告げる
「これは前代未聞の出来事ですよ!0から5へ一気に駆け上がるなんて、あなたの
名前は学園の歴史に残る事間違いなしです!
それで、研究の再開はいつになさいますか?我々はあなたの都合に合わせますので、
いつでも好きな日時を…」
「お断りします…」
私はそう言い放つ
「えっ?」
木原さんがキョトンとする
「断るとは、何をですか?」
「レベル5になるって件です、私は無能力者ですから、そんな話お受けできません」 - 202 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 01:15:05.21 ID:u6rikw.0
- 「な、何を言っているんですかっ!?」
木原さんが大声を上げる
「レベル5ですよ!?学園都市のトップ、羨望の的ですよ!?それになれるんですよ?
あなたは能力者になりたがっていた筈だ!レベルアッパーなんてものに手を出すくらいに!」
「それでもいいんです、私は無能力者でもイイって思えるようになったんです…」
「あなたは第一位を退けるほどの力がある!それを無能力者でいだなんて…」
「なんで、木原さんがそのことを知っているんですか?」
私は木原さんを問い詰める
「そ、それは…」
木原さんが言葉に詰まる
「答えられないでしょう?そんな人を信用なんて出来ません。
それじゃあ私は失礼します…」
「待って下さい!」
なおも木原さんは食い下がる
「この学園都市で、レベルは絶対です!無能力者のなら他の人に見下され、
出来損ないのレッテルを張られますよ!?しかし、レベル5になれば、地位も、名誉も、
それに多額の金を手に入れられます!それが欲しくないんですか!?」
「学園都市にとっては、レベルは絶対…。そうですね、それは否定できません。
レベルを上げようと必死で努力して、レベルが上がれば泣いて喜んで…」
「それじゃあ…!」 - 204 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 01:24:32.17 ID:u6rikw.0
- 「でも、佐天涙子にとっては違う、レベルよりも大切なものがある…」
そう言って、遠くで手を振る初春達に目を遣る
「なっ!?」
「だから、私はレベルなんていらない…」
私は歩きだす、木原さんは拳を握りしめ俯いている
「正宗」
<なんだ?御堂>
私は正宗に声を掛ける
「今日の私の退院祝い、正宗にも一緒に祝って欲しいな…」
<しかし、吾が行けば、他の者が怖がるであろう?>
正宗がそう言う
「そんなことないよっ!正宗は、私のパートナーなんだからっ!」
<むっ、そこまで言われては致し方あるまい…>
正宗が私の隣に降り立つ
「それじゃあ、行こうっ!正宗っ!」
私は隣を歩く劒冑に声を掛ける
<ああ、行くとしようか。吾の御堂よ…>
正義を胸に、私達は歩きだす―――
これは英雄の物語ではない―――
それでも少女は正義を胸に歩き続ける――――――
- 206 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/05(月) 01:26:30.21 ID:u6rikw.0
- 投下はここで終了です。
これで物語は一応、区切りがつきました。
読んで下さった方、本当にありがとうございます。
- 228 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 20:04:42.20 ID:Q.ehBmA0
- 学園都市は最先端の科学技術が集結している場所である
そんな科学の最先端をいく学園都市にも都市伝説というオカルトが存在する
虚数学区、幻想御手(レベルアッパー)など、その種類は多岐に及ぶ
風紀委員第一七七支部、そのパソコンで初春飾利が学園都市の都市伝説を
まとめたサイトを見ていた
「初春、またそんなくだらないものを見て…」
後ろから同僚の白井黒子が声をかけてくる
「夏、といえばやっぱり都市伝説とかの怖い話が必要だと思いません?」
そう言って初春が振り向く
「はぁ、この学園都市で都市伝説などとは…、くだらないですわね…」
黒子は手をひらひらと振る仕草をすると、仕事に戻ろうとする - 229 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 20:15:05.54 ID:Q.ehBmA0
- 「でも、レベルアッパーの噂も本当でしたし…、都市伝説も案外馬鹿にはできませんよ?」
「それは…、まあそうですけれど…」
それを聞いて思い直したのか、黒子はパソコンの画面を覗きこむ
「学園都市の都市伝説だけあって、幽霊や心霊現象関係の話は少ないですわね…」
都市伝説の一覧を見た黒子がそう呟く
「そうですねー…、これはどうですか?『宙に浮く少女』、心霊っぽくないですか?」
初春がそのタイトルをクリックする
「なになに?とある廃墟の地下には隠し部屋があり、そこは人体実験が行われた
場所で、実験体にされ、死んだ少女の霊がそこに居てそれを見た者は呪い殺されて
しまう…」
そこに書いてある文章を黒子が読み上げる
「よくある怪談物ですわね、まあ原因が実験というのがいかにも学園都市
らしいですが…」
黒子が呆れるように言った - 230 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 20:28:49.77 ID:Q.ehBmA0
- 「わたくしは仕事に戻りますわ、初春も遊んでないで、早く仕事に戻りなさいな」
「別に遊んでた訳じゃないですよー、最近ある都市伝説みたいなものが話題になって
いるんでそれを調べようと…」
「都市伝説みたいなもの?」
都市伝説ではなく、都市伝説みたいなもの?
その奇妙な言い回しに、黒子はそう聞き返す
「はい、都市伝説みたいな話なんですけど、かなりの数の目撃証言があって
都市伝説と呼んでいいのかわからないため、そう言われています」 - 231 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 20:40:52.22 ID:Q.ehBmA0
- 「それはもう都市“伝説”ではありませんわね」
そんなに目撃される都市伝説なんて聞いた事がない
「それはいったいどんな話なんですの?」
黒子が初春にそう尋ねる
「多分、白井さんも心当たりがある話だと思います…」
そう言うと、初春はその噂になっているという都市伝説のタイトルをクリックした
「え~と、なになに…って、ええっ!?」
パソコンに表示されたものを見て、黒子はおもわず大声を上げてしまった
そこに書いてあった内容はこうだ…
【学園都市都市伝説 №?
第七学区で悪い事をすると、どこからともなく蒼い鎧武者が現れる】
といった内容だった - 233 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 20:52:25.22 ID:Q.ehBmA0
- (まさかネットで噂になっているなんて…)
黒子はさすがにこれはマズイのではないかと、考え込む
「この話の鎧武者って、佐天さんのことじゃないでしょうか?」
初春がそう尋ねて来る
「おそらくそうでしょうね…」
あの事件の後も、彼女が人助けをするような行動をとっていたのは知っていたが
ここまで大事になるとは思っていなかった…
「どうします?白井さん…?」
「わたくしが佐天さんに直接会って話をしてきますわ…」
そう言って、黒子は小さな溜め息をついた - 234 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 21:03:26.02 ID:Q.ehBmA0
- ・
・
・
人気のない河原に何かを振る風切り音が響く
「ふぅ……」
私は一息ついて、振っていた素振り用の木刀を下ろす
「あ~、疲れた…」
そう言うと、私、佐天涙子はその場に座り込んだ
<よし、大分様にはなってきたようだな>
隣で見ていた正宗がそう感想を漏らす
あの第一位との戦いの後、学校は夏休みに突入していた…
女子中学生の夏休み、世の同じような年代の子達がプールだショッピングだと
夏休みを満喫している中、私はこうして毎日のように鍛錬に励んでいる - 235 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 21:16:50.12 ID:Q.ehBmA0
- あの戦いの後、自分の力の足りなさを痛感した私は、正宗に指導される形で
こうして鍛錬を始めた
あの時第一位に勝てたのは、奇跡のようなものだ
今は何事もないが、学園都市の暗部を知った私がこのまま放置されるとは思えない
新たな戦いに備え、私は少しでも強くなろうと必死だった
それでも
「私も遊びたいなぁ…」
私も遊び盛りの女の子だ、遊びに行きたいという思いも存在する
<御堂、気持ちはわかるが今の御堂は戦いについてはまったくの素人、
そう何度も前回のようにうまくいくとは限らぬ。
今は吾の指導に従い、戦いの術を会得するのが最優先だ>
正宗がそう私を諭す
「うん、そうだね…、よしっ!休憩終わり!」
私は立ち上がり、鍛錬を再開する - 236 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 21:26:54.36 ID:Q.ehBmA0
- 「ただいまー」
鍛錬を終えた私は、部屋に戻ってきた
私に続いて、正宗も部屋の中に入ろうとする
「あぁ!正宗っ!部屋に上がるのはちゃんと足拭いてからって、いつも言ってるじゃん!」
泥の付いた足で部屋に入ろうとする正宗を制止する
<むッ?おお、すまぬ、失念しておった…>
「もぉ…、いまタオル取ってくるからそこで待ってるんだよ?」
<了解した>
あの一件以来、研究所に戻る訳にもいかず、行くあてのない正宗は、私の部屋で
暮らしている
元は人間だったらしいが、外見は虫型ロボットなのであまり気にはならない
しかし、正宗は多少ズレているところがあるので結構苦労が多い - 237 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 21:38:29.90 ID:Q.ehBmA0
- たとえば、私が宿題をしようとした時だ…
「あ~、そう言えば夏休みの宿題、まだ終わってないや…」
<それはイカンな、御堂は学生の身、鍛錬だけではなく、勉学にも励まなくてはな>
「じゃあ、私宿題するから。正宗、少し静かにしててね?」
<了解した。ところで御堂、この時間には時代劇がやっておる。
このテレビを見て待っていてもよいか?>
「(まぁ、テレビくらいはいいかな)いいけど、くれぐれも静かにね?」
<ハハッ!案ずるな、御堂の邪魔になるようなことはせん> - 238 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 21:51:31.04 ID:Q.ehBmA0
- 「(よし、ちゃんと静かにしてるみたいね)……」もくもく
<ふむ、この世界の娯楽はよくできておるな…>
「……」かきかき
<ぬぅ!悪の代官許すまじッ!!>
「……」イラッ
<そこだッ!やれッ!斬ってしまえッ!!>
「……」ぷるぷる
<DAARAHHH!!!>
「うるさぁぁーーーーーい!!」
<うおッ!?>
「正宗、ちょっとそこに座り…、そのままでいいや」
<?>
「私さぁ、静かにしててって言ったよね?」
<う、うむ…>
「なんで、約束が守れないの?」
<す、すまぬ御堂。最近気付いたのだが…、吾はどうも熱くなると我を忘れてしまう
性分のようだ…>
「(なんで周りの人は指摘してあげないかなぁ)まあ、これ以上言ってもしょうが
ないし…、続き見てていいから、口は閉じててね?」
<承知した>
(静かになったけど…、今度は視界の端にすごい勢いで動く触覚が見えて
集中できない……) - 240 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 22:06:17.93 ID:Q.ehBmA0
- うるさいくらいはまだ我慢できるが
一番の悩みは正宗がものを壊してしまうことだ……
「それじゃあ、私お風呂に入るから絶っっっ対に!覗かない事!」
<案ずるな、御堂のような童の風呂など覗かぬわい。ハッハッハッ!>
「……ベランダに出てなさい!」
~ベランダ~
<むぅ、覗かぬと言ったのに、なぜ御堂は怒っていたのだろうか…?>
<! あの机の上にあるのは御堂が持ち歩いている音の出る機械!
壊すからと吾に触らせてくれなんだが…、今ならば!>
カラカラ
<鍵は掛かっておらぬ!今しかあるまい…、なに、気付かれぬように戻せば問題ある
まいて…>
<ふむ、このように小さな機械があれだけ多彩な音楽を奏でるとは…、これもあの携帯
という機械のように開閉するのであろうか?試してみるか…>
バキッ! - 241 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 22:20:36.58 ID:Q.ehBmA0
- <うおお!?>
~風呂~
「ん?なんの音だろう?正宗はベランダだし…、まあいいや、出てから確かめよ」
~室内~
<な、なんたることかッ!?少し力を入れただけで真っ二つになるとは…
早くなんとかせねばッ!御堂が風呂から出てきてしまうッ!>
<とりあえず、甲鉄改組で1つにつなぎ合わせねば…>
ガチャッ
<ぬう、時間切れか、仕方あるまい。ベランダに戻らねばッ!>
ガラッ
「ちゃんと大人しくしてた?ほら、もう中に入っていいよ」
<うむ…>
「音楽でも聞こうかな…」
<!>
「ねぇ、正宗?」
<なんだ御堂?>
「私の音楽プレーヤーが動かないんだけど、なんでか知らない?」
<も、もしかすると…、吾を装甲した時の衝撃で壊れてしまったのかもしれぬな…>
「そうかなぁ?さっきまで動いてたし…、それに…」
「私のプレーヤー、こんなメタリックブルーじゃなかったんだけどなぁ~?」
<…………>
「ねぇ?」
<すまぬッ!御堂ッ!!>
「正宗ぇーーー!!」 - 243 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 22:31:28.09 ID:Q.ehBmA0
- こうして正宗との共同生活を始めてからそれなりの日数が経っていた
しかし、未だ学園都市の暗部が行動を起こす素振りはなかった…
今日も私はいつものように河原で鍛錬に励んでいた
「佐天さん」
不意に声を掛けられ、声のした方へ顔を向ける
そこには木原さんが立っていた
「なにか用ですか?」
私はわざとそっけなく答える
「はい、能力者になる件のことです。まだ考えは変わりませんか?」
木原さんがそう尋ねてくる
私が病院を退院した日以来、木原さんは何度か私の前に現れて、同じ質問を
繰り返していた
「なんど聞かれても答えは変わりません。私は…、あなた達が信用できませんから、
だからその申し出は断らせてもらいます」 - 244 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 22:40:58.23 ID:Q.ehBmA0
- 私はきっぱりとそう断る
これも何度も繰り返したやり取りだ
「しかし…!」
いつもなら私が断ると大人しく引き下がるだが、今日の木原さんは引き下がらなかった
「佐天さん!あなたが実験を中止にさせた事で、暗部にはあなたを敵視する
人間が居ます!彼らがいつあなたに危害を加えに来るか分りません!
ですが、能力者になり、研究所の保護下に入ればその危険性はグッと減るんですよ!?」
木原さんが私を説得しようとする
「でも、能力者になったら…、私もあんな研究に参加しなければいけないんでしょう?」
「それは……」
木原さんは黙ってしまう…
確かに能力者になりたくない訳ではない、でもその代わりにあんな実験に参加する
なんて御免だった… - 246 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 22:51:45.98 ID:Q.ehBmA0
- 「…また日を改めることにします。しかし、この話を受ける事があなたにとって
最善の道です。よく考えてみて下さい…、では失礼します」
そう言い残すと、木原さんが踵を返す
「……」
私は何も言わず、黙って彼の背中を見送った…
<ふん!あやつもしつこい男だ。御堂、今度来たら吾が追い返した方が
よいのではなかろうか?>
「ううん…、私が話すよ」
<ぬぅ、御堂がそのように甘やかすから、奴も付け上がるのだ…> - 247 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 23:05:12.12 ID:Q.ehBmA0
- 私は木原さんに強く言うことが出来なかった…
初めて会った時は、得体のしれない人だと思った
それでも私を正宗と引き合わせてくれ、その後も色々と世話になった
しかし、あの能力者にならないかという話を聞かされた日、彼に抱いていた評価は
一変した
彼も学園都市の暗部で非道な実験をしている人間なのではないかと、
そう思った…
それ以降も木原さんは私に考えは変わらないか?と聞いてきた
私はその理由が、彼が研究対象である私を引きとめるためだと思っていた…
それでも、何度も話しているうちに、彼の言葉の端々に私の身を案ずるようなもの
を感じ取っていた
もしかしたら木原さんは、本当に私の安全の為に言ってくれているのではないか?
そう思うようになっていた…
今日の事で、それは確信のようなものに変わっていた…
だって木原さんの目は、私が学園都市に行く日に、父が私に向けた目と同じ
だったから…… - 248 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/12(月) 23:13:32.50 ID:Q.ehBmA0
- それでも…、私は木原さんの話を受けることはできない…
能力者になる条件は研究に参加する事…
私が参加する実験が、この前の実験のようなものではないと言い切れない
あんな実験に加担する事なんて、私には到底許せる事ではないから…
私は木原さんの誘いを断り続ける
「さて、正宗。再開しよっか?」
私は気を取り直し、正宗にそう声を掛ける
<御堂また客人のようだぞ>
「えっ?」
正宗の見ている方向を見ると、白井さんがこちらに歩いて来るのが見えた
- 256 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 20:04:12.99 ID:ahGTGPA0
- 「こんにちは、佐天さん。お元気そうでなによりですわ…」
こちらに歩み寄って来た白井さんがそう言った
「ええ、まぁ…」
心なしか白井さんが怒っているように見えたので、私は言葉を詰まらせる
「今日はお話があってきましたの」
ああ、やっぱり…
さすがに最近は派手に動いていたので、きっとその事だろう
「佐天さん、正宗さん、お二人の事がネット上で噂になっていますの、
わたくしも佐天さんが戦うことについてはあまり強くは言いませんが…
目立ちすぎるようなことは少し謹んで欲しいんですの……」 - 257 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 20:17:36.22 ID:ahGTGPA0
- ネットで噂に…
さすがにそこまで話が大きくなっているとは思わなかった…
「それでも…」
「それでも…、私は目の前で誰かが傷つくのを放っては置けない…」
私は白井さんにそう答える
「なんでですの?前も言いましたが、佐天さんはジャッジメントでもアンチスキルでも
ありませんわ。そのあなたが危険を冒す必要なんてありませんわ…」
前と同じ問いを、私が正宗を初めて装甲した日と同じ問いを白井さんが
私に投げかける…
「白井さんの言うとおり、私がやらなくてもいいかもしれない…。
でも、そうすることで、傷つかなくていい人が傷ついたり、ジャッジメントや
アンチスキルの人が傷つくのを防げるかもしれないから…」
私は白井さんを見つめる
「私が誰かを傷つけて恨まれても、誰かの代わりに傷ついてもいい……」
「それでも私は戦う、それが私の正義だから」
あの時とは違う、借り物ではない
私自身の想いを白井さんにぶつける - 258 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 20:32:31.10 ID:ahGTGPA0
- 「それは…、なぜですの?己を犠牲にしてでも人を救う自分に酔っているのですか?
それとも、自分の力を誇示し、英雄のように持て囃されたいからですか?」
白井さんが私に辛辣な言葉を投げかける
「私は英雄になりたい訳じゃない、英雄になんかなれない……
これはただの私のわがままだから。
たとえ私になんの権限がなくても、なんの道理がなくても、
白井さんがなんて言っても、私は戦うことをやめるつもりはありません…」 - 259 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 20:42:00.69 ID:ahGTGPA0
- 私の言葉を聞いて、今まで難しい顔をしていた白井さんが
ふぅ、と溜め息をついた
「やれやれですわ、ちょっと前の佐天さんと比べて、随分と意志が強くなられた
ようですわね。
まるでお姉様みたいですわ……」
そう言って白井さんが困ったような微笑みを浮かべる
「そこまでの意志がおありなら、もはやわたくしに言うべきことはありませんわ、
ネットの件はわたくしと初春でなんとかします、それに微々たるものかもしれませんが
わたくしと初春で、出来うる限りのフォローは致しますわ」
ただし、あまり期待しないでくださいね?と言って白井さんは笑った
「すみま…、いえ、ありがとうございます」
私は白井さんの言葉にお礼を言った - 260 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 20:52:36.59 ID:ahGTGPA0
- <やれやれ、御堂も白井殿も気の強い女子であるな…>
傍で聞いていた正宗がそう感想を漏らした
「正宗さんにだけは言われたくありませんわね…」
それを聞いて白井さんが渋い顔をする
<御堂…、こうして白井殿と会えたのも何かの縁。
ここ数日鍛錬に掛かりきりであったからな、少し息抜きに白井殿達と
遊びに行ってはどうだ?>
「えっ?」
思わぬ正宗の言葉に私は驚いた
「それはいい考えですわね。いつも気を張っていたのでは倒れてしまいますわ」
「いいの?正宗?」
私は正宗に確認をとる
<少しくらいならば、構わぬであろう。それに白井殿の言うとおり、
敵が来る前に倒れては元も子もない> - 261 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 21:03:19.81 ID:ahGTGPA0
- 白井さんはまだ少しジャッジメントの仕事があるという事で、後で初春と
一緒に合流する事になった
それまでの間、暇になった私は同じく暇を持て余しているという御坂さんと合流
する事にした
「お~い!御坂さ~ん!」
待ち合わせ場所に御坂さんの姿を見つけた
「おっ、佐天さん。久しぶりじゃない、体は大丈夫?」
「ええ、もうすこぶる元気ですよ!」
久しぶりに遊びに行くという事で私のテンションは上がっていた
「すみませんね御坂さん、突然呼び出しちゃって」
「別にいいのよ、私も暇だからコンビニに立ち読みでもしに行こうかって
思ってたぐらいだし」
常盤台の人でも立ち読みとかするんだ、と私は驚いた
「とりあえず、黒子達が来るまでそこら辺で時間潰しましょうか?」
「そうですね」
そう言って私達は歩きだした - 262 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 21:13:02.63 ID:ahGTGPA0
- 「どこ行きます?ゲームセンターにでも…」
<御堂>
歩きだし、どこへ行くか御坂さんに尋ねようとしたところで、隠れながらついて
来ている正宗が声をかけてきた
「正宗?どうした…の……」
言葉を言い切る前に正宗が何を言おうとしたのか理解した
前方に見覚えのある姿を見つけた…
男にしては華奢な体、赤い瞳、白い髪…
学園都市の第一位、一方通行がこちらに歩いて来ている
「佐天さん?どうかしたの?」
急に立ち止まった私を心配して、御坂さんが私の顔を覗き込む
「前に何かあるの?」
御坂さんが私の視線の先に視線を移す
「!? あいつはッ!!」
御坂さんも一方通行の存在に気付いた
おそらく、一方通行も私達の存在に気付いているのだろう…
一方通行はこちらを睨みつけたまま、歩を進めて来る
そして、私達の前で足を止めた - 263 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 21:25:15.79 ID:ahGTGPA0
- 「あんたッ!」
御坂さんが一方通行を威嚇する
「オレは…」
一方通行が御坂さんの言葉を遮るように口を開いた
「オレはテメェのやった事が正しいなんて認めねェ…、
テメェのやった事で残りの妹達が救われたとしても、オレの殺した妹達の死が
無駄になっちまった…。だから、オレはテメェを認めねェ」
一方通行はそう言い放つと私を睨みつけた…
「構わないわ、私は残りの妹達を助けるため戦った…
その結果、あなたの苦悩を、あなたが奪った妹達の命が無駄になってしまったけど…
私はそれが間違ってるなんて思わないから」
私も負けじと一方通行を睨みつける
どちらも視線を逸らさず、私達はしばし睨みあう… - 264 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 21:36:33.36 ID:ahGTGPA0
- 「チッ…」
先に動いたのは一方通行だった
彼は舌打ちをすると、私達の横を通り過ぎようとする…
「待ちなさいよッ!」
御坂さんが一方通行を怒鳴りつける
しかし、一方通行はまるで聞こえていないかのように、そのまま歩いて行った
「はぁ~~……」
一方通行が去った事を確認し、私は盛大に息を吐きだした
「緊張したーー」
一度勝った相手とはいえ、彼が依然として第一位である事には変わりはない…
正直、避けれる戦いなら避けたいというのが本音だった…
「御坂さん、大丈夫でした?」
私は御坂さんに声をかける
「…………」
御坂さんは返事をせず、手を真っ白になる程に握りしめている
「御坂さん?」
「えっ!?な、何!?」
二度目の問いかけで、御坂さんはやっとこちらを振り向いた
「大丈夫でしたか?」
「だっ…!大丈夫よ、心配しないで…」
「よかった…。それじゃあ、気を取り直して行きましょうか?」
「……うん」
私の言葉に、御坂さんは頷いた - 265 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 21:47:18.69 ID:ahGTGPA0
- ・
・
・
「クソッ!」
自分の部屋でベッドに身を投げ出した一方通行は不機嫌そうに悪態をついた
原因は一つ、つい今しがた会った、あの少女のことだった…
「なんで……」
なんで彼女は自分を責めないのだろうか?
そんな疑問が頭の中に渦巻く
自分は許されざる程の悪行をした外道だ
なんの関係がない人間でも事情を知れば自分を非難するだろう… - 266 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 21:57:55.72 ID:ahGTGPA0
- それなのに、彼女は自分を責めなかった…
彼女と親交を深めた10031号を目の前で殺したのに
彼女自身を傷つけたのに
自分の戦う理由だって、あんなものはただの自分勝手な言い分だ…
自分のやった事を正当化したいから、ただの人殺しになんてなりたくなかったから…
殺した妹達の命を盾に、自分の殺しを正当化しようとしていた…
そんな自分の理不尽な理屈を、理不尽な言葉を
彼女は言い訳もせずに受け入れた
それが理解できなかった…
それは彼女が生まれついての強い人間だからなのだろうか?
それはきっと違う、一方通行は天井を見つめながら実験の無期凍結を言い渡された
日の事を思い返す… - 267 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 22:06:17.71 ID:ahGTGPA0
- 「残念だが、この実験は無期凍結される事になった」
目の前の研究員がそう告げた
「随分とあっさりと中止にするンだなァ」
この実験、絶対能力進化実験は学園都市初のレベル6を誕生させるための実験だ
それがこうもあっさり凍結されるとは意外だった
「この実験は『最強の超能力者』をレベル6へと進化させるための実験だ
その最強が能力者ですらない人間に負けるなんて…
そんな実験をこれ以上続ける意味はないだろう?」
研究員がそう言い放つ
「能力者じゃない?」
「ああ、お前を倒した者は能力者ではない、データベース上はそうなっている」
あの女が能力者ではない?
それではアイツは何者なのだろうか?
「無能力者だよ」
オレの疑問を先読みするかの様に研究員が答えた - 268 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 22:17:25.80 ID:ahGTGPA0
- 「ハァ?」
無能力者?そんな筈はないだろう…
あの身体能力や飛行能力はあの正宗とか言う駆動鎧の力で説明がつくが
オレの反射を破ったのは紛れもなくなんらかの能力によるものだろう
「お前を倒した女、佐天涙子は紛れもなく無能力者だよ…
それもレベルアッパーなんぞに手を出すような学園都市での最下層に位置する
クズのような人間だ…」
研究員が吐き捨てるように言った
「お前を破った事で、奴を能力者に認定し、研究に参加させようとしている人間も
居るようだが…。まあ、どうでもいいことだ、どちらにせよこの実験はお前の最強
が崩れた時点で再演算が必要だった、それももう不可能、この実験は終わりだ…」
そう言って、研究員は机の上の資料をまとめ出した
「それでは、私はこれで失礼するよ。次の研究に参加せねばならないのでね」
資料をまとめると、研究員は足早に研究室を出て行った
- 270 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 22:28:13.04 ID:ahGTGPA0
- 「なんだァ?あんなに急いで…?」
「彼は、いえ、彼だけじゃない…、最近、この実験に携わっていた研究員の中で
別の研究にも協力する研究員が増えたのよ…」
それまで資料を整理し、会話に参加してこなかった芳川桔梗が口を開いた
「別の研究だと?」
この絶対能力進化はレベル6を誕生させる計画、その重要度は他の研究よりも
上の筈だ、それをないがしろにして参加する研究とは何なのだろうか?
「今までレベル6を生み出すのに必死だった奴らが、随分と唐突な話だなァ?」
「唐突、という訳ではないけどね。当初から、目に見える成果の出ないこの実験に
不信感を持つ研究員も居たのよ…」
芳川がそう答える - 271 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 22:38:37.43 ID:ahGTGPA0
- それを聞いて納得できる節もある…
確かに実験は半分を越えたというのに、当のオレ自身、自分の能力が上がったという
実感はなかったからだ
第一、この実験の意図すらよくわからない、2万人の妹達を2万通りの戦闘環境で
殺害するという内容は、能力を上げるためというよりも能力を使った戦闘訓練と言った
方が正しいだろう
それも能力差が大きすぎたせいで効果があったとは言い難い
大半の研究員は『樹形図の設計者』(ツリーダイアグラム)の出した計算と言う事で
実験を続けていたのだろう
しかし、何者かの手で樹形図の設計者が破壊され再演算が不可能になったことで不安が
増大した…
決定打は今回の敗北だろう、『最強』という前提が崩れ、再演算もできない
このまま実験を続ける価値はないと上も判断したのだろう… - 272 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 22:46:01.23 ID:ahGTGPA0
- 「それで?あいつらが御執心な研究ってのはなンなンだよ?」
確かに絶対能力進化実験に不信感を抱いていたのは理解できた
だが、それだけの理由で他の研究に移ろうだなんて思うだろうか?
どれだけ可能性に不安があっても、この実験には他とは比べ物にならない程の
重要性があった筈だ……
「『超新星計画』(プロジェクト・スーパーノヴァ)…」
芳川がそう呟いた
「超新星?」
超新星というと星の爆発の事だろうか?
名前からは研究の詳細がまったく掴めない
「そう、詳細はわからないけど…、彼等の話では多重能力者(デュアルスキル)を
生み出す実験、だそうよ…」 - 273 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 22:56:53.77 ID:ahGTGPA0
- 「多重能力者?」
一人の能力者が所有する能力は一つと決まっている、複数の能力を持つことは
脳への負担が大きすぎるためだ…
多重能力者はその常識を覆し、複数の能力を行使できる者を指す
しかし、『特力研』などの施設で多くの実験が行われたが、どれも成功せず
実現は不可能とされている
「レベル6の次は多重能力者かァ?ここの研究員は随分と夢を見るのがお好きなようで?」
嘲笑うように言い放つ
「それがそうでもないらしいのよ…」
「なンだと?」
芳川の言葉を聞き返す
「多重能力者の実験は半ば…、ううん、もう成功の一歩手前まで来ている、そう
言われているの」 - 274 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 23:06:17.69 ID:ahGTGPA0
- 「なるほどねェ…」
先が見えない絶対能力進化実験よりも、成功が期待できる研究に乗り換えた方がいい、
そんなところだろう
「彼のように絶対能力進化実験に参加しながらも、超新星計画に参加していた
人間は多いわ」
「二股かけてた、って訳かよ」
どちらにもいい顔をして、いざとなれば勝ち馬に乗る、学園都市の暗部にお似合いの
考え方だ
「必死なのよ、学園都市の歴史に名を刻む研究チームに自分の名前を載せたくて
仕方ないんでしょうね…」
「テメェはいいのかよ?」
こんな所で後始末みたいな事をしなくても、別の研究に参加した方が彼女のためだ
「私はいいのよ、それに誰かが後始末をしないと、あの子達が困るでしょう?」
そう言って芳川は笑った
- 276 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/14(水) 23:22:19.56 ID:ahGTGPA0
- 実験は無期凍結され、妹達のほとんどが学園都市外の施設へと出て行った
妹達は救われたのだ…
一方通行は回想から立ち戻る
そして再び、妹達を救った少女…、佐天涙子の事を考える
佐天涙子はつい最近まで無能力者だった…
それもレベルアッパーに手を出し、昏睡状態に陥った事さえある
それと自分の中にある彼女の姿が結びつかない
自分の前に立ちはだかった少女がレベルアッパーに手を出すような人間には思えなかった…
何が彼女を変えたのだろうか…?
それを知ったら……
(オレも変われるのか…?)
妹達のために命を掛けた佐天涙子、自分の利益にならないのに妹達のために後始末をする
芳川桔梗
彼女達の姿を見ると、胸が締め付けられる…
実験を経て、何も変わってない自分、何も変えられなかった自分
一方通行は今日も思い悩む
目標を失ってしまった自分がどうすればいいのかを…
だが、答えを掴む糸口さえ、まだ見つからないままだった……
- 283 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 19:44:44.56 ID:ZPgGmI60
- とある研究所の一室
ドアが開き、スーツの上に白衣を着た細身の男が中に入ってくる
「木原主任お疲れ様です」
細身の男、木原はその声に困ったような笑みを浮かべて応じた
「遅れて申し訳ない、少し用事があったものですから…」
「また例の奴の所ですか?」
研究員が質問を投げかける
「ええ、そうです。残念ながら今回もいい返事は頂けませんでしたがね」
自嘲気味に笑みを浮かべる
「研究には支障は出てませんから、我々は構いませんが、これ以上は控えた方が
いいのではないでしょうか?」
研究員が不安そうな顔をする - 284 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 19:53:49.00 ID:ZPgGmI60
- 「彼女の事は上層部も大分揉めてるみたいですし…、深入りしすぎると、いざ処分って
事になった時にこっちにまで面倒事が来るかもしれませんよ?」
研究員はそう進言してきた
「それは否定できませんね…、しかし、彼女をこちら側に引き込むことが出来れば、
そんな心配は必要なくなります」
私の言葉を聞き研究員は説得を諦めたようだ
「でも、これだけ言って無理ならダメなんじゃないですか?」
「これは痛いところを突かれましたね。でも、もう少し粘ってみますよ…
なにせ貴重なサンプルですからね……」
彼にそう言い、私は自分のデスクへと向かった - 285 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 20:05:51.48 ID:ZPgGmI60
- 研究所の職員や上層部には、彼女、佐天涙子の事を貴重なサンプルであるからと、
助命を頼んでいるが、私の本心は違っていた…
確かに最初は彼女をサンプル、いや、それ以下のモノとしてしか見ていなかった
正宗を装甲できる者は無能力者しかいないが、学園都市には無能力者なんて掃いて捨てる
程存在する
彼女が選ばれたのは、正宗の秘密を知る人間が少ない方がいいという理由、
そして、正宗が現れた所に都合よくいた無能力者であるという理由だけだった
彼女が正宗を装甲してからも私の彼女への評価は変化しなかった
偶然能力を手にして浮かれている無能力者…
どこにでもいる普通の中学生、その程度の認識だった - 286 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 20:18:38.12 ID:ZPgGmI60
- 彼女への認識が変化したのは、彼女を処分する計画が立案されてからだ
その内容は、戦いから逃げ出した彼女を処分、もしくは研究への復帰を促すための計画だった
私はそれを聞いても何も感じなかった。私自身は血生臭い事は嫌いだったが
暗部に居れば嫌でも慣れてしまう…
成功しようが失敗しようが、死ぬのはクローンと無能力者だけ
私の研究にはなんの支障もない、どうでもいい計画だった
私はただ、研究の早期再開を望んでいた…
計画が実行され、彼女が生き延びたのを聞き、彼女の選択次第ではすぐにでも
研究を再開できると思い、私は安堵した
しかし、彼女の選択は我々の想定を遥かに外れたものだった - 287 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 20:31:17.54 ID:ZPgGmI60
- 彼女は無謀にも第一位一方通行に戦いを挑んだ
つい先日まで無能力者、平凡な中学生であった彼女が最強を誇る超能力者に立ち向かい
それを打ち破ったのだ
その知らせを聞いた時、私は驚愕した。正宗の力はそれ程なのかと、ただの無能力者に
最強を退けさせることが出来る力なのかと……
私は上層部にかけ合い、彼女を研究に引き戻そうとした
彼女は第一位を退ける力を有している、もはや逃げ出すことはないだろう
だが、入院している彼女に面会に行き愕然とした… - 288 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 20:46:12.38 ID:ZPgGmI60
- 「面会できない?」
病院に到着し、彼女に面会をしようとした私は受付でそう言われた
確かについ先日入院したばかりだし、私は彼女の身内ではない
断られるのも無理はない話だった
「私は佐天さんの参加している研究の関係者です。ここにIDだってあります
研究の今後の事でお話がしたいのです。少しの時間でいいので話をする事はできませんか?」
なおも食い下がる私の前にカエル顔の医者が現れた
「君もしつこい男だねぇ…、面会はできない、そう言っているのがわからんのかね?」
カエル顔の医者が私を睨みつける
「申し訳ありませんが、これも上層部からの命令でして。研究の今後について、早急に
お話したいのです」
カエル顔の医者は溜め息をついた
「ここに居座られては他の患者の迷惑になる…、しかたない私が立ち合う、それと短時間
でいい、この条件を飲むのなら面会を許可しよう…」
「ありがとうございます」
私はこの時、この医者が、話はできないと思うがね、と言ったのを聞き逃していた
「くれぐれも、静かに頼むよ?」
そう言ってその医者は病室のドアを開けた
ドアの向こうに居たのは、呼吸器を付け、包帯で巻かれ、そして……
腕を無くした少女の姿だった… - 289 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 20:57:17.95 ID:ZPgGmI60
- その痛々しい姿を見て、言葉を失った
私は思い違いをしていたのだ…
彼女は一度の怪我で戦いから身を退いた、それは当然のことだ、彼女は漫画の登場人物ではない
些細な怪我に涙を流すような平凡な中学生だ
だから今回、彼女が戦いに赴いたのは正宗の力が一方通行の力を遥かに上回っていた
からだと思っていた
その力を行使し、危なげなく勝利を収める事ができたのだと思っていた
入院したのも、相手は第一位、無傷と言う訳にはいかず、些細な怪我をした
その程度だと考えていた
だが、目の前の姿が戦いの激しさを物語っている…
なぜ彼女はここまで戦えたのだろう?
ただの無能力者である身にも関わらず…… - 290 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 21:10:09.33 ID:ZPgGmI60
- 彼女の想いはわからない、ただ、私は彼女を応援したいと思った…
無能力者であるにも関わらず、ここまで頑張る彼女を、本物の能力者にしてあげたい、
そう思った
私は病院を後にすると、上層部に彼女を能力者として認定してくれるよう、申し出た
それから数日後、学園都市の研究に参加するという条件付きで、その申請は認められた
彼女が退院する日、私は彼女にそれを報告するために彼女に会いに行った…
(佐天さんは喜んでくれるでしょうね…)
私はそう確信していた、学園都市ではレベルは絶対だ。レベルが高いものは王侯貴族の
ように威張り、レベルの低いもの、無能力者は見下され、能力の脅威に怯えて過ごす
私が学園都市の生徒だった頃と変わらない、学園都市の仕組みだ…
だから無能力者は能力者になりたがる、かつての私がそうだったように…… - 291 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 21:24:33.81 ID:ZPgGmI60
- だが彼女はそれを断った、能力者に、それも最高位のレベル5になれるというのにそれを
断ったのだ…
学園都市ではレベルは絶対だ、彼女もそれを理解している
それでも彼女は無能力者でいい、そう言ったのだ
理解できなかった…、しかし、その理由は再度、話を持ちかけた時に彼女の口から語られた
彼女は人を犠牲にする研究が許せないと言った、能力者になれば自分のために他の誰かを
傷つけてしまうことになるかもしれない。
それが許せないのだと語った
彼女はそれ以降も戦っていた、自分の素姓を顔を鎧の下に隠し
自分以外のために、剣を振り努力を続けていた - 292 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 21:38:32.84 ID:ZPgGmI60
- 私は彼女の努力が意味を為さないものだと知っている
彼女は正規の方法で能力者になる道を失ってしまった、だから私の話を受ける
以外に能力者になる術は無い
彼女の行いは、彼女になんの利益も与えない、彼女がどんな英雄的行為を行おうとも
それを彼女の功績と知る者はなく、ただの無能力者として生きて行く…
それが許せなかった、過去の自分を思い出す、どれだけ努力しても能力者になれず
才能の壁に絶望し、道半ばで諦めた自分の姿を
自分はダメだったけれど、彼女の努力は報われてほしい、心の底からそう思った…
回想から立ち戻る
だから彼女を死なせたくない、暗部の人間の餌食になんてなって言い訳がない
ガラス一枚隔てて保管されているモノを見る、これが彼女の助けになればいい
そう思った――― - 293 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 21:46:59.81 ID:ZPgGmI60
- ・
・
・
私、御坂美琴はまだ昼前だというのにベッドの上に寝転んでいた
昨日は久しぶりに佐天さんを含めた四人で遊んで、気分は最高、と行く筈なのだが…
とある悩み事のせいで気分は暗かった
その悩みの原因は私の胸中にあるよくわからない痛み、のようなものの事だ
それを初めて感じたのは、夏休みに突入したばかりの頃
私と妹達が佐天さんに救われた後のことだった… - 294 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 21:53:31.98 ID:ZPgGmI60
- その日、街をぶらついていると目の前にスキルアウトの集団に絡まれている女の子を
見つけた
周りの人達はスキルアウト達に恐れをなして、視線を合わせないように下を向いて
通り過ぎて行く
(まっ、しょうがないか…)
あの数が相手では、助けに入ったところで返り討ちに遭うのが目に見えている
赤の他人のためにそこまでする人間は少ないだろう…
(私が行くしかないか…)
「ちょっとっ!その子、嫌がってるでしょう!?」
私はスキルアウト達に声をかける
「なんだぁ?手前は!?」
スキルアウト達がこちらを振り向く
ここから先は問題ではない、レベル5の私にとって、スキルアウトを片付けることは
赤子の手を捻るよりも容易い作業だった - 295 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:00:38.41 ID:ZPgGmI60
- 「大丈夫だった?」
スキルアウトを撃退した私は絡まれていた女の子に声をかける
「は、はいっ!ありがとうございました!」
女の子はお礼を言い、お辞儀を一つして去って行った
「さてと…」
私もその場を去ろうとする
「お姉様」
不意に後ろから声をかけられた
「ゲッ、黒子!」
振り向くと、ジャッジメントの腕章を付けた黒子が立っていた
「ゲッ、ではありませんわ。通報を受けて来てみれば、お姉様はまたこんな事を…」
黒子がこれ見よがしに溜め息をついた
「た、たまたま通りがかっただけよ。それに、放っておいたらあの子怪我させられ
たりしてたかもしれなかったしさ…」 - 296 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:10:46.63 ID:ZPgGmI60
- また小言を言われるのかと思い、あわてて言い訳をする
「ハァ、お姉様はもう少し常盤台のエースとしての自覚を持ってほしいものですわ、
万が一お怪我でもなされたら、どうなさるおつもりですか?」
「スキルアウトなんか相手に怪我なんてしないわよ」
私はそう反論する
「だいたい、私よりも佐天さんの方が危ない事してるじゃない。なのにあんたは佐天さん
にはこんな事言わないわよね?私よりも佐天さんを注意しなさいよ!」
毎度毎度の黒子の小言にイライラした私はそんな事を口走ってしまった
「佐天さんの意志はとても固いものですわ。わたくしが何か言ってもお止する事は
できないでしょう…。でもお姉様は違いますわ、お姉様はご自分が強いからという
理由だけで戦っているように見受けられますわ…」
その言葉に頭にカッと血がのぼる
「何よそれ!?私が佐天さんより…!」
劣ってるって言うの?
そう言おうとしていた事に気付き、あわてて口を押さえる - 298 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:16:41.01 ID:ZPgGmI60
- 「お姉様?」
突然黙った私を黒子が怪訝そうに見てくる
「ごめん、私もう帰るわ…」
黒子に背を向けて歩きだす
「お姉様!?まだ話は終わってませんわよ!?」
その声を無視する、さっきのはカッとなったせいで言いそうになっただけ…
佐天さんは友達なんだから、私が佐天さんにそんなこと思う筈ないよね?
自分にそう言い聞かせる、だが、それ以降も佐天さんの話を聞くたびに
胸の奥に同じような痛みを感じた…… - 299 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:25:20.10 ID:ZPgGmI60
- 認めたくない、そんなことある筈がないって思っていた…
でも、昨日気付いてしまった
この感情は嫉妬だ、御坂美琴は佐天涙子に嫉妬している―――
なぜこんな感情を抱いたのだろうか?
佐天さんが一方通行を倒したから?
多分、それだけならこんな感情を抱かなかった…
もっとも大きな原因、それは彼女が無能力者であるということだろう
私は気付かないうちに佐天さんを見下していた、彼女はなんの力もない無能力者だから
私が守ってあげなくちゃって……
今まで守ってあげていた存在、自分よりも下だった筈の佐天さんが自分より
上に行ってしまったことに嫉妬している
何よりも、黒子が私よりも佐天さんを信頼しているかのように言ったことが
許せなかった… - 300 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:33:11.71 ID:ZPgGmI60
- 「私って、こんな嫌な奴だったかなぁ……?」
私達のために戦ってくれた、私の事を友達だって言ってくれた佐天さんにこんなことを
思うなんて、最低だ…
「これからどんな顔して佐天さんに会えばいいのよ…」
謝ればいいのだろうか?しかし、これを知っているのは私だけだ、突然謝ったら
変に思われるだろうし
でも、このまま何事もなかったかの様に佐天さんと接していくことは無理そうだった
「うじうじしててもしかたない!気分転換でもして来よう」
私はそう言うと、ベッドから身を起こした - 301 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:43:22.49 ID:ZPgGmI60
- 気分転換と言っても、私一人なのでコンビニに立ち読みに行くくらいしか思いつかなかった
「近道でも通って行こうっと」
私はいつも行っているコンビニへ行くために、人通りの少ない路地を通って近道する事にした
「にゃー」
路地を通っていると、不意に物陰から猫の鳴き声がした
「あっ、猫…」
能力の関係で、動物は私に近寄らないけど、この子は逃げる素振りを見せない
(もしかしたら、触れるかも…)
そう思い、その猫に恐る恐る手を伸ばす
「にゃーー!」
案の定、猫は私の手が触れるくらいまで近づくと声を上げて逃げて行ってしまった
「やっぱ、ダメか…」
逃げ出した猫が曲がり角を曲がり姿を消す
「にゃーー!」
曲がり角を曲がった筈の猫が、再び姿を見せ、今度は反対側の道へ逃げて行った
「どうしたんだろ?」
私が首を傾げていると
「あらら、今日のあたしは運がいいみたいね…」
その曲がり角から私と同じ顔の少女が現れた… - 302 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 22:52:06.28 ID:ZPgGmI60
- 「妹達?」
実験の凍結後も学園都市に残った妹達は居る…
だが、妹達はいつもゴーグルと常盤台の制服を着用していた筈だ、なのにこの子は
男物のジャケットのようなものを着ている
「まさかテスト運転中にお姉様に会えるなんてね」
それだけではない、私は目の前の少女になにか違和感を感じていた
いつもと言葉遣いが違う?
それじゃない、もっと別の……
「あんた番号は?」
違和感の正体はわからないが、それは置いておき、彼女の番号を尋ねる
「番号?」
「そう番号よ、あなたも妹達なら番号があるでしょ?」
私はそう繰り返す - 303 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 23:02:14.15 ID:ZPgGmI60
- 「番号って、『欠陥電気』(レディオレイズ)の番号の事?アハハ、あたしを
あんな石ころ共と一緒にしないでよ?」
彼女の反応に私は驚く、違和感の正体はこれだったのだ。彼女は他の妹達と違い
かなり感情表現が豊かだ
「あたしは欠陥電気じゃない、研究所では『番外個体』(ミサカワースト)って
呼ばれてるわ」
彼女、番外個体が誇らしげにそう言った
「番外個体?」
聞いたことのない名称だ
「そう、出来損ないの欠陥電気とは違うってこと。まあオリジナルのお姉様自体が
無能力者に助けられるくらいの出来損ないのレベル5なんだけどね?」
番外個体はそう言うとケタケタと笑った - 304 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 23:10:16.97 ID:ZPgGmI60
- 「喧嘩売ってんの!?」
さっきまで悩んでいた事を言われて、声を荒げる
「へぇ…、売ったら買ってくれるの?」
言うや否や番外個体は体の周りに電撃を発生させる
「これは…」
これほどの電撃を事もなげに放つなんて、確かに番外個体は他の妹達と比べ
レベルが高いようだ
「あたしには電撃は効果が薄いよ?それでもやるの?お・ね・え・さ・ま?」
番外個体は顔に嘲笑の笑みを浮かべたまま私を挑発する
「上等じゃない!痛い目見せてやるわッ!」 - 305 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 23:16:41.57 ID:ZPgGmI60
- 番外個体の挑発に乗り、戦闘態勢をとる
(こいつには電撃は効果がない…、じゃあレールガンを使う?そんなことはできない…)
レールガンを撃てば彼女は無事では済まないだろう
(じゃあ、どうすれば…)
そこまで考えて気が付いた
(私には電撃とレールガン以外に今戦闘に使えそうな手段がない!)
(条件は向こうも同じ、やるしかない!)
私は素手で戦う覚悟を決める
「あ~らら、やっぱりそうなるのかぁ~」
番外個体は残念そうに溜め息をつく
「しょうがない、さっさと片付けるとしますか」
そう言って番外個体は構える - 306 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 23:22:23.80 ID:ZPgGmI60
- 「フッ!」
番外個体が私目がけて走ってくる
「こんのぉ!」
走ってくる番外個体目がけて力一杯拳を振るう
「よ、っと」
番外個体はそれを左手でガードすると、私に右フックを打ってきた
「きゃあ!」
私はそれをかろうじてガードすると、後ろに飛び退き番外個体との距離をとる
(格闘なら向こうに分があるみたい…、なら!)
防がれても構わないくらいの全力で攻撃する! - 307 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/15(木) 23:33:55.35 ID:ZPgGmI60
- 追撃してくる番外個体に向かって渾身の回し蹴りを放つ
「てりゃあ!」
番外個体はこちらに走り込んでくる、このタイミングならば避けることはできないはず
だが、ちらりと見えた番外個体の顔は…
(笑ってる?)
私の蹴りが当たるか当たらないかというすれすれを番外個体は体を斜めに傾けて
回避した
そして、その勢いを利用して私の脇腹に強烈な一撃を放った
「ガハ――」
体がクの字に折れ、息が出来なくなりその場に倒れ込む
「お姉様の戦い方はワンパターンすぎるのよ、もっと考えないとね?」
番外個体は私を見下して笑う
「じゃあお姉様には、もうちょっと痛い目みてもらおうかしら…」
番外個体が拳を振り上げる
「―――ッ」
私は目を瞑る
「おい!なにしてんだお前!!」
そこに聞き覚えのある声が聞こえてきた
- 314 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 21:03:47.62 ID:oP72xjE0
- ・
・
・
「大丈夫か!? ってお前はビリビリ!?」
倒れている女の子に駆け寄り、その顔を見て驚く
その子はいつも俺に絡んでくる、レベル5の御坂美琴だった
「とう…ま……?」
なんでレベル5のこいつがこんな目に!?
「やれやれ、正義の味方(ヒーロー)の登場ってわけ?」
前から嘲笑の色を含んだ声が飛んでくる
ビリビリ、御坂をこんな目に遭わせたであろう奴を睨みつける
「―――ッ! 同じ顔!?」
そいつの顔を見て、俺は再度驚きの声を上げた
そこに居たのは、御坂と同じ顔をした少女だった - 315 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 21:11:48.62 ID:oP72xjE0
- 「悪いんだけど、あんたお呼びじゃないのよ。消えてくれるかな?」
彼女は俺を見下すようにそう言い放った
「そうは行かない、倒れてる女の子放って行けるほど、俺は冷血じゃないんでね…」
「あっそう、それなら…、痛い目見せてやるわ!」
言葉を終えると同時に、彼女は俺に向かって電撃を放って来た
「うおッ!?」
その一撃を辛うじて『幻想殺し』(イマジンブレイカー)で打ち消す
「なッ!?」
少女が目を見開く
「残念だったな、俺の右手はどんな能力も打ち消す、お前に勝ち目はないぞ?」
目の前の少女は考え込むように押し黙り
「そう…、あんたが上条当麻って訳ね……」
俺の名前を口にした - 316 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 21:21:54.55 ID:oP72xjE0
- 「お前、どうして俺の名前を知ってるんだ?」
「さぁね?もしも、あたしに勝てたら教えてあげるよ」
少女は楽しそうに笑った
「ああ、それと。こっちだけ名前を知ってるのは不公平だから…、名乗っておいてあげる
あたしは番外個体、どうぞ宜しくね?」
少女…、番外個体は小馬鹿にしたようにそう言うと、構えをとった
「やるしかねぇか――」
「ダメ…、そいつと戦っちゃ……」
まだ回復していないのだろう、御坂が苦しそうにそう言った
だが、相手はやる気満々で逃げ出せそうもない
それに番外個体は能力者だろう、銃などの武器も持っていない
「心配するな、すぐに病院に連れてってやるからな」
心配そうにする御坂にそう声をかけ、番外個体へと向き直る
「悪いが、女の子でも手加減はしてやれないぞ?」
勝負はこちらに分がある、女の子が相手なのは気が引けるが、一刻も早く御坂を病院へ
連れていかなれば - 317 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 21:28:09.20 ID:oP72xjE0
- 「ハァ?自分より強い相手に手加減?寝言は寝てから言いなさい…よ!」
番外個体が電撃を放つ
それを幻想殺しで防ぎ、消滅させる
(このまま接近して、幻想殺しで掴んで能力を封じる…)
相手は能力者、しかも女の子だ。能力を封じてしまえば戦う手段を失い
戦意を喪失する筈…
俺はそう考え電撃を防ぎながら、番外個体との距離をジリジリとつめていく
「チッ!」
電撃をすべて防がれている事に苛立っているのだろう、番外個体の動きが目に見えて
単調になって来た - 318 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 21:37:56.49 ID:oP72xjE0
- (今だッ!)
相手の攻撃が途絶えた一瞬の隙をつき、相手に触れることのできる位置まで移動する
「何ッ!?」
番外個体が驚きの声を上げる。俺は電撃を放っていた手を幻想殺しで掴んだ。
これで番外個体はもう能力を使用できない筈だ、現に相手に触れているにも関わらず電撃は
放たれない
「これでお前は能力を使えない…、このまま降参し――」
番外個体の顔に視線を移す。だが目に飛び込んできたのは、能力を封じられた事に驚く顔でも、悔しがる顔でもなく……
もう一方の拳を振り上げ、笑みを浮かべている顔だった
「なッ!?」
予想外の出来事に反応できず、その一撃をもろに喰らってしまう
後ろによりめいた俺に、番外個体は更なる攻撃を仕掛けようとする - 319 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 21:47:08.10 ID:oP72xjE0
- 「クソッ!」
それをなんとか受け止める
どうにか追撃をかわし、番外個体と距離をとる
(なんだ今の反応はッ!?)
能力を封じられたにも関わらず、なんの戸惑いも見せずにすぐさま反撃に移るなんて
(俺の行動が読まれていたのか?)
そう考えれば説明がつく、あらかじめ能力を封じられる事を知っていなければ、あれほど
迅速に次の行動には移れないだろう…
(近くに心を読む能力者が隠れているのか?)
「まるで自分の行動が知られていたみたい…、そう考えているの?」
「!」
周囲を探ろうとした瞬間、番外個体がそう言った
(やっぱり心を読まれていたのか!?)
「心なんて読んでないよ。ただ、あんたの行動がわかりやすすぎるってだけ」
「…どういう意味だ?」 - 321 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 22:00:13.07 ID:oP72xjE0
- 「簡単だよ、あんたの幻想殺しは右手に触れた異能を打ち消す力…、右手で触れられると
あたし等みたいな能力者は能力が使えなくなる。そしてあたしの外見はか弱い女の子…
とっても優しいあんたは、能力を封じればあたしが降参するって考えるかもしれない」
番外個体が少し自慢げに種明かしをする
「確証は持てなかったけど、あんたが電撃を防ぎながらゆっくりと近づいてきたのと、
あたしの腕をチラチラと見てきた事で確信が持てた…、コイツは底抜けに甘い間抜け野郎だってね!」
番外個体が笑い声を上げる
「間抜け野郎か……、それでも構わない…」
それに――
(間抜けなのは、お前も一緒だ――!)
今の話で気が付いた、番外個体は俺の名前だけではなく、幻想殺しの事も知っている…
その証拠に番外個体は能力を打ち消せるのが右手だけだと知っていたような口ぶりだ、俺は右手“だけ”なんて一言も言っていないのにだ
決定的なのは番外個体は確かに幻想殺しという単語を口にした、この名称を知っているのは
ごく一部の人間だけの筈だ…… - 322 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 22:11:54.37 ID:oP72xjE0
- こいつは魔術や学園都市の暗部に関わりのある人間である可能性が高い…
先程の攻撃から察するに、こいつはそこいらのスキルアウトなんかとは違う、戦闘のプロだろう。故に俺の行動を先読みし幻想殺しを逆手に取るような戦法を仕掛けてきた…
(俺がこいつに勝つにはその裏をかくしかない…)
格闘では分が悪い…、なら相手の戦法を逆手に取り、勝負を仕掛けるしかない
「さて、正義の味方さんには、そろそろお引き取り願いましょうか?」
番外個体が再び電撃の雨を降らせてくる
番外個体は俺を近づけないようにし、次の攻撃の準備をしているのだろう
「さあフィナーレの時間だよ!?」
番外個体が拳に電気を集め始める――
番外個体の拳は瞬く間に、即席のスタンガンへと姿を変えた - 323 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 22:21:43.10 ID:oP72xjE0
- 来た―――
チャンスはそう何度も訪れないだろう、下手すればこの攻撃が失敗すれば俺の意図に
気付く可能性だってある…
(ここで決めるッ――!)
番外個体が俺に向かって疾駆する
その拳はもはや通常のスタンガンを越える威力だろう
これを防ぐには幻想殺しで受け止めるしかない、そうしなければ俺の体には
電流が走り、戦闘不能に陥るだろう……
だから幻想殺しで防ぐ、それが当然の考えだ、だから……
それを逆手に取る―――
「ガァァァッ!」
俺はその一撃を敢えて左手で受け止めた
体中に電流が走る、だが―――
「こんくらいの痛みは…、慣れてんだよぉ!!」 - 324 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 22:33:13.99 ID:oP72xjE0
- 右手を振りかぶる――
番外個体は俺が右手で攻撃を防ぎ、左手で反撃にでると予想していたのだろう…
暗部の人間であるならば、その程度で動揺はしないだろう
しかし、相手は幻想殺しを使わなければ自分の攻撃を防げないという自分の能力への
自信と敢えて電撃を受けるという行動にさしもの彼女にも隙が生じた
「おおらぁぁ!!!」
「ガフッ!?」
渾身の一撃をもろに頭部に喰らい、番外個体の体が吹き飛んだ
「ぐッ……!」
さすがにあれだけの電撃を喰らっては平気とはいかず、その場に膝をつく
だが全力で殴りつけたのだ、女の子の番外個体が立ち上がってこれるとは思えない…
「さて、これからどうするか…。まずは御坂を病院へ運んで、あの番外個体とか
いう子はどうするかなぁ…」
さすがにこのまま放置するわけにはいかないし、かといって病院でまた暴れられても困る…
「―――まだ、終わってねぇぞ?」 - 325 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 22:44:50.48 ID:oP72xjE0
- 「――ッ!?」
声のした方を見ると、そこには体中に電気を纏った番外個体が立っていた
「お前ッ!まだ――!」
「なめた真似しやがって…!ぶち殺してやる!!」
「クッ!」
マズイ、番外個体はさっきの攻撃で多少のダメージを受けているようだが、
こっちのダメージのほうがデカイ!
(どうする? 電撃は防げるが、接近戦では攻撃を防ぐ事ができるかもわからねぇ!)
「おい、青ピ。なんだってこんな路地に入るんだにゃあ~」
「さっきスゴイ音と光が見えたんよ!もしかしたら女の子が異次元から出てきたの
かもわからんでぇ!」
「誰かが暴れてるのかもしれないにゃ~、面倒事はごめんだぜ」
誰かの声が近づいて来る…
これは青ピと土御門!? - 326 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/07/17(土) 22:46:13.68 ID:p4ct.kAO
- まさかの青ピさん
- 327 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 22:56:08.17 ID:oP72xjE0
- 「って、あれは…、カミやんやないか!?」
俺の姿を確認した青ピが驚きの声を上げる
「おいおい勘弁してくれよ、そこの光ってるのがホントに異次元から出て来た
なんて言わないでくれよにゃ~?」
土御門が状況を読まない暢気な声で言った
「お前等!今すぐ逃げろッ!!」
「チッ!厄介なのが出てきたね…」
番外個体は舌打ちすると、背中を向け走り出し、曲がり角へ姿を消した
「な、なんだ……?」
俺が事態を呑み込めないでいると、周囲に爆音が轟いた
「なんやなんや!?」
青ピがその音に慌てふためく
そして曲がり角から、白いバイクに乗った番外個体が飛び出して来た
「じゃあな!上条当麻! それからまた無能力者に助けられたお姉様?
アハハハハ!!」
「うおッ!?」
爆音を轟かせながら、番外個体は路地から表の道路へとバイクで走り去って行った… - 328 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 23:06:58.81 ID:oP72xjE0
- 「なんやったんや?今のは? ってカミやん!どうしたんやその怪我!?」
俺の怪我に気付いた青ピが大声を上げる
「そっちの女の子も怪我してるやん!えっと、きゅ、救急車?いやアンチスキルに…」
「落ちつけ青ピ、とりあえず救急車を呼べ」
慌てる青ピに土御門が指示を飛ばす
「大丈夫か?カミやん?」
「俺のことはいいから!まずはコイツを病院に連れて行ってくれ!」
俺は大した怪我をしてないが、御坂はどんな怪我をしているかわからない
「御坂! 大丈夫だったか!?」
なんとか立ち上がれるようになり、慌てて御坂の元へと駆け寄る
「……」
「おい!大丈夫か!?もうすぐ救急車が来る…!?」
俺が言い終える前に、御坂が俺に抱きついて来た
突然の行動に俺は言葉を失った
「お前どうし…、お前…泣いてるのか?」 - 329 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/17(土) 23:11:20.76 ID:oP72xjE0
- 御坂は俺の服を掴み、声を押し殺して泣いている
「もう大丈夫だ、あいつはいなくなったから。もう安心していいぞ?」
レベル5といっても、まだ中学生だ。あんな目に遭えば泣いたりもするだろう…
俺は、御坂を労わるようにそっと頭を撫でた…
その時、上条当麻は気付かなかった
御坂美琴の涙の理由が、傷の痛みでも、恐怖でもなく
ただ己の無力さを悔やむものだったということに―――
- 337 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 20:04:02.84 ID:.DtrfgU0
- ・
・
・
夜の帳が下りた街を、白い髪の少年が歩いている
「たくッ、まさかコーヒーが切れてるのに気付かないなンてなァ…」
白い髪の少年、一方通行がそう悪態をつく
ここ数日は自分の今後の事を考えるのに頭が一杯で、コーヒーの残量にまで
気が回らなかった…
そんなことを考えながら、オレはコーヒーしか入っていないコンビニの袋を見る
「まァ、こンだけありゃしばらくは大丈夫だろ…」
自分の部屋に帰るために歩いていると、進行方向にいくつかの人影が立ち塞がった
「チッ!またかよ…」
以前から無謀にもオレに挑戦してくる馬鹿共は居たが、ここ最近は以前よりも数が
増えたような気がする…… - 338 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 20:16:20.24 ID:.DtrfgU0
- (アイツに負けた事が影響してンのかねェ…)
馬鹿な奴らだ、オレが誰に負けようがオレの力自体が変わった訳じゃない…
そこらの不良程度の力でオレに勝つなんて万に一つの望みも無い
にもかかわらず、不良達はオレに向かって殺到してくる
「やれやれだ……」
いつも通り何もしなくても勝負はつきそうだ。そう思いながらオレは溜め息を
漏らした
予想通りオレが手を下すまでもなく、不良達は自分の力で自滅し、地面に転がり
呻いている
「ンッ?」
その中の一人、頭からすっぽりとフードを被った奴が血を流している
さっきの戦いの最中に発砲音のようなものが聞こえた、銃を持っていたんだろう
それを反射した時に運悪く体のどこかに命中したのかもしれない…
「オイオイ、勘弁してくれよ」
まだそれ程遅い時間ではない、周囲には何事かとこちらを窺っている者もちらほら
見える
ここで死人が出れば少々面倒な事になりそうだ - 339 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 20:26:16.82 ID:.DtrfgU0
- 「チッ!」
舌打ちを一つし、ソイツに向かって歩き出す
(大した事なけりゃ放って帰ればいいしな…)
そう思い、傷を確認するためにソイツのフードを引きはがす
「なッ!?コイツは――ッ!?」
フードを引きはがしても、ソイツはピクリとも動かなかった…
だが、問題はそこではない
フードの下から現れたのは…
「妹達―――?」
御坂美琴と同じ顔をした少女だった
「どうなってやがンだッ!?」
超電磁砲本人ってことはないだろう…、それでも、なぜ妹達がこんなことを?
「――ッッ!?」
視線を感じ、弾かれるように顔を上げる
いつの間にかオレを取り囲むように人垣が出来ている
その光景を見た瞬間、オレの時が止まった――
妹達だ、妹達がオレを取り囲んでいる――
- 340 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 20:40:14.57 ID:.DtrfgU0
- 「うッ――!」
それを見て、胃の中身が逆流しそうになる
その理由は、オレを取り囲む妹達が一様に血にまみれていたからだ――
腕のない者、足のない者、全身血でずぶ濡れの者、もはや生きているとは思えない
状態の妹達が一様にオレを睨んでいる
(なンだよ、なンなンだよッ!これはッ!?)
吐き気を抑え込み、目の前の状況を理解しようと試みる…
気付けば周りに居た筈の人影や、地面に転がっていた不良達は消え去っている
「幻覚かなンかの類か!?」
それならばオレの能力になんの反応も無いのはおかしい、そう思い能力を使おうとする…
「!?」
能力が使えない!?
「クソッ!なンだってンだよッ!?」
「―――な――――い――」
混乱するオレの耳にかすれた声が届いた - 341 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 20:51:32.24 ID:.DtrfgU0
- 「!!」
その声のした方向を見る。かすれたような声だったのでどの妹達が言ったのか
わからない
だが、声の主を探す行為はすぐにその意味を失くした
「許 さ な い 」
今度こそはっきりと声が耳に届いた
その声の主を見る……
ありえない光景だった、声を発したであろう個体の首には大きな穴が穿たれている…
そんな状態で声を発するなんて不可能な筈だ……
「あ……」
ソイツの傷を見て気がついた、この妹達は―――
「オレが殺した――」
オレが実験で殺した妹達だ―― - 342 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 21:00:30.36 ID:.DtrfgU0
- 「許さない」
「許さない」
「許さない」
オレの言葉が引き金になったかのように、周りの妹達も同じ言葉を繰り返す
「う、ああ――」
その言葉に思わず耳を塞ぐ、それでも声は消えない
オレの罪を責め立てる
不意に誰かがオレの足を掴んだ
「――――」
それはさっきまで倒れていた妹達だった
「お 前 が 殺 し た 」
「ウアァァァァァ!!!」
オレは駆けだす、オレを囲む妹達を押しのけて、体に血が付いても構いもせずに
ひたすらに走った、この悪夢から逃げるために―― - 343 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 21:11:14.64 ID:.DtrfgU0
- 「ハァハァ…、追って来ねェのか……?」
肩で息をしながらオレは追手がいないことを確認して安堵の息を漏らす
「ここは…、どこだ?」
必死で走っているうちに、どうやら知らない所まで来てしまったらしい
「いや、待てよ。この景色…、どこかで見た事あるような…?」
微かに見覚えのある景色に、首を傾げる
「とりあえず、部屋まで戻らねェと」
今は能力が使えない、そしてオレの体力から考えるにそう遠くまでは来ていないだろう
周りの景色もまったく覚えがない訳でもないようだし、歩いていれば道のわかる場所まで
行けるだろう…
「オイオイ、もう歩き始めて随分経つぞ?」
一向に道のわかる場所まで出ない、その事に苛立ち思わず独り言を呟く
道を間違ったのか?
だが、風景は以前まってく知らない場所ではなさそうだ
「ン?アレは……」
目の前に古びた歩道橋のようなものが見える - 344 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 21:20:42.18 ID:.DtrfgU0
- 「コイツは…!?」
それを見て今まで感じていた違和感に気が付いた…
通りで見覚えがある筈だ…、ここは……
「学園都市じゃねェのか!?」
この風景はオレが学園都市に来る前に、最後に過ごした街の景色だ
「何がどうなってやがンだ…」
その事実を認識した事で、過去の記憶が蘇ってくる
「どうすりゃいいンだよ」
これが能力によるものであれ、それ以外の何かであれ、どうにかここから戻らなければ
「とりあえず、歩くしかねェか…」
何も考えが浮かばず、記憶を頼りに歩きだす - 345 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 21:28:51.21 ID:.DtrfgU0
- 足がまるで自分の意志を持っているかのように動く
そこはまるで時が止まったかのように、人っ子一人いない…
同級生に殴りかかられた公園、黒服の男に銃で撃たれた建物、色々な場所を通り過ぎる
(この道は、まさか…)
自分がどこへ向かっているのか気付いた…
どうやらオレは自分の家に向かっているようだった
「なンで今さら…」
そうは言っても足が止まらない、見えない糸に手繰り寄せられるようにオレは
自分の住んでいたマンションの一室の前までやって来ていた… - 346 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 21:41:56.65 ID:.DtrfgU0
- 見覚えのあるドア、オレが―――と一緒に暮らした最後の場所だ……
「クソッ!」
どうやらオレはガラにもなく感傷に浸っているらしい…
もし、この訳のわからない状況から抜け出す手掛かりがあるのなら、きっとこの中だろう
そう思い、ドアに手を掛ける……
その刹那、後ろからピチャピチャと水音のようなものが聞こえて来た
「!」
振り向けなくてはいけない、今は能力が使えないのだ、反射が出来ないならば
後ろから攻撃されればお終いだ
それでも体が金縛りにあったかのように動かない…
「―――…」
後ろから声が聞こえる、聞き覚えのある声…
そして自分でも思い出せないくらいおぼろげな自分の名前―――
後ろを振り向く、そこに居るのが誰かわかっている――
オレを守ってくれた人、オレを愛してくれた人
そして―――
オレが、初めて殺した人―――
- 347 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 21:51:27.23 ID:.DtrfgU0
- 「ウアアァァァア!!?」
絶叫と共に跳ね起きる
「ここはッ!?」
辺りは暗い、そのまま息が整うまで辺りを見回す
「オレの部屋…?」
目が慣れてきて辺りの状況を把握する
どうやらここは自分の部屋のようだ……
考え込んでいるうちに眠ってしまっていたようだ
「今のは、夢かよ……」
オレは溜め息を漏らす
「なんだって今さらあんな夢を?」
あの記憶はずっと前に捨ててきたものの筈だ、それを今さらになって思い出すなんて…
「チッ!アイツに負けてから調子が崩れっぱなしじゃねェか…」
立ち上がり、コーヒーを飲もうと冷蔵庫を開ける
「たくッ…、ついてねェぜ…」
冷蔵庫の中にはコーヒーが一本も残ってなかった - 348 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 22:01:04.34 ID:.DtrfgU0
- 「買いに行くしかねェか」
そう口にした瞬間、さっきの悪夢が脳裏をよぎる
この展開は先程の悪夢と同じ展開だ…
「引き籠りじゃあるめェし、第一位が夢が怖くて出歩けないなんて、とんだ笑い草だぜ」
自分にそう言い聞かせて、オレはコンビニに行くために部屋の外に出る
オレの心配をよそに、何事もなくコーヒーを購入する事ができた
(問題はこの後だなァ…)
そして、不良達が待ち伏せしていた道へと差し掛かる - 349 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 22:12:31.89 ID:.DtrfgU0
- (行けるか?)
今回は不良達は姿を現さず、何事もなく通り過ぎる
「フゥ…」
思わず安堵の息を漏らす、これで後は部屋に戻れば終わりだ…
ホッとしたのも束の間、今度は後ろから何者かが尾行しているような気配がする
(気のせいか?)
尾行されていた場合に備えて、慎重に後ろを確認する
すると、布のようなものを被った人影がこちらを窺っている
(オイオイ、冗談じゃねぇぞ!?)
その外見に先程の悪夢のワンシーンが重なる
(能力は…、使えるみてェだな…)
能力を使える事を確認する
(とりあえず場所を変えて様子を見るか…)
悪夢の状況と変えるために、人通りの少ない場所まで移動しようと、進路を変える - 350 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 22:21:52.38 ID:.DtrfgU0
- 案の定、その人影もオレについてくる
(そろそろか?)
辺りには人影もなく、周囲にはオレとオレをつけてきた奴しかいない
他に通行人がいない事を確認して立ち止まる
うしろの人影はオレが突然立ち止まったことに困惑しているようだ
そのまま方向転換し、ソイツの方へ向かって歩を進める
「!?」
ソイツはどうやら自分の存在が気付かれてなかったとでも思っていたのだろう…
オレが近づくと目に見えて慌てているのがわかった
(一体なンなンだァ?) - 351 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/21(水) 22:35:23.28 ID:.DtrfgU0
- 尾行の技術もお粗末だし、何よりもつけてきたのは一人だけのようだ
オレに挑戦する奴なら一人で来るなんてまねはしないだろうし…
いよいよソイツの間近まで迫ると、慌てるあまり、ソイツは自分の纏っている
布のようなものの端を踏みつけた
「うわぁ!?」
間の抜けた声と共にソイツが派手にすっ転ぶ
「なにやってンだよ…」
近くでみると、ソイツは思ったよりも小柄でまだ子供のように見えた
「あいたたた、ってミサカはミサカは涙目になりながら腰をさすってみる」
ソイツが顔を上げる
「!!」
その顔を見て心臓がドクンっと跳ねる
「妹達――?」
あの悪夢が蘇る…
「こんばんは一方通行、ってミサカはミサカは笑顔で挨拶してみる!」
だが、そんな一方通行の戸惑いをよそに、彼女は笑顔でそう言った…
- 361 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 18:59:15.24 ID:40W0iks0
- 「お前…、妹達なのか?」
「そうだよ!」
オレの問いかけに彼女は元気一杯の声で答えた
「ミサカの名前は『打ち止め』って言うんだよ、ってミサカはミサカは自己紹介
してみる!」
打ち止めと名乗った少女が笑う
「打ち止め?」
妹達の名前は番号の筈だ。それに、外見も明らかに他の妹達とは違う…
だが、問題はそこではない
「それで?オレになンか用でもあンのかァ?」
なぜコイツがオレをつけるような真似をしていたのかだ… - 362 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 19:12:48.42 ID:40W0iks0
- 「それはね、実験が中止になって調整が終わってないのに培養機から放り出された
上に、そのまま放置されちゃったから研究者にコンタクトを取れる人を探してたから
だよ、ってミサカはミサカは自分の境遇を嘆いてみる…」
なるほど、実験の中止に伴い研究員が抜けたことで研究所は人手が足りていないのだろう
「なンでオレなンだよ?お前等のお姉様やあの女にでも頼めばいいだろ?」
素朴な疑問を口にする
実験の関係者にコンタクトを取るのならオレの方が手っ取り早いだろうが、そんくらい
は超電磁砲でもできる筈だ…
わざわざ憎い相手であるオレに頼む必要はないだろう…
「でも、お姉様やあの人がどこに住んでるのかわからないし、実験の関係者に連絡を
取るならあなたの方がいいかなって思ったから、ってミサカはミサカは説明してみる」
「他をあたりな、オレはそンなことに付き合ってやるほどお人好しじゃあねェン
だよ」
妹達はもうオレとは関わらない方がいいだろうしな…… - 363 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 19:22:23.92 ID:40W0iks0
- 「でも、研究所までの帰り方もわからないし、お金も持ってないし…、って
ミサカはミサカはションボリしてみる……」
そう言って打ち止めは肩を落とした
そんな打ち止めの姿を見て、オレは今更ながらとんでもないことに気が付いた
「オイオイオイオイッ!?お前、その毛布の下になンも着てねェ訳じゃねェだろうな!?」
恐る恐る打ち止めに尋ねる
「えっ?研究所から出るときにこの毛布しかなかったから、これしか着てないけど…
ってミサカはミサカはあなたの視線に少し怯えてみたり」
どうやらコイツは本当に毛布一枚しか着ていないようだ…
「勘弁しろよ…」
もう夜だ、学園都市は治安がいいとはいえない…
そんな所にほぼ全裸のガキを放りだせばどんな目に遭うかわかったもんじゃない…
かといって超電磁砲に預けに行く訳にもいかない
「チッ!オレが面倒みるしかねェってことかァ……」 - 364 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 19:35:57.04 ID:40W0iks0
- 「どうしたの?ってミサカはミサカは怖い顔してるあなたに問いかけてみたり」
「顔は元からだ、そンなこたァいいからついて来い」
「いいの?ってミサカはミサカはさっきと正反対の事を言ってるあなたに尋ねてみる」
「どうでもいいから早くしろ、その格好のお前といるとこを他の奴に見られたら
面倒だ」
夜遅くという時間ではないが、こんな姿のガキと一緒に夜歩いているところを見られたら
あらぬ疑いを掛けられるだろう…
「とりあえず、オレの部屋まで行くぞ」
「初対面の女性をいきなり部屋に連れていくなんて、結構大胆なんだね、って
ミサカはミサカはにんまりしてみる」
「舐めた事言ってやがると放りだすぞ?」
面倒な事になった、とオレは溜め息をついた - 365 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 19:48:56.06 ID:40W0iks0
- そのままギャーギャーうるさいガキを連れてオレの部屋の前までやって来たのだが…
「オイオイ、どうなってンだこりゃあ?」
どうやらスキルアウトにでも荒らされたようだ…
オレの部屋のドアは壊され、部屋の中もすごい惨状だった
「うわぁー、これはスゴイ、ってミサカはミサカは絶句してみたり」
オレに恨みを持つ奴なんてたくさんいる、こんなことは今に始まったことではない…
そのまま部屋の中に入り、買ってきたコーヒーをテーブルの上に置く
「おいガキ、どうするんだ?」
「どうするって?ってミサカはミサカは聞き返してみる」
「ここは場所がわれてる、部屋を荒らした連中がまた来るかも知れねェぞ?
別の場所を探した方がいいンじゃねェのか?」
「それでも、ミサカはここにお世話になりたいかな、ってミサカはミサカは言ってみたり」 - 366 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 19:59:41.38 ID:40W0iks0
- 「なンでだよ?」
「誰かと一緒にいたいから、ってミサカはミサカは正直に言ってみる」
「ハァ?」
誰かと一緒にいたい?そんなくだらない理由でこんな危険な場所に留まるって言うのか?
しかも、その相手が自分達を殺したオレだって言うのによ…
「ダメかな?ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみる」
「勝手にしろ……」
「ありがとう!ってミサカはミサカは感謝の気持ちを表現してみる!」
そう言って、打ち止めはぴょんぴょんと飛び跳ねた
「とりあえず今日は寝ろ、明日研究所に連れてってやるから…」
オレはやれやれと頭を押さえた - 367 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 20:11:08.94 ID:40W0iks0
- 「ところでミサカはどこで寝ればいいの?もしかして一緒のベッドで!?ってミサカは…」
「ベッドを使え、オレはソファーで寝る」
打ち止めの言葉を遮るようにそう宣言する
「うー、もうちょっと付き合ってくれてもいいのに、ってミサカはミサカはぶーたれてみる」
「うるせェ、早く寝ろ…」
オレはソファーに横になりながら打ち止めに声をかける
「わかった、それじゃあ、おやすみなさ~い、ってミサカはミサカは就寝のあいさつを
してみる!」
打ち止めが布団を被る
(やれやれ、ようやく静かになったか…)
「あっ!先に言っておくけど、寝込みを襲うのはダメなんだからねって、ミサカは…」
「寝ろッ!!」 - 368 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 20:23:38.20 ID:40W0iks0
- その後も打ち止めはことあるごとにオレになんやかんやと話しかけたきた
それでも、30分もすると打ち止めはスースーと寝息を立てていた
「やっと寝やがったか」
打ち止めが寝て、やっと静寂を取り戻した室内で溜め息をつく
おそらくほとんど研究所の外へ出た事がなかったため、打ち止めはこんなにも
はしゃいでいたのだろう…
「オレにとっちゃ、いい迷惑だぜ…」
静かになった室内で一人愚痴をこぼす
「でも、まァ…」
「悪くはねェ……な…」
自分で自分の言った言葉に驚いた、まさか自分がこんなことを言うなんて夢にも
思わなかったからだ
「何言ってンだオレは?いまさらオレにそんな権利なンて……」
自分の中に生まれた考えを断ちきり、天井を仰ぎ見る
オレに安息を得る権利なんてない…
それでも、今日は安らかな気持ちで眠れそうだった…… - 369 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 20:34:46.79 ID:40W0iks0
- ~翌朝~
「ン…?」
目の前に人の気配を感じて目を覚ます
「何やってやがンだ?」
オレはなぜか目の前にいる打ち止めにそう問いかける
「ふーん、人の寝顔は素直な表情になるもんどすなぁー、ってミサカはミサカは
エセ京都弁を使ってみたり」
どうやら打ち止めはオレの寝顔を観察していたようだ…
「ハァ、朝っぱらから下らねェことしてンじゃねェよ」
ソファーから身を起こす、アホらしくて怒る気にもならない
「ねぇ、ミサカはお腹が空いた、ってミサカはミサカは食べ物を要求する」 - 370 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 20:44:53.63 ID:40W0iks0
- 「オイオイ、泊めてもらった挙句に今度は飯かァ?どこまで図々しいんでしょうねェ、
このガキは…」
「むぅ~、お腹が空くのはしかたないことだよ。それともあなたはミサカなんか
飢え死にでもなんでも勝手にしろって言うの?うっうっ、ってミサカはミサカは嘘泣きしながら
言ってみる」
(嘘泣きッってバラしてんじゃねェかよ…)
「わかった、わかった。冷蔵庫の中のモン好きなだけ食っていいから…」
「ホント?わ~い!ありがとうー!」
オレの言葉に打ち止めは嬉々として冷蔵庫の方へ向かう
まァ、外泊の経験があるようには思えないし、テンションが上がってるんだろう
大目にみてやるか…
「ねぇ……」
「あン?どうした?冷蔵庫の中のモンなら好きにしていいぞ?」
「冷蔵庫の中コーヒーしかないんだけど、ってミサカはミサカは衝撃の事実を
告げてみる」 - 371 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 20:54:58.68 ID:40W0iks0
- 「そりゃ、当たり前だろ。コーヒーしか入れてねェンだから…」
むしろ、コーヒー以外のものが入ってたら逆にビックリするわ
「えー!?コーヒーだけ!?それじゃあご飯とかどうしてるの?ってミサカはミサカは
尋ねてみる」
「適当に外ですましてるなァ」
「じゃあ、外に食べに行こう!ってミサカはミサカは提案してみる!」
研究所に連れてくついでにファミレスにでも寄ってもいいか…
それにこのまま駄々をこねられても面倒だしな…
「わかった、わかった。連れてってやるよ…」
「わ~い!それじゃあ早く行こう!ってミサカはミサカははしゃいでみる!」
「ちょっと待て。お前その格好で外に出るつもりか?」 - 372 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 21:05:39.24 ID:40W0iks0
- 「そうだけど?ってミサカはミサカは答えてみる」
「お前なァ…」
昨日は夜だったことと、人通りが少ない道を通った事で騒ぎにはならなかったが…
ファミレスに毛布一枚しか着ていないコイツと入ったら、即行で通報されかねんぞ…
「オレは性犯罪者の称号なんざ、ほしくねェぜ…」
そう言いながら、オレは部屋の中を漁り、打ち止めが着れそうな服を探す
当然だがオレの部屋に女物の服なんてある筈もなく、サイズも打ち止めには合わない
だろうが、毛布よりかはずっとマシだろう
「わー!洋服だ!ありがとう!ってミサカはミサカはお礼を言ってみる!」
「別にお前のためにやった訳じゃねェよ…。ほら、とっとと行くぞ」 - 373 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 21:14:24.01 ID:40W0iks0
- 部屋を出たオレと打ち止めはファミレスまでやって来た
「ほら、さっさと決めろ」
そう言ってオレは打ち止めにメニューを渡す
「あなたはもう決まったの?ってミサカはミサカは尋ねてみる」
「オレは朝はコーヒーしか飲まねェンだよ」
「え~、そんなんじゃ倒れちゃうよ、ってミサカはミサカはあなたを心配してみる」
「オレのことはいいからさっさと決めろ、早くしねェと帰っちまうぞ?」
「む~、じゃあミサカはこのハンバーグセットってのにする、ってミサカはミサカは
メニューを指さしてみる」 - 374 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/07/25(日) 21:23:38.25 ID:40W0iks0
- 注文してから程なくして、打ち止めの前にハンバーグセットが運ばれてきた
「おいしそ~!ってミサカはミサカは目を輝かせてみる!」
打ち止めはそう言いながらハンバーグセットをあらゆる角度から見ている
「早く食わねェと冷めちまうぞ?」
「そうだね、じゃあ、いただきまーす!ってミサカはミサカは生まれて初めて
いただきますをしてみる!」
打ち止めがハンバーグを口に運ぶ
「おいし~!ってミサカはミサカはこのハンバーグを絶賛してみる!」
ハンバーグか……
それを見て、ずっと昔のことを思い出した
オレがまだ、一方通行ではなかった頃のことを……
- 384 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 20:50:02.36 ID:2e1R9Mko
- 一方通行はごく平凡な家庭に生まれた
生まれてすぐに歩いたとか、言葉を発したなんて奇妙な出来事が起きた訳でもなく
平凡にこの世に生を受けた
彼の両親はわが子が平穏に人生を送ることを願い、そうなると信じていた
しかし、彼の運命の歯車は狂いだす
一方通行に突如として異能の力は発現したのである - 385 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 20:58:30.55 ID:2e1R9Mko
- 異能の力を持った一方通行に、周囲からは奇異の視線が向けられた
それは次第に恐怖、そして自分達と異なる者への迫害へと変わっていった…
そして、肉親でさえも一方通行に悪意を向けた
「あんな化物、私達の子供じゃないわ!!」
家の中に母の怒鳴り声が響きわたる
ここ最近、母は毎日のようにヒステリックにがなりたてている
原因はオレの力のことで、オレだけではなく家族まで村八分のような状態になって
いることが原因だろう
「あんな化物、とっととどこかに捨ててしまえばいい!いいえ、いっそ殺して
しまった方がいいわ!」
激昂した母の口からそんな言葉が放たれる - 386 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 21:06:21.16 ID:2e1R9Mko
- 「―――は僕の息子だ。見捨てることはできない」
母の言葉に父が反論する
父の言葉に母が更に激昂する
両親はそんな堂々巡りを毎日夜遅くまで繰り返していた
その後も父と母の意見は対立を続け、その結果、二人は離婚した
オレは父に引き取られ、生まれ育った街を去る事になった
「父さん……、ごめんなさい…」
父に手を引かれ、街を去る時
オレは父に謝罪した
父だけがオレを見捨てないでくれた…
それは嬉しいことだったが、同時に申し訳なさも感じていた
自分のせいで父は母も仕事も失い、街を追われてしまったのだから… - 387 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 21:18:56.41 ID:2e1R9Mko
- 「お前が謝る事なんてないよ…」
父はそう言うとオレの頭を撫でた
「これは僕が自分の意志でした事なんだから…」
「でも…!」
「そんなことよりも、今日の晩御飯は―――の好きなものでいいぞ?何が食べたい?」
自分を責めるようとするオレの言葉を遮るように父がオレに問いかけた
「ハンバーグ…が食べたい…」
少しの逡巡の後、オレはそう答えた
「そうか!―――は好きだもんな、ハンバーグ…。それじゃ、行こうか?」
父がオレの手を引いて歩きだす
オレと父は親子として新たな一歩を踏み出した
そこには胸を打つような言葉があった訳じゃない
ただ、以前と変わらない親子の姿があるだけだった…
それがどうしようもなく嬉しかった…… - 388 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 21:28:50.76 ID:2e1R9Mko
- それからのオレ達の生活は楽ではなかった
能力の事がバレれば、もうそこには居られない…
学校に行けば、些細な事で能力の事がバレてしまった
何かにぶつかる、誰かに叩かれる、そんなことでも能力が発動し、能力の事が
露見してしまった…
「なんで僕にはこんな力があるのかな…?」
こんな力無ければいいのに、こんな力があるから迫害される
この力が、自分の、父の幸せを壊してしまった…
「そんなことを言ってはダメだよ…」
俯いているオレの頭を父が撫でる
「お前の力は素晴らしいものだ、いつか他の人もわかってくれるさ」
そう言って父はオレを励ましてくれた - 389 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 21:43:37.36 ID:2e1R9Mko
- 各地を転々とするうちに、オレは能力を隠すために学校に行かず、部屋に隠れて
生活するようになった…
能力を隠せるようになったことで、一つの所に留まれるようになり
父は日雇いではない仕事に就けるようになった
以前と同じように、父は仕事で家に居ない事が多かったが、たまにある休日には
家で仕事の書類を整理するようになった
父が部屋で仕事をしている時、オレは決まって父の傍に居た
そんなある日、机の上に置いてあるカップに目がとまった
「コレ、何?」
黒い液体の入ったカップを指さす
「これかい?これはコーヒーって飲み物だよ」
「ふ~ん、ちょっと飲んでみてもいい?」
「はは、―――は子供だからな、コーヒーはまだ飲めないだろう」
「大人しか飲めないの?」
「そう言う訳じゃないんだが…、ためしに飲んでみるかい?」
父が目の前にカップを差し出す
その色に若干躊躇したものの、勇気をだして口を飲んでみる
「……苦い」
短い感想を漏らす、正直この味は好きになることはできなそうだ… - 390 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 21:51:35.08 ID:2e1R9Mko
- 「そうだろう?―――がコーヒーの味を理解できるようになるのはもう少し大きく
なってからだな」
父がオレの頭を撫でた
コーヒーはマズかったが、オレは父と過ごせるこの時間がとても好きだった…
学校に行くことができないオレは、図書館などで本を借り勉学に勤しんでいた
学校と違い、注意してさえいれば能力が発動するようなことは起こらず
比較的平穏な日々だった
天性のものなのだろうか、オレは幼いながらもあらゆる学問の知識を理解することができた
オレが特に熱心だったのが医学の分野だった
いつか、オレが医者になって、沢山の人を助ければ…
みんながオレを、オレの能力を受け入れてくれるかもしれない……
その一心で、オレは勉強に励んだ - 391 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 21:59:59.15 ID:2e1R9Mko
- それから、いくらかの時間が流れた…
大きな異変もなく、能力が発現してから、これほど平穏な日々はなかっただろう…
「ただいま」
玄関が開く音がした
オレは父を出迎えるために玄関へと向かう
「今日は―――に良い知らせがあるんだ」
父が嬉しそうにそう言った
「良い知らせ?」
「ああ!僕達は学園都市に行けることになったんだ」
学園都市?
「それってなんなの?」
「学園都市は超能力を開発している所なんだ、そこには―――みたいな力を持った
人が大勢居るんだよ」
自分と同じような人達が?
だったら――― - 392 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 22:06:24.63 ID:2e1R9Mko
- 「もう、いじめられないかな?」
「もちろんだ!学園都市に行けば、もう嫌な思いをしなくてすむぞ!」
もうあんな思いをしなくてすむ
それだけで胸の奥から喜びが湧いてくるのを感じた
「それともう一つ、嬉しい事があるんだ」
「もう一つ?」
「学園都市にお願いして、お前の能力開発を担当する施設で働ける事になったんだ、
これからはずっと一緒に居られるぞ」
「本当!?」
オレは思わず父に抱きついていた…
学園都市に行けば希望に満ちた生活が始まる、誰かに罵声を飛ばされるような
生活ではない
たくさんの友達ができて、父とずっと一緒に居られる……
その日、一方通行は興奮して眠ることができなかった - 393 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 22:17:40.39 ID:2e1R9Mko
- それから数日後
学園都市に行く日が着々と近づいていた
その日の夜、胸騒ぎのようなものを感じて、オレは目を覚ました
夜も深い時間帯のようで、物音一つしない…
もう一度寝ようとベッドに横になろうしたその時、不意に玄関のドアが叩かれる音がした
どうやら、父が玄関に向かったようだ
オレは心配になり、ベッドを抜け出すと玄関の方へ向かった
近づくと、父と誰かの言い争うような声が聞こえてきた
(誰だろう?)
あと少しで玄関という所で、部屋の中に銃声が響いた
「!!」
突然の銃声に心臓が跳ね上がる
「―――!無事か!?」
茫然としているオレの前に父さんが駆けよってくる - 394 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 22:26:32.68 ID:2e1R9Mko
- 「う、うん」
「こっちに来るんだ!」
父さんに手を引かれ、奥の部屋へと逃げ込む
「チッ!ヘマしやがって!探せ!!」
部屋の外から複数の男の声が聞こえる
父さんが部屋の中のものをドアの前に集めてバリケードのようなものを作る
「僕達どうなるの…?」
オレは突然の事態に泣きそうになる
「心配いらない、そこのベランダをつたって、非常階段まで行ってそこから逃げるぞ」
父がそう言った次の瞬間、部屋のドアが爆発した
「うわぁッ!!」
「クッ!―――こっちへ!!」
父がこちらへ駆け寄ろうした時…
煙の中から丸い物体があらわれ、オレと父の間に落下した―― - 395 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 22:37:43.06 ID:2e1R9Mko
- ドンッ!っと大きな音が木霊し、部屋の中を煙がたちこめる
「父さんッ!」
オレは能力があるから大丈夫だが、父はそうはいかない…
父がいた場所へと走る
医療の知識ならあるし、自分の能力はあらゆることに応用がきく
父が怪我をしていても対処できる筈だ…
そう思っていた――
「あ、ああ……」
だが、オレは父の状態を目にしてどうすればいいのかわからなかった
だって――
原型がなくなった人間のをなおす方法なんて本には書いてなかったから――
爆発の影響で部屋の中は酷い有様だ。家具は吹き飛び、壁も砕けている…
それでも、オレの立っていた所だけは無傷だった
瞬間、オレはある事実を理解した
オレと父の間に爆発物が落ち、オレはその爆風を反射した――
そして――
反射した先には、何があったのだろうか? - 396 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 22:45:53.84 ID:2e1R9Mko
- 答えは明白だ、目の前の状況が全てを物語っている
オレの反射した爆風が――
父を殺した―――
「ああああああぁぁぁァァァァアアアアアアアア!!!!!」
「見つけたぞッ!」
武装した男達がオレの視界に入る
「殺してやる―――」
「撃てッ!!」
無数の弾丸がオレに向かって放たれる
「殺してやる!!!」
それをことごとく反射する、男達が狼狽する
「がぁぁぁァァァァ!!」
そして、オレは獣のような雄たけびを上げながら男達目がけて走りだす―― - 397 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 22:56:58.28 ID:2e1R9Mko
- 戦いはあっという間に終わった
相手は銃火器で武装しただけの人間、オレの能力の前では敵ではなかった…
「…………」
オレは夜の街を歩いていた…
父を失い、復讐する相手すら失ったオレは何をすればいいのかがわからず
まるで魂が抜けたようにふらふらと歩いていた…
しばらく歩いていると、視界に放置されたビルが飛び込んで来た
「…………」
オレは吸い寄せられるように、そのビルに入ると、屋上を目指して階段を登りはじめた
朽ちたビルの中にペタペタとオレの足音だけが響く
階段を登りきると、屋上への扉とおぼしきドアがあった
オレはそれを能力でこじ開けた
「…………」
屋上に出る
ビュウっと風が頬をなでる
オレはふらふらと屋上の端まで歩いていく
そこから下を覗き込む
かなりの高さだ、ここから飛び下りればまず助かることはないだろう…
そして――
オレはそこから虚空へ身を投げ出した―― - 398 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 23:03:07.78 ID:2e1R9Mko
- 視界が逆さまになる、風を切る音が聞こえ、地面に激突する音が聞こえた…
それでも
オレは生きていた
「…………」
反射が働き、オレは死ぬことさえできなかった―――
地面に転がっている状態のまま空を見上げる
オレはこれからどうすればいいのだろう?
行く場所もなく、父を殺した罪人であるオレだけが死ぬこともできずに生きている
どれくらいそうしていただろうか?
不意に足音が聞こえてきた - 399 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 23:13:41.87 ID:2e1R9Mko
- 「―――――君かな?」
身を起こし、そちらを向く
そこに居たのは、スーツを着込んだ壮年の男だった
「誰…?」
聞いてはみたものの、誰でも構わなかった
オレにはもう、何もかもがどうでもよかったから…
「私は学園都市の者なのだが…」
学園都市――
その単語を聞いて心臓がドクンと跳ねた
「君達を狙っている者達がいると聞いて、君達を保護するために来たのだが…
間に合わなかったようだね…」
男が肩を落とす
「だが君が生きていただけでも不幸中の幸いだろう。君はこの後どうするんだい?」
「わからない…」
死ぬこともできないし、行く場所もない
この後のことなんて想像もつかない…
「よかったら学園都市に来ないかい?」
「学園都市に?」
「ああ、君を学園都市に入れる。これは君のお父上の願いでもあったからね…」 - 400 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 23:23:06.77 ID:2e1R9Mko
- 「父さんの…願い……」
そうだ、父はオレの力を褒めてくれた、オレの力を誇ってくれていた…
「どうかな?」
「行きます…」
学園都市に行こう、父の願いを叶えるために…
そして――
もしかしたら、学園都市にオレを必要としてくれる人がいるかも知れないから…
そうしてオレは学園都市にやって来た、学園都市にはオレの仲間がいる
もう化物扱いされないだろう、そんな希望を胸に……
だが、結論からいえば…
オレは学園都市でも化物だった――― - 401 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 23:34:53.15 ID:2e1R9Mko
- オレの力は学園都市でも異質だった…
みんながオレを化物のように敬遠した
オレを必要とする人間なんて、実験に参加している研究員くらいしかいなかった
仕方ないことだ――
オレみたいな奴が今更誰かに必要とされたいだなんて、都合が良すぎる…
一般の生徒等はオレを敬遠するが、研究員たちはオレに対しては表面上は
友好的だった
「――君!君のおかげで研究は順調だよ!」
実験の間の休憩時間、一人の研究員が話しかけてきた
「もうお昼だな、なにか好きなものはあるかい?なんでも用意させよう」
「ハン…、いやコーヒーが好きだ……」 - 402 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 23:43:00.70 ID:2e1R9Mko
- 「コーヒー?そんなものでいいのかい?」
研究員が面食らったようにそう言う
「ああ…」
「わかった、すぐ用意させよう」
研究員が去っていく
「ククッ、ハハハハハ!!」
笑いがこみ上げてくる、咄嗟に自分の嫌いなものを言ってしまうなんて
「そうだよなァ…」
父を殺したオレが、一人だけのうのうと生きてるなんて、幸せになろうなんて……
「そんなの、許せねェよなァ?」 - 403 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/29(木) 23:51:39.41 ID:2e1R9Mko
- オレは罰せられなくてはならない…
父を殺した罪を死で償わなくてはならない
でも、オレは死ぬことができない、オレは父の願いを叶えなければならないから――
「簡単だ」
オレに必要とされているのは能力だけだ…
それ以外を殺す、消してしまえばいい
オレはコンピューターをいじっている研究員の所へ行く
「なァ、頼みがあるンだ…」
「えっ!?な、何かな?」
研究員は明らかに動揺した仕草で返事を返す
「オレの名前を、過去の記録を消してもらいてェんだ」 - 404 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/30(金) 00:00:46.46 ID:WIXyBM6o
- 「は…?」
あまりに唐突な要求に研究員はしばし呆気に取られる
「聞こえなかったのか?」
「いや、しかし…、それは私の一存では…」
「なら、上に掛けあえ。それができねェなら、研究には協力しねェ」
「わ、わかった。しかし、名前を消してしまったら困るんじゃないか?
名前がないと色々と不便だろう?」
それもそうだ、何か適当に考えなければ…
ふと、いい考えが思いついた
「一方通行……」
オレの新しい名前、オレの価値はこの能力だけだ
ならば、それを名前にしよう――
この能力をオレの名前にしよう――― - 405 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/30(金) 00:07:20.68 ID:WIXyBM6o
- 「それは君の能力名では…?」
「やれ」
研究員を睨みつける
「ひっ!わ、わかった。上に掛けあってみる…」
研究員が転がるように部屋を出ていく
「さァ、始めるかァ…」
誰もが認める、認めざるおえない、そんな能力者になるために…
一方通行としての人生を――― - 406 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/30(金) 00:15:51.95 ID:WIXyBM6o
- ・
・
・
そうやってオレは生きてきた
多くの人間を傷つけて――
そして、オレはコイツ等を傷つけた―――
「おいし~!」
目の前でハンバーグを頬張る少女を見る
償い、なんて言うつもりはないが、早くコイツを研究所に、芳川の元に届けないと…
「ん?」
気付くと、打ち止めが手を止めてオレの方を見ている
「どうした?早く食え。食ったらとっとと研究所にいくぞ」
「研究所に行く前に、話があるの、ってミサカはミサカは切り出してみる」 - 407 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/07/30(金) 00:24:14.77 ID:WIXyBM6o
- 「話だァ?」
恨み事でも言うつもりか?
「チッ!言いたい事があンなら言いやがれ」
「うん、話っていうのはね。ミサカがお姉様ではなく、あなたの所へ来たもう一つの理由に
ついてなの、ってミサカはミサカは打ち明けてみる」
「もう一つの理由?」
研究所に連絡を取る以外の理由があるのか…
「それはね、一方通行、あなたに会いにたかったから、ってミサカはミサカは
言ってみる」
「何のために?」
「それはね、あなたと和解したかったから、ってミサカはミサカは告げてみる」
- 414 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 20:35:43.22 ID:DVdEjuko
- 「和解だと…?」
突拍子のない申し出に面食らう
「オレがオマエ達に何をしたのか、知らない訳じゃねェだろ?」
オレは自分の都合でコイツの仲間を一万人も殺したんだぞ?
「知ってるよ、ってミサカはミサカは肯定してみる」
「知ってンなら、なンでそンな寝言が言えンだよ?」
自分たちを殺そうとした相手と和解なんて馬鹿げてる
「理由は…感謝かな?ってミサカはミサカは説明してみる」
感謝だと?
「頭がおかしいンじゃねェか?」 - 415 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 20:43:35.41 ID:DVdEjuko
- 「変な言い方かもしれないけど、あの実験が、あなたがいなければ今のミサカ達は
生まれてくることさえ出来なかったから…、ってミサカはミサカは言ってみる」
「……」
「それにあなたが、ホントはあの実験を辞めたいって思ってたことだって知ってるよ、
ってミサカはミサカは…」
「それでも、オレが妹達を殺した。その事実は変わらねェ…」
「それは…」
オレの言葉に打ち止めが押し黙る
「この話は終わりだ、早く食っちまえ、そしたら研究所に連れてってやるから、
そこでお別れだ」
一方的に話を終わらせようとする
打ち止めはそれでも食い下がろうとする
「でも――」
しかし、言葉を発する前に、打ち止めはゴンッと音を立ててテーブルに突っ伏した - 416 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 20:48:54.72 ID:DVdEjuko
- 「オイ、どうした?」
打ち止めの顔を覗き込む
「!?」
テーブルに突っ伏した打ち止めは苦しそうに呼吸していた
「どうしたンだよ!?」
「ミサカは肉体的に未完成だから、ホントは培養層から出ちゃいけないんだけど…
なのに無理して外へ出たから…」
打ち止めが肩で息をしながら言った
「チッ!そういうこたァ早く言えよッ!とりあえず研究所に急がねェと…」
打ち止めを芳川の所へ連れて行くために立ち上がる
「その必要なない」
立ち上がったオレに声がかけられた - 417 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 20:57:51.49 ID:DVdEjuko
- 「誰だ、テメェは?」
声のした方を見ると、白衣を着た男が立っていた
「失礼、私は芳川さんの頼みで研究所を抜け出した打ち止めを探していたんだよ」
白衣の男がそう言った
「芳川の頼み?」
「ああ、培養器を抜け出した打ち止めを自分の代わりに連れ戻してくれとね」
男が打ち止めに近づく
「もう少し早ければベストだったが、仕方ない…」
打ち止めの様子を見て白衣の男がそう言った
「ソイツは大丈夫なのか?」
「培養器に戻し、調整すれば大丈夫だろう」 - 418 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:03:18.04 ID:DVdEjuko
- 男が打ち止めを抱える
「私は急ぎ研究所に戻るが、君はどうする?」
「オレは…」
なにを躊躇うことがある
打ち止めは助かり、オレは打ち止めから解放される…
これでいいんだ……
オレはコイツ等を傷つけたんだから、そんな奴がコイツの傍に居ていい筈がない
「オレはいかねェよ、後は勝手にしろ」
オレはそう言い放つ
「そうか、では失礼するよ」
白衣の男は打ち止めを抱えて店を出て行った
「あばよ……、打ち止め…」
去って行くその姿を見ながらオレはそう呟いた - 419 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:12:04.93 ID:DVdEjuko
- ・
・
・
「イテテ…」
キッチンで食事の準備をしている最中、昨日殴られた所が痛み、俺は情けない
声を上げる
「大丈夫、当麻?」
俺の部屋に居候しているインデックスが心配そうに声をかけてくる
「平気だよ、ちょっと殴られただけだからな」
「まったく!当麻はいっつも無茶なことばっかりするんだから。昨日だって女の子
助けたとか言って傷だらけで帰ってくるし…」
俺のもの言いにインデックスが呆れたように言った
「助けない訳にはいかないからな…」
「まあ、そこが当麻の良い所なんだけどね」 - 420 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:21:02.61 ID:DVdEjuko
- 「褒めても何も出ねぇぞ?」
「いつも通りおいしいご飯が出れば十分だよ!」
インデックスが目を輝かせる
「お前は…、遠慮って言葉を知らないのか?」
「ご飯以外のことでは少しは気を遣ってるよ!」
少しなのかよ、っとツッコミたかったがあえて言うまい…
「昨日だって、怪我してるんだから部屋で寝ればって言ったのにバスタブで寝るし…」
「いや、さすがに女の子と一緒の空間で寝るのはちょっと問題が…」
主に理性などの面で
「それに、俺に気を遣うんなら、まずは食べる量を減らすとかにしてほしいんですけどね」
「それは無理なんだよ!」
インデックスが即答する
「食べる量を減らしたら餓死しちゃうんだよ!」
餓死するって、俺ならインデックスの食べてる半分の量でも大丈夫だぞ…
そんな風にインデックスと騒いでいるとチャイムが鳴った - 421 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:28:15.00 ID:DVdEjuko
- 「ん?宅急便かなんかか?」
玄関へと向かい、覗き穴から外を窺う
「お~い、カミやん。僕や、ここ開けてーな」
覗き穴の向こうに見慣れた顔が見えた
「青ピかよ…」
「どうかしたの?当麻?」
もし、青ピにインデックスと暮らしてることがバレたら面倒なことになりそうだ…
「悪い!インデックス、ちょっと風呂場に隠れててくれないか?」
「どうして?」
「クラスの奴なんだよ、もしお前と暮らしてることがバレたら面倒だ」
「わかったんだよ」
インデックスを風呂場に隠れさせる
後はインデックスが見つからないように青ピを帰らせるだけだ - 422 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:37:34.20 ID:DVdEjuko
- 「待たせて悪かったな、ちょっと部屋が散らかっててさ」
玄関を開ける
「そんな気遣わんでもええのに、そんじゃお邪魔します」
青ピを部屋の中に招き入れる
「それで?お前がわざわざ家まで来るなんて、なんか用事でもあるのか?」
「まあちょっと話したい事が…。それと昨日あんなことがあったばっかりやし、近くに
来たんでカミやんの様子も見よ思ってな」
「お前…、思ったよりいい奴だったんだな。ただの変態かと思ってた…」
「ちょっ!カミやん、僕のことなんやと思ってんの!?」
「冗談だよ。それで、話したいことってなんだよ?」
「それなんやけどな、まあ昨日のこととも関係があるんやけど…」
青ピの雰囲気が変わる
「なぁ、カミやん。もうあんな危ないことはやめた方がええで?」 - 423 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:47:08.98 ID:DVdEjuko
- 「危ない事ってなんだよ?」
「昨日みたいなことや。そこらの不良相手にするんなら止めへんけど、あんな危なそうな
奴に喧嘩売るのはやめた方がええ」
青ピがいつもとは違う、真剣な表情で俺を見る
「しかたないだろ、女の子が暴力振るわれてたんだから。助けない訳にはいかないだろ?」
青ピの言葉にそう反論する
「そんでも昨日は返り討ちに遭っとったやないか。人助けするんはええけど、カミやんが
やられたら意味ないで…」
「放っとけって言うのかよ?」
「そうは言うてないで、ただカミやんの手に負えん相手に喧嘩吹っ掛けんなってだけや」 - 424 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 21:57:20.50 ID:DVdEjuko
- 「じゃあ昨日みたいな時はどうすんだよ?」
青ピに質問を投げかける
「そら逃げるしかないんちゃう?」
さすがに我慢の限界だった
「ふざけんなッ!誰かが暴力振るわれてるのに見て見ぬ振りしろってのかよ!?」
青ピに詰め寄る
「その通りや、みんなそうしてるやないの?だいたいカミやんは昨日あの子を助けられた
か?やられとったやないの。僕達が来なかったらカミやんだって危なかったやで?」
「それは…」
青ピの言うとおりだ俺は昨日の奴に敵わなかった…
「なぁ、カミやん。僕はカミやんを心配して言ってるんやで?あんま危ない事はせんで、
今まで通り僕等と適当にやっていこうや?」
「悪い、心配してくれるのは嬉しいけど…、俺は…」 - 425 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 22:07:15.00 ID:DVdEjuko
- 「いや、こっちが悪いんや。いきなり押しかけてこんなこと言って、今日はもう帰るわ」
青ピが立ち上がる
「でもなカミやん、僕はカミやんのこと心配してるんやで?僕だけやない、土御門や
子萌先生だってカミやんが怪我したら悲しむんや。そこんとこ考えといてや」
そう言って青ピは玄関から出て行った
・
・
・
「やれやれ、損な役回りやで、ホンマ…」
カミやんの部屋を出て、そう愚痴をこぼす
「まあ、しゃあないか。カミやんにはあんまり関わってほしないしな…」
建物から出た所で、携帯の着信音が響く
「誰や?ゲッ…」
表示された番号を見て嫌な気分になる
相手は女だが、こいつからの電話を喜ぶ気にはなれない
「もしもし」
「おい、糸目野郎。仕事だ」
電話の向こうから威圧的な声が聞こえる
「はぁ…」
予想通りの言葉に、僕は溜め息をついた - 426 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 22:13:33.94 ID:DVdEjuko
- ・
・
・
「たくっ、我ながら女々しいったらないぜ…」
研究所の前に立ってそう独り言を言う
打ち止めの様子が気になり、様子を見るために研究所まで来てしまった
幸いオレのパスはまだ生きているので、なんの問題もなく研究所に入れた
「芳川に様子を聞くだけだ…、聞いたら帰って、それで終わりだ…」
誰に言うでもなく、言い訳じみたことを呟きながら芳川の元へと歩を進める
「あら、また来たの?」
オレの顔を見た芳川が言った
「ああ、打ち止めの様子が気になってな…」
その言葉を聞いて芳川が怪訝な顔をする
「どうしてあなたが打ち止めのことを知っているの?」
芳川が戸惑うような声で返す - 427 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 22:21:12.72 ID:DVdEjuko
- 「どうしてってそりゃあ…、昨日打ち止めに会ったんだよ。そんで今日、お前に頼まれた
って奴に打ち止めを渡して…」
「詳しく聞かせて頂戴」
オレは昨日打ち止めに会ったこと、打ち止めが突然倒れ、そこへ現れた芳川に頼まれて
打ち止めを探していたという研究員に打ち止めを引き渡したことを説明する
「まずいわね…」
芳川が考え込むように唸る
「どうしたンだよ?」
「その研究員を名乗った男、天井とつながってる可能性があるわ」
「天井だと?」
天井はこの実験に参加していた研究者だ
実験が中止になってから見かけないから、他の研究所にでも行ったのかと思ったが…
「天井がどうかしたのか?」
「天井が打ち止めに不正なプログラム…、ウィルスを書きこんだみたいなの」 - 428 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 22:32:05.81 ID:DVdEjuko
- 「ウィルス?」
「そう、ウィルス。打ち止めは他の妹達と違い特別な役割を持っているの
妹達を繋ぐネットワークの管理者、打ち止めは妹達の司令塔なの。天井はその
打ち止めを介し、ウィルスを世界中の妹達に感染させることを狙っているようなの」
「ウィルスに感染するとどうなるンだ?」
「世界中に散らばる一万人の妹達が暴走し、周囲に対して無差別攻撃を実行するわ」
無差別攻撃…、そんなことをすれば妹達は一人残らず処分されてしまうだろう…
「止める方法はねェのか?」
オレの言葉に芳川が驚いたように目を見張る
「もしかして、協力してくれるのかしら?どういった心境の変化?」
「うるせェ、オレの質問に答えろ」
「方法はあるわ、ウィルスの発動は午前零時。それまでにウィルスを解除すればいい
その方法はいくつかあるわ。まず天井を探し出し天井からウィルスの解除方を聞きだし
解除する。次に打ち止めをここに連れて来てウィルスを解除する。解除の方法は
解析中だけど、零時までには間に合うわ。そして―――」
芳川が一旦言葉を切る
「多分、これが最も確実な方法。ウィルスの媒介、打ち止めを処分することよ」 - 429 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 22:43:21.51 ID:DVdEjuko
- 打ち止めを処分、つまりは殺すってことだ…
確かにそれが最も確実だろう、見つけて殺す、ただそれだけのことだ
ウィルスを解析する必要も、ここに連れ帰る必要もない
いままで散々やって来たこと、もっとも簡単な選択肢
それなのに――
「打ち止めをここに連れてくりゃいいンだろ?そンくらい楽勝だ。そンなチキンな方法に
逃げる必要なンてねェよ」
オレはそれを拒んだ
「驚いたわね、あなたがそんなことを言うなんて…」
「うるせェ、テメェはとっととウィルスの解除方法を探せ」
オレはそう言って、部屋を出て行こうとする
「ちょっと待って」
「なンだよ?」
「これを持って行きなさい」
芳川に封筒を渡される
「これは?」
「打ち止めのウィルスを書きこまれる前のデータよ。もしこっちに戻る時間がない時は
それを他の施設の学習装置なりを使って上書きすればウィルスを解除できるかも
しれない…」
「かもしれない?随分と弱気じゃねェか?」
「うまくいく保証はないからね…、こちらでウィルスの解析を行うから午前零時には
十分間に合う筈だから。これはあくまでも最終手段、できれば使いたくないわ…」
「こンなモンまで用意して、オマエも随分とお優しいことで…」
「お互いにね?」 - 433 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 23:33:23.73 ID:ORhynVgo
- 「そうかもな…」
軽口をたたきあう
オレは芳川に背を向け、今度こそ部屋の外へと走り出した
街をひた走る、どんな方法を取るにせよ。打ち止めを見つけなくては話にならない
「どこに居やがるンだ」
レストランで会った白衣の男…
あの男が天井とつながっていたのならば、二人は合流している可能性が高い
そして、ウィルス発動間近の打ち止めから目を離すとは考えられない
このことから考えれば、打ち止めは天井達と一緒に居るだろう - 435 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 23:41:58.31 ID:ORhynVgo
- この学園都市からは容易には出入りできない、そして行く宛てのない天井が行く場所は
そう多くはない筈だ
「頼むぜェ…、当たっててくれよ」
天井が行きそうな場所、かつ人目につかない場所…
その条件に合致する場所に向かって走り出す
そして目的の場所に到着する
量産型能力者の研究所跡地
天井がかつて研究に従事していた場所だ
「ビンゴだ」
廃墟となった研究所跡地には似つかわしくないスポーツカーの姿を見つける
車の隣では二人の男がなにかを話しているようだ
「アレは…、天井とレストランの男か…」
二人の姿を確認する
「ここで逃がす訳にはいかねェ」
零時にはまだ時間があるが、ここで逃げられれば厄介なことになりそうだ… - 436 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 23:50:47.30 ID:ORhynVgo
- ここで決める――
能力を使い、天井達との距離を一気に詰める
「な、なんだ!?」
「!!」
突如として現れたオレの姿に二人は異なった反応を見せる
天井は突然の出来事に狼狽しているが、もう一人の男はすぐさま懐から拳銃を取り出した
(まずは――あの男からだ――!)
男が撃った拳銃の弾が反射され、男の手にあった拳銃を砕く
「オラァ!」
そのままの勢いで男に蹴りを叩き込む
「グフッ!!?」
オレの能力で威力を増した蹴りを受けて男は吹き飛び、それきり動かなくなった
「ひ、ひぃぃ!?」
オレに気付いた天井が悲鳴を上げる - 437 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/07/31(土) 23:59:34.57 ID:ORhynVgo
- 「アイツは、打ち止めはどこだ?」
そこまで言って、その問いが不要であったことに気付く
スポーツカーの中、座席に座っている打ち止めの姿を確認する
「オイ、ウィルスを解除する方法を教える気はあるか?」
「だ、誰がお前なんぞに!」
「そうか…、じゃあしばらく――寝てろッ!」
天井の顔を殴りつける
「ぎゃッ!?」
天井は短い悲鳴を上げその場に倒れた
「チッ!鍵が掛かってやがるな…」
車のドアは鍵が掛かっていて開かない
「こっちは急いでンだ――よッ!」
能力を使いドアをこじ開ける
「オイ、打ち止め!しっかりしやがれ!」
グッタリしている打ち止めに声をかける - 438 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 00:07:34.53 ID:4CpLT8Uo
- 「スースー」
どうやら打ち止めは眠っているだけのようだ
「驚かせやがって…、おっと、芳川に連絡入れねェとな」
電話をかけて数コールで芳川が電話に出る
「オイ、芳川。打ち止めを保護した。そっちの調子はどうだ?」
「今、機材を持ってそちらに向かっているわ。解析はもうすぐ終わるから、時間には
余裕があるけど…、気をつけて、何者かがそっちに向かってるみたいなの」
「何者かだァ?オレがそこいらの奴に後れを取る訳ねェだろ?」
芳川の忠告を一笑する
「あなた一人ならね…、でもそこには打ち止めも居るでしょう?万が一に備えて
助けてくれそうな人を呼んでおいたわ」
「助け?誰だそりゃ…?」
そこまで言った所で、打ち止めの様子が変わったことに気が付いた - 439 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 00:15:45.26 ID:4CpLT8Uo
- 「―――――――――――――――――――――――――」
突如、打ち止めが暗号のようなものを口走り始める
「どうなってンだこりゃあ!?」
電話の向こうの芳川に問いかける
「そんな――!まだ零時まで時間があるのに!?」
電話の向こうの芳川の慌てる声が響く
「どういうことだ!?」
「ウィルスコードの起動準備段階に入ったみたいね…」
その言葉に愕然とする
「オイオイ!まだ零時まで時間があるぞ!?どうなってンだ!?」
「わからないけど…、一つ言えることは、私がウィルス起動までにそっちに間に合いそう
もないってことよ」 - 440 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 00:25:58.85 ID:4CpLT8Uo
- 「なッ!?じゃあどうすンだよ!?」
「残念だけど…、もう手は一つしかないわ…」
心臓が跳ね上がる、そう、わかってるんだ…
もうそれしか方法がないってことに――
「一方通行、打ち止めを殺しなさい…」
「フザけンな、フザけんじゃねェ!」
ここまで来て、それしかないのかよ――
「残念だけど、それしか方法がないの。今打ち止めを殺さなければ、妹達だけじゃない
もっと多くの人が犠牲になるのよ?」
それしか方法がない、オレがやらなければいけない――
思えばオレの人生はいつだってそうだった、誰かに道を示して貰って、
それしかないって言い訳をして――
結局オレは――
「何も変えられねェのかよッ!!」
ふと、ポケットの中の封筒の存在に思い至った
「コイツなら――」 - 441 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 00:37:38.81 ID:4CpLT8Uo
- 感染前の打ち止めの人格データ、これを今の打ち止めのデータに上書きすれば、
ウィルスは解除される
「なァ、芳川?お前に貰った打ち止めのデータを上書きすれば、打ち止めは元に
戻るンだよなァ?」
「そうだけど…、機材はないのよ?どうやって上書きするつもり?」
「オレが学習装置の代わりになる」
オレの力で生体電流を操れば可能な筈だ
「なッ!?」
芳川が驚愕の声を漏らす
「そんな、無茶よ!?いくらあなたが第一位だって言ってもそんなこと……
それに多くの人の命がかかっているのよ!?そんな一か八かのかけなんて――」
「オレは――コイツを助けてェンだよ。助けられるかも知れねェのに……
あきらめるなンて、できる訳ねェだろ?」
「もし、失敗したら…、どうするの?」
オレと芳川の間を沈黙が満たす
「そん時は、死ンで詫びてでもしてやらァ…」
「そう…、なら私はもう止めないわ、一方通行、必ず成功させるのよ?」
「ハッ!オレを誰だと思ってやがる!?」
オレは、学園都市の第一位
「一方通行だぜ?」 - 442 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 00:47:08.00 ID:4CpLT8Uo
- 「頼むぜ――、オレの能力―――」
打ち止めの額に手を乗せる
コイツを救うために、力を貸してくれ―――
能力を駆使し、打ち止めの中からウィルスを消去していく
「削除…削除…削除…」
作業は問題なく進んでいく
「あと10秒で終わりだ――」
その時、嫌な音が聞こえた
「邪魔を、するな…」
天井がオレに銃口を向けている
(チッ!?もう動けるようになったのかよ!?)
今は打ち止めのウィルス消去に全演算能力を使っている――
反射にさける力なんてない!
(クソッたれがァ――!)
そして――
天井が引き金を引いた - 443 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 00:54:27.25 ID:4CpLT8Uo
- グチャという肉の裂ける音と、反射が発動した音が耳に届いた
「ギャア!?」
間一髪間に合った、と言っていいのかわからないが、反射が間に合い、天井の手の
拳銃が砕ける
「ぐ、ぅ――」
だが銃弾はオレの頭に命中している、頭に損傷を負ったせいで演算能力が低下している
ようだ…
オレは使用できる演算能力を傷を塞ぐことに使用する
情けない話だが、それで使用できるすべての演算能力を使い果たしている――
「上等だ…」
敵は天井のみ、しかも天井は今の反射で手を負傷し、丸腰だ…
生身のオレでも勝ち目がある
「う…ご・・くな…」
「!!」
声のした方を見る、先程吹き飛ばした男がこちらに拳銃を向けている - 444 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:00:13.02 ID:4CpLT8Uo
- (予備の銃を持ってやがったか――!)
「や、やれ!殺せ!!」
天井の言葉に呼応するように男が引き金を引こうとする
「チッ!!」
それを回避しようと足を動かす
だが、発砲音は響かず、代わりに男の断末魔が響き渡った
「ガッ―――!!?」
男が血を噴き出しながら倒れる
「な、一体なに――がッ!?」
今度は唖然とする天井が血を噴き出しながら崩れ落ちた
「狙撃か!?」
敵の姿は見えない、狙撃ならば次のターゲットはオレだ――
だが、次の攻撃は訪れない
そして、辺りにバイクの駆動音が響き渡った - 445 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:06:16.34 ID:4CpLT8Uo
- バイクが停止し、バイクから一人の少女が降り立つ
「初めまして、一方通行。あたしは番外個体、よろしくね?」
「妹達か?」
オレの言葉を聞いた番外個体が眉をひそめる
「また、それ?たくっ、あたしをあんな欠陥品と一緒にしないでよね」
コイツには違和感があるが、そんなことはどうでもいい
「天井達を殺ったのはテメェか?」
「やったのはあたしじゃないけどね、あたしの仲間」
「テメェの目的は打ち止めか?」
「そうだよ」 - 446 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:14:44.66 ID:4CpLT8Uo
- それなら話は早い
「コイツのウィルスコードは解除した、もう暴走の心配はねェ。天井達もいない、
もう目的は済んだだろ?」
これでこの件は一件落着の筈だ
「アハハハハハ!!」
だが、番外個体が突然笑い出す
「何がおかしい?」
「いや、勝手に勘違いしてるのがおかしくてね…。まあ、あたしの目的の一つは妹達、
欠陥電気の暴走の阻止、それは間違ってないんだけどさ…」
「目的の一つ?」
他の目的があるということだろう、だが、見当がつかない
学園都市に反抗した天井の殺害?いや、それならもう終わってる筈だ…
「あたしの目的はねぇ、欠陥電気の暴走阻止と一緒に行える、楽な仕事だったんだけど、
あなたが阻止しちゃったからね。まあ結局やることは変わらないんだけどさ…」
暴走阻止と同時に行える――その言葉を聞いて背筋に寒気か走る
「あたしの目的は打ち止めの処分よ」 - 447 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:25:52.62 ID:4CpLT8Uo
- 「なンだとッ!?」
予想できる、最悪の事態だ
能力の使えないこの状況で、コイツを含める相手と戦わなければならない――
「なンで、打ち止めを殺す?コイツはテメェらの司令塔の筈だ…」
「だーかーらー、あたしは欠陥電気とは違うんだってば。何回言わせるのよ?」
コイツは妹達とは別口ってことか――
「それでもわからねェ、ウィルスを解除する確実な手段として打ち止めを殺すンなら
まだ理解できる。だが、ウィルスは解除した、それでも打ち止めを殺すってのか?」
「そゆこと、打ち止めを殺す、それ自体に意味があるんだよ」
打ち止めを殺すことに意味が?
「最近の欠陥電気はさぁ、生きる意味だとかなんとか、訳のわからないことを言いだしてさ、
その上、司令塔があんな甘っちょろいガキじゃあ、今後何しでかすかわかったもんじゃない
ってことで、打ち止めを殺して、欠陥電気の司令塔を替えて、元の従順な欠陥電気に
戻そうってわけ」 - 448 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:32:33.10 ID:4CpLT8Uo
- 「自分達にとって都合が悪くなったから殺すって言うのかよ?フザけンじゃねェ!
そんな理由でコイツを殺されてたまるかよッ!」
「アハハ!!自分の都合で殺すなって?どの口がそんなこと言えるのよ!?
あんただって散々殺してきたじゃない?自分の都合で欠陥電気を山のようにさぁ!!?」
心臓がドクンと跳ね上がる、番外個体の言うとおりだ
オレは一万人以上の妹達を殺した、そんなオレにコイツを止める権利なんてないのかも
しれない――
「それでも――」
「オレにどれだけの罪があっても――」
「今、コイツを見捨てる理由になンて、コイツが殺されていい理由になンて、ならねェ
だろうがッ!?」 - 449 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:40:29.67 ID:4CpLT8Uo
- 「殺されていい理由にはならない、か」
番外個体が口を笑みの形に歪ませる
「じゃあさ…、そいつが殺されなくていい理由はあるの?」
番外個体はそんなことを口にした
「なに…?」
「だからさ、殺されなくていい理由。あんたの言った殺される理由がないってのは、まあ
突っ込まないで上げるけど、あたしはそいつを殺さなきゃならないのよねー
だからそいつがなんで殺されなくていいか、理由がちゃんとないと引き下がれない訳よ?
まさか人権なんて言い出さないわよね?そんなのこのここでは通用しないわ、そもそも
ソレは人権なんてない造り物なんだから!!」
番外個体は心底楽しいとでもいうように笑みを浮かべる
「――――させねェ」
その時、やっと気付いた、オレがなぜこんなことをしているのか―― - 450 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:50:31.05 ID:4CpLT8Uo
- 必死になって街を駆けまわり、死にそうになってまでコイツを助けたかった理由
オレはやっと答えに辿り着いた――
御坂美琴が、佐天涙子がオレに立ち向かって来た理由―――
「―――守るから」
「ハァ?」
それはオレも昔、持っていたものだった
でも、遠い昔に大切な人と一緒に失くしてしまったもの――
「オレが守る!コイツは、打ち止めはオレが守るからッ!テメェなンぞに、誰にも殺させねェ!
それが答えだッ!!」
アイツ等を動かしていた想い、誰かを守りたいという想い――
オレはコイツを守りたいんだ――
オレに笑顔を向けてくれたコイツを――― - 451 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 01:57:24.69 ID:4CpLT8Uo
- 「なによ、そのバカみたいな答え?いいわ、その体で守れるって言うんなら―――
守ってみなよ!?」
番外個体がオレに向かって疾駆する
能力を戦闘に使用できない今、頼りになるのは己の体のみ
(泣きたくなってくるぜ…)
それでも戦わなくては、オレの守りたい人を守るために――
番外個体に向かってパンチを放つ
「当たるかよッ!」
番外個体はそれを易々と避ける
そして、そのままオレの顎にアッパーを叩き込んできた
「ガッ!?」
体が衝撃で浮き上がるような感覚に襲われる
「シッ!」
態勢を崩したオレの頭部に強烈なフックが見舞われる
「ごふッ!?」
打撃の衝撃で弾き飛ぶ - 452 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:02:26.93 ID:4CpLT8Uo
- 「あれだけ言っておいて、これでお終い?それはないんじゃない?」
笑いながら番外個体が近づいて来る
早く立ち上がらないと――
「まだ…、まだだ…」
ガクガクと揺れる足を押さえつけ立ち上がる
「そう来なくっちゃね♪」
立ち上がったオレの頭部に目にも止まらぬ速さでパンチが叩き込まれる
「ゲフッ――」
口から鮮血が迸る
意識が遠のいていく―― - 453 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:11:01.58 ID:4CpLT8Uo
- 「打ち止め………」
もう立ち上がる力さえ、体には残っていない…
それでも地面を這って打ち止めへと近づく
「しつこいねぇ、しつこい男はモテないよ?」
番外個体がオレを蹴り飛ばす
もはや悲鳴を上げることもできず、仰向けに転がされる
「もう時間がないからね、あんたはそこで見てな。あんたが守ろうとした奴が殺される
瞬間を…」
オレはまた守れないのか?
オレのやったことはなんの意味もなかったのか?
いや、オレのやったことに意味はあっただろう――
空に蒼い星が見えた――
「今度は……間に合ったンだな………英雄…・・・・・・・」
- 454 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:18:48.11 ID:4CpLT8Uo
- ・
・
・
事の始まりは一本の電話だった
「あれ?知らない番号だ…、誰からだろう?」
「もしもし?」
「佐天涙子さん?」
電話の向こうから、女の人の声が聞こえてきた
「どちら様ですか?」
「私は芳川桔梗、妹達の面倒を見ている者よ」
「妹達の?」
「ええ、悪いんだけど時間がない。妹達が危ないの、あなたの力を貸してくれないかしら?」
あまりにも突拍子のない申し出だ、でも、妹達の危機だというなら放ってはおけない
「……説明してください」 - 455 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:27:21.01 ID:4CpLT8Uo
- 芳川さんと名乗る人から説明を受ける
ウィルスにより妹達が危機に瀕していること
それを助けるために一方通行が協力していること
そして、一方通行達の元へ第三の勢力が近づいていること
<御堂、これは罠かもしれんぞ?>
正宗が私にそう忠告する
「罠かもしれない、でも、妹達が危ないかもしれない…。だったら答えはもう決まってる
でしょ?」
<そう言うと思ったぞ…、そういうところは前の御堂とそっくりだ>
「それじゃあ、行くよ?」
<応ッ!>
正宗を装甲し、芳川さんに示された場所に向かう
そして、現在に至る - 456 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:34:49.35 ID:4CpLT8Uo
- 降り立った私の目に飛び込んで来たのは、車の助手席に横たわる女の子と、それに
近づこうとしている少女
そして、傷だらけで倒れている一方通行
芳川さんに聞いた打ち止めというのは車に座っている少女だろう
一方通行も敵ではない――
「あらら、もう少しで片付けられたんだけどなぁ…」
残った少女が悪意を込めた笑みでこちらを見る
「フッ――!!」
彼女を敵と認識する、生身の人間が相手だ、刀は必要ないだろう――
勢いを付けて疾駆する
「おっと!」
少女が、まるで軽業師のように華麗に後方に飛び退いた - 457 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:42:40.58 ID:4CpLT8Uo
- 「!」
その少女の顔を見てギョッとする
「妹達?」
「またかー、まあ、今学園都市で噂の正宗さん相手なら、どっちみち自己紹介するつもり
だったんだけどね…。あたしは番外個体、出来損ないの妹達とは違う、OK?」
彼女の、番外個体のものいいにカチンとくる
「妹達は出来損ないなんかじゃないわ」
「出来損ないよ、欠陥電気て名前が全てを物語ってるわ」
そう言いながら、番外個体は私との距離を少しずつ話して行っている
<御堂、どうする?> - 458 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:51:57.88 ID:4CpLT8Uo
- 番外個体は私から距離を取ろうとしている
つまりは逃げようとしているのだろう…
生身対劒冑では勝敗は火を見るより明らかだ
そしてこちらには怪我人と眠っている女の子が一人――
「逃げるんなら逃げなさい、あなたに興味はないわ…」
<……>
この二人の安全を優先しよう、正宗も異論はないらしく、何も言わなかった
「いいの?よかったー。さすがに生身でソレを相手にするのは不可能だもんね」
番外個体はそう言って置いてあったバイクへと近づき、バイクに手を置いた
<コードを入力してください――>
「!!?」
番外個体がバイクに触れた瞬間、機械音声が響いた
「生身じゃあ勝てない…、だから―――」 - 459 : ◆JZzNmabVtI [saga ]:2010/08/01(日) 02:57:46.32 ID:4CpLT8Uo
- 「あたしも同じものを使わせてもらうわッ!!」
「模造超電磁砲(レールガン・レプリカ)」
その刹那バイクが変形していく――
甲高い音が響き、バイクと少女の姿は消え
白い鎧が姿を現した
「なッッ!!?」
<劒冑――だとォ!!?>
「さあ!第二ラウンドと行きましょうッ!!!?」
- 467 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 19:29:20.54 ID:4Id4wvso
- 番外個体は刀を引き抜くと、獣のような声を上げながら地を蹴った
同時に白い劒冑の合当理が点火される
<来るぞッ、御堂ッ!>
正宗が警告を発する
私も腰から太刀を引き抜き、迫りくる番外個体を迎え撃つ
「ガァァアアアア!!」
雄叫びを上げながら白い劒冑が一直線に飛び込んでくる
蒼い劒冑と白い劒冑が激突した――
刀と刀がぶつかり合い、まばゆい火花を散らす - 468 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 19:39:09.10 ID:4Id4wvso
- 突進の勢いで吹き飛ばされそうになる体を、足を踏ん張りなんとか地面に繋ぎとめる
私と番外個体はそのままギリギリと音を立てて鍔迫り合いを行う
(このまま押し切れるかッ!?)
純粋な力はこちらの方が上のようだ、私は番外個体の体を僅かずつだが押している
そのまま一気に押し切ろうと力を込めた瞬間――
番外個体が体を引いた
「―――ッ!?」
力の行き場を失くし、前のめりになった私の顔面に番外個体の拳が炸裂した
「あぐッ!!」
体が後方へと仰け反る
そこへ、追い打ちとばかりに蹴りが放たれる - 469 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 19:48:19.76 ID:4Id4wvso
- 防ぐことはできない――
そう悟った私は、後ろに仰け反る勢いを利用し、そのまま後ろに倒れることで回避する
そして、地面に倒れそうになったところで合当理を吹かし、その勢いを利用し跳ね上がり
番外個体に斬撃を見舞う
「クソッ!」
刀が白い劒冑の甲鉄にぶつかり、ガィンという音と共に火花を散らす
番外個体は弾かれたように後ろに飛び退き、私との距離を再び離した――
今が好機、とばかりに私は番外個体を追撃する
「はッ!」
番外個体目がけて跳躍し、斬撃を浴びせようとする
「甘いッての!」
番外個体はそれを体を半身にすることでかわし、攻撃後の無防備な私に
カウンターを仕掛けてきた - 470 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 19:54:06.24 ID:4Id4wvso
- 「グぅッ!」
刀が肩口に直撃する
斬撃自体は正宗の分厚い甲鉄に遮られているが、すさまじい衝撃が体を揺さぶる
刀を横に切り払い、反撃を試みるが
番外個体はそれを上に跳躍することでかわすと、またも遠くへ着地した――
<ええいッ!まるで猿のような奴じゃッ!!>
正宗が忌々しげに吐き捨てる
私も正宗のように悪態の一つもつきたい気分だった - 471 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:01:14.34 ID:4Id4wvso
- 辛うじて一太刀浴びせることには成功したものの…
それ以外の攻防を見る限り、私の劣勢は明らかだ
攻撃を最小限の動作でかわし、的確に反撃を叩き込んでくる番外個体の動きに
翻弄されている
ここに至って、私は己の戦闘技術の拙さを痛感した
思えば、今までの戦いは正宗の力で押し切ったものばかりだ……
力押しでない唯一の戦い、一方通行との戦いでさえ、相手が戦闘に関しては
素人同然であり、素人同士の戦いで勝利を収めたにすぎない
力押しが通じない相手、なおかつ戦闘技術も上回っている相手との戦いは
想像以上に旗色が悪い - 472 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:11:07.53 ID:4Id4wvso
- 「どうしたものかねぇ…」
愚痴を言っていても始まらない
どうにかこの戦況を打開する方法を見つけなくては――
<御堂、奴をなんとかして空中へと追いやるのだ。奴の体捌きも空中では力を
発揮できまい>
正宗の提案を受け入れる
地上では相手が優位――
私の力量が突然上がるなんて奇跡は期待するだけ無駄だろう…
ならば、状況を変えることで相手を引きずり下ろすしかない - 473 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:17:40.61 ID:4Id4wvso
- 私も劒冑同士の騎航戦の経験はないが、それは相手も同じ筈だ
そうでなくても、このまま相手の得意なフィールドで戦い続けるよりは賢明だろう
問題は―――
どうやって空中戦に持ち込むか、ということだ……
この短い攻防の中で、私が己に不利だと感じたように
番外個体も己の優位を感じ取っていると推察できる…
一方通行との戦いの後、正宗の指導の下剣術の鍛錬に従事しているが、
まだ素人の域を脱したとは言えない
それは相手から見ても容易にわかるだろう - 474 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:28:41.99 ID:4Id4wvso
- どうする?
どうすれば彼女を空へと引きずりだせる?
答えは簡単だ――
正攻法で敵わないのなら、それ以外の手で攻めればいい―――
「正宗、私に考えがあるんだけど……」
正宗に作戦を説明する
<成程…、その方法ならばあやつを空へと追い立てることができるやもしれん>
番外個体は刀を肩に担ぐように構えたままこちらを窺っている
こちらの次の行動を警戒しているのだろう
私は戦場を確認する
番外個体の右手側にはフェンス、その向こうには森が広がっている
対して、左手側には彼女の動きを遮るものはない…
この配置ならば、私の思惑通りにことを運ぶことだできる - 475 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:35:39.33 ID:4Id4wvso
- 「行くよッ!正宗――!」
機巧を発動させる、劒冑の右手首から筒が顔を覗かせる
飛蛾鉄炮・孤炎錫――
劒冑の甲鉄と仕手の体の一部を鉄針入りの爆弾に変え、放つ機巧
これを使い、番外個体を空へと追いやる――
「ギ、ィ――!」
体の一部を剥ぎ取られる感覚に歯を食いしばる
右手の照準を合わせる
番外個体にではなく、その少し左、彼女の回避ルートを塞ぐように - 476 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:42:35.81 ID:4Id4wvso
- 「正宗七機巧――」
<飛蛾鉄炮・孤炎錫!!>
<DAARAAAAHHH!!>
けたたましい音を響かせて、筒から弾丸が放たれる
そして――
孤炎錫の砲弾が放たれるのと同時に――
私も番外個体に向かって駆けだした - 477 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 20:52:06.57 ID:4Id4wvso
- 「なんだとッ!?」
番外個体が驚きの声を上げる
思った通りだ、彼女は名乗ってもいない正宗の名前を知っていた
ならば正宗の兵装についての知識も持っている筈…
私はそう考えた、そして予想は的中した
彼女は孤炎錫の威力を知っている
彼女から見て右にはフェンス、その先は森
そちらに避けるなんて愚策を彼女は取らないだろう…
左に避けようにも孤炎錫は左に放たれている
左に避けたのでは大打撃を喰らうのは明らかだ
右も左もダメとなれば、残された選択肢は上か後ろしかない
彼女は孤炎錫を避けるために宙へと飛んだ - 478 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 21:01:30.68 ID:4Id4wvso
- 私はそれに追いすがるように前進する
常識的に考えればあり得ない行動だ、その行動は孤炎錫の直撃を受けることを
意味している
いかに正宗の甲鉄が堅固だとしても、それは自殺行為に他ならない…
目の前で孤炎錫の砲弾が爆発する
そう、爆発しただけだ―――
爆発と同時に無数の鉄針をまき散らす筈の砲弾が、爆音だけを残して四散した
これはブラフだ――
放たれた砲弾には僅かな火薬しか入っていない
「てりゃアッ!!」
刀を裏返し、空中の番外個体目がけて跳躍する - 479 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 21:10:01.89 ID:4Id4wvso
- 「チィッ!」
すんでのところで番外個体の刀に阻まれる
攻撃は防がれたが、構わない
合当理の出力を全開にし、番外個体の劒冑ごと空へと飛び立つ
「この野郎ッ!」
かなりの高度まで上昇した所で、番外個体が私に蹴りを見舞う
弾かれた番外個体が合当理を吹かし、私の下をすり抜けるように騎航する
<逃がすなッ!御堂ッ!!>
急旋回し、白い劒冑に追いすがる - 480 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 21:21:16.03 ID:4Id4wvso
- <ぬぅ!!騎航速度は奴の方が上かッ!!>
正宗が悔しそうに言った
「…………」
なにか違和感を感じる
彼女は私に背を向けたまま、水平に騎航を続けている
なぜ彼女は地上に降りようとしないのだろう?
こちらの追撃を恐れているからか?
何かが胸に引っ掛かる…
<どうする?このままでは埒が明かんぞッ!?>
どうする?
正宗には遠距離攻撃の機巧が備わっているが、いかんせん距離が空いているため
命中させる自信がない…
加えて正宗に備わっている遠距離攻撃の手段はどれも己の体を削らなければならない
ような代物しかない
無駄打ちすれば相手よりもこちらが先に戦闘不能に陥ってしまう… - 481 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 21:29:47.18 ID:4Id4wvso
- 思案しているうちに敵機との距離が更に広がって行く
「相手が地上に降りないように警戒しながら様子を――」
その時、背筋に悪寒が走った
「あれは――?」
なんだろう?
目の前の景色の一部がボヤけているように見える
その瞬間、ガキィンッっという音が耳に響いた――
「ガッ――!?」
<おあッ!?>
何が起きたんだろう?
「あれ?」
視界の上方、空が見えている筈のそこに、地上の明かりが見えた―― - 482 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 21:39:54.02 ID:4Id4wvso
- <攻撃だとッ、一体どこからッ!?>
正宗の言葉で事態を把握する
攻撃を受けた、それも頭部に一撃を喰らったようだ
「ぅ…、正宗、損傷は?」
<案ずるな、大したことはないッ!>
頭がくらくらする、通常兵器の狙撃程度ではこれ程のダメージは受けないだろう
しかし、番外個体が攻撃してきたとは考えられない
彼女の姿は視界に捉えていたし、何よりこちらに背を向けた彼女が攻撃を行う
ことは不可能だ
「付近に別の敵は?」
考えられるのは、彼女と同じように劒冑用の兵装を持った存在
別の劒冑が存在する可能性だ
<吾の索敵探査にはあの女の劒冑の反応しかな―――!!?>
正宗の声が半ばで途切れた - 483 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 21:48:36.83 ID:4Id4wvso
- 正面を見る、いつの間にか番外個体は転進していた
だが問題はそこではない…
番外個体は刀を鞘に納めている
「あんたにとっておきを見せてあげる…」
通信か、金打声か、仕組みはわからないが
劒冑の中に番外個体の声が響く
「あたしの レールガン を――」
番外個体の劒冑、腰に戻した刀が光を放つ―――
- 484 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 22:00:06.38 ID:4Id4wvso
- <あれは、まさか…、湊斗景明のッ!?>
正宗が明らかに狼狽しているのが感じられる
<御堂ッ!この体勢であれは防げんッ!一旦退くのだッ!!>
正宗の様子、そしてレールガンという言葉――
私にもあの攻撃が今の状態では防ぎ切れないものであると感じた
幸いにして、距離には余裕がある
加えて正宗は低空でも速度を出すことができる、この事から撤退を決断する
せっかく空中戦に持ち込んだのに、それを放棄するのは癪だが、やむを得ない
一旦遮蔽物の多い森の中に逃げ込み、体勢を立て直す! - 485 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 22:08:50.61 ID:4Id4wvso
- 番外個体に背を向け
地上を目指し降下する
<――!待て御堂ッ!熱源探査に反応ありッ!これは…正面だとッ!?>
正宗の声と同時に、先程と同じように視界の一部がぼやけているのを認識した
「お嬢ちゃん、悪いんやけど、もう少し僕等に付き合ってもらうで?」
飄々とした男の声が響く
なんで気付かなかったのだろう?
ここは学園都市だ、様々な能力を持った能力者がいる
重福さんのような姿を消す能力者、レベルアッパーに頼らずに自力で姿を消せる
能力者だって存在する筈だ――― - 486 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 22:17:59.01 ID:4Id4wvso
- レーダーを見る
後ろから番外個体の機体が迫って来ている
このまま正面からの攻撃を受ければ弾き飛ばされ、無防備な状態であの一撃を
迎え入れることになるだろう―――
何とかしなければ…、反撃まではいかずとも
この状況を切り抜けなければ…
死神の手が私の首をそっと撫でる
体中から冷や汗が噴き出す
<御堂ッ―――!!>
もう時間がない
私は一か八かの捨て身の決断をする―――
- 487 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/04(水) 22:21:06.96 ID:4Id4wvso
- 今日はここまでです。
次の投下日時は追って連絡します。
ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
- 488 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 22:22:36.44 ID:XwHLG72o
- 続きが気になる引きだのぅ~乙乙、乙でした
- 489 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 22:33:51.29 ID:4adSN3Mo
- なんという引き際
乙 - 490 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/04(水) 22:44:03.72 ID:2xZUi/Ao
- 双輪懸で下から上へ追い縋るとかないわー
さすが無能力者と箱入剱冑 - 491 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/05(木) 00:48:57.67 ID:3LSXqAAO
- 乙なんだよ!
2014年1月22日水曜日
佐天「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」 1
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