2014年1月23日木曜日

佐天「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」 2

502 ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 20:08:31.20 ID:FMLDU8go
前方から迫りくる不可視の劒冑
それの目の前で合当理の出力を切る

そして体を捩り、前後を反転させる

これは賭けだ、目の前の敵に背を向けるという自殺行為――

だが勝算はある

まず第一に目の前の敵が姿を消す能力者である、という点だ

能力は一人に一つが原則、目の前の敵が姿を消すという能力を使用している以上、
他の能力を使用してくる可能性はない……

加えて先程の攻撃の威力、頭部にヒットしたにも関わらず、それほどの損傷を
受けなかったことから、目の前の敵の攻撃が正宗の甲鉄の前では脅威になりえないと
判断する

故に、前方の敵に背を向けてでも、後ろから迫る番外個体に対処することを優先する――

 
503 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 20:14:47.15 ID:FMLDU8go
頼みは正宗の甲鉄の強度―――

「なッ!?」

私の行動に目の前の敵が驚きの声をあげる

ガキィィン――、と金属のぶつかり合う音が響き、背中にすさまじい衝撃が伝わる

さすがと言うべきだろう、前方の敵は突然の事態にも関わらず
己の任務を遂行したようだ……

攻撃の衝撃で前に押し出されると同時に合当理を再び点火し、番外個体と相対する

<回避は、望めぬか――>

もはや回避は望めない、真正面から防ぎきるしか道はない!

「覚悟を決めるよ、正宗……」
504 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 20:22:53.91 ID:FMLDU8go
番外個体が目の前に迫る

そして―――

「電磁抜刀(レールガン)―――!!!」

目の前に閃光が奔った

まるで雷鳴のような音を響かせて、鞘からすさまじい速度の一撃が繰り出される

「ガ――――!!」

辛うじてその一撃を受け止める

だが、その威力に受け止めた刀ごと体が弾き飛ばされ、
私はそのまま真っ逆さまに地面へと落ちていく――
505 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 20:36:25.52 ID:FMLDU8go
<しのぎ切ったかッ!?>

まだだ――

真っ逆さまに落下している私に、不可視の劒冑が追撃を加えようと接近している

<しつこい奴らめッ!>

この状態では反撃はおろか、防御すらままならない
文字通り、手も足もでない状況だ

ならば――――

「正宗ッ!」

それ以外を使えばいい

<応ッ!!>

不可視の機体が接近していることをレーダーで確認する


「正宗七機巧――」
<隠剣・六本骨爪(おんけん ろっぽんこっそう)!!!>


「ガ、ハァッ――――――」


機巧の発動と同時に、甲鉄で覆われた肋骨が私の胸を突き破る
506 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 20:46:29.45 ID:FMLDU8go
本来敵を捕獲するための機巧を、敵を迎撃するために使用する

なぜなら、このまま敵を捕獲してしまってはそのまま仲良く地面に叩きつけられて
しまうからだ

そして、六本の肋骨を使い、六ヶ所に同時攻撃をを行えばどれか一つは命中する筈……

「うわッ!?」

思惑通り、何もない筈の虚空から火花が飛び散る

「おい、糸目ッ!」

「奴さんも随分と便利な機能付けてるみたいやなぁ……」

そのまま落下し、もうすぐ地面というところで、機体の体勢を立て直す
507 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 20:59:49.54 ID:FMLDU8go
「損傷はッ!?」

森の木々の間に着陸し、正宗に被害状況を確認する

<先程の攻撃で母衣(ほろ)に損傷を負った、だが騎航に問題はないだろう>

よかった、思ったより被害は軽いようだ

<先の行動はさしもの吾も肝を冷やしたぞ……>

「ごめん……」

<奴の電磁抜刀の威力の無さに救われたな…。認めるのは癪だが、先の一撃が村正
の放つものと同等であったら吾等は撃墜の憂き目に遭っておっただろうな>

あれで威力が無いか…、だが番外個体の一撃が脅威な事に変わりはない

そして、もう一騎の劒冑も厄介だ……



補足説明
母衣:ウィングのこと
飛行の補助、姿勢制御の役割を持つ
508 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 21:09:31.71 ID:FMLDU8go
おそらく光学操作系の能力で姿を消しているのだろう

熱源探査で大まかな位置を捉える事はできるが、細かい位置、攻撃を放ってくる
角度がさっぱりわからない

この状態では反撃どころか、攻撃を捌くことすら至難の技だ……

「一体どうすれば……」

その瞬間、隣にあった木がけたたましい音を立てて破裂した

「!」

<追撃かッ!?>
509 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 21:21:53.07 ID:FMLDU8go
その場から駆けだす

敵は降下する素振りを見せず、空からは嵐の日のように電撃が降ってくる

さっきとは事情が変わってしまった
数の上での有利を得た以上、木々が多く動きを遮られる地上よりも、動きを制限されない
空の方が有利と判断したのだろう

番外個体に空でのアドバンテージも取られてしまったということだ―――

<このままでは埒が明かんぞッ!?>

正宗の言うとおり、このままではジリ貧だ

だがあの二騎を相手を同時に相手にするのは危険すぎる

どうにかして片方を撃破する、もしくは――

「片方だけを相手にする、そんな状況が作れれば……」
510 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/08/12(木) 21:27:25.41 ID:LjfICnU0
http://www23.atwiki.jp/satousan/pages/40.html
これを見ればよろし
511 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 21:31:27.61 ID:FMLDU8go
      ・
      ・
      ・


研究所の一室、書類を整理していると携帯が虫の羽音のような音を立てて着信を告げた

「ふむ……?」

ポケットから携帯を取り出し、表示されている番号を確認する

見たことのない番号だ

登録はされていないし、心当たりもない……

それでも出ない訳にはいかないだろう、そう思い通話ボタンを押す

「もしもし、木原です」

「木原 京君、で間違いないかな?」

携帯の向こうからそう問いかけられた
512 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 21:38:53.65 ID:FMLDU8go
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

努めて冷静に対応する

「名乗る程の者ではないさ、ただの一介の医者にすぎないよ……」

この声、どこかで聞いたことがあるような……

「悪いんだが時間がないんだ。用件だけ手短に言わせてもらうよ、佐天涙子君に危機が
迫っているんだ」

「佐天さんに!?どういうことですか!?」

暗部が動いたのか!?
しかし、彼女は依然として研究価値を有している存在
彼女を抹殺するような行動をする前には何らかの予兆があってもいい筈……

「彼女の居場所のデータは送った、彼女を助けたいと思うのなら……
どうか僕の言葉を信じて欲しい……」

そこで電話は途切れた
513 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 21:51:09.55 ID:FMLDU8go
「ちょっと!?待って下さい!!」

返事は返ってこず、携帯からはツーツーという音が返ってくるだけだった

「まず、落ち着かなくては……」

今にも駆けだしたい衝動に駆られるが、罠の可能性も考えられる
彼女はあの一方通行を退ける程の力を持っている、どんな能力者が相手でも戦える、
最悪でも逃げ切るくらいはできるだろう……

もし、彼女が危機に陥るとすれば同じ劒冑を纏った相手……

研究室のPCで検索をかける

現在存在している劒冑には、データ収集及び、位置把握のための装置が付けられている

もし、先程受け取ったデータに該当する劒冑があれば―――
514 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 22:01:26.01 ID:FMLDU8go
該当あり――

先程のデータと同じ地点、そして今まさに戦闘を行っている劒冑が存在する――

もはや疑いの余地はない

乱暴にドアを開け放ち、廊下へと飛び出す

(困った事になりましたね……)

そろそろ暗部が動き出すかもしれないとは思ってはいたが……
まさか、製造されたばかりの劒冑を持ち出すなんて

それも量産機ではなく、試作品とはいえレベル5用の特別機だなんて……

「せめて、もう数日あれば!」

一人愚痴をこぼす

いや、後数日あればと嘆くよりも、これよりも早くなかったことを喜ぶべきだろう……
515 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 22:09:23.55 ID:FMLDU8go
私は車庫に置いてある、トラックに駆け寄る

「これを彼女に届けなければ――」

急いでトラックに乗り込もうと、ドアに手を伸ばす

「こんな遅くに、そんな急いでどこへ行くんだ?京……」

ビクッと体が跳ねる

聞き覚えのある声、そして、私のことを下の名前で呼ぶ人間なんてこの学園都市に
数える程しか存在しない……

「兄さん……」

そこには私の兄、そして猟犬部隊のリーダー、木原数多の姿があった

「質問に答えろ。こんな夜遅くに、トラックなんぞ引っ張り出してどこ行く気だ?」

威圧するように私に問いかける
その手には拳銃が握られ、銃口がこちらに狙いを定めている

「早く答えろ、答えねぇなら頭をぶち抜くぞ?」
516 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 22:17:14.21 ID:FMLDU8go
「資料を運搬するためですよ、知り合いの研究員に頼まれましてね……」

「主任のお前自らか?」

兄さんが疑問を口にする

「ええ、他の者は手が空いていませんし、これは私事みたいなものですからね」

必死で言い訳を考える

「その荷台の中身はなんだ?」

「先程も言ったように資料ですよ。量が多いですし、このトラック以外に車が空いて
いなかったので、少々大きいですがこの車を使用させていただいているんですが」

「そうか」

納得したのか。兄さんが銃を下ろす

それを見て私はホッと胸を撫で下ろした

「ところで京……」

「どうやら、この研究所から新兵器が一つ消えてるらしいんだが?」
517 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 22:31:45.96 ID:FMLDU8go
サーッと顔から血の気が失せる

兄さんは始めから気付いていたんだ、このトラックに積まれているモノがなんなのか……

銃口が再びこちらに向けられる

「最後通告だ、そのトラックから離れろ、京……」

殺気のこもった目がこちらを見据える

もうダメだ……、そう思い、そこから離れようとする


諦めていいのか?


「…………」


私は何かを変えたかったのではなかっただろうか?


今までずっと打算で生きてきた、笑顔の仮面をつけたまま……


誰かを救いたかったのではなかったのか?


自分では何も変えられないと、暗部から目を逸らしてきた


(佐天さん……)

私に希望をくれた少女

(どうか、私に勇気をください)

前に踏み出すための勇気を―――
518 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/12(木) 22:40:55.71 ID:FMLDU8go
トラックのドアに手をかける

「なッ!?」

兄さんが驚きの声をもらす

「こんの――、馬鹿野郎がッ!!」

乾いた銃声が数回、車庫の中に木霊する

「グッ―!」

肩と脇腹に痛みが走る

どうやら銃弾が命中したようだ

それでも、運転席に転がりこむことに成功した私は車のエンジンをかける

そのまま急発進、車庫から飛び出し、研究所を後にする

痛みに目が霞む、痛みに耐えながら夜の道をひた走る


私の目的地、常盤台へと向かって―――
524 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 19:58:55.94 ID:Hn6aIW6o
      ・
      ・
      ・


「……………」

私は相も変わらずベッドに横になり天井を眺めていた

「はぁ……」

溜め息を一つ吐く

「あの、どうかなさったんですのお姉様?随分と元気が無いようですが……」

ベッドに横たわりボーっとしている私の様子を見かねた黒子が心配そうに声をかけてくる

「なんでもないわよ……」

私はそう言ってプイっとそっぽを向く
525 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 20:06:45.43 ID:Hn6aIW6o
黒子の心配は嬉しい

それでも私はそれを拒絶する

助けられてばかりの自分が、これ以上誰かに助けてもらうのは嫌だったから……

これは先輩としてのプライド、レベル5としてのプライドなのかもしれない……

本当にくだらない……

「ごめん黒子……」

小声でそう呟く

わかっていても黒子の好意を受け入れることはできなかった

「お姉様――」

黒子が何か言おうとした瞬間――

ドゴンッ!という大きな音が響き渡った
526 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 20:13:41.31 ID:Hn6aIW6o
「な、なに!?」

慌ててベッドから身を起こす

「どうやら外からのようですわ!」

黒子が部屋の外へ飛び出す

私もそれに続くように部屋の外へと出る

廊下には私達と同じように部屋を飛び出した生徒が複数人いた

「どうかしたの!?」

近くに居た寮生に声をかける

「どうやら門に車がぶつかったようなんです……」

寮生が不安げに窓の外を指さす

「なんですって!?」

窓に駆け寄る

窓の外、彼女の指さした方向を見ると、門にトラックがぶつかり、煙を上げていた
527 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 20:23:10.39 ID:Hn6aIW6o
「事故、でしょうか……?」

黒子がそう呟いた

そうこうしているうちに、寮監がトラックの方へ走って行くのが見えた

「皆さん、心配はいりません。速やかに部屋に戻りなさい」

廊下に出ている私達に、寮の職員から声がかかる

「お姉様、寮監に任せておけば大丈夫ですわ。わたくし達も部屋に戻りましょう」

黒子が私の隣までやって来る

「あら?あの人は……」

黒子が寮監と話しているトラックの運転手であろう人を見て首を傾げた
528 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 20:32:49.01 ID:Hn6aIW6o
「どうしたのよ、黒子?」

「いえ、あの人のお顔、どこかで見たことがあるような……」

黒子が唸る

「思い出しましたわ!確か以前、佐天さんとお話しているのを見たことがありますの」

「佐天さんと……?」

なんだか嫌な予感がする

佐天さんはあの一件以来、暗部に関わってしまったみたいだし……

何より、あの人の様子が尋常ではないように見える

「私、ちょっと行ってくる!」

いてもたってもいられず、私は現場へ向かおうと駆けだした

「御坂さん!?どこへ行くんですか!?」

廊下の寮生を部屋に戻そうとしていた職員が、私の行動を見て制止の声をあげる

「ご心配なく、お姉様は私が連れ戻しますわ!」

そう言って、黒子も私に続いた

「あっ!待ちなさい!」

その制止を振り切り、私達は門へと走った
529 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 20:42:13.38 ID:Hn6aIW6o
「御坂、白井!?お前達何をしに来た!!」

私達の姿を見た寮監が私達を叱咤する

「あなたはッ!?」

寮監の前に居た、運転手とおぼしき人が私の姿を見て声をあげた

「ッ――!」

近くでその人の姿を見て息を飲んだ

遠くからでは気付かなかったが、彼の服は血で真っ赤に染まっていた

「御坂美琴さん、どうか、あなたの力を貸して下さい!!」

その人が私に詰め寄る
530 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 20:53:43.37 ID:Hn6aIW6o
「そ、そんないきなり言われても、なんのことだか……」

彼の迫力に押されて、思わず後ずさる

「佐天さんが危ないんです!」

「どういうことなんですの!?」

私よりも先に黒子が詰め寄った

「佐天さんは現在、暗部の製造した劒冑と交戦中なんです……」

劒冑……

佐天さんが使っている力、あの一方通行を退けるような圧倒的な力……

そんな相手との戦いに、番外個体に負けるような私が行っても足で纏いにしかなら
ないのではないだろうか?
531 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 21:03:36.02 ID:Hn6aIW6o
「でも……、私が行ったって……」

「確かに、劒冑は強力です…、同じ劒冑でなければ対抗できない…。ですから……」

彼はポケットから小型の端末のようなものを取り出し、操作した

機械音が鳴り、トラックの荷台が開く

そして、中から白いロボットが姿を現した

「これは……?」

警備ロボット?

多分、違うだろう。大きさは警備ロボットよりも大きいし、デザインも全く違う

「劒冑です……、あなたの為の……」

彼は苦しそうに肩で息をしながら説明した

「あなたなら……、いえ、あなたしかいないんですッ!どうか彼女を、佐天さんを
救ってくださいッ!!」
532 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 21:15:32.01 ID:Hn6aIW6o
「そこまでだ」

制止の声がかけられる

「あなたが何者か、いかなる事情があるのかは知らないが。御坂を巻き込むような行為は
遠慮して貰いたい」

寮監が前に進み出る

「誰かが危機に瀕しているというのならば、こちらでアンチスキルに連絡しよう」

「アンチスキルではダメなんです!」

男の人は寮監の提案を否定する

「いかなる理由があろうと、御坂を危険な目に遭わせるような真似を見過ごす訳には
いかん。御坂はレベル5といえども、まだ中学生だ。危険な場所にやる事はできない。
こちらでアンチスキルと救急車を手配する、あなたもここで安静にしていなさい」

寮監が有無を言わさぬといった風にそう言い切る

そうだ、私は中学生なんだ……

だからしょうがないじゃない……

私はレベル5である以前に中学生なんだから、誰かに負けたり、守ってもらったり
してもしょうがないじゃない?
533 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 21:29:16.96 ID:Hn6aIW6o
違う―――

そうじゃない―――

私はレベル5だ

でもそれ以前に中学生だ

それは正しい

でも、それ以前に―――


私は御坂美琴なんだ――


今此処には、私に助けを求める人とが居て、私にはその力があって……


そして、私を待っている、大切な人が居る―――


「なんだ――」

レベルなんて関係ないなんて言いながら、レベルに拘ってたのは私の方じゃない……

「馬鹿みたい―――」

レベルが上だから守る、そんな理由なんて必要なかったんだ

友達だから――

それ以外の理由なんて必要なかった

私は歩み出る、そして荷台の上のロボットに近づく
534 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 21:40:33.17 ID:Hn6aIW6o
「これは、どう使えばいいの?」

男の人に問いかける

「設定は済んでいます、機体に手を当てて、能力名を言えば装甲できる筈です……」

「わかったわ……」

ロボットに手を当てる

<コードを入力してください――>

「待て御坂!何をする気だ!!」

寮監が私を制止する

「ここは私達に任せて部屋へ戻れ!子供が出る幕じゃない!」

「すみません、でも、行かないといけないんです」

「それは……、レベル5だからか……?」

寮監が私に問いかける

「いいえ……」


「友達だから―――」



「超電磁砲―――」


能力名を唱える

ロボットが四散し、私の体を覆う

さあ、行こう

小難しい理由も、レベル5だからなんてプライドも必要ない

ただ私の大切な友達を助けに行こう―――
535 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 21:50:22.79 ID:Hn6aIW6o
「御坂……」

寮監が息を飲む

「お姉様」

黒子が何か言いたげに私を見る

「ごめん、黒子、何を言われても、これだけは譲れないわ」

「ふぅ……」

黒子が溜め息を吐く

「お姉様が頑固なのは今に始まった事ではありませんからね……、それに」

黒子が笑う

「わたくしも同じ気持ちですから」

「黒子……」

「わたくしも同行致しますわ」

「それは……」

私はこれがあるからいいけど、黒子は生身だ……

「そんな心配そうな声を出さなくても、無茶は致しませんわ」
536 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 21:57:43.48 ID:Hn6aIW6o
「佐天さんの場所は?」

「そちらにデータを入力してあります。どうか、佐天さんをお願いします……」

彼はそう言って、頭を下げた

「言われるまでもないわ!行くわよ、黒子!」

黒子に呼び掛ける

「待て御坂、白井!話はまだ――」

「すみません、お叱りは後で受けますから……」

私はそう言って空へ飛び立つ

黒子が私の後を追うようにテレポートでついて来る

レーダーに表示されている目的地へと急ぐ

「待ってて、佐天さん――」
537 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 22:10:52.67 ID:Hn6aIW6o
      ・
      ・
      ・


「クッ!」

あの後、森から追い立てられた私は、せめてどちらか片方だけでも撃墜しようと
空中戦に応じた

だが番外個体、そしてもう片方の仕手共にかなりのレベルの戦闘技術を有している
らしく、正面からのぶつかり合いでは決定打を与える事ができていない……

<正面に反応ッ!!>

そして問題はこれだ……

武者同士の戦闘では高い位置から駆け下りる運動エネルギーを利用して攻撃すること
が基本となるため、一度ぶつかり合った後は上昇し、高度を稼がねばならないのだが、
もう一騎がそれを妨害しうまく高度を稼ぐことができないのだ
538 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 22:20:49.86 ID:Hn6aIW6o
「このォッ!!」

目の前から来る不可視の劒冑の攻撃を防御に徹することでしのぐ

そこへ高度を取り戻し、旋回してきた番外個体の攻撃が加えられる

「つゥッ――!」

体勢を立て直し、旋回する

<ええい!小賢しい奴らめ!御堂、さすがにこれ以上の損傷は危険だぞッ!!>

「これはッ――!」

旋回しようとしたところでレーダーが新たな反応を捉える

<新手かッ!!?>

「クッ!」

また敵の増援?

これ以上はさすがにマズイ……

新しい反応のあった方向を見る

遠くから番外個体の劒冑によく似た白い劒冑が飛んでくる

「佐天さんッ!」

「えっ?」

御坂さんの声で通信が入った
539 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 22:29:10.99 ID:Hn6aIW6o
「御坂さんッ!?」

「助けに来たわ!」

どうやら新しく現れた劒冑に乗っているのは御坂さんのようだ

「!」

地上を見ると、スポーツカーの隣に白井さんの姿を見つける

「白井さんまで!?」

私は慌てて白井さんの傍に降り立つ

「二人ともどうしてここへ!?」

「事情は後で、この戦いを切り抜けてからにしましょう?」

御坂さんがそう提案する

確かに御坂さんの言うとおりだ

理由はどうあれ、こちらに劒冑が一騎加わったことに変わりはない

だが―――

「白井さん……」

装甲している御坂さんはまだしも、生身の白井さんを戦わせる訳にはいかない――
540 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 22:36:40.61 ID:Hn6aIW6o
「生身であいつらと戦うのは無謀です、白井さんはここから離れて下さい」

白井さんにそう告げる

「残念ですが、そうするのが賢明のようですわね。わたくしも佐天さん達の戦いに
参加した所で足で纏いになるのは承知しておりましたから……」

白井さんが目を伏せる

「じゃあ、どうして……」

わざわざこんな危険な所にまで……

「私の能力の使い道は戦い以外にもありますのよ?」

白井さんがスポーツカーの方を見る

そこには倒れている一方通行達の姿があった

「怪我人を連れて離脱しますわ、お二人とも、どうか無事に帰って来てくださいまし!」

白井さんはテレポートすると、打ち止めと一方通行を抱えて姿を消した
541 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 22:46:57.54 ID:Hn6aIW6o
「行かせてよかったのかよ?」

地上に降り立った番外個体が不満げに言った

「まあ、イレギュラーにやすやす手出すのは危険やし、正宗の方もこっちへの警戒は
解いとらんかったし、なにより一方通行を巻き込んだらかなわんしな……」

「打ち止めにも逃げられたんだけど?」

「なぁに、後で僕がサックリ殺りに行くから心配しなさんな」

飄々とした声で不可視の劒冑の仕手らしき男が言った

「あれ?この声って……?」

御坂さんが困惑したような声で呟いた

「なぁ、ときに番外個体。あの新しい劒冑に乗ってるんわ……」

「お姉様みたいね」

「あちゃー、やっぱりかいな……」

男が頭を押さえるようなジェスチャーをする

「どうするかなぁ」

「どうするもこうするも、殺しちまうしかねェだろ?」

どこか嬉しそうに番外個体が言った
542 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 22:54:31.01 ID:Hn6aIW6o
「おいおい、相手はレベル5やで?」

「あたしが負けるとでも?」

番外個体が殺気を放つ

「ちゃうちゃう、研究価値の点が問題なんや。レベル5殺ってもうたら面倒やで?」

「問題ないね、あたしが代わりになればいいだけの話さ」

自信満々に番外個体が言い切る

「つー訳で、お姉様はあたしに任せな」

「でもなぁ……」

「テメェから殺されてェのか?」

「はぁ…、ええけど、僕だけじゃあ正宗は倒せへんで?」

「足止めだけで十分よ、すぐに片付けるからさ。それにあんたじゃどっちの相手しても
足止めくらいしかできないでしょ?」

「了解……」

溜め息をつくように男が言った
543 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 23:06:44.55 ID:Hn6aIW6o
「そういうわけで、あなたの相手はあたしよ、お姉様?」

番外個体が御坂さんの方を向く

「あんたは、番外個体……」

御坂さんがそう呟いた

「御坂さん!」

番外個体の口ぶりから、相手は二手に分かれて戦うようだ……

「相手は番外個体ともう一人、姿を消す能力者です」

「姿を消す能力者?どうりで姿が見えないと思った……」

どうする?

番外個体はこの四人の中で最も戦闘技術に長けている、加えて電磁抜刀という必殺技
まで有している

それの相手を御坂さんにさせていいのだろうか?

かといって、姿の見えない敵を押しつける訳にもいかない……
544 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 23:14:05.76 ID:Hn6aIW6o
「まどろっこしい!そっちから来ねェならこっちから行くぜ!?」

番外個体が電気を帯びる

そして、私と御坂さんの間に電撃を放った

「クッ!!」

それを回避するために跳躍する

「行くぜェ――!?」

番外個体が御坂さんに突進する

御坂さんもそれに応じる

二人は切り結びながら上空へと駆け上がって行く

「御坂さんッ!」

「余所見したらダメやで?君の相手は僕なんやから!」
545 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 23:25:42.55 ID:Hn6aIW6o
      ・
      ・
      ・

「クッ、佐天さん――」

「他人の心配してる場合かよッ!?お姉様ァ!!」

番外個体の一撃で吹き飛ばされる

「こんのぉ!」

旋回し、再び正面相撃(ヘッドオン)の状態に持ち込む

「あんたはどうしてそんなに私に突っかかるのよ!?」

彼女が他の妹達とは違う、それは明らかだ

だが、それだけでは彼女がこれ程までに私に敵対心を抱く理由がわからない

「ハッ!そんなの決まってんだろ!?あんたが憎くて憎くて堪らないからさッ!!」

正面からぶつかり合い、その衝撃で弾かれる
546 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 23:41:07.43 ID:Hn6aIW6o
心臓がドクンと跳ねる

「どうし―――」

「どうして?なんて聞くなよ?」

私の思考を読んでいたかのように番外個体が言葉を遮る

「テメェの勝手であたし達を造り出して、テメェは御山の大将気取り。中学2年でレベル5
になったくせに、私は特別じゃない、なんて抜かしやがる!」

堰を切ったように番外個体が語りだす

「特別な人間のくせに、自分はそうじゃないって言いやがる!テメェにわかるか!?
それを見るあたし達の気持が、石ころの気持ちがわかるのか!!?」

旋回した番外個体が迫って来る

「でも、あんた達だって努力すれば……!」

それに対抗するように、口を開く

「ハハッ!普通の人間ならそれで納得できるかもしれないねェ。可能性があるかもって
言えば引き下がる事もできるかのなァ……」

「でも、あたし達は違う、造られた欠陥品だから、人形だから、規定された性能しか
備わってないから……」

「あたし達は、あんたの劣化コピーにすぎない、出来損ないだから―――」
547 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/14(土) 23:54:20.06 ID:Hn6aIW6o
番外個体の正面からの一撃をもろに肩口に喰らう

「ぐぅ――!」

肩に激痛が走る

そして、それと同じくらい、番外個体の言葉が胸を抉る

「でも、あたしは違う!劣化コピーの、欠陥品じゃないんだよ!石ころなんかじゃないんだよ!
あたしは選ばれたんだッ!ミサカミサカ言ってるアイツ等とは違う、宝石になれるんだよッ!!」

番外個体が叫ぶ

「でもまだダメだ、欠陥品から抜け出しても、皆はあたしのことを模造品だって、ガラス玉
だって言いやがるッ!!」

番外個体が上空から降下してくる

「あたしはなりたいんだよッ!本物の宝石に、誰もが目を奪われる、誰もが認めてくれる、
そんな輝く存在に……!テメェを殺して、あたしが、本物の超電磁砲にッ!!!」

番外個体が目前に迫る

番外個体の苦悩、妹達の悲劇……

それを生み出してしまったのは他ならぬ私自身だ

彼女には私を裁く、殺す権利があるのかもしれない……
548 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 00:03:33.26 ID:69c8bcQo
それでも――

「私はここで死ぬわけにはいかないッ!!」

番外個体を正面から迎え撃つ

「私を待っている人がいるから、私の為に戦ってくれている人がいるから、
私にも守りたい人がいるからッ!!」

全身全霊を込めて番外個体に打ち込む

「ガはァ――!?」

私の一撃が番外個体を捉える

そしてそのまま高度を得るために上昇する

「テメェェェェ!!」

番外個体が激昂する

「これで、真っ二つになりやがれェ!!!」

番外個体が鞘に刀を戻す

「あれは――」

電磁抜刀――

鞘と刀身の間に磁力反発を発生させ、打ち出す神速の一撃……
549 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 00:15:04.80 ID:69c8bcQo
この劒冑でも放つことができる、必殺の一撃

おそらく、あの男の人が用意したのであろう、この劒冑を装甲した時に起動した
ガイドに記されていた

問題は……

私にあれが制御できるかということ……

「やるしかないか……」

刀を鞘に戻す

そして集中する

鞘の中に磁力反発を発生させる


バチバチという音が耳に届く


そして―――


「死ねェェェ!!超電磁砲ッ!!!」

「はァァァァ!!!!!」



「「電磁抜刀ッ!!!」」



それを番外個体に放つ――
551 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 00:29:07.70 ID:69c8bcQo
「ガァアアアアアア!!!!!」
「はああぁああああ!!!!!」

まるで落雷のような音を立て刀がぶつかり合う

力は拮抗している――

私達の劒冑は、弾かれあった

「チィッ!!」

舌打ちし、番外個体が旋回行動に入る

おそらく、電磁抜刀の威力自体はこちらが上だった……

にも関わらず、なぜ番外個体を押しきれなかったのか?

その理由を私は理解している

それは、私が電磁抜刀を放つより僅かに早く、番外個体が電磁抜刀を放ったことだろう
552 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 00:34:54.20 ID:69c8bcQo
補足説明をしますと、二人の放っている電磁抜刀は剣術と組み合わせている禍(まがつ)
とは違い、ただ磁力反発を利用して打ち出しているだけという設定です。

そのため電磁抜刀のあとに禍と入れませんし、威力も禍には及ばないという設定です。
553 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/15(日) 00:36:28.48 ID:NlS.sQ2P
そうか、禍だと相手が剱冑だろうと関係なく必殺しちゃうしな
554 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 00:45:14.33 ID:69c8bcQo
番外個体はレベル4相当の能力者だと思われる

おそらく私の力の流れを読んで、電磁抜刀を放つタイミングを把握できるのだろう

それならば私にも同じことができる

問題は彼女は力の流れを把握した瞬間に行動に移った、これは戦闘慣れした彼女だからできる
反射のような行動だろう……

それに対し、私は力の流れを認識してから行動に移す際に僅かなラグが生じる

これは大した時間ではない、コンマ以下ぐらいのラグでしかない

しかし、電磁抜刀の神速の世界ではそのコンマ数秒が決定的な違いとなる

彼女は私の一撃の力が乗り切る前に、万全な状態の一撃を当てることができるのだ
555 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 00:57:45.40 ID:69c8bcQo
番外個体が旋回してくる

今度は電磁抜刀ではないようだ、刀を抜き放った状態で向かって来ている

「この――!」

電磁抜刀への対策は後回し、目の前の敵を迎撃する

「!?」

番外個体の体が電気を帯び始める

(なに?)

私に電撃で攻撃を仕掛けようとでもいうのだろうか?
556 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:06:02.81 ID:69c8bcQo
私には電気系統の能力は効かない、あの程度の電撃ならば避けるまでもない

逆に手痛い一撃を叩き込んでやる!

番外個体に肉薄する

「くらいなッ!!」

番外個体が電撃を放つ

「そんなの効かなッ――!?」

電撃は確かに効かなかった……

だが――

電撃の発光で視界が遮られた!?

「地獄へ墜ちろッ!超電磁砲!!」

頭部に一撃がクリーンヒットする

「がはッ!!?」

機体の制御を失った私はそのまま高度を失っていく

「ぐぅッ!」

なんとか制御を取り戻すが、かなり低空まで落ちてしまった

これでは依然上空に陣取っている番外個体を相手にするには不利だろう……
557 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:14:47.95 ID:69c8bcQo
私がこのまま地上に降りれば、二対二という構図上、番外個体も地上に降り立つしか
ないだろう……

そう思い、私はそのまま地上に降下した


      ・
      ・
      ・


ガキィィンと私の刀が虚空で何かとぶつかり合い火花を散らす

「姿が見えないってのはホントに厄介ね!」

レーダーによる位置確認により大まかな位置を特定できること、そして地上での戦闘で
あるということが有利に働き、何発かに一回は相手に攻撃を防がせることに成功している

しかし、相手の攻撃を避けることは難しく、攻撃を避ける事は考えず損傷を最小限に抑える
という戦法でしのいでいる

<くそッ!このままでは奴らの思うつぼではないかッ!!>

正宗が歯がみする
558 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:24:29.19 ID:69c8bcQo
正宗の言うとおりだ、このままでは私もジリ貧だし、御坂さんが番外個体に敗れるような
ことになれば状況はさらに絶望的になる……

そう考えていた時、後方に御坂さんの劒冑が降りてきた

「御坂さ――!」

レーダーを見る、敵が私に攻撃を仕掛けようとしている

「くッ!」

それを距離をとり避ける

「御坂さん!大丈夫ですか!?」

「なんとかね……」

御坂さんの劒冑は頭部、そして肩に損傷を負っていた

「やれやれ、まぁた振り出しか」

御坂さんに続くように番外個体の劒冑も地上に降り立った

「そんなことないで、こっちの戦果は大したことないが、超電磁砲のお嬢ちゃんの劒冑は
損傷を負っとる、このままなら押し切れるで?」
559 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:30:41.70 ID:69c8bcQo
幸い御坂さんとの距離は離れているため、先程のような攻撃を喰らうことはないだろうが

状況は好転していない

ここは私が番外個体に決死の攻撃を仕掛けるしか道はないだろう……

「御坂さん、ここは番外個体を私に任せてくれませんか?」

「ダメよ!あいつは電磁抜刀の他に目くらましとかも……」

そこで、御坂さんは言葉を切った

「御坂さん?」

「ねえ、佐天さん」

沈黙の後

「もし、姿が見えない奴の姿を見えるようにする事ができたら……
仕留めることはできる?」

そんなことを口にした
560 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:36:27.97 ID:69c8bcQo
<無論可能だッ!あのような姑息な手さえなければ、一息に仕留めてみせようぞッ!>

私の代わりに正宗がそう答える

「何か方法があるんですか?」

「うん、私に作戦があるの……」

御坂さんが私達に作戦を説明する

「わかりました、敵の位置データはこちらから送ります……」

あの二人に対抗できるのはこの作戦しかない……


後は……

「お願いします、御坂さん!」
「任せて、佐天さん!」

互いを信じて己の役割を実行するのみ!
561 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:45:13.72 ID:69c8bcQo
「勝負よッ!番外個体!」

御坂さんが番外個体の前に歩み出る

「ハッ!さっき逃げた奴が勝負だァ?笑わせんなッ!」

番外個体が御坂さんを挑発する

「あら、逃げるの?」

負けじと御坂さんも言葉を返す

「チッ!糸目、テメェは邪魔んならねェように、アイツを足止めしとけ……」

挑発を返され、不快そうに舌打ちした番外個体がそう指示を飛ばす

「へいへい、ホンマ人使いあらいわ……」

御坂さんが刀を鞘に戻す

「始めから全開って訳ね」

それに倣い、番外個体も刀を鞘に戻す

これで作戦の条件は整った……
562 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 01:58:06.79 ID:69c8bcQo
御坂さんと番外個体が鞘に能力を纏わせる

そして、不可視の劒冑が私に向かって疾駆する

「つぅッ――!」

私はそれを受け止める、反撃をする必要はない

私の仕事は、ただ、この劒冑の動きを止めるだけでいい

「今です!御坂さんッ!!」

「了解ッ!!」

こちらを見ずに、御坂さんがこちらに向かって電撃を放つ

電磁抜刀に集中しているため、大した威力ではなく、狙いも定まっておらず
そのまま私達の近くの地面に落ちた

地面を伝った微弱な電流が、私達の体にも伝わる
だが、それは到底ダメージを与えるようなものではない

「なんや?ただのこけおどしかいな?」

男が鼻で笑う

「糸目ェ!!」

私達の意図を理解した番外個体が男に警告を送る

「なッ!!?」

男が驚愕の声を上げる

「こりゃあ、まさか!?」

そう、地面を伝った電気は私達の劒冑に流れ―――



その輪郭を浮かび上がらせる―――

563 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:06:09.42 ID:69c8bcQo
「僕の姿が!!?」

「ソイツから離れろッ!糸目ェ!!!」

微弱な電流を纏い、おぼろげながら位置を肉眼で確認できるようになった不可視の劒冑
が空へと逃げようとする

「逃がすかァァァ!!!」

この微弱な電流はすぐに消えるだろう

つまり、今しかチャンスはない!!



「正宗ェエエエエ!!!」



<応ッ!!!>



「正宗七機巧ッ!!!!!」
<割腹・投擲腸管ッ!!!!!>




「ギッ、がアアアアアアアアアアアア!!!!!」




私の腹部を切り裂いて発射された甲鉄化された腸が敵機を絡め捕る

564 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:16:19.19 ID:69c8bcQo
「「なぁッ!?」」

二人の敵がそのあまりに非常識な攻撃に絶句する


「余所見してんじゃないわよッ!!」

御坂さんが番外個体に突進する


「あ――――――」

番外個体が我に返る

そして理解した、戦闘中に我を忘れたという愚行、この僅かなタイムロスがこの戦いの
勝敗を分かつものだったということを……






「「電磁抜刀ッ!!!!!!!!!」」






それでも番外個体は認めない、己の敗北を認めない、最後の一瞬まで否定する!
565 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:24:23.40 ID:69c8bcQo
「オオオオオオオオオ!!!!」

番外個体が雄叫びをあげる


しかし、電磁抜刀を放ったタイミングは同時―――



ならば――――



御坂美琴が負ける道理などない!



「ああああああああああああ!!!!!」



番外個体の刀が宙を舞う




「グッ!アアアアアアアアアアア!!?」



御坂美琴の電磁抜刀が番外個体の劒冑ごとその身を切り裂いた



「あ―――――」


番外個体の体がよろめく―――



「なりたかったなぁ……、宝石……………」


番外個体はそのまま地面に倒れ込んだ

566 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:36:01.94 ID:69c8bcQo
「グ、ギ―――――――」


多少の痛みには耐えられると思ったが、これはキツイ……

何せ自分の腹が真一文字に裂かれているのだ

これは正気の沙汰ではない

気を抜いたら気絶してしまいそうになる

<御堂ッ!気を確かに持て!吾がついておるぞッ!!>

正宗が私を励ます声を送って来る

その言葉を支えに、なんとか痛みに歯を食いしばり、耐える

腸が私の体の中に少しずつ戻って来る、それと同時に腸に絡め取られた敵機も
近づいて来る

「ま、さ――むね」



「ここで…、仕留めるッ!!」


<――ッ!応ッ!行くぞッ!!>


「正宗七機巧……」
<朧・焦屍剣ッ!!!>



「ぐぅぅぅるぅあああああーーーー!!」
567 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:45:16.01 ID:69c8bcQo
手に握った太刀が超高温に熱される、手が炭化し、手の甲鉄が太刀と一体化する

構わない、ここで仕留めれば、そんな事はすべて些事にすぎない!



「ぐぅぅああああ―――!!」
<DIEDARAAAAAA!!!!>



引き寄せられた敵機に超高温の太刀を突き立てる


「ごふッ!?」


敵機がその痛みにもがく


「こんなとこで…、死んでたまるかいなッ!!」


敵機が足を装甲の開いた部分にひっかけ思いっきり踏ん張った


「ギィ、アアアアアアアアアアアアアア!!!!!???」

劒冑のすさまじい力で腸が引き千切られそうになる
568 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:51:35.22 ID:69c8bcQo
とんでもない激痛に頭が真っ白になる

それでも逃がしてなるものかと歯を食いしばる


<これ以上は無理かッ!!?>


敵機を束縛していた、腸がするりと解ける


「は、あ――――」

私はその場にガクンと膝をつく

「ゲフッ、番外個体は、やられてもうたか……、しゃあないなぁ……」

男はそう呟くと、明かりの灯った街を目指して飛翔した

「待ちなさいッ!!」

御坂さんが追撃をしようとする

<待て、御坂殿ッ!!奴は姿が見えぬからよいが、御坂殿が行けば街は大混乱に
なるぞッ!!?>

それを正宗が制止する
569 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/15(日) 02:58:35.09 ID:69c8bcQo
「佐天さんは!?佐天さんは大丈夫!!?」

「はぁはぁ、はい、なんとか……」

まあ傷は治るし、命があれば大丈夫と言っていいだろう

「大丈夫な訳ないじゃないッ!血塗れじゃないの!?すぐに病院に……」

御坂さんが大慌てで携帯を取り出そうと奮闘している

<すまぬ、奴に逃げられてしまったな……>


正宗が謝罪する

「いいよ、とりあえず。この場は切り抜けられたんだし……」

この場は無事に切り抜ける事が出来た、こちらに犠牲者はいないし、諸手を挙げて
喜ぶことのできる成果だろう

しかし……

<まさか、この世界で吾以外の劒冑を見ることになろうとは……>

そう、敵は劒冑まで持ち出して来た

どうやら私が思っていた以上に暗部は厄介な相手のようだ


それでも……


「負けられないよね……」


私は敵が去って行った空を見ながらそう呟いた―――



588 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/08/17(火) 22:17:28.96 ID:ldPK7Lgo
予想を遥かに越える沢山のレスありがとうございます。

グロ等の注意書きに関しては苦手な方もいるようなので切断などの要素がある時は
注意書きを入れる事に致します。

次回の投下は土曜か日曜になると思いますので、よろしくお願いします。


今回の番外個体編について補足説明をしますと、番外個体は原作の番外個体とは
設定が違い、戦闘能力は原作よりも強化されている設定です。

番外個体の一人称が「ミサカ」ではなく「あたし」になっているのはそのためです。

美琴が劒冑を装甲してすぐに、騎航戦ができたのは、戦闘に駆け付けるまでの間に
ガイドプログラムによって劒冑の最低限の操作方法を学習したためです。
また、美琴がレベル5の天才だったというのも理由の一つです。

補足しきれない矛盾点などもあると思いますが、これからもこのSSにお付き合い
いただければ幸いです。

それでは
595 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 21:01:00.41 ID:YsGTDxIo
  ~とある病院~


番外個体達との戦いから数日後


戦いで負傷した私と一方通行、それと御坂さんに劒冑を届ける際に負傷した木原さんも
合わせた私達三人はカエル顔の医者のいる病院に入院していた

「やっと傷も治ったかな?」

ベッドから起き上がり、調子を確かめるように体を動かす

「もう動いて大丈夫なの?」

お見舞いに来ていた御坂さんが心配そうに私の方を見る

「ええ、元々大した怪我はしてませんし」

そう言って手をヒラヒラと振ってアピールする

私の傷は以前に比べれば比較的軽症だったと思う

腕は炭化してしまったが、正宗の回復能力で既に感覚が戻る程度には回復しているし、
なんら問題はないと言ってもいい状態だろう
596 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 21:12:27.47 ID:YsGTDxIo
「大した怪我はない……、ですか」

私の言葉を聞いた白井さんが眉を顰めた

「あれ程の怪我を大したことないと?わたくし達がどれだけ心配したのかわかって
おいでですの?」

白井さんが詰め寄って来る

「ごめんなさい……」

「まあまあ黒子、そう怒らないの。こうしてみんな無事だったんだから、それだけでも
良しとしないと……」

御坂さんが白井さんを宥める

「それに、これからは私も一緒なんだから。これ以上佐天さんにこんな大怪我させないわよ!」

「あれだけ寮監に怒られて、まだ懲りていないんですの?」

「何も自分から積極的に仕掛けようだなんて思ってないわ。でも佐天さんや他の人が
危険な目に遭ってたら助けに行くだけよ」
597 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 21:22:51.09 ID:YsGTDxIo
御坂さんを危険な目になんて遭わせたくない……

しかし、私の力量が不足しているのは明らかだ

今回だって御坂さんが居なければ私は今この世にはいなかっただろう……

それに、レベル5の御坂さんに私の心配なんて不要なのかもしれない

「ホントに危なくなった時はお願いしますよ、御坂さん」

「任せておいて!」

「うう、お止したい、お止したい気持ちで一杯なのですが……」

白井さんが苦々しげにそう言った

「お姉様は言っても聞かないでしょうし……」

白井さんはジトッとした目で御坂さんを見つめる
598 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 21:35:51.59 ID:YsGTDxIo
「う……」

その視線を受けて御坂さんが後ずさる

「もしかすると、もう戦いを避ける事はできないのかもしれませんわ……」

「………」

きっと白井さんの言うとおりだ、私達はもう戦いを避ける事はできないだろう……

一方通行が救った少女、妹達の司令塔、打ち止めは命を狙われている

彼女を、そして妹達を守ろうとすれば、必ず学園都市の暗部と戦うことになる……

「ですから、わたくしからのお願いです……。お二人とも、ご自分の命を最優先にして
くださいですの」

「わかってるわよ、私も佐天さんもそう簡単に死にはしないって……」

御坂さんが白井さんの頭を撫でる

「あの~、いちゃいちゃしてるとこ悪いんですけど……」

「なっ!いちゃいちゃなんてしてないわよ!?」

顔を真っ赤にして御坂さんが白井さんから離れる
599 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 21:45:53.88 ID:YsGTDxIo
「どうかしましたの佐天さん?」

御坂さんとのスキンシップを中断されて白井さんは少し不服そうだ

「いえ、入院してから安静にしてたから、他の人の様子を見に行きたいなー、って」

「そ、そうね。じゃあ行きましょうか?」

まだ少し顔の赤い御坂さんを先頭に私達は廊下へと出た

「まずはどこへ行くの?」

「それじゃあ……」



「ここよ」

御坂さんの案内で、目的の病室の前に到着する

「緊張するなぁ……」

ドアを開ける前に深呼吸をする

このドアの向こうにいる人物になんて声をかけたらいいのか皆目見当もつかない……

だが、いつまでもこうしている訳にはいかない

私は意を決して病室の中に足を踏み入れる
600 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 21:57:30.06 ID:YsGTDxIo
「あっ!お姉様と佐天さんだ!ってミサカはミサカは抱きついてみる!」

部屋に入ると打ち止めちゃんが私に抱きついてきた

「おっと…、相変わらず元気いいね、打ち止めちゃん」

少しよろけながらも打ち止めちゃんに笑い掛ける

「コラ!佐天さんはまだ怪我が治ってないんだからいきなり飛びついちゃダメじゃないの!」

「あっ、ごめんなさい、ってミサカはミサカは頭を下げてみたり」

「大丈夫だから、謝らないでいいよ」

私はそっと打ち止めちゃんの頭を撫でる

「ごめんなさい、あなたにそんな怪我をさせてしまって……」

病室の中にいた女性、芳川さんが私に話かけてきた

「いえ、私がしたくてやったことですから……」
601 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 22:06:50.86 ID:YsGTDxIo
「おお!さすが佐天さん!ってミサカはミサカは尊敬の眼差しを向けてみる!」

「はは、あ、ありがと……」

打ち止めちゃんに話しながらベッドに目を向ける

そこには不機嫌そうにこちらを見ている白い髪に赤い目をした少年がいた

「大丈夫ですか?えーと、一方通行……さん……」

「………………」

返って来たのは沈黙と不機嫌そうな眼差しだけだった

「あ、あはは」

これは笑うしかない

「ちょっとあんた!返事くらいしなさいよ!」

御坂さんが一方通行さんに食ってかかる

「…………帰れ」

ボソッと一方通行さんがそう呟いた
602 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 22:17:47.18 ID:YsGTDxIo
「ふざけてんの?」

「お望み通り返事してやっただろォが?大体人の病室来て騒ぐンじゃねェよ」

御坂さんと一方通行さんは睨みあっている

「いいんですよ御坂さん、私は一方通行さんが無事かどうか確認したかっただけ
ですから……」

「心配ないわよ佐天さん、コイツは殺したって死ぬような奴じゃないわよ」

「そうだなァ、オレはどっかのひ弱な女とは違うからなァ」

「な、なんですって!?」

「あわわ、喧嘩はやめてよ!ってミサカはミサカは喧嘩の仲裁をしてみる!」

二人の仲は相変わらずのようだ、まあ二人の関係を考えれば無理もないかもしれない

「ホントに困った子達ね……」

「お姉様にも困ったものですわ……」

芳川さんと白井さんが揃って溜め息をついた
603 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 22:35:08.77 ID:YsGTDxIo
「せっかく心配して来てくれたってのに、あの態度はないでしょう!?」

「頼ンでねェよ!大体、心配してきただァ?オレがテメェ等に、そこの女に何したか
忘れた訳じゃねェだろ?」

「ッ―――」

一方通行さんの言葉に部屋の中の空気が凍りつく

「そうね、私はあんたのしたことを忘れてなんてないし、許してもいないわ……」

御坂さんが一方通行さんを睨みつける

「お姉様……」

「でも―――」


「あんたが打ち止めを、私の妹を命がけで助けてくれたこと……、それには感謝してるわ。
だから、ありがとう……」

御坂さんがお礼を述べる

それを見て白井さん達はホッと胸を撫で下ろし、部屋の空気が弛緩するのが感じられた

「だからさ―――」

「ハッ!オレが勝手にやったことだ。テメェに礼を言われる筋合いなんてねェよ、
気色ワリィ」

弛緩した部屋の空気が再び凍りつくのが感じられた
604 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 22:45:57.05 ID:YsGTDxIo
「人が素直にお礼言ってんのに何よその態度!?」

「誰も頼ンでねェっつってンだろ!?それにオレは慣れ合いが大嫌いなンだよッ!!」

「このッ!もう容赦しないわ!!」

そう言って御坂さんは一方通行さんの腕を思いっきり抓った

「いてェッ!!テメェ!オレは怪我人だぞ!?」

それに対して一方通行さんが抗議の声を上げる

「手加減はしてあげるわよ!」

「あれ?」

何か違和感を感じる、なんだろう?

「離せ!ボケがァ!!今は能力が使えねェンだよ!!」

ああ、そうか―――

「一方通行さん、能力はどうしたんですか?」

私の言葉を聞いて、一方通行さんは気まずそうに目を逸らす
605 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 22:54:26.38 ID:YsGTDxIo
「能力は……、使えなくなった……」

「使えなくなった?」

能力が消滅したのだろうか?

「正確には演算ができなくなった、と言うのが正しいわね」

芳川さんが補足した

「あのとき頭を撃たれちまってな、体の方は、まあ大丈夫そうだが……。頭の方、
演算能力はほとんど機能しなくなっちまったみてェだな……」

一方通行さんが苦々しげに言った

「それって……」

「オレはもう第一位を名乗る程の能力は使えねェって事だ……」
606 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 23:12:26.86 ID:YsGTDxIo
「ったく、情けねェ話だ。こンなンじゃ、打ち止めを守るどころか、テメェの身の安全すら
守れねェぜ!」

「その心配はないさ」

いつの間にか病室の入り口にあのカエル顔の医者が立っていた

「どういう意味ですか?」

「彼の、一方通行の演算能力を復活させる事ができるということさ」

「どうやってだ?」

一方通行さんは半信半疑と言った風に問いかけた

「簡単な事さ、誰かに君の演算を補助してもらえばいい。彼女達、妹達の力を借りれば
それが可能だ」

「そンなことができンのか?」

「できるさ、妹達が協力してくれればだがね」

「もちろん協力するよ!ってミサカはミサカは二つ返事で承諾してみる!」

「ふむ、それなら問題はなさそうだ。それでは具体的な話なんだが……」

カエル顔の医者と一方通行さん、それに打ち止めちゃんと芳川さんはなにやら難しい
話を始めた

「邪魔しちゃ悪いし、私はあの子の様子を見てくるけど……。佐天さんと黒子はどうする?」

「私も行きます」

「ごめんなさい、気を遣わせちゃって……」

芳川さんが私達に謝罪する

「いいんですよ、それじゃあお大事に」

病室のみんなに挨拶をし、私は御坂さん達と一緒にある病室へと向かった

607 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/23(月) 23:17:54.23 ID:YsGTDxIo
今回の投下はここまでです。
遅筆のため、ペースが遅いですがご容赦ください。

補足説明しますと、一方通行は演算能力を失っているもののそれ以外の体への
影響は比較的軽微という設定です

あと一方通行の性格が若干温いのも仕様ですのでご了承ください

それでは
608 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/08/23(月) 23:29:53.02 ID:9syU26AO
乙なんだよ!
613 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 07:07:47.30 ID:1yGYm9Qo
一方通行さんの病室を出て、私達はとある病室へと向かった

しばらく病院内を歩き、目的の病室に到着する

御坂さんが病室のドアを開ける

淡い光の差し込む病室―――

ベッドに一人の少女が横たわっている

御坂さんと同じ顔をした少女、番外個体だ
614 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 07:13:34.97 ID:1yGYm9Qo
あの日の戦いの後、番外個体は私達と一緒に、この病院へ運び込まれた

御坂さんの電磁抜刀を受けた番外個体は瀕死の重傷だったが、あのお医者さんの
おかげもあって一命を取り留めた

だが、番外個体は未だ目を覚まさず、こうして眠り続けている

御坂さんは彼女をこんな目に遭わせた負い目からか、毎日この病室へ足を
運んでいるらしい……

「この子は、番外個体はこれからどうなるんでしょうか?」

生命維持装置が取り付けられた番外個体を見ながら御坂さんに問いかける

「わからないわ……」

御坂さんの弱々しい声が返って来た
615 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 07:29:51.82 ID:1yGYm9Qo
「彼女を他の妹達と同様に扱うのは些か危険だと思いますわ。お姉様達のお話から
考えますと、彼女は打ち止めさんを殺そうとした、それにお姉様にも悪感情を抱いている
ようですし……」

白井さんがそう答えた

「かといってアンチスキルに引き渡すこともできませんわ。それに、この件に学園都市が
関わっているのならアンチスキルにも手が回っている可能性が大きいですわ」

どうやら状況は八方塞のようだ……

「あのさ……」

目を伏せていた御坂さんが口を開いた

「私、この子の事、あのお医者さんに任せてみようと思うの……」

「それは、どういうことですか?」
616 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 07:43:47.01 ID:1yGYm9Qo
「この子の脳は、人間の負の感情を増幅するように細工されているらしいの……
それをあのお医者さんが治してくれるって言ってくれたから……」

だからそれに賭けてみたい

御坂さんはそう言った

確かにあの人がただならぬ人物であるというのはこれまでの出来事からもわかる

先程は一方通行さんの能力を復活させる手立てがあるとも言っていた……

それ程の技術があれば、番外個体に施されているという細工を解除できるかもしれない

「その話の通りにいったとしても、その後はどうするんですか?」

たとえ思惑通りに事が進んだとしても……

番外個体が打ち止めちゃんや御坂さんを狙わないなんて保証はどこにも存在しない
617 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 07:54:39.05 ID:1yGYm9Qo
「私が、説得するわ……。打ち止めを狙うのをやめるようにって……」

「なっ!」

その答えに驚きの声を上げる

「説得って言ったって……、番外個体がそれを素直に聞くとは思えませんよ?」

これはもはや賭けに近い……、いや今までの経緯を考えれば分が悪すぎる賭けだ……

「佐天さん、お気持ちはわかりますが他に代替え案がない以上、ここはお姉様と
あのお医者様を信じるしかありませんわ……」
618 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 08:08:42.35 ID:1yGYm9Qo
「…………」

「それに、妹さん達を思うお姉様のお気持ちを汲んで差し上げてくださいまし……」

白井さんの言葉に沈黙する

御坂さんが妹達と同様に番外個体も自分の妹としてその身を案じているのは理解できる

狙われているのが私だというのならば、御坂さんの提示した案に異論はない……

しかし、命を狙われているのは打ち止めちゃんであり、他ならぬ御坂さん自身でもある

「代替え案なら、あります……」

ならば、もっと確実な方法を取るべきだろう……

「代替え案?どんな案ですの?」

白井さんが皆目見当もつかない、という風に首を傾げる


それは、現状でもっとも簡単に、かつ確実に、番外個体の脅威を排除できる方法……





番外個体を殺害すること―――




619 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 08:17:10.96 ID:1yGYm9Qo
番外個体が万全の状態ならば、彼女を殺害することは困難だろう……

しかし―――

「…………」

ベッドに横たわる番外個体に視線を遣る

彼女は意識を失っている……

抵抗どころか、指一本動かすことのできない存在でしかない

今の番外個体を殺す方法なんて片手の指では収まらないくらいの選択肢がある

刀で斬る、首を絞める、痕跡を残さないようにするのならば、この生命維持装置の
電源を落としてしまえばいい……


ただ―――


とても大きな問題がある―――
620 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 08:24:37.79 ID:1yGYm9Qo
御坂さんが阻止する?あのお医者さんが阻止する?

それ以上に、根本的な問題がある……


それは――


私にこの子が殺せるかという問題だ―――


私にこの子が殺せるだろうか?


傷つき、抵抗をすることもできない少女を――

御坂さんが助けたいと願う少女を――


そして――


私のせいで命を落とした少女と同じ顔をした少女を―――

621 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 08:32:11.92 ID:1yGYm9Qo
そっと、頭の髪飾りを撫でる

私にはできないだろう……

無抵抗の人間を殺すことなんて、私にはできない……

「佐天さん?」

黙ったままの私に白井さんが怪訝そうな目を向ける

「あ、えと……、いや、番外個体に指示を出した人をどうにかすれば、なんとかなるかな~、
って思ったんですけど……」

まさか今考えていたことをそのまま言うわけにもいかず、咄嗟に言い訳を口にする

「残念ですが、それは現実的ではありませんわね。相手がどこの誰かもわからない
のでは……」

「そ、そうですよね~。ごめんなさい、変な事言っちゃって」
622 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 08:44:45.80 ID:1yGYm9Qo
あはは、と笑いその場をごまかす

「ごめんね、わがまま言っちゃって。この子をこんな目に遭わせた私が今更この子を
助けようなんて矛盾してるかもしれないけど……。私はこの子に、妹達に傷ついてほしく
ないから……」

「わかりました、番外個体のことはお二人にお任せします」

私には御坂さん達の案がうまくいくことを祈る事しかできない……

私がもっと強ければ

躊躇いもなく障害を排除できるくらい強い心があれば――

どんな敵にも負けないくらいの強い力があれば――

そう思い、唇を噛みしめる

強くならなければ、私の大切な人が傷つくことのないように

もう、私の目の前で命を落とすことがないように―――
623 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 08:58:22.81 ID:1yGYm9Qo
「これからどうしますの?」

番外個体の病室を出ると、白井さんがそう言った

「木原さんの病室にも行かないと……」

「木原さん……、あの方ですか……」

白井さんが少し難しい顔をする

「どうかしたんですか?」

その態度を怪訝に思い問いかける

「いえ、あの方自身がどうの、と言うわけではないのですが……」

「あの人、どうやらあのテレスティーナと親類関係みたいなの」

白井さんの代わりに御坂さんが答えた
624 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 09:13:31.42 ID:1yGYm9Qo
「えっ?そうなんですか?」

それは初耳だ……

確かにテレスティーナの名前にも木原の文字が入っていたような記憶はあるが……

「過去にあった木山先生の生徒さんを使った実験にもあの人の一族が関わってた
みたいだし……。助けてもらっておいて失礼だけど、完全には信用できないわ」

御坂さんがそう言った

「大丈夫ですよ、木原さんは私のことを心配してくれてたみたいですし。今回だって
怪我してまで私達を助けてくれたじゃないですか」

「まあ、直接話してもないのに結論を出すのは些か乱暴ですわね……」

「それもそうね」
625 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 09:27:32.05 ID:1yGYm9Qo
「それじゃあ、行きましょうか?」

「あっ」

私の言葉と同時に御坂さんも声を上げた

「どうし――」

「おや?佐天さん、これは奇遇ですね」

廊下の向こうから木原さんが歩いて来ていた

「こんにちは、怪我はもう大丈夫なんですか?」

「ええ、銃弾は急所を外れてくれていたみたいでしたので……、動いていいと許しがでたの
であなたの病室へお邪魔しようと思っていたのですが、何か他にご用事が?」

「私達はこれから木原さんの病室へ行こうと思ってた所なんです」

「なんと、危うく入れ違いになるところでしたね」
626 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 09:43:43.92 ID:1yGYm9Qo
「すみません木原さん、少し聞きたいことがあるんですけど……」

「わかっています」

私が何を聞きたいのか察しているのだろう、木原さんは私の言葉を遮った

「私の知っていることはすべてお話するつもりです、ここではなんですので場所を
変えましょう……」

「それはわたくし達もお聞きしてよろしいんですの?」

白井さんが質問をなげかける

「構いません」

「それで場所はどうします?」

「一方通行の病室はどうかな?」

御坂さんがそう提案した

「第一位のですか?」

「うん、あいつもこの件には無関係じゃないし、情報はできるだけ共有した方がいいじゃない?」
627 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 09:55:43.05 ID:1yGYm9Qo
「そうですね……、もし第一位の協力を得られればこれ程頼もしいものはありませんしね」

「それなんですけど……」

私は一方通行さんが能力を使えなくなったこと、能力の復活には時間がかかる事を
木原さんに説明した

「そのようなことが……」

「どうしますの?」

「おそらく問題はないでしょう、彼は第一位、学園都市側も彼の能力を必要としています。
能力が使えないからといって彼が標的になるような事はありえないでしょう……」

木原さんは一度言葉を区切った

「現在の情報を整理しますと、現状で狙われる可能性が高いのは佐天さんと打ち止めさんの
お二人ということになりますね……」

「それならなおさらあいつにも話した方がよさそうね、そろそろ話も終わってると思うし、
一方通行の病室へ戻りましょうか」
628 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 10:07:17.35 ID:1yGYm9Qo
「おう、さっきは悪かったな、気ィ遣わせちまって」

再び一方通行さんの病室へ戻ると、ベッドの上の一方通行さんにそう声をかけられた

「気にしないでいいわよ、必死になる気持ちもわかるからね。能力の使えないあんた
なんて、ただの目つきと口の悪いモヤシっ子だもんね……」

「うるせェ!テメェに言ったんじゃねェよ!!」

一方通行さんが御坂さんに食ってかかった

「あン?なンだよ、一人増えてんじゃねェか?」

木原さんに気付いた一方通行さんがそう言った

「あら?あなたは……」

「どうも、お久しぶりです。芳川さん」

どうやら芳川さんと木原さんは知り合いのようだ

「知り合いなのかよ?」

「ええ、彼は木原さんの弟さんよ、研究所で会ったことがあるわ」

「あいつのかよ……」

一方通行さんが少し嫌そうな顔をした
629 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 10:23:18.61 ID:1yGYm9Qo
「血は繋がってないんですけれどね」

「そうなのか?」

さらっと、スゴイ発言が出た

「私は養子なんですよ、木原の一族は優秀な人間を養子に迎え入れる習慣があると、
私の祖父にあたる幻生さんからお聞きした事があります」

自分でいうような事ではないですけれどね、と木原さんは苦笑いをした

「それではテレスティーナとは……」

「彼女とも一応は親類ですが、あまり面識はありませんね……」

「そうだったんですの……」

どうやら木原さんはあの一件とはあまり関係がないようだ

「ンで?その弟クンがなンの用なンだよ?」
630 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 10:37:32.75 ID:1yGYm9Qo
「今回の件について、私の知っていることをお話しようかと……」

「必要ねェよ」

「まあまあ、聞いておいて損はないと思うわよ?」

そっけない態度をとる一方通行さんを芳川さんがたしなめる

「よろしいでしょうか?」

「勝手にしろ……」

「それでは……、まず今回の番外個体の襲撃の目的は打ち止めさんの殺害であり、
佐天さん達との交戦は偶発的に起こったものであると考えられます」

木原さんが淡々と話し始める

「おそらく、感情を持ち始めた妹達を快く思わない人間の指示でしょうね……」

「そんな理由で打ち止めを殺そうとするなんて……、許せない!」

御坂さんが憤慨する
631 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/08/28(土) 10:51:46.42 ID:1yGYm9Qo
「番外個体達が使用した劒冑、そして、私が御坂さんにお渡しした劒冑……、
これらは共に『超新星計画』のプランによって製造されたものです」

「超新星?」

「前に芳川が言ってたな……、だがオレは超新星計画は多重能力者を造り出す計画
だって聞いたが……」

「まあ、私もそこまで詳細に知っている訳ではないからね」

「それも間違ってはいません、超新星計画は非常に大きな計画のようです。
私もその全貌を知らされているわけではありませんが、複数の研究をまとめて
超新星計画、とされているようです」

「しかし、多重能力者と劒冑……、駆動鎧のようなものですわよね?ひと括りにするには
あまりにも関連性がないように思えますが……」

白井さんが疑問を口にする
640 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 20:00:37.50 ID:1bWZPDIo
「技術的な面で見ればこの二つには関連性はありません……。
しかし、多重能力者と劒冑の開発には共通する点も存在します」

木原さんは白井さんの質問にそう答えた

「この計画の名前になっている超新星、この言葉の意味はわかりますか?」

「えと、恒星が消えるときに起きる爆発現象で、超新星爆発とも呼ばれてるわよね」

さすが御坂さん、こんな難しそうな言葉をスラッと説明した
641 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 20:17:54.55 ID:1bWZPDIo
「その答えで概ね正解です。しかし、超新星は星の終焉だけではなく、新たな星の
誕生のきっかけをつくります」

「つまり、どういうことですの?」

「超新星計画は現状を壊し、新たなるステップへ進むための計画ということです。
多重能力者、劒冑の開発、どちらもそのためのものです」

木原さんがそう説明する

「さて、度々すみませんが、もう一度質問です。現状ではほとんどの能力者が共通の
弱点と呼べるものを持っています……、それがなんだかわかりますか?」

能力者の弱点?

一つの能力に限定している訳ではなく、ほとんどなんて言われてもさっぱりわからない

「私にはちょっとわからないなぁ……、みんなはわかります?」

周りの御坂さん達にそう問いかける

「いかに能力が優れてても、能力者自体は生身の人間ってことか?」
642 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 20:28:31.67 ID:1bWZPDIo
一方通行さんがボソッとそう言った

「その通り、能力は強大な力です。しかし、身体強化系や第一位のような特殊な能力で
ない限り、その体は生身の人間です。不意を突かれ一撃を喰らえばそれが致命傷に
なる可能性だってあります」

「確かに、黒子もレベル4だけどジャッジメントの仕事でよく怪我とかするし……」

御坂さんが白井さんの方を見る

「最近ではキャパシティダウンなど、能力の使用そのものを阻害する兵器まで開発され
ています。これにより戦い方によっては無能力者がレベル5を打倒するなんてありえない
ような事態が起こる可能性も出てきました」

「…………」
643 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 20:50:47.67 ID:1bWZPDIo
「そこで提案されたのが能力者の戦闘支援兵器の開発です。駆動鎧をベースに、正宗さん
のデータを加え、能力者用の駆動鎧を製造する計画が立ちあげられました」

「その成果は先日の戦いでご覧いただけたと思います。能力者用の駆動鎧、劒冑の
登場により能力者の力は新たなステップへと突入しました……」

「つまり、既存の対能力者用の措置では通用しなくなった、そういうことね……」

芳川さんが嘆息した

「近い将来、あんなのが街に溢れかえるかもと想像しただけで寒気がしますわね」

白井さんもそれにならった
644 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 21:09:50.90 ID:1bWZPDIo
「多重能力者については、特力研での度重なる失敗で不可能だって結論が出てる、
それを実現できるンだっつーなら、今までの常識なんざ変わるだろうな……」

一方通行さんがそう言った

「戦闘を一変させる兵器の開発、能力の前提を覆す能力者の創造、これが
超新星計画の全貌だと言われています……」

「あの……、一つ聞きたいことがあるんですけど……」

私は木原さんに質問を投げかけた

「はい?」

「もう多重能力者は誕生しているんですか?」

そう質問する

「それはオレも知りたいね、いきなり複数の能力を使う相手と戦うなンざ、冗談じゃねェしな」
645 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 21:25:23.53 ID:1bWZPDIo
「もし多重能力者が誕生しているのなら、私にも何らかの情報が入る筈です。今までその
ような話は聞いていませんし、仮に多重能力者が誕生していてもすぐさま戦闘に投入され
るなんて事はないと思われます」

「そうですか……」

一方通行さんが能力を使えない以上打ち止めちゃんは私が守らないと……

「それじゃあ、これからのことを考えましょうか?」

考え込む、私に芳川さんがそう声をかけてきた

「考え過ぎてもしかたないわ、まずは今できることをしないとね」

「そうですね……」

芳川さんの言葉に頷く

「まず最優先で考えるべきなのは打ち止めさんの安全でしょう」

木原さんがそう提案する
646 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 21:43:03.02 ID:1bWZPDIo
「それなんだけど、一方通行と打ち止めは私と一緒に知り合いのアンチスキルの所へ
行こうと思うんだけど」

「なンでオレまで?」

「家は壊れたままでしょう?それに場所が割れた所に能力の使えないあなた一人じゃあ
危ないわよ?」

「それ以前に、もう病院から出て大丈夫なんですか?」

一方通行さんにそう尋ねる

「ああ、まあな。動くくらいならなンとかなるだろ」

「それならまだ寝てた方が……」

「いいンだよ、寝たっきりなンて性に合わねェし、それに……」

打ち止めちゃんに顔を向ける

「このガキは目を離したらすぐに厄介事に巻き込まれやがったからな……
また厄介事に巻き込まれねェように見張ってねェとな……」
647 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 21:53:42.28 ID:1bWZPDIo
「なんだかんだで優しいんですね」

「言ってろ」

そう言って一方通行さんはそっぽを向いた

「それでいいかしら?」

芳川さんが木原さんに尋ねた

「同意したいのですが……」

木原さんは言葉を濁した

「第一位が能力を使える状態ならいざしらず、能力を使えない状態では打ち止めさんを
守りきれるとは思えません、暗部の能力者が襲撃してきた場合、そのアンチスキルの
方一人では対処できないでしょう……」

「それじゃあどうするの?」

御坂さんが言った

「こちらで暗部の能力者と戦えるのは佐天さんと御坂さんのお二人、打ち止めさんは
お二人のうちのどちらかが保護するのがよいでしょう」
648 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 22:03:11.19 ID:1bWZPDIo
「私が預かりたいんだけど……」

「さすがに寮に常盤台の生徒以外を住まわせるのは無理ですわね……」

やっぱりお嬢様校だから規則も厳しいんだろうなぁ

「なんとかならない黒子?」

「無茶ですわ!寮監や他の寮生になんと説明するおつもりですの?あの駆動鎧を
部屋に置くときだって、わたくしとても苦労しましたのよ?」

「だったら私が預かりますよ。打ち止めちゃんはそれでいい?」

私は少し屈み、打ち止めちゃんに目線を合わせてそう言った

「いいに決まってるよ!ってミサカはミサカは全身で喜びを表してみる!」

打ち止めちゃんはそう言って飛び跳ねた

「一方通行はどうするの?まさか彼女の部屋に一緒に預ける訳にもいかないでしょうし……」
649 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 22:15:45.12 ID:1bWZPDIo
「そうだなァ、オレはお前と一緒にそのアンチスキルのとこへ邪魔することにするか」

「離れ離れになっちゃうの?」

打ち止めちゃんが悲しそうに一方通行さんを見る

「暇な時は会いに行ってやるよ」

「ホントっ!?約束だよ!ってミサカはミサカは念を押してみる!」

「あ~、ホントだよ。ったく、くだンねェことではしゃぐンじゃねェよ……」

「あの芳川さん、そのアンチスキルの人って女の人なんですか?」

御坂さんが芳川さんに尋ねた

「ええ、黄泉川愛穂って言ってね、体育の教師をしているのよ」
650 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 22:27:11.46 ID:1bWZPDIo
「こいつと一緒に住んで大丈夫なんですか?」

心配そうに御坂さんが言った

「どォいう意味だよ……」

一方通行さんも不服そうな声を出した

「大丈夫よ、彼女は強いからもし一方通行が襲ってきても返り討ちね」

「ハッ!くだンねェこと言ってンじゃねェよ。大体教師なら結構年行ってんだろ?
芳川もいい歳だし、そんなババア共、頼まれたって襲わねェよ」

一方通行さんが吐き捨てるように言った

「「「あっ……」」」

私、御坂さん、白井さんの声が重なった

やばい、芳川さんの周りに怒気のようなものが見えるような気がする
651 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 22:38:27.43 ID:1bWZPDIo
「ン?どうした?」

無言のまま近づいてきた芳川さんに一方通行さんが問いかける

「…………」

芳川さんは無言のまま一方通行さんの耳を思いっきり引っ張った

「イテテテテテ!!何しやがるッ!?」

堪らず一方通行さんが抗議の声を上げる

「女性にババアなんて言った罰よ、これだけで済んでありがたいと思いなさい。
愛穂に同じ事を言ったらこれじゃあ済まないわよ」

「マジかよ……、先行きが不安すぎンだろ……」

一方通行さんが溜め息を吐いた

「やれやれ、緊張感がないですね」

木原さんが苦笑した

「そんなにガチガチに身構えてたら、いざという時に倒れちゃいますよ?」

御坂さんがそれに応じた

「そうですね」
652 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 22:44:26.34 ID:1bWZPDIo
「私達にできるのは目の前のことを精一杯やるだけです」

私も御坂さんに続いてそう言った

守ってみせる

打ち止めちゃんを、そして、私の仲間達を……



こうして、私達の新たな戦い――


そして、新たな生活が始まった―――

653 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/04(土) 22:51:16.16 ID:1bWZPDIo
今回はこれで終了です。

次回からは一、二回程、幕間として短編のようなものを投下する予定です。

内容は本編に関わらないようなものですが、見ていただければ幸いです。


それでは

661 : ◆JZzNmabVtI [saga sage]:2010/09/08(水) 14:10:27.57 ID:2EIyTXQo
次の投下は明日になります。時間は未定ですが、遅くても21時までには始められると
思いますのでよろしくお願いします。


劒冑の開発と多重能力の研究が一括りの計画になっている理由について補足説明します。
この二つは一括りになっていますが、実際には別個の研究になっています。
詳しくは下に研究員の会話形式で説明させていただきます。


研究員A「なんでこの計画って多重能力の研究と一緒になってるの?別々でよくない?」

研究員B「なんでもなにも、上がそう決めたんだからしかたないでしょう?
そんなに気になるんだったら直接上に聞いてきたら?」

研究員A「嫌に決まってんだろ!多重能力っていえば、特力研とかで研究されてた奴だろ?
そんな100%人の生き死にが関わってるようなのに首突っ込みたくねぇよ……」

研究員C「そのことについて上からの回答です、この二つの研究が学園都市に新たな
発展をもたらす希望の星となりうる研究、ということで一括りにされているようです」

研究員A「希望の星ねぇ……、この劒冑ってのが希望をもたらすなんて俺には思えないね。
こんなトンデモ兵器に能力者なんて化けモン乗せて、どっかの国と戦争でも起こすつもり
なんじゃないの?」

研究員C「いかなる目的があるにせよ、我々に多重能力開発の詳細が伝えられていない
のは上が我々には知る必要がないと判断したからでしょう。我々のすべきことは上の意向に
従い与えられた任を遂行することだけです。それ以外に学園都市で生きて行く方法はあり
ません」

研究員A「それもそうか、俺達みたいな下っ端研究員は黙って上の意向に従うとしますか……」

研究員B「触らぬ神に祟りなし、好奇心は猫をも殺すってことね。なんにせよ知らなくても
私達の研究には関係ないんだし、気にしない事が一番ね」


上のように、なぜ関連性のないように見える二つの研究が一括りになっているのか
疑問に思う研究員もいますが、

・詳細を知らなくても自分達の研究に影響がないこと
・上層部から一応の回答がでていること

などの理由で納得、もししていなくても回答がでている以上それ以上の詮索はできない
といった状況になっています

多重能力開発の方の話はネタばれになってしまうので、後々説明させていただきます。
662 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/09(木) 12:43:48.93 ID:R/6O9sAO
待ってるんだよ!
663 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 20:29:01.12 ID:bCTvWCoo
そろそろ始めたいと思います。

今回は日常編ということで地の文なし、かっこの前に名前ありの方式で書いていきたいと
思います。

日常編なのでストーリーは進まず、内容もあってないようなものになりますので、
ご了承ください。

それでは始めます。
664 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 20:39:50.01 ID:bCTvWCoo
  ~佐天自宅~

佐天「ん~!今日から新学期かぁ~」

佐天「手の包帯はまだ取れてないけど……、あんまり目立たないし、問題ないかな……」

打ち止め「スースー……」

佐天「朝ご飯の準備ができるまで寝かせといてあげよっと」

佐天「正宗ー、朝になったよー」ガチャ

正宗<おお、もうそんな時間か……>

佐天「私はご飯の準備するから、打ち止めちゃんを起こさないように静かにしててね?」

正宗<心得た>
665 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 20:47:42.42 ID:bCTvWCoo
佐天「そろそろ打ち止めちゃん起こそうかな」

佐天「打ち止めちゃん朝だよ~、起きなさーい」

打ち止め「う~ん……、あと五分ってミサカは……スー」

佐天「早く起きないと朝ご飯食べ損なっちゃうかもよー?」

打ち止め「うう~ん……、それは困るかも、ってミサカはミサカは……」ムクリ

佐天「おはよう、打ち止めちゃん」

打ち止め「おはよー佐天さん、ってミサカはふぁ~、あくび交じりに挨拶してみる……」

佐天「よし、まずは顔を洗ってさっぱりしてきなさい」

打ち止め「わかったぁ~~」ふらふら

佐天「足元に気をつけてねー、さて、私は朝ご飯の準備の続きでもしますか」
666 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 20:57:59.59 ID:bCTvWCoo
ピンポーン!

黄泉川「おーい佐天、黄泉川じゃん」

佐天「鍵は開けてあるんで入って大丈夫ですよー」

黄泉川「それじゃあお邪魔するじゃん」

一方通行「邪魔する」

佐天「おはようございます」

黄泉川「おはよう!佐天に虫型ロボットの正宗君!」

正宗<吾はロボットではない!何度言えばわかるのだ!?>

黄泉川「細かいこと気にするもんじゃないじゃん?今日も一方通行を預けとくからよろしく
頼むじゃん?」

佐天「了解でーす、って今日から私も学校なんですけどね」

黄泉川「まあ正宗と打ち止めが居るから大丈夫じゃん?」

一方通行「なんでオレが打ち止めに世話されるみたいになってんだよ……。
大体こんな風に送ってもらわなくても一人でここまで来れるぜ」
667 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 21:10:14.56 ID:bCTvWCoo
黄泉川「怪我人が何強がってるじゃん?今だって杖ついて歩いてるじゃん。
そんな体で街歩いてたら、ヒャッハー!新鮮な肉だー!とか叫んでるスキルアウトに
やられちまうじゃん」

一方通行「いくら学園都市でもそこまで治安は悪くねェよ」

黄泉川「それは冗談にしても、一方通行は色んな奴らに絡まれてたじゃん?
ここに居れば安全だし、朝から一方通行が居れば打ち止めも喜ぶし、いいことずくめじゃん?」

一方通行「チッ……」

正宗<悪いことといえば、こやつが何もせぬ穀潰しであるということくらいなものであろう>

一方通行「うるせェ、虫は黙ってな」

正宗<何だと!?>

佐天「はいはい、二人とも落ち着いて。正宗も余計な事言わないの」

正宗<むぅ……>

黄泉川「二人とも佐天には敵わないみたいじゃん?」
668 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 21:21:07.78 ID:bCTvWCoo
一方通行「別にそんなこたねェよ、ただガキみたいに騒ぐのはみっともねェってだけだ」

佐天「そうだ!黄泉川さんもご飯食べてきます?」

黄泉川「申し出はありがたいんだけど、もう食べて来ちゃったじゃん。もう学校に向かわ
ないと行けないし気持ちだけ貰っとくじゃん」

佐天「そうですかー、残念ですね。それじゃあ気をつけて行ってきてくださいね」

黄泉川「おう!それじゃあ行ってくるじゃん!そんじゃあ一方通行を頼むじゃん?
未来から来たとかいう青色虫型ロボットの正宗君?」

正宗<だからロボットではな――、おい!待たぬか!>

一方通行「突っ込むとこそこなのかよ……」

正宗<まったくあの行かず後家め……、何度言ってもわからぬとは、あの年で耄碌して
おるのか……>

一方通行「それ絶対本人の前で言うんじゃねェぞ?」
669 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 21:38:09.15 ID:bCTvWCoo
  ~朝食後~

佐天「それじゃあ私はそろそろ学校に行くから」

正宗<ううむ、御堂を単独で外に行かせるのは反対なのだが……>

佐天「大丈夫だって、学校終わったら真っ直ぐ帰って来るし、人通りの多いところを通れば
敵も手は出せないでしょう?」

正宗<しかし、御堂……>

佐天「そんな心配そうにしないの、それにもし私が危なくなったら正宗が助けに来て
くれるでしょ?」

正宗<む、それもそうだな。御堂に危険が迫ったならば吾が駆け付け蹴散らせばよい
だけの話だな!グハハハハ!>

一方通行「単純な奴」ボソッ

佐天「それじゃあ正宗、私がいない間二人をお願いね?」

正宗<心得た!吾が居る限りこの部屋は難攻不落の城塞も同然!>

佐天「二人とも、今日は午前中で帰ってくるけど、遅くなった時のために一応お昼ご飯も
作っておいたから私の帰りが遅かったら温めて食べてね?」

打ち止め「はーい!ってミサカはミサカは元気一杯に返事をしてみる!」

一方通行「悪いな」ボソッ

佐天「じゃあ、いってきます!」

正宗<車に気をつけるのだぞ、御堂>

一方通行「ガキかよ……、って、そういやアイツはまだ中一か……」
670 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 21:49:32.17 ID:bCTvWCoo
    ~学校~

佐天「おっはよぉー!みんな!」

アケミ「お~!涙子、久しぶりじゃん!」

むーちゃん「今年の夏はあんまり一緒に遊べなかったけど……、何かあったの?」

佐天「いやー、今年の夏は色々あってさ」

むーちゃん「何それ?あっ!もしかして彼氏でも出来たの?」

佐天「あ~~……、まあそんなところかも」

アケミ・むー「「ええ~~!!!??」」

佐天「ちょ!?声が大きいってば!」

アケミ「何それ!?そんな素振りなかったじゃん!?詳しく聞かせてよー!」

佐天「冗談!冗談だって!」
671 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 21:58:31.24 ID:bCTvWCoo
  ~教室内別の場所~

佐天・アケミ・むー「「「ワーワー!」」」

初春「佐天さん達は随分と盛り上がってますね」

マコちん「そうだね、でもちょっと安心したな……」

初春「安心、ですか?」

マコちん「うん、涙子って一学期の終わりくらいからよく怪我とかしてたからさ……
悪い彼氏とかに暴力でも振るわれてたらどうしようって、心配だったから。
元気そうで安心したよ……」

初春「そうですか、優しいんですね」

初春(その予想が100%外れてると言えないところが悲しいですね……)
672 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 22:08:45.47 ID:bCTvWCoo
   ~放課後~


佐天「う~~ん……」

初春「どうかしたんですか佐天さん?」

佐天「ああ初春。実はね、なんか大切なことを忘れてるような気がしてさぁー。
思いだそうと頑張ってるんだけど……」

初春「もしかして学園都市の……?」

佐天「違う違う!そんな物騒なものじゃないんだろうけど……。とても大切な……、
以前までの私を象徴するような?」

初春「危ない事じゃなければいいんですけど。思い出したら私にも教えてくださいね?
私はジャッジメントの方へ行きますから。また明日」

佐天「うん、また明日ね」

アケミ「どうしたのよ涙子?柄にもなく考え事?」

佐天「ああアケミ、そうなんだけどさ。って何気にヒドイこと言うね君は……」
673 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 22:21:35.19 ID:bCTvWCoo
アケミ「気にしない気にしない、で何をそんなに悩んでるのよ?」

佐天「いやー、何かで悩んでるというより何かを思い出したくて悩んでると言った方が
正しいかと」

アケミ「何それ?」


   ~少し離れた場所~


むーちゃん「なんか涙子って夏休み明けてから雰囲気変わってない?」

マコちん「むーちゃんもそう思う?雰囲気変わったっていうか、大人っぽくなったっていうか……」


アケミ「そう言えばさ、涙子はういはるんにもうアレやらないの?」

佐天「アレって?」

アケミ「一学期はよくういはるんのスカートをめくってたじゃん。こうバサーって」

佐天「そ れ だ 」
674 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 22:27:42.82 ID:bCTvWCoo
アケミ「へっ?」

佐天「よく考えたら、私ここ一ヶ月以上初春のスカートをめくってないよ!」

アケミ「そ、そうなの?」

佐天「今から追えば初春に追いつける筈!じゃあねアケミ!私は初春の後を追うわ!」

アケミ「う、うん……。また明日」


ダダダダダ!


むーちゃん「大人っぽく……?」

マコちん「気のせいだったかも?」



初春「あれ?どうしたんですか?佐天さ――キャァァ!?」

677 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 22:45:16.35 ID:bCTvWCoo
   ~佐天自宅  夕食後~


打ち止め「今日の学校はどうだったの?ってミサカはミサカは興味津々に聞いてみる!」

佐天「今日は特に授業とか無かったよ」

打ち止め「学校にはテストとかもあるんでしょ?ってミサカはミサカはネットワークで聞いた
ことを聞いてみる」

佐天「そうだねー、そういやテストがあるんだった。自信ないなぁー」

ピキーン!

佐天「閃いた!」

佐天(あらかじめテスト範囲の要点を網羅したペーパーを作って、それを正宗に渡して
テスト中に教えてもらえば……)

佐天(完璧だ、完璧すぎる。うちの中学は高レベルの能力者はいないから警戒も
甘いし……)

打ち止め(佐天さんどうしたのかな?なんかニヤニヤしてる?)

正宗<おお学び舎での話しか。御堂、鍛錬も良いが学問もあまり疎かにしてはいかんぞ?>

佐天「ご、後光が!?」

佐天(あの正宗がこんなことを言うなんて……、私も心を入れ替えなくては)

打ち止め「佐天さん大丈夫?ってミサカはミサカは心配そうに尋ねてみたり」
678 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 22:52:43.27 ID:bCTvWCoo
佐天「えっ?」

打ち止め「さっきから黙ってるからどうしたのかなぁーって、ミサカはミサカは心配してみたり」

佐天「今度のテスト頑張るぞぉー!って決意を固めてただけだから」

打ち止め「そうなんだ!じゃあ今度のテスト頑張ってね!ミサカも応援してるから!
ってミサカはミサカは精一杯の声援を送ってみる!」

佐天「頑張るぞー!おー!」

打ち止め「目指せいっちばーん!」


佐天「それは厳しい」

打ち止め「えーー!?」
679 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 23:03:14.48 ID:bCTvWCoo
   ~佐天自宅  数日後早朝~


目覚し時計「ジリリリリリリ!!」

佐天「う~~ん」ガッ!

目覚し時計「ジリリ、ガン!ぷしゅ~」

バタン!

正宗<なんだッ!?敵襲かッ!?>

目覚し時計「………………」しゅ~

正宗<なんだ目覚しが落ちただけであったか……>

佐天「むにゃむにゃ……」

正宗<御堂はまだ寝ておるか……。疲れておるのだろう、もう少し寝かせておいてやるか>

正宗<思えば遠くへ来たものだ……、吾がこのような安息の時間を過ごせるとわな……>


   ~数十分後~


ピンポーン!

佐天「ん~~?何の音?」
680 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 23:13:10.22 ID:bCTvWCoo
黄泉川「おーい佐天、黄泉川じゃん」

一方通行「寝てるンじゃねェか?」

黄泉川「佐天ならこの時間には起きてる筈じゃん?第一この時間に起きてなかったら
朝ご飯とか誰が作るじゃん?」

佐天「えっ!?黄泉川さん!?」ガバッ!

佐天「目覚しは!?」

目覚し時計「…………」

佐天「壊れてる……、もしかして落としちゃったのかな?って時間時間!」

佐天「うわっ!もうこんな時間!?って正宗は?」

正宗<すまぬ御堂、起こしては悪いと思い……>

佐天「あー、気にしなくていいよ目覚し落とした私が悪いんだし。黄泉川さーん、今開けるから
待っててください!」

黄泉川「了解じゃん」
681 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 23:22:59.11 ID:bCTvWCoo
ガチャ

佐天「すみません、ばたばたしちゃって」

黄泉川「気にすることないじゃん、学生なんだから寝坊の一つもしない方がおかしいじゃん。
それに普通の学生ならこの時間なら寝坊の内に入らないじゃん」

佐天「ありがとうございます。あっ、一方通行さん、打ち止めちゃんを起こしてご飯食べさて
あげてください。私は学校に行く準備をしなくちゃいけないんで……」

一方通行「了解、だが飯はどうすンだ?オレは飯なんて作れねェぞ?」

黄泉川「情けない男じゃん……」

一方通行「うっせ」

佐天「打ち止めちゃんには悪いんだけど、買い置きのパンとかカップめんですませてください」
682 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 23:33:24.41 ID:bCTvWCoo
一方通行「了解、起きろ打ち止め」

黄泉川「車で送って行った方がいいかもしれないじゃん?」

佐天「ありがたい申し出なんですが、まだ準備があるので遠慮します」

黄泉川「そうか、それじゃあ私はもう行くじゃん。あまり急がないようにな、いざとなったら
少しくらい遅れても構わないじゃん?」

一方通行「教師でアンチスキルの奴の言うことじゃねェ……」


    ~○分後~


佐天「昼ご飯は悪いんだけど、あるものですませちゃってね」

打ち止め「は~い!ってミサカはミサカは元気よく返事してみる!」

正宗<すまなかったな、御堂>

佐天「そんな声出さないの!私のこと気遣ってくれたのは嬉しかったから」

一方通行「おい、これ持ってけ」

佐天「これは?パン?」
683 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 23:37:32.73 ID:bCTvWCoo
一方通行「さすがに何も食わねえンじゃキツイだろ?パン焼くぐらいならオレにもできる
からな……」

佐天「ありがとうございます!」

一方通行「ふん」

佐天「じゃあ、いってきます!」

打ち止め「いってらっしゃーい!ってミサカはミサカは佐天さんを送り出してみる!」

正宗<車に気をつけてな、御堂>

一方通行「あと曲がり角とかにも気をつけろよ」
684 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/09(木) 23:50:30.77 ID:bCTvWCoo
    ~昼過ぎ~


打ち止め「そろそろお腹空いてきたね、ってミサカはミサカはお腹を押さえてみる」

一方通行「もう一時を回ってやがるな……、じゃあ昼飯にするか」

正宗<だが、今日は作り置きはないぞ?>

一方通行「オレの体が万全なら外食って手もあるんだがな……。この状態で外に出て
万が一、変なのに絡まれたら厄介だ」

正宗<もし襲われたら吾が出ればよいが、御堂や白井殿から派手な行動はするなと釘を
刺されておるからな……>

打ち止め「ミサカはカップめんとかでもいいよ、ってミサカはミサカは提案してみる」

一方通行「お前がいいンならいいけどよォ」

正宗<あいや待たれよ!>

一方通行「どうした?」

正宗<ここは吾に任せて貰おうか!>
685 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 00:01:26.27 ID:dViP2eoo
一方通行「は?」

正宗<現状の責任は吾にある!ならばその責任を吾がとるのは当然のこと!>

一方通行「話が見えねェンだが?」

正宗<鈍い奴め!吾が御堂の代わりに打ち止めの昼食を責任を持って作ろうというのだ!>

一方通行「色々突っ込みたいところはあるが……、オレのは?」

正宗<貴様はそこいらの草でも食っておれ>

一方通行「喧嘩売ってンのか?」

正宗<冗談だ、今回は吾に責がある。おぬしの分も吾が作ってやろう>

打ち止め「ねえ、正宗は料理作った事あるの?ってミサカはミサカはおそるおそる尋ねて
みる」

正宗<経験はない、だが為せば成るという言葉もある。何事もやってみる事が大切だ>
686 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 00:09:26.65 ID:dViP2eoo
打ち止め「それって――」

一方通行「嫌な予感しかしねェぞ……」

正宗<二人はここで待っておるがいい!腕が鳴るぞ!>

打ち止め「そういえば正宗って台所にいるとあの虫みたいだよね、ってミサカはミサカは
ミサカネットワークで得た知識を披露してみたり」

一方通行「現実逃避したくなるのはわかるが、オレの精神ダメージを増やすような事言うン
じゃねェ」

打ち止め「カサカサ、カサカサ、ってミサカはミサカは擬音をつけてみたり」

一方通行「おい、やめろ。って待てよ?アイツ確か……」

正宗<ぬぅ!?足が届かん!?>

一方通行「だろうな。少し考えりゃわかりそうなもンだがな」
687 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 00:25:11.36 ID:dViP2eoo
正宗<吾とした事がなんたる不覚!>

一方通行「まあ脳味噌まで鉄になってンだ、無理もねェわな」

正宗<貴様は黙っておれ!>

打ち止め「でも手が届かないんじゃ料理は作れないよね?ってミサカはミサカは安堵を
隠せずに聞いてみる」

正宗<否!この程度の障害では挫けはせぬぞ!>

一方通行「じゃあどうすんだよ?アイツがいなきゃ人間形態にはなれねェンだろ?」

正宗<!! そうだ!肉体変成の術式を真似れば……>

一方通行「肉体変成?」

正宗<うむ!辰気を使い精巧な人型を作る術式だ。吾は辰気を使えぬ故、人の形は
作れぬが装甲形態を再現することくらいなら可能な筈だ>

一方通行「大丈夫なのか?」

打ち止め「爆発とかしないよね?ってミサカはミサカは後ろにさがってみる」

正宗<そこで見ておれ!吾の雄姿を!>

キイィィィン

一方通行「眩しッ!」

正宗<おお視界が高い!成功か!?む?手足が動かんぞ?」

一方通行「人型じゃなくて、ただのドラム缶じゃねェか!?」
689 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 00:34:07.35 ID:dViP2eoo
打ち止め「ドラム缶って言うよりもトーテムポールとかの方が近いかも……、ってミサカは
ミサカは感心してみる」

一方通行「もう諦めろって、おとなしくカップめんでも食えばいいンだからよ。なっ?」

正宗<一度の失敗で鬼の首を取ったかのように騒ぎおって、ここまで来て後に退けるか!
もう一度だ!>

キイィィィン!

打ち止め「ねぇ、大丈夫かな?ってミサカはミサカは心配そうに尋ねてみたり」

一方通行「爆発とかはしねェだろう」タブンナ

正宗<よしッ!今度こそ成功だ!グワハハハハ!人の手足があるというのも悪くはないな!
この術式を改良し、七機巧の八つ目として加えるのも悪くはないな!>

一方通行「オレは突っ込まねェぞ?」

正宗<もはや吾に死角ナァァアシ!二人とも吾が昼食を作り終えるのを楽しみに待って
おるがよいぞ!>ガシャンガシャン
690 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 00:44:16.31 ID:dViP2eoo
打ち止め「大丈夫かなぁ?ミサカはミサカは不安で堪らないんだけど?」

一方通行「もう止められねェだろ……、アイツは一回失敗しなきゃ懲りねェよ。
っておい!!その背中の羽みてェなのはどうにかしろ!!壁が削れる!!!」


   ~台所~

正宗<これと、これを入れて……。人参はと、ちまちま切るのは性に合わんな……
握り潰してしまうか。これならば小さくなって食べやすく一石二鳥だな>

一方通行「予想以上にヤベェな、通常なら料理の時に出る筈のない単語が飛び出し
やがったぞ……」

打ち止め「ミサカ達どうなっちゃうのかな?」

一方通行「安心しろ、オレが食って、これは到底食えねェってのを証明すれば
引き下がる筈だ」
691 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 00:55:31.25 ID:dViP2eoo
正宗<待たせたな!>

ドン!

正宗<腹が減っているだろう?遠慮せずに食べるがよい!>

一方・打ち止め「「…………」」

一方通行「こりゃ犬のエサか?」

打ち止め「これはすさまじいカオスだね、ってミサカはミサカは絶句してみる」

正宗<なんと失敬な!確かに見てくれは悪いかもしれぬが、味は確かなはずだぞ!>

一方通行「味見はしたのか?」

正宗<味覚はない>

一方通行「だろうな」

一方通行(キッチンの中のものしか使ってねェはずだからな……、味はともかく人体に
有害なものではないと思うが……。この匂いは凶器だぜ)
692 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:10:41.58 ID:dViP2eoo
打ち止め「あれ?なんだか果物みたいな匂いもするね?ってミサカはミサカはこの混沌と
した鍋の中を覗き込んでみる」

正宗<さすが打ち止め、吾が隠し味として仕込んだレモン汁に気付くとは>

一方通行「レモン汁だァ?今朝冷蔵庫の中を見た時はそンなもンなかった気がするンだが?」

正宗<うむ、冷蔵庫の中ではなく流しに出しっぱなしにしてあったぞ。御堂もそそっかしい
ところがあるものだ、使うついでに冷蔵庫の中に戻しておいたぞ>

一方通行「流しにだと?オイオイ、嫌な予感しかしねェぞ……」スタスタ


冷蔵庫「ガチャ」



食器用洗剤(レモン)「あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!俺はまた流しで食器を
洗う仕事が始まると思っていたら、なぜか料理に使われて冷蔵庫にしまわれていた。
なにを言ってるのかわからねえと思―――」


冷蔵庫「バタン」


一方通行「…………」

一方通行「コイツとずっと暮らしてたアイツは聖人君子かなンかか?」
693 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:20:33.96 ID:dViP2eoo
打ち止め「どうしたの?ってミサカはミサカは神妙な面持ちをしているあなたに尋ねてみる」

一方通行「この鍋の中身は捨てるぞ。これは人間が食えるもンじゃねェ……」

正宗<なんだとッ!?一口も食べずになぜそんな事がわかる!?>

一方通行「テメェ洗剤入れやがったろ!?そンなもン食ったら腹壊すわ!」

打ち止め「確かに洗剤は無理だよ。ってミサカはミサカは思いを率直に述べてみる……」

正宗<むぅ……>

一方通行「テメェは一人で先走りすぎなンだよ!ちょっとは周りの意見も聞けってンだよ!」

正宗<おぬしがそれを言うか!?>
694 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:28:53.99 ID:dViP2eoo
一方通行「ハッ!テメェよりはマシだろうがよ!?大体なンだよ!?この様はよォ!?
口だけで何一つまともにできてねェじゃねェかよ!?やったことといりゃあテメェの無能
っぷりを披露したくらいじゃねェか!?」

正宗<なんだとッ!!>


    ~回想~

三世村正「天下一名物とまで謳われた名甲も案外無能なのね?できることといったら
精々、床の間の飾りになってることくらいかしら?」

景明「村正、さすがにそれは言い過ぎだろう……」

    ~回想終了~


正宗<言わせておけばァ!!そこへ直れ!今日という今日はもう勘弁ならん!!>

一方通行「逆ギレかよ、おもしれェ!返り討ちにしてやるぜ!」
695 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:38:04.14 ID:dViP2eoo
打ち止め「二人ともやめなよぉ……、ってミサカはミサカは二人を制止しようとしてみる」

正宗<打ち止めはさがっておれ!>

一方通行「こいつばかりはアイツに賛成だぜ、お前はさがってな」

正宗<部屋を壊す訳にはいかぬからな、素手で相手してやろう>

一方通行「ハッ!殊勝な心掛けじゃねェか?だがオレは手加減しねェぜ?」

正宗<む?>

一方通行「鉄の塊相手に素手なンざ馬鹿げてるぜ!オレはこの杖を使わせてもらうぜ!?」

ゴンゴン!

正宗<ぬぅ!丸腰の相手に得物を使うとは卑怯な奴めッ!!>

ツルっ

一方・打ち止め「「あ」」

正宗<イカン!慣れぬ状態だからバランスが――」

ガッシャーン!
696 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:46:22.28 ID:dViP2eoo
     ~数時間後~


佐天「それでこの状態って訳?」

一方・正宗<「その通りです」>土下座

正宗<今回の事態は吾の不徳の致すところ>

一方通行「いや、カッとなって喧嘩売ったのはオレだ」

正宗<いやいや吾が>
一方通行「いやいやオレが」

打ち止め「埒が明かないね、ってミサカはミサカは嘆息してみる」

佐天「二人とも!」

一方・正宗<「はい」>

佐天「過ぎたことを悔やんでもしかたない!みんなで協力して部屋の片づけをするよ!」

一方・正宗<「はい」>

佐天「今回のことは許してあげるよ……ただし!」


佐天「今後二度とこんな喧嘩は起こさないこと、それが条件よ。約束できる
697 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:47:33.49 ID:dViP2eoo
上の文を訂正

佐天「今後二度とこんな喧嘩は起こさないこと、それが条件よ。約束できる?」
698 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 01:54:32.03 ID:dViP2eoo
正宗<約束しよう、二度とこんなつまらぬことで諍いは起こさぬと>

一方通行「オレも誓うぜ」

佐天「ならよろしい!それじゃあ掃除用具取って来るから待っててね」

打ち止め「ホント佐天さんは大人だね、それに比べて……、ってミサカはミサカは
ジト目でダメな二人を見てみる」

一方・正宗<面目ない」>



   ~次の日~


打ち止め「このままではいけないとミサカは思います!ってミサカはミサカは訴えてみる!」

一方通行「なンのことだ、と言いたいが大体の察しはついてる」

正宗<御堂に頼りきっている今の状況の事であろう?>
699 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/10(金) 02:06:08.02 ID:dViP2eoo
打ち止め「その通り!三人も集まってまるでニートのように佐天さんに寄生しているこの状況
はどうにかしないといけないと思うの!ってミサカはミサカは力説してみたり!」

正宗<まったくもって異論はない。だが具体的にどうすればいいのだ?>

一方通行「素人が昨日みたいに手探りでやったら失敗するって目に見えてるぜ?」

打ち止め「助っ人を呼んできます!ってミサカはミサカは胸を張って自分の案を提示
してみる!」

正宗<成程、経験者の力を借りるという訳だな>

打ち止め「ただし、これにも条件があります!ってミサカはミサカは二人の前に人さし指を
突き出してみる!」

一方通行「条件?」

打ち止め「二人がまた暴走しないように特訓中は助っ人の人の指示に従って貰うよ、
異論はないよね?ってミサカはミサカは条件を突きつける」

一方・正宗<「ありません」>



打ち止め「よーし!それじゃあ、すぐにでも特訓を始めるよー!えいえい――」


一方・正宗・打ち止め「<「おー!!」>」
708 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/14(火) 20:09:31.25 ID:dhS4RNgo
   ~翌日~


佐天「私は学校に行きますけど、喧嘩とかしないでくださいね?」

一方通行「わかってるよ、ニワトリじゃあるめェし、言われたことをそンなすぐに忘れたり
しねェよ」

佐天「それなら安心ですね。じゃあ私は行きますんで」

一方通行「おう、気ィつけて行けよ」

正宗<御堂は行ったか?>

一方通行「ああ」
709 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/14(火) 20:22:07.22 ID:dhS4RNgo
打ち止め「それじゃあ作戦開始だよ!ってミサカはミサカは高らかに宣言してみる!」

一方通行「作戦開始たって、お前が言ってた助っ人とやらはいつ来るンだよ?」

打ち止め「すぐに来る筈だよ!ってミサカはミサカは自信満々に言ってみたり!」

ピンポーン!

打ち止め「ほら来た!」

御坂妹「お邪魔します、と、ミサカは部屋の中に足を踏み入れます」

一方通行「お前は……」

御坂妹「お久しぶりです一方通行、と、ミサカは挨拶をします」

724 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 20:34:35.02 ID:RE.CDOwo
一方通行「久しぶりだと?お前もしかしてあン時の妹達か?」

御坂妹「むぅ……、と、ミサカは口ごもります」

一方通行「どうした?違うのか?」

御坂妹「いえ、その通りです。ミサカは検体番号10032号。絶対能力進化実験において
最後にあなたと戦った個体です、と、ミサカは重い口を開きます」

一方通行「そンで、お前が打ち止めが呼ンだっていう助っ人か?」

御坂妹「はい、と、ミサカは肯定します」
725 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 20:47:05.98 ID:RE.CDOwo
一方通行「家事とかできンのかよ?」

御坂妹「必要最低限のことはできます。少なくとも、暴れて部屋の中をめちゃくちゃにする
ような事はしませんのでご安心を、と、ミサカは苦笑します」

一方通行「チッ」

正宗<返す言葉もないな……>

御坂妹「失礼しました、正宗さん。ミサカ達の恩人であるあなたに言ったつもりはありません、
と、ミサカは弁解します」

正宗<気にするな、吾が失態を演じたのは事実であるからな>

一方通行「オレにはフォローはねェのかよ」
726 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 20:56:37.68 ID:RE.CDOwo
打ち止め「もう!そんなとこで話してないで早く準備を始めようよ!ってミサカはミサカは
みんなを急かしてみる!」

一方通行「そンなに急ぐ必要あンのか?アイツが学校から帰って来るまで、たっぷり
時間があるぞ」

打ち止め「今日の目的はミサカ達の家事の練習だけじゃなくて、佐天さんに日頃のお礼を
するのが目的なの!ってミサカはミサカは今日の目的を説明してみたり!」

一方通行「具体的には?」

打ち止め「今日の晩御飯の準備をミサカ達でして、部屋の掃除をして、その後部屋を飾り
付けるの!ってミサカはミサカは計画の詳細を発表してみる!」

一方通行「飾り付けだァ?」

正宗<時間は十分にある。不可能ではないだろうが、具体的にはどうするのだ?>

御坂妹「御心配なく、あらかじめ食材と一緒に折り紙も買ってきています。これを使って
飾りを作りましょう、と、ミサカは折り紙を取り出します」
727 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 21:09:20.29 ID:RE.CDOwo
打ち止め「うわぁ~!たくさんの色があるんだね!ってミサカはミサカは目を輝かせてみる!」

一方通行「折り紙かァ……、また随分と懐かしいもンを持って来たな」

正宗<ふむ、この色のついたちり紙で飾りを作るのだな?>

御坂妹「はい、と、ミサカは首肯します」

一方通行「役割分担はどうする?全員が一つのことをするって訳じゃあないだろう?」

御坂妹「そうですね、それでは効率が悪いですからね。まず優先するべきなのは料理の
準備と部屋の掃除でしょう、と、ミサカは提案します」

一方通行「そうだな、最悪飾りは無くても構わねェだろう」
728 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 21:21:00.86 ID:RE.CDOwo
打ち止め「え~!ミサカは折り紙で飾り作りたいよう!ってミサカはミサカはぶーたれてみる!」

一方通行「わかったわかった、作るからそう騒ぐンじゃねェ」

御坂妹「時間的には大分余裕があります。大きなトラブルが無ければ問題なく飾りの作成に
取り掛かれる筈です、と、ミサカは推測します」

正宗<何事も起きなければよいのだが……>

一方通行「お前が……、いや、なンでもねェ」

御坂妹「異論が無いようでしたら役割分担をしたいと思います、と、ミサカは話を進めます」
729 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 21:32:02.41 ID:RE.CDOwo
御坂妹「メンバーは四人ですので、料理担当と掃除担当に二人ずつの分担にしようと
思います、と、ミサカは提案します」

打ち止め「異議なーし!」

御坂妹「正宗さんは料理に向いていないようですので掃除担当、上位個体は料理がしたい
と希望していたので料理担当、ミサカは料理ができるのがミサカしかいないため料理担当
をやらせていただきます、と、ミサカは分担を発表します」

正宗<と、いうことは吾と一方通行が掃除担当という訳か>

一方通行「大丈夫なのか?コレ?」

御坂妹「お二人を一緒にするのは自殺行為のような気がしないでもありませんが、四人しか
いないのでやむを得ないでしょう、と、ミサカは一抹の不安を隠しきれません」
730 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 21:46:12.51 ID:RE.CDOwo
打ち止め「大丈夫だよ……、ってミサカはミサカは二人を励ましてみる……」

一方通行「オイ、さっきまでの元気はどこ行った?」

御坂妹「ま、まあ、掃除は料理に比べれば難易度は低いですし、何かあればミサカも
手伝いますから大丈夫でしょう、と、ミサカは自分に言い聞かせるように言います」

正宗<心配する事はない!先日の失態は吾と一方通行が反目しあった結果だ、
同じ志の元、協力すればあのような事は起こるまい!>

打ち止め「そ、そうだよね!ってミサカはミサカは二人を応援してみる!」

御坂妹「分担も終わりましたし、そろそろ作業に取り掛かるとしましょう、と、ミサカは
話を進めます」

一方通行「グダグダ言っててもしょうがねェ、やってみるしかねェか」

打ち止め「よーし!それでは佐天さんへの日頃の感謝をこめて、『佐天さんのいない間に
部屋を綺麗にしてご飯も用意しよう大作戦』を発動します!ってミサカはミサカは宣言して
みたり!」

一方通行「清々しいくらいそのまんまだな」

正宗<わかりやすい方がよかろう>
731 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 22:01:03.77 ID:RE.CDOwo
打ち止め「ミサカ達はキッチンでお料理作るから二人は部屋の掃除をお願いね!って
ミサカはミサカはキッチンへ向かって走ってみたり!」

御坂妹「待って下さい上位個体、ミサカは二人に掃除の仕方を説明してから行きますので
何もせずに待っていて下さい、と、ミサカは上位個体に注意します」

一方通行「ったく、これだからガキって奴は……」

正宗<まあ、そんなことを言うな、子供は元気なのが一番だ>

御坂妹「上位個体を待たせているので手短に説明します、まずは―――」



御坂妹「以上で説明を終わります、と、ミサカは説明を終えて一息つきます」

一方通行「結構簡単なンだな」

御坂妹「それほど高度な事をする訳ではありませんからね、と、ミサカは笑います」
732 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 22:15:50.01 ID:RE.CDOwo
御坂妹「それではミサカは行きます、お二人とも頑張ってくださいね、と、ミサカは
キッチンへ向かいます」

一方通行「オイ、ちょっと待て」

御坂妹「何か質問ですか?と、ミサカは首を傾げます」

一方通行「あー、なンて言りゃいいンだろうな……。その、お前は嫌じゃなかったのか?
ここに手伝いに来るの……」

御坂妹「なぜですか?上位個体の頼み、という理由もありますが。ミサカ達の恩人である
佐天さんのお役に立てる、ということで学園都市に残る妹達の間で誰が行くかと争……
ゲフンゲフン、話し合って自ら望んで来たのですよ?嬉しいと思う事はありますが、嫌だと
感じることなどありえません、と、ミサカは断言します」

一方通行「アイツ等だけならそうだろうが……、ここにはオレもいるだろうが」
733 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 22:28:51.02 ID:RE.CDOwo
御坂妹「そうですね、あなたがここでお世話になっているのは上位個体から聞いていました、
それがどうかしましたか?と、ミサカは疑問を投げかけます」

一方通行「忘れた訳じゃねェだろうが?オレはお前等を一万人も殺したンだぞ?
それなのに、オレの失敗の尻拭いみてェな真似までさしちまって……」

御坂妹「べ、別にあなたの為じゃないんだからね!?と、ミサカはお姉様の真似をして
みます」

一方通行「は……?」

御坂妹「冗談はさておき、確かにあなたのしたことを忘れた訳ではありません。
しかし、あなたがいなければ妹達は処分されていたこと、そして上位個体を命懸けで
守ってくれた事も事実です。ですからあなたに対する感情はプラスマイナス差し引いて
マイナス50くらいです、と、ミサカは数値を提示します」

一方通行「そうか」
734 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 22:39:35.07 ID:RE.CDOwo
御坂妹「ちなみにプラスマイナスともに上限は100です」

一方通行「…………そうか」

御坂妹「さらに補足するとマイナス100は死して輪廻転生を繰り返してでも殺しに行くくらい
の殺意です、と、ミサカは説明します」

一方通行「100でそれなら50でも殺意あるンじゃね?」

御坂妹「冗談ですよ、本気にしないでください、と、ミサカは一方通行を安心させます」

一方通行「ったく、心臓に悪い冗談はよせっての」

御坂妹……「まじめな話ですが、ミサカ達はあなたのしたことについてどうすればいいのか
わかりません、と、ミサカは正直に告げます」
735 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 22:54:39.89 ID:RE.CDOwo
訂正 前のレスの「」の前の点は「」内です

一方通行「わからない?」

御坂「はい、あなたがいなければ今のミサカ達が存在しないこと、形こそ違えどあなたも
ミサカ達を思っていてくれたことはわかっています……。しかし、あなたの手で一万人の
ミサカ達の命が失われた事も事実です」

一方通行「…………」

御坂妹「ミサカ達に復讐の意志はありません。ですが、あなたのしたことを許せるかは
わかりません。今はわからなくとも、今以上に様々な感情を持てば、あなたのことを許せ
ないと思うようになるかもしれません」

御坂妹「それでも、そんなミサカ達にも一つだけ、確かな思いがあります……」

一方通行「言ってくれ、覚悟はできてるぜ」
736 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 23:05:45.05 ID:RE.CDOwo
御坂妹「あなたを許せるかはわかりません……、それでも、ミサカ達はあなたを責めません、
と、ミサカは宣言します」

一方通行「それはどういう意味だ?」

御坂妹「言葉通りの意味です、あの日、あなたは上位個体だけではなく、結果的にはミサカ達
全員の命を救いました。あなたはミサカ達にとっても命の恩人です、ですからミサカ達は
あなたを責めません、だから――――」

打ち止め「あなたも、もう自分を責めないで――」

一方通行「なッ!?打ち止め!?いつからそこに!?」

打ち止め「一緒の部屋の中にいるんだもん、いやでも声は聞こえるよ、ってミサカはミサカは
笑ってみる」

御坂妹「上位個体……」
737 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 23:15:57.75 ID:RE.CDOwo
打ち止め「ミサカ達はあなたを責めないよ、これはミサカ達全員の総意……。
だから、この話はもうお終い」

一方通行「で、でも!オレは――!」

打ち止め「早くしないと佐天さんが帰って来るのに間に合わないよ?ってミサカはミサカは
キッチンに戻ろうとしてみる」

一方通行「オイ!」

打ち止め「一方通行も早く掃除を済ませちゃってね!ってミサカはミサカは早く仕事を
するように促してみる!」

一方通行「…………」

正宗<なぁ、一方通行よ……>
738 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 23:30:41.15 ID:RE.CDOwo
一方通行「なンだよ……」

正宗<吾はおぬしがやったことを認めることも許すこともできぬ、以前の吾ならば問答無用
で叩き斬っておったであろう……>

一方通行「そうか……」

正宗<だが、御堂も、打ち止めも、妹達もおぬしを許すと言っておる。ならば吾も、他の誰も
口出しする事はできぬであろう。だからおぬしも己を許し、罪を贖う方法を探すのだ……。
己を罰するのではなく、彼女達のために何かを為す事でな>

一方通行「正宗……」

正宗<…………>



一方通行「お前って、まともな事も言えンだな」

正宗<そうか、おぬし吾に断罪して欲しかったのか。そこへ直れ!真っ二つにしてくれ
ようぞ!!>

御坂妹「台無しです、と、ミサカは溜め息を吐きます」
739 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 23:37:50.03 ID:RE.CDOwo
打ち止め「コラー!!二人とも何やってるの!!ってミサカはミサカは憤慨してみる!!!」

正宗<あ、いや、これはだな>

一方通行「ちょっとした行き違い……、ってその手に持ってるフライパンを置け!!」

打ち止め「あれだけ言われてもわからないなんて……、佐天さんに代わってミサカが
二人におしおきをするんだから!ってミサカはミサカはフライパンを振り上げてみる!!」



>ヨセウチドメ!オトガヒビク!
>オレナンテナマミダゾ!?
>ハンセイシナサーイ!!


御坂妹「やれやれ、と、ミサカは肩を竦めます」


御坂妹「でも――」

御坂妹「暗い顔をしているよりずっといいですね、と、ミサカは微笑みます」


一方通行「オイ!笑ってないで助けやがれェ!」
740 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/20(月) 23:50:25.92 ID:RE.CDOwo
再び訂正 ウチドメ←ラストオーダー

一方通行「さて、ようやく嵐が過ぎ去った訳だが……」

正宗<まったく、おぬしが余計な事を言うからだぞ?>

一方通行「あー、まあ反省はしてる」

正宗<そうか、喧嘩両成敗と言うしな、吾も悪かった。この事は水に流し、仕事に取り掛かろう>

一方通行「そうだな、結構なタイムロスになったしな。分担は壊れモノが多い棚の上と窓を
オレ、お前は床を担当しろ」

正宗<了解した>

一方通行「雑巾がけする時に背中の奴は使うなよ?絶対に使うなよ?」

御坂妹「一方通行、ネタ振りのような発言は謹んでください、と、ミサカはキッチンから
警告します」

747 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 21:03:20.88 ID:fiRj.OUo
   ~数十分後~


一方通行「やれやれ、どうにか終わったみてェだな……」

正宗<出来が良いかと問われれば、疑問符を付けざるを得んがな>

一方通行「そう言うな、何もぶっ壊れなかっただけマシだろうが?」

正宗<そう考える事にしよう……>

一方通行「そうしとけ。後はこの折り紙で適当に飾りを作りゃあ準備完了だな」
748 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 21:09:59.79 ID:fiRj.OUo
正宗<飾りを作ると言っても、何を作ればよいのだ?>

一方通行「打ち止め達はまだキッチンだしなァ……。材料に大分余裕もある、とりあえず
作れるだけ作ってみるか」

正宗<うむ>

一方通行「つーか、どれだけ買って来てンだよ……」

折り紙100枚入り×10

正宗<吾等が失敗する可能性を考慮し、大量に用意した可能性が高いな……>

一方通行「気に入らねェが多分そうだろうな」

正宗<くッ!なんたる屈辱!>

一方通行「仕方ねェ、恥の上塗りだけはしねェように慎重に行くぞ」
749 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 21:20:22.58 ID:fiRj.OUo
正宗<吾はどうすればよいのかさっぱりわからん、おぬしに任せるぞ>

一方通行「オレも折り紙には詳しくねェし、あんま作れンのは多くねェぞ?」

正宗<構わん!やれ!>

一方通行「オレが折れンのはコレくらいだな……」おりおり

正宗<慎重に折るのだぞ!爆発するやもしれん!>

一方通行「ンな訳ねェだろ……、っと、できたぞ紙飛行機だ」

正宗<おお!これが飛行機か!おぬしもなかなかやるではないか!>
750 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 21:30:25.23 ID:fiRj.OUo
一方通行「飾り作るってのに、紙飛行機作ってもしょうがねェンだけどな……」

正宗<これを作ればよいのではないのか?>

一方通行「歓迎会の会場を飛行場にしてどうすンだよ……。床に紙飛行機が並ンでたら
邪魔にしかなンねェだろうが」

正宗<八方塞か……>

御坂妹「ミサカが指導しますのでご心配なく、と、ミサカは落胆する正宗さんに声を
かけます」

一方通行「ン?そっちも終わったのか?」

御坂妹「はい、片付けが終わり次第合流しますので少しお待ちを、と、ミサカは二人に
伝えます」

正宗<ならばしばし待つとするか>
751 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 21:41:46.05 ID:fiRj.OUo
    ~十分後~


正宗<この緑の紙を張り合わせて昆布とかはどうだ!?>

一方通行「意味わかンねェし……」

打ち止め「お待たせー!ってミサカはミサカは後ろから飛びついてみる!」

一方通行「うおッ!?いきなり飛びつくな!危ねェだろうが!」

御坂妹「ふぅー、これで晩御飯の準備と掃除が終わりましたね、と、ミサカは感慨深げに
呟いてみます」

正宗<うむ!戦いを終えたような爽快感があるな!>

一方通行「物騒なたとえしてンじゃねェよ」

御坂妹「まだ戦いは終わってません、ミサカ達には部屋を飾りつけるという戦いが残って
います、と、ミサカは気を引き締めます」

打ち止め「ミサカ達の戦いはこれからだぁー!ってミサカはミサカは漫画の最後っぽい
セリフを言ってみる!」

一方通行「なンでもいいから早く始めようぜ……」
752 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 21:55:58.10 ID:fiRj.OUo
御坂妹「それではこれより、ミサカの折り紙教室を始めたいと思います、と、ミサカは宣言
します」

打ち止め「イェ~~イ!ってミサカはミサカは合いの手を入れてみる!」

一方通行「で、何をすりゃいいンだ?見ての通りオレは紙飛行機ぐらいしか作れねェぞ?」

正宗<吾は何も作れんぞ!>

御坂妹「自慢げに言う事ではありませんね……。お二人は子供の頃に折り紙を使って
遊んだ経験はないのですか?と、ミサカは質問します」

一方通行「ガキの頃は色々あってやったことねェな」

正宗<吾の時代にはこのような文化はなかったな>
753 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/09/22(水) 22:07:13.93 ID:n7CMfTY0
折り紙は一応平安時代からありますy…
庶民にまで一応の形で広がったの江戸だったわ
754 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 22:07:56.89 ID:fiRj.OUo
一方通行「折り紙もないとかいつの時代の人間だよ。つーかお前何歳くらいなンだよ?
見た目じゃさっぱりわかンねェしよ」

正宗<歳か?うーむ、もう何百年も前の事だからな……。正確には覚えておらんな>

打ち止め「何百年!?正宗ってスゴイおじいちゃんなんだね!ってミサカはミサカは
驚いてみたり!」

御坂妹「おじいちゃんというレベルではない気がしますが……。劒冑というものには寿命の
概念がないのですか?と、ミサカは疑問を投げかけます」

正宗<うむ、吾の知る限りで寿命で死んだ劒冑の話は聞いたことが無いな。吾は元寇の
折に劒冑となったが、吾より古い劒冑も―――>

一方通行「ちょっと待て」

正宗<どうした?>

一方通行「ちょっと気になる事があってな……。今言った元寇ってのはアレか?モンゴルが
攻めて来た元寇のことか?」
755 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 22:19:45.34 ID:fiRj.OUo
正宗<モンゴル?>

一方通行「あー……、元の事だ、蒙古襲来って言えばわかるか?」

正宗<おお!蒙古共の事であったか!吾がまだ人であった頃、あの忌々しい蒙古共が
攻めて来て―――>

一方通行「いや、それ以上はいい。オレが知りたいのはお前の言ってる元寇ってのが
なンなのか確認したかっただけだ」

御坂妹「それがどうかしたのですか?劒冑に寿命の概念がないのでしたら元寇の時代から
生きていても不思議はないでしょう、と、ミサカは疑問符を付けます」

一方通行「オレが疑問に思ったのはそこじゃねェ、お前は別の世界から来た、そうだったよな?」

正宗<うむ、吾は大和の富士の麓にいた筈が、気付けばこの日本の学園都市に飛ばされ
ておった……。ええい!今思い出しても口惜しい!!>
756 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 22:31:18.26 ID:fiRj.OUo
御坂妹「ヒートアップしているところ恐縮ですが、富士とは富士山のことですよね?と、
ミサカは確認をとります」

正宗<う、うむ、その通りだ……>

打ち止め「? それがどうかしたの?ってミサカはミサカはハテナマークを浮かべてみる」

御坂妹「簡潔に説明すれば正宗さんのいた世界とミサカ達の世界、この二つの世界は
全く別の異世界ではなく、ある程度繋がった平行世界である、ということですか?と、ミサカ
は一方通行に問いかけます」

一方通行「そう考えるのが妥当だろうな」
757 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 22:46:43.00 ID:fiRj.OUo
打ち止め「それが何か問題でもあるの?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」

御坂妹「恐らくですが急を要するような問題はないでしょう。何か問題になりうる事がある
とすれば、正宗さんの世界に居た人物、存在したもの、事件などがこちらの世界に有る
可能性があることくらいでしょう、と、ミサカは結論付けます」

一方通行「そうだな、だからなンだ、で済ませてもいいが、オレは劒冑って奴の存在が
どうも気になるンだよ……」

御坂妹「どういう意味ですか?と、ミサカは相槌を入れます」

一方通行「コイツの話じゃ、向こうの世界では劒冑ってのは世界の情勢を左右する
重要な要素だろ?さっきの話から察するに歴史上の事件の時期、山の名前、向こうと
こっちとの間にそれ程大きな差異がみられねェ。それなのに劒冑の有無なンて言う
決定的な所に違いがある……」
758 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 23:00:50.07 ID:fiRj.OUo
御坂妹「こちらの世界にも劒冑に相当するものが存在する筈……、という事ですか?」

一方通行「まあ、オレの勝手な推察だがそう考える事もできるンじゃねェか、ってな」

打ち止め「それって能力の事じゃないかな!?ってミサカはミサカは閃いてみたり!」

一方通行「その線も十分に有り得るが……。能力の開発、学園都市ができたのは
精々数十年前だ。少なく見積もっても数百年以上のズレがある」

正宗<おぬしの考えすぎではないか?吾の世界とこの世界に同じ所があると言っても
何から何まで同じわけではあるまい?>

一方通行「それもそうなンだがな……」

御坂妹「ちょっと待って下さい、と、ミサカは話に割り込みます」

一方通行「ン?」

御坂妹「数百年以上の昔から存在し、超常の力を司るもの。その条件に該当するものが
この世界にもありますよ、と、ミサカは自信満々の笑みを浮かべます」

打ち止め「おお!スゴイ!10032号!それって何なの!?ってミサカはミサカは興味津々
に聞いてみる!」

御坂妹「それは―――」



御坂妹「魔法、ではないでしょうか?と、ミサカは冗談交じりに答えます」

759 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 23:14:34.10 ID:fiRj.OUo
一方通行「チッ、期待させといてくだンねェこと言ってンじゃねェよ」

打ち止め「それはちょっと無理があるよ、ってミサカはミサカは期待させておいて冗談を
言った10032号に腹を立ててみる」

御坂妹「これは失礼しました、と、ミサカは素直に反省をします」

正宗<10032号の言った事は間違っておるのか?>

一方通行「オレ達の使ってる能力は魔法みてェに見えるかも知れねェが魔法とは別物だ、
歴史だってそう古くはねェ。大体昔から魔法なンて力が存在するンなら、なンで表に出ない?
もし魔法があるンなら、そっちの世界みてェにその力を使って国同士がどんぱちやってても
おかしくねェだろ?」

御坂妹「正論ですね、と、ミサカは首肯します」

打ち止め「でも本当に魔法があったらいいのにね!ってミサカはミサカは夢を膨らませて
みたり!」
760 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 23:25:20.09 ID:fiRj.OUo
一方通行「夢見ンのは勝手だがな、魔法と同じおとぎ話の存在の超能力が使えるように
なっても、それを使ってやってる事は人体実験や殺し合いだぜ?魔法が存在しても派閥
争いだの殺し合いだのでメルヘンな事はなンもねェと思うぜ?」

打ち止め「うう、高速で夢を砕かれてミサカはミサカはしょんぼりしてみたり……」

御坂妹「元気を出して下さい上位個体、と、ミサカは上位個体を励まします」

正宗<まったく大人げない奴じゃな>

一方通行「ほっとけ……、っと話を脱線させちまったせいで時間がヤバいな」

御坂妹「そうですね、それでは説明に戻りましょう、と、ミサカは軌道修正します」
761 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 23:40:40.56 ID:fiRj.OUo
御坂妹「それでは私は上位個体に教えつつ花や飾り玉を作るので、一方通行と正宗さんの
二人は簡単なわっかつづりを作ってください、と、ミサカは説明します」

一方通行「わっかつづりってのはあの鎖みてェなやつか……」

御坂妹「その通りです、見栄えもいいですし、片付けやすく言う事なしです、と、ミサカは
力説します」

一方通行「了解、そんじゃ作業に入りますかね」

打ち止め「作り方わかるの?ってミサカはミサカは心配してみたり」

一方通行「それくらいならな、オレがコイツにも教えながらやるからそっちはそっちでやって
くれ」

御坂妹「はい、それでは上位個体、始めましょうか、と、ミサカは上位個体を促します」

打ち止め「それじゃあ、残りの時間頑張って飾り付けをするよ!ってミサカはミサカは
張り切ってみる!」

一方通行「ほれ教えてやるからこっちに来い」

正宗<お手並み拝見といこう>
762 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 23:48:37.40 ID:fiRj.OUo
      ・
      ・
      ・


佐天「やっと学校終わったよ、みんな大丈夫かなぁ……」


    ~帰宅~


佐天「あれ?部屋の中が静かなような……。正宗どうかしたの?」

佐天「…………応答なし、か。もしかしたら何かあったのかも……」

ガチャ

佐天(鍵は開いてる……、それに中には人の気配もする……)
763 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/22(水) 23:56:31.45 ID:fiRj.OUo
佐天(もし相手が能力者だったら……、応援を呼んだ方がいい?それとも……)

正宗<ええい!何をまごついておるのだ御堂!早く中に入って来ぬか!>

佐天(正宗!?中にいるの!?)

正宗<ああ!皆揃っておる、何も危険などないから早く入って来るのだ!!>

佐天(? まあ、殺気とかは感じないし……)

佐天「た、ただいまー……」

パーン!

佐天「うわッ!?」

打ち止め「おかえりなさい、佐天さん!ってミサカはミサカはクラッカー片手に出迎えて
みたり!」

御坂妹「おかえりなさい、と、ミサカもクラッカーを手に上位個体に続きます」
764 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 00:10:21.37 ID:Fg3eXOoo
佐天「一体どうしたの!?なんか飾り付けられてるし、部屋もキレイになってるような……?」

打ち止め「あのね!いつもお世話になってるお礼にパーティーを開くことにしたの!って
ミサカはミサカは事情を説明してみる!」

御坂妹「部屋の掃除から晩御飯の準備まで全て終了しています、と、ミサカは誇らしげに
言ってみます」

佐天「妹さんまで手伝ってくれたんですか?」

御坂妹「はい、と、ミサカは肯定します」

佐天「すみません、わざわざ……」

御坂妹「いえ、あなたから受けた恩に比べればこの位は……、と、ミサカは正直に述べます」

佐天「で、でも  正宗<ガハハハ!その二人だけではないぞ!この正宗と一方通行の
奴めも一役買っておるぞ!!>
765 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 00:21:31.71 ID:Fg3eXOoo
佐天「え?一方通行さんが?」

一方通行「なンだ?そンなに意外か?」

佐天「そんなことないですよ!とっても嬉しいです!」

一方通行「ふん……」

佐天「それで?二人は何をしたの?」

正宗<聞いて驚け!吾と一方通行の二人でこの部屋を掃除し、部屋の飾り付けまでした
のだぞ!>

佐天「ホント!?スゴイじゃん!よく頑張ったね!」

正宗<ワハハハハ!!もっと褒めても構わんのだぞ!?>
766 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 00:31:46.90 ID:Fg3eXOoo
佐天「正宗は何作ったの?」

正宗<吾等が作ったのは天井と窓の所の輪っかを作ったぞ!>

御坂妹(カーテンの代わりになるんじゃないかと思うくらい沢山ありますが……)

佐天「よくこんなに沢山作れたね、スゴイよ!一方通行さんもありがとうございます」

一方通行「世話になってるからな……」

御坂妹「晩御飯もミサカ達が用意するので佐天さんは何もせずにゆっくり体を休めて
下さい、と、ミサカは佐天さんに休息を促します」

佐天「さすがに何か手伝った方が……」

打ち止め「ダメだよ!今日は何にもしちゃダメ!ってミサカはミサカはお手伝いを断固拒否
してみる!」
767 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 00:44:07.73 ID:Fg3eXOoo
佐天「どうして?」

打ち止め「佐天さん、いつも学校から帰ったら掃除して、ご飯作って、その後はミサカの
遊び相手もしてくれて……。ミサカ達は佐天さんに頼ってばっかり……、だからミサカ達も
佐天さんの為になにかしたいの!ってミサカはミサカは胸の内を打ち明けてみる!」

佐天「打ち止めちゃん……」

打ち止め「ミサカ達を頼っていいんだよ?だってミサカ達は、その、か……」



打ち止め「家族、なんだから…………」

768 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 00:57:05.67 ID:Fg3eXOoo
一方通行「打ち止め……」

佐天「そっか……、家族か……」

打ち止め「ダメかな?ってミサカはミサカはおそるおそる聞いてみる」

佐天「ダメな訳ないじゃない……、そこまで言うんなら家事では頼りにさせてもらうよ?」

打ち止め「うん!どんどん頼りにしてよ!ってミサカはミサカは腕まくりのポーズ!」

御坂妹「さしずめ、上位個体は妹、一方通行は父……というより兄ですね。そして父親が
正宗さん、佐天さんは長女ですかね、と、ミサカは家族構成を予想します」

一方通行「オレが長男、アイツが長女、打ち止めが次女か……。しっかし使えねェ親父だなァ
おい?」

正宗<口の減らない奴め、だが今の吾は寛大だ。許してやろうではないか>

佐天「それじゃあ晩御飯まで何する?ゲームでもする?」

打ち止め「え?でもお手伝いするって言ったばかりなのに……、ってミサカは……」

佐天「遠慮しないの!お姉ちゃんにはたっぷり甘えていいんだよ?」

打ち止め「う、うん!」
769 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 01:04:11.41 ID:Fg3eXOoo
    ~夜 七時少し前~


御坂妹「それではミサカ達は晩御飯を作ってきます、準備は済んでいるのですぐに
できると思いますので待っていてください、と、ミサカはキッチンへ向かいます」

打ち止め「楽しみに待っててねぇー!ってミサカはミサカは興奮を抑えきれない!」

タタタ!

佐天「晩御飯なんなんでしょうね?」

一方通行「さあな?」

正宗<吾等は台所に入っておらぬからわからんなぁ……>

一方通行「ま、言葉通り待ってるしかねェだろ」

佐天「なんかドキドキして来たなぁ」
770 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 01:08:39.45 ID:Fg3eXOoo
打ち止め「じゃじゃ~ん!できたよぉ!ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」

御坂妹「上位個体走ったら危ないですよ、と、ミサカは注意を促します」

打ち止め「おおっと!そうだね、慎重に慎重に……」

コトッ

正宗<ふむ?これはなんという料理だ?>

一方通行「これは……」

佐天「ハンバーグ?」

打ち止め「大正解!ってミサカはミサカは拍手してみる!」
771 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 01:18:11.54 ID:Fg3eXOoo
一方通行「懐かしいな……」

佐天「一方通行さん?」

御坂妹「これは上位個体と一方通行が初めて一緒にご飯を食べた時のメニューでしたね、
と、ミサカは説明します」

打ち止め「そうだけど、懐かしいって程前じゃないような……」

一方通行「悪いな、昔の事を思い出してただけさ……」

佐天「昔の事、ですか?」

一方通行「ああ……」

一方通行(家族、か……)

佐天「どうかしたんですか?」

一方通行「いや、またこんな風に飯を食う事があるなンて思わなかったからな。今、オレが
こうしてられんのはお前のおかげでもある……。だから……」



一方通行「ありがとな、佐天……」

772 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/23(木) 01:29:38.38 ID:Fg3eXOoo
打ち止め「おおー!ってミサカはミサカは驚いてみる!」

佐天「ふふっ、初めてちゃんと呼んでくれましたね。私の事……」

正宗<ガハハ!一方通行の奴!顔を真っ赤にしておるぞ!!>

御坂妹「お、落ち着いてください!検体番号10310号!と、ミサカは感覚共有していた
10310号を宥めます!」

一方通行「う、うるっせェ!いちいち騒ぐような事じゃねェだろ!とっとと飯食っちまうぞ!」

佐天「そうですね、それじゃあみんな席について……」

打ち止め「はーい!ってミサカはミサカは元気よく返事をしてみる!」

御坂妹「やっと収まりました、と、ミサカは安堵の息を吐きます」

正宗<今ばかりは人の体の方がよかったな……>

打ち止め「何か食べる?ってミサカはミサカは正宗を気遣ってみる」

正宗<いや、おぬし等が食事を食べているところをみれば吾は満足だ>

一方通行「殊勝な心掛けじゃねェか?」

正宗<一方通行よ、打ち止め達が作った物を残すでないぞ?>

一方通行「はいはい」


佐天「それじゃあ、みんな準備はいい……?」

打ち止め「うん!」

佐天「せーの――」




    「「「「「いただきまーす!!」」」」」


783 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:01:16.57 ID:NYcHQ86o
「チッ……、なんで私がこんな面倒くさい事を……」

深夜、人気のない裏路地に苛立たしげな声が響く

「しかたないよ、むぎの。上からの命令だもの」

それに別の少女、滝壺理后が応じる

「別に仕事に不満がある訳じゃないわよ、ただ……」

そこまで言って私は溜め息を一つ吐いた
784 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:10:53.48 ID:NYcHQ86o
「他の奴らの仕事に協力しろ、なんて馬鹿みたいな電話が来たと思ったら……
今度は寄越すのは滝壺一人でいい、と来たもんだ」

私は両手を上げ、呆れたとでもいうようなジェスチャーをした

「戦闘能力の低いあんた一人を寄越せなんて、私達を嵌めようとしてるようにしか思えない
わよ」

「でも、上からの命令だし。罠なんて事はないと思う」

滝壺がそう切り返してくる

「私だってそうは思うんだけどね。仕事のパートナーがコイツじゃあね……」

再び溜め息を吐くと、先程から黙っていた少女に視線を向ける

「あちゃー、僕ってそんなに信用ないんだ?」
785 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:22:01.14 ID:NYcHQ86o
私の視線の先、男のような服装をし、帽子をかぶった少女が声を上げる

「これでも仕事熱心な優等生のつもりなんだけどなー」

少女はクスクスと笑い声をこぼす

「言ってろ」

私と同じ、暗部に所属する能力者

紅宮炸夜(べにみやさくや)に吐き捨てるように言った

「あんまり怒ると皺が増えるよー?」

「ぶち殺されてぇのか?」

あからさまな挑発に私の苛立ちはさらに加速する
786 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:29:35.17 ID:NYcHQ86o
「これからどうするの、べにみや?」

私達の様子を見かねたのか、滝壺が私達の間に割り込む

「ターゲットを追跡して、ここで待ち伏せてるけど。この後は?」

「とりあえずはここで待機だね」

滝壺の問いに紅宮はそう返答する

「ここでアホ面下げた馬鹿共が来るのを待ち伏せして、まとめて吹っ飛ばせばいいのか?」

コイツとの会話で募ったイライラをどこかにぶつけたくてしょうがない

「あー、それなんだけどね……」

やる気満々な私を見て、珍しく紅宮が言葉を濁す
787 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:38:40.10 ID:NYcHQ86o
「実はアイテムに手伝って貰いたいのはターゲットの位置の特定までなんだよね」

「ああ!?そりゃどういうことだ!?」

出鼻を挫かれて思わず大きな声を出してしまう

「落ち着いて、むぎの」

紅宮に詰め寄ろうとする私を滝壺が制止する

「いやー、どうもこうも、始めからこっちのリクエストは滝壺さん一人って言っておいた
筈だよ?それを第四位が勝手についてきたんだから、仕事がなくて当たり前じゃん?」

言いながら、両の掌を空へ向けるジェスチャーをした

「テメェ……」

「だから落ち着いてよ、むぎの。べにみやの言ってることは間違ってないよ」
788 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:50:34.04 ID:NYcHQ86o
「今回の仕事は滝壺さんに追跡してもらった暗部を裏切った能力者の排除の他に
別の目的もあるからね。第四位に暴れてもらったら困るんだよ」

「別の任務?」

「そー、今回の仕事の目的はそいつが持って逃げたアタッシュケースを回収することが
最優先事項なんだー」

「むぎのが攻撃したら、アタッシュケースごと壊れちゃうかもしれないから攻撃しちゃダメ
ってことね?」

「その通り、滝壺さんは理解が早くて助かるよ」

相変わらずのムカつく物言いだ……

「で、私に攻撃するなって理由はわかったけど。これからどうする訳?
ブツの確保が最優先なら、あんたの能力も色々危ないと思うけど?」

イライラを押し殺し、質問を投げかける
789 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 21:57:34.59 ID:NYcHQ86o
「ご心配なく、僕の考えた作戦があるからね」

「へー、じゃあ聞かせて貰おうじゃない?その作戦とやらを」

「まあまあー、そう急かさないで。この作戦において重要なモノがもうすぐ来る筈だからさ」

紅宮が言葉を終えてすぐに、私達の背後に何者かが着地した

「!」

私は瞬時に後ろを振り返り身構える

「おっと、俺は味方だ。間違っても能力は使わないでくれよ?」

後ろに居たのは、どこか軽い雰囲気を纏った背の高い男だった
790 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 22:12:21.19 ID:NYcHQ86o
「さすがは第四位と言ったところだな。まさか瞬時に戦闘態勢に入るなんてな……
寿命が縮まっちまったぜ……」

男は軽薄そうな笑みを浮かべながら言った

「誰だテメェは?」

「たぐさり」

男が私の問いに答えるよりも早く、滝壺が言葉を発した

「たぐさりひびき……、何度か会った事がある」

「こいつは嬉しいね、まさかアイテムの能力者である君に名前を覚えていて貰えるなんて」

日鎖(たぐさり)と呼ばれた男がハハッと笑う

「鼻の下伸ばしてないで、早く目的の物を出してよ」

二人のやり取りを見ていた紅宮が急かすように言った
791 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 22:24:37.91 ID:NYcHQ86o
「目的の物?」

その言葉を聞いて、日鎖が脇に大きな袋を抱えている事に気がついた

「おっと、悪い。だがそう急かすもんじゃないぞ?こっちだって苦労したんだからな」

「急かしたくもなるよ、予定よりも五分も遅いんだからね?」

「思ったよりガードが多くてな、片付けるのに時間がかかった」

言いながら日鎖が袋を開ける

「!」

中から出てきたものを見て滝壺が少し驚いたような素振りを見せる

中から出てきたのは、一人の少女だった

気絶しているのか、グッタリしていて生きているのか死んでいるのかすら、ここからでは
判別できない

「それは?」

「交渉材料さ」

「交渉材料?」

「まー、見ててよ。僕の作戦は成功する事間違いなしさ……」
792 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 22:37:57.58 ID:NYcHQ86o
それから紅宮と日鎖は準備がある、と言って近くの建物に入って行った

「滝壺、ターゲットがここに来るまであとどれくらい?」

「多分もうすぐ」

「やー、お待たせしましたね」

笑顔を浮かべた紅宮と、心なしか憂鬱そうな顔をした日鎖が私達と合流した

「随分とのんびりじゃない?ターゲットはこっちに向かってるけど、もし別のルートを
選んでいたらどうするつもりだったのかしら?」

延々と待たされたイライラをここぞとばかりに吐きだす

「あー、その心配はないよ。今回の事は単独犯じゃないからね、あいつ等が
この先で外部の組織の人間と落ち合う事になっているという情報をあらかじめ取得して
いるよ。別のルートは封鎖しているし、別のルートに逸れる可能性はほとんどないよ」

自信ありげに紅宮がそう答える

「おい、炸夜。準備はいいか?」

「準備はオーケーさ」

日鎖の問いに紅宮が笑顔で応じる

「それでは、喜劇の幕開けだ―――」
793 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 22:46:24.55 ID:NYcHQ86o
それから数分後、暗い路地裏に二つの足音が木霊する

「おい!こっちで大丈夫なのかよ!?」

金髪の男がもう一人の男に問いただす

「わからない!だがここ以外に道はない!」

走りながらもう片方の男が答える

「クソッ!やっぱり無理だったんだよ!この学園都市から逃げるなんて!!」

「今言ってもしかたないだろう!ッ!?止まれ!」

前方に人影を見つけ、二人の男は立ち止まる


「やー、裏切り者君。悪いんだけど、少し僕達に付き合ってもらうよ?」
794 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 22:57:49.22 ID:NYcHQ86o
「待ち伏せか!?」

二人の男が身構える

「おっと、無駄な抵抗はやめた方が賢明だよ?君達はレベル2とレベル3、対してこちらは
レベル4が三人、その上レベル5までいるんだから」

その言葉を聞いて二人の男の間に明らかな動揺が走る

「レベル5……?」

金髪の男がにわかには信じられないというように呟いた

「あー、信じられないって顔だね?まー、すんなり信じろって方が無理があるかな」

紅宮はふー、っと溜め息を吐く

「そんなことを俺達に言って、なんのつもりだ?それが本当ならすぐにでも俺達を殺せば
いいだろう?」

臨戦態勢のまま、もう一人の男が言った

「そうしてもいいんだけど、僕達としてはもう少し穏便に事を済ませたいんだよね……
だから、取引をしないかい?」
795 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 23:07:40.04 ID:NYcHQ86o
「取引だと?」

「そー、取引。悪い話じゃないと思うんだけどなー、少なくともこのまま殺されるよりかは
いいと思うんだけど?」

「そんな話、すんなりと受け入れると思っているのか?お前達のレベルがお前の言うとおり
なんて確証はないし、このまま踵を返して逃げることだってできる……」

「もしかして、自分の目で見ないと物事を信じないタイプ?難儀だねー」

ククッ、っとくぐもった笑いを漏らしながら紅宮は言った

「第四位に頼んで力の差を見せつけてもいいんだけど……、こっちにはもっと簡単な
手段があるからね……。響!」

その合図に従い、日鎖が先程の少女を抱えて前に出た
796 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 23:13:56.51 ID:NYcHQ86o
「香奈!?」

その少女を見るなり、男が驚きの声を上げた

「おー、さすが兄妹。この距離でも妹だってわかるんだー、愛の力だねー」

「貴様ッ!香奈に何をした!?」

男は今にも飛びかかりそうな剣幕で叫ぶ

「薬で眠らせているだけだからご安心を」

紅宮が口の端をニィーと釣り上げて笑う

「でも、君の対応次第ではどうなるかはわからないけどねー?」

「ぐ……!」

その言葉に男が言葉を詰まらせる

「わ、わかった……。さっきの取引の話、受けるよ……」

「素晴らしく賢明な判断だね、僕達にとっても、君達にとってもね……」
797 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 23:25:28.87 ID:NYcHQ86o
「何が望みだ?」

「簡単な話さ、君達が盗んだアタッシュケース、それをこちらに渡して貰おうか?」

紅宮がそう告げる

「それで、香奈は返してもらえるんだな?」

「そうだね、妹さんとアタッシュケースの交換。互いにいい取引だと思うのだけど?」

「ちょ、ちょっと待て!!」

二人の交渉に割り込むように金髪の男が声を上げた

「俺達はどうなるんだよ!?俺はこいつの妹のためなんかに死ぬ気はないぞ!?」

「お前――!」

「まー、そう慌てないでよ」

仲間割れを起こしそうになる二人に紅宮が優しげな声をかける

「君達二人にとっても朗報だ、寛大な統括理事長様は、そのアタッシュケースをおとなしく
こちらに渡すのなら、君達の命は助けてもいいと言っているんだ」

大仰な手振りを交えながら言葉を続ける

「もちろんお咎めなし、という訳にはいかない。君達二人には相応の罰は受けて貰う、
だが、ここで死ぬよりはマシだろう?それにこの子にはこれ以上の手出しはしないとも
約束しよう」
798 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 23:39:15.63 ID:NYcHQ86o
二人の男が顔を見合わせる

「その話……、本当なのか?」

男が改めて紅宮に問いかける

正直な話、傍から聞いていてもうさんくさいことこの上ない話だと思う……

しかし―――

「この状況で嘘をついて何の意味があるというんだ?君達の命はすでに僕達の掌の上、
その気になればいつでも君達を殺せるというのに……」

その通りだ、わざわざ嘘を吐く必要なんてない
その気になればこの二人をすぐにでも殺す事ができるのだから

「わかった、取引に応じるよ……」

金髪の男の方は未だに信じられない、という顔をしているが、それ以外に方法が思い
つかないのだろう……
何も言わずに事の成り行きを見守っている

「悪いんだけど、まずはそちらのアタッシュケースをこちらに寄越してくれないかい?
もし偽物だったりしたら堪らないからね」

「…………わかった、言うとおりにしよう……」

しばしの逡巡の後、男は頷いた
799 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 23:47:24.41 ID:NYcHQ86o
「先に断っておくよ、僕達に抵抗するような真似はしないでくれよ?もしそんなことをしたら
僕達は君達を殺さなければいけないからねー?」

紅宮がそう釘を刺す

「それからアタッシュケースは投げてもかまわないよ?まだ僕達を信用できないみたい
だしね?」

「わかった……」

男が手に持っていたアタッシュケースを放り投げる

中身に何が入っているかわからないが、距離が開いているためかこちらには届きそうも
なく、地面に落ちそうになる

「響――」

「あいよ」

紅宮が合図をすると地面に落ちるところだったアタッシュケースがまるで引き寄せられ
るように日鎖の手に収まった

「確認してくれ」

日鎖は紅宮にアタッシュケースを手渡し、そう言った
800 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/09/30(木) 23:54:07.83 ID:NYcHQ86o
「ふむー、どうやら間違いはないようだね……」

アタッシュケースの中身を確認した紅宮がそう言った

「チ……」

アタッシュケースの中身がなんだか興味があったが、こちらから見えないようにされている
せいで確認ができない

「響、その子を返してあげてくれ」

「へいへい……」

気乗りがしない様子で、日鎖が能力を使い、少女を私達と男達の中間あたりに壊れモノ
を扱うように丁寧に下ろした

「香奈!!」

男が少女の名前を呼びながら駆け寄る

「クククク―――」

「あん?」

紅宮が男の方を見て、今度は明らかに笑いを押し殺すような素振りを見せた
801 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:06:01.58 ID:5ZUwNAMo
「何が可笑しいことでもあったか?」

「クク、面白い事が起こるのはこれからさ……」

「むぎの、なんだか様子がおかしい」

紅宮の行動を訝しげに見ている私に、隣に居た滝壺が声をかけてきた
促されるように男の方に視線を移すと、男は少女を腕に抱いたままブルブルと肩を
震わせている

「?」

なんだろう?
様子から察するに、感動に震えている……、という訳ではなさそうだが……

「おい…………」

震えるような、低い声で男が言った

「なんだい?」

それに対し、紅宮は心底楽しいというように……
弾むような声音でそれに応じた

まるで、劇の好きなシーンの到来を喜ぶ少女のように―――

「香奈に……、何をした…………?」

「何って、さっきも言った通り薬で眠らせただけだよ?まあ―――」



「二度と起きないだろうけどねぇ!?ギャハハハハハハハハ!!!」

802 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:14:03.75 ID:5ZUwNAMo
薄暗い路地裏に甲高い笑い声が響き渡る

「キ――――」

「キサマァァァ!!!」

男が絶叫のような叫びを上げながら銃を構える

「はぁ……、抵抗の意思を確認……」

溜め息交じりに日鎖が呟いた

「死ねぇええ!!!」

乾いた音をたて、紅宮に向かい銃弾が放たれる

「やれやれ」

日鎖が手を横に振ると、銃弾は壁にでも阻まれるかのように弾かれた

「抵抗するんだね!?だったら――」

男が発砲した事を見てとると、紅宮は凄絶な笑みを浮かべ―――

「吹っ飛びなァ!!」

能力を発動させた

同時に、男が腕に抱いていた少女の亡骸が破裂した――
803 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:25:48.29 ID:5ZUwNAMo
「う、ごふ―――――――?」

何が起こったのか理解できない
そんな声を残し、男の体が後方へ吹き飛ぶ

「ひィ!?ク、クソッ!!」

一瞬で起きた目の前の惨状に怯えながらも金髪の男は逃げようとする

「悪いが、逃がせないんだよ」

言うが早いか、日鎖が金髪の男目がけて跳躍した

「この――!!」

金髪の男は後ろに飛んで避ける

(逃げれるか!?)

金髪の男はそう自問する、自分の能力は身体強化
脚力を強化して駆け抜ければ、逃げ切る事も可能な筈……

やるしかない――

分の悪い賭けかもしれないがもう他に道は残されていない

(敵の位置を確認しねぇと)

瞬時にそう判断し、着地と同時に顔を上げる

そこには自分が元居た場所にいるであろう男と、さらに遠くに三人の女がいる……

だが―――

「へ――?」

目の前にあったのは自分の思い描いた光景ではなく……
その目には、高速で迫る拳が映っていた

(なんで?)

その答えがでることはなく、男は最後に己の頭蓋の砕ける音を聞き絶命した
804 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:36:06.14 ID:5ZUwNAMo
「ふー、これでおしまいでしょうかねー?」

金髪の男が絶命した事を確認した紅宮がもう一人の男に歩み寄る

「ぜぇ……ぜぇ…………」

男は腕が欠損し、体中は血塗れで絶命するのは時間の問題であろう状態だった

「クク、我ながら見事だよねー。爆発の威力を調整した甲斐があったってものだよ」

まるで純真な子供のような笑みを浮かべながら男に向かって声をかける

「ねぇー?どんな気持ちだい?愛する家族を殺されて、憎い敵に手も足も出ないってのはどんな
気分?」

「はぁ……、くたばれ……。このゲス野郎……!」

男は最後の力を振り絞って呪詛の言葉を吐き出す
805 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:42:51.10 ID:5ZUwNAMo
「ふー、口の減らない人だなー」

紅宮は腕に巻かれていたバンドのようなものから一本の鉄針を取り出した

「そんな人はー、こうだ!」

それを思いっきり男の口に突き立てた

「ガ、ブ――――!!」

「うッ!」

それを見て滝壺が思わず目を背けた

「ア、ァァアァ――」

悶え苦しむ男を見ると、紅宮は満足そうに目を細め

「あの世で妹さんと仲良くするんだよ?」

この状況には似つかわしくない、まるで仲の良い友人にでも向けるかのような笑顔を
浮かべながら―――



「さようなら」



死刑宣告を下した


806 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:48:07.56 ID:5ZUwNAMo
パァン、と乾いた音が路地に響き渡る

「ク、クク、ギャハハハハハハハハハハ!!!」

もはやどこの誰かも判別できなくなった三人分の死体を見て
紅宮は狂ったような笑い声を上げる

「チッ!」

それを見て思わず舌打ちをする

「むぎの……」

滝壺が心配そうにこちらの様子を窺う

「仕事が終わったんなら帰るわ……。行くよ滝壺」

「ああ、お疲れさん」

私の言葉に反応したのは日鎖一人で、紅宮はいまだに自分の世界に入り込んでいる
807 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/01(金) 00:57:43.90 ID:5ZUwNAMo
仕事を終え帰途につきながら考える

なぜ、自分が紅宮を嫌うのかを……

「きっと似たもの同士だから、ね……」

そう言って自嘲気味な笑みを浮かべる

「はまづら達、大丈夫かな……」

隣を歩く滝壺が呟く

「さぁね……」

滝壺の言葉に、純粋な優しさから来るその言葉に、なんて返せばいいのか
思いつかず

「…………」

私は押し黙る

滝壺もそれ以上は言葉を発さず

私達は静まり返った街をただ無言で歩いて行く……


816 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 17:21:13.59 ID:IWigZq2o
お待たせして申し訳ありませんでした

今から始めます

あと今回は少しグロの要素があります
817 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 17:27:49.96 ID:IWigZq2o
麦野達が逃走した能力者を捕捉するために路地で待機しているのと時を同じくして
ほとんど車の通らなくなった深夜の街道を一台の車が走っていた

「はぁ……」

その車の運転手、浜面仕上は他の同乗者に聞こえないように小さな溜め息を吐いた

(どうしてこんな事になったのやら……)

別に暗部の仕事そのものに対して愚痴を言っている訳ではない

暗部の仕事に関わるのはもう慣れっこだし、こんな風に夜遅くに駆り出されるのも初めて
ではない……

溜め息の原因は別の事……

今回の仕事に参加するメンバーにあった
818 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 17:38:07.01 ID:IWigZq2o
ミラー越しに後ろを確認する

アイテムのメンバーであるフレンダと絹旗

この二人が原因ではない、彼女達とは比較的付き合いも長いし別段悪感情を抱いて
いる訳でもない

原因は彼女達の後ろに座っている二人組だ……

赤いショートの少女と緑色の髪のガラの悪そうな青年……

暗部の別の組織から派遣されて来たとかいう二人だ
819 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 17:47:03.38 ID:IWigZq2o
「でもホントに頭に来るよね!今回の作戦!!」

赤い髪の少女……

確か夏目来見(なつめ くるみ)とか名乗っていた少女が腹立たしげにそう言った

「別にそこまで怒るようなことじゃねぇだろうが?」

緑髪の青年が気だるそうにそう答える

「怒るに決まってるじゃん!今回の作戦で囮に使われたアタッシュケースの中身、
アレがなんだかわかって言ってるの!?」

青年の答えが気に入らなかったのか、夏目は怒りを更に加速させたようだ

車内に響き渡る大きな声で、青年に対して抗議の声をぶつける

「わかったわかった、俺が悪かったよ。だからそう耳元で大きな声を出すな……」

ゲンナリしたような声で青年は謝罪の言葉を述べる

「ホントにわかってるのかなぁ……。あのアタッシュケースの中身は『あの人』がくれた
大切なものなんだよ?それに……」

そこで一度言葉が区切られる

「あれは私達の家族になるかもしれないのに……」
820 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 17:53:43.02 ID:IWigZq2o
「?」

夏目の言葉を聞いて頭に疑問符が浮かぶ

それはフレンダと絹旗も同じだったのだろう

チラリと後ろを窺うと二人共同じように不思議そうな顔をしていた

俺達が疑問に思った言葉……

アタッシュケースの中身が家族になるとはどういう意味なのだろうか?

何かの比喩表現?

まさかそのままの意味で麦野達が奪還に向かったアタッシュケースの中には子供が
入っている、という事なのだろうか?

「んな訳ねぇよな……」

アタッシュケースの中に子供が入っているという、嫌な光景を想像してしまった……

「なぁ、あんたら。今の話はどういう意味なんだ?家族がどうとか……、よかったら教えて
くれないか?」

頭を振って嫌な想像を振り払い、夏目に先程の言葉の意味を尋ねてみる
821 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 18:06:01.16 ID:IWigZq2o
「それを知ってどうするの?あなたには関係ないわよ」

俺の質問に対して、夏目は隣の青年に向けていたような気安い態度ではなく、
まるで見下すような態度でそう言った

「それは私も超気になったんですよ。よかったら教えてくれませんか?」

助け船を出すかのように、絹旗が再度夏目に向かって俺と同じ質問をした

「う~ん……、そうポンポン話していいような話じゃないから……。詳しくは話せないんだ
ごめんね」

またしても態度が急変し、夏目は絹旗に対しては、隣の青年に接するような柔らかい態度で
謝罪した

「なんなんだよ、この扱いの差は……」

夏目はなぜか俺に対してやたらと無愛想な態度をとる

もしかして俺だけに辛く当たるのかと思ったが、フレンダにも同じような態度をとっていた……

俺達が何かした訳でもなく、まったく理由がわからない

おかげで車の中はどこか居心地の悪い雰囲気に満たされている

「やれやれだぜ……」

俺は他の奴らに聞こえないように愚痴をこぼし、本日何度目かわからない溜め息を吐いた
822 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 18:18:22.15 ID:IWigZq2o
そうこうしているうちに、車は目的地に到着した

辺りに人気のない廃墟に佇む廃ビル

ここが今回の目的地だ

「やっと着いたぜ……」

道中の息苦しさから解放されて、俺は不謹慎ながらも伸びをする

「おい、あんた。たしか、浜面……、だったよな?」

車中では苦労しながらも、夏目の相手をしていた青年が俺に声をかけて来た

「ん?あんたは……、えーと……」

マズイ、夏目の印象が強烈過ぎたせいで自己紹介されたのに名前をド忘れしちまった

「風嵐砕人(かざらし さいと)だ、まあ別に覚えなくても構わねぇがな」

若干小馬鹿にするように風嵐はそう言った

「……、それで、なんの用だ?」

「道中では夏目があんた等に辛く当ってたんでな、一応謝罪くらいはしてやろうかと思ってな」
823 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 18:29:32.55 ID:IWigZq2o
そう言って風嵐は口の端を釣り上げるような笑みを見せた

「気にしてねぇよ。ああいう扱いには慣れっこだしな」

自分で言っていて悲しくなるが、普段から麦野も俺に対してあんな感じだしな……

「ははっ!やっぱり苦労してんだなぁ!」

「つーか、なんであいつは俺やフレンダに対してはあんな態度になるんだよ?」

先程からの疑問をぶつける

「そりゃあ、あんた等が無能力者だからさ。あいつはとことん無能力者を見下してるからなぁ」

風嵐は楽しそうにそう言った

「そうかよ……」

そう言う事か……

無能力者を見下している能力者、俺が嫌いな奴らだ

だが、今ここで事を荒立てる事は賢い選択ではない……

俺は拳をギュッと握りしめ、怒りを抑える

「何遊んでるの、風嵐。手早く終わらせて帰ろうよ」

声のした方を見ると、大きなバッグを抱えた夏目が立っていた
824 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 18:44:54.83 ID:IWigZq2o
「そう慌てんなよ」

「こっちはイライラしてるんだから、早く終わらせたいの!」

言い放つと、夏目は手に持っていた大きなバッグをドサリと地面に下ろした

「随分大きなバッグね、何が入っているのかしら?」

「うお!?」

いつの間にか俺の真横に立っていたフレンダがそう言った

「気付いてなかったの?結局、こんなんだからなめられる訳よ」

「浜面は超臆病野郎ですね」

「うるせえ!」

さらに絹旗まで加わって俺を罵倒してきたが、まあなんだかんだで夏目の時程は悪い気は
しなかった

「おいおい、こんなとこでじゃれ合わないでくれよ?」

風嵐が呆れたように言った

「じゃれてる訳じゃ――」

そこまで言って視界に飛び込んできた物に言葉を失う

風嵐におかしなところがある訳ではない……

俺が目を奪われたのはその隣、夏目が手に持っている物だ……

「チェーンソー……?」

フレンダがそう呟いた

あれが先程のバッグの中身なのだろう

夏目の小柄な体には不釣り合いな巨大なチェーンソー、それを地面に引き摺るような持ち
方で夏目は持っていた
825 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 18:55:42.93 ID:IWigZq2o
「あれで戦えるんでしょうか?」

絹旗が耳打ちするように言った

「さあな……」

確かに絹旗の言う事はもっともだ、あんな大きなものを夏目のような小柄な少女が
振り回す事ができるのだろうか?

現に夏目はチェーンソーを地面に引き摺るような形で持ち、顔は俯いていて表情が
伺えない

「今回の仕事はあのビルの中に居る、外部組織の人間の排除とそれに協力した奴等の
殲滅だ」

俺達の戸惑いなんてお構いなしに、風嵐が作戦内容を確認する

「とりあえず俺と夏目が突っ込んで皆殺しにする。有り得ねぇとは思うが、窒素装甲さんは
俺達が取り逃がした奴を排除してくれ」
826 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 19:05:48.49 ID:IWigZq2o
「私は補助ですか?」

絹旗が少し不満げに言った

「別にあんたの力を過小評価なんてしてないぜ?ただ今回あんた等は俺達のサポートと
して来た訳だしな。それとも人を殺したくてうずうずしてたりするのか?」

そう言って風嵐は意地の悪い笑みを浮かべる

「そう言う訳ではないです」

「そいつはよかった。どうやら夏目の奴は、あいつ等を自分の手でバラバラにしてやりたい
みてぇだしな……」

風嵐が隣の夏目に視線を遣る

「?」

そして、俺は違和感を感じた

「どうしたんだ?」

夏目の様子がおかしい……

先程と変わらずに俯いたままの姿勢だが、肩が微かに震えている

まるで、薬の切れた薬物中毒患者のようだ……

「敵の見張りはいるか?」

「建物の前に二人」

双眼鏡でビルを確認していたフレンダがこちらを向き、そう報告する
827 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 19:20:28.09 ID:IWigZq2o
「聞こえたか?俺が左を殺る、お前は右を担当しろ」

肩を震わせている夏目が微かに首を縦に振る

「ちょっと、大丈夫なんですか?私、超心配なんですけど?」

「大丈夫さ、窒素装甲さん、援護はよろしくな」

「それじゃあ行こうか?」

絹旗の言葉を軽く流し、風嵐が夏目に声をかける

そして――

「任務開始だ」

その言葉を合図にして――

夏目が弾かれたように顔を上げる

「ひっ!?」

夏目の顔を見たフレンダが短い悲鳴を上げる

顔を上げた夏目の顔は、先程までの年相応な少女のものとは打って変わって、
目は血走り、顔には狂気じみた笑みがへばり付いていた
828 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 19:34:16.77 ID:IWigZq2o
「ふ、あ、はは、――」

夏目の口からうめきのような笑い声が漏れる

「行くぜッ!」

掛け声とともに、風嵐がビルの方角へ走りだす

「あ、はははははぁ!!」

それに続くように、夏目が疾走する

あんなに重そうに持っていたチェーンソーを小枝のように軽々と持ち上げ

すさまじい早さで駆けて行く



「ん?」

「どうした?」

「今、何か見えたような……」

「気のせいじゃないか?」

「そうか―――」

ビュン、と音が鳴り、見張りの男の体が吹き飛ぶ

見張りの男はすさまじい勢いで壁に叩きつけられ、絶命した

「なッ!?」

突然の出来事に体を硬直させている男に、暗がりから突風のような勢いで
チェーンソーを持った夏目が襲いかかる
829 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 19:47:06.38 ID:IWigZq2o
「うりゃあー!!」

唸りを上げながら、チェーンソーが横薙ぎに叩きつけられ、周囲の地面が鮮血で
彩られた

断末魔の叫びすら残さずに、数秒前まで人間だった肉塊が無様に転がる

「いぇーい!今日も絶好調だぁーーーーー!!」

夏目がすこぶる機嫌良さそうに笑みをこぼす

「そいつはいいや!じゃあ、この調子で行くぜ!」

風嵐もそれに笑顔で応じると、二人はビルの中へと走り出す




ビルの内部では、未だに入り口での出来事に気付いていない警備の男達が普段と変わら
ぬように歩いていた

「何か音がしなかったか?」

「気のせいだろ。見張りの奴らも居るんだし、何かあったら連絡があるだろう」

男が楽観的な意見を述べた、その刹那、侵入者を知らせる警報がビルの中に鳴り響く

「侵入者か!?」

男が行動を起こすよりも先んじて、男に能力による攻撃が放たれる

打撃音が響き渡り、男の頭がトマトのように吹き飛んだ

「何者だ、貴様!?」

「見てわかんねぇのか!?能力者様に決まってんだろォ!!」
830 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 20:00:13.23 ID:IWigZq2o
風嵐が戦闘を行っている場所とは別の場所

ビル内の通路で夏目が数名の男達と対峙していた

「あっはっはっーー!ミンチになれェぇえ!!」

狂気じみた叫び声を上げながら夏目が地面を蹴る

「化物めッ!これでも喰らいやがれ!」

他の男達、スキルアウトやゴロツキ共とはあきらかに違う、躊躇いのない動作で
外部組織の男が銃の引き金を引く

「う、ふはははは!!」

「何!?」

外部組織の男が驚愕に満ちた声を上げる

夏目は自分に放たれた銃弾を横っ跳びに回避し、そのまま壁を走るようにして男目がけて
突き進んだ

「死ィィねェえぇ!!!!」

愉悦を含んだ唸り声が通路に響き渡る

「ゲ―――」

壁を蹴ると同時に放たれた斬撃が外部組織の男を袈裟切りに切断する

切断された男の体が崩れ落ちると同時に、返り血で真っ赤になった夏目が床に着地した
831 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 20:11:40.64 ID:IWigZq2o
「ひいぃぃぃ!!」

その凄惨な光景を目の当たりにした男達が夏目に背を向けて逃げ出そうとする

敵に無防備な背を向ける行為は得策ではない、が、彼等がそのような行為に及ぶのも
無理からぬ話だ……

彼等のほとんどが外部組織の口車に乗せられたスキルアウトや街のゴロツキである

自分達を馬鹿にする能力者や学園都市に一泡吹かせたくて参加した……

そんな軽い気持ちだった者もいるだろう

そのような彼等にこのような惨劇を見せつけられてなお、冷静な判断を要求するのは
酷であろう

「鬼ごっこでもするのぉ!?」

戦意を喪失した者達の背中を見ながら、夏目が醜悪な笑みを浮かべる

「それじゃあ頑張って逃げてねぇ!!追いつかれたらげーむおーばー!新鮮な肉塊に
はやがわりぃー!!」

チェーンソーが真横に振るわれ、刃に付いていた肉片や血が水音を立てて床に付着する
832 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 20:21:13.40 ID:IWigZq2o
「行くぞぉーー!!」

チェーンソーが回転し、けたたましい音が鳴り響く

常人の域をはるかに凌駕した脚力で地面が蹴られる

男性と女性の筋力差、さらに男達が逃げてからの経過時間……

普通ならば男達はなんなくこの場から逃げおおせる事ができるだろう……

しかし―――

「ぎゃああああ!!」

通路にビシャビシャと言う水音と断末魔が木霊する

ここ学園都市では常識などなんの意味も持たない

夏目は疾風のような早さで男達に追いつくと、一人、また一人と、もの言わぬ肉塊へと
変えて行く

「さいっこうだぁー!この温もり!まるでハグでもされてるみたいぃぃぃ!!」
833 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 20:31:48.39 ID:IWigZq2o



「はぁはぁ――!!」

逃げ出した男達のほとんどが殺害されたが、夏目が犠牲者を弄ぶ僅かな隙に逃げだせた
者がいた

「クソッ!どうすりゃいいんだよ!!」

逃げ場を失くした男は頭を抱える

「!!」

遠くから足音が聞こえてくる

「逃げないと!」

不可能だ、きっと追いつかれて殺されてしまう……

「どこか隠れる場所は……、!!」

男の視線の先には古びたロッカーがあった

「ここなら……」

一縷の望みをかけ、男はロッカーの中に身を隠す
834 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 20:42:47.54 ID:IWigZq2o
「あれぇー?今度はかくれんぼぉ?」

グチャ、グチャ、と足音を響かせながら夏目が部屋の中に入ってくる

「はぁ――、はぁ――」

「どぉ~こぉ~だぁ~ろぉ~?」

間延びする奇怪な声がどんどんこちらに近づいて来る

(頼む!行ってくれ!!)

男が心の中で必死に祈る

「あれぇ~?居ないのかなぁ~~?」

祈りが通じたのか、夏目は男の入っているロッカーの前を素通りした

(た、助かった、のか……?)




「見ィィつけたァアァァア!!!」



男が安堵に胸を撫で下ろそうとした刹那、ロッカーのドアが引き千切られんばかりの
勢いで開け放たれる
835 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 20:49:36.23 ID:IWigZq2o
なんで?どうして気付かれたんだ!?

絶体絶命の状況に男の頭の中の混乱は頂点に達する

「うで……」

「え?」

言われてから気がついた、自分の腕から血が滴っていた事に……

おそらく逃げている途中にどこかにぶつかったのだろうか?

「あ、ああ……」

逃げ場もなく、抵抗する術もなく、男は言葉を発する事も出来ずに身を震わせる

それを見て夏目はニンマリと笑顔を浮かべ

「噛まれた腕は切らないとだめなのー!でも、もう手遅れだから首を切ろーーー!!!」

古びたロッカーごと、その首を切断した
836 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 21:04:28.50 ID:IWigZq2o


廃ビル内の一画、他の扉よりも頑丈そうな扉の前で風嵐が立っていた

「よう、そっちは片付いたみたいだな」

血塗れの夏目の姿を確認し、風嵐が軽薄な笑みを浮かべる

「ばっちりぃ、だよ」

夏目はニタァーと気色の悪い笑みでそれに応答する

「そんじゃあ最後の仕上げだ、このドアの向こうに立て籠ってるやつを片せば任務完了だ」

「りょうか~い」

「俺が扉をブチ破るからお前が突入しろ、リーダーの首あらためもするらしいから頭は
壊すなよ?」

「う、ん」

頷いたのを確認し、風嵐は能力を発動させる

「行くぞ、3、2、1――」


「0!」

風嵐が拳を振るうと、その手から衝撃弾が放たれ、ドアを吹き飛ばす

「らアァアァ!!」

ドアが吹き飛ぶのと同時に夏目が部屋の中に突入する
837 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 21:16:09.43 ID:IWigZq2o
ドアが破られる事は予測していたのだろうが、これほどの速度で侵入されるとは予期して
いなかったらしい

部屋の中には三人の外部組織の人間がいたが、瞬く間に一人が斬り伏せられた

「チッ!」

残りの二人はなおも怯まずに銃を構えるが、銃を構えた先に夏目はもう居らず

その隙に風嵐の作りだした衝撃弾の直撃を受け、また一人絶命した

「クソッ!!」

最後に残された男が悪態を吐きながらも、応戦しようとする

「しゃあぁぁ!!」

夏目が跳躍し、男の銃を構えた腕を掴むと、そのまま握りつぶした

「がぁあああ!!」

腕を折られ、激痛に呻きながら男は後退し、壁に背をついた

「…………」

「ん?」

男が戦闘能力を失った事を確認すると、夏目は風嵐に何か意味ありげな視線を向けた
838 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 21:26:09.69 ID:IWigZq2o
「ああ、そうか」

その意図を理解した風嵐が苦笑する

「首より上が無事なら何してもいいぞ」

「うふふぅーー」

その言葉を聞いて、待てを解かれた犬のように喜ばしげに夏目が男に歩みよる

「く、来るな!」

「さっきからねぇ、他の人の遊びに付き合ってたから、今度は私のリクエストする遊びで
遊ぼぉかぁ~」

「やめてくれ……」

「私がしたいのわねぇ―――」



「人間で達磨落としがしたいんだァ!あっはっはっはっはっ~~~~!!!」



部屋の中にチェーンソーの駆動音が鳴り響く


「ぎゃあああああああああ!!!」
839 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 21:37:30.50 ID:IWigZq2o




「超遅いですね、超心配です」

ビルの外、二人の帰還を待ちくたびれたように絹旗が言った

「結局、成るようにしかならないわ。気長に待ちましょう」

「そうだな、っと、来たみたいだな……」

ビルの方からこちらに歩いて来る二つの影を見つけて、フレンダと絹旗に報告する

「言われなくても見えてます、そんなこともわからないなんて浜面は超ダメですね」

「へいへい、悪うございましたね……」

不貞腐れたようにそう返答する

「結局、取り越し苦労だった訳ね」

そうこうしているうちに二つの影は顔がわかるくらいにまで近づいている

「そうだな、よう、遅かったな……」

俺はその後の言葉を継ぐことができなかった

なぜなら、俺は夏目が持っているモノを見て、絶句してしまったからだ……
840 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 21:48:05.21 ID:IWigZq2o
「なんだよ……、そりゃあ……?」

掠れるような声で言葉を紡ぐ

「何って、首に決まってんだろ?一応確認だとか、なんだとかで必要らしくてさ……」

夏目の代わりに風嵐がそう答えた

「確認がおわったらぁー、これでサッカーでもするぅ?」

手に持っていた首をこちらに見せびらかすように夏目が前に突き出す

「そんなことする訳ねぇだろうが!!」

耐え切れなくなり、俺は夏目にそう怒鳴りつける

「あ、く、ふふふ」

その瞬間、夏目の雰囲気が剣呑なものに変わる

「はーい、ストップだ。ここからは俺達に任せて、あんた等は先に戻っていいぞ?」

「あなた達はどうするんですか?」

激昂している俺の代わりに絹旗が風嵐に尋ねる
841 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 21:57:33.59 ID:IWigZq2o
「俺達は処理班の奴等と一緒にでも帰るさ、面倒くせえが、ここでいざこざ起こされる方が
もっと面倒だからな」

風嵐は俺の方を見てそう言った

「……、それなら俺達は帰らせてもらう……」

俺は踵を返し、車に向かって歩き始める

「ちょっと、浜面!」

絹旗とフレンダも後を追うようについて来る


「浜面、大丈夫ですか?」

車に乗り込むと、絹旗が心配そうにそう言った

「大丈夫だ……」

ただ無愛想にそう答えた

その後は誰も言葉を発さず、俺達は元来た道を引き返していく

道中、俺は考えていた

このままでいいのか、と……
842 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 22:08:25.13 ID:IWigZq2o
暗部に関わるようになってからずっと考えていたことだ

このままでいいのか、こんな人の命を軽く扱うような場所に居ていいのか……

あいつを、滝壺をこんなところに居させていいのかと……

今日の出来事で決心がついた、滝壺をこんなイカレタ場所に居させてはいけない……

なんとか逃げなくては、このクソッたれな暗部から、そして、学園都市から

そう決意し、前を見据える

「待っててくれよ、きっと救いだしてみせるからな」

新たな決意を胸に、俺は達壺が待っているであろう、隠れ家に車を走らせる
843 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 22:15:37.72 ID:IWigZq2o




窓のないビルと呼ばれる場所

液体の入った機械の中に、逆さまになった人間が浮いている

彼こそがこの学園都市のトップ、統括理事長アレイスターである

「来たか……」

アレイスターが呟くと、彼の目の前に二つの影が姿を現す

一人はこの窓のないビルへの案内役を務めている少女、結標淡希

そして、もう一人、黒い髪の少女が現れた

「統括理事長に報告です、今回の作戦は成功。これにより学園都市に潜伏していた
外部組織の人間の排除は完了したと言ってよいでしょう」

黒い髪の少女は前置きもなしに淡々と話し始めた
844 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 22:23:17.19 ID:IWigZq2o
「そうか、ご苦労だったね……」

アレイスターは別段気にした様子もなくその報告に耳を傾けた

「ただ、一つ問題が」

「なんだい?」

「夏目は今回の作戦において、た―――、いえ『星のかけら』を囮に使った事に不満を
抱いているようです」

「ふむ……」

アレイスターはそれを聞いて少し考える素振りを見せる

「それはこちらの落ち度だな。フォローをしておいた方がいいだろうね」

「は……」

「彼女達については君に任せるよ、“終焉境界(ディス・イズ・ジ・エンド)”うまくやってくれ」

「仰せの通りに」

終焉境界と呼ばれた少女は一礼した
845 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 22:29:52.93 ID:IWigZq2o
報告が終わり、結標の能力により二人は窓のないビルの外に移動した

「随分と早く終わったものね」

「報告のみだったからな」

結標の言葉に終焉境界は必要最低限の言葉で返した

「それにしても最近きな臭い感じの話が多くなったものね……。あなたを含めたレベル4が
何人も集められているなんて……」

探りを入れるように結標が言った

「気になるのなら教えてもいいぞ?」

「あら、随分とあっさりね?」

予想外の反応に結標が意外そうな声を漏らす
846 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 22:36:29.36 ID:IWigZq2o
「ただし、条件がある」

「条件?」

「なに簡単な事だ、私達が参加している研究に参加すればいいだけのことだ」

結標は少し思案するような素振りを見せたが

「遠慮しておくわ、自分から危ない事に首を突っ込む趣味はないから」

それを断った

「そうか、君ならば資格は十分なんだがな……」

残念そうに終焉境界が呟いた

「君がそう言うのなら無理強いはしないよ、残念だがね」

終焉境界は踵を返す

「あれ?どこへ行くのかしら?」
847 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/10/09(土) 22:40:58.06 ID:IWigZq2o
いつもとは逆の方向へ行こうとする終焉境界に声をかける

「少し用事があるんだ」

「用事?」

「ああ、人と待ち合わせをしているんでね、私はこれで失礼するよ」

「…………」

終焉境界の背を見送りながら結標は思案する

「謎の計画に、集められたレベル4、か……。厄介事が起きなければいいんだけどね……」

結標が呟いた言葉は、誰の耳にも届かずに、学園都市の闇に消えて行った……

859 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 20:50:52.95 ID:bDkMGIwo
      ・
      ・
      ・


「ちょっと遅くなっちゃったかな……?」

学校が終わり、多くの学生達でごった返している通りを、私は足早に歩いている

今日は掃除当番で、いつもより帰りが遅くなってしまった

そんなに遅くなっている訳ではないが、これ以上遅くなってしまうと、皆が心配するかも
しれない……

「急いで帰らないと……」

誰に言うでもなく、そう呟き

私は歩みを早めた
860 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 21:00:57.40 ID:bDkMGIwo
「あれ……?なんだろ?」

しばらく歩いていると、前から歩いて来る人に違和感を感じた

足早に駆けていく人や、声をひそめて話す人の数が多いような気がする

「どうしたんだろ?」

その状況を怪訝に思ったが、急いでいることもあり、特に気にせずに私は再び歩き出した

「あー……」

だが、少し歩いた先で視界に飛び込んで来た光景を見て

私は先程の状況に合点がいった

どうやら女の子(といっても私よりは年上だろう)が数人の男に絡まれているようだった

「ああもう、どうして学園都市ってこんなに治安が悪いんだろ?」

女の人に絡む男達を見ながら、私はそう愚痴をこぼした
861 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 21:10:17.66 ID:bDkMGIwo
「正む――」

正宗を呼ぼうとして、咄嗟に口を押さえる

そういえば、以前、白井さんに目立つような行動は控えてほしいと言われていたのだった

ここは人通りも多いし、隠れる場所もほとんどない……

さすがにこんな所で大っぴらに正宗を装甲してしまっては色々マズイことになるかも
しれない

そう考え、正宗を呼ぶことを思いとどまる

そして、女の人に絡む男達に視線を投げる

人数は……

ここから見える限りで三人……

「大丈夫、だよね……?」

自分に言い聞かせるように、そう呟く
862 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 21:19:09.86 ID:bDkMGIwo
相手は三人……

万が一、戦いになったとしても、私一人でもなんとか捌ける数だと思う

そんなことを考えながら、彼女達の方へ足を向ける


「なぁ、いいじゃねぇかよ?ちょっと付き合ってくれるだけでいいからよぉ?」

「やめてください!」

さて、ここからどうすればいいだろうか?

男は女の人の腕を掴んでいる、迂闊に行動すれば女の人に怪我をさせてしまうかも
しれない……

「離してッ!!」

思案しているうちに、女の人が男の手を振り払い、距離をあけた

「ちょっと!あなた達!やめなさいよ!」

千載一遇のチャンス

その隙を逃さず、意を決して女の人と男達の間に割って入る
863 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 21:28:49.95 ID:bDkMGIwo
「あん?何だてめぇは?」

突然の闖入者に男達が首を傾げる

「大の男がよってたかって女の人を囲んで……、恥ずかしくないんですか?」

「てめぇには関係ねぇだろうがッ!すっ込んでろ!!」

「ぶち殺されてぇのか!?クソガキがぁ!!」

男達は私の言葉に耳を貸さず、声を荒げ、恫喝してきた

「こんなことして、すぐにジャッジメントが来ますよ?」

「関係ないね!ジャッジメントなんざ、怖くもなんともねぇよ!!」

ジャッジメントの名前を出しても意にも介さず
男達が下卑た笑い声を上げる

この人達には何を言っても無駄だろう

おそらく、話し合いで解決する事はできない……
864 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 21:37:59.64 ID:bDkMGIwo
「逃げてください」

「え?」

後ろの女の人にそう告げる

戦いを回避できる可能性はほとんどない

いざ戦いになれば、この人を守れる余裕なんて私にありはしないだろう

この人が怪我をしないためには、どこかへ逃げて貰うのが一番いい

「で、でも……」

だが、彼女からの返答はひどく歯切れの悪いものだった

その言葉から、彼女の逡巡が手に取るようにわかる

自分よりも年下であろう私を残して、一人だけ逃げることに躊躇しているのだろう

「私は大丈夫です。行ってください」

もう一度、同じ言葉を繰り返す

「…………」

「行って!!」

さっきよりも大きな声で、再度促す

「――ッ!!」
865 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 21:51:30.49 ID:bDkMGIwo
女の人は私の声に後押しされるようにその場から駆け出した

彼女は一度立ち止まり、心配そうにこちらを見たが

私は、大丈夫、と目で合図を送った

「舐めた真似しやがって!!」

獲物を逃がされた男が、額に青筋を浮かべながら言った

「どうやら相当痛い目見てぇらしいな!!」

激昂した男が拳を振り上げる

「――!」
866 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:02:07.85 ID:bDkMGIwo
反射的に身を後ろに引き、紙一重で拳をやり過ごす

「オラァ!!」

避けたのはまぐれだとでも思ったのだろうか?

男は再度、私に向けてパンチを放った

パンチが私に届くよりも早く

頭を下げ、パンチの下をくぐるようにして、隙だらけになった相手の懐に潜り込む

「は?」

目の前の敵を見失い、男の口から間の抜けた声が漏れる

「悪いけど、女の子の顔を殴ろうとする奴に手加減なんてしなわよ!!」

言い放ち、相手の鳩尾に拳を叩き込む
867 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:11:28.34 ID:bDkMGIwo
「げ、ふ――」

鳩尾に打撃をもらった男は、苦悶の声を上げながらその場に倒れ込んだ

「この野郎ッ!」

「ぶっ殺してやらァ!!」

仲間をやられたことで激昂した残りの二人が、同時に私目がけて殺到する

二人同時に相手にするのは分が悪すぎる……

まずはどちらか片方を倒す!

そう決断し、殺到する二人へ向かって走る
868 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:26:31.21 ID:bDkMGIwo
敵が目前に迫る

そのタイミングで、進路を右に変更し、敵の横をすり抜けるように姿勢を低くする

そしてすれ違いざまに、腹部に強烈なボディーブローをお見舞いする

「ガハッ!?」

強烈な一撃を見舞われ、男の体がくの字に曲がる

そこへ間髪入れずに下がった後頭部へ肘打ちを喰らわせた

肘打ちを受けた男は、グラリとよろけ、前のめりに倒れ込んだ


この短時間で仲間を倒されてしまい、残った一人は何が何だかわからないといった様子で
呆然と立ち尽くしている
869 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:36:12.87 ID:bDkMGIwo
「逃げるんなら逃げてください。私は追いませんから……」

残った一人にそう告げる

「う、うわぁぁ!!」

その言葉を受けた男は、わき目もふらずにその場から走り出し、あっという間に
遠ざかって行った

「はー……」

なんとか切抜けることができた、そう思い、私はホッと胸をなでおろす

「!!」

突然、背後から殺気を感じ、咄嗟にその場から身をかわす

ヒュン、と風を切るような音が耳に届き

腕に鋭い痛みが走った

一瞬の静寂が辺りを包む

そして、堰を切ったように周囲から悲鳴が上がる
870 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:44:49.85 ID:bDkMGIwo
「痛ッ!」

痛みのした左腕を見ると、一の字に裂かれた傷から血が滴っている

「このクソガキがぁ!ぶっ殺してやる!!」

声のした方に目を向けると、一番初めに倒した筈の男が血走った眼でこちらを睨んでいる

その手には私を切ったであろうナイフが握られ、太陽の光を反射してギラリと光っていた

「ちょ――、ナイフなんてこんな街中で出さないでしょ普通!?」

こんな街中で刃物まで持ち出してくるなんて、予想だにしていなかった……

いや、その可能性を考えていなかったのは私のミスだ
871 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:49:57.60 ID:bDkMGIwo
(どうしよう……)

心臓がドクンドクンと早鐘を打つ

切られた傷がズキズキと痛む

動悸が激しくなり、呼吸が乱れ始めているのが手に取るように感じられる

乱れた呼吸が耳に届き、それが私の思考を掻き乱す


逃げた方がいいのではないか?


そんな考えが頭をよぎる

幸い辺りには障害物が多く、人通りも多い

人ごみに紛れて逃げれば、何の苦もなく逃げ切る事ができるだろう……
872 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/11/27(土) 22:55:40.97 ID:bDkMGIwo
(でも……)

私は逃げることはできても、他の人はどうだろう?

誰かが巻き添えになってしまうかもしれない――

誰かが私の代わりに犠牲になってしまうかもしれない――

そんなことは――


許せない


目の前の敵は私が倒さなければならない……

それが、きっと……


その先の言葉と、雑念を振り払おうと頭を振り

眼前の敵と対峙する

878 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 20:55:09.56 ID:OS/Ax1co
さて、戦うと決めたのはいいものの、現状は最悪と言っても過言ではない状況だ

相手はナイフを持っているにも関わらず、こちらには武器になりそうなものはない

刃物対素手という圧倒的に不利な状態だ

リーチにしても、相手に圧倒的なアドバンテージがある

中学一年生の私と、目の前の高校生以上はいっているであろう年齢の男とでは、体格差
は歴然であり、どちらに分があるかは火を見るよりも明らかだ

そして、それよりも大きな問題がある……

それは

私が目の前の相手に気圧されている、という事実である
879 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:01:49.41 ID:OS/Ax1co
こちらに不利な要素は多々あるが、その中でもこれが致命的であろう

心臓は相変わらず早鐘を鳴らしており、平常心を保っているとは到底いえない心理状態だ

相手の手に握られているナイフに対する恐怖も健在で、このままでは満足に動くことすら
ままならない

それどころか、敵の迫力に押され、少しずつ後退るようなありさまである

ただでさえ不利な状況にあるにも関わらず、恐怖でまともに動けないのでは、戦いにすら
ならない

一方的にやられるのが目に見えている
880 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:08:15.26 ID:OS/Ax1co
勝つためには冷静にならなければいけない

だというのに……

あれで切られたら痛いだろうなぁ、とか

刺されたら死んじゃうんじゃないだろうか?とか

そんな考えばかりが、頭の中をぐるぐると回る

(一体、どうしちゃったんだろ……)

目の前の男よりも強い相手とだって戦うことができたのに

銃を持っている相手や、能力者とだって戦えたのに

それなのに……


なぜ


こんなにも怖いのだろうか?


考えても、考えてもわからない

そして、私の混乱が頂点に達しようとした


その時――
881 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:13:47.09 ID:OS/Ax1co

<御堂!聞こえておるか!?>

「!!」

突然、頭の中に声が響き、体がビクリと跳ねた

「ま……、正宗?」

聞き間違える筈はない

それは、私の劒冑、正宗の声だった

どうして気付いたのだろう?と、一瞬疑問に思ったが、考えるまでもないことだ

仕手と劒冑は繋がっている

私の精神の乱れを感知することで、私の陥っている状況に気が付いたとしても、なんら
不思議はない
882 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:23:40.85 ID:OS/Ax1co
<御堂!何をしておるのだ!?>

私の思考を断ち切るように、正宗の声が割り込む

その口調からは、正宗の憤りがありありと伝わってくるようだ

「それは……」

なんて言えばいいのだろうか……

何も言わずに、勝手に行動してしまった後ろめたさから、うまく言葉を紡ぐことができずに
黙りこくってしまう

<いや、大体の状況は把握しておる。 だが、なぜ吾に何も言わなかったのだ!?御堂
一人で敵に立ち向かうなどと無謀なことを!>

至極もっともな意見だ

元々、私は戦闘経験なんて皆無な、ただの子供にすぎない

仕手となったことで、身体能力が上昇し、多少の戦闘経験を積んだとしても、たった一人で
戦おうなんて無謀以外の何物でもない
883 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:31:23.56 ID:OS/Ax1co
<すぐにそちらへ向かう!御堂、急いでその場から――>

離れろ、とは言わなかった

正宗もこの状況が危険であることを認識している

目の前の男を放置して逃げれば、無関係な人にまで被害が及ぶ可能性があることを理解
しているのだ

しかし、このまま戦えば私は確実に負けるだろう

かといって逃げることはできない

さしもの正宗といえど、今すぐにこの場へ駆けつけるなんてことは不可能だ

どれ程急いでも数分の時間を要する

所謂、八方塞りというやつだろうか
884 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:41:12.91 ID:OS/Ax1co
だが、そこで私はある違和感に気が付いた

(あれ?私……)

あれだけ乱れていた動悸が和らいでいる

いつの間にか、先程の動揺が嘘のように薄まり、私の心が平静を取り戻しつつあることに
気が付いたのだ


一体どうして?


<ぬぅ、一体どうすれば……>

考え込む正宗の声を聞くことで、この疑問の答えにあっさりと気が付いた

(そっか……)

私は、一人で戦ってきたわけじゃなかったんだ
885 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 21:55:08.26 ID:OS/Ax1co
考えてみれば

いや、考えなくてもわかることだった

ただの無能力者にすぎない私が、なぜ能力者と戦うことができたのか……

それは、正宗が力を貸してくれていたからだ

私が臆することなく戦うことができたのも、正宗が傍に居てくれたからだ

(ホントに、私ってダメな奴だなぁー……)

自然と自嘲気味な笑みが浮かんでくる

正宗の手を借りて戦っていただけなのに、自分が強くなった気になって

無様な醜態を晒してしまった

本当にダメダメだ
886 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 22:10:13.15 ID:OS/Ax1co
(でも……)

手が白くなるほど力を込めて、ギュッと握りしめる

今までの私ならば、ここで止まってしまうかもしれない

(止まらない、止まるわけには、いかない)

そんな権利なんて、私にはないから……

「私が、あいつを倒すわ」

<!!>

今の私は弱い存在だ、正宗の仕手に相応しいような存在ではない


だからこそ――


逃げてはいけない
887 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 22:20:02.81 ID:OS/Ax1co
<御堂……>

「心配しないで、私だって――」

私が弱い存在なのなら、相応しくない存在なのなら

なればいい

強い存在に、相応しい存在に

「戦えるから――」

ならば、戦わなければならない

誰かを守れるような強い存在に

正宗、あなたに相応しいような存在になるために
888 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 22:23:56.69 ID:OS/Ax1co
<だが御堂!!>

なおも正宗は何か言おうとするが、私の決意が固いことを感じ取ったのか、押し黙る

<ええい!この頑固者め!吾も急いでそちらへ向かう!それまで決して無茶をするで
ないぞ!!>

「うん」

頷くと同時に、正宗からの声が途切れる

こちらへ向かって動き出したのだろう

「ありがと、正宗……」

誰にも聞こえないように、口の中で呟く


たとえ、この場には居なくとも

心が繋がっている

だから平気だ、戦うことができる
889 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 22:30:16.62 ID:OS/Ax1co
先程とは打って変わり、落ち着いた態度で眼前の敵を注視する

(ナイフの刃渡りは……)

目算だが、十数センチといったところだ

急所にさえ当たらなければ致命傷を負うことはないだろう

それだけわかれば十分

今の私なら一人で対処可能だ

そう結論付け、腰を落とし、構える
890 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 22:36:02.98 ID:OS/Ax1co
敵の一挙手一投足まで見逃さないように、集中する

すでに私の中にあった恐怖心は跡形もなく消え去り

周りの喧騒が遠のき、この場には私と眼前の敵しか存在していないかのようにさえ感じる


じりじりと男が間合いを詰めてくる

どうやら男は私をひどく警戒しているようだ

最初に手ひどくやられたのが相当こたえたらしい

頭に血がのぼった状態であるにも関わらず、むやみやたらに攻撃してこないのは、それが
原因だろう
891 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 22:49:03.82 ID:OS/Ax1co
それは私にとって、とてつもない僥倖だったろう

混乱の最中にあった時に襲いかかられていたら、それこそ手も足もでなかった


じりじりと距離を詰める男に対し、私はその場から一歩も動かず、気を窺う

私は確実に仕留められるように行動せねばならない

なぜならば、一撃で仕留めなければ、私は窮地に追い込まれてしまうからだ

素手で相手を倒すには接近するしかない

先制し、攻撃を避けられる、もしくは凌がれてしまうとナイフによるカウンターを受けることに
なってしまう

生身の体でナイフによるカウンターを受ければ、負傷は免れないし、最悪、死に至るだろう
892 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:03:12.14 ID:OS/Ax1co
ナイフによるカウンターがなかったとしても、取っ組み合いにでもなれば、私が力負けする
可能性が高い

故に、私の取るべき行動は相手の攻撃を待って、それに対してカウンターを叩き込む

これが最良であると判断する


私達の距離が、どんどん縮まっていく

「…………」

そして、一足飛びで私にナイフが届くであろう距離まで接近した
893 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:19:28.36 ID:OS/Ax1co
(―――ッ)

後少し進んだところで攻撃を仕掛けてくる

目の前の男は戦闘訓練を受けた人間ではないだろう

戦闘慣れしているのであれば、私の攻撃が届かず、尚且つ、自分の攻撃が届く間合いで
停止し、こちらの出方を窺うような動きを見せてもよさそうなものだ

しかし、素人だとしても、近づきすぎればこちらの攻撃が届くことくらいはわかる筈

相手の間合いに入っていて、私が踏み込んでも攻撃が届かない距離

その条件を満たす空間は、後僅かしかない
894 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:27:14.64 ID:OS/Ax1co


瞬きもせずに、相手の動きを注視する


男が足を地面から浮かた


そして――


足が地面についた



「死にやがれぇえぇ!!!」

足が地面につくと同時に、男が叫び声を上げながら、こちらに向かって先程とは比べものに
ならない力で地面を蹴る
895 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:31:30.91 ID:OS/Ax1co


(今だッ!!)

男が私の間合いに入る

ナイフを持った手が振り下ろされるタイミングを見計らい、踏み込み

相手の懐に入り、間合いを潰す

この距離では腕を振り上げている男の攻撃は私に届かない

つまり、ここは、もう―――



(私の間合いだッ!!!)

896 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:39:33.82 ID:OS/Ax1co
左手をナイフを持った腕の手首に当てるようにして攻撃を防ぐ

「なッ!?」

信じられないというように、男が目を見開く

「はッ!!!」

ありったけの力を込め、男の顎目がけて拳を振り上げる

「ガァッ!?」

放たれた拳は、的確に顎を打ち抜き

男はそのまま後ろに倒れ込んだ
897 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:46:52.56 ID:OS/Ax1co
今度こそ、終わった……

男は失神しているようで、立ち上がる気配を見せない

「はぁー……」

それを確認し、安堵の息を吐く

<よくやったぞ、御堂!!>

正宗の賞賛の声が届く

「ありがとう……」

それに対し、素直に礼を述べる


これで、一件落着

といけばよかったのだが……
898 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/04(土) 23:52:44.50 ID:OS/Ax1co
どうやらそうもいかないようだ

ナイフを持った暴漢が倒れたことで、悲鳴を上げるような者こそいないものの、周囲の
ざわめきは未だ収まらない


「あの子、能力者なのかな?」

「なになに?能力者が暴れたの?」

「おい、早く行こうぜ。 厄介事に巻き込まれんのは御免だぜ……」

「誰か早くジャッジメント呼べよ……」


周囲のざわめきの中から、そんな言葉が耳に届く
899 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:03:46.77 ID:5NQOfLMo
<な、なぜだッ!?御堂は……、御堂は力無き者を守るために戦ったのだぞ!?
だというのに、なぜそのような目で御堂を見る!!?>


現実は物語のようにはいかない


都合のいい悪人なんて存在せず、よしんば都合のいい悪人が存在するとしても、
それを打ち倒すという行為は、決して綺麗なものではない

私に向けられるのは憧憬の眼差しではなく、奇異の視線
放たれる言葉は賞賛の言葉ではなく、恐れや誹謗


当たり前だ、私のやったことは人を殴り飛ばしただけ


もし、能力をつかったのならば、それは学園都市の決まりを破っている
能力でなかったとしても、それは法を破っている


だから、



これは当たり前のことなんだ――


900 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:10:50.18 ID:5NQOfLMo
でも、私は後悔なんてしない

私はあの女の人を助けるために戦った、自分の意志で……

<こやつ等ッ!自分達は見ているだけしかできぬくせに、好き放題言いおって!!!>

憤懣やるかたない、といった様子で正宗が声を上げる

「行こう、正宗」

<しかし、御堂!!>

「いいから、とにかくここを離れないと」

かなりの大立ち回りをしてしまった

すぐにジャッジメントが駆けつけてくるだろう

これ以上、面倒なことになる前に退散するのが吉だ

<クッ!御堂は体を張って、こやつ等に被害を及ぼすまいと戦ったというのに……。
なぜ、このような扱いを受けねばならぬのだッ!!!>
901 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:16:34.37 ID:5NQOfLMo
その理由を正宗には理解するなんてできないと思う

正宗は危ういほどに純粋で、高潔な心を持っている

だから、きっと理解できない

でも、私にはわかるんだ

この人達の気持ち……



「なぁ、君……」

「!!」


不意に声をかけられ、反射的にその場から駆け出してしまう


「ちょ、ちょっと、待ってくれよ!!」
902 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:25:04.05 ID:5NQOfLMo
走り出してから内心しまった、と思ったが、もう遅い

声をかけた人がジャッジメントだったとしても、あの状況ならば言い訳のしようがあったかも
しれない

私だって、刑務所に好き好んで入りたいなんて思わないし、他の人に迷惑をかけるのは
御免だ

なぜ走ってしまったのかといえば、あの奇異の視線から一刻も早く逃れたいという思いが
あったからだろう


見返りが欲しかったわけじゃない

賞賛して欲しかったわけじゃない

あれが、当然の結果だっていうのもわかってる


でも――

それでも―――


それでも、胸がチクリと痛んだから……

903 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:34:23.46 ID:5NQOfLMo
「はぁ、はぁ……」

ここまで来れば大丈夫だ

立ち止まり、息を整える

<大丈夫か、御堂?>

「うん、それよりも、早くうちに帰らないと……」

まったく、とんだ寄り道になってしまった

不幸中の幸いだったのは、さっきの人が白井さんのような能力者ではなかったことだ

もし、あの人が白井さんのような能力者だったら追いつかれていただろう

<! 御堂、先程の男だッ!>


「はぁー、はぁー、や、やっと追いついたぜ……」


バッと、後ろを振り返ると、やたらツンツンした髪型の男の人が息をぜぇーぜぇ―切らしながら
立っていた
904 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:40:30.53 ID:5NQOfLMo
「あっ!ま、待ってくれ!俺は別に怪しいもんじゃないんだ!」

私がまた走り出すと思ったのか、ツンツン頭の人は慌てながら言った

「…………」

<どうするのだ?>

「とりあえず、様子を見てみようか?」

<承知>

しばし、目の前のツンツン頭の人の息が整うまで待つ
905 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:49:38.32 ID:5NQOfLMo
「私に、何か用ですか?」

ツンツン頭の人の息が整ったのを確認し、質問を投げかける

さっきの出来事が尾を引いているのか、自分でもわかるくらいに露骨に無愛想な声を
出してしまった

「君、さっき不良達と戦ってただろ?」

心臓が跳ねた

「歩いてたら、辺りが随分とざわざわしてるから、なんだろうって思って覗いたら
君がナイフを持った不良と戦ってるのを見つけてさ」
906 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 00:57:44.53 ID:5NQOfLMo
「…………」

「助けに入ろうと思ったら、一発でノックアウトしちまったからさ。 タイミングを逃しちまって、
その後話しかけたら走ってっちまうし……」

「なんで追いかけて来たんですか?」

話に割り込み、そう質問する

どうやら、この人はジャッジメントではなさそうだ

私が倒した男達の関係者でもないようだし

なんで私を追ってきたのか、その意図がつかめない

「君、怪我してるだろ?怪我してる女の子を放ってなんておけねぇからさ……。
つい追いかけて来ちまったんだ」
907 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 01:06:38.90 ID:5NQOfLMo
「は?」

予想外の答えに思わず間抜けな声が出る

この人は、見ず知らずの人が怪我をしているのを放っておけない。
なんて理由で本当にここまで走って来たのだろうか?

「よかったら、うちへ来ないか?傷の手当てぐらいはしてあげられるからさ」

まったく邪気を感じさせない、人の良さそうな感じでツンツン頭の人は言った

この人は何を考えているのだろうか?

会ったばかりの女の子をいきなり家へ誘うなんて……

真意を計りかねて、怪訝な視線をツンツン頭の人へ向ける

「いやっ!別に変な意味はないんだ!ただ怪我してるからさ――!」

自分に向けられている視線に気付いたのか、ツンツン頭の人は弁明の言葉を口にする
908 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 01:14:11.70 ID:5NQOfLMo
どうやら本当に他意はないようだ……

「どうしようか?」

判断がつかず、正宗に意見を求める

<ふむ……、ついて行っても良いのではないか? 先程の奴らより、何倍も信用できる
ように吾は思うぞ>

大分、私情が入った判断のように思える

<それに、腕から血を流したまま帰るわけには行くまい?>

切られた傷口を見ると、もうほとんど血は出ていない

それでも、キチンとした手当ができるのならばそれに越したことはないだろう

このまま帰って、打ち止めちゃんと一方通行さんに余計な心配をさせるのも気が引けるし……
909 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 01:23:09.04 ID:5NQOfLMo
「すみません、それじゃあお言葉に甘えさせてもらいます」

「そんなかしこまらなくてもいいよ。 俺が好きでやってるんだから」

気にするな、と手をひらひら振りながらツンツン頭の人は言った

「そんじゃ、行こうか?」

「あ、ちょっと待って下さい。 帰りが遅くなるかもって、メールしたいんで、少し待って貰って
いいですか?」

「ん?別に構わないぜ」

「ありがとうございます」

携帯を取り出し、うちで待っている二人にメールを送信する

「これでよし、と。 お待たせしました、もう大丈夫です」

「そんじゃあ行こうか――、っと、そういりゃ自己紹介をしてなかったな。俺は上条当麻。
まあどこにでもいる、普通の高校生ってとこだ」

ツンツン頭の人、上条さんはにっこり笑った
910 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 01:33:23.29 ID:5NQOfLMo
「私は佐天涙子。同じく、平凡な中学生ですよ」

上条さんに続いて、私も自己紹介する


しばらく上条さんの後ろについて歩く

上条さんは今になって緊張でもしたのか、時たまこちらの様子を窺うが、話かけるのを
躊躇っているようだった

(私が何か言わないと……)

そうは思うのだが、初対面の男の人となんて、何を話していいのかわからない

「あ、あの――」



「私のこと、変だとか、怖い、とか思ったりしませんでした?」


なんでよりによってそんなこと聞くんだ、私……

言ってから口を押えるが、もう遅い

また奇異の目で見られるんじゃないか?

そう思い、俯いたが……


「そんなこと思わないよ。不良達相手に一人で立ち向かえるなんて、そうそうできることじゃ
ない。君みたいな女の子がそんなことできるなんて、すごい立派なことだって思うぜ?」

変なことを聞いたにも関わらず

上条さんは気にした様子もなく、そう答え

ニコッと笑った
911 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/05(日) 01:37:35.57 ID:5NQOfLMo
「あ、ありがとうございます……」

<この男、なかなかに見所のある男ではないか! 先の奴等とは大違いだな!>

その答えに気を良くしたのか、正宗は随分と機嫌よさそうに言った


私だって、褒めて貰えたのは嬉しい……


だけど


同時に、心の中に澱が溜まっていくような


そんな嫌な感じがした



920 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 21:02:54.98 ID:UP0P/e.o
道中は、他愛もない世間話をしながら、上条さんの後ろをついて歩く

「ここの学生寮に住んでるんだ」

目の前の建物を指差して、上条さんが言った

「わぁー、随分と大きなところですね」

上条さんが指差したのは、かなり大きな建物だった

私の住んでいるところとは比べものにならないくらい大きくて。もはや学生寮というより、
マンションと言った方がしっくりくるだろう

階段を登り、上条さんの部屋の前に到着した

「何にもない部屋で悪いんだけど……」

ドアノブに手をかけた上条さんが、こちらを見ながら照れくさそうに笑った
921 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 21:09:19.15 ID:UP0P/e.o
「にゃあ~」

部屋のドアが開くと同時に、一匹の猫が部屋の中からこちらへ駆けて来た

「こら~、スフィンクス!待つんだよ!」

その猫を追うようにして、部屋の中からシスター姿の女の子が走って来る

「あ、とうま!おかえりなんだよ!」

猫を抱き上げ、こちらに気づいた女の子が満面の笑顔を浮かべた

「あれ?お客さん?」

続いて私の姿にも気づき、彼女は首を傾げる

「ど、どうも」

慌てて挨拶をし、軽く頭を下げた
922 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 21:21:12.89 ID:UP0P/e.o
同居人がいるなんて思ってもいなかったものだから、呆気にとられてしまっていた

<ふむ、同居人がおったのか。よもやこの男、もう結婚しておったのか?>

(そんなわけないでしょ……、たぶん妹さんじゃない?)

突拍子もない正宗の言葉を否定する

正宗の時代ではどうだったかは知らないが、今の日本じゃこんな若くに結婚なんて考えも
しないだろう

まさか学生寮で同棲してるなんて考えられないし、高校生で奥さんや娘がいるなんてのは
それ以上にあり得ない話だ

「ちょうどよかった。インデックス、悪いんだけど救急箱出してくれないか?」

私達がおかしなやりとりをしている間に、上条さんは玄関に入り、靴を脱ぎながら女の子に
そう言った
923 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 21:31:53.90 ID:UP0P/e.o
「とうま怪我したの?」

女の子が心配そうに尋ねた

「いや、俺じゃなくて、この子……佐天さんって言うんだけどさ。この子が怪我をしたんだ。
インデックス、悪いんだけど佐天さんの怪我の手当てをしてあげてくれよ」

上条さんの言葉を受けて、女の子の視線がこちらへ移る

「そういうことなんだ。私はてっきり、とうまがまた女の子を――」

そこまで言って私の視線を感じたのか、彼女は言葉を切った

「ううん、なんでもないんだよ!じゃあ私は救急箱を用意しておくから!」

女の子は踵を返し、小走りに部屋の中へと入っていった

「どうしたんだ?インデックスのやつ……。っと、悪いな佐天さん、そんなところで立たせち
まって。遠慮せずに中に入ってくれよ」
924 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 21:42:57.35 ID:UP0P/e.o
「それじゃ、お邪魔します」

促されるままに部屋の中に足を踏み入れる

「へぇー、随分と綺麗な部屋なんですね」

部屋の中を見て、そう感想をもらす

「まあ、一応女の子と二人暮らしだからなぁ」

「むぅ!一応ってのはヒドイんだよ!」

救急箱を持った先程の女の子が抗議の声を上げた

「おわっ!?聞いてたのかインデックス!?」

「聞こえるに決まってるんだよ!こんな狭い部屋の中なんだから!」

「し、しまった。さっきまでと同じ感じで喋っちまった……」

上条さんが怯えたように後ずさる
925 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 21:51:48.88 ID:UP0P/e.o
女の子がズンズンと音を立てるようにして上条さんの方へ歩を進める

「す、すまん、インデックス!」

上条さんが頭を庇うようにしながら謝罪の言葉を口にした

「…………」

女の子は何も言わずに私達の方へ歩き続ける

「――ッ!」

観念したように上条さんが目を瞑った


「へ?」

上条さんの口から間の抜けた声が出た

なぜか怯える上条さんとまったく状況が飲み込めない私をよそに、女の子は何事もなかった
かのように上条さんの横を通り過ぎた
926 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 22:03:00.94 ID:UP0P/e.o
「あ、あのー……、インデックスさん?いつもの噛みつき攻撃はしないのでしょうか?」

恐る恐るといった様子で上条さんが言った

それを聞いて、私は「ああ、なるほど」と先程の上条さんの怯えように合点がいった

この話しぶりから察するに、この女の子は怒ると噛みつき攻撃をしてしまうようだ

たとえ小さな子供でも、物を噛む力は相当強い

それに女の子相手だから上条さんも反撃をすることができないし

唯一の対策といえば、この子の機嫌を損ねないようにするころぐらいじゃないだろうか……

「今は救急箱を持ってるし、お客さんの前だから我慢するけど、次はないんだよ!
それと、代わりに今日のご飯はいつもよりたくさんくれないと気が済まないかも!!」

上条さんの方を振り向き、女の子が声を上げる

その様子は怒っているというよりは、駄々をこねているみたいだった
927 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 22:15:39.14 ID:UP0P/e.o
「ふふ……」

自然と笑みがこぼれる

うちでも一方通行さんと正宗が打ち止めちゃんに振り回されているのを目にすることがある

「お二人とも仲がいいんですね」

「ちょ、上条さんは現在進行形で同居人の恐怖政治じみた理不尽な圧力に晒されているの
ですが!?」

私の言葉を聞いた上条さんが抗議の声を上げる

「とうまは黙ってるんだよ!じゃあ、手当てするからそこに座って」

上条さんの抗議はあっさりと打ち消され、私は彼女に促されるままにテーブルの傍の
クッションの上に座った
928 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 22:28:18.18 ID:UP0P/e.o
「あの~、俺は何をすればいいんでしょうか……」

「とうまは何もすることないから、テレビでも見てるといいんだよ」

彼女は上条さんの申し出をバッサリと切って捨てた

「そ、そうか、それじゃあお言葉に甘えてテレビでも見てるよ。歩いて疲れたからなぁ……、
結構汗もかいてるしな、やばいな目からも汗が……」

しょんぼりなんて表現が似合う動作で、上条さんがテレビの近くへ移動する

「いいんですか?」

あんなにしょげた姿を見てはさすがに心配になってくる

「心配ないんだよ。5分もすれば元通りになってるかも。そんなことよりも、あなたの
怪我の方が大事なんだよ」
929 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 22:39:07.99 ID:UP0P/e.o
手をひらひらと振りながら彼女は言った

「そういえば、あなたの下の名前は?まだ聞いてないんだよ」

「そうでしたね。えっと、私の名前は――」

「あ!ちょっと待ってほしいんだよ!」

「なんですか?」

「名前を聞くときは、こっちから名乗るのが礼儀だったんだよ!」

彼女はそう言って、腰に手をあて胸を反らした

えへんという擬音がこれ程似合いそうな場面はそうそうないだろうなぁ、と思った

「それじゃあ改めて、私の名前はインデックス、よろしくなんだよ!それと敬語はいらない
かも!」
930 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 22:47:22.83 ID:UP0P/e.o
インデックス……

どうやら彼女は日本人ではないようだ……

しかし、外国人にしても変わった名前だなぁ

日本語にすると、索引とかそんな意味の言葉だったと思う

そこまで考えて新たな疑問が浮かび上がる

彼女が外国人だとしたら、彼女と上条さんはどんな関係なんだろう?

両親が国際結婚をしたとかかな?

まあ、何にせよ。出会ったばかりの私が深く踏み入っていいような話じゃあないだろう

「私は佐天涙子。なんて呼んでくれても構わないよ。あなたのことは……
インデックスちゃん、って呼べばいいかな?」

気を取り直し、改めて自己紹介をする
931 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 22:56:48.53 ID:UP0P/e.o
「むぅー!小さな子供みたいな扱いはやめて欲しいんだよ!」

彼女は頬を膨らませると、腕をブンブン回し、体全体を使って猛抗議した

(結構子供っぽいと思うんだけどなぁ)

彼女の動きを見て、思わず苦笑する

「るいこは何歳なの!?」

「13ですけど……」

「私とあんまり年齢も変わらないんだし、呼び捨てでいいんだよ!私もるいこのこと
るいこって呼ぶから!」

「う、うん。わかった……」

迫力に押され了承してしまったが、まあ呼び捨てでいいんならこっちとしてもその方が
楽だし、別にいいかな

実は、彼女……、インデックスの年齢を小学生くらいだと思っていたのは秘密にしておい
た方がよさそうだ

彼女の申し出に頷きながら、私はそんなことを考えていた
932 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:09:34.78 ID:UP0P/e.o
「なぁ、インデックス」

「何?とうま?」

「さっきからずっと話してるけどよ。いい加減佐天さんの怪我の手当てをしてやれよ、
傷口から何か入ったら大変だろ?」

「う……」

上条さんに言われて先程から話に熱中していたことに気づいたのか、インデックスが
小さな声をもらす

「いや、別に気にしなくていいから……」

「い、今からしようとしてたところなんだよ!」

意地を張っているのか、インデックスは鼻息荒く救急箱を開けた

上条さんの方を見ると、上条さんは「やれやれ」と両手を上に上げるジェスチャーをした

「じゃあ、今から治療を始めるんだよ!」

インデックスが消毒液を持って気炎を上げていたので、私は上条さんに軽く笑みを作って
返し、インデックスの方へ向き直った
933 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:15:57.90 ID:UP0P/e.o
「ちょっとしみるかもしれないけど、我慢するんだよ?」

傷口を水できれいにし、その上から消毒液が付けられた

「…………」

ほんの少ししみたが大したことはなかった……

昔なら、「イタッ!」とか言っていた筈なのになぁ……

もしかしたら、痛覚が鈍ってきているんじゃないかと不安になる

(ないない、そんなことあるわけないよ
934 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:21:12.52 ID:UP0P/e.o
途中で送信してしまったため、一部重複します


(ないない、そんなことあるわけないよ)

ネガティブな考えを振り払う

後は包帯を巻いてもらえば大丈夫だろう

傷の手当ては何の問題もなく終わりそうだ

だが、考えるべきことはまだある

家で待っている二人に包帯を巻いて帰った時の言い訳を考えておかなければいけない

馬鹿正直にナイフで切られたなんて言うわけにはいかないし

転んだ拍子にどこかにぶつけて怪我をしたことにでもすればいいかなぁ……
935 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:31:56.26 ID:UP0P/e.o
打ち止めちゃんはそれで誤魔化せるかもしれないけど、一方通行さんは難しいだろうなぁ

今まで学園都市の暗部で生きてきただけあって、おそらくそんな言い訳程度ではすぐに
看過されてしまうだろう

(何かいい方法ないかなぁ、正宗?)

<ふむ、一方通行の奴には隠さずに言ってしまってもよいのではないか?>

(う~ん)

正宗の提案に首をひねる

確かにそれがもっとも確実な方法かもしれない……

でも、あんまり心配をかけたくないしなぁ

「ん?」

ふと、消毒液を付けてからしばらく考え事をしていたのに、一向に包帯が巻かれる気配が
無いことに気がついた

おかしいな、と思ってインデックスの方を見ると、彼女はなにやら真剣な表情で私の腕に
できた傷をじっと見つめている
936 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:42:02.23 ID:UP0P/e.o
「どうかしたの?」

「えっ!?な、なんでもないんだよ!」

我に返ったのか、インデックスは慌てて言い繕うと、救急箱から包帯を取り出した

「…………」



それから傷の手当ては滞りなく進んだ

こういったことに慣れているのか、インデックスは慣れた手つきで、あっという間に包帯を
巻き終えてしまった

「おお~、包帯を巻くのスゴイうまいんだね!」

綺麗に巻かれた包帯を見て、思わず感嘆の声をもらす

「うん……」

「?」

褒めたというのに反応が悪い、さっきまでの彼女ならもっと喜んでもよさそうなものなのに……
937 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:49:00.98 ID:UP0P/e.o
「ねぇ、るいこ。あなたに聞きたいことがあるんだけど……」

「何?」

先程とは打って変わり、真剣な表情でインデックスは私に問いかけた

「るいこは能力者なの?」

真っ直ぐと私を見据えながら、そう言った

「ううん、違うよ。残念ながら私は無能力者だよ」

嘘は言っていない

私は依然として、何の力もない無能力者のままだ



「それは、嘘、なんだよ……」

938 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/19(日) 23:57:25.40 ID:UP0P/e.o
私の心を読み取ろうとでも言うかのように、インデックスは私の目を真っ直ぐと見たまま
視線を逸らさない

「おい、インデックス!お前、何言ってるんだよ!」

雰囲気の変化に気づいた上条さんが私達の間に割って入ろうとする

「とうまは少し黙ってて」

「でも!」

「いいから……、これは大事なことなの。るいこ、あなたはさっき能力者じゃないって言った
よね?あれは本当なの?」

「うん、嘘じゃないわ」
939 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2010/12/20(月) 00:01:01.28 ID:jlyl/42o
私もインデックスの目を見つめ返しながら答える


「それじゃあ――」

言葉を区切り、インデックスは一呼吸置いた




「あなたは――、魔術師なの?」



963 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 21:32:48.16 ID:zGGcGLWOo
「は?」

インデックスの口から飛び出した質問に、私は呆気にとられてしまった

ここ最近の色んな出来事のおかげで、もはや並大抵のことでは驚かなくなったと自負して
いたのだが……

どうやらまだまだ甘かったらしい

まさか、あなたは魔術師なのか?

なんて漫画やゲームの中でしかあり得ないような質問を、実際に……、それも自分自身が
されることになるなんて、夢にも思っていなかった

しかし、インデックスの目は真剣そのもので、この質問が冗談ではないことを物語っている
965 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 21:38:43.33 ID:zGGcGLWOo
「おい、インデックス!いきなりなんてこと聞いてんだよ!?」

その質問に驚いたのは上条さんも同じだったようだ

慌てたようにインデックスの質問に横槍を入れた

「とうまは少し黙ってて。これは大事な話なんだよ」

さっきまでの子供っぽい振る舞いとは打って変わって、インデックスは真剣な声音で上条さん
に言った

「るいこの腕にある傷……、傷だけじゃない、るいこの体全体から何か魔術めいた力を感じる
んだよ」

先程までの和やかな雰囲気から一転して、部屋の中を張り詰めた空気が流れる
966 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 21:45:26.95 ID:zGGcGLWOo
<御堂、気を抜くでないぞ……>

ただならぬ空気を感じ取った正宗が警告の言葉を発した

(うん)

万が一に備え、座っている状態から腰を浮かせ、いつでも後ろに回避行動が取れるように
身構える

もし、この二人が敵だったと仮定したら、ここはすぐにでも立ち上がり、この二人から距離
を取るのが正しい選択だろう

でも――

目の前の二人は、きっと悪い人ではない……

そんな考えが脳裏をかすめる

どうしてそんなことを思ったのかはわからない

この二人とは出会ったばかりで、互いのことは何も知らないに等しい

それなのに、私は、この二人を信じたい

きっと話せばわかってくれる

そう思ってしまった

その想いが、私にそこへ留まることを選択させた
967 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 21:54:15.97 ID:zGGcGLWOo
「私は能力者じゃないし、魔術師なんてものも知らない……。でも、インデックスの言うように
私には能力とは別の力があるわ」

率直に事実を述べる

どんなカラクリかはわからないが、インデックスは正宗の力を感じ取っているようだ

そんな状況で嘘を突き通すなんて器用な真似は私にはできそうにないし、何より、彼女に
対して嘘をつくのは躊躇われた

「別の力って……?」

「それは……」

インデックスはさらに質問を重ねてきた

だが、私はそれに答えることができずに口ごもる

私の独断で正宗のことを喋っていいのだろうか?

下手なことを喋れば、この二人を暗部との争いに巻き込んでしまう可能性だってある……
968 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 22:03:35.71 ID:zGGcGLWOo
「インデックス、そんな矢継ぎ早に質問すんじゃねぇよ。見ろ、佐天さんも困ってるじゃねぇか」

そんな私の様子を見かねたのか、上条さんが再び話に割り込んできた

「でも、とうま。るいこは自分には能力者とは別の力があるって言ってるんだよ?」

「それは……」

「私だって、本当はこんな詰問みたいなことはしたくないんだよ……。でも、私達はとうまが
思ってるよりもずっと危険な立場にあるんだよ?」

インデックスは上条さんの方へ向き直り、説得を試みている

(どうしようか?)

その隙に、私は正宗に何か打開策がないか尋ねてみた
969 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 22:12:23.66 ID:zGGcGLWOo
<むぅ、これはややこしいことになったな。無闇に吾等のことを吹聴するような真似はできぬ。
さりとて、この場をうまく切り抜ける方策も思いつかぬし……>

どうやら正宗にもいい考えはないようだ……

さて、どうしたもんかなぁ……

チラリと二人に視線を移すと、どうやら上条さんはまだ納得していないようで、二人の議論
は未だ続いていた

「まあ、とりあえず一回落ち着けよ。話はそれからでも遅くはないだろ?」

しかし、私が目を話している間に形勢は逆転していたようで

今度は上条さんがインデックスを説得しようとしているみたいだ
970 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 22:23:59.36 ID:zGGcGLWOo
「うぅー……」

インデックスは上条さんの言葉に心が揺れているようだが、まだ納得はできないみたいだ

「そんな顔するなよ、な?お茶でも飲んで落ち着いてから話せば誤解も解けるって」

「でも!もし、るいこが魔術師だったり―――」



「暗部と関わりのある人間だったらどうするの!?」



(!!)

彼女の口から出た暗部と言う言葉に、反射的に立ち上がってしまった

(あちゃ~、まずったかも……)

<御堂!!>

正宗が私に声をかけてきたが、今の私にはそれに応答している時間はなさそうだ

「るいこ……、もしかして暗部のこと知ってるの?」

こちらへ向き直ったインデックスが言った
971 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 22:34:15.86 ID:zGGcGLWOo
ここまで露骨に反応してしまっては、知らないなんてしらを切るのは無理だろう

自分の不手際で状況はさらに緊迫したものになってしまった……

あまりの未熟さに唇を噛みしめる

だが、そんなことをしている場合ではない

インデックスは、どうやら学園都市の暗部について知っているようだ……

「うん、私は暗部の存在を知ってる。でも、インデックス、なんであなたが暗部の存在を知って
るの?」

質問を返すような形でインデックスに問いかける

「そっちこそ、なんで暗部のことを知ってるの?この学園都市で暗部のことを知ってるのは
魔術側の人間を除けば、暗部に関わりのあるごく一部の人間だけ……
一般人が知ってるわけないんだよ?」

険しい表情でインデックスが言った
972 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 22:47:57.50 ID:zGGcGLWOo
インデックスの言うとおりだ

一般人が暗部のことを知っている筈がない

現に私だって、学園都市に来てから最近まで、そんなものがあるなんて夢にも思わなかった

だが、インデックスの言葉は裏を返せば、彼女自身が一般人ではないと言っているも同然だ

この二人はやはり敵なのだろうか?

いや、それはあまりにも性急な考えだ

まだ、話し合いの余地は十分に残っている筈……

だが、この状況で話し合いで解決することができるのだろうか?

973 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 22:59:30.74 ID:zGGcGLWOo
思考は堂々巡りでいい考えが浮かばない……

私達の間にしばしの沈黙が流れる

どちらが先に口火を切るのだろうか?

だが、先に動いたのは、私でもインデックスでもなかった……

「ちょっと待ってくれ!!」

声を上げたのはいままで静観していた上条さんだった

上条さんは私とインデックスの間を遮るように私達の間に割り込んできた

「確かに俺達は暗部のことを知ってるし、争いとは無縁の一般人って訳でもない……
けどな、俺達は君に危害を加えようなんてつもりは微塵もないんだ」

私達の間に分け入った上条さんは、真っ直ぐに私の目を見ながらそう言った

「だから、まずは俺達の話を聞いてくれないか?」

両手を広げ、敵意がないことをアピールするようにしながら上条さんは言った

「それでも信用できないってんなら、言ってくれ。俺が人質にでも何にでもなってやるから」
974 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 23:13:39.07 ID:zGGcGLWOo
「わかりました。上条さん、私はあなたを信じることにします。私も出来る範囲でそっちの質問
にも答えますよ」

「そうか、ありがとうな、佐天さん」

私の答えに安心したのか、上条さんは手を下ろし、笑顔を浮かべた

「結局、とうまがいいところは持ってっちゃうんだから……」

少し不満げに、それでいてどこか安心したようにインデックスはそう言った

「こら、インデックス。お前はまずは佐天さんに謝れ。もとはといえばお前があんなこと言い出した
のが原因なんだぞ?」

まるで子供を叱るような口調で上条さんが言った

「う……、ごめんね涙子。私、ちょっと興奮しすぎちゃったかも……」

ペコリ、と頭を下げて、インデックスが謝罪した
975 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 23:23:41.64 ID:zGGcGLWOo
「別にいいよ。私も誤解されるようなことしたんだし」

「ううん、私の言葉の選び方が悪かったんだよ……」

「本当にな。なんでお前はもうちょっと言葉を選ばないんだか」

呆れたような声で上条さんが笑った

「と、とうまにだけは言われたくないんだよ!」

上条さんの言葉に、インデックスが抗議の声を上げた

「大体、さっきは俺が人質になってやるー、とか意味不明なこと言ってたんだよ!
この状況でそんな言葉を選ぶのはおかしいんだよ!日本語として変なんだよ!」

「あ、あれは、信用してもらうためについ出てしまった言葉で……」

あまりの猛反撃に上条さんは頬を掻きながら苦笑いをこぼした
976 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 23:31:27.05 ID:zGGcGLWOo
一方の私はといえば――

「ふ――、あはははは」

私が自分よりも背の高い上条さんを人質に取っている姿を想像してしまい、思わず吹き出して
しまっていた

「ほら、るいこにも笑われてるんだよ!」

「いえ、違うんです。ふふ、すみません」

「まあいいさ。とりあえず、これで一件落着かな?」

部屋の中はもとの和やかな雰囲気に戻り、私の緊張の糸はほどけていた

この二人と仲直りできて本当によかった……

心の底からそう思った
977 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 23:41:43.61 ID:zGGcGLWOo
「あ、そうだ……」

「どうかしたの、るいこ?」

「ごめん、ちょっと待ってて……」

「?」

私の行動にインデックスが首を傾げた

(正宗、聞こえてる?)

正宗が心配しないように、正宗にもことの顛末を報告しないと……

正宗にも声は届いていた筈だから不要かとも思ったが、やっぱり言っておかないと心配だ

(正宗?聞こえてないの?)

おかしい

何度か声をかけているのに返事がない

正宗にはそれほど距離の離れていない、建物の屋上で待機してもらっている筈なんだけど……

通信ができなくなるほどの距離は離れていない、そもそもこの通信に距離の制限があるのか
すらわからないんだけど……
978 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 23:51:20.87 ID:zGGcGLWOo
「ねぇ、何してるのるいこ?」

私の行動に痺れを切らしたのか、再度インデックスが私に質問を投げかけた

「えーと……」

向こうもかなり譲歩してくれたんだ、私も正宗の存在くらいは言うのが礼儀だ

そう思い正宗のことをインデックスに説明しようと、二人の方を振り向いた

「実はですね―――」

しかし、私はその後に続く言葉を口にすることが出来なかった……

なぜなら……

ふと目に入った窓の外に……

今まさにこの部屋へ飛び込んでくる正宗の姿が見えたからだ

「危な――――ッ!!」

またしても最後まで言葉を紡ぐ前に、部屋の中にガラスの割れるけたたましい音が響いた
979 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/14(金) 23:59:50.60 ID:zGGcGLWOo
「うわあぁぁ!?な、なんだ!?」

「で、でっかい虫が部屋に飛び込んできたんだよ!?」

窓を突き破って部屋の中へ現れた正宗を目にした二人が大声を上げる

<御堂、無事か!?>

あまりの事態に私は呆気にとられて、うまく言葉を発することができない

「お前、一体何なんだ!?くそ!またどっかの魔術師の仕業か!?」

<貴様!甘い顔をして近寄り、御堂を害そうとした悪漢めがッ!!吾がその性根、
叩き直してくれようぞッ!!!>

言うやいなや、正宗は上条さんへ向かって跳躍した
980 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/15(土) 00:08:25.44 ID:Jyis07TXo
「この野郎!!」

それに合わせて上条さんが右手を振りかぶった

<そんなものが効くものかッ!!>

上条さんの拳は正宗に当たったものの、その程度では正宗の勢いは止まらず
上条さんは正宗の下敷きになってしまった

「いってぇ!!何で出来てんだこいつ!?」

下敷きになった上条さんが声を上げる

「ちょっと!?やめなさい!正宗!!」

それを聞いてやっと我に返り、正宗を制止しようと駆け寄る
981 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/15(土) 00:18:50.45 ID:Jyis07TXo
「るいこ、危ないんだよ!!」

正宗に駆け寄る私の身を案じたインデックスが警告をした

「大丈夫です!正宗は私の――、えーと……、とにかく大丈夫だからッ!!」

説明は後回しだ、今は一秒でも早く正宗をなだめないと

「佐天さん、こいつと知り合いなのかっ!?」

「は、はい!」

「頼む、早くどかしてくれ――、って痛ぇ!!足で突くな!!」

「正宗!早く上条さんの上からどきなさい!!」

正宗は興奮して私の声が聞こえないのか、上条さんの上から動こうとしない……

「ああ、もう!ホントにこういうところは変わらないんだから!!」




「だああぁぁぁ!!不幸だぁーー!!!」
「退きなさーーーい!!!」



とある放課後の住宅街に、二つの叫びがこだました


991 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/24(月) 00:55:27.44 ID:4cWeejXho
「すみませんでした!」

窓ガラスの破片が床に散らばり

まるで嵐でも来たのではないかと見まがう程の様相を呈している部屋の中で、私は頭を
下げて、謝罪の言葉を口にした

「はは、別にいいさ。俺も誤解を招くようなことしちまったし……」

やっとこさ正宗の下から解放された上条さんが苦笑いを浮かべながら言った

「ううん、二人は悪くないんだよ。元はといえば、私が先走っちゃったのがいけないんだよ……」

この惨状に責任を感じているのか、インデックスは今にも消え入りそうな声で呟くと、下を
向いて黙り込んでしまった
992 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/24(月) 00:59:57.92 ID:4cWeejXho
「そんなことない!インデックスが責任を感じることなんてないよ!」

咄嗟にフォローの言葉を口にするが、インデックスは納得できないようで、顔を上げなかった

かくいう私も、もっとうまく言葉を選べば、穏便にことを片付けられたのではないか?と考えて
しまい、インデックスと同じように肩を落とした

「あー……、その、なんだ……」

うなだれている私とインデックス、そして表情の読めない正宗を前にして、上条さんもなんて声
をかけていいのかわからないみたいだ

誰も言葉を発せず、部屋の中はまるでお通夜のような雰囲気になってしまった




「だぁあああ!もう!!お前等いい加減にしろ!!!」



993 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/24(月) 01:04:14.23 ID:4cWeejXho
突然の大声に私達は弾かれたように顔を上げ、大声を出した上条さんの元へ視線を向けた

上条さんはガシガシと頭を乱暴に掻くと、キッとこちらを見据え、口を開いた

「確かに妙な誤解のせいでこんなことになっちまったけどさぁ。結局誰も怪我した奴はいない
し、誤解も解けた。
だったらそれでいいじゃねぇかよ?誰が悪いだの悪くないだのなんて変な意地張ってないで、
仲直りしようぜ?」

さっきの大きな声とは対照的に、小さな声で

まるで小さな子供に言い聞かせるように上条さんは言った
994 : ◆JZzNmabVtI [saga]:2011/01/24(月) 01:10:37.49 ID:4cWeejXho
「わかりました……。それじゃあ、これで仲直り……、ですね?」

「ああ!」

そう言って上条さんは手を前に差し出した

「?」

「仲直りの握手。仲直りするときにすることなんて、俺には他に思いつかないからさ。
俺が嫌ならインデックスとしてくれたっていいけど」

「しますよ、仲直りの握手。上条さんとインデックス、両方と……」

ちょっと照れたように手を差し出している上条さんに頬笑みを浮かべながら

そしてインデックスにも、笑顔で仲直りの握手をした

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