2013年1月29日火曜日

あまくさっ! 2

<主な登場人物④>

・結標淡希……多分、一番香焼との絡みを期待されてる人。だけど此処では『ショタコン』とはちょっと違う路線。カミやん病抗体無し。
        霧ヶ丘女学院高等部2年特別学級。能力は「座標移動(ムーブポイント)」の大能力者。ただし「単体ジャンプ」は危険。
        呼称は……結標、結標ちゃん、淡希、あわきん、あわき。

        学園都市暗部『グループ』所属。変態集団のショタコン枠。高校には絹旗と同様、名前を置いているだけ。月詠家居候。
        元学生運動(テロリスト)のリーダーで、それなりにカリスマはある。ただしガラスのメンタルハート。アドリブ利かない。
        窓のないビルの内部に運ぶ『案内人』を務めている。アレイスター的に便利屋その5くらいのポジション。
        性格は姉御肌。年下の面倒は上が見るべきだと謳い、グループでもリーダーを主張する。でも実は海原(エツァリ)の方が上。
        守銭奴。ひっきー。友達少ない。運動しない……無意識で一方通行とイチャイチャしてる等、あまり健康的では無い様子。
        香焼くんは如何なる事やら……(以下追々付け足していきます)



・月詠小萌……学園都市の七不思議である「完全幼女宣言」その人。その見た目とは対に、教師の鑑。とある高校1年7組(上条クラス)担任。
        専攻は発火能力。他にも社会心理学・環境心理学・行動心理学・交通心理学・等の心理学の専門家でもある。
        呼称は……小萌先生、小萌、月詠先生、月詠さん、合法ロリ、山盛り灰皿(ホワイトスモーカー)など。

        色者ぞろいの上条に近い人物の中で比較的一般人な人。だが「大人の目」で上条を一番気に掛けてくれてる人でもある。
        幼女(似非)のくせに大酒豪で愛煙者。住んでる家はオンボロだが特注車を持ち、頻繁に焼肉パーティーを開き、
        煙草の高い学園都市でヘビースモーカーで有る点貧乏では無い模様。結標が払ってる手間賃を足せば、かなりのお金持ちかも。
        性格は総合して大人。時間に精確。真剣に不良少年少女に向き合い、自分の家を借宿として提供する。だけど結構お茶目。
        実は……神道月詠神社の「ツクヨミノミコト」の陰(女性)の部、巫女役としてその身に神を―――嘘です。
        香焼よりステイルとの関わりの方が気になる……(以下追々付け足していきます)


という訳で、同日の物語! 投下します!

95第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 21:18:13.97 ID:QUx0plQw0
 ―――とある休日、PM05:45、学園都市第7学区、とある商店街・・・・・



さっき(第3話)のあらすじ。自分こと、香焼は意地悪な自称姉達に虐められ家出しました。


ぬこ「にゃー」ペチペチ・・・

香焼「……オマエまで連れ出しちゃってごめんな」ナデナデ・・・


冷え込んできた秋の夕暮れ。自分と子猫は商店街付近をウロウロしていた。
突発的に飛び出してきた為、携帯も財布も家に忘れてしまった。こんな事ならステイルに少々借りれば良かったかもしれない。

だが……今更ステイルの所へも、自分の家にも戻る事は出来ない。
今日は帰らない、と叫んだ以上此処で折れたらきっと笑われてしまうだろう。


香焼「アイツら……自分ん家帰ってないかなぁ。そしたら戻れるのに」ハァ・・・

ぬこ「みー」スリスリ・・・

香焼「せめてオマエのご飯くらいは用意しないとな」ニコッ・・・


自分の我が儘で連れてきてしまった。申し訳無い限りだ。

しかし……これから如何しよう。
他の潜入学徒の家には五和達が根回ししてるだろうし、土御門や上条さんにもあまり迷惑掛けたくない。
だがこのままウロウロしていては風紀委員か警備員に補導されかねないし……仕方ない。


香焼「公園の林か路地裏で一晩過ごそ」ハァ・・・


そこならばれない。治安も危険だが、自分は並の不良に負ける程軟弱ではない。
そう考え、トボトボ足を進めた……―――
96 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 21:20:19.57 ID:QUx0plQw0
 ―――とある休日、PM05:55、学園都市第7学区、とある商店街、スーパーとたけけ・・・・・


 ウィーン・・・アリガトッザイヤシター・・・・・


月詠「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ~ん♪」ニコニコ!

結標「小萌……特売だからって買い過ぎじゃないの? 流石に特級焼き肉セットは多いわよ……」ハァ・・・

月詠「余ったら冷凍しておけば良いんですよ。多分、賞味期限が危なくなったらシスターちゃんが処理しに来てくれるのです」ビシッ

結標「インデックスに任せたら冷蔵庫空になるわ。まったく……秋沙も秋沙よ。こんな時に来ないなんて……」ムゥ・・・

月詠「仕方ないですよー。姫神ちゃんはクラスメイトのお誕生日会ですからね」ニコッ

結標「小学生かっての……ハァ」テクテク・・・

月詠「あらあら。数少ないお友達が来てくれなくて残念ですか?」ニヤッ

結標「べ、別にそんな事思ってないもん」ムッ!

月詠「だったらちゃんと学校に行ってお友達を作る事です。友人関係は利害関係では無い立派な――」

結標「あーはいはい。お説教はまた今度受けるから」テクテク・・・

月詠「―――……んもー」プンスカッ!

結標「ごめんごめん。わたしー、こもえがー、だいすきー」ボウヨミー

月詠「心が全く籠って無い……今までで一番難しい娘なのですよ、結標ちゃんは……」ハァ・・・

結標「ゆるしてー」ニコニコ

月詠「ハァ……ん!」ピキリーンッ!!

結標「しっかし、お酒も沢山ね。冷蔵庫にまだ有ったでしょう。私呑めないのに……って、如何したの?」ヘ?

月詠「……家出気質(プレッシャー)を感じました」キョロキョロ・・・

結標「ぷ、ぷれっしゃー?」ポカーン・・・

月詠「……こっちですね!」スタスタスタ!

結標「ちょ、ちょっと! ……もう!!」ハァ・・・
97 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 21:24:15.69 ID:QUx0plQw0
 ―――とある休日、PM06:00、学園都市第7学区、とある通り・・・・・




香焼「此処の路地でいいっか」

ぬこ「みー」


適当な路地を見つけた。スキルアウトが居なそうなビル裏。


香焼「……お腹空いた」クゥー

ぬこ「……なぅ」

香焼「任務だと思えば一食くらいは大丈夫だけど……携帯食とタオルケットくらい欲しいな」

ぬこ「にゃん」

香焼「オマエは僕の服の中でダイジョブだね」ハハハ・・・


久しぶりに『僕』という一人称を使った。更に幼く見えるから普段は使わない様にしている。

さておき、子猫の寝床だが自分の服の中で大丈夫だろう。パーカー裏に隠してる暗器(ナイフ)を外せば問題無い。
兎角、業務用の大きなダストボックスの横に座り込み、猫を抱えて……目を瞑った。

……虚しい。


香焼「……馬鹿姉」グズッ・・・

ぬこ「にゃー」


純粋に仲良くしている友人達を変な目で見やがって……許さないからな。
ペロペロと舐めてくる猫の温もりだけが、唯一の救いだった。


香焼「……ごめんな」ナデナデ

ぬこ「みぅ」ペロペロ


お腹が鳴る。猫も物欲しそうな目で自分を見上げてくる。
いっそ隣のダストボックスでも漁ってみようか……そう考えた時だった。


??「もしもし」

香焼「……え」キョトン

??「そこで何をしてるのですか?」


小学校低学年くらいの子供が声を掛けてきた。


香焼「何って……」タラー・・・

??「まだ小さいのに……家出ですか?」ジー・・・

香焼「ち、小さいって……人の事言えないだろ」ジトー・・・

??「失礼ですね。私はこう見えても学校の先生ですよ!」プンスカ!


嘘付け。どう見ても自分より年下だろう。最愛より幼いぞ。
98 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 21:26:33.77 ID:QUx0plQw0
??「兎に角、小学生が居て良い場所じゃありません。如何してこんな場所に居るかお話聞かせて下さい」ニコッ

香焼「しょ……中学生っすよ!」ギロッ

ぬこ「なぅ」トコトコ

??「それは失礼しました。あ、猫ちゃんです」ペコッ


一転、飛び出した猫の方に近づきニッコリと撫で始める自称教師な少女。
ヤレヤレと溜息を吐きながら無言でそのやりとりを見詰めていた刹那……少女の背後からまた人が現れた。


??「小萌。勝手にノコノコ行かないでよ。袋持ってんの私なのよ?」

??「あ、ごめんなさい」

??「ったく……何? また家出少年見つけたの? それともその猫に釣られた?」ジー・・・

ぬこ「みー」キョロッ


女教皇様に負けないくらい露出が多い、大人びた感じの女性。歳は五和と同じくらいだろうか。


??「……ペット感覚じゃないんだからヒョイヒョイ拾わないでよね」ジトー・・・

??「むぅ。そんな事思ってませんよ」ムッ

??「アンタも……」ジー・・・


自分の方を睨んでくる年上の女性。


??「……こんなとこいないで、大人しく家に帰りなさい。スキルアウトが少ない所とはいえ、ガキが居て良い場所じゃないわ」フンッ

香焼「……やだ」ボソッ

??「生意気ね。折角の忠告を……痛い目見なきゃ分かんない?」スッ・・・

香焼「っ」ギョッ・・・


腰の辺りに手を伸ばす女性。何やら拙い予感。


??「結標ちゃん!」ギロッ!

??「……」ピタッ・・・

??「……任せて下さい」ジー・・・

??「……ふんっ」


どうぞご勝手に、と後ろに下がる。
何故か猫もその後を付けて行った。ビニール袋の中身に釣られたのだろうか。


??「とりあえずこんな場所じゃなんです。私の家に来ませんか?」ニコッ

香焼「え」キョトン・・・

??「生憎、特売でお肉を買い過ぎちゃって困ってるのですよー。減らすのを手伝って欲しいのです」

香焼「お、お肉?」クゥー・・・「……あ」///

??「ふふふ。さ、行きましょう。帰りがてらお話聞かせて下さい」ニコニコ


無邪気な笑み。多分、害は無い人だ。
という訳で……空腹の誘惑に負けた。猫もさっきの女性に付いていってしまったし、止むを得なくお邪魔する事にした。
99 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 21:42:17.97 ID:QUx0plQw0
 ―――とある休日、PM06:10、学園都市第7学区、とある通り・・・・・



家に着くまでの間、小さな少女……もとい先生から自己紹介を受けた。

名前は月詠小萌さん。本当に高校教師をやってるらしい。
それからもう一人は結標淡希さん。月詠さん家の居候さんだとか。

自分も簡単に自己紹介し、歩を進めた。


月詠「―――……成程。お姉さん達と喧嘩をしちゃったんですか」

香焼「喧嘩っていうか……アッチが一方的に悪いんすよ。人の友達変な目で見て」ムゥ・・・

月詠「あはは……先生の教え子にも、本人の意志とは別によくフラグが立っちゃう子がいますけどねー」ハハハ


フラグとか如何とか、皆して良く分からない事を言う。


結標「ま、要は身内の痴話から逃げ出してきたんでしょ? 貴方の家なのに」チラッ

香焼「……はい」シュン・・・

月詠「結標ちゃん。言い方ってものがあるのです」メッ!

結標「はいはい。悪ぅござんした」テクテク・・・

ぬこ「みー」スリスリ


物事をはっきり言う人。だけど猫を肩に乗せてるので、今一貫禄が出てない。


月詠「ごめんなさい。結標ちゃん、ホントは良い子なんですよ」ハァ

香焼「い、いえ。別に気にしてませんから」アハハ・・・

月詠「それより、財布も携帯も忘れて出てくるなんて困りましたね……お家に連絡を――」

香焼「嫌です」キッパリ!

月詠「―――……」ムゥ・・・


アッチから謝って来ない限り、連絡なんてするものか。


結標「でも今のままじゃ如何やっても連絡取れないんじゃないの? それじゃ謝罪も聞けないじゃない」

香焼「……でも、今日は絶対許さないって決めたっす」グッ・・・

月詠「香焼ちゃん……」ジー・・・

ぬこ「なー」ペチペチ・・・

結標「……ふふっ。そういう意固地な男の子は嫌いじゃないわ」ニコッ

香焼「え」キョトン・・・


そう言って、結標さんは立ち止まり……告げた。
100 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 21:59:32.04 ID:QUx0plQw0
結標「泊めてあげてもいいよ?」ニコッ

香焼・月詠「「……」」ポカーン・・・


いや、アンタの家じゃないでしょ……


月詠「ごめんなさい。結標ちゃん、謙虚って言葉を知らないんです」ハァ

香焼「え、あ、その……」アハハ・・・

結標「失礼ね。で? 如何するの? 飯食ったら出てく?」ジー・・・

香焼「……えっと」チラッ


家主さんが良しと言ってないし、それに赤の他人の女性の家に泊るなんて気が引ける。


月詠「私は構いませんよ。教師としてまだ小学7年生の子を外に放っぽり出す方がいけない事ですからね」ニコッ

香焼「小学7……でも」チラッ

結標「私が『良い』って言ってるの。子供はお言葉に甘えなさい」フンッ

ぬこ「にゃん」ペロッ

結標「子猫(この子)も外で寝かせる? まぁ畜生だから平気っちゃ平気でしょうけど」

香焼「……」ウーン・・・


些か急過ぎる。
自分が頭を悩ませている最中、月詠さんが微笑み告げた。


月詠「香焼ちゃん。では一晩私の家で考えましょう。泊るとかじゃなくて、そのお姉さん達の愚痴を聞かせてくれるだけでも良いんです」ニコッ

香焼「……むぅ」ポリポリ・・・

月詠「怒らないで下さいね? 貴方も……頭を冷やす時間が必要です。自分が一番分かっているのでは?」チラッ

香焼「……」ハァ


確かに、自分も……多少大人げ無かったかもしれない。一番年下だが。
しかし女性二人の部屋にお邪魔するのは……                   ※五和・浦上は女性としてカウントしてません。


結標「今時珍しい堅気な少年だって事は分かった。それとも……実は襲っちゃおーなんて考えてる悪い子?」ニヤッ

香焼「ま、まさか!!」カアアァ・・・///

結標「ふふっ。じゃあ決定ね」ニコッ

ぬこ「みゃー」コロコロ


悩んだ末、結局丸め込まれてしまった。
101 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 22:23:42.14 ID:QUx0plQw0
《その頃……一方、香焼宅》


五和「こ、コウちゃんが何処にも居ないよーぅ!!」アワワワ・・・

浦上「五和落ち着いて。こういう時は素数を数えるの」ポンッ

五和「わ、分かった……1、2、4、8、16、32、64……」フゥ・・・

神裂「それは二の乗数です……浦上、他の潜入学徒から連絡は?」タラー・・・

浦上「ありません。土御門さんも、上条さんも見てないそうですヨ」ハァ・・・

五和「ステイルさんが見かけたのが最後です! ど、如何しよう……誰かに捕まってたら……」ギャー!

神裂「それは無いでしょう。あの子も魔術師の一人です……もしかしたら警備員に保護されてる可能性も」フム・・・

浦上「……もしかして今頃、グレてスキルアウトの仲間入りとかしてたら」アハハ・・・

神裂・五和「「っ!!?」」ドキッ・・・

浦上「(んな事する訳無いでしょww)……もしくは思い詰めて……ビルの屋上から身を……」ワー!

神裂「し、至急捜索班を準備しなさい!!」アワワワ・・・

五和「土御門さんに街の監視モニタージャック許可を取ります!」ドタバタ!

浦上「あはは……(……いやぁ。大袈裟ですネ)」アハハ・・・




《その頃……もう一方、香焼達付近のビル屋上》


ステイル「まったく世話の焼ける奴だ……ん?」ジー・・・

ステイル「いた……誰かと一緒だな……アレは『案内人』と……『あの人』か!?」エ?!

ステイル「何故、香焼が一緒に……ふむ」ポリポリ・・・

ステイル「これは神裂達よりも、土御門に連絡した方が無難だな」カチッ・・・フゥ

ステイル「……派手な行動は慎めよ、香焼」ジジジジ・・・




《その頃……まったく関係無いバイキング店》


 ガヤガヤガヤ・・・・


デルタフォース『喰い放題だー!!』ワーイ!

吹寄「黙れ!! 貴様らが主役じゃないぞ!!」コラー!

誕生日の子「あはは。まぁまぁ」ポリポリ・・・

姫神「おめでとう……小萌先生も来れば良かったのに」ムゥ

禁書「代わりに私が来たんだよ!!」バクバク!

姫神「がめついわね。まぁ淡希を放っておけないのも分かるけど……ん? 土御門くん。携帯鳴ってるわ」チラッ

土御門「とりあえず乾杯してから見るから大丈夫だぜぃ!! ほれ! 吹寄!! 音頭取るにゃー!」ワー!

姫神「……もぅ」ハァ・・・
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 22:29:35.21 ID:qEb+wLwDO
やったー! 二日連続だー!


サブタイトルって、褒めてあげてm‥‥おや? 誰か来たようだ。
103 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 23:18:03.38 ID:QUx0plQw0
 ―――とある休日、PM06:30、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



それから歩いて数分後……


月詠「此処です」テクテク・・・

香焼「……」タラー・・・

ぬこ「なぅ」ジー・・・


大分年季の入ったオンボロ荘だ。
固まっていた自分の背中を、結標さんに押され歩を進めた。

通路に洗濯機と物干し竿。トイレは……良かった。共同じゃないみたいだ。


結標「金有るくせにこんな家住んでんのよ」ハァ

月詠「結標ちゃん。贅沢は敵ですよ! それに守銭奴具合なら結標ちゃんの方が上なのです!」ムゥ

結標「あー、そーですねー」ボーヨミー


ムキーと唸る月詠さん。よくこの二人が共同生活出来てるなと内心苦笑した。
兎角、月詠さんの後を追い部屋に入―――


香焼「……」ウワッ・・・

ぬこ「……にゃ」ピタッ・・・


煙草臭い。


結標「すぐ慣れるわよ。ほら上がった上がった」ウイッ

香焼「は、はい……お邪魔します」テクテク・・・

月詠「はい。いらっしゃいです」ニコッ


何とも、男っぽい部屋だった。山盛り灰皿、ゴミ袋いっぱいの酒缶。


香焼「結標さん……煙草喫うんすね」チラッ

結標「私は酒も煙草も嫌いよ。全部小萌」テクテク・・・

香焼「」


何たるギャップ……改めてあの合法ロリ教師は大人なのだと認識した。
104 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/09(水) 23:47:12.15 ID:QUx0plQw0
一寸後……円卓にホットプレートとお肉、野菜、それから月詠さんのビールを準備し焼き肉が始まった。
因みに、子猫にはツナ缶と麦飯を混ぜた猫まんまを食べさせた。


月詠「さて、では……」パンッ

香焼・結標「「いただきます」」ペコッ


瞬間、月詠さんが肉の塊をブチ込んだ。


結標「小萌! ばらけさせろっていつも言ってるでしょ!」アーア・・・

月詠「お腹に入れば皆同じですよ」ゴクゴク・・・プハー!

結標「それじゃ火が通らないのよ。まったく……ほら、香焼くんも手伝って」イソイソ

香焼「え、あ、はい」イソイソ・・・


ドチラが保護者か分からない。
それから結標さんの手伝いを続けながら夕飯を続けた。結標さんは意外に几帳面で面倒見が良いらしい。
口調などはガサツかもしれないが、所々細かい所にも目が行く人だ。


月詠「もぐもぐ……時に香焼ちゃん」ビシッ

結標「箸で人指さない。行儀悪い……はい。コレ焼けた」ヒョイッ

香焼「(今、箸使ってないのに……皿の上にある?!) え、あ、ど、どうも……何すか?」キョトン・・・

月詠「学生証が無いので確認できなかったんですけど、学校はドチラに?」モグモグ

結標「小萌、食べるか話すかどっちかにする。あと野菜食べなさい」ヒョイッ

月詠「どうも♪」ニコッ


結標さん、母親みたいだな。


香焼「自分は、えっと……『▲▲▲学院中等部』っす」ボソッ

月詠・結標「「……」」ピタッ・・・

ぬこ「まぅ」クチャクチャ・・・


まぁ最初は皆驚く。


月詠「ほ、本当ですか!? 理事校!!?」ジー・・・

香焼「ええ、一応」アハハ・・・

結標「やだ、小萌。今までで一番トンデモ無い子拾ってきたわよ!?」ヘェ・・・

香焼「い、いや、別に普通の学生っすよ。学園都市内なのに能力開発無い点、他の学校より劣ってるっていう人もいますし」タラー・・・

結標「言い方悪いけど、頭の中弄られる側じゃ無くて……弄る方針決める側の勉強してんだから、十分エリートよ」モグモグ


毒のある言い方だが、それも一理ある。
今の発言に月詠さんは苦い顔をしていたが、それでも理事校という点は驚くに値した様だ。
105 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 00:12:16.09 ID:aUjZRigj0
香焼「……エリートとかそういう風に言われるのは好きじゃないっす」ムゥ

結標「そう? 変わった子ね。まぁその環境で家出しちゃうんだからかなり変わってるんでしょうけど」ヒョイッ

月詠「結標ちゃんだって御嬢様校なのに家出してるでしょう」ハァ・・・

香焼「御嬢様校?」

結標「……そうでもないわよ」フンッ

月詠「霧ヶ丘ですよ。しかも大能力者さんなのです!」エヘン!

結標「ちょ、小萌!」ンモー・・・


自分の事の様に自慢する月詠さん。
霧ヶ丘で大能力者って……何だか最愛に似てるな。きっと珍しい能力なんだろう。


結標「ふんっ……別に学校で教わる事なんか無いわよ。霧ヶ丘(あの学校)は仲良しこよしなんてのは一切無いんだから」ッタク・・・

月詠「もう……まだ意地張るんですか」ハァ・・・


何やら険悪な雰囲気。


香焼「え、えっと、月詠さんはドチラの学校に御勤めなんすか?」アハハ・・・

月詠「私ですか? ○○高校ですよー」ニコッ

香焼「え……○○って」

月詠「知っていますか? そんなに有名な高校じゃない筈ですけど」

香焼「一応……」アハハ・・・


上条さん達の学校か。


結標「ん? ……知り合い居るとか?」ジー・・・

香焼「少々、はい」コクッ

月詠「おお! 誰誰! 誰ですか!? 先生は生徒の顔名前、全員記憶してますよー!」ニコニコ!


言っていいものか……まぁ無害そうだから大丈夫か。


香焼「えっと、上条当麻さんと土御門元春さんっす」ポリポリ・・・

結標「っ……」ピタッ・・・

月詠「あらあら! 上条ちゃん達とお知り合いでしたかー! 二人とも先生の担任クラスの子ですよー!」パアァッ!!

香焼「え、あ、そうなんだ」アハハ・・・


存外、世界は狭いモノなのだと考えさせられた。
106 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 00:34:22.95 ID:aUjZRigj0
結標「……しかし、何処にでも出てくるわね。幻想殺し(イマジンブレイカー)は」ハァ

月詠「結標ちゃん。ちゃんと名前で呼んで上げなきゃ駄目ですよ」ンモー

香焼「っ」ピタッ・・・


何故、その呼称を……


結標「え? 駄目なの? (やっぱり……この反応……)」キョトン・・・

香焼「いや……駄目というか……」ジー・・・

結標「アイツ、自分でベラベラ言ってるけど。ね?」チラッ

月詠「そうですねー。無能力者なのに……『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)殺し』みたいな厨二ネーム自分に付けちゃって」ハァ・・・

結標「『俺の右手は異能の力なら何でも打ち消せるんだよ』だっけ? 絶対アレ希少能力よね。羨ましい」ウンウン

香焼「」

月詠「でも、少しは先生の能力開発の成果も実って……あれ? 香焼ちゃん?」


あの人は……少し自分の重要性を危惧した方が良い。


月詠「それにシスターちゃんも此処によく遊びに来ますよ」ニコニコ

香焼「い、禁書目録が?」ポカーン・・・

結標「知ってるのね。ホント、食い散らかすだけ喰い散らかして……秋沙と揃った時なんて大変よ」ハァ・・・

香焼「吸血ごr(ディープブr)……姫神、秋沙さんも?!」キョトン・・・


確か、今や吸血殺し(ディープブラッド)の異名は完璧タブーだ。危ない危ない。


月詠「姫神ちゃんも知ってるのですか! 理事校の学生さんに知ってもらえてるなんて……先生、有名人の恩師みたいですー!」キラキラ・・・

香焼「お、大袈裟っすよ。あははは……」タラー・・・

結標「……」ジー・・・

ぬこ「……にゃう」ペロペロ・・・


……この人は意外と、大物なのかもしれない。

それから暫時、楽しく食事が出来た。
月詠さんはビールを軽く5本空けてもデキ上がらないトンデモ少女。結標さんは始めの頃にくらべ、大分優しく対応してくれるようになった。
何とも……居心地が良い。新鮮である。あの馬鹿姉妹にも見習って欲しい程だ。
107 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 00:48:24.53 ID:aUjZRigj0
それから一寸後、食事終了。


香焼・結標「「ごちそうさまでした」」ペコッ

ぬこ「ぬぉー」ペコッ

月詠「はい。お粗末さまでした♪」ニコッ


お世話になっている手前、せめて食器洗いくらいはさせて貰わねばなるまい。
そう思って、プレートを持とうとした瞬間……


香焼「……あれ?」ポカーン・・・


プレートが消えていた。
それどころか次々とテーブルの上のモノが消えていく。何が起きてるのだ……


結標「……私の能力よ」ボソッ

香焼「え、あ……凄いっす……瞬間移動ってヤツっすか?」ポカーン・・・

結標「まぁそんなとこね。でも詳細は……な・い・しょ♪」ニコッ


狐に頬を抓まれた様だ。テーブルの上のモノが全て台所にある。
兎角、食器洗いくらいはしないと……


月詠「いいですよ。香焼ちゃん、お客様なのですから」ニコッ

香焼「いえ。世話になりっ放しで申し訳が立たないっす。せめてお手伝いくらいは」コクッ

月詠「そうですか。じゃあ水に浸けとくだけでいいです。そろそろ急がないといけないので」ウンウン


急ぐって何を? というかこの部屋時計無いし。


結標「何って、この家お風呂無いでしょ。銭湯行くのよ。銭湯」ヨイショ

香焼「あ……成程」コクッ

月詠「香焼ちゃんのお風呂セットは……既存のモノで大丈夫ですか? 必要でしたらお金貸すのですよ」

香焼「置いてある石鹸とかで大丈夫っす」コクッ

結標「パンツは?」サラッ

香焼「ぱん……え、えっと……」アハハ・・・///

月詠「結標ちゃん……デリカシー無いですね」ハァ

結標「だって私達の貸す訳にいかないでしょ? まぁそのままでも良いってんなら勝手だけど」

ぬこ「みー……」グシグシ・・・


……お言葉に甘えて、お金を借りよう。
108 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 01:13:16.00 ID:aUjZRigj0
 ―――とある休日、PM06:45、学園都市第7学区、とある銭湯・・・・・



ずっと一緒に居た子猫と暫しの別れを告げ、銭湯に出発した。
途中コンビニに寄り、結標さんから借りたお金で下着を購入。
月詠さんが『む、結標ちゃんがお金を貸した……だと……』と何故か驚いていた。そんなに珍しい事なのだろうか。


結標「お釣りは取っておきなさい」サラッ

香焼「え、でも、万札っすよ」ポリポリ・・・

月詠「む、結標ちゃん……明日病院に行きましょう。先生の知り合いに名医がいるのです!」アワワワ・・・

結標「失礼ね。バラで受け取るの面倒だから、後で諭吉ごと返せば良いって言ってるのよ。やるなんて言って無いわ」マッタク・・・

月詠「よ、良かった……いつもの結標ちゃんです」ホッ・・・


次の瞬間、脳天直下でチョップを喰らう月詠さん。まぁ自業自得だろう。
というか結標さんの『諭吉』って表現、生々しいな。


月詠「痛た……とりあえず、私達が最後くらいの筈なのでゆっくりどうぞです」ニコッ

結標「多分40分後くらいに玄関居るわ。合わせる気が有るならそのくらいに出てきなさい」テクテク・・・

香焼「了解っす」コクッ


そう言って、二人は先に女湯へ入って行った。
自分も男湯の方へ歩を進み、番頭さんに『大人料金』で支払った後、更衣室へ向かった。

しかし……都会の銭湯は結構高いようだ。
地元に居た頃は保護者が五十円(子供料金だからか)くらい払って入れてたような気がしたが、此処は三百円した。
後で聞いたがこれでも良心価格らしい。地方との差を感じられる瞬間だ。

さておき、自分は銭湯や温泉といった所で碌な思い出が無い。
理由は簡単。あの馬鹿姉達と悪乗りした大人(主に建宮さん)の所為である。
無理矢理、女湯入れさせられたり、覗きに行かされたりと……振り返るだけで涙が出る。

最近では、アンの裸を見てしまった時が大変だった。
悲鳴を聞いて駆け付けたアニーが圧底ブーツで股間蹴るし、サーシャがノコギリ股間に当ててきたし、レッサーが襲ってきたり……


香焼「ハァ……不幸だ」タラー・・・


誰かさんの口癖が伝染ってしまった。
まぁ今日はそんな事無いだろう。そう思って更衣室で着替え始めた。


香焼「ん?」チラッ


一人だけ、風呂に誰か居る様だ。特に気にする事でもないか。今身体流してるし、もう上がるのだろう。
109 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 01:28:38.91 ID:aUjZRigj0
ガララと戸を開け、中に入る。
入っていた人が上がるようで、丁度入れ違いに―――


香焼「っ」ビクッ・・・


―――建宮さん並の身体つき……


??「ん? 最後じゃなかったか」テクテク・・・


―――傷だらけ。大きな刺青……


香焼「……」トコトコ・・・

??「……」チラッ

香焼「っ」ペコッ・・・


この学園都市にも本格ヤクザ商売の人間は居るんだと、チラ見してしまった。
そそくさと逃げる様に湯の方へ向かった。


??「……おい、坊主」ボソッ

香焼「っ!!? は、はい!! (こ、声掛けられたぁっ!!?)」ビクッ!?


今の自分はまるで術式が練れない。何かされたら、あの体躯相手に太刀打ちできる訳無い。


??「……タオル、浴槽ん中入れんなよ」ニコッ

香焼「え……あ、はい。すいません……」ペコッ・・・


注意だけだった。かなりホッとする。
それからその人はさっさと着替えを終え、瓶牛乳二本片手に出て行った。
ヤクザ商売の人かと思ったが、服装がライダースだったので、喧嘩屋タイプか暴走族タイプのスキルアウトの方なのだと思う。


香焼「……怖かった」ハァ・・・


銭湯なんだから入れ墨厳禁にして欲しいものだ。心臓に悪過ぎる。
兎に角一安心し、ドップリ湯に浸かった。

たまに入る大浴場、しかも独り占めは気もち良いものだった。
110 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 01:47:53.07 ID:aUjZRigj0
 ―――とある休日、PM07:25、学園都市第7学区、とある銭湯・・・・・



きっかり40分後、自分は玄関口にいた。
湯冷めしない内に帰りたいものだ、と考える前に二人が出てきた。

結標さん髪下してる。さっきより大人びた感じだ。


結標「お待たせ。行きましょ」ニコッ

香焼「はい」コクッ


帰り際に瓶牛乳を渡される。
『奢りよ』と微笑まれたが『身長伸ばせよ』の暗喩にしか思えず、複雑な心境だった。


月詠「ところで香焼ちゃん」テクテク・・・

香焼「何すか?」ゴクゴクッ

月詠「お風呂の中で吃驚したでしょう」ニヤッ

香焼「ごほっげほっ!! ……え」タラー・・・

結標「あはは! まぁアレ見たら吃驚するわよねー」ケラケラ!


……知ってるの?


月詠「はい。女湯(此方)に知り合いの風紀委員さんがいたので、もしかしてー……と思ったら案の定でしたね」クスクス・・・

香焼「……まぁ、ええ。ヤクザ屋さんかと」ハァ・・・

結標「ふひひっ! ヤクザだってー! 強ち間違ってないわねぇ」アハハ!


風紀委員に、ヤクザ? 如何いう組み合わせだ……


結標「まぁあの夫婦は偶に閉館ギリギリで来るからね。旦那の身体の所為だけど」

月詠「夫婦って……大体合ってますけど」ハハハ・・・

結標「香焼くん。あの男の人には極力関わらない方がいいわ……危ない人だから」ニヤッ・・・


やっぱり、スキルアウトか何かなのだろうか。


月詠「結標ちゃん。嘘教えちゃいけませんよ。彼、今はカタギなんですからね」ムゥ

香焼「え……し、シノギの方だったんすか?」タラー・・・

結標「まぁそんじょそこらの生半可な能力者よりは強いわよ。風紀委員のエースとどっこいくらいじゃない?」

月詠「黄泉川先生に勝てる人が居たら、警備員の殆どが制圧されちゃった様なものですよ?」

結標「そうじゃない? 加え第7学区(此処ら)一帯を仕切ってるスキルアウトチームのリーダーの兄貴分って噂。おっかないわー」キャー


そういえば、そのスキルアウトチームのリーダーとは伊賀統領の御子息だろう。五和が調べ上げていたっけ。
111 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 02:05:20.75 ID:aUjZRigj0
結標「ま、今やあの女の私兵みたいなものだけどね」アハハ

月詠「あの女って彼女、結標ちゃんと同い年くらいですよ。あと私兵って……普通に就職活動頑張ってる男性ですよ」

結標「中卒で雇ってくれる場所、学園都市に有るのかしらね? しかも無能力者ときてる」アハハ!

月詠「……無能力者は、落ちこぼれじゃ無いんです。偏見は怒りますよ」ギロッ

結標「あは、は……わ、悪かったわよ。そんなんで怒らないでって」ハハハ・・・


この街は学歴社会ではない。能力主義だ。それは一種の選民思考。
子供達は入学当初から、そう教育されている。

それを悪と呼べるかどうかは一概に言いきれないが……しかし、自分は月詠さんの意見に賛成だ。
きっと能力とか、魔術とか、そういったものではない大事なモノが有ると思う。そう信じたい。


結標「……甘ちゃんね」フフッ

香焼「……悪かったっすね」ムッ

結標「ううん。別に悪くないわよ。貴方みたいな考えの人間が居なきゃ、世界は回らないもの」ニコッ

月詠「バランス、ですか?」フム

結標「そうね。どちらか一方よりの世界なんておかしいし、何よりつまらないわ」テクテク・・・


では、貴女はドチラなのだ……とは聞けなかった。


月詠「あの子も……良い方ですよ」ボソッ

香焼「え」キョトン・・・

月詠「良い方に、変わって来てます……今は間違えない様、見守るだけです」ニコッ・・・

香焼「……」チラッ・・・


この人は、本当に教師なのだ。こんな担任が欲しかったかも、本気でそう思えた。


結標「何してんのー。早く行くわよー」クルッ

月詠「はいはい。あ、帰りにお酒買わなきゃいけませんねー」ニコッ

結標「まだ呑むんかい……私も何か買ってこー。香焼くんも買う?」ニコッ

香焼「……ちゃんとした猫の餌、買って帰ります」クスッ


面白い人達(コンビ)だ。
112 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 02:53:11.92 ID:aUjZRigj0
 ―――とある休日、PM09:30、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



それから家に戻ってグダグダと、時には真面目に話をした。
可笑しく、切なく、優しく、丁寧に返してくれる二人。

あの姉達も少しは見習ってくれたら良いのに……


結標「……それは香焼くんが邪険にしてるだけよ。だからそう見えちゃうんじゃない?」

香焼「……」

結標「人間、嫌って思っちゃうと全部悪く見えるものよ。感情ってそう出来てるモノよ」

香焼「……そう、なんすかね」

結標「ええ。意外と単純に」ニコッ


ハーフパンツにタンクトップ姿の結標さんは、悟ったような話口調で自分に告げた。


結標「……小萌、寝ちゃった」フフッ

香焼「え、あ……」チラッ

月詠「すぅ……くぅ……」zzz・・・

ぬこ「みゅぅ……」zzz・・・


熟睡、横たわる一人と一匹。因みに、月詠さんは可愛らしいパジャマにお着替え済みだ。
結標さんは静かに布団を敷き、月詠さんをそっと寝かせた。ついでに猫も隣に寝かせる。


結標「私は別として、小萌は根っからの善人よ。色々言われたと思うけど、真面目に受け止めなさい」フフッ

香焼「はい……結標さんも、良い人っすよ」コクッ

結標「ふふふ、ありがと。香焼くんは……良い人『過ぎる』わね」クスッ

香焼「……そんな事、無いっす」

結標「損する程に、良い人よ。甘いったるい程にね」


違う。買い被り過ぎだ。自分はそんな善人じゃ無い。


結標「……ま、いいわ。私達も寝ましょ」


自分は玄関に近い所、結標さんは月詠さんの隣に布団を敷く。
電気を消して『おやすみなさい』と一言、そしてパーカーを脱いで床に付いた。


香焼「……」ボー・・・


居心地が良い場所。でも……


香焼「多分……此処に居ちゃいけないんだと思う」


此処は『居るべき人』の場所。自分の場所じゃ無い。

……明日帰ってからキチンと話をしよう。誰が悪いとかじゃなく、腹を割って、言いたい事をぶつける。それだけだ。
113 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 03:35:38.02 ID:aUjZRigj0
疲れた。目を瞑って……ゆっくりと……―――


香焼「っ!?」ビクッ・・・


―――そう考えた刹那だった。身体に掛る重み。目線を胴体に向ける。そこには……


結標「……しー」スッ・・・

香焼「む、結標、さん……っ!?」ドキッ・・・


ゆっくりと、自分の身体を這うように、顔を近づけてくる。


結標「小萌が起きちゃう……」スッ・・・ピタッ

香焼「な、何を……」ドキッ・・・

結標「……何だと思う?」ニコッ・・・


面妖な笑み。


結標「驚かないで……私、貴方の事……気になるの」ペタッ・・・

香焼「結……標……さん……」ドキドキ・・・

結標「軽い女だと思わないで……誰でもって訳じゃないから……」ニコッ・・・

香焼「いや、ちょ……何で……」ゴクッ・・・

結標「香焼くん……貴方は優し過ぎる……そう言ったでしょう」ペタッ・・・


只管身体に触れてくる結標さん。


結標「甘い男に……甘えたくなる女だっているわ。その甘さ……優しさに酔い痴れたくなる」クスッ

香焼「だ、だからって……貴女も、自分も……全然互いの事知らないのに……」グッ・・・

結標「だから今から……『知り合い』ましょう……そういう事よ」ニコッ

香焼「そ、んな……自分は、まだ、そういうの……っ!!」ビクッ!?

結標「ふふふ。『そういうの』って、なぁに? おマセさん」グィッ・・・


徐ろに服の中に手を入れてきた。これは……拙い。こんな事されたら、思考が……


結標「緊張してるの? こんなに勃(な)ってるのに? 変態さんね」スッ・・・

香焼「おかしいっすよ、結標さん……好き合ってる訳じゃ……無いのに……っ」スッ・・・

結標「淡希って、呼んで……好きじゃ無くても人は抱けるのよ……こう見えても私初めてなの……お相子よ」ニコッ・・・

香焼「なら、尚更……」ギロッ

結標「もう、黙って……ん……」グッ・・・


ズボンの中を弄(まさぐ)る結標さん。声を出すか、突き飛ばすしかないのか……そう考えた瞬間―――
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 03:39:55.78 ID:5Nr6Z+zDO
!!? パンツ下ろしたぞっ!
115 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 04:09:55.87 ID:aUjZRigj0
香焼「っ?!」ギョッ!?


―――握られた。


結標「ふふっ……立派なモノね」クスッ・・・

香焼「結標……さん……」ビクッ・・・


―――ナイフを。


香焼(抜かった!!)シュッ!

結標「動くなッ」シャキッ!!

香焼「ぐっ……」ピタッ・・・


ズボンの中のガーターベルトから主戦用のナイフを奪われた。
そして自分の喉首にそれを押し付ける結標さん。


香焼「どう、して……」グッ・・・

結標「上着にダガーナイフ22本、煙玉3個、コンバットサバイバル1本。ズボン内にダガー16本、レイピアナイフ2本……他諸々」ギロッ

香焼「くっ……」

結標「幻想殺し、土御門、姫神に過剰反応……『こっち』側にいて、疑わない訳ないじゃない」ニヤッ・・・


という事は……


結標「そうね。同業者か如何かは知らないけど……『似た人間(裏っ側)』よ。甘ちゃん坊や」グッ・・・

香焼「な……ま、待って下さい。自分はそんな――」

結標「小萌に聞かせられない。外出るわよ」クイッ・・・

香焼「―――事、を……―――」


瞬間、天井が……―――……月夜の空に変わった。


香焼「―――っ……瞬間、移動(テレポート)か!!?」ドンッ!!


背中から地面に落ちる。肺から嫌な息が漏れた。
落とされたのは玄関側の庭の様で、月詠さんの部屋からゆっくり、結標さんが出てくる姿が見えた。

自分を見下しながら歩み寄って来る彼女。手には消音器(サイレンサー)付きの拳銃に……懐中電灯の様なモノ。


香焼「……拙い、な」ゴクッ・・・


逃げる気は無い……というか、今出来得る術式で逃げ切れない。
説得するしかないと腹を決め、服装を正し、結標さんが近づくのを待った。
116 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/10(木) 04:42:51.82 ID:aUjZRigj0
結標「……逃げないのね」カツカツ・・・

香焼「結標さん、話を聞いて下さい!」

結標「動かないで。穏便に済ませたいのはお互い様でしょ?」カチャッ・・・


相当頭に来てるらしい。此方からの主張は全部切られるだろう。質問等、順を追って説明しながら説得せねば納得しまい。
ゆっくりと近づいてきた結標さんは自分に膝立ち、両手を頭の後ろに置くよう指示。そして……『尋問』を開始した。


結標「所属、目的、仲間の数を言いなさい」グイッ

香焼「……」グッ・・・

結標「……此処で死ぬ?」スチャッ・・・

香焼「その前に、教えて下さい……」

結標「私の質問が先よ……答えろ!」ドンッ!

香焼「ぐっ!!」ドサッ!


押し倒され、馬乗りされた。銃口は突き付けられたままである。
質問に答えてしまってはいけない。何とか自分のペースに持って来ないと……

学園都市の『暗部』に触れてしまった場合、まずは土御門に指示を仰ぐ。鉄則だ。


香焼「つ、土御門を、知ってるんすね?」ゲホッ・・・

結標「あの道化師が如何かした? 関係無いでしょ?」ギロッ・・・

香焼「か、彼は……貴女の味方っすか? それとも……」


賭けだった。此処で『ノー』と言われれば……鋼糸(ワイヤー)で自分の首を掻っ切る。


結標「……どっちでもないわ。利害が一致したら仲間かもしれないし、逸ぐそうなら敵よ」

香焼「な、なら……彼に連絡を取って欲し―――ッッ!!」ビクッ!!


手の甲に鋭い痛み。


結標「自分のダガーで切られるのは痛い?」ニコッ・・・

香焼「む、結標さん……お願いっす……話を聞い―――ぁッ!!」グッ・・・

結標「ふふっ……利口なのね。大声上げたら鉛玉が飛んでくるって分かってるんだ」スチャッ・・・


完全優位の笑み。もはや嗜虐心と言っても過言ではない表情を浮かべ、自分を足蹴にする。


結標「あのね……貴方みたいな人が好きなのは嘘じゃ無いわ。でもね……運が悪かったの」グッ・・・

香焼「ッ……ゲホッゴホッ……やめ、て」グゥ・・・

結標「家出、というのは嘘じゃないわね? でも『仲間割れ』って言い方が正しいかしら? どっちにしろ……」スッ・・・


月と結標さんの頭が被さる。そして――


結標「香焼くん……貴方は私の数少ない『日常』に踏み込んだ『異形(イレギュラー)』……普通の子なら歓迎したけど……残念だわ」ギロッ


――歪んだ心を暴露した。
117 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 05:03:33.02 ID:aUjZRigj0
結標「小萌はね……小萌だけが、今の私の『日常』なの」フッ・・・

香焼「そ、んな……」

結標「そこに『異形』は要らない……例え一時の同僚(土御門)であっても、必要無い」ギロッ

香焼「か、彼は月詠さんの生徒で! ――ッッ!!」ザッ・・・

結標「『裏』のアイツは必要無いって事よっ……幻想殺しも『上条当麻』であるなら構わない」


この人の中心は自分では無く……月詠さん(あの人)なのか。


結標「いいえ。私が中心よ……ただ中心は二つ有る。『私(裏)』と『小萌(表)』……分かる?」

香焼「……っ」

結標「小萌が浮浪児拾ってくるのは構わない……でも貴方みたいな『危険な子』は駄目なの!」ギロッ・・・

香焼「違う……自分は、本当に……ただ普通に家出を」グッ・・・

結標「例えそうでも……もう遅いわ。知ってしまったもの」カチャッ・・・


顔を近づかせてくる結標さん。


結標「貴方に残された術は二つ。一つは全てを吐き、二度と此処に現れない事。もう一つは……」スッ・・・


態々ご丁寧に、自分の短刀を首筋に当てる。


結標「死、よ」グイッ・・・

香焼「っ」ゴクッ・・・


軽く血が流れた。この人は本当に『人を殺せる』人だ。
天草にはいない……本気のステイルやアニェーゼと同じ眼をしている。


結標「さぁ……答えなさい!」ググッ・・・

香焼「っ」ハァ・・・ハァ・・・

結標「第一、仲間の下から逃げてきたんでしょ? だったら簡単じゃない……それで生き残る。ね?」ニコッ・・・

香焼「そ……」ハァ・・・ハァ・・・

結標「好きなのは嘘じゃ無いって言ったでしょ。出来れば殺したくないわ……答えなさい。具合によっては専属の間諜にしてあげてもいい」ニコッ


甘言。短刀を持つ手とは別に、他方で頬を撫でる。一瞬だが先の『情事紛い』が思い出された……


結標「そうね……もしかしたら、『良い事』の続き、有るかもよ? ……答えなさい」グイッ・・・ニコッ


ナイフと情事。自分は……―――
118 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 05:33:23.73 ID:aUjZRigj0
香焼「ははは……素敵なお誘いっすね……本当っすか?」フゥ・・・

結標「……ええ。まぁ処女を上げるに値するかは別だけど二、三番目のペットとしてなら――」



―――お断りだ。糞売女(No,Bitch!!!)―――



結標「――ッ!!?」クッ!!


コイツは近づき過ぎた。この(0)距離なら能力云々関係無い。咄嗟に手首を掴み、ナイフを叩き落とす。
慌てた結標は急いで拳銃を掴み、もう躊躇わず引鉄を握ろうとする。


香焼「やらせるものかよっ」シュッ!

結標「っ……ワイヤー!?」グイッ・・・


手首に鋼糸を巻き付け、目標を逸らす。
放たれた火花(マズルフラッシュ)で一瞬自分の動きが止まったが、銃弾は顔面を逸れ地面に突き刺さった様だ。
そこで勢いを止めず、鋼糸を引っ張り結標の身体を地面へ薙ぐ。
結標も拙いと察し、銃を滑らせワイヤーが掛って無い逆の手に持ち替えた。そして……


香焼「っ!!」グイッ!!

結標「っ!!」カチャッ!!


状況は……逆転。自分が馬乗りに。
しかし相手は銃を腹部に立て、自分は短刀を胸部に突き立てる形で止まった。これでは、均衡。


香焼「仲間は、売れない……お願いします。大人しく帰りますから……此処は引いて下さい」ハァ・・・ハァ・・・

結標「……引鉄を、引くわ」ギロッ・・・

香焼「自分は刺しません。でも自分が死んだら……自分の意志とは関係無しに、体重で貴女の心臓にナイフが刺さります」グッ・・・

結標「……自分の意志では殺しはしないつもり? ホント……トんだ、甘ちゃんね」フゥ・・・ニコッ


自分も、この人は嫌いじゃ無い。傷つけたくない。


香焼「自分達が、死んだら……一番悲しむの……誰っすか?」ギュッ・・・

結標「……」ジー・・・

香焼「月詠さん、でしょ? 結標さん……やめようよ……」ポロポロ・・・

結標「……香焼くん」グッ・・・


武器を、捨てる。無抵抗。


結標「っ……甘過ぎるわ。何で武器捨てるのよ……何で泣くのよ……」カチャッ・・・

香焼「死にたくないし……殺したく、ないっす……お願い……」ポロポロ・・・

結標「……貴方は……裏(こっち)に居るべき人間じゃ無いっ!! 優し過ぎるわっ!!」ガチャッ!!


多分、平常心を失った自棄のベクトル違い。自分は無気力に、結標さんは……武器を振うしかなくなった。

銃声。

銃弾が自分の腹へと―――
119 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 05:53:47.21 ID:aUjZRigj0
―――……突き刺さ、らない。何時までも、痛みが走らない。

ふと下を見ると、驚愕した表情の結標さん。手には……銃が無い?


香焼「……え」キョトン・・・


刹那―――身体が浮き……地面に叩き付けられた。今日二度目の衝撃。折角食べた焼き肉が飛び出そうになる。
やったのは、結標さんじゃない模様。となると、第三者。


??「いやぁ……ホント、困ったもんですね」ハァ・・・


誰かに組伏せられている状態で、顔を上げる。
玄関の方から自分より二、三程年上そうな男性が歩み寄ってきた。


??「結標淡希……大人げ無さ過ぎです。冷静さを欠いては事は上手く運べませんよ」ニコッ・・・

結標「海原……ぐっ!?」ドサッ!

香焼「結標さん!!」ギロッ!


彼女も何者かに抑えられた様だ。事態が見えない。如何なってる……
『海原』と呼ばれた男性は此方に歩み寄り、屈託の無い笑顔を崩さず話し始めた。


海原「君も……裏の人間に有るまじき行為ですね。香焼――。まぁ結果的に貴方の冷静さで一大事は避けられましたが」ニコニコ・・・

香焼「っ……何故、自分の名前を……」ギロッ・・・


暫時無言。その後『離せ』と一言。自分から重みが消えた。
武器一切を没収され、その場に立たされる。結標さんも同じ状況の様だ。


結標「海原……アンタっ!!」ギロッ!!

海原「おっと、怒られるのは筋違いです。罰せられるべきは貴女であって、僕ではありません」フゥ

香焼「え、と……」チラッ・・・

海原「香焼さん。キチンと順を追って説明するのでご安心を……まぁ先に纏めを言ってしまえば、土御門の指示です」ニコッ


それを聞いて安堵する。良かった……何とかなったようだ。
ただ、結標さんはまだ不服なご様子。仕方あるまい……私怨とはいえ、殺し合いを止められてしまったのだから。
120 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 06:08:58.07 ID:aUjZRigj0
海原という男は、ボソボソ無線越しに命令を出し、その後また自分達の方へ向き直った。
自分達の背後に居た人物……女性二人も少し離れた所に移動する。


結標「……何時から妹達(シスターズ)はアンタの私兵になったのよ」ギロッ

海原「なぁに。暇だと言うので雇ったまでです。費用は土御門経由……香焼さんの『お姉さん達』払いですから」ニコッ

香焼「え……」ポカーン・・・

海原「順を追って話すと言ったでしょう。まずは……―――」


つまり、こうだ……

①自分が出てった後、馬鹿姉共が大捜索。

②ステイルが自分発見。しかし月詠さんと結標さんが一緒なのを見て、土御門に指示を仰ぐ。

③土御門、私用により動けず。海原にお願いする。

④海原及びサポーター、自分達を監視。

⑤問題勃発。

⑥結標さんの自棄が度を越したので、介入。

……という事らしい。


海原「―――……以上です。香焼さん。お姉さんやマグヌスさん、土御門に感謝して下さいね」ニコッ

香焼「……はい。態々お手数お掛けしたっす。申し訳ありません」ペコッ・・・


さて、と結標さんの方へ向き直る海原さん。
面倒臭そうに携帯を取り出し、結標さんに渡した。


結標「……何よ」ジトー・・・

海原「出て下さい。これは『強制』です」ジー・・・

結標「……」スッ・・・


息を飲み、携帯を耳に当てる。


結標「……誰?」ボソッ・・・


『誰……じゃねぇよ、大馬鹿女郎っ!!! 何仕出かしてんだこのタコっ!!』ガアアァッ!!


結標「ッッ!!?」キーン・・・


声で分かった……土御門だ。
121 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 06:33:49.62 ID:aUjZRigj0
結標「ちょ、ちょっと待ってよ……何でアンタに怒られなきゃいけない訳?」タラー・・・

土御門『黙れ阿呆!! 香焼を殺しかけた? 素性も知らないくせに? バッカじゃねぇのか!!』ガミガミ!!

結標「うっ……」ダラダラ・・・

土御門『別にソイツの貞操を喰らうくらいなら大目に見れたが、殺生沙汰は「戦争問題」になんだよ! 駄阿呆!!』ガーガー!!

結標「こ、戦争問題ぃっ!!?」ドキッ!!?


口を丸くし、無言になる結標さん。


土御門『テメェが詳しく知る必要は無ぇがなぁ……ソイツはテメェが良く案内するスカシノッポの不良神父のダチで……』イライラ・・・

結標「……」ゴクッ・・・

土御門『更に超能力者級のバケモノ(聖人)がトップを務める組織の一組員だっ!! しかもそこの大本は「国」だぞボケナスッ!!』ダァッ!!

結標「げっ……」チーン・・・

土御門『加えて、そのバケモンの弟分だ!! 聞いてんだろ本人から糞っタレがっ!!』シッツ!!

結標「」


完全に固まった。


土御門『ったく……人が楽しく宴会やってる最中に騒がせやがって……』ギリリ・・・

結標「……ごめんなさい」シュン・・・

土御門『カミやんと姫神にばれた時は「俺(私)が探しに行く!」とか言って大変だったんだぞ? マジ勘弁してくれよ……』ハァ・・

結標「……すいませんでした」シュン・・・

土御門『兎に角、テメェの処遇は後だ……先に香焼に変われ』ピリピリ・・・

結標「……はい」トボトボ・・・


打って変わって泣きだしそうな顔で携帯を渡してくる結標さん。こってり絞られた様だ。
多分、自分も怒られるだろう……


香焼「……変わりました。香焼っす」スッ・・・

土御門『三つ……激怒と謝罪と忠告だ』ボソッ

香焼「はい……」

土御門『まず一つ目だが……一介の教徒が出しゃばった真似すんなボケカス。俺(都市内最終指揮系統)まで迷惑掛けんじゃねぇダアホ』ギリッ

香焼「っ……すいません」シュン・・・

土御門『しかも神裂達との痴話喧嘩たぁフザケやがって……当事者全員減法じゃボケ。覚悟しとけ』ハァ


此処まで柄の悪い口調の土御門は初めてだ。相当怒らせてしまった。
122 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 06:50:44.30 ID:aUjZRigj0
土御門『まぁ後は神裂達とキチンと話付けろ。ステイルには感謝しとけよ? 見つけて無かったら大変な事だったからな』ッタク・・・

香焼「はい。分かってます……」

土御門『じゃあ二つ目だが――』


コホンっと咳払い。そして……


土御門『――本っっっ当にっ! 申し訳無いっ!! そこの変態痴女が迷惑を働いたっ!!』ニャー!!

香焼「え、ええぇっ!!?」キョトンッ!?


一転、口調がいつもの通りになる土御門。


土御門『いや、マジですまないですたい。ただのショタコンだと甘く見てたら、狂ったショタコンだったみたいだぜぃ』ハァ・・・

香焼「しょ、しょたこ……な、何すか?!」ヘァ?

土御門『ふむふむ……そうだなぁ。じゃあ詫びとして、都市に居る間はソイツの事好きにして良いにゃー』フヒヒ!

香焼「な、何言ってんすか!?」ポカーン・・・

土御門『だーかーらー! 不貞と無礼の御詫びに香焼ちゃんの従者にでもしちゃって良いぜよ? 何なら堕天使セット着せてもOK!』ククッ・・・

香焼「」


駄目だ。『いつもの土御門』だ。話にならない。


土御門『ま、お好みのプレイ云々はさておき……自分のケツは自分で拭かせる。勝手にするといいにゃ』ハハハ

香焼「……分かりました」コクッ

土御門『うしっ……じゃあ三つ目だがな、最重要』


息を飲む。


土御門『……天草抜けるか?』ボソッ

香焼「っ」ドキッ・・・

土御門『いや別に潜入学徒程度なら如何でも良いと放っておいたがよぉ……オマエ、いつか死ぬぞ?』

香焼「……」ゴクッ・・・

土御門『ステイルやソイツらにも言われてると思うんだが、甘い。弱いくせに甘い』


淡々とした声……自分が一番分かってる。


土御門『これもオマエの勝手だがな……何言っても聞かねぇんだろうから最後に……割り切れ。じゃないと、死ぬ』

香焼「……忠言、どうも」ギリッ・・・

土御門『ん……じゃあ結標に戻せ』


言われなくても……分かってるっての……遣る瀬無い気持ちのまま、携帯を結標さんに渡した。
123 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 07:05:50.82 ID:aUjZRigj0
 ―――とある休日、PM10:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



結標さんは土御門との電話を、まだ続けていた。
土御門の一言一句に顔色をコロコロ変え、結果的にグロッキーになっている。


海原「しかし……面白い人ですね、貴方も」ニコッ

香焼「え、あ……何とも」アハハ・・・

海原「あの状況下、ワイヤーだけで乗り切るとは中々」クスッ

香焼「言っちゃ悪いっすけど……結標さん、驕ってましたから」ポリポリ・・・


負けたり、逆転される者の大半は優位から来る『驕り』だ。


香焼「でも……貴方は、一体?」

海原「んー……そうですね。今は彼女達の同僚ですが」チラッ・・・

香焼「結標さん『達』?」ジー・・・

海原「此方も事情があるので詳しくは教えられません。ですが……昔の所属なら教えましょう」ニコッ

香焼「昔?」エ?


意外な言葉を耳にした。


海原「……翼ある者の帰還」ニヤッ

香焼「っ!!? じゃ、じゃあ……」ギョッ・・・

海原「ええ……『貴方達寄り(魔術師)』です」ニヤッ・・・


この街に、そんな人間が居たとは……


海原「土御門には内緒ですよ。ばらした事ばれたら、怒られちゃいますから」フフッ

香焼「え、あ、はい……」コクッ

海原「ははは。僕も貴方みたいな人間は嫌いじゃ無い……『彼』に似てるからかな?」クスッ


誰の事か分からないが、気に入られてしまった。ちょっと不気味。


香焼「えっと……二、三疑問を聞いて良いっすか?」

海原「ええ。僕の事以外と、答えられる範囲であれば」ニコッ


結標さんの電話がまだ終わりそうに無いので、質問を開始した。
124 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 07:45:37.58 ID:aUjZRigj0
香焼「まず……この人達はお仲間っすか? その、どう見ても……」チラッ・・・

海原「……超電磁砲。御坂美琴さんだと?」クスッ

香焼「はい」コクッ・・・


先程から気になっていた女性達。その容姿は超能力者第3位、御坂美琴その人だった。


海原「……量産型能力者計画(レディオノイズけいかく)、妹達(シスターズ)という単語に聞き覚えは?」

香焼「え、えっと……少々。確か絶対能力進化計画(レベル6シフト)の……」チラッ


報告書で読んだ覚えがある。
簡単に言えば絶対能力進化計画とは、その名の通り絶対能力者を作る為の非人道的計画。対象は第1位、一方通行(アクセラレータ)。
その実験動物として宛がわれたのが第3位、超電磁砲(レールガン)のクローン……欠陥電気(レディオノイズ)。

ただしこの計画は『とある人物』によって阻止された。


海原「ええ、大体合ってます。流石隠密性に長けた天草式十字凄教ですね。情報収集力も素晴らしい」ニコッ

香焼「……それで、何故海原さんと共に?」

海原「暇だったのですよ。まぁ後は……貴方達を止める為に、中途半端な人間では無理ですからね。彼女達くらい強くないと」フフッ・・・


妹達の欠陥電気は、確か異~強能力者(レベル2~3)程度だった筈だが。


海原「能力強度(レベル)は、でしょう? 現に貴方を抑えた彼女は体術のスペシャリストだ」スッ・・・


ドライバーグローブを付けた少女。


海原「珍しく都市に来ていたので協力を仰ぎました……5's(ファイズ)!」

御坂5's「先程は御無礼を、とミサカは謝罪します。検体番号(シリアルナンバー)は15555号です、とミサカは簡単に自己紹介します」ペコッ

香焼「ど、どうも……」コクッ

御坂5's「貴方は筋が良いのに勿体無い……兎に角今は身体を作る事でしょう、とミサカは冷静に貴方の武道プランを述べてみます」

海原「彼女は妹達の中では珍しく肉体派専門なんです」


珍しくって……クローンなのに一人ひとり違うのか?


御坂5's「クローン故(ゆえ)ですよ――」

香焼「え」

御坂5's「――僅かな誤差であっても自己唯一(アイデンティティ)を探そうと努力するのですと……ミサカはしみじみ説明します」フフッ


アイデンティティか……何やら難しい話だな。
125第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 08:17:22.03 ID:aUjZRigj0
海原「それから結標(彼女)を抑えてたのは……そこの御坂丸」スッ


都市製のライフルを肩に掛け、頭を下げてくるミサカ……丸さん?


御坂丸「ど、どうも。検体番号10039号です、とミサカはたどたどしくに自己紹介します」ペコッ

香焼「ど、ども」ペコッ

御坂丸「え、えっと、その……ええぃ! ショタレンジャー共、黙れ!! とミサカはMNW内と現実がゴッチャで……あわわ!」フギュゥ・・・

香焼「……」タラー・・・

海原「あはは。彼女達は個体間独自のネットワーク持っているんです。多分、貴方の事が話題になってるんですよ」フフッ

御坂5's「はははは……そうですね、とミサカは身内(ミサカ)の恥を嘆きます」ハァ・・・


不思議な人達だ。こうして見てみると同じ顔でも違く思えてきた。


香焼「え、えっとじゃあもう一つ、質問なんですが……」

海原「はい」コクッ・・・

香焼「……自分が撃たれそうになった時、何が起こったんすか?」

海原「ああ……それですか」クスッ


結標さんも唖然していた。確かに銃声はしたのだが……撃たれてない。何故だ?


海原「えっとですね。あの時は僕と、もう一人が射撃の準備をしていました」

香焼「しゃ、射撃!?」ドキッ・・・

海原「はい……最悪、銃を狙えない角度なら僕が彼女を撃ってたんですがね……『アッチ』が丁度良いポジションに居て良かった」フフッ

香焼「アッチって……」エ?

海原「……スネーク、戻ってきて良いですよ」Pi!


二件ぐらい先のアパートの屋上に向き、無線越しに呟く海原さん。
一寸後……ライフルを持って、他の二人とは違いバンダナを巻いたミサカさんが歩いてきた。


海原「今日5'sと御坂丸を呼んで貰えたのは彼女の御蔭です……スネーク」ニコッ

御坂蛇「検体番号17600号……とミサカは簡潔に自己紹介を終えます」ペコッ

香焼「ど、うも……」タラー・・・

御坂丸「プ、17600号(プロスネーク)……もう少し愛想良く出来ないのですか? とミサカはぶっきら棒な貴女(ミサカ)に呆れてみます」ハァ

御坂蛇「……」ギロッ・・・

御坂丸「ご、ごめんなさい……とミサカは謝罪します……い、10032(妹)! ヘタレとか言うな!」ムキー!


成程十人十色といった訳か。
126 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 08:36:45.51 ID:aUjZRigj0
兎角、感謝せねば。


香焼「えっと、17……」ウーン・・・

御坂5's「17600。長かったら『スネーク』でも可です、とミサカは寡黙な彼女の代わりに説明します」

香焼「す、スネークさん。ありがとうございました」

御坂蛇「師匠(その人)に頼まれたのでこなしたまでです。報酬もキチンと頂くので悪しからず、とミサカは要点だけを告げます」サラッ

香焼「あ、あはは……」タラー・・・

海原「まったく……スネーク。お金はいつも通り口座に振り込んでおきますから安心を」

御坂蛇「トンだ……茶番でしたねとミサカは最後にそこのガキに呆れながら、去ります」テクテク・・・

香焼「なっ!?」ギリッ

海原「ま、待って! ……すいません。あの子はいつもああなんです。許してやってください」ハァ・・・


茶番と言われて、良い気はしない。


御坂5's「17600号の師匠(スネーク・マスター)……ミサカ達もそろそろ、とミサカは事の終わりを判断したので」ペコッ

御坂丸「か、勝手に安価すんなし。アドレスなんて聞けるか馬鹿共!! え、えっと……ミサカも、とミサカは走って帰りまーす!!」ウワー!

海原「ええ。御苦労さま」ニコッ


こうして三人の妹達は消えて行った。さて……こっちはっと。


結標「」


蒼い顔の結標さんがいた。


海原「ククク……これはまぁ」フフッ

結標「」スッ・・・

海原「電話ですね。はいはい――ええ、それは――ふふふ! 貴方も意地が悪い――はい。分かりました――では後日」Pi!

香焼「あの……土御門は何て?」チラッ

結標「」フルフル・・・

海原「先程、香焼さんが聞いた通りですよ」ニヤニヤ・・・


と、いうと……


結標「ご……ご、ご……ごしゅ……ご……」プルプル・・・

海原「ほらほら。ちゃんと言わなきゃ大変な『問題』になりますよ?」クスクス・・・


嫌な予感が……
127 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 09:12:15.66 ID:aUjZRigj0
結標「ご……ごしゅじ、ん……さま」ウルウル・・・

香焼「……・・・・・・・・・・・・はぁ?!」ポカーン・・・


意味不明。海原さんだけがニヤニヤしてる。


結標「ご、ごご……ごめんなさい。香焼く……ご主人、さま……不躾な、わ、わたくしめに……お、お、お仕置きを……くだ、下さい」グズッ・・・

香焼「」

海原「ぷっ……妹達も残すべきでしたね。こりゃ傑作だ」ククク・・・

結標「海原、さん……今日は、迷惑を掛けて悪かったですねぇ……マジ、帰りやがって下さい。この……出刃亀野郎、様……」グヌヌ・・・

海原「ふふふ。ええ、二人っきりのお仕置き現場に他者は不要ですからね」ププッ・・・


つまり……え?


海原「ショタコン、ショタに喰われるとはこの事……良かったですね。結標さん」プフー!

結標「ショタコンじゃないって、言ってるで、ございましょ……この、ストーカー様……マジ……覚えてなさい……でございますよ」ギロロ・・・

海原「はいはい。と、いう事で……香焼さん。その貴方専属従者『あわきん』を宜しくお願いしますね。では!」シュンッ・・・

香焼「はい? ちょ、ちょっと!!?」キョトン・・・


土御門の戯言……マジだったんだ。というか、今二人きりにされると……


結標「……」ウルウル・・・


今にも泣きだしそうな結標さん。如何しよう。


香焼「え、えっと……その……」タラー・・・

結標「……うぇ」グズッ・・・

香焼「な、泣かないで! 結標さん、悪くないっすから!! 自分も、この通り元気だし!」アハハ・・・

結標「……」ウルウル・・・

香焼「も、勿論従者とか何とか意味分かんない事もしなくて良いっすからね。そう! 事故っすよ! 事故!」アタフタ・・・


何とか収ま―――


結標「うわあああぁんっ!! こんな年下に同情されるなんてぇっ!! 私の馬鹿ああぁっ!!」ビエエエエェンッ!!


―――らないっ!!
128 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 09:27:56.20 ID:aUjZRigj0
何とかしないと。


香焼「む、結標さん!! 落ち着いてよ……大声上げたら近所迷惑だよ」シー!

結標「ウワアアァンッ!! またドジったよーぅっ!! 完璧ぶってやった結果がコレよっ!! 普通にアホじゃないっ!!」ウガアアァッ!!

香焼「こ、今度はキレた……じゃなくて、静かにっ」アタフタ・・・

結標「何よ……笑えば良いでしょ!! 惨めでしょ! 憐れでしょ! 無様でしょ!」ウワーン!


面倒臭ぇ……先の冷静な結標さんは何処に行ったのだ。これじゃ五和の暴走した時レベルだぞ。


香焼「わ、笑わないから。結標さんは月詠さん為に動いたんだよね。だったら笑えないし、怒れないよ」ニコッ

結標「うぅ……ホント?」グズッ・・・

香焼「ホント、ホント」アハハ・・・

結標「でも……私、香焼くんにいっぱい酷い事しちゃったわ……」ウルウル・・・

香焼「だ、大丈夫。慣れてるっすから……ただ命懸けたり、貞操懸けたりするような真似はしちゃダメっすよ」ジー・・・

結標「ごめん……なさい」シュン・・・


調子狂うなぁ。


香焼「と、とりあえず、部屋に戻るっす。寒いでしょ。自分靴履いて無いし……結標さんも……その……」フイッ・・・///

結標「え……あ」カアアァ・・・///


服が破れたりと、さっき以上に際どい恰好になっている。


香焼「兎に角、落ち着きましょう……それから話、ね」ニコッ

結標「うん……」シュン・・・

香焼「えっと……さっきの口調に戻れないっすか? 落ち込んでる結標さん、苦手っす」タラー・・・

結標「そ……そう。わ、分かったわ……」アハハ・・・


無理矢理カリスマを繕おうとするヘタレ結標さん。
それから二人で部屋に戻り月詠さんを起こさない様(あの騒ぎで起きないのは凄い)、着替え、再び外に出た……―――《後半に続く》――
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 09:31:00.94 ID:+rvNPetDO
深夜から書き続けてるのか!?
130>>1 [saga]:2011/03/10(木) 09:31:09.82 ID:aUjZRigj0
すんません……もう無理。一旦寝る。続き夜。

感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。それじゃあ、また夜。お休み……ノシ"
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 09:48:53.27 ID:5Nr6Z+zDO
起きたらまだ書いてたww 乙!

アンジェレネの裸目撃も気になるが、まさかの‥‥あわきんニャンニャンルートなのかっ!?
夜に期待!
132VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 10:05:06.79 ID:UHqfQU6DO
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
あわきんかと思ったらS音さm……いや、なんでもない
133VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 14:29:09.99 ID:+nZ+yM8v0
やっと追いついた
とりあえず>>1


リクエストだけどルチアかフロリス出してくれたらそれだけで十分です
いやホント
134VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 16:24:15.55 ID:CxUpPY9AO
>>1
とりあえず何をどうしたらアンジェレネの裸なんか見れるのかな香焼ェ……

リクは普通に学生生活を送っている香焼くんを見てみたい
135VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 17:19:50.72 ID:8FocE1QDO


こう×あわふたー(食べられたルート)がいつか書かれると信じて……
136>>1 [saga]:2011/03/10(木) 22:15:29.25 ID:aUjZRigj0
こんばんわ! 第4話続きです。


>>131
それが理由が無くてもフラグが立つ。それがカミやん病の恐ろしい所。

>>132
あわきんははるるんです。妹さんじゃありませんよ。ちゃんと謝ったら、褒めてあげてもいいよ?

>>133
次回の英国編で出すよー。ベイロープ、フロリス、レッサーのポジションは決まってるんだけど……ランシスって何歳くらい?

>>134
香焼の学校生活って理事校設定の? 多分地味ぃだから……どっかで柵川中に組み込もうかと思ってます。

>>135
え、エロいのなんて書いた事無いんだからねっ!! 恥ずかしいっ!!


……はい。続き投下。
137第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 23:13:52.29 ID:aUjZRigj0
 ――《前半の続き》――とある休日、PM10:30、学園都市第7学区、とある公園(月詠家付近)・・・・・



空気が澄んだ夜だった。
極端な都市開発が進んでいる街で、この学園都市だけが唯一綺麗な空気を保てている。

今、自分――香焼は諸事情により、一晩宿を借りる事になった月詠さん家の居候さん――結標さんと二人きりで公園に居た。
戦闘、というか『事故』が有ったので一旦着替えた為、自分はいつもの私服を、結標さんは小さめのYシャツを無理矢理来て外に出ている。

……正直、結標さんの恰好は際どい。

だが、口には出さないでおく。一人ベンチに座って翳りを付けている彼女に、下手な事は言えないだろう。
とりあえず近くの自販機で買ったカフェオレを渡し、隣にお邪魔した。


結標「……ありがとう」ズーン・・・

香焼「うん……」ポリポリ・・・


気まずい。


香焼「えっと……」ウーン・・・

結標「……」シュン・・・

香焼「つ、土御門はああ言ってたけど、事故っすから……気にしないで、ってのは無理だと思うけど……」タラー・・・

結標「……いいのよ。私が馬鹿だったの」ハァ・・・


超ネガティブ思考モード。


香焼「しょ、職業病っすよね。まずは疑ってかかる。間違っては無いっすよ」アハハ・・・

結標「でも……早とちりで暴走しちゃった」グズッ・・・

香焼「うっ……」マズイ・・・

結標「しかも、土御門と海原にばれて……香焼くんに酷い事して……皆に迷惑掛けて」ウルウル・・・


また泣きそうだ。もうこっちが泣きたいよ。


香焼「じ……自分が、悪いんすよ。元々家出なんかしなきゃこうならなかった」ハハッ・・・

結標「それは……」チラッ

香焼「全部自分の所為っす……結標さんは悪くない」ニコッ・・・


そうだ。この人は悪くない。
ただ己の日常(月詠小萌)を守ろうとしただけだ。歪んだ形かもしれないが、それも愛故。


結標「……」グシグシ・・・


目尻を拭い、やっと凛々しい顔に戻る結標さん……良かった。崩れたこの人は苦手だ。
138 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/10(木) 23:34:03.22 ID:aUjZRigj0
温かいカフェオレを見詰めながら結標さんは呟いた。


結標「……ホント、優しいのね」フフッ・・・


キャップを開け、二三啜る。


結標「信じられないわ……こんな人が『同業者』に居るなんて」

香焼「同業かどうかは分かんないっすけどね……」ハハハ・・・

結標「でも『表』じゃないんでしょ」チラッ

香焼「まぁ……そうかもしれないっす」


互いに詳細は聞けない。知ってしまえば『制裁』が待っている。


結標「あのさ……本当に、私と小萌の事知らなかった?」

香焼「はい……もしかしたら資料にあったかもしれませんが、失礼っすけど、パッとは出てきませんでした」

結標「じゃあ……『案内人』って言葉に聞き覚えは?」


案内人。窓のないビルへの唯一の通行手段。


結標「……知ってんじゃん」ハハハ・・・

香焼「それが結標さん?」

結標「さぁ……私の口から『Yes』とは言えない。でも、お友達の愛煙家神父さんに聞いたら分かるんじゃないかな」フフッ

香焼「……自分が勝手に調べて、知ってしまった」チラッ

結標「ええ。利口な子は好きよ」ニコッ


ペースが戻ってきたようだ。


結標「ただ……お友達を穢す訳じゃないんだけどね。土御門とかあの神父と香焼くんが友達ってのは、意外かな」

香焼「土御門は友達っていうより完璧、上司っすよ。ステイルも上司っちゃ上司なんすけど……自分と一番歳近いから」アハハ・・・

結標「そうなんだー……って、ええええぇっ!!?」ハァ!?

香焼「む、結標さん。声、声大きい」アワワ・・・


まぁ驚くのも無理無いが。


結標「こ、香焼くん……実は年上なの!? 中1って嘘!?」ポカーン・・・


そっちじゃない。あっちが見た目より下なのだ。


結標「え、あ、成程……それも吃驚ね」ヘェ・・・


自分と一つしか変わらない2mオーバーの愛煙者不良神父。どっちが年相応と言われれば……間違いなく自分だろう。
139 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 00:15:22.12 ID:HwyG+qya0
それから暫く、適当な話を続けた。
普段の結標さん……月詠先生、禁書目録、姫神さんの事。土御門、海原さん、何故か第1位の事。

仕事の話は聞いていないが、この人は何処かで踏み外さなければ、存外普通の女子高生だったと思う。


結標「普通かぁ。私が女子高生やってるのなんて考えられないわ」ハハハ

香焼「霧ヶ丘には?」

結標「さっき言ったでしょ。あそこは生徒を観察対象にしか思って無い。生徒同士も慣れ合う気は無いの」

香焼「そんなのって……学校じゃない気がするっす」

結標「ええ。誰も学校だなんて思ってないわよ。でも学園都市にはそんな『学校もどき』山ほど在るわ」


研究者(大人)のエゴと片付けてしまえばそれまでだが、認めたくない。


結標「……」ジー・・・

香焼「……どうしたんすか?」エ?


複雑そうな目で自分を見詰めてくる結標さん。


結標「……やっぱり、学園都市の人間じゃないのね。香焼くんは」クスッ・・・

香焼「え」

結標「この街で理由を求めちゃいけないのよ。子供達(モルモット)は……如何に大人(研究者)を満足させるか。それだけよ」

香焼「そんなの……」

結標「ええ……嫌よね。だから私は動いたの」グッ・・・


ペットボトルを握りしめる。


結標「学生運動(テロ)なんて馬鹿な真似して……」

香焼「結標、さん……」


望むままに人を傷付けることすらできる強大な能力。その力に怯えていた。
それでも自分が力を得る必要性が何かあったのだろうと我慢していた。
しかし……量産能力者(クローン)である妹達たちの結果を知って、人以外にも能力が宿る可能性がありうることを知る。


結標「何で、能力なんて有るのか……何で、自分じゃなきゃいけなかったのか……考えたって無駄なのにね」


足掻いた。足掻きたかった。足掻くという行為で、正当化するしかなかった。


結標「あげく、昔以上に人を傷つけ……自虐して……今のザマよ」フフッ・・・


都市を裏切り、『制裁』の末……暗部に堕ちた。
140 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 00:40:49.39 ID:HwyG+qya0
香焼「……」ジー・・・

結標「……ははは、理事校出身とはいえ、中1には難しかったかな」ポリポリ・・・

香焼「いえ……」


この人は凄い。

『従順で在れ』と教育される学園都市で、自我を持った。剰(あまつさえ)、先頭に立ち戦った。
ただ手段が悪かっただけだ。テロリズムでは跳ね返されるだけ。


結標「先導……まぁ別に私がリーダーじゃなくても良かったのよ。ただ周りに器がいなかったからやっただけ」アハハ・・・

香焼「そうかな。今の話だと結標さん、カリスマ溢れてたっすよ」ニコッ

結標「あ、ありがと……でも他の所、運動組織からも誘いは受けてたのよ」

香焼「へぇ……運動組織って色々有るんすね」

結標「ただ、スポンサーってかパトロンが付くかどうかも難しいからね。私はケネディの科学結社とコンタクト取れたけど」

香焼「……アメリカが?」


学園都市を目のカタキにしている大国の一つ。合衆国(アンクル・サム)。


結標「違う違う。合衆国がバックだったら、今でもテロ続けてるわよ……金だけあるチンケな組織よ」

香焼(その組織の後ろに、合衆国が居ても変じゃないけど……)

結標「互いに『残骸(レムナント)』が欲しかった……残骸って知ってる?」


『0728事件』で粉砕された『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の残骸の中にあった中枢部品。
『0728事件』の詳細は特秘事項で下っ端の自分には知らされてないが、『魔術』による攻撃で衛星が破壊されたと記憶している。


香焼「樹形図の設計者の残骸は誰もが欲したっすからね」

結標「そ。私が掴んだ。組織が金を出すと言った。協力関係……簡単でしょ」ニコッ

香焼「……」コクッ


ただし、それこそ組織に踊らされている様に思えた。


結標「分かってるわよ。アッチも私達(能力者)を知識を持った『道具』にしか思ってない連中だもの」

香焼「じゃあ、何で……」

結標「学園都市(今まで)を取るか。見知らぬ輩(別の可能性)を取るか……可能性に縋っただけよ」


まるで弱い心に浸け居る宗教理論だ。この人は手を出してしまった。


結標「……そうね。弱いもん、私」フフフ・・・

香焼「結標さん……」


隣に座るのは、か細い一人の少女だった。
141 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 01:04:09.19 ID:HwyG+qya0
結標「ハァ……あー! やめたやめた!」グググ!!


背伸びする少女。


結標「あー……駄目ね。ネガティブ症治らないわ……」ハァ・・・

香焼「ははは……」

結標「こんなんだからガラスメンタルとか馬鹿にされるんだけどね……ま、『不幸』の考え方次第よ」ニコッ・・・

香焼「そうっすね。知り合いに『不幸』のスペシャリストがいるっす」クスッ

結標「私もソイツ知ってるわ」フフッ


不幸を『誇り』に変える人……それを『英雄』と呼ぶ人もいる。


結標「考え方一つで見方は変わる。さっき言ったでしょ? 嫌だと思えば邪険にしか見えないって」チラッ

香焼「……はい」コクッ

結標「香焼くんは……どうしたい?」ニコッ


自分は……


香焼「前向きで、生(行)きたいっす」

結標「うん。よろしい。お姉さんみたいになっちゃダメだぞ」クスッ

香焼「そんな事、ないっすよ」ポリポリ・・・

結標「ふふふ。お世辞がお上手ね」ニコッ・・・


ただ、敢えて言うならば。


香焼「誰かの所為じゃなく……何かの所為じゃなく……それらの『為』に。救われない者に、救いの手を」ボソッ・・・


姉の……女教皇様の教え。


結標「良いお姉さんじゃない。でも宗教みたいね」クスッ

香焼「あはは……何とも」タラー・・・

結標「何だかんだ言って仲良いみたいね。従順、とまではいかないけど慕ってるのは分かるわ」

香焼「慕ってるのは認めるっすけど……」ポリポリ・・・


それじゃ無理矢理みたいだ。


香焼「自分の意志っすよ。それこそ誰に言われるでもない、何かに縋るでもない」

結標「ふーん」ジー・・・


流されてじゃない。自分の決定。
142 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 01:18:36.78 ID:HwyG+qya0
科学とか、魔術とか、能力とか、術式とか……関係無い。


香焼「丸裸の自分に嘘をついてないか。それだけっすよ」ニコッ・・・

結標「……」

香焼「今自分が問題を起こしたのは組織にいるからだけど、それを嘆いてないっす」

結標「大人ね……子供のくせに割り切り過ぎよ」クスッ

香焼「ガキだから単純なんすよ。さっきの問題も不幸で終わらせたくない」


それじゃ魔術や能力の所為にして逃げてるだけになる。


香焼「だから……全部、自分の所為なんす。でもそれは未練じゃない」

結標「……」

香焼「組織の年長者が言ってたんすけどね……未練と後悔の違い知ってますか?」

結標「……先と後?」


諫早さんが言っていた。
未練はやらずに人(モノ)の所為にする事。後悔はやって自分の糧にする事だって。


香焼「やらずに人(何か)の所為にするのは、卑怯っす。やって、失敗して……成長する」

結標「……失敗して、成長か」

香焼「さっき言ってた結標さんの能力云々話も同じっすよ」


簡単な事だ。


香焼「能力の所為じゃない。自分の所為で失敗した。それを認めれば……伸びるんじゃないっすか?」ニコッ

結標「っ」グッ・・・


俯かれた……生意気過ぎたか。


結標「……ええ。生意気よ」ボソッ・・・

香焼「あはは……すいません」タラー・・・


結標さんは暫く無言だった。が、ふいに顔を上げ……微笑んだ。
143 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 01:37:45.00 ID:HwyG+qya0
結標「同じ事を……香焼くんと同い年の娘に言われたわ」ハハハ・・・

香焼「え」

結標「同じ移動能力者なんだけどさ……『不幸を能力の所為にして逃げてますの!』とか一丁前に、ね」フフッ

香焼「そう、なんだ」

結標「更に言うに事欠いて『その腐った根性叩き直して差し上げますの!』って……最近の中学生は凄いわ」クスクス・・・


凄ぇ女子だな。きっとゴッツい娘に違いない。


結標「……この街には貴方達みたいな子が必要なのよ、きっと」

香焼「大袈裟な」

結標「香焼くん……さっき言ったわね。『裏』の人間に思えないって」

香焼「……」ピタッ・・・

結標「『表』で活躍すべきよ。それこそ理事になるとか、この街の方針を決めるとか」


考えた事、無い。


結標「正直ね……香焼くんの『裏』としての顔は誰も連いてこない。残酷だけどね」


それは分かってる。自分は上に立とうだなんて思ってない。


結標「でも……『表』なら連いていこうと思うわ。貴方みたいな人に、この街を変えて欲しいって」

香焼「そ、そんな! 自分は部外者っすよ!!」アタフタ・・・

結標「勿論、もしよ。でも惹かれる力……香焼くんがさっき言ってくれた『カリスマ』ってのは人それぞれよ。貴方は『表』気質」

香焼「買い被り過ぎっすよ……自分は器じゃないっす」

結標「それは今から育てていくものよ。まぁ『道』を決めるのは香焼くんだけどね」


そういって微笑む結標さん。そんなに期待されてもなぁ……


結標「私も大概ネガティブだけど貴方もね……いや違うなぁ。香焼くんは謙虚過ぎるのね」フム・・・

香焼「まぁ横暴よりはマシっすよ」アハハ・・・

結標「もうちょっと強引っていうか強気だったら完璧なのになぁ……でもその甘さが美徳なんでしょ」フフッ

香焼「また甘いって……別に自分は甘くないし、優しくもないっすよ」ムスー・・・

結標「はいはい。しょげないしょげない。褒めてるのよ」ナデナデ

香焼「っ……も、もぅ」///


やっぱり年上なんだな、この人は。こういう時に余裕が持てる人には憧れる。
144 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 01:52:02.67 ID:HwyG+qya0
 ――とある休日、PM11:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



それから暫くしてから部屋に戻った。
月詠さんも子猫もぐっすり寝ている。結標さんが月詠さんの布団を直し、静かに告げた。


結標「じゃあ、今度こそ」チラッ

香焼「はい……お休みなさい」ニコッ


布団に潜る。


香焼「……」スッ・・・


今日は色々あった。


香焼「……」フゥ・・・


馬鹿姉達に猫がばれて……最愛の事がばれて……友達馬鹿にされて……


香焼「……」ムゥ・・・


家出して……結標さん達にあって……『事故』があって……


香焼「……」ハァ・・・


やっと、床に着いた。疲れたよ……


香焼「……」ピクッ・・・


疲れて、疲れ過ぎて……寝れない?


香焼(どうしよう……)タラー・・・


このままじゃ夜ふかしコースだ。他人の家で明日お寝坊なんて恥ずかしいぞ。


香焼(そうだ、猫!)チラッ


最近は子猫と一緒に寝ていた。近くに居れば寝れるかも……


ぬこ「にゅぅ……みゅぅ……」zzz・・・

月詠「くぅ……きゅぅ……」zzz・・・


駄目だ。ピッタリくっ付いて寝てる……困ったぞ。
145 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 02:17:09.29 ID:HwyG+qya0
こうなったら朝まで起きてようか……そう考えた刹那―――


結標「……香焼くん」ボソッ


―――小さな声。結標さんもまだ起きてるみたいだ。


結標「起きてる?」ボソッ

香焼「……はい」ボソッ

結標「そっか……もしかして、寝れない?」ボソッ

香焼「……はい」ボソッ


結標さんも同じか。ちょっと前までアレだけハイになって動いていたのだ。
そう簡単には落ち着く訳が無い。


香焼「このままじゃ朝寝坊しそうっす」アハハ・・・

結標「私はいつも寝坊だけどね」フフッ・・・

香焼「あはは……職業病っすね」クスッ・・・


『裏』の仕事は夜中が基本だ。身体が夜は起きてるようにセットされてしまう。
天草に入りたての頃は、自分もペースを直すのに苦労した。


結標「ねぇ……香焼くん」ボソッ・・・

香焼「何すか?」ボソッ・・・


成程。人と会話をしてると眠たくなったりもする。その方法か。


結標「……そっち行って良い?」ボソッ


……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?


結標「だから……その、そっちの布団行って良い?」ボソボソッ・・・

香焼「え、は……え?」タラー・・・


貴女は何を言ってるんですか?


結標「……駄目?」ボソッ

香焼「いや、その……」タラー・・・


だって……




冷蔵庫『①「いいよ」 ②「僕が行くよ」 ③「来るだけでいいの?」 ④「ご主人様に提案とは生意気な従者め。お仕置きだ」かな?』フム・・・




勝手に決めんな馬鹿家電。⑤の『駄目』に決まってんだろ。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 02:19:02.47 ID:1r72YxhDO
②だろjk!
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 02:20:29.94 ID:rCRRnzSAO
②!
148 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 03:25:24.14 ID:HwyG+qya0
香焼「おま、何勝手なこ『僕が行くよ……淡希さん』ちょ、ざけんなっ!!」ギロッ!!

結標「え、あ……そんな……」ポッ・・・///


結標さん、すぐにそこの冷蔵庫交換した方がいいです。


冷蔵庫『ひゅ~ひゅ~』ブウォオオオォン・・・・・


てか月詠さん起きちゃうっつの!


結標「……来て、くれるの?」モジモジ・・・///

香焼「ちょ、その……」ダラダラ・・・


何だこれ……さっきとはまた違う感じのピンチ。


月詠「んん……」モゾッ・・・

香焼「っ!! ほ、ほら。音立てちゃうと月詠さん起きちゃうからね……無理っすよ」ボソッ

結標「……音立てなきゃいいの?」ジー・・・///

香焼「え、いや、そういう問題でもな―――」


瞬間、自分の身体は元居た布団には無く……


香焼「―――いっす……よ。って……・・・・・・・・・・・あれ?」ギョッ!?

結標「……いらっしゃい」ニコッ・・・///

香焼「」


……結標さんの布団の上に移動(テレポート)されていた。


香焼「む、結標、さん?」ギギギ・・・

結標「てへっ☆」ペロッ♪


勘弁して下さい。


結標「安心して……別にさっきみたいな事する気はないもの」ニコッ・・・///

香焼「い、いや、これでも十分拙いっすよ……」ダラダラ・・・

結標「分かってる……」スッ・・・///


ゆっくりと、布団を掛けられた。現在向かい合わせ……大変だ! 心臓が足りない!
149 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 03:54:42.16 ID:HwyG+qya0
結標「……寒く、ない?」ジー・・・///

香焼「だ、大丈夫っすけど……やっぱ大丈夫じゃないっすっ」ドキドキ・・・

結標「ふふっ。可愛い」クスッ・・・///


寧ろ暑いです。クラクラします。


結標「なら脱いじゃえばいいじゃない。ナイフまみれの服のままじゃキツいでしょ?」ニヤッ・・・///

香焼「な、なな、な、何を!? そ、そういう問題じゃないっすよっ」カアアァ・・・///

結標「ふふふ。冗談よ……でもお姉さん達と寝るって考えれば大丈夫じゃない?」クスッ・・・///


死んでもアイツらとは同衾しません。


結標「一番上のお姉さんでも?」


女教皇様と寝たら死にます。各方面から叩かれた後、審問で処刑されます。


結標「もう……意地っ張りね」フフッ・・・///

香焼「意地っ張りとかじゃなくて……」アワワ・・・///


そうだ!


香焼「め、命令っす! ご主人命令!」ギロッ!

結標「え?」ポカーン・・・

香焼「も、元の場所に戻しなさい。そして大人しく寝る事!」ムゥ!

結標「……」ジー・・・


土御門からの馬鹿提案が役に立つ時が来た。
さぁ大人しく言う事を……



 ――ぎゅっ・・・・・



……・・・・・・・・・・・え。


結標「私の……我儘よ」ギュッ・・・///

香焼「ッッッ!!?」ドキッ!!


これは、ヤバぁい。
150 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 04:12:11.26 ID:HwyG+qya0
目の前に、胸。


香焼「む、むむ、む、結標さんっ」カアアァ・・・///

結標「……変な事しないから」グッ・・・///


十分変な事です!


結標「……香焼くんが硬派な人だって、分かってる」ニコッ・・・///

香焼「そ、そ、それなら」アタフタ・・・///

結標「私だって……淫売じゃないわよ。さっき言ったのは本当。誰でもって訳じゃない」ギュッ・・・///

香焼「む、結標……さん……」ダラダラ・・・

結標「それとも……H、したい?」クスッ・・・///

香焼「っ!?」ドッキンッ!!


拙い!! 後ろ向かなきゃ!!


香焼「し、したくないっ」グルッ!

結標「あらら……そっぽ向かれちゃった。残念」フフッ・・・


お察し下さい。


結標「我慢強い男の子は好きよ……ふふっ、私も簡単に貞操上げようだなんて考えてないわよ。心配しないで」ニコッ・・・///

香焼「……」ゴクッ・・・///

結標「自分の誇りと、私を傷つけまいって考えてるんでしょ?」ギュッ・・・///

香焼「……それは」

結標「優しいわよ、貴方は……残念過ぎる程に」ナデナデ・・・///

香焼「っ……違うっす」シュン・・・

結標「香焼くんが甘くなかったら、香焼くんじゃないか……そしたら多分、こうしてあげないわね」フフッ・・・///

香焼「結標さん……」

結標「名前で呼んでいいわ……さっきも呼んでくれたでしょ?」ニコッ・・・///


あれはあの馬鹿家電の声です。


結標「じゃあお姉ちゃんでもいいわよ?」クスッ・・・///

香焼「それは……っ」グッ・・・


何故か……あの三人の顔が浮かんでしまった。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 04:12:42.59 ID:rCRRnzSAO
盛り上がってまいりましたww
(いろんな意味で)
152 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 04:37:43.73 ID:HwyG+qya0
結標「……嘘よ。それは貴方のお姉さん達のものだもんね」クスッ・・・///

香焼「……」ムゥ・・・

結標「仲良くなさい。折角家族がいるんだもの……羨ましいわ。私も香焼くんみたいな弟が欲しかった」ニコッ・・・///

香焼「……生意気な弟っすよ」クスッ・・・///

結標「どんとこい」ギュッ・・・///


それでも、貴方の弟にはなれない。だけど……


香焼「……淡希、さん」ボソッ・・・///

結標「っ……何?」ニコッ・・・

香焼「また……遊びに来ていいっすか?」

結標「ええ。いつでもいらっしゃい」ナデナデ・・・///


この人には惹かれるものがある。女教皇様とは違うカリスマ。年上の包容力とでもいうのだろう。


結標「土御門に言われてって訳じゃなく……何かあったら助けてあげる。多少の我が儘も聞いてあげるわ」フフッ・・・///

香焼「ははっ。迷惑掛けるつもりはないっすよ」クスッ・・・///

結標「ホント、出来た子ね。遠慮しなくていいのに……あ、でもエッチぃのは駄目よ?」ニヤッ・・・///

香焼「し、しないっすよ!」カアアァ・・・///

結標「ふふふ。かわいいかわいい。もしかして彼女いるの?」ナデナデ・・・

香焼「い、いません! まだ中1っすっ」モゥ・・・///

結標「そう? 付き合う子は付き合ってるけど……じゃあ好きな子は?」クスッ・・・

香焼「い、いないよっ」ウワーン!

結標「あらあら……どうかしら? 淡希お姉さんに教えてみなさいな」ニヤニヤ・・・

香焼「ほ、ホントっすよーっ」カアアァ・・・///


それから暫くからかわれ……何時の間にか、淡希さんは自分を抱いたまま寝入ってしまった。
時計が無いので時間が分からないが、一時間したかしないかくらいだと思う。


香焼「やっと……寝たんだ」ハァ・・・

結標「くぅ……すぅ……」ギュッ・・・


背中に胸が当たる。吐息が頬に掛る。衣擦れ音が生々しく響く……余計眠れない。
信じてくれたのに、こんな感情を持つなんて……自分は最低だ。


結標「むぅ……こ、もえ……」スヤスヤ・・・

香焼「……小萌、か」フフッ・・・


淡希さんの中の平和の象徴。いつの日か、この人の全てが、平和になって欲しい。
そう願って、自分も……目を瞑り……―――
153 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 04:54:22.94 ID:HwyG+qya0
 ――とある休日(翌日)、AM08:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



トントントンという包丁刻みの一定音。

カーテンからの木漏れ日。

子猫が畳の上を闊歩する爪音。


香焼「……ん」グッ・・・


朝だ。時間が分からないが、意外な爽快感。思いの外グッスリ寝れたのだろう。


月詠「ん? おはようございます。香焼ちゃん」ニコッ

ぬこ「にゃー」トコトコ

香焼「あ、はい。おはようございます」ペコッ


アレだけ呑んで寝たのに、カラッと元気な月詠さん。あの人の身体は一体どうなってるのだろう。


月詠「ふふふ。酒は飲めども呑まれるな、ですよ」クスッ

香焼「ははは……」ポリポリ・・・

月詠「それで……お姉さん達と向き合う決心は付きましたか?」

香焼「……はい。ご迷惑をおかけしました」ペコッ

ぬこ「なぅ」ゴロゴロ


思えば下らない理由。互いに大人げ無かっただけ。


月詠「そう。なら大丈夫ですね。後で電話を貸します。帰る前に連絡するんですよ?」

香焼「はい。何から何まで……」

月詠「いえいえ。問題児の『問題』解決は私の自己満足でもありますから」ニコッ

香焼「そんなそんな……月詠さんくらい子供の事考えている大人もいませんよ」

月詠「ふふっ。お上手ですね……さてと」パンパンッ


台所(ガスコンロ)の火を止め、満面の笑みで……宣告した。


月詠「さくやは おたのし みでした か?」ニッコリ・・・

ぬこ「なー」ジー・・・


……・・・・・・・・・・・あ。
154 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 05:11:20.36 ID:HwyG+qya0
月詠「……追求しませんが、そろそろお隣の『半裸』のお姉さんを起こしてあげて下さい」ニコニコ・・・


忘れてた……って、半裸?



 ―――むにゅっ・・・・・



むにゅって……え?


結標「ぁ……んっ……」キュッ・・・

香焼「」

月詠「……柔らかいですよね。結標ちゃんの胸って」ジトー・・・


事故です!! てか、何でYシャツの前ボタン全開なの?! しかも自分の胴体に抱き着いてるし!?


結標「ん……すぅ……むにゃ……」ポリポリ・・・

香焼「……」タラー・・・


生温かい様な、怒っている様な、冷めている様な、複雑な視線を向ける月詠さん。


香焼「こ、こここ、こ、こ、コレは!! その、違くて!! え、えっと!!」アタフタ・・・

月詠「……とりあえず、起こしてあげて下さいね」ニコッ

香焼「え、あ、は、はい! あ、淡希さん! 起きて下さい! 朝です!!」トントン

結標「むぅ……んぁ……」クゥ・・・

香焼「淡希さーんっ!!」ユサユサ!


中々起きてくれない。


月詠「人が酔って寝てるからって……やって良い事と悪い事が有りますよね? 彼氏いない歴[禁則事項です]年の私に対する嫌味でしょうか」ブツブツ・・・

ぬこ「みぃ」グシグシ

香焼「あ、淡希さんっ!! 早く起きて説明を!!」アワワワ・・・

月詠「お目覚めのチューでもすれば起きるんじゃないでしょうか? ねー」ブツブツ・・・

ぬこ「なー」スリスリ

香焼「馬鹿な事言わないで下さい! てかマジ起きてー!」ギャー!


それから月詠さんのパーティー用クラッカー目覚ましが炸裂されるまで結標さんは眠りっ放しだった。
155 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 05:30:31.61 ID:HwyG+qya0
結標「んが……何時?」ボー・・・

香焼「な、何時じゃないっすよ! とりあえず朝っす! 起きて淡希さん!」カアアァ・・・///

月詠「『淡希さん』ですってー。昨日までは苗字までだったのに……ねー」グチグチ・・・

ぬこ「なー」コロコロ・・・


早く弁解手伝って下さい。居心地最悪です。


結標「……」キョロ・・・キョロ・・・

月詠「……結標ちゃん。おはようございます」ニコッ!

結標「……」キョロッ・・・タラー・・・

香焼「あ、淡希さん……おはよう」アハハ・・・


当たりを数度見回した後……自分の顔に視点が止まった。


結標「……」ジー・・・

香焼「淡希、さん?」タラー・・・

結標「っ……お、おはよぅ……」カアアァ・・・///


一瞬にして真っ赤になり、布団で顔を隠す淡希さん。何その反応!?


月詠「結標ちゃん? ……さくやは おたのし みでした か?」ニコッ!!

結標「っ!! う、うん……」コクッ・・・///

香焼「淡希さあああぁんっ!!」ウワアアアァッ!!

月詠「……決定ですね」ジトー・・・

ぬこ「なぅ」ジトー・・・


何か物凄い勘違いなさってる人がいる! 違うから! この人寝ぼけてるだけだから!


月詠「香焼ちゃん。男の子は責任を持たなければいけないのですよ? それが例えワンナイトラブであっても!」ビシッ!

香焼「違うっすよ!! 過ち冒してないよ!! ちゃんと理由あって!」アタフタ!

月詠「じゃあ……そのシーツの『血』は何ですか?」ジトー・・・

香焼「え……」ダラダラ・・・


血……ホントだ……って! これ昨日自分が斬られた時に出た血固まっただけじゃん!!


結標「あ、え……もしかして……やっちゃった系?」テヘッ♪

香焼「」

結標「ふ、不束者ですが! 宜しくお願いします!!」カアアァ・・・///


後でステイルから煙草を貰おう。きっと美味しいんだろうな……現実逃避の煙の味って。
156 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 05:50:23.22 ID:HwyG+qya0
数分後……ちゃんと説明をし、月詠さんを納得させた。
血の説明は外に出た際に切ってしまった部位を放置したままだったという事で誤魔化せた。


月詠「まったく……夜中コンビニ行く程度は構いませんが、はしゃいで怪我するなんてやっぱり小学7年生さんですよ。香焼ちゃん」プンスカ!

香焼「あはは……すいません」ペコッ

月詠「そして結標ちゃん! 小さいとはいえ香焼ちゃんも男の子なんです! 能力使ってまで抱き枕にしちゃ駄目なのですよ!」ンモー!

結標「ごめんごめん」アハハ

ぬこ「にゃん」スリスリ


さておき、現在朝御飯の最中。わかめの味噌汁、納豆、玉子焼き、グリーンサラダ、ご飯のメニューである。
子猫には昨夜買った猫缶を与えていた。


香焼「そういえば……淡希さん」モグモグ・・・

結標「んー?」ズズズズ・・・

香焼「いつもは月詠さん抱いて寝てるの?」ゴクン

結標「ぶっ!! ごほっごほっ!!」ドキッ!


昨日の寝言が気になった。


結標「そ、そんな訳無――」

月詠「ふふふ。そうですねー。偶にギュって抱き着いて来るのですよー。結標ちゃんは寂しがり屋の兎さんなんです」ニコッ

結標「――いで……小萌ぇっ!!」カアアァ・・・///

香焼「あははは」ニコッ

ぬこ「んなー」ペロペロ


淡希さんは何かに抱き着いてないと寝れないタイプらしい。


結標「ち、違うのよ。独り身の小萌が寂しそうだなぁって私が同情してあげてるだけなんだから!」ムキー!

月詠「はいはい。結標ちゃんは優しい子ですねー」クスッ

結標「ぐぬぬぬっ……小萌ぇ、覚えてなさい……」ギロリ・・・


やはり何だかんだで大人(月詠さん)の方が上手の様だ。それにしても仲が良い。


ぬこ「みー」トコトコ・・・スリスリ

香焼「……ふふふ」ナデナデ


二人は素敵な家族だ。
157 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 06:04:30.84 ID:HwyG+qya0
 ――とある休日(翌日)、AM10:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



食事が終わり、今度こそ片付けを手伝った。
それから掃除を手伝い、出来得る限りの洗濯も手伝い、一晩の礼には足りないだろうが月詠さんへの感謝を自分なりの行動で表した。


月詠「態々良いんですよ。私の自己満足って言ったでしょうに」

香焼「あはは……すいません」

月詠「香焼ちゃんが良い子だって事は嫌という程分かりました。後は……自分の問題を解決するだけですよ?」ニコッ

香焼「……はい」コクッ


一通り終わったので、一息つこうとお茶を入れた時……



 ――ピンポーン・・・・・



……インターホンが鳴った。


結標「こんな早くに誰かしら?」

月詠「回覧板だと思いますよ。はーい。今開けますよー」トコトコ


玄関に小走りする月詠さん。


月詠「はいはい。ドチラ様でしょ……」ガチャッ


ドアを少し開いた所で、止まった。そして……


月詠「あ……ぅ……」ペタンッ・・・


その場に尻もちを付いた。その表情は……恐怖。


結標「っ!! 小萌っ!!」タッ!!

香焼「月詠さんっ!!」スタッ!


自分と淡希さんが玄関に跳ぶ。そこに居た人物は……
158 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 06:20:42.87 ID:HwyG+qya0
結標「朝っぱらからカチコミとは良い度胸ね!!」スチャッ!!

香焼「っ!! ま、待って! 淡希さん!!」グイッ!

結標「香焼くん!?」ピタッ・・・


……その人は、敵じゃない。


神裂「……そう。貴女の家でしたか」スッ・・・

月詠「あ……な、にが……」オドオド・・・

香焼「女教(プリエ)……カオリ姉さん」ペコッ・・・

月詠「姉さ……香焼ちゃんの、お姉さんって……」キョトン・・・

結標「……」ギロッ・・・

神裂「……名を告げるのは初めてでしたね。神裂火織と申します」ペコッ・・・


深々とお辞儀をする女教皇様。


神裂「愚弟が、御迷惑をお掛けしました」

月詠「え、あ……いえ……」ポカーン・・・


女教皇様の事を知っているのか、月詠さんは複雑な表情のままだった。


結標「……アンタ」ギロッ

神裂「……何か」チラッ

結標「とりあえず上がりなさい。茶でも出すわ……いいわね、小萌」チラッ

月詠「あ、え、はい……どうぞ」スッ・・・


淡希さんの手を借り、立ちあがり居間へ戻る月詠さん。
女教皇様は軽く頭を下げ、その後を追った。


神裂「……香焼」チラッ

香焼「はい」

神裂「とりあえず、話は後で……五和と浦上も共に」コクッ


それだけ告げ表情を崩さぬまま、月詠さんが座る円卓の向かいへ正座。
自分と淡希さんも、遅れて少し離れた所に座った。
159 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 06:39:47.30 ID:HwyG+qya0
切り出したのは女教皇様。


神裂「貴女には迷惑を掛けてばかりで……なんと謝罪すればよいものか」

月詠「い、いえ。何というか……吃驚で」

神裂「聞けば禁書目録も未だにお世話になっている様で、それも含めて改めてお礼させてもらいます」

月詠「そんなそんな!」


確かに今回の件で女教皇様にも汚点はあったが、頭を下げさせるなんて……教徒失格だ。


神裂「前回(0728事件)の件は私の口からは何とも言えませんが……今回の件は全て私の責任です」

香焼「っ! それは――」

結標「香焼くん。黙ってなさい」スッ・・・

香焼「――っ……」グッ・・・

神裂「その子を追い詰め家出させたのは、我々姉三名が莫迦だった故。その子に責はありません」

香焼「カオリ姉さん……」

月詠「……神裂さん」

神裂「はい」

月詠「言いたい事は分かりました。ただ一言言わせてもらえれば……」


近くに居た猫を撫でながら……


月詠「何処にでもある……普通の姉弟喧嘩なのでしょう?」ニコッ

ぬこ「にゃー」スリスリ


……聖人に向かって、聖母の様な笑みで告げた。


神裂「……それは」

月詠「見た所、貴女もお若い様です。多分、歳の近い結標ちゃん以上に苦労している人なのでしょう」

結標「……歳の、近い?」エ?

月詠「結標ちゃん。香焼ちゃんが『一番上の姉は結標さんと一つ違いっす』って言ってたじゃないですか」

結標「そういえば……そんな気も」ジー・・・


比べれば確かに淡希さんが大分幼く見えるだろう。五和と比べても淡希さんは若く見える。
160 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 07:01:55.58 ID:HwyG+qya0
月詠さんは更に続けた。


月詠「『家族』という概念が希薄であるこの学園都市で、どんな形であっても『家族』であれる貴女達は恵まれているのですよ」

神裂「……ええ」

月詠「折角の姉弟です。仲良くするのは勿論、多いに喧嘩しても良いと思います」

香焼「月詠さん……」

月詠「その際、人に迷惑を掛てはいけないとは言いません。家出しちゃえば必ず誰かに迷惑は掛りますから。家出捜索の警備員とかね」

香焼「……すいません」

月詠「今回は私でしたが……良いんです。大人にいっぱい迷惑掛けて下さい」


それを寛容するのが大人の役目ですから、と自分ら『三人』に向けた。


月詠「香焼ちゃん」

香焼「はい」

月詠「神裂さん……いえ、神裂ちゃんをキチンと『弟』として、支えてあげてくださいね」

香焼「お、弟としてっすか?」ポリポリ・・・

神裂「神裂、ちゃん……ですか」ポリポリ・・・

月詠「働いてるのか如何か分かりませんが……若いのに苦労してる相が出ちゃってます。神裂ちゃんに一番必要なのは『日常』ですよ」


それは……納得できる。


月詠「先生の話は此処までですよ……さて、後は当人達の問題ですから」

ぬこ「なー」


笑顔でお茶を一啜り。

それから暫くして、女教皇様と月詠さんは雑談を始めた。自分と淡希さんは庭先で待っている事にした。


結標「綺麗な人ね。女性から見ても恰好良いし」

香焼「……はい」

結標「仲直り、できそう?」

香焼「……どうかな」


4人揃ってから、如何なるか。正直、他二人と顔を合わせるのが心配だった。
161 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 :2011/03/11(金) 07:26:52.23 ID:HwyG+qya0
数分後……女教皇様と月詠さんが玄関から出てきた。


結標「……終わったの?」

月詠「はい。見た目以上にユニークなお姉さんですよ。神裂ちゃんは」

神裂「だからその神裂『ちゃん』というのを止めて頂きたいのですが……」

結標「言っても無駄よ。小萌は未成年誰でもちゃん付けだから」


苦笑。


神裂「それでは失礼します。香焼、忘れ物は無いですか?」チラッ

香焼「え、あ……はい」コクッ

神裂「ではお礼を……近くの公園に二人がいます。そこに向かいましょう」


些か急だが、ダラダラ残るより良いだろう。


香焼「月詠さん。淡希さん。昨日今日とご迷惑をおかけしました」ペコッ

月詠「いえいえ。楽しかったですよ。また来てくださいね」

香焼「是非。お土産持ってくるっす」

月詠「ふふっ。期待しちゃいましょう」クスッ


淡希さんは……何も言わない。


結標「……私も少し、貴方のお姉さんと話が有るわ」

神裂「……」

月詠「……では、私はこれで。香焼ちゃん、他の二人ともちゃんとお話するんですよ。いいですね」ニコッ

香焼「はい。ありがとうございました」


そう言い残して、月詠さんは部屋に戻って行った。此方は……


神裂・結標「「……」」

香焼「……えっと」タラー・・・

神裂「……歩きがてら、話しましょう」チラッ

結標「……そうね」チラッ


何やら険悪な雰囲気。間違いが起こらない事を祈る。
162 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 07:44:46.53 ID:HwyG+qya0
 ――とある休日(翌日)、AM10:40、学園都市第7学区、とある道路・・・・・



歩きだしてすぐ、女教皇様が口を開いた。


神裂「どうやら一番貴女に迷惑を掛けたようですね。申し訳ございません」カツカツ・・・

結標「謝罪される謂われはないわ……終始土御門から聞いてるんでしょ?」カツカツ・・・

神裂「……」

結標「その子を殺しかけたわ」チラッ

香焼「っ!! 淡希さん!!」ギョッ!


態々言わなくても良い事を。


結標「私の早とちり。しかも私怨……姉として、『上司』として私を如何する?」

香焼「ぷ、女教皇様! 違います! それは事故で!」

神裂「……この子がこう言っています」サラッ

結標「部下任せ?」フンッ

神裂「いえ……『本人』任せ、そして『弟』任せです。月詠さんが言っていたでしょう。『喧嘩は当人同士』と」

結標「……アンタ、苦手だわ」ハァ・・・


鉾は降ろされたようだ。


神裂「それに元を辿れば私達の所為。我々が莫迦をしなければ、その事態にはならなかった」

結標「……」

神裂「貴女は被害者であって加害者では無い。土御門からの罰則も全て私が責を負います」

結標「や、やめてよそういうのは! ……調子狂うわねぇ」ッタク・・・

ぬこ「なー」


その人は達観してるから、何を言っても無駄だと思う。


結標「まったく……姉弟して同じような事言うのね。貴方達」

神裂「ふむ。そうなのですか?」チラッ

香焼「あはは……まぁ」ポリポリ・・・


そういう教えだ。仕方あるまい。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 08:00:41.63 ID:rCRRnzSAO
よかったよかった
164 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 08:07:08.53 ID:HwyG+qya0
結標「じゃあ失礼ついでに言わせてもらうけど……私は昨日の『私怨』については謝らないわ」

神裂「……」

結標「香焼くんには言ったけど、私の『日常』を守る為に動いただけ。勿論、早とちりは私の所為だけど……貴女には謝らない」

神裂「香焼本人に謝罪をしたのでしょう? だったら私に謝られても仕方ありません」

結標「そう。ならいいわ」

神裂「……香焼」チラッ

香焼「え、あ、はい」

神裂「貴方はその件を如何考えているのですか?」

香焼「え……如何って」


事故だが……そういう応えは望んでいないだろう。
それならば、今の自分の、純粋な気持ち。


香焼「最初は、怒りました……命も貞操も軽く見過ぎな行いだと」

神裂「……」

結標「そう……よね」


でも……


香焼「例え、あそこで死んでいても……未練は無いっす。やるだけの事はやった」

結標「そんな……っ」

香焼「あはは。でも結果、何だかんだでこうして生きてる。それで良いじゃないすか」ニコッ

結標「香焼くん……」

神裂「……ふふっ」


ポジティブに、自分の行いを恥じず。


香焼「それに……月詠さんに……淡希さんに会えた。それが一番っすね」ニコッ

ぬこ「にゃー」スリスリ


一期一会に感謝を、だ。


香焼「感謝はしても、謝罪はしない。そうあれかし(AMEN)……そんな考えっすよ」ハハッ

神裂「……だそうです」ニコッ

結標「……うん。ありがとう」ニコッ・・・///


淡希さんは笑顔をくれた。
それから少し先で踵を翻し、自分に連絡先のメモを渡して去って行った。きっとまた会うだろう。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 08:13:22.56 ID:rCRRnzSAO
何故か HELLSINGを思い出したしまった俺は 重度のヒラコー好き
166 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 08:25:57.78 ID:HwyG+qya0
 ――とある休日(翌日)、AM10:55、学園都市第7学区、とある公園・・・・・



神裂「……素敵な人でしたね」ニコッ

香焼「はい。二人とも」ニコッ


未だ昨日の話はしない。4人集まってからと決めている。


神裂「二つ……いいですか」

香焼「はい」コクッ

神裂「叱咤と、疑問ドチラから?」

香焼「……叱咤で」


子猫が自分の肩の上から女教皇様のポニーテールをパンチする。


神裂「先程、貴方は彼女に自分の命を軽く見過ぎと叱りましたね」

香焼「……はい」

神裂「分かっているようですので……後は言いません」


身の程を知れ、という意味だろう。当然だ。人の事を言える立場では無い。


神裂「次に疑問ですが……彼女は、貴方から見て『救いの手』が必要な者でしたか?」

香焼「……はい」


淡希さんも……最愛と同じ。
『裏』に染まり切ってる分、彼女の方が深い。          ※(この時点で香焼は絹旗が『アイテム』だと知らない)


神裂「そうですか……では須らく」

香焼「分かってるっす。途中で投げ出したりはしません」


自分に何が出来るか分からないが……手を伸ばしたかった。


神裂「では強くなりなさい。最低土御門より強くなければ、この街の『暗部(闇)』に太刀打ちできませんよ」

香焼「頑張るっす」


自分が弱いのは十に承知だ。今の自分の総合的な力は、多分アンとどっこい。まだまだだ。
167 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 08:45:23.12 ID:HwyG+qya0
一寸後、公園に着いた。自分が最愛と出会ったイカレ自販機が置いてある公園。
人気は無い。態々人払いの結界を敷いたようだ。


神裂「……此方に」テクテク・・・


歩を進める。その先に……二つの影。


五和「……」

浦上「……おはよ」


二人の前に歩み寄る。


香焼「……こんにちは、だろ。もう昼だ」

浦上「あはは。そですネ」

五和「……」

ぬこ「みー」スタッ・・・トコトコ


無言の五和。


神裂「……五和」

五和「……さい」

香焼「え」

五和「ごめんなさい……」グズッ・・・


コイツ最近いつも涙ぐんでるな。


五和「ごめ、う……うわあああああぁんっ!! ゴウぢゃあああああぁんっ!! ごめんだざああああぁいっ!!」ガシッ!

香焼「うわっ!! ちょ、い、五和!?」ワトト・・・

浦上「あーあ……お姉、先に謝っちゃった」ハァ

神裂「三人でと言ったでしょうに……仕方ありませんね」フフッ


抱き着いて泣き叫ぶ五和の後ろから、二人が頭を下げた。


神裂「教皇という立場、そして一姉として、礼節に事欠ける振る舞いをしてしまいました。申し訳ございません」フカブカー

浦上「ああ、えっと……悪ふざけが過ぎました。ごめんネ、香焼……ほら、お姉も!」ペコッ

五和「ううううぅ。ごめ、んなさい……許して、コウちゃん……嫌わないで……」ウルウル・・・


まったく……馬鹿みたいだ。


香焼「……自分こそ、心配掛けてごめんなさい」ペコッ


お相子さ。
168 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 09:12:53.86 ID:HwyG+qya0
五和を落ち着かせるのに時間が掛り、まともな話が出来たのは十数分後だった。


浦上「……それで、香焼。お泊まり楽しかった?」ニヤッ

神裂「浦上! 貴女はまだ!」ギロッ

香焼「良いっすよ、女教皇様」ニコッ・・・

神裂「む……しかし」ムゥ・・・

香焼「楽しかったよ。色々勉強できた」コクッ


そう。色々知れた。


香焼「この街は、自分達が思っている以上に……複雑みたいっすね」

浦上「あらら。何だか大人になっちゃったみたいで。てか、お姉。鼻、鼻」ハーイ・・・

五和「ぐすっ……危険な目にあったんでしょ? 怪我してない?」チーン!

香焼「大丈夫っすよ。一応勝負には勝ったっすから」ポリポリ・・・

神裂「勝ったって……殺されかけたのでしょう?」エ・・・


嘘はついてない。形勢逆転した(馬乗りになった)時点で、自分の中の戦いには勝っていた。


香焼「死合は、自分が勝手に武器を捨てて放棄したっすけど……あの時、戦いの意味は無かったっすから」アハハ・・・

神裂「……武器を、捨てた?」ハァ?!

浦上「香焼……自殺願望?」キョトン・・・

五和「やっぱりピンチだったんだ……私の所為で……」シュン・・・

香焼「だから誰の所為でも無いって言ったろ……意味の無い戦いだったから、放棄した。それだけっすよ」


そこにあったのは、自分と彼女の『命』を剥き出しにした戦いだけ。それをただ天瓶に掛けただけだ。


香焼「武器を離さなければ……如何あっても淡希さんを殺してしまってた」

浦上「馬鹿ね……優し過ぎるわよ、香焼」

香焼「五月蠅いなぁ。兎に角、結果的に淡希さんと仲良くなれた。それでいいじゃないっすか」ニコッ

神裂「楽観的な……そう理由が理由だと、怒るに怒れませんよ」ハァ・・・


誰も悪くない。為る様になっただけだ。
169 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 09:34:50.69 ID:HwyG+qya0
浦上「ま、大能力者の空間移動能力者……だっけ? その人追い詰めた点は、自慢できるカナ」クスッ

香焼「いや、淡希さんも本気じゃなかったし。本気出されてたら多分……」


……淡希さんのペットコースだった。


神裂「は? ペット、ですか?」ポカーン・・・

五和「殺されてたんじゃなくて?」キョトン・・・

香焼「い、いや、何でも無いっす!」アハハ・・・

浦上「香焼……またフラグ立ててきやがったわね」ボソッ

ぬこ「にゃーん」フシフシ


また馬鹿にされたんじゃ堪ったもんじゃない。


神裂「……まぁ深くは追求しません。貴女達も駄目ですよ」チラッ

五和「分かってます」コクッ

浦上「……」コクッ


学習したようだ。喧嘩の火種は作らない。


浦上「うんしょ! それじゃあ皆さん、結界解いていいですか?」チラッ

神裂「いいでしょう。長時間結界を張るとアレイスターにグチグチ言われますからね」

五和「それじゃあこの後4人でお昼でも行きますか」

浦上「そだね……カオリ姉さん、その恰好で?」

神裂「いつもの事でしょう」


もう周りの目線も慣れたものらしい。流石、聖人だ。レベルが違う。


五和「何処行きたい? コウちゃんの好きなとこで良いよ」ニコッ

香焼「五和が優し過ぎて怖い……」

五和「私はいつも優しいよ」ニコニコッ

浦上「馴れ馴れしいのもいつも通りだよネ……って、アレま?」ドキッ!?

神裂「どうしました?」

浦上「……結界が勝手に壊れちゃった」アララ・・・

香焼「術式ミスっただけじゃないんすか?」

浦上「うーん……五和と張ったから問題無いと思うんだけど……」ポリポリ・・・


となると、考えられるは二つ。一つは魔術師によるハッキング。もう一つは……
170 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 09:54:44.06 ID:HwyG+qya0
上条「あれ? 何か変だと思ったら……神裂達だったのか」テクテク

神裂・五和「「か、上条当麻(さん)!!?」」ドキンッ!!


誰かさんが結界に触れたか、だ。


上条「公園に違和感あるなーって触っちゃったんだけど……拙かったか?」

神裂「い、いえ。今出る所だったので」アハハ・・・

五和「か、上条さんは何故此処に?」ドキドキ・・・

上条「ああ。午後から補講でさぁ。休みなのに補講って……不幸だよなぁ」トホホ・・・


どんだけ成績悪いんだ、この人。


上条「ん? ……香焼」チラッ

香焼「え、あ、はい」

上条「何だか大変だったみたいだな。大丈夫だったか?」

香焼「あはは。御心配お掛けしたようで」ポリポリ・・・


そういえば、この人と姫神さんにばれたんだっけ。


上条「まったく、仲良くしろよ。喧嘩程度なら仲裁頼まれてやっても良いからな」ニコッ

浦上「そですネ。上条さんが仲裁なら一発で収まりますヨ」チラッ

神裂・五和「「……あはは」」タラー・・・

ぬこ「なぅ」コロコロ


今度から絶対頼もう。我が家の平和の使者、上条当麻。


上条「あはは。平和の使者か。面白いな、それ……おっと、そろそろ急ぐわ」

香焼「はい。土御門と姫神さんにもよろしくお伝えください」ペコッ

上条「おう。あと……別に俺(男)んとこ頼ってくれても良いんだからな。インデックス居るけど、アイツは気にしないからさ」ボソッ

香焼「え、あ、あはは……そうっすね。今度はお邪魔するっす」クスッ・・・


こっそり耳打ちしてくれる上条さん。同じ苦労を知ってる人だ。


上条「それじゃ、またな!」バイバイ!

神裂・五和「「ま、また近い内に!」」ウンウン!

上条「おう。いつもインデックスが楽しみにしてるよ。んじゃ!」タッタッタッ・・・


颯爽と駆けて行く普通の高校生。あの人こそ、本当に優しい人だろう。
171 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 10:12:12.56 ID:HwyG+qya0
浦上「香焼のカミやんレベルが上昇しました」コソッ

ぬこ「みー」フリフリ


そして相変わらず意味不明な浦上。


香焼「じゃあ行こう。近場のファミレスで良いっすよ」

浦上「お! いいね! 先導して頂戴な。文(もん)無しさん」ニヤッ

香焼「うっ……」

五和「ははは。いいよいいよ。今日ぐらい奢るから」ニコッ


申し訳無い。


浦上「じゃあ最近ドリンクバーの使い方覚えたらしいカオリ姉さんと一緒にファミレス行ってみよー」ニヤニヤ

神裂「ちょ、何でそれを!」ドキッ!

五和「姉さん、この前酔った時自分で言ってましたよ」クスッ

神裂「ぬ、抜かった……」カアアァ・・・///

ぬこ「にゃん!」


そういえば、子猫(コイツ)がいた。どうしよう。


浦上「あー、ダイジョブダイジョブ」ニコッ

香焼「え?」

浦上「おいでおいでー」チチチ・・・

ぬこ「んなー」トコトコ


浦上は猫を掴むと……少し大きめな自分のバックの中に入れた。


香焼「ちょ!?」ドキッ!

浦上「よしよし。顔出して良いよー」チョンチョン

ぬこ「にゃぅ」ヒョコッ


……オマエは蛇使いか?


五和「ウラの変な特技だよね。猫とか犬とか扱い上手いの」

浦上「あはは。教会の裏が野良畜生の溜まり場だったからネ。まぁこれで大人しくさせてれば、ばれないヨ」ニコッ

神裂「浦上の旧教会ですか。懐かしいですね」フフッ・・・


身体はでかくなっても心は子供のままか。そうありたいけど、そうも言ってられないからなぁ。
なんて、昔話に華を咲かせつつ、自分達は公園から一番近いファミレスにのんびりと向かった……―――
172 :第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 [saga]:2011/03/11(金) 10:23:02.18 ID:HwyG+qya0
 <おまけっ!>


 ガチャッ・・・・・


月詠「おかえりなさい」ニコッ

結標「うん、ただいま」

月詠「お姉さん達と仲直り出来そうでしたか?」

結標「大丈夫よ。似た姉弟だもの。すぐ仲直りするわ」

月詠「そうですか。それは良かったです」ニコッ

結標「……」

月詠「……寂しいんですか?」

結標「べ、別に……いや、そうね。台風一過ってヤツかも」フンッ

月詠「あらら。珍しく素直です」クスッ

結標「……何だか調子狂いっ放しだわ」ハァ・・・

月詠「ふふふ。楽しそうですけどね」

結標「……小萌」ボソッ

月詠「はい」

結標「……いつも、ありがと」ボソッ・・・///

月詠「え」

結標「……何でも無い! 昼寝する!」ゴロンッ!

月詠「……ふふふ。じゃあ先生も一緒しちゃいまーす!」コロンッ!

結標「ちょ、く、くっ付かないでよ!」///

月詠「えへへ。良い子良い子」ギュッ

結標「も、もぅ……仕方ないんだから」///

月詠「そうですよー。仕方無いんですよー」ニコニコ・・・











冷蔵庫『おーわーりーじょーうっ!』ビシッ! 
185>>1 :2011/03/28(月) 19:46:15.76 ID:w4Xj2QWF0
こんばんは! やっと落ち着いた……だけど、まだ新約買えてないのょ(´;ω;`) 
 <主な登場人物⑤>

・ステイル=マグヌス……香焼と一番歳の近い必要悪の教会(ネセサリウス)男メンバー。準レギュラー。カミやん病はLv.3くらい。
      14歳、年齢でいえば中学2年くらい。しかし所謂天才故、学校になど通ってる訳が無い。身長2m超えのヘビースモーカー。
      呼称は……ステイル、不良神父、マグヌス神父、等々。

      必要悪の教会所属の魔術師。役職的には主教補佐。魔法名は『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』。
      合理・禁書目録主義、ツンデレ。必要悪の教会では立場実力ともにトップクラスなのだが……誰かさんの所為で性格は丸くなった。
      英国と都市を行き来している為、香焼とは頻繁に顔を合わせる。彼を煙草仲間にしようと試みる一面も。傍から見ればラブラブ?
      香焼曰く『友達』だが、本人は『仕事仲間』と中々のツンデレっぷりを発揮してる。(以下追々付け足していきます)


・アニェーゼ=サンクティス……同じく準レギュラー的ポジション。そのうち『カミやん病』患者の被害者になる……誰かと似てるね!
      年齢は12歳で香焼と同学年程度。彼女も天才故、学校に通う必要無し。間違った敬語少女。普段Sだが、だからこそ打たれ弱い。
      呼称は……アニェーゼ、アニー、シスター・アニェーゼ、アニェーゼちゃん、アグネス、見栄っ張りチビ、等々。

      ローマ正教のシスターだが必要悪の教会預かりの身。リーダーを務めるアニェーゼ部隊は一応健在。『蓮の杖』を武器とする。
      性格は御転婆で我儘横暴、微エロ。必要悪の教会内での実力はそれなりに位置するが、立場は外様という事で下っ端。
      英国に来てからは前ほど『汚れ仕事』を押し付けられはしないが、英国人が手を付けたくない仕事を回されている様である。
      このSSではアンジェレネ、サーシャ、レッサーと組んで馬鹿騒ぎする事が多い。

      余談だが『どっかの世界』で香焼と[らめぇぇっ!]ってうわなにをするやめ[禁則事項です]……(以下追々付け足)


・アンジェレネ……準レギュラーかも。ポジション的には香焼と同じくツッコミ系。男性免疫が少ないが、香焼は別。男の娘と思ってる?
      年齢はアニェーゼの1つ下。アニェーゼと同様、ローマで義務教育程度は難なく叩き込まれてきた。立場は元々下っ端。
      呼称は……アンジェレネ、シスター・アンジェレネ、アン、わんジェレネ、等々。

      経緯の殆どはアニェーゼと同じ。『十二使徒マタイの伝承』を基にした硬貨袋を触媒とする魔術を使用。ファンネ○ミサイ○!
      性格は柔和だが人見知り、以外と俗っぽく偶に黒い。強くはないが弱くもない、実力は香焼くらい? 度胸はあるようだ。 
      数少ない常識人だが場に流される事も多々。アニェーゼにべったりだが彼女が本当に拙い事を仕出かそうとするとストッパーに。
      他人の気持ちに敏感故、空気を読める良い娘。なので朴念仁の香焼にイラッとする時もある。(以下追々付け足)


・サーシャ=クロイツェフ……準レギュラー? 4人娘の中で一番キャラ付けが難しい。さーせん。この子もカミやん病患者の被害者かも。
      13歳。ステイルらと同じで義務教育はすっ飛ばしている。立ち位置が繊細過ぎて本人も身の振り方に困っている。
      呼称は……サーシャ、シスター・サーシャ、クロイツェフ、真・堕天使エロシスター、等々。

      ロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』所属メンバーの戦闘修道女。必要悪の教会には上司(変態)の命令で足を運ぶ。
      性格は生真面目で寡黙、意外とお茶目。秘めたる力と立場が尤も釣り合わないが、香焼の『友人論』からすれば関係無ぇ状態。
      数多の拷問具を携帯していて、最近のお気に入りは香焼に買って貰った都市製のプラズマカッター。 ( 韭)ノ====))
      アニェーゼやレッサーとつるんで以降、大分朗らかになってきた。だけど上司が相変わらずで……(以下追々付け足)



・レッサー……準レギュラーっぽい。時系列的に出てくるとややこしくなるがネセサリウス・チビッ娘同盟には必要! 御了承下さい。
      年齢は13歳。義務教育は多分放棄したタイプ。立場は嘱託魔術師という感じ。だがステイル並にイギリス愛国者。
      呼称は……レッサー、レッサーちゃん、小悪魔系痴少女、変態、等々。

      魔術結社予備軍『新たなる光』所属メンバー。『鋼の手袋』を武器とし、特殊な霊装を常備している。尻尾は飾りじゃないよ。
      性格は横暴で大雑把、エロい。同年代ではアニェーゼと同程度の強さ。立ち位置はあくまで嘱託。他の嘱託はオリアナ等。 
      リーダーであるベイロープの目を盗んではアニェーゼ達と屯してる。御蔭でルチアとベイロープは胃薬常備らしい。
      香焼に対して上条当麻と「同じ匂い」がすると言って勝手にターゲットとしている。彼を脱がせたり着せたり、色々……フヒヒ!
      しかし、香焼に色目を使う度『何故か』他三人がキレる……何でだろうね!(以下追々付け足していきます)


それじゃあ久しぶりに投下! どーん!っ 
186第5話――アニェーゼ・アンジェレネ・サーシャ・レッサー『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 19:53:17.04 ID:w4Xj2QWF0
 ―――とある日、AM11:00、英国、ランベス宮、女子寮・・・・・



午前の職務を粗方片付けた主教補佐次席……神裂火織は昼食までの間、寮の方へ戻る事にした。

基本的には都市ではなく英国、必要悪の教会内に居る事の多い彼女。
天草内では『女教皇』、必要悪の教会内では『主教補佐次席』と割と忙しい身。
時には仕事(主に主教の我が儘を聞く係)で英国に。本職(天草の『老人』共を黙らせる)故九州某所に。そして『様々な理由』で学園都市に。


神裂「せめて身体がもう一つ欲しい……」ハァ・・・


聖人とはいえ、歳にして18。厳しい生活だった。

さておき、今回英国に戻ってきた理由は二つ。
一つは主教様への定期報告。もう一つは例の馬鹿上司の『我儘病』が発動した為、戻らされた。

『数日英国より離れる故に、留守番を頼み設けるかしら?』って……せめて何処行くか告げてから消えろあのBBA。定期報告も出来ないわ。

ちなみに勿論『主教補佐(ステイル)』も一緒に英国に。それから五和達天草学徒も連れ帰っている。建宮が用有りとか何とか。


オルソラ「あらあら。St(サンタ).神裂、溜息でございますか? お疲れでしたらハーブティーでも如何でございましょう?」ニコッ

神裂「オルソラ……ええ。頂きます」コクッ


もはや寮長的存在のオルソラ=アクィナス。朗らかな彼女はマイペースな所を抜けば、纏め役としてピッタリだろう。
ローマの御方だが到仕方ない。他の輩は問題児過ぎる。
まぁ年齢不詳の彼女は実質、シェリー=クロムウェルと同い年くらいと噂があるので寮長には妥当かと――


オルソラ「……お待たせ、いたしました」ニコニコニコニコニコニコ・・・


――笑顔が、怖い……ごめんなさい。二度とそんな事考えません。


オルソラ「しかし最大主教はドチラへ向かわれたのでございましょう。何か重要且つ特秘な会議にでも……」ウーン・・・

シェリー「存外、アメリカ西海岸で日光浴とかだったりしてな」ハハハ

ルチア「仮にも巨大宗派の一、主教ですよ? そんな訳……無いとは言えませんね」ハァ・・・


確かに……もしバッキンガム宮で騎士団長殿が騒いでいたら、女王陛下と共に消えてそうな可能性は否めない。
ロシア成教の某機関トップも一緒だったら、完璧バカンスだ。


オリアナ「良いわねぇ。お姉さんもカリフォルニア辺りで焼いて来ようかしら」ウフフ

オルソラ「まぁまぁ! それはそれは素敵な提案でございますね。皆さんで慰安旅行と洒落込みましょう」ニコッ

神裂「そんな余裕有る訳無いでしょう……」ハァ・・・


金も、時間も無い。いや金は一同使ってないから溜まっているか。


ベイロープ「行くならオーストラリアの方が良いわ。アメリカ汚いもの」フフッ

ルチア「そういう問題じゃない。というか嘱託組、今日は呼ばれて無いでしょう? 何故居るのですか?」ジトー・・・

ランシス「何故って……何でかな?」ポカーン

フロリス「ルチアっちぃ。用が無くちゃ来ちゃダメなの?」ツンツン

ルチア「用が無ければ来れる場所じゃないでしょう、ランベス宮内部は。あと太腿突くなアバズ女郎。貴様もだ、浦上!」ギロッ!

浦上・フロリス「「きゃー(棒読み)」」ナデナデ

五和「し、シスター・ルチア。落ち着いて」ドゥドゥ・・・


まったく相変わらず姦しい所だ。女子寮だから当然っちゃ当然だが。
187 :第5話――アニェーゼ・アンジェレネ・サーシャ・レッサー『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 19:55:14.87 ID:w4Xj2QWF0
兎角、昼食まで小腹を詰めながら雑談等をして時間を潰した。浦上は相変わらずだが、五和の猫被りがいつも以上に冴えてる。
こんな時間が貴重だと感じられるようになったのも『彼』の御蔭だろう……感謝してもしきれない。

いつまでも平穏が続けば良い。人間とはそう願ってしまう―――



 ドッゴオオォーンッ!!



―――が、大抵そんな事を考えるタイプには平穏が訪れてくれないものだ。


神裂「何事ですか!?」バッ!

シェリー「隣の聖堂からだな……必要悪の教会メンバーのみ入れる礼拝堂だぞ?」ジー・・・

オリアナ「音だけで特に被害は見えないけど……襲撃?」フム

ルチア「何を呑気な! 誰か調査に向かっているのですか?!」キッ!


私が――と七天七刀に手を掛けた瞬間……固定電話が鳴った。ランプが光っているのを見るに、ホットライン。
オルソラが能天気に対応を始めた。


オルソラ「はいはい。此方女子寮でございますよ。ドチラ様で――」

シルビア『シルビアよ! まったくあの馬鹿ガキ共が!!』ギャーギャー!

オルソラ「あらまぁ、St.シルビア。ごきげんよう。今日は洗濯物が良く乾きそうでございま――」

シルビア『誰かオルソラと代われー!! 話通じないっ!!』ギャー!


怒声が漏れてくる。やれやれとシェリーが重たい腰を上げた。


シェリー「あいよ。如何した? カチコミか?」

シルビア『違う! ガキんちょ共よ!』ハァハァ・・・

シェリー「……ガキ?」ハ?


ガキというと……


シルビア『チビ共! カルテッ娘! それから天草のコォヤギ坊やとステイル……あ! 見つけた悪ガキ共! 切るわよ!』プツン・・・

シェリー「……だそうだ」チラッ


数名は苦笑。そして三名程……


五和・ルチア・ベイロープ「「「……」」」スタッ・・・


ゆっくり立ち上がり、武器を手にした。
188 :第5話――アニェーゼ・アンジェレネ・サーシャ・レッサー『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 19:58:29.92 ID:w4Xj2QWF0
オルソラ「皆さま、加減を忘れずに」ニコッ・・・

フロリス「リーダー。『角』必要?」ハァ・・・

浦上「……お姉、程々にね。どうせ香焼が原因だけど『元凶』じゃない筈だから」ハァ・・・

ランシス「うん。多分香焼くんとステイルさん、アンジェは暴れてないよ。サーシャは微妙だけど」アハハ・・・

オリアナ「まぁ主にいつもの『御転婆娘コンビ』でしょうね」クスッ


周りの言葉を聞いているのか流しているのか……三人は無言で扉に向かう。そして……


ルチア「あんの糞ガキいいいぃっ!! また隊長とアンジェレネ誑かしやがってぇ!!」ダッ!!

五和「コウちゃーん! 今助けるわッ!! あの虐めっ娘共おおおぉっ!!」ダッ!!

ベイロープ「レッサー……一掃すれば問題無しね。まとめてお仕置き」シャキンッ!!


二名程シスコン、ブラコン。一人は危険思考。最大限の高速術式を行使して、駆けて行った。


神裂「……私も行きますか」ハァ・・・


彼女達だけでは余計大変な事態になりかねない。というか聖堂が壊れる。
それにステイルとサーシャが一緒というのも拙い。二人がキレたら私以外止めれないだろう。


オルソラ「では私も御一緒いたしましょう。なるべく穏便に……でございましょう」ニコッ・・・


笑顔が怖い人が一緒に来てくれるらしい。こんな時は助かる。


シェリー「とりあえず早めに終わらせろよー。昼飯前だ」ヨイショッ

オリアナ「そうね。さっさと済ませて頂戴な」スッ・・・


一部の者からすれば、もう慣れた風。残った者にこの場と昼食の確保を頼み、我々も聖堂に向かった。




 ―――とある日、PM00:00、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・大廊下・・・・・




走る、隠れる、止まれない。

本来食堂に集合し、食前の祈を囁いていなければいけないこの時間に如何して自分は逃げなければいけない?
簡単な話だ……捕まったら何をされるか分かったもんじゃない。


アニェーゼ「こらああぁっ!! 待ちやがれってんですっ!! わんこーやぎ! そいつ寄越せー!」ズゴゴゴ!

香焼「嫌だあああぁっ!!」タッタッタッタッ!!

サーシャ「第三の警告です……さっさとブツを渡したら如何です? 無論、私にですが」ジトー・・・

レッサー「自分から追い詰められる選択をするなんて相当なMですねっ!! 良いでしょう、お望みとあらば調教ですっ!!」ニヤリ!


魔術やら打撃やらで自分を追撃してくるアニェーゼ、アンジェレネ、サーシャ、レッサー。別名、必要悪の教会カルテッ娘(カルテッコ)達。
誰一人として本属の必要悪の教会メンバー(英国清教徒)ではないが、教会内で仲の良い4人故に誰かがそう呼びだした。

さておき彼女達は現在、自分とステイルが持っている『あるモノ』を奪い取ろうとしている。
シルビアさんがこの騒動の原因を自分の所為だと騒いでるが……ふざけるな。元はと言えば彼女達の所為だ。
189 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:10:10.28 ID:w4Xj2QWF0
香焼「渡したら渡したで喧嘩するだろお前ら! うわっ! 危なっ!!」ウワーン!

アンジェレネ「コォヤギくーん……たいちょー……もう走るの疲れましたぁ」タタタタタ・・・

ステイル「ハァハァ……僕も、疲れた……というか……ゼェゼェ……何故、僕まで巻き込まれなきゃならんのだ」ハァ・・・ハァ・・・

香焼「おま、友達見捨てるのか!?」フコウダー!!


そう言いながら一緒に追ってくるアンジェレネさん。しかも疲れたとは口だけ、ステイルとは違い余裕の表情。
そして6人の中で一番死にそうな表情をしている体躯の少年、ステイルさん14歳。煙草止めろっつぅの。


ステイル「ゼェ……もう、いい……コイツを、渡す……」グダグダ・・・

香焼「渡したら禁書目録に煙草の本数増やした上、もっと危ない煙草に変えたって告げ口してやる」ギロッ!

ステイル「そんな事、してみろ……ハァハァ……消し炭すら、残さず……ゼェゼェ……」ヘトヘト・・・

香焼「月詠さんにも同じ事言ってやる!」ギロッ!

ステイル「マジで……ひぃ……ふぅ……止め……ハァ……」ワトト・・・

アンジェレネ「マグヌスさーん。これ以上喋ったら死んじゃいますよー。走るの集中して下さーい」タタタタ・・・


これだからヘビースモカーは……


アニェーゼ「良しっ! 似非神父から狙いましょう!! 既にダウン寸前です!」スチャッ!

サーシャ・レッサー「「了解っ!」」スチャッ!

アンジェレネ「三人ともエグいねー」ニコニコ!


各々武器(蓮の杖、硬貨袋、バールの様なモノ、鋼の手袋カスタム)を構える。
拙い。ステイルは死に体だ。


香焼「っ! ステイル! 火ぃ貸して!」スッ・・・

ステイル「何、を……」ハァハァ・・・

香焼「いいからっ! あと耳塞げ!」チラッ!


億劫そうに革カバーの高級そうなライターを放って来るステイル。
自分はそれを受け取り……『あるモノ』に着火。そして―――



 カァッ!! キイイイイィーン・・・・・



カルテッ娘『うわぁっ!』ビクッ!!


―――後ろに放り、4人の動きを止めた。


香焼「ステイルこっち!」グイッ!

ステイル「うぐっ……オマ、さっき……何投げた……」ジトー・・・

香焼「都市製の乱聴弾と閃光弾を混ぜた特注弾。いいから隠れるぞ!」ダッ!

ステイル「……ったく」フコウダ・・・


最愛から貰った悪戯ボールが役立った。一応失聴や失明はしないとの事。
その場で悶えている4人を後目に近くの男子トイレへ逃げ込んだ。後で謝るから、今は隠れよう。

しかし、如何してこんな事態になったかと言うと……―――
190 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:13:23.41 ID:w4Xj2QWF0
                     <回想>


 ―――とある日、AM10:50、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



天草学徒にとって英国の居る時間と都市に居る時間は、年間にして丁度半々くらいと調整されていた。
そんな訳で、此方に居る連中とも仲が良かったりする。友達の数でいえば英国の方が多いだろう。


ステイル「ん? 香焼か……早いな。昼食までまだ一時間はあるだろう」テクテク・・・


そんな交友関係の中、コイツとだけはアッチもコッチも一緒になる機会が多い。


香焼「頼まれモノっすよ。お使いの品寄越せってね」ハァ

ステイル「まったく、態々あの喧しいチビ共のパシリなどしてやる義理もなかろうに。アッチでもコッチでも使いっ端とは」フンッ

香焼「お使いと言え、お使いと。てかステイルも早いっすね」

ステイル「ああ。ローラが紙切れ一枚で消えただけだからな。今に始まった事では無い」

香焼「あはは……大変だね」

ステイル「神裂には言ってないが、女王陛下も消えてる。しかも余計な事に全権を『あの方』に任せるとは……何考えてんだあのババア」ハァ・・・

香焼「女王陛下をババア呼ばわりって……」タラー・・・

ステイル「皆言ってる事だろう。気にするな」


最大主教も最大主教(問題人)だが、主教補佐も主教補佐(冷酷)だ。苦労するのは女教皇様だけだろう。


ステイル「それよりコーヒーが欲しい。香焼」スッ・・・チラッ

香焼「はいはい、補佐殿……って、此処禁煙だぞ」ジトー・・・

ステイル「ローラがいないから僕が法(ルール)さ」ニヤッ


悪い笑み。絶対碌な死に方しないぞ。


香焼「やれやれ……あ、じゃあコイツ見てて」スッ

ステイル「ん? コイツは……」ジー・・・

ぬこ「みー」ニュッ

ステイル「……都市から連れてきたのか?」ムゥ・・・


仕方なかろう。誰も預けられる都合がつかなかったのだ。
最愛は元々無理だし、月詠さん家は二人ともお出かけ中。他の学徒は一緒に帰ってきてるし、上条さん土御門に頼むのは忍びない。

という訳で、女教皇様のプライベート機にコイツの同乗をお願いしたのだ。


ステイル「飼ってもいないくせに、よくもまぁ……色々面倒だろう」フム・・・

ぬこ「にゃー」ヨジヨジ・・・

香焼「飼い主が見つかるまでっすよ。てかステイル懐かれてるね」クスッ

ステイル「……よせ。柄じゃない」ハァ


肩に登ろうとする子猫を持ち上げ、テーブルに降ろす2m超。
自分は二人分のコーヒーを入れた後、どっかり座るステイルの下へ戻った。
191 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:19:42.12 ID:w4Xj2QWF0
それから暫く、子猫とステイルのほのぼのやりとりにニヤニヤしながら、人を待った。


ステイル「ふぅ……お? コイツ、煙草を嫌わないのか」モクモク・・・

ぬこ「なー」ペチペチ

香焼「猫パンチしてるって。多分、嫌がってんすよ」ハハハ

ステイル「いや、これはコイツなりの好意表現だな。現に煙を掻き集める様に、こう」クイクイッ

香焼「煙を掃ってるんだろ」クスッ

ステイル「なら普段一緒に居るオマエが煙草を喫えば事の真意が分かるぞ。ほら」スッ・・・


また愛煙布教活動が始まった。勘弁してくれ。


ステイル「モノは試しだ。一本だけ、火を付けて咥えるだけで良い。吸わなくて良いから、な」ニヤッ・・・

香焼「やだ」ウヘェ・・・

ステイル「じゃあ命令。僕が法だぞ? 喫え」ニヤニヤ・・・

ぬこ「みー」ジー・・・

ステイル「ほら、コイツも喫ってみろって言ってるぞ?」


絶対言ってない。何というパワハラ。


香焼「人事部にパワハラ被害提出してやるぞ」ジトー・・・

ステイル「アイツらはガキの遊び程度にしか捉えないよ。ほら早く咥え―――



               ゴチンッ!!



        ―――ろっぐ、つぅッッッッ~~~~ッ!!?」ガンッ!!

ぬこ「にゃんっ!!?」ビクッ!! スタタタタ・・・


突如、頭蓋を踵落としされるパワハラ上司。ざまぁ見ろ。
だがついでに、子猫が驚いて逃げてしまった。


ステイル「……誰だ、オイ」ギロッ・・・

アニェーゼ「誰だ、じゃねぇです。人の使い魔もといペットを悪道に引き摺りこむな、この不良神父」ジトー・・・


待ち人が来た。
助かったが……誰が使い魔だ。色々危ないからそういう事言わないの。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 20:22:58.22 ID:+fONqZQDO
おおぉ‥‥>>1、復活ッッ!!
>>1、復活ッッ!!
>>1、復活ッッ!!
193 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:31:08.69 ID:w4Xj2QWF0
先頭に立つアニェーゼの後ろから3名、同じくらいの身長の少女達が連いてくる。


アンジェレネ「ま、マグヌス神父。此処は禁煙ですよ? コォヤギくんも止めなきゃ駄目です」メッ!

ステイル「……あ?」チラッ

アンジェレネ「はぅ……」スッ・・・


アンジェレネ、怯え過ぎ。ステイルは睨んだ訳じゃない。振り向いただけだ……人相が悪いのは仕方ない。

因みにこのメンツで集まる時は皆フランクに呼びあっている。
アンが自分をくん付けで読んだり、アニーやレッサー、サーシャをちゃん付けで読んだりするのがその例だ。


アニェーゼ「アンを虐めんな、この[ピーーー]野郎! 金○、ブっ潰しますよ!?」アアァン!?

ステイル「ハァ? ……上等だ。格の違いを教えてやろう、この[ピーーー]チビ……灰すら残さず消してやる」ギロッ・・・

香焼「ふ、二人とも。落ち着いて……アンも大丈夫でしょ?」

アンジェレネ「う、うん。アニェーゼちゃん、私は大丈夫ですから」

ステイル・アニェーゼ「「……ふんっ」」チッ・・・


犬猿の仲。どうして仲良くできないかなぁ。


サーシャ「第一の考察ですが、同族嫌悪というヤツでしょう。確かワシリーサが言っていた『ツンドラ』ですね」フムフム


ツンデレね。君の祖国の北側じゃないよ。


アニェーゼ「サーシャ……コイツと一緒にしないで下さい。もっと愉快な痴女衣装に改造してやりますよ」ジトー・・・

ステイル「おい、赤色(ロシア人)。いくら客人とはいえ言葉を選べ。死体になって永久凍土に帰りたくは無いだろう?」ジトー・・・

サーシャ「第一の訂正ですが……罵倒使い(スラング)も一級品(同レベル)です」ハァ・・・

ステイル・アニェーゼ「「一緒にすんな!!」」ガアアァッ!!


どっちもどっちだ。サーシャが正しい。


レッサー「にしし! こういうのって日本語で何て言うんでしたっけ? えっと……う●こち●カス?」クスクス・・・

香焼「目糞鼻糞。レッサー、ワザと間違えたろ?」ジトー・・・

レッサー「失敬失敬。しかーし……男同士で『吸え』だの『咥えろ』だの『先っぽだけ』だの、何おっ始めるつもりだったんですか?」kwsk!


頭が緩い奴も一緒の様だ。誰も『先っぽ』だなんて一言も言ってない。
それからアンとサーシャ。無言で赤面しないの。


アニェーゼ「まったく、相変わらず不貞の極みですね。レッサー」ハァ・・・

レッサー「そう? じゃあ不貞ついでに……」ゴソゴソ・・・ガシッ!

一同『っ!!?』ビクッ!?

香焼「ちょ、レッサー! レッサーさん!? 何してんの!? 何で自分のベルト掴むの!?」ジタバタ!

レッサー「コウヤギにゃんの[ピーーー]を私が[らめぇぇっ!]してあげようかなぁとかぁ痛あああぁっ!!」ゴギンッ!!


流石のアニェーゼも直接的な表現はアウトらしい。赤面しながら綺麗なローキックを叩き込んだ。
194 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:39:15.81 ID:w4Xj2QWF0
床で悶えるレッサーを捨て置き、一同、席に着く。


アニェーゼ「ああ、もぅ……コーヤギ。私もコーヒー! 砂糖ミルクいっぱいの!」ドカッ!

ステイル「図々しい奴。自分でやれ」フンッ!

アニェーゼ「アンタに言ってねぇです。コーヤギ、早く」チラッ

香焼「はいはい……アンとサーシャは?」

アンジェレネ「私は手伝います。サーシャちゃん、ココアで良い?」

サーシャ「第一の回答ですが、肯定です。お願いします」ペコッ

ステイル「まったく女の尻に敷かれる奴だ……香焼、僕もおかわり。チビガキと違ってブラック濃いめで」フンッ

アニェーゼ「チッ……調子乗んなっつってんです、枯渇不能野郎」ガタッ・・・

ステイル「あ? 僕の聞き間違いかな……コーヒーと厚底ブーツで見栄張る幼女(ロリータ)さん」スゥ・・・


いい加減にしろ……『怖い大人』呼ぶぞ?


アニェーゼ「それは……」ウッ・・・

ステイル「勘弁してくれ……」タラー・・・


分かれば宜しい。


香焼「レッサーは、サイダーだっけ?」チラッ

レッサー「痛たぁ……酒あれば酒。厨房の奥に料理長が隠してるラム酒がある筈です」ポリポリ・・・

アンジェレネ「うん、駄目です。お水持ってくるね」ニコッ

レッサー「……サイダーお願いします」ハァ・・・


やれやれ、やっと落ち着いた。とりあえず飲み物を持ってきてから渡す物を渡そう。



 ―――とある日、AM11:10、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



自分とアンが飲み物を持ってテーブルに戻ると、アニーとステイルはまだ睨み合っていた。
最早いつもの風とサーシャ、レッサーは苦笑。とりあえず全員に飲み物が行き渡り一息ついた所で、都市から買ってきた土産を取り出した。


アニェーゼ「おお! そうでした! ちゃんと買ってきましたか?」ジー・・・

レッサー「忘れてたらオシオキですからねぇ……個人的にはそっちもアリですよ?」ニシシ!

香焼「忘れてないよ……えっと、まず全員分の……」ゴソゴソ・・・


ダンボールいっぱいの菓子類。都市、というより日本でしか手に入らない菓子・ジュースだ。
英国の菓子等はハッキリ言って……雑。味の濃さだけで誤魔化している節が否めない。


ステイル「……日本の駄菓子? あと都市製の飲料か」ジー・・・


故に、コッチの人間からしてみれば日本の菓子類はかなりの嗜好品となる。4人は挙(こぞ)ってダンボールの中身に目を輝かせた。


サーシャ「……チューイングガム。風船ガム。チューブガム」パアァ!

レッサー「いやぁ、これだけあれば二週間は腹持ちしますねぇ……ご褒美は何が良いですか? [らめぇぇっ!]? [禁則事項です]?」ニコッ

香焼「い、いらないよ……」アハハ・・・


アニーがまた睨んでるぞ。
195 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:45:49.05 ID:w4Xj2QWF0
香焼「次は……アニーとアンの分だね」スッ・・・


リュックから数冊の本を取り出す。


アニェーゼ「待ってました! 新作4つですね!」ワクワク!

アンジェレネ「カナミンの新刊も溜まってたもんね!」ワクワク!

香焼「スピンオフ版も買ってきたっすよ」

アニー・アン「「わぁい!」」キャッホー!


二人が手にしたのは『超機動少女カナミン』という学園都市発の人気漫画だ。世界中で愛読者がいるベストセラー本。
今は第三期に突入し『カナミン:ディファレンシャル』という名前だ。

もともと浦上が買っていたモノを教会内の数名に読ませたら、瞬く間に人気になったのである。


レッサー「二人読み終わったら、次貸して下さいねー」ヨヤクー!

ステイル「君達は子供か……」ハァ

アニェーゼ「ふんっ。大人ぶってコレの良さが分からない枯れた14歳になるくらいなら、子供で結構ですよ」ケッ

アンジェレネ「読んでみれば面白さが分かりますよ。今度貸してあげましょうか?」ニコッ

香焼「……本気で言ってるの?」タラー・・・

アンジェレネ「ええ」ニコニコ!

ステイル「……遠慮しとくよ」タラー・・・


アンはたまに恐いもの知らずのトンデモ発言をする。てかステイルがカナミン読んでる姿を想像したら……


レッサー「きゃははは! す、ステイルがか、カナミンだって!! イヒヒヒっ!」ケラケラ!

サーシャ「カナミン……衣装……やめろワシリーサ……」ガタガタ・・・


こうなる。そして何故か怯えるサーシャ。


香焼「ま、まぁステイルは都市行くし読もうと思えば何時でも読めるしね」アハハ・・・

ステイル「読まん」フンッ

アンジェレネ「あらら、残念」フフッ

アニェーゼ「後になって読みたいっつっても絶対ぇ貸さねぇですよ」フーン!

ステイル「読まないって言ってんだろタコ頭」カチッ・・・フゥ

香焼「まぁまぁ……あとステイル」ジトー・・・

ステイル「……ん」チラッ


女の子の前でも平然と煙草に火を付けるのは如何かと。


レッサー「ま、放っておきましょう。肺癌で死ぬのが関の山です」ベー!

ステイル「神がニコチンとタールの世界に召してくれると仰るなら本望だよ」ワッカッカ・・・


そんな神様、封神されてしまえ。
196 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 20:52:21.90 ID:w4Xj2QWF0
香焼「まったく……それじゃあレッサーの分」スッ・・・

レッサー「はいはい!」グイッ!


都市製のリップに香水、ネイルカラー。女子中高生に人気の品だ。


アニェーゼ「レッサー……化粧なんて見栄張って如何すんですか?」ハァ

レッサー「化粧じゃありませんー。リップですー。まったく、少しは御洒落を気にしないと女捨ててるって思われますよ?」

アンジェレネ「でも、私達くらいだと香水とかまだ早いんじゃないかな?」

レッサー「甘い甘い。そういう考えでいると、将来ルチアとか神裂みたいに枯れるんです」

サーシャ「第一の質問ですが、修道女なら別にそれでも――」

レッサー「私シスターじゃないですよーん。それに……ホントに良いんですか? 20前に女して捨てて……ねぇ、サーシャにゃん」ジー・・・

サーシャ「――……むぅ」ウーン・・・


随分失礼な事を言うが多分、オリアナさんの入れ知恵だろう。一部の人間からしてみれば美のカリスマ的存在。
ふと、アンが自分とステイルに尋ねてきた。


アンジェレネ「うーん。男の子ってやっぱり身嗜み気にする?」チラッ

香焼「えっと、人それぞれじゃない? リップくらいなら年相応だけど、若いのに化粧までしてるとね……」アハハ・・・

ステイル「確かに……都市の女学生は正直、匂いキツいよ。アレじゃ御洒落になってないだろうに」

アニェーゼ「んなモンで男釣れると思ってる阿呆は将来売女(ビッチ)確定ですね」ハハッ

香焼「そういう訳じゃないっすけど……ステイルだって香水掛けたり髪染めたり、入れ墨(タトゥ)してるくらいだしさ」ハハハ


瞬時、4人が固まった。自分はしまったと思い、ステイルをチラ見する……


ステイル「……ボケナス」ハァ・・・


……天を仰いでらっしゃった。


サーシャ「第二の質問です。マグヌス……それは地毛では無かったのですか?」ジー・・・

ステイル「答える義務は無い」フンッ

アンジェレネ「え、えっと、魔術的な意味合いなんですよ。きっと」アハハ・・・

アニェーゼ「いやいや、違いますね。きっとイメチェンしたんですよ。地味ぃな黒髪眼鏡だったのがある事をきっかけにデビューとか」ウヘェ

ステイル「勝手な想像をするな!」チッ・・・

レッサー「香水は煙草の臭い消しかと思ってましたが……御洒落とは。もしかしてバーコードとかピアスも御洒落? センス無ぁ!」キャハハ!

ステイル「……燃やすぞ小悪魔」ギロッ・・・

香焼「す、ステイル落ち着いて! 皆もからかわないっす」アワワ・・・


自分が蒔いた種だ。フォローせねばなるまい。


香焼「つ、次。サーシャの!」アタフタ!

アニェーゼ「無理矢理切り替えやがりましたね」ジー・・・

香焼「うっさい! ほら、コレ!」ドンッ!

サーシャ「確認します……1,2,3……丁度7ケースですね。ありがとう」コクッ

アンジェレネ「ええっと……サーシャちゃん。コレ、何?」ポカーン・・・


何やら重々しいケース。自分とサーシャ以外の面々は目を丸くして、それを見詰めた。
197 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:04:20.14 ID:w4Xj2QWF0
サーシャは『第一の説明を……』と外套の裏から『何か』を取り出し、銃を構える様な仕草を見せた。
手に持つ『何か』の形状は、マジックハンドの様な取っ手に二枚の平たい電子器具が重なり付いたモノ。


レッサー「うーんと……はい?」タラー・・・

サーシャ「武器(工具)です」キリッ!

ステイル「随分とデカいな……何の工具だ、それは?」ジー・・・

香焼「都市製の資材切断器だよ。業務用のホームセンターに売ってるっす」


つい先日、自分が買って来てやったモノだ。
都市のカタログだか雑誌を見てコレの存在を知ったらしく、見つけるや否や、普段隠れている目を輝かせて喰い付いてきた。
彼女がこんなに興奮する姿を見たのは初めてだったので、相当興味があるのだと思い、買ってきてあげた所存でございます。


アニェーゼ「資材切断? 何か恰好良いですね! 如何やって使うんですか?」キラキラ・・・

香焼「此処で使ったら危な――」



     ザシュンッ!!



香焼「――いぃいいぃっ!!?」ギョッ!!

ステイル「……な」スパッ!

アニー・アン・レッサー『え』ビクッ!!



     ズガンッ!!



香焼「」タラー・・・・

サーシャ「第二の回答ですが……今の通りです」フフッ・・・キリッ!

香焼「……さ、サーシャ、さん?」ダラダラダラ・・・


注意を促す前に、即行実行しやがった拘束着修道女さん。
二枚の器具の間からプラズマの刃が飛び出す。ステイルの咥えていた煙草がスッパリ切れ、その先にあったテーブルが真っ二つになった。


アニェーゼ・レッサー「「す……凄ぇっ!!」」キラキラ!

サーシャ「第一の解説ですが、オリジナルに術式を組み込んでいるので威力は倍増。科学と魔術のハイブリッド工具(武器)です」ニヤッ・・・

ステイル「こ、の……キチガイ女っ!! 鼻が?(も)げる所だったぞ!!」ウガアアァッ!!

サーシャ「大丈夫です。今や数メートル単位なら外しません」キリッ!

アンジェレネ「あはは……そういう問題じゃないかな」タラー・・・


人に向けて撃ってはいけません。危険です。良い子は絶対に真似しない事。


サーシャ「第二の解説ですが、コーヤギーの買ってきた『コレ』はカッターの刃です」ガチャンッ!


ライフルの弾層を交換する様に、カッターのマガジンを入れ替える拷問具の専門家。あと人の名前をロシアンっぽく呼ばないでくれ。
カッターの『刃』と言うが理論が『科学』故、彼女達に説明しても分からないと思う。正直自分もプラズマという事以外、よく分かってない。

何にしろ恍惚状態のサーシャと、触らせろ撃たせろと騒ぐ御転婆コンビには受けが良かったようだ。
ただしかし……注意せねばなるまい。


香焼「サーシャ……次、危ない真似したら没収だからね」ジトー・・・

サーシャ「あ……すいません。コーヤギー」コクッ


自分の否を素直に認めるサーシャ。悪いと思ったらハッキリと謝る。この子の美徳だろう。
198 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:11:37.35 ID:w4Xj2QWF0
ステイル「今すぐ取り上げろ。十分危険だろ。しかも科学の工具を使うなんて、ロシアの人間は如何してこう……」ッタク・・・

サーシャ「……マグヌス。第一の意見ですが、祖国は関係ありません」ジトー・・・


ステイルも大概、選民思想が強いタイプだ。自分も彼のそういう所は苦手である。


ステイル「兎に角、君の魔術というか戦闘というか……スマートじゃないよ。もっと分別ある……」グチグチ・・・

アニェーゼ「五月蠅ぇ野郎です。火炎馬鹿一筋に言われたくねぇですよね」ケッ

ステイル「……何だと?」ギロッ・・・


またこの二人は……


香焼「ステイル。アニー」ジトー・・・

ステイル・アニー「「……チッ」」フンッ

香焼「まったく……これやるから機嫌直せ」スッ


こっそり、ステイルに某所で購入した禁制煙草をくれてやる。


ステイル「お。これは……まぁ、許してやろう」フフフ・・・


コイツの扱い方も慣れてきた。
4人に冷ややかな目をされたが、仕方あるまい。ステイルを黙らせる最も効果的な手段なのだ。

それから各々、手にした品を読んだり開いたり嗅いだりしていた。
一寸後……ふとレッサーが、サーシャの工具をマジマジ見詰めだし、グチグチ言いだした。


レッサー「サーシャのそれ、高いでしょう? 良いなぁ……ハッ! まさか差別ですか!?」ブーブー!

サーシャ「第三の回答ですが、私は彼に対しそれ相応の費用は出しています。文句をつけられる謂れは有りませんよ」キッパリ!


別に良いと言うのに、大分上乗せしてお使い費用を振り込んでくるサーシャ。
自分に物騒な物を買わせているという自覚は有るのだろう。義理堅いやら何なんやら。


香焼「レッサーだって偶に高い動物マフラー頼むだろ? それに比べたらマガジンは安いもんっすよ」ハハハ

レッサー「ぐぅ……」タラー・・・

アニェーゼ「でもなぁ……分かってたら私だってもっと高級な物を」ムッ

香焼「アニェーゼだって男の自分が買い辛い厚底サンダル頼むし。店員に『え? 何この子?』みたいな目されるんすよね」ハァ・・・

アニェーゼ「……悪ぅござんした」ポリポリ・・・


でも馬鹿二人(五和・浦上)のお使いと比べたら、彼女達はまだ可愛いモノだ。
アイツらは値段もそうだが量も大量、男が買い辛い物を平気で頼んでくる。しかも代金未払い。


香焼「まぁ自分が日本から運んでくれる程度のモノなら買ってくるっすよ」ニコッ


その程度しか出来ないからね。
199 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:14:07.93 ID:w4Xj2QWF0
サーシャ「いえいえ、感謝します」ペコッ

アニェーゼ「流石忠犬わんこーやぎですね」フム!

アンジェレネ「アニェーゼちゃん、それ感謝じゃないですよ」アハハ

レッサー「評価鰻登りですよん。誰かさんと違ってねー」チラッ

ステイル「……僕は主教補佐だ。お使い何て柄じゃないだろう」フンッ

アニェーゼ「うわぁ。立場を主張する男って最っ低ですよねぇ」ジトー・・・

ステイル「何とでも言え。亡命人」ケッ

アニェーゼ「むきーっ!! 何だとぅ!!」キーッ!!

アンジェレネ「あ、アニェーゼちゃん……」アワワ・・・


暫くこんな感じで、最近よく有る光景が続いた。



 ―――とある日、AM11:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



今日の昼食係の関係者が厨房で忙しなく動き出した頃、自分達は各々好き勝手やっていた。

アニーとアンは仲良く漫画を読み、サーシャは工具でカッターを調律。
レッサーはネイルアートを試み始め、ステイルは相変わらず煙草に耽っている。
自分は戻ってきた猫を抱えながら、携帯を弄っていた。

一寸後、アニーが漫画を放棄し自分の下へ寄って来る。


アニェーゼ「……何してるんですか?」ジー・・・

香焼「んー……携帯で漫画見てた」カチカチ

アニェーゼ「携帯で?」ホエ?


画面を見せてやる。更にボタンを押してコマ送り。


アニェーゼ「おお! 凄ぇですねぇ。都市製のセルフォンは何でも出来るんですか!」キラキラ!

香焼「いやいや、今の携帯の機能なら大抵付いてるよ」アハハ

アニェーゼ「むぅ……誰でも新しいヤツ持ってる訳じゃねぇんですって」ブーブー


そういえばアニェーゼとアンジェレネは古いタイプしか持っていなかった。
多分、ルチアさんが御堅い所為だろう。電話とメール以外の機能は付いていない奴だった気がする。しかも仕事以外持ち歩いていない。


アニェーゼ「良いですねぇ……これさえあれば漫画買う必要無ぇんですよねぇ」ジー・・・

香焼「いやいや、一応買うんすよ。それに普通の紙媒体の方が読みやすいしね」

アニェーゼ「ふーん……ねぇ。携帯貸して下さい」

香焼「え……無理」エー・・・

アニェーゼ「ちょっとで良いですから」ネ!


オマエは無い物強請りする小学生か。というか、同時並行でメールもしていたから本当に貸せないぞ。
200 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:19:25.16 ID:w4Xj2QWF0
アニェーゼ「……何か疚(やま)しいモンでも有んですか?」ジトー・・・

香焼「いや、そういう訳じゃないっすけど……」ウーン・・・

レッサー「如何したんですかー? イチャイチャ騒いじゃってぇあ痛っ!」ポカッ!


喧しいのが突っ込んできた。しかも開口一発アニェーゼに蹴られてるし。


アニェーゼ「コーヤギが疾しいモンあるからってつって、携帯貸してくれねぇんですよ」ムゥ

レッサー「え!? エロムービー?! ハメどぃ痛いって!! アグヌス、叩き過ぎ!!」イタタ・・・

アニェーゼ「アンタは言葉選べ色ボケ!! あとイタリア語発音すんなっ!」ギロッ///

レッサー「んもぅ……アニェーゼは言葉粗暴な割に初心(アンヨ)ですからねぇ」フフフ・・・

アニェーゼ「う、五月蠅いウルサイうるさーい!」ムキーッ///

ぬこ「にゃっ!?」ビクッ! バッ!


何気に危ない叫びを上げる茹でダコさん。
御蔭でまた子猫が逃げた。ただ今度は見える範囲、ステイルの目の前にだ。
因みにアニーの言葉の悪さは育ちの所為だと聞く。罵倒の中に淫語を使うが、実の所、本人はエッチぃ本の表紙を見るだけで真っ赤っかだ。


レッサー「さておき、コウヤギ。フォルダの中がマジでエロエロいっぱいだったらドン引きなんですけど……大丈夫?」ジトー・・・

アニェーゼ「んなもん有ったらリアルにブっ殺しますからね」ギロッ・・・

香焼「無いから……」ハァ・・・


最愛の同僚さんじゃあるまいに、そんな馬鹿な事は無い。


アニェーゼ「じゃあ貸して下さい」ン!

香焼「もぅ……少しだ――」



 Prr・・・Prr・・・



アニー・レッサー「「……」」ピクッ・・・

香焼「――け、だ……やっぱ駄目」ピタッ


メールが来た。


アニェーゼ「……おい」ジー・・・

レッサー「怪しい……」ジー・・・

香焼「仕方ないだろ。携帯ってメインは連絡手段なんだし」タラー・・・

レッサー「誰からですか?」ジー・・・


宛先は……淡希さん。


香焼「……都市の任務関係者」サラッ・・・

アニェーゼ「……ホントに?」ジー・・・

香焼「ほ、本当っすよ。何で疑うのさ」ウッ・・・

レッサー「別にぃ……でも関係者なら見せても大丈夫ですよねぇ」ニヤッ・・・

香焼「いやいや、外部漏洩とか怒られるから」ポリポリ・・・


そう言っとけば黙ざるを得まい。
201 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:22:04.95 ID:w4Xj2QWF0
因みに本文は……



【DATE】XX/XX 20:32 
【FROM】淡希さん
【sub】RE4:
------------------------
英国居るんだ!
良いなぁ……私も海外行っ
てみたい♪

香焼くん、連れてって!
なんちゃって(ハート)×3 ← 絵文字



絶対見せらんねぇ……女の子って如何してハート多用したがるんすか?


アニェーゼ「つぅか……そんなに大事な任務をコーヤギみたいな下っ端が受け持ってる訳無ぇです」ジー・・・

レッサー「確かに……」チラッ・・・

香焼「し、失礼な。自分だって都市内では色んな活動を任さ――」



 Prr・・・Prr・・・



香焼「――れ、て……」ピタッ・・・

アニー・レッサー「「……じー」」グイッ・・・


今度は……最愛だ。


香焼「と……特秘事項かぁ……ヤバいっすねぇ……」ダラダラ・・・

アニェーゼ「……やっぱり」ジー・・・

レッサー「怪しい……」ジー・・・

香焼「特秘だって! ホント!」ダラダラ・・・


嘘ではない。
『携帯は他人に見せるもんじゃないぞ……人間関係が……』って野母崎さんがシミジミ言ってた。
多分奥さんに見られた経験だろう……じゃなくて、本当に他人に見せて良いモノではない。

因みに最愛のメールは……



【DATE】XX/XX 20:34 
【FROM】最愛
【sub】RE4:
------------------------
そうなんだ(キャー)!
(ネコ)も海外旅行なんて(超)
羨ましいです♪


御土産(超)期待しちゃって
いいんですよね(キラキラ)×2

あ、でも英国土産って何で
しょう? 紅茶とか(カップ)?

紅茶の味とか(超)分かんな
いですってー(笑)



絵文字多っ……コレはコレで拙い。てか最愛(超)のデコ文字使い過ぎ。
202 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:30:00.52 ID:w4Xj2QWF0
アニェーゼ「ねぇ……どんな特秘ですか? 触りだけで良いです。教えて下さい」ジー・・・

香焼「都市内で……これ以上は[禁則事項です]っす。マジで」ウンウン・・・

レッサー「まさかショタキャラを使った痴女を誘う美人局的な任務じゃ……アニェーゼ、冗談ですって。怖いから蹴る準備しないで」アハハ・・・

香焼「そんな任務有って堪るか……兎に角、駄目。ほら、もうすぐ昼飯だから荷物片付けとくっす。ルチアさん達に見つかったら大変だろ?」

アニー・レッサー「「……」」ジトー・・・


個人の自由とはいえ、規律正しいルチアさんや真面目なベイロープさんに見つかると色々厄介だ。
だが、この二人は引かない。そして……


アニェーゼ「……ステイル!」チラッ


頭に乗せた猫をアンとサーシャに取られそうになっているステイルの方を向いた。てか器用だな。でも何故子猫を渡さないんだ?


ステイル「なん、だっ!? くっ!!」クイッ!

アンジェレネ「ねこさーん! おいでー!」エイッ!

サーシャ「第一の要望です。その猫を貸して下さい」エイッ

ステイル「ぐぬっ!! ひっつくな貴様ら!!」ワトト!

ぬこ「なー」グシグシ


椅子に座った状態のステイルの頭上の猫に、手を伸ばしても届かないアンとサーシャ。子猫も器用に曲芸乗りしている。


アニェーゼ「コーヤギが今、何か特秘任務受け持ってやがりますか?」

ステイル「はぁ? そんなもの……聞いた覚えが、無いね……どわぁっ!!」ガタッ!

アン・サーシャ「「にゃー!」」ワシワシ!

香焼「」チーン・・・

レッサー「……と、主教補佐殿が申しているのですがー」ジトー・・・


あの不良神父め……


香焼「す、ステイルにも教えられない内密な」アタフタ・・・

アニェーゼ「じゃあ審問が必要ですねぇ……もしかしたら離反行為かもしれません……」フフフ・・・

レッサー「ありゃりゃ。それは拙い……さぁ、身の潔白を証明する為にも……ハリー! ハリー! ハリー!」ニシシシ・・・


詰め寄る二人。これはピンチだ。この御転婆コンビに『力(魔術)』で捩じ押されたら、堪ったものではない。
こうなったら……


香焼「……あー!! ルチアさんが男の人と仲睦まじく腕を組んで歩いてるー!」ビシッ!!

カルテッ娘『何ぃ!!?』クルッ!!


同時に自分が指差した扉の方を向く4人。そこには……


建宮「いや、だから……オマエは阿呆か? 何度言ったら分かるのよな。一回女教皇様含め、ガキ共にガツンと言わないと」テクテク・・・

牛深「何でそう意固地になんの、斎字。オマエは昔から変な所で融通利かねぇな……女教皇様怒られてる姿をガキ共が見たら拙いべ?」テクテク・・・

野母崎「まぁまぁ。そう言わずにもうちょっと穏便に話そう、二人とも。やっぱ諫早にも相談すべきだって」テクテク・・・


……おなじみ、天草青年(オヤジ)トリオ。
203 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:34:15.16 ID:w4Xj2QWF0
アンジェレネ「……シスター……ルチア?」ポカーン・・・

アニェーゼ「いや……違ぇし!! 天草のムサい野郎共だし!!」ガアアァッ!!

レッサー「まぁあのルチアが今から皆が集まる食堂で男と同伴してる訳無いですよね……」アハハ・・・

サーシャ「第二の感想ですが……少しでも期待した自分が馬鹿でした」ハァ・・・

ぬこ「……なぅ」ペロペロ


当たり前だ。彼女が男と二人きりで居たら教会内全ての人間がフリーズする。

てな事はさておき……逃げるが勝ちっ!!


レッサー「……あぁっ!!?」ギロッ!!

アニェーゼ「逃げやがりましたねっ!!」ギロッ!!

香焼「きゅ、急用を思い出しただけだから!! 気にしないで!!」タッタッタッタッ!!

アニー・レッサー「「待てやぁゴルァアーッ!!」」ドドドド!!


扉の方へダッシュ!!


ステイル「お、おい香焼っ!! 一人で逃げる気かっ!!」テメェッ!!?

香焼「自分で如何にかしろっ!!」ワルイッ!!


猫争奪戦に巻き込まれるステイルを横目に走り抜ける自分。
アンとサーシャに顔を掴まれ危うく子猫を奪われそうになる赤毛ノッポは『糞(ダム)ッ!』と悪態をつき……


ステイル「く、の……ふんっ!!」ブンッ!!

アン・サーシャ「「うわっ!!?」」ドンッ

ぬこ「んにゃっ」ガシッ!!


外套を勢い良く脱ぎ捨て、自分の後を追ってきた。勿論、頭に猫を乗せたまま。


アニー・レッサー「「携帯寄越せー!!」」ドドドド!

アン・サーシャ「「ねこー!!」」ババババ!


無論、彼女らも追って来る。


香焼「やばっ!!」ゲッ!!

ステイル「クッソ(ジーザス)!! どうしろってんだ!!」チッ!!

香焼「オマエは子猫渡せば済む話っすよ!!」タタタタタ!

ステイル「コイツがっ!! しがみ付いてっ!! 離れないんだっ!!」タッタッタッタッ!!

ぬこ「みー」ブンブン


どうやらこの猫は長い髪の人間に懐きやすいらしい。
都市でも五和より女教皇様や浦上に懐いてたからなぁ……って、そんな事考えてる場合じゃない!
204 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:39:35.24 ID:w4Xj2QWF0
兎に角、食堂をメチャクチャにしない為にも外に逃げねば!


建宮「―――って、ノモ。アンタねぇ……ん? 香焼?」ポカーン・・・

牛深「ステイルも一緒か? 仲良いなぁお前ら」ハハハ

野母崎「何だ何だ、女の子に追っ掛けられてるなんて羨ましいシュチュだこと」ケケケ


扉の前の上司三人。しかし今は構ってられない。


香焼「すいません!! 退いてー!!」タタタタタ!

建宮「ぬをっ!!?」クイッ

野母崎「ったく……危ねぇなぁ」ムゥ・・・

ステイル「……貴様ら。そこ危険だぞ」ボソッ・・・

牛深「はぁ? 何故にさ?」キョトン・・・


自分が小走り、ステイルは大股で駆け抜けた後……―――



    『んぎゃああぁっ!!』ドゴーンッ!!



―――……扉の方から悲鳴が聞こえた。あーめん。


カルテッ娘『待てえぇっ!!』ドドドドド!


4人とも、手に物騒なモノを持っていらっしゃるよ。


香焼・ステイル「「待てるかあああぁっ!!」」ギャアアァッ!!

ぬこ「にゃーん」ニコニコ


捕まったら色んな意味で大変な事になる『大惨事聖堂内鬼ごっこ』が幕を開けた……―――



       <回想終了>



 ―――とある日、PM00:10、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・何処かの男子トイレ・・・・・



香焼・ステイル「「ハァハァ……ふぅ」」グデェ・・・

ぬこ「なー」ペチペチ


何処ら辺かは分からないが、とりあえず男子トイレに入り込めた。
此処なら居場所がばれたとしても、アニーとアンは恥ずかしがって入ってこれまい。


ステイル「アイツら……ゼェ……[ピーーー]気で、来てたぞ……ゼェゼェ」グダッ・・・

香焼「いや、多分もう……ヒィ……本来の目的、忘れてるよ……4人とも……」フゥ・・・


謂わば狩り。携帯とか子猫はもう如何でも良い。
自分ら二人を取っちめれば、彼女達の気は済むといった所だろう。
205 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:43:22.75 ID:w4Xj2QWF0
香焼「ふー……女教皇様か対馬さん辺りが気付いてくれれば……きっと助けに」

ステイル「無駄だな……多分」カチッ・・・フゥ

香焼「え?」チラッ

ステイル「神裂、対馬が出てきた所でカオスが増すだけだ……ゲホゲホッ! オルソラか……もしくは『あのお方』が出てくるしか」ジジジ・・・


こんな時でも煙草を止めない14歳は、冷静にこの場を分析した。
確かにあの二人が、カルテっ娘に[禁則事項です]とか言われたら……間違いなくブチ切れる。


ステイル「畜生(ファッキン)! 頼りにならない大人ばかりだよ、オイ!」ゲホゲホッ!

香焼「違うっす……子供が賢過ぎるだけなんすよ……」フゥ・・・


学園都市もそうだが、必要悪の教会も主要なメンバーの年齢層が低い。成人は数えるほどしかいないと思う。


ステイル「それに……あの4人に加え、シルビア侍女長まで『狩り』側に回るとは……」クッ・・・

香焼「もしかしたらルチアさんとベイロープさん、フロリスさん……馬鹿一号二号(五和・浦上)も『狩り』に出てるかも」ハァ・・・

ステイル「まったく……これだから女共は……」ジジジ・・・


頼りになりそうな男性陣(天草青年トリオ)は、さっき初見殺しで墜とされてた。
もう頼れそうな大人……そして男性は、もう……



 ―――頼れる大人が、男がいないのかい?



香焼・ステイル「「っ!!?」」ビクッ!!


大の個室が一つ……ゆっくり開き……



 ―――それは違うな……君達自身も男だろう? そして何れ大人になる……諦めるな!



水が流れる音をバックに、爽やかな笑顔で……ベルトを締めながら……


香焼・ステイル「「な……騎士団長(ナイトリーダー)!!」」パアアァッ!!

騎士団長「Yes,I’m!」ビシッ!!

ぬこ「にゃー」ジー


頼れそうなオーラを醸し出した男性が歩み寄って来た。


騎士団長「やれやれ。何やら騒がしいかと思えば……君達が中心か」フゥ

香焼「な、騎士団長さん。如何して聖堂内に!?」

騎士団長「君は……天草の香焼少年だったな。St.神裂にバb……女王陛下の安否確認を頼まれてね。案の定、何時の間にか消えていたよ」

ステイル「やはりローラと何処かに遊びに行ったな……」ハァ・・・

騎士団長「多分そうだろう。故に今後の方針を相談しに、侍女長と此処へ来た訳だが……何ともな」ムゥ


手を洗いながら顔を顰める団長殿。ダッサい筈なのだが、窮地に現れたというだけで一挙一動が恰好良く見える。
206 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:47:32.01 ID:w4Xj2QWF0
騎士団長「姫様方を連れて来なくて正解だったよ。もっとも、私の眼に入る範囲に居るのは第二第三王女様だけだけどね」Ahaha!

香焼「え……(第二第三だけって……嫌な予感)」タラー・・・

騎士団長「とりあえず主教補佐。煙草を消したまえ。それから話を聞こう。聖堂内は禁煙だ」チラッ

ステイル「チッ……香焼、説明しろ」ジュッ・・・

香焼「え、あ、はい……えっと……―――」カクカクシカジカ・・・


少年説明中……


騎士団長「―――……成程」フムフム・・・

香焼「すいません……自分達がだらしないばかりに……」シュン・・・

騎士団長「いや、人のプライバシーにズカズカ踏み込むのは褒められない事。結果的に被害が広まったが、その場の判断としては仕方あるまい」

香焼「り、団長さん……」キラキラ・・・

ステイル「……それで、如何するんだ」ジー・・・


ダンディに顎を撫で、一寸考える騎士団長さん。


騎士団長「ふむ……簡単な話だ。私が彼女達に説得……いや、説教すればいい」コクッ

香焼・ステイル「「せ、説教?!」」ハァ!?

騎士団長「先にも言ったが人には『領域(プライバシー)』というものがある。それは許可が出ない限り相互不干渉であるべきだ」

香焼「ほ、え?」ポカーン・・・

騎士団長「小娘達はそれが分かってないと見える……安心しろ、仕置き程度だ。傷などは付けん」ニコッ

香焼「お、おぉ……」カッケェ・・・

ステイル「……それが通じる相手だとでも?」ハァ・・・


確かに……彼女達は基本、人の話を聞かない。


騎士団長「なぁに、誠意を持ってすれば熱意で返してくれるさ……私に任せなさい」キリッ!

香焼「は、はい! す、ステイル、助かりそうっすよ!」ヤッター!

ステイル「……僕には嫌な予感しかしないよ」ハァ・・・


いやいや、彼は頼れる大人の筈だ。オーラが出てる。


ステイル「オーラだけじゃないければ良いがな」タラー・・・

騎士団長「主教補佐……いや、ステイル少年。少しは大人を頼ってみるんだ!」

香焼「そうっすよ! 団長さんなら言い聞かせてくれるっす!」ワクワク!

ステイル「楽観視し過ぎだと……ん?」チラッ


ステイルが風気口の方を見遣った。そこには……硬貨袋?


騎士団長「……アレは?」ジー・・・

香焼「……アンの硬貨袋(使徒)! ヤバい!」ドキッ!

ステイル「多分、索敵術式に組み替えてあるな……時期此処へ来るだろう」チッ


刹那、騎士団長が帯刀していたレイピアで袋を切り裂いた。硬貨が十数枚チリンチリンと床に落ちる。
207 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:54:42.00 ID:w4Xj2QWF0
騎士団長「成程な。頭がキレる子供達の様だ……説教のし甲斐がある」コクッ

ステイル「……そのレイピアだけで行けるのか?」ジー・・・

騎士団長「無論。私を誰だと思っている?」ニヤッ・・・


威風堂々。宣言した。


騎士団長「騎士団の長だぞ? 嘗めて貰っては困るな」キリッ!

香焼「か、恰好良い……」キラキラ・・・

ステイル「……あっそ」ポリポリ・・・


そして騎士団長は自分に視線を移し、ニコリと告げた。


騎士団長「香焼少年」ニコッ

香焼「え、あ、はい!」ドキッ!

騎士団長「君の話はMs.神裂から聴いているよ」ニコッ

香焼「え、そ、そうなんすか。光栄っす。(ん? さっき『St』って言ってたっすよね?)」ン?


公私の切り替えか。『女教皇様』は聖人や主教補佐次席、女教皇として呼ばれる際は『St(セント)』を冠せられる。
それは聖人、現人神、教皇として崇められたり敬われたりする時だ。
逆に『神裂火織』として扱われる際は『Ms(ミス)』を頭に付けられる。もしくは『さん』や呼び捨てだ。
騎士団長殿は公私共に女教皇様と仲が良いと聞く。多分、普段から使い分けているのだろう。

でも、何故今切り替えたんだ?


騎士団長「彼女は君やMs.五和、Ms.浦上の事を話す時……いつも楽しそうだよ」フフッ

香焼「も、勿体無い限りで……」アハハ・・・

騎士団長「謙遜する事は無い。謂わば弟分の様なモノなのだろう? 彼女のリフレッシュになっているという意味でも素晴らしい事だ」ニコッ


嬉しい事だが……何か話がおかしい。


騎士団長「大丈夫。任せておきなさい。君を無事、Ms.神裂の下へ帰してみせるよ」キリッ

香焼「……へ?」ポカーン・・・

ステイル「僕は最初から彼の意図を分かってたけどね」ハァ・・・

ぬこ「なー」ペタン・・・


つまり……はい?


騎士団長「今度! 私と、お姉さんと一緒にお茶でも如何かな! 君がいてくれれば場の雰囲気が凝り固まらずに済む!」ニコッ!

香焼「」チーン・・・

ステイル「多分、裏や下心は無いよ。彼、純粋にそういう事、悪気無く考えるから」フゥ・・・


少しの間、恰好良いと考えた自分が愚かだった。
208 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 21:58:56.02 ID:w4Xj2QWF0
騎士団長は満面の笑みでドアノブに手を掛け、最後にこう告げる。


騎士団長「それでは約束だ! 香焼少年! いや、兄弟(ブラザー)香―――



              ちゅどーんっ!!



        ―――やぎぃやゃああああああああああぁっ!!」ボーンッ!!

香焼・ステイル「「……」」タラー・・・



扉を開けようとした瞬間、爆風と共に壁に打ち付けられる騎士団長。せめて最後まで言わせてあげて下さい。
さておき、アニー達が来てしまったのかと思いきや……



五和「誰がブラザーだ、この両刀野郎っ!! カオリ姉様もコウちゃんもくれてやらんばいっ!! アホンダラぁっ!!」ドーン・・・



馬鹿一号だった。



香焼「な……何してんだよ馬鹿女郎おおおぉっ!!」ギャー!!

五和「あ、コウちゃん見っけ」ニコッ!

香焼「『ニコッ!』じゃねぇよ! おま、誰フッ飛ばしたか分かってんのか?!」アワワ・・・

五和「誰って……あらら。騎士団長殿でしたかー……スイマセンデシタ」ウフフ・・・


今更申し訳なさそうに手に口を当て、御淑やかに謝罪を入れる馬鹿一号。此処男子トイレだぞ? 普通に入ってくんな。


騎士団長「ま、まさか……Ms.五和に……吹き飛ばされるとは……」グヌヌ・・・

五和「『私の弟』を守ってくれようとしてらっしゃったのですね? まぁ何て勇敢な! でもごめんなさい。私の手違いで……(猫被り)」アアァ

騎士団長「き、気にするな……この程度……」ムムム・・・

五和「おっと、槍が滑ったぁ★」エイッ♪

騎士団長「おうぶっ!!」ゴンッ!!


如何にも態と臭く、されど猫を被りながら槍の柄で騎士団長の腹部を突く五和さん。


五和「きゃああ! 騎士団長殿ー! 『私の御姉様』と『私の弟』に、よくも近づいてくれた騎士団長殿ー! (猫被り)」ワーワー

騎士団長「さ、流石Ms.神裂の妹分だけあって……良い腕だ……将来が待ち遠しい……」グッハァッ!

香焼「騎士団長ああぁ!! ちょっと! 五和!! 何でまだ槍に体重乗せてんの?! 手ぇ離せボケ!!」アタフタ・・・

五和「わぁ! いけない! 騎士団長殿ー! 死なないでー! (猫被り)」ウワーン

騎士団長「ふふふ……Ms.神裂の妹弟達に見守られて逝く、か……ウィリアム……悪くない人生だったよ……」ガクッ・・・

香焼「騎士団長ああああぁっ!!」ギャアアアァッ!!

ぬこ「にゃーん……」ペシペシッ!


一人の漢が……子猫に叩かれながら、便所で散った……
209 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 22:01:43.72 ID:w4Xj2QWF0
ステイル「いや、そう簡単にくたばる奴じゃないからね」ハァ・・・

五和「ふぅ。討伐完了っと♪ まったく……誰が人の姉弟くれてやるかバーカっ!!」ベー!

香焼「おま……もしコレがばれたら……」アワワワワ・・・

五和「大丈夫! 誰も見てないよ! ……ね。二人とも」ニコッ・・・

香焼・ステイル「「……」」ダラダラ・・・


逆らったら、狩られる。


五和「さぁてと……とりあえず一番乗りで良かったわ。コウちゃん、助けに来たわよ!」ニコッ!

香焼「助けにって……他の連中撒いてきたんすか?」ヘ・・・

五和「アニェーゼとシルビアさん。レッサーとベイロープ。ルチアとサーシャが各々戦(バト)ってるよ」グッ!

香焼「……こそこそ一人逃げてきたんすね」ハァ・・・

五和「ふふふ。乱戦での隠密行動は天草の十八番よ! まぁルチア辺りに見つかったらコウちゃん去勢されそうな感じだったからね」

香焼「」

五和「一先ず安全な所へ避難を」

ステイル「おい」ボソッ

五和「……何です?」ポカーン・・・


ステイルは律義に騎士団長の身体を壁に腰掛けさせ、煙草を加えながら告げた。


ステイル「一人……足りないぞ?」カチッ・・・フゥ

香焼・五和「「……あ」」ピタッ


自分らを発見した筈のアンがまだ姿を現さない。一体何処に……



『―――東D3-左奥の男子トイレですっ!!』ピーガー!



ステイル「アンジェレネの声!? 館内スピーカーだとっ!!?」ゲェッ!!?

五和「ヤバッ! やられた!!」タラー・・・

香焼「此処は袋小路っす!! 兎に角、逃げないと!!」スタッ!!

ぬこ「みゃーんっ!!」スタタ!


先に跳び出した子猫に続き、男子トイレから飛び出す自分達。そこへ……


アニェーゼ「見つけたああぁっ!! この馬鹿犬うぅっ!! ご主人様に逆らうなんて如何いうつもりでいやがりますかあぁっ!!」ガアアァッ!!

サーシャ「目標補足……斬れ味最少、打撃Lv.4に……後頭部を目処に動きを止めます。あとアニェーゼ。色々アウトですよ」ガチャンッ・・・

レッサー「あはははは! もう何でも良いです! 如何にでもなれー!」ピョンピョンピョンッ!


カルテっ娘が来た。武器の準備を見るに……間に合わない。こうなったら子猫だけでも逃がす覚悟で―――
210 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 22:07:55.57 ID:w4Xj2QWF0
五和「ステイルさん……いえ、主教補佐」ボソッ

ステイル「……何だ」チラッ

五和「命令(オーダー)を……此処を死守する使命を下さい」グッ

香焼「五和っ!?」エッ!?


―――海軍用船上槍(フリウリスピア)を構え、自分らの前に立つ五和。


ステイル「……本気か?」ジー・・・

五和「勿論」コクッ・・・


迫り来る小さい脅威。ステイルは静かに頷き、宣告した。


ステイル「主教補佐命令だ……此処を任せる……良いな? 天草式十字凄教若衆筆頭、五和」フゥ・・・

香焼「ステイルっ!!?」ハッ!!?

五和「……了解です」ニコッ

香焼「い、五和っ!?」ドキッ・・・

五和「ステイル主教補佐。コウちゃんを……いえ、香焼をお願いします」チラッ

ステイル「任された」コクッ

香焼「な、何で!? 意味分かんないっすよ!!」アタフタ・・・

五和「香焼……行きなさい。若衆筆頭の私が命じます……大丈夫。また貴方の部屋で4人揃って遊びましょう」ニコッ・・・


何この……何!? 理解が追いつかない!!


ステイル「……すまない」グッ・・・

五和「いえいえ。滅相も……さぁ! レッツパァーリィーの時間ねっ!!」クルッ・・・グッ!


五和若衆筆頭はその場に止まり、此方を向かず……―――



五和「私、此処で生き残れたら……上条さんに……――」ニコッ・・・



――……死亡フラグをおっ建て、パァーリィーしに行きやがった。

さよなら、五和。
211 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 :2011/03/28(月) 22:12:51.65 ID:w4Xj2QWF0
 ―――とある日、PM00:45、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・何処かの廊下・・・・・



10秒経たずに聞こえた五和の断末魔をバックに、自分とステイルは兎に角走った。
トイレである程度息を整えれたので、また数十分は逃げる事が出来るだろう。
何時の間にか子猫もステイルの頭の上に戻っている。


ステイル「此処は見覚えがある。この先に中庭へ抜けれるドアがあった筈だ!」タッタッタッタッ!!

香焼「聖堂内から出ないと被害が広がる一方っす。一先ずそこへ……ん?」タタタタタ!

ステイル「……チッ。先回りされていたか」ギリッ・・・


先見。目の前の通路に車輪を持った修道女がいた。


ステイル「話が通じる相手じゃないな」ハァ・・・

香焼「……分からない。でも試してみないと! 五和みたいに穏便に済ませる気があるなら!」グッ・・・


自分は大声で叫んだ。


香焼「ルチアさんっ!! 退いて下さい!! 自分達はこの騒動を納めたいんす!」キッ

ルチア「……」ユラッ・・・

香焼「とりあえず堂内から出て被害を抑え――」

ステイル「莫迦者っ!! 横に跳べ!!」ドンッ!!

香焼「――うわぁっ!!」ゴロッ!


自分がステイルに押し飛ばされた瞬間……車輪が爆ぜた。


ルチア「チッ……外したか」ギリッ・・・

香焼「る、ルチアさん……」アワワ・・・

ルチア「私はね、Mr.コゥヤギ……異教の猿とか異文化の野蛮民族とか、そういう風に人を貶さない様、極力努力はしてきました」カツカツ・・・


大股で……早足で近づいて来るミニスカシスター。
自分は痛んだ身体に鞭打ち、必死で中庭の方へ逃げたが、あと少しという所で……捕まった。


ルチア「でもね……それでも……やはり貴方は赦せません……」ギロッ・・・ガシッ!

香焼「あ……そん、な……」ガクブル・・・

ルチア「こんな、女々しい男に……シスター・アニェーゼとシスター・アンジェレネが懐く理由が分からない……如何して……」グイッ・・・

ステイル「ほぼ私怨だな……」タラー・・・

ぬこ「んなぅ」ジー・・・


自分の胸倉を掴み、床に押し付けるアニーとアンの姉貴分。
212 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:17:06.32 ID:w4Xj2QWF0
香焼「ルチアさん……自分はただ、偏見を持って人と接したくないだけで……ぐぅっ!!」ドンッ!!

ルチア「喧しい……黙れ。喋るな。虫唾が走る」ゴンゴンゴンッ!!

香焼「止めて、下さ……ゲホッ!」ドンドンドンッ!

ルチア「そうね……貴方がもし、『僧』じゃなくて『尼』だったら……私は寛容になれたかもしれない」バンッ!

香焼「お、おかしいですよ……ルチアさん……」ゴホゲホッ!

ステイル「香焼っ! くっ……後ろからも来ている……自力で中庭へ逃げろ! 此処は抑える! 数分しか持たないぞ!」ギリッ!

ルチア「アニェーゼ達が来たようですね……さっさと片付けましょう」ニヤッ・・・


黒い笑み……目が座ってらっしゃる。光が無い。


ルチア「こんな状態でも……武器を抜かないのね。フェミニストなんだか、ただの腑抜けなんだか」スッ・・・

香焼「この騒動は……ただの、喧嘩程度っす……武器を使ったり、人を傷つけたりするのは……おかし、ぐっ!!」シュッ!

ルチア「……此処までされても?」ピタッ・・・


ナイフを自分の頬に突き付ける狂尼。


香焼「じょ、冗談……っすよね……」タラー・・・

ルチア「……そうね。冗談なら幸せでしょうね」ズズズズ・・・

香焼「っ!!?」ビクッ!!


自分の服を破いていく。


ルチア「主が仰ってる……貴方は『貴女』に変わるべきだと……」ピタッ・・・

香焼「ちょっ!!? 誰か男の人呼んでええぇっ!!」ギャアアァッ!!

ルチア「人の妹分の貞操奪って孕ませやがってぇ……死ねぇこの汚らわしい豚野郎おおおおおぉっ!!」グイッ!!

香焼「ちょっ!!? 何それ!? 身に覚えが無いいいいいぃっ!!?」ウワァアアァッ!

ルチア「並行世界でさようならあぁあぁっ!!」ブンッ!!


ナイフを振り上げる○チガイシスター。五和が言っていた事は本気だったらしい。
拙い……リアルに切られる! 男の娘なんて勘弁だ!

ルチアさんの目と口が異様に開かれ『AaaaaaaaaaMmmEeeeeeeeNnn!!!』という奇声が放たれた瞬間―――


サーシャ「ターゲット……ロックオン!」

ルチア「チィッ!!」ドンッ!!

香焼「うわぁっ!!」ゴロゴロゴロ・・・


――ザシュンッ・・・・・と目の前をプラズマの(微妙にテレズマも混じった)刃が奔った。


サーシャ「第三の感想ですが……悪趣味極まりないですね。狂ってますよ、車輪の女」スゥ・・・

ルチア「……シスター・サーシャ。何のつもりですか?」ジトー・・・

サーシャ「第三の回答兼質問ですが……そっくりそのまま言葉を返します。貴女は何をするつもりでしたか?」カツカツカツ・・・

香焼「さ、サーシャ……」ホッ・・・


助かったのやら、更なるピンチなのやら。
213 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:21:46.02 ID:w4Xj2QWF0
ルチア「私は天の意志を代行しようとしたまでです……あと、先の回答では応えになってませんよ。露公が」ギロッ・・・

サーシャ「……では再度、第三の回答です。私達は彼にそこまでの危害を加えるつもりはありませんでした。貴女はやり過ぎです」ギロッ・・・

香焼「え? 今の斬撃殺しに掛ってたっすよね? 違うの?」タラー・・・

ルチア「嘗めた口を……やはり先程の戦闘で足の2,3は折っておくべきでしたね」スタッ・・・


車輪を片手にサーシャの方へ歩み出すルチアさん。自分に『貴様は後回しだ』と目配せし、頭巾を脱いでナイフを捨てた。
てか、ステイルと猫大丈夫なのか?


サーシャ「第四の回答ですが、アニェーゼとレッサーと戦闘中です。ニコチンが切れてヒーヒー言ってますよ」ボソッ


あの不良神父……煙草切れで倒れたら同情出来ないぞ。


ルチア「さて……最後に言い残す事は? 男みたいな名前(クロイツェフ)」カツカツ・・・

サーシャ「っ……訂正を求めます」ギロッ・・・

ルチア「あら、珍しい。貴女も自分の事で怒るのですね……Mr.アレクサンドラ」ニヤッ・・・

サーシャ「……もういい。死ね。キチガイ狂信者」タッ・・・

香焼「ちょ、二人とも! いい加減に拙いっす――」

ルチア「くくく……あはははははははっ!! あの世でスターリンに宜しく伝えといてっ!!」ダッ!

サーシャ「術式展開……風、水、土より構成……」ググググ・・・


生肌で分かる程のサーシャの万象蒐集術式のマナ。そしてルチアさんの狂気染みた毀れる程のオド。
直感で分かる……聖堂が壊れるだろう、と。何とかせねば……


香焼「ふ、二人ともっ! と、止まれええええぇっ!!」ダッ!

ルチア「邪魔だああああぁっ!!」ブンッ!!

サーシャ「退いてっ……下さいっ!!」ガンッ!!

香焼「がぁ……ゲフッ!!」ゴロンゴロンッ!!


魔術じゃなくて、物理的にブッ飛ばされる自分……さっきから転がってばかりだな。じゃなくて、このままじゃ―――


ステイル「ッ~~~~~~ッッッ!! 香焼、何寝転がってるっ!! 早く逃げろぉっ!!」ダッダッダッダッ!! シューットッ!!

サーシャ・ルチア「「っ!!?」」ピタッ!

香焼「え……ゲブゥッ!!」ゴホゴホッ! ガハァッ・・・

ぬこ「にゃんっ!!」ブラブラ


―――緊迫した二人の目の前をステイルが駆け抜けた。ついでに自分を中庭の方へ蹴飛ばす。


香焼「な、にを……ぐっ!」ヒューン・・・ドンッ!

ステイル「『二番目』に怖い大人が来たっ!!」ダッ!!


体勢を立て直し、やっとの思いで中庭へ。それから聖堂内を見遣ると……


アニー・レッサー「「うぎゃああああぁっ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさーいっ!!」」ダダダダダダッ!!


此方に向かって走って来る御転婆コンビ。その後ろから……


オルソラ「うふふふふ……」ドドドド・・・


満面の笑みを振り撒く、オッカナイお姉さんが歩いていた。
その真横には、両脇に五和とベイロープさんを担いぎ疲れ切った顔の女教皇様がいる。
214 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:25:14.67 ID:w4Xj2QWF0
アニェーゼ「サーシャ! 今はルチアに構ってる場合じゃねぇです!! 来やがれっ!!」ダダダダッ!

サーシャ「第五の回答ですが……シスター・ルチアは私の尊厳を貶しました。そう簡単に彼女を許す訳には――」

レッサー「んなプライド、豚の飯にでもしといてください! 命有っての賜物です!!」グイッ!

サーシャ「うわっ!! あーれー……」ヒュンッ!!


レッサーが器用に尻尾を使い、サーシャを巻き込んで此方へ逃げてきた。


ルチア「チッ……逃げたか……ん?」ピクッ・・・

オルソラ「あらあら……シスター・ルチア?」ゴゴゴゴ・・・

ルチア「し、シスター・オルソラ……」ビクッ・・・

オルソラ「貴女と五和さん、ベイロープさんだけでは不安だったので出張ってみたのございますが……案の定でございますね」ニコッ・・・


そこで漸くルチアさんは己の危機に気付く。


ルチア「い、いえ、こ、これはですね……聞き分けの無い子供たちへの大人な対応(躾け)でして……決して私怨という訳では……」ガクブル・・・

オルソラ「誰もそこまで聞いてはございませんよ? それに『聞き分けのない子供』へ対し『躾け』が必要でございましたら……」ニコニコ・・・

ルチア「い、や……ひぃっ!!」ズサッ!!

オルソラ「私(年輩)から見て、貴女(後輩)も……『聞き分けの無い子供』でございますね」スッ・・・


刹那……『コキャッ!』という短い愉快な音がしたと共に、ルチアさんが崩れ落ちた。
そして女教皇様がルチアさん(当分再起不能)を肩に乗せ、再び二人の進軍が始まった。

必要悪の教会名物、二神の進軍(ツイン・レギオン)。度が過ぎた悪い事をすると、彼女達が出てくる。


アニェーゼ「る、ルチアが……狩られた……」アワワ・・・

レッサー「『角』をしている状態のベイロープでも……容易くなんて……」アタフタ・・・

ぬこ「にゃー!」バッ!


最早自分達を追い駆けていた事など忘れて、怯えながら話しかけてくる御転婆コンビ。驚いて子猫も何処かに逃げた。
正直、非戦闘員であるオルソラさんが如何やって『狩り』をしているかは甚だ疑問だが、これだけは分かる。

あの笑顔を直視したら、生き残れない。


香焼「……あ」ピタッ

ステイル「如何した……逃げ切れる手でも見つけたか?」ゴクッ・・・

香焼「いや、違くて……アンジェレネは?」キョロッ

サーシャ「第六の回答ですが、放送室に居た筈です」チラッ

アニェーゼ「っ!! ヤベぇです……まだシルビアが聖堂内に残っています!! このままじゃアンジェレネがっ!!」バッ!!

香焼「アニー! 駄目だ!」グイッ!

アニェーゼ「っ!! 離してっ!! 私はアンを助けなくちゃならねぇんです!!」バッ!

レッサー「今、オルソラの横を抜けるのは不可能ですよ!! 無駄死にです!!」グイッ!

アニェーゼ「で、でも……アンがまだ中に……うぅ……」ドサッ・・・


自分に寄り掛り、そのまま泣き崩れた。相手がシルビアさんなら、多分大丈夫だと思う。
確かに案では勝てない相手だが、普段から厳しいが大らかな人だ。ちょっとやそっとじゃブチ切れまい。

ただ……スイッチ入ってしまうと『簡易三角木馬』の刑が……
215 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:41:21.77 ID:w4Xj2QWF0
レッサー「いやぁ今日のシルビア姉御、備品壊されまくりで対『魔人(旦那)』くらいブチ切れてましたね」アハハ・・・

アニェーゼ「三角木……いやああああぁっ!! アンジェレネえぇっ!!」ウワアアアァンッ!!


三角木馬の乗せられるくらいなら、静かに意識を刈り取られた方がマシだ。
それならば数名で救出に行った方がまだ分は有る……なら!


香焼「……皆、此処は自分が囮に――」

ステイル「チッ……香焼、黙ってろ……」スタッ・・・テクテク・・・

香焼「――な……ステイルッ!!?」ギョッ!


ゆっくり立ち上がり、煙草を加えながらオルソラさんと女教皇様の方へ向かう最年長(14歳)。


サーシャ「マグヌス……第一の憶測ですが、今の貴方ではあの二人とまともに――」

ステイル「五月蠅いな。君達との茶番は疲れたんだよ……言っておくが『僕の勝手』だ。君達の手伝いじゃない」カチッ・・・フゥ

サーシャ「――……」ジー・・・

ステイル「ったく……勘違いするなよ―――世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ(MTWOTFFTOIIGOIIOF)」ブツブツ・・・


詠唱を始める炎の魔術師。


香焼「ステイル! 馬鹿な真似は止めるっす! スタミナ切れのオマエじゃ二人相手に」

ステイル「黙ってろと、言った――それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(IIBOLAIIAOE)」ブツブツ・・・

香焼「っ……」グッ・・・

ステイル「僕が『自分勝手』に、行動すると決めたんだ……じゃあ如何しなければいけないか、分かるな?」ジジジ・・・


一分一秒でも惜しい。


アニェーゼ「……ステイル」ジー・・・

ステイル「貴様らも、さっさと『自分勝手』に行動しろ……僕は今すぐにでも『行動』したいんだ」フゥ・・・

レッサー「……ふふっ。中々のツンデレっぷりですねぇ。まぁ無駄にはしませんよ。任せて下さい」クスッ・・・キリッ!

ステイル「それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIMHAIIBOD)――君はいつも、一言も二言も多いな」ハァ・・・

香焼「っ……アンジェレネを助ける……行こう!」グッ


その一声で、全員が立つ。


オルソラ「あら? ……まぁまぁ、神裂。ご覧になって?」クスッ・・・

神裂「やれやれ……何処からあの元気が来るのやら。若さ故、ですかね。(ステイルまで……良い事ですけどね)」ハァ・・・フフッ

オルソラ「元気? いいえ……不屈とか闘志といった類でございましょう」ニコッ


ステイルが前に進む後ろで、自分らが武器を構えた。そして、自分が考えた作戦を小声で述べる。


アニェーゼ「トンデモ無ぇ作戦ですね……」ハハハ・・・

レッサー「野郎二人の負担が大きいですが……まぁ恰好付けるチャンスって事で譲ってやりましょう」ニヤッ・・・

サーシャ「……危険は承知。しかし私達の内一人でもいいから、あの横を抜けれればアンジェレネを救出できるでしょう」コクッ・・・

香焼「ステイルは散々暴れる。自分は二人の意表を突く……オーバー!」スッ!

ステイル「やれやれ……自分勝手と言ったのにな」フフッ・・・


アチラも女教皇様が三人を下ろし、七天七刀を握る。オルソラさんはただただ……微笑むだけ。
216 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:44:34.14 ID:w4Xj2QWF0
ステイル「その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)……顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)……」スッ・・・

神裂「まったく……本来は褒めてあげるべきなのでしょうね。貴方にも友達が作れた、と」クスッ

ステイル「……余計な老婆心か? 生憎、僕はまだまだ『若い』らしいんでね―――」ニヤッ・・・

神裂「……可愛げの無い14歳だ事―――」ハァ・・・キッ!


そして、一寸後……


ステイル「―――っ、走れ(Go move)ッ!!」スッ!

香焼「了っ!!」ダッ!


オルソラ「あらあら……私は如何動いたら良いのでございましょうね。とりあえず前に出ないでおきますよ」クスッ・・・

神裂「―――七……」スッ・・・


一斉に動いた。作戦は単純且つ、大胆に!


神裂「せ……っ!? なっ!!?」ビタッ!

香焼「てぇやっ!!」シュッ!!


・まず自分が女教皇様に強襲。多分突然の考え得ない事態に8割以上の確率で女教皇様の動きは止まる。


ステイル「つ……ふッ!!」ブワッ!!

オルソラ「まぁ……詠唱していらしたので『魔女狩りの王(イノケンティウス)』さんかと思っていたのでございますが……」アララ・・・


・次に煙幕兼蜃気楼でアニー・サーシャ・レッサーの分身を作る。


アニェーゼ「私が……突っ込む!」ダッ!

サーシャ「……右回して、飛び込みます」ダッ!

レッサー「上を行けー! ってね!」タンッ!


・本命は三方から聖堂内を目指す。これで誰か一人でもオルソラさんの脇を抜けれれば……―――



神裂「中々考えましたね……でも、相手が悪いかった」ニコッ

香焼「え……あ」グイッ・・・



―――七閃―――



香焼「く、はッ……」ダンッ!

レッサー「うっそぉっ!!? ひゃんっ!!」バシッ!

ステイル「煙幕(スモーク)が、消え……がぁッ!!」ドサッ!

サーシャ「っ! これは……ぐぅッ!!」ビシッ!

アニェーゼ「みんな!? いやっ!!」ボンッ!


全員が弾かれて、地に伏せられた。オカシイ……女教皇様の手は封じた筈。如何して……


神裂「香焼……謀反の覚悟有り気で私に挑んだのは見事です。しかし……まだまだ弱い」ニコッ

香焼「ぐぅ……な……」タラー・・・
217 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:46:45.91 ID:w4Xj2QWF0
神裂「あの程度で私の一糸弾くのみの動作を止められると思ったら……大間違いですよ? 精進なさい」

ステイル「馬鹿野郎……抱き着くなり噛み付くなりしてでも止めてみせろよ」グッ・・・

香焼「で、出来るか阿呆……」ハァ・・・


要は自分の自惚れが招いた失敗だった。


レッサー「ヘタレ香焼にゃん! こんな事なら私が特攻んどきゃ良かったです!」ウガー!

神裂「魔力無しの純粋な力なら香焼かステイルの方が強いでしょう。それに貴女達三人とステイルでは誰も私の意表は付けませんよ」フフッ

サーシャ「……ならば魔力で押し通せば!」グイッ・・・

ステイル「そう……まだまだ。せめて魔力を集中させれば!」グググ・・・

オルソラ「連戦だった貴女達と、一度も魔力を使ってない聖人(神裂)……色んな面で結果が見えているのでございますよ」ニコッ

アニェーゼ「くそぅ……アンジェレネ」アアァ・・・


如何足掻いても絶望。


オルソラ「さて……では……誰からオシオキを所望でございましょうか……」ニコニコ・・・


一歩また一歩と……終わりが近づく。
ああ、如何して携帯電話と猫の奪い合いからこんな事態になったのだろうか……


アニェーゼ「ま、待って……アンジェレネの安否を!」ガクブル・・・

神裂「アンジェレネなら……放送室でシルビアに『保護』されている筈ですよ」

レッサー「……あぅ」アー・・・


間に合わなかったか……


サーシャ「だ、第四の質問です……何故、戦闘魔術師では無いシスター・オルソラが……狩りを……ひぅ!」ビクッ!

オルソラ「狩り? 可笑しな事を言うのでございますね。私はあくまでランベス宮内の風紀を守る為に動いているに過ぎないのでございます」

サーシャ「応えになってません……如何やって、戦闘修道女達を……」ガタガタ・・・

オルソラ「……内緒で、ございます」ニヤッ・・・


黒い笑み。
ああ、五和。残念ながらもうすぐオマエの近くに逝く事になりそうだ……畜生め。


オルソラ「それでは皆さん……オヤスミナサイ……」グッ・・・


何も出来ないまま、終わってしまう……―――



 ―――とある日、PM01:20、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・中庭・・・・・



―――一瞬が長い。何も、おきない。誰も、倒れない。


香焼「……」チラッ・・・


こっそり目を開いてみる。すると、目の前に居たオルソラさんが、何時の間にか女教皇様の隣に戻っている。
そして何故か彼女の真下に……シルビアさんが横たわっている。


香焼「な……」ピタッ・・・


そして、そこに居るべき筈の無い……大人が一人。隣には涙目のアン。
218 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:50:13.98 ID:w4Xj2QWF0
神裂「やれやれ……本当に……」ハァ・・・

オルソラ「貴女様に出張られたら、私共も動けないのでございますよ」クスッ・・・


他の4人も目を開く。唖然の表情。


アンジェレネ「ふ、ふえええぇん……みんなぁ……」グズグズ・・・

アニェーゼ「あ、アンジェレネ……って……え……」ポカーン・・・

ステイル「……まさか、な」アハハ・・・


一番、怖い大人……


リメエア「……まったく。この聖堂は一応税金で建てられているのだけど……貴女達、分かってる?」ハァ・・・


第一王女。


レッサー「うわぁ……引き籠り姫が出てきました……」ポカーン・・・

アニェーゼ「シルビアを、やりやがったんですか……あの姫が……」エ・・・

サーシャ「……第五の質問ですが……何故、第一王女が?」キョトン・・・


誰もが思う疑問。


リメエア「そりゃ私だって好き好んで、こんな危険な宮殿に来たくないわよ」ッタク・・・

香焼「で、では……何故……」

リメエア「御母様が自分の居ない間の全権を私に任されました……OK?」


そういえば、ステイルが食堂でそんな事を言っていた気もする。
というかあの女王、なんで第二第三じゃなくて第一(この方)を選んだんだ?


リメエア「順番よ。前回消えた時はヴィリアンに任せたし、その前はキャーリサ。その前は私……簡単でしょ」フフッ

ステイル「そんなガキ染みた順番っ子ルール……毎度毎度だが馬鹿げてるよ」ハァ・・・


確かにそうだが、この人で良かったかもしれない。
第二王女だったらもっと暴力的に混乱増しだっただろうし、第三王女はそもそも解決出来ない。


リメエア「かもね……ま、収集つかないから助けてくれって。態々この子が緊急回線(ホットライン)繋いできたのよ」ナデナデ

アンジェレネ「う、うん……迷惑掛けてごめんなさい……」シュン・・・

リメエア「……いいのよ。大人に面倒掛けてこそ子供なんだから」ニコッ


第一王女が、笑ってる?!


神裂「……裏表の無い純粋な子供とか動物に対しては寛容ですからね、姫様は」

リメエア「そうね……でも魔術師という人間は嫌いよ? あと政治家と貴族王族皇族と騎士と侍女。それから社会人――」


つまり人間不信だ。


リメエア「――そういう事ね。さて……」チラッ


周囲を見渡し、だるそうに告げた。
219 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:52:04.31 ID:w4Xj2QWF0
リメエア「空き部屋を一つ貸しなさい。子供達をそこに……それから神裂、貴女は今回の被害箇所と修復に必要な費用を纏めて持ってきなさい」

神裂「え゛っ……」ゲッ・・・

リメエア「良いわね? それから此処いらに寝てる馬鹿共を叩き起こしなさい……じゃあ宜しく」ニコッ・・・テクテク

神裂「……オルソラ」チラッ

オルソラ「では私は空き部屋の確保でございますね。神裂は他全てを」ニコッ・・・テクテク

神裂「……不幸だ」ハァ・・・


トボトボと消えていく女教皇様。背中が煤けて見えた。女子寮に籠ってる連中に手伝わせれば良いのに……


リメエア「さて……今回の騒動の中心は?」チラッ


その場に残った全員と第一王女が向き合った。


香焼「……自分っす」スッ・・・

リメエア「そう……」ジー・・・

アンジェレネ「で、でも! コォヤギくんは悪くないんです! 私達が勝手に騒いで」バッ!

リメエア「お嬢ちゃん……アンジェレネと言ったわね。確かにそうかもしれないけど……それでは責任者に為り得ないわ」

アニェーゼ「そ、そんな……」シュン・・・


流石にカルテッ娘全員、反省してくれ様だ。それだけで十分である。


ステイル「姫……責任が有るとしたら自分でしょう。この場で最年長及び最高権威者です」スッ

リメエア「そうね。監督不行が生じるとしたら貴方でしょう……でも」チラッ

香焼「……彼は巻き込まれただけっす。立場としては被害者っすよ」コクッ

リメエア「って、中心が言ってる」クスッ

ステイル「……阿呆が」チッ・・・


今回、本当にステイルは巻き込まれただけだ。というか自分が巻き込んでしまった。


リメエア「とりあえず詳しい話を聞くわ……大人は私以外入れない。良いでしょう?」ニコッ

レッサー「……まぁ。ベイロープ達に聞かれると後々嫌な思いをしますからね」ムゥ

アニェーゼ「下らねぇ原因ですから、あまり人に聞かせるのも恥ずかしいですし……」ポリポリ・・・

サーシャ「感謝します。ワシリーサにばれた日には……何を言われるか……」ハァ・・・

リメエア「ふふふ。大丈夫、口外しないわ……私も大人は大っ嫌いだしね」クスッ

アンジェレネ「姫様も大人なのに?」キョトン・・・

香焼「あ、アンジェレネ……」タラー・・・

リメエア「ええ。だから私は私(大人)も嫌いよ……兎に角、一度中に入りましょう。今、さっきのシスターが部屋を空けてくるわ」ニコッ


人間不信というより、人間の『汚い所』に敏感過ぎる人なのだろう。
220 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 22:54:20.24 ID:w4Xj2QWF0
リメエア「まずは、そうね……温かい飲み物でも欲しいわね。好きな物頼みなさいな」テクテク


所々溢れだす気品は、やはり姫様なのだと感じさせられた……―――




 ―――とある日、PM02:00、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・とある空き部屋・・・・・




自分達が通された部屋は割と広めのサロンだった。よく主教と女王陛下が入って居るらしい場所。

緊張した雰囲気の中、窓辺で煙草を吹かしているステイルだけが如何でも良い風だった。
卓上に置かれたコーヒーとココア、ホットチョコレートを各々啜り、姫様の言葉を待った。


リメエア「それで……誰が説明してくれるのかしら?」コトッ・・・

カルテッ娘『……』タラー・・・


そりゃまぁ彼女達は説明し辛いだろう。特に御転婆コンビは尚更だ。


香焼「えっと……携帯と、猫を……」ポリポリ・・・

リメエア「じゃあ坊や、説明して」チラッ・・・


結局自分が説明した。
何処まで言って良いものか分からなかったが……片眼鏡の奥底からの眼力に全てを見透かされる気がしたので、嘘は付けなかった。
ただし、ある程度付け足さないとカルテッ娘に全責任を押し付ける羽目になってしまうので、説明を工夫する。


リメエア「――……良かった。破壊活動をしたかった訳じゃないのね」ジー・・・

香焼「……まぁ、はい」コクッ

リメエア「テロとか襲撃、クーデターならキャーリサに押し付けてたけど……そういう事なら話は簡単よ」スッ・・・


纏めりゃそれで終いである。リメエア姫は溜息をついた後、一同を見渡して苦笑した。


リメエア「子供の喧嘩」フフッ

アニェーゼ「え」キョトン・・・

リメエア「良いわね。昔はキャーリサ、ヴィリアンとも喧嘩したっけ」クスクス・・・


遠い目で、懐かしそうに笑う。


アンジェレネ「姫様同士で、喧嘩したんですか?」

リメエア「ええ。ジャンケンみたい(三竦み)だったわ」

レッサー「ジャンケン?」

リメエア「私は口でキャーリサ負かすけど、ヴィリアンに泣かれると弱い。キャーリサはヴィリアン泣いても虐める……こんな感じ」

ステイル「今もそんな感じだろう?」フゥ・・・

香焼「す、ステイル……」バカ・・・

リメエア「そうね……でも今じゃ『子供』の喧嘩で済まないもの。私達姉妹は『大人』になってしまったから」ボー・・・


もし姫様三姉妹が喧嘩になれば、トンデモ無い事態になるだろう。


リメエア「私の事はさておき……話を戻しましょう。アニェーゼとレッサー、だったかしら?」チラッ

アニー・レッサー「「は、はいっ!!」」ビシッ!


カチカチに固まる二人。
221 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:00:12.02 ID:w4Xj2QWF0
リメエア「貴女達は日記を書いたりする?」

アニェーゼ「日記というか、業務日誌みてぇなモンは書かされます」

レッサー「私も、報告書は偶に」

リメエア「相変わらず子供に仕事させるのね、清教派は……じゃあ此処に居る皆にも内緒の『自分だけの宝箱』みたいなモノは?」

アニェーゼ「それは……」

レッサー「宝箱って訳じゃないですけど……」

リメエア「それっぽいモノで良いわ。兎角、有るのね?」クスッ


秘密の一つや二つくらい、誰にでもあるだろう。


リメエア「その人に知られたくない『秘密』を、無理矢理『見せろ!』って言われたら如何かしら?」ジー・・・

アニェーゼ「ブッ飛ばします」サラッ

レッサー「在られも無い姿に変えてやります」サラッ

リメエア「物騒ね。でも嫌な気持ちになるのは確かでしょ」


二人が頷く。ついでにアンとサーシャまで頷く。


リメエア「貴女達はそれをしたの。そして、そこの坊やは嫌な思いをした」

アニェーゼ「でも……嘘までついて隠しやがるんですよ……コーヤギのヤツ」モジモジ・・・

リメエア「それが坊やの防衛手段だった。貴女は暴力を振うって言ったけど、彼は言葉を武器に選んだ」

レッサー「まぁコウヤギは弱っちぃってのも有りますけどね」ハハハ

リメエア「分からないわよ? 私は魔術とか武術とかは詳しくないけど……『男』なんでしょ、彼」チラッ


無論だが、何が言いたいのか分からない。


リメエア「何だかんだ言っても『本気で怒った』男の子は……怖いのよ?」フフフ

アンジェレネ「コォヤギくんが……」チラッ

サーシャ「……怒る?」チラッ

香焼「いやいや……今は怒ってないよ。さっきは少し怒ってたけど」ポリポリ・・・


少なからず携帯の中身を覗かれそうになった時は、腹立っていた。


リメエア「……アニェーゼ、レッサー」

アニー・レッサー「「はい」」

リメエア「貴女達は、まだ坊やの携帯を奪って中を見たい?」

アニー・レッサー「「……」」

リメエア「力づくで、強盗の様に、嫌がる彼のプライバシーを侵害したとするわ。その後、貴女達の対応が如何あれ……」スッ・・・


コーヒーカップの渕をなぞりながら……


リメエア「彼が、貴女達に絶交を申し込み、口も聞かなくなったら……如何?」チラッ・・・

アニー・レッサー「「っ!!?」」ギョッ・・・

リメエア「……人のプライバシーに土足で上がり込むっていうのは、それだけの覚悟(対価)が必要よ」


冷ややかに、大人な言葉を告げる。
普段の二人なら『五月蠅ぇ! バーカ!』と説教を一蹴してそうだが、姫様の言葉回しと落ち着いた気品の所為か、大分丸くなっていた。
222 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:02:22.62 ID:w4Xj2QWF0
暫時、無言が続いたが……意を決したように、アニェーゼが口を開いた。


アニェーゼ「こ、コーヤギ……その……悪かったです。すみませんでした」ペコッ・・・

香焼「え、あ、うん……」タラー・・・

アニェーゼ「絶交は、ヤです……許して下さい」モジモジ・・・

香焼「え、えっと……大丈夫っすよ。でも、もう勝手に携帯覗こうとしないって約束出来るっすか?」ニコッ

アニェーゼ「はい……ありがと」ペコッ・・・///


元々、絶交なんてする気は無かったけど……此処まで丸いアニェーゼは珍しい。何かあったのか?


アンジェレネ「……朴念仁」イラッ・・・

ステイル「今に始まった事じゃないよ」フゥ・・・


何か言われた。意味が分からないよ。


リメエア「ふふっ、よくできました。さて……其方は?」チラッ

レッサー「うっ……わ、分かりましたよ」ポリポリ・・・


尤も謝罪慣れしてなそうな少女が向き合ってくる。


レッサー「あー、こほんっ……すみませんでした。もうしません」ペコッ・・・

香焼「うん、分かった。約束っすよ?」ニコッ

レッサー「わ、私はデレませんよ。アニェーゼと一緒にして貰っては困ります! コウヤギに縁を切られるのは困るんです! それだけ!」フンッ!

香焼「は?」ポカーン・・・

アニェーゼ「お、ま……レッサー……」ギロッ・・・///

リメエア「……ふふふ」アマズッペェ・・・


とりあえず、コッチの要件は済んだ。次は『猫』関係。


リメエア「子猫ねぇ……今その猫は何処に?」

香焼「そういえば中庭で逸れちゃったっすよ」

リメエア「そう」

サーシャ「第二の考察ですが、放っておいても戻って来るのでは?」

アンジェレネ「さっきも何も言わずにマグヌス神父の頭に乗ってましたしね」チラッ


一同、窓際で紫煙を上げる若年寄を見遣る。


ステイル「……いや、僕が召喚した訳じゃないし。そんな期待されても」タラー・・・

アニェーゼ「ドア開けとけば入って来るんじゃねぇですか?」

香焼「そうだね。そこら辺で鳴いてるかも」


そういうとリメリア姫は立ち上がり、ドアの方へ向かった。
223 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:05:12.24 ID:w4Xj2QWF0
リメエア「じゃあ……ん?」ピタッ

レッサー「姫さん如何したの?」

リメエア「……下がって」スッ・・・

アンジェレネ「何、を……えっ?!」ビクッ!!


何処からともなく取り出した年季の入ったニ丁のワルサー。それで――



 ダンッ!! ダンッ!! ダンッ!! ダンッ!! ダンッ!!



――扉を、ブチ抜いた。


一同『……』ポカーン・・・

リメエア「これで……大丈夫ね」ガチャッ・・・


ポッカリ口を開けた自分達を後目に、ゆっくりドアを開けた。それから一言……


リメエア「盗み聞きするなって、言ったでしょう?」ジトー・・・

香焼「え……」チラッ・・・


扉の前に一人の男性と二人の女性。


神裂「か、確認無しに鉛玉ブっ放すとか、如何いう神経してんですか……」ダラダラ・・・

オルソラ「大分バイオレンスでございますね」アハハ・・・

騎士団長「もうやだ……この姫……」ベヨネッタァ・・・


咄嗟に銃弾を避けた女教皇様と騎士団長は、妙な格好で冷や汗をダラダラ掻いていた。オルソラさんは上手い具合に騎士団長の陰に入っている。
やれやれとリメエア姫は冷静に、マガジンの残弾を確認して、三人に告げた。


リメエア「何の用?」ガチャッ・・・

神裂「いや、貴女が修理個所と費用纏めて来いって言ったんでしょうに……」ハァ・・・

リメエア「そうだったわね。でもソッチ二人は?」フム・・・

騎士団長「いや、アンタ来るなら来るって一言教えて下さいよ。何の為の騎士ですか、私は」ッタク・・・

リメエア「私、騎士団頼った事無いけど。邪魔だから消えて。5つ数えるわ」ワーン・・・ツー・・・

騎士団長「そういう訳にもいかないんです! 立場ってもんが有るんですよ、アンタも私もね! せめて騎士の一人くらい警護に――」


 ダンッ・・・・・


騎士団長「――つけ……て…………アンタ今3つで撃ったっしょ?! ねぇ!? 4と5は!?」タラー・・・

リメエア「聞こえなかった? 帰れ。自分の身の安全は他人に任せないわ」ガチャンッ・・・フッ

一同『……』アゼーン・・・


この姫は何者なんだろう。普通に銃ブっ放してるよ。
魔術師の巣窟で近代的な武器持ち歩いてるの、この人とサーシャくらいだろう。
224 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:08:43.01 ID:w4Xj2QWF0
騎士団長「もう、ヤダ……アンタといい、第二王女といい……何でバイオレンスなの……」ウウゥ・・・

オルソラ「確実に母上の血でございましょうね」フフフ・・・

リメエア「一緒にしないで貰えるかしら。私の方が冷静よ……それで、貴女は?」チラッ

オルソラ「ええ。私は……この子を」スッ・・・


何かを手に抱えている。ステイルの外套と……


リメエア「……成程」クスッ

ぬこ「なー」ジー・・・

アンジェレネ「あ! ネコさん!」パアァッ!!

オルソラ「中庭でニャーニャー鳴いていたのでございます。主を探していたのでございましょうね」ニコッ


言うや否や、子猫を床に降ろし自分らの方へ差し向けた。
黒い子猫は駆け足で自分の下に近づき、一声上げた後、ステイルの頭の上に駆け上った。


オルソラ「ふふふ。私は以上でございますよ」ペコッ

リメエア「そう、ありがとう。ついでにそこの堅物も連れてってあげて」

オルソラ「畏まりました。さぁ、騎士団長殿。帰るのでございますよ」グイッ・・・

騎士団長「ちょ、シスター・オルソラ!? 待て! 誰も警護に一人も付けないと、ばれた時喧しい連中がっ!!」ズルズル・・・

オルソラ「姫は十分強い御方でございますよ。それに『彼ら』もございます……あまりシツコイと、神裂に有る事無い事を……」ジー・・・

騎士団長「な……勘弁してくれ……」フコーダー・・・


オルソラさん、パネぇっす。


神裂「まったく……姫、コレがリストです。では私もこれでお暇します」ペコッ

リメエア「ありがとう。じゃあ……」

神裂「ああ、そうそう。二つ程」ピタッ

リメエア「……何かしら」

神裂「まず、お帰りの際は一言掛けて下さい。騎士団長殿の苦労も少しはお考えを」クルッ

リメエア「……善処しますわ」

神裂「もう一つは……」チラッ


自分らの方を見て、呟いた。


神裂「その子達はまだ幼い。責任を負うのであれば、私が負いましょう」

リメエア「……大人ね。貴女も若いのに」フフッ

神裂「何というか、大人というより『姉』なだけですよ。その子達の」フッ・・・

リメエア「……そういうのは、嫌いじゃないわ。安心して。私も二人の姉よ。子供達を悪い様にはしないわ」クスッ

神裂「……香焼達を宜しくお願いします」テクテク・・・


恐れ多い言葉だ。今の言葉を聞かれたら、また建宮さん達に呆れられそうである。


リメエア「良いお姉さんじゃない」フフッ

香焼「……はい」コクッ


自慢の……姉だ。
225 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:11:32.58 ID:w4Xj2QWF0
レッサー「アレですよ。香焼は初恋の人で間違いなく『女教皇様(カオリ姉さん)』って答えるタイプです」ニシシ!

香焼「な、ち、違うっすよぉ!!」カアアァ・・・///

サーシャ「第一の観測ですが、図星ですね」クスッ

ステイル「図星だろ」ククク・・・


余計な御世話だっつぅの。


アニェーゼ「……」ムッ・・・

アンジェレネ「ふふふ……アニェーゼちゃん、大丈夫だよ。神裂は上条当麻に夢中ですから」ニコッ

アニェーゼ「べ、別に何も言ってねぇですよ!!」ガアアァ///

リメエア「(面白いわね、この子達)……さて、じゃあ話を戻そうかしら」スッ・・・


そういえば『猫』の話だった。
今子猫はステイルの頭の上で首を回している。ステイルも慣れたモノで、椅子に寄り掛りながらも子猫を落とさない。


リメエア「要はその子猫を無理矢理奪おうとしたのね?」ジー・・・

アンジェレネ「……はい」コクッ

リメエア「でも、奪えなかった」

サーシャ「第二の説明ですが、マグヌスがちっとも貸してくれませんでした」ジトー・・・

ステイル「別にガキ染みた意地悪した覚えは無いよ。コイツが君らを嫌がっただけだろう」フンッ

アン・サーシャ「「むぅ……」」ハァ・・・


確かに、子猫がステイルの頭を離れようとしなかった。故に二人が無理矢理降ろそうと必死になっていたのである。


リメエア「個体差はあるけど、猫は『無理矢理』ってのが嫌いな生き物よ」

アンジェレネ「でも、黙ってても来ません」ムゥ

リメエア「お気に入りの場所があるものね。貴女達だってあるでしょう?」

サーシャ「しかし……第一の疑問ですが、何故ステイルに? 無理矢理では無いとはいえ、煙草の臭いや香水だってキツいでしょう」チラッ

ステイル「さぁね。僕の知った所じゃないが、煙とか匂いが気に入ったんじゃないか?」ハァ

リメエア「……坊や、この猫が懐くタイプってどんな人?」チラッ


どんなって……いつも一緒に居る自分を除くと女教皇様、浦上、淡希さん。


香焼「特に共通点は見当たらないっすけど……」フム・・・

リメエア「じゃあ猫じゃらしとかボールとか、好きなオモチャは?」

香焼「……オモチャっていうか、人の『髪』で遊んでるっすよ」ア・・・


ポニテやサイドポニー、ツインテをペチペチ猫パンチしている。


リメエア「それかしら。全員、頭巾を外してみなさいな」チラッ


言われた通り、修道帽をしている3人は脱いでみる。すると……


ぬこ「……なぅ」チラッ・・・スタッ

香焼「お」

ぬこ「……」トコトコ・・・


ステイルの頭から降り、テーブルの上を歩き出す。そしてアニーやアン、サーシャの長い髪に興味を示し、猫パンチを始めた。
226 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:13:44.05 ID:w4Xj2QWF0
アンジェレネ「わぁ! やっと来てくれた!」パアァ!

アニェーゼ「動けねぇです……可愛いから良いけど」ハハハ・・・

サーシャ「猫……にゃんこ……ふふふ」ニコッ

ぬこ「んにゃ」ペシペシッ

リメエア「長い髪が好きなのね。変な猫」クスッ


そういう事か。


レッサー「うーん……でも私には近づいてこなかったですよ」ブーブー

香焼「レッサーはいっつも騒いでるから近づいてこなかったんすよ。大人しくしてれば寄って来るさ」

レッサー「でも、浦上は懐かれてるんでしょう?」


アイツは昔から動物の扱いが得意だから、何とも言えない。


リメエア「ふふっ。子猫に好かれたければ御淑やかにするのね。あとその動物マフラーを外すとか」クスッ

レッサー「姫さん、それは私のアイデンティティを壊しかねませんよぅ」ハァ・・・


苦笑。


リメエア「とりあえず、全て解決……と言いたいところだけど」チラッ

香焼「……はい」コクッ


姫はリストを見詰めた後、自分らの顔を見直した。


リメエア「……大分暴れたのね、貴方達」ハァ

アニェーゼ「うっ……申し訳無ぇです」シュン・・・

リメエア「此処に居る貴方達だけじゃないけど……結構な金額よ」フフッ・・・

レッサー「ど、どれくらいですか?」ゴクッ・・・

リメエア「数十単位」サラッ

アンジェレネ「え? それなら……」コクッ


貯蓄してる皆の年金で何とか……


リメエア「嘗めてるわね。此処は文化財よ? 億の単位に決まってるじゃない」

香焼・カルテッ娘『』チーン・・・

ステイル「……僕でも、払えないな」ハァ・・・


……ならない額だった。


リメエア「魔女(スチュワート)に全部押し付けても良いんだけど、お門違いだし……私情がばれるわね」

ステイル「それは……困るな」タラー・・・

リメエア「神裂やシルビア……それから関係者全員も同じ理由ね。ただ、それでいいならば押し付けて2,3年間タダ働きさせる?」

香焼「そ、そんな……」

リメエア「仕方ないじゃない。坊やの一生掛けても払えない額だもの」


確かに自分は凡人だ。頑張って稼いでも数十億には及ばないだろう。ステイルは別として、他の皆も然り。
227 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:17:41.42 ID:w4Xj2QWF0
ステイル「……僕の名義なら借金数百単位まで借りれる。それではいけませんか?」

サーシャ「同じく、第一の提案で……ワシリーサに頭を下げれば借りれます。この際、プライド云々は言いません」

香焼「す、ステイル?! サーシャ?!」ギョッ・・・

アニェーゼ「そんな勝手な事しねぇでください! 私達皆でカンパでしょう!?」ギロッ!

アンジェレネ「そ、そうですよ! そんな負債押し付ける事になったら……如何していいか……」アタフタ・・・

レッサー「むぅ……何か手は……」ハァ・・・

リメエア「……」ジー・・・


身の程を知る、とはこういった時の事を言うのだろう。自分はなんて……小さいんだ。


リメエア「そろそろキツい事言うけど……ねぇ」ボソッ

香焼「……はい」

リメエア「分かったかしら。これが『人様に迷惑をかける』という事よ」キッパリ

アニェーゼ「それは……分かってます、けど……」

リメエア「確かに、貴方達は人より先に社会に出ているかもしれない。色んな意味でね。でも……本当に理解はしてなかったでしょう」

サーシャ「……理解、してない?」


ゆっくり立ち上がり、テーブルに歩み寄って来る姫。


リメエア「いくら一丁前に戦えても、いくら人一倍仕事が出来ても……こんな事を起こすようじゃまだまだ『子供』だわ」ジー・・・

一同『……』シュン・・・

リメエア「そして、大人へ頼る方法を知らない。そして自分が子供だという自覚すらない」チラッ

サーシャ「……」ムッ・・・

リメエア「僕の名義で数百まで借りれる? 相当危険な金融なんでしょうね。見目大人とはいえ、未成年にお金を貸すくらいだから」

ステイル「……戸籍など偽れる」

リメエア「お莫迦。主教補佐という肩書を外して、数百億貸してくれる訳無いでしょう」


正論だ。


リメエア「御高説や喧嘩口調は大人以上。だからって『大人』じゃないのよ? 分かってる?」

アニェーゼ「……分かった所で、如何しようもねぇです」ギリッ・・・

リメエア「そうよ。でも……学んだでしょう? 子供の喧嘩とはいえ、度が過ぎれば痛い目見るの」

アンジェレネ「……ふぇ」ウルウル・・・

レッサー「むぅ……大人だって、御高説並べてるだけじゃないですか。要は説教したいだけでしょう」ジトー・・・

リメエア「……そういう風に反抗出来る方が子供っぽいわ。私はそっちの方が好きよ」クスッ・・・


泣きそうなアンの頭を優しく撫でながら、リメエア姫は続けた。


リメエア「私の嫌いなモノ。大きく分けて二つ……大人と年相応では無い子供」

香焼「え……」

リメエア「子供の純粋な我儘なら結構。喧嘩だって寛容に見れる。最後にごめんなさいで仲直り出来ればね」ニコッ

アニェーゼ「……大人だから、ですか?」ジー・・・

リメエア「そうね。大人はごめんなさいで済まないもの……そして、そこで何かを壊したら保護者(大人)が面倒をみる」


しかし、自分達にはそんな保護者たる大人が居ない。
228 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:19:55.06 ID:w4Xj2QWF0
リメエア「社会の仕組みが、壊れてきたのよ……まぁそんな難しい事は貴方達に言わないわ」

レッサー「意味は分かりますよ。でも姫さんは所詮、子供の知った被りって言うんでしょう?」

リメエア「分かってるじゃない。20も生きてない子供が社会の変化云々を語れる訳無いものね」


いくら大人びていても、自分等は10代前半。失礼だが、この方の半分も生きていないのだ。


リメエア「貴方達は子供として、叱ってくれる大人が居なかった」

アニェーゼ「まぁ……仕事のミスは『駒』として叱られてましたからね」

リメエア「それを当然と受け止める貴方達。それの正否は問わないけど……せめてこのメンツが集まった時くらい、子供でいなさいな」ニコッ


それは自分も望んでいる事だ。彼女達は謂わば『灰色の青春』を過ごしている。
武器を持ち、戦場に立ち、人を傷つける……子供のする事では無い。
無論、信念有り気だろう。止めろとは言えないが……年相応で居て欲しいと願う時も有る。


リメエア「人って少しずつ何が正しいか、何をしてはいけないかを勉強して……大人になるものでしょう?」

香焼「……そうっすね」コクッ

リメエア「何れ嫌でも大人になるの……我儘が許される内は、子供でいなさいな。じゃないと碌な大人にならないわ」ニコッ・・・


私の嫌いな大人みたいにね、と微笑み……子猫を抱えた。


リメエア「貴方も、例外じゃないわよ。主教補佐。いえ……マグヌス坊や」クスッ

ステイル「……」フンッ・・・


この姫はステイルを『子供』として叱れる数少ない人かもしれない。


リメエア「さて……じゃあ終わりよ」ニコッ

香焼「え……まだ修理費の話が……」

リメエア「聞いてなかった? 子供のケツ持ちは保護者、大人がするものだって」

レッサー「ベイロープはそんなに金持ってないですよ……」

アンジェレネ「シスター・ルチアも……倹約家ですが、お金持ちじゃないです……」

サーシャ「やはり……ワシリーサに頭を下げて……」


違う違うと苦笑する姫君。


リメエア「子供の悪戯で済む範囲の額じゃないんでしょう? それに彼女達も私から見ればまだまだ子供よ」フフッ

ステイル「……ならローラや殲滅白書の部隊長に?」

リメエア「あの荒んだ大人達に貴方達のケツ持ちをさせたくは無いわ。これ以上、子供が歪んでいくのを見たく無いものね」フンッ・・・

香焼「では……何を?」


子猫を自分の肩に乗せながら、姫は―――
229 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:22:23.21 ID:w4Xj2QWF0
 ―――翌日、PM01:00、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・食堂・・・・・




騒動から数日後、自分達はいつもどうりの生活を送っていた。それはそれは信じられない程に。

食堂に残っている人間は数名。後片付けをする者、清掃する者、そして自分の様に一服付いてる者。
周囲からは多少の生活音と工事の音。それから……


ステイル「……ハァ」フゥ・・・

ぬこ「みー」ゴロゴロ


禁煙の食堂で煙草を喫う馬鹿の溜息。


香焼「オマエなぁ……喫うな、とは言わないからせめて自分の部屋に行けよ」ハァ・・・

ステイル「……移動するのが、面倒臭い」ジジジ・・・

香焼「まったく……不良神父め」ツンツン

ぬこ「なぅ」ペチペチ


煙草について言っても聞かないのは、多分一生モノだろう。
自分が呆れ返り、煙を掻き集める癖がついてしまった子猫を愛煙者から引き離すと同時に、扉の方から4人、歩み寄ってきた。


ステイル「……喧しいのが来た」チラッ

アニェーゼ「小五月蠅いアンタに言われたくねぇですよ」フンッ


相変わらずの罵倒。


レッサー「コウヤギっちも、好き好んでこんな悪ガキと付き合う必要無いのにねー」クヒヒ!

ステイル「君の痴女っぷりよりは優良児だよ」ッタク・・・

アンジェレネ「もう……少しは仲良く出来ないのかなぁ」ハァ・・・

サーシャ「第一の感想ですが、顔合わせる度罵り合いですね。飽きませんか?」フフッ


困ったものだ。


アニェーゼ「……しかし、驚きましたね」チラッ

香焼「ん? ああ……まぁね」ハハッ・・・


未だ修理されていない食堂の扉を見遣る。


レッサー「借り一、ですか。オッカナイ借りですよ」フフフ・・・

アンジェレネ「レッサーちゃん。そういう考え方、また怒られちゃいますよ」

サーシャ「アンジェレネに同意します。ただ……いつか恩返しはしたいものです」

香焼「そうだね……自分達が大人になってからでも」コクッ

アニェーゼ「いやしかし、金銭感覚が違うっつってもキャッシュでポンとは……流石王族」ハハハ・・・


今回の件、女教皇様や主教の手を煩わせる事無く全てが片付いた。リメエア姫が修理費を支払って下さったのだ。
何の関係も無い自分らに如何してそこまでしてくれるのかと聞くと……

『今私は、この国で最高権威の大人。そして貴方達はこの国の子供……それじゃ駄目かしら?』

……との事。寛容なんだか、成金なんだか。
230 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:26:40.59 ID:w4Xj2QWF0
アンジェレネ「噂では極度の引き籠り姫って聞いてたけど、強ちそうじゃないのかも」ニコッ

レッサー「潔癖症ってのは本当でしたけどね。まぁ冷酷、ってのは違いました」

ステイル「あの姫はエゴの無い世界の理想論者なんだよ……今回はその御蔭で救われたけどね」


将来この国を担うかもしれない子供達への先行投資と言ったところか。
ステイルとレッサー以外英国人じゃないのだけれど、細かい事は気にしない。


アニェーゼ「ガキ扱いされんのは嫌いですが……ああいう風な大人が居るなら、悪くねぇですよ。子供のままでも」

サーシャ「同意します。ワシリーサとは別の意味で子供として見てくれる人は貴重です」

レッサー「サーシャの上司は変態の代名詞ですからねぇ」キヒヒ!

アンジェレネ「レッサーちゃん……人をそんな風に言っちゃメッだよ」ジー・・・

ステイル「五月蠅いなぁ……余所でやれ、余所で。落ち着いて煙草も喫えやしない」ハァ・・・

カルテッ娘『此処で喫うのが間違い!!』ガアァッ!

ステイル「……おぅふ」タラー・・・

ぬこ「なーぅ」クシクシ!


せめて子供らしく……自分は好きな言葉だ。
年相応に猫に絡んだり、トランプ遊びに興じたり……悪くないよね。


アニェーゼ「コーヤギ! アンタも早くコッチ来やがれってんです!」オーイ!

レッサー「ヒヒヒ! ボロ負けさせたげますよ。脱衣ポーカー最高!」ニシシ!

アンジェレネ「や、ヤダよー。そんなの……お菓子を賭けるとかにしよう」アワワ・・・

サーシャ「再度アンジェレネに同意します。第一の提案ですが……レッサー。貴女だけ脱衣ルールにしましょう」ジトー・・・

レッサー「な、そ、そりゃ無いですよー! ならせめて野郎共も同条件です!」ギロッ!

ステイル「僕をカウントするな……って、アンジェレネ! カードを寄越すな!」ダアアァッ!!

アンジェレネ「ふふふ。6人で、ですよー」ニコッ


とりあえず携帯で、猫と5人が入った写真を一枚。


アニェーゼ「あー! 何勝手に撮ってやがるんですか!」ムキャー!

サーシャ「第一の苦情です。被写体に許可無しでの撮影は褒められたモノではありませんよ」ジトー・・・

レッサー「盗撮プレイなんて、案外スケベェですねぇ……オシオキが必要ですか?」ムフフ・・・

アンジェレネ「まぁまぁ。今度はちゃんと皆入って撮ろうよ!」ニコッ

ステイル「……その皆ってのは僕もカウントされてるのかい?」ハァ・・・

アニェーゼ「くどい! 男なら腹括りやがれってんです!」ニヤッ・・・


馬鹿みたいに遊べるのも今の内。タイマーをセットして全員で……


香焼「はい、ポーズ!」ニコッ

カルテッ娘『いえーい!』ニカッ!

ステイル「勘弁してくれ……」ハァ・・・

ぬこ「にゃんっ」ペカー!


『子供』記念を撮影した。願わくば、少しでも長く、馬鹿出来ます様に……―――
231 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:32:13.31 ID:w4Xj2QWF0
       <おまけっ!>



リメエア「……ふふっ」クスッ

ヴィリアン「あれ? 姉様、何笑ってるの?」テクテク

キャーリサ「王室サロンに居ること事態珍しーのに、笑ってるなんてもっと珍しーな」ゲェ・・・

リメエア「んー……ちょっと若いって良いなぁって、感傷に浸ってたのよ」フフッ

ヴィリアン「え? 若い?」キョトン・・・

キャーリサ「あはは! 姉上も流石に歳を気にする様になってき……冗談です御姉様、銃口向けないで」タラー・・・

リメエア「まったく……貴女達も昔はコレくらい可愛げがあったのにね」ハァ・・・

キャーリサ「私は今でも可愛いわよ?」ニコッ

ヴィリアン「……え? 可愛い?」ハァ?

キャーリサ「てぇゐっ!」ビシッ!!

ヴィリアン「あ痛っ!! ね、姉様、別に馬鹿にした訳じゃないわ! ただ可愛いって表現が……き、綺麗の方が合うって意味よ!」アタフタ・・・

キャーリサ「ふむ……まぁ許してやろー」フンッ

リメエア「姉妹仲良いんだか、悪いんだか」チラッ

キャーリサ「あら。仲良し姉妹よ? 私達」ニコッ

リメエア「……そうね。そう有りたいわね」クスッ

ヴィリアン「それより、姉様。その携帯で見てるモノ、見せて欲しいなー」チラッ

リメエア「だーめ。携帯を覗くって行為は時として戦争になりかねないのよ?」フフッ

キャーリサ「英雄さんなら普通に見せてくれるけど」ニヤッ・・・

ヴィリアン「無理矢理、だけどね」ハハハ

リメエア「兎に角、プライバシーは大事。そゆ事」ニコッ

キャーリサ「姉上のプライバシーは強固過ぎるし。せめてヴィリアンくらい分かりやすきゃーなー」ハハハ!

ヴィリアン「……え」キョトン・・・

リメエア「確かに……お忍びデートは変装したくらいじゃ誤魔化せないのよ? ヴィリアン」ニヤッ・・・

ヴィリアン「なぁっ!!? ち、違います! で、デートじゃなくて、アレはその……偶々レストランで御一緒しただけで……」カアアァ・・・///

キャーリサ「会員制のレストランでディナー一緒になったのが偶々ねぇ? アイツは手作りとかの方が喜びそうだけど?」ヒヒヒ!

リメエア「しかも態々人気の少ない場所を選ぶなんて……一般人は騙せても、身内からバレバレー」クスッ

ヴィリアン「な、も、もうっ!! 知らないっ!!」ウガアァッ///

リメエア「ふふっ。ごめんごめん。ヴィリアン、少しだけ見せてあげるから許して」ニコッ

キャーリサ「ちょ、ずりーし! 私にも見せてよ!」ワーワー!

リメエア「まったく……変な所で子供よね。二人とも」クスクスッ


 ―――バタンッ!


3姉妹『……あ』チラッ・・・
232 :第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」 [saga]:2011/03/28(月) 23:33:29.94 ID:w4Xj2QWF0
エリザード「はぁい! おっ母様のお帰りよ~ん!」ヤッホー!

キャーリサ「……喧しいのが帰ってきた」ハァ

リメエア「何処行ってたのよ……人に厄介事押し付けて」ジトー・・・

エリザード「一応国内に居た。本当本当」ニコニコ

ヴィリアン「母様、何処ぞの国の領事とかは無しよ」ハァ

エリザード「違う違う。マジ国内だってば。ぐれーとぶりてん及び北あいるらんどー」ウンウン・・・

リメエア「如何でも良いけど、毎度毎度私達に責任押し付けて逃げるの止めて欲しい」ハァ

キャーリサ・ヴィリアン「「同じく」」コクリッ

エリザード「冷たい子供達め。母親だぞ! 女王様だぞ! 偉いんだぞ!」ウガー!

リメエア「はいはい……お母様は何時までも子供みたいで羨ましいわ」フフッ

エリザード「永遠の17歳だからな! って……リメエア。何か朗らかね? どったの? 彼氏でも出来た?」ワァオ・・・

ヴィリアン「さっきからこの調子なのよ。私達もおかしいなって思ってます」ジー・・・

キャーリサ「まぁ姉上なら隠し子の一人や二人、ひょっこり現れても不思議じゃないよね」ハハッ!

リメエア「そうね……可愛い『子供』、かな」クスクス・・・

3人『へぇ……ええぇっ!!?』ハァッ!?














ロイヤル冷蔵庫「終わるのさっ!!」ドーンッ!! 
233>>1 [saga]:2011/03/28(月) 23:38:39.79 ID:w4Xj2QWF0
はい終了。溜りに溜まってた分、暇あれば投稿するよー。
しかし……早く新約が読みたいですねぇ! 此処でネタばれ禁止だよ!!

次は引き続き英国編にするか、また都市編に戻るか……それとも天草編をやるか、迷ってるよーん。

それでは感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。それじゃあ、また次回! ノシ
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 01:18:36.36 ID:zqel42ODO
超乙です!
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/29(火) 02:55:33.39 ID:E4jbHdMa0
乙です。

都市編で吹寄&青ピと出会って欲しい。
上条さんクラスメートコンプリートだ!
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 07:48:02.05 ID:JxZeztxDO
おっつー!
何ていうか、いつもどうりで安心したww

次は最愛ちゃん超再希望! 加えてそろそろ、はまづらとたきつぼ夫婦が超見たいよ!
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/03/29(火) 08:37:46.72 ID:Dfd/yNHYo
乙でした

最愛とかあわきんのことは結局バレなかったてことかな?
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 13:41:06.11 ID:c1f1YqLIO
乙でした!
こいつらは本当に小さい頃から魔術やら戦いやらに関わってきた奴らばかりだから
こう年相応に騒いでると嬉しくなるよな。
次は都市編で笹川中学二人のケー番を是非ゲットしてほしい
239VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/03/29(火) 19:21:59.86 ID:VZl23d+AO
乙です

ソギーの出番はまだですかい?
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/03/29(火) 23:55:14.09 ID:r18qmbDd0

>>182の考察だけど、簡単に説明すると

・ガブリエルを体内に入れてたサーシャは魔術に触れるたび謎の震えに襲われる
→大天使の身体の中に入ってたから、全身が震えてくすぐったいんじゃね?

という内容だったはず

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