2013年2月1日金曜日

あまくさっ! 3

<主な登場人物⑦>

・削板軍覇……お馴染、愛すべき⑦(バカ)。じゃなくて学園都市超能力者(トップ7)の№7。世界最大の『原石』。
       このSSでの年齢は14歳。つまり香焼、ステイルと同じくらい。頭は弱いが情に熱い人。公式チート月○花。
       呼称は・・・削板、軍覇、ナンバー7、⑦、 ソギー、すごパ、脳筋野郎、等。

       兎に角、迂闊に接触できないクレ○ジーダ○ヤモンド。超能力者だが自分の能力を理解しておらず、周りも理解できない。
       性格は何かに付けて「根性」を引き合いに出す熱血野郎。愛と根性のヲトコ。シリアスをギャグか熱血モノにする天才(災)。
       実力的に、攻撃性はすごパこと『すごいパーンチ』で8割方何でもありでブッ飛ばす。防御性も美琴の攻撃程度なら我慢できる。
       だがしかし、暗部や学園都市の裏側については知っている故、昔『色々』あったのかもしれない。それは『某所』で書きます。
       正直何処に住んでいるかは不明。研究所かもしれないし、四六時中高い所でピッ○ロ立ちしてるかもしれない。
       このSSでは香焼・絹旗と絡む事によってトンデモ無い方向性に……(以下追々付け足)




・初春飾利……風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部所属の中学生。白井黒子の相棒と言った方がメジャーかもしれない。
       第7学区立柵川中学に在席する中学1年。非戦闘要員である為、基本的にバックアップに徹する娘。
       呼称は・・・初春、初春さん、お花の人、守護神(ゴールキーパー)、黒春、売れっ子薄い本作家、等。

       頭の花、スカートを捲られる、風紀委員というアイデンティティが強い普通の少女。
       所持する能力はレベル1の『定温保存(サーマルハンド)』。能力自体は大した事が無い。ただし本人の演算能力は天才級。
       『守護神』と呼ばれる超一流のハッカーで半ば伝説と化している。その実力は電子系の第一人者御坂美琴を唸らせるほど。
       本人は自身の重要性に気付いてないが、都市の機能を奪うとしたらまず彼女の様な『頭脳』が狙われるだろう。
       同部署、白井と固法は出来るだけ彼女の情報を外に漏らそうとはしていない……(以下追々付け足)


・佐天涙子……初春の同級生。超電磁砲組のムードメイカー。ある意味メンバーの中で一番の精神的超人かもしれない。
       第7学区立柵川中学に在席する中学1年。同年代の女子の中では『能力』抜きでの身体能力はトップクラス。
       呼称は・・・佐天さん。(ニックネーム募集)

       挨拶代わりに初春のスカートを捲るセクハラ女子中学生。趣味は都市伝説や噂話を追求する事。基本的に誰とでも仲良くなれる。
       無能力者(レベル0)の『空力使い』。『ある事件』まで能力コンプレックスだったが、御坂達の御蔭で克服できた。
       逆に超能力者たる御坂も、彼女の御蔭で無能力者を馬鹿にする様な発言を控え出す。
       余談だがこのSSで『友情』という点では香焼の性格に一番近い娘かもしれない……(以下追々付け足)


・春上衿衣……初春の同級生。超電磁砲組の新メンバー、だと思う。春上さんマジ香菜ちゃん。『置き去り』出身。
       第7学区立柵川中学に在席する中学1年。一見ただのホワホワ少女だが……絹旗レベルの暗い過去持ち。
       呼称は・・・春上さん、衿衣ちゃん。(ニックネーム募集)
       
       語尾に「~なの」を付ける癒し系おっとり娘。殆どの人が覚えていないと思うが『絶対能力者(レベル6)』に成り掛けた少女。
       能力は受信のみ可能なレベル2相当の『精神感応』だが、特定条件下ではそれを超える数値の能力を発揮する。       
       枝先絆理と交信する際のみ特別強力になり、場合によってはレベル4相当まで強度が跳ね上がる。
       『ある事件』までは頻繁に『乱雑開放・RSPK症候群(ポルターガイスト)』を起こしていたが、今は滅多に起こさない。
       初春同様、彼女も色々と狙われ易い状況下に置かれているが、はたして……(以下追々付け足)



ポルターガイストについて詳しく知りたい方がいれば、その内それを扱った題材で何か書きます。それではどうぞ!

277第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 19:58:23.01 ID:9JvsjrAn0
 ―――とある休日、PM01:00、学園都市第7学区、とあるプライベートホテル、VIPルーム・・・・・




絹旗「―――……よしっ! 超準備OKです!」グッ!


見目普通の女の子が可愛らしいポシェットにお出かけグッズを準備し、意気込んだ。
それを不思議な目で見守る年上の兄姉分達。


フレンダ「ちょっと……最近絹旗のヤツ、変じゃない?」ボソッ

麦野「んー……そぉー」カキカキカキ・・・


携帯を弄りながら小声でちっこい同僚――絹旗最愛の変化に疑問を持つ、フレンダ=セイヴェルン。
それを如何でも良いといった感じで流す上司(リーダー)――麦野沈利。


フレンダ「だっていつもの様に下らない映画見に行く訳じゃないんだよね」ボソッ

浜面「友人、とやらに会いに行くんだろ。ほら麦野、この資料で良いのか?」テクテクテク・・・

麦野「うぃ。てんきゅー」スッ


現在麦野は『とある任務』のデータ収集中。出来る女はデスクもバリバリよ、と云わんばかりに手を動かしていた。
一方、彼女に必要資料を渡している雑用くん――浜面仕上はフレンダの問いに対して、何でも無い様にサラッと返答した。
それを聞いてフレンダは更に驚く。


フレンダ「と、友達?! あの子に!?」キョトン・・・

浜面「まぁ……よく分かんねぇけどそんな感じなんじゃね」コクッ

麦野「6-Bより7-Kで……別に任務に支障出なきゃ何やっても良いわよ。友達だろうが恋人だろうが」カキカキ・・・

フレンダ「おぅふ……麦野っち……私達、絹旗に先越された訳ねぇむぎゅううぅっ!!」グイッ!!

麦野「喧しい口は溶接してやろうかしら」ニコッ・・・

フレンダ「そ、そーりー……ジョークよ、ジョーク……」ムギュムギュ・・・


年齢的に彼氏がいてもおかしくない年上女性2人。最年少の絹旗に先を越されるのは……何となく癪ではあった。


滝壺「むぎの、フレンダ。きぬはたの事茶化しちゃ駄目だよ」メッ!

麦野「あーはいはい。リア充さん」ケッ

フレンダ「結局……羨ましい限りな訳よ。そこのスカポンタンは」ジトー・・・

浜面「な、何だよ……」タラー・・・


ピョコピョコと歩み寄ってきたおっとりした少女――滝壺理后と浜面が良い仲だということは他の同僚全員が気付いている。


浜面「……か、関係無いだろ。今は絹旗(アイツ)の話してんだからさ」フンッ

絹旗「誰が、誰の話してるんですか?」ジトー・・・

浜面「い、ぁ、な、何でもないぞー」アハハ・・・


そりゃこれだけ大きな声で内緒話をしていたら嫌がおうにも気付いてしまう。
278 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 :2011/04/05(火) 20:24:26.39 ID:9JvsjrAn0
絹旗「まったく……どうせまたバカ面が超阿呆な噂してたんでしょう? 分かってますっての」ジトー・・・

浜面「俺じゃねぇよ。コイツらだ、こいつら」クイッ

フレンダ「ちょ、私にふる訳?!」ゲッ・・・

絹旗「……もぅ。言いたい事があるなら堂々とどうぞ」ハァ


そんな事言われても……


麦野「ウチのマスコットこと絹旗ちゃんが何処ぞの馬の骨に[らめぇぇっ!]されてるなんて悔しいなぁ、って言ってたわ」ボソッ・・・カキカキ・・・

絹旗「ハアァっ!!?」カアアァ・・・///

フレンダ「い、言ってないよ! そんな頭の中エロスの権化なのは浜面だけで十分って訳!」アタフタ!

浜面「ざけんなっ! 人に責任押し付けんなよ!」ガアアァッ!!

フレンダ「結局、アンタが最初に押し付けた訳なのよ!」ガアアァッ!!


下らない口喧嘩が始まってしまった。


絹旗「べ、別にその……アイツはそういう相手じゃなくって……と、友達ですから……」ゴニョゴニョ・・・

滝壺「やれやれ……ほら、きぬはた。そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ。一々構わなくていいから」ポンッ

絹旗「あ……そ、そうですね」プクー・・・

滝壺「あの二人にはちゃんと説教しとくから、ね。楽しんでおいで」ニコッ


優しい姉分が絹旗の背中を押す。しかし同様に……


麦野「緊急招集(エマージェンシー)かかったら直ぐ帰ってきなさいよ。『仕事(アイテム)』優先だかんねー」カキカキカキ・・・

絹旗「……超分かってますよ」ムッ・・・

麦野「よろしい。流石可愛いエース暗殺者(ヒットマン)……まぁ仕事が入んなきゃ一泊でもハネムーンでも行ってきなぼふっ!!」ブヘッ

絹旗「~~~~ッッ!! そういうんじゃないって超言ってるでしょう!! 変態麦野! 見栄っ張り淑女!」カアアァ・・・///


厳しく釘を打つ姉分……というより職場――『アイテム』の上司。
多少おふざけが過ぎるので、上司であろうがクッションを投げられたりもする。


滝壺「こらっ。だから反応しないの。きぬはたは大人なんでしょ?」メッ

絹旗「むぅ……そうですね。超大人な私が超寛容な対応をしてやらなきゃいけませんねっ」フンッ

麦野「むはは、こりゃ傑作ね。じゃあ公私のケジメはつけるのよー」カキカキ・・・ピラッ

絹旗「分かってますよ。私は超大人ですから」ムンッ!


無い胸を張る超大人こと中学一年生。ホラホラと滝壺に連れられ玄関へ向かった。


絹旗「じゃあ……超いってきまーす!」ガチャッ!

滝壺「うん、いってらっしゃーい」バイバーイ

絹旗「遅くなる時は浜面にアッシーお願いするかもです!」タタタタッ!

滝壺「分かったー。気をつけてねー」ニコッ


可愛い殺し屋さんは『友人』が待つ公園に向かって走り出した。
279 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 20:55:45.65 ID:9JvsjrAn0
絹旗が去った後、年長者4人はヤレヤレと一服することにした。


フレンダ「しっかし、あの子がねぇ……友達かぁ」フム・・・

浜面「そんなにおかしいか?」

フレンダ「おかしいっていうか、何ていうか」ポリポリ・・・


浜面が知る限り、絹旗という少女は人懐っこい生意気な、偶に面倒見が良いガキんちょというイメージがある。
確かに誰かに依存するタイプではあるが、友人の一人や二人いてもおかしくないだろう。


麦野「まぁアンタは途中から入ってきたからそういう風に思えんのよ」カキカキ・・・

浜面「そういう風にって」

麦野「あの子、すんごぉ~~~~~~く人見知りよ」フゥ・・・

浜面「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」ポカーン・・・

フレンダ「結局、アンタは『普段』の絹旗をよく観察してない訳。絹旗単体じゃなく、絹旗の『全体』って訳なのだよ」コクコクッ

滝壺「うーん、そうかもしれない。きぬはた最初は猫みたいだったもん……はい、むぎの。コーヒー。」スッ・・・

麦野「そゆ事。さんきゅっ」ニコッ


今も猫っぽい気はするが、如何いう事だろう。


フレンダ「んー……じゃあまず私達(アイテム)と接する絹旗がいる訳よね。結局、それがベースって訳」ビシッ

浜面「うん。まぁそれが俺らが良く知る絹旗だよな」コクッ

麦野「ちなみに『仕事モード』は抜きよ。あの子のアレはそういう風に『教育』されてきた故だから。根っ子がそうなのよ」

浜面「……根っ子が、仕事? それって……『殺し』って事か?」ゲッ・・・

滝壺「きぬはたは……それで生計を立てていく様、教育されちゃってるから……」シュン・・・


また一つ、浜面が知らない絹旗。


麦野「……浜面。頼むから『絹旗をまっとうな女子に――』なんて事考えないでちょーだいよ」チラッ

浜面「それは……オマエの私権か? それともアイテムリーダーとしての警告か?」ジー

麦野「どっちも。リーダーとしては言わずもがな。個人としては……ん」チラッ


胸を抑え、表情を翳らせる滝壺を見遣る。


浜面「……滝壺?」エ?

フレンダ「結局……この御人好しはお馬鹿にも絹旗を『良い子』ちゃんにしようって試した訳」ハァ

浜面「麦野にゃ遠慮せず言わせてもらうが……悪い事か?」ジトー・・・

麦野「ええ。最大級の禁忌(タブー)ね」サラッ・・・


冷酷。


浜面「オマエ……っ!」ギロッ!

滝壺「はまづら、違うの! 私が……悪かったの」シュン・・・


何故か残酷なリーダー殿を庇う優しい少女。何故だ……
280 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 21:24:33.64 ID:9JvsjrAn0
フレンダ「ねぇ浜面……乱雑開放(ポルターガイスト)って知ってる?」

浜面「ぽるたぁ? えっと……騒霊ってヤツか?」キョトン・・・

麦野「駄阿呆。反復性偶発性念力(Recurrent Spontaneous PsychoKinesis)……別名、乱雑開放よ」

浜面「……悪かったな。所詮俺は中学も碌に行ってねぇ不良くんですよ」ケッ


ポルターガイスト。
トラウマやストレスにより、心理的に不安定となった子供が引き起こすとされる超常現象。
学園都市では既に原理が解明されており、具体的には能力者が一時的に自律を失い、自らの能力を無自覚に暴走させる状態及び現象を指す。

通常は同時多発を起こすようなものではないが、AIM拡散力場に干渉があった場合はその限りではない。
そうした状況下では暴走した能力は互いに融合し合い、ポルターガイストを引き起こす。
さらにそのポルターガイスト現象が規模を拡大すると、体感的には地震と見分けが付かない状況に発展する。

因みに、個々の現象は様々だ。


浜面「ああ! 確か八月の頭の方にデカいのが起きた奴か!」コクコクッ

麦野「そう、それ。簡単にいえば情緒不安定になった能力者が『心の最終防壁』を破られると暴走すんのよ」

浜面「ふーん……で? それが絹旗に如何関係有んだよ」

フレンダ「……此処まで言われて、気付かない訳?」ジトー・・・


此処までって……まさか、絹旗が?


フレンダ「That's all right(その通り)」コクッ

麦野「んで、ブチ破ったのが……そいつ」フンッ

浜面「……え」キョトン・・・

滝壺「……」シュン・・・


ただ、絹旗を『真っ当』にしようとしただけで。


麦野「能力者ってのは『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が確立してる程、高位の強度(レベル)になる。この程度は分かるわね?」

浜面「まぁ、うん」

麦野「本来、大能力者(レベル4)のあの子はそう簡単に精神ヤられる訳無いのよ? でも……ホント、馬鹿ね」ハァ・・・

滝壺「……ごめんなさい」シュン・・・

フレンダ「うん……まぁもう昔の事な訳だけどさ。結局、気を付けてりゃ二度と起こらないって」アハハ・・・


滝壺は善意で絹旗の心に触れようとした。だがそれが……琴線を弾く結果となったらしい。


浜面「……因みに、その時はアイツ如何なったんだ?」

麦野「最初は空気中の窒素膨張させる程度だったけど……危うく窒素(N2)爆弾なるとこだったわ」ボソッ

浜面「ッ!!?」ギョッ!!?


フィクションではよく耳にする原子爆弾を上回る威力の大量破壊兵器。
学園都市の技術で開発可能のレベルには達しているらしいが、国際条約上、実用化は禁止されている。
281 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 21:43:26.60 ID:9JvsjrAn0
麦野「んで、私が力で捻じ込んでる間、滝壺があの子のAIM弄くって収めた感じかな」ハァ・・・

滝壺「……体晶使わなかったら、皆死んでた」シュン・・・


自分の知らない、そんな過去。


麦野「そん時、そこの逃げ足だけは速いズル女は一目散に消えたしさ」ジトー・・・

フレンダ「い、いやぁ……結局あの場に私居ても無意味って訳じゃん?」アハハハハ・・・

浜面「……」ムゥ・・・

麦野「……と、いう訳なのさ浜面くん。あの子の『壁』をノックすらしないでね。無理矢理作った大能力者の欠点(心)は脆いのよ」ジー・・・

浜面「『自分だけの現実』が脆いと、乱雑開放起こすのか?」

麦野「原因は様々よ。そこんとこはAIMの専門家たる滝壺ちゃんに聞いてーな」チラッ

滝壺「……」シュン・・・


これ以上、滝壺の前でこの話は出来なかった。


浜面「……じゃあ話戻すけど、『仕事』抜きのアイツって何だよ。人見知りって」ポリポリ・・・

フレンダ「ああ、そんな話だったわね。ま、普段の絹旗って訳よ」コクッ

浜面「普段って……何だ?」ヘ?

フレンダ「えっと、さっき言った様に私達と居る『普段』。結局これが一つ目」


それはいつも通りの絹旗という事だろう。


フレンダ「それから、私達以外と接する絹旗。これ、アンタ知らないでしょ?」

浜面「アイテム以外と? 映画とかか?」

麦野「それはあの子の独り遊び(ソリティア)でしょ。違くて『対人関係』よ」

浜面「……確かに見た事無いな」フム・・・


基本、アイテム以外とは行動しない少女だ。依存するタイプなのは知っているが……そこまで引き籠りなのか?


滝壺「引き籠りじゃないよ。でもきぬはた、極力知らない人とは話さないかも」

浜面「俺との初対面は話したぞ?」

麦野「アンタは仮にも身内(アイテム)になるって分かり切ってた輩だったでしょ。初めてアイテム出来た時、あの子借りてきた猫状態よ」

フレンダ「あはは。私と麦野に懐くまでかーなーりー時間掛った訳よー」ハハハ

滝壺「私も、優しくおいでおいでしなきゃ絶対きてくれなかった」フフッ


……信じられない。あの御転婆が?
282 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 22:13:38.37 ID:9JvsjrAn0
麦野「そうね……じゃあお馬鹿な浜面ちゃんでも分かりやすい様、例を上げると―――」


麦野女史の分かりやすい『絹旗対人関係講座』が始まった……



 ―――とある休日、PM01:40、学園都市第7学区、とある公園・・・・・



麦野『と、まぁこういう舞台を設定するわ』ビシッ!

浜面『いや、これリアルタイムだろ……』タラー・・・

麦野『因みに、私達は此処にある自販機目線ね』コクッ

フレンダ『……あ、絹旗来た訳よ!』チラッ!


公園の東口から絹旗が小走りでやってきた。
Yシャツ、淡茶の長袖Vネックカーディガン、60デニールの黒タイツ、御洒落制服風チェック柄ミニスカ、茶色のローファーという恰好。


フレンダ『っていう設定ね』ニコッ

浜面『随分細けぇよ……一々服まで凝るなっつの』

麦野『私のコーディネイトにイチャモン付けるの? そりゃ折檻よ……浜面』ジトー・・・

浜面『はぁ!? これ設定だか舞台だか知らねぇけど架空なんだろ!?』

麦野『しゃーらっぷ! 人には譲れないモンってのが有んのよ……』ギロッ!

滝壺『二人とも、五月蠅い……ほら、接触するよ』ジー・・・


絹旗が向かうは自販機付近のベンチ。そこには一人の少年と一匹の子猫が座っていた。
白いロングTシャツ、紺のベスト、ダークグリーンのカーゴパンツ、茶色のブーツといった恰好。


麦野『出たな、イレギュラー。服のセンスは……まぁまぁね』ジトー・・・

浜面『はい? いれぎゅらー?』ポカーン・・・

フレンダ『あの少年は「例外」な訳。まぁ見てなさい。アイテムと同じ様な接し方する筈だから』チラッ・・・


意味が分からない。とりあえず見守る事にする。


絹旗「お、お待たせしました!」テクテク・・・

香焼「ううん。自分も今来たばかりっすよ」ニコッ

ぬこ「にゃー」ピョコッ

絹旗「あ、ふふふ。おいでー」ギュッ・・・

ぬこ「んなぅ」スリスリ

香焼「すっかり懐いちゃったね」クスッ

絹旗「えへへ。そ、そうかなぁ」ニコッ


あれアイテムと対応違うだろ……何故か口から砂糖が出そうだった。甘酸っぺぇ。
283 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 22:37:36.41 ID:9JvsjrAn0
麦野『……浜面、塩辛ちょーだい』ウッヘェ・・・

浜面『おま……これ、幻想だか空想なんだろ?』ジトー・・・


我慢して、絹旗講座を見続ける。


香焼「最愛、今日は仕事だかバイトは休みなの?」

絹旗「え、ええ。暫く休みの予定です。緊急が入らなければ、ですけどね」ナデナデ

ぬこ「みー」ジー・・・

絹旗「ん? 如何しました? 自販機なんか見て」キョトン・・・

香焼「喉乾いたんすかね? 自分が買ってくるよ。最愛何が良い?」スタッ

絹旗「えっと、じゃあ……『抹茶inムサシノ牛乳』でお願いします」コクッ

香焼「抹茶・オ・レ……じゃないの? 何それ?」タラー・・・

絹旗「超美味しいんですよ『inムサシノ牛乳』。香焼も飲んでみれば」ニコッ

香焼「そ、そうなんだ……(普通のオ・レと違うのかな? ムサシノ牛乳神話でも信じてるタイプとか?)」アハハ・・・テクテク


因みに『ムサシノ牛乳神話』とは、ムサシノ牛乳を多飲する事でナイスバディになれるという都市伝説である。詳細は不明。


フレンダ『ちょwww最愛だってwwww名前で呼んでる訳よwwww』ダハハハ!

麦野『っべーわwwwしかも小さい事気にしてんのバレバレだわwww』ケラケラ!

浜面『草付けんな! てか猫に気付かれてんじゃねぇのか、これ!?』アタフタ・・・

滝壺『この講座は4人の幻想または空想です。あ、彼こっち来たよ』チラッ・・・


少年は千円札を入れて、ボタンを押そうとした。しかし……


香焼「あれ?」タラー・・・


どうやらお札を飲まれたらしい。


麦野・フレンダ『『ダハハハハッハハハハハッハハッ!! ダッセェっ!!』』ゲラゲラゲラゲラッ!!

浜面『……これ俺らの所為じゃねぇよな』タラー・・・

滝壺『違うよ、はまづら。此処の自販機はそういう仕組みなの。強いて言うなら馬鹿ネットワークの所為』ウンウン・・・


何だそれ……とは敢えて突っ込まないでおく。
さておき、困った香焼少年。その姿を見て不思議に思った絹旗も猫を抱えて自販機に近づいてきた。


絹旗「どうしました?」ハテ?

香焼「うーん、お札飲まれちゃったっすね」ポリポリ・・・

絹旗「へ? むぅ……えいっ!」ガンッ!!

香焼「ちょ、最愛っ?!」ハァ!?


―――ぎゃーっ!!×4


香焼・絹旗「「は?」」ポカーン・・・


気の所為です。
兎角、絹旗が蹴っても云とも寸とも言わない―――ぎゃーっ!! とは言ったが―――自販機。二人は困ってしまった。
284 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 22:56:39.16 ID:9JvsjrAn0
絹旗「チッ……じゃあ、もう一発!」クッ!

香焼「だ、駄目っすよ! これ以上やったら故障警告鳴っちゃうっす!」アワワ・・・

絹旗「あ……むぅ」ポリポリ・・・

ぬこ「みゃー」ジー・・・


確かに、と引き下がる絹旗。


フレンダ『いつもならお構い無しにもう一発入れるのにね』

麦野『あんまりバイオレンスな姿、彼に見せたくないんじゃない?』


それならば、と香焼は小銭を投入する。しかし今度は……チャリンとストレートに落ちてきた。
もう一度、と試すが……虚しく響くチャリン音。


絹旗「……やっぱり打っ叩きましょう」スッ・・・

香焼「ま、待ってって! 風紀委員や警備員に怒られるっすよ?」

絹旗「でも超損ですよ? 良いんですか?」

香焼「……まぁツキが無かったって割り切るさ。戻ろう、最愛」アハハ・・・

絹旗「……ハァ」クスッ・・・


とんだ、御人好し。絹旗は苦笑するしかなかった。


麦野『あー……私、一番苦手なタイプのガキかも』ジトー・・・

滝壺『そうかな? 良い子だと思うよ』ニコッ

フレンダ『だってよ。浜面っち』ニシシ!

浜面『……まぁ余計な厄介事作らないって点では賢いな』ムゥ・・・


口には出さないが……こんな日陰に暮らしていると、陽だまりみたいに温い人間に依りたくなるのも理解できなくはない。
二人が諦めて踵を翻した時―――


???「お困りですか……」テクテク・・・


―――滝壺とフレンダくらいの少女が現れた。


フレンダ『げぇっ!! ちょ、麦野、ヤバくない!!?』タラー・・・

麦野『落ち着けっつの……大丈夫だ。ありゃ本物(オリジナル)じゃない』フンッ


常盤台中学の制服、ゴーグル、ネックレス。


御坂妹「と、ミサカは小さなカップルさんに尋ねてみます」ピタッ


妹達(シスターズ)個体番号(シリアルナンバー)10032号―――通称、御坂妹が二人に近づいてきた。
285 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 23:16:34.47 ID:9JvsjrAn0
麦野『浜面、よく見ときなさい。今から本当に講座始めるわよ』クイッ

浜面『え、あ、うん』コクッ

麦野『まぁコイツもちょっとイレギュラーではあるけど……これが普通、絹旗が他人と接する対応①よ』ジー・・・


御坂妹の問いに、香焼は頭を掻きながら素直に答えた。


香焼「えっと恥ずかしながら……お札飲まれちゃったんすよ」ポリポリ

御坂妹「むっ。またこの自販機ですか……とミサカは呆れを通り越して苦笑してみます」ハハハ・・・

香焼「またって、よく有るんすか?」エ?

御坂妹「はい。しょっちゅうです、とミサカは最早都市伝説クラスに胡散臭い自販機の説明をします」コクッ


不思議な喋り方をする人だ……と思いつつ、何処かで見た事あるかもと頭を捻った。


御坂妹「……ところで、貴女は何故少年の後ろに隠れているのですか? とミサカは純粋に質問してみます」

香焼「え」チラッ

絹旗「……」チラッ・・・

香焼「さ、最愛?」タラー・・・

絹旗「……」ジー・・・

ぬこ「……なぅ」ジー・・・


香焼の背中にべったりくっ付き、ジッと地面を向いている絹旗。
時折覗く様に御坂妹を見遣るが目が合った瞬間、再び俯く。


浜面『……え』キョトン・・・

フレンダ『結局これが絹旗って訳よ。今は少年がいるから逃げないけど、普段なら無言で立ち去る訳』ウンウン

麦野『昔、あの子に自分の小学校行って来いって命令したんだけど……「不可能」だったわ。他人と話せないのよ』


意外だ。


御坂妹「……とりあえずお札を取り戻したいのですね? とミサカは簡潔に問います」

香焼「え、あ、はい。でも……」

御坂妹「えいっ」ビリビリ!

香焼「わっ」ドキッ

絹旗・ぬこ「「にゃっ!!」」ビクッ!


―――アbbbbbbbbbbbbッ!!×4


香焼・絹旗・御坂妹「「「ッ!!?」」」ギョッ!?


色々ツッコみ所はあるが……ウィーン、とお札が戻ってきた。
286 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/05(火) 23:38:46.34 ID:9JvsjrAn0
御坂妹「え、えっと……とりあえず、はい。とミサカは戻ってきた千円札を少年にお返しします」スッ・・・

香焼「ど、どうも」コクッ

御坂妹「此処はマネーカードの方が確実にジュースを購入できますよ、とミサカは豆知識を披露してみます」

香焼「マネーカード……自分持ってないっすね」ポリポリ・・・

御坂妹「生憎、私も持ってないのです。とミサカは申し訳無さげに頬を掻いてみます」ポリポリ・・・


現金が使えない自販機など撤去してしまえと怒りたかった。
お札が戻ってきただけでも儲けもんか、と目の前の女性に感謝して戻ろうとした瞬間……


絹旗「……これ」スッ・・・

香焼「え」キョトン・・・

御坂妹「……そのマネーカードなら使える筈ですよ。とミサカは貴方達に説明します」コクッ


隠れながら、カードをそっと出す絹旗。香焼はそれを受け取り、タッチパネルにかざした。
ボタンのランプが光る。どうやら今度は購入出来る様だ。


香焼「えっと……ライチティーと抹茶inムサシノ牛乳……あと猫(ソイツ)の水だね」ポチッ

ぬこ「みゃぅ」コクッ


三本の飲み物を購入。


香焼「あ、そうだ。最愛、後でお金払うからこの人にも奢っていい?」チラッ

絹旗「……」コクッ

香焼「あはは。話そうよ……えっと、どうぞ選んでください」コクッ

御坂妹「……いいのですか? 大した事はしてませんよ、とミサカはチビッ子達に対して謙遜してみます」ジー・・・

香焼「チビッ子って……貴女も自分らと同じくらいじゃないんすか?」ジトー・・・

御坂妹「……0歳」ボソッ

香焼「え」ハイ?

御坂妹「いえ、何でもありません。ではお言葉に甘えて……ミサカはヤシの実サイダー0カロリーを頂きます」ポチッ


どうやらカロリーを気にするお年頃らしい……は、さておき御坂妹はマネーカードを最愛へ差し渡した。


御坂妹「どうもありがとうございます。とミサカは微笑んで可愛いレディにカードをお返しします」ニコッ

絹旗「っ……どもです」スッ・・・

香焼「……」アハハ・・・


この子は此処までシャイなのか、と香焼は苦笑せざるを得なかった。
287 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/06(水) 00:45:02.05 ID:CBarEwko0
麦野『あー……痺れたわ……』ピリピリ・・・

滝壺『ぷへー』ムハッ・・・

浜面『ちょ……空想マジ怖いんですけど』ハァ・・・

フレンダ『うぃ……とりあえず、アレが絹旗の対人その①。極力人と絡まない』プスプス・・・


まるで野生の犬猫の様だ。懐かない限りずっと警戒態勢か。


絹旗「……香焼、戻る」ボソッ・・・

香焼「え、あ、うん、分かった……えっと、ありがとうございました」ペコッ

御坂妹「いえいえ。例には及びませんよ、とミサカはクールに人差し指を立てます……猫さんチチチ」クイックイッ

ぬこ「……みぃ」プイッ

御坂妹「ふむ……やはりミサカが欠陥電気(レディオノイズ)である以上、動物とは慣れ親しめないのですね……ミサカしょんぼり」ムゥ・・・


御坂妹の手を嫌がる子猫。ついでに絹旗まで引っ込む。


香焼「あはは……最愛ってば、失礼だよ。(やっぱ海原さんと一緒に居た『妹達』さんかな?)」ポリポリ・・・

御坂妹「仕方ありませんね。まぁ今回『噂』の貴方を一目見る事が出来て……ぁ」ヤベッ・・・

香焼「え、あ、やっぱり……『妹』さん?」クスッ

御坂妹「ぐっ……ええ。正しくは御坂丸や5's(ファイズ)、蛇(スネーク)達の姉かもしれません、とミサカはカオスな説明をします」コクッ


※第4話参照。


御坂妹「とりあえず機会があればまたいずれ。其方のお嬢さんも、ね……ミサカはクールに去ります」クルッ・・・スタスタ・・・

香焼「何だかなぁ」ポリポリ・・・

絹旗「……知ってるんですか?」チラッ

香焼「うーん……知ってるっちゃ知ってる。知らないっちゃ知らない」タラー・・・

絹旗「……超変なの」ジー・・・

ぬこ「なー」ペチペチ


御坂妹が消え去った後、香焼と絹旗もベンチへ戻った。
戻るや否や絹旗は一転、先の様に明るく子猫と戯れ始めた。


浜面『……アレ、本当に絹旗か?』ジトー・・・

滝壺『信号的に確かだよ。空想だけどね』コクンッ

麦野『まぁ逆に私達が近くに居過ぎて分かんないのよ。あの坊やも特例』

フレンダ『あくまで空想って思っておきなさいな。結局もしかしたら空想幻想妄想で済むかもしれない訳だしね』フフッ・・・


なら良いが、と浜面は女衆達と絹旗講座を続けた。
288 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/06(水) 01:06:39.88 ID:CBarEwko0
 ―――とある休日、PM02:10、学園都市第7学区、とある公園・・・・・



暫くの間、香焼は子猫と絹旗が睦まじく遊ぶ姿を眺めていた。
今の絹旗と先の絹旗……どうして此処まで違うのか不思議である。というか、では何故自分には憶さないのだろう。
英国の知り合いにも人見知りの娘はいるが、此処までのギャップは無い。


香焼「……やっぱり学校行ってるか行ってないかって、大きいのかな」ムゥ・・・


集団生活に身を置いて居れば、嫌が応にも他者と付き合わねばなるまい。
この子はその環境下に居ない故、こうなっているのかもしれない。そう憶測した。


絹旗「香焼、如何しました?」テクテク・・・

香焼「え、いや……何でも無いよ」ニコッ

絹旗「むぅ……つまらない、ですか?」チラッ・・・

香焼「ううん、そんな事無いっす。猫(ソイツ)と最愛の追い駆けっこ見てるだけで微笑ましいよ」クスッ

絹旗「ほぇ? 超変なの」フフッ

ぬこ「なーん」プラプラ・・・


せめて自分くらいは、この子の味方でいてやらねば……女教皇様が言っていた偽善でもいい。
この子を独りにしたくない。


香焼「あ、そうだ。これ……はい」スッ

絹旗「ん? ……猫缶ですか? それとボール?」キョトン・・・

香焼「どっちもソイツが好きなモノっすよ」ニコッ

ぬこ「にゃー」フリフリ!

絹旗「おぉ! じゃあボール遊びが上手く出来たら超御褒美で猫缶上げましょう!」ニコッ!


それ行くぞ! と意気揚々、子猫と駆け出す絹旗。やはり普通に見れば年相応、寧ろそれより幼く見えた。


浜面『まぁ普段が荒んでるからな……こういう普通の遊びが楽しくて仕方ないんだろ』ジー・・・

フレンダ『日本最大級の大学に入った学生達が、今まで遊んでこなかった分大学入って子供染みたエアガンごっこしてたって聞くけど……』

麦野『同じ理屈かもね。能力開発と仕事で忙しくて普通の遊びした事無い……でもこの学園都市じゃそんのガキ云千と居るわよ』

滝壺『何にしろ……楽しそうだね、きぬはた』ニコッ


自分達の知らない少女の顔。微笑ましくもあり、悲しくもあった。
289 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/06(水) 01:34:26.33 ID:CBarEwko0
それから一寸後……絹旗と子猫が戻ってきた。


香焼「上手くボール追い駆けた?」

絹旗「ええ! 流石私が見つけただけあって超天才猫です! 小さい身体で玉転がししながら持って帰ってきましたよ!」ニカッ

ぬこ「にゃー」コロコロ

香焼「ふふふ。良かったね」クスッ


では、と猫缶(にゃんコイ:キングサイズ)の蓋を開け適当な紙の上にある程度出し、子猫の前に置いてやった。
すると『飯だー!』と云わんばかりに喰い付いてきた。


絹旗「あーあ。超引っ繰り返しちゃって……地面に超ボロボロ落ちちゃってますよ」アララ・・・

香焼「まぁ食べれなくはないよ。食べ切れるかどうかは別だけどね」フフッ

絹旗「ですね。ちっこいから超残すかもしれません」クスッ


しかしこの猫の胃袋は侮れない。五和が作った大盛り猫まんまを二杯平らげるレベルだ。
縮尺は違うが、某暴食シスタークラスかもしれない。


絹旗「……私達も負けずに超いっぱい食べて、超デッカくなってやりましょう!」フンッ!

香焼「私『達』って、自分もかい……自虐っすか」アハハ・・・


自覚はしていても認めたくは無い事実である。同年代の中でも自分(私)は小さいからなぁ……と溜息をついた。


麦野『いや、絹旗が成長したらしたで諸方面からクレームが……』

滝壺『……むぎの。それ以上はいけない』


大人の事情だ。
さておき、香焼に動きがあった。どうやら御手洗いに行くようだ。絹旗はどうぞと頷き、子猫と二人きり(一人と一匹)になる。


フレンダ『どっちかっていうと「2匹」だと思う訳よ。絹旗にゃんこ』クスクスッ

浜面『んな事ぁ如何でもいいが……アイツ一人っきりで大丈夫なのか?』

麦野『人が来ない限りはね……来ると、最悪パニクるわ』


それは大袈裟だろ、と浜面は苦笑する。しかし……3人は真顔。


浜面『……マジで?』タラー・・・

滝壺『多分……きぬはた、転校したての○む○む状態になる』コクッ

浜面『ほむほ……は?』ポカーン・・・

フレンダ『そうね。終始戸惑ってるか、表情変えず無言決め込むか……結局相手に対応しない訳』

麦野『対応「出来ない」のよ……ま、とりあえず周囲に人はいないから大丈夫よ。多分ね』ウンウン・・・


意味が分からないが、絹旗的に超ピンチってのは想像できた。
290 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/06(水) 02:00:58.62 ID:CBarEwko0
滝壺『それでは暫くの間……「きぬはたと猫劇場」をご覧下さい』ドーゾ

浜面『え、誰に言ってるの? 滝壺さん?』ポカーン・・・


香焼が消えてから絹旗はというと……


絹旗「……」ジー・・・

ぬこ「にゃぅ」ムシャムシャ・・・

絹旗「美味しいですかー?」ツンツン

ぬこ「なー」コクコクッ

絹旗「ふふふ、そーなのかー。水も飲んで下さいよー」ニコッ

ぬこ「みゃー」モグモグ・・・

絹旗「あはは。オマエは超気楽で良いですねー。私もオマエみたいな生活超したいですよー」ナデナデ

ぬこ「みぃ?」キョトン・・・

絹旗「分かんないっか。そうですよねー」クスッ・・・


独り言に本音を溢す。無論、子猫に言葉は通じない。
自分は何言ってんだか、と内心呆れつつ猫を撫で続けると……ふとベンチの下に何かがいる事に気付いた。


絹旗「……あ、また猫」チラッ

にゃんこ「んごー」ジー・・・

絹旗「オマエも腹減ってるんですか?」クスッ

にゃんこ「がぅ」ジー・・・

絹旗「ご飯はいっぱいあるし……喧嘩しないなら一緒に食べて良いですよ」オイデオイデ

ぬこ「みー」コクコクッ

にゃんこ「……んなーん」テクテク・・・


一匹猫が増えた。今度は少々太ったブチ猫だ。


にゃんこ「まぅ」ハフハフ・・・

絹旗「……えへへ。超猫マスター最愛ちゃんですね」ニコッ

ぬこ「にゃーん」ムシャムシャ・・・

絹旗「もう少し餌を出しましょうか……このくらいっと」ポトポトッ


すると……今度は2匹の細い白ネコが現れた。首が傷付いてるのと、尻尾が奇形しているのを見るに虐待されて捨てられたのだろう。


キャッツ「「ミィ」」トコトコ・・・

絹旗「むぅ……超酷い飼い主に飼われてたんですね。私が見つけたらブッ殺してやりますよ」プンスカッ!

ぬこ「……にゃー」スッ・・・

絹旗「お、超偉いぞ。流石猫リーダー! この子達にも分けてあげましょう!」ニコッ

キャッツ「「ミャーン」」ペコッ・・・ムシャムシャ・・・

絹旗「ふふふ。超お行儀正しい猫さんですね……オマエ達は私と同じです。仲間ですよー」ニコッ・・・


捨て猫達に『置き去り』の少女は『同情』できた。言葉にした事は無いが、基本的に……大人は嫌いだ。
子供を捨て、挙句に道具として使う。だから大人になりたくないとは言わないが自分は絶対にそうなるものかと誓っている。

理想の大人像……歪んだ少女の中にある良心の一つだった。
291 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/06(水) 02:18:55.51 ID:CBarEwko0
数分後……


香焼「」アゼーン・・・


トイレから戻ると、ベンチの周りが猫帝国と化していた。
王様はよく知る黒い子猫。王女様は一人の少女。


絹旗「あ、香焼。おかえり」ニコッ

猫s『にゃーん』ゾロゾロ・・・

香焼「……えっと」タラー・・・


1,2,3,4……13匹。


香焼「最愛さん……何、これ?」ジトー・・・

絹旗「猫の軍隊です。にゃーにゃー」キリッ!

猫s『にゃーにゃー』キリッ!


無駄に統率の取れた無駄な軍隊の無駄な掛け声である。何この浦上レベルの猫指揮者(キャッツブレイン)。
チラリと猫達の中心を見ると……猫缶が全てブチ撒けてあった。成程、これじゃあ野良達が集まってしまう訳だ。


香焼「最愛……自分、こんなに預かれないっすよ」ハァ・・・

絹旗「分かってます。見てて下さい!」チラッ・・・


途端『ニャー!』と高い声で叫ぶ絹旗。すると……


 バッ!!


……黒猫以外の猫達が散った。


香焼「」チーン・・・

絹旗「それで……今度は……にゃーんっ」クイックイッ!

ぬこ「にゃーんっ」フリフリ・・・


撫で声と共に……今さっき散った猫達がゾロゾロと戻ってきた。


絹旗「……ね!」ニコッ

猫s『にゃんっ』ビシッ

香焼「あはは……もぅ笑うしかないよ」アハハ・・・


苦笑しか出ない。


浜面『……アレも絹旗の能力か?』タラー・・・

麦野・フレンダ『『いやいや……』』タラー・・・

滝壺『きぬはたは動物とか小さい子供とか「慾」が無い生き物には普通に接するよ。もしかしたら普通以上かも』ニコッ


これが絹旗が『他人と接する対応②』らしい。純粋な生き物には寛容だとか。
292 :第7話――絹旗「超いってきまーす!」 滝壺「気をつけてねー」 [saga]:2011/04/06(水) 03:03:15.11 ID:CBarEwko0
香焼は暫く猫の中心で楽しそうに遊ぶ絹旗を眺めていた。
一匹、いつもの黒猫だけが自分の膝上に登ってきて『君も混ざりなよ!』てな感じで摺り寄ってきたが、絹旗の邪魔をしちゃ悪いなと遠慮した。


絹旗「にゃーにゃー」ナデナデ

香焼「……最愛、そんなに猫好きなの?」クスッ

絹旗「うーん……どうでしょう。私だって今日初めてこれだけの猫達と戯れましたから」フフッ

香焼「ふーん。そうは見えないっすけどね」

絹旗「……きっと共感ってヤツですよ」ニコッ・・・

猫s『にゃー』ゴロゴロ


共感、か。


香焼「もしかして人間より猫が好きとか?」ハハッ

絹旗「あはは。そうかもしれませんね! 私は猫に生まれたかったのかもしれません。にゃー」ナデナデ

香焼「ぷっ。猫娘最愛って事?」

絹旗「そりゃ妖怪でしょう。猫さんですよ、猫さん」ニャー

香焼「ははっ。こりゃ失敬。そういえば自分のあn……じゃなくて近所のオバさんの言葉だけど、猫に好かれる人はペースメーカーなんだって」

絹旗「へぇ。そうなんですかね?」ハテ?

香焼「あとは『待ち、受け』の姿勢が取れる人。大人しい人。がめつくない人……それから『純真』な人とも言ってたかな」

絹旗「……」ピタッ・・・


一瞬、絹旗の表情が翳った。


絹旗「……半分、正解ですね」ニコッ・・・

香焼「半分?」キョトン・・・

絹旗「『待ち・受け』ってのは、まさに私の『自分だけの現実』ですから。大人しいとかがめつくないってのも……さっきの通りです」クスッ


そう自虐されると……反応し辛いのだが。


絹旗「『純真』ってのは……程遠いかな」ボソッ

香焼「え」

絹旗「……私達くらいの歳より上で純真とか純粋なんてありえませんよ。聖人君主ってヤツはそうそういないんです」ニコッ・・・

香焼「ああ、うん……まぁそうだね」コクッ


含みのある言い方だが、深くは探らないでおこう。自分らはそこまでの仲ではない。
因みに数名程『聖人』を知ってるが……確かに彼女は純粋かもしれない。呆れるほどに。


麦野『いえ……絹旗は純粋よ』ジー・・・

浜面『へぇ。珍しく良い事言うじゃねぇ―――』

麦野『無論「殺人」に対してはね。あの子は何の疑問も持たず殺人を遂行できるわ。仕事と割り切れば、ね』ジー・・・

浜面『―――……期待した俺が馬鹿だったよ』ハァ・・・


それが可愛い殺人鬼。窒素装甲だ。

とりあえず今は少女相応の彼女を遠目で眺める――3人曰く『空想』内で―――事しかできない。
無力な今の自分にはそれしか……できないだろう。浜面は遣る瀬無い思いで、親しい年下の同僚を見守り続けた…… 
306>>1 [saga]:2011/04/12(火) 21:33:42.93 ID:cMmEngUn0
 <主な登場人物⑧>

・麦野沈利……学園都市超能力者(トップ7)の№4。原子崩し(メルトダウナー)。学園都市暗部『アイテム』のチームリーダー。
       このSSでの年齢は17歳。しかし神裂と同学年。同じく固法美偉も同学年。三人揃ってお色気担当……ごめんなs(ry
       呼称は・・・麦野、むぎの、沈利、むぎのん、ターミねえちゃん、第4位、原子崩し、爆発しない原子爆弾、等。

       才色兼備容姿端麗の御嬢様超能力者(レベル5)。誇り高き天才少女だが、性格に難有り。ただ此処のSSでは幾分丸い。
       金銭感覚に無頓着で、服装化粧等もかなり金を掛けている様だが鮭弁好きという庶民的な一面も。自己中心を超し自己上位的。
       彼女のプライドの高さは異常なレベルで、失敗・撤退・裏切りは絶対に許さない。キレるとF口調に変わる。
       実力的に、御坂(超電磁砲)と同等以上と自称しているが『リミッター』を解除すればの話である。MSでいうとゲー⑨。
       因みに『クーデター』前の設定なのでハイパー化はしてない。それでも最強クラスであることには変わりない。
       主にねーちん達と絡む機会や、絹旗を見守る(ちょっかい掛ける)側になるかも……(以下追々付け足)


・フレンダ=セイヴェルン……『アイテム』のメンバー。金髪碧眼。多分カナダかフランス系じゃないかなと。姉属性。
       此処では高校1年。能力を主体にせず、トラップと爆発物の扱いを得意とする。身体能力と格闘技術はかなり高い。
       呼称は・・・フレンダ、フレンダさん、チキンハート、ぺちゃぱい、等。

       「結局~」、「~訳」と独特な口調で話をする少女。アイテムの中ではムードメーカー的存在。缶詰フェチ。
       所持する能力は不明だが能力抜きにしても爆弾、トラップ等の策を講じて敵を翻弄出来る裏方のスペシャリスト。
       性格はひょうきんで楽天家。ミスを犯しても『ま、良いっか』で済むと思っている為、後々命取りに……ならないで欲しかった。
       基本自己本位だが、友人仲間を気遣う一面も見せたり。だが生命倫理に関しては残忍で、麦野の次に歪んだ性格かもしれない。
       絹旗、滝壺は彼女の保身に走る性格を何とかしてあげようと考えているのだが、果たして……(以下追々付け足)


・滝壺理后……『アイテム』のメンバー。いつもどこからか信号を受信してぼーっとしている天然系または無表情癒し系の少女。隠れ巨乳。
       此処ではフレンダと同じ、高校1年。能力はレベル4『能力追跡(AIMストーカー)』。人の苗字を平仮名で呼ぶ。
       呼称は・・・滝壺、滝壺さん。(ニックネーム募集中)

       肩の辺りで切りそろえられた黒髪に、ピンクのジャージという姿が基本スタイル。アイテム内では特定能力者の捜索を担当。
       ボーッとしている時はたいてい他人のAIM拡散力場に身を委ねている模様。この時点では浜面と『良い感じ』程度。
       狂人揃いのアイテムの中では異端な程に優しいほんわか少女。しかし、やる時は無理し過ぎる程にやる勇気を持っている。
       『能力体結晶(体晶)』という、簡単にいえば薬型幻想御手(レベルアッパー)を用い自身の能力を酷使している。
       余談だが、実は木原那由他を知っている……(以下追々付け足)


・浜面仕上……『アイテム』のメンバー(下っ端)。元第7学区最大勢力武装無能力者集団(スキルアウト)のリーダーだった。
       此処では高校2年。己の能力が何なのか分からない内に学校をドロップアウトした無能力者。しかしそこまで馬鹿ではない。
       呼称は・・・浜面、はまづら、仕上、浜面氏、不良(チンピラ)、バニー(好き)、馬鹿面、第三の主人公、等。
       
       アイテムの天才アッシーくん。『運転』に掛けては右に出る者はいない程の無免許マン。鍵開けも得意。滝壺と『良い感じ』。
       嘗てスキルアウトのリーダーを押し付けられていた……と勘違いしていた。それなりに人望はある模様。       
       『とある高校生』に喧嘩で負けて以降、半ば腐っていた根性を一に戻す。今は仲間の為に命を張る勇気がある程までに成長した。
       だが麦野(リーダー)のやり方や、絹旗の過去、フレンダの半端さ、滝壺の無謀さ等に色々考える所がある。
       このSSでは香焼と絡めば間違いなく『カミやん』病の相乗効果が望まれるのだが、如何なる事やら……(以下追々付け足)


今回こそ前回紹介したメンバーを出します! ではどうぞ! 
307第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:35:29.41 ID:cMmEngUn0
滝壺『前回のあらすじ……きぬはたにゃんにゃん』ペコペコニャーン

フレンダ『滝壺、それだけ聞くと結局エロい訳よ』アハハ

麦野『正しくは絹旗と少年が[にゃんにゃん♪]ダゾっ☆』キラリッ!

浜面『オマエら……ハァ。絹旗対人関係講座二回目です』タラー・・・



自販機の中のKさん『もしかしたら「某SS」の>>472でそんなアフタールートが見れるかもよ!』ウィイイイィ・・・



麦野『な、出張ってくんじゃ無ぇ! コッチじゃ出番やらねっつの糞垣n― 浜面『だあああぁっ!! 兎に角、スタート!!』 ―ちょ!?』




 ―――とある休日、PM02:40、学園都市第7学区、とある公園・・・・・




飽きもせずによく可愛がれるなぁと、香焼少年は苦笑した。自分を中心に猫の輪を形成させている絹旗少女。
最早完璧に猫の王女と化していた。何とも律義に一匹一匹と遊んでいる。


絹旗「オマエはさっきから食べてばかりですね。きっと前世は超相撲取りです」クスッ

猫?「ぬぉ~」モキュモキュ・・・


一番重そうな猫を撫でる最愛。
てか、ソイツ自分らよりデカくね? とか突っ込まないが……何の疑問も持たないのだろうか。

さておき、そろそろ人間の自分達も小腹が空いた頃合い。コンビニで何か買って来ようかと考えた。その時―――



??「わぁ! 猫さんがいっぱいなの」パタパタ!

絹旗「っ!!?」ビクッ!!



―――此方にフラフラ寄ってくる少女。多分自分達と同じくらいだろう。
因みに最愛は一瞬吃驚し眼を見開き硬直したが……少女を無視する事に決めたらしく、直ぐに猫との戯れを続行した。

一方、少女はと言うと呑気に一言『こんにちわ』と告げ、輪の外から猫軍団を微笑んで見詰めている。


??「これ、全部貴女の猫さんなの?」ニコッ

絹旗「……」ジー・・・

??「んー?」キョトン・・・

絹旗「……」チラッ・・・


無言で自分を見る最愛。そんな『超何とかして下さい!』みたいな目でチラ見しないで下さい。


香焼「えっと、ごめんね。その子、別に君の事嫌いだから無視してるって訳じゃないっすよ」ポリポリ・・・

??「ふぇ?」キョトン・・・

香焼「あと、ソイツら全部野良猫っす」アハハ・・・

??「へー! でもこの子の周りに集まっているの! 如何してなの!?」キラキラ・・・

香焼「それは、まぁ……」チラッ・・・

絹旗「……」ジトー・・・


『超余計な事言わないで下さい!』の目。お願いだから目で会話するの止めて下さい。
それにしてもやたらと目を輝かせる少女だ。おっとりした言葉使いの割には喰い付いて来る。
308 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:39:13.78 ID:cMmEngUn0
滝壺『むっ!』ジー・・・

浜面『如何したんだ?』

滝壺『……きぬはた使い(マスター)のレベル2、観測』フム・・・

浜面『……は?』タラー・・・

フレンダ『確かソイツを通して他人と会話をしようとする程度、だったっけ?』

麦野『アイテム必須技能よ』

浜面『え……俺もそのスキル持ってんのか?』タラー・・・


アイテムは全員絹旗使いレベル4以上です。そんな事は放っておいて……


??「ねぇ、にゃんこ姫さん。お名前は?」

絹旗「っ!!」チラッ・・・

香焼「自分で話そうよ……絹旗最愛っす」アハハ・・・

春上「絹旗、サイアイ? じゃあ貴方は?」チラッ

香焼「香焼っすよ」ニコッ

春上「うん、よろしくなの。えっと……絹旗さん。それとも最愛ちゃん?」

絹旗「……どっちでも」ボソッ

春上「じゃあ最愛ちゃんなの! 私は春上衿衣ってお名前なの。よろしくね」ニコッ

絹旗「……はい」コクッ


珍しく返事をした。どうやら最愛の眼鏡に適ったらしい。暫くやりとりを見守っててあげよう。


麦野『ありゃ対応②ね』ジー・・・

浜面『あの女の子が猫と同じだってか?』

フレンダ『まぁ純粋そうではあるけど……結局、人間だわさ。赤ん坊みたいって訳よ』

滝壺『むむっ!』ジー・・・

浜面『今度は何だ? またレベルが上がったとかか?』

滝壺『違うよ……あの女の子の信号の「色」……私に似てるかも』ジロジロ・・・

浜面『へ?』ポカーン・・・

麦野『ふーん……強度(レベル)は別として、AIM拡散力場に直接関与する希少能力(レアスキル)って感じかしら』ジー・・・


浜面にはサッパリだが、滝壺と麦野はジロジロと興味深そうに少女を見詰めていた。


春上「ふふふ。猫さん可愛いの。最愛ちゃん、この子達全員とお友達なの」ニコニコッ

絹旗「……」コクッ

春上「じゃあ……この子の名前はなぁに?」ニコッ

絹旗「え……」キョトン・・・


一匹の白ネコを撫でる春上少女は、猫の女王様に尋ねた。


春上「ほぇ? 付けてないの?」

絹旗「はい……」コクンッ・・・

春上「じゃあ付けてあげるの」ニコッ

絹旗「ぇ、と……」チラッ
309 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:41:57.88 ID:cMmEngUn0
再び自分に助けを求めてくる最愛。まぁ頑張って会話を続けた様だし、手伝ってやるか。


香焼「最愛。名前付けてあげなよ。ソイツらは野良だから黒猫(コイツ)と違って遠慮する事無いよ」コクッ

絹旗「……分かりました」コクッ


とは言うものの、そろそろ自分の膝上に乗っているコイツにも名前を付けてやっても良いんじゃないかなとは薄々思っている。
だがとりあえず、コイツは最後だ。


春上「じゃあ……このお目々が赤くてボーっとしてる白ネコさん」スッ

絹旗「うさぎ」サラッ

香焼「ダウト」ビシッ

絹旗「え……」キョトン・・・


え、じゃない。


香焼「あの、さぁ」ポリポリ・・・

絹旗「別に、良いじゃないですか。超遠慮するなって言ったの香焼ですよ」ジトー・・・

香焼「……じゃあ、いいっすよ」ハァ・・・

春上「じゃあ次は、その焦げ茶色の子猫さんなの」ピッ

絹旗「こぐま」サラッ

香焼「やっぱ駄目」ビシッ


何故、猫に別の動物名を付けるんだ。おかしいだろ? もしかして最愛、ネーミングセンス無いのか?


絹旗「……だって」ハァ・・・

春上「あはは。それじゃあこの白黒ぶち猫さん」ナデナデ

香焼・絹旗「「ぱんだ」」サラッ

春上「え?」キョトン・・・

絹旗「……えっ!?」ビクッ!!

春上「香焼さん、凄いの! 読心能力者(サイコメトラー)なの?!」オー!

絹旗「え!? そうだったんですか?! 無能力者(レベル0)ってのは超嘘ですなの?!」ポカーン・・・


いや、誰でも読めたよ……あと語尾感染ってるから。ですなのって何さ。


香焼「ハァ……そこのトラ柄は『とら』。ツリ目は『きつね』。茶色の毛むくじゃらは『らいおん』。黒くて大きいのは『ひょう』……違う?」

絹旗「な、何と……超正解、です……」ギョッ!?


いや、超単純過ぎるんです。


浜面『……アイツ、あんなアホの娘だっけ?』タラー・・・

フレンダ『さ、さぁ……』タラー・・・

麦野『お馬鹿では無い筈だけど……単にセンス無いだけじゃないの? 映画の例も有るし』タラー・・・

滝壺『ふふふふふ。きぬはた可愛いよきぬはた』ニコニコッ


しかし、如何したものか。
310 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:44:07.34 ID:cMmEngUn0
香焼「うーん……もう少し猫っぽい名前にしてあげようよ。ネコ科だからライオンとかトラってのも駄目っす」アハハ・・・

春上「ふふっ。じゃあこの上下半身で色が違う猫さんなの」

絹旗「まーらいおん」サラッ

香焼「もしかしてワザとふざけているのかな?」タラー・・・

絹旗「むっ。超真面目です!」ジトー・・・


最愛にはあのライオンの国(シンガーポール)の象徴がネコ科に見えるらしい。最早何を言っても無駄かもしれないな……
半ば諦めかけて妥協しようとした時、ふわふわした少女が最愛を諭し始めた。


春上「最愛ちゃん。猫さんは猫さんなの」フフッ

絹旗「え?」ポカーン・・・

春上「他の動物さんの名前にしちゃうと、猫さんが他の動物さんと一緒に居る時に困ってしまうの」クスッ

絹旗「ふむふむ……成程。分かりました」コクッ

香焼「あ、そういう説明で良いの……」タラー・・・


まるで子供の理屈だが其方の方が効果的らしい。
どうやら納得した最愛は、頭を捻って『では如何しましょう……』と悩み始めた。


麦野『うーん……やっぱり、うん』コクッ

フレンダ『どったの、リーダー』チラッ

麦野『滝壺と被る。おっとり、マイペース、幼児思考……つまり絹旗的には絡み易い』ビシッ

滝壺『えへへ』ニコッ

浜面『喜ぶ所か? 幼児思考ではないだろ? 滝壺は』ハァ

滝壺『……ばぶぅ』パクッ・・・チラッ

浜面『ぶっ!!?』ドッキンコッ!

麦野『うわぁ……何想像したのよ、この弩スケベっ』ジトー・・・

フレンダ『結局、空想だろうが妄想だろうが浜面は変態って訳ねー』ジトー・・・

浜面『ち、違う。だって想像してみろ! 滝壺が上目遣いで指を咥え、甘えた声で『ばぶぅ』と呟く姿を見たら誰だってそ(ry』ナガナガ・・・

麦野『その言い訳が既にマジキモなんですけど』ジトー・・・

フレンダ『距離を置かせて頂きます……って、あ、誰か来たわよ』フイッ

浜面『……俺って、一体』ズーン・・・

滝壺『大丈夫、私はそんなはまづらを応援する努力はしてみる』ニコッ・・・

浜面『』チーン・・・


どうやら現時点で応援はされていないようだ。頑張れ浜面。そんな茶番はさておき……

絹旗を傍からニコニコ見守る春上さん。その名を呼びながら『おーい!』と此方に駆けてくる少女二人。
311 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:47:59.69 ID:cMmEngUn0
春上「あ、初春さん。佐天さん」キョトン・・・

絹旗「ッッ!!?」ビクッ!!

佐天「あ、じゃない! 急に居なくならないでよー」ハァ・・・

初春「もぅ、心配したんですよ?」ハァ・・・

春上「ごめんなさいなの」エヘヘ・・・


友達みたいだ。多分、春上さんを探していたのだろう。


初春「まったく……って、何で猫まみれなんですか?」タラー・・・

佐天「すんごいメルヘン空間だね……ん? 此方は?」ジー・・・

春上「香焼さんなの」ニコッ

佐天「香焼ちゃんかぁ。こんにちは! 貴女が猫の主さんかな?」ニコッ

香焼「あははは……え」ポリポリ・・・ン?

春上「違うの。猫のお姫さまは……あれ?」キョトン・・・


いつの間にか最愛が消えてた。


春上「香焼さん。最愛ちゃんは何処なの?」キョロキョロ・・・

香焼「え……」キョロキョロッ・・・


多分、人が増え過ぎて隠れたんだと思う。
何が起こったのかまるで理解していない3人を余所に、自分は立ち上がって最愛を探そうとした。その時……


ぬこ「にゃん」ジー・・・

香焼「……何」チラッ


黒猫がベンチの裏を見詰めていた。


香焼「……」ン?


そこに……


         _ _    _..  -‐-  .._
        / /  . ::´: :: :: :: :: :: :: ::`丶、
       / / / :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :\
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    / / /: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::_::_::_::_:: :: :: :‘,
    ( ( ,.: :: :: :: :: :: :: :: :: :. イ「 : }: 、:`ヽ,:: :: i
        {:: :: :: :: :: :: :: ::、/  i i: : |i,_:\: :‘, :: |
       . :: :: :: :: ::_/i:l`ー‐ヘ!: : 廴Vい、:}.:: |
          、.:: :: :: :{.i::|'ー==ミ \i===ヘ | :トミ_ }
           ∨:: :: ::i|:`T´/|/l/iハハi|: |::_,,ノ
         }:/⌒弋: :i、         人厂         ううぅ……
           /ハ.   ヽ|{三.テテヲ不}:j/`
        {:{  》.__/く}∠∠∠} ´ノ′
         丿:T´:: :\___. -r 、__}
        {:: ::|、:: r‐‐、_{:_:ノ⌒}
         ) ::|::>`ー‐…‐ 、‐' 、
        {//   .     }  }
          ({ {{  /    .ノ´ .ノ′




……チンマイのが隠れてた。
312 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:50:59.65 ID:cMmEngUn0
麦野『あー……始まった』ハァ・・・

浜面『あれは対応①か?』

麦野『一応①だけど、ちょっと違う』

フレンダ『例えば、転校生が質問攻めにあうじゃない。結局、絹旗はああいうのに対応出来ない訳』

浜面『え。隠れんの?』タラー・・・

麦野『しかも質問攻めにあう前にね。最悪、遠くに逃げるし……だからアレはまだ良い方よ』

滝壺『そうだね。きぬはた、仕事だったらクールに無視するんだけど……あのままじゃお友達できないよ』メガホムジョウタイ・・・

浜面『……ん』ポリポリ・・・


日常生活を送る上で支障有り、か。


香焼「最愛。大丈夫っすよ」タラー・・・

絹旗「……」フルフル・・・

初春「どうしたんですか?」ポカーン・・・

香焼「……ちょっとね」アハハ・・・

春上「最愛ちゃん。隠れちゃったの」ジー・・・

佐天・初春「「はい?」」キョトン・・・


そりゃ把握できないだろう。自分は最愛に呼びかけ続け、春上さんは二人に説明をしてくれた。


佐天「なるへそ。此処の野良猫軍団はその娘さんのだったのね」フムフム・・・

初春「極度のあがり症でしょうか?」アハハ・・・

香焼「えっと……そんな感じかもしれないっす」ポリポリ・・・

春上「……最愛ちゃん、大丈夫なの。二人は私のお友達なの」ニコッ

絹旗「……」チラッ・・・ッ


目が合えば俯く。困ったものだ。猫達も心配そうに最愛を見遣っている。


香焼「最愛」ハァ・・・

絹旗「……」フルフル・・・

香焼「誰も意地悪しないよ。出ておいで」ニコッ

絹旗「……」チラッ・・・クイックイッ

香焼「ん? ……ああ、はいはい」アハハ・・・


何が言いたいか分かった。とりあえず自分は立ち上がる。
要は『壁』になってくれという訳で、さっきの『妹さん』の時と同じ対応をするようだ。


佐天「あらら、こんにちは」ニコッ

絹旗「……」ジー・・・

香焼「最愛、挨拶してくれたんだよ。返してあげなきゃ」チラッ

絹旗「……こんにちは」ボソッ

佐天「うん。こんにちは。お名前は?」クスッ

絹旗「……絹旗、最愛です」コクッ・・・

佐天「さいあい……お名前、如何書くのかな?」ニコッ


最愛は恥ずかしそうに、コソッと地面に漢字を書いた。
313 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:54:59.81 ID:cMmEngUn0
佐天「ふむふむ『最愛』ちゃんね。可愛い名前だー! 私は佐天涙子。んでこっちのお花畑は初春だよ」ニコッ

初春「おは……初春飾利です。こんにちは」ニコッ

絹旗「……こんにちは」コクッ


最早シャイな幼稚園児レベルだな。というか自分は保護者なのか?
あと先程から佐天さんとやらは自分達を年下(小学生)だと勘違いしてるっぽい。まるで保母さんレベルの対応。


初春「あれ? 姉妹じゃないんですか?」ポカーン・・・

香焼「いや、苗字違うっすよ。(しまい?)」タラー・・・

佐天「ありゃりゃ。私も妹さんかと思ってた。髪の色とか同じだし」


その理屈だと黒髪の人間は皆兄弟になるよ。


初春「ほら、義姉妹(きょうだい)とかどうです? 懐いてますし」ニコッ

香焼「何故提案? おかしいっすよ」タラー・・・

佐天「いやぁ初春の頭ん中は常にハワイだから、仕方ないよ」アハハ


義兄妹フェチはシスコン道化師だけで結構です。


フレンダ『……絹旗に「仕上お兄ちゃん」って言われたら如何する訳?』ニシシ

浜面『寒気がするので帰りますっつって逃げる』サラッ

フレンダ『ふーん……じゃあ』チラッ

滝壺『……仕上お兄ちゃん』ボソッ

浜面『』

麦野『うわぁ固まった気持ち悪い……キモいじゃなくて気持ち悪い。新たな変態属性に目覚めやがった』タラー・・・


さておき……


春上「ね? 大丈夫なの」ニコッ

絹旗「……」コクッ


そろそろ落ち着いた様なので、ベンチの裏から表へ移動させた。
おっかなびっくりだったが、猫達がぞろぞろ最愛の周りに登ってきたので幾分緊張が解れたようだ。


初春「わぁ。ホントに猫のお姫さまですね」クスッ

春上「今みんなにお名前付けてたところなの。ね、最愛ちゃん」ニコッ

絹旗「……は、ぃ」コクッ


そういえばそうだった。


佐天「名前かぁ。どれが決まったの?」

香焼「まだ一匹も決まってないんすよ」アハハ・・・

佐天「ありゃま。何故にだい?」

香焼「うーん……色々と、ね」タラー・・・

絹旗「……香焼の注文が超多いんですよ」ボソッ


あーうん。それでいいや。
314 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 21:57:51.11 ID:cMmEngUn0
初春「猫の名前っていったらタマとかシロとか、そんな感じでしょうかね」

香焼「ほら、最愛。これが普通っすよ」コクッ

絹旗「……超普通過ぎます」ジー・・・

佐天「あはは。確かに折角名前つけるんだったら可愛かったり恰好良かったりした方が良いもんね」クスッ

絹旗「はい」コクンッ


じゃあまた別の動物の名前をつける気だろうか。


春上「じゃあお友達の名前を付けるの」ニコッ

香焼・絹旗「「友達?」」キョトン・・・

春上「猫さん達は最愛ちゃんのお友達なの。だから普通に呼んであげられるお友達の名前にすればいいの」コクッ

初春「要は人と同じ名前で良いって事ですね」フムフム

佐天「例えば最愛ちゃんと仲良しさんの名前を付けてあげればもっと愛着が沸くんじゃないかな?」ニコッ

絹旗「……仲良し、ですか?」ムゥ・・・


失礼だが……最愛、13人も友達いるのかな。


麦野『……てか、あの子友達いないわよね』タラー・・・

浜面『現時点であの坊主くらいだろ』ハァ


頭を捻る最愛。そして一寸後……


絹旗「……『りこ』」ボソッ

香焼・柵川トリオ『え?』キョトン・・・

絹旗「この超ボーっとした白猫です」ジー・・・

春上「うん。可愛い名前だと思うの。りこちゃん」ニコッ

絹旗「ちょこまか動くツリ目は『ふれんだ』。高飛車そうなシャム猫は『しずり』。ふてぶてしい茶色の毛むくじゃらは『しあげ』」ピッ

佐天「おお。存外決まるもんだね」アハハ


最愛の数少ない……というより、きっと狭く深い交友関係の中の大切な人達だろう。


滝壺『きぬはた……』クスッ・・・

フレンダ『ちょこまか……』

麦野『高飛車……』

浜面『ふてぶてしい……って、まぁいいけどよ。アイツ、後無いんじゃね?』


浜面の予想は当たる。


絹旗「……うーん」ハァ

香焼「どうしたの?」

絹旗「……もういません」ボソッ

香焼「え」

絹旗「……香焼も名前つけてくださいよ」ジー・・・


そうきたか。
315 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:01:45.21 ID:cMmEngUn0
香焼「えっと……春上さん達付ける?」アハハ

春上「駄目。最愛ちゃんは香焼さんを指名したの。付けてあげなきゃいけないの」メッ

香焼「あー……」ポリポリ・・・

絹旗「早く付けて下さい。超サクサク付けて下さい」コクッ

香焼「残りの9匹(黒い子猫抜いて8匹)全部付けろと?」タラー・・・

絹旗「当たり前です」サラッ

香焼「……」ハァ・・・


ふてぶてしいのは君の方だよ。


滝壺『むむむむっ! レベル3……だと……』ジー・・・

浜面『フレンダ。解説宜しく』チラッ

フレンダ『絹旗使いレベル3は、結局奥手な絹旗に物事を頼まれる程度な訳よ』

浜面『おーけー、把握した……ん?』


それは『使い』じゃなくて『使われる』方だ。


香焼「じゃあ、白い奇形の双子は『あにー』と『あん』。トラ柄は『さーしゃ』、焦げ茶が『れっさー』、デカ黒が『すている』」

初春「全部外人さんですか?」

香焼「自分も友達繋がりで付けたっす。あとはブチと上下別色と……猫? か如何か分からない巨大猫だね」ハァ


というかこの『ぬぉ~』と鳴く猫に名前を付けてはいけない気がする。


佐天「へぇ。友達って香焼ちゃん、日本人でしょ? 実はグローバルな人なのかい?」キョトン・・・

香焼「うーん……説明し辛いっす」ポリポリ・・・


留学していたという事にしておこう。


初春「おお! 何か恰好良いですね! 帰国子女ですか!」キラキラ・・・

佐天「まーた初春の御嬢様願望が始まった。でも凄いのは確かだね。香焼ちゃん、実は常盤台とかいう?」アハハ

香焼「あはは。常盤台って女子校じゃないっすか。自分は入れないっすよ」アハハ

柵川トリオ『……え』ピタッ・・・

香焼「え」ヘァ?

絹旗「ん? ……如何したんですか?」フム?


何、それ……怖い。


佐天「……お、女の子じゃないの?」タラー・・・

春上「びっくりなの……」キョトン・・・

絹旗「え!? こ、香焼……女子だったんですかっ!!?」ビックリ!

初春「え、いや、男の娘でしょう? 常識的に考えて」ジー・・・


ヤダ、何……え?
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/12(火) 22:04:10.32 ID:s41fPWfDO
え‥‥初春の言う通りでしょ?
317 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:06:39.37 ID:cMmEngUn0
麦野・フレンダ・浜面『ダぁっハっハっハっハっハっハっハっ!!』ゲラゲラゲラゲラッ!!

滝壺『笑っちゃ、駄目……ププッ……だよ……クスッ』プルプル・・・

浜面『た、確かに……予め男だって分からなきゃ女に見えなくもないな!』アハハ!

フレンダ『は、腹痛い……ヤバい。ツボった……訳よ!』イヒヒヒヒッ!!

麦野『しかも絹旗のヤツ、今の言葉真に受けてるし!』アヒャヒャヒャッ!


……ああ、成程。だから佐天さんは自分の事『ちゃん』付けしてたのか。
自分は無言で財布の中から学生証を取り出して、3人に見せた。


柵川トリオ『……あ』ピタッ

香焼「これで分かったっすね。あと自分も最愛も中学生っすよ」ハァ・・・

絹旗「はい。私は超中学生です」コクッ


超中学生って言葉は無いですよ、最愛さん。
とりあえず3人を納得させた……と思ったら様子が変だ。


初春「や、やっぱり御嬢様じゃないですかっ!! しかも『▲▲▲』学院って理事校ですよ!!」ギョッ!!

佐天「うわぁ……っべー。レアよ。この子レアよ。学舎の園の外に出る御嬢様達よりレアよ!」ジー!!

春上「凄いの! 理事校の生徒が外を歩いてるの! きっと……捕まえたら高く売れる筈なの」グヘヘ・・・

絹旗「おー。香焼の学生証初めて見ました。嘘じゃ無かったんですね、超官僚予備軍の話は」ヘー


そっちかぁ……そっちに喰い付いたかぁ……


香焼「いや……制服見てよ」ハァ・・・

4人『ん? ……あ』ピタッ

香焼「じゃあ『自分』じゃなくて『オレ』とか『僕』って話した方が良いかな? あと最愛、何で一緒になってるの?」マッタク・・・

佐天「あ、あははは……ごめんごめん」ポリポリ・・・

春上「ずっと女の子だと思ってたの。ごめんなさい」ペコッ

初春「いや、世の中には『俺っ娘』や『僕っ娘』というジャンルも……あ、はい。ごめんなさい」タラー・・・


いや、まぁ偶に間違えられるけど……毎度の事ながらショックだ。


絹旗「大丈夫です。初めて会った時、正直香焼の性別判断を超微妙に間違いそうでしたから」サラッ

香焼「何が大丈夫なのかな? それは自分も最愛が最初男の子だと思ったっていうレベルだよ?」ジトー・・・

絹旗「むっ! 私は一度も間違えられた事なんかありませんよ!」プクー!


いや、短パン穿いてた時はどっちとも取れたよ。
318 :>>316・・・屋上。 [saga]:2011/04/12(火) 22:09:46.07 ID:cMmEngUn0
フレンダ『ふむふむ。確かにそう言われてみると絹旗が中性的に見えてくる訳よ』ジー・・・

滝壺『それはまだ幼いからだよ。もう少しすれば女性っぽくなってくると思うけど』クスッ

麦野『まぁまだ初潮も来てねぇガキんちょだしね。見分け付かねぇわな』アハハ

浜面『……おまえ』ハァ・・・


実際麦野は絹旗の第二次性徴云々は知りません。滝壺さんだけ知ってるらしいです。(?)


佐天「まぁまぁ。じゃあ最愛ちゃんは香焼くんの同級生か何かかな?」ニコッ

絹旗「……違います」フルフル・・・チラッ

香焼「最愛は……言っていいの? 自分で言う?」チラッ

絹旗「……私は霧ヶ丘です」ボソッ

初春「へぇ! って事は坊ちゃん御嬢様コンビですね!」キラキラ・・・

春上「初春さん、それはおかしいの……」アハハ・・・


初春さんは少し人と感性が違うっぽい。
さておき、最愛が自分の裾を引っ張っている事に気付いた。多分これ以上『自身』の話をされたくないのだろう。
確かに……あまり大きな声で話せる様な生活を送っていないらしいしね。


香焼「……そういえば3人は如何いう関係なんすか?」ニコッ

佐天「ん? 私達は同級生だよ。近くの学区立中学校」

初春「柵川中です。知ってますか?」

香焼「うん。今の学校じゃなかったら多分、そこ通ってたからね」クスッ

初春「何と!?」ビックリ!

春上「もしかしたら同級生だったかもしれないの」ニコッ


もしかしたら、か……あの馬鹿1号2号がやらかしてなきゃね。  ※第5話参照。


香焼「じゃあ今日は休みだから遊び歩いてたとか?」

初春「遊び歩……あ!」ドキッ!


いきなり腕時計を見る初春さん。


初春「二人とも!! もう3時ですよ!!?」ギョッ!!

佐天「げっ!! ヤバっ!!」タラー・・・

香焼「どうしたの?」

佐天「あーえっと、人と待ち合わせしてたの……走って間に合うかなぁ」ハァ

初春「春上さん! 枝先さんに連絡を!」アタフタ・・・

春上「もうしてあるの。あと木山先生がこっちに迎えに来てくれるそうなの」ニコッ

佐天「このフワフワっ娘は遅れた原因のくせにちゃっかりと……」ハァ・・・


呑気に猫を撫でるおっとり少女に呆れる友人二人。
319 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:11:44.84 ID:cMmEngUn0
佐天「あわわ……ごめん、二人とも! もう少しお話したかったんだけど、用事があるの」ポリポリ・・・

香焼「え、う、うん。大丈夫っすよ」アハハ・・・

初春「春上さん。そろそろ行きますよ! 木山先生待たせてしまいます」ヤレヤレ

春上「うーん……名残惜しいけど、仕方ないの」ムゥ


立ち上がる春上さん。


春上「最愛ちゃん」

絹旗「はい」ピクッ

春上「また猫さんと遊ばせて欲しいの。良ーい?」ニコッ

絹旗「え、あ、えっと……その……どぉぞ」コクッ・・・

春上「ふふふ。約束なの」フフッ

佐天「香焼くんも機会があればまた何処かでねー」ニコッ

香焼「うん。また」ニコッ


そして三人は手を振り、駆けて行った。


香焼「……行っちゃったね」クスッ

絹旗「何か超疲れました」ハァ・・・

香焼「良かったじゃないか。友達増えたろ?」ニコッ

絹旗「うーん……そうなんですかね」ムゥ・・・


少なくとも彼女達はそう思ってくれている筈だ。


香焼「さぁ。残り2匹の名前考えちゃおう」ポンッ

絹旗「……この大きいのは?」ピシッ

猫(?!)「ぬぉ~……」ジー・・・


だからソイツに名前を付けちゃいけない。


絹旗「じゃあ、この後から入ってきた三毛は?」スッ

香焼「14匹目? って……」エ・・・

絹旗「どうしました?」ポカーン・・・

香焼「……多分近くに飼い主がいる筈っすから、離しといてあげよう」アハハ・・・

絹旗「ふむ……超仕方ないですね」ナデナデ


首輪が付いてるオスの三毛の子猫……その猫にも名前は付けちゃいけない。


スフィンクス「みー」フシフシ
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/12(火) 22:14:01.81 ID:dfgLqxRWo
ドwルwジw

そして佐天さんミサワ読んでるww
321 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:14:25.04 ID:cMmEngUn0
 ―――とある休日、PM03:15、学園都市第7学区、とある公園・・・・・




残りの2匹は1匹ずつ名付ける事にした。
自分が付けたのは白黒のぶち猫で、『長老』。最愛は上下別色の方で……『まーらいおん』。結局そうなるのか。


絹旗「だってさっきの三毛猫、スフィンクスって名前だったんでしょう。だったら良い筈です!」フンッ!

香焼「ふーん……マーライオンって何だか分かってる?」

絹旗「馬鹿にしないで下さい! 上がライオン、下が魚の怪獣です!」エッヘン・・・

香焼「怪獣って……じゃあ何処に有るの?」

絹旗「……はい?」エ・・・

香焼「だからマーライオンは何処の国に有るか知ってる?」ジー・・・

絹旗「ちょ、超知ってますよ! あ、あれです! 下の方!」アタフタ・・・


流石、超理系少女。地理が弱い。


香焼「じゃあスフィンクスは?」

絹旗「ちょ、超熱い方!」アタフタ・・・

香焼「……最愛。今度一緒に社会の勉強しようか。割と本気で」ハァ・・・


これじゃあ大人になってから恥を掻く。


浜面『マーライオン……マレーシアだっけ?』

麦野『浜面……マジで言ってんの』エ・・・

フレンダ『じゃあスフィンクスは?』

浜面『……ピラミッド地方』ポリポリ・・・

麦野『おま……コメントに困るんだけど』タラー・・・

滝壺『はまづら……後できぬはたと一緒に小学5年の社会、勉強しようね』ブワァ・・・

浜面『べ、別に知らなくたって生きてけんだよっ!!』ガアアァッ!!


こういう風に恥を掻きます。


香焼「マーライオンはシンガポール、下の方じゃなくて南側。スフィンクスはエジプトでアフリカ北部っす」タラー・・・

絹旗「むぅ……流石超グローバル人間ですね」

香焼「小4、5レベルっすよ……」

絹旗「だって社会なんて専攻してないですもん」

香焼「いや、義務教育でしょ」ハァ・・・

絹旗「が、学園都市は超特例地区なんです! だからいいの!!」フシャーッ!!


同時に猫達も『シャーッ!』と唸った。まったくもぅ……


香焼「……じゃあ専攻って何やってたんすか?」ジトー・・・

絹旗「え」ドキッ

香焼「超特例なんだろ?」

絹旗「ええっと……言っても超意味不明だと思いますよ?」

香焼「大体のカリキュラムは把握してるっすよ」フフフ・・・
322 :>>320・・・お前斉藤っす。 [saga]:2011/04/12(火) 22:20:43.13 ID:cMmEngUn0
伊達に理事校へ通ってない。最愛は『では……』と一呼吸置き、一気に告げた。


絹旗「運動量・熱量・光・電気量等あらゆるベクトル(向き)の観測及び干渉。並びに大気中の窒素(N2)操作の有効利用 ―以下略― です」サラッ

香焼「……」タラー・・・

絹旗「……ふふふ」ドヤァ!

香焼「な、習ってないっすねぇ。あはは……来年にでも習うのかなぁ……」ダラダラ・・・

絹旗「霧ヶ丘『付属』は内部関係者でも知らない研究が超沢山あるんですよーだ。例え理事校でも習わないんじゃないんですかねぇ」フフフ・・・


まぁ……人には向き不向きがあるという事だ。


浜面『……麦野とかもっと難しい名前なのか?』タラー・・・

麦野『名前忘れた。長過ぎんのよ、専攻名……小論文かっての。原子崩し(メルトダウナー)で良いのよ。炉心融解者で』ハァ

滝壺『私も正式名称長くて所々しか覚えてないよ』

フレンダ『まぁ……希少能力者になればなる程、結局肩書きが面倒臭くなる訳よね』ハハハ


それが『科学』の街、学園都市。


香焼「と、とりあえず……万物力量干渉系能力って事? それとも大気操作系?」

絹旗「超秘密ですよ。にゃー」クスッ

猫s『にゃー』ジー・・・

香焼「気になるなぁ……」ポリポリ・・・

絹旗「じゃあ香焼の専攻は?」

香焼「それこそ言っても分かんないっすよ?」

絹旗「そんなの分かってます。でも私が言ったんだから教えて下さいよ」ジー・・・


やれやれ、子供だなぁと内心苦笑。


香焼「都市における宗教・科学信仰。並びそこから派生する『結社(新興、古参に限らず)』について……分かんないよね」アハハ・・・

絹旗「……科学信仰なんてもの有るんですか?」ポカーン・・・

香焼「うーんと、科学結社って聞いた事ある?」

絹旗「一応……『AI(人工知能)崇拝連合』とか『機械神(Deus ex machina)教』ですよね」コクッ

香焼「有名どころだとそうだね。とりあえず『信仰』の形は自由っすからそれが『科学』であっても良いんすよ」

絹旗「へぇ……じゃあ猫達は私を超慕ってますから私が神さまですか」クスッ

香焼「あはは。確かにね」フフッ

猫s『ふにゃー』ペコペコ


そこに結社としての方針が生まれなければ成り立たないのだが、細かい事は説明しても無駄だと思うので止めておく。
323 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:24:57.81 ID:cMmEngUn0
浜面『アイツら本当に中坊か? 俺にはサッパリだ』タラー・・・

滝壺『片や希少な大能力者。片や都市随一の政治学校だからね』

麦野『アンタが昔所属してた武装無能力者集団だって同じよ。「方針」に参同出来たから入ったんでしょ?』

浜面『まぁな。そういう事なのか?』

フレンダ『信仰って言葉は変だけど、結局似た様なモノって訳よ』


要は目的と手段が『現実思考(科学)』であるか『非現実(宗教)』であるかの違いだ。
尤もスキルアウトは無能力者による『運動』に近い為、異なると謂えば異なる。


麦野『私の友達に宗教の専門家が居るけど……傍から見ればこの「都市」自体が一種の科学信仰なんだってさ』

浜面『ハァ? 俺は科学信仰なんかした事無ぇぞ』

フレンダ『でも結局はこの街に居座っている訳でしょ? それってつまりは科学に縋ってる訳じゃない』

滝壺『それに「能力開発(カリキュラム)」に同意しなきゃ学園都市には入れないよ、はまづら。特例が無い限りはね』

浜面『……んー』ポリポリ・・・


『超能力』という力(科学)に魅力を感じ入学した者達。確かに見方によっては『崇拝』なのかもしれない。
今は如何あれ、浜面仕上という人間も能力に憧れていた頃があった筈なのだ。

さておき、少年少女は猫達に囲まれながら別の話題に移っていた。


香焼「……ねぇ、最愛」チラッ

絹旗「ん、如何したんですか?」キョトン・・・

香焼「えっとさ……答えたくなかったら良いんすけど……」ポリポリ・・・

絹旗「え? な、何でしょう。もったいぶらないで下さいよ」ドキッ!

ぬこ「みゃー」トコトコ・・・


能力の専攻について聞けたついでに、普段の事も聞いてみようかと考えた。
一方、絹旗は妙にドギマギ。


フレンダ『おぉ……何か始まる訳?』ウキウキ!

浜面『いや、ただの質問じゃね?』

滝壺『うふふ。きぬはた超ドキドキ中だね』ニコニコ!

麦野『何でもいいけど、あの子ベラベラ言い過ぎんじゃないわよ……』ハァ


大した事を聞くつもりは無い。『普段』を聞きたいのだ。


香焼「最愛、いつも何して過ごしてるの?」

絹旗「え? いつも、何って……うーん」ポリポリ・・・


学校に行っていないのは知っている。内容は分からないが『仕事』とやらをしているのも知っている。
しかしその他の間、この娘は何をしているのだろう。


絹旗「仕事して……ファミレスで屯して……偶にゲーセン行って……仕事して……映画見て……」ムゥ・・・

香焼「それから?」

絹旗「仕事して……映画見て……ご飯食べて……仕事して……仕事して……寝ます」コクンッ・・・

香焼「……」タラー・・・


仕事、仕事って……
324 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:27:17.02 ID:cMmEngUn0
麦野『あの馬鹿!』アチャー・・・

フレンダ『あんな記憶探り探りの言い方したら、結局突っ込まれるに決まってる訳よ』ハァ・・・


そこまで言われると、聞かざるを得ない。
自分は思い切って、猫達と一緒に頭を捻る最愛に尋ねてみる事にした。


香焼「……最愛。仕事って―――」



不良「うっはっ! 猫まみれっぽ!」テクテク・・・

DQN「オメェの猫可愛がりキメェって……あ?」ポカーン・・・

チャラ「お子様カップルが一丁前にデートかよ……ケッ」ジトー・・・



香焼「―――……」チラッ


何だか面倒臭い輩が近づいてきた。また最愛が隠れてしま……わない。
今度は何故か猫を撫で続けていた。よく見ると、男達にばれない様こっそり猫達を逃がしている。

しかし……白い赤目――確か『りこ』――が先頭を歩いてきた不良に首根っこを捕まえられた。


不良「あー、いいわ。やっぱ猫癒されんわ」グイッ・・・

りこ「……みぃ」ジタバタ

絹旗「あ……」ピクッ

DQN「テメェそう言う割には持ち方雑じゃね」アハハ

不良「いや、猫っつったら首鷲掴みじゃねぇの?」ハェ?

チャラ「止めとけって。そこのガキ怖がってんじゃ……あ?」ン?


怖がってなどいない。自分も最愛も、どちらかというと……怒っている。


チャラ「……何?」ジトー・・・

香焼「……猫が嫌がってるっす。離して貰えませんか?」

DQN「貰えませんかー? だっつぞ?」チラッ

不良「へ? この猫テメェのなの?」ジー・・・

香焼「違います……だけど、嫌がってるのは分かります」ジー・・・

不良「やっぱ野良じゃねぇかよ……ハッ」グイッ!

りこ「……みゃぅ」ジタバタ・・・

絹旗「っ!!」キッ!!

DQN「うっはっ! 睨まれてんぞー」アハハ!

不良「あはは。嬢ちゃん、凄むのは良いけどよぉ相手見てガンくれろよ? お兄さん達まだ優しいけど……怒ると怖いぞー」ケラケラ


子供だと思って自分達を馬鹿にする3人組。
何となくだが、最愛が『仕出かしそう』な雰囲気を醸し出しているのが分かる。それはアニェーゼがキレている時の『威圧』に似ていた。
325 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:29:21.29 ID:cMmEngUn0
それをさせるのは……拙い。こういう輩は此方が臆さず出娑婆らずの対応を見せれば勝手に帰るものだ。


香焼「……最愛、怒らないで」ボソッ

絹旗「言われなくとも……超分かってます」ボソッ

チャラ「ったく、オメェらガキ相手に大人げ無ぇなぁ……行こうぜ」フンッ

DQN「あーはいはい。俺らはガキですよー」ケッ・・・


良かった。帰ってくれそうだ。


浜面『あの絹旗の対応は如何なんだ?』チラッ

麦野『まだ対応①よ。人と絡まない状態。怒ってるけどまだ無視を続けられる』ジー・・・

滝壺『きぬはたはそんなに沸点低くないからね。ただ超えちゃうと……』ウーン・・・

浜面『超えると?』

フレンダ『……結局、アンタもよく知る絹旗が出てくる訳』ジー・・・


自分と最愛が一安心した矢先……まだ一人が残って『りこ』を離さずにいた。


不良「コイツ持ってくわ」テクテク・・・

香焼「な……」ギョッ!!

チャラ「汚ぇ野良猫をよく飼う気になるな」ハァ・・・

不良「俺ぁ動物飼った事ぁ無ぇよ。飽きたらどっかに置けばいいじゃん」ハハハ

DQN「ははは、エグっ! そりゃテメェの勝手だが一緒に歩くなよー。離れて歩け」ウッヘー

不良「おまっ……可愛いだろ、うりゃっ」グッ

チャラ「近づけんな、バッチぃ」シッシッ!

りこ「みーみー」イヤイヤ!

絹旗「りこ!」ギロッ・・・

不良「あーうん。リコちゃんねー。じゃ行こうかリコにゃん」テクテク・・・

香焼(コイツら……)キッ・・・


流石に口を出そうと―――した刹那。


しあげ「ンニャっ!!」バッ!!

絹旗「あ、しあげっ!」ビクッ

不良「ん……うをっ!!」ドキッ!!

しあげ「がうっ!」カプッ!!

不良「痛ぅっ!!」バッ!!

りこ「みゃんっ……」パッ・・・タタタタ・・・

DQN「ダハハっ!! 噛まれてやんのー!」ケラケラ!


茶色い毛むくじゃらの『しあげ』が、『りこ』を連れ去ろうとした不良の腕に飛び付いた。
何とか『りこ』は不良から脱出し、最愛の下へ帰って来る。
326 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:32:30.33 ID:cMmEngUn0
不良「コイ、ツ……いくら俺が猫好きっつってもよぉ……」ギロッ・・・

しあげ「フシャーッ……」ジー・・・

チャラ「あーあー……知らね」ハハッ!

不良「……ふんっ!」バシッ!

しあげ「ニャッ……ッ」ボンッ!!

香焼「発火能力者!?」ギョッ!!

絹旗「しあげー!!」アア!!


炎の点った平手で叩かれる『しあげ』。勢い良く地面に叩き付けられた。


麦野『……ヤバいわね』タラー・・・

フレンダ『うん……滝壺』タラー・・・

滝壺『了解』カチカチ・・・

浜面『……てかこの設定(空想)、悪意を感じるぞ』ハァ・・・


続けて不良が『しあげ』を蹴り付けようとした瞬間、最愛が告げた。


絹旗「おい……止めろ」ギロッ・・・

不良「……あん?」ピタッ

絹旗「止めろって言ってるんです……しずり、すている……しあげを引っ張って退いて下さい」ニャゥ・・・

しずり・すている「「……」」コクッ・・・トコトコ


立ち上がる最愛。不良は『何だ糞餓鬼』と標的を最愛に変更した。
そして二人が睨み合いをし始めた間に、『しずり』と『すている』が『しあげ』を回収した。


絹旗「……帰って下さい」ギロッ・・・

不良「……口には気を点けましょーねぇ。お兄さん達オッカナイよって言ったよなぁ」ア?

チャラ「オイ、いい加減にしとけよ。風紀委員に見つかったら面倒だぞ」トンッ

香焼「っ……自分も、そう思うっす。お願いします」チラッ

絹旗「……」グッ・・・


アチラにも常識人は居るようだ。このまま引いて貰いたい。


不良「……そこのガキがまだ睨んでんだがよぉ。腹収まんねぇってなぁ」ギロッ・・・

DQN「だからガキ相手にマジなんなって……嬢ちゃん、一言謝ればこの馬鹿帰ってくれるってさ」ハァ

絹旗「超嫌です」キッパリ

不良「……さっきの猫ごと燃やしてやっか」パキッ・・・

絹旗「ッ―――」ギリッ


瞬間―――殺気。


香焼「ッ!!?」ピキリーンッ!!


一般人には分からないだろう……皮膚の中に凍傷しそうなくらい冷たい鉄を押し付けられた感覚。
英国・天草の任務で『死地』に足を運ぶ際に味わう、禍々しい悪寒。
327 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 22:35:36.18 ID:cMmEngUn0
そしてその発生源は……自分の隣に居る少女。


浜面『おい、あれヤバいんじゃねぇのか』タラー・・・

フレンダ『滝壺っ!』

滝壺『送った! あとはあの男の子に頑張ってもらうしかないよ』ウーン・・・

麦野『……あれが絹旗の対応③よ』ハァ

浜面『③って……アレ、仕事中のアイツだろ』エ・・・

麦野『自分の敵に成り得るのであれば、日常でもああなるわ。無論手加減はするけど……』


手加減はすれど、命の保証は無い。絹旗最愛という少女に『武術』の心得は無いのだ。

    殴る。蹴る。ぶつける。攻撃を受け付けない。

単純且つ豪快。それが窒素装甲……『攻性』鎧(オフェンスアーマー)なのだ。


麦野『フレンダくらいとは言わないけど、齧る程度「喧嘩」の仕方覚えて貰いたいわね……』

浜面『殺人と喧嘩が混同してるのか? でも俺に殴りかかって来る時、そんなには』

滝壺『きぬはた、はまづらに対して本気で怒った事無いから。今のきぬはたは……結構、プッツン気味』

フレンダ『何にしろ例え怪我で済んでも、風紀委員や警備員に見つかれば結局厄介な訳よ』


暗部(アイテム)として、正直つまらぬ厄介事を作りたくない。故に……釘を刺した。


 Prrr・・・・Prrr・・・・・


絹旗「―――ッ……」ピタッ・・・


最愛の携帯が鳴った。


絹旗「……チッ」グッ・・・


途端、殺気が弱まる。自分は内心安堵したが……不良にとっては些細な事。御構い無しに声を荒げた。


絹旗「あの人はまた隠れて追跡(スニーキング)を……」カチカチ・・・

不良「何携帯なんか気にしてんだ糞餓鬼ぁっ!!」ボッ!!

絹旗「超雑魚のくせに勢がって……滝壺さんからメール来て無かったら打ん殴ってましたよ」ギロッ・・・

不良「んだとゴラァっ!!」ギロッ!

香焼「っ……本当に通報しますよ。帰って下さい」スタッ

DQN「あーあ。知らね……俺ら関係無ぇぞー。先行ってて良いかー」ハァ・・・

不良「上等だボケナスがっ!! 全治2ヶ月大火傷は覚悟しろっ!!」ボワァッ!!

チャラ「げぇっ!! 俺らまで巻き込まれるっつの!!」タラー・・・


冷静になった最愛とは裏腹、馬鹿にされたと勘違いしたらしいオツムの弱い不良さんはプッツン状態に。
只今演算中なのか凡そ1m程の火球を構成している。大体、異・強能力者(レベル2,3)だろう。


絹旗「……香焼。私の後ろに」チラッ

香焼「……最愛こそ、下がって」スッ

絹旗「無能力者のくせに恰好付けなくていいですから」ボソッ

香焼「女の子を盾にするよう、教育されて無いんすよ」ボソッ


鋼糸(ワイヤー)を握り、術式を錬った。直ぐに耐熱防壁を展開できる。この程度の炎……ステイルに比べたら、カス同然だ。
328 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:06:39.58 ID:cMmEngUn0
絹旗「因みに……攻撃受けた後だったら、超正当防衛ですよね」ニヤッ・・・

香焼「物騒な事言わないでよ……何とか説得するから、猫達守ってて」ハァ

不良「ゴチャゴチャ五月蠅ぇんだよぉ……小学生共がああぁっ!!」ブンッ!!


放たれた火球。見事自分らに着弾した。


不良「ハッハァーっ!! チェストゥッ!!」ボワアアァッ!!

チャラ「ちょ、オマ……拙いぞ」タラー・・・

DQN「おいおい……一緒に居たからって俺らまでネンショー(少年院)行きとかマジ勘弁だぜ」ダラダラ・・・


立ち込める黒煙。漂う焦臭。


チャラ「さっさと逃げるぞ!! これ即行風紀委員駆け付けるって!」アタフタ・・・

不良「ふんっ! ガキのくせに調子乗っからこうなんだ……二度と面出すなよ」チッ・・・


普通で有れば、確かに全治2ヶ月はくだらないだろう……『普通』で有れば。


DQN「うわぁ………………ぇ」ピクッ

不良「如何した。面かるぞー。それともオマエ殿してくれんの?」ハハハ

DQN「……おい」タラー・・・

チャラ「はぁ……ぃいッ?!」ギョッ・・・


目を凝らす。そこには……


絹旗「……何からツッコめばいいか分かりませんね」ケホケホ・・・

香焼「自分も……色々ツッコみたいっすよ」コホンッ・・・

猫s『にゃーぅ……』クチュンッ! クシュンッ!


まるで変わり無い光景が残っていた。二人はおろか、猫、そしてベンチまで無事である。


不良「な……ぇ……」タラー・・・

絹旗「粋がるのは超勝手ですが、見た目で相手の強度(レベル)判断してたら生き残れませんよ? 超チンピラさん」ジトー・・・

不良「い……おま、え……ら……」ダラダラ・・・

香焼「最愛、売り言葉には買い言葉しか返って来ないっすよ……風紀委員には能力の暴発って事で説明しとくっす。帰って下さい」チラッ

DQN「……お、おい。マジで行くぞ」グイッ・・・

チャラ「折角、こう言ってんだからよ……相手悪かったって」ハハハ・・・


そうしてくれ。


不良「こ、の……嘗めんなああああぁっ!! オレぁ大能力者(レベル4)様だぞぉっ!!」ガアアァッ!!

DQN「何で見栄張ってんだっ?! 素直に異能力って認めろバカ!」ヤベッ・・・

チャラ「あーもぅ……何でこんな単純阿呆とつるんでんだ俺はよぉ……」ハァ・・・


お察しします。
329 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:20:26.89 ID:cMmEngUn0
絹旗「……如何します?」チラッ

香焼「大人しくしてれば誰かが風紀委員か警備員が呼んでくれるっすよ」コクッ

絹旗「……」ウーン・・・

香焼「兎に角、猫達をベンチの下に隠しといて」チラッ

猫s『なぅ』ジー・・・

絹旗「……了解です」コクッ


それよりも、と絹旗には気になる事があった。先程の火球は自分の装甲に触れてない。
つまり……香焼が『何か』をした。もしかして無能力者というのは嘘なのだろうか。


麦野『滝壺』チラッ

滝壺『何だか、彼の信号の「色」……変……』ジー・・・

フレンダ『……如何いう訳?』

滝壺『……気持ち悪い』ジー・・・

浜面『はぁ?』キョトン・・・

麦野『……』フンッ・・・


それは彼らが知り得ない『力』。


香焼(あー……ばれたら始末書どころじゃ済まないっすねぇ)ハァ・・・


展開した術式は『結界』の一種。自分を中心に半径3m以内に鋼糸でドーム状の『壁』を作った。
網(隙間)となる部分には『魔力』を通してある為、今の火球程度であれば余裕で無傷。
ただし多少の空気は通す故、少々煙と熱は入ってしまう。

尤も、ステイルクラスの火炎であれば守って3秒……それが今の自分の実力である。


香焼(五和や建宮さんならもっと大きく硬い壁作れるんだろうけど……要修行って事っすね)スッ・・・


とりあえず一度『壁』をしまった。
因みに鋼糸は天草の基礎中の基礎武具なので常に携帯している。今使った鋼糸は3番。番号が大きくなる程重く硬い。小さければ、鋭く軽い。

さておき……不良が自棄になった訳で。


不良「ダアアアァッ!! 通れえええぃっ!!」ダダダダダダダッ!!

絹旗「あー馬鹿みたいに超ぶっ放して来てますけど……」ジー・・・

香焼「あはは……困ったね」タラー・・・


香焼は再度即座に『結界』を展開した。火球は虚しく霧散していくばかり。
ただ絹旗的に見れば何が起こっているのか分からない故、不思議で仕方が無い。


絹旗「……超嘘つき」ジトー・・・

香焼「ええっと……」アハハ・・・

絹旗「無能力ってのは嘘だったんですね」ジトー・・・

香焼「うーん……本当なんだけど……アレっす。『CD(キャパシティダウン)』とか『攪乱の羽(チャフシード)』だと思ってて」タラー・・・


キャパシティダウンも攪乱の羽も、簡単に謂えばAIM拡散力場に干渉する『ジャマー』だ。


絹旗「……だったら私の能力も消える筈ですけど」ジトー・・・

香焼「じゃあ……『マジック』だよ」ポリポリ・・・

絹旗「……手品(マジック)?」ハァ・・・
330 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:23:24.92 ID:cMmEngUn0
無論、種と仕掛け『しか』ない魔術(マジック)である。詳細を説明する気はサラサラ無い。


絹旗「……後で説明して下さい」ジトー・・・

香焼「最愛の能力教えてくれたら自分も教えるっすよ」クスッ

絹旗「……むぅ」ポリポリ・・・


お互いに隠し事の多い人間。


不良「こ、のぅ……ぜぇ……糞ったれがぁ……」ゼェゼェ・・・

DQN「お、おい……もう気ぃ済んだろ」ポンッ・・・

不良「ハァハァ……っせえぇ!! 百辺殺してやる!! もぅ泣いて土下座しても許さねぇ!!」ガアアアァ!!

絹旗「……だそうです」ハァ・・・

香焼「困ったね」ハハハ・・・

不良「ん、の……余裕ブっ扱きやがってよぉっ!!」ダダダダダダッ!!

絹旗「ねぇ香焼。そろそろ超攻撃しちゃ駄目ですか? やられっ放しは超好みじゃないんですけど」チラッ

香焼「駄目」ピシャッ

絹旗「……優しいんだか、甘いんだか」ハァ・・・

香焼「良く言われるっす」タラー・・・


それが香焼の性格だ。


麦野『あの坊や……如何思う?』ジー・・・

浜面『はい?』

フレンダ『攻撃手段無いから徹底防戦』

滝壺『不良さん達を傷つけたくないから防戦一方』

浜面『ああ、そういう……面倒事避ける為じゃねぇのか? いざって時少しでも手ぇ出しちまうと風紀委員五月蠅ぇからさ』

麦野『ふーん……』ジー・・・

滝壺『むぎのは?』

麦野『……教えない』フフッ

フレンダ・滝壺・浜面『『『え?』』』ポカーン・・・


分かってしまった気がするので、教えたくなかった。
あの少年はこの短時間で絹旗の性格を読んだ。多分、先程発した『殺気』で判断したのだろう。

最愛に攻撃させたら、最愛が『傷付く』。身体がとかでは無く、精神(ココロ)が荒む。

そんな甘っちょろい考えで……殺人鬼を守ろうとするなんて。


麦野(ホント、苦手なタイプだわ)クスクス・・・


自分の『とある友人』にも似た理念。
それは優しく甘ったる過ぎて……自分の様な『日蔭者』には猛毒。ずっと酔い痴れたくなるのだ。その温かさに。


麦野『……とりあえず誰か匿名で風紀委員呼んでやりなさい。あのチンピラしつこ過ぎんわ』ハァ・・・

滝壺『そうだね……って……ッッ!!?』ギョッ!!

フレンダ『どったの?』キョトン・・・

滝壺『何か、東南東から「面倒臭い」信号が……来てるよ』ダラダラ・・・

麦野・フレンダ・浜面『『『はぁ?』』』ポカーン・・・
331 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:26:05.29 ID:cMmEngUn0
再び少年少女達の方を見遣る。


DQN「お、おい……俺ら逃げようぜ。そろそろ風紀委員来ちまうぞ」ダラダラ・・・

チャラ「いや、コイツ置いてったら結局同じだって。ガキ共が俺らまでっつったら終わりだぞ」タラー・・・

香焼「あ、大丈夫っす。彼だけって言っときますから」ニコッ

DQN・チャラ「「サンキュッ!!」」b”!

不良「テメェら逃げたら燃やすかんなっ!!」ギロッ・・・

DQN「なぁっ!? ざけんなよっ!! ダチ燃やすって気ぃ狂ってんじゃねぇのか!?」ハァ!?

不良「テメェらこそダチ置いて逃げるとか薄情モンだろぉがよぉっ!!」ガアアァッ!!

絹旗「あーあー……超仲間割れですね」ヤレヤレ・・・


ギャーギャー騒ぎ出すチンピラ3人。この間に猫達連れて逃げても良いのでは?
そう考えた時……喧しい声が響いた。



??「待てーぃっ!!」ビシッ!!



白ラン。鉢巻き。旭Tシャツ。


麦野『げぇっ!!』

フレンダ『嘘ぉっ!!』

浜面『おいおい……』

滝壺『あはは……信号受信。本人だね』


シマ○トイズム溢れる服装&雰囲気の少年。


??「幼き者達に鉾を向け、友の声を受け入れぬか。自己判断が出来ぬまでに自棄を起した愚か者……人、それを『小物』という」テクテク・・・

一同『……』タラー・・・

??「……『小物』と、いう!」ダンッ!


……ああ、多分、次言ってやらないと話が進まないのか。


香焼「……これ自分言って上げても大丈夫っすか?」チラッ

絹旗「ええ、多分……そのバージョンはそのバージョンであると思いますから」タラー・・・


では……


香焼「だ、誰っすか。貴方はー」ボウヨミー

DQN「いや、どう見たって第7ぃぶべらぁっ!!」ボーンッ!!

チャラ「ドっくーんっ!!」ギャー!


あーあ……口挟むから。あと『ドっくん』っていうんだ、あの吹っ飛んだ人。
332 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:28:18.83 ID:cMmEngUn0
削板「学園都市、超能力者第7位(ナンバーセブン)! 魂の叫びを受け取る、愛と根性のヲトコ……削板軍覇、見参ッッ!!」ドーンッ!!


第7位さんのバックで特撮みたいな爆発が上がった。


絹旗「……誰ですか、間違ってあの超⑦(バカ)呼んだのは」ハァ・・・

不良・チャラ「「だ……第7位っ!!?」」ギャーッ!!

削板「うむ」ムンッ!

絹旗「『うむ』じゃないですよ……あー、麦野に電話するべきでしょうか」ハァ・・・

香焼「……え? 助けじゃないんすか?」タラー・・・

絹旗「アレが助けに見えるんだったら腕利きの眼科医を紹介します」ジトー・・・


そこまで言うか……


削板「因みにお腹が空いてるのでさっさと終わらせましょう。今日は朝から空きっ腹なのだ」グー・・・

絹旗「超如何でも良い情報ですね」ジトー・・・

チャラ「ちょ、待、な、何で此処に……」タラー・・・

削板「あのビルの屋上から……派手な爆発が見えたから跳んできた」アッチアッチ


割と近場――それでも200mは離れている――のビル天辺を指差す第7位。


削板「まぁんな事はさておき……貴様、自分より年下虐めて楽しいか?」ギロッ・・・

不良「なっ……五月蠅ぇな。アイツらは俺より強度上だぜ?」アン?

削板「……だからなんだ?」フンッ・・・

不良「別に弱い者虐めにならねぇだろうがよぉ……口出すんじゃねぇよっ!! 他人がぁっ!!」ギロッ・・・

削板「そうか……なら……」スッ・・・

絹旗「ッッ!!? 香焼、超伏せてくださいっ!!」バッ!!

香焼「え、あ、うわっ!!」ドンッ!!


最愛に押し倒された。


削板「口が駄目なら『手』を出すまでだっ!!」ゴゥッ!!

不良「ちょ―――」



 すごいパーンチ。



不良「―――ぶぼがぁ!!」


すんごくダサい掛け声とは裏腹、勢い良く吹き飛ばされていくチンピラさん。
因みに『結界』が一発で破られたのには驚いた。
333 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:31:46.78 ID:cMmEngUn0
絹旗「ダサいのは確かですけど……絶対相手しちゃ超超々ー駄目ですよ……」ゴクッ・・・

香焼「うん……分かったから、その……」エット・・・

絹旗「……え?」キョトン・・・


現在、最愛が自分に乗っかている形でして……


麦野『絹旗あああぁっ!! そのままヤっちまえええぁっ!!』ヒャッホーイッ!!

フレンダ『あー、完璧先越された……結局、絹旗は大人の階段登っちゃう訳ね』キミハマダ・・・シンデレラサー・・・

浜面『……お前らさぁ』ジトー・・・

滝壺『きぬはた、女は度胸だぞー』オー!

浜面『滝壺さんっ?!』ハイッ!?


瞬時に真っ赤になり、少年から離れる少女。


絹旗「ごご、ごお、ごごごぉ、ごごご、ご、ごめんなさいぃっ!!」カアアァ・・・///

香焼「あ、うん……まぁ助けてくれたんすよね。ありがと」アハハ・・・

絹旗「あ、ぅ……」キュゥ・・・///


何か気拙い……じゃなくて、とりあえず今は不良さん達の方だ。


削板「自分より強度が高いから後輩を虐めて良いだぁ? ……じゃあ強度が低くても年上なら殴って良いんだな?」ギロッ・・・

チャラ「い、いや、その理屈はおかしい」ダラダラ・・・

削板「じゃあアイツが言った理屈もおかしいよな? 分かったら二人を抱えてとっとと消えろ」ギロッ・・・

チャラ「ひぃっ!!」バッ!


伸びている二人を抱えて消え去ったチャラ男さん。とりあえず一難は去ったようだ。


削板「……大丈夫か?」チラッ

香焼「え、あ、うん……ありがとうございます」ペコッ

削板「うん。なら良いんだ」ニカッ

絹旗「……」ジー・・・

削板「ん? 俺の顔に何か付いてるか?」ン?


微妙な眼で第7位を見詰める最愛。


麦野『んだよぉ、がっかりだわ……ツマンネ』ハァ・・・

浜面『何期待してんだよ……てか、絹旗のあの対応は?』ジー・・・

フレンダ『多分、ありゃ特例な訳でして……』ウーン・・・

滝壺『一応、私達全員、彼は知ってるからね』アハハ・・・

麦野『絹旗も如何対応していいか分からないんでしょ。下手に隠れると喰い付く様な輩だし』ハァ


直接会った事は無いが、資料を見せられた事がある。
何のつもりかは知らないが、アイテムが叩こうとしていた粛清対象の人身売買組織をヤツが一人で潰していたのだ。
監視カメラにしっかりとその『戦闘データ』が残っていた為、回収させて貰っている。
334 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:34:18.40 ID:cMmEngUn0
削板「……あれ?」ジー・・・

香焼「な、何すか?」タラー・・・

削板「……オマエ、偶に屋上の上とか走ってないか? 主に夜」ジー・・・

香焼「っ!!?」ドキッ!


何で……


削板「……あとオマエも」チラッ

絹旗「え」ビクッ!

削板「偶に……路地裏いるよな? あと廃棄施設とか」ジー・・・

絹旗「っ!!?」ギョッ!!


……知っている?

香焼は任務の関係上、天草式のみが知り得るルートを行動している。
絹旗は任務の関係上、路地裏や諸所の施設で制圧行動を行っている。


香焼「き……気の所為じゃないっすか? 何で自分がそんな事する必要あるんだか」アハハ・・・

絹旗「そ、そうですね。私も路地裏なんか超怖くて歩けませんよ」アハハ・・・

削板「むぅ。そうか。ならいい」コクンッ


単純な人で助かった。


フレンダ『ヒヤヒヤするわね』タラー・・・

滝壺『流石、常に高い所に居る人だね』アハハ・・・

浜面『いや、それだけじゃ分からんだろ。普通』

麦野『アレに常識は通用しないわ……謂わば削板軍覇っていう存在が未元物質(ダークマター)よ』ジー・・・


まさに世界最高の『原石』。


削板「そういえば、お前ら何で攻撃されてたんだ?」グー・・・

香焼「え、あ、うーん……猫っすかね?」アハハ・・・

削板「猫? にゃんこ?」グー・・・


ベンチの下を見る。


削板「おお、猫とベンチと私ってヤツだな!」グー・・・

香焼「……最愛、如何いう意味?」チラッ

絹旗「私に聞かないで下さいよ……」タラー・・・

削板「よし、猫共! もう大丈夫だぞ! 出て来い!」グー・・・


大声で呼び掛ける第7位。しかし猫は出て来ない。
335 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:35:50.11 ID:cMmEngUn0
削板「……ん?」グー・・・

香焼「それじゃ出て来ないっすよ。最愛」チラッ・・・

絹旗「……」ジトー・・・

香焼「どうしたの?」

絹旗「……オマエ、猫を如何する気ですか?」

削板「はい?」グー・・・

絹旗「……」ジトー・・・

香焼「最愛?」ポカーン・・・


もしかして、さっきと同じく虐めると思ってるのか。


削板「いや、流石の俺でも猫は食べません」グー・・・

香焼「それは当り前っすよ……えっと、別に虐めたりなんかしないっすよね」チラッ

削板「そりゃそうだ。俺は学園都市に新ムツジロウさんパークを作ろうと考えた事がある程だぞ」グー・・・

香焼「それきっと直ぐに経営難になるっすよ……最愛、もう猫達出しても大丈夫だよ」ニコッ

絹旗「……香焼が言うなら」ウーン・・・


最愛はしゃがんで猫達を手招きした。


猫s『にゃーん』トコトコ・・・

削板「おお! ハルメンの何たら隊みたいだな」グー・・・

香焼「ハーメルンっすよ」タラー・・・

絹旗「……」スッ・・・ナデナデ・・・

しあげ「……ナー」トボトボ・・・

絹旗「しあげ……ごめんな」ナデナデ・・・

りこ「みぃ」ペロペロ・・・

絹旗「りこ。オマエもだね」ナデナデ・・・


守れなかった事に責任を感じているのか、最愛は2匹を撫でてやった。
その非が有るとすれば、自分(香焼)の所為だろうに。


削板「ふむ……猫を守ろうとしたのか」グー・・・

香焼「……自分の所為で一匹傷付いたっす」ジー・・・

削板「オマエは守ってただろ? 何か『すごいバリア』みたいなので」グー・・・

香焼「それを張る前にっすよ」ハァ・・・

ぬこ「にゃん」トコトコ・・・スタッ


いつもの子猫が自分の肩にしがみ付いてきた。
336 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:39:32.32 ID:cMmEngUn0
絹旗「……香焼。しあげは大丈夫でしょうか」チラッ

香焼「ちょっと見せて……毛が焼けちゃったね。火傷は……思ったより酷くないから、冷やしてあげれば大丈夫っすよ」ニコッ

しあげ「ンナー」プルプルッ

絹旗「ふぅ……超良かったですね」ホッ・・・

りこ「みぅ」コクッ


安堵の表情を溢す最愛。とりあえず落ちついた様だし、ハンカチを濡らしたら一息つこう……―――





 ―――とある休日、PM03:45、学園都市第7学区、とある公園・・・・・





―――結局、警備員が駆け付けたのは自分が『しあげ』の治療をしている最中だった。


鉄装「はぁ……また削板くんなのね」ポリポリ・・・

削板「よっ! 眼鏡の姉ちゃん。じゃんじゃん警備員は一緒じゃ無いのか?」グー・・・

鉄装「黄泉川先輩は非番です……で、今回は何を如何したの?」タラー・・・

削板「メラをバーンってフッ飛ばした」グー・・・


意味が分からない。困った警備員は自分に尋ねてきた。


香焼「えっと……発火能力者が能力を暴発させたました。自分達に火の手が回りそうな所を彼が助けてくれたっす」コクッ

鉄装「……成程ね」カキカキ・・・


事件の報告書を書き綴る警備員。


絹旗「……香焼?」キョトン・・・

削板「おい……」グー・・・チラッ

香焼「黙ってて」ボソッ

鉄装「……それで、その発火能力者は?」

香焼「病院行ってみるって、友達に抱えられて帰りましたよ」コクッ

鉄装「そう……傷害沙汰じゃないのね。誰も怪我無くて良かった」ニコッ

絹旗「……しあげが火傷しましたよ」ジトー・・・

鉄装「え?」

香焼「あーえっと、猫っす。軽傷なんで自分達で何とかしますよ」アハハ・・・

鉄装「あ、うん……とりあえず事情は分かりました。何かあった時は直ぐに通報して下さい」ペコッ

香焼「はい。御手数お掛けしました」ペコッ

鉄装「あー、削板くん。あんまり乱暴な事しちゃ駄目よ? 先輩大分御冠だからね」チラッ・・・

削板「おう! じゃんじゃんに次は負けねぇって言っといてくれよな!」グー・・・

鉄装「まるで分かってない……ハァ」テクテク・・・


何故か項垂れながら消えていく警備員。というか、第7位と顔見知りなのか?
337 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:42:47.36 ID:cMmEngUn0
削板「あの姉ちゃんには世話になってるからな! 特に飯の面で!」グー・・・

香焼「そ、そうなんすか……」アハハ・・・


取り調べ中のカツ丼が浮かんでしまった。
さておき、簡易だが『しあげ』に掛けていた回復術式が終了した。


香焼「……そろそろ大丈夫っすね」ニコッ

しあげ「ニャン」コクッ・・・トコトコ

削板「らいおんヘア! 元気になったのか」グー・・・

香焼「最愛とセンスが一緒だ」アハハ・・・


高位の能力者ってそういうものなのだろうか。
『しあげ』をゆっくり地面に置き、他の猫達の下に帰してやる。


香焼「よしっ。元通りっす」ニコッ

絹旗「……香焼」ジー・・・

香焼「ん?」チラッ

絹旗「何で嘘付いたんですか?」ジー・・・

香焼「え、いや別に……」

削板「そういえば俺も気になってた。何故正直に言わない?」グー・・・


特に意味は無いのだが。


絹旗「……意味も無くアイツら許したんですか?」ジトー・・・

香焼「えっと、さ……あの人達を通報しても誰も得しないっすよ」コクッ

絹旗「……しあげが火傷したんですよ?」ナデナデ・・・

しあげ「ニャゥ」グシグシ・・・

香焼「それを言われるとアレっすけど……」ポリポリ・・・


如何したものか。


香焼「……第7位さんが十分に制裁してくれたっす。これ以上彼らを叩くのは可哀想っすよ」

絹旗「むぅ……」ジー・・・

香焼「それに素直に詳細を話しちゃうと多分、第7位さんが叱られてたっす」チラッ

削板「まぁ……だな。いつもの様に怒られてたと思う」グー・・・


詳しい能力名は知らないが、あの『力』だ。人を助ける為振ったといえど何かしらの罰則は科せられるだろう。


香焼「極力『何も無かった』で済むんなら、それに越した事はないっすよ」ニコッ

絹旗・削板「「……」」キョトン・・・

香焼「……駄目、かな?」ポリポリ・・・

絹旗「……超御人好し」ハァ・・・

削板「あはは。けど助かったっちゃ助かったさ」グー・・・


面倒事を増やしたく無かったというのもあるが、全ては済んだ事。
元々自分達は『余裕』だったのだから寛容であるべきだ。彼らも反省しただろうし、第7位さんもお咎め無し。

万事OKだ。
338 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:45:24.60 ID:cMmEngUn0
絹旗「ハァ……まぁ大目に見ましょう」クスッ

香焼「ありがと」ニコッ

削板「ははは! オマエ、面白いな! 小学生のくせに良い根性だ! 嬢ちゃんもな!」グー・・・

香焼「むっ……自分は中学生っすよ。第7位さん」ジトー・・・

絹旗「右に同じく、です」ジトー・・・

削板「そりゃ失敬失敬。それじゃあついでだが、第7位じゃなくて名前で呼べ。ちゃんと削板軍覇って名が有る」グー・・・

香焼「あ、うん……削板さん」

削板「……いや『さん』付け止めてくれ」ゾッ・・・

香焼「え?」

削板「鳥肌立った。ほら」ゾゾゾ・・・


本当だ。


香焼「いつも何て呼ばれてるんですか?」アハハ・・・

削板「第7位か呼び捨てだ。さん、くん、ちゃん付けされると……悪寒がする。オマエらは先公かよってな……」ゾゾゾ・・・

絹旗「……典型的な馬鹿ですね。学校行ってないタイプでしょう」ジトー・・・


それは貴女もでしょう、最愛さん。


削板「五月蠅ぇ。兎に角、呼び捨てにしろ」ウヘェ・・・

香焼「でも年上に対して……」ウーン・・・

削板「同じ中坊なんだろ? じゃあ良いってば」グー・・・

香焼・絹旗「「……え」」ポカーン・・・

削板「まぁそういうキャラなら仕方ねぇけど……ん?」


中、学生?


浜面『……マジかよ』タラー・・・

フレンダ『麦野?』チラッ

麦野『いや、私も知らないから』タラー・・・

滝壺『※あくまで二次設定です。真に受けないで下さい』ペコッ


五和くらいの歳かと思った。


削板「まぁ歳は気にすんな。兎に角名前で呼べ。俺も名前で呼んでやる。そいやオマエらの名前知らねぇや」グー・・・

香焼「……香焼っす」ペコッ

絹旗「……」ジトー・・・

削板「そっちは?」グー・・・

香焼「絹旗っす。絹旗最愛」サラッ

絹旗「ちょ、勝手に教えないで下さい!」ギロッ・・・

香焼「え、このくらい良いでしょ」タラー・・・

削板「モアイとコーヤだな! 覚えた!」グー・・・

香焼・絹旗「「違ぇよ!!」」ガアアァッ!!


どうやったらそう間違えるんだ。
339 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:47:13.47 ID:cMmEngUn0
削板「冗談だって! えっと……最愛って珍しいな」グー・・・

絹旗「軍覇の方が超珍しいでしょうに」ハァ・・・

削板「まぁ多分此の世に俺しかいないからな。あと香焼、苗字じゃなくて名前は?」グー・・・

香焼「名前は……理由が有って教えられないっす。すいません」ペコッ

削板「はぁ?」ポカーン・・・


※お察し下さい。


削板「そ、そうか……仕方ない」タラー・・・

絹旗「超ばーか。超謝れ超ばーか。デリカシーない超ばーか」ベー!

削板「何でオマエに謝らなきゃいけないんだよバカ。バカって言う方がバカなんだぞ、バカ」グー・・・

香焼「二人とも……」ハァ・・・


今時幼稚園児でもしないやりとり。


香焼「……そういえば、最愛。平気なの?」チラッ

絹旗「え?」

香焼「その人……第7位さんの事」

削板「軍覇」キリッ

香焼「……削板の事」ハァ・・・


普通に話してるけど。


絹旗「……無視すると超面倒臭そうなので適当にあしらってるだけです」ジトー・・・

香焼「あはは、成程」タラー・・・

削板「ふむ。要は懐かれてしまったという訳だな」グー・・・

絹旗「世界が崩壊しても超絶対懐きませんから」サラッ

削板「ははははは! 照れるな照れるな!」グー・・・ギュルルル・・・


凄いポジティブだ。あと腹の虫の音が途轍もなくデカく鳴ってきてますよ。


削板「やっと突っ込みを入れてくれたか……オマエ良いヤツだな。香焼」グルル・・ギュゴー・・・

香焼「ええっと……どうも」ポリポリ・・・

削板「ついでに……」ジー・・・

香焼「……」タラー・・・


何が言いたいのか分かった。
340 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:49:49.46 ID:cMmEngUn0
香焼「……最愛。食べ物持ってる?」チラッ

絹旗「有っても上げません」キッパリ

削板「オマエにゃ期待してねぇよ。でもくれるなら貰ってやっても良い」フンッ

絹旗「超図々しい……猫の餌でも食べてて下さい」ジトー・・・

削板「お! いいのか!」キラキラ・・・

香焼「だ、駄目だよ! お腹壊すって!」アタフタ・・・

削板「俺は廃棄のハンバーガーでも腹壊さないぞ?」ギュルルル・・・ゴグブ・・・

絹旗「……やっぱ駄目です。猫達の餌を超根性馬鹿に分けたくありません」ジトー・・・


そういう問題じゃない……というか微妙に似てる二人だ。何処かずれてるからだろう。
とりあえず、肩掛けリュックの中を探ってみる。

飴1袋。携帯食代わりのお菓子数個。


香焼「じゃあ……これ」スッ・・・

絹旗「態々上げなくていいのに」ハァ・・・

削板「何だ、これは?」ジー・・・

香焼「ゆべし。カステラボーロ。甘納豆。それから……」

絹旗「また超コアなお菓子ばっかですね」ジー・・・


因みに全部高カロリーです。水が欲しくなります。


削板「……良いのか?」キョトン・・・

香焼「良いっすよ。さっきのお礼っす」ニコッ

削板「じゃあ……ん」モグモグ・・・

香焼「最愛もどうぞ」スッ・・・

絹旗「じゃあカステラボールを……」モキュモキュ・・・

ぬこ「なー」テクテク・・・

絹旗「こら! オマエは猫缶があるだろ」メッ!

猫s『にゃー』トコトコ・・・

絹旗「あーあ……香焼、如何しましょう」ハァ


とりあえず興味本位で近づいてきただけだと思う。また猫缶を出してあげれば大丈夫だ。


削板「詳しいんだな。あともう一個貰っていい?」モグモグ・・・ヒョイッ

絹旗「聞く前から貰ってるじゃないですか」ジトー・・・

香焼「別に大丈夫だよ……知り合いに動物の扱いに詳しい人がいるからね」アハハ・・・

削板「へぇ……もう一個」ヒョイッ

絹旗「喰い過ぎです、根性馬鹿!」フシャーッ!

削板「それは褒め言葉だ」ヘッヘーン!


『根性』が付けば、馬鹿でも阿呆でも良いらしい。
341 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:52:33.91 ID:cMmEngUn0
香焼「あはは、とりあえず此処に有る分は全部食べて良いっすよ。家にまだ沢山あるから」ポリポリ・・・

削板「ほら」ドヤァ・・・

絹旗「ぐ、ぬぬ……」クソォ・・・

香焼「最愛も食べて良いから、怒らないの」ハハハ・・・

絹旗「むぅ……香焼に免じて許してやりましょう」フンッ

削板「おう。香焼に免じて許されてやろう」ハハハ!


その理屈はおかしい。


浜面『第7位ってあんなヤツなのか?』ジー・・・

麦野『知らない。謎過ぎるわよ……悪乗りした垣根よりちょっとマシなレベルってとこじゃない?』


その垣根基準が分かりません。


削板「ところで……水が欲しいな」モグモグ・・・

香焼「自分ので良ければ」スッ・・・

絹旗「……自分で買えば良いでしょう。自販機そこに有るんですから」ジトー・・・

削板「俺は節約家なんだ。財布は持ち歩かん」サラッ

絹旗「それは節約じゃなくて超ドケチなだけです。超能力者なら超金持ちでしょう」ハァ・・・

削板「ライチティーじゃなくてライムティーが良かった」ゴクゴク・・・

絹旗「人の話聞け!!」フニャーッ!!

香焼「さ、最愛……」ドゥドゥ・・・


普通に会話出来てはいるが、ある意味相性的には最愛の天敵なのかもしれない。


削板「ふむ……どうもどうも。ところで、オマエらはアレか?」ジー・・・

香焼「ん?」

削板「アベックというヤツか?」ジー・・・

絹旗「あべっく?」キョトン・・・


アベック(avec)……フランス語で『~と一緒に』。英語で謂う「with」に相当。日本では『カップル・恋人』的な意味合いで用いられた『死語』。


香焼「アベックって……違うよ。友達っす」アハハ・・・

削板「そうなのか。最愛が香焼にベッタリだったから付き合ってるのかと思ったぞ」アハハ

絹旗「にゃ、にゃに、な、なな、な、なにをっ!!」カアアァ・・・///

削板「あはははは。初々しいなー」フヒヒ!

香焼「削板、あんまりからかわないでよ」クスッ

削板「だははは! 悪い悪い」フフフ・・・


最愛のイライラゲージが高まっている気がした。
342 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:55:52.78 ID:cMmEngUn0
香焼「そういえばその白ラン……見た事無いんだけど、何処の学校なんすか?」

削板「……学、校?」ポカーン・・・

香焼「……え」タラー・・・

削板「……あは、ははは! ひ、秘密だ!」アハハハ・・・

絹旗「超特注でしょう。あとソイツ多分学校行ってませんよ」サラッ・・・

香焼「え」ピクッ

削板「ちょ、おま、馬鹿! て、適当な事言うな!」アタフタ・・・

絹旗「超図星でしょう? だって超能力者で学校行ってるヤツなんか超稀ですもん」ジー・・・


そうなんだ。じゃあこの人は普段何をしているのだろう。


麦野『誰も分かんないわよね。アイツの動向なんか』ジー・・・

フレンダ『滝壺。アイツいつも何してるかストーキングした事無い訳?』

滝壺『……頻繁に高い所居るのは知ってる。それだけ』ウーン・・・

浜面『まぁ俺もスキルアウト時代から名前は知ってたな。デカい抗争や喧嘩に首突っ込む「火消し屋」みたいな感じだったが』


ただし彼の『普段』についてはまったく耳にしない。


削板「そ、それはアレだ! 街の平和を守る為、日々パトロールを!」フ、フンッ!

絹旗「風紀委員でもないのに?」ジトー・・・

削板「ち、小さい事は気にするな! 余計チンマくなるぞ!」ダアアァッ!!

絹旗「」カチンッ・・・


あ……ヤバい。


絹旗「……何処からも預かって貰えないので超プー太郎生活のくせに。アパートすら貸して貰えないんじゃないですか?」ジトー・・・

削板「な!? お、ま、ぇ……それ、は……」シュン・・・

絹旗「要はする事無いから『俺カッケー!』で高い所に登ってるだけの超馬鹿でしょう」サラッ

香焼「こ、こらっ! 最愛!」アタフタ・・・

削板「……」ズーン・・・

香焼「そ、削板!?」ギョッ!!


急にテンション駄々下がりの根性さん。


削板「いや、うん。分かってる……でもそれ俺の所為じゃなくね? だって好きで詳細不明の能力持った訳じゃないんだしさ……」ボソボソ・・・

絹旗「あーあ」アハハ

香焼「あーあ、じゃないよ! どうすんのさ、これ!」アワワ・・・

削板「最低限の生活は出来るよ? でも……ホントは学校行ってみたいって気も有るし……大人も少しは理解して欲しいんだよ……」ズーン・・・

絹旗「超ネガティブですね。さっきの超熱血根性は何処にいったんでしょうか!」アハハハハ!

香焼「さ、最愛。言い過ぎだよ」ハァ

絹旗「む……そうでしょうか」ポリポリ・・・


猫達に同情されながら体育座りしている超能力者。ふと、座った目で最愛を見遣った。
343 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/12(火) 23:57:53.40 ID:cMmEngUn0
削板「……」チラッ

絹旗「……何ですか?」

削板「オマエ、友達いないだろ」ジトー・・・

絹旗「」チーン・・・

香焼「ちょっ!!?」ギョッ!!


削板さん、それはタブーです。


フレンダ『喧嘩になるぞー……如何する訳よ、リーダー』チラッ

麦野『……知らね』タラー・・・

浜面『ちょ、知らないで済むのか!? 超能力者だぞ!!』アタフタ・・・

滝壺『はまづら、シリアスがギャグで済む超能力者だから大丈夫だよ』コクッ

浜面『そういう問題!?』

麦野『面倒臭ぇ……まぁ最悪ヤバかったら私行くから』ハァ・・・


一方、最愛さんは……


絹旗「……」ズーン・・・

香焼「……さ、最愛?」ダラダラ・・・

絹旗「……いいもん。友達なんていらないもん」ウルウル・・・


ネガティブってた。


削板「ほら見ろ……テメェだって超ネガいじゃねぇか」ボソボソ・・・

絹旗「……友達いないのはオマエもでしょう」ボソボソ・・・

削板「……まぁ……うん」ズーン・・・


喧嘩にならないだけマシだが……困った。


香焼「さ、最愛。自分は友達っすよ」アタフタ・・・

絹旗「……」チラッ

香焼「猫達もいるだろう。落ち込まないで」ホラ!

絹旗「……」ポッ・・・///

猫s『みゃーみゃー』テクテク・・・

絹旗「……うん」コクッ///


こっちは何とか大丈夫。
344 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:00:14.25 ID:qWNsBrfo0
削板「……」ジー・・・

香焼「……」ウ・・・

削板「じー……」ジー・・・

香焼「口で言った……」タラー・・・

削板「……俺はぼっちかぁ」ジー・・・

香焼「う、えっと……」ダラダラ・・・

削板「いいさ……俺は一人で戦い続ける孤高の戦士……」ハァ・・・

絹旗「超酷い中二病ですね。ああ、中二か」サラッ

削板「……」ズーン・・・

香焼「最愛さん! 追い打ち掛けないの!!」ンモー・・・


よくよく考えてみると、彼も最愛と同じなのか。今自身で『孤高』と口にしたが、強ち冗談では無いのかもしれない。
最愛同様、削板の事もよく知らないが……『手』を差し伸べるのは同じ事だろう。


香焼「……削板も、友達っすよ」ポリポリ・・・

削板「……」ピクッ

絹旗「……えー」ジトー・・・

削板「……マジ?」キョトン・・・

絹旗「香焼……本気で言ってるんですか?」ゲェ・・・

香焼「駄目?」

絹旗「駄目っていうか……」ウーン・・・


友達になるのに理由は要らない、それが自分の信条だ。英国の友人達には馬鹿にされるが……そこだけは曲げたくない。


絹旗「……何処で何やってるか分かんない男ですよ?」

香焼「自分は最愛が何処で何をやってるか知らないっすよ。最愛も自分が何処で何やってるか知らないだろう」

絹旗「ん……まぁ……」ポリポリ・・・

香焼「友達が友達の皆まで知ってる必要なんてないんすよ。隠し事、知らない事を許容できないから友人じゃないってのはおかしいっす」

絹旗「……そう、ですね。ごめんなさい」ペコッ


逆に『裏顔』を知っても……ステイルや淡希さんが『殺し』を敢行できる人間だと分かっていても、自分は友人を辞めない。


香焼「……って事っすよ、削板」ニコッ

削板「……お、おぅ」ポリポリ・・・


恥ずかしそうに頬を掻く超能力者。


削板「あ、ありがとな……」コホンッ

香焼「ううん。よろしく、削板」ニコッ

削板「……軍覇でいい。名前で呼べ」ムゥ・・・

香焼「分かった。軍覇」クスッ


余計赤くなった。そんなに恥ずかしいのだろうか。
345 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:03:13.33 ID:qWNsBrfo0
絹旗「おお。超能力者が超照れてます」クスクス・・・

削板「う、五月蠅ぇな……面と向かって友人なんて言われた事無ぇんだよ」ムゥ・・・


・・・・・。


削板「な、何だよ……」ウ・・・

香焼・絹旗「「……」」ニヤニヤ・・・

削板「む、無言でニヤニヤすんなっ!!」ガアアァッ///

絹旗「いやぁ……これが超能力者第7位って思うと、ねぇ」ニヤニヤ

削板「てめ……最愛だって香焼に友達って言われて赤くなってただろぉがっ!!」ジトー・・・

絹旗「なっ!! そ、それは香焼がシラフで超臭いセリフ吐くから熱くなっただけです!!」カアアァ・・・///

削板「じゃあ俺も同じだ!!」フンッ


あーうん。自分の所為ですよー。


滝壺『きぬはた……友達増えて良かったね』ニコッ

フレンダ『え、結局アイツも友達扱いな訳?』タラー・・・

麦野『滝壺にとっては友達の友達だから友達理論なんじゃない?』アハハ・・・

浜面『しかしあの坊主……』ウーン・・・


いつかのウニ頭みたいな雰囲気だな、と思ってしまった。
結局その後……猫に絡んだり、最愛と軍覇が楽しそうに喧嘩しそうになったり、それを止めたりで日が暮れていった……―――





 ―――とある休日、PM05:50、学園都市第7学区、とある公園・・・・・





―――風紀委員と警備員が下校指導を始めた時間帯。他の学生達が我が家へ帰って行く中、自分達も解散する事にした。
最愛が猫達に雑木林の方へ戻る様指示を出す。いつもの黒猫だけが此処に残った。


削板「そいつは?」

香焼「飼い主探し中なんすよ。そうだ、軍覇飼える?」

絹旗「超宿無し男にその子を任せられません」キッパリ

削板「うぐぐ……言い返せない」ハァ・・・

香焼「あはは……」タラー・・・


やれやれ。


絹旗「あ、そうだ。香焼、猫缶を置いて行っても良いですか?」

香焼「え、うん……」


本当は、宜しくない。

ソイツらはあくまで『野良』だ。放し飼いされているならまだしも、野生の動物に餌を与えるのは本来褒められた行為ではない。
加え懸念も有る。もし環境整備(保健所)員がコイツらを見つけた際に、殺処分する可能性だってあるのだ。
しかしその事実を、最愛には告げれないでいる。それを知ったら彼女は……
346 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:05:27.80 ID:qWNsBrfo0
削板「ふむ……俺はそろそろ行く。この時間になると俺の助けを必要とする者共が増えるからな!」ハハハ!

絹旗「精々警備員に迷惑掛けない様にするんですね」ハハッ

削板「喧しい。それじゃあ……おっと」ピタッ

香焼「どうしたの?」


ポケットをごそごそ探る軍覇。取り出したのは……旧世代型の携帯。


削板「香焼。連絡先教えろ」ホレッ

香焼「え」

削板「携帯持ってないのか?」ン?


いや、予想外というか何というか。


絹旗「交換したくないそうです」キッパリ

削板「……マジ?」ズーン・・・

香焼「いやいやいや! さ、最愛……」タラー・・・

絹旗「ジョークですよ。超ジョーク」ハハハ

香焼「もぅ……IC使えないんすね。赤外線で良いかな」スッ・・・

削板「おお。有るぞ!」Pi!


まさかの超能力者の電話番号、アドレスをゲットしてしまった。


削板「ふふふふふ……良かったな、香焼。何かあった時は俺を呼べる」ニカッ

絹旗「寧ろ削板が香焼を頼りそうですけどね。宿無し飯無しだから超助けてくれーって」クスクス・・・

削板「最愛……オマエとはいつかケリをつけてやる」ギロッ・・・

絹旗「むっ。超望む所です! ボッコボコのけちょんけちょんにしてやりますよ!」ジトー・・・

香焼「ふ、二人とも……喧嘩しないの」ハァ・・・


軍覇の所為か、バチバチと目に見える火花が散っている。
最愛が普通に話せるのは助かるが、血の気の多い友人が増えてしまったようだ。


削板「まったくよぉ……香焼に免じて許してやる」ケッ!

絹旗「ふんっ。それは超こっちのセリフですよ」チッ!

香焼「はぁ……」ポリポリ・・・

削板「とりあえず、またな香焼! ……ついでに最愛も」タッ!

香焼「うん。またね」バイバーイ

絹旗「人様に迷惑掛けるんじゃないですよー」バーイ


脅威の跳躍力で颯爽と消え去る軍覇。流石超能力者だ。
それからヒョウキンな相手とはいえ第7位に啖呵を切る最愛の度胸も凄い。
347 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:07:38.56 ID:qWNsBrfo0
絹旗「……超喧しいヤツです」フゥ・・・

香焼「そう? 言う割には最愛も楽しそうだったけど」クスッ

絹旗「誰があんなのを……はっ!」ギョッ!!

香焼「どうしたの?」

絹旗「まさかアイツ……香焼に……『根性アフター』なんて私が許しませんよ!」アッー!!


突如意味不明な事を口走る最愛。大丈夫だろうか……頭。


浜面『おい、誰の所為だ。麦野か?』チラッ

麦野『知らん。フレンダじゃね?』チラッ

フレンダ『オチは結局滝壺って訳ね』チラッ

滝壺『……ふふふ』ニヤッ


自重して下さい滝壺さん。あの子はまだピュアに戻れるんです。さておき……


麦野『とりあえず、絹旗対人講座は終わりよ』フゥ・・・

浜面『そういや、そんな設定だったな』ア・・・

滝壺『あくまで空想です。うん、空想』シレット・・・


結局、3つ。

①極力相手と絡まない。野生動物の様に常に警戒状態。
②動物や赤ん坊の様な『慾』の無い純粋な生き物に対しては心を開く。
③敵とあらば、日常であっても『仕事』に近い冷酷状態。

但し例外もチラホラ。あの少年や第7位の様に……


麦野『さてさーてぇ……ではこれから夜の公園で絹旗と坊やがムフフフフを……』ニヤッ・・・

フレンダ『録画録画!』●REC

浜面『……おい、空想だろ?』タラー・・・

滝壺『覗き見は無粋なので、此処で切りまーす』ポチッ

麦野・フレンダ『『あーちょっ! 待っ|||||||||・・・・・..  プツンッ


講座終了。


香焼「それじゃあ、自分達もそろそろ帰ろうか……最愛今日は迎え来るの?」

絹旗「いえ、歩いて帰りますよ」

香焼「そっか……」


歩いて帰る……帰る……ふと、疑問。


   何処に?


別に彼女の家を知りたいのではない。彼女の『在り処』が気になる。少年は、少々カマを掛けてみる事にした。
348 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:10:32.83 ID:qWNsBrfo0
香焼「……最愛の家は近いんすか?」

絹旗「え? な、何で?」ドキッ・・・

香焼「いや、何となく気になってさ」ポリポリ・・・

絹旗「れ、レディの住所を聞くなんて超変態さんですよ」ジトー・・・///

香焼「あはは。レディねぇ」クスッ

絹旗「む、むぅ……超失礼なヤツですね」ムスゥ・・・

香焼「ごめんごめん」アハハ・・・


自分の方からネタを溢す。


香焼「……自分の家はアッチなんすよ」チラッ

絹旗「え」キョトン・・・

香焼「第1学区。学校在る方。前にも言ったろ? 学校(理事会)指定の部屋だって」ニコッ

絹旗「な、え……そんな事教えられても……」タジタジ・・・///

香焼「友達だからね。このくらい教えても良いかなって」フフッ


何故真っ赤になっているのかは知らないが、話の種は撒いた。


絹旗「むぅ……私は……色々ですよ」ハァ

香焼「色々?」ピクッ

絹旗「一応アパートは有るんですけど、基本的にリーダ……えっと姉分の所に厄介なっています」コクッ


前に言っていた親しい人々の下か。


香焼「そうなんだ。お金持ちのお姉さんだっけ?」

絹旗「ええ。超金持ち過ぎて金銭感覚狂ってます。第3学区でプライベートプール貸し切る程ですよ」ハァ

香焼「へ、へぇ……」タラー・・・


それは凄い。女教皇様級の金持ちだ。


香焼「じゃあそこに帰るんすか」ヘェ・・・

絹旗「今日は第7学区内の都市立ホテルです。あの『窓のないビル』に超近いとこ」スッ・・・

香焼「……やっぱり随分リッチなんすね」アハハ・・・

絹旗「まぁ超贅沢させて貰ってる身分なので言い難いんですけど……もうちょっと普通の宿で良いですよね」アハハ・・・


都市立ホテルといえば、自分のマンションと同じレベルの高性能ルーム。
理事会議や何かしらの定例会で集まった要人しか泊まれない。ステイルや女教皇様もよくあそこを借宿としている。


香焼「そ、そっか……羨ましいね」タラー・・・

絹旗「香焼だって良い家住んでるって言ってませんでした? 理事会の予算で建てられたマンションだか」

香焼「あーうん……馬鹿共が居座んなければ完璧」ボソッ・・・

絹旗「え?」キョトン・・・

香焼「い、いや、何でも無いっす」アハハ・・・


出来れば五和と浦上の話はしたくない。
349 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:12:37.08 ID:qWNsBrfo0
香焼「うん、とりあえず分かったっす」ニコッ

絹旗「ん? 変なの……」ポカーン・・・

香焼「あはは、そうだね。変な事聞いてごめん」ポリポリ・・・


もう少し、深入りしよう。


香焼「……はぁ。帰ったらレポートかぁ。面倒臭いよ」ハハハ・・・

絹旗「うわぁ。超考えたくないですね、政治学校のレポート課題とか」ウヘェ・・・

香焼「最愛だって提出する課題は有るんでしょ? やらなくていいんすか?」チラッ

絹旗「今月分は済ませてありますよ。レポートっていうより……んー、ちょっとややこしいヤツなんですけどね」アハハ・・・

香焼「ややこしい? 霧ヶ丘特有の?」ジー・・・

絹旗「まぁそんな感じです。報告『書』っていうよりも『実績』が研究所に行くので」コクッ

香焼「へぇ……能力開発って様々だからね。ペーパーじゃなくても良いんだ」

絹旗「この最愛ちゃんは超エリートなので『仕事』をこなせばレポート代わりの単位になるんですよー!」エッヘンッ!


仕事……単位。まさか……自分と似た境遇?


香焼(……考え過ぎか)ウーン・・・

絹旗「香焼? 如何しました、難しい顔して?」ジー・・・

香焼「え、あ、いや。ちょっとね……」ポリポリ・・・

絹旗「……本当に?」

香焼「え?」

絹旗「さっきからそんな感じですよ」ジー・・・


いけない……遠回しに探っている事が勘付かれてしまう。


香焼「ははは。大丈夫っす。ちょっとお腹空いちゃってさ」ポリポリ・・・

絹旗「あはは。なーんだ」クスッ

香焼「帰ったらご飯作らないとなぁ……最愛は……自炊なんかしないか」ハハハ

絹旗「な、で、出来ますよ! 超料理人なんですから!」アタフタ・・・

香焼「ふふっ。じゃあ今度何か作って持ってきてね」クスッ

絹旗「ちょ、超余裕ですよ!?」タラー・・・


何故に疑問形なのだ。さておき兎角、最後の演技。


香焼「今日は……帰って仕事?」ボソッ

絹旗「いえ、無いですよ。超緊急が入らなければ」

香焼「へぇ。じゃあ帰って何するの?」

絹旗「……やっぱり超変態さんですか?」ジトー・・・///

香焼「あ、えっと、教えたくないなら良いんすよ」ポリポリ・・・

絹旗「……パソコン弄って、ゲームして、映画見て寝ます」ボソッ

香焼「駄目人間?」ジトー・・・

絹旗「やる事無いから仕方ないでしょう。仕事無いと暇なんです!」ンモー・・・


また『仕事』……突っ込むべきか、止まるべきか。自分が悩んでいる隙に最愛が口を挟んできた。
350 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:14:55.51 ID:qWNsBrfo0
絹旗「それより、私も質問良いですか?」チラッ

香焼「え、うん。何?」キョトン・・・

絹旗「……何で、無能力者って超嘘ついたんですか?」ジトー・・・

香焼「……」ピクッ・・・

絹旗「いえ、もしかしたら無能力者なのかもしれませんが、それでも『無能』では無いでしょう」ジー・・・

香焼「えっと……言う必要無かったと思って」ポリポリ・・・


実際、魔術や能力なんていう『力』は無闇に見せびらかしたり行使したりするものではない。


絹旗「……手品(マジック)でしたっけ? さっきの」

香焼「うん……『マジック』っすよ」コクッ


尤も『魔術(マジック)』だが、絶対に教えられない。


絹旗「もう一回見たいです」サラッ

香焼「……それは興味?」

絹旗「いけませんか?」

香焼「……じゃあ自分が最愛の能力見せてって言ったら見せてくれる?」

絹旗「……」ムゥ・・・


そういう事だ。


絹旗「……いいよ」ボソッ

香焼「………………………………………………………………は?」ポカーン・・・

絹旗「見せます」ジー・・・


予想外。


香焼「え、えっと……無闇やたらに能力を……」アタフタ・・・

絹旗「香焼」サラッ

香焼「……はい」

絹旗「さっきから言おうか超迷ってたんですが……はっきり言わせて貰います」ジー・・・

香焼「な、何?」ピクッ・・・

絹旗「やる事の割には超理屈っぽい」キリッ・・・

香焼「……」


最愛の言い分。
香焼の行動――自分や異端者である削板に対し常人と同じ様に接してくれる付き合い方。赤の他人に対する優しさ甘さ――は好ましいと思える。
しかしその逆、口にすることや表情はいつも回りくどくはっきりしない。言い方を変えれば屁理屈がましいのだ。
351 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:20:14.67 ID:qWNsBrfo0
絹旗「正直に超嬉しいんですよ。私なんかと仲良くしてくれるのは」ニコッ・・・

香焼「最愛……」

絹旗「でもね……偶に詮索やら遠回しな言い方やらされると……超ショックなんです」


上っ面なだけな気がして、本当は信用信頼されてないんだなぁ……そう思ってしまう。
要は腹を割って話をしてくれていないのだ。全て顔色を伺うかのように探り探り。

もしこれが普通の人間同士であれば、好きな子に対してあれこれ聞きたいという捉え方も出来ただろう。
だが二人は……『普通』ではなかった。


絹旗「私は素直に香焼の『マジック』ってのが気になったから聞いたんです。只、純粋に」

香焼「……」ムゥ・・・

絹旗「それを『だったら君は見せれるの?』なんて勘繰りで返されると……ショックなんですよ」ハァ・・・

香焼「……ごめん」シュン・・・


気になるのであれば香焼も素直に聞いて欲しい。勘繰りでは無く要望で『教えて』と言って欲しいのだ。


絹旗「もういいです。私も子供みたいに詮索し過ぎました」スタッ・・・

香焼「最愛……その、ね――」


絹旗「香焼……私を殴ってみてください」ボソッ


香焼「――え」


いきなり何を言う。


絹旗「何なら蹴っても良いですし石をぶつけても良い。銃で撃っても良いし、刃物で刺しても良い」ジー・・・

香焼「ば、馬鹿な事言わないでよ!」ギョッ・・・

絹旗「私の能力を見せるって言ったでしょう? 超平気ですから遠慮無くどうぞ」サラッ

香焼「……口で説明するんじゃ駄目なの? 態々暴力的な事は」タラー・・・

絹旗「言っても分からないでしょう? それに能力は見せるけど能力名・詳細まで教える気は超無いですから」ジー・・・


どうせ香焼は『マジック』とやらを隠しに隠すのだ。絹旗からすればかなりの譲渡。


香焼「さ、最愛を殴るくらいなら知らないで良いよ!」フイッ・・・

絹旗「っ……じゃあ私が殴りますよ」グッ・・・

香焼「っ!!」ドキッ!

絹旗「私の能力は攻撃だろうが防御だろうが同じ『性質』です。甲冑(アーマー)みたいなものですから応用は効きます」ジー・・・


『籠手』で殴るという意味だ。
その『性質』については話せない。だが、これだけは教えておく。


絹旗「その気になれば、簡単に人だって殺せるんです。その気に『ならなくても』自動的にRPG-7程度なら防げるんです」ギリッ・・・

香焼「……わ、分かった」コクッ

絹旗「じゃあ私を――」


香焼「殴って」ジー・・・


絹旗「―――……」イラッ・・・


その優しさが……腹立たしい。
352 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:25:45.41 ID:qWNsBrfo0
絹旗「まさか香焼が超マゾだとは思いませんでしたよ」グッ・・・

香焼「最愛に手を上げるくらいならマゾだろうが変態だろうが何でもいいよ」


今の一言で吹っ切れた。もう遠慮しない。


絹旗「ッ……さっきの超マジックの硬さと形状は?」イライラ・・・ジトー・・・

香焼「え?」ポカーン・・・

絹旗「硬さと形状です。バリアタイプですか? それとも壁? 念動力? ピンポイントなAIMジャマー?」

香焼「な、何で」タラー・・・

絹旗「言ったでしょう? 殺せるって……超絶対にマジック使って下さいよ。じゃないと最悪……死にますから」ボソッ


鬱憤晴らしも兼ね、無理矢理にでも引き出させる。


香焼「ちょ、ちょっと待ってよ!」アタフタ・・・

絹旗「命乞いですか? 私は何言われてもやりますよ? 尤も超手加減はしますからさっきのマジックを出せば怪我はしない筈です」ジトー・・・

香焼「おかしいっす! どうしてそこまで……」ゴクッ・・・

絹旗「……自分でも分かりません」クスッ・・・


普通なら見せない。もしこの事実が麦野にばれたら間違いなく折檻だ。しかしそれでも……信じたかった。自分を友達と言ってくれる、彼を。
それは不器用な少女の精一杯の行動。可愛い殺人鬼の歪んだ友情確認。

絹旗は無言で踵を翻し、数歩前に進む。そして今一度香焼の方に振り返り、静かに告げた。


絹旗「2割3割で行きます」ボソッ・・・

香焼「最愛っ!」ギリッ!

絹旗「大体さっきチンピラが出した火球と同じくらいの距離から打ん殴ります。早めにマジック出して下さいね」ザッ・・・

香焼「っ……」グッ・・・

絹旗「もし、その後反撃する余裕があるならどうぞ。私に攻撃が効かないっていうのも証明出来る筈ですから」グググ・・・

ぬこ「みー」スッ・・・

絹旗「……その子を守る為にも、マジック出して下さい」ギロッ・・・

香焼「……馬鹿だよ、最愛」ゴクリ・・・


言われなくても分かっている。何故こんな超荒っぽい手段でしか友情を確かめられないのか……絹旗は心中嘆いた。
353 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:34:48.22 ID:qWNsBrfo0
絹旗「じゃあ……行きますっ――」タッ!


香焼に向かって駆けた。距離にして凡そ17mからのスタート。
走り恰好は普通の少女。


香焼(……本気か?)タラー・・・


香焼はまだ戸惑う。躊躇う。
距離残り9m程。少女は右拳を握り緊め適当に引き手を取った。


香焼(まるで型が無い、けど……)グッ・・・


残り7m。未だ鋼糸を展開しない。
少女はタンッと地面を蹴り、幅跳びとも高跳びとも取れる要領で宙に浮く。
まるで喧嘩素人の子供が力任せに飛び掛かって打ん殴ろうとするが如くだ。


絹旗「―――ッ!! いい加減、マジック……出してますよねっ!!?」グンッ――

ぬこ「にゃっ!!」ビクッ!

香焼「っ!!」ドキッ!!


いつの間にか残り4m。既に拳は香焼へ向けて我武者羅に振われている。
香焼は腹を決め結界を展開。強度は弱めに設定。絹旗が結界を殴っても手を傷めない様にと……甘い考え故だ。

本当に、甘い。


絹旗「―――ふッッ―――」――ブォンッ!!


拳から約2m程の球状で窒素グローブを形成。その先っぽに『何か』が触れた感触。しかし……




  ガギッ―――




絹旗「っ!!」ギョッ!!

香焼(ぇ……やばっ!!?)


嫌な音がした。何かが軋む音。




   ―――バキンッ!!




結界がいとも容易く『ぐわん』と凹み……弾かれた。
354 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:40:07.40 ID:qWNsBrfo0
香焼「ぐっ……ガ、ぁっ……」ドンッ!!

絹旗「ッ……こ、ゃぎ……」ア・・・

ぬこ「みゃっ!!」ピョンッ・・・


ボールの様に吹っ飛ぶ一人と一匹。猫は器用に着地。香焼は……


香焼「ぃ……づッ……」ゴロゴロ・・・ドサッ・・・


10m近く吹っ飛んで、ブロックタイルの上に倒れた。


絹旗「ぁ……う、そ……」タラー・・・


自分が加減を間違った? それとも香焼の方にミスが?
兎にも角にもこれは超拙いと、急いで香焼の方へ駆け寄った。


絹旗「こ、香焼っ!!」バッ!!

香焼「……痛ぃ」グデン・・・


頭を抱えて様子を見る……血は出てない。何処か折れてたり捻ってたりもしていない様だ。


絹旗「大丈夫、ですか……」アタフタ・・・

香焼「ぁははは……ホントに、強いんすね……」イヅヅ・・・

絹旗「良かった……話せますね」ホッ・・・

香焼「うん……でも、全身痛いや。(アニーの『蓮の杖(座標攻撃)』直撃並にキツい……)」アハハ・・・

絹旗「……ごめんなさい」シュン・・・


涙目で謝る絹旗。しかし謝る必要は無いよと香焼は首を振った。


香焼「自分が、加減ミスったんす。最愛の言葉を信じなかったから……自業自得っすね」ゴホゴホッ・・・

絹旗「……でも」ウルウル・・・

香焼「大丈夫。怪我してないみたいだしさ」ニコッ・・・

絹旗「ごめっ……っ……なさ、ぃ……」ポロポロ・・・

香焼「泣かないで……謝るのは自分っす。ごめん」スッ・・・

絹旗「馬鹿……違います、ょ……ううぅ……」ポロポロ・・・

ぬこ「……なー」テクテク・・・


香焼からしてみれば嘗めてかかった。驕った。甘かった。
絹旗からしてみれば調子に乗った。冷静さを欠いた。我儘過ぎた。

大粒の涙を溢す絹旗の頬に手を当てる。泣かせてしまった……傷つけまいと思ったのに、傷心させてしまった。
ドチラの所為ではない。互いに浅はかだった。疑ってしまった。信じ切れなかったのだ。


香焼「最愛……」ボソッ・・・

絹旗「っ……はぃ」ポロポロ・・・

香焼「……えい」プニッ

絹旗「ひ、ぁっ!?」ドキッ!!


泣き止まない絹旗の頬を優しく抓む。
355 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:44:10.10 ID:qWNsBrfo0
香焼「ふふっ……マジック」ニコッ・・・

絹旗「え」グスンッ・・・

香焼「防御、出来なかったでしょ?」クスッ・・・

絹旗「……超馬鹿っ」グズッ・・・クスッ・・・

香焼「うん……笑ってる最愛の方が好きだよ」ニコッ

絹旗「な、ぅ……っ!!」カアアァ・・・///


この甘ちゃんは、こんな時にまで……


香焼「……もう立てるから大丈夫だよ」グッ・・・

絹旗「す、少し安静にしてないと……」アタフタ・・・

香焼「さっきの音で人が来たら、この恰好じゃ怪しまれるだろ? ……せめてベンチ座ろう」フゥ・・・

絹旗「分かりました……肩貸します」ヨイショッ・・・


二人は再びベンチへ戻った。





 ―――とある休日、PM06:15、学園都市第7学区、とある公園・・・・・





暫時無言。如何切り出して良いか分からない。


香焼・絹旗「「……」」


『ごめんなさい』以外の言葉が浮かばない。かといって、謝れば互いに苦しくなる一方だ。
香焼は絹旗の『腹を割って』という言葉を思い出す。こうなったら思い切って……


絹旗「……あのね」ボソッ・・・

香焼「ん」ピクッ


口火を切ったのは絹旗だった。


絹旗「如何しても……能力の詳細と『仕事』については、教えられないんです」シュン・・・

香焼「あ、うん……」

絹旗「他の事だったら極力教えます」ペコッ


自分の遠回しな遣り取りから察しがついたのだろう。
絹旗は申し訳なさそうな顔をする。しかしプライベートに付け入ろうとした香焼が悪いのだ。

では、と香焼も同じ対応。


香焼「自分も『マジック』についての詳細は教えられないんす」

絹旗「うん……もう十分です」コクッ


本当は学園都市に潜入している異端者だという隠し事も有るが、これこそばらせない。
これが知れたら多分……二度とこの街の敷居は跨げなくなる。
356 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 00:53:50.73 ID:qWNsBrfo0
絹旗「見せる分には問題無いんですよ。というか自動(オート)で発動する能力なので、仕方ないというか」ポリポリ・・・

香焼「さっきのヤツ?」

絹旗「はい……今度は殴れなんて言いませんから、掌押して見て下さい」スッ・・・

香焼「……」スッ・・・


手を合わせる様に……


香焼「……ん?」ピタッ・・・

絹旗「分かりましたか?」

香焼「……変な感覚」グニグニ・・・


絹旗の掌に触れられない。何か布の様な、水の様な、風の様な……目には見えない奇妙な感触のモノに触っている感覚。


絹旗「今は意識して能力を出してるので甲冑に触れられるんです。勿論……解除も出来ます」パッ

香焼「わっ」ピタッ


掌が合わさる。


香焼・絹旗「「あ……」」パッ!


分かり切ってた事だが、恥ずかしい。


絹旗「ご、ごめんなさいっ」カアアァ・・・///

香焼「う、ううん。気にしないよ」カアアァ・・・///

ぬこ「にゃーん」フシフシ

絹旗「え、えっと……とりあえずこの『甲冑』みたいなのを自在に操れるんです」モジモジ・・・///

香焼「へ、へぇ。便利っすね」アハハ・・・///

絹旗「はい……それから非常時……思い掛けない事故や攻撃なんかも自動で対応してくれます」


それが学園都市超能力者第1位―――・一方通行(アクセラレータ)の演算パターンを参考にした能力……窒素装甲である。
標準(デフォルト)状態で突如の反射は出来ないが、防御は可能だ。対戦車グレネードでも耐えられる。

さておき……彼女は此処まで見せてくれた。香焼は心中で己の頬を叩き、腹を決める。


香焼「自分のマジックは……色々応用が効くんだ」スッ・・・


都市の人間に説明しても理解し得ない力。
香焼は魔力を錬り、ステイルに教えて貰った簡易ルーン魔術を行使してみせた。まずは分かり易い『着火』。
能力者の強度でいえば低能力(レベル1)程度。精々不良神父の煙草に火を点けるくらいの役にしかたたない。


絹旗「え、見せてくれるんですか……っ!!? 火!?」ビクッ!


絹旗から見れば掌から火が出た様に見えるだけ。発火能力者(パイロキネシスト)であれば良く目にする光景だ。
しかしそれだけでは終わらない。次に小石を拾い『浮遊』の魔術を掛けてみせた。これは魔術の初歩の初歩。


絹旗「さ、念動力(サイコキネシス)!?」ポカーン・・・


二つ目の能力。この街から出た事の無い絹旗からしてみれば有り得ない『現実』。
そして最後に、空き缶を放り……2番鋼糸を用いて切断。謂わば『七閃もどき』だ。


絹旗「え、風力切断(エアカッター)……」キョトン・・・


全てが意味不明。多重能力者(デュアルスキル)は理論上不可能である筈なのに、今香焼は目の前でそれに似た様な事を遣って退けた。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/13(水) 00:58:42.83 ID:J2Gl+WmDO
>>356
こういう初々しいというか甘酸っぱい若い子のやり取り見てると、おいちゃん‥‥フヒヒ! ってなるよ。
358 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:02:00.68 ID:qWNsBrfo0
驚愕。開いた口が塞がらない。
香焼はそんな絹旗の顔に苦笑し、静かに鋼糸を袖口に仕舞った。


香焼「……他にも色々有るんだけど簡単なのはこれくらいかな。(後は自分の身体に掛ける『強化』タイプだしね)」ハハハ・・・

絹旗「……………………………………………………」ポカーン・・・

香焼「最愛……大丈夫?」ポリポリ・・・

絹旗「……ぇ、あ……はい」カクカク・・・


確かに驚くのは仕方が無い。自分だって初めて魔術を見た時は目を丸くしたものだ。
絹旗の場合は初めてに加え、都市の常識から外れたその現象を目の当たりにした。そりゃド肝を抜かすに決まってる。


絹旗「でゅ、でゅあ、多重(デュアル)……能力……」アタフタ・・・

香焼「あはは。違う違う」クスクス

絹旗「じゃ、じゃあ一体……」タラー・・・

香焼「だから『マジック』だって。まだまだ下手っぴだけどさ」ニコッ


無論、種も仕掛けも『有る』手品。

才能の無い人間が、それでも才能ある人間と対等になる為の技術……それが魔術だ。
特に天草式の魔術は応用次第で様々な事が出来る。
尤も香焼程度の実力じゃ出来る事も限られてくるのだが、そこは他の点でカバー。


香焼「自分の友人や先輩、師匠の様な人達はもっともっと凄いっす」ポリポリ・・・

絹旗「……し、信じられない」

香焼「まぁ最愛が能力開発で努力したように、マジックの努力をした……とはちょっと違うかな。自分、才能無いからね」アハハ

絹旗「う、ううん! 超凄いです! 超奇術です!!」キラキラ・・・


無理矢理開発された人殺しの道具でしかない大能力とは違い、香焼はこんなにも魅力溢れる技能を持っている。絹旗は素直に憧れた。


絹旗「私にも何か出来ないんですか!? マジックってヤツ!!」キラキラ・・・

香焼「え……無理」キッパリ

絹旗「ちょ、超はっきり言いますね……」ガクッ

香焼「申し訳無いんだけど教えてって言われても教えられない。脅されても、殺されても、教える事は出来ないっす」コクッ

絹旗「そ、そこまで言われると……超気になります」タラー・・・

香焼「ごめんね。最愛にマジックの才能が無い訳じゃないんすよ。努力すれば誰でも出来る様にはなるんだ」

絹旗「なら……」

香焼「えっと……これを覚える為『だけ』に今の能力を捨てて、更に死ぬ覚悟が有るんなら教えられるよ」

絹旗「そ、それは……」ウーン・・・

香焼「……最愛には素敵な能力が有るんだ。捨てる必要は無いんすよ」ニコッ


これだけはハッキリ言っておかなければならない。道化を演じてでも警告せねばならない。
能力者に魔術は使えないのだ。『猛毒』故に、使えば最悪襤褸(ジャンク)になる。
359 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:09:52.92 ID:qWNsBrfo0
絹旗「でも、そのマジックを売り物にしたらテレビなんかでも超引っ張りダコですよ!」

香焼「見せモノじゃないっすよ……言ったろ? 無闇やたらに己の力を見せてはいけないって」

絹旗「……うん」コクッ

香焼「『いざ』って時だけなんだ。能力だろうがマジックだろうが」

絹旗「私はいつだって自動(オート)ですよ」

香焼「……屁理屈だ」コツンッ

絹旗「てへっ」クスッ


それは誰かを守る時。それは己の信念を貫く時。それは誰かに救いの手を差し伸べる時。


香焼「とりあえず以上っすよ」ニコッ

絹旗「ありがと……やっぱり、香焼は優しいですね」クスッ

香焼「そんな事無いよ……買い被り過ぎ」ポリポリ・・・


誰もが言う。優し過ぎる、甘過ぎると。しかし……それ以上に残酷だと自負している。


香焼「優しいって言われるの……嫌なんだ」

絹旗「え? 超良い事じゃないですか」キョトン・・・

香焼「英国の友人の言葉なんだけど……」



            ―――君は、人殺しと仲良しごっこしてるだけだ―――


             ―――同じ立場に立つ勇気も無いのだろう?―――


        ―――その優しさは両刃ナイフだよ……己も、共も巻き込んで殺す―――


 ―――戦場でもし僕に、アニェーゼに、サーシャに、レッサーに、甘えが出て致命傷となったら……―――


               ―――その時は……君の所為だね―――


 ―――君は『英雄』なんかじゃないぞ? 勘違いするなよ……『あの男』にすらなれなれやしないさ―――


            ―――ディック・グレイソン気取りの香焼くん―――



香焼「『誰にでも、どんなヤツにでも甘過ぎて、コッチまで甘くなるから危険』だって……」グッ・・・


言葉を誤魔化した。殺しだなんて伝えられない。
360 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:17:10.81 ID:qWNsBrfo0
残酷な者に対して『誘惑(残酷)』……それが優しさ甘さ。一度味を知れば止められなくなる『麻薬(温もり)』。


絹旗「ふーん……そんなヤツと何で友達なんですか? 超酷いヤツでしょう」ムゥ・・・

香焼「人間って色んな『部分』を持ってるでしょ。ソイツはそういう冷酷な部分も有れば、それ以上に頼りになる部分も有るんすよ」ニコッ・・・

絹旗「……」ピクッ


そう信じている。だからこそ友達なのだ。


香焼「人を見た目で判断しちゃいけない様に……内面だけで、判断しようとしちゃいけないんじゃないかなぁって」ボソッ・・・

絹旗「……そんな理屈、聞いた事ありません」ジー・・・

香焼「例えば……例えばだけどね……」ギリッ・・・


『実は○○』『昔は●●』という言葉。あたかもこれだけが全ての様に人を判断するのは間違いだ。『普段』『日常』と合わせての人だろう。
国・身分・思想が違おうが、前科者だろうが、汚れ仕事をしてようが――例え本人が『断ろうが』――それでもステイル達は友達だ。


絹旗「……」グッ・・・

香焼「……最愛は自分の事理屈っぽいって言ったけど、そこだけは理屈じゃないんだ」


友情だけは、理屈じゃない。


絹旗「成程……英国の友人さんの気持ちが分かりました」

香焼「え」キョトン・・・

絹旗「……優しさで人を殺せる者がいるとしたら、香焼みたいな人間でしょうね」ニコッ・・・

香焼「如何いう……意味」ピクッ

絹旗「超まんまですよ」サラッ


そして絹旗は告げる。


絹旗「ねぇ、もし……私が……殺し屋だったら如何します?」ニコッ


思考が止まった。


香焼「………………………………………………………………な、ぇ?」

絹旗「私が殺し屋でも、さっきと同じ事言えますか?」ニコッ

香焼「っ……」

絹旗「……薬の売人でも同じ事言えますか?」

香焼「さ、最愛?」

絹旗「マッドサイエンティストでも同じ事言えますか?」

香焼「や、め……ろ」

絹旗「娼婦でも――」

香焼「止めろよっ!!」ガッ!!

絹旗「――っ」ビクッ・・・


咄嗟に腕を掴んでしまった……正確には、目に見えない装甲を掴んだ。いきなりの事で自動的に展開されたのだろう。
361 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:20:33.88 ID:qWNsBrfo0
香焼「……止めてよ」ボソッ・・・

絹旗「……ごめん。冗談が過ぎました」


少女は後悔した。


絹旗「あ……あはは、超必死になっちゃって! 軽いジョークですよ。超シリアスな顔してたので冗談を」ハハハ・・・

香焼「冗談でも……言って良い事悪い事……あるよ」グッ・・・

絹旗「……すいません」シュン・・・

香焼「……もう、言わないで」


再び、無言。

絹旗は分かってしまった。英国の友人とやらの話しの通り、この少年は残酷なのだ。
温もりなんて生易しいモノではない。悪党にとって超『猛毒』でしかない。
もしかして自分が日の下に居るのではと錯覚してしまう程、危うい存在なのだ。

香焼は抱かないと決めた筈の疑念が確固となってしまった。少女の嘘がそれを強固とさせたのだ。
殺人、犯罪、狂気、淫行……普通の少女が口にする言葉ではない。
もしかして自分と同じ、いやそれ以上の深い闇を孕む程、危うい事をしているのではないか。


ぬこ「なーぅ」トコトコ・・・


香焼がすべきは追求。絹旗がすべきは回避……如何にかしなければいけない。


香焼・絹旗「「あの」」ピタッ


被った。


香焼「……どうぞ」タラー・・・

絹旗「……どうぞどうぞ」タラー・・・


気拙い。


香焼「じゃあ自分から……いつか、教えてくれる?」

絹旗「……超無理」クスッ・・・

香焼「まだ何をとは言ってないっすよ」タラー・・・

絹旗「『仕事』の事でしょう? 顔に超書いてあります」

香焼「……」ムゥ・・・


そんな日が来るとは、到底思えない。


絹旗「じゃあ私ですね……次、いつ会えますか?」ニコッ

香焼「え」キョトン・・・


まるで予想外の質問。何か重い話が来ると身構えていたのに。


絹旗「予定、開けられないの?」ジー・・・

香焼「え、いや……大丈夫だよ。追々でいい? メールで連絡する」ニコッ

絹旗「うん、分かりました」チラッ


そして時計を気にする素振り。時刻は6時半を回ろうとしていた。
362 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:23:15.97 ID:qWNsBrfo0
互いに心理戦だった。
此処であからさまに香焼を拒絶する様な態度を取ったら、必ず喰らい付いて来る。殴っても蹴っても離してくれないだろう。
だったらいっそ次また会えるという安心感を持たせればいい。一時ではあるが、その手は緩む筈だ。

無論深層には……また会いたいという純粋な気持ちもある。


絹旗(超感謝してるんです。超楽しいし、超待ち遠しい)


出来る事ならずっと一緒に居たい。だがその想いが強くなる程……猛毒が沁みてくる。
彼が私を『地獄の底から引き釣り上げてくれる英雄』であったらどれだけ嬉しい事か……そう『幻想』を抱いてしまう。

 しかし不可能だ。

依り処であり、枷である暗部(アイテム)。
もし香焼がその事を知ったら間違いなく首を突っ込んでくるだろう。そしたら……一番恐れている事が起こる。


絹旗(香焼が……麦野に殺されてしまいます)グッ・・・


それだけは、避けなければいけない。


絹旗「名残惜しいですが……帰りましょう。もう暗くなってきました。これ以上は補導されちゃいます」ニコッ・・・

香焼「うん……そうだね」コクッ

ぬこ「みゃー」ヒョイッ


猫が定位置――香焼の肩の上――に登る。


香焼「今日は何か……しつこくごめんね」ポリポリ・・・

絹旗「いえ。私の方こそ超ガキ過ぎました」クスッ・・・

香焼「あ。次会う時、料理楽しみにしてるっすよ」ニヤッ・・・

ぬこ「にゃー」ジー・・・

絹旗「うっ……ちょ、超任せといて下さい。きっと舌が超惚ける料理を作ってきますよ」エヘン・・・


惚けてしまっては困るのだが。


絹旗「さ、些細な間違いです!」ムゥ!

香焼「あはは。はいはい」クスッ

絹旗「もぅ……ハァ」クスクス


やはり……毒だ。もっと依って、寄って、酔っていたくなる。
363 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:25:56.44 ID:qWNsBrfo0
絹旗「じゃあ……またね」ニコッ・・・

香焼「うん。また」ニコッ

ぬこ「にゃー」フリフリ

絹旗「ふふっ。オマエもまたな」ポンッ

ぬこ「なー」ペロッ


手を振り、別れる。


香焼「……逃げられちゃった」クスッ・・・

ぬこ「みー」ペチペチ

香焼「なぁ。如何したらいいと思う?」ポンッ

ぬこ「にゃ?」チラッ

香焼「オマエも分かんないか」ハハハ・・・


絹旗最愛。
人見知りだけど本当は明るく元気な少女。猫が好きで、名前を間違えられ易くて、純粋で、あどけなくて、健気な少女。


香焼「……最愛、か」

ぬこ「にゃーぃ」ジー・・・

香焼「にゃーあぃ……名前、それにする?」クスッ・・・

ぬこ「みぅ」フルフル・・・

香焼「嫌か……じゃあ『もあい』は如何?」フフッ

ぬこ「みゃーぃ」スリスリ・・・

香焼「……え」タラー・・・

ぬこ「みゃーぃ」スリスリ

香焼「……もあい?」マジ?

ぬこ「みゃーぃ」コクコクッ

香焼「……流石に最愛にも聞いてから決めよう」ダラダラ・・・


だけど寂しがりやで独りぼっちの少女。その身に似合わぬ強大な能力を持った少女。
これから如何接すればいい。彼女に対する疑念は、自分の心に深く刺さり過ぎた。


香焼「こういう時こそ……女教皇様に相談かな」ハハハ・・・


結局、他力本願。自分はつくづく救えない甘ちゃんだ。
進む足は重く、気持ちに靄々を抱えたまま……帰宅する。


香焼「救いの手が必要なのは……どっちだか」ハァ・・・


『手』が必要なのは彼女。
救いようの無い馬鹿は自分……自分の事なんかどうでも良い。今は彼女が必要とする救いが何なのかを考えるしかない。
彼女がいつも笑っていられるような、そんな『救いの手』を見つけたいのだ……―――
364 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 [saga]:2011/04/13(水) 01:27:57.62 ID:qWNsBrfo0
 <おまけっ!>



香焼「また鍵開いてるし……ただいまー」ガチャッ



 ガヤガヤ・・・



香焼「五和と浦上め……ん?」チラッ

ぬこ「……みゃ」ジー・・・

香焼「この靴……まさか!?」ギョッ!!



 タタタタ・・・



削板「いやぁ香焼の姉ちゃんの飯上手過ぎだなっ!!」ガツガツ!

五和「そんなそんな。上手ですね、削板くんは」オホホ

浦上「しっかし香焼の知り合いに超能力者がいるなんて驚きデスよー」アハハ

削板「いえいえ……マブダチだよ! あとくん付け止めて下さい」キリッ!


香焼「」チーン・・・


五和「あ、コウちゃ……香焼。おかえりなさい」ニコッ

削板「おぅ! 邪魔してるぞ!」ニカッ!

香焼「……何、してんの?」ダラダラ・・・

削板「飯だ」ホレ!

香焼「いや、じゃなくて……何でいるの?」タラー・・・

浦上「香焼。友達にその言い方は無いんじゃナイの?」ジトー・・・

削板「まぁまぁ。確かに俺が香焼ん家にいるのは変だよな」ウンウン・・・

香焼「じゃあ、何で?」タラー・・・

削板「昼間の菓子の礼にな! 適当に菓子買って来たんだ。家探すの苦労したぞ?」ホラッ!

五和「ふ、フジレーゼのアイスケーキ……シュークリーム……」キラキラ・・・

浦上「く、黒松堂の御団子詰め合わせ……あんみつ……並んでも買えない限定品をこんな夜中に!!」キラキラ・・・

削板「昔助けてやったヤツがパティシエらしくてな。友達にやりたいって言ったら即座に用意してくれた」モグモグ・・・

香焼「態々……この根性馬鹿は」ハァ・・・

五和「こら、香焼。失礼ですよ」メッ!

香焼「オマエはさっさと化けの皮剥がせ馬鹿1号」ギロッ・・・

浦上「削板くん。香焼の事よろしくネー。まだまだひよっ子で弱虫なんだけどサー」ニヤッ・・・

削板「おう、任せとけ! あと香焼の姉ちゃん、おかわり良いか? それからくん付け止めて下さい、ホント」ゴックンッ

五和「はいはい。たーくさん食べて下さいねー」ニコニコ


香焼「……最愛の読みが、当たった」フコウダ・・・

ぬこ「なぅ」テクテク・・・
365 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 :2011/04/13(水) 01:34:16.79 ID:qWNsBrfo0
 <おまけっ!!>




絹旗「……ただいま」ガチャッ・・・

滝壺「きぬはた、おかえり」ニコッ

浜面「お、おぅ……」タラー・・・

麦野「お、おかえり」タラー・・・

フレンダ「ご、ご飯は食べてきた?」タラー・・・

絹旗「……いりません」テクテク・・・



 バタンッ・・・・・



麦野「……あちゃー」ハァ

フレンダ「振られたか……結局、青春の甘酸っぱい思い出って訳なのよ」ハァ

浜面「どうしてそうなるだよ……それより本当に俺らの行動ばれてないんだよな」ジトー・・・

フレンダ「だからあくまで空想だって。現実と一緒にしないの!」ジトー・・・

麦野「うーん……」ポリポリ・・・

浜面「何だ?」チラッ

麦野「……滝壺にゃん。アフターケアよろしくー」ボソッ・・・

滝壺「うん……OK、リーダー」テクテク・・・



 バタンッ・・・・・



浜面「あふたーけあ?」ポカーン・・・

麦野「……予想が当たったわね」ハァ・・・

フレンダ「麦野、何か予想してたっけ?」ヘ?

麦野「『陽溜まり』って言ったでしょ。日向ぼっこし過ぎて……『毒素(メラミン)』大量ーって感じよ。あの娘」ッタク・・・

フレンダ「絹旗まだ若いから、結局日焼けしても大丈夫な訳じゃない?」クスクス・・・

浜面「麦野と違ってか?」プフー!

フレンダ「ちょ……プフッ……そんな事……」プルプル・・・

麦野「……二人とも、屋上」ニコッ・・・┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

浜面・フレンダ「「」」チーン・・・
366 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 :2011/04/13(水) 01:51:26.88 ID:qWNsBrfo0
絹旗「……ハァ」ムキュー・・・ドサッ

滝壺「……きぬはた」コンコン

絹旗「っ! って滝壺さんですか……如何したんですか?」チラッ

滝壺「ふふっ、むぎのだと思ったかな? 着替えもしないまま寝ちゃ駄目だよ。折角むぎのが買ってくれた洋服なんだから」ニコッ

絹旗「……んー」ゴロン・・・

滝壺「ねぇ、きぬはた。何かあったの? 彼と」テクテク・・・

絹旗「……分かりません」ムスー・・・

滝壺「そう。喧嘩しちゃったかな」スッ・・・ナデナデ

絹旗「ん……違いますよ。ただ……」ムニュゥ・・・

滝壺「ただ?」

絹旗「……もう、近づいちゃ駄目かなぁって」ハァ・・・

滝壺「如何して? 嫌いになっちゃったの?」ポンポン・・・

絹旗「違います……でも……住む世界が、超違い過ぎるというか……」ウゥ・・・

滝壺「でも、また会いたいんでしょ?」ニコッ

絹旗「それは……」コクン・・・

滝壺「じゃあ遠慮する事ないんだよ。きぬはたがしたい様にすれば良い。私は応援するよ」ナデナデ

絹旗「むぅ……だけど、香焼の為に――」


滝壺「人の所為にする?」ジー・・・


絹旗「――っ……」シュン・・・

滝壺「暗部だから表の人間とは仲良くしちゃいけないなんて理屈は……荒んだ考えだよ。きぬはたにそうなって欲しくない」ポンポン・・・

絹旗「……でも……超辛いんですよ」グスッ・・・

滝壺「人の心だもん。悩んだら辛いし苦しいんだよ……だけど、それを超えれば嬉しい事がたーくさん待ってる」ギュッ・・・

絹旗「……本当に?」グッ・・・

滝壺「私はきぬはたに嘘付いた事無いよ」フフッ

絹旗「……滝壺さん」ポロポロ・・・

滝壺「きぬはた、私にお話してごらん」ニコッ・・・

絹旗「うぅ……」ポロポロ・・・コクッ・・・



麦野「……ったく。遣る瀬無ぇ」チッ・・・


浜面・フレンダ「「」」ボーン・・・
367 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 :2011/04/13(水) 02:08:20.84 ID:qWNsBrfo0
 ―――一寸後・・・・・



滝壺「そっか……探られそうになったんだ」ナデナデ

絹旗「……はい」グズッ・・・

滝壺「それは大変だったね……」

絹旗「私、逃げちゃいました……次、会う時……如何したら良いでしょう」

滝壺「うーん……私は教えても良いと思うよ」ニコッ

絹旗「……は、ぃ?」ポカーン・・・

滝壺「だから教えても良いんじゃないかな?」

絹旗「だ、だって私の仕事知ったら止めさせようとするヤツですよ! もしそんな事になったら……麦野に……」ゴニョゴニョ・・・

滝壺「きぬはた。今日、能力見せたんでしょ?」

絹旗「え、あ、ま、まぁ……名前と詳細は伏せましたけど、軽く実演くらいは」

滝壺「同じだよ。仕事の詳細は教える必要なんてないもん」

絹旗「ど、如何いう事です?」タラー・・・

滝壺「例えば……私達アイテムは『殺し』の中でも『粛清』専門でしょ? それを『更生』だったり『仕分け』って言葉にしちゃえば良い」

絹旗「……それで通じますか?」ウーン・・・

滝壺「最悪、私やむぎのの所に連れておいで。上司である……私は上司じゃないけど、年輩の仕事仲間が説明すれば分かってくれるよ」ニコッ

絹旗「麦野に……香焼へ嘘をついてくれるよう頼むんですか?」タラー・・・

滝壺「うん。アイテムの皆にね。きぬはたの職場はこんなに良い所だよって分かって貰えれば、彼も安心するよ」

絹旗「……麦野はしてくれるでしょうか」

滝壺「きぬはたはむぎのを怖がり過ぎだよ。あんなにお茶目で可愛いのに」クスクス・・・

絹旗(滝壺さんだけですよ……超怖いもの知らず)ダラダラ・・・



麦野「……ケッ」フンッ・・・///
368 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 :2011/04/13(水) 02:33:18.99 ID:qWNsBrfo0
滝壺「もしきぬはたが頼み辛いなら私が言っておく」

絹旗「え、えっと……もう少し考えさせて下さい」ポリポリ・・・

滝壺「うん、分かった」ニコッ



 Prrr・・・Prrr・・・



滝壺「ん?」

絹旗「あ……香焼からメールです」ビクッ・・・

滝壺「見ないの?」

絹旗「……」カパッ・・・カチッ



【DATE】XX/XX 20:04 
【FROM】こーやぎ
【sub】こんばんは
------------------------
今日はお疲れさま。
やっぱり家に軍覇が来たよ
……(汗) ← 絵文字

さっきは最愛の気持ち考え
ないで自分勝手に色々質問
してごめんね。
でも能力見せて貰えたのは
嬉しかったよ。ありがと。

最愛の能力は何かを守れる
強い力だと思ったっす。羨
ましいよ(笑顔)

次会える日は明日になった
ら分かるから、また連絡す
るね。料理楽しみにしてる
よ(ニヤケ笑い)


ps.子猫の名前……モアイ
で良い?



絹旗「っ……超馬鹿ですよ……私も香焼も、ほんとバカ」クスッ

滝壺「ふふふ。羨ましいってよ」クスクスッ

絹旗「人殺しの、能力なのに……っ……あの、滝壺さん」グッ・・・

滝壺「ん?」ニコッ

絹旗「お願いがあります……―――
369 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 :2011/04/13(水) 02:55:07.75 ID:qWNsBrfo0
  バタンッ・・・・・



滝壺「きぬはた、明日の朝シャワー浴びるから今日はもう寝るって」ガチャッ・・・

麦野「そ」グデェ・・・

滝壺「はまづらとフレンダは?」キョロッ・・・

麦野「文字通り干してる」ハァ

滝壺「え?」キョトン・・・


浜面「いや、干すってベランダから人間吊るすって意味じゃねぇからよおおぉ!!」ギャアアアァッ!!

フレンダ「いやぁあぁぁああぁっ!! 何で逆さ吊りな訳よぉっ!! スカートがあああぁっ!!」キャアアアァッ!!


麦野「……それより」テクテク・・・

滝壺「あ、コーヒー私が淹れるよ」

麦野「良いから座ってなさい……で、あの子の毒抜けは如何?」カチャカチャ・・・チラッ

滝壺「その言い方好きじゃないかも」ジトー・・・

麦野「じゃあ何でも良いから、仕事に支障無さそう?」フンッ

滝壺「多分大丈夫。処方箋は出したよ……薬を貰うかどうかはきぬはた次第だけど」コクッ

麦野「そう……ん」テクテク・・・スッ

滝壺「ありがとむぎのん」ニコッ

麦野「しかしねぇ……やっぱ予想通りかぁ」ゴクッ・・・

滝壺「きぬはた……自分で惚れてるか如何かも気付いてないっぽいね」クスッ

麦野「……マジ?」ピタッ

滝壺「友情を知らないきぬはたが、恋愛を先に持って来れると思う?」

麦野「ふーん……今は兎に角、折角出来た『お友達』を離したくないって事か」

滝壺「そんな感じ。駄目?」

麦野「いんや、別に良いんじゃない? 恋だったら面倒だけど、友情程度なら無理に壊さなくても」

滝壺「ふふっ……やっぱりむぎのは優しいよ」ニコッ

麦野「気持ち悪ぃ事言わないでよ……良いのよ。あの子がアイテム辞めたいって言わない限りはね。何したって良いの」フゥ
370 :第8話――絹旗「私が……殺し屋だったら如何します?」 香焼「っ……」 :2011/04/13(水) 03:10:35.01 ID:qWNsBrfo0
滝壺「私もそう思う。ただ問題は……彼の方っぽい」

麦野「気付いてるって? だったら手を打つしかないけど」

滝壺「調べようとしている前段程度だよ」

麦野「じゃあ馬鹿な事仕出かす前に釘打ちゃぁ――」

滝壺「だから私に良い考えが有るの。きぬはたも彼も、ハッピーな纏め方」ニコッ

麦野「――……芝居を打てって?」

滝壺「聞いてたんだ」フフッ

麦野「……」ハァ・・・

滝壺「よろしくね。演出家(リーダー)」クスッ

麦野「じゃあオマエが脚本家(シナリオ)だぞ」ジトー・・・

滝壺「らじゃー」b"





絹旗「すぅ……くぅ……」スヤスヤ・・・



【DATE】XX/XX 20:21 
【To】こーやぎ
【sub】こんばんわ(猫)
------------------------
私の方こそごめんなさい。

それから……ありがとう。
次会える日、超楽しみにし
てますよ(笑顔)(♪)

料理、頑張って作ってきま
すね(V)(ハート)



ps.超根性馬鹿に何かされ
たら言って下さい。ブッ飛
ばしてあげます(笑顔)(怒)

あとモアイって何ですか?
まさか『最愛』じゃないで
すよね(笑顔)(ピキピキ)



絹旗「くぅ……ばか……こ、ゃ……」フフッ・・・スゥ・・・









冷蔵庫『さよならいおんハートCANNON CRACKER remix...』ドントハレ。 
371>>1 :2011/04/13(水) 03:23:06.55 ID:qWNsBrfo0
はい。お疲れさまでした。
如何しても絹旗話だと麦野がネックになりますね……設定がWWⅢ(ロシア編)後なら楽なんだけど。


アンケートというか質問。

①これからの絹旗話について……喧嘩というか殺し合い欲しい? どんな展開希望?

②地の文を如何するか迷ってます。有っても無くても駄文に変わりは無いですが、全部会話の方が良い? それとも今のままで良い?

③例の如くリクエストはありますか?

……以上。


次は英国編だね。ステイル災難話だよー。
カルテッ娘の他に誰出そうかなぁ……リメエア様出したし、キャーリサ姫ヴィリアン姫もアリかなぁ。


とりあえず今日はこんな所で! 感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントよろしく! それじゃあ、また次回! ノシ
372VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/13(水) 08:25:49.07 ID:+lheq66j0
乙!
殺し合いというか、殺し愛が見たいです ②については今のままでいいと思います
リクエストはアンジェレネ×ステイルアフターとか……駄目ですか?
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/13(水) 18:51:09.08 ID:NB30q5QR0

絹旗の話は…ほのぼのでもフレ/ンダでも何でも
②は今のままでいいと
リクエストは…ウィリヴィリか魔神?×北欧侍女とか

…いや別にどっちもやるというのも全然構わんというかやれください
374VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/13(水) 21:42:10.32 ID:J2Gl+WmDO
①殺し愛は素敵だけど絹旗の一方的になるからなぁ。敢えてあわきん介入とか
②使い分けてはどうだい?

リクエストというか質問です。このSSのエロボーダーは何処まで? とらぶる級? えくすたしぃ級?
まさか‥‥まったく無いの!?
375VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/13(水) 23:43:51.20 ID:+lheq66j0
>>374
本編のアニェーゼアフターはエロエロだったぜ
376VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/14(木) 08:32:20.42 ID:PLu3ucnDO
>>375
この>>1はヤる時はヤる 

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