2013年6月12日水曜日

番外個体「学校に行ってみたいなぁ……」 冥土帰し「よし任せろパートⅡ」

 
 ※未完決
 
1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/23(水) 02:16:50.79 ID:G/vmHtBxo
番外個体が歳相応な生活が送れたら……なお話です。

~簡単なあらすじ~

 とある日、青春漫画を読んでいた番外個体は、学校に行きたいと思うようになった。
そこで冥土帰しに相談を持ちかけたところ、あっさりと、転校という形でとある高校に入学。

 そして、番外個体のワクワクドキドキな青春が始まる――

番外個体「やったー!学校だぁー!!」

一方通行「何で俺まで……しかも百合子ちゃンだァ?」

冥土帰し「僕を誰だと思っている?」

※基本、台本形式で進んでいきます。たまに地の文が入ってシリアスになりますが、ギャグです。ほのぼのです

 番外通行。一部、MNWネタあり
 
25VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:25:37.53 ID:eiXm3xFoo
その夜、ファミリーサイド

番外「ありゃ?鍵が閉まってるよ?」

一方「鍵持ってねェのか?」

番外「うん」

一方「どっかで時間潰そォにも、こン荷物持ったままじゃダルいよなァ……」

番外「最終信号も芳川も、いったいどこをほっつき歩いてるんだが。黄泉川は飲み会でどっか行っちゃうし」

一方「仕方ねェ、ファミレスでも行くか。このままだと凍え死ンじまう」

番外「はぁ……早くぬくぬくの暖房の中でゴロゴロしたいよ……」

打ち止め「あっ、おかえりー!」

一方「……あァ?」

番外「最終信号、あなたは今までどこにいたの?」

打ち止め「晩ご飯のお買い物だよ!見て!ってミサカはヨシカワのエコバックを引っ張ってみたり!」
26VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:26:36.44 ID:eiXm3xFoo
番外「凄い量だけど……どうするの?」

一方「今夜は黄泉川がいねェんだぞ?誰が作ンだよ」

芳川「今日は私が調理するわ。いつも炊飯器ばかりじゃ退屈でしょう?」

一方「オマエ、料理なンてできンのか?」

芳川「料理は理科の実験と似たようなものよ。元・科学者を舐めないで欲しいわね」

一方「変なもン入れんなよ……」

番外「……ねぇねぇ、今日は外で食べるって言ったんじゃなかった?」

一方「あァ、そォだったな」

番外「がーん!もしかしなくても、外食は白紙!?」

一方「……だな、残念なこった」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:27:22.21 ID:eiXm3xFoo
芳川「私ったら、何か不味い事しちゃったかしら?」

番外「ううぅぅぅ……」

一方「そォさめざめすンな。別に今日じゃなくてもいいじゃねェか」

番外「……なら、明日がいい」

一方「明日だァ?」

番外「今日じゃなくてもいいなら、明日でもいいんでしょ?よし決定!」

打ち止め「わーい!おっ出かけ、おっ出かけ!」

一方「明日くれェ、ゆっくりさせてくれ……」

芳川「ほら3人とも、鍵は開けたから早く中に入りなさい」

番外「じゃあ、ミサカいっちばーんっ!」

打ち止め「あぁー、ズルい!」

芳川「最後の人は鍵閉めてね、それじゃ」

一方「…………はァ」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:28:09.82 ID:eiXm3xFoo
同時刻、とある学生寮

上条「インデックスの奴、大人しくしてるといいんだが……。まぁ、あいつらがいるから大丈夫だと思うけどさ……」

上条「おーっす、ただいまー」ガチャ

上条「……って何だこの煙は!?」

インデックス「わー、とうまだ!とうまが帰ってきたんだよ!」

上条「インデックスさん?この煙は何なんでせうか?」

ステイル「早かったじゃないか、上条当麻」

インデックス「ステイルが焼肉をしてくれるんだよ!“すてーき”なんだよ!」

上条「……はぁ?」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:29:30.16 ID:eiXm3xFoo
神裂「ステイル!この大量の肉は何なのですか!?これでは経費が……」

ステイル「まぁ落ち着きたまえ、神裂。インデックス?ミディアム、ウェルダン、それともレアがいいかな?」

インデックス「もちろん、全部なんだよ!」

上条「なんという量だ……上条さんの年間摂取量を凌駕してやがる……」

五和「みなさん、お野菜の準備ができましたよー」

神裂「五和まで何をしているのです!?」

五和「女教皇様、何を言っているのですか?食事はみんな楽しくと、貴女も言っているではありませんか」

神裂「し、しかし……」

インデックス「とうま、とうま。その紙袋はお土産なのかな?食べてもいいのかな?」

上条「いいけど、晩飯の後にしような?こっちはステイルたちへの分だ」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:30:06.27 ID:eiXm3xFoo
ステイル「僕の頼んでいた、ジャパニーズヤツハシはあったのかい?」

上条「これだろ?ちゃんと買ってきてやったぜ」

ステイル「おぉ……これが……」

上条「しっかし、お前がこんなもんをなぁ?」

神裂「私が差し上げたどら焼きのせいで、すっかり和菓子に夢中で……」

上条「はぁ?」

ステイル「僕は今、無性にこれを食べたい!しかし、食後に取っておくのも……」

インデックス「ステイル!早くお肉を焼くんだよ!」

ステイル「あ、あぁ!」

五和「お野菜も摂ってくださいねー?」

上条「これは、不幸……なのか?」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:31:51.72 ID:eiXm3xFoo
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次の日、朝

番外「おはよー……って何食べてるの?」

芳川「あなたが昨日くれた生八つ橋。美味しいわね」

打ち止め「美味しく頂いてます!ミサカはミサカはムグムグ」

芳川「ところで、今日の学校は休み?」

番外「あぁ、今日は休み。土日分の振り替え休日ってとこかな」

芳川「そう……。だからあの子も寝てるのね」

番外「そゆこと」

芳川「昨日は聞きそびれたけど、修学旅行はどうだったのかしら」

打ち止め「ミサカも聞きたーい!ってミサカはミサカは八ツ橋片手に聞いてみたり!」

番外「楽しかったよ。でも、あまりにたくさんあり過ぎて、どこから話したらいいものやら」

芳川「写真の現像ができた時に教えて貰う事にするわね」

番外「うん」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:32:50.09 ID:eiXm3xFoo
芳川「それじゃ、私はちょっとプリント屋さんに行ってくるから。出かける時は鍵を閉めるのよ?」

番外「はいはーい」

打ち止め「むぐむぐ……」

番外「……最終信号、そんなに食べたら朝ご飯が入らないよ」

打ち止め「もう食べたから大丈夫だよっ!」

番外「そんなに入るなら、その分朝ご飯を食べたほうがいいと思うなー。……太るよ?」

打ち止め「!?」

番外「あー……でも、お子ちゃまには関係ない話か。あひゃひゃひゃ!悩みがないっていいねぇ」

打ち止め「ミサカはミサカはたっ、体重計にダッシュしてみたり!」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:34:50.99 ID:eiXm3xFoo
番外「そうだ、心理定規にメール送ってみよ。もう起きてるよね?」

番外「………………・送信、っと」ポチポチ


電波ビビビビビ……


~♪

心理「あら、メールかしら。……番外個体からね」

 2011/ 2/15 08:26
 From misaka-worst.whitelie@cocomo.ne.jp
 Sub メール届いたかな?

 おはよう、心理定規。ミサカだよ(゚∇^*)
 今日は、朝起きたら窓に霜が付いてました(((p'д'q)))そっちは大丈夫?
 ミサカは今日はお休みです。お仕事頑張ってね!

 P,S こっちにはいつ帰って来るのかな?


心理「……ふふふっ」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:35:37.14 ID:eiXm3xFoo
~♪

番外「おぅ!?もう返ってきた。早いなぁ」

 20011 2/15 08:29
 From measure-heart.palelover@hardbank.ne.jp
 Sub メールありがとう

 おはよう番外個体。風邪を引いちゃ駄目よ?
 私は今、観光の仕事で沖縄にいます。こっちは半袖でも暑いくらい(;´ρ`)ゞ
 それなのに、あの人は走り回ってばっかり。馬鹿は暑さも気にならないのかしら?
 それじゃ、そろそろ呼ばれそうだから行ってきます☆ミ(o*≧∇≦)ノ
 
 P,S 近いうちに休みが取れそうよ。ふふっ、あの馬鹿も役には立つのね。


番外「いってらっしゃい……と」ポチポチ

一方「朝飯はどこだァ……」ヌゥッ......

番外「うわああ!?驚かさないでよ!」
35 :>>34 20011年って何ぞや……。2011年でよろしくです [saga]:2011/03/25(金) 00:37:04.29 ID:eiXm3xFoo
一方「番外個体か……飯は?」

番外「起きて一言目がそれとか……どこの亭主関白だよ」

一方「芳川もいねェのか。仕方ねェ、食パンでも焼くか……」

番外「そういや、ミサカもまだ食べてなかったや。ついでにミサカも分も焼いといて」

一方「あァ?……面倒臭ェ」

番外「そんな事言って、ちゃんと2枚焼いてくれてんじゃん」

一方「俺の分に決まってンだろォが」

番外「……それは嘘。あなたは2枚も食べないもん」

一方「……チッ」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:38:05.44 ID:eiXm3xFoo
打ち止め「ううっ……やっぱり増えてたぁー、ってミサカはミサカはしょんぼり……」

番外「うひゃひゃひゃ!その内、横に伸びてくるかもねー」

打ち止め「それは嫌あああぁぁぁぁ!!!」

一方「……うるせェぞ、クソガキ」

打ち止め「うわぁぁぁぁぁん!!」

一方「いったいどォしちまったンだァ……?」

番外「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

一方「番外個体、オマエが何か吹き込んだのか?」

番外「ミサカは変な事言ってないよ?お菓子ばっかり食べてたら太るよ、って言っただけですけど」

打ち止め「ミサカ、このまま豚さんになっちゃうのかな……」

一方「くっだらねェ事で喚いてンじゃねェよ」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:39:08.46 ID:eiXm3xFoo
番外「……あれ?何か焦げ臭いような」

一方「………………しまったァ!?」

番外「あーあ、黒焦げになっちゃった」

一方「これはもォいい、オマエは俺のを食え」

番外「初めからそのつもりだけどね。あなたはどうするの?その炭、コーヒーで流し込んでみる?」

一方「いンや、俺はもォ朝飯はいいや」

番外「……………………」

一方「ほら、どォした。食わねェのか?」

打ち止め「それなら、ふたりで半分こしたらいいんじゃないかな、ってミサカはミサカは提案してみたり」

番外「!?」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:40:00.23 ID:eiXm3xFoo
一方「あァ?俺はいらねェっつっただろ」

番外「……ミサカは、あなたが食べたいなら別に……」

一方「……いらねェ」

番外「何ぃ!?」

一方「オマエが食え。俺の事は気にすンな」

番外「それって、ミサカの食パンは食べれないって事!?」

一方「誰がいつどこでそンな事言った。…………分ァったよ、半分寄越せ」

番外「もういい!ミサカが全部食べちゃうから!!」モッシャモッシャ

一方「はァ……どっちなンだよ……」

打ち止め「あなたはもうちょっと女の子の気持ちを考えないと駄目だよ?ってミサカはミサカは忠告してみたり」

一方「意味分かンねェ……」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:41:57.51 ID:eiXm3xFoo
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2日後、休み明けの学校

上条「おーっす」

番外「おいーっす」

一方「」グデー

土御門「どうしたんだにゃー?」

番外「筋肉痛なんだってさ。朝からこうなの」

一方「いてェ……動きたくねェ……」

青ピ「修学旅行の疲れか?ボクらは何ともないけどなー」

番外「……ほら、あなただけじゃない?貧弱過ぎるよ」

一方「何でオマエらは平気なンだよォ……」

上条「でもどうすんだ?もうすぐマラソン大会だぜ?練習もあるし……」

一方「この程度の筋肉痛ってのは、動かしゃ治るンだよな?なら簡単だろォが」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:43:15.91 ID:eiXm3xFoo
番外「ミサカ的には、あなたは動かす程の運動もできるとは思わないけど。あと、今日は1時間目から体育だよ」

一方「……ウン、やっぱ見学だな」

番外「筋肉痛で休むとか意味が分かんねぇ……。倒れてでも出てもらうからね」

一方「出ても倒れるンだろォなァ……」

番外「あひゃひゃ、よくお分かりのようで」

一方「チッ、せめてバッテリーの持続時間が倍になりゃあ、ちっとはマシになるンだが……」

番外「それは先生が作ったんでしょ?それなら何とかならない?」

一方「今のバッテリーは別ルートからの改良品だからなァ。難しいかもしンねェ」

番外「ふーん……」

キーンコーンカーン......

一方「ほら、ホームルーム始まンぞ。いつまでも俺の机に座ってンじゃねェ」

番外「はいはーい。……よっとぉ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:44:52.94 ID:eiXm3xFoo
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体育

黄泉川「よしよーし!みんな、怪我もなく帰って来れてよかったじゃん!修学旅行は帰るまでが修学旅行!」

一方「遠足みてェな事言ってンじゃねェよ」

番外「遠足?ピクニックの事かな?」

一方「まァ、そンなところだ」

黄泉川「そこ、私語は慎むじゃんよ!」

番外「ごめんなさーい」

黄泉川「百合子、返事は?」

一方「チッ、へいへい」

黄泉川「まぁいい。コホン……さてと、マラソン大会まであと2週間を切ったが、今日も走ってもらうじゃんよ」

一方「またかよォ……」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:45:47.88 ID:eiXm3xFoo
番外「黄泉川センセー!マラソン大会ってどんだけ走るの?」

黄泉川「言ってなかったか?確か、男子が15kmで女子が8kmじゃん」

番外「何だ、大した距離じゃないんだね」

一方「いや、大してるだろ。今の補助レベルじゃもって1時間……完走できンのか?」

番外「それまで血を吐いてでも鍛えないとね」

一方「Oh......」

吹寄「ミサカさんはクラスで一番早いものね。どこの学校でそんな事を?」

姫神「私も。気になってた」

番外「えぇっと……どこだっかかなぁ~……」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:46:46.38 ID:eiXm3xFoo
一方「…………長点上機」

吹寄「長……?それって超エリート校じゃない!?」

番外「あ~……そうだった……かな?」

姫神「常盤台にも並ぶ。五本指なはず」

吹寄「この学校にLEVEL4がふたりも転校して来たのもびっくりだけど。……それ以上だわ」

一方「俺たちはそこのカリキュラムでへばっちまってなァ。あそこは疲れンだよ……」

番外「そ、そう!そゆこと!」

吹寄「エリートにはエリートなりの苦労があるのねぇ……」

黄泉川「そこ!黙る!」

吹寄「は、はいぃぃ!!」

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44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:49:21.77 ID:eiXm3xFoo
一方「はァ……!はァ……っ!」

番外「ありゃりゃ、もうバテちゃった?今日は前より頑張ってるみたいだけど」

一方「ンな訳……ねェだろォが、よォ……!」

黄泉川「百合子、無理はするなよ!」

一方「クソがっ……そン名で呼ぶンじゃ……ねェ」

番外「本当に大丈夫?また倒れちゃうよ?」

一方「ねェよ……」フラー

番外「うぉっと!?」ガシッ

黄泉川「ほら、言わんこっちゃない……。ひとまず日陰で休ませるじゃん」

一方「俺ァまだ行けン……ぞ……」

番外「あなたって本っ当、意地っ張りだよね。見学見学うるさかったのに、やりだしたらコレだもん」

一方「ぐふゥ……」
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45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:51:04.09 ID:eiXm3xFoo
更衣室

吹寄「百合子さん、大丈夫かしら……。 普段は杖付いてるけど、体育の時は放してたわよね……」

番外「能力で身体を支えてるんだけどね。でも、短い間しか使えないんだよ」

吹寄「LEVEL4でそれくらいなの?……病気なのかしら」

番外「まぁ、そんなトコ。口だけは達者だけどさぁ」

女子A「ねぇ、聞いた?6組の真里が……」

女子B「聞いた聞いた。これで5人目よ?やっぱり本当なんだわ……」

番外「……ん?何の事なんだろう……」

吹寄「またあの話ね……」

番外「あの話って?」

吹寄「どうも、この時期になると出てくるのよ。学校の七不思議みたいなものかしら」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:52:27.34 ID:eiXm3xFoo
番外「七不思議って漫画に出てくるアレ?」

吹寄「それがそのまんま。さっきの話は、保健室の合わせ鏡」

番外「あぁ、午前0時に見ると、将来の自分が映るってやつ?」

吹寄「他にもたくさんあるのよ。7つじゃ収まりきれないくらいね……。科学の街でそんなオカルトがあるわけないのに」

番外「将来の自分、かぁ……」

吹寄「噂だと、本物の魔法だとか実は魔物の誘惑だとか、くだらない事ばっかよ」

番外「ふぅーん、魔法ね……」

番外「…………他には何があるの?」

吹寄「あなたも興味があるの?」

番外「まぁね」

吹寄「あとはね――――」

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47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:53:58.54 ID:eiXm3xFoo
番外(無人のピアノ、動く肖像画、増える階段。そして、将来の自分が映る鏡……。まだ他にもたくさん……)

~~~

吹寄『でもね……それを全部知ったら、その人は消えてなくなっちゃうのよ』

番外『死ぬって事?』

吹寄『それは分からないわ。全部でいくつあるのか、それは誰も知らないもの』

番外『……』

吹寄『ただ言えるのは、それは死ではないわ。……それは死よりも深い闇の底。存在すら消されて、誰からもいなかったようにされる……』

番外『最初からいなかったように?』

吹寄『まっ、タチの悪い噂話よ。いくら科学が発展したって、こういったオカルトは無くならないものね』

番外『あははは……そうだよね。そんなのありえないっての!』

~~~
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:55:33.55 ID:eiXm3xFoo
番外(だけど……)

番外(だけど…………)

番外「行きたい行きたい行きたい行きたい鏡見てみたいよおおぉぉぉ!!!!」

一方「何言ってンだオマエは?」

番外「……へっ?」

一方「もォ昼休みだろォが。……オマエ、体育の後から落ち着きが無さ過ぎだろ。トイレか?あそこなら鏡もあンけどよォ……」

番外「ばっ……そんなんじゃないやい!」

一方「じゃあ何だよ、トイレじゃねェのか」

番外「だから、トイレトイレ言うなああぁぁぁ!!!」

一方「チッ、話は昼飯の時に聞いてやる。だからさっさと弁当持って来い」カツカツ

番外「……あぁもう!!!」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:56:41.37 ID:eiXm3xFoo
屋上

一方「……七不思議だァ?」

番外「うん、そうだよ」

上条「あぁ……最近噂のアレか」

一方「噂だと?どォせくっだンねェ作り話だろォが」

青ピ「それがな、今月に入って5人も遭ってるんや」

土御門「それも、放課後の、人気の無くなった時間帯に……な」

番外「でも、聞いた内容だと、大体の七不思議は午前0時に起こるらしいよ?」

上条「そこなんだよなぁ。何人かは、実際に校舎に忍び込んだりしてたみたいだけど……」

土御門「七不思議を実際に経験した奴はいなかったんだぜい」

青ピ「まぁ、途中で警備に見つかって停学もろた奴がほとんどやけどなぁ」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:57:50.98 ID:eiXm3xFoo
番外「ふむ……」

一方「オマエ、行きたいなンて言うなよ?」

番外「警備か……。そこまで考えてなかったや……」

一方「うォォォい!?マジで考えてやがったぞ、コイツァ!!」

番外「警備ロボなら電磁波である程度は誤魔化せるかな……。他にはどんな警備が?」

上条「この学校は貧乏だからな。校門や一部の場所には監視カメラがあるけど、ほとんどは警備員だぜ?それでも数人だけど」

青ピ「警備ロボっちゅーても。最新モデルやのーて、どっかの中古品や」

番外「ふむふむ……」

一方「俺はぜってェ行かねェ」

番外「じゃあ、みんなで行こう!」

一方「はあァァァァァ!?」

上条「すまん、俺はできそうにない……。居候を置いていけないからな」

土御門「舞夏に知られたら不味いにゃー」

青ピ「ボクもパン屋の店主はんに黙っては行けへんなぁ……」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 00:58:57.02 ID:eiXm3xFoo
一方「…………」

番外「……一方通行、一緒に行こ?」

一方「行くかボケェェ!!!」

番外「ぶー」

一方「不貞腐れても駄目なもンは駄目だァ!第一、そンな真夜中で誰が出かけるかってンだ」

番外「あなただって、夜中にコンビニ行ってたじゃない。それと同じだよ」

一方「いいか、オマエのやろォとしてる事は立派な校則違反なンだよォ!それに、クソガキに見つかったら終いだろォがァ!!」

上条「お前が校則違反を言うか……」

土御門「同感だぜい……」

番外「ぶー」

一方「だから、ぶーじゃねェ。もォこの事は忘れろ、いいな?」

番外「……ちぇっ」

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52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:03:34.12 ID:eiXm3xFoo
その日の夜

番外「んん…………よし」

番外「ミサカがあれくらいで諦めると思ったのかな?うひゃひゃひゃひゃ……」

 ただいまの時刻、午後11時20分前。ミッション開始だ。

 まずは共犯者の確保である。足音に気をつけながら、ミサカはそろりそろりと忍び歩く。気分はまさにキャッツアイ。
今この場に白い戦闘スーツがあれば、4人目になれるかもしれないね。

 ぎぃっ。

 そんな事を考えていると、ぎぃっと、木の軋む音が部屋中に響いた。今まではカーペットが敷かれてたけど、どうやらフローリングを直に踏んでしまったようだ。

 しかし、誰も起きる気配はない……。ほっ、とミサカは息を吐く。こんなミスで計画がおじゃんにだけはしたくはない。

 芳川が起きてる可能性もあったけど、その時は適当にお願いでもすればいい。彼女の事だから見逃してくれるだろう……。
そう考えていたけど、寝ているのならそれに越した事はない。何にせよ、最初の難関はクリアだ。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:05:22.93 ID:eiXm3xFoo
番外「ちょろい、ちょろい」

 そして、いよいよ今夜の共犯者である、一方通行の寝室へを足を踏み入れる。

 ドアの隙間からは明かりは見えてこない。どうやらコッチも寝ているようだ。ミサカは静かにドアの取っ手に手をかける。

 かちゃ、きぃー。

番外「起きてますかー……?」

 タンスも本棚も小物も置かれていない、質素な部屋の隅にはベッドが1台置かれている。
そこに、人ひとり分の膨らみを見つけると、ミサカは自分の影で気付かれないように注意しながら近づいていく。

 そのベッドには共犯者(予定)、一方通行が寝ていた。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:07:42.70 ID:eiXm3xFoo
一方「すゥ……」

番外「しめしめ……しっかり熟睡しておられますなぁ」

 うーむ……。いつもはぶっきらぼうでも、寝てる時は可愛い。枕を抱いて寝ているところもプラスポイントだ。
一方通行が着てるこのパジャマも、一見ただの柄物に見えるけど、よく見ると小さなキャラクターでプリントされている。

 このパジャマは、修学旅行の準備でヘブンスミストに寄った時、ミサカと最終信号と10032号とでついでに選んで買ったもの。
当の一方通行は、実際に着るまでこのパジャマがキャラクター物である事に気付かなかった。因みに、ミサカと正真正銘のペアルックである。
最終信号のサイズがなかったのが、ちょっと可哀想。

 ミサカたちは知っている。一方通行の本当の弱さは能力制限などではない、ミサカたちなのだ。
ミサカがちょっと上目遣いになれば、あの人はNoとは言えない。それが1万人もいるんだから、一方通行にとっては堪ったものじゃないだろう。

 ……だがそれがいい。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:10:12.64 ID:eiXm3xFoo
一方「ンン……」

 そのような事を知らない一方通行は、何だか寝苦しそうに顔をしかめている。
ミサカに苛められてる夢を見ているのか、最終信号にじゃれ付かれてる夢を見ているのか、それとも妹達に輪姦されてる夢を見ているのかな?

 そんな顔を見て、ミサカの負の感情が刺激された。うひゃひゃひゃひゃ。

番外「ちょっと悪戯してみようかな……?」

 どうせ起こすんだから、少しくらい遊んでもいいよね? ……当然、答えは聞こえない。

番外「…………ふぅ~」

  まずは、ミサカは一方通行の耳に、ふぅっと息を吹きかけてみる。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:11:41.42 ID:eiXm3xFoo
一方「うゥ……っ」

 一方通行のまつ毛がピクリと動いて、首筋から頭にかけて短く震えた。妙に色っぽいのは気のせいか。
こんな事は何度もやってきてるけど、やっぱり面白いね。いつもは起きるまで続けてたりするけど、今日はどうやって起こそうか。

番外「ほぅほぅ……」

一方「うーン……」

 一方通行が寝返りを打ち、顔がこちら側に向く。あと4、5年若ければ、どこかの誰かさんにお持ち帰りされそうだ。

 そういえば、前に頬紅を塗ったりもしたなぁ。あの時は、見つかった後にベクトルチョップ10連打をされて、頭が割れそうになったんだっけ。
最終信号め、あの時はミサカを置いてどこかに逃げやがったし……酷い奴だ。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:13:00.85 ID:eiXm3xFoo
番外「……何度見ても、綺麗な髪だよなぁ。こんなにサラサラだよ」

 この寝顔を前にして、この人が女の子だと言って疑う人はいるだろうか? 多分、いないと思う。

 ミサカは目の前の白銀の髪をそっと梳いた。サラサラとしたその髪は、何の抵抗もなく指の間を抜けていく。
この肌といい、この髪といい、本人はこれといったケアをしていないと言う。正直、嫉妬するなぁ。

番外「ミサカだって同じシャンプーにリンスも使ってるのに……不公平だ」

 有害なものを反射するだけで、全ての女性が彼のような美を手に入れられるのなら、世界中の美容メーカーは発狂するだろう。
日々、美しさを求めて研究に明け暮れる女性は何と思うのかな? 馬鹿馬鹿しくてミサカならやってられないな。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:14:54.60 ID:eiXm3xFoo
 手を伸ばしても手に入れることは出来ない。目の前にいるのに決して届かない美貌。

 一方通行だって望んで手に入れた訳ではない。それでも、これを羨む人は絶えないだろう。ミサカもそのひとりだ。

一方「すゥ……」

番外「……あの時は意識してなかったけど、この人の唇も……」

 ミサカはその唇をまじまじとみつめる。白い髪と白い肌、赤い瞳。いつもはそればっかりに目が行くけど、唇だって綺麗だ。
20000号はペロペロとか言ってるけど、分からない気がしないでもない。でも、あれは変態だ。ミサカは変態じゃないよ?

 でも、この唇が、仮に唇じゃないとしたら? 仮に、プリンやジェリーだとしたらどうだろう? みんなは食べたい?
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:16:38.34 ID:eiXm3xFoo
番外「美味しそうだな……」

 一方通行の唇がミサカを吸い込む。磁石のSとNのように、ミサカの顔が一方通行の顔がに近していく。
1m……70cm……30cm…………。どんどんどんどん近づいてゆく。

 吐息が顔に掛かる。視線が桜色の唇から離れない。月の光が一方通行の髪を照らす。

 そして、一方通行とミサカの影がひとつにな――――

 
一方「ン……誰だァ?」

 ――――らなかった。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:19:43.97 ID:eiXm3xFoo
番外「うぁっ!?」

 危なかった……。もう少しで変態の名を受け継ぐところだったよ。まったくもう、あなたの唇は禁断の果実ですかぁー!?

一方「打ち止めかァ……?」

 いいえ、番外個体です。

番外「や、やっほう、第1位。起こしに来たよっ!」

一方「…………今、何時だ?」

 一方通行が鬱陶しそうに携帯を開く。うーん、今回は赤点だなぁ……。次は頑張ろうっと。

番外「……学校……行こ?」

 まぁ、当初の予定とは大きく外れたけど、仕方が無い。ここで必殺! 妹達流奥義、下斜め30度からの上目遣い!

一方「」

 こうかは ばつぐんだ! 一方通行は妹達属性を持つ者からは4倍ダメージなのだ。だけど、決して一方通行が妹属性な訳ではない。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/25(金) 01:24:01.52 ID:eiXm3xFoo
                             ・
                             ・
                             ・

一方「はァ……起きるンじゃなかったぜェ……」

番外「起きなかったら第2の20000号になってたところだったよ……」

一方「どォいうこった?」

番外「……何でもない」

 寝静まった夜の街。雲ひとつ無い空に、満月がぽっかりと浮かんでいる。

 もし、鏡がミサカの未来を映し出すのだとしたら、クローンであるミサカはどんな将来を送っているのかな?

 ミサカは一方通行と共に、夜の校舎へと歩き出す。

 クローンに未来があれば、それは何なのか。それは、ミサカにとって幸せと呼べるものなのであろうか。

 そんな淡い期待を胸に秘めて―――― 
 
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:14:23.20 ID:qqYhe95bo
校門前

番外「むひゃぁ、むふひひふぁふいへ」

一方「何で途中でコンビニに寄らなきゃなんねーんだよ……。俺たちゃ遊びに来た訳じゃ…………だよなァ」

番外「ごくんっ、寒いんだから仕方ないよ。あなたもピザまん食べる?」

一方「…………」

番外「んー?」

一方「ったく、お前は何のつもりなンだ?」

番外「だーかーらー、鏡を見るんだってば」

一方「なら、ひとりで行けばいいじゃねェか。俺を付き合わせンな」

番外「だってひとりじゃ怖いもん」

一方「ンな子供な理由でやってられっかっつってンだよ……」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:18:34.74 ID:qqYhe95bo
番外「じゃあ、どうして断らずに付いて来てくれたのかな?」

一方「……うっ」

番外「あひゃひゃひゃ!男のツンデレは格好悪いよ?」

一方「俺がいつデレたンだよ……。はァ……さっさとその鏡とやらを拝んで帰るか」

番外「うん」

一方「だが、校門には監視カメラだ。壊す訳にもいかねェぞ?」

番外「正面からじゃ無理そうだね……他から入ろうよ」

一方「ま、それが無難だろォなァ」

テクテクカツカツ......

一方「……どうやってこの壁を登るンだ?」

番外「そんなの簡単だよ。跳べばいいじゃない」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:22:11.28 ID:qqYhe95bo
一方「それなりに考えてはいるンだな」

番外「……あ、やっぱりミサカはできないや」

一方「あァ?」

番外「ミサカのは空気爆発だから音が凄いよ?周りに気付かれるかも」

一方「……仕方ねェな。振り落とされねェよォに掴まってろ」

番外「ん……」

一方「そンなんじゃ落ちるぞ?もっとしっかりとだ」

番外「……っ、こう!?」

一方「それじゃ、俺の身動きがとれねェだろ……。まァいい、跳ぶぜ?」カチッ

ブワッ

番外「うおぉぉう……」

一方「……っとォ、これで不法侵入成立ってか?クカカッ、見つかったら停学だなァ」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:24:11.16 ID:qqYhe95bo
一方「保健室は別棟だ。だが、あの警備ロボの所為で直接は向かえねェ……どォする?」

番外「ほぉぉぉ……」

一方「番外個体?聞いてンのか?」

番外「ねぇ、今のは何?ふわってしたんだけど」

一方「あァ、今のか?地球の重力ベクトルを操作した。それだけだ」

番外「……帰る時もしてくれる?」

一方「そォしねェと見つかるンだろ?」

番外「やったぁ!」

一方「はァ……俺はアトラクションじゃねェっての」

テクテクカツカツ......
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:28:59.66 ID:qqYhe95bo
一方「……チッ、やっぱ施錠してやがンな」

番外「カードキーかな?これくらいならミサカでも……」ビリビリ

『ピー、カイジョシマス』

一方「これって校則云々じゃなく犯罪だよなァ……」

番外「こんな旧世代、朝飯前だよ」

一方「……壊すなよ?」

番外「やべっ、警備ロボが来た!早く中に入ろう!」

一方「……とてつもなく帰りてェ」

番外「あなたが帰ったらミサカが帰れないじゃん!早く早く!」

一方「絶対に騒ぐンじゃねェぞ?」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:32:02.02 ID:qqYhe95bo
別棟 1F

番外「暗いね……全然前が見えないや」

一方「頼りになるのは月の光だけか……」

番外「ミサカの電気で明かりにならないかな?」

一方「駄目だ。警備にバレたら面倒な事になる」

番外「だよねぇ……」

一方「それで、保健室にはどォやって行くンだ?俺ァ、この辺はあまり知らねェが」

番外「1階の渡り廊下は監視カメラがあるっていうから、まずは2階に上がって……」

一方「面倒臭ェな……。聞いてなかったけどよォ、オマエはどォしてその鏡が見たいんだ?」

番外「ミサカは七不思議なんてどうでもいいんだけどさ、そんな鏡があるなら見てみたいじゃない?」

一方「そンなもンかねェ」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:34:27.00 ID:qqYhe95bo
番外「普通なら、こんな事をしてまでして見たいとは思わないよ。でも、ミサカは非科学を見てしまったから……」

一方「マジュツ、か……。だがよォ、これがそれとは限ンねェぞ。まァ……都市伝説だろォな」

番外「なら見て確かめればいいよ。あなたの身体には、その匂いが染み付いてる。なら分かるでしょ?」

一方「そォだな。確かめるくらいは付き合ってやンよ」

番外「さて、日付が変わるまでに行かないと――」

 ぴたん。

番外「っ!?」

一方「おィ?何、腕を掴んで――」

 ぴたん。ぴたんぴたんぴたんぴたんぴたんぴたぴたぴたぴたぴたぴたぴたぴたぴたぴぴぴぴぴぴぴぴ……。

 ――かたん。

番外「でっ、出たあああああああああぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!」ピュー
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:36:50.93 ID:qqYhe95bo
一方「お、おィ!?どこ行っ……!?」

一方「……ったく、何が出たってンだ……。アイツ、幽霊とか信じてンじゃねェよなァ?」

一方「…………蛇口が緩ンでンのか。まさか、これにビビったのか?」

一方「…………………………イヒッ」

警備ロボ『ビー、ビー。侵入者発見。侵入者発見』

一方「……あ」

警備ロボ『コノ時間帯ハ、校舎ノ進入ハ禁止トサレテイマス。不法侵入ト見ナシ、通報シマス』

一方「…………やべェ」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:38:43.10 ID:qqYhe95bo
                       ・
                       ・
                       ・

番外「やっべ……迷っちゃったよ……」


番外「一方通行は勝手にどっか行っちゃうし、どうしよう……」


番外「ここはどこなんだろ?逃げるのに夢中で分からなくなったんだけど……」


番外「怖いなぁ……一方通行どこぉ……?」

 がたがたがたがた!

番外「ひいぃぃぃ!?」

 しーん……。

番外「……何だ、ただの風かぁ。ビックリさせないでよね……?」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:42:29.93 ID:qqYhe95bo
番外「あっ、そうだ!携帯で……ってあれ?忘れちゃってる……ちくしょう……」

 かつかつかつ……。

番外「……ん、誰か来てる?一方通行!?」


番外「んにゃ、あの明かりは違う……警備員だ」


番外「どうしよう、見つかったら……」


番外「…………うん、逃げよう」バッ

警備ロボ『…………』

番外「」

警備ロボ『ビー、ビー!』

番外「……うりゃ」ビリビリ

警備ロボ『ピーーーー!!!』

番外「よし、今のうちにダッシュー!!」ピュー
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:47:17.18 ID:qqYhe95bo
                       ・
                       ・
                       ・       

番外「この教室のプレート……ここは3年生のクラスかな。随分と遠くまで来ちゃった……」


番外「あーあ……外が明るかったら大体の場所は分かるんだけどなぁ~」


番外「動こうにも、そこらじゅうに警備はいるし……誰だよ、警備は緩いって言った奴は」


番外「……一方通行はどこにいるのかな?でも、確かめるまで付き合うって言ったから……保健室かな?」


番外「じゃあ、ミサカも保健室に行こうっと。えぇっと……ここが分からないから、まずは下まで降りてそれから2階に……」

 ポロン、ポロン♪

番外「っ!?」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:49:48.55 ID:qqYhe95bo
 ポロロン♪

番外「ピアノの音?」


番外「誰もいない音楽室に鳴るピアノ…………」

 チャラチャララララ♪

番外「う………ぁ………」ガタガタ

警備員「誰かいるのか!?」

番外「っ!?ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」ピュー

警備員「おい!待ちなさい!」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:54:57.89 ID:qqYhe95bo
                            ・
                            ・
                            ・

番外「ううぅ……一方通行ぁぁ……どこにいるのぉ……?」

 あれからどれだけ歩いただろうか……。気が付けば、ミサカの身体は埃まみれだった。
時に警備ロボに見つかり、時に警備員に追いかけられ、それでもミサカは立ち止まるわけにはいかない。
……一旦立ち止まっれば、そのまま挫けてしまいそうだ。

 ミサカはただひたすらに、無音の廊下を歩く。聞こえるのは自分の足音だけ。
何度、窓が風で揺れる音にビクリと怯えた事か。何度、水の跳ねる音に身体を仰け反らせたか。
いつもの明るい学校はそこにはなく、あるのは果てしなく続く暗闇の空間。

 ――それはまるで、あの時の夢のようだった。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/26(土) 23:58:57.63 ID:qqYhe95bo
番外「嫌だよ……怖いよ……」

 あぁ、こんな事になるから来なきゃよかった。非科学的な現象を見たからといって、これが当てはまるわけではないのに。
未来や将来に期待するのはまだ早いのに。そう分かっていても、鏡の噂を聞いた時、ミサカは願ってしまった。
今を楽しめばいいと思っているのに、それでも明るい未来を望んでしまう。それは悪い事なのかな……。

番外「ぐすっ……」

 一方通行はどこにいるのだろうか。もう保健室に着いていて、ミサカを待っていてくれているのだろうか。
それとも、鏡を弄っては見定めているのかもしれない。できれば……ミサカを探していてくれたら嬉しいな。

 今夜は念に念を入れて厚着してきたのに、それでも寒かった。ひとりというのは、こんなにも辛いものだったんだ。
あの人は言っていた。人の温もりを一度知ってしまうと、もう孤独には戻れないと。

 満月は雲に隠れ、廊下を照らすものは何もない。ただひとつ、非常ベルの赤いランプだけが静かに灯っているだけ。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/27(日) 00:02:11.07 ID:YSZqDnTTo
番外「もう歩けないや……」

 壁に背を持たせかけ、ミサカはペタリと座り込む。床は氷のように冷たかった。もう歩く元気も出ない。心はほとんど折れかけていた。
雲から月が顔を覗かせ、窓にミサカの顔が反射する。窓に映るその顔は、涙や鼻水でぐしゃぐしゃだ。

 もう、警備に見つかってもいいや……。心のどこかでミサカはそう思った。
もしミサカが停学を喰らったら、学校にはもう行けないかもしれない。そうなったら、一方通行はまた最終信号ばかりに構うようになるのかな。

番外「今頃、みんなは寝てるんだろうな……寒いな……」

 こんな馬鹿な事を考えなかったら、今頃はミサカだってフカフカな布団の中で夢でも見ていたかもしれない。
明日が休みだからといって、夜更かしをして地上波初放送だとかの大ヒット映画を見ていたのかもしれない。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/27(日) 00:05:25.66 ID:YSZqDnTTo
 頭の中は後悔の念でいっぱいだ。

番外「ひとりはもう嫌だよ……」

 真っ暗な廊下の中、ミサカはひとり。寝静まった街の中、ミサカはたったひとりで涙を零す。

 ミサカだって、ひとりぼっちは嫌。寒いのは嫌。誰かと一緒にいたいし、暖かい場所にいたいよ。

番外「一方通行の馬鹿……」

 でも、一方通行はここにはいない。そして、ミサカはまた……ひとりぼっち。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/27(日) 00:07:49.37 ID:YSZqDnTTo





一方「誰が馬鹿だってェ?」




106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:14:13.14 ID:DlTf6xADo
番外「……………………え?」

 ここにはいないはずの一方通行が、ミサカの隣に座っていた。

一方「探しに来てみれば、なンだその顔はよォ?それに埃だらけじゃねェか。オマエは何して遊ンでたンだァ?」

番外「ひっぐ……」

一方「……あァ?」

番外「……うぅぅ……うわああああぁぁ一方通行ぁぁぁ!寂しかった、怖かったよおぉぉぉぅぅ!!」

一方「おィ、今度は泣き出すのかよォ!?」

 ミサカは一方通行の背中をコート越しに指を食い込ませ、一方通行の胸でわんわんと泣きじゃくった。
警備員が気付いてもおかしくはないのに、一向に来る気配はない。もしかして、空気を読んでるのだろうか。

 この時のミサカは、まるで子供みたいだった。こんなに顔を涙で濡らして、こんなに目を涙で腫らせて情けないな。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:17:02.39 ID:DlTf6xADo
 でも、これで3度目だ。1回目の時は怖くて、2回目の時は何だか分からなくて、3度目は……寂しかった。寂しくて怖かった。

 寂しくて寂しくて、ずっとひとりぼっちなのかと思った。それなのに、やっぱり一方通行はミサカの元に来てくれる。

一方「あーあ……コートがしわくちゃだァ。どォすンだよ、コレ……」

番外「うぅぅっぁぁぁ……」

一方「俺が付いて来なかったら、オマエは今頃補導されてたンだぞ?分かってンのか?」

 それでも一方通行は離そうとはしない。仕方が無いとでも言うように、ミサカの頭をポンポンと叩く。

 ミサカが泣き止むまで、それが終わる事はなかった――

                       ・
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108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:19:20.16 ID:DlTf6xADo
番外「うぅぅ……ぐすっ……」

一方「オマエが悪いンだぞ?水の音でビビるくらいなら初めから行くなってンだ……」

番外「ひっく……ごめんなさい……」

一方「仕方ねェな……。このまま帰ろォかと思ったが、最後まで付き合ってやる。オマエはどォしたい?」

番外「うん……もう帰る……」

一方「そォか……歩けるか?」

番外「うん…………」

一方「……しっかしなァ、何がオマエをここまで駆り立てるンだァ?」

番外「それは……」

一方「別に理由なンざに興味はねェんだがよォ。将来だったかァ?その鏡に映るもンはよォ」

番外「うん、だからミサカは……」

一方「もしかしてオマエ、クローンに未来は無いとか言い出すンじゃねェよな」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:22:50.31 ID:DlTf6xADo
番外「…………」

一方「図星か……オマエの事だ、どォせそンな理由だと思ったよ」

番外「……分かってたの?だから、ミサカに付き合ってくれたの?」

一方「同じ事を言わせンな。オマエがそれを望むンなら、それくらいは付き合ってやる」

番外「…………」

一方「ったくよォ、学校だってそォなンだろ?どォせならとか言って、俺も連れて行きたかったンだろォが」

番外「…………ギクッ」

一方「クカカカカッ、前に言ったじゃねェか。オマエは顔に出やすいンだよ。冥土帰しには何て理由を付けたンだァ?」

番外「そっ、それは……っ!」

一方「第1位の頭脳舐めンじゃねェぞ?…………古文以外ならな」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:26:05.57 ID:DlTf6xADo
番外「ぷっ……何それ!?」

一方「やっと笑いやがったか……。俺ァオマエのそンな顔は見たくねェって言ったばっかだろ?」

番外「あ……ぁぅ……」

一方「クソガキの顔に慣れちまってンのか……俺としたもンが情けねェなァ……」

番外「情けなくなんかない……あなたは情けなくなんかないよ……」

一方「……そォかい」

番外「………………あ」

一方「どォした?」

番外「あれ、警備員じゃない?」

一方「チッ、よりにもよって出口のほォかよ……。気付かれねェうちに行くぞ」

番外「あっ、待って……痛っ!!」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:29:24.14 ID:DlTf6xADo
一方「おィ、大丈夫か!?」

警備員「見つけたぞ!そこの君、待ちなさい!」

警備ロボ『ビー、ビー!』

一方「クソったれェ……。番外個体、立てるか?」

番外「いたたた……」

一方「チッ、思ったより速いな。……ちぃっと、こっ恥ずかしいが我慢しろよ?」

番外「……えっ?これってまたぁ!?」

一方「クカカカッ、またお姫様だっこするとはな。捕まりたくなけりゃ大人しくしてるこったァ!!」

警備員「おい!待ちなさい!!」

番外「ねぇ!あの人たちを傷つけちゃ駄目だよ!?」

一方「あァ分かってる。逃げるが勝ちだ」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:32:39.19 ID:DlTf6xADo
                        ・
                        ・
                        ・

一方「ここまで来りゃァ、心配ないだろォ。あとは出るだけ――」

番外「あれ?ここって保健室じゃないかな?」

一方「あァ?……そォみてェだが」

番外「…………」

一方「……見たいのか?」

番外「……でも、今は……」

一方「アイツらは撒いた。暫くは追って来ねェ」

番外「じゃあ……いいの?」

一方「良いも悪いもオマエが決めろ」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:36:14.92 ID:DlTf6xADo
番外「……見る」

一方「ロックはいけるな?」

番外「うん…………よし、開いたよ」

一方「さっさと終わらせて帰ンぞ」

番外「はいはい、っと……。今は……もう1時過ぎか、いけるかな……」

一方「……どォだ。普通の鏡だろ?」

番外「うーん……何にも変わったところはないね……」

一方「だろ?噂なンてその程度なんだよ。分かったなら帰って寝るぞ」

番外「はぁ……やっぱり噂は噂だったのか……」

一方「ぼさっとするンじゃねェ。捕まりてェのかァ?」

番外「あっ、うん。今、行―――!?」

一方「……?どォした」

番外「え……そんな……」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:37:42.34 ID:DlTf6xADo
 鏡に映ったそれをミサカは凝視する。さっきまで、何の変哲もなかった鏡には――

一方「…………何も変わったもンは映ってねェぞ?」

 一方通行が続けて鏡を覗く。しかし、その顔に変化はない。

番外「あ、あなたにはコレが見えないの……?」

 その鏡には――

一方「見えるも何も、映ってるのは俺とオマエだけだが……」

 そうだ。鏡にはミサカと一方通行しか映ってはいない。だけど――

 だけど、それは――
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:41:00.66 ID:DlTf6xADo
番外「えっ……ぁぁ……?」

 映っていたそれは、ミサカであってミサカではなかった。一方通行であって一方通行ではなかった。
正確に言うと、ミサカたちである事には間違いはないのだ。だけど、決定的に違うものがあった。
別に老いているとか、死んだ骸骨だった訳ではない。だけど、決定的に見て分かる違いがそこにはあった。

 ――ミサカは目の前の光景を受け入れる事ができない。

番外「あなたたちは……誰?」

 その問いに鏡は答えるはずもなし。だけど、それは正真正銘のミサカと一方通行だ。

 それなら、何故この鏡のふたりは――

 ――これは……ミサカの将来?ミサカの未来?
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:46:18.45 ID:DlTf6xADo
一方「おィ、オマエには何が見えているンだ?」

 ポロン、ポロロン。

 一方通行の声色と重なるように、ピアノの音がなった。丁度この真上、音楽室のほうからだ。
先程とは違う、はっきりとした音。どこかで聞き覚えのある曲。だけど、どこか寂しそうな音色。

番外「ひっ……」

一方「またこの音……ピアノかァ?」

 ミサカたちの脳裏に、あり得ない思考が駆け巡る。科学の結晶であるミサカにあってはならないもの。

番外「やっぱり、七不思議は実在したんだよ……」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:50:31.73 ID:DlTf6xADo
番外「行くの……?ミサカは嫌だよ、怖いよ……」

一方「一緒に行けば怖くねェだろ?この際だ、真実を確かめるまで帰るわけにはいかねェだろ」

番外「あぅ……」

 終わった……。ミサカはヘナヘナとその場に崩れ落ちた。
一方通行をここまで駆り立てるのは単なる興味心か、それとも第1位としてのプライドか。

一方「怖いならここで待ってるか?」

番外「……嫌だよ。ミサカをひとりにしないで」

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118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:53:11.06 ID:DlTf6xADo
一方「この曲……ショパンかァ?」

番外「そんな事はどうでもいいからさぁ……気味が悪いよ……」

一方「分ァってる。これを見たら帰るか……。ほら、ロックを解……あァ?ここだけ開いてンぞ」

番外「もう嫌だ!ミサカは帰る!」

一方「……仕方ねェ、俺は先にひとっ飛びして帰るか」

番外「……っ!?帰ったら覚えてろよ!?」

一方「ンじゃ、いざご対面と行きますかァ」

 ガラガラガラ、と一方通行は教室のドアを引く。あまり中は見えないけど、動いているものは一切無いように見える。

番外「…………誰もいないよ?きっともう逃げたんだよ。だからもう帰ろうよ……」

一方「チッ、テレポーターか?あのショタコンだったらぶっとばす」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 00:58:51.69 ID:DlTf6xADo
 すると、教室の中でざわめく様な声が聞こえた。足音も聞こえたような気もする。

番外「……っ!誰!?」

一方「オマエは……!?」

 ミサカたちは足音のほうへ顔を向けた。誰もいないと思っていた教室には、ふたりの人影が。

上条「おっ、やっぱ来てたのか。校舎のロックは解除されてるし、そこら中にいた警備はどっか行くし……。そっか、全部お前たちだったのか」

インデックス「あっ、あなたは!……それに、大きな短髪?」

 何でふたりがここに? それより、白装束を纏った女の子がミサカに向かって吐いた言葉が気になる。

番外「…………は?」

 …………短髪?それはお姉様の事を言ってるのかな? お姉様の知り合いなのかな?

一方「……おィ、何で三下がここにいるンだよ。これはオマエの仕業だってのか?」

上条「いや、実はインデックスに鏡の事をうっかり喋っちまってな。それでコイツ……言う事聞かなくて……」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:01:42.69 ID:DlTf6xADo
インデックス「とうま!魔法の鏡は本当かも!」

番外「じゃあ、さっきミサカが見たのは……?」

インデックス「いい?大きな短髪。鏡ってのはね、魔術に深い関わりがあるものなんだよ。伝承でも鏡は重要な役割として出てくる事も多いんだから」

番外「……マジュツ?伝承?」

上条「だからってなぁ、学園都市にそんな物があるはずがないって何度も言ってるだろ?」

一方「それは置いといてだな……三下、今聞こえたピアノはオマエが弾いたのか?それとも、コッチのシスターか?」

上条「それでここに来たのか」

一方「質問に答えろ」

少女「いいえ、全部私のせいなんです……」

 ジジジ……と、人工皮でできたピアノ椅子に人の形をした何かが浮かび上がった。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:04:52.54 ID:DlTf6xADo
番外「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁ!?」

一方「おィ待て!」

番外「離せぇ!ミサカ帰るううううううううぅっぅぅぅう!!!!」

少女「あなたは……」

一方「オマエは……」

番外「…………あれ?どっかで見たような……」

風斬「ロシアでお会いした以来ですね……」

インデックス「ひょうか!出てきちゃ駄目なんだよ!」

一方「……あのピアノの音、オマエが弾いてたのか?」

風斬「はい……夜じゃないと、人目を引いて弾けないから……」

一方「はァ……それでよく警備に見つからねェもんだ……」

番外「……じゃあ、あなたが七不思議の原因?あの鏡も?」

風斬「その事なんですけど……」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:07:22.02 ID:DlTf6xADo
上条「あぁー……さっき俺も聞いたんだけどさ、あまりよく分からなくて……」

一方「……あァ?」

風斬「あの鏡は魔法でも魔物でもありません。……れっきとした能力ですよ」

番外「…………能力?」

一方「物に能力が宿るなンて聞いた事がねェが」

インデックス「私はそれが魔道具かと思って確かめようとしたんだけど、鍵が掛かっててできなかったんだよ……」

上条「それで、音楽室のほうから音が聞こえたら行ってみると、風斬がいたって訳だ」

番外「とりあえず、ピアノの音については解決したけど……その能力ってのは?」

上条「AIM拡散力場が関係してるってまでは理解できたんだが……すまん風斬、もう一度説明してくんねーか?」

風斬「えぇと……私はみなさんの能力で作られた存在だから分かるんです。これにはAIM拡散力場が関係していて……」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:10:24.71 ID:DlTf6xADo
番外「AIM拡散力場って、能力者が無意識に出す微弱な力の事でしょ?何でそれが関係してるの?」

一方「RSPK症候群、か……。差し詰め、精神系能力者が病ンでるってとこかァ?」

風斬「はい……。この近くは学生も多いですから。それに、精神系能力は制御も難しいし……」

番外「あーるえすぴーけー症候群?」

一方「簡単に言うと、心理的なトラウマを持った能力者の無自覚な暴走……だな。この規模だと、ひとりって訳でもなさそォだ」

風斬「あの鏡は未来を映し出すのではありません。鏡に幻覚が映っているだけ……」

一方「テメェの望む未来が幻覚になって現れるってかァ?なら、他の七不思議も似たようなもンだな。……ったく、精神病患者なンて放置するンじゃねェよ」

インデックス「あなたたちは何か見えたんだね?」

一方「…………いや、俺には見えなかった。あれは現象そのものが不安定だからな。見たのはコイツだけだ」

番外「うん……」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:12:34.26 ID:DlTf6xADo
上条「そういう訳なんだ。原因を抑えようにも、その能力者を見つけないといけないんだが……」

風斬「心理に直接かかるものですから認知しにくいんです。だから、都市伝説や七不思議のように広がって……」

番外「はぁ……未来を映し出す鏡なんてなかったんだね」

一方「連れ回された俺はどォなるンだよ……」

番外「でも良かったじゃない。オカルトなんかじゃなくってさ。それに、夜の散歩も悪くなかったでしょ?」

一方「オマエは泣いてたけどなァ?」

番外「そっ、それを言うなあああぁぁぁ!!!」

一方「うォ!?電撃飛ばすンじゃねェ!!」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:14:43.19 ID:DlTf6xADo
番外「あれ?ってことは…………」

 ――――つまり、ミサカは見たアレは。

 ミサカの将来でも未来でもなくて――

 つまり…………その………………。

一方「オマエが見たっつーのは、オマエ自身が望ンだ未来ってこったな」

 ……・ミサカが……望んだ事!?

番外「~~っ!!」

一方「あァ?どォした?」

番外「…………ふ」

一方「…………ふ?」

番外「ふみゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

一方「……うォォ!?ここでそれは止めろォォォォ!!!」

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126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:21:16.15 ID:DlTf6xADo
一方「もォ2時過ぎか。これじゃ、帰ってもあンまし寝られねェじゃねーか」

番外「どうやっても、七不思議は七不思議なんだね……」

 事の真相を明らかにした後、ミサカと一方通行はお互いに疲れきった表情で、トボトボと帰路に就いていた。

 流石は学園都市、七不思議も科学で成立するとは滅茶苦茶な街である。

一方「……最初にあンなデマを流した奴は誰なンだろォな?」

 結局、鏡は魔法でも何でもなかった。鏡はただの鏡。未来なんで誰も知る事はできない。
もしも……もしも、あの鏡が本当に未来を映し出すのであれば、ミサカには何が見えたんだろう?

 あの時、鏡に映ったもの。それは――
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:24:34.64 ID:DlTf6xADo
 鏡のミサカが身につけていたもの、それはコートでもマフラーでもなく、ドレスだった。
世界のどんな白よりも白い、純白のドレスに同色のヘッドドレス。

 鏡の一方通行はというと、その容姿からは似合いそうに無い黒の燕尾服を着ていて、胸には赤いバラが。

番外「………………」

 ミサカはその衣装を知っている。あれは――

 俗に、女の子の一生の夢とされているイベントのもの。だけど、キスの意味すら分からないミサカに、どうしてそれが見えたのか。

一方「そォいや、オマエが見たのは何だったンだ?」

番外「えっ!?」

 あれは、本当にミサカが望んだものだったのだろうか。それとも、妹達の願望が無意識に働きかけたものなのか。
それはミサカには分からない。観覧車の時といい、ミサカには分からない事ばかりだ。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:26:43.20 ID:DlTf6xADo
 このままでは、ミサカの口癖が“分からない”になるんじゃないかな? それだけは勘弁だ。

 ――でも、あの時の気持ちとさっきの気持ち……それはどこか似ている感じがする。

一方「……どォした?」

番外「……ミサカがお洒落してるだけだったよ」

 そう、ただのお洒落。ミサカは正直に言うつもりなどない。本当の事を言えば馬鹿にされるかもしれないのだから。
そもそも、アレがミサカの望みだなんて、ミサカにも分からないのだから。

 それでもミサカはこう思う。

 ミサカは今を楽しんでいる。今以上の幸せを望んでいるはずはない、と――
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:28:03.11 ID:DlTf6xADo
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一方「すっかり遅くなっちまったな」

番外「ミサカはもう眠いよ……」

 家に帰ってみると、玄関が明るい。ミサカたちが出る時は暗かったはずなのに。
ちょっと変だなと思いつつ、ドアをそっと開けて中を覗き込んでみると、そこには最終信号と黄泉川たちが怖い顔をして待っていた。
腕を組んで、まさに阿修羅である。背中からは黒翼さながらのどす黒いオーラが溢れている。

番外「ねぇ……みんな、どうかしたの……?」

一方「そォいや、オマエとはぐれた時、一度だけ携帯に掛けたンだが……」

番外「うぁっちゃー……」

 どうやら、ミサカの携帯が彼女たちを起こしてしまったらしい。一方通行とミサカは冷や汗ダラダラ。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:29:41.46 ID:DlTf6xADo
打ち止め「……どこに行ってたの?ってミサカはミサカは微笑みながら聞いてみたり」

 最終信号が何か怖い。ミサカには上位命令は聞かないけど、ミサカの本能が危険だと告げている。

芳川「……お姉さんもちょっと気になるわね」

 芳川は部屋の奥からジーっとコッチを覗いている。ってか、あなたはお姉さんって歳じゃじゃないだろ。
それより、さっさと仕事探せこの暇人。…………いや、ミサカは別にいいんですよ? ミサカは学校に通う高校生です。

黄泉川「ちゃんと納得できる説明をするじゃんよ」

 それより一番怖いのはこの人だ。ミサカが買ったあの木刀を肩に乗せて、こめかみには青筋まで立っている。
諭すような静かな声に、とてつもない怒りが込められているのはどう見たって明らかだ。
このままでは、格闘ゲームさながらの100HITコンボでK.Oされるのは間違いない。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:31:07.98 ID:DlTf6xADo
番外「ちょ、ちょっとコンビニまで……」

 言い訳が通用するとは思えないけど、人は1%の希望があればそれにすがり付いてしまう。
だけど、ミサカが出かけて早2時間以上。言い逃れができるはずなんてなかった……。

黄泉川「あ゙ぁ!?」

番外「ひぃっ!」

一方「諦めろ。誰にだって、どォしようもねェ時はある……」

 一方通行は観念したように靴を脱いだ。ミサカもそれに続く。……今度こそ終わった。何もかも。

 その後、太陽が昇るまでミサカたちはこっ酷く叱られた。もちろん、フローリングの直に正座である。
コンクリートや剣山がなかっただけでもマシだったというものだが、そんな冗談を言える状態ではない。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:32:34.55 ID:DlTf6xADo
 黄泉川のありがたーい説教が終わる頃には、ふたりとも足が痺れてふにゃふにゃだった。
発電系能力者でも足は痺れるんだね……。

番外「ミサカ、もう夜遊びはしないよ……」

一方「俺も真夜中のコンビニに行くのは当分やめにするわ……」

 これに懲りて、夜間外出はやめよう。ふたりはそう心に誓った。まぁ、3日坊主で終わる気もしない訳ではないけど。

打ち止め「ミサカからもお仕置きじゃー!ってミサカはミサカはふたりの足をツンツン!」

 そんなミサカたちに、最終信号が追い討ちを掛ける。今のふたりに逃げる術はない。
立つ事もままならないふたりに、最終信号の容赦の無い一撃が足へと襲い掛かった。

番外「やめっ、今触ったら……うぎゃあああぁぁぁぁ!!!」

一方「おィ、クソガ……きがあ゙あ゙あァァァァァ!!!」

 ミサカと一方通行の悲鳴が、ニワトリよりも早く朝を告げる。辺り一帯にそれは響いた。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/28(月) 01:34:51.54 ID:DlTf6xADo
 ただいま午前6時、雲ひとつ無い良い天気である。お出かけするには、打って付けの日のはずなんだけど――

番外・一方「ぐふっ……」

 静かになった部屋に、今流行りの着メロが聞こえた。それはテーブルの上に忘れた、ミサカの携帯からだ。
心理定規からかな? こんな朝早くにメール? もしかして、休みが取れたのかな?

 だけど、今のミサカは動けない。立ち上がろうとしても、ミサカの足は生まれたての小鹿のように崩れ落ちる。

 仕方ない、メールはあとで見よう。心理定規には悪いけど、ミサカはただいま諸事情により出る事叶わず。

一方「おィ……今、携帯鳴ったンじゃねェのか……?」

番外「無理……あなたが取って来てよ。お得意のベクトル操作で足の痺れなんか取れるでしょ……」

一方「クソガキに補助切られた。身体が動けねェ……」

番外「はぁ……どうしてこうなったのかな……」

一方「俺に聞くな。あァ……床が冷てェな……」 
 
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:19:18.11 ID:pH734fT3o
その日の夜

 一方通行はベッドの中で、ふと疑問に思っていた。

 何故、番外個体はここまで自分に構ってくるのか。その疑問自体は今に始まった事ではないのだが……。
だが、ここ数日は格段にレベルアップしてきている。真夜中に起き出したと思えば、罰ゲームだと言って寝付くまで抱けと言う。
本人にも分からないと言うのに、急に抱きついてキスまでしてくる。まぁ、前者が罰ゲームのつもりでは無かった事くらいは知っていた。

一方「あンな顔してりゃ分かるだろォが……」

 あの時、番外個体は怯えていた。何か怖い夢でも見たのだろう。
はたまた、普段と違う場所で、単に寝付けなかったのか。一方通行には、どちらかに思えてならなかった。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:22:06.01 ID:pH734fT3o
 では何故、観覧車で番外個体があのような行動を取ったのか。

 番外個体は言っていた。「自分だって知らない。自分だって知りたい。何でこんなにモヤモヤするのか。何でこんなに胸が痛いのか。」

一方(負の感情……かァ?)

 一方通行には、それが何なのか分からなかった。本人に分からないものが自分に分かるはずがない。
だが、あの不安そうな顔を見れば分かる。

 ――番外個体はあの時、確かに戸惑っていた。だからこそ、その不安を取り除く為にあのような行動を取ったのだ。

 一方通行はそんな彼女を放っておく事などできなかった。そして、二度とも番外個体の望む通りにしてやった。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:23:56.54 ID:pH734fT3o
 一方通行は思う。自分がその時に何を思おうが、何を感じようが、彼女が普段と同じ顔になればそれでいい。
自分のするべき事は、彼女たちの全てを護ること。それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 だが、一方通行は感じてしまった。

一方「アイツ……あンなに温かかったンだな……」

 一方通行は人の温もりを知っている。打ち止めがそれを自分に教えてくれた。
彼はそれを決して表には出そうとしないが、彼女たちを護る為なら何だってする事で表に出そうとする。

 番外個体が落ち着いたのも、恐らくは人の温もりを感じたからだろう。一方通行は自分を番外個体に重ねる事で理解した。


 ――何故なら、自分も同じだったから。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:27:54.95 ID:pH734fT3o
一方「なら、あれは……」

 しかし、番外個体を抱き締めた時に一方通行が感じたのは温もりだけではなかった。
打ち止めと共にいる時には感じる事のなかった、ある種の愛おしさ。一度離せば消えてしまいそうな、そんな儚さが番外個体にはあった。

一方「ったく、柄じゃねェってのによォ」

 結局、あの日の夜は彼女が寝付くまでまで抱き締めてやった。その次の日はゴンドラが1周するまで抱き締めてやった。
それが単なる庇護欲であったのか、一方通行には分からない。それでも……彼女が元に戻った今はどうでもよかった。それに……手を出す事も一度もなかった。

 別に、番外個体の体つきに関心がない訳でもない。しかし、自分が妹達にしてきた事を考えるとそれも当然の事だろう。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:30:05.05 ID:pH734fT3o
 自分は1万人以上の妹達を奪った。その事実は変わらない。だが、打ち止めは自分を赦しているだろうし、他の妹達だってそうだろう。

 だが――

 だが、番外個体はどうなのだろう。負の感情を拾い、自分に何かと悪態を付くアイツは――

一方「アイツは俺の事をどォ思っているンだろォな……」

 学園都市に帰ってから、番外個体が自分の命を狙うような事は無い。
寧ろ、方向性が変わっただけで、四六時中狙われているのは今も変わってはいないのだが……。

 番外個体は常に自分の事を優先して考え、行動している。一方通行はそれについて特に気にしてはいない。
それによって自分が損をするなら注意するまでの気持ちしかない。負の感情が元になっているのなら、それも自分の責任だからだ。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:33:59.66 ID:pH734fT3o
 学校に行きたいと言い出した時も、自分は嫌だと言わなかった。正しくは、あまりにも突然で言えなかったのだが……。

一方「まさか、学校に行った事で何かが……?」

 番外個体だけではない、自分も何か変わっている。いや、生まれてきている。自分でも気付かない程の、小さな何かが。

 番外個体が自分に弱みを見せたのと同じように、自分は番外個体に何かを……?

一方「…………チッ」

 一方通行は気付いていない。番外個体が一方通行に抱いた感情が何なのかを。

 一方通行は気付きつつあった。自分が番外個体に感じていた、あの愛おしさが何なのかを。

一方「…………寝るか」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:35:49.97 ID:pH734fT3o
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番外「一方通行!起きて!!」

一方「ン……あと5分……」

番外「あと5分じゃない!今すぐ起きるの!」

一方「寒ィ、布団返せよ……まだ9時じゃねェか」

番外「心理定規が帰って来てるんだよ!ていとくんが一方通行も来いってさ!」

一方「……はァ?」

pipipipipi!

番外「あ、電話だよ?」

一方「ったく、こンな時に誰だァ……?」ピッ
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:38:13.96 ID:pH734fT3o
垣根『おぉ!一方通行か?今日こそダブルデートしようぜ!』

一方「」

垣根『今からセブンスミストで待っt』

一方「……」ピッ

番外「誰からだった?」

一方「……オマエ、勝手に俺の番号教えやがったな?」

番外「…………ギクッ」

一方「……お仕置き、だな」

番外「あははは、寝たけりゃまだ寝ててもいい……よ?」

一方「悪い、今のですっかり目が覚めちまったみてェだ」

番外「……ひぃぃぃ!!逃げろぉぉぉ!!!」ダダダダダ

一方「逃がすかァァ!!!」カチッ
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:40:14.82 ID:pH734fT3o
番外「何!?ちょっとした悪戯でしょ!?」

一方「流石の俺も今のは我慢ならねェな。これでも喰らいやがれェ!!」

番外「や、やめっ……あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

一方「1本橋こーちょこちょってなァ!まだあと9往復残ってンぞォ!?」コチョコチョ

番外「ぎゃひゃひゃひゃ!ミサカが悪かっひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

一方「おらァァァァ!!!」コチョコチョ

番外「もうやめああああぁぁぁ!!!」

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152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:42:29.67 ID:pH734fT3o
番外「」ビクンビクン

一方「はァ……はァ……。ベクトル1本橋だ、参ったか」

pipipipipi!

一方「またメルヘン野郎かァ……?」ピッ

垣根『おい!喋ってる最中に切るのは酷いだろ!?』

一方「悪い。ちょっとお仕置きしてたからな」

垣根『……お仕置き?』

一方「いや、コッチの話だから気にすンな。……で、何だってェ?」

垣根『だからな、またお前らとでどっか行こうぜ!』

一方「…………はい?」

垣根『とりあえず、今から来てくれ!詳しい事は心理定規からあの子にメールで送ってるだろ?』

一方「ふざけンじゃねェぞ。俺は知らねェ」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:45:21.49 ID:pH734fT3o
垣根『心理定規もそのほうが楽しいって言うからな。それにあの子も楽しみにしてただろ?』

一方「……ちょっと待ってろ」

一方「…………番外個体、いい加減に起きろ」

番外「……はっ、ここはどこ?ミサカは誰?」

一方「なァ、オマエは知ってやがったンだな?」

番外「うん、昨日メールで心理定規が言ってたし」

一方「何で俺に言わねェンだよ……」

番外「あひゃひゃひゃひゃ!ドッキリみたいでよかったでしょ?」

一方「……されてェのか?1本橋」

番外「ひぃっ!ごめんなさーい!」ドゲザー

垣根『もういいか?』
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:47:43.08 ID:pH734fT3o
一方「仕方ねェな……付き合ってやる。ただし、これはオマエの為じゃねェ」

垣根『分かってるよ。あと……打ち止めだったか、あの子も連れてくるか?』

一方「……いや、アイツは駄目だ。例え今のオマエでも、暗部には触れさせたくはねェからな」

垣根『心配性だな。それとも過保護ってやつか?あとで泣かれてもしらねーぞ?』

一方「うるせェよ。……切るぞ」

垣根『あぁ、またな。楽しみに待ってるぜ』ピッ

一方「……面倒臭ェ」

番外「面倒臭いと言っても、実はノリノリな一方通行なのであった」

一方「変なナレーション付けンな。どォせ断っても無意味なのはよォく知ってる」

番外「うん。だって、あなたがいないと意味が無いもん」

一方「はァ、クソガキには何て言えばいいンだよ……」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:54:33.37 ID:pH734fT3o
番外「最終信号なら映画で釣れたよ?今頃は芳川と行ってるんじゃないかな。カナミン……だっけ?」

一方「そのチケット代も俺の金なンだがな…………不幸だ」

番外「ねーねー、早く行こーよー」

一方「……引っ張ンな。袖が伸びる」

番外「じゃあ、ミサカは急いで着替えてくるから、あなたも準備しててよ?」

一方「……あと、ついでに鍵持って来い。今日は黄泉川もいねェンだろ?」

番外「はーい」タタタタタ

一方「出かける前なのに、早く帰りたいってどォいう事だよ……」

番外「ねーねー!どっちの服が似合うと思う?」

一方「あァ?どっちでも変わンねェよ。……強いて言うなら右だ」

番外「え?ミサカ的にはコッチなんだけど」

一方「それを言うなら初めから聞くな!」

番外「あひゃひゃひゃひゃ!!!」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 00:57:10.58 ID:pH734fT3o
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セブンスミスト前

垣根「よう、一方通行。待ち合わせ時間はとっくにオーバーしてるぜ?」

一方「それは俺のせいじゃねェよ。コイツがちンたらしてるからだ」

番外「何それ!?あなたがもっと早く起きればよかったんじゃない!!」

一方「俺は起こされるまで知らされてなかったけどなァ?」

心理「まぁまぁ、時間はある事だし……」

一方「ってか、この前会ったばっかでもう戻って来てンのかよ」

垣根「この日の為に頑張ったからな。サービス残業って慣れると快感になる」

一方「ランナーズハイみたいに言うンじゃねェよ……」

番外「それで今日はどこに行くの?」

心理「そうね、その事なんだけど……」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 01:01:18.71 ID:pH734fT3o
一方「まさか、ノープランなンて言い出すンじゃねェよなァ?」

垣根「そんな事しねーよ。今日はそうだな……色々回ろうかと思ってな。因みに、どこ行くかは決めてねぇ」

一方「それをノープランって言うンだよ!ていとくゥゥゥゥン!?」

番外「明日は月曜日だし、日帰りで行けるところがいいね」

垣根「俺は何泊でもいいぜ。有給取っておいたくらいだし」

心理「この人、休みが決まってから馬鹿に磨きが掛かってるのよ」

番外「馬鹿にメルヘンって、心理定規も大変だね……」

一方「家を空けると色々と面倒だからな。日帰りで行けると助かるンだが」

垣根「俺の未元バスに常識は通用しねぇ……が、今日はマイクロ未元バスなんだ。性能ガタ落ちだぜ……」

一方「まァ、あンな大型で来られても迷惑甚だしいがな」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 01:03:41.49 ID:pH734fT3o
垣根「別に泊まりでもいいだろ?」

心理「いいえ、学校を休むのは駄目だと思うわよ?保護者の方々も心配すると思うし……」

垣根「なぁ、お前は学校とデート、どっちがいい?」

番外「うーん…………こっち!」

垣根「だよな!」

一方「…………おい、学生が堂々とサボり宣言かよ」

番外「でも、黄泉川たちに怒られるから駄目だね」

心理「一応、外に出る為の許可証を渡しておくわね」

一方「外だァ?ンな事できンのか」

垣根「色々回るっつったろ?ほら、許可証だ」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 01:05:39.51 ID:pH734fT3o
番外「おう、こりゃ本物だ。…………ってあれ?」

一方「なァ……ひとつ聞いてもいいか?」

垣根「何だ?」

一方「……何で俺のが百合子なンだよ。どォ考えてもおかしいだろォが。しかも、何だこの花飾りは?」

心理「第1位の一方通行だと許可が下りなかったのよ」

番外「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!プライベートでも百合子ちゃん!!腹いてぇ!!!」

垣根「冥土帰しに頼み込んでやっとできたんだぜ?寧ろ、感謝して欲しいところだ」

一方「あン医者ァァ……。だが、第2位のオマエはどォして普通の許可証なンだ」

垣根「俺は観光バスの立場上……な?」

心理「運転免許については聞かないで頂戴」

一方「クソがァ……」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/30(水) 01:07:27.76 ID:pH734fT3o
番外「書類上だからいいじゃない。それとも、本当に百合子ちゃんで行ってみる?」

一方「分ァったよ……。この格好のまま行けるンなら我慢してやる。だが、今日のうちに帰る。いいな?」

垣根「よし!じゃあ揃った事だし、いざ出発だ!」

番外「おー!」

一方「…………お、おォー」

心理「別に無理して馬鹿に合わせなくてもいいのよ?」

一方「…………お、おォ」 
 
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:27:16.97 ID:iZT6UQuso
テクテクカツカツ........

一方「……でェ、俺たちはどこに向かってンだ?わざわざ歩いてまでよォ」

垣根「どこって、最初は朝飯だろ?」

一方「はァ?」

番外「あぁ、だから朝ご飯は食べなくてもいいってあったんだね」

心理「そういう事よ」

一方「確かに、朝飯を食べる暇なンざなかったが……こンな時間にかァ?中途半端だろ」

垣根「心配すんな。そんな重たいものじゃねぇよ」

心理「美味しいホットドッグ店があるのよ。行った事無かったから気になってね」

一方「美味しいホットドッグ……クソガキが言ってたなァ。ひとつ2000円のやつだろ?」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:28:20.81 ID:iZT6UQuso
番外「それ、ミサカも食べたかったやつだ!」

垣根「おっ、そうだったのか」

心理「女の子にも人気があるみたいだしね」

番外「場所ならミサカ知ってる!ほら、早く行かないと売り切れるかも!!」タタタタタ

垣根「それはやばいな!もたもたしてると無くなっちまうぜ!」ダダダダ

一方「こンな朝っぱらから売り切れねェよ……」

一方「ハァ……アイツらは落ち着きってのがねェのか?なァ、心理定――」

心理「」イナイ

一方「…………うおォォォォい!?誰もいねェのかよ!」
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:30:23.02 ID:iZT6UQuso
テクテクテクテク......

番外「ねぇ、食べたらドコ行く?」

垣根「そうだな、最初はゲーセンなんかどうだ?」

心理「それなら、新しくオープンした所を知ってるわよ」

垣根「あぁ……地下街じゃなくて、地上の店丸々ひとつ使ったやつだろ?確か、ここと同じ学区だったよな」

番外「じゃあ、そこに行く?」

垣根「一方通行はどうす……っていねぇぞ?」

一方「はァ、はァ……オマエら、先に行き過ぎだろ」

番外「あなたが遅いんだよ」

一方「俺を置いて全力疾走してた奴が何言ってンですかァ!?」ガシッ

番外「痛い痛い!そんなに肩を掴んだら折れちゃうよ!」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:32:40.13 ID:iZT6UQuso
垣根「お前、力付いてきてんのな」

一方「コイツのせいでな」

心理「そのうち、普通に歩けるようになるんじゃないかしら?」

番外「そうなったらミサカのお陰だね!」

一方「あ゛ァァ!?」ガシィッ

番外「だから痛いって!今のは冗談じゃない!?」

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180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:35:45.28 ID:iZT6UQuso
アリガトゴザマシター

垣根「これがそのホットドックか?」

一方「そこらのと大して変わらないじゃねェか」

心理「使ってる食材が違うのかしら?並んでた子も、どこか気品があったけど……」

番外「美味しいから別にいいんじゃないの?」モグモグ

垣根「まっ、そうだな」

一方「おィ、鼻にマスタード付いてンぞ?ったく、何度注意すりゃいいンだよ……」

番外「……へっ?どこ?」

心理「鼻のてっぺんよ」

一方「あンま触ンな。そンなに擦ってっ――」

番外「ひいぃぃぃ!!染みるぅぅぅ!!」ツーン

一方「……オマエ、成長する気あンのか?垣根、その紙寄越せ」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:37:54.96 ID:iZT6UQuso
垣根「これか?」

番外「痛い!痛いよぉぉぅ!!」

一方「ちっと、こっち向け。暴れンじゃねェぞ?……こンな癖くれェ治せってンだ」ゴシゴシ

心理「優しいお兄さんね」

垣根「……全くだ」

心理「あら、あなたの頬っぺにもケチャップ付いてるわよ?」

垣根「……ここか?」

心理「もうちょっと上よ」

垣根「こっちか?」

心理「違うわ、ここよ……」chu!

垣根「……っ!」

心理「ふふっ、ご馳走様」

垣根「あ、ありがとな……」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:40:34.09 ID:iZT6UQuso
一方「…………オマエ、こンなンでよく外食したいなンざ言えるよなァ?」

番外「だって鼻が……あれ?ミサカのはどっちだっけ」

一方「こっちだろ?」

番外「もっと大きかった気がする。だからこっちだよ」

一方「オマエ、バクバク食ってただろォが。こンなに残ってるはずがねェ」

番外「小さい事は気にしないの。じゃあ、ミサカはこっちー!」

一方「少しは気にしろよ……」

垣根「なぁ、普通は他に悩む事があるだろ?間接かも?あわわ、どうしよう?とかさ」

一方「悪ィな、コイツはそンな奴なンだよ。……多分な」

心理「あなたは気にしないのね?」

一方「腹ン中に入っちまえばどれも同じだろ?」

垣根「お前もお前だな。少しは異性ってもんを意識しろよ」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:41:51.56 ID:iZT6UQuso
番外「そうだよ。いっつもミサカを子供扱いしてさ」

一方「実際にやってる事が子供と大して変わらねェだろォが。それを今更気にしろだァ?そンな台詞はひとりで寝れるようになってからにしろ」

心理「……えっ、ひとりで寝れないの?」

垣根「……もしかして、一緒に寝てるとか言わないよな?打ち止めと3人で川の字になって寝てんのか?」

番外「寝てない!あの日はただ――」

心理「寝たのね」

垣根「寝たんだな」

番外「そ、そうじゃないよ!確かに寝てたけどさぁ!」

一方「ぎゃははは!番外個体ちゃンは、夜に寝れないからって人の布団に入って来るよォな子なンですよォ」

番外「ぐぐっ……だから、あれは罰ゲームって……っ!」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:43:33.43 ID:iZT6UQuso
一方「あンな怯えた顔で罰ゲームってかァ?そりゃねェわ、下手な演技よりも酷かったしな」

心理「……怖い夢でも見たのかしら?」

垣根「妹達の事だから、実はお前に殺される夢だったりしてな。俺だったら3日は寝れねぇわ……今でも冷蔵庫の夢を見るんだぜ?」

番外「なっ!?」

一方「……過ぎた事はもういい。それより、これからどこ行くンだ?」

垣根「そうだな……この時間はどこも開いてると思うが。さっき言ったゲーセンなんかどうだ?」

番外「ミサカもゲームセンターに行ってみたい!」

心理「そんなのでいいの?」

一方「もっと他に行く場所ならあンだろ?」

番外「だって、ミサカはまだ行った事ないし。学校のみんなは帰りによく寄ってるって言うよ?」

垣根「俺は悪くないと思うぜ?腹ごなしに丁度いいしな」

一方「ゲーセンねェ……最近行ってなかったな」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:46:02.62 ID:iZT6UQuso
心理「番外個体、一緒にプリクラ撮りましょう?」

番外「うん!いいよ!」

垣根「なぁ、一方通行……」

一方「野郎と撮る趣味はねェ」

垣根「ちぇっ……」

一方「気持ち悪ィンだよ。あと、さり気無く肩に手を回すンじゃねェ!!」

垣根「それくらいいいだろ!?」

番外「じゃあさ、みんなで撮ればいいじゃない」

垣根「それもそうだな!」

一方「……チッ、勝手にしろ」

番外「一方通行、ふたりでも撮ろうね?」

一方「……覚えてたらなァ」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:48:06.71 ID:iZT6UQuso
テクテクカツカツ......

番外「……ここ?ミサカが教えて貰ったゲームセンターは地下街にあるって聞いてるんだけど」

一方「俺の知ってるゲーセンはもっと薄暗い感じだったンだが……何で地上にあるんだ?」

垣根「お前たちと会う前にチラシを貰ってな。新しくできたとこみたいだぜ」

心理「ゲームセンターというか、ちょっとしたアミューズメントパークみたいね」

番外「ほぇー……ざっと見て5階建てくらいあるんじゃないかな」

垣根「まぁ、規模がでかいってだけで、中は特に変わらないと思うぜ」

一方「オマエはあンま離れンじゃねェぞ?」

番外「れっつごー!」タタタタタ

一方「おィ!離れンなって今言ったばっかだろォがァァァ!!」ガシッ

番外「ね、ね!ミサカ、UFOキャッチャーってのをしてみたいんだけど!」
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:50:39.03 ID:iZT6UQuso
一方「引っ張らなくても言えば分かる。オマエにできンのかァ?」

番外「やってみないと分からないよ?あなたはできるの?」

一方「そォいや、やった事なかったな。ま、俺にできねェ事はねェと思うがよォ」

垣根「おい、入らないのか?」

一方「悪ィ、今行く」

番外「ねぇねぇ、ミサカたちも手を繋ごうよ」

一方「あァ?どォしてだ?」

番外「心理定規がしてるみたいに、ミサカもしてみたいなーって。だって、デートなんでしょ?」

一方「……ま、そのほォがオマエも離れずに済むな。ほらよ」

番外「はーい」ギュッ

一方「……はァ」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:53:16.82 ID:iZT6UQuso
番外「心理定規とていとくんはどこ行ったのかな?」

一方「メルヘン野郎の事だ。どォせ、スイートランドとかやってンじゃねェの?」

垣根「おらぁ!これでどぉだぁぁ!!」ザクザクザクッ

一方「…………ほらな」

番外「何あのお菓子の山!?すっげぇぇぇ!!!」

心理「番外個体も食べる?」

番外「こんなにどうしたの!?」

垣根「……お菓子タワーって知ってるか?あれを崩すと纏めて落ちてくるんだぜ?」

一方「こンな菓子に金使ってンじゃねェよ」

番外「一方通行!ミサカもこれやりたい!」

一方「あァ!?オマエ、こンなンがしたかったのか?」

番外「だってお菓子だよ?ざくざくだよ!?」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/31(木) 23:55:20.63 ID:MTej7Fcf0
あれって上手い人がやると1週間分ぐらいの菓子の山ができるよな……ww
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/31(木) 23:56:24.90 ID:iZT6UQuso
一方「ざくざくって何だよ……仕方ねェな。両替してくっから待ってろ」

垣根「悪ぃ、俺のも両替してきてくんねーか?」

一方「どンだけ使ったんだよ……。1000円分でいいンだな?」

心理「ごめんね?」

一方「……気にすンな」

番外「途中で寄り道なんかしちゃ駄目だからねー?真っ直ぐ帰って来るんだよ?」

一方「分ァってるよ。俺がこンなゲームに惹かれるかってのォ」

カツカツカツ......

一方「……さて、両替機はどこだァ?コインばっかで見当たらねェぞ」

一方「…………お、あれだな。って、あれは三下か?」

上条「ふぬうううぅぅぅぅ!!!」カシャカシャカシャ
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:01:24.44 ID:jApdZblDo
一方「おィ、そこを退け」

上条「おっ、一方通行か?こんな所で会うなんて珍しいな」

一方「ンな事はどォでもいい。両替しないなら俺に替われって言ってるンだ」

上条「それがな……札を飲み込んだまま出てこないんだ……」

御坂妹「ですから、今時2000円札というのはどうでしょうか、とミサカは頭を抱えます」

上条「あぁ……奨学金はまだだし、これからどうすれば……」

一方「オマエ、妹達だな?そのネックレス……10032号だったか」

御坂妹「はい。ミサカの検体番号は10032号です、とミサカはネックレスをちらり」

一方「こンな所で何してるンだ?いつもの病院はどォした」

御坂妹「冥土帰しが外出しているので、ミサカも外を満喫しているのです」

上条「いつもの公園で御坂に会ったと思ったら妹のほうでな。それで、こいつがどこか行きたいって言うから……」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:03:13.10 ID:jApdZblDo
一方「活発的なこって……。おィ、三下。飲まれたのは2000円でいいンだよな?」

上条「あ、あぁ……。それがどうしたんだ?」

一方「……ちょっと退いてろ」カチッ

上条「ま、まさか!?それは止めてくれ一方通行!」

一方「ふゥ……木原くン直伝!右斜め60度からのベクトルチョーップゥ!!」ガッシャーン

上条「どっしぇー!!!」

ジャラジャラジャラジャラ........

一方「ギャハハハ!今日は大解放サービスってなァ!!」

御坂妹「これは……お姉様よりも激しいのでは、とミサカは第1位と第3位の格差を改めて認識します」

一方「ほらよ、100円玉20枚でいいンだよな?」チャリンチャリン
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:06:16.83 ID:jApdZblDo
上条「あ、ありがとな……」

御坂妹「しかし、未だに出続けているコレはどうするのですか?と両替機に視線を落としますが。……まるで100円玉の海です」

一方「あー……どォすっかなァ。そこまで考えてなかったぜ」

上条「ま、まぁいい!俺たちは行くから、あとは任せたぜ一方通行!あと、助かったぜ!」ダダダダ

御坂妹「ではまた、とミサカは身を翻し、あの人に続きます」タタタタ

一方「とりあえず、アイツの分と垣根に頼まれた分を持ってくか……。札はここに置いてけばいいだろ」

番外「一方通行ぁぁ!まだぁぁ!?」

一方「おォ、今戻る」カツカツカツ

ジャラジャラジャラ......

店員「どうしてこうなった」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:08:47.92 ID:jApdZblDo
カツカツカツ......

垣根「遅かったじゃねぇか。先に遊んでた訳じゃねぇよな?」

一方「両替機が混ンでただけだ。ほら、両替の分」

心理「ありがとう」

番外「早くやろうよ!ミサカもお菓子取りたい!」

一方「あンま無駄遣いすンなよォ?」

番外「えぇっとぉ……ここを押したらいいんだよね?」

心理「そうそう。あとは、山が回ってくるタイミングに合わせて……今よ」

番外「えいっ!」ポチッ

ザックザック

垣根「それで、上のステージの動きを見て降ろすんだ」

一方「菓子落とすのがそンなに面白れェのか?」

垣根「結構ハマるもんだぜ?俺なんか小銭が無くなっちまった」

一方「さっき来たばっかでもォねェのかよ。もォオマエは両替すンな」
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 00:09:30.19 ID:rRk/rPyF0
もうやだこのLV5達
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:10:40.86 ID:jApdZblDo
番外「えいっ!」バサッ

心理「その調子よ。この感じでタワーを崩していくの」

番外「なんだか楽しいね!」

垣根「おおっ!?何だあのでっかいKitKatは!?」

一方「また菓子かよ!!どンだけ好きなンだよ!?」

垣根「俺、ちょっと突撃してくるわ!行くぞ、心理定規!」ダダダダ

心理「ちょ、ちょっと待ってよ」トトトト

番外「よっしゃ!タワー崩したらいっぱい出てきたよ!」

一方「ゲーセンって菓子取る場所だったかァ……?」

番外「見て、こんなにいっぱい!ってあれ?ていとくんたちは?」

一方「……でっかいKitKatを取りに行った」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:12:06.04 ID:jApdZblDo
番外「……はぁ?でっかいKitKat?」

一方「俺にもよく分からン。……ほォ、オマエも結構取れたじゃねェか」

番外「凄いでしょ!これでもミサカは初めてなんだよ」

一方「そんなに楽しいか?」

番外「うんっ!あなたにも分けてあげる」

一方「悪ィな。……そンなに楽しいなら俺もやってみるか」

番外「いいよ。勝負してみる?」

一方「どれだけたくさン取れるかってかァ?」

番外「心配しないでも罰ゲームなんてないからさ」

一方「まァいいぜ。ほら、500円分で勝負だ」

番外「いざ、尋常に勝負!」
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:13:31.39 ID:jApdZblDo
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垣根「ふぅ~、少々梃子摺ったが流石は俺だな」ボリボリ

心理「お願いだから、ここで食べるのは止めてくれないかしら?」

垣根「……おっ、一方通行たちはまだやってたか」

一方「うおォォォォォォ!!!」ザックザック

番外「あひゃひゃひゃ!!ミサカのほうが先にタワー崩したもんね!!」ザックザック

垣根・心理「」

垣根「……なぁ、俺には第1位がチョコ食いながらチョコ掘ってるようにしか見えねぇんだが」

心理「奇遇ね。私も同じよ」

垣根「一方通行はいつから第1位から採掘師にジョブチェンジしたんだ?」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:16:19.65 ID:jApdZblDo
心理「さぁ……でも、ふたりとも楽しそうだわ」

垣根「こう見るとさ、あの子も普通の女の子なんだよな」

心理「本当ね。まだ生まれて半年も経ってないなんて、誰が信じられるかしら」

番外「やったぁ!!ミサカの勝ちぃぃ!!」

一方「なンで俺のタワーだけ倒れねェンですかァァ!?」

垣根「よぅ、楽しい事やってるじゃねぇか」

心理「そんなにお菓子取って……」

番外「大丈夫だよ。あとで食べるし」

一方「食べてみると意外とうめェな」ボリボリ

垣根「普通に買うのとはちょっと違う美味しさがあるよな!」ボリボリ

心理「食べるのはあとにしなさいよ……。ね、番外個体もそう思うでしょう?」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:18:28.66 ID:jApdZblDo
番外「次は何にするぅー?」ポリポリ

心理「」

心理「…………私もちょっと頂戴……?」

垣根「次はなー……ホッケーどうだ?丁度ダブルスができるし」

番外「ホッケーならミサカも知ってるよ!ホンジャマカがやってるアレでしょ!?」

心理「そうよ?」

一方「ホッケーなら能力を使わなくても済むな。卓球の二の舞にはならねェぜ」

番外「貧弱な身体でミサカの足を引っ張らないでよ?」

一方「ハッ、オマエこそ」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:20:49.19 ID:jApdZblDo
ワイワイガヤガヤ......

垣根「よーし、始めるか」

番外「何点マッチ?」

一方「ゲーセンのエアホッケーは時間制だからな。とにかく点を稼げ」

番外「りょーかい」

心理「じゃあ、入れるわよ?」チャリン

フワッ

番外「おっ、風が吹いたよ?」

一方「さァてと、パックはこっちからだな。番外個体、俺は右だからオマエは左を頼む」

番外「うん、分かった。ミサカが最初に打っていいんだね」

垣根「へぇ……第1位が守りか。そんなんでいいのか?」

一方「これくらいのハンデがねェと、オマエらが勝てねェだろォがよ」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:22:51.72 ID:jApdZblDo
心理「帝督、あまり舐めると痛い目に遭うわよ。第1位の事だもの、何を考えているのか……」

垣根「あぁ、分かってる。前は一方的にやられたが、今度はそうはいかないぜ?」

一方「行けっ!番外個体!」

番外「そりゃっ!」カッ!

カコン! カコン!

垣根「おっとぉ。そんなんじゃ俺を抜かすなんてできねぇぜ?」ガシッ

番外「へぇ~、一応は第2位やってるだけはあるじゃん」

垣根「へいへーい!行っちゃうぜ?俺行っちゃうぜ!?」

一方「番外個体、気をつけろ。来るぞ!」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:24:20.73 ID:jApdZblDo
垣根「おらぁぁっ!!」カッ

番外「くっ、速い!?」

カシュン

一方「チッ、先に入れられちまったか」

番外「ごめん。今のはミサカのせいだよ」

一方「……いや、次取り返せばいいだけだ」

垣根「ほらほら第1位さんよ~。俺に先取された気持ちはどうだ?ねぇ、どんな気持ちなんだ?」

一方「……あァ。今のは最高に決まっちまったぜ。だがよォ……」

心理「帝督!来るわよ!」

番外「とりゃっ!」カッ!

一方「それがオマエの限界なンだよ。ていとくゥゥゥゥン!!?」

カシュン

垣根「なっ……!?」
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:26:46.46 ID:jApdZblDo
番外「あひゃひゃひゃひゃ!そんだけ前に出てちゃ、取れるものも取れないっての!」

一方「1点取ったくれェで浮かれてるンじゃざまァねェな?」

心理「はぁ……だから気を付けてって言ったじゃない」

垣根「畜生、アイツが攻めないからって油断してたぜ」

番外「どうする、ていとくん?」

垣根「ハッ!ホッケーくらいで吼えてんじゃねぇぞ!!」

一方「番外個体、右から来るぞ!」

垣根「おらぁ!!」ガッ!

番外「よっと」ガシッ

一方「ていとくン、そンな見え見えじゃ先を読まれンぞ?」

番外「卓球もそうだったけど、ていとくんって速いだけだよね。ぎゃひゃひゃひゃひゃ!!どこに来るか分かれば簡単だよ!」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:29:00.55 ID:jApdZblDo
垣根「な、なななな……」

心理「あら、バレちゃってるわよ?」

一方「能力展開しねェと駄目かもなァ?どォするよ、ていとくゥゥゥン!?」

垣根「くそがあああああああ!!!」ブワッサ

一方「そォだそォだ……そンくらいして貰わねェと面白くねェよ」カチッ

番外「ぶひゃひゃひゃ!そんな羽出したら逆にやり難くないのかにゃーん?」

垣根「うるせぇぇ!!!ホッケーは俺のほうが先輩なんだぞ!?勝つっきゃねぇだろうが!!」

心理「…………」

心理(あら?これだと精神系能力者の私じゃ場違いじゃないかしら……)
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:30:46.43 ID:jApdZblDo
メルヘンシュゥゥゥト!!! アヒャヒャヒャ!ハヤイダケジャン!! ベクトルブロック!

上条「何だあれ?一方通行にミサカに……修学旅行の時のふたりか?」

御坂妹「何やらエアホッケーをしているようですね。番外個体が何でここにいるのでしょうか」

上条「……あまり近づくと碌でもなさそうだな。他行くか?」

御坂妹「そうですね、とミサカは賛成します」

上条「……ところで、あの先生は何で外出してるんだ?」

御坂妹「ミサカたちに食事を奢っているのですよ、とミサカは万年補習にも分かる簡潔な説明をします」

上条「食事?」

御坂妹「はい。……1万人のミサカにです。確か、今日は16836号たち、北米ミサカの番だったでしょうか」

上条「何か複雑な事情がおありなのかな……?」

御坂妹「ふふふ、2週目が楽しみです……じゅゆり」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/01(金) 00:32:43.83 ID:ntiYmD/DO
カエル先生ェ…
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:33:37.73 ID:jApdZblDo

                         ・
                         ・
                         ・

一方「残念でしたァ」

番外「ぎゃひゃひゃひゃ!未元物質以外は能の無いていとくん!」

垣根「……」イジイジ

心理「えぇ、私たちの負けみたいね。帝督、いい加減に認めなさい」

垣根「…………ぐすっ」

一方「心理定規、オマエ……俺の心理距離を弄っただろォが。オマエの能力は知ってンだよ」

心理「……気付いてたの?でも、結果は変わらなかったからいいじゃない」

心理(番外個体を私に当ててみたんだけど……一方通行相手じゃ計れないわよね。そもそもホッケーだもの)
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:35:36.43 ID:jApdZblDo
番外「ていとくん、そんなに凹んでないで立ちなよ。お尻にゴミが付いちゃうよ?」

垣根「こんなはずじゃなかったんだよ……」 

一方「どんなはずだったんだァ?」

垣根「互いに点を取り合い、最後の1秒で俺が華麗に決めて……」

番外「それ、思いっきりミサカの事じゃん」

一方「くかかかか!ていとくンは華麗になりたかったンですねェ。だが、華麗に決めたのはコイツだ」

番外「はーい、ミサカでーす!」

垣根「こうなったらリベンジだ。もう1回するぜ!」

心理「またするの?私は嫌よ」

番外「ミサカも他のがしたいよ」

一方「そォいう事だ。諦めるンだな」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:37:27.37 ID:jApdZblDo
垣根「……じゃあ、今度は格ゲーで勝負だ!」

一方「やだ。そンなに時間ねェだろォが」

垣根「(´;ω;`)」

一方「そンな目で訴えられても、きめェだけだぞ」

心理「私もこれには引くわ……」

垣根「……」ズーン

番外「あっ、ゲコ太だ!」

一方「あァ?オマエの言ってたUFOキャッチャーか?」

番外「ミサカ、あれ欲しい!」

一方「あれって壁掛け時計かァ?時計ならオマエの部屋に1個あっただろォが」

番外「あんな間に合わせのシンプルなのより、ミサカはこっちがいいなー」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:44:25.75 ID:jApdZblDo
一方「……まァ、やってみりゃいいンじゃねェの?」

番外「100円100円っと……」チャリン

一方「縦はここ、横に進むのはこれだ」

番外「ポチっとな」ポチポチ

チャララララ♪ ウィーン........ガシッ

一方「…………」

番外「よしよし……そのままそのまま……」

..............コテン

番外「あぁぁぁぁ!?あとちょっとだったのにぃぃぃ!!!」

一方「どこがちょっとだよ……。降ろす場所から間違ってンじゃねェか」

番外「あなたならできるって言うの!?」

一方「……どら、俺に任せてみろ」
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:46:34.58 ID:jApdZblDo
垣根「お、それ取るのか?」

心理「ウォールロック?」

一方「あァ……それがどォした」

垣根「そういうのって難しいんだぜ?お前に出来るのかよ」

一方「そォだな……ベクトルさえ掌握できれば大した事じゃねェな」チャリン

心理「ベクトルって、電気系能力者が見える電磁波と違って、実際に目で見えるものなのかしら……」

垣根「さぁ……それはあいつにしか分からねぇんだろうな」

番外「早く!早くぅ!」

一方「……引っ掛けるタイプか。まァ、操作をミスらねェ限りがいけるだろ……」ポチッ
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:48:57.39 ID:jApdZblDo
チャララララ♪ ウィーーン....

番外「よし!そこ!……あれ?」

垣根「おい、行き過ぎたんじゃねぇのか?フックはもっと手前だぜ?」

一方「単純に取れンなら誰も苦労はしねェよ。こンな重いもンをただ引っ掛けるだけじゃ取れる訳がねェ」

番外「じゃあ、どこを狙ってるの?」

一方「まァ、見てろ……」

ウィーン..........ガシッ

番外「……おおぉ!?」

心理「あぁやって取るのね?」

垣根「すげぇ……どうやって引っ掛けてんだよ」

一方「あからさまな引っ掛けてくださいアピールはダミーだ……。ほらよ、これが欲しかったンだろ?」

番外「ありがとう!ミサカ、帰ったらすぐ付けるね!」ダキッ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:50:07.75 ID:jApdZblDo
一方「分ァったから、飛びかかるのはやめろ。倒れちまうだろォが」

番外「あなたは嫌なのかな?まぁ、そのほうがミサカもやりがいがあるけどさ☆」

一方「これじゃ歩けねェだろ。俺が杖付いてンの忘れてンのかァ?」

垣根「……」

一方「どォした?」

垣根「いや、こうして見るとな。分かってはいても……」

心理「やっぱりカップルに見えるわよ?」

一方「……またか。俺ァただ取ってやっただけだぞ?コイツが誰なのか分かって言ってンのか?」

番外「ていとくんもコレが欲しかったの?」

垣根「……ちょっとな」

心理「…………えっ?今のはそういうところだったかしら?」
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:51:27.13 ID:jApdZblDo
ジャラジャラワイワイ......

番外「おっ、プリクラ発見!!」

心理「たくさんあるわね……どれにする?」

番外「うーん……一方通行はどれがいい?」

一方「どれでも同じだろ?」

垣根「お前は分かってねぇな。機種によってフレームも違えばモードも撮り方も違うんだぜ?」

一方「男の俺が分かるはずねェだろ」

垣根「俺は分かってるぜ?これでもよく行ってたからな」

一方「きめェ」
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:53:32.93 ID:jApdZblDo
番外「うわぁ~これは何!?」

垣根「それか?それはコスプレの貸し衣装だ。一時期、俺もよくやってたなぁ……」

心理「……きもっ」

番外「…………」ジー

一方「…………おィ、流石にこれは洒落になンねェぞ……」

番外「ミサカ、これにするっ!」

一方「」

垣根「ははっ、お姫様がご所望のようだぜ?」

一方「最悪だ……」

心理「帝督、お願いだから変なのはやめてね?」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:55:27.31 ID:jApdZblDo
貸し衣装コーナー

番外「ミサカはどれにしよっかなぁ~」

心理「色々あるのね……」

垣根「俺は何がいいかな……これなんかどうだ?」

心理「何これ……妖精?」

垣根「ピーターパンだぜ?かっこよくね?」

番外「何だかパジャマみたい」

心理「ぷぷっ」

垣根「パジャマか……それもいいな。今度買い換えるか」

一方「…………」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:56:32.05 ID:jApdZblDo
番外「一方通行は何にするの?」

一方「……なァ、このままじゃ駄目なのか?」

番外「駄目に決まってるじゃない。みんな着るのに自分だけ普通って変でしょ?」

垣根「そうだぜ、一方通行。俺を見習ってみろよ」

一方「誰が見習うかァ!」

番外「……おっ、ミサカはこれにしよーっと」

                        ・
                        ・
                        ・
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:58:08.85 ID:jApdZblDo
垣根「俺はピーターパンで、心理定規が……これは何だ?ちょっと変わってるがドレス……か?」

心理「さぁ?私にも分からないわ。丁度サイズがピッタリだったのよ。でも露出が気になるわね」

番外「それってカナミンに出てくる敵が着てたやつじゃないかな?ほら、無駄にセクシーなところとか」

心理「あら、あなたもドレスなのね」

垣根「まるで本物のお姫様みたいだな?似合ってるじゃねぇか」

番外「本当に?」クルクル

番外「ねぇ、あなたはどう思――」

一方「…………」

番外「……一方通行?」

垣根「ん?今ので惚れちまったのか?」ニヤニヤ

心理「こら、そんな風に言わないの」

一方「なンで……」
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 00:59:10.13 ID:jApdZblDo
番外「何?」

一方「なンで俺がこンな着ぐるみなンだよォォォォ!!!!」ゲコター

番外「なんだ、ミサカの事じゃないのか」

一方「それどころじゃねェよ!せめて、もっとマシなのがあるだろォ!?」

番外「あひゃひゃひゃひゃ!だって見つけたんだもん。写りが心配なら安心しな、顔はちゃんと出てるからさ」

垣根「そうだぜ。お前も似合ってんじゃねぇか。こんなの、俺が着ても似合わねぇよ」

心理「まぁ……ひとりくらい、そういうのを着ててもいいんじゃないかしら」

一方「歩き難いったらありゃしねェぞ……」ヨタヨタ

垣根「そんなに嫌なら脱げばいいじゃねぇか」

一方「……ひとりじゃ脱げねェンだよ!」
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:02:16.14 ID:jApdZblDo
番外「ねぇ、あなたはミサカの似合ってると思う?」

一方「あァ?似合ってンじゃねェの?」

番外「どっちかはっきりしなよ」

一方「…………似合ってる。だから、あまりくっ付かないでくれねェか?歩くので精一杯なンだが」

番外「それ、あとで写メ撮っていい?こんなあなたは二度とないかもしれないからね」

一方「それはやめろォ……」


in the プリ機

垣根「よし、撮るぞ?」

番外「一方通行!ちゃんと入らないと写らないよ!?」

一方「もォやだ……」

心理「フレームはどうしましょう?」

垣根「そうだな……4人だから、枠を広く取れるやつがいいな」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:03:03.71 ID:jApdZblDo
一方「さっさとやってくれねェか?俺は早く着替えたい……」

女子高生「くすくす……」

一方「ほらァ!やっぱ笑われてンじゃねェか!!」

番外「ちょっと!耳元で叫ばないでよ!」ポカッ

一方「うォっと!」

パシャ

垣根「…………あ?」

心理「……今の写ったわね」

ウィーン

番外「あ、出てきた」
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:04:39.96 ID:jApdZblDo
一方「いってェ……ン?これは何だ?」

番外「……ぷっ、ぎゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

垣根「あはははは!これはひでぇぞ、一方通行!!」

心理「ぷっ、くくくく……」

一方「あ……あ、あァァ!?何だこりゃァ!?」

番外「あひゃひゃひゃ!!コレ、あなたしか写ってないじゃん!!!」

垣根「おいおい、ひとりだけ目立つのは反則だろ?変顔コンテストにでも出るつもりか?」

一方「ちげェ!今のはコイツが――」

番外「何?ミサカのせいだって言うの?あなたが叫ぶから悪いんでしょ!?」

垣根「カーテンを閉めなかったお前が悪いんだぜ?一方通行」

心理「これじゃあ、撮り直しね」

一方「俺はもっとマシなのが着たかった……」
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:05:24.01 ID:jApdZblDo
番外「ミサカと一緒に撮る時は違うのにしようよ」

一方「できれば今着替え直したいンだが……」

心理「お金入れたわよ?」

垣根「それじゃ、撮るぞー」

番外「はーい」

一方「……チッ」

                        ・
                        ・
                        ・
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:06:26.63 ID:jApdZblDo
垣根「いやぁ……何度見ても一方通行だけ浮いてるよなぁ……」

番外「ひとりだけ着ぐるみだからね」

一方「だから俺は他のにしろって言っただろォが!」

心理「でも、こういうのも悪くないわ」

垣根「ギャップ萌えってやつだろ?一方通行、お前も楽しかったんじゃねぇのか?」

一方「俺は全く楽しくねェよ!ったく、こンなン貰ってもどォすればいいンだよ……」

一方(第1位がこンな格好してプリクラ撮ってるとはなァ……人生はどこで狂うか分からねェもンだ)

番外「その味気無い携帯に貼ればいいじゃん。少しはお洒落になるかもね?うひゃひゃひゃひゃ!最終信号に見せたら何て言うかな?」

一方「また着る事になるかもしンねェなァ……」

心理「そうそう……ここのプリクラ、携帯に送って待ちうけとかにできるみたいよ?」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:08:24.29 ID:jApdZblDo
番外「マジで!?一方通行!次はミサカとふたりで撮ろ!?」

一方「……あァ?他のに着替えてからでいいか?流石にこれはもォ着たくねェ」

番外「それじゃ、早く服選びに行こうよ!」

一方「おィ、そンなに引っ張るとこけっ……たァ!」ドシャァ

垣根「やっぱ歩き難いもんなんだな」

心理「ただでさえ動きにくいのに、杖までついてるんだもの。当然よ」

垣根「杖つく着ぐるみって世界でもあいつだけじゃねーの……?」

番外「あ…………大丈夫?」ツンツン

一方「お、おォ……だが……」

番外「だが……何?」

一方「起き上がれねェ……」ジタジタ
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:10:08.16 ID:jApdZblDo
番外「能力使えば……って、そうか、チョーカーは着ぐるみの中なんだね」

一方「あァ、スイッチに届かねェンだ。だから起こしてくンねェか?」

垣根「俺も手伝ったほうがいいな。番外個体ひとりじゃ無理だろ?」

番外「まったく……あなたも世話が焼けるよね」

一方「誰のせいだと思ってンだ、誰の……」


再び、貸し衣装コーナー

番外「ねぇ、あなたはどんなのがいいの?」

一方「俺かァ?とにかく派手じゃなくて、動きやすいのがいいな」

番外「それじゃあ分からないよ」

一方「……もォ、着ぐるみじゃなけりゃ何でもいい」

番外「ん~…………んん!?」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:13:46.46 ID:jApdZblDo
番外「これはどうかな?」

一方「…………これは何だ?タキシード……とは違うな」

番外「漫画で見る王子様みたいだけど、これなら似合うんじゃない?」

一方「俺が王子様だァ?どこにこンなクソッタレな王子様がいるってンだよ」

番外「……ここにいるじゃない。でも、これを着たら頭から足まで真っ白けっけになるね。あっ、ミサカはそれでもいいよ?」

一方「まァ、オマエがこれを選ぶンなら仕方ねェがよォ……。オマエは何にするンだ?」

番外「ミサカはこのままでいいよ。だからあなたは着替えてきて。それとも……ミサカにお着替えを手伝って欲しいとか?」

一方「それはねェよ……だが、脱ぐのだけ手伝ってくンねェか」

番外「……どうやってこんなのを着たの?」

一方「オマエが着せたンだろォがァァァ!!」

番外「ギャハ☆そうだったねっ!」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:15:10.30 ID:jApdZblDo
in the 別のプリ機

番外「えっと……どれを押すんだっけ?」

一方「何をしてェんだ?」

番外「んとね、フレームを選びたいんだけど……」

一方「そンなら画面に説明が出てるだろォが。……こォするンだよ。で、どれにするンだァ?」ポチポチ

番外「それ!それがいい!」

一方「あァ?それってどれだよ。もォいい、オマエが選べ」

番外「えぇっと、どこ行ったかな……あった、コレコレ!」

一方「」

一方「……ハ、ハートだと?」
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:16:47.55 ID:jApdZblDo
番外「ふたりで撮る時はハートって相場が決まってるんですぅー」

一方「何の相場だよ……俺はどれでもいいンだが、よりにもよって何でコレなンだァ?」

番外「ほら、もっと寄せないと枠の中に入りきれないよ」

一方「ハートなンか選ぶからだろォが……」

番外「そうだ!ミサカもあのプリクラみたいに腕組みたい!」

一方「今度は腕ェ!?ンな暑苦しい真似できるかよ!!」

番外「いいのいいの。ほら、こうしたらピッタリ写るよ!」ギュッ

一方「お、おィ!?」

一方(コイツ、意味分かってやってンのかァ?)

番外「んじゃ撮りまーっす!ピース!」

一方「ま、まだ心の準備が――」

パシャ
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:17:50.58 ID:jApdZblDo
番外「…………あれ?出てこないよ」

一方「……あァ、まだペイントが残ってンだな。別にこのままでしなくていいだろ?」

番外「きゅきゅきゅのきゅ~っと」

一方「何書いて……って、あァ!?誰がモヤシだゴルァァァ!!!」

番外「何さ、本当の事書いてるだけじゃん」

一方「……オマエだけにされるかってンだ、俺にも貸せェ!!」

番外「あっ、ミサカがまだ書いてるのに返してよ!」

一方「きゅきゅきゅきゅっとなァ!」

番外「あぁぁぁ!?誰がピチピチの0歳児でぇーす☆だってぇぇ!?」

一方「クカカカ、傑作じゃねェか。事実だろ?」

番外「ペン返せ!このロリコン野郎!」
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:19:05.58 ID:jApdZblDo
一方「俺はロリコンじゃねェっつってンだろ!オマエこそ図体ばっかデカイ癖に、頭はお子ちゃまだろォが!」

番外「ミサカはお子ちゃまじゃないし!ミサカの身体がそんなに魅力的だからって、手を出せないのがそんなに不満なんだね!」

一方「誰の口から魅力的なンか出たンだァ!?…………はァ、そンなにペンが欲しけりゃやるよ」

番外「そうそう、渡す気があるなら最初からそうし――?」スカッ

一方「はい、あーげた」ヒョイ

番外「くそっ!第1位の癖にそんなとんちは卑怯だ!えいっ、えいっ!」スカッスカッ

一方「クカカカカ!そンなンじゃ届かないぜェ?」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:20:12.75 ID:jApdZblDo
ギャーギャーワイワイ

垣根「まだ出てこないのか……?」

心理「この分だと、まだ掛かりそうね」

垣根「ふわぁ~あ……。残業のせいで眠いぜ……ん?」

心理「どうかした?」

テレビ『先月輸送されたパンダの公開が――』

垣根「……パンダ、か」

                      ・
                      ・
                      ・
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:23:23.48 ID:jApdZblDo
一方「……オマエ、あンなンを携帯の待ちうけにしていいのかよォ?」

番外「ミサカの携帯だから別にいいでしょ?飽きたら元に戻せばいいだけだし。ほら、ミサカって写真写りいいんだね」

一方「確かによく撮れてるがなァ……クソガキらに見られたらどォするつもりだ?特に学校の奴にはどォする」

番外「プリクラで撮ったって言えばいいじゃない」

一方「勘違いされても俺は困るンだがなァ?」

番外「何を勘違いされるの?もしかして、愛人と思われたらどうしようーって?あひゃひゃひゃひゃ!!」

一方「オマエ……それが分かってやってンのか?」

番外「分かってやってるに決まってんじゃん☆」

一方「………消せ」

番外「……やだ。だって、これはミサカの思い出だもん」

一方「思い出ならそのシールだけで充分だろォが……消せ」

番外「やーだよーっ!」ピュピューイ

一方「…………逃げ足だけは速ェ奴だ。ヒット・アンド・アウェイってかァ?」
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:25:00.24 ID:jApdZblDo
ゲームセンター前

垣根「次は動物園に行こうと思います!」

番外「動物園!?」

一方「いきなりだが、それも学園都市あったな。特に問題はねェ」

垣根「いや、外に出るぜ?」

一方「…………はァ?」

心理「パンダを見るんですって」

番外「パンダって、白と黒で笹を食べるアレだよね?」

垣根「そうだ、パンダは学園都市にいないからな。せっかく冥土帰しが身体張ってくれた許可証だし、使わないわけはいかねぇだろ」

一方「何もパンダくれェで……」

番外「ミサカ!パンダ見たい!抱っこしてみたい!」

一方「…………だと言うと思ったよ。だけどな、触るのは無理だろォが」
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:26:13.72 ID:jApdZblDo
番外「なんで?動物園にはふれあいコーナーがあるってテレビで見たよ?」

一方「パンダってのはな、世界でも希少な動物なンだ。触るにゃ、馬鹿高ェ金払って本場の中国に行くしかねェ」

番外「……そっか。じゃあ、見るだけでもいいから行こうよ!」

一方「そこで中国に行くなンて言わなかっただけでも褒めてやりてェわ……」

心理「そこを褒めるのね……」

垣根「まぁ、学園都市外だからといっても、そう遠くはないぜ?」

一方「そンなら大丈夫か……」

垣根「俺の未元バスに!」

番外・垣根「常識は通用しねぇ!」

一方「不安しかないンだが……何でだァ?」

心理「……事故だけは起こさないから安心して頂戴?」

一方「…………あァ、頼む。割と真剣にな」
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:27:54.92 ID:jApdZblDo
垣根「さてと、バスはどこ停めてたかなっと……」

番外「ねぇ、あれじゃない?なんか引っ張られてるけど」

垣根「」

心理「……あ」

一方「あァ?ありゃァ、レッカー車じゃねェか?」

垣根「」

一方「路駐してたのかよ……初っ端から常識が通用してるじゃねェか……」

番外「あれ、追いかけないと不味いんじゃないかな?ミサカ、パンダを見れなくなるのは絶対に嫌だよ」

心理「早く取り返してきなさい、帝督」

垣根「……チクショォォォ!!待てバス泥棒おおぉぉぉぉ!!!!」ブワッサ

一方「はァ……先が思いやられるぜ」
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/01(金) 01:30:36.26 ID:jApdZblDo
番外「……」ジー

心理「何を見てるの?……携帯かしら?」

一方「……そンなにその待ち受けが気に入ってンのか?」

番外「えっ?……うん、まぁね」

一方「チッ……消すなとは言わねェが、あンま見せびらかすンじゃねェぞ?」

番外「消せと言ったり消さなくていいと言うし……あなたは何がしたいのかな?ミサカは最初から消す気なんてないけどさ」

番外(ミサカだって、何でこんなのを待ちうけにしたのかねぇ~……?)

一方「……へェ、そォかい」


垣根「待てぇぇ!!俺の相棒を返しやがれえええぇぇえ!!!!」 
 
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:38:12.94 ID:ml/1a1GBo
パタパタパタパタ........

番外「はい、チョコ」

一方「あァァァ!!もォ菓子はいらねェっつってンだろ!っつーか、何で空飛ンでンだよ。公道走れねェのか!?」

垣根「だって今日は日曜だし、渋滞に巻き込まれるのも嫌だろ?下見てみろよ、すっげぇ列だぜ」

心理「音は気にしないで頂戴。そのうち慣れるわ」

一方「さっきから気になって仕方がねェよ!?」

番外「そうだよ、一方通行。超能力者が超能力を否定するなんておかしいよ」

一方「何でオマエはそう悠長なン……もがァ!?」

番外「あひゃひゃひゃ!よく噛まないと消化に悪いよ?」

垣根「自分の取った菓子くらい処理しろよ?あと、ゴミはゴミ箱な」

一方「…………ったく、過剰装飾すンじゃねェよ」ボリボリ
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:42:26.93 ID:ml/1a1GBo
at 動物園・入り口

一方「人多くね?これもパンダ効果ってやつか?」

垣根「そりゃ、日本でもパンダが見れるのは、ココとあと数箇所しかねぇからな」

心理「ほとんどの人がパンダ目当てなんでしょうね。他にも可愛い子はたくさんいるけど」

番外「そうそう、ミサカとかね。ぎゃはっ、見るだけならタダだよ?」

一方「あァ?オマエのどこが可愛いンだ?」

番外「…………っ!このっ!そこを返してんじゃねー!」ゲシッ

一方「いってェ!何すンだ!?」

垣根「ははっ!今のはお前が悪いな」

心理「まぁまぁ、こんな所で騒いでないで。これ以上混まないうちに並びましょう?」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:46:26.59 ID:ml/1a1GBo
垣根「ここは俺がチケットを買ってきてもいいが、これだけ人が多いとはぐれちまうな」

心理「少し目を離したら見えなくなりそうだわ……」

一方「コイツがはぐれるのだけは勘弁してくれ……」

番外「みんなで並ぶって事ね。ミサカはそれでもいいけど」

一方「いいか、何度でも言うが勝手に行くンじゃねェぞ?」

番外「うひゃひゃひゃ、ちゃんとミサカの事見てないとどっか行っちゃうかもね?」

一方「行ったらお仕置きな」

番外「……ミサカは公衆の面前でもオッケーだよ?何なら今のうちにヤっちゃう?」

一方「…………もォいい、黙れ」

                        ・
                        ・
                        ・
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:49:10.53 ID:ml/1a1GBo
垣根「なぁ……全員高校生料金料金でよかったのか?」

一方「あァ?俺がどこ通ってるか分かってンのか?」

番外「ミサカだって高校生だよ?」

心理「…………」

垣根「心理定規……お前、中学生だろ?」

心理「高校生よ……」

垣根「………………えっ?」

心理「私……これでも高校生なのよ!?見た目で決め付けないでこの馬鹿っ!」バチーン

垣根「っだぁぁぁ!!」

一方「オマエ、知らなかったのかよ」

番外「心理定規ってミサカと同じだったんだ……」

垣根「ほふぇんらはい……」

心理「……ふんっ!」プンプン
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:51:54.34 ID:ml/1a1GBo
ゾロゾロ........

番外「あちゃー……これ全部パンダ見る人?」

一方「すげェ行列だな、何10メートルあンだァ?」

垣根「100メートル以上はあるんじゃねぇか?」

心理「どうしましょうか。並んでたら何時になるか分からないわね……他のから見る?」

垣根「じゃあライオンだな!それ以外ありえねぇだろ!」

番外「ねぇ、あそこにライオンバスってあるよ!それにしようよ!」

一方「……パンダ見たら帰るンじゃなかったのかよ」

心理「番外個体には初めての動物園だし……いいんじゃないかしら?」

番外「一方通行!悩んでる暇なんかないよ!?」

一方「悩ンでねェ、飽きれてンだ。オマエの初めてに付き合ってたらキリがねェぞ」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:56:30.06 ID:ml/1a1GBo
垣根「お前は行った事あるのか?」

一方「あンま覚えてはねェが、小せェ頃に行ったよォな気がする」

番外「あなたにもそんな時期があったんだね。ミサカ、ちょっと興味あるかも」

心理「そりゃ、誰にだってあるも……ごめんなさい」

番外「んにゃ、別にいいよ。その分ミサカには新鮮だからね」

一方「まァ、俺にも覚えてねェくらい昔の事だがなァ……」

一方(親の顔……名前……今となっては幻想みてェだな)

                       ・
                       ・
                       ・
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 22:58:50.86 ID:ml/1a1GBo
運転士さん「はーい、奥まで詰めてくださーい」

番外「ミサカは窓側がいい!」

一方「本当にいいンだな。目ン前に出てくるンだぞ?」

番外「ちゃんと檻があるから大丈夫だよ!」

垣根「そうだぜ、一方通行。百獣の王も檻を破ってまで入ってこねぇよ」

心理「とかいいながら通路側に座ってるのね」

垣根「だっていきなり来たら怖いだろーが」

番外「あひゃひゃひゃ!ビビってんの?」

一方「第2位は動物くれェで怖気ンのか」

垣根「……実は……俺、猫が怖いんだ。子供の頃に猫を飼ってたんだが、悪戯をして噛まれてな……」

心理「どこの小学生よ!」
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:00:48.22 ID:ml/1a1GBo
番外「ぶっひゃひゃひゃひゃ!メルヘンなのに猫が嫌いとか!!……あれ?じゃあ何でライオンが見たいって言ったの?」

垣根「ライオンってカッコイイだろ?見るだけなら俺も好きなんだ。だがよ……あの前足を見るとあの日の恐怖が……」

一方「どンな悪戯をしたンだァ?」

垣根「掃除機を当てたんだ。寝てる猫にな。そしたら、追っかけられて噛まれた挙句に引っ掻かれた」

心理「だからどこの小学生よ!」

垣根「ちげぇ!中学生の時だ!」

一方「ほんの数年前じゃねェか!!」

番外「ていとくんの中学時代はビビリなヤンキーだったのかよ!!ぎゃひゃひゃひゃひゃ!!」
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:02:18.69 ID:ml/1a1GBo
ザワ......ザワ......

一方「……いい加減に黙ろォか。視線がいてェ」

垣根「……あぁ」

番外「あひゃひゃひゃひゃ!!……げほ、げほ」

心理「……番外個体、ゆっくり深呼吸して?」

番外「すー、はー、すー、はー……」

垣根「笑い過ぎだろ!?」

一方「いや、あれは仕方がねェよ」

垣根「まぁ、笑い話で済んだ分、まだマシだったな……」

ブロロロロロ........
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:04:25.55 ID:ml/1a1GBo
番外「おっ、あれがライオンかな。あのモジャモジャは何?」

一方「あれはたてがみだ。顔にたてがみがあるのがオスなンだ。知らなかったのか?」

番外「必要の無い知識は入れられてないからか、ミサカは動物の事をあまり知らないんだよね」

一方「なら、パンダはどこで知ったンだ?テレビか?」

番外「うん。前にパンダがやってきた時、大ニュースになってたでしょ?ミサカ、あの頃はずっと家にいたからさ」

一方「言っておくが、情報を鵜呑みにすンじゃねェぞ。ちっと周りを見渡せば、罠はそこら中にあるからな」

番外「それはミサカを心配して言ってると受け取っていいのかな?」

一方「あァ?そンなンじゃねェよ。これは俺の為だ。俺に面倒事が回って来ねェよォにな」

キキーッ

番外「あっ、止まった」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:06:17.36 ID:ml/1a1GBo
垣根「一方通行、ポイントに付いたみたいだぞ?」

一方「あァ、そォみてェだな」

番外「ポイント?」

心理「簡単に言うと、ライオンたちが一番寄ってくる所ね」

垣根「バスの周りに餌が付いてるだろ?それを食いに寄ってくるって訳だ」

番外「へぇ~」

一方「……あれじゃねェか?」

番外「おおっ!?なんかぞろぞろ来てるよ?」

ライオンズ『……』ゾロゾロ

垣根「……ひいっ!」ビクッ

心理「帝督……中までは入って来ないから、そんな見っとも無い格好はやめて頂戴」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:08:58.76 ID:ml/1a1GBo
ライオン『……』バクバク

番外「うっわぁー……凄い食べっぷり……」

一方「……あァ」

番外「あなたもこんな感じで食べてるよね?バクバクってさ」

一方「あァ?俺は生のまンまは食べねェぞ」

番外「……でもおかしいね、ミサカの電磁波だと逃げちゃうはずなんだけど」

垣根「百獣の王にそんな常識は通用しねぇんだろ……?」

一方「まァ、前みてェにベクトル操作しなくていい分、俺も楽でいいがよォ」

心理「充電なら彼女がいるんじゃなくて?」

番外「そうなんだけど、ある程度は集中しないと難しいんだよね。少しでも電圧や周波数を間違えたらドカンだもん」

一方「バッテリーもひとつしかねェしな。できれば、ちゃンとしたコンセントで充電してェ」
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:11:18.44 ID:ml/1a1GBo
垣根「俺の維持装置もそうだが、オマエのチョーカーと比べればマシなんだな」

ライオン『ガオォォォ!!』グワッ

番外「きゃぁっ!?」

垣根「どわぁっ!?」ドテッ

一方「何やってンだァ?」

男の子「お兄ちゃんダサーい」

女の子「くすくす……」

心理「……もうあなたは座ってなさい」

番外「あひゃひゃひゃひゃひゃ!怖いなら途中下車してもいいんだよ?」

垣根「降りたら喰われる!俺はこんなところで死にたかねーよ!!」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:12:49.58 ID:ml/1a1GBo
一方「……オマエだって驚いてただろォが」

番外「ミサカ、驚いてないし!」

ライオン『ガウガウ』ニヤニヤ

番外「くそぅ!何このライオン、してやったりな顔しやがってさぁ!!あなたのせいなんだからね!?」

一方「くかかかか!コイツ、オマエを分かってンじゃねェか」

番外「……それ、どういう事かな?あなたの口から聞かせてくれる?」

一方「さァ……何の事だか俺にはさっぱりだな」

                      ・
                      ・
                      ・
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:14:26.26 ID:ml/1a1GBo
垣根「死ぬかと思った……」

心理「なんでそうなるのよ、それなら最初から見たいなんて言わないでよ」

垣根「だってさぁ……」

一方「オマエが見てェンじゃなかったのかよ」

番外「次はどれを見に行く?」

一方「あァ?パンダ見てさっさと帰ればいいだろ」

心理「そうね……私はコアラを見たいわ。ほら、あそこに見えるじゃない?」

垣根「パンダは昼飯のあとでいいな」

一方「昼飯までここで食うのかよ!」

番外「ミサカはもっとここにいたいな。ね、いいでしょ?」

一方「はァ……迷子だけにはなンなよ?容赦なくアナウンスにかけるからな」
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:16:23.64 ID:ml/1a1GBo
垣根「お前がアナウンスにかけられたりしてな」

番外「それもそうだね。3人一緒にはぐれたら、迷子になるのは一方通行だもの」

一方「冗談じゃねェぞ!!」

心理「きっと冗談よ」

一方「コイツの場合、本当にやりやがるから困るンだ……」

番外「学園都市第7学区からお越しの一方通行様。お連れ様がお待ちです。至急、サービスセンターまでお越しくださいってね、あひゃひゃひゃひゃ!!」

一方「おィ、やめろ。思い出すじゃねェか!!」

心理「やられたのね……」

垣根「ま……ドンマイ」

一方「クソがァ……」
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:17:51.59 ID:ml/1a1GBo
at コアラ館

番外「コアラどこー?」

垣根「1日中木に登ってる奴だから、ちょっと探さなきゃいけねーな」

心理「あれじゃないかしら?あそこの枝の……」

番外「あっ、いた!でも寝てるね」

コアラ『』zzz....

一方「コアラは夜行性だからな。そこのボードにも載ってンだろ?起きてるのを見るには運がいるってなァ」

番外「んむぅ……なら起こしてやる」ビリッ

一方「はいはい、ベクトル操作っと……」ポムッ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:19:41.33 ID:ml/1a1GBo
番外「何さ、ちょっと弱いのを当てるだけじゃない。ミサカだって起きてるところを見たいよ」

一方「オマエは寝てる動物を自分勝手な理由で起こすのか?俺を起こすのとは訳がちげェンだよ」

垣根「まっ、寝てる姿も可愛いじゃねーか。なぁ、心理定規?」

心理「そうよ。コアラは1日の大半を寝て過ごしてるんだもの」

一方「そォだなァ……そンなに起きてるのを見てェなら、学園都市の動物園でもいいンじゃねェか?」

番外「コアラは学園都市にいるの?」

一方「それくれェいるだろ。動物園は実験動物の公開をしてるンじゃねェからな」

番外「今度連れてってよ!最終信号も連れてならいいでしょ?」

一方「……暖かくなったら考えてやる」
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:20:36.51 ID:ml/1a1GBo
垣根「おい、見ろよ!あれって起きたんじゃねーのか!?」

番外「ホントだ!?葉っぱ食べてるよ!」

コアラ『……』モシャモシャ

心理「まるでヌイグルミが動いてるみたいね……」

一方「……よかったな、起きてるのを見れてよォ」

番外「うんっ!」

心理「あら、あれは親子かしら」

コアラ『……』モシャモシャ

子コアラ『』zzz....

垣根「背中におんぶしてらぁ。……やっべぇ、コアラ欲しい」
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:23:10.44 ID:ml/1a1GBo
一方「そンなつまらねェ理由でLEVEL5の財力使うンじゃねェぞ?ユーカリの葉なンざどォやって調達すンだ」

番外「ちっちゃいコアラが寝てる!何あれちょー可愛い!!」

一方「よく見ると、どれも親子だな。あンなに小さくても親とそっくりなのか」

番外「じゃあ、ミサカもおんぶーっ!!」ガバッ

一方「ぐほっ!?クソガキみてェな事すンじゃねェェェ!!ンなところをそっくりにすンなってンだ!!」

番外「ほらほら、しっかり支えないとふたりとも落ちちゃうよ!?」

垣根「…………なぁ、お前もするか?」イイナァ......

心理「あとでね」

垣根「」

心理「……嘘よ」
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/02(土) 23:24:09.14 ID:ml/1a1GBo
一方「いいから降りろォォォ!!!」

番外「やーだよっ♪」

一方「垣根ええェェェ!!!心理定規ォォォォ!!!」

垣根「男は黙って我慢だ、一方通行」

心理「ごめんね?私には何もできないわ。だって心を測る事しかできないもの」

一方「ぬ゙お゙おォォォォ!!!」

番外「ほらGOGO!」

一方「くっ、首が絞まるううゥゥゥゥゥううゥゥゥ!!!」 
 
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:24:01.32 ID:RmNclmIvo
                      ・
                      ・
                      ・ 

at 食堂

ガヤ......ガヤ......

一方「ここも混ンでるな」

垣根「席を確保できたの奇跡だな。とりあえず、何頼むよ?」

番外「ミサカ、このパンダカレーってのが気になるんだけど」

心理「隣の席を見たら分かるわよ?」

番外「……隣?」パッ

一方「……ライスがパンダの顔になってンのか。あンなの頼むのは子供だ」

番外「ミサカ、あれにする!」

一方「へィへィ、好きにしろ」
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:25:06.46 ID:RmNclmIvo
心理「私も同じのにしようかしら」

垣根「じゃあ俺もパンダカレーだ!」

一方「どいつもこいつも物好きなこったァ……」

番外「…………」ジー

一方「……あァ?」

番外「…………これ、あなたも」チョンチョン

一方「」

垣根「似合わねェな、第1位」

一方「どォせ予感はしてたよ!俺ァカツカレーにするからな!」

番外「すみませーん!パンダカレー4人で」

心理「飲み物も頼みましょう?」

一方「うォォォォい!!!またこの展開かァァァァ!!!!」
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:27:54.13 ID:RmNclmIvo
垣根「お前、やっぱ面白いわ」

一方「面白くねェよ!!!」

                      ・
                      ・
                      ・

番外「いっただきまーす!」

一方「……」モグモグ

垣根「……第1位がパンダカレー食ってやがる。目の保養どころか毒じゃねぇか」

心理「あなただって第2位でしょうが」

垣根「第1位と第2位の間には大きな溝があるからな。俺はセーフだ」

一方「どォいう意味だよ。第1位の何が悪い」
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:29:22.51 ID:RmNclmIvo
番外「これ、可愛いし美味しいね。一石二鳥ってやつ?」モグモグ

一方「でも甘過ぎじゃねェか?」モグモグ

垣根「別にこのくらいだろ。俺は中辛と甘口を足して2で割ったほうが好きだからな」

心理「家族向けだから、多少は抑えてあるのかもね」

一方「辛過ぎるよりはマシだけどなァ」

番外「……ねぇ、何でグチャグチャにしてるの?パンダの面影がないじゃない」

一方「こンなン恥ずかしくて食えねェよ。オマエこそ、今日は何でそンなに綺麗に食ってるンだよ?」

番外「ミサカだってそれくらいできるんだよ。それに、そんな食べ方じゃパンダが可哀想とは思えないの?」

一方「ンなら、普段からそォしろってンだ」

垣根「…………」

心理「あら、あまり進んでないじゃない?もう満腹?」
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:30:34.90 ID:RmNclmIvo
垣根「これ以上進むとパンダの顔が……」

心理「あなた、馬鹿を通り越してもう女々しくなってるわよ?…………ほら」

垣根「ほら?」

心理「あーん」

垣根「……あ、あーん」

心理「なんちゃって♪」パクッ

垣根「」

番外「…………」ジー

一方「……あァ?」

番外「……あーん」

一方「何やってンだよ」
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:31:31.74 ID:RmNclmIvo
番外「あーん」

一方「…………あーン」

番外「なんちゃt」

一方「おらァ!」バクッ

番外「…………へっ?」

一方「オマエの考えてる事はお見通しだっつってンだろ。忘れたのかァ?」モグモグ

番外「」

垣根「うおぉ……一方通行マジ策士」

垣根(俺もあぁすればよかったな……)

番外「…………うわぁぁぁ!!」ガバッ

一方「ばっ!?何俺のカレー食ってンだ!!」

番外「うるひゃいうるひゃいうるひゃーい!!」ガツガツ
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:33:22.92 ID:RmNclmIvo
心理(さて、今のうちに人参を……)ヒョイヒョイ

垣根「……心理定規、俺のカレーに何入れてんだ?お前が人参嫌いなのは知ってんだ」

心理「」

垣根「……はぁ、それくらい隠さなくても俺が食ってやるよ」ヒョイヒョイ

心理「え、えぇ……ありがとう……」

一方「俺のルーがなくなったじゃねェか!どォしてくれンだよォォ!!」

番外「そんなに怒るなよ。どうせ元からルーもライスもパンダもごっちゃだったでしょ?」

一方「関係ねェンだよォォ!!こォなったらお仕置き確定だゴルァァァ!!」

番外「ええっ!?こんな事でお仕置きぃぃ!?ミサカ、はぐれてないじゃない!!」

垣根「お仕置きってこの事だったのか。朝っぱらから盛ってると思ったじゃねーか……」

心理「帝督、下品な言い方はやめて。そんな訳ないじゃない」

一方「苦手か、毒手か……それとも両方か。選ぶくれェの権利はくれてやるよ」
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:35:32.87 ID:RmNclmIvo
番外「ほ、ほら!カレーが食べたかったんなら、ミサカのカレーあげるからさ。機嫌治してよ……ねっ?」

一方「ほォ……オマエが俺のご機嫌取りたァ、珍しい事もあるもンだな」

番外「ね?だからお仕置きの事は水に流――」

一方「す訳ねェよなァ?」

番外「」

垣根「お仕置きktkr」

心理「……こっちにもあとでお仕置きが必要なようね?それとも今かしら?」

垣根「…………何でもねぇよ」

一方「オマエが悪ィンだからなァ?これくれェならクソガキも何とも思わねェよ。悪ィ事をしたら罰が下る。当然の事じゃねェか」

番外「で、でも今までは……」
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:37:47.05 ID:RmNclmIvo
一方「あァ、そォだ……いっその事、今までの悪戯も精算しちまうかァ?ま、傷は付けねェから安心しろ」

垣根「Oh....鬼畜レータ……」

心理「番外個体、一言多過ぎたみたいね」

一方「おォ……こりゃァ、両方じゃ足りねェぞ。……やべェ、最高にぶっ飛んだお仕置きを思い浮かんじまった」

番外「ひっ……!」ビクッ

一方「さァて……覚悟はいいかな、悪戯好きな子猫ちゃァーン?」

番外「ゆっ、許してぇぇぇぇ!!!!」

                      ・
                      ・
                      ・
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:39:10.71 ID:RmNclmIvo
一方「……はァ、どォしてこンな事に」


~回想~

番外「ゆっ、許してぇぇぇぇ!!!!」

一方「ぎゃははははは!!!」バッ

番外「…………ふぇ」グスッ

一方「……あァ?」

番外「びえぇぇーーん!!!」

一方「お、おィ!?どォしちまったンだよォ!?」

垣根「泣~かした、泣~かしたぁ。打ち止めに言ってやろ~♪」

心理「鼻の下伸ばしてたあなたが言うんじゃないの。やっぱりお仕置きね」ポチッ

垣根「あbbbbbb」バタッ
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:40:29.94 ID:RmNclmIvo
番外「びぃーー!!!」

一方「ちげェ!今のはちっと驚かせるだけのつもりだったンだよ!ほら、周りに見られてンじゃねェか!」ワタワタ

心理「番外個体?この人もそんなつもりじゃなかったって言ってるんだし……」

垣根「」ビクンビクン

一方「なンちゃって!ほら、なンちゃってだから泣き止ンでくれェェェ!!」

番外「びぃえええぇぇ!!!痛いのはやだよぉぉぉう!!!」

~回想終わり~
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:41:50.18 ID:RmNclmIvo
番外「……」ムッスー

一方「俺も悪かったが、オマエも悪かったンだぞ……?」

垣根「何で俺まで……」

心理「それは自業自得よ」

一方(まァ、パンダを見たら機嫌も治るだろォよ)

一方「昼飯は済ンだンだ。あとはパンダ――」

番外「……」ピタッ

心理「番外個体、どうしたの?」

一方「あァ?言っとくが、俺はおンぶできねェぞ?」

番外「……ここ。行きたい」

垣根「ここって……ふれあいコーナーか?」

一方「俺はここで待ってる……って言いてェところだが、オマエは俺がいねェと動物に触れねェンだろ?仕方ねェ、俺も行ってやるよ」

心理「よかったわね、番外個体」

番外「……うん」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:47:06.19 ID:RmNclmIvo
at ふれあいコーナー

一方「なァ、機嫌治せよ。オマエの言うとおり来てやっただろ?」

番外「…………」

一方「はァ、いつまでも拗ねンなよ」

番外「ミサカのどこがそう見える?」ツーン

一方「……俺が全面的に悪かった。オマエの悪意はオマエのせいじゃないもンな。……これでいいか?」

番外「本当にそう思ってる?口先だけなら誰でも言えるよ?」

一方「本当にだ。……オマエ、ここンとこ何か変わったな。調整でも狂ったのかァ?」

番外「……あなたのせいだ」

一方「あァ?俺はオマエを調整した覚えはねェ」

番外「そういう意味じゃない!誰があなたなんかに!」
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:49:33.10 ID:RmNclmIvo
垣根「コケッコケッ!」

アヒル『ガーガー!』バタバタ

心理「帝督、それはニワトリ。これはアヒルよ?」

垣根「別にいいじゃねーか。こいつらも寄って来てるんだしよ」

心理「私の美意識が許さないわ」

垣根「じゃあ、グワッグワッ!!……おぉ?今のドナルドっぽくね?」

アヒル『ググゥ!』

番外「……ぷっ!ていとくん声真似上手いじゃん!」

心理「今だけは他人のフリしましょう……」

垣根「グワグワッ!ブギュブルルル!!」

番外「あひゃひゃひゃひゃ!!そのまま羽出したら見分けが付かなくなるかも!」

一方「……チッ、そォやって笑ってりゃいいンだよ。下手な意地張ってンじゃねェ」ポムポム
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:55:04.39 ID:RmNclmIvo
番外「っ!?別にミサカは意地なんて!!」

一方「俺が悪かったって言ってンだ。嘘は付かねェよ」ポムポム

番外「…………」

一方「ほら、オマエが触りたかったンだろ?猫か鳥かウサギかモルモットか……どれがいいンだ?」

番外「じゃ、じゃあ猫……」

一方「猫はあっちだな。ほら、行くぞ?」

番外「ちょっと!ミサカを置いて行かないでよ!」

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290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:56:45.34 ID:RmNclmIvo
番外「子猫!これ全部子猫だよ、一方通行!」

一方「あァ、見りゃ分かる」

番外「ミサカはあの子がいい!あの白いの!」

一方「……ペルシャか?」

番外「あなたみたいで真っ白だけどさぁ、可愛げは何百枚も上手だよね」

一方「俺に可愛げがあってどォすンだ……。だがよ、見事に避けられてンじゃねェか」

番外「だから早くミサカの電磁波を消してよ。暴れられて引っ掻かれたりでもしたらどうするのさ?ていとくんみたいにトラウマになったら許さないよ?」

一方「消すンじゃねェよ。内側に向けてるだけだ。オマエ、俺の能力知ってンだろ」

番外「ミサカには同じ事だよ。だからほら!」ギュ

一方「……なァ、手を握ったら猫を抱けないぞ?」

番外「…………あ」

一方「可愛いものに目がないからって、それくらい気付けよ」
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/03(日) 23:59:27.04 ID:RmNclmIvo
番外「どうしよう……そうだ、頭でいいんじゃない!?」

一方「当たり前だろ。それとも、あれか?オマエは尻で操作されてェってのか」

番外「それはそれは魅力的なお誘いで。あぁ、でも、あなたは尻より胸って感じだよね。どうする?あなたはどこで操作したい?」

一方「……頭だ。バッテリーの時間もあるから、そンなに長くはできねェぞ」カチッ

番外「はーい」

一方「……ほら、これでいいぞ。あンま急に動くなよ?」ポムッ

番外「そーっと……えい」ダキッ

子猫『みゃ!?』

一方「はァ……もっと優しくしねェと引っ掻かれるぞ」

番外「おー……」モフモフ

子猫『みぃー』

番外「きゃー、可愛いっ!ミサカが電磁波なんて出してなかったらずっと抱っこしてたいよ!」
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:01:59.71 ID:PBCgk5WMo
一方「それは俺にも無理だなァ」

番外「ミサカが無能力者ならよかったのになぁ……ねぇ、子猫ちゃん?」フニフニ

子猫『みゃーん』ゴロゴロ

番外「……あれ?そういえば、10032号は猫飼ってるって話だったよ?」

一方「アイツがか?動物は電磁波とかには敏感だって聞くが、鈍感な奴もいるんだな」

番外「ミサカもそんな子がいたら飼いたいなー……。ねぇ?もしも、ミサカがそんな猫を見つけたら飼ってもいい!?」

一方「あァ?そンな都合の良い猫が現れるはずねェだろ。それに、あのマンションはペット飼えたか?」

番外「黄泉川に聞いてみるよ。それでいいよね」

一方「……オマエがちゃンと世話できるならな」

番外「やったぁ!」

一方「ったく、肝心の猫がいねェのに何喜ンでンのか……」
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:03:44.10 ID:PBCgk5WMo
番外「あっ、あなたの靴紐……」

一方「靴紐がどォした?」

黒子猫『みゃみゃっ』

一方「おォ!?何解いてンですか、こン猫ォォ!!」

黒子猫『みみぃー!』タタタタ

一方「クソ野郎が!とっ捕まえてやる!!」バッ

番外「あ!今離したらミサカの――」

子猫「みゃ?」

番外「あれ?あなたは怖くないの?」

子猫「みゃー」

番外「……あなたは優しいんだね」ナデナデ

子猫「にゃー……」
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:05:04.38 ID:PBCgk5WMo
一方「あンクソ猫……どこ隠れやがったァァァ!!」

黒子猫『にゃにゃにゃにゃ』

一方「見つけたぞォ!番外個体みてェな真似しやがってェェ!!」

番外「えっ?ミサカ!?」

一方「待てェェ!!クソ猫ォォォォ!!」

黒子猫「にゃっにゃにゃにゃにゃにゃ!!!」ピュピューン

番外「ミサカって、傍から見てあんな感じだったの……?」

子猫「すぅ……」zzz...

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                        ・
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:06:18.22 ID:PBCgk5WMo
垣根「やっと来たか。待ちくたびれたぜ……ってどうしたんだ!?」

一方「ぜェ……ぜェ……少しばかり運動してきただけだ」

番外「子猫と互角に渡り合えるって流石は第1位だね☆」

心理「……?」

一方「はァ、はァ……次こそパンダで終わりなンだろォな?」

番外「うん。ミサカはもう満足したし、あとはパンダを見るだけかな」

心理「そうね。並ぶだけでもちょっと待たなくちゃならないでしょうし、これで最後にしましょう?」

垣根「んじゃ並ぶか」

一方「あン猫……覚えてやがれ……」

番外「うひゃひゃひゃ」ケラケラ
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:11:13.67 ID:PBCgk5WMo
at パンダ館

番外「かなり並んだね。30分くらいかな?」

一方「別に今日が初日じゃなかったが、思ったより早いな。どォしてだ?」

垣根「きっと中では立ち止まったら駄目なんだろうな。混雑を緩和する為によくある事だ」

心理「あまりたくさんは見ていられないから、ちゃんと見ておかないとね」

警備員「はーい!立ち止まらないでゆっくり歩いてくださーい!押さないでくださーい!フラッシュは禁止でーす!」

垣根「流石はパンダだな。凄い人盛りだ」

心理「できれば前の方で見たいのだけど、できるかしら?」

番外「大丈夫かな?」

一方「番外個体、手ェしっかり握ってろ。絶対に離すなよ」

番外「えっ?」

一方「最前列で見たいンだろ?垣根、付いて来れるか?」

垣根「俺が言おうとしてた台詞を取んなよ。俺だって間近で見てぇよ」

心理「子供みたいな事言うんじゃないわ、帝督」

一方「ほら行くぞ。はぐれンなよ」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:12:32.74 ID:PBCgk5WMo
番外「こ、こんなに近いのにはぐれるなんてしないよ!」

ギューギュー スイマセントオリマース

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                  ・
                  ・

番外「よっし!最前列ゲットォォォ!!」

一方「立ち止まるンじゃねェぞ。あとがつっかえるからなァ」

心理「髪が乱れちゃったわ……」

垣根「まぁ、これだけ人が多けりゃなぁ。やっぱ人気なんだな」

一方「それで、その人気者はどこにいるンだ?」

番外「テレビだと、2頭入って来たんだよね?」

垣根「確か……オスとメスで2頭いるって話なんだが……」

番外「あっ!いた!大きいからすぐ分かるよ!?」

一方「……でけェな。あンなにでけェもンなのか?」

垣根「熊だから大きいと知っていても、実際に見ると想像以上だぜ」
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:13:22.55 ID:PBCgk5WMo
心理「あれね。笹を食べてるのと……」

番外「タイヤのブランコで寝てる子で2頭だね。へぇ~、パンダの尻尾って白だったんだ」

心理「そうよ?ヌイグルミや漫画のパンダは尻尾が黒だけど、本当は汚れてるだけで白なのよ」

一方「そォだったのか」

垣根「第1位が知らなかったのか?」

一方「俺は動物博士じゃねェ。知らない事くらいある」

番外「白黒で笹しか食べないのに、あれでも熊なんだってね。不思議だなぁ」

垣根「白黒の熊ってだけでも相当だよな」

心理「本当、動きのひとつひとつまで愛くるしいわね……」

番外「和むなぁ……あ!2頭で遊びだしたよ!」

一方「ほォ……パンダも相撲取ンのか。はっけよいのこったのこった、ってなァ!」

垣根「はははは!転がってんじゃねーか!!」

心理「こういうのを見てると、つまらない悩みなんて吹き飛んでしまいそうだわ」

番外「学園都市でも飼ってくれたらいいのにね。そしたら毎日見に行くよ」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:13:54.42 ID:PBCgk5WMo
一方「毎日はやめろ。せめて週1だ」

垣根「週1でいいのかよ!?」

一方「…………俺も見てェからな。悪いか?」

番外「あなたが見たいなんて珍しいね。そんなに好きだったっけ?」

心理「パンダを嫌いな人はいないわ。一度見たら、また見たいって思うくらいだもの」

一方「まァな。ほら、もォすぐ外に出るぞ?見てなくていいのか?」

垣根「おっと、忘れてたぜ」

番外「写真撮らなきゃ!携帯で撮れるかな?」

心理「フラッシュには気を付けるのよ?」

番外「りょーかいでーす」ピロリーン♪ピロリーン♪

一方「よし、出るぞ。出口が一番混むから気をつけろよ」

番外「ちょっと待って。あともうちょっと撮ってか……きゃっ!?」ビリッ

一方「どォした!?」
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:17:24.45 ID:PBCgk5WMo
番外「今、誰かミサカのお尻を……」

浜面「うおっ!?今なんかビリっとしたぞ!いや、そんな事より悪かった!わざとじゃなかったんだ!」

滝壺「はまづら、何を慌てているの?」

一方「……あァ?」

垣根「どうした、ふたりとも。外に出るんじゃなかっ……たぁ!?」

浜面「」

心理「何か悲鳴が聞こえたけど、どうしたのかし……っ!?」

滝壺「」

番外「この人痴漢だよ!ミサカのお尻触ったもん!!」

浜面「違う!今のは押されて偶然……」

滝壺「今はそんな事言ってる場合じゃないよ。はまづらは分かってる?」

一方「……何でオマエがここにいるンだ」
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:18:31.01 ID:PBCgk5WMo
ハァァマァァヅゥゥラァァァァァ!!!

浜面「あの声は麦野っ!?わ、悪い!この詫びは今度会った時にするからそれじゃ!!」ダダダダダ

滝壺「そ、そんなに引っ張ったら痛いよ、はまづ――」トトトトト

ガヤ........ガヤ......チカン?

一方「……何だったンだ?」

番外「…………知り合い?」

垣根「まぁ……な」

心理「あの子たちもパンダだったのかしら?」

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302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:20:02.95 ID:PBCgk5WMo
番外「なーんだ。ミサカ、痴漢に遭ったと思っちゃったよ」

心理「大丈夫よ、番外個体。あの人はそんな軟派な人間ではないわ」

一方「女連れてる状態で、他の女に手ェ出す奴なンていねェからな。垣根もアイツの事を知ってたのか?」

垣根「あぁ、前にドンパチやった仲だからな」

心理「暗部のほとんどは再編成されたけど、アイテムはまだ存続してるみたいだったからね。どこかで会うとは思ってたけど……」

一方「まさか、こンな場所で遭っちまうとはなァ」

番外「まぁ、いーや。お土産も買ったし、そろそろ帰ろうよ」

一方「パンダのヌイグルミか。それも俺が買ったンだけどなァ」

番外「だから言ったじゃない。ありがとう、って。ちゃっかり最終信号の分も買ったのは誰だったかにゃーん?」

一方「クソガキにも何か買ってやらないといけねェしなァ。それで文句言われねェのなら安いもンだろ」
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:21:40.77 ID:PBCgk5WMo
垣根「なら、そろそろ帰ろうぜ」

心理「あら、もう6時回ってるわ」

番外「ええっ!?もうすぐ晩ご飯じゃない!」

一方「そっちかよ!せめて晩飯まで帰らねェと、昨日みてェに一晩中正座させられンぞ!!」

垣根「お前ら、何やったンだよ……。俺でもそこまでのワルはやった事ねぇのに」

心理「彼女たちの保護者はアンチスキルなのよ。きっと厳しいだけだわ」

一方「だが大丈夫なんだろ?オマエの未元バスならよォ」

番外「はっ!そうだった。常識は通用しないんだよね!?」

垣根「あぁ、その点は心配すんな。お前たちの面倒は最後まで見てやる」

心理「乗り心地については慣れるか我慢してね?」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:22:37.04 ID:PBCgk5WMo
at 駐車場

一方「ふゥ……明日からまた学校だと思うと悲しくなってくる」

垣根「サザエさん病みたいだな」

番外「ミサカは楽しみだけどな、学校」

心理「勉強が好きだなんて珍しいのね」

一方「ちげェよ。コイツは学校に憧れてるだけだ」

番外「ミサカ、勉強は好きだよ?学習装置とは違って何というかさ、新しい発見?みたいなのばっかりで楽しいよ」

一方「そォかい。……垣根、バスはこの辺じゃねェか?」

垣根「」

番外「……ていとくん?」

心理「帝督、答えなさい。これはどういう事なの?」
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/04(月) 00:23:54.24 ID:PBCgk5WMo
垣根「」

一方「オマエ……」

垣根「…………れた……」

番外「何?どうしたの?」

垣根「俺のバスが……相棒が……盗まれてる……」

一方「あァ!?またレッカーじゃねェよな!?駐車場で消えるって盗難じゃねェか!!」

番外「ええぇぇぇ!!?あの中にはミサカのゲコ太時計まであるんだよ!?」

心理「それだけじゃないわ……中には許可証も入ってたはずよ……」

一方「おィ!!どォすンだ垣根ェェ!!アレがないと帰れねェのじゃねェのかよ!!!」

垣根「何がどうなってんだよぉ……」

心理「これでも学園都市製の車種なのよ……?そう簡単に盗まれるはずは……」

番外「うわぁぁぁん!!ミサカの時計がぁぁぁ!!!」

一方「そォじゃねェだろ!!!こっからどォすンだクソったれェェェェ!!!!」 
 
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 22:58:21.11 ID:cDS3mkv6o
垣根「………………」


一方「……なァ、あれからずっと黙ったまンまだがいいのか?」

心理「相当ショックだったみたいね。自分の子供みたいに愛着持ってたから、分からなくはないけど」

番外「車が子供って何だよ。それよりも、ミサカたちはこれからどうするのさ。このまま帰れません、なんて事はないよね?」

一方「そンなに距離は離れてねェンだ。帰る手段はいくらでもある。だがなァ……」

心理「許可証が無いと、学園都市には入れないわ。例え、それが学園都市のLEVEL5でもね」

番外「ロシアから戻った時はそんな事気にしなかったじゃない。ゲートが無理なら、空からぴゅ~っと入れないの?」

一方「あン時は学園都市もそれどころじゃなかったンだろ。今度それをやったら黄泉川のお説教どころじゃねェぞ」

心理「そうね……バスの場所が分かれば、それを追えばいいんでしょうけど」
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:05:43.49 ID:cDS3mkv6o
垣根「……それだ!」

番外「あるのかよ。それでよく相棒なんて言えるもんだ」

心理「帝督、そんな大事な事を忘れてたの……?」

垣根「悪い……あまりに突然過ぎて忘れてたぜ」

一方「今どこを走ってるか分かるか」

心理「東に10kmって所で止まってるわ……相手もまさか飛べるとは思ってないでしょうから、きっと渋滞に捕まってるのね」

垣根「俺の翼なら空から追いつけるが、人目に付いたらやばいな。その場所は高速らしいから、タクシーか何かで下から追いかけるか」

番外「ふぅん……位置情報を追って犯人を半殺しにするって訳か。いいよ、ミサカも付き合ってあげる」

番外「……奴らはミサカの時計を奪ったんだ。たっぷりお仕置きしないね♪」

一方「決まりだな。クソったれの小悪党には泥棒はいけませンって教えねェとなァ!」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:07:41.27 ID:cDS3mkv6o
                                      ・
                                      ・
                                      ・

番外「おじさん!この点に向かって走って!」

運転手「追いかけっこかい?だけどね、今の時間帯は渋滞で――」

一方「脇道でも何でもいい。金なら2倍、いや3倍出す。時間がねェンだ」

垣根「とりあえず、追いつけばいいんだ。だから頼むよ」

心理「私からもお願いします」

運転手「はぁ……タクシーはそんな乗り物じゃないんだけどなぁ」

番外「ミサカのゲコ太ミサカのゲコ太ミサカのゲコ太……」

一方「オマエ、肝心の帰る事忘れてンじゃねェよな?」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:09:28.53 ID:cDS3mkv6o
ガロロロロロロロロ......

一方「どォだ?」

垣根「もうちょっとだ。このペースならもうすぐ並ぶぞ!」

番外「相手は高速を使ってるんだよね。出口に先回りとかできない?」

心理「それは難しいわね。どこに向かってるか分からないのに、そんな博打は出来ないわ」

一方「渋滞に巻き込まれてなかったら危なかったな。でもこれで何とかなりそォだ」

運転手「こっちにもパトカーか。こんな小道で油売ってるのも珍しいなぁ」

一方「おい!これってバスが動き出してンじゃねェのか!?」

心理「さっきまで止まってたのに……変ね」

番外「渋滞から抜けたのかな。どこに行ったのか分かる?」
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:10:35.74 ID:cDS3mkv6o
心理「……これは…………」

垣根「……不味いな」

一方「あァ?」

心理「相手が向かってる先……学園都市よ」

番外「えっ!?」

運転手「君たちは学園都市の子だったのかい?悪いけど中までは入れないよ?」

垣根「ちくしょお……あと少しで取り返せると思ったのによぉ……」

一方「チッ……」

番外「あぁもうじれったいなぁ!ミサカが運転するううううううううう!!!」バタバタ

一方「こンな狭い所で暴れるンじゃねェェェ!」

心理「見えたわ。あれよ」
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:13:12.92 ID:cDS3mkv6o
~その頃、未元バスは~

浜面「やっと渋滞から出られたか。まさか、今日1日で2回もピッキングするとはな……これ、学園都市製だぜ?」

浜面(それよりも、第1位と第2位が女連れで動物園にいたってどういう事だよ。麦野に見られてたらヤバかったな)

滝壺「すぴー……」zzz....

麦野「車がどこ製だなんてどうでもいいのよ。行く時に乗ったのは誰かさんのせいでベコベコになったんだからさぁ。あ、このチョコ美味し」

絹旗「麦野は私のせいだって言うんですか。それもこれも、浜面がミラー越しに超覗くような事をするからですよ」

浜面「そりゃ、バックする時は誰だってミラーを見るもんだろ。でも急にパンダが見たいなんてどうしたんだ?」

麦野「フレメアが見たかったんだから仕方ないでしょ。それに、学園都市を出るくらい簡単よ」

フレメア「むにゃにゃ……」zzz....
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:18:30.07 ID:cDS3mkv6o
絹旗「フレンダの事といい、またあのカエル顔の医者ですか。……浜面、後ろ気付いてますよね」

浜面「後ろ?……あれはタクシーじゃねぇか」チラッ

絹旗「あの助手席にいるホスト崩れ、どっかで超見た顔じゃありませんか?」

垣根『――――!!』

麦野「第2位……っ!」

浜面「それだけじゃない!第1位も乗ってんぞ!?」

麦野「あの野郎!!!」ジジジ....

絹旗「麦野!フレメアもいますし、こんな所で暴れたら駄目ですよ!」

滝壺「ねぇ、はまづら。このプリクラ見て」

浜面「滝壺、起きたのか?悪いけど今はそれどころじゃ――」

麦野「プリクラだぁ?どうせガキが色気づいて撮ってるだけでしょ?」

浜面「マジかよ……」

絹旗「」ポカーン

麦野「――え?」
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:19:47.94 ID:cDS3mkv6o
浜面「この際、一方通行らしき人物がカエルになってるのは置いといて。じゃあ、この車は……」

滝壺「それにこの許可証。私たちのと同じだよ」

麦野「……はぁああまづらぁ。オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」

浜面「ひっ、ひぃぃぃぃ!!!」

絹旗「今はとにかく超逃げましょう!許可証が手元にないのなら、奴らも中までは追ってこれません!」

フレメア「すぴー……パンダさぁぁん……」zzz......

                    ・
                    ・
                    ・
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:22:35.43 ID:cDS3mkv6o
~学園都市ゲート前~

一方「……チッ、中に逃げられたか。気付かれたのが不味かったみてェだな」

番外「とりあえずここまで来たけど、こっからどうするの?いっその事、強行突破でもしようか」

垣根「許可証がないと、いくら俺でも易々と入れないからな。だといって無理に入れば後々面倒だぞ?」

心理「でも……あのバスが中にいるって事は、奪った相手は学園都市の人間って事になるのね」

番外「学園都市製のハイテクバスをそこらの一般人が盗めるのかミサカは疑問だったけど、これで謎は解けたみたいね」

一方「学園都市の人間か……おィ、それって」

番外「もしかしなくても、さっきの痴漢の仕業だったりするかもよ?」

心理「浜面仕上……元スキルアウトのリーダーで、現在はアイテムの構成員……」

一方「スキルアウトなら車のピッキングくれェお安いもンだな。で、どォする?」

番外「問題はそれだよね。学園都市に奴らがいるのなら、今のミサカたちには何も手段がない。帰る為にはバスを見つけなきゃいけないのに、そのバスはミサカたちの帰るその先にいる」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:29:27.63 ID:cDS3mkv6o
心理「手も足も出ないわね。帝督、あなたも何か考えて頂戴」

垣根「ぐすっ……なぁ、俺の相棒はどこ行っちまったんだ?」

一方「アイテムに盗まれて、今は学園都市をドライブしてるそォだ」

垣根「…………行くぞ、学園都市へ。まずはアイテムをぶっ潰す」

番外「だーかーらー、その学園都市にどうやって入るの?って話でしょ。車1台でメソメソしてんじゃねーよ。ミサカだってゲコ太を取り返したいってのに!」

一方「落ち着け、でけェクソガキども。いいか、学園都市から出るのには無痛注射針っつーやつで発信機を埋め込むンだろ?それが証拠になるじゃねのェか」

番外「おおっ!?」

垣根「……なぁ、ひとついいか。お前は発信機を埋め込まれた覚えがあるか?」

一方「………………」

番外「何だよ!ぬか喜びさせんじゃねーよ、このロリコンもやし!!」

心理「それなら、冥土帰しにお願いしたらいいんじゃないかしら。元々が彼の偽装許可証だし、再申請して捕まりに行くよりはマシだと思うわよ」
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:33:03.74 ID:cDS3mkv6o
番外「……!?そしたら戻れるんだね!?」

垣根「そ、そうか!その手があったな!ちょっと待て、病院に電話してみる」

一方「あァ、やってくれ」

心理「……どうなるかと思ったけど、これで一件落着ね」

プルルルル......カチャ

垣根「おぉ!冥土帰しか!?実はな――」

御坂妹『もしもし、こちら救急救命病棟24時です。ただいま、冥土帰しは電話には出られません、とミサカは答えます』

垣根「……誰だ?ミサカだと?」

一方「ちょっと替われ、俺が話す」

一方「…………俺だ。お前が手配してた許可証をバスごと盗まれた」

御坂妹『おや?その声は一方通行ですね。すみませんが、冥土帰しは外出中なので電話には出られません、とミサカは大事な事なのでもう一度答えます』
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:37:03.86 ID:cDS3mkv6o
一方「……はァ?どォいう事だ」

番外「ねぇ、何を話しているの?ミサカにも教えてよ」

一方「……分かった。ハンズフリーにするから待ってろ」ポチッ

御坂妹『現在、冥土帰しは第4学区でミサカたちに食事を奢っていますからね。ってか、番外個体はこんな時間に何してんだよ。昨日怒られたばっかでこれかよ、とミサカは上位個体に――』

番外「わー!!!やめろやめてやめてくださいぃぃ!!!もう黄泉川に怒られたくないよおおぅぅ!!」

一方「1万人に驕るなンざ正気かよ……なら直接連絡は取れるか?急ぎの用なンだ」

御坂妹『今日は北米ミサカのAグループですから、16836号辺りから連絡を取ればよろしいかと』

番外「それならミサカがネットワークで聞いてみるよ」

一方「あンま長々としてっと感情拾っちまうだろォが。ンなもン電話で済ます」

番外「用件を伝えるなら、冥土帰しに電話するより早いでしょ?大丈夫だよ、そんなに長くはかけないって」

御坂妹『一応、冥土帰し本人の連絡先もお教えしますね、とミサカは携帯を取り出して電話帳を展開します』

垣根「おう、頼むぜ」
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:39:37.96 ID:cDS3mkv6o
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心理「番外個体、どう?繋がる?」

番外「ん~……駄目だ。全然繋がらないよ」

一方「接続を切ってンのか?まァいい、俺が直接医者にかけるからよォ」

垣根「日も暮れてきれる。早くしないと手遅れになるぞ」

プルルルル.....カチャ

一方「あァ、冥土帰しか?」

冥土帰し『もひもひ?そのこへはあくせろりーただね?』

一方「…………オマエ、誰だ?」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:43:25.25 ID:cDS3mkv6o
冥土帰し『ぼくをわふえたのかひ?これへも、いしゃとしてがんはってきたつもひだがおろろろろろろ……』

チョットオキャクサマ! オートリバースハコマリマス!!

一方「…………」

番外「…………」

....ミサカガカワリマショウカ? タノムネ?オロロロロロ

16836号『一方通行ですね。替わりました、ミサカ16836号です』

一方「オマエが16836号か。番外個体からネットワークでオマエに連絡を入れたンだがな……リンク切ってたのか?」

16836号『すみません。初めての食事会だったもので、情報共有を消すために一時的に……何か用があったのでしょうか』

一方「とりあえず、あの医者を元に戻せるか?電撃でも何でもいい。話せる状態にしてくれ」

16836号『は、はぁ……分かりました』
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:51:58.18 ID:cDS3mkv6o
ビリビリッ! ハウッ! ........ココハドコナノカナ?

一方「…………」

冥土帰し『やぁ、一方通行。どうかしたのかな?』

一方「それは俺の台詞だ…………」

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336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:55:16.00 ID:cDS3mkv6o
一方「はァ……」ピッ

垣根「どうだったんだ?あまりいい話とは思えなかったけどよ」

心理「でも、話は纏まったみたいね」

一方「…………よかったな。お前らの言うとォり、今日は泊まりになりそォだ……」

番外「本当!?」

一方「喜ぶような事か。こっちは最高に最悪な気分だぜ」

~♪

垣根「おい、携帯鳴ってんぞ。誰のだ?」

心理「私のじゃないわよ?」

番外「あっ、ミサカのだ」ゴソゴソ

一方「おィ!今それに出ると――」

番外「あいあい、今出ますよ~」ピッ
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/06(水) 23:56:54.54 ID:cDS3mkv6o
黄泉川『番外個体!こんな時間までどこほっつき歩いてる!?2日連続とはいい度胸じゃん!!』キーン

番外・一方「」ビクッ

番外「あの、これには色々と深い事情が……」

一方「ほらな、言わンこっちゃねェ……」

番外「」ダラダラ

黄泉川『…………病院にいるなら、せめて電話のひとつでもするもんじゃんよ。今日は泊り込みか?』

番外「えっ?」

黄泉川『急な調整と言われたから仕方ないけど、一方通行もいるんだろ?そっちはチョーカーのメンテナンスと聞いてるじゃん』

番外「あー……今は植物人間だから出れないと思うけど」

黄泉川『分かったじゃん。あまり先生に迷惑かけるんじゃないぞ?打ち止めも心配してるから、あとで電話のひとつでも寄越すじゃん』

番外「わ、分かったよ。んじゃまたね」ピッ
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:00:47.75 ID:gU+vRBeKo
一方「……あぶねェ、間に合わねェかと思ったぜ。冥土帰しは適当に誤魔化すって言ってたがよォ」

垣根「お前ら、いつもあんな感じなのか?こっちまで聞こえてたぞ」

心理「あまり怒らせるような事はしちゃ駄目よ?」

番外「善処します……」

垣根「で、どうだったんだ?泊まりって何だ?」

一方「医者が言うに、許可証が正規ルートじゃねェから、ゲートを管理してる人間に掛け合ってみるらしい」

番外「盗まれましたー、なんて言ったら学園都市から手厚いお仕置きが来るもんね」

心理「泊まりって事は、今日中にできるって訳じゃないのね?」

一方「残念な事に、そォいうこった。詳しい事は俺にはよく分からねェがな」
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:05:55.40 ID:gU+vRBeKo
番外「ねぇ、どこに泊まる!?」

一方「遊びに行くンじゃねェンだ。適当に時間潰せンのなら、カラオケでもネカフェでもどこでもいいだろ」

垣根「…………」ピポパポ

番外「何してるの?」

垣根「だって泊まるんだろ?どうせなら、豪華スイートルームでも取ろうかと思って。……あ、部屋空いてます?一番いい部屋を2部屋で。はい」

一方「手際良過ぎンだろ!ぜってェ泊まる気だったな、ていとくゥゥゥゥン!!??」

心理「なんでいっつも一番いい部屋に拘るのよ。このホスト崩れ!」

垣根「……という訳だ。時間的にホテルのレストランは閉じてるらしいから、先に晩飯食ってから行こうぜ」

番外「どうでもいいけどさ。ミサカ、お腹空いたんだけど」

一方「俺のカレーまで食っておいてそれか」
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:10:17.10 ID:gU+vRBeKo
                            ・
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番外「げぷ。ちょっと食べ過ぎちゃったかも」

一方「食べ過ぎなンてレベルじゃねェよ。晩飯にジャンボパフェなンか頼む奴がどこに……げぷっ」

垣根「出てきた時はでっかい城に見えたよ。あれって何人分なんだ?」

心理「結局、最後はみんなで食べたものね」

一方「だからって俺まで甘ェもン食わせンじゃねェ!」

番外「うひゃひゃひゃひゃ!あなたが短気なのも糖分が足りてない印なのかもね。カフェインばっかで狂ってんじゃないの?」

一方「オマエこそ、あンだけ食った割に腹ァ膨らンでるよォには見えねェな。どこに詰まってンだ?」ポンポン

番外「ひゃわぁぁ!?勝手に人のお腹触るな!」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:12:56.39 ID:gU+vRBeKo
心理「甘い物は別腹って言うけど、女の子だけの特権なのかしら」

垣根「俺は当分甘いもんは無理……」

番外「うーん……でもなんか物足りないような気がするんだけど」

一方「甘いもンばっか食ってると、そのうち味覚がおかしくなンぞ。もォ手遅れかもしれねェがよ」

垣根「おっと、ここがホテルだな。とりま、チェックインしとくか。このままじゃ風邪ひいちまうぜ」

心理「馬鹿は風邪をひかないんじゃなくって?」

垣根「俺だって風邪をひくこともあればインフルエンザにもなる」

ヒュールリー

番外「うぉっ!さぶっ!」

一方「おら、オマエもぼさっとすンな」ズイズイ

番外「おわっ!?押さなくても自分で歩けるって!!」

一方「いいからさっさと歩け。俺に手間掛けさせるンじゃねェよ」


一方「はァ……相棒だとか時計だとか喚いてたのは何だったンだァ……?」
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:16:55.57 ID:gU+vRBeKo
~エレベーター内~

ウォォォォォォォンォンォン......

垣根「ははは!受け付けの姉ちゃん、カード1枚見せただけで畏まりやがったぜ」

心理「未成年がブラックカードなんて持ってたら嫌でも畏まるわよ」

一方「……なァ、俺はまたコイツと1晩過ごすってのか。今度ばかりは納得がいかねェよ」

番外「うひひひひ、熱い夜がお望みなら頑張っちゃおうかな?」

一方「何を頑張るンだ。俺はいつでも静かな夜をお望みだ、おらァ……」

心理「普通に考えて、ここは男女に分かれるのが当然なんだけど、私はみんなに任せるわ」

垣根「……」チラッ

一方「……あァ?」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/07(木) 00:21:44.67 ID:gU+vRBeKo
垣根「ふひひひひ……一方通行、今夜は俺と語り明かそうぜ!」

一方「俺はお前と話す事なンざねェよ。だが、コイツよりはマシだな」

番外「……」イラッ

心理「どうしたの、番外個体?」

番外「何でもないよ。そんじゃ、ミサカたちは女同士の本音トークと洒落込みますか」

垣根「…………じゃあ俺たちも男同士の――」

一方「オマエ、それ以上言ったら身包み剥いで学舎の園に放り出す」

番外「…………」

心理(……さて、どうしたものかしら…………) 
 
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/09(土) 23:44:13.23 ID:0kNkWlo6o
~部屋の前~

一方「ンじゃ、俺は垣根とだな。心理定規に迷惑掛けンじゃねェぞ?」

番外「そちらこそ、男同士だからって度を過ぎた事はしないでね」

一方「しねェよ!」

垣根「えー……しねぇの?トランプとかする事あるじゃねーか」

心理「ふたりでトランプなんて何ができるのよ……」

垣根「ババ抜きとか7並べとか」

番外「……ふたりでババ抜きとか何だよ」

一方「だから、俺たちは遊びに来たンじゃねェ。そこンとこ分かってンのか?」

心理「ところで、明日は何時に起きればいいのかしら」

垣根「冥土帰しからの連絡待ちなんだろ?早いに越した事はねぇ」
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/09(土) 23:46:57.87 ID:0kNkWlo6o
番外「別にいつも通りでいいんじゃないかな。明日中って事は、夜中に突然掛けてくるようなもんじゃないんでしょ?」

一方「だから無駄に徹夜とかすンなよ。これでも明日は学校なンだからな」

垣根「そこで休むと言わない辺り、第1位は真面目キャラで通してんのか?」

一方「変な噂立てられても困るンだよ。一部の奴らには素性がバレてンだからなァ」

番外「ミサカも今日は疲れたから早く寝るよ。おやすみぃ」ガチャ

垣根「んじゃ、おやすみな」

心理「えぇ、おやすみなさい」

一方「……おゥ」
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/09(土) 23:49:49.39 ID:0kNkWlo6o
~女性組~

番外「さてと……ていとくんはどんな部屋を頼ん――」

心理「番外個体?立ち止まってどうしたの?」

番外「…………えっ、これが部屋?」

心理「あの馬鹿……たった1晩なのに無駄遣いしてるんじゃないわよ。これ、ロイヤルスイートじゃない……」

番外「ミサカの部屋の何倍あるんだろ……で、ベッドはどこ?全然見当たらないんだけどさ」

心理「ここはリビング。寝室なら隣の部屋よ?お風呂はあっち」

番外「」ポカーン

心理「……番外個体?」

番外「みさかのしってるほてるとちがう……」

心理「まぁ、滅多に泊まるような部屋じゃないのは確かね。それよりも、早くお風呂に入りましょう?」

番外「……うん、そうだね。やっぱりお風呂も広いのかな」
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/09(土) 23:53:22.86 ID:0kNkWlo6o
~男性組~

一方「何故、俺が垣根と……思えば、どっちも地獄じゃねェか」

垣根「一方通行!見ろよ、これ全部相当な銘柄だぜ!」

一方「あァ?未成年が泊まンのに、酒なンか置いたままでいいのかよ」

垣根「あとで飲み比べしてみないか?学園都市じゃ規制が多くて飲めないだろ」

一方「そもそも飲まねェよ!こンなもンは全部ゴミ箱行きだァ!」バコン

垣根「つまんねぇ奴だな。まぁいい、先に風呂入ろうぜ」

一方「……俺は朝入るからいい」

垣根「おい、そこは一緒に入るのが常識だろ!?」

一方「どこにそンな常識があるンだよ……」

垣根「まぁまぁ、堅い事言わず入ろうぜ。裸の付き合いってやつだ」ズイズイ

一方「俺がいつ堅い事言ったよォォゥ!?」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/09(土) 23:57:33.20 ID:0kNkWlo6o
~女性組・お風呂~

番外「やっほー!」ガラッ

ポワワワーン

番外「って、ひっろぉぉぉぉ!?これってお風呂っていうかプールでしょ!?」

心理「あの部屋を見れば想像は付いたけど、これじゃあどこの王室よ」

番外(前は一方通行に止められたけど、やっぱり飛び込みたいなぁ……)ウズウズ

心理「どうしたの?」

番外「やっぱ無理!今日は無礼講じゃあぁぁぁ!!」タタタタ

心理「ちょっと!そんなに走って、滑っても知らないわよ!?」

番外「とぉっ!」バシャーン

心理「えっ?」

番外「」ブクブクブク

心理「……誰も見てないし、飛び込み禁止って訳じゃないけど、これって高校生としてどうなのかしら」

番外「…………ぷはぁ!心理定規は入らないの?すっごく気持ちいいよ?」スイー

心理「ふふっ、はいはい……今入るわよ」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:00:17.44 ID:mKJt0NSfo
                        ・
                        ・
                        ・

番外「あ~……やっぱ足を伸ばせるっていいねぇ~。ミサカもこんなトコに住みたいなぁ」

心理「それでも飛び込むのはどうかと思うわよ?高校生としてどうなのかしら」

番外「そう?高校生ってこんな事しないの?」

心理「する訳ないでしょう。お風呂に飛び込んだりするのは小学生までじゃない」

番外「……それって、ミサカが小学生みたいな言い方だよね?」

心理「あら、分かった?」クスッ

番外「何をわざとらしく!?こうなったらお仕置きじゃぁぁ!!」ガバッ

心理「きゃ!?何をするの番外個体!」

番外「うひゃひゃひゃひゃ!一方通行じゃないからって、油断してるとこうなっちゃうよ?」モニュモニュ

心理「ちょっと!やめなさ……ひゃっ!?」
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:01:14.79 ID:mKJt0NSfo
番外「おっ?お姉様よりあるかも」モニュモニュ

心理「んっ……ひぁ……ふ、ぁっ……」

番外「あれれー?そんな可愛い声出して誘ってるのかにゃーん?」

心理「~っ!やめなさい!」ポカッ

番外「あうっ」バシャーン

心理「あなたこそ、その胸は何なのよ!私に対するイヤガラセ!?」

番外「嫉妬してるのかな?別にこれはミサカが好きでやったんじゃなくて――」

心理「いいわ……あなたが乙女の努力を否定するってのなら、その現実を確かめてあげる」ワキワキ

番外「……心理定規さん?ちょっと目が危ないよ?」

番外(やっべぇ、一方通行と同じノリでついやっちゃった……)
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:03:32.31 ID:mKJt0NSfo
心理「うふふふふふふふふふ……」

番外「にっ、逃げろぉぉぉぉー!!!」ザザー

心理「逃げても無駄よ!これでも水泳は得意なんだから!」スイー

番外「ひぃぃぃぃぃ!!!来るなああぁぁぁあ!!!」ザザー


~男性組・お風呂~

キャアァァァァァァァァ!!!

垣根「なぁ、今なんか聞こえなかったか?」

一方「聞こえてねェよ……はァ、なンでコイツと一緒に風呂入らなきゃなンねェンだ」

垣根「露天風呂でも一緒だったじゃねぇか。見ろよ、ライオンから湯が出てるぜ!」

一方「だからそれが何だってンだ。そンなのに頭突っ込ンで楽しいのかよ?」

垣根「この先に何があるか気になってな。ってかよ、俺たちふたりにしては広すぎね?」

一方「オマエが選ンだンだろォが。明日の朝には出るってのに、こンなとこに泊まる意味はあンのか」

垣根「泊まれたらどこでもよかったんだろ?それに、今頃あの子たちも女同士で楽しんでんじゃねぇの?」スッ

一方「分ァったよ。部屋の事は何も言わねェ。だから肩寄せンな」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:06:53.11 ID:mKJt0NSfo
垣根「こんなに広いと心細くて寂しいだろ?」

一方「頼むからひとりにしてくれェ……」

垣根「それにしても、お前の髪はサラサラでいいよなぁ」サラサラ

一方「だァァ!!オマエも話を聞かねェタイプかよ!?いや、知ってたけどよォ!!」

垣根「お前が女なら惚れてたな、うん。このまま百合子に改名とかどうだ?」

一方「……鳥肌立ってきたわ。俺はもォ上がるからな。やっぱ朝に入りなおすわ」

垣根「もう上がるのか?上がるには早いだろ」ガシッ

一方「おわっ!?危ねェだろ、風呂場でふざけンじゃねェ!オマエは風呂がどンなに危ないのか知ってンのか!?」

垣根「なぁなぁ、そんな事よりもっと話す事があるだろ?男同士じゃないと話せない事とかさぁ」

一方「元から話す事はねェよ!いい加減うぜェ!」

垣根「嫌だね。お前が何か話さない限り!俺は絡むのを止めない!」

一方「気持ち悪ィ事すンじゃねェよ、このホモ野郎ォォォ!!」

垣根「おおぅ……この肌触り、スベスベで何とも言いがたい……」サワサワ

一方「」ゾワワワー
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:09:48.87 ID:mKJt0NSfo
~女性組・お風呂~

番外「心理定規に汚された……」ヨヨヨ....

心理「それは言い過ぎよ。あなたが先にやった事をやり返しただけじゃない」

番外「ミサカだってあそこまでやってないでしょ!?」

心理「そうね。でも、あんなに大きな声出されたら男共にも聞こえてたかも。まぁ、そんな事はないと思うけど」

番外「にゃ!?」

心理「あら?その反応は聞かれてたらどうしよう、って感じかしら?」

番外「んにゃ、聞こえてるはずなんかないよ!」

心理「アッ、ソコハヤメ、アァァァァ」ボーヨミ

番外「やめて言わないでえぇぇぇ!!!」

心理「あなたって初心なのね?学習装置を通してない知識には疎いのかしら」

番外「……あんな事されたの始めてなんだもん」

心理「はいはい、私が悪かったわ。ごめんね?」

番外「……」ムッスー

心理(見た目は私より上なのに、本当に子供なんだから……。私と丸っきり逆ね)
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:14:28.01 ID:mKJt0NSfo
~男性組・お風呂~

一方「なァ、垣根。まだライオンが気になってンのか?」

垣根「……風呂場にライオンってステータスだよな」

一方「あァ?」

垣根「俳優とかがさ、風呂場に噴水とか彫刻とか置いてるじゃん?」

一方「まァ、たまに見るな」

垣根「そういうの、置きたくならね?」

一方「ならねェよ。そンなのは小金持ちがやるもンだ」ワシャワシャ

垣根「そうか?……おぉ?お前って目を開けてシャンプーできないんだな」

一方「目に入ったらどォすンだ。オマエは目ェ開けれンのかよ」

垣根「お前は小学生か。おらっ!」バシャッ

一方「うォ!?何しやがンだクソガキィィィ!じゃなかった、番外個体ォォォ!!……ちげェ、垣根ェェェェ!!!」

垣根「……」

一方「すまねェ、いつもの癖だ」

垣根「やっぱ苦労してんだなぁ……」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:16:49.89 ID:mKJt0NSfo
~女性組~

番外「今日1日歩きっ放しだったからサッパリしたよ。ジャグジー最っ高!」

心理「着替えの準備がなかったけど、今晩は我慢するしかないわね。帝督たちはどうしてるかしら?」

番外「いつも通り、ていとくんが一方通行に絡んでるんじゃないの?」

心理「……でしょうね」

番外「……」

心理「ねぇ、番外個体」

番外「ん?」

心理「あなた、本当は一方通行と同じ部屋がよかったんじゃなくて?」

番外「」ポカーン

心理「……?」
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:21:31.23 ID:mKJt0NSfo
番外「ええっ!?ミサカが?そりゃあ、あの人に色々しちゃうのならその方が手早いけどさぁ」

心理(今の間は……ふぅん、そういう事ね)

心理「別に隠そうとしなくてもいいのよ?私だって女の子だもの。考えてる事くらいお見通しなんだから」

番外「ミサカは別に隠してなんて……」

心理「無理に元気を出さなくてもいいの。私たちは友達なんだから、言いたい事は言えばいいのよ」

番外「ミサカが言いたい事……ミサカは……」

心理「あなた……一方通行が好きなのよね?この意味、分かってるかしら」

番外「……いっ、いくらミサカでも好きの意味くらい知ってるよ。本当に嫌ってるなら、ミサカはあの人と住んでないで冥土帰しを頼ってるし」

心理「では、質問の形を少し変えましょう。番外個体、あなたは――」
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:23:45.20 ID:mKJt0NSfo
~男性組~

一方「そォいや、着替えがなかったな。別に1日くれェどォって事ねェがよ」

垣根「上着は掛けとくか。ほら、お前のも寄越せ」

一方「おらよ」バサッ

垣根「このコート結構イケてるよな。どこで買ったンだ?」

一方「確か、前にアイツとセブンスミストに行った時に、気付かないうちに買わされてたンだったか?」

垣根「自分の着るものくらい把握しておけよな。この分だと、パジャマまで……なんて事はないよな」

一方「…………」

垣根「……おい、流石にそれはねぇよ!」

一方「……チッ」

垣根「もう寝るのか?」

一方「明日はいつ連絡が来るか分からねェンだ。分かったらお前も早く寝ろ」

垣根「……なぁ、あとちょっとだけ話しないか?」
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:27:10.69 ID:mKJt0NSfo
一方「話だァ?聞くだけならな。くだらねェ事だと部屋から追い出すぞ」

垣根「まぁ、寝ながらでも構わないから聞いてくれ」

一方「もォ寝てる」

垣根「……これは俺が言えた柄じゃないけどよ、お前って丸くなったよな。俺の知る第1位、一方通行はもっと刺々しかった覚えがあるんだが」

一方「オマエも同じじゃねェか。メインプランはどこに行っちまったンだよ」

垣根「メインプランになったからといって、捨て駒にされるのはよく分かったからな。アレイスターの元にいる以上、どこにいようが変わらねぇよ」

一方「今更だな。観光バスやってる奴が言えたもンじゃねェぞ」

垣根「俺だって何で観光バスにいるのか知りたいぜ……ってか!そういう話をやりたい訳じゃねぇ!」

一方「あァ?俺はてっきり、『なぁ、お前って好きな子とかいんの?』とか言い出すンじゃねェかと……」

垣根「はぁ……俺が聞きたいのはあの子の事だよ」

一方「打ち止め……いや、番外個体の事か?」
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:29:35.70 ID:mKJt0NSfo
垣根「あぁ、俺には、お前があの子の我侭に付き合ってるようにしか見えねぇぜ?はっきり言って、今日お前が出てくるとは思ってなかったぞ」

一方「何だそれは……俺がアイツを甘やかしてるみてェな言い方だな」

垣根「あぁ。それが悪いとは思わないけどな。ただ、お前がどう思ってるのか気になっただけだ」

垣根「……どうしてダブルデートなんかに付き合ったんだ?そんなくだらないもん、断る事なんか簡単だろ?」

一方「俺は自分なりの償いってもンをしてるだけだ。だがよォ――」

垣根「だが、どうした?」

一方「最近な、我侭でもいいンじゃねェかって考えるよォになってな。アイツが笑えればそれでいいと感じるンだ」

垣根「いつも笑ってるじゃねーか。俺はお前と一緒にいる時のあの子しか知らねーがよ」

一方「……そォだな」

垣根「一方通行、お前は違うとでも言いたそうだな?」

一方「……あァ」
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:33:16.10 ID:mKJt0NSfo
垣根「言わなくても分かってる。あの子の笑顔はふたつあるんだろ?あの子自身の笑顔と……そうじゃない笑顔だ」

一方「あァ、今まで俺が見てきたアイツの笑顔はあンなに綺麗なもンじゃなかった。ネットワークから拾う負の感情……操られた笑顔だ」

垣根「一方通行、お前……」

一方「だから俺は思った。アイツにはアイツの笑顔があるンだってな。それは当然の事だが、誰より俺がそれを壊しちまってたンだ」

一方「……だから、俺はそれを護りてェ。偽りの笑顔なら、本当の笑顔で埋めてしまえばいい」

垣根「笑顔を護りたい、か。それは大きく出たもんだな。最近ってーと、お前たちが高校に通うようになった辺りからか?」

一方「いや、もっと最近だ」

垣根「あぁ?昨日一昨日とか言うんじゃねーよな」

一方「そんな訳あるかよ。……お前と会った辺りからだ」

垣根「それも随分と急な話じゃねーか?俺のせい……って訳でもなさそうだが、お前に何があった?」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:35:24.78 ID:mKJt0NSfo
一方「俺に何があったのかは分からない。ただな……」

垣根「……もしかして、それがあの子の言ってた罰ゲームってやつじゃねーよな?心理定規も、あの子の変化には気付いてたみたいだが」

一方「…………」

垣根「まじかよ……。おいおい、それは俺たちも想定外だ」

一方(俺たち……?)

垣根「お前はさっき言ったな?笑顔を護る、と」

一方「あァ」

垣根「……だが、今のお前は護れてはいない。お前だって本当は気付いてるんじゃないのか?」

一方「……あァ?どォいう意味だ」
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:42:43.79 ID:mKJt0NSfo
垣根「今のテメェは言えんのか?言葉だけじゃなく、自分の為でもなく、あの子の為に胸張って護ってやるって言えんのかよ」

垣根「……笑顔を護るのは簡単だ。願い事を全部、はいはい答えればいいだけなんだからな」

垣根「俺は、お前の覚悟が上っ面だけとは思ってねぇ。だけどよ……あの子の気持ちを分かってあげない限り、その笑顔はいつか悲しみに染まるぜ?」

一方「…………」

垣根「……気付いてやれ、一方通行。あの子の身体が、心が、借物の模造品だと思ってねぇのならな」

一方「ハッ、気付いてやれ……か。三下が偉そうに」

垣根「お前だって、我侭に付き合う以上に何か感じてるんじゃないのか?それとも、自分が人殺しだからって認めたくないのか?」

一方「俺はただの人殺しじゃねェ。1万の姉を殺したンだぞ?」

垣根「それをあの子は責めた事があるか?妹達を殺したからって、それを盾に脅した事があるか?」

一方「……あれっきりねェよ、ンな事は」
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 00:48:51.60 ID:mKJt0NSfo
垣根「俺だって人殺しだ。ひとり殺していようが、1万殺していようが人殺しは人殺し。偉そうな事言えた立場じゃねぇよ。それでもだ……あとはお前次第なんだよ」

一方「黙って聞いてれば、お説教か。ていとくンよォ、オマエはいつの間に運転手さンからカウンセラーになったンだァ?」

垣根「ははっ、俺だって胸を張って護ると言える奴がいる。お前の1万人とは桁が違うが、覚悟ならこっちのが勝ってんだからな」

一方「はァ……」スクッ

垣根「おっ、どこ行くんだ?」

一方「ちょっとコーヒーでも買いに行ってくるわ。もしかすっと、コンビニまで足を伸ばすかもしンねェな」

バタン

垣根「そうか……」

垣根(これで俺のできる事はお終いか。1発殴らないと分からねーかと思ってたが、その必要はなかったな)


垣根「……さてと、心理定規は上手くやってくれるといいんだが。まっ、俺が心配することじゃねぇよなぁ」 
 
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:04:47.36 ID:U7Mq6Emdo
~10数分後~

垣根「なんか恥ずかしいのは気のせいか?初めから聞くつもりだったのに、思わず熱くなっちまったぜ」

垣根「………………う」

垣根「うにゃああぁぁぁ!!!」ゴロゴロ

コンコン

垣根「こいつは酷い……中学生の頃の日記を読み返した時より悶絶もんだぞ。これじゃ、もう二度とあいつと顔合わせら――」

コンコン

垣根「――んねぇよ、って……ルームサービスか?俺は頼んだ覚えはないぞ?それとも一方通行の奴、もう帰ってきたのか」

コンコン

垣根「……あぁ、今出る」

ガチャ

垣根「――!」

垣根「…………よぉ、待ってたぜ。麗しの姫君?」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:09:25.20 ID:U7Mq6Emdo
~外~

一方(アイツの気持ち……か。俺がそれを知って何になるってンだ?)

一方「はァ……本当にコンビニまで来ちまった。流石に手ぶらじゃ帰れねェよなァ……」

一方(俺だってテメェの気持ちくれェ気付いてたよ。だけどよ、こンな事があって許される訳ねェだろォが)

ティロリロリローン♪

一方「コーヒーコーヒー……ン?」

一方(これ……アイツがよく飲ンでるやつじゃねェか。ったく、よくこンな甘ったりィのを飲めるもンだなァ?)

一方「チッ、そンなもンよりコーヒーだ。馬鹿野郎」カコン


一方「…………クソったれが。俺が求めてたもンは何だってンだよ」
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:15:37.74 ID:U7Mq6Emdo
~その頃、とある一室~

垣根「心理定規、本当にこれでよかったのか?」

心理「よかったも何も、先に動いたのはあなたでしょうに」

垣根「お前が一方通行も誘えって言ったんだからな。どうせそのつもりだったんだろ?」

心理「それはどうかしら?私はただ、友達が心配だっただけ」

垣根「何を白々しい……お前の能力が何なのか俺が一番良く知ってるんだよ」

心理「あんなふたり、能力を使うまでもないわよ。あなただって分かるでしょう?」

垣根「……だけどさぁ」

心理「あなたこそ、あの第1位に何て言ったのかしら?最低でも内臓ひとつ失っててもおかしくなんじゃない?」

垣根「別に話すまでもねぇよ。あいつはあれでも物分りはいいんだ」

心理「ならお互い様ね。友達が困ってるのなら、手を差し伸べる……当然の事だわ」

垣根「……そうだな、あいつらにちゃんと通じてればいいんだが」

心理「さぁ、あとはあの子たちの問題。あの子たちが決めるだけよ」

垣根「はぁ……あいつらが一番世話が焼けるぜ」

心理「あら、私はあなたが一番心配なんだけど?」
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:20:53.40 ID:U7Mq6Emdo
~ホテル前~

一方「何だかンだで買ってンじゃねェか。アイツが頼ンでた訳でもねェってのによォ……垣根の奴にプレゼントってかァ?」

一方「……おっと、もォ着いちまった。もォちっと遠くまで行ってもよかったかもしンねェなァ……」

一方(結局、垣根の言ってた事は俺次第って事か。散々言った挙句にそれかよ)

ヒュルリリ.....

一方「寒ィな……もォ湯冷めなンざ関係なくなっちまった。こりゃ朝シャン決定だ、クソ野郎が」

従業員「お客様。お帰りになられましたのなら、中にお入りになられたら如何でしょう?お体に障りますよ」

一方(はァ、こンな時にアイツがいたら何て言うだろォなァ?手が冷てェとか言って握ってくンのかねェ?)

従業員「……お客様?」

一方「どの道、覚悟を決めねェと進まねェか……。ハッ、覚悟なら当の昔にできてンだよ」

一方(オレはアイツの気持ちを受け止める。それが何だろォが、俺しかできねェ事ならな……)
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:24:11.30 ID:U7Mq6Emdo
~部屋の前~

一方「垣根の奴、第1位の俺に無理難題ぶっ掛けるなンざ舐めた真似しやがって。まずはストーレートを1発だ。まっすぐ行ってぶっ飛ばしてやンぜ」

トントン

一方「垣根、俺だ。開けてくれ」

シーン......

一方「……寝てンじゃねェよな?」

トントン

一方「…………仕方ねェ、朝の着信履歴から掛け直し――」

トトトト......ガチャ

一方「ったく、いるンならさっさと開けやがっ!?」

番外「やっ、やっほう!お邪魔してるよ」


一方「…………あ?」
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:26:52.54 ID:U7Mq6Emdo
番外「ん?」

一方「オマエ、心理定規と同じ部屋だったろ。それとも、俺が部屋を間違えただけか?」

番外「違うよ。ここはあなたの部屋だけど」

一方「なら、なンでオマエがここにいるンだ?垣根はどこに行った?」

番外「ていとくんにはミサカからお願いしたの。だから……」

番外「だから、今日は一緒に寝てくれないかなって。ギャハ、言っちゃった☆」ニパッ

一方「」

番外「ちょっと、聞いてるー?」

一方「いや……枕抱き締めてればなァ……だからって垣根に頼ンだのか」

番外「んー、それとは別……なのか……な?」

一方「チッ、まァいい。それより中に入らせてくれねェか?」

番外「あっ、うん」

一方「あー寒ィ寒ィ」カツカツ

番外「…………」
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:30:08.98 ID:U7Mq6Emdo
                    ・
                    ・
                    ・

一方「よっしょ、っとォ」ボフッ

番外「何でソファーなんかに座ってるのさ。ベッドはあっちの部屋でしょ?」

一方「何か用があるンだろ?だからそれを話せ。いつもの調子で心理定規を怒らせでもしたってンならお仕置き確定だけどなァ?」

番外「ちっ、違うよ!確かに、心理定規にはちょびっとだけしっぺ返しを受けたけど……でもそれとは関係ないよ!?」

一方「あン?じゃあ何だよ。オマエは俺がいねェと寝付けねェガキじゃねェだろ。それじゃあクソガキ以下だ」

番外「ミサカはその……あなたに言わなきゃいけない事があっ……て……」

一方「当然だな」

番外「……実はそ、その……ミサカは……その…………あぅ」

一方「俯いてたら分からねェだろォが。ちゃンと俺の目を見て話せ」ガシッ

番外「ふぇ!?」

一方「オマエは、何をしに、ここに、来た?心理定規と一緒じゃ寂しいこたァねェだろ?」

番外「……実は、ミ、ミサカはあなたが――」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:32:06.35 ID:U7Mq6Emdo
一方「おっ、そうだった。オマエ、何か飲むか?」

番外「……へ?」

一方「ちっとコンビニに行ったンだけどな、気付いたらいつの間にかコレを買ってたンだよ。オマエが好きだったやつだろ?」

番外「あ、ありがと……」

一方「あァ、売店があるとか言うなよ。忘れてた訳じゃねェからな」

番外「……ねぇ、話ならここじゃなくても、寝ながらでも話せるんじゃないかな」

一方「寝ながらかァ?垣根もそォだが、オマエも寝ながらってのが好きだよなァ」

番外「あーあ、やっぱりそういう関係だったんだね。だから言ったのに」ツーン

一方「ねェよ!垣根の奴が……いや、何でもねェ。くだらねェ話に付き合わされただけだ」

番外「ふぅん……」
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:33:30.21 ID:U7Mq6Emdo
一方「オマエのほォこそ、無理に話したくなけりゃ話さなくてもいいンだぞ?オマエが寝るまでくれェなら起きててやるからよ」

番外「そんなんじゃないよ。まぁ、聞きたいってなら無理矢理聞き出してみるのもひとつの方法だけどね。どうする?」

一方「……はァ、一緒には寝てやンねェからな」

番外「えー」

一方「あの時はあの時だ。一度して貰ったくれェで甘えンじゃねェぞ」

番外「……ミサカ、…………きだよ」

一方「……あァン?」


番外「ミサカ、あなたと一緒に寝るの……好きだよ」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:35:21.11 ID:U7Mq6Emdo
~時は遡り、1時間ほど前~

心理「あなた……一方通行が好きなのよね?この意味、分かってるかしら」

番外「……いっ、いくらミサカでも好きの意味くらい知ってるよ。本当に嫌ってるなら、あの人と住んでないで冥土帰しを頼ってるし」

心理「では、質問の形を少し変えましょう。番外個体、あなたは恋をしてしまったのね?」

番外「……はい?恋?」

心理「そう、恋よ。あなたは一方通行に恋をしているのよ」

番外「ミサカが一方通行に恋……?分からないよ。ミサカが分からないのに、何で心理定規が分かるの?」

心理「だから言ったでしょう?私だって女の子なんだから」

心理「……あなたは一方通行が好き。それは合ってるわよね?」

番外「うん……でも、心理定規も好きだし、ていとくんも好き。学校のみんなも好きだし、家のみんなも好きだよ」

心理「じゃあ、一方通行はその中で何番目に好き?」
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:37:46.51 ID:U7Mq6Emdo
番外「それは……」

心理「一番でしょ?それも、他の人とは比べ物にならないくらいに」

番外「……」コクッ

心理「それだけ自覚していて分からないのなら、教えてあげるわ。あなたは一方通行に特別な好意を抱いてる」

番外「特別な好意……」

心理「あなただって、何度か経験したんじゃなくて?胸が暖かくなったり、満ち足りたり……」

番外「で、でもっ!ミサカにはそんな感情は入力されていない!入力されていないものがミサカに分かるはずが――」

番外「分かるはずが……?」

心理「……やっと分かった?」
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/12(火) 00:43:23.57 ID:U7Mq6Emdo
番外「あ……ぁ……」

心理「今、あなたが思ってるもの。それは正真正銘、あなたの気持ちよ。誰から教えられたものでも、誰かから拾ったものでもない。あなたが生み出した、あなただけの感情」

心理「それを認めようが、隠そうが、私には関係はないわ。だけど、あなたは私の大切な大切な友達だもの。最良の選択を掴む手助けくらいしたい」

番外「ミサカ、これからどうしたらいいのかな……」

心理「それはあなたが一番分かってる。あとは、素直に行動で示せばいいだけの事よ」

番外「……嫌だよ……怖いよ。もしも嫌われたりなんかしたら、ミサカはまた独りぼっちになる!それだけは……嫌っ!」

心理「番外個体、泣かないで?大丈夫。ちゃんと気持ちを伝えれば、あの人はきっと分かってくれるから」

番外「本……当に……?」

心理「えぇ、一方通行もそれを望んでる。あの人だってあなたと同じ。あなたの一言で彼は救われるのよ」


番外「…………分かった、言うよ。ミサカは伝えるんだから。ミサカは一方通行が――――」 
 
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:03:11.67 ID:tHhDgr7Jo
番外「ミサカ、あなたと一緒に寝るの……好きだよ」

一方「…………」

 ミサカはポツンと零した。予想だにしなかった告白に、一方通行は真顔で見つめている。

  ふたりがいるのは、モダンなインテリアに囲まれた部屋。そう……ここはホテルの一室。最高級な家具に広いリビング。
しかし、豪華絢爛な造りとは裏腹に空気は重く淀んでいる。ふたりの距離を物語っているようだった。

 今の一言でも、かなりの勇気を搾り出した。でも、本当に伝えたいのはこれじゃない。
ミサカが伝えたい事はもっと大事で、もっと重くて、一緒に寝る事よりもっと好きなもの。

一方「…………」

 一方通行は飲み終わった缶コーヒーをテーブル脇のゴミ箱に投げ捨てると、無言のまま静かにソファーから立ち上がる。

 その顔は何故か悲しく、何かを隠し、押さえ込んでいる。ミサカにはそう見えた。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/04/15(金) 23:03:29.41 ID:H/nO0enjo
うおおおおおおおおおああああああああ
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:08:47.17 ID:tHhDgr7Jo
番外「……一方通行?」

 空調機の音と、杖の駆動音だけがリビングに染み渡る。シャンデリアの優しい光も、モダンの暖かな色調も、今は冷たい。

 それに共鳴するかのように、一方通行の目もどこか寂しげだ。

 ――その目はどこを見ているの?

 ――何でそんな悲しい目をしているの?

一方「好きだァ?そンなンじゃ理由にもなンねェ」

 一方通行の口が開く。ミサカに突きつけられたのは冷たい一言だけだった。

番外「…………」

一方「好きだからする。嫌いだからしない。それは傲慢ってンだ」

 その通り。一方通行の言う事は間違ってはいない。自分でも分かってはいる。

 それでも、まだあなたには伝えていない事はある。ミサカはそれを伝えなきゃいけないんだから……。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:12:41.35 ID:tHhDgr7Jo
番外「あ、あの……」

 一方通行がミサカの横を素通りし、寝室に続くドアノブに手を掛ける。ミサカは振り向けない。
それ程まで一方通行の顔は冷たかった。無愛想なのではない。それはまるで拒絶されてるような印象。

番外「………………ぁ」

 なんで? どうしてこんな事になったの……? ミサカはただ――

 胸には枕を抱き、左手には一方通行から貰ったカフェラテ。しかし、それも今は生温く、表面の水滴がポタポタと枕を濡らしている。

番外「ミサカは言いたかっただけなのに……」

 一方通行はドアの向こうへ行ってしまい、もう見えない。
ミサカも彼を追い、空いた右手でドアノブに手を掛けるも、その先に進めない。進んでいいのか分からなかった。

 心理定規、あなたの言ってた事は嘘だったの……?

心理『あの人だってあなたと同じ。あの人はきっと分かってくれるから』

 ふと疑いそうになるも、あの言葉が胸に響く。あれは嘘じゃない。ドアノブに掛ける右手に再び力が篭る。

 一瞬でも友達を疑うなんて、ミサカも馬鹿だな。本っ当……馬鹿なんだから……。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:18:29.93 ID:tHhDgr7Jo
 ミサカの気持ちに誰より早く気付いてくれた大切な友達、心理定規。快く部屋を開け渡してくれた学園都市第2位の垣根提督こと、ていとくん。
ふたりの親切を無駄にしない為にも、ミサカは立ち止まるわけにはいかない。

番外「今度こそ言うんだ。遠回しなんかじゃなくて、ミサカの本当の気持ちを真っ直ぐに伝えるんだ」

 次は逃げない。ミサカは自分だけに聞こえるよう呟くと、ドアノブをゆっくりと回し、一方通行のいる寝室へと足を踏み入れた。

 一方通行はどこにいるの?

 寝室は薄暗く、読書灯が仄かに点いているだけ。窓側のベッドには一方通行が寝ている。
彼は掛け布団も掛けず、外を眺めるように背中をこちらに向け横になっていた。読書灯が静かに背中を照らしている。

 明かりの横にはずっしりとしたコンビニ袋。

そして、ミサカの足元には1本の缶コーヒー。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:21:29.96 ID:tHhDgr7Jo
番外「……一方通行、寝てるの?」

 返事が返ってくる事はなかった。ミサカは仕方なく、床の缶コーヒーを拾い上げる。どうやら未開封のようだ。
またいつものブラックかと半ば呆れていると、見慣れない文字が薄っすらと視界に入った。

番外「コレ、ブラックじゃないじゃん」

 目を凝らすと、無糖ではなく、微糖の2文字が。

一方「間違えただけだ。気にするンじゃねェよ」

 背中を向けたままの一方通行がぶっきらぼうに言う。落ちたモノくらい自分で拾えばいいのに。

番外「起きてるんなら無視しなくてもいいんじゃないかな」

 ミサカの何が気に入らないというのだ。一方通行は再び沈黙に入る。

 この男は同じ銘柄を纏め買いする癖がある。だからといって、偶然違うのが1本紛れたくらい、別に気にする事でもない。

 だけど、それでも――
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:26:21.47 ID:tHhDgr7Jo
 読書灯に照らされるコンビニ袋。透けて見える中には、色とりどりの缶が転がっている。ミサカには同じ銘柄には見えない。
その中にはミサカも飲んだ事のある、ミルクたっぷりのコーヒーとは言えない、どちらかと言うとカフェオレに近い銘柄まである。

番外「……何か変だよ。あなたってこんなのに手を出すようになったの?」

一方「だから間違えたンだよ」

 短い返事が返る。これは確実に苛立っているとミサカには分かった。コーヒーに関して一切の妥協を許さない彼でもこんなのは見た事がない。
一方通行は何かを隠している。コンビニまで行かなければいけない理由が他にあったんだ。コーヒーなんて頭から飛ぶような重要事項が。

 そして、今もそれは解決していないのだと。

番外「嘘。あなただって分かってるんでしょ。コンビニまで行く理由がどこに……」

一方「――――」

 飛行機のジェット音が聞こえた。一方通行の声は掻き消されてしまう。雲に覆われた夜空には、緑と赤の翼端灯が学園都市へ飛んで行く。
学園都市め、ここまでしてミサカを嵌めようとするか。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:28:55.99 ID:tHhDgr7Jo
 廊下からはガチャガチャと、何かが転がっているような音。誰かがルームサービスでも頼んだのだろう。
大した音じゃないが、今この時だけはウザったらしくて仕方が無い。一方通行の態度と合わさり、イライラが少しずつチャージされてゆく。

番外「ミサカがあなたに何かしたの?あなたはミサカのどこが気に入らないの?」

一方「何でもねェよ。それより、明日は早ェンだ。さっさと寝ろ」

 機会のような抑揚のない声。その声に感情はない。ミサカの知る一方通行はどこか遠くへ行ってしまった。
手を伸ばせば届く距離にあるのに届かない。目に見えない距離がどんどんと広がってゆく。

 お互いに背中越しで言葉を交わす、距離にして2、3メートル程の短い距離。だけど、今はそれがとてつもなく遠い。

番外「……何でこんなに冷たく言うの?ミサカはただ……あなたと一緒にいたいだけなのに……」

一方「俺が何なのかオマエが一番知ってンだろ。冷たいも何もあったもンか」

番外「ミサカはただ、あなたが好きなだけなのに……傍にいてくれるだけで良かったのに……」
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:34:06.65 ID:tHhDgr7Jo
 ミサカは一方通行が好き。言いたかったその一言が、こんな形で出てくる事になるなんて。
本当は面と向かって言いたかった。でも言えなかった。今の一方通行には――

 涙が止め処なく溢れてくる。音もなく零れ落ちる。どうしてこんなに悲しいの……?

番外「ミサカが……クローンが人を好きになっちゃいけないの?」

番外「今まで優しくしといて、散々持ち上げて……やっぱりあなたも捨てるんだ。これだけミサカに頼らせて、護るだなんて優しい言葉で囁いて……」

番外「……ミサカはずっと騙されてたんだ。ずっとミサカはあなたの罪滅ぼしに振り回されてたんだ」

 一方通行は答えない。ミサカは独り言のように、淡々と言葉を繋げる。自分に言い聞かせるような大きな独り言。

番外「……消し去ってよ」

番外「今が無理なら帰ってからでもいい。この自由も胸の痛みも全部、ミサカごと消し去ってよ。もうこんな思いをするのは嫌だよ」

 そっか……ミサカは幻想を見ていたんだ。

 クローンだって人を愛せる。自覚できたのはたった1時間だけど、それでもミサカはその間だけはひとりの人間になれた。
それが幻想でも今となってはもうどうだっていい。一方通行がミサカにしてくれた事は現実だったのだから。

 それだけで……たったそれだけの事実だけで今はもう満足だった。例え受け入れられなくても、ミサカが抱いた感情は本物だったのだから。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:43:29.85 ID:tHhDgr7Jo
一方「……黙ってれば何ひとりでナーバスになってンだ」

 背中から声がした。背中のほうからじゃなく、本当に背中から声がした。

 振り向くより早く、ミサカの背中に暖かい感触が……一方通行だ。視界の隅に白髪が映っている。
この時になって、ミサカは抱きつかれたのだと実感した。一方通行の白い両腕がお腹のお臍辺りをカ強く包んでいる。

 ここまで近づくまで、ミサカは全然気付かなかった。自分の事に精一杯で、触れるまで気が付かなかった。

一方「オマエは一緒に寝たいンじゃなかったのかよ。なのに何そっち向いてンだよ。せっかく、オマエの場所まで取ってやってたのによォ」

 ――――暖かい。ミサカは素直に感じる。でも、ちょっと痛いかな。

番外「……あなたは卑怯だ。持ち上げて落として……また持ち上げる」

一方「誰も寝てやらないとは言ってねェ。全部オマエの独り善がりだろォが」

番外「じゃあ何であんなに冷たく言うのさ……あんな風に当たられると勘違いしちゃうよ」

一方「俺だって他人にこンな感情を抱くのは初めてなンだ。……怖ェンだよ。俺が何をしたか分かってンだろ?」

番外「……馬鹿。そこだけは生真面目なんだから」
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:47:06.77 ID:tHhDgr7Jo
 ミサカは空っぽになった両手を一方通行のそれに重なる。固く繋がれた白い両手が緩むのに合わせて、蔦のようにその隙間に指を絡めていく。

番外「それに、そんなに強いと苦しいよ」

 ま、そこまで言う程苦しくはないんだけどね。食べ過ぎたせいで胃に来てるのかもしれないな。

一方「こうでもしねェと勝手にどっか行っちまうだろ。ちっと目を離せば消えちまうンだからな」

 耳がくすぐったい。吐息がボソボソと耳に掛かる。いつもとは違ったシャンプーの香りが鼻腔を刺激する。
それでも変わらないものがあった。それは何時も変わらない、一方通行の匂い。

番外「ミサカは一方通行が大好き。あなたの温もりを知ったときからずっと忘れられないんだ……」

一方「……あァ、分かってる」

番外「……あなたは?」

一方「言わなくても分かンだろ」

番外「言わなきゃ分かんないよ。あなたはいつもそうなんだから。行動で表してばかりだと勘違いされちゃうよ?」

一方「行動ねェ……こォでもしたら分かンのか?」
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/15(金) 23:54:44.12 ID:tHhDgr7Jo
 一方通行の身体が傾く。華奢な身体でも、このアンバランスな体勢では負荷は相当なものになる。
重力に従い、一方通行は抱き締めたミサカごとベッドに倒れ込もうとする。顔を振り向くも、一方通行の顔はよく見えない。
明かりは窓側のベッドにある読書灯が1灯付いてるだけ。

番外「おわぁ!?」

 足元もろくに見えない状況下。必死に足を踏ん張るも、ミサカではその勢いは止められず、そのままふたりはベッドの上へと倒れ込んだ。
ベッドに沈む感じが心地よい。ふたり分の重圧が加わっても尚、ベッドは軋む音ひとつ出さずに主を迎え入れる。

番外「一方通行!急に何を……んっ!?」

 ミサカは身体ごと振り向き、一方通行の粗暴な行いに糾弾するも、それが紡ぎ終わる事はなかった。ミサカの口が何かに塞がれたのだ。

 抱き締められた両腕の感触がなくなってる事に気付いた。感触があるのは――
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/16(土) 00:10:37.63 ID:CpdVzVIso
 唇に何か軟らかいもの触れる感触。口の中に熱いものが絡み付く感触。二つ目は未体験の領域。

  ――セカンドキス。

 ただ、それも一瞬で、すぐに一方通行の顔は離れ、残ったのは余韻ではなく突然の出来事に対する驚きだけ。
一方通行はしてやったりな表情でミサカの顔を見つめている。

一方「言葉で言うのは簡単だからな。どォだ、これで分かっただろ?」

番外「口で言わなきゃミサカは分かんない。だから……」

一方「だから何だ。言葉で言うのは断るぞ。丁度良い言葉が見つからねェからな」

番外「それはもういいよ。だから、もう1回……今度はもっと長くしようよ。それでチャラにしてあげる」

 ミサカは一方通行の首に腕を回して抱き寄せる。一方通行もまた、ミサカの背中に両腕を回す。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/16(土) 00:25:48.24 ID:CpdVzVIso
 心理定規の言っていた事は本当だった。一方通行もミサカと同じ……迷っていたんだ。
一方通行は過去の過ちから解き放たれてはいない。同じDNAマップから生み出させたというだけで、その矛先はミサカにも向けられていた。
それは誰にも理解できないほど重く苦しいものだっただろう。きっと、全てを救っても死ぬまで悔やみ続けるんだろう。

 叶うものなら、その束縛から助け出してあげたい。だけど、ミサカには何もできない。自分を赦せるのは自分だけ。

 それなら……せめて、ミサカが傍にいてあげよう。

 あなたの重荷を、ミサカも一緒に背負ってあげよう。

番外「……ねぇ、一方通行」

 沈んだベッドで、ミサカはそっと呟くようにその名を呼ぶ。それは名前ではなく、能力名。
本当の名前なんて知らないし、どうだっていい。ミサカだって名前なんて元々必要なかったのだから同じ事。

一方「あァ?」

番外「ひとりで無理しなくてもいいんだよ?あなたが辛い時も苦しい時も……ミサカが一緒にいてあげるんだから」

一方「そォか……ふたりで、か……」

 そう言って、ふたりの顔は夢のように近づいていった。今度は遊園地よりもずっと長いふたりだけの時間が流れる。
それはミサカがずっと待ち焦がれれたもの。それは――

 今以上の幸せ。それを掴むために、ミサカは今、大きな1歩を踏み出す―― 
 
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 22:22:20.63 ID:z7XW7wS3o
番外「一方通行……」

 ミサカは呼ぶ。始めはただの真似事だった。キスという行為の意味もよく知らなかった。
どんな時に行い、何を得るのか。ミサカは何も分からないまま、ファーストキスを捧げた。捧げた? 奪った?

 でも、今度は違う……お互いに求め合ってる。キスってそういうものなんだ。

一方「後悔……しねェな?」

番外「後悔なんかした事ないよ。今までも。これからもずっと」

 目を閉じ、触れる瞬間をただ待つ。が、その時は一向に来ない。目を開けると、一方通行が眼前で微笑んでいる。

一方「ったくよォ、オマエはどォしようもねェくらい甘えン坊だな」

 白く細い手がミサカの後頭部にそっと触れた。繊細なその掌も本当は見えない傷でいっぱい。それは心の傷。
ミサカは子供をあやすように逆手で髪を掻き上げられる。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 22:26:16.69 ID:z7XW7wS3o
番外「ミサカが甘えん坊?だったら、あなたはケチんぼだ」

一方「俺がか?俺はケチじゃねェ」

番外「ケチだよ。無愛想だと思ったら平気で臭い台詞吐いたりしてさ……」

 いつものあなた。今のあなた。どっちが本物のあなたなんだろうね?
それはコインの表と裏? それとも……エッシャーのように表も裏もないのかな?

一方「……」

番外「そんなんだからミサカは……」

 だけど……だからこそ、ミサカはあなたに惹かれたのかも知れない。
それが一方通行でなければいけない理由。他の人じゃいけない理由。心の奥底で答えが見え隠れしている。

一方「だから今こうしてやってンだろ?それでも満足いかねェのか?」

番外「それでも、あんな不意討ちは卑怯だよ」
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 22:32:13.90 ID:z7XW7wS3o
一方「卑怯だァ?」

番外「……舌、入れたでしょ。それくらい分かってるんだから」

一方「オマエが自分勝手な態度を取るからだ、ボ――」

 ――唇を押し付けてやった。

 いつまで経っても訪れないその時に堪忍袋の緒を切らしたミサカは、半開きになった一方通行の唇に舌を捩じ込ませる。
一方通行の口から吐息が漏れ、舌と舌と絡まる。空気と唾液が混ざり、音を立てる。泡立つような音がする。

番外「はむ……んんっ、んむぅ……」

 ミサカの舌が一方通行の口の中を蠢く。歯茎の裏、奥歯、上唇、下唇……そして舌に絡み付ける。

 一方通行はどう感じているだろう。一方通行は何を思っているだろう。一方通行の事だけしか頭に浮かばない。息が出来ない。
血液が頭上へと逆流していく。燃えるように身体が熱い。首から下の感覚が薄れゆく。

 その名を心の中で何度も叫ぶ。一方通行。一方通行。一方通行。 一方通行。
同時に苦味が口一杯に広がって行く。このほろ苦い味……コーヒーだ。この苦味は一方通行が飲んでいたコーヒーの味なんだ。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 22:38:34.60 ID:z7XW7wS3o
 そして、直後に甘味が程よく広がる。ふたりの唾液が混ざり合う。ウィンナーコーヒーの出来上がりだ。
ふと、一方通行の動きが止まり、肩をバンバンと叩かれた。一方通行の首、手、身体が生まれたての子山羊のように震えている。
どうやら酸欠になったようで。

一方「――!!」

 どうしたの?ミサカはまだまだ行けるよ?

 ……まぁ、気絶されても後味が悪いし、ひとまずは解放してあげましょっか。ミサカを驚かせた罰はこれで精算とするかな。

 離れ行くミサカの舌と一方通行の舌に一筋のアーチが架かる。月光でテカテカと色を帯びている。

番外「うひゃひゃ、ミサカのお味はいかが?」

 流れる唾液を拭いならがら、ミサカは猟奇的な笑顔で息絶え絶えの一方通行に尋ねた。
自己採点はとりあえず100点。でも、何点満点の100点かは知らない。だって、満点なんて限界を決める意味はないじゃん。

一方「……甘ェンだよ。パフェの食い過ぎだ、クソッタレ。だが、まァ……」

番外「丁度良い、でしょ?」
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 22:41:48.59 ID:z7XW7wS3o
一方「あァ。あのブラックは飲めたもンじゃなかったらな」

 一方通行がドアの向こう、リビングを指差す。ゴミ箱に投げ捨てた缶コーヒーの事を言ってるのかな。

番外「ちぇっ、つくづく素直じゃない奴」

一方「素直じゃないのはどっちだ」

番外「うーん……今日は両方って事にしてあげる」

 ――それから何度重ねただろう。あまりよく覚えていない。だけど……。

 ミサカは人の温もりを求めたんじゃない。ただの温もりだけじゃ駄目なんだ、一方通行じゃないと駄目なんだよ。
ミサカが唯一、心から委ねられるその場所。それこそが一方通行だった。何ものにも替えられない存在。

 ミサカの全てを投げ出してもいいくらい、大切な人。

 ――そう、大切な人。誰より優しい……ミサカの一方通行。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 22:52:44.86 ID:z7XW7wS3o
一方「両方……か。ケッ、上手い事言って逃げられると思うなよ?」

 一方通行がミサカを抱き包みながら、納得したように言う。上手い事を言ったつもりはないが、何か引っ掛かる。

 …………………………。

番外「………………はい?」

 ……ニゲラレル?

一方「危うく窒息死になるとこだったンだ。危ねェ事するガキにはお仕置きが必要だよな、あァ?」

番外「…………」

 ――“お仕置き”

 一方通行を知る人間の中でも、その恐怖を知る者は少ない。その恐怖を説明しようにも、言葉で表現できるものじゃない。
ただ、ベクトル操作をフルに発揮させる彼のお仕置きには特徴がある。それは決して相手に傷は付けない事。
傍から見れば可愛い程度のものかも知れない。だけど、される方は地獄当然なのだ。それはやられてみれば分かる。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/19(火) 23:02:19.66 ID:z7XW7wS3o
 それを今……? この雰囲気で……? そんなの聞いてないよ!? 急展開にも程ある!!

一方「1回とか言って何回もやりやがったしなァ?……言っとくが、俺にムードなンか通用しねェ。ンなもンはデフォ反射だ」

 雰囲気を反射って何だよ!? これがKYって奴なのか? この人は空気を読むどころか反射までしてしまうのか!?
何回もしたのは言わなかったミサカが悪いけど、あなただって結構その気だったでしょ!?

 一方通行の双眼がつり上がる。一方通行の口角がつり上がる。悪魔の笑顔でミサカを見据える。

番外「う……うぁぁ……ご、ごめんなさーい!」

一方「さァて……お仕置きの時間だぜェ。クッソアマの番外個体ちゃンよォォ?」

 一方通行の顔は一度まで。ミサカ、覚えた。…………うん、覚えたんだよ……。 
 
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 00:30:38.23 ID:+l1Sah1Io
番外「お仕置きは嫌だお仕置きは嫌だお仕置きは嫌だ……」

 額に傷を持った眼鏡の少年が魔法のトンガリ帽に祈るように、ミサカは懇願する。
かといって、ドクロの神様みたいに爆破されるのもお断りだ。どのような形でも、一方通行のお仕置きだけは受けたくはない。

一方「そォか、そンなに嫌なのか。なら……」

 一方通行はもそもそと上半身を起こす。視線の先にはもうひとつのベッド。まさか、ひとりで寝るなんて言い出すのでは……。

番外「嫌だよ、一方通行。離れちゃ嫌だ。ここにいてよ」

一方「…………あァ?」

 ぎゅうっ!

 ミサカは全身全霊でしがみつく。一方通行のシャツがと悲鳴を上げる。このまま行けば破けてしまいそうだ。

番外「一緒に寝てくれるって言ったんだから。だから絶対放すもんか!」

 その様はまるでコアラの子供。これじゃ、ミサカとあなたはコアラの親子だね。あれ? コアラのオスって子育てするの?
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 00:33:42.95 ID:+l1Sah1Io
 一方通行は鬱陶しそうにミサカを引き剥がそうとするが、手が届かないらしく、いつものチョップの代わりに頭突きする。

 コツン。

 でも痛くはない。別にミサカが石頭なワケじゃないもん。きっと手加減してくれてるんだよ。
それよりも、あなたも同じ事思ってたんだ……思わず頬の筋肉が張ってしまう。痛いんだか恥ずかしいんだか分からない。

一方「何照れてんだぁ?今更恥ずかしいとかねェだろ」

番外「な、何でもない!ミサカがコアラなワケないし!」

一方「……ははーン、さては俺と被ったな?」

 ギクッ! 図星であります、上官殿。ミサカは同じ事を考えておりました。

番外「あぅ……」

一方「おっ、こりゃ正解かよ。オマエは分かり易す過ぎンな」

番外「うううぅぅぅぅぅ!」

 ……分かってても、そういう事は言わないもんでしょ。常識的に考えてさぁ。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 00:37:21.67 ID:+l1Sah1Io
一方「はァ……いつもそれくれェ可愛げがありゃいいのによォ。それより、寒くねェか?」

番外「…………え?」

 然り気無く溢れた一言に再び頬が張る。ミサカが可愛い……? 自分でもそれなりに自信はあるけど、面と向かって言われたら……。

一方「……おィ、寒くはねェのか?」

番外「え……あ、うん、ちょっと寒いかも」

 言われてみれば寒い。主に背中が。

 毛布か何かないかと見回すが、それはミサカたちの下に引いてある。何せダイブしたんだから、それも当然か。
えぇっと……枕元がこっちだから、これは一度降りなきゃ駄目っぽいぞ?

 でも、そうなると一方通行から離れなきゃいけないんだよね。そうすると前が冷えちゃうし……どうしよう?
……うん、ここはハグしたまんま動くとするかな。

一方「いつまでもこのままじゃ不味いだろ。布団被ったほォがいい」

番外「……入る時もこうしてないとやだ」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 00:41:53.73 ID:+l1Sah1Io
一方「おててつないで、ってかァ?阿保らし……布団に入る時くれェ普通にしろよ」

番外「このけちんぼ」

 そうだそうだ! このけちんぼ! どうせ布団から離れた瞬間に、ぴゅぴゅいとあっちのベッドに行くんだろ!

一方「オマエが嫌でも俺が寒ィンだよ。分かったら解放しろ。それともひとりで寝るか?」

番外「うぅ……分かったよ」

 流石にそこまで言い切られたらミサカは従うしかありませぬ……ひとりで寝るなんて、今のミサカに一番堪えるお仕置きだ。

 名残惜しいけど、今だけの我慢。ミサカは一方通行から身体を離しベッドから降りると、一方通行は掛け布団を引っ張り、
肩から上を出すようにして中に入った。

一方「ほら、もォいいぞ」

 掛け布団の裾を開け、ミサカに入るように促す。気持ち広めで開けてくれているが、そんなの気にするもんか。
ミサカは迷うことなく、一方通行の胸元に潜り込む。

 おっと、寝る時は靴下を脱がなきゃ。……って、お風呂から出た時には脱いでたんだっけ。
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 00:47:41.04 ID:+l1Sah1Io
番外「えへへ、暖かいね」

 流石はスイートルーム。ベッドも最高級のふかふかだ。この沈み具合が何とも言えない。
さり気無く枕も共有しているが、これだけ大きいと気にする事でもない。

一方「あァ?それは俺かが?それとも布団か?」

番外「両方。でもあなたが一番暖かい」

 それでも、あなたには敵わない。どんな保温素材を使っていようが、一方通行の温もりには敵わない。

 敵うとしたら何だろう? …………そんなものはないんじゃない?

一方「俺は布団だな。オマエのは暑苦しいって言うンだ」

番外「……本当は?」

 はいはい、分かってますよ。でも聞いちゃうんだから。

一方「オマエに決まってンだろ。それ以外に何があるってンだよ」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 00:54:25.80 ID:+l1Sah1Io
番外「あひゃひゃひゃひゃ、そんな臭い台詞を平気で言えるのがあなたの良いところだね」

一方「だから言いたくねェンだよ」

 うひひひ、照れてる一方通行もミサカは好きだよ?

番外「ねぇ、一方通行」

一方「なンだ?」

番外「うんにゃ、呼んでみただけ♪」

一方「はァ?」

 あなたのどんな反応もミサカは好き。あなたが構ってくれる限り、ミサカはどんな事だってしちゃうんだから。

番外「嘘だよ。さっきのアレ、おててつないで……だっけ?何かの歌だよね。どんな歌なの?」

一方「それか?確か、何かの童謡だったな。それがどォかしたのか」

番外「ミサカにも教えてよ。ちょっと興味が出ちゃった」

 手を繋ぐ。その言葉にミサカは惹かれた。
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 01:03:34.99 ID:+l1Sah1Io
一方「仕方ねェな。俺もあンま知らねェンだ、間違えてても文句言うなよ」

番外「うん」

 少しの間の後、一方通行は喉の調子を確かめるように咳を1回する。そして、口ずさみ始めた。

一方「おーてーェて。つーないで。のーみーィちーをゆーけェば」

 一方通行は上を向いて淡々と歌い続ける。ただの童謡なのに、その言葉ひとつひとつがミサカの胸に刻み込まれる。
街中でよく耳にする流行のバラードとは違う、飾りっ気のない短い歌詞。初めて聞くはずなのに、昔から知っていたような不思議な感じ。

 かつて最終信号を救ったその歌声。いつかミサカの灯が消えるときも、同じように歌ってくれるのかな。
でも、そうなると、あなたはまたボロボロになっちゃう。それだけは嫌。

一方「確かこンな歌だったはずだ。どォだ、クソつまンねェだろ?」

 歌い終わった一方通行は天井を向いたまま言う。ミサカはそれをじーっと見つめながら答える。

番外「ううん、いい歌だったよ。2番を早く聞かせて?」
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 01:06:44.56 ID:+l1Sah1Io
一方「2番は知らねェな。俺も1番しか聞いた事ねェし、この歌がどンな題名なのかも知らねェ」

 童謡って悲しいね。誰だって子供の頃はみんな歌ったのに、大きくなって大人になれば忘れてしまうらしい。
大人になれば忘れてしまうもの。……子供の心っていうのかな? 何となく分かる気がする。

番外「……じゃ、ミサカも歌いたいな。一緒に合わせてくれない?」

一方「ついて来れンのか。今聴いたばっかだろ?」

番外「大丈夫、ちゃんと歌詞も覚えたから。童謡くらいどうってことないよ」

 童謡は子供が歌うもの。じゃあ、ミサカは大人なのか子供なのかどっちなんだろ。生まれたときから大人? それともずっと子供?
肉体的には大人に近いけど、精神的にはずっと子供なんだろうな。……じゃあ、ミサカは子供だ。

一方「せーので行くぞ。せーのっ」

 今度はふたりで歌った。

 天井なんて始めから存在しないかのように、ふたりの歌声が天に昇ってゆく。この声、心理定規たちにも届くといいな。

番外・一方「みーんな。かわーい。ことりになーって」
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 01:09:56.19 ID:+l1Sah1Io
 ミサカは一方通行に合わせるように歌うけど、どうしてもワンテンポ遅れてしまう。合わせようと意識する度にどんどんズレる。
そうして一方通行が気を遣って合わせると、今度はミサカのほうが先走ってしまう。一方通行の声もどことなく戸惑っている。

番外・一方「はーぁれーた。みーそらに。くーつがーなーるぅー」

 ――結局、1回もハモる事なく終わってしまった。あれ? ミサカって意外と音痴なのか……?

一方「オマエなァ……」

番外「言わなくても分かってるよ……」

 テレビの前で口ずさむ事はあっても、歌う事はほとんどないミサカ。自分の歌唱力はこんなものだったのか?
童謡ひとつ満足に歌えないんじゃ、お世辞にも普通とは言えないよね。かといって練習する場所も――

一方「そォいや、オマエはカラオケに行った事がなかったな」

番外「から……おけ?」

 カラオケなら知ってる。知ってるといっても、カラオケは歌う為の娯楽施設だという事しか知らないけど。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 01:13:59.06 ID:+l1Sah1Io
一方「あァ。上手くなりたいンなら、そこで練習してみたらどォだ?クラスで仲良い奴を連れてなァ」

番外「カラオケねぇ……」

一方「まっ、歌は上手下手じゃねェ。楽しく歌えればそれがそいつの満点なンだし、別に下手だからって気にすンな」

番外「んじゃ、吹寄さんたちにお願いしてみよっかな。その時はあなたも来るよね?」

 デルタフォースのみんなはどうしよう。あの人たちの事だし、呼んだらほいほい付いてきそうだけど、音痴だと知られたら嫌だな。

 ――やっぱり、こんな相談は同性のほうがいいや。いや、あなたは別だよ?

一方「………………」

番外「……聞いてる?」

一方「………………」

番外「一方通行?聞いてるなら返事してよ」

 ――返事がない。

 ミサカは一方通行の顔を覗き込んだ。鋭い瞳は閉じ、身体は力なく沈んでいる。

 念の為、読書灯の明かりを強めてみた。だけど、それでも変わらない。
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 01:16:57.73 ID:+l1Sah1Io
番外「ねぇってば~。寝てないでもっとお話ししようよ~」

 ゆさゆさと身体を揺らすも、起きようとはしない。いくら呼んでも、その瞼はピクリともしない。
一方通行の身体は人形のようにグラグラと揺れるだけ。

番外「本当に寝ちゃったのかな?」

 そんな一方通行を見ていると、つい手を出したくなる。要は悪戯スイッチがオンになった証。

 そして、ミサカは両手をワキワキさせると、その華奢な腰に腕を回して――

番外「こちょこちょこちょこちょ!」

 思いっきりくすぐってやった。さぁ、どう出るどう出る?

一方「………………ぐっ」

番外「……おっ?」

 瞼がほんの少し開き、身体がビクッと弾んだ。
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/22(金) 01:25:52.44 ID:+l1Sah1Io
一方「ぐぎゃひゃひゃhnufdororikonuivbhvuegheo!!!」

 それでもミサカの手は動きを止めない。あなたが降参するまで、ミサカはくすぐるのを止めないぞ。

 狸寝入りなんて、ミサカの目にはまるっとスリっとゴリっとエブリシングお見通し。
あなたの寝顔なんてよく知ってるんだからね。あなたはそんな顔して寝ないんだから、下手な演技しても無駄なんだよ。

 そしてミサカはこう言う。とびっきりのにこやかスマイルで、

番外「おはよーございます!よく眠れましたか!?」

 タイムイズマネー。時は金なりって言葉、第1位の頭脳なら理解できるよね?
折角ふたりっきりになれたんだもの。そう簡単に寝させるもんか!

一方「もォ野路で寝てェ……」 
 
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:17:52.20 ID:TLUSBVXUo
番外「野道?さっきの歌と掛けてるのかにゃ?」

一方「うっせェ……いい加減に寝てくンねェか。オマエも今日は疲れてンだろ」

番外「目が冴えちゃったんだよ。だからもっと構ってよ」

 ミサカは自分の胸を一方通行の薄い胸板に押し付ける。大胆な行動も時には大事。

 あれだけミサカをドキドキさせたんだもの。今度はミサカがドキドキさせてやる。

番外「どう?これでも眠たいなんて言う?」

一方「…………それで今度は俺にどォしろと」

 いいぞいいぞ、一方通行は困ってる。あとひと押しだ。

 …………何がひと押しなんだろう。

番外「それはあなたが考えてね」
 
 とりあえず、懲りずにこちょこちょ。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:27:44.89 ID:TLUSBVXUo
一方「だあァァァ!鬱陶しいわ!!」

番外「きゃあっ!?」

 がばっ。当然ながら、2度も同じ手が通じる相手ではなかった。

 一方通行の身体が90度回転し、覆い被さる。突然の奇襲にミサカは成す術なく仰向けになった。
肩から下は布団で隠れて見えないが、お互いの身体が密着して思うように身動きが取れない。

 一方通行ってこんなに重かったっけ……。

 逞しいとは言えないその身体も、今はとても頼もしいというかなんというか……重い。一方通行プラス布団の重さか。

 ドキドキとは違った感じが沸いてくる。何だろう、身体中がムズムズしてこそばゆい。

一方「さァ、オシオキの時間だ」

番外「ひ、ひぃ……っ!?」

背中に回された一方通行の腕が活動を開始する。計10本の指がそれぞれ別の生き物のように、使命を果たさんとミサカの背中や腰を滑るように撫で回す。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:30:53.82 ID:TLUSBVXUo
 ベクトル1本橋とは比べ物にならない刺激がミサカに襲い掛かる。

番外「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」

  さわさわさわさわさわさわさわさわ。服の上からでも充分過ぎるその感触。

一方 「しっかし、腰細ェよなァ。ちゃンと食ってんのかよ。正しいダイエットは正しい食生活からなンだろ?」

一方「……いや、あンだけ食ってンだ。腹ン中は別次元なのかァ?別腹ってのは想像以上にやべェな」

 背中をすりすり、腰をふにふに、お尻をなでなで。やめてください、そこは別次元ではありません。

 ……うん、さっきまでの紳士な一方通行は死んだみたいだ。今のあなたは極悪非道の第1位、一方通行。

番外「うにゃああぁぁぁぁ!」

 細胞が振動し、痛点が脳に信号を送り出す。

 脳が信号を受信し生命の危機と判断、痛覚として発信する。

 くすぐったい。身を捩る。逃げられない。呼吸が乱雑になる。悶え、捩る度に刺激が倍増していく。一方通行の笑い声が聞こえる。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:33:30.63 ID:TLUSBVXUo
 やめてほしい?

 ――はい。

 なんで?自分が何をされてるのか分かってるの?

 ――はい。一方通行にお仕置きされてます。

 ……あなたって本当は変態さん?

 ――違う。ミサカは普通、ノーマルだよ。他のミサカと一緒にしないで。

 そんな事言って、現実はこうじゃない。

 ――それは……一方通行が……。

 彼のせいにするの?自分から吹っ掛けてた癖に。

 ――だって、ミサカに興味無さそうだったから……。

 抱き締めてキスまでしてくれたのに、まだそんな事気にしてるんだ?

 ――うるせぇ! ミサカだって気にするって言ってるじゃない!

 ねぇ、本当にやめてほしいの?

 ――…………。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:36:22.61 ID:TLUSBVXUo
一方「なァ……俺はとっくに止めてンだが……」

番外「あ……えぇっ……?」

一方「そンなにモジモジして、オマエは何と戦ってンだァ?テメェとか?」

番外「うっ……にゃろめぇぇぇ、仕返しだあぁぁぁ!」

 恥を誤魔化そうと、ミサカは一方通行の腰をこねくり回す。柔な肌は生地のように伸び縮み。
でも何だか物足りない……肉が足りないのか?

番外「うりゅああぁぁぁ!!」

一方「おおォォォ!?」

 負けてなるものか。ミサカはモノじゃないんだぞ。誰が愛玩奴隷になんかなるものか!

番外「はぁ、はぁ……どーだ、参ったか!」
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:41:18.19 ID:TLUSBVXUo
一方「違ェンだよ」

 あれ? 思ったより効き目が薄い。おかしい、さっきよりもずっとずっと強くしたはずなのに、一方通行の顔は余裕たっぷりだ。

番外「……は?」

一方「そりゃ不意にされちまえば嫌でも反応しちまう。だけどよォ、意識しちまえば何ともねェンだよ。番外個体……分かるか?」

番外「うひゃひゃひゃ、要するに、必死扱いて我慢してたんだ。この負けず嫌いめ」

一方「まだ言うかよ……やっぱこンなンじゃ駄目か。うらァ!」

 一方通行がミサカを乱暴に抱き寄せる。抱擁だとかそんな生易しいものじゃない。これは拘束。
ミサカと一方通行の立場がいつもとは逆転、今度はミサカは一方通行の抱き枕と化した。

番外「ちょっと!何するの!?」

一方「悪戯猫にはこォするンだよ」

 一方通行の手が今度はセーターの中に潜り込んできた。抵抗しようにも、肘から上が動かない。
唯一自由な足で抵抗するが、一方通行は自分の足を絡める事で、それをいとも容易く鎮圧する。
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:46:43.70 ID:TLUSBVXUo
番外「手!手はアウトだってば!」

 じたばたじたばた。こうやって強く抱き締めて貰うのもアリかな? って思っちゃうけど、手を入れるのはアウトなんじゃないかな?

一方「俺が……嫌いなのか?」

 そんなミサカを見て、一方通行は真顔で問いかける。ぐぐっ、そんな顔で見ないでよ。
地味に涙まで浮かべて、いったい何がしたいの!?

番外「嫌いじゃない……」

一方「だよなァ」

 そんな表情も一転、一方通行がニヒル全開120%の笑みを見せる。 えぇ、分かってましたとも!
でも、あんな顔されたらどうしようもないでしょうがああぁぁぁ!

 一方通行の手が激しくなる。だけど、それでいて優しい。
首、肩、背中、腰、お尻。手の届く範囲全てを優しく撫で撫でする。首根っこをチロチロと舌が這う。

 あれ?なんか気持ち良いかも……。

一方「こォやって、触れるか触れないかギリギリがいいンだよなァ」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:50:58.40 ID:TLUSBVXUo
 ミサカの頭に顔を沈めたまま、一方通行は言う。まるでミサカの全部を知っているとでも言いたそうな口振りだ。
だけど、ミサカは何も言い返せない。口を開けば、出てくるのは言葉とは言えないものばかり。

番外「あっ……ふあぁっ、っうぅぅぅぅ!」

 目を開けられない。一方通行がどんな目でミサカを見ているか、それを考えるだけで顔から蒸気が噴き出してきそうだ。

 やだ……今のミサカを見ないで……恥ずかしいよ。

 シーン。

番外「…………ぅ?」

 静かになった。何も聞こえない。けれども、妙な緊張感が辺り一面に広がっている。

一方「ちっと万歳してみろ」

番外「ばんざい?……こう?」

 こんな時に万歳?訳が分からないまま、ミサカは恐る恐る両手を上げてみた。すると――

番外「ぶぁっぷっ!?」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 00:55:56.25 ID:TLUSBVXUo
 目の前が真っ暗になった。だけど、ある程度目が慣れていたお陰で何とか周りが見える。

 この柄、この色は……ミサカのセーター? ミサカはセーターを捲られたの? こんな姑息な罠に引っかかるとはミサカ、末代までの恥。

 ――視界に光が戻った。

番外「一方通行!何してくれちゃってんの、って……あれ?」

一方「ほォ、オマエってこンなン着てンのか」

番外「……ねぇ、なんでソレをあなたが持ってんのかな?」

 一方通行の右手にはミサカのセーター。そして左手には――

 ミサカの頭に一抹の不安が。というか、それしかねぇよ。

 そろり、そろりとミサカは胸元に視線を落とす。…………ない。そこにあるはずのモノが、ない。

番外「ばっ!?」

 いつの間に!? どうやって!? あの一瞬の間に!?

 そっ、それよりも隠さないと!
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 01:02:00.14 ID:TLUSBVXUo
一方「オリジナルよかマシだとは思うけどよォ……もォちっと大人しいのにしねェか?」

番外「人に見せるワケじゃないんだから別にいいじゃん!ってか、返せよ!?」

一方「それよか、サイズが微妙に合ってねェように見えるんだが。……成長したか?」

番外「……そう言われると、確かに最近窮屈な気も……じゃなくって!」

一方「ほらよ、欲しけりゃ取り返してみろよ」

 一方通行はセーターを脇に退け、目の前で手に入れたばかりのもうひとつのドロップアイテムをひらひらと見せ付ける。
ミサカは必死に手を伸ばし取り返そうとするも、片手が使えない上に、どうしても動きに自制が入って上手く動けない。

番外「ちょっ!返せよぉ!」

一方「どォせ、コイツはあとで捨てられるンだ。なら今ここでこォしてやる。ポポイのポーイっとなァ」

 プイっと、ゴミのような扱いで後ろに投げ捨てる。それは弧を描き、隣のベッドに不時着する。
ゴミ箱にシュートしなかっただけでも幸いとでもいうか、可愛い台詞と裏腹にやっている事は残酷極まりない。
帰ったら黄泉川にチクって……いやいや、そんな事としたら今日の事がバレてしまう。
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/25(月) 01:16:09.99 ID:TLUSBVXUo
番外「返せ!ミサカの返してよぅ!能力なんか使って卑怯だよ!?」

一方「あぁ?能力なンざ使ってねぇぞ。オマエなら分かるだろ」

番外「……はひ?」

 能力を使ってない……? だってこんなにくすぐったかったんだよ? それに微弱ながら演算回路が働いて……。

番外「まさか……」

一方「まさか?」

番外「あああぁぁぁぁ!またかよぉぉ……」

 2度目の能力の消失。今度は1度目程ではないが、致命的な揺らぎがある。なるほど、それならモニタリングが不安定な訳だ。
何となく原因が分かった。あなたのせいなんだ。あなたのせいで、ミサカの自分だけの現実がおかしくなってるに違いない。

一方「はァ?……よく分からねェが、今のオマエは無防備なンだな?」

 不味い、知られてしまった。電撃が使えるなら、いざとなれば能力OFFの一方通行くらいどうにでもなる。
仮に使えなくても、ブラフに持ち込めばミサカに負け筋はない。だけど、今のミサカに能力が使えない事を知られたら……。

番外「ね、ね?だからここでお開きってことで。とゆーわけでおやすみなさ――」

一方「キヒッ、駄~目♪」

番外「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 
 
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:12:52.88 ID:POnbzvmNo
 ただいま、午後の……えぇっと、何時だっけ。枕元には小さな時計があるんだけど、それを確かめようとは思わない。

 正しくは、余裕がない。

 何故なら――

番外「ぐににににに……ミサカには欲情しないんじゃなかったのかな?」

一方「欲情?違ェな、これは愛情だ」

番外「どの世界に身の危険を感じさせるような愛情がぐぐぐぐぐ……」

 ミサカは迫り来る一方通行の両手を必死に押さえている。胸を隠すのに片腕を使っているせいで、
いくら能力OFFの一方通行相手でも単純な戦力ではこちらが圧倒的不利。だとしても、ここで諦めてはミサカはどうなる……?

番外「だから、どーして駄目なんだよ。ミサカは寝たいだけでぐにににに……」

一方「駄目だからだ」

 なにその自己チュー。ミサカでもそこまで自己中心的な考えはできやしないよ。駄目だから駄目って、どこのお母さんですか。
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:16:26.40 ID:POnbzvmNo
一方「ほらほらァ、もっと力込めねェと喰われちまうぞ?」

番外「く、喰われるぅ!?」

一方「あァ、もぐもぐする」

番外「変な事したら感電させるんだから!」

一方「クカカカカ、面白ェな。やってみろよ」

 一方通行がケラケラと挑発する。別に、今のミサカは能力を完全に使えないわけじゃない、不安定になってるだけだ。
それならば、軽いショックぐらい与える事はできるはず。見てろよ、一方通行。目にもの見せてやる。

 精神を集中させる。パチパチと髪の毛が逆立つ。目標は一方通行、白い悪魔だ。


 バチン! 寝室に火花が灯った。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:23:51.25 ID:POnbzvmNo
番外「きゃっ!?」

 電撃は一方通行に放たれなかった。逆に、放とうとした電撃は逆流し、ミサカ自身が感電する結果になってしまった。
電気系能力者が自分の電気に当てられる、こんなヘマをLEVEL4相当のミサカがしでかすとは何たる屈辱。

一方「へェ、無防備ってのは本当みてェだな」

番外「~~っ!!!」

 今の一瞬で、ミサカのアイデンティティーが崩れ去った。ガラガラズシャーン。
やり直そうとするも、今度は火花ひとつでなかった。軍用量産化として生まれた他の妹達より優れたミサカだったが、
この瞬間、ただの無能力者当然と成り果ててしまったのだ。

番外「この馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」

 もしかしたら、一方通行も本当はミサカが無防備だなんて信じてなかったのかもしれない。
流石の一方通行だって能力がなければ、ただの無能力者。ミサカが電気系能力者である以上、危険性はゼロではない。

 ――だけど、見られてしまった。ミサカが能力を使えない事。ミサカが自分の電撃に当てられた事。
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:29:00.31 ID:POnbzvmNo
一方「なるほど、能力が使えないってェ訳だな。こりゃァ都合がいいじゃねェか」

 何が都合がいいんだ。あなたはミサカに何をするつもりなんだ。考えてる暇はない……よし、ならば次は――

 手が駄目で能力も駄目なら今度は足だ。絡められている一方通行の足なんか物ともせず、ミサカは思いっきり蹴り上げた。

番外「こんっんおおぉぉ!!!」

 能力が使えなくたって、ミサカには身体能力の高さがある。これなら一方通行には負けはしない。
片手で両手とやり合うのは無理だけど、今度はそうはいくもんか。

一方「うぐゥ!?」

 なんだか脛に柔らかな感触がすると同時に、一方通行が崩れ落ちた。口から泡を吹いて白目を向いている。

番外「……あり?」

 この手応えの無さは何なんだ……?

 さっきの感触を思い出してみる。もしかしなくても、あれはミサカには分からない、俗に言う金的なものではなかろうか。
それなら一方通行が泡を吹いているのも納得ができるけど、嫌な予感がする。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:34:37.76 ID:POnbzvmNo
一方「番外個体ォォォォ!!今のは反則だろォがァァァ!!!」

 一方通行が股間を押さえながらヨロヨロとミサカに迫る。

 ……ほら、やっぱり。ってか、反則って何様だよ。そっちは身包み剥いだくせに、立派な被害者面しちゃってさ。

番外「だあぁぁ!あっち行け!こっち見んなあぁぁ!!」

一方「やだ」

番外「ミサカの真似すんな!そんな顔しても可愛くなひゅっ!?」

 頬っぺたを引っ張られた。むにゅむにゅむにゅ、ミサカの頬っぺたがお餅みたいに伸びたり縮んだり。

一方「あの痛みはオマエには分かンのか、あァ?」

番外「いいふぇ、わふぁふぃまひぇん」

 その痛みはミサカには分かりません。一生分かるはずがありません。だからとっととくたばれこの野郎。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:42:26.13 ID:POnbzvmNo
一方「おほォ~、可愛いもンだな。それならどォだ、ぐにぐにィ~っと」

 ミサカの上に四つん這いになった一方通行は、蹴りの事など忘れてミサカの顔で遊び始める。

 どうしてそんなに楽しそうなんだよ! ミサカをおもちゃにするなあぁぁぁぁ!

番外「むにぃー……ぐにゅにゅにゅ……」

 ぐにぐりうりうり、びよんびよんのぱっちん。一方通行は遊ぶだけ遊ぶと、ミサカの口から親指を外す。

一方「はィ、蹴ってごめンなさいは?」

番外「うぅ……蹴ってごめんなさい」

 ……あれ? なんでミサカが謝らなくちゃなんないの? あっ、そうか、ミサカが一方通行の大事なトコを蹴ったからか。

番外「とっ、とにもかくにも!ミサカは寝るから!おやすみなさいまた明日!」

 ミサカは一方通行を横にはね除け、強制的に戦争を終結させると、腰まで下げられた布団を再び肩まで掛け直す。
空いた胸に枕を抱き締め背を向けるも、何をされるか分からない恐怖が頭から離れない。
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:45:37.44 ID:POnbzvmNo
 お願いだから、このまま何も起きませんように……。

番外「ぐぅぐぅ」

 はい寝た! ミサカは寝たよ!?

番外「すぴーすぴー」

 まぁ……それでも、ちょっとは構ってくれないと寂しい訳で。何もしてこないと逆に不安になってくる。

 ちらっ。

 ちょっと振り向いてみる。一方通行は諦めてくれたのだろうか。いつになっても黙ったまんまだ。

番外「…………?」

 ――いない。

 一方通行が、いない。

 さっきまでミサカの目の前にいたはずの一方通行が、いない。

 ミサカに見えるのはほの暗い寝室だけ。
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:48:03.59 ID:POnbzvmNo
番外「すぴゃっ!?」

 突如、ミサカの身体が何かに引っ張られた。そして、そのまま真っ暗な布団の中に引き摺り込まれて行く。

 明かりが遠のいていく。手を伸ばすも、明かりはだんだんと小さくなっていく。目の前が真っ暗になった。

一方「狸寝入りは駄目なンだろォが?」

 真っ暗な空間の中で、一方通行の声がする。わーん!暗いよー狭いよー怖いよー!

 光無き世界の主、一方通行。その声が四方八方から木霊のように、ミサカにふりかかる。

番外「一方通行!?どこにいるの!?」

 ミサカの肩よりも低い……腰の辺りから声がした。

一方「ここだ」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:51:27.85 ID:POnbzvmNo
 ここにいたか。姿を表せ、この変態野郎!

 ミサカはすかさず、そこにいるだろう一方通行の顔面に向けて、抱いていた枕をぶちこむ。

 殺ったか!? ……おいやめろ自分、その台詞はフラグだぞ。

一方「ここだ」

 今度は背中から聞こえた。一方通行の指が一糸纏わぬミサカの背中をなぞる。

番外「ひやぁぁぁぁぁ!なんでそこにぃ!?」

一方「ここにいるから、ここにいるんだろ」

 ……ごめん、ミサカのちっぽけな頭じゃ理解できない。ここにいるからここにいる?

 それはそうと、一方通行が後ろから抱きつく。お臍に回された両手がもぞもぞと動いている。
たわわに実ったミサカの果実をまだかまだかと待ちわびているのが分かる。

一方「オマエ、暖けェのな」

 そんな一方通行は、呑気にもミサカの背中に寄りかかって今にも寝てしまいそうだ。素肌に感じる一方通行の温もり。
こんな事になっているというのに、気を抜けばこのまま身を委ねてしまうそう。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/28(木) 23:55:27.26 ID:POnbzvmNo
番外「馬鹿!スケベ!エッチ!変態!!」

 ミサカは罵倒する。だけど、いつものような語彙力がない。

 枕はさっきのひとつっきり。残弾はゼロ。見えない枕を手繰り寄せるが、あとちょっとで掴む事ができない。
よくドラマで見るワンシーンだ。刑事が落とした拳銃を拾おうとするも、あと数センチで届かない、そんな歯痒さ。

 所謂ピンチである。最初からピンチだっかが、もっとピンチ。最上級にピンチなのである。

番外「おいこらぁ!黙ってないで、そろそろ止めないと本気で怒るからね!?」

 怒る……? そういや、本気で怒ったっけ? んにゃ、恥ずかしいとは思っても、怒る気はしない。
それどころか、ちょっと楽しいと思ってる自分が悔しい。何でこんなになってるのに、ミサカはそんな余裕があるのだろう。

一方「そンなに恥ずかしいンなら、なンでこンな真似すっかねェ」

 うぐっ……痛いところを突かれた。確かに正論っちゃ正論だけど、ここまでするのはどうなの?
一方通行も一方通行だが、ミサカもミサカ。……分かっちゃいるんだけど、納得がいかないよ。

番外「それは……」

一方「構って欲しいっつー事はだな、誘ってるンだよな」

 まぁ、大体合ってはいますケド、それは反応を楽しんでただけでありまして……。
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/29(金) 00:02:10.42 ID:xDpzD+XKo
番外「別にその気は……」

一方「あったのか?なかったのか?」

 暗闇の中、背中の一方通行は尋問のように、YesかNoかを求めてくる。

番外「ないよ」

一方「あァ?」

 Noと答えたらくすぐられた。お臍の周りを一方通行は円を描く。 

番外「ひゃっ!?……ちょび~っとだけ!ほんのちょっとだけはあったよ!」

 もう正直に言おう……少しはその気がありました。

 ミサカは枕を抱き締める。何も抵抗できないのが悔しい。できるものなら、一方通行にも一泡吹かせてやりたいのに。
畜生……この手が自由ならあんな事やこんな事を……っ!

番外「悪気はなかった、だからミサカに免じて……」

一方「悪気しかねェじゃねェか」

 おぅ……冷静に突っ込む気はあるんだ? 一応、あなたが正気を保ってくれてるだけで、少しは安心したよ。

番外「…………ミサカは0歳児だから、手を出したらペド認定だよ?」

一方「それなら問題ねェな。オマエは高校生なンだから」

 ミサカは説得を続けるが、効果はいまひとつ。それどころか、逆効果だったようだ。
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/29(金) 00:04:43.46 ID:xDpzD+XKo
番外「今ここでそれを言う!?」

 それなら、あなたは百合子ちゃんになるじゃん。となると、まさかの同性愛? じゃあ、ミサカはレズになっちゃうよ!?

 って、くだらない事考えてる場合じゃないし! とにかく、この現状を打破しなければ!

一方「ンじゃ、頂くとしますかァ」

 ミサカは一方通行の両手を必死に押さえる。胸を隠すのに使っていた片腕まで動員しないと押さえようがない。
胸元がガラ空きになるが、それでも迫り来る毒手を次々と弾いていく。

 そして、いつの間に手に届いていた枕を肩越しをぶちこむ。今度こそクリーンヒット。確かな手応えだ。

一方「ぶほっ!?」

番外「ざまあ!そぉやって枕と熱いキスしてなよ!」

 一方通行の両腕が力無く垂れる。その様子、まさに陸上げされたイカ。真っ白なのがお似合いだね。
それとも、萎びれたモヤシがいいかな?

一方「…………なァ」

 むむっ、次は精神を揺さぶりに懸かってきたか。だけど、ミサカだって同じ手には引っ掛かるものか。どうせまた顔色変えるに決まってるし。
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/29(金) 00:11:06.31 ID:xDpzD+XKo
番外「黙れロリコン!盛るならビデオ相手にひとりでやってろ!」

一方「……能力。使おっかなァ~?」

番外「な……っ!?」

 それは外道過ぎやしませんかい!? モニタリングもできない、能力もまともに行使できない赤子のミサカにそれはないっしょ!?
この状況、まさに崖っぷち。いっそのこと、言われるがままにされるほうがマシなのかも知れない。

一方「なーンてな★」

 はみっ。

番外「ひゃうぅぅ!」

 ミサカのウィークポイントその1、耳。その耳を一方通行は甘噛みした。思わぬ不意打ちに、ミサカの全身から力が抜ける。

 その隙を一方通行は見逃さなかった。一方通行の手は動きの緩んだミサカの両手を掻い潜り、そして――


一方「はい、おーしまィ」 
 
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:22:44.44 ID:7HPOVupMo
番外「――――っ!」

  もにゅっ。

番外「うにゃぁぁぁぁ!?」

 ミサカの胸に何かが触れて、沈んだ。弾力のある柔らかな膨らみに、一方通行の指が沈み込んだ。
もっと乱暴にされるかと思って身構えていたのに、だけどそれは優しく、それは暖かかった。

一方「まァ、自分で豊満っつーくれェはあるじゃねェか」

 さわさわ。

番外「ひゃわぁぅ!」

 一方通行はミサカの胸をそっと包み込む。弄る事はない。ただ、そっと包み込むだけ。
ミサカは背筋が震えてもう何が何だか分からないのに、一方通行は至って穏やかで、

一方「これがオマエの鼓動か」

番外「ばっ、馬鹿あぁぁぁぁ!」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:27:32.08 ID:7HPOVupMo
 ばしっ!

 ミサカは一方通行の手をはね除けると、ベッドから抜け出そうともがいた。だけど、混乱していて上も下も分からない。

 首から足まで、身体中が震える。一方通行の掌が見えない布団の中でミサカに触れている。
その手は見えないけど、世界で一番大好きな人に触られている。そう考えると、身体が火傷したように熱くなった。

 ――何でだろう、悪くは……ないかな……。

一方「ンー……確かにサイズが合わなかったな。成長期か、オマエ?」

 げげっ、あれだけ抵抗してたのに、一方通行はやっぱり何とも思ってないらしい。それどころか、マジで測ってやがったぞ。
ミサカは一方通行の手首を掴んで引き剥がそうとするも、その手は頑固でお腹から離れようとはしない。

番外「馬鹿っ!何でマジにやっちゃうの!?」

 確かに感じる温もりに、一方通行の声。それだけで、心臓の鼓動がは止まらない。

 一緒に寝てくれた一方通行。護ってくれるって言ってくれた一方通行。ミサカの想いを受け入れてくれた一方通行。

 これがお仕置き? ……だけど、こうやって身を任せるくらいなら……。

 
 ――駄目だ。それでもやっぱり……恥ずかしい。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:31:36.59 ID:7HPOVupMo
番外「もういいでしょ!だから放してよぉ!」

 いくら強がっても、素のミサカはかなりの初心なんじゃないかな? 負の感情補正って、意外と護利益があるのかも。
それでも、ネットワークに繋がっていない、今の状態のほうがずっといい。だって、あなたを想う気持ちにずっとずっと素直になれるから。

 まぁ……それでもこうやって強がっちゃったりしちゃうんですけどね。だって、ミサカは一方通行のモノじゃないし。
寧ろ、一方通行がミサカのモノだ。

番外「ねぇ、聞いてんの!?放せって言ってんでしょうがぁ!!」
 
 駄目だ、ドキドキが止まらない。止めてほしかったはずなのに、身体の火照りが収まってくれない。

 一方通行が何か呟いているが、よく分からない。理解しようとするだけの余裕が、今のミサカにはない。 
早く抜け出したい。だけど、このままでもいいとも思ってしまう。ミサカの中で、ふたりのミサカが衝突する。

 ――恥ずかしいんでしょ? だったらその手を取っ払ってワンパンチでもいれたら?

 ――違うね、受け入れちゃえばいいじゃん。そのほうがずっと楽だよ。

番外「受け入れる!?それってえぇっと……」

 それって……私を食べて(はぁと)、とか、優しくしてね(うるうる)、とかのアレ!?

 そういうのはまだ気が早いんじゃない? それに、心の準備もまだ……っ!
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:35:13.43 ID:7HPOVupMo
一方「あー……サイズで言うとだな――」

番外「うみ゛やぁぁぁ!!!!!!!」
 
 己の妄想と羞恥に耐えられなくなったミサカは大爆発した。どこにそんな力があるのか、一気に布団から抜け出――

 ――せられませんよね。そもそも、本気で離れたいのかどうかも分からない。

一方「馬~鹿。そンなにお可愛い反応をされるといっそう放したくなくなるだろォが」

 そう言って、一方通行がもそもそと布団を退かすと、程よく乾燥した新鮮な空気が肺を満たし、頼りなくも部屋を照らす読書灯が顔を照らした。
一方通行の腕はお腹に回されたままだけど、妙な安堵感がミサカを包む。ミサカはもう抵抗しなかった。

 やっぱり、暗いのは怖い。寝るときでもどんな時でも、灯りひとつあるのとないのとでは全然違う。
それがあなたと一緒でも、姿が見えないと尚更不安になる。一方通行……どこにいるの?あなたの顔が見たいよ。

一方「どォだ?ちったァ、男の恐さってもンが分かっただろ?」

番外「一方通行の馬鹿!ミサカを弄んだな!?」

一方「……別に見た訳でもねェし、少し触っただけだろォが。そこまでムキになる事かよ」

 一方通行が呆れたようにも、小馬鹿にしているようにも聞こえる口調で言う。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:37:24.15 ID:7HPOVupMo
直接見なければ触ってもいいってのか。揉まなければ触ってもいいとでも言うのか! このすっとこどっこい!!

番外「ミサカだって本当にされるとは思ってなかったんだから!このスカポンタン!」

 当然だ。ミサカは服を脱がされ、引きずり込まれ、触られた。ドキドキさせるつもりが、ドキドキさせられてしまった。
なのに、どうしてあなたはそんなに平然としていられるの!? ああもうムカつく!!

番外「だからって、第一、あなたはミサカの身体にぶあぁっ!?」

 一方通行が何かをミサカの頭からすっぽりと被せた。これは何だろう……?

 ミサカのセーターかな? ……でも、この感じはちょっと違う。ミサカのにしては少しブカブカだし、色もこんなに明るくない。

 これってもしかしなくても……?

一方「とりあえず、今はそれ着てろ」

 この匂い、この肌触り……一方通行が着てたセーターだ。

番外「んにぃ……これってあなたのじゃない。ミサカのはどこだよ」

一方「オマエがあンだけ暴れるからどっか見失っちまったよ。だからこれで我慢してくれ」

 それはミサカのせいじゃないやい。つーか、下着返せよ。それが先じゃないんかい。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:42:40.63 ID:7HPOVupMo
番外「そこでミサカを解放するって選択肢はなかったのかな?」

 まぁ、この状況で何も着ない訳にもいくまい。若干長さが余る袖に腕を通しながらミサカは聞く。別に心配してるワケじゃない。
だけど、あなたはインナー1枚で寒くないのかな? 男だし、恥ずかしいって事はないんだろうけどさ。
それなら、ミサカのほうが恥ずかしいよ。下に何も着てないし、何だかスースーするし、変な感じがするし。

一方「ンな選択肢は始めからねェよ。こンな暖かいもンを手放す訳にはいかねェからな」

 袖を通し終わるのを見計らって、一方通行が抱擁する。さっきの出来事もあってか、思わず身体が強張った。

  あぁ、でもやっぱり暖かいや。あんだけされたのに、今はもう許しちゃってる自分がいる。
これが惚れちゃったって事なのかな? うひゃひゃひゃひゃ、ばっかじゃねぇの?

 ――――でも、こういうのもちょっとはいいかな。

一方「そォ身構えンな。大体、アレはお仕置きじゃねェし」

番外「お仕置きじゃないなら何なのさ」

一方「俺はただ構ってやっただけだ」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:48:32.09 ID:7HPOVupMo
 そんな事言って、ミサカはあなたの股間を思いっきり蹴飛ばしたんだよ? あのお仕置きはどこに行ったのさ?

 いや……例えお仕置きじゃないとしても、あんな構い方はないと思う。服の上からならまだしも、生身にするとか1歩間違えばどうなった事やら。

一方「……まァ、そこまで露骨にされると嫌でも欲情しちまうし?」

 一方通行がわざとらしく、ミサカの胸元で手をワキワキさせる。おっと、それ以上はいけません。
ミサカはそのヤラしい両手を弾くと、その手は大人しくお腹へと下がっていく。暖かい。

一方「俺だって人並みの性欲くれェあるンだ。オマエは俺が仙人とでも思ってンのか?俺はいつの間に悟りを開いちまったンだよ」

番外「だって、ミサカがいつも仕掛けても鬱陶しそうにしてたし。それなら少しはってミサカは――」

一方「精神と身体のバランスが調和してねェ奴が何を言ってンだ。欲求に流されたら、それはただの動物だろ」

番外「はいはい、どうせミサカは見た目は大人の中身は子供ですよ~っだ」

一方「もしも……オマエが見た目通りの精神して、理解してやってたとすりゃァ………………考えるだけ無駄か」

番外「それは内面ロリだからですkひゃぁぁぁ!?」
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:52:54.43 ID:7HPOVupMo
 腰を揉まれた。腰周りは自分でも一番気を遣って維持しているトコでもあり、したがって無駄な肉も少ない。
一方通行は意識したら我慢できるって言ったけど、不意打ちされると意識どころではなく、ミサカは堪らず身を捩じらす。
贅肉が少ないと、こういう時に損するよね。これじゃ、意識しても我慢できないんじゃないかな……?
 
番外「もうそれはいいから!他にする事ないワケ!?」

一方「じゃあ聞くが、オマエの構って欲しいってのはなンだよ?」

番外「えぇ~っと、それは……」

 それはミサカにも分かりません。寝るのが惜しくて、少しでもあなたと一緒に起きていたいってまでは分かってるんだけど。

番外「……とりあえず、後ろから抱くのはやめてくれないかな?」

一方「あァ?」

番外「後ろからだと、何されるか分かったもんじゃないし」

 そう言って、ミサカは寝返る。

番外「それに……これだと、あなたの顔が見える」

 枕ひとつを隔てた先にあなたがいる。見慣れた顔が、今はとても久しく感じる。

一方「オマエはこっちのほォが好きなのか?ま、俺もだけどよォ」
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 00:58:24.81 ID:7HPOVupMo
番外「あなたも好き……?」

 そういえば、ミサカはあなたに好きって言えたけど、あなたから返事は貰ってない。
行動で示してはくれたけど、それで素直に喜んでいいものなのだろうか……。ミサカはふと疑問に思ってしまった。

番外「ねぇ、ミサカはあなたが好きだけど、あなたはミサカが好きなんだよね?」

一方「あァ?ンなこたァ、分かりきってるだろォが」

番外「分かってても言って欲しいな。態度ばっかしじゃなくて、たまには口で言おうよ」

 時には口で言わなきゃいけない事もある。多分、それが今なんだと、ミサカは思う。
今のミサカがあなたにお願いする事。それはあなたの返事。はっきりと、あなたの口から言って欲しい。

一方「オマエは言い出したら梃子でも動かねェからな……仕方ねェか。今日は特別だ、言ってやるよ」

番外「いちいち確認取らなくても、男ならびしっと言いな。ミサカ、女々しい男は嫌い」

一方「…………ふゥ」

 一方通行が目を閉じ、短く息を吐く。

番外「…………」

 結果は分かっている。だけど、それでも少しは緊張する。ミサカはじっと返事を待つ。

 一拍置いて、一方通行の目と口が開いた。さぁ、とびっきりの唄でも謡って貰いましょうかね。

一方「……………………」



一方「…………好きだ、番外個体」
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 01:00:48.55 ID:7HPOVupMo
番外「…………は?」

一方「……あァ?」

番外「……薄っ!?そんだけ!?それで言葉で表せられないとかねーよ!」

一方「仕方ね――」

 ――でも、それだけで充分だった。

  胸元に飛び込んでやった。抱きついて、頬っぺたに吸い付いて、頬擦りしてやった。ついでに、軽く口づけもしてやった。

 ――これがミサカの思い付く最大の愛情表現。もしも、これ以外にいい表現があるってのなら聞いてみたい。

番外「……ミサカ……嬉しいよ」

一方「そォかい」

 一方通行は顔を背ける。それはミサカに対する恥じらいか、自分への恥じらいか……多分、後者だとミサカは思う。

番外「ねぇねぇ、これでれっきとした相思相愛なんだよね?」

一方「……まァ、そォなンじゃね?だからって何かが変わるって事でもねェが」

番外「むひゅひゅひゅひゅ……じゃあ、あんな事やこんな事も……」

一方「…………は?」
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 01:03:48.86 ID:7HPOVupMo
番外「よぉし!さっきの仕返しも兼ねて、今からミサカはあなたをモグモグしちゃいます!!」

一方「…………おィ、ちょっと待て。意味分かってて言ってンのか?」

番外「往生際が悪いよ、一方通行。さっさとミサカのモノになりなさい、とミサカは詰め寄ります」

一方「誰がオマエのモノに――」

 ぐぅ~。

番外「…………」

 ぐぅぐぅ。ミサカのお腹の虫が鳴いた。

番外「…………」

一方「…………」

番外「なっ、何だその目は!?ちょっと小腹が空いただけじゃん!」

一方「晩飯にパフェしか頼まなかったオマエが悪い。いくら甘いもンが好きでもそれ――」

 ぎゅるるるる。
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 01:05:04.56 ID:7HPOVupMo
一方「…………」

番外「……今のはミサカじゃないからね?」

一方「…………小腹が空いただけだ」

 一方通行が苦し紛れに言うも、ミサカの腹筋は崩壊寸前だ。横隔膜が震え、押さえようにも押さえられなかった。

番外「ぷっ、あはははははは!!!」

一方「そこまで笑うこたァねェだろ……」

番外「ごめんごめん……そうだ、ルームサービスでも頼もっか?軽食くらいあるよね?」

一方「そォだなァ、何がいい?」

番外「夜食でしょ?サンドイッチがいい」

一方「……無難にそォすっか」

 枕元の電話を取り、一方通行は気だるそうに内線を掛ける。そういや、ルームサービスって営業時間とかあったかな?
ミサカは聞こうとするも、内線はすぐに繋がった。どうやら、本日は終了しました、なんて事はなかったようだ。
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/05(木) 01:10:27.11 ID:7HPOVupMo
一方「……軽食サービスってヤツを…………そォ、このサンドイッチセットってのをふたり分」

番外「ミサカ、トマトと――」

一方「あァ、ひとり分はトマトとチーズ多めで」

番外「あ……」

 一方通行は受話器を下ろす。そして、勝ち誇った顔で振り向いた。

一方「ハッ、オマエの好みなンざとうに把握済みなンだよ、ボケ」

番外「……あなたって、本当にズルいよね。そんな気遣いができるんなら、いつもそうやって欲しいよ」

 でも、今ので確実に好感度は20程アップしただろう。それだけ、好みを抑えられてるって事は、結構嬉しかったりするもんだ。
一方通行だって彼女いない歴=年齢のはずなのに、どうして重要なポイントばかりは抑えられるんだ? それとも、ミサカの攻略難易度が低いだけなのか……?



 ――だって、好感度ならとっくにカンストしてるんだから。この短時間でミサカは攻略されてしまったみたいだよ。

 
 んにゃ、そうとも言い切れないよ。ロシアで出合って、助けられて……その時からミサカの攻略は始まっていたのかもしれないね―― 
 
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 23:33:56.08 ID:M4BvlRPRo
一方「別に気遣ったつもりはねェ。勘違いすンなよ」

番外「言いたい事があるなら目を見て話しましょうね~」

 視線を反らす一方通行。その動きに合わせて、ミサカは右に左に肩を揺らす。

一方「あァ鬱陶しい!ジロジロ見ンじゃねェ!!」

番外「ちゃんとミサカの目を見て話さない人が悪いんですぅ~」

 ぎゃーぎゃーわーわー。さっきまでのムードが嘘のよう。こうなったら、どちらかが諦めるまで終わらない。

 やっぱし、一方通行の言う通りだった。両想いになったからといって何かが変わる事はなく、そこにあるのは普段と同じミサカとあなた。

番外「んー?んんー?」

一方「分ァった、分ァった!今のは俺の気遣いだよ!」
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 23:40:19.10 ID:M4BvlRPRo
 そんなこんなでじゃれ合ってる内に注文が届いたので、ミサカと一方通行はふたりでドアへ向かった。
当たり前に考えると、受け取りに行くだけならひとりで充分なのだが、何故ふたりで向かったというと――

一方「なンで部屋ン中でおンぶしなきゃなンねェンだ……?」

番外「だって、ひとりで行かせたら全部食べちゃいそうだもん」

 そうなのである。ミサカは今、一方通行におんぶされているのである。

 注文が届いた時、一方通行は親切からか、俺が出ると言って取りに行こうとした。だけど、ミサカはその腕を掴んで放さなかった。

 歩けばいい、だなんて言わないでね。ミサカは一方通行の傍にいたいんだから。
こうしていられるのが今夜だけなら、今夜は精一杯傍にいてやろうと思ってやった事なのだ。

 それを知ってか知らずか、一方通行はそんな我侭にも文句も言わず了解してくれた。

番外「それにね……」

一方「一緒にいてやるとは言ったけどな、普通ここまでするか?」

番外「するんでーっす。ほらほら、ドア開けるよ?」

一方「……さて、どンな面されンのか楽しみで仕方がねェよ、クソが」
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 23:46:04.11 ID:M4BvlRPRo
 両手が塞がった一方通行の代わりに、ミサカはドアを開ける。ドアの向こうにはホテリアーの女性が待っていた。
随分と待たせてしまってちょっとばかり申し訳ない気持ちになるけど、流石はプロ。その笑顔が眩しいぜ。



番外「……ミサカたち笑われてたね♪」

 リビングに戻った後、サンドイッチの入った小さなバスケットを手にミサカは一方通行に聞いてみた。
一方通行の背中は思ってたより広くて、首に腕を回せば丁度いいくらい。ほんのり薔薇の香りするのはホテルのシャンプーだ。

一方「そりゃあ、ドアが開いてみればお客様がおンぶしてたンじゃなァ……」

 あの笑顔は営業スマイスだけじゃない、もっと他の意味も込められていた。その証拠にドアの閉まり際、女性の口元が不意に緩むのをミサカは見逃さなかった。

 それに、不自然に口元がヒクヒクしてたもんね。ミサカは視力もバッチリなのだ。

番外「むふふふふ……」

 自然と笑みが零れる。その一方で、一方通行は困ってる。だって、背中がいかにも困ってそうな感じなんだもん。

一方「ちったァ時と場所をだな……恥ずいったらありゃしねェ」

番外「ミサカは恥ずかしくなかったよ?」
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 23:52:29.74 ID:M4BvlRPRo
 だって、好きなんだから仕方が無い。大好きなんだから、もっと周りに見せびらかしてやりたい。
ミサカと一方通行はこんなにも仲良しなんだぞ、ってみんなに見せてやりたい。
一方通行はホントは怖くなんかない。みんなが思ってるより、ずっとずっとず~っと優しいんだぞ、ってみんなに教えたやりたい。


 ――そして、そんな一方通行がミサカの恋人なんだって自慢したい。

番外「なぁなぁ~、早く食べようよぉ~」

 ミサカは身体を揺らして催促する。でも大丈夫。今の一方通行は能力仕様モードだから、ちょっとくらい暴れても平気。
飛び乗った時は勢い余って崩れ落ちちゃったけど、アレはアレで仕方が無い。

一方「オマエが暴れるから歩き辛ェンだよ。もっと大人しくできねェのか」

番外「うひゃひゃひゃひゃ!ミサカはこのままでもいいんだけどなぁ~」

 すりすりすり。ミサカは一方通行の肩に顎を乗せて、目を閉じる。

 お腹が減っていなければ、そのまま寝てしまいそうなくらいだ。

一方「言う事聞かねェと返品すンぞ?オマエの分だけな」

番外「うっ!……分かったよ。じゃあ……このままアッチまで運んでくれたら降りる」

 ミサカは寝室に続くドアを指差す。だって、少しでも長くおんぶされていたいから。
目の前には打ってつけなソファーとテーブルがあるけど、ここで降りるのは勿体がなさ過ぎる。
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/16(月) 00:05:00.73 ID:3QzkK2Aqo
一方「へいへい、ボロボロ零ンじゃねェぞ?」

番外「善処致しまする」

一方「オマエは政治家か。嘘付いたらお仕置きな」

 そうして、一方通行はミサカを背負ったまま、リビングを後にした――


 ベッドに腰掛けるミサカと一方通行。肩を並べて、つかの間のひと時。

 サンドイッチは思ってたより美味しかった。でも、一方通行と一緒に食べるサンドイッチはもっと美味しかった。

 あ、念の為言っておくけど、下着は返して貰いましたとも。やっぱりノーブラでおんぶは無理だよ。
まぁ、セーターは返してませんけどね。一方通行は最初の内は寒い寒い言ってたけど、いざおんぶしてみたら暖かいし。

番外「それでね、その時ね――」

一方「あァ」

 少しばかりお喋りもした。といっても、ミサカが一方的に話しかけて、一方通行は相槌を入れるだけなんだけど。
それでもミサカは一方通行がちゃんと聞いてくれてるってだけで嬉しかった。いつもなら適当にあしらわれるだけだったからね。

 会話は続く。食べるか話すかどっちにしなさい? 嫌です。同時進行です。

番外「でさでさ、初っ端からヒロインが死んじゃってさ~」

一方「……それってヒロインじゃねェだろ」

番外「おっ、あなたもそう思う?」
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/16(月) 00:14:15.29 ID:3QzkK2Aqo
 他愛のない会話の中身は、ミサカがよく見るドラマの話だったりミサカネットワークの会話ログだったり。
特にミサカネットワークには一方通行も興味があるらしく、馬鹿じゃねぇの? とか、くっだらねぇ、とか言いながらも楽しそうに聞いている。

 一方通行としても、妹達がこうやって毎日を面白おかしく過ごしているのは嬉しい事なんだろう。

番外「――まぁ、ミサカとしたらあんな個性なんて…………あれ?」

 気付けば、ミサカの手からサンドイッチが消えていた。あれ? 落とした?
腰掛けているベッドの周りを見渡す。足元を見下ろす。だけど、どこにもサンドイッチは見当たらない。

一方「オマエ……阿保か?食い終わったのに気付かねェとか年寄りかよ」

番外「…………」

 話に夢中で全く気付かなかった。ミサカは呆然とする。バスケットの中身は空っぽだ。残ってるのは僅かなお茶だけ。

 おいミサカよ、そこまでお喋りが楽しかったのかい? こんなに零しちゃって、口の周りだって凄い有様じゃないか。

一方「ったく……やっぱ零して……どォしようもねェな、俺が片付けておいてやるからオマエは寝ろ」

番外「で、でも……」

一方「俺の気が変わらねェうちに布団に入れ。お仕置きされてェのか?」

番外「うぅ……ごめんね?」

一方「はァ……謝るより他に言う事があるだろ」

番外「……ありがとう、一方通行」
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/16(月) 00:24:40.59 ID:3QzkK2Aqo
一方「よし、良い子だ」

 残っていたお茶を飲み干すミサカを一方通行はひと撫ですると、零れたパン屑をひとつずつ拾ってはバスケットに入れていく。
その姿を、ミサカは布団に包まりながら見守った。これで杖をついてなかったらなぁ……ギャグにしか見えないのが残念だ。

番外「……終わった?」

一方「まァ、こンなとこだろ」

 ――その一方通行が、今はミサカを抱いてくれている。一方通行の腕はミサカの背中に、ミサカの腕は一方通行の背中に。

一方「小腹は膨れたンだろ?なら眠たくなったンじゃねェのか?」

番外「むふふふふ……やーだよっ」

 そう言って、ミサカは一方通行の胸に擦りつく。一方通行の鼓動が、ミサカの鼓動とシンクロする。

 もっと甘えたい。もっと素直に触れ合いたい。撫でるだけじゃ満足できない。おんぶでも足りない。

 あなたにもっと近づきたい。

一方「そンな面で見つめンじゃねェよ。なンか怖ェ」

  一方通行は笑う。あなたとしては、明日の事もあってミサカには早く寝て欲しいんだろう。

 何度も言うけど、今寝たらあっという間に朝がきてしまう。そうなったら、ふたりっきりの時間はお終い。

 だから寝ない。まぁ、あなたの胸の中で寝たいって気持ちもあるけど、それを引き換えに大切な時間を失うと思えば我慢はできる。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/16(月) 00:33:06.77 ID:3QzkK2Aqo
番外「ねぇ、もっと撫でて。もっと強く抱き締めて?」

一方「オマエは言い出したら聞かねェからな……そンだけでいいのか?」

番外「じゃあ、チューも。ずっとずっと長くね」

一方「へィへィ、それでいいンなら何度でもしてやるよ」

番外「んー……」

 そうして、ミサカは瞳を閉じると、そっと静かに長く唇を交わした。一方通行の片手がセーターの中に滑り込み、素肌の背中を撫でる。

番外「背中、触ってる」

一方「……駄目か?」

番外「ううん、これくらいなら……もっとして欲しいな」

 相変わらず、一方通行はジーンズにインナーという、見ているコッチが肌寒くなりそうな格好のまんま。

 でも大丈夫。あなたはミサカがずっと抱き締めてあげる。だから平気だね。

一方「こォか?」

番外「うん……」

 ミサカは一方通行の胸に頭を預ける。一方通行は何も言わない。言葉を交わす必要なんてもうどこにもない。
自然と一方通行の背中に回した腕の力が緩み、頭が沈む。まるで身体がフワフワお空に浮いてるみたいだ。
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/16(月) 00:36:44.66 ID:3QzkK2Aqo
一方「眠いか?」

番外「うん……」

 正直、軽食を済ませた辺りから眠たくなっていた。一方通行にはバレないようにしてきたつもりだけど、それももう限界。
本当はもっと一方通行に触れていたい。だけど、閉じた瞼が開かない。

一方「やっぱり我慢してたんだな。なァに、別に今日だけじゃない。オマエが望むならまた一緒に寝てやるからよ」

番外「ありがと。そう聞いて安心したよ。ミサカ、今夜だけだと思ってたからさ……」

 そうだ、時間なんて作ればいいんだ。そんな簡単な事になんで気が付かなかったんだろう。
今この時が幸せ過ぎて、ただただ長く浸ればいいと思っていた。だけど、違うんだね。

一方「だから今日は撫でてやるだけで我慢しろ」

番外「ふふ……それって今度は食べちゃうぞって言ってるようなもんじゃない」

一方「さァな、オマエが嫌がる事はしねェよ」

番外「ううん……嫌じゃない。眠たくなかったら今頃あなたはミサカにモグモグされてるんだからね」

一方「そォかいそォかい、そりゃ命拾いしちまったな」

番外「……そうだ一方通行。最後にひとつだけ言っておくよ」

一方「あァ?何だ、言ってみろ」
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/16(月) 00:51:01.79 ID:3QzkK2Aqo
番外「ありがとう、一方通行。ミサカの我侭に付き合ってくれて。ありがとう、ミサカに幸せを教えてくれて」

一方「……それは俺が好きでやった事だ。感謝される謂れはねェよ」

番外「明日になったら、またいつものミサカに戻っちゃうかもしれない。だけど、いつまでも一緒にいてね……?」

一方「あァ、負の感情だろうが何だろうが、全部ひっくるめて受け止めてやる。……いつまでもずっとな」

 一方通行が撫でるのを一旦止め、ミサカを引き寄せる。ミサカもまた、引かれるように身を委ねる。
一方通行の胸は広くて優しくて暖かくて、ミサカはこんなにも大切に想われてるんだと思った。

番外「ふ、ふふ……ふ…………」

一方「その顔だ。オマエはそォやって笑ってりゃいいンだ」

 この時、ミサカは心の底から生まれてきて良かったと感じた。生まれた時は最悪だったけど、今はその反対。

 ミサカはこの幸せを逃さないよう、薄れ行く意識の中で一方通行に言う。これだけは言っておかないと……。

番外「うん……ありがと、一方通行。そしておやすみなさい……」

一方「あァ、おやすみ」

 そして、ミサカは静かに眠りに就いた。一方通行という揺りかごに、ゆらりゆらりと揺られながら――。


 ――その夜、ミサカは夢を見た。どんな夢だったのか……それはミサカだけの秘密だ。 
 
 
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:02:12.92 ID:6l2vbvIBo
~翌朝~
 
番外「ん……んん~っ…………むにゅ」モソモソ
 

番外(……何だろう、なんか懐かしい感じ)

番外(わかんない。だけど……いい匂いだ……)ギュウ

番外(…………ぎゅう?)パチッ


番外「…………」

番外(……そっか、夢じゃなかったんだ)


番外「…………ん?なら……」←抱きついたまんまの、抱き締めたまんまな訳で


番外「…………~~っ///」カァー
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:05:39.29 ID:6l2vbvIBo
番外(いや、確かに抱き締めてとは言った気がするけど、一晩中……!?)


番外「…………」

番外「も、もうちょっとだけ、いいよね……?」スリスリ


一方「……何がもォちょっとなンだ?」


番外「うにゃぁ!?一方通行!?起きてたのぉぉ!?」
 
一方「あァ、誰かさンの寝言のせいでな。あと、ヨダレか」
 
番外「ばっ、うわぁ!!?」

番外(起きてたのはともかく……寝言ってええぇぇ!?ヨダレってええぇぇぇ!?)
 
番外「あ、あ、その…………寝言って具体的には……」
 
一方「まァ、それ以外は大人しく寝てたからプラマイゼロにしてやる。で、気分はどォだ?」ポムッ
 
番外「ふにゃ……え、えっと……大丈夫、です……」
 
一方「そっか。……ならもォ起きてもいいか?」

番外「なっ、なっ……や、やだっ!!!」ムギュッ
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:07:45.19 ID:6l2vbvIBo
一方「やだって、オマエなァ……」

PiPiPiPiPi!!!

一方「ほら、オマエが放れねェと携帯が取れねェだろ」

番外「あっ、え、あ……う、うん」

一方「オマエにしちゃ、やけに素直だな。もっと粘るかと思ってたンだが」

番外「でも離さないもん。ちょびっとだけ緩めてあげるだけなんだから」

番外(だってずっと一緒って約束したもんね。別に今だけじゃないから我慢我慢……)

PiPiPiPiPi!!!

番外「ほれほれ、早く取らないと」

一方「お、おォ……」

番外「…………」ウズウズ
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:11:18.67 ID:6l2vbvIBo
~第7学区の病院~

ケータイ『やっぱ駄目ぇぇ!! うォォォ!!! バッターン!!』


冥土帰し「……っ、彼らはいったい何をやってるんだね?」

御坂妹「失礼します。先程芳川と名乗る女性からコレが届きました、と、ミサカは紙袋を差し出します」

冥土帰し「あぁ、それは彼らの学用品だ。さてと……今から僕は外まで彼らを迎えに行くから留守番は頼むよ?」

御坂妹「サー、イエッサー。因みにこちらは?」

冥土帰し「それはお弁当だよ?もちろん、彼らのだ」

御坂妹「これは貴方が作ったのですか?と、ミサカは問います」

冥土帰し「どうして分かったんだい?」

御坂妹「どうしてと言われましても……エプロン着て菜ばし持ってたら分かりますよ。それにここは調理室です」

冥土帰し「あらら……そうだったね?」
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:16:39.37 ID:6l2vbvIBo
13577号「そー……」

10039号「こら、13577号。つまみ食いは許しませんよ、と、ミサカは腕を掴みます」

13577号「ちょっとぐらいいいではありませんか、と、ミサカはタコさんウインナーに手を……」

冥土帰し「まぁまぁ、君たちの分は別にあるから。19090号くん、あとは詰めるだけだから任せていいかな?」

19090号「分かりました、と、ミサカは引き受けます」

10039号「チャーンス!」バッ

御坂妹「ちょ、それはミサカがキープしてたから揚げ……」

10039号「ひょっひゃもほはひでふ、ほ、ひははは……(取った者勝ちです、とミサカは……)」

19090号「えっと、このスペースにはこれを……」

13577号「ゴクリ……で、ではミサカはこのサクランボを頂きましょうか……」ソー

冥土帰し(よし……今度、彼女たちに料理を教えてみるのも面白そうだね?)


ケータイ『おィこら重ェンだよ!! ちょ!どこ触ってんの!!  まずは足を退けろォォォ!!』ピーピー
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:21:36.78 ID:6l2vbvIBo
                          ・
                          ・
                          ・

~ロビー~

垣根「……」ソワソワ

心理「少しは落ち着きなさいよ。周りから見られてるじゃない」

垣根「いや、だってさ。あのふたりがどうなったのか気にならね?」

心理「それは……ちょっとは気になるけど。それでもあなた、表に出し過ぎ」

垣根「そうか?…………おっ、来たんじゃね?」
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:30:46.39 ID:6l2vbvIBo
一方「だおあァァァ!ここまで来て引っ付いてンじゃねェよ!いい加減杖返せェェ!」

番外「えー、やだー。ミサカ、こうしてたいんだもん。それに引っ付いてんのはそっちじゃん♪」

一方「こンなの垣根らに見られたらどォすン――」

番外「おっ、ていとくんに心理定規だ。おっはよー!」

一方「…………」

心理「おはよう、ふたりとも」

垣根「おはよーさん。おいお前ら、朝からなんつーもん見せ付けてくれんだよ」

一方「そン顔はやめろ。全身の穴という穴にスチール缶ぶち込むぞ」

垣根「どうする?ついでに式も挙げてくか?ここはブライダル関係もばっちしだぜ?」

一方「なっ……ふざけンじゃねェよ!!」

垣根「照れちゃってかーわーいーいーっ♪」

一方「照れてねェ!」
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:38:05.60 ID:6l2vbvIBo
心理「そうだ……はい、番外個体。部屋に携帯忘れてたわよ」

番外「あっ、無いと思ってたらそっちにあったのね」

心理「お風呂場の籠に置きっ放しだったわ。多分、湿気のほうは大丈夫だと思うけど」

番外「ありがと、心理定規。それと……」

心理「ふふ、私の言った通りだったでしょ?」

番外「うん……あなたのお陰だね。ミサカひとりじゃずっと後悔してたかもしれない」

心理「私は何もしてないわ。最後に動いたのは番外個体、あなたよ。だから何も言わなくても平気」

番外「ありがとう、心理定規」

心理「えぇ」


垣根「…………なぁ、何の話をしてるんだ?」シラッ

一方「おィ垣根、無視してンじゃねェよ!」
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:43:13.14 ID:6l2vbvIBo
番外「えっ、別に……」

心理「帝督、女の子の会話に割り込まないでくれる?」

垣根「あ、悪い悪い」

一方「はァ……なァ、垣根。これも全部オマエらが仕掛けた事なンだろ?」

垣根「仕掛けたって酷い言い方だな……俺たちは別に何もしてねぇぜ?言いたい事言っただけだし」

一方「チッ……まァいい。これは貸しにしてやる」

垣根「じゃあ、今度、晩飯にでも招待してくんね?それでチャラだ」

一方「晩飯ひとつでいいのか。安いもンだな」

垣根「俺だって大勢で食事したいんだよ。そんじゃま、行きますか」

一方「だな。やっと帰れンぜ……」
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:48:51.62 ID:6l2vbvIBo
番外「一方通行?何してるの?」

一方「あァ?何でもねェよ」

垣根「心理定規は?」

番外「チェックアウトしてるから先に行ってろってさ。で、何してんの?」

垣根「あぁ、一方通行がな。お前の事が好きで好きで堪らないそうだ」

番外「うなっ!?//////」

一方「おィ、垣根ェ!!俺はまだ何も言ってねェぞ!」

垣根「まだ、ねぇ?そんで、どこまで行ったんだ?Aは当然として……Bか?それとも……Cか!?」

一方「……何の話だ?」

番外「そっ、そんなCだなんて……まだそれは早いよもう//////」クネクネ

一方「あァン?」

垣根「ふーん、へぇ~~~~」ニヤニヤ
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/24(火) 23:53:59.55 ID:6l2vbvIBo
心理「みんな、チェックアウト済ませてきたわよ。って、え――」


一方「垣根ェ!今のはどォいう意味なンだ!?番外個体に何しやがったンだ!?」ユサユサ

垣根「はて、何の事だか分っかりませ~ん」ガクガク

番外「ほ、ほら……やっぱりそうゆうのはお互いにもっと時間が必要ってゆーか……//////」モジモジ


心理「」
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:02:50.74 ID:ct+lOyuno
~学園都市~

ガロロロロロ......

垣根「うぉぉぉ!!気持ちいいーっ!!」

心理「寒いから窓は閉めなさい」

番外「嘘……顔パスとか信じらんない……」

冥土帰し「ふむ……芳川くんが準備はしてくれたから、とりあえず、ふたりは病院でいいね?」

一方「あァ、俺はそれで構わねェ」

番外「まさか、芳川が仕事したとはねぇ」

冥土帰し「彼女も彼女なりに心配してくれてるんだ。学校に必要な物は全部家から持って来てくれたんだよ?」

一方「クソガキはどォしてる?」

冥土帰し「家で大人しくしてると聞いたよ?あの子も寂しかっただろうに……帰ったら構ってあげるんだね?」

番外「最終信号には悪い事しちゃったかな。まさか帰れないとは思わなかったから……」

一方「元はと言えば、オマエが映画なンざで釣るからだ。反省しろ」

番外「はーい、反省してまーす」

一方「全然してねェだろ、どあほう」ポカッ

番外「あたっ」
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:07:34.80 ID:ct+lOyuno
垣根「しっかしまぁ……先生自ら迎えに来るとはな。これ、マイカーか?」

冥土帰し「そうだね?出勤もこれだよ?」

心理「今時59キャデラックだなんて……」

番外「げっ、古そうだと思ってたけど50年以上も前のじゃん。こんなの乗って爆発とかしないよね!?」

一方「ンな事あるか。……もし起こっても俺がいるンだ。何も心配すンな」

番外「一方通行……」

垣根「…………」ジー

垣根「なぁ、心理定規、お前だけは――」

心理「同じ事言わないで頂戴。そんな事分かりきってる事じゃない」

垣根「心理定規……」

心理「帝督……って馬鹿。あなたが言ってもギャグにしか見えないわよ」ペシッ

垣根「いてっ」


冥土帰し(……肩身が狭いね?)
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:10:07.49 ID:ct+lOyuno
PiPiPiPiPi!!!

垣根「んんっ?誰の携帯だ?」

心理「私のじゃないわ」

番外「ミサカのでもないよ」

一方「……違ェ」

冥土帰し「じゃあ誰のだい?」

心理「この音……探知の音じゃないかしら?ほら、バスの」

一方「そういや、そンなもンもあったな」

番外「なんか途中からどうでもよくなったよね」

垣根「…………近いな。よし、俺たちはここで降りるか」

番外「ここで降りちゃうの?どうせなら最後まで乗ればいいのに」

心理「そうね、帝督。私は降りないから、さっさと取り返してきなさい」

垣根「えっ……?」

一方「クカカカッ、テメェのケツくらいテメェで拭けって事だよ」
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:14:29.86 ID:ct+lOyuno
番外「残業お疲れ様でっす。取り返したらミサカの時計も届けてね?」

垣根「へいへい……あっそうだ、心理定規。あの話、俺に任せてくんねぇか」

心理「えぇ、私は別にいいけど……」

垣根「それだけ聞ければオーケーだ。それじゃ……垣根!行っきまーすっ!!」バッサバッサ

一方「……なンかすンげェフラグ立ててなかったか?」

番外「まっ、大丈夫でしょ。ていとくんだし」

心理「そうよ。死んでも死なない馬鹿はアレくらいよ」

冥土帰し「治すのは僕なんだけどね……?」
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:16:13.06 ID:ct+lOyuno
~病院~

心理「それじゃ、私はここで」

冥土帰し「近くまで送ろうかい?」

心理「いえ、ここから近いのでお気持ちだけ受け取りますわ」

番外「心理定規、またね~!」フリフリ

心理「えぇ、ばいばい」

一方「……あンだけでいいのか?」

番外「うん。電話1本で会えるんだもの。それに何か用事があるみたいだしね。……話って何なんだろ?」ウーン

御坂妹「おや、お帰りなさいませ、と、ミサカは3人を出迎えます」

冥土帰し「すまないね、また任せてしまって」

御坂妹「いえ、問題ありません、と、ミサカは視線を移します」

番外「……ん?」

一方「あァ?」

御坂妹「早速ですが、これをどうぞ、とミサカは紙袋を差し出します」スッ
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:17:06.39 ID:ct+lOyuno
番外「これ……制服?」

御坂妹「はい。それと届けられた着替えが入っています。学校は8時からでしたね。あと30分しかありませんが……」

一方「気が利くじゃねェか」

御坂妹「ミサカは役目を果たしただけですので、と、ミサカは謙遜します。あ……」

番外「まだ何かあるの?」

御坂妹「いえ、特に。それより、着替える前に軽くシャワーでも浴びたらどうでしょうか、と、ミサカは提案します」

冥土帰し「それならついでに着替えも出来るし、どうかな?学校までは僕が送ろう」

一方「そォだな……シャワーくれェ浴びる時間はあンだろ」

番外「ねぇねぇ、一方通行。一緒に入っちゃおっか?」

御坂妹「おう……大胆」

一方「なっ、ねェよ!!」

番外「ほぉ~ら、顔赤くしちゃってかっわいい~」
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:20:39.14 ID:ct+lOyuno
番外「ほぉ~ら、顔赤くしちゃってかっわいい~」

一方「ンだとォォ!?」

番外「きゃー怒ったぁ~♪」ピュピューイ

一方「…………はァ」

御坂妹「……大変ですね、と、ミサカは弁当箱を渡します」

一方「でもまァ、あれがアイツの味ってもンなンだろ。……弁当まですまねェな」

冥土帰し「君にしては珍しいね。何かあったのかな?」

一方「別に何もねェよ……」
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/25(水) 00:23:10.19 ID:ct+lOyuno
                             ・
                             ・
                             ・
~学校~

小萌「それでは、ホームルームを始めるですぅ~」

バタバタバタ......ガララッ

番外「すみませんっ!遅れましたぁー!!」ゼェゼェ

小萌「ミサカちゃんに百合子ちゃん、もうちょっとで出席を取るとこんだったですよ?今度から気をつけてくださいね~」

番外「よぉ~し、間に合ったかぁ……」

上条「ふたりとも寝坊か?」

青ピ「今朝は寒かったからなぁ~。布団から出たくない気持ちは分かるでぇ~」

一方「……まっ、そンなとこだな」カツカツ

番外「ホント、昨日の夜は冷えたよねぇ。人肌が恋しくなっちゃうよ」

一方「……っ!」ビクッ

一方(コイツ、わざと言ってンじゃねェよなァ?)


土御門「…………」ニヤニヤ 
 
 
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:00:19.91 ID:i0m23A3yo
~とある寂びれた鉄橋の下~

垣根「おっちゃん!コレんめぇな!」ズルルー

おっちゃん「おうよ!俺のラーメンは天下一ってなぁ!……あっ、家じゃ天下はかあちゃんだけどな」

垣根「あー、分かる分かる。そんな感じだわ」

浜面「…………」

おっちゃん「昔は3歩後ろをついて来るような静かな奴だったのによぉ……どこで間違ったんかねぇ」

垣根「男が強かった時代はもう終わったんだなぁ……」シミジミ

おっちゃん「ところでよぉ、兄ちゃんたちは今日は休みか?学校はどーした?」

垣根「おぁ、学校ね?俺は天才だから行かなくていいんだよ。おっと、麺が伸びる」ズルルルー

浜面「…………」

おっちゃん「そりゃ凄いねぇ~。今の子供は賢いなぁ。おっちゃんの頃とは大違いだ」
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:06:12.61 ID:i0m23A3yo
垣根「でも、今の子供も楽じゃないぜ?仕事も減って、いい大学出ても食ってけない奴も多いしな。……ん、お前は食わないのか?」

浜面「…………」プルプル

垣根「食わないのか?ならナルトもーらいっ!」ヒョイ

浜面「お前なぁ!黙ってれば呑気にすすりやがって!誰の金だと思ってんだ!俺の金だぞ!?」

垣根「それもそうか。あっはっはっは!」

浜面「車を盗んだのは悪かったと思ってる。だけどよ……どうして俺がこんな時間のこんな屋台でこんな野郎に奢らなきゃなんねーんだよ!」

垣根「おい、こんな屋台とはおっちゃんに失礼だろ。な、おっちゃん?」

おっちゃん「いいのよいいのよ、屋台なんて皆こんなもんさ」

垣根「かぁ~っ、やっさしぃ~!!」

おっちゃん「お客様は神様だからな!」

浜面「だからって奢るのは……」ズルルル

垣根「おっちゃん!替え玉1丁!」

浜面「それ自腹だからな!俺払わねぇぞ!?」
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:12:41.07 ID:i0m23A3yo
垣根「なんだ、身体で払いたかったのか?それはちょっとなぁ……」

浜面「そ、そういう事じゃねぇ!俺はお前がなんとも思わないのかって聞いてんだよ。俺みたいな人間と飯食うような柄じゃないだろ?」

垣根「だって俺、朝食ってなかったし?」

浜面「……お前、本当にあの第2位なのか?」

垣根「あぁ、俺は垣根帝督で間違いはねぇよ。前にお前の連れに酷い事しちまった事も覚えてる。だからその……盗んだ事は、まぁ……見逃してやる」

垣根「……だけどな、中にあるもんを食い散らかすのはなぁ。あの菓子はあいつらのだったし……ぷはぁ」ゴキュゴキュ

浜面「つまりはアレか?この飯代はその菓子代だって言うのか?」

垣根「まっ、そんなとこ。あ、ごっそーさん」

おっちゃん「あいよ。ふたりで1000円ね」

浜面「1000円か。ま、まぁ……それくらいなら……」



おっちゃん「まいどあり~」

垣根「ふぅ……腹いっぱい」ポンポン

浜面「これでいいだろ?それじゃ俺はこれで――」

垣根「ちょっと待て」ガシッ
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:17:58.63 ID:i0m23A3yo
浜面「まだ何かあんのかよ!」

浜面(やべ、麦野から着信着てたし。無視されたと思ってねぇよなぁ……?)

浜面(ああぁぁぁぁ……履歴がむぎのんむぎのんむぎのんむぎのんむぎのんんんん!!!!!)

垣根「浜面、だったか。今ひとり暮らしか?」

浜面「あ、あ……あ?」

垣根「今ひとり暮らし?」

浜面「い、いや……違うけど」

垣根「……よし決めた。ちっと俺に付き合え」

浜面「はい?」

垣根「任せろとは言ったけど、俺ひとりじゃ不安だったんだよなぁ~。俺の感覚だとまた文句言われそうだし」

浜面「……俺に何をさせるんだ?言っとくが、俺はもう暗部とか関わつもりはねぇんだ」

垣根「違う違う。不動産だよ、不動産。住むとこ探しを手伝って欲しいんだよ」

浜面「住む……?麦野みたいに、金なら腐るほどあるんじゃないのか?」

垣根「だーかーらー、それじゃ蹴り飛ばされるんだってばよ。俺の価値観じゃどっか気に入らないらしいし」

浜面「……?」
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:27:12.10 ID:i0m23A3yo
垣根「つまりだ、普通より少しリッチな感じで、しかしながら余所様からみて嫌味にならない……そんな部屋が欲しいんだ」

浜面「は、はぁ……とりあえず、部屋探しに付き合えばいいんだな」

垣根「そゆこと。お前、ひとり暮らしじゃないって言ったしな。やっぱあのジャージの子と住んでんのか?」

浜面「……はぁ、そうだよ。あいつらと住んでる。最近は小さいのがひとり増えたけどな」

垣根「ふ~ん。あいつら……アイテムの面々とかぁ……ハーレムだな、悪くはねぇ。…………んっ?ひとり増えた?」

浜面「そ、ひとり増えた。ちっこいの」

垣根「……ちっこいの?」


フレメア「浜面?ここで何をしてるの?お兄ちゃんだーれ?」
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:30:18.27 ID:i0m23A3yo
~とある高校~

番外「ええぇぇ!?宿題ぃぃぃぃ!?」

吹寄「聞いてなかった?」

番外「聞いてない聞いてない!!」ブンブン

一方「聞いてましたァ。親船先生のですよねェ」

吹寄「そうそう、修学旅行前に出されてた数学の宿題」

土御門「ちょっとノート見せてもらうにゃー」ヒョイ

一方「おィ!勝手に取るンじゃねェ!!」

青ピ「……なんや、やってきとるやないか。ミサカちゃん出し抜いてひとりだけ抜け駆けしようやなんて怖いわー」

一方「ケッ、やってて悪ィかよ。これくれェ寝ながらでもできるわ」

番外「一方通行!どうして教えてくれなかったの!?」

一方「聞かれなかったからな。俺だってそこまで世話見切れっかよ」
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:32:45.96 ID:i0m23A3yo
青ピ「アレ、結構難しかったんやで?見てみぃ。周りのみんなも見せ合って、まるでテスト前みたいや」

番外「だから朝から変だとは思ってたんだ。それってこうゆう事だったのね……」

吹寄「して、青髪。貴様はやってきたんでしょうね?」

青ピ「当たり前や。やってきてるに決まってるやろ。これはチャンスなんやで~?」

上条「何のチャンスだよ」

青ピ「ご褒美の撫で撫でに決まってるやんか!」

土御門「うへぇ……年増はないぜよ……」

青ピ「なんや?その言い方は許せへんなぁ~」

吹寄「となると、やってきてないのは……」チラッ

一方「……どォすンだ?今からでも頑張れば間に合うかもしれねェぞ?」

番外「あっ、あああ一方通行ぁぁぁ!!ノート写させてええぇぇ!!!?」バッ

一方「うォ!?そンなに引っ張ンじゃねェ!破けンだろォが!!」

番外「ちょっと!ちょっと写すだけだからぁぁ!!!」

一方「ちょっとどころじゃなく全部だろォが!適当に抜かしてンじゃねェ!!!」
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:36:32.97 ID:i0m23A3yo
吹寄「あ、言っとくけど、数学。次の授業だから」

番外「うにゃああああああああぁぁぁぁ!!」ユサユサ

一方「分ァった分ァった、貸してやるから汚すなよ!」

番外「……いいの!?」ニパァー

一方「その涙いっぱい浮かべた瞳が演技じゃねェってのなら貸してやる」

番外「……!あ、ありがと!あとでチューしてあげるねっ!!」トトトト

一方「いらねェよ」

吹寄「」クスクス
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/14(火) 00:43:21.88 ID:i0m23A3yo
上条「あ、できれば俺にも~……」

土御門「カミや~ん?昼飯奢ってくれんのなら貸してやるにゃー」

上条「……クリームパンでいいか?」

土御門「それにジャムパンも付けてほしいぜよ」

上条「くっ……持ってけ泥棒!」

土御門「己の金銭事情も厭わぬ愚直さ……だがいい判断だ。ほらよ、ノートだ」パシッ

上条「…………くそぅ」


一方「おィ、そンなに急いでっとミミズみてェな字に――」

番外「うりゃぁぁぁぁ!!!…………あ」ビリッ

一方「…………あ」

番外「…………」チラッ

一方「…………」


番外「て、テープ貼ってあげるから……ねっ?」

一方「絶対に許さン」 
 
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:21:35.27 ID:Sk5hJRMvo
~昼休み~

番外「あくせられーたん♪」

一方「だから“あくせられーたン”はやめろ」

上条「いいんじゃないか?可愛いし」

一方「どこがだ。可愛けりゃいいってもンじゃねェぞ!」

番外「ねぇねぇ、お弁当食べようよぉ~」

一方「はァ……そォいや、オマエに預けっぱなしだったか。ったく、傾けてねェだろォなァ?」

番外「ちゃんとしまっといたから大丈夫だよ。よいしょっと、ここでいいよね?」

青ピ「随分でかい弁当箱やけど、コレ全部手作りなん?」

一方「らしいな」

番外「ふふっーん。ミサカもまだ中身見てないんだぁ♪」

一方「オープンザドーゥァ」パカッ

番外「ちょ、ちょっと!?まだ開けないでよ!!」
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:27:11.95 ID:Sk5hJRMvo
一方「うっせェ。俺は腹減ってンだ」

番外「じゃあ、せめて椅子を持ってくるまで待っててくれたっていいじゃない!」

一方「へーい、ンじゃさっさと持ってこい。俺は気が短いからな、もたもたしてっと開けちまうぞ」

番外「…………もう!」

上条「いいなぁ~、弁当。俺も作ってくりゃよかった」

青ピ「カミやん、ボクらもはよ購買行かな売り切れるで?」

土御門「宿題写した約束忘れてないかにゃー?」

上条「ハテ、ナンノコトデセウカ」

土御門「……」ピキピキ

上条「ははは、ちょっとした冗談に決まってるじゃありませんか」

青ピ「それじゃボクらは行くから。またなー」

スタスタ ガラララ......

一方「……いただきまァす」パカッ

番外「だからまだだって言ってるでしょうがっ!」ペシッ

一方「いてっ」
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:29:42.49 ID:Sk5hJRMvo
                         ・
                         ・
                         ・

番外「一方通行。はい、あーん♪」

一方「本当に誰も見てねェだろォな?」チラチラ

番外「だからみんな食堂に行ってるよって。週明けからお弁当持参なんてミサカたちくらいじゃない?」

一方「弁当ねェ……これをあのカエルが作ったと思うと鳥肌立つわ」

番外「そうかな?ミサカは可愛いと思うけど。ほれほれ、あーんして」

一方「あー……むぐむぐ。しかし分からねェな」

番外「何が?」モグモグ

一方「タコさンウィンナーにウサギのリンゴ。ハートの串に刺さったミートボールにカエルみてェなおにぎり……俺には分からねェ」

番外「キャラ弁ってやつだよね、これ」
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:30:42.89 ID:Sk5hJRMvo
一方「まっ、食えりゃいいけどな。……ン?何見てンだ?」

番外「……あー…………///」

一方「して欲しいのか?」

番外「あー……///」コクコク

一方「ンー……どォすっかな」

                      ・
                      ・
                      ・
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:31:37.52 ID:Sk5hJRMvo
~教室前の廊下~

上条「ジュース付きだなんて聞いてねぇぞ」

土御門「言ってなかったかにゃー?」

上条「言ってねーよっ!」

青ピ「過ぎた事をいつまでもグダグダ言ってもしゃーないで、カミやん」

上条「はぁ……手持ちで1週間過ごさなきゃなんねーってのに……」

土御門「バイトでも始めたらどうだ?」

上条「バイトねぇ……」ガラ......

青ピ「ちょっと待ちぃ!カミやん!!」

上条「なっ、なんだよ?」

土御門「ほぉ~……これはこれは」ジー

上条「???」

青ピ「これはこれは……面白いんちゃう?」ジー

上条「?????」
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:35:46.75 ID:Sk5hJRMvo

一方「たまご焼き、美味いか?」

番外「う、うん///」

一方「どれどれ、俺も……ほォ、中々じゃねェか。ほら、次は何が――」

番外「ねぇ、一方通行。ミサカがもし……その、ね、もしもなんだけど」

一方「あァ?」

番外「もしもだよ?もしも、ミサカがお弁当作ったら……1番に食べてくれる?」

一方「当たり前じゃねェか。……だが、そン時はオマエも一緒だ。もちろン、作る時もな」

番外「えっ……」

一方「料理どころか、ろくに包丁も握った事のないオマエだ。怪我させちゃ悪いだろ」

番外「…………けっ、怪我なんてしないもん!!」

一方「どォだかなァ。……もォいいか?」

番外「えー、まだして欲しいかも……

一方「チッ、面倒のかかる奴だ。ほら、何がいい」

番外「次はリンゴがいい、かな」
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:37:51.84 ID:Sk5hJRMvo


上条「…………」ボーゼン

青ピ「ほー」

土御門「うんうん、やっぱりだにゃー」

上条「土御門……こんな事して大丈夫なのか?」ジー

土御門「ガン見して何言ってるにゃー」

青ピ「朝からニヤけてると思ったらコレかい。また何か漁ったんやないやろな?」

土御門「それは極秘事項だにゃー。昨日デートしてただなんて口が裂けても言えないにゃー」

青ピ「まぁ、それを聞いたところで今更やけど。今のふたり見れば分かるわぁ」

上条「デート……デート……」

上条(……昨日、ゲーセンで見たのはそれだったのか?)

青ピ「ええなぁ~ボクもあーんして貰いたいわぁ」

土御門「俺がしてやろうか?」

青ピ「いらんわっ!」
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:39:06.53 ID:Sk5hJRMvo
~もう片方の扉では~

あわきん「見て、あーんよ!これは決定的だわ!!」

海原「結標さん、少し落ち着いてください。聞こえたらどうするんですか」●REC

あわきん「だって私を殴ったのよ?ふふふふ……あの時殴られた痛みを私は忘れた事なんかないんだから……」

海原「……それは殴られたあなたが悪いのでしょう?」

あわきん「これで脅して……そうね、そして短パンを穿かせてやるのよ。いいわ、実にいいわっ!!」ヨダレドー

あわきん「あ、まだそれだけじゃ足りないわね。ねぇ、タンクトップなんかどうかしら。ちょっとベタかしら?」

海原「知りませんよ、そんな事。あっ、バッテリー変えないと」




一方「なァ、やっぱり誰か見てるンじゃねェか?」

番外「気のせい気のせい♪ほらほら、もう1回行くよ?あー……」

一方「この分だと食い終わンのにどれだけかかンのかね。……んむ」

番外「どう?美味しい?」

一方「ン、まァまァ」
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:40:24.41 ID:Sk5hJRMvo
~その頃、とあるマンション~

垣根「……どうだ、この部屋は」

心理「素敵ね……」

垣根「だろ?即契約して入居もできるなんて凄ぇな」

心理「あなたにしてはよく頑張ったじゃない。誰の入れ知恵かしらね?」

垣根「さぁな……・検討がつかねぇわ」

心理「まぁいいわ。もうすぐ荷物も届く頃だし……ちょっと遅いけどお昼にしない?」
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 01:42:41.12 ID:Sk5hJRMvo
垣根「昼飯?荷物が届いたらどうすんだ」

心理「馬鹿ね。ちゃんと用意してきたわよ」スッ

垣根「……弁当?」

心理「誰かに作るなんて初めてだったから、味には自信ないけど……」

垣根「いや……嬉しいよ。味もきっと美味いに決まってる」

心理「今頃、あのふたりも仲良くしてるかしらね」

垣根「TPOをわきまえてりゃいいんだがな。それよりも開けていいか?」

心理「……えぇ、どうぞ」 
 
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:13:04.09 ID:Xesrq6pKo
~放課後、とあるスーパー~

番外「ええと、お豆腐に白菜、鶏肉にお醤油に昆布。あとは……」

一方「終わったかァ?」

番外「あなたも見てないで少しは手伝ってよ」

一方「だから手伝ってンだろォが。ほれ、シイタケ」

番外「……ありがと」

一方「黄泉川のヤローも、また面倒なの押し付けやがって。何を言われるかと思ったら、こンなに買ってどォすンだよ」

番外「臨時の会議だもの、しょうがないよ。でもこんなにたくさんどうするんだろ?」

一方「冬眠の準備……それはねェか。いや、あの糞ニートなら……ンン?」

番外「じー……」
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:25:42.63 ID:Xesrq6pKo
一方「オマエ何見て…………あァ、またあの菓子か?」

一方(食玩コーナー。毎回コレでガキかっつーの)

番外「ね、ね。いい?」

一方「……1個だけだからな」

番外「やっほう!あなたは欲しいのある!?」

一方「いらねェよ。……まァ、強いて言うなら……」

番外「言うなら?」

一方「のど飴。オマエのせいで喉がガラガラだ」

番外「あーい、りょーかい!んじゃ待っててね!」トトトトト


一方「………………」


一方「皮肉も通じねェのかよ」
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:31:27.63 ID:Xesrq6pKo
――5分後

サカナサカナサカナ~♪

一方「……まだか」


―――10分後

モズクズクズク~♪

一方「遅ェ……トイレか?」イライラ


――――30分後

キノコッノッコーノコゲンキノコ♪

一方「…………エリンギマイタケブナシメジ♪」ボソボソ
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:36:31.69 ID:Xesrq6pKo
~食玩コーナー~

番外「うーん、うーーーん…………どっちにしよっかなぁ……」

一方「番外個体」

番外「あっ、一方通行だ。えとね、コッチとコッチ、どっちにしようか――いてっ!」

一方「遅ェ、どれだけ、待たせりゃ、気が、すむ、ンだっ!?」ビシッ ビシッ

番外「あたっ!あたたた!ごめっ、んなさっ、いっ!」

一方「ったく……これひとつにどンだけ迷ってンだよ。……ン、ラブリーエッグ?またあのカエルか」

番外「いたたたた、ミサカが欲しいのはこの3番なんだよね。これさえ引けばコンプなのに……」

一方「ま、ダブるのが目に見えてるな」

番外「んー……どっちかだとは思うんだけどなー」シャカシャカ

一方「……はァ。本当にどっちかだな?」

番外「うん。それだけは分かる!」
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:52:16.79 ID:Xesrq6pKo
一方「その根拠のねェ自信はどこから来るンだ……もォいい、両方ともカゴに入れろ」

番外「えっ、いいの!?」

一方「いつまでもしゃがンでっと周りの迷惑だろォが。見てみろ、あの中学生みてェに――」


美琴「うーーーむ、どっちかな気はするのよねー」シャカシャカ


番外・一方「」

美琴「はぁぁぁ……ゲコ太ぁぁぁ……6番出ろ6番出ろ……」

番外「…………げ」

一方「オマエ……隣にいて気付かなかったのかよ」

番外「いやぁ~、全然。気配の気も見えませんでしたよ」

美琴「よっしゃ、両方とも買っちゃお……ん?」

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641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 01:13:37.52 ID:Xesrq6pKo
~黄泉川宅~

番外「たっだい――ぶわぁぁ!?」

打ち止め「おかえりーっ!ってミサカはミサカは熱烈歓迎してみたり!」ガバッ

一方(あっぶねェ……こいつを先に行かせて正解だったわ)

番外「待って待って!今、手に持ってるんだから危ないよ!」

打ち止め「あれ?一方通行は?ってミサカはミサカは……」

一方「……ただいま」

打ち止め「あ!いたー!!ってミサカはミサカは飛び込んでみたり!!」

一方「こらやめろ!俺だって手に荷物抱えてンだろ!」

番外「うひゃひゃひゃひゃ、ほら言った通りだ。結局隠れても変わらなかったじゃん」
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 01:24:25.78 ID:Xesrq6pKo
一方「おい、クソガキ。芳川はどこだ?」

打ち止め「ヨシカワなら寝てるよ、ってミサカはミサカは答えてみたり」

番外「えー、またぁ~?」

一方「オマエが言うな。この間までオマエも同じだったじゃねェか」

番外「あーあーきこえなーい」

打ち止め「起こしたほうがいいかな?ってミサカはミサカは聞いてみるんだけど…・…」

一方「そォだな。それから、これ全部アイツに運ばせろ」

打ち止め「うん、分かった!」タタタタタ


番外「なんだ、思ってたより温和なお出迎えだこと」

一方「たかだか病院に1泊したくれェでギャーギャーさわぐ訳ねェだろ」

番外「でも本当は……?」ニヤニヤ

一方「絶っ対に言うンじゃねェぞ。また黄泉川に叱られたくないのならな」

番外「…………」
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 01:29:12.75 ID:Xesrq6pKo
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グツグツグツ......

テレビ『それでは今週の天気図です。ヨシズミさーん?』

番外「よっしゃ!見て見て!晴れだよ、一方通行!」

一方「畜生が……見事に晴々してるじゃねェか」

番外「マラソン大会が中止にならなくてよかったね♪一緒に頑張ろうね♪」

打ち止め「ミサカも応援に行くよ!ってミサカはミサカはふたりを励ましてみたり!」

芳川「そこの3人、箸が止まってるわよ」

番外「それにしても、やけにたくさん買わせると思ったらお鍋だったんだ」

黄泉川「冬は鍋に限るじゃん。まぁ、それに?」


垣根「一方通行!ポン酢取ってくれ」

フレメア「あちちちちちっ!」

浜面「ほら言わんこっちゃねぇ。貸してみろ、ふーふーしてやるから」

心理「……ちょっと帝督、肉ばっか取らないで野菜も食べなさい」


芳川「これだけ人間が多いと鍋しか浮かばないものね」 
 
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 00:50:18.95 ID://bYMjy+o
一方「だからって多過ぎだろォが!9人だぞ、9人。いつもの倍じゃねェか!」

番外「うげぇ……間違ってシイタケ取っちゃった。そりゃ、パスパース」ポイッ

一方「って、オマエは勝手に何入れてンだ!俺だってシイタケ嫌いだっつーの……」モグモグ

打ち止め「でも食べるのね、ってミサカもミサカもあなたの器にシイタケを投入してみたり」プイッ

一方「……でェ、俺が聞きたい事は分かってるだろォな?」

垣根「そぉいや言ってなかったか。んじゃ、俺たちから……」

番外「およ、ガス切れそうだよ」

一方「替えあったか?」

打ち止め「ミサカ持ってくるー!ってミサカはミサカは立ち上がってみたり!」

芳川「あなたじゃ届かないわよ。愛穂、あなたが取りに来なさい」

黄泉川「なんで私が!?こうゆう仕事は桔梗の役目じゃんよ!」

浜面「あ、なら俺が行くよ。食わせてもらって悪いしな。どこにあるか教えてくれるか?」

フレメア「なら、私が付けるよ!」


垣根「……」

心理「聞いてないみたいね」

垣根「ぐすん……もういいよ、食べてからにするもん……」
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 01:07:04.71 ID://bYMjy+o
番外「ごめんごめん。そんでどうしたの?」

一方「晩飯集りに来ただけってンなら容赦しねェからな。その日のうちに来る馬鹿がどこにいるンだ」

垣根「ふっふっふ……聞いて驚くなよ!実はな!この垣根帝督!なんと、お前んちのお――」

芳川「ああ、実はこのふたり、お隣さんに引っ越してきたのよ」モグモグ

垣根(あ、先に言われた……)

番外・一方「…………」

垣根「こほん……正確には隣の隣だけどな。そうだそうだ、これタオルね」

番外「……ミサカの耳が確かなら、引っ越ししたって……」

一方「ここ、教員用マンションじゃなかったのかよ。これは常識じゃなく、規則だろ?」

打ち止め「でも本当だよ。だって昼頃に引越し屋さん来てたもん。それでその後にふたりが来て……ね、お姉ちゃん?」

芳川「私は寝てたわ」キリッ

黄泉川「それなら口を挟むなじゃん」

心理「えぇ。信じられないかもしれないけど……私も隣があなたたちだったなんて信じられないわ」

垣根「挨拶に来たら、この子が出てきてなぁ。その時までここがお前んちだなんて知らなかったぜ」
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 01:18:55.45 ID://bYMjy+o
番外「ここ、4LDKだよ?ひとりで住むには広…………ああ!」

番外(どーせーキターーーーーーーーーーーーー!!!)ガシッ

一方(同棲、だな……)モグモグ

心理「…………ま、まぁ、そういう事よ。今のところは、ね。それにちょっと事情もあるし……」

垣根「昨日の夜にちょっと話したんだ。俺たちも闇からは身を引こうって。丁度ここにいる、そこの奴と同じようにな」チラッ


浜面「ほら、エビ向いてやったぞ?」

フレメア「ありがとー。にゃあ」


心理「まっ、観光会社だけどね」

垣根「そんで、さっき辞めますって電話したら……」

打ち止め「……したら?ってミサカはミサカは続きを聞いてみたり」

垣根「それじゃ代わりに口座凍結しますだってさ。億単位が一瞬でパーだ」

一方「ぶっ!」

番外「うわ!きったねぇ!!」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 01:28:32.65 ID://bYMjy+o
昨日投下し切れなかった分で今日はここまで。短くてごめんなさい

次回は明後日か明々後日です。早くPCファン交換しないと毎日が熱で強制シャットダウナー
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 09:14:11.59 ID:tUUxHlBDO
乙!

にしてもていとくん常識通用しなさすぎだろ(褒め言葉)………
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage saga]:2011/06/23(木) 18:19:27.05 ID:PqWe6okx0
エビは剥くものであって向くものではない

まあ浜面の超少ない語彙では超解らないでしょうが
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/04(月) 17:01:44.46 ID:/BSdNKPM0
まだかなー?
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 22:24:31.48 ID:Q0e79AoDO
まだだろうな~
677名無しNIPPER [sage]:2011/11/10(木) 00:26:54.01 ID:CX7JGi6AO
ま、まだかな~…?
678VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) :2011/12/04(日) 17:24:46.15 ID:nQi+deXS0
まだ来ていないのかorz 
 
 

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