2013年9月2日月曜日

黒子「……好きにすれば、いいですの」 1

1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:07:31.14 ID:Cp32iA0do
 
最初にこんなことを言うのもなんだが このSSは18禁です。 
18歳以上の男性が読むといいと思います。さらに純愛スキーさんは回れ右を推奨します。 
気が向いたら投下する形式なので、スピードは期待しないでください。 

2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:09:12.03 ID:Cp32iA0do
上条「俺のことが好きなんだろ?」

美琴「そ、そんなわけないでしょ!?///」

上条「正直じゃないな、顔赤くして否定しても無駄だぜ?」

美琴「んもうバカ!あんまり調子に乗ると・・・」

上条「そうなのか・・・俺の幻想だったのか・・・俺、美琴のこと好きだったのになぁ」

美琴「ちょっ・・・い、今なんて?///」

上条「ん?美琴のことが好きだって言ってんの。二回も言わせないでくださいよ(キリッ」 
3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:09:39.52 ID:Cp32iA0do
「ふにゃ!? すすすすすすす!?」

顔を赤く染めた美琴が、カチリと硬直する。

上条は、彼にしてとても珍しい、いわゆる「女性を愛でる」笑みを浮かべ、右手を持ち上げた。

「美琴」

そっ、と右手が、幻想殺しが、桃のような少女の左頬に添えられた。 

「ふにゃ、にゃ、にゃぁ……」

ぷしゅー、と美琴の頭から湯気が噴出した。

学園都市第3位。

つまり学園と、都市で3番目に聡明と言って過言ではない彼女の頭脳は、頬の丸みと柔らかさを楽しむように動く、上条の右手に侵食され、、完璧に停止した。

無理もない。

恩と、感謝と、それらを全て圧倒する恋心。

若干14歳の彼女が受け止めるには、それら感情の複合体は、あまりにも大きすぎたのだ。

「美琴」

上条が、頬に添えた指を僅かに動かし、少女の名を呼ぶ。

「は、はい……」

夢見心地。
 
あの実験場の夜から、昨夜まで。

夢の中で何度も見た光景が、いま目の前にあるのだ。

美琴はもはや、何も考えることができない。

何も、考えたくはない。

ただいまこの瞬間が、泡のごとく消えないことを、祈るのみだ。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:10:52.92 ID:Cp32iA0do
真剣な表情の上条。

彼の右手がほんの少しだけ動く。

それはただ、親指がうごいただけ。

彼の親指が、半ば開いたまま震えていた美琴の唇に触れたのだ。

「…いいか?」

問う声は静か。

「……ぁ」

美琴は何も返せない。うなずくこともできない。

視線を返すのが精一杯だった。

不安と期待に潤んだ眼差しを、返すのが。

「……」

上条の顔が、すっ、と近づいた。

空気が動き、かすかに彼のにおいを感じる。

いま自分はどんな顔をしているのだろう。

思考停止の中、僅かだけ残った理性は嘘のように冷静にそんなことを思った。

その間にも、上条の顔は、唇は、近づいていた。

何か言わなければ。

せめて、たった一言、それよりも先に言いたい言葉が。

唇が重なるよりさきに、言ってほしい言葉がある。

しかしそんな想いが少女の吐息を言葉に変える前に。

「ぁ……」

ふわり、と羽毛が大地に落ちるがごとく。

やわらかく、自然に、瞼が、降りた。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:12:04.62 ID:Cp32iA0do
「っ」
 
目を開くと、天井が見えた。

見慣れた天井。

しかし一瞬、ここがどこだかわからなくなる。

「……」

続いて耳に響いた微かな雀の声で、美琴はようやく状況を理解した。

「ゆ、め……?」

掛け布団を力いっぱい握り締めていた両手を自覚しながら、呟く美琴。

「うぅん……」

「っ」

タイミングよく、隣から響いた声で、ようやく現実に引き戻された。

反射的に見た隣のベッドには、長い髪を身に纏わせた白井がいる。

「――っは、はっ、は……はぁ~」

白井の、どこか強張っている寝顔を0.5秒だけ見てから、美琴は大きくため息をついた。

肺から息が抜けていき、身体が弛緩する。

そうなってからようやく、自分がどれくらい身体を硬直させていたのかが自覚できた。

(そう、だよね。そんな、アイツが、あんな風なわけ、ないわよね)

右手を持ち上げて自分の目の前にかざす。

白く細い指先は、緊張からの解放を示すように、小刻みに震えていた。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:12:55.63 ID:Cp32iA0do
「はぁ」

美琴は公園のベンチに座り、ため息をついた。

憂鬱というよりも、何かの感情を吐き出したような呼気は、両手で握ったヤシノミサイダーの飲み口に触れて、消えていく。

いつもの公園。

ちぇいさー、といったところなのだが、出てきたのはこの一本だけ。やはり、今日は、どこか調子が狂っている。

今朝あれから、ベッドで悶々とすること、気がつけば一時間。

休日とはいえ起床が少々遅くなったことに気がついた美琴は、気分転換に街に出ていた。

服装はいつもどおりの常盤台の制服だが、髪にはトレードマークとも言える髪飾りはつけられていない。

髪が乾いていないせいだ。

ドライヤーは音が大きい。

美琴がベッドから身を起こしたとき、白井はまだ眠っていた。

いつもなら美琴とほぼ同じ時間帯(つまり今朝よりはずいぶん早い時間)に起きるのだが、今日はベッドに沈んでいたのである。

昨夜は風紀委員の仕事がずいぶん忙しかったらしい。やけに遅く帰ってきたと思ったら、すぐにシャワーを浴びて寝てしまった。顔色も悪かったし、今朝心配になって覗き込んでみたら、どうにも疲労が抜けきっていない様子だったのだ。

そんなわけで美琴はいま、髪を乾かしがてら、暇つぶしの散歩に興じている。

自然の風に晒してしまうのは傷みが心配であるし、何よりそんな頭を人に見られたくはない。

そう思っていたら、脚はいつの間にか、いつもの公園に向かっていた。

(なんて夢見ちゃったのよ、私ったら……)

ぽわり、と、己の手元を見る視界に、夢の中で見た上条の真剣な眼差しが浮かぶ。

彼はゆっくりと顔を近づけてきていた。そして右手は自分の頬。

目を覚まさなければ、あの後どんな光景になっていたかなど、考えるまでもない。

(わ、わたし、あ、アイツと、き、き、キ……)

ぷっしゅー! と美琴の顔から、本日二回目の湯気が噴出した。

(そ、そりゃ私だってアイツには感謝してるし、それこそ恩だってあるし、でもだって、そんな私がそんな……で、でも夢は願望だって言うし……が、願望?)

視界に、上条の真剣な表情が――

ぷっしゅー! と三度、美琴の顔から湯気があがった。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:14:53.89 ID:Cp32iA0do
(あう、あう……)

頬といわず耳といわず、首元まで真っ赤に染まった少女。抱え込むようにして缶を握る両手の人差し指が、ツンツンと、モジモジと先端を絡ませあう。

もう完全に、視界に浮かんだ幻想以外に何も見えていない。

だから気がつかなかったのだろう。

やや俯き加減の少女の前に、人影が立ったことに。

「美琴? こんなところで何してんだよ、お前」

「!?!?!?!?!?」

がばっ! と顔を上げる。

つい今しがたまで、目の前に浮かんでいた幻想が、現実となってそこに現われていた。

「?」

幻想とは違って、真剣な眼差しではない。

だが、そんなことは少女には関係がなかった。

ぷっしゅー!

本日四回目の湯気が、まだしんなりした赤毛から立ち上ったのだった。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:16:58.26 ID:Cp32iA0do
常盤台中学校寮。その一室。

シャワールームから、ずいぶん長く水音が響いていた。

「……」

長い髪を身に纏わせ、頭からシャワーを浴びているのは、白井黒子だ。

美琴が部屋を出て行って、戻ってこないことを確認してからすぐシャワールームに入ったため、もう一時間近くにもなる。

やや熱目の湯を、長時間。しかしにも関わらず、彼女の顔は冷水でも浴びているかのように、青ざめていた。

――おまえが条件を呑むんなら、美琴には手を出さないぜ?

脳裏に浮かぶのは、普段からは想像もつかないような、酷薄な笑み。

いつも美琴とじゃれているときの顔は幻想だと言わないばかりの、下卑たモノだった。

歪んだ、彼の唇。

「っ……!」

ゾクリ、と身体が震え、白井は己の身体を両腕で抱え込んだ。瑞々しい唇が、強く噛み締められる。

昨夜、そこに重ねられた感触を思い出してしまったせいだ。

(……本当に、下衆な……)

美琴のため。

そう覚悟を決めた自分をあざ笑うかのように、唇だけが奪われた。

それ以上は、明日だ。

彼の言葉。すなわち、今日である。

勢いというものがある。短慮とも言えるが、決断を下すときや、覚悟を決めるときには、大きな後押しになるものだ。

だがそれも、こうして時間を空けられてしまえば、文字通り勢いを失わせてしまう。

決意は鈍り、覚悟は揺らぐ。

間違いなく、自分がこうして葛藤することを見越してのことだろう。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:18:50.13 ID:Cp32iA0do
(……お姉様)

きゅっ、と両手を握る。

敬愛する存在。彼女のためなら、命すら惜しくないほどの。

きっと美琴は、このことを知れば哀しむだろう。いや、それだけでは済まないかもしれない。

心を失い、下手をすれば……

「っっっ」

最悪の想像に行き当たり、白井は今度こそ背筋を凍らせた。

だめだ。

そんなこと、させるわけにはいかない。

彼の本性も、自分の身に今から起こることも、絶対に隠し通してみせる。

しかしその悪寒が、揺れかけていた覚悟を、再び決然と固める要因となった。

お姉様は、わたしくが護ってみせる。

白井はシャワーを止める。

ポタポタと水滴の落ちる前髪の奥で、悲壮な決意の灯った瞳が、ここにはいない彼を睨み付けていた。

約束の時間まで、後、2時間。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:20:22.22 ID:Cp32iA0do
「大丈夫か?」

「う、うん」

 左隣に腰掛けた上条の問いに、美琴は赤い頬のまま頷いた。

 基本的に休日に遭遇することがなかったせいで、完璧に油断していた。

 その上に今朝の夢である。

(し、静まりなさいって、この・・・)

 ドキドキと胸は鳴り止まないが、それを悟られるのも恥ずかしい。

 美琴は膝の上に缶ジュースを持った姿勢のまま、静かに深呼吸を繰り返した。

「……」

 ちらり、と目だけ動かして上条の方を伺う。

 上条は背中をベンチに預けながらもこちらを見ていたらしい。

 目があった。

「!」

 ひゅぼっ! と美琴の顔が燃え上がり、またも俯いてしまう。

(なななななな、なんでこっち向いてんのよ!)

 頭の中では威勢のいい言葉が出るが、口はまったく動いてくれない。

 それというのも、唇を意識してしまっているからだ。

「……」

 上条が首を傾げる気配がする。

 周囲の気配に敏感になってしまう電撃使いの特性。しかも、学園都市最高の敏感さが、いまは物凄く恨めしい。

(な、何か言わないと。何か……)

 えーとえーと、と話題を探して頭の中をひっくり返すが、普段は明晰な頭脳もこの時ばかりはうまく動いてくれない。

(話題話題話題……きょ、今日はいい天気ねー……って、そんなの絶対変に思われる! コイツのことだから思わないかもだけど、もおおおおお!)

 支離滅裂もいいところの自問自答。いや、混乱と言ってもいい。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:21:55.88 ID:Cp32iA0do
「なぁ美琴」

「ひゃい!?」

 変な声が出た。

(て、わわわわたし、ひゃいって! ひゃいって何!?)

 色々な恥ずかしさが極まり、さらに顔が熱くなる。

 普段は平気で睨みつけることのできる彼を、まったく見ることができない。

「な、なんか調子悪そうだけど……ほんとに平気か?」

「わ、私のどこが変だって言うのよ!?」

 上条の言葉に噛み付く形で、癖が出た。

 反射的に上条に顔を向け――身長差から、彼の唇が目に跳びこんできた。

「――――っ!」

 ひゅぼん! と音をさせて再び顔を俯ける。

「いや、そういうところが、なんだけど……」

 辛うじて視界の端で捕らえている上条が、頬を掻いている。

「……」

 美琴はもう、色々といっぱいいっぱいで言葉を返す余裕もない。

 缶を持つ指が小さく震えて、前髪が僅かに漏電しているのがわかった。

 

 プルルルル



「!?」

 いきなりの携帯電話の音。

 身体がベンチから浮くほど驚く。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:23:24.82 ID:Cp32iA0do
「わっ、俺か。誰だろ」

 原因は上条だった。

 彼はポケットからボロボロの携帯を取り出すと、パカッ、と開いた。

 ボタン操作をしているところを見ると、メールらしい。

 上条が携帯を見ている隙に、深呼吸をこっそりと。

 そうこうしているうちに、読み終わったらしい。上条が携帯電話をポケットに戻した。

(よ、よし……落ち着いたわ。普通に、普通にしゃべればいいのよ、御坂美琴)

 いつの間にか胸に当てていた右手には未だ激しい動悸を感じるが、無理やり気のせいだと思い込む。

 しかし、今こそ美琴が顔を上げようとした瞬間に、

「あ、ごめん美琴。ちょっと俺、行かなくちゃいけなくなった」

 上条が立ち上がった。

「え……」

「いやー、なんか友達に呼ばれちゃってさ。土御門と青髪。ほら、お前も前に会っただろ?」

 そんなことを言われても、気合一発さぁ会話! という出鼻を挫かれた美琴の耳には、うまく言葉が入ってこない。

 上条はそんな美琴の沈黙を肯定と解釈したらしい。

 じゃーな。体調、気をつけろよ? とあっさりと背を向け、走っていってしまった。

「あ……」

 大混乱から上条さん不意の退場まで、美琴の中ではめまぐるしく変わった状況についていけず、中途半端に手をあげて見送ってしまう。

「……」

 そして、そのまま、たっぷり一分。

 はー、と美琴が大きくため息をついた。

 寂しさと、自分を置いて言った彼への苛立ち。

「しゃべれなかった、な」

 ポツリと呟く。

 自分が悪いのはわかっている。

 一人で盛り上がって、彼の気遣いも無視して、その結果のこったのは、八つ当たりっぽい彼への感情だ。

 でも……

「……ばか」

 胸からあふれそうになった切なさが、彼への罵倒となって、唇からこぼれた。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:25:25.45 ID:Cp32iA0do
指定された部屋に入って15分が経過した。

スキルアウトの溜り場として風紀委員も警戒している区域。そこにあるホテルの一室だ。

ホテル、と言ってもそう上等なところではない。いわゆる、ビジネスホテルよりは少しマシ、というところか。施設も、衛生も、普通レベルといえる。

違うのは、設えられたベッドがやけに大きなことと、壁が高機能防音性を持っていること。そして一度入ると、管理者か借主でなければドアの鍵をあけられないことだ。

よく観察しないとわからないが、そこかしこに巧妙に隠された撮影用の器具と、簡易AIMジャマー。

今は機能していない――どうもいまここを借受けて指定してきた彼はその料金までは払わなかったようだ――それらと、脱出できない部屋。何をする場所なのかは押して知るべきである。

もちろん、ジャマーが機能していない今、部屋に立つ白井には脱出など容易なことだ。

彼は当然、白井の能力を知っている。それでもないジャマーを機能させないのは、こちらが逃げないことを確信しているからだろう。

「……」

そして忌々しいことに、その確信は正しかった。

ふと、視線を動かした白井の目に、ベッドの枕元に置かれた、ラバー製の『器具』たちがとびこんできた。

「――っ!!!」

白井の背筋を、凍るような悪寒が駆け上がる。

小一時間の後には自分の身に起こるだろうことを想像してしまったせいだ。

汚される。

あの男の指で。

あの男の舌で。

そして、あの男の――

「っ!」

叫びだしそうになり、白井は両手で己が口を押さえた。

防音のこの部屋から、悲鳴は出て行かない。しかし、そうすることは彼女の矜持に反していた。

そう、自分は美琴を守る為にここにきた。

何が起こるのかは、とうに覚悟してきたはずだ。

声を飲み込む。動機を抑える。剥がれかけた決意の仮面を、改めて付け直す。

しっかりと、しっかりと、しっかりと。

白井にして、数十秒。

辛うじて平静を取り戻した彼女の背後で、


ガチャ


「!」

音がした。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:27:13.61 ID:Cp32iA0do
ガチャガチャ

鍵が開く音。

ギィ、バタン

扉が開く音。

カキン

再び鍵がかかる音。

そして、

「よお。本当に来たんだな。どれだけ美琴が好きなんだよお前」
 
彼の声と、彼の足音。

白井は一息、呼気の呑む。

それから背を正し、振り向いた。

顔に浮かぶは、いつものような澄ました表情。そのまま、ふぁさっ、と髪を掻き揚げた。

「呼び出しておきながらレディを待たせるなんて……本当に最悪ですのね」

「そうか? むしろ良心的だと思うぜ? ちゃんとここに来て、取引を成立させてやったんだからな」

そう言って、彼が笑った。

彼にとっての宴が、白井にとっての悪夢が、始まろうとしている。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:30:30.13 ID:Cp32iA0do
寝転がったベッドは、存外に心地よい感触だった。

纏う制服を全て脱ぎ捨てた白井の身体を、やわらかく受け止めるベッド。清潔な白いシーツに、少女を中心とした放射状の皺が刻まれた。

中学生。未発達の肢体。

瑞々しい肌を彩るは、年齢にそぐわない薄い下着と、小さな震えだ。

寒いわけので、もちろんない。

恥ずかしいのだ。

当たり前である。肌を晒しているのだ。それも、男性の前に。

想い人であっても――白井には男性を好きになった経験は無いが――恥ずかしいだろう状況。

しかしいま彼女の身体を見るのは、そういった感情とはほぼ対極の位置にいる相手だ。

恥ずかしさと、さらに言えば、怒り。震えの要因は、その二つだった。

「…………」

んくっ、と唾を飲みこむ。

嘗め回すような彼の視線。まるで物理的な感触を伴っているようだ。

「……へぇ」

彼はひとしきり、少女の肢体を鑑賞してから、声を漏らした。

それは賞賛の響きを帯びた声。
 
しかし白井にしてみれば、おぞましい感覚を呼び込むだけのものだ。

「……なんですの。おっしゃりたいことがあるなら、きちんと言葉にしてくださいまし」
 
身体に続いて震えそうになる声を抑えこみ、平静を装う。

「いや、ちょっと驚いたんだよ」

「な、何がですか?」

「白井ってバランスいい身体してるよな、ってさ」

まぁ胸は小さいけど。

「っ」

余計な一言に、思わず噛み付きそうになるが、言葉は口から漏れなかった。

再び彼の視線が、肌を這い回ったからだ。

ふともも、腰まわり、腹、そしてつい今しがた小さいと言われた胸。

ぬるり、ぬるり、とナメクジが這い回るかのような視線は、決意したはずの少女の背筋に悪寒を走らせるには、十分すぎるものだ。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:32:06.65 ID:Cp32iA0do

「や、約束」

震える唇が言う。

「ん?」

「約束は、本当に、守ってくれますの?」

「ああ、いいぜ。でも白井こそ、本当にいいんだな?」

自分がなんでもするから美琴には手を出すな。

そう持ちかけたときと同じ、そして美琴と接しているときでは考えられそうもないような軽薄そうな顔をして、彼が笑う。

「……好きにすれば、いいですの」

こたえながら、白井は目を閉じた。

彼が、夜の街で幾人もの女性と不適切な関係にある。

風紀委員の仕事で、偶然耳にした情報。

その真偽を問いただした白井に、あっさりとそれを認めた彼。

美琴に近づくな、という要求は、拒否された。

力づくという選択肢は、美琴が哀しむというカードを切られ、封じられた。

風紀委員の権力は、まるで見えない誰かに阻まれたかのように、彼に対して一切、行使できなかった。

残されていたのは彼との個人的な取引だけだった。

「じゃあ、さっそく始めるか」

彼が近づいてくる気配。続いて、ベッドの端が、ギシと音をたてて、僅かに傾いた。

ギリ、と身体が強張るのを、白井はとめることができない。 

そして、彼の右手に―――能力を封ずる右手に肩を捕まれ、

「あっ……」

引き寄せられた。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:33:32.36 ID:Cp32iA0do
「んっ……ふっ……」

 湿った音が、室内に響く。

 寝具の上に、半裸の男女。

 閉められたカーテンを透かす陽光にシルエットは、両人の頭がある一点をもって重なっていた。

「んんっ!」

 ぐっ、と頭を後ろから押さえつけられ、白井は思わず身を硬めた。

 口付けが深くなる。

 驚きに見開いた目と同様、半ば開いてしまった唇を、彼の舌先がこじ開ける。

 今まで唇の表面を這うだけだった舌は、一息に口腔内の、ちょうど歯の裏くらいまで侵入してきた。

「んんっ!? んんんっ! んんんんっ!」

 首を振り、顔を離そうとする。己の舌先で、彼の舌を堰き止めようと努力する。

 辛うじて歯を立てなかったのは、彼を思いやったのではなく、彼の機嫌を損ねたとき、美琴の身に振るかかることを恐れたからだ。

 しかし、唇は離れることなく、舌はとまらない。

「んううっ!?」

 逆に口の中で壁を作るようにしていた舌を巧みに絡めとられた。
 
 まるで対極図のように絡んだ舌は、今度はもう外れない。

 でたらめに動かし、はずそうと試みるが、その動きすらも逆手にとられ、より強く舌同士が絡み合う

 両腕を突っ張り、カッターシャツはおろかインナー代わりにTシャツを脱いだ彼の裸の胸を必死に押すが、そちらもまったく無意味だった。

 彼の腕力は強い。

 特別鍛えているという風情ではないが、荒事は豊富と聞いていた。おそらく、自然についた筋肉なのだろう。

 荒事の経験としなやかな筋肉は、格闘技経験がないにも関わらず、白井が紀委員として修めた格闘の技術も封じてしまっている。
 
 結論として。

 空間移動を封じられた今、白井がどんなに抵抗しても、無駄なのだ。

「…………」

 いや、そもそも。

 自分の身を捧げると決めた時点で、抵抗などする選択肢はなかったのだった。

 白井の胸中にある種の諦観が生まれる。

 それは彼女から抗う力を奪い、状況を受け入れる隙間へと変化した。

 少女の唇が、舌が、抵抗をやめ。

彼を受け入れる。

「んっ……んぅ……んふ……」

 うねうねと動く舌が自分のそれを絡み取り、唾液を攪拌するように動く。

 粘質な水音が大きくなり、時折角度を変えて重なる唇の端から、とろりと唾液がこぼれた。

 そして、つぅっ、と糸をひいた唾液が、ポトリとシーツに染みを作った時。

「っ!」

 彼の左手。

 頭を抱える右手と逆に、自由に動く彼の左手が。

 つつ、と白井の肩に触れ――胸覆う布の、肩紐を、するりと外側にずらした。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:35:02.87 ID:Cp32iA0do
特に理由はない。

一歩も引かないやつ、とも言われる。

勇敢だ、とも言われる。

向こう見ず、とも言われる。

そうするのは、結局、理由がないからだ。

ただ、そこにいて、そんな状況があって、そうなった、だけだ。

そのときの言葉も嘘じゃない。

逆に、その言葉が信念じゃない。

そう思って、言っている。それだけだ。

きっと、そのときと、その状況が違えば、逆にことを言っていただろう。

図書館を救ったのも、きっとそういうことだ。

誘引物質を助けたのも、そういうことだ。

御坂美琴を護ったのも、そういうことだ。

そのような状況だった、だけだ。

そしていま。

腕の中で、涙を流しながら唇を噛み締める少女がいる。

御坂美琴を、慕うもの。

夜の街で適当な相手を探すのも、生理的な欲求に過ぎなかった。

それが御坂美琴の何かに繋がるかなんて、考えはなかった。

彼女が持ちかけてきた取引に応じたのも、夜にわざわざ街を徘徊する必要がなくなるから、というのが主な理由だ。

だが――。

「っ! ぅうっ! んんっ!」

口から漏れる声を必死に抑える少女を見ていると、興味が湧いてくる。

彼女のは、どう乱れるだろう。

彼女は、どう変わるであろう。

舌を絡める前に、口の中で溶かしておいた媚薬。

嫌悪を伴う相手と同衾するのだ。何をしても『濡れる』わけがない。

そのままでは、とても無理だろう。かといって、潤滑油に頼るのもつまらない。

薬は、用意に生理的反応を助長する。

本来ならば、もう十分だ。

だが、だめだ。興味がわいた。

彼女はどう変わるのか。御坂美琴と、どう接するのか。

少女の背中に舌を這わせ、彼は思う。

そこにいて、そんな状況があって、そうなった。

この娘は、どんなことになるだろう。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:36:01.93 ID:Cp32iA0do
パァーン、と、破裂音にも似た高い音がコンビニに響いた。

周囲にいた客と、カウンターに立つ店員が何事かと視線を向ける。

雑誌コーナーに立つ、常盤台中学校の制服。

美琴だ。

「・・・・・・」

図らずも注目を集めることになった彼女であるが、そっちの方にはまるっきり意識を払えない。

無論、自分に集まる視線は把握しているが、ちょっとそちらに回す余裕がなかった。

落ち込んだ気分は晴れることなく、ついいつもの習慣で入ったいつものコンビニ。

いつものように立ち読みしようとして、いつもの雑誌を手にとって、いつものように開いた瞬間。

目に飛び込んできたのは、見開き一杯のキスシーンであった。

(ふにゃにゃにゃにゃ……)

妙な声を頭の中で繰り返す。

声に出さないあたりは、辛うじてここがコンビニだという自覚はあるらしい。

それでもタイミングがよすぎた。いや、悪すぎた。

美琴は反射的に閉じた本を、内心で「ふにゃふにゃ」言いながら小脇に抱え、浮き足立った様子でレジに一直線。

その動きにあわせて他の客と店員の視線が動き、結局、会計を済ませて店を出る前、奇妙な空気は継続されることとなった。



結局、元の公園に舞い戻った。

ふにゃふにゃ言う自分に気がつかないまま、再び「ちぇいさー」とミドルキック。

自販機もまさか一日二回もけられるとは思わなかったらしい。ヤシノミサイダーを、3本もはく羽目になった。

(きゃー! きゃー! きゃー!)

一方の美琴は、先ほどからベンチに腰掛け、雑誌を開いてはパーン! 開いてはパーン! を繰り返している。

正直怖いが、怖い人に声をかける者はそうはいない。

何より、違法行為が何もないのだ。通報することはできても、連衡するには無理がある。

その上、彼女は第3位だ。風紀委員もアンチスキルも、うかつに手は出せない。

(えっ!? そ、そこまでするの!? いいの!? これ、普通の雑誌なのに!?)

続きをめくって、美琴の顔はさらに赤くなる。

読んでいるのは、いつも立ち読みしている雑誌でも、お気に入りの漫画だ。

ツンツンした少女と、鈍感だがまっすぐな少年のドタバタラブコメディ。

そんなどこかで聞いたような、というか、思いっきり自分を重ね合わせることのできるストーリー。

先週のラストから、いよいよ主人公とヒロインが心を通わせる山場に突入するのは、美琴にもわかっていた。

しかし実際に、絵としてみると破壊力が違う。何より、自分の心持が違う。

美琴の脳裏に、漫画と連動して、妙な想像――世間様ではそれを妄想と呼ぶ――が浮かぶ。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:37:40.01 ID:Cp32iA0do

――美琴、俺、実はさ

――な、なによ、真剣な顔して

――真剣にもなるさ。一大決心なんだからな

――な、あ、う、な、なによそれは。お金なら貸さないわよ!?

――…真剣なんだ。聞いてくれ。

――う、あ、う、うん。

――ありがとう。……美琴、実は俺、お前のことが……

(だ、だめよだめだめだめ! 私はまだ中学生なのよ!? そ、そりゃアンタは高校生かもしれないけど、そんな、こんなところで……)

妄想の中ですら、一足飛び以上に展開が飛んでいるが、恋する乙女に常識は通用しない。

イヤンイヤン、と首を振る美琴の前髪からは、バリバリと紫電が漏れまくっている。

ベンチの隣に三段重ねで置かれたヤシノミサイダーは、温度差ゆえに汗をかいていたが――美琴にあきれているようにも、見えた。

結局、彼女が正気を取り戻すためには、一時間ほど後に偶然通りがかった彼女の友人である、飾利と涙子の登場を待たねばならないのだった。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:39:51.98 ID:Cp32iA0do
「んんんっ!」

ビクッ、と白井が背を仰け反らせた。

彼の指が、尾てい骨から背中中ほどまでを逆になぞったからだ。

シーツを握る手に力が入り、放射状のシワがさらに増える。

「はぁ、はぁ、はぁ」

背中から指が離れ、瞬間的な刺激から解放された白井が頭を枕の上に落とす。

うつ伏せた少女。

下腹部を覆う布はそのままの彼女は、ほんの刹那だけ息を吐いた。

だが、彼はそれで許してはくれない。

「あっ?」

左ひじを彼の右手がつかみ、そのまま、ぐいっ、と背中側に引っ張られた。

抵抗すれば筋を痛めてしまう。いや、それ以前に、どういうわけか力が入らない。

そうなれば、身体は素直だ。

身体を痛めないよう、無意識に、しかし自ら仰向けに転がった。

僅かな稜線しかない膨らみが、ふる、と揺れる。

すぐさま、彼が覆いかぶさってくる。

「うぅんっ!」

胸の先端から、甘く痺れる感覚。

左胸は彼の指で。右胸は彼の舌で。

ゆるりと左右に動く指。親指を除く四本の指の間に間で、ポツポツと飛び石のように刺激される。

対照的に小刻みに動く舌。ソフトクリームでも舐めるかのように、舌の腹が頂を這い回る。

「あっ、んぅっ…ぅあっ、あっ…まって……まってくださいま…あっ」

柔らかな愛撫に晒された頂は、反発するように――否、刺激をねだるように、硬くしこり立っていた。

(な、なぜ、わたくし、こんなにっ)

どうしても漏れそうになる喘ぎを無理やり飲み込みながら、白井は思う。

男性経験は、もちろんない。

だが、一人で慰める経験は、ある。

快楽を知るのが年齢的に早いかと言われれば、そんなことはないだろう。女と言うものは総じて男子よりも成長が早く、耳も早い。

美琴を想っての行為は、回数だけならばむしろ多かったかもしれなかった。

身体は、快楽を知っている。

しかし、いまは状況が異なりすぎるのだ。

悪寒と嫌悪しか感じないはずの、男性との行為。

それなのに、身体は忠実に、快楽を神経に乗せている。心とは裏腹に、欲望の熱を溜めていく。

もともと、空間転移能力者は触感というものに秀でていた。

年齢にそぐわない薄手の下着を身に着けているのも、衣類の感触で演算を狂わせないため。

それほどに、自分は、敏感なのだ。

「ああんっ!」

不意に頂から強い刺激。背が仰け反り、白井の顎が上がる。

彼が唇で桃色の先端を挟み、クニクニと弄んだせいだ。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:41:35.10 ID:Cp32iA0do
「あっ、あっ、あっ、あっ」

刺激はそれだけにとどまらない。

彼の口内。唇から僅かに内側に入った部分に顔を出した頂を、彼の舌先が掠めるようにくすぐり続ける。

片や左側の頂では、いままで参加していなかった親指が先端をこね、あるいは、トントン、とノックする。

自己の指だけでは味わえない刺激と、慣れた指での刺激。

交互に、同時に入力される快感が、いよいよ下腹部にとろとろとした火をつけ始めた。

@@@@

「っ、っ、あっ、あ、はぁっ」

 頂から稜線をとおり、僅かに浮き出た鎖骨へと。

 再び稜線を上り、頂へと。

 彼の舌により繰り返される、緩やかな刺激。

 唇を噛み締め、漏れようとする声を抑えていた白井だったが、都合7回目の頂への愛撫によって、ついに堤防が決壊した。

「ああっ、ああっ、あっ、ああっ、あうっ! だ、だめですのっ。それ以上は、だめですのぉっ」

 薄い厚みの上にある、桃色の乳首。

 ツン、とごまかせないほどにしこり立ったその根元を、くるりくるりと彼の舌先がくすぐり、そうかと思えば、上下の唇が挟み、ふにふにと甘く噛む。

 その度に白井の背筋を蕩けるような小波が駆け上り、耐えようとする理性を揺さぶっていく。

「あんっ! ああぁんっ! あうんっ! ああぅっ!」

 彼の舌と唇と指が動くたび、細い白井の肢体が小刻みに跳ねる。

 その様は活きのよい魚が自ずから暴れているようにも、料理人にその鮮度を確かめるために暴れさせられているようにも、見えた。

「我慢せずに、声を聞かせてくれよ白井。どうせここには、誰も来ないんだからよ」

「ふ、ふざけ……んんんっ!」

 抗弁しようとした唇が、彼の唇に塞がれる。

 ぬめぬめとした舌が即座に進入し、白井の口内で粘度を増した唾液を絡めり、吸い上げる。

「んー?! んんー?!」

 吸い取られていく唾液。それは彼は己の物とブレンドしてから、再度白井の中に絡め戻してくる。

 ほぼ反射的に彼の両肩を押しのけようとするが、快楽に火照っている身体は、嘘のように力が入らない。

 唯一動く首だけをイヤイヤと振るものの、結局は、舌の絡み合いを助長するだけだった。

「んっ、んっ、んっ、んんんっ」

(こんな……こんな……)

 頬の裏、歯茎、口の上側、舌の裏。

 無遠慮に、しかし的確な彼の口内愛撫。想定外の刺激に、徐々に白井の目が霞がかり始めた。

「んふっ……んんん……はぁぁ、んんっ……んむぅ……」

(わた……くし……)

 阻害された呼吸がさらにそれを後押しし、やがて白井の両腕からは力が、瞳からは意思が消え去っていく。

「……」

 至近距離も至近距離でそれを覗き込む彼の目が、笑みの形に変わる。

 そして。

「んんぁ、はあっ、はあっ、はあっ……」

 つつっ、と糸を引きながら、二人の唇が離れた。

 解放された白井が、くたりとベッドに横たわる。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:43:11.21 ID:Cp32iA0do
「はぁぁ……あ……」

 しかしもう、白井は動こうとしない。

 ぼんやりとした眼差しを、中空に這わせているだけだった。

「……」

 彼が、ずっと少女の右胸を愛撫していた左手で、少女の頬を撫でた。

「あ……ぁ……あぁ……」

 白井が熱く、甘い吐息を漏らす。

 抵抗らしい抵抗も、瞳に浮かぶ意思も、ない。

「……回ったな」

 薬。

 彼が、今度は確実に笑みを浮かべ、少女の肌に右手を伸ばした。

 着地する場所は、先ほどまでの、上半身では、ない。

 薄い布に人差し指が触れる。

 十分に水気を吸った下着が湿り気のある音を返した。

「くぅんっ」

 同時に白井が顎をあげ、背筋を逸らした。

「あっ、はぁ…」

 とろん、とした表情で彼を見上げる。

 薄く浮かぶ笑みは、いまの感覚を悦んでいる証だ。

 ニヤリと笑う彼は、ただ触れただけの指先を、上下に。

「あぁ……」

 張り付き、その向こうにある肉の割れ目をなぞる動きに、意思の大半を眠らされた少女は素直に反応を返した。

 鼻にかかる吐息と喘ぎを漏らしながら、投げ出された両手はシーツを握り、細い腰は指にあわせて緩やかに揺れる。

「んっ……んんっ……ん……ん……」

 繰り返される桃色の呼吸音の間で水音が大きくなっていく。

 零れていくような音ではない。

 ちょうど粘土に多量の水を混ぜこんだような、柔らかな粘りの音。

「はぁ……はあぁ……ぅあんっ……あぁん……あんっ……あんっ……」

 指先が上に向かう。

 なぞる動きの中で戯れるようにくるりと円を描き、さらに上へ。

「んんん……」

 布地の向こうで、僅かだけ顔を出した肉芽が、刺激を予想して震える。

 だが、

「……」

 そこに到達するより先に、彼は指にかける圧力を緩めた。

 触れるか触れないか。

 ギリギリの空間を持って――さきほど乳房の頂をくすぐった時のように――肉芽の直近で円を描かせた。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) :2011/11/26(土) 01:44:55.12 ID:Cp32iA0do
「ぅうん…やぁん……」

 小さくなった快楽と、与えられると予想した快楽。

 原始の欲望を求めて腰が指を追う。

 だが彼はそれを与えない。

 むしろ白井の動きにあわせ、ギリギリの触感をキープしながら、指を運び続けた。

「やぁ……やぁ……」

 むずかる声と、強くなるシーツを握る力。

 子供のような仕草に、彼が苦笑する。

 しかし彼の所作に変化はない。

 指はゆっくりと円を描き、白井の腰もまた、ゆっくりと円を描く。

「あぅ……だめです……やぁ……あ……だめ、ですのぉ……ああぁん……あっ、あっ、あっ!」

 刺激は一定。

 だが入力される快楽は、長い時間をかけて川の底に泥が溜まるように、白井の未成熟な身体に蓄積され続けていく。

「あぁ……もう、もう……」

「どうしたんだ、白井」

 彼が、わかりきった問いを放つ。

 白井は答えるしかなかった。

「もう、もう許して……許してくださいまし……もうわたくし……我慢できませんのぉ……」

 無意識に出たであろう言葉。無意識にでた、懇願の言葉。

 しかしそれを聞いた彼の指は、

「だめだぜ、白井」

 すっ、と湿地から離された。

「ああぁぁ…」

 哀願の声が響く。

 自分で触れようとするだけの思考も停止しているのか、ただ腰だけが、独立した生物であるかのように、クネクネと動いていた。

「もっとしてほしいか?」と、彼が瞳を覗き込んだ。

「は……」

 唐突な問いに、一瞬だけ白井の返事が遅れ――しかしすぐに白痴のような笑みを浮かべた。

「はい……してほしい、ですのぉ」

 トロリ、と、白井の口の端から、涎が零れる。

「……」

「してください……もっと、気持ちよく……」

 はぁはぁと、犬のように軽く舌を出し、荒い呼吸が重なる。

「それじゃあ、」

 彼が白井の耳元に口を寄せた。

「四つん這いになるんだ」

 ふっ、と白井の耳に息を吹き掛け、続けた。

「犬みたいにな。そうすれば、続けてやるよ」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:46:14.61 ID:Cp32iA0do
「はぁ、夢見が悪かった、ですか」

「そ、そうそうそうなの! ちょっと、とんでもない夢みちゃって!」

 公園。

 美琴から渡されたヤシノミサイダーを手に、飾利がオウム返しに言った。

「それって、どんな夢だったんです?」

 問うたのは涙子。彼女の手にも飾利と同じ経緯で、サイダーがある。

「ふえっ!?」

 ピリッ、と稲光が漏れた。

「ちょ、ちょっと佐天さん」と、飾利。

「えー、でも気になるじゃん。第3位すらも動揺させる夢! どーんな内容なのかなーって」

 歌うように言いながら、横目で美琴を見る。

 件の電気娘は、「ふにゃふにゃ」と赤くなり始めた。

 これは恋話だ。ゴシップだ。からかいのネタだ。

 そういう話が大好物の涙子が、見逃す手はない。

「そ、それはその…」

 飾利としても気にならないわけではないが、美琴はさっきまでベンチを中心として同心円状5メートルに無差別落雷をさせていたのである。命をかけてまで聞きたいとは思わない。

「御坂さーん」

「にゃにゃにゃにゃに!?」

「好きな人の夢ですよね?」

 初太刀からおもいっきりいった。正に単刀直入。

「に”ゃ!?」と美琴。前髪で電撃が弾ける。

「ひゃ!」と飾利。頭上で花が一輪焦げた。

「あのいつも一緒にいる、黒ツンツン髪の高校生さんですよね?」

 さらに斬りこんだ。これぞ一刀両断。

「ふぎゃ!?」と美琴。襟首がパリッと鳴った。

「ひょえ!」と飾利。今度は三輪まとめて焦げた。

「しょ、しょれは、しょの……」

 美琴は完璧に真っ赤。ほんの数時間前と同じように、サイダーを持ちながらツンツンと指先をあわせる。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:47:12.44 ID:Cp32iA0do
「さ、佐天さんその辺で……」

 対象的に真っ青になった飾利が、サイダーを持っていない方の手でクイクイと涙子の袖を引っ張る。

 しかしそれは、あまりにも控えめすぎる行為だ。

 調子に乗りすぎて周りが見えていない涙子が、美琴の顔を覗き込む。

「にっひっひー。御坂さぁ~ん、もしかして、夢でキスとかしちゃったんですか?」

「!」

 ヒュボッ! と音をたてて美琴の耳はおろか、首筋までが染まった。

「!」

 ヒュボッ! と音をたてて、飾利の花飾りがすべて焦げた。

 そこまで来ても、涙子は気がつかない。

「そ・れ・と・も」

 まだ何か言うのか!?

 あせりに満ちた飾利が次の言葉をつむぐ前に、

「エッチなこと、だったりします?」

「!!!!」

 半径10メートルに落雷が発生した。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:48:38.03 ID:Cp32iA0do
「んあっ! あっ、はっ、あっ、ああんっ!」

 白井が身をよじる度、シーツに皺と水滴が刻まれていく。

 俯せた姿勢から、たてた両膝。

 高く上げられた下半身とは裏腹に、力抜けた両腕は上半身をささえきれない。

 結果的に白井は、桃のような尻を、彼に突き出した姿勢になっていた。

「ああぁっ! あんっ! あっ、あーっ!」

 喘ぎの他で部屋に響くは、粘質の高い液の音。

 ベッドの下端、ギリギリに位置する白井の膝。その内側から両腕を差し入れ、そのまま外側から腰を掴む。

 ベッドに接するほど近づけた部屋備え付けの椅子に座り、そのまま引き寄せれば、顔が埋まる場所は決まっていた。

 薬によって敏感になった秘裂を、彼の舌が上下になぞる。

 左側の陰唇を舌先が左右に動きながらゆっくりと下り、陰核の傍まで達する。

 かたくしこりたったソコを、ツン、と刺激してから、今度は舌を押し付けるようにして、右側の陰唇を舐め上げた。

 速度は速くない。ゆっくりと、じっくりと、ねっとりと上下する彼の顔は、白井の分泌した蜜によって、口元といわず鼻といわず、べっとりと濡れていた。

 彼の舌が陰唇を嬲るたびに、ピチャピチャと音がする。彼の鼻が秘孔を掠めるたびに、クチュリクチュリと音がたつ。 

 それは白井が、もう隠しようもないほど濡れていることを、誰でもない彼女自身に知らしめていた。

「すげぇな白井。洪水だぜ」

「あんっ、やあんっ!」

 彼の言葉に白井が強く首を振る。しかしそれは否定ではない。

 もどかしかったからだ。話しかけるために離れた彼の舌が。

 彼女はさらに尻を後ろに突き出し、小刻みに左右に振った。

 思考を奪われた少女は、羞恥心も、自制心も何もない。ただ与えられる快楽を逃したくないという衝動だけで動いている。

 彼は、やれやれ、と苦笑。薄く唇を開けると、やや顔を下側にずらした。

 顔の中で前に突き出た鼻が、じゅくじゅくと白濁の蜜を溢れさせる膣口に埋まる。そして、

「んひぃんっ!」

 がくんと、と白井が背を仰け反らせた。

「あ、あぁんっ! あっ! ああっ! あっ! あーっ! あーっ!」

 口の端から涎を零しながら、さきほど口腔愛撫をねだったとき以上に首を振る。

 彼が目だけで笑った。

 包皮から顔を出し、十分に硬くしこりたった陰核。それが唇で挟まれ、あまつさえ、ふにふにと甘噛みされている。

 形態としては乳首にされていたことと変わらないが、身体を貫く悦楽は、その比ではなかった。

「あぁんっ! あっ、あああっ! 駄目ですのっ! そんなの、駄目ですのぉ!」

 普段は理知的な瞳は完全に熱に浮かされ、凛とした表情は溶ろけてしまい、見る影もない。

 唇から漏れる否定の言葉。しかし、彼女の腰は、もっともっととねだるように、さらに彼の顔に尻を押し付けた。

「んぷっ」

 ソレを咥えている口は元より、鼻までがスライムのように柔らかくなった淫肉に埋もれた。

 呼吸ができない。しかし、彼はまったくとまらなかった。

 陰核を咥えたまま、唇を小さく左右に動かす。顔を小刻みに上下させ、埋もれた鼻先で白井の入り口を刺激する。腰をつかんでいた両手は、やや位置を後ろにさげ、あまやかな丸い曲線を、やわやわと揉みしだいた。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:51:01.94 ID:Cp32iA0do
「あっ! あっ! あっ! あっ!」

 白井の声が、単音に、高音に変わっていく。

 快楽の頂きが、見えてくる。

 背筋は仰け反ったまま、力が入らないはずの両腕は、シーツを強く掴み、ピン、と伸ばされた。

 首が強く振られ、ツインテールを留めていたリボンが解けた。軽くウェーブのかかった髪が、彼女の背中に広がっていく。

 その髪の感触すら刺激になったのか、尻の動きが左右から、円を描くものに変化する。

 口元から、粘度の高い唾液が、つつっ、とこぼれ、糸を引いてシーツに垂れた。秘裂から溢れた蜜が、彼の顎をとおり、白い水滴として、糸を残してシーツに染みを残す。

 そして、その瞬間がやってくる。

「あっ! あっ! あっ! あはあっ! もうっ! もうっ!」

 白井の瞳から、ポロリ、と涙が零れ、同時に、じゅるりと彼の唇が、蜜ごと強く陰核を吸った。

「!」

 理性のない意識が、完璧な白で染め上げられ、

「んあああっ! イクっ! イキますのっ! あああああっ! イクーっ!」

 ビクビクッ、と全身を痙攣させ、白井が絶頂に達する。

「っ! っ! っ! っ!」

 背骨が折れるのではないかと言うほど身体を仰け反らせ、大きな痙攣を、四度。

 その度に、彼が鼻を埋めた膣口から、ぴゅっ、ぴゅっ、と蜜が噴出していく。

 酸素を求めるように舌を突き出した彼女は、最後の身震いの後、半秒だけストップモーション。

「あ、ああぁ、あああぁぁぁぁぁ……ああぁぁぁぁ…………」

 直後、かくりと力を失い、投げ出すようにベッドに突っ伏す。

 そのまま彼女は、白い闇の中に、意識を投げ出していった。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:52:44.58 ID:Cp32iA0do
「……」

 常盤台中学、寮。

 出かけた時には持っていなかった手提げ袋を右手に、白井が自分の部屋のドアを開けた。

 美琴の姿はない。

 普段であれば門限の時刻は過ぎているが、休日はそれもやや緩くなる。美琴が帰ってくるのは、一時間後、と言うところだろうか。

「……」

 白井は、室内に美琴がいないことに、安堵の吐息を漏らした。

 いまもし、自分が敬愛する彼女の顔を見たら――――もしかしたら、泣いてしまったかもしれないからだ。

 右手の荷物。

 薬で狂わされ、快楽に屈し、気を失い、目が覚めた後。

 結局、それ以上は何もしなかった彼から手渡された、一式の器具が、納められてる。

「……」

 彼は、次に呼び出す日はいつがいいか、と問うてきた。

「貴方の好きにすればいい」と伝えたら、「怪しまれないほうがいいだろ?」などと、言ってきた。

 休日を彼のために空けるのは屈辱だ。しかし美琴に感づかれるわけにはいかない。

 結局、週に一回はある非番の日の、さらにそのひとつ向こう。二週間後の非番日を伝えることとなった。

 毎週じゃ男が出来たと思われるだろう、とは彼の弁だ。

 その主張は正しいと思うし、そう言った気遣いをしたことに、陵辱に恨みを置いておけば、感謝すべきことなのかもしれなかった。

 そう。

 帰り際に手提げ袋に詰まった、肛姦の準備をするための道具を手渡されなければ、だが。

「……」

 震える身体をそのままに、己のベッドに腰掛け、手提げ袋を開けた。

 カテーテル。

 注入する液体容積を量ることのできる、ビニール袋。

 カテーテルを肛門に挿入するため際に使う、また、洗浄の後にソコをいじる時に塗りこむ、媚薬入りのローション。

 快楽を導くための、アナルビーズ細身のアナルバイブ。

 何よりも屈辱なのは、それらをどう使えばよいのかと言う、彼手製の説明書だ。

 別れ際。

 この一式を渡してきた時の彼の声がよみがえる。

 彼は今日、奪わなかった。

 唇は、彼の唇で蹂躙された。

 身体は、彼の指と舌で汚された。

 しかし、もっとも奪われたくないものは、奪われなかった。

「……」

 それはただの気まぐれか、それとも、いまのこの葛藤を見越してのことか。

 ポケットから、携帯電話を取り出す。

 待ち受けには、メールが一件。

 美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。

 約一時間後だ。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 01:55:18.42 ID:Cp32iA0do
「……」

 白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。

 脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。

 ポケットから、携帯電話を取り出す。

 待ち受けには、メールが一件。

 美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。

 約一時間後だ。

「……」

 白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。

 脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。

 本当は、いやだ。

 知識としては知っているが、そんなところでスルと思うと、怖気で脚が竦む。

 しかし。

(……お姉さま)

 その想いが、彼の言葉を無視することを、許さない。

(わたくしがいくら汚されそうとも。わたくしがどんなに辱められようとも)

 美琴だけは。

 先に待つのがなんであろうと、白井はその想いだけを胸に、破滅に進む。

 美琴が帰ってくるまで、あと一時間。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 02:00:43.56 ID:Cp32iA0do
 涙子ともども飾利に連れて行かれた風紀委員の詰め所(公園放電でたいそう叱られた)からの帰り道。

「あれ、こんなところで何してるんだよ、美琴」

「ひゃ!?」

 背後からかけられた、数時間前と同じ台詞と同じ声に、ビクリと美琴は背筋を震わせ、振り向いた。

 立っていたのは、会いたくて会いたくない、件のツンツン頭だ。

「ああああああああ、アンタ! なんでこんなところにいるのよ!?」

 上条の寮は、ここからかなり離れている。

 今日はもう会うことはないのだろうな、と一抹の寂寥感を味わいながら歩いていたところなのである。

 幸い、さきほど思いっきり注意を受けたところなので、辛うじて自制心が働いてくれたらしく、放電まではしていない。

 それでも、頬が赤く熱くなるのを止められなかった。

「ん? ああ、俺は土御門たちと遊んで、今から帰るところだけど?」

 対照的にフラットな表情で返答する上条。

 ガリガリ、と後ろ頭を掻く仕草に、動揺の色は一切ない。

 思わず反射的に「私もよ! なんか文句あるの!?」と言い返しかけた美琴だったが、その直前に、ピタリ、と動きが止まった。

「アンタ、どうしたのよそれ」

「へ?」

「その、肘。引っかき傷なの、それ」

 頭を掻く上条の右手。その右手首の内側辺りに、赤い三本の線が走っている。

 いや、それははっきりと、引っかき傷だった。それも自分で掻いたような軽いものではない。皮膚は削れ、まだ血も滲んでいる状態だ。

「ああ、これ? いや、さっきちょっと」

「……アンタ、またなんかに巻き込まれてるんじゃないでしょうね」

 美琴の瞳に、心配と不安が浮かんだ。

 彼は記憶を失うまで、幾度も戦いに赴いている。

 それを知る美琴にとって、彼が怪我をしているという事実は、大きな不安の種となる。

「んな、たいしたことじゃねえよ。さっき土御門たちと、ちょっと取っ組み合いをしたんだ」

 いつものじゃれあいだ、と上条。

「……ほんとに?」

「こんなことでお前に嘘なんかつかねえって」

「っ」

 その言いように、美琴の頬が再度熱くなる。

(こ、コイツ、相変わらず……) 

 そういうことを、簡単に言う。

 その癖、本人にはそのつもりはまるっきりないのだ。

「……」

 それが悔しくて、美琴は僅かに俯いて、唇を噛んだ。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 02:03:12.52 ID:Cp32iA0do
「……ね、ちょっと」

「?」

「ちょっと、手、出しなさい」

「あ、ああ」

「違う。左じゃなくて、こっち」

 ぐい、と美琴は上条の右手を引っ張った。もちろん、引っかき傷のところには触らずに。

「美琴?」

「いいから。じっとしてなさい。どうせ消毒もしてないんでしょ?」

「いやそりゃしてないけど、そんな大げさな傷じゃあ……」

「馬鹿。引っかき傷を甘く見ると、ひどいことになるわよ」

 近くで見ると、その傷はずいぶんと深いものだった。遊びで引っかくと言うレベルではなく、それこそ思いっきり爪を立てないとできないような傷跡だ。

 そう、まるで。

 意識を失うような刺激を受けた人物が、苦し紛れに握り締めた時に、できるかのような。

「消毒っても、コンビニくらいしか、今は開いてないぜ? それにこう言っちゃなんだけど、上条さんにはコンビニで買い物する余裕なんかありませんですよ?」

「んなことわかってるわよ。だ、だから……」

 言葉を切ると同時に、美琴は上条の手首――その傷に、唇を寄せた。

「しょ、消毒、したげるわ」



「ただいまー……」

 門限ギリギリで寮に戻った美琴が、己の部屋のドアをあけた。

 中に入り、閉めたドアに内側からもたれかかって、大きく息を吐く。

(や、やっちゃった……)

 頬に両手を当てる。

 手のひらに伝わる体温は、熱く、熱い。

(アイツ、変に思わなかったかな……い、いやじゃ、なかったかな……)

 右手がすべり、唇に。

 瑞々しい唇は、小さく小さく震えている。それは触れた指先も同じこと。

 思い出すのは、面食らったような彼の顔。

 遠慮して(というか大慌てで)手を引こうとしたが、絶対にやめるつもりはなかった。

(いやじゃなかった、よね? だって、最後にはさせてくれたんだし……)

 何度かの引っ張り合いの後、結局彼は好きなようにさせてくれた。

 その上、舐め終わったあと、照れくさそうに頬を掻きながら、

「さんきゅ、美琴」

 と言ってくれたのである。

「えへ、えへへへへ」

 いささか気味の悪い笑い声が口から漏れるが、美琴は、イヤンイヤン、と顔を振るだけで、自分の声に気がつかない。

 そして一しきり「きゃーきゃー」言った後で、ふと、気がついた。

 いつもならイの一番に「何があったんですのどうされたんですの何を赤くなってらっしゃるんですのあの類人猿ですの!?」と挑みかかってくる白井が、何も言ってこない。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 02:10:10.66 ID:Cp32iA0do
 パタン、と美琴がバスルームに入った音がした。

 しばらくしてから、水の音と、微かな鼻歌が聞こえてくる。

「ぁ……ぅん……んぅ……」

 それに隠れるように、吐息と、くちゅりくちゅり、と言うシャワーではない水の音が響き始める。

 洗浄と、拡張。そのための、媚薬入りのローション。

 疼き、塗りこんだ薬のせい。

 塗りこんだのは、美琴のため。

 だが身体を弄る指と快楽は、すべて自分のせいで、自分のためだ。

 最初は指から。

 そう書いてあった、彼のメモ。

 前に回った白井の右手。

 後ろに回った白井の左手。

「こんな……あぁ……いや……うぅん……ですのぉ……」

 右手は、秘裂を掻き。

 左手は、肛門をくすぐる。

 口から漏れるは拒絶の言葉と、確実に甘い吐息。

 シャワーの音が響く。

 美琴の鼻歌が響く。

 粘質の音が、響く。

 そして白井の泣き声と。

「あっ、あっ、あああぁ……」

 喘ぎが、響く。 
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 02:11:59.90 ID:Cp32iA0do
途中であげた。不覚。

今後は適当に、適度に、気が向いたら書き進める所存。

とりあえず今までの分と、ちょこっとした続きを書いたところで力尽きたので寝る。

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/11/26(土) 07:36:18.17 ID:zsQDmvWho
期待しますね 
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/11/26(土) 08:22:06.10 ID:Cp32iA0do
あ、いかん、33と34の間が抜けてた。以下、挿入。




 もう寮の門限は過ぎているし、風紀委員は非番のはず。

 大きな事件でもあれば別だが、寮監は特に何も言っていなかった。

 部屋にいないはずが……。

 そう思って視線を走らせると、並んだベッドの片方――白井のベッドが膨らんでいるのが見えた。

「あ……」

 もう寝てたのか。

 抜き足差し足で歩を進めれば、白井はこちらに背中を向ける形で、横になっていた。

 解いた髪は幾分しっとりとしており、シャワーを浴びたであろうことを思わせる。朝から寝続けているわけでは、なさそうだ。

(んー……)

 美琴は音をたてないように注意しつつ、ベッドの反対側に回り込み、白井の顔を覗き込んだ。

 半ば頭まで被るようにしている掛け布団から覗く彼女の耳と首筋は、妙に赤く色づいている。また、静かな部屋の中に響く彼女の呼吸音は、まるで何かを我慢しているかのように、少しだけ荒い。

(風邪、かな? そういえば、朝もちょっと体調悪そうだったし……)

 どこか苦しげだった寝姿を思い出す。

「……」

 ぼふっ、と美琴の顔がまたも赤くなった。

 朝に見た白井を思い出し、そして、白井よりも早く起きることとなった原因に思考が行き着いたせいだ。

(お、お風呂。私も、お風呂に入ろっと)

 美琴は顔を振り、なるべく音をたてないように、バスルームに急いだ。

 熱い頬に、浮き立つ胸。

 その熱をシャワーで洗い流さなければ、恋心とはまた別の、身体の火照りとなるような、そんな気がしたせいだった。 
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/26(土) 08:55:47.79 ID:kPwo6F50o
常駐スレが増えた
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/11/26(土) 11:05:47.80 ID:0XQw89qAO
ふう 
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/02(金) 02:12:45.44 ID:jJrU1Uyyo
 夕刻。

 最終下校時刻が近づき、学園都市から人通りが少なくなりはじめる時間帯に、白井は第四学区からやや外れた公衆トイレの個室にいた。

 風紀委員も、常時稼働しているわけではない。

 緊急事態があれば別だが、時間を区切って休憩時間はある。そしてその休憩中をどのように過ごすかは、各々に委ねられていた。ハメを外しすぎるのは駄目が、食事や多少の娯楽程度は問題ない。

 だから白井がここ数日、自分の受け持ち学区から外れた公衆トイレに、わざわざ目立たない私服に着替え、トレードマークのツインテールも解いた上で篭っていようとも、何か言われるわけでもなかった。

「・・・・・・」

 個室に入り、確実に施錠の上、白井は右手に持っていた手提げ鞄を、ドア内側上部の上着かけに引っ掛けた。

 そしてしばらく耳を澄ませる。

 一応、他のすべての個室に人がいないことを確認しているものの、こうして密室に入ってしまうと、どうしても確認したくなるのだ。

 約十秒。

 それだけ待ってから、ようやく白井は閉じていた目を開く。

 その瞳に浮かぶのは、嫌悪と、悔しさと、使命感だ。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/02(金) 02:13:57.77 ID:jJrU1Uyyo
 すうっ、と息を吸い込む。

 悪臭はしない。

 学園都市の公衆トイレは、公衆といえども機械による掃除が行き届いている。その上、この場所はつい先程、機械が通ったところ。場所柄を考えれば衛生的と言えるだろう。

 白井は故意に事務的な動きで、胸の前ほどの高さにある手提げ鞄を開いた。



 ―――中に入っているのは、あの日、彼に渡された、洗浄器具一式だ。



 それらをひとつひとつ取り出し、便座の蓋の上に、落ちないように置いていく。

 ウェーブのかかった黒髪と、淡い青色のブラウスと、白いスカート。そんな清潔感のある私服とはまるで似合わない器具たち。

 だが白井にとっては、これらの器具も、この校則違反である服装も、結局は同じ忌々しさしかない。解いた黒髪は、ある種自慢のひとつではあるが、「なぜ解いているのか」を考えれば、とても気分のよいものではなかった。

 何しろこれから、洗浄器具を使い、自分自身で不浄の穴を拡張しなければならないのだ。

 あの、初めて呼び出された日の、次の日。

 彼に強制的に教えることとなったアドレスに、入っていたメール。



『今日から一日一回は必ず拡張して、その様子を動画でこのアドレスに送ってくれ。お前の携帯だって動画撮影くらいできるだろ? ああ、『出してる』ところは映さなくていいぜ? 洗ってるところはいるけどな』



 その文面を思い出しながら、洗浄の器具を組む白井の手に、力が篭った。

 それでも、もうここでこうするのも5回目だ。自室で行った一回を含めれば、6回目の作業。手馴れてしまっている。

 洗浄液の粉末をカップにいれ、魔法瓶からほどほどに冷めた湯を注ぐ。人肌程度までさらに冷ましてから、コックつきのスリムエネマに注ぎ込んだ。

 スリムエネマは水道に引っ掛け、チューブの先端が地面につかないように保持する。

 そこまで準備を整えてから、白井は己のスカートに手をかけた。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/02(金) 02:14:37.27 ID:jJrU1Uyyo
「……」

 一瞬だけ迷ってから、ゆっくりとスカートを下ろしていく。

 能力を使って、転移はさせない。

 風紀委員には、AIMを探査する機械も存在した。

 こんなところで、学園都市でも珍しい転移能力の痕跡を残したくはない。

 美琴にこのことが露見する可能性は、極力排する。

 このトイレに転移することなく、変装してまで歩いてくるのも、すべてはそのためだ。

 スカートの下端が床に接触する前に、白井は順々に脚を上げて、スカートの輪から抜け出ていく。

「……」

 腕の中で皺がよらない程度に畳み、個室に入って右手側にある、手荷物置き場に置いた。次に、能力のために極々薄くしている、シルクの下着に指をかける。

 指を動かすと、下着の布が肌から浮き上がり、するり、と滑るように降りていく。

 指が太もも半ばを過ぎたこと、あたかも抵抗を示すように閉じあわされた両の脚のその根元――股間部分を覆うクロッチが、肌から離れた。

「っ」

 ぐっ、と目を閉じ、先ほどと同じように、下着から脚を抜く。

 すべての布を失った股間。そこに僅かに存在する茂みが、脱いだ拍子の空気の流れに晒され、微かだが動いた。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/02(金) 02:15:54.60 ID:jJrU1Uyyo
「……」

 手の中にある、頼りない感触の下着。それを、覚悟を決めるように、やや強くスカートの上に置く。

 それから白井は、ブラウスの胸ポケットに入れていた、棒状の、いわゆる『口紅のような』携帯電話を、その下着の上に、上部先端が自分を向くようにして、設置する。

 そう、それは設置だ。

 彼女の携帯電話は、その先端部分で、動画を撮影するのだから。

 口紅を使うときのように、くるっ、と本体を捻る。これで、撮影が始まったはずだ。

 映っている。録画されている。

 髪を解き、薄手のブラウスを着て、膝半ばまでの靴下に、茶色のパンプス。

 それなのに。

 スカートも下着もなく。

 白い太ももと、薄い丸みを帯びた尻を丸出しにした、自分の姿が。

 トイレの個室の中とはいえ、ある種の倒錯を持つだろう光景。

「っ」

 白井の奥歯が、再び鳴る。それから、一度大きく、深呼吸。

「では、は、始めますの。よく、見て、くださいまし……」

 二回目の動画を送信した後、必ず言うように注文された言葉を、憎憎しげに紡ぎながら。

 細い指が、スリムエネマのチューブ部分に、かかった。 
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/02(金) 02:20:42.79 ID:jJrU1Uyyo
しかしここまで書いて、スカトロは苦手なので実際の排泄シーンはキンクリすると思われ。

で、レスとかで出てることは、まぁ、拾えるのがあれば拾うけど、積極的に組み込んだりはしないので悪しからず。

あと、前に読んだ印象持ってる人は、この大元になったやつ(大昔に書いた)をどこかで読んだのかも。

なんかのエロパロスレに落としてそれっきりにしたやつに手を入れた最初の部分作ったし。

というわけで寝る。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東京都) [sage]:2011/12/02(金) 06:41:20.64 ID:W/cyNZvao
乙~
なるほど期待 
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/06(火) 22:47:37.38 ID:MLQAajnUo
「んっ……んん……ふぅん……」

 白く、清潔感を演出したトイレの個室に、押し殺した喘ぎが響いていた。

 洋式の便座に腰かけた白井。彼女の目の前には、もう空になったスリムエネマと、そこから伸びた細い注入管が垂れ下がっている。

 その力なく揺れる様は、都合4回、排出液が透明になるまで洗浄を行った白井の精神を代わりに現しているかのように頼りない。

「んんっ……ああっ……はぁ……ぁ……ぁぁ……」

 背を丸め、頭を垂れた彼女の右手は、背中側に回っている。

 その指が行き着く先は尻の割れ目の間――その中心とも言える窄まりだった。

 右手指は濡れ、ぬめぬめと光っている。

 指を通り、手の甲を滑り、内側にやや曲げた手首からぬらりと水洗トイレの中に落ちるのは、拡張用に彼が同梱した媚薬入りのローションだ。

 その潤滑力は、ここ数日で拡げられた白井の「そこ」を、人差し指が通過することに一役買っていた。

 その催淫性は、「そこ」から神経に流れる刺激を、不快から切り離すことに成功していた。

「んっ……ふあっ……んぅううっ」

 人差し指が上下に動き続け、それに応じて、口から漏れる声があからさまになりはじめる。

 第二関節。

 固いゴムのように締め付ける入口から、その僅か数センチ奥まで。

 指で机をトントンと叩くような一定のリズムで出入りする指から響く感覚は、決して痛みなどではなかった。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/06(火) 22:48:37.54 ID:MLQAajnUo
「あうっ、あっ、はあっ、あっ、あっ、あっ」

 白井はその感覚がなんなのか、知っている。

 背筋を駆け上がるその痺れが、自分の中でどういう風に受け止められているのか、わかっている。

 頬が熱い。

 吐息が甘い。

 首筋に浮かぶ汗は、艶という名の色を帯びている。

(わたくし……わたくし……っ!)

 はぁ、はぁ、と己にも香る温い呼気。視界が、熱で霞みがかり始めた。

 溜まっていっている。

 自分を狂わせる感覚が、確実に、自分の身体へと。

「んふっ、ふぅっ、んんっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ」

 やがて白井の中に蓄積したその感覚は、己の指の制御までを奪いはじめた。

(だめですのっ、そんなっ、奥にはっ、まだっ)

 指の出入りが早くなり、ローションが肛門と指の間で泡をたてる。

 第二関節までしか出入りしていなかった人差し指が、徐々にその埋没の幅を深めていく。

 指先が円を描き、入口を、そして奥を、くるくると刺激する。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) :2011/12/06(火) 22:49:34.25 ID:MLQAajnUo
「んあっ、んんんんっ、ふぅぅぅっ、ふくんんんっ」

 根本まで入り込んだ指が、腸壁をくすぐった。口からあからさまな喘ぎが漏れる。

 予想外に大きく響いた声に、慌てて左腕の袖を噛む白井。

 少しでもその『感覚』を抑えようとするがしかし、それがために篭めた力は、逆に指への締め付けを強めただけだった。

 それはそのまま、肛門への刺激に変換される。

 ジンジンと響く熱にも似た『感覚』が、全身に広がり、熱に浮かされた瞳から、徐々に、徐々に意思の強さが消えていく。

(ああぁぁ……)

 モジモジと少女の肉付きの薄い腰が、小刻みに動き始めた。

 口元で握り締められていた左手が、何かを求めるように、ゆるく開き、また、閉じる。

「んんんっ! んんんんっ! んふぅんっ!」 

 二度、三度。

 迷うように左手指がさ迷い、そして、

(し、しかたないんですの……治めなければ、仕事にならないのですから……)

 口から、袖が離れた。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県) [sage saga]:2011/12/06(火) 22:50:19.58 ID:MLQAajnUo
 代わりに摘みあげたブラウスの襟を噛み締める。

 そうして空いた左手が、そろり、と下方に動いた。

(これは薬のせい……薬のせいですの……それに、こっちなら……)

 ゆっくりと下げられた左手が、緩く開かれた両膝の間に差し込まれ、

「んんっ!」

 クチ、と小さな、別の水音が響いた。

「ふぅんっ!」

 一気に跳ね上がった快楽に白井の身体がビクビクと跳ね、座っている便座がカタカタと揺れる。

「んむっ、んんっ、んんんっ! んむんっ!」

(こっちなら、感じたって仕方がないんですの。感じるのが、当たり前なんですから……)

 溢れようとする唾液を、たっぷりと含んだブラウスの襟。

 呼気を吸い込んだ拍子に、じゅるっ、と、唾液が三つ目の水音をたてた。 
77 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/13(火) 22:05:05.21 ID:vibqcCDUo
「どうしたんですか御坂さん、ぼーっとしちゃって」

「へっ?」

 涙子に声をかけられ、美琴は、はっ、と顔を戻した。

 夕刻のカフェテラス。

 ストリートに面した屋外テーブルで向かい側に座る涙子が、不思議そうな顔をして美琴を見ていた。

「え、あ、ごめん。なんでもないの」

 放課後にいつものごとくブラブラしていたところで、こちらも飾利が風紀委員で忙しいらしくてやることなかった涙子と出会い、お互いに暇だから、ということで、前から気になっていたこのカフェに来たのである。

 紅茶やらコーヒーを注文し、なんくれとなく、いわゆるおしゃべりをしていた、その話題の切れ目だった。

「何かあったんですか? ……もしかして、気になる人が通ったとか?」

 ニヤリ、と笑みを浮かべる涙子。

 公園での一件は忘れていないが、その程度で色恋話を逃す手はない。

 案の定、美琴は即座に「んなっ!?」と顔を赤くした。

「そ、そんなんじゃなくてっ」

「またまたー、そんな赤い顔で否定した駄目ですって。で、どの人なんですか? 御坂さんが懸想する人って」

 涙子が背伸びするようにしてストリートを覗き見た。

「け、懸想……って、違う違う、そうじゃなくって!」

「えー、じゃあなんなんです?」

 そのまま美琴を見る涙子。

 いい顔である。

 対照的に、美琴はやや気まずそうに視線を逸らすと、

「いやその……最近、黒子がちょっと」

 と、言った。
78 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/13(火) 22:05:50.38 ID:vibqcCDUo
「え、白井さんですか?」

 意外な人物の名前だ。

 美琴が続ける。

「うん。なんかあの子、最近元気がなくて。さっきそこに風紀委員の腕章つけた娘がいたから、ちょっと」

 もう一度ストリートをちらりと見る美琴の横顔には、僅かな憂いが浮かんでいた。

 さっきはそれを恋患いかと思ったのだが、どうも違う方向だったようだ。

「そ、そうだったんですか。すみません、茶化したりなんかして」

 ぺこりと頭を下げる涙子。

 美琴がパタパタと手を振った。

「あ、ううん、私こそごめん。暗い顔なんかしちゃって」

「……でも、白井さんどんな様子なんですか?」

 それがね、と美琴は前置きしてから、

「いつもだったら私がシャワー浴びてるときに中に入ろうとしてきたり下着漁ろうとしたり寝ようとしたら先に裸でベッドに入ってたり掛け布団を空間移動させたりそうでなくても不意にヨダレ垂らしながら飛び掛かってくるんだけど」

「……」

「最近は全然そんなことないのよ。学校帰りにお店に行っても普通に買い物するだけだし、早くに家に帰ってきても、普通に話とかするだけだし。一体全体どうしちゃったのかしら」

 心配そうにため息をつく美琴。
79 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/13(火) 22:06:25.03 ID:vibqcCDUo

「……いえ、世間一般では、いまの方が正常なんだと思いますけど」

 対する涙子は若干引き気味だ。

 今までの言動が言動だったので、見る目が変わると言うほどでもないが…いや、やっぱ駄目だ変わる。

「本人にもちょっと水を向けてみたんだけど、素直に言う娘じゃないし」

「あはは、そうかもしれませんね」

「……やっぱ風紀委員関係かなぁ」

「んー…初春からは特に何も聞いてないんですけど。最近ちょっと忙しい、とは言ってましたが」

「確かに疲れてるっぽいんだけど……それにしては変なのよねぇ」

「…やっぱり、本人に聞くのが一番じゃないですか?」

「でも、さっきも言ったけど、素直に言う娘じゃ……」

「いえ、今です」

「え?」

「ほら、あそこ」

 涙子が美琴の顔の脇を通すように、ストリートを指差した。

 振り返る。

「あ、黒子」

 そこには、何か考え事でもしているのか、らしくなくボンヤリとした表情でこちらに歩いて来ている、白井の姿があった。
80 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/13(火) 22:07:47.51 ID:vibqcCDUo

「……そうだったんですの。お姉様が、わたくし、お姉様に心配をかけてしまっていたのですね」

 美琴が最近の白井を心配していたこと。

 テーブルにつき、その事実を聞かされた白井は、ゆっくりと俯いた。

 その肩が小さく震え、

(くるか!?)(きますか!?)

 心配して頂けるなんて黒子感激ですのお姉様ー! とくることを予想して身構える美琴と、注文した飲み物をしっかりと確保する涙子。

 だが、

「申し訳ありません、お姉様。お気を遣わせてしまったようで。佐天さんも、わたくしは何ともありませんので、お気になさらないでください」

 と、白井は頭を下げた。

「あ、あれ?」「おおっとぉ!?」

 まさに肩透かし。

 対抗電撃を用意していた美琴の前髪で、バリッと小さな紫電が弾け、勢い余った涙子が、逆にすっ転びかける。

「ど、どうしたんですのお二人とも」

 顔をあげた白井は、驚いた顔で二人を見る――――驚という感情以外まるで見えない完璧な仕草で。 

「あんたこそどうしたってのよ!?」

「そうですよ! どうしちゃったんですか白井さん!?」

「な、何がですの?!」

「あんたがあの流れで飛び掛る仕草もなしで、しかも可憐に優雅に頭を下げるなんて考えられないわ! 『心理掌握』辺りになんかされたんじゃないでしょうね!?」

「白井さんまさか……おのれ魔術師!」

「……」

 はぁ、と白井がため息をついた。

 さっきよりも俯き、深く、深く、わざとらしいほど。
81 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/13(火) 22:09:54.49 ID:vibqcCDUo


「お姉様たちがわたくしのことをどう見ていたか、よぉく理解いたしました」

「い、いや、だって、ねぇ?」

 同意を求める美琴に、こくこくと頷く涙子。

「まぁ確かに、少し以前までのわたくしを考えれば、仕方のないことなのかもしれませんが」

((自覚あったんだ……))

「でも最近、ちょっと淑女と言うものを考え直してみることにしましたの」

 白井は言葉を切って、美琴を真正面から見た。

「……あのようにしていても、お姉様は笑ってくださらない、と思いまして」

 どこか儚さすら匂わせて、微笑む。

「……」と、美琴。

「……」と、涙子。

「…、…」と、白井。

 数秒してから、はぁー、と美琴がため息をついた。

「……見直したわ、黒子」

「ええ、正直ちょっといま、ドキドキしちゃいましたもん。あ、そういう意味じゃなくて、ほんとに綺麗で」

「そ、そうですか?」

「そうよ! 今までのあんたじゃ考えられない笑顔してたもの!」

「ですよねぇ。なんだか”決意の表情”って感じでした!」

「っ!」白井の顔が僅かに強張る。

 しかし美琴と涙子は、彼女たちの胸中に目がいっており、それに気がつかない。

 そして白井がその強張りを完璧に消すより先に、さらに美琴と涙子がその強張りに気がつくより前に。

「お待たせしました」

 店員が、白井の注文したストレートティーを持ってきた。

「あ、きたわよ黒子。はい」

「ぁ――、ありがとうございます、の」

 美琴が受け取り、白井に差し出す。

 ティーカップを受け取ろうとした白井は、

「……」

 美琴に右手が触れないよう、慎重に受け取った。

 紅茶の水面に立つ波。

 それはきっと、店員に運ばれていたせいで、小さく、震えていた。 
95 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:20:07.97 ID:Tim059+Uo
 テレビに、うつ伏せた白井が映っている。

 全裸に、解いた髪。

 波打った長い黒髪と珠のような肌は、水滴を称えて濡れていた。

 画質はよくない。

 どうやら、携帯電話で撮影した動画であるらしい。

 それでも、映っている場所がシャワールームであるということは、はっきりとわかった。

 どこか適当なホテルのシャワールームなのか、少なくとも、常盤台の学園や寮ではなさそうである。
96 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:21:59.61 ID:Tim059+Uo
 膝をたて、左手で身体を支えながら、右手を太ももの間に入れている。

 ちょうど、初めて彼の要求に従った時のような、尻を突き上げた姿勢。

 異なるのはそこにいるのが白井一人だと言うことと、その尻の間から垂れた、大きな数珠のような物体だった。

『はぁ、はぁ、はぁ……』

 数珠のように見えたのは、彼に渡された、俗にアナルビーズと呼ばれる拡張用器具である。

 全長20センチほどの球の連なりは、いまはその半分ほどが、白井の中に埋まり込んでいた。

 いや、その表現は正確ではなかったか。

 なぜなら、いま外に出ている連なりは、端の丸い金具――――取っ手部分を持った右手で、引っ張り出したものなのだから。

『くっ……うっ……』

 右手はゆっくりと引く動きを続けていた。

 内側に収まった球は、それに応じて外界に姿を現していく。

 ココア色の窄まりが徐々に広がり、白い球体が顔を出した。

 肛門が盛り上がり、球が半ばまで出たところは、則ちもっとも広がっているところ。

 そのタイミングで、白井はほんの僅かだけ右手に力を篭める。
97 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:23:42.87 ID:Tim059+Uo
『あんっ』

 ぴくんと、と頭をあげ、口から息とも声ともつかない音が漏れた。

 同時に、つるん、とゆで卵の殻を剥くように、また一つ球が外にまろびでる。

『はぁー、はぁー、はぁー』

 負担のかかる体勢に、通常ありえない行為。白井の肩が上下に揺れる。

 床を見る白井の顔に浮かんでいるのは、いままで彼に送信された動画と同じ、嫌悪と屈辱と、それからもうひとつ。

『こんなところで……なぜ……』

 思わず、という感じで漏れた己の言葉に、はっ、とする白井。

 驚きのような表情は一瞬。すぐにそれは戸惑いに変わり、慌てた様子で左手を、右手とおなじように太ももの間に差し入れた。

『―――くあんっ』

 左手の着地点は、今だ半分近く連なりが埋まったままの肛門ではなく、取っ手を持つ右手でもなく、じっとりと熱を孕んだ自身の秘裂。

 僅かに開いた陰唇の奥。そこから滲み出ていた蜜を指で集めるようにして、左手指を動かしはじめた。

『あああっ、あ、あううっ』

 突くべき手がなくなり、床に当たる頬。濡れた髪の一筋が張り付き、口元にかかっていた。

『あっ、あはっ、あうっ、んあぁぁ!』

 口内にある髪の先端を気にする様子もなく、指の動きは早くなっていく。

 それに応じて白井の口からは、ひっきりなしに喘ぎが漏れた。

 あからさまにも思えるそれは、あたかも自分は自慰によって感じているのだと、示すかのようだった。
98 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/17(土) 16:24:18.51 ID:Tim059+Uo

「……」

 そこまで見てから、彼は手元の携帯電話を持ち上げ、二つ折りのそれをパカリと開いた。

 携帯は、テレビとケーブルで結ばれている。保存されている動画をテレビ側に映すためだ。

 ”右手が塞がっている”彼は左手の指先でそれを操作する。

 次の動画が、画面に表示された。
99 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:26:05.58 ID:Tim059+Uo
 トイレの個室。

 ブラウスだけを纏い、スカートも、下着も脱いだ状態の白井が、便座に腰掛けている。

『んっ、んく……んふっ……』

 解いた髪がくすぐるのは、真っ赤に染まった赤い頬。

 潤んだ瞳は、ドアの上着掛けにひっかかって揺れるスリムエネマを見ているようで、見ていない。 

『だ、駄目ですのぉ……』

 捲り上げたブラウスの端を唇で挟み、顕になった胸は、開いた左手によって交互にまさぐられていた。

 浅い稜線は荒い呼吸に上下し、その頂を指先がクリクリとこねまわす。

 そして緩く開いた両膝の間に差し込まれた白井の右手。

 股間の後ろ側まで潜り込んでいる手は、スムーズに、そしてやや激しく上下を繰り返していた。

『んっ・・・・・・んぅうっ・・・・・・んんんんっ・・・・・・』

 荒い呼吸と、漏れ出る喘ぎと、粘質の水音が、個室に響いている。

 異なりのは、動きのスムーズさだけではない。

『んうっ!』

 白井がビクリと震え、便座から腰を浮かせた。

 浮いた尻と便座の隙間から、左手の形が見える。

 揃えられた人差し指と中指。さらにその対面に位置する親指。それらは三本とも、テラテラと濡れている。

 関節の構造上、どちらがどこに入っていたのかは明らかだった。

 そして、その深度も。
100 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:26:37.42 ID:Tim059+Uo

 親指は、先端から滑り落ちたような濡れ方だ。むらがあり、垂れていない場所は当然濡れてもいない。

 しかし人差し指と中指は、明らかにその根元までを『濡れた場所』に突っ込んだように、均一に湿っていた。

 いったんは跳ね上がった白井の身体が、重力に引かれて再び便座に落ちる。

 それを同時に、右手が動いていた。

 タイミングを合わせて、ぐっ、と上に向かって突き上げられた右手――――揃えた二本の指が半ばまで尻に埋まるところまでを、携帯のカメラが捉えている。

 そこまで捉えた瞬間、落ちた尻によってその隙間は隠された。

『ああんっ』

 白井の顎が、かくっ、とあがる。強い刺激に、目が見開かれた。

 右手の高さは変わらない。それは、根元まで埋まったことを意味している。

 右手は動き続ける。

 人差し指と中指が上下する。その動きを土台として、親指が陰核を押しこみ、こねまわす。

 さらにその押す力の反動を、人差し指と中指の動きに――――

『あっ、あふぅっ あはっ、ああっ、ふあぁっ』

 開かれていた目は、すぐに霧に覆われたように、ぼう、としたものに変わった。

 胸をまさぐる左手の勢いが、強くなる。呼吸が激しくなり、喘ぎが高くなる。

 いまの彼女は、二本の指が窄まりを通り抜けることに苦痛と感じている様子は、まったく見受けられない。

 いまの彼女は、喘ぎがもう個室の外に漏れているということにも、気がつかない。

 いまの彼女は、もうこのトイレでこうすることに手馴れてしまっていることに、気がつけない。
101 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:28:10.56 ID:Tim059+Uo
『ぷはっ、あっ、あっ、ああっ、あはあっ、ああああっ』

 口からブラウスが離れた。

 吸いきれておらず、口内にたまっていた唾液が、布の動きに引っ張られて空中に糸を引いた。

『あっ、あっ、気持ち……んんんっ、ちがっ、違いますのっ! これはっ、あっ、あんんんんっ!』

 その続きを口走りかけて、白井は強く首を振った。

 それだけは、絶対に、言葉にしない。

 そう言うかのような強い拒絶。

 だがその言葉とは裏腹に。

『あうっ、あうううっ、、あっ、あっ、あっ、んはぁっ』

 親指の動きは激しくならず、人差し指と中指は、強く動く。

 その動きは、明らかに人差し指と中指が早く激しく、親指の方が補助的なものに変わっていた。
102 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:29:17.87 ID:Tim059+Uo
「……」

 そこまで見てから、彼は手元の携帯電話を持ち上げ、再びパカリと開いた。

 左手で操作しながら、別の動画を呼び出す。同時に右手で、硬く立ち上がっているピンク色の先端を柔らかく転がした。

「んんっ……んんんっ」

「おいおい、動くなよ白井」

 そう言いながら、彼の左手は決定ボタンを押しこんだ。

 画面が切り替わる。
103 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:30:09.97 ID:Tim059+Uo
 白井は右手に握ったアナルバイブを見ていた。

 こちらも、どこかのホテルだろう。

 白く、ピン、と張られたシーツのベッドで、白井は心臓を下にして、横向きに寝転がっていた。

 両膝を左手で抱え、体育すわりのような姿勢。

 すでに彼女の目元は赤く染まり、揃えられた太ももの間からは、べっとりとした蜜が溢れていた。

 よく見れば、膝を抱える左手も、アナルバイブを持つ右手も、同様の蜜で濡れていた。

 そして、背中側に転がっているのは、球の連なりである、アナルビーズ。

 ビーズの下のシーツには、薄く染みができている。

 もうそれは、使われた後だ。
104 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:30:56.33 ID:Tim059+Uo
『……』

 白井は手の中のラバー製の凶器に、渡されていた潤滑用のローションを塗りつける。

 右手で、丹念に、己の蜜もともに塗り付けられていることも、いとわずに。

 白井の顔には、まだ嫌悪がある。迷いがある。

 しかしそれと同時に、渦巻く欲望も、間違いなく見て取れた。

 始める前までは怒りとに彩られている表情も、一度『昂ぶって』しまえば、それだけに留まり続けることを許されなくなっていた。

『これは薬のせい……薬のせいですの……』

 呪文のように繰り返し、白井は、んくっ、と唾液を飲んだ。

 手の中のアナルバイブ――――通常のバイブよりも若干細身のそれを、じっと見つめる。

 畏れと、それ以外の何か。

 瞳に浮かんだ感情は、なんだったのか。胸中に渦巻くのは、なんなのか。

 その全てを無視して、白井は右手をそろり、と尻に回した。
105 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:32:19.69 ID:Tim059+Uo

 ピッ、とそれ以上見ようとせず、彼は携帯電話を操作し、動画の再生を中止した。

 持ち上げた携帯電話が示す動画ファイルの日付は、今日から三日前のもの。

 二週間で使えるようにして来い。 

 プライドの高い白井に対し、無謀とも無茶とも言える要求だった。

「感心したぜ白井。まさか十日と少しで”使える”ようにしてくるなんて、思わなかったからな」

 実際、彼自身もそこまで期待してなかったのだろう。声には紛れもない賞賛の響きがある。

 だがそんなもの、投げかけられる白井にはなんの価値もない。いや逆に屈辱なだけだ。

「っ!」

 だから白井は、首をひねって、己の背後にいる彼を睨んだ。

 猿轡を噛まされ、後ろ手に手首を縛られ、全裸にされ、ベッドに腰掛けた彼の膝の上に座った彼女には、それしか己の意思を表現する方法がなかったのだ。

 この部屋に入った途端、いまのように拘束され、そしてあろうことか、この二週間で送り続けた自分の動画を見せ付けられたのだ。

 彼はその視線に苦笑。

 ポリポリと左手で頬を掻き、ついでのように右手で、つつっ、と白井の腹を上から下になぞる。

「んぅんっ!」

 それだけで白井は身をビクリと震わせた。この二週間が、空間移動系能力者の体質以上に、身体を快楽に対して鋭敏にしていた。

「今日はもう洗浄してきたか?」

 その事実をはっきりと認識してしまった白井の耳に、彼が問う。

 質問というよりも、確認するような口調だった。
106 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/17(土) 16:33:15.00 ID:Tim059+Uo

「……」

 胸中の畏れ――快楽への抵抗力――を隠し、再び彼を睨んだ後、白井はゆっくりと頷いた。

 二週間前、彼と約束した今日。

 指定時間の三時間前に、メールにあった指示を、白井は実行している。

「そうか。じゃあ、はじめるか」

 そう言って、彼は携帯電話を放り投げた。

 ケーブルごと、ベッドの下に落ちる携帯に見向きをせず、彼の両手が白井の胸に添えられる。

「っ!」

 白井の身体が強張る。

 行為の前の、洗浄。 

 それが今日、何をされるものか、想像したために。

 『二日目』が、始まろうとしている。 
120 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:24:39.29 ID:lMc9h+cLo

「んっ……んんっ……」

 白井のくぐもった声が室内に響く。

 ベッドに腰掛けた彼の、その両腕にすっぽりと収まったような格好。胸を這う両手は、背中側から回されている。

 それは真正面から押し当てられる場合と比して自慰をするときに近い感覚でありーーゆえに、声が漏れることを押さえきれない。

 薄いと自分でも理解している乳房を、彼の両手が包み込んでいた。

 掌全体を使って、温度を分け与えるかのように、ゆっくりと撫で回す。

 揉むのではなく、また、こねるでもないそれは、明確に与えられる刺激よりもずっと

優しく、だからこそ、白井の身体は快楽として受け入れてしまう。

「我慢しなくてもいいんだぜ? まぁ、その猿轡? のせいで出したくても出せないんだろうけど」

 言葉が終わると同時に、彼が、その舌を白井のうなじに押し当てた。

「……っ」

 想定外の刺激にさらに声が漏れそうになり、奥歯を噛み締める白井。

 だが、舌がそこで離れず、動きだしたがために、

「んうっ!」

 その努力は無駄とならざるを得なかった。
121 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:25:17.65 ID:lMc9h+cLo
 たっぷりと唾液を乗せ、白い肌を蹂躙する彼の舌。

 頭自体を動かし、舌の厚みを以って肌を這うそれは、『嘗める』というよりも『ねぶる』という表現が相応しい。

 うなじから、右肩。ヌルリと下方に転じ、腋ギリギリをとおり、今度は肩甲骨の外をなぞる。

 背骨まで達した後は、舌を左右に動かしながら、じっくりと背筋を嘗めあげてーーいや、ねぶり上げていく。

 その道程で時折、唇を押し当て、あるいは、その場で円を描くように肌を味わう。

「んんんっ……んふっ……んんむうっ……」

 自分を慰める時には絶対に有り得ない、背からの口腔愛撫。

 白井は逃げるように背筋を伸ばすが、それは逆に、彼の両手に胸を押し当てる結果に転ずる。

 意思とは裏腹に立ち上がった桃色の頂きが、胸を覆う彼の指を押し上げた。

「んんっ」

 しかし、彼の両手の動きは変わらない。

 やんわりと、胸の形を歪めることすら忌引するような静かなもの。指の間に入り込んだ乳首を摘むようなことは、気配もみせていない。

 翻って背中側では、背筋からうなじまで戻った彼の舌が、今度は左肩へと移動を開始する。 

 体温の上昇にあわせて立ち上る白井の香りを堪能するように、こちらもまた、じんわりとした動きでしかなかった。
122 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:26:05.37 ID:lMc9h+cLo

「んんんっ、んふぅっ、んんぅんっ」

 いっそもどかしいとも言えるほのかな愛撫に、白井はピクン、ピクンと身を震わせた。

 彼の手からの熱で温められ、緩やかな動きでほぐされた乳房は血流そのままに快楽を白井に供してくる。

 しかし立ち上がった乳首に刺激はない。グミのように固くなったまま、指の間でほっておかれ、片や背中の舌も、決定的な悦楽にはなりえない。

 背を曲げれば、彼の舌。背を反らせば彼の指。

 ジリジリとあぶるように、白井の身体にナニカが溜まっていく。

 どうしようもない白井の噛む猿轡が、口内に溜まった唾液を吸い、呼吸とともに、じゅるっ、と音をたてた。

 彼が苦笑する気配。

「もう少ししたらその猿轡、外してやるよ。息苦しいだろうしな」

「っ!」

 その言葉に、霞みがかっていた白井の瞳に、理性の光が戻る。

 しかしそれも一瞬。

 まるで理性を取り戻すことを見越したかのように、彼の指が、くい、と乳首を挟み込んだ。

「んふうっ!」

 白井が、ピン、と背筋を伸ばした。視界が再び、ぼう、と霞む。

(だ、だめですの……飲み込まれては……)

 頭ではそう思っても、快楽を引き出すことに慣れた身体は応えてくれない。

 背を反らしては震え、背を丸めては震える。
123 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:27:42.34 ID:lMc9h+cLo

「……いいんだぜ白井」

 再びうなじまでもどった後、彼が耳元に唇を寄せ、囁いた。

「言ってなかったけど、おまえが噛んでるその猿轡には媚薬が吹き付けてあるんだ。おまえが今まで使ってたローションに混ざってるのと、同じやつな」

「っ!」

 息を呑む白井に、彼は言葉を続ける。

「息してたら、吸い込むだろ? 時間的にもうそろそろ回ってくるころだと思う。……だからいま、おまえは薬のせいで感じてるんだよ。薬のせいだ。おまえが悪いんじゃない」

 いまの快楽は、薬の作用に依るもの。だから、それに溺れてもいいんだ。

 そう言っている彼の言葉に、とろりと白井の表情が溶けかけて、

「っ……!」

 白井は強く首を振った。

 やれやれ、と彼が、三度目の苦笑。

 その気配を感じながら、白井は後ろ手に縛られた両手を握り締める。

 彼の言葉は、きっと真実だ。

 この感覚は、二週間、無理矢理高ぶらされてきたローションを使った後のそれによく似ていた。

 確かに身体は快楽を引き出すことと、受け入れることに慣れ始めている。

 しかし、薬を使った感覚は『異常』として認識が可能だった。
124 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:28:09.95 ID:lMc9h+cLo



 すくなくとも、まだいまは、だが。



125 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:28:46.83 ID:lMc9h+cLo


 その状況で彼がこんなことを告げてくる理由は、ただひとつ。

 免罪符。

 「性欲に流されるのは薬のせいだ」と言い訳をつけることで、快楽に屈してもよい、と思わせることが目的に違いない。

「んんうぅっ、うふぅっ、ふぅぅんっ」

 手を強く握り、掌に爪を食い込ませる。

 受け入れるわけにはいかない。

 絶対にその『理由』を心の隙間に挟み込んでは、いけないのだ。

 理由というのは恐ろしい。

 それがあるだけで、楽に流される自分すらも肯定できてしまうモノ。

 白井がいま声を抑えることができないのは、確かに、薬のせいだろう。

 しかしそれを是として、快楽を受け入れてしまえば、きっと戻れない。

 今後、薬を使われたら、絶対にその『理由』を言い訳に、自分を許してしまうに違いなかった。

「ふぅんっ、んんんっ、んんんんんっ」

 背中の舌、胸の指。

 白井は必死に首を振り、誘惑を振り切ろうとする。

 感じてしまうのは、身体の作用だ。

 それでも心は、これを否定する。いかなる理由があろうとも、理由を用意されようとも、これを肯定するわけにはいかないのだ。
126 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/31(土) 15:30:34.66 ID:lMc9h+cLo

「……まぁいいけどな。好きにしろよ」

 言葉とともに、舌の動きが再開される。

 彼の口調からは、白井がいまどんな思考で快楽を否定しているかを、正確に把握していることが伺えた。

 いやもしかするとーー彼はそれを見越して、囁いたのかもしれない。

 肯定や否定と言う確定的な態様ではなく『迷い』という状態に陥れるために。

「んううぅぅぅ……!」

 それがさらに忌ま忌ましさを助長しーーそして、それでも感じてしまうのを止められない自分の身体が、悔しかった。

「んんっ! んんんっ! ふぅうんっ!」

 喘ぐ少女の口元から、猿轡が吸いきれなかった唾液が漏れ、つつっ、と顎を伝う。

 無駄な肉のない、綺麗なラインを滑り落ちた粘性高い唾液は、その下方先端で珠となり、糸をひいて堕ちた。

 太ももに、ミルクの王冠のごとく弾ける唾液。

 それにあわせるように。

「じゃあ、そろそろこっちにいこうか」

 彼が胸から右手を離し。

 先ほどのように、腹を伝って、その下ーーすでに十分に蜜を讃えるに至った、下腹部を目指す。

「っ!」

 期待か、拒否か。

 白井の胸を、ゾクリとナニカが走った。 
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:52:36.32 ID:9ws1E6ndo
 触れるか触れないか。

 そんな調子を保ちながら、指先が、肌を滑りおりていく。

(……)

 薄桃色の頂きから稜線を下り、僅かに浮いた肋骨を。

(……っ)

 腹部に差し掛かる寸前に内にずれ、形よい臍を擽り、さらに下へ。

(……っ、っ)

 そして下腹に至り、そのまま、肉裂に向かうかと思われた指が。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:53:17.33 ID:9ws1E6ndo


 ふと、止まった。


136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:55:40.30 ID:9ws1E6ndo

「……?」

 反射的な仕種で、白井は彼を見上げた。

 首を捻った横目は、見方によっては流し目のよう。

 赤く染まった頬。小刻みに震える睫。ほんの僅か開いた唇。

 不思議そうに、彼を見上げている白井。

 その唇から漏れる甘く湿った吐息を一度、香るように吸い込んでから、彼はニヤリと笑った。

「そう焦るなって。すぐに楽しませてやるから」

 と、彼が言った。

 白井の胸に在ったナニカが、ギクリと音をたてる。

「っ!?」

 白井はギュッと目を瞑り、強く首を振った。

 違う。

 いま、胸の中で音をたてたのは、絶対に違う。

 絶対に、落胆だなんて、感じていない。

 イヤイヤするように首を横に振り続ける白井に目を細めてから、彼は止めていた指を動かしはじめた。

 しかしそれは下っていく動きではない。

 生えそろう、とまではいかないが、指に絡むほどには存在する茂み。

 彼はそれを、あたかも幼児の頭に揃いはじめた髪であるかのように、愛でるように撫ではじめたのだ。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:56:48.71 ID:9ws1E6ndo

「……この前も見たんだけど、お前って生えてるんだよな。少し意外だったぜ」

(っ……!)

 カッと白井の頬が赤く染まり、ギッ、と奥歯が鳴った。

 以前見られたというのは、あの我を忘れ、彼に快楽をねだった時のこと。

 しかし、今のように恥毛をただ撫でられて煽られる羞恥心は、下手すれば秘所を弄ばれる以上だ。

 誘惑を振り払うために握り締めていた両手に、別の意味で力が篭る。

「っと、すまん、ちょっとデリカシーなさすぎたな。わりぃ」

 彼が、どういうわけか茶化す様子もなく謝罪した。

 揶揄の反応を予想していた白井の胸に意外感が浮き上がる。だがそれに何か反応するより早く、

「んふっ!?」

 白井がピンと背筋を伸ばした。

 彼の左手が、左胸の先端を刺激したせいだ。

「お詫びに、こっちにもサービスしてやるから、機嫌直してくれ」

 指は止まることなく、白井の身体に流れる痺れも止まらない。

 一定の間隔を持って、親指の先端と人差し指の第一関節とでクリクリと扱き続ける。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:57:38.27 ID:9ws1E6ndo
「ふぅんっ! んんんっ! んゃんっ! ふうっ!」

 そのたびに彼の膝の上で跳ねる白井の身体。

 彼の、まだズボンを履いたままの太ももに、薄いが柔らかい尻の感触が響いてくる。

 解放されていた右の乳首が、片側の刺激で、再びプクリと立ちあがった。

「ふぅぅんっ、んんっ、んんっ、んんっ、んんふぅぅぅ!」 

 胸の刺激から逃れようというのか、それともただ刺激に耐えられないのか、白井が背を曲げて指から逃げようとする。

 しかし彼はそれを許さない。

 少女の耳元に唇を寄せ、耳の裏に舌を這わせた。

「ひぅんっ!」

 白井が肩を竦める。

 行き場をなくした重心が、グリグリと彼の太ももに尻を擦り付けさせた。

 桃のような割れ目を中心に、左右の尻たぶが、むにむにと歪んでいる。

「気がついてるか、白井」

 彼が耳を這わせる中、ついでとばかりに囁いた。

「お前の漏らしたやつで、俺のズボンも、もう濡れてるぜ?」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:58:21.64 ID:9ws1E6ndo
「!?」

 彼の言葉を聞いてはじめて、白井は気がついた。

 快楽から逃れるために――少なくとも白井はそう認識している――はしたなく彼の太ももに擦り付けてしまっていた尻の、そのやや前側から。

 動くたびに、くちゅ、くちゅ、と小さく湿った音が漏れているということに。

 表面はもう粘液でじっとりと湿り、尻の動きで『開かれ』た拍子に、蜜がこぼれ落ちているということに。

 彼が笑う。

「何もしてないのにこんなに濡らすなんて、イヤラシイやつだな。おまけに尻まで振っちまって……美琴がいまのお前を見たら、なんて思うだろうな?」

(これは薬の――!)

 弾かれたように身を捻り、彼を睨み付ける白井。

 だが彼は、耳に唇を寄せたままの、直近からその視線を受け止めた。

 彼が再び笑う。

「わかってるよ、白井」

 言葉が続く。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 22:58:56.90 ID:9ws1E6ndo


「お前が感じてるのは、薬のせいなんだよな? だから、今からどんなに乱れても、お前は悪くないんだって、俺はわかってるぜ?」

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/05(木) 23:00:50.96 ID:9ws1E6ndo


「!」

 白井が目を見開いた。

 彼の右手が、触れ続けていた茂みから離れる。

 するっ、と滑るように下る右手。

「んんーっ!」

(待って、待ってくださいまし!)

 白井が視線が、哀願の色に染まる。

 だが彼はそれににっこりと、三度笑い返し、

「んふぅっ!?」

 水音が響いた。 
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:25:39.26 ID:m6+FbrP3o


「んっ、んうっ……」

 恥毛の根本の、僅か下方。 

 薬の影響か、あるいは身体が順応したせいか――包皮からもう顔を出した陰核に、彼の人差し指と中指、そして薬指が被さるように触れていた。

 そして三本の指も、もちろんただ触れているだけではなかった。

「んっ、んんっ、んふっ、んっ……」

 寒さに震える時よりもなお細かく、彼の右手が動いている。

 微細な振動が快楽の源泉にダイレクトに伝わり、白井は身悶えることを止められない。

「んんんっ……んぅんっ……」

 白井がいまこうしているのは、全て美琴のためだ。

 彼女が哀しまないため。

 彼女がこんな男に弄ばれないため。

 彼女が抱いている幻想を護るために。

 美琴への思慕と使命感。

 白井が彼の戯れを許す理由は、それだけのはずである。

 しかし――

「んんっ……んっ……んんんっ……ぅんっ」

 いま、白井の中で、何かがさざ波立っていた。

 彼の右手が股間で震える度に、ソレは大きくなる。 

 彼の左手が乳房を摩り、その先端を擽る度にソレは輪郭を帯びていく。

(な、なんですの、これは……!?)

 いつの間にかソレは、心の中で、染みのような黒い点に変化した。

 黒点は、胸と股間に響く感覚を糧にして、徐々に徐々にその面積を広げていく。

 だが白井には、それがなんなのかを深く考えるような余裕はなかった。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:26:46.48 ID:m6+FbrP3o

「んんぅっ! んはぁっ! んっ、んっ、んっ、んんんっ!」

 微細な振動が、僅かに強度を増した。

 陰核から生まれる甘美な痺れが腰の奥を突き、背筋を駆け登る。

 触れられる前から解れていた媚肉はもうスライムのように柔らかくなり、陰唇からジワリジワリと滲み出す愛液で、さらに泥のような有様に墜ちていく。

 その上、二週間前と違って意識も理性も削り取られることがない――その程度の薬量なのかあるいは身体が耐性を得たためか――ため、自分を見失うこともできなかった。

「んむっ、ううんっ、んっ、んんうっ!」

 白井は必死に耐える。

 首を振る。

 歯を食いしばる。

 後ろ手に縛られた両手を握り込む。

 だが白井の努力を嘲笑うかのように、口から漏れる喘ぎも、猿轡が吸い取りきれずに漏れ落ちた唾液も、溢れる蜜液も、その量を増していくばかりだった。

「んんっ! んふんっ! んふぅんっ!」

 そして忍耐を繰り返す度に、心の黒点が、風船のように膨らんでいく。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:27:30.83 ID:m6+FbrP3o

 ――もっと欲しい



「――っ!?」



 不意に耳に声が響く。

 

 ――もっと強く



 ――もっと激しく



(わ、わたくしはなにを考えているんですの!?)



 ――気持ち良くなりたい



(そんなことありませんの!)



 ――我慢したくない



(我慢なんかしていません! こんな、汚らわしいこと……!)



 ――身を任せたい



(違います! わたくしはそんなことは!)



「んんんーっ!」

 白井は現実に声をあげ、心の声を打ち消そうとする。

 しかし、
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:28:05.17 ID:m6+FbrP3o

 ――お尻でも感じるような変態になったじゃありませんか



(あれはそうなれと言われたからですの!)



 ――彼が望んだらなんでもスルんですの? 気持ち良かったからではありませんの?



(すべてお姉さまを護るためです!)



 ――本当ですの? お尻でシテいる最中、気持ち良くなりたくて前も触っていたのに?



(それは……そ、そっちで感じるなんか、おかしいから、だから、ですの……)



 ――じゃあなんで、お尻でシテ終わった後に、必ずオナニーしていたんですの?



(あ、あれは、疼きをなんとかしなければ……)



 ――薬のせいだから、ですの?



(そう! そうです! あの薬のせいで……) 



 ――嘘ですの



(嘘じゃありません!)



 ――じゃあなんで、
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:29:12.92 ID:m6+FbrP3o





 ――なんで、彼にされていることを想像して、シテいたんですの?






156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:29:54.37 ID:m6+FbrP3o
「!?」

 胸の奥からの言葉に、白井の表情が凍り付いた。

(そ、それは……)

 抗弁しようとする。

 しかし、心の声が告げたことは事実だった。

 風紀委員の休憩時間や美琴のいない自室で『拡張』した後。

 媚薬入りローションで高ぶってしまった己を慰める時に想像していたのは、

 

 ベッドに肘と膝をつき、



 尻を高くあげ、



 彼の手で尻たぶ大きく割り開かれ、



 固くなったペニスの先端を、解れた肛門に添えられた、



 ――お尻を犯されるところを、想像していたではありませんの



(違います!)



 白井は耳に響く己の声に、否定の言葉を投げ付けた。

 首を、外れるかと思うほど強く横に振る。



 ――違いません。だってわたくしは貴女ですのよ?
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:30:57.67 ID:m6+FbrP3o

(っ!)



 ――全部、知っていますもの。わたくしが、浅ましく快楽を貪っていたことを。お姉さまのためと言いながら、自涜を辞められなかったことを。



(ち、違うと言ったら違いますの! わたくしは……!)

 ギクリと胸の奥が軋む。

 だが、それをさらに否定するだけの時間を、白井は持ち得なかった。

「苦しそうだな。もう外してやるよ」

 と、彼が含み笑いを込めて、耳元で囁いた。

「!?」

 目を見開く白井。

 彼の言葉は、白井が荒い息を繰り返し、喘ぎを疎外されていることを指したものなのだろう。

 しかし当の彼女には、自分との葛藤を見抜かれているようにしか思えなかった。

(そんな、いまこれを解かれたら……)

 抑えられない。

 声だけではなく、何かが。

(駄目、駄目、駄目、駄目……)

 しかし彼は、口を猿轡の結び目に近づけると、そのまま紐の端をくわえ、スルリと引き解いてしまった。

 部屋に入ってから今まで、一時間近く拘束されていた発声器官が解放される。

「ふはっ!」 

 呼吸が正常に戻る――酸素不足のために、麻痺していた感覚が、完全に復活する。

 同時に、彼の人差し指と薬指が、陰核の両脇を、くっ、と押した。

 包皮が左右に引き延ばされ、半ば顔を出していた陰核が、完全に露出する。

 すかさず中指がそれを押さえ付けた。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:32:30.76 ID:m6+FbrP3o

「!」

 背筋を電撃が駆け上がる。

「あっ、」

 白井の身体がビクリと震え、

「あはぁっ、あっ、あっ、あああっ」

 甘く、溶けるような声が、よだれと共に白井の口から零れた。

 続けて彼の指が、小さく、しかし早く動き出す。

 プルプルと弾かれた陰核が、爆発したような快感を白井に伝達した。

 堪らず、白井の上半身がビクビクと痙攣し、逆に下半身がクネクネと前後し始めた。

「あっ、あんんっ、ううぅん、ううん!」

 必死に口をつぐみ、動く腰を止めようとする白井。

 だが無駄だ。

 坂を転がり落ち始めたボールは、動かしはじめるよりも強い力でなければ止まらない。

 そして動きはじめる力にすら負けた身体が、今もって応えてくれるはずがないのだ。

「素直になれって。おまえだってもう、自分でわかってんだろ?」

 そこに滑り込んでくる彼の声。

 白井の中で、黒点が大きくなる。

「ふぁんっ! ちがっ……ひぅんっ!」

 爪でクリッと刺激され、白井が顔をのけ反らせた。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:33:21.81 ID:m6+FbrP3o

「かっ、はっ、あっ……」

 空気を求めて口をパクパクと開閉し、大きく見開いた目で天井を見る。

「おっと」

 軽く驚きの感情を込めて彼からの攻めが止まった。

 倒れないようにか、彼の左腕が、力の抜けかけた身体をギュッと抱きしめてくる。

「はーっ、はーっ、はーっ」

 ぐにゃりとなった白井は、後頭を彼の左肩に乗せるようにして大きく息をついた。

 霞みがかった瞳が口の端から漏れた唾液と相俟って、まるで白痴のような表情。

 だが暴風のような快楽にさらされつづけ、それを不意に取り上げられた身体は正直だった。

「ふぁぁ、うぅんん……」

 秘所から離れた彼の指を求めて、腰が動く。

 グミのように固くなった乳首は、胸に巻き付いている彼の左腕に押し当てられていた。

「そんなに欲しいのかよ。おまえ、美琴のことなんかもうどうでもいいんじゃねぇのか?」

「な、何を、言って……わたくしは……お姉さまのために……」

 僅かに理性を取り戻した表情で、白井が彼を見る。

「せめて腰を止めてからその台詞言えって」

 彼は苦笑まじりに返事をしながら、右手を下に滑らせた。

「ひぅんっ」

 人差し指が押したのは、この二週間で白井自身が拡張させたすぼまりだ。

 膣口から溢れる白く濁った蜜は、蟻の門渡りを通って肛門にまで達している。

「まぁ、俺はどっちでもいいけどな」

「ああっ! だ、だめですっ! やめっ、あっ、あっ、そこはっ、ああっ、い、いやですのっ」

 指が円を描いてすぼまりの外周をグルグルとなぞった。

 十分な潤滑力のある蜜が肛門の皺に染み込んでいく
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:34:50.58 ID:m6+FbrP3o

「何言ってんだよ。今日、ここにどんなことされるかくらい、覚悟してきたんだろ?」

「それはっ、でもっ」

「でもって言われてもなぁ」

 いきなり彼が、ベッドから腰を浮かせ、半ば立ち上がった。

 彼に腰掛ける恰好で、しかも肛門に指を添えられたままの白井も、反射的に脚を伸ばし身体を浮かそうとする。

「よっと」

「っ!」

 それを利用して白井を左腕だけで抱え、ベッドに上がる彼。

 そのまま、後ろ手に縛られた彼女を、枕に顔が埋まるような位置に下ろした。

「――っ」

 俯せ。膝をたてた姿勢。

 後ろ手に縛られている以外は、二週間前と、そして想像の中と同じ恰好。

「あっ!?」

 肛門に、何かが当たる感触。

 慌てて首だけで彼を見る。

 まだYシャツも脱いでいない彼が、人差し指をすぼまりに当てているのが、わかった。

 彼の左手には、歯磨き粉のような、チューブが握られている。

 それはねじ式の口が外れており、そして肛門に感じる指は、どこか冷たく濡れていて――

「待っ、あっ!?

 ぐちゅ、と音がたつ。 
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:36:47.60 ID:m6+FbrP3o

「ああああっ!」

「おお、入ってく入ってく。すげぇぜ白井。流石は二週間足らずで自己開発しただけあるな」

 感心しているのがわかる彼の声。

 蜜と、媚薬入り軟膏の補助を得た指は、たいした苦労もなく根本までてズブズブと沈んでいく。

「い、いやっ、だめですのっ! 指、入れないでっ、あっ、あっ、あああっ、だめですっ、動かさないでくださいましっ」

 自分の指とも、器具とも違う、少しゴツゴツした感覚。それが奥を突いたかと思うと、すぐに逆方向に戻っていく。

 いつもと違うのは感触だけではなかった。

 突っ込んでいる側の彼は、白井のペースなど把握していない。

 そして白井が苦痛を訴えない以上、遠慮が入る隙間はないのだ。

「んっ! んんあっ! あはぁっ! あっ、あっ、あっ!」

 無遠慮な前後運動。

 しかしアナルバイブまで飲み込む白井の肛門は、それを苦もなく喘ぎの元へと変換してしまう。

「……これなら指増やしても、ぜんぜん大丈夫そうだな」

「なっ!?」

 一旦抜かれる指。

 広げられていた菊座が、活約筋の作用ですぐにすぼまり、

「はうっ!?」

 ぐぐっ、と再び押し広げられて、尻が前に逃げる。

 だが彼の左手がその丸い曲線に指を食い込ませて、逃がさない。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:38:28.80 ID:m6+FbrP3o
「あっ! がっ! ああっ! あぐっ……!」 

 限界近くまで広げられ、ズブズブと潜り込んでいく感触。

 拘束された両手が握り締められ、背中が反り返っていく。

 無理もなかった。

「ははっ」彼が笑う。

「やっぱり三本でも大丈夫だったな」

 人差し指と、中指と、薬指。

 ぐっ、ぐっ、と。段階的に、揃えられた三つ指が白井の排泄器官に埋没していく。

「っ! っ! っ!」

 完全に息を吐ききった白井は、悲鳴をあげることもできない。

 5回。

 声なき悲鳴をあげて、そこでようやく、挿入が止まった。

 いや、最奥まで到達したのだ。

「……!」

 ガクリ、と白井が頭を枕に落とした。

 そのまま、肩を大きく揺らして、呼吸を繰り返す。

 ジン、ジン、と後ろの穴から、心臓の鼓動にあわせて何かが背筋を駆け上がってくる。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:40:16.12 ID:m6+FbrP3o

(わたくしのお尻、こんなに広がって……)

 荒い息の中、白井は自分が何をされているのか、はっきりとわかった。

 彼女の瞳には酸素不足の陰りはあっても、理性が戻ってきている。あまりの圧迫感で頭から興奮が消え去っていた。

 白井は今まで、指は二本までしか入れたことがなかったし、アナルバイブも、彼女の指三本よりは細かった。

 それに彼に渡された器具でもっとも太いものがアナルバイブだったので、それが入った時点で、拡張は終わりと思っていたのだが。

 幸いにも、自分で拡張した排泄口は、想像よりもずっと頑丈だったらしい。彼の指が三本、根元まで埋まっていても、裂けた様子も、裂ける様子もない。

 そして疲労と圧迫感で動けない白井は、しかし、頭の中は逆にクリアとなっていた。

 なんとなく、どこか他人事に、頭の中に思考が流れていく。

(こんなの、苦しいですの……)

 呼吸はなんとか出来た。

 しかし圧迫感と異物感は、圧倒的だった。

(こんなの、恥ずかしいですの……)

 二週間前は理性を失っていた。いまでも、あの時のことはぼんやりとしか覚えていない。

 しかし今は、彼に全てをさらけ出している。しかも、ある意味は秘所よりも隠しておきたい場所に、指まで突きこまれて、だ。

(こんなの……)

 こくんと、と唾液を飲み込む。

 その拍子に、尻の穴が窄まったのか、ジン、と痺れが響いた。

(こんなの、おかしいですの……)

 今はまだ、耐えていられる。

 しかしこれから、こんな目に遭い続けるのか。

 二週間前に唇は奪われた。

 今日にも肛門を犯される。

 すぐに口も汚されるだろう。

 そして近い将来、純潔も散らされるに違いない。

 いや、それは。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) :2012/01/16(月) 00:42:26.71 ID:m6+FbrP3o

 すうっ、と空調によって動かされた空気が、白井の尻の割れ目を通っていく。

 彼の目の前に晒している、女の全て。

 拘束され、能力も封じられた今、抵抗することはできない。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:42:59.82 ID:m6+FbrP3o

 今日、今、これから。

 すべて失くすかもしれないのだ。

「――っ!」

 唐突に背筋に悪寒が走った。

 いつか起こるだろうと覚悟していたこと。

 しかしそのいつかは、すぐにと同義なのだ。



 イマカラ、犯サレル。



(いや……)



(いやですの……)



(こんなの、いやですの……)



(わたくし、こんなのは、いやですのよ……)



(助けて……)



(誰か……)



(誰か……助けてくださいまし……)

 しかしこのホテルに白井がいることを知っているのは、誰もいない。

 助けなど、くるわけがない。

 それでも白井は思う。

 自分の敬愛する御坂美琴ならば、もしかしたら、ここに自分がいることに気がついてくれるかもしれない。

 そう、思い切り叫んだら、もしかしたら。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:43:35.15 ID:m6+FbrP3o

 

 お姉様。



167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:48:40.31 ID:m6+FbrP3o

 ――黒子。

(!)

 その衝動にしたがって叫びかけた白井の脳裏に、美琴の顔が浮かんだ。

 彼のことを話す美琴の笑顔。彼の愚痴を言う美琴のむくれた顔。彼と会話してきた美琴の晴れ晴れとした顔。彼のことで哀しむ美琴の浮かない顔。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:49:07.41 ID:m6+FbrP3o

 そうだ。

 くじけるな。

 美琴を護る。そのために、決心したではないか。

 たとえ自分がどうなろうとも、美琴さえ、彼の手に落ちなければいいと、そう思ったではないか。

「っ!」

 白井の目に、力が戻る。

 しかしその瞬間。

「動かすぞ?」

 彼の声とともに、指が動き出す。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:50:04.17 ID:m6+FbrP3o

「うあああっ!?」

 ギリギリまで、指が引き抜かれる。

「くふあっ……!」

 すぐにまた、根元まで。

「あああっ!」

 引く。

「ああああっ!」

 押す。

「ひぐぅっ!!」

 抜く

「くあっ!」

 それほど早くない。

 しかし止まらない。

 音がする。

 出入りの度に、グポッ、グポッと、空気と粘液の音が。

「指とか汚れてない。ほんとにきちんと洗浄してるのな。褒めてやるよ」

「いやあっ!? 」

(そんなこと言わないでくださいまし! 思い出させないでくださいまし!)

「いやってなぁ。褒めたんだから素直に喜べって。それに何かついてたほうが、お前もイヤだろ?」

「ふざけっ、くあっ、ああんっ!」

「強情だな……ご褒美にもっと激しくしてやるよ」

 指の出入りが加速する。

「ああっ! あああっ! ああああっ!」

 白井が枕に顔を押し付けたまま首を振った。

 結んだままのツインテールが、バサバサとシーツを叩く。

 やがて、そんな彼女に変化が起こり始めた。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:51:40.23 ID:m6+FbrP3o

「はぁっ! んんっ! うぅんっ!」

 声に、どこか甘い響きが混ざり、

(は、激しいっ、でもっ、これっ、この感じっ……!)

 腰の奥でムズムズとした感覚が燻る。

「んうっ! んくっ! あうんっ! んはあっ!」

 肛門を抉られ、腸壁を擦られる。

 そこに生まれているのは、排泄感にも似た感覚。

 それは、彼に命じられ、拡張をしている最中に感じていたもので、

「あれ? 白井、お前もう感じ始めてるのか? なんか前側から、また白いのが出てきてるぜ?」

(っ!?)

「ちがっ! そんなことっ! 違いますのっ! ああっ! くうんっ!」

「いや流石の俺でも、こんな近くで見てりゃわかるさ。お前のココ、やっぱり濡れてきてる」

「嘘ですの! わたくし、こんなところで感じたりなんか、あっ、あっ、あっ、あああっ!」

「感じてないのか? ぜんぜん?」

「あ、あ、あたり、うあっ、当たり前ですのっ!」

「ふぅん?」

「あっ!? あっ! あっ! あーっ! だめですのっ! だめっ! だめっ! だめぇっ!」

 髪を振り乱す白井。

「……」

 そこで不意に、彼が手の動きを止めた。 
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) :2012/01/16(月) 00:53:17.15 ID:m6+FbrP3o

「はっ――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 ポスリ、と再び、白井は枕に顔を埋めた。

「……なぁ白井」

 彼が右手をギリギリまで抜いた状態で止め、左手で尻を掴んだまま、言う。

「もういい加減、認めないか? 大丈夫だって。お前はよく我慢したよ。誰もお前を悪く言わないって。それに言ったろ? 薬のせいだって。そもそも尻の拡張だって俺がお前にやらせたんだ。お前がここで気持ちよくなるのは当たり前なんだよ」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

(耳を傾けては駄目ですのよ白井黒子……この男の狙いは『わたくしが快楽を選択する』こと自体なのですから……)

「……」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

「……」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「……そうかよ」

「あんっ!?」

 クチュ、と音をたてて、彼が右手を完全に抜いた。

 愛液と腸液と軟膏に塗れ、ぱっくりと開いた肛門が、ゆっくりと、元の形に戻ろうとする。

(抜いた……? いったい何故……)

 白井が疑問に思うと同時に、今しがた抜かれた彼の右手が、左手とは反対側の尻たぶを、ぐっ、と掴んだ。

 続けて、窄まりかけた肛門に、何か硬いモノが押し当てられる。

「え……」

 その体勢と、気配。

 白井が首を後ろに向けかけて――
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:54:38.37 ID:m6+FbrP3o



 ズン、と衝撃があった。



174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:55:52.34 ID:m6+FbrP3o
「ひぐぅっ!?」

 先の三本指より一際太いものが体内に入ってくる官職。

「おっ? 予想よりもずいぶん楽に入ったな。流石は学園都市暗部特製の媚薬だな。柔軟効果もすげぇ」

 そして、彼の声。その内容。

「あっ……?」

 一瞬、何が起こったのか理解できない

 いや、何かが肛門に突き込まれたのはわかる。今までのなによりも、太く、長いモノが。

「しかし、ははっ、こっちもすげぇな。なんか中でぬるぬる絡み付いてくる。普通、こっち側はこんなにならないんだけど」

 尻を掴む彼の両手。

 ふとももの裏に感じる、誰かの脚。

 四つんばい。

 長く、太いもの。

(まさか……まさか……)

 ガクガク、と白井が身を震わせ始める。

「わりぃな、白井」と、彼。「我慢できなかったんだ」

(っ!)

 反射的に後ろを振り返る。

 無許可とかいえ、ここはラブホテル。しかし強姦の撮影に使うことを念頭においているところだ。

 部屋の壁面は、鏡張りになっていた。

 何が起こっているのか、白井は、その両目で見ることになる。

「い、」

 

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/16(月) 00:57:04.07 ID:m6+FbrP3o


「いやああああああっ!」



 絶望的な声が、室内に響き、防音効果ゆえに、外には一切、漏れなかった。



184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 00:59:36.05 ID:QONzfrqDo

「おや、外出か御坂」

「はい、ちょっと学校まで」

 常盤台中学校学生寮、玄関。

 外出しようとした美琴は寮監に呼び止められて脚を止めた。

 休日の昼下がり。出かける生徒は多いが、それでも美琴は目立つ存在だ。おまけに白井と共に、割と問題行動もある。

 気をつけろ、と寮の玄関を出る者たちに告げる寮監が、ふと呼び止めてしまうのも自然なことだ。

 とはいえ呼び止めた当人にも美琴にも、後ろ暗い様子はない。

 美琴から見れば寮監は怖い対象でもあるが、生徒に愛情を注いでいるのはわかっている。そして寮監にして見れば、第三位の美琴も、手のかかる娘、の一人なのだから。

「学校に? 今日は休日だぞ?」

「そうなんですけど、研究所以外じゃ、学校くらいしか私の訓練場所がないので」

 『超電磁砲』の出力は、そんじょそこらの電撃使いの比ではない。全力を出せば、周辺一帯の停電すら招くほどの大規模なものだ。

 大袈裟と思うなかれ。

 なにしろ前科あり。

 疑いない。

 そんなわけで、彼女が能力の訓練をしようと思えば、電撃使い専用の研究所か、発電所か、『超電磁砲』のための施設を持つ常盤台中学しかないのである。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:00:36.49 ID:QONzfrqDo

「休日に訓練とは熱心で感心なことだが、どうしたんだ急に」

 美琴が努力の人だとは承知しているが、休日には年相応に遊ぶことの方が多かったはずだが。

「あはは、ちょっと最近、思うところがありまして」

「ふむ?」

 心配そうな顔を浮かべる寮監。

「あ、違うんです。えー、と……」

 言っていいかなぁ、と美琴は少し考えてから、

「黒子が最近、努力してるんですよ。何に、というか、全般的に。だから私も、ちょっと頑張ろうかなって思いまして」

 あのカフェでの衝撃の発言から一週間。

 確かに白井は、いわゆる淑女になろうとしているらしい。

 普段のシャンとした態度は変わりなく、しかし日常での気遣いや、いままで悩まされてきたセクハラ紛いの言動は影を潜めている。

 今日も、風紀委員の非番だと言うのに、何やらマナーの復習にいく、とどこかに出かけていた。

 美琴としては少し無理をしているようにも思えたし、こういう休日に遊びにいけないのは少し寂しい。セクハラ紛いの言動も、なくなればなくなったで物足りないものだ。

 しかし、白井が頑張っているのは素直に尊敬する。

 そしてその原動力が、『御坂美琴が笑顔でいられるように』と言うのだから、嬉しくもあり、気恥ずかしくもあり、

(私も黒子が笑っていてほしいと思えるような人にならないとね)

 何よりも、自分への刺激となった。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:01:30.25 ID:QONzfrqDo

「ふむ。よい方向への刺激のようだから、詳しくは聞かないこととしよう」

 野暮だからな、という寮監の言葉に美琴は微苦笑。

 休日でもスーツ姿な寮監が、野暮という言葉を使ったのが、どこかミスマッチで可笑しかったのだ。

「じゃあ失礼します」

「ああ、気をつけてな」

 頷く寮監に軽く一礼して、門をくぐる。

 外に出て空を見ると、抜けるような晴天だ。

(……気をつけて、かー)

 第三位の自分が気をつける相手など、それこそ両手で数えるほどしかいない。

 しかしそれは、まだまだ自分より上がいるということ。

「一方通行に勝てるくらいにはならないと、ね」

 小さく口に出す。

 それは壮大というよりも、無謀なこと。物理現象である電撃は、ベクトル操作に通用しない。

 だが美琴が言う勝つとは、ある意味ではその無謀を指し、ある意味では違う。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:02:20.25 ID:QONzfrqDo

 右手ひとつで、一方通行に立ち向かった少年。

 彼が持っていたあの意思を、自分でも体現できるように。そして、今度こそ大切なモノを護れるように。

 そう、せめて、

(あのカフェの時の黒子みたいな『決意の顔』ができなくちゃ、愛想尽かされるわ)

 目指すは、少年と後輩。

 御坂美琴は軽い足取りで、彼女の目標に踏み出した。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:02:54.42 ID:QONzfrqDo

「あぐっ! ああっ! はうっ!」

 土下座でもするように顔を枕に埋め、尻を高くあげられた白井が、途切れることなく声を上げ続けている。

 涙を流し、辛そうに――痛みのせいではなく――顔を歪める少女の口から漏れるのは、苦鳴にも似た意味なき言葉。

 背後から腰をたたき付けられる度に響くグチッ、グチッ、と言う鈍い水音が、その言葉を艶めいたモノに塗り替えていた。

 彼はワイシャツもズボンも脱いでいない。それがゆえに、屈辱的な声と音は、ダイレクトにその源泉――白井に届いている。

「ああんっ! あんっ、あっ、ああっ、あはぁっ!」」

 しかし白井はそれを抑えることができない。

 一定の速度を保った腰は、事が早く終わることを予想させず、口は閉じるどころか、後ろから前に通り抜ける快楽を喘ぎとして吐き出すことに終始していた。

 そう、喘ぎだ。

「うんっ! あっ、あっ、あっ、き、気持ちいっ、あっ、んんっ、なっ、なぜっ、ですのぉ!?」

 意思どおりに動かない唇は、内心にだけにしておきたい言葉を、なぜかよく外に吐く。

 辛うじて言い切ることだけは耐える白井だが、誰が見ても彼女が快楽を得ているのがわかるだろう有様だ。

 呼吸するためか、枕に顎だけを乗せた彼女。

 眉を顰め、涙を流し、喘ぎを止めようと歯を食いしばっている。

 しかし。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:04:00.60 ID:QONzfrqDo

「あっ! くふっ! はぁっ!」

 眉の角度は甘く垂れ、

「んはぁっ! あっ! あうんっ!」

 涙濡れる頬は紅く、

「んんんっ!  んあっ! うぅんっ!」

 食いしばったがために篭る力は返って締付けを強くしてしまう。前後する快楽を、より身体に響かせてしまう。

「んはあっ!」

 彼の両手が、まだ芯の残るやや固めの尻を、それぞれ左右外向きにこね始めた。

 肉は薄くとも、そこは溶けたオンナの身体。

 広げれば、剛直が突きこまれている肛門周辺はより剥き出され、閉じれば肉棒の幹部分を挟むほどには、尻たぶが寄る。

「くあっ! ああんっ! すごっ……くっ、ちがっ、んんん! ふあっ! ううんっ!」

 中だけではなく、入り口周辺までペニスで擦られた白井の声が、より高くに変化した。

 彼からも、白井自身も見えない太ももの内側。

 しかし秘裂から溢れた白濁の蜜は、高い粘性ゆえに白井に太ももを流れているのを感じさせ、その量ゆえに彼のズボンを濡らして彼にそれを悟らせてしまっていた。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:05:24.24 ID:QONzfrqDo

「ああっ! んんんっ! いやですのっ! わたくしぃっ!」

 彼に何か言われるよりも先に、白井が強く首を振った。

 枕を支点にしているため、それにあわせて尻が左右に揺れているのにも気がついていない。

 いやそれはむしろ無意識か。

 後ろ手に縛られた白井は、そうすることで身体を、乳房をシーツに擦り付け、肛門以外からの快楽を得ようとしているのだ――自分が濡れているのは肛姦ではないと、言いたいがために。

「あうっ! あんっ! あっ! あっ! んはぁっ」

 白井が膝をつかい、自ずから腰を上下に揺らし、あるいは、彼の動きにあわせて左右に振り始めた。

 重力の助けを得て、お椀形になった乳房。小さく揺れるその硬くとがった先端は、シーツに掠るか掠らないかのところを、行ったり来たりしている。

 乳首への刺激ゆえに濡れている。

 そう言うかのように、白井は積極的に腰を振る。尻を上下に動かす。彼が突きこむのにあわせて後ろに突き出し、抜くにあわせて前に引く。

「うぅんっ! あっ! あっ! ああんっ! んあああっ!」

 喘ぎも、水音も、尻がズボンにあたる布の音も、どんどん大きくなっていった。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:06:29.01 ID:QONzfrqDo

「……」

 彼はそこまできてもなお、白井に声をかけない。

 揶揄することもなく、許す言葉をかけるでもない。

 挿入から今まで。

 彼は無言のまま、速度を変えないまま、ただ尻をこねる手だけを変化させ、律動を繰り返していた。

 それは彼女に情けをかけているのではない。

 逆だ。

 ここで、白井に無理に何かを言う必要はないからだった。

 今日の白井の精神の変化は、彼にとっては明白かつ、予想通りの反応である。

 白井は強い。

 それは彼女のレベルが高いから、というそんな一面的なものでは、もちろんなかった。

 彼女と同年齢で、彼女ほど聡明で、誇り高く、心の芯に折れないモノを持ち、しかしそれに寄りかからない確たる己を持つ者は、まずいないだろう。

 事実、彼女はこんな目に遭って二週間、それを誰にも悟らせていないのだ。

 御坂美琴と信頼しあう友人で、同室であるにも関わらず、だ。

 それほどの彼女は、だが残念なことに、聡明すぎて、誇り高すぎて、芯が強すぎた。確たる自分を、持ちすぎていた。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:07:22.84 ID:QONzfrqDo

 聡明だから、薬の影響で周囲に露見しないよう、自ずから自慰を行う。

 いくら美琴を想って行為しようとしても、実体験は強烈な彼のとの一件だけ。

 そうなれば、それを思い出すのは当たり前だ。よかれわるかれ、それは強い思い出なのだから。

 誇りが高いから、自分の弱さを認めなかった。

 いくら強くあろうとも、彼女はまだ中学生になったばかりなのだ。

 どんなに取り繕うとも、汚される恐怖に、その想像に、その現実に、耐えられるわけがない。

 しかし彼女はそれを認めない。自分は強くあり、美琴を護ることを誇りとし、他の誰も巻き込まないと決めている。

 だから、ただただ強い自分のままで、耐えるしかない。

 芯が強いから、彼に屈服しない。屈服しない以外の選択肢が、存在しない。

 快楽を与えられば抵抗する。羞恥心を煽れば抵抗する。免罪符を与えれば抵抗する。

 肛姦でイカされようとすれば、抵抗する。

 そしていま、腕を縛られ、能力も封じられ、薬で性感を高められた彼女は、抵抗している。

 自分で快楽を得ることで、尻穴でイカされるという事実に、抵抗しようとしている。

 結果的に、自分から尻を擦り付けているという事実に、目を瞑って。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:08:16.63 ID:QONzfrqDo

 今日が終わっても、彼女は変わらない。変わることが出来ない。

 薬を与えれば今日のことを思い出して自分を慰める。そして自己嫌悪すると同時に『陵辱の記憶に美琴への想いが負けた』という観念に囚われ、自涜をやめることができないだろう。

 美琴を見れば折れかけた今日の自分を思い出すだろう。次は折れないと決意し、折れかけた自分を恥じて、そして心を磨耗させていくだろう。

 鏡の前では、今日を乗り越えたことに安堵するだろう。尻でイカなかったというだけで、快楽を得たことに違いがないことに、目を向けないまま。

 そして何より、それらのことをすぐに自覚するだろう。確たる己を持つがゆえに。

 なんのことはない。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:09:22.26 ID:QONzfrqDo



 白井を追い詰めるのは、白井自身だ。



195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:10:03.75 ID:QONzfrqDo

「ふあっ! ああんっ! あはっ! あっ、あっ、あっ、はぁんっ!」

 そんな彼の視線に気がつくことなく、白井の声が早くなる。高くなる。

 腰の動きが――彼女の今の意思の中では乳首への刺激が――大きく、強くなる。

 ぐっ、とこね続けていた彼の手が、逆に尻を強く掴んだ。そのまま、白井の動きに逆にあわせ、激しく前後に揺さぶった。

 グポッ、グポッ、と音が響く。乳首が強くシーツに擦れる。

「ああっ!」

 一気に快感が強くなり、白井が強く首を振った。

 汗を吸った髪がバサバサと、吐息の混じった空気を大きく揺らす。

「あはあっ! あぅんっ! あ、当たってるますのっ! ああんっ!」

 完全に白濁した愛液が、白井のふとももにも彼のズボンにも触れることなく、珠となって股間から垂れ落ちた。

 強くたたきつけられる腰により、それ以外の蜜が、飛沫となってシーツに散る。

「ああっ! いやあっ! だめですっ! そんな強くっ、だ、だめですのぉっ!」

 言葉は拒絶。しかし声は甘く蕩け。

「あっ! ああんっ! はぁっ! もうっ! もうっ! あっ! ああああっ!」

 両足の指先が、くっ、と力を入れて曲がる。

 汗の浮いた白い背中が、ぐぐっ、と仰け反った。

 そこに、彼が一際強く腰を突きこんだ。
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:10:48.46 ID:QONzfrqDo

「はうっ!?」

 白井が大きく目を見開き、ヒクヒクと震えた肛門が、根元まで突きこまれたペニスを、ぎゅう、と締付ける。

 その瞬間。

 

 ドクン、と白井の中で、大きな拍動が響いた。



 熱いものが直腸の奥に叩きつけられる。

 同時に彼が唐突に白井に覆いかぶさり、いままで尻を掴んでいた両手で、乳首を、きゅう、と抓り上げた。

「!」

 胸から響く、痺れるような快感。

(あっ――)

 白井の中で、ギリギリまで高まっていた性感が、爆発した。

「ああっ! ああああっ! イ、イクっ、イキますのぉっ! ああっ! イクっ!」

 手を縛る布を千切れんばかりに動かし、絶頂する白井。

 視界が真っ白に染まり、甘く痺れる電撃が、全身を駆け巡る。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage saga]:2012/01/18(水) 01:12:17.32 ID:QONzfrqDo

「っ! っ! っ! っ!」 

 グリグリと尻を押し付け、膝でシーツを蹴るように、何度も何度も痙攣した。 

 背を覆う彼を押しのけるように限界まで身を反らし、身体を震わせる。

「っ!」

 そして彼の歯を食いしばる音が一度だけ響き、身体の中で震える剛直が、最後の一滴までを吐き出したのと、時を同じくして。

「あっ――あぁ、あっ、あ……ぁ……あぁ……」」

 白い意識の極みに達していた少女が、ようやく降りてきて、がくり、とベッドに身を沈めた。

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」

 目を閉じ、肩で息をする白井。ピクン、ピクン、と肩が震えている。

 意識があるのか定かではない状態の彼女の口元。

 そこには、この部屋に入ってきたときとは考えられないような、蕩けた笑みが、確かに浮かんでいた。 
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:35:08.62 ID:nAI/Ynsfo

 肩まで湯に浸かった白井は、脱力感に任せて、バスタブにもたれかかった。

 ちゃぷっ、と湯気をたてる水面が揺れる。入浴剤を落とした湯は、赤く、そして薔薇の香り。

 バスタブは、白井が脚を伸ばしてちょうどという程度の大きさだ。

 ここは、彼と会うホテルではない。寮とは逆方向の、小さなビジネスホテルである。

 彼と別れ、すぐに駆け込み、シャワーを浴び、湯舟に沈んだ。

「……」

 背もたれながらも、俯いている白井。

 投げ出した脚と、太股の間にだらりと下げた腕。そして頭だけが、かくんと落ちたような姿勢は、まるで疲労という言葉をを体言しているかのようだ。

 解いて垂れた髪で、少女の表情は伺えない。

「……。……」

 しかし覗く唇が、何事かの繰り言を紡ぎ続けている。

208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:36:01.08 ID:nAI/Ynsfo

 大丈夫ですの。

 耐えられます。

 お姉様。

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:37:32.93 ID:nAI/Ynsfo

 湯舟に浸かってから身じろぎひとつしていない彼女の周りに響くのは、その繰り言のみ。ちゃぷ、と水音もたっていない。

 壁にかけられたシャワーヘッドも、確かに使った形跡がありながら、もう垂れるような水滴が残っていなかった。

 どのくらい、ここでこうしているのか。

 それは白井にも、わかっていないのだろう。

「……。……」

 そんな、終わろうとしない彼女の声を途中で途切れさせたのは、ほんの小さな音だった。

 心地よい温度の湯。そこから立ち上る湯気は天井に集まり、液体に戻る。

 設計上のミスではなく、使用劣化によって小さく凸凹のできた天井は、その僅かに集積した水気を、いつしか水滴に変えていた。

 音は、それが落ちて、バスタブを叩いたもの。

 小さな小さな、水音だ。

 しかしそれが何かの契機になったのか。



 ――よう。起きたか



「っ!」

 白井の耳に、彼の声が甦った。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:38:41.84 ID:nAI/Ynsfo

 

 ――大丈夫か? 悪かったな、いきなりシちまって。我慢できなかったんだよ



 目が覚めたとき。

 ベッドの中で、彼は服をきたまま、自分は全裸のまま。

 左隣に寝転ぶ、彼。

 シーツから、そして俯せた自分に重ねるように置かれた彼の右腕から伝わる、人肌の温もり。

 驚き、力が入った拍子に、尻からゴプリと音をたてて漏れたモノ。

 すべて、克明に思い出せてしまう白井。

 振り払う前に次の声と記憶が響く。



 ――そうだ、参考までに教えてくれよ

 

 そう問う彼の顔には、なんの色もない。ただ『気になったから』というだけの視線。

 彼の唇が、質問を吐き出そうとする。

「っ!」

 白井は強く首を振った。

 だが頭の中の映像は止まらない。

 残酷な台詞は、気軽投げ掛けられた。
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:39:38.91 ID:nAI/Ynsfo



 ――処女より先に尻を犯されるのって、どんな気分なんだ?



212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:40:14.67 ID:nAI/Ynsfo


「うぅぅぅっ!」

 喉の奥から絞り出すような声をあげ、ぎゅっ、と両腕で己を抱きしめる白井。

 バスタブから背を離す。

 顔をさらに俯かせる。

 歯を食いしばる。

 あまりに強く噛み締めた奥歯が、ミシリ、と軋む。

 それでもなお、心の慟哭は治まらない。

「……っ」

 白井の喉が震え、言葉が溢れようとした。

 彼女は腕に爪が食い込むほど強く力をこめる。

 耐える。

 耐える。

 耐えた。

 だが。

「っ!」

 そうして力をこめた少女の神経が、ズキリと痛みを知覚した。

 彼女にとっては、この二週間で馴染みのある痛み。

 指、ビーズ、バイブをはじめて使ってから、それに慣れるまでは感じていたものである。

 今日はそれよりも大きなものだったから、痛んでもおかしくはない。

 

 処女より先に――



 治まりかけた衝動が再び白井に襲い掛かった。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:41:36.92 ID:nAI/Ynsfo


「っ!」

 白井は身を折って、顔を湯に浸けた。浮かんだ髪がゆらりと拡がる。

 声は水中では形にならない。

 彼女の顔の左右で、ボコボコと泡が咲く。

 太股の間で、両拳が湯圧ゆえに緩やかに、バスタブの底を何度も殴った。

 屈辱、嫌悪、悔恨、恐怖、怨嗟。

 負の感情がないまぜになった中、白井は何度も声をあげ、泡を咲かせる。

 美琴に助けを求めようとした自分が情けなかった。 

 尻を犯された直後に、泣き叫んだ自分が悔しかった。

 何よりも、そんな中で快楽に喘いでしまった自分が哀しかった。

 いっそ、折れてしまった方が楽なのかもしれない。

 彼との『契約』は、満足させることだ。スルことさえスレば、美琴の安全は保証してくれるはずだ。

 いやむしろ、そういう風に積極的に、従順になった方が、彼も喜ぶかもしれない。

 それもまた、美琴を護る手段なのかもしれない。

(あぁ……)

 ミシミシと、心が悲鳴をあげ、胸の奥に再び、あの時自分に囁きかけてきた黒点が拡がっていく。ジクリ、と甘い毒が、心に滲んだ気がした。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:42:41.40 ID:nAI/Ynsfo


 しかしそれを止めたのは、



 ――黒子



 やはり、瞼の裏に焼き付いた、美琴の笑顔。

 折れた自分がその笑顔を向けられて、自分を恥じないでいられるのか?

「っ!!!」

 白井は一気に顔をあげた。

「ぷはっ! はっ――はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」

 いつの間にか限界以上に息をとめていたらしい。機関銃のように呼吸を繰り返す。

 顎先と髪先からポタポタと水滴が落ち、震える肩とともに、湯の水面が小さく波立った。

「……」

 いずれ必ず純潔を。

 今日の経験で、それは予想ではなく、想像のつく確信と変わっていた。

 犬のように這い、固いモノを押し当てられ、一気に貫かれる。

 それを明確に想像した白井の背筋に悪寒が走り、

「――っ」

 パン、と両の頬を叩く白井。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:43:39.86 ID:nAI/Ynsfo


「しっかりしなさい白井黒子! お姉様を護るのでしょう!」

 撫で回された身体は、シャワーで清めた。

 奥に出された白濁は、慣れてしまった手順で洗浄した。

 目を覚めました瞬間に不覚にも温かく感じた彼の体温は、湯の熱で拭い去った。

「わたくしが護ってみせますの……!」

 もう大丈夫だ。

 もう折れたりしない。

 絶対に御坂美琴の幻想を、殺させはしない。



 ――この動画撮った場所、使えそうだよな。



 ――今度から行く前に連絡しろよ。大丈夫だったら俺も行くから。



 別れ際に告げられた言葉。

 明日からは、自涜ではなく、彼からの行為が日常になる。

 その日常を繰り返した先にあるのは、貪り尽くされた自分自身と、美琴の笑顔だ。

 彼のことを話す時は白井が嫉妬してしまうほどかわいらしい、笑顔だけだ。

「……」

 それでも――いや、それだけで、どこまで浅ましく、汚らわしく、惨めに堕ちたとしても、耐えられる。

 湯を含んで、簾のように垂れた前髪。

 その向こう側にある瞳には、再び決意の光が灯っていた。 
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/01/26(木) 20:44:35.77 ID:nAI/Ynsfo



 ……決意に囚われ、決意にすがりついた光が、宿っていた。



242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:18:39.58 ID:UCBx2BnAo

「ん~っ」

 バスから降りて美琴は大きく伸びをした。

 夕暮れの空気が、胸に染み込んでいく。

「ぷはー」

 肺いっぱいの空気を吐き出すと、美琴は身体の中にあった淀みのようなものが消えたことを実感できた。

 学園の園から出ている巡回バスは、施設としての居心地はよいものの、美琴にはあまり落ち着ける空間ではない。それは乗客の少ない休日で同様である。

 常盤台も、学園の園も、そこから出ているバスも、どうにも学校という感覚がついてまわるせいだ。

 彼女は超電磁砲。学校が纏われば、どうしたってそこに行き着く。

 もちろん能力自体は美琴の誇りなのだが、肩書というのは往々にして肩を凝らせてくるもの。そして美琴はそういうのが苦手なのである。

「さて」

 ポケットから携帯を取り出して、時刻を確認。

 今日は休日なので普段より門限が遅い。まだ余裕があった。

 美琴は携帯とは逆のポケットを探り、食事券と書かれたチケットを取り出した。

 以前、何かの取材協力の時に正規の報酬とは別に渡されたものである。なんでもスタッフの親類が開店しているものらしい。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:19:53.42 ID:UCBx2BnAo

(みんなを誘って、これに行ってみようかな)

 有効期限が近い。それに、訓練での疲労もある。

 せっかく出てきたのだし、いつものメンバーと連絡をとって夕食というのも悪くない。

(黒子の復習ってのも、もう終わっただろうしね)

 朝から出掛けていたのだから、まぁ大丈夫だろう。

 そう思って、とりあえず待ち合わせ場所になりそうなカフェにでも、と顔をあげる美琴。

 踏み出しかけたその脚が、

「あ……」

 目の前の交差点を見て、とまった。

 美琴の口元に、本人も無自覚であろう喜びの微笑みが浮かぶ。

 赤信号待ち歩行者の群れ。

 その中に、見覚えのあるツンツン頭の姿があった。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:21:22.40 ID:UCBx2BnAo

「ほんとによかったのか? 別に上条さんだって、餓死するほど貧しくはないのですよ?」

「だから良いって言ってんでしょうが! 何回言わせんのよアンタ」

「いやでもやっぱり、年下に奢って貰うというのはですね」

「食事券自体がもらいもんなんだから奢るも奢らないもないわよ」

 交差点まで走って捕まえてうっかりビリビリしそうになるところを何とか抑えて。

 夕食の食材を買いに行くという上条を強引に誘った、その帰りである。

 そもそも奢り、というか食事券があるということで誘ったというのに、この男は店に入った当初から支払いのことばかり。

(なんでコイツ、バーゲンバーゲン言う割に、そういうところだけは気にするのかしら)

 かなり緊張しながら誘ったのに。

 照れ隠しで喧嘩腰にならないように一生懸命我慢したのに。

 せめて料理を楽しんでくれたら食事の好みも知れようものだが。

 救いらしい救いと言えば、すべて食べ終わった後に、

「すげぇ美味かった。誘ってくれてありがとうな、御坂」

 と真正面から告げてくれたことくらいだろう。

 そこまで思い出した美琴の頬が、かあぁっ、と染まった。

(な、なんだってコイツ、ああも真っ直ぐ人の目を見られるのかしら。そんな、たいしたことしてないのに。ま、まぁ、そういうところも好……き、きらいじゃないけどさ)

 みょうな言葉がするりと頭に浮かびかけて、美琴は慌てて首を振った。

 しかし抑えきれなかった何かが電撃に変わり、ビリビリと前髪を鳴らす。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:22:55.11 ID:UCBx2BnAo

「あ、あの御坂さん?」

「ななななな、なによ!?」

「いえ、なんでいきなりビリビリしてんでしょーか、と」

「なんでもいいでしょ!? アンタには関係ないでしょーが!」

 隣で高圧電流を流されて関係ないもないが、まぁそこは乙女理論。感情は理屈は凌駕するものである。

 普段であればここから美琴が突っ掛かり、恒例の追いかけっこが始まるところなのだ。

 だが、美琴は、はっ、とした表情を一瞬だけ浮かべて、さらに続こうとする乱暴な言葉を止めた。

(って、だめよ御坂美琴! 素直になるって決めたじゃない!)

 白井の、あの決意の顔を見たあとに、自分で決めた小さな決まり事。

 彼女のように凛とした目標ではないものの、どうしてか自分の中で、一番に変えなくちゃ、と思った事柄だった。

 美事は背筋を伸ばし、ゆっくりと深呼吸。。ジジジ、と電気が納まっていく。

「ご、ごめん。ちょっと、驚いちゃってさ」

 努めて冷静に、美琴が言った。

 しかし、

「……おい、御坂。大丈夫なのか? どこか具合が悪いのか? 熱でもあるんじゃないんだろうな」

 極めて真剣な上条の口調と表情。

「あ、アンタねぇ……」

 ヒクヒクと口の端がひくつる美琴であった。

 こうなれば、抑えた努力は無意味だ。いくら決意しても、短期間で人は変われない。

 美琴が(言葉で)噛み付こうと口を開け――
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:23:42.32 ID:UCBx2BnAo



 ――ぴと、と額にちょっと硬くて、柔らかい感触。



247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:24:58.15 ID:UCBx2BnAo

「え……」

「別に熱くはないけど、でも、引きはじめだったらやばいよな」

 視界には大きく、彼の右手。

 自分を救ってくれた、感謝してもし足りない男性の、右手だ。

「……」

「うーん」

「……」

「って、あれ? なんかだんだん熱くなって……」

「ああああああアンタなにやってんのよ!」

 のけ反って顔を離そうとする美琴。

「わ、ばか動くなって。よくわからないだろ?」

 しかし上条は、さらに近づいて右手を押し当ててくる。

「ぁ……」

 見えた彼の目は、真剣なそのもの。

 本気で心配してくれているのだ。



 ――素直にならなくちゃ



 小さな決意が聞こえてくる。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:26:39.42 ID:UCBx2BnAo

「……」

 美琴の脚が一瞬だけ、後ろに下がるかどうか迷い、

「……だ、大丈夫よ、熱なんか、ないから」

 その場に留まった。

 半端に持ち上げた両手はゆっくりと降ろされ、そのまま腰の後ろに。

 手指を組んで、居心地悪そうに、しかしどこか柔らかな雰囲気で、もじもじと。

「そうなのか? でもなんかやけに熱いんだけど」

「だい、じょうぶ。それ、風邪なんかじゃないから」

 美琴はそこで言葉を切り、小さく、本当に小さな声で、続けた。

「……お医者様でも草津の湯でも、治せない病気だけど」

「ん? なんか言ったか?」

「……なんでもない」

「?」 

 首を傾げる上条。

「まぁ、大丈夫ならいいけど、無理すんなよ?」

「わ、わかってるわよ」

 彼が右手を離す。

「……」

 すうっ、と体温がなくなっていくことを寂しく感じてしまう。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:28:21.88 ID:UCBx2BnAo

(ん……?)

 そんな中、彼の右手が掻き交ぜた空気に、ふと、かぎなれた香り。

 赤くなっていた美琴が、訝しげに眉をひそめた。

 かなり薄くて、気のせいかとも思ったそれは、

(黒子の香水?)

 自身と白井の部屋にいつも香っているものだ。

 元々、常盤台は化粧が禁止だ。同様の理由で香水もアウトだが、そこは常盤台の伝統。『気のせいかと思うほどほんのりと』香水を振る技術も確立されていた。

 この香りは美琴にとって、馴染み深いゆえに気がつきにくく、逆に気がつけば間違いないと確信が持てる。

(……なんでコイツから?)

 上条が自分からつけているとは初めから考えない。そもそもこれは女性用だ。

 もちろん市販品なので、彼の周りの誰かがつけていて、それが移ったということも考えられる。

 美琴の付けているものは制汗スプレー程度であって香りが違うし、白井は上条のことをそれほど好んでいない。会ったとしても肌に触れさせることはないだろう。

「……」

 上条にだって女友達はいるだろう。そうでなくとも学生だ。クラスメイトの半分は女子に違いない。

 休日なのだから、誰かと会って、その時に移ったのだ。少なくとも、どこかに遊びに出掛けていて移るにしては、弱すぎる香りである。

 要するに、深い意味はない。この香りは、たんなる偶然だ。

 そうとしか考えられない。

「……」

 考えられないのだが、どうしても、そうだとは思えない。

 理屈じゃなかった。これもまた、乙女の理論。

 いわゆるヤキモチからの疑問である。

 世界はそれを女の勘と呼ぶ。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:29:32.48 ID:UCBx2BnAo

「ね、ちょっと」

「?」

「……まさかとは思うけど、アンタ、香水なんて付けてないわよね?」

「は?」

「香水よ、香水」

「んなの、つけてるわけないだろ? 上条さんちにはそんな金銭的余裕はありません」

「……そう、よね」

 予想通り。

 支払いを気にしまくってる男なのだから、というかそれ以上に、美琴の知る上条は、そんな風な気をつかえるタイプではない。

(だったらやっぱり誰かから移った?)

 さっき、誰かと会っていたのか。

 そう問おうとして、美琴は一度だけ言い淀んだ。
 
 もし、誰かと会っていたら。

 もしそれが、友人というカテゴリー以上の相手だったら。

 しかし、美琴がその内心に何かのケリをつけるよりも先に、上条が「あー……」と漏らした。

 失敗した、と、言うような声色である。

「……なによその顔。アンタ、なんか私に隠してることでもあるんじゃないでしょうね」

 というか、何か隠している態度だ。

 乙女のなんやかんやもそうだが、彼があからさまに隠し事をしている態度に、苛立ってしまう。

 すっ、と美琴の両目が細まった。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:30:23.58 ID:UCBx2BnAo

「あいや、その」

「……私には、言えないこと?」

 次に、声に険と、寂しさが混じった。

 彼には隠し事が多い。それはなんとなく、わかっている。

 彼がそれを言わないのはきっと、それだけの理由があるのだろうし、きっと、美琴への配慮であるに違いない。

 しかしやはり、隠し事をされると言うのは、寂しく、辛いものだ。

 それが、自分の信頼している相手であれば、なおのこと。

「……」

 上条も美琴の内心がわかるのか、ガリガリと頭を掻いた。 

「……」

 それ以上何も言わない美琴の眼差しを見て、ひとつ、ため息。

 それから、

「いや、実はさっき」

 ポリポリと。

 気まずそうな顔で。

「白井と会ってたんだ」

 と、上条は言った。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:31:32.68 ID:UCBx2BnAo

「ただいまー」

 言いながらドアを開け、美琴は自室に入った。

「お帰りなさいまし、お姉様」

 勉強机についた白井が、振り返って応える。

 机に拡げられているのは、参考書か何かだろうか。

「アンタも帰ってたのね。お疲れ様。マナー講座? だっけ。どうだったの?」

「普通、ですの。基本の復習のようなものでしたわ。もっとも、それが一番大切で、難しいのですけど」

 微笑を浮かべて返す白井。

 返ってきてシャワーを浴びたのか、髪はどこかしっとりとしている。

 美琴は「そう」と簡単に返事。クローゼットを開け、ハンガーを取り出した。

「……それより、黒子?」

 上着をハンガーにかけ、今度はクローゼットにしまいながら、美琴が言った。

 位置関係的に、美琴も白井も、お互いに背を向けた形。

「何ですの?」

 いつもどおりの様子で、白井が問い返す。

 サラサラとシャープペンシルが線を書く音は、淀みない。まるで適当に落書きでもしているかのように。

「アンタさ」

「はい」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:32:13.68 ID:UCBx2BnAo



「今日、アイツと会ったんですってね?」



254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:33:02.48 ID:UCBx2BnAo

「――!?」

 ビクンッ! と白井が震えた。

 アイツ――美琴がそんな呼称をする相手など決まっている。

 しかも、ただ問われただけではない。

 美琴の声は、いつもよりも低く、僅かに怒気の混じったものだったのだ。

「なっ、えっ、そっ、なっ……?」

 ひくっ、ひくっ、と喉が痙攣するように動き、白井は言葉を作れない。

 錆びたネジを回すように、ぎこちなく巡らした首。

 背後の美琴は、クローゼットに上着をかけた姿勢で、白井に背を向けている。

「今日、たまたま偶然、アイツと街で会って。……それで聞いたのよ」

「……、……」

 声の調子は変わらない。呼吸のとまった白井は、次の声も発せられない。

 しかし美琴が振り返る気配。

「っ」

 白井は弾かれたように、顔を前に戻した。

「……」

 トン、トン、と美琴が床を歩く音がする。

 その音が白井に近づいてきていた。

「……。……」

 その音一回一回に、身を震わせ、カタカタと歯を鳴らす白井。

 とても振り向けない。とても美琴の顔を見ることができない。

 やがて足音が真後ろで止まる。

 白井の震える右手から、ポロリと、シャープペンシルが零れた。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:34:12.94 ID:UCBx2BnAo

「ねぇ、黒子」

「……」

 返事もできない。

 しかし美琴は、そんな様子に構う事なく、言葉を続けた。

「聞いたわよ? アンタ、疲れて公園で倒れかけたんですって?」

「え……」 

 それは、無茶を叱る柔らかい声。

「黒子には黒子の目標とかあるんだろうし、その努力をやめろなんて言わないけど……それにしたって限度を考えなさい」

「……」

「ここんとこ、毎日何かの訓練してるんですって? そんなんじゃ、身体を壊しちゃうわ」

「……」

「アンタの目標の一部に私がいるのは嬉しいし、それを目指すのはいいんだけど……身体壊すんだったら、私は嬉しくなんかないわよ?」

「……は、はい、ですの」

 白井がぎこちなく頷く。

「まぁ、よりによってたまたま通り掛かったアイツに介抱してもらった上に、倒れた理由まで聞き出されたなんて、言いづらいのはわかるけど」

 くすり、と美琴が苦笑した。

 淑女になろうとは言え、中々今までの癖を拭い去るのは難しい。

 それこそ、美琴が素直になろうとしているように。

 白井の上条嫌いは、結構な深度だ。

 上条相手に弱みを見せたとあれば、美琴への口止めをさせるのも頷ける話である。

 しかしここで美琴から告げてしまったのだから、次に上条と白井が会えば、きっと彼は痛い目に遭うだろう。

(ま、これくらいはいいわよね)

 いくら白井が相手とは言え、他の女性の香りをつけて自分の前に立った罰だ。

 美琴は、自分の小さな決意――素直になること――を自分自身に少しだけ実行し、小さく笑みを漏らした。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/01(水) 02:35:21.15 ID:UCBx2BnAo


 背中越しに、美琴が幸せそうに微笑する気配。

 白井は、美琴に決して気がつかれないように唇を噛み締め、

「……」

 胸に、そっと、右手を当てた。 
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:36:00.15 ID:/akQKQv+o

 学園都市のビジネスホテルが賑わうのは、もっぱら夜からである。

 それは利用者の多くが、遅くなりすぎて『家に帰る手段をなくした』大人たちであるからだ。

 何しろここは(少なくとも名目上は)学生のための街だ。最終下校時刻以降の外出を防止するため、日が落ちると公共交通機関は激減する。

 そのため、まだ夕刻である今は、ホテルの廊下にひと気はない。

 しかし不意に誰かが部屋から出てくるとも限らない。

 私服姿に着替え、髪を解いた白井は、足早に部屋に入った。

「……」

 パタリ、と背中でドアが閉まると、入室を感知したセンサーが自動的に明かりを点ける。

 間取りは確認する必要もない。今まで数回、『拡張』時に利用しているのだ。

 5歩分しかない、カーペット敷きの通路。窓際に並ぶテレビや、スタンド。部屋の6割の面積を占めるベッド。通路の途中で右手側にあるドアは、中でさらに左右に入口を持っており、浴室とトイレがある。

 標準的なビジネスホテルだ。

 白井は故意に事務的な動きで通路を抜け、クローゼットの扉を開けた。

 ハンガーだけがかかっているそこに、常盤台の制服を入れたスーツバッグをしまい込む。

 今日は風紀委員の準勤務日。

 警ら等の通常業務はないが、事件があれば呼び出される、いわゆる待機の日だ。こうしている間にも呼び出されるかもしれない。

 制服を持ち歩かないわけにはいかないが、少しでも部屋の空気に晒したくない――特に腕章をそうすることは、避けたかった。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:37:53.19 ID:/akQKQv+o


(運が悪ければ、ここから出動することになりますわね)

 白井の瞳が、不安そうに揺れる。

 呼び出されるということ――つまり、余剰人員すら投入する事件が起こるということは、一刻の余裕もないということに等しい。

 そんな中、のんびりとシャワーを浴びることなどできはしない。

 情事のニオイを纏わり付かせたまま、出動することになるのだ。

「……」

 いや、ことによると。

 自分は出動することが、できないかもしれない。

 彼が、許してくれなかったら。

「……」

 白井は唇を噛みながら、丁寧にクローゼットを閉めた。

 しかしどうしようもない。本当に出動がかかれば、なんとか説得するしかないのだ。

 そう、たとえば、

(次はきちんと満足をさせますから、とでも言って……?)



 ――ズクッ、と白井の下腹の奥で、何かが動いた。



269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:42:42.18 ID:/akQKQv+o

「っ!」

 即座に首を振り、息を止め、右手を胸に当てる。その右手を左手で包み込み、目を閉じて俯いた。

 告げられる恐怖を、意識的に思い出す。

『今日、アイツと会ったんですってね』

「!!!」

 あの時感じた凍つくような感覚が背筋をかけあがり、白井はぶるりと身を震わせた。

「――はっ」

 悪寒を吐き出すように一息。頬が強張っているのが、自覚できる。

 その時にはもう、腹の奥で動いたはずのナニカは、恐怖に凍らされていた。

「……」

(ごめんなさいお姉様……)

 続いて襲い掛かってくるのは、とてつもない罪悪感だ。

 美琴を護るため。

 その思いと彼への嫌悪で表面化していなかった感情は皮肉にも、自分を心配してくれる美琴によって形持たされていた。

 事情はどうあれ。

 白井は美琴を裏切っているのだから。

「……」

 白井が胸の痛みを庇うように右手と、それを包む左手に、きゅっ、と力をこめる。

 それとほぼ、同時に。

 トントン、と部屋のドアがノックされた。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:43:32.49 ID:/akQKQv+o

「っ!」

 即座に首を振り、息を止め、右手を胸に当てる。その右手を左手で包み込み、目を閉じて俯いた。

 告げられる恐怖を、意識的に思い出す。

『今日、アイツと会ったんですってね』

「!!!」

 あの時感じた凍つくような感覚が背筋をかけあがり、白井はぶるりと身を震わせた。

「――はっ」

 悪寒を吐き出すように一息。頬が強張っているのが、自覚できる。

 その時にはもう、腹の奥で動いたはずのナニカは、恐怖に凍らされていた。

「……」

(ごめんなさいお姉様……)

 続いて襲い掛かってくるのは、とてつもない罪悪感だ。

 美琴を護るため。

 その思いと彼への嫌悪で表面化していなかった感情は皮肉にも、自分を心配してくれる美琴によって形持たされていた。

 事情はどうあれ。

 白井は美琴を裏切っているのだから。

「……」

 白井が胸の痛みを庇うように右手と、それを包む左手に、きゅっ、と力をこめる。

 それとほぼ、同時に。

 トントン、と部屋のドアがノックされた。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:44:36.26 ID:/akQKQv+o

「すげぇよな、こんなところを気安く借りられるんだから。やっぱ空間系の高レベルって、奨学金や実験報酬が多いのか?」

「……ええ、それなりには」

 ベッドに腰掛け、物珍しそうに室内を見回す彼に、白井は押さえ付けた平坦さを持つ声で答えた。

 三日前の、あの日。美琴がシャワーに入ってから。

 どういうつもりか、と電話で問うた白井に対し、彼の返答は「手を出さなきゃいいんだろ?」というものだった。

 白井としては、自分がこうしている以上、美琴と接触はしてほしくもない。ましてや、自分たちが会っているという情報など、たとえ冗談でも伝わってほしくないのだ。

 現実問題、前者については今までも美琴の側から接触する形だったのでなんともできないが、後者はどうとでもなる。ましてや今回のように、身体に触れた、と明確にわかる話をするなど、言語道断だった。

 しかし今の彼を見る限り、その一件はまったく気にしていないようだ。

 不機嫌そうな白井を見上げる視線は「まぁいつものことか」くらいの色である。

「じゃあ先にシャワー浴びてこいよ」

 ひとしきり観察の終わった彼が、ベッドに腰掛けながら、シャワールームへの入口を指した。

「……何をなさるつもりですの?」

 今日は、いつものような洗浄器具は持ってきていない。今からホテルに行く、と彼にメールを送ったとき、そう指示されたからだ。

「そんな警戒するなって。別に覗いたり、乱入したりしねぇよ。ただのレディファーストさ」

「紳士的で何よりですの」

 皮肉を込めて、白井が言う。彼はその言葉に苦笑した。
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:46:38.12 ID:/akQKQv+o

 昨日も、一昨日も、『拡張』は続けさせられている。ビデオメールも同様だ。

 しかし、そのどちらにも、彼は来ていない。

 流石に、彼も女子トイレに侵入するのは控えたいようで、ホテルに入る時だけでいい、とのことであった。

「では、お言葉に甘えさせていただきますの」

 ツインテールを靡かせて、バスルームに向かう白井。

 どうせ逃れられないし、そもそも逃れるという選択肢もない。ならば早く済ませるのが上策だ。

「ああ、ゆっくりでいいぜ? 俺はこのベッドの感触をもう少し味わってたいからさ」

「……」

 子供のようにクッションを確かめる彼から視線を外し、白井はドアをあけ、中に入った。

 入ってすぐに洗面台があり、左右に再びドアがある。左はトイレで、右はバスルーム。

 真正面の洗面台に映る表情は、硬く、嫌悪の表情が覗いている。

 勤務日は公衆トイレを。待機はホテルを。

 なんでトイレとホテルを使い分けてたんだ、という彼の問いに、ばか正直に答えたのは失敗だった。

 公衆トイレがいっぱいだったから、とでも言っておけば、彼を呼ぶようなことにはならなかったかもしれないのに。

(……いえ、それは甘い考えですわね)

 白井は首を振り、その思考を打ち消した。

 そうなれば、もっと見つかる危険のある状況を強制されたに違いない。

 己の裁量がある今の方が、まだマシだろう。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:47:56.75 ID:/akQKQv+o

(……それよりも、)

 今日は何をするつもりなのか。

 『器具』を持ってきていないのだから、洗浄もできるわけがない。

 てっきりまた、前のように――



 ――尻を高くあげ、後ろ手に縛られ、肛門を犯され――



 ――ズクッ、と再び下腹の奥でナニカが動いた。

「っ!」

 慌てて首を振る白井。

 再び『恐怖』で払拭しようとするが、今度は上手くいかない。

 生々しい行為の方が、より強く思い出されたからだ。

 激しく、貫かれた記憶。

(か、身体が驚いているだけですの。あんな激しいこと、普通ではありませんから……)

 ただそれだけですの。

 そう頭の中で呟き、動くナニカから目を逸らし、白井は右手側のドアを開けた。

 脱衣所は、当然のごとく利用者を待ち構えている。

 ここで服を脱ぎ、身体を清めれば、彼の前に出なければならない。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:49:01.66 ID:/akQKQv+o

(だとすれば、やはり、やっぱり……)

 そろり、と右手で、スカート越しにソコを押さえた。

 カチカチ、と奥歯が鳴りはじめる

 それはすぐに全身に伝播をはじめて、

「っ!!!」

 白井は奥歯を強く噛み合わせた。

 ガチン、と音が響き、震えが止まる。

「わたくししかおりませんの。わたくしだけが護れるんですの。わたくしが護りたいんですの」

 それは白井の唇から奏でられた。

 何度も唱え続けて、もはや言葉や声ではなく、呼吸の一部のように、淀みなく。

「わたくしさえ我慢すれば、お姉様は笑っていられるんですの……!」

 それは、まるで呪文のようだった。
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:50:32.32 ID:/akQKQv+o

「寒くないか?」

「だ、大丈夫、ですの」

 彼の言葉に、白井は横を向いたまま言った。

 彼女の口調がやけに素直なのは、理由がある。

 素裸。

 ベッドの上。

 身体に浴びせられる視線。

 いずれも、忌まわしいことに初めてではない。

 ただひとつ異なったのが、

「そんなに恥ずかしいか?」

 仰向けに寝転んだ彼も、その三要素を満たしているということだ。

 彼の両脚の間に正座し、身体を前に倒した白井。

 それこそ土下座のような恰好の彼女の目の前にあるのは、隆々とそそり立っている、彼のペニスだ。

 いや正確には、嫌悪と羞恥で顔を逸らしている彼女の右頬の前に、か。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:51:28.30 ID:/akQKQv+o

「あ、当たり前ですの!」

 まったく見たことがないわけではない。何年も前に父親と風呂に入ったこともあるし、保健の授業では写真入りの教材だってある。

 こういう風に立ち上がった状態だって、風紀委員の仕事でその手の変態を取り締まった時に目撃していた。望んだわけではなかったが。

 望んでいないことは今も同じだが、状況が違いすぎる。ここまで間近では初めてであったし、

(こ、こんなものを、本当に、口で……?)

 血管の浮いたそれを目の端で捉えながら、白井は彼の要求を頭の中で繰り返した。

 彼は交わりではなく、口淫を望んできた。

 こういう行為があるのは当然知っている。いずれ必ず、させられるということは予測していた。

 しかし実際に間近で見た白井は、とても直視することができないでいる。

 赤黒く、ヒクヒクに震え、熱を持ち。

(わたくしを、あんなに激しく貫いたモノ……)

 すぼまりを出入りした、あの感触。

 手を触れていない今でも、その硬度は想像できた。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:52:43.94 ID:/akQKQv+o

「さ、観察はもういいだろ? そろそろ始めてくれないか?」

「っ」

 はっきり言って醜悪としか思えないペニスにキスをし、口内に含み、舌を絡め、唇で扱き、そして吐き出される汚濁を受け止めなければならない。

 想像するだけで、吐き気を催す。

 そもそもの彼への嫌悪感に加えて、このペニスは三日前には己の肛門に突き込まれていたモノだ。

 彼も入浴しているだろうし、いまさっきシャワーを浴びている。

 それでもその意識は消えてくれない。

 しかし、彼の促しは、命令のようなものだ。

 おずおず、と白井の手が伸びた。

「っ」

 白魚のように細く綺麗な指が巻き付き、ピクリと震える彼。

(硬い……ですの)

 それは想像どおりの硬さがあった。

 血液の流れが指先ではっきりとわかるほど、内側から張り詰めている。

(熱い……ですの)

 そしてそれは、想像以上に熱をもっていた。

 シャワーによるほてりなどでは決してない、人肌よりも確実に高い体温。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/04(土) 22:53:56.04 ID:/akQKQv+o

「……」

 ちらり、と彼を見上げる白井。

 怒張の向こうから投げ掛けられる彼の瞳には、期待はあっても、侮蔑はない。

「は、始めますの」

 自分を後押しするために、声に出し、顔を寄せる白井。

 近づくにつれて、怒張からの熱を頬に感じる。

 いま、自分は。

(こんなこと、たいしたことではありませんの)

 土下座するように身を縮めて、男の股に、顔を埋めようとしているのだ。

(お姉様のためですの)

 精液を吐き出すところを、舐めしゃぶろうと言うのだ。

(純潔より先にお尻を犯されたことに比べたら、このくらい……)

 そして。

「んっ……」

 唇の間から差し出された舌先が、ペニスの表面に触れる。 
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:44:28.18 ID:LTTmuyHpo

 てろ、てろ、てろ、と。

 指が緩く絡んだペニスの裏筋中ほどからカリ首までを、白井の舌が舐め上げる。

 動きはゆっくりと。

 左肘で上体を支え、右手指をペニスに緩く絡ませた白井の首と口が痛まない程度の早さで。

「んっ……んん……」

 探り探りと戸惑い、さらには嫌悪の雰囲気が見て取れる白井の動きだが、しかしそれでもただ上下するだけでもなかった。

 時に裏筋を、時に舌先でカリ首の溝を、時に赤く充血した亀頭を、舐め、なぞり、ねぶる。

「とりあえずはアイスとかを舐める感じだよ」

 舌先をペニスに当てたまではいいものの、そこから20秒ほど動けなかった白井に、彼がかかけた言葉である。 

「そのくびれてるところとか、縫い目みたいなところ。あとは先っぽのところとかを重点的にな」

 彼のモノを舐める。

 その状況に吐き気を耐えていた部分もあったのだが、何をどうすればいいのかわからなかったのも事実。

 ありがたいとは決して思わない指示指導に従っての動きは、忌ま忌ましいことにそれなりの効果があるらしい。

 起立はますます硬度を増し、僅かだが生臭いニオイ――性臭を臭わせ始めていた。

 鼻を抜ける生臭さにえずくのを辛うじて堪えながら、顔を右に傾けて幹部分に舌を這わせる。

「んぅ……ふ……ん」

 その拍子に、解いた髪が一房、パサリと頬にかかった。
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:45:40.83 ID:LTTmuyHpo

「ん……」

 恥羞によって朱に染まった少女の頬。そこにかかる黒髪とのコントラスト。

 白井はそれを左手で掻き上げ、邪魔にならないように耳にかける。

 ふわりと、己の髪の香りが、性臭と混ざったのがわかった。

「……」

 彼から、何やら含みのある気配。

「……なんですの?」

 白井は口を離して問うた。

「ああ、いや」

 険しい視線に彼は苦笑し、

「今の仕種、艶っぽいなって思ったんだよ」

 と、てらてらと唾液に光るペニスの向こう側の、その彼女の瞳を見ながら言った。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:47:00.52 ID:LTTmuyHpo

「……」

 虚を突かれ、ぽかんと言葉を失う白井。

 だがすぐに眉を潜め、続いて彼の視線から逃れるように、舌の動きを再開させる。

 誉められたのかもしれないが、相手と状況が悪すぎた。

 かけられた言葉を無視するように、あえて舌の動きを早める。

 唾液がそれを生み出した舌に絡まり、ピチャ、ピチュ、と音をたてた。

 彼は、やれやれ、と一息

「じゃあ次は、唇かな。キスしてみたり、くっつけて横に滑らせたり、吸ってみたりしてみてくれ」

「っ!」

 キス。

 その単語に、白井は心がギシッ、と軋むのを感じた。

 過剰な神聖さを抱いているわけではなかったが、それでも白井は、ただ舐めるということに比べてキスというものを、どこか大事なモノのように感じてしまうのを止められない。

(……)

 無意識に舌がペニスから離れる。

 美琴のことを思って大切にしていた。目の前の男に契約代わりと奪われた。そしていま、ただ性の道具として使う。

「わかりました、の」

 白井は一度だけ、ぎゅっ、と目を閉じてから薄く開き、

「んっ……」

 瑞々しい唇が、醜悪な剛直に押し当てられた。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:47:50.95 ID:LTTmuyHpo

「んんっ……ちゅっ、ちゅぶ……」

 押し当て、離し、押し当て、滑らせる。吸った拍子に、少しだけ冷えた唾液が性臭をとともに口の中に入ってくる。

「ああ、あと舐めるのも一緒にな?」

「……はい」

 右手に僅かに力がこもり、しかし指示に従う白井。

 舐めるときと同様、うずくまった姿勢から膝で身体を持ち上げて顔を寄せた。

「んっ、んぅ……ちゅぷ、ちゅ、ちゅる……んぅ、れろ……」

 キスの雨を降らせ、その合間に舌がてろてろとペニスを濡らす。

 時折頬にペニスが当たり、唾液が頬を彩った。

 舐め、接吻し、吸いつき、滑らせ、頬を掠め。

 小さな水音だけが、ビジネスホテルの室内にただ響く。
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:48:55.46 ID:LTTmuyHpo


(どんどん、熱くなって……)

 唇と舌と頬から、その脈動と熱が伝わってくる。

 充血したペニスは、もう褐色と言っていい色に。

 白井はもう何度目かわからないループを繰り返すため、顔をやや下げ、その根本に舌を当てた。

 たっぷりと唾液を乗せた舌の腹で、先端までを、ぬろおっ、と舐め上げる。

 唾液を増やしているのはその方が滑りがよくて楽だと気がついたためだ。

 ゆっくりと言うには若干勢いよく動いた舌が亀頭から離れ、移りきらなかった唾液が糸をひく。

「っ……白井、次はくわえてくれ。歯をたてないようにな」

 次の指示。

 白井の動きが止まり、その眉がひそめられた。

「……」

 しかし次の瞬間、白井の顔は無表情に変わる。

 そのまま口の中で何事かを呟いた後――ぐっ、と身体をやや前に乗り出した。

「んっ」

 大きく開けた唇を剛直の先端を被せる。

 赤黒い亀頭が、口内に沈んでいった。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:50:27.25 ID:LTTmuyHpo


「ん……んんん……」

 先端だけでは終わらない。

 どうせ命じられるのなら――まるでそう言うかのように、白井は自ずから顔を下げ、深くペニスを口に収めていく。

 カリ首が歯の間を通り、先端が口腔上部に触れた。反り返ったペニスはその角度ではそれ以上飲み込めない。

 だからさらに身体を前に傾ける。

 正座のように踵に触れていた尻が浮き、動いた空気がいつかのように――尻を犯される直前に感じたように、尻たぶの間、秘裂と肛門を撫でていった。

「んぐ……んんぶ……」

 しかしそれでも、物理的な限界というものがある。

 小柄な白井の口に収まったのは、結局全体の半分程度。これ以上くわえこもうとすれば、それこそ喉まで使わなければならない。

 ディープスロート、と言う単語は知っているが、とても無理だった。いまでも苦しくて、目の端に涙が浮かんでしまっているのである。

「そこまででいい。無理すんなよ」

 ちょうどそのタイミングで、彼が白井の頬を撫でた。

「そのまま顔を動かすんだけど、いまみたいに限界まで飲み込まなくてもいいからさ。それよりも唇で扱くみたいにして、後は口の中で舐めるんだ。ペースは白井に任せる」

「んん……」

 鼻だけで息をしながら、白井は頬に添えられた彼の手を払った。

 頭を動かすのに邪魔だと言うことと、何より、気遣われたくなどなかったのだ。

 開き気味に投げ出した彼の脚の間で、少女の頭が上下を始めた。
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:51:20.17 ID:LTTmuyHpo


「んっ、んぅっ、んんっ、んっ」

 剛直が出入りし、ぐちゅぐちゅと音をたてる。

 口内に満ちる性臭が、直接鼻に抜ける。

 口の周りが唾液にまみれ、おとがいに向けて垂れていく。

 長く、ウェーブのかかった白井の髪がその白い背中を撫でるように揺れる。

 舐めるときより、キスするときよりも激しい運動と、鼻でしか呼吸のできない状況に、白井の息がふーっ、ふーっ、荒くなっていく。

「……?」

 それに伴い、ペニスの向こう側から響く彼の吐息も、徐々に乱れ始めた。

 水音と己の呼吸音。

 その間に混じる彼の吐息の調子に、白井は覚えがあった。

(気持ち、いいんですの……?)

 それは白井が自涜のとき、声を漏らさないためのものだ。

「……」

 試しに顔を前後させながら舌先だけを幹に当てて小刻みに動かしてみる。

 すると、彼の脚が小さく震えるのが二の腕から伝わってきた。

 快楽を、得ているのだ。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:53:39.02 ID:LTTmuyHpo


(では、こうすればもっと……)

 浅くくわえ、カリ首をぐるりと刺激する。

 先ほどよりも大きく、震えが響いた。

 自分の攻めで、彼が追い詰められている。

 自分を蹂躙するだけだった、彼が。

 自分が。

(……)

「っ?」

 と、彼の呼吸に僅かな戸惑いが混じる。

 いきなり白井の動きが変わったせいだ。

「んんっ、んぐっ、んぶっ、んふぅ」

 歯が当たらないように口はあけたまま、しかし幹は唇で締める。

 裏筋に添えるように当てた舌はときおり左右に動き、あるいは舌先が横側を舐めた。

 口腔の上側で先端をこすり、あるいは頬の内側に埋める。

 浅くくわえて、カリ首を唇でやわやわと圧迫した。

 時折故意に唇を緩めて、グポッグポッと出入りの音を響かせる。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:55:06.66 ID:LTTmuyHpo


「んんふっ、んぶっ、んっ、んんんっ」

 白井は口淫など初めてだ。

 だが、能力的に複雑怪奇な演算をこなし、また、常盤台の先進的な授業についていける頭脳である。

 開始してから今まで。

 指示されて行った行為と偶然行った行為の中で、彼が同様の反応を示した動きを思い返してトレース、あるいは組み合わせ、そしてまたあるいは予測し、実行する。

 性感帯は概ね決まっている。

 ならば後はそこをどう刺激するか――どう興奮を高めるかがポイントなのだ。

「んぐっ、んふっ、んんんっ、んむんっ」

「っ……っ……っ……」

 じゅる、じゅる、と音が響く。

 己が行為に効果があったのは、彼の呼吸がさらに早まったことと、伝わる震えが大きくなったことと、脈打つペニスからの性臭が強くなったことで確認できた。

 上下する視界の端で、彼が拳を握りしめるのが見えた。

 ぐぐっ、とペニスの根本から、ナニカが競り上がってくるのを唇に感じる。

 近い。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:56:50.47 ID:LTTmuyHpo

「んんっ」

 白井はさらに頭を大きく、早く動かし、唇を締めた。

 それはしゃぶるというよりも口で扱くという表現が相応しい。

 自分が飲み込めるギリギリまで彼の股間に顔を埋め、亀頭から離れる寸前まで顔を引き、また埋める。

「うあっ」

 彼が初めて声らしい声をあげた。

「んふっ」

 それがどこかおかしく、くぐもった笑いが漏れた。だがそれはねばついた水音に遮られて、彼の耳にも、彼女の耳にも、彼女の心にも届くことなく、消える。

 だから白井は同じように、前後抽送を繰り返した。

 頭の動きが大きくなった分、持ち上げられた尻がゆらゆらと揺れる。

 運動量が増え、頬に、首に、背中にうっすらと汗が浮いた。

「んぷっ、じゅるっ、んんんんっ、んちゅっ」

 一往復ごとに、ナニカが上にあがってくる。

 根本、幹半ば、カリ首。

 そしてついに、ナニカが先端に。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 17:58:02.50 ID:LTTmuyHpo

「んんっ!」

 そのタイミングをもって、白井は顔をひき、舌の裏側で亀頭の先端――尿道を、ぬるりと横に撫でた。

「くっ! 出すぞ白井っ」

 彼が歯を食いしばり、そう宣言した。

 口内の亀頭が一層膨れあがり、次の瞬間。

「!」

 ペニスが鳴動し、大量の白濁が白井の舌を、口腔を、喉の入口にたたき付けられた。

「んぐっ、ぬぶっ、んんんっ」

 ビクンビクンと何度も震えるペニス。

 奥に向けて射精されているとはいえ、量が問題だった。白井の小さな口はすぐに一杯になってしまう。

 苦み、辛み、生臭さ。

 とても飲み込むことができず、白井はペニスを口から引き抜いた。

「ぶぱっ、えぶっ、うえっ――げほっ、げほっ、かはっ!」

 目からは浮いた涙が零れ、口からはどろどろの白濁が漏れる。

「はあっ、はあっ、けほっ、はあっ、はあっ」

 阻まれていた呼気を取り戻すかのように、肩を上下される白井。

 ゆるく開いた唇の端から垂れた唾液は、白濁まじりゆえに粘性に富み、ぬるりと糸を引いて、正座をした白井の膝に落ちた。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 18:00:09.13 ID:LTTmuyHpo


「……では、これでお暇いたしますの」

 シャワーを浴び、私服に着替え、制服の入ったバッグを持ち。

 白井は、制服姿でベッドに腰掛けたままの彼に言った。

 ここはビジネスホテル。その気になれば明日の朝10時まではチェックインしていられる。

 もちろん白井にはそんなつもりはない。業務でやむ終えなくならばともかく、宿泊など常盤台が許さない。

 そもそもこんなことの後に、泊まりたいとも思わなかったが。

「俺はもう少し休憩していくよ。これ、カードをフロントに返せばそれでいいんだよな? 料金とか、とられないよな?」

「……清算はチェックイン時に済ませているので大丈夫ですの。冷蔵庫の飲み物を飲んだり、有料のチャンネルを見れば別ですが」

 彼の口調とその内容に若干の情けなさを感じながら、一応はありのままを告げる。

 冷静に考えればここの代金を請求してもいい気もするが、ここを選んだのは白井だ。彼に任せたら、それこそどこで何をされるかわからない。

「では、これで」

 背を向け、ドアに向かおうとする白井。

 そこを、

「あ、ちょっと待てよ」

 彼が呼び止めた。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 18:01:43.16 ID:LTTmuyHpo


「……っ」

 これ以上何かするつもりなのか。

 踏み出しかけた脚を止め、白井の肩が僅かに震える。

 ゆっくりと、嫌味のような動きで振り向いた先にあったのは、ひょい、と放り投げられた紙袋。

「え」

 思わず、という調子で受け止めてしまう白井。

 ガサリ、と乾いた音が、腕の中で響く。

 中に何か入っている。

「それやるよ。練習するときと、それから拡張……ああ、いまは維持かな? それと、オナニーするときは必ずそれを咥えてやるようにな?」

「……」

 彼の言葉に何が入っているのかを概ね推測しながら、紙袋を開く。

 バイブレータ。

 それも、大きさは先ほどまで咥えていたものに、近い。

「流石に俺のと同じ形じゃないぜ? でもバカにしたもんじゃなくてさ。臭いや味は本物に近いらしい」

 確認したわけじゃないけどな、と彼は言葉を追加。

「……」白井は俯いたまま返事もしない。

 彼はそれを気にしなかった。

 ニヤリと酷薄な笑みを浮かべる。

「今日は、ずいぶん積極的だったよな。次もああいう感じで頼むぜ?」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 18:03:17.93 ID:LTTmuyHpo

 部屋を出て、乱暴にドアを閉める。

 バタンという音も置き去りに、白井は廊下を歩き始めた。

 先ほど受け取ったバイブは、忌々しいことに、制服を入れたバッグの中にある。

 誇りある常盤台の制服とこんなものを同梱することに抵抗はあったが、いまはそれよりも、脳裏に響く彼の言葉の方が白井にとっては心の枷になっていた。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 18:05:00.28 ID:LTTmuyHpo



 ――今日はずいぶん積極的だったよな



322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/12(日) 18:06:59.65 ID:LTTmuyHpo

「……」

 確かに、今日の自分は少しおかしかった。

 特に後半の、自分は。

 その考えは、口の中に思う様に出された後に、シャワーを浴びながら考えていたことだ。


 ……あんなに、自分が積極的に、彼に奉仕するなどと。


(早く終わらせるためですの)

 白井はそう思う。強く思う。

 シャワーを浴びながら結論づけた、自分の口淫――特に後半の、積極的な自分の動きについて、そう思っている。

 技巧に長ければ、それだけ早く終わる。

 屈辱でも彼が悦べば、美琴の危険は減っていく。

(……それだけ、ですの)

 白井は廊下を強く踏みしめ、歩く。

 足音で、己の心の中にある感情を、払拭するかのように。




334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/13(月) 17:32:49.74 ID:P4Awa66Eo
え? なんなん? 黒子エロいんですけども? ああぁーエロい
乙 
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/16(木) 22:59:21.55 ID:IrtRitXp0
黒子が堕ちる瞬間が楽しみで仕方がない 
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 01:51:27.53 ID:71mRNDgIO
着実に堕ちていってるな……

乙乙!
        

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