2013年10月1日火曜日

絹旗「変態!変態!!超変態!!!」

1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga saga]:2011/04/02(土) 13:49:51.40 ID:9hgPuJYU0
我らが天使、絹旗最愛ちゃんが人生という広大な迷路に迷うようです。
変人変態ばかりのとある寮でお送りするショートドラマ。

一話1~10レスまでの短編になります。
暇つぶしにどうぞ。

注意事項

・考えずに感じるSS
・地の文ありです。台本形式になったりもします。
・絶賛キャラ崩壊中だぜひゃっはぁ!
・ネタSSですのでこまけぇryで生暖かい目でご覧ください
・窒素装甲、上琴、浜壺、百合もあり。
・投下中のレスは全然構いません。てかむしろしてくれたら嬉しいです

>>1はこの板でも屈指の遅筆のため不定期の更新になります。ご勘弁ください。 因みに私は一度の投下で5レスを目標とするクズでございます。
 暇な時にお読みください。

それでは始めさせていただきます 
2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga saga]:2011/04/02(土) 13:51:41.60 ID:9hgPuJYU0
第一話『恋ってなんだろう』


「これは恋なのでしょうか……?」

ふと漏れた本音。
絹旗最愛は『恋』という人生最大の難関にぶち当たっている。

なぜ自分が?
なぜアイツに?
なぜこれほどまでに胸が痛む?

趣味であるB級、C級の映画やTV、雑誌などでそういったものはよく目にする。
しかし、見ることと体験することではこうも違うものなのかと絹旗は思う。

はぁ、とため息ばかりが口から出る毎日。
アイツからの着信がないかと携帯を開いては閉じる。

これが、世間一般に言う『恋焦がれる』ということなのだろうか?
経験のないことなので絹旗はその疑問の答えを見つけられないでいた。

「まぁ、この感情は『好意』だと認めましょう」

百歩どころか千歩、いや万歩譲って。

「でも……」

絹旗は続けて叫んだ。

「なんであんな超変態相手なんですかあああああ!!」

第一話 完 
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga saga]:2011/04/02(土) 13:52:14.89 ID:9hgPuJYU0
第二話『私は絹旗最愛』 


とある晴れた休日。
絹旗は日課になっているジョギングをしていた。

「まぁジョギングは初めの5分くらいであとは超散歩なんですが……」

誰に言うわけでもなく呟く。
晴れ渡った空が青く心地よい日。

コンクリートや最新技術を使った人工建造物群の真っただ中で生活している。
そんな絹旗は空が好きだ。
自然は守るべき地球の遺産である。森林伐採反対。などと自然超愛好家のように行き過ぎた極論を
述べるほどではないが、この街で天然の自然を感じられるのは空くらいなのだから。

空に向けられていた視線を戻せば、見えてくるのはいつもの学園都市。
下校時間でもある今、そこらには学生があふれている。

楽しそうに語り合う大学生。
わんやわんやと騒ぐ高校生。
元気いっぱいに走り回る小学生たち。
それをこそこそと見守る真っ白で細い男。

いつも通り平和な学園都市。
さぁ、散歩の続きだ、と今視界に収めた景色に背を向けたところで絹旗は違和感を覚える。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:53:30.34 ID:9hgPuJYU0
(ん? 小学生を見守る真っ白で細い男?)

絹旗にはそんな男に心当たりがある。誠に遺憾なことだが。

(おかしいですね……超幻覚でしょうか?)

心の中で呟いたその一言には希望を込めていた。

アイツじゃない。
アイツであるはずがない。
てか絶対アイツだけど別の人であって欲しい、と。

振り返り、もう一度その男に注目する。
そして絹旗の淡い希望は完全に打ち砕かれた。

小学生(正確には女子小学生。いわゆる幼女)を見守る白い男はアイツだった。

(ホントに毎日なにやってんですか。相変わらず超不審者です……)

呆れ果てた絹旗はその男―――――学園都市第一位をセロハンテープよりも下、使い古された軍手より上にランク付けした。

第二話 完 
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:54:01.17 ID:9hgPuJYU0
第三話『俺はロリータコンプレックス』


やんごとなきかな。

ああ、気にしないでくれ。言いたかっただけだ。

まずはこの物語、というか寸劇の主人公を紹介をすることにしよう。
それが読み手の皆様への礼儀というものだ。

その男は一方通行。
この学園都市で最強で最凶。
無敵の第一位と言えば知らないヤツはいない。

そして……

実験に次ぐ実験。
脳みそをいじくられ、よくわからない機械をとりつけられる。
そんな日々が続いた弊害だろうか?

一方通行は見事に変人・奇人としても第一位になった。

そんな主人公たる彼が今何をしているのか、それはとある晴れた日の下校時刻―――
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:55:02.28 ID:9hgPuJYU0
「なにしてるんですか?」

「あァン? なンだ、チビガキじゃねェか。 見てわかンねェか?」

「超わかんねーですよ……」

「下校中の幼女ウォッチングだ。 チビガキも一緒に眺めるか? 今日は大量だぜ?」

そう言って絹旗にカメラを差し出す一方通行。
彼の日課兼趣味である幼女ウォッチングとはなにか?

そんなもの読んで字のごとく幼女を眺めるだけである。
だが、その『儀式』を行うことによって彼のモチベーションは一気に最高潮だ。

まだ幼い顔立ち。
折れてしまいそうなほど細い手足。
そして透き通るようにきめ細かい肌。

なかなかカメラを受け取らない絹旗に対し、一方通行は『いつものように』幼女の素晴らしさを語る。

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:55:57.01 ID:9hgPuJYU0

「どォだ? まさしく神が創った奇跡! それが幼女だ! ロリだ! この際ショタも入れといてやらァ!!」

「……」

絹旗は口を閉ざす。いつものように。

「なンてこったい! 俺はなンでこれまで幼女相手にツンケンしてたンだよ!? 
 まだまだ俺の知らない素晴らしい世界があったってのによォ!!」

「……」

絹旗は喋らない。これは規定事項である。

「幼女! 幼女!! 幼女!!! ひゃはァ!? 幼女って三回言ったらスンゲェ幸せな気分になれるぜェェエエェ!? 
 おい、絹旗さンよォ!! オマエもちょっと言ってみろォ!!」

一方通行は猛進する。なぜなら彼の人生はいつも『一方通行』。引き返すことはできない。





―――けれど、引き返すことはできずとも、止まることはできる。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:56:48.93 ID:9hgPuJYU0
「……このっ!」

この学園都市でも一方通行の暴走を止められる者は数人しかいない。

いや、正確には止めようと思う者は、か?
殆どの者は気味の悪さから避けるだろう。

そして、絹旗最愛。
彼女はその数少ない内のひとりだ。

「変態!変態!!超変態!!! さっさと帰りますよ!! 逆らったらあなたの家のDVDや漫画を全て!!
 全て!!! 超燃やします!!!!」

「おいィィィィィィ!!!! そンなことされたら俺はどォやってこの世知辛い世を渡り歩くってンだァアァァァァァァ!!!!」

「嫌なら散歩に付き合ってください!! わりと超マジで殴りますよ!?」

「わかったわかったァ! けど最後にヨシコちゃンをだな……」

「超死ねええええええええええええ!!!」

強烈なボディブローにより気絶する学園都市最強……だった男。
えー、ここまでが『いつも通り』の展開だ。

つまり、幼女について暴走する一方通行が絹旗最愛により気絶させられる。
この流れをいつものようにやっているのである。
てか毎日最愛ちゃんに殴られるとか私の業界ではご褒美なんですけどね!


「はぁ……なんでこうも超毎日毎日」

出るのはやはりため息ばかり。
なぜ自分はこの超ド級の変態に特別な感情を抱いているのか。

絹旗最愛は今日も悩む。

トチ狂った白髪のもやし、一方通行。
狂おしいほどに愛らしい、絹旗最愛。 

これは、こんな二人の狂った物語……じゃないけどそんな感じ。

因みにこの第三話のナレーションは私こと、アレイスター=クロウリーがお送りした。

それではまた次回。 
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:57:42.04 ID:9hgPuJYU0
第四話『俺は冷蔵庫』 


ブ――ン



人間の日常生活においてもっとも活躍する家電とはなにか?

それは冷蔵庫であるのは疑う余地もないだろう。

それについて今からレクチャーしてやる。感謝しろよ。


動物のほぼ全ては生きるために必要なエネルギーを『食事』によって摂取するのだ。
タンパク質、ビタミン、糖分、塩分、etc.
人間ももちろん例外ではない。

諸君らも普段何気なく『食事』を行っているだろう?

だが、現代人は他の生物とは決定的に食生活が異なる。
雑食である上に、『調理』を行うのだ。

煮る・焼く・蒸す・干す・炒める、etc.
このように多彩な方法で食材を変化、融合させ、より旨く仕上げる。

それらを行うには『食材』だけでは足りない。
では何が必要か?

―――キッチン。

キッチンが要るのだ。
火を扱う調理には欠かせないであろうコンロや、生物にとって命とまで例えられる水が出る水道までもを標準装備。
一家に一台(?)はキッチンがあるだろう。キッチンのない家は家とは言わない、呼ばせない。

キッチンと食材。この二つが揃うことによって食事は画期的なまでの進化を遂げた。

だがしかし!ここで致命的な問題が発生したのだ!

保存。食材は『腐る』のだ。
どうしようもなく、無情に。

もちろん『腐った』ものは『食べられない』。
『不味い』。

それを解決したのは誰か?


それは俺。冷蔵庫。

わかったか?
冷蔵庫がどれほど偉大で尊大で寛大かわかったか?

これにてレクチャーはひとまず終了とする。
テストに出るからメモっとけよバカども。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:58:08.56 ID:9hgPuJYU0
ガチャ...バタン


あぁ。この家の主人が帰ってきたみたいだな。

この家は主人である男の独り暮らしだ。
さっさと嫁のひとりやふたり作ればいいってのに。

「クッソ……思いっきり殴りやがってチビガキのやつ」

腹をさすりながらブツブツと文句を垂れてやがるご主人。
どうせまた絹旗のお嬢ちゃんに殴られたんだろう。
まったく。ちっとは反省してお嬢ちゃんの気持ちにも気付いてやれっての。

「おい、帰ったら『ただいま』の一つでも言ったらどうだ?」

「うっせェよ。 まずはコーヒー飲ませろ」

バタンッ!

乱暴に冷蔵室の扉を開け、缶コーヒーを取り出すご主人。

「もっと優しく扱え。 それに相変わらずコーヒー中毒かよ」

「コイツは俺にとってガソリンみてェなもンなンだよ。 ……ただいまァ、ていとくン」

「またお嬢ちゃんに叱られるぜ? おかえり、一方通行」

なんだかんだ良いヤツなご主人である一方通行。
冷蔵庫の俺が言うのもおかしいが、コイツは間違いなくいい変態の部類に入るだろう。

ああ、それと『ていとくん』ってのは俺の愛称だ。
いい名前だろう?これでも結構気に入ってる。
気軽に呼んでくれて構わないぜ。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)[saga]:2011/04/02(土) 13:58:57.85 ID:9hgPuJYU0
俺たちはいつも通り他愛ない会話を続ける。

「それで? 今度はなんでお嬢ちゃんに殴られたんだ?」

「殴られてねェよ」

なら腹をさすってんじゃねぇよ、とそんなことを思ったがその絵面が間抜けなので黙っておく。

「ならさっきは何しに出てったんだ?」

半ば答えがわかっていることをあえて問いかける。
こうした方がもしかしてボランティアでもしに行ったかもしれない、という緊張した雰囲気を味わえるだろう?まぁ嘘だが。

「クックック……聞いてくれよ。今日は良い日だったぜ?」

『良い日』。
コイツがその単語を口にする時は決まって面白い話が聞ける。
俺は身を乗り出すくらいの勢いで聞き返す。

「何があったんだよ?」

「今日はなァ……なンとミヨちゃんがミニスカだったンだぜェェェェ」

「マジかよ!? あの清楚系幼女の代表格が……ミニスカだと?」

「コイツが証拠だァ。 見ろよ」

そういって一枚の写真を取り出す一方通行。
写真を見た俺は心のままに叫ぶ。

「フオオオオオオオオオオオ!! コイツはやべぇなおいいいいい!!!」

「だろォ? 俺も思わず勃起しちまったぜェ」

「おいおいおい、動画の方はねぇのかよ!? あるんだろ!?」

「まァ待て……俺が画像だけ、なンてミスをすると思うかァ?」

「今夜はパーリィだなぁぁぁああぁ!!」

「レッツ・パーリィ!!!」

母さん、今日も僕らは元気です。


ブーーーーン

第四話 完

42 :1[saga]:2011/04/03(日) 13:33:31.22 ID:dTYmE4//0
第五話『私は花瓶』 



窓際を彩るにもっとも相応しいものはなんでしょう?

それは『花』です。

彩り鮮やかで、自然な安らぎを与えてくれる、優しいもの。

花にはいろんな『色』があります。

赤。
青。
黄色。

そこに緑の葉や茎が混ざり合い、暖かな雰囲気を醸し出す。

だけど、花だけでは窓際を飾れません。
想像してみてください。

窓際にポツリと置かれた花を。

むき出しの根が哀愁漂う40代のおじ様を連想させることでしょう。
なにか足りない。決定的になにかが足りないんです。

そう、『花瓶』。

花瓶がなければ花なんてただのゴミですし、花がなければ花瓶はただの壺。
共存関係と言ってもいいでしょう。
お互いがお互いを支え合い、どちらかが欠けても生きてはいけない。
ふたつが揃って初めて私たちは窓際の女王になれる。

紹介が遅れましたね。
この部屋の女王たるのが私、花瓶です。
43 :1[saga]:2011/04/03(日) 13:34:59.31 ID:dTYmE4//0
「じゃぁじゃじゃんじゃんじゃんじゃああん、じゃぁじゃじゃんじゃんじゃんじゃぁん♪」

そよ風が気持ちいい。
こんな日はなぜか歌いたくなってしまう。
曲は『The Star-Spangled Banner』。
アメリカ国歌だ。

ガチャ...バタン

あっ、お嬢さんが帰ってきたみたい。
この家はお嬢さんのひとり暮らし。
まだまだ子供といっても差し支えない歳なだけに、私はちょっと心配です。

「超ただいまです、飾利」

「おかえりなさい、最愛さん」

この人が私のお嬢さん。
絹旗最愛さんです。『超』が口癖の可愛らしい女の子。

けどなんだか今日はご機嫌斜めみたいですね。
まぁたぶんいつも通りあの人のことなんでしょうけど。

「今日は超話したいことが超たくさんあるので付き合ってくださいねっ」

「はいはい、わかりましたよー。 けどその前にお水をあげてくださいね?」

「あっ! 超忘れてました!」

超ちょっと待ってて下さいねー、と言って台所までとてとてと水を汲みに行くお嬢さん。
ふふっ、せっかちなところは相変わらずですねー。
44 :1[saga]:2011/04/03(日) 13:35:51.61 ID:dTYmE4//0
「今日は超いっぱいあげちゃいますね!」

「わわわっ! ダメですよ! 適量が一番なんですから」

私に新鮮な水が注がれる。

トポトポと。

コポコポと。

この時間は大好き。
ひんやりと体の中から私を満たしていくのですから。

「……っと。 このくらいですかね?」

「そうですねー。 お花さんも喜んでますよ」

うっし、なんて言ってガッツポーズをするお嬢さんを見て私は笑う。

「あはは、それで今日は何があったんですか?」
45 :1[saga]:2011/04/03(日) 13:37:40.22 ID:dTYmE4//0
「そうですよ! 超聞いてください! 今日もあのモヤシのヤツは……」

マシンガントークのように語りだすお嬢さん。
いつものことながら話すのはあのロリコンモヤシのことばかり。

(まったく、なんであんな変態がいいのか私にはわかりません……)

心の中でそう漏らしました。
わからないのは私が『花瓶』だから?
いえ、たとえ人間であったとしてもあんな変態と関わるのは本能が拒否するでしょう。

お嬢さんもさっさと諦めればいいのに……なんてことは言いませんし、思いません。
認めたくないことだけど、彼女がここまで感情豊かになるのはあの変態のことくらいです。

喜怒哀楽ははっきりしているお嬢さん、けれど、あの変態のこととなるとそれは目に見えて顕著になります。

ぬいぐるみを抱き締めながら、表情を二転三転して喋るお嬢さんは誰が見ても心惹かれるものですし、
守りたくなるような愛らしさがあると思います。
多少身内びいき気味ですけどね。

「そこでどうしたと思います? ……超カメラ渡してきたんですよ!」

「あはは! ホントに変態さんですねぇ」

……変態すぎてお嬢さんの恋が実ることは当分なさそうです。

私は今夜も遅くまで愚痴を聞かされるだろうなぁ、なんて思いながらお嬢さんの話に耳を傾けます。
なんだかんだ言ってもお嬢さんの顔を見てるのは面白いですからね。


第五話 完 
54 :1[saga]:2011/04/03(日) 23:33:44.65 ID:dTYmE4//0
第六話『ここは変人寮』 


ここは第○学区にそびえる寮のひとつ。
この寮の通称は『変人寮』だ。

ペット厳禁。

男女は適当。

寮母を敬う。

隣人に迷惑かけたらシャイニングウィザード。

そんな寮則がある変人寮。

ここに住む住人は変人奇人ばかりなのでそう呼ばれている。
何も変態ばかり……というわけでもないが、殆どの者は一般の人々とは少し変わった性格、体質の持ち主ばかりだ。
55 :1[saga]:2011/04/03(日) 23:35:15.34 ID:dTYmE4//0
例えば言わずと知れたロリコンや、『超』が口癖の少女。

その他にも、

不幸体質のクズ。

重度のショタコン。

片思いストーカー。

ドS。

レズビアンカップル。

異種間交際者。

掃除ロボ性愛者。

etc.etc.。

などの変人たちが居住している。

この物語(SS)はそんな変人たちの日常を映すものである。

第六話にしてやっと土台が固まってきたこのSS。
とりあえず住民たちの二つ名的ななにかを書いてみたが……。
その住人がクローズアップされるかは誰にもわからない。

……とりあえず次回はこの寮の寮母さん(管理人?)に焦点を当ててみようと思う。

それではまた次回。


第六話 完 
62 :1[saga]:2011/04/04(月) 22:13:15.13 ID:1jJzO0F50


「どうしよう……」

黄泉川は頭を抱えた。
悩みの根源は目の前でソファーに寝そべる一人の女性。

「ペット禁止って私が決めたルールじゃん……」

そう、この寮はペット厳禁。
寮の管理者たる黄泉川が破るわけにはいかない。

「あら愛穂。 わたしは別に構わないと思うわ。 ルールは破るためにあるのよ」

悩む黄泉川をよそに、芳川は寝返りを打った。

第七話『ペット禁止の変人寮で寮母が野良ニートを拾ってきたらしい』
63 :1[saga]:2011/04/04(月) 22:16:32.69 ID:1jJzO0F50
「ルールを破ったら寮母としての示しがつかないじゃん」

「ならわたしを外へ放り出すの? いくらなんでも酷いんじゃない?」

「ぐっ……」

黄泉川は思う。
ああ、なぜ私はこんな野良ニートなんぞ拾って来たのか。
後悔ばかりが積み重なる頭で思い出す。

あれは夕方のことであった。

………………………………

「小萌ー! 夕飯は焼き肉にするじゃん!」

「もうー。 またですか? 太っちゃいますー」

「まぁまぁ、硬いこと言うなじゃん」

「まったくぅ」

友人である小萌とスーパーで買い物を済ませ、帰りの途中。

「あ、何かいますねー?」

「なんじゃん?」

小萌が何かに気づき、駆け寄る。
そこには――――


「あら、愛穂じゃない」


――――旧友、芳川桔梗の姿があった。

64 :1[saga]:2011/04/04(月) 22:18:18.84 ID:1jJzO0F50
「桔梗? こんなところで何してるじゃん? 研究所は……」

「クビになったのよ」

!!

働かないことで有名な旧友はついに職を失ったらしい。
研究所に居住し、堕落の限りを尽くしていた芳川……。


つまりは、野良ニート。


そこからは説明不要だろう。
野良ニートの末路なんて口に出すのも恐ろしい。

「桔梗、もしよかったら……」

………………………………

そして現在。
こうして連れ帰って来てしまったのだ。
65 :1[saga]:2011/04/04(月) 22:21:24.42 ID:1jJzO0F50
「はぁ……」

「さっきからため息ばかりだけど、幸せが逃げるわよ?」

そのため息の原因たる芳川はのん気なものだ。
黄泉川は悩むが、よくよく考えれば芳川を放り出すという選択肢はないことに気付く。

(さすがに私もそこまで鬼じゃないじゃん。 なんとか更生させれば……)

寮を任される黄泉川は静かに、しかし激しく燃えていた。

ペットを同居人へと更生しようと。

その当人は……。

「ねぇ、夕飯まだー? お腹減ったんだけど」

などとニートのニートたる所以を披露していた。

頑張れ、黄泉川。



第七話 完。 
70 :1[saga]:2011/04/05(火) 00:18:44.23 ID:NKLOrVyw0
一応ですが、こちらはある程度の書き溜めはしてあります
らじおの合間にぽちぽち書き続けてたものなのですよ

それを吐き出すペースの問題ですかね?
毎日投下した場合、4/14で書き溜めが消え失せるのでそこからは適度に書いたら投下しようかと

あとらじおは書き溜め出来ない仕様ですので更新遅いですが、こちらより優先して書いてます
それにしては遅すぎるなんて言わないでww



そういえば次回予告だなんてふざけたものが出てきたので、それを投下したら寝ますですノシ
71 :1[saga]:2011/04/05(火) 00:22:06.42 ID:NKLOrVyw0

突如として学園都市に現れた怪物たち……

怪物「おろろろっろろろろろろぉぉおおおおん!!」


木霊する悲鳴……

生徒「きゃあああああああああああああ」


崩壊する学級……

「カミやんカミやん、この子どう?」

「……んー、もうちょっと胸がな~」

「もうっ、ちゃんと授業を聞いてくださいー!」



だが――――





――――希望はあった。


秩序を失った学園都市に救いの天使が舞い降りる。



「ぴるぴるぴるるる! 今日も非科学な魔法でテメェらを救っちゃうぞっ」



次回、魔法少女むぎのん パリィ×3!!!  第八話『こんなふたりがいてもいい』

明日もブ・チ・す・く・い・か・く・て・い・ね☆

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[sage]:2011/04/05(火) 00:32:41.14 ID:d6UFtc7AO
麦野ェ……
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/04/05(火) 13:16:49.89 ID:rwKVfcDDO
書き溜めがあったのか
どっちにしろ自分の好きなペースで無理せず頑張ってください




すでにパンツは下ろした
楽しみにしてるぞ 
76 :1[saga]:2011/04/05(火) 20:41:10.14 ID:NKLOrVyw0
第八話『こんなふたりがいてもいい』



「まだぁ?」

「ちょ、ちょっと待って!」

プラプラと片足を揺らめかしながら、同棲している恋人を待つ麦野。

(はっやく、はやくぅ~♪)

胸の内で高まる感情を抑えきれない。
今日は待ち望んだデートなのだ。
いくら同棲している、といっても最近はお互いの予定が合う日は少なく、すれ違いが続いていた。
まぁ、そういった理由がなくとも好きな相手とのデートで喜ばない者はいないだろうが。


ごそごそ。

がさがさ。

部屋の奥では急いで準備をしている音が聞こえる。
77 :1[saga]:2011/04/05(火) 20:42:45.32 ID:NKLOrVyw0
(私だけ早起きしちゃったからなー。 起こせばよかったかしら?)


麦野は今日をあまりに楽しみにしすぎて早く起きていた。
子供みたいだな、と自分を笑うが、そのおかげで寝顔を存分に楽しむことができたので少しだけよかったとも思う。


がちゃりと部屋のドアが開き、支度を終えた彼女が麦野の下へと走る。

「ごめーん! 許して!!」

急に立ち止まるなり、顔の前で手を合わせながら、下げた頭から心配そうに麦野を見る『彼女』。
彼女に上目遣いで謝られて麦野が許さないわけはない。


基本的に麦野は彼女に甘いのだ。


「大丈夫っ、早く行くわよ」

そう言って、手を差し出す。



彼女―――固法美偉はありがとう、と口にして手を取った。



女性同士とはいえ恋人は恋人。
好きなものは好きなのである。
今日は精一杯楽しむことだろう。

彼女たちに、幸あれ。


第八話 完 
80 :1[saga]:2011/04/05(火) 20:45:12.98 ID:NKLOrVyw0
第九話『最愛の人との別れ(一応言っておくが最愛ちゃんではない)』


なんで? 

行かないで。

私を見捨てるの?

あんなに愛し合っていたのに。

「大好きだよ」って。

「ずっと傍にいるから」って。

言ってくれたじゃない。




―――嘘つき。
81 :1[saga]:2011/04/05(火) 20:47:42.84 ID:NKLOrVyw0

「ちょっと待ってよ! まだ一緒にいてくれるはずでしょ!? もう行っちゃうの!?」

彼女は結標淡希。
とある変人ばかりが住む寮の住民。

彼女は今、修羅場を迎えている。

最愛の人と別れるか、別れないか。

こういった問題は生きていればそれなりに誰もが経験していることだろう。
若い時ほど別れが多い、というのはなかなか的を得た言葉だ。

「私はこんなに好きなのよ!? 愛してるって言ってもいいわ! 私、あなたを愛してるの!!」

結標は必死に玄関のドア横に立つ影へと訴える。
彼女の綺麗な瞳には涙が浮かんでいた。

「お願いっ! ねぇ、もう一度やり直しましょ?」

影はジッと動かない。

「とりあえず一回中に入りましょう? 落ち着いて話し合いましょうよ」

一度冷静になるよう促す結標だが、影はピクリとも動かない。
呆れているのだろうか?
82 :1[saga]:2011/04/05(火) 20:49:36.16 ID:NKLOrVyw0

「……お願い……うっ……だからぁ……ああぅ……」

ついには泣き出してしまった。

誰だって愛する人との別れは辛い。
身を引き裂かれる思いだろう。

心が崩れた結標。
だが影―――寮の管理人兼寮母の黄泉川は冷徹にも言い放った。

「けど家賃払ってもらわないと困るじゃん? とりあえずこれはもらっていくじゃん」

そう言って彼女は結標の最愛の人を連れ去る。


ガチャン・・・バタン

閉められたドアが愛する人との間にできた壁のように感じて、結標は最愛の人の名を叫ぶ。

「ゆきちぃぃぃいいぃぃぃぃぃいぃぃぃ!!!!!!」



結標淡希、女子高校生。
能力『座標移動』のレベル4。
赤毛を二つ結びにして、いつも露出度の高い服装をしている。

好きなものは『小さい男の子(ショタ)』と『諭吉(金)』。


彼女も立派な変人です。



第九話 完 
93 :1[saga]:2011/04/06(水) 23:19:06.42 ID:pbP+JcMr0
第十話『とりあえず超突撃してみよう』


絹旗は今一方通行の部屋の前に立っている。
やはりというかなんというか、アイツの部屋はこの寮内でも異質の雰囲気を醸し出していると絹旗は思う。
思い違いというか、気のせいというか。

(ただ単に私がアイツに超特別な感情を持っているからなのかもしれないですけど)

ふと気が付けば、絹旗に抱えられた花瓶(初春)までブルブルと緊張で震えている気がした。

「飾利? 超震えてます?」

「震えているのは最愛さんの方ですよ」

(うぐぅ……)

絹旗は一旦落ち着いて自分の体を確かめるが、どうしようもなく震えていた。

足はがくがく。
腕はぷるぷる。

「はぁ……超遊びに来ただけなんですが……」
94 :1[saga]:2011/04/06(水) 23:20:52.21 ID:pbP+JcMr0

「好きな人の家に行くのに慣れる女の子はいませんよー。 みんな最愛さんと同じで緊張しますって。 
 慣れるのは付き合ってからじゃないですか?」

「一方通行と付き合う……ですか……」

ほんの少し想像するだけで顔が紅潮する。
自身の気持ちについて自覚はあるが、具体的な関係性を提示されるとやはり照れてしまうようだ。

一緒に映画鑑賞やレジャー施設へのデートなど、したくないわけがない。
小さい子を見て暴走する一方通行が簡単に頭に浮かぶが、光の速さでかき消す。
現状の一方通行はただの変質者だが、絹旗に好意を抱いて交際するに至れば暴走することもないだろう。
そのためにも……

「今日こそ、超仲良くなってみせます!」

「その意気です! 頑張ってください!」

初春の声援を受け、震える手足を落ち着かせる。
まずは、深呼吸。それから大きく伸びをして最大限にリラックス。

「よし! 超突撃しますよ!!」

そして絹旗はドアを開ける。
95 :1[saga]:2011/04/06(水) 23:23:05.81 ID:pbP+JcMr0

ガチャッ


「超お邪魔しま……す……」

「……」

「……」

ドアを開けた先では絹旗に向けられた目玉が四つ。
一方通行はひとり暮らしなので二つであるはずなのだが……

(って部屋超違えェ!!)

「ご、ごめんなさい! 部屋を超間違えてしまいましたっ!!」

「「い、いや、お気になさらず……」」

ふたりして同じことを言う二人。
流石は超カップルですね、と絹旗は思ったが、感心している場合ではないだろう。

「いえ! それでは超お邪魔しました!!」


バタンッ!


急いでドアを閉め、表札を確認する。
そこには『上条・御坂』と書いてあった。

「oh……超やってしまいました……」

「ま、まぁこんな時もありますよ」

初春のフォローが目に染みる絹旗だった。
96 :1[saga]:2011/04/06(水) 23:25:50.67 ID:pbP+JcMr0

それにしても、お隣さんに突撃してしまう辺り絹旗は相当混乱していたのだろう。

よくよく考えてみれば一方通行の家などいくらでも遊びに行ったことがあるし(まぁこの気持ちを自覚してからは
毎回テンパっているが……)、一方通行が絹旗の部屋に来ることだって、たまにだがあるのだ。

今更怖気づいたところで事態が好転することはないだろう。
それに、迷えば迷うほど一方通行と一緒に過ごす時間が減っていくことになる。

(――やっぱり、超少しでも長く一緒にいたいなんて思う辺り、私も女の子なんでしょうか?)

心の中で呟いた一言に答えは返って来ない。
絹旗は普通の女の子であることに疑問を抱いてしまう。

(というか)

さきほどのことを思って初春へと話しかける。

「上条さんと御坂さんには超悪いことをしてしまいましたね」

「なんで御坂さんは馬乗りになっていたんでしょうか?」
97 :1[saga]:2011/04/06(水) 23:27:58.38 ID:pbP+JcMr0

「いつもの超痴話喧嘩じゃないですか? どうせ夕方には超仲良くスーパーに買い物でも行ってますよ」

「仲がいいんだか悪いんだかわかりませんねー」

ホントです、と口を動かして、今度こそ一方通行の家の前に立つ絹旗。
今回は表札の確認もオーケー。
顔に似合わない綺麗な字で『一方通行』と書いてあるのを見て思う。

(今度こそ超本番です……)

さっきと同じように深く呼吸し、伸びをする。
マウントポジションを取られた上条の顔は御坂への恐怖と、突然現れた絹旗への驚きで間抜けな顔をしていた。
それを思い出すと固くなった体が本来の柔らかさを取り戻す。

(これは今度、超お礼を言わなくてはなりませんね)

上条へと胸の内で感謝し、ドアノブへと手をかける。

「では行きましょうか、飾利」

「ガンバです、最愛さん!」


ガチャッ


「超お邪魔します!」



第十話 完 
102 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:31:12.48 ID:g8UfsvCL0
第十一話『不幸体質』


いきなりでなんだが、俺は少々不幸だ。

昨日は大好きな通販番組を見逃すし、スキルアウトに追い掛け回されたあげくフルボッコ、
最寄りのスーパーが原子崩しの手で終焉を迎え、隕石で実家が崩壊した。
パッとあげればだいぶ不幸な気がするだろう。
だが、実際、不幸だったのはフルボッコにされたくらいだ。

通販番組は彼女が録画しておいてくれた。
最寄りのスーパーは商品価格や原産地を偽っていたらしい。
実家はけが人も出ず、立て直す予定だったのでむしろ費用が浮いたとのこと。
……因みにスキルアウトたちは俺を暴行している最中で助けに来た彼女の電撃を受け全員病院送りとなった。

生まれてこの方とんでもなく不幸で、疫病神扱いされていたこれまでのクッソタレな人生と比べると
輝きが全然違うことだろう。


俺を変えてくれたのは彼女――――御坂美琴だ。

可愛い彼女。ちょっと感情表現が激しすぎたり、電撃を放ってくることもあるけどそんなことは気にならない。
彼女のおかげで俺は金をも手にしたのだ。贅沢は言えない。

「ふんふんふ~ん♪」

今彼女はベッドの上で雑誌を読みつつ鼻歌を歌っている。
正直、パジャマ姿の美琴を眺められる俺は世界でも最高に幸せ者だろう。
昼下がりまでパジャマで過ごすって素晴らしいよね、休日万歳!
103 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:32:58.82 ID:g8UfsvCL0

「美琴」

「ん~、なにー? ……きゃっ!」

耐えきれず俺は美琴に抱きついた。
美琴の体は柔らかく、抱き締めていて楽しい。残念ながら胸は控えめだけど。

「あんたはいつもくっついて来るのね」

ふふっ、と笑いながら美琴が漏らす。

それの何が悪いのか。
一緒に住んでるってことはいつでもくっつけるってことだろう?

「美琴がそこにいると抱きたくなるんですよ」

「ちょっ……///」

何を勘違いしたのか美琴は真っ赤になっている。
言ってから気付いたがこれじゃ俺が年中盛ってるみたいじゃねぇか。

「いやちがっ! ハグだぞ、ハグ!」

慌てて訂正する俺。
男のなさけないところだが、本音を言えばハグではない意味で『抱きたい』と思っている。
そんなこと口が裂けても言えない。我が家の天気を電撃の雨にするわけにはいかないのだ。
105 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:39:43.20 ID:g8UfsvCL0

少し体を離して喋っていた俺を、今度は美琴の方から抱きしめてきた。
そして耳元で、

「そっちじゃなくてもいいんだけどなー」

なんてことを小声で言ってきやがった。どこの小悪魔だコイツ。
抱き締める腕に力が篭る。

いつからそんな子になったんだ?お父さん許さんぞ!と、軽口の一つでも言いたいが、俺の愚息は正直に
その存在を強調して美琴のふとももを押し上げている。
こんな状態で冗談なんて言えば苛められる。主に性的な意味で。

どうやって返そうか迷い、パクパクと言葉を待って開閉していた俺の口に美琴のそれが重なる。

「んん!……ちゅ、ちゅぅ……んぅ……」

いきなりの接吻で俺の思考は停止。
それまでのメインプラン、『軽口で誤魔化して昼ごはん作戦』を直ちに廃案とし、流れに身を任せる。
あー、お昼から何やってんだろ俺。
106 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:42:46.68 ID:g8UfsvCL0

―――――――――――――――――――――――――――――――

「うふふっ。 さっきから当たってるのに気付いてないとでも思ったぁ? ……したかったんでしょ?」

「美琴が可愛いからしたくなったんだよ」

口にして後悔。ちょっと恥ずかしい。
けど、美琴は喜んでくれたようだ。赤くなりつつも口唇は半月を描いている。
そしてまた口を合わせて来た。

「っん、……ちゅっ……あむ……」

「ぷは……とうまぁ、大好きっ」

口づけのあとにそんなことを言われて我慢できる男はいないだろう。
もちろん、俺もその一人だ。

ちょうど今はベッドの上で美琴を下にしている体勢。
これ以上ないほど条件は揃っていると思わないか?

「俺もだよ……美琴」

こうなっては止めれない。
美琴の体を貪ろうとしたその時―――





―――ピンポーン。
107 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:44:35.43 ID:g8UfsvCL0

急な来客。なんてタイミングの悪いヤツだ。
それでもスイッチの入っていた俺はこのまま続行しようとするが……

「ダーメ、ちょっと待っててね」

美琴は俺を押しのけ、玄関へと向かってしまった。


こういう時、女って生き物は冷静だと思う。
男の方が性に忠実というか、タガが外れやすいというか。
レイプするのは男性が殆どだというデータは正しいようだ。
男は我慢ができない、つまりバカだということ。

俺が思考遊びに浸っていると、がちゃりとドアが閉まる音がした。
美琴が来客を帰したのだろう。
早く戻っておいでー、俺の天使ー。








…………だが、戻ってこない。

それどころか何かを破る音が聞こえてきた。
段ボールみたいだが、片付けなんて後ですればいいよ、と言おうとして気付く。

まさか、先日注文した『アレ』が届いたのか?
108 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:47:27.72 ID:g8UfsvCL0

俺は顔の血液が一気に下がるのを感じた。

『アレ』

バレたら確実に殺される代物だ。
というか注文しておいて全く忘れていた自分を叱責し、玄関――つまり美琴の下へと向かう。


そこには――――


「当麻ー? これはなーにっかなー?」


――――鬼がいた。

うん、コイツは鬼だ。美琴に鬼が乗り移ったのだ。
右手で鬼を殺せば俺の天使たる美琴は帰ってくるはず。

「えーと、オブジェ?……ぐわっ!」

現実逃避している俺を美琴が床へと転がす。
こんな時でも壁に頭をぶつけないよう器用に倒すあたり、天使の美琴も残っているようだ。
だがおかしいな、右手で触れているのに顔は憤怒のままだぞ?

「これの・ど・こ・が、オブジェなのかしら? 説明してくれる?」

馬乗り、つまりはマウントポジションを取る美琴。
さっきまで別の馬乗りをしようとしていたと思うが、そろそろまともな思考回路を戻さなくては命がやばい。
109 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:49:17.12 ID:g8UfsvCL0

「……えっと、生きるために必要な行為をより優雅に、より快適に、をコンセプトに造られた人工の楽園?」

「わかりやすく言って」

「……オナホです」

情けないことこの上ない。
母親に自慰行為を見られたときほどの情けなさだ。いや、そんな経験は上条さんにはないけどね?

「私よりこんな穴でする方がいいってわけだ。 ごめんね、こんなのに負けるほどダメな女で」

「いや、そんなことはないぞ! ただちょっと最近忙しそうだったから一人でする時のお供にですね」

美琴のはこんな人口物とは比べ物にならないが、右手より心地よいのはわかりきっているわけで。

「忙しいって言ったって毎晩一緒に寝てるじゃない? やっぱり私じゃ嫌なんでしょ? ハッキリ言えやゴラァアッ!!」

あーこれはダメだ。
確実に俺の意識を飛ばすであろう電撃に備え、目を固く瞑る。
だがその時、予想もしない来訪者が現れた。
110 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:51:48.30 ID:g8UfsvCL0

ガチャ


「超お邪魔しま……す……」

そこにはお隣に住む中学生がいた。
なぜか花瓶を抱えているが、なぜだろうか?

美琴に何か用でもあるのかと思い、一瞬美琴の顔を見るが、コイツもぽかんとしていた。

「ご、ごめんなさい! 部屋を超間違えましたっ!!」

そう大声で言い、頭を下げる絹旗ちゃん。
なるほど、我が家から見て絹旗ちゃんの部屋とは逆隣りに一方通行の部屋がある。
彼女が一方通行と仲良くしているのは知っていたので、一方通行宅と間違えたのだろうことがわかった。

「「い、いや、お気になさらず……」」

俺と美琴は同時に声を上げた。
一緒にいる時間が長いせいか、言動や行動が似てきた気がする。

「いえ! それでは超お邪魔しました!!」

バタンッ!

律儀にもう一度深くお辞儀をして出て行った絹旗ちゃん。
可愛らしい子だなーと思うと同時に、一方通行と仲良くやれよー、と間抜けなことを考えてしまった。
112 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:55:02.25 ID:g8UfsvCL0

「彼女、一方通行の家に遊び行くんでしょうね」

俺と同じ結論に至った美琴が言う。

「ああ、アイツのことを本気で心配してるのなんて絹旗ちゃんくらいだ」

「そうね、アイツのどこがいいのかわかんないけど」

美琴さんは酷いことをおっしゃる。素直な子だから思ったことがすぐに口をついちゃうんだよな。
ま、俺の方が素直だけど。

「その意見には同意するが、あれでも暴走しなけりゃまともなんだぜ?」

「……しない日ってあるの?」

「えーっと……あったかなー?」

親友と言ってもいいほどに俺と一方通行との仲はいい。
というかアイツと二人で仕事しているわけだし、相棒みたいなもんだ。

幼い子を目にしていない時のアイツは、見た目の良さも相まって正直モテる。
……その後、ロリに対する熱い思いを吐き出しどん引きされるが。

「けど、あの子ならきっと一方通行を変えられる気がするんだよなー。 なんでかな?」

「あははっ、私もよ。 なんだかそんな気がするのよねー」

顔を見合わせ笑う。
一方通行は間違いなく変人だが、あの子は限りなくまともだ。
この寮でも、あんなにまともなのは上の階の佐天さんかあの子くらいだと思う。

「うまくいくといいな」

「ええ、そうね」

お隣さん同士の恋を応援する俺たち。
というか我が家を挟んでいる部屋位置のため、俺たちはお邪魔な気がしないでもない。
まぁ、気のせいだろう。
113 :1[saga]:2011/04/07(木) 22:56:12.97 ID:g8UfsvCL0

そこまで思考したところで、いつの間にか俺の天使が鬼から解放されていることに気付く。
そうか、ようやく鬼を倒したんだな。よくやったぞ、右手。

右手に宿る『幻想殺し』を褒め、美琴にどいてくれ、と言う旨を手で伝える。

「え、許してないわよ? 罰は何がいい? えっちひと月禁止とか?」

……どうやら鬼が悪魔になっただけらしい。
美琴の顔をよく見ると笑顔なのだが青筋が浮かんでいた。



どうか言わせてくれ。
出来るだけ大きな声で。
これからのひと月の地獄を思うと叫ばずにはいられないのだ。


「不幸だああああああああああああああああ!!!」




第十一話 完 
121 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:42:14.81 ID:JFzssbao0

第十二話『マヨネーズこそ調味料で最強』



「超お邪魔します!」

絹旗はそう言って一方通行の部屋のドアを開けた。

「声がデケェよバカ」

部屋の奥から不機嫌な声が聞こえる。
よかった、すでに幼女のことしか頭にないという最悪の状態は避けられたようだと絹旗は少し安心した。

以前一方通行の部屋に来たとき、一方通行は既に『ハイ』になっていたのだ。
幼女幼女と喚きちらしていた彼を絹旗は窒素パンチにより大人しくさせただけで一日が終了した。
あの時ほど無意味な休日はなかったと絹旗は思ったものだ。

靴を脱ぎ、一方通行のところへ向かう。

「挨拶は超基本ですから。 こんにちは」

「こんにちはです、一方通行さん」

軽く右手を挙げ挨拶する絹旗。
腕の中から初春も一方通行へと挨拶をした。
122 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:43:02.73 ID:JFzssbao0

「おゥ、今日は花瓶も一緒なのか」

「飾利のことはちゃんと超名前で呼んであげてください」

失礼なモヤシを一蹴する。
初春だって生きているのだ。
絹旗は家族でもある初春をバカにする人を嫌う。

「すまなかったなァ、初春」

「いいえ、いいですよ。 ていうか一方通行さんってわざと『花瓶』って呼びますよね?」

「気のせいだ」

絶対わざとだろうが、飄々と切り返す一方通行。
彼は幼女の他に人のことをからかうことが大好きなイヤな奴としても有名である。

(……つくづく思いますが、なんで私はこんな超モヤシが好きなんでしょうか?)

イヤなヤツでロリコン。
そんな彼に好意を抱く自分がわからない絹旗。

「お、今日は嬢ちゃんたちが来る日だったのか。 いらっしゃい」

キッチンから声がした。
123 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:43:39.23 ID:JFzssbao0

「垣根さんも超こんにちは」

「お久しぶりです、ていとくん」

垣根のことを絹旗は『垣根さん』と呼び、飾利は『ていとくん』と呼ぶ。
絹旗が『垣根さん』と呼ぶのは『ていとくん』だなんて呼び方をするとどうしても笑ってしまうからだ。

「ゆっくりしていけよ、ご主人は今日もだらけてるがな」

なんてことを言って笑う垣根。
古今東西、ここまで陽気な冷蔵庫は彼だけだけであろう。

絹旗がなぜ初春を連れてきたのか?
それは垣根と話させるためだ。
なぜだかわからないが、初春という花瓶は垣根という冷蔵庫と喋りたがる。
冷蔵庫と花瓶の恋は棘の道だろうが、超頑張ってほしいと絹旗は思う。

「では飾利、ここに置いておきますね。 ……飾利を超よろしくです、垣根さん」

「ありがとうございます、最愛さん」

「まかせときな。 ほら、嬢ちゃんは頑張れよ」

「超余計なお世話ですが、有り難く受け取っておきますよ」

垣根からの冷やかしに近い声援を受け、絹旗は一方通行の下へと足を進める。
124 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:44:37.78 ID:JFzssbao0

「いつも悪いな。 ていとくンが初春と喋りたがりやがってだなァ……」

「超構いませんよ。 飾利もあれでお喋りが好きですし」

冷静に喋ったつもりの絹旗だが、垣根も初春と会いたがっていたということに内心驚いていた。
もしかすると初春の恋が成就する日は近いのかもしれない。

(これは、超負けていられませんね……)

初春には悪いが、やはり家族といっても女同士。
対抗心が湧かないわけはない。

「それより何してたんですか? 超急に連絡して来ましたけど……」

「あァン? 今日は休みで通学する幼女もいねェからなァ。 正直仕事もないから暇だったンだよ」

「暇ができる度に連絡するのは私ですか。 私も超暇じゃないですからね?」

嘘をついた。
絹旗は、一方通行からの連絡があればアイテムの仕事でもないかぎり断ってでも一方通行を優先するだろう。

「そンなこと言って断ったことねェじゃねェか」

ニヤリと笑って一方通行は言った。
その笑みが似合ってるだけに絹旗は少し顔が熱くなる。

(かっこよくなんて思わないです、超気のせいです)
125 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:45:27.15 ID:JFzssbao0

「まぁ超そうなんですけど」

「ハッ! オマエも暇人だなァ」

クハハっ、と絹旗を笑う一方通行。
いつものどうでもいい会話だが、負けっぱなしは癪なのでささやかな皮肉を返す。

「貴方よりは超友達いますけどね」

「ぐっ……それは言うなァ」

一方通行は幼女幼女言っている変態だ。
だが、彼との距離が近くなればなるほど見えてくるものがある。

一方通行は友達を欲しがっている。

口ではいらねェ、うぜェ、などと言うけれど、たまに寂しそうにしている時がある。
信じられないことだが、幼女たちを眺めている時にもそんな顔をする時があるのだ。

何を思っているのか絹旗には詳しくはわからない。
けど、その寂しそうな顔をしている彼を見ると、絹旗はなぜか放っておけなくなる。

「まったく……なら友達でもなんでも作ればいいじゃないですか」

「だけどよォ、最近は増えたンだぜ? 三下の学校の友達だけどよ」

絹旗の表情は驚愕で歪む。
この一方通行は仲良くなれる人類が存在したと言っている。
余りに衝撃的な一言に絹旗は思わず聞き返した。
126 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:46:13.46 ID:JFzssbao0

「え、それは超本当ですか!? 妄想と現実は区別しないとホントにもう超取り返しの
 つかないことになってしまいますよ?」

「マジだボケ! オマエはどンだけ俺がコミュ障だと思ってンだァ!!」

「だって普段から超変質者じゃないですか!」

「違うわァ! あれは幼女たちの平和をだなァ……」

「それが超変態臭いんです! 超自重してください」

幼女の平和を脅かしているのは間違いなく一方通行の方だと思う。
うん、絶対そうだ。

けれど、どうやら一方通行に友達が増えたというのは本当のようである。
会話を続けつつ、絹旗は考える。

一方通行に友達が増えたのは嬉しい反面、寂しくもある。

(私と遊ばなくなったりしたら超どうしよう……)

そんな不安が、絹旗の頭をよぎる。

(考えたくもないです……)
127 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:47:09.96 ID:JFzssbao0

絹旗は一方通行と毎日ように会ってはいるが、当然会わない日もある。
会えない日が続いた時は少し苦しかったのを思い出した。
いや、正直に言おう―――辛かった。

たった数日。
されど数日。

その数日でどうしようもなく絹旗は一方通行に依存している自分に気付いた。気付かされた。
あんな日々を送るのは嫌だ。
その為にも――――

(その為にも、もっと一方通行が私に超好意を持ってくれるよう行動しなければ!)

さっきから続けている他愛ない会話を打ち切るべく一方通行の手を取った。

「だから調味料じゃマヨネーズが最強だって何回も……あァン? なンだァ?」

「せっかくの休日です。 こんな超ひきこもってないで映画でも見に行きませんか?」

「えー、めンどくせェ」

コイツはホントに……一発殴った方が良いのではないか?と絹旗は思ったが、踏みとどまる。

「どうしても超見たい映画があるんです!」

「……そンなに見たいのか?」

「はいっ」

「……」

一方通行はしばらく考え込む。
だが、絹旗には答えがわかっていた。

あまり知られていないが一方通行は優しい。
不器用で、恥ずかしがりだからおおっぴらにその優しさを振りまかないが。
お隣のヒーローとはまた違った優しさを持っているのを絹旗は誰よりも知っている。

「しょうがねェな、今回だけだぞ」

絹旗の顔が綻んだ。
128 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:47:58.76 ID:JFzssbao0

―――――――――――――――――

手を繋いだまま絹旗たちは部屋を後にする。
どうやら初春と垣根は留守番のようだ。

「一方通行」

「なンだァ?」

手を繋いでいることに少しは反応して欲しい絹旗だが、それはこの鈍感相手に求めすぎだとも思った。

「今日はずっと超一緒にいますからね! 超覚悟してください!」

「せっかくの休日がチビガキのお守かよ」

さきほどまで暇だと喚いていた口で不満を漏らす一方通行。
あまり彼と関わりを持たない者が聞いたならばお前は何がしたいのだ、と言いたくなることだろう。
だが、これは彼の照れ隠し。
心にもない一言だとわかっている絹旗は気にも留めずに言う。

「こんな超美少女とデートですよ? もっと喜んでください」

「美幼女の方がいいンだけど?」

デート、という単語を強調した絹旗だが彼には通じなかったようだ。
相変わらず幼女のことしか考えていない。
そのことに少し悔しくなった絹旗は追撃する。

「幼女よりも私の方が超エキサイティングです!」

「……いや、エキサイティングの意味がわかンねェぞ?」

追撃は失敗に終わった。
というかエキサイティングをアピールに使うあたり絹旗もテンパっているようだ。少し、いやかなり。
129 :1[saga]:2011/04/09(土) 03:48:42.03 ID:JFzssbao0

(くっ!……私の方が超ドキドキしてどうするんですか!)

繋がれた手を横目に思う。
一方通行に自分を意識させるために繋いだが、殆どないどころか二回目なので緊張してしまっている。


(けど……今日はこれで超満足かもです……)


今この瞬間、決意する。

この鈍感ロリコンモヤシ相手にいきなり意識させるなんて、無理だ。
少しずつ、しかし確実に。亀のようにゆっくりでも。

(私は超亀でいいんです。 超ちょっとずつでも進んでやりますから!)

亀が歩く速度でも、前に進んでいればいずれは目標に辿り着くことができるのだ、と。

(それに……手を繋げただけで、今は超幸せです)

繋いだ手に力を込め、離してしまわないように、離れてしまわないように。

そんな二人が目指すは映画館。
日が落ちるまでくだらないC級の映画を見るのだろう。


幼女を目指して爆走する兎に亀が追いつく日は来るのか?
この話の続きはまたいつか。



第十二話 完 
139 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:12:18.67 ID:t5mnAAjv0
第十三話『男の一人暮らしにしては綺麗な部屋』


ゴーーーー

ここは変人寮のとある部屋。
表札には『土御門』と書いてある。

土御門元春。
暗部組織『グループ』に所属している高校生。
レベル0だが、暗部組織を率いるほどの指揮能力や体術、魔術師としての力など、
普通の学生とは大きく異なっている。

だが、彼がもっとも『普通』と異なっているのはその性癖だ。



彼は『妹』を愛している。


妹。
血縁的に自分より後に生まれた女性を指す言葉だ。

しかし、土御門の妹はそういった血縁的な繋がりのない妹である。
義妹、と呼ぶ方が正確だろうか?


ぎ‐まい 【義妹】

1 義理の妹。夫または妻の妹、弟の妻など。
2 血縁関係はないが、姉妹の約束を交わして妹としている人。妹分。
(コトバンクより引用)

土御門には上の2にあたる妹がいるのだ。
それも数多くの。


………………………………
140 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:13:52.34 ID:t5mnAAjv0

「こらこら舞夏、洋子と喧嘩しちゃダメだにゃー」

部屋の中では『舞夏』と『洋子』が喧嘩をしているらしい。
彼が言うには。

ゴーーーーガチャンガチャン

だが、女の声も人間が暴れる物音もしない。
聞こえるのは金属がぶつかり合う甲高い音。

ガチャンガチャンゴーーーー

「まったく元気すぎて困るんだぜい。 やっぱり今日は舞夏の相手だけでもよかったのかもしれんな」

モテる男はつらい、と言いたげに肩をすくめる。

今、土御門の部屋には土御門と舞夏と洋子だけだ。
しかし、聞こえてくる『声』は土御門の声だけ。
これはいったいどういうことか?



簡単だ。

この部屋に人間は土御門元春ただひとり。

つまり、舞夏も洋子も人間ではない。


――――――いや、生物ですらない。
141 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:14:41.12 ID:t5mnAAjv0

ゴーーーー

この世には奇妙な冷蔵庫がある。奇妙な花瓶がある。

『彼ら』相手なら恋をすることも可能だろう。
彼らには感情といえる心があるのだから。

だが、土御門の義妹達にはそれがない。


――――ただの掃除ロボ。

それが土御門の愛している義妹達の通称だ。
いや、通称というか正式名というか、詳しくは知らない。
けれど、学園都市を掃除するために生み出された『機械』であることは確かだ。

なぜ土御門が掃除ロボを愛してしまったか。
それを語るには原稿用紙の10枚や20枚では語り尽くせないだろう。
なので割愛しようと思う。

ひとつ言わせてもらえれば、彼は掃除ロボに心を奪われたのだ。
甲斐甲斐しくゴミを拾うその姿に。

土御門には聞こえるのだろう。
掃除ロボたちの声が。心が。

彼の目には掃除ロボたちの擬人化された姿が映っているのかもしれないし、
あるがままの無骨な金属質さが魅力的なのかもしれない。
142 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:15:17.16 ID:t5mnAAjv0

「やっぱり舞夏が一番だにゃー」

舞夏と呼ばれた掃除ロボがお気に入りのようだ。
なにを血迷ったかメイド服まで着せている。

「妹たちに囲まれて俺は幸せだ……」

口から常人には理解不能な惚気を漏らす土御門。
彼の顔はこれ以上ないほどの笑顔だった。


土御門元春。
暗部組織『グループ』に所属している高校生。
数多の掃除ロボを愛する異常性癖者。

そして、掃除ロボを勝手に持ち去る掃除ロボドロボウでもある。

もちろん、掃除ロボは学園都市の公共機関が決められた区間に指定の数を設置している。
気にいったロボに名前を勝手に付け、気の向いたときに持ち去る行為は犯罪であるのだ。

彼がアンチスキルに御用となる日はいつの日か。
その日を可能なかぎり早く迎えることを切に願う。

第十三話 完
143 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:18:52.19 ID:t5mnAAjv0

第十四話『彼女たちのデート』

「こっちの方が似合うんじゃない?」

「えー、けどこれ可愛くないかしら」

ここはとある洋服店の店内。
さきほどからお互いに服を見せ合っているのは麦野と固法だ。
こっちがいい、あっちがいいとかれこれもう30分になる。

「沈利はもっと落ち着いた雰囲気の方が似合うと思うんだけどなー」

「んー、けど今回はちょっと遊んだ感じが欲しいのよねぇ」

「遊んだ感じね……あ! ならこれとかどうかしら?」

棚から商品を取り出し言う。

「……いいかも!」

それを麦野は気に入ったようで、買い物かごに入れ、次の棚へと向かった。

女性の買い物は長い。
その後もそれぞれがめぼしい商品を見せ合い、あーでもないこーでもない言いつつ選んでいた。
144 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:19:33.31 ID:t5mnAAjv0

「ありがとうございました。 またのご来店をお待ちしております」

頭を下げる店員を背に、店を後にする。
ふたりは満足げな表情だ。
お目当ての品を買えたからか、久しぶりのデートだからか。

彼女たちは仲の良い友達に見られるが、交際している。
性別という大きな壁を越えた彼女たち。

並々ならぬ苦労もあったのだが、割愛しようと思う。
だって長くなっちゃうし。


「次はどこ行く?」

買い物袋を片手に固法が言う。
彼女はジャッジメントでもある高校生だ。
髪はセミロングで、眼鏡のよく似合うクールビューティ。

「ちょっとお腹すいちゃったかもね」

返事を返すのは麦野。
暗部組織『アイテム』のリーダー。
レベル5第四位として強大な力を持つが、見た目はいいところのお嬢様といったところか。
背の半ばまで伸ばした髪を風に遊ばせている。
145 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:20:01.35 ID:t5mnAAjv0

「ならお昼にしよっか」

「鮭食べよう、鮭」

「ふふっ、ホントに好きなのね」

固法は笑う。
だが、麦野は鮭の良さをまだわかってないのか、と鮭の良さについて語りだす。
魚類の頂点やら、熊も好物だからなどと、あまり関係のないことまで言っている。

(鮭のことになると可愛いわね)

鮭について語る麦野を見て微笑ましいと思う。
普段の落ち着いた麦野とはまた違ったところ。

麦野の鮭トークが栄養価の話に差し掛かったあたりで固法は歩みを止める。

「ほら、鮭トークはおしまい。 着いたわよ」

「まだ終わってないのに……」

「続きは食べながら、ね」

不満げな麦野をなだめ、定食屋へと入る。
ここには焼き鮭定食があったほずだ、と固法は以前訪れた時のことを思い返した。
その時も麦野と一緒だったのも思い出して、目を細めた。
146 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:20:52.81 ID:t5mnAAjv0

「いらっしゃいませー」

元気のいい男性店員に席へと案内され、注文をした後、またも麦野の鮭トークが展開される。
食べながら、と固法は言ったのに待ちきれなかったようだ。
その根底にあるのが好物を恋人である自分にも好きになって欲しいという想いから来ているのだと知り、
固法はまた微笑む。

「沈利」

「なーに?」

「食べたら家でゆっくりしようね」

本来の予定ではこの後にもう一軒ほど洋服店を見に行く予定だった。
だが、とあることを思った固法はその予定を変更したいと口にする。

「……」

それを聞いた麦野はほんの少し考えた後、頬を緩ませ問う。

「したくなっちゃったのかにゃーん?」

麦野の表情は、先ほどまでの鮭トーク時のほほ笑みとは違い、サディスティックな笑みだった。
対する固法の反応は無言。
しかし、目を逸らし、頬はほんのりと赤い。

これを肯定の合図だと知っているのは麦野だけだろう。
はっきりとした言葉がなかったので麦野は続けて口を開いた。

「あら、何も言わないなら次のお店行っちゃうけど……いいの?」
147 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:21:33.85 ID:t5mnAAjv0

ここが自宅なら問いを重ねることはなかったかもしれない。
だが、ここは定食屋だ。
食事時ではないために少数の客と店員しかいないが、自分たち以外に人のいる場所。
そういった場では麦野は固法の無言の肯定では満足しない。
言葉や態度で、明確に示さなければいつまでも納得しないだろう。
その性質ゆえに。

「よ、よくないわよ」

「じゃあ、どうしたいのかにゃーん?」

「……うっ」

固法は鮭を共に好きになって欲しいとする麦野に対して、『抱きしめたい』という想いにかられ予定変更を提案した。
しかし、帰ってきたのはその先のことがしたいのか、という問いかけ。
普段ならバカなこと言わないでとでも言ったのだろうが……その気持ちが全くないかと聞かれれば、ないとは言い切れなかった。
そういった事情もあり、現在返答に困っている。

他の人には聞こえないかもしれないが、人のいる場ではっきりと了承するのは少々恥ずかしいものだ。
148 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:22:13.25 ID:t5mnAAjv0

(わかってるくせにっ)

そう固法は心の中で呟く。
固法がこのような公の場では言いだせないのをわかって問う麦野。
けれど、そうやって責められることで固法はさらに“そういった”気分になっていく。

「…………し、したいの」

長い沈黙の後、麦野が待っているであろう言葉を口にする固法。
これを聞いて麦野はご満悦のようだ。

「ふふっ、なら早く食べて帰りましょ」

そして固法の方へと顔を近づけ、「よく言えました、お楽しみに、ね?」と囁いた。
固法は顔を朱に染め、うつむく。
しかし、顔にはほんの少しの期待が表れていた。

「おまたせしました。 焼き鮭定食でございます」

注文した料理を店員が持ってくる。
そこからは普段通りの二人だった。

――ほんの少し固法の頬は赤かったが。
149 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:22:47.27 ID:t5mnAAjv0

………………………………

「ありがとうございましたー」

店を出て、自宅のある寮へと向かう。
大通りを過ぎたあたりで、麦野が固法を呼んだ。

「美偉」

「なに?」

「ほら」

右手を差し出す麦野。
その意味を理解して固法は自身の左手を重ね、繋ぐ。

「すぐにでも美偉とくっつきたいけど、我慢して手だけ」

「……早く帰らなきゃ、襲われそうね」

「襲われる方が好きなんじゃないの?」

「ば、ばかっ」

「顔真っ赤っかだよ?」

「もう知らないっ」

「ふふっ」

繋がれた手を離さずにそっぽを向く固法を見て麦野は笑う。
笑う麦野を見て固法も微笑んだ。


第十四話 完

150 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:25:11.21 ID:t5mnAAjv0

第十五話『なんとか説得してみよう』


俺は今日も不幸だ。なぜって?
ついさっき彼女からひと月は襲わないでね?と襲いたくなる顔で言われたんだよ。

男子高校生が同棲する彼女とひと月交わることを禁止されるとはどういうことか。

わかりやすく言えば、ナイチンゲールですら助走をつけて殴るレベルの罰である。

寝食を共にしているのに手を出せない。
一人になる時間もあまりないので自家発電もできないだろう。

つまり、これからひと月は禁欲生活というわけである。


「いくらなんでもひと月は酷すぎるんではないでしょうか、美琴様」

今俺は自室で正座をしている。
もちろん美琴の前で。

「……」

正座している俺に対して、ベッドに腰掛ける美琴は何も言わない。
恐らく、どうせまた土下座だよコイツとか、したいだけの猿かよ、とか思っていることだろう。
だが、なんと思われようとひと月は厳しすぎるんじゃありませんかね?
151 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:25:58.77 ID:t5mnAAjv0

「俺が悪かった! 美琴がいるのにあんなものを使おうとして……間違ってた!」

オナホールを購入した俺が悪いのは誰の目にも明らかだ。
ここで謝るだけならば美琴は本気でひと月何もさせてくれないだろう。
俺の彼女は天使であり、悪魔でもあるのだ。

以前、俺が不良から助けた女の人にお礼として、その人とふたりで食事に行った際も今回のように罰を課せられた。
その時の罰は美琴に公開自慰だったのを思い出す。
あの時の美琴はまさに悪魔と呼ぶにふさわしい。

「へー、こうやってするんだあ」などと呟きつつも時折邪魔をして来たのだ。
おかげで30分近く達することができなかった嫌な思い出の一つとして記憶している。

けれど、前回は断るのも悪かった、という正当な理由があったのだ。
美琴も頼まれたら断れない性質であるし、人当たりの良い方だからそれに理解を示してくれた。

罰が軽減されたのだ。
軽減されなかった時の罰は考えたくもない。
152 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:26:46.20 ID:t5mnAAjv0

今回の一件を改めて考えてみよう。
言い訳する余地はあるかどうか……。


全くと言っていいほどない。
完全に俺が悪い。

だがこのままでいいわけがないのだ。
そんなことをされたら土御門のように人外に手を出すかもしれない。……いや、さすがに掃除ロボはないな。

「……」

食い下がらねば地獄だぞ、上条。
美琴が沈黙している今がチャンスだ。
息子のため、自分のために俺は諦めるわけにはいかない。

「完全に禁止というのは厳しすぎると思うのですよ」

これは事実だ。
いくらなんでも厳しすぎる。

「だってあんなものでしちゃうなら私じゃなくてもいいんでしょ?」

いいえ、そんな滅相もないです。
美琴としたくてしたくてたまらなかったけど、つい……なんてことを言えばゲームオーバー。
慎重に言葉を選んで言う。

「美琴がどうしてもいない時しか使わないよ。 それも今では間違っていたと思ってる」

まずはオナホ購入の理由を正当化せねばならない。
私を差し置いて、というのが美琴の根底にあるのは明らか。
ならばそれを覆す。
153 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:27:16.73 ID:t5mnAAjv0

「一人の時にどうしても我慢できなくなる時は美琴にだってあるだろう?」

疑問として問いかけることで共感を得る。
これは話術の初歩だ。

「ま、まぁあるけど」

ほんの少し赤くなって可愛い。
けれど今は見惚れている場合じゃない。
共感を得ることができたのなら話は早い。

「だろ? そういう時美琴ならどうする? どうしても我慢できなくなったら」

どうしても我慢できなくなったら、と付け加えることでこの問いへの答えは「ひとりでする」以外はありえない。
わざと口に出させることで、自身も一歩間違えば立場が逆だったかも、という疑惑を芽生えさせるのが狙いだ。
まぁ、美琴は正直に口にすることはないかもしれないが。

だが確実に想像する。
どうしても我慢できないが、独りの自分を。

考えてしまったならば口に出したも同じだ。
疑念は確実に芽を出した。

本来なら、同棲している時点で俺と会わない日はないのだからこの問いは全くの無価値。
有り得ないことを仮定している時点で意味のないものなのだ。
美琴は頭はいいが、こういった無駄な知識を詰めていないので気付くことはないだろう。

今回はただ単にオナホを体験したかったという俺のくだらない欲望が原因だが、それを隠すことに繋がる。
154 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:27:51.09 ID:t5mnAAjv0

「……」

予想通り美琴は無言。
俺は追撃する。

「ひとりでするしかない……と思うんだ。 違うか?」

オナニーしちゃう、なんてのは美琴も言いだしにくいだろう。
だが、この聞き方なら『うん』や『違わない』などの言葉でいい。
その行為を連想させるわけでもないために先ほどの問いよりか数段答えやすいはずだ。

「……そうね」

勝ったっ……!

この一言で美琴は我慢できなくなったらしてしまうと言ったも同じ。
あとは、するならばより良い方が、より快適な方が、などの言葉を慎重に選んでいけばいい。

人間は快楽に弱い。
美琴の共感を得ることができるだろう。

共感を得さえすればあとはこちらのもの。
ずっと俺のターン。
矢継ぎ早に言葉を投げかける――――はずだった。
155 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:28:49.17 ID:t5mnAAjv0

「だけど――――」


だが、俺が口を開くより早く、美琴は続けた。



「――――私なら、当麻が帰ってくるまで我慢してるわ」


俺は理解ができなかった。
いや、我慢できなかったらって言いませんでしたっけ?

「我慢して我慢して我慢して……それから当麻としたら、きっといつもよりもっと幸せじゃない?」

そう言った美琴の顔は、想像してしまったのか少し赤かったが、満面の笑み。
俺の仮定を完全に無視しているが、そんなこと言われちゃ俺の負けだ。


「……ごめんな、もう何も言わないよ」

俺は正直に謝罪した。
こんなに愛おしい美琴相手に言い訳をする自分はバカだった。

はぁ、と気付かれないように小さなため息をつく。
だが、俺の顔もきっとにやけているのだろう。

我慢できなくなっても俺とするまで我慢する。

矛盾しているが、彼女にこんなこと言われて幸せじゃない男っているのか?
156 :1[saga]:2011/04/16(土) 11:29:24.94 ID:t5mnAAjv0

俺が幸福感に浸っていると美琴から声がかかる。

「ねぇ当麻」

「なんだ?」

ひと月の地獄を天使と共に過ごす覚悟を決めた俺が聞き返した。

「右手よりはこれの方が気持ちいいんだよね?」

オナホを片手に美琴が言った。
俺は訝しみながらも素直に頷く。

「へー……使ったことってあるの?」

「ないけど……青ピが言うには全然違うらしいぜ?」

「ふーん……」

何を考えているのか俺にはさっぱりだった。

じろじろとオナホの箱を見たり、取説を読んだりしている美琴。
しばらくして、いいことを思いついた!といった風な顔をし、俺に向き直る。

そして、悪戯な笑みを浮かべた。

「じゃあ、試してみよっか」

………は?

「はぁああああ!?」

俺の叫びが部屋に響き渡る。

なぜ?どうして?なんで?なにゆえ?どのような理由で?

疑問が頭を駆け巡っている俺に美琴はさらに続ける。

「ほら、ベッドに横になってよ」

いったい何が始まるのでせうか?

期待と僅かな恐怖を抱いて俺は立ち上がり、ベッドへと足を踏み出した。


第十五話 完 
1571[saga]:2011/04/16(土) 11:33:57.02 ID:t5mnAAjv0
以上です。ついに書き溜めが終わりました。

どうも、爪と肉が削ぎ落ちた>>1です。
これから当分は更新できませんのでご了承ください

もしも、一ヵ月経って一話も書けていなかったら書き終わるまで書き溜めてから立て直しますです……

それではノシ
158VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県)[sage]:2011/04/16(土) 12:11:43.07 ID:5V6oIgUAo
何があったんだ…?

乙です
159VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/04/16(土) 14:16:56.23 ID:rcxH++aDO
土御門ェ……

かみやん、ええぷれいやそれ。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/04/16(土) 19:48:13.57 ID:x2t5WSVm0
流石>>1
らじおでは出来ないようなことをやってのけるぜ…!

爪が剥げたことなら何度かあるけどそげぶはその比じゃなさそうね…
治るまで無理はしないで、しっかり療養してください


…それまで全裸待機してるから!べっ…別にアンタのためじゃないわよっ/// 

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