2013年10月25日金曜日

がんばれヴェントさん

 
 ※未完作品
 
1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 14:59:05.94 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「あー! もうヤダー!」

テッラ「どうしたんですか、ヴェント」

ヴェント「……壊した」

テッラ「え? 何を壊したのですか?」

ヴェント「そんなコト聞かないで! ……もう嫌」

アックア「ここに居たのか、ヴェント」

ヴェント「……何か用かしら」

アックア「電子レンジが壊れていたのだが、もしや……」

ヴェント「……そうよ! 私が壊したのよ! 悪い!?」

テッラ「なるほど……そういう事でしたか」

アックア「……ヴェント、電化製品には触るなとしつこく言ったはずであるが」

ヴェント「……今回こそはいけると思ったのよ」

テッラ「何故そう思えるのか不思議でなりませんねー」

アックア「とりあえず、詳しく話を聞こうか」

ヴェント「あれは……ちょっと小腹の空いた昼下がりのコトだったわ――」

2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 14:59:54.20 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「あら、オルソラ。その籠いっぱいの卵はどうしたの?」

オルソラ「信徒の方が余ったのでどうぞ、という事で頂きまして」

ヴェント「へー……それにしても大量にあるわね」

オルソラ「ええ、この卵を使うためにも今夜のお食事はオムレツでございますよ」

ヴェント「……ねえ、一つ貰って良いかしら?」

オルソラ「はい、ではお一つ。お腹が減ったのでございましょうか?」

ヴェント「お昼食べそこなっちゃってね。ちょっと厨房に行ってくるわ」

オルソラ「いってらっしゃいませー」


厨房

ヴェント「さて、ゆで卵は……時間がかかるわね。目玉焼き……卵一つだしなー……ん?」

ヴェント(……あれ? これってもしかして……電子レンジってヤツ?)

ヴェント(そういえば前に……)

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:00:31.86 ID:nDYcrAE6o


アンジェレネ「眠れません……」

アニェーゼ「ホットミルクでも飲めばすぐ眠くなっちまいますよ」

アンジェレネ「でも、お鍋に火をかけてそこからというのもちょっと……」

ルチア「ですが、それしかホットミルクを作る方法はありませんよ?」

アニェーゼ「そうなんですよね、なんかやり方があれば良いんですが……」

??「わたしに任せてもらおうか」

ルチア「その声は……ビショップ・ビアージオ?」

ビアージオ「その通り。シスター・アンジェレネ、ホットミルクが欲しいのだな?」

アンジェレネ「え、ええ……やっぱりお鍋で何とかするしかないですよね?」

ビアージオ「わたしに任せろと言ったはずだ……これを見よ!」

ルチア「こ、これは……!」

アンジェレネ「ま、まさか……!」

アニェーゼ「……電子レンジ!」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:00:58.22 ID:nDYcrAE6o


ビアージオ「これを使えば、冷たい牛乳も瞬く間にホットミルクへと変わる訳だ……牛乳を持ってこい」

アンジェレネ「は、はい! ……えーっと、ありました! どうぞ」

ビアージオ「よし……ではカップに注ぎ、レンジの中に入れ……スイッチオン!」

ルチア「おお……きちんと動いていますね」

アニェーゼ「……本当に温まるんですか?」

ビアージオ「当たり前だ、わたしが買ってきたのだから間違いは無い。……よし、出来た」

ルチア「湯気が出ている……ホットミルクが出来ていますよ!」

ビアージオ「そうはしゃぐなシスター・ルチア。さて、飲んでみろ」

アンジェレネ「いただきます! ……んぐっ……ぷはぁ、おいしいです!」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:01:59.41 ID:nDYcrAE6o


アニェーゼ「すごい……これが電子レンジの力ってやつなんですね」

ビアージオ「これで冷めた食事も美味しく食べる事が出来、天からの恵みを無駄にせずに済むという訳だ」

ルチア「さすがビショップ・ビアージオ、素晴らしいお考えです」

ビアージオ「さあ、もう時間も遅い。明日に備えて就寝せよ」

アンジェレネ「分かりました……ふわぁ、おやすみなさい」

ビアージオ「おっと、言い忘れていた。……ヴェントにはこの事は内密にして貰うぞ」

ルチア「……そうですね、ヴェント様の前で家電製品の話は禁忌」

アニェーゼ「また家電が悲惨な目に遭っちまうだけですからね」

ビアージオ「そういう事だ。ではわたしも部屋に戻る、君達もすぐに寝るように」

アニルチアン「はーい」




ヴェント「……みーちゃった」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:02:55.37 ID:nDYcrAE6o


ヴェント(そう、今この厨房には電子レンジがある)

ヴェント「……実は興味があったのよね、何でも温めて美味しく食べられる電子レンジ。
      ちょうど卵もあるし、これを温めればゆで卵になるんじゃないかしら?」

ヴェント(でも……また壊しちゃったらどうしよう……まぁ、そんなに難しくはなさそうだし大丈夫よね)

ヴェント「よし、じゃあ……試してみっか!」

ヴェント(卵を中に入れて……スイッチオン!)

ヴェント「後は待つだけ……あれ?」

轟!

ヴェント「!? ……爆発した?」

ヴェント「ど、どうなってるのよコレ! 壊れてるんじゃないの!? こういう時は……叩けば直る!」バンバン

ヴェント「……あれ? 何か煙が出てる……」

ヴェント「………………逃げちゃえ」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:03:23.41 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「――というワケで、逃げてきちゃったのよ」

アックア「…………」  テッラ「…………」

ヴェント「……何よ、言いたいコトがあるならはっきり言えばいいだろうが!」

テッラ「……何でそうやって機械オンチの癖に興味を持つんですかねー」

ヴェント「だって……ビアージオが使ってるのを見た限りでは簡単そうだったし……」

アックア「使い方は間違っていなかったが、温めた物が悪かったのである」

ヴェント「……どういうコト?」

テッラ「卵をそのまま電子レンジで温めてしまうと、体験された通り爆発してしまいます。
     これは常識……と言いたいところですが、ヴェントには家電に関する知識はありませんから仕方ないですねー」

ヴェント「……そこまで言わなくても。それに今回はたまたまよ、運が悪かっただけ」

アックア「ついこの前もテレビを壊し、さらには洗濯機で周りを泡だらけにしたはずであるが」

ヴェント「うっ……それは……そうかもしれないけど」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:04:09.58 ID:nDYcrAE6o


テッラ「まっ、ヴェントに家電は無理です。諦めた方が良いでしょうねー」

ヴェント「そ、そんなコト無いわよ! 私だってきっといつか……」

アックア「そのいつかは何時までも訪れないのである」

ヴェント「……そんな言い方しなくても」

ビアージオ「……やはり、電子レンジを壊したのはヴェントだったか」

ヴェント「げっ……ビアージオ」

ビアージオ「だから隠しておけとあれ程言ったのだ……はあ」

ヴェント「何よ……アンタが隠すような真似をするから」

アックア「ヴェント、少しは反省の色を見せるのである」

テッラ「貴女のした事は良い事ではありませんからねー」

ヴェント「……ちょっとは悪いかなーって思ってるわよ、ごめんなさい」

ビアージオ「……まあ良い。壊れた物は元には戻らない、話すだけ無駄だ」

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:04:50.21 ID:nDYcrAE6o


テッラ「しかし、やはりヴェントは家電製品を扱う事は一生出来ないかもしれないですねー」

ヴェント「そんなコト無い! それに……家電が無くても生活できるわよ」

アックア「機械オンチのくせに家電に興味があるというのもまた難儀である」

ヴェント「別に……興味なんて……」

ビアージオ「……そういえば、フィアンマが新しいパソコンを買ったと言っていたような」

ヴェント「! ……ちょっとフィアンマの所に行ってくる!」ダッ

テッラ「おや、行ってしまいましたねー」

アックア「興味は人一倍強いから質が悪いのである」

ビアージオ「とりあえず、新しいパソコンには悪い事をしてしまったな」

テッラ「まっ、フィアンマも引きこもってばかりですから良い薬になるでしょう」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:05:40.49 ID:nDYcrAE6o


フィアンマの部屋


ヴェント「フィアンマー!」ドンドン

ガチャ

フィアンマ「……うるせえな、ってヴェント? お前、何しに来たんだ?」

ヴェント「新しいパソコンを買ったって聞いたから見に来たのよ」

フィアンマ「…………」バタン

ヴェント「あっ、コラ! 開けろ!」ドンドン

フィアンマ「帰れ! そしてもう俺様の部屋に近づくな!」

ヴェント「ちょっとだけ! 触るだけでいいからー!」

フィアンマ「お前が家電に触るだけで壊れるのは何度も見てきたんだよ! 帰れ!」

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:06:11.65 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「クソッ……フィアンマのヤツ、あんな態度取らなくても良いじゃない」

ヴェント(何とかしてアイツの部屋に入る方法は……)

オルソラ「あら、こんな所でどうなされたのでございましょうか?」

ヴェント「ん? オルソラか……その手に持った籠は何なの?」

オルソラ「フィアンマ様のお食事なのでございますよ。あの方はなかなか外には出てこられませんので」

ヴェント「相変わらず引きこもってんのか……」

オルソラ「確か……ねとげ、と呼ばれるものに没頭しているようなのでございます」

ヴェント「ねとげ? 何の事かしら……?」

オルソラ「さあ……何でございましょうか? あっ、こうして話しているとお食事が冷めてしまうのでございます」

ヴェント「せっかくのオルソラが作った料理だからそれは避けたいわね。アイツも食堂に出てくればいいのに」

オルソラ「ですが、お食事を渡す時はキチンとお顔を出してお礼を言ってくれるのでございますよ」

ヴェント「それはキチンとって言えるのかしら……ん? 今、顔は出すって言ったわよね?」

オルソラ「ええ、それがどうかしたのでございましょうか?」

ヴェント「……いいコト考えたわ、ちょっと協力してもらえる?」

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:06:51.10 ID:nDYcrAE6o


オルソラ「フィアンマ様、お食事でございますよ」コンコン

フィアンマ「おっ、悪いなオルソラ」

オルソラ「いえいえ、開けて頂いてもよろしいでしょうか?」

フィアンマ「もちろん、今開けるぞ」ガチャ


フィアンマ「いやー、オルソラの料理とネトゲだけが俺様の最近の楽し……あ」

ヴェント「ハァーイ♪」

フィアンマ「げえっ! ヴェント!」

ヴェント「お邪魔しまーす」ダッ

フィアンマ「あっ! お前、やめろ!」

ヴェント「これが新しいパソコンね……」

フィアンマ「やめろ! マジでやめろ! お前が触ったらとんでもない事に!」

ヴェント「よーし……スイッチオン!」 
 
 
 
 
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:07:56.61 ID:nDYcrAE6o


フィアンマ「出てけ!」ゲシッ

ヴェント「痛た……何よーケチ!」

テッラ「凄まじい音がしたみたいですが……何かありましたかねー?」

ヴェント「……ちょっとパソコンに触ってみただけなのよ、そしたら……ドカーンって」

テッラ「ドカーン……ですか。そこまでいくとネタですねー」

ヴェント「うるさい! ただ触っただけなのになー……」

??「騒がしいと思えば……ヴェント、お前だったのか」

ヴェント「教皇……何でもないわよ、別に……」

教皇「また何か壊したのか?」

テッラ「ええ、その通りです」

ヴェント「ちょっと……テッラ」

テッラ「事実には変わりありませんからねー」

ヴェント「うう……」

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:08:36.15 ID:nDYcrAE6o


教皇「お前のソレは相変わらずのようだな……」

ヴェント「私だって……どうにかしたいって思ってるわよ」

テッラ「そんなしょげられると何とかしてあげたくなるから困りますねー……」

教皇「機械や家電をまともに扱うためにはどうするか……それが分かれば良いのだが」

ヴェント「そんなの分かったら苦労しないわよ」

テッラ「どうしましょうかねー」

教皇「……良い方法を思いついたぞ」

ヴェント「ホント!?」

テッラ「教皇様、いったいどのような方法を思いついたのでしょうか?」

教皇「ヴェント、――学園都市に行ってみてはどうだ?」

ヴェテ「……はい?」

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:09:08.72 ID:nDYcrAE6o


テッラ「学園都市に、ですか?」

教皇「学園都市には最新の技術が集まっている。そこで克服する事が出来れば二度と壊す事は無いであろう」

ヴェント「……そんなの嫌よ! 科学の都市に行くなんて……絶対嫌!」

教皇「しかし、家電に興味があるのもまた事実ではないのか?」

ヴェント「それは……でも、学園都市製品の家電は私にはレベルが高そうだし……」

テッラ「いえ、むしろその逆かもしれませんねー」

ヴェント「どういうコト?」

テッラ「便利になればなる程、操作は簡単になるものなのです。人間の性か、労力を少しでも減らそうとしてしまいますからねー」

教皇「学園都市の物の方が扱いやすいかもしれないと言う事か……それは間違っていないかもしれないな」

ヴェント「でもでも……学園都市に行ったら何も出来ないかもしれないし……」

??「ヴェント様! そんな事を言ってはいけません!」

テッラ「今度は誰ですかねー?」

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:09:53.78 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「その声は……リトヴィア?」

リトヴィア「ええ、聞き捨てならない言葉が聞こえましたので。思わず大声を出してしまった事をお許しください」

教皇「それは構わないが……リトヴィア、何か言いたい事でもあるのか?」

リトヴィア「ヴェント様、確かにあなたは今まで数々の家電を壊してまいりました」

ヴェント「……それは言わないで欲しいかな」

リトヴィア「そんなヴェント様が科学の都市、学園都市に行くなんて想像を絶する無謀であるのもまた事実」

テッラ「随分な言いようですが、間違ってはいませんねー」

教皇「それでリトヴィア、お前は何が言いた……リトヴィア?」

リトヴィア「ふ……ふふ……」

ヴェント「な、なんかすごく気持ち悪い笑顔してるんだけど……もしかして」

テッラ「アレ、ですかねー……」

リトヴィア「ふふ、ふふふふ……素晴らしい! 無茶、無謀! どうしようもない困難!
       お前には絶対に出来ないであろうと決めつけられているような状況! ああ、素晴らしい……」

教ヴェテ「……やっぱり」

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:10:35.62 ID:nDYcrAE6o


リトヴィア「なんという不可能! なんという不条理!! ああ、ヴェント様が羨ましい……」クネクネ

ヴェント「ねえ、これって私のコト馬鹿にしてるわよね?」

テッラ「怒っても良いと思いますねー」

教皇「落ち着けリトヴィア……とりあえず、涎を拭け」

リトヴィア「はっ……失礼致しました。ともかく、ヴェント様! この機を逃してはいけません!」

ヴェント「そんなコト言われても……」

リトヴィア「克服するならば今しかありません! 時間とは限られているものなので! 思い立ったら即行動です!」

テッラ「このアッパーぶりにはついていけませんねー」

ヴェント「うーん……そこまで言われたら、行ってみようかなー」

教皇「ヴェント、行く気になったのか?」

ヴェント「私もみんなに迷惑かけてばかりもいたくないし、何とかしたいって思ってたのは本当だから」

リトヴィア「すっばらしい! ヴェント様、困難に立ち向かうあなたを私は応援していますよおおおおお!!」

ヴェント「うん、分かったからちょっと離れてくれるかしら」

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:11:10.62 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「――というワケで、学園都市に行くコトにしました」

全員「おー」

アックア「学園都市、か。また思い切った決断をしたものであるな」

テッラ「少しは改善されると良いんですけどねー」

アニェーゼ「大変かもしれねえですが頑張ってくださいね、ヴェント様」

ヴェント「ありがとう。まっ、私が本気を出せば家電なんて楽勝よ」

アンジェレネ「ヴェント様、学園都市に美味しそうな物があったら買って来てくださいね?」

ルチア「シスター・アンジェレネ……相変わらずシスターとしての自覚が足りないようですね」

オルソラ「しかし、学園都市にはそんな簡単に入れるものなのでございましょうか?」

ヴェント「あっ……その辺はまったく考えてなかったわ」

フィアンマ「一番大事な所を忘れていたのかよ……仕方ない、アレイスターには俺様から言っておいてやろう」

リトヴィア「そんな簡単に入る事が出来るのも少々味気ないような気が……」

ビアージオ「楽に済むならばそれに越した事はないであろうが」

ヴェント「さて……出発の準備をしなくちゃ!」

教皇「ところでヴェント、飛行機の予約はしたのか?」

ヴェント「……えっ?」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:11:43.47 ID:nDYcrAE6o


ルチア「ヴェント様、チケットが無いと飛行機には乗れませんよ」

ヴェント「さすがの私でもそれ位分かるわよ」

アックア「今から予約すれば問題ない。電話をするのが嫌なのであれば、代わりに予約をしてやろう」

ヴェント「いや、そうじゃなくて……」

テッラ「どうしました? ファーストクラスを希望なんて贅沢は許しませんよ?」

ヴェント「そういう問題でもなくて……」

フィアンマ「何だよ、言いたい事があるなら早めに言え」

ヴェント「えっと、その……だから、うーん……」

アニェーゼ「どうしちまったんですか?」

アンジェレネ「まさか……飛行機が怖いなんて言いませんよね?」

ヴェント「……っ!」

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:12:17.69 ID:nDYcrAE6o


ビアージオ「シスター・アンジェレネ、それは馬鹿にし過ぎと言うものだ」

アニェーゼ「そうですよ、いくらなんでもそんな事がある訳……あれ?」

ヴェント「…………」

アックア「……ヴェント?」

ヴェント「あの…………」

全員「…………」

ヴェント「えっと…………」

教皇「……ヴェント、飛行機に乗るのが……怖いのか?」

ヴェント「………………うん」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:13:28.69 ID:nDYcrAE6o


全員「………………」

ヴェント「何よ……何か文句でもあるワケ!?」

テッラ「えーと……別にヴェントが何かする訳でも無いので、怖がる必要は無いと思うのですが」

ヴェント「そういう問題じゃないわよ! だって、飛ぶのよ!? 鳥でもない鉄の塊が空を飛ぶのよ!?」

ビアージオ「それは飛行機の全てを否定しているな」

ヴェント「ともかく! 機械に身を預けるのは嫌なのー!」

フィアンマ「しょうがないヤツだな……じゃあ、船で行けば良いだろうが」

ヴェント「そ……そうね! では、早速船のチケットを」

アンジェレネ「でも、船も結局はエンジンとかで動いてますよね?」

全員「あっ……」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:14:02.69 ID:nDYcrAE6o


アックア「ヴェント……船も別に」

ヴェント「嫌だー! 船も怖いー!」

ルチア「シスター・アンジェレネ! あなたが余計な事を言うから!」

アンジェレネ「だ、だって……飛行機や船がこわいなんて、そんな事子供でも言いませんよ! ……あ」

ヴェント「…………」

リトヴィア「ヴェ、ヴェント様?」

ヴェント「……どうせ私は子供以下ですよーだ」

テッラ「いじけてしまいましたねー」

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:14:44.24 ID:nDYcrAE6o


教皇「しかし、飛行機も船も駄目となると……学園都市に行く事は不可能だな」

リトヴィア「不可能!? ああ、なんて素晴らしい響きなのでしょう!!」クネクネ

アニェーゼ「また自分の世界に入っちまいましたね」

アックア「リトヴィアは放って置くのが吉である」

フィアンマ「ヴェント、少しは我慢したらどうだ。そうしないと学園都市はおろか他の場所にもいけないぞ?」

ヴェント「でもでもー……」

ルチア「徒歩と手漕ぎボート、なんて事も馬鹿らしいですからね……」

テッラ「何日かかるか分かりませんねー。後は……もう馬や帆船とかしかないでしょう」

教皇「それも同じであろう。やはり我慢をするか、それとも諦めるか……」

オルソラ「ヴェント様、飛行機に乗ってみてはいかがでございましょうか?」

ヴェント「嫌よ! そんなコトするなら歩いたり馬や帆船で行った方が……ん?」

アックア「どうしたヴェント?」

ヴェント「……ふっふー、良いコト思いついちゃった!」

フィアンマ「良い事?」

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:15:16.01 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「そうよ! 帆船! これで行けば何の問題も無いわ!」

教皇「……ヴェント、気持ちは分かるが帆船というのもなかなか難しいものがある。帆船一つで長い航海を乗り切るのは難しいであろう」

テッラ「大きい物を用意しても、それに見合った人員が必要です。ヴェント一人のために何人もの信徒を動かすのも避けたいですねー」

ルチア「でも、『神の右席』の命ならば従う者も多いと思いますが」

アックア「しかし、どうでもいい事に協力させるのも忍びないのである」

ヴェント「大丈夫よ、一人か二人で十分の船があるから」

オルソラ「長い航海を乗り切れて少ない労力で動く船……そんな便利なものがあったのでございましょうか?」

ヴェント「あるわよ。まっ、私だからこそ出来るって言った方が良いかしら」

フィアンマ「ヴェントだからこそ……船……?」

ビアージオ「……! なるほど、確かにヴェントならば出来る……いや、ヴェントにしか出来ないのかもしれない」

アンジェレネ「ビショップ・ビアージオ、何か分かったのですか?」

ビアージオ「ああ……荒波にも耐える事が出来、かつ機械を使わない船。その名は――『女王艦隊』」

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:16:07.63 ID:nDYcrAE6o


教皇「『女王艦隊』だと……ヴェント、本気か?」

ヴェント「だって、もうそれしか無いじゃない」

フィアンマ「いや、それはさすがに無しだろ。アレ、物凄く危険な霊装だぞ?」

ヴェント「大丈夫よ! 私の手にかかれば扱うコトくらい楽勝楽勝!」

ビアージオ「しかし、アレはかなりの大きさ……一人で乗るには大げさ過ぎるだろう」

ヴェント「さすがに旗艦の『アドリア海の女王』は出さないわよ。護衛艦を一隻だけ上手いコト動かすから」

アックア「確かに、それならヴェント一人でも何とかなるかもしれないのである」

ヴェント「でしょー? というワケで、早速準備に取り掛かるわよ!」

テッラ「準備、ですか?」

ヴェント「本来の使い方とは大分異なるから、ちょっと調整が必要なのよね」

アニェーゼ「話がずいぶん大きくなっちまいましたね」

ルチア「そこまでして異教徒の国へ行きたいものなのでしょうか……」

アンジェレネ「でも、日本にはあんみつとか大福とかおいしくて甘い物がたくさんあるんですよ!」

ルチア「だからシスターとしての自覚をですね」

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:16:41.69 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「さて、準備する前に……ビアージオ」

ビアージオ「……物凄く嫌な予感がするが、一応聞こうかヴェント」

ヴェント「アンタも一緒に手伝  ビアージオ「断る」

ヴェント「なっ……まだ最後まで言ってないでしょうが!?」

ビアージオ「手伝えと言いたいのだろう? 何故わたしがそんな面倒くさい事をしなければいけないのだ」

テッラ「相変わらずですねー」

ヴェント「良いじゃない、手伝うくらい!」

ビアージオ「わたしは面倒な事が嫌いなんだ。何の得にもならないような事をする訳が無いだろう?」

フィアンマ「そこまで言い切るとむしろ清々しいな」

ヴェント「うう……でも、私一人じゃ大変だし……」

リトヴィア「大変……ああ、なんと素晴らしい響き! 困難とはやはり良い物です!」

オルソラ「リトヴィアさんにまた変なスイッチが……」

アックア「無視が一番である」

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:17:47.71 ID:nDYcrAE6o


ビアージオ「大体、何故わたしなんだ! 別に他のヤツでも良いだろうが!」

ヴェント「ほら、アンタには扱い方を少し教えてあげたでしょう?」

ビアージオ「そんな事もあった気がするがそれでも断る!」

ヴェント「そこまで強情ならこっちにも考えがあるわよ!」

ビアージオ「そんな安い脅しに屈するわたしではない!」

ヴェント「あら、『天罰術式』でしばらく眠らせてあげるって言ってもそんな態度が取れるのかしら?」

フィアンマ「うわー……コイツ、切り札出してきやがったよ」

テッラ「さすがにそれはマズイでしょうねー」

ビアージオ「それでも面倒な事は絶対にしない!」

アックア「どっちもどっちであるな……」

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:18:29.32 ID:nDYcrAE6o


教皇「ビアージオ、そこまでヴェントに協力する事を拒むか」

ビアージオ「教皇様……まさかヴェントに協力しろ、などとは仰いませんよね?」

教皇「ヴェント一人に旅をさせるのは不安だったのだ。お前のその性格を治す機会でもある、
    気は進まないであろうがヴェントを学園都市に連れて行ってもらえないか?」

ビアージオ「なっ……!」

ルチア「いくらビショップ・ビアージオといえども教皇様の命ならばさすがに……」

テッラ「ええ、断れないでしょうねー」

ヴェント「ふっふー……ビアージオ、アンタも準備しなさい!」

ビアージオ「くっ……本当に行かねばなりませんか?」

教皇「無論だ。ビアージオ、ヴェントをよろしく頼むぞ」

アニェーゼ「ご愁傷さまってやつですね」

アンジェレネ「お土産もよろしくお願いします!」

ビアージオ「はあ……」

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:19:04.60 ID:nDYcrAE6o


ヴェント「というワケで、ビアージオは準備をよろしくね」

ビアージオ「……おい、まさかわたしだけに準備をさせるつもりではないだろうな?」

ヴェント「えー、ダメー?」

ビアージオ「駄目に決まってんだろうが、あぁ!?」

ヴェント「でもでもー、女の子には色々準備があるしー。任せたわよー」ダッ

ビアージオ「あっ! 待てこのヤロウ!」

オルソラ「あらあら……行ってしまわれましたね」

ビアージオ「……何故わたしが」

アックア「……ビアージオが少し気の毒であるな」

フィアンマ「もう諦めるしか無いだろ。学園都市には良い待遇を受けられるように言っておくから元気出せって」

ビアージオ「……行く事自体はもはやどうでも良い。問題は……エンジンなど無縁の船で航海をすると言う事だ」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:19:30.62 ID:nDYcrAE6o


テッラ「航海に不安があるのですか? まあ、沈没や難破等は心配しなくても良さそうですがねー」

ビアージオ「そこではない……何日も船の上で過ごすなど、無駄でしかない。それが苦痛なのだ……」

ルチア「確かに……航海中は暇でしょうね」

ビアージオ「わたしは無駄な事と面倒な事が嫌いなんだ……これはもはや拷問だ……」

リトヴィア「拷問……苦痛に耐えながらも情報は漏らすまいと努力するその姿勢! ああ、すっばらしい!」

フィアンマ「誰かコイツをどうにかしてくれ」

アンジェレネ「無理だと思います……」

ビアージオ「クソッ……何か良い方法は無いか……どうすれば……」

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:20:06.83 ID:nDYcrAE6o


ヴェントの部屋


ヴェント(学園都市かー……楽しみね)

「とりあえず……顔のピアスは別に要らないわよね。舌のピアスも別にいっかな」

「ハンマーは……一応、護身用に。『天罰術式』の準備もしておこうかしら……」

「それと化粧道具に……着替え、色々持っていかないといけないわよね」


ヴェント「……よし、完璧! 後は船の準備が出来たら出発よ!」

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/01(月) 15:20:54.55 ID:nDYcrAE6o


第一話 ヴェント、決意する 完

学園都市に行く事になったヴェント、それに何故かついて行く事になってしまったビアージオ。
しかし、船でバチカン→日本なんて時間かかり過ぎだろ……とビアージオは納得がいかない。
そこでビアージオはある方法を思いつき、ヴェントを罠にはめようとする……。

次回  ヴェント、飛行機に乗る


50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/01(月) 23:44:15.30 ID:go7cnZNAO


その日の夜

ビアージオ「……このままだと本当に船旅の刑になってしまう……どうすれば良いのだ」

テッラ「おや、そこに居るのはビアージオですねー」

アックア「浮かない顔をしているな。やはり、あの件であるか?」

ビアージオ「その通りだ……まったく、憂鬱で寝る事も出来ない」

テッラ「それは深刻ですねー……そうだ、良かったらこれをどうぞ」

ビアージオ「これは……アイマスク?」

テッラ「それを付ければ少しはマシになると思います」

アックア「それならば、私からはこれを貸そう」

ビアージオ「iPod……アックア、なかなか洒落た物を持っているな」

アックア「ヴェントには内緒である。目と耳を塞いでしまえば寝る事も出来るであろう」

ビアージオ「確かに、これなら寝れそうだ。礼を……そうだ!」

テッラ「急に大声を出して、何か思いついたのですか?」

ビアージオ「これだ……これならば、長い船旅などせずに学園都市に行く事が出来る! 二人とも、しばらくこれを借りるぞ!」

テッラ「? まあ良いです。どうぞ、好きに使って下さいねー」

アックア「良く分からないが、好きにするのである」

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/01(月) 23:57:05.30 ID:go7cnZNAO


フィアンマの部屋

フィアンマ(ったく……Fortisのヤツ、寝落ちしやがったな。俺様一人になりかけただろうが)

コンコン

フィアンマ(……ん? こんな時間に誰だ?)

ビアージオ「フィアンマ、まだ起きているか?」

フィアンマ「ビアージオか。待ってろ、今開ける」ガチャ

ビアージオ「夜遅くにすまないな」

フィアンマ「気にする事は無い。俺様はこれからが活動時間だからな」

ビアージオ「それは人としてどうだろうか……まあいい、頼みがある」

フィアンマ「頼み? ああ……ヴェント関連だったら気の毒だから協力してやるよ」

ビアージオ「察しが良くて助かる」

フィアンマ「とりあえず、俺様に何をして欲しいか言ってみろ」

ビアージオ「頼みとは……飛行機のチケットを二枚取ってもらいたい」

フィアンマ「はぁ? ヴェントは飛行機に乗りたくないから船で行くって話じゃなかったのか?」

ビアージオ「確かにその予定だった。しかし……妙案が浮かんだのだよ」

フィアンマ「妙案?」

ビアージオ「ああ、ともかくチケットを二枚予約してもらえるか?」

フィアンマ「……良く分からないが、とりあえずやっておいてやるよ」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 00:11:55.65 ID:sbemJURAO


次の日

ヴェント「ビアージオ、船の調整は済んだかしら?」

ビアージオ「ああ、完璧だ。わたしにかかれば造作の無い事だったな」

ヴェント「本当に!? よーし、いよいよ出発ね! オルソラー、オルソラは居ないかしらー?」

オルソラ「はい、ここに居るのでございますよ。何かご用でございましょうか?」

ヴェント「ついに学園都市に向けて出発する時が来たのよ。だから、オルソラにお弁当を作って貰おうと思ってね」

オルソラ「まあ、それはそれは。では、腕によりをかけて美味しいお弁当を用意いたしましょう」

ヴェント「頼んだわ! 後はみんなに挨拶もしないといけないわね」

ビアージオ「今の内に行ってこい。わたしも少し準備をしてくる」

ヴェント「じゃ、また後でねー」ダッ

ビアージオ「…………行ったか。シスター・オルソラ、食事に関してだが」

オルソラ「ご心配なさらなくとも、ちゃんとあなた様の分もご用意いたしますよ」

ビアージオ「いや、その必要は無い」

オルソラ「? どういう事でございましょうか?」

ビアージオ「食事は軽いもので構わない。……長旅をする訳では無いからな」

オルソラ「……?」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 00:32:36.29 ID:sbemJURAO


広い部屋

アニェーゼ「ついに出発しちまうんですね……」

アンジェレネ「なんだかちょっと寂しいです……」

ヴェント「そんな悲しそうな顔しないの。またすぐに会えるわよ」

アックア「その通りである。今は笑顔で見送り、道中の無事を祈る事が一番だ」

アンジェレネ「そうですね……ヴェント様、私はここでヴェント様が楽しく旅できるよう祈ってます!」

ヴェント「ありがとうアンジェレネ、その気持ちだけでも十分よ」

アンジェレネ「あと、お土産もよろしくお願いします!」

ルチア「……その姿勢だけは変わらないのですね」

オルソラ「ヴェント様、このバスケットの中にお弁当が入っているのでございます。どうぞ旅先でお召し上がり下さいませ」

ヴェント「ありがとう、オルソラのお弁当……旅の楽しみにさせてもらうわ」

テッラ(ヴェントの弁当……)

アックア(『前方のヴェント』改め、『弁当のヴェント』……)

アンジェレネ(『天かす術式』……)

フィアンマ(『神の懐石』……)

アニェーゼ(『ヴェン・トー』……)

ヴェント「……アンタ達、なんか失礼なコト考えてない?」

アックア「気のせいである」

テッラ「ですねー」

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 00:49:45.77 ID:sbemJURAO


教皇「ヴェント、旅の途中、そして着いてからも様々な事が起きるであろう。しかし、その全てがお前を成長させるはずだ。
    諦めずしっかりと頑張ってもらいたい。……ただ、何かあった時はいつでも連絡するように」

ヴェント「……大丈夫よ、ちょっと遊びに行って来るだけだから」

リトヴィア「ヴェント様、旅に困難は付き物ですので。それにもめげず、乗り越える事で輝かしい未来が訪れます!
       さあ、是非とも苦難の道へ! 精神的に、そして肉体的に苛まれながらも生き抜くのです!!」

テッラ「フィアンマ、右腕で一発殴って差し上げてはいかがですかねー?」

フィアンマ「俺様もそう思ってた所だが……コイツは下手したらそれすらも悦びに変えそうだ」

教皇「……リトヴィアは放っておくとしよう。ヴェント、気を付けてな」

ヴェント「ええ、必ず学園都市で家電を使えるようになって帰ってくるわ」

ルチア「ビショップ・ビアージオ、ヴェント様の事、守ってあげてくださいね」

ビアージオ「心配するな、わたしを見くびらないでもらいたい」

ヴェント「じゃ、挨拶も済んだし……行ってきまーす!」

全員「いってらっしゃーい」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga]:2011/08/02(火) 01:04:01.73 ID:sbemJURAO


アニェーゼ「行っちまいましたね……」

ルチア「日本までの船旅……やはり、心配ですね」

アックア「いや……それがそうでも無さそうである」

アンジェレネ「どういう事ですか?」

テッラ「ビアージオ……何か企んでいるようでしたからねー」

教皇「企んでいる?」

オルソラ「確かに……長旅にもかかわらず、お弁当は少な目で良いと仰っていたのでございます」

フィアンマ「アイツ……多分、ヴェントを嵌める気だぞ」

アックア「何があったのであるか?」

フィアンマ「……ヴェントが居るから言わなかったが、俺様に飛行機のチケットを予約するよう頼んできた」

教皇「飛行機……ビアージオ、まさか……」

リトヴィア「実は、私にも心当たりが……」

テッラ「リトヴィアにもですか?」

リトヴィア「ええ、車を一台と運転手を一人用意して欲しいと言われまして」

アックア「車……ヴェントは車には絶対乗りたくないと言うはずである」

アンジェレネ「どうするつもりなんでしょうか……?」

フィアンマ「分かっている事はただ一つ――ビアージオは、ヴェントを飛行機に乗せようとしている」

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 01:19:50.37 ID:sbemJURAO


ヴェント「アンタ、その服装で行く気なの?」

ビアージオ「司教の服は重くてな、今だけスーツを着る事にした」

ヴェント「ふーん……船旅でそんなコト気にしなくても良いと思うけど」

ビアージオ(……これからどうなるかも知らず、いい気なものだ)

ヴェント「で、準備は出来たって言ってたけど、海まではどうやって行くのかしら?」

ビアージオ「ああ……わたしに考えがある、まずはコレを付けろ」

ヴェント「……何これ?」

ビアージオ「アイマスクだ、これを付ければ余計なものを視界に入れる事を防げる」

ヴェント「それ位私にも分かるわよ。何故、今これを付けなくちゃいけないワケ?」

ビアージオ「……実はな、『女王艦隊』の中の一隻を調整していたのだが」

ヴェント「うんうん」

ビアージオ「わたしは独自の方法で術式を組み上げ、それを護衛艦の一隻に適用したところ……
       従来の数倍のスピードで航行出来るようになったのだ!」

ヴェント「えー! じゃあ、長旅もかなり短縮されるワケ?」

ビアージオ「短縮どころの話ではない……一日で到着出来る」

ヴェント「や、やるじゃない……正直、アンタのコト甘く見てたわ」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 01:36:23.33 ID:sbemJURAO


ヴェント「でも、それがどうしてアイマスクを付けるコトになるのかしら?」

ビアージオ「従来の数倍のスピード、という事は目に映る景色も数倍のスピードで動くという事だ。
        そのまま景色を見てしまうと、船の上という事もあって一瞬で酔ってしまう。だから、これを付ける必要がある訳だ」

ヴェント「ねえ、それって……船の中に居れば済む話じゃないの?」

ビアージオ「……えっ?」

ヴェント「だから、景色を見ないようにするなら中に居ればいいじゃない」

ビアージオ「…………確かに」

ヴェント「でしょー? だったらこれは要らないわよね」

ビアージオ「……待て! 確かにその通りだ……しかし、スピードが上がるという事は揺れも激しくなり、どの道船酔いは避けられない」

ヴェント「えー……酔うのは嫌ね」

ビアージオ「だが、外に居れば風と潮の香りでそれも和らぐ。つまりは外に出て、かつ景色を見てはいけないという事だ」

ヴェント「……なんか面倒くさいわね。分かった、とりあえずアイマスクは付けておこうかしら」

ビアージオ(……危なかった。一つ目はクリアだな)

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県)[sage]:2011/08/02(火) 03:23:30.23 ID:8p0A1ajso
どっちも馬鹿だwwwwwwww
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 03:45:17.53 ID:sbemJURAO


ビアージオ「では、早速付けて貰おうか」

ヴェント「えっ? まだ船にも乗ってないじゃない」

ビアージオ「実は、今回用意した船は……陸を走る事も出来る」

ヴェント「……マジで?」

ビアージオ「言っただろう? わたしに任せて貰えば造作も無い事だと」

ヴェント「司教の名は伊達じゃなかったってワケね……」

ビアージオ「つまり、この場から動かなくとも学園都市まで移動する事が出来る」

ヴェント「それは是非、この目で見ておきたいわ」

ビアージオ「……駄目だ」

ヴェント「えー……それもダメなの?」

ビアージオ「詳しくは言えないが……『アドリア海の女王』とは計り知れない力を持った霊装であり、
        その護衛艦といっても何が起きるかは分からない。危険を回避する上でもそのアイマスクは必要不可欠な物で……」

ヴェント「あー、もう良いわ……とりあえず付ければいいんでしょ?」

ビアージオ「あ、ああ……今すぐ付けて貰いたい」

ヴェント「分かったわ……よいしょ」

ビアージオ「どうだ?」

ヴェント「見事に何も見えないわね……」

ビアージオ(……よし!)

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 07:14:47.93 ID:sbemJURAO


ビアージオ「次は耳にこれをつけてもらう」

ヴェント「耳に? 何をつけるのよ?」クイッ

ビアージオ「駄目だ! 見てはいけない!」

ヴェント「なっ、何よ……急に大声出さないでくれるかしら?」

ビアージオ「すまない、だが視覚で捉えてはいけない物でな」

ヴェント「どういうコト?」

ビアージオ「最初に言っておこう。今から耳につける物は、特殊な霊装だ」

ヴェント「特殊な霊装……」

ビアージオ「その霊装は対象の聴覚に大きく作用する。つまりは聴覚以外の感覚、視覚等に対応している訳では無い」

ヴェント「なんかまた面倒くさそうな物が出て来たわね……」

ビアージオ「ああ……だが、耳につけて貰えればそんな事はどうでもよくなるはずだ」

ヴェント「ふーん……それは分かったわ。でも、耳につけた時点で触覚がはたらいちゃうと思うけど大丈夫なの?」

ビアージオ「……あっ」

ヴェント「……ビアージオ?」

ビアージオ「………………大丈夫だ! とりあえず言われた通りにしやがれ!」

ヴェント「……仕方ないわね、好きにしなさい」

ビアージオ「では失礼するぞ……どうだ?」

ヴェント「……うん、今のところ問題は無いみたい」

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 07:16:14.83 ID:sbemJURAO


ビアージオ(よし……スイッチオン)カチッ

ヴェント「わっ! この霊装から音楽が流れてきたわよ!」

ビアージオ「ああ、その霊装を装着すると耳に音楽が流れるようになっているからな」

ヴェント「へー……私もそんな霊装知らなかったわ。まるで、えーっと……そう! iPodみたいね」

ビアージオ「……っ! な、何だそれは?」

ヴェント「ルチアとアンジェレネが前に話してたのよ。いつでもどこでも音楽が聴ける機械があるって」

ビアージオ「……ず、随分便利な物だな」

ヴェント「でも、この霊装があれば別にそんなの要らないわよね。帰ったら二人に教えてあげないと」

ビアージオ(……そんな霊装存在しないけどな)

ヴェント「ビアージオ、ちょっと音量が小さいんだけど」

ビアージオ「ああ、今上げてやろう」

ヴェント「ちょっと上げ過ぎかも……まいっか」

ビアージオ(……ここまでは完璧だ。だが念には念を入れて一応、試してみるか)

ビアージオ「すぅー……弁当のヴェントぉぉ!!」

ヴェント(……これ、何って曲なのかな)

ビアージオ「聞こえてないようだな……これで視覚、そして聴覚は塞いだ! 後は……!」

ヴェント(……いい曲ね)

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 07:38:25.25 ID:sbemJURAO


??「えーっと……依頼人との待ち合わせの場所はこの辺のはずよね」

??(リトヴィア……急に連絡してきたと思ったら「頼みたい事がありますので。よろしくお願いします」って一方的に用件だけ言うんだもの)

??「さて、依頼人は……えっ?」


ヴェント(……後で何の曲か教えてもらおうっと)

ビアージオ「そろそろ来るはずだが……ん? おそらく、あの女だな」

??「リトヴィアに頼まれて来たけど……あなたがビアージオ=オブゾーニかしら?」

ビアージオ「ああ、その通りだ。という事は君が」

オリアナ「ええ、オリアナ=トムソンよ。よろしくね」

ビアージオ「急な依頼で申し訳ない。よろしく頼むぞ」

オリアナ「仕事の方は良いのだけど……そっちの」

ヴェント(……迷えー)

オリアナ「……でっかいヘッドフォンとアイマスクをした女の人は何なのかしら?」

ビアージオ「……気にするな、君はただ仕事をこなしてくれれば良い」

オリアナ「……特殊なプレイでもする気?」

ビアージオ「そんな気は一切無いから安心しろ」

オリアナ「まあいいわ。で、どこまで連れて行けば良いのかしら」

ビアージオ「行き先は……空港まで頼む」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/02(火) 08:16:16.75 ID:suph1Tt4o


オリアナ車

オリアナ「空港まで行くのは分かったけど、それならタクシーを呼べば良かったんじゃない?」

ビアージオ「そういう訳にもいかない事情があってな」

オリアナ「まあ、後ろの女の人を見れば特殊な状況である事は察しが付くけどね」

ヴェント「…………」シャカシャカ

オリアナ「音量が大きすぎて音漏れしてるけど、大丈夫なの?」

ビアージオ「それにも深い訳があるのだ。気にせず運転してくれ」

オリアナ「はいはい。でも、ローマ正教ってのはリトヴィアみたいに変な人しか居ないと勘違いしてしまいそうね」

ビアージオ「……アレと一緒にはして欲しくないな」

オリアナ「確かに」

ビアージオ「アレはまた特殊だからな……ところで、少し電話をさせてもらっても良いだろうか?」

オリアナ「構わないわよ。あら、ローマ正教の人間なのに携帯電話を持っているの?」

ビアージオ「便利な物は取り入れるべきであろう?」

オリアナ「リトヴィアにも見習って欲しいわね」

ビアージオ「それは難しいかもな。では、失礼して……」ピポパ

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]:2011/08/02(火) 08:28:22.58 ID:suph1Tt4o


戻ってバチカン

教皇「ヴェントとビアージオはどうなったであろうか……」

テッラ「教皇様、まだ一時間ほどしか経っておりませんねー」

アックア「心配し過ぎである。私達はただ無事を祈るとしよう」

教皇「それもそうだな……」

ルチア「失礼します。教皇様、お電話です」

教皇「電話? 誰からだ?」

ルチア「それが……ビショップ・ビアージオからでございます」

アックア「ビアージオから……?」

教皇「丁度良い、ビアージオが何を企んでいるのか本人の口から聞く事にしよう」

テッラ「それは良いお考えですねー」

ルチア「お電話をこちらにお持ちしましょうか?」

教皇「ああ、そうしてもらえると助かる」

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 09:01:33.00 ID:sbemJURAO


教皇「ビアージオか?」

ビアージオ『教皇様、お忙しい所時間を頂き申し訳ございません』

教皇「それは構わないが……お前、何を企んでいる?」

ビアージオ『お見通しでしたか……お察しの通りですよ』

教皇「……ヴェントを騙し、飛行機に乗せるつもりなのだな?」

ビアージオ『ええ、ですが勘違いなされないようにお願いします。これはあくまでもヴェントのためですから』

教皇「ヴェントのため?」

ビアージオ『科学の都市に行くにもかかわらず、飛行機などに臆していてはいけません。心を鬼にして、ヴェントを飛行機に乗せるべきです』

教皇「なるほど……その考えも間違っていないな。しかし、ヴェントが素直に飛行機に乗るとは思えないのだが……」

ビアージオ『それはわたしにお任せ下さい。そこで教皇様、お願いがございます』

教皇「言ってみろ」

ビアージオ『飛行機の手荷物検査や金属探知……あれを免除するよう取り計らって頂きたいのですが』

教皇「それ位は労せず出来るが……」

ビアージオ『では、よろしくお願い致します』

教皇「ああ、そちらの道中の無事を祈っているぞ」

ビアージオ『ありがとうございます、それでは』プツッ

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 09:44:45.74 ID:sbemJURAO


アックア「どうやら、私達の思った通りのようであるな」

教皇「ああ……ここはビアージオに全てを任せる事にしよう。テッラ、頼みたい事があるのだが良いか?」

テッラ「ええ、ビアージオの言った事なら聞こえていましたので仰らなくても構いません。上手い事取り計らっておきましょう」

教皇「よろしく頼む。……しかし、ヴェントが黙って飛行機に乗るとは思えないが」

アックア「狡猾なビアージオの事だ、何も言わず騙して乗せるつもりであろう」

テッラ「ずる賢さに関してはローマ正教随一ですからねー」

教皇「あの二人を共に行かせたのが正しかったか間違いだったか……どうなる事やら」

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 16:46:46.66 ID:sbemJURAO


オリアナ「用件は済んだのかしら?」

ビアージオ「ああ、全てが上手くいっているようでわたしも安心している所だ」

オリアナ「それは何よりね。ところで、空港に行くとは聞いたけどどこに向かう予定?」

ビアージオ「依頼人の情報を聞き出すのはあまり好ましい事では無いと思うが」

オリアナ「もう、そんなカタい事言わないで。お姉さんも急に呼び出されて大変だったんだから」

ビアージオ「……まあ、依頼に答えてくれた礼だ。わたし達は学園都市に行くつもりでな」

オリアナ「学園都市? へぇ、科学の都市にローマ正教の重役さんたちがねえ」

ビアージオ「おかしいか?」

オリアナ「ええ、何か争いでも起きそうでお姉さんちょっと怖いわ」

ビアージオ「無闇に争いを起こすほど無思慮では無いつもりだ。それに……今回学園都市に向かう理由はくだらないものだからな」

オリアナ「くだらない理由?」

ビアージオ「ああ……くだらなく、そして面倒でまったく気が進まなくてな」

オリアナ「……色々大変そうね」

ビアージオ「……そう思って貰えればわたしも少しは報われるか」

ヴェント(……あっ、この曲もいい)シャカシャカ

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 16:48:54.52 ID:sbemJURAO


空港

オリアナ「着いたわよ。ここで降ろして大丈夫かしら?」

ビアージオ「構わん、世話になったな。良い運転だった」

オリアナ「お姉さん、お仕事はキッチリとこなす主義なのよ。でも、さすがに荷物までは運ばなくていい?」

ビアージオ「ああ、大丈夫だ。ここで君の仕事は終了、リトヴィアに話はしてあるから礼を受け取っておけ」

オリアナ「OK、ではここで失礼するわ。楽しい旅になるといいわね、バイバーイ♪」

ビアージオ「…………行ったか。さて、この荷物はどうするかな」

男「失礼ですが、ビアージオ=ブゾーニ様でしょうか?」

ビアージオ「確かにわたしはビアージオ=ブゾーニだが……何か用か?」

男「ローマ教皇様の代理により、学園都市に訪問されるとお話をお聞きしています。搭乗までご案内させて頂きますのでよろしくお願い致します」

ビアージオ「流石は教皇様……お話が分かるお人だ。では、この荷物を頼むよ」

男「かしこまりました。それと、お連れの方は……」

ビアージオ「ん? あっ……」

ヴェント「…………」シャカシャカ

男「……そちらの方は大丈夫なのでしょうか?」

ビアージオ「……このまま連れて行くのは流石にまずいか」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 16:50:59.69 ID:sbemJURAO


ビアージオ「すまないが、頼みたい事がある」

男「何でしょうか?」

ビアージオ「……担架を用意してくれないか?」

男「担架……ですか?」

ビアージオ「ああ、この女は今自分の力で動くのが難しくてな。しかし、その無理をおしてでも行かねばならない理由がある」

男「……分かりました。お運び致しましょう」

ビアージオ「話が早くて助かるよ。有能な人物は嫌いではない」

男「では、私は担架と人員を調達してきます。少々お待ち頂けますか?」

ビアージオ「もちろんだ。よろしく頼む」

男「分かりました、失礼致します」

ビアージオ「さて……まずはスイッチを切って」

ヴェント「! 音楽が消えた!?」

ビアージオ「ヴェント、アイマスクは外さずそのまま聞いてくれ」

ヴェント「えっ? 別にいいけど、何かしら?」

ビアージオ「今から船は海に出る。最初は物凄く揺れる、気を付けろよ」

ヴェント「まだ陸を走っていたってワケね……分かったわ。ところで、この曲歌ってるのは誰なの?」

ビアージオ「それはまた後で話そう。では、また音楽を聞いていてくれ」カチッ

ヴェント「…………」シャカシャカ

男「担架をお持ち致しました」

ビアージオ「御苦労、ではやってくれ」

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 16:52:25.88 ID:sbemJURAO


男「行くぞ、せーの……ふんっ!」

ヴェント「わわっ! 結構揺れるわね……」

男「このまま搭乗口までお連れするぞ!」

男達「OK! それっ!」

ヴェント(揺れが激しいな……さすが従来の数倍のスピードね)

ビアージオ(……アイマスクとヘッドフォンをした女が担架で運ばれて行く。奇妙な光景だ)

男(……やっぱり、宗教家ってのは変わった人が多いんだろうな)

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[sage saga]:2011/08/02(火) 17:27:56.10 ID:sbemJURAO


なんやかんやあって機内

ビアージオ(色々あったが何とか乗れたな。しかもファーストクラスを用意して貰えるとは……流石は教皇様だ)

ヴェント「…………」シャカシャカ

ビアージオ「ヴェントも大人しくしているし、後は乗って到着を待つだけだな……」

ビアージオ(しかし、余計な事に気をつかったせいか……眠気が……)コックリ

ビアージオ「……zzz」

『当機は間もなく離陸致します。お客様は――』

ヴェント「…………」シャカシャカ

乗務員(あの女の人、まだ音楽聞いているみたいね……注意した方が良いかしら)

ヴェント「…………」シャカシャカ

乗務員(一応声をかけた方が良いわよね)

乗務員「失礼致します、お客様?」

ヴェント「…………」

乗務員(聞こえてないみたい……肩を叩いてみましょうか)トントン

ヴェント「……っ! び、ビアージオ!? って……あれ?」クイッ

乗務員「お客様、当機は間もなく離陸致しますので、音楽再生機器は一旦電源をお切り頂けますでしょうか」

ヴェント「えっ? 当機? 音楽再生機器……?」

乗務員「ええ、そのお召し物にお付けになられているものです」

ヴェント「服に? な……何よコレ!」

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[sage saga]:2011/08/02(火) 17:28:29.38 ID:sbemJURAO


ヴェント「何よ……このいかにもな機械! それに、ここはいったい……?」

乗務員「お客様、何かご不明な点でもございましたか?」

ヴェント「不明なトコばかりよ……とりあえず、この乗り物は何?」

乗務員(……えっ? 何その質問?)

ヴェント「いいから早く答えなさい!」

乗務員「ええと……飛行機の機内、とお答えすればよろしいでしょうか?」

ヴェント「……なーんだ、飛行機かー。それならそうと………………………………」

乗務員「……お客様?」

ヴェント「……ひ、…………ひ!」

乗務員「ひ?」



ヴェント「飛行機ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!?」



81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/02(火) 17:47:56.92 ID:sbemJURAO


ビアージオ(……んん? 後ろの席が騒がしいな……)

ヴェント「飛行機!? 飛行機いい、嫌だぁぁ!!」

添乗員「お、お客様! 落ち着いて下さい!」

ヴェント「今すぐ私を降ろせぇぇぇ! 降ろさないと五臓六腑をシェイクして人肉ジュースに変えるぞオイ!!」

添乗員「ひ、ひいいい!?」

ビアージオ(……やべ)

ヴェント「……ビアージオぉぉ……お目覚めかしらァ!?」

ビアージオ「……zzz」

ヴェント「寝たフリしてんじゃねぇぞコラァ!!」

ビアージオ「駄目だったか……まあ良い。何を騒いでいる、ヴェント」

ヴェント「……アンタ、いい度胸してるわね。『神の右席』を嵌めるなんて、なかなか出来るコトじゃないわよ」

ビアージオ「嵌めるなんてとんでもない。とりあえず、少し落ち着け」

ヴェント「コレが落ち着いていられるかァァァ!!」

ビアージオ「……まあ聞け、わたしはヴェントの事を思ってこんな事をしたのだ」

ヴェント「……あぁ?」

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/03(水) 09:38:39.41 ID:FVhc+duAO


ビアージオ「確かに黙って飛行機に乗せたのは悪かった、それは認めよう。しかし……」

ヴェント「何よ、それなりの理由があるって言いたいワケ?」

ビアージオ「そもそも、わたしには考えがあった……いや、作戦と言うべきか」

ヴェント「……作戦?」

ビアージオ「ああ、その名も……機械克服大作戦」

ヴェント「…………ネーミングセンス無いわね」

ビアージオ「……放っておけ」

ヴェント「で、そのナントカ作戦ってのは何なのよ」

ビアージオ「簡単に言えば、ヴェントを騙して飛行機に乗せる事だ」

ヴェント「だからそれは分かってんのよ!」

ビアージオ「まあ聞け、お前にとって飛行機というのは機械としてそれ程脅威では無いはずだ」

ヴェント「いや、無理無理。絶対落ちるもん」

ビアージオ「そうそう簡単に落ちる物ではない。それに、皆との会話でもあったように飛行機に乗ったとしてもヴェントは何もしなくとも良いだろう?」

ヴェント「それはそうだけど……」

ビアージオ「ならばこれ程機械に慣れるのに適した物は無いとは思わないか?」

ヴェント「うーん……」

84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/03(水) 09:39:07.39 ID:FVhc+duAO


ヴェント「でもでもー……飛行機はちょっとレベルが高いと思うワケで……」

ビアージオ「……ヴェント、良く考えてみろ」

ヴェント「……何よ」

ビアージオ「機械が怖くて飛行機も乗れない人間が、果たして家電を扱う事が出来るであろうか」

ヴェント「そっ、それは……」

ビアージオ「習うより慣れろ、まずは耐える事から始めれば良い。……これは、君の素晴らしい家電生活の第一歩だ」

ヴェント「素晴らしい家電生活……」

ビアージオ「そうだ、朝起きたらテレビを点け、冷蔵庫から飲み物を取り出し、風呂に入り、
        ドライヤーを使う……そんな生活に思いを馳せていたのではないか?」

ヴェント「…………」

ビアージオ「さあ、始めよう。ヴェント、家電生活はここから始まる!」

ヴェント「……分かったわ、私――飛行機に乗る!」

ビアージオ「分かってくれたか……」

ビアージオ(……何とか誤魔化せたな)

ヴェント「あ、でも私を騙したのは許さないからね。覚えておけよコラ」

ビアージオ「……チッ」

86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/03(水) 10:08:56.25 ID:FVhc+duAO


しばらくして

ビアージオ「そろそろ離陸するが……気分はどうだ?」

ヴェント「……最悪ね。今すぐ帰ってアンジェレネと散歩にでも行きたいわ」

ビアージオ「そう言うな。いよいよだ……動くぞ」

ヴェント「……ひいっ、スピードが出て来たわよ!?」

ビアージオ「落ち着け、まだまだスピードは上がるぞ」

ヴェント「ううっ……やっぱり降りる!」

ビアージオ「今更何を……飛ぶぞ、覚悟しておけ」

ヴェント「な、何コレ……体に何かが……ひいいいっ!」

ビアージオ「無事に飛んだな……どうだ、ヴェント。……ヴェント?」

ヴェント「…………」グッタリ

ビアージオ「……死んでやがる。大丈夫か?」

ヴェント「な……何とか耐えきったわ……」

ビアージオ「それは何よりだな。ほら、窓から外を見てみろ」

ヴェント「ダメ……目、開けられない……」

ビアージオ「目瞑ったままだったのか……いいから目を開けて外を見ろ」

ヴェント「分かったわ……どれどれ? ……おおっ!」

ビアージオ「どうだ、なかなか良い眺めだろう?」

ヴェント「ローマやバチカンがあんなに小さく……私、飛んでるんだ」

ビアージオ「飛んでるのは飛行機だけどな」

ヴェント「……アンタ、ロマンが無いわね」

ビアージオ「面倒臭い事はしない主義なのだよ」

88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)[saga sage]:2011/08/03(水) 10:37:38.16 ID:FVhc+duAO


ヴェント「おお……イタリアから離れていく……」

ビアージオ「改めて……気分はどうだ、ヴェント?」

ヴェント「たっのしぃー! あっ……ま、まあ悪い気分じゃないわね」

ビアージオ「素直に喜んでおけ」

ヴェント「別に喜んでなんて……うわー、もう町も見えないわね」

ビアージオ「ヴェント、飛行機も悪くないだろう?」

ヴェント「そうね、コレなら家電生活も夢じゃないかも」

ビアージオ「もう一つ良い事を教えてやろう、さっきまで耳につけていたのも機械だ。確実にヴェントは機械に慣れてきている」

ヴェント「……よし、今から全ての家電を制圧に行ってやるわ。覚悟しなさい、学園都市!」

ビアージオ「全ての家電を壊さないようにしてくれよ」

ヴェント「……その可能性は否定出来ないかも」

ビアージオ「……勘弁してもらいたいものだ」

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 15:56:10.91 ID:XDdsQ1O+o


日本 空港

ヴェント「……眠いわね」

ビアージオ「ファーストクラスだからまだ良かったものの……時差があるからな」

ヴェント「昼に出発しても……今日本は昼なのね……眠い」

ビアージオ「初日は身体を休めた方が良いか……とりあえず、学園都市に向かうぞ」

ヴェント「学園都市に直接飛行機で行ければ良かったのに」

ビアージオ「一応空港はあるようだが話が急すぎたからな。タクシーで行くか」

ヴェント「……車で行かなきゃダメ?」

ビアージオ「まだそんな事を言っているのか……乗るだけだ、落ち着いていれば問題ない」

ヴェント「……本当だったら嫌だけど、この眠さには勝てないわ」

ビアージオ「大人しくしていてくれたらわたしとしても助かる。……ほら、歩けヴェント」

ヴェント「眠いー……」

ビアージオ「……面倒臭いヤツだ。荷物をもってとっとと歩け」

ヴェント「えー……任せた」

ビアージオ「……別に、わたしはこのまま置いていっても構わないのだが」

ヴェント「冗談よ。……学園都市ねえ、どんなトコなのかしら」

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:19:42.81 ID:XDdsQ1O+o


学園都市 ゲート

ビアージオ「……許可証?」

警備員「ええ、許可証が無いと学園都市にお入れする事は出来ないのです」

ビアージオ「ヴェント、許可しょ……」

ヴェント「……zzz」

ビアージオ(……いや、知る訳無いか。しかし困ったな……許可証が要るとは聞いていなかったが)

警備員「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

ビアージオ「ああ……ビアージオ=ブゾーニと……あ」

ヴェント「……zzz」

ビアージオ(ヴェントの名前……何と言えば良いのだ? 前方のヴェントと言っても通じないだろう……ここはとりあえず)

ビアージオ「……もう一人はヴェントという名前だが」

警備員「では確認してみます。……ああ、リストに名前がありましたよ。ビアージオ=ブゾーニ様と、ヴェント=ゼンポーノ様ですね?」

ビアージオ「はぁ? ゼンポーノ?」

警備員「ええ、それで登録されています。何か問題ありましたか?」

ビアージオ「……いや、何も問題は無い。では、通してもらっても良いかな?」

警備員「もちろんです、タクシーに乗車したまま通過して下さい」

ビアージオ「分かった。世話になったな、礼を言う」

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:37:15.84 ID:XDdsQ1O+o


ビアージオ「着いたぞ、ヴェント」

ヴェント「……んー」

ビアージオ「まだ眠っているのか……無理もないが、起きろ」ゲシッ

ヴェント「いたっ! 何するのよ! ……ん? ここはドコ?」

ビアージオ「まだ寝ぼけてるのか。望み通り連れてきてやったんだよ、『学園都市』に」

ヴェント「本当!? ここが学園都市か……ビルやら良く分かんないプロペラやら……バチカンとは大違いね」

ビアージオ「科学の最先端が集う都市だ、目新しい物ばかりであろう」

ヴェント「ねえ、あの動いてるものは何かしら?」

ビアージオ「あれは……清掃ロボットだそうだ。道端にある塵を自動で掃除する優れもの……とガイドブックに書いてある」

ヴェント「ガイドブック? 何それ?」

ビアージオ「先程ゲートで貰ってな、これさえあれば学園都市を百倍楽しめる……だそうだ」

ヴェント「へえ……気が向いたら観光するのも良いわね」

ビアージオ「目的は見失うなよ。さて……わたしは一応挨拶に行ってくる」

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:41:04.72 ID:XDdsQ1O+o

ヴェント「挨拶?」

ビアージオ「教皇様から頼まれていてな。この学園都市を創った者、アレイスターに礼を言えと」

ヴェント「ああ、アレイスターのトコに行くのね。私はやめておくわ、なんか面倒くさいし」

ビアージオ「……面倒臭いのはわたしも一緒だがな。まあ良いが……ヴェント一人では心配だ」

ヴェント「大丈夫よ。私だって自分の面倒くらい自分で見られるから」

ビアージオ「なら良い。一応確認だ、お金」

ヴェント「財布の中にたっぷりと」

ビアージオ「ハンカチ、ティッシュ」

ヴェント「テッラが持たせてくれたわ」

ビアージオ「お腹が減った時の食糧」

ヴェント「オルソラ特製弁当!」

ビアージオ「良し、後は落ち合う場所だけだが……」

ヴェント「泊まる場所に行けば問題ないわよね?」

ビアージオ「一人で行けるか?」

ヴェント「子ども扱いしないでくれるかしら? もうタクシーは大丈夫よ」

ビアージオ「それなら心配しなくとも大丈夫だな。確かホテルは、第三学区の……面倒だ、この紙に書いてある場所へ迎え」

ヴェント「じゃ、まったねー」

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 17:51:03.23 ID:XDdsQ1O+o


ビアージオ「さて……とりあえず現在位置を確認しないとな。ここは……第七学区、で良いのだろうか」

ビアージオ(アレイスターの居るのは……なるほど、少し距離があるな。ではタクシー……ん)

ビアージオ(少しヴェントに渡し過ぎたな……一文無しになる事は無いだろうが一応通貨を両替しておこう)

ビアージオ「銀行は……地図で見れば良いか。一番近いのは、『いそべ銀行』という銀行みたいだな」

102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 17:59:27.37 ID:XDdsQ1O+o


ヴェント(さて、一人になったは良いけど……何をしようかしら)

ヴェント(眠くて歩くのも面倒だし……どこかで休むとしようかな)

女「どうぞー、ただ今キャンペーンやってまーす」

ヴェント(ん? チラシ配りか、この暑い中精が出るわねー)

女「どうぞー」

ヴェント(一枚もらっていこうかな)ヒョイッ

女「ありがとうございまーす」

ヴェント(なになに……クレープハウスらぶるんNEW OPEN、クレープ屋か)

ヴェント「先着百名様にゲコ太マスコット(紳士Ver)プレゼント、ねえ……」

ヴェント「このマスコットは要らないけど、暇だし行ってみようかしら」

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 18:14:35.52 ID:XDdsQ1O+o


ふれあい広場

ヴェント(えーと……あっ、アレかな。人も並んでるし、間違いないなさそう)

ヴェント「それにしても子供がこんなにたくさん。学園都市は平和で良いわねー」

ヴェント(とりあえず並んで順番を待つとしましょうか)


初春「タイミングが悪かったみたいですねー」

黒子「先にベンチを確保してまいりますわ」

初春「じゃあ私も。佐天さん、私達の分もお願いしますねー」

黒子「お金は後でお支払いしますわー」

佐天「あっ、ちょっと……あ」

美琴「……。え、何?」

佐天「あの……順番、かわります?」

美琴「えっ? あっ……別に、順番なんて……私はクレープさえ買えればそれで」

子供「やったー! ゲコ太ゲットー!」

美琴「あっ……」

佐天「……はあ」


ヴェント(あれがゲコ太か……やっぱり欲しいとは思えないわね)
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 18:25:34.29 ID:XDdsQ1O+o


ヴェント(やっと私の番ね……)

店員「いらっしゃいませー」

ヴェント「ストロベリーとチョコ、生クリーム増量でお願い」

店員「かしこまりましたー」

ヴェント(いつもは他のシスターの目があるから食べられないのよね……アンジェレネに言ったら羨ましがられそう)

店員「お待たせしましたー」

ヴェント「美味しそうね……はい、お金」

店員「ありがとうございます。それと、これをどうぞ」

ヴェント「ああ……忘れてたわ、ゲコ太が貰えるのね」

店員「ええ、それが最後の一個ですよ」

ヴェント「へえ、まあせっかくだし貰っておくかし……」

ドサッ

ヴェント「……ん?」

美琴「うう……」ズーン

ヴェント(え? この女の子、私の方を見てる? ……何か迷惑かけた?)

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 18:31:14.15 ID:XDdsQ1O+o


佐天「み、御坂さん……そんなに落ち込まないでくださいよ」

美琴「……ゲコ太が」

ヴェント(ゲコ太……? このよく分かんないカエルが欲しいワケ?)

美琴「ゲコ太……ゲコ太が……」

佐天「うう……どうしよう」

ヴェント(何だか大変そうだし……別にあげても良いわよね)

ヴェント「えーと……この、ゲコ太? もし良かったら受け取ってくれない?」

美琴「えっ!?」スクッ

佐天「うおっ!?」

美琴「良いんですか!? 本当に良いんですか!?」

ヴェント「え、ええ……」

美琴「あ、あ……ありがとうございます!」ガシッ

ヴェント(スゴイ握力……どんだけゲコ太好きなんだっつうの)

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 18:39:32.02 ID:XDdsQ1O+o


いそべ銀行

ビアージオ「すまない、外貨を両替する事は可能だろうか?」

銀行員「ええ、出来ますよ。では、こちらに」

ビアージオ(これで何とかなるだろう。……ヴェントは無事にやっているだろうか)

銀行員「ええと、現在の――っ!」

ビアージオ「ん? どうした、何かあった……」


丘原「動くな! 大人しくしていろ!」

ビアージオ(……顔を隠す布、大き目の鞄、そしてあの威圧的な態度)

男A「少しでも変な真似をしてみろ……そんな事したら」

丘原「オラァっ!」ボワッ

客「きゃ、きゃあああ!!」

ビアージオ(……炎、か。これが噂の能力者というヤツだな)

銀行員「お、お客様に危害を加えないでください! 目的は何でしょうか!?」

男B「銀行に来たらやる事は一つに決まってんだろ? 金を寄越せ!」

ビアージオ(面倒臭い事に巻き込まれたものだ、……はあ)

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 18:56:15.10 ID:XDdsQ1O+o


黒子「――で、お姉様はそちらの方にゲコ太を譲って頂いたという事ですわね」

美琴「そ、そういう事になるかなー……あははー……」

黒子「はあ……相変わらずゲコ太の事になるとお人がお変わりになるようで……。わたくしからもお礼、そしてお詫びをいたしますの」

ヴェント「良いわよ、私は別にそんなカエルに興味は無いから」

美琴「そんなカエルって……ゲコ太は可愛くないですか!?」

初春「み、御坂さん……落ち着いてください」

佐天「えーと……その荷物、どこかへ旅行ですか? それとも学園都市の外から?」

ヴェント「外からよ。さっき着いたばかりでここがどこだかもよく分かっていないってワケ」

初春「それは大変ですねー……あっ、もし何か困った事があったらいつでも私達に言ってくださいね」

ヴェント「へえ、見た目は可愛い女の子なのに頼もしいじゃない」

初春「もちろんです! 私は『風紀委員』ですから」

ヴェント「ジャッジメント……? 裁く……それなりに権力を持っているってコトかしら?」

黒子「そこまで大きな力を持っている訳ではありませんの。学園都市の治安維持に貢献しているといったところでしょうか」

美琴「違うでしょ、あくまでも校内の治安維持がメインじゃない。アンタはそれで始末書何枚書いてるのよ」

黒子「うっ……それは」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/03(水) 19:30:38.93 ID:XDdsQ1O+o


佐天「まっ、ともかく困った事があったら遠慮なくあたし達に言ってもらって良いですよ」

ヴェント「でも、今日会ったばかりなのに随分私に優しくしてくれるのね」

初春「初めて会ったとか、そんなの関係ありませんよ。それに……」

黒子「実は、わたくし達もこの四人で集まるのは今日が初めてですの」

ヴェント「えっ? もしかしてお邪魔だった……?」

美琴「そんな事無いですよ。それにゲコ太も頂いたし!」

黒子「お姉様……」

佐天「えー……ともかく、別にそんな気をつかわなくても大丈夫ですから」

ヴェント「そう言ってもらえると嬉しいわ。じゃあ、名前を教えてもらっても良いかしら?」

美琴「もちろん、私は御坂美琴です」

黒子「白井黒子ですの」

初春「初春飾利です、よろしくお願いします!」

佐天「佐天涙子でーす」

ヴェント「ありがとう、私のコトは気軽にヴェントって呼んでくれればいいわ」

111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 00:14:46.47 ID:L9eT6Mvmo


佐天「へー、イタリアから来たんですか」

ヴェント「正確にはその中に存在するバチカンからね」

黒子「バチカン……そこからなぜ学園都市にいらしたんですの?」

ヴェント「目的は一応……まあ、旅行みたいなものよ」

初春「お一人ですか?」

ヴェント「違うわ、もう一人連れが居るけど今は別行動をとってるだけ」

佐天「もしかして……男の人とか?」

ヴェント「性別は男に分類されるわね」

初春「って事は……恋人とかだったり!」

佐天「はー、オトナって感じですねー」

ヴェント「……まったくそんな気が起きない相手だから有り得ないわね」

美琴「じゃあ、恋人は居るんですか?」

黒子「お姉様……初対面の方にそれは失礼と言うものでは」

佐天「いいじゃないですか、それに……あたしも気になります!」

初春「私もです!」

ヴェント(……この位の年齢の子はそういう話が好きなのかしら。ルチアとは大違いね)

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 00:23:08.29 ID:L9eT6Mvmo


ヴェント「期待してるトコ悪いけど、恋人は居ないし今は興味も無いって感じね」

佐天「そうですかー。まあ、あたし達も同じようなもんですけどね……ねっ、初春」

初春「私も今の所そういうのはありませんね……」

ヴェント「あら、四人とも可愛いのに。もったいない」

初春「御坂さんはどうなんですか?」

美琴「えっ? 私?」

佐天「常盤台のお嬢様だし、言い寄られたりしてるんじゃないですか?」

美琴「んー……あまりそういうのに縁が無いかも」

黒子「当然ですの。お姉様に寄り付く悪い虫はこの白井黒子が全て追い払っておりますので」

ヴェント「……そういう関係なのかしら?」

美琴「違いますっ!」

初春「さすが常盤台……未知の世界ってのは本当にあるんですね」

美琴「違うってば!」

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 00:52:46.53 ID:L9eT6Mvmo


ビアージオ(……見た所まだ少年。その歳で銀行強盗とは、異教徒らしいと言うべきか?)

客「た、助けてえええ!」

丘原「静かにしろ! 金さえ出せば危害は加えねえ。ただ、少しでも変な動きを見せたら……どうなっても知らねえぞ?」

銀行員「わ、分かりました! 今すぐお金を用意いたします!」

男A「最初からそうしときゃ良いんだよ。……この金を用意しているヤツ以外は壁側に行け、今すぐな」

客「う、うう……」

男B「チンタラしてんじゃねえぞ! さっさと動け!」

ビアージオ(馬鹿の一つ覚えのように大声を出すだけ……あまり差別はしたくないが、これは異教徒の猿だな)

男A「そうだ、それで……ん? おい、オッサン。テメェも早く壁の方に移動しろ」

ビアージオ「おっさん? ……もしや、それはわたしの事を言っているのか?」

男B「当たり前だろが、とっとと動け。そうしねえと……」

丘原「火だるまになっちまうぞ?」ボウッ

ビアージオ(……面倒だ)

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 01:10:55.34 ID:L9eT6Mvmo


男A「おい、コイツ炎見てビビっちまったみてえだぜ。黙ってこっちを見てるだけだ」

男B「はっ、じゃあビビッて足が動かねえんだな。ビビりのオッサンとかダサすぎだろ」

丘原「おい、言う通りにしねえと本当に痛い目見るぞ?」

ビアージオ「わたしはこの銀行に用があって来た。動くなら君達がさっさとここから出て行くべきだろう」

男A「……おい、このオッサン意味分かんねえ事言ってねえか?」

男B「ガイジンだし、日本語通じねえんじゃねえの?」

丘原「もう一度言うぞ、言う事を聞け」

ビアージオ「断る、異教徒の小猿共の命令など聞くまでもない」

丘原「……ナメた事言ってんじゃねえよ!」ボウッ

客「きゃあああ!!」

客「た、助けてくれえ!」

銀行員「お、お客様……どうか、今だけはその方達に従ってください」

ビアージオ「……申し訳ないが、それも拒否する。わたしに命令しても良いのは、わたしよりも偉い人間だけなのでな」

男B「ふ、ふざけやがってえ!!」

ビアージオ「来い、異教徒の小猿共。我が十字架が君達を正しい方向へと導いてやろう」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 01:37:13.57 ID:L9eT6Mvmo


男A「……コイツ、話が通じねえや。もういい、やっちまおうぜ!」

丘原「オッサン、後悔させてやるよ。火傷だらけの体で自分の国に帰るんだな!」

 丘原燎多は発火能力者である。
 その丘原の手に現れたのはやはり火の球であった。しかし、先程とは大きさが違う。
先程までのが威嚇のための火だとしたら、今、丘原の手に生み出されたものは相手を倒すための炎。


丘原「オラァ!」


 その炎の球はバスケットボール程の大きさであり、普通の人間がまともに喰らっては大惨事になる事は間違いない。
しかし、ビアージオは避けようとせず、ただそこに悠然と立ったままである。そしてその場所に炎の球が迫る。


ビアージオ(……能力者と言えど、炎には変わりない。ならば)

       「――十字架は悪性の拒絶を示す」


 轟! という爆発音が響き渡る。それは炎と「何か」が衝突する音であった。
司教は避ける事が出来ず諦めたのか、いや――


丘原「……ハッ、言う通りにしねえからだ。おい、死んではいな……っ!」

ビアージオ「……弱い、その程度では火種にすらならないな」


 避ける必要が無かっただけだ。

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 01:57:54.69 ID:L9eT6Mvmo


丘原「な、何だよ……そのでっけえ鉄骨みてえなのは!?」

ビアージオ「失礼だな、十字架を鉄骨呼ばわりするとは」


 小規模の爆発の中から現れたのは巨大な十字架、それは天井まで届きそうな大きさであった。
その十字架はビアージオを炎から守るには十分な大きさであり、床に刺さったままその場に似合わないオブジェとなった。


ビアージオ「あまり守りに使った事は無いのだが……君達に悔い改める時間を与える必要があると思ってな」

男A「能力者……!? いや、こんな能力見た事ねえ……」

ビアージオ「しかし、今考えるとわたしが学園都市で騒ぎを起こしては問題になりそうだな……。
        それは教皇様に迷惑をかけるも同然、出来ればこの辺で立ち去りたいものだ」

男B「な、何ゴチャゴチャ言ってんだ! そんなの見かけ倒しだろ!」

ビアージオ「仕方ない……君達に問おう。今すぐ自らの悪行を悔い改め、この場を立ち去ってはどうだ?」

丘原「……ンな事出来る訳ねえだろうがぁ!!」

ビアージオ「……残念だ、若くして悪の心を持ってしまったか。ならば――」


 そう言うとビアージオは十字架を手に取り、三人に向かって投げつけた。すると、


ビアージオ「――その悪性は我が十字架が拒絶する」


 巨大な十字架が男三人を襲い、そのまま覆いかぶさるように三人を押しつぶす。


三人「ぐうっ……」

ビアージオ「安心しろ、大きさはわたしでもどうなるか分からないが、出来る限り手加減はしたつもりだ。……出来る限りはな」


 その手加減は、少年達を気絶させるには十分すぎる程であった。

117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 02:07:02.60 ID:L9eT6Mvmo


佐天「っ! 何か今、あっちからすごい音が……」

ヴェント「……ええ、あそこの銀行からみたい」

黒子「事件ですわね……初春、すぐに警備員と救急に連絡を」

初春「分かりました!」

美琴「黒子!」

黒子「いけませんわ、これは黒子のお仕事。お姉様はそこで見守ってくださいまし」

美琴「でも、」

黒子「大丈夫ですの、わたくしにお任せあれ」ヒュンッ

ヴェント「っ! 消えた!?」

佐天「まさか……白井さんって」

美琴「ええ、黒子の能力は空間移動。大能力者相応の強さだから心配する事は無いと思うけど……」

ヴェント(能力者か……アレイスターのヤツ、とんでもないモノを生み出したわね)

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 02:19:49.58 ID:L9eT6Mvmo


黒子「風紀委員ですの! 大人しくその場……に?」

黒子(大きな……鉄骨のような……十字架? それに下になってるのは……いかにも悪い事しに来ましたー、って感じの男達。そして……)

銀行員「あ、ありがとうございます! お怪我はありませんでしたか!?」

ビアージオ「わたしは無傷だ。それより……床を傷つけ、穴まで開けてしまい申し訳ない」

銀行員「いえ、他のお客様に怪我も無くお金も奪われなかったのですから……それ位は問題ありません」

ビアージオ「なら良いのだが……ん?」

黒子「ええと……どうやら、あなたにお話をお伺いする必要がありそうですわね」

ビアージオ「……このまま何も聞かずに帰してはもらえないだろうか」

黒子「許しませんの」

ビアージオ「そうだろうな……はあ、面倒な事になったものだ」

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 02:29:01.51 ID:L9eT6Mvmo


外の通り

初春「白井さん、大丈夫でしたか!?」

黒子「ええ、というか何もしていませんの」

美琴「何もしてない? そんな訳……ねえ、黒子」

黒子「お姉様のお聞きになりたい事は言わなくても分かりますの。そして、今からそれを伺うところでして」

ビアージオ「……はあ」

佐天「……その男の人が銀行で何か悪さをしてたんですか?」

黒子「いいえ、むしろその逆ですの」

初春「逆? どういう事ですか?」

黒子「それが  ヴェント「ビアージオ!? アンタ、こんなトコで何やってんのよ?」

ビアージオ「ヴェントか……色々あってな」

美琴「もしかして……」

佐天「ヴェントさんのお知り合いだったりします?」

ヴェント「……そうなるわね」

120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 02:44:13.94 ID:L9eT6Mvmo


黒子「――つまり、あなたが銀行強盗をしようとしたあの男達をコテンパンにした、という事でよろしくて?」

ビアージオ「違いない、方法に関しては黙秘させてもらうがな」

ヴェント「ビアージオ、そこの銀行を見る限りではずいぶん派手にやったみたいね」

ビアージオ「……今では後悔している」

美琴「あの十字架……黒子が移動させたから良いけど、あんな重そうなの一人では運べないわよね」

佐天「あたしも気になりますね……どうやったんですか?」

ビアージオ「同じ事は二度言わせるものではないよ。方法に関しては黙秘させてもらう」

初春「ええと……今は言わなくても良いですけど、もうすぐ警備員の人が来るのでその時は言ってもらわないといけませんからね?」

ビアージオ「まだ拘束されると言うのか? ……わたしとした事が」

美琴「あー……でも、他のお客さんを助けた訳ですし、そんなに落ち込まなくても」

ビアージオ「……拘束される時間、それが無駄でありそして面倒臭い。はあ……憂鬱だ」

佐天「……なんか、変なとこで落ち込んでるような気がしますね」

ヴェント「こういう男なのよ、放って置いて問題ないわ」

121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 03:19:17.05 ID:L9eT6Mvmo


黒子「とりあえず、警備員が来るまではここに居てもらいますの」

ビアージオ「これ以上騒ぎを起こす事は避けたいからな……大人しく従おう」

ヴェント「当たり前でしょう。着いた初日から問題を起こすなんて……教皇が聞いたら呆れるわよ」

ビアージオ「それは言わないでもらいたいな。事の深刻さは自分が一番分かっているつもりだ」

初春「えーと……ヴェントさんの知り合いって事は、一緒に学園都市に来たって事ですか?」

ビアージオ「その通りだが、君達はヴェントの事を知っているのか?」

佐天「さっきまで、仲良く一緒にクレープ食べてたんですよねー」

ヴェント「ねー」

美琴「という訳で、別に心配しなくても大丈夫ですよ」

ビアージオ「心配などしていない、むしろこの後の処遇の方が気になって仕方ないな……」

初春「そんな酷い事になるとは思わないですけど……あっ、来ましたよ」

黄泉川「失礼するじゃん。通報をしたのは君達?」

黒子「ええ、風紀委員第一七七支部所属の白井黒子と」

初春「初春飾利です」

黄泉川「ご苦労様……と言いたいとこだけど、ちょっとやり過ぎじゃん? 始末書位は覚悟しといた方が良いかもね」

黒子「いえ、犯人を沈黙させたのは……そちらの方ですの」

黄泉川「ん? ……ええと、この男の人?」

ビアージオ「違いない、その銀行の焦げた跡以外はわたしの所業によるものだ」

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 10:01:07.49 ID:braJtlF8o


黄泉川「……とりあえず、名前を聞かせてもらうじゃん」

ビアージオ「ビアージオ=ブゾーニ、この都市の者ではない。外部者のリストの方から探ぜば見つかるだろう」

黄泉川「わざわざどうも、えーと……ビアージオ=ブゾーニ……あっ、あったあった。今日来たばかりねえ」

ヴェント「来たばかりで騒動を起こすなんて……どっちが面倒を見にきたのか分からないわね」

黄泉川「じゃあ、詳しく話を……ん? 本部から通信……ちょっと待つじゃん」


ビアージオ「どうやら時間がかかるかもしれないな……」

黒子「あれだけ激しくお暴れになったら仕方ありませんの」

美琴「確かにね……」

ビアージオ「無理も無いか。ヴェント、先に宿泊先に行ってもらう事になりそうだ」

ヴェント「しょうがないわね……まっ、引き取りには来てあげるから安心しなさい」

ビアージオ「……不本意だがそうなるかもな。君達ももう居る必要は無いだろう、立ち去るべきだと思うが」

初春「いえ、私達も通報したので関係者ですから。それに……」

佐天「どうやってあんな事したかも気になりますから」

ビアージオ「それが困ると言っているのだ」

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 10:05:51.27 ID:braJtlF8o


黄泉川「何?」

『ビアージオ=ブゾーニをすぐに解放するように、事情聴取も不要との事です』

黄泉川「……説明を求める事は」

『こちらも指示があっただけなので……ともかく、お願いします』

黄泉川「……了解」

黄泉川(圧力か……まっ、被害を受けたのは犯人の少年達だけみたいだし深入りする必要も無いじゃん)

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 10:20:39.29 ID:braJtlF8o


初春「あっ、戻ってきましたよ」

黄泉川「待たせたじゃん?」

ビアージオ「少しな。さて、処分でも決まったか?」

黄泉川「ああ、結論を言えば……話を聞く必要は無くなったじゃん。ビアージオ=ブゾーニ、
     事件解決のための協力に感謝しこの場で解放する……という事で」

美琴「えっ? それって……」

黒子「上からの……」

黄泉川「それ以上は禁句じゃん」

ビアージオ「……なるほど、こちらとしても協力になっていたのなら何よりだ。ここは黙って立ち去らせてもらおう」

黄泉川「送迎の必要は?」

ビアージオ「そこまで気を遣わせるわけにもいかないな、そちらはそちらの仕事をしてくれれば良い」

黄泉川「では、改めてご協力に感謝します。楽しい滞在を」

ビアージオ「そうなると良いのだがな」

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 10:32:54.29 ID:braJtlF8o


ヴェント「……何があったのかしら?」

ビアージオ「見当はついている。おそらく……ん?」

初春「佐天さん……これは怪しいですね」

佐天「うん、学園都市の裏側を見たって感じ?」

美琴「あれだけ暴れても何も聞かれないなんて……ねえ?」

黒子「……それはお姉様が言える事でもないような気が」

ビアージオ「……君達、余計な詮索は慎んでもらおうか」

佐天「えー? こんな面白そうな事を見逃すなんて……」

初春「でも、ヴェントさんのお知り合いの方ですから……」

黒子「そうですの、せっかく外から来られた方に失礼な態度を取るのは控えましょう」

ヴェント「そう言ってくれると助かるわ、私達も来たばかりなのに帰国なんてのは避けたいし」

佐天「それもそうですね……ごめんなさい、つい……」

ビアージオ「分かってもらえればそれで良い。……日も暮れてきた、君達も何かに巻き込まれる前に帰った方が良いだろう」

美琴「そうね……大人しく帰りましょうか」

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 10:44:26.55 ID:braJtlF8o


初春「せっかく御坂さんにお会いする事が出来たのに……あまり話せなかったのが心残りですね」

美琴「また一緒にどこか行きましょう? あっ、ヴェントさんもどうですか?」

ヴェント「私も……? 良いのかしら?」

佐天「もちろん! じゃ、ヴェントさんも一緒にまた会うって事で」

ヴェント「ええ、今度はゆっくり話をしたいわね」

黒子「そうと決まれば、お互いに連絡先を交換した方がよろしいのでは?」

初春「そうですね。ヴェントさん、連絡先を教えてもらっても良いですか?」

ヴェント「えっ? 連絡先……?」

美琴「携帯を近づければすぐに出来……もしかして、海外のは無かったりします?」

ヴェント「ええと……」

ビアージオ「……ヴェントの携帯は故障していてな。代わりにわたしが君達の連絡先を控えておこう」

ヴェント「……ビアージオ?」

ビアージオ「この場は任せておけ」

佐天「そうなんですか……大変ですね。分かりました、じゃあお願いします」

ビアージオ「海外の携帯だが……とりあえずやってみよう」ピッ

美琴「どれどれ……あっ、普通に出来ますね」

ビアージオ「御坂美琴、登録完了だ」

初春「では、次は私が」

佐天「その次はあたしが!」

黒子「そしてわたくしですわね」

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 10:58:25.83 ID:braJtlF8o


ビアージオ「これで全員か」

黒子「ではわたくし達は帰るとしましょうか」

初春「そうですね。ヴェントさん、また会いましょう!」

美琴「色々あるかもしれないけど気を付けてください」

佐天「楽しい旅行にしてくださいねー」

ヴェント「ええ、また会いましょうね」


ビアージオ「……この都市は不思議なものだ。罪を犯す若者も存在すればあのような少女達も居る。
        どちらがこの都市の本来の顔なのか、それともどちらも持ち合わせているのか……」

ヴェント「そんなコトはどうでも良いわ、あの子達は優しかったってだけで十分でしょう?」

ビアージオ「それもそうだな……気にするまでも無いか」

ヴェント「ところでビアージオ、さっきのコトだけど」

ビアージオ「ああ、感謝の言葉など言わなくても良い。後でわたしの携帯から連絡なりなんなりをすれば良いだろう」

ヴェント「そうじゃなくて……どうしてアンタ携帯電話を持っているコトを隠してたの!?」

ビアージオ「……はあ?」

ヴェント「前から興味があったのよねー……ちょっと触らせろ!」

ビアージオ「ふざけるな! ヴェントが触って壊れた機械は数知れず! これだけはと今まで必死に隠していたわたしの苦労も考えろ!」

ヴェント「大丈夫! 飛行機に乗るコトが出来るようになった今の私ならいける!」

ビアージオ「絶対触らせるものか! 拒否! 拒絶!」

128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 11:21:16.52 ID:braJtlF8o


ヴェント「はあ……はあ、アンタも強情ね」

ビアージオ「ああ……これだけは守り切ってみせる」

ヴェント「でもね、さっさと渡さないと……グッチャグチャの塊にすっぞコラ!」ザッ

ビアージオ「お、おい! ハンマーは冗談では済まなくなるぞ!?」

ヴェント「『神の右席』を……ナメてんじゃねえぞおおおお!!」

ビアージオ「そこまで本気になる事では無いであろう!?」

ヴェント「アンタには騙された恨みもあるからね……ちょっとオシオキしておかないと。それに……」

ビアージオ「……それに、なんだ」

ヴェント「私は今眠くてお腹が減ってイライラしてるのよおお!!」

ビアージオ「理不尽すぎる……シスター・アンジェレネの方がマシだな。それにしてもこんなくだらない事をしている場合では……ん?」プルル

ヴェント「あら、立ち止まってていいのかしらーん?」

ビアージオ「待て、電話だ。わたし達を心配した教皇様からかもしれない」

ヴェント「チッ……仕方ないわね」

ビアージオ「まったく……。これは、バチカンからではないか……。誰だ?」

『この都市を楽しんでもらえているようで何よりだ、ビアージオ=ブゾーニ』

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 11:44:13.84 ID:braJtlF8o


ビアージオ「……名前を聞こう、と言うべきかもしれないが大体の見当はついている。アレイスターか?」

アレイスター『察しが良くて助かる。歓迎しよう、ローマ正教の重鎮達』

ビアージオ「歓迎か、敵意が無くて安心したと言っておこう」

アレイスター『そこまで警戒しなくとも良いだろう。私は別に争いを求めている訳では無い』

ビアージオ「今は、というのが抜けている気がするがな。その前に……礼は言っておこう」

アレイスター『学園都市の「力」を体感した感想を聞きたいものだ』

ビアージオ「あの少年位ではこのビアージオ=ブゾーニに傷を付ける事すら不可能だ。
        わたしと戦うのなら大聖堂を落とす程の戦力を持ってこい、話はそれからだ」

アレイスター『そこまで気を荒げなくても良いだろう。それに、自ら巻き込まれた者は私にも止める事は出来ない』

ビアージオ「耳が痛いな……ともかく、取り計らいに感謝する」

アレイスター『さて、今回わざわざ科学の領域に足を踏み入れたのは確か』

ビアージオ「……聞いているのなら話すのは避けさせてもらおう」

アレイスター『「前方のヴェント」が機械に興味がある、とは聞いた。それでこの都市を選ぶとは』

ビアージオ「世話になるぞ。しばらくは滞在するつもりだ」

アレイスター『好きにすれば良い。この都市にある家電も同様だ、存分に楽しむ事が出来るようにしておこう』

ビアージオ「助かるよ。それと……おそらくだが、かなりの被害が出ると思われる」

アレイスター『大げさでは無いのか』

ビアージオ「『前方のヴェント』を甘く見るなよ。ヤツが本気を出せば……この都市の全ての家電が爆発するぞ」

アレイスター『……気には留めておこう』

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 12:06:50.16 ID:braJtlF8o


ヴェント「ちょっとー、誰?」

ビアージオ「少し黙っていろ。相手はアレイスターだ」

ヴェント「アレイスター? なーんだ……とっとと話を終わらせなさいよね」

ビアージオ「そう思うなら邪魔をするな。……失礼した、とりあえず話す事はもうこちらには無いが」

アレイスター『こちらからも無い。隣も元気そうで何よりだ』

ビアージオ「……視ている、という事か」

アレイスター『どのように解釈してもらっても構わない』

ヴェント「早くー、もう疲れたー」

ビアージオ「アレイスター、最後に一つ良いだろうか。……ここから一番近いホテルに泊まりたいのだが」

ヴェント「足痛いー、荷物重いー」

アレイスター『……手配しておこう』

ビアージオ「……礼を言わせてもらう」

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 12:13:19.07 ID:braJtlF8o


なんやかんやあって第七学区のホテルの前

ビアージオ「ここか……急に頼んだにしては立派な所を用意してもらったものだ。ヴェント、入るぞ」

ヴェント「ハンマー重い……置いて来れば良かったわね」

ビアージオ「早くしろ、わたしは先に行く」

ヴェント「ちょ、ちょっと待ちなさい」

ビアージオ「どうした、別に後から来れば良いだろう」

ヴェント「……自動ドアが苦手なのよ」

ビアージオ「……よくここまで無事に来たものだな」

ヴェント「私もやれば出来るってコトね」

ビアージオ「褒めてはいないぞ」

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 12:30:36.53 ID:braJtlF8o


ホテル内

ビアージオ「さて、チェックインも済ませ二つの部屋の鍵も受け取った。……で」

ヴェント「嫌よ! 階段! エレベーターなんて無理!」

ビアージオ「……だったら一人で歩け、わたしはエレベーターを使う」

ヴェント「薄情ね……一緒に階段で行きましょう。健康的だし」

ビアージオ「勝手に健康になって長生きでもしていろ。付き合ってられん」

ヴェント「待って! やっぱり足痛いから階段はキツイかなーって……」

ビアージオ「……では、どうすれば良い」

ヴェント「飛行機、タクシー、自動ドアの次は……エレベーターを克服する。付き合いなさい」

ビアージオ「……やはりそうなるのか。それにしても、飛行機から降りた後はどうした?」

ヴェント「……飛行機に乗ってる時の緊張と、乗れた達成感でその辺の記憶が無いわ」

ビアージオ「……先が思いやられるな」

133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 12:39:31.21 ID:braJtlF8o


ホテル ビアージオの部屋

ビアージオ(あれから二時間挑戦し続け、やっとの思いで部屋に着く事が出来た……疲れたな)

ビアージオ「さて、教皇様に一応連絡を入れておくか。時差は……今は夜、ならばまだ昼か。早速電話を」

ドンドン

ビアージオ「……嫌な予感が」

ヴェント「ビアージオ! 助けてー!」ドンドン

ビアージオ(やはりヴェントか……今度は何だ)ガチャ

ビアージオ「どうした、また機械でも壊したのか?」

ヴェント「……部屋から出て、戻ってきたら鍵が閉められてた」

ビアージオ「…………」

ヴェント「何よコレ!? 勝手に閉まるとかどうかしてる! これだから科学は……」

ビアージオ「……ヴェント、オートロックという言葉を知っているか?」

ヴェント「何それ?」

ビアージオ「……駄目だ、駄目過ぎる」

134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 12:56:24.28 ID:braJtlF8o


ビアージオ(あれから一時間、オートロックの利便性を説き続けてしまった……やっと電話が出来る)プルル

ルチア『もしもし』

ビアージオ「その声は……シスター・ルチアか」

ルチア『ビショップ・ビアージオでしょうか? 無事学園都市に着く事が出来たのですか?』

ビアージオ「何とかな。教皇様とお話しする事は出来るだろうか?」

ルチア『お待ちください……教皇様は今、お忙しいようです』

ビアージオ「そうか。ならばわたし達は無事に着く事が出来、学園都市のトップとも接触したとお知らせするよう頼めるか?」

ルチア『分かりました。……ビショップ・ビアージオ、異教徒の国はいかがでしょうか?』

ビアージオ「これはこれでなかなか快適だと言っておくか。……まあ、異教徒の猿と呼ぶべき者達も居たには居たがな」

ルチア『そうですか……ご無事をお祈りしております』

ビアージオ「そちらもな。……では、疲れが溜まっているようなのでこの辺で失礼するよ」

ルチア『ええ、お体をゆっくりとお休め下さいね』

ビアージオ「そうさせてもらおう」

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 13:00:33.35 ID:braJtlF8o


ビアージオ(さて……そろそろ眠るとしようか。明日は今日よりも騒動に巻き込まれるだろう……ヴェントのせいで)

ビアージオ「しかし、窓から見るとこの都市はなかなかの景色だ。過剰な気もするが、これ位が適しているのだろうか?」

ビアージオ(……願わくば、帰国まで何事も無く時が過ぎますように。無理な願いは流石に叶わないだろうがな)

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/04(木) 13:06:06.23 ID:braJtlF8o


ホテル ヴェントの部屋

ヴェント(はあ……ホテルに泊まるだけでこんなに大変だとは思わなかったわ)

ヴェント「でも、明日からはもっと大変なコトをするのよね。今のうちに休んでおかないと……」

     「学園都市、か。能力者、アレイスター……は別にどうでも良いわ。家電よ家電。
      さっさと家電を使いこなせるようになって、あの子達と遊んで帰るとしましょうか」

     (さてそろそろ眠りに……あら?)


ヴェント「雷が落ちてるわね。天気も良いのに、変なの」

     「まあ良いわ、おやすみなさーい……」


     
     第一日 終了 
 
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 01:32:46.14 ID:4xQIZacao


翌朝 とある高校の男子寮のとある部屋


「なんていうか、不幸っつーか……ついてねーよな」

(冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、エアコン……テレビは生きてんのか)

「このクソ暑い夏にエアコンと冷蔵庫が壊れるとか、どーしろって言うんだよ……」

「……分かってんだよ。分かってんだけど独り言にしねーと消化できねーんだよう」

「しかも朝から補習。もうなんつうかアレだな、うんアレだ……はあ」

(……ウダウダしてんのも時間のムダってな)

「いーい天気だし、布団でも……と思ったけどやーめた。遅刻する前にさっさと行くとしますか」

(しかし、家電がイカレちまったのはマズイな……恨むぞ雷め)



上条「……帰りに電気屋にでも寄るしかねーか」



144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 01:42:58.70 ID:4xQIZacao


同じ頃 第七学区のとあるホテル ビアージオの部屋

ビアージオ「……朝か」

       (そうか、学園都市に居るのだったな。景色が違いすぎるからかそれ相応に違和感を感じるものだ)

       「今日はいよいよ学園都市製の家電にヴェントが挑む事になるのか。……面倒だな」

       「とりあえず、被害を最小限に抑える必要がある。……さて、問題のヴェントは」


ドンドン

ヴェント「ビアージオー!」

ビアージオ「さっそく来やがったか……待て、今開ける」ガチャ

ヴェント「大変なのよ、何とかして!」

ビアージオ「朝の挨拶の代わりに騒動を持ってきたか……何があった」

ヴェント「……テレビを壊した」

ビアージオ「…………」

ヴェント「…………」

ビアージオ「……まずは一敗だな」

ヴェント「……うん」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 01:58:17.97 ID:4xQIZacao


ホテル内のレストラン

ビアージオ「テレビの件は伝えておいた、気負わなくても良いぞ」

ヴェント「……そうは言うけど、これから色々使えるようになろうとしているのよ。その最初がこれじゃあ……はあ」

ビアージオ「安心しろ、こんなのはまだ軽い。今後は様々な家電に挑み、数多の家電を破壊するだろうからな」

ヴェント「ずいぶん失礼なコト言ってくれるじゃない」

ビアージオ「否定出来るのか?」

ヴェント「……無理ね」

ビアージオ「分かっていれば良い。さて、今日は家電に挑む第一日となる訳だが」

ヴェント「ええ、どんな相手が待ってるか楽しみね。でも、どうすれば家電が使えるようになるのかしら?」

ビアージオ「それに関しては心配するな、わたしに考えがある」

ヴェント「考え? 何か良い方法でもあるワケ?」

ビアージオ「家電が集まる場所、そこへ行けばその道の専門家が居るはずだ。
        まあ、専門家まで行かなくても知識を持つ者であれば構わないだろう」

ヴェント「なるほどね。その家電が集まる場所ってのはドコなの?」

ビアージオ「それは――電気屋だ」

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 02:16:01.46 ID:4xQIZacao


ヴェント「電気屋……名前からしてレベルが高そうね、相手としては悪くない」

ビアージオ「落ち着け。制圧に行くのではない、家電の扱いを学びに行くのだぞ」

ヴェント「分かってるわよ、それ位の覚悟が無いとねってコト」

ビアージオ「覚悟するようなものでも無いのだが……まあ、ヴェントならばそれも納得だな」

ヴェント「ともかく、ホテルを出たらその電気屋ってヤツに向かえば良いのね?」

ビアージオ「そういう事だ。そこまではわたしが連れて行ってやろう」

ヴェント「えっ? 連れて行くだけ? 別行動ってコト?」

ビアージオ「その通りだ。わたしは家電について学ぶ必要は無い、居ても時間の無駄だ」

ヴェント「……でもでもー」

ビアージオ「何だ? 心細いとでも言いたいのか?」

ヴェント「そういうワケじゃないけど……」

ビアージオ「……ヴェント、良く考えろ。家電の扱いを学ぶ事が何を意味するか、そして教皇様が何をお考えになっているか」

ヴェント「……それは」

ビアージオ「わたしが言わなくともそれは分かっているだろう? ならば、ここは自分一人で立ち向かえ」

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 02:30:36.62 ID:4xQIZacao


ビアージオ「自分よりその分野に長けている者に教えを請う事は誰しもがする事だ、それは構わない。
       むしろ推奨すべき行為だ。しかし、その場で努力するのは自らの力のみであるべきだろう」

ヴェント「……一人で頑張れって言いたいワケ?」

ビアージオ「ああ、そうでないとわざわざ科学の領域にまで足を運んだ苦労が無駄になるからな」

ヴェント「へえ、説教くさいけどたまには司教っぽいコトもするのね」

ビアージオ「放って置け。言いたい事は分かったな? では、今日は精一杯動いてみろ」

ヴェント「ええ、そうさせてもらうわ。あと、一つ聞いても良いかしら?」

ビアージオ「何だ」

ヴェント「まさかとは思うけど、面倒くさいから一人で勝手にやってろ……とか思ってないわよね?」

ビアージオ「………………。そんな事ある訳無いだろう?」

ヴェント「その反応、図星だなオイ」

ビアージオ「……いや、正直時差ボケが体を蝕んでいるのだよ。ちょっと休ませてくれ」

ヴェント「そのまま一生寝てれば良いんじゃないかしら」

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 02:51:13.29 ID:4xQIZacao


ビアージオ「さて、今日の予定はこれで良いな」

ヴェント「問題ないわ、早速向かいましょう!」

ビアージオ「待て、まだ九時前だ。電気屋が開くのは十時、一時間以上あるぞ」

ヴェント「えー……せっかくやる気になってたのに」

ビアージオ「そう言うな。ところでヴェント、『天罰術式』は用意出来るのか?」

ヴェント「えっ? まあ、ちょっと時間がかかるけど出来るわよ。……何を考えているのかしら?」

ビアージオ「……昨日の様子からして、この都市には多くの能力者が居ると思われる。
        それがあの少女達のように悪用する者で無ければ良いが、その逆も存在すると証明された」

ヴェント「安全、とは言い切れないってコトね」

ビアージオ「そして、わたし達は科学とは正反対の位置に居る。その両者がもし本格的にぶつかり合う事になれば……」

ヴェント「……想像したくも無いわね」

ビアージオ「昨日の騒動はわたしの行いが悪意に満ちたものではなく、かつアレイスターの計らいによって事なきを得た。
        しかし、もし悪意からヴェントを狙う者が現れた時……わたし達の手を離れ火種になる可能性もある」

ヴェント「昨日は偶然にアンタが襲われた。でも、そうではなく意図的に私達を狙う者が居るかもしれないってコト?」

ビアージオ「簡単に言えばそうなるな」

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 03:20:07.68 ID:4xQIZacao


ヴェント「厄介ね……私なんか狙っても何の得にもならないのに」

ビアージオ「あくまでも可能性の話だ。もっとも、二十億の信徒の上に立つ『神の右席』ならばその可能性は引き上がる」

ヴェント「ただ家電を使えるようになりに来ただけなんだけどなー……」

ビアージオ「静かに滞在を終えたいのはわたしも同じだ。……そこで『天罰術式』の出番となる」

ヴェント「良く分からないわね。『天罰術式』は私の、そしてローマ正教の切り札よ。そんなの使ったらそれこそ火種になりそうじゃない」

ビアージオ「まあ聞け。『天罰術式』はヴェントに悪意や敵意を向けた者にしか効力を発揮しない、そうだな?」

ヴェント「間違ってはいないわ」

ビアージオ「ならば、誰も悪意を向けなければ何の意味も無い、つまりは無害だ」

ヴェント「ふんふん」

ビアージオ「と言う事は、普通に過ごしていれば誰も倒れずに済む。もしヴェントを狙う者が居ればその者は倒れる。
        何も起きずに過ごせれば良し、命が狙われても結果的には何も起きずそれもまた良し、となる」

ヴェント「変な使い方を考えるものね。でも、結局は敵を魔術で倒してしまう事になるからまずいんじゃないの?」

ビアージオ「その時はアレイスターに報告し、危害を加えようとした勢力を無力化してもらうまでだ。
        アレイスターのヤツも『天罰術式』を持つヴェントと正面からやり合うのは避けたいだろうからな」

ヴェント「……何か面倒くさいわね。アンタ、こういうのは嫌なんじゃないの?」

ビアージオ「自分の力を使わない作戦を考えるのは苦にならないものだ。それに、科学の都市で油断する程愚かではない」

ヴェント「……とりあえず、準備はしておくわ。でも、舌に鎖付けたりとかが大変なのよねー」

150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 04:03:44.41 ID:4xQIZacao


ビアージオ「では、『天罰術式』に関しては任せたぞ」

ヴェント「はいはい、面倒だけどやっておくわ。それが終わり次第出発ってコトで良いわね」

ビアージオ「ああ、構わない。わたしは一旦部屋に戻るとするかな」

ヴェント「じゃ、また後でねー」


ビアージオの部屋


ビアージオ(さて、一応教皇様に報告しておきたいが……向こうは深夜、事後報告になってしまうか)

ビアージオ(しかし、念には念を入れておかねば。それならば……アレイスターにも伝えておく必要があるな)

ビアージオ「しかし、昨日の番号で出るのか? ……物は試しだな、やってみよう」プルル

アレイスター『何の用かな、ビアージオ=ブゾーニ』

ビアージオ(結構簡単に出るものだな……)

ビアージオ「手短に言おう、『神の右席』の力を使う。これはあくまでも自衛のためだ、その旨を理解しておいてもらいたい」

アレイスター『私はそちらについて詳しくは無いのだが、説明は省くつもりか?』

ビアージオ「白々しいな、ともかく用件はそれだけだ。もし不穏な動きがあればそちらで処理してもらえると助かる」

アレイスター『そこまで慎重になる必要は無いと思うが』

ビアージオ「そうもいかないのがまた面倒でな。これ以上話す事は無い、切るぞ」プツッ

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/05(金) 23:42:56.03 ID:grMJzvbbo


ビアージオ(もう一時間近く経ったか。ヴェントの方はどうであろうか)

ドンドン

ビアージオ「来たな……待て、今開ける」ガチャ

ヴェント「ひゅんひへひははほー」

ビアージオ「……あぁ?」

ヴェント「ははは、ひゅんふへふはっへひっへふほほー」

ビアージオ「まさか、言語に影響を与える能力か? おのれ能力者……!」

ヴェント「ひはうひはう。ひょっほひはひふひははははへはふへへー」

ビアージオ「……何を言いたいのかさっぱり分からん。ちょっと紙に書いてみろ」

ヴェント「ははっは。……はい」

ビアージオ「何々……『舌に鎖を付けるの久しぶりだったから、喋り辛くてこうなってるのよ』……?」

ヴェント「ほういうほほ」

ビアージオ「これがローマ正教の切り札とはな……はあ」

ヴェント「はひほー。ほへ、へっほうふへふほはいへんはっはんはははー」

ビアージオ「分かった分かった、慣れるまでしばらく喋らなくて良い」

ヴェント「おっへー」

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 00:05:37.23 ID:KIzwRnjTo


ヴェント「……よし、ちゃんと喋られるようになってきたわ。これで外に出られるわね」

ビアージオ「流石にそのまま外に出る訳にはいかなかったからな……さて、行くか」

ヴェント「……ついに始まるのね、私の輝かしい家電生活が」

ビアージオ「輝かしいかどうかは疑わしい所だ」

ヴェント「何よ、私にかかれば家電なんてすぐに自由自在に使いこなせるようになるわ」

ビアージオ「自由自在に破壊できる、の間違いだろう」

ヴェント「くっ……今に見てなさい、ローマ正教一の家電使いになってやるから」

ビアージオ「大した自信だな……ただ、頼むから他の者を爆発に巻き込むなよ」

ヴェント「大丈夫……と言い切れないのが悔しいわね」

ビアージオ「……ローマ正教がテロ集団などと思われるような事態だけは避けてくれ」

ヴェント「……善処するわ」

ビアージオ「まあ良い。無駄話はここまでだ、行くぞ」

ヴェント「あっ、その前に……荷物ってどうすればいいの?」

ビアージオ「同じホテルに泊まる予定だ、そのまま置いておけば良い」

ヴェント「良かった、あのハンマー持ったままってのはキツイからどうしようか困っていたのよ」

ビアージオ「ホテルにハンマーがあるのもまた問題になりそうだがな」

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 00:42:10.50 ID:KIzwRnjTo


タクシー 車内

ビアージオ「……目を開ける事は出来ないのか?」

ヴェント「ムリ……飛行機はなんとかなったけど、まだ乗るだけでも精一杯だから……」

ビアージオ「それもすぐに慣れる、焦らずに進歩すれば良い」

ヴェント「そうなるとこちらとしても嬉しいけどね……うう」

ビアージオ「 ……ところでヴェント、最初に挑むのはどの家電にするつもりだ?」

ヴェント「あっ、それは全然考えていなかったわ。どれが良いかしら?」

ビアージオ「そうだな……生活の中で重要な位置にあるのはテレビ、冷蔵庫、エアコン、
        洗濯機、掃除機、携帯電話、パソコンか。まあ、挙げればキリが無いな」

ヴェント「その中なら……洗濯機と掃除機に興味があるわね」

ビアージオ「その二つを選んだか。何か理由でもあるようだが」

ヴェント「それが使えるようになれば、オルソラの手伝いがもっと出来るようになるかなって」

ビアージオ「なるほど、ヴェントにしては良い心掛けだな」

ヴェント「こう見えても、オルソラの手伝いは結構してるのよ? アンジェレネよりは役立つ自信があるわ」

ビアージオ「……シスター・アンジェレネにはもう少し頑張ってもらいたいものだ」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 01:12:09.32 ID:KIzwRnjTo


時間は少し前

半蔵「おっ、浜面。似合わねー格好してどうしたんだよ」

浜面「ん? 言ってなかったか。夏だけの臨時バイトってヤツをするんだよ」

半蔵「……バイト? 前科持ちのお前が?」

浜面「少し金が欲しくてな、っつう訳でたまには真面目にバイトすんだよ。鉄板集めなんてダセェ事したくねえし」

半蔵「えー? 格好もそうだけどその発想も似合わねーよ。金が欲しいならATMをまた狙おうぜー」

浜面「……半年前に何があったか忘れたのかよ! 俺は二度と爆発オチなんてのはごめんだからな!?」

半蔵「……それは俺も嫌だけどな。でも、よく悪さしまくりのお前がバイトなんて受かったな」

浜面「そこはアレだ、ウマい事やったんだ」

半蔵「ウマい事、ねえ。まっ、こっちの活動に影響しないようにしてくれよ」

浜面「その辺は心配するなって。夏の少しの間だけだからどの道そんなに時間は取られねえよ」

半蔵「もし顔出さなくなったらこの人詐欺ですー、って警備員に通報してやる」

浜面「お前も捕まるだろうけどな」

半蔵「……それも良いな」

浜面「……あの巨乳目当てとかそういうバカな考えはやめとけよ」

半蔵「ほっとけ。ほら行けよ、マジメな浜面くん」

浜面「うるせえっつうの!」

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 01:36:01.13 ID:KIzwRnjTo


電気屋前

ビアージオ「ヴェント、目を開けて車から降りろ」

ヴェント「……着いた?」

ビアージオ「ああ、ここが学園都市の中でも最新鋭の家電を取り揃えている電気屋だ」

ヴェント「……最新鋭が集まる電気屋、イイ場所ね。でも、どこでそんなコト知ったのかしら?」

ビアージオ「このガイドブックに書いてあった。『グルメに観光、デートスポットまでお任せあれ』、だそうでな」

ヴェント「それなら信頼できそうね……さあ、入るわよ」

ビアージオ「途中まではわたしも同行しよう」

ヴェント「分かったわ。では、中に……っ!」

ビアージオ「ん? どうした?」

ヴェント「……早速、厄介な敵が現れたわね」

ビアージオ「……自動ドアは敵ではないと昨日教えただろうが」

ヴェント「喋りかけないで! 今、集中してるんだから」

ビアージオ「集中?」

ヴェント「自動ドアを通るにはそれなりに精神を統一させないといけないでしょう?」

ビアージオ「そうだな、よく分からないがわたしは先に行くぞ」ウィーン

ヴェント「あっ、ちょっと!」

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 02:03:43.82 ID:KIzwRnjTo


店内

ヴェント「こ、これは……」

ビアージオ「圧倒される程の品揃え、そして近未来的なデザイン。かと思えば、
        シンプルなデザインで使いやすさを重視したのもある。まさに家電の宝石箱だな」

ヴェント「ってガイドブックに書いてあるけどその通りね……緊張してきた」

ビアージオ「落ち着け。家電はお前を倒そうとなどするはずもないのだ、安心して手に取れ」

ヴェント「分かってるわよ……さて、まずは洗濯機に挑むとしようかしら」

ビアージオ「ならば、早速この店の者を呼び教えを請うとするか」

ヴェント「そうね、誰に頼めば良いかな……」

ビアージオ「丁度あそこに暇そうな者が居る、わたしが呼んできてやろう。ヴェントはここで大人しく待っていれば良い」

ヴェント「ええ、頼んだわ」

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 02:18:09.51 ID:KIzwRnjTo


同じ店内

浜面(……初日って事もあるが緊張するもんだな。『浜面君にはとりあえずお客様への対応をお願いするよ』、
    とか言われて立ってはいるが、何していいか分かんねえ……。敬語とかもロクに使った事無いし……不安ばかりだな)

ビアージオ「失礼、君は店員で間違いないな?」

浜面「えっ? お、俺ですか?」

ビアージオ「君以外にわたしが話しかけていると思うか? 無駄な時間は取りたくないのだが」

浜面「あっ……そうですよね、失礼しました。えっと……何かご用ですか?」

ビアージオ「ああ、君に頼みたい事がある。家電の使い方を教えてもらいたい」

浜面「家電の使い方……あっ、はい。どの商品ですか?」

ビアージオ「洗濯機ならばどれでも良い、出来れば操作が簡単な方が助かる」

浜面「えーっと、ちょっと待ってください」ピッ

浜面(パネルにキーワードを入力……洗濯機、使いやすい……おっ、出た出た。
    『従業員専用、店内商品検索パネル』、これさえあれば問題なし、って言われたけど本当だったな)

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/06(土) 02:34:07.25 ID:KIzwRnjTo


ビアージオ「どうだ、良いのは見つかったか?」

浜面「ええ、案内する……いや、案内しますのでどうぞこちらに」

ビアージオ「ああ、言うのを忘れていたな。申し訳ないが、教えを求めているのは私ではないのだよ」

浜面「えっ? じゃあ、誰ですか?」

ビアージオ「あそこに居る女だ。……ヴェント、呼んできたぞ」

ヴェント「……き、来たわね」

浜面(……キレイな女の人だと? こっちの男は雰囲気がアレだけど、
    そっちの女の人は優しそうだな。俺のバイト一発目も良い感じで行けるか?)

ビアージオ「その女に洗濯機の使い方を教えてやってもらいたい。どうだ、頼めるか?」

浜面「も、もちろん。精一杯やらせてもらいます!」

ビアージオ「それは頼もしいな、では後は任せる。ヴェント、無理せず落ち着くのだぞ」

ヴェント「分かってるわよ」

ビアージオ「しばらくしたら迎えに戻る。くれぐれも問題は起こすなよ、良いな?」

ヴェント「しつこいわね……分かってるってば」

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 08:31:13.04 ID:smvSjuzlo


ヴェント(……緊張してきたかな、それに家電に囲まれているってのも落ち着かないわね)

浜面「えーと、こっちにあるのが商品です」

ヴェント「こ、これが操作の簡単な洗濯機?」

浜面「ええ、電源を入れてスイッチを一回押せばすぐに洗濯してくれます。ドライかどうかも機械が判断して洗い方を変えたり、
    総重量や汚れの具合から適切な洗剤の量を教えてくれる優れもの……って書いてあります」

ヴェント「……とりあえず、使いやすいってコトは間違いないわね!?」

浜面「は、はい。そうだと思いますけど……じゃあ、実際に使ってみます?」

ヴェント「そうね……分かった、やってみるわ……!」

浜面(そんなに力入れなくても良いのに。でも、このお姉さんキレイだがなんか嫌な予感すんだよな……)

ヴェント「……スイッチはどこにあるの!?」

浜面「えっ? あっ、すいません。この見やすい所にあるのがそうですね」

ヴェント「これか……ふう、すぅー……はぁー……」

浜面「……あのー、深呼吸なんかしてどうしたんですか?」

ヴェント「静かにして! 家電を使う前には集中するコトが大事でしょう!?」

浜面「……へっ?」

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 14:06:15.48 ID:smvSjuzlo


浜面「いや、ボタン二つ押すだけなんでそこまで気合い入れなくても……って聞いてねえや」

ヴェント「……よし、やってみるわ。その前にもう一度説明しなさい」

浜面「えー……、とりあえずそのボタンを押してくれますか。右にある電源って書いてあるヤツですね」

ヴェント「……コレ、で良いのかしら?」

浜面「はい、そうですね。じゃ、どうぞ押しちゃってください」

ヴェント「お、押すわよ!」プルプル

浜面「……手が震えてますけど大丈夫ですか?」

ヴェント「……このボタンを、このボタンを……!」

浜面(この人、本当に大丈夫か? なんか目がヤバいぞ……)

ヴェント(……えいっ!)ドガッ

浜面「えっ!? いや、そんな強く押さなくても大丈夫ですよ!? それに押すとこ違ってるし!」

ヴェント「ええい……ここか!」ドゴッ

浜面「そこでも無いです! ここ! 見たら分かるでしょうが!?」

ヴェント「それえっ!!」バガンッ

浜面「ボタン押す音じゃねえよ! いったん止めましょう!」

ヴェント「それっ! それっ! それええっ!!」グシャッ ベゴンッ ズドン

浜面「もうそれ殴ってるじゃねえか!? そんなにしたら……」

ヴェント「これで……どうだぁぁぁぁぁあああ!!」


165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 14:08:34.07 ID:smvSjuzlo



浜面「ぬぐわあああああああああああ!!!!」



166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 14:22:07.82 ID:smvSjuzlo


浜面「いてえ……なんで爆発すんだよ!? 年に二回も爆発とかシャレになんねえ!」

ヴェント「あれー……おかしいなー……」

浜面「あ、アンタ……何やってくれてんだ!? 洗濯機を壊すなんてどう……か、してる……ぜ」

浜面(な、何だ……急に体が、……お、もく……うっ)バタン

ヴェント「あら……? 爆発の衝撃で倒れちゃったのかしら……」

浜面「…………」

ヴェント「まっ、最初だしこれ位で落ち込んでてはいけないわよね。私は『前方のヴェント』、常に前向きでいないと」

ヴェント(でも、教えてもらう人が居ないと何も出来ないのは事実……)

ヴェント「仕方ないわね……誰か他の人を呼んでこよっと」

167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 14:32:23.70 ID:smvSjuzlo


 ヴェントさんは他の従業員を呼び、その後も家電に挑みました。しかし、


従業員「えーと、こちらのスイッチをですね」

ヴェント「ここね……えいっ!」ドガッ

轟!

従業員「えっ!? ちょっと、何で爆発する……うっ」バタン

ヴェント「またやっちゃった……あれ? また倒れてるわね、次の人を呼ばないと」

 何故か爆発→相手がイラッとする→『天罰術式』発動の流れは続くのでした。




従業員2「ここの電源を入れて頂いて」

ヴェント「オラァ!」ガキンッ

轟!

従業員2「そ、そんなに強く叩いたら壊れ……ぐうっ」バタン

ヴェント「また倒れた……爆発位で情けないわねー。次の人を呼ぶか」




従業員3「では、そのボタン  轟!

従業員3「なっ……バカじゃねえ……かっ……」バタン




従業員4「えー、 轟!

従業員4「ぐうっ……」バタン


 このように轟! 轟! 轟轟! と爆発は続きました。そしてついには、


168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 14:57:26.65 ID:smvSjuzlo


轟!

従業員28「ううっ……」バタン

ヴェント「あー! いつになったらうまくいくのよ!? 誰か、誰か居ないワケ!?」


 しかし、その電気屋にはヴェントの声だけがむなしく響き渡るだけであった。
それもそのはず、電気屋の従業員は全員『天罰術式』により仮死状態に陥っていたのだから無理も無い。
流石にこの状況を不思議に思い通報しようとした者も、ヴェントの姿を見て倒れてしまっている。


ヴェント「……なんか静かね。まったく……科学の最先端、学園都市ってのは嘘だったの!?
     全然使い方が分からないし、店員もすぐに倒れちゃうし、家電は爆発するし……」


 それはすべてヴェントのせいなのだが、本人は家電を学ぼうと必死なので他の事に頭が回らない。
その結果、『前方のヴェント』、電気屋の制圧に成功という恐れていた事態を招いてしまった。


ヴェント「誰か……誰でも良いから居ないの!?」


 このままでは学園都市の家電全てが爆発してしまう、それは学園都市最大の危機であると言っても過言ではない。
学園都市を救う者は居ないのか、否――そこに一人の救世主(ヒーロー)が現れた。


上条「な、なんだ……この惨状は……」

169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 15:07:02.27 ID:smvSjuzlo


少し前

上条(小萌先生もたまには良い所あるよなー、家電がぶっ壊れてるって話したら)

小萌『上条ちゃんの不幸っぷりは相変わらずなのですねー……さすがに可哀想になってしまいます。
    今日は早めに終わりますから家電を買いに行って欲しいのですよー』

上条(とのお言葉を頂いた訳だし、さっそく電気屋に行くとしますかね)

   「って言っても、高いのは買いたくない……品揃えの良いあそこなら安いのもあるかもしれねーな」

   (しかし……暑過ぎる。さっさと店に入って涼みながら探しますかね)

   「さて、この自動ドアの先には涼しい空間とたくさんの家電が俺を……」ウィーン

   「待ってる……って、なっ……!?」


上条「な、なんだ……この惨状は……」

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 21:29:36.62 ID:ItruZqzpo


上条「ところどころ焦げた跡、そして倒れている人達……まさか、テロか!?」

   (マズイ……ここに居たら巻き込まれる……! 外に逃げて警備員に通報しねえと……)

   (ん? 奥に誰か居るみてえだな……女の人? ……様子がおかしいな、もしや……あの女が犯人?)

ヴェント「ったく……誰も居ないワケ!? いったん外に出て誰かを捕まえて来るしか……あ」

上条「あ……」

ヴェント「…………」ジー

上条(誰か分かんねえけど見つかった!? ヤバい、早く逃げねえと!)

ヴェント「みーつけた! ちょっと、そこのアンタ」

上条(駄目だ、ここで止まってしまっては間違いなく不幸な目に遭う……それだけは避けたい!)

上条「ひ、人違いです!!」ダッ

ヴェント「あっ! 待て、逃がすワケ無いでしょうがァ!」

上条「ひ、ひいっ!? 追ってくるう!?」

ヴェント「止まれ! そうでないと……その顔グッチャグチャにするぞコラ!」

上条「絶対ヤバい人じゃねえかー! 逃げる! 逃げるったら逃げる!」

ヴェント「待てえええええ!!」

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/08(月) 22:01:55.25 ID:ItruZqzpo


上条「い、行き止まり!?」

ヴェント「追い詰めたわよ……もう逃げるのは諦めた方が良いんじゃないかしらーん?」

上条「ひ、ひいっ……! こっちに来るな!」

ヴェント「うん、それムリ。さあ、私に……」

上条(クソッ……俺の人生こんな所でゲームオーバーなのか!?)

ヴェント「私に――」

上条「……くっ」

ヴェント「家電の使い方を教えなさい!」

上条「ううっ……そんな……あんまりだ! 俺にはまだやりたい……ん? 今、何て言った?」

ヴェント「聞こえなかったのかしら? 私に家電の使い方を教えなさいって言ったつもりよ」

上条「ああ、なるほど。家電か、そういう事ね………………家電?」

173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 07:35:55.07 ID:n500goyNo


上条「……聞き間違いかどうか確認するけど、家電の使い方を教えなさいって言ったのか?」

ヴェント「何度も言わせないでもらえるかしら? アンタは大人しく言うコトを聞いてれば良いのよ」

上条「はあ……家電ねえ」

ヴェント「何? なんか文句でもあるのかオイ」

上条「いや、別に何もねーんだけど……家電の使い方を教えりゃいいんだろ?」

ヴェント「そっ、なら早くこっちに来なさい」

上条「洗濯機コーナーか。って、何だこの爆発したかのようなボロボロっぷりは!?」

ヴェント「えーと……それは」

上条「おい……アンタがやったのか?」

ヴェント「……そう、私がやった。けど、それが何か問題でもあるワケ?」

上条「問題過ぎてどうしようもねえよ! ……テメェ、さてはテロリストってヤツか!?」

ヴェント「……失礼なコト言わないでくれるかしら。ただちょっと使い方を間違っただけよ」

上条「へっ? 使い方?」

ヴェント「店員の言う通りにしようとしても失敗しちゃって、それで洗濯機が壊れてこうなった」

上条「……じゃあ、この爆発は全部洗濯機を壊して起きたのか?」

ヴェント「……そういうコトになる」

上条「……これは不幸の予感しかしねえ」

174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 07:44:41.10 ID:n500goyNo


上条「……つーかさ、この周りに倒れている人達もお前がやったのか?」

ヴェント「私のせいではないわ、洗濯機が爆発したくらいで倒れる方が悪い」

上条「いや、十割方悪いのはそっちだと思うぞ」

ヴェント「……何か文句でも?」

上条(睨み怖ええ……迫力やべえ……)
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 07:54:17.18 ID:n500goyNo


上条「しかし、こんだけ人が倒れてると流石に通報した方が良いよなー……」

ヴェント「……それもそうね。じゃ、アンタやっといて」

上条「はあ? 何で俺がそんな事」

ヴェント「返事は?」ギロッ

上条「だから睨むなって怖いから! 分かったよ……俺がやっとけばいいんだろー……」

ヴェント「さっさとしなさい。アンタには家電の使い方を教えてもらわなければいけないからね」

上条「はいはい……やっぱりどこへ行っても不幸なんだなー……警備員っと」ピポパ

   「もしもし、倒れている人が……数は、三十人位? えっと、外傷は……あれ? 無いみたいですね」

   「ええ、という訳なんでよろしくお願いします」プツッ

ヴェント「終わったみたいね」

上条「言われた通りやっといたよ。で、洗濯機の使い方だっけ?」

ヴェント「そう、丁寧に分かりやすく教えなさい」

上条「分かりにくく説明する方が難しいと思うぞ……とりあえず、このスイッチを押してくれ」

ヴェント「こ、これね……」

上条(ん? なんか様子がおかしくねーか……?)

ヴェント「い、いくわよ……」プルプル

上条「いや、ちょっと待て」

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 08:13:32.93 ID:n500goyNo


ヴェント「……何? 言われた通り押そうとしてるじゃない」

上条「いやいや、おかしい所しかなくてツッコミのしようがねえよ」

ヴェント「おかしい? どこが?」

上条「えーと……まず、目を開けろ。次に拳を握るな、それじゃスイッチを押せねえから」

ヴェント「あっ……わ、分かってるわよそれ位」

上条「本当に分かってんのか……? とりあえず、もう一度やってみてくれ」

ヴェント「ええ、いくわよ……」

上条「はい、ストーップ」

ヴェント「……また? ふざけたマネしてると後で酷い目に遭わせて――」

上条「その前に確認。今、俺の顔が見えるか?」

ヴェント「何言ってるのよ、そんなの目を瞑ってるんだから見えるワケ…………あ」

上条「……何で洗濯機のスイッチを押すだけなのに目を閉じちまうんだよ!?」

ヴェント「仕方ないじゃない! 苦手なんだから!」

上条「苦手ってレベルの話じゃねーぞ!? 機械オンチにも程がある!」

ヴェント「……今何つった?」

上条「機械オンチって言ったんだよ! つうか触る事すら出来ねーってどういう事だ!」

ヴェント「……私を、舐めてんじゃねえぞおおおお!!」

上条「なっ……!?」

177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 08:30:41.26 ID:n500goyNo


一方その頃 電気屋近くのカフェ


ビアージオ(……落ち着くな、このような安らげる時間は大切にしたいものだ)

       (しかし、面倒だったからとは言えヴェントを一人にしたが……少し心配だな。
        あれからそれなりに時間は経っている、もう少ししたら様子を見に行くか……)


女A「ねえ、なんかあの電気屋で事件がおきてるみたいよ」

女B「事件? 何それ?」

女A「何でも、店員さんが次々と倒れてるとかなんとか」

女B「ウソー、怖いねー」


ビアージオ(ん? それはもしや……ヴェントが行った電気屋の事か?)

       (待て……何か大事な事を見落としてしまったような気がするぞ。何だ、何が……はっ!)

       「し、しまったああああああ!!」

       (ヴェントは自衛のために『天罰術式』を使っている、そしてヴェントが家電を学べば……相手に不快な思いをさせる事は間違いない。
        むしろ不快にさせるために家電を使っていると言っても良いレベル! つまりは……電気屋制圧という最悪の結果を……)

       「わたしとした事が……これはまずい事になった……ん?」プルル

       「電話、嫌な予感しかしないな……誰だ?」

アレイスター『流石は「前方のヴェント」、と言うべきだろうか』

ビアージオ「……アレイスターか」

178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 08:55:59.26 ID:n500goyNo


ビアージオ「その言い方からすると、やはりヴェントのせいで……」

アレイスター『二十億の信徒の上に立つ「神の右席」の名は偽りでは無いと知る事が出来た、と言っておこう』

ビアージオ「……面倒な事を頼むかもしれないが、良いだろうか」

アレイスター『約束は守る。それに、私には何の影響もないのも事実だ』

ビアージオ「そう言ってもらえるとこちらとしても助かるな。……処理は任せる、わたしはすぐに解除するよう伝えなくてはならない」

アレイスター『賢明な判断だ。あまり目立つような行動は控えて欲しい、隠すにも限度がある』

ビアージオ「……何も言い返す事が出来ないのが辛い所だ。ともかく、わたしは自分のすべき事をする。
        今はヴェントのもとへ向かうのが最優先だな。 これ以上被害を出す事も避けたい、切るぞ」プツッ


ビアージオ(ヴェントはまだあの電気屋に居るのか? 居たとしたら……ヴェント一人で家電を使わせてはいけない!
        洗濯機だけならまだしも、店ごと大爆発というのも可能性として十分考えられる……急ぐか)

179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 09:17:10.21 ID:n500goyNo


戻って電気屋


ビアージオ「これは……悲惨だな……。ヴェント、どこだ! どこに居る!?」

ビアージオ(反応が無い……やはり、別の場所へ向かったのか? だとすると被害が拡大し……ん?)


上条「だから殴っちゃ駄目だっつうの!」

ヴェント「殴ろうとなんてしてない! ただスイッチを押そうとしてるだけ!」

上条「その前に目を開けろよ!」

ヴェント「何故か閉じちゃうんだから仕方ないでしょう!?」

上条「仕方なくねーから! それだと何も使えないままだぞ!?」

ヴェント「くっ……それは困るわ……」

上条「だったら俺の言う事をちゃんと聞けよ!」

ヴェント「聞いてるでしょうが!」

上条「どこがだよ!?」

上ヴェン「ぐぬぬ……!」


ビアージオ(……何をやっているのだろうか)

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 09:30:42.92 ID:n500goyNo


ビアージオ「ヴェント……何をやっている」

ヴェント「ビアージオか。見て分からないの? 洗濯機の使い方を教えてもらってるのよ」

上条「使い方って言うよりは目の開け方、殴らない方法って言う方が正しい気がするぞ」

ヴェント「……何か言ったかオイ?」

上条「……だからそれ怖いって」

ビアージオ「遊んでいる場合ではない、少々厄介な事になった」

ヴェント「厄介なコト?」

ビアージオ「ヴェント……この倒れている者達は何故こうなったと思う?」

ヴェント「それは……言いにくいけど、私が洗濯機を壊してその衝撃で」

ビアージオ「いや、そうではない。相手がそのせいで敵意を持ってしまったのだよ」

ヴェント「えっ、敵意ってコトは……? ……あ、そう言えば『天罰術式』発動してたの忘れてた」

ビアージオ「……ともかく、すぐに解除しろ。このままでは被害が広がり大事となってしまう」

ヴェント「確かに……ちょっと待ってなさい。今解除するから」

181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 09:51:45.71 ID:n500goyNo



ヴェント「でも、解除してるトコ見られるのはちょっと恥ずかしいわね……というワケであっちに行くから」

ビアージオ「分かった。……これで倒れている者達の方は何とかなるだろう……後は、」

上条「あのー、置いてけぼり喰らってるみたいなんだが……どうなってんの?」

ビアージオ「悪いが、今はそんな事をしている時間は無い。後にしてもらおうか」

上条「……まあ良いけど。それに……、そもそも俺は関係なかったのでこの辺で帰らせてもらうな」

ビアージオ「そうだな、では君は……待てよ?」

ビアージオ(この異教徒の少年はヴェントに家電の使い方を教えていた、それにもかかわらず倒れていない……。
        つまり、この少年はヴェントに敵意を抱かなかった。それはヴェントが何をしても不快に思わなかったという事を意味するも同然……)

上条「じゃ、あの女の人によろしくな。さような」

ビアージオ「待て、君に頼みがある」

上条「頼み……? 何だかものすごく嫌な予感がするので帰りたいのでございますが……」

ビアージオ「そうはいかないな。悪いが、君にはもう少しだけ付き合ってもらうぞ」

上条「いや、本当に勘弁してほしいんだけど」

ビアージオ「何度も言わせるな、まだ帰る事は出来ないと思え」

上条「……嫌だ、絶対不幸な目に遭うに決まってる! 意地でも逃げてやるからな!」ダッ

ビアージオ「そう慌てる必要は無い。一つ、良い事を教えてやろう。わたしは学園都市に特別待遇を受けている。
        もしわたしが学園都市の重鎮に、とある少年に何かされたと言えばどうなると思う?」

上条「……脅してるのか?」

ビアージオ「好きに解釈すると良い。ただ……わたしも一人の少年の人生を台無しにしたくは無い、とだけは言っておこうか」

上条「……脅しですか、脅しなんですねちくしょう! ……不幸にも程がある」

182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 10:02:08.14 ID:n500goyNo


ヴェント「お待たせ―。解除したから倒れてた人達はすぐに目を覚ますはずよ」

ビアージオ「よし、ではこの場から離れるぞ」

上条(この隙に……こっそり消えちまえば……)

ビアージオ「少年、どこに行くつもりだ?」

上条「えっ? えーと……お花を摘みに?」

ビアージオ「残念だよ、まだ若いのにこれから先は厳しく辛い未来しか待っていないとはな……」

上条「アンタ完璧に脅してるじゃねーか! クソッ……どの道不幸からは逃げられないのか……」

ヴェント「とりあえず、早く逃げないと。昨日みたいなコトにはなりたくないわ」

上条「昨日? アンタら、そんなに問題を起こしてんのか?」

ビアージオ「……そもそも、この都市に居る事自体が問題なのだが」

上条「はあ? 何だそれ?」

ビアージオ「無駄話をしている場合ではない、逃げるぞ」

上条「あっ、待てってば!」

183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 10:17:56.96 ID:n500goyNo


数分後

黄泉川「……これは酷いじゃん。ともかく倒れてる人達をすぐに病院に……って」

浜面「……ん? あれ、俺……寝てたのか?」

黄泉川「誰かと思えば……そこに居るのは浜面じゃん」

浜面「……げえっ! 巨乳で恐怖の警備員!?」

黄泉川「相変わらずみたいね。浜面、これはお前がやったじゃん?」

浜面「へっ? 何の事だ?」

黄泉川「周り、見てみな」

浜面「周りって……何じゃこりゃぁ!?」

黄泉川「浜面……これで十何回目だっけ?」

浜面「ち、違う! この服を見てみろ、俺はここで働いてたんだよ!」

黄泉川「……確かに、その服は従業員の制服に間違いなさそうじゃん」

浜面「だから俺は犯人じゃねえって!」

黄泉川「ああ……疑って悪かったね」

浜面「ったく……濡れ衣着せられたらたまったもんじゃないっつうの」

黄泉川「ん? でも、前科持ちの浜面がこんな立派な電気屋でバイト……? なんか、ものすごーく怪しいじゃん」

浜面「あ……それは、えーと……」

黄泉川「浜面、正直に言ったらそこまで酷い事にはならないと思うじゃんよ?」

浜面「……最悪だ」

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 10:34:39.22 ID:n500goyNo




上条「はあ……はあ、何とか無事に逃げられたみたいだな」

ヴェント「そうね……もっとゆっくりしたかったけど」

ビアージオ「流石に『天罰術式』はやり過ぎだったか……アレイスターに借りが出来てしまったな」

ヴェント「それも嫌ね……」

上条「なあ、さっきから出てくるてんばつなんとかってのは何なんだ?」

ビアージオ「君は関係ない。仮に知ってしまえば……やはり、」

上条「だー! 最後まで言わなくって良い! ……で、俺はまだ帰っちゃ駄目なのか?」

ヴェント「ビアージオ、この男を連れてきたのには何か理由でもあるワケ?」

ビアージオ「そうだな……少年、君に頼みがあると言ったな」

上条「ああ、その話か……もう何でもいいや。頼みってヤツを早く言えよ」

ビアージオ「なに、簡単な事だ。その女に家電の扱い方を教えてやって欲しいのだよ」

上ヴェ「……はあ?」

185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 10:49:08.95 ID:n500goyNo


ヴェント「ビアージオ、アンタどういうつもり? 確かに、この男には教えてもらおうとしたけど……。
     それは他に誰も居なかったってだけで、別の電気屋に行った方が良いんじゃないのかしら?」

ビアージオ「良く考えろ。『天罰術式』はヴェントに敵意を持った者にしか影響しない」

ヴェント「その通りね、それが何か関係でも?」

ビアージオ「そして今回、電気屋の従業員達はヴェントが洗濯機を破壊してしまったため苛立ち、
        結果的に敵意を抱いたと言う事になってしまった。……まあ、ヴェントが何も出来なくて苛立ったという者も居るだろうが」

ヴェント「……一言余計よ」

ビアージオ「改めて考えてみろ、その従業員達は結果的に失敗したヴェントに敵意を抱いた。
        しかし、その少年はどうだ? 同じようにヴェントに説明し、端から見れば苛立っているようにも見えた」

上条「へ? 俺?」

ヴェント「アンタの言う通り……あれ? ちょっと待って……」

ビアージオ「気付いたか、ヴェント。そうだ、この少年は苛立っていたように見えた。しかし、」

ヴェント「倒れていない……と言う事は」

ビアージオ「この少年は――内心ではヴェントに敵意を抱いていなかったと言う事になる」

上条(……何が何だかさっぱり分かんねえ)

186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 11:03:52.74 ID:n500goyNo


ヴェント「行動と内心で思っているコトが一致していない……不思議ね」

ビアージオ「少年は異教徒ゆえ、その様に理解できない行動をとるのだと最初は思っていた」

上条「失礼な事を言われてるってのだけは分かるぞ」

ビアージオ「黙っていろ。普通ではない、理解できない者も存在するのだな、位にしかわたしも思わなかった。
        ……しかし、これはこの国では良くある事だと言う事が分かったのだよ」

ヴェント「良くあるコト? それはいったい?」

ビアージオ「相手に対して失礼な態度、乱暴な言葉で接していても、内心ではそれとは異なる考えを持つ。
        そのようなタイプの人間はこの国ではポピュラーであり、好まれる傾向にあるようだ」

ヴェント「流石は異教徒の国、そんな人間も居るのかー……」

ビアージオ「わたしも驚いたよ。それをこの国では……『ツンデレ』と言うらしい」

ヴェント「『ツンデレ』……覚えておく必要がありそうね」

上条「おい、ちょっと待て」

190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 18:51:21.91 ID:JEZjWYkHo


ビアージオ「どうした少年、何か言いたそうな顔をしているな」

上条「いや、いやいやそれはねえって! なんで俺がツンデレになってんだよ!?」

ヴェント「違うって言いたいワケ?」

上条「当たり前だろうが! 日本文化を勘違いしすぎだっつうの!」

ビアージオ「おかしいな……この本にはそう書いてあったのだが」

ヴェント「どんな風に書いてあったのかしら?」

ビアージオ「『ツンデレ』とは人間の型(タイプ)を表す言葉とされている。行動と内心で思っている事は一致していないのが最大の特徴である。
        乱暴な態度、馬鹿にしたような態度をとるが、実際は気恥ずかしさからその様な行動をとっているのだと考えられている。
        『ツンデレ』に分類される者は大方その態度をとる対象に好意を抱いているケースが多い。
        また、自分が『ツンデレ』である事を本人は認めず、大声を出して否定するのは良く見られる行動である……とな」

上条「何書いてやがんだよその本……どうせ外国人向けの間違った日本紹介とかそんなんだろ?」

ビアージオ「学園都市ガイドマップの特別付録、最新日本文化辞典に書いてあったぞ」

上条「……はあ?」

ヴェント「学園都市が発行しているものみたいね」

上条「……ちょっと見せてくれ」

ビアージオ「ああ、自らの目で確認するといい」

上条「どれどれ……本当に書いてあるじゃねーか。しかもその横は手打ちそばの項目だし意外としっかりしてやがる……」

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/09(火) 19:31:24.23 ID:JEZjWYkHo


ビアージオ「という訳で、『ツンデレ』の少年、改めて君に頼もう。この女に家電の扱い方を教えてやって欲しい」

上条「……とりあえずツンデレの件は置いておこう。で、どうして俺にそんな事を頼むんだよ?」

ビアージオ「簡単な事だ、どうせならヴェントと良好な関係を築けそうな人間に頼む方が良いだろう?」

上条「……はあ?」

ヴェント「つまり……この男と私が仲良くなれそうと思ったワケね」

ビアージオ「その通り、せっかくの滞在だ。客と店員という関係よりは仲が良い者同士の方が注意もしやすい。
        この学園都市で友人を作る事も出来、時間を無駄する事もない。まさに完璧だと言えるな」

上条「どこが完璧なんだよ! まず前提がおかしい、俺がこの女の人に良い印象を持ってるとは限らないだろう?」

ビアージオ「しかし、『ツンデレ』と分類される人間は対象に好意を抱いているとされている。
        ならば君はヴェントに好意、とまではいかなくとも悪い感情は持っていないという事だ」

上条「……ここまで間違ったまま突っ走ると止める方法が思いつかねえ。ともかく、アンタの考えてる事は全部間違ってるぞ!」

ビアージオ「照れるなよ、少年。ヴェント、この少年から学んでみてはどうだ?」

ヴェント「そうね……アンタの言う通り、この男に教えてもらうのも良いかもしれない」

上条「えええ……」

ビアージオ「よし、そうと決まれば話は早い。少年、しばらくの間この女を頼むぞ」

上条「はい、分かりました……って言うとでも思ってんのか!? そんなムチャクチャ理論で俺を巻き込もうとするな!」

ビアージオ「そうか……これは独り言だが、わたしはこの都市の上層部……統括理事会と言ったか。
        そこと繋がりがあり、もしある少年に不当な扱いを受けたと言えば……」

ヴェント(統括理事会に繋がり……? ああ、アレイスターのコトか)

上条「……またそうやって脅そうとしてるんだな」

ビアージオ「そう人聞きの悪い事を言うな。さあ、どうする?」

上条「……もういいや、家電の使い方くらいだったら教えてやるよ」

199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/23(火) 01:04:47.47 ID:CaibvlTvo


ビアージオ「それは何よりだ、理解ある少年と出会えた幸福に感謝せねばなるまい」

上条「……脅したのはどこの誰だっつーの」

ヴェント「何? 何か文句でもあるワケ?」

上条「何でもねーよ……結局はこんな感じで不幸に巻き込まれていくんだなー……」

ビアージオ「不幸? 安心しろ、少年。わたし達はローマ正教に所属する者でそれなりの地位についている」

上条「ローマ正教? それがどうしたんだ?」

ビアージオ「もし上手くいけば……それなりの礼はする、という事だ」

上条「礼……? それって、まさか……コレ、か?」

ヴェント(……露骨に手で表すのもどうなのかしら)

ビアージオ「その通り、日本の通貨で考えれば……これ位は渡しても良いか」

上条「指が五本……五千円?」

ビアージオ「違うな」

上条「って事は……五百円?」

ヴェント「……そんなワケ無いでしょう?」

上条「じゃあ……五万円!? そんなにもらえるのか!?」

ビアージオ「そんなに少なくて良いのか? その上のつもりだったのだが……」

上条「その上……っ!? ご、五十万!?」

ビアージオ「どうだ少年、これでも嫌だと言うのか?」

上条「とんでもない! ぜひやらせて頂きたいのでございます!」

ヴェント「現金な男ね……」

200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/23(火) 03:10:07.00 ID:CaibvlTvo


ビアージオ「何はともあれ、君にはこの女に家電の使い方を教えてもらわないと困る。話はそれからだ」

上条「それもそうだな。でも、よく考えたらアンタに教えるのは結構骨が折れそうだ……」

ヴェント「……どういうコトか説明してもらおうかしら?」

上条「さっき洗濯機の使い方を教えていた時の事を考えると……あれ? これかなり大変なんじゃねーか?」

ビアージオ「気付くのが遅かったな。言っておくが、もう後戻りは出来ないからな」

上条「……まあ、そんな長い時間がかかる訳では無いだろうし……大丈夫か」

ヴェント「へえ、頼もしいじゃない」

ビアージオ(そう言ってられるも今の内だろうな……この少年には悪いが、犠牲になってもらうぞ)

上条「ところで、アンタ達……学園都市の外から来たのか? ガイドブックとか持ってるし」

ヴェント「そうよ、昨日着いたばかりでどこに何があるかも分からないの」

上条「何でまた学園都市なんかに来たんだ? 今日から夏休みだからイベントも無いし、大覇星祭もまだまだ先だぞ?」

ビアージオ「わたし達にはわたし達の目的があるという事だ。……まあ、そこまで立派な目的でもないが」

上条「目的ねえ……それを放っておいて家電の使い方なんてのに時間をとってて良いのか?」

ヴェント「…………それが目的よ」

上条「へ?」

ヴェント「家電を使えるようになるために学園都市に来たのよ! 何か文句でもあるのかオイ!?」

上条「ひいっ!? なっ、無い! 素晴らしい目的だと思います!」

ビアージオ「ヴェント、落ち着け……そう思うのも無理はないだろう、まったく……どうしてこうなったのか」

ヴェント「ビアージオ、アンタも何か文句あるワケ?」

ビアージオ「あり過ぎて困る位にな……今は言い争っている場合ではない、話を進めるぞ」


203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 00:25:47.60 ID:QeqSGKfLo


上条「で、家電の使い方、って具体的にはどうやって教えれば良いんだ?」

ビアージオ「それは君に任せる、出来る限りはこちらも協力しよう」

上条「それは良いんだけど、どこでやるんだよ? 流石に電気屋では無理だろうし」

ビアージオ「確かに……それは考えていなかったな。どこか場所を借りるしかないか」

上条「そこまでしなくてもいい気はするな……どこでも良いんだったら俺の家でやるか?」

ヴェント「アンタの家?」

上条「ああ、俺の家なら他の人に見られる訳でもないし許可を取る必要も無い。そっちが問題無ければの話だけどな」

ビアージオ「それは良い提案だ。ヴェント、ここはこの少年の案に従うとするか」

ヴェント「そうね、でも……」

ビアージオ「どうした、何か問題でもあったか?」

ヴェント「えっと、この男……私に好意を抱いてるのよね……?」

ビアージオ「……そういえばそうだったな。少年、不埒な事を考えてはいないだろうな?」

上条「……そうだな、まずはそこを否定する事から始めねーとな。さっきも言ったがそんな事無いんだって!
    それに、今日会ったばっかりの女の人に好意を抱く訳無いだろうが!?」

ビアージオ「……なるほど、これが『ツンデレ』か。書いてある通りだな」

上条「だからツンデレでもねえし好意も抱いてねえって言ってんだろ!?」

ヴェント「自分が『ツンデレ』であるコトを本人は認めず、大声を出して否定するのは良く見られる行動である……ピッタリ当てはまってるじゃない」

上条「だから本当に違うっつうの!」

ビアージオ「そう照れなくても良い。……一つだけ言っておくが、無茶な事をしようとすれば後悔するからな」

ヴェント「コレが身の危険ってコトなのかしら……」

上条「……もう嫌だこの外国人、頼むから話を聞いてくれ」

204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/08/24(水) 00:46:03.66 ID:BmUD+nIbo
僕も家電になってヴェントたんに触れてもらいたいです
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 00:55:05.39 ID:QeqSGKfLo


ビアージオ「……ともかく、ヴェントに手を出すのはやめておけ。肉体的にも社会的にも君の存在は抹消するぞ」

ヴェント「ずいぶん失礼な言い方ね」

ビアージオ「間違ってはいないだろう? 少年、君のためを思って言っているという事だけは分かってくれよ」

上条「……どの道手なんか出さねーから良いけどさー……誤解されたままってのも嫌だな」

ビアージオ「素直になれば良いと思うのだが……異教徒の人間の思考は理解できないな」

上条「それはもう良いって……話を戻すぞ、俺の家で家電の使い方を教える。それで良いな?」

ヴェント「何もしないって誓えるのならそれで良いわ」

上条「だからしねえっつうの! ……って否定したらまた勘違いされるだけなんだよな、はあ」

ビアージオ「二人の問題は二人で解決してもらおうか。本題だ、こちらもその提案に異論はない」

上条「じゃあ、決まりって事で。始めるのはいつにする? 今日は流石にもう無理だろうけど」

ヴェント「早い方が良いわ、明日からすぐってのが理想ね」

ビアージオ「わたしも早く終わらせて帰りたい、明日からでも構わないか?」

上条「ああ、夏休みだから問題は……あっ」

ビアージオ「どうした、都合でも悪かったのか?」

上条「いや……俺、補習があってさ……明日も朝から学校に行かないといけないんだ」

ヴェント「補習? ……アンタ、いわゆる落ちこぼれってヤツ?」

上条「……言い返せないのが悔しいがその通りだ」

ビアージオ「学生の本分を全う出来ていないとは……怠惰な生活を改めるべきだな」

上条「……どうして俺は見ず知らずのヤツらにこんな事を言われてるのだろう」

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 01:36:20.69 ID:QeqSGKfLo


ビアージオ「仕方が無いな……その補習とやらに貴重な時間を奪われたくはない。
        少年、学校には行かずにヴェントに家電の使い方を教えてやってくれ」

上条「はあ? いや、いやいやそれは無理だろ。 流石に補習をサボる訳にはいかねーって」

ビアージオ「そんな事は言われなくとも分かっている、補習に行かずに済むようにわたしが手配してやると言っているのだよ」

上条「補習なしって……本当に出来んのか?」

ビアージオ「何度も言わせるな、わたしが出来ると言えば出来る。無駄な質問は控えてもらいたいものだな」

ヴェント(エラそうに言ってるケド、要はアレイスターに頼むってコトよね……)

上条「そこまで言うんだったら……分かったよ、明日の昼前には会えるようにすれば良いか?」

ビアージオ「それで構わない、ヴェントも問題は無いな?」

ヴェント「ええ、そっちの言う通りに従うわ」

上条「じゃあ、連絡先を交換しとくか。携帯はさすがに……いや、アンタは持ってなさそうだな」

ヴェント「……何が言いたいのかしらーん?」

上条「機械オンチだから携帯なんて持てないだろ?」

ヴェント「……オイ、もう一回言ってみろよクソ野郎がァ!!」

ビアージオ「だから落ち着けと言っているだろうが……少年、君の言う通りヴェントは携帯電話を所持していない。
        代わりにわたしが君の連絡先を控えて……おい、ヴェント、その目は何だ?」

ヴェント「ねえ、連絡先の交換ならわたしが代わりに ビアージオ「断る」

207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 01:46:40.57 ID:QeqSGKfLo


ヴェント「なっ……まだ最後まで言ってないでしょう!?」

ビアージオ「聞かなくとも分かる、どうせ携帯電話を使ってみたいだけなのだろう?」

ヴェント「あら、分かってるじゃない。だったら大人しく ビアージオ「断る」

ヴェント「……いい度胸じゃない、こっちが『神の右席』ってコトを忘れたのかオイ!?」

ビアージオ「ハッ、その『神の右席』が家電の一つも使いこなせないからこんな所まで来てるのだろうが!
        今まで壊した家電を忘れたとは言わせないぞ、わたしがせっかく買ってきた電子レンジもその一つだ」

ヴェント「それは……」

ビアージオ「ヴェント、今はまだその時ではない。少しずつ学べ、教皇様もそう望んでおられるはずだ」

ヴェント「……仕方ないわね。まぁ、その内携帯電話も使いこなせるようになるから別に良いケド」

ビアージオ「それはこの男次第だな。頼むぞ少年、ローマ正教の未来は君に懸かっているのだよ」

上条「……何そのスケールの大きな話」

ビアージオ「言い過ぎだと思うだろう、しかし……いや、これ以上言うのはやめておこう」

上条(もしかして……俺、とんでもない事態に巻き込まれてたりする?)

208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 02:20:08.53 ID:QeqSGKfLo


上条「色々あったけど……とりあえず、連絡先も交換したしもうやる事は無いよな?」

ビアージオ「そうだな、後は君に任せる。今日はここで失礼させてもらうよ」

上条「……あれ? そういえばまだ名前も教えてもらってなかったような気が」

ビアージオ「確かに……今携帯で見えたが、漢字の読み方は……上条当麻、で良いのか?」

上条「ああ、それで合ってるよ。アンタは……これでビアージオって読むのか?」

ビアージオ「その通りだ、ビアージオ=ブゾーニという、呼び方は好きにすれば良い」

上条「分かったよ。で、そっちのアンタはヴェントって名前なのか?」

ヴェント「……今はそれで良いわ」

上条「……? まあいいや……よろしくな、ヴェント」

ヴェント「期待してるわよ、ええと……カミジョートーマ……トーマが名前よね」

上条「なんか発音が変だな……当麻だよ。と・う・ま」

ヴェント「当麻……これで合ってる?」

上条「そうそう、そんな感じだ」

ヴェント「分かったわ……よろしく、当麻」

上条「こちらこそ。……何も壊さずに済めば良いけどな」

ビアージオ「それは無理だな、一つ二つで済めば良い方だろう」

ヴェント「へえ……アンタ達、グッチャグチャの塊にされたいみたいねェ!」

上条「じょ、冗談だって! なあ?」

ビアージオ「冗談? 真実を言ったまでなのだがな」

ヴェント「よーし、ちょっとハンマー持ってくるから待ってなさい。すぐにミンチにしてあげるから逃げんじゃねえぞコラ!」

上条「落ち着いて! 落ち着いて!」

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 02:53:17.03 ID:QeqSGKfLo


上条「……さらに色々あったけど、とりあえず今日はここまでって事で良いよな?」

ビアージオ「ああ、わたし達もそろそろ宿に戻らないとな」

ヴェント「そうね……明日からキチンと教えなさいよ、当麻」

上条「分かってるつーの、こっちもミンチにはなりたくねーし……あっ」

ヴェント「ん? 何か言った?」

上条「いえ、何も!」

ビアージオ「上条当麻、今日はゆっくりと休息をとっておけよ。根気、そして何があっても受け止める心の余裕が必要だからな」

上条「そうだな……明日から本当に大変な事になりそうだし」

ヴェント「大丈夫よ、家電なんてすぐに使いこなせるようになるわ」

上条ビア(……それが出来ないからこんな事になってるんだろうが)

ヴェント「アンタ達、やっぱり何か失礼なコト考えてない?」

上条「き、気のせいだって……」

ヴェント「本当に? まぁ、明日はハンマー持っていくから、変なコトを言わないように気を付けなさい」

上条「……肝に銘じておきます」

210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 12:13:28.45 ID:coofugs7o


上条と別れた後 第七学区のホテル


ビアージオ「……二日目にして二度目の騒動を起こしてしまったが、誰も追及に来ないか。アレイスターは上手くやってくれているようだ」

ヴェント「あんなヤツに頼るってのもあまり良い気分では無いけどね。まあ、使えるモノは使っておきましょうか」

ビアージオ「この都市に来てからヤツの世話になるような事をしているのも問題なのだがな」

ヴェント「それはアンタが言えるコトではないでしょう?」

ビアージオ「……わたしはもう問題など起こさない、後はヴェントが家電を使えるようになれば良いだけだ」

ヴェント「どうかしら、また事件に巻き込まれて騒ぎを起こすんじゃないわよ」

ビアージオ「無駄な心配はするな、そう何度も巻き込まれる訳が無いだろう?」

ヴェント「だと良いケド。……明日からが勝負ね」

ビアージオ「そうだな……わざわざ学園都市に来たのだ、それなりの成果を挙げてもらいたいところだが……間違って戦果を挙げないでくれよ」

ヴェント「笑えない冗談ね。……そう言ってられるのも今の内だけよ、私の本気ってヤツを見せてあげるから」

ビアージオ「頼もしい事だ、その勢いで家電を破壊しないようにな」

ヴェント「……今に見てなさい、二度とそんなコト言わせないから」

ビアージオ「さて……そろそろ眠るとするか。ヴェント、部屋の鍵はキチンと所持しているか?」

ヴェント「当たり前でしょう? でも、こんな薄いカードが鍵になるなんて……不思議なものね」

ビアージオ(……しかし、科学の最先端とも言える学園都市がまだカードキーを使っているとは思えないが。もしや、アレイスターが気を利かせたか?)

ビアージオ「まあ良い、考えるだけ無 ヴェント「あっ」パキッ

ビアージオ「…………」

ヴェント「…………」

ビアージオ「……フロントに行け」

ヴェント「……うん」

211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 12:55:33.17 ID:coofugs7o


ビアージオの部屋


ビアージオ(……疲れたな、二日目でこれでは先が思いやられる。しかし、運が良かった。ヴェントの事を任せられる者に出会えるとはな……これでわたしも自由に過ごせる)

       (そういえば、あの少年……上条当麻は本当に『ツンデレ』というものなのだろうか。見た限りでは好意を抱いているようには見えなかったな。
        だが、『天罰術式』の影響を受けていなかったのも事実……まさか、魔術を防ぐ事が出来る? ……いや、流石にそれは無いだろう)

       (まあ良い、とこかくこれでヴェントは家電の使い方を学べる訳だ。少年には悪いが……わたしはそんな面倒な事をしたくないからな)

       (さて……眠る前に一応バチカンに報告もしておくか。教皇様やアイツらの事だ、きっと『天罰術式』にも気付いているだろう)ピポパ


アンジェレネ『は、はい! アンジェレネです!』

ビアージオ「……シスター・アンジェレネか、その対応の仕方はどうかと思うが」

アンジェレネ『あっ……ごめんなさい。その声はビショップ・ビアージオですか?』

ビアージオ「ああ、教皇様に申し上げたい事があってな。教皇様は今、何をしておられる?」

アンジェレネ『えーっと……教皇様は今お忙しいようです』

ビアージオ「今日もか……仕方が無い、テッラかアックア、リドヴィアでも良いから代わってもらいたい。フィアンマは期待するだけ無駄だろう」

アンジェレネ『分かりました。シスター・リドヴィアはシスター・オルソラと布教で外国に行っているから……居るのは、あっ! アックア様ー!』

ビアージオ(っ! ……耳が痛い、受話器から離れてからにしてもらいたかったな)

アックア『ビアージオか、何の用であるか?』

ビアージオ「報告というヤツだ、実は――」

アックア『言わなくとも見当はついている。「天罰術式」』を発動させた事についてであるか?』

ビアージオ「ほう、流石は『神の右席』だな。遠い異国からの魔術を感知したか」

アックア『「天罰術式」程の大規模な魔術であれば気付かない方がおかしいであろう。……被害者も出ているからな』

ビアージオ「被害者?」

アックア『フィアンマが気絶したらしいのである』

ビアージオ「……発動していたのは昼間で、バチカンは深夜のはずだが。また夜更かしでもしていたのか」

アックア『そこはどうでも良い。ビアージオ、あまり目立つような行動は慎んでもらいたいものであるが』

ビアージオ「……自分でも分かっているつもりだ。とりあえず、話はそれだけだ」

アックア『そうか、ならばもう切……何? 言いたい事があるそうなのでアンジェレネに代わるのである』

アンジェレネ『ビショップ・ビアージオ、お土産を忘れないでくださいね!』

ビアージオ「……君は相変わらずだな。分かった、忘れないでおこう。切るぞ」プツッ

212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 13:23:57.31 ID:coofugs7o


ビアージオ(フィアンマが気絶? まさかそんな事は有り得ないだろうが……もしや、それ程の悪意を持つような事でもあったか?)

       「……まぁ、どうでも良いな。ともかく、明日からはわたしは自由の身。ヴェントには悪いが、短い滞在を謳歌させてもらうとしよう」

       (願わくば、もう騒動には巻き込まれたくないものだ……)

214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 17:48:01.04 ID:65Mr+cwVo


ヴェントの部屋


ヴェント(……初日は失敗、明日からはあの男が教えてくれるみたいだけど……本当に大丈夫かしら)

     (まっ、面倒くさがりのビアージオよりは役に立ちそうね。それに、『ツンデレ』……何かされそうになったらすぐにハンマーで撃退しないと)

     (学園都市、か……バチカンの方がもちろん過ごしやすい。でも、この街も悪くは無い……教皇、アンタの言う通りなのかもしれないわ)

     (ともかく、家電を使えるようになってさっさと帰りたいトコね……アレイスターの世話になり続けるのだけは嫌)

     (それにしてもあの男、上条当麻……なーんか引っ掛かるわね。異質なモノ……能力者、いや……)

     「……考えても仕方ないか、とりあえず寝ないと」

215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 18:03:32.44 ID:65Mr+cwVo


上条の部屋


上条「し、し……しまったぁぁぁぁぁあああ!!」

   「家電がぶっ壊れたから電気屋に行ったのに……それどころじゃなくてすっかり忘れてた……」

   (まずい……俺の家でやる事になったのに、このままだと……明日素直に言うしかねーか)

   「えっと……テレビは生きてるんだっけ、つーかテレビ以外はアウト……エアコンも、駄目か……あんまりだ」

   「テレビよ、俺の事を分かってくれるのはお前だけだ……という訳で俺に娯楽を提供してくださいよっと」ピッ


『――――次のニュースです。最近、ネット上で噂になってい』ピッ

   
上条「ニュースなんか見てられるかっつーの。……明日からはどうなるんだろうか、って考えても仕方ないか」

   (不幸な目にだけは遭いたくないけど、無理だよなー……はぁ)



    二日目  終了

221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 22:36:49.29 ID:65Mr+cwVo


一方その頃バチカンでは


アックア「アニェーゼ、どこかへ出かけるのであるか?」

アニェーゼ「ええ、お使いを頼まれたので今から行くトコなんです。まだやる事は残ってるんで早めに済ませちまわないと」

アックア「そうか……ならば、やはり自分で行くとするか」

アニェーゼ「おや、何か頼みたい事でもあったんですか?」

アックア「手紙を投函してきて欲しかったのであるが、仕方ないな」

アニェーゼ「それ位なら大丈夫ですよ。こちらに渡して頂ければすぐにでも出しに行きますから」

アックア「それは助かる、よろしく頼むぞ。手紙は……これである」

アニェーゼ「……ほう、これは……イギリスの第三王女へ、ってトコですね」

アックア「……余計な詮索は慎んでもらいたいのである」

アニェーゼ「今更照れなくても良いじゃねえですか、ほとんどあっちも公認みてえなものですし」

アックア「そういうのとは違う、とあれ程言ったはずであるが」

アニェーゼ「そう言ってるのはアックア様だけってな感じですけどね。とりあえず手紙は任せちまってください」

アックア「……まあ良い、頼んだぞ」

222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 23:05:25.14 ID:65Mr+cwVo


イギリス


メイド「ヴィリアン様、お手紙でございます」

ヴィリアン「私に手紙ですか、これは……! ええ、ありがとうございます。ご自分のお仕事にお戻りください」

キャーリサ「ん? どーしたヴィリアン、嬉しそーな顔して」

ヴィリアン「う、嬉しそうな顔など……していません」

キャーリサ「……そーか、言わなくとも分かるの。その手に持ったのは、ヤツ……ウィリアム=オルウェルからの手紙だな?」

ヴィリアン「それは……その……」

キャーリサ「お前は相変わらずあの男がお気に入りのよーだし、妹に先に結婚されるのかもしれないとは……」

ヴィリアン「か、からかわないでください!」

キャーリサ「はいはい、意地悪な姉はすぐに消えるとしよーか」

ヴィリアン「もう…………誰も居なくなりましたね? では……」


『姫君、一介の傭兵でしかない私がこのように手紙をお送りする事をお許しください――』


ヴィリアン「……ウィリアム、相変わらずですね」


 アックアからの手紙は当たり障りのない内容であり、人を楽しませようとするものとは異なっている。
しかし、それでもヴィリアンにとっては大切な手紙だという事には変わりないだろう。そう読み進めていくうちに、その手紙の中で引っ掛かる話題が出てきた。

223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 23:18:06.69 ID:65Mr+cwVo


『そういえば、私の仲間が学園都市に旅立ちました。色々と事情があるのですが、その女が居ると電化製品が使えなかったのです。
 しかし、しばらくは戻らないという事で私も安心して携帯電話を使えるようになりました。あの女が居るとすぐに壊されそうですから』


ヴィリアン(女、というのが気になりますが……ウィリアムに限って……え?)

       (何か気になる内容が……学園都市、ではなくて……電化製品、でもなく……携帯電話……携帯電話?)

       「携帯……電話……?」

       「…………誰か、誰かおりませんか!?」

メイド「失礼いたします。ヴィリアン様、どうかなさりましたか?」

ヴィリアン「ええ、ローマ正教に連絡を取りたいので連絡先を調べて頂いてもよろしいですか?」

メイド「ローマ正教……ですか? 分かりました、少々お待ちください」

224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 23:31:48.95 ID:65Mr+cwVo


戻ってバチカン


ルチア「アックア様、お電話です」

アックア「私に電話であるか……誰からだ?」

ルチア「それが……イギリス王室からのようです」

アックア「イギリス王室……? 分かった、すぐに代わろう」

ルチア「ええ、どうぞ」


アックア「誰であるか、『後方のアックア』に用か、それとも……ウィリアム=オルウェルに用か」

ヴィリアン『……私です、ウィリアム』

アックア「その声は……姫君ですか? 何かご用でも?」

ヴィリアン『ええ、お聞きしたい事があります』

アックア(聞きたい事……手紙に何か問題でもあったか……?)

ヴィリアン『ウィリアム、私が手紙をお送りし、それにあなたが答えまた私が返す。このやり取りを何度か交わしましたね』

アックア「ええ、その通りです。もしや……何か気に障る事でもありましたか、姫君」

ヴィリアン『……いえ、私がただ勘違いをしていただけですから。ただ、どうして……』

アックア「……姫君?」

ヴィリアン『――どうして、携帯電話を持っているという事を教えてくれなかったのですか!?』

アックア「……は?」

225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/24(水) 23:55:48.43 ID:65Mr+cwVo


ヴィリアン『……確かに手紙のやり取りというのも良かったのですが、携帯電話があるなら教えて欲しかったのです』

アックア「なるほど……それは、失礼致しました」

ヴィリアン『いえ……あなたは携帯電話など使わない、と思っていた私も愚かでしたね』

アックア「姫君に非はありません、無礼をお許しください。……貴女の方こそ、携帯電話をお持ちなのですか?」

ヴィリアン『はい、所持しています。……それが、何か?』

アックア「私も姫君が携帯など持たない、と考えていました。愚かなのは私も同じだという事です」

ヴィリアン『そうですか……お互いに、勘違いしていたようですね』

アックア「ええ、思慮が足り無かった事をお詫びいたします」

ヴィリアン『もう良いのです。ところで、ウィリアム……何か言うべき事があるのではないでしょうか?』

アックア「言うべき事、ですか……?」

ヴィリアン『そうです、何かありませんか?』

アックア(言うべき事……何も思いつかないのである)

ヴィリアン『…………』

アックア「…………」

ヴィリアン『……ウィリアム?』

アックア「……申し訳ありません、特には無いのですが」

ヴィリアン『……相変わらずですね、馬鹿者ォ!』

アックア「なっ……!?」

ヴィリアン『番号を教えてもらいたい、とか男としてそういう事が言えないのですか!?』

アックア「し、失礼いたしました……」

ヴィリアン『……あなたにそこまでは期待していません、もう良いです。ウィリアム、連絡先を教えなさい』

アックア(……それならそうと最初から言ってもらいたいものである)

226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/25(木) 00:09:20.93 ID:VbUEd3Cuo


テッラ「――それで、そうやってメールをしている、と」

アックア「……そこまで使う気は無かったのであるが、こう頻繁に送られると返さざるを得ないからな」

テッラ「あなたの様な筋骨隆々とした男が、そんな小さな機械の前で悪戦苦闘しているのは見ててなかなか面白いですねー」

アックア「……不慣れな事はなるべく避けたいのだが」

テッラ「おや、その言葉、イギリスの第三王女の前でも言えますかねー?」

アックア「言えないからこうして指を痛めている。そうやって見られていると気が散る、どこかへ行け」

テッラ「いえ、もうしばらく楽しませて頂きますよ。あなたの困った顔はこの酒に良く合う」

アックア「安酒片手に人間観察か……悪趣味だな」

テッラ「からかっている、と言って頂けると嬉しいですねー」

アックア「黙っていろ。……よし、送信」

228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/25(木) 11:53:13.09 ID:oRupIBWso


翌朝 ビアージオの部屋


ビアージオ(……朝か、今日からはあの少年に全てを任せる事ができるのか。教皇様に同行せよ、
        と言われた時はどうなるかと思ったが……わたしの思い通りに事は進んでいる、実に気分が良い)

       (あとはヴェント次第、といった所か。一週間程で帰国できれば良いのだが……)

       (しかし、時間が出来てしまったのはどうするべきか……適当に視察という名目で学園都市で過ごすとするか。
        いくら事件の多いとされる学園都市といっても、そう何度も巻き込まれはしないであろう。……だが、)

       (何故か嫌な予感がする……気のせいだと良いが。さて、最後にやるべき事をやっておくか)

229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/25(木) 12:08:47.96 ID:oRupIBWso


とある高校の男子寮 上条の部屋


上条(……朝か、良く分かんねーけど、今日からあの女に家電の使い方を教えるんだよなー。
    しかし……どうしてこうなったんだ? また体質が呼び寄せた不幸の一種なんですかねー……はぁ)

   (しかもしっかりやらねーとあの男の方に何か言われそうで怖いしな……やるしかねーか)

   (そういえば、補習に行かなくても良いって言われたけど……本当な)プルル

上条「電話、小萌先生か……もしもし?」

小萌『おはようございますなのですよー上条ちゃん』

上条「おはよーっす。何か用ってヤツですか? 補習関係とか?」

小萌『ええ、補習に関する事には違いないのですが……簡潔に言うと、今日の補習は無しなのですー』

上条「補習無し? 本当に?」

小萌『本当なのですよー、っていうか上条ちゃんはしばらく補習はありません』

上条(あの男の言った通りになってやがる……本当に学園都市のお偉いさんと繋がりがあるって事か)

小萌『今朝、急に校長先生から連絡があったのです。上条ちゃん……もしかして、何か悪い事とかしてませんかー?』

上条「悪い事なんてしてないって。とりあえず、学校には行かなくても良いって事ですよね?」

小萌『ですですー。でも、上条ちゃんのサボりのツケはいつか払ってもらうのですよー。覚悟していてくださいねー』

上条「お手柔らかに……わざわざ連絡どーもでーす」

小萌『いえいえ、それではー』プツッ

上条「……結局補習は後でやる事になるんだろーな。それじゃ何も変わんねー……部屋でも片付けるか」

237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/28(日) 00:09:38.24 ID:4qFmPKqTo


しばらくして再び第七学区のホテル


ビアージオ「ヴェント、そろそろ時間だが準備は出来たか?」

ヴェント「いつでも出られるわ。あの男から連絡は?」

ビアージオ「まだ無いな……手配はしておいたから問題は無いは――」プルル

ビアージオ「と言っている内に来たか……上条当麻か?」

上条『ああ、遅れて悪かったな』

ビアージオ「構わんよ、君が仕事をこなしてくれるのであれば何も言う事は無い」

上条『えーっと……それなんだけど、一つ大事な事を忘れててさ』

ビアージオ「大事な事? 何だ、言ってみろ」

上条『俺の家の家電……ほとんど壊れてるんだ』

ビアージオ「……はぁ?」

上条『だから今からすぐ、って訳にはいかないんだ……悪い』

ビアージオ「家電が全て壊れている……そんな事がありえるのか? ヴェントはまだ何もしていないぞ?」

ヴェント「それ、どういう意味かしら」

上条『俺だって良く分からねーよ……どうやら、雷にやられたみたいなんだ』

ビアージオ「仕方が無いな……少年、とりあえず君はヴェントと共に電気屋に行け。そして家電を用意しろ」

上条『あー……そうしたいのは山々なんだけど、俺の財布事情ではなかなかツラいものがあってですね……』

ビアージオ「余計な心配をするな、それ位は負担してやろう」

上条『……負担? 代金を出してくれるって事か!?』

ビアージオ「こちらから依頼した事だからな、面倒は見るつもりだ」

上条『なんか話がウマすぎて怖くなって来たな……本当に良いのか?』

ビアージオ「……何度も同じ事を言わせないでもらいたいのだが。ともかく、今から君には電気屋に行ってもらうぞ」

上条『ああ、分かった。今すぐ出るからどこへ向かえば良いか教えてくれ』

ビアージオ「今から言うホテルに来てもらうとしよう、場所は――――」

238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/28(日) 00:30:32.21 ID:4qFmPKqTo


ビアージオ「――――だ、そこに来てもらえれば良い」

上条『分かった、今すぐ向かう』

ビアージオ「来る時はタクシーを使え、時間を無駄にしたくは無いのでな。これ以上話す事は無い、切るぞ」プツッ

ヴェント「まずは調達ってコト?」

ビアージオ「その通りだ、あの少年と共に家電を手に入れて来い」

ヴェント「分かったわ、アンタはこれからどうするつもり?」

ビアージオ「そうだな……この都市を視察するとしよう。教皇様に何も報告出来ないというのも心苦しいからな」

ヴェント「……立派なコト言ってるように聞こえるケド、別に何も考えてないんでしょう?」

ビアージオ「……失礼な事を言うな、わたしが何も考えていないとでも思うのか?」

ヴェント「当たり前じゃない、視察とかそんな面倒臭いコトをアンタがするワケ無い」

ビアージオ「……なかなか鋭いな」

ヴェント「今更何を言ってるのよ……まっ、学園都市まで連れてきてくれただけでも十分。そっちはそっちで好きにやれば良いわ」

ビアージオ「そう言ってもらえると助かるな。ならば、少しの間休ませてもらうとしよう」

ヴェント「……そのままずっと何もしないで帰国、ってコトにならなければ良いケド」

ビアージオ「そこまで怠惰な人間ではないよ、わたしなりにやるべき事をやるつもりだ」

ヴェント「……本当かしら」

239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/08/28(日) 00:54:59.50 ID:4qFmPKqTo


しばらくして


上条「悪い、待たせちまったか?」

ビアージオ「少しな、だが気にする程でも無い」

上条「えーっと……じゃあ、まずはヴェントと一緒に買い物に行くって事で良いんだよな」

ヴェント「そうなるわね、さっさと済ませましょうか」

ビアージオ「頼むぞ少年、前も言ったが君にはローマ正教の未来が懸かっているんだ。その事を忘れないでくれよ」

上条「だから大げさだっつーの……そういえば、アンタはどうするんだ? 一緒に来ないのか?」

ビアージオ「ああ、わたしは遠慮させてもらうよ。他にやるべき事があるからな」

上条「仕事か何かで忙しいって事か……それなら無理も無いよな」

ビアージオ「いや、ただ休息をとるだけだが?」

上条「……はぁ?」

ビアージオ「時差ボケというのはなかなか辛いものでな……上条当麻、後は任せた」

上条「えー……」

ヴェント「……ビアージオのコトは放っておいて良いわ。どうせ何を言っても無駄だから」

上条「……なんか、いきなりやる気を奪われた」

ビアージオ「そんな事を言っている暇があるなら早く行け、与えられた時間は有効に使うべきだ」

上条「アンタには言われたくねーけどな……じゃあ、俺の乗ってきたタクシーで行くとしますか」

ヴェント「そうね……その前に、すぅー……はぁー……」

上条「……何してんだ?」

ヴェント「タクシーに乗る前に気を落ち着かせているのよ……邪魔しないで」

上条(……先が思いやられるなー)

251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/15(木) 12:24:04.31 ID:gwXp217/o


上条「……精神統一ってのは終わったか?」

ヴェント「ええ、待たせたわね……行きましょうか」

ビアージオ「ヴェント、くれぐれも問題を起こさないように行動してくれよ。……これ以上は教皇様に迷惑がかかる」

ヴェント「アンタの方こそ、また事件に巻き込まれないように注意した方が良いと思うケド?」

ビアージオ「その心配は無用だ。わたしは残りの時間を静かに、そして平穏に過ごすと決めたからな」

ヴェント「どうかしら? 油断してると痛い目見るわよ」

上条「あのー……そろそろ乗りたいんだけど……」

ビアージオ「ああ、待たせてすまなかった。改めて……頼むぞ少年、君には期待している」

上条「そんな大した事をする訳じゃねーけどな。よし、行こうぜヴェント」

ヴェント「分かったわ。ところで……」

上条「ん? 何だよ、まだ何かあるのか?」

ヴェント「……やっぱり歩きでってのは?」

上条「はい、つべこべ言わずに乗りますよー」グイッ

ヴェント「ちょ、ちょっと腕を引っ張るな! まだ心の準備が……」

上条「運転手さん、出発しちゃってくださーい」

ヴェント「お……降ろせ!」

上条「これ以上タクシーに乗るだけで時間を使わせるんじゃねえっつーの!」

ビアージオ(……先が思いやられるな)

252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/15(木) 12:45:45.20 ID:gwXp217/o


タクシー内

ヴェント「……アンタ、イイ度胸してるわね。この私を無理やり連れて行こうとするなんて」

上条「……無理やり巻き込まれたのはむしろ俺の方なんですが」

ヴェント「それもそうね。で、ドコで家電を買うつもり?」

上条「一番手ごろな店は昨日、悲惨な状態になっちまったからな……誰かさんのせいで」

ヴェント「……その誰かさんってのは、誰を言ってるのかしら」

上条「言わなくても分かるだろ?」

ヴェント「ふーん……ちょっと私には分からないからその口で今すぐ言ってみろコラ!」

上条「お、落ち着けって! ……とりあえずどこでも良いから買おうと思うけど、それで良いか?」

ヴェント「ええ、学園都市のコトは良く知らないからアンタに任せるわ」

上条「はいはい、任されましたよーっと。……それにしても、家電なんか説明書読めば一人でも何とかなるはずなんだが」

ヴェント「……それが出来ないからこうしてアンタに頼んでるのよ」

上条「頼まれたからには協力はするよ。せっかく学園都市まで来たのに何も得られなかったってのは俺も嫌だしな」

ヴェント「へぇ、頼りになるじゃない。すぐに家電の使い方なんて覚えるつもりだから、アンタが苦労するコトは無いと思うケド」

上条「……だと良いけど。家電ついでにタクシーもすんなり乗れるようになると良いな」

ヴェント「……努力はする」

上条「とか話してる内に着いたみたいだな……降りるぞ、ヴェント」

253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/15(木) 13:21:17.55 ID:gwXp217/o


一方その頃


ビアージオ(やっと行ったか……あの少年には悪いが、これでヴェントを任せる事が出来た。肩の荷が下りたと言うヤツか。
        さて、これから何をするかだな……この疲れた体を休めるのが良いだろう、とりあえずその辺のカフェにでも入るか)


??「あっ、そこに居るのは……ビアージオさーん!」


ビアージオ(……ん? 今、わたしの名を呼ばれたような気がするが……まさかな)


??「おーい、ビアージオさーん! 聞こえてますかー?」


ビアージオ(……どうやら間違いではなさそうだな。声のする方向は、後ろか。いったい誰が……)


美琴「あっ、こっち向いたって事は聞こえてたんですね。良かったー」


ビアージオ(……あの少女は確か、御坂美琴だったな)


美琴「すいませーん、ちょっとこっちまで来てもらえませんかー?」


ビアージオ(無視する訳にもいかないか……仕方が無い、面倒だが行くとしよう)

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/15(木) 13:42:45.14 ID:gwXp217/o


ビアージオ「また会うとは偶然だな、御坂美琴」

美琴「名前覚えててくれたんですね。でも良かったー、丁度良い所に来てくれて」

ビアージオ「丁度良い所……? いったい何の事だ?」

美琴「その前に……今から何をしようとしてたんですか?」

ビアージオ「ん? わたしは今からカフェで休息をとろうと思っていたのだよ」

美琴「なるほど。って事は……今はお暇なんですよね?」

ビアージオ(……! この流れ、面倒の予感……!)

美琴「えっと……申し訳ないんですけど、この人の車を探すのを手伝ってもらえませんか?」

ビアージオ「この人、とは……君の隣にいる女性の事か?」

??「いや、車を止めた駐車場が分からなくなってしまって……」

ビアージオ「……それでわたしにも探してもらいたい、と言いたいのか」

美琴「ええ、一人でも多い方が見つかりやすいじゃないですか」

ビアージオ「だからと言って、学園都市の人間ではないわたしに頼むというのはどうかと思うが……」

美琴「そう言わずにお願いしますよ。この人も困って……って、ええ!?」

??「……それにしても暑いな」ヌギヌギ

ビアージオ「……はぁ?」

美琴「なっ……何で脱いでるんですか!?」

??「炎天下の中、ずいぶん歩いたからね……汗びっしょりだ」

ビアージオ「……御坂美琴、この人はいったいどうしたんだ」

美琴「わ、私にも分からないですよ! さっき知り合ったばっかりだし!」

木山「何をそんなに騒いでいるんだ? しかし……暑い」

美琴「ともかくシャツを着てください!」

ビアージオ(……これはもしや、巻き込まれたか?)

257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/17(土) 02:32:05.89 ID:dj2vJp9Oo


再びヴェントside、電気屋


上条「色々あったけど何とか着いたなー」

ヴェント「へえ、この店も結構数があるわね。……触ってみても良いかしら」

上条「それは俺の家でやった方が良いと思うぞ……。とりあえず、買うヤツを決めねーとな」

ヴェント「アンタの家に無いのを買わないといけないか。何が無いワケ?」

上条「……簡単に言えば、テレビしか無い」

ヴェント「……私が言うのも変だけど、そんな生活やっていけるの?」

上条「そんな事言われても、朝起きたらぶっ壊れてたんだよ……どうしようもねーだろ」

ヴェント「……不幸な男ね」

上条「今に始まった事じゃねーから別に気にしてないけどな……いや、でもやっぱり辛い事には変わりないか、はぁ……」

ヴェント「辛気臭い顔してないでさっさと買ってしまいましょう。買うコトが目的では無い」

上条「それもそうだな。……で、一つ確認したいのでございますが、上条さんはお金をそこまで持っている訳ではなくてですね……」

ヴェント「言ったでしょう、金のコトは心配するなって。何でも良いから早く選んで欲しいわね」

上条「良かったー……じゃあ、店員さんにでも聞いて適当に決めちまうか」

258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/17(土) 02:56:22.90 ID:dj2vJp9Oo


上条「すいませーん、ちょっと良いですか?」

店員「いらっしゃいませ、どういったご用件でしょうか?」

上条「家電を一式揃えたいと思って来たんですけど、数が多くてどれにしたら良いか迷ってて」

店員「分かりました。では、こちらからいくつかお勧めさせて頂きますがよろしいですか?」

上条「お願いします。ヴェント、お前もそれで良いよな?」

ヴェント「私にはどれが良いとか分からないから任せるわ。……出来れば使いやすいのが良いケド」

店員「使いやすさですね。お二人でお使いになるのでしょうか?」

上条「うーん……二人で、って事には間違いないかな」

ヴェント「それが何か関係あるのかしら?」

店員「ええ、同居なされるのなら一人暮らしで使うタイプだと小さく感じられるかもしれませんからね」

上条「なるほどねー……ん? 同居……?」

店員「はい、特に冷蔵庫はお二人で暮らす場合はそれなりの大きさが必要でしょうから」

ヴェント「……いや、そこじゃなくて。誰と誰が同居するって思ってるのかしら?」

店員「お二人が同居なされるのかと思ったのですが。同棲するために家電を買い替える、という方も珍しくは無いですからね」

上条「……完璧に勘違いされてるな」

ヴェント「……みたいね」

259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/17(土) 05:07:28.52 ID:dj2vJp9Oo


上条「えーと……勘違いしてるみたいなんで言っときますけど、俺達は別に恋人とかそういうんじゃないんで」

店員「そうでしたか……申し訳ございません」

ヴェント「別に謝らくても良いわ。……まぁ、こんな男とそういう関係って思われたのは確かにイヤね」

上条「……そこまで言わなくても良いと思うんだが」

ヴェント「科学の都市に住む男となんて誰が……あっ、そういえば……」

上条「ん? どうしたんだ?」

ヴェント「忘れてた。アンタ、私のコトが……その、好きなんだったっけ」

上条「……あー、そこの誤解を解くのを忘れてたな」

ヴェント「そう考えると今の私の発言ってアンタにとっては結構辛いのか……悪いコトしたわ」

上条「だから違うっつーの……俺はアンタの事が好きな訳じゃねえって!」

ヴェント「それも素直に言えないからそういう態度をとってるワケでしょう? ……謝っといたほうが良いかしら」

上条「素直も何も好きでも何でもないってのが素直な気持ちだって言ってんだろうが!?」

ヴェント「無理しなくても良いわよ、『ツンデレ』だから仕方が無いもの」

上条「何度でも言うが俺はツンデレでも無い!」

ヴェント「生き難い男ね……素直になればもっとイイ人生になると思うケド」

上条「人の話を聞きやがれ!」

260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/17(土) 05:33:40.60 ID:dj2vJp9Oo


上条「……とりあえず、同居とかではないので気にしないでください」

店員「は、はぁ……分かりました。使いやすさの他に何かご要望はありますか?」

上条「んー……出来れば安いのが良いですね。それで丈夫なら言う事無しって感じです」

店員「丈夫、値段……分かりました、今から条件に合う商品を探してきますので五分程お待ちいただけますか?」

上条「じゃあ、ここで待ってますね。よろしくお願いします」

店員「かしこまりました、少々お待ちください」


ヴェント「別に値段なんて気にしなくても良かったのに」

上条「出してくれるってのはありがたいけど流石に高い物はな……それに」

ヴェント「それに?」

上条「高いの買って壊すのも悲しいからな……誰かさんが壊すだろうから」

ヴェント「アンタも懲りない男ね……本当にイイ度胸してるじゃない」

上条「これだけ言っとけば逆に壊す事も無くなるだろ?」

ヴェント「自分で言うのもアレだけど、そんな簡単に上手く行けば良いわね」

上条「そのために俺が居るんだろ? 一緒に頑張ればなんとかなるし心配するなって」

ヴェント「そこまで優しくするなんて……アンタ、やっぱり私のコトが」

上条「何度でも言うけど、それだけは絶対に違うからな」

264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 03:40:06.79 ID:me2eiwnbo


店員「お待たせいたしました。こちらが条件に合った商品となります」

上条「どれどれ……冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ……」

店員「いかがでしょうか?」

上条「値段も手ごろだし文句は無いですね。どうだ、ヴェント?」

ヴェント「私には良し悪しが分からないから勝手に決めてもらって良いわ」

上条「よし……このリストにある商品全部買いたいいんですけど、大丈夫ですか?」

店員「もちろん、問題ありませんよ。お買い上げありがとうございます」

上条「いやー、すんなり見つかって良かったな」

ヴェント「でも、買ってすぐに使えるのかしら」

上条「それもそうだな……すいません、当日配送って出来ますか? 出来ればすぐにでも使いたいんですけど」

店員「ええ、出来ますよ。今からですと……三時間後にはお届けできると思います」

上条「思ったよりもすぐ着くんですね。じゃあ、それでお願いします」

店員「ではこちらで手配しておきますね。お支払いはカードでしょうか?」

上条「……ヴェント、お金は本当に大丈夫なのか?」

ヴェント「ちょっと待ちなさい……えーっと、あったあった。この財布の中にあるから取り出して」

上条(財布……って、何だこの厚さは!? お札がはみ出てやがる……)

ヴェント「それだけあれば十分だと思うケド……足りない?」

上条「十分すぎる程だな……少なくともこれだけあれば一年は暮らせると思う」

265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 04:07:01.05 ID:me2eiwnbo


店員「ありがとうございましたー」


上条「さて、届くのは三時間後か……それまでどうすっか」

ヴェント「他にやるコトも無いし、何か提案してもらいたいわね」

上条「うーん……時間も時間だし、昼飯食えば丁度良いかもな」

ヴェント「イイ考えね、せっかく学園都市に来たからには美味しいモノが食べたいわ」

上条「美味い物ねぇ……有名な物とかは無いしなー。適当にそういう店が集まってる所にでも行くか」

ヴェント「……歩きで行ける?」

上条「ここからは近いし歩きでも行けるけど……帰りはタクシーに乗ってもらうからな」

ヴェント「……憂鬱ね、タクシーに乗らなくてもイイ方法とか無いのかしら」

上条「そんな事言われてもなー……ん? そうか、アレを買えば……」

ヴェント「何か思いついたワケ?」

上条「ああ、アレなら俺でも買える位だし良いかもな」

ヴェント「だから、アレって何よ」

上条「後でのお楽しみってヤツだ。そうと決まれば早速メシ食いに行こうぜ」

ヴェント「気になるわね……まっ、アンタに任せるしかないから別に良いケド」

266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 04:58:16.40 ID:me2eiwnbo


地下街


上条「何とか着いたなー。ここなら色々あるから適当に選んでくれよ」

ヴェント「へえ、不思議なものね……地下にこれだけ発展した世界があるなんて」

上条「一応科学の最先端、ってのが売りだからな。実験台とかにされてる感は否めなかったりもするけど」

ヴェント「それにしても、店があり過ぎて迷うわ……」

上条「何か食べたいものとか無いのか? ほら、せっかく日本に来たんだし」

ヴェント「そうね……あっ、一つ気になる物があった」

上条「おっ、何だ? ここにあれば良いんだけど」

ヴェント「確か……うど、ん……だったかしら。それが食べてみたいかな」

上条「ずいぶんまたシンプルな物を……何でうどんを選んだんだ?」

ヴェント「知り合いの男が話していたのよ。『日本のうどん粉に興味がありますねー』、って言ってたわ」

上条「うどん粉に興味がある外国の男……謎すぎる」

ヴェント「ちょっと変わってるヤツだから考えるだけ時間のムダね」

上条「……ヴェントよりも変わってるヤツなんて居るのか?」

ヴェント「あら、ぶん殴られたいのかなー?」

上条「じょ、冗談です! だから拳を振り上げないでください!」

267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 05:35:37.54 ID:me2eiwnbo


うどん屋


上条「という訳でうどん屋に来たけど、どうだ?」

ヴェント「あの白くて細いのがうどんってヤツ?」

上条「あぁ、冷たいのや暖かいのって感じで色々あるから好きなのを選んでくれよ」

ヴェント「そうね……っ!? ちょ、ちょっと……何よコレ」

上条「ん? それはきつねうどんって言うんだけど、それがどうしたんだ?」

ヴェント「きつね、ってあの狐よね……日本人は狐を食べるなんて……驚いたわ」

上条「あー……そうだよな、名前だけ見たら勘違いするのも無理ないか」

ヴェント「まさか……イギリスで狩られた狐は日本に……」

上条「そんな訳ねーだろ。きつねうどんってのは油揚げが乗ったうどんってだけで、狐の肉が乗ってる訳じゃないからな」

ヴェント「油揚げ……?」

上条「気になるなら食ってみろよ。あの甘い感じは一度食べておいた方が良いぞ」

ヴェント「そう……じゃあ、これにしようかしら」

上条「そういえば……何で日本語が読めるんだ? そもそも普通に話してるってのも驚きだけどな」

ヴェント「コレ位出来て当然よ、私は『神の右席』なのだから」

上条「……理由はさっぱり分かんねーけど、ヴェントは凄いヤツって事だけは分かった」

268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 14:04:24.01 ID:TKp/zJh3o


上条「おっ、来た来た。冷めちまう前に食べるとしますかね」

ヴェント「コレがうどん、ねぇ……ん? この日本の細い棒は何なのかしら?」

上条「あぁ、それは箸だよ。それを使って食べるんだ」

ヴェント「聞いたコトはあるけど実際に見るのは初めてね。どうやって使うワケ?」

上条「まずは一本をペンを持つみたいな感じで持つ」

ヴェント「ふんふん」

上条「次にもう一本をこんな感じで……指の間で挟む様に持つ」

ヴェント「ん……こう?」

上条「そうそう。で、これをこうやって動かして食べ物を掴む。後は好きに食べればOKだ」

ヴェント「よし……アレ? よっ……あっ、……コレ、結構難しい」

上条「慣れるまでは大変かもな……まぁ、すぐに使えるようになるさ」

ヴェント「よっ、と……うっ……麺が滑って掴めない……」

上条「いきなりうどんは難しかったかもなー……フォークでも取って来た方が良いか?」

ヴェント「それは負けた気がするわね……すぐに慣れるんでしょ? 見てなさい、この時間だけで使いこなして見せるわ」

上条「そのやる気は後のために取っておいた方が良いと思うけどな」

269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 14:05:40.64 ID:TKp/zJh3o


数分後

ヴェント「…………」ズルズル

上条「もうほとんど使いこなしてやがる……どうだ、美味いか?」

ヴェント「なかなかってトコかな、この油揚げってのも意外とイケる……」ズルズル

上条「だろ? もっと美味い物が日本にあるし、食べてから帰ってもらいたい所だな」

ヴェント「そのためにも、さっさと家電を使いこなせるようになりたいトコね」

上条「そういえば、ヴェントはどこから来たんだ?」

ヴェント「言ってなかった? バチカン、って言って分かるかしら」

上条「……バチカンって?」

ヴェント「……流石は落ちこぼれね。バチカンはイタリアの中にある国、コレ位は常識だと思うんだけどねぇ」

上条「どうせ上条さんは落第生ですよー……でも、何でまた学園都市なんかにしたんだ?」

ヴェント「それは前も言ったでしょ。科学の最先端の都市の家電なら使いやすいはずだと思ったのよ。……だけど、」

上条「結果としてああなっちまった訳か……あそこまで酷いともう奇跡の領域だよな」

ヴェント「そうは言っても、意外と難しかったんだもん……」

上条「ボタン押すだけで難しいってのも変な話だな。箸を使う方が難しいと思うんだが」

ヴェント「これは機械では無いでしょ? そういうコトよ」

上条「どういう事だよ……」

270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 14:06:46.61 ID:TKp/zJh3o


上条「ごちそうさまでしたっと……さて、アレを買いに行きますかね」

ヴェント「さっきから気になってたんだけど、アレって何かしら?」

上条「一緒に来れば分かるさ。確かすぐ近くにあったはず……ほら、あそこの店だ」

ヴェント「自転車が並んでいる店……あぁ、アレって自転車のコトだったんだ」

上条「これならヴェントが怖がる事も無いだろ?」

ヴェント「……別に、怖がってなんて」

上条「無理すんなって。とりあえず、これならタクシーとかに乗らずに移動できるしな」

ヴェント「なんか馬鹿にされてるみたいで嫌だけど、自転車に乗るってのはイイ考えね」

上条「じゃあ、さっそく買って帰るとするか。すいませーん」

店主「いらっしゃい、どんな自転車をお探しで?」

上条「とりあえず安ければ良いんで、何か良いのありますか?」

店主「色々あるから好きなのを選んでいきな。そこの彼女さんと二人でツーリングでもするのかい?」

ヴェント「誰がこんな男と……あっ、えっと……」

上条「その流れはもう良いっつーの!」

271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 14:08:28.00 ID:TKp/zJh3o


上条「……とりあえず、ヴェントも一台好きなのを選んでけよ。自転車乗れないってオチは無いよな?」

ヴェント「自転車位乗れるに決まってるでしょ。……でも、すぐ帰国するのにわざわざ買うのもアレね」

上条「それもそうだな……じゃあ、俺が漕ぐから後ろに乗るか?」

店主「兄ちゃん、それはダメだ。二人乗りはやっちゃいけねえよ」

上条「あー……そうなんですか」

ヴェント「それだと買うしかないってワケね、仕方ないか」

上条「他に良い方法があれば良いんだけどな……」

店主「……兄ちゃん、二人乗りするならお勧めがあるぜ」

上条「お勧め? どんなのですか?」

店主「実は二人乗り出来る自転車があるにはあるんだ。最近学園都市でも条例が制定されて許可が出たんだよ」

上条「……でも、二人乗り用って事は高くなったりするんじゃ」

店主「いや、これが全然売れてなくてね……良かったらサービスするからぜひとも買って欲しいもんだ」

上条「本当ですか? だったらそれにしようかな」

ヴェント「その自転車ってのはドコにあるのかしら?」

店主「ああ、コレだよ、コレ」

上ヴェ「……なっ」

272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 14:10:25.54 ID:TKp/zJh3o


上条「な、何だこの自転車は……」

店主「二人乗り用自転車、いわゆるタンデム自転車ってヤツでね」

ヴェント「ペダルが二人分、確かに二人乗り用だけど」

上条「流石にコレは……なぁ?」

ヴェント「……乗るのが恥ずかしいかな」

上条「ヴェント、やっぱり諦めてタクシーにした方が良いかもな」

ヴェント「タクシー……そうよね。いや、でもタクシーに乗る位なら……」

上条「あれ? もしもし、ヴェントさーん?」

ヴェント「……決めた、タクシーよりはコッチの方がマシ。この自転車に乗る」

上条「えー……止めとこうぜ、我慢してタクシーに乗った方が」

ヴェント「私が乗るって決めたからには乗るの。私に否定形は無い、アンタがいくら言っても私の決定には逆らえない」

上条「いや、自転車乗るだけでそんなエラそうな事言われても……」

ヴェント「……それ以上口答えすると、どうなるか分かってる?」ギロッ

上条「ひ、ひいっ!? 分かった、分かりました! 買うよ、買えば良いんだろー……」

ヴェント(危なかった……タクシーに乗るなんてもう無理だもん)

273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/18(日) 14:11:37.50 ID:TKp/zJh3o


そして結局


上条「……じゃあ、行くぞ。せーの」

上条「…………」キコキコ ヴェント「…………」キコキコ

ヴェント「……なんだか、周りから見られてるような気がするのは気のせいかしら」

上条「……奇遇だな、俺もそう思ってたトコだ」

ヴェント「ったく……何が悲しくてこんな恥ずかしいコトを」

上条「こんな事になるならそれぞれ自転車買っても良かったかもなー……別に後でリサイクルショップで売れば良いし」

ヴェント「今更言っても遅いっつうの……アンタは黙って漕いでるだけで良いんだよ」

上条「へいへい……そう言えば、これも今更だけど自転車は別に乗っても良かったのか?」

ヴェント「機械じゃないから問題無し」

上条「何そのルール……タクシーに乗れれば良かったん……あっ」

ヴェント「どうかした?」

上条「さらに今更だけど……レンタルサイクルって手があった。借りればこんな思いしなくても良かったかもな……」

ヴェント「…………」

上条「…………」

ヴェント「……急ぎましょうか」

上条「……あぁ」

上条「…………」キコキコ ヴェント「…………」キコキコ

277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/20(火) 22:14:53.96 ID:ktvuGy/Do


とある高校の男子寮


上条「……この羞恥プレイに耐えながらも何とか着いたな」

ヴェント「ここがアンタの家?」

上条「あぁ、この寮の七階に俺の部屋があるんだ」

ヴェント「七階……自転車を漕いだ後だとツライものがあるわね」

上条「大丈夫だって、いくらボロっちくてもエレベーターはあるからさ」

ヴェント「……エレベーター、か」

上条「その反応……おい、まさか」

ヴェント「何、その顔は? 安心しなさい、エレベーターは克服済みだから」

上条「本当か? また無駄に時間を費やす事になるかと思ったけど、それなら良かった」

ヴェント「でも、三十分位は待ってもらうコトになるかな」

上条「……はぁ?」

ヴェント「心の準備ってヤツね、すぐ終わるから待ってなさい」

上条「いや、三十分はすぐに入らねーだろ。つーかそれって克服したって言えんのか!?」

ヴェント「文句でもあるワケ?」

上条「大アリだ! 悪いけど、先に行ってるからゆっくり準備でも何でもしててく――」

ヴェント「待てコラ」グイッ

上条「ぐうっ!? え、襟を引っ張るな……ぐるじい……」

ヴェント「アンタ、私の面倒を見るようにビアージオから言われてるでしょ?」

上条「言われてるけどそこまで面倒見なくても良いだろうが……」

ヴェント「ゴチャゴチャ言ってないで付き合いなさい。従わない場合は……分かってるだろうけど」

上条「……不幸だ」

286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/26(月) 03:11:59.55 ID:ldWJrVs0o


上条の部屋の前


上条「……本当に三十分もかかるとは」

ヴェント「エレベーターにも慣れてきたか……流石は私、と言ったトコかな」

上条「それで慣れたって言うのか……?」

ヴェント「最初は二時間かかった、それが三十分で乗れるようになったのだから褒めてもらいたい位なんだけど」

上条「次はもっと慣れて五分位にして欲しい所だ」

ヴェント「五分……夢のような数字ね」

上条「一般的にはそれでも遅いくらいなんだけどな。ともかく、部屋に入るとしますか」

ヴェント「足疲れたー、喉乾いた―」

上条「ガキみたいな事言いやがって……今開けるから」ガチャ

ヴェント「おっ邪魔しまーす。……へえ、ココがアンタの部屋か」

上条「どうだ? 朝に掃除しておいたから汚くは無いと思うけど」

ヴェント「そうね、一言で言えば……狭い」

上条「……もうちょっと気の利いた言葉なんかが欲しかったんですが」

ヴェント「お世辞なんて言ってもしょうがないでしょ? そんなコトはどうでもイイから飲み物でも出してくれないかなー」

上条「はぁ……お茶で良いよな?」

ヴェント「熱いのは嫌だから、冷たいのでお願い」

上条「分かりましたよーっと」

287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/26(月) 03:42:55.05 ID:ldWJrVs0o


上条「ほい、注文通り冷たいの」

ヴェント「悪いわね、……何コレ」

上条「何って、お茶だぞ? 氷で冷たくしたから心配するなって」

ヴェント「いや、色が緑って……ハーブでも入ってるワケ?」

上条「そっか、緑茶なんて見るのも飲むのも初めてって事か。それは元々緑色なんだよ」

ヴェント「緑茶、ねぇ……飲んでも大丈夫なのかしら?」

上条「大丈夫だって、とりあえず飲んでみろよ」

ヴェント「そこまで言うなら……んっ」

上条「どうだ?」

ヴェント「……意外とイケる、この苦味がイイ味出してて美味しいかも」

上条「そりゃ良かった。健康にも良いし、何より安いから助かってんだよ」

ヴェント「コレは広めるべきね、帰国する時に買っていこうかな」

上条「それも良いかもな。さて、そろそろ……」

ピンポーン

ヴェント「ん? 誰か来た?」

上条「電気屋から家電が届いたんだろ。はーい、今開けまーす」ガチャ

業者「お待たせしましたー」

ヴェント(来たか……不思議と緊張するモンだ。今度こそ壊さないようにしないと……)

288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/27(火) 20:08:04.73 ID:vCgJrsmso


ビアージオside カフェ


美琴「何でカフェに来ちゃったんだろう……」

木山「ふう……ここは涼しくて良いね」

ビアージオ「暑いのならばここで思う存分涼んでいけば良い。それから車を探しても遅くは無いだろう」

美琴「いや、本来の目的からは大きくずれてると思うんですけど」

木山「さて、何を飲もうか……」

美琴「……このままだとこの人に流されてしまいそうですね」

ビアージオ「それは間違いないな。……まったく、自分の厄介事に他人を巻き込むのはどうかと思うが」

美琴「そんな事言われても……こんな展開になるなんて思わなかったんですよ」

木山「そう気を落とすな、ひとまず何か飲んで落ち着こう。ここは私が出すから」

美琴「その前に車を探した方が良いんじゃないんですかね……?」

木山「お礼を先に渡すと思ってもらえば良い、とりあえず少し休憩だ」

美琴「……なんか納得いかないけど、とりあえずここはご馳走になります」

ビアージオ「コーヒーの種類もなかなか、他のメニューも充実しているな」

美琴「えーっと、私は……」プルル

美琴「あっ、電話……すいません、少し席を離れますね」

木山「注文はどうする? 言ってもらえれば私が頼んでおくが」

美琴「うーん……じゃあ、あなたと同じもので良いです」

木山「そうかい、では頼んでおこう」

美琴「お願いします。――もしもし?」

289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/27(火) 20:10:23.48 ID:vCgJrsmso


ビアージオ「さて、何を頼むか決めたか?」

木山「あぁ、そちらは決まったかな?」

ビアージオ「わたしはコーヒーを頼むつもりだ。決まったのならウェイターを呼ぶとするか」スッ

店員「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」

ビアージオ「ブレンドを一つ、ホットで頼むよ」

木山「それと、これを二つ頼む」

ビアージオ「……ん? 君はそれを注文するのか?」

木山「そのつもりだが……何か問題でも?」

ビアージオ「一応確認しておくが、それはあの少女の分も含まれているという事で間違いないな?」

木山「同じものを頼んでくれと言われたから、その通りにするつもりだが」

ビアージオ「そうか……(だが、それを頼んでも御坂美琴は喜ばないと思うが……)」

木山「……やはり、何か不都合でもあったか。それならもう一度考え直すしかないな」

ビアージオ(ここで考え直させるのも時間の無駄だな……それなら)

       「いや、考え直す必要は無いだろう。あの少女も満足するはずだ」

木山「それは良かった。年頃の娘さんの好みは私には分からないから、少し不安になってしまったよ」

店員「えーっと……お客様?」

ビアージオ「あ、あぁ……待たせてすまない。注文は以上だ」

店員「かしこまりました、少々お待ちください」

290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/27(火) 20:13:20.31 ID:vCgJrsmso


美琴「お待たせしましたー」

ビアージオ「構わないが、ずいぶん長い電話だったな」

美琴「友達と話すとつい……。私の分も注文しておいてくれましたか?」

木山「私と同じもので良いと言われたので、その通りにしておいたよ」

美琴「ありがとうございます、何を頼んだんですか?」

木山「それは……おっと、言う前に実物が来たようだ。自分の目で確認すると良い」

店員「失礼いたします、ブレンドコーヒーをご注文のお客様」

ビアージオ「わたしのだな。……イタリアのカフェとまではいかないが、良い香りだ」

店員「ええと、スープカレーセットをご注文のお客様」

美琴「へ? スープカレー?」

木山「ありがとう。私とその子の前に置いてくれ」

店員「かしこまりました。ご注文の品はお揃いでしょうか?」

ビアージオ「あぁ、もう下がってくれて構わんよ」

美琴「えっ? これで注文終わりって事は……」

ビアージオ「そのスープカレーは君の分だ、感謝して食せば良い」

美琴「こ、この暑い中スープカレーって……」

木山「丁度お昼も近いし良いと思ったのだが……気に入らなかったみたいだね」

美琴「えーっと……別にお昼は後でも良かったと言うか、ただ飲み物だけもらえれば良いと言うか……」

木山「それは悪い事をした……別の物を頼むとしよう」

美琴(そ、それは流石に……)

美琴「……大丈夫です、見てたらなんだか美味しそうに見えてきたので」

木山「そう言ってくれると注文した甲斐があったな。では、食べるとしよう」

美琴「そうですねー……いただきまーす……ご丁寧に飲み物まであったかい紅茶なんて……はぁ」

291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/27(火) 20:15:58.41 ID:vCgJrsmso


美琴「……意外とイケる」モグモグ

ビアージオ「しかし、時間は大丈夫なのか? 車を探していたという事はどこかに向かっていたという事だろう」

美琴「それもそうですね、やっぱりすぐに探しに行った方が」

木山「あぁ、それなら心配しなくて良い。あまり時間に縛られる仕事ではないからね」

美琴「何のお仕事をされてるんですか?」

木山「研究が仕事、つまりは学者だ」

美琴「へぇ、学者さんなんですか」

木山「大脳生理学、主にAIM拡散力場の剣研究をしていてね」

美琴「それって、能力者が無自覚に周囲に発散している微弱な力の事ですよね?」

木山「人間の五巻では感じ取れず、機械を使わなければ計測できない程の弱い力。私はその力を応用する研究をしているんだ」

美琴「って事は能力についてもお詳しいんですか?」

木山「何か知りたい事でも?」

美琴「えっと……どんな能力も、あっ……外部の人の前ではあんまり話さない方が良いですかね……?」

木山「外部? それはそちらの男性の事かい?」

美琴「ええ、そうです……って」

ビアージオ「……zzz」

木山「気持ちよさそうに眠っているようだが」

美琴「……みたいですね。あのー、ここで眠らない方が良いと思いますよー。もしもしー?」

ビアージオ「んう……あぁ、すまない。時差ボケなのか、なかなか眠れなくてな……」

木山「睡眠は十分取った方が良い、不十分だと日常生活に影響も出るだろうから」

美琴「……あなたが言える台詞ではないと思いますけど」

ビアージオ「君が学者だ、という所までは聞いたがそこからは眠ってしまったようだ。気分を害していなければ良いが」

木山「なに、気にしないでくれ。車を探してもらえる手伝いをしてくれる人に文句など言うはずもない」

美琴「とりあえず、さっさと食べて探しに行きますか」

292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/27(火) 20:17:13.30 ID:vCgJrsmso


美琴「ふう……ごちそうさまでした」

木山「喜んでもらえたようで何よりだ。さて……暑い日差しの下に出るのは億劫だが、探しに行くとするか」

ビアージオ「では気を付けてくれよ。御坂美琴、また会う事もあるだろう」

美琴「そうですねー、ではまた……ってビアージオさんも行くんですよ!」

ビアージオ「わたしは協力するとは一言も言っていない。ここで君の幸運を祈っているよ」

美琴「面倒臭いからって見捨てないでください! この人と二人きりなんて何が起こるか……」

ビアージオ「そうは言ってもな……」

店員「お待たせしました、アイスコーヒーのお客様」

ビアージオ「あぁ、ありがとう。という訳で、わたしはコーヒーを飲まなければいけないのだよ」

美琴「最初から手伝う気なかったんかい!」

店員「失礼しま……あぁっ!」ガシャン

美琴「あっ……」

店員「し、失礼いたしました! お客様、お怪我はありませんか!?」

木山「あぁ、大丈夫だ。ただ、服にはかかってしまったけどね」

店員「本当に申し訳ございません……今、タオルを」

木山「なに、そこまで気に思わなくても良い。それに濡れたのなら――」ヌギヌギ

美琴「なっ……!」

ビアージオ「……またか」

店員「ええっ!?」

木山「脱げば良いだけの話だろう?」

ビアージオ「そういう問題では無いと思うが」

木山「そうなのか? では、どうすれば良いのだろうか……」

美琴「ともかくシャツを着てください! そしてスカートを脱ごうとしない!」

木山「しかし、濡れた衣服を着続けるのは流石に」

美琴「良いから着ろ! そして脱がない! 分かりましたか!?」

ビアージオ「御坂美琴、あまり店の中では大声を出すものではないぞ」

美琴「なんでそんなに冷静なんですか……」

298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/28(水) 02:10:29.43 ID:37mh6iQZo


再び上条の部屋


上条「壊れた家電も回収してもらったし、新しいのも来た。さて……心の準備は出来たか?」

ヴェント「ええ……いよいよこの時が来た、私の明るい家電生活」

上条「その第一歩が今日だな、どれから始める?」

ヴェント「最初は……やっぱり、濯機を使いこなせるようになりたいトコね」

上条「洗濯機にこだわってるみたいだけど、何か理由でもあるのか?」

ヴェント「他のシスターの手伝いが出来るってのが大きな理由かな。それに……壊して迷惑をかけるようなコトはしたくないし」

上条「ちなみにどんな失敗をしたんだ?」

ヴェント「知らないわよ……普通につかっただけなんだけど、何故か壊れた」

上条「いや、壊れたじゃなくて壊したんだろ。それに、ヴェントの普通は普通じゃないからな」

ヴェント「それ、どういう意味か説明してもらえるかしらー?」

上条「お、怒るなって! ……このやり取りも何度目だろう」

ヴェント「知らないわよ、アンタが私を馬鹿にするからこうなるんでしょ。余計なコトしてないでさっさと教えなさい」

上条「分かった分かった。でも、今更だけど教えるっつってもなぁ……」

ヴェント「何か問題でもあるワケ?」

上条「いや、ぶっちゃけボタンを押すだけだし教えるも何も」

ヴェント「……それが出来ないから、こうして頼んでるんだよ」

上条「どうやって教えるか……とりあえず、実際にやってみるしかねーよな」

299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/28(水) 02:36:51.25 ID:37mh6iQZo


上条「んじゃ、始めるぞ。ここに洗濯機があります、ボタンさえ押せばいつでも洗濯が出来るようになっています」

ヴェント「ふんふん」

上条「で、ここが電源ボタン。漢字だけど……読めるか?」

ヴェント「『神の右席』にかかればコレ位は余裕ね、心配しなくても大丈夫」

上条「前から気になってたんだけど、カミノウセキって何なんだ?」

ヴェント「……それを知ったらただじゃ済まないけど、聞きたい?」

上条「……止めとく。とりあえず、ウセキパワーで漢字は大丈夫って事だな」

ヴェント「なんか引っ掛かる言い方だけど、そういうコトにしておくわ」

上条「とりあえず電源ボタンを押さなきゃ何も始まらないからな。よし、押してみろ」

ヴェント「えっ!?」

上条「えっ、じゃねーよ。ほら、押してみろって」

ヴェント「わ、私が?」

上条「……他に誰が居るのでございましょうか。ボタンを押すだけ、それだけだぞ?」

ヴェント「……分かった、やってやろうじゃない。……押すわよ」

上条「あぁ、押してくれ」

ヴェント「ほ、本当に押すわよ?」

上条「うん、押して良いぞ」

ヴェント「えっと……本当に押すけど」

上条「いいから早くしろっつーの」

ヴェント「本当の本当に」

上条「押して良いです、むしろ押してください、つーか押せ」

ヴェント「う、うう……すぅー、はぁー……」

上条(……押すまでにどれ位かかるんだろう)

301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/30(金) 19:37:13.98 ID:JUan1aPlo


五分後

ヴェント「……すぅー」

上条「なぁ……そろそろ良いか?」

ヴェント「……黙ってろ、私は今集中してるんだから」

上条「その集中ってヤツ、本当に必要なのか? 別にそんな事しなくても」

ヴェント「私が必要だって言ったら必要なの、これは確定事項だから。大人しく待ってなさい」

上条「いや、だから」

ヴェント「……すぅー……はぁー」

上条「……聞いてねえ」


また五分後

ヴェント「ふぅー……すぅー……」

上条(……まだかよ)


またまた五分後

ヴェント「……ふぅー、すうー 上条「おい」

ヴェント「……何? 私は今」

上条「集中してんのは分かったけどよ……いくらなんでも時間かかり過ぎだろうが!」

ヴェント「そんなコト無いわ、私の行動に間違いは無い。アンタがせっかちなだけね」

上条「ボタンを押すだけで十五分以上経った、それでも問題無いって言えんのか!?」

ヴェント「それは……でもでもー、緊張とかそういうのが……」

上条「もう何でも良いから押してくれよ……押すだけで良いんだ、やってみろって」

ヴェント「……分かった、押せばイイんでしょ、押せば」

上条「あ、あぁ……(なんか、嫌な予感がする……)」

ヴェント「そこまで言うなら押してやる…………見えた!」

上条「へっ? ……って、まさか!」

302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/30(金) 19:40:29.19 ID:JUan1aPlo


ヴェント「うおおおおお!」ブンッ

上条「ストーップ!!」ガシッ

ヴェント「な、何すんのよ! 放せ! 放せ!」

上条「放したらまたテメェは殴ろうとするだろうが!」

ヴェント「殴る!? ナニ言ってんのアンタ、私はボタンを押そうとしただけ!」

上条「だったらテメェの右手を見てみやがれ!」

ヴェント「右手? 右手はちゃんと握って……あ」

上条「……前と一緒だ、またそうやって握り拳で思いっきり殴ろうとしてたんだよ」

ヴェント「コレは……えーと……」

上条「とりあえず落ち着けって、出来ないのは分かったから。つーか機械オンチのアンタに最初からそこまで期待してねーって」

ヴェント「へぇ、またそうやって私を馬鹿にするワケだ……」

上条「えっ? いや、俺を事実を言ったまでで何もそこまでお怒りになるような事では……」

ヴェント「事実、ねぇ……今度と言う今度はその舐めた態度を改善してやろうかコラァ!」

上条「ひいっ!? 何度目か分かんないけど勘弁してくれ!」

ヴェント「諦めな、今から徹底的に教育してアゲル。とりあえずこの手を放せ!」

上条「嫌だ! 放したら絶対殴られる!」

ヴェント「分かってるじゃない、大人しくしてろ!」

上条「絶対嫌だっつーの! 意地でも抵抗してや……ああっ!?」グラッ

ヴェント「えっ!? うあっ……」バタン

303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/09/30(金) 19:42:08.46 ID:JUan1aPlo


上条「痛た……ったく、お前が暴れるからこんな……いいっ!?」

ヴェント「…………」

上条(な、何故こんな事に!? これじゃあどっからどう見ても俺が……)

ヴェント「……私を押し倒すとは、本当にイイ度胸してるわね」

上条「ち、違う! そっちが暴れるからこうなっちまったんじゃねえか!」

ヴェント「……まっ、別に良いケド。私が悪かったのは間違いないし」

上条「えっ?」

ヴェント「何よ、自分の非を認めただけ。いけなかったかしら?」

上条「いや、そんなに素直に認めるとは思わなかったから……ちょっと拍子抜けしたと言うか」

ヴェント「私にだって常識位ある。それにアンタには世話になるんだから、迷惑かけたコトは謝るわ」

上条「あ、あぁ……俺の方こそ酷い言い方して悪かった。今度は二人で頑張ってみようぜ」

ヴェント「じゃあ、キチンと教えてちょうだい。……で、」

上条「ん? どうかしたか?」

ヴェント「……いつまで私の上に居るつもりなのカナー?」

上条「あっ……わ、悪い! 今退くから!」

ヴェント「よいしょっと……。アンタ、もしかして……押し倒すのが目的だったワケ?

上条「はぁ!? んな訳ねーだろうが!」

ヴェント「そういうのが狙いだったら、早めに考え直した方が身のためね。もし変なコトをしようとしたら」ゴトッ

上条「……その物騒な武器ははどこから出てきたのでございましょうか」

ヴェント「素敵なハンマーでしょう? ミンチにならないように気を付けなさい」

上条「……肝に銘じておきます」

315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:40:28.04 ID:hU7nxLBWo


上条「気を取り直して、再び家電に挑もうと思う」

ヴェント「えー……ちょっと休憩したいんだけど」

上条「まだ電源すら入れられていないのに、休憩なんてする訳ねーだろうが」

ヴェント「仕方ないなー……それじゃまずは心の準備から」

上条「それも無し、また時間かかるだけだろ。良いから何も考えず押してみろって」

ヴェント「……分かった、そこまで言うなら押してやる!」ブンッ

上条「はいストーップ」ガシッ

ヴェント「ぐっ……一応聞くけど、どうして止めたのかしら?」

上条「右手がグー、そして目を何故か閉じている。それで本当に押せると思ってんのか?」

ヴェント「それは……」

上条「ボタンを押すだけだぞ? 目を閉じる理由なんて無い、拳を握る必要も無いんだって」

ヴェント「……でもでもー、」

上条「そもそも、どうしてそんなに家電とか機械が苦手なんだ? そこまで行くと流石におかしいだろ?」

ヴェント「…………」

上条「……あれ? 急に黙ってどうしたんだ?」

ヴェント「……何だった良いでしょ。アンタには関係ないんだから」

上条「それくらい教えてくれよ。それに関係なくは無いんだ」

ヴェント「――――良いから黙ってろ!」

上条「っ!? ヴェ、ヴェント……?」

ヴェント「あっ…………悪いコトしたわ、謝る」

上条「お、おう……俺の方こそ悪かったな」

ヴェント「…………」

上条(……なんか、触れちゃいけない所だったのかな)

316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:41:04.73 ID:hU7nxLBWo


上条「……分かった、とりあえず押すだけ押してみよう。ちょっと手を出せ」

ヴェント「手? 別に良いけど。ほら、コレで良い?」

上条「んじゃ、ちょっと失礼」ギュッ

ヴェント「なっ……急に手を握ってナニするつもり?」

上条「先に言っとくけど、変な事をするつもりは一切ないからな」

ヴェント「……本当かしら、今までが今までだから信用できないかも」

上条「無理やり押させるためだ、少しの間だけ我慢してくれ。で、まずはこのまま洗濯機に手を近づける」

ヴェント「う、うう……」

上条「ただ近づけてるだけなんだが……ともかく次、その硬く閉じた手を開いてくれ」

ヴェント「手を開けば良いんでしょ、それ位……あ、あれ?」

上条「拳になっちまうのは多分、緊張のせいだろ。体をリラックスさせて、力を抜く。出来るか?」

ヴェント「分かった……ふぅー……すぅー……」

上条「そうそう、良い感じに手の力が抜けてきたな。そしたら人差し指だけ伸ばしてくれ」

ヴェント「……はいっ、コレで良い?」

上条「それで大丈夫だ。……よし、そのままにしてろよ」グイッ

ヴェント(私の指が……洗濯機のボタンに近づいてる)

上条「――それっ」ピッ

ヴェント「あっ……押せた」

上条「これで電源が入った、そのまま行くぞ。こっちのボタンを押せば」ピッ

ヴェント「水が出た……! コレってもしかして、」

上条「あぁ、洗濯スタートって事だな。ヴェントが押してこうなったんだよ」

317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:41:54.35 ID:hU7nxLBWo


ヴェント「私の手で、洗濯機が動いた……」

上条「どうだ、簡単だろ? これでヴェントも家電が使えるって事が証明――」

ヴェント「や、やった! 私にも出来た!」ダキッ

上条(なっ……何故に抱き着く!?)

ヴェント「コレで私も家電が使えるようになる! もう壊してテッラに呆れられたりフィアンマに馬鹿にされなくて済むんだ!」

上条(お、おおっ!? 慎ましやかだけどそれなりに柔らか味のある何かが、何かが当たってる!?)

ヴェント「アンタのおかげね、感謝するわ! ……って、どうして困ったような顔してるワケ?」

上条「えーっと……その、今の体勢を良く考えて頂ければ分かると思うんですが……」

ヴェント「体勢……ハッ、何どさくさに紛れて抱き着いてんだコラ!」ゲシッ

上条「痛い! 痛いって!」

ヴェント「やっぱりアンタ、私にナニかしようと思ってるみたいじゃねえか! この、この!」ガシッボカッ

上条「ち、違う! 抱き着いてきたのはそっちだから!」

ヴェント「えっ? 本当に?」

上条「本当だって……さっきのハンマー見たばかりでそんな事するかっつーの……」

ヴェント「それもそうか……誤解してたみたいね」

上条「その誤解のせいで酷い目に遭ったけどな……痛え……」

318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:42:21.87 ID:hU7nxLBWo


上条「ともかく、ヴェントも家電が動かせるって事は分かったな」

ヴェント「コレは大きな進歩ね、アンタに頼んで良かった」

上条(……まっ、ボタンを押すだけなんだから子供でも出来るんだけど)

ヴェント「なんか失礼なコト考えてない?」

上条「気のせいだと思いますよ。じゃ、次は一人で押せるようになってもらうぞ」

ヴェント「ひ、一人で……?」

上条「押す度に誰かに手を握って貰わねーと駄目、ってのも変だろ? 大丈夫だって、すぐに慣れるさ」

ヴェント「だと良いんだけど……アンタに任せるから、やり方を教えて」

上条「うーん……一回押せた訳だし、とりあえず一人で頑張ってみてくれ」

ヴェント「無茶なコト言うじゃない……分かった、やってみる」

上条「あぁ、ゆっくりで良いからな。でも、心の準備ってのは無しで頼む」

ヴェント「よし……まずは、力を抜いて」

上条「そうそう、緊張しないで、リラックスして」

ヴェント「ボタンの位置を確認したら……押す!」スカッ

     「あ、あれ? おっかしいな……」

上条「……忘れてた、もう一つ克服しなきゃいけない事があったな」

ヴェント「何それ?」

上条「確認した所までは目が開いてるが、押そうとした時にはもう目が閉じられてるんだよ。多分、無意識なんだろうけど」

ヴェント「た、確かに……今は何も見えていない!」

319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:42:55.01 ID:hU7nxLBWo


上条「どうして目を閉じちまうのかはこの際どうでも良い、それよりも目を開けられるようにならねーと」

ヴェント「……それが出来たら苦労しないわ」

上条「だよなー。目を開けるには……水泳の練習みたいにやってみるか?」

ヴェント「水泳? どういうコト?」

上条「家電に触れながら少しずつ目を開けていく、水の中に入ってから目を少しずつ開けるみたいにさ」

ヴェント「良く分かんないけど、アンタの言う通りにするしかないか」

上条「じゃあ、家電に触る所から始めるか。……って事はまた手を握ってやるしかねーよな」

ヴェント「そうなるわね、ハイ。変なコトは考えないように」

上条「何度も言ってるけど、本当にそんな事考えてねえからな!」

ヴェント「否定するトコが怪しいと思うんだけど、『ツンデレ』の言うコトは信用できないし」

上条「……この話は後でキッチリしよう、正しい日本文化を教える必要があるみて―だからな」

ヴェント「ゴチャゴチャ言ってないで早くしてもらえる?」

上条「そっちから言い始めた事なのに、どうして俺が悪いみたいになってんだろう……」

320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:43:30.40 ID:hU7nxLBWo


上条「さっきみたいにヴェントの手を洗濯機のボタンまで運んだ、ここまでは良いな?」

ヴェント「何とか大丈夫……で、ここからどうするワケ?」

上条「俺の手を……こうやって、放す。ヴェントはそのままだぞ」

ヴェント「こ、このまま? 放したら駄目ってコト?」

上条「あぁ、そして相変わらず目を閉じたままだな。ここからが練習だ、ゆっくり目を開けてみろ」

ヴェント「急に言われても……ちょっと時間かかるかも」

上条「焦んなくて良いって、自分のペースで良いからさ」

ヴェント「……なかなか開けられないってのが自分でも腹立たしい」

上条「何で目を閉じちまうんだろうな……泳ぐのも苦手だったりするのか?」

ヴェント「そんなコトは無いけど……コレは難しい」

上条「うーん……洗濯機を使った事はあるんだっけか」

ヴェント「前に使おうとした、でも変なトコを押して壊して……」

上条「……ん? って事は、前は普通に触れたんじゃねーの?」

ヴェント「確かに……どうしてこうなったんだろう」

上条「前に壊したのが記憶に残ってそのまま苦手意識しちまうとか、軽いトラウマ……とか?」

ヴェント「トラウマ、ねぇ……そんなコトでトラウマを作るのも情けないなー」

上条「そう言うなって、どうだ? 開けられそうか?」

ヴェント「……駄目ね、ちょっと無理みたい」

上条「そっか、じゃあ一回手を放して良いぞ。あんまり頑張り過ぎても辛くなって悪化しちまうかもしれねーからな」

ヴェント「分かった、……はぁ、悪いわね」

上条「気にすんなって、押せただけ進歩してるさ」

ヴェント「進歩か、だと良いケド」

321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:44:04.60 ID:hU7nxLBWo


上条「とりあえず、今日はこの辺にしとくか?」

ヴェント「そうさせてもらうと嬉しいかな、ちょっと疲れた……」

上条「時間は……もう五時か」

ヴェント「そろそろ帰らないといけないわね」

上条「帰るんだったらタクシーを……あっ」

ヴェント「ん? 何かあった?」

上条「一応聞いておくけど、タクシーに乗って帰るってのは……」

ヴェント「絶対イヤ」

上条「ですよねー……でも、それならどうやって帰るんだよ」

ヴェント「決まってるじゃない。ほら、アレよ、アレ」

上条「アレ、ってまさか……アレか?」

ヴェント「せっかく買ったんだ、使わないと意味ないでしょ?」

上条「いや、それはそうなんだけど……個人的にはもう勘弁してもらいたいと言うか」

ヴェント「へぇ、私に歩いて帰れって言いたいワケ?」

上条「……何故、壁に立てかけたハンマーに手を伸ばすのでございましょうか」

ヴェント「それ位察しなさい。さて、どうしたらイイかは分かる?」

上条「……分かったよ、漕げば良いんだろ漕げば」

322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:45:05.69 ID:hU7nxLBWo


とある駐車場


ビアージオ「暑い中を歩き回り……ようやく見つかったか」

木山「いや、助かったよ。一人では見つけられなかったかもしれないからね」

美琴「いえいえ、今度は気を付けてくださいね」

木山「あぁ、それでは失礼するよ」


美琴「さようならー。……それにしても、見つかって良かったですね」

ビアージオ「まったく……御坂美琴、わたしも暇では無いのだよ」

美琴「そう言わないでくださいよ。それに、どうせ寝るだけなんじゃないですか?」

ビアージオ「失礼な言い方だな。……まぁ、間違いではないが」

美琴「やっぱり……。休むのは明日からにしてください、今日はしょうがないって事で」

ビアージオ「仕方が無いな、ただし今日だけだ。わたしは静かに過ごしたい、何事も無いのが理想なのでな」

美琴「分かりましたってば。……さて、そろそろ帰らないと」

ビアージオ「もうこんな時間か……わたしも帰るとするよ」

美琴「気を付けて帰ってくださいね。ビアージオさんなら大丈夫だとは思いますけど」

ビアージオ「これ以上厄介事には巻き込まれたくないからな……すぐに帰った方が良さそうだ」

美琴「そんなに心配しなくても……じゃ、今日はどうもありがとうございました」

ビアージオ「あぁ、それでは失礼するよ」

323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/18(火) 18:46:51.60 ID:hU7nxLBWo


ビアージオ(……明日こそは平穏な日を迎えられるよう祈っておくか。それにしても、ヴェントの方は大丈夫であろうか)


通行人「……ねぇ、アレって何かしら」

通行人2「自転車だろうけど……あまり見ない形ね」

通行人「二人乗りっていうのかな?」

通行人2「カップルとかそういうのなのかもね」

通行人「でも、アレは……なんか面白いよ」

通行人2「後ろの女の人の服装も独特だし、みんな見てるね」


ビアージオ(いったい何の事……はぁ?)


上条「やっぱり人の目が気になるな……」キコキコ

ヴェント「……ただ黙って漕いでれば良いだけ、気にしないコトね」キコキコ

上条「多分だけど……ヴェントのその黄色い何と言ったら良いか分かんねー服も原因の一つだと思うんだが」

ヴェント「何? この服に文句でもあるワケ?」

上条「文句っつーか、指摘? ともかく、普通の服にしたらまだマシかもしんねーぞ」

ヴェント「悪いけど、この服だけは譲れないわ。コレを否定するんだったら容赦しないケド?」

上条「……何そのポリシー。はぁ……せめて普通にしてくれればなー」

ヴェント「うるさいわね、『前方のヴェント』は常に前進あるのみ。今はホテルまで向かうだけで良いの、分かった?」

上条「分かんないけど分かりました……」キコキコ


ビアージオ(……何だ、アレは)

328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/26(水) 20:50:34.32 ID:4pao/VrSo


上条「あれ、あそこに居るのは……」

ヴェント「ビアージオね、あんなトコで何やってんのかしら? おーい、ビアージオー」

ビアージオ「……ヴェント、何をしている」

ヴェント「見て分からない? 自転車を漕いでるの」

ビアージオ「それは見て分かる。わたしが聞いているのは、どうしてその様な特殊な自転車に乗っているかという事だ」

ヴェント「それは……色々あったのよ」

ビアージオ「そもそも、何故自転車に乗っている?」

上条「ヴェントがタクシーに乗りたくねえってワガママ言うから仕方なくこうしてんだよ」

ヴェント「何それ、まるで私が悪いみたいに言わないで欲しいんだけど?」

上条「百パーそっちが悪いだろうが。……自転車の形については、俺にも良く分からない」

ビアージオ「……まぁいい。それよりも本来の目的に関してだが、少しは進歩があったか?」

上条「成果はあったちゃあったな。進歩って言うには微妙なところだけど」

ビアージオ「ほう、では聞かせてもらおうか。ヴェント、今日は何を学んだのだ?」

ヴェント「聞きなさい、今日は洗濯機のスイッチを押せたのよ」

ビアージオ「……スイッチ、か。なるほど、他には?」

ヴェント「それだけよ」

ビアージオ「それだけ? ……おい、少年」

上条「いや、これでも精一杯頑張ったんだって……アンタなら分かってくれるだろ?」

ビアージオ「……難航しているようだな」

上条「……あぁ」

329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/26(水) 20:51:40.37 ID:4pao/VrSo


ビアージオ「まぁ、最初からすべてを得られる訳も無いか。最終的な目標を達成できればそれで良い」

上条「そういう事、明日はきっと色々出来るようになると思う。……多分」

ヴェント「ん? 明日の話?」

上条「明日は一人で電源入れられるようになると良いなって話」

ヴェント「楽勝ね、この私に不可能って言葉は無い」

ビアージオ「お前の口癖は『否定形はない』、では無かったか?」

ヴェント「そんなの気分よ、気分。ともかく明日は今日以上に進歩出来るはずだから」

上条「……その自信はどこから来るんだ?」

ヴェント「だから何度も言ってるでしょ、私は『前方のヴェント』」

上条「常に前向きポジティブ思考、ってか? だったらもっと上手く行って欲しいんだけどな」

ビアージオ「それも含めて明日考えれば良いだろう。上条当麻、明日もよろしく頼むぞ」

上条「あぁ、明日はもっと良い報告が出来るように頑張るよ」

ビアージオ「それは頼もしい。では、改めてホテルに向かうとするか」

ヴェント「ホテルまでここからどれ位あるか分かる?」

ビアージオ「ここからなら……少し待て、今地図で確認する」

上条「道はあってたのか、適当に進んでただけかと思ってたよ」

ヴェント「何言ってんの、私は『前方のヴェント』だから迷うワケ無いでしょう?」

上条「何でも前方のヴェントって言っとけば良いみたいなノリだな……」

330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/26(水) 20:54:14.67 ID:4pao/VrSo


ビアージオ「ここからホテルまでは三キロと言った所だな、歩くのは……遠慮させてもらうか」

上条「丁度いいや、ヴェントを連れて帰ってくれよ。別にそこまで俺が行かなくても良いだろ?」

ビアージオ「いや、良く考えてみろ。わたしは歩かないと言ったのだよ」

上条「……ヴェント、タクシーに乗れ」

ヴェント「だからイヤだって何度言えば分かんのよ」

上条「それだと自転車でそこまで行く事になる、つまり俺も行かなくちゃいけなくなるだろうが」

ヴェント「良いじゃない、それ位」

上条「早く帰らせてくれよ……そうだ! この自転車にビアージオと一緒に……ああっ!」

ヴェント「アンタ、いつの間にタクシーに……」

ビアージオ「運転手、――――というホテルまで頼む。ではヴェント、また後でな」

上条「待て! ヴェントと自転車に乗ってくれ、そしてそのタクシーには俺が乗って帰るから!」

ビアージオ「それだと明日、君の家に行く際はわたしが漕がなくてはならないだろう? それに、」

ヴェント「それに?」

ビアージオ「自転車を漕ぐとか面倒臭いだろうが。先に向かわせてもらうよ、出発してくれ」

上条「まっ、待ちやがれ! ……って何のためらいもなく行きやがった。という事は、」

ヴェント「ほら、さっさと乗りなさい。急がないと暗くなるでしょ」

上条「……頑張れ、俺」

331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/26(水) 21:12:32.87 ID:4pao/VrSo

それから十数分後 第七学区のとあるホテル

上条「はぁ……はぁ……やっと着いた」

ヴェント「だらしないわね、コレ位でそんなになるとか」

上条「ずっと漕ぎっぱだったから仕方ねーだろ……つーかお前は疲れてないのか?」

ヴェント「こんなモンで私が疲れるワケ無いじゃない。何故なら私は『前方のヴェント』だから」

上条「それにツッコむのも面倒臭くなってきたな……ともかく、これでやっと帰れる」

ビアージオ「着いたか、思ったよりも早かったな」

上条「……一人だけ楽しやがって」

ビアージオ「人聞きの悪い事を言うな、わたしはやりたい様にやっているだけだ」

ヴェント「要は面倒だから楽したい、ってコトでしょ」

ビアージオ「分かっているではないか。少年、ご苦労だったな」

上条「とってつけたように言われてもなぁ……まぁいい、ともかく今日はこれで帰らせてもらうぞ」

ヴェント「明日もキチンと迎えに来なさいよ、分かった?」

上条「へいへい。……一人で歩いて来れば良いのに」

ヴェント「ボソッと聞こえた気がするケド、何か言った?」

上条「何も言ってねーよ。じゃ、またな」

ビアージオ「あぁ、道中の無事を祈るよ」

上条「心の底からそう思ってくれてたらこっちも気持ちよく帰れるんだけどな」

ビアージオ「一応というヤツだ。社交辞令、と日本では言うのだろう?」

上条「そんな身もふたもない事を……」

332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/26(水) 23:35:13.82 ID:XD/jCtBvo


ヴェント「じゃ、私達もそろそろ中に入らないといけないから行くわ」

上条「あぁ、またな」


上条「……さて、帰るとするか。…………あれ、ちょっと待てよ?」

   (もしかして、俺はこの自転車を一人で漕がなきゃいけねーのか? 結構あった道のりをこの自転車で?)

※タンデム自転車を一人で漕ぐには倍位の労力が必要らしい。

   (いや、流石にそんな馬鹿げた事をしなくても良いよな……適当にこの辺に放置しておけば良いだろ)

   「そうと決まればどこか適当にその辺にでも……ここでいっか」

   (さーて、後はタクシーにでも乗って……ん? 財布が……無い!?)

   「あー! どうせ使わねーだろうって思って置いてきちまったんじゃねえか! ……歩くしかねえか」

警備ロボ「――放置自転車を発見。持ち主が居る場合はただちにこの場から動かしてください」

上条「えっ? まさか……置いてっちゃダメ的な感じなのか……?」

警備ロボ「居ない場合は強制的に――」

上条「ま、待った! すいません、ここに居ます! 今すぐ動かしますから!」

   (あぶねー……危うく撤去されるとこだった。しかし、駐輪場も近くに無さそうだな……って事は、)


上条「……不幸だ」キコキコ

333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/27(木) 00:06:14.17 ID:FyUcfqd3o


ホテル内のくつろげるいい感じのところ

ビアージオ「あの少年、上条当麻はどうだ?」

ヴェント「問題は無いわ。まっ、他にアテがあるワケでもないし頼りにするしかないってのが正直なトコね」

ビアージオ「あの少年はヴェントに気があるようだ。それならば印象を悪くするような事はしないであろう」

ヴェント「……変なコトはしてくるケド」

ビアージオ「ほう、意外と積極的なのか。日本の男は奥手だと聞いたが、どうやら違っていたみたいだな」

ヴェント「……今度変なコトしたら酷い目に遭わせてやろうかしら」

ビアージオ「度が過ぎて問題にならないようにな。何度も言うがこれ以上は何も起こさずに帰国する、分かったか?」

ヴェント「ハッ、問題を先に起こしたのはアンタでしょ? そっちこそ、今日は何してたワケ?」

ビアージオ「わたしの方は……御坂美琴に会った」

ヴェント「へぇ、元気だった?」

ビアージオ「あぁ、そして一緒に車を探せと言われてな……面倒だったが手伝わされたのだよ」

ヴェント「あの子が車……?」

ビアージオ「いや、そうではない。確か……木山春生、だったか。その女が車の持ち主だ」

ヴェント「つかりは人助けってコトか。面倒臭いとか言ってやりそうもないのに、良く手伝う気になったわね」

ビアージオ「まったくだ……次は何を言われても逃げる事にするか」

ヴェント「……アンタ、本当に司教なの?」

ビアージオ「どうとでも思えば良い。……そろそろ休むとするか」

ヴェント「もう寝るの? アンタはやるコトも無いから、十分な睡眠が必要なワケでもないでしょうに」

ビアージオ「眠りたいから眠るのだよ。先に部屋に戻らせてもらうぞ」

ヴェント「そのままずっと眠っちまって起きなければイイのに」

ビアージオ「帰るまでなら良い、よろこんで眠らせてもらおう。では、また」

334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/27(木) 04:44:15.67 ID:v1sJuqHXo


ビアージオの部屋

ビアージオ(そういえば、教皇様にまだ報告が出来ていなかったな。今日こそは)ピポパ

アニェーゼ『もしもし?』

ビアージオ「その声は……シスター・アニェーゼか」

アニェーゼ『ええ、そっちは……ビショップ・ビアージオですか』

ビアージオ「その通りだ、すまないが教皇様と連絡が取りたい。代わって頂く事は出来るだろうか?」

アニェーゼ『ちょい待っててください……。あー、ダメみてえですね。お忙しいようです』

ビアージオ「またか……いったい何をなさっているのか」

アニェーゼ『さぁ……ちょっと私には分かんないので。他の方にでも代わりましょうか?』

ビアージオ「そうだな……周りには誰が居る?」

アニェーゼ『今は、えっと……フィアンマ様がダルそうにあくびなんかしちまいながら近くを歩いてますね』

ビアージオ「フィアンマか……それならば代わらなくても良い、手間を掛けさせて悪かった」

アニェーゼ『いえいえ。……なんかフィアンマ様が「ギリシャが大変だ」、とか言ってますが』

ビアージオ「少なからず影響はあるだろうからな……。気にせずとも他の誰かが動くであろうが」

アニェーゼ『まっ、別にどうでも良いんですがね。ところで、そっちはどんな感じですか?』

ビアージオ「今の所は楽しませてもらっている、変わりなく従事じている君達には少し悪い気もするがな」

アニェーゼ『せっかくの機会なんですから、せいぜい楽しんじまってください。こっちはこっちで上手くやってますから』

ビアージオ「そう言ってもらえると助かるよ。では、また改めて連絡するとでもするか」

アニェーゼ『こんな事言う必要も無いですけど、学園都市ってトコは結構危ないみてえなんで気を付けてくださいね』

ビアージオ「承知の上だ、だがその忠告は心に留めておこう。切るぞ」プツッ


335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/10/27(木) 05:05:33.56 ID:v1sJuqHXo


ヴェントの部屋


ヴェント(はー、疲れた……今日の感じからして、あの男に任せとけば良さそうね)

     (後二、三日で使いこなせるようになったらイイんだけど。そうすれば街で色々出来るだろうし)

     (お土産も買わないといけないか、食べ物が多い方が……まぁ、今から考えても仕方ない、その時考えよう)

     (それにしてもあの男の手、確か握ってた時は左手だったか。そっちは問題ないんだけど……)
  
     (なーんか引っ掛かる……何だろう、この変な感じ。気にする程でもない、と言ったらそこまでか)

     (ともかく、明日はきっと家電を使いこなす私が居るはず……よし、寝よう)

     「おやすみなさーい……」


     三日目 終了

342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/11/05(土) 22:35:59.04 ID:uJxyGfhMo
一方その頃バチカンでは

テッラ「――出来ましたねー」

オルソラ「ええ、これはなかなかの出来だと思うのでございますが」

テッラ「私も同感ですねー。これで美味しい料理をお願いしますねー」

オルソラ「もちろんなのでございますよ。夕食をお楽しみにしていただきたいのでございます」

アックア「テッラ、何をやっているのであるか?」

テッラ「アックアですか、見て分かりませんかねー?」

アックア「それは見て分かるが……大量のパスタと、パンだと言うのは分かる」

テッラ「余った小麦粉を思い切って使ってみたところ、つい作り過ぎてしまいまして」

アックア「それにしては大量であるな……これ程の量を消費できるものなのか?」

テッラ「人は多いので問題ないでしょう。食べて力を付ける必要のある騎士様ならば、これ位は食べられると思いますがねー」

アックア「私は傭兵だと言っただろうが。……腐らせる事だけは避けてもらいたいものである」

オルソラ「私が腕によりをかけてお食事を作りますので、アックア様もたくさん食べて欲しいのでございますよ」

アックア「……腹を減らしておく必要があるか、少し運動をしてくる」

テッラ「これは頼もしいですねー、十人前は食べて頂きたいものです」

アックア「それならば貴様は二十人前を腹の中に入れろ」

テッラ「それは無理と言うものですねー」

343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/11/05(土) 22:37:55.49 ID:uJxyGfhMo

四日目 朝 上条の部屋


上条(ぐっ……痛え……この痛みはまさか)

   「やっぱり筋肉痛かよ……そりゃずっと漕いでたらそうなるよな……」

   (タクシーにすんなり乗ってくれたら良いだろうが……ったく、ともかく行くしかねーか)

   (遅れたら文句言われるのは間違いなし、口答えしようものなら……ハンマーが待ってる)

   (……まぁ、悪いヤツでも無いし人助けと思えば……軽く命がけなのがアレだけど)

   (確か昨日は……結局一時間位かかった。って事はもうちょい時間があるな)

   「テレビでも見てから行くか」ピッ

『最近起きている爆発事件に関してですが、どうやら――』

プルル

上条「ん? 電話か……もしもし?」

小萌『おはようなのですよ、上条ちゃん。良かった、起きてたのですねー』

上条「小萌先生? 何か用でも?」

小萌『はい、今は上条ちゃんは補習先延ばしって事になっていますが、どうせ上条ちゃんの事だから
    「やったー、勉強から解放されたー!」、とか調子に乗りまくっているのでは、と先生は気付いたのですよ』

上条「随分な言いようですね……あながち間違いでもないけど」

小萌『そこで、先生は学校に来なくても勉強できるようプリントを作ったのですー。なので今から取りに来てほしいのですよー』

上条「えー……取りに行かなきゃダメですか?」

小萌『駄目なのです、今すぐ来てくださいねー』プツッ

上条「…………はぁ、行くか」

344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/11/05(土) 22:38:41.44 ID:uJxyGfhMo
第七学区のとあるホテル ホテル内のレストラン


ヴェント「驚いた、ちゃんと起きてるじゃない」

ビアージオ「朝の挨拶にしてはずいぶんな言い方だな。わたしはそこまで怠惰では無い」

ヴェント「どの口が言ってんだか。アンタほど怠惰な人間も居ないでしょうに」

ビアージオ「またその様な事を……朝から口論をする気は無い、さっさと朝食を済ませてはどうだ」

ヴェント「それもそうか。じゃ、いっただきまーす」

ビアージオ「……ん? ヴェント、箸を使えるのか?」

ヴェント「そうよ、あの男に教えてもらってね。慣れたら意外と便利よね、コレ」

ビアージオ「その調子で本来の目的も達成できれば良いのだが……」

ヴェント「うっさいわね、今日の夜にアンタを驚かせてやる」

ビアージオ「どうだかな、悪い意味では無い事を祈っているぞ」

ヴェント「……ったく。で、アンタは今日は何して過ごすのよ。まさか本当に寝て過ごすとか言わないでしょうね?」

ビアージオ「それも良いが、今日はこの都市の視察を真剣に行うつもりだ」

ヴェント「……信じられないわね、アンタが真剣とか胡散臭すぎて笑っちまいそう」

ビアージオ「どうとでも言え。この都市でも神学を学んでいる者がいると聞いてな、許されればそこを視察しようと思っている」

ヴェント「へぇ、ちょっと見直した。司教ってだけはあるじゃない」

ビアージオ「もっと褒めても良いのだぞ。……まぁ、得るものが無いと判断した時はすぐさまホテルに戻り休息を取るつもりだが」

ヴェント「チラって見て帰るとか普通にやりそうね、アンタ」

ビアージオ「価値のない物を見続けても意味が無いだろう? ……さて、そろそろ時間か」

ヴェント「そうね、食べ終わったら外に出てみるか」

345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/11/05(土) 23:25:59.49 ID:uJxyGfhMo
ホテルの外 玄関前


ヴェント「そろそろ十時だけど、まだ来ていないみたい」

ビアージオ「待ち遠しいか?」

ヴェント「ある意味ね。私の目的の鍵たる人物なのだから、さっさと現れてもらいたいわ」

ビアージオ「あの少年は約束を破るような人物には見えなかった、きっともうすぐ来るだろうよ」

ヴェント「だったらもっと早く……ん?」


上条「はぁ……はぁ……あと、少し……」キコキコ


ビアージオ「来たか、それにしても……」

ヴェント「どうしてあんなに汗だくなのかしら……」


上条「ぜい……ぜい……やっと、着い、た……」バタッ

ヴェント「ちょ、ちょっと……アンタ、どうしたのよ?」

ビアージオ「上条当麻……何があった? そこまで汗だくになっているのは流石におかしいと思うが……」

上条「はぁ……ごっほごっほ……ま、待ってくれ……少し息を整えさせてくれ……」


※タンデム自転車を一人で漕ぐには倍位の労力が必要らしい。

355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:36:15.20 ID:fzUxdgWto


上条「はぁ……はぁ……ふうー……悪い、待たせちまったな」

ヴェント「別にいいけど、自転車漕ぐくらいでどうしてそんなコトになってんのか気になるわね」

上条「この自転車……一人で漕ぐと物凄くキツイ……しかも、昨日も漕いだから筋肉痛だったり、
    学校に呼び出されたから遠回りになったり……ともかくもうダメだ……」

ビアージオ「そんな事になるのならば、自転車に乗らなければ良いだけだと思うのだが」

上条「俺もそうしてーよ……ヴェントがタクシーに乗ってくれればなぁ」

ヴェント「……それだと私が悪いみたいに聞こえるわね」

上条「あぁ、そう言ったつもりだ。……頼むよ、タクシーに乗ってくれないか?」

ヴェント「絶対イヤ」

上条「……って言うと思ったよ。なぁ、アンタからもヴェントに言ってやってくんねえか?」

ビアージオ「ヴェント、タクシーに乗れ」

ヴェント「イヤって言ってるじゃない」

ビアージオ「すまない、少年。わたしでは無理だった」

上条「いや、もうちょっと頑張ってくれよ!? 俺では無理だし、アンタだけが頼りなんだよ!」

ビアージオ「……面倒だ、諦めてヴェントの好きなようにさせてやってくれ」

上条「だからこのままだと俺の脚がボロボロになっちまうんだって!」

ビアージオ「仕方ないな……今日は我慢してもらうぞ。その代わり、明日からはその問題を解消しよう」

上条「本当だな……? また面倒臭いとか言うなよ?」

ビアージオ「その約束は出来ない。なぜなら、今この時点で物凄く面倒だからな」

上条「……もうやだ」

356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:38:26.77 ID:fzUxdgWto


ヴェント「じゃ、行ってくるわー」

ビアージオ「あぁ、気を付けてな。少年、今日も頼んだぞ」

上条「……本当にどうにかしてくれんだろうな?」

ビアージオ「約束は守る、面倒で無ければな」

上条「うわ、全然信用できねえ……」

ヴェント「ほら、さっさと行くわよ。今日中には家電を使いこなせるようになるんだから」

上条「……悪いけど、それは百パー無理だと思う」

ヴェント「あぁ?」

上条「う、嘘だって……うん、きっと使えるようになるさ。多分、もしかしたら、おそらく」

ヴェント「なーんか引っ掛かる言い方だけど、ともかく出発しましょう」

上条「分かったよ。……はぁ、この道をまた往復すんのか」

ヴェント「健康的でイイじゃない、運動不足よりはよっぽどマシね。機会なんてモンに身を預けるなんて怠惰な人間の愚かな結末よ」

上条「今は怠惰になってもお釣りが返ってくる程漕いでると思うんだけどな……」

ビアージオ「何を話し続けているのか知らないが、さっさと行った方が良いと思うぞ。これ以上暑くなっては流石にな」

上条「それもそうか……よし、行くぞヴェント」

ヴェント「ちゃんと漕ぎなさいよ、サボったら後で痛い目見てもらうから」

上条「……痛い目って、想像したくねえな」

357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:39:11.23 ID:fzUxdgWto


上条の部屋


上条「ぜえ……はあ……なんとか着いた……」

ヴェント「情けないわね、コレ位で音を上げるなんて」

上条(……ヴェントがタクシーに乗ってくれれば全部解決するのに)

ヴェント「なんか言いたそうな目してるけど、言いたいコトがあるなら言ってみたら?」

上条「いや、やめとくよ。……言っても無駄だろうからな」

ヴェント「あっそう、だったら切り替えて本来の目的に取り掛かるとするか」

上条「昨日は……一人でスイッチを押すのは無理だったから、そこから始めるか」

ヴェント「一人で、ねぇ……それってやっぱり一人で押せないと駄目なワケ?」

上条「駄目なワケって……それが出来ないと一人じゃ何にも出来ないだろうが」

ヴェント「仕方ないか……ほら、さっさとどうやるか教えなさい。時間は有効に使いたいのよ」

上条「分かったって。でも、どうやって教えるかだな……とりあえず物は試しだ、一回一人でやってみてくれ」

ヴェント「えっ? も、もう?」

上条「あぁ、ほら早くやってみてくれよ。昨日から少しは成長してるかもしんねーし」

ヴェント「わ、分かった……押すのはどれが良いのか言ってくれる?」

358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:40:06.40 ID:fzUxdgWto


上条「うーん……よし、洗濯機にこだわってみるか」

ヴェント「洗濯機……じゃあ、押すけど」

上条「おう、さっさと押してくれ」

ヴェント「本当に押すわよ?」

上条「あぁ、何も気にせず押してくれ」

ヴェント「……ちょ、ちょっと待ちなさい。少し心の準備を……」

上条「……それ、物凄く時間がかかるヤツだろ」

ヴェント「そんなコト無いわ、すぐに終わるから少し待ってなさい」

上条「分かった。すぐってのはあんまり信用出来ねえけど、自分のタイミングでやってみてくれ」

ヴェント「……すぅー、はぁー」

上条(深呼吸してからの……)

ヴェント「…………私は出来る、私は出来る」

上条(……自己暗示?)

ヴェント「…………」

上条(ついに黙っちまったよ……)

ヴェント「――見えた! おおおおおおおおお!」

上条「はいストーップ」ガシッ

ヴェント「……どうして止めたワケ?」

上条「もう言わなくても分かってると思うけど、手の形とか色々おかしい。……とりあえず、グーパンチはやめようか」

359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(千葉県)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:40:54.11 ID:fzUxdgWto


上条「なぁ……どうしてスイッチを押そうとするだけでぶん殴ろうとしちまうんだ?」

ヴェント「……そんなの、こっちが聞きたい位ね」

上条「うーん……殴るって事は、それに敵対心とか恐怖があるとかそういう事だったりすんのかもな」

ヴェント「敵対心、恐怖……」

上条「なんか機械に嫌な思い出がある、それ位しか原因は無いと思うぞ。心当たりは?」

ヴェント「それは……ある、と思う」

上条「だったらそれをどうにかしねえとな……簡単に解決できる問題だったりするのか?」

ヴェント「……一生解決する事は無い、そう言いきっても良い」

上条「一生、とまで言われたらなぁ……それだと何も出来ずに終わっちまうぞ?」

ヴェント「…………」

上条「あっ……ち、違う! 別に責めてる訳じゃねえんだ、悪い……」

ヴェント「……別に、それ位分かってるから謝らなくても良いけど。こっちこそ面倒なコト頼んで悪かったわね」

上条「誰も面倒だなんて言ってねーだろ? ……分かった、昨日みたいにやってみるか」

ヴェント「昨日みたいって、またアンタと一緒に触れるってコト?」

上条「あぁ、そこから慣れていくしかやっぱり無さそうだしな。そっちが嫌じゃなければの話だけど」

ヴェント「……変なコト考えたら」ゴトッ

上条「……どこから出て来たのか分からないハンマーさんにはお引き取り願いたいのでございますが」

ヴェント「仕方ないわね……ほら、好きにしなさい」

上条「んじゃ、失礼しますよっと」ギュッ

360 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:41:53.03 ID:fzUxdgWto


上条「せっかくなので、別の家電を扱ってみようと思う」

ヴェント「別の家電か、どれにするのかしら?」

上条「まずは、ボタン一つで操作も簡単な……これだ!」

ヴェント「あぁ、テレビね」

上条「じゃあ、右手の人差し指をリモコンに近づけてっと」

ヴェント「お、おぉ……」

上条「そのまま電源のボタンを押す、そうすれば……」

『正解は、越後――』プツッ

上条「で、もう一度押せば消える。これだけなら簡単だろ?」

ヴェント「そうね……リモコンとかから始めた方がやりやすかったりして」

上条「ヴェントがそう思うならそうした方が良いのかもな……それじゃ、一人でやってみてくれ」

ヴェント「リモコンなら……よし、やってみっか。リモコンを……くっ……」

上条「……まさか、それを持つのにも抵抗があるとか言わねえよな?」

ヴェント「……文句あんの?」

上条「悪い、さっき面倒だなんて言わねえって言ったけどさ……やっぱり少し面倒かもしれない」

361 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:43:50.85 ID:fzUxdgWto


ヴェント「……分かった、持てばいいんだろ、持てば!? ええい!」ガシッ

上条「おおっ! そうだその勢いでいけ!」

ヴェント「コレを……押せば、押せばぁ!」

上条「そうだ! それを押すだけだ!」

ヴェント「コレを……コレを、コレを……!」プルプル

上条「震えてる……そこまで拒否反応を示すほどなのか……!?」

ヴェント「押せば……押す、私は押す! 押してやるっつってんだよぉ!!」

上条「いける! 後少しだ、そのままリモコンを!」

ヴェント「――そおいっ!」ブンッ

上条「投げつけたあ!? ってそっちは!」

ガッシャーン

ヴェント「あっ……窓が」

上条「あー……悪い、まだ早かったみてえだな」

ヴェント「……そっちに謝られると余計に情けなく感じるんだけど」

上条「いや、頑張った事は認めようかと。爆発よりはマシだからな……」

ヴェント「……とりあえず、窓は弁償する」

362 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:44:44.95 ID:fzUxdgWto


上条「業者を呼んだから、窓については心配しなくて良いぞ」

ヴェント「……悪かったわね、また失敗しちまった」

上条「気にすんなって、落ち込んでも仕方ねーしな。……時間も時間だし、飯でも食うか」

ヴェント「もうそんな時間か、何か食べるモンでもあるのかしら?」

上条「用意は出来るけど……せっかくだし、外で食おうぜ」

ヴェント「イイ考えね。じゃあアンタに任せるわ、適当に連れて行って」

上条「そうだな……せっかく日本に来たんだから――」

363 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:45:45.45 ID:fzUxdgWto


回転寿司


ヴェント「……かいてんずし、って読めば良いのかしら」

上条「合ってるけど……なんで読めるのか不思議でしょうがないんだが」

ヴェント「『神の右席』だから楽勝ってワケ、そろそろ言わなくても察しなさい」

上条「相変わらず便利だな、それ。……よし、外にいつまでも居ねえでさっさと入るか」

ヴェント「それもそうね」


――――――――


店内


ヴェント「食べ物が、移動してる……!?」

上条「やっぱり最初は驚くよな。そこから自分の食べたい寿司を取って食べてくれ」

ヴェント「寿司、か。聞いたコトはある、なかなか美味しいらしいじゃない」

上条「生魚も食べられるならきっと気に入ると思うぞ。とりあえず、俺は……イカでも食べるかな」ヒョイッ

ヴェント「私は……って、コレ……」

上条「ん? どうしたんだ、好きなのを取って良いんだぞ?」

ヴェント「……そっか、嫌がらせってコトか。私が何も出来ないからってこんなコトするなんてなー」

上条「はぁ? 何言ってんだよ?」

ヴェント「……こんな機会の上を動いてたら取れるワケねえだろうが! 何も食べんなじゃねえぞってコトかぁ!?」

上条「……あー、そうなるのね」

364 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:46:11.22 ID:fzUxdgWto


結局


ヴェント「あむ……マグロってのもイケるわね」モグモグ

上条「気に入ってくれたんなら良いけど……これも無理だとはなぁ」

ヴェント「うっさいなー……仕方ないでしょ。それより、次はこのえんがわってのが食べたい」

上条「へいへい……よっと」ヒョイッ

ヴェント「考えれば簡単ね、アンタに取ってもらえば良いんだから。ほら、さっさとこっちに寄越しなさい」

上条「ほらよ。そういや、箸の使い方はもう完璧みたいだな」

ヴェント「慣れればどうってコトも無いわ。こんな美味しいものが食べられるなら、学園都市も悪くないか……あむ」モグモグ

上条「ネタの新鮮さを追及した科学最先端の寿司、とかなんとか。……普段は寿司なんて遠い存在だから分かんねーけど」

ヴェント「もったいない、こんな美味しいんだからもっと食べればイイのに。あっ、次はイカを取って」

上条「そんな贅沢できねえっつーの……はいよ」

ヴェント「コレも美味しそうね……あむ、……うん、コレもなかな――んんっ!?」

上条「ど、どうした!?」

ヴェント「は、鼻が……つーん、ってなった。なにコレ……まさか、科学側からの攻撃……!?」

上条「……ただワサビが多かっただけだって」

365 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:46:42.39 ID:fzUxdgWto




上条「ふう……美味かったな」

ヴェント「日本の食べ物も捨てたモンじゃないわね、他にも何かあるなら聞いておこうかしら」

上条「そんなの数えきれない位あるぞ。日本に居る間に出来るだけ美味いもん食って帰った方が良いのは確かだな」

ヴェント「そのためにも、さっさと使いこなせるようになりたいトコだけど……」

上条「そうだな……。よし、帰って続きを始めるか。少しでも早く慣れるためにさ」

ヴェント「そうね、さっさと戻るとしましょうか」

366 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/08(木) 04:48:18.31 ID:fzUxdgWto


一方その頃ビアージオは

アレイスター『それが本当に必要なのか、私には理解する事は出来ないようだ』

ビアージオ「そう言うな。なに、難しい事を頼んでいる訳では無いのだよ」

アレイスター『実現する事は可能だ。しかし、私は便利屋では無いのだが』

ビアージオ「そう気にする事では無い。たった一言、下の者に命令するだけであろう?」

アレイスター『――断る理由が無いのは確かだ。その要求を呑むとしよう』

ビアージオ「感謝する、明日にでも動く事が出来ればそれで良い。頼むぞ」プツッ

ビアージオ(……我ながら、またくだらない事でアレイスターに恩を売ったものだ。まあいい、これであの少年の要望には対処できただろう)

ビアージオ(それに、使えるモノは使っておくべきだからな。さて……昼を食べにカフェにでも行くとするか)

379 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 11:56:48.16 ID:PS0JauGKo


戻って上条の部屋


上条「なんか工事してんのか、外が少しうるさいな……」

ヴェント「……あっ、直ってる」

上条「おっ、窓も新しいのになってるな。さて、早速始めるとするか」

ヴェント「こっちはさっさと使いこなせるようになって帰りたいんだけど、結構時間かかるモンね」

上条「ほとんどそっちの問題なんだけどな……。住んでた所、バチカンだっけ?」

ヴェント「そうだけど、それが何か?」

上条「そこではどんな生活してたんだよ。いくら何でもこの時代で家電無しで生活は無理だろ?」

ヴェント「無理じゃないわ、自分では操作なんてしないようにしてたから」

上条「でも家電は壊してたんだよな……やっぱりぶん殴って壊しちまったのか?」

ヴェント「……その言い方、私が何でもかんでも殴って物を壊す乱暴者に聞こえるケド」

上条「あぁ、そのつもりで言っ ヴェント「あぁ?」ゴトッ

上条「……スイマセンデシタ」

380 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 11:57:37.06 ID:PS0JauGKo


ヴェント「ったく……で、何が言いたいのかしら」

上条「いや……前も言ったけど、触る事すら出来ないのはやっぱりトラウマとかそういうのなのかって思ってさ」

ヴェント「ンなコト分かったら苦労しないわよ、こっちが聞きたい位ね」

上条「そうだな……とりあえず、俺が手を握ってれば大丈夫って感じか」

ヴェント「……情けないけどそうなる」

上条「だったら向こうでも他の誰かに、俺がやったみたいにしてもらえば良いんじゃねーの?」

ヴェント「誰かに手を握って貰えってコト?」

上条「あぁ、それなら何とかなるだろ?」

ヴェント「嫌ね、そんな恥ずかしいコト頼めるワケ無いじゃない」

上条「壊すよりはマシだと思うけどな……仕方ねえ、とりあえず家電に慣れよう作戦は続行だな」

ヴェント「そうするしかないか……じゃあ、ほら」

上条「おう、失礼しますよっと」ギュッ

上条(なんか当たり前のように手握ってるけど……女の手を握るって、よく考えると……)

ヴェント「なーんか変なコト考えてない?」

上条「き、気のせいだと思うのでございますよ!?」

ヴェント「何焦ってんだか、さっさと始めなさい」

381 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 11:58:12.97 ID:PS0JauGKo


VS冷蔵庫


上条「これなら開けるだけだし、特に説明する事は無いな。ほら、開けてみろ」

ヴェント「え、ええ……んっ」ガチャ

上条「さすがに開ける位は出来るか。じゃあ、次は閉めてみてくれ」

ヴェント「分かった。……それっ」バタン

上条「よし……もう一回やってみるぞ。まずは開けてくれ」

ヴェント「……よっ。楽勝ね、もう何も問題なく開けられるわ」

上条「本当か? じゃあ閉めてくれ」

ヴェント「楽勝だって言ってんだから信じなさい。……せーの」

上条(……ここだ! このタイミングで手を離す!)

ヴェント「……っ!? なぁっ!」ドタン

上条「お、おい!? そんなに力強く閉めなくても良いだろうが!?」

ヴェント「はぁ……はぁ……急に離すからこういうコトになっちまうんだろうがぁ!」

上条「お、落ち着けって! 何も問題なかったんじゃねえのかよ!?」

ヴェント「……ソレはソレ、コレはコレなんだよ!」

上条「意味分かんねー……とりあえず、急に手を離すのはやめるよ」

ヴェント「二度とこんな真似しようと考えないコトね、分かった?」

上条「はいはい……」

382 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 11:59:13.16 ID:PS0JauGKo

VSエアコン


ヴェント「……リモコンか」

上条「さっきみたいな事にならないようにするためには……よし、一緒に押してみるか」

ヴェント「結局そうなるか……」

上条「だったら一人でやってみるか? 今度は持たなくて良いからさ」

ヴェント(ここで逃げたら進歩ナシ……それは悔しい)

上条「……ヴェント? 無理しなくても良いんだぞ?」

ヴェント「……分かった、やってやろうじゃない。机の上に置きなさい」

上条「あ、あぁ……これで良いか?」

ヴェント「よし……押す」

上条「……頑張れ、これを乗り越えたら先が見えてくるんだ。だから今すぐ!」

383 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 11:59:44.36 ID:PS0JauGKo


ヴェント「お、押す!」プルプル

上条(人差し指が震えてる……頑張れ、後少しだ!)

ヴェント「押す……絶対に押してやる……」プルプル

上条(いいぞ……あと三十センチ……)

ヴェント「コレを、押す……押す……押せば……!」

上条(二十……十五、十……残り五センチ!)

ヴェント「……押す、押す!」

上条(一センチ……!)

ヴェント「…………」ピタッ

上条(……止まった!?)

ヴェント「ふぅ……ちょっと休憩す 上条「おい」

ヴェント「……何?」

上条「あと一センチだろうが!? いいから押してみろって!」

ヴェント「……でもでもー、ちょっとこれ以上はツライというか」

上条「……はぁ、まぁいいや。自分で頑張るって意志はあるみてーだしな」

384 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:00:36.97 ID:PS0JauGKo

VS電子レンジ


ヴェント「……コレ、電子レンジってヤツか」

上条「もしかして……一度ぶっ壊してたりすんのか?」

ヴェント「……生卵を温めたら爆発した」

上条「なんてベタな失敗を……」

ヴェント「……手、握りなさい」

上条「あぁ……よし、とりあえずカップに水を入れたので温めるぞ」

ヴェント「コレで水がお湯になるんだから不思議なもんね、火を使わないんだから」

上条「こんなモンで驚いてたら、学園都市に居れば休む暇も無くなるぞ……」

ヴェント「確かに、あの道を動き回ってた機械には驚いたかも」

上条「もう一台位壊したとか?」

ヴェント「アンタも懲りないわね、そろそろ痛めつけといた方がイイかしら」

上条「だから冗談だって……あれは道を勝手に掃除する便利なロボットってヤツでさ」

ヴェント「それ位知ってるから説明なんて要らないわよ。コレに載ってるし」

上条「……出た、謎のガイドマップ」

ヴェント「信頼しても問題無いみたいだから助かってるわ、『ツンデレ』についての記述もその通りだったもの」

上条「……忘れてた、そこの誤解を解かねーとな」

385 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:01:16.57 ID:PS0JauGKo


上条「もう何度も言ってるけど、俺はツンデレじゃねえんだって!」

ヴェント「あぁ、その話? もうイイじゃない、認めちまえば」

上条「だから人の話を聞けって! 俺はアンタが好きだなんてこれっぽっちも思ってねえんだよ!」

ヴェント「……いや、そうやってストレートに言われると少し恥ずかしいんだけど」

上条「……はぁ?」

ヴェント「ここ、このページを見てみなさい」

上条「『ツンデレ』に関して……何でこんなに詳しく書いてあんだよ学園都市」

ヴェント「そこの一例、ってトコ」

上条「一例? どれどれ…………なっ!?」



『本当は俺の事好きなんだろ?』

『な、何言ってんのよ!? べ、べつにアンタのことなんて好きでも何でもないんだからね!』

 これは言葉通りに受け止めてはいけません。つまり――

『アンタのことが好きで好きで仕方ないのよ!』

 となるのです。これが「ツンデレ」であり、日本ではポピュラーなタイプと言えます。



ヴェント「ほら」

上条「……もうやだこの街」

386 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:02:08.70 ID:PS0JauGKo


ヴェント「しかし、アンタも物好きね。私なんてのが、その……好きなんてね」

上条「……だから好きでもなんでもないけどそれを言っても逆に好意を示していると受け止められてしまっていったいどうすれば良いのか」ブツブツ

ヴェント「まぁ、こんな女を好きになるヤツなんて他に居ないし。そっちも変わり者ってコトか」

上条「……ん? こんな女って?」

ヴェント「別に可愛くもないし、魅力があるワケでも無い。と言っても私にはそんなもん必要ないケド」

上条「いや、ヴェントは普通に可愛いとかそう言われてもおかしくないと思うぞ」

ヴェント「……っ!?」

上条「だからそんな風に言わなくても……って、ガイドブックと俺を交互に見るとか何だよその反応は」

ヴェント「なるほど、コレが『デレ』ってヤツか……」

上条「……はぁ?」

ヴェント「ここに書いてあるでしょ」

上条「『ツンデレ』の魅力はたまに出る『デレ』にあります。そこを見逃さないようにするのが――おい、まさか……」

ヴェント「やっぱりアンタ『ツンデレ』じゃないの。頭もツンツンしてるし、コレは確定でイイでしょうが」

上条「だから違うし髪の毛も関係ねえっつーの!」

ヴェント「あっ、もうそろそろ帰らないといけないわね。ほら、今日はここまでにするから一緒に来なさい」

上条「人の話を……はぁ、もういいや。否定しても無駄なんだろうし」

ヴェント「ついに認めたってワケか」

上条「無駄だろうけど、それでも俺は違うって言い続けるぞ」

387 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:02:37.34 ID:PS0JauGKo


街中


上条「この自転車に乗るのも慣れて来たなぁ……」

ヴェント「慣れれば何でもラクなもんね、なかなか快適に思えてきた」

上条「……相変わらず周りの視線は気になるけど」

ヴェント「学園都市、か。変なトコっていうのは間違いなかったけど、ここも慣れればもっと楽しくなんのかしら」

上条「かもな、ヴェントの場合は一人で過ごすのは無理だろうけど」

ヴェント「……機械ばっかりってのはイヤね、もう少し減らせば良いのに」

上条「もし暮らすって事になったら大変な事になりそうだな……」

ヴェント「そん時は協力するのよ。まぁ、そんなコト起きないから安心しなさい」

上条「……物壊して警備員に追いかけられるのは嫌だしな」

ヴェント「なんか言った?」

上条「いや、何も」

388 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:03:28.05 ID:PS0JauGKo


ホテル前


ビアージオ「……来たか」

ヴェント「ビアージオ、出迎えなんてアンタにしては気が利くじゃない」

ビアージオ「出迎えなのでは無い、お前達に話す事があってな」

上条「お前達、って俺にも関係する事なのか?」

ビアージオ「君が言ったのだろう。自転車を漕ぐのは嫌だ、と」

上条「あぁ、その事か……もしかして、何か良い方法を思いついたのか?」

ビアージオ「その通りだ、妙案を思いついたのでそれを実行に移そうと思う」

ヴェント「面倒臭がらずによくそんなコトしたわね。で、その方法ってのは?」

ビアージオ「なに、簡単な事だ。上条当麻、君が住んでいるのは学生寮だったな」

上条「そうだけど、それが何か関係でもあんのかよ?」

ビアージオ「話しは最後まで聞くものだ。そして、君の部屋で家電を扱う練習をしている。違いは無いな?」

ヴェント「間違いないケド、それで方法ってのは何なのよ」

ビアージオ「ヴェント、お前はその学生寮にしばらく住め」

上ヴェン「……はぁ?」

389 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:03:53.94 ID:PS0JauGKo


ビアージオ「なんだその反応は、わたしの言った事が理解出来なかったのか?」

上条「……いや、理解は出来たけどその考え自体は意味分かんねえよ」

ビアージオ「意味が分からない? ただヴェントが寝る場所を変えるというだけであろう?」

上条「俺の寮は男子しか住めねえし、そもそもヴェントは学生じゃねえだろうが」

ビアージオ「少年、常識に囚われていては何も生み出す事は出来ないぞ」

上条「超えてはいけないモノもあるっつーの。……だいたい、そんな事出来る訳が」

ビアージオ「すでに許可は取ってあるぞ。工事も明日には終わるそうだ」

上条「……えっ?」

ビアージオ「統括理事会からも協力は得ている、反対しても何も変わらないだろうな」

上条「無茶苦茶だ……ヴェント、お前もなんか言ってやってくれよ」

ヴェント「そうね……その部屋は照明がどうやって点くのか教えなさい」

ビアージオ「人間の出入りをセンサーで感知し、時間と体勢を判断して電気が点いたり消えたりするそうだ」

ヴェント「鍵は?」

ビアージオ「安心しろ、オートロックでは無い」

ヴェント「お風呂は?」

ビアージオ「狭くは無いそうだ」

ヴェント「分かった、そこに住むコトにする」

上条「ええっ!?」

390 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:04:20.63 ID:PS0JauGKo


ビアージオ「という訳だ。これで自転車を漕いでわざわざここまで来る必要も無い、君の願い通りだろう?」

上条「なんか違うけど……もう決まっちまってんだよな」

ビアージオ「なに、少しの間だ。それに今は学生達は夏季休暇と聞いた、問題は無い」

ヴェント「住むのは明日からか、色々準備する必要がありそうね」

上条「それだと明日は準備が出来るまでは会う必要な無いって事か」

ビアージオ「何を言っている、君にも協力してもらうぞ」

上条「協力っつったって何をすれば良いんだよ? 出来る事なんて無いだろ?」

ビアージオ「ヴェントも滞在する上で服や雑貨等が必要になるだろう。その買い物を手伝ってもらう」

上条「家電指導の次は買い物の付き添いか……まぁ、それ位なら良いけどさ」

ヴェント「じゃあ、アンタは買い物するのに最適な場所を探しておきなさい。分かった?」

上条「あぁ、分かったよ。……つー事は、このチャリで長い距離を往復するのもこれが最後か」

ビアージオ「その自転車は駐輪場にでも置いておけば良いだろう、今日の帰りと明日は君一人なのだからタクシーでも使えば良い」

上条「そう言われたらそうだな。……ん? 待てよ、それだともしかして……」

ビアージオ「何か問題でもあったか?」

上条「このホテルに自転車を置いて良かったんなら、昨日俺が必死で漕いだのは……」

ヴェント「無駄になっちまうか、残念だったわね」

上条「不幸だ……」

391 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:04:51.01 ID:PS0JauGKo


上条「じゃ、また明日って事で」

ビアージオ「あぁ、時間には遅れないよう気を付けるように」

上条「分かってるって。それじゃ」


ヴェント「ずいぶん思い切ったコトをするわね、アンタも」

ビアージオ「なに、わたしが疲れる訳でも無いのだ。それならいっその事と思ってな」

ヴェント「しかし、あの男と同じ寮に住むなんてね……」

ビアージオ「あぁ……あの少年はヴェントに好意を抱いているんだったな。不安か?」

ヴェント「別に不安なんて無い、何かあっても撃退する位は造作も無いって前も言ったでしょ?」

ビアージオ「その通りだな。しかし、本当に上条当麻という男は『ツンデレ』なのだろうか」

ヴェント「……さぁね、どうせすぐに会うコトも無くなる。考える必要も無い」

ビアージオ「それもそうか……さて、わたし達も部屋に戻るとしよう」

392 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:05:27.40 ID:PS0JauGKo


夜 ヴェントの部屋


コンコン

ヴェント「……誰かしら、こんな時間に」ガチャ

ビアージオ「ヴェント、まだ起きていたか」

ヴェント「何か用?」

ビアージオ「今からコンビニエンスストアに行くのだが、何か欲しい物はあるか?」

ヴェント「へえ、気が利くじゃない。じゃあ適当に飲み物でも頼むわ」

ビアージオ「分かった、帰ってきた時にまた寄るのでそのつもりでな」バタン

ヴェント「……とは言ったものの、ふわぁ……眠い」

393 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:06:17.62 ID:PS0JauGKo


とあるコンビニ


ビアージオ「さて、何を買おうか……ヴェントの欲しい物は、飲み物だったか」

ビアージオ(……いちごおでん? おでんというのはいったい何なのか……まぁ、これで良いだろう)

ビアージオ「あとは、明日のために……ん?」

風紀委員女「風紀委員です! 早急にこの場から避難してください!」

ビアージオ(……ジャッジメント。確か、この都市を守る自治組織の様なものとガイドブックに書いてあったな)

風紀委員女「そこの人、早くここから逃げてください!」

ビアージオ「逃げる? いったい何を……」

風紀委員女「ここに爆弾が仕掛けられた可能性があります……」

ビアージオ「爆弾……? そんな事が」

風紀委員男「大丈夫ですか!?」

女「すいません、足をくじいてしまって……」

風紀委員男「急いで避難を……っ!? ぬいぐるみ……まさか!」

ビアージオ「……っ! どけ、そこから離れろ!」

風紀委員男「な、何を……」

ビアージオ(巨大化させた複数の十字架で……壁を作れば)

女「ば、爆弾って……このぬいぐるみが!?」

ビアージオ「離れろ! ――十字架は、悪性の拒絶を示す」

女「きゃああああ!!」

風紀委員男「くっ……!」

394 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[saga sage]:2011/12/22(木) 12:06:52.10 ID:PS0JauGKo


再びヴェントの部屋

ヴェント「ビアージオのヤツ、遅い……ふわぁ……」

ヴェント「…………」

ヴェント「……寝よう。アイツには明日謝ればいいでしょ……んんっ……」

ヴェント「……zzz」


 四日目 終了

403 :今年はスピードをあげたいです[saga sage]:2012/01/08(日) 17:00:44.45 ID:ZmfZY2tJo

一方その頃バチカンでは


「……おい、ちょっと……こっちへ来てくれるか……」

アンジェレネ(……? どこかから声が……気のせいでしょうか?)

「……こっちだ、こっち」

アンジェレネ「その声は……フィアンマ様? 私に何か用ですか?」

フィアンマ「聞きたい事があるのだが、今時間はあるか?」

アンジェレネ「えーっと……はい、大丈夫ですよ」

フィアンマ「それは良かった。俺様の部屋に来い、頼みたい事がある」

アンジェレネ「頼みたい事? 分かりました、ついていけば良いですよね」

フィアンマ「それで良い、……他のヤツには見つからないようにな」

アンジェレネ「? とりあえずついていきますね」
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:02:08.63 ID:ZmfZY2tJo

フィアンマの部屋


アンジェレネ「それで、ご用とはいったい何なんですか?」

フィアンマ「これを渡す、そして俺様と一緒に進めてもらうぞ」

アンジェレネ「これって……ゲームですか?」

フィアンマ「その通りだ。感謝しろ、この俺様とゲームが出来るのだからな」

アンジェレネ「はぁ……分かりました、とりあえずやってみます」

フィアンマ「話しが早くて助かる、ただの娯楽に過ぎんが……やるからには手を抜かないようにな」

アンジェレネ「えっと……マジカルハンター、って言うんですね」

フィアンマ「その通り。日本で作られたゲームだが、なかなか凝ったもので俺様もプレイしている」

アンジェレネ「でも、どうして私もやらないといけないんですか?」

フィアンマ「このゲームは前作まではオンラインに対応していたのだが……今回は違ってな」

アンジェレネ「よく分からないですけど、それが何か問題なんですね?」

フィアンマ「あぁ……俺様の周りにはゲームをやる者など居ない。だからこうして渡したという訳だ」

アンジェレネ「つまり……一人でやりたくないって事でしょうか」

フィアンマ「……言い方が悪いぞ、ともかく始めろ」

アンジェレネ(お掃除の途中だけど、フィアンマ様のお願いならシスター・ルチアに怒られる事もないはず……)
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:03:15.13 ID:ZmfZY2tJo

ルチア「はぁ……いったいどこに」

アックア「どうした、何かあったのであるか?」

ルチア「アックア様……実は、清掃の途中なのですがシスター・アンジェレネが見つからなくて」

アックア「なるほど……私も一緒に探すとしよう」

ルチア「いえ、アックア様にその様な事をさせる訳には……」

アックア「なに、やるべき事は済んでいる。修道女一人探す位どうという事も無い」

ルチア「そうですか……では、お願いします」
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:04:00.84 ID:ZmfZY2tJo

ルチア「見つかりましたか?」

アックア「いや、どこにも居なかった。……これだけ探して居ないとはな」

ルチア「……何かあったのでしょうか」

アックア「その可能性も考えるべきか……ん?」

テッラ「おや、二人揃って何を? ずいぶんお困りの様ですねー」

ルチア「テッラ様、シスター・アンジェレネを見かけませんでしたか?」

テッラ「アンジェレネですか……私は見ていませんねー」

アックア「そうか、いったいどこに……」

オルソラ「あら、皆様お揃いでどうなさったのでございましょうか?」

アックア「オルソラ、アンジェレネを見なかったか」

オルソラ「アンジェレネさんでございますか? それでしたら――」
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:04:52.14 ID:ZmfZY2tJo

再びフィアンマの部屋

アンジェレネ「……フィアンマ様、私が尻尾を」

フィアンマ「ならば俺様は頭を……」

コンコン

フィアンマ「……ん? 誰だ、この忙しいときに」

アンジェレネ「私が出てきますね。はーい、誰ですかー?」

ルチア「……なるほど、こんな所に居たのですね」

アンジェレネ「し、シスター・ルチア……」

ルチア「清掃という奉仕を怠り、貴女はいったい何をやっているのですか!?」

アンジェレネ「うぅ……ご、ごめんなさい……」

フィアンマ「そう叱ってやらないで欲しい。俺様がここに来るように言ったのでな」

ルチア「フィアンマ様……修道女達にあまり娯楽を与えては」

テッラ「その通りですねー。仮にも『神の右席』の一員なのですから、自覚をもって行動してもらいたいのです」

アックア「全くである。……む、フィアンマ」

フィアンマ「何だ、お前まで俺様に何か言うつもりか?」

アックア「それはまさか……マジハンであるか?」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:05:41.32 ID:ZmfZY2tJo

フィアンマ「お前の言う通りだが、それがどうかしたのか?」

アックア「……実は、私も」ゴソッ

フィアンマ「……ほう、お前も3PSを持っていたのか」

アックア「大剣使いの私が居れば百人力である。さて、一狩り行くぞ」

アンジェレネ「わぁ、大剣だったら尻尾も簡単に切れますね!」

ルチア「あ、アックア様!? 貴方まで一緒になっては……」

テッラ「呆れましたねー……いったい何を考えているのでしょうか」

ルチア「流石テッラ様、模範となる態度を……」

テッラ「笛が居ればさらに楽に狩りが行えるというのに、分かっていませんねー」

ルチア「……え」

フィアンマ「なんだ、お前は笛か。だったら耳栓を頼むぞ、俺様は弓で遠くから攻撃するとしよう」

アンジェレネ「私は足を攻撃します! 片手剣だと尻尾に届かなくて困ってたんですよ……」

フィアンマ「四人揃ったか……よし、一狩り行くとするぞ」

テッアッアン「了解ですねー(である)(です!)」

ルチア「……はぁ」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:06:45.18 ID:ZmfZY2tJo

五日目 朝 第七学区のとあるホテル内レストラン


ヴェント「早いじゃない、って今日はその格好で出るのか」

ビアージオ「……そのつもりではなかったのだが、仕方なくな」

ヴェント「……ん? よく見ると、なんか顔に傷らしきものが……アンタ、また何かやらかしたの?」

ビアージオ「わたしがやったのでは無い……巻き込まれただけ、あくまでも被害者だ」

ヴェント「へぇ、あんだけ言っといて結局目立ってるのはそっちじゃない」

ビアージオ「好きで目立っている訳では無い、……これ以降は大人しくさせてもらうつもりだ」

ヴェント「どうだか。ヘタな行動が一歩間違えばとんでもないコトを巻き起こす、分かってると思うけど気を付けなさい」

ビアージオ「分かっている。そういえば、昨日飲み物を届けようとしたが出なかったな」

ヴェント「あぁ、あの後すぐに寝たからね。眠気には勝てなかったってワケ」

ビアージオ「酷い目に遭いながら買って来たにもかかわらず……わたしの苦労は何だったのか」

ヴェント「知らないわよ。ほら、さっさと出て買い物とかを済ませないと」

ビアージオ(さすがに今日は何も無いだろう……一応、後で祈っておくか)
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:07:39.05 ID:ZmfZY2tJo

ビアージオ「そうだ、ヴェント。お前に言っておく事がある」

ヴェント「言っておくコト?」

ビアージオ「自らの身を護る位の魔術は使えるようにしておけ、分かったな?」

ヴェント「そんな必要あんのかしら、まぁそれ位はできるし問題ないケド」

ビアージオ「だからと言ってハンマーの様な見える物はやめておけ、目立たない程度にしろ」

ヴェント「注文が多いわね……風を起こすぐらいならいつでもできるようにしとくか」

ビアージオ「お前ならば造作も無いだろうが、爆風を防ぐくらいの威力は欲しい所だな」

ヴェント「爆風? ずいぶん具体的に言うじゃない、そんなモンだったら楽勝だけどね」

ビアージオ「何が起きるか分からないものだ。勝手の分からない場所ならば尚更な」
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:08:04.94 ID:ZmfZY2tJo

ホテル前

ヴェント「ん、来たみたいね」

上条「悪い、待たせちまったか?」

ビアージオ「今出て来た所だ、丁度良い位だったな」

上条「そっか、じゃあ早速向かうとしますか。まずは何を買えばいいんだ?」

ビアージオ「服を買う所まで案内してくれ、わたしもそこに用があるのでな」

上条「服か、だったらあそこで良いよな……そういえば、その格好」

ビアージオ「この服か? これは司教としての正装だ、若干動きづらいのが難点だが」

上条「そんな格好して何するつもりなんだ? 昨日まではスーツだったじゃねーか」

ビアージオ「……それは聞くな、君には何も関係ない」

上条「あ、あぁ……あれ? 顔に傷が」

ビアージオ「何も聞くなって言ったはずだが、聞こえなかったか?」

ヴェント「あまり触れない方がいいみたいだから放っておきなさい。それよりも、さっさと出発したいんだけど」

上条「それもそうだな。さて、一応聞いておくけど……タクシーは」

ヴェント「何言ってんだか。ほら、さっさと乗れっての」

上条「既にスタンバイ完了って訳ですね……はぁ、仕方ねーか」
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:09:01.26 ID:ZmfZY2tJo

街中

上条「しかし、まさかこんな事になるなんてな……」キコキコ

ヴェント「部屋を借りちまうなんてビアージオも思い切ったコトをするもんね」キコキコ

上条「本当だよ。まぁ、俺が迎えに行かなくて済むから楽って言えば楽か」

ヴェント「ともかく、今日中に必要な物を買っておかないといけないか」

上条「必要な物って服以外に何かあるのか? よっぽど特殊な物じゃなければ揃うと思うけどさ」

ヴェント「思いついたら言うわ、とりあえず衣服の問題をどうにかしないと」

上条「それもそうか。食事とかは外食すれば何とかなるし、俺が作ったので良ければ一緒に食うとかもできるしな」

ヴェント「へえ、料理ができるのね」

上条「男の一人暮らしだからって料理位するっつーの。期待されても困るけど」

ヴェント「一回位は味わわせてもらおうかしら。で、その店にはまだ着かないの?」

上条「いや、そろそろ見えるはず……ほら、あそこにあるヤツだ」

ヴェント「セブンス・ミスト、か。品揃えが良ければ何でもいいけど」

上条「多分大丈夫だろ。今着てるような変わった服は置いてないだろうけどな」

ヴェント「コレが変わった服だって? アンタ、センス無いわね」

上条(……そっちが特殊なセンスしてんだろ、ってのは黙っておこう)
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:10:00.70 ID:ZmfZY2tJo

セブンス・ミスト前

ビアージオ「遅かったな、待ちくたびれたぞ」

上条「……アンタはタクシーに乗ったんだから、先に着くのは当たり前だろうが」

ヴェント「さて、さっさと買い物を済ませちまいましょうか」

上条「そうだな、とりあえず中に入るか」

ビアージオ(昨日の様な事が起きなければ良いのだが……まぁ、二日連続で巻き込まれる事も無いだろう)

ヴェント「ビアージオ、なにボーッと突っ立ってんのよ。後ろ見てみなさい」

ビアージオ「後ろ?」

女の子「…………」

ビアージオ「あぁ、邪魔をしてしまったか……申し訳ない、待たせてしまったようだな」

女の子「う、ううん……大丈夫」

上条「入口の前に立ってたら邪魔だもんな。さっさと中に入ろうぜ」

ビアージオ「少し待て。……これを渡そう、これで許してもらえるか?」

女の子「あっ……ゲコ太だ! おじちゃん、ありがとう!」
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:12:20.04 ID:ZmfZY2tJo

ヴェント「……アンタ、そんなマスコットに興味があったのね」

ビアージオ「そんな訳が無いだろう、昨日お礼としてもらったのだよ」

上条「へえ、確かこれコンビニ限定のゲコ太ストラップだろ?」

ビアージオ「わたしは要らないと言ったのだが……役に立ったのだから良しとするか」

女の子「ゲコ太♪ ゲコ太♪」

ヴェント(ゲコ太ってそんなに人気なのか……)

女の子「ねーねーおじちゃん。そのお洋服変わってるねー」

ビアージオ「ん? あぁ、この服が珍しいのか」

上条「まぁ、学園都市では見ないよなそんな服」

ビアージオ「なるほど。……どうだ、カッコいいか?」

女の子「うん! でも、そっちのお姉ちゃんのはバナナみたいで変だねー」

ヴェント「なっ……バナナって……この服が?」

女の子「ねーお母さん、昨日たべたあとのバナナの皮みたいだねー」

上ビア「……ぷっ」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:13:41.70 ID:ZmfZY2tJo

ヴェント「はぁ……子供の言うコトだし気にしちゃ……って」

上条「ば、バナナ……確かに……ぶふっ」

ビアージオ「くくっ……いや、実に子供の感性というものは素晴らしい……」

ヴェント「……テメェらも笑ってんじゃねえぞォ!!」ブンッ

上条「うわっ!? だからそのハンマーはどこから出てくんだよ!?」

ビアージオ「や、やめろ! 本当の事を言われたからと言って暴れるな!」

ヴェント「本当の事って、やっぱりテメェらも思ってたんだなオラァ!!」ドゴッ

上条「お、おい! 火に油を注ぐような事言うなよ! いくらバナナに似てるからって……あっ」

ヴェント「へー、そっかそっか。痛い目に遭いたいみたいだねー?」

上条「いや、だからこれは」

ヴェント「……グッチャグチャの塊にすっぞコラァ!!」ドスッ バキッ

ビアージオ「お、落ち着け!」

女の子「あはは! おねえちゃんたちおもしろーい!」

ヴェント「こっちは面白くねえんだよォ!」ブンッ

上条「ひいいっ!? 死ぬ、間違いなく死ぬ!」
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:14:20.56 ID:ZmfZY2tJo

上条「という訳で、この子も一緒に連れて行く事になりました」

ヴェント「……まっ、別にいいケド」

女の子「バナナのお姉ちゃん、いっしょにおようふくみよー!」

ヴェント「ば、バナナってのはどうにかならないのカナー?」

女の子「えー、でもバナナにしか見えないよー?」

ヴェント「くっ……だから、コレは」

上条「ヴェント、諦めろ。子供は純真な心で言ってるんだ、寛大な心で許してやれ」

ビアージオ「その通り、『神の右席』であれば尚更の事だな」

ヴェント「チッ……分かったわよ。今日一日位はバナナになってやるか」

女の子「ねーねー早くー!」

ヴェント「わ、分かったって。そんなに慌てないの」

上条「ほら、急げよバナナ」

ビアージオ「そうだぞバナナ」

ヴェント「……バナナシェイクみたいになりたいワケ?」

女の子「早く早くー!」

ヴェント「あっ、コラ! 手を引っ張るなっつうの……」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:15:09.74 ID:ZmfZY2tJo

上条「良いのか? さっさと買って帰りたかったんじゃねーの?」

ビアージオ「構わん、わたしが何かする訳でも無いからな」

上条「相変わらず、身勝手な判断基準だな……分かりにくいっつーの」

ビアージオ「簡単な事だ、わたしが面倒な事をしなければそれで良い。それに」

上条「それに?」

ビアージオ「楽しそうにしている者共の邪魔をする訳にはいかないだろう?」

上条「……確かに、それもそうだな」

ビアージオ「仮に邪魔をしたとしても、後で恨まれて面倒なだけだからな」

上条「ブレねえなぁ……」

ビアージオ「さて、わたしもスーツを買わなければならない。そこまで案内しろ」

上条「スーツを買うのか? 昨日まで着てたのはどうしたんだよ?」

ビアージオ「……先ほども言ったが君には関係無い。詮索は慎んでもらおう」

上条「へいへい。まっ、俺みたいに何かに巻き込まれて着られない位にボロボロになった、とかじゃねーだろうしな」

ビアージオ「……っ」

上条「あれ? ……図星か?」

ビアージオ「……君には関係無いと言っているだろうが」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:15:56.26 ID:ZmfZY2tJo

紳士服店

ビアージオ「なるほど……悪くは無いデザインだな」

店員「今採寸させて頂ければ、明後日にはご用意できると思いますが」

ビアージオ「明後日だと? そんなに早くできるものなのか」

店員「お客様の体型でしたら、問題ないですね」

ビアージオ「流石は学園都市、と言った所か……」

上条「採寸すんのか? だったら俺が居る必要もねーよな」

ビアージオ「そうだな、ヴェントのもとへ向かってくれ」

上条「分かった、終わったりなんかあったりしたら連絡してくれ。じゃ、またな」
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:16:27.78 ID:ZmfZY2tJo

上条「さて、ヴェントはどこに……おっ」

女の子「あっ、お兄ちゃーん!」

上条「ここに居たのか、ヴェントはどこだ?」

女の子「バナナのお姉ちゃんならそこにいるよー」

上条「そっか。おっ、居た居た。よっ、何見てんだよ?」

ヴェント「あっ」

上条「ん? ……って、それは……」

ヴェント「……人が下着見てるトコを邪魔すんじゃねえっつうの!」バシッ

上条「い、痛い! 暴力はダメだって!」

ヴェント「いいからさっさと離れろ!」

上条「すいませんでしたー!」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:17:16.49 ID:ZmfZY2tJo

しばらくして

ビアージオ(さて、採寸も終わり料金も支払った。ヴェント達に合流するか)


初春「あれ? あそこに居るのは……」

佐天「ビアージオさんだね。おーい、ビアージオさーん」

ビアージオ「ん? 君達は……久しぶりだな」

美琴「こんにちは、ビアージオさんも買い物ですか?」

ビアージオ「そんな所だ。御坂美琴、今日はわたしを厄介な事に巻き込むなよ」

美琴「わ、私だって好きで巻き込まれたわけじゃないですよ!」

初春「えっと、ビアージオさん。昨日、確か……」

ビアージオ「……初春飾利、その話は」

佐天「なになに? 初春、何かあったの?」

初春「えっ? いや、その……」

ビアージオ「何も無かった、そうであろう?」

初春「は、はい……。佐天さん、何でも無いですよ」

佐天「いーや、そこまでいくと怪しすぎるでしょ。あたしに隠し事をしても良い事ないぞー? うりうりー」

初春「さ、佐天さん……やめてくださいよー」
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:17:44.53 ID:ZmfZY2tJo

美琴「……で、何があったんですか?」

ビアージオ「だから何も無いと」

佐天「見たところ……その顔の絆創膏が何か関係してるんじゃないですか?」

ビアージオ「それは間違いだな、これはひげを剃る時に手が滑ったからだ」

佐天「……初春、初春」

初春「えっ? 何ですか?」

佐天「ちょっと耳貸して……」

初春「は、はい……」

ビアージオ(……嫌な予感がするな)

佐天「(ビアージオさんの右手、何だかおかしくない? 昨日ので骨とかに何かあったのかな?)」

初春「ええっ!? でも、そこまでの怪我はしてないって報告が……あっ」

佐天「なるほどー……風紀委員にも関係する何かがあったんですね」

ビアージオ「……君には隠し事は向いていないようだな」

初春「ご、ごめんなさい……」
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/01/08(日) 17:18:12.71 ID:ZmfZY2tJo

ビアージオ(これ以上追及されるのも面倒だな……それに)

佐天「ほらほらー、隠しても何にもならないよー?」

初春「さ、佐天さん……」

美琴「……私もちょっと気になるかも」

佐天「前の事もありますからね、きっとビアージオさんには何か秘密が……」

ビアージオ「……仕方ない、昨日あった事だけなら話してやろう」

初春「ええっ!? だ、駄目ですよ……」

ビアージオ「半分は君の所業によるものだ、諦めろ」

佐天「そうだよ初春。……で、何があったんですか?」

ビアージオ「昨日、私がコンビニエンスストアに行った時――」


438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:21:06.21 ID:ZPMhzNcDo

遡って昨夜のとあるコンビニ

ビアージオ「……っ、無事か?」

女「あ、ありがとうございます……」

風紀委員男「だ、大丈夫です……でも、この十字架はいったい」

ビアージオ「……それについては話すつもりは無い。感謝しているのであれば黙っている事だな」

風紀委員男「はあ……分かりました」

黒子「風紀委員ですの! ここで爆発が確認されたという情報が……あら?」

ビアージオ「君は、白井黒子だったか」

黒子「ええ、間違いありませんの。……この十字架、また何か巻き込まれたようですわね」

ビアージオ「不本意だが、その通りだよ。……このまま帰っても良いか?」

黒子「だから駄目ですと何度言えば分かりますの? 少々お待ちくださいまし」

ビアージオ「仕方ないか……」
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:21:36.70 ID:ZPMhzNcDo

店長「あ、あの」

ビアージオ「ん? わたしに何か用でも?」

店長「いえ、あなたのおかげで被害は最小限で済みました。だからお礼を言おうと」

ビアージオ「……あ、そういう事か。それならば気にする必要は無い」

店長「そんな訳には! 本当にありがとうございました……何かお礼が出来ればいいのですが」

ビアージオ「わたしは何も求めてなどいない、黙って帰してもらえばそれで良いのだが……なあ?」

黒子「もちろん駄目ですの」

ビアージオ「……まったく、理解を示してもらいたいものだ」

店長「そんなことより、何か欲しい物とかありませんか? 商品券とかはどうですか?」

ビアージオ「必要ないと言っているのだが……まあいい、それで気が済むのならば頂くとしようか」
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:22:16.76 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ(とは言ったものの、何を受け取るべきか……ん?)

ビアージオ「……ゲコ太? おい、白井黒子。これはいったい何だ?」

黒子「あら、ゲコ太ですわね。子供達と一部の女子生徒に大人気のマスコットですの」

ビアージオ「学園都市ではこの蛙男が流行っているのか」

黒子「そういう事になりますわね」

ビアージオ(……シスター・アンジェレネは喜ぶか?)

店長「どうですか? 何にするか決まりましたか?」

ビアージオ(礼を受けるというのも面倒なものだな……これにしてしまうか)

ビアージオ「このゲコ太を貰おう。二、三個あればそれで良い」

店長「分かりました! いや、二、三個と言わずに何十個でも!」

ビアージオ「……それは遠慮させてもらおう」
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:23:10.25 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ「さて、わたしはいつまでここに居れば良いのだ?」

黒子「もう少々お待ちくださいまし。ほら、来ましたの」

黄泉川「爆破事件があったのはここであってる?」

黒子「ええ、間違いありませんの」

黄泉川「なるほど、最近連続して起きてる事件とほぼ一緒の手口じゃんよ。そして……」

ビアージオ「久しぶりだな。会う事は無いと思っていたが」

黄泉川「巨大な十字架に、特別滞在者の……ビアージオ・ブゾーニ、か」

ビアージオ「その様な顔をするな。これでもわたしは何人かの恩人になっているのだよ」

黄泉川「それは感謝したいけど、どうやらそっちの事は調べる事が出来ないみたいでね。
      ありがたいと思う反面、ちょっと困るってのが正直な所じゃん」

ビアージオ「確かにな。さて、わたしはどうすれば良いだろうか?」

黄泉川「詳細を聞く事は?」

ビアージオ「わたし自身に関わる事以外ならいくらでも話そう。ただし、手短にな」

黄泉川「ご協力に感謝します。……まずは、爆発した時の状況を知りたいじゃん」
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:23:38.65 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ「状況か……わたしはコンビニで商品を見ていた。その時、風紀委員と言ったか。
        それを名乗る男女二名が店の中に入ってきた。そして爆発の危険性があると注意されたのだよ」

黄泉川「で、逃げようとしたじゃん?」

ビアージオ「そのつもりだった。しかし、その爆弾と思われるものを見つけてしまってな」

黄泉川「そして爆発に対し十字架で対抗したって事で間違いは?」

ビアージオ「無い。これで全てだ、他に聞く事は?」

黄泉川「うーん、今の所は無いじゃんよ。また何かあったらお邪魔するかもしれないじゃん」

ビアージオ「では、今日はこれで失礼させてもらおう。それと、一つだけ聞かせてもらいたい」

黄泉川「どうぞ、答えられる範囲内であれば」
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:24:24.61 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ「学園都市、という場所ではこのように爆発事件など頻繁に起きるものなのか?」

黄泉川「……そう言われると、否定はできないってのが正直な所じゃん」

ビアージオ「子供ばかりのこの都市で、凶悪な犯罪が起きているという事か」

黄泉川「それも否定は出来ないじゃんよ。ただ、子供たちは悪くない。悪いのは大人だからね」

ビアージオ「その言い方からすると、この騒動も……いや、これ以上はやめておこう」

黄泉川「そうして貰えるとこちらとしても助かるじゃん。……お互いに、話したくない事、知られたくない事はあるじゃんよ」

ビアージオ「その通りだな。では、わたしはこれで失礼させてもらう」

黄泉川「ホテルまでお送りする必要は?」

ビアージオ「……自分で用意するのも面倒だ、今回は甘えるとしようか」

黄泉川「了解じゃん。それと、服も新しいのを用意した方が良いかもしれないじゃんよ?」

ビアージオ「服? ……なっ!? これは……もう着られないな」
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:25:10.00 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ「――という事があった。それでわたしはここに服を買いに来た、これで良いか?」

佐天「つまり、また巻き込まれちゃったって事ですね」

ビアージオ「……言い方が悪いが、そういう事になるか」

初春「さ、佐天さん……でも、風紀委員の男の人もおかげで助かったて報告も入ってますから」

美琴「へー。それだったら、むしろ感謝してもらいたい位ですよね」

ビアージオ「全くだな……さて、わたしはヴェント達と合流する。これで失礼するよ」

佐天「ヴェントさんも来てるんですか? じゃあ着いて行けば会えるんですね!」

ビアージオ「それはそうかもしれないが……ヴェントに会いたいのか?」

美琴「あれから一度も会ってないしね。ついて行ってもいいですか?」

ビアージオ「ならばついて来い、ヴェントも喜ぶだろう」

初春「本当ですか? じゃあ一緒に行きましょう!」

ビアージオ「賑やかなのは良いが、騒ぐのは控えてもらいたい所だな」
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:25:39.95 ID:ZPMhzNcDo

上条「もう会計は済んだか?」

ヴェント「ええ、待たせたわね。さて、後は何をするか……何かしたいコトはある?」

女の子「うーんとねー……」グー

ヴェント「今の音……お腹が減った?」

女の子「う、うん……」

上条「じゃあ、ファミレスでも行くとするか。それで良いよな?」

ヴェント「良いけど、ビアージオのヤツはどこに行ったのかしら」

上条「すっかり忘れてた……電話してみるか?」

ヴェント「それが良いわね」

上条「そうと決まれば早速……ん? 何だよ、何でこっち見てんだ?」

ヴェント「私がそれを使って代わりに 上条「却下」

ヴェント「……チッ」

上条「その内使えるようになるから……それまでは我慢してくれ」

ヴェント「でも、いつかは使えるようにならないといけないワケだ。だったら今使っても」

上条「……連絡が取れなくなっても良いんだな?」

ヴェント「へえ、なーにが言いたいのかなー?」

上条(この流れはマズイ……ともかく電話を)ピッ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:26:53.13 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ「さて、どこに居るのか……ん? 電話か」ピッ

上条『おっ、繋がったか。こっちの買い物が済んだみたいだから連絡したんだけど』

ビアージオ「そうか。上条当麻、今どこに居る? 合流しようと思ったのだが見つからなくてな」

上条『今いる場所はえーっと……三階の――あっ、おい! やめろ!』

ビアージオ「うん? どうした、何かあったか?」

上条『駄目だっつってんだろうが! 待て! あと数か月後にはきっと!』

ヴェント『それは私が家電に慣れるのに数か月かかるって言いたいワケ?』

上条『だ、誰もそういう風には!』

ヴェント『そういう風にしか聞こえねえんだよ!』

上条『や、やめろおおおお!!』プツッ

ビアージオ「……切れた、か」

美琴「な、なんか大変そうな感じでしたね」

ビアージオ「……とりあえず、三階に行くぞ。破壊される前にな」

初春「破壊? 何の事ですか?」

ビアージオ「それは……いや、話すのも面倒だ。実際に見れば分かるだろう」

佐天「? まぁ、とりあえず行きましょっか」
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:27:19.76 ID:ZPMhzNcDo

三階

女の子「がんばれー! あっ、あぶない!」

ヴェント「さっさと寄越せって言ってんだろうがぁ!!」

上条「渡さねえっつってんだろうがぁ!!」


ビアージオ「……騒がしいと思ったら、やはりか」

初春「ヴェ、ヴェントさん……と、誰でしょうか?」

美琴「あれ? あの女の子は確か……」

女の子「あっ! ときわだいのお姉ちゃんだ!」

美琴「あの時のカバンの女の子よね。どうしてここに?」

女の子「お兄ちゃんとお姉ちゃんとお買いものしてたの!」

佐天「へー……買い物にしてはずいぶん激しいけど」

ビアージオ「まったくだな……おい、ヴェント」

ヴェント「はぁ……はぁ……ん? 何よビアージオ、邪魔するつもり?」

ビアージオ「邪魔になってるのはお前達だ……周りを見ろ」

上条「周り? ……あっ」

佐天「周りに人だかりができてるのに、気付かなかったみたいだね……」

初春「あはは……そんなに暴れてたらこうなりますよね」
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:28:09.20 ID:ZPMhzNcDo

ヴェント「チッ……運が良かったな」

上条「こちとら不幸しか無くて毎日憂鬱だっつーの……」

ビアージオ「大人しくしろ。せっかくお前に会いに来たのだからな」

ヴェント「ん? あぁ、そこに居るのは――」

佐天「どうもー、相変わらず派手にやってますねー」

初春「さ、佐天さん! ど、どうも……こんにちは」

ヴェント「久しぶりね、奇遇じゃない」

美琴「元気でしたか? って聞くまでもなさそうで――あああ!?」

佐天「えっ? 御坂さん、急にどうしたんですか」

上条「げっ……ビリビリ中学生」

ビアージオ「ほう、知り合いだったのか」

上条「知り合いっつーか……あんまり会いたくは無いっつーか……」

美琴「今日こそは逃がさないわよ! 決着を付けてやるんだから!」
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:28:33.57 ID:ZPMhzNcDo

ヴェント「決着? どういうコト?」

上条「何でもねーよ……。だから、決着も何もこっちは戦いたくなんかないって言ってんだろうが」

美琴「へえ、勝ったまま終わらせたいって訳? そんな事させるかっつーの!」

初春「み、御坂さん……落ち着いてくださいよー」

佐天「因縁ってヤツなのかな?」

ビアージオ「なんだか面倒な事になってきたな……」

女の子「おじちゃん、わたしおなかへった……」

ヴェント「ってワケだから、何か食べようって話をしてたトコ」

ビアージオ「分かった、どこかで休むとしよう。しかし、食事ができる場所はどこにあるか……」

佐天「あっ、だったらあたし達が案内しましょうか?」
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:28:59.40 ID:ZPMhzNcDo

ヴェント「それは助かるわね。お願いしようかしら」

ビアージオ「探すのも面倒だからな……佐天涙子、案内を頼もう。礼として昼食をご馳走すれば良いか」

佐天「本当ですか? ラッキー! 行こうよ初春!」

初春「じゃ、じゃあお言葉に甘えて。でも、あの二人はどうするんですか?」


美琴「表出なさい! 今日こそその勝ち誇った顔をギャフンといわせてやるんだから!」

上条「だから勝負なんかしねえって! それに勝ち誇ってもいねえよ!」


佐天「うーん……面倒だから放っておこっか」

ビアージオ「気が合うな、わたしもそう思っていた所だ」

女の子「しゅっぱーつ!」

ヴェント「こら、走らないの」

初春「良いのかなぁ……ん?」プルル

初春「電話、白井さん? もしもし?」

黒子『初春! 虚空爆破事件の続報ですの!』

初春「えっ!?」
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:29:25.23 ID:ZPMhzNcDo

黒子『学園都市の監視衛星が、重力子の爆発的加速を観測しましたの!』

初春「観測地点は!?」

黒子『近くの警備員を急行させるよう手配していますの! 貴女は速やかにこちらに戻りなさい!』

初春「だから観測地点を!」

黒子『第七学区の洋服店! セブンス・ミストですの!』

初春「セブンス・ミスト……丁度良いです! 今、私そこに居ます! すぐに避難誘導を開始します!」プツッ

佐天「う、初春……?」

初春「落ち着いて聞いてください、虚空爆破事件の犯人の次の標的が分かりました」

ヴェント「グラビトン? 何それ?」

ビアージオ「昨日の爆発事件か……で、それはどこだ、初春飾利」

初春「……この店です!」
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:30:11.34 ID:ZPMhzNcDo

佐天「ええっ!? このお店、爆破されちゃうの!?」

ヴェント「爆破? ちょっとビアージオ、説明して」

ビアージオ「面倒事が起きたというだけだ、知らなくとも良い」

初春「早くこの建物から避難させないと……御坂さん!」

美琴「だからこの電撃でアンタを今日こそ! って、初春さん? どうしたの?」

初春「この建物が爆破されるかもしれないんです!」

上条「ば、爆破!?」

美琴「ほ、本当に?」

初春「はい……御坂さん、すみませんが避難誘導に協力してください」

美琴「わ、分かった」

初春「佐天さんは避難を。それにヴェントさん達も」

佐天「えっ? う、うん……分かった。初春も気を付けてね」

初春「では私は誘導してきます!」

ヴェント「この都市も賑やかなモンね。……ん? どうかした?」

佐天「えっ? ……いえ、何でも無いですよ。さっ、早く逃げましょう!」

ビアージオ「それが良さそうだな、食事を一緒にとはいかなかったか」

上条「んな事はどうでもいいからさっさと逃げるぞ!」
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:31:14.33 ID:ZPMhzNcDo



上条「全員、無事に避難したみてーだな」

ヴェント「みたいね。……って、あの子はどこに居るの?」

佐天「あの子って、あの女の子ですか? あっ……確かにどこにも居ない」

ビアージオ「まさか……中か?」

上条「この人ごみの中に居る可能性もある……三人で人ごみの中を探してくれ!」

ヴェント「待ちなさい、アンタはどこに行くワケ?」

上条「俺は中を探す! 急がねえと……」

ヴェント「だったら、私も行くから一緒に探すわよ」

上条「何言ってんだよ! もし爆発したら」

ヴェント「いいから急ぎなさい、何も言わずにさっさと走れ!」ダッ

上条「あっ! お、おい!」ダッ

佐天「い、いいんですか?」

ビアージオ「ヴェントが居れば心配する必要は無いだろう。わたし達は人ごみを探すぞ」

佐天「は、はい!」
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:31:50.34 ID:ZPMhzNcDo

時間は少し前

女の子「本当にお兄ちゃんとお姉ちゃんたちは上にいるのー?」

??「あぁ、君を探してたから早く行ってあげると良い。それと、これを」

女の子「? このぬいぐるみはなーに?」

??「これを腕に緑の飾りをしたお姉ちゃんに渡してもらえるかな?」

女の子「うん! わかったー!」

??「ほら、さっさと行かないと置いて行かれるよ」

女の子「うん! ばいばーい!」

??(……これで、これで……!)
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:32:40.13 ID:ZPMhzNcDo

店内

初春(全員避難完了……とりあえず、白井さんに報告して)プルル

黒子『初春!』

初春「全員、避難終わりました」

黒子『今すぐそこを離れなさい!』

初春「えっ?」

黒子『過去の人的被害はビアージオさん一名を除き風紀委員だけですの!
   犯人の真の狙いは、観測地点周辺にいる風紀委員……今回のターゲットは』

黒子『――貴女ですの! 初春!』

初春「……えっ!?」

女の子「お姉ちゃーん!」

初春(あっ……まだ逃げられてなかったんだ。早く逃げ……ぬいぐるみ?)

女の子「はい、これあげる!」

初春「私に……?」

女の子「うん! めがねをかけたお兄ちゃんが渡してって。はい!」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:34:00.52 ID:ZPMhzNcDo

上条「はぁ、はぁ……あの子はどこに!?」

ヴェント「……居た!」


初春「これはいったい……っ!?」

初春(ぬいぐるみが急に縮んで……まさか、これが爆弾!? 少しでも遠くへ……!)

女の子「あれ? どうして投げちゃう 初春「伏せて!」

上条「大丈夫か!? ……っ! あれが爆弾!?」

上条(クソッ……! 右手でどうにか……っ!? ヴェント!?)

 上条は初春と少女を護るために前に立ち、右手を構えた。
だが、それが何を意味するかは上条本人しか知らない。
その上条の五メートル前に、さらに人が立っていた。それは――

上条「ヴェント! 早く逃げろ!!」

ヴェント「――ハッ、この私が爆弾ごときで、」

 上条はヴェントに逃げろと叫ぶ。しかし、間に合わなかった。
初春の投げたぬいぐるみは凄まじい速度で収縮し、轟音と共に爆発した。

上条「ヴェントぉぉ!!」

 爆風がヴェントに襲い掛かる、それを上条はただ見ている事しか出来なかった。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:34:53.68 ID:ZPMhzNcDo

ビアージオ「佐天涙子、そっちはどうだ」

佐天「こっちにもいません……やっぱり中に――っ!?」

「ば、爆発したぞ!」 「まさか、最近起きてる事件の……」
「まだ中に人居るみたいだぞ……」「さっき誘導してた風紀委員の女の子は……」

ビアージオ「爆発……本当に爆破されたのか」

佐天「う、初春が! 中に初春がまだ!! まさか、そんな……初春!!」

ビアージオ「落ち着け、心配する必要は無いと言っただろう」

佐天「そんな事……そんな事言われても! それにどうして心配無いって言い切れるんですか!?」

ビアージオ「答えてやろう。それは――『前方のヴェント』が居るからだ」

佐天「ぜんぽうの……ヴェント?」

ビアージオ「あぁ、ローマ正教が保証する。君の友人は無事だ、だから安心しろ」

佐天「わ、分かりました……初春……」

ビアージオ(さて、ともかくあの女の子を……ん?)

??「ふふ、ふふふ……」

ビアージオ(爆破されたのを見て笑う、か。……面倒だが、確かめてみる価値はありそうだな)
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/04(土) 17:35:37.78 ID:ZPMhzNcDo

上条(な、何だ……この風は……竜巻?)

 爆発は防げなかった。しかし、上条や後ろの少女二人には傷一つついていない。
それは何故かと考えた時、そこに存在する凄まじい竜巻のおかげと誰もが思うだろう。
その竜巻は次第に威力を弱め、その中から一人の女が現れた。それは紛れもなくヴェントであった。

上条「ヴェン……ト……?」

ヴェント「なに呆けた顔してんだか……。私が巻き込まれたとでも思ったワケ?」

上条「この風……お前がやったのか?」

ヴェント「それ以外に答えがあんのかしらねぇ」

上条「……じゃあ、爆風を防いだのは」

ヴェント「私ってコトになるか。信じられないって顔してるみたいだけど」

上条「あ、あぁ……」

ヴェント「まったく……いつも言ってるでしょ?」

ヴェント「――私は『前方のヴェント』、『神の右席』の一人って」

474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:04:00.24 ID:6FOlyZuro

上条「……その神の右席とかいう訳分かんねーので説明されてもなぁ」

ヴェント「気にしないコトね。私がこの場を救った、それ以外考える必要は無い」

上条「それもそーか……おい、大丈夫か?」

初春「は、はい……私は大丈夫です。この子も……」

女の子「う、うう……」

ヴェント(迷いなくこの子を庇ったワケか……イイ子、って言葉では足りないわね)

上条「そっか……それなら良かった。ヴェント、お前のおかげだな」

ヴェント「……正直、あんまり目立ちたくは無いってのが本音だけど」

女の子「う、うう……バナナのお姉ちゃん……」

初春(……バナナ?)

ヴェント「うっ……その呼び方はやめてくれるかなー?」

初春(あぁ……バナナってヴェントさんの服の事か)
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:05:28.08 ID:6FOlyZuro

女の子「う、うう……ああああん!!」

ヴェント「えっ!? ちょ、ちょっと、急に泣き出してどうしたの?」

上条「……無理もねーだろ、目の前で爆発が起きたんだ」

ヴェント「……仕方ないわね。ほら、こっち来なさい」

女の子「ぐすっ……こわかった、こわかったよ……」

ヴェント「よしよし……」


上条「……とりあえず、誰も怪我せずに済んだみてーだな」

初春「そうですね……ヴェントさんには感謝したいですけど」

上条「ん? 何か問題でもあんのかよ?」

初春「ビアージオさんも同じように、前に事件を解決してくださった事があったんです」

上条「へぇ、面倒臭いとか言って放って置きそうなもんだけどな」

初春「でも……その時もやはり目立ちたくは無いと言って、困ってたみたいで」

上条「うーん……外から来たんだし色々あんのかもしんねーな」
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:05:49.89 ID:6FOlyZuro

初春「ええ……ですから、少し申し訳ない気が」

上条「何か良い方法は……」


美琴「初春さん! 大丈夫!? 爆発に巻き込まれて……え?」

上条「あっ、ビリビリ中学生」

美琴「ビリビリじゃないっての! ……ってそうじゃなくて、これはいったい」

初春「? どうかしましたか? 私達なら大丈夫ですよ」

美琴「いや、爆発があったのに……なんか不自然な跡っていうか」

上条(……鋭いな、まあ別にコイツに気付かれても――そうだ!)

上条「なぁ、頭に花乗っけた風紀委員さん」

初春「そ、それって私の事ですか?」

上条「あぁ、ちょっと耳貸してくれ」

初春「えっ? は、はい……」

美琴「ちょ、ちょっと! なに初春さんと内緒話してんのよ!」

上条「―――を、―――の――にして」

初春「ええっ!? そ、そんな事……」

上条「そうすれば誰も困らないだろ? アンタが証言してくれれば良いんだからさ」

初春「うーん……」
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:06:19.12 ID:6FOlyZuro

美琴「だーから無視すんなっつーの! ……この跡から考えて、
    明らかに爆風を防いだ何かがあったのは分かるわよ。で、それはアンタがやったの?」

上条「あぁ、それなんだけど実は」

ヴェント「(……ちょっと、それは言って欲しくないって言ったの覚えてる?)」

上条「(大丈夫だって、俺に任せとけよ)」

美琴「今度はヴェントさんと内緒話……いったい何があったのよ!?」

上条「簡単に言うとだな、爆風を防いだのは」

美琴「防いだのは?」

上条「ビリビリ、お前だ」

美琴「……は?」
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:06:55.35 ID:6FOlyZuro

上条「今回の事件は、常盤台のお嬢様であらせられるビリビリ様が解決したって事だな」

美琴「ちょ、ちょっと!? いったい何の事よ!」

初春「御坂さん……この場は黙って手柄を受け取ってください」

美琴「う、初春さんまで……何がどうなってんの?」

上条「これで良いよな、ヴェント?」

ヴェント「なるほど……分かった、後は頼んだわ」

美琴「ヴェントさんまで……誰か説明してよ!」

初春「あの……警備員の方が来られると思うのですぐに出ないと」

上条「確かに、見つかったら面倒な事になりそうだな……行くぞ、ヴェント」

ヴェント「そうした方が良さそうね。ほら、アンタも一緒に」

女の子「う、うん……」

上条「じゃ、後は頼んだぞー!」ダッ

美琴「ま、待ちなさいってばー!!」

479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:07:14.27 ID:6FOlyZuro

美琴「まったく……いったい何なのよ」

初春「えっとですね……実は、助けてくれたのはヴェントさんなんです」

美琴「えっ? ヴェントさんが爆風を防いだって言うの?」

初春「はい、物凄い風が吹いたと思って見たら……竜巻が巻き起こっていたんです」

美琴「……それを、ヴェントさんが?」

初春「ええ、……多分」

美琴「そっか、ヴェントさんもビアージオさんみたいに何か……」

初春「能力者……なんですかね」

美琴「それは私にも分からないわね……部外者の能力者なんて聞いた事ないし」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:07:59.38 ID:6FOlyZuro

美琴「ヴェントさんの事は分かったけど……どうして私の手柄にしないといけないの?」

初春「部外者だから目立った事は控えたい、とヴェントさんが言ってたんです」

美琴「前にも、ビアージオさんがそんな事を言ってたわね」

初春「ですから、せっかく助けてもらったのに迷惑がかかるような事は……」

美琴「なるほど……私が助けたって言えば確かにみんな信じるかもしれないか」

初春「はい、それに……」

美琴「それに?」

初春「……多分、前のビアージオさんみたいに……どうせ揉み消されるんじゃないかなーって」

美琴「それもそうね……ん? 足音がする……」

初春「警備員の人達が来てくれたのかもしれませんね。御坂さん、お願いします」

美琴「はいはい……ヴェントさんのために、ね」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:09:28.61 ID:6FOlyZuro

黄泉川「誰か居るじゃん!? 怪我人は……ん?」

初春「お待ちしていました。誰も怪我はしていません」

黄泉川「相当な爆発だって聞いたけど……本当に大丈夫じゃん?」

初春「ええ、本当に大丈夫ですよ。実は……この方のおかげなんです!」

黄泉川「この方? って……もしかして、常盤台中学の」

初春「はい! 常盤台中学が誇る無敵の電撃姫! 超電磁砲こと」

美琴(う、初春さん……急にテンションが……)

初春「――御坂美琴さんです!」

美琴「ど、どうも……」

初春「御坂さんの活躍により、私は怪我せずに済みました」

黄泉川「なるほどねぇ、流石は超能力者って感じじゃん?」

美琴「そ、そうですかね……」

黄泉川「協力に感謝するじゃん。詳しい話を聞くから一緒に来てもらうじゃんよ」

美琴「……やっぱりそうなるのね」

初春「……すいません、御坂さん」
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:09:57.12 ID:6FOlyZuro



佐天「あっ……ヴェントさーん!」

ヴェント「待たせたわね。やっぱりこの子は中に居たわ」

佐天「そっか……無事で良かったー」

女の子「バナナのお姉ちゃんがたすけてくれたの!」

佐天「バナナ? 助けた?」

ヴェント「……気にしないでもらえると嬉しいわ」

佐天「は、はぁ……」

上条「ところで、ビアージオはどこに行ったんだ?」

佐天「あたしと一緒に探してたはずなんですけどね……」

ヴェント「ったく……どこに行っちまったの ビアージオ「わたしならここに居るぞ」

ヴェント「っ!? 急に現れるんじゃないわよ……ビックリした」

佐天「あれ? ビアージオさん、ずっとここに居ました?」

ビアージオ「いや、野暮用があってな。少し離れた場所に居た」

上条「野暮用? 何だよそれ?」

ビアージオ「なに、気にする必要は無い。……面倒事を一つ解決したというだけだ」

上条「アンタにとっては、ほとんどが面倒事になりそーだけどな」

ヴェント「間違ってないわね」
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:10:25.37 ID:6FOlyZuro

ビアージオ「わたしの事はどうでもいい。その少女は無事だったようだな」

上条「あぁ、誰も怪我せずに済んだよ」

佐天「う、初春も無事でしたか?」

ヴェント「ええ、心配しなくて良いわ」

佐天「そっか……ほっ」

上条「でも、あの風紀委員の子も大したもんだよな」

ヴェント「本当ね、何の迷いも無くこの子の盾になろうとしたんだから」

佐天「初春は……あたしの自慢の友達ですから。……でも、あたしは」

ビアージオ(……ん?)

上条「えっ? 最後の方聞こえなかったんだけど、何て言ったんだ?」

佐天「な、何でも無いんです! 気にしないでください!」

ヴェント「そう? ならいいケド」
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:10:53.62 ID:6FOlyZuro

上条「……なんか、急に腹減ってきた」

ビアージオ「そういえば、昼食に行く途中だったか……」

女の子「おじちゃん、お姉ちゃん……おなかへったよ」

ヴェント「どこで食べるって話だったかしら」

ビアージオ「佐天涙子に案内してもらおう、という事だったはずだ」

佐天「あっ、そうでしたね。じゃあ、一緒に今から行きましょっか!」

女の子「うん! いこーいこー!」

上条「ずいぶん遅めの昼食になっちまったな……さっさと行くとするか」
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:11:20.47 ID:6FOlyZuro

ファミレス

上条「……まぁ、もう三時だし、空いてるのつったらファミレスぐらいしかねーよな」

佐天「あ、あははー……なんかすいません」

ビアージオ「なに、気にするな。食すもの全てが恵み、不満など抱く訳が無い」

上条「おぉ……その格好でそういう事言うとそれっぽく見えるな」

ビアージオ「……わたしを何だと思っている」

上条「面倒な事が嫌いなオッサン」

ヴェント「間違いないわね。そんなコトよりさっさと注文したいんだけど」

佐天「そ、そうですね。子供用のメニューもあるかな?」

上条「えーっと……あったあった。ほら、こっから選びな」

女の子「いっぱいあるー! ねーねー、どれがいいかなー?」

ヴェント「そうねぇ……オムライスとか良いと思うケド」

女の子「オムライス! おいしそー……」

上条「いやいや、こっちのハンバーグだろ。絶対こっちの方がウマいって」

女の子「あー、ハンバーグだ! こっちもいいなー……」

ヴェント「……あん?」
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:11:58.47 ID:6FOlyZuro

ヴェント「はぁ? どう考えてもオムライスでしょ、何考えてんだか」

上条「そっちこそ何考えてんだよ。子供はハンバーグが好きに決まってんだろ」

ヴェント「…………」 上条「…………」

ヴェント「オムライス!」 上条「ハンバーグ!」

ヴェント「……へえ」 上条「……ふうん」

上条「どうやら、言っても聞かねえみたいだな……」

ヴェント「そっちこそ、ずいぶん頑固みたいね……」

上条「……やんのか?」

ヴェント「ハッ、イイ度胸じゃない。この私に勝負を挑むなんてよぉ!」

上条「いいぜ……そっちがその気なら、こっちだって本気で!」


佐天「あ、あのー……メニューの事でそんなに熱くならなくても」

ビアージオ「放っておけ、相手をしても面倒なだけだ」
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:12:23.86 ID:6FOlyZuro

佐天「はぁ……あれ? このお子様セットにはハンバーグもオムライスもありますよ」

ビアージオ「本当だな。これにするか? どうやら玩具も付いてくるみたいだが」

女の子「おもちゃ? じゃあそれにするー」

佐天「えーっと、それだとあの二人は……」

ビアージオ「無駄な争いをしているという事になるな、もとから無駄だった気もするが」


上条「ハンバーグは意外と安く作れて簡単なんだぞ!」

ヴェント「オルソラの作ったオムライスを食べてもそんなコトが言えんのか!?」

上条「オルソラって誰だよ!?」

ヴェント「オルソラはオルソラに決まってんだろうが!」


ビアージオ「……賑やか過ぎて困るな」

佐天「そうですね……」
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:13:09.11 ID:6FOlyZuro

ビアージオ「おい、お前達」

上ヴェン「あぁん!?」

ビアージオ「他の客の迷惑だ、静かにしろ。そして」

女の子「わたしもうきめたよー。お兄ちゃんとお姉ちゃんもはやくきめてねー」

上条「ええっ!? もう決めたのか?」

佐天「お子様セットにはハンバーグとオムライス、それにおもちゃも付いてくるんですよ」

ヴェント「……だったら仕方が無いか。それと、もう私は決まってるわ」

上条「俺もだ、みんな決まってんだったら注文するけど」

佐天「あたしも大丈夫です」

ビアージオ「すぐに呼べ、これ以上待つのは面倒だ」

上条「分かったよ。えーっと……あったあった、よいしょ」ピンポーン

ヴェント「……!? 今のは何!?」

上条「えっ? 今のって……」

佐天「えーっと、このボタンですか?」
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:13:30.22 ID:6FOlyZuro

ヴェント「そう、それ。……今、押したら音が」

佐天「これを押すと店員さんが来てくれるんですよー。あっ、ほら」

店員「お待たせしました、ご注文をお伺いいたします」

ビアージオ「サンドウィッチセットを一つ、それとお子様セットを一つ」

佐天「あたしは……オムハヤシでお願いしまーす」

ビアージオ「あとはお前達だけだ、早くしろ」

ヴェント「分かってるわ、私は……」

上条「ちょっと待てって、俺は……」

上ヴェン「マカロニグラタンで」

上条「……あ?」 ヴェント「……ん?」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:14:10.77 ID:6FOlyZuro

上条「……おい、真似すんじゃねえよ」

ヴェント「そっちこそ真似してんでしょうが。……まぁ、私に合わせておけば間違いはないケド」

上条「そっちが真似したんだろうが!? 俺は最初からマカロニグラタンにしようと思ってたんだ!」

ヴェント「無理しなくてもいいじゃない、認めてラクになれば良いのに」

上条「そっちこそ……あぁ、そっか。そういう事か……なるほどねぇ」

ヴェント「何がなるほどなのよ」

上条「いやいや、別に? 何でもねーって」

ヴェント「あん? 言いたいコトがあるならさっさと言えっての」

上条「いや、ただ……最近は俺に頼ってばっかだから、こういう所でも頼っちまうのかなーって思っただけだ」

ヴェント「……ハッ、いつ誰がアンタを頼ったって言ってんのかしら」

上条「誰って、お前に決まってんだろうが」

ヴェント「へぇ、……この『神の右席』に良くもまあそんなコトが言えるじゃない」

上条「……神の右席だか何だか知らねーけど、俺の手を握らないと家電に触れないヤツが何言ってんだよ」

ヴェント「ぐっ……それは……」
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:14:42.28 ID:6FOlyZuro

佐天「……あのー、ちょっと良いですか?」

上条「ん? 別に良いけど、何だ?」

佐天「えっと……手を握るとかってのがちょっと気になって。お二人って、そういう関係だったりするんですか?」

上条「はぁ!? ンな訳ねえだろうが!」

佐天「でも、手を握るって、普通の関係では無いですよね?」

上条「違うんだって、それはまた別の問題で……」

ヴェント「……まぁ、そっちの方は私に気があるみたいだけど」

佐天「ええっ! そうなんですか!?」

上条「だ、だからそれは違うっつってんだろうが!」

佐天「おっと、なんか急に焦って怪しいですねー?」

ヴェント「そろそろ認めてもイイのに、無理しちゃって」

上条「もう何度目だよ……このやり取り」
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:17:48.57 ID:6FOlyZuro

店員「あのー……ご注文は……」

女の子「おなかへったー……」

ビアージオ「……仕方ないな。先程注文したのとマカロニグラタンを二つだ、コーヒーは食後で。以上で頼む」

店員「は、はい。かしこまりました」


佐天「その辺を詳しく教えてくださいよー」

上条「だから何でもねえんだって! 俺は何もしてねえってば!」

ヴェント「……押し倒すような男が言えるコトじゃないわね」

佐天「お、押し倒す!?」


女の子「ねーねーおじちゃん、おしたおすってどういうこと?」

ビアージオ「それは……また後であの二人にでも聞いてくれ。きっと答えてくれるはずだ」

493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:18:22.30 ID:6FOlyZuro

佐天「へー、上条さんはツンデレなんですねー」

上条「だから違うって言ってんのに……」

ヴェント「それにしても、また変な事件に巻き込まれたモンね……」

ビアージオ「まったくだな……落ち着いて買い物も出来たものでは無い」

佐天「あの、爆発から初春を守ってくれたのはヴェントさんなんですか?」

ヴェント「……どうしてそれを?」

佐天「ビアージオさんが、ヴェントさんは……えっと、前方のヴェントだからなんとかしてくれるって」

ヴェント「ずいぶん口が軽いみたいねぇ、ビアージオ?」

ビアージオ「……普段から口にしているお前が言うな」

上条「その、前方のヴェントってのは何なんだよ? 前方って言うからには、後方も居るのか?」

ヴェント「……気にしない方が身のためってトコね。誰も傷つかなかった、それで十分でしょ」

佐天「……それもそうですね。初春を助けてくれて、ありがとうございました」

ヴェント「私よりも、あの子の方が凄いけどね。アンタも、あの花乗っけたお姉ちゃんにお礼言うのよ?」

女の子「うん! わたし、ちゃんとありがとうっていってくる!」

ビアージオ「……注文したものが来たか。まずは空腹を満たすとするか」

上条「そうだな、色々ありすぎてもう限界だ……」

佐天「ですね、早速食べましょっか」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:18:50.93 ID:6FOlyZuro

佐天「ふう……ごちそうさまでしたー」

ビアージオ「悪くは無かったな、……少し休むとするか」

女の子「うう……わたし、トイレ行ってくる」

上条「一人で大丈夫か?」

女の子「うん、だいじょうぶだよ。……ひとりでもこわくないもん」

ヴェント「(……なんか不安そうな顔してるわね)」

上条「(……爆発した場所に居たんだ、ちょっとまだ怖いんじゃねえか?)」

佐天「……あっ、あたしも行こうかな。一緒に行く?」

女の子「う、うん! お姉ちゃん、いこー!」

佐天「じゃあ、あたしも一緒に行ってきますねー」


上条「……察してくれたみたいだな」

ヴェント「そうね……あの子達と知り合えて良かったわ」

ビアージオ「まだ子供にもかかわらず、人格者といえるな。異教徒なのが残念だ」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:19:21.29 ID:6FOlyZuro

ビアージオ「……だが、それと同時に過ちを犯す者もいるのは悲しい事だな」

ヴェント「銀行強盗に爆発事件、物騒にも程があるわね」

上条「それだけ聞けば……物騒ってのは違いねーか」

ビアージオ「上条当麻、この都市では普段からこのように事件が起きているのか?」

上条「起きる時もあれば起きない時もある、それは『外』と変わんねーよ」

ビアージオ「しかし、この都市の人口の九割が学生と聞いた。……つまり」

ヴェント「子供が犯罪、か。それも凶悪なヤツを」

上条「……そういう事になるよな」

ビアージオ「まぁ、君に言っても意味が無いか。その様な行いをする者に問題があるのだからな」

ヴェント「大人しく暮らしてれば良いのに、力なんて持つからそんなコトになんのかしらねぇ……」

上条「力って言われても、俺にはどの道関係無いけどな」

ビアージオ「関係無い? 君も学園都市では能力者と呼ばれる存在なのだろう?」

上条「いーや、俺は無能力者なんだよ。無能力、言葉通りゼロって訳だ」

ビアージオ「つまり……能力に関しても落第生という事か」

上条「……間違ってねえけど、もう少し気を遣った言い方をしてくれよ」
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:19:47.84 ID:6FOlyZuro

ヴェント「つまらないわね、せっかく学園都市に居るのに能力が使えないなんて」

上条「いや、別に能力が何も無いって訳でも無いんだ」

ビアージオ「ほう、では君の能力とはいったい何なのだ?」

上条「あぁ、実は――」

佐天「お待たせしましたー」

女の子「しましたー!」

ヴェント「帰ってきたわね。イイ子にしてた?」

女の子「うん!」

佐天「あれ? 何か話してる途中でした?」

ビアージオ「あぁ、上条当麻は無能力者と呼ばれる落第生だ、という話をな」

佐天「……えっ?」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:20:14.16 ID:6FOlyZuro

上条「だから落第生じゃねえ……って言い切れない自分が悔しい」

ヴェント「別に何でも良いから……ん?」

佐天「…………」

ヴェント「……急に黙って、何かあったのかしら?」

佐天「えっ? あっ……だ、大丈夫ですよ! ちょっとぼーっとしてただけで……」

ヴェント「本当? 無理しない方が良いと思うケド」

佐天「そ、そうですね……じゃあ、帰って休もうかな」

ビアージオ(……急に様子が変わったが、何か問題でもあったか?)

上条「そろそろ四時か……とりあえず、店を出て帰るとするか」

ヴェント「それもそうね。ビアージオ、支払いよろしく」

佐天「あっ、お金……えーっと、あたしの食べたのは」

ビアージオ「わたしが払うと言ったのを忘れたか? 先に出ていろ、すぐに終わる」

佐天「そういえばそうでしたね……じゃあ、甘えちゃいます」
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/02/15(水) 17:20:59.03 ID:6FOlyZuro



佐天「じゃあ、この子はあたしが送っていきますね」

女の子「お姉ちゃんとお兄ちゃんとおじちゃん……かえっちゃうの?」

ヴェント「またすぐに会えるわ、だからそんな顔しないの」

女の子「ほんと? お姉ちゃんとまた、おかいものできる?」

ヴェント「ええ、だから今日はここまで。分かった?」

女の子「……うん! ばいばーい! バナナのお姉ちゃーん!」

ヴェント「ぐっ……だから、その……」

上条「我慢しろって。じゃあなー、気をつけて帰れよー!」

女の子「またあそぼーねー!」

佐天「さようならー」


ヴェント「……騒がしい子だったわね、良い子には違いないけど」

ビアージオ「あれ位で無いと子供は困る。……そのまま迷わずに育ってもらいたいものだな」

上条「そうだな……さて、俺達も行くとするか」

505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:28:16.99 ID:Yf7VIiKAo

上条の寮の前


上条「はぁ……疲れた。自転車をセブンス・ミストに置いてたのをすっかり忘れてた……」

ビアージオ「遅かったな」

上条「相変わらず、そっちはタクシーで先に着いてるってのがな……はぁ」

ヴェント「で、ビアージオ。私の部屋ってのはどこにあんのかしら」

ビアージオ「一階の奥だ。誰も使っていない部屋を特別に、お前のために使えるようにしておいた」

ヴェント「へぇ、早速見せてもらおうじゃない」

上条「でも、大丈夫なのか?」

ビアージオ「どうした、何か心配な事でもあるのか?」

上条「ヴェントはスイッチをまだまともに押せねーから……普通に生活するのも難しいんじゃ」

ヴェント「……なーんか引っ掛かる言い方ね」

ビアージオ「安心しろ、前も言ったようにその対策は万全だ」

上条「本当か? それなら良いんだけど」

ビアージオ「実際に見れば分かる、ついて来い」
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:29:07.18 ID:Yf7VIiKAo

新・ヴェントの部屋

上条「……なるほどな、これなら安心ってのも納得できる」

ビアージオ「特別に作らせた部屋だ、ヴェントもこれなら何も気にせず生活ができるだろう」

ヴェント「ちょ、ちょっと! テレビが勝手に……」

ビアージオ「説明書には……テレビを数秒間見続けると勝手に電源が点く、とあるな」

上条「これが説明書か、ちょっと見せてくれよ。……何だこれ!?」

ビアージオ「学園都市の最先端の技術だそうだ」

上条「テレビは音声でチャンネルが変わる、センサーで自動で消える……」

ビアージオ「他の家電もあらゆる配慮がされている、そして頑丈なものを用意させた」

上条「これならあのヴェントでも……」

ビアージオ「……油断はするな、いつ部屋ごと爆発するか分からん」

上条「……その可能性は、高いな」

ヴェント「ん? 何コソコソ話してんのよ」

ビアージオ「気にするな、面倒な事にしかならないだろうからな」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:30:10.91 ID:Yf7VIiKAo

ビアージオ「さて、わたしはそろそろホテルに戻るとしよう……。後は任せたぞ、上条当麻」

上条「……アンタに『任せた』って言われたのは何度目だろうな」

ビアージオ「そんな事をわたしが知る訳ないだろう? では、頼んだぞ」


ヴェント「……ここが私の部屋になるのか」

上条「あぁ、普通に生活するには何も心配無さそうだな」

ヴェント「……まさか学園都市に住むとは思わなかったわ。
      まぁ、すぐに出られるだろうからもったいない気もするケド」

上条(……すぐに出られる、のか?)
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:30:36.57 ID:Yf7VIiKAo

ヴェント「それにしても、食事はどうやって用意するか……」

上条「さっきも言ったけど食事だったら、俺が作ったので良ければ一緒に食うか?」

ヴェント「それは助かるわね……任せようかしら」

上条「まぁ、手伝ってくれんなら助かるけど……無理だよな」

ヴェント「ちょっと、どうしてそこで無理って決めつけるワケ?」

上条「いや……家電が使えなかったら料理も無理だろ」

ヴェント「甘く見てんじゃないわよ、『神の右席』が料理ごときで苦労すると思ってんの?」

上条「……またその便利ワードかよ」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:31:07.72 ID:Yf7VIiKAo

上条「えーっと、包丁使うくらいはできるって事か?」

ヴェント「えぇ、任せなさい」

上条「じゃあ、明日から協力してもらうか」

ヴェント「明日って……今日はどうするつもり?」

上条「新しくこの部屋に来たんだ。そういう時、日本では食べるものがあるんだよ」

ヴェント「へぇ、日本の文化か。良いじゃない、何を食べるワケ?」

上条「それは――そばだ」

ヴェント「……そば?」
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:31:52.17 ID:Yf7VIiKAo

しばらくして

蕎麦屋「じゃ、器は外に置いといてくださーい」

上条「どうもー。……よし、これで準備は出来たな」

ヴェント「それがそば? 前に食べたうどんと似てる気もするわね」

上条「食べ方は似てるから、そう思うのも自然かもな。さーて、早速食べるとしますかね」

ヴェント「ん? これは……このまま食べるのかしら」

上条「いや、違うんだ。そこのつゆを使って食べてくれ」

ヴェント「つゆ? この黒い液体のコト?」

上条「あぁ、これをこの容器に入れて……で、そばを箸で取る」

ヴェント「箸で取って……で、ここからは?」

上条「そうしたら、あとはそのつゆにつけて食べるだけだ」

ヴェント「へぇ、では……あむ。……うん、悪くは無いわね」

上条「口に合ったみたいで良かったよ。だったら……そこの天ぷらも合わせて食べてみてくれ」

ヴェント「天ぷら……どれどれ、あむ……へぇ、美味しいじゃない。日本の食べ物はどれも美味しいのね」
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:32:18.68 ID:Yf7VIiKAo

ヴェント「でも、どうしてそばを食べるのかが理解できないわね」

上条「んー……昔から、そうされてきたんだよ。本当は近所に住んでる人にご馳走するのが正しいんだけどな」

ヴェント「日本の文化にも色々あるもんねぇ。……ずるずる」

上条「まぁ、ヴェントはずっと学園都市に居る訳でもねーし、挨拶なんてのは要らないか」

ヴェント「それもそうか、使い方さえ覚えれば良いワケだし」

上条「……覚えられれば良いんだけどな」

ヴェント「ん? 何か言った?」

上条「いや、気にしないでくれ。……ずるずる」
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:32:44.92 ID:Yf7VIiKAo

上条「ふー……美味かったな」

ヴェント「日本語では……なすって言ったかしら、アレはなかなか良かったわね」

上条「秋になったらもっと良い茄子が食えるけど……関係ねーか」

ヴェント「へぇ、秋に学園都市に行けば食べられるワケ?」

上条「別に学園都市じゃなくても良いんじゃねえの? まぁ、大覇星祭もあるし来てみるのも良いかもな」

ヴェント「ダイハセイサイ?」

上条「学園都市の学生が参加する大規模な運動会て考えてくれ」

ヴェント「運動会? 子供の遊びをわざわざ見てもねぇ……」

上条「そこは学園都市の独自の楽しみ方があるんだよ、来てみれば分かると思うぞ?」

ヴェント「そう、まぁ考えとくわ」
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:33:10.92 ID:Yf7VIiKAo

上条「……よし、そろそろ寝ますかね」

ヴェント「そうね、私も部屋に戻るか」

上条「じゃあな、何かあったらいつでも来てくれ」

ヴェント「分かった、そんな必要は無いだろうケド。では、また明日」


上条(……ここ数日で色々起きてるな。主にヴェント関連だけど)

上条(寝る前にテレビでも見るか、よっと)ピッ

『本日、大型デパートのセブンス・ミストで爆破事件が発生しました。この事件は最近起きていた――』

上条(ニュースになってるな……まぁ、あんだけの爆発だったら無理もねーよな)
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:34:12.48 ID:Yf7VIiKAo

『奇跡的に負傷者は出ず、被害は店内の物品、建物の損害だけとなりました。
 爆発の損害を軽微なものにしたのは――』

上条(ヴェントの力、か。……能力者でも無いのにそんな事が出来んのか?)

『御坂美琴さん! 何か一言お願いします!』

『えっ? えーと……あー、誰も怪我しなくて良かったなー……あはは』

『学園都市の誇る超能力者、御坂美琴さんによって爆発の被害を――』

上条(本当はヴェントのおかげなんだけどな。……さて寝るか)

『犯人は男子学生であり、現場付近で風紀委員に取り押さえられたそうです。
 なお、その付近でも爆発があり、現場には謎の巨大な十字架が――』ピッ
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:34:48.75 ID:Yf7VIiKAo

ヴェントの部屋

ヴェント「……本当にスイッチが無いのか、良く出来てるじゃない」

ヴェント「試してみるか……ええと、テレビを点けるには……画面を数秒間見続ける」

ヴェント「……じー」ピッ

『謎の巨大な十字架が残されており、事件に何ならかの関わりがあるものと思われます』

ヴェント「へぇ、これならスイッチを押さなくても良いわね。……って、この画面に映ってるのは」

ヴェント(ビアージオの十字架で間違いない……また何か問題を起こしてたのか)

ヴェント(……まぁ、どうせアレイスターがどうにかするでしょう。気にする必要は無いわね)

ヴェント(ベッドも……悪くは無い。明日に備えて寝よう……)

ヴェント(……おやすみなさい、って電気はどうやって消せば)プツッ

ヴェント(……消えた。何から何まで便利なモンね……)
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:35:29.37 ID:Yf7VIiKAo

一方ビアージオは

ビアージオ(今日こそは教皇様にご連絡を……)ピポパ

フィアンマ『誰だ』

ビアージオ「フィアンマか? お前が電話に出るとは珍しい」

フィアンマ『確かに、俺様も自ら望んで電話に出た訳では無いが……誰も居ないのだよ』

ビアージオ「誰も居ない? 教皇様もか?」

フィアンマ『あぁ、何か用があるのであれば俺様が聞こう』

ビアージオ「……いや、やめておこう。教皇様に直接お話ししたい」

フィアンマ『大方の予想は付く。学園都市で謎の巨大な十字架が発見されたそうだが』

ビアージオ「……これ以上、話を続ける必要は無い。切るぞ」

フィアンマ『ビアージオ、面倒だからといって自分の立場を忘れるなよ』

ビアージオ「胸には留めておこう、また連絡する」プツッ


ビアージオ(わたしが好き好んで面倒事に関わりを持つ訳が無い……だが、あの時は――)
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:36:03.63 ID:Yf7VIiKAo

セブンス・ミストの爆発後 路地裏

(……いいぞ、すごい、素晴らしい! 徐々に強い力を使いこなせるようになってきた……!)

「もうすぐだ……あと少し数をこなせば無能な風紀委員も、あの不良共も……!」

「みんなまとめて 「吹き飛ばす、とでも言いたいのか?」

「……っ!? だ、誰だ!?」

ビアージオ「挨拶は面倒だ、省かせてもらうぞ。君に尋ねたい事がある」

「な、何か用でも……?」

ビアージオ「あぁ、あの爆発を起こしたのは君だな?」

「……爆発? いや、僕には何の事だかさっぱり……」

ビアージオ「そうか、では言っておくが……あの爆発で死傷者は出なかった、被害は建物だけだろうな」

「そ、そんな馬鹿な! 僕の最大出力だぞ!」

ビアージオ「ほう。君の最大限の力があの爆発、か」

「あっ……い、いや、遠くから見てもすごい爆発だったので……」ガサゴソ

ビアージオ(鞄の中……何が狙いだ?)
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:36:32.24 ID:Yf7VIiKAo

「中の人は……とても助からないんじゃないかって!」ブンッ

少年は鞄の中からぬいぐるみを取り出した。それが何を意味するのか、
既にビアージオは理解している。あれは玩具では無い、人を殺す爆薬だと。

ビアージオ「大人しくはしてくれない、か。ならば」

「へっ……これで、これで何もかもぉ!!」

その言葉と共にぬいぐるみはビアージオの後方に向かって投げられた。
すぐにぬいぐるみは収縮し、轟音と共に爆発が起きる。その爆風はビアージオを容赦なく襲った。

ビアージオ「―――十字架は悪性の拒絶を示す」
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:36:57.61 ID:Yf7VIiKAo

「へ、へへっ……なんだ、簡単じゃないか。こうやって見つかっても、すぐに消せば……っ!?」

少年の目の前には男の焼け焦げた姿が存在するはずだった。しかし、そこにあったのは――

(な、何だこれは……十字架? それもいくつもあって……)

十字架の障壁、それが最も適切な表現だろう。
ビアージオが居た場所を囲むように無数の十字架が壁を作っていた。
それは隙間を作らないように複雑に組み合わさり、堅固な要塞のようにそこに存在していた。

ビアージオ「すまないな、君のその力は既に対策済みだ。もっとも、力づくな事に変わりはないがな」

「……く、クソッ! もう一度だ! 何度でも……何度でも!」

ビアージオ「―――十字架は悪性の拒絶を示す」

言葉と共に一つの十字架が宙を舞った。それは少年の頭上で止まり、そして

「ぐっ……!? な、何だよこれ!? お、重い……」

巨大化した十字架は少年を覆うように落下した。
少年はかわす事が出来ず、十字架を背に乗せたまま地面に伏せてしまった。
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:37:35.38 ID:Yf7VIiKAo

ビアージオ「大丈夫か? 話す事はできるか?」

「クソッ……クソッ! 今すぐ解放しろ!」

ビアージオ「それは無理というものだよ。君を解放してもまた面倒な事になるからな」

「……正義の味方ぶってんのか。こうやって悪者を捕まえて良い気分にでもなってんのかよ!」

ビアージオ「なるほど……正義、か。悪い行いを正す者が正義と言うのなら間違ってはいないな」

「…………いつもこうだ。何をやっても、こうやって力で地面にねじ伏せられる……」

ビアージオ「……その言い方からすると、何者かによって虐げられているという事か」

「……そうだよ! 僕が弱いからこうやって酷い目に遭う! でも誰も助けてくれない!」

ビアージオ「では、話せ。君が今まで受けた物事、そして許しがたい者の事を」

「……はぁ? 話してどうなる! それで何か変わるのかよ!?」

ビアージオ「それはまだ分からないな、まだわたしは何も知らないのだから。ただ――」

ビアージオ「わたしはローマ正教の司教だ。異教徒が相手なのは考え所だが……今はその役割を全うしよう」
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:38:30.31 ID:Yf7VIiKAo

ビアージオ「――なるほど。力によって屈服させられ、金を奪われる……異教徒の猿の考えそうな事だ」

「……何度も何度も、殴られて……でも誰も助けてくれない」

ビアージオ「風紀委員、という自治組織があるのだろう? それを頼れば良い」

「風紀委員……? アイツらは何もできない……いつも来るのは何かあってからだ!」

ビアージオ「それがどうして爆発事件に発展したのか……理解に苦しむな」

「……復讐だよ。不良達、それに無能な風紀委員に対して……復習してやろうって思ったんだ」

ビアージオ「復讐か、ずいぶん面倒な手段に出たものだ」

「何と言われても良い店…僕は間違った事なんてしていない!」

ビアージオ「確かに、君を虐げた者、そして君を救済できなかった者にも非はあるかもしれないな」

「……そうだ、だから悪いのは僕じゃない……僕は――」

ビアージオ「ただ、君は取り返しのつかない事をしている。それには気付いているか?」

「……知るかよ」

ビアージオ「そうか、では考えてみろ。……君のその力は、全く関係の無い者を巻き込んでいないか?」

「それは……」
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:39:04.07 ID:Yf7VIiKAo

ビアージオ「まだ幼い子供もあの建物には居た。その命をも君は奪っていたかもしれない」

「…………」

ビアージオ「その行いは、君の受けた理不尽なそれと何も変わらない。
        弱者が力によってねじ伏せられる、全く同じではないか?」

「で、でも! 僕は……ただ、……ただ」

ビアージオ「悔い改めろ、異教徒の少年。まだ時間はある」

「…………」

ビアージオ「……これ以上、わたしが居るは必要ないな」

「……一つだけ聞きたい事がある」

ビアージオ「わたしが知る事であれば答えよう、手短に頼むぞ」

「爆弾を……小さい女の子に渡した。その子は……無事に」

ビアージオ「あぁ、誰も怪我などしていないだろう。あの女が居るのだからな」

「あの女……?」

ビアージオ「君が知る必要は無い。……では、失礼するよ」
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:39:42.44 ID:Yf7VIiKAo

数分後

白井「ここでも爆発があったと聞いて来ましたが……なっ」

白井(この巨大な十字架……まーたビアージオさんですわね。……ん?)

「……風紀委員か」

白井「ずいぶん重そうですわね……手助けいたしましょうか?」

「……頼むよ」

白井「よいしょ、っと……大丈夫ですの?」

「少し体が痛むだけだ。……それより、他に用があるんじゃ」

白井「ええ。介旅初矢。爆破事件の容疑で一緒に来ていただきますの」

介旅「分かった。どこへでも連れて行ってくれ」

白井「あら、素直ですわね。もっと抵抗なさると思いましたが」

介旅「……そんな面倒な事はしない。もう二度と」

白井「? ともかく、嫌っていう程反省していただきますので、そのつもりでいてくださいまし」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2012/03/03(土) 15:40:11.25 ID:Yf7VIiKAo

ビアージオ(――また面倒な事に巻き込まれたというのには変わり無いか)

ビアージオ(この都市にも問題はある、それは当然の事だ。しかし……)

ビアージオ(力を持った者がその使い方を誤り、そして犠牲が出る)

ビアージオ(……まったく、面倒な場所だ。そして最も厄介なのは――)

ビアージオ(何故、何も行動を起こさないのか。わたしは魔術の領域の人間、この都市に本来は存在してはいけない)

ビアージオ(……まぁ、考えるのも面倒だな。向こうから動きを見せるであろう)


ビアージオ「力、能力……それは悪性か否か。……今は考えず寝るとしよう」


五日目 終了 
 
 
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/03/14(水) 22:00:20.42 ID:A+ebvut2o
家電殺し
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]:2012/03/18(日) 22:17:12.20 ID:LBLSd2Plo
ヴェントかわいい 
 
 
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[sage]:2012/03/28(水) 19:14:10.49 ID:/Hz6QnYAO
続き、まだかなぁ……。 
 
 
 
550 : ◆/4AHdsw06Y[sage]:2012/06/19(火) 20:15:02.86 ID:+Cgu7DQLo
散々粘りましたが依頼を出します。
ある程度(学園都市を出るまで位)まで書き溜めることができたら、またスレ立てしたいと思います。
ここまでありがとうございました、そしてすいませんでした。 
 
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)[sage]:2012/06/20(水) 01:26:29.70 ID:P+JHqVjAO
終わりかぁ…。残念だけど仕方ないですね。
次も頑張ってください!
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/06/20(水) 01:27:44.21 ID:BE2rY8PIO
乙!お元気で

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