2013年11月1日金曜日

アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」

1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:08:02.38 ID:qsadPkX80
注意点

時系列は新約後
独自設定・独自解釈かなりあり
オリジナル要素・設定結構あり
贔屓割とあり
厨二展開爆発
登場人物は大体パワーアップしてる
人がバンバン死ぬ

質問とかにはなるべく応えていこうとは思ってる


3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:08:50.62 ID:qsadPkX80
12月23日

第三次世界大戦が終結して約2カ月が経った。大戦直後は平和以外の何物でもなかったが
11月、すぐに変化は訪れた。『新入生』達による学園都市への大規模クーデターだった。
だがそれは、主にとある少年達の活躍によって事なきを得た。

その少年達とは、上条当麻、一方通行、浜面仕上の3人である。このクーデターを通し
一方通行はさらなる覚醒を、浜面仕上は『素養格付』(パラメータリスト)の壁を越え
能力を発現、そして上条当麻の戦闘センスにもさらなる磨きがかかった。

しかし、これら全ては学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーの思惑通りだった。
これから起こる事に備えて……
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:10:45.18 ID:qsadPkX80
元暗部『アイテム』が住んでいるマンション

絹旗「『素養格付』の壁を越え能力を発現、ってたかだか低能力者(レベル1)じゃないですか。
   超威張るほどではないですよね」

いきなり喧嘩腰の発言をした少女は『アイテム』の中で最年少
『窒素装甲』(オフェンスアーマー)の能力を持つ、絹旗最愛だ。

浜面「誰も威張ってねーだろ。てかその言い方は酷くない!?
   それに大能力者(レベル4)と比べられてもだな」

『アイテム』の中で唯一の男、浜面仕上はそう言い返した。彼は今でこそ
レベル1であるが、つい先日までは、ぶっちぎりの無能力者(レベル0)だった。

それでも超能力者(レベル5)に2回勝利したり、第三次世界大戦の激戦区を
渡り歩いたりしてきた過去を持つ、割と世紀末帝王HAMADURAだったりする。

麦野「しかも『肉体強化』(オートエンハンス)とかありふれすぎ。レベル0の時の方が
   まだレベル0という個性があったのに」

そんな発言をした彼女は、学園都市でも7人しかいないレベル5の第4位
『原子崩し』(メルトダウナー)の麦野沈利。紆余曲折あって今は左手が義手、右眼が義眼である。普段は特殊メイクで隠している。

浜面「何言ってんだよ。レベル0は学園都市に6割も居るんだぞ。
   レベル1になっただけ今までよりは個性あるだろ!それにレベル5に言われてもだな!」

滝壺「そんな個性とかどうでも良いよ。はまづらははまづらだから」

そんな風に浜面のフォローに入った彼女の名前は滝壺理后。
能力はレベル4の『能力追跡』(AIMストーカー)。
療養中の身であったが、つい先日治療が完了した。浜面とラブラブ。

浜面「滝壺///」

滝壺「はまづら///」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:12:10.57 ID:qsadPkX80
麦野「(まーた始まったよ……)」

絹旗「(超甘々空間ですよね。てか私達、超邪魔者ですよね)」

麦野「(でもねぇ……新しく家探すのも面倒臭いしねぇ……)」

絹旗「(そうですよね。一応それぞれに部屋はありますし、このままでも超問題ないですよね)」

フレメア「大体!私にも構ってほしい!にゃあ!」

駄々をこねだしたのは、フレメア=セイヴェルンという少女。
とある事情で麦野が殺してしまった『アイテム』の構成員だった
フレンダ=セイヴェルンの実の妹だ。

何の罪もないのに、とある目的から『新入生』達に狙われていたところを浜面達に助けられた。
その後麦野が『フレンダの妹なら、私が面倒を見る』とか言い出したので
こういう風に『アイテム』と暮らしている。

麦野「はいはい。じゃあ私と遊ぶ?」

フレメア「うん。ブラッド&デストロイがやりたいな」

麦野・絹旗「「……え??」」

フレメア「あれ?大体聞こえなかった?ブラッド&デストロイがやりたいな」

麦野「え?いやでも、そんなのじゃなくてもいろいろあるにゃーん?ほら、ど○ぶつの森とかさ」

フレメア「ブラッド&デストロイ」

絹旗「マ○オパーティとか、超どうですか?」

フレメア「ブラッド&デストロイ」

麦野「じゃあせめて、大○闘スマッシュブラザーズDXとか」

フレメア「ブラッド&デストロイがやりたい!」

麦野(フレンダ、あんたの妹、手に負えないよ……)

こんな感じで『アイテム』は超平和だった。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:13:27.14 ID:qsadPkX80
黄泉川のマンション

打ち止め「ねぇねぇ一方通行(アクセラレータ)、ミサカと遊ぼうよ、ってミサカはミサカは
     駄々をこねてみる」

ものすごく面倒臭い口調のこの少女の名前は、打ち止め(ラストオーダー)。
オリジナルである御坂美琴のクローンで、見た目は10歳くらい。
紆余曲折を経て、今では一方通行と家族のような関係。

一方通行「あァ?だりィからパス」

そんな素っ気ない返事をする少年は一方通行。先日の『新入生』のクーデターを通して
『絶対能力者』(レベル6)へと『最強』から『無敵』へと進化(シフト)した。
能力は『一方通行』。簡単に言うと『ベクトル操作』である。チョーカーのバッテリーは
今や1時間は持ち、日常生活でも杖を使わなくても良いぐらいには回復した。

番外個体「そんなこと言わないで、少しぐらい遊んであげれば良いじゃん」

一方通行に向かって、少し生意気な口を聞く彼女は番外個体(ミサカワースト)。
第三次製造計画(サードシーズン)により新たに生み出されたクローン。一方通行に救われた。

一方通行「ンな事言うなら、オマエが遊ンでやれよ」

番外個体「仕方ないな~。今からミサカが子供の扱い方と言うものを見せてやるから見習え!
     ほーら打ち止めちゃーん、お姉さんと一緒に遊びましょうね~」

打ち止め「ミサカはそんなに子供じゃない!ってミサカはミサカは憤慨してみる!」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:14:49.20 ID:qsadPkX80
黄泉川「随分賑やかじゃんよ」

打ち止めと番外個体のやり取りを、微笑ましく見守る女性は黄泉川愛穂。
この部屋の家主であり、教師兼『警備員』(アンチスキル)でもある。

芳川「明るいのも良いけど、私はもう少し落ち着きも持ってほしいと思うわね」

彼女は芳川桔梗。もともとは研究者だったが、現在は黄泉川のマンションで居候しているニート。
黄泉川とは旧知の仲である。

黄泉川「その言い方は無いじゃんよ。桔梗は人の事とやかく言う前に早く次の仕事見つけるじゃん」

芳川「分かっているわよ」

黄泉川「分かったんならそれで良いじゃん。ところで一方通行、買い物に行ってくるじゃんよ」

一方通行「はァ?何でだよ?今日は天皇誕生日で祝日だろうが。オマエが行け」

黄泉川「なーに言ってんじゃんよ。アンチスキルは祝日でも仕事があるじゃん」

一方通行「じゃあ芳川に行かせろよ」

芳川「私はちょっと忙しいから無理なのよ」

一方通行「どっからどう見ても、TV見てくつろいでいるようにしか見えないンですけどォ。
     これは俺の目の錯覚ですかァ?」

芳川「だから言っているでしょ。TV見るのが忙しいの」

しれっとした顔で芳川はそう言い切った。

一方通行(殴りてェ)

一方通行は純粋にそう思った。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:15:58.06 ID:qsadPkX80
黄泉川「私は一方通行に頼んでるじゃんよ」

黄泉川「前にも言ったじゃん。買い物でもなんでもいいから『日常』に触れて
    社会の歯車の一員になれって」

一方通行「チッ、分かったよ分かりましたよ。行けばいいンだろ?」

一方通行はとても億劫そうにソファーから起きあがる。

打ち止め「ミサカも行くー、ってミサカはミサカは宣言してみる」

番外個体「み、ミサカも行きたいっ!」

打ち止め「駄目ーっ!今回はミサカと行くの、ってミサカはミサカは今回は負けない
     と意気込んでみる!」

番外個体「はっはっはーっ!ミサカに敵うのかなぁ!」

一方通行を巡って、軽い戦争をする打ち止めと番外個体だったが、そこへ黄泉川が一言。

黄泉川「3人で行けばいいじゃんよ」

打ち止め・番外個体「「あ」」

そんなこんなで仲良く?買い物に行った3人であった。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:17:53.67 ID:qsadPkX80
第7学区 とある学生寮

禁書「ねぇとうま、暇だから外に行って遊ぼうよ」

彼女の名前は禁書目録(インデックス)。『完全記憶能力』があり
頭の中に10万3000冊の魔道書を記憶していると言うトンデモ少女。食いしん坊。

上条「今は筋トレ中だから無理。それに寒いし」

筋トレをしている少年は上条当麻。夏休み以前の記憶がない。
彼には『幻想殺し』(イマジンブレイカー)という、それが異能の力であるのならば
神様の奇跡でさえ打ち消せる、と言う触れ込みの凄い右手を持っているが
身体検査(システムスキャン)上はレベル0判定なので、極貧高校生。

禁書「いいじゃんそんなの!昔はそんなことしてなかったのに!」

上条「いーや駄目だね。俺は気づいたんだ。俺の攻撃方法は殴ることしかできない。
   近距離戦しかできないんだ。そのためには体を鍛えといた方が良いだろ?
   今まで何故体を鍛えてこなかったのか、我ながら不思議なくらいだ」

禁書「何でとうまの中では、戦いがあるのが前提なの!?とうまは元々、ただの高校生なんだよ!?
   戦いがあるほうが異常だし、今後もしあったとしても、そう言う戦いには参加しなくても
   良いかも!」

上条「でも戦いなんてなくても、筋トレして特にデメリットは無いだろ?」

禁書「むぅー。今までずーっと私に記憶喪失の事隠していたくせに!」

上条「う!?そこ言われると弱るな……でも今まで隠していたのは、お前の悲しむ顔を
   見たくないと思ってだな……」

禁書「き、気持ちは嬉しいけど、そう言って私の怒りを和らげようとする手には
   乗らないんだよ///」

と言いつつ、いつものインデックスならこのまま噛みついてもおかしくないのだが
面と向かって言われると、さすがに嬉しかったようで、噛みつく事は無かった。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:19:26.19 ID:qsadPkX80
上条(ふぅ。何とか噛みつきを回避できましたか)

禁書「……そうだね。外に出たら“また”女の子とお知り合いになったりするかもしれないから
   このままずっと、家で筋トレしてもらってる方が良いかも」

上条「何だよその言い方……まるで俺が1歩でも外に出れば、女の子と仲良くなって
   帰ってくるみたいな言い方じゃねぇか」

するとインデックスは溜息をつきながら

禁書「とうま、それ本気で言ってるの?これだから無自覚は困るんだよ」

上条「あ、あの~、インデックスさん?何故そこで深い溜息を吐くのでせうか?」

禁書「ねぇとうま、私の気持ち考えたことある?」

インデックスは腹筋最中の上条に跨った。

上条「お、おい!」

禁書「私はとうまが学校に行っている間、ずーっと一人ぼっちなんだよ?私だって寂しいんだよ?」

インデックスは若干涙目になりながら、じっと上条を見つめる。

上条「……」

禁書「だから、たまには私と遊んで欲しいかも」

上条「……そうだな。たまには遊ぶのも悪くないな」

禁書「でも外に出ると、とうまは女の子のところに行っちゃうから、この部屋の中で
   出来る事をしようよ」

上条「い、家の中で、しようよ……」

今現在、上条はインデックスに跨られている。
上条は健全な高校生であるため、女の子が自分の腰辺りの上に居るのは、若干刺激的なのである。
その状況で“しようよ”なんて言われたのだ。紳士である上条の理性も少し吹っ飛びかけた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:20:24.04 ID:qsadPkX80
上条「///」

禁書「どうしたのとうま?顔が赤いよ?熱でもあるの?」

インデックスが心配そうに上条の顔を覗き込む。顔の距離は10cmまで近づく。

上条「だ、大丈夫。上条さんは今日も健康体です!はい!」

禁書「……よく分からないけど大丈夫なら良いんだよ。それより今思いついたんだけど
   人生ゲームって言うのをやってみたいかも!」

上条「人生ゲームか……あったっけなぁ……」

禁書「とりあえず一緒に探そうよ。見つからなかったら一緒に買いに行くんだよ!」

上条「はいはい、分かりましたよ」

上条は面倒臭そうに、けれども嬉しさも込めて、そう返事をした。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:22:21.23 ID:qsadPkX80
イギリス清教 第零聖堂区『必要悪の教会』(ネセサリウス)

ステイル「最大主教(アークビショップ)!この書類に書いてあることは本当なのですか!」

大声でそう叫んだ彼は、ステイル=マグヌス。
イギリス清教に所属する炎を得意とする魔術師である。
2mの大男であるが、14歳。
魔法名は『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』。

ローラ「ええ、本当よ」

軽い返事をしたのは、イギリス清教の最大主教であるローラ=スチュアート。
身長の2.5倍位ある、宝石店にそのまま売られてもおかしくない金髪をもつ
見た目18歳くらいの少女だ。

ステイル「こ、この書類には『学園都市の襲撃を認める』とありますが……
     何故学園都市を攻める必要があるのですか!」

ローラ「簡単なことなのよ。あそこには殺さなければいけなし人がいるの」

ステイル「な、何を」

ローラ「アレイスター=クロウリー。奴は生きていたのよ。学園都市統括理事長として」

ステイル「そんな……確かに学園都市統括理事長は、あの最悪の魔術師と言われた
     アレイスター=クロウリーと同名ではあるが、時代的にどう考えたって
     生きているはずがない!」

ローラ「私もそう思っていた時もあった。でも第3次世界大戦が終戦した10月30日に
    わずか700秒程度の間ではあったけど、生体反応が出たのよ」

ローラは若干気分が昂ぶっているせいか、似非古文口調ではなくなっていた。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:24:13.06 ID:qsadPkX80
ステイル「ですが、あそこには禁書目録が……」

ローラ「そんなことは関係なしにつきなのよ。それに、呼び戻そうと思えば
    いつでも呼び戻せしこともできる」

ステイル「しかし」

ローラ「しかしではない。ステイルも知っているでしょう?イギリスはクーデター以降
    弱っているの。だがここで学園都市を潰せば、我らイギリスは力を取り戻す」

ローラ「それどころか、科学サイドという一大勢力が無くなれば、我ら魔術サイドが
    世界を手中に治めることもできる」

ローラ「それに魔術世界の歴史上最大の汚点とも云われる、アレイスターを潰したいでしょ?」

ローラ「つい先日、学園都市でクーデターがあったのは知っているでしょう?
    この好機を逃す手は無しにつきなのよ」

ステイル「そんなことは関係ない。……駄目だ、貴方は危険すぎる……!」

ステイル「今のところ世界は平和そのものだし、何よりあそこには禁書目録がいる。
     彼女を危険に巻き込むわけにはいかない」

ステイル「こんな書類、僕が今ここで燃やしてやる!」

ローラ「そんな口を聞きて良いのかしら?私には遠隔制御霊装がありしことよ?」

ステイル「この女狐めが!」

ステイルは感情を隠すことができなかった。

ローラ「ふふふ。さあ、分かったら明日にでも、学園都市に攻めたりけるから
    相応の準備をしなさい」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:26:02.30 ID:qsadPkX80
翌日 上条の通う学校

上条(眠い……)

現在、上条の通う高校では、終業式の真っ最中である。

昨日はあの後、人生ゲームを探すも結局なかったので
買いに行くためにインデックスと出掛けたのだ。
にもかかわらず、いつも通りインデックスが『おなかすいた』と喚きだしたので
食べ放題バイキングに行ったところ、店側に『勘弁して下さい』と泣きつかれて
いろいろ大変だったりした。

そして校長先生の長話のコンボである。上条の疲れはピークに達していた。

上条(話長いな……)

青ピ「(カミやん、カミやん)」

ひそひそ声で上条に話しかけてきた彼は、青髪ピアス。
見た目が青い髪の毛に、ピアスをつけていることからそう呼ばれている。本名も能力も不明である。

上条「(なんだよ)」

青ピ「(なんか疲れているようやけど、大丈夫なん?)」

上条「(大丈夫じゃねーよ。こっちは昨日の事でヘトヘトなんだよ)」

青ピ「(なになに、昨日何があったん?)」

上条「(昨日インデックスと出掛けたんだけど、あいつが食べ過ぎてよ。
   俺は色々と大変だったんだよ)」

青ピ「(おいカミやん、そのインデックスって娘、確か大覇星祭の打ち上げの時と
   鍋の時に居たシスターちゃんの事やろ?)」

上条「(……そうだけど)」

青ピ「ふざけんなやカミやーん!それデートやないかーっ!」

いきなり大声を出す青髪。当然、全校生徒の注目は上条と青髪に集まる。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:27:05.14 ID:qsadPkX80
上条「ど、どうしたんだよ!」

青ピ「おまっ、あんな可愛い子とデートできたって言うのに、疲れたやと!?
   デートしたくてもできん、僕の気持ち考えろやーっ!」

上条「お、落ち着けって!」

小萌「あ、青髪ちゃーん!静かにするのですよー!」

大声で青髪を注意する彼女は月詠小萌。
身長135cmで小学6年生ぐらいにしか見えないが酒も煙草も大好きな、立派な大人であり教師である。

青ピ「僕はたった今決めた!今からカミやんを排除する!」

上条「ちょ」

青髪が上条に襲いかかろうとした、その時だった。

災誤「騒ぐな!」

青髪「ぐへっ!」

青髪は災誤(ゴリラ)に殴られ気絶した。そのまま災誤にかつがれて退場する。

上条(ふぅ、何とか助かったか)

数分後、終業式は終了した。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:28:42.45 ID:qsadPkX80
黄泉川のマンション

打ち止め「あなたは今日も寝てばっかりなのね、ってミサカはミサカは呆れてみる」

一方通行「疲れが溜まってンだよ」

打ち止め「嘘ー!ミサカはもうこんなに元気なのに、ってミサカはミサカは
     天真爛漫ぶりをアピールしてみる!」

一方通行「うるせェなァ」

打ち止め「あなたはクーデターが終了して以降寝てばっかりじゃない
     ってミサカはミサカはあなたの怠慢さに呆れてみる」

一方通行「クーデターが終了して以降って……まだ2週間も経ってねェじゃねェか」

番外個体「いや、普通の人は丸3日も休めば、元気に回復するんだけどね」

一方通行「俺は普通じゃないの」

番外個体「そんなこと分かってるよ。あなたの正体はモヤシだよね」

一方通行「……」

番外個体「シカトかよ」

打ち止め「ミサカとあーそーぼー、ってミサカはミサカは懇願してみたり」

一方通行「番外個体、遊ンでやれ」

打ち止め「いーやーだー。ミサカはあなたと遊びたい、ってミサカはミサカは
     あなたの提案を却下!」

番外個体「ほぅら、熱烈なラブコールだよ~?」

一方通行「……何がしてェンだ」

打ち止め「今日はクリスマス・イブって日らしくて、学園都市も盛り上がっているみたいだから
     とりあえず外に出よう、ってミサカはミサカはソワソワしてみる」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:29:34.71 ID:qsadPkX80
芳川「そうね。それがいいわ。行ってきなさい。3人で」

一方通行(こンな糞寒い中、外に出るのかよ…)

打ち止め「さっさと準備して出発するよー、ってミサカはミサカは姉御気どり」

番外個体「若いってのは良いね。元気があって」

一方通行「ナンバリング的には、オマエの方が妹だろうが」

こうして3人はクリスマス・イブで盛り上がる学園都市へと繰り出していった。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:31:07.73 ID:qsadPkX80
『アイテム』が住んでいるマンション

浜面「わたくし浜面仕上ですが、現在緊急事態です」

浜面「恥ずかしながら、わたくし浜面仕上は、今まで彼女というものがいたことがなかったので
   今日までクリスマスという行事があったことを、すっかり忘れてしまっていたのです」

浜面「何が言いたいかって言うと、滝壺へのプレゼントを買っていないのです。
   幸い、あと1日猶予がありますが、どうしたらいいか困っています」

フレメア「浜面、さっきから、大体誰に向かって喋ってるの?」

浜面「え?いや~別に」

絹旗「フレメアちゃん、あまり浜面に近付かない方が良いですよ。
   浜面は超浜面ですから、どうせ超気持ち悪い妄想でもしていたんでしょう」

フレメア「そうなの?」

浜面「違うって。あまり絹旗お姉ちゃんの言うことは信じるなよ。コラ絹旗!
   あんまりデタラメ教えるんじゃありません!」

絹旗「うわ!何ですかその口調!超気持ち悪いです」

浜面「なんかさぁ!最近お前、俺に冷たすぎない!?」

絹旗「全然。超そんなことはありませんけど」

そこへ麦野が、うるさいな。と言う調子を含めた声で

麦野「はーまづらぁ、鮭弁買って来い」

浜面「唐突!?」

麦野「腹が減ったんだよ。いいから買って来い。30個」

絹旗「では、私はマシュマロを超お願いします」

浜面「はいはい」

滝壺「私も付いて行くよ。はまづら一人だけだと荷物大変でしょ?」

浜面「滝壺~(感動)」

ここで浜面は、ああなんて優しいんだ。さすが我が姫!と思っていたのだがあることを思いつく。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:32:22.64 ID:qsadPkX80
浜面(待てよ。ひょっとしたらこれ、滝壺のプレゼントを探すいい機会じゃないか?
   ここは敢えて……)

浜面「気持ちは嬉しいけど、病み上がりの滝壺に重い荷物を持たせるわけにはいかないから
   俺一人で行くよ」

滝壺「はまづら、そんな気遣いいらないよ。私は、はまづらと一緒に居られるだけで幸せだから」

浜面(ああ!なんて良い子なんだ!可愛すぎる!俺には勿体ないくらいだ!
   でもその優しさが今は辛い!)

浜面(いや待てよ。一緒に居られるだけで幸せ=プレゼントなくても俺さえいれば良い
   という公式が成り立たないか?)

浜面(いやでも、クリスマスにプレゼントなしは……さすがにないよな)

と5秒くらい浜面が考えていると

滝壺「はまづら、どうかした?」

浜面「え?いや別に何でも」

滝壺「じゃあ買い物に行こうか」

浜面「いや、やっぱりさ。滝壺はまだ病み上がりだし、休んでいてくれよ」

滝壺「……そう。分かった」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:33:27.90 ID:qsadPkX80
フレメア「じゃあさ、大体私も買い物に連れてって」

浜面「……お菓子とかは買わないぞ?」

フレメア「にゃあぁぁぁあああ!?浜面のケチ!大体、少しぐらい買ってくれても良いじゃん!」

浜面「無駄遣いはいけません!」

麦野「いいわよ。これでフレメアにお菓子でもおもちゃでも、何でも買ってあげなさい」

麦野は財布から、万札を数枚取り出す。

浜面「さすが、レベル5は財力が違うな。でもフレメアのこと、こんなに甘やかしていいのか?」

フレメア「全然、大体甘やかされてないもん。にゃあ」

麦野「そんなことはどうでもいいんだよ。いいから早く買ってきて」

浜面「へいへい」

そんなこんなで、浜面とフレメアのおつかいスタートである。

だがこんなにも平和な日常の終わりは、確実に近付いていた。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:34:24.76 ID:qsadPkX80
放課後 上条の通う高校

上条「さ~て、帰るかな~」

姫神「か。上条君」

勇気を振り絞って、上条に話しかけた彼女は姫神秋沙。
『吸血殺し』(ディープブラッド)という、吸血鬼に対しては必殺の能力を有している。
今はその力を、イギリス清教からもらった十字架で抑えている。

上条「ん?どうした姫神?」

姫神「そ。その。明日。わ。私と」

上条「明日?明日がどうしたんだ?」

姫神「だ。だから。明日。私と」

その時だった。姫神を押し退けて、カチューシャをつけた女の子が上条の目の前に出てきた。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:36:00.62 ID:qsadPkX80
カチューシャ「か、上条君。明日って何の日か分かる?」

上条「お前も明日って……明日ってなんかあったっけ?」

カチューシャ「もう!上条君の馬鹿!明日はクリスマスじゃない///」

上条「ああ~、そう言えばそうだ」

カチューシャ「だから、明日、私と一緒に、で、デートしない?///」

上条「え?俺と?」

カチューシャ「うん///」

上条「マジか。まあ気持ちは嬉しいけどよ。俺なんかで良いのか?」

カチュ-シャ「な、何言ってんのよ!私は上条君と行きたくてわざわざ誘ってんのよ!
       言わせないでよ、恥ずかしい///」

瞬間、男子達から「ヒューヒュー、アツイねぇ!」「また上条かよ……」「リア充爆発しろ」
などなど、喜怒哀楽が入り混じった野次が飛んできた。

上条「そ、そうか。じゃあ俺でよけれ」

姫神「待って」

そこに姫神が割って入る。

姫神「最初は。私が誘おうとしていた。私も上条君とデートしたい///」

女子A「そ、それだったら私だって上条君とデートしたい!」

と姫神、女子Aに続いて「私も!」「私だって!」と次々に上条とデート志望の女子が。

男子A「おい、あいつハーレムルート入ろうとしてんぞ」

男子B「そろそろ見逃せないレベルだな」

男子C「よし!奴を仕留めるか!」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:37:58.64 ID:qsadPkX80
うおーっ!と男子勢による暴動が起こる。
そんな中冷静な少女が一人立ち上がり、教卓へと足を運び

吹寄「うるさーい!」

教卓を思いっきり叩き、クラス全員を一撃で黙らせたのは、吹寄制理。
健康グッズにはまっている、黒髪巨乳おでこDXな少女。

吹寄「上条!貴様、忘れている事があるわよ!」

上条「忘れている事?」

吹寄「貴様、ただでさえ頭悪いのに、学校も碌に来ない日が多かったわよね」

上条「……あ」

吹寄「思い出した?その埋め合わせのために、明日から私と一緒に補習があること」

上条「そ、そうだったーっ!」

その瞬間、クラスの女子達は絶望へ叩き落とされた。
一方男子勢は「イヤッホォォォォォウ!」と一気にハイテンションに。
が、そこで冷静な男子がある事に気づく。

男子D「ん?待てよ……今吹寄の奴“私と一緒に”って……」

男子E「え?吹寄って頭いいから、補習なんてあるわけなくね?」

吹寄「私がボランティアでこいつの補習の面倒見るの。
   このクラスから留年者を出すのも癪だからね」

その瞬間男子勢は、対カミジョー属性鉄壁の女が陥落したと思い、絶望へ。
一方女子勢は女子勢で「吹寄さんはライバルじゃないと思ったのに」
「ホルスタイン乳が!抜け駆けかよ!」と暴言を吐く者までいる始末だった。

と吹寄以外のクラスメイト(上条も含む)が絶望していたその時
ガララッ!と教室のドアを開ける一つの影が。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:39:07.23 ID:qsadPkX80
土御門「盛り上がるのはそこまでだぜい」

彼は土御門元春。上条が住んでいる学生寮の隣人で
多角スパイでもあり、暗部の人間でもあり、とにかく凄い人物。

上条「土御門!?」

土御門「ちょっとカミやん借りていくぜい」

そう言いながら、土御門は上条の腕を引っ張る。

上条「ちょ、いきなりなんなんだよ」

土御門「良いから、黙ってついてこい」

土御門の目が鋭くなった。
上条は普段のふざけた調子の彼も、エージェントである真面目な時の彼も知っている。
今の目つきは、まさにエージェントのそれだった。

上条「……分かった」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:42:00.63 ID:qsadPkX80
上条の通う高校 屋上

土御門「カミやん。落ち着いて聞いてくれ」

上条「な、なんだ」

土御門「今日、イギリス清教率いる魔術サイドが、学園都市に攻めてきた」

上条は土御門の言っている意味が分からなかった。

上条「は?」

土御門「だから今日、イギリス清教率いる魔術サイドが、学園都市に攻めてきたんだって」

上条「聞こえなかった訳じゃねぇよ!」

上条「なんで、だって、おかしくないか?第3次世界大戦では
   学園都市とイギリス清教は協力したんじゃないのかよ!」

土御門「まあ落ち着け。確かにそうだが、あの大戦以降、科学サイド>魔術サイド
    というパワーバランスになった」

土御門「だが学園都市は先日のクーデターで弱ってしまった。魔術サイド>科学サイドにしたい
    イギリス清教にとっては、今が攻め時って訳だ」

上条「理屈は分かった。けどよ、別に学園都市はイギリス清教と敵対関係では無いはずだし
   このままどちらも何もしなければ、世界は平和のままのはずだろ?
   どうしてわざわざ攻め込んでくるんだよ!?」

土御門「人間ってのは、自分が他者より優れていると、こいつよりはマシだと
    どこかで少しでも優越感に浸っていないと、生きていけないものさ」
    優劣を逆転したいんだよ。平和とか、そんなの関係なくな」

上条「ふざけんな!」

土御門「……」

上条「そんな程度の理由で、これから学園都市は攻められて
   俺の大切な人達が傷つけられていくのかよ!そんなこと、俺が絶対にさせねぇ!」

上条「いいぜ、イギリス清教。テメェらが立場を逆転するためだけに
   人を傷つけて、何も感じないと言うのなら――」

上条「――そんなふざけた幻想は、欠片も残さずぶち壊してやる!」

土御門「カミやん、カッコつけているとこ悪いが、既に学園都市とイギリス清教の戦いは
    始まっているぞ」

上条「なんだって!?」

土御門「空を見てみろ」

上条は空を見上げた。
そこには学園都市の戦闘機が何十機も飛んでいる光景があった。

土御門「まだ本格的に戦いが始まった訳じゃないが、水面下では戦いは確実に進行しているし
    これからさらに加速するだろう」

土御門「カミやん。念のためインデックスのもとに急ぐんだ」

上条「そうだ、インデックス!」

言うが早いか、上条はインデックスのもとへ走りだした。

土御門「さて、俺も動くとするか」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:43:44.41 ID:qsadPkX80
上条がインデックスのもとへ走りだした頃 上条の学生寮

禁書「ふんふふん♪ふんふふん♪ふんふんふ~ん♪」

鼻歌交じりでご機嫌のインデックス。何故かと言えば、インデックスが大好きなアニメ
超起動少女(マジカルパワード)カナミンが、冬休みに一挙再放送されるからだ。

禁書「とうま、まだかな~」

そして明日からは冬休み。
上条当麻とも一緒に過ごせるので(上条が冬休みに補習がある事は知らない)インデックスは
嬉しくてたまらないのだ。

今か今かと上条の帰りを待つインデックス。
そんな事を思っていたころ、ガチャ、と扉の開く音がした。

禁書「あ、とうま帰って来たんだ……ね」

部屋の扉を開けて入ってきたのは上条ではなく、隻眼の男だった。

隻眼の男「一緒に来てもらおうか。『禁書目録』」

禁書「え?あ……そんな……だって……」

インデックスはかなり動揺していた。

まず1つ目。この男は多分魔術師だ。それも相当レベルの。だから怖くて仕方ない。

2つ目は、この男に気付かなかった自分に動揺していた。
扉を開けられるまで、その姿を見るまでに気づく事が出来なかった。

そして3つ目。何故こんなにも強力な魔術師が、学園都市に居るのだろうか?
まして、上条の部屋に来れたのだろうか?

インデックスは動揺しすぎて、過呼吸になりかけていた。

隻眼の男「この調子なら、勝手に気絶してくれそうだな」

禁書(とう……ま……)

結局、過呼吸をこじらせたインデックスは意識を失った。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:45:55.49 ID:qsadPkX80
第6学区

一方通行「帰りてェ」

現在一方通行達は、学園都市の中でもアミューズメント施設が多く集結した場所にいる。
一方通行はそこで様々なゲコ太グッズを買わされたり、様々な施設に連れ回されたりして
疲弊していた。今はベンチで休憩中である。

番外個体「情けないねェ。女の子とのデートも満足にできねェのかよ?」

一方通行「したことねェし、出来るわけねェだろ。てか俺の真似すンな。気色悪ィ」

番外個体「あははは。あなたの真似って案外楽しいね」

一方通行「あっそ」

番外個体「素っ気ないなぁー。女の子の話はちゃんと聞いてあげないと」

一方通行「知ったこっちゃねェよ」

打ち止め「ねーねー。次はあれに乗ろう、ってミサカはミサカはあなたの腕を引っ張ってみる」

打ち止めが一方通行の腕を引っ張りながら指差したのは、観覧車だった。

一方通行「あァ?ンなもン番外個体と一緒に乗って来いよ。俺はここで休ンでる」

打ち止め「やだ。ミサカはあなたと一緒に乗りたいの、ってミサカはミサカは大胆発言」

番外個体「みっ、ミサカもっ、ミサカも乗りたい!」

一方通行「チッ。仕方ねェ。3人で乗りゃあいいンだろ?」

打ち止め「そうそう。そうと決まれば、観覧車までダッシュ!ってミサカはミサカは
     爆走してみたり~」

一方通行「そンなに慌てンな。転ぶぞ」

打ち止め「ミサカがそんなドジな真似するはずが、あ!」

ドジな真似するはずがない。の台詞途中に早速転んだ打ち止め。

一方通行「言わンこっちゃねェ」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:48:36.01 ID:qsadPkX80
一方通行「ほら、早く起きろ」

一方通行は倒れた打ち止めに手を差し伸べた。

打ち止め「……」

だが打ち止めは、一向に一方通行の手を取らないどころか、言葉一つ発しない。

一方通行「打ち止め……?」

一方通行が打ち止めの様子を窺おうとした、その時、ドサッ!と後ろから何かが倒れた音がした。

一方通行「あァ?」

訝しげに一方通行は振り返った。番外個体が息苦しそうに倒れていた。

一方通行「番外個体!」

一方通行は番外個体のもとへ近付く。

一方通行「おい、どうした?何があった?」

番外個体「妹……達……」

一方通行「妹達(シスターズ)がどうしたンだ!?」

番外個体「世界中の……妹達が……次々と……殺されている……」

一方通行「なンだとォ!?」

今の一方通行の演算能力は、1万人近い妹達の代理演算で行われている。
つまり妹達が殺されてしまうと、一方通行は能力は愚か、日常生活すらままならなくなってしまう。
そして何より、これ以上妹達を殺されること自体許せなかった。

一方通行「妹達を殺している奴はどこだ?」

番外個体「世界中にいる……妹達は……現在進行形で……同時多発的に殺されている……
     さすがの……あなたでも……全部は回れない……だから……妹達の虐殺が……
     一番激しいところ……」

番外個体「ロシアに……向かってほしい……」

一方通行「あァ、分かった」

一方通行は返事をした直後、あるところに電話をかける。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:51:02.39 ID:qsadPkX80
一方通行「土御門」

土御門『今そちらに結標を向かわせている。番外個体と打ち止めは
    とりあえず「冥土帰し」(ヘブンキャンセラー)のところに預ける』

一方通行「まだ何も言ってねェけど」

土御門『事情は大体分かっている。いいからお前は妹達を助けに心おきなくロシアまで行って来い』

毎度のことだが、何故土御門は何でも知っているのだろうか。
疑問だったが、今はそんなこと気にしている場合ではない。

一方通行「結標なンかに、こいつら預けて大丈夫なのか?」

土御門『結標はショタコンだから、幼女には興味ないぞ?』

一方通行「当たり前だ。そンなこと聞いてンじゃねェよ。実力的に大丈夫か聞いてンだ」

結標「あら、随分な言い草ね」

いきなり虚空から現れた彼女は結標淡希。能力は『座標移動』(ムーブポイント)。

土御門『大丈夫だろ。結標もついにレベル5、それも第2位になったんだからな。
    テレポートできる距離と質量も、前より格段に上がっているし
    自身の転移も今は余裕みたいだからな』

一方通行「ふーン」

結標「反応薄いわね。ま、レベル6のあなたからすれば、私なんて雑魚も同然でしょうね」

一方通行「うン」

結標「ものすごく正直ね。この子たちを壁か地面の中へテレポートしようかしら」

一方通行「オマエ……死にたいのか?」

結標「冗談よ。じゃあそういうことで、この子達を病院へ送ってくるから」

宣言通り、結標と打ち止めと番外個体が、目の前から消えた。

土御門『これで大丈夫だろ。行ってこい、一方通行』

一方通行「気安く命令口調やめろ」

一方通行は電話を切り、チョーカーのスイッチを能力使用モードにし、飛ぶ。向かうはロシア。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:53:01.92 ID:qsadPkX80
第5学区

フレメア「浜面!大体これも欲しい!」

浜面「はいはい。分かりましたよ姫」

フレメア「早く早く!」

浜面(それにしても一体何品買うつもりだ?宅配サービスだから荷物の心配は無いけど
   もうそろそろ金の方が……)

浜面は麦野に10万程貰っていたのだが
ぬいぐるみやらゲームやらを買わされたおかげで、既に残りは5万程だった。

浜面(昼飯代とか、滝壺へのプレゼント代を考えると、そろそろきついな)

浜面「フレメア、そろそろ飯にしないか?」

フレメア「うん。大体おなか減ったしそうしよう。にゃあ」

浜面(ふぅ。これでようやく買い物地獄から抜け出せましたな)

浜面はそんな事を考えながら、フレメアを連れて近くのファミレスに入る。

店員「いらっしゃいませー。何名様ですか?」

フレメア「大体2名様」

店員「喫煙席と禁煙席、どちらにしますか?」

フレメア「大体禁煙席で」

店員「かしこまりました。ではこちらへどうぞー」

案内された席に座ってから、注文を決めた後、浜面はこう切り出した。

浜面「なあフレメア、女の子にはどんなプレゼントあげた方が良いと思う?」

フレメア「う~ん、私だったらブラッド&デストロイとか、鯖缶とかくれたら大体嬉しい」

浜面「そ、そうか」

浜面(ブラッド&デストロイあげて喜ぶ女の子なんて、フレメアぐらいじゃないか?
   鯖缶好きなのは、姉の遺伝か?)

などと適当に考えながら、結局滝壺にあげるプレゼントどうすんだ!?と悶絶する浜面。
それを訝しげに見るフレメア。というか外出した本来の目的が麦野の鮭弁と
絹旗のマシュマロのおつかいという事を忘れている2人。

フレメア「どうしたの浜面?悩みなら大体聞いてあげるよ?迷える子浜面の為に」

浜面「なんだよ子浜面って!馬鹿にすんなよ!」

10歳くらいの女の子に馬鹿にされ、しかも少し大人気なくキレてしまう浜面。
そんな時だった。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:55:20.45 ID:qsadPkX80
お姉さん「きゃ!」

浜面「へ?」

浜面達が居る席の横を通りかかった、ドリンクを持ったお姉さんが盛大にコケた。
そのお姉さんが持っていたドリンクは、見事に浜面にかかった。

浜面(マジか)

店員「だ、大丈夫ですかお客様!」

浜面「まあ、なんとか」

お姉さん「あいたたた。あっ!ごめんなさいね。お姉さんの不注意で
     こんなにビショ濡れになっちゃって」

お姉さん「お詫びに、これからお姉さんが、何でも一つだけ言う事を聞いてあげるわ」

浜面(なんですと!?)

浜面がこんなに興奮するのには訳があった。
なにせそのお姉さんは、爆乳な上に、ふわふわ金髪カールで超美人という
エロの化身のような人だったからだ。
そんな人が「何でも一つだけ言う事を聞く」と言い出したのだ。
健全な男児である浜面仕上は、興奮度MAXだった。

浜面(なんてナイスバディーなんだ!スタイルだけなら、滝壺すらも凌駕している!?)

などと内心で葛藤している浜面だったが、そこにフレメアが一言。

フレメア「大体浜面、なんかエロい」

浜面「え?」

お姉さん「あら、そうなの?お姉さんをそんな目線で見てくれるなんて嬉しいわ♡」

浜面「いえわたくしは、そんなやましい気持などは一切なくってですね……って、え?」

お姉さん「あら、そうなの?お姉さんはもうそんなに魅力ないのかしら」

浜面(え?何この人?エロい目線で見られる方が嬉しい人なの?え?何それ?)

お姉さん「とりあえず一緒にご飯食べない?お姉さんも今来て注文したトコだったの」

浜面「そ、そうっすね」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:56:46.60 ID:qsadPkX80
とりあえずお姉さんと相席することになった浜面とフレメア。3分後、それぞれ注文した品が来た。

お姉さん「ここで会ったのも何かの縁。君の名前はなんて言うのかしら?」

浜面「俺の名前は浜面仕上。そちらは?」

お姉さん「浜面クンね。お姉さんの名前はオリアナ=トムソン。オリアナでもトムソンでも
     お姉さんでも、呼び方は何でもいいわよ」

浜面「じゃあオリアナさんで」

オリアナ「ええ」

浜面「あのー、相談があるんですけど、聞いてもらっても良いですか?」

オリアナ「もちろん」

浜面「あの……俺彼女いるんですけど、クリスマスのプレゼントまだ買ってなくて……何あげたら
   良いと思いますか?」

オリアナ「そうね……本当に愛し合っている2人なら、何あげても喜ぶと思うわよ。
     たとえそれがどんな安物であっても、心さえこもっていれば、ね」

浜面「そうですか……ありがとうございました!」

オリアナ「いえいえ」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 21:59:10.80 ID:qsadPkX80
その後も案外会話が盛り上がる2人(主に浜面の麦野と絹旗の愚痴)。
それが面白くないのか、フレメアが割って入る。

フレメア「大体、もうおなか一杯になっちゃった。もう出よう」

浜面「駄目じゃないか。ちょっと残して。ちゃんと食べなさい!」

フレメア「いーやーだー。大体もうおなかいっぱいー!」

浜面「……分かったよ。じゃあ俺が食べるから少し待っていてくれ」

フレメア「大体分かった」

しかし、再びオリアナと浜面の2人だけで会話が弾んでしまう。面白くないと思ったフレメアは

フレメア「もう浜面の馬鹿!大体麦野お姉ちゃんの鮭弁と絹旗お姉ちゃんの
     マシュマロを買うんでしょ!?」

浜面「あ。(やっべーそうだった。今頃麦野キレてるんじゃねぇか?)」

とりあえず携帯を見てみるが、幸いまだ着信は無かった。

浜面「フレメア、気付いていたんなら、なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ」

フレメア「だって……浜面と2人でいるのが楽しかったんだもん……だから
     すぐには帰りたくないな、って思ったんだもん……」

浜面「そ、そうだったのか」

オリアナ「あら、浜面クンって結構モテるのね」

浜面「モテるとかじゃなくて、懐かれているだけですよ。じゃあおつかいもあるんで、俺はこれで」

オリアナ「ちょっと待って。私、車で来てるの。だから送ってあげるわよ」

別に電車でもバスでも、帰る方法はいくらでもあるのだが
せっかく送ってくれると言うし、車の方がいろいろ楽だなと判断した浜面は

浜面「じゃあお言葉に甘えて」

オリアナ「じゃあ行きましょ」

3人は食事代を払い、ファミレスを出て、オリアナの車へ乗り込む。

浜面「へー。高そうな車ですね」

オリアナ「お姉さん自慢の車よん♪」

フレメア「それじゃあ、大体そう言うことでしゅっぱ~つ」

こうして浜面とフレメアを乗せた車は発進した。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 22:00:17.01 ID:qsadPkX80
上条の寮

上条(ドアノブが明らかに壊されている……!)

上条「インデックス!」

勢い良く扉を開け叫んだ。返事は無い。
中に入り少し様子を見てみたが、荒らされた形跡は特に見られない。
だがインデックスの姿だけがどこにもない。

上条「くっそ!遅かったか!」

とりあえず携帯を取り出し、土御門に電話をかける。

上条「もしもし」

土御門『どうだ、カミやん』

上条「既に……いなかった……」

土御門『そうか、遅かったか。だが嘆いていても仕方ない。とりあえず第22学区へ来てくれ。
    そこで作戦会議だ』

上条「分かった」

電話を切り、第22学区へ向かう。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 22:01:24.98 ID:qsadPkX80
その頃一方通行は、天使化して時速8000kmでロシア上空を飛んでいた。

一方通行(どこに行けばいいか分からねェが、とりあえず飛び回っとくか)

そう考え1分ほど空を飛んでいると
地上からドォン、バゴォン!と爆発音が聞こえてきた。

一方通行(あそこかァ!)

地上へ急降下していく一方通行。そして1秒もかからずに、ドガァァァン!と地上へ激突した。

魔術師達「何だ、今の音は!」

一方通行「ビンゴみてェだなァ」

魔術師達「な、何だあれは!」

妹達「一方……通行……」

一方通行「さァて、天国行きのチケットをプレゼントしてやるよォ!」

一方通行の一方的な大虐殺が始まった。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 22:02:42.02 ID:qsadPkX80
イタリアのミラノ とある民家の前

オッレルス「ふぅ。こんなもんかな」

妹達「助けていただきありがとうございました、とミサカ達はお礼を言います」

オッレルス「どういたしまして」

妹達を助けた彼はオッレルス。数多くの魔道書の『原典』(オリジン)の知識を実用化し
魔神としての力を振るう為に『北欧王座』(フリズスキャルヴ)を利用している。

シルビア「どういたしまして、じゃないわよ!」

オッレルス「痛!」

オッレルスを殴った彼女はシルビア。英国所属の魔術師であり『聖人』でもある。

シルビア「まーた10人も女の子助けちゃって」

オッレルス「仕方ないだろ。目の前で困っている人がいたら助けるのが普通だ」

シルビア「もう今月になって保護する子供達、これで何人目よ?」

オッレルス「今まで90人だったから、今日で100人いった」

シルビア「100人いった。じゃないわよ!」

再びオッレルスを殴るシルビア。

オッレルス「痛!」

シルビア「100人の子供達の面倒見るのが、どれだけ大変か分かってんの?」

オッレルス「はい、承知しています。いつもシルビアさんには感謝しています」

シルビア「分かってるなら良いけど」

シルビア「まあ、私も、あんたのそういうところに惚れたし」

オッレルス「なら、もう少し優しく接してくれませんかね」

シルビア「何だと!?」

ヘッドロックをかけるシルビア。

オッレルス「ちょ、ギブギブ!」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 22:05:02.69 ID:qsadPkX80
フィアンマ「昼間っから俺様の目の前で、イチャついてんじゃねぇよ」

2人に軽口を叩く彼は、元『神の右席』フィアンマ。
間違ったやり方で世界を救おうとしたが、上条に敗れ、阻止される。
その後、アレイスターの手によって瀕死に追い込まれるが
オッレルスとシルビアによって保護された。

オッレルス「これがイチャついているように見えるのかい?助けておくれよ」

フィアンマ「お前なら、抜け出そうと思えばいつでも抜け出せるだろ」

フィアンマ「それを抜け出さないってことは、シルビアのおっぱいを堪能したいからか?」

シルビア「げ、そんな考えなの?」

シルビアは即座にヘッドロックを解いた。

オッレルス「ちょ、違いますよ!?あれはフィアンマが言ったデタラメで」

シルビア「うるさい!もう近付くな変態!」

オッレルス「え……」

オッレルスは激しく落ち込む。

フィアンマ「はっはっはっ!本当にこいつらのやりとりはいつ見ても面白いな。飽きがこない」

ヴェント「本当ね」

彼女はヴェント。元『神の右席』の一人。
第3次世界大戦後は、行くアテもなく彷徨っていたところをオッレルス達に保護された。

ヴェント「本当、あの2人が羨ましい」

そんな事を言うヴェントを、フィアンマはじーっと見た。その後、ヴェントを引き寄せる。

ヴェント「な、何?」

フィアンマ「お前、やっぱり顔面のピアスとって薄化粧にしたら美人だな」

ヴェント「な、何言って……ん」

フィアンマはヴェントの唇に自分の唇を重ねた。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 22:06:35.51 ID:qsadPkX80
オッレルス・シルビア・妹達「「「な!?」」」 

ヴェント「ちょ、何すんのさ///」

フィアンマ「いいだろ別に。俺様達は恋人同士なわけだし」

ヴェント「そ、そうかもしんないけど。こんな、皆の前で///」

フィアンマ「お前がラブラブなのが羨ましいって言うから、キスしてやったのに」

ヴェント「だ、だから、その、嬉しいけど、場所を考えてほしいわけであって///」

シルビア「ラブラブで良いなぁ」

オッレルス「じゃあ俺達も……するか?」

シルビア「は、な、何言ってんのよ!誰があんたなんかと///」

オッレルス(全く、こういうところで照れるのがまた可愛いんだよなぁ)

シルビア「な、なにニヤついてるんだ気持ち悪い!」

シルビアは、恥かしそうにそっぽを向いた。

オッレルス(ああ、可愛い)

なんだか2組のカップルがイチャつきだしたところで

妹達「あ、あのー」

シルビア「何?」

妹達「ミサカ達は別に保護してもらわなくてもやっていけます、とミサカ達は宣言します」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/28(木) 22:08:49.46 ID:qsadPkX80
オッレルス「駄目だ」

妹達「え?」

オッレルス「君達は一方通行という、学園都市の切り札を動かす重要な鍵となっている」

妹達「ど、どうしてそれを」

オッレルス「まあいろいろとね。君達がいなくなると、一方通行が機能しなくなる」

オッレルス「そして一方通行という切り札が使えなくなると、学園都市の戦力は著しく低下する」

オッレルス「本当は世界中に散らばっている妹達全てを助けたいところだが、時間的に
      さすがにそれは無理だ」

オッレルス「だからせめて、君達だけでも守り通さないといけない」

妹達「何故ですか」

オッレルス「何故って、今説明した通り」

妹達「そうではなくて、何故ミサカ達や一方通行、ひいては学園都市の心配をするのですか?」

妹達「先程のあなたの戦闘を見させてもらいましたが、敵は『何故だ!何故魔術サイドである
   貴様達が、科学サイドのこいつらに味方している!』などと言っていました」

妹達「『魔術』というのがミサカ達にはよくわかりませんがあなた達は魔術サイドの人間で
   ミサカ達とは本来敵対関係にあるのではないですか?とミサカ達は当然の疑問を
   投げかけます」

オッレルス「じゃあ逆に質問するけど、もし君達の目の前で、君達の嫌いな人が
      誰かに殺されかかっていたとしたら、そいつが嫌いだからと言って
      君達は助けないのかい?」

妹達「それは……助けるとは思いますが」

オッレルス「それと同じさ」

妹達「……」

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:46:31.08 ID:D9cHSfej0
オッレルス「と、まあカッコつけて言ってみたけど」

オッレルス「君達もそのネットワークを通して分かっていると思うけど
      今の学園都市は軽い戦争状態だ」

妹達「そ、それは」

オッレルス「別に隠さなくても良い。俺達は分かってて助けたんだから」

オッレルス「何故そんなことになっているかと言うと、ローラがとある人間を殺すためだけに
      学園都市を襲っているからだ」

妹達「ローラとは?そしてとある人間とは?」

オッレルス「ローラはイギリス清教って言うところの最大主教さ。
      今では魔術サイドの長と言っても過言ではないだろうな。
      そしてとある人間とは、学園都市統括理事長アレイスター=クロウリー」

妹達「!」

オッレルス「アレイスターを殺す為だけに学園都市の子供達を巻き込むのはおかしい。
      俺達はこの争いを止めたいんだ。学園都市の第1位、一方通行が負けると
      戦況は一気に傾くだろ?それを防ぎたいのさ」

妹達「なるほど。それでミサカ達を。ですが、そればらば急いで学園都市に応援に行かないと」

オッレルス「そう言うと思ったよ。準備はもう出来ている。まずは今から、ヴェントの
      風の魔術で一方通行のところへ行く」

妹達「……あなたは一体、何者なのでしょうか?」

オッレルス「オッレルス。魔神になり損ねた、惨めな魔術師だよ」

ヴェント「何カッコつけてんだか。こっちの準備は出来たわよ」

オッレルス「そっか。他の皆も大丈夫か?」

シルビア「当たり前よ」

フィアンマ「俺様も完璧だ」

妹達「あの、ミサカ達はどうすれば……?」

オッレルス「そのままでいいよ。よし、じゃあ頼む」

ヴェント「OK」

ヴェントが返事をすると、風がオッレルス達や妹達の体を包む。

妹達「わっ」

オッレルス「それでは、ロシアへ向けてしゅっぱーつ!」

こうしてオッレルス達は、ロシアに居る一方通行のもとへ。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:48:38.99 ID:D9cHSfej0
第22学区

上条「ど、どうなってんだよ……」

上条が第22学区に辿り着いて、最初の感想がそれだった。

上条「人が……1人もいねぇ……」

ステイル「忘れたのかい上条当麻。これは人払いの刻印(ルーン)だよ」

声は後方から聞こえてきた。上条は勢い良く振り返る。

ステイル「おっと失敬。そういや最初に会った時の僕と神裂の事は忘れていたんだったね」

上条「土御門はどこだ?それとお前は敵なのか?味方なのか?」

ステイルと言えば、なんだかんだで結構共闘している仲間みたいなものだ。
しかし今回は、イギリス清教自体が敵と言う事もあって、念のため確認をした。

ステイル「質問は1つずつにしてくれよ」

ステイル「1つ目の回答としては、これは土御門の罠だ。いい加減気付け」

上条「は?」

言っている意味が分からなかった。

ステイル「2つ目の回答は、君を倒すためにここに来た!つまり君の敵さ!」

上条(やっぱステイルまで敵なのかよ!)

ステイル「さあ、行くよ!」

上条(来る!)
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:49:58.14 ID:D9cHSfej0
ステイル「巨人に苦痛の贈り物を!」

ステイルは炎剣を上条にではなく、上条の数m手前の地面に向かって放る。
当然地面が爆発する。その爆風自体は、上条の『幻想殺し』で防ぐことが出来るが
爆発によって砕けた地面の破片を防ぐことは出来ない。

上条「くそっ!」

上条は、素早く数歩後退することで破片をやり過ごす。

ステイル「原初の炎、その意味は光、優しき温もりを守り厳しき裁きを与える剣を!」

間髪容れずに、今度はステイル自身が炎剣を持って突っ込んでくる。
上条はそれを右手で受けて立とうとするが

ステイル「弾けろぉ!」

ステイルが叫ぶと同時、上条の右拳が届く前に、炎剣は爆発した。
上条の右手は、爆風は難なく防いだ。しかし煙は残ってしまっている。

上条(煙で周りが見えねぇ……!)

ステイル「灰は灰に、塵は塵に、吸血殺しの紅十字!」

声は左から聞こえてきた。ステイルの右手からは赤い炎
左手からは青白い炎が、それぞれ伸びてくる。

上条「う、おおおおお!」

煙が完全に晴れたわけではないため、炎は見えないが悠長に考えている暇はない。
すぐに炎は来る。そう思い咄嗟に右拳を右斜め前方へ叩きこむ。

キュイーン!と甲高い音が響いた。
炎を消せたと確信した上条は、殴った勢いそのままで右斜め前方に転がりこんだ。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:51:03.78 ID:D9cHSfej0
上条(何とかして近付かないと……!)

勢いよくステイルへ向かって駆け出す。

ステイル「はあ!」

今度は周りの地面の前後左右から、炎の鞭が4本伸びてくる。

上条「こんな技、見たことねぇぞ!」

ステイル「僕だって成長しているんだよ!」

上条は臆せず、迫りくる4本の炎の鞭の内、前方から伸びてくるものを打ち消し
そのまま前進する。左右と後方から迫っていた炎の鞭は、ぶつかり爆発した。

上条「とりあえず、これで目を覚ませ!」

ステイル「ふん」

上条の拳は、ステイルの体をすり抜けた。

上条「な!?」

ステイル「それは蜃気楼だ」

声は後方から聞こえてきた。

ステイル「炎の鞭は防いだみたいだけど……ならこれはどうかな!」

上条が素早く振り返ると、巨大な炎の球体がゆっくり迫ってきているところだった。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:52:45.33 ID:D9cHSfej0
上条(この程度の速度なら、俺の『幻想殺し』で速攻で消せる!)

炎の球体に向かって駆け出す。

ステイル「君も学習しないねぇ。拡散しろぉ!」

炎の球体は爆発した。爆発したと言っても、ただ爆発したわけではなく
直径10cm程、長さは50cm程の炎の槍が拡散するように爆発した。

上条(これは――)

炎の槍は、ステイル以外の全方向へ向かって拡散していく。上条に向かってくるのは10本程。

上条(――全部綺麗には避けきれねぇな!)

それでも、ここで引く訳にはいかない。上条は勢いを落とさず突っ込んでいく。

上条「うおおおお!」

炎の槍を避ける、消す、しかし3本目が左腕を掠める。

上条「ぐっ!」

消す、避ける、避ける、7本目が右腕を掠める。

上条「があっ!」

8本目を消す、しかし9本目と10本目がそれぞれの両脚を掠めた。

上条「あがっ!」

直撃を免れたとは言え、3000度の炎の槍は掠めただけでも相当な激痛だった。
上条はたまらず片膝をついてしまう。

ステイル「膝をついている暇があるのかなぁ!」

ステイルが上条に向かって駆け出す。

上条「くっ!」

ステイル「喰らえ!」

ステイルは飛び膝蹴りをかました。上条は咄嗟に両腕を交差させてガードをしたが
2mの長身から放たれる飛び膝蹴りの威力は相当なものだった。
上条は地面を数m転がったが、その勢いを利用してすぐに立ち上がった。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:54:47.02 ID:D9cHSfej0
上条「はぁ~、痛ってぇ~」

じんじんと痛む両腕を振り、調子を確かめる。
どうやら骨が折れたりヒビが入ったりした様子はない。

上条「お前、相当強くなったんじゃないか?魔術も前より多彩だし体術も凄かった」

ステイル「君に僕の何が分かる。いいからおとなしく消し炭になってくれないかな」

上条「だって俺、お前の事ただのニコチン中毒だと思ってたし」

上条「それに三沢塾の時だって、建宮と戦ったときだって、オリアナと戦ったときだって
   お前そんなに役に立ってなかったじゃん?」

ステイル「えらく余裕じゃないか。僕にはまだ『魔女狩りの王』(イノケンティウス)という
     切り札があると言うのに」

ステイル「そしてここは地下街。イノケンティウスと相性が良い」

上条「はっ!んなもん使わせなきゃいいだけだろ」

ステイル「なら見せてやろう。僕の切り札を」

上条「させるかよ!」

ステイルに詠唱はさせまいと、上条は駆け出す。

ステイル「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ
     それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり」

上条「詠唱はさせねぇ!」

しかし、上条の拳はまたしてもすり抜けた。

上条(また蜃気楼!?)

本物のステイルは、その蜃気楼からさらに数十m後方にいた。

ステイル「それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり
     その名は炎、その役は剣、顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ」

ステイル「イノケンティウス!」

ステイルの呼びかけとともに、イノケンティウスが顕現した。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:56:02.60 ID:D9cHSfej0
上条「出させちまったか……しかもオルソラ救出の時より遥かにでかいし。はぁ……不幸だ……」

ステイル「だからその余裕はどこから来るんだ!いけ!イノケンティウス!」

ステイルに呼応するように、イノケンティウスの左手が上条に迫る。

上条「んなもん効かねぇよ!」

打ち消せない事を逆に利用し、上条はその左拳を掴み取り、右後方へ受け流す。
その後、すぐさま右拳が飛んでくるが、それを左に転がることでやり過ごす。

ステイル「ならばこれはどうだ!」

今度は幅30m、高さは20mほどの炎の波が迫ってくる。

上条「俺には効かねぇ!」

甲高い音と共に、炎の波も『幻想殺し』によって、あっさり破壊される。

ステイル「これならどうだ!」

イノケンティウスが雄叫びをあげる。瞬間、上条の真下の地面から炎の柱が現れた。

上条「っ!」

上条は、それすらも素早いフットワークで避けて消した。
その後も何本か、上条を狙って地面から炎の柱が出てくるが
避けては消し、避けては消し、を繰り返した。

上条「いい加減懲りろよ。効かねぇんだよ!」

ステイル「これなら!」

今度は火炎放射が放たれた。

上条「効かない」

火炎放射すらも当然のように受け流す。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:57:06.57 ID:D9cHSfej0
上条「今度はこっちから行くぜ!」

ステイル「ははっ!イノケンティウスへ突っ込んでどうするつもりだい!」

上条「こうするんだよ!」

上条はイノケンティウスを殴るのではなく、大きく引っ掻くように右手を振るった。
すると一瞬ではあったが、イノケンティウスの引っ掻かれた部分が消えた。

上条「とうっ!」

上条はその一瞬出来た隙間を潜り抜けた。

上条「お前の切り札、抜けたぜ!」

ステイル「くそっ!」

ステイルは咄嗟に両腕をクロスさせてガードを作る。

上条「へっ!そんなチャチなガード、こうやって破れるんだよ!」

上条は、右足でステイルの両腕を蹴りあげた。

ステイル(ガードが解かれ――!)

上条「とりあえず、お前にはいろいろ喋ってもらおうか!」

ドガァ!と上条の拳がステイルの顔面に突き刺さる。
ステイルは竹とんぼのように回転し、後頭部を地面に強打し、仰向けのまま気絶した。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:58:04.12 ID:D9cHSfej0
上条「やべ……気絶しちまったか……」

これでは情報が聞けないと思った上条だったが、先程のステイルが言った事。

『1つ目の回答としては、これは土御門の罠だ。いい加減気付け』

上条「……こうなったら、土御門に直接電話をかけるしかないか……」

意を決して、土御門に電話をかける上条。

土御門『どうしたカミやん』

上条「第22学区へ行ったらステイルがいた。で倒した」

上条「そして妙な事を言った。『これは土御門の罠だ』って」

上条「違うよな!?土御門!」

土御門『……第7学区の俺達の高校の教室まで来てくれ』

それだけ言って電話は切れた。

上条「……行くしかないか」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 11:59:00.85 ID:D9cHSfej0
ロシア

魔術師達は一方通行の手によって、ただの肉塊と成り果てていた。
20人ほどいたが、要した時間はわずか5分。

一方通行「大丈夫か」

妹達「助かりました一方通行、とミサカ達はお礼を言います」

15人ほどいた妹達はそうお礼をした。

一方通行「そンなことはどうでもいいから、次の妹達のところへ行くぞ」

妹達「はい」

そうしてさっさと次の妹達のところへ行こうと思った矢先だった。

ワシリーサ「あらあら、それはちょっと困るな~」

一方通行「あァ!?」

ランシス・フロリス・ベイロープ「「「ふふふ」」」

一方通行「またワラワラと」

サーシャ「私見1。私達を先程までの雑魚たちと一緒にしてもらっては困ります」

ワシリーサ「そう言う訳だから、いかせてもらうZE!一本足の人喰いばあさん!」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:00:22.85 ID:D9cHSfej0
ランシス・フロリス・ベイロープ・サーシャ、そしてワシリーサの
一本足の人喰いばあさんが、一斉に一方通行に襲い掛かる。

一方通行「その程度でどうにかなると思ってンのかァ!」

一方通行の背中から黒い翼が噴射される。
その一撃だけで、ランシス・フロリス・ベイロープ・サーシャは葬られた。
それでも一本足の人喰いばあさんだけは、黒い翼と拮抗した。

一方通行「やるじゃねェか」

ワシリーサ「よくも……よくもサーシャちゃんをーーー!」

激昂するワシリーサに連動して、人喰いばあさんが力を増す。
それは黒い翼を押し始めるほどだった。だが一方通行は余裕を崩さない。

一方通行「時間がねェンだ。これで決める」

その瞬間、一方通行の黒い翼が純白に変化した。圧倒的な白い翼の力の前に
一本足の人喰いばあさんは為す術なく切り裂かれ、ワシリーサをも切り裂いた。

一方通行「終わった。次の妹達のもとへ行くぞ」

しかし、後方から何者かの気配。
一方通行は気だるげに振り返った。

オッレルス「ちょっと待ってくれないか」

一方通行「なァーンなーンですかァ?オマエは?」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:02:18.86 ID:D9cHSfej0
オッレルス「俺の名前はオッレルス。詳しい事は省くけど、君達の味方だ」

オッレルスに保護された妹達「これは本当のことです、とミサカ達はフォローしときます」

一方通行「俺の邪魔をしねェならそれでいい。早く次の妹達のもとに行かねェと」

オッレルス「駄目だ。ここにいるのと、学園都市にいる妹達以外は全滅している」

一方通行「勝手なこと言うなよ。オマエに何が分かるってンだ?」

一方通行はオッレルスの胸倉をつかむ。その時、上から声が聞えてきた。

エツァリ「その方が言うのは、本当ですよー」

一方通行「海原か」

エツァリ「学園都市の時速7000kmの旅客機で、迎えに来ました」

一方通行「そンなもン、俺は無くても」

エツァリ「妹達や、そこにいる4人の魔術師の為に用意したものですよ」

一方通行「あっそ」

素っ気ない返事をする一方通行だったが
妹達の為ならともかく今来た4人の魔術師の為に用意した、と言うのはおかしい。
なんかもういろいろと訳が分からなかったが、そんなこと気にしている場合ではなかった。

一方通行「じゃあさっさと学園都市に戻るぞ」

そうして一方通行達は、超音速旅客機に乗り込み学園都市へ。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:04:40.27 ID:D9cHSfej0
オリアナの車

浜面「オリアナさん、こっち、方向が違うんですけど……」

オリアナ「いいじゃない。このまま帰るなんて勿体ないわ。お姉さんと“イイコト”しましょ?」

浜面「っ!」

若干エロい雰囲気の台詞を言われているにもかかわらず、全く興奮しない。
あるのは寒気だけ。浜面は確信した。自分達は誘拐されていると。

オリアナ「どうしたの?お姉さんとイイコトを」

浜面「オリアナさん、もうそろそろその白々しい演技やめません?」

オリアナ「あら、ただの坊やかと思ったら、意外と勘が鋭いのね」

浜面「鋭いもんか。こうやって車に乗っちまってる時点でアウトだよ」

浜面「アンタ、何者だ?」

オリアナ「お姉さんの名前はオリアナ=トムソン。って自己紹介したはずだけどなぁ」

浜面「そのふざけた喋り方は演技じゃないのか」

オリアナ「まあね」

浜面(そんなことはどうでもいい。この状況をどうするかだ。
   相手の素性は分からないし滝壺達を巻き込みたくない。よって助けを呼ぶのは却下)

浜面(となると自力で脱出するしかないわけだが……)

チラッとフレメアの方を見る浜面。フレメアは震えていた。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:07:23.49 ID:D9cHSfej0
浜面(フレメアもいるし、どうするべきか……)

現在浜面達を乗せている車は高速道路を走っている。
ここで下手に車から飛び降りれば、ただではすまない。
ましてやフレメアもいる。車から飛び降りるのはまず無理だ。

ではオリアナの邪魔をして車を止めるべきか?
いや、それも下手すると車が横転してしまうなどの危険性もある。
しかし、このまま何もしなければどこかへと連れ去られてしまうだけだ。

オリアナ「何かいろいろと考えているようだけど、ここから逃げようなんて思ってないわよね?」

浜面「……目的は何だ?」

オリアナ「教えると思う?」

浜面「そうかよ」

浜面は持っていた拳銃の銃口を、オリアナの側頭部に突きつけた。

浜面「フレメアの手前、あまり手荒なことはしたくなかったんだけどな」

オリアナ「あら、そんな立派なものも持っていたのね」

浜面「そのふざけた喋り方はやめろ。それと今すぐUターンして引き返せ」

オリアナ「嫌だと言ったら?」

浜面「迷わず引き金を引くに決まってんだろ」

オリアナ「お姉さん、強引な人は嫌いじゃないけど、早漏はあまり好きじゃないわね」

浜面「だからそのふざけた喋り方を」

浜面が何か言いきる前に、オリアナは車のブレーキを思いっきり踏む。
それはつまり、慣性の法則によって車に乗っている全員が前のめりになるという事。
しかし、それはさほど問題ではない。シートベルトがあるからだ。だが

ブチッ!と助手席に座っていた浜面のシートベルトが千切れた。
結果として浜面は、フロントガラスに思い切りぶつかった。

浜面「く……そ……」

オリアナ「うふ♪」

そしてオリアナは即座に単語帳の1ページを千切り、浜面に貼りつける。
オリアナが貼りつけた『速記原典』(ショートハンド)からそこそこの威力の電流が流れた。

浜面「があああああ!」

頭部を強打した上に、電撃を喰らった浜面は気絶してしまった。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:09:20.74 ID:D9cHSfej0
フレメア「は、浜面!浜面!!」

オリアナ「お嬢ちゃんも、少しの間眠っていてもらおうかしら」

オリアナは『速記原典』すら使わず
どこからともなく出した催涙スプレーを使い、フレメアを眠らせた。

オリアナ「さて、これで後はあそこへ行くだけね」

再び車を発進させようと前を向きなおすオリアナ。
すると数十m先に1人の少女が仁王立ちしているのが見えた。

オリアナ(高速道路に仁王立ちって、明らかに一般人ではないわよね)

そう考えたオリアナはアクセルを全開にし、少女に突っ込む。そして――

ドゴォン!と車の方が少女に止められた。

オリアナ(ふふ。これが『能力者』ってわけね)

オリアナはアクセルペダルを踏み続ける。しかし少女は、吹き飛ばされるどころか片手を離す。
離した片手で、懐からレディース用の拳銃を取り出す。そして迷わずその銃口をオリアナへ向ける。

オリアナ(このフロントガラスは防弾性。そんなチャチな拳銃ではどうにも)

少女は迷わず引き金を引く。当然、オリアナは銃弾なんて弾かれるだけだろうと思っていた。
しかし、そんな思惑に反して、ビシィ!と銃弾はフロントガラスにめり込んだ。

オリアナ(え?)

そして2発目。今度はガラスが砕け散った。
さすがにヤバいと思ったオリアナは、車から急いで降り単語帳の1ページを千切る。
そこから出てきたのは雲の塊。オリアナはそれに乗り一旦上空に避難する。
少女は構わず雲に乗ったオリアナに向かって、2,3回発砲した。
だがオリアナを乗せた雲は素早く動き、銃弾を避けた。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:11:59.16 ID:D9cHSfej0
少女「雲に乗るなんて、超メルヘンチックな人ですね」

オリアナ「銃の引き金を迷わず引ける女の子って、将来が心配だわ」

その言葉に少女はイラっときたのか、さらに2,3回発砲した。
しかし、オリアナを乗せた雲は、いともたやすくそれらを避けた。

オリアナ「んもう、危ないんだから♡」

少女「そんなエロい感じ出したって、同姓相手には超イライラを募らせるだけですが」

オリアナ「だってそれが狙いだもの」

少女「へーそうですか。でも、そろそろ超笑い事では済まされませんよ」

少女がそう呟いた。オリアナは、何を言っているんだと思っていた。
見たところ少女は空を飛べそうもないし、この距離で銃弾を当てられるスキルもなさそうだ。

そんな少女が「笑い事で済まない」と言ったって、説得力がなさすぎる。
オリアナは心の中で嘲笑っていた。だが直後――

何かビームのようなものが、オリアナに直撃した。

少女「超ナイスです、麦野!」

麦野「まあ、私の実力なら当然ね」

滝壺「いや、まだだよ」

オリアナ「ああ~びっくり。少々焦ったから濡らしちゃったわ。見てみる?
     下着までびちゃびちゃだよ」

麦野「お前みたいなビッチのきったない下着見て誰が喜ぶんだよ?
   そこのバカ面なら、興奮するかもしれないけど」

滝壺「ちょっとむぎの。はまづらはそんなに馬鹿じゃない」

少女「ちょ、ちょっと2人とも言い争っている場合じゃ……」

麦野「全く。元はと言えば絹旗、アンタがちゃんと仕留めないから」

絹旗「そんな!超とばっちりです!」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:13:47.88 ID:D9cHSfej0
オリアナ「ふぅ~ん。あなた達が、麦野沈理、滝壺理后、絹旗最愛なのね」

麦野・滝壺・絹旗「「「!!!」」」

オリアナ「案外皆若いのね。強力な人達、って聞いていたから、もっとゴツいの想像していたけど」
     どれもこれもお子様だったのね」

麦野「そんなこと、おばさんに言われても……ね!」

『原子崩し』により出来たビームで攻撃する。オリアナは、それをいとも容易く避ける。

オリアナ「そんな普通な攻め方じゃあね。さっきは不意打ちだったから濡らしちゃったけど」

麦野「あっそ。じゃあこれはどう?」

麦野は『拡散支援半導体』(シリコンバーン)を前方に投げる。
それに自身の能力で出来たビームを当てた。ビームは拡散してオリアナに襲い掛かる。
これは避けられないだろう。と麦野は思っていたが、そもそもオリアナは避けなかった。
オリアナは『速記原典』を使い、麦野の攻撃を難なく防いだ。

オリアナ「んもう。そんなにがっつかないでよ」

麦野(なんだあれは?私の攻撃を喰らう前に、単語帳のようなものを口で千切っていたが……
   私の能力を防ぐなんて、どんな能力者だ?)

オリアナ「あなた達、案外強くて危険だから、お姉さん一旦逃げるわね」

絹旗「超勝手にしてください」

オリアナ「あら、追わないの?」

絹旗「今は浜面とフレメアちゃんの安全が超優先ですから」

オリアナ「あらそう。じゃあお姉さんはこれにて退散!」

そう言った瞬間、オリアナの乗っていた雲が爆発した。
その煙が晴れたころには、オリアナは既にいなかった。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:15:58.83 ID:D9cHSfej0
絹旗は、浜面とフレメアを車から出し、担いだ。

麦野(それにしても、あいつは一体どういう能力なんだ?)

麦野(……まあどうでもいいか。滝壺の能力で、どこにいるかは分かるんだし)

麦野「滝壺、やつはどこへ行った?」

滝壺「それが……分からない」

麦野「あれだけ時間があったのに、やつのAIM拡散力場を捕捉出来なかったのか?」

滝壺「違う。そうじゃない。あの人からはAIM拡散力場がでてないの」

麦野「はあ?意味が不明なんですけど」

滝壺「私にも、よくわからない」

そこで浜面とフレメアを担いだ、絹旗が一言。

絹旗「それって、超“能力者じゃない”ってことじゃ……」

麦野「どういうことだ?」

絹旗「だってあの人、超雲を出しただけじゃなく、麦野の攻撃も防いでいましたよね。
   “雲を出したまま”」

麦野「そう言えば……」

絹旗「あの人が雲を出す能力者だと超仮定すると、逆に言えば、雲しか出せない事になります」

絹旗「ですが、あの人は明らかに雲とは違うもので、麦野の攻撃を超防いでいました。
   それはおかしいことです」

絹旗「だって『多重能力者』(デュアルスキル)は理論上、超不可能なんですから」

絹旗「つまり、これらから超導き出せる答えは、あの女は能力者ではない。
   ということではないでしょうか」

滝壺「確かに、それなら辻褄は合う」

麦野「だとすると、やつは一体何者なんだ?」

絹旗「その答えはまだ超分かりませんが」

滝壺「とりあえずは、はまづらたちを病院へ運ばないとね」

『アイテム』は、とりあえず『冥土帰し』の病院へ。

こうして少年達やその仲間達は、戦いの渦へと巻き込まれていく。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:18:04.93 ID:D9cHSfej0
風紀委員 第177支部

初春「白井さん!第1学区のレストランで火災発生です!
   原因は『発火能力者』(パイロキネシスト)による放火だそうです!至急現場へ!」

喰い気味にインカムで指示を飛ばす彼女は、初春飾利。
能力はレべル1の『定温保存』(サーマルハンド)。
ハッカーたちの間では『守護神』(ゴールキーパー)と呼ばれるほど情報戦が得意。

白井「これで3件目ですの。一体学園都市で何が起こっていると言うんですの?」

初春飾利に疑問を投げかけた彼女は、白井黒子。能力はレベル4の『空間移動』(テレポート)。
御坂美琴を『お姉様』と呼び、尊敬している。

初春「さあ、それは分からないですけど。白井さんなら余裕ですよね?」

白井「簡単に言ってくれますけどね、さっき解決した2件の事件の犯人も
   なかなか強かったですのよ?こんなに疲れたのは
   『幻想御手』(レベルアッパー)事件以来ですの」

初春「白井さんが疲れるほど強かったんですか?」

白井「ええ。前2人は間違いなく、レベル3以上ではありましたわね」

とテレポートしながら初春と会話しているうちに、現場へたどり着く。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:19:10.84 ID:D9cHSfej0
白井「ジャッジメントですの!あなたを放火犯として拘束させていただきますの!」

発火能力者?「ふん、やれるものならやってみろ!」

それなりの大きさの炎が白井に向けて放たれる。

白井(そこそこでかい炎ですけど)

白井はテレポートで攻撃を避けつつ

発火能力者?「女はどこへ……?」

白井「ここですわ!」

男の後頭部付近にテレポートし、ドロップキックをお見舞いした。

発火能力者?「ぐはっ!」

男が倒れたところへ、白井はすかさず金属矢をテレポートさせ、男を地面に縫い付けた。

発火能力者?「ちぃ!動けねぇ!」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:20:17.92 ID:D9cHSfej0
白井「初春。放火犯、拘束完了ですの」

初春「御苦労さまでした」

男はまだ起き上がろうと必死にもがいていた。

白井「もう諦めなさいな」

発火能力者?「ふざけんな!こんな……こんな小娘になめられてたまるかよぉー!」

男はそう叫ぶと、掌から炎を出す。

白井「な」

直後、男は炎を地面に放った。それは爆発して、金属矢を地面もろとも抉り取った。

発火能力者?「へっへっへっ。さあ、第2ラウンド開始と行こうぜ」

白井「自ら出した炎とはいえ、立てるなんておかしいですの……」

発火能力者?「はっ!魔術師って言うのは、自分が使う魔術の属性には
       ある程度、耐性があるってもんよ」

白井「『魔術師』?」

魔術師「それじゃあいくぜぇ!」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:23:15.19 ID:D9cHSfej0
白井(9月1日に泥人形を使いこなした、あれと同類のものでしょうか?
   まあどの道拘束することに変わりはありませんの!)

魔術師「おらよ!」

魔術師の炎が、白井へ向かう。
白井はそれをテレポートで難なくかわし

白井「攻撃が単調ですのよ!」

再び魔術師の後頭部付近へテレポートしていた。

魔術師「お前こそ、さっきと全く同じ手とは、単純にもほどがあるぜぇ!」

魔術師は思いっきりしゃがんだ。当然白井のキックは外れた。

白井「!?」

魔術師「ひゃひゃ!パンツが丸見えだぜ~!」

下品な叫び声をあげながらも、魔術師は白井の右足を掴み背中から地面に叩きつけようとする。

白井「甘いですわよ!」

だが白井は、体を後方へブリッジを描く様に捻り、地に両手をつき叩きつけられるのを防ぐ。

魔術師「あ?」

構わず白井は、左足で右足を掴んでいる魔術師の右手を挟み、そのまま捻る。
痛みでたまらず右手を離す魔術師。白井はさらに畳みかけるように、腕のバネを使い
とんぼ返りするように、男の顔面を蹴り飛ばす。

魔術師「がはっ!」

白井「まだまだですの!」

完全に起き上がった白井は、掌底を2,3発腹に叩きこむ。

魔術師「ごっ、がっ!」

白井「とどめですの!お姉様直伝……」

白井「ちぇいさーっ!ですの!」

実際は教えてもらってなどいないのだが、見様見真似でやった回し蹴りは
見事に魔術師の顔面に決まった。

白井「今度こそ終了ですわね」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:24:54.33 ID:D9cHSfej0
初春「……さん……白井さん!いきなり爆発音が聞こえましたが、どうかしたんですか!?」

白井「ああ初春。一度拘束した男が暴れたんですの。完全に黙らせましたけど」

初春「それは良かったです。安心しましたよ。白井さんに万が一の事があって
   入院とかしてしまうと、私の仕事量が増えてしまいますからね」

白井「……素敵すぎる友情をありがとうですわ。これから支部に戻ったら
   真っ先に服だけをテレポートして、この寒空に放置して差し上げますから
   今から楽しみに待っていてくださいですの」

初春「それは無理ですよ。だってまた事件が発生していますから」

白井「ぬおおおお!本来ならばお姉様とのデートのはずだったのにいいいい!」

とりあえず男を倒し、いつも通りのふざけた調子に戻る白井と初春だった。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:26:19.67 ID:D9cHSfej0
その頃、白井黒子が敬愛する『お姉様』は第7学区の街を歩いていた。

御坂「はぁ……全く、なんでアイツ電話に出ないのよ……」

電話に出ない“アイツ”に文句を言っているのは、御坂美琴。
能力はレベル5の『超電磁砲』(レールガン)で、レベル5の中では第3位。

御坂「……アイツがロシアから帰って来た後、私を心配させた罪で
   また『罰ゲーム』をとりつけることに成功したけど……」

御坂「もしかして、今日のデートの約束忘れているんじゃないでしょうね……」

しかもさっきから空を飛ぶ戦闘機の音はうるさいし、時々爆発音も聞こえていた。
でも単身でロシアへ行った事や今までの事(一方通行の実験を止めようとした時など)
を白井に話した時
『お願いですから、もう2度と危険な事には関わらないでくださいまし』
と泣いて言われてしまったのだ。

そこまで言われてしまうと、さすがに自重しないといけないな、と思ったのだ。
もう目の前で何か事件が起こったとき以外は、自ら危険なことに首を突っ込むのは
やめようと決めたのだ。

そんな事を思い出していた、その時だった。

御坂「あ」

数m先を、ツンツン頭のあの馬鹿が走っているのが見えた。御坂は追いかけるため走り出す。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:27:50.51 ID:D9cHSfej0
御坂「ちょっとアンター!」

聞こえていないのか、無視なのか、反応が返ってこない。

御坂「ちょっとー!ちょっとー!!」

やはり返事がない。いくら聞こえていないだけかもしれないとは言え
さすがにイラついてきた御坂は

御坂「ちょっとー、って言ってんでしょうが無視すんなやこらーっ!」

御坂は、電撃を上条の目の前に落ちるように放った。

上条「おわっ!」

本当に驚いている様だ。どうやら本当に聞こえていなかっただけらしい。

御坂「全く。アンタ、私との約束すっぽかしといて何やってんのよ」

上条「御坂か。すまん、今急いでるんだ。また今度」

上条は再び走り出そうとする。

御坂「ア・ン・タ・は~!今日は罰ゲームで私と1日付き合う約束だったでしょーが!」

だから御坂は、上条の腕をガッチリ掴んだ。

上条「……そうだったっけか?」

御坂「そうよ。だから今からでもいいから付き合いなさい、って何その傷!」

御坂はステイルに負わされた火傷を見て驚く。

上条「これは、まあ、いろいろとあってだな……」

上条は、御坂に魔術サイドとの戦争の事を教えていいのか、一瞬逡巡したが

上条「とにかく急いでるんだ。だから今日は一緒に行けない。すまん。
   この埋め合わせは今度するからさ」

御坂「はあ?意味わかんないんですけど。てかとりあえず病院行かないと」

上条「頼む!」

御坂「え?」

上条「今急いでるんだ!埋め合わせは絶対するからさ!今回だけは頼むよ……」

いつもと違う上条に、御坂は言葉を失う。そして、ある考えに至った。

御坂「アンタ……ひょっとしてまた危ない事に首突っ込んでるの?」

上条「……」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:29:49.53 ID:D9cHSfej0
御坂「前にも言ったわよね。アンタはもう少し他人を頼りなさい、って」

御坂「困っているなら遠慮なく言って。私だって力になれる!」

確かに御坂が戦力に加わってくれれば頼もしい。でも御坂を巻き込むわけにはいかない。

上条「それも、できない」

御坂「なんで!どうして!」

御坂は問い詰める。上条は答えられない。そんな時

神裂「上条当麻、あなたを倒します」

神すら裂く女、神裂火織が突如、5mほど先の道路に降臨した。

上条「か、んざき……!」

神裂「七閃!」

7本の鋼糸(ワイヤー)が一斉に上条に襲い掛かる。

上条「っ!」

不意打ちに近い攻撃だったが、それでも上条は、御坂を突き飛ばし
7本すべてのワイヤーを避けきる。

上条(やっぱ、神裂も敵なのかよ……!)

神裂「ならば直接……!」

神裂が上条に突っ込もうと、身構えた時だった。
ビリビリィ!と神裂の目の前に電撃が放たれた。

神裂「なんのつもりですか?」

御坂「そりゃこっちの台詞よ……」

御坂「アンタこそなんのつもりじゃボケー!!!」

上条「ひ!?」

あまりの気迫に、上条の方がビビってしまった。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:31:03.90 ID:D9cHSfej0
神裂「あなたに用はありません。用があるのは上条当麻だけです」

御坂「私だってコイツと用事があるの。邪魔をするって言うのなら、容赦はしないわよ」

上条「駄目だ御坂!こいつは相当強い!お前だけじゃ」

御坂「アンタ、先急いでるんでしょ?」

御坂「ここは私に任せて、アンタは行きなさい」

上条「でも」

御坂「罰ゲームよ!」

御坂「ここは私を信頼して任せてくれたら、今日の約束すっぽかした事、許してあげる」

上条「……分かった。すまない。御坂」

上条はだいぶ迷ったが、ここは御坂を信頼して、先を急ぐことにした。

神裂「勝手に話を進めているようですが、させません!」

御坂「そりゃ、こっちの台詞だっつーの!」

今度は神裂に直接電撃を放つ。
神裂はそれを避けるが、上条は取り逃がしてしまう。

神裂「仕方がありません。あなたを説得してから、上条当麻を追います」

御坂「やれるものなら、やってみろっつーの!」

御坂と神裂、科学と魔術のエース同士が交差する時、戦いは始まる――!
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:33:00.93 ID:D9cHSfej0
神裂「先程も言った通り、私は上条当麻ただ一人にだけしか用はありません」

神裂「ですので、私は出来ればあなたと戦いたくありません」

御坂「そんな危ないものぶら下げておきながら、何言ってんだか」

御坂が言う“危ないもの”とは
神裂が腰につけている『七天七刀』(しちてんしちとう)のことだ。

神裂「あなたこそ、その電撃、やたらめったら放つものではないと思いますが」

御坂「私はちゃんと手加減してるし」

そこでようやく、御坂はある事に気付く。

御坂「それにしても、人がいないわね」

神裂「人払いのルーンを刻んでいますからね」

御坂「ふーん。よくわかんないけど、人がいないなら遠慮はいらないわね!」

御坂「一撃で終わらせる!」

人を気にしなくて良いと分かった御坂は、雷撃の槍を神裂に向けて放つ。
さっきの威嚇の電撃とは、威力も速度も数段違う。もちろん死なない程度には
手加減してあるが、喰らえば気絶以上は堅い。これで終わりだ。

神裂「確かに、危険ではありますが」

しかし、声は頭上から聞こえてきた。

御坂(な!?)

神裂「喰らわなければ、何の問題もありません」

神裂は鞘に入れたままの刀を振り下ろす。
御坂はそれを、バックステップで何とかかわした。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:34:48.31 ID:D9cHSfej0
御坂「アンタ、その動きただの人間じゃないわね」

神裂「……」

御坂「私の雷撃の槍を避けた上に、反撃までしてくるなんて人間の動きじゃない。
   『肉体強化』の能力者って訳でもなさそうだし、アンタ何者なの?」

神裂「私は『聖人』と言って、あなたの言う通り普通の人間ではありません」

神裂「はっきり言って私は強いですよ。事実あなたの電撃を避けて反撃すること位は
   容易に出来ました。それに私は、まだ実力の半分も出していません。
   あなたに勝機は無いと思われます。おとなしくここを通してもらえませんか?」

御坂「随分と嘗めた口聞くじゃない。私だって、こう見えてもこの街で4番目に強いんだけど。
   それと力をセーブしているのは、アンタだけじゃないのよ」

御坂「私だって“普通の”人間相手には手加減する常識ぐらいある。
   でもアンタが普通じゃないと言うのなら、こっちも全力で戦える!」

御坂の前髪から紫電が迸る。それを御坂は纏った。

神裂「なるほど。先程の一撃までも手加減だったのですね」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:37:00.85 ID:D9cHSfej0
御坂「今から、私の全力って言うのを見せてあげる!」

御坂がそう宣言した次の瞬間には、御坂は神裂の視界から消えていた。

御坂「ちぇいさーっ!」

一瞬で神裂の後方に回り込み、回し蹴りを繰り出していた。

神裂(速い――!)

ゴシャ!と神裂は刀の鞘で蹴りを受け止めた。

神裂「その速さ、その硬度、電撃を体に纏うことで、人間離れした動きが出来るのですね」

御坂「たったの一撃でそこまで見破られるとはね。分析力もなかなかじゃない」

御坂「なら、こう言うのはどうかしら!」

御坂は距離を取り、ズズズ!と周りから、砂鉄を浮かび上がらせた。

神裂(これは……)

砂鉄は形を鋭利に変えて、一斉に神裂に襲い掛かる。

神裂(この程度では私を捉えることはできません!)

それら全てを、神裂は容易に避ける。

御坂「やるじゃない!でもまだまだぁ!」

砂鉄の攻撃はより激しさを増す。それでも神裂は、砂鉄の猛攻をすべて避けきる。

神裂「もうその手は通用しません!」

砂鉄による嵐のような攻撃を潜り抜け、御坂に肉迫する。
御坂は距離を取ろうと逃げる。そして再び砂鉄の攻撃。攻撃はいつまで経っても止まない。
別に避けられない訳ではないが、埒が明かないと思った神裂は

神裂「七閃!」

7本のワイヤーは、砂鉄を切り裂き、そのまま御坂のもとへ。

御坂(来る!)

御坂は砂鉄を器用に操り、厚さ10cmはある砂鉄の盾を即席で作る。
ギギギギギ!とワイヤーが8cmのところまで喰い込んだが、止まった。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:38:41.99 ID:D9cHSfej0
御坂「はああああ!」

御坂は両手に砂鉄の剣を持ち、突っ込む。

直後、刀と刀がぶつかり合う音が木霊した。刀と刀をぶつけあったまま、両者は拮抗する。

御坂「おかしいわね。この剣は超振動している上に、私の電撃を纏わせているから
   ガード不可のはずなんだけど」

神裂「この『七天七刀』を、普通の刀と一緒にしてもらっては困ります」

御坂の電撃砂鉄チェーンソーと、神裂の七天七刀が擦りあい火花散る中、会話は続く。

御坂「何言ってんの。ただの太刀じゃない」

神裂「この刀は魔術でコーティングされています」

御坂「魔術?そんなオカルト、信じられるかっつーの!」

神裂「別に信じてもらわなくても……結構です!」

神裂は御坂をあっさりと振り払う。

御坂「まだまだぁ!」

あらゆる方向、あらゆる角度から斬りかかる。
ガァン!ゴン!ギィン!と刀がぶつかり合う音が連続して木霊する。

御坂「よく防ぐわねぇ!これならどうよ!」

御坂は両手の砂鉄剣を一つにし、振り下ろす。

神裂「無駄です!」

だがやはり、あっさりと刀で受け止められてしまう。

神裂「思いあがらないでください。刀の使い方に慣れている私に刀で勝とうなんて100年早いです」

御坂「そんなもん関係ない!」

神裂「ありますよ。今からその証拠をお見せしましょう」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:40:26.04 ID:D9cHSfej0
御坂はまたも神裂に振り払われた。
振り払われたと言っても、先程までとは比べ物にならない威力でだ。

御坂(なんて力……!)

神裂に振り払われた勢いで、御坂は数十m地面を滑る。
そして、わずかだが、靴が滑る音が後方から聞こえた。

御坂(――!)

神裂は鞘の先端で突きを繰り出す。御坂はギリギリのところで体を捻り、なんとか突きを避けたが

神裂「一撃だけでは終わりませんよ」

バババババ!と猛烈な連続の突き攻撃が繰り出された。

御坂(っ!)

それでも御坂は、間一髪でそれらの攻撃を全て避けきる。神裂の攻撃の手が一瞬緩む。

御坂(――これで)

神裂「まだです」

神裂は攻撃の手を緩めたのではない。溜めたのだ。
1秒後“溜めの突き”の一撃が、御坂の心臓目がけて放たれた。

御坂(避けきれない!)

鞘とはいえ、心臓付近に喰らえば、確実に呼吸困難以上のことにはなってしまう。
だが避けきれない。

御坂(なんとかこの剣で……!)

神裂の突きを、砂鉄の剣で受けた。
しかし、その衝撃で御坂はノーバウンドで数十m吹き飛ばされて、壁に激突した。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:41:48.15 ID:D9cHSfej0
御坂「がっ!ごほっ!ごほっ!」

思わず御坂は咳き込む。

神裂「その纏っている電撃、速度と硬度、さらには反応速度まで上がっているのですか」

御坂「……まあね。今の私は電撃で神経を活発化させているの」

御坂「それで反射神経とか運動神経を飛躍的に上げている。私が纏っている電撃は
   硬度だけを上げているにすぎないわ」

神裂「そんなに詳しく説明していいのですか?」

御坂「アンタ、科学駄目そうだから。言っても分からないでしょ?」

神裂「うるっせぇんだよ、ド素人が!」

御坂「え?」

神裂「知ったような口を聞くな!あなたに私の洗濯機へ対する思いが分かるんですか!」

御坂(なんかめちゃくちゃヒートアップさせちゃったわね。
   しかも洗濯機とか訳わかんない事言ってるし)

御坂(挑発したつもりではあったけど、ここまで怒らせてしまうとはね……)

神裂「あなたには、少々痛い目を見てもらいます!」

御坂「嫌なこった!」

とりあえず一旦距離を取ろうと、御坂は即座に逃げる。

神裂「逃がすかぁ!」

御坂(さっきまでは敬語使ってたわよね?キャラ豹変しすぎ!)

そんな事を考えつつ、神裂から逃げ続ける。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:45:02.98 ID:D9cHSfej0
御坂「アンタの言う通りよ。刀の戦い……というより近距離戦じゃアンタに分がある。
   だから私は遠距離から、アンタを狙うことにするわ!」

神裂「させると思いますか!逃がしはしません!近距離戦に持ち込みます!」

御坂「嫌だって言ってるでしょ!」

逃げながらも、砂鉄を操り、神裂の追跡を振り切ろうとする。

神裂「無駄!」

神裂は刀を抜き、砂鉄を切り裂いていく。

御坂(さっきまでは、頑なに鞘だけでしか攻撃してこなかったのに、普通に刀抜いてるし!
   って、そんな悠長に考えている場合じゃないか!)

神裂は徐々に距離を詰めてくる。

御坂(こうなったら!)

御坂は、神裂に向かって電撃を放つ。

神裂は、電撃を刀であっさり弾く。そして御坂に肉迫し――

ザシュ!と御坂を一閃した。

神裂「安心してください。加減はしてあります」

と切った御坂を見下ろして言った。

御坂「……」

神裂「手加減はしたのですが、気絶してしまったようですね」

そうして神裂が踵を返そうとした瞬間――

御坂「さっきから誰に向かって喋ってるの?」

切ったはずの御坂からではなく、後方からその声は聞こえてきた。
そしてもう一つ、金属を弾いたような音もした。

それはコインを弾いた音――!

御坂「喰らいなさい!」

神裂(っ!)

御坂の必殺技『超電磁砲』(レールガン)が神裂目がけて一直線に駆け抜けた。
その余波だけで地面は抉れ、莫大な煙が立ち込めた。

御坂(これでさすがに……)

神裂「まだ終わっていませんよ」

煙からいきなり神裂は現れ、さらに切りかかってきた。
それでも御坂はバックステップで、神裂の不意の一閃を紙一重で避けた。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:47:07.61 ID:D9cHSfej0
御坂「まさか……私の『超電磁砲』を避けたって言うの?」

神裂「ええ。『聖人』である私にとっては、あの程度なら避けられないこともないです」

御坂「あの程度とは言ってくれるじゃない。あれでも私の必殺技なんだけど」

神裂「もう分かったでしょう?あなたは必殺技ですら私には避けられる。
   これでどうやって私に勝つと言うのですか?」

御坂「どうとでもなるわよ。だって不意打ち自体は成功していたもの」

神裂「そうですね。あれは一体どういうトリックだったのでしょうか?」

御坂「あなたが切ったのは、私が作った電撃の分身よ」

神裂「道理で手応えがないと思いましたよ。ですが、いつ入れ替わったと言うのでしょうか?」

神裂「私はあなたを追いかける時、一瞬たりともあなたから目を離さなかったはずですが」

御坂「簡単な事よ。私の電撃自体は防いでいたかもしれないけど私の電撃は閃光にもなる。
   つまり目くらましにもなる。その隙に入れ替わっただけの話」

神裂「なるほど」

御坂「本当に分かってる?」

馬鹿にした感じで言った御坂に対し、神裂は多少の怒りを覚えながら

神裂「何故そんなに余裕なのでしょうか?あなたの全ての技は私には悉く通じず
   必殺技ですら避けられると言うのに」

御坂「今の状態の私で勝てないなら、この戦いの間に成長してでも勝つまでよ」

御坂「こっから先の戦いは、私自身でも未知の領域、120%でいかせてもらうわ!」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:49:49.03 ID:D9cHSfej0
御坂「はあああああああああああああ!」

今までのどんな電撃よりも大きい電撃を放つ。

神裂「電撃を大きくしただけでは効きません!」

刀で電撃を弾く神裂。

御坂「ちぇいさーっ!」

その間に、先程と同じく神裂の後ろに回り込み、いつもと同じように右足で回し蹴りを放つ。
それはあっさりと腕で止められてしまった。

御坂「まだまだぁ!」

即座に逆回転をし、もう一度回し蹴りを放つ。だがやはり腕で止められてしまった。

神裂「近距離戦では勝てないと分かっていながら突っ込むとは。
   ひょっとしてあなたは馬鹿なのですか?」

御坂「アンタ程ではないけどね!」

御坂は即座に砂鉄電磁剣を作り、切りかかる。周りの砂鉄も神裂を攻撃する。

それら攻撃を時には受け止め、時には避ける神裂。

御坂「だらあああああああああああああああ!」

御坂は全力で叫んだ。雷撃の槍、砂鉄、そして御坂自身。
今までの戦法をフルパワーで、なおかつ一斉で神裂に挑みかかる。

神裂はそれらを、かわし、ワイヤーで防ぎ、ワイヤーで魔法陣を描き
刀で切り裂くなどして、全て無傷で防ぐ。

御坂(まだよ……まだ力を出せる!)

激しい戦いの中で空中を舞っていた御坂は、そのままの体勢で『超電磁砲』を2発連続で放つ。

神裂「はあっ!」

神裂はその2発を刀で撃ち落とす。

御坂「まだよ!」

今度はコインを4枚弾く。
それを、両手と両足を使い4発連続で放つ。

神裂「ふっ!」

やはり全弾撃ち落とす神裂。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:51:11.24 ID:D9cHSfej0
神裂「何発やっても無駄です!」

御坂(手持ちのコインは30枚で7枚使ったから、残るコインは23枚。それで終わらせる!)

御坂「どおおおらああああああああああああああああ!」

『超電磁砲』を両手両足フルに使い撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ!
23発の『超電磁砲』が1秒もかからずに神裂に向かう!

神裂「唯閃!」

神裂も自身最大の抜刀術『唯閃』を行使した。
その一閃のみで、23発全ての『超電磁砲』を撃ち落とした。

神裂(唯閃まで使わされるとは……少々焦りましたが、これで)
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:53:30.51 ID:D9cHSfej0
御坂(まだ……まだ100%の力を出し切っただけ……)

御坂(越えるんだ。限界を!)

御坂「これが私の限界突破、だああーっ!」

雄叫びをあげる御坂の周りから、莫大な砂鉄が舞い上がる。
また砂鉄か、無駄な事を。と神裂は思っていたのだが

砂鉄はその場で形を変え、長さ30cm、直径10cm程の槍となって浮いた。
その数200程。しかもそれが全部高速回転している。

神裂(まさか……)

御坂「喰らいなさい!『超電磁槍』(レールランス)!」

再び両手両足フルに使った攻撃が始まった。先程までと違う点は2つ。

1つ目は、砂鉄の槍が高速でジャイロ回転していること。

そして、もう1つ。桁違いの数だ。御坂は100発の砂鉄の槍を、3秒かからずに放ちきる。

神裂「唯閃!」

神裂は唯閃を繰り出すが、撃ち落とせるのは1回につき、せいぜい30発が限界だ。
それでも神裂の抜刀術、唯閃は1回に1秒もかからない。

よって3秒ないとは言え、4回も出せば、完全に防ぎきれるはずだった。
そして神裂には、それを出来る技量があった。

にもかかわらず、両頬、両脇腹、両脚の横、計6発を撃ち落とせなかった。

その6発は、あくまで通り過ぎただけだった。決して直撃したわけではなかった。
ましてや掠ってすらもいなかった。

だがジャイロ回転した超高速の槍は、通り過ぎたその余波だけで
周りの物を引き裂いていくほどの力があった。

よって神裂の、頬や脇腹、足の皮膚は2割ほど削られた。

神裂「ぐ!」

神裂は初めて悶絶する。しかもこれで終わりではない。まだ残り100発の槍が残っている。
そう思い顔をあげた神裂の見た光景は想像の斜め上を行くものだった。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:54:50.86 ID:D9cHSfej0
100本分の砂鉄の槍が1本に集結されていた。その大きさは長さ30m、直径2mほどか。

神裂(避けられるか……いや避けたところで、余波でやられる!)

神裂(ここは唯閃で切り裂くしかない!)

御坂「これで……終わりよ!」

『超巨大電磁槍』が放たれた。

神裂「唯閃!」

ギギギギギ!と槍と剣がぶつかり合う音が木霊する。
さすがにこの大きさだけあって、神裂もそう簡単に切り裂けない。

神裂「はあああああああああああああああ!」

神裂が雄叫びをあげる。そして

バゴオォォォン!と一帯に電撃の巨大槍が蹂躙した音が響いた。

御坂「やっ……た……」

全ての力を使い果たした御坂は、その場でうつ伏せに倒れた。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:56:25.22 ID:D9cHSfej0
御坂(でも、あの人死んじゃったかな……)

今更ながら少し後悔してしまう。でも手加減できる相手だし仕方なったか。
でも人を殺すと言うのは、どんな理由があってもいけないわけで。とかいろいろ
考えていた御坂だったが、それらの心配は杞憂に終わった。

神裂「はぁ……はぁ……」

煙の中から息切れしながらも、神裂が再び御坂の前に立ったからだ。

御坂「な、なんで……」

神裂「さすがに……焦りましたよ。切り裂くのを止めて……
   刀の先端に魔力を集中して……突くことによって……直撃を免れました」

御坂「あの状況で……それだけのことを……やってのけるなんてね……」

神裂「とは言え、唯閃の使い過ぎや最後の激突で、結構なダメージを受けましたけどね」

御坂「勝者の……余裕ってわけ?」

神裂「そんなつもりは。さて、あくまで私の目的は上条当麻なので。それでは」

負けず嫌いの御坂も、負けを認めざるを得なかった。
自身の技を全て防がれ、挙句の果て充電切れ。御坂は自分自身が情けなかった。

御坂(せっかく……アイツが初めて……私を頼ってくれたのに……)

悔しくて仕方なかった。目尻からは涙が流れるくらいには。

そんな御坂を一瞥して、神裂は先へ行こうと歩を進めた。が

神裂(……何か来る!)

そう感じた神裂は、数歩後退する。
するとさっきまで立っていた場所から、カランカランと金属の矢が落ちた。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/29(金) 12:58:05.40 ID:D9cHSfej0
神裂(金属矢が、虚空から現れた……?)

白井「許しませんの……」

気がつけば、御坂の近くにツインテールの女の子が立っていた。

神裂「何がですか?」

白井「お姉様をボロボロにし、泣かせた事に決まっていますの」

神裂「お姉様、ということは、あなた達は姉妹なのですか?あまり似ていませんね」

白井「姉妹ではありません。先輩後輩の関係ですの」

白井「そんなことより、実はお姉様とあなたの戦いは拝見させていただきましたの」

神裂は、人払いのルーンを刻んでいるのに、何故ここに来れたのか?
と疑問に感じつつも、尋ねる。

神裂「見ていたのなら、何故加勢しなかったのですか?」

白井「理由は2つ」

白井「1つ。お姉様は自分の戦いに手を出されるのを嫌っていますの」

白井「そして2つ目。先程の戦いは、あまりにも激しすぎて
   わたくしが入ってもついていけず、足手まといにしかならないと思ったからですの」

神裂「では、今ここであなたが出てきても、私には勝てないのでは?」

白井「そうですわね。お姉様より弱いわたくしが
   お姉様に勝ったあなたに勝てる確率は低いですわね」

白井「ですが、そんなことはどうでもいいですの。
   あなたがお姉様を傷つけ、泣かせた、その事実は変わらない」

白井「たとえどれだけの実力差があろうともお姉様を傷つけたあなたに
   黒子は絶対に負けられませんの!」

御坂「や……めなさ……い……黒子……」

神裂「いいでしょう。ならば叩きのめすまで!」


95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 20:54:06.37 ID:6MLEAleW0
神裂は一瞬で白井に肉迫する。そして鞘の横薙ぎの一撃が振るわれた。

白井「甘いですの!」

白井はそれを避け、神裂の後頭部へとキックを入れるためのテレポートをする。
だが神裂は、それを見越したように、先の一撃からそのまま回転斬りへと移行する。

白井「な!?」

白井は慌ててテレポートして、距離をとる。

白井「何故わたくしの攻撃が分かったんですの?」

神裂「勘と反射神経。ただそれだけです」

白井(なるほど。お姉様を倒すだけありますの。
   ですが、黒子の実力もこんなもんじゃありませんの!)

白井はパッパッパッ!と連続でテレポートする。

神裂「かき乱す作戦かもしれませんが、そんなことでは動揺しませんよ」

白井「ではそろそろ!」

白井はまず、正面から攻撃を仕掛けた。神裂はそれに対し横薙ぎの一撃を振るった。
当然白井はテレポートで避ける。

神裂(後ろか!?いや……上!)

神裂は上へと、突きの一撃を放った。それも白井はテレポートで避ける。

神裂(今度こそ……後ろか!)

神裂は思った。刀は今、上の突きの後なので使えない。
今更ながら、回転斬りを防ぐために、これを狙っていたのかと気付いた。
それでも神裂は後方を一切見ずに、右足で後ろ蹴りを放った。
しかし手応えがない。またしても避けられた。そして――

白井「ちぇいさーっ!」

神裂の右側に現れた白井の、回し蹴りが来るところだった。

神裂(甘い!)

神裂は刀を地面につき、棒高跳びの要領で6m程ジャンプし、回し蹴りを避けた。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 20:55:57.42 ID:6MLEAleW0
白井「今の連続攻撃が避けられてしまうとは……」

神裂「もう諦めてはくれませんか?私の狙いは上条当麻です。私はそこを通りたいだけなのです。
   通してくれれば、こちらから攻撃は加えません」

白井「それは無理ですわ。わたくしはジャッジメントですの。
   正直不本意ではありますが、わたくしの目の前で学園都市の住人である
   あの殿方を傷つけるのなら、風紀を乱す者として見過ごす訳にはいきませんの」

神裂「見たところ、あなたは既に、かなり消耗しています。
   早くその電撃少女と一緒に病院へと行った方がよろしいかと」

白井「あなたに心配される覚えはありませんわ。それにあなたもボロボロではございませんか」

神裂「私は普通の人間とは違います」

白井「わたくしも普通の人間とは違いますのよ」

神裂「……どうしても戦うしかないのですか」

白井「あなたが素直に拘束されてくだされば、戦う必要はありませんわよ?」

身構える2人。静寂が訪れる。

御坂「黒子……もう……やめなさ」

御坂の声を遮るように、2人は再び激突する。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 20:57:09.94 ID:6MLEAleW0
神裂はイラついていた。かれこれ2分程、自分の得意な近距離で戦っているにもかかわらず
一向にダメージが与えられない。

一方の白井も、これだけテレポートして攻撃を繰り出しているにもかかわらず
かわされ、いなされ、防がれ、とにかくダメージを与えられないことに辟易し始めていた。

白井(仕方ないですの!ここは肉を斬らせて骨を断つしか……!)

そう考えた白井は、神裂の横薙ぎの一撃を、敢えてテレポートせず受け止めた。

白井「がは!」

神裂「!?」

ミシィ!と嫌な音が聞こえたが、痛みの中演算に集中し、刀を100m先にあった
ビルの壁の中にテレポートした。壁の中と言っても、刃の部分だけしか埋められず
柄は出たままだが。

白井「これで純粋な肉弾戦に持ち込みましたの……」

神裂「刀が使えない肉弾戦だろうと、あなたには負けませんよ」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 20:58:39.53 ID:6MLEAleW0
そうして神裂が刀を失って、純粋な肉弾戦に入ってから10分が経過した。
神裂は、攻撃を防ぎ続ければ体力が切れて勝手に自爆してくれるだろうと、たかをくくっていた。

だがそのテレポートと体術のキレは一向に落ちなかった。

神裂「あなたは10分間、全力で動きっぱなしだというのに、何故いまだにそこまでの動きが
   出来るのですか!?」

白井「――!」

神裂の問いに白井は答えない。否、答えないのではなく
あまりの集中力で神裂の声が聞こえていない。

神裂(彼女の原動力であろう、あの電撃少女は、そこまでの人だと言うのですか!?)

白井の攻撃、反応速度は衰えるどころか、徐々に激しさを増していく。

神裂(この私が押されて!)

ついに白井の拳が、神裂の頬を掠めた。

神裂(くっ!)

神裂の攻撃は一向に当たらない。対して白井の攻撃は掠り始めている。

神裂(このままでは……仕方ありません!)

神裂は敢えて白井の拳を受ける。その代わり白井の拳をしっかり掴んだ。

神裂(捉えました!)

しかしそれは間違いだった。1秒後、視界が変わった。
正確には、視点が低くなった。まるで背が縮んだような感じだ。
その答えはすぐに分かった。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:00:14.63 ID:6MLEAleW0
神裂「ぐあっ!」

膝から下の脚に激痛が走った。思わず目線をそこへ持っていくと、なんと地面に埋まっていた。

何故このような事が起こったかと言えば
白井が神裂を地面の中にテレポートしたからに他ならない。

少しでも脚を動かそうものならば激痛が走るのだが、抜けださなければ話にならない。
そう思い、両手を地につき抜けだそうと試みたが
白井の、顎から突き上げる強力なキックがそれをさせなかった。

神裂「がは!」

さすがの『聖人』神裂火織もこれは効いた。白井の攻撃は終わらない。

膝から下の脚が埋まっている神裂に対して、白井は容赦なく何十発もの拳と蹴りを叩きこんだ。

前方をガードすれば後方から、後方を意識すれば前方から集中砲火を喰らった。
ならばと思い、前方にも後方にも意識を集中するが、意識の隙間をかい潜って
ダメージを与えてくる。そのあまりの鬼畜っぷりは、御坂ですらも引く位だった。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:02:30.08 ID:6MLEAleW0
御坂「もういい!もうやめて黒子!それ以上やったら、その人死んじゃう!」

白井「何故止めますの!?お姉様だって、この方を殺そうとしたじゃありませんか!」

御坂「それは……手加減できなかっただけで……」

白井「そんなの言い訳ではありませんか!それに何よりお姉様をここまで傷つけたこの方を
   黒子は許せませんの!」

御坂「その私がやめてって言ってるんだから、やめなさいよ!」

白井は御坂を無視し、神裂への暴力を止めない。

御坂「やめてって……言ってんでしょーが!」

御坂の電撃が白井へと飛ぶ。充電切れ状態から振り絞った一撃の為、通常に比べ威力は相当弱いが
それでも全身に軽度の火傷を負わせ、気絶させるぐらいの威力はある。

だが白井は、それをテレポートで避ける。避けた電撃は神裂にヒットした。

神裂「あああああ!」

御坂「あ……」

白井「ざまぁですの」

神裂を見下ろしながら、白井は言い放った。そして暴力を再開した。

御坂「黒子!黒子!!」

今の御坂には叫ぶ事は出来ても、白井を抑えられるだけの力はない。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:03:50.04 ID:6MLEAleW0
白井「さあ、そろそろ終わりですの!」

白井の全力の両脚飛び蹴りが、神裂の顔面に炸裂した。
これで終わった。と白井は思ったが

ガシィ!と神裂の右手が、白井の右足を掴んだ。
そしてそのまま、とてつもない勢いでビルの方へ投げ飛ばした。

その隙に神裂は、激痛を伴いながらも地面から抜け出そうと試みる。
一方で、白井は神裂の数十m上とテレポートしていた。

それはつまり、投げ飛ばされた勢いそのままの白井が隕石の如く
神裂の脳天に落下してくることを意味していた。

神裂はそれに気づいてはいたが、未だに地面から抜け出せていない。
よってかわすことはできない。受けて立つしかない。

落下してくる白井。対し神裂は左拳に力を込める。そして――

白井の両脚と神裂の左拳のアッパーが激突した。
瞬間、白井の両脚と神裂の左腕から血が噴き出した。

白井・神裂「「がああああ!!」」

御坂「黒子ー!」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:05:13.39 ID:6MLEAleW0
悶絶する2人。御坂は白井に向かって叫ぶが、返事がない。
白井は神裂戦の前に、いくつかの戦いをこなしてきた。
加えて神裂戦でも限界を超えた戦いをしてきた。

そして今、両脚が潰れたことによって、白井は完全に力尽きてしまった。
もはや意識も朦朧としている。御坂は這いずりながらも、白井のもとへ向かう。

一方で神裂は、右手を地につき力を込め、強引に地面から抜け出した。
その時に脚の皮膚がそこそこ剥がれたが、構わずビルに埋まっている刀を引き抜きに行く。
そして右手だけでビルから刀を抜いた。刀を抜いたことでビルが崩れた。

それにしても、殴られ蹴られ左手は潰され、両足もボロボロ。
さすがの神裂も戦うのは愚か、上条を追う力も残っていなかった。

だから神裂は、即興で簡単な魔法陣を描き、周りにある瓦礫や自分が持っていた手荷物を置き
回復魔法を行使した。

神裂「ふぅ」

完全回復とまでは行かないが、剥がれた皮膚はある程度は元に戻り、出血も止まった。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:06:09.83 ID:6MLEAleW0
ようやく御坂は、白井のもとに辿り着いた。

御坂「黒子……大丈夫……?」

白井「お……姉……様……ごめん……なさい……ですの……」

御坂「ホント……世話の焼ける後輩なんだから……」

白井「あの方……どうやら……回復したみたいですの……」

御坂「そんなことはどうでもいいのよ……黒子が無事なら……」

白井「お姉様……」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:07:34.11 ID:6MLEAleW0
そんな2人を遠目に見ながら、神裂は今度こそ上条を追いかけようと歩を進めた。が

神裂(何か来る!)

神裂は反射的に数m後退する。するとさっきまで立っていた場所の地面がへこんだ。

いや、へこんだと言うよりは抉れたと言うのが正しいのか。とにかく地面が少し消滅した。

神裂(次から次へと……人払いは本当に発動しているのでしょうか?)

神裂は呆れながらも上を見た。するとビルから身を乗り出している男が見えた。
黒曜石で出来た、ナイフのようなものを持っている。
トリックは分からないが、多分あのナイフで攻撃してきたのだろうと思う。

神裂(あの男は今ビルの上に居る……そして先の遠距離攻撃は気をつければ
   絶対に避けられる。ここは無視をして、先を急ぎましょう)

そう思い、走り出す神裂であったが、その男は、ビルから突如飛び降りた。

どう言う理屈かは分からないが、その男は至極当然のように無傷で神裂の目の前に降り立った。

男「あなたですか?御坂さんとその御友人を傷つけたのは」

神裂「私は何もしていませんよ。あの2人が勝手に突っかかってきて、勝手に倒れただけです」

言いながら神裂は気付いた。いつの間にかあの2人がいない。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:09:13.33 ID:6MLEAleW0
神裂(この私が今まで気づかないとは……)

男「お二方は、こちらで回収させていただきました」

神裂「別に構わないですよ。あの2人に用はありませんから」

男「ところで、僕はあなたが憎いので、少々痛い目を見てもらうかもしれません」

神裂「あなたに憎まれる覚えなどないのですが」

男「それがあるんですよ。僕の想い人を傷つけてくれましたからね」

神裂「よく分かりませんが、邪魔をするなら」

男「神裂火織」

神裂「何故私の名を?」

男「いやぁ、こちらにもエージェントがいましてね。あなたの事は大体分かっています。
  その強さも」

男「その強さを分かった上で、あなたを倒すと言っているんです」

男の威圧感は、先程の白井と同等かそれ以上だった。それにこの感覚は――

神裂「あなた……魔術師ですか?」

男「ええまあ。エツァリと申します」

エツァリ「さて、会話はこれぐらいにして、そろそろ始めましょうか」

こうして、極東の魔術師とアステカの魔術師の戦いの火蓋が切って落とされた。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:10:28.96 ID:6MLEAleW0
麦野達はワゴン車で冥土返しの病院を目指していた。

絹旗「それにしても、学園都市の拳銃は超凄いですね。防弾ガラスでも2発で壊せましたよ」

滝壺「学園都市の科学技術は、外部より2,30年進んでいるからね。その程度は割と当然だと思う」

麦野「寧ろまだ2発もかかるのかと思うわ。そこは1発で貫けよと」

半蔵「なんか……女の子達が拳銃について語っているかと思うと……世も末だな」

感慨深く呟いた彼は、服部半蔵。
今は凋落した忍者の末裔である服部家の子孫で、超有名な忍者である『服部半蔵』の名を
継ぐものである。

麦野「なんか言った?」

半蔵「いいえ、何も」

滝壺「それにしても、はんぞうも割と運転うまいよね」

半蔵「まあ俺も浜面の横で、ずっと運転してるところ見てたからな」

滝壺「はまづらを迎えに行くときに、運転手がいなくて困ってたから
   はんぞうには、皆感謝してるよ」

半蔵(はぁ……浜面はこんなに優しい子が彼女なのか……羨ましすぎる)

郭「どうかしました?半蔵様」

半蔵の事を様づけで呼ぶ彼女は郭。半蔵に付きまとう、くの一の末裔だ。

半蔵「なんでもないよ」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:11:22.49 ID:6MLEAleW0
麦野「(てかさ、この女何なの?何で普通にいるの?)」

絹旗「(よく分かりませんが、半蔵さんに超付きまとっているくの一みたいですね)」

麦野「(ふーん。まあ役に立つなら良いけど、役に立たないなら邪魔なだけなんだけど)」

絹旗「(これから何かに役に立つかもしれませんし、今のところは害もないですから
   超ほっといても問題ないんじゃないですかね?)」

郭「全部聞こえていますよ。麦野氏、絹旗氏」

思わずドキッとする麦野と絹旗。

郭「別に気にしていませんから、堂々と会話しちゃってください」

麦野「じゃあ遠慮なく」

麦野と絹旗は、郭に対して失礼なことから先程までの拳銃の話など、遠慮なく雑談し始めた。

郭「順応早いですね……」

麦野「なんか言った?」

郭「いいえ、何も」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:12:48.39 ID:6MLEAleW0
浜面「ん……あ……」

滝壺に膝枕されていた浜面が目を覚ました。

滝壺「あ、はまづら、大丈夫?」

浜面「あ……ああ……って、あの女はどこだ!?」

麦野「何騒いでんだ。私達が追い払ったってーの」

浜面「そ、そっか。俺、あの人にやられたのか……」

麦野「ほんと、アンタ助けるのに苦労したんだから。感謝しなさいよね」

浜面「あ、ああ。ってかフレメアは!?」

絹旗「ああもう超やかましいな。フレメアちゃんならそこで寝ていますよ。
   多分催涙スプレーか何かで眠らされたのでしょう。命に別状はありませんよ」

浜面「そ、そうか……良かった」

だが今回浜面は、フレメアは愚か自分自身すら守る事が出来なかった。
もし滝壺達が助けに来なければ、間違いなく敵に捕まっていただろう。

半蔵「浜面、あんまり落ち込むなよ。今回は相手が悪かったんだ。一応全員無事だしな」

浜面「半蔵?お前どうしてここに?」

半蔵「こいつらがお前を助けに行くために、運転手を探してるって聞いたから
   俺が立候補したんだよ。親友の為だしな」

浜面「そ、そうか。でも滝壺とか、半蔵の事知ってたっけ?」

滝壺「うん。前の『新入生』のクーデターの時に、一度会った」

浜面「じゃあさ、俺の位置はどうやって分かったんだ?」

滝壺「それはもちろん、私の能力を使ったからだよ」

滝壺の能力は一度記録したAIM拡散力場の持ち主を、たとえ太陽系の外に出ても
追い続け検索・補足出来る。今の滝壺は『体晶』がなくても、ある程度能力が使える。
そして浜面は先日レベル1になったことにより、滝壺の能力を十二分に活かせたのだ。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:14:12.39 ID:6MLEAleW0
浜面「そうか。やっぱ『アイテム』って凄いな」

絹旗「うわ。なんか超キモいです」

浜面「なんで!?」

郭「そんなことより浜面氏!私の事はノータッチですか!?」

浜面「どうせ半蔵についてきただけだろうなー。と思って」

郭「浜面氏のくせに~」

麦野「そんなに元気なら病院へ連れて行く必要はないな」

浜面「俺は良くても、フレメアを連れていかないとだな」

麦野「そうだな。ところで浜面、運転変わってやれ……よ」

浜面「どうした?」

麦野(この感覚――!)

麦野「滝壺!私の能力の補助を!」

滝壺「うん!」

麦野の能力『原子崩し』はビームを出せるだけでなく、盾なども作れる。
それを滝壺の補助でより精密にして、強化することもできる。

麦野はビームでワゴンの屋根を消し飛ばし、ワゴンの周りに滝壺の補助を受けた盾を展開する。

浜面「何やってんだ麦――」

浜面が言い終わる前に――
突如現れた3機の『六枚羽』による一斉掃射が、麦野達の乗るワゴンを襲った。

ドドドドド!と激しい攻撃で揺れるワゴンだったが、麦野の盾のおかげでダメージは無い。
そして『六枚羽』の攻撃をひとしきり防ぎきった後

麦野「今度はこっちの番よ!」

麦野は『拡散支援半導体』を使い、自身のビームを拡散させる。
六枚羽達はビームを攻撃してを防ごうとするが、麦野のビームはそれら全てを貫き
六枚羽達を撃ち落とした。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:15:43.29 ID:6MLEAleW0
滝壺「さすが、むぎのだね」

麦野「滝壺の補助があったからよ」

絹旗「安心するのはまだ超早いみたいですよ」

今度は麦野達が乗っているワゴンを追うように、2台の黒い装甲車が走ってきた。

麦野「この!」

麦野はビームを放つが避けられてしまう。
そうこうしている間に、2台の装甲車はワゴンを挟むように横につく。

麦野「服部!ブレーキだ!」

半蔵「お、おう!」

言われた通り、急ブレーキをかける半蔵。すると、目の前で装甲車と装甲車がぶつかった。
ワゴンを挟み撃ちにするつもりだったのだ。

麦野「よし!この距離なら!」

標的までは数m。麦野は再びビームを放つ。
だがたったの数mであるにもかかわらず、装甲車はビームを避けた。

麦野「な!?」

間髪容れず装甲車は交互にワゴンへとアタックを仕掛ける。

麦野「ちょ、なんとかしてこの攻撃から抜けだして!」

半蔵「無理だ!そんな運転スキル、俺には無い!」

絹旗「超仕方ありませんね」

浜面「絹旗!?」

絹旗はワゴンの上部から身を乗り出し、装甲車の1台へと飛び移った。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:17:31.94 ID:6MLEAleW0
浜面「絹旗!」

絹旗「超大丈夫ですよ。こう見えても私はレベル4の『窒素装甲』ですからね。
   まずは1台超潰します!」

絹旗は装甲車の上で大きく振りかぶり、拳を振り下ろす。その一撃は装甲車を大きくへこませた。

絹旗「な……」

絹旗は驚愕した。装甲車は確かにへこんだ。だがそれだけ。へこんだだけだったからだ。
絹旗の一撃を受ければ、普通の車なら大破してもおかしくないのに。

絹旗(この車超堅い……!ここは一旦ワゴンに戻りましょうか)

そう思った絹旗だったが、装甲車が突然激しく動き、振り落とされそうになる。

浜面「絹旗!早く戻れ!」

装甲車は暴れながら、ワゴンとの距離を離していく。どうやらワゴンと絹旗を引き離したいようだ。

絹旗「私の事は超構いません!皆さんは先に病院へ!」

浜面「絶対に!絶対についてこいよ!」

絹旗(そんな事、浜面に言われなくても超分かってますよ)

こうして絹旗は離脱した。そして浜面達の危機も依然続いている。

浜面「麦野、早くもう1台の装甲車を何とかしないと……!」

麦野「そんなこと分かってる!でも当たらないんだよ!」

麦野はさっきからビームを放っているが、悉く避けられる。

浜面「さっきの、シリコンなんとかを使えば良いんじゃねぇのか!」

麦野「さっきので失くなっちまったんだよ!」

浜面「そ、そうか」

半蔵「くっそ……何とか出来ないか郭!」

郭「そんなこと言われても……あ」

半蔵「どうした!?」

郭「私、巻き菱を持っていました!」

半蔵「どうしてそれを早く出さなかった!?」

郭「いやぁ、今思い出したんですよ」

半蔵「ああもう分かったから!早く撒け!」

郭「はい!半蔵様!」

返事をした郭は勢い良く、空いた屋根から巻き菱をばらまく。
巻き菱を踏んだ装甲車のタイヤはパンクし、あらぬ方向に走って行った。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:18:32.59 ID:6MLEAleW0
麦野「おい。そんな便利なものあったのかよ」

郭「すいません麦野氏。巻き菱の存在を忘れていまして」

浜面「助かったよ郭ちゃん」

郭「ありがとうございます浜面氏」

麦野「(浜面の奴、何でこいつには優しくて、私には冷たいんだ……)」

浜面「ん?なんか言ったか麦野?」

麦野「な、何でもないっ!」

滝壺「とりあえず一難去ったね」

浜面「ああそうだな。あとは早くフレメアを病院に連れて行って、絹旗を助けに行かないと」

だがまだ危機は去っていなかった。
浜面達のワゴンの後ろから5m前後の大きさの、カマキリのような何かが来る。

それはフレメアと初めて会った日『新入生』と初めて激闘を繰り広げた時に見た
ファイブオーバーモデルケース“レールガン”のような駆動鎧(パワードスーツ)だった。

浜面「一難去ってまた一難、ってか……」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:20:15.34 ID:6MLEAleW0
しかも、目を凝らして良く見てみると、モデルケースレールガンではない。
カマキリの羽を収めるための腹部側面と、前足保護カバー側面に、それぞれ文字が刻印されていた。

FIVE_Over.Modelcase_“MELTDOWNER”
Gatling_Meltdowner、と。

浜面「麦野!滝壺の補助ありで『原子崩し』の特大で強固な壁を作れぇ!」

麦野「はあ!?攻撃して壊した方が」

浜面「駄目だ!防御じゃなきゃ駄目なんだ!」

麦野「分かったよ。滝壺!」

滝壺「うん!」

浜面に言われた通り、滝壺の補助でより強固になった『原子崩し』の盾を展開する。
その1秒後だった。1分間に4000発に相当する『原子崩し』の掃射がワゴンに向けて放たれた。

半蔵「うおおおお!?」

激しく揺れるワゴン。

浜面「集中しろよ麦野!少しでも気を抜いたら貫かれるぞ!」

麦野「分かってるっつーの!」

浜面「滝壺も頼むぞ!」

滝壺「うん!」

郭「なるほど!浜面氏はまともに撃ちあっても負けると分かっていたから防御を選択したのですね」

浜面「そうだ。ファイブオーバーは威力もさることながら、1番恐ろしいのは連射性だ。
   多分威力だけなら麦野の方が上だろうが、連射で負けると思ったから防御を選んだ」

半蔵「でもこのままじゃジリ貧じゃねぇか……」

浜面「その点は、俺に考えがある。多少賭けだがな」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:21:32.20 ID:6MLEAleW0
そうして、浜面の考えがある発言から4分が経過した。
その間は『原子崩し』を、ずっと連射され続けていた。
考えがあると言いながら、特別指示もしないし
ただ黙っているだけの浜面に、麦野がついに痺れを切らした。

麦野「浜面……!私も滝壺もそろそろ限界が近いんだけど……!考えって何だよ!」

浜面「多分……あと1分だ……あと1分だけ耐えてくれ!」

麦野「……分かったよ!踏ん張ってよ滝壺!」

滝壺「うん……!」

半蔵「おいおい浜面、本当に大丈夫なのか!?」

浜面「さっきも言った通り、確実な手ではない。寧ろ賭けだ。
   だが今はこの可能性に懸けるしかない」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:22:52.37 ID:6MLEAleW0
そうして耐えてくれ発言から1分が経過した。
するとカマキリの『原子崩し』の連射が突然止まった。

浜面「今だ麦野!防御を解いて、お前の一撃をカマキリにぶち当ててやれ!」

麦野「ようやく反撃か!」

即座に盾を解き、『原子崩し』のビームを放つ。それは見事にカマキリへ当たった。撃墜成功だ。

浜面「よっしゃあ!」

麦野「めっちゃ疲れたー」

滝壺「はまづら……」

浜面「おっと」

倒れ込む滝壺を受け止める浜面。

浜面「病み上がりなのに良く頑張ってくれたな。ありがとう」

滝壺「どういたしまして」

麦野「ちょっとー、私にもお礼は?」

浜面「ああ。麦野もありがとう」

麦野「う、うん///」

浜面「おい麦野、顔赤いけど大丈夫か?」

麦野「だ、大丈夫だし!浜面に心配される覚えはないっ!」

浜面「そ、そうか」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:25:28.88 ID:6MLEAleW0
郭「それより浜面氏、何故連射が止まった瞬間、すぐ反撃すると言う思考に至ったんですか?」

郭「攻撃が効かないから、一呼吸置いただけとか、溜め攻撃が来ると言う可能性も
  考えられたじゃないですか?でも浜面氏は迷わず反撃するという事を選んだ。何故?」

浜面「半蔵は知っているだろうけど、俺、あのカマキリのレールガンバージョンと
   戦ったことあるんだ。さらに言えば、あれに乗ったこともある。
   それで分かった事があるんだ」

浜面「あの連射は永遠には出来ない。ってことがね」

郭「ほう。それは何故?」

浜面「あのカマキリの連射には、膨大な電力を消費すると同時に凄まじい熱も発する。
   その熱を下げるために、冷却期間が必要になる。そこを狙ったんだ」

浜面「でもそれはレールガンバージョンの話であって、メルトダウナーバージョンにも
   その法則が通用するか分からなかったし、冷却期間に入るまで、どれくらい耐えれば
   良いかも分からなかったし、さっきの郭ちゃんが言ったこともあったし
   不安要素だらけだった」

浜面「だけど麦野達の限界も近かったし、あそこで攻撃してなかったら
   また連射が始まっただけだっただろうし、あのまま耐え続けるだけだったら
   どの道俺達は死んでいただろう」

浜面「だから少しでも連射が止まった瞬間に、すぐさま攻撃することに懸けたんだ」

半蔵「浜面……お前、度胸あるな」

郭「浜面氏も色々考えていたんですね!」

半蔵「つかお前は終始マイペースだったよな」

郭「そんなことありませんよ。私は私なりにですね」

半蔵「あーもう分かったから。それより浜面、運転変わってくんね?」

浜面「あぁ~、まあ別にいいけ」

滝壺「はまづらは一応怪我人。できればはんぞうに引き続き運転してほしい」

半蔵「そ、そうっすか」

半蔵(そこまでして、滝壺は浜面とくっついていたいのか……チクショー、羨ましいぜ
   浜面の野郎!)

郭「そんなに浜面氏が羨ましいんですか?私なら半蔵様に一生ついていくのに///」

半蔵「は?え?何お前?心読めるの!?『読心能力者』(サイコメトラー)!?」

郭「半蔵様が考えている事はすべてお見通しです」

半蔵(なん……だと……)
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:27:55.89 ID:6MLEAleW0
次々とトラブルが起こったと言うのに、まるで何事もなかったかのように盛り上がる車内。

そんな中フレメアも目を覚ました。

フレメア「ん……」

麦野「お、フレメア。ようやく目を覚ましたのね」

フレメア「麦野お姉ちゃん……?大体ここはどこ?」

麦野「ここはワゴンの中。今病院へ向かっているところだったけど
   フレメアも目を覚ました事だし、いかなくてもいいかな?」

滝壺「それは駄目だよむぎの。はまづらも怪我してるし」

麦野「滝壺、アンタのノロケはもう聞き飽きたよ……」

滝壺「それだけじゃないよ。なんか学園都市中の様子もおかしいから
   安全な病院へ行こうと言うのもある」

浜面「でも絹旗は連れて帰らなくていいのか?」

滝壺「きぬはたは大丈夫だよ。私は信じてる」

浜面「そっか。ところで半蔵、あとどれくらいでこの高速道路抜けられるんだ?」

半蔵「多分あと2分くらいじゃねぇかな」

浜面「そうか」

フレメア「ねぇねぇ、大体何で、このワゴンには屋根がないの?寒い」

浜面「まあいろいろとあってな。麦野が吹き飛ばしたんだよ。少しの間我慢してくれ」

フレメア「あれ?ねぇ、大体前見て浜面!」

こいつ人の話ちゃんと聞いてんのか?と思いつつ
言われた通り目線を前に持っていく。そこには驚くべき光景があった。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/30(土) 21:30:39.52 ID:6MLEAleW0
浜面「嘘……だろ……?」

フレメア「あれ、フレンダお姉ちゃんじゃない!?」

麦野・滝壺「「え??」」

麦野と滝壺も前に視線を向ける。

そこには、確かに金髪碧眼の女子高生、まさにフレンダ=セイヴェルンが数十m先に立っていた。

だがそれはおかしい。何故なら麦野がフレンダを殺してしまったからだ。
彼女が生きているはずがないのだ。

浜面「な、何が……起こっているんだ……?」

半蔵「な、何だ!?知り合いなのか!?止まった方がいいのか!?」

と言っても、ここは高速道路なので、車を止めるなんてことは非常識以外の何物でもない。
まあどちらかと言えば、女子高生が高速道路に突っ立っている事の方が異質ではあるが。

麦野「止まれ!」

半蔵「お、おう」

半蔵はブレーキをかけ、ワゴンを止める。

フレメア「フレンダお姉ちゃーん!」

浜面「……待てフレメア!何か様子が――!」

浜面が違和感に気付いた、次の瞬間、フレンダはフレメアに向かって爆弾を投げた。

フレメア「え?」

浜面「フレメアーっ!」

浜面はフレメアのもとに飛び込み、抱え込む。ボガァン!と爆弾は浜面ごとフレメアを飲み込んだ。かに思えたが、麦野が能力で盾を作っていた。

浜面「た、助かったぞ麦野」

しかし、麦野はそんな声は聞こえていなかった。

麦野「アンタ、何者なワケ!?」

麦野の質問を無視し、フレンダは無言で、何かのスイッチのようなものを押す。
瞬間、浜面達が立っている高速道路が、ガラガラと音を立てて崩落した。

浜面(まさか……高速道路の柱の至る所に爆弾が仕掛けてあって
   それを一斉に爆発させて、崩落させったってのか!?)

しかしそんな事を考えている場合ではない。この高速道路は高さ20m位の位置にある。
このまま落ちたら死ぬ。この状況で出来ることと言えば……


126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/07/31(日) 00:09:17.53 ID:s/+bFleT0
崩落現場から約8kmの地点

絹旗「とりあえず、装甲車は超潰しましたが、これからどうしましょうかねぇ」

あの後絹旗は、装甲車を潰すことには成功したが、高速道路から落ちてしまった。
とは言え『窒素装甲』があったため、20mの高さから落下したが傷一つつかなかった。

絹旗「あーあ、ここからじゃ帰り方が分かりませんし、超だりぃ~」

ぼやきながらトボトボ歩き出す絹旗。その時だった。

黒夜「だるいなら、私が送ってあげようかァ~。天国にィィィ!」

後方から、突如下品な少女の声が聞こえてきた。
黒夜の能力『窒素爆槍』(ボンバーランス)が、絹旗に向かって炸裂した。

ボガァァァン!と『窒素爆槍』が辺りを蹂躙する音が響いた。

絹旗「あなたも超しつこいですねぇ。今までで懲りなかったんですか?」

『窒素装甲』を纏っている絹旗は無傷だった。

黒夜と絹旗はクーデターが起こる少し前、暗部からの『新入生』と『卒業生』として
過去に1度激突している。
その時は、絹旗個人は負けてしまったが『卒業生』としては『新入生』に勝利した。
続くクーデター本番では、どちらも関わってはいたが、直接戦うことは無かった。
結局クーデターも失敗に終わり、絹旗は勝手に死んだものと思っていた。

黒夜「少し負けたぐらいで挫折するぐらいなら、初めからクーデターなンて、起こさねェよォ!」

黒夜の脇腹から無数の『腕』が出てくる。黒夜の能力は『窒素爆槍』。
掌から窒素の槍を生み出す能力だ。つまり掌がたくさんあれば、という発想で
黒夜は自ら改造人間(サイボーグ)になったのだ。

黒夜は地面に『窒素爆槍』を放ち、その爆風で空を飛ぶ。
その後も『窒素爆槍』を微妙に出力し続け浮遊した。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:37:53.92 ID:tiKOg62V0
黒夜「さァて、空中からの攻撃に耐えられるかなァ!」

黒夜の数千の腕から『窒素爆槍』が放たれる。『窒素爆槍』の雨が、絹旗を襲う!

ズドドドド!と凄まじい音が辺りを蹂躙する。

黒夜「ははははは!呆気ねェなァ、絹旗ちゃンよォ!」

莫大な煙が立ち込める中、黒夜は勝利を確信する。

絹旗「まだ勝負は超終わっていませんよ」

絹旗は無傷で立っていた。

黒夜「へェ。少しはマシになったンだねェ」

絹旗「私は超優等生ですからね。劣等性のあなたとは違うんです」

黒夜(窒素で直径2m程の盾を作って防いだのか)

黒夜「少しぐらい窒素を使えるようになったからって、粋がってンじゃねェぞォ!」

再び『窒素爆槍』の雨を降らせる黒夜。だが絹旗は、またしても平然と立っていた。

黒夜「ちィ!」

絹旗「もう終わりですか?では今度は超こっちの番です」

黒夜「はァ?」

黒夜は、こっちの番も何もただでさえ近距離戦しかできず、遠距離戦が苦手な絹旗に
空を飛んでいる自分に攻撃など当てられるものかと思っていた。

絹旗「ほい!」

掛け声とともに、絹旗はボールを投げるような動作をした。

黒夜「なァーにやってンだァ!絹旗ちゃ」

その言葉は途切れることとなった。黒夜の機械の腕がいきなりちぎれたからだ。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:40:24.98 ID:tiKOg62V0
黒夜「おォ!?」

何故だ。と黒夜は思った。
その間にも絹旗は、再びボールを投げるようなモーションに入っている。

黒夜(まさか……)

黒夜は『窒素爆槍』を出力し、5m程右へ移動する。
するとさっきまでいた場所から、空気を切るような音が聞こえた。

黒夜「もしや、オマエ……!」

絹旗「超頭が悪い黒夜でも、さすがに気付きましたか?」

絹旗「超そういうことです。掌で窒素の球を作って投げたんですよ」

黒夜(そこまで窒素を使いこなしているって言うのか!?)

絹旗「そして、こんな事も出来ます」

そう言うと絹旗は、両掌を合わせる。それを徐々に離していく。
一般人からすれば、女の子が両掌を合わせて離しただけにしか見えない。だが黒夜には見えていた。
絹旗が掌を離していくのに合わせて、槍のようなものが出来上がっていくのが。

絹旗「それ!」

絹旗は、その窒素の槍を黒夜目掛けて投げた。

黒夜「糞が!なめてンじゃねェぞぉ!」

黒夜は『窒素爆槍』で受けて立つ。ボガァァァン!と槍と槍が激突した。結果は相殺。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:42:03.61 ID:tiKOg62V0
黒夜「はン!所詮はその程度かァ!」

絹旗を見下しながら、余裕をアピールする。そこである事に気付く。

黒夜「!?」

いつの間に作ったのだろうか。絹旗の周りに、1辺が1m程の窒素で出来た立方体が10個ほど見えた。それらを絹旗は、拳と蹴りで黒夜目掛けて放った。

黒夜「ちィ!」

黒夜は窒素の塊を、相殺や避けるなどして、全てやり過ごす。

黒夜「成程ねェ。認めてやるよ。オマエは以前より大分窒素を使いこなしている」

黒夜「だがなァ、いくら遠距離攻撃が出来ても、そンなチャチな攻撃、相殺する事も
   避ける事も出来るンだよォ!」

絹旗「で、言いたい事は超それだけですか?」

黒夜「あァ!?」

絹旗「私の攻撃を防げるからって、超良い気になっているようですが
   あなたの攻撃も、私には超効かないんですよ?」

黒夜「その心配はいらねェよ。私には、まだ違う攻撃手段がある」

絹旗の真上に移動しながら、黒夜はそう言った。

黒夜「例えば、こう言う風に力を1つに集めて、超巨大な『窒素爆槍』で攻撃するとかなァ!」

『窒素爆槍』が1点に集められる。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:43:39.41 ID:tiKOg62V0
対して絹旗が執った行動は、両手を高く上にかざしただけだった。

黒夜「まァ賢明な判断だとは思うよ?この大きさの『窒素爆槍』なら
   逃げたって吹き飛ぶだけだろうしね」

黒夜「それならば、受け止めた方が可能性があるって言うのは
   妥当な判断だと思うけど……どの道オマエは終わりだァ!」

黒夜は勝利を確信し、超巨大『窒素爆槍』を放つ。

黒夜「消し飛べェ!」

超巨大『窒素爆槍』が迫る中、絹旗はこう考えていた。

絹旗(私の能力は“窒素”を纏う事。最近はある程度操れるようにもなってきた)

絹旗(ならば敵の攻撃とは言え、窒素である以上、操り、超何とか出来るはず!)

もちろん、確実に操れるなんて保証はない。そのまま押し潰されてしまう可能性も少なくない。
だが逃げたところで、黒夜の言う通り吹き飛ばされるだけだ。
“溜め”が完了する前に攻撃したって、残りの腕で、避けられるか相殺されるだけだろう。
だから受け止め、操る可能性に絹旗は懸けた。

絹旗(自分を超信じるんだ!!)

そして――

超巨大『窒素爆槍』が絹旗に激突した。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:45:12.68 ID:tiKOg62V0
絹旗(ぐぅぅぅぅ!)

激突した瞬間に押し潰されそうになる絹旗。
そのあまりの圧力に、2秒もたずに片膝をついてしまう。

絹旗(違う……受け止めるのでは……駄目です……纏うんだ……この窒素すらも……!)

以前は、体表面から数cmしか窒素を纏えなかったが、今では20cmは纏える。
だが、少し窒素を吸収し纏ったくらいでは、膨大な窒素で出来た黒夜の槍は受け切れない。

絹旗(纏いきれない……窒素は……発散させる……!)

絹旗「う、あああああああああ!」

この瞬間をもって、絹旗は覚醒し、能力者として一段階成長した。
ついに『窒素爆槍』の受け流しが始まった。

黒夜「何ィ!?」

『窒素爆槍』はどんどん吸収され、発散されていく。

黒夜「糞がァ!」

その様を見て焦った黒夜は、通常の『窒素爆槍』をいくつも放つ。
だがその全ては吸収され、発散された。

黒夜「まだまだァ!」

懲りずに『窒素爆槍』を放ち続けるが、やはり吸収、発散され……
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:46:05.57 ID:tiKOg62V0
1分後

黒夜「はァはァ……」

絹旗「もうこの私に、窒素での攻撃は超効きません」

黒夜「嘘だ、嘘だ、嘘だァ!」

切り札すら防がれたからか、黒夜は錯乱する。

黒夜「ハ、ハハ、そうだよ。いくら私の攻撃が効かないからって
   お前の遠距離攻撃も私には届かないんだよォ!」

絹旗「何だ、超そんなことですか。私だって、攻撃方法は超1つじゃないんですよ?」

そう言うと絹旗はジャンプした。そしてさらに、空中でもう一度ジャンプした。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:47:36.61 ID:tiKOg62V0
黒夜「何が……起こって……」

絹旗「今みたいに、空気中の窒素を操って足場を作れば、超解決する問題なんですよ!」

絹旗は、何度も空中でジャンプして、黒夜との距離を詰める。

黒夜「うわァァァ!?くるなァァァ!」

黒夜は『窒素爆槍』を放つが、ボシュゥゥ!とあっさり受け流される。

絹旗「だから超効かないと言っているでしょう」

黒夜「くっ!」

黒夜はたまらず逃げる。

絹旗「超どうしたんですか?黒夜ちゃーん?」

黒夜「糞がァ!馬鹿にしやがってェ!」

どこに収納していたのか、黒夜は拳銃を100丁ほど出し撃ちまくる。

絹旗「レベル4の攻撃が超効かないのに、拳銃如きが効くわけないでしょう」

弾丸は悉く弾かれる。これでは埒があかない。

黒夜「これならどうだァ!」

今度は10個のロケットランチャーに、50個の手榴弾を出す。そして全てを一気に絹旗に炸裂させる。
バガァァァン!と辺りにとんでもない爆音が響いた。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:49:16.38 ID:tiKOg62V0
黒夜「ハハ……これで」

絹旗「これで……超なんですか?」

煙の中から平然と現れる絹旗。

黒夜「化け物……め……」

絹旗「自らの体を改造した、サイボーグにだけは超言われたくないですね!」

黒夜「糞ォォォ!最後の勝負だァ!」

先程の大きさではないとは言え、即席で割と大きい『窒素爆槍』を作り、放った。

黒夜「この距離なら、さすがのオマエも受け流す事も、避ける事も出来ねェだろォ!」

絹旗「その即席で作った槍ですが、力の焦点が合わず超隙だらけですよ。
   どんなに大きい力でも、その隙が『弱所』となり
   その『弱所』を突かれれば、その力の半分も超発揮できません」

絹旗「ぶっちゃけ受け流すのは簡単ですが、超癪なので真っ向から打ち破らせてもらいます!」

絹旗の右掌の上で、窒素が乱回転しながら集まり、球状に圧縮され、そのまま留まる!

絹旗「窒素丸!!!」

絹旗の窒素丸と黒夜の『窒素爆槍』が激突する。力の大きさだけなら、黒夜の方が上だった。
だが絹旗の一点集中し『弱所』を突いた窒素丸と、黒夜のでかいが隙だらけの力。
優劣は明らかだった。

黒夜「この私が……負け……」

絹旗「おおおおお!」

絹旗の窒素丸は『窒素爆槍』を貫き、そのまま黒夜へ直撃する。

黒夜「ごっ、がああああああああああああああ!」

黒夜は、そのまま100m程吹き飛び、地面に叩きつけられた。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:51:01.72 ID:tiKOg62V0
第7学区 上条の通う高校

ガララッ!と勢い良く扉を開け放つ上条。すると窓のそばに、金髪でグラサンの男が立っていた。

上条「土御門……」

土御門「あの強くなったステイルでも止めらないとはな」

上条「ステイルが、土御門が罠を仕掛けたとか言ってたけど、嘘だよな?」

土御門「それにねーちんも突破したって言うのか。あ、それは『超電磁砲』が相手してるんだっけ」

土御門「ちなみに現在、学園都市には第一級警報(コードレッド)が発令されている。
    皆核シェルター級の避難所に避難しているだろう。風紀委員と警備員は除いてな」

上条の質問を無視し、土御門はそう続けた。

上条「そんなこと聞いてんじゃねぇ!
   お前が俺を罠に嵌めて、ステイルと戦わせたかどうか聞いてんだ!」

土御門「本当だ」

上条「何で……?」

土御門「不覚にも、イギリス清教に舞夏を人質に取られてしまってな」

舞夏とは、土御門の義理の妹である。土御門の最も大切なモノで
彼女の為ならば、世界を敵に回す覚悟があるぐらいだ。

土御門「そして、カミやんを殺せ。と言われた」

土御門「ステイルもねーちんも『禁書目録』を人質に取られた。
    そして同じく、カミやんを殺せと命令された」

土御門「俺はその手助けをしたって訳だ。いやイギリス清教、ひいては魔術サイド全体が
    何らかの弱みを握られたり、操られたりでローラに踊らされている。
    目的はアレイスターと上条当麻の抹殺。ついでに学園都市滅亡らしい」

上条「……」

土御門「すまないなカミやん。そんなお前を助ける事は出来ない。
    寧ろ殺そうとしている。恨んでくれても構わない」

上条「そう言うことだったのか。別に恨みはしないさ。ただ俺を殺すんじゃなくて
   お前の手で舞夏を救い出すと言う選択肢は無かったのかと問いたいけどな」

土御門「……カミやん、世の中は綺麗事だけじゃ済まないんだよ。
    これ以上の会話は無用だ。死んでくれ」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:52:30.96 ID:tiKOg62V0
土御門は懐から拳銃を取り出し、その引き金を迷わず引いた。
対し上条は、即座に横に転がりこみ、教室の扉から出ていく。

土御門「直線になっている廊下じゃ、逃げ切るのは容易じゃないぞ!」

土御門は即座に上条を追いかけるが、廊下には上条の姿がない。
代わりに窓が開いていた。

土御門(ここは3階……飛び降りればただでは済まないはずだが……)

一応窓から顔を出して確認する。

土御門(なるほど。駐輪場の屋根に落ちた訳か)

上条は屋根から降りて、何か自転車をいじっている。土御門も屋根の上に飛び降りる。

上条「うおおおお!」

土御門が屋根に降り立った瞬間、間髪容れずに上条は自転車を投げつけた。

土御門「ちっ!」

土御門は拳銃をもう1丁取りだし、2つの拳銃で自転車を撃ち抜く。
上条は2台目の自転車を投げつける。

土御門「しつこい!」

2台目の自転車も撃ち抜く。上条は3台目の自転車を投げつける。

土御門(銃弾を無くさせる気か!?)

3台目の自転車を撃ち抜きながら、土御門は考える。上条は4台目の自転車を投げた。

土御門(銃弾なんてまだまだあるが、このままだとキリがないのは事実。ここは)
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:54:14.36 ID:tiKOg62V0
土御門は一旦銃をしまい、ジャンプし、上条が投げた自転車を空中でキャッチする。
そしてそのまま上条に投げ返す。

上条「ぬお!?」

上条は急いで横に転がる。土御門は地面に着地後、すぐ銃を引き抜く。
だが上条は既に起き上がっており、土御門に殴りかかろうとしていた。

土御門(速い――!が――)

充分避けられる、と土御門は思っていた。
だが土御門の体は、足に痛みと共にガクン、と地面に縫い付けられたように傾くだけ。

土御門(この技は……!)

土御門がよくやる反則技、踏み砕きだ。上条は左足で土御門の右足を潰し動きを止めたのだ。
そして動けないまま、上条の強力な拳が飛んでくる。咄嗟に、両手を使って顔と胸を守る。
だが上条の拳は顔でも胸でもなく、腹に直撃した。

土御門「ごはっ!」

上条に殴られた土御門は、そのまま自転車の集団に突っ込んだ。
その衝撃で2丁の拳銃を落としてしまう。上条はその2丁の拳銃をすかさず拾い、遠くへ投げる。

上条「立てよ土御門。義妹を救いにも行かずに俺なんかに現を抜かしている
   馬鹿兄貴の目を覚まさせてやるよ」

土御門「素人が調子に乗るなよ」

土御門はゆっくり起き上がる。

上条「『御使堕し』(エンゼルフォール)の時のリベンジはさせてもらう」

土御門「いいぜカミやん。素人とプロの、格の違いってやつを見せてやるよ」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:55:43.02 ID:tiKOg62V0
結論から言うと、浜面達は全員無事だった。
麦野の『原子崩し』で落下速度を落として着地したのだ。
完全に無傷のスマートな着地とはいかなかったが。

麦野・滝壺・浜面「「「痛て……」」」

フレメア「浜面、大体大丈夫?」

フレメアは浜面に抱かれて落ちたため、無傷。忍者の末裔である半蔵と郭も無傷で着地していた。

浜面「さすが、忍者の末裔だけあるな」

半蔵「……つか、そんなに余裕ぶっこいてる状況じゃないみたいだぞ」

郭「あの金髪の娘が、銃器を持って近付いてきています」

郭の言う通り、フレンダが銃器を持って近付いてきていた。

半蔵「どうする?戦っても良いのか?」

浜面「いや……そいつは……」

浜面はたじろいだ。まだ混乱しているのだ。その時、麦野が口を開いた。

麦野「服部、郭、お前らは何もしなくて良い。浜面と滝壺もだ。私がやる」

麦野が表立つ。

浜面「大丈夫なのか?」

麦野「当たり前だ。あれはフレンダじゃない」

麦野「お前らは知らないだろうが、あの『超電磁砲』にもクローンがいるぐらいだ。
   学園都市の技術は既にそこまでの領域に達している」

浜面「マジかよ……」

麦野「だからあいつもクローンか、精巧なロボットか。はたまた別の何かか。
   どの道あいつはフレンダでもなんでもない。私が2秒で消し炭にする」

麦野「フレンダを侮辱した事、許さない……!」

麦野が攻撃をしようと構えた、その時だった。
3m程の大きさのゴリラの形をした駆動鎧が上空から降ってきた。
それともう1機。5m程の、隼の形をした駆動鎧も飛んできた。

その隼の駆動鎧は、フレンダを乗せ、フレメアを掴みどこかへ飛んでいった。

麦野「待ちやがれ!」

麦野はその駆動鎧が飛んで行った方向へ走っていく。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:56:55.62 ID:tiKOg62V0
浜面「ちょ、待て麦野!」

ゴリラ『貴様らの相手は、この俺だ』

ゴリラが浜面の前に立ち塞がる。そしてその拳が、浜面目がけて振り下ろされた。
浜面は横に転がり、なんとか拳を回避する。

浜面「くっそ!」

滝壺「はまづら!」

半蔵「郭!」

郭「はい!」

ゴリラを挟むように、半蔵と郭は同時に走り出す。両者が手に持っているのは鎖鎌。

半蔵「おらっ!」

郭「はあっ!」

2人は同時に、鎖鎌をゴリラに向けて投げつける。それはゴリラに巻き付いた。

半蔵「引っ張るぞ!」

郭「はい!」

ゴリラを引き裂こうと、鎖鎌を同時に引っ張る2人。

ゴリラ『その程度の攻撃で、この駆動鎧が潰れるとでも?』

ゴリラは引き裂かれるどころか傷1つつかなかった。
ゴリラは鎖鎌を掴み、そのまま回転する。半蔵と郭を投げ飛ばすためだ。
ヤバい、と思った2人は咄嗟に鎖鎌から手を離す。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 09:58:26.95 ID:tiKOg62V0
ゴリラ『邪魔だな貴様ら。仕方ない。自動操作に切り替えるか』

そう言うと、ゴリラの駆動鎧の中から男が出てきた。
その男は駆動鎧から降りると、浜面達の方へ歩み寄る。

半蔵「おらよ!」

半蔵は持っていたクナイを、その男に向かって投げるが、ゴリラがそれを阻んだ。

男「貴様ら忍者の相手は、その駆動鎧がやる。そして浜面仕上、貴様の相手はこの俺だ」

浜面「お前、何者だ?」

男「俺は鬼塚剛。お前らにやられた『新入生』の残党だ」

浜面「『新入生』の、残党だと!?」

鬼塚「お前の能力は『オートエンハンス』のレベル1。
   能力の詳細は、能力発動後1分はレベル0のまま。1分後にレベル1の『肉体強化』に相当する」

鬼塚「その2分後にレベル2、その3分後にレベル3、その4分後にレベル4相当になる。
   そしてその5分後、能力が切れる」

鬼塚「要するに、10分でレベル4になり、15分でレベル0に戻ってしまうってわけだ」

浜面「こっちの情報は筒抜けか……」

鬼塚「俺の能力を教えてやろう。レベル4の『肉体強化』系(パーツエンハンス)だ」

浜面「『パーツエンハンス』?」

鬼塚「百聞は一見にしかず。どう言う能力か見せてやろう。ぬん!」

掛け声とともに、鬼塚の右腕が3倍程太くなった。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:00:09.03 ID:tiKOg62V0
鬼塚「こう言う風に、俺は体の部位ごとを強化できる。この腕はレベル2相当だ」

浜面「へぇ……なんでその情報を俺に教えるんだ?」

鬼塚「男と男が喧嘩するのはフェアじゃなきゃな。俺だけ貴様の事を知っていて
   貴様は俺の事知らない、ではアンフェアだろ?ほら貴様も能力を発動しろ」

浜面「じゃあ遠慮なく!はっ!」

鬼塚「発動したみたいだな。ま、今から1分はレベル0のままだろうがな」

鬼塚「では行くぞ」

鬼塚は脚を強化し、凄まじい勢いで浜面に肉迫する。

浜面(速え――!)

ドガァン!と鬼塚の強化された腕の一撃が浜面を襲った。
浜面は咄嗟に両腕でガードしていたとはいえ、数m地面を転がった。

鬼塚「1分どころか、10秒も保たないか」

浜面「ふ……ざけやがって。何がフェアだ。お前はレベル4、俺はレベル1。
   その時点で既にフェアじゃないんだよ」

鬼塚「馬鹿者。今の俺は腕も脚もレベル2相当だし、互いに能力が分かった時点で
   フェアだろう。最終的には貴様もレベル4になるんだしな」

浜面「意味が分からねぇ。けど俺はお前みたいに正攻法ではいかない。何でもやらせてもらう」

浜面は拳銃を取り出した。

鬼塚「拳銃如きで、この俺を撃ち抜けるとでも?」

浜面は無言で2回発砲した。鬼塚はそれを最小限の動きだけでかわす。

鬼塚「おらぁ!」

浜面の手ごと拳銃を蹴り飛ばし、間髪容れずに強化した左腕のラリアットをお見舞いした。

浜面「ごはっ!」

浜面は再び地面を数m転がる。追撃しようと、鬼塚は近付くが

浜面は突然起き上がり、頭突きをかました。

鬼塚「ぬがっ!」

浜面「まだまだぁ!」

そこからさらに拳を2発、鬼塚の顔面に叩きつける。

鬼塚「がっ!」

浜面「まだだっ!」

さらに追撃しようとしたが、鬼塚がそこで一旦距離をとった。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:01:41.15 ID:tiKOg62V0
鬼塚「どう言う事だ?何故貴様は、レベル1相当になっている?
   まだ能力発動から、30秒も経っていないはずだが……」

浜面「言ったはずだ。勝つ為なら俺は何でもすると」

鬼塚「意味が分からん。質問の答えになっていない」

浜面「簡単な事さ。滝壺の補助で、俺の能力進化までの時間を短くしただけさ」

鬼塚「成程。ではこちらも、さらにレベルを上げていこうか。ぬん!」

先程の距離をとる時に、脚はレベル3相当になっていた。腕もレベル3相当になる。

鬼塚「おおおおおお!」

鬼塚の怒涛の拳の連撃が浜面を襲う。

浜面(滝壺の補助であと20秒も耐えれば、レベル2相当になれるはず……!)

浜面(そこまで耐える……!)

鬼塚の攻撃を、受け止め、いなし、かわすなどして、クリーンヒットを免れる。

鬼塚「ほう。その動き、ただの素人じゃないな」

浜面「元々、武装無能力者集団(スキルアウト)で体は鍛えてあった。
   そして最近、ボクシングもやり始めた」

鬼塚「少しボクシングをかじったところで、俺の拳を避けられるのは腹が立つなぁ!」

鬼塚の攻撃が、より一層激しさを増す。

浜面「攻撃が段々大振りになってるぜ!そんなんじゃ当たるもんも当たらねぇよ!」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:03:50.32 ID:tiKOg62V0
そして20秒。浜面はレベル2相当になった。

浜面「おおお!」

浜面の渾身の一撃が、鬼塚の顔面に突き刺さった。

鬼塚「ごふぁ!」

鬼塚は数m地面を転がる。

鬼塚「最初の一撃は防げなかった癖に、今の連続攻撃を防ぎきるとはな」

浜面「最初の一撃は不意打ちみたいなものだったからな。
   冷静に対処すればなんてことはない」

鬼塚「どこまでもイラつく奴だ。ならば見せてやろう。レベル4の力を」

浜面「させるか!」

浜面は能力を発動させまいと、鬼塚に殴りかかるが

鬼塚「残念。もう腕はレベル4になった。レベル2程度の攻撃では
   この腕をクロスしてガードしていればノーダメージだ」

それでも浜面は攻撃を止めない。

鬼塚「無駄だと……言っている!」

鬼塚は、両腕をクロスしたまま、浜面へ体当たりをかます。
浜面はノーバウンドで数m吹き飛んだ。

浜面(く……レベル3相当までは、あと2分くらいか……?)

鬼塚「見せてやろう。これがレベル4の真の力だ!ぬん!」

瞬間、鬼塚の体が膨れ上がった。
結果として、半蔵と郭が今も戦っているゴリラの駆動鎧と、大差ない大きさになった。

鬼塚「いくぞぉ!」

3mほどの大きさになった癖に、速さまで増した、鬼塚の怒涛の攻撃に
なんとかクリーンヒットは避けるも、反撃が出来ない。浜面は仕方なく一旦距離を取るが

鬼塚「逃げるのなら、厄介な滝壺理后から始末する」

鬼塚の攻撃の矛先が滝壺へ向く。

浜面「滝壺ぉーっ!」

浜面は滝壺を抱え込むように飛び込む。2人は、鬼塚の攻撃を何とか避けた。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:05:41.79 ID:tiKOg62V0
浜面「とりあえず、滝壺を安全な場所まで運ばないと……!」

浜面は、滝壺をお姫様抱っこしながら逃げる。

鬼塚「お荷物を抱えながら、俺から逃げられるとでも思っているのか!」

鬼塚は地面を殴り、そこからできた破片を掴み投げる。破片と言っても、1m程の塊をだ。

浜面「お……おお……!」

浜面は、直撃を避けようとジグザグに走る、時折ジャンプするなどして逃げたが
やがて足はもつれ、転んだ。

浜面「滝壺、お前だけでも逃げてくれ!俺の補助は遠くからで良い!」

滝壺「でも、それじゃあはまづらが」

浜面「いいから早く!」

滝壺「……絶対ちゃんと迎えに来てね。迎えに来ないと許さないんだから」

浜面「ああ、分かってるよ」

鬼塚「そんなに余裕で良いのかな?」

鬼塚は既に浜面の真後ろにいた。そしてそのまま拳を振り下ろす。
浜面はそれを何とか避けるも、鬼塚の猛攻撃は続く。

浜面は先程までと同じく、クリーンヒットは避ける。
だが逆に言えば、避けきっているのはクリーンヒットだけ。
鬼塚の拳が地面にぶつかったときに飛び散る破片や、強力な一撃を避けきれず
受け流すときに、受け流しているとは言え、ダメージは溜まっていく。

浜面「くっ!」

浜面は、ついに片膝をついてしまう。

鬼塚(チャンス!)

浜面はガードをするも、鬼塚の右拳の一撃で15mほど地面を転がった。

鬼塚「まだまだぁ!」

鬼塚はその場で10mほどジャンプした。
そのまま倒れている浜面に向かって、空中からかかと落としを炸裂させた。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:06:50.85 ID:tiKOg62V0
鬼塚「ほう……よく避けたな」

浜面「うおおおお!」

間髪容れずに鬼塚の腹に拳を叩きこむ。

鬼塚「先程よりは威力が高まったな。レベル3相当になったのか。
   だがレベル4の今の俺には、レベル3相当の攻撃もまるで効かん」

浜面「く……!」

再び鬼塚の、鬼のような連撃が浜面を襲った。

浜面(避けられる……!レベル3の今なら、ほぼ完璧に避けきれる!
   今は攻撃が効いてないみたいだが、レベル4になれば攻撃も通用するはず!
   それまで耐える!)
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:07:52.99 ID:tiKOg62V0
鬼塚「ちょこまかちょこまかと、鬱陶しいな」

鬼塚は攻撃を避けられてイライラしていたのか、両手を組み、それを振り下ろしてきた。

浜面(大振りになった……!チャンス!)

浜面は鬼塚の一撃を避け、振り下ろされた腕を駆け上がる。

浜面「喰らいやがれ!」

そして浜面の全力の蹴りの一撃が、鬼塚の顔面に叩きこまれた。

浜面(これで少しは……!)

鬼塚「だから効かんと言っているだろう?」

浜面(やば……!)

鬼塚は浜面を掴み、投げ飛ばす。浜面はノーバウンドで数十m先の高速道路の柱に激突した。

浜面「がはっ!」

鬼塚「まだだ!」

鬼塚は、高速道路にもたれかかっている浜面に迫る。

浜面(なんとか……しねぇと!)

浜面は痛む体に鞭打ち、距離を取ろうと逃げる。

鬼塚「さっきから逃げてばかり……男なら正面から正々堂々戦え!」

浜面「何度も言うけど、俺は勝つためなら何でもする!」

鬼塚「つまらん……つまらんぞぉー!」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:09:55.19 ID:tiKOg62V0
鬼塚は先程と同じように地面を殴り、その破片を浜面に投げまくる。

浜面(レベル3の今なら……避けきれるはず!)

浜面は投げられてくる破片を全て避ける。

鬼塚「おらぁぁぁ!」

破片攻撃はさらに激しさを増していく。

浜面(攻撃が激しくなってきた……このままじゃ避けきれない……!)

そう考えた浜面は、今まではただ避けていただけだった1m程の破片を、蹴りで軌道を逸らす。

浜面(これで何とか)

鬼塚「おおおおお!」

破片攻撃が終わったと思ったら、今度は鬼塚自身が飛び込んできた。

浜面(また近付かれちまった!)

鬼塚の連撃が浜面を襲うが、クリーンヒットだけは避け続ける。
しかし、徐々にダメージは溜まっていく。

浜面(このままじゃ……ジリ貧だ……!こうなったら1度攻撃を受けて……!)

そう考えた浜面は、鬼塚の拳を敢えて受け止めた。
そしてそのまま、1本背負いで鬼塚を地面に叩きつける。
仰向けに倒れた鬼塚の首辺りに乗っかり、顔面に拳のラッシュを叩きつける。

浜面(攻撃の手を緩めるな!攻撃を続けていれば、いつかは!)

そう信じ、攻撃を続けたが、パシィ!と拳を受け止められた。

鬼塚「何度言ったら分かる?お前の攻撃はもう効かない、と」

鬼塚は浜面を掴み、地面に叩きつける。
その後すかさず、地面に伏している浜面に、拳を2,3,4と振り下ろす。
計10発の拳を振り下ろした後、とどめの肘を喰らわせた。
その威力は浜面を中心に、半径10mの地面にヒビを入れるほどだった。
浜面もガードはしていたが、既に解かれ、白目を向いて気を失っていた。

鬼塚「ふぅ。ようやく終わったか」

滝壺「はまづらぁー!」

滝壺の叫び声が聞こえた。鬼塚には、その声は聞こえるだけで、姿は見えない。
どこに居るかまでは分からない、しかしそう遠くへは行っていないだろうと思う。

鬼塚「滝壺理后ー!次は貴様の番だー!」

鬼塚は大声で叫んだ。そして滝壺を探そうと歩き出した時だった。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:11:10.97 ID:tiKOg62V0
浜面「……待てよ」

鬼塚「……ほう」

浜面「まだ勝負は……終わってねぇぞ……」

鬼塚「やめておけ。そんな状態では、俺を倒すことは愚か、最早傷をつけることすら不可能だろう」

鬼塚「しかし、まさか先の一撃で死んでないとはな。そうだな。
   せめてもの手向けだ。あとで滝壺理后と、仲良くあの世へ送ってやろう」

浜面「……させねぇよ」

鬼塚「何?」

浜面「させねぇって言ってんだろ!」

瞬間、浜面の拳が鬼塚の顔面に突き刺さった。

鬼塚「ごっふぁ!」

鬼塚は10mほど吹き飛ばされた。

鬼塚「貴……様、その速度と威力、レベル4相当になったと言うのか!?」

浜面「ああ。これから滝壺の補助のおかげで6分間、レベル4相当の力を使える」

浜面「この6分で決める!」

鬼塚「くくく、そうか。ようやく面白くなってきたなぁ!」

鬼塚「この6分間、貴様から逃げ続けて、能力が切れたところをいたぶるのもいいが
   癪だから、真正面から打ち砕いてやるよぉ!」

最後の6分間が、始まった。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:12:50.98 ID:tiKOg62V0
浜面と鬼塚は、同時に地面を蹴った。
ドガァ!と拳と拳がぶつかる。

鬼塚「この俺と互角の力とはな」

浜面「当たり前だろ。同じレベル4相当なんだから」

その後も拳と拳がぶつかり合う。

浜面(このままじゃ6分経っちまう……!)

もう既に1分ほど殴り合っている浜面は、焦っていた。

浜面(こうなったら……賭けだが、やってみるか!)

浜面は一旦距離をとる。

鬼塚「どうした!?早くしないとレベル4相当の能力が消えるぞ!」

鬼塚が物凄い勢いで迫る。

浜面(集中しろ……!集中しろ……!)

鬼塚は拳を振るった。が、浜面は鬼塚の視界から消え去った。

鬼塚「な!?」

驚く鬼塚。そこへ浜面が、空中からドロップキックを繰り出した。

鬼塚「ぶふぉあ!?」

たまらず後退する鬼塚。浜面は地面着地後、追撃を仕掛けようと左拳に力を込めている。
それを見た鬼塚は、反射的に右拳を繰り出す。
右拳と左拳が激突した。瞬間、ブシャア!と腕は潰れ、血が溢れた。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:14:32.84 ID:tiKOg62V0
浜面「あぁ~、痛ってぇー」

鬼塚「く……何故だ……?」

鬼塚「何故俺の右腕が潰れ、貴様の左腕が残っている!」

浜面「そのトリックを、教えると思うか?」

鬼塚「くそがぁ!」

鬼塚は闇雲に拳を振るう。

浜面「遅いぜ!」

しかし浜面は既に、鬼塚の後方へ回り込んでいた。そしてそのまま回し蹴りを浴びせる。

鬼塚「ごあっ!な……ぜ……!」

その後も浜面は高速で動きまわり、時には蹴りを繰り出し、鬼塚を翻弄する。

鬼塚「何故そんなに速く動けるー!」

鬼塚は冷静さを失って、その場で両腕を水平に広げ、回転する。

鬼塚「これならどの方向から攻撃されても、問題ないぞぉ!」

浜面「馬鹿かお前?上がカラ空きなんだよ!」

浜面の全力のかかと落としが、鬼塚の頭頂部に炸裂した。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/05(金) 10:16:18.76 ID:tiKOg62V0
鬼塚「ぶるふぁ!?」

浜面(ここだ!)

浜面は、ここぞとばかりに猛ラッシュを仕掛ける。

浜面(反撃する暇を与えるな!息さえさせるな!能力は残り2分もない!チャンスは今しかない!)

さすがの鬼塚も、この猛ラッシュは効いたのか、体のサイズが、元の190cmに戻った。

浜面(これで決める!)

浜面「うおおおおおおおおおおおおお!」

ドガァン!と浜面の渾身の一撃が、鬼塚の腹部に深く突き刺さった。
その拳が突き刺さったまま、浜面は走る。

浜面「おおおおおおおおおおおおおお!」

そして拳ごと、鬼塚を高速道路の柱に叩きつけた。

鬼塚「ごはぁあああああ!」

鬼塚は高速道路の柱に深くめり込んだ。

浜面「これ……で」

終わった。と浜面は思ったが、柱にめり込んだ鬼塚から、ヌッと手が伸びてきた。

浜面「おお!?」

浜面はそれを数歩後退することでやり過ごす。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:18:20.40 ID:tiKOg62V0
浜面「まだ……動けるのか……?」

鬼塚「はぁ、はぁ、分かったぞ。貴様が突如早く動いたり、拳の威力が増したトリックが」

鬼塚「貴様はレベル4相当の力を、拳や脚に一点集中していたのだな」

『肉体強化』系の能力者というのは、力が身体中に、均等に強化される。
浜面は、それを一点集中する事によって、集中した箇所が、一時的にレベル4を超える力を
発揮できたのだ。

浜面「バレちまったか。まあ俺は、どの道もうすぐ能力が消える。
   お前がまだ立ち上がるのなら、俺は次の一撃に全てを懸けるだけだ」

浜面はレベル4相当の力を、全て右拳に集中する。

鬼塚「能力にこういう使い方があったとはな。ならば俺も、残った力の全てを左腕に集中しよう」

鬼塚も、一度は解けた能力を左腕に集中する。
その結果、左腕の大きさは元の10倍以上になった。

浜面「はは。お前、そんな不安定な状態で、攻撃を繰り出すつもりか?」

鬼塚「どうせ次の一撃で、拳と拳をぶつけ合って、全てが終わる。何か問題でも?」

浜面「そうか」

そして、2人は同時に地面を蹴った。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:19:59.03 ID:tiKOg62V0
浜面・鬼塚「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

鬼塚と浜面の拳が激突する!かの様に思われたが、鬼塚の左腕が空を切った。

鬼塚「な……にが」

浜面「そんなもん決まってる」

浜面の声は上から聞こえてきた。

浜面「お前とぶつかる直前に、脚に力を集中して、避けただけだ。
   馬鹿正直に勝負なんてするかよ」

鬼塚「ふ、ざけるなぁー!」

鬼塚は叫んだ。しかし、左腕だけが異様にでかくなって
バランスがうまくとれない鬼塚は動けない。浜面は、再び右拳に力を集中する。

浜面「これで、今度こそ決着だ!」

浜面の究極の一撃が、鬼塚の顔面に突き刺さった。
その一撃は、鬼塚を地面に1mほどめり込ませ、鬼塚を中心に半径30mの地面に
ヒビが入るほどだった。完全に意識を失って聞こえていないであろう鬼塚に向かって
浜面はこう言った。

浜面「『暗部』の人間のくせに、変なところで正々堂々だったのが敗因だったな」

滝壺「はまづらぁー!」

浜面「俺の……勝ち……だね」

滝壺が走ってきたところを見ながら、限界まで力を使い果たした浜面も倒れた。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:21:53.39 ID:tiKOg62V0
浜面達が激闘を繰り広げた地点から3kmほど行った場所

麦野「はぁはぁ」

麦野は、5mほどの大きさの隼の形をした駆動鎧を追って、走っていた。

麦野(くそ……!どこまで逃げる気だ……!)

麦野がそう考え始めた時に、隼はゆっくり地面に降り立った。
隼の上に乗っていたフレンダが降りた。

フレンダ「麦野」

麦野「軽々しく私の名前を呼ばないでくれる?」

フレンダ「麦野、結局私の事死んだと思っていた訳でしょ?」

麦野「当たり前でしょ。だって私が、この手でフレンダを殺したもの。生きているはずがない」

フレンダ「結局、上半身と下半身がさよならしても、『冥土帰し』にかかれば
     ちょちょいのちょい!って訳よ」

麦野「有り得ないわ。あれで生きているはずがない」

フレンダ「これを見ても、まだ信じられない?」

フレンダは自分の服を捲りあげる。そこには、上半身と下半身を縫合したような跡があった。

フレンダ「大体、麦野も『冥土帰し』の『負の遺産』で、そこまで蘇ったんでしょ?
     『冥土帰し』の凄さは麦野も分かっているはず」

フレンダ「結局、私は本物のフレンダって訳よ」

麦野「……もしかして本当の本当にフレンダなの?」

フレンダ「そうよ。やっと信じてくれたのね麦野!」

フレンダは麦野に向かって走り出す。

麦野「フレンダ!」

フレンダ「麦野!」

抱き合う麦野とフレンダ。

麦野「フレンダ……会いたかった……会いたかったよぉ!」

フレンダ「私も……私もだよぉ!」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:23:22.60 ID:tiKOg62V0
フレンダ(なーんちゃって。嘘に決まってんじゃん。死ね!)

フレンダは抱き合った状態から、隠し持っていたナイフを取り出し

麦野「なーんて、言ってほしかったかぁ、偽物野郎」

ザシュ!と、フレンダのナイフを持っていた右腕が消し飛んだ。

フレンダ「きゃぁぁぁあああ!」

悶えるフレンダ。

フレンダ「何で……私が本物のフレンダでないと思ったぁー!?」

麦野「いやいや普通に有り得ないでしょ。誤魔化しきれるとでも思ったの?
   傷跡については、特殊メイクでどうとでもなるし、アンタが『暗部』だとしたら
   フレンダの口癖、その他行動パターンをある程度把握していてもおかしくはない」

麦野「それに、もしアンタが本物のフレンダなら、どうしてフレメアを連れて逃げた?
   高速道路を爆破する意味も分からないし。いろいろと杜撰すぎたわね」

フレンダ(適当にフレンダの真似して動揺させれば、レベル0なんかに
     2度も負けるアマちゃんなんて倒せると思ったのに……!)

麦野「さて、消えて頂戴」

フレメア「待ってぇーっ!」

倒れているフレンダと麦野の間に、フレメアが割り込んだ。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:24:21.51 ID:tiKOg62V0
麦野「どうしたのフレメア?どいて。そいつを殺せない」

フレメア「フレンダお姉ちゃんに、こんな事するなんて、麦野お姉ちゃんは酷いよ!」

麦野「何言っているんだフレメア?こいつはフレンダじゃない。ひょっとして操られているのか?」

しかし、別段操られているようには見えない。

フレメア「おかしいよ……今の麦野お姉ちゃん、怖すぎる……」

麦野「こいつは生きているだけでフレンダを侮辱しているようなものだ。
   まだまだ『お仕置き』が必要なぐらいだよ」

フレンダ「調子に乗るなよぉー!」

フレンダは、今まで庇ってくれていたフレメアを人質に取る。

フレンダ「どうだ。これで」

しかし、その言葉は最後まで続かなかった。
麦野の『原子崩し』がフレンダの左脚を消し飛ばしたからだ。

フレンダ「ぐおおあああ!」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:25:28.35 ID:tiKOg62V0
麦野「ほら、庇ってくれたフレメアに、こんなことするんだ。まだまだお仕置きが足りない」

フレメア「もう良いよ!もうやめてよ麦野お姉ちゃん!」

麦野「何なのフレメア?あまり邪魔すると、あなたも消すわよ」

フレメア「え?」

麦野「分かったらそこをどきなさい」

そう言って麦野は、フレメアを振り払うように殴り飛ばした。

フレンダ「あんた……外道なんてもんじゃないわね」

麦野「お前にだけは言われたくないわ」

そうして麦野は、とどめを刺そうとする。

フレンダ「く!ファルコーン!」

フレンダが叫ぶと、さっきの隼の駆動鎧が突っ込んできた。

麦野「ふん」

だが麦野は『原子崩し』で、あっさりと隼を消し飛ばした。

フレンダ「あ……ああ……」

左腕だけで必死に這いつくばるように逃げるフレンダ。

麦野「じゃあ今度こそ終わりね」

麦野が最後の攻撃をしようとした、その時だった。

絹旗「麦野!」

麦野「絹旗か」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:26:52.55 ID:tiKOg62V0
絹旗は状況を確認する。右腕と左脚がないフレンダ。
しかしながら、多分あれは偽者だろう。と絹旗は判断した。

しかし、フレメアが傷ついているのはどう言うことか。
まさかレベル5の麦野が守り切れなかったとでも言うのか。

いや、それにしては偽者相手に、優位に立っているようにしか見えない。
となると、フレンダの容姿をした偽者相手に激情して、その勢いで
フレメアにまで暴力を振るった。と考えるのが妥当なところか。

絹旗には心当たりがいくつかあった。麦野は一度思い込むと一直線のタイプだ。
その手で同胞のフレンダを手にかけ、浜面や滝壺をも手にかけようとした事もある。

絹旗「フレメアちゃんが傷ついているのは、超麦野の仕業ですか?」

麦野「まあね。この偽物野郎を殺すのに邪魔してきやがったから、ちょっと躾をね」

絹旗「もう良いでしょう。その偽者は既にボロボロです。超放っておいても、問題ないはずです」

麦野「駄目よ。こいつはフレンダを侮辱した。まずは残りの四肢を消し飛ばす」

絹旗「麦野!もうそんな無意味なことは超やめましょう!」

麦野「何?ひょっとして絹旗も、躾が必要なのかしら?」

絹旗「ぐぬぬ」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:28:43.31 ID:tiKOg62V0
絹旗はレベル4だ。しかも黒夜戦を通し、さらなる成長をしている。
既にレベル4以上レベル5未満の力ぐらいはある。

しかし、相手は正真正銘のレベル5。止められる確率は限りなく低い。
麦野は偽者相手にキレているだけだし、ここで止めに入らなくても何も問題は無い。

でも、それでも絹旗は止めなきゃいけないと思った。
偽者とは言え、フレンダを殺してしまったら、それこそ相手の思う壺というか
人間として本当に終わってしまう。そんな気がしたから。

絹旗「もうこんな人間とは思えない超鬼畜の所業はやめましょうよ。
   浜面や滝壺さんのもとに帰りましょうよ」

麦野「分かった。アンタにも躾が必要みたいね」

麦野の意識は絹旗に向きかけていた。

フレンダ(チャンス!)

フレンダは左手で拳銃を引き抜き、発砲しようとしたが
麦野の能力により、左腕までも消されただけだった。

フレンダ「うわあああああ!」

絹旗「麦野!」

麦野「ちょっと待ってよ絹旗ちゃん。今のは正当防衛でしょ?」

そして麦野は、未だに悶絶しているフレンダを見下しながら

麦野「あーあ。なんかもう面倒くさくなっちゃった。消えて」

そうして麦野は、最後の一撃をフレンダに放った。放たれた跡には、塵も残らなかった。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:29:25.13 ID:tiKOg62V0
絹旗「麦野……」

結局、偽者を麦野に殺させてしまった。でも仕方ないかと思った。
とりあえず、この件はこれで終わり。再び浜面と滝壺を探そうではないか。
そう考えていた時だった。

麦野「さて、今度はお前の躾でも始めようか」

絹旗「超マジですか……万事休す、ですかね……」

麦野の『躾』が始まろうとしていた。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/05(金) 10:31:01.58 ID:tiKOg62V0
滝壺「!」

半蔵「どうした?」

滝壺「……意味が分からないけど、むぎのときぬはたが戦闘を始めてる……」

半蔵「なんだって!?」

滝壺「……ここから約3kmの地点。急いでいかなきゃ!」

半蔵「ちょ、待てよ。この状況で、レベル4とレベル5の間に割って入っても……」

浜面は重傷の上気絶。半蔵と郭も、ゴリラのコックピットを集中的に狙い
なんとか動きを止めたようだがボロボロ。滝壺もレベル4ではあるが戦闘には向いていない。
こんな状況で、戦闘系の能力者の2人を止められるとは思えない。

滝壺「でも、それでもいかなきゃ!」

郭「まあまあ滝壺氏、焦らないでください。3kmって言うのは結構距離ありますし
  気絶した浜面氏を運ぶのも一苦労なはずです」

滝壺「そんなこと言ったって!いそがなきゃ!」

郭「だから冷静になって下さいって」

半蔵「お前は少し落ち着きすぎだろ」

郭「今の状況じゃ、行っても戦いに巻き込まれて犬死にするだけです。
  まずは、私と半蔵様で止めた駆動鎧を動かせるかどうか、試してみましょう。
  もし動かす事が出来たなら、移動も早くなりますし、戦力にもなります」

半蔵「一理あるな……よっしゃ!そうと決まれば動くかどうか試すか!」

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:50:07.81 ID:/Y0I2UTx0
第7学区

エツァリ「いきますよ」

エツァリは『ウサギの骨』を素材とした、閃光の弾丸を放った。

神裂「ふん」

神裂は、それを横に2歩動いただけで避ける。めげずにエツァリは続けて3発、閃光の弾丸を放つ。

神裂「そんなものいくらやっても当たりませんよ」

神裂はそれらをすべて冷静に避け、エツァリの後方に回り込んでいた。
容赦ない神裂の一閃が放たれるが――

ガキィン!とその一閃はあっさり受け止められた。

神裂「そのナイフ、案外丈夫なのですね」

エツァリ「これは『トラウィスカルパンテクウトリの槍』と言いましてね。
効果は……まあ、貴方自身で体験して確かめてください」

槍の切っ先が神裂に向けられる。

神裂(これは!)

直感的に横へ数歩ずれる。すると切っ先が向けられた、神裂の遥か後方にあった車が抉られた。

神裂「なかなか危険なものを持っていますね。トリックは、簡単に言えば
   金星の光を反射させ、槍に変貌させ見えない光線として放つ。
   それが直撃したものは抉られる。そんなところでしょうか」

エツァリ「さすがの洞察力ですね。科学には疎くても、魔術には詳しいご様子だ。
     正確には、抉るのではなく『分解』しているんですけどね」

神裂「成程。ではガードでは駄目ですね。まあそれなら避ければ良いだけですが」

エツァリ「そうですね。それにしてもムカつきますね」

エツァリのスーツの懐から、巻き物状の『原典』(オリジン)が広がり、伸びた。
その巻き物の表面は、粉末の嵐となり神裂を襲う。

神裂「その程度で本気なのですか?」

とは言え、これだけ広い範囲かつ強力な攻撃だと、避ける事は出来ない。
しかし、刀を使えば余裕で防げる。と神裂は思っていた。

だが神裂は刀を抜いた瞬間、その刀は自身の意志とは関係なしに、首元へ向かった。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:51:57.97 ID:/Y0I2UTx0
神裂「な!?」

思わず左手で右手を掴み、止める。その事に気を取られた神裂は、粉末の嵐をモロに喰らった。

神裂「ぐああああ!」

エツァリ「どうです?『暦石』の効力はすごいでしょう?」

神裂「これは……一体どういうことなのでしょうか?」

とりあえず刀を捨てながら、神裂は尋ねた。

エツァリ「『自分の肉を乾燥させて粉末状にしたものを周囲に散布し
     それが付着したものを自在に操る』という事です」

エツァリ「貴方が今、刀を捨てたのは賢明な判断というものでしょう」

神裂「自身の肉まで捧げて……そこまでして勝ちたいのですか?」

エツァリ「勝ちたいんじゃない。貴方を消したいんです」

神裂「刀が無くなった程度で、私を倒せるとは思わない事です」

エツァリは無視して、閃光の弾丸を5発放つ。

神裂「だから、当たらないと言っているでしょう?」

5発の弾丸を軽く避け、エツァリの後方に回り込む神裂。
そして蹴りを繰り出そうとしたが――

エツァリの右手の槍の切っ先は後方を向いていた。
それはつまり、後方に回り込んだ神裂に向いていると言う事。

神裂「くっ!」

神裂は身を捻り、ギリギリ直撃は避けるが、束ねていた髪の一部が『分解』された。
神裂は一旦距離をとる。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:54:36.91 ID:/Y0I2UTx0
神裂「参りましたね。私の長髪まで『分解』してくれるとは」

エツァリ「髪の毛どころか、全てを『分解』して差し上げますよ」

にこりと冷たい笑みを浮かべながらそう言った。

エツァリ(とは言っても『ウサギの骨』のストックが無くなれば
     閃光の弾丸は放てなくなりますし、この槍も、いつまでもどこでも
     使える訳ではないですがね)

エツァリ(これ以上無駄打ちする訳にもいかないですし……さて、どうしたものでしょうか)

エツァリ(とりあえず、粉末の嵐でも放っときましょうか)

粉末の嵐が神裂に向かって吹き荒れる。

神裂(ジャンプすれば、身動きが取れない空中で、槍の標的にされる事は目に見えている。
   ここはやはり、後退してビルか何かの陰に隠れるのが妥当ですね)

神裂は、凄まじい速度で後退し、ビルの陰に隠れた。
粉末の嵐は過ぎ去ったが、今度は槍の『分解』がビルを抉った。

神裂「く!」

隠れているだけではいけないと思い、ビルの陰から出る。
何より、捨てっぱなしの七天七刀を槍で『分解』されては堪らない。
腰に差すだけなら大丈夫だろうと思い、神裂は高速で動きながら、刀を拾いに行く。

当然エツァリは神裂を狙って攻撃を放つ。
閃光の弾丸には限りがあるので、トラウィスカルパンテクウトリの槍でだ。

しかし、槍での攻撃の照準は元々難しく、まして高速で動く神裂をエツァリの槍は捉えきれない。
だからエツァリは、神裂が刀を拾いに行くことが分かったから、刀の付近に『分解』を放った。

神裂(そう来ましたか!)

だが神裂は、臆することなく刀を拾いに行く。
結果、刀を拾い上げることには成功するが、掠った『分解』は背中の皮膚を多少削いだ事となった。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:56:04.49 ID:/Y0I2UTx0
神裂(やはり、腰に差すだけならば、問題ないようです)

エツァリ(やはり、粉末の嵐を連発するしかありませんね!)

粉末の嵐が、またしても神裂に向かって吹き荒れる。

神裂(多少賭けですが、やってみますか)

神裂は側にある砂利を拾い上げ、天高くエツァリに向かってジャンプする。
神裂のジャンプ力の前に、さすがの嵐も避けられてしまう。

エツァリ(空中とは言え、身を捻るくらいの事は出来るはず。
     閃光の弾丸は多分当たらない。ここはやはり、この槍で!)

槍の切っ先を神裂へ向ける。同時に見えない光線が発射される。

対し、神裂は持っていた砂利を投げつけた。
結果、槍の『分解』は砂利のいくつかにしか適用されず、奥の神裂には当たらなかった。
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:57:31.41 ID:/Y0I2UTx0
エツァリ「く!」

神裂はエツァリの前に降り立ち、素早い動きで槍を持っている右手に手刀を振り下ろした。
当然エツァリは槍を落とす。神裂はそれを思い切り蹴り飛ばした。
ならばとエツァリは、左手で閃光の弾丸を至近距離で放つが、それすらも避けられ
左手にも手刀をもらい『ウサギの骨』を落とす。

エツァリ「やりますね。しかし肉弾戦になろうと、自分は負けません!」

エツァリは拳を固く握りしめ、神裂に殴りかかる。

神裂「調子に乗らないでください」

ひらり、とエツァリの拳を避け、逆に左拳の一撃を腹に決める。

エツァリ「ごはっ!」

あまりに強力な一撃に、エツァリの体は数cm浮いた。為す術もなく、エツァリは力なく倒れていく。

神裂「やはり『原典』の所持者は、身体も丈夫になっているようですね。
   私の本気の一撃を受けたのに、意識を保てるなんて。普通の人間なら
   意識を失うどころか、内臓までつぶれていたでしょう」

エツァリ「ぐ……!」

エツァリはそれでも神裂に抗おうと、手を伸ばす。

神裂「もう少しだけ、痛めつけておく必要がありますね」

グシャ!という音。神裂の革靴が、エツァリの伸びた手を踏みつけた音だった。

エツァリ「ぐああああ!」

悶えるエツァリに、神裂は鞘で何発か殴った。
10発ぐらい殴ったところだろうか。エツァリの動きが止まった。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:58:45.46 ID:/Y0I2UTx0
神裂「ようやく大人しくなりましたか。まだ意識はあるようですが」

エツァリ「はぁ……はぁ……」

神裂「あの槍、やはり攻撃は一度に一対象しか出来ないのですね。
   そこに気付かなければ、長期戦になっていましたよ」

その時だった。エツァリの体がドクン!と大きく脈打った。
それは力の覚醒とか、そういうプラスの類ではなかった。
『原典』が、敗北したエツァリを蝕んでいるのだ。

神裂「これは滑稽ですね。最後は『原典』に見捨てられるなんて」

エツァリ(結局……自分はここまでの……人間だったと……言うことですか……情けない……)

ショチトル「エツァリお兄ちゃん!」

エツァリを「お兄ちゃん」と呼び、突然現れた少女はショチトル。
本当の兄弟という訳ではないが、エツァリとは師弟関係で、彼の事を慕っている。

エツァリ「ショチトル……ですか……」

ショチトル「もう喋るな……!」

エツァリ「御坂さんの……ご友人の……白井さんは……ちゃんと運び……ましたか?」

ショチトル「ああ運んだ!運んだから、もう喋るな!」

エツァリ「そう……ですか……それは……良かった」

エツァリはそこで気を失ってしまった。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 18:59:55.85 ID:/Y0I2UTx0
ショチトル「貴様、よくも!」

ショチトルは神裂を睨む。

神裂「私を怨むより、早くその方を病院にでも運んだ方がいいですよ。
   私の目的は『上条当麻』なので、それでは」

やれやれ、今度こそ上条当麻を追いかけるか、と思ったその時だった。

建宮「ちょっと待ってほしいのよな。『女教皇』(プリエステス)」

彼は建宮斎字。大剣『フランベルジェ』を操る魔術師だ。

神裂「建宮、一体何の用です?」

建宮「何の用って、わざわざ聞くのよな?我ら天草式十字凄教の理念、覚えているのよな?女教皇」

神裂「『救われるものに救いの手を』ですが、それがどうかしたのですか?」

建宮「どうかしたのですかじゃないのよな!
   これだけの人を傷つけておいて、何故そんな涼しい顔をしていられる!」

神裂「……仕方ないじゃないですか!『禁書目録』を人質に取られているのですから!
   多少の犠牲は仕方ないんです!それに傷つけはしましたが、殺してはいませんし!」

建宮「そういう問題じゃないのよな!女教皇はあの少年に言われた事を忘れたのよな!?」

神裂は、あの少年の言葉を思い出す。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:00:38.71 ID:/Y0I2UTx0

上条『テメェは力があるから、仕方なく人を守ってんのかよ!?』

上条『そうじゃねぇだろ!履き違えんじゃねぇぞ!
   守りたいモノがあるから、力を手に入れたんだろうが!』
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:02:01.59 ID:/Y0I2UTx0
建宮「女教皇は嬉々として、そのエピソードを教えてくれたのよな。
   アックア戦の時も、励みになったって」

建宮「ならここは!イギリス清教の言いなりになるんじゃなく
   上条当麻と一緒に『禁書目録』を救えば良いだけなのよな!」

神裂「忘れてなんていませんよ……!でも仕方ないんです!
   この『聖人』である私でも、イギリス清教という巨大な組織に比べれば
   ちっぽけなものなんです……」

建宮「そんなの関係ないのよな……!問題なのは、力の差じゃない。気持ちなのよな!
   ……今の女教皇には、こんな事も分からないらしい」

建宮「ならば、我ら天草式十字凄教で女教皇を止めるだけなのよな!」

建宮がそう叫ぶと、五和を始め、天草式の面々がどこからともなく現れた。

五和「女教皇……あなたを止めます!」

神裂「そこまでして私の邪魔をしたいのですか」

五和「間違った上司を止めるのが、部下の役目ですからね」

神裂「良いでしょう。これ以上足止めされては堪りません。
   私の全身全霊を以って、速攻で片をつけます」

神裂の威圧感が、先程までとは段違いに増していく。

神裂「Salvere000!」

ショチトル「なんて奴だ!まだこんな力を隠し持っていたのか」

建宮「女教皇が本気を出したのよな。お前さんは早く逃げた方が良い」

ショチトル「すまない。エツァリを病院に運んだら、私も加勢する」

建宮「その必要はないのよな」

ショチトル「え?」

建宮「それまでには片は付いている。俺達の勝利という形でな」

ショチトル「……そうか」

建宮「病院までの道中何が起こるか分からない。お前さんこそ、気を抜くなよ」

神裂「話は終わったようですね。では、行きます!」

建宮「行くぞ皆!女教皇の目を覚まさせてやるのよな!」

天草式「おおおおお!」
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:04:18.03 ID:/Y0I2UTx0
絹旗「くっ!」

絹旗は、目の前に窒素の盾を展開したり、避けるなどして、麦野の攻撃の直撃は避けてきた。
それでも吹き飛ばされるなどして、ノーダメージではなかった。

絹旗「もうやめましょうよ。こんな超無意味な事」

麦野「反省の態度が見られないわね」

麦野は容赦なく『原子崩し』のビームを連発する。
絹旗は、直撃は避けるも、やはり余波で吹き飛ばされてしまう。

麦野「ねぇ絹旗、私もお前を殺すつもりはないんだ。
   反省している態度を見せてくれればそれでいい」

絹旗は何も間違ったことはしていないのだが、正直かなり疲弊していた。
このまま戦い続けるのは無理があるし、謝れば終わるのか。
考えた絹旗は、とりあえず素直に謝ることにした。

絹旗「超すいませんでした」

麦野「……明らかに上辺だけよね?もう少し躾が必要かしら?」

絹旗「そんな!?謝ったのに超酷いです!」

麦野「だから、上辺だけの謝罪なんていらねぇんだよ。せめて土下座くらいしろ」

絹旗(超仕方ありませんね)

絹旗は素直に土下座をして謝る。

麦野「仕方ない。これで許してやるか」

絹旗(ふぅ。これで)

麦野「って、この程度で済むわけないだろうが」

絹旗「え?」

瞬間、至近距離でビームが放たれた。

絹旗「うっわあああああ!」

絹旗の目の前の地面にビームが直撃した。窒素の鎧を纏っているとは言え
絹旗は数m吹き飛ばされ、額からは一筋の血が流れた。

麦野「なあ絹旗、何でお前は私を止めたんだ?私は何か間違っていたか?
   フレンダの姿を勝手に使った敵を倒した。ただそれだけのことだろ!?」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:05:13.60 ID:/Y0I2UTx0
絹旗「……そんなの、超間違っているに、決まっています」

麦野「何だと!?」

絹旗「どんな理由があっても、人を殺してはいけません。
   それにフレメアまで傷つけて、これのどこが超正しいって言うんですか!?」

麦野「元『暗部』で、たくさんの人を殺してきた私達が、今更人を殺すのがいけない
   なんて言う資格は無い。それにフレメアには、躾をしただけだ」

絹旗「だからこそ、もう二度と人を殺さないって超誓ったじゃないですか!
   それに麦野がフレメアにした事は、躾でもなんでもなく、ただの暴力です!」

麦野「うるさい!私だって!私だってそんなことは分かっている!」

麦野「う……ぐ……ああああああああ!」

麦野が絶叫した。同時に能力が暴走を始めた。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:07:54.78 ID:/Y0I2UTx0
絹旗「麦野!」

麦野は力の暴走で、義手である左手が吹き飛んだ。加えて、全方向にビームが発射されている。
絹旗は、近付くどころかガードや避けることで精一杯だった。

絹旗(麦野……!)

その時だった。何かが動く影が見えた。フレンダは消滅した。
となると、考えられるのはフレメアだった。フレメアは麦野に向かって歩き出す。

絹旗「フレメアちゃん!?今の麦野に近付いては、超駄目です!」

絹旗の声が聞こえていないのか、はたまた無視しているのか。
フレメアは、構わず麦野に向かって歩き続ける。そして、麦野の腰辺りに抱きついた。

麦野のちぎれた左腕からは『原子崩し』で出来た腕が伸びており、依然ビームの発射も続いている。

その状況で、零距離のフレメアが無事でいられるのは、奇跡と言っても良かった。
フレメアはそのままの状態で、呟くように言った。

フレメア「本当は……大体分かってた。フレンダお姉ちゃんは、大体前に死んでいて
     死者が生き返る筈もないってことぐらい」

フレメア「でも……どうしても寂しかった!フレンダお姉ちゃんの訳がないって
     大体分かっていても、どうしても殺してほしくなかった!」

呟くような声から、段々大きな声に変わっていく。
絹旗の耳にも、届き始めるくらいに。

フレメア「だから……!私は止めに入った!」

フレメア「でも気付いた!私はもう大体1人じゃない。寂しくなんかないって!
     私には、浜面や滝壺お姉ちゃん、麦野お姉ちゃんや絹旗お姉ちゃんがいるから!」

絹旗「……フレメアちゃん」

フレメア「だから!こんなところでこんなことやってないで
     また皆と一緒に過ごそうよーーーーー!」

麦野「う、わああああああああああ!」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:09:12.94 ID:/Y0I2UTx0
麦野が絶叫した途端、ビームの発射が終わった。
そして、前のめりになって、うつ伏せに倒れ込んだ。

フレメア「麦野……お姉ちゃん?」

絹旗「麦野!」

絹旗は、麦野を抱えるために側に寄った。

麦野「すまないな。フレメア、絹旗」

絹旗「本当、超大変でしたよ」

麦野「ふっ……ぐ、あああああああ!」

絹旗「超どうしたんですか!?」

麦野「私から……はな……れろ……」

見ると、ちぎれた左腕から能力が漏れ出している。
ここからビームか何かが、発射されてしまいそうだ。
そう判断した絹旗は、麦野の忠告通り、フレメアを抱えて一旦離れる。

麦野「く……もう……駄目……」

麦野の左腕から、ビームが発射された。
けれど、発射されたと言っても、そのビームが飛んでいく方向はランダム。
離れれば、絹旗達にはまず当たる事は無いだろう。と麦野は思っていた。

だが不幸にも、麦野のビームは絹旗達の方向に向かって行った。

絹旗(せめてフレメアちゃんだけは絶対に守る!)

絹旗は、身を挺してフレメアを守ろうと、フレメアの前に立つ。
いくら窒素を纏っているとはいえ、直撃すれば重傷は免れられない。

麦野・フレメア「「絹旗!(お姉ちゃん!)」」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:11:11.20 ID:/Y0I2UTx0
滝壺「むぎの、きぬはたーーーーーーー!」

ゴリラに抱えられてやってきた、滝壺の叫び声。
と同時に、絹旗にあと10cmと言うところで、ビームは滝壺の能力により上へと逸らされた。

滝壺「大丈夫だった?きぬはた、ふれめあ?」

絹旗「ち、超助かりました」

フレメア「大体ありがとう。滝壺お姉ちゃん」

滝壺「……むぎの」

絹旗「あ、あの麦野は超悪くないと言うか……あまり責めないでください」

滝壺「責めるつもりなんてないよ。大方、偽ふれんだを見て逆上して
   能力が暴走しちゃったとか、そんな感じだよね?」

絹旗「え、ええ」

滝壺は麦野の側に寄った。

滝壺「気絶しているみたい」

半蔵「じゃあ、このゴリラで早いとこ病院に行こうぜ」

滝壺「それがいいね」

郭「じゃあ、行きましょう!」

滝壺一行は病院へと急ぐ。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:12:33.84 ID:/Y0I2UTx0
第7学区

結論から言うと、天草式は神裂を倒すことには倒した。ただし、建宮も犠牲となってしまった。

天草式の面々は、アックア戦と同様に、一定の規則性を以って動くことにより
お互いの動体視力や運動能力を補強したのだ。

そして中心になったのは『聖人崩し』を使える五和だ。『聖人崩し』と言うのは
「聖人である神裂が『脅威』と思うような問題にさえ立ち向かわなくてはならない」
という理論のもとに生み出された。対聖人専用術式だ。
正直、天草式の連中は『聖人崩し』で何とかなると思っていた。自信はあった。

だが、いや、やはりと言うべきか。神裂火織と言う人間は思ったより強かった。
とても『聖人崩し』など決める余裕はなかった。
だから建宮は、神裂と刺し違え、五和にこう言った。

建宮「俺ごとやれ!五和!」

もちろん最初は無理だと思った。
だが建宮は神裂と刺し違えている時点で、助かる確率は低かった。

そして何より、ここで神裂を止めないと、上条当麻が狙われるのだ。
五和にとっては、世界で1番愛している人を傷つけられてしまう。
それに、これは上条当麻を守る戦いだった。

そう言った葛藤を経て、五和は、建宮ごと神裂に『聖人崩し』を見事に喰らわせた。

結果、建宮だけが死に、神裂は聖人の力を8割方失ったが、戦闘不能になっただけだった。

五和は罪悪感に苛まれていた。
他の天草式の面々も、五和になんと声をかければ良いか分からなかった。
そんな状況の中、天草式の1人である対馬が、五和の側に寄った。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:13:52.89 ID:/Y0I2UTx0
対馬「五和、貴方の気持ちは分かる。けどさ、こんなところで立ち止まっていても仕方ないよ。
   行こう。上条君のもとへ」

五和「……建宮さんは私が殺したも同然です!こんな私が上条さんを守る資格なんてあるんですか!
   もういっそのこと死んでしまいたい!」

対馬「ふざけんじゃないわよ!」

五和「え?」

対馬「あんたが死んで誰が喜ぶの!?建宮は、そんなことを望んでいたと思うの!?
   建宮は上条君の事を託したのよ!五和に!私達に!」

対馬「本当に、本当に建宮の事を思うなら、死ぬんじゃなくて上条君を守りきることでしょ!?
   ……生きて償うのよ!もちろんあなた1人には背負わせない。皆で背負うから!」

対馬「それでも、まだ不貞腐れるって言うなら、それで良い。私達だけで上条君を助けに行く!
   どうするの!?」

五和「……行きます。行かせてください」

対馬「……よし。じゃあ早速行くよ」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:15:44.41 ID:/Y0I2UTx0
同じく第7学区 『冥土帰し』の病院

ゴリラを全力疾走させた滝壺一行は、ようやく病院に辿り着いた。
現在、特に重傷である浜面と麦野は、速攻で治療に入った。
絹旗、半蔵、郭も軽傷ではないし、滝壺も能力を行使しすぎていたが
彼女達はとりあえず休んでいるだけだった。
何故なら、風紀委員である白井黒子とか言う少女や、エツァリとか言う少年など
彼女達よりも重症な患者がたくさんいたからだ。

それにしてもこの病院、レベル6である一方通行や、レベル5である結標淡希、
同じくレベル5の御坂美琴までいる凄い病院だ。

絹旗「(滝壺さん、この病院、なんでこんなに超有名人ばかりいるのでしょうか?)」

滝壺「(わからない。医者が凄い人だから、とか?)」

絹旗「(そう言う事を聞いているのではなくてですね。
   御坂美琴は超憔悴していますからともかく、一方通行と結標淡希は超無傷ですよね?
   病院に居る意味が分からないのですが)」

滝壺「(そう言われればそうだね。じゃあ、お見舞いとかかな?)」

絹旗「(いえ、超お見舞いとか、そんな感じではないと思います)」

絹旗「(大体、3mもの大きさのゴリラで、ここまで移動してきたって言うのに
   それまで人とか全く見かけませんでしたよね?なんか学園都市が
   超殺伐としていると言うか……それと何か関係があるんでしょうか?)」

滝壺「(うーん……そう言えば学園都市の様子は、今日の午後位からおかしかったよね。
   でも、もうよくわからない)」

滝壺は病院に着いた安心感と疲れで、思考を止めていた。

絹旗「(そ、そうですか)」

絹旗は、先程まではシリアス全開だったのに
病院に着いた途端に呑気になる滝壺に、少し呆れた。

だがそんな空気をぶち壊す出来事はすぐに起こった。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:17:44.09 ID:/Y0I2UTx0
御坂「ちょ、ちょっと!何か軍隊のようなものが来てるわよ!」

御坂が窓から外を見下ろしながら、そう叫んだ。
急いで滝壺達も窓をのぞきに行く。

そこには確かに、500人程の群衆がこの病院に向かって歩いているところだった。
そのうちの半分は、修道服を着ている。残りの半分は鎧のようなものを着ていた。
どちらも科学一色の学園都市には不釣り合いだ。

結標「いよいよお出ましってわけね。滝壺理后、絹旗最愛、貴方達も協力して」

絹旗「それは良いですけど……て言うか、あれ何なんですか!?」

結標「『魔術』を使う、魔術師らしいわよ。私もさっきちょっと話を聞いたばかりでね。
   よく分からないんだけど、私達の敵である事だけは確かよ」

絹旗「(……もしかして、あのときの女は……魔術師だったのでしょうか……
   それに学園都市が殺伐としていた理由も……)」

結標「何ブツブツ言っているの?とにかく戦わないと、この病院もろとも、私達は殺されるわよ」

その言葉に反応したのは御坂だった。

御坂「なら私も協力する!」

結標「無理。力を使い果たしてから、そう時間は経ってないあなたがいても、足手まといなだけ」

御坂「……」

その言葉に御坂は反論できなかった。その時、後方から1つの白い影。

一方通行「オマエらは引っ込ンでろ。ここは俺1人でやる」

結標「本当にあなた1人で良いの?」

一方通行「当たり前だ。俺からすれば、オマエら全員邪魔なだけだ」

結標「……私達を傷つけない為に、体を張って護ってくれるのね。惚れちゃいそう」

一方通行「オマエとコントしている暇はねェ。俺を外にテレポートしろ。それだけでいい」

結標「はいはい」

瞬間、一方通行は消え、病院の外へテレポートされた。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:18:41.66 ID:/Y0I2UTx0
絹旗「ちょ、1人で超大丈夫なんですか?」

結標「大丈夫よ。仮に死んだとしても、私には何の損も無いし」

絹旗「さっき惚れちゃいそう。とか言ってたじゃないですか」

結標「冗談に決まっているでしょ」

絹旗「私なら、超冗談でもそんなこと言わないですが。もしかして本当に好きだったりして」

結標「はあ……だから冗談だって……これだからお子様は」

絹旗「な、なんですかその言い方は!」

そんな会話を聞いて御坂は

御坂「ちょっとアンタら!お喋りしてる場合じゃないでしょ!?あいつ1人にさせて良いの!?」

御坂はそんな事を口走った。もちろん妹達の件を完全に許した訳ではないが
だからと言って、一方通行を1人にして死なせると言うのは間違っている。

結標「あいつの強さは、貴方も良く分かっているでしょ?きっと大丈夫よ」

御坂「そ、そうかもしんないけど」

結標「そんなに心配なら、戦いの様子を見ていればいいじゃない」

御坂「し、心配な訳じゃないけど……」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:19:51.22 ID:/Y0I2UTx0
一方で、外では

一方通行「はァーい、ようこそ、地獄の入口へ!
     これから地獄への歓迎パーティを、盛大に開いてやるよォ!」

そのあまりの狂気っぷりに、魔術師の集団は怯んだ。

アニェーゼ「怯むこたぁねぇです!一斉にかかっちまってください!」

250人ほどのシスター軍団が、一斉に一方通行に襲い掛かる。

一方通行「消えろ」

その一言の後に、背中から黒い翼が噴射され、シスター軍団を一撃で薙ぎ払った。

アニェーゼ「んな!?」

キャーリサ「ならば行け!騎士軍団!」

今度は騎士の軍団が一方通行を襲う。

一方通行「だァーからァ、無駄だっつーの」

黒い翼が純白に変わる。頭上には小さな輪っかが出現。天使化したのだ。
白い翼は、これまた一撃で騎士達を葬った。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:21:41.30 ID:/Y0I2UTx0
一方通行「さて、残り7人な訳だが。オマエらは楽しませてくれンのかァ?」

引き裂く様な笑みを浮かべる一方通行。

キャーリサ「怯むな!全員の持てる力全てを、奴に叩きつけよーではないか!」

赤いドレスに身を包んだ、イギリス第2王女キャーリサは、風の『短剣』を掲げる。

リメエア「……」

紫のドレスに身を包んだ、イギリス第1王女リメエアは、火の『杖』を掲げる。

ヴィリアン「……」

エメラルドグリーンのドレスに身を包んだ、イギリス第3王女ヴィリアンは、水の『杯』を掲げる。

リドヴィア「……」

白い擦り切れた修道服に身を包んだ、ローマ正教のシスターだったリドヴィア=ロレンツェッティは土の『円盤』を掲げる。

アニェーゼ「万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開!
      偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ!」

黒いミニスカートの、おおよそ修道服とは思えない修道服に身を包んだ
アニェーゼ=サンクティスは呪文を唱え、エーテルの『蓮の杖』(ロータスワンド)を掲げた。

キャーリサ「これで終わりだし!」

それら5つの武器から光が現れ、1つに集まる。

キャーリサ「いっけー!」

その光は一方通行へ。

オリアナ「『礎を担いし者(Basis104)!』

オリアナは魔法名を唱えた。

オリアナ「我が見に宿る全ての才能に告げる――」

オリアナ「――その全霊を開放し、眼の前の敵を討て!」

単語帳の全てのページを使った攻撃。上条の時とはまた違う効果を持つ。

ビアージオ「――十字架は悪性の拒絶を示すぅ!」

豪奢な法衣を纏った、元ローマ正教の司教(ビショップ)である
ビアージオ=ブゾーニは持っている全ての十字架を開放した。

それら全ての攻撃が一方通行を襲う。その攻撃は、小さな街なら丸ごと吹き飛ばせるほどだった。
ボガァァァァァン!と、全ての攻撃が一方通行に直撃した。
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:29:14.49 ID:/Y0I2UTx0
キャーリサ「はーはっはっ。案外、呆気ないものだったよーだし」

莫大な煙が立ち込める中、勝利を確信したキャーリサ。
しかし、それはすぐに動揺に変わる事になる。

一方通行「本当に面白ェよな。こンな攻撃で倒せると思ってンだから」

煙の中で、純白の少年は平然と無傷で笑っていたからだ。

キャーリサ「い、今の一撃を受けて無傷だと!?」

アニェーゼ「あ、有り得ねぇです……!」

一方通行「結局、傷をつけることすら敵わなかったみたいだが、まァ、なかなか楽しかったぜェ」

オリアナ「これはまずいわね。緊張で漏れちゃいそう」

ビアージオ「……悪魔が」

一方通行「何言ってンだ、おっさン。どっからどう見ても天使だろうがァ。
     ここまで楽しませてくれた礼だ。特別にさらなる力を見せてやるよ」

オリアナ「まだ上の力が出せるって言うの?」

一方通行「一瞬だからなァ?よく目ェ見開いて拝ンどけ」

そして――

一方通行の純白の翼が、更に大きくなり、銀色へと変化する。
頭上の輪っかも、2回りほど大きくなる。
何より1番大きな変化は、一方通行の後方にも大きな輪っかが出現した事だ。
それはただの円形の輪っかではなく、歯車のように凹凸があった。

アニェーゼ「こ、神々しい……まるで……神様……」

とは言え、魔術師達も神様なんてものは実際に見たことはない。
そもそも本当に居るのかも分からない。
けれど、その神々しさは、神様としか形容のしようがなかった。

キャーリサ「構わないし!もー一発全力でかますぞ!」

ビアージオ「私はもう無理だ。十字架がないからな」

オリアナ「私はまだ行けるわよ」

オリアナは、もう一束単語帳を取り出し、その全ページを千切る。

キャーリサ「行くぞ!」

キャーリサやアニェーゼ達も、一連の動作を繰り返し、5つの力を1つにした攻撃を繰り出す。

一方通行「無意味だっつーの」

一方通行は1歩も動かないどころか、何一つの動作もしなかった。
なのに――魔術師達の全力の一撃は、簡単に弾かれた。
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:31:20.43 ID:/Y0I2UTx0
キャーリサ「な、んで……」

一方通行「終わりだ」

一方通行が、その4文字の言葉を口にした直後、一方通行の背中の輪から大量の光線が飛び出し
光の雨となって魔術師達に降り注いだ。魔術師達は、跡形もなく消滅した。

一方通行「終わったか」

一方通行は神化を解く。一部始終を病院の窓から見ていた御坂の感想は

御坂「これが……レベル6……『神ならぬ身にて天上の意志に辿り着くもの』なの?
   凄すぎる……」

それしか言えなかった。

絹旗「ま、これで超一件落着って感じですね」

結標「……いや、どうやらまだみたいよ」

結標はそう言って、800mほど先の場所を指差す。そこに見たものは。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:33:14.98 ID:/Y0I2UTx0
同じく第7学区 上条の通う高校の駐輪場

上条「行くぜ!」

最初に仕掛けたのは上条だった。先程と同じく、土御門の踏み砕きを実践するが

土御門「おいおい、そんな俺の真似事、2度も通用すると思うなよ!」

土御門は、上条の左足の踏み砕きを避け、逆にそれを右足で踏み返す。

上条「ぐあ!」

そしてすぐさま、必殺の後頭部攻撃(ブレインシェイカー)を喰らわそうと右手を伸ばす。
が、上条の左手がそれを阻んだ。それどころか、逆に右拳が飛んできた。

土御門(ちっ!)

土御門は、それを左手で受け止める。これで両者とも両手が使えなくなった。
ならば残る手段は――

土御門(これでも喰らえ!)

若干、というか相当無理があったが、土御門は右足で上条の足を踏んだまま
左足で上条の腹辺りに蹴りを放つ。さすがにこれは止められないだろう。
と土御門は思っていたが、上条は左足を踏まれたまま、右脚を挙げ折り畳み、ガードしてきた。

土御門(なっ!)

土御門は驚愕したが、ならばと頭突きを繰り出す。上条も考える事は同じだったようで
頭突きが飛んできた。直後、ゴガァ!と頭突きと頭突きが衝突した。
1秒経って揺らいだのは土御門の方だった。ヨロヨロと後退する土御門に上条は突っ込んだ。
拳でも蹴りでもなく、タックルで。

土御門「ごはっ!」

上条の渾身のタックルが、土御門の腹に直撃した。
攻撃を受けながらも、このままだとマウントポジションを取られる。
そう判断した土御門は、タックルを喰らった勢いのまま、巴投げを繰り出す。

土御門「おらよっ!」

上条「くっ!」

上条は思い切り投げられたが、空中で1回転しながら綺麗に地面に着地した。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:34:15.15 ID:/Y0I2UTx0
上条「おっかしーなー。さっき思い切り右足踏んだのに、めちゃめちゃ動けるじゃん。
   俺の攻撃が甘かったのか?」

土御門「それはこっちの台詞だぜい。カミやんこそ、なんでそんなに動けるんだ?」

上条「我慢してるからに決まってんだろ」

土御門「俺も、そういうことだぜい」

上条「口が減らねぇなぁ」

土御門「それはカミやんだろ」

今度は2人同時に駆け出す。2人の右拳が交錯し、互いの顔面に突き刺さった。

土御門「くっ!」

ふらついたのは、またしても土御門。上条はそこへ右拳で追撃する。
土御門はそれを左肘でガードした。

土御門(これで――)

肘のガードにより、上条は右拳を痛めたはずだ。だとすると、蹴りは得意ではないはずだし
次は左拳が飛んでくるはず。

上条「な、めんなぁー!」

しかし土御門の予想に反して、上条は痛めた右拳を繰り出した。
土御門は予想外の攻撃にガードする事も出来ず、自転車の群衆までぶっ飛ばされた。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:35:19.58 ID:/Y0I2UTx0
上条「テメェは、こんなところで俺と殴り合っている場合じゃねぇだろ!
   早く舞夏を助けに行けよ!」

土御門「だから、俺1人抵抗したって無駄なんだよ。お前を殺すしかない」

上条「ふっざけんな!そんなのテメェの勝手な都合だろうが!」

上条「舞夏が俺を、人を殺してまで、救ってほしいと思っているのか!?
   舞夏はずっと、お前の助けを待っているんじゃないのか!?

上条「テメェは一体、何のために力をつけた!?」

土御門「うる、せぇ」

上条「テメェはこんなところで何やってんだよ!」

土御門「うるせぇって言ってんだろ!」

土御門は跳ねるように起き上がり、上条に飛びかかる。

上条「いいぜ、テメェが俺を殺さなきゃ、舞夏を助けられないってほざくなら――」

上条「――まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!」

ドガァ!と上条のクロスカウンターの一撃が、土御門の顔面にクリーンヒットした。
土御門はまたしても自転車の群衆までぶっ飛ばされ、今度こそ気絶した。

上条「テメェが出来ないって言うなら、俺が舞夏を救ってやるよ」

気絶して、既に声が聞こえていないだろう土御門に、上条はそう言った。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:36:57.07 ID:/Y0I2UTx0
シェリー「そいつは無理だな」

上条(っ!)

姿は見えないが、シェリーの言葉と同時に、上条の下の地面が揺れた。
ゴーレムが現れようとしているのだ。

上条(わざわざ俺の下から出そうとするとか、嘗めてんのか!)

上条は自分の右手を、地面に叩きつける。
それでゴーレムは崩れ去る。この場合は出現前だから何も起こらず、不発に終わる。
筈だったのに、地面は揺れ続けている。何の異変もなくゴーレムが“現れようとしている”。

上条「なんで!?」

とにかく、このままだとゴーレムの上になってしまうので
上条は転がるように前へ走り、駐輪場から脱出する。
その先のグラウンドには“既にゴーレムに乗った”シェリーがいた。

上条「は?」

そして駐輪場を突き破り、ゴーレムが“2体”現れた。

どう言う事だ?ゴーレムは1体までしか出せないんじゃなかったのか?
しかも『幻想殺し』で壊せない。上条は混乱していた。

困惑する上条に、ゴーレム3体のパンチが襲いかかった。

上条「ご、があああああああ!」

上条はパンチの直撃は避けるが、その衝撃の余波と地面の破片だけで
数mは吹き飛び、それなりのダメージを負った。
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:38:41.16 ID:/Y0I2UTx0
シェリー「滑稽だな。冥土の土産に教えてやるよ。
     何故私のゴーレムに『幻想殺し』が効かなかったのかを」

シェリーは勝手に語り出す。

シェリー「お前の『幻想殺し』には弱点がある。あらゆる異能を触れただけで消し飛ばす、
     強力無比な能力だが、反応できず異能に触れなくてアウト、という場合」

シェリー「その他、元を断たない限り再生するタイプの魔術に弱い、
     数が多すぎると迎撃しきれない、軌道が読めなければ触れない、
     有益無益の判断が出来ない、とかな」

よくそこまで調べたなと、上条は思う。

シェリー「今の私のゴーレムは『核』を中心に動いている。その『核』を
     消さない限り、ゴーレムの外殻にいくら触れても意味は無いのよ」

シェリー「ゴーレムが3体いることについては、私がパワーアップしたから。
     じゃあこれでバイバイ、上条当麻」

上条は土御門戦で足を痛めている。そしてなかなかのダメージを負った。
つまり動く元気がない。そこへ容赦なく、ゴーレムの拳が振り下ろされる。
避けられない!と上条は思わず目を瞑った。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:40:19.20 ID:/Y0I2UTx0
だがいつまで経っても、衝撃は来なかった。上条は恐る恐る目を開ける。

そこには、昭和の(間違った)番長のような男が拳を素手で受け止め、平然と立っていた。

シェリー「な……に……」

男「お前が、上条当麻だな」

上条「そ、そうだけど、何故俺の名前を?」

男「芹亜から聞いたんだよ」

上条(せり、あ……せりあ……もしかして!)

上条「雲川先輩の事か!」

男「そう、それだ。俺は芹亜から、お前を助けるように言われたんだよ」

上条「そ、そうだったのか。で、あんたの名前は?」

男「自己紹介がまだだったな。削板軍覇だ。レベル5の第7位でナンバーセブンと呼ばれている。
  よろしくな!」

とここで、ゴーレムのパンチを受け止められて、呆気に取られていたシェリーが
ようやく我を取り戻し、残る2体のゴーレムで攻撃を仕掛ける。

削板「ふん!」

削板は、受け止めていたゴーレムの拳を、掴み、1体の方へ投げた。
そしてもう1体の攻撃は、あっさり避け、顔面に蹴りを叩きこんだ。
その蹴りだけで、ゴーレムの顔面は砕け、へこんだ。

シェリー「ちぃ!ゴーレム!そいつらを叩き潰せぇ!」

ゴーレム3体が、一斉に削板へ襲い掛かる。対し、削板は

削板「超スーパーウルトラボルケーノインフィニットグレートデンジャラス
   インフィニットすごいパーーーーーーーーンチ!」

訳の分からない事を叫びながら、両拳を思い切り前に突き出した。
それだけで、ゴーレム3体は砕け散りながら吹き飛び、シェリーも吹き飛んだ。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:41:36.51 ID:/Y0I2UTx0
上条(す、すげぇ。ゴーレム3体を一撃で、しかもシェリーごと倒しやがった。
   インフィニットって2回言ってたけど)

削板「大丈夫だったか?」

上条「あ、はい。助かりました」

削板「そうか。じゃあ次は『冥土帰し』の病院に行くぞ」

上条「え?」

削板「お前の傷を治す為なのと、病院自体を守るためだ」

上条「は?病院を守る?」

削板「あっちを見てみろ。病院に向いている巨大な光があるだろ?あれを倒しに行くんだよ」

上条「本当だ!今まで気づかなかった」

削板「気付かないのも無理はない。あの巨大な光が出てきたのは
   ほんの1分前くらいの出来事だからな」

削板「と言う事で、急いでいくぞ上条!」

上条「ちょ、まっ」

そう言うと、削板はものすごい速度で走っていった。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/08(月) 19:52:03.90 ID:/Y0I2UTx0
上条(あら~)

置いてけぼりの上条。
とりあえず上条は、念には念を入れて、シェリーのオイルパステルを破壊しておく。
そう言えば、ステイルのルーンのカードも、片っ端から消しておくべきだったと後悔する。
とそこへ

削板「おいおい何をやっている?早く行くぞ」

削板は、わざわざ上条のところに戻ってきて急かした。

上条「い、いや~、削板が走るの速いから」

削板「何だと!?この程度の速度についてこれないとは、根性が足りんぞ!」

上条「え?ええ~?」

上条は、根性とか、そう言う問題じゃないと思っている。
先程彼が走っていた速度は、音速を超えているようにしか見えなかったからだ。

削板「俺はこれでも全力疾走じゃないぞ。5割程の力でしか走ってないぞ!」

上条「いやそう言われても、ついていけないものはついていけないわけでですね」

削板「ああもう分かった。よし!俺が担いで走ろう!」

上条「い、いや!それは勘弁してほしいです!」

さすがの上条でも、音速なんかで走られると
何か体に重大な負担がかかりそうだと言うことぐらい分かる。

上条「てか、それ以前に、俺はインデックスを助けなきゃ」

削板「ああ、そのインデックスについてだが、あの病院に行けば、事態が動く。
   って芹亜が言ってた」

上条「な、なんで雲川先輩がインデックスの事を?」

削板「さあね。俺はインデックスって言うのがよく分からんし、上条の事情についても
   よく知らない。けど、あいつ物知りだし、芹亜の言う事聞いてれば何とかなるぜ。きっと」

上条「……」

上条が雲川芹亜について知っている事と言えば、名前と頭がとても良いことぐらいだ。

上条「削板、雲川先輩に会わせてくれないか?」

削板「そんなことしなくても、電話で話せよ」

削板は、徐に携帯を取り出し雲川に電話をかけ、上条に渡す。


221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:34:30.71 ID:baUWBQyL0
雲川『何だ?』

上条「もしもし、あの、上条ですけど。いきなりで悪いんですが、俺はインデックスを助けに
   行かなきゃいけないんです。何で病院に行かなきゃいけないんですか?」

雲川『お前じゃなきゃ勝てない敵がいるから、だけど。というかお前、インデックスが
   どこにいるかとか、何も知らないだろ?どうせ手掛かりは無いんだ。だったら
   病院へ行って、学園都市を守ることに専念した方が良いだろう?』

上条「いや、よく分からないんですけど」

雲川『良いから黙って私の言う事を聞け。何もしなくても、インデックスはきっとお前の前に
   姿を現す。だから今は病院へ急げ』

雲川『それと、この携帯の持ち主の馬鹿いるだろ?どうせお前を置いて音速で走りだしたり
   しただろうけど。だから「俺のペースに合わせて走って下さい」って頼め。
   私がそう言ったと言えば、言う事を聞くはずだ。それじゃ』

一方的に捲し立てられた上に、電話を切られた。
だが雲川の言う通り、インデックスに関する手掛かりは、今のところ無い。
ここは言う通り病院へ行くしかなさそうだ。

上条「あの、俺のペースに合わせて一緒に走って下さい」

削板「うーん。でも急がなきゃ」

上条「雲川先輩がそう言った」

削板「なに!?そうか。なら仕方ないな」

上条(削板と雲川先輩って、一体どういう関係なんだ?)

とにもかくにも『冥土帰し』の病院へ。
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:35:13.44 ID:baUWBQyL0
第7学区 窓のないビル

アレイスター「いよいよ大天使のお出ましか。ククク、楽しくなってきた」

学園都市統括理事長であり、世界最高最強の魔術師だった、男にも女にも、子供にも老人にも
聖人にも囚人にも見える『人間』は、そう言って、狡猾に笑った。

アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:36:30.48 ID:baUWBQyL0
第7学区 『冥土帰し』の病院前

一方通行「あの光は……」

一方通行が言う『あの光』と言うのは、病院から800mほど先にある光の事だ。
一方通行はその光に、何か感じるものがあった。

一方通行「あの光は……ロシアで戦った……天使と同じような?」

一方通行がロシアで戦った天使、即ち『神の力』(ガブリエル)の事であるが
ガブリエルは、既に上条当麻によって消失した。となると、あの光は何なのだろうか?

そもそも、ガブリエルとは四大天使の1つである。それと同質の光と言う事は――

答えは簡単だった。
同じ四大天使の内の“2体”『神の薬』(ラファエル)と『神の火』(ウリエル)の顕現だった。

ラファエルの大きさは40mほどで、一般的なイメージの天使とは違い
頭上に輪っかこそあるが、土偶のような格好だった。

ウリエルも、頭上に輪っかこそあるが、竜のような形をしており
おおよそ天使とは呼べないものだった。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:37:50.59 ID:baUWBQyL0
一方通行(明らかにヤベェな。だが)

一方通行は再び神化した。

一方通行「かかってこいやァ!」

天使には人間の言語は理解できない。それでも一方通行の挑発を皮切りに
2体の天使は800mの距離を一瞬にして移動し、一方通行に突っ込んだ。

一方通行は、自身の動きに連動する巨大な手を出現させ、2体の天使を受け止めた。

一方通行「『天使』ごときが『神』に逆らってンじゃねェ!」

受け止めた天使を、思い切り弾き飛ばした。その距離は約3km。
だが今の一方通行や天使にとっては、そんな距離は零距離も同じ。

1秒もかからずに、一方通行と2体の天使は再び激突した。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:39:05.65 ID:baUWBQyL0
一方通行は焦っていた。神化は、その巨大な力に比例して制限時間も極端に短い。
今の一方通行では、せいぜい1分くらいが限度だろう。先の戦いも含めて、もう20秒は経っている。

加えて、天使と言うものはやはり強い。
ガブリエルとの戦いのときは、紫電を纏ったような天使と共闘しても倒すことは出来なかった。
そのクラスの化け物が2体。正直言って戦局は悪かった。

それでも、一方通行は諦めず何度も天使とぶつかる。

一方通行「負けられるかよォ!」

一方通行が2体の天使を相手に、多少押し始めた。
どんどん病院から遠ざかるように天使達を押し退ける。能力はあと20秒ほどか。

一方通行(これで決める!)

一方通行の後方にある大きい歯車が激しく回転し始めた。
すると2体の天使の真下から、白く大きな陣のようなものが現れた。

一方通行「終わりだァ!」

その陣から、莫大な光が飛び出した。2体の天使は為す術なく光の柱に飲み込まれた。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:40:45.30 ID:baUWBQyL0
一方通行の神化は、まだ10秒ほどあったはずだが、力を使い切ったため
その力は解け、その場に倒れた。

一方通行「やったのか……?」

一方通行は淡い希望を抱くが、現実はそうは甘くなかった。

2体の天使は、ダメージを受けているようではあるものの、まだまだ戦えると言った感じだった。

一方通行「く……そが」

一方通行は戦うどころか、立ち上がることすらできない。
それでも、護りたいものがある。護らなければいけないものがある。
藁にもすがる思いで、一方通行はこう願った。

一方通行(起きろよ幻想(ラッキー)……手柄ならくれてやる……俺を踏みにじって……
     馬鹿笑いしても構わねェ)

一方通行(だから……誰でもいいから……これ以上あのクソガキと……それを取り巻く環境を……)

2体の天使達は、力の切れた一方通行など最早眼中にもないようだった。
ただ病院を見据えて、突撃する。その直前で――

紫電が2体の天使を穿った。

一方通行は、この紫色の電撃に見覚えがあった。それはロシアで見たものだ。
一方通行は力を振り絞って、空を見上げた。そこには

カザキリ「これ以上私の『友達』と、その大切な方々が住んでいるこの学園都市を
     傷つけはさせません!」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:42:17.64 ID:baUWBQyL0
第7学区 病院へと向かう道

上条「くそ……!どうなってんだ……!?」

先程まで、銀色の光と、緑色と黄色の光がぶつかり合っていて、銀色の光が
病院から離すように、緑と黄色の光を押し、光の柱が出たと思ったら、銀色の光が途絶えた。
と思ったら、今度は紫色の光とぶつかりあっている。

削板「まあ、行けば分かるんだろう」

上条「それ、大丈夫なんですかね?」

削板「根性で何とかなる!」

上条「はあ……」

走りながら、上条はやっぱり不安が増していった。
そんな不安を拭おうとした訳ではないが、なんとなく横に目線を持っていくと

上条「あ、あれは!?」

路地の奥で五和が倒れているのを見つけた。

上条「ちょ、削板!こっちきてくれ!」

先頭を走っている削板にそう声をかけ、自身は路地の奥へと走っていく。

削板「お、おい!」

削板は仕方なく上条の後を追いかける。

上条「大丈夫か五和!?」

倒れている五和に寄り、抱え込む。その体はボロボロだ。

五和「う……上条……さん……?」

上条「一体何があったんだ!?」

削板「どうしたと言うんだ!」

五和「私の事は……良いですから……早く……ここから……逃げて下さい……」

上条「何を言って」

「ほう。まさかターゲットが自ら出向いてきてくれるとは、探す手間が省けたのである」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:44:51.72 ID:baUWBQyL0
突然、後方から渋い声。その声の主は

上条「アックア!」

振り返ると、青いゴルフシャツのようなものを着た男が立っていた。

彼はアックア。元『神の右席』の1人で『聖人』でもあった。
今はその力は無く、イギリスで騎士を務めている。
アックアと言うのは、ローマ正教に居た時の名前で、本名はウィリアム=オルウェル。

その振り返った先に、更に驚くべき光景を目にした。

天草式全員が、倒れている。
大多数は気絶などで済んでいるようだが、何人かは死んでいるように見える。

上条「アックア、これはテメェの仕業か!?」

アックア「私の仕業と言うよりは、私『達』がやったことである」

アックアがそう言うと、フルンティングを携えた騎士団長(ナイトリーダー)と
カーテナ=セカンドを携えた英国女王エリザードが、物陰から現れた。

アックア「本来なら、これに20余名ほどの騎士達も居たのであるが
     思ったよりそこに倒れている奴らが強くてな。
     こちらもわずか3人しか残らなかったのである」

上条「何で……こんな事をした!?」

アックア「簡単なことである。上条当麻、貴公を殺すためである」

上条「なら俺だけを狙えば良かっただろ!何でこいつらを傷つけた!」

上条の問いに、何故か騎士団長、その名の通りイギリスの騎士派の長が答える。

騎士団長「そいつらがまるで『上条当麻』を匿っているような言い方をしたからだ」

上条「お前には聞いてねぇ!」

騎士団長は構わず無視し

騎士団長「で、そいつらを倒して、周りを探していたら、お前が出てきたという訳だ。
     どうやら匿っていると言うのは嘘だったらしい」

上条「ふざけ」

エリザード「下らん会話はここまでだ」

エリザードの言葉が上条の言葉を遮った。そして次の瞬間には――

エリザード「死ね」

エリザードは上条の目の前に出現し、上条の首を取ろうと
カーテナ=セカンドを水平に振るっていたところだった。

上条「っ!」

轟!と
カーテナ=セカンドの一振りは空を切った。
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:46:25.08 ID:baUWBQyL0
エリザード「よく避けたな」

エリザードは目線を少し上げてそう言った。その目線の先には

削板「3対1とは根性無しにも程がある。喧嘩をするなら、1対1だろう!」

近くにあったアパートの屋根の上に立ちながら、五和を抱えている上条ごと抱え込んだ削板がいた。

エリザード「これは喧嘩ではなく、戦いだ」

削板「屁理屈はよせ」

削板は上条を降ろす。

エリザード「生意気なガキだ」

次の瞬間、エリザードは一瞬で削板達の居る屋根の上に飛び乗り
カーテナ=セカンドを削板に振り下ろしていた。
その一撃で確実に仕留められると、エリザードは思っていた。

だが削板はエリザードの予想に反して、カーテナ=セカンドを白刃取りでキャッチした。
エリザードはさらに力を込めるが、押しきれない。

削板「ったくよぉ。あんた、ばあさんなのに、なんでこんなに速くて力があるんだ?」

エリザード「そんな事はどうでもいいだろう。ウィリアム!騎士団長!こいつは私がやる!
      お前らは上条当麻を殺れ!」

アックア・騎士団長「「はっ!!」」

ドン!と2人は地面を蹴って、上条の元へ。
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:47:49.45 ID:baUWBQyL0
2人は1秒もかからずに、上条の目の前へと現れた。

削板「させるか!」

削板は白刃取りしていたカーテナ=セカンドごとエリザードを横に投げ飛ばし
その後即座に、騎士団長のフルンティングを素手で受け止めた。

しかし、アックアが止めきれない。

削板「上条!」

削板は上条の方を見た。
上条は五和を抱え、アパートの屋根から飛び降りようとしているところだった。
アパートの高さは3階。飛び降りたって死にはしないだろうが
足を痛めるぐらいは間違いないだろう。

上条が五和を抱えて飛び降りるのと、アックアが持っている剣を振り下ろすのは同時だった。
アックアの一撃はアパートを崩壊させた。

上条は何とか着地に成功して、五和をゆっくりと地面に降ろした。

上条「五和、ここで」

アックア「会話している暇があると思うのであるか?」

アックアの踏みつけが、上条を狙い定めて襲い掛かってくる。

ドゴォ!とアックアが地面を踏みつけただけで、地面にヒビが入った。
上条は何とか避けたが、踏みつけの余波だけで数m地面を転がった。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:48:54.37 ID:baUWBQyL0
上条「っは!」

上条は急いで起き上がり、目の前のアックアを見据えようとするが
既にアックアは上条の視界に居なかった。

上条(どこへ!?)

アックア「遅すぎるのである」

その声は左斜め後方から。アックアが剣を水平に振っているところだった。

上条は一瞬の判断でしゃがみ、肘を放った。
しかし、その時には既にアックアは上条の右側へと移動していて、剣を振り下ろしていた。

上条は体を捻り、紙一重でその一撃を避けたが、その後もアックアの攻撃は続いた。
縦に横にと、連続で繰り出されるアックアの攻撃を、上条は全て紙一重で避ける。

上条(反撃する暇どころか、呼吸すら、瞬きさえする間もねぇ!)

上条がそんな事を感じていると、アックアの攻撃の手が一瞬だが緩んだ。

上条(――今だ!)

上条は、アックアへ殴りかかろうとする。
アックアは今まで右手だけで持っていた剣を、両手で持ち
振り上げ“その状態のまま”上条の左側にスライドした。

上条(やば――)

アックアの凶悪な一撃が、振り下ろされた。
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:51:38.54 ID:baUWBQyL0
上条は両手持ちの一撃を何とか避けていたが、余波だけで数m地面を転がった。
そして後方にはビルの壁。もう後退して避ける事は出来ない。

アックア「終いである」

アックアは剣の切っ先を上条に向け、そのまま突っ込む。
上条はそれをしゃがむことで避ける。ドゴォン!と剣がビルに突き刺さり
その状態から、ビルの壁を抉りながら剣を右側に薙いだ。

上条(めちゃくちゃだ……!)

上条は右側に転がりながらそう思った。アックアの攻撃は終わらない。
水の魔術を使って地面を滑るようにして動く。

それでもアックアの攻撃を全て避ける上条。埒があかないと考えたアックアは、一旦距離を取る。

アックア「ならば、これはどうであるか」

アックアの周囲から、水が湧き出た。それは津波となって上条に襲い掛かる。

上条(異能の力ならば、恐れる事はねぇ!)

上条は臆せず津波に挑みかかり、キュイーン!と甲高い音と共に、津波を消し去る。
その津波の先に、アックアは両手で剣を持ち、上条の真正面で剣を振り上げていた。

上条(ようやく隙を見せたか!真正面からそんな大振り殴って下さいって言ってるようなもん――)

とそこで、上条は思った事を一瞬で反芻する。

アックアは、わざわざ一旦距離を取り、消されると分かっていながら津波を繰り出した。
それは多分、視界を一時シャットダウンする為だろう。

では何故視界を塞いだにもかかわらず、わざわざ真正面から
それも大振りで目の前に現れたのだろうか。まるでわざと隙を見せているような……
すると目の前のアックアが溶け始め――

上条(――違う!これは罠!――)

瞬時にそう考えを改め、バックステップをすると
そこに本物のアックアが、剣を地面に突き刺すように落下してきた。
その威力の余波で吹き飛ばされることは無かったが
代わりに地面から飛び散った、砂利の雨が上条の体を叩いた。

上条「ぐ……おお!」

上条は砂利に叩かれ悶えながらも、距離を取るために数歩後退するが

アックア「無駄である」

アックアは突き刺した剣を軸にして、回し蹴りを繰り出した。
上条は両腕をクロスしてガードはしたが、ノーバウンドで数十m先のビルの壁にぶつかった。
そのあまりの威力に、壁にはヒビが入り、上条の体内の空気はすべて吐き出された。

アックア「今度こそ終いである」

ビルの壁にもたれかかっている上条に向かって、アックアは剣を持って突っ込む。
そして――

ゴシャア!と肉を潰す音と、ビルにヒビが入る音が辺りに木霊した。
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:53:22.88 ID:baUWBQyL0
上条は何とか致命傷は避けていた。
と言っても、左脇腹には剣がしっかり貫通していた。

上条(けど……これで……剣は掴んだ……!)

上条は今、しっかりと剣を左手で抑えている。あとは右手を添えれば剣を打ち砕けるはず。

上条「これで……剣はもう使えねぇぞ!」

上条は右手で勢いよく剣に触れたが――

何も、起きない。

上条「な……んで……」

アックア「何か勘違いしているようであるが、この剣は何の変哲もない“ただの剣”である」

上条「嘘……だろ……」

上条はこの剣のおかげで、超人的な動きが出来るのかと思っていた。
そう思うのも無理はなかった。彼は世界大戦後に、土御門から
色々な人の状況を教えてもらったのだ。その時に、アックアに関してはこう聞いていた。

土御門『アックアは「聖人」の力を失った。今ではただのマッチョなおじさんって訳だぜい』

だから、きっと武器のせいで体が強化されていると思ったのだ。
いや、そんな事全く関係なかったとしても、武器はどうせ魔術的要素が絡んでいると思ったのだ。

しかし、これがただの武器だとするのなら
アックアは何故こんなにも超人的な動きが出来るのか。

アックア「……不思議そうな顔をしているのであるな。何かおかしいところがあるのであるか?」

上条「おか……しい……だろ……その動き……普通の人間……じゃない……」

アックア「そうか。私が『聖人』の力などを失ったにも関わらず
     この動きが出来ることに疑問を抱いたのであるか」

アックア「答えは簡単なのである。カーテナ=セカンドの欠片から
     力の一部を借りているだけなのである」

上条「そんな……裏技が……あったのかよ……」

アックア「武器が普通の剣である理由は、貴様の右手に対抗するためである」

そんなアックアの言葉も、剣を突き刺された状態で、最早意識すら朦朧として
思考も出来ない上条には聞こえていなかった。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:55:03.81 ID:baUWBQyL0
アックア「さて、そろそろ終いにするであるか」

そう言って、アックアは剣を引き抜いた。
その事により崩れ落ちる上条に、剣を振り下ろそうと構えるアックア。
削板は騎士団長とエリザードを相手にしているため、当然助けには来れない。
その場に居る五和や天草式のメンバーも、未だに動けない。

アックア「さらばである」

そして、容赦なく剣が振り下ろされた。
一部始終を見ていた、五和や天草式のメンバーは思わず目を瞑った。

グシャ!と肉を潰す音が響き、辺りには鮮血が舞った。

ただし、それは上条の血ではなく、腹を殴られた、アックアの口から吐き出されたものだった。

アックア「な……にが……起こったのであるか……?」

五和や天草式メンバーは、アックアの動揺する声で、瞑っていた目を開いた。

フィアンマ「堕ちたものだな。後方のアックア」

そこには真っ赤で、異様な右手を持つ男が立っていた。
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:56:05.11 ID:baUWBQyL0
騎士団長「『射程距離』!」

削板との激しい攻防の中で、騎士団長はそう叫んだ。
剣の破片を発射し、それは見事に削板の顔面に直撃した。
ように見えたが、削板は破片を歯でキャッチしていた。

削板「ほほへいほへはほへほはほふほほはへひはひ!(その程度では俺を倒す事は出来ない!)」

破片を吐きだし、間髪入れず騎士団長に突っ込む。その速度は実に音速の2倍以上。

削板「どおおらあああああ!」

騎士団長「『耐久硬度』!」

その速度に騎士団長は反応し、叫ぶ。
フルンティングは、絶対破壊されない硬度になり、削板の渾身の拳の一撃を受け止めた。

騎士団長「ぐお!」

だが剣は破壊されなくとも、運動量までは打ち消せない。
運動量を受け取った騎士団長は、いくつかのビルを突き抜けながら、数百mは吹き飛ばされた。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:57:41.10 ID:baUWBQyL0
エリザード「ほう。やるじゃないか」

削板の後方に居たエリザードが、カーテナ=セカンドを振り下ろしながらそう言った。
削板はそれを間一髪で避け、距離を取る。

削板「どうなってる?」

削板が先程まで居た場所が白くなっている。より正確に言えば空間が。

エリザード「次元を切断しただけだ」

切断した次元から、白い物質がいくつか零れ落ちた。
エリザードはその物質全てを、削板に向かって蹴りだした。

削板「すごいパーンチ!」

削板は『敢えて不安定な念動力の壁を作り、それを殴る事で壊して遠距離まで衝撃を飛ばす』
必殺技を繰り出した。

それだけで白い物質は砕け散り、逆にエリザードにまで衝撃は向かって行った。

エリザード「やるな。だが」

カーテナ=セカンドを水平に振るう。それだけで、衝撃波はあっさりと振り払われた。

削板「なかなか根性あるじゃねぇか!」

削板は、音速の2倍以上の速度でまっすぐ突っ込み
エリザードの顔を掴み、そのままビルの壁に向かって叩きつけた。
はずだったのだが、何の手応えもない。

削板「あれ?」

思わず顔面を掴んだはずの右手を見る。その時だった。

エリザード「何をやっている?遅すぎるぞ」

またしても後方に居たエリザード。カーテナ=セカンドを振り下ろそうとしている。

削板「っ!」

叩きつけるつもりで、ビルの壁まで行ってしまったので後退は出来ない。
だから削板は、背中から7色の煙を出しながら、空中へと避難した。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/09(火) 23:59:24.04 ID:baUWBQyL0
削板は、空中からすごいパンチを連続で繰り出し
衝撃波の雨を降らせようと考え、拳をエリザードに向けて突き出そうとした。
しかしその時、赤く鋭い何かが横目に見えた。それは頭に向かって飛んできていた。
削板は何とか頭を動かし、そのまま喰らっていれば、脳味噌が吹き飛んでいたであろう一撃を
額を掠る程度に留めた。その影響で鉢巻は外れ、額からは一筋の血が流れた。

削板(あの紳士みたいな奴が、さっきみたいに遠距離から攻撃してきたのか。
   だがしばらくは戻って来れないはず。ここはまず、あの婆さんの根性を
   叩き直すのが先だな!)

そう思い、今度こそ拳をエリザードに向けて突き出そうとするが、既にエリザードの姿は無かった。

削板「な!?どこ行った!?隠れてないで正々堂々勝負しろ!」

叫ぶ削板だったが、当然返事は無い。
その時、上から空気を切るような音が、わずかに聞こえた。

エリザードが降ってくる音だと、直感で判断し、上も見ずに前方へと飛ぶ。
その直感は正しかった。1秒後には、次元を切り裂きながら地面へと激突したエリザードがいた。
もし前方に飛んでいなければ、今頃は次元の藻屑となっていた事だろう。
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:01:48.46 ID:25u0vCuc0
削板(油断も隙もねぇな!)

削板は改めて根性を入れ直す。しかし、削板にはそんな時間はなかった。
ビルを突き抜けながら吹き飛ばされたにもかかわらず、服が多少汚れ破け
額から血を流す程度の傷しか負っていない騎士団長が、削板の後方に居たからだ。

騎士団長「『武具重量』!」

フルンティングが縦に振るわれた。削板はそれを何とか白刃取りで受け止めるが
その剣は、その大きさからは考えられないほどに、圧倒的に重かった。

削板(ぐ……おお……!)

頭の真上で白刃取りしていた削板は、このままだと頭が剣で切り裂かれてしまうと
考え、せめて被害を最小限に留めようと、剣ごと白刃取りしている手を徐々に左へずらしていく。
その間に重さに耐えられなくなって、ついにフルンティングが左肩に触れた瞬間――

騎士団長「『切断威力』!」

スパッ!と、浅いながらも、削板の左肩が切り裂かれた。

削板「ぐあ!」

削板には多少の悶絶と、多大な困惑があった。
削板は心臓をはじめ、体中に銃弾を撃ち込まれようが、アイスピックで刺されようが
『痛い』程度で大したダメージを受けない。オッレルスの『北欧王座』ですら2度耐えた。
そんな自分が、切り裂かれた。とりあえず削板は、音速で距離を取る。

騎士団長「『移動速度!』」

しかし騎士団長は、その速度に追いついてきた。

削板「く!」

騎士団長「『切断威力』!」

そして再び、万物を切り裂く一撃が、今度は首目がけ水平に振るわれた。

削板「おお!」

削板はそれをしゃがむことで回避。そして反撃のアッパー。
騎士団長はそれを『武具重量』で迎え撃つ。

ゴドン!と削板は地面に叩きつけられた。騎士団長も吹き飛ばされはしたが
障害物が何もない真上に吹っ飛んだだけなので特にダメージは無し。

削板「ごほっ!ごほっ!」

地面に叩きつけられて、血を吐きながら咳き込んでいる削板に
騎士団長は、またしても『武具重量』で隕石のように落下してくる。

削板「おおっ!」

削板は即座に前方に転がり、騎士団長の一撃を避けた。
騎士団長の一撃は、騎士団長を中心に、半径100mほどの地面にヒビを入れ
辺りには莫大な煙を立ちこませた。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:03:54.55 ID:25u0vCuc0
削板(ちっ!姿が見えねぇけど……!)

削板はおそらく騎士団長がいるであろう方向に、すごいパンチを3回ほど放った。
しかし手応えは無かった。
仕方なくもう3発ほど放とうと拳を突き出す前に、何か固いものが、肩に直撃した。

削板「がっ!」

拳銃ですら『痛い』程度には丈夫なはずなのに、激痛だった。
続いてその固いものは、流星群の如く次々と削板目がけて降り注いだ。

削板「ご……っは……!」

あまりにも突然の出来事に、防御する事も避ける事も出来ずに
為す術もなく、固いものの雨に打たれた。
その固いものの正体は、先程次元を切断しながら落下していたエリザードの
カーテナ=セカンドによって生み出された物質を、エリザードが連続で蹴ったものだった。

その物質のラッシュの後に、容赦なく騎士団長の『切断威力』の一閃が
削板の右脇腹を切り裂いた。

削板「ごふぁ!」

口からは血が溢れた。さすがの削板も倒れそうになり

とどめの、カーテナ=セカンドの次元をも切断する一撃が、次元もろとも削板を切り裂いた。

その直後にゴガァ!と壮絶な音が辺りに響いた。
削板が800m先のビルに激突した音だった。だがそれはおかしいことだった。

エリザード「……次元ごと切断したはずだが……?」

そう。つまり削板は吹き飛ばされるのではなく、本来なら次元の藻屑になっていなければおかしい。
削板との戦いで、常に余裕を見せていたエリザードは初めて困惑した。

エリザード(能力が本当に一瞬だが覚醒して、私の次元切断の一撃を
      あの程度の被害で留めたのか……?)

騎士団長「私がとどめを刺してきましょう」

騎士団長はそう言うと『移動速度』により削板のもとへ。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:06:04.78 ID:25u0vCuc0
一方で削板は、ビルの壁にもたれかかっていた。
さすがの削板も、戦うどころか、立ち上がる気力さえなかった。

削板(俺は……とんだ根性無しだ……)

自責の念に駆られる削板だったが、体は動かない。動いてくれない。そんな時だった。

ポケットの中に入った携帯電話が鳴り響いた。
そんな中削板は、あの激戦の中でよく壊れなかったなぁ。さすが学園都市製。
とか、よくポケットから落ちなかったなぁ。とか考えていた。携帯に出る気力すらなかった。

すると携帯は、通話ボタンを押していないにもかかわらず、勝手に通話状態になった。
しかも、勝手にスピーカーモードにもなった。そこから聞こえた声は

雲川『何をしているの?早く立ちあがって敵を倒しなさい』

幼馴染みの雲川からだった。

削板「芹亜か……」

削板はボソッと、普通の通話状態でも聞こえないような声で呟いた。
当然、ポケットの中に入っていて、なおかつ折り畳まれている携帯に声が聞こえる訳などないのだが

雲川『何を情けない声を出しているんだか。根性無しにもほどがあるけど』

しっかり返事があった。

削板「そうだ……俺は根性無しだ……あまりにも情けねぇよな……」

削板「でもよ……もう体が動かねぇんだ……俺は……ここまでみたいだ……」

雲川『お前はその程度の男だったの?』

いつも冷静な、雲川の声が若干熱を帯びたようだった。

雲川『私はそんな男に惚れていたのか……全く、私も見る目がないな』

削板「は?」

削板は突然の告白に、情けない声をあげた。

削板「お前……何言って……」

雲川『言葉の通りだけど?』

削板「いや……いろいろおかしいだろ……このタイミングで告白とか……
   そもそもお前……上条の事が好きなんじゃ……ねぇのか……?」

雲川『そうだ。私は上条当麻も好きだけど。でもお前も好きなんだ。
   こんな尻軽女だけど、どうしようもないくらいお前も好きなんだ。だから勝て』

削板「だから勝て。って意味不明だぞ……俺以外の男も好きな女の為に……
   俺以外の好きな男を守る為に……この勝負勝てってか……理不尽すぎるだろ……」

雲川『そうだ。全部私の我儘だけど。でも好きな人には死んでほしくないんだ。
   お前も、上条も。至極当然の感情でしょ?死なない為には勝つしかない』

雲川『限界を超えてでも勝て。ただし絶対に死ぬな。
   上条当麻を護る者として、私の愛する人として、恰好ぐらいつけてみせろ』

そこで通話は終わった。
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:07:53.31 ID:25u0vCuc0
削板(無茶苦茶な事ばっか言いやがって……でも……なんか元気でたっつうか)

削板(確かに、こいつらぐらいはどうにかしないと、いくらなんでも恰好つかねぇよなぁ!)

体は動く。動いてくれる。ヨロヨロとした動きで、削板は立ちあがった。

騎士団長「何か言い残す事はあるか?」

既に削板の前に立ち塞がっていた騎士団長はそう言った。

削板「……絶対勝つ!」

騎士団長「そうか。ならば死ね。『切断威力』」

フルンティングの、万物を切り裂く一撃が振り下ろされた。
と同時に、騎士団長の体は顎に激痛を伴って、100mほど宙を舞った。

騎士団長「が……あ?」

騎士団長は痛みと共に、困惑があった。
何故自分は宙を舞っている?答えは簡単だった。

削板が音速を超えた速度で、アッパーを繰り出したからだった。攻撃はそれだけでは終わらない。

削板は空中で、騎士団長に音速を超えた蹴りを叩きこんだ。
当然、騎士団長は数百m程ぶっ飛ばされる訳なのだが

ぶっ飛んだ先には、削板がいた。再び強烈な蹴りが、騎士団長を襲った。
またしてもぶっ飛んだ騎士団長。そしてまたしてもその先に居た削板。
そしてまた蹴りの一撃。ぶっ飛んで再び蹴りの一撃。
その様は、騎士団長をサッカーボールにみたてた、1人サッカーのような状態だった。

この連続技で、さすがに意識が朦朧としてきた騎士団長。
無抵抗に仰向けで宙を舞っていると、正面に削板が現れた。
その両拳には、とんでもないエネルギーが集まっていた。その内の左拳が飛んでくる。

騎士団長「『耐久……硬度……』」

フルンティングを絶対破壊されないようにしてから、ガードする。
確かにフルンティングは破壊されなかった。だが構わず削板は

削板「うおおおおおおおおおおおおお!」

騎士団長を、拳ごと隕石の如く地面に叩きつけた。
その威力は騎士団長を中心に半径300mの地面にヒビを入れ
『耐久硬度』のフルンティングを砕くほどだった。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:10:03.61 ID:25u0vCuc0
エリザード「やるじゃないか。しかし、そのボロボロの体で私に勝てるかな?」

莫大な煙が立ち込める中で、立ち上がる1つの影に向かってエリザードはそう言った。

削板「関係ねぇよ婆さん。どうせ次の一撃で全て決まるんだから」

削板は、右拳にエネルギーの全てを集結させた。

エリザード「私の一撃を受けると言うことは即ち、イギリスという一国を受け止めると言う事!
      それが貴様に出来るかぁ!」

エリザードは削板に向かって突っ込む。

削板「俺の根性に、不可能なことはねぇーッ!」

削板は突っ込んでくるエリザードに対して、右拳のカウンターを繰り出す。
次元を切り裂く一撃と『耐久硬度』のフルンティングをも砕いた一撃が激突した。

削板・エリザード「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

両者の一撃は拮抗した。

エリザード「くくく、本当にこの一撃と拮抗するとはなぁ!
      だが、カーテナ=セカンドの力はこんなもんじゃないぞぉー!」

カーテナ=セカンドが若干押し始める。

削板「そんな事、俺も同じだあああああああああ!」

腕から血を噴き出しながら、強引に押し返す。

削板「たとえ、この右腕が潰れようとも!
   この勝負だけは、負けるわけにはいかねぇぇぇんだよぉぉぉ!」

削板の右拳が、さらに力強くなって、カーテナ=セカンドを押し返していく。。

エリザード「馬鹿な!?まだ力が出せると言うのか!?」

今度はカーテナ=セカンドが押され始めた。
動揺するエリザードに追い討ちをかけるように、ピシッ!と、カーテナ=セカンドにヒビが入った。

エリザード「なに!?」

削板「終わりだぁぁぁあああああ!!!」

バキャア!と、ついにカーテナ=セカンドは砕け散り
突き抜けた削板の右拳は、そのままエリザードの顔面に突き刺さった。
殴られたエリザードは、数kmにも亘って吹き飛び、いくつものビルを突き抜けた。

削板「なんとか……勝ったぜ……」

削板(だが……お前を……助けには……行けねぇや……上条……)

削板の意識はそこで途切れた。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:11:08.47 ID:25u0vCuc0
アックア「カーテナ=セカンドの力が……消えた……!?」

フィアンマ「どうやら、あの騎士団長とエリザードを倒したみたいだな」

アックア「馬鹿な……そんなことが……有り得るのであるか……!?」

フィアンマ「現にカーテナ=セカンドの力は消えているだろう?現実を見ろ。アックア」

アックア「だが、私は弱くなった訳ではないのである。調子に乗らないので欲しいのである」

フィアンマ「お前こそ、カーテナ=セカンドの欠片を持っていて、天使級の
      力を振るえるからと言って、調子に乗ってもらっては困るな」

アックア「相変わらず口が減らないのであるな!」

アックアは自身が作った水流に乗り、フィアンマへと突っ込む。
対してフィアンマは

スッと右手を前方に突き出しただけだった。

アックア「嘗めているのであるか!」

アックアの容赦ない突きが、フィアンマを襲うが
ガキィィィン!と、その突きは右手であっさりと受け止められていた。
それだけではなかった。フィアンマが少し握る力を強めただけで、剣は粉々に砕けた。

アックア「馬鹿な!?」

アックアは一旦後退する。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:13:50.57 ID:25u0vCuc0
フィアンア「何も驚く事は無いだろう。そんな霊装でも何でもないただの剣が
      俺様の右腕で砕けないわけがない」

アックア「そう言えばおかしいのである。噂では、貴様は右腕を失ったと聞いた。
     何故右腕が存在しているのであるか?そしてその右腕は
     何故そこまで強力なのであるか?」

フィアンマ「右腕を失ったという噂は知っていたくせに、オッレルスと言う
      魔術師に保護されたと言うのは聞いていなかったのか?」

アックア「オッレルス?」

フィアンマ「知らんのならそれでいい。説明も面倒なんでな。ま、俺様は確かに右腕を一度失った」

フィアンマ「が、オッレルスが俺様の第3の腕を、魔術を巧みに使い、俺の右肩に移植した。
      そうして第3の腕は、今となっては、俺様の本当の右腕となっている訳だ」

アックア「そんなことが可能なのであるか!?」

フィアンマ「現にその俺様が、今貴様の目の前に立っているだろ。もう一度言おうか?現実を見ろ」

アックア「つまり、その右腕は、第3の腕の力を持った右腕と言うことであるか?」

フィアンマ「まあ大分弱体化はしたがな。武器もないお前に負けるほどではない」

アックア(成程。厄介であるな。だが弱体化したと言うのなら、勝機は十分にあるのである)

アックアは細いワイヤーを取りだす。厳密に言えば、それはミクロサイズのチューブだった。
その内側から、樹脂のような液体が噴出した。
それは空気に触れると、固体化し四方八方に杭を飛び出させた。
原始的なメイスへと生まれ変わった。

アックア「勝負はここからである。Flere210(その涙の理由を変える者)!」

フィアンマ「格の違いを教えてやるか」
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:15:34.92 ID:25u0vCuc0
ドンッ!と壮絶な音と共に、アックアが地面を蹴る。
一瞬でフィアンマではなく、既に意識不明で倒れている上条のもとへ肉迫し
そのメイスを振り下ろした。

バゴォォォ!とフィアンマの右手がメイスを掴んでいた。

フィアンマ「俺様ではなく、上条当麻を直接狙うなんてな。
      せめて俺様を倒してからにしてくれんか?」

アックア「任務達成の条件は上条当麻の抹殺。貴様と直接戦う必要はないのである」

フィアンマ「ふ~ん。どうでもいいけど、メイスから手を離した方が良いぞ」

アックア「何を言って――」

アックアが言いかけた瞬間、メイスが突如燃えだした。

アックア「っ!」

メイスから手を離し、後退する。轟々と燃え盛るメイスを、フィアンマは上へ投げ飛ばした。
メイスは空中で灰となった。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:16:41.57 ID:25u0vCuc0
フィアンマ「これで再び武器を失った訳だが……まだやるか?」

アックア「当たり前なのである。まだ終わりではないのである!」

再びワイヤー、厳密に言うとミクロサイズのチューブを取りだした。
そのチューブは膨らみ、弾けた。そこからは、アスカロンが出てきた。

フィアンマ「その程度の武器で、どうにかなると思っているのか?」

アックアは、フィアンマの問いかけを無視して、津波を繰り出す。
津波がフィアンマに襲い掛かるが

フィアンマ「ふん」

津波を振り払うように、右腕を軽く振っただけで、津波は蒸発した。

アックア「これならどうであるか!」

間髪入れずに、数千もの氷柱が生み出され、フィアンマと上条へ飛んでいく。

フィアンマ「無駄だ」

フィアンマが地に手をかざす。
それだけで上条とフィアンマの周囲の地面から炎が噴き出し
ドーム状となって2人を包み、氷柱の攻撃を全て防いだ。

フィアンマ「終わりか?」

ドームの炎が消えて、視界が戻るが、アックアは既に、フィアンマの視界から消えていた。

フィアンマ「……上か」

そう判断したフィアンマは右手から炎を噴き出し、左手で上条を抱え飛んだ。
その1秒後に、先程まで上条が横たわっていた場所に、アックアが落下してきた。

フィアンマ「さすが傭兵。デダラメな戦い方だ」

そう言いながら、フィアンマは上条を抱えさらに飛んでいく。

アックア「逃げるのであるか!」

フィアンマ「こちらの勝利条件は、お前を倒す事ではなく、上条当麻を守り切る事だからな」

アックア「逃がさないのである!」
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:18:22.17 ID:25u0vCuc0
フィアンマは上条を抱えながら、1km程飛んだところで地面に降り立った。

フィアンマ「お前……こいつを頼めるか?」

少女「はい!それはもう、私の愛する人の為なので!」

フィアンマ「そうか。じゃあ頼むぞ。一応腹の傷は焼いて塞いだが回復魔術を頼む。
      『幻想殺し』を避けて、部分ごとに回復させれば、右手以外は回復できるはずだ」

少女「はい!分かりました!そちらも頑張って下さいね!」

フィアンマ「お前のようなチビに、とやかく言われる筋合いはない」

少女「ただ応援しただけなのに!」

フィアンマ「いいから、早く行け」

少女「はい!」

少女はその小さい体で上条を抱え、鋼の手袋(トール)に乗り
それを操り、虫のように走って行った。丁度そこへアックアがやってきた。

アックア「あの少女は、我々の味方であった筈なのであるが……」

フィアンマ「あの少女はお前らの為ではなく、自分の“意思”で行動している。
      それだけだろう。お前と違って」

アックア「黙るのである!」

フィアンマの一言に激昂したアックアは、1mの太さはある水の鞭を、10本生み出した。
その鞭は一斉にフィアンマに襲い掛かる。

フィアンマ「ほう。先程よりは強力な魔術だな」

フィアンマは右腕を振るう。すると虚空から数十の炎の拳が現れ、鞭を蒸発させた。
その間にアックア自身が、フィアンマのもとへ突っ込む。

フィアンマ「攻撃が単調すぎる……クロスカウンターしてくださいと言っているようなものだぞ」

フィアンマは、アックアの顔面を狙って拳を繰り出す。
それは見事に直撃した。ただし、それは単なる水で出来た分身でしかなかった。

フィアンマ「だから攻撃が単調すぎると言っているだろう」

特に焦る事もなく、フィアンマは数歩後退する。
すると先程までフィアンマがいた地点に、アックアが落下してきた。

アックア「……読まれていたのであるか」

フィアンマ「元同僚だしな」

そう言うながら、右拳を繰り出す。

アックア「ふん!」

対してアックアも、アスカロンを振るう。右拳とアスカロンが激突した。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:19:51.04 ID:25u0vCuc0
ズザザ!と靴が地面に擦れる音。アックアだけが一方的に弾かれた。

フィアンマ「さすがに丈夫だな。俺様の一撃を耐えるとは。だが、次で壊れるぞ」

アックア「調子に……乗らないでほしいのである!」

フィアンマの真上に、総重量2tはある水のハンマーが生み出された。

アックア「喝!」

掛け声と共に、水のハンマーが振り下ろされたが

フィアンマ「ふん」

フィアンマが右拳を上に突き出す。それだけで水のハンマーは一瞬で蒸発した。

アックア「これならどうであるかーっ!」

アックアがアスカロンを振るう。
その軌道から、とんでもない量の水が激流となってフィアンマに向かう。

フィアンマ「これは……強力だな。仕方ない、少しだけ力を出すか」

フィアンマは至って冷静に右拳を前に突き出す。
そこから超巨大な炎の拳が発射され、激流を一瞬で蒸発させた。
そして炎の拳は消えずにアックアへ向かう。

アックア「く!」

アックアはアスカロンと、即席で作りだした水の盾を展開してガードするが
それらを簡単に突き破って、炎の拳はアックアへ直撃した。

アックア「ぐおあああああああ!」

アックアは身を焦がすような痛みに襲われた。全身に重度の火傷を負ったのだ。
そこへ追撃を加えようと、フィアンマはアックアへ肉迫する。
アックアは、アスカロンを正面に構え、ガードを試みる。

フィアンマ「無駄だ」

フィアンマの右拳の一撃は、アスカロンを打ち砕き、そのままアックアの腹へと直撃した。
その一撃により、アックアは数kmほど吹き飛ばされ、ビルを幾つも突き抜けた。

フィアンマ「さて、俺様も急ぐか」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:21:19.23 ID:25u0vCuc0
カザキリは2本の紫電の剣を生み出し、2体の天使に投げつける。
2体の天使は、それらを易々と避け、同時にカザキリへと突っ込む。
カザキリは冷静にその攻撃を避ける。

結果、ゴシャア!と2体の天使は激突した。
その隙にカザキリは、紫電の翼で2体の天使を包み込み
御坂以上の電撃(正確にはようなもの)を放った。しかし

ウリエル「hqhfqgbh殺glw」

ウリエルが暴風を巻き起こし、翼から強引に抜け出す。
続いて、尻尾のようなものを、カザキリに叩きつけようとする。
カザキリは、それを紫電の剣で受けて立つが、バリィィン!と紫電の剣は砕け
尻尾の一撃をまともに喰らい、幾つものビルを突き抜けながら、数十kmは吹き飛ばされた。
ウリエルの方もノーダメージと言う訳ではなく、尻尾はちぎれかかっていた。

今度こそ2体の天使は、病院へ突っ込もうとするが
カザキリが一瞬で舞い戻りウリエルにタックルをぶちかました。

今度はウリエルが吹き飛ばされる。それに黙っていなかったのはラファエル。
目にあたる部分から、極太のレーザー光線をカザキリに向けて放つ。
カザキリは翼で自身の体を包み込み、レーザーのダメージを最小限に防ぐ。
そうこうしている間にウリエルが再び舞い戻る。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:22:48.88 ID:25u0vCuc0
カザキリ「さすがに、2体はきついですね……」

ガブリエルと戦った時は、真っ白な少年と共闘しても、倒すまでには至らなかった。
それなのに、目の前には、そのクラスの化け物が2体も居る。
状況は絶望的と言っても過言ではなかった。

カザキリ「それでも……『友達』とこの街を守るために負けられない!」

ウリエル「hdhhgh殺fjgwlr」

ウリエルから、風の刃が連続で繰り出された。

カザキリ「はああああああああ!」

カザキリはその攻撃を時には避け、時には翼で切り裂き、徐々に『神の火』に迫る。
そうしてある程度近付いたところで

カザキリ「ここだ!」

即席で紫電の槍を生み出しウリエルへ刺そうとする。
しかしその前に、瓦礫とコンクリートの雨がカザキリの体を叩いた。

カザキリ「が……ああ……」

正確に言うと、ビル群の雨。
カザキリの避けた風の刃が、カザキリの後方のビル群を切り裂き
そのビル群をラファエルがサイコキネシスで操ったのだ。
それでもカザキリは、なんとか耐えきる。
しかし、槍は消え満身創痍で、反撃は愚か、浮いているのがやっとの状態だった。

そんなカザキリに、容赦なくウリエルの風のブレスが放たれた。

カザキリは自身の翼でガードを試みたが、それも虚しく、ひらひらと地上へ堕ちた。
そこへ止めと言わんばかりにラファエルの極太レーザーが叩きこまれた。

カザキリ「う……あ……」

最早悲鳴を上げることすらできずに、倒れてしまった。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:23:54.55 ID:25u0vCuc0
一方通行「あの天使でも……駄目だってのか……!」

思わず地面を拳に叩きつける。

一方通行「クソが……何とか……ならねェのかよォ!」

一方通行が咆哮したその時、カザキリがゆっくりと立ち上がった。

カザキリ「まだ……です……!」

既に満身創痍であるが、その眼光に諦めの色は見られない。

カザキリ(……もう私の力では、2体を狩ることは出来ない……でもせめて……道連れにしてでも
     1体は倒す!)

カザキリ「うあああああああああああ!」

カザキリが叫ぶと同時に、その体から数万の紫電が放たれた。それは2体の天使に襲い掛かった。
強力な攻撃だが、致命傷にはならない。だが動きを止める事は出来た。

ギャン!と、カザキリはその隙にラファエルの懐に突っ込み
そして自分ごとラファエルを遥か上空へ押し上げる。

カザキリ「これで終わりです!」

次の瞬間、上空4000mで、半径2kmにわたる爆発が起こった。

カザキリが執った手段――――自爆だった。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:24:50.95 ID:25u0vCuc0
結果としてラファエルは消滅したがウリエルは残ってしまった。

一方通行「あの天使が……ここまでやってくれたンだ……
     いつまでも……倒れている訳にはいかねェ……」

一方通行はヨロヨロと立ちあがる。
ただでさえ天使化などで力を使い果たしている上、代理演算を行っている妹達の数も少ない。
今の一方通行の能力は、せいぜいレベル2程度だった。それでも諦めない。

一方通行「うあああァァァ!」

神化をしても倒せなかったのだ。通常状態、ましてやレベル2程度で敵うわけなどない。
それでも、わずかなベクトルの力を足に集約し、突っ込んでいく。

そんな一方通行に対して、容赦ない風のブレスが放たれた。

一方通行「うがあああァァァ!」

一方通行は、消失した。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:27:30.00 ID:25u0vCuc0
上条「う……」

暗い路地裏で、上条は目を覚ました。

少女「あ、目覚めたみたいですね」

上条「お前……レッサーか……?」

レッサー「そうです。あなたの恋人、レッサーです」

上条「恋人ではねーだろ。つーかお前、俺の味方という事でいいのか?」

レッサー「はい、もちろんです!私はイギリスの為なら、敵であろうと助けますよ」

上条「イギリスの為?お前ら魔術サイドは、俺を消したがってたみたいだけど……は!
   もしや、これは罠!?」

飛び起き、構える上条。

レッサー「ち、違いますって!ああもう、本当の事を言います!私はあなたの事が好きなんです!
     だから、イギシス清教裏切ってあなたの事助けました!これでどうですか!」

上条「いや、それも罠なんじゃ……っ痛!」

レッサー「まだ安静にしていないと」

上条に寄り、介抱するレッサー。

上条「どうやら、本当に敵ではないみたいだな。でも安静にはしていられない。
   つーかここどこだ?早く病院へ行かないと!」

レッサー「ここはその辺の路地裏です。本当はトールに乗って移動しながら
     治療したかったんですけど、ガチャガチャ揺れるので
     こうしてトールから降りて治療したんです」

レッサー「フィアンマって人が焼いて傷を塞いだところに、私が回復魔術を施しました。
     少しは楽になったはずです。ですが、まだまだ重症です。
     急ぐ気持ちは分かりますが、もう少しだけ安静にしておいた方がいいと思います」

上条「そっか。とりあえずありがとう。でも病院へ急がないと」

レッサー「……仕方ありません。トールに乗って移動しましょう。
     右手は触れないように注意してください。(もう少し2人きりを楽しみたかったのに)」

上条「ああ」
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:28:35.23 ID:25u0vCuc0
まずレッサーがトールに乗り、その後に上条が乗る。

レッサー「飛ばしますんで、ちゃんと私に掴まっててくださいよ」

上条「おう」

返事をして、何の意識もせず、ただ丁度いい高さで、腕をレッサーへ回し
ムニュっと、何か柔らかいものを掴んだ。

上条「あれ?」

レッサー「あん♡」

同時に、トールが暴れ出した。レッサーが突然の事で操作を誤ってしまったのだ。
グラングランと、トールは右往左往に激しく揺れ動く。

上条「ご、ご、ごめん!だ、だか、ら、この、揺れを、とめ、て!」

上条はトールから落ちまいと、掴む力をさらに上げる。

レッサー「ああ♡そんな♡激しすぎます♡」

さらに暴走するトール。

上条「うわあああああ!もう駄目だああああ!」

レッサー「わ、私もですうううううう!」

瞬間、スパーン!と2人は地面から5mの高さのところまで放り出された。
このままだと頭から落ちる軌道だ。

レッサー「このまま落ちたら死にます――――!」

上条「んな事分かってる!」

上条(こんなところで死んでたまるかよ!)

上条は空中で姿勢を入れ替え、レッサーをお姫様だっこし、見事に地面に着地した。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:29:51.80 ID:25u0vCuc0
上条「ふぅ、何とか助かったか」

レッサー「あ、ありがとうございました///私の操作ミスで放り出されたと言うのに。
     足、大丈夫ですか?」

完璧な着地とは言え、5mという高さから落ちて
足が痛まなかったわけはなかったが、上条は取り繕って

上条「大丈夫だよ。まあ元はと言えば俺のせいだし。今度は気をつけるよ」

レッサー「軽くなら……揉んでも大丈夫ですよ」

上条「その下ネタに持っていく思考は相変わらずかよ。てか駄目だろ。また操作ミスるだろ」

レッサー「さっきは心の準備が出来ていなかっただけです。来ると分かっていれば大丈夫です。
     なんなら下の方もいいで」

上条「馬鹿なこと言ってないで、早く行くぞ」

レッサー「ちぇ。仕方ありませんね」

そうして2人がトールに乗ろうとした時

ローラ「レッサー?何をやっているのかしら?」

上条「誰だ!?」

レッサー「ちっ!先手必勝!」

レッサーはトールを掴み、ローラへと突っ込んでいく。

レッサー「詠唱も、何らかのアクションもさせません!」

トールがローラを掴もうとする。

上条「駄目だ!一旦引っ込め!」

レッサー「え?」

上条の叫び声と同時に、ボガァァァン!とローラが爆発した。
その爆風でトールは粉々に砕け、レッサーは上条の手前まで吹き飛ばされた。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:31:01.50 ID:25u0vCuc0
上条「レッサー!」

上条はレッサーに駆け寄ろうとする。

ローラ「巨人に苦痛の贈り物を♪」

ローラの炎がレッサー目がけて襲い掛かる。

上条(これはステイルの魔術!しかもステイルより何倍もでけぇ!けど、臆することはねぇ!)

上条の『幻想殺し』は異能の力であるならば、どれだけ強大な力であっても
ステイルの『魔女狩りの王』やインデックスの『竜王の殺息』(ドラゴンブレス)などの
持続系でなければ、基本的に打ち消せる。

上条はレッサーを狙う炎に迷わず右手を突き出し、打ち消した。

上条「大丈夫かレッサー!」

レッサー「……」

レッサーを抱え込み叫んだが、返事がない。そこへ容赦なく

ローラ「七閃♪」

7本のワイヤーが襲いかかってきた。

上条(今後は神裂の……!)

七閃はただのワイヤー攻撃。上条の右手では打ち消せない。
だから上条はレッサーを抱えて、逃げるために走り出した。

ローラ「逃げ切れると思いて?」

上条(くっ!)

シュルルル!と7本のワイヤーが高速で上条の背中に食い込んだ。

上条「が……あ……」

上条は思わず転んでしまう。レッサーは地面に投げだされた。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/10(水) 00:32:49.90 ID:25u0vCuc0
ローラ「あらあら、もう終わりなのかしら?」

上条「お前、一体何者なんだ?」

ローラ「イギリス清教の最大主教、ローラ=スチュアート」

上条「何でステイルの魔術や神裂の技が使える?」

ローラ「私は、イギリスにある三大宗派のうちの1つ、清教派のトップなる者。
    これぐらいは当然なのよ」

上条「答えになってねぇんだよぉ!」

上条は駆け出し、ローラに殴りかかるが、シュボ!と拳はローラをすり抜けた。

上条(蜃気楼か!?)

ローラ「どこを見ているのかしら?」

声は後方から。本物のローラは、投げ出されたレッサーを踏みつけていた。

上条(抱えながら戦うのは無理だから、敢えて放っておいたのが仇になったか!)

上条「その足をどけやがれ!」

ローラ「そう。良いけど」

言われた通り、ローラはレッサーから足をどけた。

上条「えっ(そんなあっさり!?)」

直後、レッサーは目覚め起き上がった。

レッサー「ふぇ……あ!助けて下さ~い!」

起き上がったすぐ近くにローラが立っていたためか、レッサーは助けを求めて
上条に駆け寄り抱きついた。

レッサー「こ、怖かったですぅ~」

上条「無事でよかった。でもこれからあいつと戦わなきゃいけないから
   お前はその辺に隠れていてくれ」

レッサー「いえ、その必要はないですよ。だって――」

グサ!と氷のナイフが上条の背中に突き刺された。

上条「レッサー……お前……」

為す術もなく、上条は地面にうつ伏せに倒れた。

レッサー「――だってあなたは、ここで死ぬんですから」


270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:13:49.34 ID:itpxcIft0
ウリエル「shjshfw死fwrfjw?」

一般の人間には、理解し得ない言語を発したウリエル。
今発したのは「何故死んでいない?」というニュアンスの言語だった。

一方通行は確かに消失した。だが死んではいなかった。
ブレスを放った現場の、10mほど先に一方通行はいた。

一方通行「何でテメェらがここにいやがる!」

結標「何を怒っているの?私はあなたの命の恩人なのよ。感謝してほしいぐらいだわ。
   しかもこれで2度目。今度何かお礼頂戴」

結標がブレス直撃寸前に、一方通行をテレポートしたのだ。

一方通行「ふざけンな!テメェらじゃどうにもならねェ!100歩譲って
     助けてくれた事は感謝してやっても良いが、オマエらがここに
     来たところで何も出来やしねェ!今すぐ引き帰しやがれェ!」

結標「あら、あなたが素直に感謝して、しかも物凄い勢いで捲し立てるなんて
   相当危ないのかしら」

一方通行「良いから、早く帰」

御坂「黙りなさい一方通行。アンタ1人でやったってどうにもならないでしょーが。
   それに、アンタがいなくなると、あの子達が悲しむ」

一方通行「お子様が……力の差ってのが分からねェのか!このままだと死ぬぞ。
     妹達の身を案じるなら、オマエが帰れ!」

御坂「駄目よ!アンタがいなくても、私がいなくても駄目なの!一緒に生きて帰るのよ!」

一方通行「クソが……」

麦野「あんま粋がるなよ、第1位。私らが助けてやるっつってんだ。
   つーか今は、お前の方がよっぽど役に立たねぇわ。お前はそこらへんでマスでもかいてな」

一方通行「テメェこそ粋がンな三下が。そこの中2に負けるような雑魚が。帰れ」

絹旗「感謝の一言も超素直に言えないんですか?浜面の方が、数倍マシですね」

一方通行「ドチビが。レベル5ですらねェオマエは論外だ。さっさと帰れ」

絹旗「本当にこのモヤシは……私がボコボコにしましょうか?」

麦野「やめな絹旗。私らはそこのモヤシを倒すために来たんじゃない。助けるために来たんだ」

御坂「アンタは黙って休んでなさい」

結標「ま、作戦もあるし何とかなるでしょ。そう言う事だから、じゃあね~♪」

一方通行「まさか俺を、待ちやが――」

一方通行は何か言いかけたが
パッ!と結標のテレポートにより、一瞬で病院へ転送された。

その一部始終を見ていたウリエルは、標的を4人の少女に定めたようだった。

結標「さて、あちらさんも私達の事睨んでいるっぽいし、いよいよ来るわね。皆準備は良い?」

御坂「もっちろん!」

麦野「当たり前だ」

絹旗「超当然です!」

結標「OK。それじゃあ行くわよ!美琴!沈利!最愛!」
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:15:00.65 ID:itpxcIft0
先手はウリエル。数千もの風の刃が生み出され、一斉に少女たちに向かって行く。

結標「皆!作戦は分かってるわね!それじゃあ行くわよ!」

御坂・麦野・絹旗「「「おう!!!」」」

パッ!と、結標の能力により、少女たちは全員テレポートされる。

結標自身がテレポートしたのはウリエルの目の前。

結標「喰らいなさい!」

結標は目にあたるであろう部分に、手榴弾をテレポートする。
ボガァァァン!と見事に爆発は決まった。

結標(これで少しは)

そう思っていた結標だが、煙が晴れる前に、風のブレスが飛んできた。

結標「さすがにこれだけで倒せるわけないか!」

文句を言いつつ、冷静にテレポートでブレスを避ける。

結標「ま、まだまだこれからだけどね!」
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:15:39.74 ID:itpxcIft0
御坂と絹旗がテレポートされたのはウリエルの後方わずか50mほどの場所。

絹旗「おりゃあああああああ!」

御坂「だあああああああああ!」

結標がウリエルを引きつけている。その間に絹旗は手近なビルを殴りまくる。
ビルは徐々に崩れ、瓦礫になって積みあがる。それを御坂が、手と足を使って撃ちまくる。
大小様々な『超電磁砲』がウリエルに向かって行く。

しかしウリエルは全方向に広がる、風の波動攻撃を繰り出した。
それにより全ての『超電磁砲』は弾かれ、御坂や絹旗をも吹き飛ばした。

絹旗「くぅぅぅ!」

ドッ!ガッ!ゴッ!と、絹旗は地面に何度も叩きつけられた。
窒素を纏っているとは言え、ノーダメージという訳にはいかない。

御坂「ぐぅぅぅ!」

御坂は電磁力で勢いを殺しながら、何とかビルに貼りついた。

結標「大丈夫だった?」

テレポートしてきた結標が、2人を気遣う。

御坂「もちろん!まだまだ行けるわ!」

絹旗「超余裕です!」

結標「んじゃあ、行くわよ!」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:18:18.26 ID:itpxcIft0
強制的に病院にテレポートされた一方通行は
窓から戦闘の様子を見ながら愚痴を零していた。

一方通行「あれが作戦!?結標が気を引いている間に、ドチビがビルを崩して
     その瓦礫をオリジナルが撃ちまくる。あンなの無駄だ。天使には効きやしねェ」

滝壺「大丈夫だよ。私の補助もある」

一方通行「この病院から、4人に補助とは褒めてやりてェが
     そンな付け焼刃じゃあどうにもならねェ。根本的に次元が違ェ」

滝壺「違うよ。私が補助しているのは、あくまでむぎのだけ」

一方通行「どっちにしろ関係ねェ。そうだ。つーかその4位の糞ババアはどこ行きやがった?」

冥土帰し「落ち着こうか一方通行。君は少し、人を信じると言う事を覚えた方が良い。
     それに君は休んだ方が良いね?」

一方通行「今戦いを見ているだけのこの状況で、充分休ンでいる事になる。
     今妹達は合計で30人ほど。チョーカーのバッテリーを満タンまで充電したところで
     使える能力はせいぜいレベル2程度」

一方通行「だが天使化、神化にはチョーカーの代理演算は関係ねェ。だからこうやって
     休ンでいるだけでも意味はある。いざという時に助けにも行けるしなァ」

冥土帰し「その必要は無いと思うけどね?」

一方通行「どう見てもその必要しかねェだろうが」

冥土帰し「確かに、彼女達1人1人の力は、君に比べたらちっぽけなものだ。
     でもね、今の彼女たちは個人で戦っているんじゃない。チームで戦っているんだ」

冥土帰し「それは2人だから2倍、4人だから4倍とか、そんな単純ではなくて
     絆が深ければ、その力は何十倍、何百倍にもなる」

一方通行「仮にそうだとしても、さっきも言ったように次元が違ェ。
     何百倍じゃあ、どの道話にならねェ」

冥土帰し「じゃあ実際の戦いを見てみるんだね?」

一方通行は言われた通り、再び窓から戦闘の様子を眺める。
相変わらず、ダメージは碌に与えていないように見えるが……

冥土帰し「確かに、ダメージは限りなく0に近いかもしれない。
     例えるなら、HP10万の敵に、1ずつしかダメージを与えていないような
     そんなものかもしれない」

冥土帰し「けどそれは、逆に言えば10万回攻撃すれば倒せると言う事だね?
     つまり、やられなければ必ず勝利は見えてくる」

確かに理論的にはそれは可能だ。しかし現実的に重大な問題がある。

一方通行「このままだと、体力削り切る前にバテるに決まってンだろ。
     現に、戦っている3人はもうバテているように見えるが?」

冥土帰し「でも凄くないかい?彼女達1人1人なら、とっくにやられていたと思うよ?
     それをここまで粘るなんて。それに僕には、まだまだ行けるように見えるけどね?
     特に結標君はね」

一方通行「……」

冥土帰し「絆の力に関して、さっきは何百倍にもなる。という表現で止めたけど
     僕は何千倍、何億倍、いや無限大になると信じているよ」

一方通行「……あいつらに、絆があるとは思えねェ。それどころか因縁があるくらいだろ」

冥土帰し「この学園都市の危機の前に一致団結したのさ」

一方通行「一体あいつらに何を吹き込ンだ?」

冥土帰し「それはね――」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:19:33.69 ID:itpxcIft0
――――――――――

―――――――

――――

御坂「ちょ、ちょっと!いよいよ紫の天使まで追い込まれたわよ!ヤバいんじゃないの!?」

結標「うるさいわね。私達がここでいくら焦ったって、事態は変わらないのよ。
   少し落ち着きなさい」

御坂「落ち着きなさい!?落ち着いていられるわけないでしょーが!
   今すぐアンタの力で、私をあそこへテレポートしなさい!」

結標「だから!そうしたってあなたはやられるだけでしょ!あなたこそ頭冷やしなさい!」

御坂「それでも、例えそうだとしても!出来る出来ないの問題じゃなくて!
   やるかやらないか!それが問題でしょ!」

結標「負けると分かっている戦いに挑みに行くなんて、ただの無謀な愚か者よ」

御坂「そうかしら?戦いに挑みもしないで、ただただ殺されるのをガクガク震えて
   待つだけの方が、よっぽど愚か者な気がするけどね」

結標「分かったわ。そこまで言うなら、あなた1人送ってあげるわよ!」

絹旗「ちょ、2人とも超落ち着いてください!滝壺さんも喧嘩止めるの手伝ってくださいよ!」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:20:13.08 ID:itpxcIft0
2人のいがみ合いがヒートアップしていく中、カツンと2つの足音。

麦野「レベル5の第2位と3位が、くだらないことで争ってんなぁ」

麦野は先の戦いで左腕が吹き飛んだが、冥土帰しによって、新たな義手をつけられていた。

御坂「アンタ……」

結標「うるさいわね。第4位」

冥土帰し「まあまあ、少し落ち着くんだね?」

御坂「落ち着けませんよ!緊急事態だってのに、この臆病者は!」

結標「事態が呑み込めてないのよ。このお子様は」

麦野「私からしたら、どっちもお子様みたいなもんだけどなぁ」

御坂・結標「「はぁ!?」」

冥土帰し「こらこら、2人を煽るような事は止めるんだね?」

その時、外から爆音が響いた。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:21:07.55 ID:itpxcIft0
御坂「なんか凄い爆音が……急がなきゃ!」

冥土帰し「まあ待つんだね?君1人じゃあ勝てないよ」

結標「ほらね」

冥土帰し「ただ、言っている事は御坂君の方が正しい」

結標「んな!?」

冥土帰し「結標君の言う通り、1人じゃ勝てない。けど御坂君の言う通り
     このまま何もしなければ、戦わなくても殺されるだけだろうね?」

冥土帰し「なら、やるべきことは1つだね?」

御坂「な、何ですか?」

冥土帰し「“協力して倒す”だよ」

結標「はぁ!?そんなことしたって勝てるわけ」

冥土帰し「勝てるさ」

結標「根拠は?」

麦野「ぐちぐちうるせぇぞ」

結標「あなたのほうこそ、いちいち癇に障るわ」

冥土帰し「言い争っている場合ではないね?手短に話すよ?
     結標君、御坂君、麦野君、絹旗君の4人で、あの天使を討伐してもらいたい」

結標「4人が協力したところで、あの天使を倒せるとは」

冥土帰し「倒せる」

結標「……っ!」
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:22:09.90 ID:itpxcIft0
冥土帰し「しかし、元々少なくない因縁がある君達が、そう簡単に協力できるとは思えない」

御坂「そこまで知っていて……じゃあ、どうするの?」

冥土帰し「まずは名前で呼び合う。既に親しい関係である絹旗君と麦野君は除いてね」

御坂「確かに、能力名や序列で呼び合うよりは良いと思うけど……そんなんで良いの?」

冥土帰し「もう1つ。『約束』をするんだ。『約束』は時に強い絆を生む。
     内容は『共に生き残り、この街を守り切る』これでどうだね?」

結標「そんなんで、何とかなるの?」

冥土帰し「なると僕は信じている。あとは君達次第だ。さあ、もう時間がない。
     結標君、絹旗君、御坂君、麦野君、そして滝壺君の補助。
     この5人で一方通行を助け、この街を守ってほしい。あとは頼んだよ?」

―――

――――――

―――――――――

一方通行「ふーン。『絆』の力ねェ」

冥土帰し「君は身をもって体験しているだろう?君と打ち止めの間にあるものさ。
     人は、大切な何かを守りたいときに本当に強くなれるんだよ?」
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:23:35.20 ID:itpxcIft0
御坂「最愛!もっとビルを砕いて頂戴!」

絹旗「超分かっています!」

絹旗が砕く。御坂が撃つ。反撃を凌ぎながら、何度それを繰り返したことか。
多分1000発は撃っただろう。それにも関わらずウリエルの勢いは衰えない。

結標も持っていた手榴弾やその辺の瓦礫を、片っ端からウリエルの内側に
テレポートしているのだが、やはり勢いは衰えない。

結標「最愛!あなたは直接攻撃に回って!『超電磁砲』のための瓦礫は私が用意する!」

御坂「分かったわ!」

絹旗「超分かりました!」

2人が返事をした次の瞬間には、絹旗はウリエルの真上にテレポートされていた。

絹旗「行きますよ~」

窒素が螺旋状に回転しながら絹旗の両腕を包み込む。それはつまり、窒素のドリル。
まずは左腕から『神の火』へ落下していく。

ギギギギギ!とウリエルの頭上の輪っかと、窒素のドリルが擦れ合う。
輪っかは割れるどころか傷1つつかない。

絹旗「おりゃあああ!」

窒素の密度と回転速度を上げる。その甲斐あってか、ピシッ!とヒビが入った。
しかし、そこで左腕が弾かれる。

絹旗「こっこだああーっ!」

ヒビ目がけ、今度は右腕を繰り出す。そのヒビに、わずかにドリルがめり込んだ。
窒素の密度と回転速度を限界まで上げる。割る。この輪っかを絶対割って見せる。

10秒経って、その思いが通じたのか、バキィン!と、幅1mはある輪っかの一部が欠けた。
若干悶絶したように見えたがそれだけ。とても致命傷には至らない。
そこでウリエルから、全方向に風の波動が放たれた。

絹旗「ぐぬうううあああ!」

吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる絹旗。
窒素で覆われている絹旗にとって、大きい怪我にはならなかったが
連戦をこなし、今の今まで全力を出してきた絹旗は、もう限界だった。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:24:56.54 ID:itpxcIft0
結標(よく頑張ったわね。最愛)

結標「美琴ー!」

結標が叫ぶと、御坂の目の前に瓦礫――とは言い難い、操車場のコンテナ1個分ほどの
大きさの塊がテレポートされた。

御坂「行っけー!」

バギュゥゥゥン!と塊が『超電磁砲』となって放たれる。
間髪入れずに、結標は次々と塊をテレポートしていく。
御坂も、目の前にテレポートされていく塊を次々と放っていく。
先程までの、瓦礫でのちまちました攻撃とは違う。
まさに大砲のような一撃が、連続して放たれていく。

さすがのウリエルも、これは効いたのか。若干仰け反ったように見えた。

結標「これで決めましょう!」

御坂「ええ!」

結標が、御坂をウリエルの真上100m程にテレポートする。
同時に、操車場のコンテナ8個分程の大きさの塊も、御坂の目の前にテレポートされていた。

御坂「これで終わり、だああーっ!」

巨大な塊を、思い切り殴って『超電磁砲』として放った。
御坂の全身全霊究極の一撃。
それは輪っかの一部とウリエル本体の一部を縦にくりぬいた。
これには、さすがのウリエルも悶絶したようだった。

結標「(今しかない!)沈利ー!」

直後、結標により、滝壺の補助を受け、遠くで力を極限まで溜めた麦野が
御坂と同じような座標にテレポートされた。

麦野「消し飛びなぁぁぁあああ!」

直径100mの、1つの街を壊せそうなぐらいの『原子崩し』の一撃がウリエルを飲み込んだ。
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:27:38.44 ID:itpxcIft0
結標の能力により、安全に地面までテレポートされた御坂と麦野。
現在、御坂と麦野と絹旗は能力を使い果たしていた。結標も、もう長くは持たない。

麦野「やっ……たの……?」

目の前にはウリエルが倒れている。
御坂と麦野の全力の攻撃により、羽はちぎれていて輪っかも砕けているが、消滅はしていない。

結標「念のため、動きを抑えておきましょうか」

そう言うと、どこからともなく、コンテナ5個分の大きさの塊20個ほどが
次々とウリエルにかぶさるようにテレポートされていった。

結標「はぁ……はぁ……さすがに、これで限界ね」

結標がヘナヘナと地面に座り込む。他の3人も同じ様なものだ。

御坂「やったのね……私達で」

絹旗「ええ」

麦野「ま、私にかかりゃちょろいもんよ」

結標「そうやってすぐ調子に乗る」

御坂「あれ?そう言えば……」

絹旗「超どうしたんですか?」

御坂「淡希の持っているそれ、何なの?」

御坂の言っている“それ”とは、結標の持っている、先端に宝石のようなものがついた
フレイルのことだ。

結標「これね。特注のフレイル。これで目印をつけているのよ」

絹旗「目印?」

結標「そう。本当はあのビルを丸々テレポートできればいいのだけれど
   今の私じゃ、距離は10km、質量は10tまでが限界なのよね」

御坂「自慢を聞きたい訳じゃないんだけど」

口ではそう言いながら、内心では結標のことを素直に感心していた。
後輩の白井黒子が結標と同じテレポーターだからこそ分かる。
距離10km、質量10tは化け者だ。さすが、ここ最近でレベル5第2位までに躍り出ただけはある。

結標「これからの説明に必要なことなの。で、ビルをテレポートできないからって
   ちまちま瓦礫をテレポートするのも効率悪いじゃない?」

絹旗「それは遠回しに私の事を超ディスっているのでしょうか?」

結標「瓦礫より大きいものをテレポートしたい。でもビルは出来ない。
   そんなときにこれを使って、コンクリートを削って線を引くの」

結標「今回の場合は、ビルに線を引いて、区切りをつけた。
   そうすると区切りをつけた部分が、ビルから失くなるのをイメージしやすくなって
   ビルの一部だけをテレポートできるって訳。分かった?」

御坂「うーん。なんとなく?」

結標「あれよ。折り紙をしようとしたとき、正方形の紙がなくて
   長方形の紙しかなかったらどうする?」

御坂「そりゃあ、折り目をつけて、その折り目に沿って、はさみで切るなり
   手で千切るなりで、正方形の紙を作るわ」

結標「それと同じよ。長方形の紙を勘で破いて、正方形の紙を
   生み出すのは難易度高いじゃない?けど折り目をつければ、綺麗に切れるでしょ?」

絹旗「成程。超納得です」

結標「ま、私も先生じゃないから、これ以上上手く説明は出来ないんだけど。
   こんな話は置いといて、帰りましょうか」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:28:56.34 ID:itpxcIft0
ちょっと雑談を交わした間に、能力が多少戻った結標は
テレポートで病院に帰還しようと立ちあがった、その時だった。

ウリエル「hjbghhjrghsgthfgmhjzsghv!」

ウリエルが雄叫びをあげて、起き上がった。

麦野「まだ……起き上がってくるって言うのか!?」

見たところかなり弱っている。先程までは雄叫びだけで、暴風が吹き荒れ
吹き飛ばされたと言うのに、今は空気がビリビリするくらいだ。
だが4人の少女達はそれ以上に弱っている。戦うのは愚か、立っているのがやっとの状態だ。

結標(どの道、一旦帰るしかないわね……!)

そう思いテレポートしようと演算したその時
かなり小さめではあるが、風の刃が飛んできた。
それは結標の手前の地面に直撃し、彼女を吹き飛ばした。

御坂・麦野・絹旗「「「淡希!!!」」」

結標「だ……いじょうぶよ」

口ではそう言ったが、弱っている状況で、この一撃はきつかった。
演算が出来ない――!そこへウリエルは次の一撃を放っていた。
もう駄目だ。誰もがそう思った。4人の少女達は反射的に目を瞑っていた。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:30:07.71 ID:itpxcIft0
結標「……?」

目を瞑ってから10秒ほど経っただろうか。衝撃は、来ない。
結標は、恐る恐る目を開けた。

女「ハァーイ、科学の子猫ちゃん達。お姉さんが助けに来てあげたわよー」

楽観的な声をあげて、黄色い女がそこに立っていた。

結標「あなたは……?」

女「私はヴェント。魔術師」

結標「てことは、私達の敵!?」

ヴェント「他の奴らはそうかもしれないけど、私は君達を助けに来たんだヨ?
     ま、信じる信じないは君達次第だけど」

御坂「はぁ!?意味が分からないわ!」

ヴェント「悪いけど、これ以上君達と問答している暇はない」

ヴェントがそう言い放った直後ウリエルの風の波動弾が飛んできた。
しかしそれは、ヴェントの肌に触れた瞬間、霧散していった。

ヴェント「私に風の攻撃は効かない」

そう言い放ち、ヴェントはウリエルの真上まで飛んだ。
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:32:18.63 ID:itpxcIft0
ヴェント「喰らえ!」

ヴェントの風のハンマーが振り下ろされた。
しかし、鈍器で殴ったような鈍い音は一切しなかった。
ズブブと、ハンマーがウリエルに飲み込まれている。

ヴェント「ビンゴ!」

一見不発のように見えるが、これがヴェントの狙い。
初めから攻撃するつもりで、ハンマーを振り下ろした訳ではなかった。

ヴェント「吸収!」

元『神の右席』後方のアックアは、かつて自身の属性と適合する天使ガブリエルの
『天使の力』(テレズマ)を、わずかであるが体の中に抑え込んだと言う。
しかし、それは無謀というものだ。莫大なテレズマを吸収すれば、吸収した者は
そのエネルギーに耐えきれず、内側から爆発する。

だが、それは天使が万全状態の話。
今回の場合は違う。ウリエルは既に瀕死だ。今のウリエルなら吸収しきれる。
そして同時にパワーアップも出来る。ヴェントはそう考えていた。

しかし、現実はそうは甘くなかった。ウリエルの総量のわずか5%。
たったそれだけのテレズマを吸収しただけで、ヴェントの体は悲鳴を上げていた。

ヴェント(ここまでの……力を……!)

だからと言って、ここで退く訳にはいかない。今この現場でまともに戦えるのはヴェント1人。
もしリタイアすれば、少女達は殺され、病院は破壊される。

ヴェント「天使ごときが……なめんなァー!」

ヴェントが咆哮する。体からは血が噴き出す。それでも吸収を止めない。
そうして10%を吸収したところだった。

ヴェント「がは!」

先に限界を迎えたのはヴェントだった。血を噴き出し、地面へ真っ逆さまに落ちていく。

結標「くっ!」

結標が力を振り絞り、ヴェントを一気に地面の数cm上まで横にしてテレポートさせた。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:34:10.26 ID:itpxcIft0
ヴェント「くっそ……」

ヴェントは自分が情けなかった。颯爽と助けに参上して、調子に乗ってこのザマだ。
甘かった。瀕死だからと言って、吸収しきれるという考えが驕りだった。

ウリエルは少女達にボロボロにされ、ヴェントに吸収され、もう残り体力10%を
切っているだろう。しかし、10%もあれば、瀕死の彼女たちを蹂躙し、病院を破壊できる。
終わった。さすがにこれは終わった。誰もがそう思った時だった。

一方通行「演出ご苦労さン!仕上げは俺はやるぜェ!」

御坂「アンタ……!」

いつの間にか一方通行が少女達のところに居た。
そして、超巨大な光の拳が現れ、グシャ!とウリエルを一撃で潰した。
一瞬ではあるが、神化したのだ。

ヴェント「やるじゃない……アンタ……」

一方通行「はァ……はァ……当然だ……」

強がってはいるが、一方通行はかなり疲弊していた。
それは無理もなかった。寧ろよくやったと言うべきだろう。

ヴェント「けどまあその力、もう少し温存しとくべきだったかもね」

一方通行「はァ?どう言う意味だ?」

先程の状況でウリエルを倒せたのは一方通行だけだった。
もし一方通行が助けに入らなければ、事はもっと悪い方向に進んでいただろう。
それを温存しとくべきだったとはどういうことか。
寧ろあれ以上のタイミングがあったとでも言うのか。

ヴェント「『四大天使』。ガブリエル、ウリエル、ラファエルときたら、次に来るのは?」

一方通行「『神の如き者』(ミカエル)か」

そんな会話を繰り広げていた時だった。目の前にミカエルが降臨した。

ヴェント「『四大天使』の中でも別格の強さ。
     アンタの力はコイツにとっといてほしかったのよ」

御坂・麦野・結標・絹旗「「「「嘘でしょ……」」」」

一方通行「こりゃあ、万事休すかもなァ……」
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:35:08.72 ID:itpxcIft0
上条「もしかして……操られているのか……」

ローラ「正解♪その子はもう私の人形だよ♪
    ちなみに、他の大半の魔術師のことも操ったり、弱み握ったりしたんだ♪」

気分が昂ぶっているせいか、いつもの似非古文口調ではなくなっている。

上条「テメェが……諸悪の根源か……」

ローラ「失礼な。私はアレイスターを殺して、世界を平和に導こうとしているのよ」

上条「ふっざけんな!これのどこが、世界平和に繋がるってんだ!
   つーか土御門から、俺の抹殺と学園都市の崩壊も目的だって聞いたぞ!」

ローラ「あら、バレてたの?そんなに興奮すると、血が噴き出しちゃうよ?」

上条「うる、せぇ。テメェみたいなのは、ここでぶん殴ってやる!」

上条はヨロヨロとした動きで立ちあがる。

ローラ「……人の話をちゃんと聞かない人は嫌いなの。もう飽きちゃった。
    レッサー、そいつを消しなさい」

レッサー「……たくないです」

ローラ「え?」

レッサー「やりたく……ないです」

上条「レッサー?」

ローラ「ふーん。私の洗脳に抗うんだ。じゃあもういいや。“弾け飛んで死ね”」

その瞬間、ローラの言葉通り、レッサーは体の内側から弾け飛んだ。
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:36:41.27 ID:itpxcIft0
上条「な……にが……」

ローラ「使える魔術は、何もイギリス清教所属のだけじゃないの」

今のは、錬金術の最高峰『黄金錬成』(アルス=マグナ)。
しかもアウレオルスのように、鍼で緊張を緩める必要もない。
だが今の上条には、最早そんなことは関係なかった。上条は怒りで我を忘れローラに猛進する。

ローラ「窒息死」

上条の体が、ガクンと勢いを失う。
しかしこの技は一度喰らっている。対策は分かっている。
上条は右手の指を喉の奥に滑り込ませる。
バギィン!とガラスが割れるような音と共に、上条の呼吸が元に戻った。

ローラ「感電死」

瞬間、上条の四方八方を青白い電光が取り囲んだ。
上条は右手を突き出す。それが避雷針の役割を果たし、電光がそこに集中する。
結果、電光はあっさりと消し飛んだ。

ローラ「圧死、および轢死」

虚空から1台の車が降ってくる。上条の後方からは、車が突っ込んでくる。
上条はまず、振ってくる車を打ち消した。その後回転し、裏拳気味で後方から来る車を打ち消した。
しかしそれは、少しの間ではあるが、ローラの目の前で背を向けていると言う事。

ローラ「隙だらけだよん♪」

ローラは上条の背中に触れた。そしてローラの掌から、尋常ではない空気圧が放たれる。
上条の体は何十mも吹き飛ばされ、地面を転がった。

上条「ごふぁ!」

背中の傷と口から血が溢れる。もはや動くことすら厳しい。
地面に這いつくばりながらも、首だけはローラを見た。
そこには、銅、銀、金のゴーレムと、ローラのそれぞれの手には剣が握られていた。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:38:46.25 ID:itpxcIft0
ローラ「さて、どうやって殺してほしい?」

ローラとゴーレムが迫ってくる。だが上条は戦う事は愚か、もう動くことすらままならない。

ローラ「……あなたは今、絶望的な状況にあるのよ。今や学園都市の戦力は
    1体につき『聖人』5人を生贄に捧げた、大天使達に割かれている。
    助けが来る確率もない」

ローラ「なのにその目、諦めてない。この状況でも覆せると信じている目。ムカつくのよね」

上条「テメェみたいな奴には……死んでも負けるわけにはいかねぇからな……」

ローラ「あっそ。じゃあ死になさい」

ローラの右手の剣『カルンウェナン』が振り下ろされる。上条は思わず目を瞑った。
ザシュ!と肉を切り裂いた音が響いた。しかし、それは上条のものではない。

上条(一体……何が……)

上条はおそるおそる目を開いた。
そこには、ホスト風な男の持っている刀のようなものが、ローラの心臓を貫いていた。

男「おい、そいつを安全なところに連れてって手当てしてやれ。
  『冥土帰し』からもらった、あの薬を飲ませろ」

誰に話しているんだ。と上条は思ったが、直後に上条の体は抱きかかえられていた。
ドレスを着た、可愛い女の子だ。

ドレス女「本当に良いの?薬は、あなたの為に用意されたものじゃ」

男「誰に向かって口聞いてやがる。俺がそんな簡単に傷つく訳ないだろ。いいから早く行け」

ドレス女「分かったわよ。ていうか、もうその女死んだんじゃないの?」

男「こいつは偽者だ。どっかで俺達の事をほくそ笑んで見ているんだろう」

ドレス女「じゃあ、安全なところなんてないわね。あなたの側が1番安全ね」

男「……分かった。じゃあこの『未元物質』(ダークマター)空間で、おとなしくしていろ」

そう言って、レベル5第1位、垣根帝督は『未元物質』の空間を創り出し上条達を取り囲んだ。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:40:54.49 ID:itpxcIft0
直後に、偽者のローラは溶け、本物のローラが物陰から現れた。

ローラ「そんな気休めの檻みたいなので、私を止められるとでも思っているの?」

垣根「ふん。随分と余裕だな。俺の能力の全容を把握しきった訳でもねぇだろうに」

ローラ「その台詞、そっくりそのまま返すわ」

垣根「そりゃあアレさ。俺とテメェには、決定的な違いがある」

ローラ「性別が違うとか?」

垣根「まあ、それもあるかな。けれど、もっと違う決定的なモノ。戦う理由さ」

今の垣根は、上条とドレス女、即ち心理定規(メジャーハート)を守るために戦う。
ローラはとある人間を殺すために戦う。かつての垣根のように。
今なら、一方通行がどうしてあんなにも強かったのかが分かる。

ローラ「もしかして精神論?しかも科学の街で」

垣根「そうやって馬鹿にしているがいいさ。そうやって、俺も負けたんだからな」

ローラ「……よく分からないけど、あなたみたいなSっ気が強い人を、圧倒的な力で
    屈服させるの、楽しいのよねぇ♪」

垣根「黙ってりゃ可愛いのに。歪んだ性癖をお持ちのようで」

ローラ「わざわざ邪魔してきたんだから、少しは楽しませてね♡」

垣根「テメェが『もう止めてください』て言うまで、喘がせまくってやるよ」
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:42:51.69 ID:itpxcIft0
心理定規「とりあえず、応急処置は済んだわ。ほら、これを飲んで」

上条は言われた通り、薬らしきものを飲んだ。すると体に活力が戻って来た。
不思議な事に、血も完全に止まって傷もかなり塞がった。

上条「今のは、何だったの?」

心理定規「私もよく分からないわ。あの人が『冥土帰し』から飲むように。
     ってもらったらしいけど」

上条「じゃあ俺が飲んだらヤバかったんじゃ……」

心理定規「かもしれないけど、あの人が良いって言ったんだから良いんじゃない?」

上条「よほど信頼しているんだな。けど、こう言っちゃ悪いけど、多分、あいつじゃ
   ローラには勝てない。いや一方通行でも勝てるかどうか怪しいレベルだ。
   だから、俺も今から一緒に戦う。俺の右手なら、この空間からも出られるはずだ」

心理定規「やっぱり、あなたの右手には特殊な力が宿っているのね」

上条「俺の右手の事を知っているのか?」

心理定規「詳しくは知らないけど、まあ、噂はね。それで、もう薄々分かっていると
     思うけど、あなたにはやってもらうことがあるの。そのために今は休んでいてほしいの」

上条「あの病院に向かっている光を消すことか」

心理定規「そう。どうやらあなたは、この街を救う為のキーパーソンみたいだからね」

上条「じゃあなおさら共闘してローラを早く倒したほうがいいだろ」

心理定規「じゃあ、百歩譲って出るのは良いけど、あなたは構わず病院へ向かって
     こっちはこっちで何とかするから」

上条「いや駄目だ。一緒に戦わないと奴には勝てない。やっぱ俺も一緒に」

心理定規「駄目よ」

心理定規は能力を発動させる。脳に直接作用するため、能力は通じる。
現在の心の距離は、先生と生徒のようなもの。

心理定規「あなたは、ここで大人しくするか、病院へ行くかの2択しかないの。分かった?」

上条「そいつは出来ねぇ相談だ」

心理定規(能力が作用しているのにもかかわらず、抵抗してくる!?)

ならばと、心理定規は再び心の距離を調節。上条にとって最愛の恋人となる。

上条「いくらお前の頼みでも、俺はここから出ないといけない」

心理定規(な……んで……)

簡単な話だった。心理定規の洗脳より、上条の意志が強かった。たったそれだけのお話。
上条は『幻想殺し』で『未元物質』の檻を砕こうとしたその時だった。
突如、外から爆音などが響き渡った。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:44:28.11 ID:itpxcIft0
上条「そういや、さっきまでめちゃくちゃ静かだったけど」

心理定規「この空間は、外界からの音や光景を全て遮断してしまうからね。
     もちろん、この中で起こった出来事も、外からは把握できない」

上条「じゃあ、その効果が切れたってことは」

心理定規「待って!まだ音は断続的に響いている!きっとあの人が負けた訳じゃない!」

上条「お、落ち着け。とりあえず、俺も加勢する。だからこの檻砕くぞ」

心理定規「駄目なの。あなたはここにいて。じゃないと、私」

上条の腕にしがみついて、涙目になりながら、上目づかいで必死に訴える心理定規。
その姿に、上条は不覚にもときめいてしまった。
それは現在の心の距離を考えると当たり前のことだった。

きっとこの少女は、垣根に何かあったと不安なのだろう。
だから、せめて上条をここから出さないと言う、垣根の言いつけだけは果たそうと必死なのだろう。

だからこそ、上条はこの檻から出なければならない。少女の不安を拭う為に。垣根を助けるために。上条はなんとなく自分が能力に干渉されているのだろうと言う事は分かっていた。
上条は自分の頭を触り、能力を解除した。
いつの間にか外の音が聞こえなくなって、再び静けさだけが漂っている。
右手で檻に触れた。檻が砕けた瞬間に広がった光景は

余裕綽々のローラに、無傷で倒れている垣根だった。
その状況に誰よりも素早く反応したのは心理定規だった。

心理定規「帝督!?帝督!?」

心理定規は垣根を抱え揺さぶるが、何の反応もない。まるで死んだように。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:47:03.23 ID:itpxcIft0
上条と心理定規が檻に入っていた5分間

垣根「時間がねぇんだ。さっさと決める」

垣根の背中から6本の白い翼が生えた。右手には『未元物質』で出来た白い刀。
その羽をはばたかせ、垣根は一瞬でローラへ肉迫し、その刀を縦に振り下ろしていた。

当然ローラは、右手の『カルンウェナン』と左手の『エクスカリバー』をクロスしてガードする。

しかし、垣根の刀は2本の剣を“すり抜けて”、そのままローラに振り下ろされた。
ガキィン!と金属音が周囲に響いた。

ローラ「くっ!」

ローラは一旦距離を取る。その顔面と、胸のあたりが“割れていた”。

垣根「なんだぁそりゃあ。鎧か?」

ローラは体表を覆うように黄金の鎧を纏っていた。そのため、実質無傷のままである。

ローラ「その刀、すり抜けたり、実体に戻したりすることが出来るのか!?」

垣根「へぇ。この刀のトリックを1発で見破るとはな。案外やるじゃねぇか」

ローラ(攻められるのは分が悪い。こちらから攻める!)

今のローラは、霊装の力や特殊な術式で、霊長類を遥かに超越した運動能力を宿している。
一瞬で垣根に肉迫し、まずは左手の『エクスカリバー』を振り下ろす。

当然、垣根は右手の刀でガードする。すると垣根の左側が開くのは必然。
ローラはそこに右手の『カルンウェナン』を滑り込ませる。

ガキィン!と『カルンウェナン』が垣根の左手の刀にガードされた。

垣根「二刀流は、何もお前だけじゃないんだぜ」

しかもそれだけではない。垣根の翼が何やら蠢いている。ローラは距離を取る。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:48:30.28 ID:itpxcIft0
垣根「そうだな。あまり俺に近付かない方が賢明かな。この翼も刃に成り得る。
   いわば八刀流かな」

ならばとローラは、先程から手持無沙汰だった、3体のゴーレムを操る。
1体5mほどの巨大なゴーレムだが、時速60kmで垣根に突っ込む。

垣根「そっか。まずはこいつらから消さなきゃな」

垣根の右3本、左3本、それぞれの翼達が巨大な光線状となり銅と銀のゴーレムを飲み込んだ。
残りは金のゴーレムのみ。

垣根「こんなんどうだ?」

垣根の目の前の空間から、いきなり巨大なビームが放たれた。『原子崩し』の応用だ。
それは、一瞬にして金のゴーレムを飲み込んだ。

垣根「もう終わりか?」

ローラ「調子に乗るな」

ローラは垣根の真上に、10tに及ぶ水のハンマーを生み出し、振り下ろした。
しかし垣根は、6枚の翼で自分を包み込みガードしていた。つまりは全くの無傷。

垣根「じゃあ、そろそろ終わらせるか」

垣根が6枚の翼をはためかせ、ローラへ肉迫し、刀を振り下ろした。

ローラ「ゼロにする」

ガードのモーションすらしなかったローラへ、刀が直撃した。
しかし、全く手応えがない。垣根は一旦距離を取る。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:50:17.45 ID:itpxcIft0
垣根「テメェ、何をした?」

ローラ「ソーロルムの術式。術者が認識した武器による攻撃力を『ゼロにする』というもの。   
    効果時間はおよそ10分。その間対象は『ゼロ』のままとなる。
    もちろん限度はあるけど、貴方程度なら完全に攻撃力をゼロにできる」

ローラ「私が認識したのは『未元物質』。あなたは10分間『未元物質』を使った攻撃では
    私を傷つけることは出来ない。さて、どうする?」

垣根「どうもしねぇよ。何も能力自体が完全に使えなくなった訳でもねぇし
   武器が駄目なら素手もあるし、認識されなけりゃ武器もアリなんだろ?
   そんだけありゃあ、充分だ」

言ったそばから、懐から拳銃を取り出し、ローラへ放った。
再び黄金の鎧を纏っていたローラには、避けるまでもない。カンカン!と弾丸は弾かれていく。

垣根「やっぱ堅いな。じゃあこれはどうよ?」

垣根は素早く弾丸を入れ替え、発砲した。
別にソーロルムの術式で『ゼロにする』ことは可能ではあったが
どうせ鎧は貫けないので、ローラは敢えてそれをしなかった。

ローラの思惑通り、弾丸は鎧を貫く事は無かった。
それでも若干ではあったが、弾丸は喰い込んた。

垣根「弾けろ」

瞬間、喰い込んだ何発もの弾丸は炸裂した。
垣根は追い討ちをかけるように、どこに収納していたのか10個ほどの手榴弾を、ローラへ投下した。
ボガァァァン!と辺りに壮絶な音が響き渡った。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:52:41.48 ID:itpxcIft0
垣根(出血大サービスで、持っていた武器をほとんど使ったんだけど)

煙の中には平然と立つ1つの影。

垣根(やっぱあの鎧をどうにかしねぇと駄目か)

煙が晴れ、改めて良く見ると、鎧にヒビが入っている。だがそれだけ。
傷を負わせてはいない。しかも鎧は再生していく。

垣根(このままじゃ分が悪いか。結局10分後には、またゼロにされるかもしれねぇが
   ここは一旦逃げて時間を稼ぐか)

垣根は翼をはためかせ、空中に漂う。

ローラ「分かってる?『未元物質』をゼロにしたと言う事は、その防御力もゼロになっている
    と言う事。つまり、そこに匿っている子猫ちゃん達の檻も
    あっさり破壊できるってことだよ?」

垣根(しまった!)

ローラ「灰は灰に、塵は塵に、吸血殺しの紅十字!」

ローラの両手から、3000度の炎が上条達へ向かう。

垣根「させるかよ!」

垣根は炎と上条達の間へ入る。

ローラ「あは♪君が割って入っても、能力で防ぐ事は出来ないんだよ!」

垣根「だから、こうするんだよ!」

垣根は6枚の翼を器用に操り、目の前の地面を捲りあげ、即席で土の壁を創り出した。
結果、壁は砕けるも、垣根も上条達も無事だった。

垣根(やつはどこへ!?)

ローラ「ライトニーングサンダー!」

声は上から。ビリビリ!と言う音と言葉から推察するに、電撃系の攻撃だろう。
ならばと、垣根は10m先程に、先端を尖らせた棒状の導体を生み出した。
結果、それは避雷針の役割を果たし、ローラの出した稲妻はそこへ導かれ
垣根も上条達も無傷だった。

ローラ「やるわね♪ならば直接行くとするわ」

垣根「させねぇ!」

ローラは右手の『カルンウェナン』を上条達の檻へ振り下ろした。
そこへ垣根は割って入り、ローラの右手首を左手で掴む。
黄金の鎧で覆われている以上、握り潰す事は出来ない。
けれども、覆っている鎧ごと捻りあげる事は出来る。
垣根はローラの右手を思い切り捻る。
ローラはたまらず『カルンウェナン』を落とすが、構わず左手の『エクスカリバー』を振り下ろす。
垣根は『カルンウェナン』を拾い上げ応戦する。

ローラ「ゼロにする」

垣根(こいつ、自分の武器にためらわず――!)

ゼロになった『カルンウェナン』を『エクスカリバー』があっさりと砕き
そのまま垣根をも切り裂こうとしたが、ギリギリのところでその凶刃を避けた。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:54:05.99 ID:itpxcIft0
ローラ「あーあ『カルンウェナン』が砕けちゃったよ。どうしてくれるの?」

垣根「お前がやったことだろ」

ローラ「はぁ……もういいや。なんかこのまま戦い続けても、こっちが損するだけな感じするし。
    なかなか楽しかったけど、もう飽きちゃった。“死んで”」

瞬間、垣根は全身から力が抜け、ゆっくりと仰向けに倒れていった。
傷は無く、出血もなく、病気でもない。ただ、死んでいく。

垣根(ふ……ざけんな……)

こんな理不尽な事があるのだろうか。強い能力を持ってしまったばかりに『暗部』に
入れられ、一方通行に瀕死状態にされ、それでも死ねず脳を三分割されながら生かされ
この学園都市の危機にあたって、利用される為に蘇った。それでも護りたい人がいたから
ここまで垣根は垣根なりに精一杯生きてきた。それは決して誇れる人生ではなかったけど。

垣根(だからって……こんな最期って……ねぇだろ……)

先程までの炎や雷なら防ぎようはあった。
しかし言葉1つで、しかも「死ね」なんてあまりにも抽象的な表現では対策のしようがない。
そうして垣根の体は完全に地面に倒れた。『死』が確定した。
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:55:12.01 ID:itpxcIft0
そうして垣根が倒れてから約30秒。
甲高い音と共に檻が砕かれ、中から上条と心理定規が現れた。

心理定規「帝督!?帝督!?」

垣根を抱えながら必死で叫ぶが、返事は無い。

上条(まさか……)

垣根は見たところ無傷。なのに電池が切れたように動かない。
この状態は知っている。かつて「死ね」と言われた姫神のようだ。

上条「くそ!」

上条は急いで垣根に触れる。しかし、何も起こらない。『死』は既に確定してしまったからだ。

ローラ「ははは!もう遅い!もう死んでるんだよぉ!」

上条「テンメェェェエエエ!」

上条は怒りで我を忘れ、ローラに突っ込む。

ローラ「倒れ伏せ。上条当麻」

瞬間、ズン!と上条は地面に伏せられた。アウレオルスとは段違いの力。
それでも右手を少しずつ動かし、指を噛んでこの状況から逃れようとするが
ローラは右手を踏み、それを阻んだ。

上条「ぐああああ!」

ローラ「お前なんてなぁ!右手がなけりゃ、ただの男子高校生にすぎないんだよぉ!」

垣根に案外苦戦した苛立ちと、上条をコケにしている興奮で
ローラのテンションは最高潮に達していた。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:56:08.98 ID:itpxcIft0
心理定規「帝督!お願い目を覚まして!私じゃ何も出来ないから!
     無理を言ってるのは分かってる!
     けれど、この状況を変えるには、あなたしかいないの!」

ローラ「あははははは!何言ってるの?そいつはもう死んでるんだよ?
    何言ったって聞こえてるわけなーいじゃーん!」

上条「笑うな……人の死を、笑ってんじゃねぇー!」

その時だった。上条の叫び声に応えるように、バグン!と垣根の体が跳ねた。

心理定規「ふぇ?」

ローラ「なんだ?何が起こった?」
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:56:36.86 ID:itpxcIft0
――うるせぇな、あいつ。人の死を笑うな?誰が死んだって?
何1つ守れちゃいねぇのに、死ねるわけねぇだろ――

――私じゃ何も出来ないから、目を覚まして?当たり前だ。
ハナっからお前に期待なんざしてねぇんだよ。お前は黙って俺に守られてろ――
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:57:14.61 ID:itpxcIft0
心理定規に抱えられながら、垣根はゆっくりと目を開けた。

垣根「よぉ」

心理定規「え?あなた、死んだんじゃ……なかったの?」

垣根「なんだ、その死んでた方が良かったみたいな言い方は」

心理定規「え?いや、あの、そんなつもりは」

垣根「分かってるよ。冗談だ」

などと言いながら、心理定規の頭をワシャワシャと撫でた。

心理定規「ちょ、やめてよ。髪が乱れる」

垣根「お前が泣いてたから、撫でてやってんだろ」

心理定規「誰のせいだと思ってるのよ……」

垣根「悪かったな。でも、もう大丈夫だから」

そう言って垣根は立ちあがった。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:58:15.82 ID:itpxcIft0
ローラ(馬鹿な!?何があった!?)

能力の不発?いや、それはあり得ない。
現に上条には打ち消されはしたが、ちゃんと能力は効いていた。
今も、倒れ伏せ。という命令が依然続いている。だとしたら、残った可能性は1つしかない。

一度死んで蘇った。もうそれしか考えられない。

ローラ(にわかに信じがたいが)

まあいい。例え奇跡的に生き返ろうが、また殺せば良いだけ。

ローラ「死ね」

再び、容赦なく言葉を放った。
しかし、垣根は平然と立ったままだった。

ローラ「あれ?」

垣根「おいおい、死ねって言われて素直に死ぬ奴がいるかよ。馬鹿じゃねぇの?」

上条「何が起こって……」

ローラ「くっ!死ね!死ね!!死ね!!!」

ローラは何度も同じ言葉を口にするが、垣根は平然としていた。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 01:59:46.96 ID:itpxcIft0
垣根「もう諦めろ。どうやら俺はレベル6に進化したみたいだ。誰であっても、今の俺は殺せない」

心理定規「嘘……」

垣根「自分で言うのもなんだが『一度死んだ者が復活した時、奇跡の力を得る』
   歴史上、こう言う例はいくつか存在するらしいぜ。多分、俺もそれなんだろう」

ローラ「進化したからと言って、私の能力が通用しないだと……」

垣根「さて、そろそろその汚い足をどけてもらおうか」

そう言った次の瞬間には『未元物質』で作られた刀で、ローラは切り裂かれていた。
先程までの羽をはばたかせるとか、そういった動作は一切なかった。
故に動きが予測できず、気付いた時には切り裂かれていた状態だった。

ローラ(しかも……鎧ごとあっさりと……!)

そんな事を考えながら、ローラは超高速で距離を取る。しかし、今の垣根はそれをも許さない。

垣根「遅ぇよ」

超高速で逃げようとしたローラに一瞬で肉迫し、ブン!と垣根は右足で蹴りを繰り出した。
ローラは『エクスカリバー』でガードをしたが、バゴォン!と垣根の蹴りは
『エクスカリバー』を易々と砕き、ローラへ直撃し、ノーバウンドで100m先のビルまで
ぶっ飛ばした。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 02:01:47.34 ID:itpxcIft0
ローラ(ソーロルムの術式の効果もなくなっているのか?
    とりあえず、砕かれた鎧と傷の回復を……)

そう考えたローラであったが、既に垣根が目の前に居た。

垣根「俺にはもう勝てねぇよ。さっきテメェが『死ね』って言っても死ななかっただろ?
   俺の能力の方が上ってことだ」

言いながら、垣根はローラの腹を踏みつける。
その足の重さは、どう考えても人間のものじゃなかった。
踏まれた事は無いが、インド象よりも重いのではないか。

ローラ「く……足よ……吹き飛べ……!」

必死に言葉を絞り出したローラだったが、垣根の足に全く変化はない。

垣根「テメェのその言葉だけ?で自分の思い通りにするやつ。確かに凄えよ。
   相手にまで干渉出来るんだからな」

垣根「その点、俺が思い通りに出来るのは、自分の身体だけだ。
   けど、逆に言えば今の俺は自分の身体だけなら、最弱にも無敵にもなれる」

垣根「簡単に言うぜ。俺は現在『未元物質』そのもの。
   俺そのものがこの世の法則に当てはまらない。
   俺が思えば、この世界の法則では死ななくすることもできるし
   光より速く動く事も出来るし、ダイヤモンドよりも硬くなれるし、質量だって自由自在だ」

垣根「分かったか?もうお前は俺には勝てない。最後のチャンスだ。
   このままもう何も抵抗せず、大人しくするなら命は見逃す。どうする?」

ローラ「ハイ……ワカリマシタ……モウ……ナニモシマセン……」

垣根「案外物分かり良いんだな。いいだろう。見逃してやる」

垣根は足をどけ、踵を返す。

ローラ(なーんて、馬鹿じゃないの!お前は殺せなくても上条当麻は殺せるんだよぉ!)

ローラ「死ね!上じょ」

しかし、その言葉は最後まで続く事は無かった。
垣根の背中から生えている6枚の翼の内の1つが、ローラの顎をもぎ取ったからだ。

垣根「俺が言えた立場じゃねぇんだけどよぉ。お前性根から腐ってやがるな。
   やっぱ殺すしかないか」

ローラ「……!……!!」

上条「やめろ!垣根!」

垣根「無理」

上条の言葉も聞かず、垣根は6枚の翼でローラを細切れにした。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/15(月) 02:02:47.49 ID:itpxcIft0
上条「垣根ぇ!何もそこまでしなくても!」

上条は垣根のもとへ駆け、その胸倉を掴む。瞬間、垣根はただの人間に戻った。

心理定規「ちょ、ちょっと!帝督はあなたを助けるために殺したのよ!
     あの女は、ああやって諦めたふりをして、あなたを殺す気満々だったのよ!
     殺すしかなかったのよ!」

上条「けど!」

垣根「盛り上がってるとこ悪いが、疲れた。少し眠らせてくれ」

言ったそばから、垣根の体から力が抜けていくのが、胸倉を掴んだ手から伝わってくる。

上条「お、おい!大丈夫か!」

心理定規「帝督!」

心理定規は上条を突き飛ばし、垣根を抱きかかえる。
抱きかかえた垣根から、すーすーと寝息が聞こえる。

心理定規「よかった。あ、ごめんなさいね、突き飛ばしたりしちゃって。
     帝督はもう無理そうだから、あなた1人で行ってくれる?」

上条「……ああ」

垣根の事が若干許せない上条であったが、これ以上時間を割いている余裕もない。
とにかく病院へと駆け出した。


321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 02:50:22.54 ID:iNh2rC4q0
イギリス清教 第零聖堂区『必要悪の教会』

隻眼の男「ローラの野郎、あれだけ調子こいてた割にはあっさり死んだみたいだな」

それが意味する事は、今まで操られていた魔術サイドの人間達が、正気を取り戻したと言う事。

隻眼の男「つーことは、こいつらの洗脳も解けたと言うことか。ったく、だりぃ」

『こいつら』とは、現在進行形で行われている、インデックスの『自動書記』(ヨハネのペン)の
完全修復と覚醒の儀式を、隻眼の男と一緒に護っている魔術師達の事だ。

傾国の女「私……何を……」

エリザリーナ「く……」

マタイ=リース「ローラの奴め……」

隻眼の男「洗脳が切れたなら、もう邪魔なだけだよな。死ね」

瞬間、3人の魔術師はグシャ!と一瞬で圧死した。辺りに血の海が広がる。

隻眼の男「あーあ、暇だなー。なんか、楽しい事ねぇかなー」

その時だった。結界で守られていた扉が開かれた。そこには男と女。

オッレルス「ギリギリ間に合わなかったか」
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 02:52:46.51 ID:iNh2rC4q0
隻眼の男「オッレルス……!」

隻眼の男は、胸の高さまで腕を上げ、下ろす。先程3人の魔術師達にやった攻撃と同じだ。
それでオッレルスは潰れるはずだった。

だがオッレルスは右手を上にかざしただけで、3人の魔術師達とは違い潰れる事は無かった。

隻眼の男「……やっぱこの程度の攻撃じゃ死なねぇのか。あの噂は本当だって事か」

オッレルス「あの噂って?」

隻眼の男「テメェは本来、魔神になれるほどの実力を持っているのに、子猫を助けるために
     その機会を棒に振ったって事だ」

オッレルス「本当の事だけど?それは魔神になった君が言うべきセリフではない気がするけどね。
      オティヌス」

オティヌス「何で、子猫如きの為に、1万年に1度あるかないかのチャンスを棒に振った?」

オッレルス「子猫の命の方が、大事だったからに決まっているだろ」

仮にその子猫に100億円の価値があったからとかだったらまだ分かる。
しかしこの男は、たった1匹の小動物の『命』が大事だと言う理由だけで
『魔神』になる権利を捨てた。

オティヌス「余裕かましやがって。ムカつくぜ。最高にムカつく。殺す。ここで殺す!」

先程と同じように、腕を上げ、下ろす。
ただし、威力は先程の比ではないくらいに強く、しかも側に居るシルビアや
その空間ごと押し潰すつもりの攻撃。

対して、オッレルスも先程と同じように右手を上に挙げた。
それだけで、周りの地面はともかく、オッレルスとシルビアが潰されることは無かった。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 02:54:28.79 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「シルビア、君じゃあオティヌスには勝てない。その辺に隠れていてくれ」

シルビア「……分かったわ」

本当は出来れば共闘したい。だがシルビアには分かっていた。
自分がいても足手まといになるだけだと。

オティヌス「女を気遣うとは、余裕あるじゃねぇか」

オッレルス「今度はこっちの番だ。『禁書目録』は返してもらう」

無視して、オッレルスは左手を突き出す。『北欧王座』の『説明できない力』が前方に放たれる。
それは常人はもちろん、オティヌスですら不可視の攻撃――!

オティヌス「これが噂の『北欧王座』か!」

しかしオティヌスには、可視は出来なくとも何か強力なエネルギーが
放たれている事は分かっていた。腕を上げ、降ろす。
それだけでオティヌスの前方の『説明できない力』は潰れ、地面はへこんだ。

オッレルス「成程。君の重力、実に厄介だ。なら、これはどうかな」

オッレルスは右手を突き出す。
同じく『説明できない力』が放たれる訳だが、先の一撃とは違う。

オティヌス「っ!」

何かを感じたオティヌスは、後方に飛び退く。
すると先程まで居た空間に『説明できない力』が放たれていた。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 02:55:56.92 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「座標攻撃も出来んのか……!」

これでは重力で潰せない。面倒だ。ならば本人を潰すまで――!

オティヌス「死ねぇ!」

オティヌスの右手から直径30mほどの、触れれば吸いこまれ、圧し潰される重力球が放たれた。

対してオッレルスは右手を突き出し、重力球の中心に『説明できない力』を叩きこんだ。
それだけで重力球は内側から弾け飛んだ。

オティヌス(右手は座標攻撃、左手は普通の攻撃か)

オティヌスがそんな事を考えている内に、オッレルスは左手を突き出す。

オティヌス(普通の攻撃か。それなら――)

そう考え腕を上げ、降ろす。それで前方の『説明できない力』は押し潰された。
だが“それ以外の方向から”とんでもない衝撃。

オティヌス「ごっ、はぁ!」

肉体の表面から芯まで、その全てに均等に浸透するような不自然なダメージ。
しかし何故?オティヌスにはダメージより、疑問の方が大きかった。
そこへ考える暇も与えまいとオッレルスが突っ込んでくる。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 02:58:56.42 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「一発当てたからって、調子こいてんじゃねぇぞぉ!」

前方に重力の波動を放つ。それでオッレルスは潰れるはずだった。
しかし、オッレルスの姿は突如オティヌスの視界から消え去った。
それはオッレルスが一瞬でオティヌスの後方に周り込んだからに他ならない。

オッレルスは『説明できない力』を纏った右拳を繰り出した。これはもらった!と思ったが
拳が当たる直前に振り向きかけたオティヌスが微笑んでいるのをオッレルスは見逃さなかった。
そして、オティヌスにあと2cmというところで激痛と共にオッレルスは弾かれ
数十m先の壁に激突した。

オッレルス「これは……!」

考える暇もなく、追い討ちをかけるように
今度はオティヌスに向かって体が引き寄せられていく。

オッレルス(まさか、引力と斥力まで使えるのか――)

オティヌスは重力を纏った拳を構えている。上等だ。と
オッレルスも引力の勢いを逆に利用し、突っ込む。
1秒後、2人の拳は交錯し、ゴシャア!と壮絶な音が辺りに木霊した。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:03:40.17 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「がっ!」

拳が直撃したのはオッレルスだけだった。
初めから来ると分かっていてクロスカウンターをかましたオティヌスと
咄嗟の機転で攻撃に回ったオッレルスの差がこれだった。

しかも引力の効果はまだ続いている。
それはつまり、普通なら拳を受けぶっ飛ばされるはずが、まだそこに留まっていると言う事。
即ち、オティヌスがオッレルスを殴り放題だと言う事――!

オティヌス「タコ殴りじゃー!」

オティヌスの追撃の拳が放たれる。しかし、オッレルスはそれをいとも容易く右手で掴んだ。
と同時にオティヌスは気付いた。
殴り放題という至近距離は、オッレルスの手も届くと言う事。
オッレルスは左手をオティヌスの体に添える。

オティヌス「やべ、斥りょ」

オッレルス「遅い」

オッレルスの左手から、超至近距離で『説明できない力』が放たれた。
そのあまりの威力に、オティヌスは一瞬で数十m先の壁に激突した。
もう後退は出来ない。そこへオッレルスが右手を出しているのが見えた。座標攻撃が来る。

オティヌス(どうする――!)

オティヌスは何となく分かっていた。
座標攻撃が自分の居る座標に叩きこまれるのは当然、上にジャンプしようが
左右に移動しようが、敢えて前方に飛び込もうが、その全ての座標に
攻撃がセットされているだろうと。

だからオティヌスは、微妙に斥力を放ちながらジャンプした。
結果、本当にオティヌスの上にセットされていた『説明できない力』は弾かれた。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:07:09.02 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「君、案外冷静なんだね」

オティヌス「テメェこそ、あのタコ殴りにされるって状況で
      俺の拳を1発で掴み。逆に反撃してくるとはな。
      さすが『魔神』に最も近い男だと言われただけはあるぜ」

オティヌス(しかし、長期戦になるとマジでヤベェな。ここは一気に決める!)

オティヌス「喰らいやがれぇ!」

叫びと共に、突如オッレルスの周辺に7つ程の重力球が出現した。
その1つ1つが『聖人』ですら一撃で仕留める威力のをだ。

オティヌス「座標攻撃が出来るのはテメェだけじゃねぇんだぜぇ!」

対してオッレルスは、両手を水平に広げた。
そして全身から『説明できない力』を放ち、重力球を消滅させた。

オッレルス「別に俺の力は、手から出すと決まっている訳じゃないんでね」

オティヌス「くそが!ならこれはどうよ!?」

オティヌスは両手を上げ、下ろした。
重力のほとんどを分散させずに、敢えてオッレルスの真上に集約させ、下ろした。
しかしそれは、少し移動しただけで、重力の範囲からは逃れられると言う事。
オッレルスは攻撃を避けるのも兼ねて、両手を振り下ろして隙だらけのオティヌスに突っ込む。

オティヌス(かかったな!)

しかしこれはオティヌスの計算通り。
こうして突っ込んできたオッレルスを斥力で弾き、隙を作ろうと言う魂胆だった。
そうしてオティヌスは、拳があと2cmというところで、オッレルスに斥力をぶつけた。

だが、オッレルスは弾かれない。

オティヌス(何が!?)

間違いなく斥力の煽りは受けている。証拠にオッレルスの拳や体がビリビリと震えている。
斥力の煽りに弾かれないのではなくて、耐えている。
見れば、何もない後方に左手を突き出している。それが意味する事は、噴射。
左手から『説明できない力』を噴射し続けて、斥力に耐えている――!
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:08:02.28 ID:iNh2rC4q0
オティヌス(くっそがぁ!)

オティヌスも斥力を最大まで強くする。それはもう、ビルすら吹き飛ばすほどの威力。
第零聖堂区『必要悪の教会』でなければ、全てが粉微塵に吹き飛でいただろう。
それでもオッレルスは噴射し続け耐える。

オッレルス「おおおおおおおおおおおお!」

常に冷静なオッレルスが、おそらく人生で初めての咆哮をした。拳があと1cmまで迫る。

オティヌス「おおおおおおおおおおおお!」

負けじとオティヌスも咆哮する。拳の距離が3cmになる。

オッレルス・オティヌス「「おおおおおおおおおおおおおお!!」」

2人の咆哮が重なる。そして2人の咆哮以外の全ての音が消え――
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:10:00.06 ID:iNh2rC4q0
ゴギャア!と1つの音。オッレルスの拳が、オティヌスの顔面を捉えた音だった。
それは確かに、顔面しか捉えていないはずなのに『説明できない力』の効果なのか
まるで体中に拳を喰らったようだった。勝敗は決した。

オッレルス「……ふぅ」

シルビア「オッレルス……」

心配だったのか、シルビアは物陰から出てきてすぐにオッレルスに抱きついた。
そんな彼女の頭を撫でながら、倒れているオティヌスに言う。

オッレルス「『禁書目録』を返してもらおうか。
      多分俺も時間をかければ儀式を中断することは出来ると思うが
      時間もないし、出来れば君に頼みたいんだが」

オティヌス「は?何でだよ?」

オッレルス「君の負けだからだよ。負けた奴は勝った奴の言う事を聞くのは当然だろ?」

オティヌス「だから、俺はまだ負けてねぇのに
      何で言う事を聞かなきゃいけないんだって聞いてんだよ」

オッレルス「何を言って――」

瞬間、オティヌスの体がバグン!と跳ね、同時にとんでもない衝撃波が繰り出された。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:11:41.23 ID:iNh2rC4q0
オッレルス達は、衝撃波が繰り出される直前に何とか飛び退き、直撃を回避した。
一方オティヌスはと言うと、平然と立ちあがっていた。その背中からは黒い翼。
手の爪は異様に伸び、そして黒い尻尾に、頭からは2本の角が生えていた。

オッレルス「君、その姿は――」

しかし、オッレルスの言葉は最後まで続かなかった。
オティヌスが一瞬でオッレルスに肉迫し、その顔面を思い切り殴りつけたからだ。
その一撃は、ぶっ飛ばされたオッレルスが第零聖堂区『必要悪の教会』の壁を易々と破り
イギリスの街を数kmに亘って転がるほどの威力だった。

オッレルス「がは!」

削板に音速の2倍以上の速度で叩きつけられようが、オティヌスの斥力で弾かれようが
平然としていたオッレルスが、ここで明確に悶絶した。

オッレルス(あの姿は……がっ!)

考える暇すらなかった。ぶっ飛ばされてから2秒も経っていないのに、オティヌスは
オッレルスの顔面を蹴り上げ、地面から30mほど浮いた彼を空中でタコ殴りにした。
それでオッレルスの意識は中断され、無残に地面へと落下していった。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:15:10.27 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「はは。案外、呆気ねぇもんだなぁ」

ボロ雑巾のようになっているオッレルスを見下しながらそう言った。
そこへ音速以上の速度で走ってきたシルビアが、オッレルスを介抱した。

シルビア「オッレルス!オッレルス!!」

抱え、呼びかけるが返事は無い。一応呼吸はしているので生きてはいるが。

オティヌス「あーあ。所詮『魔神』に“近い”だけで『魔神』じゃなけりゃ
      『魔神』の領域に達した俺には勝てないってことか。
      それにしても差があり過ぎだろ。もうちょっとは楽しめると思ったのに」

シルビア「アンタ……何をしたの?その体は一体……?」

オティヌス「見たらわかるだろ。今の俺は言葉や形だけじゃなく、本当の意味で
      『魔神』になったんだ」

『魔神』とは『魔術を極めすぎて、神様の領域にまで足を突っ込んでしまった』人間の事である。よって厳密には、まだ不完全な『北欧王座』しか使えないオッレルスも
『魔神』という座だけは冠していても、実際はオッレルスに負けるほどでしかないオティヌスも
『魔神』とは言えない。それなのにオティヌスは“本当の意味で”『魔神』になったと言った。

オティヌス「まあ魔術を極めた訳じゃねぇけど、神に等しい強さの力を取り込んだんだから
      『神』って言う表現は間違いでもねぇよなぁ」

シルビア「どう言う……意味……?」

オティヌス「聖人って言うのは、身体は丈夫でも、頭の方は弱いのかなぁ?」

シルビア「いいから、答えなさいよ……!

オティヌス「……この状況で強気だとは、お前、面白ぇな。
      さっき俺が言った事思い出せ。そしたら分かるだろ」

シルビア「まさか……いや、けど、そんなこと、有り得ない……!」

オティヌス「ま、普通はそう言う反応だわなぁ。
      自慢じゃねぇけど、多分、この世界でこんな事が成功したの俺だけだと思うぜ」

狼狽するシルビアに、オティヌスは笑ってそう言った。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:18:38.31 ID:iNh2rC4q0
オティヌスが多分世界で初めて成功した事。それは悪魔との融合。

シルビア「冗談でしょ?悪魔との融合なんて、普通の人間なら、死んでもおかしくないのに……」

オティヌス「だよなぁ。我ながら凄ぇと思うもん」

悪魔と融合するためには、まずは悪魔を召喚しなければならないのだが
これについては悪魔に関する魔道書を1冊でも読み、人間を何人か生贄にすれば可能になる。
召喚条件はそこまで難しいものではない。
そしてオティヌスのように融合が成功すれば、莫大な力を得る事が出来る。

ではなぜ世界中の魔術師はそれをしないのか。答えは実に簡単。
人間を生贄にするという、明らかな倫理観の無視と、リスクが大きいからだ。

召喚した悪魔と融合、もしくは力を借りる為には、召喚した悪魔に勝利しなければならない。
それは容易なことではなく、返り討ちにあって殺されるのも珍しくない。
仮に勝利できたとしても、力を取り込んだ瞬間にその莫大なエネルギーに耐えきれず
大抵の人間は死ぬ。今のところ、ここまでなら魔術世界でも数例確認されて来た。

ここからは実際の例がないので何とも言えないが、もし取り込めたとしても
取りこんだ悪魔に乗っ取られる。また精神崩壊や病で死ぬ。というのが予測されている。
要するに『ハイリスクローリターン』と言う事だ(もし成功したら、悪魔の力を使役できるので
ローリターンと言う訳ではないが、リスクと照らし合わせて考えた場合)。

目の前の男は、これだけの条件をすべてクリアしたとでも言うのか。
有り得ない。そんなことは、有り得るはずがない。

シルビア「嘘……嘘よ!そうよ。これは幻なのよ……!」

オティヌス「認めろよ。実際俺の見た目は変わり、オッレルスを圧倒しただろ?それが証拠だ」

それでもまだ信じられなかったシルビアは
自分でもよく分からないまま、思わずこんな質問をしていた。

シルビア「じゃあ、アンタと融合した悪魔は何なの……?」

オティヌス「サタン。悪魔の中でも上位のサタンだよ」

シルビア「悪魔と融合するなんて……アンタの目的は一体何なの……!?」

オティヌス「強くなりたかったから。ただそれだけのことさ」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:20:34.87 ID:iNh2rC4q0
シルビア「そんな……アンタ、正気じゃない……!」

オティヌス「そーかぁ?もともと魔術なんてのは『才能のない人間が、才能のある人間へ
      追いつくために』存在するんだぜ。『強くなりたい』という俺の願望は
      それに最も近いだろ?」

シルビア「じゃあ聞くけど、そんなに強くなった先に何があるって言うの!?」

オティヌス「そりゃあ、まだ分からねぇよ。とりあえず最強無敵になってから考える」

オティヌス「つーかよぅ、それだったら何でお前らも強くなったんだよ?あ?」

シルビア「それは」

オッレルス「それは、大切な人やモノを守るためさ」

答えたのは、オッレルスだった。

オティヌス「今意識が回復したのか、それともだいぶ前から回復はしていて、
      黙って俺の話を聞いていたのか。ま、どっちでもいいけどよ。
      俺とコイツとの会話を邪魔すんじゃねぇよ」

そう言ってオティヌスは、オッレルスの頭を踏みつぶそうとしたが、
思い切り地面に足を降ろした頃には、既にオッレルスとシルビアの姿は無かった。

オティヌス「逃げたか」

だが今のオティヌスの魔力感知はずば抜けており、イギリス国内程度なら正確に位置を把握できる。追いかけて殺す事など造作もなかったが

オティヌス「ま、この世ともうすぐお別れする事になるんだ。少し待ってやるか」

取り込んだ悪魔に支配されていないからこそ湧き出た感情だった。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:22:36.46 ID:iNh2rC4q0
オティヌスから数km離れた場所にオッレルスとシルビアはいた。

オッレルス「シルビア、君は逃げるんだ。オティヌスの話が本当なら俺達は絶対に勝てない。
      だからせめて、君だけは逃げてくれ。俺が時間を稼ぐから」

シルビア「っざけんじゃないわよ!」

オッレルス「え?ぶはっ!」

シルビアはオッレルスを思い切りぶった。

シルビア「私だけ逃げる?そんなこと出来る訳ないでしょ!」

オッレルス「何を言っているんだ。分かるだろう?悪魔と融合したあいつは強い。
      はっきり言って俺でも勝てない。だから君だけでも」

シルビア「なら一緒に戦えばいい。
     アンタはこの程度で諦めるような、そんな人間じゃないでしょ!?」

オッレルス「じゃあはっきり言うけど、君なんかじゃ足手まとい以外の何物でもないんだよ!
      君なんかいても仕方ないんだ!」

言い方は酷いが、これはまぎれもない事実。オッレルスはシルビアを愛しているからこそ
諭すのではなく、真実を突きつけることによって、シルビアを諦めさせようとする。

シルビア「そんなこと分かってる。それでも一緒に行くって言ってんの。
     私だけ逃げるくらいなら死んだ方がマシ」

オッレルス「そんなの君の我儘だろ!俺は君に生きていてほしいんだ!」

シルビア「それだって、こっちからしたらアンタの我儘でしかない。
     アンタが私を連れてかないって言うなら、私はここで死ぬ」

オッレルス「意味が分からないよ……」

シルビア「アンタさ、待たされる側の気持ち考えたことある?」

オッレルス「それは」

シルビア「ないでしょ?私がいつもどれだけアンタを心配しているか……
     もう我慢できないの。なんなら私だけでもアイツに挑む」

オッレルス「でも」

その時だった。オッレルスのポケットの中の携帯が震えた。
着信を見ると、オッレルス達が現在住んでいる家からだった。
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:24:40.91 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「もしもし」

保護された少女『もしもし、まだ帰ってこないのー?どこで何してるの?
        もしかして、また私達みたいな子達を助けているの?』

オッレルス「いや、そうじゃない。そうじゃないけど……」

言い淀んでいるオッレルスから、シルビアは携帯を強引に奪いとった。

シルビア「もしもし」

少女『あ、シルビアお姉ちゃん。
   あのねー、オッレルスお兄ちゃん元気ないみたいだけど、何かあったの?』

シルビア「お、声だけでオッレルスのテンションが分かるんだ」

少女『えっへへー。私はオッレルスお兄ちゃんの事が大好きだからねー。
   それくらいは当然なんだよー』

シルビア「そう。じゃあさ、頼みがあるんだけど」

少女『なになに?』

シルビア「元気がないオッレルスを励ましてやってくれないか」

少女『そんなことなら、お安い御用だよー』

シルビア「そう。じゃあ代わるわね」

そう言ってシルビアは、オッレルスに携帯を差し出す。オッレルスはそれを無言で受け取る。

オッレルス「もしもし」

少女『もしもし、あのねー。私には、お兄ちゃんが何に悩んでいるかは知らないけどね、
   落ち込んでいるなら、これだけは言っとくよー?』

少女『お兄ちゃんは、絶対に途中で諦める人じゃないよ。
   生きる希望を無くした私達に、お兄ちゃんが生きる希望を与えてくれた。
   今でも、感謝してる』

少女『それと、辛くなったらいつでも相談してねー。私なんかじゃ
   頼りにならないかもしれないけど。お兄ちゃんは1人じゃないんだよ?』

少女『じゃあね、お兄ちゃん。早く帰ってきてねー』

それで、通話は終了した。
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:26:01.43 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「……」

シルビア「分かったでしょ?私達には、私達を待ってくれている人がいる。
     もう軽々しく、君だけ逃げろなんて言わないでよね」

オッレルス「君だって、死んだ方がマシ。とか言ってたじゃないか」

シルビア「それぐらい言わないと、アンタ納得しないでしょ」

オッレルス「……」

シルビア「あの子も言ってたけど、アンタは途中で諦める人じゃない。私が1番良く分かってる」

オッレルス「でもやっぱり」

シルビア「まだ、私達は死んでない。ボコボコにされただけで、死んでない。
     だったら、また立ちあがればいい。やられても、立ちあがる。
     何度も、何度でも。死なない限りは」

シルビア「行こうよ。オッレルス。そして勝って、2人で帰ろう」

オッレルス「……もういいよ。分かった。やってやろうじゃないか。
      そもそも悪魔の1匹ぐらい倒せなきゃ『魔神』になる資格もないだろうし」
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:26:58.23 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「おいおい、ようやく戻ってきたかと思えば、女連れかよ。
      せっかく逃がす時間を与えてやったてのによ」

オッレルス「余計な御世話だ。君は俺達2人で倒す」

オティヌス「あのさぁ」

瞬間、オティヌスはオッレルスの真横に居たシルビアの顎を蹴りあげていた。

オティヌス「調子乗ってんじゃねぇよ?」

そして蹴りあげられたシルビアを追撃しようと、オティヌスは飛ぼうとするが

オッレルス「それは君の方だ」

オティヌス「おお?」

オッレルスはオティヌスの尻尾を掴み、思い切り投げ飛ばした。
オティヌスはイギリスの街並みを数kmに亘って転がった。
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:28:33.27 ID:iNh2rC4q0
オッレルス(大見得を切ったものの、やはり速い。
      何とか反撃は出来たが、やつの攻撃は全く見えなかった)

オッレルス「大丈夫かシルビア?」

シルビア「ええ。なんとかね」

オッレルス「油断するな。やつはすぐ戻ってくる」

そうやってオッレルスが注意を促した1秒後に、オッレルスはオティヌスの爪で切り裂かれた。
あまりの速度に、オッレルスは半歩しか下がれなかった。

オティヌス「浅かったか」

しかしオッレルスは、切り裂かれながらも咄嗟にオティヌスの手を掴んでいた。
そこへシルビアはオティヌスの後ろから剣を振るった。

オティヌス「甘ぇ!」

後方からの一撃に対して、オティヌスは尻尾で対抗。
結果、その一撃はシルビアを吹き飛ばした。

オティヌス「調子こきやがって」

オッレルス「くっそおおおぉぉぉ!」

叫びながら、オッレルスは左手をオティヌスの体に添え、全力で『説明できない力』を放った。
まともに喰らったオティヌスは、またも数km吹き飛ばされる。

オッレルス(攻撃する暇を与えちゃいけない!叩みかける!)

オッレルスは吹き飛ばされたオティヌスのもとへ駆けだす。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:30:24.07 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「やるじゃねぇか」

オティヌスがそう言って体を起こした時には
既にオッレルスが真上から『説明できない力』を放っていた。

オティヌス「成程。攻撃する隙を与えないってかぁ!」

しかしオティヌスは、翼で自身を包み込みガード。
返す刀で翼を思い切り広げ、莫大な風力をオッレルスにぶつける。

オッレルス「ぐ、おお!」

それに対してオッレルスは左手から力を噴射し、風に耐えきった。
直後に右手から光の剣を出現させ、逆に突っ込む。
ガキィン!と光の剣は、しっかりと受け止められた。

オッレルス「くっ!」

オティヌス「こんな事も出来んのか。器用な奴だ。けど俺はこんな事も出来るぜ」

オッレルス(――っ!)

直後、オティヌスの口が大きく開かれ、ビュオ!と赤い光線が吐き出された。
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:33:30.38 ID:iNh2rC4q0
ズザ!と靴が地面に擦れる音。オッレルスは光線を紙一重で避け後ろへ周りこんでいた。
オティヌスは咄嗟に尻尾を振るう。

オッレルス(待っていたよ!)

後ろからの攻撃に対して、もし何らかの防御策があれば
わざわざ振り向かずに、誰だってそれで防御するだろう。
そして分かっている攻撃なら、いくら速くても対応できる。
オッレルスは尻尾を左手で掴み、右の手刀で尻尾を切り裂いた。

オティヌス「ちぃ!」

思わずオティヌスは裏拳を繰り出す。これもオッレルスの予想通り。
後ろの敵へ即座に反撃すると言ったら、裏拳か後ろ蹴りくらいだ。
しかし後ろ蹴りは、かなりのバランス感覚を求められる上、外せば隙が生じる。
だから大抵は裏拳の場合が多い。
今のオティヌスなら翼もあるが、真後ろと言うのは、風で攻撃するにしても
翼を叩きつけるにしても角度的に難しい。性格上、翼で防御に転じると言う可能性も低かった。

よってオッレルスは、思い切りしゃがみ、裏拳をかわした。
右か左から来るかは分からなかったが、しゃがめば関係ない。
間髪入れずにオティヌスの足を払い、転ばせる。
そこへ、シルビアが空中から剣の切っ先を下へ向けながら
仰向けになったオティヌスの顔面目がけ落下する――!

オティヌス「馬鹿が、返り討ちだ!」

口を開き、そこから光線を発射しようとして――
そこにオッレルスの『説明できない力』が叩きこまれ、吐き気と共に光線は不発に終わる。

オティヌス「くっそがあああああああああああああああああああああああああ!」

断末魔の叫びと共に、グシャア!とオティヌスの顔面は貫かれた。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:37:00.45 ID:iNh2rC4q0
シルビア「はぁ……はぁ……」

オッレルス「……やったのか?」

シルビア「ええ」

剣が口の中を貫き、地面にまで刺さり、血まみれになっているオティヌスを見てそう言った。
しかしながら、大ダメージには違いないだろうが、まだ死んではいないはず。
そう判断したオッレルスは

オッレルス「念のため、これから封印するぞ。
      時間がもったいないが、放っておくわけにもいかない」

シルビア「分かったわ」

オッレルスはボロボロの体をひきずり、シルビアは跨っていたオティヌスから立ちあがって
封印するための準備をしようとしたところで、バキャア!という鉄が砕けた音が響いた。
瀕死のオティヌスが、剣を噛み砕いた音だった。オティヌスはゆっくり起き上がる。

オッレルス・シルビア「な――!」

オティヌス「テメェら……許さねぇよ?」

口の中を貫かれ、声なんて出せるはずないのに、何故か声が聞こえた。

オッレルス(くっ!)

ヤバい、と思った時にはもう手遅れだった。
オティヌスは一瞬で2人に肉迫し、顔面を掴み思い切り地面に叩きつけた。

オティヌス「ぎゃははは!」

オティヌスは気絶したシルビアを無視して、オッレルスを殴ろうとしたが
オッレルスは反撃の頭突きを繰り出した。
それは見事にヒットするが、ダメージを受けたのはオッレルスだけだった。

オティヌスは頭突きによって興醒めし、殴るのを止めオッレルスを真上に放り投げた。
そして赤い光線を吐きだし、オッレルスに直撃させた。ひらひらと紙きれのように
オッレルスは無残に落下する。光線を喰らえば、本来なら消滅してもおかしくないのだが
口の中を貫かれた事によって、威力は大分落ちていた。

オティヌス「あーあ。足りねぇ。足りねぇよ。もっともっと抵抗して来いよぉ!おらぁ!」

しかし既に気絶しているオッレルスとシルビアには聞こえていない。

オティヌス「つまんね。こうなったらイギリスの街を破壊して遊ぶか」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:38:51.69 ID:iNh2rC4q0
ボガァン!ドゴォン!バガァン!と爆発音のようなもので、シルビアは目を覚ました。

シルビア「……一体、何がどうなって……?」

そうして周りを見渡し、見つけたのはぐったりとしたオッレルスだけだった。

シルビア「オッレルス……!オッレルス!!」

側により、抱き上げ、呼びかけるが返事がない。それどころか、呼吸すらしていない。

シルビア「ちょ、ちょっと!ねぇ!ねぇ!」

思わずオッレルスの体を揺さぶってしまうシルビア。しかしやはり目覚めない。
ふと思い出して、胸に耳を当ててみると、心音も聞こえていなかった。

シルビア「嘘……嘘でしょ!」

言いながらシルビアは心臓マッサージを始めた。
確か心臓や呼吸が止まった人が助かるかどうかを大きく変える境界は10分だったはず。
自分は何分気絶していただろうか。考えながらも、心臓マッサージを続ける。

シルビア「お願い……!目を覚まして!」
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:41:17.82 ID:iNh2rC4q0
そうして心臓マッサージを始めて、3分ほど経っただろうか。オッレルスは、目覚めない。

シルビア「どう……すれば……」

今でも爆発音が響いている。オティヌスがイギリスの街を破壊している音だろう。
しかし、オッレルスは目覚めない。自分も満身創痍。
こんな状態で、悪魔と融合したオティヌスを止める事など――

とそこで、シルビアは自分の思った事を反芻する。

シルビア(悪魔と、融合……)

そこで気付いた。まだ1つだけ方法がある事に。
だがそれは、最良の選択ではあるが、完璧なハッピーエンドには至れない。

シルビア(それでも――!)
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:42:50.66 ID:iNh2rC4q0
それから3分後。
シルビアが描いた魔法陣の中心に倒れたオッレルスと、そこに寄り添うシルビアがいた。

シルビア「ゴメンね。2人で帰ろうって言ったけど、その約束守れそうにない」

そうしてシルビアは、オッレルスの唇に自分の唇を重ねた。

シルビア(あなたを……愛してる)

同時にオッレルスとシルビアは光に包まれた。シルビアが執った手段。
それは自身を生贄にしてテレズマの一部をオッレルスに託す事だった。
その光は徐々に広がり、やがて――
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:44:35.78 ID:iNh2rC4q0
オティヌスは遠くに光を見た。その光は決して大きくない。
けれど弱弱しくもなく、温かい光。

オティヌス「……ありゃあ……」

その光の場所へ、オティヌスは突っ込んでいく。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:45:56.20 ID:iNh2rC4q0
オティヌスが光の場所へたどり着くまでに30秒もかからなかったが
その間に光はなくなっていた。代わりに、1人の『魔神』が浮遊していた。

オティヌス「面白ぇ。ようやく俺と同じ境地に至った訳か」

オッレルスは答えない。頭上には白い輪っかに、背中からは白い翼。
ただその目からは、一筋の涙が流れていた。

オティヌス「なぁーに、泣いてんですかぁ!」

両手の爪でオッレルスを切り裂こうと突進する。
オッレルスも迎え撃つように突進。0・0000001秒で2人の『魔神』が交差した。
それは本当にただの交差。爪がかすったとか、翼が掠めたとかそんなことは一切なかった。
にもかかわらず、オティヌスの全身に切り傷が走った。

オティヌス(かまいたち……なのか……!?)

オティヌス「なめやがってー!」

振り返り、もう一度突進。オッレルスもやはり突進。2人の『魔神』は2度目の交差をした。
それでオティヌスの黒い翼は根元からちぎれ、頭の角もへし折れ、腕はもぎとられた。
勝敗は、決した。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:47:27.19 ID:iNh2rC4q0
無残に地面に落下していくオティヌスを見ながら、オッレルスは
オティヌスを倒した喜びとシルビアを失った悲しみに駆られていた。

オッレルス(シルビア……俺、やった。やったけどさ……君がいないんじゃ……)

しかしオッレルスに、感傷に浸っている暇はない。
彼が戦っていた理由は、オティヌスを倒すことではなく、インデックスを救出する事である。

とりあえず、第零聖堂区へ行こうとしたところで、ゾン!と圧倒的な威圧感。
それはもちろん瀕死のオティヌスのものではない。
威圧感の発生源は、まさに今から行こうとしているところからだ。

オッレルス(……急がなきゃ!)

だがその必要はなかった。儀式が完了し、ヨハネのペン状態になったインデックスが
オッレルスの鼻先数cmのところに、いきなり現れたからだ。

オッレルス「――!」

言葉を発する前に、彼の体は光の爆発に飲み込まれた。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:51:02.81 ID:iNh2rC4q0
10%とは言え、テレズマを吸収したヴェントは『聖人』と同等か、それ以上の強さである。
もちろん、今は力が馴染んでいない為100%の力は発揮できないが、
せめてフィアンマ、もしくは『幻想殺し』の少年が来るまでの時間稼ぎくらいは出来ると
ヴェントは思っていた。

しかし、それは甘い考えだった。
ミカエルがたった一振り、右手に持っていた剣を振り下ろしただけで
学園都市の大地は割れ、ヴェントは愚か、遠くから見守っていた少女達と一方通行を吹き飛ばし
瀕死に追い詰めた。一方通行が一瞬神化して、皆を守らなければ全員死んでいただろう。
レベルが違った。現在意識を保っているのは、ヴェントと一方通行だけである。

一方通行「オマエ……カッコつけて出てきたくせに……さっきから
     何の役にも立ってねェじゃねェか……」

ヴェント「分かってるわよ……私だって……ケドさ……強いわ、やっぱ……」

軽い調子に聞こえなくもないヴェントの返事の仕方に、怒りすら覚えた一方通行だったが
ヴェントに怒ったところで、この事態が変わるわけでもない。彼女だけの責任でもない。
自分があまりにも無力な事もある。だからもう一方通行は、神頼みするしかなかった。

一方通行(誰か……いねェのか……残りのレベル5は何をやってやがる……
     あのヒーローは何をやってやがる……?)

もちろん今挙げた人物のどれか、いや寧ろ総動員したって、この大天使に簡単には勝てないだろう。
それでも一方通行は願った。そんな彼の願いは、届いた。

男「なんや、本当に一方通行君が地面に這いつくばってるなんてな。
  これはなかなか拝めへん光景やで~」

世界三大テノールでもびっくるするような野太さで、似非関西弁を話す声が聞こえた。
一方通行はその男を見た。青い髪の毛に、耳にピアス。

一方通行(何だアイツは……いや誰でもいい……この状況を変えられるなら……)

一方通行「頼む……コイツらを……助けてやってくれェ!」

男「言われなくても、この青髪ピアスが助けたるで~」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:53:57.91 ID:iNh2rC4q0
会話はそこまでだった。ミカエルが左手から直径1kmにも及ぶ、莫大な炎の塊を放ったからだ。
その光景に誰もが息をのむ。1人の男を除いて。

青ピ「その程度では、僕を倒す事は出来へんで~」

瞬間、青髪の周囲から莫大な量の水が渦巻いた。
それは炎の塊とぶつかり、蒸発と言う形で相殺された。

一方通行「水流操作(ハイドロハンド)……!」

そのまま字の通り、水を操作する能力。
この量の水を操作できると言う事は、レベル4以上は確実だろう。

青ピ「僕の能力は『蒼竜激流』(ブルーストリーム)って言うんやけどね。
   まあ御坂ちゃんと同じ、カッコつけて違う能力名で申請しただけなんやけどね」

どうでもいい情報を聞かされた一方通行は、しかし青髪に何かを感じた。

青ピ「次はこっちから行くで」

瞬間、先程とは比べものにならない量の水が青髪の周囲から湧き出る。
それは竜の形になった。しかも2匹。1匹につき333tで、大きさはミカエル以上の竜。
2匹合わせれば確実に学園都市を水没にまで追い込めるほどの水量。
それをミカエルにぶつける――!

ミカエル「fghrsdtjwkgktgdjghq!」

ミカエルも右手の剣を振り下ろす。しかしそれは、2匹のうちの1匹の竜に止められた。
その隙にもう1匹の竜が、まさに激流の如くミカエルを飲み込んだ。

一方通行は確信した。この男はレベル5の第6位なのだろうと。
そしてこの強さは、御坂美琴や麦野沈利を越えているだろうと。

学園都市の序列は強さだけで決めるものではない。能力の研究価値の方が重要視される。
だからこの強さで第6位なのだろうと、一方通行は余計なことまで考えていた。
それほどまでに圧倒的だった。

しかしそれ以上の現実が、彼らを待ち受けていた。
333tもの水量をまともに喰らったのに、平然とミカエルが君臨していたことだ。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:55:19.79 ID:iNh2rC4q0
一方通行(あの一撃でも……無理だってェのか……)

先程の青髪の一撃は、コンテナ8個分の超巨大『超電磁砲』や
極限までチャージ&滝壺の補助あり『原子崩し』よりも上だった。
一方通行も、さすがにこれだけでは終わらないだろうとは思っていたが
ここまで平然としているとは、予想だにしなかった。

青ピ「はぁ……はぁ……簡単にはいかへんと思っていたけども
   こうも余裕で耐えきられるとなあ。さすがにショックや……」

青髪ピアスは辟易していた。当然だ。と一方通行は思った。
あれだけの水量を生み出して攻撃をしたのにもかかわらず、余裕で耐えきられたのだ。
それは彼のプライドを引き裂いた事だろう。精神的なダメージは計り知れない。
加えてあれだけ能力を全開にした攻撃をすれば、疲れるのは当然。
正直立っているだけでも称賛に値する。

青ピ「まだや……まだ終わってへん……!」

再び青髪の周囲に水が渦巻く。先程よりは圧倒的に少ない水量。
それでも、残った持てる力の全てを発揮しようとしたところで

ミカエルの体が突然大きく仰け反った。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:56:33.11 ID:iNh2rC4q0
青ピ「なんや!?何が起こったんや!?」

驚いているのは青髪ピアスだけではない。一方通行も目の前の光景に呆気に取られていた。
ただ1人、ヴェントだけは笑みを浮かべていた。

ヴェント「全く……遅いんだよ。アイツ」

一方通行「何言ってやがる?」

ヴェント「よく見な。ミカエルの顔面付近」

一方通行は言われた通り、見上げ、目を細めた。すると確かに、ミカエルとは別の赤い何かがいた。

一方通行「ありゃあ何だ?」

ヴェント「ちょっと特殊な右手を持った人間だよ。私のパートナーでもある」

そんなことまでは聞いていなかったのだが、言葉から察するにヴェントの仲間なのであろう。
それもミカエルを仰け反らせるほどの強さを誇るのならば心強い。
そんな事を考えている内に、赤い男がヴェントの前に降り立った。

フィアンマ「大丈夫……じゃないみたいだな。遅れてすまなかった」

ヴェント「本当よ。あと少し遅かったら、皆消炭になっていたところよ」

フィアンマ「その代わりと言っちゃあ何だが、あとは俺様に任せておけ」

一方通行「オマエが強いのは分かる。けど、1人でやれンのかよ?」

フィアンマ「出来る限りはな」

そう言ってフィアンマは、両手から炎を噴射し、ロケットのように飛び立った。
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:57:39.08 ID:iNh2rC4q0
フィアンマは素早くミカエルの顔面前へ移動すると、噴射を左手だけにし
右肩から莫大な炎を噴射しながら右拳を放ち、ミカエルの顔面へ深く突き刺した。
それは比喩ではなく、本当に拳が顔面に喰い込んでいた。

フィアンマ「吸収!」

突き刺さった右手から、自身の属性と適合するミカエルのテレズマを吸収する。
だがミカエルのダメージは、青髪ピアスとフィアンマを合計しても1割ほどでしかない。
万全状態とさして変わらないこの状態から、全部を吸収しきれるはずもない。

フィアンマ(それでも、やれるだけやってやる!)
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 03:59:40.21 ID:iNh2rC4q0
吸収から3分。実に25%ものテレズマを吸収したところで、フィアンマは限界をむかえた。
フィアンマは何とか地上に着地するも、右手を抑えてうずくまっていた。

一方通行「おいおい、俺が言える立場じゃねェけど、アイツあれで終わりかよ!?」

ヴェント「もう充分でしょ」

一方通行「オマエ、パートナーが頑張ったからって惚気てンのか!?
     過程がどうこうじゃねェ。結果がなきゃ意味ねェって言うのによォ!」

ヴェント「うるさいわね。もう充分だって言ってるでしょ」

だから何が充分なのか。一方通行がキレかけたところで、咆哮が聞こえた。
それは、忘れたくても忘れられない、あの少年の咆哮。

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

右手に『幻想殺し』を宿した少年が、空中からミカエル目がけ落下する。

一方通行「アイツ、空飛ンで……」

浜面「迎えだ……」

いつの間にか重傷の浜面仕上が側にいて、一方通行にそう言った。

一方通行「あァ!?」

浜面「だから、ゴリラで上条を迎えに行った半蔵と郭が、あいつをビルの屋上から
   思い切り投げ飛ばしたりしたんだよ。多分。未だによくわかんねぇけどさ。
   あいつの右手、異能の力なら何でも打ち消せるんだろ?
   それで、あの赤い天使みたいなのが異能の力だと言うのなら
   もうチェックメイトなんじゃないのか?」

そうか。と一方通行は悟った。
ヴェントの充分だと言うのは、上条当麻が来るまでの時間だったのか。と
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:02:36.36 ID:iNh2rC4q0
上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

落下してくる上条に対して、ミカエルは右手の剣を突き出した。
上条はそれに臆することなく、己の右手を繰り出す。
そして剣の切っ先と右手が触れた瞬間、キュイーン!とガラスが割れるような
甲高い音と共に、剣の方が先端から崩れていく。

ならばと、ミカエルは左拳を繰り出した。対して、上条はやはり右手を繰り出す。
そして拳と拳が触れ合った瞬間、やはり甲高い音と共にミカエルの左拳は触れた箇所から
消えていく。

剣と左手を失ったミカエルは、フリーになった右手でフックを繰り出す。
真正面から殴るのではなく、横から打つ。

上条「なめんなよぉ!」

上条は空中で180度右回転する。つまり、ミカエルの右フックを裏拳気味で迎え撃った。
結果、ミカエルの右腕は手首から消えていく。

そして上条の右手が、本体まであと10mというところで、ミカエルは炎に包まれた翼で
上条を包みこもうと翼を動かした。つまりは道連れ。

上条「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

右手に『幻想殺し』しか持たない上条に、空中で方向転換をする術は無い。
仮に上条の右手が本体へ触れ、打ち消しが始まったとしても、数秒は翼が残る。
そして数秒もあれば、その翼の残骸に上条は溶かされる。
万事休すか。上条と、下から見ていた意識を保っている面々はそう思った。
ただ1人の男を除いて。

青ピ「遅すぎるでカミやーん!」

青髪の咆哮と同時に、2匹の水の竜がミカエルの翼目がけ上昇し、噛みついた。
よって、翼の包み込む動作は止められた。

上条「終わりだぁぁぁあああああああああああああああああああああ!」

ついに上条の右手がミカエルの顔面に触れた。
瞬間、バリィィィィィン!と、鼓膜が破れるのではないかというほどの甲高い音が周囲に響いた。
触れた箇所から、ミカエルは徐々に消えていく。
そして上条が地上でヴェントにキャッチされた時には、完全に消滅していた。
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:05:11.34 ID:iNh2rC4q0
一方通行「やりやがった……あの天使を、右手1本で……」

前からとんでもない右手を持っている事は知っていたが、まさかここまでだとは思わなかった。
そんな風に、一方通行ですら尊敬しかけている上条当麻は現在、ヴェントの胸に顔を埋めていた。

ヴェント「ちょっと、早くどけてほしいんだけど」

胸に顔を埋められているヴェントは至って冷静にそう言った。

そもそも何故こんな事になっているかと言うと、上条を安全に着地させようと
ヴェントは魔術を使い上条を風に包みこんだのだが、上条が地上まであと3mの
ところで間違って『幻想殺し』で魔術を解除してしまったので
仕方なくスライディングを決め込み、何とか上条をキャッチしたからである。

そこで上条も早く避ければ良かったものの、たび重なる連戦での疲労の蓄積(回復魔術や
『冥土帰し』の薬などはあったが、あくまで応急処置的なもので疲労の方が圧倒的に大きい)や
ミカエルを倒して緊張の糸が解けせいか、上条は動けず顔を胸に埋めっぱなしだった。

それに黙っていなかったのは2人の男。

青ピ「おいおいカミやん。一体何人の女の子に手出せば気ぃ済むねん。
   僕も結構頑張ったよ?カミやんだけラッキースケベはずるいわ。
   だから、僕にもおっぱい揉ませて下さい」

ヴェント「ツッコむとこそこじゃないでしょ。つーか揉ませねーよ」

フィアンマ「お前は後で殺す。その前にまずは上条当麻から殺すがな」

洒落にならない殺気を放ちながら、フィアンマは上条の制服の襟首を掴み持ちあげる。

上条「ぷはぁー!危ねぇ!呼吸できなくてもう少しで死ぬとこだった!」

フィアンマ「大丈夫だ。すぐに俺様の手で殺してやる」

上条「え、フィアンマさん?何でフィアンマさんがそんなに怒っているんでせうか?」

フィアンマ「俺様の女の胸に顔を埋めたから」

上条「なるほどそう言う訳ですか。いえね、上条さんも早くどく気はあったのですよ?
   ただ体が動かなくてですね、この件に関してはちょっとゆっくり話し合いで
   解決できませんか、できませんね、すいませんでしたーっ!」

いつもの癖で言い訳が謝罪になっている上条は、容赦なく殴られた。
フィアンマではなく、青髪ピアスに。その勢いで上条は地面を転がる。

上条「ちょ、何すんだよ!何でお前が怒ってんだよ!」

青ピ「うっさい!僕の心の痛みを知れ!」

訳の分からない事を言いながら、上条に殴りかかる青髪、対抗する上条。
いつもの下らない話題からの喧嘩になってきたところで

フィアンマ「……馬鹿馬鹿しい。もういい。大丈夫だったか、ヴェント」

ヴェント「うん」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:06:58.15 ID:iNh2rC4q0
滝壺「あくせられーた、皆を守ってくれてありがとう」

浜面と同じく病院を飛び出した滝壺理后は、少女達を守ってくれたお礼を言った。

一方通行「俺は何もしてねェ。お礼なら、あそこで喧嘩している馬鹿2人と
     あの気持ち悪ィ右腕持ってる人間にでもするべきだ」

滝壺「そんなことないよ。あくせられーたは、黄色い天使を倒したし
   赤い天使の攻撃からも、むぎの達を守ってくれた。感謝してる」

一方通行「あっそォ。なら素直に受け取っとくわ。じゃあよ、情けない話なンだが
     肩かしてくれねェか?俺1人じゃ、立つこともままならねェ」

滝壺「もちろんだよ。恩人だからね」

一方通行は滝壺の力を借りて立ち上がる。立つ事もままならなかった彼はまともに歩けもしない。
よって一方通行は、必然的に滝壺によりかかるわけなのだが

一方通行「助かったわ。ところでよォ、なンつーか、後ろから殺気を感じるンだけどよォ。
     何とかしてくンねェ?オマエの連れだろ?」

一方通行の言っている意味が良く分からなかったが、滝壺はとりあえず振り返る。
そこにいたのは、一方通行×滝壺理后というシチュエーションに耐えきれず
今すぐにでも一方通行へ殴りかかろうとしている浜面仕上だった。

滝壺「は、はまづら……!?違うの。こ、これはね。
   私が出来る精一杯のお礼で、決して浮気なんかじゃ」

滝壺の説得?も虚しく一方通行は浜面に押し倒された。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:08:24.89 ID:iNh2rC4q0
一方で4人の少女達は自力で目を覚ました。
そこで少女達が見たのは、1人の少年が真っ白な少年を押し倒しているのを必死で止める少女と
青い髪の毛の少年が、ツンツン頭の黒髪の少年と喧嘩している光景だった。
それだけで3人の少女の行動方針は決定した。

絹旗「浜面が超浜面のくせに、第1位を殴って、それを滝壺さんが止めるなんて
   一体何がどうなっているのでしょう?」

麦野「面白そうね。行ってみましょ」

麦野と絹旗は、滝壺達の方へ。

御坂「あ、あの青い髪の毛野郎何なの?今すぐぶちのめしてやる!」

御坂美琴は、上条当麻の方へ。

結標(なんか……私だけ1人ぼっち……)

麦野沈利と絹旗最愛は滝壺理后と『仲間』である。御坂美琴は上条当麻と頻繁に諍いを
起こしており、その様子は仲睦まじく『友達』と言えなくもない。
そんな中、誰ともそこまで親しくない結標淡希は迷った。
一方通行とは元『同僚』であって『仲間』なんて大層なものじゃないし
ましてや『友達』でもない。寧ろ因縁があるくらいだ。

結標(……そうね。どうせならあっちの集団に突っ込む方が面白いかも)

そうして結標は、上条達の集団へ突っ込んでいった。
これが運命の出会いになるとは、この時点ではまだ誰も知る由もなかった。
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:10:46.81 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「なんか……おかしくないか?」

ヴェント「彼ら、戦争が終わったと思って、はしゃいでるんじゃないの?」

フィアンマ「まだ終わっとらんと言うのに。無知とはいいものだな」

ヴェント「どうやったら止まるんだろう?」

フィアンマ「そもそも、俺様やヴェントは戦闘の始終を見ていたから分かるが
      あの女どもは、こうやって詳細をよく知らない俺様がいたり
      天使がいなくなったことに、何の疑問も持たんのか……」

ヴェント「この国で言う『空気を読む』っていうアレなんじゃない?
     上条当麻とかがはしゃいでいるから、それに則って。みたいな」

フィアンマ「ふん。良い風習なのか、悪い風習なのかよく分からんが……
      そろそろ本題に入りたいし、時間もないから、ここで制圧しとくか」

そう言うとフィアンマは地面を殴りつけて、その震動ではしゃいでいる連中を
黙らせようと思い、拳を振り下ろそうとしたところで

ドシィン!と地面が震動した。
はしゃいでいた連中と、フィアンマとヴェントは何だ?と思わず震源の方向を見る。

そこにいたのは何人かの人間を抱えたゴリラだった。
そのゴリラの頭から、2人の人間が出てくる。

半蔵「急患を何人か拾ってきた!何人か運ぶの手伝ってくれ!」

その声に反応したのは浜面、上条、青髪。3人ははしゃぐのをやめゴリラへ近付く。
ゴリラは抱えていた削板、垣根、心理定規と五和を含む天草式の何人かを降ろした。

五和「上条……さん」

意識はあるがフラフラの五和は、上条に寄りかかる。

上条「お、おい!大丈夫か?」

五和「はい……上条さんが支えてくれるので……何とか……」

青ピ「おいおいカミやん。こんな別嬪さんともフラグ立てとんのかい?
   女垂らしなんてレベルじゃねーぞ」

もはや似非関西弁すら忘れている青髪へ、上条が悪口を言われたと思ったのか、五和が言い返す。

五和「上条さんのことを……悪く言わないでください……この人は……
   自分の損得の為ではなく……人の為に動ける人なんです……」

上条「い、いいって五和。こいつはそんなつもりで言ったんじゃないんだ。
   冗談みたいなもんだから」

五和「でも……私……」

上条「とりあえず、病院に運ぶからじっとしててな」

そう言うと上条は、五和をおんぶして病院へ運んだ。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:13:15.31 ID:iNh2rC4q0
青ピ(僕だけ……悪者みたいになってもうた……)

浜面「あいつモテるんだなー。つーか鈍感ってレベルじゃねーぞ」

青ピ「君もそう思うよな!?」

呟いただけなのに、馴れ馴れしく同意を求めてきた青い髪の毛の少年に、浜面は若干うろたえる。
彼らはあくまで初対面である。

浜面「ま、まあ。とりあえず、俺はこの特攻服みたいな兄ちゃん運びますわ」

なんとなく青髪のノリにはついて行けないと思った浜面は、倒れていた削板をおんぶして病院へ。

青ピ「君、男の人抱えて大丈夫なん?」

心理定規「大丈夫。この人は私が運ぶから。運ぶなら別の人をどうぞ」

そう言って心理定規は垣根をおんぶして、そそくさと病院へ。

青ピ(あの体格差で運ぶなんて無理あるやろ。けど大丈夫ってキッパリ断られたしなぁ)

半蔵「おいあんた、ボーっとしてないで運んでくれよ」

天草式の一員の香焼を運びながら、半蔵は言う。

青ピ「ああ。分かってるで」

青ピ(女の子、女の子を運んで感謝されたい!)

そんな不純な動機をもつ青髪ピアスは、地面に倒れていた人たちの中から
天草式の一員、対馬を発見する。

青ピ(むっふぉー!金髪貧乳美脚お姉さんキタコレ!)

そして対馬を運ぼうと手を伸ばしたその時

郭「あの、女性は私が運びますんで」

郭が素早い動きで対馬をおんぶして病院へ。
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:14:15.47 ID:iNh2rC4q0
青ピ(しゃあない。もう男で良いから運ぶか)

そうして天草式の牛深でも運ぼうかと思ったその時

ヴェント「別にアンタは運ばなくても良いわよ。あとは私が全員運ぶ」

青ピ「どうやって?」

ヴェント「こうやって」

そう言ってヴェントは指をパチン!と鳴らすと、患者達がフワフワと浮いた。
風の魔術の応用だ。

ヴェント「こういうわけだから、アンタは休んでなさい」

青ピ(あ、なんかもういいや……でも……)

青ピ「天使!あなたは僕の天使やでぇー!」

思わずヴェントに抱きつこうとする青髪を、ヴェントはひょい、っとかわして

ヴェント「触ろうとするな。気持ち悪い」

一言で撃沈した。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:16:35.42 ID:iNh2rC4q0
御坂「ところでさ」

結標「何?」

上条と青髪がいなくなったので、暇になった彼女達は世間話をしていた。

御坂「なんで、こっちの集団に来たの?」

結標「駄目?」

御坂「駄目じゃないけど……」

結標「大丈夫よ。あなたの大好きなツンツン頭君を狙って。とかじゃないから」

御坂「ぶっ!な、何を言っているのかしら!わ、私は別にあの馬鹿の事なんて何とも」

結標「素直になりなさいな。あなた、バレてないとでも思ったの?」

御坂「……ほんとに?」

結標「何が?」

御坂「ほんとに、あの馬鹿を狙った訳じゃないの?」

結標「ほんとよ。ただあっちの集団に入るのもアレだったから、こっち来ただけ」

御坂「ふぅー。ならよかった」

結標「そうそう。そうやって素直になればイチコロよ。
   ただ、あの馬鹿呼ばわりはよくないと思うけど」

御坂「そ、それは分かってるんだけど……いきなり名前で読んだら変かなって……」

結標「あなた、そんなこと気にするタイプだったんだ。そんなことないわよ。
   名前で呼んじゃいなさいな」

御坂「わ、分かった。今度、というか、あとで、言ってみる……」

そうやってガールズトークが繰り広げられていたところで

フィアンマ「すまんが、まだ戦争は終わっていない。
      急だが、これからすぐ話し合いの場を設けたいのだが」

フィアンマがいきなり割り込んだ。

御坂「ちょ、アンタ一体誰!?」

結標「……」

即座に戦闘モードに入る御坂と結標。

フィアンマ「焦るな小娘ども。俺様は味方だよ。だから、その戦闘態勢を解いてくれ」

と言われても、真っ赤な服に異様な右手を持つ人間の言う事を
御坂と結標はそう簡単に信じることは出来ない。
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:17:16.88 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「……どうすれば信じてもらえるのか……」

膠着状態が続く中、タッタッタッと誰かが走ってくる音がした。
少女達はその足音の方を向く。

上条「おーい、フィアンマー!とりあえず、皆集めたぞ!」

フィアンマ「助かった。最後にこの小娘どもに説明してやってくれ」

上条「また俺が説明役かよ!」

フィアンマ「俺様はこの小娘どもが気絶した後に到着したからな。信じてもらえんのだよ。
      やはり魔術と科学に深くかかわっているお前が説明役に適任だ」

御坂「ちょっと、どう言う事なの?」

上条「それはだな――」
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:19:01.58 ID:iNh2rC4q0
病院1階を占拠して、話し合いは行われていた。

上条「えーっと、俺から言える事は、皆仲良くやってね?」

上条はこう締めくくったが
あまり納得がいっていない様子の、御坂をはじめとする科学サイドの住人達。

御坂「あのさ、なんでこの日本刀女がここに居る訳?」

日本刀女とは様々な戦いを通して『聖人』の8割の力を失った神裂火織のことである。

上条「だからそれについては、このどう見ても神父には見えない神父さんが
   さっき説明してくれただろ?ローラって言う魔術師が倒れたおかげで
   弱みが無くなり、洗脳されていた魔術師も解放されたって」

ステイルを指差しながら、上条は言う。

絹旗「つまり、この魔術師さん達は、超やりたくなかったのに、無理矢理戦わされていた
   ってことですか?」

上条「そうそう、そう言う事!理解力良いねぇ!」

絹旗「それほどでも……ありますかね///」

御坂「ちょっと!それじゃあ私が理解力ないみたいじゃない!」

上条「いえ、決してそう言う訳では」

一方通行「いちいち話の腰を折るなオリジナル」

御坂「うっさい!」

上条「あわわわわわわ、どうすれば」

結標「放っておきましょ。ところで戦争が終わっていないと言うのは?」

上条「それは」

フィアンマ「それは俺様から説明しよう」
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:23:30.88 ID:iNh2rC4q0
とりあえずヒートアップした御坂を落ち着かせて

フィアンマ「まず、戦争が終わっていない事の前に、もう一度だけ説明するぞ」

フィアンマ「この戦争がなぜ起こったか。これはイギリス清教の長
      ローラ=スチュアートが魔術サイドを率いて起こしたものだ」

フィアンマ「イギリス清教の長でしかないローラが、何故魔術サイド全体を率いることが
      できたのか。それは第3次世界大戦で学園都市と共に勝者となったからだ。
      それによってイギリス清教は、魔術サイドのトップも同然になった」

フィアンマ「あとはもうローラの思うままだっただろう。
      このままだと世界は科学サイドの物になってしまう。
      とでも唆して、大半の魔術師を味方につけたのだろう」

フィアンマ「それでも、そこにいるステイル=マグヌス君とかは、最後まで反抗したようだがね。
      結局は反対派も、弱みを握られたり、洗脳されたりで言いなりになるしかなかった
      ようだがな。俺様などの一部の例外を除いて」

フィアンマ「しかし、ローラはもういない。そこの垣根君とやらがやったんだろう?
      いやはや、素直にすごい」

垣根「そりゃ、どーも」

心理定規「ちょっと。もう帝督は疲れているから休ませてほしいんだけど」

フィアンマ「すまんな。もう少しだけ話を聞いてくれ」

フィアンマ「でだ。ローラがいなくなったことにより、反対派の魔術師は解放された訳だ。
      ここにいる魔術師達は味方と思ってもらっていい。
      賛成派の魔術師も、既に学園都市の科学兵器によって大体駆逐されているだろう」

フィアンマ「逆に言えば、その賛成派の魔術師達を迎撃する為に、科学兵器などは
      使い切ってしまっただろうな。まさか能力者とは言え生徒たちを使う訳にもいくまい。
      つまり増援は期待できない」

フィアンマ「だからだ。できれば君達には戦ってほしい。君達はレベル4やレベル5なんだろう?」

この場に居る大体はフィアンマの言った通りなのだが、この条件に当てはまらない
浜面、半蔵、郭はわずかに震えた。とそこで御坂が疑問を呈する。

御坂「いや、力を貸すのは構わないけど、賛成派の魔術師は大体駆逐されて
   反対派の魔術師は解放されたんなら、一体何と戦うって言うの?
   結局戦争が終わってないとはどういうことなの?」

一方通行「だから、いちいち話に水を差すンじゃねェ。
     最後まで聞かないと何とも言えねェだろうが」

御坂「うっさい!」

フィアンマ「そうだな。話は最後まで聞いてほしいな。確かに一般の魔術師は大体倒れた。
      反対派の魔術師は解放された。残ったのは非戦闘員の信徒達ぐらい。
      大天使達も倒した。だがまだいるんだよ。『禁書目録』、通称インデックスが」

その名を聞いて、何人かは反応し、何人かはちんぷんかんぷんだった。
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:26:05.52 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「彼女を倒さなければ、戦争に勝利したことにはならない」

青ピ「インデックスちゃんを倒す?あの女の子を?そもそも戦えるんかいな?」

フィアンマ「(こいつ、インデックスを知っているのか?)戦えるなんてもんじゃない。
      ヨハネのペンが発動した彼女は最強最悪の敵『魔神』いや『神上』といってもいい」

御坂「『かみじょう』って、と、と、とう、コイツの事?」

当麻と言いかけて、結局上条を指差しながらコイツ呼ばわりしてしまった御坂。

フィアンマ「違う違う。『神』に『上』と書いて『神上』だ。
      意味は言葉の通り、神より上の存在と言う事だ」

一方通行「つまり、あの天使達より強いとか言い出すンじゃねェだろうな?」

フィアンマ「強いだろうな」

あっさりとしたフィアンマの言葉に、科学サイドの面々は絶句する。

フィアンマ「だが、希望がない訳じゃない」

青ピ「なんや、その希望って言うのは?」

フィアンマ「上条当麻だよ」

フィアンマの一言に、科学サイドの面々は一斉に上条を見る。

フィアンマ「こいつの能力は『幻想殺し』だが『幻想殺し』なんて
      コイツの“中”にいる化け物を抑える蓋でしかない」

その一言に、またしても上条に注目が集まる。
今度は魔術サイドの面々、シェリーや土御門、エツァリやショチトル、天草式達も上条を見ていた。
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:27:34.28 ID:iNh2rC4q0
絹旗「では、この上条さんを中心に、私達がサポートしていくって感じですか?」

フィアンマ「いや、その必要はない。上条とインデックスの戦いは壮絶なものになる。
      俺様達では手が出せないほどにはな。上条には1対1で戦ってもらう」

その一言に、一方通行は疑問を呈する。

一方通行「じゃあ何で俺達までこのクソだりィ話聞かされたンだ?
     それだったら、オマエらだけで話し合えば良かったじゃねェか」

御坂「話は最後まで聞きなさいよ」

一方通行「うるせェ」

フィアンマ「続けるぞ。それが上条だけで良いと言う訳でもないのだよ。
      魔術師で勘の鋭い奴は気付いていると思うが、ロシアに莫大なテレズマが感じられる。
      つまり、天使達が召喚されている可能性が高い」

それに同意したのはステイルだった。

ステイル「確かに、ヨハネのペンの『禁書目録』なら天使の召喚など容易いだろう」

この天使の召喚にも生贄が必要なのだが、敢えて言わなかった。
生贄に使われた人間はどうしたって戻って来ないし、科学サイドの連中に
躊躇いを持ってもらっては困るからだ。

絹旗「超待って下さい。ということはつまり」

麦野「私達は天使達と戦えってことか」

麦野の一言に科学サイドの面々は凍りつく。
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:31:25.42 ID:iNh2rC4q0
滝壺「ま、またあんな強さのと……」

浜面「滝壺……」

青ざめている滝壺を浜面は優しく抱きしめる。

フィアンマ「いや、さっきまでの天使達は、大天使と言うくらいだ。
      普通の天使達とは比べ物にならないくらい強い。
      逆を言えば、インデックスが引き連れてくるであろう天使達は
      おそらく大天使の4分の1の強さもない」

とはいえ、強いのに変わりはないがな。とフィアンマは付け加える。

フィアンマ「さらに、数も何体いるかは分からない。3体ぐらいしか連れてこないかもしれないし
      10体ほど連れてくるかもしれない」

いくらあの大天使より弱いとはいえ、10体もきたらどうなるのか。
先程まで天使の強さを垣間見たものや、魔術サイドの面々は恐怖に慄いた。
だが何人かは違う反応を見せた。

白井「よく分かりまんけど、今度こそお姉様の力になって見せますの!」

垣根「俺様が、軽く捻ってやるよ」

フィアンマ「その威勢、保っていると良いがな。ま、話をはこんなところかな。
      明日に備えて今晩はゆっくり休んでくれ」

一方通行「おい待て。本当に明日までは大丈夫なンだろうな」

フィアンマ「分からん」

一方通行「はァ?」

フィアンマ「だが多分大丈夫だ。天使の召喚と言ったって、1秒で終わる訳じゃない。
      時間はそれなりにかかる。数が多ければなおさらな」

一方通行「学園都市には、突然現れたじゃねェか。
     それに3体しか召喚しなかった場合は、時間はどうなる?」

フィアンマ「用心深いな。そんなものは違う場所で召喚の儀式が行われ
      召喚は学園都市の座標に合わせただけだ。それと呼び出す天使の種類
      質、数、準備など様々な条件によって時間は変わるが
      いくらインデックスとはいえ、最低10時間はかかるだろう」

一方通行「じゃあインデックスの天使もいきなり学園都市に召喚される心配は」

フィアンマ「その心配はない。この戦争が始まって、学園都市に侵入した魔術師が
      天使を『ここに呼び出す』と言う印をつけた。だがそれは俺様が既に処理した。
      それで遅れたんだよ」

フィアンマ「じゃあ1晩だけだが、ゆっくり休んでくれ。聞いたところによると
      ここには名医がいるそうじゃないか。できれば各自万全な状態にしてもらえ」
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:32:59.32 ID:iNh2rC4q0
時間は午後8時。ベッドが6つある部屋に『アイテム』と半蔵と郭がいた。
フレメアはレベル0の少女だった為、核シェルター級の避難所へ移送された。

半蔵「なあ浜面。さっきの話マジなのかなあ」

病室の窓に寄りかかりながら、半蔵は同じく寄りかかっている浜面に尋ねる。

浜面「嘘をつく理由がない。それに見たろ?あの赤い天使を」

半蔵「俺さ、怖いんだよ。俺だってレベル0なのに、明日化け物と戦う事が……
   そりゃ空気に流された俺も悪いけどさ……やっぱり怖ぇよ……」

言いながら半蔵は泣き始めた。よっぽど怖いらしい。

半蔵「浜面、お前はさ、怖く……ないのかよ……」

浜面「怖えよ。めちゃくちゃ。俺だって泣きだしたいぐらいだ」

けど、と浜面は続けて

浜面「守りたいモノがある。守らなきゃならないモノがある。
   だからさ、怖がっている暇なんてないんだよ」

半蔵「何だってんだよ……何でお前は……そんなに強いんだよ……」

浜面「強くなんかねぇ。ただの意地だ。お前にだってあるだろ?守りたいモノ」

半蔵(守りたいモノ……)

半蔵は病室を見まわし

半蔵(……郭……か?)

その時、狸寝入りを決めていた郭は心の中で

郭(もしかして半蔵様、今私の事思ってくれている?)

思わずテンションが上がっていた。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:34:11.61 ID:iNh2rC4q0
同じく、狸寝入りを決めていた『アイテム』の面々は

絹旗(浜面のやつ、超浜面のくせにちょっとかっこよかった……)

滝壺(はまづらは、アイテムの中で1番の重傷で、1番弱いのに……私がサポートしなきゃ……)

麦野(……絶対に皆を死なせはしない)

静かなる闘志を秘め、麦野はゆっくりと目を閉じる。
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:35:40.77 ID:iNh2rC4q0
神裂「まずは謝ります。すいませんでした。建宮の事も」

天草式十字凄教の女教皇である神裂火織は、病院の一室で天草式の仲間たちに頭を下げた。

五和「いえいえ。分かってくれればいいんです。女教皇こそ、お体大丈夫ですか?」

神裂「ええ。それと、明日は壮絶な戦いになると思いますが、ついてきてくれますか?」

五和「もちろんです!」

神裂「感謝します。では、これで」

神裂は、天草式のメンバーが使っている病室を出て
シェリーやアステカの魔術師がいる自室へ戻った。

シェリー「許してもらえたのか」

神裂「おかげさまで」

シェリー「よかったな」

シェリーとの会話はそれで終わった。

神裂「あなたもすみません」

次に神裂は、エツァリに謝罪した。

エツァリ「ええ、とっても痛かったですよ。けどもう良いです」

にこりと優しい笑みを浮かべるエツァリ。

神裂「そう言ってもらえると助かります」

ショチトル「おい。私は許さないからな」

エツァリ「ショチトル。そんな事を言うものではありません」

ショチトル「ふん」
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:38:48.02 ID:iNh2rC4q0
御坂「何なのこの割り当て、おかしくない?」

時間は既に午後9時。ベッドが4つある病室で、御坂美琴は文句を言っていた。

御坂「私と淡希と黒子は分かる」

御坂はそこで、けど、と一拍置いて

御坂「なんでアンタも一緒なのよーっ!」

一方通行「うるせェなァ。いいから早く寝ろよ」

御坂「眠れないわよ!こんな男がいる部屋で!」

一方通行「仕方ねェだろ。こううまい具合人間関係考えて整えると、こうなるしかねェンだよ。
     俺だって不満だわ」

御坂はここでぐぅの音も出なかった。正直彼女にはこれがベストメンバーに近い。
だって残りは、得体のしれない魔術師達に、全く面識のなかった垣根と青い髪の毛の少年
そして『アイテム』だ。
この中から選ぶぐらいなら、因縁があるとはいえ一方通行の方がマシかもしれない。

御坂(男の枠が、あの馬鹿だったら……)

一方通行(ようやく静かになりやがった)

この言い合いの一部始終を聞いていた白井黒子は

白井(お姉様……類人猿の次はアルビノ人間ですの?)

ベッドのシーツを噛みながらそんな事を思っていた。

結標(神経が図太すぎるでしょ……)

結標は白井とも御坂とも一方通行とも因縁がある。それなのにこの3人ときたら、この調子だ。
自分はひょっとしたら存在を認識されていないのかもしれない。

結標(ほんと、頭痛がしてくるわよ。このメンバー……)
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:39:35.48 ID:iNh2rC4q0
ヴェント「ねぇフィアンマ、私達、勝てるかな?」

病院の個室で1つのベッドに横になりながら2人は喋る。

フィアンマ「俺様がいるんだ。負けるはずがないだろう?」

ヴェント「ふふ。あなたはいつもそうだよね。でもさ、オッレルスもシルビアも負けたんだよね」

フィアンマ「まあインデックスが覚醒してしまっていることを考慮すると
      奴らは失敗したことになるな」

ヴェント「あの2人が負けるなんて、私不安で……」

そんなヴェントをフィアンマは強く抱きしめる。

フィアンマ「大丈夫だ。俺様が絶対に守ってやる」

ヴェント「うん///」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:40:08.49 ID:iNh2rC4q0
同じく病院の個室のベッドで、垣根は物思いに耽っていた。
心理定規は、戦闘系の能力者ではない為避難所に行かせた。
絶対に迎えに行くと約束して。
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:43:08.63 ID:iNh2rC4q0
土御門「カミやん、色々済まなかったな。舞夏はもう無事だ。ほらステイルも謝れ」

4つのベッドがある病室で、ステイルは渋々といった調子で

ステイル「……すまなかった」

上条「もういいよ」

ステイル「そして、もう1つだけ頼みがある。絶対にインデックスを救ってくれ!」

ステイルは珍しく、いろんな意味で敵である上条に頼み込んだ。

上条「はは、お前らしくないな。言われなくてもそうするつもりだよ」

土御門「カミやん、フィアンマの言っていた事、本当か?」

上条「ああ。俺は“中にいる”力を使いこなして、インデックスを救って見せる」

そこへ特攻をかけたのは、話題について行けなくて空気だった青髪ピアスだ。

青ピ「それって、カミやんの『中の人』の力を使うってことやろ?
   それってさ、操り切れなくて暴走とかって言うお決まりの展開になるん?」

上条「それは、させない」

ここで普段の上条をよく知っている土御門と青髪は
何か雰囲気が違う上条に違和感を覚えた。と上条の雰囲気が元に戻る。

上条「つーかさ、お前普通に居るけどなんなの?」

青ピ「カミやん。ミカエルの翼抑えたのは、何を隠そうこの僕やでー。
   実は僕、レベル5の第6位なんや」

上条「マジかよ!?」

土御門(俺ですら詳細を知らない第6位が、まさかこんな身近にいたとはな)

上条「ちょ、じゃあお前、自分で言うのもなんだけど
   なんで俺らと一緒に底辺校通ってるんだよ!?」

青ピ「そんなん簡単やー。小萌先生がいたからやでー」

上条「は?それだけ?」

青ピ「それだけって、人生において、どんな教師に授業を教わったかというのは重要な事やで。
   大体僕はレベル5の器じゃないし、名門校なんてつまらなそうやし。
   カミやんたちとバカやってるの楽しいしな」

上条「青髪……」

上条は素直に感動した。

土御門(なるほどな。ま、レベルなんて高くても闇の世界に堕ちるか
    輪の中心に立つことは出来ても、輪の中に入る事は出来ないなど
    それほど良い事もないからな。こういう生き方もあるってわけか)
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:45:40.81 ID:iNh2rC4q0
青ピ「それよか、文句があるのはこっちやで」

上条「は?お前に何かした覚えねぇけど」

青ピ「僕は、カミやんやツッチーの事を親友やと思ってる」

上条「だから何が言いたいんだよ」

青ピ「あのな、僕もバカやない。詳しくは知らんかったけど、カミやんも土御門君も
   得体のしれない『何か』に関わっていることぐらい前から何となく感じてた」

青ピ「なのに一言の相談もなしやったんやで。親友としてはちょっとなぁ」

上条「親友だから、余計に巻き込みたくなかったんだよ。
   つーか俺はお前の事をレベル5って今日知ったんだからな。一般人を巻き込めるかよ。
   いやもちろん、レベル5と分かっていたとしても、お前を巻き込むつもりはなかったけどな」

青ピ「そんな気遣いいらんよ。寧ろ相談してくれないと疎外感あるやん」

土御門「ま、レベル5である事を隠していたお前が
    グチグチ言う権利は無いんじゃないかにゃー?」

青ピ「今までダンマリ決め込んでいたくせに、こういうときに限って
   ツッコんでくるなんて、ほんまツッチーはいやらしいなぁ」

土御門「まあレベル5隠していたのと“おあいこ”ってことで、今日はもう休もうぜい」

上条「そうだな」

青ピ「そうやな」

こうしてそれぞれの夜は更けていく。
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:48:42.24 ID:iNh2rC4q0
0:00 病院屋上

上条は屋上のフェンスに寄りかかりながら黄昏ていた。
そんな時、バタン!と屋上の扉が閉まる音。一体誰がこんな時間に?と
上条は扉の方へ視線を持っていく。

土御門「ようカミやん。こんな時間に、しかも寒空の下で何やってるのかにゃー?」

上条「そりゃこっちの台詞だ」

土御門「聞きたい事があってな」

言いながら、土御門は上条の隣に来て同じ様にフェンスに寄りかかる。

土御門「無駄な問答は避けたいから初めに言っておくが、俺はカミやんの記憶喪失を知っている。
    いや正確には記憶破壊か」

その時、上条は無言だったが、内心ではかなり驚いていた。
記憶破壊と言う辺り、あてずっぽうでない事は分かる。
そもそも、お前記憶喪失だろ?なんてあてずっぽうでも言わない。
土御門は確かに記憶喪失を認知していると思っていいだろう。

土御門「で、質問て言うのはさ。お前、インデックスの事好きだろう?」

その質問に何の意味が?と上条は思ったが、土御門が真面目に聞いてくるので真面目に回答する。

上条「前の『上条当麻』がどう思っていたかは知らないけどさ。俺は好きだよ。
   ただ最初の方は、恋愛対象としてではなく、家族としてって感じだったけどな。
   なんつーか、妹が出来たみたいだなーって」

土御門「じゃあちょっと辛い事を聞くかもしれんが、聞いてくれ。
    その好きな人と戦うのは、辛くないか?
    俺が舞夏と戦うなんて事になったら、多分俺は発狂する。何でそんなに冷静なんだ?」

上条「こう言うと語弊があるかもしれないけどさ。
   俺にとっては願ったり叶ったりな部分もあるんだよ」

土御門「どう言う意味だ?」

上条「今度こそ、インデックスを救えると思ったからさ。
   前の『上条当麻』が出来なかった事を、出来ると思ったから」

もちろん、前の『上条当麻』が何を思って救ったのかの詳細は知らない。
けれども、インデックスが牙をむくと言う事は、完璧には救えていなかったという事。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:49:57.07 ID:iNh2rC4q0
土御門「いや、分からん。どう言う意味だ?」

上条「今の俺なら、インデックスの頭の中にある10万3000冊の魔道書を破壊できる。
   インデックスを完璧に救える!」

土御門「どうやって?
    インデックスの頭を開けて、脳細胞を直接破壊するとか言うんじゃないだろうな」

上条「そんなわけないだろ。けど、きっとできる。実際俺が記憶喪失になっているんだからな」

そう。上条の記憶破壊は、何も頭を開けて脳細胞を削ったからではない。異能の力によるものだ。

土御門「それはインデックスの脳細胞ごと魔道書の記憶を破壊すると言うことか?」

上条「いや、10万3000冊の魔道書だけを破壊する」

土御門「そんなことが」

上条「できる」

できるのか?と言おうとした土御門の言葉は遮られた。

土御門「そうか。いろいろ聞いて悪かったな。じゃあな。早く寝ないと風邪ひくぞ」

上条「ああ」
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:50:33.53 ID:iNh2rC4q0
『今更何のようだ?』

『インデックスを救いたい。だから力を貸せ』

『あの時は「引っ込んでろ」とほざいたではないか』

『うるせぇ。状況が状況なんだよ。力を貸さないって言うなら、勝手に借りてくぜ』

『貴様ごときに、我が力を使いこなせるとでも?無理だ』

『まあ我は一向に構わんがな。そのまま貴様の体を乗っ取ってやるだけよ』

『いいぜ、テメェごときが、この俺を支配できるってほざくなら――』

『――まずは、その幻想をぶち殺す』
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:53:05.02 ID:iNh2rC4q0
12月25日 AM9:00 病院前

半蔵「郭、準備は出来てるか?」

郭「はい!もちろんです!」

半蔵「あのさ、お前はこの戦い、降りても良かったんだぞ?死ぬかもしれないのに」

郭「私は半蔵様に一生ついて行くって決めましたから。
  それより、半蔵様こそ、何故この戦いを降りなかったのですか?」

郭は昨日の会話を狸寝入りで聞いている。
だから空気に流されてと言う事は知っているのだが、敢えて聞いた。

半蔵「正直言うと、かっこ悪いけど空気に流されてかな。
   だけど、この状況の学園都市や浜面とかを放っておけないと思ったのも事実だよ」

郭「半蔵様……かっこいいです……惚れ直しました///」

半蔵「戦闘に付き合わせるんだ。絶対お前の事を守ってやるからな」

郭「半蔵様///私も全力を尽くします!」
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:53:32.92 ID:iNh2rC4q0
ショチトル「エツァリお兄ちゃん、私の事、守ってくれる?」

これから迎える戦いを想像して震えるショチトルを、エツァリは優しく抱きしめる。

エツァリ「もちろんですよ」
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:54:12.52 ID:iNh2rC4q0
神裂「これが最後の戦いです。気を引き締めていきましょう」

天草式「はい!!!!!」

そんな天草式十字凄教を遠目に見ながら、ステイルはルーンを仕込んでいた。
そこへシェリーが近付いてきた。

シェリー「お前1人ぼっちかよ?寂しい奴だな」

ステイル「君に言われたくはないね。そんなことより君の準備は良いのか?」

シェリー「そんなもの必要ないわよ。私の魔法陣を書く速度をなめるなよ」

ステイル「そうですか」
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:55:05.17 ID:iNh2rC4q0
絹旗は浜面の目の前で満面の笑みを浮かべながら

絹旗「浜面、超先に言っときますけどね。
   なんだかんだいって、浜面はかっこよかったです。それだけ!」

浜面「おい、それはお前の死亡フラグなのか?それとも俺の死亡フラグなのか?」

滝壺「大丈夫だよ。はまづらに死亡フラグが立ったとしても、私が守るから」

絹旗「滝壺さん!その言い方だと、私の事は超守ってくれないみたいじゃないですか!」

いつも通り騒がしくなってきた3人に、麦野はこう言った。

麦野「死亡フラグなんてもんあると言うのなら、私はそれをへし折ってやるよ」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:56:02.57 ID:iNh2rC4q0
御坂「黒子、アンタ本当に大丈夫?あんなに重傷だったのに」

白井「お、お姉様が、黒子を心配して下さるなんて……お姉様こそ、
   あの日本刀女との戦闘の後も、力を使い過ぎたらしいですが……大丈夫ですの?」

御坂「大丈夫よ。駄目になりそうだったら言いなさいよ。私が守ってあげるからね」

白井「お、お姉様ーっ!」

思わず御坂に抱きつく白井。

御坂「ちょ、抱きつくな!あ、これは違うからね!勘違いしないでよね!淡希!」

白井「淡希って……!なんで、お姉様があの露出狂女の事を名前で」

御坂「こら!淡希のことを悪く言わないの!」

ゴチン!と白井はゲンコツをもらう。

白井「あ、あああ、そんな……」

結標(常盤台のお嬢様って……まともなのいないのかしら)
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:57:26.32 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「だいぶ吸収したテレズマが馴染んできたな。お前はどうだヴェント?」

ヴェント「うん。私も良い感じかな?暴走しちゃったら場合は止めてネ♪」

フィアンマ「お前、たまに俺様でも恐怖を抱く様な事を平気で言うよな」

ヴェント「フィアンマの事を信じているから言える事だヨ?」

フィアンマ「あんま嬉しくない信頼だな」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 04:58:47.09 ID:iNh2rC4q0
垣根「久しぶりだな。一方通行」

一方通行「何の用ですかァ?」

垣根「挨拶しただけなのに、その反応は酷いんじゃないの?」

一方通行「オマエと話す事なんてねェもン」

垣根「冷たいな。今の俺はレベル6だぜ。俺自身が『未元物質』になれる」

一方通行「その程度で粋がンな。
     俺もレベル6だし、オマエ自身が『未元物質』になろうが、俺はそれを解析する」

垣根「なるほどね。ま、初めての共闘をするわけだから、仲良くしようや」

一方通行「(序列コンプレックスはなくなったみたいだな)足だけは引っ張ンなよ」
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 05:00:19.64 ID:iNh2rC4q0
青ピ「なあなあツッチー。能力者なのに、魔術って使えるの?」

土御門「なかなか鋭いにゃー。能力者に魔術は使えないぜい。
    めんどいんで詳しくは省くがな。俺は能力の特性上、3回ほど使える。
    逆に言うと、3回でギリギリだから、ほとんどはお前に頼ることになるぜい」

青ピ「ええー。ツッチーの役立たずー」

土御門「お前、昨日は頼れとか言ってたくせに!」

青ピ「共闘は良いけど、守りながら戦うのは勘弁や。女の子ならともかく!」

ふざけんにゃー!と喧嘩が始まる。

削板「おいお前ら!喧嘩は止めろ!」

削板が一喝した。その一言に、土御門と青髪の喧嘩がピタッと止まる。

土御門「つーか大丈夫なの?昨日は重傷すぎて、話も聞いてないんだろ?この状況理解してる?」

削板「うーん、よく分からんがな。とにかく戦って勝てばいいんだろ。任せとけ!」

青ピ(しっかし、一晩丸々休んだとはいえ、あの重傷がここまで回復するもんかいな。
   人間かコイツ……)

とそこで上条が口を開く。

上条「騒ぐのはその辺にしとけよ」

青ピ「なんや、カミやんちょっと冷たいでぇー」

上条「……」

青ピ「ガン無視されたんですけど」

土御門(カミやん……)

上条「フィアンマ」

フィアンマ「何だ?」

上条「これ以上待ってられない。ちょっと先に行って戦ってくる。皆に離れるように言ってくれ」

フィアンマ「どうやって?」

上条「良いから頼む」

その一言に得体の知れない威圧感を感じたフィアンマは指示に従う。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 05:01:18.93 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「離れてもらったぞ!」

上条から100mもの距離を取ったフィアンマが大声で上条に呼び掛けた。

上条「オッケー」

上条のその返事と同時に、バリィィィン!とガラスが割れるような音が響いた。

土御門「これは『幻想殺し』が能力を打ち消した時の音と似ている――!」

土御門がそう私見を述べた時には、辺りに暴風が吹き荒れた。
その暴風の源、上条を見ると、その背中から50mもの翡翠色の翼が生えていた。

フィアンマ「あれは『竜王の翼』(ドラゴンウィング)!もしや、やつの中にいるのは――!」

フィアンマがそう叫んだ時には、上条はフィアンマ達の視界から消えていた。
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/06(火) 05:02:42.32 ID:iNh2rC4q0
上条は時速10000kmでロシアへ向かっていた。

上条「話によれば、ロシアから来るんだよな?」

ロシアから来るんだから、ロシアへ向かえば激突するんじゃね?という単純な考えで飛行していた。
とそこで、前方に9つの光が見えた。

上条「――!」

上条から光が見えてから、1秒。9つの光と上条は交差した。
それで9つの光の内の2つは、上条の『竜王の翼』に切り裂かれた。

残りの6つの光は、そのまま学園都市の方へ向かい、1つの光はその場に留まった。

禁書「――警告、第二十四章第六節。召喚された天使の迎撃を確認。
   現状、天使を迎撃した謎の力に対しての迎撃を優先します」

上条「よう、インデックス。今度こそ、完璧に救ってやるからな」

『神上』と『神浄』の戦いが始まる――!


395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:14:23.85 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:15

フィアンマ「そろそろ来るぞ。皆準備は良いか?」

全員「おう!!!!!!!!」

と、全員が気合いを入れたところで

ビシュン!と天使3体が、突然フィアンマ達の目の前に現れた。

浜面「いきなり!?」

一方通行「おい。いきなり召喚されてンじゃねェか!」

フィアンマ「馬鹿かお前は。こいつらはたった今、学園都市に到着しただけだ」

つまりは、可視出来ぬ程の速度でやってきた。ただそれだけ。

フィアンマ「こいつはやばいぞ。質が半端じゃない。気を抜けば一瞬で殺されるぞ。
      現時点では3体だが、もう3体後から来るみたいだ」

直後、天使の内の1体、人型で黄緑色をした『神の雷光』(バラキエル)が
稲妻のようなものを乱発した。それにより、一瞬で病院前の大地は荒野になった。

天使達の目の前には荒野しか広がっていなかった。
ここで一般人ならフィアンマ達は消滅したと思うだろう。だが天使達は違った。
人間達は散り散りになっただけで消滅したわけではないと言う事を感知した。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:15:43.40 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:17

結標「咄嗟に皆を滅茶苦茶にテレポートしちゃったんだけど、大丈夫かしら?」

病院から見て北5km地点で結標は嘆いた。とそこでパッ!と目の前に白井が現れた。

白井「ここからお姉様の匂いがしましたの!」

テレポーターはテレポーターをテレポートできない。
だから白井は、こうして遅れてテレポートしてきたのだ。

御坂「げ、黒子」

そして白井は見事に御坂の場所に辿り着いた。

白井「げ!とは何ですの。お姉様の匂いだけで辿り着いたこの健気な白井黒子を
   褒めてくださってもよろしいくらいですのに」

御坂「うるさい!気持ち悪い!」

そんなやりとりを見ながら

麦野「何で私がこんなメンバーのところに」

結標「ごめんなさいね。私が滅茶苦茶にテレポートしたばっかりに」

麦野「もういいよ。そんなことより」

ビシュン!と先程攻撃してきた天使バラキエルが結標たちの前に現れた。

麦野「さっさとこいつを倒すよ」
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:19:00.83 ID:Ih+JMOPW0
御坂が雷撃の槍を放つのと、大きさ10mほどのバラキエルが雷(いかずち)を放つのは同時だった。雷(かみなり)と雷(いかずち)がぶつかりあい周囲に余波が広がる。

麦野「喰らいな!」

バラキエルの後ろ10mにテレポートされていた麦野は『原子崩し』のビームを放った。
しかしバラキエルは雷を全方向に放ち、ビームを相殺した。

白井(普通の攻撃が効かないのなら、座標攻撃はどうですの!?)

白井は体に巻いていた大量の金属矢セットから
いくつかの金属矢をバラキエルの体内にテレポートした。
金属矢は確かにめり込んだものの、バラキエルは平然としていた。

結標「ふっ!」

結標は大きさ10mほどの塊を、バラキエルを覆うようにテレポートした。
結果バラキエルは塊に閉じ込められたが、バガァン!と放電しながら一瞬で塊から脱出した。

御坂「ぶっち抜けぇぇぇえええ!」

御坂は既にコンテナ8個分の塊と共に、バラキエルの真上20mほどにテレポートされていて
ウリエルすら追い込んだ必殺の『超電磁砲』を放っていたところだった。

御坂(これで最低でも瀕死に――!)

しかしそれは甘い考えだった。バラキエルは『超電磁砲』をかわし
一瞬で御坂の後方に周りこみ、即席で生み出した槍型の雷を放った。
その一撃から白井が連続でテレポートをして助けた。
かわした槍型の雷は地面に直撃すると壮絶な爆音と共に直径30m、深さ20mほどの穴が穿たれていた。

御坂(喰らえば即死ね。死体も残らないわ)

結標「気合いを入れ直すわよ!」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:20:33.46 ID:Ih+JMOPW0
そうして戦いが始まって5分ほど経ったが
少女達は、未だにバラキエルに決定打を与えられていなかった。
このままだと消耗して不利なるのは少女達の方である。

御坂(くっそ!本当に速い!)

バラキエルの1番の強みは、スピードである。
そのあまりの速さにダメージを与えるどころか
テレポートで何とか攻撃を避けるくらいしか出来ない。

御坂(これならどうよ!)

御坂の周囲から大量の砂鉄が渦巻く。
それを鞭のようにしてバラキエルへ攻撃するが、グン!と砂鉄はバラキエルの手前で反発した。

麦野「やめろ美琴!やつも得意分野は電撃みたいだ!
   ということは、多分電撃による攻撃は効かない!」

御坂「そん……な……」

少女達の中でメインアタッカーである御坂が封じられた。
その事実は、少女達のモチベーションを著しく下げた。
それを敏感に感じ取ったバラキエルは、一気に勝負を決めようと、周囲2kmに数万の雷を放った。

結標(これは一旦退くしかない!)

そう考え、結標は御坂と麦野と共に、自身の上限である10kmの距離をテレポートした。
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:21:36.28 ID:Ih+JMOPW0
御坂「く、黒子!黒子が!は、早く私を戻して!」

結標「駄目よ。まだ放電は続いている。戻れない」

御坂「ふざけんじゃないわよ!黒子が!黒子が心配なの!」

麦野「落ち着け!きっと大丈夫だ」

麦野はそう言ったが、雷の速度に対して、一気に雷の範囲外まで飛んだ自分たちは
ともかく、範囲内に居るなら、テレポートしたところで逃げ切れなかっただろう。
つまり――

御坂「そ、そうよね。大丈夫よね」

御坂はそう自分に言い聞かせた。一旦冷静になるんだ。
そう思い深呼吸したところで

ビシュン!とバラキエルが御坂達の目の前に現れる。そして、放電。

結標・麦野・御坂(((ま……ずっ――!)))

完全に不意を突かれた御坂達は、思わず目を瞑った。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:23:10.75 ID:Ih+JMOPW0
放電から10秒ほど経過しただろうか。衝撃は、ない。

麦野(……?)

恐る恐る最初に目を開いたのは、麦野だった。
そこに広がっていた光景は

一方通行「俺も長くは保たねェ!早くオマエらで止めをさせェ!」

神と化した一方通行に、彼が出した手に抑えられているバラキエルだった。

麦野(しかし、どうすれば……)

御坂「沈利!『原子崩し』を最大で出して!」

麦野「だが、それで倒せるとは到底」

御坂「いいから早く!私に考えがある!」

麦野「分かったよ!」

どうせ左手は義手だ。代わりはいくらでもある。
そう思い麦野は、左手が吹き飛ぶほどの『原子崩し』によるビームを放った。

その様子にギョッとする御坂であったが
それでも自身がいま出せる最大出力の、10億Vの雷撃の槍を『原子崩し』のビームに重ねた。
つまり『超電磁砲』と『原子崩し』の合体。

御坂「喰らえ!『超原子砲』(メルトガン)!」

麦野「え?」

バラキエル「hfgfwhbgfhw!」

バラキエルは危険を感じ取り、避けようとするも一方通行の巨大な手によって
身動きが取れない。そして――

バギャァァァァァン!と『超原子砲』がクリーンヒットした。
それでバラキエルは消滅した。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:25:11.62 ID:Ih+JMOPW0
一方通行「ふゥ」

一方通行は神化を解いて、一息ついた。

御坂「レベル5同士の技の合体。新技の威力どうよ!」

御坂は得意気にガッツポーズをした。

麦野「いや、私達の技が強かったと言うより、相手の耐久力が低かっただけなんじゃないか?
   つーか、後輩は良いのかよ?」

御坂「そ、そうだ黒子!黒子!!」

麦野(今まで忘れていたのか?)

こいつひょっとして案外アホの子だったりするんじゃないかと思ったところで

パッ!と白井黒子が虚空から現れた。

御坂「く、黒子……!?黒子ー!」

思わず御坂から白井に抱きつく。

白井「え?お姉様、もしかして黒子の事心配して下さったんですの?」

御坂「当たり前でしょ。もう、黒子の馬鹿」

そこで白井は、あまりの嬉しさに本当に昇天しかけた。

白井(お、お姉様が、お姉様が黒子を心配して、お姉様が抱きしめてくれるなんて!グヘ、グヘヘ)

そこへ麦野は空気を読まず白井に尋ねる。

麦野「おい。お前どうやって助かったんだよ?」

白井「咄嗟に下水道にテレポートしたんですの。
   まあ地面や壁に埋まる可能性もありましたが、あの時はああするしかなかったんですの」

麦野「へぇ」

麦野は白井の度胸に素直に感心した。そんな様子を遠目に見ていた結標と一方通行。

結標「とりあえずあの子達を代表してお礼を言っとくわ。ありがとう」

一方通行「これで借りは1つ返したからな」

言いながら、抱えていた垣根を降ろす。

結標「そちらの方はもうダウンしたの?」

一方通行「まあな。けど置いとく訳にもいかねェし、仕方なく持って来たンだよ」

結標「私達を助けに来たってことは、貴方達はもう天使を倒したってこと?2人だけで?」

一方通行「あァ。結構あっさりな」
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:26:24.12 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:16

病院から見て北西5km地点で一方通行と垣根は、大きさ10mほど、4つの翼と腕を持つ
人型の真っ白な『神の美』(ヨフィエル)と戦った。

まず垣根が自ら『未元物質』になり、ヨフィエルと激突。
その激突で垣根は戦闘不能になるも、ヨフィエルも翼と腕を2つずつ失うと言う重傷だった。

そこへ一方通行は神と化し、自身の手に連動する巨大な手を出現させ
一撃でヨフィエルを捻り潰した。

一方通行「こンな感じで終わった。で、黄緑の光が見えたンで、コイツ拾ってかけつけた訳だ」

結標「なるほどね」

一方通行「次行くぞ。あの橙色の光の方にな」
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:28:54.20 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:20

病院から見て北東5km地点で、浜面、滝壺、絹旗、半蔵、郭、削板は
大きさは10m、人と豹を足して2で割ったような形で、尻尾も生えており、頭上には輪っか
背中には翼が生えた橙色の『神を見る者』(カマエル)と交戦していた。
先程の病院前にはいなかった天使である。

カマエルは見た目からして接近戦が得意そうだった。
そしてそれは、接近戦が得意なこのメンバーにとっては好都合だった。

半蔵は『発条包帯』(ハードテーピング)で自身の身体能力を向上。
浜面も能力を既に解放していて、滝壺に補助してもらいながらハードテーピングで二重の構え。
絹旗も滝壺の補助を受け強化。削板はいつも通り全力。郭は滝壺のサポート。
まさに万丈の構えだった。

カマエル「hwrhjkbytkwyt!」

カマエルはまず、削板に肉迫し引っ掻くように、腕を振り下ろした。

削板「遅い!」

対して削板はそれを避け、カウンターのアッパー。カマエルは空中を舞う。

絹旗「超喰らえ!」

そこへ浜面に投げられて空中を舞っていた絹旗のかかと落としが炸裂した。
カマエルは地面に叩きつけられる。

絹旗(それでも輪っかは割れませんか……)

カマエルは起き上がると、今度は滝壺を狙い肉迫した。

浜面「させるかよ!」

しかし浜面が滝壺と郭の前に立ち塞がった。
一瞬でも臆し、タイミングが遅れれば引き裂かれてしまう状況で
浜面はレベル4相当の渾身のクロスカウンターを放った。
それは見事にカマエルの顔面へ叩きこまれ、カマエルは3mほど吹き飛ばされた。
そこへ追い討ちをかけるように、半蔵は鎖鎌を投げつけ、巻き付かせた。

半蔵「っしゃあ!あとは――」

カマエルが巻き付いた鎖鎌を精一杯の力で振り回し地面に叩きつけた。
そこへ

削板「すごいパーンチ!」

倒れているカマエルに直接、渾身の一撃を叩きこんだ。

郭「これはいけますね、滝壺氏!」

滝壺「そうだね。でもまだ油断は出来ないよ」
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:31:41.01 ID:Ih+JMOPW0
削板「あれ?」

絹旗「超どうしたんですか?」」

削板「いや、殴ったと思ったら空振ってた」

削板を除く全員が、は?と思ったその時、カマエルの咆哮が聞こえた。
それは削板の後ろから。不意の咆哮に全員が思わずたじろぐ。
カマエルの口が大きく開かれた。そこから黄土色の光線が吐き出され
ドゴォォォン!と辺りが蹂躙された。

削板(くっそ!光線は卑怯だろ!)

何とか直撃を免れた削板は、空中を舞っていた。とそこに
シュン!とカマエルが突然目の前に現れ、爪を振り下ろしていた。

削板(――!)

あまりの速度にガードすら出来ず、爪をまともに喰らった削板は、そのまま地面に叩きつけられた。
光線と削板が叩きつけられた衝撃で莫大な煙が立ち込める中
絹旗は腕に窒素のドリルを纏わせて、煙をかき分けカマエルの後ろから特攻した。

それに対してカマエルは、尻尾を振るった。
その一撃は窒素のドリルを掻い潜り、絹旗にダイレクトにヒットした。
尻尾の一撃をまともに喰らった絹旗は、学園都市の街並みを3km転がった。
いくら窒素を纏っているとはいえ大ダメージだった。

次にカマエルが狙いをつけたのは浜面。
0・1秒にも満たない時間で肉迫された浜面は、反撃もガードも出来ずに爪で無残に引き裂かれた。

滝壺「は、はまづらーっ!」

郭「た、滝壺さん駄目です!今そいつに近付いちゃ――」

郭の引きとめも虚しく、思わず飛び出した滝壺は頭から喰われた。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:33:04.94 ID:Ih+JMOPW0
郭「う、う、うわあーっ!」

泣き叫び、逃げ出す郭をカマエルが追いかけようとしたところで
ジャララ!と半蔵の鎖鎌が放たれる音が響いた。

カマエルはそれに敏感に反応し、軽く爪を振るい、やってきた鎖鎌を引き裂いた。

半蔵「ちっくしょおおおおおおおおおおおおお!」

半蔵は半ば以上ヤケクソで、巨大手裏剣を投げた。
だがそれも鎖鎌同様、軽く爪が振るわれただけで引き裂かれた。
そしてカマエルは、その場でもう一度爪を振るった。瞬間、半蔵の体に切り傷が走った。

半蔵(爪からの風圧だけで……)

半蔵は為すすべなく倒れた。

郭「ひ、あ……」

目の前に広がる地獄絵図に、郭は意識を保てず気絶した。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:34:03.00 ID:Ih+JMOPW0
「……わ……くる……るわ……郭」

郭「――っ!」

誰かが自分を呼ぶ声で郭は目を覚ました。
上半身だけを起こし、周りを見渡すと、すぐ近くに左腕がない麦野がいた。

麦野「よかった。アンタは無事だったみたいね」

郭「……」

郭は何も答えることが出来なかった。

麦野「ま、この状況見て気を失うのも無理はないわね。
   元暗部である私ですらも、これは酷いと思ったもの」

郭「どうして……どうしてもっと早く来てくれなかったんですか!」

八つ当たりなのは分かっていた。それでもこのやり場のない思いを吐きだしたかった。

麦野「すまなかった。絹旗と半蔵とナンバーセブンは生きているんだが、浜面と滝壺は……」

郭「……いえ、こちらこそすみませんでした」
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:35:59.94 ID:Ih+JMOPW0
一方通行(ここでも力を使っちまった。もう俺も力を使えねェ。
     さて、次からはどうしたものか……)

地獄絵図と化していたこの現場を救ったのは、またしても神と化した一方通行だった。
一方通行がカマエルを取り押さえ、御坂と麦野の合体技『超原子砲』で仕留めたのだ。

一方通行(やっぱ耐久力は、大天使よりはないみてェだが……俺はそろそろ限界、
     垣根もこのザマだし、オリジナルと第4位もフルパワーで2回も攻撃したンだ。
     もう限界が近いだろう。今まともに動けるのは、結標とツインテールぐらいか……)

一方通行(このまま無理して増援に行っても、足手まといになる上に
     犠牲がいたずらに増えるだけか……?ここは一旦退くべきか……)

と一方通行がいろいろ思案しているところに、結標が尋ねる。

結標「で、どうするの?」

一方通行「何で俺に聞く?」

結標「この中で1番頭いいし、冷静だからよ」

一方通行「ンじゃあ一旦退きますかァ。このまま行っても、犠牲が増えるだけだ。
     能力が回復次第、増援に行く」

結標「分かったわ。じゃあそれを皆に伝えてくる」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:37:44.37 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:25

病院から見て南東5kmの地点で、ステイル、シェリー、神裂、天草式10数名
エツァリ、ショチトル、青髪、土御門はいた。

土御門「まずはこの状況について確認するが、今の状況は病院前での突発的攻撃に対して
    結標がランダムにテレポートした事による」

土御門「これにより、ステイルのルーンの仕込みは無駄になった。
    だからまずはステイルのルーンを仕込む事を優先する。
    この役はステイルと俺と天草式でやる」

土御門「残りはもうじき来るであろう天使を迎え撃つ役をやってもらう。……何か質問はあるか?」

ハイ、とショチトルが手を挙げる。

ショチトル「何でお前が仕切ってるんだ?」

土御門「仕切っちゃ駄目だったか?」

これ以上作戦に関係ない事を質問するのは止めなさい。
と言うエツァリの制止を振り切って、ショチトルは質問を続ける。

ショチトル「別に駄目じゃないが。なんか偉そうだったから」

土御門「それはすまなかったな。これでも仕切るのには慣れているつもりだったんだがな」

そうあっさり謝られると、もうこれ以上ツッコめないショチトル。

土御門「他に質問は?」

皆は特に発言しなかった。

土御門「よし。じゃあ早速行動開始だ」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:39:15.94 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:27

一方通行達は病院に辿り着いた。重傷であった半蔵、削板、絹旗はここでリタイア。
レベル0であるのと半蔵を見守るとして郭もリタイアした。
垣根もリタイア候補に挙がったが、垣根自身がまだ行けるとのことで
垣根はそのまま戦力として数えられた。
とりあえず重傷者以外は、病院の1階で待機することになった。

御坂「~!」

御坂は、助けに行きたくても行けないことでソワソワしていた。

白井「お姉様、お気持ちは分かりますが、落ち着いてくださいですの」

後輩の意見を御坂は素直に受け入れ、椅子に座った。しかし今度は貧乏ゆすりが激しかった。
はぁ。と溜息をつく白井。とそこで、左腕の取り付けが終わった麦野が治療室から出てきた。

冥土帰し「やれやれ。そう簡単に左腕を使い潰さないでほしいね?」

麦野「仕方ないじゃない。今回の敵は、何かを犠牲にしないと勝てないレベルなんだから」

それにしても、病院に来てから2分で義手をあっさりと取り付けるこの医者は
本当に人間なのだろうか?と一方通行は半ば以上疑問に思った。

冥土帰し「さて、次は君の番だよ。一方通行」

一方通行「あァ?何が俺の番だ?今の俺に出来る事は、こうやって休む事だけだが」

冥土帰し「僕は閃いたんだよ。君のレベル5の時の演算能力を取り戻す方法を」

一方通行「なン……だと……!?」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:41:29.97 ID:Ih+JMOPW0
冥土帰し「今から治療に入る――と言っても、君はただじっとしているだけでいい」

一方通行が案内された場所は、治療室どころかただの個室だった。
ベッドに腰掛けながら一方通行は尋ねる。

一方通行「からかってるンですかァ?こンなただの病院の個室で何するってンだよ?
     つーか何でコイツらがいるンだよ?」

コイツらとは垣根と結標の事だ。

冥土帰し「もちろん君の治療に必要だからだよ。
     正直言うと、これからやることは賭けなんだけどね?」

一方通行「一体、どうするってンだ……」

垣根「こうするんだよ」

垣根はそう言うと、人差し指から1辺が2cmほどの『未元物質』の立方体を生み出した。

垣根「今の俺は、限度はあるが無から有を生み出すなんて造作もねぇ」

一方通行「で、得意気に出したそれをどうするンだ?」

結標「私があなたの頭の中にテレポートするの」

一方通行「はァ?そンな異物頭の中にぶち込まれるとか、迷惑以外の何物でもねェよ」

冥土帰し「いやね、垣根君の『未元物質』。
     これが君の失われた脳細胞の代わりを担うんじゃないかと思ってね」

一方通行「はァ?能力が脳細胞になる?そンなことありえねェ」

垣根「おいおい。あまり俺をなめるなよ。これは一見ただの『未元物質』だが
   お前の脳味噌に触れると、自動的にお前の脳を補うように形が変質し
   完全にお前の脳味噌と同化する。これはそういう『物質』だ」

一方通行「そンなもン、常識的に考えてありえねェだろォが」

垣根「おいおい。忘れたのか?俺の『未元物質』に常識は通用しねぇ」

一方通行「カッコつけてンじゃねェよ」

冥土帰し「お話はそこまでにしようか。まだ戦いは終わっていないんだろ?
     さっさと『未元物質』をテレポートした方が良いね?」

一方通行「ちょっと待て。それが成功すると思うのか?」

冥土帰し「だから言ったじゃないか。賭けだと。けれども、このまま何もせず
     しょぼい演算能力のままと、垣根君の『未元物質』を信じてみるの
     どっちが良いと思う?」

一方通行(しょぼい演算能力ねェ……妹達がたくさン死んだ今は事実だが
     はっきり言ってくれるじゃねェか……)

一方通行「いいぜ。そこまで言うなら甘ンじて受けてやるよォ!」

冥土帰し「では、結標君」

冥土帰しがそう言うと、結標は無言でテレポートを実行した。
垣根の人差し指から『未元物質』が消え、一方通行の頭の中にテレポートされた。
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:43:22.56 ID:Ih+JMOPW0
ステイル達がルーンを仕込み始めてから、3分もしないうちに
大きさ10mほどの人型ではあるが手は鋏で、蠍の尻尾のようなものが生えている
群青色の『神の栄光』(ハニエル)が神裂達の目の前に現れた。病院前では見なかった天使である。

神裂「では皆さん、ステイル達が来るまで耐えましょう!」

青ピ・シェリー・エツァリ・ショチトル「「「「おう!!!!」」」」

神裂「救われぬ者に救いの手を(Salvere000)!」

魔法名を名乗ってから、ドン!と勢いよく地面を蹴って駆け出した。
今の彼女は『聖人』の力を8割方失っているが
それでも一般人をはるかに超越していることに変わりは無い。

神裂「唯閃!」

必殺の唯閃が放たれた。
が、ガキィン!と唯閃はハニエルの左鋏にあっさりと受け止められた。
そして反撃の右鋏に、神裂は腹の辺りから真っ二つにされた。

シェリー「くっそ!我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)!」

魔法名を名乗ると同時、シェリーは素早く魔法陣を描き上げ、3体のゴーレムを出現させた。
そして3体同時にハニエルへ襲い掛かる。

対してハニエルは、鋏から水をレーザーのように噴射した。
それはあっさりとゴーレムを貫き、シェリーをも貫いた。
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:44:37.50 ID:Ih+JMOPW0
青ピ「くっそおおおお!今度は僕の番や!」

言うと同時、青髪の周囲から水が渦巻き竜を模る。
数は2匹。2匹の竜は凄まじい速度でハニエルへ向かう。

対してハニエルは、両方の鋏から高密度の水を噴射した。
それはウォーターカッターのように、水の竜をあっさりと引き裂いた。
それだけでは終わらず、ハニエルは追撃の尻尾を繰り出す。
5mほどの長さしかなかった尻尾が、急激に伸びる。

青ピ「うおっ!」

青髪は地面を転がりながらも、何とか尻尾を避けた。尻尾はそのまま地面に突き刺さった。

青ピ「危なかったー」

エツァリ「まだ油断しないでください!」

青ピ「それってどういう――」

意味や?と言う前に、青髪がいた場所の下から尻尾が飛び出し、青髪を貫いた。

ショチトル「きゃあああああ!」

エツァリ「くっ!」

エツァリはトラウィスカルパンテクウトリの槍の切っ先をハニエルに向ける。
『分解』が発射され直撃するが、ハニエルにはまるで効いていないようだった。
そこへ追い討ちをかけるように、ハニエルは鋏から青紫色の光線を発射した。
それはエツァリとショチトルを飲み込み、消滅させた。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:45:56.56 ID:Ih+JMOPW0
青ピ(これが絶体絶命ってやつか……)

青髪は物陰に隠れてハニエルの様子をうかがいながらそんな事を思っていた。
先程尻尾に貫かれたのは、青髪が生み出した水の分身だった。

青ピ(今のところ奴が出した技を整理すると、水のレーザーに青紫色の光線
   あとは鋏に尻尾……駄目や……僕1人ではどうにも……)

と、いろいろ思考していたら気付いた。ハニエルの左鋏がこちらを向いている事に。

青ピ(――ひょっとして気配で存在を感知しているんかいな――!)

そう一瞬で判断して物陰から青髪が飛び出すのと
ハニエルの左鋏から青紫色の光線が放たれるのは同時だった。

青ピ「っは!」

飛び出した勢いと光線の余波で地面を転がった青髪だったが、何とかハニエルのほうを向き直した。
その時にはハニエルの右鋏がこちらへ向けられていて、光線がチャージされているところだった。

青ピ(やられる前にやる!)

そう判断して、即座に水の竜を生み出して突撃させる。
だがハニエルまであと2mというところで、無情にも光線が発射され
水の竜を一瞬で消し飛ばし、青髪のもとへ向かい

ボガァァァァァン!と周囲に爆音が響いた。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:47:02.13 ID:Ih+JMOPW0
青ピ「ごほっ!ごほっ!」

青髪は莫大な煙が立ち込める中で咳き込んでいた。
そこで気付いた。自分はまだ生きていると。

ステイル「イノケンティウス!」

後ろからステイルの声が聞こえた。応じるように20mもの大きさのイノケンティウスが
ハニエルに近付き持っていた十字架を振り下ろした。ハニエルは左鋏で十字架を掴むが
イノケンティウスの十字架は消えない。そして10秒間十字架を掴んでいただけで
ハニエルの左鋏は溶けだした。さすがのハニエルも一旦距離を取る。

ステイル「逃がすな!」

ステイルがそう叫ぶと、イノケンティウスから火炎が放射された。
対してハニエルは右鋏から大量の泡を発射した。
火炎放射と大量の泡がぶつかり合うが、所詮水と火。
基本的な技の相性はハニエルの方に分があった。
火炎放射は愚か、イノケンティウスまでもが泡に飲み込まれ、一時的に消失した。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:48:37.14 ID:Ih+JMOPW0
天草式「女教皇の敵ぃぃぃ!」

五和「待って!皆冷静に!」

五和の引きとめも虚しく、無残に地面に転がっている神裂の上半身と下半身を見て逆上した
五和以外の天草式のメンバーは、ハニエルへ飛びかかる。

ハニエル「rgr殺hg」

ハニエルの蠍のような尻尾から、数千もの針のようなものが全方向に放たれた。
それは天草式メンバー全員の体に幾つも刺さった。

五和「きゃああああああああああああ!」

土御門「しっかりしろ五和!」

ステイル「イノケンティウス!」

一時的に消失したイノケンティウスは再び燃え盛るが
またしてもハニエルに泡を噴射され、消失した。

ステイル(1万枚のルーンを使って、天草式によって最適な配置をされた
     強力なイノケンティウスをこうもあっさり……!)

しかも力が強力な分魔力の消費も激しい。時間をかけている暇は無い。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:51:26.37 ID:Ih+JMOPW0
土御門(これはまずいか……!)

土御門「青髪、いつでも技を出せるように準備して
    俺の合図でお前の必殺技をフルパワーで出してくれ。数は1匹でな」

青ピ「……なんやよう分からんけど、分かったで!」

青髪は土御門の言われるままに、自身の周りに水を渦巻かせ待機する。

土御門「――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定」

土御門は懐からフィルムケースを取りだすと、蓋を開けて中身をばらまいた。
1cm四方の四角い紙片が大量に舞い上がる。

土御門「――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン」

土御門「――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス」

土御門「――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式」

土御門はさらに詠唱をしながら、亀、虎、鳥、龍の折り紙が入った
4つのフィルムケースを取り出し適当な方向に投げた。

土御門「――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置」

土御門「――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ」

と、詠唱もあと少しと言うところで、ハニエルが右鋏から光線を発射した。
詠唱を破棄する訳にもいかないし、防御をする手段もない。
青髪も力を溜めているので助けられない。とその時

ステイル「盾になれ!イノケンティウス!」

ステイルのイノケンティウスが土御門の盾になるように立ち塞がった。
イノケンティウスは自らを盾に光線を受けた。水ではない為、そう簡単に消失はしない。
とは言え、光線の噴射は続いている。そう長くは持たない。

青ピ(まさか、ツッチーはこれすらも計算に入れて、こんな長ったらしい詠唱をしてたんかいな!)

土御門「――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ、釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ」

土御門「――鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン」

と詠唱が完了したところで、光線がイノケンティウスを貫き、土御門をも貫こうとしたところで

五和「七教七刃!」

ハニエルの周囲に張り巡らされたワイヤーが、ハニエルを切り刻んだ。
とは言え、この程度の斬撃では傷すらつかない。だが右鋏の照準を少しずらすことは出来た。
つまり光線の照準もずれたと言う事。光線は土御門の真上10cmを通過した。

土御門「よし!頼む青髪!」

青ピ「よっしゃ!」

青髪は、今できる限界の水の竜を放った。大きさは30m。水量は500t。

土御門「黒ノ式!」

叫びながら地面に手をかざす。
そこから大量の水が渦巻き、青髪の水の竜と合体し、強力な一撃となってハニエルへ向かう。

ハニエル「gshgmhvjv!」

さすがのハニエルも危険を感じたのか、尻尾から針を出して反撃するが
水の竜はそれらを軽く飲み込み、ハニエルすらも飲み込んだ。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:53:38.99 ID:Ih+JMOPW0
土御門「ごほっ!ごほっ!」

魔術を使った代償として、土御門は体中から血を噴き出して倒れた。

青ピ「大丈夫かいな!」

土御門「……大丈夫じゃないんだぜい。どうやら俺はここでリタイアのようだ」

と言って、土御門は意識を失った。

ステイル「……何とか天使を倒したみたいだが、その代償は大きかったみたいだね」

ステイルは周りを見回す。
そこには上半身と下半身に分かれた神裂に、腹を貫かれたシェリーがいた。
大量の針が刺さった天草式メンバーがいた。
エツァリとショチトルにいたっては死体すら残っていない。

五和「女教皇……皆……敵は……とりました……」

一度に大量の仲間と尊敬する人を失った五和は、そこで泣きだした。
それを見たステイルは、彼女は最早使い物にならないだろうと判断した。

ステイル「……土御門は戦闘不能。あそこにいる女も使い物にならなそうだ。
     仕方ないから、僕らだけであの深緑色の天使のところに行くぞ」

青ピ「せやけど、このまま放っておいてもええの?」

ステイル「どうせテレポーターとか言うのが、そいつらを迎えに来てくれるだろう」

青ピ「そうか……そうやな。じゃあ行こか」

ステイル(こいつはあのツンツン頭の熱血馬鹿よりは理解があって楽だな)

と思って走り出そうとしたその時だった。

結標「待って」

虚空から結標と御坂と麦野が突然現れた。

結標「走るよりは、テレポートの方が早いでしょ」

青ピ「せやけど、ツッチーや五和ちゃんはどうするんや?」

結標「あの子がいるから大丈夫よ」

そう言って結標が指差した先には白井がいた。

結標「あの子も、今では人間2人程度を運ぶのは余裕だからね」

青ピ「2人……なぁ……」

御坂「ちょっと!何グズグズしてんのよ!」

と結標にテレポートされてきた御坂は、もう待てないと言った調子で言った。
御坂は周りを見回しながら

御坂「こんな惨劇を、2度と起こさない為に急ぐわよ!」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:56:35.53 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:30

病院から見て南5kmの周辺は、大きさ3mほど、形は人型で深緑色の
『神の神秘』(ラジエル)によって、樹海にされていた。病院前にはいなかった天使だ。
そんなラジエルと交戦しているのはヴェントだった。
学園都市、というより日本時刻では朝のはずだったが、樹海のせいで薄暗かった。

ヴェント(……やっぱり、1対1はきついわね……いずれ体力が尽きてやられるのはこっち……)

などと考えている内に、地面から大量の蔦が生え、襲い掛かる。

ヴェント「ちぃ!」

ヴェントは飛び、ハンマーを振るった。
それだけで巨大な竜巻が発生し、大量の蔦と樹海の一部を吹き飛ばした。
そこへ、休ませまいとラジエルは大量の葉を回転させて、チャクラムの如く放つ。

ヴェント「はっ!」

空中でハンマーを振るった。風の刃が大量に生み出され葉のチャクラムとぶつかった。
結果は相殺。反撃とばかりに、ヴェントはもう一度ハンマーを振るう。
巨大な竜巻が生み出され、ラジエルを飲み込まんとするが
ラジエルが地面から生み出した蔓――と言っても樹齢1000年の木の幹の太さほどある
蔓とは言い難い蔓を壁のようにし、竜巻を迎え撃った。
結果、竜巻は蔓の壁をいくらか削ったが、ラジエル本体を捉える事は無かった。
そんな攻防をしているうちに、削られた樹海は復活していた。

ヴェント(このままじゃジリ貧……お願い……誰か早く来て……)

ヴェントがそんな事を願ったその時、突如樹海が燃えだした。

ヴェント(来た!)

これはフィアンマの出した炎じゃない。となるとこれはルーンの魔術師が出したものだ。
と一瞬で判断したヴェントは、樹海の燃焼に巻き込まれないように、飛んだ。
そして空中でハンマーを振るい、竜巻を発生させた。
それはラジエルを狙ったものではない。燃え盛る樹海を狙ったものだ。
それが意味する事は竜巻と炎の合体。そして鉄の沸点をも超える超高温の炎の竜巻は
そのままラジエルに向かい襲い掛かる!

ラジエル「frshdstwbyfh!」

さすがのラジエルも危険を感じ、蔓でガードするのではなく、超高速で後退した。
その判断は天使にとっては間違いであり、ステイル達にとっては狙い通りだった。

ステイル「イノケンティウス!」

ラジエルが後退した先には、ステイルが呼び出したイノケンティウスが待ち構えていて
十字架を振りおろしていた。高速で後退していたラジエルは、それが分かったころには
既に十字架に潰されていた。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:58:04.22 ID:Ih+JMOPW0
ステイル「ふぅ」

天使を潰せたと判断したステイルはイノケンティウスを引っ込めた。
その近くには麦野、御坂、結標、青髪がいた。

麦野「案外、あっさり終わったじゃない?じゃああの炎の竜巻、危ないだけだし
   ちゃっちゃと消しちゃってよ。あなたレベル5の第6位で水流操作系の能力者なんでしょ?」

青ピ「そう言う時だけ僕を使うの?簡単に言うけども、あれだけの炎を消すのは結構大変で」

麦野「えー、やってくれてもいいじゃない。もしやってくれたら、私の事」

青ピ「ぜひやらせていただきます!」

と言って、青髪は炎の竜巻に少し近づいて、水の竜で竜巻を消し飛ばした。

御坂「ちょっと!そんなこと言っていいの?」

麦野「そんなことって何よ?」

御坂「だからその、私の事、す、す、好きにしても良いなんて///」

麦野「そんなこと言ってないけど。私の事、までしか言ってない」

御坂「そ、それはちょっと屁理屈なんじゃ」

麦野「何?そこまで言うなら、美琴が代わりにピアス君の言う事を聞けばいいじゃない」

御坂「な、何でそう言うことになるのよ!私は嫌よ!」

などと喧嘩になりつつあった御坂と麦野だったが、突如ヴェントの怒号。

ヴェント「まだだ!まだ天使は消滅してない!」

御坂・麦野「「え?」」

瞬間、地面から大量の蔦が飛び出した。
それはそこにいた御坂・麦野・結標・ステイルの心臓を貫く様に向かう。
彼女達の心臓を貫くまであと数cmというところで、彼女達は結標によってテレポートされた。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 15:59:59.18 ID:Ih+JMOPW0
御坂「助かったわ、淡希」

結標「あれで本当に終わったのかな。と疑っていたから。警戒していたのよ」

麦野「私ともあろう者が……てかお前はなんか気配とか感じなかったのかよ?」

ステイルの方を見ながら、そう疑問を投げかけた。

ステイル「僕はテレズマ感知に優れているわけじゃない。
     気配を消されれば、どこにいるのかは分かりづらくなる。
     まして僕はもう疲れているんだ」

麦野「ちっ」

青ピ「まあまあ。皆無事やったんやし、とりあえずそれでええやないの」

ヴェント「そいつの言う通りだ。今は一致団結して天使を倒す事が優先だ」

いつの間にか近くにいたヴェントと青髪はステイルをそうフォローした。

麦野「天使倒すって言ったって、どこにいるんだよ?」

周りを見回すが天使らしきものが見当たらない。

ヴェント「下だ。地面の中からわずかにテレズマを感じる。
     だがどの辺りに埋まっているか、正確な位置までは分からない」

麦野「じゃあとりあえず、能力ぶっ放して地面を適当にめくりあげていけばいいのか?」

ヴェント「やめろ。能力を無駄に使うな。とりあえず私の魔術でアンタらを浮かせる。
     空中から様子を見る」

そう言って指をパチン!とならすと、皆の体がフワフワと浮き上がり、地上10m地点で留まった。

麦野「で、浮いたのは良いけど、こっからどうするの?」

ヴェント「私に考えがある。皆バラバラになって。多分、蔦の攻撃が来るけどなるべく避けて。
     能力は必要最低限にしか使わないで」

御坂・麦野・青ピ・ステイル・結標「「「「「OK」」」」」
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:02:22.42 ID:Ih+JMOPW0
そうしてバラバラになってから2分が経過した。怒涛の蔦攻撃の連続に、全員辟易し始めていた。

麦野「おい!まだかよ!」

ヴェント「もう少し!もう少しだけ耐えて!」

怒鳴る麦野に、ヴェントも怒鳴って対応する。
そんなヴェントは地面から伸びてくる蔦を観察していた。

ヴェント(奴は多分、自身の体から蔦や蔓を出して攻撃する。
     学園都市に植物が無い訳ではないが、アスファルトだらけのこの街で
     植物を操って攻撃するのは効率が悪いはず)

ヴェント(さっき私が1対1で戦っていた奴は、分身か何かだろう。
     実際、やつ自身は何もしなかった。
     樹海で視界が薄暗い時に、武器でも作って突っ込んでくればいいのにだ)

ヴェント(わざわざ分身で戦うなんて、私を嘗めていたのか、遊び心なのか
     さっきみたいに倒したと油断させる為なのかは知らないけど)

ヴェント(遊び過ぎたわね!チェックメイトよ!)

ヴェントは、高速で蔦が最も盛んに生い茂っている地点の真上に移動した。

ヴェント「誰か!1番火力ある攻撃を出せる人来て!」

青ピ「僕かな」

麦野「私が行く!」

麦野はヴェントのもとへ移動して

麦野「ここにぶち込めば良いのね」

ヴェント「そうよ。出来ればとびっきりのをね」

麦野が力を溜め始める。

ヴェント(一見、蔦は地面から全体的に生えているように見えるが
     実際はその生え方には差がある)

ヴェント(蔦を地面に通せば通すほど、威力は弱くなっていく。
     強い攻撃を繰り出すには自分の体から出した蔦を
     地面からなるべく早く出した方が良い)

ヴェント(つまり、蔦が一段と生えているこの地点が、奴が潜んでいる場所!)

そんな事を考えているヴェントと、力を溜めている麦野を重点的に狙って蔦が伸びてくるが
ヴェントは風で切り、麦野は避ける。その内に麦野の力のチャージが完了する。

ヴェント「行け。遠慮なく叩きこんで!」

麦野「ぶっち飛びなあああ!」

と麦野が『原子崩し』のビームを放つ直前に、反撃の蔦が麦野を襲った。

麦野「おおおおおお!」

麦野はそれを義手の左手で抑える。
ギチギチと蔦が喰い込んでくるが、構わず右手から能力を放った。
ビームは一直線に落下して伸びてくる蔦を消し飛ばしながら、ドゴォォォン!と地面に直撃した。
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:03:49.33 ID:Ih+JMOPW0
ビームによって直径、深さ共に10mほどの穴が出来た。
そこからゆっくりと、大きさ5mほどの鮮やかな緑色の花に包まれたラジエルが上昇してきた。

ヴェント「皆こっちきて!こうなったらゴリ押しよ!全員で今できる最大限の技を繰り出すの!」

言う通りに全員がヴェントの周囲に集まる。結標とステイル以外の全員が力を溜める。
ヴェントの背中からは黄色い翼が生える。ウリエルのテレズマを取りこんだヴェントの本領だ。

ヴェント「アンタとルーンの魔術師は、瓦礫に火をつけたものをあいつにテレポートして!
     皆、そろそろぶっ放すわよ!」

御坂・麦野・青ピ「「「おう!」」」

同時、竜巻、雷撃の槍、水竜、ビームが放たれた。
その4つの攻撃が合体したものがラジエルに向かう。
その攻撃に対抗するように伸びてきたのは緑色の光線。
最大級の攻撃はぶつかり合って、拮抗した。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:05:40.35 ID:Ih+JMOPW0
ヴェント「今よ!炎の瓦礫をテレポートして!」

結標「それが……」

ステイル「彼女によってテレポートで配置されたルーンが、根こそぎ天使に荒らされたみたいでね。
     僕はもうライター程度の炎しか出せない」

ヴェント「新しくルーンを配置すればいいじゃない!その子のテレポートを使って!」

ステイル「ルーンがもうほとんど無いんだ!」

ヴェント「くっそ!じゃあもうただの瓦礫でもいいからテレポートしてくれ!」

結標「やってるけど、手応えが無いと言うか、効いてない感じがする!」

ヴェント「仕方ない!このまま私達がゴリ押しするしかないみたいね!皆、頑張るわよ!」

御坂・麦野・青ピ「「「おう!」」」

ヴェントを含む4人は力押しで、ラジエルを潰すことにした。
つまり、4人は力を放ち続けている。人間は同時に2つの事をやるのは困難だ。
もしこの状況で攻撃が来れば、避けることすら出来ない。
そしてその人間では対応できないような事は起こった。

ラジエルから夥しい数の蔦攻撃が全員を狙って放たれた。

ヴェント(強力な光線を放ちながら、蔦攻撃まで――!)

結標「皆!力の放出を止めて!」

その言葉に4人は一斉に放出を止めた。蔦が全員まであと数cmというところで
結標によって、天使から2km離れたビルの屋上にテレポートされた。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:07:08.59 ID:Ih+JMOPW0
御坂「これからどうするの?」

開口一番、御坂はヴェントにそう尋ねた。

ヴェント「どうするもこうするも、どうにかして攻撃を決めない限りは……
     ルーンの魔術師が使えればな……」

と、その時だった。

麦野「う、ぐうう、ああああああああああああああああああああ!」

義手の左腕を抑えながら、麦野が突然苦しみ出した。

ヴェント「その左腕、早くちぎらないと――!」

そう言ってハンマーを振るったときには遅かった。
麦野の左腕は爆発し、そこから種のようなものが全方向に拡散された。
突然の攻撃に、ステイル以外は何とか対応するも、ステイルだけは体中に種らしきものを浴びた。

ステイル「がはっ!」

ヴェント「何かヤバい!自分にルーンを貼って自分を燃やせ!」

ステイル「ご、あああああああああああ!」

しかし苦しむステイルには、ヴェントの声は聞こえていなかった。
間もなく、麦野とステイルの体に異変が起こった。体がどんどん干からびていく――!

ヴェント「電撃娘!2人に電撃を放って、種を焼き尽くすようにだ!」

御坂「よく分からないけど分かった!」

返事と同時、御坂の電撃が2人を射抜いた。だが、遅かった。2人の体は完全に干からびていた。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:09:30.13 ID:Ih+JMOPW0
御坂「う……そ……」

青ピ「一体……何が起こったと言うんや……」

ヴェント「種だよ。2人の体に埋められた種が、生命力や魔力を吸い取ったんだ。
     吸い取ったエネルギーは、多分天使に還元されているんだろう。
     もっと早く気付くべきだった。左腕が爆発したところでようやく気付くなんて……」

だが反省している暇などなかった。
2km先から、ラジエルの光線がヴェント達の居るビルを射抜いたからだ。
ビルが崩れ、全員が地面に向かって落ちていくが、ヴェントの魔術により無事に地上へ着地した。
とそこに、2kmもの距離を、地面を伝って移動してきたラジエルが
2匹の食虫植物のようなものと共にヴェント達の目の前に現れた。
食虫植物は、直撃すればそこから生命力を吸い取る種を無数に発射した。

ヴェントは風で、御坂は電撃を巧く放ち、青髪は水で盾を作って防ぐ。
しかし

結標(駄目だ――!もうテレポートできない――!)

ここまで結標は自分だけでなく、それなりの人数で相当な距離を連続でテレポートしてきた。
彼女はもう限界だった。寧ろここまで保った事の方が称賛に値するだろう。
そんな結標の異変に唯一気付いた青髪は

青髪「結標ちゃん!」

水の盾を自身の周囲に展開しながら、結標の前に躍り出た。
それで何とかなるはずだった。しかし

たった1つ、種が水の盾を貫き、青髪の左脇腹に直撃してしまった。
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:10:34.47 ID:Ih+JMOPW0
結標「は、早く種を取り除かないと!あなたは!」

青ピ「大丈夫や。こうすれば……ぐっ!」

青髪は右手で昔のチョキのように銃を作り、自身の左脇腹に人差し指をあてがい
そこから水の弾丸を放った。つまり、自分で自分の脇腹を種ごと撃ち抜いたのだ。

青ピ「これで……吸収される事は無くなったはず……」

結標「でも……血がこんなに……どうして……どうして私なんかを庇ったの!」

青ピ「惚れたからや……」

結標「え?」

青ピ「君に惚れたから……惚れた女を守るのは当然やろ?」

結標「でも……それで死んだら意味ないじゃない!」

青ピ「大丈夫。僕は死なへん……昔から……体だけは丈夫やから……
   仮に死んだとしても……惚れた女を守って死ねるのなら……悔いは無い……」

それで、青髪は意識を失った。

結標「い、いやああああああああああああああああああああ!」
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:11:47.58 ID:Ih+JMOPW0
御坂「これ以上……これ以上好きにさせてたまるかーっ!」

雄叫びをあげる御坂の周囲から莫大な量の砂鉄が舞い上がる。
それは30mほどの槍の形になって、ジャイロ回転をしていた。それを御坂は殴って放つ。

ヴェント(この一撃に懸けるしかない!)

御坂の『超電磁槍』にヴェントの竜巻が加わった。
その一撃は、ラジエルが咄嗟に盾にした2匹の食虫植物を易々と貫き

ボシュウウウウウ!と間抜けな音と共に、ラジエルの腹部辺りに咲いていた花に吸収された。

御坂「う……そでしょ……」

狼狽している御坂などお構いなしに、ラジエルの腹部の花が光り出す。

ヴェント「ヤバい!跳ね返す気だ!」

その言葉と当時、腹部の花からカウンターの一撃が放たれた。
それはラジエルから一直線に学園都市の街並み2kmを蹂躙した。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:13:39.60 ID:Ih+JMOPW0
ヴェント「はぁ……はぁ……」

彼女達は生きていた。究極の一撃が放たれる直前に、御坂とヴェントは咄嗟に横に飛び
結標と青髪を抱え、直撃を免れたのだ。ただし、その余波だけで800m吹き飛ばされた。
ヴェントの風で着地は無事だったものの、結標は意識を失い、ヴェントも御坂も限界だった。

ヴェント(結局……私程度ではどうにもならないの……?)

這いつくばりながら、自身の無力さが情けなかった。
ウリエルのときだって何もできなかった。そして今も。

ヴェント(くっそ!くっそ!!)

這いつくばりながら、彼女は泣いていた。守りたい。
守るために戦わなきゃいけないのに体は動かない。動いてくれない。

御坂(2度と惨劇を起こさないと息巻いておきながら……このザマとはね……)

御坂も自身の情けなさに、地面に仰向けになりながら涙を流していた。

御坂(昨日から、泣いてばっかり……皆が信頼してくれているのに……それに応えられない……)

思いだけは。守りたいと言う思いだけは、自分が1番あると自負している。
けれども、体は動かない。どう足掻いても動かない。

ヴェント(もうそろそろ……奴が来るはず……)

ヴェントがそう考えた時、地面を破ってラジエルが現れた。
蔦などで貫けば終わりなのに、わざわざ出てきた真意は彼女達には知る由もない。
ただ1つだけ分かる事は、もう終わりだと言う事。

ヴェント(……こんな死に方かあ……せめて、死ぬ前に……もう一度だけ
     フィアンマに会いたいなあ……)

そんな事を思いながら、ヴェントはゆっくりと目を閉じた。

御坂(……あーあ、もう最悪。結局、あの馬鹿には告白できなかったし。
   黒子、私が死んだって知ったら、悲しんでくれるのかなあ……)

ツンツン頭の少年と、ツインテールの後輩を思い浮かべながら、御坂はゆっくりと目を閉じた。

――そして、緑色の光線は放たれた。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:15:07.42 ID:Ih+JMOPW0
AM9:37

『土御門』

土御門「!」

白井に病院までテレポートされて、病室のベッドに寝かされていた土御門は突然の声に飛び起きた。

土御門(傷が治っている……一体これは……)

『土御門、君に頼みがある』

土御門「!」

またしても脳内に直接語りかけるような声。この声の主を彼は知っている。

土御門「何の用だ?アレイスター」

アレイスター『もうすぐ上条当麻が帰ってくる。
       君には帰ってきた彼を、病院前に案内してほしい』

土御門(てことは、カミやんのやつ、本当に『神上』と化した
    インデックスに勝利したと言うのか?)

土御門「何故俺がそんな事をしなければいけない?一体何がしたい?」

アレイスター『そんなことは後で説明する。とりあえず言う事を聞いてもらおう。
       ちなみに、君以外の者に協力を求めようとしても無駄だからな。
       言う事を効かない場合はもちろん、土御門舞夏を』

土御門「分かっている。それ以上言うな。お前の言う事は聞く」

アレイスター『では、頼んだよ』
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:16:23.77 ID:Ih+JMOPW0
ヴェント(ここは天国かなあ。それとも地獄かなあ。
     あまり良い事してこなかったし、やっぱ地獄なのかなあ)

そんな事を思いながら、ヴェントはゆっくりと目を開けた。
そこに広がっていた光景は、崩れたビルとか瓦礫の山だった。

ヴェント(あれ?地獄ってこんなところなの?)

とその時、ヴェントが1番聞きたかった人間の声が聞こえた。

フィアンマ「俺様の女を泣かすとは、覚悟は出来てんだろうなぁ!」

イメージカラーとは違い、普段は割と冷静な彼からは想像も出来ない程荒げた声だった。
天使にとっては、何を言っているかは分からないだろうが。

ヴェント(ひょっとして、私まだ生きている!?)

フィアンマ「一撃で仕留める」

ドォォォン!とフィアンマの右肩が爆発した。
真っ赤な炎に包まれた右腕を突き出しながら、一直線にラジエルに突っ込む。
対してラジエルは緑色の光線。先程フィアンマに右手で弾かれた光線より、10倍は強い。

フィアンマ「無駄だ!」

フィアンマの右拳と、緑色の光線が真正面からぶつかる。
それでもフィアンマの拳は止まらない。光線を押し退けながら突き進む!
そして――

ドッゴォォォォォン!と拳がラジエルに直撃したのと同時、爆発が起こった。
そのあまりの威力に、ラジエルは粉々に砕け散った。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:18:17.13 ID:Ih+JMOPW0
御坂(ここは天国?それとも地獄?てかそんなものないか。
   でももしあるのなら、天国が良いなあ。そりゃあ、自販機に蹴りいれたり
   あの馬鹿には散々迷惑かけてきたけど……地獄はあんまりだよね)

そんな事を思いながら、御坂はゆっくりと目を開けた。
そこに広がっていた光景は、逆さまの、真っ赤な瞳に真っ白な少年の顔だった。

御坂「うひゃあ!?」

思わず御坂は悲鳴を上げた。

一方通行「生きていてよかった。オマエに死なれちゃ、妹達に示しがつかないンでな」

御坂「一方通行がいるなんて、やっぱここは地獄なの?」

一方通行「つまらねェボケは止めろ。ここは地獄でも天国でもない、学園都市だ」

御坂「え?あ、そうなの?」

一方通行「本気で勘違いしていたのか?オマエ本当に第3位かよ?」

御坂「うっさいわね!アンタの顔が地獄みたいだからよ!」

一方通行「意味分かンねェし」

御坂「てかアンタと話している場合じゃない!あの天使は!」

一方通行「もう終わったぞ。アイツが1人でやった」

一方通行が顎で示した先には、異様な右手を持つ真っ赤な男がいた。

御坂「ほ、本当に!?」

一方通行「嘘ついてどうすンだよ」

御坂「そ、そう。あれ、そういやあの男、今まで見かけなかったけど何してたの?」

御坂はこれまでバラキエル、カマエル、ハニエル、そして今のラジエルと様々な天使との
戦いを見てきた。ヨフィエルの時は直接見た訳ではないが垣根と一方通行2人だけでやったと言う。
それらの戦いすべてにあの男はいなかった。

一方通行「オマエバカか?天使は全部で6体居たンだ。
     あの男はその内の1体を俺達と一緒に倒して助けに来たンだよ」

御坂「そ、そう言えばそうだった。てかアンタ達と私達が
   別行動したのはそれが理由だもんね。演算能力が戻った調子はどう?」

一方通行「……おかげさまで、結構調子は良い」

8月31日の出来事で脳の一部を失ったから、演算能力が云々で、垣根と結標の力によって
能力を取り戻した。と言う事だけ説明して病院で別れた。
9000人以上の妹達が死んだ事は言っていない。というより死んだ事を知っているのは
一方通行を除けば、冥土帰し、結標、土御門、垣根、フィアンマ、ヴェントくらいである。
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:19:19.71 ID:Ih+JMOPW0
垣根「実際調子いいなんてもんじゃねぇよ。大活躍だったぜ、コイツ。
   コイツが天使を倒したと言っても過言じゃねぇ」

傍らに居た垣根が、一方通行を親指で指しながらそう言った。

一方通行「いきなり褒めるてくるとか、気持ち悪ィから止めろ」

フィアンマ「いや、実際助かったよ。
      あの俺様ですらピンチな状況をひっくり返してくれたんだからな」

そこに2体の天使との戦いを終えてボロボロのフィアンマも
ヴェントを抱えながら近付いてきて、一方通行を褒め称えた。

御坂「てか傷が無いけど、無傷で勝ったの?」

垣根「そうそう。そりゃあもう凄かったぜ」
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:21:51.17 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:35

病院から見て南西5km地点で、大きさは30m、人型で虹色に光る『玉座に侍る者』(メタトロン)と
15分も交戦していたフィアンマは既にボロボロだった。

フィアンマ(メタトロン……ミカエルをも凌ぐ天使……まさか、この俺様が
      手も足も出ないだなんてな……)

メタトロンの攻撃は主に拳と炎だった。フィアンマは炎の魔術師で火炎属性攻撃に耐性があり
強力な拳も特異な右腕があったからこそ、ここまで対応できた。
フィアンマでなければ、4秒もかからずにこの世から消え去っていただろう。
そんなフィアンマも、もう限界だった。メタトロンの拳が来る。しかしもう体が動かない。

フィアンマ(ここで終わりか……さよならヴェント)

恐怖からではなく、諦めの気持ちでフィアンマはゆっくりと目を閉じた。
2秒後、ゴキィン!と言う音と共に、メタトロンの拳が弾かれた。

フィアンマ(何が……)

あまりにも異様な音に、フィアンマはゆっくりと目を開けた。
目の前に広がっていた光景は、ポケットに両手を突っ込んで
悠然と仁王立ちしている真っ白な少年だった。

一方通行「よう。今助けたので昨日の借りは返したぜ」

フィアンマ「あの……『一掃』レベルの拳を……弾いたと言うのか……」

垣根「あとはそいつに任しときな。多分、やってくれるぜ」

呆然とするフィアンマの隣に、いつの間にかいた垣根がそんな事を言った。
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:24:56.03 ID:Ih+JMOPW0
一方通行「さァて、天使さン。楽しませてくれよォ!」

タン!と彼の軸足が軽く地面を踏んだ。
瞬間、一方通行を中心に1辺が3mの3×3マスのラインが入った。
もう一度同じ様に地面を軽く踏む。すると一方通行の周囲8マスが浮きあがった。
浮き上がった1辺3mのコンクリートの塊8個を2秒かからず蹴り終える。
1発1発が『超電磁砲』以上の威力だ。

だがそんな攻撃も、メタトロンは拳1つで突き破った。
しかし今の攻撃は、全盛期の演算能力を越えた現在の一方通行にとっては
小手調べ、陽動にすぎない。

一方通行「次はこれだァ!」

既に800m先のビルとビルの隙間に潜り込んでいた一方通行は、そのまま両手を広げて
ビルに手を突っ込んだ。そしてゴォォォン!という轟音と共にビルを持ちあげた。
惑星の回転エネルギーを奪い取った腕で、ビルを恐るべき速度で2つ放った。

メタトロン「ghdjshgkgkylueglku」

窓の無いビルでなくては耐えられないような究極の2つの攻撃を
メタトロンは両拳を突き出して砕いてみせた。その代わり拳にヒビが入った。

フィアンマ「あのメタトロンを……押している?」

メタトロンがヒビの入った拳を引き戻した時には
一方通行はメタトロンの懐に潜り込んで、双掌を腹部に突き刺していた。

一方通行「――解析――爆発」

解析を2秒で終えた一方通行は、テレズマのベクトルを操りメタトロンを内側から爆発させた。
それでも大ダメージではあるが倒すまでには至らない。

一方通行「成程。今迄の天使とはレベルが違うって訳かァ」

言いながら、メタトロンの顔面付近まで上昇した一方通行はその顔面に蹴りを叩きこんだ。
その一撃でフィアンマの拳ですら揺らがなかったメタトロンが仰け反った。

一方通行「空気を――圧縮」

両手を水平に広げて空中を舞っていた一方通行の頭上に関東中の風が集められる。
それは圧縮され、直径10mの『高電離気体』(プラズマ)が10個出来上がった。
そしてその数のプラズマを生み出してもなお、一方通行は余裕だった。

一方通行「本当は100m級のプラズマをぶつけても良かったンだけどよォ。
     あンまでかいのだと、学園都市を溶かしかねねェからよォ。
     仕方なく分散させたわけだわ。まァ、どうでもいいか。
     オマエが消滅する事に変わりはねェしなァ」

10個のプラズマが、メタトロンに向かって放たれた。
耐熱性があるメタトロンですら、摂氏10000万度を超えるプラズマに為す術なく溶かされ、消滅した。
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:25:40.69 ID:Ih+JMOPW0
フィアンマ「あのメタトロンを……一方的に……」

垣根「ったく。いつになったら、俺はアイツに追いつけるのかねぇ」

と、垣根とフィアンマが会話を交わしている間に、一方通行が既に近くに居た。

一方通行「何してンだ。早くあの深緑の光のところに行くぞ」
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:27:02.85 ID:Ih+JMOPW0
垣根「と、まあ厨二全開でとにかく凄かったって訳だ」

一方通行「うっせェぞ。クソメルヘン」

垣根「だから自覚はあるから。自覚がないお前よりマシだから」

御坂「『ちゅうに』って中学2年生の事?」

そんな風にアホな会話が繰り広げられているその時だった。

アレイスター「現在時刻は日本時間で9時42分。四大天使を倒し、学園都市を襲った
       6体もの天使をも倒した。君達は本当によくやってくれた」

一方通行達の目の前に、アレイスターが突然現れた。

垣根「何の用だ?」

アレイスター「そんなに睨まないでくれ。私はただお礼を言いに来ただけなんだから」

フィアンマ「だだお礼を言う為だけに、お前ほどの奴がわざわざ出てくるわけないだろう。
      何を企んでいる?」

アレイスター「何も。だからお礼を言いに来ただけと言っているじゃないか。
       そろそろ君達は休むべきだ」

アレイスターがそう言った直後だった。ドサッ!と何かが倒れるような音が連続でした。

フィアンマ「ぐ……!な……」

気付けば一方通行以外の全員が、うつ伏せに倒れていた。
そして壮絶な頭痛。フィアンマは確信した。アレイスターによって“何か”をされた。

一方通行「何を……しやがった……」

何とか立っている一方通行も辛そうだ。

アレイスター「成程。さすがに2人は耐えたか。だが終わりだ」

そうして、何とか意識を保っていたフィアンマと一方通行の意識も中断された。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:29:14.15 ID:Ih+JMOPW0
時は少し遡り、AM9:05。
ロシアへ向かう途中の海上で『神上』と『神浄』は対峙していた。

禁書「――『書庫』内の10万3000冊により、天使を迎撃した魔術の術式を逆算……
   該当する類似の『力』を特定。おそらく『竜王』(ドラゴン)の力だと思われます」

そう。上条の中に居たのは『竜王』。『幻想殺し』は莫大な異能の塊である『竜王』を
封じ込めるための『蓋』でしかなく、『蓋』を解いた今の上条は『竜王』の力の一部を使役できるのだ。

禁書「――『竜王』の力を使役する者に対して有効な魔術のくみ上げに成功しました。
   これより有効魔術『聖ジョージの聖域』を発動、天使を迎撃したものを破壊します」

バギン!と言う音と共に、インデックスの両目にあった2つの魔法陣が拡大した。
それは直径2mほどの大きさで、重なるように配置された。

上条「――何か来るな」

上条当麻は記憶喪失である。この状態のインデックスは、イギリスのクーデター後に
フィアンマと共に見た事はあるが戦った事はない。
それでも、もう少しで攻撃が来るだろうと言う事がなんとなく分かった。直感ではなく、経験として。

ズズズズズ、と翡翠色のエネルギーが上条の右腕から滲み出し、包み込んだ。
それは『竜王の顎』(ドラゴンストライク)を象った。その顎が大きく開かれる。

一方でインデックスの方も、人の頭では理解できない『何か』を歌い終わった。
直後、魔法陣の重なった部分に『亀裂』が入った。そこから莫大なエネルギーが滲み出ているのが上条には分かった。

上条「来い!お前の全てをぶつけてみろ!」

直後、ゴッ!と亀裂の奥から直径1mほどの光の柱が発射された。
『竜王の殺息』(ドラゴンブレス)。究極の一撃がインデックスから10mほど離れた上条に一直線に向かう。

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

上条の咆哮と共に大きく開かれている『竜王の顎』から、光の柱が発射された。
同じく『竜王の殺息』。そして究極の一撃と究極の一撃がぶつかりあった。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:31:37.32 ID:Ih+JMOPW0
同じ『竜王の殺息』でも、一方は10万3000冊を活かした『偽物』(レプリカ)。
一方は本物の『竜王』を宿した者からの『本物』(オリジナル)。
優劣は10秒で明らかになった。上条の『竜王の殺息』が押し始めた。しかし、インデックスも馬鹿ではない。

禁書「――『聖ジョージの聖域』は効果が見られません。
   他の術式に切り替え、引き続き天使を迎撃した者の破壊を実行します」

効果がないのなら素直に退いて別の手段で攻撃すればいいだけ。
インデックスは『竜王の殺息』の発射を止めた。同時に上条の『竜王の殺息』が
インデックスに向かうが、凄まじい速度でそれを回避し、上条の後方に回り込んだ。

禁書「――続いて有効と思われる魔術『自然現象』(フェノーメノン)発動」

究極の怪物の一撃で真正面から打ち砕くのが駄目なら環境を、変えてしまおうと言うとんでもない発想。
思いつく事は出来ても、完璧に自然を操る事など一般人は愚か学園都市のレベル5やプロの魔術師だって到底出来ない。
しかし『神上』たる今のインデックスならそれが可能――!

禁書「タイダルウェイブ」

現在、上条とインデックスは海上で戦っている。
インデックスは真下の海水を操り、高さは100m、幅は10kmにも及ぶ津波を生み出した。

上条「――!」

上条は、インデックスを倒すのではなく助けるために戦っている。
そのため、極力インデックスを傷つけたくはない。このまま『竜王の殺息』を
出しながら振り返れば、津波ごとインデックスを貫いてしまうだろう。
だから上条は『竜王の殺息』の『性質』を炎に変え、相殺しようと考え振り返った。

結果『竜王の殺息』は津波を貫くことなく、見事に蒸発だけをさせた。

禁書「ダイヤモンドダスト」

津波、即ち水を蒸発させれば水蒸気が発生するのは道理。
相当量の水を蒸発させた上条の周りには、相当量の水蒸気があった。
それをインデックスは一気に冷却し、凍らせた。
本来ならば、実害は特になく幻想的に見えるだけのダイヤモンドダスト。
しかしインデックスが行使したダイヤモンドダストは、水蒸気を上条ごと氷漬けにした。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:32:48.96 ID:Ih+JMOPW0
禁書「――とどめです」

氷漬けにしただけでは足りないと言わんばかりに、頭上に100mを超える光の大剣を生み出した。
そして氷ごと上条を砕く為に、その大剣を振り下ろしたところで

バリィィン!と上条当麻が氷から脱出した。その瞳は黒から澄んだ青に変わっている。
しかしそんなことは些事にすぎない。氷漬けにされていようがされていまいが
瞳の色が変わろうが、この大剣で切り裂くことに変わりはないのだから。

上条「なめんな!」

上条の左腕から翡翠色のエネルギーが滲み出し、包み込んだ。
それは爪の形を象った。即ち『竜王の鉤爪』(ドラゴンクロウ)。
万物を切り裂くその爪は、光の大剣をあっさりと切り裂き

上条「遊びはやめようぜ。インデックス」

ボシュウ!とインデックスをも切り裂いた。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:34:46.68 ID:Ih+JMOPW0
その瞬間、インデックスは上条の後方20mの位置で勝利を確信してほくそ笑んでいた。
何故なら、上条が切り裂いたインデックスは蜃気楼にすぎず、加えて隙だらけだったからだ。

インデックス「――終わりです」

全長30mにも及ぶ光の槍を生み出し、繰り出した。それで勝利は確定した。

ゴキィィン!と上条の右腕の『竜王の顎』が光の槍を止めなければ。

禁書「――!」

上条「言ったはずだぜ。遊びは止めようぜ、と」

ゴギャア!と『竜王の顎』が咥えていた光の槍を噛み砕く。

上条「今の俺に小細工は通用しない。真正面から正々堂々と来い」

禁書「――ミラージュ」

光の屈折を操り、大量の蜃気楼の分身を生み出す。もちろん、本物の分身ではなく
映像のようなものにすぎないが、上条には本物が分からないはず。

上条「だからさ。小細工は通用しないんだって。それに――」

上条の背中に生えている翡翠色の『竜王の翼』が大きくはためいた。
それだけで風速200m級の暴風が吹き荒れた。それだけの風を喰らって蜃気楼で出来た分身は掻き消され
本物のインデックスですら即席で風の盾を作って防ぐことが精一杯だった。

上条「終わりだ。インデックス」

インデックスの後方に回り込んだ上条。右腕の『竜王の顎』の口が大きく開かれる。

禁書「――!」

風を防いだので精一杯だったインデックスは、後ろに回り込まれた事に気付く事は出来ても
対抗する手段がなかった。そして――

上条の『竜王の顎』がインデックスを丸々飲み込んだ。
飲み込んだ。と言うよりは『竜王の顎』の形をしたエネルギーを最大限に浴びせた。と言う方が的確かもしれない。
とにかく飲み込んだ瞬間、バリィィィィィン!という強烈な音と共にヨハネのペンは完全に崩壊し、インデックスは気絶した。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:36:17.60 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:20

ヨハネのペンを完全に破壊した事は分かるが
頭の中の10万3000冊がどうなったのか分からない上条は
インデックスに負荷がかからない速度で、学園都市へ帰還する為に翼をはためかせた。

AM 9:35

『冥土帰し』の病院前に辿り着いた上条は、再び『幻想殺し』で蓋をして
『竜王』化を解き、インデックスを抱え病院内へ駆けこんだ。

上条(……なんだ?この異様な静けさは……)

そんな事を思いながら『冥土帰し』のもとを訪ねた上条の目の前に飛び込んできた光景は

気絶してがっくりと項垂れて椅子に座っている『冥土帰し』の姿だった。

上条(何が……何が起こって……)

とりあえず右手で触ってみるも反応はない。異能の力は関係していないのか。

上条(どうすれば……!)

その時だった。

土御門「カミやん!」

息を切らしてはいるが、体はピンピンしている土御門が現れた。

上条「土御門!これは一体……!」

土御門「話は後だ!インデックスを置いて、病院前に急ぐぞ!」

上条「……分かった」
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:38:30.65 ID:Ih+JMOPW0
訳が分からなかった上条であったが、土御門に言われた通りインデックスをベッドに寝かせ
土御門の後に続いて病院前へやってきた。そこにいたのは

アレイスター「やあ。待ち侘びていたよ。上条当麻」

妹達&打ち止め&番外個体「「「……」」」

学園都市統括理事長アレイスタークロウリーと、やけに大人しく
ただ突っ立っているだけの御坂美琴のクローン達だった。

上条「こ……れは……一体……」

土御門「何のつもりだ!アレイスター!」

アレイスター「そうだな。それを説明する前に、まずはお礼を言っておこう。
       ありがとう。君達は本当によくやってくれた」

上条「どう言う意味だ……」

アレイスター「どう言う意味だも何も、私は感謝の意を述べているだけだが?」

土御門「ふざけるなよアレイスター。お前ほどの奴が、その程度の事でわざわざ出てくる訳がない。
    本当の目的は何だ?」

アレイスター「やれやれ、土御門はせっかちだね。そうだな。
       確かに私は、感謝を述べる為だけに現れた訳ではない。
       一言で言ってしまうと上条当麻、君と戦いに来た」

上条・土御門「「な!?」」

アレイスター「さあ、早く力を解放してくれ。最期の晩餐(ショータイム)の幕開けだ」

瞬間、ゴッ!とアレイスターからとんでもない威圧感が滲み出た。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:39:38.59 ID:Ih+JMOPW0
上条「い、意味が分からねぇ!アンタと俺が戦う理由がねぇ!」

土御門(それに、カミやんと戦いたいならば、カミやんだけを呼べばいいはず。
    わざわざ体の傷まで治して俺をここへ招いた理由は……)

アレイスター「土御門の疑問に対してはこうだ」

土御門「何!?」

ドキッ!とする土御門。
しかし冷静に考えてみれば、アレイスター程の人間ならば読心などわけないと、すぐに気付いた。

アレイスター「この戦いの立会人をやってもらいたくてね。その立会人が何故君だけなのか。
       どうして君じゃなければいけなかったのか。それにもいくつか理由があるが、それは後回しだ」

アレイスター「そして上条当麻。君は戦う理由がないと言ったね」

上条「ああ。それがどうした?」

アレイスター「では、こうすればどうかな?」

パチン!とアレイスターが指を鳴らした。それだけ。
たったそれだけで打ち止めや番外個体、そして妹達の体が内側から弾け飛んだ。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:42:08.92 ID:Ih+JMOPW0
上条「な……」

土御門「アレイスター!」

ここで土御門は、無駄だと分かっていながら、懐から拳銃を引き抜こうとして思い出した。
武器や折り紙などはすべて奪われてしまっている事を。

アレイスター「土御門、君ならば分かるだろう?もともとからではあるが
       武器も何もない君如きではこの私はどうにもならないと。
       だからだよ。君は弱いから立会人に選んだんだ。そして弱みもある。
       土御門舞夏という、決定的な弱みが」

そう。土御門は魔術師でありながら、無理矢理能力開発を受けたため中途半端になってしまった。
おまけに義妹を守るために刺し違えると言う選択も出来ない。
やるとすれば確実に勝利しなければならない。しかし上条と共闘したってただでは済まないだろう。
よって土御門は見守ることしかできない。

アレイスター「それにだ。魔術と科学に精通していて、なおかつこの私とある程度
       面識がある君が、1番早く状況を飲み込めると思ってね。
       戦いの後にする説明もよく聞いていてほしい」

土御門(何を……言っているんだ……?)

とそこで

上条「ゴチャゴチャうるせぇよ」

土御門の思考を遮るように、上条が呟いた。

上条「テメェ、まさか俺と戦う理由を作る為だけに、妹達を殺したんじゃないだろうな」

アレイスター「“だけ”ではないね。君と戦う理由の1つとして殺したのはあるが
       もう1つ理由はある。あとは個人的に役立たずだったからという感情はある」

上条「いいぜ、テメェが俺と戦うっていう下らない理由の為に妹達を殺したって言うのなら――」

上条「――そんな腐った考えのテメェは、ここでぶっ潰す!」

バリィィィン!という甲高い音。
『幻想殺し』という『蓋』が外され『竜王』の力が解放される。
一般人でも分かるくらいのとんでもないエネルギーを前に、普通なら怯えるところを
人間、アレイスター=クロウリーは歓喜に震えていた。

土御門(あの感情を表に出さないアレイスターが笑っている?)

アレイスター「さあ、始めようじゃないか!潰し合い(ショータイム)を!」

『神浄』と『人間』の戦いの火蓋は切って落とされた。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:43:55.62 ID:Ih+JMOPW0
上条の全身から滲み出た翡翠色のエネルギーはそれぞれ『竜王の翼』、『竜王の鉤爪』、『竜王の顎』を象った。
瞳の色は青く変わった。

土御門「カミやん!病院には仲間達が何人かいる!傷つけないように戦うんだ!」

上条「分かってる!」

アレイスター「そんなに心配しなくても大丈夫さ。舞台はしっかり用意している」

パチン!と指を鳴らす。瞬間、周りの光景がグルグルとめまぐるしく変化する。
3秒後、3人は窓のないビルの屋上に移動していた。

土御門「こ……れは……!?」

アレイスター「一応、ビルを変形させて、100坪ほどの広さにはなっているが……
       落ちるなよ、土御門。さて上条当麻。ここなら遠慮なく暴れられる。かかってきなさい」

2人の距離は約50m。

上条「言われなくても!」

と、上条がはばたく前に

ゴッ!と、いつの間にかアレイスターが右手に持っていた
『衝撃の杖』(ブラスティングロッド)から、ビル1つは軽く吹き飛ばせる衝撃が放たれた。

上条「効かねぇよ!」

右腕の『竜王の顎』が大きく咆哮した。それだけで衝撃波は打ち消された。

アレイスター「成程。実に出鱈目な力だ」

言いながら、もう一度『衝撃の杖』を振るおうとしたところで

上条「させるかよ!」

50mもの距離を一気に詰めた上条が、左腕の『竜王の鉤爪』を振るい
アレイスターの右腕ごと『衝撃の杖』を引き裂いた。

上条「まだだ!」

追撃の如く
右腕の『竜王の顎』がアレイスターを飲み込もうと、その口が大きく開かれたところで

アレイスターが爆発した。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:46:35.61 ID:Ih+JMOPW0
上条(そんな馬鹿な!?)

莫大な煙が立ち込める中、上条自身は、『竜王の顎』で爆発を喰らいつくしたため全くの無傷だった。
しかし驚きを隠せなかった。

上条(右腕を切り裂いた時は確かに手応えがあった。
   しかし顎で飲み込む時には、爆発する分身に入れ替わっただなんて……)

切り裂いてから、『竜王の顎』で飲み込もうとするまで1秒も無かった。
そんな一瞬の間に入れ替わったと言うのだ。誰だって驚きを隠せないに決まっていた。

アレイスター「君のその『竜王』の力、異能の力を喰いつくすんだろう?
       しかもその青い瞳は、分身など、そういうまやかしは効かず本物だけを見抜く力がある。
       単純に見切る力も半端ではない。全く、卑怯にも程があるんじゃないか?」

ゆったりとした声は後ろから。上条はゆっくりと振り向いた。
そこにまたしても驚くべき光景が広がっていた。

アレイスターの右腕が再生していたのだ。

上条「な……」

アレイスター「そこまで驚く事ではないよ。君みたいな『化け物』に比べたらね」

土御門「大丈夫だカミやん!今のところはカミやんが押しているし
    再生させる暇もなく一気に消し飛ばしてしまえばいい!」

愕然とする上条に、土御門のアドバイスが届いた。

上条(そっか。そうだよな。再生する暇もなく消し飛ばしちまえばいいんだ……)

とそこで、上条は自身の中に渦巻く黒い感情に気付いた。

上条(俺はなんてことを……考えてるんだ……)

よく考えれば、先程の攻防のやり取りも、完全に殺すつもりだった。
いくら妹達が殺されたからと言って、復讐に駆られてアレイスターを殺してしまったらアレイスターと同じ殺人者ではないか。
そんな上条の思考を遮るように、アレイスターが口を開いた。

アレイスター「どうした?君と戦いたいと言う理由で、妹達を殺した私が憎くないのか?
       それに早く私を殺さないと、君の大切な人達がさらにいなくなるかもしれないよ?」

上条「っ!」

その一言で、上条の中の黒い感情を呼び戻すには十分だった。

土御門(何だ……?何故奴は喰い気味にカミやんを挑発する?奴の狙いは何だ!?)

そんなことを考えている土御門などお構いなしに、戦いは激しさを増していく。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:49:08.39 ID:Ih+JMOPW0
上条「ぶっ殺す!」

一瞬でアレイスターとの距離をゼロまで縮めた上条は『竜王の鉤爪』を振るった。
しかしそれは、虚しく空を切っただけだった。

アレイスター「ふふふ。良い感じじゃないか」

目に見えて怒っている上条を後ろから見て、アレイスターは微笑んだ。

アレイスター「今度はこちらから行かせてもらおうか」

そう言って指を鳴らす。瞬間、虚空からアレイスターが3人現れた。

上条「馬鹿な……!」

上条が驚くのも無理なかった。現在の上条の青い瞳は分身や幻と言った類の力を見抜く事が出来る。
しかし今上条の目の前に居る4人のアレイスターは違った。
それぞれが誤魔化しているとか、力を等分して作り出した分身ではなく『本物』のアレイスターなのだ。

上条「こんなことが……」

そのくせ4人の見た目はそれぞれ違っていた。
1人は先程まで戦っていた、膝を超えるほどの長い銀髪で、手術衣のような色の服を着ている。その手には1本の杖。
1人はその髪の色が真っ赤で、服も真っ赤。それぞれの手には棍棒が握られている。
1人は髪の色は真っ青で、服も真っ青。手には1本の槍。
1人は金髪で、服も黄色い。手には鎚。そんな4人。
けれども4人とも『本物』。

上条(訳が……分からねぇ……!)

けれども、と上条は思う。

上条(4人とも本物だと言うのなら、4人とも潰すだけ!)

そうやって意気込む上条に

アレイスター「そう焦るな。今度はこちらからと言っただろう?」

ゴッ!と赤いアレイスターから、ミカエルを超えるほどの炎が放たれた。

アレイスター「まだだ」

そこに銀髪のアレイスターからの風が加えられる。鉄をも溶かす炎と風が合体したものが、上条に襲い掛かる。

上条「『竜王の殺息』!属性は『風』!」

『竜王の顎』から莫大な風のブレスが放たれた。
それはアレイスターが生み出した炎と風の塊を掻き消さずに、そのまま跳ね返す!

アレイスター「やるな」

青いアレイスターが水の盾を生み出す。そこに銀髪のアレイスターが風を加えた。
水と風が合体した盾は、炎と風の塊を相殺した。莫大な水蒸気が発生し周辺は霧のようになった。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:50:45.94 ID:Ih+JMOPW0
上条「――!」

咄嗟に左に跳んだ。直後に、バガァン!と何かが叩きつけられた音。
金髪のアレイスターが持っていた魔法の鎚『ミョルニル』が地面を叩いた音だった。
その一撃は、一方通行のビル投げですら揺らがなかった窓のないビルに、ヒビを入れるほどだった。

アレイスター「よく避けた。と言いたいところだが」

上条が跳んだ先の真後ろには既に、金髪のアレイスターが『ミョルニル』を振り下ろしていた。

アレイスター「光速で動くこの私には、いささか遅すぎるよ」

ゴシャア!と『竜王の鉤爪』の裏拳により『ミョルニル』が砕かれた。

アレイスター「ほう」

『ミョルニル』を失った金髪のアレイスターは一旦後退する。

上条「はぁ……はぁ……」

だらん。と左腕を下げる上条。窓のないビルにヒビを入れる一撃と真っ向から激突した『竜王の鉤爪』にヒビが入ったのだ。

アレイスター「まあすぐに再生するだろうけどね。だから、猛攻を仕掛けさせてもらうよ」

赤いアレイスターから溶岩の波が繰り出される。幅的にも高さ的にも避けられない一撃。

上条「ちっくしょう!『竜王の殺息』、属性は『氷』!」

『竜王の顎』から氷のブレスが発射された。その一撃は溶岩の波を軽く凍らせた。
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:52:07.23 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「なら私だ」

青いアレイスターがの背中からガブリエルを彷彿とさせる氷の翼が生えた。
目の前の溶岩を凍らせた塊すらも、自身の氷の翼に取り込む。
翼の数はどんどん増えていく。そして直後――

10分の1秒の速さの氷の翼のラッシュが始まった。

上条「『竜王の翼』!」

ドドドドド!と凄まじい速度で様々な角度から襲い掛かる翼を、しかし上条は『竜王の翼』を器用に操り打ち砕いていく。

アレイスター「隙だらけだよ」

そんな激しい攻防が行われている上条の近くへ、赤いアレイスターが涼しい顔をして肉迫する。

アレイスター「ふっ!」

左手の棍棒『ヤグルシ』が振るわれた。それを上条は、『竜王の顎』で左手ごと破壊する。

アレイスター「だが左手が使えない今の君は、この一撃は防げまい」

赤いアレイスターは構わず右手の棍棒『アイムール』を振るった。

上条「そいつはどうかな!」

再生が完了していた『竜王の鉤爪』で、右手ごと『アイムール』を引き裂いた。

アレイスター「まさか、再生が完了していたとはね……」

上条「おらよ!」

呆れている赤いアレイスターへ、追い討ちの頭突きがクリーンヒットし、数十mほどぶっ飛んだ。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:53:51.95 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「やはり、隙だらけだ」

上条「がはっ!」

タイミングを見計らったかのように、頭突き直後で隙だらけの上条に
青いアレイスター投げた槍『トライデント』がクリーンヒットした。上条は地面を数十m転がる。
いつの間にか氷の翼のラッシュは終わっていた。

アレイスター「やはり、『竜王』の力が君の体を覆っている限り、貫けないか」

上条(何とか助かったが……)

常にと言う訳ではないが、上条の体を『竜王』の力が覆っているときは異能の力はほとんど効かない。
インデックスのダイヤモンドダストも、これで切り抜けた。
しかし全くノーダメージと言う訳ではないし、4対1の今の状況ははっきり言ってピンチだった。

とりあえず腹部に刺さりかけている『トライデント』を破壊し立ち上がる上条。
目の前には両手が再生し、なおかつ2本の剣を持っている赤いアレイスターがいた。

上条(何でもアリかよ……)

もう大抵の事では驚かなくなってきた。しかしどうしたものかと、上条は思考を巡らせる。
と、それを見透かしたようにアレイスターが口を開いた。

アレイスター「戦いの最中に考え事とはいただけないね」

上条「くっ!」

図星だったが故に上条は歯がみする。いつの間にか上空には黒雲が広がり雨が降り注いでいた。
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:56:22.03 ID:Ih+JMOPW0
土御門(何故だ?何故アレイスターは考え事をしている最中の隙だらけのカミやんに攻撃しない?)

戦いに巻き込まれないように、ビルの角ギリギリから戦いを眺めていた土御門はそう疑問に思った。
その疑問はすぐに解決される事となる。

アレイスター「私を倒すにはどうすればいいか悩んでいるんだろう?簡単だよ。
       力をもっと開放すればいい。今の君は『竜王』の力の3分の1程度しか使っていないだろう」

その声は、何故か200m以上離れている土御門にも届いた。

土御門(もしや、アレイスターの考えている事は、ものすごく単純な事なんじゃ……)

上条「ざっけんな。そんなことしなくても今すぐ倒してやる!」

アレイスター「そうか、残念だ。ならば引きずり出すまでさ!」

銀髪のアレイスターが、『テュルソス』を振るった。
瞬間、一般人は愚か、魔術師ですら感知できない数万のかまいたちが放たれた。

上条「くっ!」

しかし上条の青い瞳はそれを見切り、『竜王の翼』で自身を包み込むことでガードした。

アレイスター「まだだ」

黒雲から雷、金髪のアレイスターから稲妻、槍の『ブリューナク』が投擲された。
ゴッギャアアアアア!と、『竜王の翼』でガードしているとはいえ、雷と稲妻と『ブリューナク』をまともに喰らった上条。

上条「ぐ、おお……」

何とか耐え切った上条であったが、『竜王の翼』にはヒビが入った。

アレイスター「これで終わりじゃないよ」

炎に包まれた赤いアレイスターが、全身をドリルのように回転させながら突っ込んでいく。
2本の剣、『ドラグヴァンディル』と『バルムンク』の切っ先を上条に向けがら。

上条(来る!)

ガードしたままでは貫かれると直感した上条は、『竜王の顎』で迎え撃つ事にした。
翼のガードを解き、顎を大きく開く。

アレイスター「ふん」

ギュルルル!と構わず赤いアレイスターは突っ込んでいく。そして――

ドガァ!と『竜王の顎』と赤いアレイスターは激突した。
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:57:55.80 ID:Ih+JMOPW0
上条(『竜王の顎』と……拮抗するなんて……!)

本来ならば、異能の力など一瞬で喰いつくす『竜王の顎』と拮抗していると言う事は
それだけこの異能の力が喰らいつくせないくらい莫大だと言う事。

アレイスター「埒が明かないな」

目の前で高速回転している赤いアレイスターが、そう呟いた直後――

ドゴォォォォォォン!と核爆弾よりも強力な威力で赤いアレイスターが爆発した。
それは炎の柱となって、天空まで伸びるほどだった。

上条「自爆……だと……」

爆心地の中心、と言うより爆心地そのものである上条は、『竜王の顎』で
爆発をいくらか喰らい、『竜王』の力を纏っていたとはいえ、大ダメージだった。

アレイスター「休んでいる暇は無いよ」

上条の目の前で、青いアレイスターが鎌のような剣『ハルパー』を振るい
後ろでは、銀髪のアレイスターが『テュルソス』を振るっていた。

上条「ちっくしょおおおおおがあああああ!」

渾身の力を振り絞り、後ろの銀髪のアレイスターを『竜王の顎』で武器ごと喰らい
前に居る青いアレイスターの『ハルパー』を『竜王の鉤爪』で引き裂いた。

アレイスター「やるな。だが終わりだ」

瞬間、上条は時が止まったような錯覚に陥った。
何故なら、降り注ぐ雨粒が一瞬空中で留まったからだ。
一瞬後、大量の雨粒は一点に集められた。上条の真上に。

上条「させるか!」

何か来る。その前に真上にある莫大な水の塊を吹き飛ばそうとしたが

アレイスター「遅い。終わりだと言ったはずだ」

金髪のアレイスターによって電撃が加えられた水の塊が、上条に滝の如く降り注いだ。
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 16:59:55.60 ID:Ih+JMOPW0
上条「はぁ……はぁ……」

上条は『竜王の顎』で水の総量の半分ほどをを飲み込み、何とか2本の足で立ってはいたが、大ダメージには変わりなかった。

アレイスター「電気がよく通った水のお味はいかがかね?」

軽口を叩くアレイスターに、上条は言い返す気力もなかった。

アレイスター「これで分かっただろう?さあ、早くさらなる力を解放するんだ。
       さもなければ、土御門を初めとする、君の大切な人達を消していくが?」

上条(くっ……そ!)

上条には分かっていた。このままではこの『人間』には勝てない。大切な仲間達が殺される。

しかし、これ以上の力を解放すれば、それを御しきれはしないと、なんとなく分かる。

上条(どう……すれば……)

と上条が渋っている心を読んだアレイスターが口を開く。

アレイスター「大丈夫。たとえ君が力を解放して自我を失おうが、私が倒してみせるよ。
       それに、さっさと解放してくれないと、私も少々手荒な事をしなければならなくなるが?」

そう言って、指を鳴らした。すると虚空から鮮明な画像が現れた。
そこに映っていたのは、地面に伏している御坂美琴。

アレイスター「一度だけ言う。私がもう一度指をならせば、彼女は粉々に弾け飛ぶ。
       正直、妹達が死んだ時点で、彼女は“脅威”になる可能性の方が高いから
       殺そうかどうか迷っていたんだよ。ま、今の説明は要らなかったね。
       3秒カウントする。3秒以内に力を解放しなければ、彼女は吹き飛ぶ。では、3」

上条(外道が!)

アレイスターの言っている事はハッタリではないだろう。
事実、妹達を容赦なく殺した。このままでは、御坂が死ぬ。

アレイスター「2」

土御門「カミやん!迷っている暇は無い!カミやんなら大丈夫だ!」

今迄の戦いの煽りを受けて、割とボロボロの土御門が叫ぶ。

上条(駄目だ……俺が暴走しちまったら……俺が皆を殺しちまうかもしれない……!)

アレイスター「1」

土御門「カミやん!」

上条「くっそがああああああああああああああああああああああああああ!」

アレイスター「ゼーー」

ロ、と言って金髪のアレイスターが指をならそうとした時、ズシャア!と、その体が真っ二つに引き裂かれた。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:01:45.88 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「どうした?まだ5割程度の力しか出していないじゃないか。全力を出してくれよ」

3人もの自分を殺されているのにもかかわらず、残った青いアレイスターは涼しい顔で言い切った。

上条「ブッコロス……!」

土御門(カミやんのやつ、やはり飲まれた!?)

アレイスター「5割で自我崩壊か」

『竜王』の力の5割を解放した上条は、先程までとは比べ物にならないほどのエネルギーで身体が覆われていた。
瞳の色は赤く変わり、翼は大きくなり臀部の辺りからは『竜王の尻尾』(ドラゴンテイル)が生え
左手はもちろん、右手までもが『竜王の鉤爪』になり、頭部が雄ライオンのように『竜王の顎』に
覆われていた。

アレイスター「全力を出さないと、私には勝て」

青いアレイスターの言葉が途切れた。その顔が苦痛に歪む。理由は簡単だった。
窓のないビルを通して『竜王の尻尾』が、青いアレイスターを背後から貫いたのだ。

アレイスター「その程度で、私を」

やはり言葉は最後まで続かなかった。
一瞬でアレイスターに肉迫した上条が『竜王の鉤爪』を振るい、青いアレイスターを細切れにしたからだ。
4体のアレイスターは全滅した。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:03:30.73 ID:Ih+JMOPW0
土御門「野郎……やりやがった!」

しかし喜ぶにはまだ早い。今度は上条を止めなければならない。だが、勝てるはずもない。

土御門(どうすればいい!?)

焦る土御門に、100mは離れている上条の赤い瞳がゆっくり向けられる。
その眼光を見た瞬間、恐怖のあまり思考が吹き飛び、その場で動けなくなった。

土御門「……ぁ……ぁぁ」

そこに

アレイスター「待ってくれ。私との勝負はまだ終わっていないよ」

エコーがかかった声は、窓のないビルから。
土御門の目の前に、ズズズズズと、黒い西洋の鎧のようなものを身に纏ったアレイスターが背を向けて現れた。
その髪の色は、黒い。

アレイスター「異能の力がほとんど効かない『竜王』の力で覆われている君を
       これ以上魔術で攻撃するのはナンセンス。ここからは肉弾戦だ」

ドン!と上条とアレイスターは同時に地面を蹴った。
土御門が瞬きをしているい間に、グシャア!と肉を叩く音。上条が数十mほどぶっ飛ばされる。

上条「コロス!」

すぐに起き上がり、反撃に出る上条。
一瞬でアレイスターの後ろに回り込み、『竜王の鉤爪』を振るう。

アレイスター「攻撃が単調すぎる。理性を失った獣など、恐るるに足らない」

地面に背を向け、宙を舞う。
爪を避けたと同時、そのままオーバーヘッドキックの要領で、上条の頭上に足の甲を叩きつけた。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:05:48.35 ID:Ih+JMOPW0
上条「コ……ロス!」

それでも上条は止まらない。眼前から翡翠色の光線が放たれた。

アレイスター「遅い」

既に上条の後ろに回り込んでいたアレイスターは『竜王の尻尾』を掴み、地面に何度も叩きつけた。
5回ほど叩きつけたところで、グン!と上条が動かなくなった。『竜王の鉤爪』を地面に喰い込ませたのだ。
しっかりと地面に固定された上条は、掴まれている『竜王の尻尾』を振るい、逆にアレイスターを投げ飛ばした。

地面をスライドしながら踏ん張るアレイスターの後ろに、上条は右の『竜王の鉤爪』を振り下ろした。

アレイスター「本当に単調な攻撃だな。私を馬鹿にしているのか?」

右手で上条の右手首辺りを掴み、そのまま一本背負いの要領で地面に叩きつけた。
右手は離さず、左足で左手と左翼を踏み、顔面を右足で踏み、尻尾と右翼の反撃を左手で掴んだ。

アレイスター「何だこのザマは。理性のあった上条当麻の方がよっぽど強かったよ」

その挑発に上条の体がバグン!と跳ねた。そのせいで一瞬アレイスターの右足が顔面から離れた。
その一瞬で上条は眼前から翡翠色の光線を放った。

アレイスター「今のはちょっと危なかったかな」

そう言うものの、涼しい顔を浮かべて後退したアレイスターに上条が真正面から襲い掛かる。

アレイスター「後ろからが駄目なら真正面……君はアホだな」

カウンターの右ジャブ。次に左ジャブ。とどめに右アッパーを繰り出した。上条が30m上空に舞い上がる。

アレイスター「そろそろ終わりかな」

ギャルルルル!とアレイスターは縦回転しながら上昇していく。
そして、かかと落としを上条の脳天に叩きこんだ。
直後、ゴッシャァァァアアア!と上条は高さ60mほどある窓のないビルを貫き、地上に叩きつけられた。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:07:11.26 ID:Ih+JMOPW0
土御門「なんて戦いだ……!」

思わず感想を漏らしてしまう土御門。
しかしこれ以上やると、上条は本当に死んでしまうのではないかと心配になる。
だからと言って、自分には何も出来ない。土御門は己の無力さを噛み締める。

そんな土御門の心情をアレイスターは読みとったのか、こんな事を言った。

アレイスター「残念ながら、もうそろそろ決着だ。まあそれも悪くないかな」

意味不明だった。上条が死んだら悪くない訳がない。
何が言いたいんだ、と疑問に思った土御門であったが、そこで冷静になって考えてみた。
そして1つの可能性。

土御門「アレイスター、お前、まさか――!」

アレイスター「当然だろう。寧ろ今まで気付かなかったのかい?」

と、その時だった。
翡翠色の光線がアレイスターを狙って、窓のないビルを一直線に貫いた。
アレイスターはと言うと、3歩後退しただけで光線を避けていた。
そして地面を蹴り、宙を舞う。直後、上条が窓のないビルから一気に上昇し、アレイスターへ肉迫する。

上条「シネェェェエエエ!」

左の『竜王の鉤爪』を、アレイスターはその身を低く縮めることによって回避。
続いて右の『竜王の鉤爪』が顔面を引き裂かんと襲い掛かるが、左手であっさりと弾く。
隙だらけの上条に、アレイスターは右拳を固く握り締めて、獰猛に笑ってこう言った。

アレイスター「歯をくいしばれよ『神浄』。私の究極の一撃は、少しばかり響くからね」

直後、ドガァ!とアレイスターの右拳が上条の腹部に深く突き刺さった。
その一撃で、上条は強かに地面に叩きつけられ、動かなくなった。
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:09:00.04 ID:Ih+JMOPW0
土御門「ゲームセットだな」

土御門は冷静にそう言った。

アレイスター「上条当麻はまだ100%の力を出していない。戦いは終わっていないよ」

既に地に足をつけていたアレイスターはそんな事を言う。

土御門「いや終わりだよ。きっとあまりにも劇的な展開について行けなかったんだろうな。
    こんなに長い時間、生命維持装置から出て生き続けられるはずもないって
    単純なことに、今更気付いたんだからな」

アレイスター「言葉を返すようだけど、私は生命維持装置に居ながら戦うことだって出来るんだよ?」

土御門「ロシアでフィアンマを倒した事を言っているのか?馬鹿言え。
    あんなもの、どうせクローンか何かだろう。さっきまでの4体のアレイスターもそうだ。
    今目の前に居るお前がオリジナルだな?」

アレイスター「何だ。冷静に分析できるんじゃないか。そうだ。
       今迄のはクローン。今君の目の前に居る私がオリジナルだ。
       そして生命維持装置を飛び出したのも事実だ。だが私はまだ戦える」

土御門「無理だな」

きっぱりと、否定した。

土御門「先程お前が言った台詞、カミやんが一方通行を倒した時の台詞と酷似している。
    それは、この戦いが終わりだという暗示だろ?全く、くだらん演出だ。もうお前は限界なんだろう?」

アレイスター「本当によく分析できている。君になら任せられそうだな」

土御門「新統括理事長なら勘弁だぞ」

アレイスター「それは雲川芹亜に任せる。君に任せるのは……これだ」

ブチッと髪の毛の1本を千切る。それは1つの巨大な巻物になった。

アレイスター「これを後で読んでおいてくれ。重要な事が書いてある。いくつかのプレゼントもある」

アレイスター「それから、上条当麻の記憶も脳細胞ごと戻しておこう」

土御門「何で他人の記憶をお前が持っている?」

アレイスター「彼を生まれた時から観察していたからさ」

そう言って、今は『竜王』の力が全く出ていない上条の額に手を当て何かを唱えた。
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:11:55.37 ID:Ih+JMOPW0
土御門「カミやんは、もう暴れる事は無いのか?」

アレイスター「多分ね。四肢のどれかを消したりすれば、そこから『竜王』が漏れ出すかもしれないが。
       いつの間にか『幻想殺し』で蓋もされているみたいだし」

土御門「で、結局お前の目的は何だったんだ?」

アレイスター「そうだね。君も大体見当がついていると思うが冥土の土産に教えてあげよう。
       いくつかの有益な情報もね」

まあ死ぬのは私だが。とアレイスターは付け加える。

アレイスター「簡単に言えば、魔術サイドへ復讐したかった。君ならばその理由は分かるだろう?」

土御門「『魔術師の頂点に立っていたお前は魔術を捨てて科学に走った。
    だから“世界で最も魔術を侮辱した魔術師”として世界中の魔術師を
    敵に回す羽目になり、最終的にはイギリス清教の追っ手に致命傷を負わされる』
    これが通説だ」

土御門「だがそれは違う。お前は、お前の才能を妬んだ魔術師達に罠にはめられたんだ。
    だから、魔術サイドへの復讐のために学園都市を作った。
    学園都市創設から、今迄の出来ごと全て、魔術サイドへの復讐の段取りだったんだ。
    そうだろう?」

アレイスター「その通りだ。君は本当に優秀だな。多角スパイなだけはある。
       やはり、君を立会人にして正解だった。ただ何箇所か間違っているのは
       私は罠にはめられたのではなく、自ら罠にはまったのだがね」

土御門「何だと!?」

アレイスター「それとだ。全て計算通りだった訳ではない。8月31日の出来事での一方通行の弱体化。
       何とか復活はさせたが、垣根帝督の瀕死。上条当麻が北極海に沈み、一方通行に『闇』が解体された時。
       今回の戦争では、大天使の出現と、妹達の雑魚さ加減は予想外だった」

アレイスター「まあ大天使というイレギュラーには焦りと同時ワクワクしたし、垣根帝督が
       1人でローラを倒す、一方通行完全復活と言う嬉しい誤算もあった訳だが」

土御門「じゃあ何か。上条当麻と戦いたいと言う以外で妹達を殺したのは
    その役立たずぶりに腹が立って殺したのか?」

アレイスター「それもある。あと1つだけ。君達が苦しまないようにするためだ」

土御門「どう言う意味だ?」

アレイスター「あとで巻物を見てもらえば分かる」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:13:09.78 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「さて、私はそろそろ限界だ。君の疑問はあと1つ。
       『魔術サイドへの復讐』が目的ならば、上条当麻と戦った理由は何なのか?
       でも、大体は見当がついているみたいだね」

土御門の心を読んだアレイスターは、なおも喋り続ける。

アレイスター「単純な事だ。『強い奴と戦いたかった』ただそれだけ。
       昔魔術師達の罠に、自らはまったのもこれが理由だ。
       当時は私より強い者がいなく、本当に退屈だったからね。
       それで負けて、復讐を誓った。逆恨みだと言うのは自覚しているよ。
       まあ君を含め、魔術師は『7人』残ってしまった訳だが、それはもういい」

土御門「強くなってしまうと、人間何を考えるか分からんな」

アレイスター「駄目だ。限界だ。有益な情報を与えようと思ったが無理みたいだ。
       まあ巻物に大体の事は書いてある。じっくり読むといい。では、さよならだ」

アレイスターの体が、下半身から黒い塵のようなものになって消えていく。
20秒もしないうちに、体は全て塵になり、風に流された。
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:14:01.61 ID:Ih+JMOPW0
土御門「さて、あとはこのビルから降りるだけなんだが……」

どうしたものかと、土御門は頭を悩ませる。とその時

ヴェント「大丈夫か!?」

今迄気絶していたヴェントが、窓のないビルに舞い降りた。

ヴェント「アレイスターの野郎の反応は無いけど……お前が倒したのか?」

土御門「いや。勝手に昇天してっただけさ」

ヴェント「意味分からない……何があったか知らないけど、このビルも崩れそうだし降りるよ!」

そうして土御門と上条を上手い具合に風で包み込み
ヴェント達は無事地上に降り立った。戦争は完全に終結した。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:16:01.18 ID:Ih+JMOPW0
12月27日

学園都市と魔術サイドの戦争により、魔術の存在が明るみに出たと同時、消滅が確認された。
犠牲者は約20億を超え、主に魔術を使って暗躍し戦争のきっかけでもある、イギリス、イタリア、ロシアは世界中から糾弾された。
と言っても、イギリスは悪魔らしき物の手で壊滅状態、ロシアも天使のようなものに大地を荒らされ、同じく壊滅状態だった。
しかしイタリアは健在だったため、イタリアを理由にEUを落とし、世界のパワーバランスを変えようと
アジア辺りが動こうとし(建前として学園都市を攻めたことの報復)、第4次世界大戦が勃発しかけた。

それを新統括理事長となった雲川芹亜がとめた。1番の被害者である学園都市が
戦争なんかするなと言えば、それ以外の国は従うしかなかった。
まあそれは建前で、イギリス、イタリア、ロシアの連合軍に勝利した学園都市を恐れて従っただけであったが。

雲川「ったく、勝手に統括理事長に任命されて、いきなり大仕事だったんだけど」

雲川はモニターの向こうの貝積にぼやいた。

貝積「まあそう言うな。君のおかげで、第4次世界大戦が回避されたのだから。
   ところで、愛しの彼に会いに行かなくていいのかね?」

雲川「どっちのこと?」

貝積「どっちもだよ。見舞いに行けばいいじゃないか」

雲川「いいよ。2人とも昔から傷の治りだけは馬鹿みたいに早かった。きっともう退院しているけど」

貝積「では見舞いなどと言う理由が無くても、直接会いに行けばいいじゃないか」

雲川「お前はさっきから一体何なんだ?2人に会ってもすることなんてないけど」

貝積「若いうちは青春するべきだと思うけどねぇ」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:16:42.20 ID:Ih+JMOPW0
冥土帰しの病院

ナース「先生!大変です!上条さんがいません!」

冥土帰し「それは大変だ。多分彼が行くところは、あそこだ。君はついてこなくていい。僕だけで行く」

そう言うと、冥土帰しは年甲斐も無く走った。
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:19:30.64 ID:Ih+JMOPW0
上条「インデックス!」

戦争が終わってから2日目だと言うのに、ほぼ傷が回復していた上条は病室を抜け出した。
インデックスがどこかに居ると信じて病院をかけずり回っていた。

探し始めてから5分。ついにインデックス様の文字を見つけ、病室の扉をノックもせずに開けた。

インデックス「ひゃう!?」

そこには着替え中のインデックスがいた。

インデックス「あ、あの……」

上条「ああごめんインデックス!決して覗くつもりじゃ――」

言いながら急いで扉を閉め――

インデックス「どちら様でしょうか……?」

上条「え?」

上条は一瞬自分の耳を疑った。

上条「上条……当麻……だけど……」

インデックス「『神浄の討魔』(かみじょうとうま)さんか。良い名前ですね。
       けれど、ごめんなさい。覚えがありません。医者から聞いた話だと私、記憶喪失みたいなんです。
       もしかして、私達は知り合いだったのでしょうか?」

上条「嘘……だろ……」

足から力が抜ける。ドアを背にして、上条は尻餅をついた。とそこで

冥土帰し「ああ……やはりここに……」

息を切らしながら冥土帰しが近付いてくる。

上条「先生……これは……」

冥土帰し「意識が戻ったら、ちゃんと説明しようと思ったんだけどね?
     まさか意識が戻った途端、行動を起こすとは……」

会話を聞いて、ドア越しに冥土帰しが居る事が分かったインデックスは言った。

インデックス「あの、先生。私、何かいけない事を言ってしまったのでしょうか?」

冥土帰し「大丈夫だインデックス君。君は何も心配する事は無いよ?さあ行こうか。上条君」
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:22:29.85 ID:Ih+JMOPW0
空いている病室に移動した上条と冥土帰し。

冥土帰し「単刀直入に言うよ。彼女は記憶破壊を起こしている」

あまりにも衝撃的な一言に、上条は気絶しそうになった。

上条「まさか……俺の……せいで……?」

冥土帰し「話は大体土御門君から聞いた。君の中には『竜王』というのがいて
     その力を使って頭の中にある10万3000冊とやらを破壊しようとしたんだね?」

上条「はい……」

冥土帰し「僕には魔術なんてものはよく分からないから、土御門君と一緒にインデックス君を診てもらったんだけどね。
     10万3000冊の魔道書は綺麗さっぱり消えているらしい。脳細胞ごと『意味記憶』を破壊したのはなく
     10万3000冊だけが消えていた」

冥土帰し「ところが何故か『エピソード記憶』が脳細胞ごと破壊されていてね。
     まあ脳細胞だけなら、垣根君を使えば戻せるんだが……」

上条「の、脳細部さえ戻れば、容れ物さえ戻れば、記憶は蘇るんじゃないですか!?」

藁にもすがる思いで尋ねる。

冥土帰し「確かに、その可能性はある。けれど、戻らない可能性もある」

上条「じゃあ、可能性があるなら、早く脳細胞を戻して――」

冥土帰し「でも、駄目なんだ。彼女自身が、記憶を取り戻すことを拒んでいるんだ」

上条「な、んで……」

冥土帰し「彼女にね。彼女自身の名前を教えてあげたんだ。『君はインデックスと言うんだよ』って」

冥土帰し「そしたら彼女『インデックスって馬鹿にしてるんですか?目次なんて
名前つける親が、どこに居るって言うんですか?』って」

冥土帰し「はっきり言っちゃうと、そんなこと知るもんかと、僕は思ったんだ。
     けれど土御門君が、『あなたの名前は別にある。インデックスって言うのは
     役職みたいなもんだ。でも本名は俺も知らない。とにかく何でインデックス
     と言う二つ名がついたのか、説明しよう』って言ったんだ」

冥土帰し「そしたら彼女、何かを感じ取ったのか、『結構です』って断ったんだよ。
     当然『何で?』となるわけだけど、彼女の言い分はこうだった」

冥土帰し「『インデックスなんて役職与えられるなんて絶対におかしい。
     きっと私の過去は、碌でもないものなんだ。だったらそんな記憶いらない』と」

冥土帰し「僕としても心苦しかったんだが、さすがに患者の意志を尊重しない訳にいかなくてね。
     でも、これではあまりにも悲しい結末すぎる。
     彼女の1番の理解者である君が説得すれば、彼女の気も変わるかもしれない」

冥土帰し「とにかく、そういう事だから、今は何も出来ないんだ。力になれなくて本当にすまない」

そう言って冥土帰るしは病室から出て行った。彼も暇ではないのだ。
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:24:12.04 ID:Ih+JMOPW0
上条「そんなの……アリかよ……」

少年に降りかかった現実はあまりにも残酷だった。
いつも一緒に居たインデックス。彼女助ける為にロシアにも行った。
北極海に沈み死にかけもした。それでも少年は生き延び、詳しい事は分からないが、何故か記憶も戻っていた。

それなのに、たった1つ。インデックスとの思い出が無くなった。
たったそれだけのことで、がらりと世界が変わって見えた。天国から地獄。今なら分かる。
大切な人に忘れられた辛さが。ステイルと神裂が、どうして敵になると言う選択を執っていたのかを。

上条「俺は今まで……何をしてきたんだろうな……」

フラフラと病室を出て上条が向かった先は屋上。
自殺防止のフェンスがあるが、その気になれば超えられない事もない。

上条は、身長135cmの教師から教わった言葉を思い出していた。

小萌『人って、いつ死ぬと思います?』

上条『いつって……寿命じゃないですか?老衰とか、事故とか』

小萌『違いますよ。それは肉体的に死んだだけで、他の人の心の中では生き続けます』

上条『じゃあいつ死ぬんですか?』

小萌『だからそれはこっちが聞いているのですけど……まあいいです。
   人が死ぬ時……ズバリそれは、人に忘れられた時です!』

人に忘れられたとき、人は死ぬ。
じゃあ世界で最も大切な人に忘れられた自分は死んだも同然。
もう生きる気力が湧かない。そうしてフェンスに手をかけたその時だった。

バタン!と屋上の扉が開かれた。
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:26:09.89 ID:Ih+JMOPW0
五和「はぁ……はぁ……」

息を切らした五和が、立っていた。

五和「何……やってるんですか……?」

上条「何って……飛び降りようとしているだけだけど」

五和「ふざけないでください!何でそんな事を――」

上条「――うるせぇんだよ!外野は黙っとけ!」

そのあまりの気迫に、五和ビクッ!と震えてしまった。

上条「お前に何が分かる!大切な人に忘れられた気持ちが分かるのか!」

鬼気迫る上条に、しかし五和も怯まずに言う。

五和「分かりますよ!私だって!
   私だってこの戦いで女教皇と建宮さんをはじめとする仲間を失ったんですから!」

上条「そう言うレベルじゃねぇんだよ!俺は世界で1番大切な人から忘れられたんだ!
   しかも、その原因は俺のせいなんだよ!この辛さがお前なんかに分かって――」

五和「――分かります!!!」

今度は逆に、五和の気迫に上条が押される。

五和「確かに!女教皇と仲間の皆は敵にやられました!けれど!建宮さんを殺したのは私です!
   私の手で仲間を殺してしまったんです!その直後は、私も死にたいと思っていました……」

けれど!と五和は続けて

五和「仲間の1人が励ましてくれたんです!『あなたが死んで誰が喜ぶの!?』って!
   『建宮さんの事を本当に思うなら、死ぬんじゃなくて、上条さんを守り切ると言う
   建宮さんの遺志を引き継いで生き続けるべき』って!」

五和「世界はあなたとインデックスさんだけで構成されている訳ではありません!
   あなたが死んで、悲しむ人はまだ大勢います!それでも、自殺すると言うのなら――」

五和「そんなふざけた幻想(かんがえ)は、私がぶち殺します!」
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:27:29.70 ID:Ih+JMOPW0
そこで上条は絶句した。構わず五和は続ける。

五和「私、実はさっきの病室での会話聞いていたんです……」

その一言に、上条は目を見開く。

五和「まだ希望はあるじゃないですか。上条さんが説得して垣根さんの力を使えば
   脳細胞は戻り、記憶も戻るかもしれない……世界に見切りをつけるのは、まだ早すぎますよ……」

上条「でも……俺はもう……生きる気力が……」

五和「……じゃ、駄目ですか?」

上条「え?」

五和「私じゃ、駄目ですか?」

上条「何を言って……」

五和「こんなときに言うのも図々しいかもしれないですけど、私、上条さんの事が好きなんです。
   本当に。狂おしいほどに」

突然の告白に、上条の思考回路はついて行けなかった。

五和「私、ボロボロの上条さんを放っておけません。
   インデックスさんの記憶が戻るまでの“代わり”で良いんです。あなたを支えたい」

5秒ほどの沈黙。そして上条の思考は追いついた。
バッ!と五和の胸に顔を埋め

上条「うっ、うっ、うぅ~、うわああああ……!!」

中学1年生の夏休み以来、約3年ぶりに泣いた。
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:28:12.16 ID:Ih+JMOPW0
御坂(あーあ、失恋しちゃった)

こっそり屋上のドア付近で話を聞いていた御坂は、その事実を噛み締めていた。

御坂(……妹達も全員死んじゃったし。こうも不幸が連続で続くと心が折れそうだわ。私が死にたいくらい)

そんな事を考えていた時、パッ!と白井黒子が目の前に現れ

白井「すみませんお姉様」

御坂の手を掴み、もう一度テレポートした。
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:29:44.88 ID:Ih+JMOPW0
病院前

御坂「私をこんなところにテレポートして、一体何の用?」

白井「ある殿方が、お姉様とお話がしたいとおっしゃるので……」

御坂「どこにいるの?」

一方通行「ここだ」

御坂の後ろ1mほどのところに、一方通行は立っていた。

御坂「何の用?悪いけどアンタの顔なんて見たくもないんだけど」

白井「お姉様、いくらなんでも言い方に棘があり過ぎますわ。この方はお姉様の恩人なのでしょう?」

御坂「恩人ってほどじゃないわ。それにアンタにも話したけど、私とコイツには因縁があるの。
   そして今回の戦争で妹達が全員死んだ。コイツが守り切れなかったから」

戦争が終結した直後、土御門により妹達が全滅した事が、御坂と一方通行に伝えられた。

御坂は、本当は一方通行だけのせいではないと分かっていた。
寧ろ妹達を死なせたのは、DNAマップを提供した自分のせいだと。
元凶は自分だと分かっていた。それでも上条と妹達を失った悲しみは計り知れなく、一方通行にぶつけるしかなかった。

一方通行「そうだ。俺が守り切れなかったせいだ」

御坂の心を知ってか知らずか、一方通行は言い切った。

一方通行「だから、せめてオリジナルのオマエは守らなきゃならねェ」

御坂「私はこれでもレベル5なのよ。アンタに守ってもらう必要なんかない」

一方通行「……一緒に暮らしてくれねェか?」

白井「はぁ?何をおっしゃって――」

白井が前に出ようとするのを御坂は腕で制して

御坂「人の話聞いてた?守ってもらう必要なんてない。
   てか常盤台に寮あるし一緒に暮らすとか無理だから」

一方通行「……そうか」

御坂が冷静に断ると、一方通行もあっさり引き下がった。一方通行は御坂達に背を向けて歩き出す。

御坂「何だったのよ……」
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:32:13.16 ID:Ih+JMOPW0
心理定規「はい、あ~ん」

垣根「ガキじゃねぇんだ。1人で食える」

心理定規「うっ……!(涙目)」

垣根「わ、分かった。食えばいいんだろ。食えば!」

心理定規「うん!あ~ん」

垣根「あ、あ~ん」

現在、病院の個室で垣根は、お見舞いに来た心理定規からリンゴを食べさせてもらっていた。

垣根「つーかさ、お見舞いとか来なくても良いぞ?もっとお前のやりたいことやれよ」

心理定規「うん、やってるよ。あなたのお世話。楽しい♪」

垣根「あーそう。そりゃよかった(棒)」

心理定規「あのさ、何でさっきからそんな無愛想なの?
     可愛いあなたの彼女が献身的にお世話してくれているのよ。
     もう少し何かあるじゃない?股間を膨張させたりとかないの?」

コイツ頭大丈夫か?と垣根は半ば以上心配になる。

垣根「つーかお前、何彼女面してんの?」

心理定規「え?違うの?」

垣根「なんか俺、ノリでお前を守る的な事、ひょっとしたら万が一にでも言ったかもしれねぇけどさ。
   付き合って。とは一言も言ってねぇけど」

心理定規「えー、でも戦争が終わったら絶対に迎えに行く。とかも言っていたけど。
     まあ結局このザマで、私が見舞いに来ているんだけどね」

垣根「う、うるせぇよ!」

心理定規「まあ良いわ。で、彼女面しないで見たいなこと言っていたけど……
     じゃあ今から私とお付き合いして下さい。これで良いわね?」

垣根(な!?)

その瞬間、垣根は不覚にもときめいてしまった。
しかしこれは――

垣根「おいテメェ今告白と同時能力使っただろ。そうじゃないと、この俺がお前にときめくはずがねぇ」

心理定規「はぁ?そんなことで一々能力使うはずないでしょ。
     もしときめいたのなら、それはあなたの本心で・しょ♪」

言われてみればそうかもしれなかった。
常識的に考えてレベル6になるほどの『自分だけの現実』(パーソナルリアリティ)をもつ自分が、コイツ程度の能力など効くはずない。

垣根「そっか。そうだな。じゃあ正式に俺の女になったんだから、もう他の男と会話すんなよ」

心理定規「じゃああなたも、他の女と会話しないでね」

冗談で言ったのに、案外乗ってきた心理定規に、垣根は少し辟易した。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:33:31.64 ID:Ih+JMOPW0
青ピ「ん……」

病院の個室で青髪は目覚めた。何か右太もも辺りに若干の重みを感じる。
青髪はゆっくりと身を起こす。そこにいたのは

眠っている結標淡希だった。

青ピ(まじか!?僕の右太もも辺りにおっぱい当たってるで!)

そんな風に密かに興奮していると、結標が目を覚ました。

結標「ふ……あ……あ、ご、ごめんなさい!私うっかり寝ちゃったみたいで……」

青ピ「構へん構へん。寧ろ大歓迎って感じ?」

結標「え?あ、そ、そうですか……」

青ピ「そんなかしこまらなくても……もっとラフにいこうや」

結標「でも、私の命の恩人ですし……」

青ピ「そんなん気にせんでええよ。人間、持ちつ持たれつやろ」

結標「そう、よね。やっぱり私に敬語は合わないわ。ところで、あの時言ってくれた事、本当なのかしら?」

青ピ「あの時って?」

結標「だ、だからのその、私の事を……な、なんで私が言わないといけないのよ!
   てかそのニヤケ顔、絶対気付いているでしょ!」

ポカポカと青髪を叩く結標。

青ピ「あはははは。可愛いなあ結標ちゃんは。まあ冗談はこの辺にしといて、
   あの時って言うのは、僕が君を庇って告白した事の事やろ?」

結標「そ、そうよ。それが本当かどうか聞いてるの!」

青ピ「本当かどうかって……本当に決まってるやろ。あそこで嘘つく意味がないし。
   で、返事聞かしてほしいんやけど」

結標「え、へ、返事?そ、それはまだちょっと……あ、わ、私先生呼んでくるわね!」

顔を真っ赤にしながら、病室を飛び出した。

青ピ「自分からこの話題出しといて……意外と初心なんやな~」
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:34:43.92 ID:Ih+JMOPW0
この戦争で学園都市の総人口約230万人の内、約30万人が犠牲になった。
その30万人の内の3人、麦野、浜面、滝壺の墓の前で絹旗とフレメアは黙祷していた。

絹旗(皆さんごめんなさい……私が超弱ったばっかりに……もし今度……
   大切な人が出来たら……その人達を絶対守り切って見せますから)

3人の墓の前で、絹旗は誓った。

絹旗「フレメアちゃんは、今後どうするんですか?住むところとか」

フレメア「……一応、一方通行と住む事になった。『新入生』事件の時に浜面と一緒に私を助けてくれた人だから、大体大丈夫。
     絹旗お姉ちゃんこそ、どうするの?」

絹旗「私ですか?私はですね……とりあえず中学校にでも超通ってみようと思っています。
   あと風紀委員になって、皆を守りたいです」

フレメア「お姉ちゃんならきっとなれるよ」

絹旗「ありがとうございます。お世辞でも超嬉しいです」
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:35:13.71 ID:Ih+JMOPW0
郭「おいしいですか?」

半蔵「ああ、まあ。リンゴの味だ」

病院の個室で、半蔵は郭が皮を剥いたリンゴを食べていた。

郭「あの……私、もっと強くなりますから……半蔵様を守れる位に」

半蔵「ああ、待ってる」

半蔵(そして俺自身も強くならねぇと……もうこれ以上大切な人達を失わないように……)
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:38:38.73 ID:Ih+JMOPW0
イタリアのミラノ とある民家

保護された子供達「……」

フィアンマ「元気ないな」

ヴェント「仕方ないわよ。オッレルスとシルビアがいなくなってはしゃげるはずない。
     しかも死体も見つからなかったから、葬式もあげられないし」

フィアンマ「特にあの女の子が酷いな」

ヴェント「オッレルスに1番懐いていた子ね」

フィアンマ「どうしようか……」

ヴェント「下手に元気づけるよりは、ここは放っておいた方が良いかもね。
     それに子供達なら大丈夫だよ。オッレルスから教わった事、どんな事があっても
     生きる希望を失ってはいけないってこと、分かってるはずだから」

フィアンマ「もっと強くなる必要があるかもな……どんな災厄からも守り抜くために」

ヴェント「でも魔術サイドは滅亡して、もう戦争なんて起こる事ないだろうから
     強くなる必要はないんじゃない?私達に出来るのは、この子達の側に居てあげる事なんじゃない?」

フィアンマ「土御門から聞いたんだ。魔術師は俺様達を含めて『7人』残っていると」

ヴェント「え-っと、その土御門って言う奴と、天草式の五和って奴と私とあなた。
     あと3人か。偶々生き残ったんじゃないの?しかもそれがどうしたって言うの?」

フィアンマ「まあ順を追って説明する。偶々と言うか、3人のうちの1人は闇咲逢魔という流れの魔術師らしい。
      天草式と同じく日本人の上に、学園都市の近くに住んでいたから
      ローラも簡単に手が出せなかったのだろう。わざわざ1人の魔術師の為に日本に潜入するのも馬鹿らしいからな」

ヴェント「あとの2人は?」

フィアンマ「それが問題なんだ。神裂火織、アックア、シルビアはこの戦争で命を落とした。
      大天使の為に合計15人もの『聖人』が生贄にされた。だが『聖人』は全部で20人。
      あと2人いる計算になる。ローラでも手が出せなかったか、あるいは別の理由があったかは定かではないが
      とにかくそういう2人がいる」

ヴェント「だから偶々生き残っただけじゃないの?てかそれが私達に何か影響でもあるの?」

フィアンマ「でなきゃ、こんな説明はしない。土御門から聞いた話によると
      そいつらは『強い奴と戦いたい』とかいうイカれた思想を持ち合わせているらしい。
      つまり俺様達を狙う可能性もある」

ヴェント「はぁ?何それいい迷惑なんだけど。てか何で土御門がそんなこと知ってるの?
     それに『強い奴と戦いたい』という目的なら、なんで戦争に参戦しなかったの?」

フィアンマ「順に回答していくと、土御門はアレイスターに巻物を託されたらしい。
      そこに書いてあったんだと。そして戦争に参戦しなかった理由は……」
      
ヴェント「理由は?」

フィアンマ「悪魔との融合の儀式をしていたらしい。だから戦争には参加できなかったんだ。
      これも巻物に書いてあった事らしいが」

ヴェント「え?」

フィアンマ「ただその『聖人』2人の正確な特徴とかは一切説明が無いらしい。
      アレイスターの野郎の考えている事はよく分からん」

ヴェント「結局、要約するとどういうことなの?」

フィアンマ「悪魔と融合するほどの実力者が俺様達に牙をむくかもしれない。
      そいつらに対抗できるよう、俺様達も強くなるしかないってことだ」



悲しみを乗り越えた者。いまだにもがき苦しみ続ける者。
勝ちとった平和に幸せを噛み締める者。確かな目標を定めた者。
世界は新たなる局面に向かって廻り始めた。
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:40:03.40 ID:Ih+JMOPW0
年が明け、1月1日。
めでたく退院した上条と垣根、そして五和が土御門の部屋に招かれていた。

土御門「とりあえず退院おめでとうにゃー。まあ中に『竜王』がいるカミやんはともかく
    カッキーも異常な回復力で」

垣根「なんだカッキーって、気持ち悪ぃよ」

土御門「まあまあいいじゃないか。もう俺達は『仲間』なんだし」

上条「おい。そんなことより、俺達をここへ呼んだ理由はなんだ?」

五和「当麻さん、そんな言い方はどうかと……」

上条「あ、ああすまねえ」

垣根「おっとぉ、その雰囲気は、ひょっとしてお2人さん、結ばれちゃった感じ?」

五和「え、ええまあ」

上条「……」

垣根「……この空気は地雷を踏んじゃったかな~。すみませんでした。土御門君、話を進めてくれたまえ」
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:41:06.59 ID:Ih+JMOPW0
土御門「気を取り直して、まずは五和にプレゼントだ」

土御門が五和に渡したのは、槍の形のアクセサリーのようなものだった。

五和「これは……」

土御門「『グングニル』だ。五和ならその霊装の貴重さが分かると思う。
    何故か知らんが、それは如意棒みたいに自由自在に伸縮するから持ち運びには困らず、常に携帯できるぜい。
    縮むのはそのサイズ、伸びるのはその槍の本来の長さまでだがな」

五和「こ、こんな貴重なものを何で……」

土御門「アレイスターから巻物を託された。その中にあったんだ。何故託したのかは、今から説明する」

垣根「ちょっと待てよ。俺らには何かねぇのかよ」

土御門「ないにゃー。はい、説明始めます」

垣根「ちぇ」
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:43:05.42 ID:Ih+JMOPW0
土御門「率直に言おう。いずれ学園都市から世界が滅亡するかもしれない」

上条「はぁ?」

土御門「もう一方通行には説明済みだが、この学園都市に反乱分子が1人いる。
    カッキーなら分かるんじゃないか?」

垣根「ああ、食蜂お嬢様の事でございますか?」

土御門「やっぱりわかってたかにゃー」

垣根「まああいつがレベル5の中で1番腹黒いだろうし。けどそれがどうしたってんだ?
   ぶっちゃけ順位こそ5番だが、いざ戦うとなればレベル5最弱だろ。
   あの窒素のチビにも負けるんじゃねぇの?逆らってきたら5秒で潰すまでだが」

土御門「カッキー、奴が恐ろしいところはそこじゃない。その能力によって人を洗脳することだ」

垣根「それで学園都市の能力者の大半を味方につけて、反乱をおこすのか?
   それとも人質を取るとか?どの道、そんなことはさせねぇし、させたとしても
   俺の大切な人を傷つけるのなら、容赦なく殺すだけだ」

土御門「カッキーは分かっちゃいない。実際人質を取られたら思うように動けないし仲間割れのきっかけにもなる」

土御門「例えばだ。舞夏が操られて、お前の彼女……心理定規を殺そうとする。
    するとお前は舞夏を殺す。そしたら俺はお前を殺そうとする。こういう負の連鎖が発生する」

垣根「だから、人質なんか取られなきゃいい。取られる前にさっさと殺せば良い。なんなら、今すぐにでも」

土御門「今食蜂に手を出せば、お前はただの殺人者だ」

五和「拘束とかは出来ないんでしょうか?」

土御門「出来ないな。実行に移さなければ、たとえ『人を殺したい』と強く思っていたとしても
    その人を罪に問い、裁く事は出来ない」

垣根「なら実行するまで待って、実行してからさっさと殺せばいいんだな?」

土御門「だから、そう甘くもないって。能力を使って操られた人かどうかなんて
    見分けはつかないし、そもそも食蜂を殺せば、洗脳が解けるとも限らない」

垣根「いや解けるだろ」

土御門「お前が進化したように、食蜂も能力の質が向上しているかもしれんぞ」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:45:40.41 ID:Ih+JMOPW0
上条「で、結局何なんだよ」

上条がイライラした調子で言った。

上条「そんなネガティブな事言われたって、どうしろってんだ。
   結局今は何も出来ないんだろ?つーか俺達だって操られちまうんじゃねーの?」

五和「当麻さん、少し感じ悪いですよ……」

土御門「いや、いい。要するに最悪の場合、食蜂の手によって学園都市の大半の人間が
    操られてクーデターを起こし、世界を破滅に追い込むかもしれない。
    それとカミやん、垣根や一方通行はさすがに洗脳できないだろう」

垣根「こいつの『幻想殺し』ってやつか。まあ脳に干渉する以上、一時的には
   効くんだろうが、どうせすぐ解かれるだろうしな」

土御門「あとネガティブ情報ばかりだったが、朗報もある。さっきは例えで出したが
    実は五和や舞夏、心理定規など、俺達の大切な人達は洗脳されないようになっている」

垣根「どう言う事だ?」

土御門「アレイスターの巻物にそう書いてあった。洗脳されないようにアレイスターが何らかの干渉をしたんだろう」

垣根「そんなことが出来るなら、学園都市の人間中そうすればいいのにな。一体何なんだ?」

土御門「巻物にな。コメントが書いてある。
    私は『一方的な試合』(ワンサイドゲーム)は嫌いなんだ。ってな」

垣根「意味分かんねー」

土御門「つまりだ。食蜂が何かすると分かっていて、学園都市の人間全てを守って
    俺達を有利にする訳でもなく、かと言って、身内や親族などを人質に取られたら
    俺らが圧倒的に不利だ。やつはな、俺達に互角の戦いを演じてほしいんだよ。多分な」

垣根「余計意味不明だわ」

土御門「全くだ。俺も自分で言っていてよく分からんよ」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:47:48.81 ID:Ih+JMOPW0
上条「んじゃあ、どうすりゃいいんだよ」

相変わらずイライラした調子で上条は言う。

土御門「だから、気をつけてくれって事さ。昨日まで友人だった奴がいきなり敵になるかもしれん。
    そして食蜂が本格的に行動を開始した時、協力してほしい」

垣根「にゃーるほどねぇ。でも何でそれを俺達だけにしか話さないんだ?
   他の奴にも話して置いて損はないだろ」

土御門「無駄なんだよ。話したところで、お前らほどのパーソナルリアリティを持つ者か
    カミやん並のイレギュラーでもない限り、洗脳は避けられないだろう」

垣根「麦野は死んだからあれだが、その上の『超電磁砲』や『座標移動』は効かないんじゃないか?
   逆にお前はヤバいよな。あと世界の破滅に繋がるっていうのもよく分からん」

土御門「俺は何が何でも、奴の洗脳からは逃れて見せるさ。
    『超電磁砲』は今、精神状態が芳しくない。あっさりと洗脳されるだろう。
    結標はムカつくことに、青髪と交際を始めてな。人生の絶頂期で精神状態も
    良好だろうが、逆に青髪を操られたら、そこから切り崩されるだろう」

土御門「世界が滅亡って言うのは、食蜂が世界の終焉を願っているみたいだ。
    巻物に書いてあった。ただ理由までは書いていなかった」

垣根「成程。奴ならそのぶっ飛んだ考えがあり得なくもないってところが怖いな。
   それにしてもアレイスターの野郎、本当に中途半端だな」

土御門「ああ。本当に意味不明だ。とにかく俺が言いたいのは気をつけろってことだ」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:49:34.49 ID:Ih+JMOPW0
上条「ようやく終わったか。とにかく、まだ何も出来ないってことだな。
   結局長いネガキャンされただけだったな。じゃあ俺も暇じゃないんだ。お邪魔しました」

立ちあがり、ドアを乱暴に開け土御門の部屋を後にする。

五和「あ、あの悪く思わないでください。当麻さん、インデックスさんの事でいろいろ
   悩んでちょっとイライラしているだけなんです。本当はもっと優しくて」

土御門「フォローしなくてもあいつの性格も事情も分かっているよ。
    俺だって舞夏から忘れられたら、八つ当たりの1つぐらいするだろうしな。
    逆に親友としてお願いするよ。ちょっとドライで辛いだろうが今のあいつを、支えてほしい」

五和「はい。もちろんです。インデックスさんが記憶を取り戻すまで……
   インデックスさんの“代わり”に……では、私もこれで」

垣根「おい女。あいつどこいった?」

五和「え?多分、隣の自室に戻ったんだと思いますけど……」

垣根「OK。分かった。あいつ1発ぶん殴ってくる」

五和「え?ちょっと」

垣根「邪魔すんじゃねぇぞ。邪魔するならお前からぶん殴る」

五和「ひっ」

垣根の威圧感に、五和は怯み動けなくなった。

土御門(カッキー、カミやん……)
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:50:46.82 ID:Ih+JMOPW0
ドンドンとドアを叩く音。現在同棲している五和は、鍵が開いている事を知っているはずだ。
誰だようるせぇな、と思いつつ上条はドアを開けた。

直後、上条は殴り飛ばされていた。殴られたと言う事を自覚するまで数秒の時間がかかった。

上条「何すんだよテメェ」

レベル6であり学園都市第2位である垣根に向かって、上条は一切物怖じしない。

垣根「何すんだよじゃねぇだろ」

グイ!と右手で上条の襟を掴み引き寄せた。

垣根「テメェが何を背負っているか、何に悩んでいるか詳しくは知らねぇ。
   けどな、だからってまわりに当たってんじゃねぇよ。迷惑だ」

上条「上から目線で偉そうに説教垂れてんじゃ、ねぇ!」

上条の右拳が繰り出された。それを垣根は左手で易々と止めた。

上条「うっぜぇ!」

ならばと上条は、無理矢理頭突きを繰り出す。

垣根「調子こいてんじゃねぇぞガキが!」

対して垣根も頭突き。ドガァ!と額と額が激突した。両者とも譲らない。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:53:39.40 ID:Ih+JMOPW0
垣根「お前さ、何甘ったれてんだ?」

上条「うるせぇ。テメェに俺の辛さが分かってたまるか」

垣根「ああ分かんねぇよ。だからどうした?」

上条「あ?」

垣根「確かにお前は不幸かもしれねぇ。けどな、そんな人世界中にたくさん居るんだよ。
   身近で言えば、一方通行と『超電磁砲』は妹達を失った。それでも
   あいつらは、テメェみたいにグレてねぇ。頑張って1歩を踏み出している」

上条「それが何だ?他人が不幸だからって、俺の不幸が軽くなる訳でもねぇし。
   それに俺の不幸の質は、次元が違う。何を隠そう、インデックスの記憶を奪ったのはこの俺なんだから!」

垣根「それこそ、それが何だ?だな。そんな不幸自慢して何になる?
   大体まだ生きているだけいいじゃねぇか。
   たとえその人が、お前の事を何とも思っていなくとも、生きている事実さえあれば」

上条「良くねぇよ。俺はこの手で、あいつを抱きしめたい。
   何で……ここまでやってきたのに……俺はよぉ!」

垣根「あとよ、あの女。物凄く辛そうだった。自分の事を“代わり”って言ってた」

上条「ああ、インデックスの記憶が戻るまで一緒に居てくれると言うから、言葉に甘えただけだよ」

垣根「ふーん。お前最低だな」

上条「何が!」

垣根「見ただけで分かる。あの女、お前の事を本当に好いている。
   お前はそんな女の気持ちを踏みにじるのか?」

上条「“代わり”で良いって言ったのはあっちの方だ。
   精神的に弱っているときにそんな事を言われたら、甘えたくなるだろ。
   ……正直、そういうやらしい考えがあったと俺は思っている」

垣根「それがどうした?確かに、そういう図々しい魂胆はあったかもしれねぇ。
   だがそれは100%の内の1%にも満たねぇだろうな。99・99%は心からお前を支えたいと思って言った事だろう。
   それでも、お前はそんな女の気持ちを踏みにじるのか。八つ当たりをして傷つけるのか!?」

上条「他人の人間関係に、土足で踏み込み過ぎなんだよ。俺は“今のところ”インデックスが好きなんだ。
   誰にどう思われようとも、“今”だけ一時的に支えてもらって、インデックスが戻ってきたら、インデックスと一緒に居たい」

垣根「そこまで言うなら、もう何も言わねぇよ。ただ1つだけ覚えとけ。
   あの女は“今”はお前の女なんだ。せめてその“今”の間ぐらいは、あの女を泣かせるんじゃねぇぞ。
   泣かせたら、俺がお前を殺す」

上条「分かったよ。けど、お前にそこまで言われる筋合いは無いね」

垣根「ふん」

垣根は襟から手を離し、上条の部屋を後にした。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:54:20.52 ID:Ih+JMOPW0
五和「と、当麻さん!大丈夫ですか!?」

垣根と入れ替わりで、五和が入ってきた。

上条「……ああ」

上条(……分かってるんだよ。インデックスの説得がうまくいかず、苛立って
   八つ当たりしちまってることぐらい……五和が心から俺を支えたいと
   思ってることぐらい……俺だって……分かってるけどよぉ!)

少年は苦悩する。
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:56:03.23 ID:Ih+JMOPW0
冬休みが明け、始業式が終わり、上条、土御門、青髪の3人は
姫神、吹寄の2人に屋上に呼び出されていた。

吹寄「貴様ら、戦争中避難所に居なかったけど、どこに居た訳?」

いきなり核心を突かれて、焦る土御門と青髪。

青ピ「(ちょ、どうするんツッチー?)」

土御門(どうする?)

一般的な世間の解釈は、魔術と言う巨悪が滅んだ事によって、世界は完全に平和になったとされている。
だがまだ終わりじゃない。食蜂の反乱が待っているかもしれない。
その状況で自分達の立場を明かしていいものだろうか。

土御門(とは言え、ここからごまかすのも、至難の業だ……)

悩む土御門と青髪をよそに、上条は口を開いた。

上条「あれだ。別の避難所に居ただけだよ」

吹寄「それはどこ?」

上条「俺らさ、第6学区で遊んでたんだ。だから第6学区の避難所に避難したんだよ。
   お前らは第7学区だろ?」

吹寄「ふーん、そうなんだ。よーく分かったわ」

上条「用はそれだけか?じゃあ、俺は帰るぜ」

そして踵を返そうとした時

吹寄「貴様が嘘をついているってことがね!」
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:58:10.51 ID:Ih+JMOPW0
上条「はぁ?何でそうなるんだよ?」

吹寄「だって、戦争があったイブのあの日、私と姫神さんで第6学区で遊んでいたんだもの!
   そしてそこでコードレッドになって、私達は第6学区の避難所に避難した。そこに貴様らはいなかったわ」

土御門(おかしい……だとしたら普通、俺らは第7学区の避難所に避難していると考え
    第6学区の避難所で会わないのも必然だと考えるはずだ……)

吹寄「もちろんその時、貴様らは普通に第7学区に避難したのかと考えたわ。
   私ね、皆が心配だったから、仲の良い数人に電話かけたのよ。そしたら1人の子が言ったのよ」

吹寄「『ここ』(第7学区の避難所)には3人がいないってね」

吹寄「じゃあどっか違うところにでもいるのかなとも考えたけどさ。
   ここで私は思ったのよ。姫神さんも同じ事思っていたわ」

吹寄「貴様らが何かに巻き込まれてるんじゃないかってね。
   何故そういう結論に至ったのか、言わなくても分かるわよね?」

上条「分かんねーよ」

姫神「上条君。それはギャグで言っているの?」

吹寄「あのさ、上条はよく入院して学校休みがちだったし、土御門も割と学校に来ていなかった。
   何より決定的だったのが、大覇星祭でのあの時の貴様の態度と、姫神さんから聞いた三沢塾での話」

吹寄「これだけの不審点があって、貴様らに何かあると思わない方がおかしいわよね?」

姫神「青髪君も。私が電話したのに。出なかったし」

吹寄「本当は入院中の貴様らにすぐにでも聞きたかったけど、やっぱそれは
   いくらなんでも辛いかなと思って、こうやって冬休み明けに速攻呼び出した訳」
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 17:59:50.89 ID:Ih+JMOPW0
土御門(予想以上に、クラスメイトってのはクラスメイトの事を見ているものなんだな……
    こりゃあごまかせないかな)

まあでも、詳しくは教えられないかなと思いながら、白状しようとしたその時

上条「ああそうだ。確かに俺達は避難なんかしていない。
   正直言うと戦争に参加して戦ってきた」

上条「でもよ。それをほじくり返して何なるんだよ?
   俺らはお前らに心配かけまいと黙ってたんだぜ。
   それに終わった事だし、だから何だ?って話だ。いちいち詮索してんじゃねぇよ」

青ピ「カミやん、そんな言い方は」

吹寄「だから!」

突然吹寄が叫んだ。

吹寄「私が言いたいのは、今度何かあったら、私達相談しなさいよね!絶対力になってあげるんだから!」

上条「お前程度じゃ、どうにもならねぇよ」

青ピ「カミやん!」

吹寄「よして青髪!きっとそれは事実なんでしょう。だから、私は強くなっていつか貴様らの力になるから!」

上条「やめろ。足手まといだ。邪魔以外あの何物でもねぇ」

土御門(カミやん……)

土御門には分かった。苛立ちもあるのだろうが、こうやって敢えて冷たく
引き離すことによって、巻き込ませないようにするためだと。

だがその思惑を知ってか知らずか、1人の男が動いた。

青ピ「ええ加減にせぇよカミやん!」

ゴッ!と殴られた上条は地面を数m転がった。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:01:35.92 ID:Ih+JMOPW0
姫神・吹寄「「青髪(君)!!」」

青ピ「カミやんの事情はな、ツッチーから多少は聞いた。
   確かにカミやんは、今とてつもなく辛いんやろうけど
   それで当たるのは間違っているし、多かれ少なかれ誰だって不幸位抱えてるもんや」

青ピ「それでも皆強く生きてるんやで。何故それが出来るのか。
   それは、人間は1人だけで生きているからではないからや。皆支え支えられ、生きている」

青ピ「てーかカミやんが諦めてどうするんや?ずっと願ってたんやろ?
   映画みたいに絵本みたいに、命を賭けてでも、たった1人の女の子を救うって。
   だったらそれは全然終わってへん!始まってすらいてへん!
   少しぐらい長いプロローグで絶望してる場合やないやろ!」

上条「――!」

上条の目が見開かれた。記憶を取り戻した今なら分かる。
かつてこんな事を魔術師に言った気がする。
何故こんな事を青髪が?と疑問に思ったが、俺達は似た者同士なのかなと勝手に解釈した。

青ピ「――ええ加減グレるのはやめようや。いつまでもウジウジしってとぶっ飛ばすぞ!上条当麻!」
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:03:17.44 ID:Ih+JMOPW0
上条「……馬鹿じゃねぇのお前。ぶっ飛ばすぞ!って既にぶっ飛ばしてんじゃねぇか」

青ピ「なんやと!?」

上条「けど、ありがとよ。お前のおかげで少し吹っ切れたわ」

青ピ「力になれて何よりや」

上条「けど、俺にも1発ぶん殴らせろ。それでおあいこだ」

青ピ「いやや!」

そう言って青髪は逃げだそうとしたが、土御門が羽交い絞めにした。

青ピ「ちょ、何するん!?」

土御門「殴られただけじゃ、さすがにカミやんが可哀想だからにゃー。殴り殴られるのも、青春だし」

上条「歯ぁ喰いしばれよ!」

青ピ「ぐはぁ!」

ドガァ!と上条の右拳が青髪の顔面にクリーンヒットし、土御門毎地面に伏した。
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:06:43.62 ID:Ih+JMOPW0
吹寄「ちょ、貴様ら何やってるの!?」

土御門「青春だにゃー」

土御門は起き上がりながらそう言う。

上条「やべ、ちょっと強かったかな。手加減はしたんだけど」

姫神「青髪君。完全ノックアウト」

土御門「さてこの空気で言うのもアレだけども
    実は今日、俺達も姫神を呼び出すつもりだった」

上条「え?初耳だけど」

土御門「うん。今初めて言ったもん」

上条「はぁ?」

吹寄「ちょっと貴様らだけで盛り上がらないで説明しなさいよ!」

土御門「そうだな。一言で言うと、姫神の能力を取り除く方法を発見した」

姫神「!」

土御門「まあ別にその十字架を付けてでもいいんだけども、根本的に能力を取り除けば
    その十字架を外しても良いし、能力開発も出来るようになる。どうする?」

姫神「もちろん。出来る事ならお願いしたい」

土御門「OK分かったにゃー。じゃあカミやん『竜王の顎』だ。
    それで姫神を飲み込めば、原石である『吸血殺し』は失われる」

吹寄「ど、どらご、何だって?それ大丈夫なの?」

土御門「もちろん」

上条「ちょっと待て。俺は『竜王』の力を完璧に使いこなせなかった。
   もしインデックスの二の舞にしてしまったら……」

土御門「カミやん。あんまり自分を卑下するな。いいか。
    本来なら『竜王』の力は3割であろうと御しきるのは難しい。
    だがカミやんはアレイスター戦でそれをやってのけた。
    何が言いたいかって言うと、もっと自分に自信を持て。
    仮に暴走したとしても、俺達が絶対止めてやるから」

上条「駄目だ。姫神に危険が及ぶ可能性がある以上、俺には出来ない」

姫神「いや。お願い」

上条「え?」

姫神「さっきから上条君達の会話は理解できない。
   けれど。これだけは言える。私は上条君を信じているから。お願い」

土御門「だそうだ」

上条「けど」

土御門「友達を救いたいだろ?お前にしか出来ない事なんだよ」

姫神「上条君」

上条「……分かった」

バリィィィン!と甲高い音と共に『幻想殺し』が解除された。
上条の右腕から翡翠色のエネルギーが滲みだし『竜王の顎』を象った。

上条「いくぞ」

姫神「きて」

『竜王の顎』が姫神を飲み込んだ。
またしてもバリィィィン!と言う甲高い音が鳴り響いた。同時に姫神が地面に向かって倒れ出した。
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:09:33.77 ID:Ih+JMOPW0
土御門「っと」

土御門は姫神を優しくキャッチした。上条も即座に『幻想殺し』で蓋をし姫神に近寄る。

上条「おい!大丈夫なのか!」

土御門「大丈夫。気絶しているだけだ。じきに目を覚ます」

とそこで、今まで絶句していた吹寄が口を開いた。

吹寄「……そう言えば、色々あって流されてきたけど、結局貴様らは何者なの?特に上条」

土御門「それは」

上条「もういいよ土御門。ここまで見られて隠すのはもう無理だ。正直に話そう」

土御門「……そうだな」

それから、上条と土御門は正直に話した。夏休みから今まで自分達が関わってきたこと全てを。
青髪については本当に一端しか知らないので、その一端だけを話した。

吹寄「そう……だったんだ……私、そんな事も知らないで今までのうのうと生きてきたんだ……」

土御門「それが普通だにゃー」

上条「それで、さっきはもし今度何かあったら協力したいと言っていたがもう関わる気もなくなっただろ?
   まあ、もう何も起こらねぇよ。きっと世界はずっと平和さ」

土御門(カミやん……)

吹寄「イヤ」

上条「え?」

吹寄「貴様らに守ってもらうなんて御免よ!私達は強くなって貴様らと一緒に戦う!」

上条「はぁ?だから世界は平和だって――」

吹寄「分からないわよ?前に学園都市でクーデターあったし、またあるかもしれないじゃない!?」

土御門(鋭い……)

吹寄「備えあれば憂いなし!まあ聞きたい事は聞いたし、姫神さんは私が連れていくから。
   協力するなって言われたって、無理矢理にでもついて行くんだから!」

姫神をおんぶして、吹寄は颯爽と屋上から去って行った。
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:11:46.68 ID:Ih+JMOPW0
土御門「どうする?心強い味方が出来ちゃった感じだけども」

上条「馬鹿言え。気絶させてでも連れて行く訳にはいかねぇよ」

土御門「たまには人に頼っても良いんじゃないかにゃー?戦いながら守れば良いだけだし」

上条「簡単に言いやがって。それは厳しいだろ」

土御門「そんなことよりカミやん!話があるんだにゃー」

上条「話題の変更の仕方が強引すぎるだろ!つかこれ以上何があるんだよ!」

土御門「カミやんは知らないかもしれないけど、『原石』って言う天然の能力者が世界に50人ほどいる。
    『原石』はその特異さから世界中の研究機関から狙われている。
    つまり『原石』の人間は、自分が生まれ持った能力を快く思っていない」

上条「てことはまさか……」

土御門「察しが良いにゃー。そのまさかだぜい」

翌日から、上条は世界中から集められた『原石』の人間の能力を取り除くことになった。
世界の頂点である学園都市が招集をかけたので、どこの国も言いなりになるしかなかった。

週末は冬休み序盤に入院して出来なかった補習(後半は何とか出ていた)を強いられ忙しい日々を送った。
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:13:55.08 ID:Ih+JMOPW0
そして2月某日。
補習も完璧に終え、吹寄との個人授業を経た上条は成績も中の下ほどになり、学年末テストも赤点を回避し、進級が決定した。

上条「今日で『原石』を取り除く作業も終わりか……」

とある高校屋上。最後の『原石』を土御門と共に待っていた。

土御門「最後の『原石』はカミやんも知っているあの人だぜい」

その時、ガチャと屋上の扉が開かれた。

雲川「はろ~」

上条「え?雲川先輩!?」

土御門「よく見るんだにゃー。もう1人いるぜい」

削板「よう!」

上条「削板!?」

土御門「レベル5第7位、通称ナンバーセブン、削板軍覇。彼が最後の『原石』だ」

上条「……マジか。てかそれなら何で雲川先輩も一緒に?」

雲川「私がいたら駄目なの?」

上条「え、いやそれは……」

土御門「カミやん。雲川先輩は何もかも知っている。今更隠す事なんて何もないんだぜい」

雲川「そう言う事だから、ちゃっちゃとやっちゃって。
   ウチの旦那には、土御門から事情を聞いて、もう説明してあるから」

上条「だ、旦那!?」

雲川「うん。軍覇は私の旦那だけど」

削板「おい。婚約した覚えはねぇぞ!?」

雲川「いいじゃん。どうせ結婚するんだから。私の事好きでしょ?」

削板「ま、まあ」

土御門「雑談はここまでだ。さっさと終わらせよう。カミやん、頼んだ」

上条「……マジか。ほんじゃま、遠慮なく!」

『幻想殺し』を一時的に解除し、『竜王の顎』で飲み込み、また『幻想殺し』で蓋をする。
もう手慣れたものだった。
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:14:59.39 ID:Ih+JMOPW0
削板「ああ、なんか微妙な気分だ」

上条「これを喰らって気絶しなかったなんて、削板くらいだよ」

削板「俺は常に鍛えているからな」

雲川「じゃあ帰りましょ。ダーリン♡」

雲川は削板の腕を掴んで引っ張り、颯爽と屋上を後にした。

上条「雲川先輩って、あんなキャラだっけ?」

土御門「恋をして乙女になったんだにゃー」

上条「はぁ。そんなもんなんかなー」

土御門「さて、これで『原石』50人の能力が『竜王』に戻った訳だが」

上条「何だよその言い方は。何かあるみたいじゃねぇか」

土御門「ああ。だが大したことじゃない。――お前の中に何故『竜王』が宿ったのか。
    それの答えを今から話そう」

496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:19:18.27 ID:Ih+JMOPW0
土御門「と言っても、本当に大したことじゃない。ただの過去のお話だ。
    知ったからと言って、何かが変わる訳ではない」

上条「前置きは良いから、早く話せよ」

土御門「エンゼルフォールを覚えているか?」

上条「え、まあ、覚えているけど」

土御門「あの時は、上条刀夜のお土産が偶然エンゼルフォールを発動した。
    カミやんに『竜王』が宿ったのも、それと同じなんだよ」

上条「いや、全く意味が分からねぇ」

土御門「お前が安全に生まれるように、お前の祖父、上条十牙(とうが)がいろいろやったんだよ。
    そして“偶然”お前が上条詩菜の胎内に居る時『竜王』が宿った」

上条「マジ……かよ……そんなこと有り得るのか……?」

土御門「にわかには信じがたいがな。
    アレイスターの巻物にも書いてあったし、実際エンゼルフォールの例もあるしな」

上条「で、それと『原石』がどう関係しているんだよ?」

土御門「カミやんもなかなか鋭くなって、しかも冷静だし会話が捗るにゃー」

上条「良いから早く話せよ」

土御門「アレイスターの巻物によると
    『竜王』がお前に宿ったと同時、『原石』にも能力が宿ったんだ。
    それは『竜王』の副産物で、もともとは『竜王』の力の一部だったらしい」

上条「じゃあ、俺の中の『竜王』は強くなったのか?」

土御門「強くなったと言うより、もとに戻ったと言う方が正しい。
    あと『吸血殺し』を吸収したからと言って、吸血鬼を殺せると言う訳でもない。
    ……分かっているのはここまでだ」

上条「ふーん。なんか大したことあった話だけど、今更って感じだったな」

土御門「だから初めに言っただろ?何か変わる訳でもないって。
    正直、話さなくても問題なかったんだが、どうせならと思ってな。
    あと、お前は愛されて生まれてきたってことも知ってほしくてな」

上条「そっか。ありがとな」

土御門「……インデックスの説得はうまくいっているか?」

上条「まだ駄目だよ。ようやく打ち解けてきたぐらいでさ。
   けど五和に言われた事と、お前の今の話で、俺はたくさんの人に愛されて生きているんだなって」

上条「垣根や青髪に説教されて、不幸なのは俺だけじゃないって。
   諦めるのはまだ早いって。まだ物語が終わってないだけだって」

上条「『原石』の人間から能力を取り除いて、こんな俺でも出来る事があるんだなって。
   そんな当たり前の事に、お前達は気付かせてくれた」

上条「皆だって、幸せな事ばかりじゃないはずだ。それでも皆頑張って生きていて。
   こんな俺を励ましてくれて。いつまでもウジウジしている訳にはいかねぇよ」

土御門「上条当麻完全復活だな。今日はお祝いでもするか」

上条「よせよ。皆当然の事を俺に教えてくれただけだ。寧ろ俺がお礼を言わないと。
   まあしばらくはインデックスの説得で時間がないけどな。今日もこれから行くんだ」

土御門「そうか。頑張れよ」

上条「ああ」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:22:23.57 ID:Ih+JMOPW0
2月が過ぎ、3月。寒さのピークも過ぎ、徐々に暖かくなっていく。
学園都市では、12月25日から放置されていた半壊の窓のないビルの解体がようやく終わった。
街の復興も大体は完了したが、完璧ではなかった。

土御門は、巻物の中にあった音声プログラムを聞き『肉体再生』の能力を敢えて失うことに成功。
学園都市で能力開発に苦しんでいる者の為に使ってくれ、と土御門は雲川に音声プログラムを託した。

多分アレイスターは、魔術サイドの復讐の為だけに作った学園都市や能力者達を
そのまま放っておくのもどうかと思ったのだろう。
さらに、能力者が減れば食蜂の手駒も減る訳だし。と土御門は考えていた。
しかしアレイスターの考え(土御門の推測ではあるが)とは裏腹に当の学園都市の能力者達は
能力をリセットして新しい能力開発に勤しんだりしただけだった。それもそうだ。
『量子変速』(シンクロトロン)とか『絶対等速』(イコールスピード)とか
よっぽど変則的な能力でない限り、あって損はない。いや、例に挙げた能力も無いよりはマシだ。
あとはレベル0の能力者が一部使って学園都市を去った位だった。

ロシアやイギリスはゴーストタウンと化していた。
相変わらずEUを中心に世界はギクシャクしているのだが
世界の頂点である学園都市が『戦争をすればその国を制裁する』と宣言している(雲川案)ので
どの国も迂闊に動けなかった。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:24:00.02 ID:Ih+JMOPW0
その後、学園都市でも世界でも何事もなく3月21日。
学園都市の小・中・高校の卒業式が大体終わった。
春休みに入り、学園都市の学生達の親から苦情が殺到した。
0930事件、クーデター、加えて戦争の舞台となった学園都市。
魔術サイドが滅んだとは言え、保護者達の我慢も限界だった。
これにより約80万人の学生が学園都市を去った(音声プログラムで能力を失ってから)。
しかしイギリス・イタリア・ロシアの連合軍との戦争に勝利した評判の方が大きく
学園都市に約100万人の学生達が新たに入った。戦争終結直後からだったのだが
大人の数が不足しているので、これを機に緊急で募集をした。これで生徒の総数は約200万人。大人の総数は約30万人となった。



土御門(参ったな。結局、学生の数は寧ろ増えた訳だ。食蜂の手駒がみすみす増えた訳だ。
    これはもう、巻き込みたくないとか言う前に、なりふり構わず
    いろんな人に協力してもらうしかないかな……)

舞夏「どうした兄貴ー。悩み事なら聞いてやるぞー」

自室で1人悩む土御門に、舞夏が声をかけた。

土御門「何でもないぜい。そんなことより、今日はいつまで居るのかにゃー?」

舞夏「今日は泊まっていこうかなー。兄貴も心配だしー」

土御門「おおう、マジかにゃー!じゃあ今日の夜はお楽しみだにゃー!」

舞夏「悩みは聞いてやるが、そう言う事をしようとするなら帰るぞー」

土御門「ああー嘘嘘!嘘だから!でもせめて、膝枕で耳かき肩揉みはして!」

舞夏「しょうがないなー。愛しい兄貴の為、それぐらいならやってやるんだぞー」
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:24:48.93 ID:Ih+JMOPW0
常磐台中学 学生寮

白井「お姉様……」

御坂「……」

戦争終結直後から、ずっとこんな調子で塞ぎこみがちの御坂。
それは無理もなかった。20002人のクローンを失い、その上失恋したのだから。

白井「お姉様、どうか元気を出して下さいまし」

御坂「うん。ありがとう。気を使わせてごめんね。黒子」

白井「……では、行ってまいりますの」

とりあえず風紀委員第177支部へ行くことにした。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:26:14.99 ID:Ih+JMOPW0
風紀委員第177支部

白井「おはようございますの」

初春「おはようございます」

白井「聞いてくださいまし。お姉様、相変わらず元気がなくて……」

白井は、支部に来るたびに初春にそう言っていた。ただし妹達の件や失恋の事は一切言っていない。

初春「だからそう言われても……原因が分からないとどうにも……
   病気なのでしょうか……白井さんは何か知らないんですか?」

白井「うーん。知っていると言えば知っていますが、言えませんの。
   何とかお姉様を元気づける方法ありませんか?」

初春「毎回毎回そうやって濁して……まあ誰にだって知られたくない秘密はありますし
   深くは突っ込みませんけど。何回か佐天さんを含めて4人で遊びましたけど
   また集まって遊ぶのはどうでしょうか?」

白井「そうしましょうか。では善は急げ。今日の午後早速遊びましょう」

初春「私は大丈夫ですけど、佐天さんは分かりませんよ?」

白井「初春が誘えば来てくれますわよ」

初春「そうですね。あ、そう言えば、今日からこの支部に新しい子が入ってくるみたいですよ」

白井「初耳ですの」

初春「私も一昨日に聞いたばかりですよ。何でも、最近レベル5になった娘で
   研修もわずか2ヶ月しかしてなくて、特例で入るらしいですよ」

白井「へぇ~。一体どんな娘なんでしょうか?」

初春「もうそろそろ、固法先輩がその娘を連れてくるらしいですよー」

と、まさにその時、支部の扉が開かれた。
入ってきたのは、固法と、常盤台中学の制服を着た短い茶髪の女の子だった。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:27:33.51 ID:Ih+JMOPW0
絹旗「今日から第177支部で超活動することになりました絹旗最愛です!よろしくお願いします!」

初春「よろしくお願いします」

白井「あ、あなたは確か、あの時病院に居た……」

絹旗「えへへ。白井さんがいると知って、わざわざ177支部志願したんですよ。私、結構人見知りなんで」

白井「その制服は……」

絹旗「ああ、これですか。4月から常盤台中学の2年として超通うことになりました。
   白井さんとは同級生ってことになりますね」

初春「白井さん、絹旗さんと知り合いだったんですか?」

白井「ええまあ。戦友と言ったところでしょうか」

絹旗「そちらは初春さんですよね?資料で超拝見しました。
   何でも情報戦が得意で8月1日には、とある事件を解決するのに一役買ったとか」

初春「え?えへへ。そう言われると照れちゃいますよー。
   そちらこそレベル5の第4位なんて凄いじゃないですか」

絹旗「『窒素装甲』って言って、窒素を纏う能力なんですけどね。
   今ではある程度の量なら、大気中の窒素も超操れます」

初春「絹旗さんがいれば百人力ですね!」

絹旗「えへへ。そう言われると、超照れちゃいます」

固法「早くも打ち解けたみたいじゃない?それじゃ早速、見回り行くわよ」

絹旗・白井「「はい!!」」
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:29:09.98 ID:Ih+JMOPW0
第6学区にある遊園地

結標「私ね。あなたと同じ高校に通おうと思うの」

ベンチで青髪と座っている結標は、そんな事を言った。

青髪「何で?霧ヶ丘に復学した方が、君の為になると思うけど」

結標「私、ああいう名門校って実は嫌いなのよね。それにあなたと同じ高校に通いたいって言うのもある」

12月27日にはぐらかされた青髪の告白だったが、結局翌日にOKをもらい正式に交際がスタートしていた。

青ピ「そうか。僕と同じ考えなんやなー。でも僕らの高校は底辺校やで?
   大覇星祭とか散々な順位やで。それでもええの?」

結標「底辺校なら、私の実力で引っ張り上げてやるまでよ。なんちゃって」

青ピ「そっか。結標ちゃんがそこまで言うなら、これ以上はなにも言わへんけどな」

結標「ねぇ。そろそろ名前で呼んで?あとあなたの本名も知りたいな」

青ピ「えー。名前で呼ばれるのもええけど、僕は『ダーリン♡』とか『ア・ナ・タ』とか呼んでほしいな。
   それに本名が分からないとかミステリアスで素敵やん?」

結標「えー、教えてよ。ダーリン♡」

青ピ「気ぃ向いたらな。淡希」

言いながら、結標の頭を優しく撫でる。

結標「はう///」
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:30:15.37 ID:Ih+JMOPW0
黄泉川が住んでいるマンション

黄泉川「一方通行、買い物してくるじゃんよ。はい、これメモね」

ソファーに寝っ転がっていた一方通行とフレメアに、容赦なくメモを置いた。

一方通行「ちっ。だりィけど行くか」

フレメア「待って。大体私も一緒に行く」

一方通行「お菓子は1品までな」

フレメア「うん。大体分かってる」

2人はさっさと支度をして、ガチャと扉を開け、手を繋ぎながら消えていった。

黄泉川「一方通行も大分丸くなったと言うか、大人になったじゃんよ」

芳川「突然預かる事になったフレメアとかいうのも、最初はだいぶ手のかかる子だったけど
   今ではすっかり一方通行に懐いて、良い子になったわよね」

黄泉川「ああ。本当に子供の成長は早いじゃんよ」

芳川「それもこれも、あの時の愛穂があったからよ」

黄泉川「何じゃんよ?あの時って」

芳川「妹達が全員死んで、落ち込んで帰って来た時よ」

黄泉川「そ、その話はよすじゃんよ///」

一方通行「っくし!」

フレメア「大体大丈夫?風邪でも引いたのかにゃあ?」

一方通行「大丈夫だ。そンなンじゃねェ」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:31:36.97 ID:Ih+JMOPW0
芳川「落ち込んでいる一方通行に後ろから抱きついてさ。
   30分ぐらいなんか言いあっていたわよね。
   で、あなたが最後に言った言葉が『我慢しないで、泣いて良いじゃんよ?』だったかしら。
   その言葉であの子はあなたの胸に顔を埋めて泣きだして、あなた自身も一緒に泣いていたわね」

黄泉川「わー!何でそんな細かく覚えているじゃんよ!?」

芳川「うふふ。あの時の様子はしっかり録画させてもらったわ」

黄泉川「はぁー!その映像どこにあるじゃんよ!?今すぐ消すじゃん!」

芳川「映像には残っていないわ。私の脳内に焼き付いているの」

黄泉川「OK。今から桔梗の脳味噌の解体作業に入るじゃん」

ユラリと座っていた椅子から立ち上がり、芳川へ近付く。

芳川「え、ちょ、ちょっと待って?冗談よ冗談。アハハ、愛穂ったら本気にしちゃって」

黄泉川「問答無用じゃん!」

きゃああああああ!というアラサー女の悲鳴が部屋の中で木霊した。
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:32:50.58 ID:Ih+JMOPW0
垣根「何か隣が騒がしいな」

心理定規「行ってみる?」

垣根「いや、いい」

偶然にも黄泉川の部屋の隣を借りて住んでいた垣根達は、隣室から聞こえる悲鳴をあえてスルーした。

垣根「お前、4月から常盤台通うんだろ?そしたら寮生活で、ここにも戻って来れないんだろ?考え直さないか?」

心理定規「私も、帝督と離れ離れになるのは寂しいけど、ちゃんと中学校に行って教養を身につけないとと思って。
     大丈夫。常盤台は女子校だから浮気はあり得ないし。寧ろ帝督が浮気しないかのほうが心配よ」

垣根「俺はそんな軽い男じゃねぇよ。長点のクソビッチどもに興味はねぇ」

心理定規「とか何とか言って、誘惑されたら、コロッと落ちちゃうんじゃないの?」

垣根「俺様が弄ぶ事はあっても、弄ばされる事はねぇよ」

心理定規「弄ぶのも駄目!」

垣根「はいはい、分かりましたよ姫。そんなことより、今日良いよな?」

心理定規「そう言う事は、結婚してからじゃないと駄目!」

垣根(見た目派手なくせに、そういうところ純情と言うか、古い考えと言うか……
   ま、そう言うところも可愛いんだけどな)

心理定規「今私の事可愛いって思ったでしょ?」

垣根「ああ。思ったよ」
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:33:39.76 ID:Ih+JMOPW0
夕方 上条が住んでいる学生寮

上条「ただいまー」

五和「おかえりなさい。すみません。
   まだご飯も出来てないですし、お風呂も沸いてないです……」

上条「いや、別に良いよ。てか寧ろ一緒に料理作ろうぜ。そっちの方が楽しいし」

五和「はい」

そうして2人は料理を作り始めた。

五和「あの、インデックスさんの説得はうまくいっていますか?」

上条「ああ。あと一押しってところかな。
   まあ記憶を取り戻す気になって、ようやくスタートラインなんだけどな」

五和「それはよかったです」

屈託のない笑みを浮かべたように見えた。

上条(五和……)
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:34:30.51 ID:Ih+JMOPW0
無事に料理は完成し、2人はそれを一緒に食べ始めた。

五和「私、4月から当麻さん達の高校に通うことになりました。
   3年生としてなので、一緒のクラスと言う訳にはいかないですけど」

上条「マジか!そりゃあ嬉しいな。勉強も教えてもらえるし」

五和「はい。当麻さんのお力になれれば、私も嬉しいです」

そんな感じでわいわい食事を終えたころには、お風呂も沸いていた。

五和「では私は食器を洗うので、先にお風呂入っちゃってください」

上条「ああ」

カチャカチャと食器を運ぶ五和の後ろ姿を見ながら、上条は言った。

上条「五和。お前の事、絶対に守って見せるから」

五和「え?(こ、これってもしかしてプロポーズ!?)」

一瞬期待に胸を膨らませたが、すぐに違うと切り替えた。
守ると言うのは、元日に土御門から言われた、食蜂の脅威からと言う意味だ。
そもそも私はインデックスの“代わり”でしかないのに、何バカな事を考えているんだ、と。

五和「はい。私も、当麻さんの事守って見せます」
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:35:31.00 ID:Ih+JMOPW0
『心理掌握』こと食蜂操祈は常盤台の寮で1人くつろいでいた。

食蜂「退屈ねぇ」

その時、コンコンと扉を叩く音。

食蜂「どうぞ」

少女「失礼します」

入ってきたのは、肩くらいまである鮮やかな紫色の髪の少女だった。
身長は130cmほど。その目は虚ろげだ。

少女「報告に参りました」

食蜂の目の前で跪き、報告を始める。

少女「『超電磁砲』こと御坂美琴様ですが、妹達を失った悲しみで
   精神崩壊一歩手前のようです。今の食蜂様なら、容易に操作できるかと」

食蜂「ふーん。まあその辺は私の改竄力で、いくらでも切り崩せるんだけどねぇ」

少女「結標淡希様ですが、どうやらレベル5第6位と交際中のようです。
   そこから切り崩せば問題ないかと」

食蜂「うんうん。続けて?」


少女「近頃レベル5の第4位までのし上がった絹旗最愛様ですが、
   直接叩きのめしたいと言う者がいまして、いかがいたしますか?」

食蜂「いいわ。そいつに任せましょう」

少女「はい。問題は垣根帝督様、一方通行様、そして上条当麻様ですが――」

食蜂「垣根と一方通行は、私達の開発力で『あの装置』が完成すればどうとでもなる。
   その上条当麻って言うのは、どれほどの男子力を持った人なのかしら?」

男子力とか半ば意味不明であるが、少女は一切突っ込まず続ける。

少女「はい。分かっている事は『幻想殺し』という能力が右手に宿っている事です。
   効果は、異能の力ならば何でも打ち消せると言うことらしいです。
   ここからは未確定情報なのですが、どうやら『幻想殺し』意外にも力が
あるみたいです」

食蜂「ふーん。じゃあそいつは私の女子力で殺しましょうか。なーんちゃって。
   てへ☆」

少女「……」

食蜂のボケ?にも一切反応を示さない少女。

食蜂「ちょっとは反応してよぉ。操祈、寂しくて泣いちゃうゾ☆」

少女「はい」

食蜂「……」

少女「……」

食蜂「まあいいわ。『あの装置』が完成すれば、すぐにでも動くから
   準備はしておきなさい。もう下がって良いわよ」

少女「はい」

少女は食蜂に一礼して、部屋を後にした。

食蜂「うふふ。楽しみだわ。この糞みたいな世界を終わらせることを考えると」



運命の時まで、残り約3週間。

                             To be continued……
509VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:42:54.03 ID:Ih+JMOPW0
打ち切りエンド見たいですが、これで一旦終わりです
次スレは、食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」の予定です
これから書きためるので、まだまだ先の話ですが

ちなみにレールガンはコミックでしか見ていないので、食蜂についてはウィキでしか見ておらず、詳しい事は分かりません。
というかコミックが出たとしても多分原作より強い食蜂を描くことになるかと思います

>>495
してないです。というかそれは読んだこと無いです
ドラゴンについては、よくある説をそのままパクっただけです
どうせだから、少々ヤケクソ気味に祖父のおかげでドラゴンを宿したとか
『原石』が云々と言う設定つけてみました。姫神を活躍させるためです

510VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:44:19.75 ID:Ih+JMOPW0
html化されるまで、気付いた質問には答えていこうと思っています 
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/09/12(月) 18:49:59.91 ID:w2sTs15M0
>>1
お疲れ様
最初からずっと見てたよー

この作中での死者(原作登場)

科学側
☆、妹達全員、麦野、浜面、滝壺
風斬(能力者がいれば復活可能?)
黒夜(?)

イギリス側
王室:エリザード、リメエア、キャーリサ、ヴァリン
騎士:騎士団長?、騎士軍団
清教:ローラ、ステイル、神裂、建宮、シェリー、アニェーゼ、アニェーゼ部隊
新光:レッサー

ローマ
リドヴィア、ビアージオ、マタイ

ロシア
サーシャ、ワシリーサ

その他
エツァリ、ショチトル(アステカ)
シルビア
オリアナ
傾国の女(フランス)
エリザリーナ(独立国同盟)

って所?
512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 18:58:08.34 ID:Ih+JMOPW0
>>511
そうですね。大体あってます

騎士団長は死にました。あとレッサー以外の新たなる光のメンバーも全滅です

あと裏設定と言うか、レイヴィニアやマーク=スペースなどの魔術結社の人間や残った
ロシア成教メンバー、一般人はインデックスの天使の召喚の為の生贄にされて
オルソラなど一般人、非戦闘員の信徒達も、戦争中に世界中にある学園都市の協力機関に殺されましたということにしています
513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 19:03:35.36 ID:Ih+JMOPW0
>>512の補足と言うか
とにかく、魔術サイドの人間は7人しか生きていません
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage saga]:2011/09/12(月) 19:28:18.77 ID:w2sTs15M0
丁寧な返事感謝
土御門が☆に幻想殺しと言わずカミやんと言ったのは☆の最期に理事長とスパイではなく知り合いとして話してたから?

一方通行が全体的に少し薄情に見えたから泣いて終わり以外にもうちょい描写あったてもよかったかも?
けど実力差があるキャラはあっさり殺すのとかもよかったし
精神的にあっさり気味な登場人物の中で禁書への固執具合とか上条っぽくてよかったと思うんだよ
515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/09/12(月) 19:47:02.18 ID:Ih+JMOPW0
>>514
レスありがとう
最初の質問に関しては、ぶっちゃけそこまで深く考えていなかったです
特に意図は無いです

一方通行が薄情に見えると言うのは分かります。
>>504で芳川が言っていたことを数レスかけてやろうかとも思ったのですが正直疲れちゃって。
上条はインデックスに固執する描写やり過ぎかなとも思ったのですが
良かったと思ってくれて何よりです
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)[sage]:2011/09/12(月) 23:03:35.82 ID:DKSUhLnAO
>>1おつです

質問って訳じゃないけど,こりゃ五和さんは報われなきゃな;

インデックスは上条さんと暮らしてないみたいだけど今どうしてるの?
517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/09/12(月) 23:47:59.15 ID:Ih+JMOPW0
>>516
小萌先生のとこで居候と言う事で
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/09/13(火) 06:26:24.61 ID:7o4mD6wDO
読んだ。
神裂VS御坂黒子は違和感有りすぎ。
黒子と御坂が強過ぎ。
特にテレポートは痛みで演算出来なくなるぐらいデリケートな筈なのに、ポンポン跳ぶし。

原作読み直して欲しいわ。
519VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/09/13(火) 12:08:56.21 ID:9uFaIliX0
>>518
仰るとおりです。>>1の都合で、御坂はもちろん
黒子は強くさせすぎたと思います

まあでも、このSSでは一応全員パワーアップしていると言う設定ですし
許して下さい
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/09/13(火) 15:50:28.22 ID:Ea7oF2300
>>518
美琴の強化は補正強いけどあり得ないかと言うとタイマンで神裂に負けたし許される程度じゃね?
VS天使も実力差があるけど一VS多って市民が武装した軍隊に勝つことすら歴史上存在する
黒子は美琴がとめたのに神裂に過剰攻撃してるし我を見失ってる描写がある
狂信レベルまで行くと痛みとか無縁の世界になるしテレポート出来るのはまあありだと思う

上条とかもDBみたいな超インフレ作品もあるから原作でフィアンマレベルでも噛ませになる可能性もある
(GTのセル&フリーザの扱いは製作スタッフに殺意が沸くレベル)

どちらかと言うと浜面の能力とカーテナが日本で使えるとか一方通行の淡白さとかの方が違和感あるけど
>>1が過剰演出や演出不足って認めてるし次回作に更なる期待って感じじゃない?

3行で纏めると
黒子ご乱心
超インフレ
>>1面白かったぞ次回作も期待
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/09/14(水) 16:26:41.83 ID:/1X1FLdn0
>>1は上条「なんだこのカード」を見たことある?なんか雰囲気が似ているんだが・・・
あと幻想殺しはハディート説が一般なんだが、こことは関係ない?

522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/09/14(水) 20:05:03.23 ID:FoaqqYpR0
>>521
そのSSも見た事ないですね。強いて言うならリアルワールドというSSを多少参考にしたぐらいです。
あと一方禁書でもドラゴンストライクだけは出してましたから、それも参考にしました。
ハディート説についてちょっと調べてきましたが、学がない>>1にはよく分からないです。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/09/14(水) 20:12:17.82 ID:FoaqqYpR0
>>522の補足として
そうやって一方禁書やリアルワールドでドラゴンの力が出るし
とあるまとめサイトのコメントにもドラゴン説が書いてあって
妙に納得してしまった自分は、ドラゴン説が有名だと勘違いしていました。

でもハディート説のところで『赤い竜』がどうのこうのと書いてありましたが
アニメでは完全に緑色でしたよね?あと原作でも『赤い』とは書かれていない気がするのですが
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/09/15(木) 02:48:46.89 ID:8tsaAMwo0
>>521
似てるのは人死にまくるってとこだけじゃないかな?

>>1
おつです 

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