- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 01:37:09.27 ID:XZt4l12R0
総合に投下したものですが、なぜか続いてしまったので独立します
人生初スレ建てなので至らないところがあったらよろしくご指摘願います
10レスぐらいの小ネタを週1~2回投下できたらいいな
長編なんて無理ゲな貧弱一般人です
なるべく多くの人に罵ってもらいたいからsage忘れても気にすることないんだよ!
注意事項
※ステ×イン未来設定
※ほぼ魔術サイドのみ
※全体的に誰得
※つまんないギャグとなんちゃってシリアスが交差
※回収未定の伏線満載
※勝手なカップリング多数
※俺得
需要なさげだけどよければどうぞ- 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 01:39:19.21 ID:XZt4l12R0
昼下がりのロンドン、聖ジョージ大聖堂。その中庭で神父服の男が紫煙を燻らせていた。
「はぁ……」
煙と共に大きく息を吐く長身赤髪の神父―ステイル=マグヌスに向けて目の前に立つ女が口をとがらせる。
「なぜにそのような溜め息をついたる、ステイル?私の護衛がそれほど気の重くなりたる仕事といいける?」
珍妙にまとめられた、身長のゆうに1.5倍はありそうな銀髪を左右に揺らしながら絶世、と言っても過言でない美女がステイルを糾弾する。
神々しささえ感じられる美貌にそぐわぬ稚い仕草は、ステイルの拍動を少なからず速める効果があった。のだが。
彼女の美貌は現実逃避の受け入れ口としては悪くないが、そうも言ってはいられない。
「はぁぁぁ………………」
問いかけには答えず、先ほどより更に長く呼気を逃がす。これ見よがしに、である。
「……言いたいことがありけるなら、はっきり言ったらいいと思うにつき!」
「ならば一つ質問があります、最大主教(アークビショップ)……」
ステ「その馬鹿げた口調は、土御門の差し金ですか……!」
イン「え?ローラが最大主教たるものこの口調でって……」
ステ「(元)最大主教ゥゥーーーッ!!!」
- 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 01:40:58.05 ID:XZt4l12R0
ステ「内にも外にも問題児が多すぎるだろう!どうなってるんだイギリス清教は!?」
イン「むむ!心配は無用なりてよステイル!私が最大主教となるからにはしっかり改革を」
ステ「それ以前に貴女の食費が財政を圧迫しているんですよ!」
イン「わ、我らの父は食物を粗末にしたることを第一の罪として定めて……」
ステ「今の問題発言は教義を揺らしかねませんよ!?」
ワーワーギャーギャー
イン「……フゥ、ハァ……」
ステ「ゼェ……ハァ、と、とにかく、明日にはローマから就任祝いの使者が到着します。その前でこんな間抜けな……」
イン「……やっぱりステイルも、私には無理だと思いけるの?」ウル
ステ「…………ッ!?」アセ
イン「……」
ステ「い、いや、違うんだそうじゃなくて」アセアセ
イン「無理しなくてよきよ、うすうす自分でも身の丈に合わぬこととは」グス
ステ「違うッ!!」
イン「!」
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 01:42:46.65 ID:XZt4l12R0
ステ「君は……貴女は、神を愛し、神に愛される高潔な聖職者だ。多くの人が疑いようもなく、貴女に救われているのだから」
ステ(……君を救えたのは、ただ一人だけだったが、ね)
イン「……す、すている……?」
ステ「んっ、ああ、とにかく……必要悪の教会は皆、貴女を認めている。自分をあまり下に置かれると、彼らも悲しみます」
イン「そっ、か。うん、わかった。」
ステ「口調の方はまあ、おいおい直していけばいいでしょう。今は明日の公式訪問について詰めなければ(とりあえずあの女狐を今すぐ遠隔操作で塵に……)」
イン「あっ!」
ステ「ッ、今度はなんですか?」
イン「明日のことで思い出したる!もとはるが公式の場ではこの……」ゴソゴソ
ステ(いやな予感しかしない)
イン「『神にご奉仕☆メイド風あーくびしょっぷ』を着るべし!と」
ステ「土御門ォォォーーーーーッ!!!!!」
大聖堂に、本日二度目の絶叫が響き渡る。
すっかり『必要悪の教会』の、いやイギリス清教のメインツッコミに定着したすているくんにじゅうよんさいのこれからやいかに!
続く
- 17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:34:49.37 ID:XZt4l12R0
どこの国の何処とも知れぬ、路地裏の暗がりに、雰囲気にそぐわない軽快な声が吹き抜ける。
「ッハッ、ハッ、ヒー! そりゃー傑作だぜい! で、オレからのプレゼントの方はお気に召したかにゃー?」
『やかましい!! 君とあの婆のせいでこの忙しい時期にいらん苦労を背負いこんでるんだぞ僕は!!』
耳元から携帯電話を遠ざけて、怒鳴り声に対処する金髪グラサンアロハシャツの大男――土御門元春は電話相手の怒りを意にも介さずのたまう。
「そいつは残念。十年前とは比べ物にならんインデックスの肢体にあのサイズ小さめに見積もったメイド服はさぞかし……」
『OK、現在地を教えろ。ピンポイントでルーンを郵送してやる』
相変らず冗談が通じないヤツだ、と苦笑しつついまやイギリス清教のブレーンを務める男は薄暗い路地を抜け、人気の多い市場へ出る。
土御門の現在のねぐらはすぐ近くだ。
「オレの仕事、わかってるのかにゃー? 秘匿回線とはいえおいそれと喋るわけにはいかないぜよ」
『……つまり、だ。使者の到着までにイギリスに戻ってくる、ということはないんだね?』
電話の声のトーンが変わる。こちらが本題、ということだろう。
現在イギリス清教は最大主教の交代という難しい時期にある。そこにけっして友好的とは言えないローマ正教がいち早く『祝い』の使者を送りこんできたのだ。
現ローマ教皇、ペテロ=ヨグディスがどのような思惑だったとしても、外交交渉にも長けたブレーン役、土御門元春も本来その場に同席すべきなのである。
しかしは彼は現在イギリスからはるか大西洋を越えた地に潜伏して、今回の件に関わる気はないという。訝しむ相手に向けて土御門は声色を変えずに軽く返す。
「まあ、深刻な事態になることはないと思うからそう気張らずにいることだぜい?」
『クソッ……何か知ってるな? 土御門』
「にゃっはは。まあ繰り返すが、おまえが心配するようなことにはならない。到着してからのお楽しみってことだにゃー」
はぁ……と向こう側から最近お馴染みの溜め息が聞える。
苦労性というか、とある『病気』がここのところとみに顕著になってきている青年にむけて一つ、確認しておく。
「それから……舞夏は元気か?」
- 18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:37:33.44 ID:XZt4l12R0
『ああ、元気さ。神裂も気をかけてくれるが、立場というものがある。かなり彼女にも助けられているよ』
少なくとも電話先の相手には決して見せないような表情に緩めてそうか、と返す。
土御門の元義妹は現在、最大主教の世話係として学園都市からイギリスに移り済んでいる。
最大主教とは気心の知れた仲ゆえに、環境の激しい移り変わりに対する清涼剤となっているらしい。
『とはいえ、たまには帰ってきたらどうなんだ。口には出さないが、最大主教は寂しさを堪えているのでは、と言っていたぞ』
「…………まあ、いずれ、な。」
土御門の現在の仕事はやや私情が絡むとはいえ、教会の利益につながる立派な「裏のお仕事」である。
中途半端に済ませて世界一大事な妻を巻き込むわけにはいかない。
そうこうしていると、寝泊まりしているボロアパートが眼前に現れる。
溜まった郵便物を無造作に抜き取るとドアを開け、しばらくぶりの清潔、
とは言い難いが少なくとも硝煙や血痕の染み付いていない寝床に飛び込む。
「じゃあそろそろ切るぜい。オレは久方ぶりの惰眠をこれから貪るんですたい」
『……ん、そうかい。わかった、それではよい夢路を』
初っ端の剣幕からは考えられないほど穏やかな声が耳に入ると、ブツッと通話が切れた。
土御門は怪訝に思いつつも、会話には滲ませなかった疲労に負けてとりあえずは睡魔に身をゆだねることにした。
と、その時。放りだした郵便物の中に見覚えのある筆跡と名前を見つけた。見つけてしまった。
常識も国境も通用しない未元速達便――「土御門元春様へ ステイル=マグヌスより哀をこめて」。
「にゃ、なんでこの場所が……」
慌てて跳ね起きた時にはすでに遅い。中に仕込まれたルーンカードが「土御門がギリギリ死なない威力」で発動した。
「ふっ、不幸だにゃーーーーーっ!!!!」
いや、自業自得である。
イン「なにかありて、ステイル? いやにすがすがしい顔をしてつきにけりなのよな」
ステ「いや、とりあえず溜飲が下がった。…………?」
イン「どうかしたるのよな?」
ステ「いや、なにか……おかしい。更に、一段と、おかしくなっているような……」
イン「おかしき!? かような馬鹿なことがありにけるのよ? 矯正はさいじが手伝ひてくれたのよな」
ステ「建宮ァーーッ!! お前もかァァーーーーッ!!!!」
- 19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:40:07.64 ID:XZt4l12R0
イギリス 聖ジョージ大聖堂
ステ「クソッ、結局天草式には逃げられ、馬鹿口調も全く矯正できず、
僕がやったのはあのふざけた露出度のメイド服を片っ端から焼き捨てることだけか……!」※予備が五十着ほどありました
イン「まあしょうがなきにつき! それよりいよいよご使者が着きてきたるのよな!」
ステ「正直そこが一番の不安材料なんだが……(土御門の口ぶりからすると誰なのか知ってる風だったが……?)」
コンコン ローマセイキョウカラノゴシシャガゴトウチャクシタゾー
イン(つ、ついに最大主教デビューの時がきたのよな……!)
ステ(一体何者が………………)
扉「ギギギギィ」
フィアンマ「俺様だ」ドヤッ
イン「」
ステ「」
フィ「?」
イン「すいませんチェンジで」
フィ「!?」
- 21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:41:40.63 ID:XZt4l12R0
フィ「全く失礼な奴らだな」プンスカ
ステ(普通にキモイ)
イン「まさかローマ正教があなたを送りけるとは……意外といふべきか、大胆といふべきかなのよな」
ステ「というか、面識あったっけ……」※原作未確認
フィ「こまけぇことは気にするな、ステイル=マグヌス」
ステ「……いやいや、待て。僕と……最大主教と貴様の間には全く細かくない事情があるだろう」ボウッ
イン「ステイル、かように前に立ちふさがりてはロクに会話できぬのよな?」
フィ「そうだぞ、そう恐ろしい顔をせずとも『聖なる右』のない今の俺様では貴様に勝てんよ。場所も場所だしな」
ステ「よく言う。だいたい本人の口からいけしゃあしゃあとそんなことを言われて、納得できると思うのか?」
フィ「あの金髪グラサンから聞いてないのか? 奴は俺様の事情を断片的にだが知っている」
ステ「(……あ・の・シスコンがッ……!)……確かに、土御門は「心配ない」と言ったが」
イン「そもそも、なぜにもとはるとフィアンマに面識がありけることよな?」
フィ「世界を流離っている最中に、な。あの男のおかげで俺様の世界も少し拡がった」
ステ(おかしな方向に拡がってないだろうな……)
フィ「いまの俺様はメイド喫茶『お客様は神様~右席に失礼しますご主人様』のCEOとして布教活動を」
ステ「土御門ォォォーーーーーーッ!!!!」
イン「そろそろパターン化してきにけり。しかしそうなるとおもてなしには『神にご奉仕☆メイド風あーくびしょっぷ』が
やはり必要なりけるのよ!幸いここにあと一着……」
フィ「!! ほう……これは!」
ステ「それはっ、土御門のっ、罠だァァァァーーーーーーーッ!!!!! というか気に入ってたのかぁ!!!」イノケンティウス!!!
イン&フィ「「あぁっ、もったいない!」」
ステ「もったいなくありません!! もう持っていないでしょうね!!」
フィ「フフッ、それで上手いこと言ったつmウボァーーーーーーッ!!!」ジュゥゥゥウウ
イン「肉の焼けたるいい匂ひなのよな」ジュルリ
- 22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:43:42.23 ID:XZt4l12R0
ステ「なんというか……しらけたな」
フィ「さて、いい加減に仕事をしなければな」シューシュー
ステ(もう少しヴェルダンにしておくべきだったか)
イン「そうだったのよ! さにあれども、私の初仕事を遂行しけるべきよな!」
ステ(そういえばこの口調は完全にスルーされてるな……)
フィ「エッヘンオッホン! ……それではイギリス清教最大主教、Index-Librorum-Prohibitorum殿。
こたびは最大主教への昇叙、厚くお慶び申し上げたる」
ステ(……?)
イン「ありがたきことよな。非才の身にあれど、主の教えに従ひて研鑽を積み、人々の救いの手となりぬのよ」
フィ「……わがローマとイギリスは長らく友好関係とは言ひ難かった。」
フィ「が、教皇聖下は万民の心の安寧を願っておられる。宗派の違いなどなにほどのことがあろうか、ということだ」
イン「それこそ主の望みと私も考えたり。ローマとイギリス、否、
世界の人々の求める『救い』を丁寧に拾いてゆきてこその『救済』なりしよな」
フィ「……フフッ」
イン「?」
フィ「なぜ『お前たち』の周りに多くの善意があるのか。それが今よくわかった」
ステ(……『お前たち』か……)
フィ「俺様がこの場に来たのは、祝福のためだけではない。十年越しの、謝罪のためでもある」
ステ「……」
イン「……」
- 23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:45:42.10 ID:XZt4l12R0
「十年、経ってしまったのはひとえに俺様の――俺の身勝手な願望ゆえだ」
「あの男に諭されて、世界を見た。なにものも通すことなく、この眼で」
「醜かった。歪んでいた。しかし、」
「美しかった」
「善は確かに、この世にあった。作り出すまでもなく、今の世界に」
「それを確かめてようやく、俺は自分の過ちと向き合えた」
「自分が間違っていたと、認められた。だから、いくら遅くなったとしても頭を下げよう」
「済まなかった」
- 24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:47:09.58 ID:XZt4l12R0
「顔をあげてください」
「人には、口があります」
「目があって、耳があって、鼻があって、手があって」
「心があります」
「話し合うために、笑いあうために、手を取りあうために神様がくれたもの」
「私はそう思ってます」
「だから、取り戻しましょう?」
「どんなに長い時間がかかっても、一生だったとしても」
「取り返しのつかないことを取り戻そうとしている人を、私は知っているから」
「あなたにも、あきらめないでほしいから」
「私は、あなたを許します」
- 25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:48:46.54 ID:XZt4l12R0
「ありがとう、最大主教――いや」
「シスター・インデックス」
- 26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:49:53.60 ID:XZt4l12R0
ステイルには、言葉はなかった。口を真一文字に結んで、眼前の『救い』から目ではなく、心を背けた。
まるで天上の、この世ならざる光景を見ているかのようで、そしてなにより――
自分が愛したままの『インデックス』がそこにいたから。
自分以外を愛した『インデックス』がそこにいるから。
どんな瞬間よりも強く、その隙間を思い知らされてしまっていたから――
なにも、言えなかった。
- 27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:51:36.25 ID:XZt4l12R0
フィ「それでは、時間も時間だ。そろそろお暇しようか」
ステ「ローマに戻るのか? それとも……」
フィ「今度は、贖罪の旅ということになるな。今回のことは、前教皇の計らいで実現したることだ」
イン「マタイ前聖下はお元気でありて?」
フィ「りうまち、だったかをこじらせてな。歳も歳、万全とはいかぬが……」
フィ「学園都市の医者を誰かに紹介されたらしくな、どうやら快復にむかっているそうだ」
イン「それはよきことよな!」
フィ「まったくいつまで経てども頭が上がりそうにない……」
ステ(とか言いつつ微妙に嬉しそうだな)
ステ(…………? やはりなにか、違和感が)
フィ「ではな、最大主教、ステイル=マグヌス」
イン「……我らをして御身にならいて、常に天主に忠実ならしめ、その御旨を尊み、その御戒めを守るを得しめ給え」ニコッ
ステ「(へえ……)かくして我ら相共に天国において天主の御栄えを仰ぐに至らんことを」ヤレヤレ
フィ「……御身の御取次によりて天主に願い奉る、アーメン」フフッ
スタ、スタ、スタ……ギィッ
「…………さらばだ」
- 28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:52:50.81 ID:XZt4l12R0
フィ「機会がありければまた会いたし。主の加護があらんことよな!」
ステ「なんかうつってるーーーーー!!!??」ガビーーーーン!
- 29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:54:59.18 ID:XZt4l12R0
ステ「どうするんだあれ……」
イン「気にすることなしよな!」
ステ「なくてたまるか! アイツこれからあの口調で地球一周謝罪行脚するんですよ!?」
ピラッ
イン「あれ? なにか紙切れが落ちたるのよ? なになに……」
フィ『そうそう言い忘れた、俺様の旅は「お客様は神様(以下略)」の宣伝も兼ねているのだが』
ステ「……いや、いつ書いたんだこんなもん」
フィ『先ほどちらりとだが見せてもらった「神にご奉仕☆(以下略)」には実に感銘を受けた。
そちらが良ければ俺様の城、略称「ベツヘレムの星」の制服として採用したいと思う。というか採用する。答えは聞いてない』
イン「!!」
ステ「!?」
フィ『現物はないが俺様の「聖なる右脳」にかかれば再現など容易い。
「あのイギリス清教最大主教も絶賛着用中!」のキャッチコピーで商品展開も考えているので楽しみにしt』ボウッ!
イン「す、すている!? 何故にまたイノケンティウスを顕現させたるのよな!?」
ステ「ふ、ふぃ、っ、」
イン「ふぃ?」
- 30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 09:56:56.44 ID:XZt4l12R0
ステ「フィアンマァァァァァァーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
鬼のような形相で『魔女狩りの王』を引き連れたステイルが大聖堂を飛び出す。通行人がびっくらこいて何人か腰を抜かした。
乳母車の赤ん坊がキャッキャと笑いだし、何故だか手慣れた感のあるホームレスがありがたやと暖を取りに群がる。
しかし本日四度目となった絶叫の元凶はすでにどこにも見えず、青青く晴れ渡る空に五度目の絶叫が響いて抜けた。
「不幸だぁぁーーーーーーーっ!!!!!」
続きますん
- 40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:43:04.21 ID:XZt4l12R0
日本 上条家
prrrrrr!
上条「はいはい今でますよ~っと。……何だ、ステイルか」
ステ『何だとは何だい、上条当麻。ぼくだってできればこの短期間に何度も君の声なんか聞きたくないよ』
上条「なんだそりゃ。じゃあかけてくんなっつーの」
ステ『いや、その……ね。この間の、ミセス浜面の件で確認しておくことがあってね』
上条「ああ、理后さんの力を借りたいとか、土御門の居場所がどうとかって話のことか?もしかして、やっぱりあの……ナントカの……」
ステ『「体晶」のことかい? 話には聞いてたから一応本人に確かめたが、いまは大した問題にはならないらしい』
上条「はぁ~っ。俺の紹介だからな、無事で何よりだ。それにしてもあんなトンデモ能力を副作用なしでいけるのか、レベル5ってのは」
ステ『君の右手ほどではないだろう……話が逸れたね、本題は最大主教のことだ』
上条「インデックスのこと……? まさか、また何かあったのか!? ついこないだも電話してきたばっかだぞ!?」
ステ『…………はぁぁぁぁぁ…………』
上条「……そんな不幸オーラビンビンの溜め息をつかれると、上条さんとしては他人事とは思えないのでせうが。何があったんだ?」
ステ『はぁ……最大主教は君に連絡を取った。そして、ミセス浜面の連絡先を聞き出した。そうだね?』
上条「な、なんだよお前!?まさかこの電話、盗聴でもしてるんじゃ」
ステ『よりにもよって君の電話など、誰が盗聴するかッ!! ……とにかく、OKだ。僕の用事は済んだ。御夫人と仲良くやれよ』
上条「……それこそお前に言われるまでもねぇよ」
ステ『フラグをこれ以上増やすなよ。
君の建てまくった旗のせいでわりと世界の大部分が大ピンチだったあの頃を、忘れたとは言わせないよ』
上条「…………それは、言われるまでも……あった、な。……じゃねぇよ! さっさと切れ!」
ステ『ヤレヤレだ』ブツッ
上条「……ほんと、お前に言われたかねーよ」
- 41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:45:39.72 ID:XZt4l12R0
イギリス 聖ジョージ大聖堂
ステ「本当に、ヤレヤレだよ」
火織「」
ステ「OK、事情は把握しましたよ最大主教。根本の部分でいまだによくわからないところがありますが……」
イン「なにやら疲れが超たまっているように見えたるのよな、ステイル。
でも大丈夫!さようなステイルでも私は超応援しにけるにゃーん」
ステ「……不幸だ」
火織「」
ステ「どうしてこうなったんだ、最大主教ッッッ…………!!!」
- 42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:47:51.40 ID:XZt4l12R0
火織「それで……いったい全体なにがどうなって……その、こんな有様に?」
イン「むむっ! 久方ぶりに会いたる超親友にむけてその言い草はブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・いなるのよな、かおり!」
ステ「申し訳ないが、少し黙っててください、最大主教。……とても捌ききれませんので」
イン「」(´・ω・`)
火織(……捌く?)
ステ「とにかく、僕の胃もそろそろ限界だったところだ。本当によく来てくれたね、神裂……おっと、すまない」
火織「ふふっ、あなたからはそう呼ばれる方がしっくりきますからね。今まで通り、神裂で構いませんよ」
ステ「お言葉に甘えさせてもらうかな。……さて、この危機的状況についてだが」
イン「」(´・ω・`)
- 43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:50:18.79 ID:XZt4l12R0
火織「……冷静になって考えてみれば、なんというか……状況は読めますね、だいたい」
ステ「……まあ、例によって元凶はあのアンポンタンだ。髪の長い方の。それにクワガタやらレベル5やらが絡むうちに……」
火織「どうしてもこうなった、と」ハァ
ステ「現状を嘆いても始まらない。更なる症状進行の前に手を打たないと」
火織「原因がハッキリすれば、話は早いのですが……
インデックスの完全記憶能力に端を発しているならば、どちらかというと科学の分野になりますね……」
ステ「あのスットコドッコイがなにがしかの魔術を仕掛けた可能性も完全には否定できないが。
……今のところ、そういう形跡は見られないね」
イン「」ヒョコヒョコ
火織「どうしました、インデックス?」
ステ「ああ済まない。発言しても構いませんよ」
火織(教師と生徒ですね、これ)
イン「学園都市には、超学習装置(スーパーテスタメントではありません)なるものがあるのよな。それで脳を上書きしたれば」
ステ&火織「「却下だ(です)」」
イン「あれー?なぜに応援してくれぬのよ?」
ステ(当然だろう……君の脳を弄くるなど、そんなこと)
火織(二度とあってなるものですか……!)
イン「?」
- 44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:52:58.61 ID:XZt4l12R0
火織「やはり、地道な矯正こそが最大の近道ではないでしょうか」
ステ「はぁぁぁ…………それしかないか。そういうことなら適任は僕と君、かな。他にはいるかい?」
火織「信頼できて、かつ言葉遣いが無個性……もとい、平易な人物というと……五和、ですかね」
ステ(良い性格になったよなぁ)
火織「それから恐れ多いことですが、ヴィリアン王妹殿下などどうでしょう? お茶友達、でしたよね?」
イン「大丈夫、ヴィリアンのところに行くと得も言われぬ美味が並びてにゃーん!」
ステ「(自制しろ、自制……)寮の連中なら、シスター・ルチアとシスター・アンジェレネに……シェリーもギリギリセーフ、か?」
火織「……遺憾ですが、天草式の男どもは引っ掻きまわしそうなのでアウトです。浦上や対馬にも手伝ってもらいましょう」
イン「……!」
ステ「どうかしましたか?」
イン「……もしや、彼女らと毎日その矯正とやらを行わなければ超いけなし?」
ステ「まあ、公務に支障の出ない範囲で最大限やってもらいます。いずれは学園都市への訪問もありますし……最大主教?」
イン「むー」
火織「? その、私たちとでは不満、ですか?」
イン「そ、そういうわけにはあらぬのよな! ただ、その……」
ステ「その?」
- 45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:55:36.23 ID:XZt4l12R0
イン「す、すているは、超参加しなくてよしにつき!」
火織「!?」
ステ「」
- 46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:57:29.10 ID:XZt4l12R0
火織「そ、それは、どういう……」ハッ
ステ「」マッシロ
火織「ステイル? ステイル!? しっかりしてください!!」ガクガク
イン「……ハッ!? わ、私は何を言ってるのよな……かっ、かおり!! かおりの力でかように揺さぶっては!」
ステ「」チーン
イン「ああああっ! ステイルが超!ゴ・リ・ン・ジュ・ウ・か・く・て・いになりてしまうのよなーーーー!!」ガビーン!
火織「すっ、すいません!! とり、とりあえず医務室に運ばなくては!!」ヨッコラセ
ステ「」
ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ
ナンダヨナニカシラ ウルセーデスネ オッ、オシボリイリマスカ!?
コリャタイヘンナノヨナ ドーカシタノカー? ニャー アラアラデゴザイマスヨー
ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ
すているくんにじゅうよんさいの受難はまだまだまだ終わらない。まる。
- 47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/15(日) 19:59:00.76 ID:XZt4l12R0
火織「そういえば、ステイルの話でよくわからない部分があったのですが」
イン「?」
火織「いえ、あなたの口調をしっちゃかめっちゃかにしてくれた表六玉とクワガタについてはよくわかるのですが」
イン(ヒョーロクダマ?)
火織「レベル5、というのは、その……彼女のことではないですよね? 彼女の口調はごく普通であったと記憶していますし」
イン「!」
火織「あなたはどうして他の超能力者と交流を持つに至ったのですか? そこのところの経緯がよく……」ウーン
イン(……かおりもステイルも、とうまに似てきたんだよ)ボソッ
火織「なにか言いましたか?」
イン「なんでもなし!」
火織「?」
続けたし
- 60 :天草式編0 [saga]:2011/05/17(火) 20:46:04.06 ID:yylIiJLt0
注意事項強調
※勝手なカップリング多数←CAUTION!
- 61 :天草式編1 [saga]:2011/05/17(火) 20:47:35.91 ID:yylIiJLt0
- 懐かしい夢を見ていた。
「そ、それ、待ったなんだよ!」
「おいおい、冗談だろう? チェックだ」
「ステイル! 少しぐらい手加減してくれてもいいかも!」
「君の頭脳にかかれば、あっという間に僕より上手くなるよ。これくらいの意地悪は許してほしいね」
「ステイル……それは少し大人げないですよ?」
「僕の方が年下だッ!!」
『あの子』と初めて会った頃の夢。十年前、『あいつ』によって彼女が救われるより、更に前。
「おかわり!」
「おい、神裂! 多めに用意しておけといっただろ!?」
「うっせえんだよ、ド素人が! あの体にあれほど入るとは思わないでしょうが!」
「私の『宇宙胃袋』に――常識は通用しないんだよ!」
「「やかましい!!」」
『あの子』を救えなかった時の夢。――なにもできなかった無力な自分の夢。
「お別れだね。すている、かおり……」
「イン、デックスッ……!」
「…………最後に、これだけは誓うよ。たとえ君は全て忘れてしまうとしても――」
- 62 :天草式編2 [saga]:2011/05/17(火) 20:48:45.65 ID:yylIiJLt0
「んんっ…………? ここは……?」
ステイルが目を覚ますと、そこは清潔なベッドの上だった。上体だけでも起こしてあたりを窺おうとすると、
「ツッ! か、肩が……?」
手をつくだけで鈍い痛みが走り、満足に起き上がれない。
仕方なく首だけ回して状況を把握しようとするも、ベッドの周りはカーテンに覆われている。
とにかく、状況を整理すべきだ。
この無機質な天井、規則的な機械音、極めつけに鼻をつく薬品臭。
魔術の総本山に似合わぬ医療機器がいくつも運び込まれた、聖ジョージ大聖堂の医務室である。
どうやら自分は、怪我を負って運び込まれたらしい。
この医務室に運ばれるということはすなわち、聖堂で倒れたということになる。
「――――――ッッ!!」
そこで、気づいた。肩の痛みなど気にもならず、ベッドから這いずり出ようとする。
(あの子は、いまどこにいる!?)
護衛の自分が倒れるような事態が起こったのだ。必然、彼女の身にも何かが、
動きが、止まる。
何かを、忘れている。彼女に関することだ。そうだ、脳裏に焼きつく最後の光景は、焦り顔の彼女が、なにごとか、叫んで
- 63 :天草式編3 [saga]:2011/05/17(火) 20:50:12.86 ID:yylIiJLt0
思い出すべきでない記憶が、すぐそこまで顔を出している。 記憶<チーッス
煩悶し、混乱するステイルはカーテンの向こうに現れた気配に気づかない。
(えーっと、確か神裂と一緒に何かを話し合っていたんだ。そこで、あの子が……)
魔術師として致命的なミスだった。闖入者は前触れなくカーテンをめくると、ステイルに向かって――
「目を覚ましたるかにゃーん、超すている! 大丈夫、こ、この人魚姫アワメイドが看病しちまうのよな!」
鱗を意識したのだろうか赤い網タイツ。大事な部分は泡のような謎の物質で隠された下半身。
『歩く教会』の内側でもなお存在感を強烈に主張していた部位にいたっては、
大きな貝殻が二枚、直に張り付いているようにしか見えない。
全体的にスケスケ素材で歩く18禁ボディをコーティングした人魚姫アワメイドが――
――惜しげもなく、精神年齢に明らかに合致していない艶姿をふりまいた。
眼福眼福。 ステイル爆ぜろ
- 64 :天草式編4 [saga]:2011/05/17(火) 20:51:55.08 ID:yylIiJLt0
凍れる時の術式が作動して数秒後、
「……フッ」
完全にチルド状態だったステイルが突如として笑みを浮かべた。
近年稀に見る穏やかな微笑である。スーパー(笑)イノケンティウス(笑)を発動した時以来かもしれない。
「おお! そんなに気に入りてか! さあさ、これからあなたは私の超応援を受けなければいけねー……え? 何?」
勘違いしたインデックスが喜々としてご奉仕を始めようとすると、ステイルが首を振る。
さらにぎこちなく腕を動かし、耳に指を突っ込む。
「……? 耳を? 塞げと言いたいのよな?」
ステイルが笑みを深めて頷いたのを見て、恐る恐るインデックスがそれに倣った次の瞬間、
「最 大 主 教 ッ ッ ッ ! ! ! ! !」
最大級の雷がロンドンの街並を大げさでなく揺らした。炎使いなのに。
- 65 :天草式編5 [saga]:2011/05/17(火) 20:53:08.07 ID:yylIiJLt0
大聖堂 医務室
イン←着替えた
ステ「ま・た・つ・ち・み・か・ど・か! ……ゲホッ、カホッ」
イン「あまり叫びすぎては喉が潰れちまうにゃーん?」
ステ「誰の、ガフッ……だれ″のぜいだど」
イン「されども今回の超メイド服はもとはるから貰いしものではなく……」
ガラッ!
建宮「そう! 我ら天草式十字凄教の総力を結集して作り上げた至高にして有頂天の逸品なのよな!!」
天草式「オオッ!!!」
イン「さいじ!」
ステ「やばりきざまら″かッ……!!」
- 66 :天草式編6 [saga]:2011/05/17(火) 20:55:44.82 ID:yylIiJLt0
野母崎「あああ、最大主教!! なんで着替えてるんですか!?」
牛深「くぅーーー、惜しい!! もう一回見ようとおもって来たのに!」
香焼←脳内映像再生中
諫早「まあまあ。最大主教は慎み深く攻めるということでしょう?」
建宮「だぁーから言ったじゃないのよ最大主教! これを着さえすれば童貞のステイルくんなんてイチ」
火織「あ な た た ち ?」
五和「な に や っ て る ん で す か ?」
馬鹿ども「」
オーモーイーガーシューンーヲーカーケーヌーケーテー
ナナセエンッ
--------------------------------BASARA K.O.--------------------------------------
- 67 :天草式編7 [saga]:2011/05/17(火) 20:58:45.28 ID:yylIiJLt0
大聖堂 中庭
五和「まったく貴方達ときたら! 私と女教皇様では飽き足らず、最大主教にまで!」
牛深「」シーン
五和「野母崎さん、今回のことは奥さんに言っておきますからね!」
野母崎「そ、それだけはご勘弁を……」グフッ
五和「香焼。浦上には『香焼は巨乳以外はお断り』と伝えておきますね」
香焼「!? なっ、え!? あれ!?」ビクビクッ!
五和「諫早さん……はいませんね。あれ? 最初から?」
(((クソッ、逃げやがった!!)))
五和「……まあいいでしょう。さて…………たーてーみーやーさーん?」
建宮「おうおうどうしたのよ五和? 可愛い顔が台無しなのよな?」ピンピン
五和「そん、なこと言っても誤魔化されません!! いい年していつまでもメイド服メイド服って……!!」
建宮「……勘違いしちゃあならねえのよ五和。俺が愛してるのはあくまでメイド服の中身。
そう、これはお前さんや女教皇様への愛ゆえの行動なのよな!!」
五和「へ? あ、あっ、愛!? わ、私のことを愛し……っ!!??」
建宮「そうよそうなのよそうなのよな三段活用!
だぁーからそんな怖い顔してないでこの! 『帰ってきた超精霊チラメイド2』を」
キュピーン
テーレッテー
---------------------------------FATAL K.O.---------------------------------------
- 77 :天草式編8 [saga]:2011/05/18(水) 17:18:08.24 ID:57LMa2fP0
---------------------------------------------------------------
ステ「……………………はぁぁぁぁぁぁあああ……………………」ケフ
火織「すいません、ステイル。少し花を摘みに行った隙に……」
ステ「まあ、だずかったから″いいざ」
火織「ひどい声ですね。正直、普段の煙草もあまりよろしくないと思うのですが」
イン「これを機に禁煙したるなら、応援しちまうのよ!」
ステ「だから、だれ″のぜいだど…………神裂」
火織「…………ええ。インデックス、『いけないです』と言ってみてください」
イン「いけねーですにゃーん」
火織「」
ステ「」
イン「?」
- 78 :天草式編9 [saga]:2011/05/18(水) 17:20:01.19 ID:57LMa2fP0
ステ「畜生!! いっだいいづの間に接触しだんだ!?」ゲフグフッ
火織「アニェーゼ! アニェーゼはいますか!? あっ、やっぱり来なくていいです!」
ナンダッテンデスカマッタク!
イン「着替えは女子寮で行いたるゆえ、超がーるずとーくに花が咲きたり!」
ステ(がーるって歳かい……)クチニハダサナイ
火織「……私が目を放したのは、ほんの十分程度なのですが……」
ステ「超ズピード感染だな。厄介極まり″ないね、まっだぐ……オル″ソラ″が不在なのが、不幸中の幸いだっだな」
火織「一日前の内容を憶えてないと、彼女とは会話になりませんからね……」
イン「げに恐ろしき怪奇現象なりて! 超催眠魔術だとか超超スピードだとかかようなチャチな(ry」
ステ「貴女の方がよっぽどファンダジーやメル″ヘンしでまずよ!! どいうが何を記憶しでいる″んだ貴女の脳は!」カハッ
イン「十万三千冊改め、+ジャパニーズコミック二万冊の超禁書目録(ネオインデックス)を応援してほしいのよな!」
ステ&火織「「やかましい!!」」ゲッホンガッフン
- 79 :天草式編10 [saga]:2011/05/18(水) 17:21:46.32 ID:57LMa2fP0
五和「失礼します、女教皇様。この肉塊の処理ですが」
火織「いつも通り、テムズ川に流しておけば問題ないでしょう」
五和「了解です。対馬さんにも手伝ってもらわないと……」
イン(天草式女性陣も)
ステ(逞しくなったなぁ。いや、わりと昔からか)トオイメ
五和「申し訳ありませんでした、最大主教、ステイルさん。まったく、建宮さんは……」ブツブツ
イン「いやいや、楽しき時間だったにゃーん!
いつわもたまには超さいじの期待に答えちまってもよきことよ?」ニヤニヤ
ステ「別に、貴女があの男の言動に責任を取るいわれ″などないだろ″う?」ニヤニヤ
五和「なっ、なにを微笑ましそうな顔で見てるんですか!」
火織「……? まあ、どちらかと言えば責任は私が取るべきですね」
五和「えっ!? そ、そんな、女教皇様にはすでに家庭が」
火織「な、なにをそんなに焦ることがあるのですか?
まあ、あの男も教皇代理の肩書きから解放されて緩かったタガが抜けてしまった感はありますね」
五和「い、いえ、でも! 昔から決めるときにはちゃんと決めてくれますし!」
火織「はあ、いえ、それは私もよく知ってますが……あの、五和?」
五和「……ハッ、いえその、別に他意は」アタフタ
イン「ニヤニヤ」
ステ「ニヤニヤ」
五和「」
火織「?」
五和「もぉーーーっ! 不幸ですーーーーーっ!!」ダッ
ヌオッ アッ、アマリランボウニヒキズラナイデホシイノヨナ……アッーーーー!
火織「…………?」ハテ
- 81 :天草式編11 [saga]:2011/05/18(水) 17:23:34.93 ID:57LMa2fP0
ロンドン市街地
スタスタ ヒョコヒョコ スタスタ
ステ「嵐のような……いや、前方のヴェントに強襲されたような一日だったな……」シュボッ
火織「ドタバタ具合では匹敵するかもしれませんね……」
イン「喉はもう大丈夫につき?ハ・イ・ガ・ン・か・く・て・いする前に医者にかかるべしなのよな」
ステ「やめてください、リアルに怖い」トイイツツ フー
火織「ああそうです、インデックス」
イン「?」
火織「ステイルほどではないにしても、私からもお小言がありますよ」
イン「ええー」
火織「看病やらの動機があったとしても、あのような振る舞いを誰彼かまわず見せていては
最大主教としての威厳などあったものではありません!」
ステ(自分のことは棚に上げて……)プカー
火織「それからいいですか、あなたは少し暴食的に過ぎる。
シスター・ルチアほどとは言いませんがもっと禁欲的に……」クドクドクドクド
イン(……別に、誰彼かまわず見せてるわけじゃないかも)ボソッ
火織「?」キコエタケドイミフメイ
ステ「?」キコエテナイ
- 82 :天草式編12 [saga]:2011/05/18(水) 17:26:52.43 ID:57LMa2fP0
ステ「そう言えば結局、どうして僕はベッドに転がされていたんだ? どうもそのあたり、記憶が曖昧なんだが」
イン「!」アッ
火織「!!」ヤバッ
火織(ここは、口裏を合わせて)
イン(超なかったことにしにけりにゃーん)
火織「あ、貴方は前最大主教の遠隔魔術(イヤガラセ)で一時的に、
……えっと……その…………し、四十肩にされてしまったようなのです!」
イン「し、しかしもう大丈夫! 我が超禁書目録にかかればカ・ン・チ・か・く・て・いしたるのよな!」
ステ「んな馬鹿な。と、言いきれないのがあの女狐の恐ろしいところだな……
クソッ、やはりプライベートジェットを落とした報復か?」ブツブツ
イン(どうにか疑われねーで押し切りけり!)
火織「あと……インデックスの口調矯正講座の件ですが、女人ばかりの輪に入るのは気まずいでしょう?」タブンコンナカンジ?
イン(かおりにありては珍しく超空気読んでるのよな!)
ステ「(なぜか心臓が痛い)僕は護衛だぞ。そういうわけには」
火織「私か、私が無理なら五和らを同席させます。宮殿のお茶会は、まあ……これは別にいいでしょうか?」チラッ
イン(……コクリ)
ステ「しかし、だな。これは僕の仕事なんだ。他人任せになど」
イン「……すているは、頑張りすぎたるのよ。少しは自分の体のことも考えてほしいのよな」
ステ(…………)
- 83 :天草式編13 [saga]:2011/05/18(水) 17:28:02.95 ID:57LMa2fP0
(駄目なんだ。それじゃあ、駄目なんだよ。君の隣にいるためには、少なくとも)
(『あいつ』より、強くなければならないんだ……!)
(僕の力では、まだまだ足りない…………!!)
(まだまだ、まだまだ………………)
「……大丈夫」
「!」
「そんなにも頑張ってるすているを、私はいつでも信じてるんだよ」
「だから……ね?」
(まったく……敵わないな…………君には)
(そうですか……あなたたちも、複雑なことですね……)
- 84 :天草式編14 [saga]:2011/05/18(水) 17:29:24.17 ID:57LMa2fP0
カー カー カー
火織「…………さて、夕食の時間になる前に、私は買い物に行かないと」
ステ「そんなものメイドが用意するだろう? いや、そもそも君に洋食なんて作れるのか?」ハハッ
火織「魚をさばく前に試し斬りしようかと思うのですが」スチャ
ステ「何を包丁にする気だ!? あ、いや待て、すみません、僕が悪かったです」ハイ
イン「ステイルの超へたれっぷりは長く見ぬと不安になっちまうにゃーん」
ステ「くそ、くそ……どうせ僕なんて」イジイジ
火織「……ふふふっ。それでは二人とも、また明日」バイバイ
イン「あははっ。また明日!」バイバイ
ステ「……ああ。また明日」バイバイ
- 85 :天草式編15 [saga]:2011/05/18(水) 17:31:57.53 ID:57LMa2fP0
――お互い手を振り、また明日。
それは今まで夢の中にしか存在しない世界だった。
しかし、夢と現実は違う。当然のように世界は遷ろっている。
男と女の関係も、少年と少女のそれとは違うものなのだ。
「さて、帰りましょうか。最大主教」
『さて、神裂が待ってるよ、インデックス』
「まいかが夕餉を作りて待ちたるのよ!」
『かおりはどんなごはんを用意してるのかな!』
霧越しに夕日が差し込むロンドンに、かつてより少しだけ伸びた二つの影が落ちる。
それはやがて縦から、横に並んで揺れていった――
なんだかこのまま終わって問題なさそうなんだね?
- 86 :1 [saga]:2011/05/18(水) 17:33:56.54 ID:57LMa2fP0
でも続くのよな
見返してみたら異様なジェットコースター展開でした
いろいろツッコミどころが残りましたが答えを用意しきれていません
気持ち悪いほど綺麗にまとめちゃいましたが
魔術サイドの口調軍覇が目標なので頑張ります
以外にも筆がガンガン進むので明後日もしくは明日また来ます
ご指摘などありましたらどうぞ罵ってくだしゃい
- 98 :イギリス王室編1 [saga]:2011/05/20(金) 08:53:06.30 ID:8KV5zKLe0
カチャカチャと陶器の擦れる音が豪奢な室内に響く中、ステイル=マグヌスは優雅に紅茶を口に運ぶ。――とびきり美味い。
それも当然だ。ここはイギリス王家の中心地、バッキンガム宮殿。
『人徳』の王妹ヴィリアンが客人を通すこの部屋で、もてなされる紅茶が最上級のものでないはずがない。
「いやいや、茶葉の質がどうということではない。ヴィリアンが手ずから入れた紅茶は極上、と決まっているのである」
ステイルのひとりごとを聴きつけたのか、ウィリアムが重々しくそれを否定する。
かつて『神の右席』の一員、後方のアックアと呼ばれ――現在ではイギリス王妹ヴィリアンの夫となった男である。
「それは私への当てつけか、貴様? 我が妻とて魚を捌かせれば一級品だ」
やっかみ半分で噛みついたのは英国三派閥の一つ、騎士派のトップに君臨する男、騎士団長(ナイトリーダー)。
『最近の』悩みは、妻以外に本名を呼んでもらう機会がないことである。
……なかなかに深刻な問題ではあるが、こればかりは神でもない限りどうにもしてあげられない。 タスケテカマチー!
- 99 :イギリス王室編2 [saga]:2011/05/20(金) 08:55:37.22 ID:8KV5zKLe0
「そのようなつもりではない。お前の被害妄想である」
「一級品と言っても捌くところまででしょう。和食なら良かったんでしょうがね……」
ツッコミを入れたステイルも、なにを隠すこともなくイギリス清教は最大主教の側近である。
つまりこのテーブルで交わされている会話は事実上、英国三派閥のトップ会合となんら変わりがない。
だがその内容はと言えば、
「なんだお前たち、他人事のように!」
「この件に関して、僕と神裂は他人です。下手にフォローして毒物混入容疑でしょっ引かれるのはもう御免だ……」ボソ
「まあ、彼女には借りも負い目もあるが…………すまんな、我が友。リアル犯罪者は勘弁なのである」ボソボソ
「畜生、畜生!! 上はやかましいババアと年増どもに無理難題を押し付けられ、
下は若い連中に突き上げられ、家に帰って安らいでも食卓でプラスマイナス――ゼロになる!
この状況で友達見捨てんのか、テメェらぁ!!」ウガー!
……繰り返すが、これはイギリスで最も権威ある野郎どものやりとりである。
正直、そこらの居酒屋で交わされるものと大差ないと言わざるを得ない。
中でも派閥の長であるはずの騎士団長の中間管理職じみた嘆きは
(微妙に惚気に聞こえなくもないが)ことに悲哀の色が濃く、
こちらに関しては他人事と思えないステイルは、さすがになにかしらフォローを入れるべきかと言葉を探る。
- 100 :イギリス王室編3 [saga]:2011/05/20(金) 08:57:37.30 ID:8KV5zKLe0
が、現実は非情である。
「………………………………」
「ハッ!! まっ、待て待て! ノーカウント! ノーカウントだ!」
「あ な た … … … … ?」チャキンッ
「おい、マジかよ、夢なら覚め」
答え③ 覚めない。現実は非情である。
デーンデーンデーン
サイシュウオウギッ ユイセンッ
---------------------------------誠---------------------------------
……カーテナなしでは、夫婦喧嘩(喧嘩になってないか)は妻に軍配が上がるらしい。
「…………不幸だなぁ」
(唯閃なのに)三枚に下ろされてしまった騎士団長の切り身を眺めながら紅茶を啜る。
ちょっぴり結婚願望が薄れたすているくんにじゅうよんさいの秋の日であった。まる。
- 101 :イギリス王室編4 [saga]:2011/05/20(金) 08:59:44.22 ID:8KV5zKLe0
火織「…………フン。まったく、あの人は」
イン「あれ?あっちは大丈夫につき?あれー?」
ヴィリアン「ほら、よそ見しないでください、インデックス」
イン「うう……ヴィリアンは超意外にスパルタ教育であるのよな」
火織「そろそろ二時間ほどですね。いかがですか、ヴィリアン殿下」
ヴィ「とりあえず、ローラ様の口調はあんいんすとーるできたと思うのですけれど……」
イン&火織((あんいんすとーる?))チンプンカンプン
ヴィ「ああ、ごめんなさい。つまりローラ様言葉が治った、ということです」
火織「おお!」
イン「あまり実感がわかねーにゃーん」
火織「コラ!折角ヴィリアン殿下が貴重なお時間を割いて下さったのに、あなたという子は……!」ゴツン
ヴィ「ま、まぁまぁ、私も楽しかったのだから構いませんよ」
イン「うう……結局、かおりの方が超恐ろしいって訳なんだよ」
ヴィ「……いつの間にか、また増えているような」
火織「……なんだか絶対聞こえるはずのないものを聞いてしまった気がします」
イン「よくわかんない方角からビビビと、信号が来たのよな」ボー
火織(収拾つくんでしょうか、コレ……)
- 102 :イギリス王室編5 [saga]:2011/05/20(金) 09:01:11.12 ID:8KV5zKLe0
ステ「で、プラスマイナスゼロになった、というわけですか」
ヴィ「ごめんなさい、やはり私では力不足だったようで……」ペコリ
火織「そ、そのようなこt」
ウィリアム「そのようなことは断じてない!」ヌッ
イン「わわ!超びっくりしちまったんだよ!」
ステ(急に見ると心臓に悪い顔だ)
ヴィ「ウィリアム……?」
ウィ「ヴィリアン、己を卑下などするな。それで悲しむ男が、少なくともここに一人いるのである」
ヴィ「ウィ、ウィリアム……!」
ウィ「ヴィリアン!」ガバッ
ヴィ「ウィリアム!」ダキッ
ステ(見てられない)シラー
イン(見てられないかも)シラー
- 103 :イギリス王室編6 [saga]:2011/05/20(金) 09:02:39.49 ID:8KV5zKLe0
騎士団長「さすがだな、我が友」ヌッ
ステ「うおっ! 貴方もか!」
団長「『第四子懐妊も時間の問題』!これでクソバ……先代のご機嫌取りには事欠かないだろう」
ステ(本当に、同情を禁じ得ないな)ホロリ
火織「あっさり起き上がられると、かなりショックですね……まったく、あなたという人は」ハァ
団長「!! ああ、その、か……火織」
ステ(四十男がなにを恥じらってるのやら)
火織「なんですか?」プイ
団長「ババ……エリザード様への献上話だが、もう一つぐらい、その……」
火織「……もう一つ?」ナニガ?
団長「だから、だな……もう一つ、その、エー…………け、慶事が! あると、より効果が上がると、思うのだ」
火織「!!! っ、なっ!?」カアア
団長「……」タラタラ
火織「……」カアアアア
団長「か、火織……?」オソルオソル
火織「ほ、本当に、あなたという人は、まったく!まったく!!」ボカボカ ミシッメリッグフッ
ステ(付き合いきれない)ヤレヤレ
イン(付き合いきれねーんだよ)ヤレヤレ
- 104 :イギリス王室編7 [saga]:2011/05/20(金) 09:04:24.34 ID:8KV5zKLe0
ステ「まあ一歩前進、と捉えるべきでしょう」
火織「おや、珍しく前向きな意見ですねステイル」
イン「本当なのよな。結局、いつもなら溜め息をつくか、超不幸だーってなるところな訳よ」
ステ(…………ここ最近の僕は、よほどの哀しみを背負ってたらしいな…………)ズーン
団長「しかし、実際問題として治すそばから新しい口調が追加になるのではいたちごっこだろう」
ウィ「しかも感染経路が電波ではどうしようもないのである」
ヴィ「で、電波ってちょっとウィリアム……」
ステ「事実ですから仕方がありません」
イン「」ガーン
ステ「受け入れてください」
イン「」(´・ω・`)
団長(漫才を見ているようだ)
火織「しかしそのわりには、常にない落ち着きではないですか」
ステ「あれ?もしかして僕、君に嫌われてる?」
- 105 :イギリス王室編8 [saga]:2011/05/20(金) 09:05:56.86 ID:8KV5zKLe0
ステ「……僕としてはやはり、あの超教皇級の馬鹿口調が消えたことが大きいんですよ」
イン「大丈夫、確かに喋るのが超楽になったにゃーん!」※書くのも楽になりました
火織「公の場に出すにはまだまだですが、このぐらいなら日常会話もしやすいですしね」
ヴィ「根本的解決にはなってないと思うのですけれど……」
ステ「いいのです、これで。僕の精神安定上、ね」
団長「まあ、考えてみればあの女狐のような珍妙極まる話し方をする者など」
ウィ「世界広しといえど、そうそういるはずもないのである」ハハハ
一方通行「ぶェっくしゅン!」
打ち止め「クシュン!ってミサカはミサカは(ry」
サーシャ「第一の質問ですが、ハックシュン!」
アウレオルス「突然。へっくしゅん!」
ガブリエル「bhown噂cixwoovhsa」クチュン!
ステ「あれ?なんかいやな予感が……」ゾクッ
イン「結局、私もなんだよ。あれー?」ブルッ
- 106 :イギリス王室編9 [saga]:2011/05/20(金) 09:07:57.61 ID:8KV5zKLe0
イン「そういえば、超三人に聞きたいことがあったんだにゃーん」
ヴィ「超三人……?ええとつまり、四人以上、ということですか……?」ウーン
ステ「あの、ヴィリアン殿下。深くお考えになられない方がよろしいかと」
火織「それで、三人とは誰のことですか?」
イン「そこの男三人のことであるんだよ」
ステ「うん?」
ウィ「む」
団長「なにかね?」
イン「あー……ウン。す……三人は」
ステ「(す?) なんですか?」
イン「さ、三人はロリコンなのよな?」
ステ「僕はこれからウチの馬鹿どもの居場所を特定します」ボウッ
ウィ「では私はキャーリサ様の尋問を」ガタッ
団長「一番可能性があるのは、やはり先代だろう」スチャッ
火織「い、インデックス! いったい誰にそんな戯言を吹き込まれたんですか!?」
イン「リメエアなんだよ」
「「「国家元首ゥゥゥーーーーーーーッッ!!!!!」」」
- 107 :イギリス王室編10 [saga]:2011/05/20(金) 09:09:59.50 ID:8KV5zKLe0
イン「大丈夫。そんなロリコンな……三人でも私は応援しちまうかも」
ステ「いったい何を言ってるんですか貴女は!」
イン「だってだって! 超ヴィリアンも超かおりも、十歳以上歳の差があるかも!
これはもうロ・リ・コ・ン・か・く・て・いである!」
ヴィ「うぃ、ウィリアム……」
ウィ「な、何故そんな顔で見るのだヴィリアン! 私が愛しているのはお前だという事実は変わらな……」
ヴィ「でも初めて助けてくれたあの時、私はまだ十四歳で……」
ウィ「ベ、別に当時からそのようなあれだったとは限らな」
ヴィ「じゃ、じゃああの時は私のことなんてなんとも……」ウル
ウィ「どっ、どうしろというのであるかーーーーっ!!」
火織「私とあなたに至っては、初対面の時は倍ほど開きがあったように思うのですが」
団長「それがなんだというんだ? 私には恥じるところなどない。凛々しく、気高く、美しい。
一振りの名刀のようなお前にだから私は惹かれたんだ。歳の差など問題になりはしない」キリッ
火織「あなた……」キュン
団長「そんな不名誉な誹りを受けたことなどもないしな。ハハッ、まあ私とお前ではあまり外見年齢に差がn」
デーンデーンデーン
団長「」
- 108 :イギリス王室編11 [saga]:2011/05/20(金) 09:12:13.62 ID:8KV5zKLe0
キーーン メリメリッ スパスパスパッ
ヌオオオオオッ! ゼロニスル!
ターゲットカクニン ハイジョカイシ デデデデストローイ
ナンナンダソレハァァァァァッッ!!!!!!
ステ「僕はあちらのアレら↑とは違います! 無罪だ、冤罪だ!」
イン「でもでも! アンジェレネがスイーツ食べさせて貰ったってドヤ顔で自慢してきたのであるんだよ!」
ステ「寮の連中はたいてい一度は彼女に奢らされてるんですよ! 別に僕のほうがどうというわけじゃ」
イン「い、一度や二度じゃないって言ってたかも! 結局、すているもペドフィリアって訳よ! 応援できねーです!」
ステ「悪化してるぞおい! と、とにかく、僕は彼女をそういう対象としては見ていませんよ」
イン「む、むむむ、そもそもこもえっていう前科があるのよな!」バン!
ステ「実年齢ではむしろ彼女の方がショタコンです!! というか僕と彼女はそんな関係ではない!」ババン!
イン「! じゃ、じゃあすているは超年上好きってことにゃーん?」
ステ「なんだその熟女フェチみたいな言い方!?
……別に、女性を年上だとか年下だとか、そういう観点で見たことはありません!」
イン「……そ、そう。そういうことなのよな……」
ステ(お、収まったか…………)ホッ
イン「まあ、それならいいのであるのよな」
ステ「だいたい僕にそういう疑惑があったとして、何故貴女に糾弾されなきゃならないんですか……」
- 109 :イギリス王室編12 [saga]:2011/05/20(金) 09:13:55.37 ID:8KV5zKLe0
団長「ゼェ……ゼェ……ヴィリアン様、ウィリアム。そろそろ……」
火織(チッ)
ヴィ「あらいけない、もうこんな時間なのですね」ハッ
ウィ「う、うむ。それでは我らはそろそろ行かねば (助かった……)」
ステ「この後は御公務ですか?」
団長「…………いや、これから『イギリス王室わくわくふれあいタイム』だ」
ステ「………………(聞き返したくないんだが)…………すいません、何ですって?」
イン「なんだか超楽しそうであるのよな!」
団長「……すまない火織。頼む」
火織「『イギリス王室わくわくふれあいタイム』です。
詳しいことは王室のほーむぺーじとやらに載っているそうです。
……私達も一応、護衛として同席を」ハァァ・・・・・・
団長「先代(クソババア)が御提案なされたものだ。内容は」
ステ「いやもういいです、大体予想がつくんで」
イン「えー。私は詳しく聞きてーかも!」
ステ「断固お断りです。聞きません」
火織「……ちなみに関連法もいくつか成立しています」
ステ「はぁぁぁあぁ………………もうやだこのイギリス」
- 110 :イギリス王室編13 [saga]:2011/05/20(金) 09:15:44.50 ID:8KV5zKLe0
ロンドン市街地
ヒョコヒョコ スタスタ
ステ「はぁぁ」
ステ「結局、どこに行っても僕の気苦労は絶えないって訳なんだな……」
イン「大丈夫?そんなステイルでも私は応援しt」
ステ「八割がた貴女が原因です!」
イン「でも、かおりが仲良くやってるみたいでよかったにゃーん」
ステ「仲良く……やってるのか…………? まあ、喧嘩するほどなんとやら、か。
神裂もいい加減洋食は諦めればいいものを」ヤレヤレ
イン「むっ! その言い草は聞き捨てならねーかも」
ステ(……まあ、なんだかんだでだいぶ聞けるようになったじゃないか。それほど心配することでも……)
イン「乙女心はカーテナより貴く、英仏関係より複雑なのである!!」ドヤッ
ステ「」
イン「あれ?…………あれー?」
ステ「そういえば……さっきから…………そんな感じだったような……」
イン「ドタバタしてて自分でも超気づいてなかったんだよ!」
- 111 :イギリス王室編14 [saga]:2011/05/20(金) 09:17:22.20 ID:8KV5zKLe0
イン「うむむ! 由々しき事態であるにゃーん!」
ステ(そりゃあ、そう簡単にはいかないか…………)
「やっぱり、不幸だ………………はぁ」
---------------------------------------------------
インストール済み
クワガタ 原子崩し 窒素装甲 AIM剥奪 くぎゅ
OUT
超教皇級の馬鹿口調(ヴィリアンがアンインストール)
IN
フレ/ンダ←New! アックア←New!
---------------------------------------------------
そんなつづきは応援できない……
- 119 :土御門編1 [saga]:2011/05/21(土) 14:31:53.81 ID:OysQ35li0
『必要悪の教会』寮 食堂
イン「まっだであっるか♪ まっだであっるか♪」
ステ「……その口調で軽快に跳ねないでください」
火織「お行儀が、悪いですよ、インデックス…………」ハァ
トントントン グツグツグツ ジュージュー
舞夏「さあ出来たぞ、召し上がれ―」
イン「ああ、天にまします我らが主よ、迷える我らはここにいっただきまーす!!」
ステ「祈るなら最後までやってください!」
火織「い、いただきます……」
舞夏「おう、どんどん食べろー」
ステ「この量でこの質……相変らず絶品だね、ミセス土御門」
イン「ふふん、まいかは超!名門綾乱出のプロのメイドで
あるのだからこれぐらいは朝飯前なのよな!」モキュゴクゴックン モグモグモグ
ステ「よくちゃんと喋れますね。というか何で貴女が自慢げなんですか」カチャカチャ
舞夏「そ、そんなに褒められるとさすがに照れるなー」ニヘヘ
イン「謙遜することねーかも!」ズズズズズ!
ステ「その通りだね。さすがはイギリスにもその名が轟くメイド学校。だがしかし……」スープハオトヲタテズニ!
- 120 :土御門編2 [saga]:2011/05/21(土) 14:34:42.63 ID:OysQ35li0
火織「う、ううぅ……」シクモグシクモグ
ステ「そっちのしけた面はどちらかというと、冥土送り(エクスキューショナー)だね」モグモグ
舞夏「どうだー火織? それが洋食の基本、オムライスだぞー?」
火織「お、美味しいです。オムライスがこんな、こんなにも……」シクシク
ステ「まあ、この間君の作ったオムライスときたら対味覚兵器もかくや、という代物だったからね」ゴチソウサマ
イン「結局、私が平らげたって訳だにゃーん」ゴチソーサマ!
舞夏「oh…………」オソマツサマデシター
ステ(『宇宙胃袋』は健在だったな……)
火織「うっ、うぇぇぇえええええええんん!!」
ステ(三十路近くにそんな泣きかたされてもな)
火織「私だって頑張った! 頑張ったんですよ!!
慣れない洋食を! あの人に喜んでもらいたくて!!」ウェーン
舞夏「愛情は料理の一番のスパイス! 間違ってないぞー、火織ー!」
ステ(結果、塗炭の苦しみを味わっているようだったが……)
火織「うううううぅぅ。つ、つまりそれは愛情が足りないということでしょうか……」シクシク
舞夏「……追いうちになっちゃったなー」
イン「な、泣かねーで、かおりー」ナデナデ
- 121 :土御門編3 [saga]:2011/05/21(土) 14:36:37.00 ID:OysQ35li0
五分後
火織「…………申し訳ありません。お見苦しいところを」カオマッカ
舞夏「だいたい、なんで洋食にこだわるんだー? 火織は和食はちゃんと作れるじゃないかー」
火織「……その、それは。あの人は根っからの洋食派なので……」
舞夏「自分の故郷の味を知ってもらうってのは、国際結婚の王道だと思うんだけどなー」
ステ「僕らもそう言ったんだけどね。この頑固者は聞かなくて」
イン「相手の好きなものを食べさせてあげたい、っていうのは超恋愛の王道なのよな!」
火織「あ……う…………」プシュー
舞夏「むむ、そうかそうか! それで私に洋食を教わりたい、ということなんだなー!」
ステ「まあ、今日はそのために彼女と神裂の予定を合わせたのさ」クルッ
イン(誰に説明してるのかな?)
舞夏「そういうことなら善は急げ! さっそく始めるぞー!」
火織「よ、よろしくお願いします! 先生!」
イン「味見はまかせてにゃーん」
ステ(一応、医務室の手配はしておくか……)ピッポッパッ
- 122 :土御門編4 [saga]:2011/05/21(土) 14:38:52.03 ID:OysQ35li0
舞夏「さて、まずは私も火織のレベルを確かめさせて貰うぞー」
火織「うう……」ドキドキ
舞夏「そんなに緊張しなくても、ただのスクランブルエッグだー。作り方はこちら↓」
1.卵をボウルに割って、よくかき混ぜろー。この時、箸で黄身を切る様に混ぜると、よく混ざるぞー。
2.薄く油をひいたフライパンを熱するんだー。熱したときに出る白い煙が消えたらもっかい油をひけー。
3.フライパンを弱火にかけて、1で作った物を入れて熱しながら混ぜれば、
ウルトラジョウズニデキマシター!
舞夏「なー? 簡単だろー?」
火織「りょ、了解です! 行きます!」
イン(どこに?)
- 123 :土御門編5 [saga]:2011/05/21(土) 14:40:33.56 ID:OysQ35li0
1.卵をボウルに割って、よくかき混ぜろー。この時、箸で黄身を切る様に混ぜると、よく混ざるぞー。
コンッ パカ シャカシャカシャカ
舞夏「なんだ、上手じゃないかー」
火織「そ、そうでしょうか?」
ステ(力の入れすぎとかは起こらないんだよな、なぜか)
2.薄く油をひいたフライパンを熱するんだぞー。熱したときに出る白い煙が消えたらもっかい油をひけー。
シューシュー ツツツ シュー
舞夏「……普通に考えて、問題の起こり得ない工程だなー」
火織「プレッシャーをかけないでください!」
イン「ふぁいと! かおり!」
3.フライパンを弱火にかけて、1で作った物を入れて熱しながら混ぜれば
キシャーン キシャーン ダダッダー
ダッシュ! ダッシュ! ダンダン ダ ダン
舞夏「!?」
ステ「!?」
イン「!?」
- 124 :土御門編6 [saga]:2011/05/21(土) 14:42:39.77 ID:OysQ35li0
ドンッ!
火織「……………………」
オーレーハー グレートー
舞夏「……………………それは、スクランブルダッシュだー」
ステ&イン「「………………いくらなんでも、これはない」」
火織「うわぁぁぁぁぁぁんんんんんん!!!!!」
- 125 :土御門編7 [saga]:2011/05/21(土) 14:45:07.82 ID:OysQ35li0
イン「ごちそーさまなのよ」ケフッ
舞夏(人体って不思議だなー)
ステ「だいたい、卵焼きはちゃんと作れるのにどうして横文字が入るとこうなるんだ?」
火織「お、おのれ魔術師ッ…………!」
イン「現実逃避はいけねーかも」
火織「インデックスまで!?」
舞夏「まあ、私にもプロとして意地があるからなー。このままじゃ終われないんだぞー」
火織「! じゃ、じゃあこれからも」
舞夏「どん! と任せておけー! 必ずや旦那の大好物をマスターさせてやるぞー」
火織「ああ、ありがとうございます!! ……あ、いやしかし、貴女にも時間の都合というものが」
舞夏「いいんだー。…………馬鹿兄貴がいないと、毎日にハリがないからなー」ボソッ
イン(まいか…………)
ステ(…………。ん?)
prrrrrrr
ステ「失礼。…………ああわかった。すぐ行く」ピッ
イン「誰からだにゃーん?」
ステ「なに、大したことではありません。……僕は少し出ますので、最大主教はここでお待ちを」
イン「むー。連れてかないと私も超長電話してやるのよな」ピポパ
ステ「我儘言わないでください。おい、神裂……」
神裂「ああ、師匠! 貴女に一生ついていきます!」
舞夏「ふふー。あがめろーたてまつれー!」
ステ「(だめだこりゃ)…………ん、あれは」
- 126 :土御門編8 [saga]:2011/05/21(土) 14:47:23.78 ID:OysQ35li0
レイチェル「~~♪」
ステ「ちょうどいいところに、シスター・レイチェル」
イン「!!」ビクッ
レイ「あら、神父(ファーザー)ステイルではありませんか。皆さんも」コンニチワ
ステ「実は緊急の用件が入ってしまって。少し彼女を見ていてもらえませんか?」
イン「むー! 私は良いとはいってな」
レイ「まあまあ! じゃあ行きましょうか最大主教! ご飯を山でご用意しますよ?」
イン「山のような、と言って欲しいのよな!? っ、ていうか、たった超今お腹たっぷり食べて……」
レイ「はいはい行きましょうねー ほっぺたにしまっちゃおうねー」
イン「すっ、ステイル!! 結局、助けてほしいってわk」
ステ「アーメン」
イン「」
ステイルゥゥゥゥゥ!!!???
ニヒャクニンマエホドアリマスヨー
ステ(…………恐ろしい人だ)プカー
- 127 :土御門編9 [saga]:2011/05/21(土) 14:49:28.32 ID:OysQ35li0
ロンドン 路地裏
ステ(……このあたりか)
スッ……スッ……
ステ「……来たか」
??「面と向かっては久しぶりぜよ」
ステ「やあやあ、よく帰ったね。……土御門」
元春「いやーステイルくん、素晴らしいプレゼントをありがとにゃー」ピクピク
ステ「君の置土産に較べればなんてことのない代物さ」ピクピク
元春「おかげで舞夏の元に戻ってくるのが一月ばかり伸びちまったぜい」ギロッ
ステ「……御夫人には申し訳なかったがね、あれは自業自得と言うんだ」マケジトギロッ
元春「なんのことかにゃー。そうそうこないだフィアンマから新店舗の招待券が届いて」
ステ「それのことだそれのっ!! くそっ、ただでさえ問題は山積みだっていうのに!」
元春「あ、お前の分も同封されてたぜい。今度一緒に中国nアチョーーーーーッ!!!!!」ボボボボボッ!!
ステ「あの野郎ッッ……!!! なにを全世界展開なんてしてるんだ!!!」
元春「……そう言ってやるな。これが今奴の目に映ってる世界の在りようなんだ」プスプス
ステ「君が掛けさせた色眼鏡に映ってる世界だろうがッ!! どんだけピンク色のレンズなんだ!!」
- 128 :土御門編10 [saga]:2011/05/21(土) 14:51:32.29 ID:OysQ35li0
元春「いやー相変わらずよくキレるツッコミで安心したぜい」ハハハ
ステ「ああ確かによくキレてるよ僕は!! ……もう、正直疲れた」ゼェハァ
元春「インデックスの護衛にか?」
ステ「…………そういう聞き方はないだろう」
元春「はっはっはっ、冗談ですたい」
ステ「……ちっ」シュボッ
元春「おっ、オレにも火ィくれよ」スッ
ハー プカー
ステ「……」
元春「その分なら、インデックスを守る気持ちに揺らぎはないんだろう?」
ステ「当然だろう。愚問の極みだね」
元春「……たとえあいつの心に、いまだに『だれか』が棲んでいても、か?」
ステ「繰り返す。愚問だ」
「それが、僕の生き方だ。遠い昔に誓った、ね」
- 129 :土御門編11 [saga]:2011/05/21(土) 14:54:03.74 ID:OysQ35li0
元春「……死んでも、いや『死ぬまで』変わらぬ頑固者だな」
ステ「何とでも言え」
元春「もう言うことはないにゃー。さ、愛しの愛しの舞夏とご対面だぜい」ウキウキ
ステ「おい待て、土御門。僕の方にはまだ聞くことが残ってるぞ」
元春「なんですたい?」
ステ「とぼけるな、君の『仕事』のことだ。もう終わったんだろう? 僕ぐらいには教えても……」
元春「終わったから、戻ってきた。そんなことを言った覚えはないな」
ステ「なに? だが君は」
元春「オレの今回の仕事は、土壌づくりだ。本番はこれから『やってくる』」
ステ「……前に言ったな? 今回の件は、めずらしく私情を絡めていると」
元春「…………ああ、そうだ」
ステ「……めずらしい、ということは御夫人ではない?」
元春「……そうなるな」
ステ「ではいったい何のために、いや誰のために動いた、土御門元春?」
元春「そうだな……間違っても、ダチ、ではない。仲間というのも少し違う」
ステ「……じゃあ、なんだ?」
「『共犯者』……そう呼ぶのがしっくりくる、変態野郎さ」
- 130 :土御門編12 [saga]:2011/05/21(土) 14:57:02.28 ID:OysQ35li0
ステ「結局、明確な答えになってない気がするな」
元春「んーそれじゃあそうだな……こいつはサービスだ」スッ
ステ「……この封筒はなんだい?」
元春「今回の仕事の報告書だぜい。一応お前はオレの上司だからにゃー」
ステ「君に上司扱いされたことなど前世まで遡っても記憶にないんだが……というか、初めに出せ」
元春「それじゃあお話があっさり終わっちまうぜい」
ステ「早く終わってなんの不都合があるっていうんだ……?」※作者にあります
元春「さてと、それじゃあ今度こそ」
イン「あーーーーっ!!!! こんなところに居たかもー!」
ステ「最大主教!?」
元春「おう、久しぶりだぜい、インデックス」
イン「もとはる! いつ帰ってきたのよな?」
元春「つい今朝の便でにゃー。……舞夏は、元気か?」
イン「それは超本人に聞くべきかも! ほらこんなところに居ないで! 舞夏を待たせちまうんだよ!」
元春「わかったわかった、すぐ行きますたい。お前はステイルに用があったんじゃないか?」
ステ「! なにかあったのですか!? ……いやそもそも、何を一人でこんなところまで!!」
イン「レイチェルから逃げ……い、いつまでも帰ってこねーから捜しに来たんだにゃーん」
元春(アイデンティティーの危機を感じるにゃー)
ステ「護衛を捜していて危険な目に遭ったら本末転倒でしょう!」
イン「むー! 結局、ステイルは過保護すぎるって訳よ!
だいたい私には『歩く教会』があるから超安全なのよな!」
ステ「突然空から幻想殺しでも降ってきたらどうするつもりです!」
イン「なにそれこわい。それなんてベツレヘムの星なのである?」
- 131 :土御門編13 [saga]:2011/05/21(土) 14:58:52.29 ID:OysQ35li0
元春「(……頃合いかにゃ)夫婦漫才してるところ悪いけど、オレはお先に行くぜい?」
イン「漫才じゃないかも!」
ステ「夫婦でもないよ!」
元春「(息ぴったりですたい)ああそうそう、インデックス、ちょっとお耳を」ゴニョゴニョ
イン「?」フムフム
ステ「……おい、何をしている?」
元春「おいおい、これぐらいでステーキにされちゃあたまらんぜよ。じゃ、あばよ」ダッ
ステ「……なんだったんだ?」チッ
イン「…………」ヒョコヒョコ
ステ「どうかしましたか? というか、今いったい何を……」
イン「その封筒、見せて欲しいかも」
ステ「な……!?(しまった! 彼女に『裏側』など見せるわけには……!)」
イン「あ・や・し・いのであるー!」グイッ
ステ「ま、待てそれは!!」クッ!
イン「いいから見せるのよな!」ムキー!
バサッ バラバラバラ
ステ(ああっ! やむを得ん、こうなったら消し、炭、に…………?)
- 132 :土御門編14 [saga]:2011/05/21(土) 15:01:01.11 ID:OysQ35li0
『新装開店!! ベツレヘムロンドン店VIP席御招待券!! これであなたも神の右席!?』
ステ「」
イン「………………」ギラリ
ピラッ
『騙して悪いが、これも仕事(?)ぜよ』
ステ「」
イン「……………………………………すている?」シャキーン
ステ「」
ガブリッッッ!!!!
「謀ったなぁぁーーーーっ!! 土御門ォォォォォ―ーーーーーーーーッッッ!!!!!!!」ドクドクドク
「どういうことなんだぜい!? 私のメイドじゃ不満なのかにゃー!? 白状してもらいますたい!!」ガジガジ
「不幸だぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!」
- 133 :土御門編15 [saga]:2011/05/21(土) 15:02:16.62 ID:OysQ35li0
OUT
AIM剥奪(ステイル&神裂がなにげに矯正)
IN
だぞー ←New! だにゃー ←New!
ツ・ヅ・キ・か・く・て・い・ね
- 137 :シスター編1 [saga]:2011/05/23(月) 21:00:22.04 ID:MaeONEPe0
――聖なるかな、聖なるかな――
荘厳な空間に賛美の祈りがこだまする。
聖ジョージ大聖堂には多くの十字教徒が詰めかけ、壇上の司祭と共に祈りを捧げながらも――
ひと際、響き渡る清廉な声に誰もが聞き入っていた。
やがて祈りが終わりを告げると、司祭が信徒にむけて祝福の言葉を授け、ミサは閉祭となる。
「あなたに、祝福を」
ミサを執り行った司祭――イギリス清教最大主教、インデックスは列をなす会衆ひとりひとりを祝福する。
ステンドグラスから射す陽に融ける銀糸。
エメラルドよりなお碧の深いくりくりとした瞳。
愛らしい唇から紡がれるやわらかな言の葉の調べ。
そしてなにより、悪魔をも蕩かしてしまいそうなその微笑みの輝き。
天使と見まごう美貌に、老若男女を問わず感嘆の息が漏れる。
ある年若い青年など、恍惚とするあまりその幽かに眩いてさえ見える手をとり、口づけを捧げようと――
――できなかった。
- 138 :シスター編2 [saga]:2011/05/23(月) 21:01:26.43 ID:MaeONEPe0
「祝福は、最大主教手ずからなされます」
祭壇の陰にひっそりと佇んでいた黒い神父が、青年と最大主教の間に瞬きもしないうちに入っていた。
一度見れば忘れないような灼髪、二メートルを越すであろう長身。
なぜだか彫られたバーコードの直ぐ上の眼は、その髪より少しだけ暗い――焔色。
その風貌に反して周囲の誰もが接近にすら気づかなかった影のような男は、一切の感情を顕わさずに続ける。
「……どうか一度、お引き取りをんんッ!!!????」
…………ところがいったいどうしてしまったのか、突如として男の無表情が著しく歪む。
我に返った青年は慌てて謝罪し、羞恥に耐えかねて聖堂を飛び出してしまう。
しかし会衆の関心は既に青年ではなく、鳥の首を絞めたような切ない叫びをあげ、蹲ってしまった男の方に集っている。
異様な事態に誰もが声をかけかねていると、やがて男がギ、ギ、ギ、と首だけを後ろに回した。そこには――――
――男の陰になって、衆目から隠れていた最大主教の、つい先ほどまでとは、まるで異質な――
「私の視界に、入らないで欲しいかも。………………変態」
――――悪魔をも畏れさせるような、ドス黒い微笑みが煌めいていた。
- 139 :シスター編3 [saga]:2011/05/23(月) 21:02:53.33 ID:MaeONEPe0
三時間後 『必要悪の教会』寮 食堂
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
ヒートアップシテキタデゴザイマスヨー!
ダレダコイツニノマセタノハー!
イチバンタテミヤ、イックノヨナー!
ステ「 」
アニェーゼ「ゴキュッ、ゴキュッ、ぷはーっ! で、どうしちまったんですかい? あれ」
ルチア「親父臭いので自制してください。なんでも、さきほどのミサで最大主教となにかあったとか」
ミサカ13854号「……今にも死にそうな、いえ終わりがないのが終わりと言わんばかりの
表情です、とミサカは神父(ファーザー)ステイルの心境を分析します」
アニ「よくわかんねーですけど、的を射た表現ですねえ。……おや?」
トコトコトコ
アンジェレネ「ふぁ、ふぁ、神父ステイル! あの、元気出してください!」
ステ「 」
アニ「おっ、アンジェレネがここぞとばかりに行きましたよ!」ニヒヒ
ルチ「まったく。シスター・アンジェレネも、あんな煙草臭い男のどこがいいのでしょうか」ナゲカワシイ
13854「まあ、神父ステイルはどうやらお義兄様の病気がうつったようですので、とミサカは事情通ぶります」
- 140 :シスター編4 [saga]:2011/05/23(月) 21:04:20.25 ID:MaeONEPe0
アン「い、嫌なことはお酒を飲んでぱぁーっと、忘れちゃいましょう?」
ステ「 」
アン「こ、これ、『すぴりたす』って言う名酒らしくて! つ、土御門さんからもらいました!」
アニ「おおっ、飲ませて潰してお持ち帰りですか。アンジェレネも大胆じゃねーですか」ヒュー!
ルチ「嘆かわしい。全く、嘆かわしい! 禁欲精神の欠片もない!」クワッ!
13854「……ツッコミどころはそこではない気がします、とミサカはお二人にツッコミを入れます」ビシッ
アン「さ、さあ! ふぁ、神父ステイル、どうぞいっぱ」
ステ「…………t……………………ど…………?」
アン「へ?」
ステ「つ……ち……み……か……ど……?」
アン「はい? つ、土御門さんがなにか?」
アニ「?」
ルチ「?」
13854(だいたい予想はつきました、とミサカは予め耳を塞ぎます)
- 141 :シスター編5 [saga]:2011/05/23(月) 21:05:40.93 ID:MaeONEPe0
「つゥゥゥゥちィみィィかァどォォォォォォくううううンンン!!!!???」
アン「ひ、ひぃぃいっ!!?」
アニ「」
ルチ「」
13854(神父ステイルがもやし化してしまいました、いや元からか、
とミサカはセルフツッコミを入れます)ビシッ イテッ
- 142 :シスター編6 [saga]:2011/05/23(月) 21:07:04.47 ID:MaeONEPe0
ステ「土御門の馬鹿はどこだ!!!」
アン「え、え…………。つい先ほど、奥様と一緒に中国へ旅行に出たとか」
ステ「畜生めぇぇーーーーっ!!!」
アン「あ、あ、あ、ご、ごめんなさぃぃっっ!!!」
ステ「!!」ハッ
ステ「す、済まない。君に怒鳴ったわけではないんだ……」
アン「い、いえ。私もついビックリしてしまって…………し、失礼しました」
ステ「君が謝ることなど何ひとつない。見苦しいところを見せてしまって、済まない」ペコリ
アン「あ、い、いえ。こちらこそ……」
ステ「いや、だからそこで謝られると僕の立場がだね……」
アン「ご、ごめんなさいっ!」
ステ(……まずい、無限ループだこれ)
13854「女性を困らせるものではありませんよ神父ステイル、とミサカは大人の女な忠告をします」
ステ「あ、ああ! シスター・ミサカか、ちょうどいいところに」
アニ「そうやってすぐ誰かに頼るのはヘタレくせーですよステイルくんー?」
ルチ「ことが女性問題だけにより際立ちますね……汚らわしい」
ステ(あれ、僕ぜんぜん助かってない? 状況悪化?)
アン「し、シスター・アニェーゼ!? まさか見てたんですか!?」
アニ「見てたも何も、あんな馬鹿でかい叫び声が上がっちゃあ注目しないわけにも……」
- 143 :シスター編7 [saga]:2011/05/23(月) 21:08:28.71 ID:MaeONEPe0
アウト! セーフ! ヨヨイノヨイ!
オルソラ「また負けてしまったのでございますよー」アハハハ
建宮「いーやッふうゥゥーーー!!! 勝ったのよなー!
さあオルソラ、次はいよいよその修道服よな!」
オル「わかりましたでございますよー」ウフフフ
ヌーゲ! ヌーゲ! ヌーゲ! ヌーゲ!
建宮「うっひょー! 眼福眼福なのよなー!」
チョンチョン
建宮「…………ん?」
五和「たてみやさん」
建宮「おお五和、いいところに! 次はおまえさんも」
五和「これが、ヒトを殺すってことです」
建宮「へ?」
コノメニウー
------------------------------Last-Ark Finish---------------------------------
- 144 :シスター編8 [saga]:2011/05/23(月) 21:09:47.85 ID:MaeONEPe0
アニ「……いえ、あっちのことは置いときましょう」トオイメ
13854「結局のところ、ミサカ達は最初からデバガメしていましたが、とミサカは真実を告白します」
ルチ「別に私は覗くつもりなど……」
アン「あ……あうう…………」シュー
ステ「そこらへんにしておけ、君たち。シスター・アンジェレネも困っているだろう」ヤレヤレ
アン「ふぁ、神父ステイル…………」
アニ「……なるほど、こりゃ病気ですね」
ルチ「……汚らわしい」
13854「処置なしなんだね? とミサカは大恩人のモノマネをしてみます」
ステ(……いくらなんでもそこまで言わなくてもいいだろう)
ステ「とにかく、礼を言うよ。シスター・アンジェレネ」
アン「い、いえ!お力になれてよかったです!」
ルチ「最大主教とのことはよろしいのですか?」
ステ「ん……まあ……なんとか…………なるような、ならないような…………」ズーン
アニ「……それにしてもなにをやらかしたんですか、いったい」ハァ
13854「結局ミサカたちは事情をよく知らないのですが、とミサカは暗に説明を求めます」
ステ「……いや、なんというか、その…………」
- 145 :シスター編9 [saga]:2011/05/23(月) 21:11:37.80 ID:MaeONEPe0
最大主教官邸 『ランベスの宮』
イン「わかってる、わかってるよ……でも、あんな言い方って…………」
コンコン
イン「!」
火織「インデックス、ここですね? 入ってもいいですか?」
イン「ど、どうぞ!」
ガチャ
火織「失礼します。……? 電話中でしたか?」
イン「う、ううん! もう終わったにゃー」パタン
火織「そうですか。みんな寮で楽しそうに……
いや、少しハメを外しすぎですが、楽しくやってますよ?」
イン「…………みんなには悪いけど、結局、たまにはひとりになりたいって訳よ」
火織「……ステイルですか」
イン「………………うん」
- 146 :シスター編10 [saga]:2011/05/23(月) 21:13:15.14 ID:MaeONEPe0
火織「さすがに可哀想でしたよ、あれは」
イン「う…………でもでも、悪いのは超すているかも」
火織「あー、その…………間違ってたら申し訳ないんですが」
イン「?」
火織「もしかして…………嫉妬ですか?」
イン「…………意外だにゃー。まさかかおりが気付くなんて」
火織「酷い言いようですね!?」
イン「自分で言うのもなんだけど、正直気付いてなかったのはかおりくらいかもー」
火織「しょ、しょうがないでしょう!?
……その、あなたはいまだに『彼』を、という先入観がですね」アタフタ
イン「…………はぁぁ、である」ヤレヤレ
火織「な、なんですかその溜め息はー!」ウガー!
火織「は、話を元に戻しますが」
イン(逸らしたのはかおりですたい)
火織「いい加減に許してあげてもいいのではないですか? ステイルからなんとか聞き出しましたが、
これはどう考えても土御門の謀りです。わかっているのでしょう?」
イン「まあ、確かに最初は思わず噛みついちゃったけど、ちょっと考えればわかる訳よ」
火織「……ならばむしろ、あなたが謝るべきなのでは?」
イン「ううっ!! で、でもでも、さっきのアレは超ひどかったんだぜい!」
火織「さっきの、アレ?」
イン「……んー、なんていうか、そのー…………」
- 147 :シスター編11 [saga]:2011/05/23(月) 21:14:22.54 ID:MaeONEPe0
--------------------------------
ミサの始まる少し前 聖ジョージ大聖堂
イン『…………』
ステ『…………最大主教、ご準備の方は』
イン『…………万事、整っているぞー』
ステ『……まだお怒りですか』
イン『超別に…………』ブツブツ
ステ『何度でも言いますが、僕は嵌められたんだ、土御門に! …………ん?』
イン『……やっぱり、もう一度もとはるやさいじに頼んで……』ブツブツ
ステ『…………ッッッ!!!! いいですか!!』プチッ
イン『ひゃ、ひゃあっ!! なんであるか!』
ステ『僕はもう!! 金輪際!!! 貴女のあんな姿はお断りですっ!!!!』
- 148 :シスター編12 [saga]:2011/05/23(月) 21:15:34.59 ID:MaeONEPe0
イン『~~~~~~っっ!!!!』プチッ
イン『こんのっバーコード!! ロリコン!!! ……ヘタレ魔術師!!!!』
イン『それならいかがわしいお店でもなんでも行って満足してくるといいかも!!!』
ステ『な、な、なんだとっっ!!!?? ど、どうしたらそういう話にっ!!』
ゴーン ゴーン ゴーン
ワイワイガヤガヤ
ステ『!! も、もうこんな時間か!?』
イン『…………ふん』
ヒョコヒョコヒョコ
イン『それでは皆さま。ミサをはじめるにゃ……ゲフッゴホッ! ……ミサを執り行うかも』
ステ『くっ、くそぉ…………』ケハイケス
-------------------------------------------------- 149 :シスター編13 [saga]:2011/05/23(月) 21:16:42.03 ID:MaeONEPe0
シスターズ「……………………なんていうか」
火織「……………………その」
「「「「「付き合ってられません」」」」」
ステ「…………」
イン「…………」
「「…………すいませんでした」」
- 150 :シスター編14 [saga]:2011/05/23(月) 21:18:09.90 ID:MaeONEPe0
聖ジョージ大聖堂 廊下
スタスタ
ステ「…………」シスターズニオイダサレタ
ヒョコヒョコ
イン「…………」カオリニオイダサレタカモ
ステ「あ」
イン「あ」
イン「あ…………その。さっきは……」
ステ「申し訳ありませんでした」
イン「!」
ステ「……お互い、言いたいことはわかってると思いますので。
…………僕からは、これだけです」
イン「……そう、だね。じゃあ私も、ごめんなさい」
ステ「………………まだ、料理は残ってると思いますよ」
イン「………………うん。じゃあ、超行くんだよ」
ヒョコヒョコ スタスタ
- 151 :シスター編15 [saga]:2011/05/23(月) 21:20:10.62 ID:MaeONEPe0
コツコツと音を立て、人気のない廊下を二人は会話なく歩む。
インデックスの脳裏をよぎるのは、先ほどの火織とのやりとり。
『……その、あなたはいまだに『彼』を、という先入観が』
(先入観、か。…………結構するどいかも、かおり)
そして、すぐ隣を歩く青年の顔をちらりと見上げる。
(だから、なんだよね…………)
(だから、きっと貴方は………………)
インデックスの苦悩を知る者は彼女以外に誰もいない。
『彼女』以外には、誰も。
超続きます
- 160 :ロシア成教編1 [saga]:2011/05/25(水) 21:51:37.51 ID:VJ3PSsT20
聖ジョージ大聖堂
ステ「……」ソワソワ
イン「……」ソワソワ
元春「おまえら、少し落ち着け」
イン「いやだって……」
ステ「なにかこう、もの凄く久々のお仕事な気がしてね……」
元春「……まあ、わからんでもないが」
イン「それになにしろ、内容が内容だしなー」
ステ「……ロシア成教総大主教、クランス=R=ツァールスキーか。
本当に何も掴んでないのかい、土御門?」
元春「掴んでるなら旅行になんざ行かないし、帰ってくるつもりもない。
……舞夏をがっかりさせたのだけは、ほんと苦渋の決断だったけどにゃー」ギリッ
ステ(御夫人には悪いがざまあ)
イン「しかし人前に顔を出さねーことで有名な総大主教が直々に、なんてにゃー」
ステ「前々から不思議ではありましたがね。今のご時勢、呪術に対する警戒としては過剰な気もするし……」
元春「どうも総大主教が、と言うより側近の一人が止めているそうだ。俺でも顔写真すら手に入れられなかった」
ステ「…………マジかい」
イン「それはただ事とは思えねーかも……」
元春「お前ら、人をなんだと思ってるんだ?」
- 161 :ロシア成教編2 [saga]:2011/05/25(水) 21:53:02.31 ID:VJ3PSsT20
元春「…………そろそろ時間だ」
ステ「むこうの警護はどうなっている?」
元春「こっちが二人だからな。この場では同じ人数、ということで納得させた」
ステ「二人、か……」
イン「そういえば昔、とうまからロシアにはとんでもねー魔術師がいるって聞いたんだよ」
ステ(そういえば、奴もロシア出身ではあったな……)
元春「ま、心配しなくてもそう無茶な真似をロシア成教がするとも思えんが……」
コンコン
「「「!」」」
ロシアセイキョウカラノオキャクサマノオナリダゾー
イン「どうぞ、入るのであ……(ゲシッダニャー)お、お入りください」
ステ(やはり不安だ…………)キリキリ
ギギギギギギィィッ
- 162 :ロシア成教編3 [saga]:2011/05/25(水) 21:54:17.30 ID:VJ3PSsT20
(…………こ、)
(これは………………)
ステイルと土御門は、等しく言葉を失った。
いや、二人は隣にいるインデックスを見慣れているから、その程度で済むのである。
何の免疫もない一般人が視界に入れれば、それだけでひれ伏したくなる中性的な美貌。
後ろに付き従う護衛であろうか、二人の修道女もかなりの美女ではあるが、
主の方に至ってはもはやそういう次元ではない。
十字教徒としては畏れ多いことだが、あえてなにかに例えてしまうなら――
――神ではないか、これは。
青年の視線は、初めから同種の輝きを持つ女性にのみ向けられている。
インデックスはそこから瞳を逸らすことなく毅然と応じる。
痛いほどの静寂の中、ついに総大主教が口を開く。その第一声は――――
- 163 :ロシア成教編4 [saga]:2011/05/25(水) 21:56:02.45 ID:VJ3PSsT20
「……………………ハラショー」
「……………………………………は?」
「ハラショー! おお……ハラショー!!」
「え…………え……? あ、あの、総大主教様?」
「なんと美しい。いや、写真と実物ではこうも違うものか!」
(どういう…………)
(ことだってばよ……だぜい)
先ほどとはまた別の静けさに包まれた聖堂の中、
全く空気を読まずに総大主教、クランス=R=ツァールスキーがインデックスに迫る。
あまりのことにステイルと土御門が呆気にとられている間に――
(しまっ…………!)
クランスはインデックスの手を恭しく取り、躊躇うことなく口づけた。
- 164 :ロシア成教編5 [saga]:2011/05/25(水) 21:57:44.28 ID:VJ3PSsT20
ビキビキビキッ!!!!!!!
部屋のこちら側と向こう側からそんな音がするのを、土御門は確かに聞いた。
と同時に、此方の気温が著しく上がり、彼方は零下の如く冷えこむ。
このままでは明日の一面ニュースを総大主教殺人事件が飾ることになる。
土御門がそう危惧して頭を回転させようとしたその時、護衛の修道女の片割れと目が合う。
すると女は、どこか面白がっているような――底知れぬ笑みを浮かべた。
(……どういうことだ)
寒暖差が見せる蜃気楼というわけでもないだろう。
現にもう片方のシスターと来たら、今にも飛び出しそうな憤慨した顔で――顔?
(この顔は…………?)
その情報が意味するところを悟ったとき――
イギリス清教一の曲者、土御門元春はこの状況の全貌を理解した。
- 165 :ロシア成教編6 [saga]:2011/05/25(水) 21:59:20.46 ID:VJ3PSsT20
「ああ失礼、つい感極まった! お初にお目にかかる、Index-Librorum-Prohibitorum殿。
ロシア成教総大主教をつとめている、クランス=R=ツァールスキーという!」
その間にも、紅潮した貌で総大主教は絶好調でしゃべくり続けている。そして――――
「え、あ、その、ご丁寧にどうもなんだy」
「この度突然の訪問をした理由は一つ!」
「は、話を聞いてほしいかm」
「私と婚姻して、生まれてくる子の母親になってはくれないか?」
――――三たび、時が凍る。
「「死にさらせぇぇぇぇぇーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!!」」
時が動き出した刹那、ロシア成教のトップは炎剣とバールのようなものに吹き飛ばされ、星になった。
「………………神は死んだ」
――誰かがそう呟いたとしても、全く無理のない状況だった。
- 166 :ロシア成教編7 [saga]:2011/05/25(水) 22:01:34.14 ID:VJ3PSsT20
クランス「何をする、サーシャ? 痛かったぞ」
サーシャ「第一の解答ですが、こちらの台詞です!
何をいきなり子作り宣言などしているのですか!? 見てて痛々しいんですよ!!!」
ステ「くそっ、ケロッとしやがって……なぜだ?」
イン(強力な霊装? ……それともギャグ補正?)
元春(…………おそらく後者だにゃー)
クラ「ワシリーサが言ったのだ、愛を伝えるならそこ(子作り)までを前提にするべきだと」
サー「クソ上司ィィィーーーッッ!!!!」
ワシリーサ「あらあらサーシャちゃん、いけないわ。
宗派の代表として、あまり大声を上げると品位と言うものが損なわ」
サー「第二の解答ですが、トップ自らが既に株を暴落させてるんですよ!!
さらに第一の私見ですが、そもそも訪問目的自体がメチャクチャです!」
クラ「そこに愛があるのだ、神の教えに背いてなにが総大主教か? なあ、インデックス殿」
イン「え、えー……。そこで私に振られても困っちまいます……」
クラ「はは、照れ隠しなどしなくとも貴女は十分愛らしい」
ステ「」チッチッチッ シュボッシュボッシュボッ
サー「第三の解答ですがそれはドン引きされてるんです!! あと後ろを見てください総大主教ーーッ!!」
- 167 :ロシア成教編8 [saga]:2011/05/25(水) 22:03:16.76 ID:VJ3PSsT20
元春「……つまるところあれか。こんなことの為に、
オレは舞夏との旅行をキャンセルしてきたってわけか……」
サー「第一の質問ですが、あなたは?」
元春「ああ、『アンタ』のほうはオレに会うのは初めてだったか。
……初めまして、『神の器』」
サー「!! …………第一の質問に補足します。 あなたの、名前は?」
元春「土御門元春、だ。よろしく、お嬢さん」
サー「…………第四の解答ですが、その節はご迷惑をおかけしました」ペコリ
元春「ま、終わったことだ」
ステ「ゼェゼェ…………なんの、話だい?」プスプス
クラ「なんだ、その男と知り合いなのかサーシャ」ボロボロ
元春「…………なーに、ちょっとした顔見知りって程度ですたい」ナァ?
サー「え、ええ。第五の解答ですが、以前少し、その……海水浴に」
ワシ「なぁぁんですってえええっっ!!! サーシャちゃんの、水着姿ぁあ!!?」
サー「喰らいつくな鼻息を荒げるな顔が近いんだよこのクソ上司ィィーーーー!!!」
ステ(すさまじい親近感が湧く)
イン(…………む)
- 168 :ロシア成教編9 [saga]:2011/05/25(水) 22:05:24.58 ID:VJ3PSsT20
イン「結局、ばたばたしてて自己紹介もロクにできてねーって訳よ」
ワシ「そういえばそうねぇ。なら早速私から……」
サー「第一の自己紹介ですが、ロシア成教『殲滅白書』のリーダー兼、総大主教補佐の
サーシャ=クロイツェフと言います。以後お見知りおきを」
ワシ「ぐすっ、ひどいわサーシャちゃぁん……」
ステ「その若さでかなりの重職ですね。よほどの腕前とお見受けしますが(唯一まともに話が出来そうだ……)」
イン「…………」
サー「第六の解答ですがそのようなことはありません。
……その、総大主教が目をかけてくださったからです。
解答に補足すると、残念ですが私の魔術などそこのクソリーサに比べれば……」
ワシ「はいはーい!クソリーサこと『殲滅白書』の特別顧問、ワシリーサでーっす☆」
サー(殴りたい、バールのようなもので)
イン「ぬうっ、ワシリーサ…………!?」
元春「知っているのかインデックス!」
- 169 :ロシア成教編10 [saga]:2011/05/25(水) 22:06:38.03 ID:VJ3PSsT20
イン「逃亡生活へと旅立つ弟子に、お手製カナミンドレススーツを餞にしたことで一躍、
その筋で有名になった……。人呼んで、『ロシア一ぶれない女』!!」
サー「第七の解答ですがってわぁぁぁあああ!!! どうしてそんなことまでぇぇ!?」
ワシ「てへっ☆」
サー「…………第一の宣告です、死ねっっ!!!」ギラリ
ワシ「きゃー☆ サーシャちゃんったらこ・わ・い♪」ダッ
キョウトイウキョウハキサマヲヤツザキニシマス!
ハゲシイノガオスキナノサーシャチャーン?
クラ「では私の番だ。改めて、ロシア成教総大主教、クランス=R=ツァールスキーと言う」
イン「…………ものすごーく、慣れてる感じがするのである」
ステ「……まったく他人事と思えない」
元春「おれはどっちかというと、ワシリーサのほうに親近感が湧くぜい」
ステ「ああそりゃそうだろうよ!!!」
- 170 :ロシア成教編11 [saga]:2011/05/25(水) 22:26:16.49 ID:VJ3PSsT20
イン「それで、総大主教様は……」
クラ「クランス、と気軽に呼んではくれないか? こちらも出来ればインデックス、と」
ステ「……………………」ギリギリ
元春(おお、こわいこわい)ニヤニヤ
イン「……クランスは私を愛してるっていうけど、いったいどうしてかなー?」
クラ「まあ有り体に言ってしまえばひとめぼれ、と言うやつだ」
元春「こいつぁストレートだにゃー」ヒュー!
イン「いやだから、これが初対面のはずだにゃー。どこで私を知ったってんです?」
クラ「…………? おい、そっちの男」
元春「へ?」オレ?
ステ「どうか、したのですか?」ヒクヒク
クラ「なぜ、インデックスと語尾が同じなんだ? それが噂のペアルックというモノか?」
元春「…………はぁ? なにいっt「なんだとぉおお!!!」……す、ステイルくーん?」
ステ「それは本当か、土御門!? 御夫人というものがありながら、彼女に手をッッッ・・・・・・!!!」
元春「ちょまっ、落ち着け! こいつ、錯乱してるにゃーーっ!!?」
- 171 :ロシア成教編12 [saga]:2011/05/25(水) 22:27:44.73 ID:VJ3PSsT20
ギャーギャーギャー シネー! ホーラコッチコッチー!
クラ「宗派が違えど、どこも変らないものだなぁ。……おやインデックス、上機嫌そうだが」
イン「ふふふっ、別にっ」ニコニコ
クラ「うっ!(か、可憐だ…………)そ、それは何より」
イン「えへへー」ジー
クラ(いったいさっきから何を見て…………。 ! これ、は…………)
数分後
ステ「ハッ…………僕はいったいなにをしてたんだ?」ハテ
元春「つ、月夜ばかりとおもうなよ、テメェ……」グフッ
クラ「そうそう。貴女をどこで知ったのか、だったな」
イン「結局、私の方はあなたのことをよく知らない訳よ」
クラ「それもそうだろう。私は貴女の写真を見て心奪われたんだ」
ステ「写真…………?(もしや……)」
クラ「ほら、これだ」ピラッ
『メイド喫茶ベツレヘム新商品! あのイギリス清教最大主教も』ボウッ!!
ステ「フィアンマェ……もう叫ぶの疲れたな……」ズーン
- 172 :ロシア成教編13 [saga]:2011/05/25(水) 22:29:37.66 ID:VJ3PSsT20
ワシ「それでクランスちゃんが会いたい会いたい、って言うからしょうがなく来ちゃった☆のよ」ピンピン
サー「『来ちゃった☆』ではありません!」ゼェハァ
クラ「はは、ワシリーサ。それではまるで私が駄々っ子のようではないか」
サー「第八の解答ですが、行動力がある分駄々っ子よりタチが悪いんですよ!」ゼェゼェ
クラ「だがまぁ、確かに突然の訪問は非礼だったし、なにより……」
イン「なにより……?」
クラ「貴女の人となりをもっとよく知って、それから挑むべきだった、と今は思う」
イン「!」
サー「…………」
クラ「先ほどの求婚は、どうか忘れて頂きたい。
まずは友人として、ティータイムでも共に過ごせれば望外なのだが」
イン「………………」
クラ「……………………」ゴクリ
- 173 :ロシア成教編14 [saga]:2011/05/25(水) 22:31:03.26 ID:VJ3PSsT20
イン「もとはる。まいかを呼んできてくれるかなー?」ニコ
クラ「……!」
元春「了解。ついでに、オレはこれで退散させてもらおう」
ワシ「じゃあ私も。インデックスちゃん、クランスちゃん。仲良くやってねん」
ステ「……僕は、すぐ外に控えさせていただきます」
サー「…………失礼します」
イン「ありがと、みんな」
クラ「済まない、気を遣わせて」
ギギギギギギギィィッ
バタンッ!
- 174 :ロシア成教編15 [saga]:2011/05/25(水) 22:33:04.49 ID:VJ3PSsT20
元春「舞夏、二人分の茶会だ。用意してくれ」
舞夏「了解だー。お客様はなにがお好みですかー?」
ワシ「クランスちゃんはオレンジペコにプリャーニキっていうお菓子が好きなんだけど……」
舞夏「ご安心をー。一通り用意してございますー」スッ
シツレイシマスー
ワシ「…………まあ、なんてよく出来たメイドさん。お持ち帰りしたいわぁ」
元春「オレの妻だ。それはご勘弁願いたいな」
ワシ「……噂はほんとだったのねぇ。イギリス清教の懐刀は頭に馬鹿のつく愛妻家だって」
元春「いやいやそちらこそ。倒錯趣味のあるロシアの裏のドンに知っていてもらえたとは光栄だ」
ワシ「ドンだなんてそんなおっかなーい♪ それに倒錯趣味なんてないわよぉ」
元春「総大主教が人前に出ないのは、『殲滅白書』のワシリーサがその美貌を
独占するため……なんて噂を思い出したな」
ワシ「独占だなんて、そんなぁん。私とサーシャちゃんによる複占よぉ」ズゴン!
サー「だ、だ、誰が総大主教を我がものにしてるですってぇ!?」デンドウドリルノヨウナモノ
ワシ「もうもう、そんなに照れなくてもぉ☆」ダッ
元春「おいおい、オレを巻き込まないでほしいぜよ」ダッ
サー「くっ、逃げ足の速い…………!」
- 175 :ロシア成教編16 [saga]:2011/05/25(水) 22:34:38.58 ID:VJ3PSsT20
ステ「…………貴女も苦労しているようですね」シュボッ
サー「第九の解答ですが、はぁぁぁああっ…………」
ステ「心中、お察しするよ。……中の二人のことも含めて」フー
サー「!! だ、第二の質問ですが、そんなにわかりやすいですか……?」カァ
ステ「ええ、結構。……見慣れた光景です」プカー
サー「第一の独言ですが、……かなり、複雑な気分です」
ステ「…………」
サー「今から十年前、とある事件の後遺症に悩み、組織に、国に追われる身となった
私の味方になってくれたのは…………ワシリーサと、総大主教だけでした」
ステ「後遺症?」
サー「大規模魔術のようなもの、です。私自身はあまり記憶にないのですが、
それ故に有益な解決策も見いだせず……十年前の私は、途方に暮れていました」
ステ「……魔術による、後遺症…………」
サー「それでもあの方が――クランス様が、仰ってくださったから」
『諦めるな。私が、総大主教である私が、なんとかして見せるから』
サー「私は、あの方の御側にいようと決めたのです」
- 176 :ロシア成教編17 [saga]:2011/05/25(水) 22:36:34.18 ID:VJ3PSsT20
ワシ「あの頃は、クランスちゃんもガタガタだったのよねぇ」
元春「第三次世界大戦か……あの時は、ロシアも大きく揺れたな」
ワシ「ローマから糸を付けられた人形。そんなモノに自分の無力さを思い知らされたクランスちゃんは、
目の前のあの子を救おうとすることでなんとか自分を保つしかなかったのよ」
元春「共依存関係、ってわけか」
ワシ「クランスちゃんは方々手を尽くして……時に科学の力まで借りて、
サーシャちゃんの体を『医学的には』ほぼ正常な状態にまで戻したわ」
元春「そして……最後の一押しに来たって訳だ」
ワシ「さすが…………お見通しというわけね」
-----------------------------------------------------------------------------------
サー「え?」
ステ「『禁書目録』という言葉は知っていますか?
……我らの最大主教の脳には実に、十万三千冊の魔道書が詰まっています。
かつては、その力を求める魔術師は枚挙に暇がありませんでした」
サー「え…………? じゃ、じゃあクランス様は……」
- 177 :ロシア成教編18 [saga]:2011/05/25(水) 22:38:01.36 ID:VJ3PSsT20
---------------------------------------------------------------------------
イン「…………」
クラ「……どうだろう、承知してもらえないか、インデックス?」
イン「…………ふふ。私の力で良ければ」
クラ「お、おおぉ……! 有難い、本当に、礼を言う!!」パァァ
イン「まだお礼には早いにゃー。魔道書の利用には慎重に慎重を重ねる必要があるんだよー」
クラ「それでも! やっとサーシャに人並の幸せを贈ってあげられるかもしれない……!」
イン「……本当にサーシャを溺愛してるかも。
ってことはあれであるか、さっきのアレは嘘だったのかな?」
クラ「いやいや、ここに来る時はサーシャを驚かせるための方便だったが……一目見て、つい」
イン(つい、であんなのが飛び出すのはよほどの真性ぜよ)
クラ「私にとってサーシャは、隣に居なくてはならない存在だが……。
………………自分でも、その先はよくわからないんだ」
イン「……だったら結局、サーシャのためって訳でもないけど、はっきり言っちゃうかも」
クラ「!」
「――ごめんなさい。私には、他に愛している人がいるから」
「だから貴方の気持ちには、答えられません」
「だから。友人としてよろしくなんだよ、クランス」
「ああ………………よろしく、インデックス」
- 178 :ロシア成教編19 [saga]:2011/05/25(水) 22:39:58.68 ID:VJ3PSsT20
------------------------------------------------------------
元春「しかし……考えてみればしてやられたな」
ステ「なにがだ?」
元春「無茶な要求を断らせてから本命を出す。交渉術の基本だ」
ステ「……! それじゃあ……!」
ワシ「あらもう、やだわぁ。そんな打算だけでやったことじゃないのよぉ☆」
サー「……第二の私見ですが、ツッコミどころ満載です。というかあなたがやらせたんですか!」
ワシ「まあ、クランスちゃんってば人間離れしてキレイだから。
万が一の場合は『ドッキリ大成功!』で収めるつもりだったんだけど」
ステ&サー「「収まるかぁっ!!!」」
ワシ「……本当はね。クランスちゃんにも対等なお友達を作って欲しかったの」
サー「…………え?」
ワシ「幼いころからご機嫌伺いの大人に囲まれて、少し育ったら道具扱いされて。
お次は監視の目に晒されて、自分の人生なんて無いも同然」
ステ「…………」
元春「…………」
ワシ「サーシャちゃんにもとーっても助けられてるけど。
そうじゃない、支えるのとは違う相手もいたらもーっと良いかな♪
……なーんて考えちゃったり?」
サー「ワシリーサ…………」
ワシ「あらサーシャちゃん? そーんな顔しなくてもぉ……」
- 179 :ロシア成教編20 [saga]:2011/05/25(水) 22:41:08.67 ID:VJ3PSsT20
ギギギギギィ
サー「あ……」
クラ「サーシャ!!」バッ
サー「く、クランスさま……」カァ
クラ「朗報だ、よく聞いてくれ!!」グイッ
サー「だだ、第三の私見ですが、かかか、顔が近いです……!」ワワワ
ワシ「ね? 心配しなくても、クランスちゃんの一番はサーシャちゃんよぉ♪」
ワシ「インデックスちゃんも、ありがとねぇん☆」
イン「……ふふ」
イン「友達だもん。当たり前かも」
- 180 :ロシア成教編21 [saga]:2011/05/25(水) 22:43:13.53 ID:VJ3PSsT20
その夜 『ランベスの宮』
ステ「失礼します、最大主教」
イン「うん……うん……じゃあ、またね」ピ
ステ「……お邪魔でしたか?」
イン「大丈夫かも。それで、どうー?」
ステ「女王陛下の許可も内諾ですが取りました。
研究協力の名目でロシア側の人員を受け入れられそうです」
イン「第一の解答だけど、ありがとなんだよステイル」
ステ「…………実際のところは、土御門と貴女の仕事ということになります。
僕はいつも通りにやるまで。しかし、本当に大丈夫ですか?」
イン「私なりに、クランスの人となりは見たつもりかもー。
それに第一の質問だけど、何かあっても守ってくれるんだよね?」
ステ「……………………当然です」
イン「ふふ、頼りにしてるのである! 技術的にも、丁度似たようなケースを調べてたところだから」
ステ「初耳ですね、それは」
イン「結局近い内にわかるから、楽しみにしてほしいって訳YO!」
ステ「……………………………………」
ステ「また胃薬増やしてもらうかな……」
- 181 :ロシア成教編22 [saga]:2011/05/25(水) 22:44:28.03 ID:VJ3PSsT20
OUT
窒素装甲(期限切れ)
IN
かつての痴女服 ←New!
ロシア最強の女 ←New!
続いちまうんです
- 187 :ババ……御隠居編1 [saga]:2011/05/27(金) 20:20:40.17 ID:nDVeIk5D0
ガアアアアアアアァァァァァッッッッ!!!!!!!!!!
黒々と煌めく巨竜の天を震わす咆哮が、峰々の果てまで突き抜ける。
と同時にいかな魔術か、炎が、氷が、雷が、ところ構わず降り注ぐ。
人知では決して抗えぬはずの怪物に、しかし選ばれし四人の勇者は血戦を挑んでいた。
「おのれ……好き勝手しおって!!」
一人は先代英国女王、エリザード。
身の丈を上回る太刀を携え、痛む躰に鞭打ち竜の眼前に躍り出る。
「待てい、一人で先走りたるは許さなきよエリザード様!」
また一人は先代イギリス清教最大主教、ローラ=スチュアート。
その桁外れの長髪ほど、とまでは行かなくともやはり身に余る大太刀を構えエリザードを援護する。
「みんなで力を合わせればなんとかなるんだZEい!」
そして現最大主教インデックス。
もはやバランスの成り立っていない長尺の業物を振り回す姿は、滑稽を通り越して愛らしい。
「…………………………」
……さらに、遠距離から黙々と竜の弱点を、しかも正確に射ぬき続ける男が一人。
- 188 :ババ……御隠居編2 [saga]:2011/05/27(金) 20:22:30.07 ID:nDVeIk5D0
「ええい、全員で頭に群がったら邪魔になるだろ!」
「邪魔と言いしならそちらのことよ!」
「ひゃっはー! インデックス様の活躍をとくと見るんだよ!」
「……」
シュン バスッ シュン バスッ
「秘奥義! 斬・空・天・翔・剣!!」
「完全に別作品でありにけりよ!?」
「あー!? エリザードに吹っ飛ばされたのである!!」
「…………」
キュインキュインキュイン シュン バスバスバスッ
「ぬぐわぁぁぁぁあああーーーー!!!!」
<<ああ! エリザードがやられし!>>
「くうっ、これは聖ジョージのドラゴンの一撃に匹敵するぞー! こうなったら……」
- 189 :ババ……御隠居編3 [saga]:2011/05/27(金) 20:23:47.56 ID:nDVeIk5D0
「粉塵をおくれ、ステイル=マグヌス」
「ステイル! 粉塵パワーよ!」
「第七の要求だけど、粉塵が欲しいんだよステイル」
「………………………」
「は……………………………………………………………………………………………………………………………ぁあ」
ほぼ一人で討伐に貢献していた男の口から、ギネス級の溜め息が漏れた。
- 190 :ババ……御隠居編4 [saga]:2011/05/27(金) 20:25:20.17 ID:nDVeIk5D0
ロンドン郊外 エリザードの別邸
エリザード「全くお前らが足手まといなせいで、またスネオを仕留めそこなったじゃないか」
ローラ「自分のことを棚に上げたり!? エリザード様がところ構わず気刃大回転するのが原因につき!」
イン「おかげで何回尻もちつかされたかわからないぜよ」
ステ「なんでだ……? どうして、どうしてこうなってる…………?」ズーン
エリ「どうしてって……たまにはヴィリアンだけでなく、私とも遊んで欲しいじゃないか」
ステ「そうです、僕らはあ・な・たの招待を受けたからここに参ったのです、先代」
イン「ステイルの解答に補足すると、とっても楽しいんだよ!」
ステ「貴女は少し黙っててください! ……それで、問題はあんただ」
エリ「?」クルッ
イン「?」クルッ
ロー「???」クルッ
ステ「貴様だぁああーーーッッ!!!」ボウゥ!
ロー「きゃわわああんんんっっ!!///」
ステ「気色の悪い声を出すなァァァーーーーッ!!!!」
- 191 :ババ……御隠居編5 [saga]:2011/05/27(金) 20:27:32.73 ID:nDVeIk5D0
ステ「よくもまあ、あれだけのことをして僕らの前に顔を出せましたね!」
ロー「あれだけの?」ハテ
エリ「こと?」ハテ
イン「?」ハテ
ステ「なんで貴女まで『?』なんですか!?」
ロー「可愛いくぁいいインデックスに会いたることの何が悪いの?」ダキッ ナデナデ ポニュッ
イン「えへへー」ダカレ ナデラレナデラレ ポニュッ
エリ「おお、なかなか壮観じゃあないかステイル? こっちに来ておまえも見てみろ」クフフ
ステ「黙ってろアンタ!!」
ロー「インデックスはこの通り、何も気にしてなきよ?」ネー
イン「ふふ、結局、ローラなら大丈夫な訳よ」ネー
エリ「こうして見ると、姉妹のようだねぇ」
ステ(実年齢は倍どころか二乗しても怪しいぞ……!)
ステ「くそっ、くそっ! なら! だったら!!」
- 192 :ババ……御隠居編6 [saga]:2011/05/27(金) 20:29:21.41 ID:nDVeIk5D0
ステ「どうして揃いも揃って太刀を担いでくんだ!!」
エリ「かっこいいだろ?」
ロー「かっこよきことよ」
イン「かっこいいかも!」
ステ「くそぉぉぉおおおおおーーーーっっっ!!!!!」
イン「うるさいよー、ステイルー」
ステ「こ・の・科学かぶれどもがあ!!」
エリ「お前さん、騎士団長に似てきたよ」
ステ「うぐっっ!!!」グサッ
ロー「だいたいステイルにおきても、かなりの腕前でありしことよ? まあ私の次ぐらいには」フフン
イン「そげぶ。まあステイルはいつも私に付き合ってるからだにゃー。
とうまやあくせられーたともよくアドパしてるんだよ」
ステ「ちょっ」
エリ「アwwwwドwwwwパwwwwwおまえww」
ロー「『科学かぶれどもが』キリッ …………wwwww」
ステ「死ねぇェェェーーーーーッッ!! 特にそっちの若づくりーーーーーっ!!!!」ブオオオンンッ!!
- 193 :ババ……御隠居編7 [saga]:2011/05/27(金) 20:31:09.01 ID:nDVeIk5D0
一分後
エリ「いかにここがロンドンで、お前だったとしてもねえ」
ロー「さすがにこの面子相手に三対一は無謀につきよ」
イン「ごめんね、ステイル……」
ロー「最初の『強制詠唱』でチェックメイト、哀れなりしステイル……」ヨヨヨ
エリ「さすがは世界胡散臭い女ランキング暫定第一位、しらじらしい」※二位はワシリーサ
ステ「な……なぜですか…………最大主教……」
イン「この二人はともかく、げーむ機が可哀想なんだよー」
エリ&ロー「「ちょwww」」
ステ「僕は…………こんな玩具に負けたっていうのか……?」
ステ「どうして……? な、なんで……? どうして僕の身にばかり、こんな理不尽が…………?」
- 194 :ババ……御隠居編8 [saga]:2011/05/27(金) 20:33:50.50 ID:nDVeIk5D0
エリ「まあ仮にステイルの炎の直撃を受けたとしても、そこは安心と信頼のDM社製品。
イノケンならともかく、五百や千℃の炎では小揺るぎもせんよ」
ロー「げに恐ろしき科学の力……連中め…………よくよく好きと見える……」
イン「面妖な、変態科学者どもめ…………」デアル
ステ(あんたたちの方がよっぽど面妖だよ)ボロッ
ロー「科学というか機械につきては実際、ステイルやインデックスの方が詳しきことよ?」
エリ「へー、そうなのかい。私のパソコンも新しいの見積もってくれないか?
ニコ動の再生速度がどうも納得いかなくてさ……」
ステ「(これでいいのか、イギリス王室……)……それは、回線速度の問題では?
最近の話題はついに実現してしまった滞空回線(アンダーライン)通信ですかね」
ステ(夢というか、恐怖の技術だが……)
イン「第一の解答だけど、私は別にそれほど詳しくはないんだよー。
でもけいたいでんわの進化には着いていってるにゃー」フフン
ロー「ふふ、それを使って最近はよく誰かと話しているの?」
イン「! そ、そうなんだよ! 学園都市には友達がたくさんいるから……」
ロー「………………そう。それはよきことよ」
エリ「?」
ステ「……?」
- 195 :ババ……御隠居編9 [saga]:2011/05/27(金) 20:35:19.76 ID:nDVeIk5D0
エリ「しかし、確かにステイルの知識はなかなかじゃあないか」
ステ「別に専門知識があるというわけではありません。
各国のトップニュースぐらいは先代も目を通しておいででしょう?
……滞空回線は学園都市の技術なんですよ」
エリ「しかし王室(ウチ)は宮殿の魔術防衛網が完璧だからか、そっち方面への興味が希薄でねえ。
リメエアぐらいか、騎士団の情報なんちゃらがどうとか言ってるのは……
おまえ、そのへんのセキュリティもなんとかしてくんない?」
ステ「はは、御冗談を。僕は僕の仕事で手一杯ですよ」ハァ
イン「結局、疲れてるステイルを最近よく見る訳よ」
ステ「いや、だから貴女が…………いえ、もういいです」ハァァァ・・・・・・
ロー「ふふふ、疲れたるならリフレッシュする必要がありて、ステイル」
ステ「今日に限っては貴女のせいで激しく疲れてるんですが」ヤツレ
ロー「まあまあそう言わず。久しぶりに二人で散歩などいかが?」
イン「へ!? ろ、ろ、ローラ?」
ロー「そんなに取り乱しては淑女失格につき、インデックス。……私を、信じてくれるのでしょう?」
イン「う、うん…………」
エリ「ん、行ってらっしゃい。じゃあ今度は二人でストⅦでもやろうじゃないか」ワクワク
ステ「…………この邸の警備は」
エリ「不備があると思うかい?」
ステ「……いえ。では行って参ります、最大主教」スッ
ロー「三十分ほどで戻りけるのよ」ファサッ
ステ(しかし相変らずの馬鹿長髪だ)
イン「……行ってらっしゃい」フリフリ
- 196 :ババ……御隠居編10 [saga]:2011/05/27(金) 20:37:16.34 ID:nDVeIk5D0
エリザード別邸周辺
スッ スッ スタスタ
ロー「懐かしきこと。昔もこんな風にあなたは後ろについてきにけり」
ステ「…………まあ確かに、懐かしいと言えなくもないですが」
ロー「インデックスともこうして? それとも、横に並びて?」
ステ「なにも変わらない。僕は最大主教の護衛です」
ロー「それは言い訳よ。横に並びても護衛はできしことよ」
ステ「……僕が、何に言い訳してると言うんだ」
ロー「私からは、目は離せぬとも、必要以上には近づきたくなきにけり。では、あの子とは?」
ステ「…………」
- 198 :ババ……御隠居編11 [saga]:2011/05/27(金) 20:38:51.73 ID:nDVeIk5D0
「あの子は、隣に来てくれとは言わないでしょう?」
けして油断してはならない相手の一言一言が、なぜかステイルの胸に妙に刺さる。
「あの子は優しいから。あなたの気持ちを慮りているから」
聞くな。ステイルは自らに言い聞かせる。目の前のコイツは、彼女を――――
「本当に、本当に。やさ、し、い…………」
「……………………」
「…………こ、んな私を、慕ってくれる。名を、呼んでくれる。抱き、ついて、くれる」
――――――――。
ローラ=スチュアートはインデックスという少女を、
かつて自らの手で生きながらの地獄に追いやった女だ。
――――しかし。
- 199 :ババ……御隠居編12 [saga]:2011/05/27(金) 20:41:55.83 ID:nDVeIk5D0
インデックスが首輪の呪縛から解放されたときも、
新たに嵌められた『枷』が外れた――あるいは、自ら外した――ときも、
ステイルは結局、この女の真意には辿りつけなかった。
だからといって目の前で流される涙粒が、真実を物語っている証拠など何もありはしない。
――だがステイルは、そっとハンカチをローラに差し出すと、しばし彼女に背を向けることに決めた。
----------------------------------------------------------------------------------------------
ステイルが再び向き直ると、ローラは常とまるで変わらない胡散臭い笑みを浮かべていた。
「ふふ、レディーの扱いが解りてきたようで何より。紳士への第一歩ね」
「齢二十四にして第一歩ですか……第五十歩ぐらい行ってないとまずいと思いますが」
「十年早し。まあ、肝心のところが確りとしているようでよきことよ」
「フン…………」
ステイルの猜疑心がどうあれ、インデックスはすでにローラを許しているのだ。
ならば警戒だけは解かずにはおくが、それ以上は踏み込むべきでない。
心の内側のことは、当人たちの問題である。
- 200 :ババ……御隠居編13 [saga]:2011/05/27(金) 20:44:11.67 ID:nDVeIk5D0
「それからまたしても、インデックスの話なりけれど」
再び縦に並んで二人は歩きだす。幾度かの雑談を交えたのち、ローラはそう切り出した。
「ようやく、本題ですか」
自分の周りには婉曲的な輩が多すぎる、とステイルは紫煙を吐く。
「あの子は今、揺れているわ」
「……ええ、そのようで」
「原因はわかりにけり?」
「…………おぼろげながら」
「では、対策は?」
「………………」
「……まあ、別にそれはよきてよ。よく悩め、青年」
「じゃあいったい、何の話ですか」
- 201 :ババ……御隠居編14 [saga]:2011/05/27(金) 20:45:50.18 ID:nDVeIk5D0
チッ、とステイルは舌を打つ。それも本筋でないらしい。どこまで話を焦らせば気が済むのだ。
ステイルが苛立ちを隠さずにいると、
「問題は、悩みを溜めこんでいる場所のことよ」
「……! 先ほどの…………?」
「ここのところ、彼女があの携帯端末を握る機会が増えてなき?」
「…………本当に油断のならない女狐だ、貴女は」
どこでそんなことを知ったというのか。いや、考えても益体のないことである。
「僕にでも、神裂にでもなく、誰かに悩みを吐きだしていると? ……いったい、誰に?」
「『吐き出して』いるのならまだ心配はいらねど……下手に私がつつきても事態をこじらせかねなし。
……とにかく、『電話相手』には気をつけておきなさい」
「……ご忠告、痛み入ります」
極めて深刻な事態、とまでいかなかったとしても、
インデックスに関わることである以上ステイルは全力を尽くす。
現れては消える疑念と、言葉にできない焦燥に包まれながらも、二人は歩みを止めはしなかった。
- 202 :ババ……御隠居編15 [saga]:2011/05/27(金) 20:47:22.22 ID:nDVeIk5D0
エリザード別邸
ロー「ただいま戻りしよー!」
イン「あ! お、おかえり! 第一の質問だけど、どうだった?」
ステ「どう、と言われましても……普通にそこらを一周してきただけですよ」フゥ
ロー「別にあなたが心配するようなことは何もなきよー」ニヤニヤ
イン「む、むむー……」
ステ(『電話相手』、か…………)
イン「? 第二の質問だけど、どうかした、ステイル?」
ステ「いえ、別に。お一人ですか。先代と一緒では?」
イン「あーー…………。エリザードなら、さっきの部屋で…………」
ステ「?」
ロー「?」
- 203 :ババ……御隠居編16 [saga]:2011/05/27(金) 20:48:57.60 ID:nDVeIk5D0
------------------- You Win! ---------------------
エリ「いやいや、小足見てから昇竜余裕って一度やってみたかったんだよなー。
ほら騎士団長、もっかい練習付き合え」
団長「…………い・い・か・げ・ん・に・し・ろ!!!!
こっちは仕事で来てるっつってんだろテメェ!!」
エリ「えーいいじゃん。どうせまたリメエアの小難しい話だろう?」
団長「いいわけあるかッ!! そもそも別邸だからってジャージで寛いでんじゃねぇェェーーーッ!!!」
「…………なるほど」
自分の悩みは尽きないが、自分より長いこと不幸の星に魅入られている人はいる。
そう、『あの男』だってそうだったではないか。
それを思い出すだけで、明日への希望は自然と湧いてくる――
そんな悟りを開きかけているステイル=マグヌス二十四の晩冬の一日であった。
--------------------------------------
OUT
くぎゅ(ルチアが矯正)
NOT IN
超教皇級の(ry
二回目につき(めんどくさいので)なし
---------------------------------------
結局、続くって訳よ
- 211 :女王編1 [saga]:2011/05/29(日) 17:41:24.37 ID:trDPI7LC0
未明 ロンドン市街地
スタ スタ スタ ピラッ
ステ「………………」
ピョコピョコ
レッサー「おや、これはステイル=マグヌスじゃありませんか、お久しぶりです」
ステ「君は……レッサーか。こちらこそ、お久しぶりだね」
レッ「こんな朝も早くからお仕事ですか? まったく働き者ですね」
ステ「日課の散歩だよ。こんな時間にうろついている君には言われたくないね」
レッ「誰かさんのせいで『新たなる光』もロンドンじゃ商売あがったりなんですぅー。
少しはこっちの身にもなってくださいよ」ベー
ステ「いい歳してベー、はないだろう。……相も変わらずその尻尾は健在だし。恥ずかしくないのかい?」ハッ
レッ「あーん、レディーにためらいもなく年齢の話題を振るなんてデリカシーが欠如しきってますねぇ。
それにこの霊装のことなら心配ご無用。道行く人々が私の臀部に視線を奪われていると思うと、
それだけで…………もう……!」イヤーン!
ステ(そうだった、関わり合いになってはいけない人種だったな……。
…………僕の周りはそんなのばっかりじゃないか)ズーン
- 212 :女王編2 [saga]:2011/05/29(日) 17:43:33.90 ID:trDPI7LC0
太陽<ヤァ
ステ「ん、日が昇ってしまったか」フゥ
レッ「んー、いい朝日ですね。ステイルはこれから最大主教のところに?」
ステ「当然。それが僕の仕事だ」
レッ「実は私、最大主教に所用がありまして……」
ステ「そうかい、じゃあまた後で」スタスタ
レッ「あーん、いけず!」ピョコピョコ
レッ「まだまだ人気がないですねぇ」
ステ「それはそうだろう。こんな時間に働いてるのはパン屋か新聞配達か……」
レッ「魔術師ぐらい、ですかね。それもここ数年はとーんと減っちゃって、実に平和ですよ」
ステ「……平和に越したことはないだろう」
レッ「いやはや間違いなく正論です。争いなんて、無いに越したことはありませんよねぇ?」
ステ「………………」
レッ「なんですかノーリアクションってー。そうですね、こんな噂知ってま」
ステ「着いたよ」
レッ「ちょっ、せっかく話題振ったんだから聞いてくださいよ!!」
- 213 :女王編3 [saga]:2011/05/29(日) 17:45:06.81 ID:trDPI7LC0
『ランベスの宮』前
レッ「……やあやあ、やっと着きましたか! それでは中に」
ステ「悪いが中には入れられないね」
レッ「えーっ!? ここまで来てそれはないでしょう!」
ステ「知ってるだろう、ここは最大主教の要塞だ。
自由に出入りできるのはごく一部の人間のみ。
それ以外は事務的にも魔術的にも、少々面倒な手続きを踏んでもらうことになるよ」
レッ「だったらなんで連れてきたんですか!」
ステ「そのガッカリ顔を見るため、とか」ハッ
レッ「んがー! ムカつきますねーー!」
ステ「というか、正式な遣いなら事前に何らかのアクションがあって然るべきなんだよ。
……聖堂でなら普通に会えるから、そっちで待っていろ」ハァ
レッ「ちぇっ、とんだ無駄足でしたね……おや?」
- 214 :女王編4 [saga]:2011/05/29(日) 17:46:43.84 ID:trDPI7LC0
舞夏「おー、ステイルにレッサー。珍しい組み合わせだなー。」
ステ「おはよう。ミセス土御門」
レッ「おはようございます! あれ、あなたは普通に通れるんですか?」
ステ「まあ、僕と彼女は出入りできるよ。護衛と世話係だからね」
舞夏「最低限、朝は用意しなくちゃならんからなー。まあそれだけでもひと仕事だー」
ステ「最近ようやくマシになってきた気がするのが救いだね」
レッ「えー!? あの大食らいが……マジですか?」
舞夏「まあ、朝のおかわりが十回から八回ぐらいにはなったなー」
ステ「それでも恐るべき変化だよ…………。何かしたのかい?」
レッ「乙女が小食になるといったらアレです、ダイエットでしょう! ……なーんて」ハハッ
ステ「それだけはあり得ないね」ハハッ
舞夏「ところが、そのまさかなんだぞー」ニヤニヤ
レッ「!?」
ステ「!?」
- 215 :女王編5 [saga]:2011/05/29(日) 17:48:22.73 ID:trDPI7LC0
舞夏「ちょっと最近、膨らんできたんじゃないかー? って言ったら、顔色を変えてなー」
ステ「なん…………だと………………?」
レッ「二重の驚きです……! ふ、太ってるんですか? 今まで何ともなかったのに!?」
舞夏「ちなみに私は、胸のことを言ったんだけどなー」
ステ(ひでえ)
レッ「それはそれで許せません……まだ膨らむんですかアレ!? ステイルのせいですよまったく!!」
ステ「意味不明の言い掛かりをつけるな!! 僕は何もしてやしない!!」
レッ「わかってるじゃないですかいやーん!
……ま、それはそれとして体重計を気にするような乙女心があったっていうのは更に驚き、ま…………」
ステ「まったくそこに尽きるね……。昔からそんなこと、一顧だにした事がないよ」
舞夏「ちなみに気にしてるのは、どちらかといえば体重計の数字じゃないなー」ニヤニヤ
ステ「は?」
レッ「……あーなるほどなるほど、そういうことですか」ニヤニヤ
ステ「……よくわからないな」ハァ
レッ「まあまあ、頑張って! じゃあ私は女子寮にでも遊びに行きますから、また後で!」ダッ
ステ「…………はぁ」
舞夏「じゃ、お姫様が目を覚ます前にいくかー」
ステ「そういえば、こんなに早く来て土御門の食事はいつもどうしてるんだい?」
舞夏「兄貴にかまけてる暇はないから夜に作り置き、朝に『温めて食べてください』だー」
ステ(ざまあ)
- 216 :女王編6 [saga]:2011/05/29(日) 17:49:57.19 ID:trDPI7LC0
『ランベスの宮』
ステ「何度来ても慣れない場所だ……」
舞夏「じゃ、起こしに行ってくるぞー」
ステ「よろしく。それじゃあ僕は……」
舞夏「いつも通り一緒にインデックスの寝顔を眺めに」
ステ「一度たりともやっていないのは君がよく知ってるだろう!」
舞夏「どっちかっていうと、やってない方が問題だと思うなー」
ステ「……とにかく、僕は礼拝室で待ってるよ」
舞夏「おう、また後でなー」ジャ!
ステ「どいつもこいつも、好き勝手を言いやがる…………」スタ スタ
- 217 :女王編7 [saga]:2011/05/29(日) 17:51:29.53 ID:trDPI7LC0
二十分後 礼拝室
ステ(…………)
バタン!
イン「第一の挨拶だけど、おはようステイル!」
ステ「……ん! お、おはようございます、最大主教。……ドアは静かに開けてください」ハァ
イン「開口一番これかも……。結局、もう少し爽やかな朝の挨拶が欲しいって訳なんだZE!」
ステ「…………今の言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
舞夏「よーし、じゃあまた朝食でなー」フリフリ
バタン
イン「ごっはん、ごっはん!」ウキウキ
ステ「祈りの時間ぐらい欲求から解放されてください」
イン「あはは、冗談冗談かも」
ステ(まったくジョークに聞こえない)
イン「えへへ……始めよっか」フフ
ステ「やれやれ……始めましょう」フッ
- 218 :女王編8 [saga]:2011/05/29(日) 17:53:27.82 ID:trDPI7LC0
更に四十分後 食堂
ドドドドンッ!
舞夏「よーし、それでは召し上がれ!」
ステ「………………」
イン「いっただきまーす!」バクヒョイモグパクッ
ステ「いただきます…………」チラッ
レッ「ひゃー、美味しそうですねー! いただきます!」
ステ「……おい」
リメエア「あら、なかなか……いただきます」
ステ「あの……」
キャーリサ「見た目は宮殿のコックにも劣らないの。いただくぞ」
ステ「聞け!」
- 219 :女王編9 [saga]:2011/05/29(日) 17:55:10.73 ID:trDPI7LC0
ステ「とりあえず、一つに絞りましょうか。……どうやって入ったんですか?」ゲッソリ
キャ「私は英国王妹だし。私が入れない場所などこのイングランドには無い!」カチャカチャ
ステ「入った場合不法侵入ですがね……答えになってないし」
イン「モグモグモグ」
キャ「だいたいヴィリアンは出入り自由にしてこの私を通さないとはどーいう事なの?」
ステ(こーいうのが面倒だからなんだが)
リメ「まあ本当のところは、少し前に手続きを済ませているのだけど」パク
ステ「……一応、警備責任者である僕の元に話が来るはずなんですが」
イン「ングングング」
リメ「まあ。土御門が『オレに任せとけ』と言っていたのに……前代未聞だわ」
ステ「護衛も連れず、のこのこ伏魔殿に乗り込んでくる女王陛下(クイーンレグナント)も
前代未聞だとは思います。っていうかまたアイツは面白がって……」ハァァ
レッ「なんで私をナチュラルにゼロにカウントしてるんですか!」モシャモシャ
イン「ゴキュゴキュゴキュ」
- 220 :女王編10 [saga]:2011/05/29(日) 17:57:05.49 ID:trDPI7LC0
ステ「だいたい君はさっきしょぼくれて帰ってっただろう」ハンッ
レッ「しょぼくれても帰ってもいません!
いやー何というか、よく確かめたら許可下りてたみたいで」イヤーン
舞夏「ステイルのしょぼくれた顔が見れた、ってことで良しとしようかー」オカワリイリマスカー
レッ「ですね」ア、オネガイシマス
ステ「良くてたまるk」
イン「ズズズズズズ!」
ステ「…………もしかしてわざとやってますか?」
イン「ドキッ!」
ステ「いや『ドキッ!』じゃなくて。全部口に出てますし」
イン「にゃんのことだかふぁからないぜよ」モキュッモキュッ ゴクン!
ステ「一番信用の置けない口調も一緒に出てきてるんですよ!」
キャ「テンポのいいジャパニーズ・マンザイなの」
レッ「二人とも日本は長いですからねー。日本人も身近に沢山いますし」
リメ「日本人は漫才を誰もが嗜む民族なのね……」
舞夏(あの二人のせいで日本が誤解されたなー)
- 221 :女王編11 [saga]:2011/05/29(日) 17:59:45.16 ID:trDPI7LC0
ステ「で? 結局何の御用ですか? 女王陛下に王妹殿下」
キャ「別に大したことじゃないな。ほら、今日はこれからちょっと忙しいし」
ステ「(じゃあ来るなよ……)護衛は…………お二人とも取らない主義でしたね」
キャ「騎士団長がうるさいからとりあえず、一人連れてきたの」
ステ「よりにもよって、の最悪の人選ですね」ハァ
レッ「やーんステイルくんってば、そんなに照れなくてもぉ」
リメ「それで聞きたいのは、この間のロシアの件で」
ステ「……? 僕の報告に何か不備が?」
レッ(放置プレイもイケる口ですよ、私は)ヌフフ
リメ「そちらに問題があったという事ではありませんの。
……ただ、当の総大主教のお人柄を確かめたのは最大主教だから」ニヤ
ステ(……?)ゾク
キャ「仔細をもう一度、インデックスの口から語ってほしいということだ」ニヤリ
イン「私?」
レッ「警備体制に不備が無かったか、という点も気になるので……
警備責任者の挙動も詳らかにお願いしますよ」ニヤニヤ
ステ「なんだそのこじつけはぁ!! 揃いも揃ってそんなことの為に来たんかいッ!!!」バァンッ!
イン「第一の私見だけどいい感じでキレキレかも、ステイル! 私も負けてられないんだよー!」
ステ「勝たなくていいからぁ!! ちょっと、ノリノリで喋らないでくださいぃぃぃーーっ!!!」
- 222 :女王編12 [saga]:2011/05/29(日) 18:00:46.12 ID:trDPI7LC0
一時間後
ステ「くそっ、くそおっ……本当にアレだけで帰りやがった…………!」ゲッソリ
舞夏「いやーそんな事になってたなんてー」
イン「まいかはどうせもとはるから聞いてるに決まってるんだにゃー」
舞夏「ま、そうなんだけど」
ステ「これじゃ、僕……イギリスを守りたくなくなっちまうよ……」モヤモヤ
イン「いやあ、クイーンレグナントは強敵でしたねー」
舞夏「インデックスとステイルでこんなに意識の差があるなんて……」
イン「……それはどうかなぁ」ボソッ
- 223 :女王編13 [saga]:2011/05/29(日) 18:02:12.47 ID:trDPI7LC0
ステ「結局、土御門もどうしてアレらを通したんだ?」
イン「第一の質問だけど、まいかは何か知ってる?」
舞夏「あー……んー…………まあ、そのー………………」
ステ&イン「「?」」
舞夏「わ、私の料理を王室にも自慢したかったらしいぞー」テレテレ
ステ「そんな馬鹿な…………」
イン「もとはるならあり得ることなの」
ステ「だいたいアイツ、自分が御夫人の料理を満足に食べられないのによくそんな心境になったね」
舞夏「まあそこは本人も悩んでたけど、ステイルを弄ぶって聞いて決心したみたいだー」
ステ「…………おい、君は知ってたのか」
舞夏「てへっ☆」
ステ「」ピキビキ
イン「『嫁の料理自慢』+『ステイル大わらわ』>『一緒に食べられない手料理』」
イン「……ってことだにゃー」
ステ「なにを考えて生きてるんだアイツ…………!!!」
- 224 :女王編14 [saga]:2011/05/29(日) 18:04:03.49 ID:trDPI7LC0
スタスタ ガチャ
火織「おはようございます、皆。……おやステイル、
いつもより顔色が…………いや、いつも通りですね」
ステ「どういう意味だ!!」
イン「おはよーなの、かおり!」
火織「おはようございます、インデックス。……キャーリサ殿下とお会いになったんですか?」
イン「なんでわかるんだし?」
火織(用法がメチャクチャな気もしますが……可愛らしいので良しとしましょうか)ハァ
舞夏「おう、準備できてるぞー火織」
火織「よろしくお願いします、師匠! ……今日という今日こそは!」
イン「第二の質問だけど、今日の朝ご飯はどうだった?」
火織「うぐっ!!!」
ステ「……朝ぐらい和食にすればいいだろう。
仕事の方も相変わらずのようだし、いい加減に騎士団長の胃がストレスでマッハだね」
火織「うう……でも、残さず食べてくれるものですから、つい……」テレ
ステ「」シラー
イン「」シラー
火織「そんな目で私を見るなぁ!!」
- 225 :女王編15 [saga]:2011/05/29(日) 18:06:18.30 ID:trDPI7LC0
火織「コホン……失礼しました。……おや、いつもより食器の数が少ないように見えますが」
舞夏「今日は三人多かったはずなんだけどなー」
イン「! そ、それはだなー」アタフタ
ステ「最大主教はダイエット中だそうだよ」
イン「!? ま、ま、まいかぁぁ…………っ!」
舞夏「~~♪」
火織「そうなのですか、インデックス! ようやく私の気持が伝わったのですね!!」
イン「え、あ…………? そ、そーなの! 火織に言われて節制を心がけてるんだぜい!」
ステ「…………ああ、なるほど。そういうことだったんですか。それは喜ばしいことで」パチパチ
イン「第一の解答だけど、そういうことなんだZEい!」
火織(こころなしか、聞き覚えが……)
- 226 :女王編16 [saga]:2011/05/29(日) 18:08:20.72 ID:trDPI7LC0
ステ「……そろそろお時間です、最大主教」
イン「これからオルソラとシェリーのとこだったかなー?」
ステ「…………ええ、その通りですよ。もう既に胃が痛くなってきた……」
火織「それは、なんというか……ご愁傷様です」
舞夏「骨は拾ってやるぞー」
イン「骨が残ればいいんだけどなの」
火織「…………」
ステ「はぁぁ……先に言っておいていいですか」
火織「……どうぞ」
イン「どうぞだし」
舞夏「どうぞだぞー」
ステ「………………今日も不幸だ」ハアアアアァァァァッッ・・・・・・・・・・・・
ステ(これじゃあまだ悟りには遠いな……)
- 227 :女王編17 [saga]:2011/05/29(日) 18:09:27.74 ID:trDPI7LC0
OUT
アックア(ヴィリアンが一時間でやってくれました)
IN
元第二王女(未婚)←New!
続くのである
- 234 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:45:19.47 ID:JLzuQpbg0
『必要悪の教会』 図書室
シェリー「おう、来たか。おはよう二人とも」
イン「おはようなの、シェリー! オルソラ!」
ステ「……おはよう」
シェ「何だ元気がねぇな。なにか疲れることでもあったの?」
ステ「確かにあったが、これはどちらかと言うと現在進行形というか……」
オルソラ「それではおやすみなさいませ、五和さん。あまり夜更かししてはいけないのですよ」
シェ「…………ああ、そうだよなそりゃ。私は慣れたけど」トオイメ
イン「……ちなみに『これ』は『いつ』なのかにゃー?」
シェ「えーっと、寝る間際に五和に会ったのは……六日前だったかな」
ステ「…………」
イン「…………」
シェ「そんな顔するんじゃないわよ! 仕事モードのときは話は通じるんだ!」
ステ「ふぅ…………はぁぁぁあああ…………さっさと始めてくれ、頼むから」
- 235 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:48:08.83 ID:JLzuQpbg0
オル「あら? 最大主教様にステイルさん。いつの間にこちらに?」
イン「第一の解答だけどついさっきかも。……気にせずおしごt」
オル「まあ、でもどうしてジンバブエに?」
ドンガラガッシャーン!
ステ「君こそジンバブエに何の用があるっていうんだ!? ここはイギリスだ!」
オル「あらあら。先ほどといえば、五和さんはもうお休みになったのでございますよ?」
ステ「朝だ! 今は!! あと五和は仕事中だ!!!」
オル「ジンバブエのお料理は美味でございますよー」
ステ「本当に行ってたのかよ! しかも何しに行ってんだ!!」
オル「まあ、私はいつの間にイギリスに帰ってきていたのでしょう?」
ステ「知るかぁーーっ!! というかこっち側に帰ってきてくれ頼むから!!!」
シェ「いやあ、私も参考にしたい丁寧な捌きっぷりね。あやかりてーな」
イン「ステイルの労災申請、してあげた方がいいかも」ソノウチタオレソウ
- 236 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:49:34.34 ID:JLzuQpbg0
十分後
オル「では最大主教様、いつものお仕事を始めましょう」
シェ「おつかれさん」ポンポン
ステ「」チーン
イン「ステイルの犠牲は無駄にはしないZE!」
シェ「聞いたぞ。また新しい案件を抱え込んだんですって?」
イン「人の身にあまるエネルギーを体に取り込んだとゆー点では、
『コレ』と状況は類似してるんだけどなー」
シェ「それにしたってお人良しが過ぎんだよ。……ま、嫌いじゃないけどね」
オル「溢れる叡智を人の世に役立てようとする…………。
最大主教様のおこないは私もシェリーさんもとても好ましく思っていますよ」
シェ「……勝手に言ってろ」
イン「うん……そう簡単にはいかないけど、これは私が選んだ道だから」
ステ(『禁書目録』の平和的利用、か……)
- 237 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:52:17.95 ID:JLzuQpbg0
今より、五年ほど前。
『生涯』の大半を過ごした学園都市を去り、インデックスは故郷イギリスに単身渡ってきた。
短い生涯でただ一人愛した男と、大切な友人が結ばれるのを見届けての帰還――いや旅立ち。
納得づく、というわけではないだろうが、その事を引きずっているようには一見して見えなかった。
実際数年後に執り行われた二人の挙式では彼女は新郎親族席に座り、
寂しさを堪えながらも――誰もが気付いていたが――しっかり笑い、そして泣いていたのだ。
だが彼女が生きる目的の一つを失った、という事実は変わらない。
愛した男の側に寄り添い、笑い、助けとなる。それはもう叶わないことなのだ。
周囲が見かねるような煩悶の中で彼女が縋りついたのが――
自らの存在意義、『禁書目録』の編纂作業だった。
- 238 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:53:47.14 ID:JLzuQpbg0
『僕が心配しているのはあくまで、彼女の持つ『知識』であって――』
いつ言ったかも判然としないような自身の言葉がどうしてか彼女に伝わり、
『ステイルだって言ったんでしょ? 私の価値は、『知識』にあるって』
そしてまた新たな『枷』を生んでしまったのだと気付いたとき、ステイルは自らを呪った。
(結局、僕はまた君を傷つけてしまったのか)
彼女を、自分に深入りさせたくない。あるいは、自分が深入りしたくなかった?
そのような気持ちから出た一言だった気がするが――
結果は、このザマだ。
そうしてインデックスは人並の幸福を放棄し、己が内の『毒』と闘う道を選んでしまったのである。
- 239 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:55:09.79 ID:JLzuQpbg0
ステ(…………少しボーッとしていたな。作業は……?)ウツラ
オル「……こんなところでございましょうか」
シェ「書き方一つ間違えりゃあ墓場行き、ってのがこの仕事の辛いところよね」
イン「ごめんね……無理させてるかも」
シェ「嫌なら最大主教の命令だろうが何だろうが断ってるわよ」
オル「シェリーさんの言う通りでございますよ。これは私たちが望んで行っていることです」
イン「…………ありがと。シェリー、オルソラ」
ステ(………………)
シェ「さあて、偽書化はこのぐらいにして一旦休憩しねぇ?」
オル「では、お茶を入れて参りますね」スッ スタスタ
ステ「そのくらい、僕がやって……おっと」フラッ
シェ「あら、だらしないわね」
イン「…………ステイル、第一の質問だけど」
ステ「な、なんですか?」
イン「徹夜、何日目?」
ステ「…………!」
- 240 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 19:58:14.15 ID:JLzuQpbg0
シェ「あら、そういうことなの?」
ステ「…………ここのところ、別の『仕事』が忙しくてね」
ステ(『電話相手』もさっぱりだしな……)
イン「……私は、何日目って聞いたんだし」
ステ「………………ほんの、三日ほどです」
シェ「おいおい、そんなんで護衛が満足にできんのか?」
イン「気付かない私だって悪いけど……。…………すている」ガバ
ステ「も、申し訳ありません。ですがねって、え?」
グイッ ポフッ
ステ「」
イン「………………寝て」オサエツケ
シェ「…………ヒュー♪」ニヤニヤ
オル「あら? あらあら、まあまあでございますね♪」モドッテキタ
ステ「み、見てないで、止めろッ!!」
- 241 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:00:38.94 ID:JLzuQpbg0
シェ「別に止める必要ないでしょ? ここからは危険性の低い考察タイムだし」
オル「ええ、ええ。ステイルさんが気をお張りにならなくとも大丈夫でございますよ」
ステ「待て、まさかこのまま」
イン「すている。命令なんだよー」
ステ「…………クソッ! 勝手にしてください……!」フテ
シェ「そ、気にせず寝てなさい」ニヤニヤ
オル「すこやかにお眠りください。
……(パン)そうです最大主教様、子守唄など唄われては?」ニコニコ
ステ「ふっ、ふざけ……」
イン「――Sleep then my prince, oh sleep 」
ステ「お、おい……!」
イン「Slowly the grey shadows creep ~♪」ニコッ
ステ「…………」メヲツムル
イン「Forest and meadow are still――」
- 242 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:02:48.23 ID:JLzuQpbg0
-----------------------------------------------------------
シェ「……いやあ、いつ聞いても惚れ惚れするな」パチパチ
オル「ステイルさんもよく眠ってございます」パチパチ
イン「えへへ、お粗末さまなんだにゃー」ペコリ
シェ「しかしこいつは意外と溜めこむタイプなのね」プニプニ
イン「……ここのところ、確かに顔色がビリジアン気味だったけど、
まさかこんなに無茶してたなんて……」
シェ(ビリジアンて)
オル「ステイルさんは今回の事についてどの程度?」
イン「…………第二の解答だけど、全部の情報を握ってるのはもとはるだけなの。
私はあくまで『治療』のことだけに専念してて欲しいって」
シェ「だが少なくとも、コイツが出ずっぱりになるところまで
事態は進行してるってことだな……」
イン「………………」
オル「くだんの方々は、いつお着きになるのでしたか?」
シェ「……いや、今日だろ。その話を一週間ぐらいさんざんしたでしょうが!」
オル「あら?」
イン「…………無事で着いてくれるか、不安なの」
シェ「祈りは、届くんだろ? だったらシャンとしてなさい」
オル「どうかご安心ください、最大主教様」
イン「…………うん。そうだね!」
- 243 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:04:44.21 ID:JLzuQpbg0
一時間後
ステ「…………んん」
「……から…………も危機……きなの…………」
「…………ぁ………………はどのよ…………ざいますか?……」
「……うーん…………れはちょ……かと…………んだよ……」
ステ(……僕は、寝たんだっけか。あの無茶な状況で……)ズーン
ステ(何を話してるんだ? …………緊張とかとはかけ離れているが)
シェ「……そういうわけでこの! 『出会い系』ってやつにオルソラを登録したんだよ!」
ステ「なにやってんだお前ぇぇーーーーーっっ!!!!」ガバッ!
イン「あわわ! 急に起き上がると危ないんだYOすている!!」ヨケッ
シェ「あら、おはよう王子様。お姫様の膝枕はどうだったよ?」
ステ「…………そんなことはいい! それよりなにを世迷言を言ってるんだ君は!」
イン「………………」
オル(あらあら)
- 244 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:06:23.87 ID:JLzuQpbg0
シェ「いやさ、いつまでもオルソラが行かず後家予備軍ってのはおかしいでしょう?」
オル「私の身は神に捧げたものでございますよ、アンジェレネさん」
ステ「……済まない、当事者ではあるが君に出てこられるとカオスにもほどがあるんだ」
オル「あらあら」オクチチャック
ステ「ゴホン! ……人の心配よりまず自分のことだろうがゴスロリ女ぁっ! 歳を考えろ歳を!!」
シェ「ははん、私はそういうこだわりを既に超越してんだよ。芸術家だし」
イン(聞いててちょっと悲しくなるし)
ステ「ちいっ、この方面からでは駄目か……!」
シェ「それより、ちょっとおかしいのよ。聞いてくれ」
ステ「聞きたくねぇ……」
シェ「まあそんなこと言わないで。登録してから一月ぐらい経つんだけどよ、なんの反応もないの」
ステ「……喜ばしいことだね、彼女の為には」
イン「でもでも第一の疑問だけど、オルソラぐらいの美人さんに
男が食いついてこないっていうのは変なんだよー」
オル「照れてしまうのでございますよステイルさん」テレテレ
ステ「(そっちは僕じゃない)……どれ、携帯を見せてくれ」
シェ「はいよ」ヒョイ
ステ「どれどれ…………」ポチッ
- 245 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:08:12.59 ID:JLzuQpbg0
デーンデーンデーン デデデ デデデ デーンデーンデーン
イン「…………」
ステ「…………」
イン「……火織のテーマ曲ですたい」
シェ「そんなのあったのかよ? 羨ましいわねー」
オル「私も欲しいのでございますよー」
ステ「………………」
ステ「……………………」
イン「……どうぞ、ステイル」
ステ「……一つだけ言うなら。…………これは『出会え系』、だ」
イン「オルソラ君! 座布団いちm」
ステ「やかましいわぁぁーーーーーーっっ!!!!」
- 246 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:10:03.63 ID:JLzuQpbg0
シェ「似たようなもんだろ、何か違うのかしら?」
ステ「大岡越前とコンバット越前ぐらい違うんだよ!!」
イン「どうどう、落ち着いてー」
ステ「貴女は僕を休ませたいのか疲れさせたいのかどっちなんだ!」
イン「『ステイルには休んで欲しい』『ドタバタも見たい』
「両方」やらなくっちゃあならないってのが「最大主教」のつらいところかも」
シェ「覚悟はいいか? ワタシはできてるわ」
ステ「僕は出来てないんだよォォーーーーッッ!!!」
オル「お茶が美味しいのでございますー」ホノボノ
オル「さて皆さま、今日のところはこれぐらいにしておきましょうか」
ステ(僕は何のためにここに居るんだろう)ゼェハァ
シェ「当面の課題には答えが出たしな。……あと何冊だったかしら?」
イン「第三の解答だけど、これであと十万二十七冊かな」
シェ「ははは、そりゃあいい。十万を割るまであと少しね」
オル「先は長いですが精一杯協力させていただきますよ」
イン「ありがとう。私一人じゃどー頑張ってもここまでは来れなかったんだよ」
イン(…………『私一人』じゃ……)
シェ「またなの? いちいち礼なんて要らないっての」
ステ「…………貴女のひたむきな姿勢があればこそ、ですよ」
オル「ふふふ、それではお開きに……」
- 247 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:12:02.84 ID:JLzuQpbg0
prrrrrrr チャラーチャッチャラーン
ステ「……失礼」
イン「あ! ちょっとごめんなの」
シェ「…………!」
オル「…………?」
イン「……わかったんだよ。わざわざありがとう!」ピ
シェ「……着いたのか?」
イン「うん! いつわからで、今こっちに向かってるって!」
オル「まあ、喜ばしいことでございます」
ステ「……いいだろう、すぐに行ける。また後で」ピ
イン「ステイル?」
ステ「……予め言っておきますが、土御門ですから。
そちらも無事進行中のようですから、今度こそ着いて来ないでくださいよ」
イン「むー。……まあ、しょうがないなー」
シェ「寮の中ならそこそこ安全よ。安心して行ってきな」
オル「お土産など買ってきていただけますかー?」
ステ「……とにかく、行ってきます」スッ
イン「……行ってらっしゃい」フリフリ
- 248 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:13:44.78 ID:JLzuQpbg0
ロンドン とある路地裏
スタスタ
ステ(この間より奥だな……)
元春「おっ、来たな」
??「どうも」
ステ「…………彼が?」
??「ええ、自分の口からご説明するのが筋、というものですので。
わざわざご足労いただきありがとうございました」
---------------------------------------------------------
『必要悪の教会』女子寮
ワイワイ ガヤガヤ
五和「最大主教、お連れしました」
イン「ありがとなんだよ、いつわ。
みんな、今日からここに住むことになる二人でございますよ。
……さ、自己紹介して」
トチトリ「私の名はトチトリと言う。今日からお世話になる。……ほら、お前も!」
- 249 :暗号官編 [saga]:2011/05/30(月) 20:15:45.60 ID:JLzuQpbg0
「元、『翼ある者の帰還』所属の魔術師、エツァリと申します。どうかよろしく」
「わ、わかってる! アス……いや、メキシコ出身のショチトルだ。よ、よろしく頼む」
------------------------------------
OUT
フレ/ンダ(シェリーがついでに矯正)
IN
おばあちゃん ←New!
------------------------------------
続くんだぞー
- 258 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:16:43.46 ID:yn+wO9T20
現代において、世界は大きく三つに分けることが可能である。
第三次世界大戦を引き起こした科学サイドと魔術サイド。
これら二大勢力は基本的にそれぞれの分野に特化しており、お互いの技術が相入れることはまずない。
しかし二大勢力が鎬を削る傍らには、第三勢力が目を光らせているというのが歴史の常である。
科学と魔術、そのどちらをも利用しようとする者たち。
三次大戦を静観していた彼らはこれを好機とし、外交・戦場の両面から攻勢をかけるはずであった。
しかし蓋を開ければ、両サイドは多少は疲弊したものの深手を負うことはなかった。
魔術側に至っては終戦間際に三宗派のトップが手を取り合う、という全くの想定外。
先だって中米最大の魔術結社が事実上の壊滅状態に陥っていた『第三世界』は大きく動揺し、
科学と魔術が表面上だけでも友好的に歩む中、世界各地で徐々に混迷を深めていったのである。
- 259 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:18:30.11 ID:yn+wO9T20
「ステイル=マグヌスさんですね? お初にお目にかかります」
張り付けたような笑みを浮かべながら、どう見ても東洋人にしか見えないアステカの魔術師が会釈する。
「貴方が、土御門の『共犯者』か」
「『共犯者』、とは言い得て妙です。自分達の関係を表すにはこれ以上ない。
さすがですね、土御門さん」
「よせやい、照れるぜい」
「…………軽口はいい」
どうにも腹に一物も二物も持ってそうな男である。
ステイルにとって、あの女狐を連想させる人格の持ち主は天敵と言ってもよい。
……天敵が多すぎる気もするが。
「なるほど、依然変わらず短気な方のようだ」
事実、早速表情も変えずに小型の爆弾を投げ込んでくるではないか。
ステイルも負けじと動揺を挙動に出さないよう努めて応じた。
「僕を知ってるのか」
「ええ、存じ上げておりますとも」
――優男は、ますます笑みを深めた。
- 260 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:19:52.25 ID:yn+wO9T20
「あなたには、自分の身の上話をしておく方が話の通りが良さそうですね」
「できれば、遠慮したいが……」
「まあ聞いてやれ、ステイル。お前にもなかなか興味深い話だと思うぞ」
「だったら、君がしたらどうなんだ……!」
口を挟んできた土御門に怒気を見せはしたものの、これ以上押し合っていても話が先に進まない。
ステイルは首だけ動かしエツァリを促した。
「インパクトの強い話から始めてしまいましょうか。上条当麻のことです」
「……!」
「掴みはオッケー、のようですね」
(まったく、本当に僕の周囲にはこんなヤツばかりだ)
胃以外に心臓まで痛むのを感じながら、ステイルは毒をすんでのところで胸中に収める。
「中米の魔術結社『翼ある者の帰還』は、かつて『幻想殺し』が周囲に
科学魔術問わず引きつける、極めて強大な戦力を危険視しました」
――上条勢力。
ステイルがそのような不愉快なネーミングを知るはずもないが、心当たりならありすぎるほどにある。
「そして組織は上条当麻を抹殺すべく、刺客を放った。それが、自分の物語のプロローグですね」
- 261 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:21:25.11 ID:yn+wO9T20
「まあ、正確にはそのもう少し前に転機があったわけだが」
「いやですねえ。それをこれから話すところだったんじゃないですか」
「茶番はいいよ。次」
「上条勢力……あ、これは自分が勝手にそう呼んだだけですが。
その存在を自分が監視するにあたって、あなたのことも調べていた、というわけです」
「なるほどね……。次」
「……気乗りしてないというか、普通に体調悪くないですかあなた?」
「一日三回の胃薬が欠かせない日々だよ……」
「…………手短にいきますね」
……横で大笑いしているアロハ野郎よりは良心の持ち合わせがあるらしい。
「…………監視対象の中に、自分の人生をレールから思いきり外してくれた女性がいました。
――御坂美琴。当然あなたもご存知ですね?」
「別にあの子が何かしたわけでもなく、お前が勝手に踏み外しただけ、って話だけどにゃー」
御坂美琴。知らないわけがない。
上条当麻が彼女を選ばなかったただ一つの理由である女性の名は、
ステイルにとっても特別なものだった。
- 262 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:23:24.15 ID:yn+wO9T20
「謝る、と言うわけではありませんが」
口を噤んだステイルを尻目にエツァリは続ける。
「上条当麻がみ……美琴さんを選んだのは、ひとえに自分との約束を守るためです。
極論、そこだけでも承知して欲しくこの話を貴方にしたのですよ」
ステイルの脳裏に過ぎる、いつかの光景。
『どうしてだ。どうしてあの子を選ばなかった?』
――意味のない問いかけだった。あんなことをして、誰が報われるわけでもなかった。
(僕はあのとき、どんな答えが欲しかったんだ……?)
上条は目の前の男との約束を守り、ステイルとの約束を完遂することはなかった。
彼の意志がどうであったとしても、それが事実であり、結果である。
別段誰が悪いと言う話でもない。
上条当麻を、あるいはこの男を責める資格など、ステイルには無いはずだった。
「………………終わった話だね」
「…………そうですか」
咥え煙草を上下に揺らしながら、ステイルは自嘲する。
――いったい、何が終わったと言うんだ。
- 263 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:26:11.18 ID:yn+wO9T20
「では、あとの話は端折って進めてしまいましょう」
「おいおい、こっからが本題だろうが」
「まあまあ」
肩の荷が下りたのか、エツァリは先刻よりハリボテ感の薄れた笑顔で大胆にのたまう。
「僕は事情が理解できればなんでもいいさ。続けてくれ」
「ではお言葉に甘えて――」
紆余曲折を経てエツァリは、かつての同僚とともに組織の残骸に追われる身となった。
いや、残りカスだけならばたいした問題にはならなかったのだ。
なにせ三人が身を隠したのは科学の中枢、学園都市だったのだから。
――問題は、エツァリが二冊の『原典』をその身に宿す、正真正銘の『魔導師』であるという点に在った。
「……それは、本当なのかい」
「ええ、この場でお見せしても構いませんよ?」
「勘弁してくれ……」
不幸中の幸いか、その情報は三宗派をはじめとする純正の魔術サイドに大々的に伝わることは無かった。
しかしエツァリは『第三世界』――特に中米に点在する魔術結社に、
反攻のための兵器として狙われる事となってしまったのである。
- 264 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:28:08.34 ID:yn+wO9T20
---------------------------------------------------------------------------
見知らぬ人々に囲まれ、ショチトルは不安を堪えてあたりを見回した。
奇抜な格好をしたリーダーらしき女性の後ろに群がる数十人のシスター。
少女趣味の服装を纏った、ちょっと……いやかなり少女には見えない女性。
ここまで護衛してくれた女性からは温かみを感じる。……例えるなら、おしぼり的な。
長髪ポニーテール以上に、嫌に露出度の高い服装が印象に残る女性。
そして、兄と慕う人の知人を通して、今まで幾度となく電話越しに助言をくれた――
他の全てが霞む美貌を誇るこの集団のトップ、最大主教。
女子寮なのだから当然のことなのだが、見事なまでに女女女。
更に揃いも揃って美人どころとなるといかに同性とはいえ、ショチトルは気後れを隠せない。
「な、なあトチトリ……エツァリはどこに行ったんだ?」
この場でもっとも心の許せる親友の袖を引き、ショチトルは自らの最大の不安をぶちまける。
二十代半ばだというのに幼さの残る彼女の仕草に、数人のシスターが鼻を押さえてのけぞった。
…………大丈夫かこの寮。
「まったくお前は……この歳になってまーだ『愛しのエツァリお兄ちゃん』と
離れ離れになるのが堪えられないのか?」
「おまっ、ちょっ、何を言い出すんだトチトリィィ!!??」
- 265 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:30:18.02 ID:yn+wO9T20
二人の香ばしいやりとりに、シスターどもから今度は黄色い悲鳴が上がる。
そうそう、そういう反応が正しいんだよお前ら。
「愛しの!」
「お兄ちゃん!! とミサカは(ry」
「ブラコン!? ねぇブラコンなの!?」
「なんと背徳的な……これは主への冒涜です!!」
「いやいや、義兄妹で血のつながりが無いってパターンこそ至高だぞー」
「どのみちガチよ今の反応! ねぇそのエツァリさんとどこまでイってるの!?」
「かーっぺっ! 結局男持ちですかい! どいつもこいつも貞操観念がなってやしねーです!!」
「んもーそんなこと言ってるから行き遅れるんですよシスター・アニふがっ!!」
「あらまあ、膝枕とは甘酸っぱいですねぇ」
一部怨嗟の声も混じっていたが(時間軸がおかしいのも居る気がするが割愛)とにもかくにも姦しい。
女三人姦しいとは言うが、少なく見積もっても五十人はこの場に居るのだ。
姦しい×16である。
「あ……う…………ええぇぇぇぇ…………?」
ショチトルの混乱やら羞恥心やらが極限に達しようとしたそのとき――
- 266 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:33:03.50 ID:yn+wO9T20
「静かになさいっ、あなたたち!!!」
乱痴気騒ぎを切り裂く凛とした声が一閃した。
声の元はまとめ役たる最大主教……では当然なく、エプロン姿の聖人のものであった。
「彼女たちは長旅で疲れているんです。くだらない話をしてる暇があればまず休息でしょう!」
いまいち迫力に欠けるがそこは腐っても(腐ってないけど)聖人、怒らせては後が怖い。
「まったくですね! ほらあなた達、やんなきゃならねー事が山積みでありやすよ!」
「「「「「はーい」」」」」
女子寮の男持ち率に嘆いていたアニェーゼ=サンクティス二十四歳も
ようやく正気に戻り、シスターをぞろぞろと率いて寮を出ていく。
「それではお土産を楽しみにしてくださいませ」
「お前は行くんじゃねぇ!!」
またジンバブエにでも行くつもりだったのだろうか。
「…………ヤレヤレなんだよ」
- 267 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:35:37.28 ID:yn+wO9T20
「それでは、女子寮の中をご案内させていただきます、とミサカは久々の仕事に奮い立ちます」
女子寮の管理人――ショチトルにはどこか見覚えのある顔――に連れられ、寮内を見学して回る。
比較的まともな人格の者ばかりだったことも手伝って、ショチトルの緊張も徐々に和らいできた。
「ここがお二人の部屋です。では中に……」
「あ、すまない。……ちょっといいだろうか?」
「何かご不明な点がありましたか、とミサカは自らの説明に不備があった可能性を危惧します」
いよいよ二人が暮らす相部屋の前に来たとき、ショチトルが突然声をあげた。
「いや、そういうわけでは! ……その、最大主教殿はお時間のほう、大丈夫だろうか?」
「んー? 第一の解答だけど、遠慮しなくていいかも。
それから私の事は、インデックスって呼んでくれると嬉しいな!
……これ、電話でも言ったよねー?」
「す、すまない! 面と向かうと、やはり失礼なのではないかと……
それでは皆さん、できればインデックスと二人きりで話をさせて頂きたいのだが」
残りの面々は――特に火織と五和は――顔を見合わせると頷いて、
「いいでしょう、私たちは下の食堂で待ちます。何かあれば呼んでください」
ぞろぞろ連れだって、階下へ降りていった。
「それじゃ、中に入ろっかにゃー」
(…………にゃー?)
- 268 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:38:10.27 ID:yn+wO9T20
質素な内観のワンルームに机とベッドが二つ、それに小さな箪笥だけが備え付けられている。
インデックスとショチトルはお互いベッドに座って向き合った。
「まずは、お礼を言わせて欲しい。……何から何まで、大変お世話になりました。
それだけ、二人きりで伝えたかったんだ」
「…………ふふ。困っている人を見たら思わず手を差し伸べちゃう。
イギリス清教にはね、そんなおかしな病気に罹ってる人がたくさんいるんだよ」
「……それは、とても素敵なことだ」
今までショチトルが殆どエツァリ達としか共有したことの無い温かさが、この場所には溢れている。
――自然と、笑みがこぼれた。
「身体の方は、その後変わりないの?」
「ああ。こうして二本の足で立てるのも、あなたと、あのお医者様のおかげだ」
「……くすぐったいなあ。あなたの体に残った最後の『毒』を抽出する方法は、
ついさっき、確立が終わったんだよ」
「……ほ、本当なのか? こんなに早く?」
「私ひとりでは無理だったけど、たくさんの人に協力してもらったから。
…………エツァリに教えたら、ものすごーく喜んでくれるかにゃー?」
なごやかに進む会話の中、にやりとほくそ笑んだインデックスがやおら舵を切る。
前触れもなく揺らいだ足場に対応できず、ショチトルは狼狽した。
- 269 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:40:09.41 ID:yn+wO9T20
「ななななな、なんでどいつもこいつもアイツの名前を出すんだぁっ!!!」
「べっつにー? 私は依頼人に報告しなきゃならないだけで他意は無いし」
「ウソをつくなぁっ!!」
「ふふ…………照れなくてもいいのでございますよー」
「照れてないっ!!」
ショチトルをひとしきりからかった後、改めてインデックスは話題を振った。
「でもいいよね。強くて冷静で格好いいなんて、理想の男性かも」
「…………ストーカーでさえなければな」
「…………あー…………」
選択肢を間違えたことを悟ったインデックスの頬が引きつる。
と同時に、この話を続けると『どこ』に辿りつくか明確に意識してしまう。
「そっか…………エツァリは、みことの事が好き、だったんだよね……」
- 270 :アステカ編① [saga]:2011/05/31(火) 22:42:44.53 ID:yn+wO9T20
二人の間に初めて、気まずい沈黙が降りる。
しかし全ての事情を把握しているわけではないショチトルは
問題が野郎の側にあると思いこみ、ピンポイントで墓穴を掘ってしまった。
「ま、まあ! 過去の話だ! 今はストーキングしてるわけじゃあない!
エツァリも彼女の側には信頼できる男が居ると言っていた!」
「う、うん…………。それは良かった……ね?」
ショチトルの認識では、インデックスと美琴は単なる友人でしかなく、
その間に立つ『男』の正体など彼女が知る由もない。
決して悪気がある訳ではないのだが――
「そ、そうだ!」
――だが、彼女の失敗は残念ながらこれに留まらない。
「わたしの事はもういいだろう! あなたの方こそどうなんだ、インデックス?」- 285 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 20:54:16.99 ID:NeFPis3v0
---------------------------------------------------------------
「クシュン! ……失礼。あなた今、自分の噂しませんでしたか?」
「目と耳はどこに付いてるんだ貴様!?」
「話を続けようぜい」
エツァリの事情はおおむね説明が済んだ。
ではいったい何故、今回イギリス清教が彼らを保護するに至ったのであろうか。
答えは明快、現在のイギリス清教の『敵』が中米の魔術結社くずれだからである。
「敵の敵は味方。はっ、なるほど単純明快だ」
「だろ?」
「……皮肉を言ったつもりだったんだがね、『背中刺す刃』」
「心配するな、自覚はある」
年月をかけて緩やかに異常に蝕まれた『第三世界』は一年ほど前、ついに一線を越えて暴走を開始した。
各魔術結社が科学兵器を併用したゲリラ活動に踏み切ったのである。
主な標的はいまなお最大勢力たるローマでも、極寒という地の利を持つロシアでもなく――
科学の総本山学園都市と、その友好勢力イギリス清教であった。
- 286 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 20:57:25.82 ID:NeFPis3v0
大半は内乱などで崩壊した組織のなれの果てである。
所詮は科学や魔術に正面きって戦う力などあるはずもない。
しかし科学にも魔術にもなりきれない半端者どもの抵抗は、
大方の予想をはるかに越えて長期化の様相を呈していた。
烏合の衆ですらなかったゲリラ組織だが、この場合はそれが功を奏するという結果になった。
ただでさえ数だけはいるのに潰すべき頭が存在せず、一網打尽になどしようがないのである。
「なるほど、ようやく話が見えてきたね……」
「お察しいただけて幸いです」
そこで土御門はその卓越したスパイとしての能力を生かし、大胆にも敵の巣窟メキシコに潜入した。
彼はイギリス清教が魔導師(エツァリ)を手中に収めようとしている、
という噂を中米全域に流し――ほぼ事実ではあったが――組織の危機感を煽った。
- 287 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 20:59:31.28 ID:NeFPis3v0
「そして見事、連中を誰もが待ち望んでいた『烏合の衆』に仕立て上げたってわけだ」
「自分で見事とか言うな」
「あとはオレたちの……いやお前の陣地に引きずり込んで一網打尽、だ」
「……その割には僕も含めてみな、作戦の全容を知らないんだが」
「『さっき』皆には伝えた。準備万端なんてそぶりで
一月も二月も手ぐすね引いてたら敵さんも警戒が強まるだろう。
あくまでこれは向こう側の奇襲作戦なのさ。……対応できないとは、言わせないぜ」
「……本当に、好き勝手言うよ」
危険な賭けだが、土御門が胴元なのだ。すなわち十分に成算がある、ということである。
「まあ、そういうわけでお世話になる、ということです」
「これは双方の利害が一致した話だ。そうでもなきゃ受け入れられなかったんでな」
「よく言うねまったく。かたや魔術三大勢力、かたや三人の男女。
『利』だけで成り立つ取引ではありえないな」
「……ま。そのへんが私情ってやつさ」
極めて珍しいことに、土御門が言いにくそうに口ごもった。
よほどの事情があると言うのだろうか。
それともやはりこの優男に友情のひとつも感じていて、それが気恥ずかしいだけなのか。
ステイルが思考の末、これ以上の追及は止そうかと考えていた矢先――
「やはり、ショチトルの『おねがいお兄ちゃん♪』作戦の戦果は計り知れないものでしたねぇ」
待ちに待った、と言わんばかりにエツァリが大型焼夷弾を投下した。
- 288 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:01:52.06 ID:NeFPis3v0
「…………おい」
「~~♪」
「兄妹……もとい夫婦そろって同じようなリアクションを取るな!」
「……まあ、むかし舞夏が誰彼かまわず、それこそカミやんにまで
『お兄ちゃん』呼ばわりしてたことへの……ささやかな意趣返しぜよ」
「なんでそれが今、廻り廻って僕に精神的ダメージを与えてるんだっ…………!!」
「人の世のつながりとは数奇なものですねえ」
「元はといえば貴様のせいだぁーーーーっ!!!」
寂しい路地裏にお決まりの絶叫が反響した。
人払いをしてなければ野次馬が集まってもおかしくはなかった……
……やっぱ集まんないかも。いつもの事だし。
「しかしやはり、自分としてはあなたに奇妙な繋がりを感じずにはいられませんよ」
焼夷弾の延焼被害に遭ってしまったステイルが落ち着くのを見計らって、
エツァリが神妙な顔で新たな話題を切り出す。
「……ぜぇ……はぁ…………何の話だい?」
「…………少々、愚痴っぽくなるのですが」
ステイルの疑問に構わず、彼は微笑を苦笑に変えて続ける。
「報われない恋……というのはなかなかに、と言う話です」
- 289 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:03:40.17 ID:NeFPis3v0
------------------------------------------------------------------
「あなたの方こそどうなんだ、インデックス?」
悪意など微塵もない言葉が、インデックスの胸に突き刺さる。
「…………駄目なんだよ。私の愛した人は、他の女の子を選んだの。
私から見てもお似合いというか、似た者同士の二人で…………。
だからその恋はもう、終わってる……はずなの」
本当に、よく似た二人であった。
誰かが、いや誰だったとしても苦しんでいるのを見れば放ってはおけず、
自らが傷つくことを顧みずに手を差し伸べてしまう。
……言葉にすればいやに薄っぺらく聞こえてしまうものだ。
しかし彼と彼女にとって、
その他人が鼻で笑うような感情こそが、
時に独善と呼ばれる行動こそが、
自分だけの現実(パーソナルリアリティ)など、軽く凌駕する――
――自分だけの信念(アイデンティティー)なのである。
だからこそかつてインデックスは、自らの敗北をあっさり認める事ができたのだ。
認めて、しまったのだ。
- 290 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:06:19.23 ID:NeFPis3v0
「…………大した経験のない私が言うのもなんだが、恋は一生涯に一度きりではないだろう」
「……そうだね。確かにいま、他に気になってる人はいるんだよ」
煙と焔の匂いを常に纏う、同僚の――今は部下という事になっているが――赤髪の魔術師。
彼は自分の記憶の外側で、更には意識の外側でも、変わらずに自分を守り続けてくれていた。
そのことを、情報としてインデックスは既に知っている。
「でもね……。それも、駄目なの」
そして今なお、昔と『なにも変わらず』自分を守ってくれる。
「……いったい、何故なんだ?」
だからこそ、無理なのだ。
「あの人が、すているが好きなのは……私じゃないから」
- 291 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:08:21.09 ID:NeFPis3v0
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「僕が愛したのは、彼女じゃあない」
ステイルが煙と共に吐き出した呟きに、エツァリはおろか土御門でさえ驚きを隠しきれなかった。
「おいステイル、お前…………」
「――そんなことは、大した問題じゃあないんだ。……『僕にとっては』ね」
続いた言葉に、二人は押し黙る。
口調は軽いが、言葉に籠る重さがどうしようもなく圧し掛かってきた。
「…………なるほど。自分もこういう事に関しては一家言持っているつもりでしたが」
「別に僕のそれだって、大それたものではないよ」
そう、ステイルにとって自分の想いなど何ほどのこともない。
今までさんざん、封をして閉じ込めてきたモノなのだから。
だから、ステイル=マグヌスにとっての『問題』とは『そこ』ではないのだ。
- 292 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:10:47.79 ID:NeFPis3v0
気まずい沈黙の中、突如としてステイルが目を瞑り、僅かののち見開く。
「無駄話をしてるうちに、来たようだね」
「……! 早すぎやしませんか……!!」
「そうか? オレは今日迎え撃つ腹積もりだったがな……どこだ?」
「テムズ川沿い上流から……八人か」
「……自分が行きます」
「ふざけるな。何のためにお前をロンドンに連れてきたと思ってるんだ」
「………………」
エツァリは俯いて歯噛みする。本来ならそこまで義理堅い男ではないのだが、
これが大きな『借り』であるという感覚は拭い去りがたい。
「お前は寮に行って、大事な女を側で守れ。なあに、心配しなくても……」
土御門がそんな彼を見かねて叱咤する。
そのとき、こともなげにステイルが放った一言は、エツァリをして驚愕させるに十分であった。
「そいつらは、大したことがなかった。……七人、片付いたよ」
- 293 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:13:03.38 ID:NeFPis3v0
「な…………」
「数が合わないが、あと一人はどうした?」
「どうも、一般人と一緒に居るようで手が出しづらい」
「人質でも取ったか? それは少し厄介だな……」
「僕が直接行って対処したほうがよさそうだね」
「いやいや、お前は最大主教とランベスに戻って指揮を取れ」
「………………はあ?」
露骨に顔をしかめるステイルだが、すぐに土御門の言わんとするところに思い当たる。
「そんな顔色で戦場に出てこられても足手まといだ、と言ってるんだ」
「……チッ」
今回の襲撃の前触れだったのかはわからないが、
彼は小規模な魔術師集団への対処のため、深夜に意識を張っていた。
そのせいでここ三日ほど、ステイルは満足な睡眠を――ほんの一時間ほどを除いて――取っていない。
- 294 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:16:32.38 ID:NeFPis3v0
「……ギリギリまで情報を伏せていたのはオレだ。全面的に信頼しろとは言わないがな」
……それも、納得できないことではない。
土御門を越える頭脳が他に『必要悪の教会』に存在しない以上、
リスクを見越して情報の分散を最低限に抑えることはすこぶる合理的であった。
「…………わかったよ」
「では、行きましょうか」
この場は、土御門が正しいことを認めざるを得ない。
既にすっかり落ち着きを取り戻しているエツァリを伴い、ステイルは路地裏から去っていく。
その背中に向けてどこかおどけた、しかし喜色を隠しきれない声がかかった。
- 295 :アステカ編② [saga]:2011/06/01(水) 21:18:09.73 ID:NeFPis3v0
「ステイル、『オレ』を信じろとは言わん」
「ただ、テメエの築いた『要塞』と……」
「――必要悪の教会(オレら)を信じて、待ってろ」
- 304 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 20:46:36.04 ID:DSagRTE50
ステイル=マグヌスは専守防衛に長けた魔術師である。
一定のエリアにルーンを刻んで己の『陣地』とし、
その内側を戦場に選べば聖人や超能力者といった怪物たちともどうにか、伍する事ができる。
しかし長所を裏返せば短所になるのは至極当然のことで
彼は追跡戦を最たるものとし、討って出る戦闘ではその戦術的価値を大きく下げてしまう。
ただ一人を守れる力。
それは彼が渇望しているものであり、終着点に着いたのだと諦めてしまっても良かった。
だが、ステイル=マグヌスはそこでは終われなかった。
『ただ一人を守れる力』では、彼女の笑顔までは守れないのだ。
ならばどうする。どうすればいい。
方法は二つあった。
一つ、『陣地』を動かしてしまう。
フィアンマの『ベツレヘムの星』は極端にすぎる例だが
常に陣地として機能する動く要塞があれば、ステイルの求める力は手に入るかもしれない。
そして、もう一つは――――
- 305 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 20:48:49.97 ID:DSagRTE50
ステイルとエツァリを見送った土御門は、タイミングを見て背後の暗がりに声を掛ける。
「もう出てきていいぞ」
「ったく、なーにカッコつけてんですかグラサン」
現れたのは戦闘修道女の部隊を統括する、アニェーゼ=サンクティスである。
「ま、ちょっと嬉しくなってな。……配置は終わってるか?」
「完了したから来てんですよ。それとさっきのアレですけど、
私たちは『必要悪の教会』にもイギリス清教にも鞍替えした覚えはありゃしねーんですが」
「十年経ってまだそんな事を言うのか……。だがどっちみち、助けてくれるんだろ?」
「ぬぐっ……ここでツンデレキャラになっちまうのは、何だか負けた気分になりそうです」
『別にアンタ達のためじゃねーんですからね!』というテンプレートをなんとか飲み込みはしたものの
十年慣れ親しんだこの街を守る、というアニェーゼの覚悟に揺らぎはない。
「素直で結構。さあ、おっぱじめるか」
「ま、私たちの出番が来ちまうほどの相手は、今のところ皆無ですが」
路地裏を抜け、陽が中天にかかっているにも関わらず
猫の子一匹――このタチの悪い二匹は例外だが――いないロンドンの街路に出る。
- 306 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 20:50:35.26 ID:DSagRTE50
「……嬉しいってのは何の事なんです?」
周囲への警戒を怠らず、アニェーゼが徐に問いかける。
「…………ん、ああ。ステイルのことでな……」
「まさかあの早漏状態が好ましい、とか言うんじゃねーですよね」
まったく見習いたい口の悪さだ、と苦笑しつつ土御門はいらえを返す。
「言ってしまえば、そういうことだな。オレはアイツを昔から知ってるが、
十三になるかならないかって頃に一人の女に人生を捧げる覚悟を決めちまったんだ。
それだけでも大したイカレぶりだろう?」
「……私だって、そのぐらいで神にこの身を捧げてやすよ」
「そりゃあ失礼」
もちろんまったく悪びれずに大男は続ける。
- 307 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 20:52:54.64 ID:DSagRTE50
「まあそういう経験を通して、あまりにも早く『自分を殺す』ことを覚えちまった。
……考えてみれば昔からその辺は異常だった。だってそうだろう?
惚れた女が自分など眼中にもない事をわかっていながら、
それでも守る決意は一度だって揺らがなかったんだからな」
「…………美しい話です。良いか悪いかは別として」
自信の過去も悲惨なものであるゆえか、アニェーゼも神妙な顔で聞き入る他ない。
「ところが今はあのザマだ。インデックスを守れるのは自分だけだと先走って、
この大事な時に体調不良。…………完全に護衛失格だ」
「おお、辛辣辛辣ぅ」
「守る相手が遠くから近くに来た分、視野が明らかに狭くなってるんだな。あれは」
「……の割には嬉しそうじゃねーですか。最初の質問に逆戻りです」
「まあつまりだな…………」
土御門が結論に入ろうとした、その時。
「この話はまた後で、ってことだ」
「…………そのようですね」
- 308 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 20:55:03.32 ID:DSagRTE50
土御門とアニェーゼの前に、十を超える影がぬうと現れる。
魔術でも科学でもなく、そのどちらでもある――――作戦コード、『半端者』の集団だ。
「おうおうおめでとさん、アンタらが最初の『通過者』のようだ。ここまでの旅路はどうだった?」
しかし彼らは一様に決して浅くない負傷を負っている。いずれも――火傷である。
「いやー長旅御苦労さまでしたぁ。お疲れなんじゃねーですか?」
それを見たアニェーゼの顔が嗜虐心に揺さぶられて凶悪に歪む。
隣の土御門が思わず一歩引くレベルの残念加減である。
「そんじゃぁまあごゆっくりできるように――」
- 309 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:00:48.85 ID:DSagRTE50
パチンに彼女が指を鳴らすと、こちらも十人以上のシスターが
ルチアとアンジェレネに率いられて姿を現し、『半端者』を取り囲んだ。
「防衛を重視、退却を禁止! 不退転の覚悟で、異教の友人を守り抜け!」
「し、シスター・アニェーゼ、ほどほどにしてくださいね……」
数の上で互角であろうと、アニェーゼ達と敵方には埋められない差がある。
それは体力であり、装備であり、練度であり――戦う理由だ。
「――豚肉市場に送ってあげちまいますから、よーろこんでくださいねぇぇええ!!!」
「聞いてないですよね……」
「だにゃー」- 310 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:03:38.67 ID:DSagRTE50
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女子寮についたステイル達を出迎えたのは、
火織、シェリー、オルソラ、五和、トチトリの五人だった。
「始まったのですね、ステイル?」
移動中も矢継ぎ早に使用していた携帯電話を耳から離すことなく、ステイルは火織の問いに頷く。
「僕の『陣地』の欠点を補うには君とシェリーの力が不可欠だ。行ってくれ」
「任せときな」
「私は建宮さんたちに合流します」
「ああ、頼むよ」
その時、階段から二人分の足音が聞こえてきた。
インデックスとショチトルも事態は把握しているようだった。
「連中め、もう来てしまったのか……」
「ショチトル、思い詰めてはいけないぞ」
「しかしだな、トチトリ!」
責任を感じずにはいられないのか、ショチトルが声を荒げる。
そこに、落ち着き払った声がかかった。
- 311 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:05:09.57 ID:DSagRTE50
「ショチトル。深呼吸、してみましょうか」
「え、エツァリ……」
「いま自分たちにできるのは、自らの身の安全を確保し彼らを闘いに専念させること、ですよ」
張り付けたものではない、なによりもショチトルの不安をほぐす笑顔が向けられる。
「う、うん……お兄ちゃん…………」
「「「「…………」」」」
そのかわり、周囲の空気は何とも言えない味付けとなったが。
「ふふ、良かったねショチトル」
「これは……ご挨拶が遅れました。この度は誠、お世話になりました」
事の成り行きを微笑ましく見守っていたのはインデックスのみである。
ショチトルにばかり意識の行っていたエツァリは彼にしては珍しく、慌てて一礼した。
「あなたには、他にお話ししておきたい事もありますが……」
「すまないが後にしてくれ。事態は急を要する。最大主教、早急、に…………」
「……あ…………」
- 312 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:06:57.99 ID:DSagRTE50
「…………ん」
「…………えと」
向こうが落ち着きゃ今度は此方で、ステイルとインデックスは視線を合わせようとしない。
いや正しくは、互いにチラチラ見合っているのにすぐに逸らしてしまうのだ。
「………………やってる場合ですか、この非常時に……!」
火織のぶつけどころのない嘆きはこの場の残り全員の、
「あらまあ、オセキハンをご用意した方がよろしいのでしょうか?」
「「「「………………」」」」
……残り全員マイナス1の意見を代弁したものだった。
「……ゴホン!! とにかくそちらの三人とオルソラは、
最大主教と共に最も安全な場所に移る。四人分の『許可』は土御門が手配済みだ」
「…………ステイルは、どうするのかな?」
「……僕も、護衛としてランベスに詰めます」
インデックスが安堵のため息をつくのを見て、ステイルは内心の苛立ちを押し殺す。
(彼女にまで心配されるようでは…………僕は、何をやってるんだ)
- 313 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:10:11.74 ID:DSagRTE50
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「終わりました、教皇代理」
「『元』、なのよな」
「……ふふ、仕事中と思うとなかなか昔の癖が抜けませんね」
ロンドン東端部の民家密集地帯。
とある一軒の屋根上に陣取るのは天草式十字凄教の建宮と対馬であった。
十年も昔の肩書で今なお男が呼ばれるのは、彼らの『女教皇』に
負けず劣らず建宮が慕われ、信頼を集めている証左でもある。
「五和がこちらに合流するという連絡も入りました」
「ん、了解。……しーっかしこれだけの範囲を人払いするのは一苦労だったのよ」
「王室の戒厳令がなければ現実味すらなかった話ですからね」
彼ら天草式が担当したのは今回の戦闘に市民を巻き込まないための工作である。
とはいえそこまで大がかりな術式を使ったわけでもないし、
外敵の侵入を戦闘前から完璧にシャットアウトしても意味が無い。
王室が鶴の一声で家の外に出るな、とのお達しを出して後は民家の入口を一軒一軒『人払い』。
ロンドン外周部の、更に狙われやすそうな位置に絞ったとはいえ
ひたすら地味で根気のいる作業ではあった。
「土御門もどうやって戒厳令なんて引き出したのよなぁ?」
「……あの男のことですから、なにがしかの取引があったのでしょう」
まさかその材料が『ステイルくん弄くり認可権』とは誰も思うまい。
- 314 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:12:05.36 ID:DSagRTE50
暫くすると、建宮のふところの端末が震えて着信を知らせた。
「おっと、はいはい建宮なのよなー」
『七人抜けた。そこから西北西に約百五十m』
電話越しに事務的な声が響き、すぐに切れてしまう。
「……そっけないのよな」
「建宮さんが彼に被せた損害を考えれば、ごく当然だと思いますけど」
「はっはっは、そんじゃあお前ら始めるぜ!」
無理矢理誤魔化した彼の言葉に呼応して、そこかしこに潜んで居た天草式の精鋭メンバーが動き出す。
五和も、いつの間にやら愛用の海軍用船上槍(フリウリスピア)を携え到着していた。
建宮と目が合うと慌てて逸らす挙動不審に、生温かい視線が注がれる。
「き、緊張感を持ってください!」
(((それはこっちの台詞だ)))
- 315 :イギリス清教編① [saga]:2011/06/02(木) 21:14:05.94 ID:DSagRTE50
「……? なにやってんのよな、お前ら」
「教皇代理には関係ありません!!」
「だから『元』だっての……」
首を傾げた建宮は、まあいいかと切り替えて号令を掛ける。
「……んじゃあ、行くぞ! 『我らが女教皇様から得た教えは?』」
苦笑していた対馬、牛深、野母崎、香焼、諫早、浦上が、
そして憤慨から覚めた五和が鬨の声に代えて、一斉に応じた。
誰かに利用されるだけだった、あの三人の人生を変えるために。
――――救われぬ者に、救いの手を!!――――
- 319 :イギリス清教編② ↑はお気になさらず [saga]:2011/06/03(金) 20:11:40.78 ID:vbydGEJI0
---------------------------------------------------
『ランベスの宮』に無事全員を護送したステイルが最初にしたことは――
「やっほー。お邪魔してるぞインデックス、ステイル」
肺の底から大きく、息を吐き出して吸う事だった。
「なにをしているんですか、先代ぃぃっ…………!!!」
「なにって、別になぁ。キャーリサ」
「おかわりはいかがだー?」
「許可は出てるんだから、お茶して寛いでただけだし。……あ、一杯頼む」
あらゆる意味で英国最強の母娘はこんな時でも絶好調だ。
「……質問を変えましょうか。その脳味噌の配線はどうなっているんです……!」
「血圧が上がりても脳の中身は危なきよ、ステイル」
「…………」
「スルーなりし!?」
- 320 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:12:40.90 ID:vbydGEJI0
間の抜けた問答を繰り返す連中を見て、アステカ組……もといショチトルは呆然とする他ない。
「……インデックス、なんだアレは?」
「イギリスの先代女王と、現女王の妹なんだよ。あとついでに私の前任者」
「えぇー………………」
「……噂以上にクレイジーな国だな、イギリスは。学園都市と友好的なのも頷けるぞ」
「何を冷静に分析してるんだトチトリィィ……」
「とりあえず自分がご挨拶申し上げて来ましょうか」
「やめて! これ以上引っ掻きまわさないでお兄ちゃん!」
「まあ初めましてショチトルさん、お茶などいかがでございますか?」
「むっオルソラ、お客様にお茶を出すのは私の仕事だー」
「ああもうなんなんだこの状況はぁーっ!!」
イギリス清教に期待の新人が加わったと見てよさそうである。ご愁傷様。
- 321 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:14:42.00 ID:vbydGEJI0
その間にもステイルのなんかどうしようもない怒りは収まらず、彼の血管は断線寸前である。
「宮殿はどうなってるんですか! あちらの方がよほど安全でしょう!」
「騎士団長とウィリアムがいるから向こうは問題ないの。
魔術防衛網ならこの『ランベスの宮』とて負けず劣らずで、
さらにこの私がここに居る以上、母上の安全は確保されている」
「ここに居る理由にはなってません!」
「ちなみに私は久々の我が家に戻りてきただけにつき」
彼の顔色はその長髪と同じ色……を通り越して、光が逆流してきたようなそれになっている。
いい加減に死にそうだ。見せ場も作ってないのに。
「しょうがないじゃないか。可愛い娘に孫と一緒になって、
『友人を助けてやって欲しい』、なんて言われてはね」
「母上、言われたのは私ひとりだし」
「え! ヴィリアンが……?」
「……私にも構って欲しきことよ……」
- 322 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:16:35.55 ID:vbydGEJI0
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バッキンガム宮殿には、毎度お馴染み騎士団長の怒鳴り声が響いていた。
そこらで警護に当たっている騎士たちも、上司が御立腹だというのに動じることなく職務に当たっている。
よほど、焼き増しの効く風景であるらしかった。
「君たちだな!? キャーリサ様と先代を城外に出す手引きをしたのは……!」
その前に並んでどこ吹く風なのは、魔術結社『新たなる光』の四人である。
「んーん……。そんなことより私たちも繰り出していいですかぁ?」
代表して受け答えしているのは最も緊張感なく欠伸などかいているレッサーだ。
「良いわけあるかぁぁっ!! 言え! どうしてこんな事を……」
彼女の舐めきった態度にますますボルテージのあがる騎士団長を
押し留めたのは、雰囲気にそぐわぬ涼やかな声だった。
「騎士団長。どうか彼女たちを責めないでください」
「少しは落ち着いたらどうだ、我が友。また血圧が上がるのである」
「ヴィリアン様、ウィリアム……! も、もしや?」
- 323 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:17:48.32 ID:vbydGEJI0
わなわなと震えだす騎士団長に申し訳なさそうにしながら、第二王妹は続ける。
「姉君には、私からお願いしたのです。
……その、母君まで行ってしまうとは思わなかったのですが」
「ぬ・ぐ・ぐ…………」
「今さら連れ戻すことに意味はないだろう。彼女らの言うとおり、我らも討って出るべきだ」
理解者だと思っていた親友の一言に肩を落とし、悲しき中間管理職は力なく告げた。
「わかった……。好きにしなさい…………」
「さっすが~、ウィリアム様は話がわかるッ!」
「止すのである。……なぜだかとてつもなく後ろ暗い気分になる」
「さわらないで…………お願い、やめて……プフッ」
「誰も触ってないわよ、ランシス」
しかしこの連中、緊張感皆無である。
王室に毒されるとこうなってしまうモノなのだろうか。
ちなみに女王陛下は戒厳令の実施に加え、政治的策謀からも
国を守るべく孤軍奮闘しているのだが、ここで語られることはない。
「…………前代未聞ね」
- 324 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:20:04.94 ID:vbydGEJI0
平静に戻った騎士団長が部下の騎士に声をかけ、ウィリアムが抜ける守備体系の変更を伝える。
「……宮殿の守護は、我ら騎士団があたろう」
「では私が守るのは無辜の市民だ。無事は祈らないのである、我が友よ」
「私とて今さら、お前の為に祈ったりなどするか。妻のことならともかく……
…………ゲッホンゴッホン! ヴィリアン様と女王陛下は任せろ」
「ああ。……では行ってくるぞ、ヴィリアン」
「はい……。この子たちと一緒に待ってるわ、ウィリアム」
ひとときの別れに際して、父でもある男は妻の腹部をしばし、愛おしげに見つめる。
――やがて家族に背を向けた時、そこには百戦錬磨の戦士がいた。
「味方だと思うと、頼もしいですねぇ」
「フッ……。よろしく頼むのである」
守るべきものを背に、ウィリアムは四人の魔術師に先だって歩み出す。
そうして男は、自らの人生そのものである戦場に飛び込んでいった。
- 325 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:22:33.68 ID:vbydGEJI0
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「ヴィリアン殿下が…………」
「理解したかい?」
粗方の事情を聞き終えたステイルは、しかしそれでも納得しきれなかった。
「しかし! そもそもこの件は、我ら清教派が始めたことです! 王室派や騎士派は……」
「無関係なのだから引っ込んでろ、とでも言いたいのか?」
「…………それ、は」
とたん、目の前の老婆がとてつもない巨人に様変わりした。
「イギリスは、我が国家だ。『第三世界』の連中が好き勝手することをこの私が許すとでも?」
ステイルは、言葉なく俯く。
しかしエリザードは覇気を収め、そんなステイルに優しく声をかけた。
「……そして、ロンドンを守るためのお前のたゆまぬ努力を、この私が知らないとでも?」
「なっ…………!!」
「ふふふ……だから、十年早いと言いけり」
「お前さんの『セキュリティ』にはみーんな助けられてるんだ。
……少しは、周りに見返りを求めな?」
- 326 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:24:29.62 ID:vbydGEJI0
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「ど、どうなってるんだコレは……!?」
ロンドンの『ギリギリ外側』、南の開けた郊外の地。
『半端者』の指揮官のひとりは青ざめた顔で目の前の惨状を見やっていた。
彼ら急ごしらえの『組織』は百を超える魔術結社が、
イギリスに対し乾坤一擲の反攻を行うために集まったものである。
構成人数は万に迫るという常識外れの烏合の衆、それが『半端者』(土御門命名)だ。
しかし、しかしである。
彼らはその半数以上を既に戦線に投入しているにも関わらず
ロンドン市内への侵入を果たした者はその十分の一にも満たない。
一方で侵入に失敗し命からがら逃げ出し戻ってこない脱走者や、
戦線復帰できない負傷者は二千を越え――
――残る二千五百は、躯すら残さず燃え尽きていた。
「あ、あり得るのかこんなことが……」
男の脳裏に過ぎる、一つの可能性。
ロンドンには、数年前からまことしやかにある噂が流れていた。
――この街には悪意を持った侵入者を焼き尽す、『守護神』がいる――と。
- 327 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:26:43.48 ID:vbydGEJI0
もちろん『組織』もこの都市伝説を軽視したわけではない。
事実、噂が流れ始めた時期からロンドン市内での魔術的事件の発生は
外部から見てもはっきりわかるほどに激減しているのだ。
焼き尽す、という一節からその筋で有名な一人の魔術師を連想した彼らは判断した。
多方面から一斉に侵攻すればいかに凄腕とはいえ所詮、身一つの魔術師である。
他に聖人を抱えているとしても、『原典』の奪取は不可能ではない。
追いつめられた焦燥感に、内部からの土御門の巧妙な誘導も手伝った。
――かくして彼らは、神罰吹き荒れる死地へと赴いてしまったのである。
そしてつい先刻。
男の部下はロンドンに踏み入った瞬間、前触れもなくかすかな『熱』を感じだした。
そこで違和感に歩みを止めてしまえば良かったのだが、元より彼らには後が無い。
欲望か絶望か、はたまた狂気か。とりつかれたかの様に前進する彼らの妄執を――
ゴオオオオウウッッ!!!
――――赤々と盛る紅蓮の炎が断ち切った。
「どうだ、ウチの『セキュリティシステム』は?」
- 328 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:29:05.00 ID:vbydGEJI0
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ステイル=マグヌスは専守防衛に長けた魔術師である。
彼がインデックスと、その周りの世界まで含めて守るためにとった方法とは――
「……南で二十八人。今ので二千六百、か」
――――『陣地』そのものを、極端に巨大化してしまう事であった。
ステイル=マグヌスの現在の『陣地』は、ロンドン全域である。
- 329 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:31:37.04 ID:vbydGEJI0
彼は『日課の散歩』と称して毎日のようにステルス化を施したルーンを市内に配置してきた。
数年をかけて街に自らの魔力を行き渡らせ結界を張ったステイルは、
かつて「三沢塾」に自身の力を充満させ、レーダーとした錬金術師のように――
――霧の都の『魔術の流れ』を把握する存在となった。
「大丈夫、ステイル……?」
「……ご心配なく。僕がするのは敵の位置を連絡することのみ、…………です」
「………………すている…………」
次に彼が着目したのは、魔術世界では語り草となっている
「0930事件」で用いられたとされる『天罰術式』であった。
ステイルは『神の火』に由来するこの術式を再現することに――不完全ながらも、成功した。
『自らの陣地内で、強力な「悪意」を抱いた者を、それに応じる「熱」の苦しみでかき乱す』
- 330 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:34:25.81 ID:vbydGEJI0
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「後は『天罰』で抵抗力の落ちた敵をレーダーで捉えて、
街中に張り巡らせた『爆弾』をボン! ってなわけだ」
「こんな、ことがぁっ……!!」
ただ一人残された哀れな子羊を前に、土御門元春は感情のこもらない眼差しを向けた。
長期に及ぶスパイ活動の中で、権力や金への執着を捨て、平穏を選んだ者を彼は数多く見てきた。
もちろん事情があって残らざるを得なかった者もいるだろう。
しかし、欲に塗れてこんな場所まで来てしまった連中と
そうでない者を区別してやるほどの甘さを、彼は持ち合わせてはいない。
それにどうやら、目の前の男は前者であるらしかった。
「くそっ、原典が! 原典さえあれば私はぁぁっ!!」
「見苦しいな。あんた、ちゃんと下調べしてきたんだろ?」
(都合のいいように誘導したのはオレなんだけどな)
「黙れっ、黙れえェッ!!」
露骨な権力欲。
この世の日陰を渡り歩いた土御門からすればさほど汚らわしいものでもない。
科学の暗部とて似たようなもの、と言うよりは
即物的な欲望に基づいているのならいくらかマシだ、とさえ思える。
- 331 :イギリス清教編② [saga]:2011/06/03(金) 20:36:21.62 ID:vbydGEJI0
しかし同情の余地があろうが無かろうが、土御門には関係などない。
最後通牒がわりに一層冷えた視線を男に送る。
「ま、せめてこれだけ覚えてから死ぬんだな」
そしてゆっくりと、彼らを破滅させた『モノ』の名を告げた。
「この街にはな――――
ファイアウォール
――『守 護 神』っつう、神様がいるんだよ」
- 340 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 20:55:31.65 ID:TSZExWME0
しかし絶望を突きつけられてなお、『半端者』の歪んだ志は未だ折れていなかった。
「く、クククク……だったら、アレならどうだぁ!?」
「ほう……?」
男が哄笑して指差す先、およそ百メートル。
彼方に異形の駆動鎧が数台並んで、起動を開始すべく蠢いていた。
「……これはこれは「FIVE Over」とは。十年前の遺物とはいえよくあれだけ揃えたな。
しかもあれはガトリングレールガンか……あんなスクラップに嫁さんが見立てられてるなんて、
カミやんが聞いたらキレるな、くくっ」
「笑ってられるのも今のうちだ! 貴様らの切り札ではあれは止められん!」
「切り札なんて言った覚えはないが……。
だがあれで『陣地』の外から所かまわずぶっ放されたら、街にかなりの被害が出るな。
……お前ら、それがどういうことだかわかってるのか?」
これから起こるであろう事態を言葉に出した土御門が凄む。
しかし手負いの獣はそのような脅しなど歯牙にもかけない。
「仲間や一般市民の心配をする暇があるなら命乞いをしたらどうだ!
『超電磁砲』の最初の標的は貴様だ!」
「…………そうかい、よーくわかったよ。
まあ確かに、『守護神』じゃあれは止められないな」
- 341 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 20:58:16.44 ID:TSZExWME0
ステイルの築いたシステムは『侵入者』に「魔力」ないし「悪意」があることを前提にしている。
仮に『侵入者』が秒間六十発放たれる金属砲弾だとしたら、それらを阻止することは不可能だ。
「あれがお前らの切り札ってわけだ。……ところで知ってるか?
あの駆動鎧はその昔、とある異端の無能力者(イレギュラー)に
戦闘不能にされたっていうご立派な実績があるんだ」
「ははは、戯言を! だったらなにか? 貴様がそれを再現して見せるとでも!?」
「御冗談。オレはか弱いか弱い、異端でも何でもない無能力者(レベル0)さ。
しかしイレギュラーでも破壊できるんだぜ? だったら――」
土御門が舌先三寸で敵の気を引いているその時、
二つの影がまた別の方角――やはり百メートルほど先――に現れる。
「『アレら』はどうやら、無差別攻撃を行うつもりのようです。
…………ならば、遠慮は全く要りませんね……!」
「よく聞こえんなー、あんな遠くの会話。
……それにしても微妙に見覚えがあると思ったらあの物騒なビリビリ、
もしかして前にエリスを吹っ飛ばしたのと同じヤツかしら?」
「――だったらオレらの聖人(キリフダ)に、どうにかできないワケないだろうが」
「な、まさか、アレはぁぁっ…………!?」
- 342 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:00:47.59 ID:TSZExWME0
「シェリー、二秒稼いでください。
……それで、終わらせます」
「その間に何発喰らわなきゃいけないのかしらね。
まあしょうがない、相手は違うが…………。
…………リベンジマッチといこうぜぇ、エリス!」
「撃てェッ!! はやくそいつらをコロセェェェェーーーーッッ!!!!」
男の絶叫とともに駆動鎧の銃身が回転を始め、 『Gatling Railgun』が光の嵐を放った。
精密性を著しく欠くそれらは疎らに拡がり、ロンドンの一角を阿鼻叫喚の地獄絵図に変える。
「『Intimus115(我が身の全ては亡き友のために)』!!」
――そこに居たのが、卓越した土属性の魔術師、シェリー=クロムウェルでさえなければ。
彼女が産み落とした特大ゴーレムは、かつてその身を貫いた
『超電磁砲』の一斉掃射をかろうじて逸らし、愛する街を守るべくそびえ立つ。
- 343 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:04:18.07 ID:TSZExWME0
GAGAGAGAGAGAGAGAGA!!!!!!!!!!!!!!!
「耐えなさい、エリス!」
総合火力のみなら本家を上回る『Gatling Railgun』の前に、
シェリー渾身の一作とはいえゴーレムが屈するのは時間の問題である。
だが、彼女の表情が揺らぐことは微塵たりともない。
なぜなら、本物とは似ても似つかぬ無粋な鉄塊に向かって駈けるのは――
「『Salvere000(救われぬ者に救いの手を)』!!!」
――ロンドン最強の聖人なのだから――!
- 344 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:07:32.51 ID:TSZExWME0
「終いだな」
瞬きの間に全てが終わったとしか認識できない男は膝から崩れ落ち、放心状態に見える。
が――
「おっと!」
土御門がいきなり男の手を踏みつけた。
その手には通信用の護符なのだろう紙切れが握られている。
「何のために長々と講釈を垂れてやったと思ってるんだ?
さっさと出さずにあんなガラクタ引っ張ってくるもんだから、一時は焦ったぜ」
「ちいぃっ…………!!!」
男は土御門が親切に語ってやった情報を仲間に伝えるべく
密かに連絡文を飛ばそうとしていたのだが、それこそがこの曲者の狙いだった。
「早速連絡先を探知させてもらおうか」
「キサ、がああああぁぁぁっっ!!??」
「ああ、ちなみにオレの魔法名は『Fallere825(背中刺す刃)』だ。 ついでにコイツも」
土御門は友好的に表情を崩したつもりである。
しかし男は、死神が自分に微笑んだ、としか感じなかった。
「――――覚えて死ね」
- 345 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:11:39.54 ID:TSZExWME0
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ところ変わって、再び『ランベスの宮』。
「潮が引いていくな……」
敵の動きの変化を感じ取り、ステイルはそう呟いた。
「なんだ、もう終わりか。結局私の出番はなかったし」
キャーリサはぼやくが、軍事を司る彼女ももちろんわかっている。
どんなヤケッパチの集団だろうと、戦力の過半数を失えば負け戦を認めざるを得ない。
土御門も外交交渉上、余り勝ち過ぎて禍根を残すのはよろしくない、という見解だった。
一般への被害をほぼゼロに抑えた上での完勝というのは理想の戦果である。
しかし、インデックスは――
「たくさん、人が死んだんだね……」
「………………最大主教」
「これは、戦争だったんだ。向こうから仕掛けてきて、決してやめようとはしなかった、な」
- 346 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:14:13.08 ID:TSZExWME0
キャーリサの力強い言葉に、後ろめたさは一切見られない。
彼女が守るのは自国民の安寧のみであり他国の、ましてや
敵対者に慈悲を与えるなどこの王妹の矜持が許すはずもない。
「それでも、私は祈るよ」
しかし、インデックスは毅然と宣言する。
自分にできることはそれだけだ、と言わんばかりに。
「私も、お供をさせてくださいね」
オルソラが、いかなる時も揺るがぬ柔和な笑みで彼女に続いた。
かつて自らを殺めようとしたアニェーゼを許し、共に歩んでいる現世の聖母。
「……はっ、好きにするといいの」
「こらこら、言い方というものがあるだろキャーリサ」
「インデックス、くれぐれも無理なきようにしなさい?」
二人の静かな決意に、三人の女傑が同調し場の雰囲気も僅かながらに緩む。
- 347 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:16:34.64 ID:TSZExWME0
――そのときだった。単調な機械音が鳴り響く。
ステイルが眉をひそめて、しかし即座に着信に応答した。
「土御門か、どうしたんだ? 敵の動きならもう……」
『手短に言うからよく聞け、ステイル!』
通話マイク越しに伝わってきたのは焦燥。
周囲にそれを悟らせぬよう、落ち着き払ってステイルは答える。
「なんだい?」
しかし事態は、彼の予想を大きく上回っていた。
『敵だ! それもおそらく、かなりの実力者がすぐ近くまで迫っているぞ!』
終幕は、まだ下りきってはいない。
- 348 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:18:54.19 ID:TSZExWME0
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火織を先行させた土御門は、自身はその辺りにあった農家のトラックを拝借して走らせていた。
とはいえロンドンのほぼ中心に位置する『ランベスの宮』までここから二十キロ弱はある。
火織の到着も半刻は先になるだろう。しかし何をおいても土御門を急がせるのは――
(舞夏…………!!)
あの状況で死んだ男がロンドンの『仕掛け』を伝える相手は
それなりの地位と実力を持った指揮官クラスだろう、と土御門はふんでいた。
運よく司令部の場所でも割れれば、戦術的にも戦略的にももはや優位は揺るがない。
ところが札から魔力を探知すると、すでにその反応は都の中枢に迫っているではないか。
こうなると弱まった敵の攻勢も何らかの伏線と見るべきである。
念のため、シェリーをはじめとするメンバーには外への警戒を引き締めるよう指示した。
『半端者』がいかにして『守護神』の情報を掴み、そして突破したのかは杳として知れない。
しかし察するに、敵の目的はこの厄介極まりない術式を内から破壊して、
しかる後に残存戦力をつぎ込むことだろう。
術式の破壊とは即ち、ステイルの首を取ることに他ならない。
- 349 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:21:02.91 ID:TSZExWME0
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「なるほど、ヤケッパチを通り越した愚者の集まりだった、ということか」
「……なぜ着いてくるんです」
「母上に叱られておいて、まだ言うか」
「く…………」
淑女諸氏をエツァリに任せたステイルは、『ランベスの宮』の入口で刺客を迎え撃つ事に決めた。
中で待ち受けてもよかったが、万が一この要塞さえ突破するような
実力者であった場合、彼女らの身の安全を保証できない。
更には市街地を無差別に攻撃するのではないか、との危惧もあった。
…………余計な、しかしこの上なく豪華なオマケもついてきたが。
「……ちなみに申し上げておくと、あなたの護衛は僕の仕事に含まれていません」
「そりゃそうだし。お前の仕事は私に護衛されることだからな」
「……………………はぁぁ……」
潜入した敵が用いた手段に、ステイルはある程度想像がついていた。
手段というより、敵の性質か。
天罰が作動した相手が魔術師なら、苦しみから逃れるため魔力を精製して抵抗しようとする
可能性は高く、そこに『揺らぎ』が生まれる。多種多様の感知術式を併用することで、
ステイルはその揺らぎをかなりの精度で察知することが可能だ。
ならば初めから、この敵に『揺らぎ』は起こらなかった、ということになる。
- 350 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:22:23.00 ID:TSZExWME0
そこに至る可能性は二つ。
「あの、すいません」
一つ、魔術師ではない、つまり能力者の類。ステイルの考えではこちらだ。
「えーっと、『ランベスの宮』というのは、こちらでよろし……おや、君は」
そして、まあこっちはないだろうが、二つ目は――
「どこかで会わなかったかな……ああそうだ、確か!」
――悪意がまるっきり無い場合。
「当麻の結婚式に来てくれたともだ」
「誰が友達かぁぁーーーーっっ!!!!!」
- 351 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:24:44.74 ID:TSZExWME0
「………………おい、ステイル。説明しろ」
「そうそう、ステイル君! すまないね、商売柄人の名前を忘れてはならないというのに」
キャーリサもステイルも、火織のオムライスをいっぱい食わされたような湿気りきった面をしている。
「……ご紹介します、キャーリサ殿下」
「へ? キャーリサ? 英国王室の?」
それもそうだろう。こんなとき、他にどんな顔をしろというのか。
「上条当麻……
……さんの父君、上条刀夜氏です」
「あ、どうもよろしく」
「」
- 352 :イギリス清教編③ [saga]:2011/06/04(土) 21:26:37.76 ID:TSZExWME0
「あれ? なにこの空気?」
「どういうことなの…………」
……とりあえず、ステイルくんから一言。
「……………………不幸だよな、コレ」
「なんだ、やっぱり友達じゃあ」
「違いますッッッ!!!!」
- 356 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 08:59:36.63 ID:Jaa2nsz10
寒さも薄らいできた早春、午後六時をそろそろ回る霧の街は未だ幽かに明るんでいる。
逃避したくなる幻想(げんじつ)にすんでのところで回帰したステイル=マグヌス二十四歳。
……とりあえずは、仕事に取り掛かることとした。
「…………申し訳ありません、ミスター上条。まずは、身体検査をさせていただきたい」
「ん、ああ……それはそうか。
ここは教皇の、いや言い方が違うのか? とにかく官邸だものな。
それにしてもあのインデックスちゃんがねぇ……」
「………………はぁぁ」
正直もう、この段階で本人同定も必要ないくらいである。
敵側の変装魔術の可能性も捨てきれないが、最大主教をちゃん付けで呼ぶような男である、
というぶっとんだ事実まで把握しているとは考え難い。
が、しかし。
「…………おいお前、女装趣味でもあるのか?」
「あ、あれ!?」
刀夜が所持していた黒のスーツケースから出てきたのは、
明らかに女物の下着や香水、必需品のたぐい。
更にそれと知れないようカモフラージュされた儀式用具であった。
その隙間に挟まった、一枚の術札。
「…………あった、術式だ……」
- 357 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:03:14.39 ID:Jaa2nsz10
とあるロリ教師の平野に負けず劣らず凹凸のない声で、ステイルは札の向こうの人物を検めた。
「…………モシモシ、ツチミカドクン?」
『!? どうしてこれにお前が……既に刺客を撃退したのか!?』
「……もう来なくてもいいよ。オーバー」
『おい、どういうことだ説明し』
ブツッ。電話でもないのにそんな幻聴がステイルの鼓膜を打った。
「……キャーリサ殿下。申し訳ありませんが…………」
「お、おう。後は任せるの」
甚大な気力の萎えを感じたステイルは、なんと仕事を英国王妹に投げ出す。
キャーリサが同情するほどの死相が今の彼には浮かんでいるらしかった。
「おい、トーヤだったか? 貴様、このスーツケースはなんだし?」
「おかしいな……よく見たら外観は似てるが、これは私の物ではない。
どこかで取り違えたのか…………?」
誤魔化してるつもりならあまりにもお粗末であるし、何より中身を見せるはずが無い。
と言う事は、出まかせの虚言という可能性は低いと見てよさそうだった。
「どこで間違えたか、心当たりは?」
「むむむ…………」
- 358 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:05:03.61 ID:Jaa2nsz10
ステイルの脳裏に、一つの情景が浮かぶ。
「……今日の正午過ぎ。どちらで、何をなさってたか覚えていますか?」
「正午……? 確か川沿いの公園で、って…………ああ!!」
「なにか思い出したか?」
『数が合わないが、あと一人はどうした?』
『どうも、一般人と一緒に居るようで手が出しづらい』
「ベンチで女性が一人、苦しそうにしていたんだ。
声をかけようとして近づいたんだが、急に暴れ出して。
なんやかんやで取っ組みあってるうちに、その…………」
「……その?」
「いやー実は、その女性の胸を鷲掴みにしてしまって。
そしたら、顔が真っ赤になってキューバタン!と」
『熱』暴走でも起こしたのだろうか。術者のステイルも予想してるわけがない事態である。
「………………」
「………………」
「ははは、お恥ずかしい!」
「……なるほど、間違いなく親子だし」
英国王妹も納得の元祖フラグメイカーであった。
- 359 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:07:10.95 ID:Jaa2nsz10
「救急車を呼んだんだが、ロンドン市内には戒厳令が出ているというじゃないか。
仕方なく、市街の病院まで付き添ったのさ。その時に間違えたのかな……」
「その女は、結局どうなった?」
「それが少ししたら快復してね、何度もお礼と謝罪をもらったよ。
なんかスッキリした顔で、故郷に帰ってやり直すとか言ってたなぁ」
……その女は土御門の見立てでは相当の実力者で、かつ組織の中心に近いはずなのだが。
「つまるところ、
『実力者→美形or美人→フラグ→再利用→メインキャラ昇格』
……の流れで善玉になったという事だし」
「全然さりげなくないですが、勝手に自分をメインキャラに含めないでください」
「ってああ! じゃあ私の荷物はあの人が持って行ってしまったのか!?」
お間抜けなやりとりがこれでもかと繰り広げられる。
どう収拾つけんだコレ。
- 360 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:10:07.48 ID:Jaa2nsz10
駄菓子菓子、キャーリサが何ごとか思いあたったのか再び表情を引き締める。
「……いや、待つし。貴様いま、戒厳令のことは知っている、と言ったな?
だというなら何故、こんな危険地帯までのこのこやってきた?」
戒厳令とは非常事態において、政府が市民の権限を制限することである。
今回はテロリストの襲撃予告が出たとして正午前に発令したが、
そこは「ブリテン・ザ・ハロウィン」を経験済みのロンドン市民、手慣れたものであった。
しかし目の前の男はそれを知っていながら人気のまるでないロンドンの異様な街並みを、
一人で、しかも己の足以外の手段を使わずはるばるやって来たというのだ。
そんなことがあり得てたまるか。
『軍事』を象徴する戦乙女は、疑念の色濃い眼光で男をにらみつける。
「……そんなこと、決まっているさ」
「なに?」
しかし上条刀夜は憶さない。
息子によく似た、強い意志の宿る眼でキャーリサを正面から見据えた。
- 361 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:12:21.73 ID:Jaa2nsz10
「家族が心配だった。父親が娘を訪ねるのに、これ以上の理由がいるのか?」
大切な人を慈しむ、迷いなき言葉。表情。眼差し。
ステイルにはその全てが、途轍もなく眩ゆく感じられた。
「っ…………ミスター上条、あなたという人は……!」
「娘だと? 誰のことを言っているの?」
ステイルの口から、呻きに似た声が漏れる。
「決まっているだろう、君たちの最大主教のことだよ」
「な、何を言ってるんだし、貴様……?」
――遠くにあって、こんなにも彼女の事を想っている人がいるというのに。
「あの子は、当麻の家族なんだ。つまり、私にとってもかけがえのない家族だ」
――この五年間、最も近くに居て、彼女を見ていたはずの自分は。
「だから何かあったなら、世界中いつでも、何処からでも駆け付けるさ」
――――自分はいったい、彼女に何をしてやれたのだろう。
- 362 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:15:15.53 ID:Jaa2nsz10
夜の帳が下りた。
敵が再び侵攻を始めることはなく、現在ロンドン周囲は騎士団が警戒に当たっている。
最終的に内部への侵入を果たした『半端者』は七百人ほどになった。
そのほとんどがステイルの『守護神』によって減衰した戦力であり、
無傷の精鋭およそ三百名で構成されたイギリス清教サイドに負けの目など出るはずもなかった。
大した怪我人も出さず引き上げてきた彼らは、後を出番のほとんどなかった騎士団に任せ
普段通りの、ただし決して明るいばかりではない日常に戻っていく。
インデックスはエリザード達(とついでにローラ)に礼と別れを告げると
エツァリ、ショチトル、トチトリの三人を念のため『ランベスの宮』に残し、
『家族』である上条刀夜との旧交を温めるべく聖ジョージ大聖堂に場を移したのであった。
「大したおもてなしもできないけど、改めて久しぶり、とうや!」
「はっはっは! インデックスちゃんにもてなされる日がくるなんてな」
「はぁ……まったく、酷いオチがついたものですね」
「まあまあねーちん、今は腹にモノ入れることにしようぜい。舞夏ーお酌してくれにゃー」
「お客様が優先だぞ馬鹿兄貴♪」
- 363 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:17:20.39 ID:Jaa2nsz10
聖堂上階のテラスからは、美しい街並みと天蓋の灯のコントラストが実によく映える。
息せき切って駆け付けた結果、盛大にずっこけた火織と土御門を加えた四人は
丹精込められたメイドの手料理がところ狭しと並ぶテーブルを囲んでいた。
「そちらの三人も、当麻のご友人で良かったかな? 式で会ったと思うんだが」
「何度か食事を用意したこともございます、お客様ー」
「は、ははは……その、当麻さんには大変お世話に……」
「確かにカミやんには筆舌に尽くしがたいほど世話になったぜい」
「そんな、ウチのバカ息子で良ければドンドン使ってやってください。
そういうのが性に合っているんだから」
「…………そ、そうだとうや! ちょっと聞きたい事があるし!」
上条当麻の話題になったとたん、インデックスの表情が曇る。
刀夜もそれを察知して、慌てて話題を変えた彼女に追従した。
「なんだい? フフ、もしかして恋の悩みだったり……」
が、あと一歩空気を読みきれていない。本人は渾身のドヤ顔であるが。
「……それだったらとうやには相談しないかも」
「どういう意味なのかな!?」
そういう意味である。
- 364 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:20:43.94 ID:Jaa2nsz10
「その、このあたりに来るまで誰かに止められたりしなかったにゃー?」
「誰かって誰だい?」
「あー…………」
言葉に詰まったインデックスを見かねて、土御門が助け船を出した。
真に空気を読むとはこういうことである。
「戒厳令のことを聞いてるのなら予想がつくんじゃないかにゃー。
街のあちこちに特殊部隊が潜んでいたって噂だぜい」
「そうなのか……私は適当に中心に向かっていたらここに着いたんだがね」
(外周に注力してたとはいえ、天草式とアニェーゼ部隊の
防衛網を潜り抜けるなど一般人の所業とは思えませんね……)
「ま、偶然だろう! 私は昔から意外と運が強くてね。良いか悪いかは別として」
土御門も火織もそのことは実体験を通して痛いほどよく知っている。
なにせ『偶然』大天使をこの世に墜とした男なのだ。
『偶然』彼らの敵と接触してフラグを建て、
『偶然』二重三重の警戒をスルーし、
『偶然』ドンピシャのタイミングで姿を現したとしても、
「まあ無い事もないか」で済ませられる。
それが上条刀夜だった。
- 365 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:23:45.96 ID:Jaa2nsz10
その後も和やかな談笑が続いていたが、あるとき刀夜が疑問を投げかける。
「……ところで、ステイル君はどうしたのかな? 姿が見えないが」
「あ…………」
「どうも、ここの所仕事を無理していたようでして」
「ちょっと一人になりたい、なんて格好つけて出ていったにゃー」
「そうか、それは心配だね」
再び押し黙ってしまったインデックスを見やった刀夜は
ふむ、と口元に手を当てて何事かを考え出した。
卓上を賑やかに行き来していた言の葉が、しばしの間途切れる。
食器が擦れ、舞夏が給仕する音のみが場を包んで一分ほどだったであろうか。
口火を切ったのは、やはり刀夜だった。
「土御門君。それに舞夏さん、火織さん。すまないが……」
刀夜は少し語尾を濁したが、二人は顔を見合わせ、さほど間を置かず立ち上がる。
「……それでは時間も遅いので、私たちはこれで失礼しようと思います、上条さん。
またいつの日か、食卓を共に囲めれば幸いです」
「本当にオレは、貴方の息子のような友人を持てて幸せだ。
……カミやんにも、よろしくお願いします」
二人は『ヒーロー』の父親に敬愛の念をこめて別れを告げ、
また舞夏は優雅に一礼だけし、そして立ち去っていく。
そうしてガランとしたテラスには、刀夜とインデックスだけが残された。
- 366 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:26:17.30 ID:Jaa2nsz10
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ステイルは礼拝堂の長椅子に腰かけ、紫煙を燻らせるでもなく虚空を眺めていた。
考えるのはもちろん、上条刀夜ら『親子』のことだった。
(――堪えられなかった)
ステイルには刀夜の眼差しを、正面から受け止めるだけの勇気がなかった。
(理屈抜きであの子を愛してくれる、あの人のつよいつよい想い)
それは、ステイルが長い歳月の中で失ったものだった。
――禁書目録があるから――
――最大主教になったのだから――
――――――■■■■■った、償いだから――――――
そんな理屈を並べなければ彼女を守れなくなっていた自分が、途方もなく醜く思えて。
ステイルは、彼ら『親子』から逃げ出したのだった。
- 367 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:29:17.11 ID:Jaa2nsz10
ギ、とかすかに背後から音がした。
『守護神』は既に停止している。ステイルには誰が来たのか知る術はない。
しかし彼は振り向かなかった。
「調子はどうだ、ステイル?」
「私たちはそろそろ帰宅します。…………大丈夫ですか」
土御門と火織が気遣う色を表情に滲ませ現れた。
ステイルは、なにも答えない。
「精神的に、という心持ちなのでしょうが……
実際問題今日のあなたは大量に魔力を消費しているはずです。
無理にでも休息を取るべきですよ」
「ま、その様子じゃ身体なんてどうとでもなれ、って感じだが」
確かにその通りである。
『魔女狩りの王』のような大量に魔力を要求される術式を使用しなかったとはいえ、
今日一日でステイルが起動させたルーンは軽く万を超えるだろう。
加えて敵の位置特定を行っては休みなく連絡、そして『守護神』の維持。
矢面に一度も立たなかったとはいえ、疲労は限界をとうに超えていた。
- 368 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:30:56.37 ID:Jaa2nsz10
「……休むとも。ここで寝てるさ」
しかしこの男と来たらその身を案じる声にロクに耳を貸さず、
でかい図体を丸めて長椅子に寝ころんでしまった。
火織は常にないステイルの子供じみた仕草に溜め息をつきつつも、同時に笑みも洩らした。
「あーあー、まるっきりガキの不貞寝ですたい。
…………ま、そんなお前を見てると嬉しくなるのも事実だが」
「………………はぁ?」
それは土御門とて同様だった。彼は昼間のアニェーゼとのやりとりを思い出す。
「惚れた女のことでうじうじしやがるなんて、十年前のお前にはあり得なかった事だ。
…………正直言えばオレはあの頃、お前が気味悪く見えることがあった」
「…………なんだと…………」
「土御門、少しでいいから言葉を選んでくださいよ……」
剣呑な顔をしたステイルがむくりと身を起こす。
火織が苦笑いして容赦のない男をたしなめるが、土御門はそんな彼女にも問うた。
「ねーちんだって、同じこと考えてたんじゃないのかにゃー?」
「…………まあ、否定はしません」
「かっ、神裂! 君まで何を!?」
- 369 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:33:32.82 ID:Jaa2nsz10
「あなたがもっと未練がましく、微かな希望に縋りついたところで……
……少なくとも私たちは、それを責めたりはしなかったでしょう」
「…………っ!! ふざけるな!!!
仮に君たちが肯んじたところで、他の全てがそれを許しはしなかった!
状況が、時期が、政治が! 科学も魔術もそいつらの思惑も!」
「そしてなにより、彼女がそれを許さなかったんだよ!!!」
自分ではない別の男の傍で、彼女が笑っている光景。
まさしく煉獄に身を焼かれるようだったあの日々。
しかし彼は、自らを律した。当然のことだ。
それが嫉妬だろうが何だろうが『火』である以上、御せずしてなにが焔の魔術師か。
にも拘らず、十年前のステイル=マグヌスを知っているこの二人が、そんな己を否定するというのか。
――何故だ。彼らなら、理解してくれるはずなのに――
「だから、そういうのをぶちまけりゃあ良かった、って言ってんだよオレらは」
- 370 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:35:31.87 ID:Jaa2nsz10
「な…………?」
冷や水を浴びせ掛けられたように気勢を失ったステイルを見て、土御門はくつくつと喉を鳴らす。
「確かにお前は正しい。お前の言ってることは間違いなく正論だ。
インデックスの保護をカミやんに委ねたババアの目論見をオレ達は静観するほかなかったし、
当の本人はお前のことなんざちょっと顔を知ってる同僚、としか認識してなかった」
「だっ、だったら!!」
「……正しければ、それで良いのですか?」
混乱する彼に、横から静かに声がかかる。
「辛い、悲しい、苦しい…………。感情は、理屈とは別のところで動きます。
そういった心の澱を、あなたに溜めこませてしまった自分が、私は許せない」
「世の中のサラリーマン連中だって、気に入らないことは酒に吐き出して明日には持ち込まない。
そういうポーズすら見せようとしなかったあの頃のお前より、今は百倍マシだな。
…………だから、そういう隙間が見れて嬉しい、と言ってるんだ」
無茶苦茶だ。ステイルはそう思った。
あの頃の彼にとって土御門元春と神裂火織は、単なる仕事仲間に過ぎない。
それは逆から見ても、また真であったはずなのだ。
- 371 :イギリス清教編④ [saga]:2011/06/05(日) 09:39:24.29 ID:Jaa2nsz10
「だーかーらー。ただの同僚でも酒ぐらいは付きあうもんだぜい。
まあ、オレら全員未成年だったけどにゃー」
「あの時点で、それなりの付き合いだったと思うのですが。
…………そんなに信用が無かったのでしょうか?」
呆れたような笑みを浮かべて好き勝手を言う『仲間』に、ステイルは顔を俯ける。
「はは……ははは…………まったく、何なんだい君たちは…………」
視界が、ぼやける。
「まったまたー、素直になるにゃーツンデレ神父ー」
顔が、熱い。
「……ふふ、別に今からでも一杯、いいですよ?」
躰が、震える。
「あぁ、まずいな…………目からイノケンティウスが」
「「そのボケはない」」
「やかましい!!」
礼拝堂に反響する自らの笑い声は、ひどく久しぶりのものだとステイルには思えた。
- 380 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:13:08.29 ID:Jaa2nsz10
「それで、どうします? 本当に一杯付き合っても構いませんよ」
「ふふ……気持ちだけ受け取っておくさ。まだ気を抜いて良いわけじゃあない」
心に淀んでいたモノを少しだけ吐き出し、ステイルは笑う。
気分が楽になると、身体の疲れが否応なしに表面に浮上してくる。
「ほう、多少は視野が広がったようでなによりだ」
「ま、一応礼を言っておくかな。…………ありがとう。神裂、土御門」
滅多に聞けない素直な礼を受け、二人の表情も自然と綻ぶ。
「どう致しまして。次は更に遠慮なくかかって来なさい、ステイル」
「君は酒癖が悪いからな……。お手柔らかに頼むよ」
「おおおお、思わず鳥肌が立っちまったぜい。明日は火の雨だにゃー」
「君の頭上だけ局地豪雨にしてやろうか?」
「こわいこわい。じゃ、そろそろ退散するぜい」
そう言うと土御門は、蝋燭の灯のみで照らされた礼拝堂の入口を見やった。
「新しいお客さんも、来たことだしな」
- 381 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:14:51.93 ID:Jaa2nsz10
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時は少し遡る。
土御門たちが去った後のテラスは静寂に包まれていた。
慈愛とも憐憫ともとれる刀夜の――『彼』そっくりの――面立ちに
インデックスもまた、正対することが出来ないでいた。
彼女は視線を手の内の水面に落とし、次に放つべき言葉を求め彷徨う。
しかし上条刀夜は、彼女を待ちはしない。彼にも、確固たる目的があった。
其れを果たすべく――
「……インデックス。君は――――当麻をまだ、愛しているんだね?」
――核心に、切り込んだ。
- 382 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:16:08.78 ID:Jaa2nsz10
グラスがか細い指から離れ、床に吸い込まれる。
「………………あ……………………」
蒼白な表情は、千の言葉より雄弁な解答だった。
- 383 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:18:50.24 ID:Jaa2nsz10
「…………そうか」
硝子の破片を拾い集めながら、刀夜が一言呟く。
焦点の合わない目で彼に視線だけ向けるインデックスは、混乱の極致にあった。
――どうして、なんで? 誰から、いつから?
疑問が次々に浮かんでは消える。
しかしどの一つとして明白な答えを得たくないと思う自分が居ることに、彼女は気がついた。
「そもそも今日私がここに来たのは――当麻や美琴ちゃんに話を聞いたからなんだよ」
そしていよいよ、身体の震えがおさまらなくなる。
――ああ、駄目だ。それだけは。他の誰に知られても、あの二人にだけは。
「……私は二人から君の様子が少し心配だ、という話を一週間ほど前に聞いた。
推測でしか言えないが……当麻はもちろん、美琴ちゃんもあれで結構鈍感な部分がある。
私だって詩菜に言われなければ、ね。君の一番の心配事は杞憂だと思う」
「あ…………う、うん……」
――全て、見透かされている。この、父の如き人には。
- 384 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:21:35.30 ID:Jaa2nsz10
「先ほども言ったがこの事に最初に気がついたのは詩菜なんだ。
私は半信半疑という程度だったが……。
君とステイル君のお互いへの態度、そして当麻の名前を出した時の反応。
…………女の勘とはつくづく恐ろしいものだね」
確かに、恐るべき直感である。
インデックスはこの事実をもちろん自分以外の誰にも話していないし、
感付いているとしたらごく身近な――例えば土御門のような――数人だけだと考えていた。
「……そもそもどうしてとうま達は、私が変だって思ったのかな?」
僅かばかり心が軽くなったインデックスだが、
最大の不安について自ら切り出すのはやはり勇気の要ることだった。
「同じ事を言っていた。…………君からの電話やメールが減った、とね。それだけさ」
たった、それだけ。
刀夜にとっては然程深刻にも思えなかったが、
当麻と美琴は彼女の懊悩を漠然とだが感じ取ったのかもしれなかった。
「そっ、か…………変わってないね。とうまもみことも」
そして遥か東の国から『家族』の温かい想いを受け取ったインデックスは――
「じゃあ…………聴いてくれるかな、とうや」
「もちろん」
礼拝堂の想い人同様、心の澱をかき混ぜることに決めた。
- 385 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:22:57.43 ID:Jaa2nsz10
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十年前。彼女は間違いなく、世界にも恥じることなく宣言できた。
『わたしはとうまを、愛してるよ』
それこそ、恋敵の友人にでも。
其れが、美琴の背中をもしかすると押したのかもしれなかった。
今となっては、もうわからない。
結果として、インデックスは恋に破れた。
『おめでとう。とうま、みこと。……幸せになってね』
緊張した面持ちで自らを呼び出し、事実を余すことなく告げた男女に、彼女は祝福の言葉をかけた。
無理をしていなかったと言えば、嘘になる。
――そんなの、もう、どうでも良いよ。いつものとうまが帰ってきてくれたら、何でも良いよ――
しかしインデックスは、いつの日か彼にそんな懇願をしたことを思い出した。
彼女はただ幸せそうな二人を――上条当麻を見て、これでいい、と思い定める事にしたのだ。
- 386 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:25:19.92 ID:Jaa2nsz10
自暴自棄になった、というわけではない。
事実インデックスは遂に学園都市を去るその日にも
大勢の見送りの先頭に立つ彼らを拒みはせず、笑いかけた。
急な帰国をした彼女を慌てて出迎えたのはもちろん、神裂火織と――ステイル=マグヌスであった。
彼らは所用で日本まで迎えに行けなかった事を詫びたが、それ以上に、どこか複雑そうな面持ちだった。
インデックスは改めて『必要悪の教会』の一員として、彼らの同僚になった。
そうして、三人の日々が『再び』始まった。
食卓を共に囲んで騒いだ事は数えきれない。
土御門に引っ張り出されて、魔術事件を解決すべく力を合わせた事もある。
アニェーゼ達とミサを執り行い、オルソラやシェリーと暗号談義に花を咲かせた。
ローラとは唯一、二人を交えず対話したし、王室に招かれた宮殿の晩餐会は忘れられない美味ばかりで。
火織が騎士団長からの求愛を受けた日には、ヤケなのか祝いなのか判然としない酒宴を天草式と共に張った。
そんなある日、ステイルがフラッと姿をくらましたと思うと、顔に青痣をつくって帰って来た。
それは当麻と美琴から結婚式の招待状が届いた、翌日のことだった。
- 387 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:27:46.06 ID:Jaa2nsz10
思い起こせば、その日、その時からだったのかも知れない。
手当てをするインデックスに一言も発さず、
ただ悲しげな瞳で咥えた煙草を上下に揺らす彼を見て、何故だか切ない懐かしさを感じ。
――心臓が一度、大きく跳ねた。
記憶を失う前の二人がどのような関係だったのか。
彼女の問いにステイルは頑として回答を拒み続けた。
そもそも十年前、インデックスと彼がまともに顔を合わせたのは
『法の書』の一件と、第三次世界大戦の騒乱時ぐらいのものだ。
月詠小萌と姫神秋沙、そして上条当麻の言葉の端からステイルが
しばしば学園都市に訪れていたらしいことは感じとっていた。
しかしそれは即ち、彼が当麻を事件に巻き込みに来ている、という事実に繋がる。
決して好意的に解釈できるような事実ではなかったし――
――『卑怯者』と、そう詰ったことさえあった。
- 388 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:31:33.17 ID:Jaa2nsz10
火織も彼女自身とのことは語っても、ステイルの話題になると力なく言葉を濁すのみ。
しかしただ一つだけ、懇願するインデックスに根負けして、
ある『誓い』の存在を教えてくれた。
その時に脳裏を過ぎったのは、彼女と彼の数少ないやりとりの一つ。
『法の書』を廻る攻防の最中の事だった。
――駄目だッ!! そうなれば、今以上に大勢の魔術師に狙われる羽目になる!
――? 心配、してくれるの?
往時のステイルは一瞬肩を震わせたかと思うと彼女から顔を背け、
すぐに当麻に凄まじい剣幕で食ってかかり、インデックスを守るよう迫った。
そのあと彼女は、疑問を抱きながらも差し迫る危機に頭を切り替えたのであったが。
今にしてみれば、なんと残酷な問いだったのだろうか。
こんな薄情な女を、何故ステイルは身を削ってまで守ってくれるのだろうか。
どうして彼は、そこまで己を殺してしまうのだろうか。
ステイル=マグヌスのことを、もっと『記憶』したい。
自らの『図書館』にのみ価値を見出して日々を過ごしていたインデックス。
彼女に、新たな標が生まれた。
- 389 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:35:36.87 ID:Jaa2nsz10
意識して彼に特別な笑顔を向け始めたインデックスに、だがステイルは徐々に頑なになっていく。
彼への思慕が募る一方で、インデックスはある日唐突に、一つの事実に気づいてしまう。
『とうま』
ロンドンでは珍しい、茹だるような寝苦しい夜だった。
誰かの苦しげな呻きで彼女は目を覚ました。しかし辺りには誰もいない。
夢だったのかと再び眠りの海に身を浮かべようとして、インデックスは愕然とした。
『とうまぁ……』
声は再び、驚くほどすぐ近くから――自らの喉から漏れ出てきた。
すすり泣くような声は、彼女自身のものであった。
そうしてインデックスは皮肉にも、
ステイルに心を寄せれば寄せるほど、
恋という情動の中で焦がれれば焦がれるほど、
――――上条当麻を未だに愛している自分がいることを、知覚した。
- 390 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:37:20.13 ID:Jaa2nsz10
「……苦しかったかい?」
語り終えて、インデックスは刀夜の問いに大粒の涙を零しながら頷いた。
「すているが、本当に、好きなの……! ……なのに、なのに!」
自らの『能力』など言い訳にはできない。
『完全記憶』は、感情を記録する異能ではないのだから。
しかし。
自分を地獄から引きずり出してくれた少年が。
約束を守って帰って来てくれた男性(ひと)が。
「とうまの事が、どうしても『忘れられない』の…………!」
――どうして、誰も幸せにしないこんな『熱』を記録してしまったのだろう。
「なんで、わたしは、こんなに汚いの……?」
――――どうして、素直に彼の目を見て、このキモチを伝えられないのだろう。
- 391 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:39:07.89 ID:Jaa2nsz10
「やめるんだ」
力強い、怒気を孕んだ声がインデックスの自傷を咎める。
「でも現に、私はすているを傷つけてる! ……『不幸』に、してるんだよ!」
『それ』が原因の一つであると、彼女は考えていた。
ステイルも知っているからこそ、自分に踏み込まないのだ、と。
このままでは彼は、『幸せ』になどなれは
「 違 う ッ ッ ! ! ! 」
――裂帛の大喝が、彼女の苦悶を断ち切るべく放たれた。
- 392 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:41:56.28 ID:Jaa2nsz10
「思い出すんだ。この五年、君の側に居た彼の事を。
ああ、私は知らないさ。だから君の記憶に訊こう。
……ステイル君は悲しんでいたか? 苦しんでいたか?
君の側に一分一秒とて在りたくはないという顔を、していたのかッ!!」
『君は……貴女は、神を愛し、神に愛される高潔な聖職者だ。
多くの人が疑いようもなく、貴女に救われているのだから』
(――そうなの? 私は、あなたも救えているの?)
「彼は、笑っていなかったか? 安らいでいなかったか? 喜んでいなかったのか?
君の側に居られて幸せだという表情を、一度たりとも見せたことがないのか!?」
『――Sleep then my prince, oh sleep 』
『お、おい……!』
(――――ひとときでも、あなたの拠り所になれているの?)
- 393 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:43:14.07 ID:Jaa2nsz10
インデックスの瞳に生気が蘇りつつあるのを見てとり、刀夜は立ち上がった。
「さあ行こう、彼のところに」
「え、え…………!?」
突如の提案、いや命令に狼狽するインデックス。
しかし上条刀夜は止まらない。
「……私は当麻じゃないから、これ以上の事は出来そうにもない」
「この問題がすぐに解決するものでないことも承知の上さ」
「だが一度、君の今の想いをぶつけてみるべきだ」
「何、言葉にしなくても良い。言葉で全てが伝わるとも限らないしね」
「……君たちがもし記憶ではなく、心で繋がってるなら」
そして微笑み、手を差し伸べる。
くのう
「いつか君の幻想を、彼が壊してくれるよ」
- 394 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:45:04.27 ID:Jaa2nsz10
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立ち去る土御門たち――火織は別れを告げた直後の邂逅で気まずそうであった――と
入れ替わりで現れたのは、上条刀夜と、インデックスだ。
十年前の心情に向き合ったばかりのステイルだが、『現在』の事はまた話が別である。
飽きもせず沈黙に身を委ねる男女を気にも留めず、刀夜は用件を告げた。
「ステイル君、来たばかりで申し訳ないが私はそろそろお暇しようと思う。
もともとここには近くで商談が在ったから寄ったんだ。
明日からも仕事があるし、スーツケースも探さなければならないんでね」
「…………そうですか。最大主教とは、もう良いのですか?」
「ああ。目的は果たした。…………あとは、私の出る幕ではない」
ステイルは立ち上がると黙ったままの彼女を一瞥した後、刀夜に一礼をおくる。
- 395 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:47:12.03 ID:Jaa2nsz10
「……では、お元気で」
「私の娘を、よろしく頼むよ」
「…………命にかえても」
(……そういうことではないのだが)
刀夜は思ったが、高望みしてもしょうがない。
「とうや…………」
「……わかってるね? じゃあ、またいつか」
『娘』はいまだ、縋りつく子犬のような瞳で刀夜の袖を引く。
しかし、このままでは彼女の為にはならないのだ。
「最後にこれだけは言っておこうか」
その手をゆっくりと引き剥がし、別れの言葉に代えて彼は告げる。
「インデックスという慈愛深く、優しい娘を持てた事は、私の誇りだ」
溢れんばかりの情愛を残し、『父親』は聖堂を――ロンドンの街を後にした。
- 396 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:49:06.93 ID:Jaa2nsz10
そして礼拝堂は、一組の男女のためだけの舞台と化す。
二人は通路を挟んで隣の長椅子に、どちらからともなく腰を下ろした。
「…………どうしようもないな、僕らは」
「……………………そうかも」
先に口を開いたのは、煙草を切らしたのか口寂しそうなステイルであった。
応じるインデックスの声はか細い。
「まったく、問題はまさに山積みだ」
「なんでこうなんだろうね。私たち」
いったいどれだけの人々に見守られ、心を砕かせているのか。
続くやりとりは、どこか諦観を伴って交わされた。
「…………僕は」
「私は…………」
――やがて二人は、想いを言葉に変えた。
- 397 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:50:47.24 ID:Jaa2nsz10
「僕が愛したのは、貴女ではなく『あの子』だ」 「あなたが愛したのは、私じゃない『私』だよね」
「貴女はまだ、上条当麻を忘れられない」 「私の心には、いまだに上条当麻がいるの」
「それでも」 「それでも」
『――それでもあなたが――』
――――――――
- 398 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:52:58.87 ID:Jaa2nsz10
想いの最後のひとかけらは結局、言葉にはならなかった。
「まだまだ……時間はかかりそうだね」
「はぁ……臆病者なんだよ、お互いに」
しかし二人には、時間も機会も有り余っている。
一年のタイムリミットも、一万キロの距離も、とうに融けて消えた。
ならば残る障壁は、心の遠さ、それだけだ。
一歩縮めるべく先に踏み込んだのは、インデックスであった。
「…………名前」
「……え?」
「インデックスって呼んでくれたら…………嬉しいな」
ステイルは押し黙る。
彼女を最後にそう呼んだのは、果たしていつのことであっただろうか。
そして今の自分に、その資格があるのか。
「…………どうかな?」
一瞬の逡巡。
二人にとっては無限に等しく感じられた刹那の後。
- 399 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:54:46.14 ID:Jaa2nsz10
降ってきた言葉は、誰も幸せに出来ない一片であった。
「…………………………すまない、『最大主教』」
「……………………そっか。うん、無理しなくていいよ」
「本当に、すまない」
――結局自分は、ただの臆病者であった。
忸怩たる思いを噛みしめながら、しかしステイルも、一歩だけ。
「今日は…………疲れた。その、出来れば…………」
「…………なに、かな?」
――――ただ一歩だけ、勇気を出すことにした。
「膝を借りても、いいかな」
- 400 :イギリス清教編⑤ [saga]:2011/06/05(日) 21:57:20.06 ID:Jaa2nsz10
聖女の綻んだかんばせに、赤みが差した。
そこに在るだけで誰かを幸せに出来る、彼女の真の『才能』の顕れ。
「……どうぞ、私ので良ければ。…………子守唄も、いる?」
守護神はその瞬間、たとえ天使にだろうが悪魔にだろうが――
――『アイツ』にだろうが、胸を張って誇ることが出来る、と感じた。
「…………ありがとう。……お願いするよ」
僕は今、幸せだ――と。
白銀の聖女が、黒衣の守護神を温かく包みこんだ。
天から降りそそぐ陽のような唄声が、光に乏しかった聖堂を照らし出す。
安らかに微睡む男と、ふわりと微笑む女を、ステンドグラスの聖母が優しく見守っていた――――
- 409 :>>1 ◆weh0ormOQI [sage]:2011/06/06(月) 16:50:36.83 ID:rmpIv+mF0
同じ時間に来ると言ったな あれはウソだ
時間が取れなくなったので明日の夕方ぐらいに投下です><
ついでにトリとやらのテストも
お詫びに5分でできた小ネタ↓- 410 :NGシーン① [sage]:2011/06/06(月) 16:52:23.83 ID:rmpIv+mF0
-----------------------------------------------------------------------
「……いいさ、君たちがもし記憶ではなく、心で繋がってるって言うんなら」
そして力強く、右手を振りかぶる。
「えっ」
「その幻想を、私がぶち[ピーーー]!」
バキッ!!!!
「…………」
「………………」
「…………………………えっ?」
- 411 :NGシーン②[sage]:2011/06/06(月) 16:54:23.51 ID:rmpIv+mF0
----------------------------------------------------------------------
「僕が愛したのは、貴女ではなく『あの子』だ」 「あなたが愛したのは、私じゃなくて小萌だよね」
(ロリ的に)
「貴女はまだ、一方通行を忘れられない」 「私の心には、いまだに上条当麻がいるの」
(食費的に)
「それでも」 「それでも」
『――――』
「「えっ」」
- 412 :>> ◆weh ormOQI[sage]:2011/06/06(月) 16:55:47.47 ID:rmpIv+mF0
saga忘れがネタかどうかはご判断にお任せします
いや普通に忘れたんですけどね
- 416 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 17:54:39.01 ID:KJELjeb/0
一ヶ月後 聖ジョージ大聖堂 大広間
建宮「えーそれではお集まりの皆さん、この不肖建宮斎字が音頭を取らせていただくのよ!」
レッサー「よっ、やれやれ!」
建宮「ロンドンの街を守り切った我々と、新たな三人の仲間、そしてなにより――」
天草式「「「なによりー!?」」」
建宮「我らが麗しきアークビ「『私の』くぁいいインデックスの誕生日に、カンパーイ! なりしよ!!」
あああああぁぁぁぁ!? なにするのよなー!!」
「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」
建宮「oh……」
五和「げ、元気出してください建宮さん。おしぼりいりますか?」
建宮「おお五和……今の俺の癒しはお前だけなのよ…………」
五和「ほ、ほ、ほ、本当ですか!? 私、建宮さんのお役に立てて……?」
建宮「そのとーり! さあその『隠れてない巨乳』に顔を埋めさせてほs」
シンクノソラー
- 417 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 17:56:12.58 ID:KJELjeb/0
ステ「どいつもこいつも、主賓そっちのけで騒いでるな……」
イン「みんな楽しそうだから、別にいいんだよ!」
ステ「こう言っちゃなんだが、貴女の誕生日に括られて歓迎会をされるあの三人だって……」
元春「本人たちは一向に気にしてないからいいんだぜい」
火織「……結局のところ、財政難が一番の原因なわけですが」
ステ「…………」
元春「………………」
イン「なななななんで、私の方を見るのかな!?」
元春「その豊かな胸に手を当てて考えるぜよ……誕生日おめでとう」
火織「とりあえず一日五食はやめましょうね……誕生日おめでとう」
ステ「ダイエットの成果はどうなったのかな……誕生日おめでとう」
イン「とってつけたような祝いの言葉はやめて欲しいかも!?」
火織「おや……ステイル?」
イン「どうかしたかい」
ステ「今、インデックスに敬語を使ってませんでしたよね?」
イン(何で……!)
ステ(こんな時だけ鋭いんだ…………!)
- 418 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 17:58:01.52 ID:KJELjeb/0
元春「ほう、ねーちんにしてはなかなか早かったぜよ」
火織「なんですか……また私だけ気付いてなかったとかですか……」ズーン
元春「いやいや、なかなか尻尾を出さないようにはしてるから、皆そんなには気付いてないにゃー」
ステ「べっ、別に前から敬語が外れる事は珍しくなかっただろう!」アセ
イン「そっ、そうかも! 二人きりの時は普通がいい、なんて頼んだわけじゃ」アセアセ
ステ「ホントに隠す気があるのか貴女はァーーーーッッ!!!」
ステ「くそ、油断したか……」
火織「別に堂々としていれば良いでしょう」
イン「そ、その。私が、恥ずかしいって言ったから……」
元春「上司と部下になる前はタメだったろうが」
ステ「そこらへんの女心ってヤツは僕にもよくわからないがね……
まあ、最大主教が望むのなら、僕は何だってするよ」
イン「あぅ……」カァ
元春「見事なカミやん病だ……殴りたくなってきた」ウズウズ
火織「でもその割に名前は呼ばないのですね?」
ステ「…………」
イン「…………」
元春「……どうやらそこは地雷原だ、ねーちん」
火織「?」
- 419 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 17:58:53.92 ID:KJELjeb/0
元春「さて、いつまでもお邪魔するのもなんだし」
火織「そうですね、後は若い二人に……」
ステ「たいした歳の差でもないだろうが二十八歳!」
火織「冗談ですよ。来客に挨拶するのもあなた方の務めでしょう」
元春「(オレは冗談を言った覚えはないですたい)だな、会場を回って見せつけて来い」
ステイン「「何をだ(かな)!?」」
元春&火織((それをだよ))
移動開始…………
ガヤガヤ ワイワイ
ステ「……回るのはいいが、ドンチャン騒ぎで皆こっちには見向きもしないね」スタスタ
イン「皆嬉しそうだから別にいいかも。…………あ、あれ!」ヒョコヒョコ
ステ「アレ? ……………………さて、ではアチラに……」
クランス「おおインデックス! この度は誠に目出たいな!」
ステ「なんで居るんだよッ!! おかしいだろロシア成教!!!」
- 420 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 17:59:50.46 ID:KJELjeb/0
クラ「友人の生誕日を祝いに来て何が悪いんだ?」
ステ「いや、外交上いろいろあるでしょう? 其方のブレーンだって……。
…………ブレーンからしてアレだったな」
アニェーゼ「アレってのは、あっちでばか騒ぎの中心に居るアレのことですかい?」
イチバンタテミヤ! フリーキックヤルノヨナー!
オナジクイチバンワシリーサ! キックサレルボールヤッリマース!
ステ「…………」
イン「……なんでもありなのかな、あの人」
サーシャ「第一の懇願ですが見ないで聞かないで触らないでください! ロシアの恥ですあれはッ!!」
アニ「……ああ、あれが『カナミンスーツのワシリーサ』ってワケですか」
サー「第一の質問ですがまたかあのバカ上司ィィィーーーーッッ!!!!」
ステ(安定感があるいい人材だ……)
イン(ステイルの目がプレミアリーグの監督みたいになってるんだよ……)
- 421 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:00:48.64 ID:KJELjeb/0
イン「あれ? そう言えばなんでアニェーゼが二人と一緒なの?」
ステ「そういえば……何かつながりがあったのかい君たち?」
アニ「よくわかんねーですけど、あのアロハ野郎にお偉いさんだからって
案内役を押し付けられちまったんですよ。こちとら初対面だってのに」
サー「…………!! 第一の解答ですがその通りです! 私たちに特に面識などありません!」
クラ「きゅ、急にどうしたんだサーシャ?」
アニ「サーシャ…………?」
サー(うわあああぁぁぁ!)
アニ「ああ、ああ。なぁるほどぉ……」ニヤ
イン(あ、スイッチ入った)
サー「だ、第二の質問ですがその凶悪な顔はなんですか!?」
ステ(待て落ち着け、これは土御門の罠だ)
アニ「そうそう、その口調で気付くべきでしたねぇぇ……
痴女としか思えない拘束服のサーシャ=クロイツェフさぁん?」ニタニタ
イン「…………拘束服?」
ステ「………………痴女?」
サー「いやあぁぁぁあぁぁ!!!!!
第二と第三と第四の懇願です、お願いだから黙ってください!!!」
クラ「ん? あれはあれで可愛かったじゃないか、サーシャ」キョトン
サー「え…………」キュン
- 422 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:01:44.92 ID:KJELjeb/0
アニ「……チッ。予想外の展開になりやがりましたね。
はぁ……どいつもこいつも……」デアイガホシイ
ステ「だいたいにして頬を染める場面とは違うだろう、これは」
イン「ちっちっ、そこが乙女心の難しさなんだよステイル」
ステ「貴女は全世界の乙女に謝るべきだと思うね」
クラ「ああ失礼した。すっかり遅れたが誕生日おめでとう、インデックス」
サー「……ハッ! だ、第一の祝辞ですが、おめでとうございます」
アニ「ああ、私もまだ言ってやせんでしたね。おめでとうございます、最大主教」
イン「ふふふ、ありがとう!」
クラ「……『ありがとう』とは紛れもなくこちらの台詞だ」
サー「第二の解答ですが、私を長年の悩みから救ってくれたのは、貴方です。
なんと、お礼を言えば良いのか…………」
ステ「…………」
イン「サーシャがお礼を言うべきなのは、クランスのはずなんだよ。
あんなに頭を下げられたら、断れるはずないもん。
ほーんと、サーシャは愛されてるかも」ニヤニヤ
アニ「ほほう、愛されてるんですかい」ニタニタ
ステ(シスター・アンジェレネを呼んでおくべきか……)
- 423 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:02:44.09 ID:KJELjeb/0
サー「………………えーっと、その……第三の解答ですが」
ステイン「「?」」
アニ(おや、またしても予想外の反応)
クラ「待てサーシャ、そこから先は私の口から話そう」
サー「クランスさま…………」
ステ(十秒後に何をしてるか予想のつく自分が嫌だ)
イン「どうしたの?」
クラ「実はだな…………」
クラ「私とサーシャは今、結婚を前提にお付き合いを」
ステ「進展が速すぎるだろッッ!! とりあえず僕たちに謝ってくれ>>1!!!」
メンゴメンゴ(笑)
ステ「ちくしょおおおぉぉーーーーっっ!!!!」
イン(ステイルはいったい何と闘ってるんだろう……)
- 424 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:04:02.06 ID:KJELjeb/0
移動中…………
五和「はああぁぁぁ………………何であの人はいつも『ああ』なんでしょう…………」グビグビ
アンジェレネ「だ、大丈夫ですか五和さん……? ……はぁ」ゴクゴク
五和「大丈夫じゃないですぅ……。あなたの方こそ元気がないですよぉ……」プハァ
アン「うう……だってあの二人、割って入る隙がますます無くなってるんです……」ハァァ
オルソラ「まあまあ、二人とも夜更かししては美容にいけないとあれほど……」
ステ「……それは一カ月以上前の話題だった気がするんだが」フー
アン「あ! ふぁ、ふぁ、神父ステイル!」
イン「…………私もいるかも」
五和「あーこれは最大主教! おたんじょうびー、おめれとうございます!」
アン「お、おめでとうございます。……上手く、やってますか?」
イン「…………うん。ごめんは言えないけど、ありがとうねアンジェレネ。いつわも……」
オル「あら、十七歳の誕生日誠におめでとうございます、最大主教様」
イン「……」
ステ「…………」
五和「………………」
アン「……………………え、永遠の十七歳だったんですか? 最大主教」
イン「それはしいなの事なんだよ!」
- 425 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:05:08.91 ID:KJELjeb/0
ステ「なかったことにしよう。うん、絶対その方がいい」
アン「そうですね……」
オル「?」
イン「じゃあ↓から仕切り直しかも!」
ステ「それで貴女は、なにをくだを巻いていたんだ?」
五和「……わかってるんでしょおぉ……教皇代理の事ですぅぅぅ……」
アン「相当出来あがっちゃってますね……」
オル「おしぼりなど如何でございましょう?」
ステ(キャラまでぶれ始めた)
五和「…………オルソラさん! あなたもずるいんですよぉ!!!」
オル「え? え?」
アン「ど、どうしちゃったんですか五和さん?」
イン「いつわはネジが飛ぶと誰よりも怖いって天草式の皆が言ってたんだよ、そういえば」
ステ(別に平常運転でも相当なものだが……)
オル「わ、私何か、五和さんのお気に障ることを…………?」ワタワタ
五和「だって、だってだって!!」
- 426 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:07:44.34 ID:KJELjeb/0
五和「オルソラさん、建宮さんにお姫様だっこされてたじゃないですかぁぁ!!!」
「「「!!??」」」
オル「え? ヴィリアン王女様がなにか……?」
「「「………………」」」
ステ「……ゴッホン! あ、あの男、オルソラ狙いだったのか…………!?」
アン「そ、そんなシーン見たことないですよ!」
イン「…………ううん、私のデータベースに一件だけヒットしたんだよ」
ステ「なん…………だと………………?」
五和「そーですぅ!! 私は忘れてませんよぉ…………
十年前のあの日、オルソラ教会でのことをぉ!!!!」
「「………………は?」」
イン「詳しく知りたい人はアニメⅡ期のDVD二巻を見てね!!」
ステ「まさかの販促!?」
- 427 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:09:25.89 ID:KJELjeb/0
移動中…………
トチトリ「しかしあれだな、管理人さんとそちらのシスターさんは本当に瓜二つだ」
13857「こんなドジっ子と一緒にされるとは心外です、とミサカは悲しきDNAの悪戯を嘆きます」
17000「いったい誰がドジっ子だと言うのです、とミサカは失礼極まりない発言に憤慨します」
13857「お義兄様の好みの属性を獲得しようと『寮母さん』などにうつつを抜かしているから
お姉様に先を越されたのだ、とミサカは17000号の本末転倒ぶりを嘲笑います」
17000「アニェーゼさんに感化されて特殊性癖をゲットしてしまった13857号よりは
遥かにマシです! とミサカは(ry」
13857「どどどどうやってミサカがドSって証拠だよ! とミサカは(ry」
トチ「……仲の良い姉妹だなぁ」
イン「もう、また喧嘩してるの二人とも?」
ステ「彼女らのコレはじゃれ合いだろう。もう見飽きたよ」
トチ「おや、最大主教にステイルさん」
ステ「すまないね。せっかくの歓迎会がこんな節操のないもので」
トチ「ははは、貴方も意外に律義な人だな。こんな会を催してもらえるだけで私達は満足さ」
ステ「フッ……成程。確かに本人がそういうなら仕方がないね」
トチ「その通りだとも。さ、一杯どうだ?」
イン「…………」
妹達((また始まった…………))
- 428 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 18:10:36.64 ID:KJELjeb/0
ステ「お言葉に甘えたいところだが、遠慮するよ。……最大主教の身は素面でないと守れない」
トチ「ほほう、見上げた男ぶりじゃないか。なあ最大主教?」
イン「す、すているのバカ……!」
13857「お義兄様とは一味違う所を見せてくれますね、とミサカは微妙に惜しがります」
17000「なにが惜しいのでしょう、とミサカは修羅場を誘発しかねない
13857号の腹黒さに戦慄します」
ステ(SPが酒を飲まないのはごく普通のことだと思うんだけどね)
トチ「いやあ済まない。普段からバカップルを見慣れてるものだから、
私もうっぷんが溜まっていたのかもしれないな」
イン(普段からアレなんだ……)
トチ「とにかくこの場はあなたへの祝いが先だろう。
誕生日おめでとう、あなたの前途に我らの神の祝福を」
妹達「「お誕生日、おめでとうございます」」
イン「あ、あはは……。ありがとう、みんな」
ステ(他宗教の祝福は……まあ無粋なことか)
13857「ああそうです、最大主教」
イン「え? まだ何かあるの?」
17000「後ほどスペシャルなプレゼントをお渡しするのでご期待ください、
とミサカはあえて今出さずに勿体ぶります」
ステイン「「?」」
- 431 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:21:42.64 ID:KJELjeb/0
移動中…………
建宮「おらおらアックアさんよぉ! この建宮斎字の酒が飲めないっていうのよなぁ!?」
ウィリアム「す、少し落ち着くのである建宮! おい貴様ら、コイツを止めないか!」
牛深「ええー」
野母崎「やだよ、建宮さん酔うと見境つかなくなるしー」
対馬「そうね……五和に変に誤解されて聖人崩し喰らいたくないし……」
諫早「このまま行けばその対象はウィリアムさんになるのかな」
ウィ「わっ、私はもうとっくに聖人ではない!
というか貴様らもしかして、まだ十年前の事を根に持っt」
香焼「きょ、今日のポニーテールは反則的なまでに似合ってるっすよ///」
浦上「///」
ウィ「人の話を聞けーーーっ!!」
ステ「…………行こうか、最大主教」
イン「うーん、ちょっと可哀想だけど。関わるとめんどくさそうかも」
天草式「あ、お誕生日おめでとうございまーす(なのよなー)」フリフリ
イン「ありがとなんだよー」フリフリ
ステ「テキトーだな……」スタスタ
ウィ「待て、助けなくても良いから、せめて祝いぐらいはさせるのである!
って行くな! ぬうう、誕生日おめでとおおおおおおおおっっ!!!」
イン「ありがとねー」ヒョコヒョコ
ステ「ヒーローェ……」ホロリ
- 432 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:22:35.38 ID:KJELjeb/0
移動中…………
ヴィリアン「あら? 今ウィリアムの声が……?」
リメエア「間違いようのない野太い声ね……まあ大丈夫でしょう」
キャーリサ「そうそう。そんな事よりも腹の子の為に食べるべきなの、ヴィリアン」
ステ「立食パーティだってのに椅子持ち込んでるのもいるし……」
キャ「妊婦が居るんだ、大目に見るし」
イン「ヴィリアン! もう出歩いて平気なの?」
ヴィ「ふふ、心配してくれてありがとう。安定期に入ったから大丈夫ですよ」
リメ「さすがに四度目ともなると肝の据わり方が違うわね。……誰かさんと違って」
キャ「妹の心配をしてなにが悪いとゆーの姉上!?」
ヴィ「もう、姉君ったら……」テレ
リメ「自分が婚期を逃しているという事実をまず心配なさい」
ステ「すっかり姉馬鹿伯母馬鹿だな……どうしてこうなった」
ヴィ「でも、私はとても幸せです。こんなに家族に想ってもらえて。
……昔は、夢に過ぎないと思っていた光景ですから……」
キャ「…………」
リメ「…………」
イン「ヴィリアン、良かったね……」
- 433 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:23:37.86 ID:KJELjeb/0
ヴィ「まあいけない、私の事ばかりかまってもらって。
今日はおめでとうございます、インデックス」
キャ「そう言えばそうだったし。おめでとう」
リメ「おめでとう、最大主教。これからも共に英国を支えて行きましょう」
イン「ありがとうございます。不束者だけど、よろしくお願いするんだよ!」
ステ(今のはわざとなのか……?)
ヴィ「それに私も幸せだけど、今のあなたも幸せそうですよ、インデックス?」
イン「そ、そうかな…………」チラッ
ステ「………………」ポリポリ
キャ「横の甲斐性なしが我慢ならなくなったら私の所に連れて来い。
カーテナ(欠片)で根性を叩きなおしてやるし」
ステ「……どうぞ御随意に。例え大天使が相手だろうと僕の意志は揺るがない」
ヴィ「あら」
キャ「おお」
イン「」
リメ「だからキャーリサ、貴女は四十路手前の自分を顧みなさい……」ハァ
- 434 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:24:49.45 ID:KJELjeb/0
移動中…………
ステ「…………あれもスルーしたいんだが」
イン「……どうしよっかなーなんだよ」
エリザード「ほーれじゃんじゃん持ってこーい!!」ヤッホーイ!
ローラ「良き飲みっぷりであることよエリザード様! 私も負けてられなし……!」ウズウズ
ワシリーサ「んねぇねぇ聞いてるオジサーン? サーシャちゃんがね、
私の可愛いサーシャちゃんがお嫁さんに……ウッウウウッ」ガクガク
騎士団長「」シーン
ステ「騎士団長が尊い犠牲に……」アーメン
イン「無事主の御許に辿りつかん事を……」アーメン
ロー「あああ! インデックスーーー!! ってわわっ!?」トタトタガバッ
イン「あわわ! 危ないんだよローラ! 歳を考えなきゃ!」フラフラ
ステ「クソッ、感付いたか女狐が……!」チッ
ロー「…………本人の前でする言い草でなきにつきよ……」シクシク
- 435 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:25:41.74 ID:KJELjeb/0
ロー「と、とにかく! 二十六歳の誕生日おめでとう、インデックス」
イン「えへへー。ありがとう、ローラ」
ステ(年齢にせよ誕生日にせよ、この女の申告だという点が気に入らないんだよな……)
エリ「おや、主役のご登場か。今日はめでたいね、インデックス」
ワシ「あらぁインデックスちゃん、お誕生日おめでとー☆
…………ああサーシャちゃん、クランスちゃぁん……。
もう子供じゃないのねぇ…………うっ、ぐすっ」ビシバシ
団長「…………お、おめでとう。最、大主、教……。
これか、らも……妻、と仲良、く……………………」パタッ
イン「うん、うん! とっても嬉しいかも!!」
ステ(…………まあ、いいか。……?)
ロー「」チョイチョイ
ステ「はあぁ………………なんですか、手短にお願いしますよ」プカー
ロー「どうである、青少年? 新たな一歩は踏み出せし?」
ステ「…………あの聖堂、カメラも監視術式も無いはずなんですが」
ロー「なんとステイル! 神の御前でナニに及んだとヒャアアァァッッ!?」ボボウッ!
ステ「次に言ったらその阿呆な長髪を焼き尽くしますよ……」ユラリ
ロー「今のだけで三十センチは減りたりよ!?」
- 436 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:26:56.27 ID:KJELjeb/0
ロー「それはさておき。壁を一つ、乗り越えた感じでありて?」
ステ「……別に、そのような」
ロー「どのみち、上条刀夜には感謝せねばならなし。
……あの子の父親役を出来る者は、ロンドンにはおらぬのだから」
ステ「…………母親役だって、居るわけじゃあない」
ロー「……えぇ、そうね」
ステ「話はそれで終わりですか?」
ロー「手短に済ませいと言ったのはそっちにつきよ。
まあ、まだまだこれから、と言う事ね?」
ステ「貴女に言われるまでもない事ですね」
イン「むー! またローラとお喋りしてるのすている!?」
ステ「おっと。では僕は行きますよ」
ロー「ええ、頑張りなさい」
ステ「フン……」スタスタ
「ええ、ええ。まだまだ、これからよ? ステイル…………」
- 437 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:32:44.25 ID:KJELjeb/0
移動中…………
イン「あ、レッサーが何か始めるかも」
ステ(イノケンステンバーイ)
レッサー「あっはっはっ!! さーさお集まりの皆さん、見たいですかー?
私のスカートの中身、今日はなんとノー」
ステ「よさんかァァッッ!!!!」ゴオウッ!
ルチア「おやめなさい、破廉恥なッ!!」ドグシャァッ!
レッ「んぎゃぁぁっっ!!!」
シェリー「あーあ、レッサーが『✝レッサー』になっちまった」
ショチトル「だ、大丈夫なのかコレ!?」
ルチ「気にする必要はありません、こんな喋る15禁」
ステ「すぐに蘇るよ。レッサーだからね」
ショ「そ、それにしてもやり過ぎてるように……これ、ただの肉塊じゃぁ」
シェ「アンタも心配性ねえ。だったらやるか? 蘇生の儀式」
イン「うむ! では準備を始めるんだよ」
ショ「じゅ、十字教にはそんな秘術が!?」
ルチ(純真な子羊ですね…………)
- 438 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:34:54.00 ID:KJELjeb/0
イン「それじゃあいくよ……」
ショ「」ゴクリ
イン「ささやき」
ステ「いのり」
シェ「えいしょう」
ルチ「ねんじろ!」
ショ「……」
レッ「 レッサー は まいそう されます 」
レッ「…………じゃあないでしょうがあああぁぁぁ!!!」ガバァ!
ショ「おお! 本当に蘇るなんて!!」キラキラ
ルチ(心が痛い)
シェ「なるほど、ツッコミはツッコミでも純真無垢なのねこの子……」
イン「ステイルとは大違いなんだよ」
ステ「おい待て」
- 439 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:37:01.28 ID:KJELjeb/0
レッ「ステイルを差し置いてツッコミに回るとは何たる不覚…………。
それはさておき、本日はおめでとうございます最大主教」
ルチ「おめでとうございます。我らの主に感謝いたしましょう」
シェ「おめでとさん。また一つ三十路に近づいたわね」ククク
ルチ「シェリーさん! 主より命を授かった聖なる日をそのように……!」
イン「る、ルチア。そんなに目くじら立てなくてもいいんだよ?」
ステ「いつもの軽口だろう、全く生真面目にすぎるね」ハッ
((((アンタが言うな))))
ステ「…………?」
ショ「おめでとう、インデックス。……そして、ありがとう」
イン「こちらこそ。……私の力で、誰かを救えるんだって思えたから。
だから、私もあなたに救われたんだよ」
ステ(『救い』…………か)
ショ「これからの、あなたに貰った人生を力の限りに生きる。
それで、あなたも喜んでくれるだろうか?
……エツァリは、私と共に生きてくれるのだろうか?」
- 440 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:38:13.70 ID:KJELjeb/0
イン「一個目の解答は、必要ないよね。……そして二個目の答えは、私にはあげられないよ。
ショチトルが、自分で掴みとらなくちゃ意味ないの。頑張ってね」ニコッ
ショ「わかり、ました…………。ありがとうございます、最大主教」
イン「もう! だからインデックスでいいって言ったかも!」
ショ「あ、いやその、つい! あまりにあなたが、その、眩しかったから……」
イン「く、口説かれてるのかな私!? で、でも、私には他に心に決めた人が……」モジモジ
ショ「ちが、ちがぁーーーう! 私にだってそんな趣味はなーーーいっ!!」
ワーワー ギャーギャー
シェ「……ごく稀にだけど、あの子からはオルソラとはまた別の神々しさを感じるんだよな。
むかし私、インデックスの命を思いっきり狙ってた筈なんだけど」
ルチ「私とて、かつて最大主教に刃を向けた身ですが…………。
どこぞのウニ頭同様、ああもサッパリ許されるとそれはそれでむず痒いものがあります」
ステ「…………そんなことはないさ」
ルチ「え?」
ステ「彼女もまた、人並の苦悩に焼かれ、当たり前の感情に左右される人間だ。
人の上に立つ者として、それを衆民に見せてはいけないのだろうが……」
レッ「……だったら、貴方がその受け皿になる、ぐらいの気概を見せたらどうなんですか?」
- 441 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:40:29.46 ID:KJELjeb/0
ステ「当然やるさ。僕は彼女の心まで守り抜きたい。
しかし、それは一人で背負い込めばいい、という問題でもない。
…………僕では受け止められないモノも、あるんだ」
シェ「それで? 私らにどうして欲しい訳?」
ステ「僕が言えた事ではないのはわかってる。だが…………」
レッ「まどろっこしいですね。良いんですよ? 遠慮なく言ってくれて」
ステ「……時々で良いんだ。彼女の中に、踏み込んでやってくれ。
それで彼女は、少なからず救われるかもしれない」
ルチ「……立場と言うものがありますから、一歩引いていた事は否めません」
シェ「確かになぁ。親しみやすいヤツだけど、
奥にまでズケズケ入っちまうのは違うかな、とは思ってたよ」
レッ「別に私は仕事上の付き合い、ビジネスライクな関係しか持ってないですしー?」
ステ「…………そ、そうか……」
- 442 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:41:46.17 ID:KJELjeb/0
レッ「――まあでも、素直になれない神父さんが多少なりとも自分を曝け出したんです。
私たちも負けてられませんね」
ルチ「迷える子羊……いえ、迷える友人の支えになるのは、主ではなく私の意志です」
シェ「私はどう足掻いても長い付き合いになるんだ。それとなく気を掛けてやるわよ」
ステ「……………………ありがとう」
レッ「あーーーーーっ!! やばい、今のでサブイボバリバリですよ!! おおサムイサムイ」
ステ「なんだと貴様ぁっ!?」
ルチ「明らかにキャラに合っていなかった事も否めませんね。嘆かわしいことです」
ステ「キャラ否定!?」
シェ「っていうか赤髪黒尽くめって時点で『キャラ作り頑張ってます』オーラ出てない?」
ステ「貴様が言うなゴスロリィーーーーーッッ!!!!!」
ショ「あ、あっちは賑やかだな……あはは」ビクビク
イン「……まーたレディーに囲まれてイチャコラしてるんだよ…………」ブツブツ
ショ(怖いよぉ…………)
- 443 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 19:44:50.97 ID:KJELjeb/0
移動中…………
ステ「あらかた、挨拶は済んだかな」スタスタ
イン「あと残ってるのは…………。いた、ね」ヒョコヒョコ
エツァリ「どうも最大主教。この度は誠におめでとうございます」ペコリ
イン「どういたしまして。…………ごめんねステイル、ちょっといいかな?」
エツ「おや?」
ステ「……ああ。では僕は、向こうに行っているよ」
スタスタ
エツ「……一体どうしました?」
イン「私に、話があるんだよね?」
エツ「これはこれは……一月も前の事を、よく記憶して……。いや、愚問でしたねこれは」
イン「私は、『忘れない』よ。
……今までの事も、これからあなたが語る言葉の一欠けらも、逃さずに」
エツ「そうですか……」
「では、お話しましょう。自分の『約束』について」
- 444 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:32:57.65 ID:KJELjeb/0
------------------------------------------------
インデックスたちから距離を取ったステイルは、
ギリギリで視界から外れない程度の位置に陣取って食事を摘むことにした。
もちろん、二人の会話の中身は聴こえない。
「なんだ、終わったのか?」
「お疲れ様です、ステイル」
「おう、今日は顔色がいいじゃないかー?」
姿を現したのは、最初に会って以来影も形もなかった二人と、舞夏であった。
「君たちか、どこに行っていた?」
舞夏は給仕の為にあちこち動き回っているのを何度となく確認したが、
ステイルは土御門と火織をその後一度も見かけていない。
彼はその事を怪訝に思い問い質した。
「なーに、誕生祝いがたっぷり届いてたんでな」
「不埒なものが紛れ込んでいないか、確認していたのですよ」
「…………そうかい。御苦労さま」
- 445 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:34:32.69 ID:KJELjeb/0
少し前のステイルなら、どうして自分を呼ばなかったのだと食って掛かるところだろう。
だが今の彼には、こうして二人を労う余裕さえある。
舞夏も含めた三人は顔を見合わせ、三様に笑った。
「なんだ、その反応は…………! 僕が何かおかしなことを言ったか?」
そんな彼らの応えに、ステイルは僅かばかり紅潮して憤慨する。
似合わない、という自覚はここまで散々からかわれて身に染みているようであった。
「いやー悪い悪い。インデックスは…………海原と一緒か」
「ほほー。良いのかステイルー?」
「……別に言いも悪いもない。僕が彼女の交友関係に口を挟むわけにもいかないだろう」
「ふむ…………。どうも貴方達の『ソレ』は複雑で、私には量りかねますね……」
煙草に手を伸ばして舞夏の口撃をかわすステイル。
それを見た火織は呆れの交じった口調でひとりごちた。
「放っておいてくれ。『この点』だけは余人に口を挟まれたくはない」
「……ま、誤魔化さなくなっただけマシ、と取ってやるよ」
(誤魔化す、か…………)
しかしステイル自身、目指す頂を把握しているわけではなかった。
- 446 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:35:31.85 ID:KJELjeb/0
「プレゼントと言えば、御坂姉妹が先ほど含みを持たせてきたな……」
やや重くなった雰囲気を解すため、ステイルは話題を切り替える。
三人は多々不満顔だったものの、これ以上は得るものが無さそうだと乗ってきた。
「シスターズ? オレたちはなんにも聞いてないぜい」
「それは気にはなりますが、彼女たちに限って心配はないでしょう」
「そーだ、私はまだインデックスにお祝いしてなかったなー」
「君は朝起こした時にしたんじゃないのか?」
「それはそれ、これはこれだー」
他愛もない会話が延々と続く中でふと、火織が形の良い眉を顰めた。
「どうかしたのかい、神裂」
「いえ……今にして思い当たったのですが…………」
言いにくそうに、口籠る。
事情を理解できないステイルや舞夏が疑問符を浮かべる中、
「なんだ、今頃気付いたのかねーちん」
「…………結局、気付いてて私には黙ってるではないですか!!」
- 447 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:37:01.65 ID:KJELjeb/0
テンプレート通り土御門が飄々とからかいの言葉をかけた。
憤懣やるかたなしの火織を押し留めて、ステイルが突如始まった漫才の解説を求める。
「どうどう。で、なんの話だい」
「いや、インデックスへの贈り物の話なんだがな? 学園都市からもタップリ来てんですたい」
「それはそうだろう。あの子の友人は科学サイドにも数多くいるんだからね」
ステイルの知らない彼女の片鱗を感じて、小さく胸が痛む。
しかしその辺りの事情は、むしろこのアロハシャツの方が良く承知しているはずだ。
訝しむ彼の疑問に答えたのは、土御門ではなく火織であった。
「…………無かったのです」
「……え?」
「『あの二人』からの分が…………どこにも」
- 448 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:40:55.64 ID:KJELjeb/0
--------------------------------------------------------
「…………そっか」
「……ご清聴、感謝いたします」
己の『物語』を語り終えたエツァリが、芝居がかった仕草で一礼する。
インデックスは、感慨深げにポツリと呟いた。
「……とうまはちゃんと、みことを幸せにしたね」
「…………ええ。自分にとっての『世界で一番』も、そろそろ期限切れですね」
二人の間を奇縁で繋ぐ、一組の男女。
彼らの幸せは、インデックスとエツァリにとっても甘く、そして切ない幸福だった。
「これからエツァリは、どんな『幸福』を捜すのかな?」
「おっと……申し訳ありませんが、其れを最初に告げる相手は既に決めておりますので。
どうか、ご容赦ください」
「……ルール違反、するとこだったかも」
舌を出しておどけるインデックスに、しかしエツァリは鋭く、次なる問題提起をした。
「たったいま課したルールを破るようで恐縮なのですが」
「………………なに?」
「貴女ご自身は、『幸福』というものを如何様に捉えておいでですか?」
- 449 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:42:21.86 ID:KJELjeb/0
問いに、息が詰まった。
「……貴女は、ショチトルを救ってくれました。自分の事も、トチトリの事もです。
この感謝は言葉では言い表せない。ゆえにこれからの行動で示そうと思います」
「そんな、私はそんな見返りなんて」
「きっと貴女は、他にも多くの人を救ってきたのでしょう?
その度に、自らも救われた、そう感じてはいませんか?」
――どうして?
彼女の表情から自らの推察が正しい事を感じ取ったのだろう。
エツァリは、更に畳みかける。
「救ったから、救われた。高尚で高潔な精神で、誰もが貴女を讃えるでしょう。
…………しかし、あなたはそれで本当に『幸福』ですか?」
彼の語る言葉の裏側に、二人の『独善』の背中が見え隠れしていた。
それは、インデックスも良く知る――
「はっきり、申し上げてしまいましょう。
あなたは、上条当麻と御坂美琴の『信念』を、『模倣』してはいませんか?」
- 450 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:43:48.94 ID:KJELjeb/0
それは、当に正鵠であった。
「……自分も、あの二人をそれなりに、しかも『そういう目』で眺めてきた身です。
他の皆さんがどうかわかりませんが、自分には、理解できてしまうんですよ」
――彼らのように、何の見返りも求めずただ誰かを救えば、それで『幸福』を掴めるかもしれない。
インデックスは、自らも確りとは自覚していなかった『勘違い』を、出会って間もない男に正確に突かれた。
「お節介なのは承知の上。……しかし貴女は、別の『幸福』も探ってみるべきだ。
自分達を救ってくれた貴女の痛々しい姿は、見るに堪えないのです」
『今のあなたも幸せそうですよ、インデックス?』
(ヴィリアン……良いのかな? そんな『幸せ』、私に似合うのかな?)
「以上、です。貴女の御心を乱したこと、お詫び申し上げます」
言うべきを終えたエツァリが、再び一礼した。
その時。
「まったくだね、万死に値する……とりあえず後で屋上来い」
「ははは。この聖堂、屋上なんてあるんですか?」
「聖堂裏でも構わないよ」
- 451 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:45:16.83 ID:KJELjeb/0
コツ、コツ、とこの五年で最も聞き慣れた深い靴音が鳴る。
インデックスが顔を上げると、赤髪の想い人が見分けのつけ難い顔を二つ、引き連れて立っていた。
「彼女らが、『プレゼント』を渡したいそうだ。……中身は、土御門でさえ検めていない」
『彼女』の妹達、13857号と17000号が、手に何か持って歩み出る。
「失礼します、インデックスさん。『私達』からの贈り物は、このチョーカーです」
17000号は豊かになった表情で微笑みかけ、見覚えのある首飾りをインデックスに渡す。
「一方通行を覚えておいでですね? 彼のように装着してください。その後は私達にお任せを」
修道服の13857号は対照的に、淡々とチョーカーから延びる電極を彼女の頭に装着する。
「本当に、大丈夫だね?」
苦い顔で問いかけたのはステイルだ。
しかし嫌な記憶が蘇ったにすぎない彼も、その行為自体を咎めるわけではない。
「ご安心を。安全性を最重視した設計ですので」
「その結果として、耐久力が失われることになりましたが。
一度きりの使用と割り切れば問題ないでしょう……終わりました」
- 452 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:46:56.45 ID:KJELjeb/0
当のインデックスを置き去りにしたまま、事は拍子良く進んでいく。
「け、結局コレってなんなのかな……?」
困惑のまま声を絞り出す彼女に、妹達はあくまで冷静に返した。
「使って頂ければすぐにご理解できるかと。先ほど言ったように、安全は確保されています」
「これが、私達『ミサカ』のお気持ちですよ。……どうぞ、チョーカーの電源を」
悪意など微塵も感じさせないシスターズが是非にと促す。
それでも不安を御しきれなかったインデックスは、ステイルに目を向ける。
彼は、どこか寂しさを隠しきれない表情で、しかし安心させるように微笑みかけてくれた。
意を決したインデックスは、電極のスイッチに手をかけ――
――そして、電子の海に飛び込んでいった。
- 453 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:47:41.80 ID:KJELjeb/0
-------------------------------------------------------
- 454 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:49:07.05 ID:KJELjeb/0
――んっ、ん! コレ、上手く行くのかぁ? ――
――なによアンタ、あの子に直接会いたくないワケ? ――
右も左もわからぬ小宇宙の中で、インデックスの耳にとても愛しい音が響く。
――いやそんなんじゃありません事よ!? ただ、俺の右手が邪魔しないかな、とは――
――信号自体は機械でやり取りしてるの。場所も脳、あらゆる意味で右手の干渉なんて――
――って、アレ!? ――
――おい、どうした!? やっぱりなんかトラブって――
そう言えばこの一月、一度も声を聴こうとはしなかった。
だから、なのだろうか。こんな、こんな温かい方法で。
――も、もうあの子『来てる』わよ!――
――んなぁっ!? おいおい、妹から連絡はまだ――
――ハメたわねぇ、アイツラぁ…………! ――
- 455 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:50:12.31 ID:KJELjeb/0
こんなにも優しい『熱』を、自分に届けてくれたのだろうか。
――あーもう、怒るのはあとあと! ――
――だな。……おい、聞こえてるか? いきなりで悪かったな――
――……コホンッ! 久しぶり。元気よね? ちゃんとご飯食べてる? ――
――おいおい、そういう話は後に置いて、まず言う事があるだろ? ――
――う、うっさいわね! わかってるっつーの! ――
ああもう、どうして。
どうして彼らは、これほどに。
――せーの、で行くぞ。ちゃんと合わせろよ美琴? ――
――当麻が、私に、合・わ・せ・るのよ! せーの! ――
――おっ、おいおい! ――
- 456 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:52:47.86 ID:KJELjeb/0
――誕生日おめでとう! 俺の大切な家族、インデックス! ――
――誕生日おめでとう! 私の大事な親友、インデックス! ――
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- 457 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:54:19.95 ID:KJELjeb/0
--------------------------------------------------------
止まらない。止まってくれない。
止めなくても、いい。
一月前とは意味を異にする透きとおった水晶が、ぽたりぽたりと顔を覆う指の間から零れては消える。
「お二人が今日という日に、電話よりもメールよりも、もっと近くで繋がりたい、と。
ですので、ミサカたちとその他多くの協力者でご用意致しました。
…………本来ならば、この場にお呼びできるのが一番だったのでしょうが」
「んっ…………ひっぐ……べつ、に……いいよぉ…………すごく、すっごく!」
女のか細い躰が、すぐ近くで頭を撫でていた長身の腰に抱きつく。
男は、そっと華奢な肩に手を置いて、硝子のような躰を抱き寄せ――はしなかった。
男はあくまで、慈しむように絹の如き銀糸を撫でるのみ。
「嬉しかった………うれ、しかったよぉ!!」
「ああ…………良かったね。本当に……良かった」
インデックスは、己が思いの丈をひたすらに叩きつける。
ステイルは、巨木のようにそれを受け止め、吸収する。
- 458 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:55:36.87 ID:KJELjeb/0
やがて彼は、彼女の耳朶に顔を寄せ囁いた。
「僕からも一言いいかい?」
その言の葉の一つとて聞き洩らしたくないと、インデックスは目を瞑って頷く。
愛おしげにその姿を見やってから、ステイルは肩を握る手にかすかに力を籠めた。
「あらためて。誕生日、おめでとう。それと――」
――――生まれてきてくれて、ありがとう――――
そうして男女は暫く、そのままのかたちで寄り添っていた。
- 459 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:57:06.22 ID:KJELjeb/0
――んが。
パシャリ!
「「………………へ?」」
突然、シャッター音が響き、フラッシュが瞬いた。
いや、突然と認識していたのはステイルとインデックスのみで――
「第二の祝辞ですが、おめでとうございます」
「ううう、お幸せに、ふぁ、神父ステイル……」
「計画通り、とミサカは嗜虐心100%の笑みを浮かべます」
「うむ。よきかなよきかな、である」
「なかなか大胆だったの。男を上げたなステイル!」
「インデックスー! 私の胸にも顔を埋めて欲しきよー!」
「お、お兄ちゃん……わ、わ、私も…………」
「おっといけません。その話は部屋に帰ってからにしましょうね」
二人を取り囲む、人、人、人。
そして、いましがたカメラを鳴らした元凶は。
「すっ、すいません二人とも! 私は止めたのですが……」
「またまたやらせていただきましたァン! だぜい」
- 460 : エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 20:59:08.31 ID:KJELjeb/0
「……つっ、」
「す、すている……?」
「…………つ…………!」
「あーその、血管がキレない程度にしましょうねステイル?」
「……つうぅぅぅぅ………………!!」
「とりあえずこの写真はロンドンタイムズにタレこみますにゃーステイルくん」
ブチブチブチンッ
「あ」
「土 御 門 オ オ オ ッ ! ! ! ! !」
ロンドンでは珍しい、よく晴れた日のこと。
珍しくもなくなった絶叫が、青青く晴れ渡る空に響いて抜けた。
--------------------------------------完-------------------
- 461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2011/06/07(火) 20:59:52.51 ID:KJELjeb/0
- 462 :????[saga]:2011/06/07(火) 21:00:32.42 ID:KJELjeb/0
元春「いやいや、なに勝手に終わらせてるんだにゃー?」
ステ「えっ」
イン「えっ」
- 463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/07(火) 21:01:06.92 ID:Aku3JO7c0
- えんだぁぁぁぁぁぁぁぁ
乙です! - 464 :????[saga]:2011/06/07(火) 21:01:32.84 ID:KJELjeb/0
イン「なんていうか、普通に絶叫オチもついて良いエンドだったと思うかも」
ステ「極めて遺憾だが、まあ……オチとしては普通だね」
元春「だーかーらー。つまりそれってノーマルエンドだろ?」
ステ「……なにか文句でもあるのか?」
イン「トゥルーエンド目指すのは疲れそうなんだよ……」
ステ(さっきから何語で喋ってるんだこの二人)
元春「ま、そういうわけだから」
ステ「どういうわけだ……というツッコミも使い古された気がするな」プカー
イン「この先どうやって続けるつもりなのかな?」
- 465 :????[saga]:2011/06/07(火) 21:02:49.62 ID:KJELjeb/0
元春「おまえら、ちょっと学園都市行って来い。二か月ぐらい」
ステイン「」
ステ「……とりあえず彼女は、最大主教なんだが」
元春「最大主教だからこそ、友好を深めるために訪問するんだろうが」
イン「二か月はちょっと……」
元春「サーシャの件もショチトルの件も片付いたんだ。たまには息抜き息抜き」
ステ「そもそもこの状況で学園都市に行った場合、結構気まずいんだが」
イン「とうまとみことにあんな会い方した手前、あっさり行っちゃうと向こうも……」
- 466 :????[saga]:2011/06/07(火) 21:04:00.30 ID:KJELjeb/0
元春「ハァ…………まったくお前らときたら」
ステ「溜め息をつきたいのはこっちだ!!」
元春「しょうがないぜよ、そんな煮え切らないお前らに
陰陽道に伝わるとっておきのまじないを教えてやる」
イン「おまじない?」
元春「どんな理不尽な展開だろうと灰燼に帰す、最高の術式さ」
ステ「……とりあえず、言ってみろ。言った後でどうするか判断する」
元春「こまけぇこたぁ、いいんだにゃああぜるばいじゃんんんんんっ!!!???」
ボーボーボー
イン「とーおきーやーまにーひーはおーちてー」トオイメ
ステ「……………………」トオイメ
- 467 :????[saga]:2011/06/07(火) 21:05:21.22 ID:KJELjeb/0
「不幸だ…………」
--------------------------------------完-------------------
----------------- 完-------------------
-----------------第一部 『ロンドン編』 完-------------------
- 469 :第一部『ロンドン編』 エピローグ[saga]:2011/06/07(火) 21:06:19.44 ID:KJELjeb/0
超教皇級の馬鹿口調
クワガタ
原子崩し
窒素装甲
AIM剥奪
くぎゅ
フレ/ンダ
アックア
だぞー
だにゃー
かつての痴女服
ロシア最強の女
元第二王女(未婚)
おばあちゃん
ALL CREARED!
……WHAT'S THE NEXT TRADEMARK PHRASE?
- rmOQI[saga]:2011/06/07(火) 21:07:47.34 ID:KJELjeb/0
うん? 『続く』けど?
大変こざかしい真似をして申し訳ありませんでした
ではあとがき(笑)のようなものを少し書き捨てていこうかと思います
どうぞ読み飛ばしてください
ここまで読んで下さった方はもう御承知でしょうが、
このSSは要するにステインが相思相愛の癖につまんないことでウジウジして、
いろんな人に説教してもらっては距離を詰めていく、というのが本筋になります。
の割にあちこちに脱線するのは>>1にシリアス、ギャグ、ラブなどどれか一つの
作風に絞って作文するだけの能力が無いからです。
今後も8割方アホみたいにテンション高いギャグで行きます。
また>>1は上条さんとインさんの関係も実は好きで、
これを乗り越えようと思ったらステイルは相当なハードルを越えなきゃいけないだろうなあ、
と思ったのも彼の受難の原因の一つです。
まあ時間軸を原作時点に設定してしまえばいくらでも攻略難易度は上げられるんですが。
ラストまでのプロットはほぼ完成しており、後は肉付けしていくのみですが
このペースでは後2カ月はかかる見込みとなります。
学園都市編はロンドン編よりもさらにギャグ中心になるので、
気長に、気楽にお付き合い頂ければ幸いです。
以上チラ裏でした
それでは>>1は一週間ほどお休みさせていただこうと思います
とかいって調子に乗って明日来るかも
ご指摘の他、ご質問などもあればどうぞ罵ってください
それではまた!
- 473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)[sage]:2011/06/07(火) 21:12:46.40 ID:ALHNf5oqo
- 乙!!久々に鳥肌物のssに出会えたわ
- 474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)[sage]:2011/06/07(火) 21:14:23.83 ID:5pABC8RAO
- 乙
俺達のステインはま だ始まったばかりだ!
今まで楽しかった!これからも楽しみだ!- 482 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:10:28.64 ID:gbNAPBf30
こっそり自分用にまとめた俺設定(笑)を直して投下
そういうの要らないです、って方はスルー推奨- 483 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:12:45.69 ID:gbNAPBf30
ステイル=マグヌス(24歳)
イギリス清教第零聖堂区、『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師。
一度も触れなかったけど実は事実上のリーダー。
その割にはロンドンの防衛と最大主教の護衛を一人で背負いこんでいたお馬鹿さん。
イギリスが誇るメインツッコミとしての技術と胃薬の量だけが日々増加し続ける苦労人。
あ、一応魔術の腕も上がってますよ?(笑)
チート術式をいくつか新たに修得しているが、基本は努力の人。
原作中で上条さんの右手の最初(だよね?)の餌食になった故か、結構なフラグ体質に。
最大主教とは上司と部下の関係から抜け出しそうであと一歩踏ん切りがつかないため、
周囲からは相当まどろっこしがられている。
実のところ当初からの彼女のアプローチは全て意識した上でかわし続けていた。ヘタレ。
が、最近はそれもやめたようである。
インデックス=ライブロラム=プロヒビットラム (26歳 ※ローラの申告による)
英国三派閥が一、清教派ことイギリス清教のトップたる最大主教(アークビショップ)。
頭に宿す『禁書目録』は健在で、最大主教としての公務のかたわら、
『原典』を危険度の低い『偽書』に編纂する作業に携わっている。
童顔とそれに似合わぬナイスバディで本人の知らぬところで着々と信者を増やしているが、
大食いも相変わらず。イギリス清教の緊縮財政にはかなり苦しめられている。自業自得。
護衛の魔術師とは上司と部下の関係から抜け出しそうであと一歩踏ん切りがつかないため、
周囲からは相当まどろっこしがられている。
上条さん限定だった攻撃性はステイルに対してはやや大人しめ。それをどう見るべきか。
実のところステイル以上のヘタレかも。
が、無自覚にイチャつくことも最近増えてきた。
- 484 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:14:10.52 ID:gbNAPBf30
神裂火織(旧姓 28歳)
イギリス清教傘下、天草式十字凄教の女教皇(プリエステス)。
騎士派の長である騎士団長の妻として、清教派とのパイプ役も兼ねている。
聖人としての能力はもちろん健在で現在ロンドンNo.1の実力者。
原作では和食にはある程度の腕を見せるが、>>1のせいで洋食がダメダメにされてしまう。
舞夏の指導でようやく産業廃棄物を産み出せる程度の腕前にはなった。
ステインの微妙な関係に最近やっと気付いた困ったさん。姉のように二人を見守る。
フルネームで呼びたいときに呼べない人その一。
土御門元春(26歳)
イギリス清教第零聖堂区、『必要悪の教会』のNo.2。
卓越した頭脳と交渉力、そしてスパイ能力を生かして世界を股にかけるスーパーエージェント。
が、おちゃらけた態度のせいで周りからは畏怖はされても敬意は持たれない。
学園都市での長いスパイ活動は既に終え、
現在は基本的にロンドンで妻となった元義妹といちゃいちゃしながら暮らしている。
イギリスのメイン孔明でもあり、現在の矛先はもちろんステイル。
ご存じ禁書の名ユーティリティープレイヤー。
土御門舞夏(24歳 ※原作では13~15?)
最大主教の御側付きメイドで、かつての義兄と籍を入れている。
しかし相変わらず呼称は(少なくとも人前では)「兄貴」。
原作では科学魔術どちらの裏事情も知らないとされるが、本作では魔術サイドの事は承知している。
『ランベスの宮』の雑事をほぼ一人で担当するスーパーメイド。
掃除ロボに乗っての移動はやめたらしい。
- 485 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:17:39.88 ID:gbNAPBf30
フィアンマ(年齢不詳 30代?)
現在は旅の修道士にでもなるのだろうか。あとメイド喫茶チェーンの経営者。
おそらく最もキャラ崩壊させられた人。
今後の見せ場も予定してるのでファンの方は許して。
上条当麻(26歳)
我らがヒーロー。現在の職業は学園都市のお偉いさん。
台詞のみでの登場にも関わらず、>>1は常に彼の存在を感じていました。
つまるところステインにとってのラスボス的存在。いや別に本人は何もしてませんけど。
学園都市編ではレギュラー…………になれるかな?
上条美琴(24歳)
我らがレールガン。現在の職業は研究者。ちなみに一児の母。
インデックスとはいろいろあったが今では良き友人。
っていうかこの夫婦周りの人間関係と来たらもうね。おかげで話の幅も広げやすいですけど。
女なのにフラグ体質かもしれない。
建宮斎字(30代?)
天草式十字凄教の元教皇代理。
とは言え、かんざきさんも結構複雑な身分なので変わらずメンバーのまとめ役である。
五和はいまだに上条さんラブだと思ってる。
五和(20代後半)
天草式十字凄教の一員。
なんか苦労してるが、結局この人の場合もハッキリ言葉にしないのが原因である。
>>1的に結婚させなかったのは「五和」が名字なのか名前なのかさえ定かでないから。かも。
- 486 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:19:21.00 ID:gbNAPBf30
ウィリアム=オルウェル(旧姓 40代)
英国王室第二王妹の婿。地位的には騎士団の特別指南役。
二重聖人としての力は失ったが長年の経験とたゆまぬ研鑽により今なお相当の実力者。
ステイルより多分強い。フルネームで呼べなくなった人その二。
ヴィリアン(34歳)
英国王室第二王妹。インデックスとは友人。
何気に夫とお盛んでもうじき四人目を出産する。
騎士団長(40代)
英国三派閥が一、騎士派のトップ。イギリスの元祖苦労人。
妻とは結婚して数年経つが、子供はまだ。そろそろかも。でも無理かも。
アニェーゼ=サンクティス(24歳 ※原作ではインデックスより少し下の外見)
ロンドン在住『アニェーゼ部隊』のリーダー。
いまだイギリス清教傘下に入ったつもりは無いらしい。
部下が何人か寿除隊している。結婚願望あり。でもドSが災いして独身。
ルチア(20代)
『アニェーゼ部隊』所属のシスター。
リーダーとは違い純粋に色ボケしてきたシスターどもを嘆いている。
でもまあ少しは丸くなったかも。
アンジェレネ(20代)
『アニェーゼ部隊』所属のシスター。
いつの間にやらヘタレ神父にフラグを建てられていた。が、諦め気味でもある。
下手するとステイルより年上の可能性も。禁書だし。
ミサカ13857号(10歳 外見24歳)
『アニェーゼ部隊』所属のシスター。ドSらしい。>>1オリジナル。
どのような経緯で入隊したのかは不明。考えてない。能力者なので魔術はもちろん使えない。
- 487 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:21:17.02 ID:gbNAPBf30
クランス=R=ツァールスキー(25歳 ※原作で外見15歳くらい)
ロシア成教のトップ、総大主教。サーシャと婚約中。
キャラ崩壊というかキャラ捏造。口調だけは原作準拠のはず。
サーシャ=クロイツェフ(23歳)
ロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』のリーダー兼総大主教補佐。
あれよあれよと言う間に婚約中の身になってしまった。でもまんざらでもない。
ロシア成教のメイン(と言うかオンリー)ツッコミ。
ワシリーサ(一応30代後半?)
ロシア成教『殲滅白書』の特別顧問。事実上のトップ。
サーシャ同様にクランスも溺愛。ちょっと危ない趣味のオバサン。お婆さんの可能性も。
ローラ=スチュアート(26^2より上? そうでもない? 年齢不詳)
前最大主教で現在は隠居の身。あちこちを遊び歩いているらしい。
『インデックスと母娘』説も界隈にはある。彼女に注ぐ愛情は本物か、それとも…………?
ちなみにインデックスは、ステイルにフラグを建てられているのでは、と見ている。
エリザード(60歳前後)
前英国女王で現在は隠居の身。
最近はネトゲにハマっているらしい。大丈夫か英国王室。
またようやく出来た孫も溺愛中。重度のババ馬鹿。
- 488 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:22:13.08 ID:gbNAPBf30
レッサー(20代前半)
予備軍から結社になった『新たなる光』のメンバー。
『イギリスのためになること』という行動理念は変わらず、必ずしもステイル達の味方ではない。
かつては内心ビクビクだった色仕掛けにも年季が入ってきた。
キャーリサ(ギリギリ30代)
英国王室第一王妹。いまだ未婚。
さすがに歳なのかんざきさんに実力で抜かれてしまった。
何かしらの反動が出たのか、母親ほどではないが姉馬鹿伯母馬鹿に。
リメエア(40代中盤)
英国三派閥が一つ王室派の、そして英国のトップ女王陛下(クイーンレグナント)。
肩書の割に出番は少ない。キャラ掴みにくい。
いちおう一般男性と結婚済み。子供もちゃんといる。
シェリー=クロムウェル(30代後半)
『必要悪の教会』所属の魔術師。未婚、と言うか結婚願望なし。
インデックスの編纂作業を補佐するのが主業務。たまに王立美術院で教鞭も執る芸術家。
オルソラとは付き合いの長い漫才コンビ。
オルソラ=アクィナス(20代? ※原作に記述無し?)
イギリス清教所属のシスターにして、暗号解読官。こちらも未婚。
会話の異次元ぶりがやばい。ジョジョのラスボスになれる能力。
だと言うのになぜか優秀な交渉力を有するため、土御門に代わって各国を飛び回ることも。
でもなぜジンバブエに行ってたのかはイギリス清教七不思議の一つ。
- 489 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/09(木) 23:23:12.88 ID:gbNAPBf30
エツァリ(20代中盤 ※本物海原は原作で15歳)
アステカの魔術師、というより『魔導師』。『必要悪の教会』所属になった。
美琴を見守ることに区切りを付け、ショチトルたちを守るためにかつての同僚と取引をする。
最後の最後でインデックスに説教もして見せた。
本領を見せる機会は無かったがステイルの胃薬増量に貢献できる逸材。
ショチトル(20代中盤)
アステカの元魔術師。寮に入ったがじき専業主婦になるかも。
身体は完治したが魔術行使はややトラウマ気味で、これからは一般人に。
数少ないツッコミサイド。しかし天然ボケも入っている。
トチトリ(20代中盤)
アステカの元魔術師。男子寮の寮母さんにでもなろうかと思案中。
ショチトルとの差別化に悩まされた人。ちょっと悪戯好きのお姉さんタイプに落ち着いた。
ミサカ17000号(10歳 外見24歳)
イギリス清教女子寮の管理人。原作組。
>>1がすっかりその存在を忘れてた人。
上条刀夜(50代? ※原作に記述無し?)
外資系企業の営業担当で、結構なエリート。孫が出来ても相変わらずの元祖旗立男。
インデックスとは何度も顔を合わせており、娘のように思っている。
無茶苦茶な登場をしておいて美味しい所をかっさらっていくあたり、まさに親子。
- 490 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/09(木) 23:24:32.00 ID:gbNAPBf30
こんなモノを投下と呼ぶのもおこがましいので
何も考えずに書きなぐった小ネタを数レス- 491 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:25:53.48 ID:gbNAPBf30
とある日 とある木陰
イン「…………」
ステ「…………」ウトウト
イン「ステイル、起きてる?」
ステ「……ああ、起きてるよ」
イン「…………ごめん、起こしちゃったね」
ステ「…………いいや、起きていたとも」
イン「頑固なんだから、ステイルは」プクー
ステ「なんとでも言ってくれ」ヤレヤレ
- 492 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:26:48.35 ID:gbNAPBf30
ステ「それで、何の御用かな、最大主教?」
イン「ちょっと、私の顔の方見てくれる?」
ステ「………………」
イン「………………」
ステ「………………別に、顔を見なくとも話はできるだろう」タラー
イン「…………………………」
ステ「言いたい事があるなら、はっきり言ってくれないか…………」
イン「…………………………じゃあ、訊くんだよ」
- 493 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:29:34.02 ID:gbNAPBf30
イン「すているって膝枕の時、絶対上見ないよね?」
ステ「…………そうかな、わからないね」
イン「上見て」
ステ「………………」
イン「……やっぱり」
ステ「……何がだい?」
イン「あ、あのね、その」
ステ「…………」タラタラ
- 494 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:33:20.90 ID:gbNAPBf30
イン「こっち見ないのって、その……『コレ』のせい?」
ボイン
ステ「………………………………………………ちがう」ボソリ
- 495 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:34:09.83 ID:gbNAPBf30
イン「やっぱりそうだ!」
ステ「違うと言ってるだろう!」
イン「うーうん、間違いないかも! ステイルはウソをつくと鼻の頭に血管が」
ステ「そんな方法で見つかるマヌケに見えるのか僕は!?」
イン「だったら私の目を見て違うって言って欲しいんだよ!」
ステ「………………だいたい!
万が一『そう』だったとしたら貴女はどうして欲しいって言うんだ!?
そもそもどうしてこんな難癖を吹っ掛ける!?」
イン「あー誤魔化した! 誤魔化したんだよ! やっぱりすているはチキン野郎なんだ!」
ステ「なんだとおおぉぉっ!? いやそれ以前にいろいろ問題のある発言だったぞ今のは!?」
- 496 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:34:52.56 ID:gbNAPBf30
ワーワー ギャーギャー
火織「…………あの二人は、何を膝枕したままで喧嘩しているのでしょうか?」
元春「さあにゃー。とりあえずアイツら、あれでカップルじゃないつもりらしいぜい」
火織「それは…………通りませんね」
元春「『アベックを下位に、独り身を上位に』したら間違いなく下位判定だぜい」
火織「…………とりあえず、争うならひっつき合うのをやめるべきではないでしょうか」
元春「あの間に怒鳴りこんでそう進言する気概があるならやってみるにゃー」
火織「無理です」
元春「俺にだって無理だな」
- 497 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:36:40.29 ID:gbNAPBf30
ステ「なんなんだ貴女は! 見て欲しいのかつまり!」
イン「…………」
ステ「………………お、おい。何故黙るんだい」
イン「ば、ばか。すているのばか」
ステ「…………なんでだ」
イン「そういうのを乙女の口から言わせる気なのが馬鹿って事なの!」
ステ「理不尽な…………」
イン「ねえ、私、そんなに魅力ない……?」
ステ「ッ!」
- 498 :小ネタ「膝枕」[saga]:2011/06/09(木) 23:37:44.89 ID:gbNAPBf30
ステ「な、無いわけあるかっ!!!」
イン「んにゃあぁっ!?」
ステ「あ」
イン「……………………」
ステ「……………………」
イン「……寝よっか」ポリポリ
ステ「そうしよう…………」ポリポリ
元春&火織(いつまで昼寝する気だ……)
オワリ
- 499 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/09(木) 23:39:21.80 ID:gbNAPBf30
- 第二部ではこれが平常運転です
本編はもうしばらくお待ちくださいませ
その間にもう1,2本小ネタ行くかもー - 503 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:41:23.48 ID:b8WmflSz0
とある日 とある居酒屋
元春「カンパーイ!」
火織「カンパーイ!」
イン「カンパーイ!」
ステ「………………」
火織「あっはっはっ、どうしましたステイルー? ノリが悪いですよノ・リ・が」
ステ「君はノリが良すぎだ。なんで乾杯直後にへべれけなんだ!」
元春「酒豪のくせに酒癖は悪い、全然潰れないっつー最悪のパターンだなこりゃ」
- 504 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:42:42.82 ID:b8WmflSz0
ステ「いいか、確かに僕は君たちと酒を飲むことは了承した」
火織「そうそう! たまには仕事のうっぷんを吐きだしてスッキリしようじゃありませんか!」
イン「ほらステイル、ペースが遅いかも! もっとじゃんじゃん行くんだよ!」
ステ「直属の上司が側にいて愚痴もクソもあるか! なんでここに居るんだ貴女は!」
元春「まあもちろんオレが呼んだわけで」
イン「呼ばれたわけれー」エヘヘ
ステ「ああ悪い、わかってたよ貴様の仕業だとは!」
火織「インデックス、いい飲みっぷりです! ほうらもう一杯!」
イン「あはははははは! 最ッ高の気分なんだよぉぉぉ!!」
- 505 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:43:39.63 ID:b8WmflSz0
元春「いやーいっぺんインデックスの酒癖がどんなもんか見てみたくて☆」
ステ「☆を付けるな気持ち悪いんだよ!
聖職者のトップが居酒屋でぐでんぐでんなんてスキャンダラスすぎるだろうが!」
元春「おい、このオレがそんな基礎を疎かにすると思うのか?
この店の周りには天草式(男)をそれとなく配置して怪しいヤツはシャットアウトだ」
建宮「」パシャパシャパシャ
天草式「」カメラマイクスタンバーイ
ステ「獅子身中の虫って知ってるかオイ!」
元春「え? 呼んだ?」
ステ「そういえばそうだったよ確かに!!」
- 506 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:44:25.04 ID:b8WmflSz0
元春「しかし実際問題、アイツの酔っぱらった所を見たことはなかったな」
ステ「ミサでは赤ワインが振る舞われるが、彼女はそのときぐらいしか飲まないな」
元春「……ほほう、つまり」
イン「かおりー暑くなってきたよー」
火織「インデックス、熱くなったらやることは一つと決まっています」
ステ(『あつく』の解釈に差異があるような)
元春「お前もアイツの乱れた姿は初めてなわけだな」
ステ「ぶっ!!!」
- 507 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:45:29.53 ID:b8WmflSz0
ステ「それが狙いか君は!?」
元春「他にどんな狙いがあると思ってたのかにゃー?」
ステ「くそっ! 今すぐ帰るぞ、アーク、ビショ………………」
イン「…………」ジー
ステ「ど、どうしたんだい? さっさと帰」
イン「あついの、すているぅ…………」
ステ「」
- 508 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:46:18.05 ID:b8WmflSz0
イン「すているの身体で、ひやして…………?」
ステ「神裂ィーーーーーッッ!? 責任を取れよ君ィィーーッ!!」
忽 然
ステ「いねぇーーー!?」ガビーン!
イン「ねえすている…………?」
ステ「待て、こっちに来るんじゃあ…………」
- 509 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:46:59.10 ID:b8WmflSz0
イン「おねがい、私から逃げないで…………?」
ステ「……………………」
ステ「…………ああ、逃げないさ」
- 510 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:47:40.57 ID:b8WmflSz0
ポフッ
イン「んー。ひんやりしてて気持ちいいよー」スリスリ
ステ「……貴女の体温が上がり過ぎているだけだ」
イン「そうかなー?」スリスリ
ステ「そうだとも」
イン「ねーすている」
ステ「なんだい?」
イン「お姫様抱っこ、して?」
ステ「…………なぜ?」
- 511 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:48:43.64 ID:b8WmflSz0
イン「してもらったことないからー」
ステ「そうなのかい?」
イン「すている、してくれた事無いよ?」
ステ「…………僕の話か」
イン「だからして?」
ステ「してもらった事が無いからしてくれ、と言うのは動機として意味不明だね」
イン「してくれないの?」
ステ「…………するよ」
- 512 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:49:19.01 ID:b8WmflSz0
ヒョイ ギュッ
イン「えへへー」
ステ「……信じられないほど軽いな」
イン「どーいう意味かな?」
ステ「質量保存って知ってるかい?」
イン「…………しほし?」
ステ「ニュースキルみたいに言わないでくれ」
- 513 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:50:07.24 ID:b8WmflSz0
ステ「それで、僕はいつまでこうしてればいいのかな?」
イン「ベッドまで、連れてって?」
ステ「…………お断りだ」
イン「んーじゃあ、どっか横になれるところ」
ステ「…………はぁ。すいません、お勘定」
店主「なんだ、もう帰るのか。 居酒屋『陽差し』を今後ともよろしくな」
ステ(どこかで間違いなく会ってるんだが…………くそ、頭が働かない)
- 514 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:50:54.09 ID:b8WmflSz0
とある公園
ステ(人払いしまくったとはいえ、なかなか神経の擦り切れる旅路だった……)
イン「ここ、どこー?」
ステ「川音が聞こえるだろう? テムズ川沿いの公園だ」
イン「じゃあ、あのベンチ」
ステ「元よりそのつもりだよ」
ヨッコイショ
ステ「ふう…………」
- 515 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:51:47.83 ID:b8WmflSz0
イン「あはは、親父臭いよすている! 体力ないねー」
ステ「」グサッ
イン「冗談なんだよ! そんな落ち込まないの!」
ステ「…………で、次はどうしたら?」
イン「ひざまくら」
ステ「……いつもとは逆、ということかな?」
イン「ん」コクリ
ステ「…………どうぞ」オロス
- 516 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:52:36.44 ID:b8WmflSz0
イン「おじゃましまーす」エヘヘ
ステ「お邪魔なら今までも十分にしてたよ」
イン「あったかーい」
ステ「冷やしたいんじゃなかったのか」
イン「zzz」
ステ「早っ!!」
イン「zzzzzz」
ステ(……………………)
- 517 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:53:25.14 ID:b8WmflSz0
ステ(…………僕も寝るか)チラッ
天草式男「」チーン
天草式女(女教皇除く)「」グッ!
ステ(ありがたい)GJ
ステ(周囲の警戒は彼女らに任せようか)
ステ(…………他人任せとは無責任な話だな、我ながら)
ステ(まあ、でも………………)
- 518 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:53:58.90 ID:b8WmflSz0
(たまには、いいか)
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- 519 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:54:47.27 ID:b8WmflSz0
イン「ん…………」
イン「頭が痛いんだよ…………」
イン「ここ、どこかな?」
イン「…………外? まだ夜だし…………」
イン「すている? どこ…………」キョロ
ステ「zzzzzz」
イン「………………」
イン「…………あぅ」カァ
- 520 :小ネタ「酒」[saga]:2011/06/11(土) 14:55:51.45 ID:b8WmflSz0
イン「……」ムクリ
ステ「zzz」
イン「…………」プニプニ
ステ「zzzzzz」
イン「……やっぱり普通、逆だよね」ヨッコイショ
ステ「zzz」コテン
イン「えへへ、おやすみ…………」ウトウト
ステ「zzz」
イン「…………zzz」
オワリ
- 521 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/11(土) 14:57:49.50 ID:b8WmflSz0
- くっついてるわけじゃないので甘さ控えめ
こういう小ネタって需要あるんですかね?
気分で書きなぐってるモノなので無いならやめようかなぁ、と - 522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]:2011/06/11(土) 15:24:30.62 ID:yPhfMSOv0
- 需要?
すっごくあります! あるに決まってるじゃねーですか! - 523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/06/11(土) 15:41:43.46 ID:Cu8veM/AO
- 乙
やはりこの2人はほのぼのしてて良い - 531 :小ネタEX「食べカス」[saga]:2011/06/12(日) 17:17:34.67 ID:oz83ptPt0
とある夕食時
イン「んぐんぐんぐ」
ステ「まったく、レディーらしからぬ食い散らかしようだ。ほら、食べカスがついているよ」
イン「え? ナプキンナプキン……」
ステ「そんなものは要らないよ」グイ
イン「へ? なあにすて…………」
パク
イン「なななな、なにするのすている!?」ジタバタ
ステ「駄目だ、逃げるんじゃない」ギュ
イン「ええええええ!?」
ステ「静かにするんだ。…………口の中も掃除しないと」グイ
- 532 :小ネタEX「食べカス」[saga]:2011/06/12(日) 17:18:43.01 ID:oz83ptPt0
イン「~~~~!?」
ステ「ふむ……」
イン「……ん、っあ…………す、すて…………」
ステ「っ…………」
イン「ひゃぁん……んむぁ…………ん、ぷはっ!」ガバッ!
ステ「…………嫌だったかい?」
イン「んあっ、はあ、ひゃぁ…………」トロン
ステ「御満足頂けたようで。では続きを……」
イン「へぇ……? だ、駄目なんだよ!!」
- 533 :小ネタEX「食べカス」[saga]:2011/06/12(日) 17:19:43.28 ID:oz83ptPt0
ステ「あんなに喜んでくれたのに、何が駄目なんだ?」
イン「あああ、ああいうのはお布団の上で、す、するものでしょ!?」
ステ「成程、一理あるね」
イン「ほっ…………」
ステ「じゃあ、ベッドに行こうか」
イン「」
イン「あ、あ、え、い、ええええ?」カァァァァァ
ステ「そう驚かなくても」
イン「お、驚くに決まってるんだよ!!」
- 534 :小ネタEX「食べカス」[saga]:2011/06/12(日) 17:21:13.56 ID:oz83ptPt0
ステ「何が不満なのかよくわからないね」
イン「え、え、え、だって…………。あ! ま、まだご飯の途中だし……」
ステ「…………いい機会だ」
イン「んにゃ?」
ステ「僕の長年の仇敵と決着をつけることにしよう」
イン「へ? へ? だ、誰と?」
ステ「簡単な事さ。君が僕の質問に一つ答えてくれればいい」
イン「はあ」
ステ「じゃあ、訊くよ。覚悟を決めてくれ」
イン「ええぇぇ…………意味不明かも」
- 535 :小ネタEX「食べカス」[saga]:2011/06/12(日) 17:22:15.38 ID:oz83ptPt0
ステ「すうう…………はああああ………………」
イン「ううう…………」
ステ「……『 』」
イン「ひゃ、はい!!」
ステ「僕と食事、どっちを愛してる?」
- 536 :小ネタEX「食べカス」[saga]:2011/06/12(日) 17:23:32.62 ID:oz83ptPt0
イン「………………」
ステ「……………………」ゴクリ
イン「そんなの、決まってるよ」ニコ
ステ「!」
イン「もちろん………………ステイ
-------------------------------------------------------
(続きは省略されました)
-------------------------------------------------------
舞夏(私もいるんだけどなー…………不幸だぞ)ハァ
オワリ?- 537 :>>1 ◆weh0ormOQI[sage]:2011/06/12(日) 17:27:06.96 ID:oz83ptPt0
- なんかインさんのリミッターも外れかけでした
二人とも制限完全解除のレベル5が>>1の最終目標です どれだけかかるやら
では明日夜から本編の投下を再開いたします
基本は二、三日おきで間に時系列無視の小ネタが入るかも
今後ともよろしくお願いいたします - 538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/06/12(日) 18:43:21.30 ID:kYFY9+3C0
- ああああぁあああまあああああぁぁああああああいいいぃぃいいいい!!!!!
これがレベル4…だと!!?
おつ - 540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/06/13(月) 01:43:24.10 ID:gpa78kBO0
- あまああぁああいいいい!!!!こんなに男を上げたステイルを見られるとは…まじ乙
- 541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]:2011/06/13(月) 02:42:37.79 ID:EoXkSamqo
- ギャ、ギャグオチはどうした?まさか本当にそういうアレなのか?
どうせギャグオチなんだろって冷めた表情でマウスをカチカチやってた俺のなんかアレはどうなってしまうんだよぅ!?
2013年11月17日日曜日
ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」 1
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