2013年11月18日月曜日

ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」  2

543第二部 『学園都市編』 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:39:09.46 ID:/gvEXE4J0


学園都市。



それは日本の首都東京の西部に位置する巨大な教育研究機関の総称であり、


同時に世界の一方を占める勢力、『科学』の総本山である。




三次大戦の主役となった十年前と較べ技術進歩の速度が緩やかになっているとはいえ、


今なお世界最高の科学技術を擁して、勢力を拡大し続ける事実上の独立国家。




数多の学生が超能力を有し、『魔術』に対抗しうる力を秘めるこの世のパワーバランスの一極点。










――――そして、彼女の人生が始まった場所。



それが、学園都市だった。

544 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:41:29.41 ID:/gvEXE4J0

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ロンドン・ヒースロー空港の特別通路を、一組の男女が暗い面持ちで歩いていた。


十字教をなめたようなスタイルの神父――ステイル=マグヌスは、いつも通りの憂鬱な面である。

彼にとっては悲しいことだが、別段周りから見て珍しい表情、というわけでもない。


そのステイル以上に凄絶な表情でスーツケースを引いているのが、

国内外に多数のファン(お前らまず入信しろよ)を当人も知らぬ間に獲得している、

イギリス清教最大主教――インデックス=ライブロラム=プロヒビットラムであった。


「ねえ、ステイル…………やっぱり帰らない?」


「…………そういうわけにはいかないね。大体、あなたが是非にと言ったんだ」


「そ、それはそうなんだけど!」


ステイルとて、気乗りしないのは山々である。

あれよあれよという間に清教派内で決定していた今回の『仕事』は、

その始まり――は別として、終わりまでほぼ全てあの曲者が仕組んだことだ。

ましてや行き先があの街ともなれば、いよいよ彼のテンションはストップ安である。

545 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:43:32.25 ID:/gvEXE4J0


しかしインデックスは、彼よりはるかに陰鬱な表情でSAN値の最安値を更新し続けている。

彼女がこのフライトを渋っているのには、ステイルとは全く別の理由があった。


「す、ステイルは『アレ』に乗ったことがないからそんな風に構えてられるんだよ!
 一度でもあの地獄を体験したら、私みたいな敬虔な子羊が震えるのはしょうがないかも!」


イギリス清教のファイナンス部門は相当に切ないことになっていたらしい。

なんと最大主教が乗る便だというのにファーストクラスはおろか

ビジネスクラスのシートさえ押さえてないのだと言う。



…………というか、そもそもクラスがどうとかいう問題ですらなかった。



「僕も噂には聞いてるが……そんなになのかい、『アレ』は?」

「…………カエル先生いわく、『十分も経たない内に思考する余裕が消える』代物なんだよ」

(……それは、旅客機と呼んでいいのか?)


546 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:44:59.73 ID:/gvEXE4J0


二人がみっともなくあーだこーだ言っているうちに、とうとう通路が終わってしまう。

到着したのは滑走路を見渡せる開放的なロビー……ではなく、

油と鉄の芳ばしい香りが漂う巨大ガレージであった。

カッチリとした、しかし高級なスーツに身を包む美女が二人を出迎える。



「ようこそ、今回のテストフライトにご搭乗くださる方々ですわね?」



そう、『テストフライト』だ。

何をトチ狂ったのか、シスコン軍曹が己の上司のために手配したのは

未だ一般客を乗せて飛行した経験のない試作機であった。

先立つものがどうこう以前に、面白がっているのが明け透けな事この上ない。



ゴルゴダに向かう救世主のような心もちで此処まで歩んできた二人は、

案内役に言葉を返す気力もなく顔を上げて――



547 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:45:41.21 ID:/gvEXE4J0












――『処刑の十字架』を目の当たりにした。











548 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:47:04.57 ID:/gvEXE4J0



ステ「……」

イン「…………」

ステ「………………」

イン「………………え、『コレ』で行くの?」


穴三「その為のフ○ジールです」ハイ




ステ「旅客機が喋るなぁぁぁあああああっっ!!!!!」


549 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:48:40.46 ID:/gvEXE4J0


イン「…………私達、新型の『超音速旅客機』に乗るって聞いてたんだけど……」

ステ「なのにあれはなんだあぁぁぁぁっ! せめて飛行機の形状を保てえええ!!」

案内役「まあ、学園都市製のガラクタなどと一緒くたにして欲しくはありませんわ!
    それに『飛行機』などと無骨、そして無粋な呼び名! 
    我が婚后航空の先端技術を駆使した次世代型制空システム! 
    その名も『ネクスト』! と呼んでいただきたく」

ステ「技術もフォルムも設計思想も何もかもが尖り過ぎなんだよおおーーーっ!!!」



案内「それではお時間ですので、シートにお座りくださいませ」

イン「……あれはシートって言うより、コックピットって言うんじゃないのかな」

ステ「…………おい待て。パイロットはいったいどこに乗るんだ……」ンゼェハァ

案内「その点はご心配なく。超高性能AIが目的地まで完全自動でお送りいたします♪」

穴三「単騎でも墜落率はほとんどありません」ハイ

ステ「1%でも有ったら大問題だろうがああぁぁっ!!!」

イン(出発前からステイルが絶好調なんだよ)

550 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:50:13.78 ID:/gvEXE4J0


ステ「もういい。無理にでも別の便を取ろう、最大主教」

イン「え、いいのかな……? 『仕事』に影響するんじゃ」

ステ「そのツケはヤツが払わされて然るべきだ。付き合ってられるかこんな…………」



案内「まあ、困りますわお二方!」

ステ「困ってるのは僕らだ!!!」



案内「実はお二人にお手紙を預かっているのですが……
   このような事態になったらお渡しするように、と」

イン「………………誰から?」

案内「今回のクライアント、土御門元春様でございます」

ステ「やっぱりかああぁぁぁ!!」

551 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:51:27.70 ID:/gvEXE4J0


ステ「見たくねぇ……」

イン「でも、無視したらそれはそれで後がこわいかも……」

ステ「そうなんだよな…………しょうがない」ピラッ



元春『いぇーい、元気にいちゃついてるかNYAー、二人ともぉー?』



ステ「焼き捨てたい」シュボッ

イン「お、落ち着いてステイル! まだまだ先は長いんだよ!」



元春『これを読んでるってことは案の定グダグダ言ってんだな?
   まったく恋愛だけじゃなくこんな事にもチキン野郎ってわけだ』



ステ(いつかコイツを『コレ』に乗せてやる。必ずだ)

イン(気温がジワジワ上がってきたんだよ……)

552 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:52:54.61 ID:/gvEXE4J0


元春『まあぶっちゃけ、他の選択肢も用意できないことは無いんだけどにゃー。
   ただ速くて安い、っていうかテスト料が入ってくるとなりゃあ乗らない手はないぜよ。

   …………そういうわけで、保険を掛けさせて貰った』



ステ「目眩がしてきた……」

イン「だ、だいじょぶ? 膝枕しよっか?」

ステ「べ、別にいいよ」


案内「」イラッ

穴三「」イラッ



元春『わかってるとは思うがお前たちの命の担保くらいはちゃんとしてるぞ?
   ……もちろんこれからするのはお二人さんが渋った時の為の
   人質……いや物質(ものじち)の話だぜい』



イン「い、命は保証してくれるって!」

ステ「『保証』か、それとも『補償』なのかは議論の余地があるがね……はぁぁ」プカー

553 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:54:25.06 ID:/gvEXE4J0


元春『いやーそれにしてもご両人、誕生会では良い画を撮らせてもらったにゃー』



ステイン「「!!」」アッ



元春『ロンドンタイムズにタレこむ、と言ったな…………あれはウソだ。





   日本のニュース番組のトップを、確保する準備が万端整ってるぜーい!!』



ステイン「「!!??」」

案内(息の合った二人ですわね……)



元春『まあオレだって鬼じゃあない。やることやりゃあ無かったことにするぜい。
   んじゃ、久々の日本をしっかり楽しんで来いよ(笑)』



ステ「」

イン「…………不幸なんだよ」

554 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:55:46.71 ID:/gvEXE4J0


イン「うう……せめて、最後の祈りの時間が欲しいかも……」

ステ「最後というか、最期になりそうな…………っ、いや!
   僕がいる以上、貴女を決して死なせは、いや傷つけさせはしない…………!」キリッ

イン「す、すている…………」キュン

案内「あーさっさと乗りやがってくださいますか? 後がつかえてますので」イラッ

ステ「『後』なんて誰もいないだろうが!」



イン「じゃ、じゃあ。覚悟を決めて……」シートベルトガシャ

ステ「おい、最後だ。もう安全性については聞かない。聞くだけ無駄だ。
   どれぐらいスピードが出るのか、それだけ教えろ」オナジクガシャ



グイングイングイン ドドドドドドドドドドド



ステ「ってなに勝手にエンジン掛けてるんだおい!!」

穴三「テストの汎用性は高くなりました。いい傾向です」ワクワク

ステ「お前かあ!! なんだこのポンコツAI!?」

555第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:57:33.86 ID:/gvEXE4J0


ジー ガチャン アー マイクテス マイクテスデスワ


案内『機体性能から算出される瞬間最大速度は時速五千キロほどになります』

ステ「!?」

イン(意外と大したことない、そう思える自分が悲しいかも)トオイメ



案内『ただし、今回のテストはこの機体の為のものではありませんわ』

イン「へ?」

案内『モニタをご覧くださいませ。PVをお流しいたします』

ステ「なんでこのタイミングで!?」


ピッ 




案内『これが、今回我が社が自信を持ってお送りする新型追加ブースターです!』


556 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 20:59:34.71 ID:/gvEXE4J0




ステ「」

イン「わーかわいいですわー」ボウヨミ



案内『これにより、夢の時速一万キロ台を大きく突破!!
   学園都市までおよそ三十分の快適な空の旅を』

ステ「もういい早く出せっ!!! やるならさっさとやってくれえーーーーーっっ!!!!」

557 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 21:01:22.91 ID:/gvEXE4J0


そして、二人は風になった。


「」

「」


見慣れた倫敦の街並みが後ろへ後ろへとかき消えていくが、

もちろんステイルとインデックスにそんな瑣末事はインプットされない。

意識が光の彼方へ飛翔するなか、ステイルが認識できたのはただ一つ。





「オイルタンクから、燃料が逆流」


「するなああああああああぁぁぁぁあぁぁーーーーーーっっっっっ!!!!!!!」


無機質なポンコツ声の提供する『ツッコミどころ』だけであった。






かような変態企業がひしめく極東の科学の坩堝で、二人を待ちうけるモノとは――――!?

558 :第二部 プロローグ[saga]:2011/06/13(月) 21:02:22.25 ID:/gvEXE4J0


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IN


トンデモ発射場レディー ←New!



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559 :????[saga]:2011/06/13(月) 21:03:30.31 ID:/gvEXE4J0

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『…………本当に来るなんて驚きだ。心中お察しするけど』


『まあ、ウチのトップはお人好しなんでな』


『我らのヒーローと一緒、で?』


『…………アイツの影響力は本当に計り知れないな』


『まったく。あのお人好しどもなら何も言わなくても首を突っ込むだろうし』


『己が身ぐらいは自分で守れる。だからこそ、こっちのうるさいのも最後には黙ったんだ』


『それはこちらにとっても好都合。……こういう釣りはお互い得意のようだけど』


560 :????[saga]:2011/06/13(月) 21:04:44.65 ID:/gvEXE4J0



『釣り人二人に魚が一匹。こうなると漁夫同士の駆け引きだな』


『おいおい、お互い手の内は見せ合って、カード交換までしただろう?』


『はは、どうだろうなぁそれは?』


『魚の方も相当の大物だという疑いが濃い。限られた脳細胞は有効に使おうじゃないか』


『違いない。……さて、悪いがそろそろ切るぜ』


『そうかい。また楽しいおしゃべりを期待するけど』


『そいつは光栄だな。そんじゃあ――』


561 :????[saga]:2011/06/13(月) 21:06:07.25 ID:/gvEXE4J0









『あばよ、どこの誰ともわからない先輩さん?』









『じゃあな、世話した覚えもない後輩君?』









566 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:17:50.04 ID:wu3NEmQn0


二人がロンドンを出発して二十七分後

日本時間 午後六時

学園都市 二三学区 国際空港



当麻「ちょっと早すぎたんじゃないか? 二時間前にこれから家出るって言ってたんだぞ?」

美琴「この特別学区に直接着陸するんだから、超音速旅客機でも使ってるんじゃないかと思うのよ。
   だとしたら、後一時間以内には着くわね」

当麻「…………アレか。インデックスのヤツ、ちゃんと乗れたんだろうか……」

美琴「大袈裟ねぇ。いくらあの子が科学嫌いでも飛行機ぐらいダイジョブでしょ」

当麻「お前はアレが、どんだけインデックスにトラウマを刻んだ代物なのか知らないんだよ……」

美琴「はあ。まあ私はそのフライトを楽しんだ事ないしー?」

当麻「いいか? あれをフライトだなんて呼ぶのは明らかにライト兄弟に対する冒涜だ!
   上条さんは今でも土御門に賠償請求を行いたい気持ちで」

567 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:19:46.56 ID:wu3NEmQn0


                 キーーーーーーーーーン


当麻「ん?」






キキーズザァッ! Σ穴二三  三三三三三三三三三   キーーーーーーーン   






当麻「…………」

美琴「…………」

568 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:20:43.02 ID:wu3NEmQn0


当麻「…………なんなんだ、アレ?」

美琴「わわわ、私に聞かれても知る訳ないでしょうがぁぁっ!!」

当麻「……新型の駆動鎧か? いや、あんなの開発してるなんて話は……」

美琴(見覚えのある社名ロゴが入ってるのは秘密ね)

当麻「だとするとまたDM社? いやでもあのロゴは…………」

美琴「あーーーーーーーっ!! だ、誰か降りてくるわよ!」

当麻「人乗れんのアレ!? っておい、まさか……アイツら…………」




ステイン「」ゲッソリ



当麻「」

美琴「」

569 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:22:10.64 ID:wu3NEmQn0


イン「こ、ここは? 遂に私達は主の御許に……?」

ステ「き…………気を、しっかり、ウェップ、持つんだ…………」



            オーイ オマエラー!



ステ「な、何者だこんな時に…………!」ザッ

イン「……待って! あ、オェップ、あれは……」



当麻「やっぱりお前らかよ! だいじょ「みことーーーーーーーーーーっ!」ガバアァッ!

当麻「……へ?」

美琴「んなぁっ!? ちょ、ちょっといきなり何するのよインデックス!」

イン「ほ、ほ、本物のみことですわよね? 幽霊じゃないよね?」

美琴「なんか喋り方おかしいし! 
   あたしの死亡届でも見たことあんのかアンタは! 
   生きてるに決まって…………い、インデックス?」

570 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:23:28.35 ID:wu3NEmQn0


イン「こ……怖かったんだよおおぉぉぉっ!! 生きて会えるなんて思わなかった!」ウエーン

当麻(昔より、一段と酷い反応に見える……いったいなにが?)

美琴「……あーもう! ほら、泣かないの! 
   これで私より年上だってんだから信じられ…………」


ポニュポニュ ←インさん ペタ ←美琴さん


美琴「…………」

イン「ううう…………みことぉ…………」ダキッ ポニュポニュ

当麻「あのー美琴さん? どうかして…………ヒイッ!」






美琴「大きすぎる…………修正が必要ね…………」



イン「!?」ガバッ アトズサリッ

571 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:24:38.07 ID:wu3NEmQn0


ナンデアンタソンナニソダッテンノヨー! フコウヘイダッツーノー! ビリビリ

アワワ! ワタシハベツニナンモシテナインダヨー! キーン ムコウカ



当麻「相変わらず仲良いのか悪いのかわかんねえなぁ。おいステイル、大丈夫か?」

ステ「……………………ああ」ヤツレ

当麻「いつもならイヤミの一つもぶつけてくるお前がこのザマってのは、相当なもんだな……」

ステ「やかましい。君もアレに乗ってみればいいさ…………」

当麻「上条さんにだって時速七千キロの素敵な旅を味わった経験はあるんですよ」

ステ「…………あれは、一万キロを軽く超えてるそうだ」

当麻「…………うっそーん」



ステ「ふう…………」シュボッ

当麻「いきなり煙草かよ……。ここまで迎えに来てやったんだから、挨拶の一つもよこせよ」

ステ「なんだ、君は遠路はるばる地獄をくぐって来た客に乞食のような真似をするのかい?」ハンッ

当麻「…………あーあー、テメェはそういうヤツだったよ。忘れてた俺が悪かったなこりゃ」ケッ

572 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:25:59.94 ID:wu3NEmQn0


当麻「それで…………どうなんだ、インデックスとは?」

ステ「君に教える義理などない。……と言いたいが、お父上に免じて話してやる。
   …………君も、彼女の家族だからね」

当麻「そういえば、父さんがそっち訪ねたって聞いたときはビビったな。
   何をやってきたのか話そうとしないしさ」

ステ「まあ、君にだけは絶対言えないだろうね」

当麻「なんだよそれ……。まあいいや。結局お前とインデックスは……」



ステ「僕と彼女は、恋人(ラバーズ)でもなんでもない。
   ……今のところは、そういう形で落ち着いた」

当麻「………………ん、そうか」

ステ「存外、あっさりした反応だね」

当麻「俺が口を挟む事でも無さそうだ、って思ってさ。
   インデックスの事に関してだけは、お前は信用できる」

ステ「フン……」



当麻「俺の家族を頼むぜ、ステイル」

ステ「…………ああ、君に言われるまでもないね」

573 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:27:31.33 ID:wu3NEmQn0


美琴「ああもう、なんで私はいつまで経っても『こう』なのかなぁ……」トボトボ

イン「元気出してくださいませ、みこと」ヒョコヒョコ

美琴「だってだって! とうとう打ち止めにまで抜かれたのよ!?
   同じ母親の血が、っていうか同じ遺伝子なのにぃ…………」

イン「授乳期って、膨らむんじゃなかったっけ……?」

美琴「とっくに終わったわよ! 確かに当時は…………その、ちょっとだけ膨らんだけど」ボソボソ

イン「どのくらい?」コソコソ

美琴「えっと、…………よ」ゴニョゴニョ

イン「…………よ、良かったね?」ニコ

美琴「見ないでっ! そんな慈愛に溢れた眼差しで私を!」



当麻「おう、追っかけっこは終わったのか?」

イン「あ! とうま久しぶり! いたの?」

当麻「一応三年ぶりだよな俺ら!? なにその『あ、漬物食べ忘れてた』みたいな反応!?」

イン「お残しなんていう許し難い生命への冒涜、私はしたことないかも!」

当麻「ああホント懐かしいやりとりだよコレ! 涙が出るぜまったく!」

574 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:28:21.95 ID:wu3NEmQn0


ステ「…………」

美琴「あ、どうもお久しぶりです」

ステ「おっと、これは失礼。結婚式以来ですね、ミセス上条」

美琴「えーっと、ステイルさんで良いんですよね?」

ステ「ええ。ステイル=マグヌスです。最大主教の護衛をしています」ペコリ

美琴「どうもご丁寧に。いつも妹達がお世話になってます」ペコリ

ステ「別に僕が何か世話を焼いてるわけじゃあ……」

美琴「そっかぁ、あなたが…………」

ステ「? なにか?」



美琴「あなたが、インデックスの好きな人かぁ…………」

575 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:29:29.75 ID:wu3NEmQn0


ステ「…………ミセス上条? どこからそんな話を」

美琴「ああそれから、そのミセスっての止めてくれません? 私達一応同い年でしょう?」

ステ「何をもって『一応』を付けた!? 紛れもなく僕は二十四歳だ!」

美琴「そうそうそんな感じ。 敬語もいらないわねー」



ステ「……だったら、何と呼べばいいんだ」

美琴「そりゃあ普通に名前で。あだ名なんて『超電磁砲』ぐらいしかないし」

ステ「……成程、夫婦だ」ハァ

576 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:30:40.50 ID:wu3NEmQn0


美琴「どういう意味よそれ……。とりあえず、一回呼んでみて。ホラホラ!」

ステ「ヤレヤレだね。…………美琴。これでいいかい?」

美琴「ちゃんと出来るじゃない。これからよろしくね、ステイル!」ニコッ

ステ(この夫婦と一緒に夜道を歩きたくはないな……ん?)



イン「…………すている?」ギラ

当麻「…………おい、ステイル」ユラリ



ステ「……ちょっと待て。それはあまりに理不尽だろう……?」

美琴「どうかしたの二人とも? ……ああごめんね、ステイルを独り占めしちゃって」

イン「別に、そういうわけじゃ…………ない、よ」



美琴「…………その分じゃ、いろいろありそうね」

577 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:32:36.80 ID:wu3NEmQn0


イイゼ、テメエガミコトニフラグヲタテルッテイウナラ ソゲブ!

セメテサイゴマデチャントイッテグハアアアアァァァッ!? 



美琴「男どもは放っておいて行きましょ? 積もる話もたくさんあるし」

イン「うん! みことの料理が毎日食べられないのは残念だけどなぁ」

美琴「へ? なんで?」

イン「え? だって私達はこれから…………ねーステイル!」



ステ「な、……なん、だい?」ボロッ

当麻「ちっ、意識があるのか……耐久力を上げたな」

ステ「覚えてろよ貴様……」

イン「私達はこれから、第三学区のホテルに泊まるんですわよね?」

ステ「それはそうだろう。自分で言うのもなんだが、僕らは賓客だよ」




当麻「へ? お前ら、ウチに泊まるんじゃないのか? 俺らそのつもりで準備してたんだけど」

美琴「そうよ、ウチは部屋も空いてるし。食料だってたーっぷり買い込んだんだから」

578 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:33:40.00 ID:wu3NEmQn0


ステ「……待て待て、常識で考えろ。僕らはいずれ君の上司とも会談するんだ。
   それが人の家に転がり込むなんて馬鹿な話があるか」

当麻「この学園都市に――常識は通用しねぇ」

ステ「それはDM社のキャッチコピーだろうが!!」

イン「世界中で流行ってるよね、それ」

美琴「だいたい、あんなアレ(穴三)で上陸しておいて今さら常識なんて言われても」



ステ「………………!!! と、い・う・こ・と・はぁ!!」



当麻「土御門にもよろしく世話してやってくれって言われたし」



ステ「またやられたのか僕らはああああっっ!!!??」

美琴「なんかお金に困ってるんでしょアンタたち?」

イン「うっ」

ステ「ぐぐっ」

579 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:35:54.97 ID:wu3NEmQn0


当麻「そうか……お前もまた、土御門の犠牲者の一人なんだな」ポン

ステ「やめろォ! 君に同情されると大事な物をわんさか失いそうなんだよ!!」



当麻「意地をはるんじゃねぇ! お前だって辛かったんだろ、苦しかったんだろ!?
   俺だってなぁ、ひざ蹴りだのドロップキックだのバックドロップだので
   アイツと青ピにはなんべんもボコボコにされてる! 
   それは大体がよくわかんねぇ理不尽な理由で、俺は奴らに抵抗し続けた! 
   ちょっと気を抜くとイタリア、イギリス、ブラジル、南極、アトランティス、宇宙!
   どこにでも送り込まれた! そんな無茶苦茶をなぁ、許していいはずがねえんだ!
   一緒に闘おうぜ、グラサン野郎の享楽のためだけの陰謀と!
   いい加減に始めようぜ、魔術師!
   
   まずはあのアロハシャツのふざけた幻想(わな)をぶち壊す!」


ステ「」



イン「久々の生説教キター! と思ったらほぼ単なる愚痴だったかも」

美琴「とうま…………」キュンキュン

イン(このバカップルが)ケッ

580 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:37:19.84 ID:wu3NEmQn0


ステ「くそ、この分じゃ出発前にヤツが通達してきた宿泊先も……」

当麻「嘘っぱちだろうな、間違いなく」

ステ「…………はぁああああ」

美琴「だいたいさ、イギリス清教トップの御訪問だってのにこんな寂しい到着して。
   政治的パフォーマンスの一つも組まれてないの?」

当麻「おい美琴、ストレートすぎるだろ…………」

イン「そういう予定も、最初はもちろんあったけど」

ステ「僕らはそういう気疲れするのはゴメンなんだよ」フー

美琴「わがままねぇ。まあ、トップってそんなものかしらね」

ステ「会談当日はカメラが入って晒し物にされるらしい。それだけで十分さ」



イン「そう言えば、まことは連れてきてないの?」キョロキョロ

美琴「この学区は立ち入りに厳重な審査がいるからね。
   いくら当麻でもそうそう簡単に子供用のパスなんて取れないの」

ステ「じゃあ、誰かに預けてきたのか」

当麻「マンションのお隣さんにな。あそこなら友達もいるし安心だ」

イン「りこうのお家?」

当麻「ああそっか、お前ら友達だったのか」

ステ(そしてそれは、僕の悪夢の始まりでもあるわけだ)トオイメ

581 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:38:56.92 ID:wu3NEmQn0


当麻「んじゃ、そろそろ行くか。車回してくるから、玄関口で待ってろ」

イン「大丈夫? とうまの運転なの?」

当麻「どういう意味だコラ!」

ステ「すまないが僕らを巻き込まないでくれるかな。
   できれば車は君一人で走らせて、僕らは公共の交通機関を……」

当麻「なにその事故る前提のリスク分散!?
   今日だってここまでちゃーんと上条さんは運転してきたんですよ!?」

美琴「途中で壊れた踏切に立ち往生した上、三回ぐらい追突されかけたけどね」

当麻「…………」



イン「…………みこと、辛かったですわね」ナデナデ

美琴「ううん、大丈夫。もう慣れたから……」ナデラレナデラレ フニャー

ステ「君は自宅の鍵さえくれればもう用済みだよ、じゃあな」バイバイ



当麻「…………不幸だ」ズーン


ステイン((元祖は味わいが深いなぁ))

582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(河口湖)[sage]:2011/06/15(水) 20:39:22.83 ID:9ZoyQAQ00
姫神チラッ
583 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:40:49.71 ID:wu3NEmQn0


電車内


ガタンゴトン ガタンゴトン


イン「大変なことになっちゃったけど、みことのお料理をいつでも食べられるのは嬉しいんだよ!」

ステ「へえ、それほどの絶品なのかい。僕も楽しみだな」

イン「なんて言ったらいいのかな……柔らかくて、ふわふわしてるんだよ。みことの手料理」

美琴「ほ、褒めたってデザート増やしたりしないわよ! 
   だいたいアンタら、毎日舞夏に食事作ってもらってるんでしょ?
   あれに較べれば私のなんてたかが知れて……」

イン「どっちにしろ、愛情がこもってるから美味しいんだよ、二人の料理は」ニコ

美琴「……す、好きに言ってなさい!!」プイ



イン「みことは相変わらずのツンデレさんだねー。
   とうまとくっついて本人にだけはデレデレになったけど、基本がそのままかも」ニヤニヤ

ステ「四六時中見せつけられたら、たまったもんじゃないね」ニヤニヤ

美琴「……アンタらに言われたくないっての」ボソ

ステイン「「へ?」」

584 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:42:12.97 ID:wu3NEmQn0


美琴「ああそれから、一つ言っておくわよインデックス?」

イン「なーに?」

美琴「いくらなんでもアンタに無制限に食わせるだけの蓄えは用意してないからね。
   私の目がある以上、ある程度食事制限させてもらうわよ」

イン「」

ステ「それはありがたい」

イン「!?」



イン「すすすステイル!? わ、私をポイ捨てするの!?」

ステ「人聞きの悪すぎる言葉をわざわざ選択するんじゃない! 
   だいたい貴女の暴食が、土御門の策略に論理的な『言い訳』を与えてるんだよ!!」

イン「じゃ、じゃあステイルは、今回の事は全部私が悪いと思ってるの……?」ウル

ステ「…………!! そ、そうは言ってないだろう! 
   ただ、常識的な範囲に食費をおさめるのは」アセアセ

イン「すているからも一緒にみことにお願いして? …………ダメ?」ウワメヅカイ

ステ「…………」メヲソラス


美琴(計算なのかしらね、アレ)

585 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:43:41.22 ID:wu3NEmQn0


イン「…………」ゴク

ステ「…………」ニコ

イン「!」パァ



ステ「……ダメだ」ニッコリ

イン「」/^o^\

ステ「そんな顔で見ても…………なんだその顔!?」

美琴(ブリティッシュジョーク……じゃなさそうね。っていうか漫才?)

イン「ステイルのけちー」/^o^\

ステ「その顔? をいったん止めろ!」

イン「えー」/^o^\三三三/^o^\

ステ&美琴「「気に入ったんかい!!」」

586 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:44:55.31 ID:wu3NEmQn0


イン「ブーブー。……ステイル、最近ちょっと厳しいよ」

ステ「貴女が最大主教になってから甘やかした覚えは無い」

美琴「その前ならあったんかい」

イン「なんで、すている…………?」

ステ「ん、その…………言うなれば、だね…………」

美琴「聞けよ」

ステ「どこぞのクワガタではないが……あ、愛故のムチ、だとでも思ってくれ」



イン「……う、うん」カァ

ステ「…………」ポリポリ



美琴(私と当麻も、傍から見たらああなのかな…………
   いや、それはそれで……………………キャー!)モワモワ



ステイン「「…………」」ドンビキ

587 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:47:10.46 ID:wu3NEmQn0


午後七時半 上条家前


当麻「おっ、ちゃんと来れたか。真理(まこと)、ご挨拶しろ」

真理「んー? はいめ、まして?」キャッキャッ

ステ「はじめまして。……なんだ上条当麻、君こそ生きて帰ったのか。
   しかも僕らより早くとは運の良いことだね」ハッ

イン「はじめましてですわ、まことー。先に着いたのに何で外で待ってるの?」ハテ

当麻「あの学区はスピード制限緩いから、基本は車のが速いんだよクソ野郎。
   ってゆーか、お前らが俺の鍵持ってったからだろうが!
   だいたい美琴も鍵持ってんだから俺の取り上げる必要ねーし!!」

美琴「ただいま真理ちゃーん! ねー当麻、浜面さんに挨拶は?」

当麻「嫁さんにまでスルー!? ああもういいよ、慣れましたよ……
   浜面家も飯時だから、お邪魔になっちゃうだろ。
   真理返してもらう時に一応お礼したけど、お前は明日でいいんじゃねえかな」


真理「ままー、まんまー」

美琴「そうね、じゃあ二人とも上がって。すぐにご飯にするから」

ステ「申し訳ないね、美琴」

イン「なによりお待ちかねだったんだよ!」

588 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:49:06.21 ID:wu3NEmQn0


当麻「ああ、悪い。ちょっと待ってくれ」ゴソゴソ

イン「どうしたの、とうま?」

当麻「んっと、どこにしまったっけな…………あったあった、コレだ」ヒョイ

ステ「…………小袋? なんだそれは?」

美琴「ああ、土御門さんから届いた奴じゃない」

ステイン(…………またか…………)



当麻「実はな、土御門から『二人を家に上げる段になったらこの嚢を開けよ』って指示されてんだ」

ステ「諸葛孔明かアイツは……」

イン「よく孔明の罠に嵌まってるステイルが言うと重みがあるんだよ」

ステ「やかましい! と言うかなんだかんだで貴様もヤツの片棒を担いでるぞオイ!!」

当麻「まあまあ気にすんなって。よっと」シュルシュル

美琴「短いけど文が入ってるわね…………なになに」

589 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:50:12.80 ID:wu3NEmQn0


元春『トップニュースを無かったことにしてやったとして、
   それで終わる土御門様だと思うのかにゃー?』

当麻「なんだこりゃ」

美琴「意味わかんないわね」

イン「トップ…………ニュース……」ハッ



ステ「…………上がらせてもらうぞっ!! 他にも届いてる物があるな!?」ガチャガチャ

美琴「……はっはーん、成程。どうぞお上がり下さいー」ニヤニヤ

当麻「?」

イン「ま、待ってすている! 私も……」


バタンッ


ステ「」

イン「」


美琴「なかなか良く撮れてるわよねー『ソレ』」ニヤニヤ

当麻「なんだ、『ソレ』の話だったのか」

590 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:51:25.97 ID:wu3NEmQn0


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飛び込んだ二人の目に映った部屋は、素朴な生活感に満ちていた。

ここで暮らす者が、幸せであることを語らずとも実感させる。



しかしその窓際には、いまだ眠らない都市からの光を遮る異物が存在していた。

それは自分達が寄り添い合う誕生会での風景。











――――その、特大パネル(約二メートル四方)であった。









591 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:52:37.06 ID:wu3NEmQn0


口をあんぐりと開けたままフリーズした二人に、空気の読めない男が声を掛ける。

彼の手にある起爆スイッチは一つではなかったようだ。


「二つ目の嚢は『お前らが固まったら』開けろっつー話だ。という訳で……」


当麻は固く縛られたパンドラボックスの口を躊躇なく緩めていく。

なんだかんだ言って、この男も現状を楽しんでいるのかもしれなかった。


「……よっと! 二つ目の中身を読み上げるぞー」


そして、哀れなアダムとイヴは自らの首にロープが締まっていくのを黙って眺めていた。




「えー、『小萌先生と風斬ちゃんと、ついでに一方通行にも送りつけといたぜい』……だってよ」

「」

「」



「いやーアンタらも大変ねーあはは」

「」

「」

592 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:54:15.07 ID:wu3NEmQn0










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593 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:56:50.68 ID:wu3NEmQn0


「せっかくのご飯の味がよくわからなかったんだよ……」


食事後とは思えない生気のない声でインデックスがひとりごちる。

あの後二人は意識の定かでないうちに、いつの間にやら晩餐を終えていた。


「まあま、これから毎日御馳走したげるから、楽しみにしてなさい?」


現在インデックスはリビングで、美琴と二人ソファーに腰掛け談笑していた。

かつての恋敵同士の、実に三年ぶりの対面である。

電波に乗せたやりとりは幾度となく交わしたとはいえ、直に顔を合わせての交流はやはり格別であった。





「誕生日はゴメンね。どうしても当麻の都合がつかなくて」

「いいよ、わかってたことだもん。…………それに、あんな、素敵な…………」


話題は、二ヶ月ほど前のインデックスのバースデイの件に移っていた。

いまだに想起するとこみ上げるものがあるのか、言葉に詰まる。

594 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:58:43.02 ID:wu3NEmQn0


「……そ。喜んでくれて何よりだわ」


美琴は、小さく肩を震わせ俯くインデックスの背中を優しく撫でる。

部屋にはしばらく、コツコツという柱時計の正確な音のみが奏でられた。

背越しにでも伝わる彼女の温かい拍動が落ち着いたのを見計らって、美琴は再び声を掛ける。


「ステイルの事、だけど」


震えが収まったはずの身体が、ひと際大きく跳ね上がる。


「あの人が、好きなのよね?」


インデックスは顔を背け、しかしコクンと頷いた。

しかし、羞恥や驚愕のために逸らした、という風には美琴は受け取れない。


「…………ごめんなさい。これ以上は、立ち入らないわ」




これは、もっと複雑な『何か』だ。


595 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 20:59:29.11 ID:wu3NEmQn0







頭を掻いて、共通の友人であるメイドの話でもしようか、と頭を巡らせていた美琴に、





「……聴いて欲しい。…………ううん違う、みことには、最初から話そうと思ってたの」





決然とした貌でインデックスがその『何か』を蒸し返した。







596 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:01:52.07 ID:wu3NEmQn0


語り始める前に、告解者は唯一の懸念を確かめねばならなかった。


「とうまとまことは、今なにをしてるのかな?」

「パパは可愛い我が子を寝かしつけようとして………………一緒に、寝たみたいね」


超能力者――『電撃使い』としての能力の一端で、美琴は家族の動向を概ね把握できる。

愛する夫にだけはその効き目が無いが、そこは常なら経験則で補うところだ。

ちなみにステイルは件のパネルを四つにばらして厳重に包んだ後、

どこか広い場所で燃やしに行ったらしかった。


「じゃあ、この話を今聴いてるのは…………」

「万が一、盗聴器かなんかがあっても私には通用しない。
 正真正銘、私とインデックスだけの女の秘密よ」


珍しく神経質に状況を確認するインデックスに、母である女は胸を叩いて請け負う。

力強い仕草に勇気づけられた彼女は、二度三度と深呼吸をくり返し――


597 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:02:35.44 ID:wu3NEmQn0






――自らの、醜い『熱』を告白した。






「私はね、みこと。まだ、とうまを――――」





598 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:04:27.95 ID:wu3NEmQn0

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マンション裏の、遊具が狭い空間にこれでもかと立ち並ぶ公園。

どうにかこうにか巨大パネルを運搬してきたステイルは、

陽の在るうちは笑い声で賑わうだろう憩いの場に、念のため『人払い』を施した。

覆いを取り外した彼は羞恥に叫びたくなる衝動と――それ以上の葛藤に苛まれながら、カードを翳す。



切り取られた世界の中の男女は、灰も残らず炎に消えた。




「良かったのか?」


刹那の間だけ炎が上がった虚空を、暫し眺めていたステイルに一つの影が近づく。

『人払い』されている空間に侵入できる者など、たとえこの街でも極めて限られる。


「良いに決まっているだろう。残り三枚と土御門の元データ。
 ……と、ついでにクソ野郎自身も同じ行く末になるさ」


特段驚いた様子もないステイルは、顧みもせずにいらえる。


「…………お前さ。他にインデックスと写ってる写真、何枚持ってる?」


影はもちろん、彼女が真に愛する男だった。

599 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:05:40.31 ID:wu3NEmQn0




「『彼女』との写真は無い。今燃やしたこれだけだ」


懐に肌身離さず持っている一枚を無意識に弄りながら、神父は努めて平坦に答える。

当麻はその仕草に気付いたのかどうか、会話の向きを変えるが――



「…………お前も、拘るんだな」



――ステイルは容赦なく、向けられた切先を突きつけ返した。



「僕ではなく彼女がだ。嘗ての君のようにね、上条当麻」

600 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:07:41.69 ID:wu3NEmQn0


己を懸想してくれる人が本当に愛したのは、自分ではない『自分』。

現在のインデックスと十年前の上条当麻は、実に似通った業を背負っていて。

そしてその帰結まで、同じ道程を辿るはずなのだ。



「僕にとってはそんなこと、大した問題じゃあない」


  ――そんなの、もう、どうでも良いよ――



いつかの声が重なって、ステイルの吐露は当麻の耳に届いた。

十年前の上条当麻の罪はあの日、彼女の心からの叫びによって許されていた。

ならばインデックスのカルマも、神父に赦されて終わるのだろうか。

601 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:09:15.52 ID:wu3NEmQn0




――しかし。


「本当に、そうか?」


上条当麻は、己が信念に従い愚直に突き進む。





束の間、ステイルは逡巡する。


「……そうだとも。僕の問題は、そこではない」


僅かにでも感化されてしまったのか、と告解者は自嘲する。

ステイル=マグヌスもまた、このどこまでも憎く畏敬すべき英雄に――




――自らの『真の懊悩』を、ぶつける決心を固めた。




602 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:10:03.79 ID:wu3NEmQn0





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603 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:11:24.58 ID:wu3NEmQn0


「…………帰ってきたわね」


ステイル達の帰宅を精緻に察知した美琴が呟く。

インデックスは、すでに湯浴みも済ませて床に就いていた。


ガチャリ、と気遣いを感じさせる静かな音が、しかしそれ以上の静寂に包まれたリビングまで届く。

手の中のグラスを揺らしながら、シャワー上がりの美琴は二人に声を掛けた。


「おかえり。男同士の腹の内の見せあいはどうだった?」

「どっちかって言ったら、コイツが一方的に割ってただけだな」

「黙れ。君の腹の中を見たいときは直接かっ捌くまでだ」

「んだとこのヤロ……おっといけね」


声を荒げずに罵り合う男どもを見て、思わず彼女は噴き出す。

基盤部分では平和を愛する夫の喧嘩腰、というのは平時では滅多に見られない姿だった。

あるとすれば金髪の変態か、青髪の変態と絡んでる時に限られるだろう。

604 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:12:47.06 ID:wu3NEmQn0


「やっぱりアンタたち、良い友達なんじゃない?」

「「誰が」」


声が揃ってしまったことに気づき、再び反目した二人を見て、美琴は爆笑をすんでのところで堪える。


「……っく、く、……ぷぷ…………はーぁ。
 ま、深くは訊かないわ、私も女の秘密は話せないし。
 そろそろ日付も変わるけど、もう寝る?」

「……このマンションのセキュリティは?」

「自分の目で確かめただろ。学園都市では最高峰だよ」


それは即ち、『科学的』に全世界最高水準である、という意味だ。

この夫婦は一宗派のトップたる自分達よりよほど裕福なのではないか、とステイルは一瞬悩む。

しかし眠気が勝ったのか、彼は疑問を振り払って勧めに従う事にした。


「了解した。で、どこで寝れば? このソファかい?」

「廊下の、こっち側から数えて二番目の部屋が空いてるわ」

605 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:13:46.09 ID:wu3NEmQn0


(慣れない事をするもんじゃあないな)


おどけたつもりだったステイルは、淡白に流されたボケを悼んで苦笑する。

と同時に軽く、素直な感嘆の声を上げた。


「客室が二つもあるのか……羨ましい話だね、まったく」

「インデックスの家はこんなとこよりずっとでかいんだろ?」

「『ランベスの宮』は最大主教の住まいだ。僕には関係ない」


肩をすくめて馬鹿にするステイルに、しかし夫婦は底意地の悪い笑みを並べる。

背筋に寒いものを感じた男は、慌てて問い質した。

606 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:15:48.49 ID:wu3NEmQn0


「なんだ、その面は……!」

「いやいや、なんでもありません事よ?」

「そうだ、ベッド一つしかないから気を付けてねーん」


魔術師が『仕事』用に匹敵する形相で鋭く睨みつけても笑って手を振るのみ。

つい六時間ほど前のアバンギャルドな滑空旅行が、

ここにきて脳に休息を求める信号を発させている事も手伝う。

これ以上は時間と体力、精神力の無駄だと判断したステイルは踵を返した。




(いいだろう。どんな罠を仕掛けたか知らないが、
 拠点攻略の達人でもあるこの僕に通じると思うなよ……!)




その謎のプライドの高さが、命取りになるとも知らずに。



607 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:17:17.39 ID:wu3NEmQn0


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チュン チュンチュン


翌朝、インデックスは昔懐かしい雀の鳴き声で目を覚ました。

手探りで昨夜寝付くまでは握っていた携帯電話を、『自由な右手』で手繰り寄せる。

瞼を上げればいつ以来だろう、天蓋もつかず大きさは一人分のベッドが。

そして可愛らしく飾り付けられた、彼女の住居からすればやや手狭な部屋が目に入る――






――はずだった。



眼前に、見慣れた黒尽くめの柱が鎮座――というか横倒しになっていなければ。



「…………へ?」


608 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:17:58.50 ID:wu3NEmQn0











              そして、御近所迷惑な悲鳴がマンションを劈いた。










609 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:19:36.39 ID:wu3NEmQn0







「すすすすすすすすすすすす、すている?
 さささささささすがに、まだ、心の準備が、できてないんだよ……!」


「違う、これは違うんだ! いいか、ハッキリ言っておく!! 
 僕がこの部屋に入ったのはあのバカ夫婦の仕組んだ謀略で、
 いまだに居るのは寝ぼけた貴女がどーしてもその手を離さなかったからだ!!!」


「へ? あわわ!(バッ) ご、ごめんなさいですわ! で、でもでも!
 全くそういう気にならなかったって言うならそれはそれで失礼な話かも!」


「ふざけるなどうしろって言うんだ!! 黙秘だ! その件については断固として黙秘する!!」



部屋の外からはしてやったりの呵々大笑がこれまた近隣に迷惑をかけている。


そんな大声さえ耳をスルーする必死の痴話喧嘩の中で――――


610 :上条家編[saga]:2011/06/15(水) 21:20:43.27 ID:wu3NEmQn0










――――二人の科学の街での、騒がしい日々が始まった。









618 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:27:22.40 ID:0WhgRUpQ0


午前八時 上条家 リビング



真理「ごちそーさまでいた!」

イン「うう……ごちそうさまなんだよ」

美琴「はい、お粗末さまでした」

イン「美味しかったけど、でもでもやっぱり……」

美琴「」ギロッ

イン「なんでもありませんわ」



ステ「…………馬鹿な。白米四杯で終了だと?」

当麻「昔はそうめん三昧で過ごした夏もあったからなぁ……」

美琴「厳しくやればもっと減らせるわよね、インデックス?」

イン「」

ステ(…………やはり僕らは、甘やかしていたんだろうか?)ズーン

619 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:28:43.53 ID:0WhgRUpQ0


当麻「お前らはどれぐらい日本に居られるんだ?」

ステ「帰国予定は七月の下旬になっている。一月半ほどだ」

美琴「結構長いわね……」

イン「…………迷惑なら、今からでもホテルに」

美琴「誰もそんなこと言ってないでしょ」

当麻「なにを今さらだろ、インデックス。
   今回はちゃんとイギリスから謝礼も受け取っちまってるしな」

イン「……うん、ありがと二人とも」



ステ「それにしても謝礼? 僕は何も聞いて…………それはそうか、
   こんなサプライズを仕込むぐらいだ。知らせるわけもないか」ハァ

美琴「大した額じゃあないのに当麻ったらなかなか受け取ろうとしなかったのよ」

イン「うーん、変なところで律儀だよねとうまは」

当麻「どうして家族を迎えるのに金なんか貰わなくちゃならねーんだよ」

美琴「…………って感じでね」

620 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:29:48.91 ID:0WhgRUpQ0


ステ「君の石頭じゃあ納得できないだろうが、今の彼女には立場というものがあるんだ」

当麻「けっ、そんな事は俺だってわかってるよ」

イン「頭で理解できても心が頷かない。……ふふ、ほんと変わらないねとうまは」

ステ「…………」


真理「ままー? ぱぱー?」

美琴「んー? どうしたんですか真理ちゃーん?」

真理「?」ユビサス

イン「え?」ユビ

ステ「僕ら?」ササレ


当麻「そういや、ちゃんと紹介してなかったよな」

美琴「そうね。ほら真理ちゃん、パパとママのお友達の……」

ステ(誰がコイツと友達なんだ……!)ピクピク

イン(抑えるんだよ、ステイル)

621 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:30:48.77 ID:0WhgRUpQ0


美琴「……わかったー? じゃあ言ってみましょ。インデックスと、ステイル!」

真理「いんでっくしゅと、しゅている!」キャッキャッ



イン「…………あーん、可愛いんだよー!!」ダキッ

真理「いんでっくしゅ、いんでっきゅしゅ!!」ンキャンキャ

イン「もうダメかも! お持ち帰りしたいですわー!!」ガバ

美琴「こらこら!」コツン



ステ「………………」

当麻「どうだ? 子供を抱いたインデックスを見た感想は?」

ステ「…………どう、とはなんだ」

当麻「いや、別にここで惚けなくてもいいだろ」

ステ「……………………」



ステ「………………………………だ」

622 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:32:32.17 ID:0WhgRUpQ0


当麻「んー?」


美琴「聞こえないわねー?」ヌッ







ステ「…………せ、聖女マルタのようだ、と言ったんだ…………!」






美琴「……えー、よくわかんな」

当麻「ああ、お前の好みのタイプド真ん中ってことか」

ステ「んがっ!?」

623 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:33:33.92 ID:0WhgRUpQ0


美琴「ほうほう」ニヤニヤ

ステ「げほっ、がほっ!! 貴様、憶えてたのか!?」

当麻「まあ、お前とした数少ないお気楽話だったからなぁ。
   いや、結構重たいシチュエーションだったっけ……?」

ステ「そ、それは君の記憶違いだ!」

美琴「『憶えてたのか』の後でそれはないでしょ。……ねー、インデックス?」

ステ「ハッ!!!」オソルオソル




イン「…………」

ステ「…………い、今のを聞いて……?」



当麻「そりゃあそうにきmグホォ!!!」

美琴(ちょっとアンタ黙ってなさい!!)ドゲシッ!

当麻(か、上条さんの上条さんが…………!!)

624 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:34:56.86 ID:0WhgRUpQ0


イン「す、すているは」モジ

ステ「ななな、なんだっ!」アセ


美琴「」ワクワク

当麻「」チーン

真理「?」


イン「……マルタ様みたいな、働き者の女の子が好きなの?」

ステ「…………ん……ぐぐ……」


美琴(ほらそこで一発! ガツーンとかましなさいよ素直じゃないわね!)

当麻(…………お、お前が言うな…………)


イン「………………」ゴクリ

ステ「………………」

625 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:36:10.21 ID:0WhgRUpQ0


ステ「僕が、聖女マルタを好きなのは」

イン「!」ゴクリ

ステ「……どこまでも清らかで、慈愛に満ちているからだ」

イン「…………怪物タラスクを、その御心だけで鎮めたみたいに?」

ステ「まさしく、そうだね」


当麻(宗教関係の話はわかりにくいな)

美琴(アンタ魔術サイドにドップリ浸かってたでしょうが!)




ステ「そして、今の貴女はそれほどに…………光輝いて見えた」



イン「」パクパク




上琴((キター!!))

真理「?」

626 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:37:16.09 ID:0WhgRUpQ0


ステ「…………もういいだろう! この話は終わりだ!!」

美琴「御馳走様でした」

当麻(どこが『恋人でもなんでもない』んだよ)

イン「い、いただきますわ!」

ステ「おい、落ち着くんだ最大主教!」







当麻「そういや、親船さんに会うのはいつだっけ?」

ステ「君が知らなくてどうするんだ、まったく? 公式会談は七月十日の予定だよ」

美琴「けっこう先じゃない。それまでアンタ達は何して過ごすの?」


イン「…………」

ステ「…………」


美琴「何も無いんかい!」

当麻「え? ってことはお前ら、これって夏休みみたいなもんなの?」

627 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:38:04.55 ID:0WhgRUpQ0


イン「退屈な日々を寝転がって過ごすのは得意なんだよ!」エッヘン

上琴「「威張るな!」」

ステ「……僕はそんな自堕落な生活には耐えられないよ」

イン「えー」

ステ「しょうがない、全大型零分針ツアーでもやるか」

イン「わーい!」

上琴「「おい!」」




ステ「冗談はさておき、僕らもなんだかんだでやる事はある。
   会いたい人もいるしね。日中は出歩くことの方が多くなるだろうな」

イン「この時期の日本はジメジメしてて嫌なんだよ……」

ステ「……ヤレヤレ。君たちも自分の仕事があるだろうから、僕らにそうかまける事はないよ」

628 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:38:37.44 ID:0WhgRUpQ0


美琴「でも私たち、今日は日曜で仕事も無いわ。どっか案内しよっか?」

イン「……えっと、ごめんねみこと?」

ステ「僕らが最初に訪う相手はもう、決めているんだ」



当麻「…………ああ、あの人か」

美琴「当麻、誰だかわかるの?」

当麻「まあな」

イン「私とステイルが、とうまの次に……
   もしかしたらとうまよりお世話になったかも知れない人なんだよ」

当麻「おい」

ステ「もちろん僕は君に世話になった覚えなど無いが」

当麻「おい!!」

629 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:39:43.54 ID:0WhgRUpQ0


ステ「実は訪日が決まった時点で既に連絡を入れていてね。
   さすがにあの空港には来てもらえなかったが、今日を逃すとゆっくり会えないんだ」

イン「そういうわけだから、ごめんなさい」ペコリ

美琴「もちろん、全然かまわないわよ。大事な人なんでしょ? 楽しんでらっしゃい」

当麻「俺の分もよろしく言っておいてくれ。最近なかなか会えないしな」

ステ「はっ。自分で言えよ、上条当麻」

当麻「……テメーはいちいちそうやって」



美琴「やっぱり仲良いわねぇ」

イン「ロンドンに居るときとは別の意味で生き生きしてるかも」

美琴「さみしい?」

ステ「…………べっつにー」

630 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:40:44.40 ID:0WhgRUpQ0


イン「じゃあとうま、みこと、まこと。行ってきますわ!」

ステ「夕刻までには帰るつもりだ。それまでは気にしないでくれ」

当麻「おう、気を付けてな」

美琴「いってらっしゃーい」

真理「いっえらっしゃーい?」

イン「ふふふ」



ガチャン



イン「…………あったかいね、此処は」ヒョコヒョコ

ステ「…………ああ、そうだね」スタスタ

イン「巻き込みたく、ないな」

ステ「それこそ、余計なお世話と言いそうだがね。……あの二人は」

イン「…………」

631 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:41:37.80 ID:0WhgRUpQ0


午前十一時 第四学区 レストラン『虚数学区』前



ステ「……なかなかアカデミックな店名だな」プカー

イン「まだ来てないかな?」

ステ「日本の礼儀に則って三十分前行動だったが……やはり早すぎたか」

イン「おなか減ったねー」グーグー

ステ(こっちも早すぎる)





「シスターちゃーん! ……ステイルちゃーーん!!!」





ステ「…………来たようだね」ジュッ

イン「うん! …………ひさしぶりーっ! こもえーーっ!!」



小萌「二人とも、久しぶりなのですー!」ガバッ

632 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:42:54.74 ID:0WhgRUpQ0


ステ「おっと。飛びついては危ないよ、小萌」

イン「こもえは相変わらずちっちゃいねー」ダキッ

小萌「シスターちゃん……いやいや、最大主教さんが育ち過ぎなのです!」


イン「…………小萌にまで、そんな他人行儀で呼ばれたくないよ」

ステ「…………」

小萌「うっ! こ、これはしつれ……いえ、ごめんなさいなのです。
   やっぱり先生も大人ですから、柵というものが先に立ってしまいます」

ステ「まだ教師を続けて?」

小萌「もちろんです! 先生は生涯教育の現場に立ち続けてみせるのですよ!」

イン「……やっぱり凄いなぁ、こもえは」

ステ(二百五十年後でもそのまま教壇に立ってそうだな……)



小萌「二人だって、教室で会った事はなくても先生の生徒なのです。
   お友達に言えないことがあったら、いつでも相談してくれていいですよー?」ニコリ

ステ(……本当に、この人には)

イン(……一生、敵いそうにないかも)

633 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:44:28.10 ID:0WhgRUpQ0






結標「感動の再会してるところ悪いんだけど、そろそろ私達も輪に入っていい?」

イン「ああ、あわき! 来てくれたの?」

結標「小萌に無理やり連れて来られた……っていうか、足代わりにされたんだけど」

小萌「あ、あははーなのです…………」



姫神「どうも。久しぶり。インデックス」

イン「あいさー! 会いたかったんだよ!」

姫神「私も。会いたかった。ステイルも。久しぶり」

ステ「まだミコフクなのか、秋沙。元気だったかい」




イン「!?」

小萌「!?」

結標「?」

634 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:46:14.46 ID:0WhgRUpQ0


イン「すている!? いつの間にあいさにフラグを建ててたのかな!?」ガクガク

ステ「そんな事をした覚えは無い!!」ガクガク

姫神「まあ。よく考えれば。ステイルは命の恩人だから。
   そういうことになっててもおかしくない」イェーイ

小萌「そ、そういえばそうなのでした……何たる伏兵!」

ステ(そういや二回も助けてるんだった)



イン「うーでもでも! あいさはとうま一筋だったはずなんだよ!」

姫神「その上条君は。奥さん一筋だけど」

イン「ぐぐぐぐっ!!」ガハァッ!

ステ「なぜ見え見えのカウンターに突っこむんだ……」

結標「芸人根性みたいなものを感じるわね……」

635 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:47:29.10 ID:0WhgRUpQ0





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「根性!?」ガタッ


「隊長! 電波を受信してないで仕事してくださいませ!!」


「ん、ああ。悪い悪い」


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結標(…………白昼夢でも見てるのかしら、変な光景が)フリフリ



636 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:48:51.03 ID:0WhgRUpQ0


姫神「フラグ云々は冗談として。命の恩人なのは事実だから」

ステ「例の結婚式以来、僕らはメル友というわけだ」

イン「うう……知らなかったかも」

ステ(何故か言いにくかったんだよな……)

小萌「うう……ステイルちゃんに下の名前で呼んでもらうのは、
   先生だけの特権だと思ってました」

イン「ロンドンでは結構同僚を名前で呼んでるんだよ」

ステ「まあ、そういう文化だからね」

結標「じゃあインデックスも名前d」



ステイン「「わーーーーーーっっ!!!」」



結標「なによいきなり!?」

ステ「す、すまない……」

イン「ご、ごめんなさいですわ……。
   …………その、私達にとってはものすごーくデリケートな問題なんだよ」

結標「はあ」

637 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:49:53.37 ID:0WhgRUpQ0


小萌「何というか、複雑なんですね二人も」

ステ「…………そろそろ入ろう、予約の時間だ。予定より人数が多いが……」

イン「だ、大丈夫なんだよ! オーナーとは友達だから!」

姫神(逃げた)

結標(逃げたわね)

小萌(逃げたのです)


カランカラン イラッシャイマセー


ステ「へえ…………小さいが、雰囲気がいいな」

店主「御予約のお客様ですね? あちらの窓際のお席へ」

イン「えっと、ごめんね? 予約より二人増えちゃったんだけど」

店主「え、えーっと、じゃあ……そのお隣の席へどうぞ」

イン「ありがとですわ」

店主「(ですわ?)いえいえ、それでは追加のお料理を用意しますね」イソイソ


結標(見た事あるような……)ハテ

姫神(無いような。やっぱりあるような)ハテ

638 :先生編2011/06/17(金) 20:51:18.73 ID:0WhgRUpQ0


ステ「……良かったのかい? 彼女も友人なんだろう?」

イン「うん。でも、今日は小萌にお礼を言う日だって決めてたから。
   ちゃんと話して、わかってくれてるんだよ」

ステ「……そうだね。今日は、小萌に今までの感謝を伝えなくては」



小萌「…………」グス

イン「あれ? 小萌泣いちゃってる?」ニヤニヤ

ステ「そろそろ[ピーーー]歳だというのにこれではね」ニヤニヤ

小萌「ななな、泣いてませんよっ! 私はあなた達よりずーっと大人なのです!」

ステイン「「はいはい」」ナデナデ

小萌「二人して頭を撫でるんじゃありませーーん!!」ナデラレナデラレ



結標(ねえ秋沙、もしかして私達場違い? っていうか空気?)

姫神(ふふふ。淡希先輩も。私の領域に飲み込まれはじめてる。ふふふ)

結標(『原石』怖っ! レベル5を侵食してるんじゃないわよ!)

姫神(ふふふふふ)

639 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:53:09.40 ID:0WhgRUpQ0




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ステ「…………よし、行き渡ったね。じゃあ最大主教、頼むよ」

イン「では、私達の再会を祝して!」




                ――カンパーイ!――




小萌「んっ、くっ、ぷはーっ! 昼間から飲むお酒は最高ですねー!」グビグビ

ステ(犯罪的な光景だ、しかし)

姫神「それにしても。このムニエル。美味しい」モグモグ

結標「無国籍料理店、ってヤツかしらね。そういえばいつだったかの
   『学園都市ウォーカー』に載ってた気がするわ、このお店」パクパク

イン「ふふ、でしょでしょ。私も鼻が高いかも!」ドガガガガガガガ

ステ「貴女が自慢するのか……まあ、気持ちはわかるが」パクリ

640 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:55:09.58 ID:0WhgRUpQ0


小萌「んー! こっちのサラダもドレッシングが抜群ですね!」

ステ「ああそうだ、小萌。土御門から何か届いてないかい?」

小萌「…………そういえば、ステイルちゃんは土御門ちゃんと同僚なんですよねー。
   本当に世間は狭いのです。それで、何かって何ですか?」

結標(実は私も元同僚なんだけどね)



イン「その、多分……私達の写真、なんだけど」ゴニョゴニョ

結標(なんか面白そうな話ね)ニヤニヤ

姫神(あまり。引っ掻きまわさない方が)デモニヤニヤ

小萌「……写真なんて、届いてないのですよー?」

イン「へ? そうなの?」

ステ(どういう事だ……土御門お得意のブラフか? だが何の意味があってそんな)






小萌「写真は届いてないけど、インデックスちゃんとステイルちゃんが
   抱き合ってる姿をタップリ収めたビデオが」

ステ「土御門ォォォォーーーーーーッッ!!!!!」





641 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:56:34.70 ID:0WhgRUpQ0


姫神「それは。それは」ニタニタ

結標「熱烈に愛の抱擁、ねぇ」ニタニタ

イン「なにを余計な修辞を付け加えてるのかな!? そもそも抱き合ってたわけじゃ」

小萌「私としてはちょっぴり複雑でしたが、
   二人がとーっても仲良しのようで安心しました」シクシク

ステ「くっそおおお!!!」



イン「だ、大丈夫? また血管切れてない?」

ステ「何とかね…………小萌」

小萌「なんですかぁー」ズーン

ステ「(何故落ち込む)そのビデオとやらに、コレを張ってくれないか」つ紙切れ

イン(あ)

小萌「なんなのですかコレ?」

ステ「貴女の健康を祝う魔術の護符さ。
   件のブツに張り付けてベランダにでも一晩放置しておいてくれ」

小萌「はあ……了解しました」

ステ(これでまず一件)

結標「ふーん、魔術ねえ。そう言えばあなた」

ステ「なにか?」

642 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:58:12.39 ID:0WhgRUpQ0


結標「この面子で面識が無いのって、私とあなただけじゃない?」

ステ「確かに…………最大主教の友人なのはわかったが。小萌の生徒なのか?」



結標「違うわよ、改めて自己紹介するわね。
   私の名前は結標淡希。霧ヶ丘大学って所で研究員、やってるわ」

姫神「でも。淡希先輩を学内で見かけたことなんて。一度も無い。不良研究員?」

結標「茶化すんじゃないわよ。そっちの秋沙とは小萌の所の居候仲間ね。
   更に高校、大学と一応は先輩後輩の仲よ。どっちにしろ余り時期は重ならないけど」

小萌「二人が同じ霧ヶ丘だったと聞いたときには先生もビックリしたのです」



ステ「…………成程。君が『座標移動』というわけか」

結標「……へえ、さすが腕利きの魔術師さん。敵の事情には精通してるって訳?」

ステ「そんなに構えないでくれ。『仮想敵』だよ、ただの」

結標「そのシミュレート結果を聞いてみたいわね、是非とも」

ステ「仮想と言わず、実際に試してもいいさ」ガタ

結標「いいわよ、表出る?」ガタッ

姫神「ちょっと。二人とも」

643 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 20:59:17.19 ID:0WhgRUpQ0



小萌「結標ちゃん、やめなさい!!」


イン「コラッ!! ステイル!!!」



ステ&結標「」ビクッ


姫神(ほっ)






結標「あはは、ごめんなさいね?」

ステ「殺伐とした空気が最近恋しくてね」

結標「あらやだ、あなたもそうだったの? ちょっと平和ボケするとこういう雰囲気がねー」フフ

ステ「やはり僕らのような人種は、時々シリアスタイムを取らないと息苦しいね」ハハ

姫神(なに。このほのぼのしているようで。血なまぐさい会話)

644 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:00:26.01 ID:0WhgRUpQ0



ワキアイアイ



イン&小萌((どうしてこうなった…………))



姫神(空気化回避のため。早めに行動に出るべき)

姫神「淡希先輩の自己紹介が済んだところで。近況報告とかしたら?」

ステ「ああ、そう言えばそうだね」

結標「すっかり話が弾んじゃったわ」

イン(ナイスなんだよ、あいさ!)



姫神「それじゃあ。言いだしっぺの私から」

小萌「よっ、やれやれ!」

結標「あなたちょっと酔ってない?」

小萌「ワインの一本や二本で潰れる小萌先生ではないのです!」

イン(懐が)

ステ(痛い)

姫神(また。いつもの。パターン?)フフフ




645 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:01:36.72 ID:0WhgRUpQ0


ステ「おっとすまない、続きをお願いするよ秋沙」

姫神「!!」

イン&小萌(嫌な予感が……)

結標「?」


姫神「わ。私は。医者を目指して勉強中。
   それから淡希先輩と一緒で霧ヶ丘で研究協力もしてる」

イン「……それは、安全なんだよね?」

小萌「…………」

イン「あ、ご、ごめんなさいこもえ!
   その、学園都市を信じられない、ってわけじゃあ」




小萌「いえ、しょうがないことなのです」

結標「…………前統括理事長の退任後、これでもかと膿が出てきたからね」

ステ「その上、すべての闇が暴かれたという証拠も無い」

小萌「………………」




646 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:03:08.48 ID:0WhgRUpQ0


小萌「あのころ……」

姫神「小萌…………」

小萌「私は、自分の無知が恥ずかしくてしょうがありませんでした」



「学園都市の教育は生徒の未来の為であると盲信して」


「結標ちゃんも、姫神ちゃんも、御坂……美琴さんも、上条ちゃんも」


「私の知らないところで、酷い目に遭ってて」


「そんなことも知らずにのうのうと教鞭を執っていた私は」




「私は、教師を辞めるべきなのだとさえ思いました」




イン「そ、そんな……」

ステ「………………」




647 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:04:01.33 ID:0WhgRUpQ0


姫神「そんな顔しないで。インデックス。ステイル」

小萌「そうです。結局私は、今も先生のままなのです」

イン「…………なんで?」

小萌「ふふふ、決まっています」




小萌「先生は、先生だからです。生徒の為に生きるからこそ、先生なのです!」




ステ「……はは、成程」

姫神「いかにも。って感じでしょ?」

イン「うん、こもえらしいんだよ」ニコ


結標「ちなみに霧ヶ丘の研究が健全である事は、この私が保証するわよ」

姫神「万年サボりの淡希先輩に。なぜか請け負われる私って」フフフ

結標「おいこら」




648 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:05:04.48 ID:0WhgRUpQ0


結標「私はさっきしたから、次はそっちのお二人さんね」

姫神(私の話のわりには。私の台詞数が少なかった気がする)


ステ「僕らの近況か……正直、分けるほどでもないから一緒に話そうか」

結標「なに? あなた達夫婦なの?」

ステイン「「ぶっ!!」」


ステ「げっ、がはっ!」ムセタ

イン「おっ、お餅、ももちががが……」ツマッタ

姫神「だ。大丈夫。二人とも?」

小萌「ちょっと結標ちゃん! からかうにしてももっとマシな言い方があるはずです!」

結標「えー? だって近況報告をまとめるって、まるきり夫婦のそれじゃない?」

ステ「ちっ、違うに決まってるだろうが! ただ四六時中一緒に居るだけだ!!」




イン「」モチゴックン





649 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:06:24.86 ID:0WhgRUpQ0





イン「す、す、す、すている!! ちょっと落ち着いて!?」

ステ「……え? …………あああああああっっ!?
   僕はいったい何を口走ってるんだ!?」

イン「ち、違うんだよみんな! 私とすているはその、お偉いさんとボディーガードなの!
   
   つまり単なる一心同体、いわゆる一蓮托生ってわけなのです!」

ステ「貴女ももちつけ、いや落ち着け! 文脈が微妙に繋がってないぞ!?」



小萌「うう……そうなのですか。
   つまり二人は病める時も健やかなる時も
   共にある事を誓ってしまったのですね…………」シクシク

結標「風呂場とかベッドでも共にあるのかしらね」ククク

姫神「小萌先生。涙拭いて。何故か私も胸が痛いけど」つハンカチ

小萌「先生もいい加減、新しい恋をさがすべきなのかもしれません」ドウモ チーン


650 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:07:37.53 ID:0WhgRUpQ0



イン「もうダメかもコレーーーーっ!?」

ステ「不幸だあっ!!」

イン「え。ふ、不幸なの…………?」ウル

ステ「あ、いや、今のは弾みで」ワタワタ


三人(((ケッ)))





小萌「では。最後は私の番なのですよ」ケロリ

ステ(さっきの大騒ぎはなんだったんだ……)ゲッソリ

イン「こもえはいつまで経ってもこもえですわよね」

ステ「確かにそんな気がするな…………」

結標「そして実際にその通りよね」

姫神「十年前から。変わってない」


小萌「うわーん! みんながいじめます!」




651 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:08:47.09 ID:0WhgRUpQ0


イン「ううん。違うんだよ、こもえ」

小萌「ぐす…………え?」


ステ「貴女は十年前、僕たちをあたたかく見守ってくれた頃の小萌そのままだ」

小萌「え? え?」


姫神「小萌が居なかったら。私。路頭に迷ってた」

小萌「ひ、姫神ちゃんまで……」


結標「つまり。私達全員、変わらないでいてくれる小萌に感謝してる、ってこと」

小萌「………………」



イン「こもえ」

ステ「小萌」

小萌「は、はい!」





652 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:10:51.48 ID:0WhgRUpQ0




イン「とうまたち、皆の『先生』でいてくれてありがとう」

小萌「お礼を言われるような事じゃありません! 先生として当然の……」



ステ「そして、僕らを『生徒』と呼んでくれてありがとう。とても、嬉しかった」

小萌「あ、あ…………うぅ」



姫神「二人とも。あまり感動させると。また泣いちゃう」

結標「ま、その場合私達も共犯だけどね」



小萌「ん…………あ…………ひっく、えっぐ」




653 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:11:38.34 ID:0WhgRUpQ0


ステ「あーあ。結局泣かせてしまった」

イン「こもえ、いつもお疲れ様」



小萌「私、こそ! みんなに会えて嬉しいです! みんなの先生にしてくれて!」









「あり、がとうございますっ! うわあああああんん!!!!」








654 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:13:08.20 ID:0WhgRUpQ0


午後二時 『虚数学区』裏



姫神「小萌先生は。泣きやんだかな」

ステ「結局三十分ぐらい泣いてたな……ちょっとやり過ぎたか」

姫神「そんなことない。最高のうれし泣き」

ステ「なら、いいんだが」



ステ「それでなんだい、二人で話とは? ……あまりその、アレすると、最大主教が」

姫神「ふふ。大丈夫。すぐ終わる話だから。心配しないで」

ステ「っ、エッヘン!」

姫神「ふふふふふ」

ステ「さっさと始めてくれ!」

655 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:14:12.93 ID:0WhgRUpQ0





姫神「……小萌先生は。私の知る限り最高の先生」

ステ「奇遇だね。僕もそう思う」

姫神「だけど。私の記憶にもう一人。忘れられない『先生』がいるの」

ステ「………………それは、まさか」

姫神「ん」コクリ







姫神「教えて。ステイル。あの人は。どうなったの?」






656 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:15:23.77 ID:0WhgRUpQ0



ステ「……なぜ、そんな事をいまさら?」

姫神「メールで聞けるような事じゃなかったから。いつか。会えたら聞こう。
   そう思ってるうちに。十年が過ぎてた」

ステ「…………」

姫神「私は。あの人の『協力者』だったから。なのにあの人は。どこかに消えて」



   
「…………私だけが。こうして平穏に暮らしてる」



「その事を思うと。どうしようもなく心が痛いの」



「ねえ。教えて? あの人は――」


657 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:16:33.57 ID:0WhgRUpQ0










「アウレオルス=イザードはどうなったの?」









658 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:17:26.79 ID:0WhgRUpQ0










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659 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:19:02.17 ID:0WhgRUpQ0


午後三時 学園都市 とある場所


ステ「小萌も喜んでくれたようで良かったね」スタスタ

イン「むー」ヒョコヒョコ

ステ「……まだ怒ってるのかい」シュボ

イン「だって。百歩譲って二人で話してたのは良いとして、内容も秘密なんて」

ステ「じゃないとテーブルから離れた意味が無いだろう」プカー

イン「…………そういう話じゃないんだね?」

ステ「………………」



『魔術を失い、記憶を失い、崩れ去った自らの「目的」さえ失った。
 その後の消息に関しては僕も一切関知していない…………その生死さえも』

『………………そう』

『仮に君がヤツを見たところで、風貌はすっかり変わり果てている。
 唯一ヤツの「顔」を知る僕でさえ、いま会って判別できるかと聞かれれば…………』

『あんなに一途に。あの子を想ってた。あの人が』

『………………それこそ、いまさらだ。詮無き事だよ』



ステ「……ああ。違うとも」

660 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:20:06.65 ID:0WhgRUpQ0





ステ「そんなことより、秋沙と言えば!」

イン(誤魔化したんだよ)

ステ「君は彼女と、ロンドンでも電話をしていたんだろう?」

イン「もちろんなのです。友達だもん」

ステ「…………ならばなぜ、秋沙の口調は君にうつってないんだ?
   小萌のそれはあっという間にコピー完了だと言うのに」



イン「……あ、あれ? ホントだ」

ステ「…………考えるだけ無駄か。そもそもメカニズムからして謎なんだから」ハァ



イン「なんでなのですわー?」

ステ「…………………………はあぁぁぁ」ヤレヤレ


661 :先生編[saga]:2011/06/17(金) 21:21:48.03 ID:0WhgRUpQ0


-------------------------

IN

みんなの先生 ←New!


NOT IN

吸血殺し ←Why?


-------------------------




姫神「なんでって? それは。私が聞きたい。ふふふ」





姫神「…………不幸…………はぁ」






672 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:39:12.92 ID:7wMadqJ00




ステ「………………」



イン「ねえすている、私 の 方 だ け 見 て ? 


   アンジェレネもこもえもトチトリもレッサーもあいさもローラもるいこも

   かおりもいつわもまいかもアニェーゼもルチアもシスターズもサーシャも

   ヴィリアンもキャーリサもリメエアもシェリーもオルソラもショチトルも

   みこともあわきもさいあいもうみどりもしずりもかざりもあいほもききょうも

   くろこもらすとおーだーもわーすともひょうかもせりあもみさきもヴェントも

   エリザードもワシリーサもさだのりもまこともガブリエルも見ないで?


   私の事だけ見てればすているはそれでいいんだよ?」


673 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:40:29.52 ID:7wMadqJ00



ステ「これ全然別の何かが外れてるから!
   後半とりあえず女の名前並べただけになってるぞ!!
   あと最後の方明らかにおかしいだろ!!!
   それに平仮名ばっかりで読みにく…………待て、来るんじゃない」



イン「すている、邪魔者は全部私が消してあげるから」



ステ「現状彼女たちが僕らの邪魔をした事は一度たりともない!!
   基本的に当人同士の問題のはずだよな!?
   おい、早くリテイクだ、急げ…………」





イン「 す ー て い る ぅ ♪ 」



ステ「アッーーーーーーー!!!!!」


674 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:41:40.69 ID:7wMadqJ00


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リテイク



とある日 とある木陰



イン「ニャー♪」ゴロゴロニャー


ステ「ニャーて。猫抱えてるわけじゃあないんだから」


イン「赤毛でおっきい可愛げのない猫さんなんだよー♪」


ステ「余計なお世話だよ。……さあ、そろそろ仕事に戻ろう」


イン「やだ」


ステ「……わがまま言うんじゃない」


イン「やーだよーだ」


ステ「………………」ムクリ

675 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:42:29.03 ID:7wMadqJ00


イン「ああもう! 勝手に行っちゃダメなんだよ!」ダキ


ステ「…………最大主教」


イン「なぁにかなぁ?」


ステ「…………………………当たっている」


イン「何がかな、言ってみてってきゃわああ!!」


ステ「は、はしたない真似をするんじゃない! 神裂が見たら嘆くぞ!!」


イン「誰も見てないよー♪」


ステ「どこに土御門の手の者が潜んでるかわからないだろう!」


イン「だったら見せつければいいかも」

676 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:43:15.40 ID:7wMadqJ00




ステ「…………ああもう! 好きにしてくれ!」


イン「お仕事はいいの?」


ステ「仕事はする。そこは最低ラインだよ」


イン「じゃあお姫様だっこのままで仕事していい?」


ステ「…………それで仕事になると思ってるのか…………!」


イン「すているとくっついてた方が効率上がるもーん♪」


ステ「公開処刑だ、これはぁ…………っ!」

677 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:44:26.50 ID:7wMadqJ00






ステ「くそ、いい加減に行くよ。遅刻してしまう」ゲッソリ


イン「だっこー」


ステ「(幼児退行してないか)…………後でだよ」


イン「うーん、しょうがないんだよ。でもその前にちょっと耳貸して?」


ステ「はあ? まあ、いいが……」カガム


イン「んっ」マワリコム


ステ「そっちに耳は無い…………」


678 :小ネタ「リミッター」[saga]:2011/06/18(土) 14:45:08.84 ID:7wMadqJ00



CHU☆



イン「ん…………」


ステ「………………」


イン「えへへ」


ステ「……………………」


イン「よーし、すている分補充完了! 行こ!」





ステ「…………………………やれやれ」マッカ





オワリ




684 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:05:21.77 ID:B962q0+D0



朝 上条家



当麻「さて、時間だな」

ステ「おや、補習にでも行くのか」

当麻「テメーは上条さんをいったい何だと思ってんだ?」

イン「毎年留年ギリギリだったあの頃が懐かしいね」

当麻「ええ、ええ。過ぎ去ってみれば感慨深い笑い話に……なるわけあるか!」グイ


ステ「おい、彼女に触れるな!!」ドン

当麻「おおっ!?」シリモチ

イン「ステイル!?」

美琴「ちょ、ちょっとー。気持ちはわかるけどやり過ぎよステイル」

当麻「わかるのかよ! 俺の気持ちの方を慮ってくださいません!?」

美琴「結構独占欲強いのね、ステイルって」

イン「え、え? …………えぇ?」ポー

当麻「聞け!」



685 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:06:39.87 ID:B962q0+D0


ステ「違う! ……最大主教、いま貴女が身につけている『ソレ』の事を忘れたのか」

イン「へ? ………………あ」


当麻「ま、まさか『歩く教会』が…………?」

ステ「その通り。最大主教昇叙の折にめぎ……前任者がもう一着用意したんだ」

当麻「じゃあ、もしいま俺がインデックスに触れてたら…………?」




イン「…………間違いなく裸にひん剥かれてたんだよ」


美琴「ほーう…………?」バチバチ

ステ「そういうわけだから、とりあえずヴェルダンで焼くよクソ野郎」シュボ

当麻「未遂ですよ未遂!? しかも故意じゃねーし!」

イン「とうまは覚えてないだろうけど、前科ありですわよ」

当麻「」


686 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:07:48.49 ID:B962q0+D0


バリバリバリバリィィィ!! ボボボボッ!!!




当麻「じ、時間だって言ってるだろ…………遅刻しちまう、ぜ……」ボロボロ

美琴「ちっ」

ステ「生命力だけはクマムシ並だねまったく」

当麻「なにその虫!? ゴキブリとかじゃねーの普通!?」

ステ「殺虫スプレーも無効化するようなヤツと較べたらゴキブリに失礼だろう」

イン(トリ○アの泉で見たなぁクマムシ)




当麻「……じゃ、俺らはそろそろ仕事行くけど」

イン「行ってらっしゃーい」

美琴「真理のこと、くれぐれも頼むわね」

ステ「安心して任せてくれ、美琴」

イン「お母さんなのに仕事あるんだね」

美琴「まあ、育児中だから週三日の出向で済ませてもらってるんだけどね」

ステ「普段はこの子をどうしてるんだい?」

当麻「一昨日みたいにお隣の奥さんに預けてるんだ。
   そのお隣さんの友達に託児所勤めの人が居るんだけど、そこを頼る事もあるな」

687 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:09:44.60 ID:B962q0+D0


真理「ままー、ぱぱー」

美琴「いつでもパパより先にママって呼んでくれる真理ちゃーん!
   良い子で二人のいう事聞くのよー?」

当麻「細かい事で悦に入ってんじゃねえよ……行ってくるぞ、真理」

真理「いっれらっしゃーい」オテテフリフリ

当麻「行ってきまーす」フリフリ

美琴「なんかあったらお隣に聞いてねー」フリフリ

イン「うん、任せて欲しいのです!」フリフリ



ホライソイデトウマ! チョ、アンマオスナヨ!



ガチャン



ステ「慌ただしいことだな……」




688 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:10:47.51 ID:B962q0+D0


イン「それじゃあまこと、何して遊ぼっか」

真理「あっちー!」

イン「え? どうかした?」

ステ「向こうの部屋に行きたがっているようだね」

イン「よーし、行ってみよう! んっせ」ダッコ

真理「おー」

ステ「やれやれ。子供部屋かな?」



スタスタ ヒョコヒョコ



ガチャ


689 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:11:39.67 ID:B962q0+D0





デデンデンデデン デデンデンデデン





シュワちゃん「――I'll be back」





ステ「!?」

イン「!?」




690 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:12:24.91 ID:B962q0+D0


ステ「な、何者だ貴様!」

真理「しゅわちゃんー!」

イン「ま、まこと、お友達なの?」

ステ「んなわけあるか! 貴様、一体どうやって侵入して……」




デデンデンデデン デデンデンデデン



シュ「I'm back」



ステ「どこからだ! いちいちテーマ曲らしきものを流すな!」

イン「待ってステイル! これってもしかして」

真理「あいむばーっく」

ステ「……!? 人形か……?」

691 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:13:22.41 ID:B962q0+D0


イン「う、うーん。近くで見てみましょー」オソルオソル

ステ「待つんだ最大主教。万が一ということもある。
   僕が確かめるから下がっていてくれ」キリッ

イン「…………うん」キュン



真理「ケッ」

ステイン「「!?」」



ステ「き、気を取り直して……動かないな。背面に何か書いてあ」


シュ「俺の背後に立つな」


ステ「何で急に日本語になるんだよ!」

イン「しかも元ネタが全然違うんだよ」

692 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:14:29.46 ID:B962q0+D0


ステ「どれ……『小児用玩具 タ○ミ○ーター 一分の一サイズ』……」

イン「………………」



ステ「どの口が『小児用』とかほざいてんだ!!」

シュ「I will」グッ

ステ「やかましい!」

イン「こっちには説明書があったんだよ」ガサゴソ

真理「とりせつー」

ステ「…………いや、別にもう読まなくても」




イン「んーっと……『お宅のお子さんの情操教育に役立つ事間違いなし!』」
   
ステ「親馬鹿が高じすぎて頭が沸いたのかあの二人は!!
   どういう情操を育てるんだこのマッチョマンがぁ!!!」
    

イン「『※審判の日を迎えると暴走を開始します』」

ステ「捨てろオオォーーーーッ!!! 今すぐにだあああああ!!!!」




693 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:16:00.38 ID:B962q0+D0



ドンドンドン!!!



ステ「ぜぇ……はぁ…………ん?」

イン「お隣からなんだよ」



『るっせぇーぞ隣ぃぃぃ!!!! マンションだってことカァンケイなしかぁ!?

 よーっぽどブ・チ・コ・ロ・されたいのかにゃーん!?』


ムギノモジュウブンチョウウルサイデスヨ

ハッハァ チガイネェナァ



イン「………………にゃーん?」

ステ「……………………ブチコロ?」

ステイン「「………………」」


イン「行ってみようか、お隣」

ステ「…………ああ、謝罪しなければね」ユラリ

イン(なんか殺気を感じますわ)

694 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:17:28.82 ID:B962q0+D0




上条家のお隣 玄関前


ステ「じゃあ押すぞ」

真理「ぞー」

イン(どきどき)ダッコチュウ



ビンボーン ビンボーン



ステ(……なにかおかしくないか?)


ピッ


『へーい、どなたですかぁ?』

695 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:19:00.31 ID:B962q0+D0


イン(男の人?)

ステ「ああ失礼、実は隣の上条家に居候しているものですが」

??『居候? どーりで平日に物音がするわけだ』

ステ「その事で迷惑をお掛けしたようなので、一言お詫びをと」

??『はは、あんなの日常茶飯事っすよ。たまたまこっちもうるさいのが来てたんで。
   そんな気にすることでもないですよ?』

ステ「そう仰ってもらえるとありがたい。
   これからもお世話になるかもしれないので、一度ご挨拶させて貰っても?」

??『ああどうぞどうぞ。今開けるんで』



ステ「…………」シュボッ

イン「……ステイル? さっきから何かただならぬ雰囲気なんだよ?」

ステ「なぁに、大したことじゃあないさ……」

イン(えー)

696 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:20:48.53 ID:B962q0+D0



ガチャ


仕上「どうもお待たせー。んじゃ早速中に」

ステ「入らせてもらおう」グイッ

仕上「うおっ!?」

イン「ちょ、待ってよー!」




浜面家 リビング


ズカズカ


理后「あれ……しあげは?」

麦野「なによアンタ? まさかさっきの隣の」

ステ「『原子崩し』、麦野沈利で間違いないね」

イン(ちなみに靴はちゃんと脱いだのですよー)



麦野「……あぁん? だったらなんだってんだぁ!?」ギロ

697 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:21:40.24 ID:B962q0+D0



ステ「………………い…………は」

麦野「あん?」

絹旗「なんか様子がおかしいですね」

黒夜「やばいのキメてんじゃねコイツ?」

イン「どうしちゃったのステイル?」

麦野「ん。アンタのその声…………」



ステ「貴様のせいで、僕は、僕はっ、僕はあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!

   …………イ ノ ケ ン テ ィ ウ ス ッッッ!!!!」



イノケン「んごー」メラメラ



麦野「ええええええっっ!!??」ナニコレ





698 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:22:37.92 ID:B962q0+D0

十分後



イン「よしよし」ヒザマクラ

真理「よしよしー」ナデナデ

ステ「も、申し訳ない……どうかしていたようだ僕は…………」ピクピク

麦野「あー…………」

仕上「……気にすんなって。家の方は絹旗がガードしてくれたから被害ゼロだ」

絹旗「超超能力者二人と超大能力者二人に喧嘩売るなんて無謀過ぎです」

イン(奇襲苦手なのに無理するからかも)

理后「別にわたしは何もしてないよ?」

黒夜「理后さんはそこに居るだけでいぃんだよ、セラピー的な意味で」

699 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:24:11.94 ID:B962q0+D0


麦野「悪かったわね、アンタ。ちょっとやりすぎたかにゃーん?」

ステ「……自分で言うのもなんだが、完全に自業自得だ。どうしてそうも気を遣ってくれる?」



                   シーン



ステ「なんだい、この痛々しいほどの静けさは……」

仕上「いや、アンタがビームに吹っ飛ばされた時にな……」

黒夜「懐からバラまかれた胃薬の山を見てさぁ、みんなこう……」

絹旗「超いたたまれない気持ちになってしまいました……」

理后「あなた、苦労してるんだね」

ステ「」



麦野「それであんたが気絶してる間に、このインデックスから事情を聞いたのよ」

イン「語るも聞くも涙なくしては出来ない一大スぺクタクルでしたわ」

ステ「泣きたいのは僕だああああああ!!!」

700 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:26:24.11 ID:B962q0+D0




絹旗「何が切っかけだったかは忘れましたが、
   インデックスさんと私達は超電話友達なのです」フンス

黒夜「なんだよ水臭ぇな最愛ちゃん、私だけ除け者かよ」

仕上「お前は携帯すぐ壊すだろ、『窒素爆槍』で喧嘩して」

理后「まず電話を身体に内蔵するところから見直すべきだよ、くろよる」



麦野「切っかけ…………おい、理后。あんた覚えてるんじゃないの?」ニヤリ

イン「…………!」

理后「うん。いんでっくすは、私とすているがどういう関係なのかを探」

イン「わーーーー! わわわーーーーーーーー!!!」

ステ「…………ああ、土御門の力場を探ってもらった時のアレか」※>>40参照

仕上「へー、んなことあったのかよ」ニヤニヤ

黒夜「ひゃはは、旦那の浮気を探ってたのかよぉアンタ!」ニタニタ

イン「あうう…………」マッカ

ステ(そこから僕の悪夢は三速ぐらいにギアチェンジしたわけだが)トオイメ

701 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:28:43.29 ID:B962q0+D0


麦野「そういうわけでアンタの苦労は理解したから、これ以上は追及しないわよ」

ステ「………………痛み入る。まったくの逆恨みだったなコレは…………」



仕上「む、麦野にいたわりの精神を発揮させただと…………!?」

絹旗「出産前後の超理后さん以外、誰も成し遂げられなかった偉業を…………!」


麦野「はーまづらぁ、きーぬはたぁ?」

仕上&絹旗「「あっ」」

麦野「アンタら後で『チキチキ☆めるとだうなー』ね」

仕上&絹旗「」


イン「なにそれ?」フッカツ

理后「説明がむずかしい…………」

黒夜「確かに現存する言語システムじゃ解説しがたいよねアレ。ヘッダが足りないっつうの?」

ステ(意味がわからん)

黒夜「六発中六発弾の入ったロシアンルーレットを六連射、ってのがいちばん近いかなぁ」

ステ「それ絶対死人出るよね」

702 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:30:08.12 ID:B962q0+D0




麦野「ったく、コイツラときたら…………」

仕上「それはお前の口癖じゃねぇだろ」

ステ(口癖?)ビクビクッ

イン(可哀想なステイル……)ホロリ

ステ(いや、貴女のせいだから)



理后「でもあの頃のむぎの、すごく優しかった」ニコニコ

麦野「……! な、なに言いだすのよ!」

理后「しあげの次によく病室に来て、リンゴ剥いてくれたよね」

絹旗「えー? 私だってよく行ってたけど、超滅多に会いませんでしたよ」

703 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:31:17.62 ID:B962q0+D0


理后「だれかが来るとむぎの、すぐ窓から逃げ出しちゃってたから」

黒夜「くくく、どんだけハズかったのよ沈利ちゃん!」

仕上「アグレッシブだなー。まあ知ってるけど」

理后「大丈夫、そんなツンデレなむぎのでも私は応援してる」

麦野「」パクパク



ステ「…………」

イン「神妙な顔してどうかしたのですかー?」

ステ(僕も同じような事をした、とは言いにくいなこの空気)




704 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:33:29.87 ID:B962q0+D0


真理「あー、せんせー」

ステ「君はいつの間にやら空気と化してたね……」

絹旗「あれ、真理ちゃんじゃないですか? そっか、お母さんは今日居ないんですね」

イン「うん、私がみことから預かったの……って、この子を知ってるの?」

絹旗「ええ、私は託児所でよくこの子の面倒を超見ますので。こっち来ますか、真理ちゃん?」

ステ(『よく』のあとに『超』? 日本語は難しいな……)


真理「んー! せんせー!」

イン「ちぇー……。元気でね、まことぉ…………」

仕上「大袈裟だなオイ」



真理「せんせー! …………もあいせんせー!」タッタッタッ



絹旗「」ピシッ

ステ「」

イン「?」

705 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:34:58.07 ID:B962q0+D0




絹旗「………………いいですか、超間違ってますよ? 先生の名前はきぬはた」

真理「もあいー!」

絹旗「……………………」


   プッ


絹旗「いま笑ったのは超誰ですかあああ!?」

黒夜「ひゃはははは! も、モアイちゃんだとよ!! コイツは傑作だぁ!」

絹旗「海鳥ちゃァァァァン!? 超スクラップにされてェみたいですねェェ!!」オフェンスアーマー!

黒夜「上等だコラァ! イースター島のお仲間の元に愉オブにして配達してやンよォ!!」ボンバーランス!

絹旗「いィ歳こいてイルカちゃンと一緒におねむしてるガキが
   つけ上がってンじゃねェぞォォォォ!!」

黒夜「何かいけないンですかァ!? 私はまだ二十二なンですゥ!!!」

仕上&ステ((それはないだろ))



706 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:36:08.46 ID:B962q0+D0


絹旗「私よりちょォォっとだけ若いからって超調子こいてンじゃ……ねェ……」

ステ(どうしたんだ一体)

黒夜「イッヒヒ!! さっきまでの威勢はどォこに逝っちゃったのかなモアイちゃ、ン…………」

イン(あれ? なんか寒くなってきましたわ)





理后「 ふ た り と も ? 」





絹旗&黒夜「「ひいいいいっ!?」」ゾワッ

ステイン((ヤバっ、こわ))


理后「……ふたりが怖い顔してるから、まことが泣いちゃったよ?」

真理「んえっ、せんせーこわい…………」

黒夜「あ…………」

絹旗「ちょ、超ごめんなさい真理ちゃん!!」

707 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 18:38:19.10 ID:B962q0+D0


真理「ひっく、うえっぅ、うわぁぁぁん!!!」

絹旗「あああああ!! 泣きやんでくださいー!」ワタワタ

黒夜「や、やべぇ……。そ、そうだ! ほーら真理、おててがいっぱーい!」


バサモサドサッ!


真理「うえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇんんんん!!!!!」

絹旗「なに超余計な事してくれてんですか海鳥ぃぃ!!!」

黒夜「こ、こんなはずじゃあ…………」ガーン

仕上「ちょっとしたホラーだったぜ、今のは」

麦野「あるいはグロね」

絹旗「言ってる場合ですか! 手伝ってくださ……」


理后「おいで、まこと?」

真理「ん、ひっく…………りこー」トタトタトタ



710 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:30:54.37 ID:B962q0+D0



五分後



真理「zzz」スヤスヤ

イン「…………凄いんだね、りこうは」

理后「それほどでもない」ブイ

仕上「さすがは俺の嫁だ」

麦野「うるせーよドリンクバー往復係」

仕上「その称号まだ返上出来てなかったわけ!?」

ステ「…………それに引き換え、あっちの連中と来たら」



黒夜「くっそ、一方通行にウケた唯一の一発芸だったのに…………」ズーン

絹旗「私、保母さんなのに。やっぱり本物の母親には敵わないんでしょうか…………」ズーン

ステ(一方通行の笑いの沸点は意外と低いな)

イン(アハギャハよく言ってるから意外でもないのです)

712 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:32:42.79 ID:B962q0+D0


麦野「なんだかんだ言っても『アイテム』最強はやっぱり理后ね」

仕上「裏篤を産んでからますますそんな感じだもんな。母は強しってか」

イン「そういえばりとくは居ないの?」

理后「あの子は五歳だから平日は幼稚園に通ってるの」

ステ「……じゃあ一体、父親の君は仕事もせず何をしてるんだ」

仕上「消毒されるべき汚物を見るような目をしないで!? 一応ここに居るのも仕事だから!」

イン「自宅警備員、ってやつかも!」

仕上「ちっがぁぁう!! 重役会議中なんだよ今!!」

ステ「その会議に部外者を招き入れたのは誰だい」

仕上「んがっ!!!」



麦野「まあ、会議っつってもお茶しながら駄弁ってただけよね」

仕上「お前一応社長だろ!」

イン「え? そうだったの?」

麦野「あれ、電話じゃ言わなかったっけ?」



713 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:34:36.94 ID:B962q0+D0




ステ「彼女達は株式会社『アイテム』さ。中小企業の割には名前が売れているね」

仕上「あれ? よく知ってるな」

麦野「…………あんたそう言えば、私の顔知ってたわね。
   不公平じゃない? 魔術サイドばっかり情報握ってさ」



ステ「…………そうとも言い切れないよ。
   科学の『秘匿性』が長年歴史の裏に隠れてきた魔術に及ばないように、
   魔術結社の『経営論』・『組織論』というものは科学に比して遥かに劣っている。
   情報を隠しすぎる分、まとまりが無くなって個々の能力に依存しがち、というわけさ」

麦野「よく言うわ。アンタらの頭脳は元『グループ』のグラサン野郎でしょ?
   …………最ッ高に食えない奴だったわね」






ステ「…………獅子身中の虫、という言葉が日本にはあるね」ゲッソリ


714 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:35:48.50 ID:B962q0+D0




麦野「……………………あ、なんかゴメン」

仕上(何度見てもレアな光景だぜ……カメラどこだっけ)ニヤニヤ

麦野「はーまづらぁ?」

仕上「ななななんでごじゃいましょうか麦野さん!?」



イン「ちなみに獅子身中の虫は故事成語だから、正確には仏教圏の言葉なのですよー」

理后「おー。先生みたい」パチパチ

イン「ふふふふ」

ステ「…………適職だろうな、それは」



715 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:37:10.75 ID:B962q0+D0



チュドーン



仕上「ぬぎゃあああああ! お助けえええ!」ドタバタ

理后「しあげ、静かにして。まことが起きちゃう」

仕上「俺が悪いんですか理后さん!?」

イン「結局、お仕事の話は聞いたことなかったね。何やってる会社なの?」



黒夜「滞空回線(アンダーライン)って聞いたことあるかぁ?」

イン「うーん…………どっかで聞いた事あるかも」

ステ「貴女の記憶力で『あるかも』は無いだろう」

イン「ああ! 『かいせんそくど』の話で聞いたんだよ!」

麦野「真骨頂は速度じゃなくて機密性とサイズだけどね」

仕上「その気になればいくらでも悪用できるシステムだからな。
   そういうわけで管理を統括理事会から委託されてんのが俺たち『アイテム』ってわけだ」

黒夜「コンプライアンスとバランスとりつつ
   実用化まで漕ぎつけんのは大変だったよなぁ…………」トオイメ

麦野「苦労したのは主に私と理后だろうが。電子的な意味で」

ステ(ふむ………………)

716 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:38:16.93 ID:B962q0+D0




絹旗「ちなみに私は臨時でヘルプに入ってるだけで超正社員ではありません」

ステ(やっと復活したか)

理后「きぬはたは自分の夢に専念してくれてもいいのに。
   そうすれば託児所じゃなくて、幼稚園とか保育園でも……」

絹旗「む、理后さんらしくもない発言です! 
   親御さんの超大切なお子さんを預かる仕事に優劣なんてありません!」

黒夜「ヒュー。言うじゃねぇの最愛ちゃん」

イン「かっこいいよ、さいあい!」

絹旗「ちょっと、茶化さないでくださいよ!」ウガー!


理后「……うん、きぬはたの言うとおりだね。ごめんね?」

絹旗「あ、わ、私こそ偉そうなことを……」



真理「んー…………まま…………」



絹旗「あ……」

麦野「ほら、出番じゃない絹旗?」

717 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:39:20.17 ID:B962q0+D0


絹旗「…………おはようございます、真理ちゃん」

真理「あ、もあいせんせー。おあよう」

絹旗「………………はい、超よくできましたね♪」



ステ「今度はちゃんと耐えたじゃないか」

仕上「子供のする事にいちいち腹を立ててちゃ育児なんてできねぇよ」

理后「もうお昼の時間だね。何か作ろっか」

黒夜「手伝うよ理后さん。アンタらも食ってく?」

イン「いいの!?」パァ

ステ「僕らはあまり料理が出来ないから助かるが……」

理后「子供の食べる物はちゃんとわかってる人に任せた方がいいよ」

ステ「…………お見通しか。参ったね」

イン「みことにも、お隣に聞きなさいって言われちゃったしね……」

718 :アイテム    +1編2011/06/19(日) 20:40:28.54 ID:B962q0+D0


麦野「インデックス、あんたはコイツに料理作らないの?」

イン「…………えええええ!?」

仕上「なんだこのリアクション」

イン「わ、私が料理…………?」

黒夜「なんだその『考えた事もありませんでした』ってツラはよ」

ステ「正直、僕も想像だにした事がない」


イン「…………!」カチン

ステ「なぜ怒る!?」

イン「いィんだよ、私に料理が出来ないと思ってるンなら、まずはそのふざけた――」

ステ「ストップ! やめろ! 貴女がその先を言ってしまうのは色々マズイ!!」


麦野「私ら日常的に使ってるわよね?」

黒夜「挨拶代わりに[ピーーー]とか[ピーーー]とか、あと[ピーーー]」

仕上「子供の教育に悪いので遠慮してくださいませんかね!?」

719 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:41:55.90 ID:B962q0+D0



イン「とにかく! ステイルをなンとしても見返してやるンだよォ!!」

ステ(そもそも完全記憶があれば楽勝だろう…………)

理后「じゃあ台所に行こう」

黒夜「最愛ちゃん、しっかり面倒見てろよぉ」ケラケラ



スタスタ ヒョコヒョコ ガシャガシャ



ステ(…………ガシャガシャ?)

絹旗「海鳥に言われるまでもないですー」ベー

真理「できたよ、せんせー!」

ステ「へえ、積み木遊びでも……」


720 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:43:12.07 ID:B962q0+D0





デデンデンデデン デデンデンデデン





シュ「I’m back」








絹旗「わー、上手に超シュワちゃんが作れましたねー♪」



ステ「なんでだあああああああぁぁぁ!!!!!」


721 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:44:56.59 ID:B962q0+D0




ステ「なんだこれ、流行ってるのか!? 
   どんなスカイ○ットが現代に介入したらこうなるんだ!」

仕上「最近学園都市で育児ロボとして売れまくってんだよ。まあアレはちゃちいオモチャだけどな」

ステ「育児するのアレ!? コ○ンドーでも量産する気なのか!
   っていうか玩具にしては作りこみが精巧すぎるだろうがぁぁーー!」

麦野「クソッたれのDM社製品ってあたりがまた胸糞悪いのよね」

ステ「それ以前の問題だろ完全にぃぃぃぃ!!」

仕上(悲しい宿命背負ってんなコイツも……)ホロリ



ステ「…………ハァ………………ゲホ……すまないが、一服させてくれ」スッ

仕上「あ、俺も」

絹旗「だったらベランダ行ってくださいね、超ヤニ臭いオヤジども」シッシッ

麦野「そのまま戻ってこなくてもいいわよー」フリフリ



ステ「…………まあ、当たり前か。あと僕はオヤジじゃない」ズーン

仕上「…………行こうぜ、同志」ズーン

722 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:45:58.61 ID:B962q0+D0



キッチン



イン「何を作るの?」

理后「大人数だから、一度に作れるもの……パスタにでもしようか」

黒夜「それでアンタさぁ、ホントに料理したことねぇの? いっぺんも?」

イン「とうまとみことがお付き合いし始めた記念に、一回だけ……」

理后「…………えっと、何作ったの?」

黒夜(やっべ空気重い)


イン「…………食パントーストして、上に目玉焼き乗っけたの」

黒夜「………………………え、それだけ? ってアイタぁぁっ!!」ゴツン!

理后「かみじょうとみことは、喜んでた?」グーデナグッタ

イン「う、うん! 特にとうまは泣いて嬉しがってくれたかも!」

黒夜(私でも涙出そうだな、そのシチュエーション。いろんな意味で)

理后「よかったね、いんでっくす」

イン「……うん!」


黒夜「これ、イイ話なのか?」

723 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:47:23.97 ID:B962q0+D0



理后「じゃあ、いんでっくすはすているの好物を作ってみよう?」

黒夜「理后さんの台詞読みづらいてぇぇぇ!!」ガツン

イン「(肝っ玉母さんなんだよ)えっと、ステイルの好物…………タバコ?」



理后「…………」

黒夜「……いや、世界中探せばそういう料理もあるかもしれねぇけど」

理后「とりあえず、普通の食べ物でお願いします」

イン「何で敬語!? だ、だってステイルが
   食べ物の好き嫌い言ってるところなんて見た事無いのです!」

理后「似た者夫婦?」

黒夜「いや、女の前でカッコつけてるだけじゃね?」

イン「好き勝手言わないで欲しいかも!」



724 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:48:16.23 ID:B962q0+D0


黒夜「でも現実問題さぁ、好物も把握してなくて喜ばせられると思うか?」

イン「…………」

理后「……いんでっくすは、すているに喜んで欲しい。それは、間違いないんだよね?」

イン「……………………ん」



黒夜「ちっ、煮え切らねぇでやんの」

理后「くろよる」

黒夜「事実だろ、コレは」プイ

理后「…………ねぇ、いんでっくす?」

イン「……なぁに?」



725 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:49:43.65 ID:B962q0+D0


「誰かの事を想う時は、その人の顔だけ、思い浮かべてみよう?」


「……!」


「私はね、しあげの困ったみたいな笑い顔が好き。
 りとくを見て、デレデレしてる顔が好き。
 きぬはたとくろよるに、お兄ちゃんみたいに接してる顔が好き。
 むぎのと、それに他の友達と喧嘩してじゃれ合ってる顔が好き。

 ――私に、あいしてるって言ってくれる顔が好き」





「いんでっくすは、あの人のどんな顔を知ってる?


 
 ――――どんな顔が、好き?」



726 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:50:59.36 ID:B962q0+D0



「…………すているは」

「うん」

「コーンの入ったスープを見ると、ちょっとだけ嫌そうな顔するの」

「うん」

「たまーに出るステーキにはがっつかないけど、目だけは子供みたいにウキウキしてる」

「うん」

「でもね、私が一番好きな顔は」

「……うん」

「私が、ごちそうさまって言った時なの。――すごく、優しいの」




(ああ、そうだ。私はこの五年間、こんなに――)


「…………ちゃんと見てるじゃんかよ」


(あの人の顔ばかり、追いかけてたんだ)


「……わかったよね。いんでっくす?」

727 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:51:51.76 ID:B962q0+D0



「うん」



インデックスは、ステイル=マグヌスが好きだ。



「ありがとう。りこう、くろよる」



それだけは。



「何か照れんな」


「どういたしまして」





――――それだけは、他にどんな柵があっても変わらない。




728 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:52:56.18 ID:B962q0+D0

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そのステイルと仕上は、世のお父さんよろしく寂しい指定席に佇んでいた。



「ふうぅ………………はぁ」

「喫煙者はいつだって肩身が狭いよなぁ……あ、火ィくれ」

「ああどうぞ」

「サンキュ」



ベランダには暫く、焼けるような吐息だけが漏れる。



「………………君も苦しい生き方を選ぶんだね」

「お前も、人生賢く生きてるようには見えねぇな」

「……それもそうだ」

「俺はお前の事、魔術側のお偉いさんって事ぐらいしかわからねえけどよ。
 お前の方はどうやら俺たちの事をよく知ってるんだろ?」

「そうだね。『アイテム』の事ならある程度は」

729 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:54:51.72 ID:B962q0+D0





前統括理事長アレイスター=クロウリーの失踪後、

その手の内に秘められていた禁忌の技術の存在が次々に明らかとなった。

中でもその汎用性の高さから最も流出を危惧されたのが――悪魔の目、滞空回線であった。

臨時で統括理事会を取り仕切った現最高指導者、親船最中は

アレイスターの残したこの『遺産』の存在を公表して注意を呼びかけるべきと判断する。


しかし時すでに遅く、体制の混乱に乗じて侵入した外部の産業スパイによって、

滞空回線の管理システムは東京の巨大コンツェルンの手中に落ちていた。

畢竟、全世界に遍く情報が一つの権能の手中に収められるという危機である。


彼ら『アイテム』は資本という大敵から悪魔の技術を奪還すべく大立ち回りを演じ、

結果として経済界の鼻つまみ者として扱われることとなりながらも――





――見事、世界を揺るがしかねない『目』の存在を公表するに至ったのである。



730 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 20:56:29.00 ID:B962q0+D0



「君たちは、まさしく未曽有の危機から世界を救った英雄というわけだ。
 …………しかし、失ったものも少なくはないだろう?」


ステイルは紫煙を吐き出し青空をけぶらせながら問う。

それに応じるように浜面仕上が一息ついた。


「あらゆる意味で、な。命だけは残ってるがそれも親船の婆さんの援助あってのことだ。
 俺の右腕は…………」


突然男は言葉を切り、左手を右手首に添えて思い切り引き抜く。

さすがに面食らったステイルが断面に視線を向けると、無機質な鈍色が覗いた。


「これで驚いてたら麦野や黒夜はもっとさ。まあ、アイツらのはコレとは別件なんだがよ」

「……他の二人は」

「さすがにこんな弄くり回しちゃいねえが、サッパリ綺麗な身体ってワケじゃあない」


何でもないように機械仕掛けの腕を元に戻す。

その口調の軽さが、ステイルにかすかな、そして理由もわからない羨望を生んだ。

731 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:02:35.67 ID:B962q0+D0


「大事な人が傷ついても、堪えられるのか」

「そうじゃねぇ。俺は、そんな聖人君子じゃあない。
 守りたいモノ……理后の命や心っていうどうしても譲れねぇもんの為に、
 別の何かをなりふり構わず犠牲にする。そういう選択をしたって事だ」


浜面仕上は、決して後悔などしてはいなかった。

その眼に燃ゆる確固たる信念の火を見て、彼は羨望の正体を悟る。


「…………僕にも覚えがある。そして僕はその線引きを間違えた」


――命だけ。命だけでも助かるなら。


「……いや、違うな。どう考えてもあれ以上の選択は、無力な僕には出来なかった」

                 とき
――次にその胸に刻まれる一年が、少しでも辛くないモノになるように。


「後悔しているとは、思いたくない。ただ、忘れられないんだ」


そうして、『失敗』したあの日。




「あの日、この――――」


732 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:03:33.97 ID:B962q0+D0























733 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:04:26.62 ID:B962q0+D0





続くステイルの言葉を、頭上を通過した航空機の轟音が掻き消した。

悪魔の技術が人の手で清められた今、その言の葉を受け取ったのは間違いなく浜面仕上のみだった。


「……そうか。お前の想いの行き場は、土の下にも空の上にも無いんだな」

「ああ。燃え尽きてしまった」



そして空に再び、一筋たなびく煙がかかる。






「――――もう何処にも、無いんだ」




734 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:05:38.03 ID:B962q0+D0


仕上の視線が一瞬、窓の内側に向く。

しかし彼は、それ以上の事は何もしなかった。


「俺には、その悩みは解決出来そうにないな。心当たりが無いわけじゃねーんだが」


束の間、瞠目する。


「ただ、それは俺の口から言っていい事じゃあない」

「……上条当麻にも、同じ事を言われたよ」

「珍しいな。アイツが説教を中途半端でやめたのか?」

「僕と彼女に関する事だったからかな。そうじゃなければ一発かまされてただろうよ」


いつの間にやら話題の中心は、学園都市が世界に誇るヒーローに移っていた。


「はは、もしかしてお前もやられたクチか」

「そうだとも、忌々しい事にね。……あれが、始まりだったのかもな」

735 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:07:38.31 ID:B962q0+D0


ステイル=マグヌスは『成功者』に初めて会った日の事を追想する。


「俺にとっては、間違いなく人生の分岐点だったぜ」


浜面仕上もまた、八つあたりのように弱者に向けた己の憤りを

粉微塵に打ち砕かれた過去を、笑いながら反芻していた。


そして過去と同時に力強く未来を見据える無能力者の横顔に、ステイルは僅かに目を細めた。


「その延長上に、君の闘いがあったと?」

          アンダーライン
「あんなふざけた『 代 物 』にのさばられたら、
 俺と理后、裏篤の未来はどうなっちまうんだよ。
 …………俺がバカみたいな闘いを始めた理由は、たったそれだけさ」

「羨ましいね。…………見事に成し遂げた君が」



笑みの発する擬音が、ニカ、からニヤリ、に変わる。



「自分は永遠に失敗者です、みたいな湿気たツラぶらさげてんじゃねぇよ。」


736 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:09:20.06 ID:B962q0+D0


辛辣な言葉にそぐわない表情を見てとった神父は舌打ちしながら続きを促す。

人生の先輩はすぅ、と息を吸った。


「俺からお前に言えるのは、やり方を変えるのも一つの手だって事だな。
 お前、あの子が大事で大事で仕方が無いんだろ?
 でもな、危険から遠ざけるだけじゃあ、いや違うな、遠ざけた結果失うモノだってある。
 相手から信頼されるだけじゃない。お前も背中を預ける相手として、信頼してみたらどうだ?」


彼女を、信頼する。


(僕は、彼女を信頼していないのだろうか?)


対魔術師戦においてインデックスの持つ『禁書目録』は、

さながら能力者に対する浜面理后の『能力剥奪』の如き力を発揮する。

事実、ステイルは彼女の実力を知った上で一つの戦場を任せた事もある。



(…………なら、『今』は?)

737 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:10:27.42 ID:B962q0+D0













「…………君の忠言が」


すっかり短くなった煙草を指の間で塵に変え、呟く。


「僕の悩みをすっかり解決してくれた訳じゃあないが。
 …………一つ、気が楽になったよ。ありがとう、人生の先輩」

「そりゃどうも…………って、お前俺より年下なの!?」

「僕は二十四歳だ! 老け顔に関して君には何も言われたくないな!!」

「どういう意味だオイ!?」



男たちの喧しい声が、閑静なマンションの一角に響いた。


738 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:11:33.00 ID:B962q0+D0

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キッチンとベランダから聞こえる賑やかな声をBGMに、絹旗最愛は温かな命をあやしていた。

その姿を穏やかな笑みを浮かべた麦野沈利が椅子に腰かけながら見守る。

やがて幼子はいま握っている玩具に飽きたのか、新たな贄を求めて辺りを見回し始めた。

子守を一段落させた絹旗は、目線はあくまで真理から放さずに、麦野に静かに語りかけた。




「…………麦野、来月は」

「わかってる」


返事は、起伏のない声で即座に戻ってきた。


「私の口から何を言っても無駄かもしれませんが、無理だけはしないように」

「……何で今年は、そんな話するのよ」


麦野が、おどけるように、どこまでも優しく笑った。

絹旗は口元に手を遣り、語るべき素材をゆっくりと咀嚼する。

しかし、なかなか外には出てこない。

739 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:12:32.04 ID:B962q0+D0


「………………言いなさい、絹旗」


いつしか懇願するような色を帯びていた麦野の命令に、彼女は意を決した。










「今年は、あの子が来るかもしれません」










「――――そう」


暫くののちそう絞り出した女の顔色を窺う勇気は、絹旗には無かった。

その代わりに、話を続ける事で凍りつきそうな空気をかき混ぜる。

740 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:14:14.20 ID:B962q0+D0


「裏篤の顔を、一度見てみたいと。そう、話題の端に」

「私の顔は、見たくないってこと?」


瞬間、わけもわからないまま絹旗は窘める声を上げていた。


「麦野……!」

「はは、ゴメン」


しかし麦野は鋭い糾弾を軽く受け流し、窓の外に焦点を合わせる。

ガラス越しに見える二つの影は、そろそろ室内に戻って来そうだった。


「私だけが、どうしようもないモノを抱えてるわけじゃあ、ないんだよね」


ポツリと、微かな声。

そのとき初めて、絹旗は女の表情を目に入れた。


741 :アイテム    +1編[saga]:2011/06/19(日) 21:15:07.92 ID:B962q0+D0









――――麦野沈利の貌は、裁きを待つ咎人のそれだった。








742 :アイテム(-1)+1編[saga]:2011/06/19(日) 21:16:19.96 ID:B962q0+D0


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IN

窒素爆槍(怒った時だけ一方通行) ←New!


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751 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/23(木) 20:01:58.50 ID:NBrWRVhl0


注意事項
※とあるスレの設定をまるっと頂いております
 是非そのスレもご覧になってください↓

ミサカ「俺らのこと見分けつく奴なんていんの?」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1297/12970/1297027702.html

※ていとくんファン注意

それでも読むの? やめとけば?
そんな物好きな方はどうぞ↓
752 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:03:13.19 ID:NBrWRVhl0



とある雨の日 とある路上



シトシト シトシト



イン「うー…………じめじめするね……」

ステ「……別に、貴女は家に残って美琴や真理と遊んでいればよかったんだ」

イン「お仕事をステイル一人に押し付けてのんびりしてられるほど図太くないんだよ!」

ステ(上条当麻が聞いたら泣くだろうな)



イン「……それに、私の護衛なんだから。その、軽々しく、は、離れないで欲しいかも」

ステ「…………ああ、そうだね。すまない」

青ピ「ケッ」



イン「………………」

ステ「………………」

青ピ「………………」

753 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:04:46.66 ID:NBrWRVhl0



ステ「!? 何だ貴様、いつの間に!?」

青ピ「そんな怖い顔せんといてよおにいさーん。
   ボクは見覚えのある女の子見かけたから寄ってきただけの健全な男の子ですー。
   そしたらなんですか、道の真ん中で堂々といちゃついてるやん自分ら。
   思わず怒りが声に漏れてたっちゅーわけで」

ステ「早速動機が不純だなオイ。さっさと失せろ」

イン「あ、とうまの友達の青ピなのです!」

青ピ「覚えとってくれたん? 嬉しいなぁ」

ステ(くそ、本当に知り合いだったのか)



青ピ「シスターちゃん、久しぶりやねー。いや、今は最大主教ちゃん?
   何かボクの心をかつてキュンキュン揺さぶった先生みたいな雰囲気やわ」

ステ「……あー、成程。上条当麻の級友で、小萌の元生徒という認識でいいんだね?」

イン「この口調が状況把握に役立つ日が来るなんて思わなかったんだよ」

ステ「僕の台詞だ!!」

754 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:07:07.89 ID:NBrWRVhl0


イン「でも私達、そんなに何回も会ってたっけ?」

青ピ「姫神ちゃんの代わりに新学期に乱入してきたのがファーストコンタクト。
   更にクラスのすき焼きパーティーと、カミやんの結婚式。三回も会うてるやん!」

ステ「三回って…………記憶に関する能力でも持ってるのかコイツ」

青ピ「ボクの能力なんて関係あらへんよ。一度見た女の子はぜーったい忘れへん。
   自慢じゃないけど昔、九九七〇つ子ちゃんを全員見分けた事もあるんやでー」

ステ「………………話に突拍子が無さ過ぎて、逆に説得力があるな…………」

イン「それは正直、私でも厳しいかも」



ステ「つまり君は、噂に聞くシスター・ミサカの義兄の一人というわけだ」

青ピ「そーいうことです。何か気が付いたらカミやんとも親戚になっとったわ」

イン(とうま周りの人間関係は一度相関図を作らないと意味不明なんだよ)

青ピ「んじゃあ、そっちの背の高いおにいさんがロンドンで
   最大主教ちゃんとラブコメしてるっちゅう?」

ステ「…………」

イン「…………」ポッ

ステ「頬を染めるんじゃない!!」

755 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:08:44.84 ID:NBrWRVhl0


青ピ「まあまあ、落ち着いて」

ステ「情報の出所は…………聞くまでもないかチクショウッ!!!」

イン「もとはるともクラスメイトってことですものね」

青ピ「お、懐かしい名前やなー。でもそっちじゃないんやで」

イン「へ?」






青ピ「最近のMNWはお二人の話題で持ち切りらしいでっせー! ひゅーひゅー、お熱いねぇ!」

ステ「なんだそれはああああああっっ!!!!」

イン「まさに予想GUYなんだよ……」トオイメ

青ピ「神父さん、前回のMNW人気投票でグンと順位を上げて十一位浮上やて! よっ、色男!」

ステ「喜べるかあああ!」

イン「(ムッ)ちなみに一位は誰なのかなァ?」

756 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:10:35.54 ID:NBrWRVhl0


青ピ「一位は不動で美琴ちゃん、二位も四十五回連続でカミやん。この二人のツートップや」

ステ(四十五…………)

青ピ「三位打ち止めちゃん、四位アーやん、五位がお義父さんで六位がお義母さん。
   七位がカエルせんせ、八位番外個体ちゃん、そして九位が最大主教ちゃんや!」

イン「わ、私? なんで?」

青ピ「昔打ち止めちゃんを助けてもろたとか言うとったけど……。
   それ以上に最大主教ちゃんのファンクラブ会員が結構な数居るらしいで」

イン「私の、ふぁんくらぶ…………?」カァ

ステ「聞いたことないぞ、そんなふざけた組織…………!」

青ピ「え? イギリス清教公認とちゃうの?」

ステ「公認してたまるかっ!!」

青ピ「おっかしいなー。つっちーの話では」

ステ「土御門ォォォォォォーーーーーーーッッッ!!!!!」

757 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:11:32.33 ID:NBrWRVhl0





青ピ「ちなみにボクは十位です。いやー二人の間に入ってなんか悪いなぁ」

ステ「どうでも良いよそんな事!」

イン「むー」

青ピ「ほらお兄さんがデリカシーないこと言うから、最大主教ちゃんヘソまげてしもた」

ステ「ぼ、僕が悪いのか……?」

イン「ふーンだ。それより私の名前、知らないわけじゃないよね?」

青ピ「まあそりゃ、可愛い女の子の事は忘れへんよ。
   ただちゃんと自己紹介してもろてへん子を
   勝手に名前呼ぶのはボクのぽりしーに反するんや」



イン「……ふふふ。じゃあ改めて自己紹介するのです。
   私の名前はインデックス=ライブロラム=プロヒビットラム。
   インデックスって呼んでくれると嬉しいな!」

青ピ「おっけー! ほなよろしく、インデックスちゃん。そっちの神父さんは?」

758 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:12:31.60 ID:NBrWRVhl0


イン「ほら、ステイル!」

ステ「っ…………ステイル=マグヌスだ。……よろしく」プイ

青ピ「男のツンデレなんて誰得やねー。んー……マグヌス……マーくんじゃあんまりやし」

イン「プッ!」

ステ(…………堪えろ…………!!)

青ピ「ほな、スーさん! スーさんって呼んでええ?」

イン「あはは、スーさんだってステイル!」

ステ「…………勝手にしろっ!!!」モイチドプイ

青ピ「よろしくなー、スーさん」



ステ「ふん…………雨もいつの間にか止んできたかな」

イン「あ、本当だね」カサトジル

青ピ「ところで二人はこんなとこでなにしとんの?」

759 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:13:31.10 ID:NBrWRVhl0


ステ「ただの散歩さ。雨季だからといって部屋に篭ってばかりじゃ気が滅入る」

青ピ「そーいうことちがくて、なんで日本に? って話なんやけど」

ステ「…………友人を訪ねて来たんだ」

青ピ「あー、カミやんか」

ステ「誰がアイツと友人だっていうんだ!!」

イン「まあまあステイル。青ピこそ何やってるの? お仕事とかは?」

青ピ「……そういえばボク、仕事中やったわ」

ステ「よくもまあナンパなんてする気になれたな……」

青ピ「嫁さんもろてからそんな事しとらへんよー」

ステ「ほう、今の行為がナンパじゃないと申し開きするつもりかい?
   君の上司か奥方の前で訴えてやってもいいんだよ」

イン(ステイルがイキイキしてきたかも)

青ピ「あかんあかんあかん! それだけは堪忍して!」ハァハァ

ステ(とか言いつつ若干恍惚としてないかコイツ)


イン「…………それじゃあさ、青ピの職場に連れていってくれる?」

ステ「お、おい!」

760 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:14:22.55 ID:NBrWRVhl0


青ピ「んー…………。まあ大丈夫かな。ウチの会社アットホームな雰囲気やし」

イン「ありがとうなんだよ!」

ステ「僕はまだ仕事の途中だ!」

イン「……ふーん。じゃあ私を青ピに任せて一人で続ける?」

青ピ「うっひょー! こないな美人さんとご一緒できるなんて光栄ですわ」



ブチンッ



ステ「ふざけるなあっ! 誰が貴女をこんな男に渡すかッ!!!」



イン「」

ステ「ふう……はぁ…………。あ、あれ? どうしたんだい?」

青ピ「…………いやあスーさん、アンタ結構情熱的なんやね」

ステ「…………………………あ」

761 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:15:33.80 ID:NBrWRVhl0


三十分後 第一七学区



青ピ「ほら、着いたよ」

イン「………………」ポー

ステ「………………」ボー

青ピ(さっきからずっとこんな感じやん)



青ピ「…………お二人さーん! 聞こえてますー!?」

イン「へっ!? ど、どうかしたのかな青ピ!?」

ステ「………………っ! こ、ここは……?」

青ピ「だぁから、ボクの勤め先やって」

イン「そ、そうでしたわね! 結構新しくて綺麗なビルなんだよ! ねえステイル?」

ステ「…………」

イン「ステイル?」

ステ「……ああいや、確かに新しいビルだね。最近建て直したのかい?」

762 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:16:36.45 ID:NBrWRVhl0


青ピ「おっ、なかなか勘がええなぁ。
   実はここ、十年ぐらい前から怪談スポットとして有名な廃ビルだったんや」

イン「廃ビル? でも…………」

青ピ「もちろん目の前のコレは二年ぐらい前に建て直した新品。
   でもな、再建に至ったのはその廃ビルで
   世にも恐ろしい怪奇現象が起きたからっちゅう……」

イン「や、止めて欲しいんだよ。この科学の街でそんなオカルトじみた…………」ガクブル

ステ「…………僕らの方がよっぽどオカルトのはずだよ」ヤレヤレ



青ピ「なんや、スーさんはあんまり怖がらないんやね」

ステ「この図体で怪談話に震えるなんて、それこそ笑い話だろう」プカー

青ピ「うーん、同僚の女の子には結構ウケたのに」

イン「け、結局今のは青ピの作り話だったのかな?」

青ピ「あはは、勘忍なー。本社ビルが学園都市に遷ったのは建て直しのあと。
   そんな話ぎょうさん知っとるわけありませーん」ケラケラ

イン「ひ、酷いのですー!」

青ピ「あかん、その口調で涙目になられると奥さん一筋のボクでもグラリとくるわ」

ステ(…………さて、どこの路地裏で燃やそうかこのゴミ)シュボ

763 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:17:32.94 ID:NBrWRVhl0




イン「それで、なんて会社なのココ?」

青ピ「…………道すがらちゃんと説明したけどなぁ」

ステ「……すまないね、もう一度頼むよ」

青ピ「あんだけ勿体ぶって身ぶり手ぶりしたのにこの仕打ちはないわー」

ステ「だ・か・ら! すまないと言ってるだろう!」

イン「ステイル、謝ってる人の態度じゃないかも」

ステ「ぐっ。…………申し訳ない、もう一度説明していただきたい」ペコリ

青ピ「あっはっは、そんな畏まらんでも」

イン「大袈裟だねーステイルは」

ステ「理不尽だぁっ!!」


青ピ「さあて、聞いて驚け! なんとボクの勤めるこの会社はなぁ…………!」

イン「なぁ…………?」

ステ「結局勿体ぶるのか……」



764 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:18:58.53 ID:NBrWRVhl0




青ピ「泣く子も黙るおもちゃシェア日本一! あの『Delight Measure』! 通称DMグル」

ステ「帰ろうか最大主教」スタスタ

青ピ「ちょ、ちょ! そんな殺生なこと言わんといて! せっかくここまで来たんやし」

ステ「生死に関わりかねないんだよこんな変態企業に足を踏み入れたら!!
   摂氏千度の高温に耐える鎧をまとったアーノ○ド=シ○ワル○ネッ○ーの
   大群に取り囲まれないと言う保証がどこにあるんだ!!!」

イン(想像力豊かな自分がちょっと恨めしいですわ)

青ピ「そんなアホな事起こらんよぉ。精々メイド姿のマイ○ル=○ーンが
   『お帰りなさいませ、ご主人さま』ってやってくれるぐらいやて」

ステ「なんだその壮絶な誰得はぁぁーーーーーーっ!!!」

青ピ「僕は『1』の時の○ンダ=ハ○ルトンが良いゆうたんやけどなぁ」

ステ「どんな企画会議だああーーー!!」



青ピ「冗談はここまでにして。ほな行きましょ、お二人さん」

ステ(本当に冗談なんだろうな……)

イン「魔王の城に乗り込む時ってこんな感じなのかな……」

ステ「ベツレヘムの星に行った上条当麻に聞くべきだと思うね」ハァァ



765 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:21:11.92 ID:NBrWRVhl0



DMグループ本社 玄関ロビー



バサッバサッバサッ バサッバサッバサッ



ステ「……………………」

イン「…………わーお」

青ピ「どや? なかなか神秘的な光景でしょ?」

イン「間違っても聖書には記述され得ない光景なんだよ…………」



ステ「…………なぜ、冷蔵庫が羽を生やして自律飛行している?」

イン「あんな物を浮かべて喜ぶなんて、やっぱり科学は変態の巣窟かも」

青ピ「ひっどい言い草やねー。ほら、ていとくんからも何か言ったってくださいよ」



バサッバサッバサッ クルッ



ステ(ステイルは直方体の金属塊に取り付けられたモニターの――中の顔と目が合った)

イン(さ、三人称に現実逃避しないで!)

766 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:22:46.74 ID:NBrWRVhl0



ヒュー バサバサバサ!



ステ「急降下するなああああぁあぁ!!!!」

イン「上から来るぞぉ、気を付けろ!」デスクリ

ステ「余裕あるな!」

青ピ「どーもぉ、ただいま帰りましたぁ」



キキーッ!



ステ「どこにブレーキ音が掛かるような機構があるんだよ!」

??「さっきからギャーギャーうるせぇ野郎だな。おい青髪、心理定規が御立腹だ」

青ピ「へ、しゃちょーが? ボクなんかしましったっけ?」

??「連絡つかねぇって花頭が訴えたんだよ。とっとと報告いけや、営業主任」

青ピ「初春ちゃんと定規ちゃんがボクを呼んどる!? 
   そないな事でしたらはよう言ってくださいな!!」

??「食いつくのはそこか」

767 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:23:51.61 ID:NBrWRVhl0


ステ「え、営業主任だと…………?」

イン「私は『花頭』と『定規』っていう謎のキーワードの方が気になりますわ」

青ピ「こうしちゃいられへん! じゃあお二人さん、ボカぁ仕事に戻るんで」

ステ「お、おい……勝手に中を見てろと?」

イン「まあ、無理言うわけにもいかないかも」

青ピ「心配せんでも、後の案内はていとくんがしてくれはるって! なぁ?」

??「おいコラ、なに勝手に決めてくれてんだ変態ピアス」

青ピ「そんなこと言って、最後にはちゃーんと助けてくれることわかってまっせー。
   スーさん、インデックスちゃん。
   こんなナリやけど根は親切な人ですから安心してな。ほな!」



マッテテヤウイハルチャン! イマイクデサダノリチャンー!



??「…………クソが。言うだけ言って行っちまいやがった」

イン「あのー…………」

??「あぁ!?」ギロ

ステ「『ソレ』で睨まれても凄みがイマイチだな……」

??「心配するな、自覚はある」キリッ

イン「あるんだ…………」

768 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:24:57.07 ID:NBrWRVhl0





イン「DM社のマスコットさんだよね?」

ステ「『常識は通用しねぇ』のキャッチフレーズで一躍会社を押し上げた伝説の、ね。
   …………飛行する上に会話可能だという現実は知りたくなかったが」

??「お前らはあの変態ヤロウの客か? 出来ればお引き取り願いてぇな」

ステ「僕も可能ならお引き取りしたいが」チラッ



イン「…………ステイル、何連勤だと思ってるのかな」

ステ「……休めってことかい」

イン「その通り! これは最大主教命令なのです!」

ステ「それなら別にそこらの公園で……」

イン「膝枕でお昼寝する?」

ステ「そこに直結させる必要はないだろう!?
   …………まあその、嫌だとは言わないが」ポリポリ

イン「えへへ……」モジモジ

??(俺はいつまで『??』表記のままでいなけりゃならねぇんだ)シラー

769 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:25:55.08 ID:NBrWRVhl0




イン「でも面白そうだから見学したいかも」

ステ「最終的にはそこに行き着くのか…………」

??「おいコラバカップルども。とりあえず自己紹介させろ」

イン「え? 『ていとうこくん』でしょ?」

ステ「近々アニメ化されるそうじゃないか、おめでとう」パチパチ

??(心理定規の奴なに勝手なことしてくれてんだ……!)







??「……いいか! 俺はこのDMホールディングスの頂点にして学園都市第二位の超能力者――」






770 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:26:47.66 ID:NBrWRVhl0





ステ「ま、まさか! 『未元物質』、垣根帝督本人なのか!?」





垣根「おいいいいいいいぃぃっっ!!! 
   一番大事なところを何で他人に横取りされなきゃならねえんだコラあああ!!」

ステ「あ、悪いつい」メンゴメンゴ

垣根「テメェ俺が『未元物質』使えたら愉快なオブジェにしてんぞゴラ!!」

ステ「今は使えない、と」メモメモ

垣根「しまったぁ!」ガーン!

ステ(たまにやるボケがこんなに楽しいとは思わなかった)



垣根「くそ、せっかく溜めに溜めた正体発覚シーンがこれなのか……」ズーン

イン(まあみんなわかってたんやろうけど)




771 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:28:59.03 ID:NBrWRVhl0


ステ「第二位は、公式には空席になっているはずだが」

垣根「もちろん学園都市上層部は俺の現状を把握してる。
   一般には実験中の事故で行方不明ってことで処理されてるが、
   いずれ肉体を取り戻して返り咲く予定なんだよ」

イン「その『一般向け』じゃない情報を私達に教えてくれたのはどうして?」

ステ「! 確かに……」

垣根「………………」

ステ(まさか、この短いやり取りの間に僕らの目的を……?
   いや、仮にそうだったとしてこんな機密情報を安々と洩らす意味は)





垣根「……………………わり、これオフレコで頼むわ」アセアセ

ステ「まさかのアホの子!?」

イン「とりあえずその汗どこから掻いとんの?」

垣根「俺のボディに常識は」

ステイン「「通用しねぇ」」

垣根「………………」

772 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:29:43.08 ID:NBrWRVhl0







垣根「…………ちくしょう」イジイジ

ステ(大ホールの隅っこでいじける冷蔵庫…………)

イン(写メ撮っとくんだよ)パシャ




垣根「ああくそ! とりあえずテメェら案内してやる!
   会長直々なんて地に頭擦りつけて感謝しろよコラ!」

イン「その体で土下座は可能なのですかー?」

垣根「俺がやるんじゃねええええ!!」

ステ(見てみたい気はするな)

773 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:30:55.15 ID:NBrWRVhl0




二階 営業部


「はいはい、DM本社営業フロアですー」

「三番にお電話入っとるよ」

「そない殺生な事言わんといてください! ウチかてこのご時世ギリギリで……」

「主任まだ帰ってきてないん?」

「綺麗どころ二人に呼び出されたから暫くきーへんて」

「会長ー、景気はどうでっか?」

垣根「ぼちぼちでんがな」



ステ「…………なにこれ?」

イン「青ピみたいな人がいっぱいなんだよ」

垣根「我が社のモットーはアットホーム! 
   よってフロア責任者の口調を部署員全員で真似る『わくわくふれあいタイム』を導入中だ!」

ステ「どっから拾って来たんだそのネーミング!」

イン「みんな自然にこなしてるように見えるのが恐ろしいですわ……」


774 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:34:41.23 ID:NBrWRVhl0


三階 企画開発部


イン「ここは普通に話してるね」

垣根「全社一斉にやるとさすがに混乱するから、部署ごとにずらしてんのさ」

ステ「…………話の内容がまったく、普通じゃないんだが」



「だから! このスピードじゃあ婚后航空の最新型には勝てないんだよ!」

「別に最大速度で勝る必要は無いと思いまーす」

「いやいや、スピードの追求こそ男のロマンというのは頷ける話だ」

「Actually、私は主兵装にドリルを採用したドッグファイト重視型が」

「TLS(戦術レーザー兵器)って『アイテム』社が実用化してましたよね?」

「カモォォォォォンンン!!!!」

「「「「うるせぇよ」」」」



ステ「おもちゃ…………会社………………?」

垣根「あれは今世紀最大のヒット商品『リアルター○ネー○ー』
   を開発したチームだ。次も期待できそうだな」

ステ「」シュボ

イン「お、落ち着くべきかもステイル!」ガバ

ステ「はなせ! ジャッジメント・デイが来る前に奴らだけは討ち取っておかないとォォォッ!!」

775 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:35:48.56 ID:NBrWRVhl0




六階 人事部


イン「ていとく、あれは面接かな?」

ステ「こんな時期にか?」

垣根「中途採用なら時々な。どれ、今日はどんなのが」



「それでは当社をご希望される理由をどうぞ」

「そうね、事務職で三十代女性の平均年収以上の給料を見込めるからかしら」

「…………入社のあかつきにはどのような分野でご活躍したいと?」

「そうね、お布団の寝心地を確かめる仕事がいいわ」

「……………………よく、自分に甘いと言われませんか?」

「そうね、自分ではよく言うわ。でも私、甘いだけで優しくはn」

「お帰り下さい」

「イヤよ」

「…………あ、会長! この人どうにかしてくれません!?」



三人「「「………………」」」


776 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:37:19.66 ID:NBrWRVhl0




九階 野球部


ステ「ツッコミ待ちかこの部署名はあっ!!!」

イン「待ちに待った、って感じかも」

垣根「社会人野球の強豪なんだよウチは。東京ドームにも何回か行ってるぜ」



「ふん!」

「ストライークッ! バッターアウトッ!!」

「いいぞおデコ! これで次の大会もいただきだ!」

「だーれがデコですって!」ズドン!



ステ「ビルの中に室内練習場とか何考えてるんだ……」

イン「そういえば外から見た時やけに窓の大きいフロアがあったんだよ」

垣根「エースピッチャーはあのデコ女だ」

ステ「無茶苦茶な球を投げてないかアレ」

イン「パッと見、140キロ台のフォークに見えるんだよ」

ステ(…………それ何てクル○ン?)

777 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:38:23.66 ID:NBrWRVhl0




十一階 社長室



垣根「なかなか溜飲の下がるツアーだったぜ、バーコード野郎?」クク

ステ「………………」ゲッソリ

イン「お夕飯は胃に優しいものにするからね」セナカサスサス

ステ「ああ、ありがとう……」

垣根(ケッ)



心理定規「あら、来たの垣根? 何か騒がしかったみたいだけど」

初春「こんにちは垣根さん。今日も磁石ペタペタ
   貼り付けられるのが似合いそうな素敵なフォルムですね♪」

垣根「よ、よせやい、照れるぜ」

ステ(アホの子確定か)



心理「そちらは?」

垣根「青髪の客人だとよ。それよりお前らの紹介が先にあるべきだろうが、立場的に」

心理「それもそうね。ようこそ我が社へ、お客様。
   当社の代表取締役を務めております、メジャー定規です」ペコリ

778 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:39:12.56 ID:NBrWRVhl0




ステ「…………」

イン「……芸名?」

心理「そのようなものね。ちなみに定規は『さだのり』と読みま」

ステ「おいやめろ馬鹿! あまり露骨だと苦情が来るだろうが!」

イン「そ、そっちのお花の人は?」



初春「同じく、弊社のシステム開発部門を任されております、初春飾利と申します!」

ステ(…………彼女が)

イン「みことから聞いたことある名前なんだよ」

初春「美琴さん……? ああ、居候の大喰らい最大主教さんですね、聞いてます!」

ステ「いちいち言う事が微妙に黒いな……」

779 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:40:42.29 ID:NBrWRVhl0




心理「最大主教ですって? 十字教の、つまり魔術側のトップじゃない」

初春「そんな人が入国してるなんて話、テレビではやってませんでしたけど」

ステ「お忍びの訪問でね。……ちなみにネット上ではどうなのかな、
   『守護神(ゴールキーパー)』さん?」

初春「…………心配しなくてもほのかな噂すら立ってませんよ、
   『守護神(ファイアウォール)』さん?」



ステ「……成程、本物だ」

初春「むむむ…………」



心理(急に雰囲気が重くなったわよ)

垣根(やっべバサバサ音出すと空気読めてないっぽくね俺?)

イン(…………定期的にシリアスやるだけの病気だから気にしなくていいんだよ)プイ

780 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:41:41.62 ID:NBrWRVhl0



五分後



ステ「付け焼刃の知識で名付けたんだが、やはりイマイチだったかな」

初春「いえいえ、格好いいじゃないですか! 厨二心をくすぐられるネーミングです!」

ステ「学園都市の能力者にだけは言われたくないな」ハハハ

初春「もう、ステイルさんったら馬鹿にして!」ウフフ



イン「やっぱりこうなった…………」ハアァ

心理「そういう男なのね。よくわかったわ」

垣根「ナンパテクとか教えてもらいたい」

心理「冗談は顔だけにしなさいよ」

垣根「ボディの方じゃねえの!? これでも顔には自信あんだぞ!」

初春「イケメルヘン(笑)」ヌッ

垣根「それだけ言いにコッチ来たのか脳内お花畑ぇぇぇ!!!」

781 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:42:46.11 ID:NBrWRVhl0




初春「じゃあ、私はそろそろ……」

心理「ええ、よろしくね初春さん」

垣根「しくじんじゃねぇぞ」

初春「嫌ですねー、万年第二位の垣根さんじゃないんですから」

垣根「」ビキビキ

ステ(腹黒いっていうか)

イン(ノーマルにドス黒いんだよ。ていとく限定?)



初春「……大丈夫です。絶対に成功させますから、垣根さん」ニコ

垣根「………………ああ、頼む」

初春「任せてください! では、お二人とも失礼します」ペコリ

ステ「ああ。またいずれ機会があればね、飾利」

イン「じゃ、じゃあね、かざり!」ピクピク

ステ「?」

初春「はい! 美琴さんのお家でお会いできたらいいですね」フリフリ

782 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:43:55.61 ID:NBrWRVhl0



ガチャ バタン



垣根「…………さあて。魔術師さんよ、何の用があって乗り込んで来やがったんだ?」ギロ


イン「冷蔵庫に凄まれてると思うとちょっと…………」

ステ「君抜きで話を進めるとスムーズになると思うんだが」

垣根「……いつまでも調子こいてんじゃねぇぞクソッたr」

心理「そういうわけだから垣根、ちょっとガ○ガリくん買ってきてくれる? いちごおでん味で」

垣根「おいィィィィィィィ!? 心理定規さんんんん!?」



心理「青髪から話は聞いたけど、作為的なものは感じられなかったわね。
   どうやら本当に偶然ここに来た、と思ってよさそうよ」

垣根「まあ、お前の尋問なら確かな事実だろうが…………。
   っていうかあのピアス野郎、またナンパしてやがったのか」

イン「? 青ピは奥さん一筋って力説してましたわ」

ステ「まあ浮気性だとしてもまったく意外性はないけどね」

783 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:45:01.81 ID:NBrWRVhl0


垣根「いや……アイツは間違いなく愛妻家なんだがよ」

ステ「……?」

心理「どうも、プレイの一環らしいのよね」

イン「ぷ、ぷ、プレイ?」

垣根「青ピがナンパして、女のメアドゲットするだろ? まあ成功率低いけどな」

心理「そしたら携帯をわざと奥さんの目に着くところに放置して」

垣根「『ちょっとアナタ! この女誰よ!(裏声)』」



心理「…………っていう流れの折檻プレイを夫婦合意の下でやってるらしいわ」

ステイン「「…………」」ゾワゾワゾワッ!






「ハックシュン! とミサカは古典的な噂話対象のリアクションを取ります。
 ……それにしても今日の青ピはどんなご奉仕を要求してくるのでしょうか///」






784 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:46:42.56 ID:NBrWRVhl0



ステ「コホン! ……僕たちに悪意が無い事は理解してもらえたかな?」

垣根「……故意じゃなかろうと、そもそもこの学園都市に魔術師が
   居るって時点で不審だと――自分でも思わねぇか?」

イン「…………」

垣根「おい、心理定規」

心理「さっきからやってるわ。ねえアナタ、本当のところを話してくれない?」

ステ「っ! 『心理定規』は能力名か!
   (大能力者までは気が回っていなかった…………!)」



垣根「それでいてこのザマはなんだ?」

心理「………………ダメだわ。
   とりあえずお二人さんの互いの『距離』を参考にはしてみたけど。
   あなたたち、距離単位は親密でも隠し事が多そうね」

ステ「…………悪趣味な。心の中まで覗けるのか?」

心理「さあね? どのみち魔術師相手だとどうも効き目がイマイチ。
   魔力とかいうのが邪魔で精神系能力が阻害される、
   っていう研究成果もそういえば出てたわね」

垣根「…………ちっ」

785 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:47:53.42 ID:NBrWRVhl0




ステ「……ふう。君たちはある程度上層部とのつながりがあるんだね?」

垣根「……まあな」

イン「だったら、そう遠くないうちに教えてもらえると思うな」

心理「ふうん。まあ、期待しないで待ってるわ。待ちぼうけは嫌いじゃないの」

垣根「…………」



ステ「自分達の事は話さないでおいて恐縮なんだが、垣根のその身体は一体何なんだ?」

心理「………………垣根、またペラペラ喋ったのね?」

垣根「お、おいおい。『また』っていうのは人聞きが悪いぜ」アセ

イン「まあ、めじゃーはーともさっきから垣根って呼んでるけど」

心理「あ、あら? そうだったかしら? ……じ、実は」アセアセ



ステ「今さらAI搭載のマスコットでした、では通らないね」

イン「だいたい、会う人会う人『会長』って呼んでましたわ」

垣根&心理「「…………」」

786 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:48:46.95 ID:NBrWRVhl0




垣根「…………しょうがねぇな」

心理「ちょ、ちょっとあなた!」

垣根「中途半端に探られて余計な首突っ込まれるよりはマシだろうが」

ステ「本当にお話しいただけるとは思わなかったよ」

垣根「テメェらも『上』の連中に一枚噛んでやがるんだろう?
   その気になれば調査は不可能じゃあなさそうだしな」

イン(腕利きのスパイもいますしねー)



ステ「とりあえず、肉体を取り戻したいんだっけ?」

垣根「……あれ? そこまで喋ってたか俺?」

心理「ちょっと、『うっかり』洩らすような話題じゃないわよ!
   もうほぼ核心でしょうがそこは!!」

イン「ていとくって結構アレ?」

心理「……この姿になってからはその傾向が顕著になったわね」

787 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:50:05.56 ID:NBrWRVhl0



垣根「と、とにかく! 俺は十年前にある事情で『死』んで、当時の統括理事長の命令の下に
   脳だけの――まあ他の器官も残っちゃあいたが――存在にされた」

イン「の、脳…………!?」

垣根「くく、綺麗な世界に生きてるレディーにはグロすぎたかぁ?
   超能力者の根幹をなす演算装置ってのはな、それだけ『資産価値』のある物なんだよ」

ステ「説明は出来れば簡潔にお願いしたいね」



垣根「はっ、悪い悪い。で、数年前のゴタゴタの最中にこの悪趣味な女が
   『俺』を奪い去って、何をイカレたのか『生き返らせ』ようとしたわけだ」

イン「……なんで?」

心理「さあて、ね。『未元物質』にはいくらでも利用価値がある、なんて建前は一応構築済みよ」



垣根「…………本当に、悪趣味なイカレ女だよ。テメェは」

心理「お褒めに預かり、光栄よ」

ステ(ほう…………)

788 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:51:56.92 ID:NBrWRVhl0




イン「それで、その身体は?」

垣根「オカルト頭に小難しい説明は無駄だろうから省いてやるが……。
   要するにコイツは『肉体』が完成するまでのスペアボディさ。
   電気信号に変換した脳波を受信するには、そのまんま脳味噌を
   再現するよりこっちの方が手っ取り早いんだよ」

ステ「『肉体』、と言うのは……」

心理「乱暴に言えば、クローン体ね」

イン「クローン…………」



ステ「……どっちかと言うと、その前衛的なデザインの方が疑問なんだが」

心理「それは初春さんと青髪の共同デザインよ」

垣根「マジで!?」

ステ「なぜ君が驚く!!」

垣根「じゃあ、このふざけた六枚羽も連中の仕業だってのかオイ!」

心理「知らなかったの?」キョトン

垣根「知ってたらとっくに冷蔵庫に詰めて市中引き回しの刑に処してるわぁ!!!」

ステ「一見の価値アリだな、それは……」

789 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:53:31.05 ID:NBrWRVhl0








ステ「……それにしても、わからないな」

心理「なにがかしら?」

ステ「君たちの目標は、垣根の肉体を取り戻す事なんだろう?
   門外漢が口を挟むのもなんだが、既に現在の技術水準で十分可能に思えるね」

垣根「……俺の目的は、あくまで『未元物質』、垣根帝督の復活だ。
   レベル5のパーソナルリアリティと演算処理についてこれるだけの
   スペックを生み出す程、クローン工学は発展しきってないって事だよ」

イン「――本当に、それだけ?」

垣根「…………」

心理「…………」



垣根「……聖職者ってのは間違いなく適職だな、お前」

ステ「………………」

心理「あら喋る気なの? らしからぬ素直さじゃない」

垣根「黙れアバズレ。テメェ能力使ってねぇだろうな?」

心理「知ってるでしょ? 私の能力じゃそんなこと無理よ」

イン「それで、話を聞かせてもらえるのかな?」

790 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:56:37.56 ID:NBrWRVhl0




垣根「…………二万」

ステ「何だと?」






「アレイスターの野郎が消えた時点で、俺と同じような境遇にあった『脳味噌』の数さ」






イン「………………!!」

心理「驚いた? でも考えてもごらんなさい。
   たかだか五十年やそこらで、数千年の歴史がある『魔術』に『科学』を追いつかせたのよ?
   アレイスター=クロウリーや研究者たちが何をやっていたところで」

ステ「驚嘆には値しない、か」


791 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 20:57:52.34 ID:NBrWRVhl0



垣根「そいつらに電気信号を用いていちいち接触して、意識を活性させて。
   『生き返る』意志があるかどうかの確認をするにはな。
   …………このふざけた電子の身体の方が都合が良いんだよ」

ステ「…………垣根帝督、君は」

垣根「やる気のねえヤツまで面倒みる気はねぇ。
   ……ただ、家族にもう一目会いたい。太陽の下で呼吸がしてみたい。
   そんな単純な、しかし強い願いを持つ諦めの悪いヤツは……
   俺達の考える以上に、ゴマンと居やがった」



イン「わ、私には科学はよくわからないけど。電気の事ならみこ……第三位を頼れば」

心理「それは、初春さんに拒否されたわ。巻き込みたくはないって」

イン「かざりが? ……そっか、みことの友達なんだよね」

垣根「アイツは電子世界で『保管場所』に度々アクセスしてる
   俺(イレギュラー)に気付いて、向こうから接触を図ってきやがった」

心理「あの子普段はそうでもないんだけど、
   端末を通すと途端に鬼みたいな情報収集能力を見せるのよ」

ステ「と、いう事は彼女も協力しているのか?」

792 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:00:53.90 ID:NBrWRVhl0


心理「『他人事とは思えなかった』。似たような境遇だった友人がいるらしいわ」

イン「似たような、って!」

心理「この街の犠牲者、ということね。……これ以上は、私の口からは言えないわ」

ステ「…………業が深いな、学園都市って場所は」

垣根「いまさら気付いたのか? 此処は紛うことなき、クソッたれの掃き溜めだよ」



イン「でもあなたは今、そこから沢山の人を引きずり上げようとしてるんでしょう?」

垣根「………………」

心理「どう言い繕っても無理だと思うわよ、垣根」

垣根「……同情だよ、単なる」

イン「ていとく。同情は、『慈悲』っていう心の、いちばん初めの一歩なんだよ。
   その慈悲(どうじょう)で助かった人がいるっていう事実は。
   …………あなたがどんな考えでも変わらないの」



垣根「クソが…………ああそうだよ! 俺は柄にもなく人助けなんかしちまってるよ!」

ステ「君の人柄など僕の知った事ではないが。ま、今日の印象だけなら悪人には見えないね」

心理「良い子ですって。良かったじゃない、垣根」

垣根「…………っ!」


793 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:03:44.84 ID:NBrWRVhl0




イン「……それであなたたちは、その人たちは、いま?」



垣根「笑えるぜ? 何年も何年もかけてよ、ようやく八十%、一万六千人に接触した。

   ――――そしてその内一万人は、死んだ。助からなかった。
   
   第一位に聞かれたら、ヘソが茶を沸かすだろうぜ。
   全盛期の奴ならより早く、より完璧に、独力でこなせたはずだ」

心理「っ、垣根!」

ステ(一方通行…………か)



イン「わらわないよ」

垣根「…………あ?」

イン「あくせられーたは、そんなあなたを決して哂ったりしない」

垣根「………………」

イン「あなたも彼を知ってるなら、わかるんじゃないのかな?

   あの人が、血に汚れた手で、どんな気持ちで――誰かを守ろうと決めたのか」


794 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:07:03.76 ID:NBrWRVhl0







「…………ああ。悔しいが、理解しちまったよ」






795 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:07:56.95 ID:NBrWRVhl0






心理「ここの社員にもね、結構いるのよ。『生き返った』人が」

ステ「…………そうだったのか」

垣根「もともと、能力に目を付けられたから『保管』されてたんだ。
   そうじゃないのもいるが、スペックは十二分にある連中ばかりだ」

心理「でもね、彼らの大半は死んだことになっていて……帰る場所が、無かったのよ」

イン「じゃあ、もしかしてていとくはその為に…………?」



垣根「…………辛気臭ぇ話はもうやめだ!」

イン「あれあれー? もしかして、照れてる?」ニヤニヤ

垣根「んだとクソシスター!」グイ

ステ「おい、少し口に気を付けろ貴様。それと、余り気安く触れるな」ギロ

イン(触れるって言っても羽なんだけどなぁ)

796 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:08:47.77 ID:NBrWRVhl0


垣根「あん? 器の小せえ野郎だなヤニ男くん?」

ステ「いい度胸だ。そのボディ、ヤキを入れても構わないんだろう?」

垣根「え」

心理「ちょっと、結構高いんだから勘弁して下さる? 弁償してくれるなら構わないけど」

垣根「ええ?」

イン「…………無理だから、やめとこ?」

ステ「やれやれ、そこのレディーに感謝しろよ」

垣根「ええぇぇ…………」



ガチャ



青ピ「しゃちょー…………あらら二人とも、ここに居ったん?」


797 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:10:47.13 ID:NBrWRVhl0


ステイン「「………………」」アトズサリ

青ピ「なんなん自分ら、ボクの事タイヘンなヘンタイみたいに……」

垣根「そのままズバリだな」

青ピ「酷いわーていとくん」

心理「何の用かしら?」



青ピ「初春ちゃんから伝言でっせ。――――例の実験、『成功』やて」



垣根「…………っしゃ!」

ステ「まさか、いま『助けている』最中だったのか?」

心理「身体に脳を移し替える作業そのものには、私達がいても意味が薄いから。
   信頼…………ふふ、信頼できる人に任せてるわ」

イン「良かったね、ていとく!」

青ピ「ほんま、喜ばしいなぁ」

垣根「……! べ、別に喜んじゃいねぇよ!!」

ステ(超能力者ってのは、ツンデレじゃなきゃいけない決まりでもあるのか……)



798 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:11:47.85 ID:NBrWRVhl0



青ピ「ほな、ボクはそれ言いに来ただけですー。他に仕事もあるんで勘忍なぁ」



ガチャ バタン



心理「後で会いに行きましょうね、あなた」

垣根「ん、まあ。これから面倒見なきゃなんねぇしな!」

イン「んふふー。そのニヤニヤ笑い、全然隠しきれてませんわー」

垣根「うるっせえんだよ!!!」カァ

イン(ド素人って続くのかと思ったかも)

ステ「青髪も事情を理解してたんだね」

イン「ていとくの事、最初から名前で呼んでたもんね」



799 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:12:50.12 ID:NBrWRVhl0



心理「…………へ?」

垣根「ん? そ、そういえば……」

ステ「…………何だ、幽霊を見たようなツラで」

イン「あ、あははは。嫌ですわステイル、そんな非ィ科学的な」



垣根「おい、俺は本当にアイツに喋った覚えはねぇぞ」

心理「私だって! 初春さん……の口がそんなに軽いとは思わないし…………」

イン「で、でもでも! 皆会長さんって呼ぶし青ピもその辺りから察して」

垣根「俺の『人助け』はトップシークレットだ。
   玄関ロビーでもそこまではお前らに言わなかっただろ」

心理「それに生き返った当人たちがそんなこと吹聴すると思う?」

ステ「…………確かに」


800 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:13:23.70 ID:NBrWRVhl0






「「「「………………」」」」






ステ「何者なんだい、あの変態……」





801 :DM編[saga]:2011/06/23(木) 21:14:42.73 ID:NBrWRVhl0


---------------------------------


IN

エセ関西弁 ←New!


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青ピ「そんな怖い顔で見んといてや? ボカぁしがないサラリーマンですー」




808 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:45:22.37 ID:M+yRV3QB0


第一学区 統括理事会本部 統括理事長室



親船「…………では最大主教さん、公式会談当日を楽しみにしていますね」

イン「はい、統括理事長。どうかご自愛くださいね」

雲川「我々若い世代に任せると言う事をそろそろ覚えて欲しいものだけど」

親船「あら芹亜さん。私はまだまだ現役よ?」

一方通行「元気のいい婆さンだぜ全く」

イン「ふふ、ではぼちぼち失れ」

ステ「ゲホン、ガッホン! ……失礼しましょう、最大主教」

イン「コホッコホッ! お、お元気で」



親船「?」

雲川(くくく……!)

一方「何やってンだてめェら。おら出ンぞ」

809 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:47:06.59 ID:M+yRV3QB0



統括理事会本部 廊下



ステ「……ふう。非公式だと言うのにこの胃の痛み具合か」キリキリ

イン「もう、ちょっと失礼かもステイル。みんなエエ人だったんだよ」

ステ「貴女が失言しやしないか気が気じゃなかったんだよ!
   …………それにつけても『平和的侵略者』親船最中に、科学のブレーン雲川芹亜。
   これだけでもティータイムを共に楽しむには無理のある相手だというのに……」チラ





一方「…………なンだよ」

ステ「警護に能力者が就くとは聞いていたが……まさか第一位とは」フゥ

一方「悪ィかよ、これも仕事だ」

イン「ふふ、私は逆に頼もしかったのです。久しぶり、あくせられーた!」

一方「…………ああ、元気だったかシスター」

810 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:48:11.85 ID:M+yRV3QB0





イン「………………ゴメン、今鳥肌たってもーた」

一方「あァァン!? 人が挨拶してンのにそのリアクションはねェだろてめェ!!」

イン「挨拶したら自転パンチが帰ってくるようなキャラだったと思うんだよ」

ステ「えー…………」ドンビキ

一方「いくらオレが黒歴史満載の人生送ってるからって
   そンな触れた者みな血液逆流するような尖ったアルバムの一ページはねェよ!!」

ステ「黒歴史ねぇ」シュボ

イン「とうまにもあるけどあくせられーたのそれはもっと酷くて



   『凱旋だ、クソ野郎(「クソ野郎」と文末につけたくなるお年頃)』とか」



一方「誰が垂れ流しやがったァァ!? クソガキか、番外個体かァ!」

イン「もこひけん……じゃなかった黙秘権を行使するのです」

ステ(学園都市に来てから若干僕の仕事が減ったな……複雑な気分だ)プカー

811 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:49:52.84 ID:M+yRV3QB0





一方「チッ、後で一人ずつ楽しいタノシイ拷問タイムだァ…………!」

ステ「程々にしておけよ。それにしても面と向かっては初めてだね、一方通行」

一方「あァ? ……そォか、お前がステイル=マグヌスか」

ステ「はじめまして、ではおかしいのかこの場合」

一方「クカカァ! この時を待ちわびたぜェ、クソ野郎……!」



イン「な、何なのかなこの雰囲気? 喧嘩は駄目なんだよ!」



一方「なァに心配はいらねェよ、ちょっとお喋りするだけだ」ミギテダス

ステ「その通り、貴女には理解できない事かもしれないね……」ミギテダス



イン「や、やめて!」ヒロインッポク


812 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:51:48.64 ID:M+yRV3QB0



ガシッ!



イン「…………へ? 握手?」



一方「ヒャハ、ギャハハハハ!! 今日はイイ日だねェ! 
   長年の相棒によォやくご対面出来たんだからよォ!!」

ステ「こちらこそ光栄だ。何度君の巧みなハンマー捌きに助けられたか」

一方「いやいやマグヌスくン、お前の曲射こそ芸術だぜありゃあ?」

ステ「全く、女性陣と来たらバカの一つ覚えで太刀を担いでは突っ込むだけだからね」

一方「あンなド低能どもに狩りの駈け引き求めるなンざ酷な話だろォがよ」

ステ「HAHAHA! 全くだね!」


813 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:52:47.38 ID:M+yRV3QB0



ヒャハハハァ! HAHAHAHA!



イン「えぇぇぇぇ…………私の立場がないんだよ……」



スタスタ



当麻「おっ、終わったんだな」

食蜂「男同士でガッチリ握手ねぇ……そのスジの女の子にはウケル光景かもぉ」

814 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:54:35.88 ID:M+yRV3QB0


イン「あ、とうま! ……ちょっと、みことっていう人がいながら『まだ』なのかな?」ガチガチ

当麻「ち、違いますよインデックスさん!? 食蜂とは単なる仕事上の付き合いだって!」

食蜂「そうよぉ最大主教さん、美琴さんの旦那様なんて怖くて手出しできないわぁ」

一方「よく言うぜ、エゲツなさ第一位の女王サマがよ」カカカ



ステ「上条当麻、そちらのレディーは?」

イン「……むゥ」

当麻「ああ、コイツは」

食蜂「どうも初めましてぇ、イギリスからのお客様。統括理事会参与の食蜂操祈って言いまぁす」

ステ「(…………第五位、『心理掌握』か)どうもはじめまして、ミス食蜂」

食蜂「そうなんだけど、ここに居る人たちって私の掌握力がイマイチ届かないのよねぇ」

イン「え? どういう意味?」



ステ「………………成程、えげつない」

一方「だろォ?」

815 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:55:33.53 ID:M+yRV3QB0


ステ「しかし学園都市に来てたかだか二週間足らず。レベル5との遭遇率が異常だな」

イン「このペースならコンプリートも夢じゃないかも!」



一方「それは無理だな」

イン「えー? どないして?」

食蜂「第六位がいるからねぇ」

当麻「いるって言うか、『いない』って言うか……」

ステ「学園都市には不在なのかい?」

一方「いやァ、書類上は居るンだがよ…………」

当麻「外出したって記録も無いしな」

食蜂「なのにぃ、第六位に会った事のある人って、学園都市中探してもどこにもいないのよぉ」



ステ「…………それは、つまり」

イン「いわゆる一つの、都市伝説じゃあ……」

当麻「統括理事会ですら把握してないんだから、ちょっと異常だよな」

ステ「『ちょっと』で済むか!! しっかり仕事しろ!!!」

816 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:57:07.50 ID:M+yRV3QB0


一方「この話題は長く続けねェ方がいいかもなァ」

食蜂「私も自分の身が可愛いしぃ」

イン「えー、えーっとそれじゃあ。『参与』って何する仕事なの?」

ステ「日本政府にもそんな機関があった気がするね……何をしているのか良くわからないが」

食蜂「でしょぉ? 私自身何してるか良くわかってないのよぉ」

ステ「いいのか、それで…………」



一方「平たく言やァ、そこの無能理事みてェなのを補佐する有識者機関だな」

当麻「『無能』じゃなくて『無能力者』ですよ一方通行さん!?」

ステ「君を理事にしてしまったことだけは、ミセス親船の痛恨のミスだと常々思うよ」

当麻「ミスじゃないよ! 上条さんちゃんと仕事してるよ!?」

イン「とうまが外交で役に立つのって人脈だけだよね?」

食蜂「そんなことないわよぉ。今日も上条さん、私の用意した原稿を
   読み上げるだけの簡単なお仕事をしっかりこなしてたものぉ。
   いつもの妙に熱のこもったアドリブが出なかったから合格ねぇ」

当麻「………………不幸だああああ!!」ダッ

817 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 17:58:34.65 ID:M+yRV3QB0




イン「ちょっとからかい過ぎましたかねー」

ステ(僕は本音を言っただけだが)

食蜂「さ、私もこのあと講義だから急がないとぉ」

ステ「学生…………のわけはないな」

一方「このふざけたナリで天下の長点上機大学の教授だってンだから、世も末だ」

イン「へぇ、みさきは凄いんだね!」

食蜂「……そういう純粋な目で見られるとちょっと弱いなぁ。
   じゃあ、また機会があったらお会いしましょうねぇ」フリフリ



スタスタ



ステ「…………何かと目に痛いオーラの女性だったな」

一方「眩しいンだよなアイツ、物理的に。まァオレは反射するけどォ」

イン「あくせられーたはこの後暇なの?」

818 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:00:13.92 ID:M+yRV3QB0


一方「そろそろ警備引き継ぎの時間だ。それが終わりゃあ帰ンよ」

イン「私、らすとおーだーに会いたいな」

ステ「それは丁度いい…………僕も一度お目にかかりたかったところだ」ユラ

一方「(ンだコイツの殺気は)大学から戻るまでに時間が少しあるが、構わねェか?」

イン「大丈夫だよね、ステイル?」

ステ「もちろんさ。君たちには最大主教がお世話になった礼もじっくりしたい」

一方(気のせい…………か? まァ、いざとなりゃあブチのめすまでだ)



イン「あくせられーたぁ?」

一方「お、おォ。そンじゃあ玄関で待ってろ」

ステ「僕らの事は気にせず、ゆっくりでいいさ」



819 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:01:42.04 ID:M+yRV3QB0


三十分後 統括理事会本部 玄関ロビー


コツ コツ


一方「よォ、待ったか三下ど…………も……」



当麻「ちょちょちょ、待ってくださいってお姉さぁぁぁぁん!!
   そーいうのはアポ取ってからにしてーーーーっ!?」



一方「………………オイ、この状況は一体なンなンですかァ?」

ステ「それは、僕らが聞きたいな」プカー

イン「こないだ面接に来とった人やん」

一方「はァ? 顔見知りでもい……」



芳川「まあまあ、とりあえず一回採用面接してくれない?
   あと一方通行っていうのがいるはずだからそれとなく私に便宜を図るように」



一方「クソニートおおおおォォォォ!!! なァにしでかしてくれてンだァァァァ!?」

820 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:02:38.00 ID:M+yRV3QB0





芳川「あら。ちょうど良いところに来たわね、一方通行」

上条「それ俺の台詞! おい、この人お前の知り合いなのか?
   なんとかしてくれ、どうもこういう話を聞かない人種には敵いそうにないんだよ!!」

イン「話術サイドだもんね、とうま」

ステ「耳栓を着けるのが有効な戦術かもな。今度試してみよう」

上条「他人事だと思って好き勝手言わないでくれねえ!?」



一方「おい芳川ァ!! とうとう頭の発酵が致命的なところまで進ンだのかてめェはァ!!」

芳川「だって、あなたがいい加減就職しろって言うから。
   とりあえずお給料の高いところから順にローラー作戦をかけてるのよ」

一方「悪かった忘れてましたァ!! 
   てめェの脳みそはとっくにチーズみたいに穴ボコだらけだってよォォ!!」

821 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:03:50.29 ID:M+yRV3QB0


芳川「私だっていつまでもあなたのお世話になるわけにもいかないしね」

一方「現在進行形で世話かけてンだよ! 
   偽計業務妨害で警備員のお世話にでもなってろこのクソアマァッ!!」

芳川「愛穂ももう華の独身貴族じゃないのよ? その辺りは私でも弁えるわ」

一方「ちげェェェェ!!! ブタ箱イケっつってンだよ!! 
   弁えてンならオレと打ち止めの邪魔すンのも遠慮してくださいますかァァ!?」



イン「むむぅ、聞き捨てならないワードが出たんだよ」

ステ「『俺たちの愛を邪魔する者は許さない』…………そう聞こえたね」

当麻「ああ、あいつら今ふたりきりで同棲中なんだよ」

イン「おおおおお!!!」パチパチ

ステ「へえ、おめでとう」パチパチ

一方「てめェ三下あああああァァァァ!!!!!」

822 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:05:08.58 ID:M+yRV3QB0




ステ「しかしそういう事なら、二人の『愛の巣』へのご訪問は遠慮すべきかもしれないね」

イン「らすとおーだーが私達のことなんて眼中にもなく恋人に飛びついて
   
   『ただいま、ダーリン♪』
   
   なーんてやっちゃったらあくせられーたが憤死しかねないのです」

一方「ンなことしてねえええェェェ!! …………ゼハヒャァ、ブハァッ……!」ゼエゼエ

ステ「怒涛の七連続か。僕もまだまだ精進が足りないね」

イン(なんで対抗心燃やしちゃってるのかな……)



一方「はあああァァァ、不幸だ。……おい上条、オレァもう上がるぞ。
   この家事しねェ家事手伝いさンはお前に任せた」

芳川「ちょっと、何を勝手に決めてるのかしら?」

当麻「え!? い、いやいや上条さんには荷の重い任務だと思いませうよ?」

一方「雲川にでも押しつけとけ。あのアマならどうとでもすンだろ」

芳川「私の意思は無視? っていうか私は無視?」

823 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:06:47.26 ID:M+yRV3QB0




当麻「トホホ…………あの先輩に捕まると帰り遅くなるんだよなぁ」サメザメ

イン「…………ねえとうま」

当麻「美琴、真理、今日もお父さんは…………って、どうしたインデックス?」

イン「今夜は私達、あくせられーたの所に泊めてもらおうと思うんだけど」

ステ「おい、急に何を……む」



当麻「そうなのか、一方通行?」

一方「……あァ。クソガキもシスターとゆっくり話したいだろうしよ。
   今夜はお泊りパーリィだ、晩ご飯もお任せってなァ!」

ステ(パーリィ…………)

当麻「まあ、本人が良いって言うなら。悪いな」ペコ

一方「なンでお前が頭下げンだ」

当麻「家族が世話になるんだから、当たり前だろ」

一方「…………家族、か」



芳川「´・ω・`」


824 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:08:21.20 ID:M+yRV3QB0



第七学区 路上



ステ「すまないね、いきなり最大主教が」

イン「ゴメンねぇ、あくせられーた」

一方「一家水入らず、ってのを演出してェンだろ? 構いやしねェよ」

イン「空気が読める男は違いますわなー」チラ

ステ(なぜこっちを見る)



一方「四人分か……冷蔵庫の中身が足りねェかもな」

イン(冷蔵庫と聞くとつい『アレ』かと)

ステ「買い物でもして行くかい? 食費ぐらいはこちらが持たせてもらうよ」

イン「食費と言わず、お料理も任せて欲しいかも」

一方「金なンざどうでもいいンだがよ、シスターさンは料理できるンですかァ?」

825 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:09:41.77 ID:M+yRV3QB0


イン「むーっ! みンなそンな反応ばっかりしてェ!」

ステ「これまでの行いを鑑みるに、しょうがないことだと思うがね。
   しかし最近はちゃんと、美琴や隣の御夫人に教わっているんだ」

一方「隣……馬面の嫁さンか」

イン「りこうに勧められたから、練習し始めたのです!」

一方「マグヌスくンに食べてもらいたいからですかァ?」ケケケ

イン「う、うう…………」アウアウ

ステ「………………」シュボ

一方(こっちは反応薄いなァ)



イン「ら、らすとおーだーだって手料理ぐらい作ってくれるでしょ?」

一方「……ごくごく最近になってだけどな。まァだオレが作ったほうがマシだぜありゃ」

イン「でも、嬉しいんだよね?」

一方「………………ああ」

826 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:10:59.40 ID:M+yRV3QB0




ステ「…………良く考えれば、泊まるにしても身支度が必要だったな」

一方「あァ?」

イン「あ、そっか。私達の荷物は全部とうまの家だぁ」

ステ「ふむ……ここからなら、さしたる距離でもないかな。どれ、僕が取ってくるよ」

一方「お、オイオイ! てめェボディーガードだろうが!」

ステ「第一位殿が付いていてくれるなら安心だ。まさか、自信が無いのかな?」ハン

一方「やっすい挑発してンじゃねェぞ……待ち合わせはどうすンだよ」

イン「それなら大丈夫。私が連絡用の護符を持ち歩いてるから」

ステ「魔力を辿ればあっという間さ。では失礼」

一方「勝手に決めてンじゃ……」



スタスタ


827 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:12:49.98 ID:M+yRV3QB0



一方「チッ、何なンだアイツ?」

イン「ふふ、私が意地悪言ったから空気読んだのかも」

一方「…………どういう意味だそりゃ」

イン「ねぇ、あくせられーた。何か悩み事があるの?」



一方「…………ッ!! こンなとこ来てまでお仕事かよ、仕事熱心なシスターだな?」

イン「うーん、私も自分の問題はあるんやけど。
   でも、あなたのそんな顔見たらほっとけないんだよぉ」

一方「……誰彼構わず手ェ差し伸べてっと、そのウチ自分の首が回らなくなンぞ」

イン「………………」



(…………エツァリにも、同じような事言われたなぁ。でも)





「それでも、やっぱりこれは――私が望んでしている事だから」




828 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:15:28.15 ID:M+yRV3QB0

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痛みを堪えるようなシスターの笑顔を目の当たりにして、一方通行は今日何度目かの舌打ちをした。

つまるところ『コレ』は、単なる傷の舐め合いにすぎない。



(だが、そンなみっともない行為に縋りつきたくなるほど……)



罪人は、追いつめられていたのかもしれなかった。

男は背を向けて、夕日に泥む平穏な街並みに視線を逃がした。

買い物カゴをぶら下げる女子学生、学校帰りに馬鹿笑いしている少年たち。


広々とした空の下にあふれている、生の実感。


この空間に己が存在するという事実が、一方通行に筆舌に尽くし難い違和感を齎していた。

やがて白髪の男はかぶりを振って、インデックスに向き直った。



「…………くだらねェ愚痴に、付き合おうってのか? 聖者サマよ」



829 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:16:29.37 ID:M+yRV3QB0



煌めくような銀髪の聖女は、先刻と変わらぬ姿形で佇んでいた。

間違い探しをするとすれば、その視線。



「もちろん。私で良ければ」



視線だけが赤髪の神父の足跡を辿っていた事を、本人は自覚していないようだった。



「そうか。なら聞いてくれるか、インデックス」


「……どうぞ」



微笑みながらも、インデックスの表情には同時に『弱さ』が見え隠れしている。

そんな彼女に対して一方通行は――自らの『弱さ』を、叩きつけてしまった。


830 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:19:03.17 ID:M+yRV3QB0







「打ち止めに、プロポーズした」






831 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:20:07.59 ID:M+yRV3QB0


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「女の荷物とはなぜこうも多いんだ……」



上条家に一旦帰ったステイルは、美琴に事情を説明してインデックスの必需品をまとめてもらった。

自分のそれと比べて三倍はあろうかという女性の身支度品に辟易しながらも、

彼は探査術式が導く地点――おそらく一方通行の住居――に向けて歩を進めていた。



(…………なぜ、僕は彼女から離れたのだろう)



荷物の重さが徐々に苦にならなくなってくると、

彼は目を逸らしていたある事実に正対せざるを得なかった。


護衛の放棄。


ロンドンの仲間の耳に入れば、そう詰られてもおかしくない行為であった。

832 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:22:53.52 ID:M+yRV3QB0


たとえ学園都市最強の能力者、『一方通行』がステイルをはるかに凌ぐ実力者だったところで、

それが最大主教の身柄を一時的にとはいえ預ける免罪符になど成りはしない。

『科学』は、間違っても心を許してよい隣人ではないのだから。



(…………………だとすれば)


                                   ひと
だとすれば、ステイル=マグヌスがこの世界で最も大事な女性から逃げ出した理由とは。






(僕は、彼との邂逅を――――恐れていたんだな)





833 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:23:57.75 ID:M+yRV3QB0


「あれ、アナタ…………」



意識の海に沈みかけていたステイルを、鈴の鳴るような声が呼びもどした。

顔を上げればそこには、彼も『良く知る』顔があった。



「『妹達』か、君は?」



御坂――いや、上条美琴に瓜二つな顔をした少女に、気が付けばステイルはそう問い掛けていた。

そして、すぐに後悔の念に襲われた。



(何をぶしつけな事を……! どうかしてるな、まったく)


834 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:25:30.82 ID:M+yRV3QB0


『彼女』達の数奇な事情を少し考えれば、

見ず知らずの男にそう呼ばれて良い気がしないことは察しが付く筈である。

しかし瑞々しい栗色の長髪をたなびかせる少女は、気にした様子も無く無邪気に笑った。



「わたしの事を知ってるなら、ステイル=マグヌスさんで間違いないよね。
 はじめまして! 御坂家の末娘、打ち止め(ラストオーダー)って言います!」



ステイルはその瞬間、つくづく自らの頭の回転が鈍っている事を痛感した。

打ち止めが自己紹介に対して反応を見せずに俯いた男を不思議に思い、その眼前まで歩み寄った。

ようやく神父の腕がユラリ、と動いたと思うと――少女のアホ毛がむんずと掴み取られた。



「ななな、何するの!? ってミサカはミサカは」

「ええい、やかましい! ミサカネットワークとやらの管理者なんだろう君は!?
 一言物申すぞ、僕らへのプライバシー侵害についてぇ!!」


835 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:26:28.45 ID:M+yRV3QB0


「え、えー…………。何のことでございましょう?」

「僕らの話題で持ち切りだそうだな……! 変態夫婦の片割れから聞いたぞ!」

「そ、その夫婦は自分達の私生活を赤裸々にみさつべにうpしてるから、
 別にあなたたちのホームビデオぐらいいいかなぁと思って………
 ってミサカはミサカは責任転嫁してみたり♪」

「それはただの衆人環視プレイだあぁーーーーっ!!!
 みさつべって何だ、ビデオってどういう事だあああ!!!!」




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836 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:27:54.87 ID:M+yRV3QB0


ひとしきり拳骨制裁を加えて溜飲を下げたステイルは、

大学帰りだと言う打ち止めに先導されて彼女の住居への道のりを歩む。

午後五時半を回ろうかという時間帯ではあったが、夏至が近づき日の長くなるこの季節、

まだまだ子供たちが安心して遊びまわれるほどの光量は残されていた。



「インデックスさんがお料理!? うーん、これは私も負けてられないっ!」

「二人で作ってもらっても一向に構わないが……食べ物を並べてくれよ」

「失礼な言い方! あの人もいっつもそんな感じだし!」

「相乗効果で不味くなる可能性を考慮に入れないといけないからね」

「ぬぬぬーーー!」



すっかり遠慮が消えて無礼に接するステイルに対して、少女は感情を前面に押し出して抗議した。

年甲斐の無い仕草に大きく息と煙を吐いた不良神父は一度周囲を見渡すと、やや声を抑えた。

837 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:29:01.96 ID:M+yRV3QB0




「一つ、失礼な質問をしていいかな? ……その上、たいした意味もない質問だ」

「……そういうのって、聞いてみないとわからないよね。
 『これからあなたに無礼を働きます』みたいな宣言の方がわかりやすい、って私は考察してみる」

「…………日本人はまわりくどい表現を好むと聞くがね」


かと思えば、打ち止めは澄ました顔で正論を吐いてきた。

もう一つ掴みきれない少女の素行に、ステイルは無意識のうちに『彼女』を重ねていた。







「君は、一方通行という男を―――――なぜ愛した?」







「…………見てたから、かな」


838 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:30:36.57 ID:M+yRV3QB0





答えが還ってくる事を半ば期待していなかった男は、鸚鵡の如き反応しか取れなかった。

いつの間にか、二人は歩を止めていた。


「見て、いた?」

「あなたは、絶対能力進化実験を?」


打ち止めの躊躇なき問いに、ステイルの方が言葉を一瞬飲み込むほどだった。

気が付けば近傍では、鴉と彼らの声音だけが空気を振動させていた。


「……概要と、顛末ぐらいなら知っている」

「そう。だったら、掻い摘んで話しても大丈夫そうだね」

「そもそも、話したくないならそれでも」


終いには、聞いた側が制止をかける始末である。

しかし少女は、男のためらいを優しく振り切った。

839 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:33:28.09 ID:M+yRV3QB0


「今は、話したい気分なの。私たち――『ミサカ』たちが
 見た事、聞いた事を共有できるのはもうわかってるよね?」

「ああ、実感としてね」

「つまり私は、一〇〇三一回『私』を殺したあの人の顔を、知ってるの」


壮絶な『経験』ではあるが、この件について妹達の間では半ば清算が為されていた。

それ故、打ち止めの面差しはあくまで自然体のままだ。

対照的にステイルはその言葉を境に深く瞠目し、咥えた煙草を上下に揺らし始めた。




「ある時ふと思ったの。この人は、何を考えてこの実験に参加してるんだろう。
 一分一秒を、どんな風に過ごしているんだろう、って」



「一方通行の事を、知りたかった?」



目を瞑ったままの男の問い――呟き、と呼ぶべきかもしれない――に、

小動物のそれのように人を優しくさせる笑みで、少女は頷いた。

840 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:35:55.88 ID:M+yRV3QB0





ステイルはもちろん知らない。


『どうして、こんな辛そうな顔で自分を見るのだろう』

『この人の事を、もっと知りたい』


それが、インデックスが彼に想いを寄せ始める端緒に酷似していた事など。

ステイルは断じて知り得ないし――――



「……やはり僕の『問題』については、君の恋人に尋ねてみるほかないようだ」



――――知っても、仕方のない事だった。


841 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:39:42.97 ID:M+yRV3QB0




「あれ、もう終わりで良いの? もっとあの人とのなれ初めについて惚気たかったんだけどなー」

「最初に断っただろう? 無意味な質問かもしれない、とね。
 ………………一方通行には、『意味』のある問いをさせてもらうだろうが」

「…………喧嘩だけは、しないで欲しいな」


男の口調の裏に潜む陰性の何かに気が付いたのか、打ち止めは不安そうに釘をさす。

しかしようやく瞼を持ち上げたステイルは、歩みを再開してその表情を隠した。


「約束は、出来かねるね」


影法師が長く長く、アスファルトにその姿を現す。

東の空に既に現れていて然るべき一番星は、灰色の帯の後ろに隠れていた。



(明日は、雨だろうか)



脈絡もなく、ステイルはそんな事を考えた。


842 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:42:14.00 ID:M+yRV3QB0


夕食の為の買い出しを終えた二人は、一方通行の部屋に到着していた。

広すぎず、狭すぎず。

仮に子供が一人加われば、理想的な心と肌の距離感がそこに生まれるのだろう。

インデックスはキッチンにある調理器具の把握につとめつつ、冷蔵庫に食材を詰めている。

その後ろ姿に、自宅だというのにリビングで所在なさげにしている一方通行が語りかけた。


「今月の末に、アイツの両親に会うことになってる」

「そうなんだ。…………ご家族に会うのが、こわい?」


振り向かずに、女は答える。


「ご両親に、なにか恨み事を」

「違ェ。そうじゃあない。…………逆なンだ」

「逆?」

「会って、許されないのが怖いンじゃねえ」

843 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/25(土) 18:45:15.75 ID:M+yRV3QB0
訂正
>>842の冒頭に


--------------------------------------------------------------------------------


があるものと思ってくださいな 
844 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:46:14.83 ID:M+yRV3QB0






他の音が全て消え、男の独白のみがインデックスの耳に届いた。





「――――『許される』のが、恐ろしい」





白を基調に品よく整えられた空間に、沈黙が降りた。





845 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:47:30.79 ID:M+yRV3QB0




「たっだいまー!」

「お邪魔するよ」


静寂を裂いたのは、玄関口から呼びかける賑やかな居住者だった。

無機質な重みの漂っていた部屋に、優しい温かみが戻ってくる。


「久しぶり、インデックスさん! ってミサカはミサカは感極まって抱きついてみたり!」

「大きくなったね、らすとおーだー! 身長では抜かれてしもたわー」

「……そのかわり、特定部位では大きく水をあけられてるような」

「そんな恨めしそうな顔でどこを見てるのかな!?」


キッチン周辺が途端に騒がしくなり、静寂を分けあった二人は密かに溜め息をついた。

先刻までのやりとりを悟らせない尖った表情で、一方通行は恋人の同伴者を睨む。


846 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:48:30.87 ID:M+yRV3QB0


「なんでてめェが、打ち止めと一緒に帰ってくるンだァ?」

「偶然以外にどんな理由が有り得るのか、その頭脳で考え付いたらぜひ教えてくれ」


学園都市第一位の殺気を内心ビクビクでかわしながら、ステイルは再会を喜びあう二人の女性を見やる。

此方にはさして注意を割いていないようだが、この場で一方通行と問答する事はためらわれた。


「いまは女性陣の手料理を楽しみに待とうじゃないか」

「……メルヘンな物質が出てくるわけじゃねェンだがよ、決して期待して良いモンでもねェぜ」

「ちょっとアナタ! 聞こえてないと思ってるの!?」

「うっせェんだよクソガキ。さっさと食すに値するブツ出せ」

「ステイル、今日はハンバーグにするからねぇ」

「……別に、ハンバーグだからどうという事もないが…………その、楽しみにしてるよ」

「うん!」

((ケッ))


847 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:49:29.60 ID:M+yRV3QB0




和やかな雰囲気が再び張り詰めることは無く、やがて四人は食卓を囲んだ。

打ち止めの差し出す箸に、一方通行が白い肌を僅かに紅潮させてうろたえる。

インデックスがそれをからかい、ステイルは肩を竦めてたしなめる素振りだけ見せた。

それはこの上なく平穏な、やわらかい時間であった。







しかしそれが、単なる困難の先送りに過ぎない事を。

ステイル=マグヌスは、確りと知悉していた。




848 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:50:19.05 ID:M+yRV3QB0


-----------------------------------------------------


ステ「そう言えば…………」

一方「ああン? どうかしたか」

ステ「いや、腐れ金髪アロハグラサンから何か届いていないかい?」

打止「んー、もしかして」ニヤリ

一方「…………おォ、あれかァ」ニタリ

イン「うう…………予想の斜め上をゆく事が今から見えてるンだよ……」

一方「そんな落ち込むンじゃねェよ、シスター。
   オレがシスコンから受け取ったのはメール一通だけだァ」アハギャハ

ステ「その不気味な笑いで心安らぐとでも思うか! 何が添付されていた!?」

打止「なーんにも。メール本文も一行だけだったよ」

イン「ほっ……、ってインデックスはインデックスは肩の荷が降りた気分で」

ステ「まだ気を抜くには早い! 何だったんだ、土御門からの通信は…………!」

一方「たいしたもンじゃねェっつってンだろ。単なる」

ステイン「「単なる…………?」」

849 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:51:21.40 ID:M+yRV3QB0





一方「とある大型動画投稿サイトのアドレ」




ステ「土御門ォォォーーーーーッッ!!!」

イン「もとはるゥゥゥーーーーーッッ!!! さすがに今回は許さないンだよォォォ!!」





打止「この間百万再生突破してたよぶらぼー!
   ってミサカはミサカは祝福の言葉をかけてみたり!」




ステ「ジーザァァァァァス!!!!!」

イン「不幸かもおお!! ってインデックスは(ry」




850 :一方通行編[saga]:2011/06/25(土) 18:52:09.40 ID:M+yRV3QB0


--------------------------------------

OUT

トンデモ発射場レディー(美琴が矯正)

窒素爆槍(上位能力で上書き)


IN

心理掌握 ←New!

粒子加速器 ←New!

最終信号 ←New!


--------------------------------------


856 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:02:53.86 ID:qbPgcS030



第七学区 とある路地裏



イン「これはこの辺の方が良いと私は思うンだよ」

ステ「いくら貴女でもこれに関しては僕に一日の長がある。今のままがベストなんだ」

イン「ふぅん、私に勝負を挑もうっちゅうん?」

ステ「……いいさ、今日は切り上げて心ゆくまで論戦を交わすというのも悪くn」



ギュルギュルギュルギュルグー



イン「…………」

ステ「………………」

イン「その前にご飯にしよっかぁ」テヘ

ステ「…………腹の音にも淑女の嗜みを求めたいね」ハァ

イン「あ、あれ! あっちで何か騒ぎかも!」

ステ「やれやれ。…………しかも本当だし」ハァァ


857 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:03:49.16 ID:qbPgcS030





少女「ごめんなさい……! 私、友達と待ち合わせで急いで……」

不良A「近道によりにもよってこんな道選ぶなよなガキぃ! 見ろや!
    テメェのせいで俺の一張羅が台無しなんだよ!!」

少女「でも、私はちゃんと避けて…………」

不良B「口答えしようってのか加害者の癖してよお!!!」

少女「ひっ! ご、ごめんなさい……!」



「ちょっと待ちなさい、あなたたち!」



A「んだよねーちゃん、俺ら今三人でお喋りしてんだよ。何の権利があって」



佐天「警備員(アンチスキル)です!」


858 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:04:59.87 ID:qbPgcS030



B「げっ」

A「ちっ…………別に俺らは悪くねぇよ。
  そのガキがぶつかって来たせいで飲みもんこぼしちまって、シャツがひでぇ有様だ」

少女「だ、だから! あなたたちが脇にのいた私にぶつかってきたんじゃないですか!」

A「警備員が来たからってツケ上がんじゃねぇ! それはてめえの言い分だろうが!」


佐天「……なるほど。だったら全員詰め所まで来てもらって、詳しく事情を聞きます」

AB「…………」

佐天「やましい事が無いなら来れるよね?」

B「……おい」

A「…………くそがぁ。良いよ別にそこまでしねーでも」

佐天「そう。だったら一件落着でいいのね?」

A「………………」

B「行こうぜ」

A「けっ」

859 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:05:53.52 ID:qbPgcS030




佐天「大丈夫?」

少女「あ、ありがとうございますお姉さん!」

佐天「いやいや、これも仕事のうちだから。気にしない気にしない!
   それよりこの通りはああいう子が多いから、次からは注意してね」

少女「はい、ごめんなさい…………えっ?」

佐天「どうかし……ッ!!」



ボウッ!



A「ばーか、痛い目見やがれクソアマ!!」

少女「あ…………」

佐天(発火能力! 避けたらこの子が……ダメッ!)



860 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:07:43.95 ID:qbPgcS030



轟「!!」



「火の扱いがなってないね、ボウヤ」



佐天「え?」

B「な、なんだ今の……」

A「あんなメチャクチャな炎、大能力者でもなきゃ、ヒッ!」




「いけないなぁ、そんな中途半端な火じゃ焼かれた人が苦しいだろう?」



スタ スタ スタ



「人様に向ける時は、こう」


861 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:08:37.46 ID:qbPgcS030



ボウッ


「――――骨も残さないようにやるものだ」







AB「」バタン




862 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:09:40.53 ID:qbPgcS030


ヒョコヒョコ


イン「怪我してませんかぁ、二人とも?」

少女「」ボー

佐天「んえ? …………あ、あなた達何やったんですか? その子たちは……」

ステ「見てただろう? 少し脅かしただけさ(催眠魔術だが)」

佐天「っていうかだいたい、何者なんですか……?」

イン「そう聞かれると困るけど。ってインデックスはインデックスは思案するンだよ」

ステ「レディーの質問には答えるのが礼儀というものだね。僕らはご覧のように、通りすがりの」

佐天「通りすがりの?」




ステ「…………えーっと。神父とシスター、さ」

佐天「……助けてもらったところ申し訳ないんですけど。
   今の『えーっと』とその珍妙なファッションについて二、三お聞きしたいんですが」

ステ「出来れば遠慮しておきたいな」

佐天「じゃあID、見せてくれます?」

ステイン「「………………」」


863 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:10:32.32 ID:qbPgcS030


佐天「あー。とりあえず、支部まで御同行お願いしますね」

イン「…………ステイルぅ」ジトー

ステ「………………ソーリー(しょうがないな……連絡するか)」ピ



表通り



佐天「それじゃ、あなたはここで。今後は気を付けるように!」

少女「はい、ありがとうございます! ……あの、そちらの神父さんとシスターさんも!」

ステ「ん?」

イン「別に私は何もしてないよ? お礼はコッチに言うたげて」

少女「じゃ、じゃあ…………神父様、助けてくれてありがとうございました!」

864 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:12:17.29 ID:qbPgcS030


ステ「世の中、女性を守るのは男と相場が決まっている。お気になさらず、レディー」

イン「……キザったらしいンだよ」ボソ

少女「ああああの! また、お会いできるでしょうか?」カァ

イン「」ピシッ

ステ「……神の思し召しのままに」プカー

少女「は…………はい!」パァ

イン「ぬぐぐゥ」

佐天(カッコつけてるけど適当にあしらってるだけだよねコレ)


少女「それじゃあ失礼します!」ペコリ

ステ「ああ、お元気で」フリフリ

佐天「さようなら」フリフリ

イン「…………じゃ、じゃあねぇ……」フリフリ



佐天(でも、あの物憂げな表情…………)


865 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:13:39.31 ID:qbPgcS030


イン「むむー。ほら警備員さん、早く行こ! 
   ってインデックスはインデックスは危機感を感じつつ話を逸らしてみたり!」

ステ(危機感?)

佐天「……あ、はいはい! 二人とも、途中で逃げようなんて思わないで下さいね!
   仕事を別にしても、助けてくれたお礼もしたいんですから」

ステ「仮にも職務中なんだろう、しっかりしてくれ」ヤレヤレ

佐天「うう…………どうせ私は新米ですよ」



スタスタ ヒョコヒョコ     スタスタ



ステ「警備員というのは、有志の教員から成るんだったかな」

イン「じゃああなたは先生なの?」

佐天「まだ二年目のぺーぺーだけどね」

ステ「その割には警備員などやってるじゃないか。どちらも楽な仕事じゃないだろう?」

佐天「あはは、確かにそうなんだけど。ウチの部隊は体力自慢が特に揃ってるから、
   それについていくと自然に………………はあぁぁ」

ステイン「「?」」

866 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:14:33.76 ID:qbPgcS030



警備員第七三活動支部



佐天「こんにちはー!」



白井「あら佐天さん、今日は非番でしょう?」

佐天「まあ、ちょっと一言では説明しにくい事情があって」

白井「…………人の事は言えませんけど、自らの職掌は最低限把握してくださいませ」

佐天「あっはっは」



黄泉川「若いうちは危ないことに首を突っ込んで痛い目見るのも勉強じゃん」

佐天「あれ、黄泉川先生! なんで支部に?」

黄泉「お前が連れてきたその二人のことでちょっとな」

佐天「…………へ? なんでもう知ってるんですか?」

白井「そうそう、先ほどから気になっていたのですがそちらは? 不審者ですの?」


867 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:15:43.42 ID:qbPgcS030


ステ「ふう、しっかり仕事をしてくれたようで何よりだ」

黄泉「統括理事会から、『赤髪の神父と白髪のシスターのIDについては不問とする』
   …………って極秘のお達しじゃん、佐天」

イン「白髪じゃなくて銀髪って言うんだよこれは!」プンスカ

ステ「どうどう」


佐天「そ、そんなタイミング良く!」

白井「イマイチ解りませんが、偶然ではない、と考えるのが自然ですわね」

黄泉「全くだ。私も納得しきれないから、せめてこの支部で一目見てやろうと思ったじゃん」


イン「うう。敵意むきだしなんて勘弁やわぁ」

ステ「そう睨まずとも、理事の一人と知り合いなだけさ(まあソイツに頼ったわけじゃないが)」

佐天「理事会って、そんな大物を、え? 私、教師生命ピンチ?」

イン「まあ落ち着いて、ってインデックスはインデックスは宥めるかも」ポンポン

白井「そういう棘のある雰囲気ではありませんわね」



黄泉「理事ってのは、上条当麻か?」

ステ「…………なぜ、そうお思いに?」

868 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:16:44.05 ID:qbPgcS030


黄泉「本部を出る時にアイツが来て、ペコペコ頭下げてきたじゃん。
   おかげでこっちの方がパニックになったじゃん」

ステ(結局、上条当麻の耳に入ってしまったか……)

イン(………………)


佐天「上条…………ってもしかして」

白井「まあまあ! それではアナタ、お姉様の話に何度かのぼったインデックスさん?」

イン「お姉様ってぇ?」

白井「もちろん御坂…………か・み・じょ・う・美琴お姉様ですの!!」

佐天「憎い敵のように『上条』を噛み砕かなくても」

ステ(僕らが歩くとあの夫婦の関係者に当たるな……)

黄泉「インデックス…………? 珍しい、でもどこかで聞いたような」ハテ

ステ「その上条当麻から聞いたんでしょう。彼女とヤツは一緒に暮らしていた時期があるので」


イン(ステイル?)ゴフシヨウチュウ

ステ(必要以上に貴女の素性をばらす事は避けるべきだ)オナジク

869 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:17:49.88 ID:qbPgcS030


佐天(美琴さんの話ではインデックスっていうと……)ウーン

白井(ここは空気を読むべきなのでしょうか……)ウーン

黄泉「? まあ、そうかもしれないが……お前らなに黙りこくってるじゃん?」

四人「「「「いや別に」」」」


黄泉「……やれやれ。害は無さそうだし、私は帰るじゃん」

白井「黄泉川先生! せめて隊長が戻るまでは居てくださいまし!」

黄泉「アイツの相手は疲れるからゴメンじゃん!! そんじゃお前達、悪さするなよ!」ダッ



ガチャッ バンッ!!



イン「どうかしたのかな?」

白井「逃げられましたわ…………」

ステ「『隊長』がどうかしたのかい?」

佐天「…………はぁ。それよりお礼がまだでしたね。この度h」


871 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:20:41.80 ID:qbPgcS030



グワラゴワラドシャガッキーーーン!!



佐天「!?」

白井「て、敵襲ですの!? どこから!?」

イン「………………な、なンなンだろう、ビックリしたねェ」



ステ「今のは彼女の腹の虫がホームランを打った音だよ」

イン「ちょっとステイルーーーーー!?」

ステ「怒鳴りたいのはこっちだ!!
   どうしたらあんな真芯でボールを捉えたような、
   いや金属バットをへし折ったような破砕音がする!?」

イン「だってだって! 今朝もみことはご飯三杯しか食べさせてくれなかったし!
   そろそろ夏の甲子園予選の時期だし!! ってインデックスは(ry」

ステ「空腹が極限に達すると季節の風物詩が棲みはじめるのか貴女の胃には!」


872 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:21:20.24 ID:qbPgcS030


ワーワー ギャーギャー



白井「」ポカーン

佐天「えーっと、要約するとつまり……?」

イン「おなか減ったンだよ!」

ステ「…………すまない、出前のメニューか何かあるだろうか?」



一時間後



空になった丼×10「」

イン「ごちそーさまでした!」

佐天「……噂に聞いていても、実際に目にするのとは大違いだって実感するなぁ」

イン「これでも腹六分目かも」

佐天「oh…………」

873 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:22:16.49 ID:qbPgcS030



白井「…………では、佐天さんを助けていただいた、ということですのね」

ステ「そんな大層な事じゃあないよ」

白井「友人を助けていただいた事に変わりありません。わたくしからの礼も受け取ってくださいな」

佐天「ステイルさん、ありがとうございました!」

ステ「…………『これ』のお代を持ってくれればそれでいいさ」



白井「……お願いしますわ、佐天さん」

佐天「えええ!? 今一緒にお礼してくれるって言ったじゃない!」

白井「んまー! 直接救って頂いた誠意を見せるというのに
   他人に集るなんて、警備員の風上にも置けませんの!」

佐天「なにその清々しいまでの手のひら返し!? トホホ、安月給にはきついなぁ…………」

ステ「僕らの財布も苦しいんでね、どうかよろしく」

イン「ありがとうねぇ、るいこ!」ニコッ

佐天(インデックスちゃんって、思わず許したくなる笑顔だなぁ)ハァ

白井(生き易そうです、ふらやましいですの)フッ

874 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:23:02.74 ID:qbPgcS030



ステ「ではそろそろお暇しようか」

佐天「えー。もう少しお喋りしません?」

イン「…………」

白井「わたくしは仕事中なのですが……」

佐天「まあまあ……二人であの人の帰りを出迎えたいの?」

白井「さーさどうぞお寛ぎくださいな! お茶とお菓子などいかが?」

イン「よろしく頂くんだよ!」

ステ「いま食べたばかりだr」



ドッカーン!



イン「…………」

ステ「……言ったそばからこれかい?」

イン「こ、今度は違うかも!」

875 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:23:57.92 ID:qbPgcS030


佐天「あー……これはその、ウチの隊長の御帰還でして」

ステ「…………聞き忘れていたが、ここは何支部だったかな?」

白井「第七三支部ですが」

ステ「……………………はぁぁぁぁぁ」

イン「七三支部だとどうかするの、ステイル?」

ステ「すぐにわかるさ」

イン「?」



ゴシカァァァァン!!



イン「こここ、今度はなに? ってインデックスはインデックスは狼狽してみたり」

白井「効果音だけではおわかりにならないでしょうが」

佐天「今の、ドアが開いた音だよ」

イン「は?」

876 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:25:29.91 ID:qbPgcS030




削板「 い ま 帰 っ た ぞ お お お お お ! ! ! ! 」




イン「」

ステ「第七位、削板軍覇。そういえば警備員をやってるんだったな……」

佐天「さすが隊長、有名人だなぁ」

白井「そんなに叫ばなくとも聞こえておりますわ隊長!!」


削板「んん? そっちのイカレたファッションの二人組は何者だ?」

白井「聞いて下さいまし!」

ステ「朝起きて鏡を見る習慣はついてるのか貴様ぁ!」

イン「あんちすきるって防護服着るんじゃなかったっけぇ」

佐天「素の防御力が駆動鎧以上、っていうか異常だから要らないの」

イン「…………あれ、私服って言うんとちゃうん?」

877 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:26:37.56 ID:qbPgcS030


白井「それで? 喧嘩の仲裁は無事終わりましたの?」

イン「仲裁て」

佐天「酔っ払いの言い合いにレベル5が駆け付ける、それが警備員第七三管轄区だよ」

ステ「なんだその神室町も真っ青の治安維持は!
   だいたい学生の街でそうそう酔っ払いがたむろしてたまるか!!」

イン「おちおち試食コーナーにも張り付けないかも……」

ステ「立場を自覚してくれ! 施す側だろう貴女は!!」



削板「おお、聞いてくれ白井、佐天! なかなか根性のある事態になった!
   俺は通報を受けてすぐさま現場に向けてすごシュしたのだが」

ステ「……なんて?」

削板「すごーいダッシュ。略してすごシュだ」



ステ(…………バカか、こいつは…………)


878 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:28:07.37 ID:qbPgcS030



イン「外に自動車が止まってるけど、あれは使わないの?」

佐天「隊長は装甲車使わないの。まず運転できないし」

白井「『車より俺の方が根性がある!』とかなんとか。実際車より速いですし」



ステ(…………バカな)



削板「ところがどっこい、車道を爆走していた俺はどこでどう道を間違えたのか
   気が付けばハイウェイを大爆走していたんだ!!」

イン「ええええェェェェ…………」

削板「まあ最終的には現場に着いたから心配ない! もう喧嘩は終わってたけどな!!!」



ステ(………………バカだ、こいつは………………)


879 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:29:30.94 ID:qbPgcS030


削板「終わりよければ全て良し!! そうだろう?」

白井「ちーっとも良くありませんわ!!」

佐天「結局高速を攻めてきただけって事ですよね」

イン「走り屋っちゅうやつかな? 憧れちゃうンだよ」

ステ(そんな頭文字○は嫌だ)



削板「それよりそっちの二人!!! その風体……ズバリ魔術師だな!!」

ステ「おおっと」

イン「テレポーター!」

ステ「*いしのなかに……違うわ! 
   僕らは通りすがりのかm……宗教関係者だよ。そこの女性を助けただけさ」

白井(呼ばれたかと思いましたの)

佐天「この人たちの言ってる事は本当ですよ! 確かにセンスはアレですけど」

ステ「おい」

880 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:30:39.34 ID:qbPgcS030


削板「ええい黙れ黙れ! 離れていろ二人とも! 
   貴様らが例の魔術結社の手先というわけか!!!」

ステ「なに…………?」

削板「最近巷で大人気のあの魔術結社だあ!!!!」

イン「私達はそンな怪しい者じゃありまへん! っていうか大人気!?」

削板「とぼけるなあああああ!!!! 根性が足りん証拠だ!!!」

イン「ひゃぁ!!」

ステ「いちいち喧しいんだよ! ボリュームのツマミはどこに落としたんだ貴様!!」

削板「うるさいのは貴様らだぁぁ!!!!!!」



白井(どう考えても隊長の方がうるさいですの)

佐天(『!』の数が尋常じゃないよね、いつも通り)


881 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:31:38.99 ID:qbPgcS030


削板「もうとっくに調べはついているのだぞ! 
   貴様らが千○県○安市に拠点を構える魔術結社、その名もぉっ!!」

白井「千○県…………?」ハッ

佐天「○安市…………?」ゲッ

ステ「駄目だ待つんだ、一体何を口走るつもりだ」

イン「?」



削板「『ね○み色の夢の国』の手先だとなぁ!! 普段は○○○ー○○スにでも扮してるんだろ!?」



ステ「貴様それ以上発言するなァァァァァァァーーーーーーッッ!!!!」

白井「隊長ぉぉぉぉぉ!!! 出過ぎです、ご自重くださいませぇぇえぇ!!」

佐天「学園都市ごと消されちゃいますよおおおお!?」



イン「…………ああ、○ィ○○」

ステ「よさんかァァァァァァーーーーーッッッ!!!!!」


882 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:33:22.21 ID:qbPgcS030



三十分後 支部前



ステ「やっと解放された…………」

佐天「いやホント、今日は二人に迷惑かけちゃったね!」

ステ「今の心労は主にあの男のせいだがね」シュボ

佐天「あれで結婚してるらしいんだよね。噂だけど」

ステ「んなアホな…………」

イン「本人に聞いたの?」

佐天「うん…………でも戸籍上はどこにもそんな痕跡ないの。
   隊長は見栄張るような人じゃないから、ウソじゃないとは思うんだけどね」

ステ「それはいわゆる……」

佐天「学園都市七不思議が一つ、『第七位既婚者説』だよ」



イン「…………いや、本人に聞けば一発じゃん?」

佐天「ま、相手が相当の恥ずかしがりってのが真相らしいんだけど」

ステ「さっきまでのいかにもな語り口調は何だったんだ!」

883 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:34:12.34 ID:qbPgcS030




イン「あんちすきるって事はぁ、ぐんはも先生なんだよね……?」

佐天「…………戦慄の事実だよね、やっぱ」

ステ「大丈夫なのか、学園都市の教育現場は……」フー



佐天「…………教育、か」

イン「るいこ、どうかした?」

佐天「二人は、十年ぐらい前のこの街を知ってる?」

ステ「……ああ」

イン「…………うん、良く知ってるよ」

佐天「どう見える? 十年前と、今の学園都市。較べてみてさ」

884 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:36:46.27 ID:qbPgcS030


ステ「……僕には、あまり変わっては見えないな」

佐天「そっか、魔術師だもんね。あなたたちは『知ってた』人なんだね」

イン「……るいこには、どう見えてるの?」



佐天「私の景色は、だいぶ変わったかな。
   これでも、『暗がり』の端の端っこぐらいには行った事あるの。
   …………でもそんなのはホント、氷山の一角でさ」

ステ「『滞空回線』、『0930事件』、『サードウォー症』、そして…………『魔術』」

イン「この三年で世間に広く認知されたモノだけでも、沢山あるね」

佐天「うん。怖い場所だよ、此処は。…………それでもね」


「それでも、子供たちは今もこの街に居て、未来を探してる」


「そんな次の世代に、痛みを知った私たちが。私たちだからこそ」


「沢山の悲劇を知って、乗り越えてきた一世代前の『学生』の手で」




「科学が人を幸せにできるって、証明しないとね――って思うんだ」


885 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:37:37.74 ID:qbPgcS030



佐天「なーんて偉そうなこと言って私、今も昔も無能力者(レベル0)なんだけど!」アハハ

ステ「…………関係無いね」

佐天「え?」


ステ「力があるから人を救うんじゃない。人を救うために力を手に入れるんだ」

イン「わたしたちは知ってるの。その手を迷いなく、救いの為に差し伸べられる人たちを」

ステ「あの忌々しい男(やろう)には、そんなちっぽけな能力なんて関係ない」

イン「あの勇敢な女性(ひと)には、そんな大層な能力なんて関係ないの」



「あなたも知ってるよね? その二人にはね」


「『力』よりも、更に内に秘める『信念』の方が」




「遥かに大事な――――芯、なのさ」


886 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:42:15.93 ID:qbPgcS030



ステ「僕も、紛れもなく持たざる者だ。そして魔術とは、持たざる者の為の『技術』なのさ」

佐天「……あなたが、持ってない人? あんな凄い能力があって?」

ステ「もちろん、それ相応の血反吐は吐いたさ。しかし、僕自身はどこまでいっても……凡人だ」

イン(すている…………)

佐天「努力で、そんな力を手に入れられるの?」

ステ「何を他人事のように。君だって、だからこそ警備員になったんじゃないのか?」



佐天「! ……そう、なんだよね。能力なんて無くても、誰かを守りたかった。

   能力なんて無くても、私は私だって言ってくれた親友がいるから」



イン「良い友達がいるんだねぇ」ニコ

佐天「うん、最っ高のね! そういう友達の励ましがあったから。
   削板隊長の地獄を一周して天国行ってからまた地獄に落とされる……!」





佐天「あの、あの阿鼻叫喚の特訓に耐えられるんだからぁぁぁあ!」ウワァァン


887 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:43:26.40 ID:qbPgcS030



イン「途中までイイハナシだったはずですのに……」

ステ「まさかのガチ泣きか……アワレだな」プカー




佐天「アケミ、むーちゃん、マコちん、えりちゃん、絆理ちゃん、美琴さん、初春ぅ!!!」




佐天「私は強く生きてるよおおおおお!!!!」ウオオオ




イン「夕日でもないのに叫んでるじゃん」

ステ「隊長の教育の賜物かな」

削板「良い根性だぞ、佐天んんんんん!!!!!」

ステ「人間ビックリ箱か貴様! どこから現れた!?」

イン「この人だけはホンマわからんわぁ」ハァ


888 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:45:13.01 ID:qbPgcS030



佐天「何かスッキリしたなぁ。ステイルさん、ありがとね! 
   …………ってこれ、今日何回目かな」ハハ

ステ「ふむ……君の年齢は?」

佐天「二十三、だけど。それがどうかした?」

ステ「僕はまだ二十四でね。たった一つ年長の相手に
   『さん』付けするのが日本の礼儀ならうるさくは言わないが……」

佐天「それって……」

イン「あ、私もちゃんと名前で呼んで欲しいな!」



佐天「……ふふ、りょーかいりょーかい! それじゃ、最後のお礼にしとくね」


889 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:46:20.68 ID:qbPgcS030



佐天「今日一日、助けてくれて、話を聞いてくれて。
   ありがとう、インデックス! ありがとう、ステイル!」

イン「どういたしまして、なんだよ」ニコ

ステ「どういたしまして、涙子」フフ

佐天「! …………それじゃあ私も帰るから。またね!」

ステ「お、おい?」



タッタッタッ



イン「…………あーあ、またねー」

ステ「急にどうしたのやら」

イン(…………はぁ)

890 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:48:23.17 ID:qbPgcS030



ヒョコヒョコ        スタスタ


ステ「暑い、もとい熱い一日だったな……」

イン「はああ」

ステ「顔色が悪いね、やはり歩き回り過ぎたか」

イン「誰のせいだと思ってるのかな」

ステ「僕の護衛に不備があったと?」

イン「うーん…………わかんない?」

ステ「いま貴女が何を言いたいのか、という点に関してはさっぱりだね」

イン「…………まあいっか。すている、隣来てくれる?」

ステ「?(スタスタ) やはり何か異常が」


891 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:49:07.45 ID:qbPgcS030







ギュッ




イン「………………」

ステ「………………」



イン「……この手の意味は、わかってる?」ギュ

ステ「…………ああ、おそらくね」ギュ



892 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:50:10.02 ID:qbPgcS030



午後六時 上条家



イン「ただいま!」

ステ「帰ったよ」



真理「おあえりなさい! いんでっくしゅ、しゅている!」キャッ

イン「まことー! 私の帰りを待っててくれたじゃん?」ガバ

ステ「…………最大主教」

真理「じゃんじゃん!」キャッキャッ

イン「んふふー、くぁいいねまことは……え、なに?」

ステ「帰りを待っていたのは、あっちも同じのようだ」



美琴「…………インデックスちゃぁん?」

イン「!? ど、どうしたのかなぁみこと? そんな般若みたいな顔アイタッ!!」ゴツン!


893 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:51:10.75 ID:qbPgcS030


美琴「警備員のお世話になったらしいわねぇ?」

イン「そ、それは人助けの結果であって犯罪に手を染めたとかじゃないんですの!」

美琴「ええそうらしいわね、そっちは別にとやかく言わないわ」

イン「ほっ」

美琴「でもね、インデックス?」

イン「えっ」



美琴「丼十杯、たらふく食べさせてもらったらしいわねぇ!?」

イン「…………」ダラダラ

美琴「何か申し開きは?」

イン「………………わ、私の中の野球魂が疼いてェ」



美琴「晩ご飯はおかわり禁止」ニッコリ

イン「オーマイガーッ!! なンだよォォォ!!!」

894 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:52:05.71 ID:qbPgcS030



ステ「……やれやれだね」

当麻「おう、おかえり」

ステ「君こそお早いお帰りだね。よっぽど職場で頼りにされてないと見える」

当麻「…………なあ、ステイル」



ステ「聞くな」

当麻「!」

ステ「お人好しの君には不本意だろうが、僕らがそのお節介を望む事は決してない」

当麻「……相手が助けて欲しいかどうかなんて、俺には関係ない」

ステ「その通り、君はそういうヤツだよ独善者。…………この話はもうするな」

当麻「…………ん、そうかよ」


895 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:53:18.03 ID:qbPgcS030


イン「ステイル、みことを何とかして欲しいじゃん! ってインデックスは(ry」

美琴「はいはい諦めなさーい。ほら二人とも、ご飯運んでちょうだい!」



当麻「俺は、美琴とその周りの世界を守る。
   『約束』があるし、俺自身がそうしたいからな。
   ……忘れるなよ。美琴の世界にはとっくにインデックスも、お前もいるんだぜ」



ステ「肝に、銘じておこう。さあ食事だ…………」ピシ

当麻「おい、どうした? ってなんだこりゃ!?」



美琴「今日のメニューはコーンポタージュにコーンと温野菜のサラダ、
   焼きトウモロコシにとうもろこしの天麩羅よ。どーおステイル?」

ステ「どう、とはなんだい? HAHA、お、美味しそうじゃあないか」プルプル

美琴「なら良かったわ。ご飯の方にも混ぜたからたっぷり食べてね♪
   別にインデックスを甘やかした挙句、友達に奢らせたことなんて気にしてないわよん」

ステイン「」



当麻「…………不幸なのかな、あれ?」ジゴウジトク?


896 :警備員編[saga]:2011/06/28(火) 20:53:52.47 ID:qbPgcS030


-----------------------------------


OUT

みんなの先生(当麻が矯正)


IN

警備員ですの! ←New!

警備員じゃん ←New!


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903 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:11:20.86 ID:wCZQyb9Z0



学園都市二日目の夜 上条家



当麻「それじゃおやすみ」


美琴「おやすみー」


ステ「待て待て待て」


上琴「「?」」


イン「『?』じゃないんだよ! 私とステイルの寝室はどうすればいいのかな!?」


美琴「昨晩問題なかったんだから、そのままでいいでしょ?」


当麻「防音はしっかりしてるから心配いらないぞー」


ステ「あまり余計な事をほざくとその口を縫い合わすぞ!!」


904 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:12:22.60 ID:wCZQyb9Z0


イン「とうまの口からそんな言葉が出るなんて、おねーさんは複雑なんだよ……」


当麻「ええぇ……お前が俺の妹分だろ常考」


イン「それじゃあみことのおねーさんになれないかも!」


当麻「そっちが目的かよ」


美琴「私もインデックスは妹的なアレとしか見れないわ……」


イン「えええ!? みことに『お姉ちゃん』って呼んでもらいたいのにー!」


当麻「なんで俺の時よりショックでかそうなんだよ!!」


ステ「一応、上条当麻と並んで最年長のはずなんだが…………」ヤレヤレ


イン「ステイルなら私のおねーさんっぷりがわかるよね?」

905 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:13:07.57 ID:wCZQyb9Z0


ステ「いやぁ微妙」


イン「う、裏切り者!」


ステ「返す言葉はないし、必要も(ry」


イン「結構根に持ってるのアレ!?」


ステ「何の事かな」フー


イン「やっぱりそうだ…………」


当麻(何の話だ?)


美琴(当麻に分かんないのに私に聞かれても)

906 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:13:53.35 ID:wCZQyb9Z0


ステ「だがまあ、ごく稀に聖母のように見える事も無きにしもあらず」


イン「え。そ、そこまで褒められると照れるんだよ……」テレテレ


美琴(そこまでは褒めてないわよね、これ)


ステ「と、シェリーが言っていた」


イン「むきーっ!!」




ステ「話が逸れたな。他の部屋は無いのかい?」


当麻「子供部屋なら、まあ」


ステ「あの得体の知れない『玩具』がある空間に寝泊まりしろと?」


美琴「だったらやっぱりインデックスと相部屋ね」フフン

907 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:14:38.34 ID:wCZQyb9Z0


ステ「…………ソファという選択肢も残されて」


イン「そんなとこで寝たらどっか痛めちゃうかもしれないんだよ!」


ステ「なぜ自ら退路を塞ぐ!?」


当麻「ほら、インデックスもこう言ってるし覚悟決めろよ」ニヤニヤ


美琴「男なんだから、一発気合い入れなさい」ニヤニヤ






ステ「……………………はぁぁぁ。しょうがない」



上琴「「へ?」」

908 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:15:20.49 ID:wCZQyb9Z0




ステ「いつものだと思えば、まあ大丈夫だろう。構わないかい、最大主教?」


イン「んー…………そうだね、案外一人よりリラックスできるかも」


当麻「おっとと、予想外の展開になってしまった感」


美琴「え? なに? アンタらそこまで進んでたの?」


ステ「『そこまで』と言うのが何のことかは知らないが……
   とにかく、僕らは予定通りその部屋をお借りするよ」ハン


イン「とうま、みこと、おやすみ」フリフリ



ガチャ バタン


909 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:16:24.23 ID:wCZQyb9Z0



上琴「「…………へ?」」




一時間後




当麻「…………はっ! あまりの事に時が吹き飛んじまった!」


美琴「新手のスタンド使いかッ!」ドギャァァン


当麻「おのれディケイド!」クワッ!


美琴「じゃなくて。あの二人は…………確かに寝てるわ。しかも寄り添って」デンジハ


当麻「おいおい、マジかよ……この時間なら、一、二回戦いたしてる可能性も……」タラ


美琴「な、なんかとんでもないことしちゃったのかしら私達…………」タラタラ

910 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:16:59.59 ID:wCZQyb9Z0


当麻「み、見に行くか?」


美琴「なんか怖いけど…………怖いもの見たさもあるわね!」←深夜特有のハイテンション


当麻「実は俺もだ!」←深夜特有の(ry




オソルオソル ガチャ……




当麻「…………」ドキドキ


美琴「…………」ワクワク


911 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:18:22.23 ID:wCZQyb9Z0




ステ「zzzzzz」←腕枕中


イン「zzzzzz」←腕枕され中



当麻「…………え? これだけ?」


美琴「……なんだか自分がとてつもなくイヤらしい女に思えてきたわ……」


当麻「…………俺は、そんな美琴でも」


美琴「ちょ、ちょっと! そんな急に///」




ステイン「「ケッ」」zzzzzz


上琴「「!?」」

912 :小ネタ「寝室」[saga]:2011/06/29(水) 23:19:25.63 ID:wCZQyb9Z0
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元春「一日平均三時間も膝枕タイムとってりゃそりゃ慣れるぜよ」


舞夏「兄貴ー? いきなりどうしたんだ?」


元春「いや、ちょっとした電波だにゃー。
   …………それより舞夏、二人きりのときは違うだろう?」


舞夏「あ…………ご、ごめん」


元春「『申し訳ございません』だ。…………返事はどうした?」




舞夏「ひゃ、はい…………申し訳ございません、ご、『御主人様』……」


元春「イイ子だ。さ、ご褒美だな」グイ


舞夏「んひゃあっ!? 御主人様ぁ…………」


元春「…………おっと、ここから先はカメラお断りだぜ」



オワットケ

※結局ステイルはソファに寝泊まりする事になりました


913 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/29(水) 23:20:32.21 ID:wCZQyb9Z0
もう1ぽーん
914 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:21:42.99 ID:wCZQyb9Z0



上条家 キッチン



美琴「…………そう。そしたら全部混ぜて捏ねるの」


イン「りょーかいなんだよ。んっ、くう、ぬぬぬぬぬ!!」


美琴「もうちょっと恥じらいなさいよ……レディーでしょうが」


イン「スカートの中に短パンはいてたみことにレディーうんぬんで説教されたくないなぁ」コネコネ


美琴「う」


イン「覚えてるみことー? みことの短パン癖は私が直してあげたんだよ?」グググ


美琴「そ、それがなによ。別にアンタにどうこうしてもらわなくたって、
   時間が経てば自然と穿かなくなってたはずよ」


イン「とうまとの初デート」ポンポン


美琴「うう!」

915 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:22:54.33 ID:wCZQyb9Z0



イン「あの時は面白かったよねー、ロングスカートの下にまで短パ」バシバシ


美琴「悪かった! 私が悪かったからもうその話題はやめてぇ!」


イン「そんなみことを後押ししてあげた私を慕うのなら『お姉ちゃん』って呼んでもいいかも」フフン


美琴「誰が呼ぶか!」


イン「ちぇっ、やっぱりみことはまだまだツンデレなんだよ……」


美琴「料理に集中しなさい! ハンバーグ失敗してもいいわけ?」


イン「それは困るんだよ!」



キャピキャピ


916 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:23:58.27 ID:wCZQyb9Z0



上条家 リビング



当麻「………………お前さぁ」ピコピコ


真理「さー」


ステ「なんだ」ピコピコ


当麻「結構味覚おこちゃまなのな」シュイーンシュイーンシュイーン


真理「なー」


ステ「ぶはっ!?」ドグシャァ!


真理「ごーやぶれすー」ガァー


当麻「おいおい、ちゃんと避けろよ。一乙寸前じゃんか」キーン! ズバッ!


真理「ためさんー!」キャッキャッ!


917 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:24:59.16 ID:wCZQyb9Z0



ステ「誰のせいだ!」ゴクッゴクッゴクッ


当麻「いやだって。ハンバーグって、ステーキって(笑)」スチャッ


真理「(笑)」


ステ「僕が頼んだ訳じゃない! 彼女が勝手に作ってるんだ!」カイフク


当麻「ほーお、勝手にそんなモノ食わされて迷惑なのか?」タッタッタッ


真理「なのかー?」


ステ「!? ち、ちが…………あ」



チカラツキマシタ ホウシュウガヘリマス



当麻「あーあ(笑)」


真理「あーあ(笑)」


ステ「そのステレオをやめろ! どうやって発音してるんだその(笑)!?」


918 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:25:45.97 ID:wCZQyb9Z0


当麻「残り時間も微妙だし、3Dオセロでもするか」ゴソゴソ


ステ「…………技術の無駄遣いとはこの事だね、純粋に。
   三次元ルールのリバーシかと最初は思ったんだが」


当麻「ただの立体映像オセロだもんなー。パッケージ詐欺だったわ」


ステ「さっさと訴訟でも起こせばいいだろう……」


当麻「で」


ステ「で?」


真理「でー?」


当麻「インデックスの料理、どうだ実際?」コソコソ


ステ「…………彼女の記憶力にかかれば世界中の三つ星レシピを図書館に収められる」


当麻「修められるかはまた別の問題だろ? 話を逸らすなって」


919 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:27:07.47 ID:wCZQyb9Z0


ステ「…………正直な感想を言ってしまえば」チラ




イン「できたかな?」


美琴「オッケーね。それじゃあ焼きましょ」


イン「えっと、まずは『強めの中火で火をつけ片面を焼く』……」




ステ「平凡な味さ。この半年、ミセス土御門や美琴の料理で舌が肥えている」


当麻「舞夏の料理かぁ……確かにな」


ステ「だが……………………う、嬉しい」ボソ


当麻「おっ!」


ステ「なんだその『待ってました』みたいな反応は」

920 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:28:41.38 ID:wCZQyb9Z0


当麻「気にすんなって。ほら続き」


真理「つづきー?」


ステ「…………途轍もなく、幸せだ」ボソボソ


当麻「おいおい、そんな日本語が苦手だったっけお前?」


ステ「何が言いたい?」ギロ


当麻「5W1Hって言うんだけどさ、本場じゃ通じないのか?
   …………それとも、ただの根性無しか?」ニヤ


ステ「」イラッ




ステ「『今』! 『ここで』! 『僕は』! 『彼女の手料理を待っているこの状況が』!
   『途轍もなく』! 『幸せ』だ!! これで文句あるかぁ!!!」


921 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:29:31.67 ID:wCZQyb9Z0




当麻「ありませんことよ」


真理「ことよー」


ステ「フン、くだらない真似をさせるな!」


当麻「そう言うなって。お前も文句ないよな――――インデックス?」




ステ「  は  ?  」




美琴「おっまたせー♪」


イン「…………ご、ご飯出来たよ、すている……」モジモジ


ステ「」


922 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:31:00.74 ID:wCZQyb9Z0


~~~~~~~~~


ステ(何ゆえあんなありきたりな挑発に乗ってしまんだ……)ズーン


イン「は、早く食べよ!」


真理「まんま! たべよー!」


美琴「まあ気分は『ごちそうさま』なんだけどー?」


真理「えー? はんあーぐたべたい!」


美琴「ウソよすぐ食べましょ真理ちゃーん! ほらナプキンしましょうね」


当麻「おっ、見た目はいいじゃんかインデックス」


イン「………………え? あ、うん、今日のは自信作かも!」




ステ「…………どこから聞いていたんだ?」


イン「……………………んと」


当麻(最後のこっぱずかしいシャウト聞かれた時点でアウトだけどな)

923 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:31:59.33 ID:wCZQyb9Z0


美琴「ちなみに私は、ここからね」カチッ


ステ(カチッ?)



『僕が頼んだ訳じゃない! 彼女が勝手に作ってるんだ!』



ステ「がはああっっ!!!」


イン「す、すている…………」ウル


ステ「ち、違う! この後を聞けば、じゃなくて! やっぱり聞くんじゃないーーっ!!」




美琴「そうそう、インデックスは『途轍もなく幸せだ』のくだりから聞き耳立ててたわよん」


イン「みことおおおおっっ!?」

924 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:33:39.82 ID:wCZQyb9Z0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




ステ「……………………」モグモグ


イン「……………………」モグモグ


当麻「うん! 見た目だけじゃあないな、味もいけるぜ」


美琴「やっぱ物覚えの良さが違うわよね。
   これで動きまでトレース出来たら教える事なんてないんだけど」


ステ「……………………」モグ


イン「……………………」モグモグモグ


真理「おいしーよ、いんでっくしゅ!」


イン「あ、ありがとまこと……」


ステ「……………………」

925 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:35:15.39 ID:wCZQyb9Z0



当麻(おい、ステイル!)コソコソ


美琴(それでも男なわけ? 一言でいいから何かあるでしょ!)ゴニョゴニョ


ステ(この気まずさは誰のせいだと思ってるんだスットコドッコイども…………!!)



イン「………………すているは、どう?」


ステ「!」



当麻「あーあ、もたもたしてるから」


美琴「あーあ、女の子に先に聞かせちゃうとか」


真理「あーあ?」


ステ(く、くそおっ!)


イン「その、別に口に合わなかったなら無理しないでいいよ?」

926 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:36:28.72 ID:wCZQyb9Z0




ステ「ッ!!! 君たち、よこせえっ!!!」ガタッ!


当麻「ぬおっ!」ハンバーグトラレタ


美琴「ちょ、ちょっと!?」オナジクウバワレタ


イン「ええ!?」ガクゼン


ガツガツガツガツガツ




ステ「んぐっ、もぐっ、美味い!! 他の奴に食わせるには勿体ないぐらいだ!!!」




イン「は、ひゃ、え? すて、すている…………」パクパク


上琴(おおおおおお!!!!)パチパチ


真理「んー?」パチパチ ングング


927 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:37:21.81 ID:wCZQyb9Z0



ガツガツガツガツ  ゴクリ



ステ「ご馳走様! 少し一服してくるぞ!!」ソソクサ



ガラッ ベランダGO



当麻「……いや、良かったなーインデックス」


美琴「意訳すると『僕だけのためにハンバーグを作ってくれ』ねぇ。
   超能力者の翻訳力にかかれば間違いないわぁ」


イン「あわわ、うあぁぁぁああああ、すているのばかあぁぁ……!」モンゼツ プシュー




真理「『僕だけのためにハンバーグを作ってくれ』」キリッ


「「「!!??」」」

928 :小ネタ「料理」[saga]:2011/06/29(水) 23:38:21.08 ID:wCZQyb9Z0



ベランダ



ステ「くっそおおおおおおおお…………」モンゼツ プカー






仕上「………………お前も大変だなぁ」シキリゴシニ プカー


ステ「聞こえてたのかあああああぁぁぁあ!?」


理后「大丈夫だよ、まぐぬす。私はそんなシャイなまぐぬすを応援してる」シツナイカラ


ステ「ちくしょおーーーーーーーっっっ!!!!」


裏篤(おとなってたいへんだなぁ)シミジミ



オワリ




941 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:00:07.94 ID:zkSXQ8AZ0






――むかしむかしあるところに、いっぴきのかいじゅうがいました。





942 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:01:04.21 ID:zkSXQ8AZ0


かいじゅうはせかいでいちばんつよいいきものでしたが、

あまりにもつよすぎるのでみんなからこわがられていました。

かいじゅうはつよいのでよわねをはきませんでしたが、

どうすればみんなとなかよくなれるのだろう、といつもかんがえていました。



そこにひとりのまほうつかいがあらわれて、じょげんをします。



かんたんですよ、かいじゅうさん。もっともっとつよくなればいいんです。

つよくなってつよくなって、かみさまになってしまえば、みんながあなたをうやまいますよ。



かいじゅうはおどろきました。

もっとつよくなる。

そんなことはずっとなやんできたけど、ちっともおもいつきませんでした。

かいじゅうはまほうつかいに、どうすればかみさまになれるのかききました。

943 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:02:54.72 ID:zkSXQ8AZ0



かんたんですよ、かいじゅうさん。

かみさまはだれよりもつよくて、だれよりもいろんなことをしっています。

つよいゆうしゃをたくさんやっつけて、あたまのいいがくしゃをたくさんみつけて。









みんなみんな、たべてしまえばいいんです。



そうすればそうするだけ、あなたはかみさまにちかづきますよ。



それをきいたかいじゅうは、ますますみんなにこわがられてしまうといやがりました。

するとまほうつかいはとつぜん、ひとりのおんなのこをかいじゅうのめのまえにさしだしました。



このこはわたしのでしです。このためにつれてきたのでたべてみてください。

――――きっと、おいしいですよ。


944 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:03:48.63 ID:zkSXQ8AZ0



ますますいやがるかいじゅうに、まほうつかいのでしはかみなりのまほうをぶつけてきました。



きにしなくていいですよ。わたしはこのためにうまれてきたのです。

もしもいやだというのなら、わたしがあなたをころします。

さあ、どうしますか?

――――――ばけもの。





かいじゅうのしかいが、まっかにそまりました。

きがつけば、にこにこがおのまほうつかいがめのまえにたっています。

くちのなかには、にくのあじ。



まほうつかいが、ひときわにっこりわらいました。


945 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:04:56.06 ID:zkSXQ8AZ0


どうですか、おいしかったですか?

ちからがみなぎってきませんか?

ちしきがあふれてきませんか?




――――ねえ、かんたんでしたよね、かいじゅうさん?




かいじゅうはもう、ひきかえせませんでした。

ゆうしゃにかってはにくをさき、がくしゃをさらってはあたまをくらい。

かみさまにどんどんちかづいていきます。

946 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:05:37.78 ID:zkSXQ8AZ0










そのうちかいじゅうは、なんのためにかみさまになろうとしていたのか、わすれてしまいました。









947 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:06:23.14 ID:zkSXQ8AZ0


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六月末 第一六学区



イン「あれ…………ねえステイル、あっち見るじゃん」

ステ「ん? ………………これは、壮観だな」



ガヤガヤ ミサカハ ミサカッテバワカンナーイ ミサカミサカ



ステ「一家団欒…………というやつかな」

イン「同じ顔が四つ並んでるんだよ」



オーイ スタスタ



美琴「やっほ。二人ともこんなところでデートしてたの?」

ステ「デートじゃあない。そちらこそ、後ろの方々は……」


948 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:07:38.95 ID:zkSXQ8AZ0



ミサカ10032号「これはインデックスさん、お久しぶりです、
         とミサカは後ろの神父さんに対するニヤニヤを隠しながら平然とします」

ステ「隠すつもりなら口に出すな、忌々しい」

イン「えーっと、くーるびゅーてぃーだよね? 
   ってインデックスはインデックスは確認してみるかも」


10032「その通り。私はお義兄様から『御坂妹』と呼称された、現御坂家の一〇〇三四女です。
    両親から貰った名前もありますが、好きに呼んでくれて構いませんよ、
    とミサカは名前を考えるのが面倒な>>1のフォローをメタ的にします」

ステ「はあ」

美琴(なに言ってんのかしらこの子)


949 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:08:27.47 ID:zkSXQ8AZ0



番外個体「あっは☆ その赤もやしが噂のヘタレ神父さん?」

美琴「あ、赤もやし…………!」プッ

イン「だ、駄目だ、まだ笑うな……こらえるンだ……し、しかし…………!」プルプル

ステ「」ギロリ

美琴&イン「~~♪」

ステ「はあ…………もはや何も言うまい」

番外「何か私空気? とりあえず、御坂家次女の番外個体でーす」

ステ「次女……のわりには明らかに長女より育っtあばばばばばば!!!」



美琴「らしくもない失言だったわね」バチバチ

イン「ふんだ。すているのばかっ」カジカジ

ステ「く…………そ……」グフ

番外「ご愁傷様~」


950 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:09:33.51 ID:zkSXQ8AZ0


美鈴「久しぶりねインデックスちゃーん! 私の事覚えてる?」

イン「もちろんですの。みことのお母様の、みすずさんだよね?」

美鈴「いやだわそんな堅苦しいの、『みすず』で良いわよん」



旅掛「結婚式で上条さんと一緒に座っていた娘が、いまや一宗教のトップとはなぁ」

ステ「と言うと、あなたは……」

番外「復活早っ!!」

イン「リアルイノケンティウス? それともギャグ補正?」

10032「おそらく後者でしょう、とミサカは賢察します」

美琴「賢察は尊敬語よアンタ。愚考しなさいよ」

ステ「……ちょっと静かにしててもらえるかな」

951 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:10:16.99 ID:zkSXQ8AZ0



旅掛「『御賢察』の通り俺が御坂家の大黒柱、御坂旅掛だ。
   そっちの姦しい娘たちの父親でもある。話には聞いているぞ二人とも」

美琴「ちょっとお父さん? 私をこっちの精神的幼児たちと一緒くたにしないでよ」

美鈴「いつまでも精神的新婚夫婦の美琴ちゃんがそれを言うのー?」

イン「この間もとうまと『いってらっしゃいのキス』しとったしぃ」

美琴「んにゃあ!? あ、アンタ気付いてたの!?」

ステ「…………僕らはてっきり、見せつけてるものかと」

美琴「あわわわ…………いや。私達は夫婦なんだもの。何もやましい事なんてないもん」

イン「あれ、開き直っちゃうんだ」

美琴「そうよだって当麻は嫌がってないしむしろ求めてくるし
   夫婦仲が良いのは子供の情操教育にだって好影響があるはずだしえへへ」



イン「…………うわぁ」シラー

ステ「やはりねぐらを移すべきなんじゃないかな」

イン「私達におかまいなく『コト』に及ばれたらいたたまれないんだよ……」

952 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:11:24.35 ID:zkSXQ8AZ0


番外「……お姉様って結婚してからこっち免疫付いたっていうか、
   妄想癖悪化してからかい甲斐なくなったよね」

10032「その分わたしたちの興味対象はそっちのじれったい二人に転移したわけですが、
    とミサカは運命の皮肉にニヒルな笑みを浮かべます」

ステ「そんな馬鹿な因果律のせいだったのか!?」

イン「じ、自分達の事を心配するべきだと思いますゥ!」



旅掛「美琴ちゃんもすっかり俺の手を離れてしまって…………グス」

美鈴「まだお嫁に行ってない子は何千人って居るのにねぇ。
   三年前の式を思い出すだけでこの調子なのよウチの旦那」

10032「これからもう一人、嫁に出すと言うのに困ったものです」

ステ「…………それはもしかして」



コツ コツ ピョコピョコ



一方「おいおい、なンでてめェらがここに居やがンだ?」

打止「二週間ぶり? ってミサカはミサカはご挨拶!」

953 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:13:07.85 ID:zkSXQ8AZ0


ステ「これは、もしかして」

イン「居合わせちゃいけない場面に出くわしちゃったのかなぁ?」

一方「…………別に構いやしねェよ」

イン「え?」



番外「ぎゃは、ねぇ一方通行? 今日はミサカたちの前で
   トンデモ羞恥プレイおっぴろげで見せてくれるってホントぉ?」

一方「口の悪さをイイ加減直せやてめェ。嫁の貰い手がなくなンぞ」

番外「…………はん。アンタに心配される謂われなんてないんだよ」



ステ(……なるほど)ボソ

10032(番外個体は昨晩涙で枕を濡らしていました。まったく無理をして……
    とミサカは精神的には最年少の可愛い姉妹を慈しみます)ボソボソ

イン(…………それは、辛いね)ボソ

番外「ちょ、ちょっと! なんかミサカのプライバシーが
   著しく侵害されてる気がするんだけど!」

イン「まあまあ」ポンポン

番外「そういう目で見られるとミサカ弱いからやめてー!?」

一方「?」

954 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:14:02.39 ID:zkSXQ8AZ0



美鈴「アーくん御無沙汰! 相変わらず羨ましくなるほど白いお肌ねー」ペタペタ

一方「そりゃどうもォ」ペコ

旅掛「元気だったか? この吹けば飛びそうな貧弱白アスパラに辛い目に遭わされてないかい?」

一方「……」ギリギリ

打止「この人は酷いことなんてしないよお父様! 
   昨日も私の作ったビーフシチュー、まじィまじィって言いながら完食してくれたもん!」

一方「打ち止めァァァ!!!」



イン(プロポーズしてまでツンデレとか…………)ボソ

ステ(余程、筋金入りと見えるね。さすがはツンデレベル5第一位)ボソ

一方「聞こえてンだよそこの白黒ども!!」

番外「そのコーディネートで白黒バカにできんの第一位サマぁ?」ゲラゲラ

10032「十年間飽きもせずにモノトーン配色のファッションばかりとは
    科学の街の最先端が笑わせます、とミサカは(ry」

一方「序列は関係ねェだろ、序列はァ!!」

955 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:15:22.36 ID:zkSXQ8AZ0



旅掛「さて、一方通行。場所は変えるか?」

一方「……その必要はねえ。いつも通りだ」

旅掛「長かったなここまで…………では始めよう」



イン「な、何を…………?」

美鈴「ほら美琴ちゃん、いい加減戻ってらっしゃい」

美琴「うん、私……当麻とこんなに長く一緒に過ごせて…………幸せ……だった……よ」パタ

番外「…………どこまで飛んじゃってるのよお姉様」ドンビキ

10032「宇宙を一巡してくれば戻ってくるのではないでしょうか、
    とミサカは妄想力だけで特異点に至ったお姉様に畏敬の念を禁じ得ません」

ステ「結局、僕らはどうすればいいんだい?」



一方「言っただろ、見世物だと思ってのンびりしてろ」

打止「私たちはね、これからやることを誰にも、
   それこそ世界中のどんな人にも恥じることが無いって宣言したいの」

イン「え…………」

956 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:16:12.73 ID:zkSXQ8AZ0




ステ「…………主張はわかった。だが僕らまでショーの小道具だと思われるのは癪だな」スッ

美鈴「なにそれ?」



ステ「――これよりこの場は我が隠所と化す(TPIMIMSPFT)」



番外「あれ…………人が」

美琴「『人払い』ってやつね」フッカツ

10032「未来を見てきた気分はどうでしたか?」

美琴「なんかこれから起こる事がわかる気がするわッ!」メメタァ

ステ「それはただの経験則じゃあないのか……」



一方「………………まあ、なンでもいいがよ」

旅掛「魔術、か。面白いものが見れたな。さあ」

打止「…………」


957 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:17:00.01 ID:zkSXQ8AZ0


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あくぎゃくひどうのかいじゅうはあるひ、とあるゆうしゃにたおされました。

ゆうしゃはさらわれたおひめさまをたすけてめでたしめでたし。



でもかいじゅうは、みっともなくいきのこってしまいました。

ゆるされないことをしたとさとったかいじゅうは、それでもしねなかったのです。



しななかったかいじゅうは、やりなおそうときめました。



まほうつかいから、でしそっくりのおんなのこをたすけだしました。

ころしてしまったひとたちのかぞくに、なんどもなんどもあたまをさげました。

あたまをさげるだけではだめだとたたかいつづけたけっか、せかいをすくいました。



いつしかかいじゅうには、たいせつなひとができていました。


958 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:18:26.99 ID:zkSXQ8AZ0


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旅掛が『さあ』とひとこと発すると、瞬時に世界がそのたたずまいを変えた。

喧騒に包まれる休日の学園都市の片隅で、一組の親と子が対峙した。



「……………………お義父さン」

「なんだ」



急激に減ったギャラリーには目もくれず、一方通行と打ち止めは父の真正面で膝を折った。

地表は勿論アスファルトで、じりじりと照る初夏の熱さが二人を焼く。

御坂旅掛は自身の額にも流れる汗をぬぐうことなく、次なる科白を只管に待ち続けた。



「どうか」



やがて一方通行が、長い沈黙を破った。

地に擦りそうになっていた頭がようやく上がり、二人の男の視線が打ち当たった。


959 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:18:53.92 ID:zkSXQ8AZ0






「どうか、娘さンとの結婚をお許しください」





「お願いします、お父様」





960 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:19:59.51 ID:zkSXQ8AZ0


無用の文言は付随しない。

男女の懇望はただただ純粋に、お互いへの愛だけを根拠にして放たれた矢だった。

受けた父親はじっと二人の目だけを見定め、重々しく口を開いた。



「立ってくれ、一方通行」

「…………はい」



杖をついて器用に身体を立てた恋人に、少女は憂患の隠せない眼差しを向けた。

瞬刻の視線の交差で打ち止めの心境を推しはかった男は、

この期に及んでそうした表情を取らせてしまう己の不甲斐なさに唾棄したくなった。



その胸の内を知ってか知らずか――――旅掛は、大音声を張った。



           ばかむすこ
「歯をくいしばれ、一方通行」



961 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:20:50.00 ID:zkSXQ8AZ0



その厳しさと同時に温かさを孕んだ『父』の雄叫びを聴いて。


天使にも悪魔にもなり得る最強の超能力者の貌が、どこまでも人間らしく歪んだ。








おやじ
「 俺 の一〇〇三一発目は、今までで一番響くぞ!」










962 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:22:04.50 ID:zkSXQ8AZ0

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第四学区 とある高級居酒屋



美琴「それじゃあ、カンパイね」

ステ「…………なぜ僕らまで」

打止「見届け人になってもらったんだから遠慮しないで! 
   ってミサカはミサカはお酌してみたり!」

美鈴「祝いの席、ってことだしねーこれ。細かいことはいいじゃない神父さん!」ケラケラ

イン(しいなもそうだけど、孫が居るようには見えませんの)

ステ「宣誓の立ち会いなら、式本番でやって然るべきなんだがね」ハア



美琴「…………それ、いいアイデアじゃない?」

ステ「は?」

イン「み、みこと?」

美琴「だからさ、神父様とシスターさんに二人の門出を祝福してもらったらどーお?」

打止「なにそれステキ! ってミサカはミサカはお姉様のアイデアに飛びついてみる!」

ステ「ちょっと待たんか!! 僕らの滞在期間はあと一月も無いんだぞ!」

963 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:23:19.89 ID:zkSXQ8AZ0


美琴「あー大丈夫よ、式場の手配はとっくに終わってるもの」

イン「えええ!? さっき結婚の承諾貰ったばっかりじゃん!?」

打止「まあ、なんていうか今日のアレは、あくまで形式的なものだったの」

美鈴「ケジメを付けたら結婚、って決まってたからね。
   時期を逆算して先に式場決めちゃったの、私たちで」アハハハ

ステ「無茶苦茶な……!」

打止「式は七月二十日の予定なんだけど、どう?」

イン「!!!」



ステ「…………ええい、こういう事は当事者の意思が第一だろう!
   おい、一方通行………………って」

964 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:24:03.02 ID:zkSXQ8AZ0



ドンチャンドンチャン



旅掛「のめ飲め呑め! 親父の杯が受けられないのか親不孝者ぉ!!」

一方「じょ、上等だコラァ! ウエップ、一升だろうが二升だろうが」

番外「きひひひひひ!!! まぁさか能力使ってアルコール分解なんてしないよね一方通行ぁ!?」

一方「だだだだれがンな狡い真似すっか!!
   今日のオレはアセトアルデヒドも一方通行だァァァ!!!」

10032「イミフなんだよこのもやし、とミサカはテーブルでただ一人平静を保ちます」

旅掛「当麻君も青ピ君も通った道だ! それでこそ俺の息子になる資格がある!!」

一方「ヒーロー…………だとォ……? 面白え、だったらオレが
   乗り越えないワケにはいかねェよな…………ギャハハハハハ!!
   やあってやンよおおおおおお!!!!!!!!」グビグビグビグビ




ステ(ダメだこりゃ)


965 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:24:48.05 ID:zkSXQ8AZ0



打止「……やっぱり無理かな。インデックスさん、ステイルさん」

イン「ね、ステイル」

ステ「…………日程的には可能だ。司祭役どうこうは
   置いておくとして、招待されれば出席はさせていただくよ」


打止「やったぁ! ってミサカはミサカは大はしゃぎ!」

美鈴「んっふっふー。これはますます当日が楽しみね」

イン「むむ……結婚式の祝福は、良く考えればやったことないンだよォ」

ステ「僕は何度か経験があるがね」



美琴「式か…………」ハア

ステ「なんだいそのため息は?」

美琴「どうしても思い出すのよね…………三年前の事」

打止「それってモチロン……」

美鈴「当麻君と美琴ちゃんの結婚式よね」



イン「………………そして、あの事件が起きた日だね」



966 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:25:15.79 ID:zkSXQ8AZ0




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967 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:26:19.54 ID:zkSXQ8AZ0



三年前 上条当麻・美琴の披露宴終了後



元春「悪いなみんな、急に集まってもらって」

ステ「なんだい、土御門。僕らはいま仕事をするような気分じゃないんだが」

イン「ぐすっ…………よかったね、とうま、みことぉ……」グスグス

当麻「ほら、いつまでも泣いてんなって」

美琴(当麻にそんな言葉かけられても、ねぇ……)

火織「それでいったい、どうしたのですか?」



元春「……イギリスから、アニェーゼ部隊が日本に向かっているとの連絡が入った」

当麻「え? あいつらに招待状は……」

美琴「っていうか、それ誰なの当麻」ゴゴゴ

当麻「べ、別に美琴が気にするようなことはないって! 
   俺はさっき、一生をお前にやるって誓っただろ?」

美琴「! う、うん! 私の全部、当麻のモノだもん!」

968 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:27:37.81 ID:zkSXQ8AZ0


イチャイチャ


ステ「あれらは放っとくとしよう」イライラ

イン「ひっく…………イギリスからは人数が多すぎるから、私たちが代表として来たのに」

火織「王室のお歴々も差し置いて、ですからね。五和も来たがっていましたが」

元春「その王室だが、第二王女も軍を率いて来ているらしい」


「「「「!?」」」」



「…………まだ驚くには早いぜ。
 学園都市の能力者どもが百人単位でこの式場を取り囲みつつある。
 更にブラジルで前にカミやんが接触した魔術結社が宣戦布告してきた。
 加えてアトランティスを名乗る謎の集団が大西洋を横断中だという噂もある。
 はたまた南極の極秘科学基地から特殊部隊が発進したなんて風説が飛び交うし、
 挙句の果てには地球外生命体が上空に信号を送ってきている」



当麻「え、え、え? ………………………………え?」

美琴「」ポカーーーーーーン

969 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:28:26.33 ID:zkSXQ8AZ0



元春「連中の共通点は二つ。女であること」

イン「……………………もう一つは?」



元春「上条当麻奪還を旗印に掲げている事」



「「「「「………………」」」」」」



ステ「…………要約してくれ」

元春「おいおい、わかりきってんだろうがそんな事」ハハハ

火織「いったいこれから、何が始まるんです?」






元春「――――第四次大戦だ」キリッ





970 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:29:09.78 ID:zkSXQ8AZ0




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971 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:30:11.72 ID:zkSXQ8AZ0



ステ「第四次世界大戦――またの名を、上条戦争」トオイメ

イン「去年発行された歴史の教科書に、遂にとうまの名前が載ったじゃん」トオイメ

美鈴「いや、ホント大物よねウチの当麻君は!」アッハッハ!

打止「そんな軽いアレで済ませていいのかな……」

ステ「ヤツが世界各地どころか地球外にまで立ててた旗のせいで、
   わりと世界の大部分が敵に回ったからね」

美琴「あの頃はマジ地獄だったわよ……
   まあ、愛の試練だと思えばどうってことなかったけど!」フンス



イン「結局とうまとみことのバカップルぶりが加速しちゃったんだよねぇ」

ステ「僕も当事者の一人のはずだが、あの頃何が起こってたのかサッパリだよ。
   何をどう間違えたのか、アレイスターの野望を打ち砕いてしまった事だけは覚えてるが」

イン「『幻想殺し』の旗立能力がプランの誤差修正能力を上回ったとか何とか言ってましたの」

旅掛「アレイスター涙目wwwwwざまあwwwwww」

美鈴「もーパパったら飲みすぎ。あっちのテーブル大丈夫なの?」


972 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:31:23.35 ID:zkSXQ8AZ0




番外「一方通行、あくせられーた」ボー

一方「ンっ、ごくっ、ぷはあああァ! ンだ、番外個体」

番外「ミサカたちの可愛い可愛い妹、絶対幸せにしてよね」ヒク

一方「…………あァ」



番外「約束だからね、破ったら…………ひっく」

一方「……飲みすぎだ、お前」

番外「やぶった、ら……ぐっちゃぐちゃにひて…………う、わぁ」

10032「番外個体、一方通行の言う通りです。…………もう、帰りましょう」




「うわあああああぁぁぁあああぁあんんんん!!!!!」



973 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:34:10.12 ID:zkSXQ8AZ0



打止「番外個体……!?」ガタ

イン「ダメだよ、行っちゃ」

打止「なんで!?」

美琴「アンタが行っても傷つけるだけよ」

イン「………………くーるびゅーてぃーに任せよう、ね?」

打止「っ! …………わかった」





番外「っく…………うええん」ギュ

10032「それでは私たちは一足お先に失礼します」ギュ ナデナデ

一方「…………すまねェ、頼む」

旅掛「また、必ず会いに来るよ。…………こんな父親で、ゴメンな」

美鈴「寂しかったらいつでも呼んでね? 私たちは、貴方達二〇〇〇三人の親なんだから」

番外「お父様……お母様ぁ…………」

974 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:36:28.63 ID:zkSXQ8AZ0



カラカラン アリガトウゴザイマシター



イン「大丈夫かな」

美琴「……私の妹は、そんなにやわじゃないわ」

ステ「………………強いな。君たちも、ご両親も」

打止「うん、『ミサカ』達全員の自慢なんだ」

イン「とうまもみことも、とっても素敵な家族に囲まれてるね」

美琴「なに言ってんのよ、アンタ達だって私の家族よ」

ステ「僕と君は、本格的に知り合って一か月足らずだぞ」



美琴「カァンケイないわね。その、インデックスは…………私の、お、お姉さんだし」

イン「! つ、ついにみことのデレ期がとうまとまこと以外にも解放されたかもぉ!」

美琴「そういうこと言うともう呼ばないわよ!」カァ

イン「やだやだ、もっと『お姉ちゃん』って甘えて欲しいですの!」ガバ

美琴「その口調でひっつくのはやめなさぁいっ!!」

975 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:38:45.39 ID:zkSXQ8AZ0



打止「お姉様の『妹』扱いって初めて見たなぁ」

一方「コイツは筋金入りの『お姉様』だしな」ヨッコラセ

ステ「ちなみに、僕はどうなるんだい?」

美琴「そりゃ、『弟』に決まってるでしょ」

ステ「異議あり! 僕と君は同い年だぞ!」

イン「ステイルは確かみことより遅生まれじゃん。まだ二十四歳だし」

ステ「くうっ!」

美琴「そこまで嫌がんないでもいいでしょう、『弟』くん?」クスクス

一方「こんなでけェ弟、俺はいらねェな」ククク

ステ「君たち、人をからかうのもいい加減にしてくれ……」ハァ

976 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:40:01.41 ID:zkSXQ8AZ0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


旅掛「さて! そろそろお開きにしようと思うが、いいかな?」

一方「そンじゃ、支払いは俺が」

ステ「偶然居合わせただけだというのに、随分お世話になってしまったね」

イン「ごちそうさまじゃん、あくせられーた!」

一方(なンか黄泉川っぽいな)



第四学区 路上



美琴「第七学区までは一緒に行きましょうか」

旅掛「おいおい、パパがそんな方向音痴に見えるのかい美琴ちゃん?」

美琴「知らない人が歩くとガンガン迷うわよ、この街は」

美鈴「私も昔わけわかんなくなっちゃったもんねー」

美琴「それはアンタが酔っぱらってたからでしょうが!」

977 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:40:44.76 ID:zkSXQ8AZ0


移動中…………


キャピキャピ


美鈴「しっかし何度見ても羨ましいお肌ねぇ……詩菜さんといい勝負よ」プニプニ

打止「むー! 私だって瑞々しさでは負けないもん!」プニプニ

一方「やめろやてめェらァァァァァ!!!!」

旅掛「やれやれ、美女二人に挟まれてこの反応とは何たる玉無しだ。
   っていうかもう少し俺にも構ってええええ!!!」

一方「はあ…………不幸だぜェ」コツ コツ






スタスタ ヒョコヒョコ     スタスタ


イン「楽しそうだねぇ、ってインデックスはインデックスはほのぼのしてみる」

ステ「そうだね、まさに家族だ………………美琴、いいかい?」

美琴「なに?」

978 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:42:09.36 ID:zkSXQ8AZ0



ステ「君はあまり、一方通行とは言葉を交わさなかったね」

イン「……ステイル、いきなりそんな」

美琴「ふぅん、マグヌスくんは人間観察がお得意なワケ?」

ステ「そうかもしれないね」

イン(なんか変だよ、すている……)



美琴「知ってると思うけど。私とアイツ、昔殺し合った事があるのよ。
   …………いや、殺し『合い』とは言わないわねアレは」

ステ「それを引きずっているのか、やはり?」

美琴「…………私自身にとっては、決着(けり)のついてる話よ……多分」

ステ「………………」

美琴「ただ、アイツがどう思ってるのか、ってのはさらに別の問題なのよね」

イン「…………心の問題は、難しいね」

美琴「ええ…………そうね。まったくだわ」

979 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:43:17.22 ID:zkSXQ8AZ0



第七学区



旅掛「さて、俺と美鈴はここでお別れだな。願わくば今度は『外』で会おう、二人とも」

打止「今日はわざわざ来てくれてありがとう。お父様、お母様!」

美鈴「超能力者って外出が難しいんでしょ? 無理しなくてもいいのよ」

一方「……………………必ず、どンな事があっても行くさ」



イン「『外』って? 結婚式の前にどこか行くのぉ?」

美琴「ええっと、インデックスなら知ってるわよね。来月はね、里帰りする時期なの」

イン「…………あ」

ステ「日本の夏季休暇は、八月がピークだったと記憶しているが」

美琴「うーん、それはそれで正しいんだけど。正確にはね」


980 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:44:29.08 ID:zkSXQ8AZ0








「いなくなった人たちが、こっちに帰ってくる季節なの」







981 :御坂家編[saga]:2011/06/30(木) 22:45:46.70 ID:zkSXQ8AZ0

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なかまができました。

ともだちができました。

すきなひとができました。

かぞくができました。








それでもかれのあたまから、『ころして』しまったひとのかおは。






――――いつまでもいつまでも、きえませんでした。





982 :>>1 ◆weh0ormOQI[saga]:2011/06/30(木) 22:48:17.18 ID:zkSXQ8AZ0


続きますの!


気が付いたらみこインがいちゃついてた、何を言って(ry
小ネタはこれとはまた別に書きますね


残りが微妙なので本スレはここで投下終了とさせていただきます。
書き溜めが在る程度出来たら次スレを建てようかと思うので適当に埋めてくださるとありがたいです。
建てる段階で埋まってなかったら誘導しますが
そうじゃない場合多分スレタイは『インデックス「~~~」』になるので目安にどうぞ。


それではこんな駄スレをここまで読んで下さった皆さん、今までありがとうございました!
ご指摘、ご質問、罵声、糾弾などあったら遠慮なくどうぞ。

983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/06/30(木) 22:54:43.57 ID:RBja3icSO
いちもつ

みんなかわええのう
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県)[sage]:2011/06/30(木) 23:11:57.34 ID:QaVicyq00
乙! 
次スレも期待してます!
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/01(金) 02:29:10.06 ID:6xkLIMCZo
こんだけバラエティ豊かなキャラを出しておきながら一人一人の描写が丁寧だな・・・
物語の世界に引き込まれっぱなしだわ
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/07/01(金) 18:31:38.92 ID:Gs3s4eKD0
乙ですの! 

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