2014年6月1日日曜日

とある主人公たちのハーレムルート 1

 
※未完作品
 
2 :以下、あけまして、おめでとうございます[saga]:2012/01/02(月) 23:35:13.28 ID:Ct7sawydo
 絶対的な肉の快楽に溺れながら浜面仕上の脳裏に浮かんだのは冥土返しと呼ばれる医者の技術の素晴らしさだった。
 対面座位の形で交ぐわっている超能力者、麦野沈利。その顔にかつて浜面が付けた大きな傷はもう存在しない。

 激しい性交で火照ったせいか、多少なりの違和感もあるが意識してみようとしなければこの距離でも気づくこともできない。

 同時に失ったはずの左腕も再生し、彼女を後ろから抱きかかえるようにしている裸の滝壺理后と背合わせで手をつないでいる。
 それだけではない。麦野の肉体の中に取り付けられた訳の分からない機械類も全て存在しない。

 もはや彼女は四肢の揃った健康体そのもので、その肢体は全て浜面のものだった。


「は、は……う、あ……」


 腰をぶつける度に声にならない声が麦野の口から漏れる。獣の唸りのようにすら聞こえるそれは豊かに揺れる双丘―右の乳房は滝壺に揉みしだかれている―と共に浜面の性欲を一層かきたてる。

 それだけではない。麦野を抱きかかえる滝壺の顔も淫欲に溺れていた。
 自分の呼吸と鼓動で肉体が張り裂けそうになっている。きっと二人も同じだろうと浜面は確信する。


「あは、しずり、すっごく幸せそう……」


 さほど饒舌でない少女、滝壺が淫蕩な顔で麦野に囁く。
 三人で肌を重ねるようになってから、肌を重ねるときは自然と下の名前で呼ぶようになっている。

 それは呼称だけではなく、何かしらの壁を取り払っているということ。
 浜面に犯されている女も、それを抱きかかえる女も、汗まみれの快楽の中でお互いを肯定し合う。


「うん、幸せなの……仕上のが、中でいっぱいで、溺れちゃいそうなの……」


 暗部という殺人を否定しない空間の中、屍の山の頂点で殺戮の女帝として降臨していた面影はここにはない。

 ただひたすらひとりの男に抱かれている事実と快楽で麦野は溶けきっていた。

 彼彼女らのいる部屋の外は深い闇。だが部屋の明かりは強く三人を照らしていた。
 二人の顔が見たい、二人の淫らな姿が見たいという卑猥な思いで少年が決めたのだ。


 だから、この瞬間、二人の雌は彼のもの。


 分厚い胸板を内側からガンガン叩く心臓に引きづられるように、もっと深い、もっと奥の、きっと真実の何かがそこにあると慟哭のような激しさで浜面は腰を叩きつける。柔らかな長い髪から雄を嗾けるような匂いがして、視点の合わない麦野の唇を無理やりに奪う。
3 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/02(月) 23:36:30.72 ID:ZO7EcI0Qo
ふぅ
4 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/02(月) 23:37:01.55 ID:Ct7sawydo
「んっ!」


 一瞬だけ、驚いたかのような表情を見せるもそれは容易く解け、自分の顎をつかみ、頭を引き寄せ、舌を絡ませる愛人(レマン)を麦野は迎え入れる。
 互いの舌を絡め、唾液をすすり、相手に嚥下させ、歯肉をぶつけ合うかのようにキスを続ける。

 愛情の交換。しかし食餌の光景にすら見える。生きるために互いが互いのエキスを必要としている。腰を一番深い場所で押し付けて、淫液が二人の恥毛を濡らす。

 体液と体液の交換に麦野の背中を支える少女、滝壺が不満そうに頬を膨らます。
 常日頃、どこか遠くを見るような瞳は間違いなく二人を見つめ、その空間に自分がいないことに子供のように不満を募らせる。

 だから、意地悪をするように。
 その手を二人の重なる箇所へと滑らせ、愛液に満ちた麦野の肉芽を親指で軽く弾いた。


「ひんっ!」


 ぎゅう、と秘肉が狭まると同時に思わず浜面の舌を噛む。粘膜であり筋肉の塊である舌に牙を突きつけられ、苦痛の表情で浜面は麦野から口を離した。
 二人の口を繋げる唾液の糸に僅かながらに赤いものが混じる。


「痛ぇだろ、馬鹿!」


 数々の傷を付けられた。一方的な狩りのあの日のことではなく、肌を重ねるようになってから。噛み癖のある滝壺には肩を、爪を立ててくる麦野には背中を。だが神経の固まった粘膜を傷つけられ流石の浜面も一瞬、思考に怒気が混じる。


「ご、ごめんなさい……」


 泣きだしそうな眼で麦野が謝罪する。女帝ではありえない姿。無能力者に叱られて、超能力者が逆らうことができない。

 心も体も満たしてくれる男に嫌われたくないという当たり前の姿。
 その愛らしさに浜面の怒りが瞬時に溶ける。

 当然、滝壺は面白くない。
 麦野には敵わないものの両手に余るほどの胸を麦野の背中に押し付けつつ、膝立ちになる。麦野の肩口から顔を出す。自然、二人の左手は解ける。


「しあげ。私が応援してあげる」


 麦野の顔のすぐそばで、男と女が舌を重ねる。血を拭うように、いたわるように優しく少女の舌が雄の舌を癒す。それが唾液の交換に変わるまで時を必要とはしなかった。


「あっ……」


 自分と繋がっている男が自分でない女と自分の息がかかる距離で口付けを交わしている。
 全員が了承し納得した関係だとはいえ、いやだからこそ全身を縫いつけられるような感情に支配される。
 なによりも、滝壺と唾液を交換するたびに膣の中で浜面が跳ねるのを感じてしまうことが切ない。
 そんな麦野を、滝壺の視線がぬるりと舐めた。

 見せつけるように、一分ほど。
 麦野は何も言えない。
 目尻に涙が浮かんでくる頃に、ようやく二人の唇が離れた。


「ねぇ、しずり。どんな気持ち?」


 勝ち誇ったかのように滝壺が囁く。その手が麦野の豊満な胸を持ち上げ、先端の突起を強く捩じ上げる。びくん、と麦野の体が震え肉壷が締め付けられる。


「やだ……謝るからもう止めて……」


「ふふ、どうするの、仕上?」


「悪かったな、そんなに虐めるつもりはなかったんだよ」


 儚げな少女に男が優しく問う。
 滝壺理后が麦野沈利に告げる。
5 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/02(月) 23:38:39.06 ID:Ct7sawydo
「でも、しずりは罰を受けないといけないよね。しあげのこと傷つけたんだから」

 罰。ペナルティ。
 それがどれほど甘いものか、麦野は心身ともに刻みつけられている。

 数え切れぬほどの性行をもってして麦野の精神の中のマゾヒズムは確実に花開いていた。
 目の前の青年ーもはや少年とは呼べないほどに熟成した精神と肉体の男-の前で自分が牝であることを最大限に切望すること。

 ぞぞっ、と背筋に何かが走る。それはおぞけであり寒気えあり歓喜。じゅくりと子宮が喜びの蜜を吐き出す。

「さぁ、お願いしないとね?」

 ムダ毛一つない麦野の太股を撫でながらもう一人の牝が囁く。張りのある肌に滝壺が爪を立てる。白い肌に赤く痕がつく。
 新雪が汚されるように淡い痛みが麦野を促す。

「仕上の精液を、私の子宮にいっぱい出してください」

 消え去りそうな小声で、それでも一音一音しっかりと麦野が言う。

「赤ちゃんができちゃうかもしれない危険な日に、中だししてください」

 自身の言葉で鳥肌が立つ。

 [ピーーー]ことしかできない自分が女という性である矛盾と、それを捧げられるかもしれないマゾヒズム。
 女としての本能が歓喜している。体液ではない、遺伝子と遺伝子の交わりができると震えている。

 もちろん、ここにいる三人はみな学生。子供を育てられるほど大人ではない。超能力者であり暗部出身である麦野の経済力が如何に凄かろうとも、
 浜面仕上という男がどれほど精神的に立脚していようともとうてい現実的ではない。

 事実、麦野も滝壺も避妊薬を服用している。

 だが、避妊薬を服用したとしても膣内に射精すれば妊娠の危険性はある。そもそも受精可能な女性に安全な日などない。その確率を下げているだけである。

 故に背徳的な官能が全身の細胞をふるわす。
 惚れた男の子を産みたいという本能は麦野の中にも確かに息づいているのだ。

 ひゅ、と浜面が短く息を吸う。感情が溢れだして体をつき動かした。
 けだし、痺れるような快楽が全身を駆けたが故。
 
 繰り返すが、全員がわかっている。理解している。
 これはただの遊技であって、確信的な人生設計ではないことを。

 それでもココロの奥底から愛しいと思う女に嬰児が欲しいとせがまれれば男として嬉しくないわけがない。

 例えそれが嘘の言葉であったとしても、言葉にしてしまった以上そこに魂が宿る。

 嘘で虚構で、それでも「そうなりたい」という欲望が確かに存在して。

 浜面仕上は今再び野獣に戻る。


「ひぐっ、や、やん、あ、あ、ああっ」


 肉と肉とがぶつかり滑稽な音を立てる度に麦野の嬌声が響く。無数の蛇がうねっているような筋肉と女の柔らかな肌とが弾け、溶け、混じり合う。
 限界を超えて膨張した男根が麦野の熱い膣肉を抉り、溢れ出る蜜と熱とが淫蕩な香りを強くまき散らす。


「んっ、んんっ!」


 甘い果実のような唇を浜面は容赦なく貪る。快楽で息苦しくて、麦野の体が必死に酸素を求めていることを知りながら、それでも自分の欲望を優先させる。
 軽い酸欠に意識を引きづられるそうになりながらも、自分の肉が男を夢中にさせていることに麦野は歓喜し、その快楽を高ぶらせる。
6 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/02(月) 23:40:02.83 ID:Ct7sawydo
 滝壺理后の肉体も高ぶっている。浜面の性交で早鐘となった心臓はまだ落ち着きを取り戻していない。
 その土台に、自分の男が自分以外の女を抱いているという嫉妬――確かに、納得はしているが――が積み重ねられ、喉がひきつりそうなほど心も体も切なく追い詰められている。

 自分だって、欲しい。
 一箱六個入のコンドームを一晩で使い切り、それでも足りなくて避妊具なしで性交を強請ったのは滝壺だ。
 しかし、最後の射精は膣内ではなく臍から胸の当たりにまき散らされた。
 鼻腔に満ちるほどの青臭い臭いに包まれて幸せだったのは確かだ。
 だがそれでも、自分も麦野のように危険日に中に射精されたいと願っている。

 下世話な話、中に出されたときにはきちんと処理しないと性器からとんでもない悪臭がするようになるし、その処理をしている姿は
「女を捨てている」と表現してもいいような情けない格好となることを知っている。

 だとしても。

 それでも女としてその瞬間がどれほど甘美なのかはよく知っている。

 故に麦野への嫉妬は止められない。滝壺が麦野に友情以上の、もはや愛情といっていいほどの信頼を持っているとしても、それでも嫉妬の炎に胸を焼かれてしまう。

 だから憎しみの一歩手前までの力で麦野の両の乳首をひねり上げてしまった。

「きゃうっ! ううっ!」

 反撃も反論もない。超能力者の頭脳をもってしてもこの状況を改善する演算能力は維持できない。
 過剰なほどの痛みは圧倒的な快楽に飲み込まれて肉体を喜ばせ、自分の体が喜んでいることが浜面への愛情を深くしている。

 自分を否定して否定して、眼球をえぐりとり弾丸を打ち込んで全身を数千度の熱で焼いた男が、自分を孕ませようと全力を尽くしてくれている。

 優しく勇敢な王子様の連れ合いは塔に閉じ込められた可憐なお姫様であって、お姫様の命を狙う悪い魔女ではない。

 それなのに、王子様とお姫様は自分を迎えくれた。
 それだけじゃない。自分に素敵なプレゼントをしてくれる。

 嬉しくて苦しくて切なくて。必死になって浜面に抱きついた。もうすぐ崩壊する快楽の塔に流されないように、長く伸びた爪を浜面の大きな背中に立てる。

 わたしのものだ。

 いま、このしゅんかんはわたしだけのものだ。

 絶頂が近づいてきている。麦野の意識が甘いクリームのように溶けてきている。全身の神経が快楽のためだけに発動し、それの欠片でも味わいたいと
滝壺が必死に麦野に抱きついている。

「綺麗だ、本当に」


 誰に聴かせるというわけでもなく、胸を付いて出た言葉に浜面は気づかない。
 そして、崩れ落ちる塔の上で聞き取れるはずもない言葉に、麦野は優しく微笑んだ。


「出してっ! 仕上の精液をいっぱい出してっ!! 私を妊娠させてぇ!!!」


 麦野が言い終わると同時に、浜面の熱棒の先端が弾けた。爆発した。
 急激に熱せられた鉄が弾けてあたりに熱を巻き散らかすかのように、麦野の肉体の中で確かにそれは爆熱した。
 原始的な、獣のような、大型は虫類の如き生命力の固まりが波打って注がれて。


「あっあっあああああっ!!!!」


 麦野沈利は全身を大きくふるわせる。快楽の分だけ浜面仕上に対する愛情が純化していく。女としての幸せに酔いながら雌としての絶頂に満たされる。
 魂のステージがあがっていく浮翌遊感と、それでいながら肉体は愛しい男にしっかりと抱きしめられ地上に縫い付けられているという安堵。
 麦野沈利は自分は絶対にこの男の子供を産むんだという決意を強く心に刻んでいた。
7 :骸の蝉[saga]:2012/01/02(月) 23:42:23.54 ID:Ct7sawydo
 どこから飛んできたのか、麦野の病室、その窓の外に一匹の蝉が落ちていた。
 ジジ、とわずかな唸りを上げている。命が付きかけているのは誰の目にも明らかだった。

 脳を持たない節足動物でも死が怖いのだろうか。

 外の風を取り入れようと窓を開けた麦野は、ふと視線が向かった先の僅かな命の残り火を見てそんなことを思った。

 季節は秋。もはや蝉が大声を鳴らす季節ではない。
 学園都市は研究施設の集合体という面を強調しすぎるあまり自然というものがあまり残ってはいないのだが、だからといって蝉が全くいないわけでもない。
 地面を掘り起こしすぎて絶滅した昆虫もいるのだろうが、ミンミンゼミやヒグラシなどはその限りではなかった。

 つまり、蝉が居ても別段珍しいわけでもなんでもなかったのだが、麦野の視線は何故か釘付けにされている。

 視線と表現したが、それは二つあった。

 二人いるということではない。麦野の右目と左目が別の概念から構築されているもの――すなわち、生まれもつものか、後に補われた機械的なものか――という違いである。当然、見えるものは同じではない。同じにすることもできるが異なる映像を見ることもできる。

 それはつまり映像を受け取る側――大脳の皮質に機械的な措置が施されているということでもある。
 人が人たるものを脳に求めるのであれば、麦野は人という概念を陵辱されているとも云えた。

 それだけではない。麦野の顔の右半分は作り物だ。
 既に失われている。
 今は特殊メイクで外見を誤魔化しているだけだ。

 右目と同じ、作り物の貌。
 それだけではない。いくつかの内蔵は欠け、それを補う人工臓器が取り付けられている。残存する臓器も神経が壊れているために補助装置でなんとか機能を維持している状態だ。
 カエル顔の医者のカルテを見たところ、組木細工のように繊細に収められているはずの内蔵は位置はバラバラで本棚を蹴り倒した後のように乱雑に積み込まれているような状態だった。

 未熟な昔の自分を突きつけられて恥ずかしいよ、と言ったカエル顔の医者。彼は専門用語も交えては具体的に内蔵を元に戻す説明をしてくれたのだが、医療技 術に興味のない麦野は失った顔と左腕と同じように再生医療を行うということ、再生箇所は発癌性が高いため定期的な健康診断が必要だということ以外は頭に入 らなかった。

 元の体に戻れるのなら、それだけでいい。
 アイツが望んだ通りの体に戻れるだけでいい。
 殺し続けた自分にはお釣りが来るほどに開けた展望だと麦野は感じたことを思い出す。

 そして、心に残った蝉をなぜだか分からぬまま映像として保存する。
 やがて清掃ロボがやってきて、蝉の生死を問わずにゴミとして片付けてしまうだろう。
 だからといって救いあげようとも思わない。もはや寿命なのだ。ここで拾い上げたとしても遠からず死ぬ。内蔵を弄り回されて生きている自分とは違うのだ。

 死に藻掻く蝉に背を向け部屋の中心、ベットに腰掛ける。
 取り入れた風はパジャマには涼しすぎるほどだったが、それが心地よかった。
 肘から先のない左腕の布地がふわりと揺れた。

 今さらのようなその光景を見て、

 ――そういうことね。

 麦野は自分と蝉とを重ね合わせていたことを理解した。


 三度、殺し合いをした。

 一度目は裏切りを許せなくて。
 二度目は弾けるほどに膨らんだ復讐心に身を漕がれて。
 三度目は全てを捨てて、一人の全てを奪おうとして。
8 :骸の蝉[saga]:2012/01/02(月) 23:43:40.28 ID:Ct7sawydo
 蝉の胴体は空っぽだ。
 大きな音を立てるために、ドラムのような反響装置として、肉も筋も存在しないただの伽藍堂だ。

 ただの伽藍堂。

 麦野の肉体には本来存在しなくてはいけないものが存在していない。本来存在してはならないものが存在している。
 それは既に人という概念の枠組みが崩れているに等しく、本質的な何かがこぼれ落ちてしまっている。

 ただの伽藍の堂。

 死んでいるはずのものを生かされた。生かされてしまった。
 そして、そのままもう一度死ねばよかったのに、希望を見てしまった。魅せられてしまった。
 麦野が殺したいほど憎んで殺したいほど愛した男がどんなことをしても守ってやると言ったのだ。

 それが、期限付きだとしても。
 その言葉で無機質な世界に色が花開いてしまった。

 なんて残酷なんだろうと思う。

 既に壊れた器に盛るものなんて全て漏れてしまうのに。

 ほう、とため息をつく。セミの声はもう聞こえない。
 夕暮れになって日が奥深くまでさしている。ふと、センチメンタルな気持ちになった。

 焼いてやろう。

 このままゴミとして葬られるのは可哀想だ。
 幸いなことに焼くことには慣れている。一匹の虫を原子に変換することぐらいものを思うよりも容易い。
 死ぬことのできなくなった自分のかわりに死んだ、その嫉妬と代わりを務めてくれた感謝を込めて。

 立ち上がり、スリッパを突っかけて窓に近づく。
 残った右手の人差し指を蝉の死骸に向ける。
 瞬間、音も光も影もなく蝉は消失した。
 一欠片の灰も残らなかった。

 はしご状神経の脳を持たない生き物の死を嘆くように風が吹いて、目に見えない何かが空に散って何処かに還っていく。その姿を麦野はぼんやりと眺めていた。

「――むぎの?」

 後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはピンクのジャージ姿の少女、滝壺理后がぼんやりとした眼をしながら立っている。
 どうやらノックの音にも気付かなかったらしい。

「何をしているの?」

 一番会いたくない人物に声をかけられ、麦野の表情が濁る。しかしそれは文字通り一瞬のこと。平素のように変わりなく女王然として気を張った声を出す。

「虫をね、焼いていたのよ」

 嘘ではない。だがこれでは善悪も理解できない子供のようだなと省みる。

 不思議そうな顔をしながら滝壺が麦野に歩み寄る。
 風が二人のボリュームのある髪を揺らした。

 この少女も今現在入院中だ。
 体晶という薬を多用した副作用で複数の内蔵が潰瘍を併発しているのだ。
 神経を過剰に活動させ脳に特段の作用を与える薬は内臓の交感神経をも狂わせ、その機能をめちゃくちゃにしたのだ。分泌すべきホルモンを分泌せず、
 分解すべき毒素を分解しない。
 命があることそのものが既に奇跡とも言える。
 その奇跡は浜面仕上げという一人の青年――少年という年でありながら少年という枠には収まりきらない肉体と精神を持つ男――の活躍によって起こされた。

 麦野が殺そうとし、殺されて、奪い取ろうとし、心を奪った男。

 そして、滝壺の恋人。

 今、滝壺の生命活動は安定している。
 しかし完全に元の体を取り戻すにはやはりきちんとした治療が必要であり、学園都市でもっとも技術力の高いこの病院に麦野と共に入院しているのだ。

 浜面仕上の強い意思で二人は今ここにいる。
 アイテム再結成まではどんなことをしてでも守ってやるという約束を守りきってくれたのだから、一つぐらいは言うことを聞いてやろうと、そんなことを口にしたら
 浜面は「身体を治せ」と言ったのだ。
 呆れはしたが麦野は素直に言うことを聞いている。実行している。

 滝壺を追い込んだことを憎んではいないのか、と聞くこともできずに。
9 :骸の蝉[saga]:2012/01/02(月) 23:44:53.78 ID:Ct7sawydo
 滝壺の能力、AIMストーカーは体晶を用いることで”正しく暴走”し、一度認識した能力者のAIM拡散場を銀河の果てまで追跡する。
 全ての物理的防御を無視して対象を射抜き焼き殺す麦野の能力との相性は抜群だった。

 便利だったから使って。
 切り札だったから使わせた。

 結果、滝壺の命が縮まるとわかっていて使わせた。

 ――そういう表現しか知らなかった。

 もう浜面は麦野を許している。滝壺も一緒だ。それは理解している。でも一度動いてしまった歯車が元に戻ることはない。
 浜面は滝壺を選択し、麦野を捨てた。
 アイテムの中に居場所があっても浜面の横に居場所はない。
 それはもうどうしようもないこと。


 ――嫌われて当然だよね。
                       麦野は一人胸の中で呟く。
 ――だからこんな化け物になっちゃったんだ。
                       言葉に出せない思いを繰り返す。
 ――アイツが滝壺にいくのは当然だったんだ。
                       苦しいから、敢えて明るく問いかけた。


「どうしたのよ。言いたいことあるんでしょ?」

 何か照れている滝壺に言葉を促す。
 ただ顔が見たいというだけで違う階から降りてきた訳でもあるまい。きっと何かを伝えたいのだろう。ぴんと張った背筋に確固とした芯を感じた。

 苦しくても我慢しよう。
 顔には出さないでいよう。
 大丈夫、私は強い。

 視線を合わせる。滝壺が大きく息を吸う。
 そして力強く宣言した。

「私ね、体が治ったらはまづらに抱いてもらおうと思うの」

「――っ!」

 弱かった。
 心乱された。心臓を鷲掴みにされた。唇を噛まなかったら叫んでいたのかもしれない。
 何時か必ずそうなることで、単純に刻限が見えていないだけのことを改めてその唇で言霊にされて、魂が揺さぶられるほどに動揺した。
 形のない何かを失いそうになる。

 どこか遠くを見ながら滝壺が笑っている。こころなしか頬を染めている。当たり前だ、自分が女になると高らかに告げたのだから。
 恥ずかしがりながら、気高そうに。それでいて嬉しそうに。
 こんな言葉を口にできるほど誰かを好きになれたことを誇らしげに。
 麦野の目には眩しいほどの笑顔。

「そ、そう。決めたんだ」

 震える舌先を黙らせるように麦野が息を呑む。
 右手を胸の前で握って暴れる心臓を落ち着かせる。

「決めたんだったら、応援するよ」

 小さく、まるで叫びのように言う。はっきりと、嘆くように言う。

 引きつっていないだろうか。不自然ではないだろうか。おかしくないか。不格好ではないか。
 大丈夫、こんな顔だ。多少不格好だろうと構うものか。

「あんたじゃないけどさ、応援する。怖いかもしれないけど幸せになりなよ。浜面は浜面だからダメなときはとことんダメだけどやるときはヒーローにだってなれるからさ」

 生皮を剥がすような感覚。自分の言葉が自分の内側を切り刻んでいくのを麦野は理解する。

「浜面の童貞臭は酷いもんだからさ、一回覚えたら毎日のように弄ばれるんじゃない? 万一マンネリになってもバニースーツで覚醒した猿になりそうだし」

 けらけらと愉快に麦野は言う。
 言って、滝壺の大ぶりの乳房を鷲掴みにする。
 きゃあ、と騒ぐこともなくキョトンとした顔で滝壺が麦野を覗き見る。

「私ほどじゃないけどさ、滝壺スタイル良いんだからさ。ここなんかいい武器になるんじゃないの?」

 私ほどじゃないけどね。心の中でだけもう一度言う。
 負けてない。ううん、負けてなかった。今はこんな体だけれども負けてなんかいなかった。体だけならあいつは私の方を見ていたはずだ。
 そんな思いが今でも麦野の中には確かに存在する。
 感じさせてはダメだ、と麦野の強すぎるプライドが虚勢でしかない笑みを崩させない。
10 :骸の蝉[saga]:2012/01/02(月) 23:45:58.09 ID:Ct7sawydo
 滝壺がゆっくりと麦野の手を取った。片手しかない麦野を、両手でしっかりと。痛いほど握り締めた。

「ありがとうね、むぎの。私、むぎのにそう言ってもらって本当に嬉しい」

 いつの間にか夕方のオレンジは夜の帳に塗り替えられ、外の風も冷たくなってきていた。
 滝壺の顔の陰影が深くなって柔らかな美しさを引き出している。屈託の無い笑みにそれが良く合っていた。
 内側からにじみ出ているのは素直さだろう。暗部というコロシコロサレル世界の中で屈託さを失わなかったのは麦野の知る限り滝壺しかいない。
 皆が皆、何処かに闇を持ち、目に見えない歯車が空回りしていた。
 殺してしまったフレンダも、子供のくせに大人味を出そうとしている絹旗も、出会った頃の浜面も。
 そして何より麦野沈利という自分自身が。
 噛み合わない歯車を持て余して狂っていたではないか。

 ぼんやりと、そして何か悟ったように物事に拘泥しない――浜面に関することは別として――滝壺理后だけがあの世界で狂っていなかった。
 素直なままで存在していた。

 誘蛾灯のように浜面が滝壺に惹かれるのは当然の因果。滝壺が浜面を受け入れる選択をしたのは当然の結果。

 羨ましすぎて気に入らない。
 でも、笑ってやる。弱い私なんて私じゃない。百万ドルの笑みで受け止めてやる。
 ああ、でもこんな顔じゃ5セント硬貨の価値もないか。

 しかしながら、麦野の強がりも容易く撃ち抜かれる。

「むぎのも、はまづらに抱いてもらおう?」

 微笑みを浮かべたまま、散歩にでも誘うような滝壺の言葉によって。

「綺麗な体に戻ったらはまづらに抱いてもらおうよ」

 先程の宣言と同じぐらいに力強く。さもそれが当たり前であるかのように。
 強く強く手を握って。
 麦野を逃がさないように手を握って。

「――」

 何を言っているのかわからなかった。
 何を言っているのかわからなかった。

「むぎのも、はまづらのこと大好きなんだから、一緒に抱いてもらおう?」

 イかれている。そんなものは常識はずれだ。なんてエロゲだよ。
 思った言葉は幾つもあるのに口の中が粘ついて何一つ出てこない。それなのに喉奥に唾液が溜まりすぎていて、息苦しくなって嚥下する。
 百万ドルの笑顔なんてもう何処にもない。
 心臓が、何発も弾丸を打ち込まれた壊れた心臓が音を立てて動き出す。自律神経が異常になっていることを理解する。首筋と耳の裏とに汗が浮き出てくる。

「あ、んた……なに、を……」

 麦野はもうどう話していいのかすらわからなくなっていた。

 空っぽの蝉。
 音響装置でしかない空っぽの内側で滝壺の言葉が麻薬のように木霊する。

「はまづらのこと好きなんだよね?」

 やめてよ。言わないでよ。あんな無能力者。知っているよ。でも知らないんだよ。好きって気持ちがよくわからないんだよ。

「私、むぎのだったら許せる。ううん、むぎのにも一緒にいて欲しい」

 おかしいよ。普通じゃないよ。なんで浮気を唆すようなことするんだよ。そんな性癖に付き合いきれないよ。

「だって、むぎのは本気だったんだから。私とおんなじように本気だったんだから。はまづらのこと本気で好きになってくれた人が報われないのは、私、嫌だよ」

 アンタはこんなキャラじゃない。そこまで割り切れるはずがない。もっと嫉妬深いはずだ。
 だって、私だったらそんなの許せないから。


「――やめて」


 やっと言葉がでたとき、麦野は自分が泣いていることにはじめて気が付いた。
 泣いたことなんてなかったのに。
 泣くところなんて誰にも見せたことがなかったのに。

 眼球を失った右目。涙腺は残っていたらしい。
 全く熱さを感じない右半分の顔を伝った涙が口の中に飛び込んでくる。

「アイツはアンタを選んだ! 選んだんだ! もう終わったことなんだよ! そんなおかしな話持ち出して希望があるようなこと言わないで!!!」
11 :骸の蝉(了)[saga]:2012/01/02(月) 23:49:47.80 ID:Ct7sawydo
 暴力に訴えなかったのは何故だろう。能力で殺さなかったのは何故だろう。
 決まっている。浜面に嫌われたくないからだ。
 体も心もおかしくなっているのに、溢れんばかりに胸の内に彼の存在を感じてしまう。

「そうだよ! 私は今でも浜面が好き! どうしようもないぐらいに好きなんだよ! でも、だからってもう終わって決定したことを、無理矢理ひっくり返したって、
 そんなのどうにもならないよ!」

 看護婦が何事かと駆け込んでこないのが不思議なほどの大声。
 隣の部屋が騒ぎを聞きつけているのは間違いない。
 叫んでいた。麦野は身を切るような声で叫んでいた。
 涙を溢れさせて、えづいて、肩を震わせて、今にも崩れ落ちそうなほどに脆くなっていた。

 そして、幼児のように無力な麦野を滝壺が強く抱きしめる。
 その腕を麦野は避けようするが、その体からは考えられないほどの力と滝壺の体温から逃れることはできなかった。

「もう、やめて――」

 超能力者でも化け物でもない、一人の少女が消えそうな声で言う。

「やめないよ。むぎのが、うん、って言うまでやめない」

 もう一人の少女が力強く抱きしめる。
 言うことを聞かない子供に言い聞かせるように。

「だって、今むぎのを離したら絶対に後悔する。一生後悔する。おばさんになっておばあちゃんになって辛い思いをする」

 自動で着いた電燈が闇を払っている。科学の光が煌々と照らしている。
 柔らかな胸に抱かれ、泣いて潤んだ眼のまま麦野が滝壺を見上げる。

「はまづらも、むぎののこと、好きだよ。好きな人のことだもん。私にはわかるよ」

 降り積もるような優しい言葉で滝壺が麦野を癒す。
 溢れ出している感情をコントロールできない麦野をあやすように慈しむ。
 その姿は慈母に似て、その微笑みは聖母(マドンナ)に似ていた。

 どくん、と不完全な心臓が脈打つ。

12 :骸の蝉(ずれた)[saga]:2012/01/02(月) 23:50:57.98 ID:Ct7sawydo
「浜面が、私のことを、好き――?」

 そんなハズはない。だって、アイツは――

「私のことを好きでいてくれている。それは確信している。でもだからってむぎのを想ってないわけじゃないよ」

 いやじゃないの、アンタは――

「言ったよね? むぎのだったらいいって。むぎのは本気だから許せるって」

 なんのメリットがあるの? 私が傍にいたらアイツ奪っちゃうかもしれないんだよ?

「それはさせないよ、むぎの。私いっぱいいっぱい好きだって言ってずっとはまづらに見ていてもらうんだから」

 答えになってないよ。なんでいやがらないの、アンタ――

「後悔するから。私も、そしてはまづらも一生後悔するから。だからむぎのを離してなんかやらない。一生はまづらのものになるって言わないと放してあげない」

 おかしいよ、滝壺――

「そうだね。おかしいよね」

 うん、おかしい――

「でも、私たちの居た場所っておかしな場所だったよね? 常識なんか何処にも転がっていない枯れた世界だったよね?」

 うん、そうだね――

「そんな世界にいた私たちが普通の常識で幸せになる必要はなんだよ、きっと。おかしなままで幸せになってもいいんだよ」

 でも、それは――

「応援するよ? むぎののこと、全力で応援してあげる。だからきっと大丈夫」

 ――世界の全てを敵に回してでも?

「世界の全てじゃないよ。浜面も私も居る。きっと絹旗だって応援してくれるよ。フレンダだって絶対に応援してくれているはずだよ」
 
 アイテムが? でもアイテムを壊したのは私だよ?

「それでも、だよ。フレンダだってむぎのを恨んでないよ絶対」


 甘く甘く重ねられる砂糖菓子のような言葉に麦野の心は揺れ動く。
 もしそれが本当だとしたら、浜面仕上が麦野沈利を必要としてくれているのならばどれほどに幸せなことだろうか。
 思っただけで背筋が震える。
 そして、確信する。

 ここで甘えてしまって、裏切られたら、私は私でいられなくなる。
 引き返すのならば、今、此処。

 全てを満たしてくれる提案だからこそ麦野は怖い。心の奥底まで甘えてしまうものができたときに、もしそれを奪われたのならば本当に本当の意味で伽藍堂になってしまう。
 結局のところ、麦野沈利という女にある最大の悪癖が彼女を縛っている。

 麦野沈利は独りだった。
 独りに慣れすぎていた。

 アイテムの中でバカをやっているのは楽しかったしファミレスでくだらない会議をするのも好きだった。
 でも、自分はリーダーで彼女たちは部下で、システムが入れ替わればみんないなくなってしまうと割り切っていた。

 彼女にとっては友達も恋人もいなかった。

 だからこそ、これほど暖かな誘惑を知ってしまったら。
 その居心地の良さを知ってしまったら。

 絶対に戻れなくなる。
 独りに戻ったときに壊れてしまう。

 ――怖い。

13 :骸の蝉(了)[saga]:2012/01/02(月) 23:51:24.27 ID:Ct7sawydo
「滝壺。私、怖いよ」

「むぎの?」

「滝壺の言うとおりになればきっと私はシアワセになれるんだと思う。でも、一回幸せを知ったらもう引き返せない。もし浜面に愛想つかされたら生きていけなくなる」

 滝壺がもう一度、優しく麦野を抱く。ふわっと開いた髪からする匂いが見えない衣となって二人を包む。
 麦野の感情が爆発することはなく、そして滝壺の言葉を突き放すこともなかった。
 そこまで自分を見つめたんだね、と滝壺が微笑む。

「大丈夫。浜面は絶対に麦野を見捨てたりなんかしない。あの人は強いもの。頼りなくて情けなくて僻み根性が染み付いているけど、でも、あんなに強い人、他にいないよ」

 浜面は強い。
 スーパーマンではないし、オペラの主役にもなれない。世界の危機を救うこともできない。ただの、無能力者だ。
 しかし、強い。
 その強さは超能力者麦野沈利を三度にわたって退けた、ということとは違う。
 当たり前のことを当たり前にこなし、どんな悪条件でも絶望に蝕まれることなく、僅か数パーセントの確率でもそれが最善の手であるのならば命をとして実行する。
 その精神力こそが――強いのだ。

 その強さを麦野は身をもって知っている。
 麦野から眼球と左腕を奪い、そしてそれを元に戻せと強く言ったあの眼を知っている。

 だから

「信じても、いいのかな。甘えても、いいのかな?」

 再び泣き出しそうになりながら滝壺に問いかける。
 溢れ出しそうなのは涙だけではない。伽藍堂であるはずの心の中にいっぱいに詰まっている誰かへの想いが、堰を切って溢れ出しそうなのだ。

 蝉が大声でなくのは交配の相手を探すためだ。
 自分がここにいるよ、と天地に響くように宣言しているのだ。
 そのための空洞があるとしても、きっと何も詰まってないわけではない。

 麦野の空洞は溢れ出す感情で埋めつくされている。
 埋めつくされた感情できっと宣言するのだろう。自分の思いを伝えるのだろう。

 滝壺はただ微笑んで、

 ――応援するからね?

 とだけ、はっきりした声で麦野に告げた。
14 :蒼穹の内側(前)[saga]:2012/01/02(月) 23:53:52.37 ID:Ct7sawydo
 中天高く蒼穹に雲一つない青空。
 ましてや週末とあれば健康な少年少女は街へと繰り出し大いに青春を楽しむものである。
 まぁ、補習に追われて楽しい週末を楽しめないものもいるが得てしてそういう輩は自業自得の類である。

 そして、補修どころか学校にもほとんど通わず、それでいながら卒業後の進路は引く手あまたの学園都市の超能力者、麦野沈利は裸にエプロンという姿で
床に直接座りながら満面の笑みを浮かべていた。
 状況を説明すればかなり淫蕩になる。
 手錠を持って椅子に括りつけられた素っ裸で茶髪の不良、浜面仕上の股座に座り込み、彼の陽根をその大きな乳房で挟んでいるのだ。当然、素肌にまとった
エプロンは腰でまとめた紐だけで吊るされた状態で麦野の太ましい足元を隠す程度の役割しか果たしておらず、ただ裸でいるよりも淫らな姿となっている。
 乳房の間には海草のローションがたっぷりと含まれ、麦野が両手でそれを動かす度に浜面は快楽のうめき声を上げる。

(えへへ、かわいい――)

 殺戮を繰り返し命乞いをする輩の腸を撒き散らしてきたとは思えないほどの素直な笑みを浮かべながら心底幸せそうに浜面のペニスを刺激する麦野。
 再生した左腕がなんの障害もなく自分の胸を動かせて、浜面を心地よくさせていることがたまらなく嬉しい。
 両の乳房を動かす度にねちゃねちゃ、という液体の音がする。
 その音がすればするほど浜面が固く大きく熱くなるのを心臓のすぐそばで感じられることに麦野は満足していた。

「どう? 仕上ちゃんは気持ちいいのかにゃーん?」

 体を重ねる時だけは下の名前で呼び合う。そういうことにしている。

「たまんねぇよ。たまんねぇからいい加減出させてくれよ」

 情けない声で浜面が嘆く。
 とても常日頃二人の女が腰砕けになるほどの性欲を発揮している人間とは思えない声だ。

「だめー。今日は出させてあげないの」

 鼻にかけたような甘えた声で胸の刺激を強める麦野。
 淫らな気持ちは当然あるが、それ以上に性的なことでは主導権を握れない男を思いのままにしているという事実が彼女を興奮させる。
 そして、羨望の眼差しで見られても自分では対して意識をしていない大ぶりの乳房が性器として男を魅了していることが誇らしかった。

 ガクガクと浜面の足が震え、限界が近いと告げている。
 ローションの中に浜面の分泌物が混ざってきているのか、白く泡立って濁ってきている。
 最初冷たかったローションが二人の体温で温められて、まるで二人の間で何かが繋がっているような錯覚を覚えさせる。
 麦野の笑みは止まらない。世界で一番幸せそうな顔をしながら夢中で両手を使って胸を動かす。
 ふわっ、と浜面の陽根が膨らんだ気がした。

 あ、これはいくな、と判断した麦野は途端身体を離して浜面の陽根の根元を指でぎゅっと抑える。

「おま、やめっ、馬鹿っ……」

 びくんびくん、と身体全体で震える浜面だが四肢を拘束する手錠によって身動きが取れない。
 ぞぞっ、と全身に鳥肌が立つも、それはそれで終了し最終的な快楽にはたどり着けない。

 麦野がいかないようしっかりと抑えているから。

 やがて昂った波は頂点を迎えずゆっくりと落ち着いていき浜面は性的な絶頂を迎えることなく中途半端な快楽の地に落とされる。

「い、言っておくけどこれはかなり辛いんだぞ!? 出したいのに出せないのはとんでもない苦痛なんだぞ!?」

 言っても麦野の行動は変わりないと知りながらも絶叫する浜面。
 世紀末帝王の貫禄など何処にもない。うっすら眦に涙すら浮かんでいる。
 そんな浜面をふわりと優しい香りが包んだ。
15 :蒼穹の内側(前)[saga]:2012/01/02(月) 23:55:08.25 ID:Ct7sawydo
「しずり。今度は私の番だよ?」

 柔らかな声の滝壺理后が椅子の背もたれごと浜面に後ろから抱きついた。
 背もたれがあるから感触はわからないが、麦野同様に素肌にエプロンだけのその姿とエプロンを押し上げている丸い膨らみが当たっているはずだ。
 性感を限界まで高められたまま限界を降りることを許されていない浜面には滝壺の甘い体臭だけでも刺激的だった。
 耳元の声でぴくりと逸物が動く。
 ずっと笑みを崩さなかった麦野がむっと表情を変えた。そしてそのままぎゅっと力強く握りしめる。

「しずり」

 おもちゃを独占しようとする子供に諭すような声。顔は笑っている。笑っているが目は本気だ。本気で許さないと言っている。
 超能力者と大能力者という、圧倒的な実力差がありながらも麦野は滝壺に逆らえない。
 本来浜面が選んだのが滝壺だという事実と、滝壺が強く推してくれて麦野がここにいるという現実。だがそれ以上におそらく本質的な部分で麦野は滝壺に逆らえない。

 ちぇ、と小さく舌を打ったあと麦野が浜面自身から手を離す。そしてすっと立ち上がり拘束されたままの浜面の唇に自身のそれを重ねた。

「今度は理后が気持ちよくしてくれるってさ」

 ベタベタになった胸元を気にしながら麦野が二人に背を向ける。簡単にシャワーで流してくるのだろう。
 恥ずかしがる様子もなくエプロンを外して風呂場へと向かった。
 もちろん、麦野の胸と同じぐらいにローションまみれの浜面の陰茎は滝壺が綺麗にするのだ。口と舌で。

 萎びることのない逸物を前にして滝壺が座り込む。先程の麦野と同じ。
 違うのはエプロンの胸をはだけさせてないことか。
 しかしシルエットだけしかみせない胸元が逆にエロティックに浜面の本能を誘う。

「てかてかだね」

 言って、躊躇いなく手を伸ばし口を近づける滝壺。見上げるような視線のまま張り詰めた浜面のペニスを口に含む。
 亀頭冠だけを唇に含めてローションに塗れた肉茎に指が絡まるとそれだけで浜面の背筋にゾワゾワと快楽が走る。
 ちろり、と一舐めだけしてすぐに口を離し、

「熱いね」

 とだけ言って再び口に含む。
16 :蒼穹の内側(前)[saga]:2012/01/02(月) 23:55:58.48 ID:Ct7sawydo
 今度は簡単に離さない。柔らかい舌の感覚に浜面が戦く。肉塊が戦慄く。
 じゅろ、と啜る音を態と立てながら口内いっぱいに浜面を迎え入れる。陰毛が触れるのも構わず喉奥にまで深く飲み込む。
 そして垂れたローションに濡れる陰嚢を両手で優しく揉んだ。
 陰茎に塗れたローションを一滴残らず飲み干そうというのか、唇の内側と甘噛みの前歯で浜面の陰茎を削ぎとっていく滝壺。
 薄皮一枚も奪われているわけではないのに浜面の神経は限界まで悲鳴を上げる。
 今日一日だけで何度も二人に限界近くまで高められているのだ。昂っているのだ。もはや全身が性感帯になっていると言っても過言ではない。
 そのような状態で徹底的に性器を責められて、それでいながら射精を許されない。
 男にとっては最高の快楽であり拷問だった。最早脳が蕩けて形がなくなっていてもおかしくはない。

 唇で一通りローションを拭ったあと、滝壺が横笛を吹くように唇としたを茎に這わせていく。
 四肢を拘束された浜面の不自然な体制に併せて不自然に首を傾げ、エプロンに隠れた乳房を脇から見せつけている。

 一見すると脱力系で何も考えていないような滝壺だが性行為に関しては積極的だった。
 猥雑なことを口にする割に本番になると顔を真っ赤にしたまま何もできない麦野に比べるとそれは顕著だった。
 経験豊富だというわけではない。ただただ積極的なのだ。貪るようにのめり込んでくる。
 そして滝壺に引きづられるように麦野も肉体を浜面に晒す。
 淫らさが淫らさを呼ぶ二人の女は理想的であったし浜面は贅沢すぎると感じていた。
 だからと言ってどちらかを手放すなんてことを考えたこともない。地獄に落ちるまで、否、地獄に落ちても手を離さない。

 高い体温に包まれ浜面のペニスが震える。奥歯がガクガクとなる。
 舌をうねらせるたびに、歯が甘く立てられるたびに、あふれ出た唾液が滝壺のすっきりした顎のラインを伝わる様に、
 浜面の心の中に形の持たない答えのない何かが積み重なって崩れ落ちそうになる。

(濃い味はしないけど――満たされてるから――私――)

 じゅくりと滝壺の淫蜜が溢れ出て太ももを短くつたって床に落ちる。落ちて麦野の蜜と混ざり合う。
 朝から二人で何度も何度も愛撫し口に含んだのだ。雄の臭いなど欠片も残っていない。
 それでも滝壺理后はいやらしく舌を絡め心のまま吸い込む。戸惑いも焦りもせず淫蕩に唇を窄め吸盤のように強く吸引する。

「やべぇ! 本気で、もうイイだろっ!」

 背骨を、心臓を、脳みそを全て鷲掴みにして掻き乱して一つに纏まって股間から放出する。
 そんな獣じみた妄執が浜面全体を支配する。

 思いっきり、射精したい。

 もう数時間もお預けを食らっているのだ。
 性欲豊富な健康体の青年にはどれほどの苦痛か。
 滝壺理后も麦野沈利も美しい少女であるのだからなおさらだ。

 ローションが唾液に書き換えられて、浜面の陰茎がびくびくと震える。
 快楽の電流がすべての神経を支配する。

 うふふ、と少女が笑った。

 ちゅる、と滝壺が口を離す。唾液が陰茎と唇とを一瞬つなぎ重さで切れる。

 そして、やはり。

「ダメだよ。しあげ」

 ぎゅう、とその根元を抑える。
17 :蒼穹の内側(前)[saga]:2012/01/02(月) 23:56:47.74 ID:Ct7sawydo
 悪魔のような笑顔で的確に射精ができないように抑える。
 精巣が限界まで引き上げられ尿道括約筋が役割を果たそうとするのに、悪魔がそれを許さない。
 浜面の顔が青くなる。脳内に快楽が駆け回っているのに出口がない。そんな状態に狂いそうになる。

 十秒、二十秒。

 淫欲の罪で業に塗れて地獄に落ちたとしてもこれほどの苦行が待っているだろうか。

 それなのに滝壺はニコニコと笑っている。
 この娘はサディストかもしれない。今さらのように浜面は戦慄する。

「頑張ってるね、しあげ」

 波が砕ける寸前まで高鳴り、そして落ちていく。快楽の頂点からゆっくりと滑り落ちるも昂った地は脈動したまま。
 心臓の音はうるさいほど耳に響き己が誰だかを忘れさせる。

 もし両の手足が拘束されてなければ押し倒して貫いていただろう。
 勃起は不自然なほど収まらなかった。
 射精しようとする感覚が失せても狂おしいほどにそれを求めている。
 目の前に最高のメスがいるのに何もできない。すべてを甚振られている。

 もう、何もかもが限界だった。

 今この瞬間能力者として目覚めてもおかしくないぐらい。
 浜面の眼が血走って、全身の筋肉がポンプアップして両手にはうどんのような静脈が浮かび上がっている。

 ぺたり、といつのまに近寄っていたのか。

 裸のままの麦野がシャワーで火照った体をろくに拭かないまま椅子ごと浜面に抱きついてキスをする。

 するりと立ち上がった滝壺が汗ばんだエプロン姿で唇を重ねる。

 そうして、二人が浜面の頭を挟むように両の耳に。
 啄むように囁くように。
 天国への切符を見せびらかすように。

「もっと凄いことしちゃう?」

「我慢した分いっぱい出させてあげるよ?」

「満足してくれるかわからないけど」

「二人で精一杯頑張るから」

 血走った眼のまま二人を見る浜面仕上。ここにいるのは本能を限界まで研ぎ澄ませた一匹の獣でしかなかった。
 枝垂れ架かるように両の腕をそれぞれの胸の谷間に収め。
 示し合わせたかのように二人がその手を浜面のシンボルに伸ばす。

 最後の藁がラクダの背骨をおるように。

 軽く触れただけで。

「っうううっっつっ!!!!」

 浜面仕上は全身を震わせて溜め込んだ精一杯を天井に届くほどに発射した。
18 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/02(月) 23:58:48.26 ID:Ct7sawydo
 太陽は頂点から摩天楼に顎を載せるほどに時は経ったが空は相変わらずに青い。
 突き抜ける蒼さが宇宙にまで届きそうで道行く若者たちの心を開放している。
 健康的な生活とはこういう天気の下で大きく背を伸ばすことであって、色欲に塗れることではない、はずである。

 全裸のまま拘束されていた浜面仕上は数時間ぶりに両手足の手錠を外された。微妙に硬直した筋肉と乾いたままの喉を癒すこともできないまま
裸体を隠そうともしない麦野沈利と滝壺理后に無理矢理浴室に連れ込まれた。
 暗部組織アイテムのアジトのひとつだったこのマンションは家庭用として考えても相当に贅沢な間取りをしており、浴室も過剰と言えるほどに広い。
単純に言えば三人の男女が同じ空間にいても十二分なほどに広いのだ。
 長身な浜面は普通の浴槽では充分手足を伸ばすことはできないのだがここの浴室であればそれは可能である。
 窮屈にはなるがあと二人入ることも不可能ではない。
 そして洗い場もそれに匹敵するほどの面積がある。

 正直、学生には過剰な設備だ。
 ホテルの浴場に匹敵する。

 学園都市の過剰な免疫組織であり暗殺部隊であったアイテムの福利厚生がそれなりに立派だったということなのだが、この部屋の維持費を稼ぐだけでも
浜面は目眩がすることがある。
 他のアジトは処分したし超能力者と大能力者の奨学金を考えればさほどの贅沢でもないのだが、いくら世紀末帝王HAMADURAと云えども所詮彼は無能力者の
チンピラ。思考できる金額が二人の少女とは隔世と言えるほど異なっていた。

 現状彼はただのヒモである。
 確かに無能力者でチンピラでサル顔で「爆ぜろ」「パパの睾丸から人生やり直せ」などと某ツンツン頭に非道いことを言われまくっているダメ男で果報者ではある。
 しかしそれでも男なのであって現状には満足していない。出来ることならば二人の少女もこれからできるであろう家庭も自分の稼ぎで養いたいのだ。
 そのためにろくに通ってなかった学校に通い始めて無事卒業するために補習もガンガン受けて、更には大型二種やクレーン車や危険物処理者の試験を受けまくっているのである。
(鍵開けのスキルを生かした職業で自立したいという目標はあるが、建設関連の資格を持っていれば確実に仕事が入ってくる。毎日のように研究所が設立され廃棄される学園都市の事情を考えると妥当な選択だろう)

 浜面は浜面で必死に考えているのだ。

 しかしながらこの瞬間だけはそのような現実的な考え方は完全に彼の脳裏から失われていた。

 この広すぎる浴場を利用した二人の少女の愛撫に身も心も蕩けそうになっていたからだ。

 FRPの暖かな床に麦野が髪も纏めぬままに寝転がっている。その上に被せるように滝壺が体を重ねている。
 だが麦野の顔は浜面の視線にはない。
 何故なら。

(まじぃ! めちゃくちゃ気持ちいいけどンなこと言えねぇ!)

 くぐり椅子と言われる「口」型の、上面の中央が大きく欠けた椅子に座った浜面の股の下、椅子の中に麦野が頭を突っ込んでいる。
 そして睾丸から蟻の門渡りと呼ばれる部分を経由した排泄口である肛門まで、その全てに舌を這わせて舐めとっているのだ。
 これまで一度もされたこともない経験を、意識過剰なほどの自尊心の塊の麦野が何の躊躇いも見せずに行なっている。
 男の排泄器という意味ではペニスも一緒なのだが然しながら受ける側の浜面の心理には大きな違いがあった。
19 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/02(月) 23:59:50.48 ID:Ct7sawydo


 単純な羞恥心。
 肉茎を刺激されて性的快楽を得るのは当然のことだ。しかし肛門とその周辺を刺激されて全身を震わせているとなれば自分を変態だと思い込んでしまう。

「まるでオンナノコだね、しあげ」

 滝壺理后は心理操作系の能力者ではない。対象のAIM力場を「読む」ことである程度の検討は付けられるが学園都市で最下位のレベル0の無能力者である
浜面はその限りではない。
 しかしそんな能力などなくても麦野の愛撫の度に身を震わせてる様を目にすれば手に取るように分かる。

 揶揄うように厚い胸板の上に飾り付く乳輪に舌を這わしながら見上げその表情を伺う。
 敢えてペニスに手は触れない。
 そこは当たり前に感じてしまうのだから。
 代わりに先ほどまでの責めで敏感になっている全身の全ての皮膚に指を滑らす。

 滑らかな肌ではない。大小の無数の疵痕が残っている。裂傷であって火傷であって冷傷であって。弾痕が残っていないのが不思議なほどだ。
 その傷には二人でつけたものも多い。滝壺を庇うかわりについた傷。麦野が殺そうとしてついた傷。背中の傷が多いのは逃げたからではない、護ったからだ。
 肩口にも傷が付いている。抱かれている最中に思わず滝壺が噛んでしまうから。
 背中に新しい傷がある。抱かれている最中に麦野が思わず爪を立ててしまうから。

 もっと傷をつけたいと思う。もっと自分を書き込みたいと思う。

 新しい傷の代わりに新しい快楽を埋めつけたい。

 触れていないのにペニスが涎を垂らしている。びくりびくりと高ぶっている。
 二人の少女が浜面の新しい性感を掻き出しているからだ。
 綺麗に洗っているから排泄物など欠片も残っていない、そのはずだがそうでないかもしれない。それでも麦野は浜面の肛門に舌を這わせる。
 両手で宝物を掲げるように陰嚢を優しく揉みほぐす。
 体温が上昇して新たに体臭が漂ってきた耳の裏に舌を這わせながら滝壺がボリュームのある胸を浜面の胸板に押し付ける。
 彼女らが彼にされたように、彼が彼女たちにされている。

「お前ら――後で覚えていろよ――」

 息を乱しながらそれでも浜面が声を上げる。
 快楽に屈しているのではないと。
 快楽を引きずり出すのは好きな癖に引きずり出されることはプライドが許さないのだ。
 だがもうそれももう時間の問題。
 彼のシンボルは既に限界だ。崩壊は目に見えてる。背中の皮膚が毛羽立ち全身の汗腺が吹き出す。浴室で湿度が高いため汗は外に逃げていかない。
 それだけではない。嗅げば明確に雌の性臭がする。二人の少女が発している匂いが密室である浴室に満ち満ちている。愛撫に没頭することで喜んでいるのだ。

 じゅくり、と自分の股間が湿っていることを麦野は感じた。
 これまでのこととこれからのこと。期待と不安と。
 嫌がられないだろうか。変に思われないだろうか。
 全部の自分を受け入れてくれるだろうか。
 自分が非の打ち所のない美人だと確信して、それを裏打ちするほどの外観を持っていても麦野は自分に自信がない。
 滝壺ほど強くないと知っている。全てを捨てて腕の中に飛び込んでいける強さがない。
 勝てないと思っている。
 それでも負けたくはなかった。この気持ちだけは。

 どろり、と自分の性器が蕩けていることを滝壺は知っていた。
 彼女は自分に自信がない。いつ自分が消えてもおかしくないと思っているしそんなことばかりを考えていた。
 生きていたのは死ななかっただけ。いつかはわからない崩壊の時をただ漫然と受け入れていた。
 ファミレスで麦野、絹旗、そしてフレンダと話している時間は楽しかったし、暗殺の仕事も楽しみこそしなかったものの自分の存在価値だと思っていた。
 そんな自分の全てを壊し再構築した男。
 彼は全能の神様でもカッコ良く危機を切り抜けるヒーローでもなかった。
 それなのに今は生きたいと思っている。一日でも長く生きて彼の傍にいたいと思っている。晴れの日も雨の日も歓喜の日も残酷な日も寄り添っていたいと思っている。
 だから全部。自分のための自分だってあげよう。
20 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/03(火) 00:01:16.54 ID:WCYw4bHto
 何かに取り付かれたかのように、シンクロしているかのように二人が浜面から離れた。
 滝壺が浜面から一歩下がるとするりとくぐり椅子から抜けた麦野が尻を軸として体を半回転し腹筋で上半身を起こす。
 椅子に座った浜面を見下ろす滝壺と見上げる麦野が同じ笑顔で同じように笑う。きっと心の中身が一緒だからの結果。
 二人とも髪は濡れ肌にぺたりと張り付いている。ざっくりと短くおかっぱにした滝壺の黒髪と長い麦野の茶髪と。
 黒髪の重さはボリュームで抑えられ、長髪の膨らみは抜いた色で抑えられている。一枚の絵になりそうなほどに二人のバランスがいい。
 麦野の肢体は長く乳房や臀部も大きく張っている。日本人離れしているが下品になってはいない。
 スラングで言うところのブロンズ女のような男をそそる身体なのに開ききった花というよりもこれから花開く蕾のような甘やかさを醸している。
 一方の滝壺の肉体は麦野ほど我侭ではないにせよ、十二分に豊かだ。手に余るほどの乳房と括れた腰と。
 飛鳥時代の仏漆像のような流れるような官能的な空気を身に纏っている。

「ねぇ、仕上。ちょっと仰向けに寝てくれる?」

 ただただ美しいばかりの少女たちが浜面に横になるように示した。
 FRPの床はほんのりと暖かく、それに寝そべると重力に逆らうが如きに浜面の逸物が天を突く。へそに届きそうなほどで、割れた腹筋に張り付きそうなほど高ぶっていて、
それでもやはり上をむいている。
 床と一体化していながら性器のシルエットだけが乖離していた。

「しずりが先ね」

「――いいの?」

「うん。前は私が先立ったから」

 くぐり椅子を片付ける、湯船に放り込まれいたボトルを滝壺が取って麦野に渡す。
 先ほど見かけた浜面は海草で作られたローションが入っていると見て分かった。
 適温に温められたローションを何に使うのか、何となく検討は付いていたが浜面は何も言わない。
 当たっていれば嬉しいが、そうでなかったら侮辱になるかもしれない。
 だが、三人が考えていることはどうやら同じのようだった。

「うん。あったかいね」

 体温より若干上程度の温度のローションを麦野が浜面のペニスに塗りつける。亀頭冠にも肉茎にもまんべんなく隙間なく。
 細く長く綺麗な手で纏わされることで浜面が短くうめき声を上げる。

 でもこれは下準備。
 隙間なくローションを纏ったところで浜面のシンボルは開放される。

 そして麦野は大きく足を開いて鼠径部の後方にたっぷりのローションを含ませた。寝そべった浜面からは滑稽な姿に見えたが笑うというよりは何をされるのだろうという
期待の方が意識を支配している。

「大丈夫、かな?」

 準備を終えて立ち上がる麦野。その臀部は全体でないにせよローションで光っている。準備は万全だとしても未経験であることが怖いのだ。
 不安がる麦野を、

「大丈夫。私が応援してる」

 同じく未経験な滝壺が背中を押す。
 滝壺の言葉に、麦野はうん、と小さくうなづいた。

 何時も自信満々で暴力的で、それでいながら浜面に嫌われるかもしれないと思うだけで小さく震えてしまう麦野が精一杯の勇気をもって寝転がった浜面の体を跨ぐ。
 浜面の顔を見ながら蹲踞の姿勢で腰を下ろし脈動するペニスを手に取る。

「動かないでね――」
21 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/03(火) 00:02:15.96 ID:WCYw4bHto
 ゆっくりと麦野が体を落とす。ペニスの先端が麦野に触れる。

 しかし、そこは膣口ではない。

 そのもっと後ろ。浜面が散々嬲られた場所。
 肛門。排泄口。
 そこに浜面の亀頭が当てられた。

 アナルセックスという言葉ぐらい浜面でも知っている。過剰な性情報を簡単に入手できる現在で、ましてや若い男女ばかりで構成されている学園都市で、
行儀のいい子なんて落ちてきやしないスキルアウトの中にて知らなかったとしたらそちらの方が健全ではないぐらいだ。
 だが浜面にはそんな経験はない。そもそも、この二人以外の女を抱いたことがない。
 当然、肛門性交などは初めてのことだ。

「準備してきたから。汚いとか思わないでね」

 不安そうな顔で麦野が浜面を見つめる。
 膣よりも弱く避けやすい腸がどうなるのかの不安ではなく、自分が嫌われるかもしれないという不安。
 ぐっ、と浜面の中で何かが沸き上がる。

「思うわけないだろ。沈利の体に汚いところなんかねぇよ」

 その言葉に、麦野の目が開かれる。唇の端が柔らかく解け全身の筋肉が弛緩した。
 そして、ゆっくりと浜面の肉茎を肛門で受け入れ始める。

「ぐぅ、うっ、あうっ……」

 瞬間的に麦野の全身から細かい汗が吹き出た。本来一方通行である其処を、外部から強制的に開いて受け入れる。
 もちろん今日のこの日のために色々と準備はしてきている。肉体的に受け入れられるはずだ。少なくとも指の三本は受け入れられるようにしてある。
 しかしそれでも練習と本番とは違う。
 弛緩した筋肉はもう緊張している。必死に奥歯を食いしばり眦には大粒の涙が浮かんでいる。
 ギリギリまで開いて皺のひとつも残っていない肛門は亀頭部分を飲み込んでいた。
 日本人の平均をふた周りは上回る浜面の男根を受け入れるのは長身で鍛えた体を持つ麦野でも相当に苦しいらしい。
 そして状況は最善ではなく、浜面の肉系は茎の中央部分が一番太い形になっており、亀頭の笠を受け入れたとしてもそこが一番太いというわけでもなかった。

「はぁ、はぁ、はぁっ――」

 大粒の涙が汗と一緒に浜面の胸板にぽたぽたと落ちてくる。
 長い髪がカーテンになって浜面から麦野の表情は伺えない。両手が震え、膝ががくがく笑っている。それでいながらしゃがみこむことも出来ていない。
 たっぷりのローションにまみれ、麦野の肛内にも溢れん程のローションが溜まっているはずなのに旨くいかない。
 見れば赤い膣口がパクパクと口を開け、文字通り下の口で呼吸をしているように見えた。

「沈利、無理してやらなくてもいいんだぞ。俺は今でも十二分なほどに嬉しいんだし」

「しあげ、それは優しさじゃないよ」

 痛みと恐怖に全身を震わせる麦野を優しく背後から抱きしめた滝壺が浜面を諭す。浜面は言葉をなくす。
 今の麦野の姿は無様と言っていい。でも投げ出したわけじゃない。
 だからこのようなときに伝えるべき言葉は。

「大丈夫――応援してる」

 耳元でしっかりと。魂に響くように。
 背後からその顎を掴んで自分に向けさせ、滝壺が麦野の唇を奪う。優しく癒すように。
 下から見上げている浜面はどちらの瞳も涙で濡れていることだけが見えた。

「――大丈夫。もう、大丈夫だから」

 何も変わっていない。顔面から吹き出す汗は不自然なほどに浜面の腹筋まで流れ落ちてその中に溢れ出た感情――涙が混じっている。
 それでも麦野は意を決したようにずぶずぶと浜面のペニスを肛門で受け入れていく。
 中央の、一番膨らんだ部分で一度息を吐き、小さく悲鳴を挙げたがそれでも腰を沈めていく。
 そして、浜面は自分の亀頭が麦野のS字結腸に不自然にねじ込まれるのを感じ、その瞬間に全ての肉塊が麦野に吸い込まれていた。

「はは――やった――」

 苦しそうに、それでも嬉しそうに麦野が笑う。
 まるで後光のさした女神のよう。

「私はもう全部、仕上げのものなんだ――」
22 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/03(火) 00:03:23.10 ID:WCYw4bHto
 高らかに凱旋のように。
 それなのに涙は止まらない。
 本来の機能ではない使い方をされて直腸が違和感を覚えている。苦しくてたまらない。肛門が裂けていないのが不思議なぐらいだ。
 本当にこれで快楽が得られるのだろうか。とても信じられない。
 それでも腸口に異物を受け入れていることで膣口から淫蜜がどんどんと溢れ出ている。子宮が降りて膣内の温度が上がっていることを感じてしまう。
 苦痛を訴えているのに紛れなく辛いはずなのに肉体のどこかが喜んでいる。

「動く、ね――」

 息もできないぐらいに苦しいまま、麦野がずるずると体を引き上げる。
 蹲踞の形から浜面の脇の横に手をついて四肢で体を支えて腰を引き上げる。ズルリズルリと少しづつ浜面の肉茎が顔を出し、亀頭にかかる程度のところで
今度は腰を下ろす。
 一回ごとの動作は鈍い。
 苦悶の表情で行う麦野に浜面は何も言えない。言えないがそれでも普通に逸物を肉壺に挿入したほうが精神的にも肉体的にも満足は高いだろう。
 入口は狭く窮屈で、内側は温まったローションで満ちているが膣口のように全体的に包み込むような感覚ではない。膣口のように反応が素直なものでもない。
 なによりも麦野の表情を見るのが辛い。喜んでいるのはわかる。しかしそれは被虐的な奉仕の喜びであって一方的に押し付けられている浜面としては素直に喜べない。
快楽の中での加虐趣味はあってもそれ以外のときにはそんな趣向はないのだ。

 だが、全てが間違いだった。

 一瞬だけ、麦野の表情が変わった。苦痛だけの中に一瞬だけ愉悦が混じった。
 そして、それを再現するかのようにもう一度同じ動きをする。
 ――同じ顔をした。

 背後から滝壺の荒い吐息が聞こえている。大きく引き伸ばされた肛門に浜面の肉塊が収まっているのを見られているのだ。全身の毛穴が捲れ上がり脂汗を
流しているのに直腸のある一部を亀頭が擦るときと、その肉塊が体から抜けていく時に、違う快楽が僅かながら芽生えていた。滝壺の視線はきっとそれをも捉えていた。

 一方、浜面は麦野の腸内がこれまで感じたことのないようにうねり始めたのを感じた。そもそも肛門性交自体が初めてなのだし、比較対照がそれほどないのだが
全体を波打つように包み込む感覚は想像したこともないものだった。
 上の方から狭まって徐々に下に行くかと思えば右に流され左に流され、吸い付くような感覚こそないものの大波に弄ばれる小舟のように次にどこから何が来るのかが
わからないような不思議な温度があった。

 徐々に、然しながら確実に麦野の動きが早くなる。

「あっ、はぁっ、あっ、あっ、あんっ!」

 リズム良く麦野の腰が上下する。
 あれほど苦しんでいたはずなのに苦痛の色は半分ほどに収まっている。欠けた其処を埋めているのは紛れも無く快楽。
 初めての肛門性交で、心理的ではない肉体的な快楽を麦野沈利は引きずり出していた。

「やべぇ! 沈利の尻、あったかくてすげぇ!」

 惚けたような浜面の叫び。生暖かい直腸粘膜の動きを心の底から楽しんでいる。

「すごいね、しずり。淫乱なんだね」

 興奮と嫉妬の混じった声で滝壺が麦野を詰る。両手を伸ばして容赦なく麦野の淫壺に指を突っ込む。

「あぐっ! ちょ、ちょっと理后、それは無理っ!」

「無理じゃないでしょ。しずりは淫乱なんだもん。大丈夫、いっぱい気持ちよくしてあげるから」

 尻の穴を犯され膣穴をかき回され、麦野は身も世もないほどに淫らに喘ぐ。
 肛虐の痛みは強い。だがそれだけではない。直腸粘膜を巨大なカリ首がかき回す感覚と排泄に似た引きずりだす感覚とがどうしようもないほど心地よく感じていた。
23 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/03(火) 00:04:42.94 ID:WCYw4bHto
「いや、そこはダメ!」

 滝壺の指が麦野の紅珠に触れる。弾いて嬲る。鮮烈な快感が脊髄を断ち割り脳天まで直撃しちぎれそうな肛門括約筋の痛みが苦痛ではなくなってくる。
 ずどん、と全体重をS字結腸で感じる喜び。浜面の巨大なペニスを全て受け入れる快感。喜びが形となって肛門粘膜がやわやわと波打って浜面を刺激する。
 熱い肉で埋めつくされる下腹部の痛み。それなのに妖炎が瞼の裏に見え隠れする。
 肛門性交に次第に慣れてきた女の体を淫乱と定義するのであれば麦野はまさにそれだった。

「いや、はんっ、ああんっ、あっ……」

 喘ぎながら麦野は幼女のように泣きじゃくる。痛み苦しみ快楽恐怖驚愕怯え嗜虐被虐希望絶望。全ての感情が混沌とひとつになって溢れ出している。
自分だけの認識が書き換えられ、麦野は強くなり脆くなる。

「なんかすげぇ、言葉になんないけどめちゃくちゃすげぇ」

 語彙不足を露呈しながらも浜面は興奮を隠せない。滝壺もそうだ。その乳首は痛いほど勃起していて紅に染まる麦野の背中に押し付けられていた。

 ペニスをずるずると引き出す感覚は排泄に似ている。何かを出すという行為には必ず快楽が伴う。そうでなければ壊れてしまうほど生命は脆い。
 一方、ペニスを受け入れる感覚は快楽というより拷問に近い。圧倒的だ。圧倒的すぎて口から内臓がすべて飛び出してしまいそうになる。死の甘美さに似ている。
 二つの方向から光が指すことでくっきりと「生」のシルエットが浮かび上がるのを麦野は感じる。

 そうしている間にも滝壺の指は止まらない。いつまでもこんこんと湧いてくる女液をすべて掻き出そうと縦横に狭い膣の中を駆け回っている。
 その行為が余計に淫蜜を吐き出させているというのに。

 二人に同時に責められるという、この三人ではよくあるシチュエーションに三人の理性が蝕まれる。どこまでも進化する欲望に皆身を任せる。
 まだ知らない自分が選ばれていく、そんな印象を脳裏に浮かべながら麦野が長い髪を振り乱した。

 浜面は卑屈な敗北感を覚える。完全に麦野を支配しているのに逆に支配されているように思えて仕方がない。しかしそれは急激に反転し、
 この完璧な女を支配しているのは自分だという傲慢さが顔を出す。

「そんなにケツが気持ちいいのかよ、沈利」

 狂ったように泣き乱れる麦野に浜面は興奮を隠さない。一瞬だけ悲しそうな顔をした麦野だったが、浜面の言葉に素直に答える。

「気持ちいいよ。もう何もかもわかんなくなっちゃうぐらいに気持ちいい」

 わずかばかりの理性の中で麦野は一体何を考えたのか。素直になれてしまったという浜面と違った敗北感に麦野は微笑んだ。
 実際問題として、やはり膣で受け入れたほうが快楽は勝る。本来の機能ではないのだから当然だ。
 しかしそんなことはどうでもいいぐらいに興奮していて体の中を木霊している。

「素直になったね、しずり――ほら、こんなに濡れてるよ?」

 淫液に塗れた指を掲げ、滝壺が麦野の口に押し付けると麦野は嫌がる素振りも見せずにその指を舐めとる。生臭い自分の体液なのにそれを受け入れている。

「うっ、またケツが締まってるぞ、沈利!」

 麦野の意識は混濁している。嬌声を上げていることはわかる。指をしゃぶっているのもわかる。排泄口で愛しい男を受け入れていることが一番分かる。
強烈な杭打ちに全身の細胞が歓喜の歌を歌っていることを理解する。淫靡な電流に身を任せ喘ぎ声を上げている自分が幸せだと感じている。

「ねぇ、沈利? 何処がいいの? 何処が気持ちいいの?」

 麦野の口から指を引き抜いた滝壺が問う。結果なんてわかっている。それでも言葉に出させる。
 麦野は抵抗できない。

 肉体も精神も全てが支配されている。快楽の奴隷――否、浜面仕上の奴隷なのだ。自覚したのは何時からだろう。日常でも出来るだけしおらしくしようとしていた。
素直に甘えたいと思っていた。でも傲慢な自分の殻を外すことができずに今でも暴力的になってしまう。
 その分だけ、夜は乱れた。夜は甘えた。
 今も同じ。自分はアナタのものだよと思いっきり宣言したい。

 ボロボロと泣き崩れながら直腸で感じていると告げた。

「お尻――おしりがいっぱいで気持ちいいの――」

 晒し者のような自分。違う。晒しているのだ。こんな淫らでどうしようもない女だけどあなたのことが好きですと告げているのだ。
 浜面が腹筋で上半身を起こす。泣き崩れた麦野を捕まえて思いっきり唇を重ねる。
 嬉しそうに微笑んだあと、麦野がそっと目を閉じた。

「好きです――」

 倒錯的な性交の中で心だけは純真に麦野沈利は浜面に告白する。
24 :蒼穹の内側(後)[saga]:2012/01/03(火) 00:05:40.10 ID:WCYw4bHto

「俺もだ」

 何度目かわからない声遣りにも拘わらず常に新鮮な気持ちになる。
 その気持ちのまま抱きしめて押し倒す。肛門でなのに正常位の形となり獲物に牙を突き立てる獸の体制に浜面は構築されなおす。
 倒錯に積み立てられた、目に眩むようなオルガズムが近づいてきている。鼓動に合わせて突き立てられる直腸粘膜の感覚が堪らない。
 滝壺も股間を擦りながら一人にされないように浜面の背中にもたれ掛かる。奪われないように奪うように。

「む、は、止めないで――最後の最後まで――」

 奪われる唇、酸素を求める呼吸の狭間で麦野が専願する。今この願いを聞き届けることができるのは世界でただ一人だけ。

「しあげ、次は私だからね」

 妖艶な笑みを浮かべたまま大きな背中に手を回す滝壺。淡い陰毛を無邪気に擦りつけている。

 アナルは剛直に抉られて瞳は蕩け、快楽神経に全身を震わせながら麦野は必死に浜面の首に手を回す。

「あひっ、ひん、あっ、あっ、ダメ、もうダメになるっ!」

「うぉ、スゲェ締まるぞ沈利」

「私も、もうイっちゃうかも――二人ともえっちすぎる――」

 三人が三人とも快楽の果てに指をかける。全てがもう限界だった。

「うわぁっ!!! 死んじゃう、もうこんなの死んじゃう!!!」

 超能力者の肛門に限界まで締め付けらる。全身の穴という穴から体液を吹き出しながら麦野沈利が絶頂を迎える。艶かしい嬌声を張り上げながら快楽の境地へと全てを
高めていく。

「出るっ、出るぞ、沈利!!!」

 脳みそごと射精するような勢いで浜面が麦野の腸内にどくんと噴射する。腸の壁に白濁液をぶつけられるというこれまでになかった感覚に麦野のオルガスムスは完成し
全身を震わす。

「――! ――!!!」

 声にならない声を上げながら、漆黒のような白光のような連続する絶頂に麦野が全身を震わす。

「私もイっちゃうよ、しあげ、しずり――」

 二人の絶頂に合わせるように滝壺理后も限界に達した。じょぼ、という間抜けな音と共に尿が溢れ出て浜面の背中を汚す。アンモニア臭が浴室中に広がっていくが誰も咎めようとはしない。

「――っ!!!」

 最後の一滴まで精液が注ぎ込まれ、ようやく麦野の絶頂が終を迎える。硬直した全身の筋肉が一気に弛緩して、浜面の首にかけた両手だけを覗いて全てが床に
投げ出される。
 広がった尿に髪が犯されていくが気にもならなかった。

 痛みはまだある。
 ないわけがない。

 しかしそれ以上の満足を得た麦野は残った僅かばかりの力をすべて集め、必死になって浜面にしがみついて子供のように口付をねだるのだった。
25 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/03(火) 00:06:21.93 ID:WCYw4bHto
ようやくここまで古いの移設完了

次に新しいのです
まぁ、エロくないけどさ
26 :蒼穹の裏側[saga]:2012/01/03(火) 00:08:50.95 ID:WCYw4bHto
 嘗てアイテムの一アジトであり、現在は浜面、滝壺、麦野が住まいとして使っている住居には一つだけ学生らしからぬ部屋がある。
 まぁ、ファミリー用の高級マンションなのだからそもそも学生向けではないのだが、ファミリー用としてもこれが或る部屋はごく一部だろう。
 お父さんたちの憧れの空間――書斎である。

 天井にまで届く本棚にはびっしりと専門書や最新の論文が詰め込まれており、しかもそれは一つや二つどころの騒ぎではない。中央に紫檀の机が二つあるのだが、
それを取り囲むように本棚が並んでいる。小さな図書館といっても良いだろう。
 その二つの机に向かっているのは麦野沈利と滝壺理后の二名の才女である。
 白いTシャツにロングパンツという洒落っ気のない服に日頃ふわりと靡かせている髪をポニーテールにまとめ、小ぶりの眼鏡を掛けた麦野の姿は図書館の司書を思わせる。
毎晩の乳液を欠かさない肌は化粧気ひとつなくとも透き通るように美しく、同じく紅を付けていない唇もサクランボを思い起こさせるほどに瑞々しい。
 他方の滝壺理后は何時ものようにピンクのジャージ姿で眠そうな目をしているが、気まぐれなのかお洒落なのか、横髪に一房白いエクステを付けておりそれが濡れた烏の
ような高級感ある黒髪にいいアクセントになっていた。

 それぞれの机は論文で埋めつくされており、わずかな空間に今目を通している論文と英語の辞書――科学用語を英語で詳しく説明している英字辞書――が乗っかっている。

 彼女たちがやっていることはアルバイトである。

 科学の街学園都市は外部との科学知識や技術に三十年の差があると言われている。
 だが学問と云うものは、特に科学と云うものは論文にしないと価値がない。
 科学は再現性の学問でありそのためには他の学者や施設による検証がどうしても必要だからだ。
 哲学や文学のように「こういう考えがありますよ」というだけでは駄目なのだ。
 そして間口を広めるためにはどうしても英語で論文を書き上げなくてはならない。
 中学生で学術論文を書き上げる輩が履いて捨てるほどいる学園都市だとしてもその原則は絶対である。

 これは学園都市の技術の拡散を防ぐ――という理念と相反するように思えるが事実は逆だ。
 三十年も技術が離れてしまえば同じ実験を他の地域や国で再現しようにも莫大な資本を必要とする。そしてそれほどの巨額を用意できる科学者などいない。
 各国のエリート達が「方法」が分かっているのに「手段」がないという状況に追い込まれるのだ。
 それならば学園都市の施設を借りよう、学園都市に移住して研究しよう、という学者が当然出てくる。
 つまり世界中の優秀な研究者達を労せずして集めることができるのだ。

 そして残念なことに、科学知識が豊富でも英語が苦手という者も多い。特に学生は、だ。
 素晴らしい発想をもっているのにそれを表現できないというだけで埋もれさせるのは学術的経済の無駄である。

 つまりは、そういう連中の論文を添削し、更には参照している論文との整合を取るという仕事は常に需要がある美味しい商売なのだ。

 ただまぁ、それなりの知識と英語能力とが必要なことは確かだが。
27 :以下、あけまして、おめでとうございます[sage]:2012/01/03(火) 00:10:07.06 ID:WCYw4bHto
「う、うーん」

 三本目の論文をチェックし終えた麦野が大きく背伸びをした。窮屈そうにTシャツに押し込められた大振りの胸が揺れる。
 眼鏡を外し瞼の上から眼球を押して目の疲労を取る。ぐるんぐるんと右腕を回して肩こりを少しでも癒そうとする。

「お疲れさま。少し休憩しようか」

 眠たそうな目をしたままの滝壺が温かいコーヒーを煎れてくれた。
 さっくりと終わった論文を畳んで麦野がスペースを作るとそこにチョコクッキー二枚が添えられたピンク色のソーサーとカップが置かれる。
 砂糖は入れない。ミルクも入れない。
 甘いものは好きだがそれはクッキーで十分だ。
 滝壺が自分の机に戻ってトン、と座り込む。ふわりと上がる湯気をあるのだからもうコーヒーは置かれてるんだなと麦野は判断した。

「どれくらい終わった?」

「半分かな。参考論文が結構細かくて探すの疲れたよ」

 滝壺の机にはピンク色の端末が置かれている。学園都市の論文はデータ化されているのが当たり前で検索もしやすいのだが、何分本数が半端なく多い。
 そして分野が物理や化学といった枠を超えるのは当然で、中には神学や芸術論にまで飛び火するのだからそれを追う方も大変だ。
 麦野も端末は持っているが今は使わない。彼女の担当はこれまで自分が添削した論文から派生したものが多く、つまりはリピーター中心であり、
その大切なお客様の論文は本棚にびっしり詰まっているのだ。

「しっかし、つまんない発想ばっかりで見ていてつまんない論文ばかりよねぇ。絹旗の言うところの超B級ばっか」

 それはそうだろう。そもそも一流の学者は論文の添削などは研究室内で完結してしまう。添削をしてもらう相手のいない学生相手の商売なのだから仕方がない。

「能力開発関係ばかりだからね。どうしても発想は似てきちゃうよ。凄い子がいてもすぐに引き抜かれちゃうしね」

 エクステをいじりながら滝壺が答える。

 長点上機や霧ヶ丘、そして常盤台などの超エリート校。その学生たちの論文を添削することもあるが、所詮は子供の論文。さほど出来が良いわけでもない。
 出来が良い生徒は次の論文を発表する前に研究機関へ出向してしまうので彼彼女の論文を添削する機会は無くなってしまうのだ。
 逆に言えば、発表の方法が悪くて「出来が悪い」と見なされている生徒を発掘しているのだから一概に悪いことばかりとは言えないのだ。

 もっとも偉そうなことを言ったところで麦野にしろ滝壺にしろ科学者として論文を発表したことはない。
 科学知識は豊富で素晴らしい頭脳を持つが決して科学者ではない。
 添削という、当人以外に一番にその論文に目を通す人間として評論家になっているだけであって彼女達はただの学生でしかないのだ。少々枠には収まらないにせよ。
 評論家として楽しんでいるという点ではここにいないアイテムの一員絹旗と趣味は似ているのかも知れない。

 麦野がカップを両手に抱えて熱い黒色の液体を口に含む。熱いということはそれだけで贅沢だと感じる一瞬が心地よい。
 猫舌気味の滝壺はふぅふぅと湯気を吹き飛ばしながら温度が下がるのを待っている。
 それを見て香気が勿体ないな、と麦野は思うが所詮インスタントなので放っておくことにした。

「――あのさ、変なこと聞くけど」

 突然、顔の色を変えて訝しげに麦野が言葉を発する。何、と振り向いた眠そうな滝壺に麦野が恥ずかしそうに問いかける。

「おしり、大丈夫? 私結構きついんだけど」

 ぽん、と丸い音を立てて滝壺の顔が赤くなる。瞼も瞳孔も思いっきり開かれて、手に持ったコーヒーカップがわさわさ揺れて思わず中身をこぼしそうになる。
 どういう理屈か、エクステが外れて落ちた。

「――正直、痛い」

「――そう。やっぱり無理があったのかな。彼奴の大きいし」

 羞恥心で真っ赤になって小さく呟く滝壺の声に麦野も赤くなりながら同意した。
28 :以下、あけまして、おめでとうございます[saga]:2012/01/03(火) 00:11:34.55 ID:WCYw4bHto

 昨日のことである。
 彼女ら二人の同棲相手であり恋人でありもげてしまうべき男、浜面仕上と初めてのアナルセックスをしたのだ。
 そのこと自体は良い。いや良くないが土台自体が歪んでいるのだから仕方がない。
 ともかく一人の男を共有する二人は同時に後ろの処女を捧げたのだ。
 十分に準備をして身体も受け入れられるように慣れさせて、その集大成として二人して受け入れたのだが――

「痔にならないかな。なったら嫌だな」

「なんか狡いよね。浜面は全然痛くないんだから」

 二人の乙女は昨日の痛みを未だに引きずっているのだった。

 自分で覚悟を決めて、精神的にも肉体的にも満足を得た麦野だったがそれでも痛いモノは痛い。
 滝壺はさほど苦しそうに見えなかったがやはりそれでも現状痛みを訴えている。
 浜面仕上は長身であり、それに見合う分だけに性器も大きいのだがこの場合は裏目に出ている。それも滝壺と麦野の二人だけに。
 浜面自身は何のリスクも負っていない。

「一応裂けてはいないよね? 中が裂けてたらわかんないけど」

「血は出てないから大丈夫だと思うけど、お医者さんに見てもらう?」

「冗談でしょ! そんなこと出来るわけ無いじゃない!」

 乙女としてそれは無理である。尊厳というものがある。「おしりでえっちしたら痛くなっちゃったの」なんて赤の他人に言えるわけがない。
 大声の麦野に最初から返答はわかっていたとばかりに滝壺が頷いてコーヒーを一口飲んだ。
 二人して顔の赤いままほぉ、と溜息を吐く。

「だよねー。でも薬は買ってあるんだ、使う?」

「――使う」

 そんなことがあった翌日に何もご丁寧に椅子での仕事などしなければよいものを、麦野も滝壺もやや完璧主義的なところがあり自分が組んだスケジュールを崩すことを
嫌がる傾向にある。特に滝壺は普通に学校に行って授業を受けて、帰ってきて仕事をしているのだからある意味自業自得である。
 学校の堅い椅子が肛門にいいわけがない。

「なんかさー、すげぇムカツいたんだけど。もう浜面掘っちゃう?」

「面白そう」

 ニタリ、と二人して悪魔のような笑みを浮かべる。けけけと笑う。
 くぐり椅子やローションを用意した二人だ。女性用の疑似ペニスを用意することなど訳もない。
 更に言えば常日頃ドSの麦野や隠れSの滝壺さんにしてみればそういういけない妄想は決してタブーでも何でもない。
 ホモの嫌いな女子なんていないのである。

「でもはまづらって受けじゃないよね」

「うん。っていうか顔的に美形じゃないしね」

「やっぱり上×一?」

「『お前の気持ちが一方通行だっていうのなら、その幻想をぶち殺す!』ってか。私的には第七位にひぃひぃ言わされる垣根とか読みたいけどね」

 気障なホストもどきが根性論の熱い男に熱い肉体的な説教をたたき込まれる姿を想像し麦野が変な意味で笑う。

 チョコチップクッキーなどよりもよほどコーヒーが進んでしまうのが怖い。
 別に彼女達が特に腐っているわけではない。これは淑女の嗜み。オシャレやスイーツのように学園都市の女の子には必須の話題なのである。(実の所、浜面が決して出入りしようとしないこの書斎にはおぞましい特別な本棚があったりするのだがそれはまた別の話)

「でもはまづらが男と浮気したらどうする?」

「男とかの前に浮気したらもぎ取る」

「半分残しておいてね? 私ももぎとるから」

「うん。思いっきり泣きわめくところを仕上子ちゃんになってもらおうか」

「そうなっても大丈夫だよね。私たちなら愛してあげられるし」

 浜面が聞いていたら何かがきゅ、と縮まってしまうような会話をして平気な顔をしてげらげらと笑う二人。
 品がないにもほどがある。デートの前には浜面の為に精一杯オシャレをして可愛らしい自分を見せようと必死になる二人だが浜面がいなければこんなものである。特に滝壺は黒い。
29 :以下、あけまして、おめでとうございます[saga]:2012/01/03(火) 00:14:06.99 ID:WCYw4bHto
「これはただの妄想で言葉遊びだけど、はまづらがつきあうとしたらどんな男の子だろうね」

「ん? 彼奴結構交友範囲広いからなぁ。スキルアウトの半蔵ってやつに幻想殺しに第一位か。上×一は外せないとしたら半蔵ってやつになるのかな? 
でも彼女いるって言ってたな」

「はまづらだって彼女いるよ。ここに可愛いのが二人」

「私きれい系お姉さんだし。学校にも友達いるみたいだけど私知らないんだよねぇ。滝壺は?」

「私も知らない。なんだかんだではまづら忙しいし、時間があるときは私たちのために割いてくれてるしね」

「アイテムの集まりもあるしなぁ。そういや絹旗が浜面ポイント不足しているって言ってたな」

 浜面ポイントとは浜面をドリンクバー往復させたり足代わりに車走らせたり殴ったり蹴ったり言葉で詰ったりすると貯まるポイントである。
 百ポイントたまると一浜面がゲットでき、一浜面は一日中浜面を自由に出来る権利のことを指している。
 まぁ、分かり易く言い換えれば「浜面に超構って欲しいんです」ということだ。絹旗は決して認めようとしないだろうが。

「絹旗男の子だったら面白いかもね。背が小さくてかわいい系の男の子がベットの上ではまづらを押し倒しているの」

 滝壺の言葉に麦野が妄想する。

 ――――――

「浜面! 僕の言うことを超聞くのです!」

 思春期前の特有の甲高い声で自分より頭二つばかり高い男を押し倒したのは少年絹旗。
 華奢で背が小さく、そのことがコンプレックスで常日頃大人びた行動をしようとしているもののどうしても子供じみた部分が出ている少年。
 彼が押し倒しているのは常日頃罵詈雑言の憎まれ口を放ちなにげに足蹴にしながらも文句を言わず自分に付きそってくれて趣味の映画鑑賞にもつきあってくれる
青年浜面。
 しかしながら彼はもう自分を見てくれなくなっている。何故ならば絹旗ですらあこがれてしまうような素敵な女性とつき合っているからだ。
 その姿を見て、胸の中に感じる違和感を嫉妬と認めることも出来ないほど初心な絹旗は。
 ある日感情を爆発させ浜面を押し倒してしまう。

「――んで?」

 しかし絹旗の知識ではそれ以上のことは出来ない。せいぜいが唇を奪う程度。
 残念なことに経験豊富な浜面には何も通用しない。
 にやにやと下司な笑いを浮かべる浜面に何も出来ず涙がこぼれ落ち自分だけの現実が崩壊する一人の少年。
 窒素を操る能力を失った彼はただただ無力な華奢なこどもでしかなく、簡単に立場を入れ替えられてしまう。
 浜面が上、絹旗が下。
 そしてその白いウールセーターを捲り上げられ日に当たってない白い肌に舌を這わせられる。
 捲り上げられたセーターの裾を咥えろと強く言われ、必死になってかみ続けることで絹旗は声を殺す。
 しかしその刺激が薄桃色の乳首に与えられると未成熟な身体をぴくりとふるわせほろほろと涙を流す。
 きめ細やかな肌がナメクジの這ったような舌の跡で汚され、白い肌がほんのりと染まっていく。絹旗にはまだそれが何なのかを理解することが出来ない。
 理解できないまま彼の幼い性器は染み一つ無いブリーフパンツの中で屹立する。
 顔を見せないままよだれを流す性器の窮屈さに気づいた浜面は獲物を見つけた肉食獣のような、真横に口の開いた笑みを浮かべその半ズボンを少しづつ下ろしていき――

 ――――――

 そこまでを思い浮かべた麦野は脳裏の光景に思わず鼻を押さえる。
 鼻血が出たかと一瞬勘違いするほどに興奮したのだ。見れば滝壺も顔を赤らめて両手で口を押さえている。

「うわぁ……やべぇ、ちょっときゅんときちゃった。後で絹旗に謝っておこう」

「うん、私もちょっときちゃった。ごめんね、きぬはた」

 思わず室内に満ちる沈黙。紙とインクの匂いとコーヒーの残り香と、そして腐臭が混じり合った空間。
 最後に残ったクッキーの欠片をコーヒーで流し込む。喉を通る異物が胃の腑まで流れ落ちて休憩が完了。
 しかしながらもうなんというか――

「ちょっと仕事する気にならないね」

 もはや空気が仕事のそれではなかった。

「うん。上がりにしようか」

 おしりも痛いしね、とぺろり舌を出しながら今更のように落ちたエクステを付ける滝壺。かちゃりと麦野と自分のカップを重ねて台所に持ち帰る。
 鼻先にかけていた眼鏡をケースに入れて麦野も立ち上がる。うーん、ともう一度背伸びをして鈍った筋肉を引き延ばす。

 腐話はどうにもこうにも危険である。何分、のってしまう。
 男がいて、交わる喜びを感じていながら、それを会話する相手もいるというのになんでこうもまぁ気分がはしゃいでしまうのだろう。
 昨日のアナルヴァージンだって腐ってなければやらなかったと思う。元々そういう興味があったのだ。正直こんなに痛いとは思っていなかったけれども。

(そりゃまぁ――こんなの好きな人相手でなきゃできないよね)

 そういう意味ではやおいは真実の愛なんだろうなぁ、なんて麦野は一人思う。
 いや違うだろお前、という突っ込みの心も確かにあったがとりあえずそれは脇に置いておくとして。

「滝壺ー! ペニバンとか本気で買うー!?」

 なんてろくでもないことを大声で聞いて、台所でどんがらがっしゃんと何かが壊れる音を聞いた。 
30 :以下、あけまして、おめでとうございます2012/01/03(火) 00:16:36.64 ID:WCYw4bHto
とりあえずこんな感じで続けていこうと思います
何分スレ立ては初めてなのでお手柔らかに

気分によって主人公は変わるしシーンは変わります
求めるのはエロス
あくまでエロス

起承転結もオチもないのでそこのところよろしく 
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:29:21.04 ID:wLWx/ORko
投下します
今回は上条×御坂
絹旗ちゃんがうまく書けないよママン・・・ 
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:30:35.38 ID:wLWx/ORko
 春口の夕焼け。まだまだ風の寒い季節の中で、超能力者第三位、超電磁砲御坂美琴はその白いヒップを突き出しながら公園の一本の木にしがみついていた。
 萌黄色の新緑が夕の日差しを零し小さな森の中に柔らかく六角の光をばら撒く幻想的なその世界で。
 春の到来を喜ぶ生命の宴の場所で。
 常盤台のお嬢様が丸い尻を突き出して快楽にあえいでいる。

 声は出さない。出すことは許されない。
 人がいない時間帯とは言えどもそれなりに人通りのある公園。すぐに金を飲み込む悪癖がある自販機を置いて採算が取れるほどに誰かがやってきているのだ。
もしこんな姿を見られたりしたら自分も彼も只では済まない。

「あ、はぅ――」

 僅かながらに憂いに帯びた吐息が樹木に押し付けられる。近場によらなければわからないようなそんな小さな声でさえも発してしまったことに美琴は驚き、
ぎゅっと唇を噛み締める。
 それなのに。
 それほどまでに彼女は耐えているというのに。

 背後に立つ男はそんな彼女の姿に支配者としての欲望を溢れ出しながら笑っている。

 常日頃、己の不幸を口癖とし、それでいながら快活に笑う男の姿はそこにはない。
 己の心のままに己の正義を貫き通し、そのためならば世界中を敵に回してでも不幸な誰かのために命をかけられる少年の姿でもない。
 ただの、一匹の雄でしかなかった。

 紺地のショートスカートも妹達と違う短パンも、そして可愛らしいゲコ太柄の、ひと桁の年齢の幼女が愛用するような下着も全て纏っていない。
 美琴の下半身はひざ下までの白い靴下と革靴だけ。それなのに上半身は制服を完全に身に付けている。
 やや乱れたブラウスと枯れ木色のニットセーター。首にかかったボタンだけは外しているがそれは呼吸を助けるため。
 降り積もったパウダースノーのような白くきめ細やかな肌がほんのりと赤く染まって夕焼けのこぼれ日の反射と混ざっている。
 散々に彼を追い回し命を刈り取ろうとした無邪気なお姫様はもういない。
 ブラウスの影にある細い鎖骨を隠すか隠さないかと柔らかなショートカットの髪が揺れる。

 餅のように柔らかく白く温かな尻を左手で鷲掴みにしながら赤黒い逸物を蕩けた未成熟な秘裂にねじ込みながら少年、上条当麻は快男児に相応しくない
下衆な声で美琴に囁きかけた。

「ビリビリはもうお仕舞いか? 感じなくなってきたぜ?」

 嘘である。
 学園都市で一番の発電能力者である御坂美琴が自分の体内の電流をコントロールできない訳がない。
 事実、他の女では味わえないような快楽に彼は満足している。
 性交の最中であり、自分の秘肉に電気を纏わせて不自然に反応させて男を楽しませるというどんな科学者でも考えもしなかったであろう品のない能力の開放だとしても
御坂美琴が電気に関して間違うということはありえない。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:32:04.90 ID:wLWx/ORko
 完全に舞い上がっていた。
 何故自分がこんなことをしているのかさえもよくわからない。
 頭は朦朧として、それでいながら一部の演算装置だけは必死に稼働させ、与えられる快楽にメモリを食いつぶされ愉悦を貪る。
 鯨飲馬食という言葉があるが、それと似たようなものかもしれない。
 飽きることなく飽きられないように必死に快楽を紡いで感じてもらおうとしている。

「ご、ごめんなさい。今ちゃんとやるから――」

 しかし彼女は反論しない。反論できない。小さな声で己の努力不足を謝罪するだけである。

 等身大の自分を見て欲しい、という強力な能力者特有の小さな望みは過剰に叶えられた。
 今現在、彼女はむしろ卑小な存在として上条当麻に支配されている。
 これは彼の性癖の作用が大きいのだが――それでも美琴は幸せだった。

「あぅん、こ、これで――あぅっ!」

 美琴が自分の体内の電流をコントロールする。その返答は言葉ではなかった。まだ小さな子宮に衝撃が与えられる。
 大きなカリ首が膣内の粘膜を掻き出すとそれだけで何も言えないほどの甘美な記憶が全身を支配してしまう。
 彼の部屋で、ホテルで、常盤台の寮で、様々な場所での経験が美琴の優れた脳の中でフラッシュバックする。
 しかしそれでも。

(こんなところで――私、感じてるんだ――)

 どうして断らなかったんだろう。決まっている、彼が言ったからだ。
 彼の言うことには逆らえない。

(でも、まさかこんなところで――)

 木漏れ日も向こう、遠くに何時も美琴がちぇいさー、と回し蹴りを食らわしている自販機が見える。
 記憶を失った上条当麻が「初めて」美琴と出会った場所。
 不良たちのたまり場の路地裏ではなく、此処。
 此処で抱きたいと言われて、恥ずかしくて嬉しくて舞い上がった。
 その一方で、こんな危険な場所でまさか、という思いも確かにあった。

「ビリビリが気持ちよくなってきたぞ。流石だな、美琴」

 甘噛みするような、痛みにわずかに遠い電流の感覚に満足げに上条が嗤う。奥から花の蜜が溢れ出て纏わりついて周囲に性臭が漂う。
 背徳的な痴態を見られるかもしれないという興奮で息を荒くする美琴は上条の満足にうっすらと微笑んだ。
 巨大な肉の塊が恥肉を擦り舐る。原始的な暴力のようなピストン行為に二人の呼吸と鼓動が荒くなる。

「あ、あ、あ、あ、ァ……――」

 たまらずに腰をくねらせる美琴だが、鷲掴みされて逃げることはできない。極悪なまでの肉亀ががりがりと柔らかな肉を噛み荒らしていく。
 ぴちゃぴちゃと水の跳ねる音が淫らに響いて日頃持っているはずの清楚で健康な美琴の空気が淫乱に淫蕩に淫欲に完全に書き換えられる。
 禁断の果実を口にした最初の女のように圧倒的な何かが脳を支配されていく感覚に溺れていく。

(イヤらしい――わたし、こんなにイヤらしい女だったんだ――)

 蕩けた惚けた眼で美琴が嗤う。
 お淑やかなお嬢様とは元々言い難い竹を割ったようなさっぱりとした性格の持ち主の少女が街角の娼婦にも劣るような下劣な雌の表情を浮かべる。
 剛直の抜き差しに浅ましく身を震わせ快楽に溺れて喜んで。顔を見なくとも口づけを交わさずとも良いというのであればそれこそ娼婦と何も変わらないではないか。

 違う。娼婦にも客を選ぶ権利はある。
 わたしの客はコイツだけ。
 そう、決めたんだ。
 コイツに幾ら他の女が居てもそれは絶対に変わらない。

 膣内を蠢く肉塊の挙動が全てわかる。電流に対する反応も不随筋のコントロールだってわかる。
 ずるずると引き抜かれ、どん、と内蔵まで押し込まれ、其のたびに皮膚の全てが内側から弾けるような快楽に身を焦がされる。
 メフィストレスと契約したファウストのように、時が止まれば魂を奪われるとしても、この瞬間時が止まってしまえと美琴は願う。
 何時だってそうだ。彼と重なるときは何時だってそう。
 脳の中の悪魔が囁く。
 今此処で殺してしまえ。
 膣内の電気のために今この男は右手を使っていない。
 今その電力を最大級にしてしまえば、その右手だけを残して二人は蒸発して灰になる。
 そうすれば永遠にお前のものになるのだぞ。

 なんて魅惑的。なんて蠱惑的。
 己の命程度の安いチップで上条当麻が永遠に手に入るのなら安い買い物だと、そう信じてしまいそうになる。
 それなのに、出来ない。
 己を実験動物だと信じ割り切り死を受け入れた一万を超える妹達が居て。
 己を実験動物だと信じ、それでも実験動物ではないと気づいて人生という新しい戦場に立つ一万に近い妹達がいて。
 命を簡単に捨てることなんて出来ない。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:33:17.41 ID:wLWx/ORko
 違う。
 そんなことじゃない。
 妹達は言い訳に過ぎない。
 一緒に居たい。笑って泣いて寄り添っていたい。おじさんになっておばあちゃんになって一緒のお墓に入りたい。
 少女じみた子供の夢だとしても諦められない。

 結局のところ――御坂美琴という少女は最後の最後まで御坂美琴だった。ハードルがあるとしたら乗り越えないと気が済まない。横に逃げることを決して許しはしない。
 そして、絶対に乗り越えられなかったハードルを乗り越えるために命をかけてくれたこの少年に対する感情はどうしても否定できない。暴れ馬のように引きずられてしまう。

「好き――好き――」

 子宮口を亀頭でごりごり押されながら常盤台の「お姉さま」が女の声で鳴く。無意識のうちに丸く白いヒップを振って男を誘う。
 ナイフで横に切った傷口がパクリと開いた。そんな口で引きずった笑みの上条が尻肉をぐいと開いて排泄器官を空気に晒す。

「あ、いや、そこは見ちゃダメ――」

 聞く訳がない。
 ぐい、と「右手の親指」が排泄口に押し込まれる。美琴の体内の甘美電流が断ち切られる。膣内の動きが通常になる。
 尤も、その「通常」がどれほど素晴らしいものであるのかを美琴は知らないのだが。
 名器などという言葉では意味があふれ出てしまいそうな其処にペニスを出入りさせながら上条は太い親指にきゅうと肛門括約筋が食い込んでくる様を楽しむ。
 快楽に溺れていた美琴の息が苦痛で歪んだ。

「そこはダメ! 痛いの!」

 口で拒絶しながらも強引には出来ない。心の奥底でそれを求めている自分がいるのを知っているから。

「なんだよ。インデックスだったら泣いて喜ぶぜ?」

 下品に、淫らに、この世のものとは思えない化生の顔で上条が笑う。嗤う。
 美琴と重なりながら美琴ではない女のことを口にする。

 美琴の記憶が一人の少女を呼び覚ます。
 碧眼銀髪の人形のような愛らしい少女。金糸で刺繍を入れた可憐な装束のシスター。
 そして同天を見えない宿敵といっていい間柄のオンナ。

 その名前を出されて勝気な少女の勝気な部分が顔を出す。わかりやすい挑発に呆気なく乗っかってしまう。

「――っ」

 痛みを口にしない。やめろとも言わない。求めている自分は絶対に見せられない。
 切迫する沈黙に了と解した上条がケダモノの顔で動きを早める。
 甘辛い電流は失くなった。然しきゅうきゅうと食いついてくる蜜壺が気持ちよくないわけではない。
 アナルを抉る度に豚のような悲鳴を上げながらも次の瞬間にはその悲鳴を噛み殺す細く華奢な少女の姿は嗜虐心を大いに唆る。
 上気した顔が痛みに怯える。苦痛に喘ぐ。
 闇の足音が聞こえ始めた森の中で叫びにならない嘆きの音がする。

 よく耐えていると上条は感心する。
 上条は自分を好人物とは思っていない。
 悪事を憎むし己なりの正義感もあるし、そして理不尽な運命を踏み潰して乗り越え崖に落ちた不運な誰かを引きずりあげようとする性質はあるが、だからと言って
 非暴力主義者ではないし当人同士の中で完結してしまうべき問題に首を突っ込むつもりもない。
 流石にオルソラとローマ正教アニェーゼ部隊との戦いなど当人同士組織内の問題でも理不尽に程があれば行動せずにはいられないが、例えば男と女の間柄であれば
 当人同士が納得さえしていれば周囲が騒ぎ立てるのは余計なお世話だと思う。
 そのように信仰しながらも嫉妬もやっかみもある小人物である上条は浜面仕上の生活ぶり――二人の女性と同棲していながらその女性同士の仲が良い――が羨ましくて
よく詰るのだが、それはまた別の話。
 そして何よりも彼の性癖が通常ではない。

 その通常でない彼の性癖に。

 インデックスの名前を出しただけで美琴は耐え忍んだ。

 ローションも何もない状況で思いっきり突っ込んだのだから痛くない訳がない。インデックスのように肛門を調教しているわけでもない。元から資質があるのかもしれない。
 しかしそれ以上に。

(嫉妬、か――)

 上条のどす黒い笑みに一層の闇が混じる。
 嬉しいのだ。
 心に罅を入れるほどの嫉妬をこの少女が抱いていることが堪らなく嬉しいのだ。
 ただ性欲を解消するためだけに抱いているわけではない。愛しいと思う気持ちも存在している。
 然しながらそれが世間いっぱいで言うところの「愛情」とはかけ離れたところにあるということも理解している。

 支配。君臨。言葉はなんでもいいが、そうでなければならない。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:34:43.73 ID:wLWx/ORko

 異様な光を帯びた瞳がある。
 細く引き締まった脚と、其れに繋がる臀部と。
 その中央を深く深く貫いている己の分身と。

 咲わずにいられぬものか。

「あっ、うん、ん――」

 強力な締め付けに抵抗するように派手に侵入と撤退を繰り返す上条。
 その傲慢な動きに思わず美琴の口から喘ぎ声が漏れる。
 グリグリと親指を動かし、曲げて内側から粘膜を擦りあげ、悲鳴を上げそうになる美琴に全く尊厳を払わないまま己の快楽のためにだけ上条が動く。
 狭い通路を無理やり広げられ、引き出されて真空を作られて、別の箇所では皺一つ一つを数えるように指が動かされ。
 如何に学園都市第三位の頭脳の持ち主とはいえ通常の精神構造を維持できなくなる。

「んーっ、んーっ」

 ニットセーターの肩口に噛み付いて必死になって美琴が耐える。ニットはもう涎でベトベト。そして引き伸ばされている。これではもう役に立つまい。
 それなのに鼻息荒い上条は止めない。何一つ止めようともしない。
 逸物で子宮口をグリグリとやればその分だけ奥から蜜が溢れてくる。悪夢のような陵辱。スレンダーな身体が熱を帯びて跳ねる。華奢な顎が上がる。
 白い首筋が曝されるも上条の視線では伺うことができない。
 腹の中の明確な異物に踊らされた超能力者が全身を震わせて踊り狂う。
 汚辱といっていい。屈辱といっていい。
 少なくとも夜景の綺麗な部屋で生まれた年のワインに酔いながらの柔らかなシーツの上に広げられるような、そんな夢のような世界とはまるで違う。
 然しながら。
 例え地獄の底でも上条が作り出した場所であるのならば美琴はそれだけで幸せだった。

 凛と済ました背筋のいいお嬢様は何処にもいない。活発で太陽の下で輝く元気ある少女でもない。
 オスに支配されるメス。
 上条当麻と御坂美琴。
 ただそれだけ。

 サディステックに膣肉を抉り肛門を刺激し、異物を排除し受け入れようとする矛盾した肉の動きに唇を歪め、物音一つで全てが崩壊するという緊張感で背筋を楽しませている。
 ペニスがヌルヌルとマッサージされる。電気の刺激はなくとも射精に導くには十分すぎる。
 生意気なお嬢様、第三位の超能力者が自分に支配され快楽に泳いでいる姿にぞわり、と全身の産毛が反り立った。

「よく締まるぞ、美琴。そろそろ出してやる――!」

 小さな声で、囁くように、呟くように宣言する。

「今日はダメ、中はダメなの――お願い、中は――」

 眦に涙を浮かべながら懇願する美琴。肩越しに見せる白い顔はくしゃくしゃに歪んでいて、それでいながら透き通るように美しかった。

「それなら尚更だな」

「いや、ダメ――赤ちゃんできちゃうからぁ――」

 今更のように死物狂いで逃げようとする美琴。グイ、と後ろから木に押し付けられてあっという間に身動きが取れなくなる。
 ぽん、と上条の右手がその頭に乗せられて発電能力の全てを奪われる。肛門に突っ込んでいた親指は立てて触れていないがそんなことは関係なかった。
 ただの華奢で無力な少女が此処にいる。

 カラダの一番奥底を何ども抉られる。貫かれる。犯される。
 ぐい、と膨らんだ亀頭の存在を熱として感じたときに先端から熱い液体が体内に注がれた。

「きひぃっ、いや! いやぁああああぁああ!!!」

 溶けた鉄のように熱い精液を注がれて美琴が絶叫する。声を殺すことなど完全に忘れて泣き叫ぶ。一瞬意識が飛んで木に押し付けられた身体がびくりと跳ねる。
 頭の中が真っ白になり健康的な喉を震わせる。
 獣のような表情のままの上条が射精をしながら咆哮するように絶叫するように腰を振り美琴を貫く。
 これでもかこれでもか、と長い長い射精が行われ、美琴の小さな子宮に吸い込まれていく。
 爛れた性器粘膜が真っ赤に染まって毒々しいほどの色となり、空気を吸って白濁した美琴の粘液に明確に違う別の白が混じる。
 ずるり、とペニスが引き抜かれると泣き崩れる美琴と対照的に、上条が意志をもった化け物のように陵辱の高笑いを浮かべる。
 そうしたまま、一分ほど美琴は泣いていた。

「バカァ――馬鹿馬鹿――赤ちゃんできちゃうじゃない――」

 赤い唇を震わせて美琴が泣いて詰る。下半身を剥き出しにしたまま地面に座り込んで睨みつける。
 まだ中学生の美琴に子供を産む能力はない。
 肉体的にはともかく、社会的に育てる力は無い。
 だからと言って、クローンの命を弄ばれたトラウマのある彼女には堕ろすという選択肢は最初から存在しない。

「薬は用意してあるからよ、きちんと飲めば大丈夫だろ」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:36:00.43 ID:wLWx/ORko
 下衆な上条には妊娠の恐怖はわからない。
 自分の肉体の中に別の誰かが存在して、その彼彼女を一生育てていかなければならないというプレッシャーを理解することができない。
 寧ろそうなれば一生美琴を支配できるのではないか、という狂った思考にこそ到る。
 中学生の妊婦など抱ける男はこの日本にそうはいるまい。それはそれで楽しそうだと心の底から笑う。

 繰り返すが、彼は男女の情愛を理解していないわけではない。
 ただその理解がずれているのだ。
 現実を理解できずフィルター越しの幻想しか理解できない。
 戦争帰りの復員兵に似ている。
 死を身近に感じすぎて具体的な日常に戻れないのだ。
 その心の罅や洞が肌を重ねる女たちに向けられている。

 単純に、子供なのだろう。長いスパンで物事を考えられないだけなのだろう。
 彼にだって責任を取るという言葉の意味ぐらいならわかる。しかしそれは表面を知っているだけで内側の重さを知っているわけではない。 
 アフターピルを用意しておいて、もしそれでダメならばその時に考える。その程度のルーチン。
 大人ではないのだ。

 然しそうだとしても。
 差し出された上条の手を美琴は握る。
 彼にはまだまだ時間があるし成長もする。
 女の心を理解できないまま女を抱いている悪癖も治るかもしれない。

 彼の中には輝いて眩しいぐらいの何かが存在していて。
 それに美琴が見惚れたのは事実なのだ。
 多分インデックスという少女も同じで。
 性的な奴隷として扱われていながら彼と距離を取ろうとしないのだろう。

 出来るのならば自分を選んでもらいたいし自分だけを見ていて欲しい。
 そうでないのだとしても彼の傍にいたい。
 性的な意味ではもう少しマトモになって欲しいけれども。最低でもアフターピルが万能でないことぐらいは理解してもらわないと。

 すっと立ち上がった美琴が涙目のままで上条に抱きついて唇を重ねる。

「大っ嫌い」

 熱した皮膚に肌寒い風を感じながら上条の腕の中で美琴が言う。
 肉体の内側で跳ねまくる心臓の音を感じる。

「アンタなんか大っ嫌い」

「知ってる」

 言って、今度は上条が唇を奪う。
 先程までと打って変わったように優しい瞳で。
 んっ、と軽い抵抗だけして美琴が受け入れる。

「上条さんは何処かおかしいんですよ。わかってるんだけどな。ブレーキ踏まなきゃいけないところでアクセル踏んじまうんだ」

 つつっ、と美琴の太ももに不純な液体が滑り落ちる。彼と彼女の遺伝子が混ざり合うこともなく重力に切り裂かれる。
 上条がカバンからティッシュペーパーを取り出してそれを拭う。拭って、白く泡立った性器と周囲の陰毛も綺麗にする。ムッとする性臭を感じた。
 コンビニの袋をゴミ箱がわりにして使ったティッシュを捨てて、今度はウェットティッシュで美琴の肌を磨く。
 アルコールの揮発に寒気を覚えながらも下半身を丸裸にしたままの美琴は何も言わない。

 掃除が終わって、美琴が下着と短パンとスカートを身につける。肩口の伸びてしまったニットは大まかに形だけは整えたものの、もう御役御免だろう。
 目立たないように隠しながら帰るしかない。

 身支度を整えている間に上条も自分の体を綺麗にする。といっても愛液にまみれたペニスと周囲を拭うだけだ。
 簡単に終えて、すべてのゴミをまとめたコンビニの袋の口を閉じた。帰り際に公園のゴミ箱に捨てていく。
 遺伝子情報が云々カンヌンといった条約はあるが、ジュースの缶を全て回収している訳でもない学園都市だ。
 自分たちの世界の中で焼却処理される分には問題にもならない。

「そういやさ」

 もう帰るだけ、という段になって上条が自分のカバンを掻き回す。なかから可愛らしい手のひらサイズの紙袋を取り出す。

「安物だけど美琴に似合うかなと思ったんだ。嫌だったら捨ててくれ」

 袋を開けて、中から出てきたのは大きな向日葵のヘアピン。闇が混じった夕暮れにもその黄色い色が明るく映える。

「へぇ? アンタにしちゃ珍しい心遣いね」

 にこり、と笑った美琴が上条の手のひらに置かれたヘアピンに手を伸ばす。
 確かに安物で玩具じみた作りで高級感など全くないが、割り切った分だけ何処かしらサッパリとした印象を感じる。
 春口で、まだ季節が合わないが明るい太陽のようなイメージは嫌いではない。

 しかし手にとったヘアピンを美琴は身につけようとはせずそのまま上条の手のひらに戻した。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/06(金) 23:36:26.55 ID:wLWx/ORko

「どうせなら当麻が付けてよ。私に」

 一歩よりも近い半歩の距離で、御坂美琴がコケティッシュに笑う。全身の穴という穴から体液を垂れ流していたメスの姿ではない。
 活発な、太陽の化身のような、明るい笑顔。
 何故だろうか、その姿はインデックスと非常によく似ていた。

「――あの子にも同じの買ってるんでしょ? いいよ。でもあの子には自分でつけさせてね?」

 何時もフードをかぶって、私服を殆ど持っていないインデックスと言う名の修道女。
 今日帰ってプレゼントしても大事に胸に抱えるだけできっと付けさせようとはしない。

 だから此れはほんのちょっとした独占。
 いいじゃない。これぐらい。
 私はアンタと同じ夜を過ごせない。同じ朝を迎えられない。
 だからこれぐらい、いいよね?

 半歩の距離で、背伸びするように見上げて。
 御坂美琴は彼の右手が自分の頭に触れるその時を静かに待った。 
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/06(金) 23:37:33.17 ID:wLWx/ORko
以上です
アイテムに比べると動かしづらいですよこの人たち 
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 22:53:48.52 ID:H9TkV7o3o
投下します
上条×姫神で 
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 22:55:22.06 ID:H9TkV7o3o
 シャワー上がりのほんのり赤みが染まった肌をバスタオルで隠して、長い黒髪の水気を取っている姫神秋沙の姿を眺めながら濡れて何時ものツンツン髪ではなくなっている上条当麻は腰にタオルを巻いただけの姿でソ

ファに腰を下ろし持ち込んだ安売りの缶ビールを傾けていた。
 学園都市にもラブホテルはある。
 もちろん、高校生の使用は禁じられているのだが、建前と実情が違うのは何処の世界でも同じことだ。
 性欲過多な世代を集めているのだからどうしてもそういう需要はある。
 闇組織にそういう施設を作られ犯罪の温床となるぐらいならば学園都市で管理した方が都合がよろしい。
 遺伝子だのなんだのと、そういったものなのだろうが――上条当麻は遺伝子云々に関しては信用しないことにしている。

 今、姫神秋沙という自称魔法使いの少女は魔法使いの証であるステッキ(警棒)を携帯していない。当たり前だ。素肌にタオルの姿なのだから。
 代わりというわけではないが、胸元には飾り気のないごつい十字架を首から下げている。
 インデックスの「歩く教会」の簡易版の結界。鈍い金属色のケルト十字。
 ただ本来の目的と違うところは――外側の何かから内側の何かを守るのではなく、内側の何かから外側の何かを守る――彼女の能力を封印しているという点である。

 吸血殺し、と言うらしいその能力は文字通り吸血鬼だけを殺す。
 吸血鬼という伝説の中にだけ存在する生き物を、その意思に関係なく強制的に誘いだしその肌に牙を突き立てさせ、一滴でも血を吸えば忽ちのうちに灰燼に帰してしまう。
 姫神が言うところの、「普通の人間となにも変わらない」吸血鬼を、善良なるも邪悪なるも、男も女も老いも若きも何一つ変わりなく――全てを殺して殺し尽くす。一面に降り積もる白い灰だけの、そんな世界に書き換えて。

 原石、と言うらしい。
 上条自身の「異能ならば全てを打ち消す」右手の幻想殺しもそうだ。
 天然の能力者。生まれ落ちての異能。
 学園都市の通常の能力者がジルコニアだとすれば天然石のダイヤモンドに相当する。
 ダイヤモンドに意思があったとしても自分が宝石になると最初から思って存在していないように、原石というのも偶然の天然の作用であってそれ以上ではないのだろう。

 吸血殺しも幻想殺しも「殺すべき対象」が存在しなければなんの価値もない能力である。

 然し、と上条は考える。

 姫神秋沙は元霧ヶ丘女学院の生徒である。
 つまりは高位能力者だ。レベル三かレベル四か。希少価値を有しているとしてもそれは間違いないだろう。
 何故ならば封印のケルト十字を身に付けたことでレベルゼロと判断された彼女は霧ヶ丘女学院を退学になったのだから。
 言い換えれば、霧ヶ丘女学院は希少価値だけで入学を許しているわけではないということだ。
 もし上条当麻が女であったとしても、その右手の稀少価値だけではレベルゼロに門は開かれない。
 更に論を繋げれば、上条当麻と異なり姫神秋沙はそれだけのAIM拡散力場を有しているということになる。(万年赤点の上条が此処まで考えられるのは浜面 仕上の同棲相手を浜面自身から紹介されて、その能力を覚えていたからである。因みに、顔はやめてと浜面の同棲相手二人に言われてたので肝臓をしこたま殴っ た)

 砂上の楼閣に更に部屋を乗せる。

 魔術によって能力を封印することは可能だということだ。
 AIM拡散力場を消すことができるという訳だ。
 それは言い換えれば「能力者に対する幻想殺し」を魔術サイドで実装できるということである。

 ――何故やらない?

 能力者と魔術師が正面から激突したことは数少ない。
 自分を除けば一方通行と御坂美琴ぐらいだろう。
 超能力者には使えないのか。それとも相手が受け入れていないと発動しないのか。
 然しながら可能性が在るというだけでも勝負の札になるというのに。
 特に同じ戦場に立ちたがる御坂美琴に関しては上条も敏感になる。

 ――戦うとしても、一人にはしないほうがいいか

 険しい顔をした上条の鼻を甘い香りがくすぐった。
 見れば、髪を吹き終えた姫神がつまらなそうな顔をして此方を覗き込んでいた。

「上条君。最低」

 長い髪をくるくると巻き上げてつむじの上ぐらいで纏めている姫神秋沙。上げた腕に吊られて見える白い腋が妙にエロティックに見える。その視線が上条を責めている。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 22:57:22.15 ID:H9TkV7o3o
「今。私じゃない誰かを考えていた」

 上条は反論しない。事実だからだ。
 顔に出ていたのか、とそれだけを反省する。
 御坂美琴のことを考えていたことそのものは悪いこととは考えたりしない。

「確かに。私は。上条君にとって都合のいい女。それ以上でもそれ以下でもない」

 パチン、と日頃は使わない髪留めで長い髪を一つのユニットにする。お団子状態の髪型だが、それ以上にめったに見ることのできない白い項の方に意識が行く。
 黒髪の少女が上条の顔を正面から見つめる。
 大和撫子を絵に書いたような主張しすぎない顔立ちは整っていながら美しさを隠しきれていない。

「だからといって。こんなときに他の女のことを考えるのは。マナー違反」

 ぐい、と手を伸ばして上条の缶ビールを奪う。そして半分以上残っていたそれを一気に飲み干す。
 苛々を隠すように。
 けは、と炭酸のゲップを吐き出したときには姫神の顔は赤く染まっていた。
 湯上りにアルコールということで吸収が早かったのか、そうではないのか。
 ぐるん、と強い意志をもった瞳で上条当麻を射抜く。
 上条は両手を上げて、西洋風の降参のジェスチャーをする。
 ごもっともです。私が悪ぅございました。

 そして、火照った姫神の肩を抱いて引き寄せた。
 姫神の顔が上条の胸板に押し込まれ、僅かな距離で見上げる格好になる。そして両手で赤い頬を挟まれて。

「――――」

 抵抗もできないまま唇を奪われた。
 舌を絡めるわけでなく唾液をすするわけでなく、表面だけの淡い口づけを一分。
 それでも離れたときに姫神の目は蕩けていた。満足そうに上条が笑う。

「君は。ずるい」

 言って、姫神の手が下に伸びる。引き締まった腹筋のラインを一つ一つ確認して、羨ましいほどにメリハリのあるクビレの繊維をなぞり、
白いタオルを外したのちに太股の無数の蛇で構築されたような筋肉の動きをなぞる。
 鍛えたのではなく、取捨選択し残された筋肉。
 単純な強さという意味において上条のランキングは低い。路上の喧嘩では一対一か一体二まで。相手が三人出てくればどれほど弱そうであろうと
逃げるという選択肢を選ぶ。
 しかし世界相手の立ち回りという異常事態をこなせるほどの筋肉はついていた。成長期の少年の肉体は大幅に成長しているのだ。
 人一人殺せれば初段である、と剣道などでは言う。真剣勝負とはそれほどまでに経験値が高い。
 剣を用いることそのものがなかったにせよ、僅かな期間に連続して命のやりとりをした上条当麻は「根源的な部分」で戦闘能力が高まっている。
 それは雄としてもそうだった。

「こっちもやらせてもらおうかな」

 にたり、と嗤った上条が姫神の纏うバスタオルを剥がす。ふわり、とタオルが地面に落ちる前に白い裸身が視界一面に飛び込んでくる。
 その肌にはシミ一つない。絹で織り込んだのようにキメ細かく、それでいながら静脈の蒼さが透けて見えるほどに薄い。胸は大きくないがその分上品に感じられ、
細い腕が強く表現されていないところがいい。
 残念なのは、飾り気も何もない塑像のような鉄細工のケルト十字が華奢な体に似合っていないところなのだがこればかりはどうしようもない。
 二人ソファーに座って、タオルもはだけて。
 互いの両手が別の生き物のように動く。触れて、撫でて、揉んで、挟んで、捻って、爪を立て、摘んで。その動きに舌が絡むまでにそう時間は掛からなかった。

 比較的凹凸の少ない姫神の身体だが、舌を使う視線で見れば決してそんなことはない。慎ましやかな胸は美しいラインを誇っており、細く続く腹も浮かび上がる
腹筋の丸いラインに縦臍のワンポイントが似合っていて、少し大ぶりの臀部は所謂安産型でボリュームはあるが決して垂れたりはしていない。
 長く健康的な四肢は一種の芸術品ですらあり己のゴツイ腕と比べて、これが本当に同じ項目に纏められているのだろうかと上条を驚かせる。

 狭いソファーに飽きたのか、上条が姫神を抱える。首の下から肩口を手にもって、膝の下にもう一方の手を差し入れて持ち上げる。

「お姫様だっこ。だね」

 ほう、と赤らんだ顔で見上げている姫神を優しくベットに下ろす。白いシーツに放射状の皺が広がった。

「さて、続きですよ?」

 言って、上条が白い肌に顔を埋める。上気した肌の甘い匂いを鼻腔いっぱいに吸い込んで、獣のように舌を這わせる。
 薄く傾らかな双丘を啄みながら指先を惑わしている。弾き語りにも似た、倒錯的な官能の声が姫神の細い喉から溢れた。

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/09(月) 22:58:23.88 ID:H9TkV7o3o
「や。はは。うん――」

 擽ったそうに。甘えた声で。
 清浄で森厳な巫女の姿ではなく、唯の女の声で。
 姫神が白い指先を上条の頭に伸ばして串のように櫛のようにツンツンしていない髪を梳く。
 お返しとばかりに上条は顔の位置を上げ、姫神の白い項と耳元を舐るように舌先で踊る。左手で細い上半身を持ち上げて、右手は甘い乳房を我侭に弄る。
 盆の窪に舌を這わせる度、敏感な乳首を指先で捻る度、姫神が鳴く。快楽の神経が甘く電流に痺れ姫神の瞼の裏で小さな花火が光って消える。

「小さいと敏感って本当なんですかね」

 言って、クラスメイトの委員長や天草式の聖人や交渉術に長けている割には会話が繋がらないシスターを脳裏に浮かべる。
 途端、むっとした顔で姫神が上条を睨みつけた。

「別に。小さくはない。これでも平均値には達している」

 女性のアベレージなど知らない上条はそれが本当かどうかがわからない。
 しかし姫神の感情豊かな姿は見ていて笑みが溢れてきてしまう。

「何が。可笑しいの」

「いやいや、姫神も可愛いもんだなぁって」

 ひゃう、と姫神が悲鳴を上げる。乳首を捻られるとスイッチが入ったように蕩けてしまうのだ。
 熱したナイフがバターを切り裂くように、溶けてなくなってしまうんじゃないかと思えるのに何故か淡い紅色の乳首はぴんと自己主張を続けている。

「上条君は。卑怯」

「へいへーい。卑怯者ですよ上条さんは」

 くるり、と腕の中で姫神を回転させて膝の上に乗せる。熱く激ったペニスを白い腰に直接押し付けながら両手に敏感な胸を収める。
 逸物に身体が食い込むように姫神秋沙が上条当麻に体重を預けた。ぐにり、という直接的でない感覚に上条の顔が歪む。
 そして食いつくように姫神の耳を口に含んだ。

「ひゃ。う。うん――耳は。弱い――」

 顔を真っ赤に染めながらも姫神は上条を止めない。甘い呼吸を繰り返して快楽の波に乗っている。
 軽く歯を立てられるとそれだけでぞわっとした感覚が全身を多い、直後に優しく温かく舐められると其処から全てが溶けてなくなってしまいそうになる。
 自然、内股になって太腿をもじもじと擦り合わせる姫神。当然のようににやりと嗤った上条は右手をその狭間へと滑らせる。

「あ」

 短く叫んだ姫神が気付いたときには上条の右手は既に蜜で溢れている肉壷へと辿り付いていた。
 幻想殺しでも殺せない圧倒的な現実。雌の器官が雄を向い入れる為に機能しているという事実。
 下司な笑みを唇に貼り付けたままの上条が乱暴に雌の器官をまさぐる。
 びくん、と姫神の身体が痙攣し、上質な絹のような肌に漣が走る。渇いた地面が豪雨に喜ぶように乱暴な快楽が細い肢体を満たしていく。
 男性として小柄な上条ではあるが姫神には抵抗できない。力の差はもとよりも男と女という、唯それだけの、ただし絶対的な差によって。
 体力ではなく、感情。
 得も言えぬほどの歓喜の波が内側から起こって止められない。
 何時の間にか足を開いていた。手を受け入れやすく腰を浮かしていた。
 哀れな女は一匹のオスに蹂躙されるためだけに花開く。

 形のいい眉を歪ませながら姫神が喘ぐ。鳴く。

「ひゃ。あ。んん。あん。あ――」

 丸く開いた赤い唇から淫らな旋律が奏でられる。
 それはまるで魔術のように上条のココロを昂らせる。媚薬よりも上質で、価値のある響き。
 どんなラブソングも敵わない原始的な情感が乱暴なまでに部屋中に満ちる。

 日頃お目にかかれない後ろ髪の生え際。長髪の姫神のそれを拝むには髪を纏めてもらうしかない。
 黒く長い髪は一種の恐怖である。
 金や銀の髪では出せない。縮れた髪では有り得ない。ただ濡れてカーテンのように下げられるだけで日本人にしか理解できない女の憎悪を表現する。
 文明を元にした、魔術。
 髪の美しさだけならば日本人の黒髪こそが一番だと上条は思う。
 そして美しいが故に情念が篭る。影が宿る。
 そんな影を切り開いてみる白い首筋は途轍もなく淫らだ。
 ただそれだけなのに。
 姫神が最初に自分がそういった通り、彼女は魔法使いなのだろう。
 魔法名も体系も神話もいらない。
 女はただ女であるだけで魔法を使えるのだ。

 哀願めいた嬌声をあげる。
 そんな姫神を一度離した。本能の赴くまま彼女の花弁に顔を寄せる。
 しかし上条の行動を姫神が制する。
 怪訝な顔をする彼に魔法使いは小さなプラスティック製の容器を取り出して上条に渡した。

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 22:59:19.30 ID:H9TkV7o3o
「おしり。したいのならこれ使って」

 蓋を開ければ白色の軟膏が中に入っている。油分を見ればワセリンのようだ。特に薬物の臭いはしない。

「姫神も準備がいいな」

「――慣れているから」

 言って、上条は失敗だったと顔を顰める。
 自分は正義の味方でもなんでもないが人の不幸を見て笑う人間でもない。これまでの姫神の人生を姫神が悔やんでいるのならばそれを質らう必要などない。

 ――ほんの一時の肌の熱を持って己を慰めたからといって、彼女を責めることは誰にもできない。

 所詮此れは傷の舐め合い。
 自分の世界を壊してしまった魔法使いと。
 世界を救うために心に魔物を飼ってしまった幻想殺しとの。
 下らない敗北者のミサ。

 傷の舐め合いならばそれらしくしよう。
 上条は何も言わずに姫神の股間に顔を埋める。
 同時に、姫神も上条の股間に手を伸ばし顔を近づけた。
 羞恥と興奮のため息が互いの性器を擽る。

 ぞぶり、と上条が姫神の肉に喰らいつき、ちろり、と姫神が上条の男根を舐めた。
 それが合図。
 六と九の形になって二人の口が二人の性器を愛撫する。
 歯車と歯車が噛み合って動き出すように二人の快楽が連動する。

「うむ。む。はむ。ん。ん」

 身長に比べれば大振りな上条のペニスを姫神は喉の奥まで飲み込む。下も唇も歯も全てを使って男を喜ばそうとする。
 溢れ出る唾液を万遍無く塗りこんで刺激を送り、これ以上ないというほどに硬くなり先走りを流し続けている肉塊を甘いキャンディでも頬張るかのように舌を絡める。
 ペニスを全て飲み込んで、頬を大きく歪ませて吸引し、剽軽とすら表現できるような顔になるまで愛撫をやめない。
 恍惚の表情を浮かべながらリズミカルに、姫神秋沙は口唇の性に没頭する。

 対する上条も負けてはいない。
 誰かが見ているわけでもないのに興奮の色を隠そうとして、それが仄かに溢れでいることに気づかないまま甘い紅肉に舌を這わす。
 経験があるからといって姫神に羞恥心がないわけではない。必死に押し殺しているのだ。
 そんなことを知ってか知らずか、恥知らずの上条当麻は不格好なまま口を動かす。
 コンパクトに収まった大陰唇と小陰唇を開き、その内側の溝を丁寧になぞる。肌色を通り越して赤い其処を乱暴に丁寧に優しく狂おしく舐めほじる。

 姫神が竿と亀頭とを手と舌とで愛撫すると対抗するように上条が陰唇の奥にある蕾に舌を伸ばす。
 深い尻肉に挟まれた其処を強引に空気のもとに曝け出し、周囲の染まった粘膜共々皺の一つ一つまで舐る。
 ぎゅ、と締まった其処がパクパクと口を開けるようになるまでさほど時間は掛からなかった。

 ネットリとしたワセリンを指取り、肛門に塗りこんでいく。
 丁寧に、内側にもたっぷりと。
 人差し指一本を受け入れるのもやっとだった其処は粘膜に潤滑剤を塗り終えたときには指数本が入れられるほどに柔らかくなっていた。

 これらの行為を上条は冷静に行なっていた。訳ではない。
 性器への愛撫によって得られた言葉にしづらい快楽に身を捻りながら、何時暴発してもおかしくない快楽の崖っぷちで哀れなダンスを繰り広げていたのだ。
 奥歯で快楽の悲鳴を噛み締め、太腿と二の腕に走る肌寒さに耐えて。
 その代価としてか、彼の怒張は限界以上に膨れ上がっていた。

 ほう、と姫神が口を離す。
 ネットリとした濃い唾液が太い糸のように肉茎と伝わり、落ちる。
 怒張と比べるが如く姫神の秘所は二つとも解れて何方でも受け入れられる態勢になっていた。

「どうするの。私は何処でもいいけど」

 緩慢に白い指を竿に掛けたまま姫神が上条に問う。
 ぴくりと騒めく亀頭を悪戯っぽく舐めとりながら淫蕩な声で男を誘う。
 その視線は何処にも定まらないままで、まるで薬物中毒者の末期のように溺れていた。

「どうせ一度ではすまないはず。だから何処からでも好きにして」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:00:07.10 ID:H9TkV7o3o
 上条は膣内と直腸に指を付き入れながらしばし沈黙していた。
 全ての穴を味わうのは当然だ。若い彼には我慢することが出来ない。極上の肉を隅々まで味わない訳にはいくまい。

「一回口で出しておく? そうすれば長持ちするよ。フェラなら後でまたしてあげるし」

 淫らな提案。上条の背筋をぞわりと何かが駆け抜ける。
 上条は言葉でなく行動で返答とした。
 右手も左手も、全ての指を別の生き物として動かす。むっとする発酵臭に包まれながら舌先で蜜をぞぞりと啜る。膣の中で、直腸で、太くガサツな指が踊る。

 乱暴な快楽に眉を顰めながらも姫神が返答に喜ぶ。無邪気な顔で再び肉塊にむしゃぶりつきずびずびと聴くに耐えない品のない音を立てながら吸い尽くそうとする。
 その激しさに上条の顔が歪む。快楽に歪む。

「すげぇぞ、姫神! めちゃくちゃ気持ちいい!」

 極まった、悲鳴のような叫び。激しい首振り運動がそのまま上条の性感に繋がる。逆に上条の方から腰を動かし姫神の意思と関係なく喉奥を犯し尽くす。
 それでも姫神は苦しそうな素振りも見せず小さく窄めた唇を性器に見立てて抉り続けた。
 腰を引き攣らせ、顔は天を仰ぎ、姫神への愛撫も忘れた上条が獣のように唸る。
 ぶる、と背筋を震わせてぴくぴくと腰が脈動する。

「ふむぅ。ぐ。うん。ん――」

 どくん、と姫神の口の中で肉の塔が砕ける。熱い塊が打ち込まれる。
 目を細めて嬉しそうな顔をした姫神が鼻を鳴らしながら喉元を動かしている。それは精液を塊のまま嚥下している仕草であって姫神が上条を受け入れた光景だった。

 ――ゴクッ

 全てを飲み干して、姫神が満足そうに口を離す。一気に放出したはずのペニスはまだ硬いままで次の刺激を待ちかねているようにぴくりと動く。
 不道徳な行為に新たに湧き出る唾液と胃の腑から湧き上がってくる生臭さに姫神のメスの本能が戦慄いている。
 精液の味と臭いに支配された姫神が甘い体臭を振りまく。
 それは正しく食虫植物の甘さであって、吸血鬼を殺すための吸血殺しの甘い体臭だった。

「――気持ちよかった」

 終末を越えた射精の感傷に、上条が素直な気持ちで姫神を褒める。
 彼女の体液で濡れた口元を拭い、切なげにすら聞こえる声で姫神に伝える。

 誇らしげな姫神は再びペニスに舌を這わせる。
 細い指で幹を優しく扱く。

「あんなに出しちゃったのに。元気だね。すぐに次ができるかな」

 尿道に残った精液も啜って、射精したばかりの敏感な上条を攻め立てる。硬いままのそれを愛おしそうに舐めとる姫神の前に残滓など欠片も残っていなかった。

 まだまだ子供とも言えるあどけなさを残していながら姫神は完全なメスだった。
 華奢な細い身体に牝の機能を全て搭載し、雌の技術の全てを身に付けていた。

 ぺろり、と上唇を舐めた姫神が上体を起こして上条の顔を見る。
 淫猥な表情は上条を奮い立たせる媚薬としては十二分過ぎた。
 うふふ、と心の底から淫らに笑う。
 後ろに手を回して髪留めを外すと黒い髪がはらりと舞った。

「上条君は。するときはこれがいいんだよね」

 腰まである長い髪を空間に敷いて。淫らな世界に筆で一本の線が引かれる。
 女の命とも言われるその黒髪が白い肌に映えている。
 何も纏っていないのに、玄衣黒服の装束のように凛々しくさえある。
 その中央に、無骨な十字架が哀れなように縫いつけられていた。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:01:25.52 ID:H9TkV7o3o
 上条の肉体全てが勃起する。
 裸の肉体が雄の機能の全てを開放する。

「姫神!」

 射精したばかりだというのに。
 上条当麻は姫神秋沙をベットの上に組み伏せていた。
 白いシーツに広がった髪は夜の海を思わせ、そこに浮かぶ白い肌は海面に浮かんだ月のようだった。
 互いの体液を啜った生臭い唇同士をかみ合わせ舌を重ねる。自信の体液が混じった相手の唾液を啜り貪る。
 獣と獣とがオスとメスの姿で絡み合う。

 血走った眼をした上条が姫神と一度身体を離す。
 膨れ上がった逸物を片手に彼女を蹂躙しようと姫神の両足を広げさせる。其処には蜜を湛えた女芯と鳶色に窄まった肛門とが自分を主張していた。

 何を犯そう。何方を愛そう。
 胡乱に惑う選択に姫神は笑みを浮かべたまま何も言わない。
 一秒は幾つにも刻まれ瞬間瞬間を重ねていくが、何もしないその時間さえもが楽しい。鼓動が世界を変えていく。

 僅かな時間の後、上条のペニスは姫神の肛門の窄まりに当てられた。

「ふふ。そっち?」

 探るように、慈しむように亀頭で肛門を撫でる。角度を計算して、パクパクと開いている穴に先端を食い込ませる。
 女の柔らかい太腿を女の細い指が捉える。開いたままの脚を閉じないようにとの配慮。淫らに我侭な笑顔。
 若い情夫の必死な姿に姫神の心は震える。
 肛門の前方で女の穴がだらしなく涎を垂らしている。発情に身を焦がして心と体がひとりの男に捧げられる。

 出来るのならばもっと違った形で。

 それは適わぬ夢だとしても。

 少しだけ寂しげに姫神が嗤った。

「――ん」

 丁寧にワセリンを塗り込まれ、光を反射している肛門は対した抵抗もなく上条のペニスを中程まで受け入れた。
 焼けた火箸のような熱くて硬いそれが直腸に入り込むと姫神の心臓がどくんと脈打つ。
 言葉に出来ない劣情が脳内を駆け巡り圧倒的な乾きをもって姫神の心を苛んでいく。

「もっと。乱暴で。いいよ」

 恰楽の声で姫神が誘う。隠しきれない興奮が吐息となって溢れ出る。
 慣れた肉体は苦痛を訴えない。
 本来以外の機構で本来以外の快楽を貪ろうとしている。排出専門の場所が快楽の機能を曝け出す。

「狭いぞ。姫神」

 ぐぐ、と少しづつペニスを押し込んでいく上条。乱暴にしていいと言われたがやはりこの抵抗は怖い。
 力づくにしてしまえば忽ちに破れてしまいそうで。
 強ばった異物を排除しようと強く食む肛門はちぎられそうにきつく、中の直腸粘膜は内蔵に直接触れているかのように熱い。
 甘い吸窄と熱い食みに上条が感嘆の声をあげる。

 背中と尻肉とを鷲掴みにして、上条が侵入する。ぎちぎちに絞まる肛門はワセリンの力がなければ到底押し入れることは不可能だっただろう。
 宛ら処女の膜を奪うが如く途轍もない抵抗が上条を襲う。
 一度目ではない。二度目ですらない。それなのに、此れは。

 上条は外道だ。性的な奴隷を所有――そう、所有だ――している。
 インデックスという修道女の少女を、肛門性交だけの奴隷として飼っている。
 彼女は処女のまま、肛門性交の絶頂を覚えさせられている。
 姫神よりも幼く、身体も小さく、そして肛門だけしか知らない少女。

 然し姫神のアナルはインデックスに匹敵した。
 入口はきつく、中は熱く柔らかく。何よりも姫神という一種の清浄性を纏った少女の排泄口だということが興奮を高めた。
 過去に何があろうとも、この少女のもつ清々しさは失われない。
 下司で愚かな自分が汚しても良いものだろうかと自問する。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:02:27.23 ID:H9TkV7o3o
 知ったことか。
 傷口を舐め合っている弱者にそんな質問など無意味だ。
 一瞬の通りすがりでも、姫神の心が満ちるのであれば他に何が必要だというのか。

「あ。ああ。はいって。くるよ」

 少しづつ、抵抗を突き破りながら侵入するペニス。太く固く存在感の大きなものが肛内に満ちてくる感触と圧迫感に姫神が低く呻くような声を漏らす。

 ――ぬぶっ――ずるっ――

 音がするわけではない。然し二人は体内で響くその音を確かに聞いた。

「あ。ああ。お。あ”あ”。あ――」

 猛る男根が侵入するその度に姫神が短い悲鳴を重ねる。拡張され、引き裂かれて、酸素不足の金魚のようにパクパクとその口を開く。
 目の焦点がずれ、何処か遠い世界を見るような瞳になっていく。

「うぉお。全部入ったぞ、姫神……」

 二人の腰が密着する。その僅かに前で膣口が静かに涎を垂らす。二人の陰毛が重なり合ってその中で隆々たる上条の逸物が完全に姫神の肛門に飲み込まれていた。
 広がった肛門の皺が反逆するように上条のペニスの付け根を締め付けている。
 其れでいながら中は熱く柔らかく、矛盾する両極端な二つの感覚に上条の脳がどろりと溶ける。
 いつ味わっても新鮮な感覚。新鮮な征服感。完全に支配しているという喜び。

「はぁ。はぁ。うん。わかるよ。私の中。上条君でいっぱい」

 開ききった肛門と圧迫される腹腔。姫神も新たな感覚を感じている。何回も繰り返したのに、脱皮したかのようにその度に新しい。
 圧倒的な雄の存在が自分の肛門に入っているという倒錯が姫神のマゾヒズムを刺激する。不浄の穴でペニスを全て受け入れるのは至上の女の喜びだった。

 細いその腕を伸ばして上条を捉える。
 引き寄せて唇を重ねる。
 甘い甘い、砂糖菓子の様な口づけ。
 骨まで溶けてしまいそう。

 ――ずりゅ――

 上条の腰が引かれる。高く張り出した亀頭冠が直腸の粘膜を鋭く掻いて姫神に快楽の電流を流す。

「ひぃん!」

 甘く鼻から抜けるような悲鳴を上げながら必死に上条の頭を抱きかかえる。甲高い嬌声を聞くのはたった一人。
 乱暴に引き抜かれた腰が今度は鋭く打ち付けられる。
 あんなに裂けそうだったのに、今ではその気配すらない。
 圧縮ゴムにペニスを差し込んでいるような締め付けが棹全体を甘く噛み続け、抜ければ温かな腸肉が包み込んでくれる。
 痛みと快楽のブレンドは快楽の方がまさり、いや痛みがあるからこそ快楽の純度が高められる。
 きつい締め付けと柔らかな暖かさは膣では感じ取れないものだった。

「うわぁああ! すごい。お尻が捲れちゃいそう!」

 姫神も同じだった。膣と比べれば快楽の度合いは膣が勝るが、しかし得られる興奮は勝るとも劣らない。
 異質な快楽は強烈で瞼の内側に幾つもの火花を散らせ、青筋立ったペニスを受け入れる度に意識が強力にシェイクされる。
 尻穴から口内まで貫かれそうな、そんなイメージが強く脳に刻みつけられる。
 少女の細い身体と黒い髪が踊る。舞う。
 強引なピストンと共に嬌声が漏れる。苛烈に振舞われればそれだけ姫神は甲高く喘ぐことになる。

 ――ずぼっ――ずぼっ――ずぼっ――

 間抜けな音が室内に響く。それ以上の声が室内に満たされる。
 上条の頭を必死に抱えながら姫神は鳴いた。啼いた。
 神が焼いたソドムの街で。禁断とされた性交に。別種の神とはいえ。神に使える巫女が。泣いて喚いている。
 罪と罰とを縫いつけるように上条が荒々しくペニスを動かす。其の度姫神の肛感は高まり深く深く嘆いていく。

「や。だ。声が。どうし。ても」

「いっぱい喘げよ。聞きたいぜ、俺は」

「は。あん。お尻が。おしりが。すごいよ! 上条くぅぅうん!!!」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:03:22.63 ID:H9TkV7o3o
 声を上げて悦がると官能が高ぶる。火がついたように全身が興り頭の先からつま先まで全てが別のものに書き変わってしまう。
 それは嫉妬で羨望で後悔で。
 訳の分からない涙が一筋姫神の頬を伝わった。
 黒い黒い官能が己の意思をバラバラに砕いていく。
 姫神は確かに正常な意識を保ったまま狂っていった。

「うぉ、姫神っ、なんか急に締りがっ!」

 元からきつかった肛門がさらに締め付けられる。姫神の腕から逃れた上条がその顔を見つめたが視線は上条を見ていなかった。
 もっと遠くの、もっと昔の何かを見ている。
 その瞳は自分を見ていない。

 瞬間、かっとなった。怒りが沸騰した。感情が煮えたぎった。
 自分と交わっている女が自分のことを見ていない。
 誰を見ているのだろうか。嘗て愛した男か。嘗て恋焦がれた誰かだろうか。嘗て殺した一人だろうか。
 疎外感以上の感覚が全身を鷲掴みにする。大きな腕が小さな自分を握りつぶす。
 傷の舐め合いだとしても、自分でない男を見ている姫神を上条は許すことができるほど大人ではなかった。

 だがそれを反転すれば。
 顔も知らない男から姫神秋沙を寝取ろうとしている自分でもある

 加虐と被虐の交じり合った興奮が上条の中で加速する。黒く黒い深い闇の中で赤く赤い口が開かれる。
 無数の牙を持ったそれが上条の中で暴れて狂う。
 何度も死線を迷った少年の中に潜んでしまった魔が上条の肉体を乗っ取る。

「もっと感じろよ! もっと喘げよ! 俺の腕の中で乱れろよ!!!」

 覆い被さって腰を振る上条の激しさに今更のように姫神が彼を見つめる。
 嫉妬に狂った彼の姿を見て、切なそうに嬉しそうに笑う。
 今、この瞬間、彼に組み敷かれているのは姫神だけだ。
 快楽を示すように尻を振って上条を誘う。

 より速くより強くより暴力的に。そして何より支配的に。
 突くというよりも抉るように上条のペニスが押し込まれる。
 圧倒的な肉の塊が姫神秋沙の肛門を穿った。

「うう”ぁ! ああ”んンっ――!!!」

 衝撃。重くて速い衝撃が姫神に叩きつけられる。それはもはや快楽とは呼べず唯の暴力でしかなかった。
 直腸の裏側から子宮を押され、膣口から無理矢理に陰蜜を吐き出させ、通常の性交では感じ得ない絶頂へと姫神を導く。
 いや、絶頂ではない。
 底なしの深い穴だ。
 其処には光も差すことはない。
 そんな絶対的な快楽の底へ錐揉み状態で姫神は堕ちていく。

「うわあぁああああああああっぅっっつっ!!!!」

 杭打ち機の様な情もない暴力の嵐に姫神の精神が砕かれる。暴力と快楽が溶け合って一つになって肉体の全てが唯一人の誰かのために存在する快楽装置になる。
 堰を切ったかのように姫神の全身が開かれる。涙が溢れ、涎は溢れ、全身の汗腺が開いてむっとする女の色香をまき散らす。
 皮膚が赤く染まるほどに昂った姫神に上条の感情が叩きつけられる。
 黒い髪が淫らに染まる。
 二人の縮れた恥毛の中で狂おしいほど何かが高められている。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:03:52.18 ID:H9TkV7o3o
「ひ、姫神!」

「上条。くんンんんン!!!」

 情夫も情婦も、上擦った声でお互いの名を叫ぶ。
 赤く染まった尻の肉に杭が何度も打ち込まれ、痛みが甘美に全身を支配し花も色も鳥も風も全てが彩られ戦慄いて砕け散っていく。

 深々と打ち込まれるペニスに姫神が泣く。嘆く。
 二人の身体から汗が飛び散り、上条の欲求が再び限界を超える。
 けたたましい肉交の音と共に苦悶と羞恥が倒錯して積み上げられ唯唯崩壊の時を待つ。

「や。やあ。わ。わたし。も――」

 淫悦に姫神の絶頂が訪れる。
 途轍もない高揚の中で圧倒的なアクメが訪れて姫神のココロとカラダを弄んで通り過ぎていく。
 それはただの一度ではなく、何度も、何度も、姫神がノックアウトするまで限りなくやってきて。

 それなのに上条は腰の動きをやめようともしない。
 奥深くから抉って捻ってほじって穿って、噛みちぎろうとする姫神の肛門の締りに酔いしれて強い摩擦をもってして、姫神の快楽を更に高く高く押し上げていく。

「――!!! ――!!!!」

 声にならない声が響いて、姫神が生命の歌を奏でた。
 はしたない姿で情夫の腕の中で、姫神秋沙が絶頂のワルツを踊る。
 寝取ろうという上条は嗜虐とも被虐とも加虐ともつかない判別不可能な感情をもってして熱い精液の塊を姫神の直腸にぶち込んでいく。
 劣情が高揚して腹の奥から溜まっていた射精欲の全てを開放して姫神に埋め込んでいく。
 それでも腰を動かしたまま。
 イソギンチャクのような無様な形になった姫神の肛門に全てを押し込んで、更に内蔵深くまで染み込ませようとする。
 射精しながらも痛いほど勃起している上条のペニスが全てを開いて射精を終えたときには。

 圧倒的なオーガズムに打ちのめされた姫神は既に意識を失っていた。


 ―――――――――
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:05:11.25 ID:H9TkV7o3o
 あれから膣内に三度、腸内に二度。そして口腔にも一度射精した上条当麻は再びシャワーを浴びたヒメガミ秋沙と肩を並べてソファーに座っていた。
 流石に八回も射精をすると体力過多の上条でも疲労しきってしまう。
 やや眠たげな眼をしながらもホテルの残り時間をめいいっぱい使ってこの静かな時間を楽しんでいる。

 やがて、姫神が静かに口を開いた。

「上条君。別れて欲しい」

 やっぱりか。
 そんな思いで上条当麻が姫神秋沙を見る。
 その顔は火照っていて色っぽくて、そして何かを決意した凛とした空気を纏っていた。

「――別れるも何も、そういう関係じゃないだろ」

 寂しそうに上条が口にする。
 所詮此れは傷の舐め合い。何方かの傷が癒えれば其れまでの関係だ。

「――そう」

 姫神が、悲しそうに微笑んだ。
 その笑顔は深みある美しい顔で。まるで触れてはいけない芸術品のようにだった。

「理由。聞かせてもらってもいいかな?」

 普段は吸うこともない煙草を取り出して、喫む。嫌な臭いを持った紫煙が上に舞って散る。
 一口二口。それが限界。
 潰してもみ消して、上条が天を仰ぐ。

「ステイルのお薦めも大したこと無いな」

 そもそもそれほど煙草が好きではない上条はその良さが理解できない。
 バーコード入りの不良神父にはインデックスを弄んでいるという負い目があって、上条は苦手だった。
 然し、姫神と上条が共に知る数少ない魔術師でもある。

「付き合って欲しいって言われた」

 誰に、とは言わない。恐らく姫神は絶対に口にしない。
 何処か眩しそうな眼をした姫神を見て、上条は丸い吐息をした。

「そっか」

「うん」

 ほう、ともう一度息を吐いて、上条当麻が軽く眼を抑える。
 少しだけ。そう、ほんの少しだけ胸が痛んだ。
 仕方のないことだ。お互いそれは分かりきっていた。
 分かりきっていたはずだ。

「姫神がそうしたいなら、それでいい」

 突き放すように言う。

「上条さんは応援しますよ」

 飽くまで他人事で。友人に話すように。
 恋人にでは決してない。

「君は。最後の最後まで卑怯だったね」

「悪いな。上条当麻は姫神秋沙を守れなかった」

「守って欲しいなんて思ってなかった。でも。時間と場所が違かったのならばって何度も思った」

「そっか」

 沈黙。
 二人して静かに時を刻む。
 かち、かちとなる時計の音が煩かった。

「君は。インデックスと御坂美琴を守れるの?」

 最後の問い。肌を重ねた女が女として問いかける最後の問い。
 上条は唯笑った。

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/09(月) 23:06:03.34 ID:H9TkV7o3o
「地獄の底にまで付き合った女と地獄の底まで付いてくる女だぜ? 此れはもう上条さんの責任ですよ」

 静かに、ただ静かに笑う。
 上条当麻は浜面仕上が憎らしい。
 アイツはきっとこんなことで悩んでいない。もっとレベルの高いところで戦っている。
 畜生。ちくしょう。

「さよなら。だね」

 また会うだろう。例えば明日の教室で。
 でもそれはもう今の距離でのことではない。
 男と女の関係はもう終わり。

「そうだな。さよならだ」

 上条は静かに笑う。笑うしかない。
 別れが出会いの始まりだったら、出会った瞬間に別れは決定していた。
 無責任な男が無責任に捨てられただけだ。

 静かなまま姫神が顔を寄せる。唇を重ねる。
 長い長い髪がカーテンのように二人の世界を作る。

 かち、かち、かち

 時計の音が煩わしい。

 そして二人は離れる。

「さようなら。最後の最後まで卑怯な人」

 姫神が笑った。心の底から嬉しそうに。
 手を伸ばせば届くかもしれない。今ならまだ届くかもしれない。
 でもその両手にはもう抱えているものがある。

「ありがとう。最後の最後まで優しかった人」


 ――上条は笑った。笑うしかなかった。 
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/09(月) 23:07:46.68 ID:H9TkV7o3o
一部抜けあり

>51の

――ほんの一時の肌の熱を持って己を慰めたからといって、彼女を責めることは誰にもできない。

の前に以下が入ります

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/09(月) 23:08:14.52 ID:H9TkV7o3o

 自分が育ち、自分が愛した村を自分のせいで壊した。
 皆が皆、彼女の心に痛みを残すことを謝りながらも吸血殺しの力に負けて灰となって散った。
 姫神が学園都市に来るまでどのようなことがあっただろう。
 アウレオルス=イザードという錬金術師に会うまでどのような事があったのだろう。
 上条と見(まみ)えるまでどんな世界を見(み)ていたのだろう。

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/09(月) 23:09:39.96 ID:H9TkV7o3o
なくとも話にそんなに影響はないですね
ヒメガミさんの新しい彼氏についてはご想像のままに 
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/15(日) 17:48:43.00 ID:mVFFq77lo
投下します
今回は難産だった……
一方×黄泉川です 
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:49:31.81 ID:mVFFq77lo
 鈍い音がする。

 壁を殴りつけている音がする。

 裸の少年が壁を殴りつけている。

 違う。

 額が割れんばかりに壁に頭を叩きつけている。

 がん。がん。がん。

「クソッ――」

 極悪人が己を断罪しない世界を呪う。膝をつきそうなほどの罪を背負った少年が茨の冠を切に願う。
 白く華奢なその体は紫外線をはじめとする全ての異物を拒否した圧倒的な衣に包まれていたはずなのに拭いきれないほどの罪の色に染まっていた。

「クソ、が――」

 東京都の西部に存在する独立国家学園都市。
 科学の粋を極めたその街の最高傑作である超能力者第一位、一方通行は完全に敗北していた。

 負けるのは一度や二度ではない。負けた程度で最強の座は揺るがない。
 無敗と最強は違う。
 逃げ続けても無敗にはなれるが、最強は戦わなくてはならない。
 そして最強と無敵とはまた別の概念だ。
 敵がいなければ、きっと誰をも傷つけなくて済む。
 そう願っていた少年が嘗て、いた。

 その成れの果ては思う。嘆く。

「俺は正真正銘の化け物になッちまッたンだなァ――」

 マンションの浴室で。
 圧倒的な蒸気の壁の中で。

 一方通行の男根は細い体に不釣合なほどに勃起していた。

 時間は深夜。
 一方通行は夢を見ていた。
 其れは嘗ての体験。
 絶対能力者進化実験に於いて、超能力者第三位御坂美琴の対細胞クローン、妹達を殺し続けた夢。
 屠り、バラし、砕き、裂き、潰して開いて練りこんで、血液を逆流させ神経を破壊して、野に咲く花をガスバーナーで焼き尽くすが如く殺し殺し殺しコロシ続けた。
 もし、あの日あの場所にあの無能力者が現れなかったのであれば。
 今頃彼は絶対能力者になっていたのだろうか。
 然し、そのときの『一方通行』は本当に彼だろうか。
 血に酔い肉に笑う唯のケダモノが其処にいるだけではないだろうか。

 ――そんな夢を見た。

 然して、悪夢から目を覚ましたとき。
 一方通行は夢精をしていた自分に気づいた。
 殺戮の夢を見て快楽に射精していた自分に気づいた。
 下着の中は堕精に溢れ、其れでいながら逸物は限りなく屹立している。
 白い体の中でも白く赤く存在している其れを見たとき、一方通行は絶望した。

 シャワーを浴びた。
 ネットリとした汗を流した。
 下着も洗って精子を取り除いた。

 其れだけのことをしても。

 勃起は収まらなかった。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/15(日) 17:51:10.52 ID:mVFFq77lo
「クソが――」

 一方通行は裸のまま壁に頭をぶつける。
 一方通行を一方通行足らしめている反射は行なっていない。
 彼の額は赤く膨れ上がり、わずかに切れた傷から血の雫が垂れた。

 能力を使えば生理現象を収めることは可能だ。
 然し、打ち止めをはじめとする妹達の演算能力をこんな下らない事のために使う気にはなれなかった。

 最強だろうが無敵だろうが自分自身からは逃げられない。
 そして、自分の中に明確に存在する殺戮衝動を打ち止め達に向けないという保証は何処にもない。
 能力こそ最強である一方通行だが精神的に完成されているわけではない。
 寧ろ、本来暖かな光の中で成長すべき時間を大人たちに奪われた彼は未成熟のまま年齢を重ねている。
 その上、彼が罪と感じている殺人の桁は万を超えていた。

 ――器が歪んでいたとしても彼の責任などではない。

 同居人の黄泉川という女教師は嘗て言ったことがある。
 どんなに巨額な負債でも一円でも一銭でも返していかなくてはいけない、と。
 その言葉の通りに守ろうとした。世界中の悪意から、打ち止めを、シスターズを、黄泉川を、芳川を。
 彼が保護すると認定したものを彼は全力で守ろうと戦ったのだ。

 敵は、一番近くにいた。

 奪うのは気持ちいい。[ピーーー]のは快感だ。人の痛みなど感じずに人に痛みを与えよ。
 節足動物の羽を持つ黒い悪魔は一方通行の腹の中に居たのだ。
 勝てる道理などない。

 今現在とて、彼のペニスは刺激を求めている。隆々と膨れ上がって自己を主張している。
 冷たいシャワーを浴びたぐらいでは萎えたりはしなかった。
 熱いシャワーを浴びても意味はなかった。

 少なくとも今彼は自分の心の化け物を降ろさない限りは浴室から離れることはできない。
 心の洞に潜む毛むくじゃらの生き物は死と死の肉を望んでいる。
 こんなおぞましいものを洗い流せないまま誰に会おうというのか。

「クソッたれ――」

 最高の演算能力が何の役にも立たない。
 サディステックなサーキットを破壊することもできない。脳内の快楽物質を排出する機構が死と破壊を望んでいる。
 思えば、暗部とは良い空間だったのかもしれない。
 クソッタレな奴らを良心の咎めもなく葬り去ることができる。
 悪党も善人も英雄も興味はないが彼処こそが自分の居場所だったのかもしれない。
 魍魎という死者の臓腑を食らう化け物。
 そんなものは表の世界に居てはいけないのだ。

 光り輝くように微笑む一人の少女の姿が脳裏に浮かぶ。
 つん、と髪の一部を立たせながら笑うスミレの花のような可憐な少女。
 御坂美琴と同じ遺伝子を持ちながらこんな汚れた自分に笑いかけてくれる天使のような女の子。
 打ち止め。

 今の一方通行は打ち止めをも壊してしまう。
 其れが彼には恐ろしくて仕方がない。
 木原数多のように。垣根帝督のように。エイワスと呼称した人外の存在のように。
 外にある敵ならばいくらでも戦おう。

 だが今の敵は自分だ。自分だ自分だ自分だ。
 傍にいるだけで巻き込む、と言った甘い話ではない。
 自分に打ち止めを殺したい衝動があることを突きつけられている。胡乱に嘆いているだけでは足りない。
 この憑き物を落とさないことには彼は一歩も動くことはできない。
 然しどうやって降ろせばいいのだ?

 暗い眩暈の中で一方通行は在る音を聞いた。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:52:48.32 ID:mVFFq77lo
 こん。こんこん。

 見れば、磨ガラスのドアの向こうに一人の女のシルエットが見える。
 肉付きのいい、緑色のジャージの髪の長い女。

「一方通行? アンタ何やってるじゃん? お風呂場壊さないで欲しいじゃんよー」

 黄泉川愛穂。
 この部屋の主だ。
 今日は帰りが遅いと連絡があったがこんな時間に帰宅したのか。

「こちとらパワードスーツがサウナスーツになって汗塗れになってガレキの撤去やってきたとこじゃん。
 早くシャワー浴びて寝たいんじゃん。出来れば早く上がってくれないかなぁ」

 磨ガラスで潰れた外見なのに、湿った長い髪をうんざりとした顔で眺めているその姿が容易に見て取れた。

「――悪ィな、ちと出られねェ」

 一方通行と黄泉川の間には十前後の年の差がある。
 大人と子供だ。
 だからと言って勃起した姿を見せるわけにもいくまい。
 彼にだって彼女にだって恥じらいというものはある。
 常日頃化粧気の欠片もない女体育教師だが、時々妙に色の入った艶を見せるのは女だからだ。堂々と雄の性器を晒すわけにはいかない。

「そうか。仕方ないじゃん」

 濡れ髪をわさわさと掻き回して、黄泉川が立ち去るのを待つ一方通行。
 然し磨ガラスの向こうで緑色が肌色に塗り替えられる様を目撃し慌てる。紅玉のような深く赤い目が見開かれる。

「お、おま! 黄泉川! 何脱いでるンだ!」

「だから仕方がないってことじゃん。アンタは出られないし私は早くシャワー浴びたいんだから」

 がちゃり。戸が開かれる。
 其処に居たのは左手の指に下着を絡めた裸の女が立っていた。
 見れば目につかざるを得ない大振りな乳房と日頃は意識もしない腰の括れ。蕭々と陰る茂みには唯の記号以上の衝撃がある。
 日頃大雑把に纏めているだけの髪の毛は長く腰にまで流れ、湿気と埃っぽさを感じさせるもそれ以上の色香を漂わせていた。

「はいはーい。お邪魔するじゃんよー」

 ファミリータイプのマンションと言えども大人二人が洗い場に立てば狭苦しいものになる。
 一歩ではない半歩の距離に踏み込まれた一方通行はその半歩でがんと背中を壁にぶつけた。

「何考えてるンだよ、このクソ婆ァ! テメェに恥じらいはないのか!」

「婆ぁじゃないじゃん。まだピチピチの二十代じゃんよー 其れに恥じらいっていうのならアンタこそ」

 女性にしては長身の黄泉川は細身の一方通行と視線が噛み合う高さに居る。黄泉川の目が一方通行の額を捉える。
 そして股間の塊を見る。少しだけ頬を染めた黄泉川が呆れたように一方通行に話しかけた。

「青少年が未熟な性問題を抱えているのはよぉくわかるじゃん。でもだからって血が滲むほど頭ぶつけなくても良いと思うじゃん?
 アンタは只でさえ其処に大怪我負ってるんだから」

 汗まみれだと言っていた。触れた蜘蛛の巣が何時までも絡まるように黄泉川の汗の匂いが浴室に満ちていく。
 不快なはずの汗腺の汚濁が妙に甘やかしく鼻腔に香る。
 震えて怯える一方通行の顔に黄泉川が手を伸ばす。その温かな手が傷跡を撫で、躾るような顔で黄泉川愛穂が優しく諭していく。
 然し違う。一方通行は其のことを知っている。
 自分が嘆いているのは殺戮衝動だということを知っている。

 ――其れを告げたのならば黄泉川はどんな顔をするだろう?

 化け物を見るような目で見るだろうか。
 違うな。きっと理解を示すだろう。彼女は優れた教師だ。様々な子供の姿を見てきている。
 然しその理解は自分と貴方とは違うという論旨に立って為されたものだ。
 正しく化け物を見る視線ではあるが一方通行は其れに耐えられる自信はない。

 だが、衝動と同じくして破滅への期待がある。
 そもそも自分がこんな場所にこんな形で居ることが可笑しいのだ。
 もっと正しい価値で正しい場所に物事を置いてこそ社会というものは正しく形成される。
 悪党に興味をなくしたとしても、一方通行の挺身は変わらなかった。
 自分は意識をもった核弾頭だ。そんなものは街中に置いておくべきではない。
 不可解なまでに己を卑小化する癖は未だに抜けていない。

「――違うンだよ」

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:53:45.64 ID:mVFFq77lo
 滔々と彼は話し始める。
 卑小に己を定義する彼は、故に己より格下と見出したものに何一つ期待をしない。己より素晴らしいと感じたものに屈服してしまう。
 唯己と同等と認めた相手には感情の全てを曝け出してしまう。
 噛み付くことしか知らない。
 崇めることしか知らない。
 優しい表現を知らない。

「そンな甘いもンじゃねェんだ――」

 悪夢を話す。
 殺したと。
 殺したと。
 殺して殺してばらしてばらして爆ぜて混ぜて潰して燃やして灰にして細胞の最後の核酸まで陵辱し尽くして。
 そんな夢を見て。

「オレは興奮してたンだよ――」

 嘆いていた。天を仰いでいた。白い肌に白い手を当てて悔恨していた。
 裸の少年が裸の女の前で己の罪を懺悔した。
 懺悔しているのに、彼の逸物は朗々と昂っていた。
 其れは嘗て彼が犯した罪であって彼が背負っている咎だった。
 黄泉川にはそう思えた。

 黄泉川は一方通行の罪について深くは知らなかった。
 唯、友人であるところの芳川桔梗が深い闇の世界に居た事。甘いだけで優しくないと称する彼女が一緒に闇の世界から連れてきた少年だということ。
 其れ以上のことを黄泉川は知ろうとしなかった。
 国際法上問題になる超能力者第三位の遺伝子複製体、妹達の一人打ち止めを見たときにある程度の想像は知てはいたが、敢えて知ろうとはしていなかった。

 一方通行には彼の属すべき光の世界があるはずだと彼女は信じていたから。

 飄々と振舞う彼女が何も気にしていないと一方通行が思ってくれていれば切っ掛けになると思っていたのだ。

 然しこれほどまでとは。

 嘗て黄泉川は一方通行が垣根帝督という男を肉塊に返す姿を目撃したことがあった。
 溢れ出すベクトルを束ねた黒い乱暴な翼で何度も何度も垣根提督を叩きつけている悪鬼に貶めてしまったことがあった。
 責任は黄泉川にあった。
 黄泉川が垣根に傷を負わされて、一方通行の意思を沸騰させてしまったのだ。
 其のことを彼女は今でも悔やんでいる。
 警備員の知る裏の情報では垣根帝督はあの状況でもまだ生きている――らしい、とは聞いたのだがそうだとしても一方通行が人に手にかけたという事実は変わらない。

 例え罪があっても人は癒されるはずだと彼女は信じている。
 嘗て守るべき生徒に銃を向けてしまった後悔を胸に抱き続けている黄泉川は全ての生徒を守ろうと信仰している。
 勿論その中には一方通行も――自分に重傷を負わせた垣根帝督も含まれるのだ。
 だからこそ、垣根帝督が生きているという噂を聞いたとき黄泉川は嬉しかった。
 一方通行が罪に塗れなくて済んだのだから。

 ――勘違いだった。

 一方通行の瞳は既に闇に慣れすぎていて光を見ることも出来なくなっていた。

 暗部という闇が解体され一方通行の世界も綺麗に開けた――そう思っていたのに。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:54:49.96 ID:mVFFq77lo
 然し。だが然し。

 黄泉川愛穂は教師である。教師とは生徒を導く者を言う。
 導くことは時に正論を言い時に詭弁を言い其の者の成長を促すことを言う。
 だから彼女の嘘は上手かった。

「――そんな事、大なり小なり誰にでもあるもんじゃん?」

 ヤレヤレ、しょうもない奴だ。
 言外にそういう素振りを見せながら黄泉川が顔を振る。
 わさわさと乱暴に一方通行の髪を掻き回して頭を両手で鷲掴みにする。
 こん、と自分の額と一方通行の額とを当てて絶対に言葉が逃げない距離で嘘を続ける。

「この中に入ってる脳みその反応なんて学園都市でも全部は把握しきってないじゃん? 確かに一方通行は脳に傷を持っている。
 然して過去に色々とあった。でも化け物なんかじゃないじゃん? 生老病苦、全てに対して感情が作用するように性欲だって色んなところに作用するんだよ。
 発散の仕方が上手くいってないからといって自分を特別な存在だと認識しているのなら其れは大きな勘違いじゃん」

 赤い目を見つめる。
 闇の虚を持って、揺れて、逃げようとしている眼を見つめる。
 見つめて言葉を重ねる。
 グイ、と態とらしくペニスを握ってやると一方通行は嫌がる素振りを見せた。
 最強には程遠いほど弱々しい姿で。

「人間なんて誰だって異常じゃん。全てのデータがアベレージの普通人なんて存在しないじゃん。
 それでも人間なんて誰だってとても普通でとても特別なんじゃん? アンタは一方通行という能力者じゃなく一人の人間じゃん。
 ただ、ちょぉっとばかり性欲の解消方法がわからなかっただけじゃん?」

 一方通行は天才だ。
 その頭脳は学園都市最高の演算装置だ。
 黄泉川の嘘なんてすぐにバレる。
 ――それが嘘であったのなら。

 黄泉川は嘘を重ねている。此処まで特別な人間の背負っているものを理解できるなんて言えるほど彼女は聖人君子ではない。
 然しながら嘘だけを言っているわけではない。
 少なくとも黄泉川が本当と信じる嘘を本当のこととして語っている。
 魂の底から響かせれば言葉は必ず伝わる。

 品なく言い換えれば、一方通行は本当に興奮すべき経験を必要としていると、唯それだけを重ねているのだ。
 自分に興奮しろと。
 現実の女の身体に興奮しろと。
 現実は夢なんかを過去なんかを軽々と乗り越えるのだと。

 だから。飄々と何時もの顔で。
 高鳴っている自分を押し殺して。

「少しだけ、私が手伝ってやるじゃん。今回だけ特別に授業してやるじゃん?」

 他の生徒とほんの少しだけ距離の近い彼を導くことは黄泉川愛穂の義務だと黄泉川は自分自身に大きく宣言した。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:56:33.50 ID:mVFFq77lo
 隠しきれない照れと共に黄泉川がにっこりと笑う。
 熱いシャワーを出して、大雨のようになった床に一方通行を軽く突き飛ばす。歩行困難な肉体の一方通行は抵抗することもできないまま腰をついた。
 反射的に身を起こすが、その華奢な身体に黄泉川の豊満な肉体が覆い被さる。

「黄泉川!?」

「大声出しちゃダメじゃん。打ち止めや番外個体が起きてきちゃうじゃん」

 因みに芳川桔梗は今この部屋にはいない。彼女は新しい職場となった研究室に泊り込みで仕事をしている。
 其の仕事が終わったら、もう一度教員採用試験を受けようか、なんて話をしていた。
 ――共犯者は、今はもう、黄泉川だ。

 少年の薄い胸板に熱いシャワーの雫が舞い落ちる。其れは黄泉川の背を伝わり豊満な胸を伝わった雫で彼女の汗が混じっている。
 素のまま勢いで太いロケットのような大ぶりの乳房が乗せられる。
 決して小さくはないものの、大振りな乳房には相対的に小さく見える乳首の硬さが一方通行にも伝わった。

「よ、黄泉川――乳首が――」

 胸板を刺激する二つの感覚に一方通行の声が上擦る。生唾を飲む。彼は女の肉体に此処まで触れたことはない。
 打ち止めは幼すぎるし性欲の対象と見たこともない。初めて経験する異性の感触。
 骨と筋肉とで構成されるものではない。余分なはずの脂肪で出来ていながら其れはしっとりと柔らかく重く温かく包み込まれるように熟れていた。
 母性というものを知らない一方通行は、まるで母親の乳房に触れているような不謹慎な気持ちと、もっと触れていたいという背反する感慨に囚われる。
 罪人が罪人のまま受け入れられる女性に対して母性を感じたとしても何の不思議もない。不思議ではないからこその不道徳な心の動きを一方通行は初めて知った。
 股間の勃起が、初めて別の意味に書き換えられる。

「随分と初心な反応じゃん。此処はこんなに立派なのに」

 するり、と股間を撫でると一方通行の顔が歪む。喉の奥で悶える。屹立した其れの頂点に指を掛けて回せば一方通行は面白いほどに反応した。

 どきどき、と黄泉川の胸が高鳴る。
 一方通行を初心と称する彼女だが人並み以上の経験を持っているわけではない。
 付き合った男性は年上ばかりで、何時もリードされてきていた。
 このように未成熟な男を喜ばせた経験は唯の一度もない。

 苦悶と恍惚の狭間の様な色が一方通行の瞳に宿る。ねろり、とした情念のような其れは少しづつではあるがどろりとした闇の色を追い出しつつあった。

「まずい――だろォ――黄泉――かわ――」

 視線が揺れた一方通行が今更の様に異議を申し立てる。
 愚かな話だ。
 本当に嫌ならば左手を首筋に当ててチョーカーのスイッチを入れればいい。
 それなのに、しない。
 望んでいるからだ。

「嘘はいけないじゃん?」

 虹彩を観察するように覗き込む黄泉川の顔には笑みが浮かんでいる。母性と、それ以上の欲情と。愛欲と痴情とが蠱惑に一方通行を魅力する。

「一方通行? アンタが見た夢と今の私と、何方が興奮する?」

 甘さの漂う吐息と汗の香りに一方通行が酔う。酔っているのが分かっていて黄泉川は尋ねる。
 鼻腔と鼓膜に伝わる免罪符に一方通行は酔ったまま答える。

「黄泉川――だ――」

 呼吸をするのも切なそうに。一方通行が胡乱な視線で答える。
 彼の頭脳は最早働いていない。圧倒的な現実の前には悪夢などただの幻想に過ぎない。すぐさま殺される。
 柔らかく熱を帯びた唇が一方通行の其れに重ねられる。
 驚愕する彼を逃さないよう頭を抱えた黄泉川が暴虐無人に舌を突き入れる。
 どうしていいかわからないまま混乱する唇を犯すように女の舌が一方通行の口内を踊り狂う。

「――」

 生暖かく湿ったものが自分の舌に絡みつき、蕩けて溶けてしまいそうな感覚に一方通行の性感が高まる。
 ぞくぞくと背筋を何者かが駆け上がり心臓の鼓動は不自然なまでに耳音に響く。
 驚愕の前に細身の体が硬直して其れをあやすように黄泉川愛穂が優しく一方通行を抱きしめた。

「抱かれてるだけじゃだめじゃん? コッチも抱いて欲しいじゃん?」

 言って囁いて、一方通行にその腕を自分の背中の回すように指示すると、おずおずとしながらも意外と力強い腕に包まれて黄泉川が満面の笑みを浮かべる。
 淫らで慈愛に満ちて、共に罪を流すようで。
 そうしてもう一度唇を重ねる前に。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:58:07.97 ID:mVFFq77lo
「今のが初めてのキスだったら嬉しいじゃん?」

 そう淫蕩な顔をして。
 黄泉川は再度唇を重ねる。
 一方通行は反応できない。全神経を奪われたかのように息がかかる至近距離の黄泉川を見つめる。
 その眼に手を乗せて閉じさせてちゅるりちゅるりと口吻を続ける。二つの舌で唾液を混ぜ合い交換し唇の周りをぬらりと濃く混じった唾液で汚して。
 貪っていた唇が離れて互いに見つめ合うと、一方通行は苦しいかのように視線を逸らした。
 それなのに黄泉川がその豊満な肢体を遠ざけると捨てられた子犬のような眼で彼女の姿を追いかける。
 一歩も半歩も離れていないのに。
 押し付けられた砲弾のような乳房や甘い唇がもうこの瞬間にも恋しくてならない。
 張り艶を保ったままの若い肉体は健康的で色も良く、唇の交換で火照って肌下の血の色が浮かんで甘い香りを漂わせている。
 隠そうともしない大きな胸は重力を無視して高く突き上げられた紡錘で一方通行の目には驚くほど大きく映って見えた。

 ごくり、と一方通行が唾を飲む姿を見て黄泉川が満足そうに笑う。

「これでも体育教師として、警備員として身体は鍛えているじゃん。その分女として努力が形になっているんじゃん」

 常日頃色気のかけらもない緑色のジャージ姿だが、黄泉川は自分の肉体を高く評価している。
 足は細くはないが逆に余計なものも付いておらず、足首はほっそりとしていて其れでいながら十分な発条を備えている。
 引き締まった腹筋は腰の括れとなって胸や尻など女としての武器を強調している。
 長身で肉感的な外観は美しいというよりも凛々しく、凛々しいというよりはカッコ良いと表現するべきものであったが、大振りなのに垂れることもない臀部や
胸部を見れば如何に女として優れた肉体をしているのかが分かる。
 健康的なのに、卑猥。引き締められているのに弾けそうに女の色香で溢れている。
 教師であることを天職としながらも女であることを磨き続けた誇りのようなものを一方通行は初めて感じた。

「――アンタも前より少しは鍛えたと思うじゃん」

 照れたように、恥ずかしそうに。自分の裸を晒すよりも何倍も精神力を使ったかのように黄泉川が一方通行に告げると言葉を失っていた一方通行は
ますます何も言えなくなってしまった。
 其のような一方通行の姿を、愛おしい、と感じた黄泉川がそっと身体を近づける。膝立ちで上体を起こして、大きく張ったペニスに手を伸ばした。
 恍惚の顔でそっと触れる。
 固く勃起した其れはつい先程触れていた時よりも熱い。火照っている。
 凶悪な凶器で或はずなのに、可愛い、と心の底から思った黄泉川が行動を加速させる。

 魘されるような熱い溜息を重ねながら――かわいいじゃん――などと言葉を漏らし黄泉川が一方通行の股間に被さるように顔を近づけていく。
 男の香り、雄の性臭を感じながら火照った脳を持って黄泉川が口に含む。

 ――ちゅ、ちゅる、ちゅる、ん――

「よ、黄泉川!」

 知識だけはあってもはじめての経験が一方通行を襲う。
 自分のペニスに食いついている黄泉川。甘く噛んで舐めて啜って熱い体温で温めて。
 ぎゅ、と締めるように動いたかと思えば舌が茎に絡みつきうねうねと戦慄く。両手が優しく陰嚢を包んで内包する睾丸を刺激して一方通行の性器其のものが
黄泉川愛穂の玩具となって快楽を与えられる。

「あァ! ああァァ!!!」

 びくり、と腰を動かしながら一方通行が悲鳴を上げる。痙攣のような動きに黄泉川が面白そうに唇を離す。

「まだまだじゃん。こんなんでイってたら全然楽しめないじゃん?」

 昂った波が遠ざかる。学園都市第一位の頭脳が一女教師に翻弄される。
 射精欲求を押さえつけるように命じられ従うことしかできない。暴虐で最強で化け物の一方通行など何処にもいない。
 熱いシャワーのカーテンの中で一方通行の熱は高められていく。もはや絶望などない。
 腹に衝くかのごとく反り返っているペニスは殺戮の衝動ではなくなっていた。

 床に身体を投げ出すように横たわる黄泉川がその格好のまま再び一方通行のペニスに指を掛ける。
 元気、という単語が一番相応しい白い其れは波が引いたとはいえ高いところで留まっていた。
 優しく微笑みながら黄泉川が髪を掻き上げる。

「今度は我慢しなくていいじゃんよ――」

 一方通行から見えない黒いカーテンの中で、彼のペニスは再び黄泉川の口内に収められた。
 ペニスが温もりに包まれる快感に一方通行の四肢が強ばる。
 脳を傷つけて補助演算がなければ思考すらもできない一方通行が、其の思考を大きく乱した。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 17:59:23.53 ID:mVFFq77lo
「んむっ、ん――」

 首を捻るような形で頬張ると亀頭が頬の内側の柔らかい部分に包まれる。
 その格好のまま隅々まで舌を這わせていくと自分で溺れそうなほどに唾液が溢れてきた。
 久方に愛し合う相手がまさか一方通行とは。つい先程まで考えもしなかった。
 黄泉川は一方通行の闇を見ようとはせず彼が其処から出てきた時の居場所を作ろうと考えていた。
 然し、一方通行の闇は心の奥深くまで染み込んでいた。
 其れを知った自分と、その解決手段として身体を与えた自分。
 愛情や同情が愛欲に切り替わったのかもしれない。
 信じることと疑うことのジレンマはきりがない。さまよい続ける以外に生きる方法などない。
 そうだとしても、休む枝ぐらいにはなってやりたいと思う。

 様々な思いが交錯するも、黄泉川愛穂の中に芽生えた背徳と高揚は確かに存在している。
 其れは発情と形を変えて久しく男を迎えていない膣肉を熱く蕩けさせ甘い蜜を吐き出させる。

 口の中でペニスを泳がすように悪戯しながらもその下にぶら下がった玉を優しく揉み解す。
 一撃で失神させられる急所を弄ばれながら一方通行は黄泉川を完全に信頼しきっていて溶けそうな思いの中、身を任せている。
 舌触りも滑らかなのは一方通行の薄い組織のせいだろうか。
 そんなことを感じながら興奮を舌の動きに変えて黄泉川は愛撫を続ける。そうしながら自身の股間にも手を伸ばす。
 しっかりとした陰毛の中に存在する女性器は滔々と蜜を流して新しい男の肉体を待ち焦がれている。
 汁が溢れて太腿と臀部を濡らした其処は二本の指を容易く飲み込み、くちゅくちゅと湿った音を立てる。

 華奢な身体に電流を流されたように反応する一方通行。
 その顔は上気して真っ赤に染まっている。
 溜息が歓喜の色に書き換えられて声にならず、熱い舌先に蕩けそうなペニスの感覚に身も心も震わせる。
 ぬるぬると動く舌の味蕾、其の僅かながらの凹凸が亀頭に絡んで快楽という快楽に溺れる。

「あァ! よ、黄泉川!」

 本当に、今度こそ、圧倒的な電流が一方通行の身体を駆け巡る。これまで体験したことのない快楽が大津波となって押し寄せる。
 背を大きく仰け反られ高く天を仰ぐ。
 ビリビリと痺れるような感覚がペニスから全身に広がり、其れが瞬く間に収束してペニスに戻って、一気に爆発する。
 脳みそが一気に放出されたかのような快楽に一方通行は意識を白黒させた。

 ――ドクン

 黄泉川は顔色一つ変えることなく其れを受け止める。

 ――ドクン、ドクン、びゅる、る――

 鈴口から吐き出される精液を全て舌で受け止める。
 圧倒的に濃い雄のスープを唾液と絡めて臭いを引き出し、鼻腔いっぱいに膨らませて味も香りも喉への絡みすらも楽しみながら嚥下していく。
 しゃくりあげるたびに矯正を上げる一方通行を愛おしいと思いつつ熱い体液とその濃厚な青臭さとを身体に染み込ませていく。
 単純な味としてはけして美味とは言えない。然し何故か甘露とも言える甘さを胸の内に感じる。
 其れが何故かを知っていながらも知らないふりをしつつ、黄泉川愛穂は満足そうにペニスから口を離した。
 ちろり、と上唇を舐める。赤い舌が赤い唇をなぞる。

「す、すまねェ黄泉川。急に出しちまって」

 最早唯の一人の気弱な少年となった一方通行が自分でもコントロール出来なかった射精を詫びる。

 其れに返事もせず尿道に残った僅かな精液も全て啜って舌でクリーニングしてから黄泉川が漸く顔を上げて一方通行を見る。

「正直に答えるじゃん、一方通行。アンタの夢と今のと、どっちが気持ちよかった?」

 聞くまでもないことを敢えて聞く。
 一方通行の震える視線を見れば其れだけで十分すぎるほどの証拠だ。
 だが言葉で聞きたい。
 黄泉川はだから尋ねる。

「今のに、決まってるだろ」

 視線を合わせることもできない。一方通行は虚脱したまま小さく答えた。
 其処に嘘は存在していない。

「わかったじゃん? アンタの夢なんか唯の欲求不満だったんじゃん。自分のことを責める必要なんて何処にもなかったんだよ」

 淫蕩なまま、優しい慈母の如き笑みを浮かべて黄泉川が言う。
 その言葉は今までのどんな言葉よりも一方通行の中に染みていく。
 精神異常と自分を責めていた衝動は遥かに小さくなった。
 完全に無くなったわけではないが――大きすぎる過去を考えればまた囚われるかもしれないが――少なくとも今現在、一方通行は自分の中に殺戮による
性的な快楽を得る資質というものが存在していないと認識していた。
 憑き物が、落ちた。
 自分以外の誰かによって射精させられたという快楽に虚脱して、心の中にしがみついている何かがするりと落ちた。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 18:00:44.09 ID:mVFFq77lo
 そんな一方通行を黄泉川が優しく抱きしめる。大きな乳房に頭をうずめさせて白く美しい髪を手で梳いてやった。
 反発も何もせず一方通行は為されるままに身を任せている。
 何も出来ないまま、視線だけが黄泉川の大きな胸に向けられていた。

「――気になるじゃん?」

 束縛されていないのに溢れ出しそうなボリュームが目の前に突き出されていて気にならない男などいない。
 一方通行の虚脱した男の欲望が形を変えて帰ってくる。

「触ってもいいんじゃん?」

 自らの手で一方通行の手を導くと、彼はおどおどしながらも手を離さずにゆっくりと弾力を味わい始めた。
 ずんぐりとしたロケットの様な巨乳は形を保つために硬いのかと思えばそんなことはなく、手に吸い付くように張りと弾力がありきめ細やかな肌に青く静脈が浮かんでいる。
 やがて自動人形のように己の医師に関係なく指を動かし始めた一方通行は手のひらに余るその重さに心地よい痺れを感じてくる。
 其れでも飽きることなく揉み、撫でて、指を食い込ませている。
 沈んだ指を跳ね返す弾力と、其のたびに乳房の先端で揺れる桃色の乳首が目に入って一方通行を混乱させる。

「しゃぶってもいいじゃん」

 慈母の笑みで黄泉川が言う。
 尖ったニップルを突きつければ一方通行は言われるがまま其れを口に含む。含んで強い力で吸う。
 ぷくりと膨れ上がっていた乳首は真空状態の口内で全方位に広げられて甘い感覚を黄泉川に伝えた。

 柔らかな乳肉にしゃぶりついていると鼻が肉に埋まって上手く呼吸ができない。
 赤ん坊のように低い鼻ではないのだ。
 息苦しいままで一方通行は必死にむしゃぶりつく。

 学園都市の子供は皆母性に飢えている。
 本来両親と過ごすべき時間を離れて生活しているのだから当然だ。
 其の起来は一方通行には特に感じられた。

 だから、其れを取り戻すように黄泉川の乳首にむしゃぶりつく。
 甘い匂いと体温を感じるほどの距離に安心感を覚え、母性を感じているのに肉欲に混ぜ込んでしまうという背徳感がスパイスとなって彼の性欲を擽る。
 空腹ではなく性欲を満たすための行為なのだから当然だ。

「ん。ふふっ」

 勃起した乳首からの甘い刺激に黄泉川が笑う。
 常日頃は邪魔なだけだと思うこの胸も、男を夢中にさせるとなれば自慢の一品に早変わりする。
 疼く乳首を銜えている一方通行がもう片方の乳房を遠慮なく玩具にして甘える姿は誇らしくすらある。
 疼く身体を鎮めてくれるはずの刺激は余計に身体を疼かせただけで黄泉川の性器からはただ蜜が流れているのだが、黄泉川は焦ることなく飽きるまで一方通行に胸を自由にさせた。

 その代わり。

「んっ!?」

 手を伸ばして再び勃起したペニスを両手に収める。
 隆々としたそれに白く長い指を絡めて根元から先端までを優しく扱く。
 両手を性器に見立ててゆっくりと前後させ、熱い肉がより熱く赤くなるのを楽しむ。

 ――ちゅば、ちゅばちゅば――

 ――する、ぎゅ、ぎゅう、す――

 二つの音がシャワーの音に紛れながらも浴室の中に静かに満ちていく。
 湿気と熱気に満ちた空間の中で皮膚が全て粘膜になったような錯覚を覚えながら二人は互いの肉を弄ぶ。
 眉尻は下がり唇に笑みは浮かび、淫蕩な世界で淫靡に時間を重ねる。姦淫の時を刻みながら二人の興奮は高まっていった。

「――そろそろ私も限界じゃん」

 淫らに笑った黄泉川愛穂が一方通行から離れる。
 未練を持った視線で胸を追いかける一方通行を軽く小突いて、黄泉川は床に腰を付いた状態で大きく足を広げた。
 淫蕩な雌の性器を拡げる。
 ねたり、と蜜を湛えた其処を恥ずかしそうに自慢気に一方通行に見せつける。
 シャワーの雨から少しだけ離れた。

「其れの使い方は知ってるよな」

 其れとは一方通行の股間の肉塊。
 黄泉川の手の刺激で再び鈴口から涙を流している。
 学校での性教育をきちんと受けているかどうか妖しい一方通行ではあったが、本能に刻まれた行為についてはそれなりの検討が付いた。

「勃起したち○ぽをま○この中に入れてセックスをするんじゃん」

 卑猥に率直に出された単語に一方通行が過剰なまでに赤面する。最早赤面するような間柄でなくなっているのに。
 学園都市の狂気を体現していると彼を評した輩は大馬鹿者ばかりだ。
 これほど純真な少年にその表現はそぐわない。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 18:01:44.83 ID:mVFFq77lo
 口篭って視線を彷徨させる一方通行。
 期待はしているが其れを自分から口に出せないらしい。
 だから黄泉川は態とらしく言葉を重ねる。

「童貞は大切な相手にとっておきたいって気持ちはわかるじゃん? でももしよかったら童貞くれないか? 
 私だって結構興奮していてこのままじゃ寝れそうにないんじゃん」

 一方通行が今考えていることと今目の前の光景とが重なる。
 乱れて開かれた肉体を前にして衝動を抑えられるほど彼は紳士ではない。
 紳士ではないが、誰かを裏切っているのではないかという恐怖にも怯えている。
 だからこそ共犯者は嗤う。
 天秤の針は揺らいでいる。傾きかけている。水が下に落ちるように蜜に虫が群がるように当たり前の欲求が一方通行を支配する。

「こんなオバサンじゃ嫌か?」

 容易く釣れた。
 少しばかり悲しそうな申し訳ないような視線で一方通行を見て言っただけで、彼は不自由な肢体を動かして黄泉川に近づく。

「――俺じゃ黄泉川をイかせられねェと思うが、構わねェのかよ」

 消極的な肯定。懸想を纏わせながら自信なさげに一方通行が言う。
 黄泉川は笑って答えない。
 唯、その華奢な身体を引き寄せて、M字に開いた足の間に彼の身体を調えた。

「此処が入れる穴――そう、そうじゃん」

 コンクリートよりも鉄骨よりも硬い逸物を黄泉川は自分の膣口に導く。
 ヨダレを垂らした其処には最早過剰な愛撫など不要で男の肉を一刻も早く頬張りたいと口を開けている。
 自らの穴に位置調整をして、少しだけ腰を浮かしてやると黄泉川の秘肉はあっさりと一方通行の亀頭部分を飲み込んだ。

「いいじゃん、そう、そのまま押し込むじゃん。いっぱい入れちゃうじゃん」

 掠れたような高ぶった声で黄泉川が唆す。灼熱のような熱さに包まれた一方通行は甘美なその感覚に顔を歪める。
 大振りなペニスの肉塊はするりするりと飲み込まれていってその瞬間瞬間に童貞を失う。
 きつくも滑らかに抜けた奥は多少の空間を持っていて、其処の粘膜から無数の触手が伸びているかのようにやわやわと一方通行を包んでいた。
 奥にまで届けば何かしらこりっとした硬さを持つものがあった。軽く其処を突くと、

「其処が子宮じゃん。子供を育てる部屋じゃん――」

 黄泉川が甘えた声で己の肉体を教えた。

 一方通行は声を噛み殺している。
 余りの甘美さに全身が震えている。
 女の肉にくるまれる心地よさは之までの何物にも勝った。
 劣情混じりの愛情が心の中で渦巻く。

 一方の黄泉川も胸の中の充足に心ときめいていた。頭皮を掻きむしって脳の中に手を入れてしまいたくなりそうなほどに愛おしい。
 華奢で偽悪者で純情な少年を夢中にさせている事実が誇らしい。
 強烈な女の肉で一方通行を舐りながら黄泉川が心の底から笑う。

 一方通行は笑えなかった。
 心地よすぎて、少しでも動くだけで射精しそうなのだ。
 仕方がない。経験など欠片もない童貞なのだ。つい、今の今まで。
 鋭敏な感覚と初体験の緊張とでもうどうしていいのかすら判らない。

 すると、今更の様に気づいた黄泉川が一方通行に優しく口を開いた。

「別に何回出したっていいじゃん。好きなときに好きなように出していいんじゃん。初めてなんだから、不格好でも構わないじゃん」

「あ、あァ――」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 18:02:57.19 ID:mVFFq77lo
 ――びゅ、びゅびゅっ

 言って、意識的に膣肉を締めると、其れだけで一方通行は射精した。
 少年の身体がガクガクに震え、腰に痙攣が走り、情けない顔をした一方通行が快楽の悲鳴を上げる。
 ほんの僅かの刺激だけで吐精した其れを、黄泉川は熱い膣肉で受け止める。
 肉体的な快楽は薄いが、自分の中に一方通行が広がる快感はそれ以上に精神的な高揚感を与えてくれる。
 自分が優れたメスであるという証左に心が震える。

「熱いのが、出てるじゃん?」

 幸せそうな顔で語りかける黄泉川に、一方通行はまるで泣きそうな顔をしながら詫びごとを繰り返す。

「スマねェ。気持ちよすぎて出ちまった」

「謝る必要はないんじゃん。気持ちよければ出るのは生理現象なんだから。其れにまだまだ硬いままじゃん。抜かないでこのまま出来るじゃん」

 細い少年のきめ細やかな頬を優しく撫で、温めるようにその唇を奪う。黄泉川の中でもふつふつと沸き立つ劣情があった。
 大振りな胸の肉の下の心臓が、狭苦しいと肋骨の中を叩いている。
 膣内に感じるペニスの硬さを楽しみながら、下から受け入れるように腰を動かして昂る情熱を楽しんだ。

 一方通行の外観は美少年という以外にない。
 色素を失った髪と肌と眼。正確には色素を失えば赤目にはならないのだが、後天的な過剰薬物投与は自然の原理をも破壊している。
 華奢で細い身体にコンプレックスを感じているらしいが、傍で見ればうっすらと筋肉のラインが浮かんできていて成長途中だということが分かる。
 そしてきめ細やかな肌はどんな女にも妬ましく感じるほどで不条理なまでに透き通っている。
 凶悪で、全てを噛み砕きそうな視線こそあれ、彼は十分に美少年と言うに相応しかった。

 その美少年を、虜にしている。
 愛おしく思える美しい少年と情愛を交わしていることに加速度的な劣情を醸した黄泉川は、二度も、いや三度も射精して余裕を取り戻した一方通行に
腰を使わせる方法を教えこんでいた。

「そう、そうじゃん。緩急リズムつけて、深くつくばっかりじゃダメじゃん――そう、時計回りに入れる方向を少しだけずらして――」

 ――にゅる、にちゃ、にちゃ、にちゃ――

 淫猥な授業は黄泉川の膣内で行われている。絞り立ての精液と奥からこんこんと湧き出る女の蜜とを潤滑剤にして未熟な一方通行の腰振りを助ける。
 情熱的に撹拌された二つの液体は交わりの隙間から溢れて白く泡立っている。
 少年にとって最初の女になったという証。その生臭い体液を指で掬いとって、黄泉川は一方通行に見せつけるように淫らに指を舐めとった。

「ふふっ、二人の味じゃん――」

 少年の歴史に名を刻んだという達成感に黄泉川は胸を熱くする。
 男は最初の女を、女は最初に達せさせてくれた男を忘れないと言う。
 例えこれが唯の同情から始まった話だとしても、一方通行は黄泉川愛穂という女を絶対に忘れない。
 無上の喜びを持って、自分の指をしゃぶり尽くした黄泉川はそのまま一方通行の唇にむしゃぶりついた。

 舌を重ねて吐息を重ねて体温を重ねて、その距離で黄泉川が真っ赤に染まった顔で言う。

「アンタの筆下ろしの相手は私じゃん。ずっと忘れないでいて欲しいな」

 心理的にも表情的にも薔薇色の顔で囁く黄泉川に一方通行は言葉も無く頷く。
 天地の有り凡ゆる幸福を纏めた顔をしながら一方通行の首筋と腰に手を回し、彼の身体にぶら下がるような形のまま下から腰を突き上げる。
 然して一方通行の腰の動きも加速する。進化する。
 自分の内側と、外側と。両方に一方通行を感じる。密着した太腿や腰周りの熱が全身を麻痺させる。
 一方通行が必死に腰を振るうたびにその爆乳が波を立てて前後に揺れる。胸の谷間の汗がフェロモンのように薫って、一方通行を惑わせる。

「あ、ああん、はぁん、いいじゃん、すごく気持ちいいじゃん、素敵じゃん、一方通行――」

 飄々と過ごす日常からは想像もつかないような淫らな声で黄泉川が快楽の詩を謳う。
 喘ぐ甲高い嬌声はそれでも抑えられていて浴室から外には漏れない程の大きさになっている。
 だとしても、この淫靡な空気は外に漏れていてもおかしくはない。
 もし、打ち止めが、番外個体が目を覚ましてこの光景を見たら。
 そう脳裏に浮かぶ度、黄泉川の全身を甘い電流が襲う。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 18:04:43.21 ID:mVFFq77lo
 ――見られていたら

 汗ばむ程に強くなる女の香り。粘膜と粘膜が触れ合い壁が戦慄き成熟した膣肉が一方通行を締め付ける。
 口淫とは違う強く重ねられる肉の密着感はスキンシップという言葉を辞書でしか知らなかった一方通行に肌の重ねる心地よさを深く刻み込む。
 脳内の快楽中枢を書き換えて女という存在を知り、自分が男であると知った一方通行が縦横無尽に膣内を蹂躙する。

「ああ、いいところに擦れるじゃん。其処、そこが気持ちいい! そこもっとしてぇ!」

 視覚味覚聴覚触覚嗅覚、第六感。末那識・阿頼耶識などという仏教用語を持ち出すまでもなく一方通行を構成する全てが快楽の色に染まっていた。
 上下、左右、円を描いて。そうしながら優しく深く突く。
 脳細胞の全てが焼ききれんばかりの快楽の電流が一方通行を一匹の雄に塗り替えていく。

「ああ! 一方通行のお○んぽいいじゃん! すごくいい! 気持ちいい!」

 悦にいった顔で下品に黄泉川が顔を振る。熱いシャワーの雫か、涙か、涎か、熱を持った透明な液体が黄泉川の顔から跳んだ。
 二人の繋がった部分の泡はホイップクリームのように白く膨らんで、淫らな臭いを発している。淫臭の中の愛の営みはもはやシャワーの音だけでは隠せない。

「よみ、か、わ、俺、またイっちまいそうなンだ――」

「いいじゃん。好きなだけ出すじゃん。今の私はアンタの好きにしていい女なんじゃん――」

 切羽詰った一方通行の声に、此方も頂点の色を見せて黄泉川が答える。
 ペニスの付け根に高まる射精欲。無数の壁が纏わりつきながらも包み込んで握りしめるように締め付ける。
 差程の時間も重ねずペニスに限界が近づいている。
 何時出してもいい。そう言った黄泉川だったが、出来るのならばその時も重ねたい。
 砲弾の爆乳を震わせながら受け入れる腰の形を変えて少しでも自分も高まろうとする。大振りの乳房を自分で掴んで先端の乳首を自分で舐める。
 我侭な肉体だけに許された特権を使って、黄泉川は性感を高めていく。

(スゲェ――黄泉川の乳だとこンなことまで出来るのかよ――)

 淫らな貌に見惚れながら驚愕する一方通行。不慣れな腰の動きもなんとか様になってきている。
 自らの乳首を責めながらも甘い息で一方通行と自分の感情を溢れ出させる黄泉川。其の卑猥な眼に、早く絶頂に達しようという意思が溶けている。
 眉間に皺を寄せ、眦が落ちて、瞼が半分ほど垂れ下がって、意識が朦朧としているようなのに、明確に快楽を求めている。
 恍惚に潤んだ視線が一方通行と絡まって、少年の喉に乾きを覚えさせる。
 締まりなく開いた口元から吐き出される息が過剰なほど湿気を含んでいて、唇の端が少し痛んだ。

 黄泉川自身による黄泉川への愛撫は黄泉川だけではなく一方通行をも興奮させる。
 乳首から子宮まで甘く流れた電流はそのまま膣を経由し一方通行のペニスへと伝わって彼の脳にまで届いてしまう。
 こんこんと湧き出る愛液を潤滑油にして動く肉塊は膣内の細やかな襞に苛まれて敏感な亀頭が熱い肉の熱で溶ける。

 貪欲にアクメを求める女教師。自らの大振りな乳房を見せびらかしこれでもかと言わんばかりの浅ましい姿。邪な笑顔。目に飛び込む其れらと。
 雌の性臭と。肉の感覚と。甘く切ない声と。全てが蠢いていて一つとなって一方通行を更なる射精へと導く――

「あァ! もうダメだァ――」

 仰け反って、四肢を硬直させて、赤い瞳を更に血走らせて。
 一方通行が最後の悲鳴を上げる。

 ――ドクン、ドクン、ドクン

 膣内に満ちていくその日四度目の射精。ペニスがしゃくり上げて精液を吐き出し、黄泉川の子宮までも汚そうと精一杯に熱く粘膜に染みていく。
 一番深い場所で腰を埋めたままの一方通行の肉体が細かく震え、その彼の肉を銜え込んだ黄泉川の膣がきゅう、と絞まる。

(キタ、じゃん――)

 悲鳴も挙げず声にもならず。
 眼を瞑って小さく震えて。
 黄泉川は全身に満ちていく絶頂を楽しむ。
 一方通行の動きだけではダメだった。乳首を舐めたことだけでも足りなかった。
 最後の最後。熱い精液が自分の中に満ちていく感覚。
 其れに精神的な最後の扉を開かれて、鍛えられた身体の女教師は小さく体を震わせてアクメを楽しむ。
 射精に呼応する蠢動は既に黄泉川の意思ではなく、ぎゅう、と勝手に身体が絞り立てている様を第三者のような視線で見ながら、身体が悦んでいることを心の底から楽しむ。
 最後の一滴まで流し込まされて。
 一方通行が熱い息のまま顔を上げて黄泉川を見る。そんな少年を満足の笑みで迎えた黄泉川愛穂は――

「まだ出来るじゃん?」

 少しだけ下から見上げるような、甘えた視線と唇で。
 熱く火照った肉体を何一つ隠さずに。 膣内に男を迎え入れたまま。

「アンタは早漏すぎるからもう少し授業を続けたほうがよさそうじゃん☆」

 若さを象徴するように二度も膣内で射精しながら芯の残った肉塊を柔らかく膣肉が吸い込む。
 逃がさないと言わんばかりに。

「黄泉川先生の補習は厳しいじゃん。ちゃんとついてくるじゃんよ」

 上体を起こして、今度は一方通行を下にして。
 ペニスを銜え込んだまま彼の上に跨って。

 一度も抜かれないままのペニスを再度射精へと導くべく、大きく肉の張ったヒップが熱いシャワーの中動き始めた。 
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/15(日) 18:08:53.73 ID:mVFFq77lo
あふん、saga忘れたところが赤くなっているよー

いやね、色々と書いてみたんだけどどうにも上手くいかなくてですね。
絹旗と浜面のデートとか、浜面とのデートの為にるんるん気分で服を選ぶ麦野とか、ボロボロにKOされる上条さんとか
途中で投げ出してばっかりでかなりきつかった今回は

ちょっと熟女系っぽい書き方になったけれども黄泉川さん熟女じゃないです小萌せんせいが熟女です
キスがヤニくさいとか書いときゃよかったかなー 
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/18(水) 03:12:01.81 ID:6xGy0nN/o
眠れないので一気に書き上げたです
エロじゃないです
まぁ、推敲もしてないので文章が変かもしれないけど其処はスルーして 
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:13:08.72 ID:6xGy0nN/o
 東京西部にある科学の都、学園都市。その面積は小さいが突出した科学技術において世界をリードする事実上の独立国である。
 その学園都市において第十五学区は最大の繁華街であり、週末の今日は多くの学生たちで賑わっていた。
 立ち並ぶ百貨店群はそれぞれ巨艦化を進めており、一つの建物の中で大抵の用事は事足りるようになっているため、入口に客を誘導することに必死だ。
 呼び込みのパフォーマンスがあちらこちらで行われており、超能力の街として様々な能力者が煌びやかな技を披露している。

 空を飛ぶ女子学生に数え切れない程の光の輪が舞い、暖かな氷で作られた塔が七食に輝いて、カラフルなチョコレートでデコレートされたドーナツが手を挙げる人たちにテレポートされていく。

 しかしながらそのような能力が目覚める気配もない我らのヒーロー浜面仕上はボサボサの茶髪にジャージとジーパンといういつもの姿で背を丸めて一人街を闊歩していた。

 因みに脱力系ヒロイン滝壺理后女史と綺麗なお姉さん、口は悪いが結構純情だぞ麦野沈利女史に言わせると
「少なくとも体力増強系で異能力者程度はあるはず。二人がクタクタになっても元気いっぱいなのはどう考えてもおかしい」
 とのことだがあまり深くは触れないでおこう。

 時刻はもうすぐ昼時であり天宙高く存在する太陽もちょうど真上だ。
 舌の怪我が口内炎に転じたこともあって朝食を抜いていた浜面はぐぅという腹の音を感じながら合流前に何か食べるかと当たりの店を見回した。

 ちょうど良い感じのオープンテラスのカフェが目に付く。
 パスタでいいか、と財布の中身がそれなりにあることを思い出しながらつかつかと店に近づく。

 すると、真っ白な頭の何処かで見かけたような凶悪な面構えが凶悪な面構えのままサンドイッチに噛み付いていた。

 少し訂正する。
 色が全て抜けたような真っ白な髪と染み一つない肌。
 紅玉のような深みある瞳。女性のような華奢な体つきの”最悪”が新窓の令嬢が道端で佇んでいるような空気を醸し出しながらまるでハムスターのように
両手でサンドイッチをつかみ端をはむはむと齧っていた。
 シルエットだけでみれば愛らしい少女の仕草にしか見えない。

 カワイイは正義? 違うか。

 中身を知っているだけあって見た光景と自分の心象にうんざりした浜面だが、あったら言わなきゃならないことがあったな、と思い直す。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:14:10.03 ID:6xGy0nN/o

「よう、大将」

 右手を上げながら声を上げ、相手が何かを言う前にその隣に座る。
 ギロ、と視線だけで人を殺せそうな目付で浜面を睨みつけた学園都市最強、超能力者第一位、一方通行。
 口は開かなくても「食事の邪魔をするな」と言っていることがよくわかる。
 しかし世紀末帝王はそんな圧力には屈しはしないのだ。

「この間はキングサーモン送ってくれてありがとうな」

 言って、浜面は深々と頭を下げた。
 途端、一方通行の顔が苦虫を噛み潰したかのように渋くなる。例を言われるという行為に彼は慣れていない。

「――あれは黄泉川が勝手にやったことでなァ」

 嘘である。新しい靴を探そうと端末で検索していたところ鮭皮という珍しい靴を見つけ、そこから麦野沈利という鮭好きを連想して送り付けたのだ。
 何かしらの意味があったわけではない。ただ何となく「そういや浜面が言ってたな」と麦野の嗜好を思い出していい機会だからと注文をしただけだ。

「そう言うなよ。麦野も一日中機嫌が良かったし」

 まァなァ、と半分残ったクラブハウスサンドを皿に戻して一方通行はコーヒーを啜る。
 結末は見えていた。浜面が「麦野に任せると三食鮭になるから困る」と散々惚気けたのでぶち殺しの三ミリ手前まで追い込んだのは一度や二度ではない。
 それだけやってもまだ惚気けるのだからそれだけ心をもって行かれているのだろう。

「ああ、お礼というわけじゃないが繚乱の特製ザッハトルテ送っといたから。土御門経由だから多分二三日中には着くと思うけど」

「甘いもンかよ。俺が食えねェだろォが」

「打ち止めちゃんが喜ぶだろ。アンタにゃそれが一番の贈り物だろうさ」

 店員を呼び止め、ボンゴレ――あさりとにんにくのパスタ。
 あさりは亜鉛を多く含むんですぜ?――とトマトジュース――ビタミンやアミノ酸を効率良く摂取できるんですぜ?――を注文する浜面仕上。
 食事から体力づくりを欠かさない男である。

「どいつもこいつも俺をなンだと思ってやがるンだ」

「筋金入りのロリ……OK、ボーイ。まずはチョーカーから手を離そうか」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:15:13.53 ID:6xGy0nN/o
 何時でも何処でも行われる漫才をやり取りする二人。一方通行の表情は変わらない。
 生粋のコーヒー好きでありながらさも不味そうに黒色の液体を啜る。
 一人の時間を邪魔されたことが相当に腹ただしいのだ。

 君子危うきに近寄らず、を地で行っている浜面だが一方通行に関しては「アイツの相手になってやって欲しいじゃん」と爆乳ジャージ教師に頼まれているので話は別だ。
 学校を退学させられるところを庇ってもらった恩もあるので彼女の言うことに浜面は従うことにしている。
 もっとも、そんなことがなかろうとも一方通行の友人でいようとは思っているのだが。

「しかしアンタが一人で飯食ってるとはなぁ。しかもこんな所で」

「飯も食えば糞もするわ。コーヒーだけで生きてるわけじゃねェ」

「いやいや、そうでなくてな。あのおチビちゃんか目付きワル子ちゃんが一緒じゃないか」
 
「二人とも今日は調整だァ。そのあとオリジナルとショッピングだとよ。ったく、久々にのンびりできてたのによォ。どこぞの猿面のおかげで台無しじゃねェか」

「誰が猿面だ……人を指さすな!」

 どうやら見事に食欲をなくしたらしい。半分残ったクラブハウスサンドに手をつけようともせず一方通行はコーヒーばかり口にしている。
 まぁ、ひと切れしかないサンドイッチというのもまずないのでひと切れ以上は胃袋に収めたのだろうが浜面には想像できないほど小食であることに間違いはない。
 麦野はもとより滝壺よりも小食ではないだろうか。よく体を壊さないものだと浜面は思う。

「ま、言わんとすることはわかる。俺もタマには一人になりたいからな」

「わかってるンだったら腰落ち着けるンじゃねェよ。さっさと失せろ」

「いや、もう注文しちゃったし」

 ふぅ、と呆れたような息を吐いて一方通行が椅子の背もたれに沿って背を伸ばし、首を周囲に向ける。
 当たりの人ごみが所々で流れが止まっているのは能力者のデモンストレーションをやっているからだろう。
 腹ごなしにああいうのでも見て回るか、こいつと喋ってるぐらいなら、などと一方通行は失礼なことを考えている。
 もっとも、第一位の超能力者がみて驚くような能力が存在するかというと甚だ疑問だが。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:16:18.25 ID:6xGy0nN/o
「ああ、そういや気になってたンだがよォ」

 ゆらりと頭の位置を戻した一方通行が浜面に問いかける。

「なんだよ」

「滝壺だったか。味覚は治ったのか?」

 今度苦虫を噛み潰したのは浜面の方だった。
 感情を否定するような機械的な口調で言葉を吐き出す。

「まだ完全じゃないんだ。甘味とか塩分に関しては分かってきてるみたいなんだが苦味や酸味についてはあんまり感じてないみたいだ」

 劇薬である体晶を使い続けた副作用は未だに滝壺の肉体を蝕んでいる。
 内蔵器の潰瘍や神経異常はずいぶんと改善されたが、脳の中の異常は完全には取り除かれていない。
 幸い、日常生活を送ることに対して不自由を感じるほどではないが、浜面仕上としては愛しい少女が食事が無味乾燥なものでしかなく美味しいと感じられない
現状に大きく心を痛めていた。
 何を食べても「美味しい美味しい」と目の前で言うのだ。それが形だけと分かっているからこそ辛い。

 麦野が料理をしても滝壺が料理をしないことの原因でもある。
 状況の改善はされているが、完璧には程遠い。

 一方通行はそんな浜面を見て眉をひそめる。
 自分で振っておいてなんだが、お気楽な馬鹿が真剣に苦しんでいる姿を見るのは心地よいものではない。

「まぁ、あの冥土返しのことだ。時間はかかるかもしれんが絶対に治すだろうさ」

「そこは信じてるんだけどな。麦野も綺麗にしてくれたし」

 ここまで話して、浜面の注文したパスタとトマトジュースが運ばれてきた。浜面の表情が一変して喜色満面になる。
 そして店員に一方通行はコーヒーのお代わりを注文した。
 どうやら浜面が食い終わるまでは付き合ってくれるらしい。

「さぁて、いただきますかぁ。朝飯抜いてたから腹ぁ減っててよぉ」

 嬉々としながらフォークと左手とでアサリの殻を取り外す浜面。
 ニンニクのいい香りが周囲に舞う。殻をむき終えたあとソースの付いた左手を品なく舐めとって「いい味してるじゃん」というその姿を一方通行はその姿をつまらなそうに眺める。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:17:05.27 ID:6xGy0nN/o
「三下にパスタたァ似合わねェなァ。お前は素直に牛丼でも食っとけ」

「牛丼を馬鹿にするなや。朝食抜いてたからいきなり重いのは入んねぇよ。軽目ですぐエネルギーに変わるパスタが丁度いいんだよ」

「ふぅん、ンなこと考えたこともねェからわかンねェなァ」

「学園都市一の天才様は栄養学が苦手と見える」

「栄養学というレベルじゃねェだろ。それでいいんなら常日頃からタンパク質摂取を心がけてるのになんでオレには肉がつかねェンだ」

 言って、自身の細い腕を見つめる一方通行。モヤシだのセロリだの言われ慣れてはいても気にしていないわけではない。
 多少は食わなきゃダメだよな、と丸いとため息をついたあとサンドイッチに手を伸ばした。
 伸ばしたその手にはうっすらと筋肉のラインが見えてきているのだが一方通行はまだそれに気づいていないようだ。
 浜面とは比べ物にならない細い筋肉ではあるけれども。

「それにしても浜面は三食がっしり食うタイプじゃなかったのかよ。寝坊でもしたのか」

 はむはむと再び子栗鼠のようにサンドイッチと格闘し始める一方通行にいい塩加減のパスタを胃の中に収めた浜面が舌を出して指さす。

「ちと舌に口内炎が出来ちまってな」

 舌を出しながら喋るなんて器用な真似は当然出来ないから見せたのは一瞬だが、そこに白い口内炎が大きく出来ていたのは確かだった。

 あァ、と一方通行は嘆息して、

「口内炎は痛ェはなァ」

 とさも気の毒そうに感想を述べる。

 ホルモンバランスが崩れているせいか、一方通行は比較的口内炎が出来やすい体質である。
 外部からの刺激は反射できても自分自身の疾患は治せない一方通行はそういう意味でも小食になる傾向がある。
 自身の体験を踏まえて、一方通行は浜面に日頃見せないような哀れみの目を向けた。

「舌にできるとはなァ。間抜けに自分で噛ンだのか?」

 口内炎は過食によっても起こるが口内に出来た傷が炎症を起こしても発生する。そして舌に出来る場合は後者の方が圧倒的に多い。
 唾液で殺菌がされているとしても口内は雑菌の溜まり場である。わずかな傷でも口内炎に転換するのだ。

「んにゃ、麦野に噛まれた」

 瞬間、一方通行の顔が歪んだ。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:18:27.72 ID:6xGy0nN/o
 舌を誰かに噛まれるという状況は学園都市で一番の頭脳をもってしても一つしか考えられない。
 刹那、こいつをプラズマ化するのにどれくらいのエネルギーがいるだろうと一方通行が考えたとしても彼に責任はなかろう。
 少しでも可哀想だと思った自分が馬鹿だった。
 首裏に手を伸ばしカチリ、と黒いチョーカーに着いたスイッチを起動させる。たったそれだけで自立歩行も困難な脳障害者が世界最強の超能力者に変わる。

「はーまづらくゥン、スクラップの時間だぜェ」

 地獄のそこから這い上がってきたかのようなデスボイス。三日月を横にしたように不自然な口の中は血を求めているかのように赤い。
 細身の一方通行の背後に見えない死神が鎮座している。空気の分子で有刺鉄線をまとった卒塔婆の様な鎌が無数に構築される。
 そう、嘗て敵対した時の麦野が纏っていた空気と同じ、アレ。

 こんな流れだったっけ? おかしくない?
 強制的に切り替えられた空間に浜面は慌てて両手を振って言い訳をする。

「あ、あのな。俺と麦野は付き合っているわけであって別にディープキスしたぐらいでリアルトマトジュースにされなきゃならない理由にはならないと思うんですが」

「別にテメェが何処の誰と付き合おうが犬と突っ付き合おうが知ったこっちゃねェが、人が心配してやったら惚気話でした、なンて俺に通用するとでも思ってるのかよ。
 っていうかテメェの話は何時でも何処でもノロケに変わるんだようっとうしいンだよ」

「別に惚気けてないよ!? 聞かれたから事実を答えただけであって」

 ぶんぶん頭を振って、惚気話ではないと言い訳する浜面仕上。そう思っているのは当人だけなのは間違いない。
 しかしながら此処で浜面を処刑したら常日頃「爆ぜろ」「砕けろ」「裂けて死ね」などと言っている上条と同レベルになるし、なによりコーヒーがまずくなると判断した
一方通行は浜面を塵に返すことを先送りすることにした。あくまで先送りで何時ものことである。
 浜面の妖しい呼吸が十を数えた辺りでカチリ、とチョーカーのスイッチを切る。
 その瞬間にげはぁ、とにんにく臭い浜面の吐息が巻き散らかされた。

「大体よォ、テメェは現状でも人様の嫉妬を煽るような人生送ってるンだから発言には気を付けなきゃならんだろォ」

 ふん、と見下したように鼻を鳴らし新しいコーヒーの香りを吸い込む一方通行。要するに侮蔑している。
 産毛が逆立つ程のプレッシャーから開放されてか、僅かばかり気の大きくなった浜面は常日頃思っている言葉で反撃する。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:19:23.89 ID:6xGy0nN/o
「爆乳黄泉川はじめとして女性四人と同居している第一位様に言われたくありませんけどね!?」

 沈黙。
 一方通行の右手の、傾け続けているハズのコーヒーカップの動きが変化する。

「――俺のことはどォでもいいだろうォが」

 一瞬だけ、一方通行の返答が遅れる。視線が泳ぐ。その態度に流石の浜面も気付かされる。

「何、そのタイミングのズレ? お前まさか!」

「それ以上口を開くと命の保証はねェぞ」

 地球すら押しつぶしそうなプレッシャーのデスボイス。
 しかしながら今回は別だ。

「ねぇ、ちょぉっとばかりお兄さんの眼を見てお話しないかなぁ」

 おデコのラインに青筋を立てながら不自然なまでに優しい声で浜面が言う。
 なんだよてめぇ、人のこと散々鬼畜だのエロス帝王だの詰っておいて自分はどうなんだよ。
 弄られキャラの属性持ちの上に彼女二人持ちで周囲の目が痛い生活をずっと送ってきた浜面にはそっち方面のガス抜き手段が存在しなかった。
 唯一の例外といっていいウニ頭はフラグ管理が上手くいっていないらしくなんだかんだと浜面を感情のはけ口にしてくる。
 二股かけている浜面は反論ができない分だけストレスが溜まっていく。
 そんな浜面が「こんな一方通行」を見逃すはずがなかった。

「なぁ、上条もそうだけどさ、俺のこと外道だの鬼畜だの言っているくせに自分はどうなのかはっきりして欲しいんだけどさ」

「俺はンなこと言った覚えはねェけどなァ」

「ああ、単語そのものは口にしてないかもな。だがなんだかんだと俺を虐めてくれているのはどういう理由だ」

「キャラの宿命だ諦めろ」

「さいですかさいですか。ウルトラマンでカフェイン中毒の中二病拗らせもそうですね。あくせろりーたなのも仕方がないですね。
 然して何人にも手を出したのも仕方ないですね」

「――裂くぞコノヤロウ」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:21:02.33 ID:6xGy0nN/o
 会話しながらもタイミングを見つけてパクリパクリとパスタを口に運んでいた浜面がかちゃりとフォークを置く。
 更は貝殻数個を残して綺麗に片付けられ、半分ほど残ったトマトジュースをずずりと啜っている。

「ったくよぉ。No Pani No Gain って言うけどさ、それなりに痛みは伴っているんだぞ俺だってさ」

「Gain は得ているンだろうが。文句言うな」

「言ってませんよ。けどさぁ、上条も複数の女に手を出してるのに何で俺ばっかり言われなきゃなんないの? どう考えてもアッチの方が鬼畜だし。
 それにさぁ一方通行先生もなんか怪しいし、そろそろネタキャラから開放してくれないかな」

「――まァ今後は気をつけてやるよ」

「オーライ、じゃあ俺も言わないことにする。けど――」

 ニヤニヤと下司な笑みを浮かべて、椅子から腰を浮かべながら膝を付くような奇妙な格好で下からのぞき込むような浜面がむくれた顔の一方通行を覗き込む。

「誰とやったのかだけは教えてもらえるかな?」

 回答として一方通行は教育的チョップをチンピラの顔面に叩き込む。どす、といい音がした。岩山両斬波に為らなかったのは単純にチョーカーのスイッチを入れ忘れただけ。
 それでも不安定な足場が災いしてか、がらんごろんと派手な音を立てて浜面が転がる。

「おー痛ぇ。鼻にモロに入ったぞ」

 巻き込むように倒れた椅子を立て直し、周囲の客に謝りながら浜面がもう一度座る。涙ぐんだ眼で花の筋を撫でる。
 ぶすっとした表情の一方通行。白い肌が心なしか赤い。

「やかましい。ヒラキに成らなかっただけ有難いと思え」

 物理的に可能な超能力者が何かを噛み潰しながら言う。
 嫌な奴に弱みを握られたことを苦々しく思いながら、このタイミングで運ばれてきた熱いコーヒーに手をつける。
 煎りの強い苦みばしった其れは香り高くも口内と食道とに熱の面白さを味合わせる。

「ったく。絹旗との会話の面白い題材になりそうだったのに」

「最低だぞお前。言わないと口にしたそばから其れかよ」

「冗談ですぜ旦那。まぁでも揶揄うのも楽しそうではあるな。自分が嫌だからやらないけどさ」

 素敵な悪戯を見つけた子供の眼で笑う浜面に心底気に入らなそうに一方通行が睨みつける。
 地獄のタールの様な熱いコーヒーを味わいながらも変なところで嘘をつけない自分を恨めしく思う。
 まぁ然し。やらないといったのだから浜面はやらないのだろう。自分と似て変なところで律儀なこの男を一方通行は一面においては高く評価している。
 大体、現実に負けざるを得ない妄想に本気で挑んでいる男――二人の女を本気で同時に嫁にしようというふざけた幻想――は軽蔑するか尊敬するかの
二択しか判断のしようがないのだ。然して十人のうち住人は前者の感想を持つ。
 風車に挑むイカれ騎士の様な姿勢は愚かにしか見えないが其れでも男として憧れる姿でもある。
 爛々と瞳孔を輝かせ二人の女を守りきる為の努力に汗を流す姿は快男児に相応しい。
 英雄色を好む――好色が英雄とは成り得ないのが歴史の実情だが、一人ぐらいこんな男が居ても良いのかもしれない。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:22:21.17 ID:6xGy0nN/o
 コーヒーの最後の熱さまで楽しんで、一方通行は表情を出さないまま尊敬に値する男に質問する。

「――で、超のちびっ子の話が出てきたが、今日は其奴とデートか」

「デートって程のもんじゃねぇよ。何時もの如くC級映画の鑑賞会さ。ただ暫く俺も忙しくて構ってやれたなかったからさ。
 常盤台の堅苦しい生活に悲鳴を上げてるみたいだし。お姫様の我侭に従うのは下っ端の役目ですよ」

 アイテムの構成員、絹旗最愛は今現在学園都市有数の進学校であり能力開発の名門である常盤台中学校に籍を置いている。
 暗部が解体されたあと、アイテムを再構成したわけなのだが、其のアイテムの中で浜面仕上は滝壺理后と麦野沈利との不可思議な同棲を始めてしまったため、
絹旗は行き場をなくしてしまった。最初は絹旗も同じ部屋で暮らそうという運びだったのだが、流石に居心地が悪かったのだろう。
 仕事仲間であった超能力者第四位、麦野沈利。浜面の伝手での知り合いとなった第一位一方通行、そして常盤台の電撃姫第三位御坂美琴の推薦状を携えて
超がつく名門校に潜り込んでしまったのだ。
 余談だが、暗闇の五月計画からの因縁のある黒夜海鳥も常盤台の生徒となり絹旗のルームメートとなっているらしい。
 筆箱や教科書、ノート、参考書などに「絹旗最愛」と名前を書いたら全てに「きぬはたもあい」とルビを振られて殴り合いの喧嘩をしたところ、無能力者である寮の管理人に
垂直落下式ブレーンバスターを決められて三時間ばかり意識を失った、などと信じられないことを電話したきたりもするが元気ではあるようだ。

 唯、門限が厳しく深夜の映画鑑賞が出来ないことをよく嘆いている。
 曰く、「B級C級映画は超一期一会なんです。字幕や吹き替えがつかないのは当然としてメディア化すらしないことだって多いんです。一度見逃したら超二度と会えません」
とのことなので見逃した映画の多さにハラハラと涙を零していたりもするようだ。
 ――まぁ、十分あり得る話でもあり嘘八百なのかもしれないが。

 其のようなことを面白おかしく一方通行に話していると、何処からか鈴を転がすような甘い声が聞こえた。

「おい浜面、後ろ見てみろよ」

 白くて赤い少年が顎で浜面の背後をさす。振り返れば三十メートル程遠くにカーキ色のニットセーターにスカートの常盤台制服を纏った小さな少女が手を振って駆け寄ってきていた。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:23:21.17 ID:6xGy0nN/o
「おお、絹旗!」

「はまづらー!」

 ぶんぶん、と歳相応に無邪気に手を振りながら満面の笑みで絹旗最愛が駆けてくる。
 人形のような細い肢体と年よりも幼く見えるあどけない顔付き。ショートカットの髪が走ることで揺れて健康的な色を出している。
 浜面は立ち上がり、両手を前に突き出して絹旗最愛の突進を受け止めようとする。
 受け止めようとするが――

「とうっ!」

 目の前十メートル程の距離に来たとき、ヒーローの様な掛け声と共に絹旗がジャンプした。
 まるでトランポリン選手のように高々と華奢で小さな身体が天空高く舞い上がり、ビルの階数で言えば三、四階の高さまで跳び上がる。
 翼を持たないまま重力の軛を抜けて天に駆け上がり、太陽を背にその体を「X」字に大きく開いた。

 然して――

「超ちっそキーック!!!」

 ぐるり、と空中で一回転したあと、特撮ヒーローの必殺技のように右足の前に突き出した蹴りが浜面目掛けて落ちてくる。
 高さと重さが破壊エネルギーに変わるという当たり前の物理学の前に、何が起きているのか理解できない浜面はただただ本能的に、

「どわあわあっっ!!!」

 其の場所から逃げ出す。
 次の瞬間、豪っ、という少女が出したものとは思えない衝撃と破壊音とをもってして浜面が今まで立っていた場所の椅子と床の飾り石とが粉々に砕けて周囲に舞った。

(おォ――こいつはすげェ――)

 カチリ、とチョーカーのスイッチを入れ、過剰に舞った誇りと破片とを被害が出ないように排除しながらも一方通行は絹旗の今の動きを賞賛する。
 外観から見ただけだとただ高ヶ所からの飛び蹴りに過ぎないが、着地の瞬間絹旗の全身を覆う窒素の膜が解除され、それが足裏に収束され、瞬間的な発条になって
衝撃から自分の足を護ったのだ。
 其れは黒夜海鳥の窒素爆槍と同じものだ。
 流石に黒夜程の正確性も威力もないが、クッションとしての機能は十二分に発揮したらしい。
 あの高さから落ちて――そう、派手に見えるが実はこの蹴り技はただ高いところから落下しただけのものに過ぎない――足の骨にも筋にも何らダメージを負っていない。

 然して何より。
 一方通行の男の子の部分を超窒素キックは大いに刺激した。
 ヒーローは蹴りを決めてナンボである。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:24:03.23 ID:6xGy0nN/o
 ぱん、ぱん、ぱん

 思わず心の底から拍手をする。
 其れにつられて、周囲の客も疎らに、そして段々と大げさなまで拍手をし始めた。

 繰りかえすが、此処は繁華街だ。
 然して様々な能力者によるパフォーマンスが行われている。
 絹旗の、じゃれつくというのは過剰なこの行為もパフォーマンスの一つとして受け入れられてしまったのだ。
 一方通行の拍手には其のように周囲を納得させる狙いもあった。

 納得できないのは浜面である。
 久々の再会である。
 忙しさにかまけて中々構ってやれなかった負い目もある。
 然しだからと言っていきなり命を狙われれば当然怒りも湧く。

「きぬはたーっ! なにしてくれとるんじゃー!!!」

 くわっ、と眼を見開いて自分より頭二つほども小さい少女に食ってかかる。
 そんな浜面にぼすっ、と水月にいいパンチを決めて――流石に窒素装甲は使っていない。使っていたら文字通り破裂している――
内臓の神経全てに痛みを与えた絹旗はふんず、と反り返って。

「何撚けてるんですか浜面。此処は私の窒素キックを超食らって派手にぶっ飛ぶのが仕事でしょうに」

 お前が悪い、と言い放った。

「食らったら死んじゃうよ! 熟れたトマトを壁にぶつけるようなものですよ!」

 ぐはぁ、と呼吸困難な痛みに苛まれながらそれでも必死に不条理を訴える浜面。
 だが残念なことに残念な星のもとに生まれたものは残念な生き方しか出来ないのが定めである。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/18(水) 03:25:30.61 ID:6xGy0nN/o
「超五月蝿いです!」

 ごすっ、といい音を立ててショートアッパーが浜面の悲しい顔を打ち抜いた。
 ぐらり、と膝から倒れる浜面に絹旗は両腕を広げ殺戮を歌うが如く奪略者の笑みを浮かべた。

「映画を見たいんです! 私は超映画を見たくて仕方がないんです! この気持ちは抑えきれません! 外泊できなくってどれほどのB級C級映画を見逃したか!
 一分も一秒も無駄には出来ないんです!
 この溢れんばかりの気持ちを表現するための窒素キックなんですから浜面はミンチになろうと受け止めなくてはいけないんです!」

 おふぅ。此奴は電波だ。
 何処か遠くの誰かを見るように一方通行は己の思考ルーチンを植え付けられた哀れな被害者と、その被害者に玩具にされる世紀末帝王を哀れみの目で見る。
 幸いなことに、絹旗の目に一方通行は映っていない。

「ハリーハリーハリー! 身分証明書は準備したか! 気の抜けたコーラは! 脂ぎって途中で食欲をなくすポップコーンの準備はOK?」

 話に脈絡がなさすぎる。
 いや、映画を観たいというのは良くわかる。非常に良くわかるのだが。
 何だその意味のわからないアイテムは。
 ウンザリとした顔をした一方通行は本日の優雅な午後は既に崩壊したことを今さらのように理解する。
 まさか、浜面仕上よりも絹旗最愛のほうがこんなにアレな性格だとは。

 檀道済の三十六計逃げるに如かずではないが、此処は消えるのが得策だ。

 こっそりと。
 二人が気づかないように。
 せめて生き延びてくれよと願いながらも学園都市第一位とは思えないほどこそこそとした態度で大声を張り上げて自身のC級映画美学を語る絹旗最愛と、
そして此方を恨めしそうに見つめるHAMADURAから逃れるようにこそこそと自分の静かに過ごせる日常への逃避行を開始した。
 何一つ言わず二人分の伝票を精算したのはせめてもの思いやりだったのかもしれない。 
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/18(水) 03:27:29.38 ID:6xGy0nN/o
中途半端ですが以上です
超窒素キックが頭に浮かんで書きたかっただけなのです
窒素装甲の性質上、飛び蹴りにはそれほど威力はないしパンチの方が当てやすいと思うのですがそれはそれ

さて、今から何時間寝られるか 
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/01/18(水) 09:24:59.04 ID:sTCgKqdIO

エロだけじゃなくこういう普通の日常の描写も上手いなあ

104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/18(水) 23:36:16.73 ID:6xGy0nN/o
いやぁああ!!!
誤字だけじゃなくて頭痛が痛いレベルの表現が連発ぅ!

――勢いだけで書くもんじゃないですね、はい


>>102

うまくないっす……
褒めてくれたのは嬉しいっすし感謝ですが、今回は……あはん


もし読んでくれている人がいたら聞きたいんですが、エロス優先にして超展開とかおっけいですかね
書いてみたいネタはできたんですが、それをやると確実に別の話と矛盾するというか
いや、最初から構成とか起承転結よりエロ優先ではあるんですが、設定矛盾までしちゃうと
書くたびにこれはこの世界のこの時系列です、と理解してもらわないといけなくなるし

あと、基本的に一話完結で一気に投下する形式をとってきました
短編複数視線複数によるミルフィーユみたいな積み重ねでどろんどろんにしようと思ってたんです
それと何時逃げても取り敢えずは区切りが付いてるよ状態にしようと
後者は兎も角前者は全然ですがね

今度やってみたいネタはそれなりに長くなりそうなんで(といってもまぁエロシーン4,5のつなぎシーンをいくつか程度)
一話完結はちと難しいかな、と
それにスカとか入りそうだから人を選びそうだなぁ、と
さらに付け加えれば話の流れ無視して別の小話とか入れたりもするかもしれないと構成力のなさに定評のある負け犬は思ったのです

こう、頭かちわれば完成品が出てきて全てナイス、とかになればいいのに
っていうか誰かほかの人が書いて私が楽しめればいいのに

一応、考えているのが
 上条(含むインデックス、美琴)×みさきち
 女王様が陥落するまで(浣腸屈服とか覚せい剤ローションバイブとか)

小話で
 土御門×まいか、福井県の海山の幸鍋で舌鼓 地酒も入って……
 絹旗、映画の途中で体調不良 突然の出血に慌てる浜面 お赤飯? ねぇお赤飯なの?
 打ち止め、寝ている一方通行を起こせず添い寝 おや膝になんかあたっているってミサカはミサカは……

とまぁ、長ったらしく書き述べりましたが実際書けるかどうかは別問題 というか誰か書いて
途中で投げ出したプロットもあるのにむぎのんとかむぎのんとかむぎのんとか

筆が早い人は羨ましいですねマジで
その腕お持ち帰りできればいいのに或いはレンタル

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/20(金) 00:16:40.59 ID:kIiKDRSRo
とうかー
今回はちょっと刻んでみるし一話完結ではないです 
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/20(金) 00:17:12.18 ID:kIiKDRSRo
 初夏の日差しが眩しい。キラキラと輝いて街中に満ちていく。
 其れは正しく魔法で、人の心を満たして癒して活力を与えてくれる。
 イタリアンレッドのワンピースにホワイトのパンツをあわせた可憐な少女が喫茶店の一廉でほう、と丸く溜息をついた。
 空気中の水分、水素と酸素の結合の手に反射した六角の日差しが店の中まで降りてきて、その中に絵画と見違えるほどに美しい少女が憂いを帯びた眼で何もない空間を眺めている。
 ボーンチャイナを抱える手は白いシルクの手服をはめていて飾り刺繍の薔薇ですら甘く香ってきそうだった。

 学園都市に於いて精神系能力最高峰である超能力者第五位、食蜂操祈は長い金髪を鬱陶しそうに掻き上げながら淡い紅色のお茶を口に含む。苦味と香りとが口に広がり、舌先で熱を感じる。
 華のある仕草は彼女が精神系能力者でなくとも見とれてしまうだろう。事実、透明なガラス板の向こうの歩行者達の何人かは視線を彼女に向けてよこす。
 其れが鬱陶しいのだが、だからと言って能力を使う気にもなれない。
 星が入っていうように見えるほどの輝かしい瞳は煮え切らない思いに陰っていた。

 読心・洗脳・念話・他者の思考の除去或いは増幅・思考の再現・感情の移植など多種の能力を一手に引き受けて使いこなす十徳ナイフに例えられる能力は自身に対しては何の意味も持たない。
 気分を明るくしたり陰鬱をはねとばしたり、そういった使い方が何一つ出来ないのだ。他者に対してはそれこそ粘土を捏ねるよりも簡単に捏造すら出来るのに。
 明るい色合いの髪が背中でふわりと揺れて甘い曲線を描いても、認識をしなければ操祈には何の価値もない。
 観察することで世界が確定する。観察者の位置にいる彼女は客観である自分が甚だ居心地が悪かった。
 だからと言って通りすがる全ての人格を操作するのも煩わしいし、奥の席に位置を替えるのは待ち人が自身を見つけられない可能性がある。
 君臨して統治することには慣れていたけれども、やはり等身大の自分というものは否定出来ない。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/20(金) 00:17:49.44 ID:kIiKDRSRo
(美人は損よね――)

 心の片隅で勝ち誇っている最強の精神系能力者は目の前の透明なガラス板の向こうに待ち人が来たのを知った。
 心成しかふくよかになった彼女が軽く手を挙げ、そして軽やかな足取りで店の中に入ってくる。
 さほど仲が良くなかった、というよりも嫌われていたと自覚しているが世間一般並みの人付き合いぐらいはしてくれるようだ。
 まぁ、呼び出しておいて其のような態度に出たら憤慨して廃人にでもしてやるところだが、今回の彼女ばかりはそうはいかない。

「お待たせ。ごめんなさいね、呼び出して」

 目の前に座るのはつい先日まで自分が着ていた常盤台の制服を纏った自分よりランキングの高い超能力者――超電磁砲、御坂美琴だった。

 店員に声をかけ、彼女と同じものを、と注文する姿は以前にあった時よりも心成しか大人びている。
 いや、違う。確かに大人びている。
 成長期にある胸はワンサイズはアップしていて、すっとしていた顎のラインも心地よさそうな丸みを帯びている。
 香水は付けていないはずだが何処となく甘い香りを漂わせ、薄くリップを塗った唇はぷっくらとしていてた。
 髪を伸ばし始めたのか、活発なショートカットは肩口までのラインに降りて健康的というよりも知性的な外観を与えている。
 蛹を抜け出して羽を広げつつある蝶のシルエットが脳裏に浮かんだ。

「別にぃ。私も時間はあったからねぇ」

 アグリアスという南米の森に住む蝶は川一つ挟んだだけでも別の模様を羽に描くらしい。
 目の前の御坂美琴と食蜂操祈の間には何本もの川が流れているが、自分の背中に生えている羽にはどんな模様が浮かんでいるのだろう。
 透き通る眩しい肌の少女を見ながら操祈は軽く指を立てた。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/20(金) 00:18:46.16 ID:kIiKDRSRo
「別に喧嘩売っている訳じゃないんだけれど、太ったかしら? 前よりも肉付きがいいわねぇ。私の胸囲力ほどじゃないけどぉ」

「そうかもしれないわね。少なくとも体重計を気にしなくはなったわ。ある程度身体が調ったらダイエットはするけど今はその時期じゃない」

 普通の女性ならば怒るべき質問を軽くスルーした美琴に操祈は少しばかり驚く。挑発を受け流せない性格のこの少女が随分とまぁ大人びたものだ。
 外観と同じく精神も成長したのだろうか。
 心理操作の頂点でありながらも食蜂操祈が御坂美琴の心を覗くことは出来ない。
 超能力者は己の周囲に無意識にフィールドを形成しており、彼女の精神感能力はそのフィールドにはじかれてしまうのだ。
 単純な出力だけで言えば意能力の発火能力者にも劣るため仕方ないことではある。
 出力が小さい分だけ広範囲に細かい調整を持って同時に人を操ることが出来るため、戦場さえ選べば最強の能力者であることは間違いないのだが。

「大きな声じゃ言えないけどね、妊娠状態だから其れなりの身体になっちゃっているのよ」

 悪戯っぽい眼で覗かれて、そして妊娠という単語に刹那の単位だけ操祈は驚くが、

「――生理不順でピルつかってるってことね」

 と美琴の言葉を自分なりに解釈して返した。
 にこりと笑ったまま無言の美琴に、まぁそういうこともあるわね、と自身も女である操祈は納得する。

 女性の身体とは微妙なバランスの上に成り立っていて、ちょっとした刺激でも簡単に崩れてしまう。
 避妊のためだけでなく調子を整えるためにもピルを服用するのだが、その副作用として体重の増加やむくみが発生してしまうことがある。
 学園都市では超低容量ピルが用いられていて副作用はずいぶんと抑えられているはずなのだが――

「まぁ、貴方はそうなっちゃったのねって私の理解力は判断するわぁ」

 個人個人で症状が異なるのは仕方がない。
 それこそアグリアスだ。
 樹形図の設計者でも使えば完全に副作用もなくコントロール出来るのだろうが其れは既に存在しないし、まさかこんなことには使わせてもらえまい。
 冥土返しという優れた医者のことを聞いたことはあるが、医者とはいえ婦人科の話を初老の男性には相談しにくいのだろう。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/20(金) 00:19:33.56 ID:kIiKDRSRo
「――私は今の状態に満足しているのよ。少しぐらい体重が増えたって構わない。嘔吐も収まったしね」

 運ばれてきた紅茶の温かさを味わうように美琴がカップを両手で包む。ふわりと舞う蒸気の向こうの顔が笑っている。
 生理が重くて吐いたことは操祈にも数々ある。

「ふぅん。大変だったのねぇ。まぁ私には何の関係もないんだけどぉ」

 興味がないと露骨に言う。元々仲が良かった訳でもない。
 勝気そうな瞳に光が瞬いたがどうやら喧嘩を買うつもりはないらしい。
 ゆっくりとお嬢様然として――実際お嬢様なのだが――柔らかな空気をまといながら美琴が喉を潤した。
 空の光が流れる。
 ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲が流れる。
 然して二人の間の空気が静かに過ぎ去っていった。段々と場が和んでいく。

「聞いたわよ。その年で工学博士とったんですって? 飛び級どころの騒ぎじゃないわね」

「社会心理学と大脳生理学の学位持ってる人に言われても褒められているとは思えないわね」

「褒めてないもの。で、何処に進学するつもり? というか、籍だけ置いて機関に出向かなぁ?」

「――やりたいことと、やらなくちゃいけないことがあるの。高校には行かないわ」

「あ、そう。まぁ博士号持ってて高校通うのも馬鹿馬鹿しいか」

 話すのはたわいないこと。触れれば祓える止揚の末節。
 近況を交わすのは悪いことではないが、そろそろ閑話休題。

「――で、卒業して学び舎の薗にも立ち入らなくなった私に何の御用かしらぁ?」

 味が飽きた紅茶をカップに半分ほど残して操祈が美琴に問いかける。

「はっきり言えばお互い嫌っていた間柄なのに一々呼び出すなんて、馬鹿馬鹿しすぎて逆に好奇心惹かれちゃったわ。
 今更仲良くやりましょう、なんてことじゃないんでしょう?」

 金髪を指先で絡めて笑う操祈。同じ冷たさで笑う美琴。
 とはいっても殺意も敵意も其処にはない。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/20(金) 00:20:25.24 ID:kIiKDRSRo
「アンタのことは大嫌いよ、今でも。自分で指ひとつ動かさずに他人を支配して思い通りにする。身震いするぐらいに気持ち悪い」

「酷いわぁ。指先は使ってるわよ」

「あらごめんなさい。指先しか使っていない、の間違いね」

 言葉が多少攻撃的でも、この二人では互いに暖簾に腕押し、糠に釘だ。
 仲は良くないがそれでも認め合わねばならないぐらいに実力が拮抗している。
 精神が脳の機能であり脳の電気信号で構成されているとするのならば、最大出力の電撃使いと最小出力の電撃使いとが此処にいることになる。
 然して不可思議なことに最大と最小は釣り合っているのだ。

「まぁでも実力は認めているのよ。その実力を見込んで頼みたいことがあるの」

 美琴が余裕をもった笑みのまま静かに言う。ゆっくりと頭を下げる。
 このような態度を想定していなかった操祈は虚を突かれる形になる。

 ――頼み? 超電磁砲が?

 我儘なままで育って、周囲がお嬢様だろうとなんだろうと関係なしに其れが通る能力を身に付けた食蜂操祈は意外と世間慣れしていない。
 周囲が優しかったり煽て上げてくれたり、或いは適度な距離をとってくれていることを自覚しているし、そうでなければ周囲を改竄する能力もある。
 然し、改竄能力が通用せず、己の我儘を否定するような勝気で凛とした一つ下の後輩には精神的な苦渋を飲まされてきた。
 嘗て超電磁砲の遺伝子複製体、妹達に対して「ちょっかい」をかけたのもその憂さ晴らしの面が否めない。
 其れもなんだかんだと彼女に解決されてしまったのだから余計に気持ちに黒いものが溜まったものだ。

 そんな相手が、頭を下げている。
 溜飲が下がるとかそういったことの前に、これが現実なのかと操祈はまず自分を疑った。
 ぱちり、ぱちくりと瞬きしても光景は変わらない。

「――と、兎に角頭を上げてくれない? 幾ら私の人徳力があっても人に見せたい光景じゃないのよね」

 見せたくなければ改竄すればいい。そんなことも忘れて操祈が美琴に顔を上げるよう懇願する。
 お嬢様同士の駆け引きはどうやらいきなり美琴に軍配が上がりそうだ。

「じゃあ、遠慮なく上げさせてもらうわ。然して話も聞いてもらえると判断するけどOK?」

「話ぐらいなら私の包容力でいくらでも聞いてあげるけど――頼みっていうのは何?」

 飽きたはずのぬるい紅茶を飲み込んで、高鳴った鼓動を操祈は調える。
 ――そう、高鳴っていた。興奮した。
 組み伏せられないと思っていた相手からの頼み、立場的にほんの僅かでも上に立てるという思いにときめいたのだ。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/01/20(金) 00:21:00.04 ID:kIiKDRSRo





 其れを罠だと感じていたのならば話は変わっていたはずなのに。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/20(金) 00:21:41.21 ID:kIiKDRSRo





「実はね――会って欲しい人がいるのよ」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!orz_res]:2012/01/20(金) 00:22:13.00 ID:kIiKDRSRo



              柔らかく微笑んだ御坂美琴の笑みに異物が混ざっていることに食蜂操祈は気づかない。



116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/20(金) 00:22:38.95 ID:kIiKDRSRo



「幻想殺し――上条当麻っていうんだけどね――」


117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!orz_res]:2012/01/20(金) 00:23:19.46 ID:kIiKDRSRo



              、御坂美琴が恍惚とした顔で自分のお腹を優しく撫でていることに気づかない。



118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/20(金) 00:24:10.48 ID:kIiKDRSRo


「アイツの頼みを聞いてくれないかな――」

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!orz_res]:2012/01/20(金) 00:24:44.09 ID:kIiKDRSRo



              、、蝶がその羽の下に蜘蛛の糸を張っていることに気づけない。



120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/20(金) 00:25:12.60 ID:kIiKDRSRo


「私はアイツにいっぱい借りがあるから少しでも返済したいのよ――」

121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!orz_res]:2012/01/20(金) 00:25:44.53 ID:kIiKDRSRo


              、、。きづけな――



122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/20(金) 00:26:26.49 ID:kIiKDRSRo
 甘く染み込むような声は食蜂操祈の心に溶け込んでいく。
 幻想殺しのことは識っている。会ったことはないから知っている、とは言えないが情報ぐらいは持っている。
 超電磁砲が熱心に追いかけて、絶対能力者進化実験を第一位一方通行を破るという信じられない方法で止めて、世界中の「魔術」と呼ばれる別の能力者と戦ったという無能力者のこと。
 この少女と腕を組んで歩いていたという話も聞いた。
 なるほど、恩人でもある自分の男の為に頭を下げたのか。
 食蜂操祈は納得する。

「いいわ。貴女の言うとおりにするわ。何をするのかはわからないけど貸しの一つぐらい作っておけば役に立ちそうだしね、貴女も貴女の言う『アイツ』も」

 食蜂操祈が宣言する。
 嬉しいという思いもあるのだ。
 自分よりランクが上の超能力者ではなく、自分を忌み嫌っていた生意気な後輩が自分を頼ってきてくれたことが。
 高飛車で高慢で我儘だが、心の性根から腐っているわけではない。
 食蜂操祈は自分を慕ってくれる人間を玩具の様に弄ぶが、其の玩具は大切な宝物でもある。不用意に傷つけたりはしない。
 ただ心理操作に長けているというだけでは人がついてくるわけがない。
 人格破綻者と言われる超能力者群の一人ではあったが、操祈はお嬢様の枠からはみ出してもいなかった。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!桜_res]:2012/01/20(金) 00:26:56.36 ID:kIiKDRSRo





              ――だから容易く蜘蛛に捕らわれる。


124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/20(金) 00:27:26.76 ID:kIiKDRSRo
 いつの間にか日は陰っていた。どんよりとした雲が世界を包む。ちらりちらりと小さな水滴が落ちてきて安定しない空気が街中を覆い始めていた。
 樹形図の設計図というラプラスの魔は既に退治されていて未来など誰にもわかるわけがなかった。 
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/20(金) 00:30:41.24 ID:kIiKDRSRo
今回は以上です
一回やってみたかった消したり色変えたり

ただ細かく刻み過ぎたかしら
でもセリフと見えない説明を併せて8つ、赤い文字を頭に見立てて蜘蛛、というのが脳裏に浮かんだんで其れ優先で

ええ、京極堂丸パクリですがなにか 
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/21(土) 22:35:19.25 ID:0MjPP7+0o
妊婦はアナルより受けが狭いと思うんですがなんとかエロくしたいです
でも今回の話はみさきちヒロインですよ?

>>130
わたくしです
タイミングが悪かったのは反省いたしておりますわ

あの話は黒夜さんの微笑ましい悪戯ですの
このスレの浜面さんは快男児ですので女性を無理矢理支配しようとはしませんわ
絹旗さんの方はどうだか知りませんけど

原作で京極堂が指摘している、「一人称がない」形式で、かつ描写をシンプルな描写でやってみましたの
あとやってみて思ったんですが、日記って調教ものと相性がいいかもしれません


さて、筆が乗っているうちにガンガン投下いくですよ 
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:36:27.16 ID:0MjPP7+0o
 学園都市第十六学区は商業地域である。
 その中心部にあるホテルは外部の要人を受け入れるための宿泊施設として建てられたものが多い。
 学生たちが教職員の監視から逃れるための個室サロンとは数段階違う設備を有している。宿泊と遊技場という設計時からの目的が異なっているのだから仕方がない話だ。
 然し、共に超能力者であり十代半ばの少女には過分なほどの奨学金を受け取っている食蜂操祈と御坂美琴には其のような概念はない。
 否、学び舎の薗のお嬢様は得てして金銭感覚が常人と異なっている。
 遊具がないことを除けばクッション一つとってもホテルの方が上なのだから僅かな金銭にこだわってどうする。
 世間知らずにも程がある思考だが、其れがお嬢様というものだ。

 数あるホテルの中でも最高級の、そして最上階の一室を御坂美琴は用意していた。
 最上階の部屋は一つしかない。
 スイートルーム一室だけ。
 一泊だけで数十万かかるその部屋を用意した美琴も案内される操祈もちょっと高い買い物をした、させた程度の感覚しかない。
 高級な絨毯敷きの広いエレベーターに運ばれると高級な樫の分厚い扉が二人を出迎えた。

 最重要級のセキュリティを備え付けられたその扉、その意味を簡単に能力で無効化して美琴が扉を開く。
 エレベーターホールから直接つながる其処に食蜂操祈は迎い入れられた。

「へぇ。なかなか立派じゃない」

 三十畳はあるリビングに案内されて高慢な批評家が感心したように呟く。
 調度品は質のいいクラシックなもので整えられているし奥深くのガラス窓は床から天井まで届く大きなもので濡れた穹でなければ嘸かし気持ちのいい光景になるだろう。
 赤煉瓦作りの暖炉まである。勿論飾り物だろうが其れに違和感を抱かせないだけの空間が整えられている。

 湿気で髪が絡んで多少の憂鬱を覚えていた操祈は口調と裏腹に目を輝かせて室内を見渡した。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:37:11.33 ID:0MjPP7+0o
 ソファに二人、誰かが座っている。

 一人はツンツンと髪を逆立てている少年で、年は操祈と同じか一つ上ぐらいか。
 決して長身ではないが痩躯で引き締まっている。
 ややタレ目気味で特徴のと言えるものはないが人好きのする顔つきで、其れでいながら剣呑な光を目に宿している。
 詰襟の学生服の胸元を開けて赤いシャツを覗かせていた。

 ――幻想殺しね

 もう一人はシスターだろうか。純白の布地に金の刺繍が施された、豪奢で神の娘に相応しくない格好をしているが纏う空気は清浄なものだ。
 臀部まで届く長い髪はストレートの銀髪は光を奉ろっているように美しく、翠玉の瞳は全てを吸い込むよう。
 ブルーブラッド、そのままのような日焼け一つしたことのないような肌は何処までも白い。
 天真爛漫で甘そうな唇は子供っぽく、恥ずかしげに頬を赤め、其れでいながらシスターの影も同居している。
 気に入らないのは修道服を纏めているのが安全ピンであることなのだが、宗教的な意味合いがあるのかパンクファッションなのか食蜂操祈には理解できなかった。

 ――誰なのかしら

 星の入った様な大きな瞳を瞬かせ、肩筋にかけたポシェット――中には能力使用時に目安として使っているリモコンが入っている――に手をかける。
 自分が罠にかけられたとは思わないが、万が一に備えて何時でもリモコンを取り出せる準備をする。
 後輩の頼みを聞くと承諾はしたが、絶対的に信頼したわけではない。能力が使えなければ操祈はか弱い一人の少女に過ぎない。当然とも言える警戒だった。

「御坂さん? 宜しかったらご紹介願えません?」

 語尾を過剰に上げて、聞いてないぞと言外に伝える。
 機嫌がなおったり悪くなったりと忙しい。

 然して御坂美琴が食蜂操祈に紹介するまでもなく、

「どうも初めまして。ご足労をおかけ致しました。上条当麻です。此方はインデックスと云います」

 ラフな服装や髪型と裏腹に慇懃な態度で上条が丁寧な挨拶をした。
 慌てたようにもう一人の少女が言う。

「はじめまして! 私はインデックスっていうんだよ!」

 外人とは思えないナチュラルな日本語だったが、操祈が感心することはなかった。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:38:20.08 ID:0MjPP7+0o
 ――目次? 偽名にしても露骨すぎるじゃない。

 不信感を隠さなずに操祈が顔を顰める。眉をひそめる。
 其の態度に、

「あはは、偽名に思えるかもしれないけどこの子、他の名前はないわよ?」

 取り繕う笑みで御坂美琴が言った。
 顔の前で両手を振って、悪意があるわけではないと示す。
 ほらほら、私はなんにも持っていないわよ。
 相撲の時に両手を広げるのと同じ行為だ。

 上条当麻とインデックスの座るソファに九十度ずれたもう一つのソファに操祈と美琴が腰掛ける。
 順番はインデックス、上条。隣のソファに操祈、美琴。
 自然挟まれる形となる操祈は不自然ではない範囲でポシェットを膝の上にのせた。
 布地ごと、スイッチを押せるように。

 いつのまに注文したのか、ルームサービスのコーヒーが運ばれてくる。
 上質な生地のスーツ姿の執事――ホテルのサービスマン――が四人の前の低く広い卓に丁寧に皿を並べ、その場で一杯づつ香り高い豆と熱い湯とで灼熱のタールのような液体を淹れる。
 全ての作業を終え、丁寧な仕草で執事が体質したあと、暫く緊張が続いた。

 一息ついたあと、インデックスが話を続ける。
 皆がイギリス式の深いソーサーと熱いカップを手に持っていた。

「Index-Librorum-Prohibitorumっていうのが私の名前。ロザリーとかエリザベスとか、そういう普通の名前は覚えてないんだよ」

 英語ではない、ラテン語?
 禁書目録という概要だけは理解したが食蜂操祈の困惑は深まるばかりだ。どう考えても人名ではない。
 シスターの外観も相まって宗教書のタイトルか何かに思えてしまう。

 そして。

「覚えていない? 失礼なことを聞くようだけどもしかして貴女、記憶喪失なのかしらぁ?」

 心理掌握と呼ばれる最強の精神系能力者は記憶に関する言葉を聞き逃すことは出来なかった。
 ちらり、と横目で美琴を眺めれば其処に否定の視線はない。
 短い沈黙の後、

「――うん。私の記憶は二年ぐらいしかないんだよ」

 とインデックスという少女が小さく答えた。
 あっけらかんと。躊躇もなく。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:39:16.09 ID:0MjPP7+0o
「でも其れはもういいの。とうまが助けてくれたから」

 然して大雑把な説明が始まる。
 曰く、自分は完全記憶能力者であること。
 曰く、其のために脳がパンクして死亡してしまうため一年ごとに記憶を消去していたこと。
 曰く、其れは嘘で騙されていたこと。上条当麻がインデックスを救ったこと。
 曰く、上条当麻と出会ってからはモノクロの世界に色が付いたように全てが変わって見えたこと。

 感動的な話だ。
 なんて幻想的な物語。

 然しもう完結した御伽噺ではないか。

 熱いコーヒーを飲み干しながら考える。

 完全記憶能力を失わせることは心理掌握でも不可能だ。其れは脳の機能の問題であって心理的なものではない。
 サーキットを作り替えることは可能だが、人格が変貌する可能性もある。洗脳など甘いものではない。人の脳を用いた人造人間を生み出すようなものだ。
 食蜂操祈は人殺しにはなりたくない。
 十得ナイフは人を解体するための道具ではない。

「――悪いけど、記憶喪失は兎も角、完全記憶能力は私の修正力でも手が出せないわ。
 足し算も引き算も、歌を歌うことも忘れても構わないというのなら話は別だけど」

 優しくソーサーとカップとを置いて、ぎり、と食蜂操祈は奥歯を噛んだ。
 精神に関わることで敗北した。
 言ってみれば釘でも釜でも鍋でも作れる鍛冶職人に宇宙船を作れという程に乱暴な論理だ。
 それでも不可能ではないが、出来上がりは精々フランケンシュタイン博士の怪物だ。
 咲いている花を態々手折ってまで不自然な化け物を作りたくはない。

「ううん。いいの。私は私だもの。みさきに望んでいるものは別なことなんだよ」

 別のこと?
 操祈が眉を釣り上げる。
 なんだこの舞台は。非常にわかりづらい。
 御坂美琴に敬意を払って能力を使わずにいるが、これならば最初から思考を覗いてしまった方が良かった。
 小さな敗北を軽く流されて操祈のプライドが浮く。不安定になる。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:40:17.08 ID:0MjPP7+0o
「――数ヶ月後の私の周りの環境を整えて欲しい、というのがとりあえず――かな」

 横に座る御坂美琴が言う。彼女の方に操祈が視線を向ける。頬に手を当てて遠くを見るような目をした少女が映る。
 その姿がやけに艷めいていて操祈の疳に触った。

「とりあえず? 言っとくけど貸しは高いわよ。特に私のは」

「あははは。いいのいいの。願い事はひとつだけだもの。後は命令」

「命令? 御坂さん、あなた何様のつもり?」

 お嬢様は挑発に弱い。
 ましてや性格破綻者と呼ばれる高慢な超能力者の一人で、疳の虫が騒いでいる食蜂操祈にはその一言に過分なまでに反応した。
 余裕がなかったとも言える。
 過剰なまでの仕草で立ち上がりポシェットからリモコンを取り出す。
 無敵の宝剣のように掲げた其れを御坂美琴に突きつけた。

「効かないわよ?」

 カップを抱えたまま、見下したように御坂美琴が食蜂操祈を見上げて笑う。
 其の態度に青い静脈が額に浮かぶ。

 謝ると思っていた。
 行き過ぎた表現にこの少女が先ほどと同じように頭を下げると思っていた。
 然して、このような状況で他の二人は動かない。
 インデックスは目の前の争い事に困惑し、上条当麻は――ぞっとするような笑みを浮かべている。

「残念だわ。私、本当に嬉しかったのよ。御坂さんが私を頼ってくれて。少しは仲良くなれるかと思ったけれどもうおしまいね」

「おしまい? それはどうかしら。客席の側にいては劇を打ち切ることなど出来ないわよ。
 舞台に上がって欲しいの。
 其れがお願い。
 でも今はわからないか」

 元々弾丸は詰められていた。
 引き金はフェザータッチ。ちょっとしたくしゃみでも薬莢内で火薬が炸裂して線状痕を刻みながら弾丸は発射される。
 そんな関係が変わるかと期待していたのに。

「何よそれ。訳わかんない。私の洗脳力で素直になった後でゆっくりと話を聞くわ。
 心理掌握が超能力者のフィールドを打ち抜けないなんて幻想、壊してあげる」

「やってみれば?」

 崖の淵の岩を押すような一言で、食蜂操祈の理性が――キレた。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:41:07.64 ID:0MjPP7+0o
 細くしなやかな其の指が乱暴にリモコンのスイッチを押す。同時に彼女の自分だけの現実の中のスイッチも押される。
 千の針穴に万の麻糸を同時に通すような複雑怪奇な構築式が組み立てられ優れた頭脳が演算する。
 新しい世界が認識されて現実世界に落とされる。
 科学の生み出した魔法――超能力。

 ――異能は顕現しなかった。

 通じなかったのではない。
 発動しなかったのだ。

「――な、なんで――」

 演算は行われた。何一つ邪魔などされていない。コーラを飲んだらゲップが出るぐらいに確かなことが成立しない。
 いや違う。邪魔はされた。

 ――上条当麻の右腕。
 幻想殺し。ありとあらゆる異能を打ち砕く有り得ない力。
 その腕が、食蜂操祈の頭に乗せられていた。
 第一位、一方通行の能力すら打ち砕く其れに第五位程度が適う道理はない。

 黒い翼と節足動物の多脚を持つ悪魔。
 ナイフで切り裂いたように唇が真っ赤に笑っていた。
 その牙はまさに――蜘蛛。

 知識はあったのに。情報はあったのに。
 間抜けと言えば間抜けな話。
 隣り合って座らなければよかった。
 然し彼女は信じていたのだ――御坂美琴が邪悪な人間ではないと。

 蜘蛛の糸は強い光に溶け込んでしまうほど細く、獲物を逃さないほどに強い。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/21(土) 22:41:39.08 ID:0MjPP7+0o
「言ったはずよね。アンタのこと大嫌いって」

 自身の腹部を優しく撫でながら御坂美琴が立ち上がった。
 インデックスという少女が俯きながら、ごめんなさいなんだよ、と呟く。

「でも大丈夫。これからはきっと大好きになれるはずだから」

 女でも見惚れてしまいそうな美しい顔で淫婦が笑う。
 まるで堕天使。
 イブに林檎を齧らせる蛇のような美琴の手が伸びる。其れが操祈の顎にかけられた。

「最初だけよ? 辛いのは――ようこそ、当麻の世界へ」

 上条の手が退けられた瞬間、食蜂操祈の全身に電流が走る。
 全身の筋肉が硬直し、手足は曲がり腹筋が縮む。
 能力を失えば唯の少女に過ぎない操祈が最強の電磁能力者御坂美琴の電流に耐えられるわけがない。

 美しい金髪が帯電して羽のように広がった。

 ――蜘蛛の糸から逃れられる蝶など居なかった。 
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/21(土) 22:42:52.55 ID:0MjPP7+0o
以上です

囚われるのはお姫様の特権ですよね
アックアが囚われて騎士団長が救いに行っても絵にならんです 
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/23(月) 02:18:30.67 ID:fTUHN2Opo
 胎児が進化の夢を見るという仮説がある。
 母親の胎内で生物の進化をなぞりながら人間の形に成長し、一年足らずの時間の中で何億年もの生命の業を夢見、体験するのだという。
 生きるということがどれほどの拷問なのかを魂魄の隅まで叩き込まれる。
 誕生の日に赤ん坊が大声でなくのは現世という地獄に落ちたことに対する恐怖と悲鳴なのだという。

 馬鹿馬鹿しいまでの小説的な、まさに夢物語。
 脳という器質がなければモノを思うことができない、などという次元の話ではない。
 古臭くかびの生えた原子生物の記憶など持っていても何の役にも立たない。
 小鹿は生まれてすぐに立ち上がる。
 叩き込まれているのは生き延びるための術だ。
 ならば一番に記憶しておくべきは父母の体験だろう。そんなもの何処にあるというのか。

 勿論生物によって環境はある。
 無数の卵を産んで、多くが他の生物の、或いは母親自身の餌となり、それでも僅かながらも生き延びて、成長の度に数を減らしながら成熟していく生命もある。
 人間はそうではない。
 少なくない時間を掛けて自分で食事することも排便することも敵わない貧弱極まりない赤ん坊から大人という生き物に成長するのだ。
 胎児の夢で記憶していない出来事を共に歩むのだ。
 其のために親は長い時間を子に割くことになる。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/23(月) 02:19:05.43 ID:fTUHN2Opo
 食蜂操祈は銀のスプーンを銜えながら生まれ落ちた。
 食蜂という珍しい苗字の家は明治の頃に商業で大成功し戦後の混乱期を生き延びた資産家。
 たくましく知的な父親と若く優しい母親。
 更には何処の貴族様か、乳母まで付いていた。
 この場合、乳母というのは母親がわりに母乳をさずける女性を指して言うのではない。
 Nurse――日本語では看護婦と訳されてしまうが――子育て全般を行う女性がいた。
 作法、教育、運動、そして帝王学。全て彼女に叩き込まれた。

 彼女はもう一人の母であり年の離れた姉であり厳しくも温かい先生だった。

 柔らかな微笑みで絵本を読んでくれる姿に何度も何度も甘えた。
 父も母も仕事を持っていたため、食蜂操祈にとって家族とは彼女のことだった。
 幼稚園にも小学校にも通ったが、心の底から先生と呼んだのは彼女だけだった。

 ある日目撃してしまう。

 尊敬する先生と、敬愛する父親とが淫らにベットで乱れている光景を。

 家庭は壊れていた。
 忙しいはずの母親は若いツバメと有閑時間を重ねていた。
 ただただ父親と母親との間に離婚は体裁の悪いものという共通認識だけがあって、幼い操祈は其れに気付けなかった。

 飛び出すように家を出た。
 全てが信じられなくなった。
 だが小学生の操祈が行ける場所など限られている。
 親の庇護を受けなければ生きていける訳がない。
 胎児の夢は彼女に何も与えてはくれなかった。
 然しながら――幸運というべきか――この世界には一ヶ所だけ彼女の希望を叶える場所があった。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/23(月) 02:19:52.16 ID:fTUHN2Opo
 学園都市。

 科学と研究と、然して能力開発の実験都市。

 其処では優秀なモルモットを必要としていた。モルモットの餌代を吝嗇るような場所でもなかった。
 彼女は自分がどう扱われるかなど関係なかった。
 あの家から離れることさえ出来ればそれで良かった。
 食蜂操祈は転校する。
 転校して、能力を身につける。

 其の能力は。彼女が世界で一番欲しがっていた『心』を蹂躙するものだった。

 皮肉というしかない。
 学園都市の極々限られた選ばれし頭脳、超能力者。然して心理掌握という名前が示す能力。
 食蜂操祈は家族を再構成できる能力を身に付けた。
 彼女の意思で優しく暖かな居心地のいい世界を構築できる。

 だからこそ――絶望する。

 思いのままに心が操れるのならば。
 結局彼ら彼女らは食蜂操祈の一部でしかない。
 愛が欲しければきっと愛を囁くだろう。全身で、命懸けで愛してくれるだろう。

 だからなんだ。

 そんなものは自己満足に過ぎない。
 自分という世界が拡張しただけ。

 認識する側の人間である食蜂操祈は結局世界中に満ちているはずの愛を全て偽物にしてしまった。
 彼女の望む形で食蜂操祈という個人を愛してくれる人間はもういない。
 食蜂操祈が本気で誰かを好きになっても、其の誰かの心を自由に操れるのならば、最早恋でも愛でもない。
 絶対的な支配者になって、支配されるという特権を失ったのだ。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/23(月) 02:20:38.06 ID:fTUHN2Opo
 常盤台で派閥なんていう玩具を弄り回していたのは憂さ晴らしだったのかもしれない。
 操祈を取り巻く少女たちは心の底から彼女を慕っていた。
 心を覗ける操祈には其れが痛いほどわかっていた。
 だから玩具にしていても傷つけたりはしなかった。

 でも、対等じゃない。
 対等なんかじゃない。
 ライオンと兎の間に友情も愛情も存在しない。

 嫌われているのならば逆に良かった。
 然し頼られていた。好かれていた。
 其れを偽物に染め変えることが出来る自分が嫌いだった。
 嫌いだけれども、自分の能力を誇ってもいた。
 この能力がなければ自分は父親と尊敬する女性の情事を見た時と同じ無力な少女に戻ってしまうから。
 自分を支えるものが他になかった。

 だから能力の通じない御坂美琴が好きだった。
 子供のまま大人以上の能力をもってしまって、然して心を信用できないから素直になんかなれなかったけれど。
 対等なのは彼女ぐらいしかいなかった。
 年下のはずの御坂美琴が眩しかった。
 自分と同じ超能力者で、周囲から輪になって慕われて、それでもその輪の一員になれなくて。

 似ていたけれど似ていなかった。

 彼女には頼れる後輩がいて。友人ができて。愛する人が出来て。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/23(月) 02:21:03.53 ID:fTUHN2Opo
 羨ましくて嫉妬した。
 彼女のクローンにちょっかいを出したりもした。
 ライオンが甘えても悲劇しか生まないように其れは唯の蹂躙でしかなかったけれども。

 色々と抱えていた。
 転じて憎んだりもした。でも憎みきれなかった。
 天狗として伸び続けた鼻のせいで自分から何かをすることなんか出来なかった。

 だから。
 頼ってきてくれて本当に嬉しかった。
 貸しとか借りとか、そんな言葉でしか遣り取り出来なかったけれども、同じ場所に立っていた。
 そう思っていた。

 本当の意味での友達が出来るかもしれない。
 あの日壊してしまった私の世界を取り戻せるかもしれない。

 深い深い意識の闇の奥で食蜂操祈は甘えた。

 夢が都合良く構成されている。無意識のまま、無意識の望むとおりに。
 だから自分が囚われてることに気づかない。
 ほんの数分の夢。
 胎児の夢。
 生まれ落ちて悲鳴を上げる直前の夢。

 彼女の意識の外。肉体が存在する三次元世界でお姫様は囚われのまま眠っている。
 ピンと張ったベットのシーツに沈んで。
 シーツの皺はまるで食蜂操祈を捕まえている蜘蛛の巣のよう。
 ほんの僅かの時間。
 最後の休息。
 これから起きる悪夢のような現実がすぐ傍に立っていることに超能力者第五位の脳はまだ気づいていなかった。
 
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:41:05.64 ID:2FXIIHtGo
 羊水のような熱帯の海のような濁ったあたたかな世界から食蜂操祈の意識がゆっくり浮かび上がってくる。
 まだ輪郭も取り戻せない意識の中で感じたのは何か冷たくて滑らかなものが自分の首筋と豊かな胸とに触れていることだった。
 鉛のように重い瞼がゆっくりと開いていく。

「う……」

「あら、お目覚めかしら」

 聞き覚えのある声で操祈の意識が明確になった。
 目と鼻の距離に羨望と憎悪の顔がある。
 白々しい台詞を吐きながら御坂美琴が食蜂操祈を覗き込んでいた。
 少女が少女に跨るような形で顔を寄せている。
 反射的に起き上がろうとするが肩口を抑えられて簡単に組み伏せられる。

 肉体の感覚で状況を把握するとどうやら自分はベットに寝かされているらしい。
 清潔なシーツの匂いがする。
 腕は後ろ手で縛られている。
 首に何かを巻き付けられている。
 服は脱がされていて上下の下着と肘上まである手袋だけの姿。
 肌寒さのバランスがおかしい。
 何か、聞き覚えのない音がする。
 ダメだ、この格好では其れが見えない。

「御坂さん、何のつもり? こんなことをしてただで済むと思っているの!?」

 目と言葉だけでも人を殺せそうな其れを美琴は軽く受け流す。
 嘗ての常盤台の生活であれば能力を使わなくても相手に卑屈な迄に頭を下げさせた魔力は彼女には効かない。
 美琴の左手が操祈の首筋に伸びた。
 先程なかったエンジェルアローのリングが光る。

 触れた其れは一方通行がミサカネットワークの補助を受ける受信機として用いているチョーカーととてもよく似ていた。
 色は緋。
 空気中を飛び交う様々な電磁波からエネルギーを吸い取って、半永久的に起動し続ける超技術だ。
 学園都市最高の電磁能力者による一点物である。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:41:44.66 ID:2FXIIHtGo
「能力、使えないでしょ?」

 言われて、操祈が能力発動のための演算を行う。然し結果がでてこない。
 心理掌握が発動しない。
 何もできない。

「そんな――嘘――」

 驚愕に目を丸くする操祈。そんな彼女を美琴が笑う。

「良かったわ。AIMジャマーの軽量化に手間はかかったけど。インデックスの頭覗かれて自動書記が発動しちゃうとアンタもこの子も危険だからね」

 軽量化どころの話ではない。理論が似ているだけで別物だ。大型客船を丸ごとカヌー一艘に詰め込んだようなものだ。
 革新する技術は魔法と変わらない。
 その波の中ですら一線を画す天才は魔術師と呼ぶに似る。
 御坂美琴は紛れも無く天才だった。
 天才の毒が食蜂操祈に埋め込まれていた。

「大丈夫よ。チョーカーを取れば能力は元に戻るわ。一時的に抑えさせてもらっただけよ」

 唖然とする操祈に笑いかける顔はまさに淫婦。黒いクリームのような蕩ける闇を唇に乗せて円熟の娼婦のように妖艶に微笑む。
 妖の巫女が現実を理解できず指一本動かせない操祈を抱きしめるように上体を起こさせる。
 自然、彼女の視線が部屋全てを見通せるようになった。

 十疊程の洋室。高級な壁掛け時計やスタンドなどの調度品。壁紙は白。雨を隠すカーテンは緑色で毛足の長いカーペットが敷き詰められている。

 其処に居るのは椅子に腰掛けた裸体の男と。

 床に座って男の股ぐらに頭を埋めている美しい銀髪のシスター装束の少女。

 間の空いた膝掛けの内側に何かを舐めている口先だけが見える。
 先程から続いている音は其処から発生していた。

 何をしているのだろう。
 操祈が訝しむ。
 言葉で知っていても映像としての其れを知らないから脳の中で情報の連結が遅れた。
 僅かな時間の後、一瞬で気づけなかったのが愚かしいとばかりの連鎖反応が脳の中で起こる。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:42:22.63 ID:2FXIIHtGo
「あ、貴方達! 何をしているのよ!」

 口淫。
 勃起した男性のペニスを女性が口で慰める行為。
 きっとあの日も行われていたおぞましい何か。
 顔を赤くしながらも清廉を尊ぶような声で操祈が叫ぶ。

 其の声に銀髪の少女は反応せず、ツンツン頭の少年が顔だけを此方に向けて、

「フェラチオだよ。見ればわかるだろ?」

 と、当たり前のことを当たり前に理解できない愚かさを揶揄うように笑った。
 その眼は異様に輝いている。
 瞳の光の意味を食蜂操祈は気付くことが出来ない。

 その瞬間もシスターの口淫は止まらない。
 ぴちゃりぴちゃりと音を立てて舌を絡め、ぞぞりと音を立てて吸う。
 清浄な神の嫁としての衣を纏いながらインデックスが上条当麻に奉仕している。

 その光景を、食蜂操祈は見続けてしまう。
 首を抑えられているわけでも瞼を切り取られているわけでもないのに。
 魅入られる、という表現通りに其の淫らな光景から目が話せなかった。

 ごくり、と自身が唾を飲む音が木霊する。

「み、御坂さん、貴女どういうこと? この男と貴女は付き合っているんじゃなかったの?」

 立て続けに起こる理解不能な現状、制御不能の感情に当然の疑問が爆発する。
 恋人の目の前で他の女に奉仕させている男も、其れを黙ってみている女も、然して此処に囚われた自分の役割が何なのかも、一つも理解できない。
 心を読めないという唯其れだけのことで食蜂操祈の立っている場所が崩壊の悲鳴を上げる。

「付き合っているわ。愛し合っているわよ。結婚するんですもの、私達。当麻が十八になったら籍を入れるの」

 恍惚の顔で自分の男と自分でない女が絡み合っている姿を見る御坂美琴。見せつけるように差し出した左手の薬指に虹色のリングが輝いている。
 安っぽいチタン製の、自分で染色した世界にひと組みだけのリング。

「同じものを当麻もしてるわ。日常生活だと目立つから付けられないけど」

 さも可笑しくて堪らないと喉を鳴らす美琴。
 その瞬間にも美しいシスターの祈りにも似た口淫が続けられている。
 見せつけられなくとも聞こえるように、派手に、強く。

「何で――其処までの関係なら他の女なんか入ってくるわけが――」

 理解できない。其れだけは理解できない。
 愛に包まれた男女のつがいは一人が一人を愛し、一人が一人の愛に応えるものではないのか。
 儒教や女性人権論とか、そんな話ではない。
 社会を構成するための常識とはそういうものではないのか。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:43:53.25 ID:2FXIIHtGo
「私も最初は嫌だったわ。他の女と寝ている自分の男だなんて。インデックスと仲良くなれたのも最近の話よ」

 笑う。淫蕩に笑う。耳元で囁き続ける。

「でも、愛してしまったら仕方がないの。自分のことを向いてくれないからって嫌いになれるわけじゃない。
 当麻の中には私の居場所はちゃんとあって、インデックスの居場所もあった。其れだけよ。
 社会も戸籍もパラダイムも関係ない。一夫一婦制だって国民皆兵のための制度だし」

 尤も、と美琴が言葉を続ける。

「当麻、パパに凄く殴られたわよ? 最終的には許してもらったけど。
 インデックスいい子だしね。
 当麻のお義父さんにもきつく言われたなぁ。
 でも不思議ね。ママとお義母さんは最初から分かってたみたいだった」

 女ってさ、支配されたいって本能があるのよ。
 そう女の声で囁き続ける。
 淫らな光景と反社会的な声に操祈は悲鳴を上げることも出来ない。

「形だけの愛情のない家庭なんかより何倍も素敵だと思わない? 愛してくれているし愛に応えてもくれる。
 心の底まで惚れてしまって、でも誰かに取られたから諦めるなんてことも出来ない。
 全てのヒトにそんな生き方をしろとは思わないけど、こういう生き方を否定する必要はない」

 だけど

「今の社会では居場所がなくなるのも事実。人間は群れの中の生き物でもあるし、他の個体からの嫉妬もあるわ。
 でも、食蜂先輩の能力があればそんな煩わしいものに疲れることもなくなるの。だからアンタを此処に連れてきた」

 傲慢で滑稽な論理を横車させるために食蜂操祈は捕まえられた。
 そもそも、御坂美琴の台詞には理解させようという意思すらない。
 唯の状況説明。一方的で支配的な。
 操祈の人権などこの空間には載っていない。台本としては三流もいいところだ。ト書きからして間違っている。

「巫山戯ないで! こんな淫らで如何わしいことに私の支配力を使うつもりなんてないわ!」

 漸くのように頭に血がのぼる。怒鳴りつける。
 能力が使えなかろうとも超能力者。誇りを失ったわけではない。
 いや、其れ以前の話だ。
 荒唐無稽にも程がある。
 統治者には統治者の意地があるのだ。例え縄に繋がれて罪人になろうとも。

「でしょうね。だから、アンタには当麻の奴隷になってもらうわ」

 支配される側の人間になってもらうと、御坂美琴が宣言した。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:45:41.73 ID:2FXIIHtGo
 其の言葉に、インデックスを押しのけながらゆらりと上条当麻が立つ。
 つま先で長い毛のカーペットの艶波を確かめ、獣の笑みを浮かべて操祈の前に塞がる。
 糸一本纏っていない――エンジェルアローのリングだけが左手にある――彼の股間は隆々とそびえ立ちインデックスの唾液にぬらぬらと濡れていた。
 異様な目付きで見下ろしてくる。

(何――この眼――なに――)

 自分が客観的に見ても美人だと知っていて、然して自分に視線を遣る男の獣欲を理解してしまう心理掌握であったが、これほどまでにどす黒い視線は知らない。
 地獄の闇を大釜で煮詰めたような漆黒の光が圧倒的な暴力装置となって操祈を貫く。
 下着姿の自分を見ている。欲情していることを隠さない雄の視線。

 上条の股間の異物から目を逸らして、抱えている美琴から逃れようと藻掻いて。
 興奮しても激怒しても驚愕しても、怯えることだけはなかった精神操作系最強の能力者が、

「いやぁ!」

 歳相応の乙女のような悲鳴を上げた。

 くの字姿に折れている扇情的な脚も括れたウエストも自然と揺れてしまう大きな乳房も、全部、隠せていない。下着などあの視線を防ぐ盾にはならない。
 通りすがる男たちの心の中で何ども犯され蹂躙され、メスの姿を曝け出すという妄想と妄像とを見せ付けられ、自身の女としてのスペックを知っている操祈であったが、
実際の男の視線を直接肌に受けるのは初めてだった。

「見ないで! 見ないでよ、変態!」

 大声で叫んだ、次の瞬間。
 大きな乾いた音がした。
 左の頬に焼け付くような痛みがあった。
 何が起きたか分からぬまま、大きな困惑に頭から突き落とされてしまった。
 数瞬の後、やっと理解する。

(たたか――れた――)

 赤くなっていた顔から血の気が引いていく。
 食蜂操祈は暴力を振るわれたことがない。加害者になったことはあっても被害者になったことはない。
 家庭が壊れていたとしても、蝶よ花よと可愛がられて育ち、学園都市では周囲の人間を支配して育ってきたのだ。
 ショックは大きかった。

「アンタ、意外と礼儀を知らないのね。人に向かって変態はないと思うんだけど」

 淡々と諭す美琴の声に再び怒りが湧き上がってくる。

「貴方達! こんなことをしてただじゃ済まなさ――」

 一気にまくし立てようとした言葉は再度頬を張られてかき消される。先程よりも強い衝撃に脳の中が痺れてくる。
 操祈の中の憤怒と屈辱の中に、暴力に対する恐怖が混じっていた。
 倒れ込まなかったのは支えられているからに過ぎない。
 混乱したままの操祈の双眸がベットに容赦なく上がり込んでくる上条の姿を捉える。

「うそ――嘘でしょう――」

 漸く。
 そう、漸く食蜂操祈は理解する。
 自分は囚われの蝶で、これから蜘蛛の餌食になるのだと。
 御坂美琴が言った、奴隷、という言葉は比喩でも何でもなく文字通りの意味だと。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:47:11.97 ID:2FXIIHtGo
 自分が女だということは知っている。様々な男達の妄想の中で嬲られていることも知っている。
 然し狂気のようなあの肉塊で此れから処女を穢されるのだと理解してしまえばその恐怖は先程の暴力などと比べ物にならなかった。
 ガクガクと顎の骨が揺れる。眦に涙が浮かぶ。

 それでも完全には屈しないのは超能力者としてのプライドか、お嬢様としての矜持か。

「いい目付きだな。最高だ」

 本能が身の危険を感じて身体を逃そうとしてもしっかりと強く美琴に抱きしめられていて逃げ出せない。

「変なことしたら絶対に許さな――」

 再び、乾いた音が鳴る。
 覚悟を決めていたとしても其の痛みは鋭く操祈を貫く。
 暴力はいけないんだよ、と口元を濡らしたシスターが止めなければ何度打たれただろうか。

「いいきみね。アンタが妹達にしたこと、忘れたわけじゃないんでしょ? あの子達はアンタの玩具になるために存在してるわけじゃない」

 酷いことをした、という自覚はあるが既に決着がついたものだと思っていた操祈は美琴の怒りが理解できない。
 然し積年の恨みを吐き出すような言葉に暴力に対するものとは違う別種の恐怖が襲いかかる。
 虎の尾を踏んだ。竜の逆鱗に触れた。言葉はなんでもいい。
 兎に角、絶対に許されない何かを自分はしてしまっていたのだ。

 精神を操作できるが故に完全なる憎悪を目の当たりにすることのなかった操祈がはじめてしった恐怖。
 ぎり、と彼女を食む腕が強くなる。より強く抱きしめられる。
 少女の恐るべき腕力に不安が高まっていく。

 然して気づく。

 御坂美琴の肉体がおかしい、と。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:48:52.70 ID:2FXIIHtGo
 柔らかな胸はいい。しなやかな腕もいい。
 然し腹部のこれはなんだ。
 後ろ手に組まされた手のひらにあたる感触。
 妙に固くて存在感があって、本来ならば其処に存在しないはずのもの。

 下腹部。

 子宮。

 妊娠。

 真逆。

「み、御坂さん――貴女、本当に妊娠しているの?」

 喫茶店で、冗談のように言った台詞を思い出す。
 あれが冗談でなかったのならば。
 そういえば先ほど、『アンタもこの子も危険だからね』と言っていた。
 この子、とは誰だ?

「あら、やっと気づいたの? 今日で四ヶ月目に入ったの。ようやく安定期に入ったわ」

 あの癪な艷やかさは母になったからか。
 にんまりと笑う表情に食蜂操祈は恐怖する。
 再度、更に異なる恐怖。日常から切り離されているという違和感。
 自分より年若い少女が妊娠しているという信じられない、それでいて圧倒的な存在感。

 父親は目の前の少年。
 傲慢に裸のままに逸物を屹立させ、此れから自分を犯そうとしている雄。

「狂ってる――狂ってるわ――」

 此れまで感じたことのなかった複数の恐怖。
 暴力。復讐。狂気。
 学園都市の心理掌握は心というものの重さに初めて気づいた。
 こんな恐ろしいものを自分は玩具にしていたのか。

 其れが形になって目の前にいる。
 精一杯の強がりなんてもう何処にもなかった。
 ほんの一瞬、美琴が手を緩めた瞬間、素早い動きで上条当麻が操祈のブラを外した。
 精巧なレースの其れが紙の如くに散り、艷やかな肌が形作る美しい谷間と、それを支える豊かな乳房が丸出しになる。
 本能なのか、淡い色の乳首はピンと張っていた。
 おう、と感嘆の声を上条が発する。

「すごいんだよ――みことよりおっきいかも――」

 後ろから顔を赤くして覗き込んでいたインデックスも思わず声に出す。
 興奮の色を隠さない美琴が憎々し気に其の乳首を摘みあげた。

「きひぃっ!」

 強烈な痛みに悲鳴を上げる操祈。もう、涙を止めることさえできない。
 上条当麻に組み伏せられる。美しい金髪がシーツの上に漣として走る。
 何時の間にか、御坂美琴は身体を離していた。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:51:07.56 ID:2FXIIHtGo
「美琴。カメラの準備は出来てるな」

「もちろんよ、当麻。自動で何時間でも撮り続けるわ」

 カメラが何処にあるのか、操祈には見えない。
 見えないが、御坂美琴がそういうのだから間違いはない。
 つまり、此れまでのこと、此れからのことは全て記録される。
 全て。
 例外なく。
 此れから陵辱される全てが記録されてしまう。

「いや、やめて――お願い――謝るから――何でもするから――」

 ボロボロと涙を流して懇願する。
 誰も応えない。
 銀髪の少女の小さな声が、ごめんなさい、と響いただけで。
 きつく目を閉じて捻じ切れんばかりに横をむいて、少しでも現実から逃れようとして。
 後ろ手に縛られているから胸を隠すこともできない。男の視線に晒すことなどはじめての経験。
 高慢に澄ましている美貌が様々な恐怖に塗りつぶされていく。

「いやよ――見ないで――」

 何時もならば、操っちゃうんだゾ☆、とでも言ってリモコンを翳してそれで終わり。
 だが其れが出来ない。
 リモコンも能力も奪われて、余裕を失って、然して純潔を奪われようとしている。

 三人の粘つく視線を双乳に感じながらも其れを防ぐ術すらない。獣の吐息を感じる。
 囚われの蝶は此れから甚振られる瞬間が来ることが刹那の単位であろうと後になればいいと必死に願うことしか出来なかった。

 然し幻想は容易く殺される。

「いや! やめなさい! やめてぇ!」

 興奮した上条が乱暴に乳房を鷲掴みにしたのだ。柔らかく、甘く、溶けるような大切な其れを乱暴に扱われて悔しくて涙が溢れる。
 睨みつけてももう魔力はない。

「すげぇな。浜面のところの麦野さんぐらいにはあるのかな。黄泉川先生程じゃないけど。あのドサンピン、こんなもの自由にしてたのか」

 知らない名前を出され、困惑しながらも羞恥に顔を染める。
 粘着質な声の質に萎えかけた怒りが蘇ってくる。
 御坂美琴という素晴らしい彼女が居て、婚約までして、子供まで生まれるというのに何でこの男は私の肉体を弄ぼうというのか。
 父親と同じ。家庭なんかどうでもいいと信じる獣以下の生き物だ。
 何でこんな男の囁く愛を信じられるのか。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:52:19.40 ID:2FXIIHtGo
「御坂さん! 貴女こんな男で本当にいいの!? こんな獣以下の、性欲しかないような男で!」

 絶叫した。喉が裂けよとばかりに絶叫した。
 然し返答は。

「そうよ。当麻がいいの。当麻じゃなきゃダメなの」

 清々しいほどまでに信じきった結論。
 其れが愛だと言われれば誰が否定できるというのだろう。だが、操祈は否定して欲しかった。
 星が溢れんばかりの瞳を涙で潤ませながら、必死に上条当麻を睨みつける。
 異能でもなんでもない其れは彼に髪一本ほどの傷も与えられない。
 寧ろ、乳房を乱暴に扱われて全身に震えを走らせてしまった。

「きっと、すぐわかると思うんだよ。とうまは、壊れてしまったけれど、でもやっぱり世界を救った人なんだから」

 訳の分からないことを銀髪の少女が言う。

「そうよ。当麻は凄いの。最高の男よ。味わってもらえることを光栄に思いなさい」

 超能力者第三位が囀る。
 嬉しそうに自分の腹部を撫でながら。
 銀髪の少女が心底羨ましそうな眼で見ている。

 眉間に皺を寄せて耐えても十本の指は柔らかい乳房を蹂躙し続ける。処女肉である乳肉への蹂躙はそのまま精神への汚濁となっていく。

「離して! 離しなさい!」

 乳房を握りつぶされる痛みに全身を発条にして抵抗しようにも、其れは男と女。結果など見えている。

「騒いでも無駄よ? 誰も助けに何か来やしない。能力以外に何もないアンタを誰が救ってくれるというの?」

 自信に満ち溢れた、それでいて色めいた声で御坂美琴が言う。妖しい唇が赤い。
 自分でない女が陵辱されている光景に、電磁能力者も神の娘も吐息を荒くしている。
 この階はこの一室だけ。隣の部屋なんて存在しない。
 窓の向こうは雨で、空中浮遊ができる能力者がいたとしてもこんな日に散歩をすることなんてない。

 犯されるという恐怖に押しつぶされそうになる。
 それでもただ此の儘咀嚼されるのは嫌だった。ほんの数時間前までは憂いながら単調な日常を味わっていたというのに、何故。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:53:08.56 ID:2FXIIHtGo
 絶望がやって来る。犯されてしまう。其れを撮られてしまう。
 初体験がレイプで、然も半永久的にメディアに残るなんて、気高い女王には耐えられないことだった。
 会ったばかりの男に生まれてきてからずっと守ってきた処女を奪われるのか。

「いやぁ! 絶対に、絶対にそんなのはいやぁぁあああああ!!!!」

 恐怖。恐怖恐怖。
 この短時間に様々な恐怖を知って、体験させられて、背筋を凍らせて。
 だが此れだけは別だ。
 これだけは。これだけは。

 傲慢で乱暴で、世間知らずだとしても。
 尊敬でき、敬愛する人に優しく時を語られて、甘く歌うようにベットに導かれて。
 甘いクリームのような一時の中で其れを二人で添い遂げる。
 そんな夢をみたことぐらいはある。
 いや、今でもそう思っている。
 だからこそ。狂ったように絶叫する。

 ――毒蜘蛛を喜ばせるだけだと言うことに気付かない。

 復讐心に燃える美琴も、哀れな子羊が捧げられる姿に陶酔するインデックスも、壊れた魂の罅に魔物を飼う上条当麻も。
 皆が皆悦んでいる。

「時間はたっぷりあるからな。楽しもうぜ」

「いや、やめなさい! やめて!」

 同じ言葉ばかりを繰り返し、語彙を失った操祈。
 そんな彼女の身体を、指一本で触れるか触れないか、ギリギリのところでサワサワとなぞる。
 擽ったさと気色悪さに肉体が反応する。
 白いミルクのような肌に軽いタッチで触れられて、

「んんっ」

 思わず操祈の口から甘い声が出た。

 其の声に、誰よりも食蜂操祈が反応する。

(そんな――嘘――)

 優しく刷るような愛撫が新鮮すぎて、おぞましさの中に白い光が混じっていた。
 鳥肌が立ちそうな世界の中でその瞬間だけが甘く心地よく、だからこそ認められない。
 微妙な感触が快感だなんて認められる訳がない。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:54:17.61 ID:2FXIIHtGo
「ふふ。身体は正直なのね」

 嘲笑うように美琴が言う。
 見透かされたような台詞。精神操作系能力者の頂点に立つ自分が心を覗かれている。強い苛立ちが芽生えるも、続けられる優しいタッチに声を噛み締める。
 余計なことを言えば甘い声が漏れてしまう。
 必死に下唇を噛んだ。

(そんなことはない――気持ち悪いだけ――)

 心の中で必死に自分に言い聞かせる。
 その間にも男の愛撫は広がっていって首筋から太腿までを余すことなく指先でタップを結んでいく。

 然して、

「ひっ――」

 ぬるりとナメクジのような舌先が食蜂操祈の首筋を舐めた。
 ぞわわっ、と全身に怖気が走っていき、舐められて濡れた痕が気持ち悪く皮膚に残り続ける。
 その領域が拡大して、広がって、温かくなる。
 唇で吸われ、歯を立てられ、白い首筋が赤くなる。
 染まりきった頃、唯の皮膚がまるで粘膜のように敏感になっていた。

 荒い息をぶつけられるたびに過剰に感じてしまう。

(気持ち、悪い――)

 良かろうと悪かろうと、感じてしまう。
 自分の肉体なのに自分のものにならない。此れまで散々食蜂操祈が他人に行なってきたことのほんの一部が彼女自身に跳ね返ってきている。

 舌と唇が首筋を舐っている間、左手は豊満な腰に手を回され、右手は同じく豊満な乳房を弄っている。
 興奮の鼻息を感じながら、柔らかな乳房と頂点の乳首とを操られる。
 高貴なお嬢様の柔らかな乳房はマシュマロのように柔らかく白く、甘い。
 其の表面で滑り踊る指は乱暴で繊細で官能的だった。

(気持ち悪いだけだわぁ――)

 思わず漏れそうになる艶っぽい溜息を殺しながら、然し殺しきれず漏れていることに気付きもせず、必死に感じないフリをする操祈。
 それでも敏感な乳首をコリコリと弄られると鼻から抜けるような甘い息が漏れてしまう。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:56:11.79 ID:2FXIIHtGo
「あ――やめ――あふぅ――」

 小さめな乳輪に柔らかなタッチで踊らされて、ちりちりと甘い電流が走る。

(こんな男に――私の精神力が――負けてたまるか――)

 心の中で強がる。
 最早彼女の世界は其処にしかない。
 だが侵食は圧倒的で、初な乙女に耐えられる道理などない。
 しつこく乳輪を撫で回されて、首筋を舐められて、やがて甘い溜息が当たり前のように繰り返されるようになった。

 火照っている。
 身体の芯に火がついたよう。
 粘膜となった首筋が熱い。もっと上を、そう、唇を嬲ってくれればいいのに。

 そんな思いすらして、だからこそ食蜂操祈は抵抗する。
 自分から求めていることなど認めるわけにはいかない。
 そんな彼女を脅かすように上条は乳首を弄ぶ。快楽に乙女が声を漏らす。

「はぁ……触らないで……もう、いいでしょう……」

 涙を浮かべて懇願する。
 無意味だということは百も承知だ。それでも毛筋ほどでも可能性があるのならば縋らざるをえなかった。
 余りにもの情けなさに涙が溢れてくる。
 心から媚びているわけではない。
 然しストックホルム症候群ではないが、絶対的な陵辱者に対して僅かなりとも媚びるなというのは酷だ。
 ヴァージンならばなおのことだろう。

 だが

「今更媚びられてもねぇ。アンタの罪は消えないのよ」

 はん、と鼻で答えて御坂美琴が嘲笑する。三日月のように釣り上がった唇から溢れる歯が牙のように尖って見える。
 凛と澄ましたお嬢様が肉食獣の顔で言う。

「でも安心して。当麻の女になったら全部許してあげる。私の当麻に幸せをくれるヒトを憎んだりはしないわ」

 眉を八の字にして嘆く食蜂操祈に告げられたのは処刑の宣言。
 分かりきっていたこととはいえ、最後の希望を撃ち抜かれて金髪の少女が大粒の涙を零した。
 瞬間、上条当麻の両腕が食蜂操祈の両乳首を甘く抓あげる。

「あん!」

 強い電流――然し先ほど美琴から味わされたアレとは違う甘い切ない其れ――を流されたような刺激に操祈の背中が反る。
 まるで胸を突き出すような、もっとと強請っているようにすら見える姿勢。
 あは、と甘い吐息が口から漏れる。
 固く尖った乳首から感じる刺激は弱く強く甘く苦い。練られたテクニックは百戦錬磨とはいかなくとも経験のない処女には逆らえないほど見事なものだった。
 好きでもない男に嬲られてやがて意識が甘く混濁していく。

「あ、いや! うん、やめてぇ――」

 嫌がる声が甘い。
 上条当麻に対する圧倒的な嫌悪感が徐々に薄れていく。
 おっぱいの先に意識が集中して、激しい羞恥心の中で初めて誰かから与えられる感覚にふわりと酔い始めていく。

「うっとりしてるんだよ。みさき、初めてなのにそんなに感じてて羨ましいんだよ――」

 何時の間にか、二人の少女が操祈の左右に横たわっている。
 インデックスは右。美琴は左。
 覗き込む二人の視線も甘く火照っている。
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/25(水) 00:57:04.28 ID:2FXIIHtGo
「恥ずかしくないの? 処女のくせにこんなに乳首で感じちゃって。淫乱なのかしら? 当麻のテクは凄いから仕方ないのかもしれないけど」

 ねぇインデックス、と美琴が笑えば碧眼のシスターは顔を赤くして俯く。
 二人の遣り取りも操祈には白く遠くに聞こえる。
 それでも恥ずかしい自分の顔が見られていることは理解している。
 然し、顔を隠す手段はない。
 右を向けばインデックスに、左を見れば美琴に覗かれてしまう。
 好き勝手なことを言われて、朦朧とする意識の中で悔し涙を浮かべることしかできない。

 両の乳首から蜘蛛の巣の様に広がっていく快楽に食蜂操祈は抗えない。後ろめたくて心地よくて、甘くて甘い。

「いや……もう、いやぁ……」

 悲鳴は嬌声。
 上条当麻の逞しい肉体に押さえ込まれて逃げ出すことも出来ない。
 じんわりと、自分の性器が濡れていくのを食蜂操祈は自覚する。其れは下着のクロッチだけでは抑えきれなくなっていた。性臭が漂い始める。
 然して其れに気づかない三人ではない。

「濡れてるね、みさき」

 インデックスが言う。

「淫らな女ね、アンタ」

 美琴が見下げる。

「楽しんでくれて何よりだよ。最高だな、オマエ」

 見えない黒い何かを放射状に背中から広げて上条当麻が言う。
 食蜂操祈の甘い体臭を心の底から楽しみ、彼女の雌の部分を引き出しておいて、真円の如く両目を見開いて。
 けらけらと、けらけらと笑う。
 其れは正に狂人。
 彼女の身体をベットに放り投げて、膝立ちのままけらけらと笑う。
 股間の淫獣は激って、非道く下賎で淫らな臭いを放っている。

「上条さんの息子も大喜びですよ。こんなにでかくなってる」

 怯えながらも、甘く溜息を重ねる操祈の目には、其れが怪物にも異物にも見えない。
 嫌いなのに。
 男なんて大嫌いなはずなのに。
 女をメスとしてしか見ないで、大切な世界を壊してしまう野蛮な生き物など滅んでしまえばいいとすら思っていたはずなのに。

 ――目が離せない。

 怖い、怖い怖い。
 今この瞬間でも逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
 あんなものを見せつけられて怖くないはずがない。
 それなのに。それなのにそれなのに。

 銀髪のシスターが頬を染めて、茶髪の妊婦は嬉しそうに羨ましそうに、然して自分の心が分からなくなった心理掌握が何かに怯え何かに縋りながら。

 雄の性器を見つめている。
 恐ろしいほど巨大。どす黒くパンパンに膨れ上がった先端部分にうどんのような血管がのたうち回っている極太の肉竿。
 醜悪極まりない其れを三人の女が見ている。 
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/01/26(木) 00:04:07.78 ID:7WN9z+1Do
「やっぱりこのデカパイで楽しませてもらおうかな」

 下司な笑いを貼り付けたまま、上条当麻が腰を食蜂操祈の腹の上にのせ、強欲を胸の谷間に収める。

「や――」

 内蔵を圧迫され、肺を押され、呼吸が苦しい中必死に悲鳴を上げる操祈。
 か細い声を無視して柔らかな乳房の狭間に置かれた其れは、グロテスクな顔をして不快な臭いを放って、然して口付けをせがむかのように迫ってきている。
 鈴口から透明な液体を零して、其れが垂れて肌に落ちそうなほど。
 閉じられない瞳で操祈は見ている。眉間に縦皺を刻みながらいやいやと首を振っても距離は何も変わらない。柔らかな金髪が体温で上気した匂いを撒き散らすだけだった。

「美琴は大切な時期だから乱暴にできないし、インデックスはペッタンコだからなぁ。上条さん、初めてのパイズリですよ」

 血走った目で見下ろしながら上条当麻というオスが牙を剥く。
 高飛車なお嬢様の乳肉をペニスで汚すという行為に彼は間違いなく高ぶっている。
 極上の美乳を左右から中央に寄せて、猛然と腰を使い始めた。

「や、な、なに?」

 訳が分からない。
 両の乳房の狭間で熱い何かが前後している。
 溢れ出したカウパー氏線液が僅かながらの潤滑油になってはいるが、そんなもの肉と肉の抵抗を殺すには至らない。
 醜悪な肉塊が大切な、赤ん坊にミルクを与えるための大切な装置を欲望の吐口とばかりに蹂躙する。
 その光景を、まるで自分ではないもののような視線で見ながらも、

「やめてぇ! お願いだからやめてぇ!!」

 無意味な悲鳴を発する。
 必死に顔を逸らす。
 然し視線に入らない訳がない。必死に目を閉じても唇近くまで感じる熱量に操祈は怯えてしまう。

「くぅ! 柔けぇなぁ。すげぇ興奮する。畜生、浜面の野郎、こんな気持ちいいことしてたのかよ!」

 誰の何とを比べているのか判らない。
 判らないがこんな下劣な声で感嘆されても操祈は惨めになるだけだ。
 女であることが、こんなにも情けないことだなんて思いもしなかった。
 慕ってきた同級生や後輩達に、面白半分で売春を命令したりしなくて本当に良かったと今更のように思う。
 男の自慰の為の道具。其の現実が操祈の幻想を大きく揺さぶる。
 そうしている間にもカウパーは漏れて乳肉を汚し、熱く火照っていた其処と熱い雄肉とが馴染むようなおぞましい一体感を醸し出してくる。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/26(木) 00:04:40.82 ID:7WN9z+1Do
 知らなかった臭いが鼻先に突きつけられる。もし間違って舌を伸ばしたりしたら届いてしまうかもしれない。
 何故だか、操祈の膣肉が鳴る。きゅう、と縮んで蜜を溢れさせる。
 玩具にされている乳房の下で、熱い心臓ががんがんと脈打っている。
 愛撫されているわけでもないのに、先ほどと同等、いやそれ以上の興奮を得ている。
 おぞましさと恐ろしさに操祈はただ耐えるしかない。

「くぅっ! そろそろだぞ。顔面で受け取れよ!」

 苦しそうな声をしながらも上条の動きが速くなる。
 たぷたぷと肉と肉とが重なる音が大きくなって、操祈の第六感が何かを告げる。顔を背ける。
 然し、其の顔は強引に美琴によって正面を向けられる。
 にこり、と笑った顔に見下ろされて、目を丸くした操祈に。

「おおっ! 出るぞっ!!! ぶちまけてやる!!!!」

 獣の声で叫んで、全身を痙攣させながら上条当麻の精液が弾丸のように打ち出される。
 どくんどくんと脈打つたびに、熱い白い塊が操祈の顔に打ち込まれる。 

「ひっ、ひぃぃいい!」

 白濁が、艷やかな唇にも、高い鼻も、ふっくらとした頬も。おでこから首筋までが生臭い精液で穢されていく。
 涙と汚辱に塗れて、高慢なお嬢様の悲鳴が響く。
 想像したこともなかった行為に顔面を犯されて、肉体も精神もぼろぼろに崩されていく。
 操祈はただ泣き崩れることしか出来なかった。

「ふぅう。スゲェ気持ちよかったな。こんなに興奮するとは思わなかった」

 白濁液の飛び散った顔を、上条当麻が勝ち誇った笑みで見下ろす。
 正に其れはマーキング。
 自分のものにしたという証。
 漸く彼女の腹の上から動いて、射精直後のペニスを美琴の前に差し出す。
 当然のように婚約者は醜い肉塊を口に含んで甘えるように男の眼を見た。

「インデックス。何時ものように舐めてやれよ」

 啜り泣きながら唇を噛み締めている操祈を無視して、オスが清浄であるハズのシスターに命令する。
 うん、とうなづいて食蜂操祈に覆いかぶさったインデックスは、その小さな口から赤い舌を出して泣きじゃくる少女の顔を子猫のように舐め始めた。
 ちろり、ちろりと精液を舐めとる。ぼおと火照った顔をした修道女はどんな娼婦よりも淫らだった。
 顔に感じる甘い熱さに、泣きながらも擽ったそうに操祈が身体を攀じる。
 小柄な少女は其れを逃さず生臭い体液を舐めとっていく。

「味も覚えさせてやるんだ。いいな?」

 お腹に彼の子を抱える淫婦に奉仕させながらも言葉でインデックスを支配する上条当麻。
 彼の言われたとおりに、銀髪碧眼の少女は口に含んだまま食蜂操祈の唇を奪った。
 驚愕しながらも何も抵抗できない操祈が、泣きながら其れを受け入れる。
 生臭く苦い液体が口内を穢して、彼女の体内に吸い込まれていく。吐き出す気力もない。

「――美味しいでしょ? 当麻のザーメン」

 ちゅぽん、と陰茎から口を離した美琴が笑う。
 僅かな時間で先ほどと同じ硬さと形を取り戻している。

「世界で一番美味しいのよ。とっても幸せな気持ちになれるの」

 初めてのキスなのに、食蜂操祈は抵抗できない。
 抵抗できないまま汚される。
 顔に射精された衝撃は途轍もなく大きかった。星が入るほどの大きな瞳からほろほろと涙が落ちる。

 なのに、二人の少女は其れが美味しいという。素晴らしいという。
 操祈には理解できない。
 出来ないが、反論する気力すらなかった。
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/26(木) 00:05:10.05 ID:7WN9z+1Do
「そういえば、当麻のパイズリ童貞、アンタが貰ったのね。良かったじゃない」

 言われても操祈にはその言葉が理解できない。

 言って、再び肉茎を口に含む美琴。心の底から幸せそうな顔をして甘い奉仕を繋げる。
 ちゅぱちゅぱと音を立てて、赤ん坊が母親からミルクを強請るような顔をして上条を見上げる。
 そんな少女の頭を少年は優しく撫でた。
 擽ったそうな顔で美琴が笑う。

 その間にも操祈とインデックスの口唇は重ねられている。
 柔らかく可憐な舌が下劣な精液を口に運んで、抵抗できないまま操祈は其れを嚥下している。
 何処か遠くを見るような目は既に視点を此処に置いていない。
 完全に絶望に染まった色をしていた。
 超能力者第五位の華やかな高慢さが何も残っていない。

 いや、残っている。
 僅かながらに理性の光が戻ってきて、自分にこんな仕打ちをしている輩を許せないという気持ちが湧いてきている。
 ただ其れはまだ小さい。
 ショックが大きすぎるのだ。
 少し時間を置けば自分を取り戻せるだろう。

 ――其の時間を与えてくれるかどうかは別の話だが。

「もういいぞ、美琴」

 優しい声で上条が言うと、御坂美琴がモノ惜しい顔をしながら口を離す。
 てらてらと光った肉塊は大振りで臍に届きそうなほどに昂っている。
 満足した顔で頭を撫でられて、猫が擦り寄るように美琴が分厚い右手に甘えた。

 然して、全てを舐め終えたインデックスが食蜂操祈の身体から離れる。

 ベトベトになった顔に何の表情も浮かべられないか弱い少女が其処に居る。
 美しい金髪をシーツに広げながら、標本の蝶のように縫いつけられて身動き一つしない超能力者第五位、心理掌握が居る。

 然して、上条当麻が食蜂操祈の両膝に両手を当て、一気に股を開かせる。
 濡れて役割の果たさなくなった純白の下着が其処にあった。
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/26(木) 00:05:41.20 ID:7WN9z+1Do
 瞬間、操祈の瞳に光が戻る。
 悲鳴を上げて反射的に足を閉じようとするが適わない。
 男の力で抑えられて、欲望を放ったばかりの肉塊が自分の腹の向こうに見える。
 ひっ、と短く息を飲んだ。

 臨戦態勢の其れは大きく、黒く、長く、弾けそうで、鉄塊と言っても違和感のない程の存在感を示している。
 異常なまでに具現化した性欲を突きつけられて、レイプされるという恐怖が再び操祈を覆い尽くす。
 せっかく気力を取り戻したのに、此れでは何もならない。
 ただ怖い思いをするだけだ。

「いやああ!!! お願い、其れだけはやめてぇええええ!!!!」

 必死にもがいて足を動かして、膝を抜いて自由になった足で上条を蹴り付ける。
 自分の息が生臭い。精液の臭いがする。
 何度も何度も、疲れ果てるほどに蹴り付けるも上条は一歩も動かない。
 活きのいい獲物を手に入れたとばかりに笑っているだけでよける素振りすら見せない。
 実際、幾ら足の筋肉搭載量が腕の三倍だからとはいえ、引き締まった肉体を持つ上条に操祈の力では大したダメージを与えることは出来ない。

 操祈の長く美しい足が上条の顎を捉えるも、次の瞬間には足首を掴まれてしまった。
 然してそのまま肩の上に抱えるようにして操祈を折り曲げる。
 足と足の間にぐいと身体を入れて、蹴りが無効化する間合いに入った。

「まったく、お嬢様のくせにお行儀が悪いなぁ」

 にやにやと笑いながらきめ細やかな太腿を撫でる。汗ばんだ肌と肌とが妙に馴染んでいる。後ろ手に縛られて、股座に居座られて操祈は何も出来ない。
 眼を見開いて、じっくりと覗かれて操祈が震える。
 抵抗出来ないままに下着がずらされて隠されるべき肉が表に出された。

 むっとする性臭が広がる。
 淡い陰毛に縁どられた肉貝は微かに開いていて赤い肉舌を広げている。濡れて光を反射して海の色を出していた。
 底知れない表情で、血走った眼で、上条当麻が其れを見る。
 身体が折り曲がっている形で、丁度其処は上を剥いている。
 然して乱暴なまでに左右に割り開く。
 自分でもろくに覗いたことのない肉の中を、三人の視線が焼く。
 羞恥心に顔を背けた。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/26(木) 00:06:24.75 ID:7WN9z+1Do
「凄く綺麗なんだよ――紅真珠みたい――」

「へぇ、こんなところもお嬢様なんだ。羨ましいなぁ。私、妊娠して色がついてきちゃってるから」

「仕方ないだろう。そんなに黒くなってないぞ? それに妊娠してから思いっきりエロくなって上条さん美琴たんに萌え萌えですよ」

「うふふ。ありがと。でも色はインデックスの方が綺麗よ? 全然使ってないんだし」

「色よりも赤ちゃんがいる方が羨ましいんだよ。私も早く妊娠したいかも」

 割れ目が透けて見えるほどの繊毛に息を吹きかけるように三人が言葉を交わす。擽られるような息風と、肉の色の批評とが恥ずかしくて仕方ない。
 それなのに、蕩けるように蜜がこんこんと湧き出しているのが自分でも分かる。
 せめて、唇を真一文字に結んで言葉を発しないことで抵抗する。何の意味もないことは当然理解していた。恥辱に全身が赤くなるのを感じた。

 あのまま忘我の儘でいたほうがどれほど楽だったか。
 然し其れは精神操作系最高の能力者としての微かなプライドを自分で焼き殺すのに似る。
 断頭台に上がるにしても強い意志でいたかった。
 だが此れは処刑ではない。陵辱だ。
 其の僅かなプライドが自分の首を絞めていることは知っている。自分で自分を追い詰めている。
 最後の最後まで奪われるにせよ、最後の一枚のカードを守りきりたかった。

「――さっさと、済ませなさいよ」

 涙は止められない。
 それでも陵辱者たちを睨みつけた。
 此れから処女を奪われると思うと震えが止まらない。それでも心の全てを奪わせはしない。
 恐怖した。怯えた。泣いた。ボロボロになった。
 それでも。それでも。

 それでも私は食蜂操祈。心理掌握。学園都市第五位の、精神操作系最強の能力者――

 絶対に靴を舐めてたまるものか。

 力強い視線。形だけの、指一本で崩れ落ちそうな視線。チワワが吠えているのと変わらない脆さ。
 ひょう、とツンツン頭の陵辱鬼が軽い口笛を吹く。
 ゆっくり息を吐いて宣言する。

「いいだろう。食蜂操祈。其の気位の高さに免じて、前置きなしでやってやるよ」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/26(木) 00:07:05.79 ID:7WN9z+1Do
 にい、と鬼が笑った。
 深い闇の様な漆黒の花弁が世界を覆う。

 本が閉じて、開かれた。

 処女肉に肉厚のペニスが押し当てられる。

 恐怖に前歯がぶつかる。

「いくぜ。ちゃんと撮ってろよ美琴!」

 一気に貫かれた。 

「あぐうううううっっつっ!!!」

 苦痛に絶叫する。メリメリという音が胎内で響く。強引に押し開かれて未踏の地が陵辱者に踏み荒らされる。
 おぞましい肉塊が少女の肉体に侵入している。其の事だけで発狂しそうになる。
 然してぶちぶちという音。信じられないような痛み。
 思考回路が全て奪われるような激痛が陰部から全身を侵食する。

「痛い! 痛いぃ!!」

 大きく張り出した亀頭がどん、と子宮に迄届く。処女膜をぶち破った其れがふてぶてしいまでに操祈の胎内で自分の存在を語る。
 形のいい顎に手が当てられる。
 唇を奪われる。
 相手の唇に噛み付いてやるという意識すら湧かなかった。

「さぁ、此れで立派な女だ。おめでとうございます」

 朱の唇から悲鳴が漏れる。上条の声は聞こえていない。
 生肉を食いちぎられるような激痛に背骨を限界まで反らせる。甘い金髪が空気の分子に泳ぐ。

「きついな、これは――」

 強烈な締め付けに苦痛すら感じながらも上条当麻は感動している。
 この街の最底辺の無能力者が高飛車な本物のお嬢様の処女膜を奪ったのだ。
 御坂美琴も、インデックスも彼に処女を捧げたのだがそれとはまた別の興奮が肉体を支配する。
 力づくで奪うということは男の本能を刺激してやまない。

「う、ぐぅ――」

 瓜という実は完熟すると縦方向に四つに割る。横から見れば「八」の字が二つの形になる。
 八が二つで十六。
 破瓜とは本来そういう意味だ。
 然して、年の頃で言えば食蜂操祈は丁度その年代だった。

 だからと言って痛みに耐えられるというわけではない。

 最悪の破瓜の痛みに気を失いそうになる操祈。
 然し上条が彼女を気遣う訳もない。
 剛直が強引に引き戻され、強引に押し込まれる。
 文字通り傷口に棒を突っ込まれる痛みに、操祈は気絶する自由すらも失う。

 狭い通路を暴れん坊が強引に進んでくる。
 その分押し出されるように操祈の口から悲鳴が漏れる。
 引きずられればカリ首が傷口を抉って、やはり悲鳴を上げる。
 操祈に残された自由は陵辱が一瞬でも早く終わるように祈ることだけだった。

 この科学の街で神に祈るしか出来ない。

「あううっっ、あううう――」

 グラマラスでスレンダーな肉体が跳ね上がって踊らされる。
 内臓の中で異物がグリグリと子宮を刺激する。
 本当に内側までレイプされているという事実が圧倒的に食蜂操祈に伸し掛ってくる。
 汚辱と屈辱。

 此れまで生きてきてこんな思いをしたことはない。

 幼い頃のあの光景が脳裏に浮かぶ。

 男なんて。男なんて。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/26(木) 00:07:50.23 ID:7WN9z+1Do
 死にたいと思いながらも、舌を噛みきることも出来ない。
 他人を操作することは出来ても自分には出来ない。
 能力が封印されているとかそういう問題ではない。
 死にたいと思っていても死が怖いのだ。自分には甘いのだ。
 だから大切な自分がこんなに陵辱されている今が怖くて仕方がない。

 然して。

 上条が激しく腰をふりはじめる。

「いぎぃ! 痛いの、痛いの、やめて、お願いやめて、抜いてよぉ!!!」

 ボロボロと涙を流しながら、先ほど自分でさっさと済ませろと言った自分を呪う。
 こんなに辛いなんて。こんなに苦しいなんて。
 こんなこと、本当に好きな人とじゃなきゃ出来ないはずなのに。

 高慢で傲慢で高値の花だった元常盤台の女王が泣きながら首を左右に振りまくる。
 涙の雫が美しい金髪に舞う。

 そんな女王様の苦しむ顔を見て、御坂美琴とインデックスはぞくぞくと背中を震わせている。

「乱暴にされるのもいいかも――」

「赤ちゃん、無事に生まれたら私も当麻にしてもらおうかな――」

 嗜虐的な笑みを浮かべる上条と、被虐的な世界に喜びを見出す二人のメス。
 膣壁を抉るように腰を振られて、彼彼女らの為に操祈が悲鳴を歌わされる。
 初めて男根を受け入れた膣が異物を排除するように動いて、其れが上条を喜ばせる。
 強烈に収縮する中を、強引にペニスが蹂躙する。

「凄くしまって気持ちいいぞ! 流石はお嬢様だ!」

 先走りと、破瓜の血と、然して子宮から湧き出る蜜とを潤滑油にしてペニスがピストンされる。
 ヌルヌルと纏わりつく其れらの液体とゴムのような締め付けが上条のペニスを刺激する。
 夢中になって剛直を抜き差しし、其の度に泣き悶える操祈の顔を見て笑う。
 生意気なお嬢様が唯の雌に落ちた姿を間近に見て、上条の射精欲が急速に高まってくる。

「ははは。早漏だな、俺。出しちまうぞ! もう出すからな!!」

「ひぃ、いや、其れだけは嫌――お願い、外に――」

「ダメよ。此れは御仕置きなんだから。其れに、アンタは当麻の奴隷になるんだから子宮で味を覚えなきゃダメ」

 身も世も無いほど泣きじゃくって懇願して、然して一蹴されて。
 操祈が壊れる。
 妊娠が怖い。
 然して中に出されて烙印を押されてしまうことが怖い。

「ダメっ! だめぇぇぇぇ!!!」

 死物狂いで身を捩るが逃げられる訳がない。子宮口に押し込まれた亀頭がぐいと膨れて先端から暑い液体が放たれた。
 どくん、という絶望の音を身体の奥で聞く。

「きひっ、いや、いやああああああ!!!!!!」

 灼熱のザーメンを子宮に注がれて頭の中が真っ白になる。瞼の裏で赤い光が創く。
 一瞬意識が飛んで拘束された両腕がありえない方向へと引っ張られて軋んだ音を立てる。
 死にも勝る汚辱が注がれる。
 叫んで叫んで叫んでいた。

「おうっ、おうっ!」

 獣の声で雄が鳴く。
 射精しながらも腰を動かし続ける。
 爛れた膣の肉が溺れそうになるぐらいに射精し続ける。

 長い長い射精が終わって、ペニスがゆっくりと引き抜かれると白い液体に赤いものが混じって溢れてきた。
 信じられないほど濃い性臭がする。
 けらけらと、けらけらと化け物のように上条当麻が笑い。

 自身の美しい髪に顔を埋めながら食蜂操祈は涙を流し唇を震わせながら絶望の淵で必死に憤りにしがみついていた。 
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/01/26(木) 00:29:27.14 ID:7WN9z+1Do
頑張った
頑張ったけど口調とか別人ですよもう
愛がないエロスはやっぱり書きづらい
愛だよね、愛
やっぱり最愛って素晴らしい名前だよね 
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/01/26(木) 21:59:14.35 ID:7WN9z+1Do
最愛たんは眩しくて書きづらいですわぁ
いつか書きたいけど

みさきちに愛はやってくるのかなぁ
まだまだ酷い目にあってもらうけど

上黒スレさんはひどいですよね
あんなに可愛い黒子をひどい目に合わせて(自分を顧みない発言
もっとやってください

総合の825で少しだけもあいたんと黒夜を弄りました
鬼畜で外道な方はお読みください 
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/29(日) 22:25:10.91 ID:AywzV3y0o
 月明かりは人を選ばない。
 緯度や地形に依る差は生じても、其処さえ同じならば罪人だろうが聖人だろうが、老若男女問わ

ずに優しく包み込んでくれる。

 既に死んだ光だ。
 太陽光が反射した、唯其れだけの価値しかない光。
 甘い香りを見出すのは観測者たる人間が現実を歪めているに過ぎない。
 だとしても、幻想は心の中にあって人と人との間に繋がるものでもある。

 酔月の波に浮かびながら浜面仕上は高鼾を立てている。
 心地よい疲労が睡魔に変わり、肉体と精神が夢の心地へと旅立っている。
 柔らかなベットの上に、毛布一枚だけの裸の儘。逞しく、細かな傷の多い肉体が其処にある。
 然して見下ろすのはディアナも嫉妬せんばかりの美しい二人の少女。
 一人は東洋の魔法のような黒髪に仏のような微笑を乗せて。
 一人は長い茶色の髪に月光を贅沢なほどまき散らして、幼子を見るような瞳で。

 浜面仕上を見つめている。

 同じ毛布の端と端。
 其れで胸元を隠しながら隠しきれない美しい裸体を月光に晒して。
 座った二人が挟むような形で男は寝ている。
 安心しきったような、甘えたようなだらしない寝顔。

「こうしてみると本当にチンピラだよねぇ」

「そんなことないよ。仕上はかっこいいよ」

 貶す方も褒める方も、言葉の意味は違えども愛情に満ちている。
 人格という器から感情が溢れて、其れを言葉に乗せている。色は同じ色。
 女が男に惚れている、という陳腐な感情をこれでもかと溢れ出させている。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/29(日) 22:26:35.44 ID:AywzV3y0o
「こうして見てるとさ、なんでコイツのこと好きになっちゃったのかわからなくなるんだよね」

「好きじゃないの?」

 睦話の甘い言い方に、キョトンとした顔で滝壺理后が問いかける。
 麦野沈利は少しだけ苦笑して、

「違うわよ。大好き。愛してるわ。でも、最初の最初――アイテムがアイテムであったあの一週間のこと」

 と悲しげに言った。

 十月三日に浜面仕上が暗部に落ちて、十月九日に麦野沈利を撃破する迄の。
 フレンダをも含めた僅かな時間のこと。
 実際には一週間もない。

「フレンダを殺して、アンタを使い潰すことに躊躇いはなかったのに、コイツのことだけは生かしたまま自分の下に置こうとした。
 もう、あの時には惚れてたんだと思う」

 誰に聴かせるというわけでなく――聞いているのは滝壺理后だけ――自告する麦野沈利。韜晦する姿は美しい儘。遠くを、過去を覗き込み自分を見ている。
 或いは其れが月光の魔力なのか。

「だからわからないの。ただ、ちょっとだけ使い勝手のいい使い捨ての下部組織の一人でしかなかったのに。
 特別に守ってもらったわけでも命をかけてくれたわけでもないのに」

 アンタみたいにね、と少しだけ恨むような声で言う。

「カッコいいわけじゃない。優しいけど優しさなんか唯の甘さだとしか考えなかった。無能力者なんて蟻と変わらないって思ってた。
 なのに何で好きになっちゃったのかな」

 殺し合いをして、眼球と左腕とを奪われて。壊れた玩具のように誰かに作り替えられて、プライドも命も何も要らないからと奪いに行って。
 あの感情に名前を付けるとすれば独占欲。
 欲しかったのだ。この男が。星を落としてでも月を落としてでも。
 懺悔するような声で、掴んだ毛布に強い皺が寄った。

 然して、其れを聞いて。
 滝壺理后が悲しそうな顔をした。

「私は、沈利が羨ましい」

 そう、言った。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/29(日) 22:28:02.92 ID:AywzV3y0o
 驚いて麦野沈利が滝壺理后を見つめる。
 同じ男を愛している女同士が、其の男を挟んで見つめ合う。
 甘い唇が開いた。

「あの一週間で、私は仕上のこと好きでもなんでもなかった。
 優しい人だと思ったし、護ってあげたいと思ったけど、でも其れは半分は自戒で自虐でしかなかった。
 自分と直接関係ない誰かの死を悲しむことが出来る人をこんな世界に巻き込んでしまったという負い目があったから、したこと」

 月光はただ静静と降り注いでいる。
 三人に降り注いでいる。

「好きになったのは、命懸けで守ってくれたから。
 本気で守ってくれる騎士に惚れてしまっただけ。
 媚を売ってるのと変わらないよ。
 私は私を護るために仕上のことを好きになったの」

 だから沈利が羨ましい、ともう一度滝壺理后が言う。
 白い肌に、乳房に、夜の帳が掛かる。

「だから。私には負い目があるの。
 この人を本気で好きになってもいいのかなって。好きだよ。もう離れられない。
 でも、其の種が偽物だっていう怖さがずっとある。
 好きになる条件を満たしてくれたのが仕上だっただけで、もし他の誰かが其れを満たしてしまえば私の心は其の人を向いてしまうんじゃないかって、何時も、怖いの」

 だから、かな――

 言葉は続く。

「仕上の心の中に沈利が居ることに気づいたとき、私嫉妬出来なかった。
 当たり前だと思ったよ。
 何もかもいらないから仕上だけが欲しいって人に、私が勝てるわけないって。
 でも一緒にいたかった。
 仕上のことが好きで好きで好きで、どうしようもなかったから」

 だから。

 その先の言葉を、滝壺理后は紡がない。
 然し分かる。麦野沈利には分かってしまう。

 こんな不格好な反社会的な三角関係を提案したのだということを。

 嬉しかったし。幸せだった。
 でも、そんなものが長く続くはずもなかった。
 滝壺理后も麦野沈利も、調子のいい嘘だと分かっていたのだから。

 それでも。
 それでも浜面仕上は本気で抵抗をしてくれている。
 本気で二人を守れると信じて、戦ってくれている。
 馬鹿なのだ。正真正銘の馬鹿なのだ。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/01/29(日) 22:28:40.69 ID:AywzV3y0o
 だから嬉しい。
 思うだけで強くなれる。
 きっと、二人の少女の思いが本物になったのは、愛する馬鹿が本気で神様に喧嘩を売ったから。
 堕落かもしれない。強欲かもしれない。
 少なくとも現代の社会では認められない。

 それでも。
 そうだとしても。

 この思いがあれば世界だって書き換えてみせる。
 何処までもついて行く。
 地べたを這いずって泣きじゃくって、それでも屈服しないで前に進む人が居て。
 其の隣にいられるのだから。

 笑いたければ笑え。
 滑稽だと軽蔑しろ。
 それでも一緒に歩いていく。
 ついてくるなと言われるその日まで、ずっと。

 月光は貧者にも富者にも老いにも若きにも平等に降り注ぐ。
 其れが勝ち目のない戦いに進むものであろうと、其の脇を固めるものであろうと、平等に。
 現象に人格はなく故に不公正なこともない。

 其の光の中で。
 麦野沈利が浜面仕上の唇を奪う。
 優しく、甘く。

 愛してるわ、と呟いて。

 滝壺理后が浜面仕上と唇を重ねる。
 熱く、溶けるように。

 大好きだよ、と囁いて。

 最初が本物だろうが偽物だろうがなんだろうが、動いた歯車を止めることは出来ない。
 噛み合った歯車が常識を砕いて崩れさせて、真実と幻の境界線を越えていく。

 夢現の覚醒しない意識の中で、浜面仕上は曖昧な精神世界で必死に手を伸ばす。
 其れが既に届いていることに彼はまだ気づかないでいる。
 赤の女王は言う。
 留まるためには走り続けなければならない。
 だから彼の疾走にゴールなどなく。
 疲れて崩れ落ちるまで汗を流し続けるのだろう。
 然してその時、右と左とで重い彼の体を支えてくれる誰かが居るのだから。

 ――浜面仕上は既に救われているのだ。

 気付かない。
 然し気付いても走り続けるだろう。
 ヒーローとはそういうものだ。
 然して、誰か一人の為にヒーローになることができるこの男が、滝壺理后と麦野沈利という二人のお姫様のために戦うというのならば。
 きっと月だって落とせる。

 其の日を待ちわびているかのように、月光は優しく三人の罪人を照らし続けていた。 
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/02/01(水) 22:32:01.41 ID:J8GLeoin0
いいなぁ、すごく良い
>>1が書く浜絹のイチャラブも見てみたいぜ
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/02(木) 01:01:48.58 ID:s7g9ideno
少し投下します 
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:02:47.60 ID:s7g9ideno
 救われるものも居れば救われないものもいる。
 経済学ではあるまいし、幸福というものは主観によって成り立っていて誰かに与えられるものではないし奪われるものではない――はずだ。
 然しながら、奪われてみて初めて自分が幸福だったと気づくことは往々にしてある。

 あれから三度も抱かれた。強姦された。暴虐無人に荒らされた。
 爛れた秘肉は充血して腫れぼっていて其の中に何度も刷り込まれた。
 嵐のような陵辱の中で、僅かなりとも自分の意思を貫いたことを食蜂操祈は誇ってもいい。
 然し、彼女の精神力は限界まで擦り切れていていた。
 しょうがない。
 一度だって想像したこともないような圧倒的な暴力に組み伏せられて精神の殆どを陵辱されたのだ。
 此の状況で強い意志をもって敵を殺そうとまで憎しみを昂らせる気力は今の彼女にはない。

 然して何よりも、三度の交わりで、彼女は自分の中に快楽の炎が燻っていることを知った。
 肉を貫かれることではなく、それ以前の愛撫で。
 熱く火照る肉体が自分の中にあることに気づいていしまった。

 其れは単純な本能であり、或いは絶対的な支配者に対する生理的な媚なのかもしれない。
 心理掌握には非常にわかりやすく説明しやすいロジックが頭の中に構築されたが、残念なことに圧倒的なまでの肉の現実が、違うのだと本能的に察せさせていた。

 上条当麻という男は憎らしい。
 許されるのならば生きたまま解体して痛覚神経を持って生まれたことを後悔させてやりたいと思う。
 心理掌握の能力が使えるのならばそのまま精神の狂気の中で永劫の苦しみを味わせてやりたい。

 尤も、心理掌握の能力は上条当麻には通用しない。
 右手の異能無効化能力は精神操作系に対してはほぼ絶対的な防御となっている。
 嘗て黄金錬成という最高峰の錬金術師に記憶を操作されたが、あれはただひとつの例外だ。其の例外を彼女は知らない。
 非常に気に入らない話だが、食蜂操祈は上条当麻に対してはその性質上完全の無能力者といっても過言ではない。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:03:43.16 ID:s7g9ideno
 だがほかの人間を複数操作すれば唯の肉体の持ち主の上条を物理的に排除することは不可能ではない。
 例えばすぐ隣にいるインデックスという少女。精神操作すると危険であると言っていたが、逆説的にいえば其れだけ強力なカードであるはずだ。

 然し今の彼女には其れが出来ない。紅のチョーカーは心理掌握の能力を封印し、然して三度もの痴態を録画されている。
 御坂美琴がその気になれば国防省からNASAから、果ては火星探査船まで全てのコンピュータをハッキングしてその画像を散布することも不可能ではないだろう。
 幾ら心理掌握が精神操作において万能に近い能力をもっているとしても全能には程遠い。世界中の全ての人間の記憶を改竄することは出来ない。
 だからといって無能力者に其処までされながら抵抗しないということは超能力者のプライドが許さない。

 然して。
 大切に守ってきた処女を会って数時間に男に奪われたという身を削ってでも覆したい現実があるのだ。
 もし可能ならばあの男に弄ばれた全ての肉を切り落としていしまいたい。

 私は私だ。下司な雄の性欲を充足させるための道具ではない。

 圧倒的な現実の中で自分を陵辱した男も、それに与した女も食蜂操祈は許すことは出来ない。
 出来ないが、残念なことに復讐を実行に移せる手段がない。そうであるが故に復讐心は募る。募りながらも其れを維持できるだけの気力がない。
 繰り返すが、食蜂操祈は疲れ果てているのだ。刹那的な感情が湧いてもすぐに沈んでしまう。

 一日、此処で一日の猶予を与えられていたのならば結果は違うものだっただろう。

 然して、肉体的な疲労に甘味が良く効くように、精神的な困憊には甘い誘惑が良く染み込む。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:04:25.94 ID:s7g9ideno
 風呂場に連れていかれて、全てを脱がされる。
 一山丸ごとが大理石という台湾の山から切り出された、其れだけで何千万という価値を持つ大理石を防汚、耐熱処理をして刳り貫かれた大型のバスタブ。
 洗い場も大理石の光沢を持っているが触れて冷たいということはない。
 無駄にシャワーヘッドに金飾りが付いているのがやや成金趣味的で品がないのが欠点か。
 座椅子に腰掛けた食蜂操祈の身体をインデックスが癒す。
 長い銀髪をタオルで纏めて、然して無駄毛一本ない細い裸体――驚くべきか、陰毛すらなかった――を隠しもしないでメイドのように奉仕する。
 花の香りのする石鹸の泡。肌心地の良いスポンジ。
 髪にダメージを与えないように優しくシャンプーで洗い、トリートメントを掛けて、ドライヤーを不必要にするようにキメ細かなタオルで雫を拭っていく。
 献身的で、気遣ってくれて、心地よく汗を流してくれて、肌のきめ細やかさも髪の艶も褒めてくれて。

 そうなれば悪い気はしない。
 インデックスは上条の命令に従っていただけであって特に操祈を害する感情を持っていたわけではない。
 暑いシャワーでこびり着くホルモン臭が消えていくと共にインデックスに対しては信頼のようなものが生まれ始める。
 其れは心理学的には洗脳に近いものであったし、認識もしていたのだが辛いことがあった直後の優しさを切り離すことが出来るほど彼女は大人ではなかった。

 然して彼女らと同じ空間に憎むべき男女がいる。
 豪奢な湯船に浸かり、上条当麻が御坂美琴とそのお腹を後ろから抱きかかえている。
 操祈ほどではないが大きな胸と、傾らかながらもあからさまに通常と違う腹筋のライン。
 遺伝子と遺伝子が絡み合った二人の子供が居る下腹部が大切そうに二人の手で抱えられている。

 耳元で少年が何かを囁くと少女が恥ずかしそうな顔をしながら答える。
 はしゃぐように湯を弄び、雫が跳ねて顔に掛かり、其れを笑顔で叱りつけて。
 耳を食んで、擽ったそうに甘えて。項にキスを散らして。其れが嬉しくて堪らないと笑う。
 絵に描いたようなバカップルぶりだ。

 食蜂操祈を蹂躙した陰性は欠片も見えない。
 まるで最初からそうだったかのように陽性に笑っている。
 其の姿が癪に触る。
 自分に何をしたのかこれっぽちも感慨を持っていないと言わんばかりの態度だからだ。
 あの傲岸不遜はなんだったのか。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:05:13.24 ID:s7g9ideno
 インデックスに足を広げさせられる。暖かなシャワーで逆らおうと思わない。
 ずきり、と腹の中が痛む。まだ残っていた粘液がどろりと垂れて怖気が走る。
 犯されてしまったのだという事実に再度心が犯される。
 それなのに二人は自分を気にも止めやしない。
 路傍の石の如く捨て置かれている。

 あんなことをしておいて。
 絶対に許さない。

 癒されて、漸く勝気な自分が戻ってくる。
 そうだ。
 食蜂操祈はこの程度で屈する女ではない。

 操祈の目は今何も見ていない。映っていても認識してない。
 彼女の心は肉体を離れている。泥の中に引き込まれている。明晰な脳から切り離されている。

 心を覗けるということは心の虚に覗き込まれるということだ。
 世の中に聖人など居ない。少なくとも此れまですれ違った全ての人間の中に存在はしない。
 恋人に向ける笑顔の裏に他の誰かを考えていたり、泣く子をあやしながら自分の子供を疎ましく思う母親が居たり、敬愛する人間に成り代わりたいと考えたり。
 そんなおぞましいものを世界で一番見続けた自分がこの程度の事で屈してなるものか。
 高々犯されただけで。

 ――犯された。

 ぎり、と奥歯を噛む。
 人を信用しないからこそ本当に信用したいと飢えていて、其れを利用された。裏切られた。
 自分には告発する権利がある。侮蔑の視線と誣告の義務がある。罵声を浴びせなければならない。

 許せない。
 許さない。

 男に甘える女と、女に甘えられている男とを裁きにかけてやる。糾弾を弾倉に込め殺意を引き金に本当の地獄というものを味あわせてやろう。
 今の操祈には二重の意味で首輪がある。観念的なものと物理的なものと。
 結果として自分の首が落ちても、それでも復讐してやる。
 自分の淫らな姿が晒されるぐらい、耐えてみせる。否、そもそも此の程度の首輪で心理掌握を掌握したと勘違いしていることそのものを超えてやる。
 今ならば、有機的幾何級数的に能力が開放されそうな気がする。
 絶対能力者の壁ぐらい超えてやれる。
 妄想妄像の類であろうが、其れを可能にするのが能力の本質。

 登場人物が作家になって此れから編まれるべきストーリーを書き換える。絶対能力。其れが正に目の前にある。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:05:52.20 ID:s7g9ideno
 その瞬間。

「ひゃぃ!?」

 背筋に氷を放り込まれたかのような意表と驚愕の声を食蜂操祈は上げていた。

 愕きと共に原因を見れば、細い身体の美しい修道女が操祈の股間に顔を埋め、赤く腫れぼった性器に口を付けていた。
 猫がミルクを舐めるようにちろりちろりと舌を出している。

「あ、貴女! インデックスさん! 何をしてるの!?」

 反射的にインデックスの顔を抑えて少しでも離させようとするも、意外なまでに強い力で抵抗される。何よりも淫筋からの微妙な刺激もあって操祈は全力を出すことが出来ない。

「――だって、とうまのせーえき、もったいないから」

 少しだけ口を離して無邪気な顔をして、インデックスが淫らな言葉を放った。
 驚愕に身動きが取れない操祈に、再び顔を埋めて膣からこぼれ落ちてくる男のエキスを啜る。

 ――ぴちゃ、ずずっ、ごく――

 陰唇の間の筋目に舌を通し、時にはその上の肉芽にも欠け、然して中から少しでも湧き出れば其れを啜る。
 インデックスの行為は手馴れていた。
 メスの性器を愛することに慣れていた。
 さわさわとした陰毛が柔らかく蜜と唾液に濡れる。

「いや、やめて――だめ――」

 先程の暴力では全く感じなかった。
 愛撫によって体が熱くなり、淫壺が蜜を吐き出しはしたが其れは身体全体に対する愛撫のもので性器に対するそれではなかった。
 否、性器に関しては傲慢な肉塊で強引に蹂躙されただけだった。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:06:25.40 ID:s7g9ideno
 初めて、誰か他の人によって操祈は性器からの快楽を得ている。
 己の意思に拘わらず蜜は滔々と流れ出て、其れに合わせて肉の襞に絡まっていた上条当麻の二重螺旋構造体もが垂れてくる。
 インデックスは日頃は全く感じさせない淫蕩な表情をしながら嬉々として其れらを飲み干していく。

 体温の高い彼女の舌で優しく舐められると食蜂操祈の全身から力が抜ける。
 其れだけではない。あれだけあった復讐心が形を壊していく。
 インデックスに対して害意はない。このような状況になっても其れは変わらない。
 苦痛ではなく快楽を、其れも優しく優しく与えられているためだ。
 同性だという嫌悪感すらなかった。
 ただ受け入れがたい快楽を否定するためだけに操祈はインデックスの頭を抑えている。だがやはりその力は弱い。

 インデックスの持つ、傷ついたものを全力で庇う聖母のような心を食蜂操祈は信じてしまったのだ。
 もし、仮にヨハネのペン等の事情を無視してインデックスの心を食蜂操祈が覗いたとした場合、恐らくさほど嫌悪を抱くことも軽蔑することもなかっただろう。
 彼女は弱く、誰かに庇護してもらわねば生きて行けず、自分がその能力を身につけようとはしない。然し弱いものを庇い、本能に忠実で、やきもち焼きだ。
 シンプルで、人間らしくて、その本質に優しさがある。
 自分がどんな辛い目にあっていたからといって、他者への心を忘れたりはしない。
 きっと誰もが好感を持てる心の持ち主。

 善人を玩具にするのは彼女には簡単だ。
 然して、弄ばれたと知ったときに善人のメッキは剥がれ醜悪な顔で糾弾してくる救われない被害者となる。
 そんな、吐いて捨てるような生き物ばかりだ。人間など。
 裏切られても信じ続けられるような善人などいない。かといって善人であることは否定しない。
 善人でいられる許容範囲が或だけの話だ。
 所詮人が無限の愛を持っている訳がない。其れは誰もがもっている消耗品なのだ。

 だが、彼女は違うのだろう、と操祈は思ってしまった。信じてしまった。
 正しく洗脳であって、精神操作系能力者としては堕落である。
 ただ身体を優しく洗われただけで其処まで狂ってしまったのは、正常ではなかったという証左だ。

 然して其の堕落はまだ続いている。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:06:57.91 ID:s7g9ideno
「やめて――そんなところ舐めないで――」

 頭を抑えながら、然し体を丸めてまるで抱き寄せるような格好になって食蜂操祈が悶えている。
 チロチロと嬲る舌先は同じ女である彼女の感覚を掘り起こし、然して其れだけではなく白く細い指先が操祈の狭い膣口に入れられる。

「ひっっ!」

 短い悲鳴を上げる。
 然し、操祈が思っていた苦痛は無かった。
 寧ろじんわりと暖かいような心地よさが広がる。

「とうまは、乱暴なんだよ。あんなに出しちゃったら赤ちゃんできちゃうかも」

 口元を操祈の蜜で光らせたインデックスが彼女を見上げる。その目は蕩けて瞳孔が緩んでいる。
 それでも何処か清浄な空気のままのインデックスが笑った。

「でも大丈夫だよ、みさき。とうまのせーえきはわたしが全部飲んであげるんだよ」

 言って、膣口に付き入れた細い指を中で折り曲げた。
 ぞくぞく、と快楽の電流が食蜂操祈の全身を走る。くちゃ、くちゃ、と音がするたびに白く濁った粘液が膣口に溢れ出してきた。
 然し其れは上条の精液ではない。空気を含んだ食蜂操祈の性液だ。
 それでも構わずにインデックスは啜る。
 発酵臭を伴っているからわかるはずなのに、全く気にしない。

 操祈の膣の中でインデックスの指がくねくねと曲げられる。
 然して、ある一点をグリグリと押したとき、

「きいぃ!」

 操祈が短い悲鳴を上げた。
 インデックスが見上げると瞳を潤ませながら息を荒くした操祈が居た。
 折角汗を流したのに新しい汗が浮き出ている。

「い、インデックスさん――もう、いいわ。もうやめて。あの男の体液なんてもう残っていないから」

 息も絶え絶えになりながら涙目で操祈が言う。其れは懇願。早く指を抜いて欲しいという要望だった。
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:07:56.80 ID:s7g9ideno
 なのに。

「続けろよ、インデックス。今のところグリグリとやってやれよ」

「多分Gスポットね。よかったわね。気持ちいいところすぐ見つかってさ」

 同じ空間にいて此方を見なかった二人が、ニコニコと笑いながらインデックスに命令する。
 其の声はやはり陽性で操祈を蹂躙した男と女のものには思えない。
 溢れんばかりの湯に二人の身体を沈めて、肩まであったまりながらも後ろから抱きかかえている格好は変わっていない。
 まるで、動物園の中を覗き込む子供のような目で食蜂操祈を見ている。

 然して、悲しいことにインデックスは食蜂操祈の言葉よりも上条当麻の言葉を選んだ。
 悲鳴を上げた其の箇所に指の腹をグリグリと押し付ける。
 途端、電流のような快楽が操祈の体内を駆け巡り、どくん、という音を立てて子宮から固形物のように濃い粘液が吐き出された。

「いいいぃいい――!!!」

 背をそらせて、髪を広げて操祈の悲鳴が浴室に木霊する。
 此れまで一度も感じたことないような圧倒的な快楽が全身の細胞を麻痺させて筋肉の硬直を奪う。
 それでもインデックスは指を動かすことをやめず、然して舌を動かすことも止めなかった。
 赤い肉の芽を舌先で巻き込む。
 クリトリスと膣内の二つの圧倒的な快楽に操祈の喉が悲鳴、嬌声、然してオスとメスとを興奮させる歌を奏でる。
 響く声には原始的な本能が刻まれて、其の声に御坂美琴はうっとりと頬を染めた。

「こんなにいい声出せるのね。きっといい奴隷になれるわ」

 上条当麻の魔は御坂美琴にも取り付いている。
 彼のためならば地獄の底にでも傍で歩んでいきたいと切に願う彼女は、彼の子供を孕むことで彼の全てを受け入れることを選んだ。
 だから上条がインデックスを抱いても、食蜂操祈を抱いてももう嫉妬しない。
 自分のことだけを見てくれないと嫌だ、という感情を失ったわけではないが、上条が望むことを望むままにさせてあげることに比べたら些細なことだと思っている。

 然して、自分と妹達を弄んだ女が、陵辱されてプライドを破壊されて、然して上条に心から仕えるようになることを心の底から願っている。

 彼女は貞淑なまま夫の傲慢を受け入れていた。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/02(木) 01:08:28.31 ID:s7g9ideno
 だから、ゆるりと風呂から出て。
 熱い身体のまま、腹部を庇いながらインデックスの隣に座って。
 彼女の指に添えて二本目の指を操祈の膣内に入れることに躊躇いなどなかった。

「き、ひいぃぃいい!!!」

 まるで場末の娼婦が男を喜ばすような悲鳴。
 高慢なお嬢様には似合わない。
 驚きながら、恐怖しながら、其れでいながら確かに甘いものが混じっている。

「当麻の太いの受け入れたんだから二本ぐらい平気でしょ? 痛くないって顔してるわよ?」

 言って、狭い膣内でインデックスの細い指を辿る。
 然して、彼女の指の腹が押している場所を見つけると、情けも容赦もなく思いっきり其処を強く押した。

「―――――!!!!」

 悲鳴にもならない。
 パクパクと酸素不足のコイのように口を開けて操祈が天井を見る。
 細い両腕はぷるぷると震えて何かを掴むこともできない。

 一度顔をずらされたインデックスは美琴の手が重ねられたまま、再び操祈のクリトリスに舌を伸ばす。
 其処はとても敏感な器官で強い衝撃では痛みを伴ってしまう。
 滾滾と湧き出る淫蜜は彼女の快楽を告げていたが、だからといって操祈を傷つけるような真似はしたくなかった。

 御坂美琴はインデックスほど優しくはない。
 食蜂操祈には恨みもある。
 だから、責めるようにGスポットを強く弄ぶ。

 其の度に食蜂操祈が声にならない絶叫を繰り返す。
 ぷしゃ、と膣肉から液体が吹き出す。
 尿よりもサラサラとしていて、然して不快でもない其れ。
 然し二人ともそんなことを気に求めずに次から次へと哀れな犠牲者に快楽という罰を送り込む。
 憎悪も好意も、結果は同じだった。

 然して、上条当麻があの陽性の顔でそんな三人を見ている。

 四度も射精したのに、その股間は隆々と激っている。

 インデックスの股間も、蜜が溢れて太腿に垂れてきている。
 興奮しているのだろう。
 彼女には奉仕によって性感を高めるという嫌いがある。
 元々、誰かに尽くすことが好きなのだ。

 然してインデックスは今食蜂操祈の快楽を必死に引きずり出している。
 事実、彼女は潮まで吹いた。
 まだ処女を失ったばかりだというのに。

 なんて可愛らしいインデックス。
 必死に奉仕する姿を愛しく思い。

 四つん這いの姿のインデックスの背後に近づいて。

「――とうま?」

 細く小さな身体の修道女を背後から前戯もなく思いっきり貫いた。 
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:16:17.30 ID:LaFDeQMgo
 其の声が何処から聞こえているのか、食蜂操祈にはわからなかった。

 此れまでの人生において一度だって体験したことのない圧倒的性的快楽が大海原からやって来る津波のように押し寄せてきて、素のまま陸に押し上げられた魚のようにピチピチと跳ね、
パクパクと口を開いていたのだ。
 肉の快楽が精神を圧倒していた。
 だから、其の声は自分が出していると思っていたし、其れ以外は有り得ないと思っていた。

 然し。

 ぜいぜいという荒い息遣いが自分のものだと理解し始めたときに、真実に気づく。

 少女が。
 碧眼の。
 銀髪の。
 あどけない。
 欧米人で。
 細い子供のような体付きの。
 献身的な。
 一瞬だけだとは言えども心を許してしまった少女が。

 雌の嬌声を挙げていた。

「おっきんだよ、すごい、ぐりぐりしてくるんだよ――」

 其れは恋人に甘える声。

 何時の間にだろうか。
 先ほどベットでされたように御坂美琴に後ろから抱えられていた。
 虚ろな視線のまま目の前の光景を瞳孔に映していた。
 其れが、インデックスという少女が上条当麻という男に貫かれながら腰を振っている光景だと漸く理解した。

 光景は、上から。
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:17:17.79 ID:LaFDeQMgo
 床に直接尻を付けている二人に覆い被さるように立って、腰を曲げて壁に手をついている少女。
 髪を纏めていたタオルは床に落ちて水分を吸ってしまっている。
 束縛から逃れた長い髪は大きな垂れ幕となって只でさえ狭い操祈の世界を小さくしている。
 立ちバック、という如何にもコジツケで付けましたという呼び名の体位が視界を塞いでいた。

 視線を下げると二人が交わっている箇所が見えた。
 白く陰毛も生えていない女芯を、赤黒い肉塊が行き来する。グロテスクで卑猥な光景だったが、インデックスは怯えの声も羞恥の悲鳴も上げていない。
 寧ろ、食蜂操祈に見せつけて喜んでいるような、そんな気さえ感じさせる。

 つい先程、食蜂操祈は復讐心を取り戻した。
 自戒であって言葉であって法律であって自己との契約である其れを必ず実行する。其の心に燃えていた。
 然し。
 圧倒的な快楽の波と。
 其れによって再び叩きつけられた疲労と。
 然して自分ではない誰かの性行為を息のかかる距離で見せつけられて、彼女は再び混乱した。

 雪白の肌。
 可愛らしい唇。
 甘い瞳。
 整った人形のような顔立ち。

 それなのに、素のまま、インデックスは女の顔で喘いでいる。

 途端、今更の様に羞恥心が湧いてきて身体を隠そうとするも、ぎっしとばかりに抱きすくめられていて隠すことが出来ない。
 耳元で、御坂美琴が笑った。

「あらあら。若しかしたら『自分もこんな顔してたんだなぁ』なんて思っちゃったのかな?
 だったら半分正解ってところかしら。
 アンタはもっと凄い顔してたわよ」
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:18:10.35 ID:LaFDeQMgo
 ニヤついた声に此れまでのおぞましい記憶が甦える。
 騙されて、襲われて、パイズリを強制された上にレイプによってヴァージンを奪われた。
 後悔する時間も与えられず更に犯され、疲労困憊となれば風呂場に連れ込まれた。
 優しく身体を洗われて、やっと糾弾する気力が湧いてきたところで、インデックスに秘部を啜られて弄られて何度も達した。
 然して今、目の前で其の少女の痴態を見せつけられている。

 何て卑劣だろう。
 悔しくて悲しくて涙が出てきそうになる。無意識のうちに唇を噛もうとして、違和感に気づいた。

「ギャグが入ってるから気を付けてね」

 軽い調子で言われ、然して力づくで備え付けの鏡の方に顔を向けさせられると赤い玩具の様な丸い玉を噛ませられた自分の姿があった。
 黒い革製のベルトがぐるりと後頭部まで一周していて簡単には取れそうにない。
 ボールに穴が開いていて、其処から自分の息が漏れるのが分かった。

「アンタ暫く飛んでたし、面白そうだから付けちゃった」

 強制的に開かれた口から涎が垂れる。それなのに涙は出ない。出そうなのに出ない。
 自分の顔が卑猥に見えて、情けなかった。

「ホント、良く似合ってる。いい奴隷になれるわよ、食蜂先輩☆」

 蔑む様な声と共に、操祈の豊かな胸が揉み解される。良いように、玩具のように。
 馬や牛のように口を支配されてしまうと、本当に食蜂操祈は奴隷のように見えてしまう。
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:18:35.81 ID:LaFDeQMgo
 然して其の間にもインデックスと上条当麻の性交は続いている。
 勃起した肉棒がぬちゃぬちゃと前後するたびに銀髪のシスターは幼い身体を震えさせて喜ぶ。
 小さな顎がカクン、と上がれば可愛らしくも艶っぽい喘ぎ声が漏れる。
 然して濡れた目で操祈を見つめた。
 あは、とインデックスが笑う。

「操祈もとうまの奴隷になるんだよ――」

 そうであることがどれほど素晴らしいかと説得するような、そんな声。
 全身を震わせながら甘い甘い性交に酔っている。
 童顔を歪ませて腰を動かして少しでも上条の動きを助けようとする。其の動きは如何にも手馴れたものだと説明されなくてもわかった。 

 然して、食蜂操祈は其れを否定することが出来ない。
 物理的に声を出すことが出来ないのだ。出るのは豚のような哀れな鳴き声だけ。
 例え声が出なくとも、能力が使えれば意思を伝えることが出来るのに其れすらも取り上げられて。

 太いペニスが出入りしたかと思えば奥まで付いた状態でグリグリと刺激し、ねっとりと腰を使う。
 かと思えば押し入ったままで背後から顎をとって唇を奪う。

「あ、いい――とうまのおち×ち×、おっきくて気持ちいいんだよ――」

「インデックスのお×んこもきつくて最高だぞ」

 卑猥な単語を交わしながら随分と慣れた感じで腰をシンクロさせる二人。
 其の姿から操祈は眼を逸らすことが出来ない。
 濃厚なディープキスで唾液を交換する姿を見上げて、ごくりと大きく唾を飲むしかない。
 傍目にも二人の興奮が高まっているのが分かる。
 ぎり、と顔のすぐ傍で美琴が奥歯を噛んだ。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:20:03.87 ID:LaFDeQMgo
「疑問に思ってるかどうか、アンタじゃないからわかんないけどさ。
 正直に言うわ。
 嫉妬してる。
 自分の男が自分じゃない女と交わってて胸が張り裂けそうよ」

 然し、美琴は嗤って言う。

「それでも私は上条当麻のオンナだから。
 全部受け入れる。もう自分でもどうしようもないのよ。
 インデックスに泣いてほしくないし」

 然して、ギャグが入って悲鳴を上げることもできない操祈の勃起した乳首を強く捻った。

「―――!!!」

 圧倒的な痛みに身悶えする。ほろり、と涙が溢れる。溢れた雫が痛みを訴える乳房に中って跳ねた。

「アンタの言うとおり、狂ってるわ。
 狂ったまま歯車を回すしかないの。
 周りを巻き込んで破滅に向かうだけだとしても、ね。
 然して一番被害を少なくする歯車がアンタってわけ」

 背筋に硬いものが押し付けられる。
 其れは子を孕んだ女の子宮。
 柔らかいものは女の二つの乳房。

「だから絶対に堕ちてもらう。この子のためにも、アンタは必要なのよ」

 押し付けられるのは熱い吐息。
 耳筋の裏側が湿気るほどに近くで。

「でも、アンタも幸せになれると思うわよ?
 誰一人信用できない儘、腐った視線で世界の女王様を気取っているよりも、誰かに必要とされる、然して愛される奴隷の方が素敵だもの」

 汗と淫らな匂いとが漂う。
 上条当麻とインデックスの結合部から淫猥な音が立つ度に二人の息遣いが荒くなる。お互いの感じる場所を知り尽くしているといった塩梅で。

「うん――あはっ、とうま、とうま――」

「可愛いぞ、インデックス」

「あ、あ、とうま、もうイっちゃいそうなんだよ――お願い、今日は危険日だから、中に――」

「よし、出してやる。思いっきり出してやるからな――おぅっ!」

 どくん、という音が聞こえた気がした。
 食蜂操祈には聞こえないはずの、インデックスの体内の音。
 あの、何度も自分の中で行われた蹂躙の音が。

 低い声で唸りながら臀部を引き攣らせる上条に、シスターの粘膜が貪欲に精液を飲み干そうとする。

「ひゃぅ! 熱いの、熱いせーえきが出てるんだよ――とうまのせーえき、とうまのせーえき、いっぱいお腹の中入って、私の卵子とくっついちゃうんだよ――」

 男の熱い滾りを受け止めたインデックスも笑いながら口を開いている。先程、何度も達した操祈には見間違えることもない、絶頂した恍惚の顔だった。
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:20:37.05 ID:LaFDeQMgo
(いや――いや――)

 ふるふると顔を振る。払い落とそうとする。
 ほんの一瞬だったとはいえ、信頼した少女が女の顔で達している。其れを自分が見ている。
 見て、性器が粘液を垂らしている。
 先程の指技で強制的に吐き出されたものではなく、半ば自分の意思で感じて垂らした淫蜜がトロリと溢れ出てきている。

 其れは二人の性交を間近で見て操祈も感じていたということ。
 其のことを認めたくなくて、熱い涙が溢れていた。滔々と流れていた。
 何故こんなに流れてくるのか、自分でもわからない。
 感じていたことを認めたくない。其れは確かだ。
 然し其れだけではない。何か、自分でも理解できない何かが涙の中に隠れている。
 心理掌握が自身を掌握出来ない。

 声を出せていたのならば。
 絶叫できたのならば。
 理解できていたのかもしれない。

 然して、見上げる操祈の瞳には、達した後にも拘わらず性器をつなげたまま濃厚に互いの唇を貪り合っている二人の姿があった。
 ケダモノの様な醜い光景であるはずなのに、神々しくさえ見える、矛盾。互いの唾液を悦んでいる顔が輝いている。

「ありがとうなんだよ、とうま――頑張って妊娠するね――」

「インデックスの子かぁ。母親並みに食うようになったら上条さんの経済は破綻しますよ」

「お馬鹿なんだよ、とうま――」

 赤く頬を染めて、人形のような少女が微笑む。
 心の底から嬉しそうに、隷属する喜びを語る。

 そんな二人の遣り取りを見てか、急激な疎外感に突き動かされた美琴が立ち上がって『インデックスの唇』を奪った。

 一瞬驚いた顔をするも、笑って少女と少女が口淫する。
 ぴちゃりぴちゃりと音を立てて互いの唾液を啜る。

 猿轡を噛まされた操祈は驚いて見上げるしかない。滔々と涙を流し続けたまま。
 感じるのは疎外感。
 御坂美琴の感じたものと同じ。

 きっと、涙のワケもそう。

 だから。

(嘘、でしょう――)

 理解して、操祈は自分の心を疑う。
 御坂美琴は其れを狂った歯車と呼んだ。
 ほんの一日前には顔も知らなかった誰かに、今自分は恋焦がれているのか。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:21:11.12 ID:LaFDeQMgo



 インデックス。


 彼の少女が遠い。
 出口の見えない螺旋階段のように、同じ場所を――同じに見える場所を――食蜂操祈は巡っている。
 嘆いても、響いても、誰かへの情熱が心の中にあることを否定できない。
 其れは強烈な嫌悪感になって操祈の精神を蝕んだ。
 既に投げられてしまった賽子は目を出す以外に結果が存在しない。角を持って床に仇するのは確率の玩具でしかない。
 だからと言って、これ以上穢されたくない。奴隷、などという単語で括られてたまるものか。


 今ならば、逃げられる。


 自分は裸で、こんなものを口にさせられているが拘束されている訳ではない。
 拘束具たる御坂美琴は離れている。
 逃げて、ギャグを外し、大声で悲鳴を上げれば誰かが駆けつけてくるかも知れない。
 何時までも黙っていられるものか。

 然し足は動かなかった。ぴくりとも動こうとしなかった。
 視線は三人に釘付けになったまま。動かせない。
 ギャグを外すことすら出来なかった。

 やがて、三人の睦みあいが終わり、視線が操祈に絡んでくる。
 恥ずかしがるインデックスと、何処か余裕のある美琴。然して傲慢不遜な顔をした上条当麻が食蜂操祈を見定めている。
 獲物は、針についた返しに引っかかった儘。
 くくく、と噛み締めたように上条が笑う。其れは、ははは、という暴虐な嗤いへと変わっていく。
 其の股間は、何度も何度も射精して尚大きさを誇っていた。


 狐の目。

 獲物を見つけた狐の目。

 箱の中の鶏を全滅させる肉食獣の目。

 男の目が食蜂操祈を覗いている。

 安息の欠片を与えられた、首輪と口輪の付いた女を見ている。
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:21:44.87 ID:LaFDeQMgo
 然して、当たり前のような顔をして操祈の身体に手を伸ばした。
 涼しい表情で三人の興奮に当てられて尖っている乳首を弄る。
 逃げないという確信があるのだろう。ねっとりとした指使いには余裕すらあった。
 限界以上までに膨れ上がって勃起してしまう。

(いやよ、もういや――)

 いやらしさを否定するように美貌を左右に振るも、逃れられる通りはない。意地悪く口元を歪ませた上条が両の乳首を抓る。

「むふぅ!?」

 現実的な甘美が乳首から弾ける。姫肉で強制的に与えられたあの妖しい感覚が広がる。
 僅か数時間の間に急速に食蜂操祈は女として花開いている。

「ほら、感じてるんだろ?」

「ゥゥン、ン――」

 落ち着いた声と共に勃起した乳頭と柔らかな乳肉とを揉みしだく上条当麻。
 まるで其のためにあるように少年の手に馴染んで、肉体と精神とに染み込んでくる。
 怒りと絶望と孤独と。混じり合った炎が燃えていたハズの瞳がトロン、と溶ける。
 ボールギャグの空いた穴から甘い息が漏れる。
 心は此の男に屈していないはずなのに、快楽に贖えない。

 然して、頃合を見計らったのか、上条が右の乳首に吸い付いてきた。

「んンーっ、むーっ!」

(いやぁ、気持ち悪い!)

 食蜂操祈は拘束されていない。然し下半身に力が入らない。必死になって身を捩るが上条の唇を振り払うことは出来ない。
 敏感になった乳首を本能のままにしゃぶられて汚辱感が身に染みてしまう。
 本来ならば赤ん坊に含ませる其れを大の男に奪われる。勃起した乳首をねっとりとしゃぶられてしまう。

「くふっ!」

 強烈な嫌悪感と共に甘い性感が操祈を擽る。眉間に縦皺を刻みながらギャグを噛み砕かんとの操祈を上条当麻は逃さない。
 硬く凝った乳首に歯をたて、柔らかな乳肉にナメクジの如く舌を這わせる。
 甘噛みされて電流の走る乳首をねちっこく弄られ何とも言えない感覚が操祈を襲った。
 歯を立てる。しゃぶる。
 この二つを繰り返されると脳の奥が真っ赤に染まって何も考えられなくなる。

 復讐も、罵倒も、インデックスへの思慕も。

 痛いのは嫌だ。其れよりは気持ち悪いほうがましだ。だって、気持ち悪いだけじゃないのだから。
 気付けば舌の愛撫を楽しんでいる自分がいることに食蜂操祈は気づく。
 気づいて、深い嫌悪に陥る。陥りながらも繰り返される愛撫に身を焦がす。

 好きでもない男。自分と釣り合わないレベル0の無能力者。
 自分の純潔を無理矢理奪った下司な男。
 そんな男に舐られて何故自分は心地よくなってしまっているのだろう?

 此の儘だと、また犯される。

 インデックスのように。

 自分も、あんな顔をするようになるのか。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:22:42.73 ID:LaFDeQMgo
(其れだけは、いやよ――私の自尊力が許さないわ――)

 インデックスのあの表情は瞼に焼き付いている。
 嬉しそうで、幸せそうで、でもメスの顔で。
 こんな下等な男のためにそんな顔をしようなど、食蜂操祈のプライドが許すわけもなかった。

 レイプの屈辱と恐怖を忘れたわけではない。否、今でも怖い。
 然し其れ以上に自分が屈してしまうことが怖い。

「へぇ。まだそんな貌、出来るんだ。ホント、プライドだけは強い女ね――」

 呆れたような顔で御坂美琴が言う。
 その隣には裸のインデックスが寄り添っていた。
 雨に濡れた子犬のような目で、言う。

「いじめてばっかりじゃダメなんだよ――優しくしてあげないと――」

 其れは真心から出たものかもしれない。
 然し、事はそんな場所を通り過ぎている。
 分かっていながら、美琴が笑った。

「大丈夫よ。これからは気持ちいいことばかりだから」

 不敵な笑みを浮かべた美琴。操祈に怯えの色が走る。

 何時の間にか身体を離していた上条が操祈の下半身へと移動する。
 両膝の裏に手を入れて高く持ち上げた。
 そのまま膝が床につくほどに身体を折り曲げられてしまう。
 下司な言葉で言う「まんぐりがえし」の形となった。
 窮屈な姿勢で、股間の筋が天井に開かれる。

「んーっ!」

 自分の性器が丸見えの恥ずかしい格好に操祈が悲鳴にならない悲鳴を上げる。
 ピンク色の襞が露骨に見えて、自分のものなのにまともに見ることができない。
 まるで商売女だ、と涙目になった。

(ダメ――恥ずかしすぎる――)

 秘裂はおろか肛門まで曝けだしている格好に羞恥心を感じない訳がない。気を失わないのが不思議なぐらいだ。
 秘所を覗かれるのが二回目だとはいえ、僅かなりとも慣れたわけではない。
 然して、三人の視線が集中していることがわかるともう耐えられるものではなかった。

「やっぱり綺麗なんだよ、みさきの――」

「こんな小さな穴に当麻の大きいのが入るんだから不思議よね」

「赤ん坊が出てくる穴だぞ? 確かに米粒ぐらいしかないけどな」

 敏感な割れ目に息がかかる距離で三人が評価する。
 後ろ手に縛られているわけではないのだから抵抗できそうなものだが、最早全身に力が入らない。

 然して。

 余裕を持った上条当麻が濡れた秘所に舌先を伸ばした。

「うぐぅ!」

 舌先がねちゃり、と触れた瞬間、怖気と快感が走る。
 インデックスが舐めた時と同じ、否、ある意味其れを越えた何か。
 ピンク色の肉の中を舌先で弄ぶとおぞましく妖しい何かが全身を巡り、高々と突き上げたヒップを揺らす。
 いやでいやで仕方ないはずなのに、全身から全ての力が抜けていった。
 インデックスにされた時と同じように。

「ずいぶんと濡れてきたな」

 口を離して言って、再び口を近づける上条。
 其の行為が怖くて仕方がない。

 何より、インデックスがしたときと何も変わらない快楽が怖い。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/04(土) 01:23:08.42 ID:LaFDeQMgo



 ――唯の肉体の反応であって、愛情でもなんでもないの?


 食蜂操祈には其れが怖くて仕方がない。
 優しくされて、一瞬でも心を許したから気持ちよかった。のではなく、ただ粘膜と粘膜の接触が生み出した幻想に過ぎなかったのだとしたら。

 心の愛というものを信じきれない操祈にとって其れは圧倒的な暴力となる。

(違う――違うわ――そんなの、嘘よ――)

 然し幾ら否定しても淫蜜は止まらない。滔々と溢れてくる。
 性器を舐められて恥ずかしいのに、視線を逸らすこともできない。

「うぅン――ふむゥ――」

 舌先を浅く入れて、表面に溢れ出す蜜を砂か何かをかき回すようにしてやると操祈の息が鼻から甘く抜ける。
 卑猥な体位での愛撫にもう抵抗もしない。陵辱者の舌がまんぐりがえしの操祈の核を弄ると身も世もないように身体をくねらせた。
 ギャグで閉じれない口から涎と共に甘い嬌声が溢れる。

「もっと気持ちよくしてやろうか?」

 口先をベトベトにした上条が舌を突き刺しながら言う。
 其の舌はクリトリスから大陰唇、膣口、アリの戸渡りとをせめて、更にその後方へと動く。

「んむぅっ!?」

 上条の舌が食蜂操祈の肛門を舐めたとき、彼女は夢心地の疲労の中から突然に意識を立ち上げざるを得なかった。  
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/04(土) 01:27:08.75 ID:LaFDeQMgo
中途半端だけどこんなもんで
テレパス使える人だからしゃべれなくなったらどうなるのかとやってみたら個性も消えました まる
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/02/04(土) 01:43:38.98 ID:2zaqy8UG0
……ふぅ。

………………ふぅ。


ふぅふぅふぅふぅふぅふぅ…………………………。


[ピーーー]気か!!>>1乙 
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/09(木) 21:04:21.58 ID:z8QwvHNto
投下をします
本来ならば文字通り糞バナシなんですが、どうにもこうにも書きづらいので今回は逃げます
ゲス条さんは難しいかもしれません 
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:05:06.31 ID:z8QwvHNto
 コンパクトの手鏡をのぞき込みながら超能力者第四位、麦野沈利は流行のラブソングをハミングする。
 周囲に聞こえないように、小さく。だが喜色は隠せない。
 化粧のノリもいいし、今日の服装は我ながらうまくいった。
 長い茶色の髪を二つのお団子にして紅地のベルベットシュシュで纏め、裾の広がったカットソーのワンピースに綺麗な色を重ねたタイツを合わせている。
 少々幼い出で立ちだが麦野の実年齢を考えれば可笑しくはない範囲だ。
 実際、鏡に映る自分の姿に麦野は特に違和感を覚えたりはしない。
 美人には何でも似合うのだ。
 少しでも綺麗になりたい。可愛くなりたい。素敵だと思ってもらいたい。
 そんな想いが胸の中で木霊する麦野は立派な乙女である。

 アミューズメント施設が集約された第六学区の広場に設置されているオープンカフェで麦野沈利は朗らかに微笑む。
 まだ肌寒いし春一番が吹き荒れているしで外でのんびりお茶をする時期ではないのだが、幸いなことに今日は風も弱く太陽の光も暖かい。
 快晴の日はえてして風が強いものだが、どうやら偶然はいい方向に向いている。
 それに胸の中でとくん、と打つ鼓動を抑えるのには少々肌寒いぐらいで丁度良い。
 一応肩下げのバックの中には財布と一緒に折りたたみ式のパーカーも入っているが、今のところその必要はなさそうだった。

 麦野の首からはホワイトゴールドのブロークンハートネックレスが下げられている。ハートが二つに割れていて、その片割れを付けているのだ。
 高級ではない。しかし浜面からプレゼントされた麦野の宝物だ。
 主張しすぎないからどんな服装にでも邪魔をしない。
 ちなみに滝壺はプラチナの同デザインのネックレスをプレゼントされている。二つのペンダントトップが合わさって一つのハートを形作る。
 非常に分かりやすい呈示だ。
 デートの時に意外と黒で纏めてくる傾向のある滝壺にはいいアクセントになっている。
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:07:14.71 ID:z8QwvHNto


「今日は私の勝ちかな」


 にんまり、と鏡の中の麦野が笑う。
 この前のデートでは滝壺に少し先をいかれた。今回はちょっとばかり可愛いコーディネイトで浜面の視線を釘付けにするつもりである。
 こまめな洗顔と保湿とを欠かさない肌はいつもよりも瑞々しい。
 淡い紅色の唇はグロスがなくとも輝いているし、アイシャドウがいらないぐらいに目元もすっきりしている。
 化粧がいらないぐらいだ。
 実際問題、スッピンでも十分勝負できる美しさが麦野にはあるし自覚もある。
 それでも綺麗になれるのであれば髪の毛一本ほどの妥協を許さない。それが麦野沈利というオンナノコだ。
 傍で見ても全くわからないが、かつて顔に大きな傷を負っていることもあってスッピンでの勝負を無意識のうちに避けているという部分もある。
 しかしそれ以上に本気で綺麗になりたいという想いがあるのだ。
 もちろん濃すぎるなんて失敗はしない。ナチュラルに、それでいて主張するところは主張している。
 その証拠に、街行くと男達の視線は麦野に釘付けだ。
 ふふん、と勝利の鼻息をならすもこの顔は浜面仕上のためだけにあるんだと思えばまだまだ勝利には程遠いと気を引き締める。

 本日は土曜で半日学校の日である。時刻は十一時を半分近く回ったところ。
 滝壺は学校から出て部屋に戻る途中だろうか。
 浜面も今日は補習がない。少なくとも今年度中はない。
 学年を残り一週間切って漸く進級の目処がたったのだ。
 かなり強引で無謀なスケジュールだったし、それに加えて工事機械の免許も取得しつづけていた浜面だったが、なんとか無事に何も失わずに人生のコマを進めることができたのだ。

 今日のデートはお祝いの意味もある。
 安物ではあるがそれなりに見栄えのする白いカジュアルスーツ一式と靴、ネクタイとを先日滝壺と一緒にプレゼントしたばかりだ。
 麦野個人としては多少値が張っても良いものを着せたいと思うのだが浜面が嫌がるので十万で収まる範囲で揃えてしまった。
 しかし長身で鍛え抜かれた肉体を持つ浜面にはきっとよく似合うだろう。強いて言うのならば猫背気味だからそこを直してもらいたい。
 いつも同じ高さにある視線だが、少し見下ろされるのが麦野の好みなのだ。
 どうやらまだ身長が伸びているらしい浜面はどんどん麦野好みの男になっていく。
 カッコイイ浜面に腕を組んで思いっきり甘えたい。
 麦野の支度は少々早すぎる嫌いはあるが、これはデート前のドキドキを少しでも長く楽しみたいという麦野なりの幸福の獲得方法である。

 興奮すれば汚い言葉が飛び出すという悪癖のある唇も、今この時は嬉しそうに微笑んでいるだけだ。
 浜面のことを考えるといつもこんなだ。どうしたって顔が綻んでしまう。
 思うだけで心の中で小さな痛みとサクラ色の何かが広がって体中がほっこりと温かくなる。
 決して美形ではないが愛嬌があって、逞しい肉体は全てを預けたくなるような安心感がある。
 太く広い腕の中に抱きとめられるとただそれだけで空まで飛べそうな気分になる。
 実際問題として、麦野はその能力で空を飛ぶことができるが、ロケットのように強引に重力を振り切るそれと、暖かな浮遊感を持つ心の充足は全くの別物だ。
 人を好きななるということは素敵なことなのだ。


(まだかな――まだかなぁ? ねぇ、はーまづらぁ?)


 恋人の名を苗字で呼ぶ習慣はまだ続いている。奇妙な同棲生活を続けて何度も身体を重ね合ってもそれは変わっていない。
 でもいつかは麦野という姓は捨てようと思っている。例え戸籍上浜面仕上の妻となれなくとも改姓はできる。あとはただ自分がどう思うかというだけの問題だ。それはもう確信しているし決定事項だ。
 だからって焦っているわけでもない。
 こうやって待つ時間も楽しい。
 実際、年齢が逆だったらもう籍は入れられるんだけなぁ、と空想したこともあるが、その空想が楽しいのだ。
 広場中央の時計台を見上げればまだ十分も経っていない。
 流石に注文したコーヒーから湯気は消えているが熱さを失ってはいない。それに身体はどんどん熱を持ってきている。
 島崎藤村の『初恋』の一節『誰が踏みそめしかたみぞと問ひたまふこそこひしけれ』ではないが思いっきりからかってやりたい。
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:08:16.61 ID:z8QwvHNto


 誰のせいでこんなに身体が熱くなってるんだよ、って。


 きっと一瞬ギョッとした顔をして、居心地悪そうに視線を泳がせて『もしかして俺のせいか?』なんて照れくさそうに言って。
 それを『ばーか、調子にのんなー』って言い返して、しょぼんと凹んだところに思いっきり抱きついてやるんだ。

 実際にはできない。麦野はここぞというところで踏み込むことができない。そのことを彼女もよく理解している。
 できるのは滝壺理后だ。
 ひとりの男を共有して奪い合っているライバル。惚けた顔をしながらひょいっと麦野の超えられないハードルをいつも超えていく。
 浜面の手をとったり、腕を組んだり、隣に座ったり、頭を肩を持たれかけさせたり。
 どぎまぎして、照れくさくて中々できなくて狼狽えている麦野を置いてきぼりにしていつも浜面の隣に澄ました顔をして座っている。
 右を取られれば左があって、左を奪われれば右に行けるからまだなんとかなっているだけだ。
 ほくろの数も知っている仲だというのに普通の恋人関係的な部分はまだまだ麦野は慣れていない。
 今だって浜面のエスコートがないと恋人握りすらできない。

 麦野沈利は可憐な乙女である。
 ほくろの数を知っているような仲の男の手もろくに握れない。滝壺理后を除く誰かの前で浜面仕上に素直に甘えられない。
 とくん、と胸を打つ痛みに耐えながら年下の愛人のことを想う。


「おや、麦野じゃないですか」


 そんな麦野の空間は可愛らしい声で壊された。
 てくてくと軽い足取りで近づいてくるのはアイテムのメンバー、絹旗最愛。
 常盤台の制服を身にまとって片手にクレープを持った愛らしい少女がにこりと笑いながら麦野に語りかける。


「こんにちわ。デートですか? 超可愛い格好ですね」


 こんな時間に甘いものを食べたら昼食が取れないだろうと麦野は思ったがとん、と向かいの椅子に座られるとクレープがツナと蒸かしたジャガイモの軽食系だと気づいた。
 ファミレスに鮭弁などを平気で持ち込む麦野だったが最近はそこら辺も気を遣うようになっている。
 これはいいんだろうか、と思ったがそう思っている間にぺろりと絹旗はクレープを食べ終えてしまっていた。


「そうよー、これからデートなんだ。羨ましい?」

「相手が浜面でこぶ付きじゃなけりゃ超羨ましいです」

「そりゃ残念。滝壺には『絹旗がこぶ扱いしていた』と伝えておくわ」

「超やめてください。滝壺さん云々でなくって三人デートというのが超理解できないだけです」


 ありゃ、と眉の間に縦筋を入れて麦野が肩をすくめる。
 みんなで暮らそうという案を蹴っ飛ばして常盤台に潜り込んだ絹旗の気持ちもわからなくはない。
 絹旗も個々人に対して悪印象を持っているわけではないのだが、不安定な形の上にさらに異物として自分が居ることは嫌なのだろう。
 実際、絹旗は浜面とデートしている。映画に付き合っただけだと浜面は言うだろうけれども世間一般ではそれをデートと呼ぶ。
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:09:06.17 ID:z8QwvHNto


「まぁ、麦野は超ヤンデレですから今の形が落ち着いているのかもしれませんが私には超わかりません」


 店員を呼んでマンゴーパフェを注文する絹旗。ここは結構パフェが美味しいんですよ、と大きな眼に甘い星を散らす。
 私は浜面と滝壺きたら行っちゃうんだけど、と言ってみても、超関係ないです好きにしてください、と素っ気ない。


「わかってもらおうとは思わないけど、そのものズバリ言われると結構くるわね」

「麦野の人生ですから麦野の好きなように生きて構わないと思いますが、私は恋愛するんだったら自分一人だけを見てくれないと超嫌ですね」

「その割にアンタ、浜面とデートしてるじゃない」

「でーとぉ!? 超冗談じゃありません。
 映画観るのに相方が欲しいだけです。
 私は麦野や滝壺さんみたいに趣味悪くはないです。
 そりゃ、確かに背も大きいし何かと気が利くし、そういった意味では好みのタイプですがスケベで変態でニヤケて超キモ顔なところは超ちっそパンチ食らわしたいぐらいに嫌いです
 ――なんです、その生暖かい視線は」

「いやぁ、残念だなぁ、と思って。そんな素直じゃない絹旗の恋を超応援できないよ」

「私と滝壺さんの口癖を混ぜないでください! 新技・超ちっそドリルぶちかましますよ!?」


 仲間として応援ぐらいはしてもらえると思ったがリアリストである絹旗には理解できないようだった。
 その分、少しぐらいからかってやろうと浜面とのデートのことを突っ込んでやると面白いように反応する。
 耳まで真っ赤にしてがおー、と両手を突き上げて。

 絹旗が浜面仕上に好意を抱いていることは間違いない。
 それが恋心に変わる日が来るかどうかはわからないけれども、もしあの馬鹿が絹旗も欲しいと言い始めたら素直に従おうと滝壺と話し合っている。
 嫉妬しない訳はないだろうけど、絹旗がこの想いと同じものを心に宿したとき、諦めろということは麦野にはできない。
 妹の恋を応援するってこんな感じなのかな、と軽く唇を歪めると笑われたと勘違いした絹旗が牙を剥き出しにして怒り狂う。


「なんですか、なんなんですか! どうしても私が浜面を超好きだって言うんですか!」

「滝壺もそう言ってるわよ? お子ちゃまだからまだ気づいていないってもね」

「誰が超お子ちゃまですか!」

「ワカメちゃんスタイルで視線を集めてたりしてたところとか? 常盤台の制服着用義務があって正直ホッとしてるもの」

「ワカメちゃんじゃありません! あれは超計算しているんです! 見えそうで見えないラインを――ってなんですか、その目は!?」


 ニヤニヤと生暖かく麦野が見守ってやるだけで絹旗の顔は赤くなる。
 ああ、こりゃ確定だわ、と今更のように思って、そして軽い嫉妬とまだまだ負けないなという自負とが麦野の中に湧きあがる。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:10:05.31 ID:z8QwvHNto

「うふふ、かーわいいねぇ、絹旗ちゃーん」

「その呼び方は超止めてください。嫌な奴を思い出します」

「あら、仲いいんじゃなかったっけ? 浜面言ってたけど」

「仲良くありません!
 黒夜は超嫌な奴です!
 三学期はじめの身体測定のとき、あの糞アマ、去年から三センチも身長伸びてたんですよ!
 超許せません!
 私は一ミリも伸びてないのにアイツだけすくすく育ってるんです!
 何がいけないんですか!
 牛乳だって毎日飲んでます!」


 腕を振り回してぎゃーぎゃー騒ぐ絹旗。
 自分も数年前に成長期を終えてしまっているが、まだ十三歳で希望を捨てろというのはかわいそうな話だ。
 実際問題女の子は十一歳で身長が止まる子も結構いるのだが、彼女らと比べても今の絹旗最愛は拳骨一つ分ぐらい低い。
 身長は絹旗のコンプレックスなのだ。


「――うん、そっか。悪かったよ。でも牛乳飲むと身長伸びるのはホントだよ。毎日一リットル飲んでる浜面も一年で四センチ伸びたって言ってたし」

「Σ(゚Д゚|||)ガーン あ、あの野郎……下っ端の癖にまだ超成長期だったていうんですか! 超許せません!!!」

 
 ブルブルと怒りを貯めながら絹旗が拳を握る。
 ああ、窒素装甲全開で浜面なぐるんだろうなぁ、と判断した麦野は、


「ぶちのめすのはデート終わってからね」


 とだけ言い放つ。
 大丈夫。超能力者である自分に三回も勝った男が大能力者の絹旗に負けたりはしない。
 精々追い回されてボロボロになって『かんべんしてくれぇ』と情けない悲鳴を上げる程度だ。
 全然問題はない。
 ちょっと過激なスキンシップというだけだ。
 甘えん坊の絹旗に自分の男を貸し出してやるなんて、なんてできた女なんだろうと麦野は自我自尊する。


「でもいいじゃない。仲良しの友達ができて」

「超仲良くないです」

「まぁまぁ、老婆心ってやつさな。ばばぁじゃないけど」

「麦野沈利さんじゅうはっさいですからねぇ。まだ余裕はありますね。具体的に言うと不惑まで超二年ぐらい」

「あれぇ、絹旗、今日は随分と反抗的だにゃーん?」

「麦野が私をからかうからです! 無理矢理、浜面が好きだってことにされちゃうし、身長が低いことも弄られたし」

「待て。身長のことは弄ってないぞ。牛乳は効果がある証拠があるって言っただけじゃない」

「証拠が浜面だから嫌なんです! 浜面がどんどんおっきくなったら余計に私が小さく見えちゃうじゃないですか!」
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:11:49.61 ID:z8QwvHNto


 ふぅん、と麦野は絹旗に対する評価を改める。
 具体的に自分がどの目線で見られるかを気にしている辺り中々侮れない。
 コイツと敵対する日はそう遠くはないかもしれない、などと心のメモに書いておく。
 もちろん、浜面の判断には従う。だが女の本能として戦うべき時は戦う。
 戦い方はオシャレだったり甘え方だったり、色々。


(肌は綺麗だからな。オシャレを覚えたら化けるかも――たぶん)


 くりくりとした瞳。滑らかな珠の肌。形のいい唇はやや小さめで愛らしい。
 小さな手は守ってあげたいという庇護欲を掻き立てるし、控えめな胸も慎まやかな臀部もメリハリにはかけるが綺麗な形なのは一緒に風呂に入ったことがあるから知っている。
 どこまで成長したのかは判らないが、意思の強い瞳で見上げられたら浜面も悪い気はしないのは確かだ。
 ワカメちゃんスタイルは空回りしていたが、もっとこう自分を輝かせるあざとい方法を見つけ出したら厄介なことになると麦野は判断する。


(ま、そうなってからの話かしら――宣戦布告は済んでいるけどね)


 マンゴーパフェが運ばれてくると不思議な閑話は休題。
 相好を崩した絹旗が長いスプーンでもってパフェと格闘し始める。その姿はどう見ても色気より食い気。花より団子だ。
 年よりも幼く見える外観と相まってとても愛らしい。最愛の名前を持っていて当然だと麦野は感じた。

 時計台を見上げる。
 そろそろ約束の時間の十分前。
 あと一分もしないうちにふたりの足跡が聞こえるだろう。
 辺りを見回してみる。


 ほら、いた。


 白いカジュアルスーツ一式に身を包みいつもより背を張って、いつもボサボサの茶髪はワックスでオールバックに纏めている。
 ただそれだけなのにいつもより何倍もカッコイイ浜面仕上が居た。

 隣にはウエストタグ入りの黒いアウターに同じく黒の――ただしこちらの黒はトーンが違う――レイヤード風チェニックを合わせ、ベージュ色のフラップポケットパンツを履いた
モノトーン系の滝壺理后がいる。
 当然その胸元には麦野のペンダントトップの片割れが鈍色に光っていた。

 颯爽と歩いてきた二人を見て、パフェと格闘していた絹旗が驚く。


「おお、浜面ですか! かっこいいですねぇ。馬子にも超衣装ってやつですよまさに」

「おう、絹旗。こんにちわ。なんだ麦野と会ってたのかよ」

「こんにちわ、きぬはた」

「こんにちわです二人とも」


 にか、と歯を見せて陽気に笑う浜面仕上。常日頃玩具にしてばかりで、つい先程までもぶっつぶすとほざいていた絹旗も一瞬見とれるほどにその服は似合っていた。
 猫背を解消すれば浜面は本来の背の高さを取り戻す。そして長い手足に引き締まった身体があるのだから採寸さえしっかりしていればカジュアルが似合うのは当然だ。
 スリーピースだからサスペンダー仕様で同色のベストをスーツの下に着ている。
 これで思いっきり日焼けなり酒焼けなどをしていれば文字通り堅気の職業の人間ではなくなるのだが、浜面は寧ろ清々しさや知性を感じさせている。

 そんな浜面を見て。


(わぁ――かっこいいぞ、はーまづらぁ)


 ぽお、っと頬を染めて放心状態で自分の愛人を見上げていた。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/09(木) 21:13:33.07 ID:z8QwvHNto
 そして、そんな恋人に浜面が気づかない訳がない。片足を前に出して胸元を広げる仕草をして、


「どうだい? 惚れ直しただろ?」


 なんておどけてみせる。
 すると麦野は抑揚のない声で、


「うん。惚れ直した――」


 と言って、赤くなった頬を両手で隠した。
 思ってた以上の反応に浜面は困惑するが、自分がかっこいいと言われて悪い気はしない。
 せっかく纏めた髪をボリボリと掻いて、少しだけ居心地の悪そうな顔をしたあと、


「麦野も可愛いぞ。いっぱいおしゃれしてきてくれて嬉しいぞ、俺」


 気障な台詞を吐いて、柄じゃないな、と苦く笑う浜面。
 そういうところがダメなんだよ、と唇をとがらしたあと、にこりと笑って。


「誰のためだと思ってるのかな?」


 と浜面以上におどけてみせた。


「――俺のため、か」

「決まってるじゃん、馬鹿」


 すっかり二人だけの世界に入っている麦野と浜面を前にして絹旗は「このパフェ甘すぎです」と舌を出し、滝壺は「私はかわいくないのかな?」なんて浜面の袖を引っ張る。
 すぐさま正気を取り戻した浜面がフォローに入るも、そうなれば麦野の機嫌が悪くなる。
 ふん、とすねた顔をして、財布から札を二枚取り出すと絹旗の前に置いた。


「悪いけど絹旗払っといてね。それとも一緒に来る? お昼ご飯までなら奢ってあげるけど」

「ありがたいお誘いですがこのパフェで超お腹いっぱいです。それに人の恋路を邪魔すると麦野に蹴られて原子崩しなので超遠慮します」

「あ、そ。わかったわ。きちんとした食事とらないと伸びないわよ?」

「超うるさいです! 浜面! あとでオシオキですからね!!!」

「おい! ンだよ、それ。久方のデートで気持ち晴れ晴れなのに何にいきなり喧嘩売ってくるんだよ絹旗」

「あー、なんか身長がねぇ」

「ぎゃー! 何言うんですか麦野! さっさと行ってください! デートなんでしょ? ほら超消えて消えて!」

「わかったわかった。道すがらのんびりと話すから」

「それも超やめてください!」

「はいはい。全くお子様なんだから」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/09(木) 21:14:05.55 ID:z8QwvHNto
 バカバカしい掛け合いの最中、顔を真っ赤にしながら麦野が浜面の手を取る。
 必死の思いで、やっと手にとった右手。
 左腕には滝壺が腕を絡めている。
 強くたくましい右手に一度は失った自分の左手を繋げるのが麦野は好きだった。
 取り戻してくれてありがとう、という意味で。
 手にとって、立ち上がる。拡がったワンピースの裾を右手で直す。軽く背中とお尻とを見て特に汚れはないな、と確認する。
 よし、今日も綺麗だ。ドキドキする心臓を掴むように右手を胸元にもってくる。きゅん、と身体の中で音がする。


 絹旗にはまだ早いって、これは。


 小さな痛みと広がる熱。これを感じてるはずの滝壺を少しだけ睨んで、浜面に聞こえないように二人で唇だけを動かす。


 負 け な い か ら ね


 長い戦いで負けても失うものは精々戸籍上の登録事項だけで、一緒にいられることに比べれば下らないことなんだけれども。
 それでもやっぱり浜面仕上に関することだけは誰にも負けたくない。

 一瞬だけ火花を散らして、満面の笑みで浜面の腕を自分の胸に埋める。私の男だよ、って。この熱が少しでも伝わればいいなって。
 せっかくオシャレしたのにもう裸になりたい。
 直接熱を伝えたい。
 できるのならば心臓そのものに触ってもらいたい。
 そんな想いで見上げれば、いつもより高い位置にある頭。
 やっぱりこっちのほうがカッコイイじゃない。
 二つ年下の恋人は十五センチ高い位置で照れている。
 嬉しくて思わず微笑んだ。


「麦野、本当に超丸くなりましたね――」


 呆れた顔で絹旗がいうが麦野はそれを否定しない。滝壺もそうだろう。
 ドキドキと心臓を高鳴らせながら宣言する。


「一生分の恋をしてるからね」


 春風のような笑顔。
 コロシコロサレのドロドロとした深い闇の世界にいたとは思えないほど清々しい笑顔。
 浜面は照れっぱなしで、滝壺はムッとした顔で浜面を見上げている。
 絹旗も、自身の名である最愛の光景を見せつけられてはどうしようもない。


「こんな鼻下伸ばした奴、さっさとふっちゃいませんか、滝壺さん」

「いや。はまづらは私のだもん」

「恋は超盲目ですねぇ。どう見てもチンピラなのに」

「あ、それは否定しないよ、きぬはた」

「否定しろよ!」


 ちぇ、と小さく舌を鳴らして絹旗がマンゴーパフェに向かい合う。高々とスプーンを振り上げる。キラリと太陽の光が反射して六角形の格子を大気に放つ。


「さっさと行ってください。私はこれからパフェを超平らげるという任務があるんです」

「ごめんね、きぬはた。はまづらはあとで貸してあげるから」

「楽しみにしてますよ。あ、そうそう浜面」

「なんだよ」

「本気でカッコイイです。私とのデートの時もその格好でお願いしますね」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/09(木) 21:14:57.50 ID:z8QwvHNto


 やるな、と麦野は思う。
 散々からかったのに結局デートという言葉を選びやがった。
 見れば滝壺がこちらを見ている。
 強敵出現だね、とその目が語っている。

 まぁ、でも。
 今は久しぶりのデートを楽しむのが先だ。
 浜面の腕を引っ張って肩口に頭をあずける。引っ張られてよよっとよろけて苦笑する顔も見ていて飽きない。


 さて、今日は思いっきり甘えよう。思いっきり楽しもう。
 ライバルは先に行っているしダークホースも出現した。
 ここで頑張らないとレースから置いて行かれる。
 原子崩しが敗北していいのは世界中で浜面仕上ただひとりだけだ。
 滝壺には感謝しているけど二号で収まるつもりはない。
 浜面の言うとおり、二人とも一番というのならばわかるけれど。

 十五センチ上の、二歳年下の恋人を見つめる。

 馬鹿。世界一の大馬鹿。
 こんな美人を振りませる幸運を本当に理解してるの?

 理解させてやろう。
 一瞬たりとも目が離せないぐらいにベタ惚れさせてやる。
 愛されてないとは思わないけれど、もっともっとこの馬鹿が欲しい。

 空気は暖かく太陽は眩しく風も強くない絶好のデート日和。
 ゲーセンのダンスゲームで可憐なところを見せつけたりプリクラで恥ずかしい写真を撮ったりおいしいレストランや街頭のスイーツで舌鼓を打ったり、やることはいっぱいある。
 願わくば、自分も浜面も、そして滝壺も笑ってあの日は楽しかったと思い出せる日にしたい。

 そして。

 互いに苗字で呼び合うこの習慣も、デートの時には解除しようと提案したい。
 夜の生活じゃないけれど、距離の短い時間ならばいいじゃない。

 ずっと前から考えていた今日の目標を確認して、滝壺と目配せして。
 また猫背になりそうな浜面の背中を思いっきり叩きながら。

 カップルだらけの街並みの一つとなって三人は消えていった。 
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/09(木) 21:24:14.20 ID:z8QwvHNto
変態的な話書くよりはこっちの方が書きやすいなー、とは思ったり
でも鬼畜系の話も書けないとエロスの幅が広がらない
少なくともみさきちの浣腸シーンまでは終わらせないとなぁ 
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/09(木) 23:48:54.62 ID:z8QwvHNto
こんにちわ→こんにちはですね
素で間違えた

このスレ内では麦野18才、滝壺17歳、浜面、フレンダ16歳となってます
最愛ちゃんと海鳥ちゃんは13歳
身長は浜面182センチ、麦野167センチ、滝壺161センチ、絹旗147センチ、黒夜153センチぐらいで
浜面と麦野の身長が同じというのは浜面が猫背なのと麦野がハイヒール好きだからです、多分
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/11(土) 00:57:45.72 ID:Ra2cFeebo
ちょろっと投下
今回ものーえろすで逃げ 
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/11(土) 00:58:16.23 ID:Ra2cFeebo


??「へぇ、鬼の第四位があんな顔するんだ」


絹旗「黒夜ですか。覗きとは超下品です」

黒夜「やだなぁ、絹旗ちゃん。空気を読んで割り込まなかっただけだよ」

絹旗「ふぅん。そういうことにしておきましょう? 注文は?」

黒夜「ここのおすすめってある?」

絹旗「パフェがおすすめです。特に苺カスタードパフェは超おすすめです。
   生クリームとカスタードが絶妙なんですよ」

黒夜「ん、ありがと。店員さーん、苺カスタードパフェ一つね」

絹旗「しかし、こんなところで何をしているんです?」

黒夜「何って、第十六学区なんて遊ぶしかないじゃん。あとショッピングかな。
   ゲーセンでプライズ取って新しいパジャマ買うつもりなんだけど。
   ほかに出物があれば買うかな」

絹旗「そうですか。超興味ないですね」

黒夜「だったら聞かないでほしいなぁ。あ、それにしてもさ、浜ちゃんかっこよかったよねぇ」マジデ

絹旗「ええ。ホント、馬子にも衣装です」チョウ カッコヨカッタデス

黒夜「うんうん。あの格好の浜ちゃんに口説かれたらついてっちゃいそうだよ」イガイト イケメン

絹旗「超ありえませんから無駄な想像ですね」イケメン ジャ ナイデスネ

黒夜「感じ悪いなぁ。絹旗ちゃん、浜ちゃんの格好気に入らなかったの?」カナリ イケテタヨ?

絹旗「そんなことありませんよ。次の映画鑑賞では是非着てもらいたいですね。
   ちゅーの一つぐらいなら超してあげてもいいです。ほっぺたですけど」イケテマシタネ

黒夜「へぇ、顔色一つ変えずによく言うなぁ。第四位にからかわれて顔真っ赤にしてたのに」

絹旗「演技です。超演技です」アカカッタデスカ?
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/11(土) 00:58:56.10 ID:Ra2cFeebo

黒夜「でも浜ちゃん好きなんでしょ?」メッチャ アカカッタ

絹旗「――そうですね。多分好きなんだと思いますよ? 
   アイテムも、もう裏の組織じゃありませんし浜面が私の命令きく必要なんて超ないんです。
   それでも映画に付き合ってくれますし、なんだかんだで一番近くにいる異性です」

黒夜「冷静な分析だねぇ」シミジミ

絹旗「だからって滝壺さんと麦野の幸せを奪ってまで自分のものにしようとは思いません。
   正直、あの関係は不自然にも程があるとは思いますが、幸せなのもわかります。
   あの二人を泣かせてでも欲しいか、となると疑問です」

黒夜「ふむふむ。大人だねぇ。暗部なんて欲しけりゃ力づくで奪ってナンボなところじゃないさ」

絹旗「だから暗部はもうないんです。表の世界に生きてるんだったら表のルールに束縛されます。
   そんなことも理解できない浜面は超馬鹿ですし、浜面に言いくるめられている滝壺さんも麦野も馬鹿です」

黒夜「恋愛なんて損得勘定でするものでもないだろうさ。
   それに、私だって浜ちゃんのことは結構好きなんだよ?」

絹旗「――へぇ。意外です。
   黒夜のことだから自分に土をつけた無能力者なんて憎んでも憎みきれないと思ってましたが」

黒夜「そうそう。それかもしれない。
   なんだかんだで私に勝った無能力者っていうのは大きいかもね。
   なんかこう、甘えても平気だって気がしてくるんだよ。
   それに身体が大きい男って私の趣味なんだよね。こう、ワイルド系の」ウホ、イイオトコ

絹旗「ふぅん。じゃあ奪いますか?」ソレ チガウッテ

黒夜「奪わないよ。命が惜しいもの。
   それになんていうのかな。胸がドキドキとかそういうのじゃないんだよね。
   ほんわかってするのはあるんだけど、切ないって感じじゃあない」

絹旗「超冷静ですね、黒夜」

黒夜「まぁ、まともに戦って敗北するのが怖いだけなのかもね――おっと、パフェがきましたよ、っと」

絹旗「味は保証しますよ? 少なくとも値段分の価値はあります」

黒夜「へへ。そりゃ楽しみだ。あとさ、ひとつ聞いておきたいんだけど」

絹旗「なんです?」

黒夜「浜ちゃんを奪いたいほど好きではないけど、好きなことには変わりないんだね?」

絹旗「そう、ですね――それで合ってると思います。
   一緒にいれば楽しいし浜面のこと想って胸が暖かくなったりもします。
   超抱かれたいか、となると難しいですが、多分イエスと答えるんでしょう」
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/11(土) 00:59:48.31 ID:Ra2cFeebo

黒夜「そっか。じゃあ私は絹旗ちゃんと同じなんだね
   私もどっちかというと抱かれたいから」

絹旗「止めてください気持ち悪い」

黒夜「そう言わないでよ。オナネタ一緒だってことでちょっと親近感あるんだから」

絹旗「――ちょっと、こんな人通りの多い場所で何言ってるんですか、超お馬鹿!」

黒夜「まぁまぁ、一緒に浜ちゃんに調教された仲じゃない。絹旗オナネタノートで」コピー アルヨ

絹旗「黒夜――どうやら新・必殺技、超ちっそドリルの餌食になりたいようですね」ケシナサイ、バカ!

黒夜「またアレ? 窒素爆槍のパターンを窒素装甲でやるっていう奴?
   言っとくけど私の窒素爆槍の二十分の一程度の出力しかないよアレ」カタチダケジャン

絹旗「空力使いとしてパターンを増やしたいんですよ。窒素装甲は垣根帝督にも黒夜にも負けてます。
   空間転移や念動力にも弱いのに接近戦しかできません。
   今の私は本気の浜面が使うガトリングレールガンに勝つ方法がないんですよ」

黒夜「だから妄想の中で調教されてるんですねわかります」エロムスメ ガ

絹旗「あー、もう――兎に角、私は今確実に浜面に負けるんです。それぐらい弱いんです。
   少なくとも本気の浜面に勝てるぐらいの強さを身に付けないといけません」クロヨル モ デショウ

黒夜「――あ、このクリーム美味しい」ウマー

絹旗「話聞いてませんね」

黒夜「聞いてるって。絹旗ちゃん、自信がないんでしょ要するに。
   私みたいにサイボーグ化して腕を増やす、って裏技を探しているところで。
   そうなれば原子崩しとも戦えると」

絹旗「そこまでは考えてません。
   ただ、自信は欲しいです。一緒にいても足を引っ張らない程度の何かが欲しいんですよ。
   そこまでいって、もし浜面が私も欲しいといったのならば、多分あの不安定な世界に飛び込むんだと思います」

黒夜「ふぅん。ハーレムに突入するんだ。
   ま、絹旗ちゃんがそれでシアワセになれるんだったらいいと思うよ?
   そんときは私もペット枠で入れてもらおうかな」ゴロニャーン

絹旗「もっとも、これも全部絵に描いた餅です。画餅は食えません。
   浜面の中の私がどれくらい大きくなるかの勝負でもありますね
   それにあの寮はペットお断りです」
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/11(土) 01:00:29.00 ID:Ra2cFeebo

黒夜「まぁいいけどね。絹旗ちゃんの人生だ。
   ハーレムの一員になって幸せになるもの有りだと思うよ」

絹旗「随分と受け入れがいいですね、黒夜」

黒夜「あ、このカスタード美味しい」ウマウマー

絹旗「超逃げないでください」

黒夜「だってさぁ。結局のところ絹旗ちゃんの態度次第じゃない。
   今のままの三人に飛び込むか、別れて独り身になるのを待つか。
   それがどっちになろうと、自分の精神の安定になるような自信を探している訳だし」

絹旗「超自信がないのは確かですね」

黒夜「暗部もなくなったんだし、能力の強弱なんてもうどうでもいいことなんじゃないの?
   要は女の魅力でしょ。
   大体、戦闘力だけで言ったら一番に落ちるのは能力追跡じゃない」オッパイ オオキイケド

絹旗「知らないんですか? 滝壺さんレベル5に繰り上げになるんですよ?」ムギノ ニ マケテナイヨネ アノ オッパイ

黒夜「へぇー、それは知らなかった」

絹旗「あと、麦野はレベル6昇格だそうです。ただし暫定ですけど」

黒夜「へへぇー、そりゃめちゃくちゃすごいじゃないのさ。でも第一位でなくて第四位?
   第二位や第七位ならわからなくもないけど。
   それも暫定ってどういうこと?」

絹旗「滝壺さんのAIMストーカーって、他人のAIM拡散場を乗っ取ることができるんです。
   そして他人の能力を上昇させることができるようになったみたいなんですね。
   これが認められてレベル5になったわけなんです。
   ですが、今のところ超能力者の中で能力上昇できるのは麦野だけなんです」コンビ クンデマシタシ

黒夜「なるほどねぇ。だから暫定のレベル6か。
   でも学園都市の目指していた最高の存在になったわけだね」スゲー

絹旗「当人はそんなのどうでもいいと思ってるみたいですけどね。本気で。
   夕飯のオカズに何を作ったら浜面が喜ぶか、の方が重要だと言ってました」

黒夜「それは惚気けてるんだよ。砂糖吐きそう」ウェプ

絹旗「私も歯が全部角砂糖になったかと思いましたよ。
   で、なんかレベル6としてこの世界にあるなんでもかんでもが取り寄せできるようになったみたいです」

黒夜「え? それじゃレベル3じゃない。アポートでしょ? なんでもかんでもはすごいかもしれないけど」

絹旗「時間軸に対しても有効なんです。ただし過去方向にだけ。あと座標移動も可です。
   太古の恐竜を連れてきたり、太陽のコロナを目の前に引き寄せたり、敵対相手をブラックホールに叩き込んだりとなんでもありですよ」

黒夜「ほぇええ。それじゃホントに神様だ。第一位だって勝てやしない」ヒャー

絹旗「ただし、滝壺さんのブーストがあっても十秒弱しか持たないそうです。
   発動までに十分ぐらいかかるし。
   使ったら使ったで完全に疲労して指一本動かせなくなるみたいですね。
   実戦では到底使えない能力です」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/11(土) 01:01:14.38 ID:Ra2cFeebo

黒夜「でもレベル6でしょう? 奨学金とか凄いことになりそう」

絹旗「一ヶ月一億とか貰えるんじゃないでしょうかね。
   恐竜捕まえて超売りさばくだけでも三十億はくだらないでしょうし
   でも将来浜面と一緒に会社作るための資金にするから使わないって言ってました」

黒夜「へぇええ。羨ましいわ。
   でも、原子崩しが進化してどうしてスーパーテレポートタイムマシンになるんだろ?」フシギー

絹旗「さぁ? 私も理屈は超わかりません。
   ともかく、滝壺さんはレベル5で麦野はレベル6なんですよ。
   私も少しは成長しないと自信というやつが無くなります」

黒夜「私にも負けっぱなしだけどね」

絹旗「あれは変な腕の効果でしょう。まぁ、負けたのは否定しませんが。
   大体それをいうのならば寮監にKOくらいっぱですよ私達」

黒夜「なんだろうね、寮監の強さ。本気でシャレになんないよね。
   攻撃する前には動いてるし絹旗ちゃんの反射も効かないし」

絹旗「あれですよ。三十過ぎても処女だから魔法が使えるんですよ」ドウテイ ッテ オンナニモ ツカウコトバ ナンデスヨ?

黒夜「うわぁ。マジでありそうだから怖いわ。
   でもどこで見てるかわかんないしこれ以上言わない」フルイ イイカタ ダトネ

絹旗「賢明ですね。正直麦野より怖いです。
   多分ですが、第一位でも勝てないんじゃないでしょうかね」

黒夜「絹旗ちゃんさぁ。
   超ちっそシリーズ開発するより寮監に弟子入りしたほうが強くなれるんじゃない?
   猟犬部隊を一人で全滅させたって話もあるし、超電磁砲や第七位よりも強いって聞くし」

絹旗「強くなりたいわけじゃありません。自信が欲しいだけです。
   それにあの寮監に弟子入りなんかしたら超死にます。絶対死にます」

黒夜「マジでなにものなんだろうねあの人。背中の筋肉が鬼の貌でも驚かないよ」アメリカ ニ カッタリ

絹旗「江田島平八の親戚か何かじゃないですかね。学園都市最強でもおかしくありません」タイキケン トツニュウ シタリ
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/11(土) 01:01:43.10 ID:Ra2cFeebo

黒夜「ま、いいや。絹旗ちゃんこれから暇?」

絹旗「B級映画を見るのに超忙しいです」

黒夜「暇なんだ。じゃ、これからデートしようよ」ネー

絹旗「忙しいと言ってるじゃないですか」ウデ ヒッパルナ

黒夜「えーっ、いいじゃん。一人で出歩くの寂しんだよぉ」イジイジ

絹旗「麦野じゃありませんがすっかり丸くなりましたねぇ、黒夜」

黒夜「あのお嬢様空間にいたら牙ぐらい抜けるよ。絹旗ちゃんからかっても最近反応薄いし」

絹旗「身体測定後に
   『大丈夫だよこれから顔だけすくすく成長して立派なモアイになるから』
   と言われたときは流石にぶち切れましたけどね」

黒夜「いや、あれは我ながらナイスな台詞でした」ナハハ

絹旗「まぁ、いいです。デートしたいのならここの料金払っておいてください」

黒夜「おい、なんでさ」

絹旗「エスコートする方が払うのがマナーです」

黒夜「第四位が置いていった分は?」

絹旗「超おこづかいです」ポッケ ナイナイ

黒夜「けちくさー。奨学金でてるのに」

絹旗「私も麦野を習って少し貯金をしようかと。浜面が会社作るなら出資したいですから」

黒夜「ふぅん。まぁいいや。出しとくよ。その代わり付き合ってよね?」

絹旗「映画一本も付けてください」

黒夜「あいよー。その分買い物の荷物持ちはしてもらうからね」イッパイ カッテヤル

絹旗「超了解です。ただし2メートルのモアイ像とか買ったらその場でぶちのめしますからね」

黒夜「そんなものどこで売ってるんだよ――」 
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/11(土) 01:05:53.80 ID:Ra2cFeebo
グダグダのまま投げっぱなし

一度絹旗と黒夜の心情は書いておきたかったのです

会話文、5~10行で話を進められる人は本当に羨ましい

次こそクソバナシを 

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