2014年6月1日日曜日

とある主人公たちのハーレムルート 2

245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:54:23.43 ID:2lGjUMZ+o
 毎日のストレッチを欠かしていないから肉体の柔軟性には自信があった。
 だが今の食蜂操祈はまるでクラゲの如く骨が存在しない。
 少なくとも筋肉の芯となるべき硬いものがない。
 まんぐりがえしの窮屈な体勢で苦痛を感じることもない。
 拘束は口だけなのに全身の筋肉が反応しなかった。
 ただ与えられる快感に反射的な震えが起こるだけで操祈の意思が届かない。

 意思の中に強い炎は宿っていても意識そのものが快楽に曇ってしまっている。
 大きな瞳は瞳孔が開ききっていて、宿っていたはずの大きな星がこぼれ落ちてしまっていた。

 然して、快楽に屈しないことだけが抵抗なのに流されつづけていた。

 上条の与える刺激は直接的過ぎた。圧倒的だった。
 粘膜の生み出す幻想は操祈の相貌を崩させる。
 いくら強い意志を持とうとも、生物に搭載されている脳器質的反応に抵抗できる訳がない。
 プログラムがハードに焼き付いている基本命令を無視することはできない。
 世界中の誰よりも心理掌握は知っている。

 肉体の疲労。
 精神の疲労。
 誰かへの甘え。
 依存。恥辱。恐怖。心の襞に隠れたねっとりとした闇。
 蚊帳の外に置かれる精神的な苦痛。

 然して、快楽。

 様々な要素が絡み合って化学反応が起こる。
 ただ、其れはまだ表面に浮かび上がるものではない。
 池の底の高低が水が乾いてはじめてわかるように今の操祈の精神には表れていない。
 嵐が巻き起こっていれば水位も何も関係ない。
 ただ流されるままだった。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:55:01.72 ID:2lGjUMZ+o

 流されて、セピア色のあの日のことが過ぎる。
 世界中の全てから愛されていると思っていた幻想が、打ち砕かれたあの日のことを。
 尊敬する父と敬愛する母と、先生と慕った一人の女性と。
 自分が存在する世界が足元から崩れ落ちて、一人であるという疎外感を突きつけられた、あの忌

むべき日の出来事。

 今の操祈は当時と同じ、ただの無力な少女に過ぎない。
 超能力を得たことで新しい外殻を構成し、其の中に必死に隠してきたか弱い自分を剥き出しにさ

れている。

 ほんの数時間前。
 久しぶりに顔を合わせた御坂美琴と花開いた香りの紅茶を飲んでいたとき。
 確かに持っていたはずの様々なものはほぼ全て奪われてしまった。
 もはや残っているのは「心の底から屈服した訳ではない」という最後の一枚だけ。
 処女を奪われる時に「やるならばやれ」と言葉にはしたがあれは言ってみれば屈しはしないとい

う宣言だ。
 今、そこまでして温存したカードも手放しそうになっている。

 もう逃げられないと諦めているのか。強制的に与えられた快楽に溺れてしまった自分を悔いてい

るのか。
 いや、おそらくは其の両方が食蜂操祈から抵抗心の殆どを奪っている。最低の男の舌で性器を嬲

られて悦んでしまった自分が憎らしい。
 然し肉体は感じてしまっていて思考能力を奪うほどに快感が大きくなっていた。

 女王の誇りの最後の一欠片を焼べた炎は心の底に消えそうな燠火となって存在しているだけだ。
 圧倒的な性感の嵐の中でそんな残り火がいつまで保つというのだろう。
 卑劣な陵辱魔達に嬲られて若干高校一年生の発達した、それでいて未成熟な肉体はぼんやりとし

た脳の働きとは別に些細な刺激をも快感と受け取ってしまう。
 秘谷を直接舐められる強烈さはないもののその周辺も敏感に昂っていて、ぬめる舌が這えばぴち

ゃりという音が立つたびに甘く鳴いてしまう。



 然し、その一部分だけは快楽よりも衝撃のほうが強かった。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:55:24.36 ID:2lGjUMZ+o

 白桃のように瑞々しいヒップの一番奥の、割開いた所にある人に見せるべきでない不浄のすぼま

り。
 セピアに傾いたピンクが、排泄するための器官だと信じられないぐらいに美しく存在している。

慎まやかで大人しく、まさに花の蕾のようだった。
 敏感な其処を陵辱鬼が舐めた。


「んん――っ!!!!?????」


 瞬間、泥のようだった意識が明瞭になる。
 赤ん坊の頃ならばいざ知らず自意識を持ち始めてからは両親にだって触らせたことのない不潔な

場所をよりにもよって舐められている。
 無論、御不浄に行って清めていない訳ではないのだが、逆に言えばその程度のことしかしていな

い。先程インデックスに身体を洗ってもらったときも椅子に座っていたから清潔な石鹸の泡で消毒

されたばかりという訳でもない。
 衛生的とは決して言えない場所を舌で責められた。
 ぞくぞく、と背筋に怖気が走る。
 困惑と、然して妖しい快楽とが操祈にのしかかる。


「綺麗な形してるな。超能力者はこんなところも超能力者なのかね」


 言って、上条当麻が窄まりと周囲の敏感な粘膜とをさわさわと指先で躍らせる。唾液で滑らかに

なっている其処に周囲の細く短く疎らな、性器回りとは違う形の陰毛が猫のヒゲの様な触覚となっ

て絡んで操祈の心臓を昂らせた。


「見せあったりするものじゃないもの。わかるわけないじゃない」

「そうだよ、とうま。お医者さんならいざ知らず私達がわかるわけないんだよ」

「そっかぁ? フィボナッチ数みたいに自然界で顕れる美しい形ってあるんじゃないのかな?」

「肛門に黄金比なんてあるかどうか知らないわよ。でもイボも切れ目もないって意味では綺麗なの

かな?」

「綺麗な色なのは間違いないんだよ。すっごく可愛いんだよ」


 再び繰り返される恥ずかしい鑑賞会。
 はしゃいだ声を耳にして気を失いそうなほどに操祈の羞恥心が高まる。
 それでも逃げていった力は戻ってこない。抵抗も出来ない。
 ギャグを噛んだ紅い唇を震わせて眦に涙を浮かべるのが精一杯。髪の毛ひと筋ほどお尻の筋肉が

動く程度だった。
 その間にも上条の絶妙なタッチが操祈の肛門を開発していく。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:55:50.44 ID:2lGjUMZ+o

(いやよ――みないでぇ――)


 湿度の高い浴室で、全身の汗がねっとりと絡みついている。
 触れるか触れないかのギリギリのラインで指が動いて、溶けてしまいそうになる。
 新しい蜜が湧き出てくる。
 通常の皮膚ですら快楽器官に書き換えてしまう上条のタッチは粘膜構造体であるアナルに対して

は必要以上に過敏に働いた。
 ヒクヒクとお尻の穴が動いてしまうことを自覚してしまう。既にボロボロのプライドが更に侵略

されてしまう。染め上げられてしまう。


(おしりで感じてるなんて――こんなの、私じゃないわぁ――)


 首筋を舐られて唇に求めてしまったように、もっと強い刺激を心の何処かで望んでいる。
 嫌な男だ。それは変わらない。変わっていったのは操祈自身だ。快楽に慣れ始めている。
 スポンジが水を吸うように、与えられる快楽を吸収してしまう肉体が憎い。


 然して。


「そうだな。インデックス、責めてやれよ。上条さんは足抑えておくから美琴は道具持ってきてく

れ」

「浣腸とグリセリンとローター?」

「ああ、あと足枷な。アームグローブはいいや」

「わかった。すぐ戻るわ」

「――どうした、インデックス? 早くしろよ」

「う、うん。わかったんだよ」


 くるり、と上条が位置を変える。
 操祈の頭の上に股間を持ってくる形で足を抑え続ける。
 焦点の定まらない視界の目と鼻の距離に先端から涙を流す赤黒い肉塊がある。
 恐怖の対象を目にしても悲鳴を上げることもできない。
 皺くちゃの睾丸が額にぶつかりそうな位置にあって、逃げようとするも操祈は無力なままだった


 レイプで処女を奪われた女の弱さ。
 違う角度で見せつけられた雄の性器に怯えながら悔し涙を流すしかない。


 更に。


 銀の長く美しい髪で顔を隠したインデックスが、おどおどとしながらも白魚の様に細くしなやか

な指を操祈の肛門に寄せた。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:56:16.27 ID:2lGjUMZ+o

「ごめんね。でもよくマッサージしておかないと痛くなるから仕方ないかも」


 くびれた腰と張りのあるヒップ。然してその中央に位置する不浄の蕾。
 魅力的なラインを描く其処に、インデックスが手を添える。
 優しく撫でて、次に来る衝撃を少しでも和らげようとする。
 魅惑的な尻肉を撫でられるたびに、操祈の中に此れまでの暴力的な愛撫とは異なるあたたかな快

楽が芽生える。


「ふむっ!」


 然してインデックスの人差し指がヒクヒクと物惜しそうに戦慄いていた食蜂操祈の排泄口に沈む


 操祈の形のいい顎が跳ねる。
 鼻先が上条のペニスにふれ、ぷるんと揺れた。
 だが其れがおぞましいとか感じる暇もないほどに衝撃は強かった。


(痛い!――痛い――)


 本来、排泄されるものの太さを考慮すれば対して広げられたわけではないにせよ、内側から外側

へという当たり前の機構を無視した挿入には痛みを伴う。
 全身の皮膚が粟立ち漸くのように筋肉に力が入る。
 然し男の力には抵抗できない。
 指を突き立てたままのインデックスが突き立てられた肛門の周囲の粘膜を優しく舐める。
 子犬が泣いた飼い主を必死に慰めるように、柔らかく暖かな其れに操祈の快楽が刺激される。
 だが其れでも痛みは圧倒的で、ジンジンと響いて涙を流すしかない。


「ほら、尻の穴も気持ちいいだろう?」


 気持ちよくなどない。
 少なくとも指を入れられても痛いだけだ。
 これがボールのような形状のもので一瞬で中に入るものだったら話は別だったろう。
 瞬間的に開かれて閉じれば苦痛はなかったのかもしれない。
 だがそれでもインデックスは指を前後し、内側から外側へと筋肉をほぐしていく。怪我をしない

ように気を付けつつも、その範囲で大胆に。
 瑞々しい白桃の様なヒップに夢中になっているかのように尻肉を甘噛みし続ける。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:57:08.59 ID:2lGjUMZ+o

 操祈は泣きながら首を左右に振る。
 其のたびに上条当麻の精巣に額が当たる。
 生暖かく妙な柔らかさと硬さを持つ其れが皮膚の薄い額に当たって切ないぐらい悲しくなる。
 生まれて初めて排泄器官に指を入れられた強烈な屈辱。
 それなのにとくん、と子宮から蜜が溢れ出すのがわかる。
 もう、自分自身が信じられない。


「おやおや、ま×こが白く濁ってきたぞ。思いっきり感じてるじゃねぇか。もっと楽しめよ。
 インデックスも楽しんでるぜ」


 野卑た声を聞いて、泣く。
 泣かざるを得ない。
 唯一の救いはインデックスが与えているのが苦痛だけではないということか。
 甘く尻肉に歯を建てられると少しだけだが温かい気持ちになる。
 優しさを感じる。
 この異常空間でこの少女だけは自分の心配をしてくれている。
 同時に、屈辱も苦痛も与えている事実に操祈は配慮しない。
 白いシスターが上条当麻の言うことに逆らえないことは理解しているからだ。

 息も絶え絶えで苦痛の愛撫に耐える。
 インデックスは指を微妙に振動させながらゆっくりと指を引き抜き、然してゆっくりと挿入する


 排泄をエンドレスで行うような感覚に、僅かながら甘い何かが湧いた。
 苦痛だ。
 だが人の脳は苦痛に対してカウンターとして麻薬を生成する。
 本来、苦痛であるはずの排泄行為は脳内麻薬がなければ快楽とならない。
 ある程度のレベルの生命であれば当然搭載されている機構。
 其れは生殖にも搭載されている。
 すなわち、排泄の快楽とセックスの快楽は非常によく似ている。
 似ているからこそ、責め苦となり快楽行為となる。
 粘膜としての肛門の甘さではなく、排泄の類似行為に対する性感。
 未熟な脳が搭載した肉体の矛盾と崩壊を回避する緊急ルート。
 食蜂操祈は知識はあったがまさかこんな形で経験するとは思ってもみなかった。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:57:35.14 ID:2lGjUMZ+o


(いや、やめて――はん――)


 心理掌握の鼻息に艶が重ねられる。
 メンタルがアウトゾーンに突入する。


(いや――なのに――)


 苦痛が解消されたわけではない。
 ジンジンと響く痛みは強く残っている。
 それなのにあれほどあった嫌悪感が事実、雪のように溶けていった。
 そんな操祈の変化に気づいたインデックスが優しく声をかける。


「大丈夫だよ、みさき。お尻は本当はすっごく気持ちいいところなの。私が教えてあげるんだよ」


 まんぐりかえしの形で尻肉が割開かれていて、インデックスの空いた手のひらが優しく撫でる。
 寂しそうに笑って肛門に指を突き刺したまま柔らかな尻肉に指を食い込ませる。
 途端に操祈は色っぽく眉を顰め、弄られているアナルを引く付かせてしまう。


(やめて――それ以上しないで――私、おかしくなる――)


 腰をくねらせても逃げられない。
 ささやかな抵抗は心の中だけで、其れはなんの意味も持たなかった。
 悪魔に魂を売ったような快楽がほんのりと芽生え始める。
 然して再びインデックスが指を付き入れられた排泄口を優しく舐め始めた。


(インデックスさん、お願い、やめて――そんなこと――)


 先程よりも感じてしまう。
 膝をついた銀髪の少女がうっとりした顔をしながら金髪の少女の排泄口を舐めている。
 倒錯的な奉仕に嫌悪感を含ませず、美しい少女に奉仕する喜びを表情に表している。
 激烈な汚辱と快楽とが操祈の脳の中で渦を巻いて彼女の意思をより混乱させる。

 ゆっくりと指が抜かれ、引くつく穴に鉄のように硬くされたピンク色の舌先がねじ込まれる。
 指を入れられた時よりも痛みは感じず、寧ろ蕩けるような切なさに操祈の性器がきゅんと鳴った


 破滅が近づくような快楽にただただ流されながら操祈の吐息がより一層甘くなる。
 淫蜜が滔々と溢れてくる。
 チーズを湯で溶かしたような匂いが一層濃くなって、自分自身よりも近くにいる誰かがそれを嗅

いでいる状況に操祈の涙は止まらない。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:58:06.07 ID:2lGjUMZ+o


「みさき。感じてるんだね。いっぱい濡れてるよ」


 嬉しそうな声をしてインデックスが語りかける。


(あう――ダメ――やめて――怖いの――)


 ホロホロと涙を流しながら、インデックスが再び指を添えたことに操祈は恐怖する。
 またあの痛みを味わうのか。
 コミュニケーションの全てを奪われて一方的に陵辱される恐怖に操祈は狂う寸前だった。
 もう、傲岸不遜な女王など何処にもいない。
 ただただ哀れで小さな少女が怯えているだけだ。
 それなのに、操られているはずのインデックスが嬉しそうに言う。


「いっぱい気持ちよくなってね。ちゃんとほぐしておかないと辛いから」


 肛門の皺の一つ一つがしっとりと湿気を帯びた舌先で丁寧に舐められる。
 唾液に濡れた人差し指がゆっくりと侵入していく。
 操祈の尻肉がヒクヒクと痙攣し、そして彼女の意思と関係なく、痛みなく飲み込まれていく。
 執拗に繰り返される肛門愛撫に操祈の筋肉は緩んでしまっていた。


「いふっ!」


 瞬間、操祈の背骨の全てが脈動した。
 圧倒的な圧迫感に大きく目を見開いて眼球を白くする。
 インデックスの指は第一関節どころか第二関節まで飲み込まれていた。
 素のままグリグリと動かす。
 圧迫されているのに痛みを感じない。
 寧ろ中から広げられている甘い刺激に酔いそうになる。
 否定のしようがない。
 食蜂操祈は間違いなく肛門を掘られることで喜んでいた。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:58:37.68 ID:2lGjUMZ+o


(やめて――やめてよぉ――)


 心だけで否定する。
 深いギャグボールは舌を噛むことすらも許さない。
 無力だと分かっていても操祈には其れしか出来ない。
 高値の花のお嬢様が無力な自分を知る。
 ただの指一本と舌先だけで崩壊しそうなか弱い自我を知る。
 禁断の快楽に溺れそうになる。
 あの、イク、という感覚がちらりと瞼の裏に浮かぶ。


「ふぐっ、ひぐっぐぅ―――」


 屠殺される豚の如き悲鳴を上げながら操祈が首を振る。否定しようとする。
 汚辱と悦楽とが螺旋構造になって全身を支配する。
 甘美な刺激が全身に満ちていく。
 お尻の穴に指を入れられているという下品極まりない不条理な行為がくっきりした快楽として脳

に刻まれていく。
 飢餓となり乾きとなり妖しい感覚が欲しいという原理が膨らんでいく。


「やっぱりお尻の穴で感じてるんだね、みさき。ほら中で指が動いているのわかる?」


 人形のような童顔を火照らせてインデックスが言う。
 熱い吐息を転がしながら指を出し入れさせ、其の度にこの街の最高の能力者が甘く鼻息を漏らす

ことを心の底から楽しんでいる。
 性器も、肛門も、快楽を刻み込むのはインデックスだ。
 善人の顔をしてサキュバスよりも淫らに笑う。
 陽性の表情には陰りがあり、深い慈愛がありながらも上条当麻の意思には逆らわず食蜂操祈を陵

辱していく。
 悪意が無い分だけタチが悪い。
 操祈を快楽地獄に突き落として、有り得ない絶頂へと追い込んで、悲しそうに嬉しそうに笑う。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 22:59:09.66 ID:2lGjUMZ+o


「インデックス。もういいわよ。準備しましょう」


 然して、何時の間に戻ってきたのか。
 中学生妊婦が幾つかの道具を抱えて上条当麻の横に座っていた。
 わかったんだよ、と小さく呟いたインデックスを横目にてきぱきと行動する。

 御坂美琴が食蜂操祈のハリのある太腿に紅いレザーの足枷を付ける。
 両脚の間に一定の長さの棒が入る形となって股を閉じることができなくなる道具だ。
 当然、これをつけていれば歩行すら出来ない。

 取り付けると上条当麻とインデックスが食蜂操祈の体から離れ、然して四つん這いの形にひっく

り返す。
 床暖房のおかげで冷たくはないが操祈は濡れた床に顔を押し付ける形になった。
 柔らかで豊かな乳房が潰されて広がる。ビンビンに勃起したピンクの乳首が擦れる。
 それは当然ヒップを高く突き上げる体勢でもある。
 既に精神の限界が近い操祈は抗議の声ひとつ挙げない。


「ねぇ、当麻? 声聞けないとつまらないかしら」

「そうだな。せっかく美琴が付けてくれたけどギャグ外すか」


 操祈の処女肉を食らった赤黒い肉塊を屹立させたまま上条当麻が嗤う。
 乱暴にギャグボールを取り外すと、弾力のある白い頬に哀れに赤い筋が残った。
 はぁはぁと荒い息を付きながら操祈が酸素不足を訴えるように短く舌を出す。
 金髪が美しく広がっている分だけ、今の操祈は儚い。

 インデックスが名残惜しそうな顔をして操祈を見ている。
 そんな彼女にお湯で溶いたグリセリンを入れた浣腸器が手渡される。
 其れは狂気であって凶器だった。
 インデックスの双眸が妖しい色に染まる。高窓の令嬢に浣腸をするという背徳感に肢体を震わせ

る。
 新しい過激な玩具を手にして白磁のようなシスターが淫らに笑った。


「はぁ――はぁ――うぅ――」


 久方に口の自由を取り戻した操祈が乱れた呼吸を整えながら堪えきれずに嗚咽を漏らす。
 もうカケラほどもプライドは残っていない。
 真っ赤に染まった脳は現状を正確に認識しておらず、それでもこれからどんな汚辱を味わされる

かという恐怖に怯えていた。
 絶頂間際にまで高められた肉欲が行き場をなくして身体の中で破裂しそうに脈づいている。
 切なくて辛くて悲しい。
 助けて欲しい。自分が弱くて醜くて傲慢なのはよく理解したから開放して欲しい。


 然し。


「みさき。動かないでね」


 だからと言って宴会は終わらない。
 男とその妻とに突き動かされ、なおかつ自分の明確な意志をもって。
 インデックスが巨大な浣腸器の嘴を操祈の肛門にあてがう。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 23:00:04.06 ID:2lGjUMZ+o


「ひっ――」


 ひんやりとしたガラスの触感に操祈が短い悲鳴を上げる。
 だが僅かに身じろぎしたがそれ以上の抵抗をしない。
 ガラス作りの浣腸器が破損して肛門がズタズタに切り裂かれるのが怖いのか、妖しい熱を欲しくてせがんだのか、もう操祈自身が理解できていない。
 然して、其れはそんなに甘いものではなかった。


「ひゃっ!」


 つぷ、と冷たいガラスの細い嘴が吸い込まれる。反射的に肛門を締めた分だけ異常な硬さに恐怖する。
 漸く、自分が何をされるのかを理解する。


「力いれすぎると血塗れになるわよ。お尻が二度と使い物にならなくなってもしらないから」


 上条当麻の肉茎に指を絡めながら楽しそうに美琴が言うと操祈は慌てて息を吐いて緊張をほぐす。
 直後、ガラスとガラスが擦れ合うあの嫌な音が伝わって響いて、同時に薬液が操祈の直腸に注がれ始めた。
 インデックスがシリンダーをゆっくりと押し込んだのだ。
 気持ち体温より高い温度の、微妙な粘性を持った液体が排泄器官を逆流して操祈の体内に押し入ろうとする。


「くうぅうぅ――」


 おぞましさに涙する。同時に、温かく質量を持った柔らかなものが満ちていく感覚にあの妖しい疼きを感じてしまう。
 だからといって逃げることはできない。
 足は動かせないし、下手にヒップをゆすって中でガラスが砕けたりしたら一体どんな目に合うのか、想像もしたくなかった。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 23:00:29.96 ID:2lGjUMZ+o


(ああ――私、インデックスさんにこんなこと――)


 常日頃純白の手袋に包まれて日に焼けない細い腕が震える。
 もう白い自分には戻れない。
 決して褒められた性格じゃなかったけれども、自信に満ちていた淋しがりやにはもう戻ることはできない。
 強烈な羞恥心が今更のように湧いてくる。自分ではない誰かの視線がこれほどまでに怖いものあと初めて知る。
 こんな自分を見て笑っている卑劣なカップルの視線が怖くてたまらなかった。
 精神が崩壊しそうな強烈な体験が、一瞬でも早く終わりますようにと願ってならない。

 然し巨大な浣腸器に蓄えられた薬液の量は多く、インデックスもされたことはあってもされる方は初心者だ。
 浣腸液は少しづつしか流し込まれない。
 延々と続く拷問のような其れに操祈は堪らず涙する。


「いや――インデックスさん、やめて――苦しいの――」


 操祈の懇願にインデックスの表情が曇る。上条と美琴を見やると二人は続けろと小さな声で言い、インデックスは従うしか出来なかった。


「ごめんなさいなんだよ」


 言って、シリンダーを一気に押し込む。
 苦痛を長引かせないことがせめてもの優しさだと言わんばかりに。


「あぐっ! いやぁ! 苦しいの!」


 ちゅるん、と浣腸が抜かれる。
 流し込まれた大量の薬液が漏れそうになって操祈が慌てて肛門を引き締める。


「やだ――お腹痛いの――」


 全身汗だくになって必死に床に顔を押し付ける。
 直腸内で浣腸液が蠢き出して鈍い痛みを発している。
 誰かが見ている前で粗相なんて出来ない。
 わずかに残った、然し確実な羞恥心が真っ白なヒップを揺らしていた。
 冷や汗まみれの操祈の身体を御坂美琴が優しくなでる。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 23:00:55.61 ID:2lGjUMZ+o


「汗びっしょりね。そんなに辛いの?」


 くすくすと笑いながら操祈の無駄肉のないウエストのラインを指でなぞる。


「きひぃ、やめて、漏れちゃう!」


 操祈は悲鳴を上げながらヒップを揺らすしかない。


「大丈夫よ。漏れないようにしてあげるから」


 指先を脇の下まで滑らせながら耳元で美琴が囁く。悪魔めいた声の響きは心底楽しんでいるとしか聞こえない。
 微妙な刺激は肛門括約筋を必死に締めている操祈には地獄のような甘さだった。
 結果、便意は圧倒的なまでに高まってうねりを上げている。


「ふふ、私の妹達を散々弄んでくれたんだからこれぐらいは当然よね」


 ハイキング直前の子供のような弾む声。彼我の距離にいながら二人の差は絶対的だった。
 便意が渦を巻いて腸内で暴れている。全身の毛穴が開いて脂汗が流れている。
 もう、限界は近かった。
 このままでは最悪の自体となってしまう。


「お願い――おトイレに行かせて――ください――」


 最早女帝の言葉ではない。
 恵みを強請る哀れな少女が願う小さな悲鳴だった。


「だぁめ。もっともっと苦しんでもらわないと」


 にこり、と天使のような悪魔の微笑みを美琴が浮かべる。
 その笑みを見上げて、腸内で荒れ狂う暴虐の嵐に操祈は絶望という言葉を知る。
 額に脂汗を浮かべて唇を噛んで必死に便意に耐える。


(でも――もう――)


 ふるふるとヒップを震わせて刻一刻と迫る決壊の時を少しでも引き伸ばそうとする。
 粗相を耐えるのも限界だ。


「あら。もうタイムアップかな?」


 美琴の声がする。
 そして、ブルブルと震える肛門粘膜にそれ以上の振動を放つ何かが押し当てられた。


「でも大丈夫よ。蓋をしてあげるから」

「いひぃっ! まってぇ!」


 ぐい、と何かが押し込まれる。
 ただでさえ容量いっぱいの腸内に余計な異物を飲み込ませられる。
 指よりは太く、それでいて苦痛を感じさせないほど滑らかで。
 親指大のローターと呼ばれる玩具が、細い電気コードを繋げたまま操祈の限界近い肛門に押し込まれた。 
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/15(水) 23:03:41.96 ID:2lGjUMZ+o
とにかく浣腸まではたどり着けた
メモ帳の改行を解除しなかったのは失敗でしたごめんなさい 
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 01:58:46.57 ID:T0spvMgeo
 夜風が吹く街を白い月明かりが照らしている。
 コンビニエンスストアで何時ものように新発売の缶コーヒーを大量に買いだめした白い超能力者。
 華奢で透き通る肌をした中世的な存在が近代的なデザインの前腕部支持型杖をついて固く冷たいアスファルトの上を歩いている。
 ぼんやりと浮かぶ街明かりに顔の陰影は見えないが少なくとも愉快そうな顔はしていない。
 甲高い音が混じる独特の足音は夜の学園都市に静かに沈んだ。

 行き交う人もいない。
 既に深夜という時間帯であり、無人タクシーが道明かりを照らす程度だ。
 帰り道の足を急ごうとするも、歩行障害のある一方通行には走ることは出来ない。


一方(めんどくせェ――)


 学生が過半数を占めるこの街では歓楽街は遠い。
 どうしても孤独というものを感じてしまう。
 孤高というものに憧れを持っていた過去のある一方通行は現実にあるちょっとした孤独を面倒だ、と評価した。
 家に帰れば喧しい住人たちが待っていて、その感想もまた、面倒だァ、となるのだが若干ながら意味合いが異なる。
 この二つを完全に分離できるほどに一方通行は大人ではなく、また子供でもなかった。

 そんな彼の視界がひとりの男の影を捉えた。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 01:59:19.79 ID:T0spvMgeo

 街灯の下でつまらなそうに紙巻きを吹かしながら奇妙な歌を口ずさんでいる。
 頬を隠すほどの茶色い茶髪に新人ホストのような整っていて、それでいて不真面目そうな顔。
 シャツやタイまで黒で調えたスーツを身に纏ったかつての学園都市第二位がそこに居た。


垣根「よぉ、一方通行」


 銜えていた紙巻きを落とし、靴で踏み潰し、両手をズボンのポケットに入れてわずかに背を伸ばす。
 にやりと品なく笑って、


垣根「相変わらずムカつく面してるなぁ」


 と歯を見せた。

 一方通行は顔を歪める。


一方「誰だテメェ」

垣根「オイオイ、あんなに情熱をぶつけ合った相手を忘れるんじゃねぇよ」

一方「その面をしたクソ野郎はよォ。
   俺の知る限りだとまだ脳味噌を切り分けられて容器に収まっているはずなンだけどなァ」


 缶コーヒーでパンパンに膨らんだコンビニ袋を落とす。
 甲高い音が連続で鳴る。コロコロと転がる音が響く。
 補助のための杖がスイッチ一つで右手に収納される。
 一方通行の左手がゆっくりと首のチョーカーに移動していく。


垣根「ああその通りだ。お前と戦った垣根帝督の肉体は確かに肉塊のままさ」


 垣根帝督の顔をした男が垣根帝督の薄っぺらな表情を浮かべる。
 くき、と首を鳴らして肩をすくめる。
 一方通行が漆黒の声で咎めた。
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 01:59:48.08 ID:T0spvMgeo

一方「じゃあテメェは誰だ」

垣根「垣根帝督だよ。間違いなく俺さ」


 次の瞬間、一方通行のチョーカーのスイッチが入れられた。
 同時に自立歩行も困難な虚弱な少年が最強の能力者に変わる。
 超能力者は足元のベクトルを変換しアスファルトを踏み砕きながら音速に近い初速を持って一方通行が垣根帝督を名乗る男に突撃した。

 垣根帝督は迎撃しない。
 顔色一つ変えない。

 二人の距離は十メートルを切っていて。
 故に交わるのに秒の桁を必要とせず。
 最弱の拳が最強の鉾となって第二位を名乗る偽物を弾き飛ばす――はずだった。


一方(!?)


 しかし。
 一方通行の拳は垣根帝督の身体に触れることなく。
 完全にすり抜けた。

 ごう、と強引にアスファルトに着地し火花をまき散らしながら反転した一方通行に背を向けた垣根がゆっくりと振り返る。
 軽薄な笑みは変わらない。


一方「今のは――」

垣根「まぁ、分かっただろう? 今の俺は――」


 未元物質そのもの、だ。


 白い最強と黒い第二位が対峙する。
 だが垣根帝督は戦意を見せない。
 ニヤニヤと笑ったまま肩をすくめる。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/24(金) 02:00:13.78 ID:T0spvMgeo

垣根「俺は水面に映る月影みたいなもんだよ。水面を切っても叩いても月そのものを壊せるわけじゃねぇ。
   こっちから干渉も出来ねぇけどな」


 この世に存在しない素粒子を構成し既存の物理法則を塗り替えるのが未元物質。
 異界の法則をこの世界に持ち込むのが未元物質。
 未元物質が混じった空間ですら異法則に飲まれるというのであれば。
 未元物質だけで構成された器に既存の物理現象が通用する訳がない。


 成程、肉体が残骸のままで残骸にしつくされていようとも。
 意識が他の器に乗っているのならばそれは垣根帝督。
 あえて例えれば未元物質性の幽霊とでも言うべきか。
 見えて聞こえて触れない。
 光や音のベクトルを操作したところでこの肉体は壊せない。


垣根「服もタバコも自分でつくなきゃならねぇのが不自由だがな」


 そして垣根はゆっくりと両手を上げる。
 万国共通の降伏のポーズ。


垣根「これでも話し合いを望んでいるんだ。ちぃっとばかり付き合っちゃくんねぇか」


 敵意もない。悪意すらない。
 自分はただの道化だと茶化してすらしている。
 一方通行は完全に毒気を抜かれた。
 言葉を信用したわけではないが、自分の勘は信用できる。
 警戒を解かないまま一方通行はチョーカーの電源を落とした。


一方「いいだろォ。この先にちょっとした公園がある。そこまで行くぞ」

垣根「あぁ。缶もちゃんと拾ってけよ? 何本買ってるんだか知らないがもったいないからな」

一方「ケチくせェ野郎だなァ」

垣根「おいおい、業者さんが一生懸命作って流通さんが頑張って小売の人が汗かいて売った品物だぞ?
   無駄にするのはムカつくんだよ」

一方「ちッ――」
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 02:00:51.19 ID:T0spvMgeo

 数分後、同じ月明かりの元、遊具の少ない公園に二人はいた。
 どういう理屈か知らないが一方通行から巻き上げた缶コーヒーを垣根帝督は味わっている。


垣根「旨ぇな。なにより未元物質性じゃないところが最高だ」

一方「飲めンのかよ。干渉出来ねェンじゃなかったンかよ」

垣根「この程度だったら干渉出来る。
   完全に干渉不可能だったら見ることもしゃべることも出来ねぇし。
   まぁでも、実体、と呼べるものじゃないことは確かだな。
   唯我論じゃねぇが俺の認識で存在しているだけで物理現象じゃねぇからな」


 呆れたような顔をしながら椅子がわりにブランコに座った一方通行がプルトップを開ける。
 ゴクリと飲むと、なるほどそれなりに旨い。
 しばらくはこいつだな、と一人心つ。


一方「――ンで、話っていうのは何だ?
   わざわざ化けて出てきてまで下らねェこと言ったら承知しねェぞ」

垣根「――まぁ、ある意味下らねぇことなのかもな」


 親指と中指とでぷらぷらと缶を振りながら垣根帝督が立ったまま空を仰いだ。


垣根「あの花飾りのガキを俺から救ってくれてありがとう」

一方「――はァ?」


 言葉の内容も、ありがとうという単語も一方通行の予想の外にあった。
 かつてこの男を肉塊にしたときあの場所にいた風紀委員のガキのことか?
 そのことでなんでこいつが礼を言う?


垣根「あんとき俺を止めてくれてありがとうと言ってるんだよ」


 月を見つめたまま未元物質の幽霊が言葉を重ねる。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 02:01:22.54 ID:T0spvMgeo

 一方通行は理解できない。
 だから。


一方「――話せ」


 詳しい話を聞かせろと強く命令した。


垣根「長くなるぜ?」

一方「テメェから誘った話だろォが」


 何故か寂しく笑いかける垣根帝督に一方通行は冷たく言い放った。
 少しだけ唇を歪ませて垣根が終わってしまった物語を語り始める。


垣根「俺は、まぁそれなりに裕福な家庭に生まれたガキだったんだが、ちぃっとばかり特殊な生まれがあった。
   実の父親と育ての父親が違う――まぁ、俺のオヤジは無精子症だったんだな。
   で、精子バンクに登録されていたそれなりに優秀な精子を血統上の父親にもって生まれたわけだ。
   ガキのころはそれなりに幸せだったと思うぜ?
   顔も思い出せないがオヤジもお袋も優しかったからな」


 ここで一旦口を閉じる。
 コーヒーを一口飲んで、やっぱり旨いなと呟いた後。


垣根「よくある話さ。両親の交通事故で俺一人だけ生き残って。
   親切な顔した親戚ってやつが財産を乗取って俺を学園都市にぶち込んで。
   ――で、置き去りさ」


 置き去り。チャイルドエラー。
 その言葉だけで垣根のその後が分かる。
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 02:01:59.09 ID:T0spvMgeo

一方「文字通りよくある話だな」

垣根「ああ。あとはご想像通りモルモット生活で実験付け。頭蓋骨だって何回開かれたかわかりゃしねぇ。
   まぁ、それなりに珍しい能力を発現して超能力者になった分だけ運はよかったが、生き延びただけだったな」

一方「ふン。笑えねェなァ」

垣根「あとは暗部行きさ。
   生きる目的もないまま、ただこのまま燻れないという未熟なままの心を抱えて暴れまくった。
   それなりに楽しかったぜ?
   ただ強者ってだけで蹂躙するのはよ。
   テメェが妹達ぶっ殺してた見てぇにな」

一方「――――」

垣根「睨むなよ。テメェが悔やんでるように俺だって今じゃ悔やんでるんだからな」


 最後の一口を含んで、ゆっくりと味わったあと見事なスローで缶をゴミ箱にシュート。
 静かに懐からタバコを取り出し、銜えた。
 ぱちん、と指先で音を出すとそれだけで先端に火がつく。
 深く喫って、紫煙を吐き出した。


垣根「まぁ、テメェの悔やんでるのとはちぃっとベクトルが違うがな」

一方「―――」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 02:02:26.01 ID:T0spvMgeo

垣根「で、だ。ある日。俺に妹がいるって連絡が入った。上からだ。
   精子バンクで生まれたって言っただろ?
   血統上の父親が結婚して子供を作って、そのガキが学園都市に入ってきたんだとよ。
   俺は驚いたね。
   天涯孤独だと思ってた俺に妹がいるってさ。
   まぁ、父親の方は育ててくれたオヤジだけが俺の父親だからなんとも言えなかったが」

一方「ふン。殺しを続けてたから怖くて妹に会えなかった、か」

垣根「それもある。
   しかし妹の情報が全く手に入らなかった。
   精子バンクが外部のものだとしても十何年も前のものでデータは廃棄されていた。
   個人情報の最たるものだからな。
   学園都市の遺伝子情報から調べようとしたがそれもダメだった。
   下手に動けば超能力者第二位の妹がいることが研究者たちにバレちまう。
   そうなればどうなるかは身をもって知っていたからな」


 垣根がタバコを吸う。深く、未元物質性の煙を味わう。
 そんな人間くさい幽霊を見ながら一方通行は話を続けさせる。


一方「モルモット扱いはさせたくなかった、ってか」

垣根「上もそこらあたりを考えて俺に妹のことを知らせたんだろうな。
   人質さ。
   忠実な番犬とは言い難い俺に首輪を付けたかったんだろう。
   とても有効なカードだったよ」

一方「会ったことも顔も知らない妹に、か」

垣根「会ったことも顔も知らない妹に、だ。
   ――俺は学園都市に来て初めて希望というものを知ったんだよ」


 笑うか、と垣根が尋ねた。

 笑わねェよ、と一方通行が呟いた。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 02:03:00.47 ID:T0spvMgeo

垣根「希望っていうのは麻薬と同じだな。
   特に俺には効いた。
   妹がいるってだけじゃ満足できなくなっちまった。
   脅しに使っているから安全だ、なんて思えなくなっちまった。
   聞かされてねぇだけでもしかしたらどこかの研究機関で救いを求めてるかもしれねぇ。
   今日は違くとも明日そうならないという保証はねぇ。
   俺は妹が絶対に研究者達の手に渡らない方法に取り付かれちまった」


 沈黙。
 二人は沈黙する。
 ただ紫煙が昇り。
 コーヒーの香りがして。
 月が明るかった。


一方「だから俺を殺してメインプランに這い上がりたかったのか」

垣根「そうだ。アレイスターとどうしても交渉したかった。
   ついでに言えばアンダーラインで妹の情報も欲しかったというのはあるな」


 再び二人は沈黙する。
 空気が質量を持ち粘性を持つ。
 月明かりだけは変わらない。
 突き飛ばしたタバコの残骸が空中で残骸として解けて消える。

 沈黙は雄弁だった。

 ここで妹のことを先に知ってれば話は別だったんだろうがよ、と呟く。
 妹のことを知ったのはこの器になってからだ、と嘆く。

 一方通行は垣根帝督の話したいこと全てを理解した。

 気障な男の頬に一筋の涙が溢れた。


一方「―――花飾りのガキがお前の妹か」

垣根「初春飾利。あの花飾りのガキが俺の妹だったんだよ」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 02:03:34.99 ID:T0spvMgeo


 俺はあんなに探していた、救おうとしていた妹を殺そうとしたんだ、笑えるだろ?

 笑わねェよ。笑わねェ。だから大の男がボロボロ泣いてるンじゃねェよ。

 泣いてるか? そうか、俺は泣いてるのか。

 泣くンじゃねェ。泣くのはガキと女だけの特権だ。


 深夜の公園に幽霊の嗚咽が響く。
 顔を歪め、ボロボロと涙をこぼしながら垣根帝督が肩を震わす。
 目尻を抑えて夜風に立ち尽くす。


垣根「――俺を殺してくれてありがとう」


 涙で顔を濡らしながら、未元物質の幽霊が言った。
 上を見て、月を見て、必死に涙に耐えながらかつての傲慢な超能力者第二位が言った。


垣根「――俺からあいつを守ってくれて本当にありがとう――」


 ちッ、と一方通行が舌を打つ。
 下らねェ、と言おうとして、言えなかった。
 大の男が、超能力者が泣き崩れる姿に何も言えなかった。 
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/24(金) 02:09:11.93 ID:T0spvMgeo
未元物質の性質とかはかなり適当
垣根の過去も捏造

でもこういうつながりがあってもおかしくはなかったんじゃないかなぁ、とは考えていた

守るべきものを守ろうとして、勘違いして傷つけるなんてドラマでは本当によくある話だけれども 
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:51:51.22 ID:T0spvMgeo
 とある事件があった。

 嘗て暗部という空間が学園都市に存在した。
 人を殺すことを生業としたクズどもが巣食う狂乱の世界だった。
 アイテムという組織があり、その組織に潰された他の様々な組織が存在した。

 アイテムは恐怖そのものであり一度目を付けられれば逃れられたものは数少ない。
 然し存在しなかったわけではない。
 そういった輩が存在した。

 暗部という世界がなくなっても復讐心が消えるわけでもない。
 戦友を殺され、或いは自身の肉体を欠損させられ恨まない道理はない。
 また、暗部と関わりがなくとも巻き込まれた者たちもいる。
 アイテムに報いを受けさせるべく彼らが行動を開始した。

 その前に立ちふさがったものがいる。

 陽の光の世界にいるアイテムに手を出すなと。

 能力者の街で最底辺の無能力者の青年。

 時に殴り倒し。
 時に銃撃を放ち。
 時に天をも焦がすような業火で持って相手を追い込み。
 時に生と死の境界線を綱渡りして。

 そのような浜面仕上による麦野沈利と滝壺理后のための物語があって。

 結果として誰一人殺すことなく彼彼女らの説得に成功し。
 代価として一週間ほど浜面仕上は入院したのだが。

 この話においては前座に過ぎない。

 重要なのは浜面仕上が自分の女のために戦って守りきったという事実と。
 勝手に命をかけられて守られた女たちの憤りがあるという事情である。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:52:35.93 ID:T0spvMgeo


「んん――っ、やっぱり外の空気はいいなぁ」


 ジーンズに革ジャンという何時ものファッションに長身で逞しい肉体を宿した茶髪でにやけた顔をした三枚目の無能力者、浜面仕上は冥土返しの病院の入口から出て太陽の光を浴び、心底嬉しそうに大空を見上げる。
 雲ひとつない、とまでは行かなくとも青く高く突き抜けた心地よい空が広がっていた。
 消毒薬の匂いがこびりついた病院とはそれだけでも違う。
 なまった身体に刺激を与えるように両手を組んで天に上げ、大きく背を伸ばす。


「仕上。もう調子は万全?」


 一見すると二十代中盤に見えるほど大人びた外見を持つもそれを言うと極太の青い光線が飛んでくるという恐ろしい性質の少女、麦野沈利が嘗ては見せなかったような優しい顔で言う。
 ピンク色のワンピースに白のロングパンツを合わせるという六十年代的なファッションだが一周回って古臭さは感じさせない。
 隣には入院時の荷物が入ったバックを両手にぶら下げたおかっぱ頭のピンクジャージの少女、滝壺理后が甘そうな眠そうな目で信号を受信している。
 二人ともピンク色だが元々ピンクは人気の色なので揃っていても違和感はない。


「おう。もうなんの問題もないな。流石だねぇ、腹の傷も殆どわからねぇ。
 ハラワタが飛び出てたなんて信じられないぐらいだわ」


 どん、と自分の分厚い腹筋を叩く。
 白い歯を見せて快活に笑う男は滝壺の手から自分のバックを取り上げると肩から下げて二人の少女をじっくりと見つめた。
 長身な彼からは頭半分は低い二人の頭を交互に愛情をもって撫でる。
 ん、と二人とも甘い目をして気持ちよさそうに受け入れる。


「悪かったな、二人とも、迷惑かけた」

「迷惑じゃないよ、しあげ。そういう関係だもの」

「そうね。別に迷惑とかそういうのはどうでもいいかな」


 ふわり、と長い髪を跳ね上げた麦野沈利が隣の滝壺理后を見る。ぽうとした瞳の滝壺がよかった、と小さく呟く。
 そんな二人を横目に太陽熱を反射するアスファルトの上に立った浜面はぐるりと周囲を見渡して不思議そうに言った。
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:53:17.16 ID:T0spvMgeo


「しっかし、いつもなら車が何十台かは止まっているのに今日は一台も止まってねぇな」


 この病院の医師は冥土返しただ一人というわけではない。
 彼の名と技術とを慕った情熱あふれる医師達が集っている。
 つまり、それだけの数の医者と、医者を支えるナースたちとが勤務している大病院な訳であり、当然ながら広々とした駐車場に常日頃ならば溢れんばかりの乗用車が止まっているはずであった。
 学生が大半を占めるが故に公共施設が発達した学園都市ではある。しかしそれを考慮しても大型駐車場が満杯になるほどの患者が来ているのが常であって今日の光景は少々異常である。


「そうね。そう頼んだからね」


 浜面の疑問に憮然とした表情で麦野沈利が応える。


「患者のためだったらなんでも用意するって言ってくれたよね、カエルのお医者さん」


 眠そうな目が強い意志をこもった目に変えていきながら滝壺理后が言う。


「へ?」


 二人の言葉の意味が判らない浜面が呆然と口を広げていると二歩下がった位置にいる二人が同時に脚を高々と上げ、浜面の腹を蹴り飛ばした。
 どん、という到底女性の筋力になし得るとは思えない衝撃が浜面仕上の腹筋を貫いて内蔵を襲う。
 ふわり、と足が地を離れたかと思うとゴム毬のように浜面の大柄な肉体が十メートルほども飛んだ。
 ドスン、と白い線の描かれた駐車場に背中から落ち、反射的に受身を取ったものの肺の中の空気が全て出てしまうほどの衝撃と、その衝撃を緩和するための受身による右腕の痛みとが浜面の肉体を襲う。


「お、お前ら何を――」


 苦痛よりも驚愕に顔を変えながら浜面仕上が必死になって上半身を起こす。
 バックは遠くに飛んで、受身を取った右腕はビリビリと痺れて感覚がない。
 かつんかつんと高い足音を立てて近づいてきた二人が浜面の顔面をサッカーボールのように思いっきり蹴っ飛ばした。
 痛みで地面に縫いつけられている浜面が、当然のように後頭部を硬いアスファルトに叩きつけられる。反射的に腕を差し込んだが衝撃は脳の芯を貫いた。
 鼻が砕けたのか、どろりとした鼻血が流れ呼吸が苦しくなったところに二人の女の足が強く浜面の胸を踏みつぶした。

 げぇ、と文字通りカエルのような悲鳴を上げるとものすごく冷たい顔をした麦野沈利とこれまでに一度も見たことがないほど怒りに顔を染めている滝壺理后が浜面を見下ろしていた。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:54:12.98 ID:T0spvMgeo

「万全ならなんの遠慮もいらなねぇよなぁ、はーまづらぁ」

「そうだね。思いっきりオシオキしないといけないよね。はまづら」


 後頭部を打ち付けて視界が真っ赤になっている浜面を唾棄するような視線で二人が見下す。
 三人だけでいるときは名前で呼び合うという今までの了承もなく、嘗て暗部組織の中でも最凶と呼ばれたアイテムの二人が鬼の表情で自分の男を蔑んでいた。

 がしり、と女の力とは思えない強さで麦野が浜面の襟首を掴むと自分より一回り以上は大きい身体の男を右手一本で吊り上げる。
 腹も胸も鼻も頭も両腕も悲鳴を上げている浜面は手足をもがれたバッタの如く身動き一つ取れない。
 苦しい呼吸の中、自分がなぜ糾弾されなければいけないのかを必死になって考えている。


「いい気になって萎びたナスでマスこいてるんじゃねぇぞ。誰が助けて欲しいなんて言った、コラ」

「勝手に戦って、勝手にボロボロになって、勝手に守られて、私たちがどれほど惨めだったかわかる?」


 道端の、踏み潰された昆虫の死骸を見るよりも冷たい視線が浜面仕上の心を貫く。
 それは全身が悲鳴を上げているという現実よりも何倍もの苦痛となって彼の脳を圧迫する。
 

「お、俺はそんなつもりじゃ――」


 必死に弁解する浜面。しかしその言葉は最後まで繋げない。


「カンケェねェ!!! カンケェねーんだよ!!! テメェのやったことはただの自己満足だ!!!
 ただのオナニーなんだよ!!! 私たちをオナホ扱いするんじゃねぇー!!!」

「そんな偽善者のハリボテの好意押し付けるはまづらのこと、私は応援できない」


 ぶん、と麦野が腕を振る。
 繰り人形のように関節が解けながら浜面の肉体が軽々と宙を舞って地面に叩きつけられる。
 今度は受身ひとつ取れず顔面からアスファルトに叩きつけられる浜面。
 ぼたりぼたりと血を流しながら動かない肉体に必死に命令を出して起き上がる。
 ガクガクと生まれたての仔馬のように膝を揺らしながらそれでもなんとか自分の両足で立ち上がる。
 鼻血は顔どころかシャツまで汚して、地面の汚れが全身に塗り込められていた。


「――なんだよ、それ。自分の女を守っちゃ悪ぃのかよ」


 奥歯を噛み締めながら哀しそうな目で浜面が滝壺理后と麦野沈利を睨みつける。


「世界中で俺だけには権利があるんじゃねぇのかよ」


 ただの無能力者でありながら超能力者も、軍隊も、駆動鎧も、魔術さえも敵に回して戦い抜いた男が本当に辛そうな顔をしながら自分の恋人たちに問いかける。


「お前らの為に命をかけて何が悪い!!!」


 快男児が絶叫した。
 その声が天高くまで響いた。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:54:43.91 ID:T0spvMgeo

 それでも


「悪いに決まってるんだろぉが。脳味噌の代わりに糞が詰まってるんじゃねぇのか、その頭に」

「悪いよ。だって、その考えの中に私たちの気持ちは入っていないもの」
 

 二人の女の答えは変わらなかった。
 眦をうっすらと滲ませながらも答えは変わらない。
 愛していると天地に満ちよと咆哮されて、全身が歓喜に震えるほど嬉しくてたまらなくても答えだけは変わらない。


「確かにコレまではうまくいったね」

「今回もなんとか生き延びた」

「でも次は?」

「その次は?」

「その次の次は?」

「ゲームや小説じゃあるまいし、脚本が決まってるわけじゃない。いつか絶対にアンタは命を落とす」

「その日をずっと震えて待ってなきゃいけないの? それって本当に私たちを守れているの? そんなことをはまづらは私たちに望んでいるの?」

「そんな悲しい愛情なんていらない。アンタは命のかけ方を間違っている」
 

 絶対能力者、超能力者、無能力者。
 そんな枠組みなんて三人の間では既にどうでもいいこと。
 でも現実問題として無能力者が戦場に立つという意味は変わらない。
 それでも。


「俺は――もう理后にも沈利にも手を汚して欲しくない」


 浜面仕上の意思は変わらない。
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:55:09.49 ID:T0spvMgeo

 もう大きな戦いは終結していてこのような事件はそうは起こりはしないだろう。
 だが起こらないとは言い切れない。
 この都市では闇はどうしようもないほど染み付いていて決して洗い流されることはない。
 そして再びこの二人が戦場に立てば、特に麦野沈利は能力の性質上手加減というものができない。
 血の味を知っているものが再び血に狂うことは得てして起こりうる話でもある。
 浜面仕上はなによりもそれを恐れた。


「できるよ、それぐらい」


 だが、麦野沈利は言う。快活に笑う。


「しあげだって、やりとげたもの。私たちだってできる」


 それでも、滝壺理后が宣言する。花のように微笑む。


「殺さない。無力化するだけの甘ったれた戦争をやってやろうじゃん。これでも私たちは二人揃っての学園都市最高の能力者なんだよ?」

「しあげの意思なんて関係ないよ。しあげが今回みたいな押しつけをするんだったら私たちは私たちで勝手についていく」

「世界中でアンタだけが私たちを守る権利があるんだったら私たちにもアンタを守る権利があるはず」

「勝手に命をかけないで。ずっと一緒だって言ってくれたじゃない。気持ちのいいときだけ一緒で辛いときは別々だなんて、そんなの絶対に許さない」


 無理だ、と浜面は思う。
 いやだ、と浜面仕上は思う。
 それでも心が嬉しいと叫んでいた。
 自分のやったことをこれだけ否定して、命をかけて、恐怖と後悔と、それでも二人を守りたいという大切な想いを蹂躙されて。
 それなのに嬉しくてしょうがない。

 袖口で、鼻血を拭う。鉄臭い熱い塊を手鼻で吹き飛ばし、悲鳴を上げる肉体を押さえつける。
 顔面を叩いてモヤがかかったような意識に喝を入れ、アスファルトで擦りむけた両手のひらの傷を舐めて細かい砂を吸い出して吐き出す。


「――ったく、最高だな、お前ら。今までで一番痛いぞ」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:55:41.54 ID:T0spvMgeo

 両手を広げて、二人に近づく。
 思いっきり力の限り抱きしめる。
 滝壺理后も麦野沈利も鼻から抜けるような甘い声を出して男の胸に飛び込む。
 鼻が機能せずとも二人の甘い匂いが浜面を包む。
 柔らかな二人の身体を心の底から楽しむ。
 血と唾液に濡れた両手だったが、それでも二人の頭を撫でた。
 二人の美しい髪を汚れた手で染め上げる。


「最高の特効薬だ。完敗だよ。俺の完全敗北だ」


 腕の中の二人の少女が嬉しそうに微笑んで浜面を見上げた。
 柔らかな胸が熱い胸板に押し当てられている。
 擽るように二人の額に唇を滑らせた。

 あはっ、と麦野沈利が笑う。


「嬉しいな。仕上にはじめて勝てた」


 先程までの鬼人とは違う柔らかであたたかで融けそうな微笑み。
 原子ではなく、心を融かす笑み。


「馬鹿。ずっと負けっぱなしだよ俺は」


 浜面が太い腕で滝壺理后をもっと強く抱きしめる。


「ありがとな。俺のことこんなに想ってくれて」


 喉を鳴らす猫のように黒髪の少女が甘える。
 少女特有の甘く柔らかい肉体を必死に押し付けてくる。

 そうして、時間も忘れて二人を抱きしめる浜面仕上。チンピラのような外見の男が二人の女に甘え続けた。
 やがて、小さく、そして下品に声を漏らし始める。くけけ、と怪鳥のように笑い始める。


「あれ? ちょっと蹴りすぎちゃったかにゃーん?」

「やりすぎたかな、もしかして」


 小さく怯えながら麦野沈利と滝壺理后が浜面の腕から逃れようとするが、鉄の檻のように圧倒的な力で押さえつけられて二人は逃れることができない。
 笑い声はどんどん大きくなる。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/24(金) 23:56:18.11 ID:T0spvMgeo

「いやぁ、あれですよね。先生方。
 ワタクシのような下っ端はやられたらやり返すみたいな矮小な考え方しかできないんですよ。
 それでですね、とっても重要なことなんですがワタクシ浜面仕上はここ一週間ばかり入院してたじゃないですか。
 溜まってるんですよね。下品なんですが、こう、下の方が」


 にたぁ、と頬が割れんばかりに唇を開いた浜面が爬虫類のように長く舌を出す。
 頬肉が持ち上がり山型になった双眸に品のない光が満ちてくる。


「あ、あの、しあげ?」


 怖がったような声を出す滝壺理后。強い意思を持っていたはずの瞳が砂の塔のように崩れる。
 ガタガタと肩を震わせる麦野沈利。高慢で自分勝手な女王様から程遠い幼子のように青くなっている。
 健全すぎる肉体を持つ十代の男の性欲、特に浜面仕上の体力には二人がかりでも彼女たちには付いていくのがやっとだ。


「萎びたナスで申し訳ないんですがいつもはちょっとセーブしてるところを今日は思いっきりリミッター外して二百パーセントでいこうかなぁと。
 いんにゃ。三倍だな。三回づつの六回のところを十回づつの二十回いってみようか」


 一人十回、という数字に二人は本気で恐怖する。
 当然だが、この数字には愛撫による射精は全く含まれていない。
 完全な無能力者であるのだが、浜面仕上の肉体はこと性的な部分においては常人の数倍のポテンシャルがある。どう考えても肉体強化系で強能力者ぐらいあるだろうというレベルで。
 五回を性豪と呼ぶのならばまさに性神。

 神の贄に捧げられた二人の少女は視線を震わせ奥歯を鳴らす。
 絶対能力者と超能力者が本気で恐怖している。


「あ、あのね仕上。計算あってないし十回ってちょっと無理――」

「退院したばかりだし、無茶しないで――ちょ、ちょっと、本気で怖いよ。応援できないよ」

「随分と痛めつけられたからなぁ。やっぱりあれですね、復讐って人間の感情なんですよね。やられたら犯りかえさないと」

「無理無理無理無理、耐えられないよ、そんな回数絶対無理!」

「エッチするのは好きだけど、そんなにされたらおかしくなっちゃう――」


 結果から言えば小鳥たちが鳴き出す時間まで麦野沈利と滝壺理后とは眠ることを許されず。
 精神崩壊寸前まで絶頂を叩き込まれて完全敗北した。
 目が覚めたときには既に日が暮れていて、それでも足腰が立たなかったほどだ。
 回数的にはそれぞれ十二回、他に三回という計二十七回というAV男優でもゼウスでも考えられない回数をこなした浜面仕上氏。
 余談ではあるが命の危険にさらされた両女史は本気で絹旗最愛嬢の勧誘を考えたという。 
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/25(土) 00:04:51.09 ID:IqvYpl4ao
大学時代に聞いた限りだと十六回というのがあったけどやられる側はたまったものではないらしい
生物学的には優れた才能ではあるんだろうけど 
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/02/25(土) 01:52:33.62 ID:j+RNYDDt0
超乙おつ!
超絶倫な世紀末帝王マジぱねぇっす 
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/26(日) 16:27:16.22 ID:MHsuDZb7o
投下します
みさきち編はこれで一段落
マジスカなので嫌な人は回れ右

BGM、デイト・オブ・バースのサマーオブラブ
ttp://www.youtube.com/watch?v=f9RRYRo6aZk&feature=related

大昔の曲ですが名曲です 
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/26(日) 16:28:02.49 ID:MHsuDZb7o
「ひぎぃ!」


 強烈な刺激が脳天にまで抜けた。腸内の圧力がローター一個分増えて全身の毛穴が開いて脂っこ

い汗が吹き出す。一気に息苦しくなって目の内側が赤く染まっていく。


「いや……お尻、お腹、がはっ、くるしっ――」


 浣腸液を大量に注入された肛門に異物を挿入される苦しみ。汚辱感と圧迫感は気が狂いそうなほ

どで思考能力が一気に侵食される。意識のメモリが食いつぶされて最早操祈には何一つすることが

できない。泣きじゃくりながら酸素不足の金魚のようにぱくぱくと口を開くだけだ。


「すっごぉい。ぜぇんぶ入っちゃった☆」


 大きな消しゴム程もあるローターを自分で押し込んでおきながら自分と同じ超能力者の肛門を美

琴が楽しそうに覗き込む。
 インデックスも眼を見開いて凝視する。
 ローター部分は完全に埋没しているのにピンクのコードがまるで尻尾のように肛門から生えてい

るのが実に卑猥だ。もちろんコードの先にはスイッチがあってそれは美琴の手に握られている。


「良かったわね、食蜂先輩☆ これでもう粗相の心配はないわよ。感謝してくれるかな」


 妙にテンションの上がった美琴の声が不快に操祈の耳に響く。
 こんな拷問をしておいて感謝もへったくれもあるわけがない。
 しかし、操祈はただ必死になって目を閉じて耐えているだけだった。


「話――かけ、ないで――」


 苦しいのだ。ゴロゴロと薬液が腸の中で戦慄いて濁流となって圧力をかけている。
 音や言葉一つでもそれに積み重なれば最後の藁となって一気に噴出してしまうかもしれない。
 全てが便意に変換されてしまう。天井から垂れてくる水滴の音も、誰かの息遣いも、何もかもが


 埋め込まれたローターの異物感に直腸がザワめいている。最悪の自体に今にも暴発しそうな排泄

欲を必死になって我慢するが、その態度が嗜虐的な美琴を一層喜ばせる。


「苦しい? でもこれからよ。いっぱい虐めてあげる。アンタが素直になれるように殻を全部壊し

てあげる」


 言って、美琴が操祈の白いヒップに細い指を滑らせた。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/26(日) 16:29:30.59 ID:MHsuDZb7o


「ひぐっぅうぅうう!!! いやぁぁぁああぁぁあ!!!」


 ただそれだけで操祈が絶叫する。密閉性の高い浴室で操祈の声が反射する。
 赤く朱い唇から悲鳴だけが漏れる。
 そんなことをしても便意はいささかも衰えず一刻の猶予もないほどに限界は近い。

 ただ見ていただけの上条が下司な笑いを浮かべたままインデックスに言った。


「かわいそうじゃないか。インデックスも慰めてやれよ」


 機嫌の良い声で命令すると、インデックスは少しだけためらったあと、分かったんだよ、と操祈に近づいた。
 そして、尻の方向に投げ出されている左の足首をとって、指を一本一本舐め始めた。


「はぐっ! インデックスさん、やめて――くるし――」


 生まれて初めて足の指を舐められる。温かく湿って、そして心地よい感覚に排泄欲が爆発的に膨れ上がる。
 美琴が尻肉を嬲り続け、インデックスが足の指の間まで綺麗に舐めとっていると操祈の肉体は倒錯的な官能の火を肉体の奥深くに灯してしまった。


「美味しいんだよ、みさきの指――」


 誰かに奉仕したいというシスターの献身欲が被虐趣味に変わったインデックスがマゾ奴隷特有の目をしながら一本一本の指をぬるりぬるりと爪の生え際まで丁寧に舐める。


「ひあぁぁ、だめぇぇ、お願い、やめてぇぇ」


 おしっこが漏れそうなほどの快美。女性の肉体の構造上どうしてもそれは肛門の動きと連動して括約筋が緩みそうになる。
 直腸内の濁流がうねりをもって肛門に殺到し、なんとか必死にそれを食い止めるも瞼の裏側が焼き付くほどの赤さに思わずヒップをゆすってしまう。

 しかし実際のところ、その程度では漏らしたりはしない。
 ローターの存在は圧倒的で堰となり蓋となり脱糞を防いでいた。


「も、漏れちゃう――漏れる――」


 恐怖する。操祈の感覚ではもう排便していてもおかしくはない。
 だが濁流をせき止めているローターは開いた肛門からピンクの顔を覗かせても排泄物を欠片も外に出しはしなかった。


「大丈夫。漏れないからね。いっぱい苦しんで綺麗になろうね、操祈」


 白桃のような瑞々しいヒップから背骨を通って首筋まで美琴の指が踊る。
 ぞくぞくっ、という感覚が操祈を襲って思わず背を逸らす。


「ひっ――ン――ン――」


 美琴の指に操祈が感じてしまう。全身に鳥肌が立つほどの快感だった。
 食蜂操祈は気付かない。
 浣腸で苦しんでいるという状況が快感を生み出したということを。
 脳の事柄では常識のように行われる事例に、心のスペシャリストが気付くことができない。
 だって、言葉や文字なんかで知るよりも、それは圧倒的すぎて、まるで自分ではない様だったから。

 インデックスに足指の全てを舐められる。右足も左足も、舐められていない指がない。
 温かな口内で柔らかい舌で舐められて、それがとてつもなく気持ちいい。
 足裏もかかとも、段々と舌が侵食してきて、その官能に震える。
 

「くひぃ、いやぁ、やめてぇ、お願いだからぁ――」

「すごいでしょ、信じられないぐらい気持ちいいでしょ。お腹痛くて頭いっぱいなのに最っ高に気持ちいいでしょ?
 もっともっと教えてあげる。アンタが正真正銘のマゾだってこと」


 常盤台の顔というべき第三位が欲情した女の声を耳元に呟く。小さなナイフで生木に名前を彫り込むように、いくら成長しても決して消えることのない傷を埋め込もうとしている。
 そのまま耳たぶをアマガミされ、大振りの乳房をねっとりと揉まれる。切ないほどに疼いてビンビンに勃起した乳首を摘まれる。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/26(日) 16:31:00.31 ID:MHsuDZb7o


「きゃうっ!」


 短く圧倒的な悲鳴。一度で済むはずも無く、左手で乳首を捏ねくられる。切なく甘い淫らな呼吸と苦しく圧倒的な吐息とを重ね合わせる操祈の目の前にピンク色の箱が見せつけられた。
 肛門と同じ色のコードでつながっている件の箱だ。


「これ、なぁんだ?」


 嬉しそうな声で囁いて、操祈に負けないほど乳首を固くした美琴がスイッチを入れる。
 とたんにローターが振動を開始して慈悲も憐憫もない無機質なまでに乱暴的な動きが操祈の敏感すぎる直腸粘膜を襲った。
 内側から肉を削ぎとると思えるほどの凄絶な運動が操祈の噴出をこらえている肛門の内側で起こる。


「ひぎっぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!」


 絶叫する。
 あまりにもおぞましい気が狂いそうな発狂しそうな振動に白目を剥きながら身体を打ち上げられた魚のようにのたうたせる。
 床に濡れて湿って広がった髪が力づくで宙に浮かんで金色の虹を描く。
 足を拘束していなかったらインデックスは蹴り飛ばされていたかもしれない。
 気を失わないのが不思議なぐらいに厳しい。
 それなのに美琴とインデックスの責めは辛く、甘く、操祈の意識を現実に縫い止め続ける。
 特にインデックスの責めはすね、太腿と伝わって今まさに蜜を溢れさせている操祈の花びらへとたどり着こうとしていた。


「ふふ。みさき、いっぱい感じてるんだね――」


 言って、秘肉にむしゃぶりつくインデックス。ずぞりと蜜を啜り、食蜂操祈に甲高い悲鳴を上げさせたあと拷問を加えられているアナルにまで吸い付いた。


「ひゃあ!!!! あぐぅいい!!! いやぁああ!!!!」


 苛烈さは幾何級数的に加速していく。二人の少女による責め苦には超能力者第五位のお嬢様はただ無力なだけの存在に過ぎなかった。
 体内を支配的な排泄欲の嵐に魔法のように快楽の雫がプラスされる。
 相反する二つの事柄が破滅的に混じり合い操祈の全てを翻弄する。涙とヨダレとが止まらない。
 いっそのこと、直腸内の全てを噴出させてしまえばどれほどに楽だろうか。
 だがそれは出来ない。
 完全記憶能力を持つインデックスの前でそれを行えば、色、音、臭い、形、飛沫の軌跡まで全てをインデックスは死ぬまで忘れずに記憶し続ける。
 それがどれほど恐ろしいのか、考えただけでも食蜂操祈は人格が崩壊しそうになる。
 だがそれでも構わないと心の何処かで誰かが囁くほどに精神的に追い詰められていた。

 排泄を我慢することは苦しい。
 しかし、強引に蓋をされて決して排泄ができない状況はそれ以上に苦しい。
 まさに生き地獄の苦しみだった。


「すごいことになってるね、みさきのおま×こ――」


 インデックスがねっとりとした声で囁いたあと、細い指を操祈の陰部に挿入した。
 聖なるシスターの指が先程どれほど自分を高めたのかを知っている食蜂操祈はその瞬間に敗北を決意した。


「取って――これ取ってよ――お願い、おトイレに行かせて――なるから、奴隷にでもなんでもなるからぁ――」


 たまらずにヒップを左右に振って泣き叫ぶ。
 幼子のように泣きじゃくる。


「おトイレに――はぅぅう! 狂っちゃうよぉ!!! お願いだからおトイレに行かせてぇ!!!」


 白旗を掲げるも二人の責めは止まらない。
 美琴とインデックスが陶酔した顔で責め続ける。蜜壷で指がダンスし、肛門をピンク色の怪物が咆哮し、細い項を美琴の舌が嬲るように舐る。


「お願い――ううっ、お願いしますっ!!! ひぃいっ、助けて、助けてください――」


 嗚咽しながら必死に懇願の声を上げるも一睡一酔の夢のように完璧な操祈の身体に溺れた二人は責めを止めない。
 同性の美しすぎる少女を責めるという特権に溺れている。
 やがて、上条当麻が呆れたような声を上げた。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/26(日) 16:32:00.93 ID:MHsuDZb7o


「おいおい、いい加減にしろよ二人とも。もう十分だろ、頃合だ」


 すると御坂美琴は満面の笑みを浮かべて、インデックスは少しだけ残念そうな顔で操祈の体から離れた。
 焼けた鉄板の上で踊り続けるような責め苦からは解放されたが便意が収まったわけではない。
 脂ぎった汗が食蜂操祈の全身を多い皮膚呼吸を苦しくしている。


「ふふふ。狂っちゃう?
 でも大丈夫よ、そう簡単には狂わないから。私もインデックスも身をもって知ってるわ。
 死んだほうがマシって思えるようなステキな体験をさせてあげる」


 やはり責め苦はこの程度では終わらない。この程度では解放してはもらえない。
 恐ろしい未来を暗示する美琴の言葉に操祈は心の底から震える。
 震えるも、その言葉で僅かに甘いピンク色の痛みが発生したことに気付かない。


「此処でするのよ。三人に見られながら出しちゃいなさい」


 美琴の非情な声がバスルームに木霊する。高級ホテルの最高のスイートルームのバスルームで悪魔のような声が反響する。
 覚悟はしていたが、改めて言葉にして言われると圧倒的な質量を持って恐怖が操祈に顕現する。


「待って――せめてインデックスさんだけでも他のところに――」

「こんな面白いこと見せてあげないなんて可哀想なことは出来ないわよ」

「だって、完全記憶能力――」

「うん。だから絶対居てもらわなきゃ。あ、もちろんこの部屋にもカメラはあるわよ?
 空気中を微粒子レベルで漂っている無数のカメラがアンタの恥ずかしいところを余す残さず撮りきってくれるわ。
 ホント、音と映像だけしか取れないのが残念なんだけどね」

「そこはインデックスが覚えていてくれるよ。なぁ、インデックス」

「うん。私は見たもの聞いたもの味わったもの、そして思ったことを絶対に忘れることはないんだよ」

「どんなふうに思ったか後で俺に教えてくれよ?」

「あ、ずるいわよ当麻。インデックス、私ともお話しようね?」


 便意に必死に耐え、そしてそれを見られるという死ぬほどおぞましい屈辱を与えられようとしている操祈の前で、寄りにもよってその行為を最高の見世物にしようと三人の男女が語り合っている。
 翌日のデートを待ちきれないカップルが夜中に電話し合うように、陽性の響きが蔓延しているのが怖い。
 最初からトイレでさせるつもりがなかったのは覚悟していたが、その覚悟をこんなふうに歓談のネタとされるとは流石の操祈も考えてはいなかった。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/26(日) 16:33:21.07 ID:MHsuDZb7o

「そんな――ひどい、酷すぎる――」


 ポロポロと涙を溢れさせて抗議の声を上げる操祈。排泄欲を抑えることはもう不可能だ。


「何言ってるのよ。奴隷になるって誓ったじゃない。私は聞いたわよ」

「聞いたな」

「うん。間違いないんだよ」

「奴隷だったら命令には従ってもらうわ。今回だけじゃない。これからずっとよ? 一生私たちのものになってもらう」


 言い訳は通用しない。確かに言ったのだ。排泄出来ない苦しさと魔的な責め苦から逃れたい一心で確かに口にしたのだ。
 それがその場限りの言い訳だとしても宣言してしまったことに変わりはない。
 言霊という単語が示すとおり自身の言葉が強く自分自身を拘束する。
 極限状態での意思行為など無効である。それは分かっている。分かっていても心に作ってしまった罅の中に自分の言葉が強く甘く染み込んでくる。


「我慢なんかしなくていいんだからね」


 言って、床の上に白い愛液の溜まりを作っている秘所の上にあるセピア色のすぼまった蕾、そこから生えているピンクのコードを御坂美琴がゆっくり、力強く引っ張る。


「ひぃいいい!!!! 出ちゃう! 出ちゃうよぉぉ!!! やめてえぇ!!!」


 引っ張られ空間に余裕ができると、轟々という濁流があっという間にその余裕を食いつぶす。
 ストッパーが消失しつつある世界に排泄欲が渦を巻いて襲いかかる。


「いひゃああ!!!! うわああ!!! 出ちゃう! もうだめぇ!!! 見ないでぇ!!!」


 ちゅるん、という頓狂な音がした。
 卵を産み落とすようにローターが飛び出ると直腸が爆発するほどの腹痛が膨張する。
 もはや崩壊を止める手段などなかった。
 塞き止められていた濁流が一気に身体の外に放出される。下品な破裂音がする。本能に不快を与える臭いがまき散らされる。
 腰を高く上げた形ゆえに横射するミサイルのような形で軟便が弧を描いて舞う。
 直接的なラインから避難していた三人が思い思いの顔でその光景を見ている。
 呆然としたインデックス。
 端然とした御坂美琴。
 そして傲慢不遜な笑みを貼り付けている上条当麻。


「うわっ、ひぃっ、いや、いや、いやあああああ!!!!!!!!!」


 超能力者でなく食蜂操祈でなく、ただの女の絶叫がバスルームを支配する。
 この世界の全てを否定してあったことをなかったかのようにしようとする。
 寝小便を隠そうとする幼子となんら変わらない思考ルーチンに陥りながらこれが夢だという逃げに少女は埋没しようとする。


 無理だった。


 圧倒的すぎた。


 排泄の解放感が悪魔のような快楽に変わって全身をガクガクと震えさせる。
 目の前がチカチカするほどの快美感が肉体の全てに充満し信じられないことにあの性的な絶頂を食蜂操祈は味わっていた。
 その、死にも勝る恥辱を三人の男女に見られている。
 音も光景も録画されている。
 なによりも完全記憶能力を持つ少女に一生その光景を、臭いまでも記憶され続ける。
 化生の様な御坂美琴の笑い声。
 怪鳥の様な上条当麻の嗤い声。
 そして哀れむように慈しむように、侮蔑と興奮の入り交じったインデックスの視線とが食蜂操祈を包み込む。
 瞬間、食蜂操祈のプライドは欠片ひとつ残さず砕け散った。


(私、いっちゃった――こんなひどい状況で、いっちゃった――こんなの、私の想像力でも有り得ない――)


 有り得ない、なんて言い訳は通用しない。
 何よりも食蜂操祈の身体が知っている。
 絶頂のあとの心地よい余韻と身体の火照り。それを深く自覚しながら食蜂操祈の意識は深く深い穴に堕ちていく。
 付けられた紅の首輪の存在が強く強く、自分が家畜であると証明していた。 
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/27(月) 00:41:56.75 ID:1fX1G1Sro
 食蜂操祈は既に別人になっていた。
 操祈自身が何よりもそう思った。

 脱糞シーンを見られてからベットに引きずり込まれ夜が明けるまで絶頂地獄を味わった。
 崩壊寸前の精神を繋いでいるのは残酷なことに御坂美琴とインデックスとのスキンシップであって、体温というものが精神にどれほど影響を与えるのかをまざまざと実感させられた。
 有名なチンパンジーの赤ちゃんの実験がある。
 針金細工の授乳能力のある母親と、授乳能力のないヌイグルミの母親とを用意した場合。
 チンパンジーの赤ちゃんは空腹時を覗いてヌイグルミの方に抱きついていたという。
 中学生が教科書で習うようなメジャーな話だが、人の皮膚の本当の強さというものを操祈はまざまざと知った。

 脱糞直後から御坂美琴の性格は一変した。
 元の快活で一本気な姉御肌の活気あふれる少女に戻った。
 本能の奥底でうねる大型爬虫類のような情欲の瞳がなくなったわけではないが、食蜂操祈に対する態度は非常に柔らかくなった。
 復讐を果たして満たされたのかもしれない。

 この世のものとは思えない地獄を味わった直後だからなのか。
 その地獄に叩き込んだ張本人が必死になって宥め、甘やかし、寄り添って、それでいながら優しい言葉で甘い快楽を与えるという矛盾し切った世界は弱気になった操祈には余りにも心地よかった。

 無理やりにではなく、心の奥底に火をつけてそれをゆっくりと燃え上がらせるようにするスキンシップに食蜂操祈はいいように嬲られた。
 インデックスも美琴も性器に直接触れるようなことはなく、ただただ互いの皮膚と皮膚とを合わせて吐息を確かめ合うような距離で触れるか触れないかのタッチで操祈の身体をまさぐり続けた。

 確かに直接的な快楽ではなかったしその山は傾らかなものだったが、だからこそ何時までも高く不安定な場所を食蜂操祈はさ迷った。
 美貌を褒められ女の命たる髪を撫でられ全身の皮膚そのものが粘膜となってしまいそうな程の体温の上昇を味合わされ。
 結果、一度も触れていないはずの性器から蜜は滔々と溢れ続けた。
 甘く切なく温かいもので心の中が満ちていった。
 若干サディステックなきらいがあったが美琴が「感じている?」と問いかければ操祈は素直に答えた。
 泣きながら甘える仕草に興奮していたのか、完璧なプロポーションを誇る操祈の身体は性器や肛門付近を除いて隅々までインデックスに舐められた。
 切なすぎて太腿をモジモジさせると喜々とした顔で陰部に取り付いて「美味しいんだよ」といつまでも止まらない淫蜜を舐め続けた。

 嫌悪感は一切なくなっていた。
 脳髄まで溶けてなくなってしまいそうな快楽が全身を覆い尽くしていて倒錯的な快美感に操祈は酔い続けていた。

 怖かったのは近くに腰掛けてまんじりともしない上条当麻が赤黒い逸物を隆々と高ぶらせていたことなのだが、その視線すらも心地よいと感じていた。
 ペニスを破壊寸前までに勃起させておきながらも強烈な自制心と共に堕ちていく食蜂操祈を満足そうな眼で見つめていた。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/27(月) 00:42:50.34 ID:1fX1G1Sro

 ただ時折美琴とインデックスに声をかけるとその時だけは二人の責めが苛烈になって心の底からの従属を操祈に迫ってくる。

 逞しい肉塊が視界に入る度に操祈は思ってしまう。


(今、あれを入れられたらどれぐらい気持ちいいの――)


 欲情して赤くなった吐息で淫らなことを想像する食蜂操祈は紛れも無く一日前の食蜂操祈ではなかった。
 騙されて、能力を奪われて、顔に精液をかけられて、レイプされて、脱糞シーンまで披露して。
 そこまでされているのに憎いという感情が浮かんでこない。
 寧ろこの狂った世界がいつまでも続いてくれますようになどと心の何処かで思い浮かべてしまう。

 なんて簡単で浅ましい女だろうと愕然とするも、自分の本能の生臭さを食蜂操祈は否定できない。
 硬い殻を外されると中身は余りにも弱々しい、貧弱な肉の貝でしかなかった。
 心ではない身体の関係が気持ちよすぎて安心してしまう。
 田舎の驢馬ではないが、知ってしまったらもう元に戻ることはできない。


 二人に延々と嬲られて、気が付けば夜が明けていた。


 そして今も操祈はベットの上に転がされている。御坂美琴とインデックスとに上下の口を塞がれている。
 M字に開かれた足の間でインデックスが執拗に性器を舐めている。
 この少女にとって舌と口とは何よりも感情を表せる部位らしいということを食蜂操祈は嫌というほど思い知らされていた。
 甘えるとき、感じさせようとするとき、インデックスは指での愛撫よりも口での愛撫を好む。指を舐めるという行為も積極的に行う。甘噛みの回数も多かった。
 きっと、感情を爆発させるときもそうなのだろう。大きく口を開けて相手に噛み付くのかもしれない。
 口蓋を失った猶太人、フロイトならば確実に口唇期障害だと断定している。
 そんなインデックスが操祈の薄めの陰毛に包まれた濡れそぼった肉壺、強制排泄された肛門までも悪魔主義者の如く味わっている。


 そして


「んン――ん――」


 添い寝をするように横たわった御坂美琴が甘えてくる食蜂操祈の唇を味わっていた。
 頭を抱えて、自分の両手を櫛にして美しい金色の髪を梳いてやりながらねっとりと舌と舌とを絡ませる。美琴の唾液を操祈に飲み込ませ、操祈の唾液を甘く嚥下する。


(ああ――ダメになっちゃう――)


 操祈も朦朧とする意識の中、自分よりひとつ年下の超能力者の唾液を嬉しそうに嚥下する。内蔵までも舐められてしまいたいと妄想する。
 自分に好意を持った相手にも見えない紙一枚を挟んで対峙するきらいのあった食蜂操祈に対し、年下にも拘わらず美琴は姉のように甘やかす。


「可愛いわよ、操祈――」


 とろんと熔けた目をしながら呼び捨てにされるととてつもなく心地よい。
 意識が霞みかかって正常な判断はできないが、それでも執拗に美琴の唇にむしゃぶりつく。

 一方、インデックスの舌先もまた心地よい。
 ディープキスよりもストレートな快楽だが、アクセルを踏むだけの乱暴なものでない優しい愛撫が操祈の全てを嬉しくさせてしまう。
 そして美琴の手も乳房に触れたと思えば脇腹をすっと撫で、戻ってきたかと思えば勃起した乳頭をねっとりと揉みしだく。


「んむぅ――ん――」


 桜色のため息が溢れてそれすらも吸われてしまう。
 互いの二酸化炭素すらも心地よい。
 こらえきれない悦楽の波に翻弄されながらディープキスに溺れる。
 睡眠不足でぼぉっとした脳に最も近く乱暴な筋肉が鋭敏に反応していた。

 三人は交代で仮眠している。
 二時間程度だが、それでも休憩をとっている。
 しかし操祈は取っていない。
 疲労は強かった。

 ぼう、と意識が朦朧とする。その一方で神経は過敏になっている。禅でいうところの魔境、或いはランナーズハイと言った脳の過剰反応が起こっていた。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/02/27(月) 00:43:27.64 ID:1fX1G1Sro

「みさきのドロドロだよ。いっぱい感じてるんだね」


 奉仕の喜びに顔を赤らめながら幼女のように純真で、娼婦のように爛漫なインデックスが操祈の股間に顔を埋めて粘着質に思えるような声で言う。
 当然のように全裸で、白い素肌に銀色の髪をまとわせているだけなのだが、平坦な胸の淡いピンクの乳首がつんと尖って愛らしく女を表現していた。


「いっぱいイってね。とうまの大好きなエッチなことしか考えられない女の子にしてあげるから」


 言外に自分もそうだと宣言しているインデックスもかなり高ぶっている。
 お嬢様の淫芯に奉仕しながら自身の陰毛も存在しない性器を指で弄ってくちゅくちゅという水音を立てている。
 未成熟な性器は痛々しいほど充血して官能を高めている。


(う――また、いっちゃうんだぁ、わたしぃ――)


 目尻を下げてインデックスの奉仕に数えるのもやめた絶頂が近づいてくるのを操祈は楽しんでいる。
 鼻から甘く息が抜け、苦痛に近くなるほどの快楽の、新しくも見知った波に身も心も預ける。
 アリの戸渡りを舐めしゃぶり、アナルに舌先を突っ込まれ、ピンクの肉芽を前歯で甘噛みされる。その度に操祈のマスクメロンのような巨乳が揺れて先端の乳首が痛いほどに勃起した。


「ひゃ、あ――」


 アナルをしゃぶられて、操祈が軽い、しかし明確な悲鳴を上げる。
 刹那の単位で絶頂して全身を震わせる。
 直後、津波のような圧倒的絶対的な絶頂のさらに上の絶頂が操祈を高く高く押し上げた。


「あぁぁああああ!!!!!」


 全身がぶるぶると興り、ぐわっ、と丸くなるほど目を見開いて。
 白い喉を反らせて食蜂操祈が絶叫する。
 瞬間、操祈の股間からぷしゅ、っという音と共に体液が噴出し、奉仕に没頭していたインデックスの顔と髪とを汚した。

 歓喜の、命の歌が響く。
 楽器の名前は食蜂操祈。
 奏者の名前は御坂美琴とインデックス。
 そして観客であり指揮者でもある男の名前は上条当麻

 操祈の絶叫が続く中、インデックスの舌が潮吹きをした陰部に咲くクリトリスに執拗に絡みつく。ぷっくりとした突起物を舌先で執拗に刺激する。

 雷に怯える幼子のようにブルブルと震える操祈の身体を美琴が優しく抱きしめる。
 雷の巫女であり幼子の母親でもある彼女は自分の腕の中の年上の少女を自分の子供でもあるかのように優しくしっかりと包み込んだ。


「あうっ――ああっ――ひぃ――」


 ゆっくりと天女のように操祈の意識が降りてくる。
 それでもインデックスの責めはとまらなくて彼女の意識を上昇気流のように高めてしまう。
 絶頂を重ねて敏感になりすぎたクリトリスは自分の収まる鞘から剥き出しになったままインデックスの玩具になっていた。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/02/27(月) 21:24:01.37 ID:DxTg0R2N0
すごいスレを発見してしまったでござる

ふぅ
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/27(月) 22:33:25.46 ID:1fX1G1Sro
 気が付けば目の前に肉の凶器が突きつけられていた。

 絶頂後の余韻に心を躍らせる最中にどうやら操祈はベットの上に座らされていたらしい。
 そして両脇を二人に抱えられ、仁王立ちした上条が下司な笑いを浮かべながら目の前に立っていた。

 臨戦態勢の赤黒いペニスが異臭を放ちながら鼻先に突きつけられている。
 一粒の涙のように先端から丸い液体がはみ出していてそれが臭っているのだ。
 溶鉱炉の中の鉄のように熱いペニスが圧倒的な存在感を突きつけていた。


「いや――いや――」


 恐怖する。
 当然だ。
 御坂美琴とインデックスの優しい愛撫とは違う暴力装置そのものである雄の凶器に操祈は心地よくさせられたことはない。
 思わず涙声で首を振った。
 御坂美琴に恥丘をまさぐられ、インデックスには乳首を潰されて、甘い電流のような刺激に包まれたがその程度で恐怖が消える道理もない。
 不快なホルモン臭にただ怯えるだけだった。


「フェラチオしてくれよ」


 なのに、上条の言うことは操祈の弱さを無視する。


「その綺麗な唇と舌とでち×ぽを気持ちよくするんだよ。インデックスと美琴がしてるの見ただろ?
 頭いいんだからきょとんとするなよ、わかってる癖に」

「そ、そんなことできない――」


 ニヤニヤと品のない笑みを貼り付けた上条が見下ろしてくる。
 その絶対的な支配者の顔に食蜂操祈は幼児のように恐れ戦く。
 確かに見た。脇の二人が目の前の男に奉仕する光景を見た。
 だがお嬢様育ちの操祈には雄の性器を口に含むという概念が淫らでおぞましすぎて理解することができない。

 誰かの心の中で陵辱されているとき、そうされている自分を見たことがある。
 だがそれは所詮は誰かの心の中の話であって、実際の肉と肉との関係で自分が男のペニスを頬張るなどということは考えたこともない。
 人間という乗り物に心が乗っかっているなどという幻想は既に壊された。
 肉体こそ、誰かが与えてくれる温度こそが人間なんだと気づいた今の操祈にはフェラチオと呼称される行為は自分が支配されるという宣言をするに等しい。


「ねぇ、操祈? アンタは拒否できないの。これは命令だから。奴隷になったアンタは断ることはできない。
 それにね、映像のことを忘れたわけじゃないよね。ロストバージンも浣腸も全部撮られてる。
 今だって撮ってるのよ?
 アンタは逆らうことはできないの。『しょうがないじゃない』 ねぇ」


 御坂美琴が耳元で囁く。


(しょうがない――私は、逆らえないから――)


 インデックスが言う。


「でもできれば自分の意思でやって欲しいんだよ。
 そうすればおま×こに入れてもらったときに何倍も気持ちよくなるんだから」


(何倍も、気持ちいい――)


 正しく洗脳だった。
 プライドを破壊されて、疲労の限界で、快楽というものを肉体に刻まれて。
 二人の年下の少女の言うことはきっと真実なのだろう。
 ただ、それが一方的な真実という解釈でしかないということに気付かない。
 家畜以下の性の奉仕が甘いものとすら思えてきてしまう。

 だが突きつけられている肉塊は生々しすぎてどうしても生理的に受け付けない。
 同じ塩基配列に並んでいる生き物の一部などとは到底思えない。
 情けないほど狼狽しながら下唇を噛んでシーツに小さなシワを二つ作って自分が何をすればいいのか必死に考えている。
 華奢な肩を震わせると豊かな双乳が揺れた。


(どうしよう――どうしよう――)
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/27(月) 22:34:36.42 ID:1fX1G1Sro

 気持ちを抑えようと小さく息を吐くと、逆に自分の心臓が痛いほど鐘を撞いていることを知る。
 恐ろしいのか喜んでいるのか、この学園都市で最も心に精通した少女が自分の中に知らない自分が居ることを刻みつけられる。

 一日前の自分だったら簡単だった。
 こんな不愉快な目で自分を見たことを後悔する心すらも奪い取っただろう。
 だが今の自分は違う。
 心の何処かで奉仕したいという思いもある。
 御坂美琴やインデックスが嬉しそうにしゃぶっていた、あの顔をしたいという自分も確かに居るのだ。

 狂っている。確実に狂っている。
 そのことが分かっているのに狂っていくことが気持ちいい。

 だが幾ら悩もうとも結論は出ている。
 食蜂操祈は逆らうことはできない。
 逆らえば破滅が待っている。仕方がないのだ。


「うう――」


 涙を目尻に浮かべながら、両手の細い指を肉の竿にかける。
 女を内側から狂わせるための肉の狂気は両手の内に収まるのが不思議なぐらいに大きい。
 データが全くない操祈にはそれが大きいのかどうかすらわからなかったが世間一般的には巨根と言っても良いそれがびくん、と嬉しそうに跳ねる。


「ひっ――」


 思わず手を離した。
 瞬間、鈴口の表面を指先が撫でてねっとりした透明の液体が手につく。
 あの、濃厚なホルモン臭を放つ液体が自分の手について、操祈は自分でも同士ようもないほど怯えた。


「あ、あう――」


 実際に肉と肉との接触があって、現実の問題として操祈は肉と熱を知る。
 それに臭いが加わる。
 全部がこの世界の出来事だった。


「あ、あ――ああ――」


 蛇に睨まれたカエルだ。
 カエルが蛇の鱗を手に入れてその触り心地のおぞましさに怯えている。
 余りにも恐ろしすぎてあっという間に喉が渇いて唾液が粘膜を保護するように溢れ始めた。


「や、いやよ――」


 圧倒的な威容を誇るペニスから目が離せない。内包する暴力の力に呑まれていた。


「舐めるんだよ。舌を伸ばして舐めるんだ」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/27(月) 22:35:36.20 ID:1fX1G1Sro

 グイッ、とペニスの先端が小鼻に突きつけられる。抑揚のない上条の声が上から降ってくる。
 トーンの低い声が圧倒的な重さで伸し掛ってくる。


「もう一回浣腸されないとわからないのか?」


 ぞくぞくっ、と背筋に何かが走る。
 冷たい声であのおぞましい浣腸のことを言葉にされて、食蜂操祈は本当の意味で抵抗を止めた。


(もう、逆らえないのね――私の抵抗力は、もう、無理――)


 諦めの境地とともに服従する甘い快楽を知ってしまう。
 星を纏った瞳が涙に揺れる。
 心の中で自分に言い訳しながらも、甘い心の動きを楽しみながら、怯えながら操祈が再び赤黒いペニスに指を伸ばした。


「熱い――」


 思わず言葉に出していた。
 手袋で紫外線から守っていた白い指ではまわらないほど肉塊は太い。
 火傷しそうなほど熱く、岩を割りそうなほど硬かった。
 それなのに心臓の鼓動に合わせて脈動することが人間の身体の一部なんだと操祈に教えこませる。


「舌を出すんだよ」


 インデックスが優しい声に導かれるように操祈が艷やかな唇からピンク色の舌先を出す。
 そして言われるまま巨大なペニスに震える舌を伸ばした。
 触れた瞬間、ぴりりと舌先に苦味が走る。反射的に首を引こうとして後頭部を美琴に押さえ込まれた。


「ダメ。怖がっちゃ。続けるの」


 美琴の強い声に逆らえない。
 怯えながらちろりと舐め上げる。
 絶対途中で解放される訳がない。一刻も早く射精させたほうがいい。
 しかしこんなに大きなモノをどうこうできるのだろうかとどうしても気後れしてしまう。


(あうう――気持ち悪い――)


 どうしても嫌悪感が先立つ。
 二人の少女が嬉々として奉仕できることが信じられない。
 こみ上げる吐き気を抑えながらカリ首に舌先を滑らす。
 舌が火傷しそうなほど熱く、苦さが伝わってきたが操祈はなんとか自分自身を支配することができた。


 なのに


「もっと気合入れてくんないと何時まで経っても射精しないぞ? どうしたんだよ」


 上条当麻の声は冷たく喜んで操祈にもっと高い山を登れと命令する。
 ホロホロと涙を零しながら見上げると軽薄な笑みを浮かべて見下ろしていた。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/27(月) 22:56:30.31 ID:1fX1G1Sro

(こんなのいや――はやく出してよ―ー)


 決死の思いで舌を伸ばしたのに冷たく突き放されて足りないと言われた。
 両手で竿を持ち、先端の赤黒い果肉部分を重点的に舐める。裏筋をつぅと伝わらせてカリ首を丁寧に舐る。先端の鈴口を弄ることも忘れない。
 だが鈴口から出てくる生臭い液体だけは嫌で嫌でたまらなかった。
 しかし舌先で舐めていればその液体を自分に取り込まざるを得ない。
 男の液体を自分から舐め干すという自分自身の姿に操祈は被虐的な喜びの欠片を得る。
 こんなに素直でか弱い自分がこんなにも可哀想な目に合っているんだということに喜びを見出してしまう。


「おう。やればできるじゃないか。美琴が言ってたとおりマゾとしての素質があるんだな」


 上条が嬉しそうに嗤う。
 蔑みの言葉を無視して、その言葉で自分の心にどんなに波がたったかを無視して操祈は肉茎に唇を押し当てた。
 横笛のようにペニスを構え、しかし横笛というよりはハーモニカのように唇を動かして根元から先端までを唾液塗れにしていく。
 小さなキスや舌先のダンスを繰り返しながらてかてかになるまで舐め尽くしても上条のペニスは到底上限を見せようとしない。


(はやく射精してよぉ――お願いだからぁ――)


 熱い涙が頬を伝わる度に祈るように上条を見上げるもその度に顔は余裕万面。
 射精する気配は少しも見せない。
 だが上目遣いの奉仕は気に入ったようだ。
 大きな右手で乱暴に頭を撫でられる。


(うん――)


 その暖かさと乱暴さが妙に心地よい。
 自分に何をしたのか忘れたわけではない。憎むべき男だ。いくら逆らえないとしても心まで通わせたわけではない。
 だが体温は圧倒的に強い。
 頭皮への乱暴なマッサージが操祈の心の中の刺を解かしていく。


「口に含むんだ。ツバを沢山口の中に出してあったかくしてくれよ」


 妖しい心の動きを読まれたのか、操祈に下された命令はさらに淫らなものだった。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/28(火) 22:07:27.89 ID:UN8a1BRoo
「そんな――」


 流石に抵抗はある。口答えしても時間が無駄になるだけだったが排尿器を口に含むことを素直には従えない。根元を握ったまましばし逡巡した。
 だが、両脇でニコニコと微笑んでいる二人の少女に背中押されるように、怯えながらも清楚な唇を醜悪なペニスに被せていく。


「あぐぅ――」


 大きすぎて簡単に銜えることができない。顎が外れそうだ。それでも一度先端を含めばするりと口腔に滑り込んできた。


「ぐぅふぅっ!」

「そのままで見上げて視線で媚びるんだ。そうそう。フェラしてくれてる女ってやっぱり可愛いよな」


 冷やかすような声。だが言われたとおり見上げるとその視線は何処か優しげだった。
 また乱暴に頭を撫でられる。男の手のひらは強く温かく何故か安心できた。
 そうだとしても生理的嫌悪感が薄れたわけではない。


(うう――気持ち悪いよぉ――私の忍耐力でも耐えられない――)


 強烈な雄の性気と苦味が口内に満ちてきて猛烈な嘔吐感が胃の腑から這い上がってくる。
 むせ返りそうになって細い眉と眉の間に深い縦皺を刻みながら涙をほろりと流す。
 それでも肉塊を口から出すことはなかった。強烈な汚辱に耐えながら必死で舌を動かす。


「それだけじゃだめなんだよ。唇を窄めて首を前後に動かすんだよ。唇で扱いてあげるの」

「手も遊ばせてないでタマとか優しく揉むのよ。太腿の内側も感じるから撫でてあげて?」


 指導する二人の少女の声が上擦っている。
 モデルのような美少女で輝くような金髪をもつお嬢様が自分の男に奉仕する姿に昂っているのだ。
 操祈は彼女らを喜ばせるように言いように従う。
 細く白い指が胡桃が二つはいったような皺くちゃの袋を優しく揉みあげてびくびくと漣のたつ男の太腿の内側の肉を擽る。
 想像以上に弱くて想像以上に強かった。


「もっと奥まで飲み込むんだ――そう、初めてなのにめちゃくちゃ上手じゃないですか。
 上条さんも堪らないものがありますよ。
 処女膜破ったチ×ポに奉仕させてるなんて最高だっ!」


 ペニスが蕩けそうな快感に上条当麻が声を上げる。
 その光景に食蜂操祈の中で確かに芽生えつつある奉仕の喜びの種がブルリと震えて自分の価値を謳う。
 二人の少女が己の両手で操祈の豊かな乳房とその先端のピンクの果実を撫で摘み収穫しようとし、淫蜜に溢れる股間の紅き肉種を指でまさぐる。


「うぅン――あふぅ――」


 紅唇と肉竿との僅かな空間から甘い吐息が漏れる。御坂美琴とインデックスの愛撫は的確に操祈の感じる場所を責めてくる。
 柔らかく耳を甘噛みされつつ項に舌を這わされるともう堪らない。おぞましい口淫奉仕を強要されているのに骨の髄まで開発された身体は熱く紅く感じて悦んでいる。
 健康的な十五六歳の完熟する直前の果実はより深くより甘く自身の果肉を育てていた。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/28(火) 22:08:55.74 ID:UN8a1BRoo
「舌をもっと動かして――そう、先端の穴も気持ちいいんだ――うまいな、ホント」


 ちゅぶ、ちゅぶ、と淫らな音が口先で起こっている。インデックスの言うとおり唇で扱いているのだ。
 口腔だけではなく頭部全体が性器になってしまったかのような錯覚がある。美しい金髪が甘い残像を残す。

 早く終わって欲しい。気持ち悪い。解放されたい。
 それは確かだ。
 しかしそれだけではないことを操祈は認めつつある。
 自分だけでなく二人の少女も支配している傲慢で滑稽で不埒な男を自分の舌先でコントロールしていることが面白くて誇らしい。
 息苦しく目の前が真っ白になりそうなほどなのに、いやだからこそなのか、この僅かな時間で食蜂操祈は尽くす喜びというものを理解しつつあった。

 あのとき。
 あの幼い楽園が終わりを告げた日。
 先生と慕った女性がこんなことをしていた。
 あの顔。あの顔を今自分はしているのだろうか。


「くおっ、もう上条さんは限界ですよ!」


 頓狂な声を掲げた後、上条当麻が食蜂操祈の頭部を両手で抱えた。そして痛みが伴うほど強く握り締め固定すると猛烈な勢いで腰を前後に振り始めた。


「うぐっ! おうぅ!」


 喉奥をいきなり蹂躙される。両手で必死に陵辱者の腰を押して抵抗する。しかし無駄だった。
 高慢な肉塊は当たり前のように操祈の喉すらも陵辱し激しいえづき感が止まらない。ポロポロと涙が出てきてもただの性具としか見ていない上条は気付かない。
 より激しくペニスを突き入れてくる。強烈なイマラチオで濃厚な精液を飲ませようと、それしか考えていない。


(だめ、やめてぇ! 苦しくて死んじゃうぅ!)


 息苦しさに白目を剥いて卒倒する。その寸前に喉の奥で何かが爆発した。
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/02/28(火) 22:10:55.32 ID:UN8a1BRoo

「出る! 出すぞ! 全部飲み干せ!」


 操祈を自分色に染め上げる。そのことに固執し目を真っ赤に染め上げた上条当麻の陰茎が操祈の口内で跳ねる。
 どくん、どくんと脈打ち濃厚なザーメンを操祈の内側に打ち込む。ぐぐっと亀頭が膨れ上がって噴水のように射精する。
 尻肉を痙攣させながら男が最高の女を自分のものにしようとする。


「うぐうぅうぅう!!!!」


 おぞましい。おぞましすぎる。
 必死に口からペニスを吐き出そうとするも両手でがっしりと押さえつけられて頭を引き抜くことができない。


(ひぃぃい!!! いやぁ!!!! もういやぁあああ!!!)


 熱く生臭い精液が口内の全てを陵辱する。喉を射抜いて舌肉も染め上げる。吐き気を催す雄の臭いで一杯になる。
 あっという間に口内は濁った雄のリキッドだけになってしまった。
 そんな操祈に御坂美琴とインデックスとが優しく抱きつく。嬉しそうに幸せそうに。
 二人の体温が操祈に芽生えた被虐の喜びを思い出させた。
 全身の皮膚が泡立つ。
 こんな可哀想な女の子なんて他にはいない。
 上条は腰をしゃくって最後の一滴まで射精すると半萎えの肉棒をするりと操祈の口から引き出した。


「よかったよ。すげぇよかった。じゃあ全部飲み干してもらおうかな」


 陵辱者は更なる乱暴な命令を発する。信じられなくて見上げて懇願して弱々しく首を左右に振って哀れみを乞うた。
 口に出されただけでも穢らわしいこの液体を飲み干せというのか。
 そんなこととてもできない。
 しかしうすら笑いを浮かべた上条と目が合い、二人の少女の嫉妬するような視線を浴びてもはや逃れる術はないことを今更のように知る。

 誰も助けてはくれない。
 だがその状況は操祈のマゾの資質を激しく揺さぶる。
 じゅくり、と股間が熱くなった。
 ぎゅっと目を閉じてドロドロの精液を嚥下する。喉に絡みついて気持ち悪い。ぞぞり、と胃の腑がまるで自分のものではないように蠢いた。
 むせ返りそうになりながら必死に飲み干す。内臓までも汚される屈辱。
 次第に感覚がおかしくなってくる。下腹部が疼いて両足をモジモジさせずにいられない。
 頭の芯がじーんと痺れて、臭いも味も気にならなくなっていた。
 いや、寧ろ、今の状況を悪くないとすら感じ始めていた。

 目の前の縮んだペニス。色が濃くなったものの随分と萎えて大きさは半分ぐらい。
 自分の大切な処女を穢した肉塊。
 それなのに嫌悪感がない。愛おしいという感情すらある。
 自分がこんなに小さくしてしまったのだという誇りすら感じられる。


「んぅ――」


 最後の一滴まで飲み干す。
 涙で濡れた、星の舞った瞳で見上げる。満足そうな顔の上条が優しく操祈の頭を撫でた。
 膝まづいたままの操祈は呆然と見上げる。


「ほら、最後に言うことがあるでしょ?」


 優しく諭すように美琴が言う。


「飲ませてもらったんだから感想を言うんだよ」


 迷える子羊を導くように銀髪のシスターが言う。


 小さく痙攣するように身体を震わせながら、何時もの、得意な、形だけの媚の目で上条を見上げた。


「すごく苦くて生臭かったです。でも――美味しかった、です」


 それは服従の宣言。食蜂操祈は自分とは違う圧倒的なパワーを持つ肉体に従うことを宣言した。
 心の全てが納得したわけではない。だが、畏怖のような感情に支配されている。支配されることが心地よい。
 被支配の特権の味を久々に思い出した操祈は完全に状況に酔った頭で必死に微笑んだ。 
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/02/29(水) 12:36:11.00 ID:8Ho30Y3zo
>>403
さやかもう休んでいいんだよ
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/02/29(水) 21:40:15.57 ID:M8AXyiADO
誤爆あげかよおい
食蜂さんも堕ちたかしら 
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/01(木) 22:33:39.56 ID:7xKWHC0Go
なんだこの流れ……
まぁ読者がいるのはいいんだけど

浜面編投下します 
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/01(木) 22:34:32.81 ID:7xKWHC0Go
 世紀末帝王HAMADURAには二十六の特技がある。
 カードの偽造や鍵開け、ドライビングテクニックという暗部向けのスキルも多いが、一流店と言わないまでもそこそこの店レベルで十分通用する料理の腕やスキルアウト時代に仲間の髪を切っていた経験もある。
 ボタン付や鉤裂きの修正も得意だ。車の塗装修正もできる。更にはタップダンスやクラシックバレエなども踊れるし半蔵と連弾でピアノを引くことだってできる。
 歌唱力は麦野や滝壺が圧倒的に上なのだがかと言って下手なわけでもない。
 勉強はできないが頭がいいという典型的なタイプである。
 ただ惜しむらくは器用貧乏すぎて突出しているものがないのだが、何分彼はまだまだ若い。

 そんな彼が特技というよりも趣味としているのが女性の髪を弄ることである。
 自分の髪型には無頓着な癖に長髪の麦野沈利や艷やかな黒髪の滝壺理后の髪を触るのが大好きなのだ。
 丁寧にきめ細やかにシャンプーもトリートメントもしてやるしできるだけダメージの少ないドライヤーのかけ方も習得した。ブラッシングだって欠かさない。
 元々興味津々だったが自分が女性に好かれるタイプでないことを承知していたため手を控えていたが正々堂々と触れる相手ができればもう自重する必要はない。
 恋人たちだって愛情かけて髪を手入れしてくれるのならば断る理由などないわけで、チャシャ猫のように目を細めながら気持ちよさそうに櫛を通させている姿は日常的な光景だったりする。


「痒いところはございませんかぁ?」


 語尾を妙に強調した軽い口調で浜面がわさわさと泡まみれの頭をマッサージしてると、


「ううん。全部気持ちいいよ」


 とうっとりした口調で滝壺理后が答えた。

 風呂場である。
 ご家庭用とは思えない広々とした浴室でペタンに床に尻をつけたまま滝壺理后は黒髪を恋人に洗ってもらっていた。
 当然ながら二人とも裸である。
 豊かな乳房も括れたウエストも触り心地の良さそうな張った太腿も何一つ隠していない。
 椅子に座っていないのは滝壺の下半身に力が入らないからで、その理由と言えば後ろの立っている男と実に十回も交わったからだ。
 因みに同じ目にあった麦野沈利は口元に小さな泡を貼り付けたまま疲れはててベットの上でぐっすりと眠っている。
 一週間前に内臓が破裂し飛び散るほどのダメージを受けたのは本当にこの男なのかと疑いたくなる現状だった。単純に医者の腕がいいというだけでは到底納得がいかない。

 寝室はとんでもない臭いになっており、流石にそこで眠らせるのは可哀想だとリビングに来客用の寝具を敷いたのだが、そうなればそうなったで性臭塗れの二人を洗ってやりたくもなる。
 順番的に最後だった麦野は疲労困憊そのものだったのでとりあえず放置し、寝付いていた滝壺理后を抱えて風呂場に連れ込んだ浜面だったが、熱いシャワーで目を覚まさせてしまった。

 もっとも、うつらうつらとしながらも身体を洗ってもらうのは実に心地よいらしく溶けそうな表情をしながら頬を赤めて幸せそうに笑うのだから浜面としても悪い気はしない。
 ただ、性器から溢れ出してくる自分の遺伝子を見るのは浜面としても赤面ものだったし、そんな浜面を意地悪そうな目で、こんなに出されちゃったら出来ちゃ うよね、なんてからかってくる滝壺の言葉に顔を青醒めたり直後真っ赤になったりと色々と居心地の悪くなる瞬間があったのも確かだ。

 ただまぁ、そういう時間も含めての恋人関係なのであって振り回されるのも嫌いではない。

 わしゃわしゃと頭皮を強く丁寧にマッサージしながら艷やかで滑らかな髪の汚れを落とす。
 あまりやりすぎると髪質が悪くなるから補正は必要だ。
 髪は女の命とよく言うが、だとしたらこの黒髪は浜面にとっては命と同レベルの宝物である。軽く扱うことはできない。
 もちろんシャンプー前のブラッシングも行なった。
 生え際からつむじに向かって少し力をいれて頭皮を押し上げる。
 毛穴の汚れを全部開かせて泡に取り込ませる。気持ち長めに頭皮マッサージを続けたあとシャワーで泡を洗い落とす。
 その際にも頭皮を揉むようにマッサージするのを忘れない。
 指を立てて頭皮を傷つけないようにつむじから生え際に丁寧に泡を流しとる。
 洗い流したあとはタオルで丁寧に水分を取ってくるくると巻き上げて置く。
 本来ならば早めに乾燥させたほうがキューティクルへのダメージは少ないのだが、きちんと湯船に入れて温めてやりたい。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/01(木) 22:35:16.50 ID:7xKWHC0Go


「お客様。こちらへどうぞ」


 慇懃な態度で湯船にと誘う。
 立てないんだもん、と滝壺が唇を尖らせると苦笑しながらも抱きかかえて一緒に湯船につかる。
 ざばぁっと過剰な湯が大人三人入っても余裕のある浴槽から溢れ出て大きな音を立てた。
 向かい合って両腕で抱きしめたまま肩まで浸る。
 熱めのお湯が浜面には心地よかった。


「湯が割れてないけど平気か?」

「大丈夫だよ。ちょうどいい温度だし」


 一番風呂は水の分子が水素結合した巨大な水分子になっていることもあり意外と肌に悪かったりする。
 事実、浜面が麦野に付けられた背中の傷が染みたりもしたが滝壺はそうでもないらしい。
 昼間――と言ってももう一日前なのだが、麦野沈利と腕の中の少女とに散々ぼこられた一部が悲鳴を上げてはいたが浜面仕上の肉体は健康そのものだった。
 ただ、流石に腰は痛い。使いすぎである。赤玉が出ないのが不自然なほどだ。
 愛あるからだよなぁ、なんて自画自賛しながら若干黄色がかった視界の大部分を占める腕の中の少女の耳元に語りかけた。


「可愛かったぞ、すごく」


 その言葉だけで滝壺が頬を赤める。何を指しているのかは一目瞭然だ。
 厚い胸板に押しつぶされた白い乳房が先程までの強引な交わりを思い出して熱くなる。
 滝壺がぷい、と横を向く。耳まで真っ赤なのはわかっているがそれでも顔を見られたくない。
 だがこの距離では簡単にのぞき込まれてしまう。
 にやにやと品なく、それでいて嬉しそうに浜面仕上が笑っている。愛嬌のある顔に優しい瞳と白い歯が輝いていた。


「嫌い。しあげのことなんか応援できない」


 ぷい、と今度は逆を向く。こんな子供っぽいことをしても逆らえないのは重々承知しているがビロートークでからかわれるのは好きじゃない。
 なのに、浜面は形のいい耳を軽く噛んでくる。
 みぃ、と思わず口から可愛らしい音が漏れた。


「やぁっ、だめ、もうしないんだからねっ」


 大きな波紋が水面に広がる。
 どんなにもがいても万力のような力を持つ太い腕から逃れることはできない。柔らかい耳たぶに歯を立てられるとピンク色の電流が全身を駆けた。
 呆れるほど抱かれたからか、あの熱が内側に篭っていることを知ってしまう。
 だがもう疲れ果てていて苦痛なだけだ。
 涙目になって睨みつけると浜面が少しだけたじろいだ。


「わかった、わかったって。もうしない。俺も限界までやったからな。二三日勃たねぇよ」


 あれだけやって二三日?
 と滝壺は呆れたがそれが若さというものなのかもしれない。
 ふん、ともう一度そっぽを向いて唇を尖らせた。
 だが機嫌直してくれよと何度も懇願する浜面の苦笑につい顔が綻んでしまう。ずるいとは思うがこれが惚れた弱みというやつだ。
 ふん、ともう一回だけ鼻を鳴らして両手を大きな背中に回した。
 数え切れないほど何回もやっているのに新鮮な気持ちになる。
 目と鼻の距離にある顔が優しく微笑んだ。
 とくん、と先ほどとは違うピンク色の痛みが胸に湧く。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/01(木) 22:36:54.04 ID:7xKWHC0Go


「言っておくけど、しあげのしたこと許したわけじゃないんだからね」

「ヤリスギたこと? しゃあねえじゃん二人がめちゃくちゃ可愛かったんだから」

「そ、そうじゃなくって! 勝手に大怪我したこと!」


 顔を真っ赤にしながら珍しく大声で言い返す滝壺。
 いつも眠そうな目が――本当に眠いのだが――怒りに燃えている。抱きしめ合う二人だけの距離で胸襟を開いて言う。
 秘密なんかいらない。この胸にこの痛みがあるのなら権利は自分にもある。


「――あれは悪かったって。反省してる」

「嘘。納得してないでしょ。しあげは自分のしたことは正しいと思ってる」

「――まぁ、少しはな。惚れた女のためだったらなんだってできるっていうヒーロー幻想はまだあるよ。
 俺は何もない何一つ持ってないチンピラだからな、そう簡単には捨てられねぇ」

「むぅ――」

「でも泣かせてまでやりてぇとも思わねぇよ。あの蹴りは本当に痛かった」


 浜面が自身の丸い鼻を指してニヤリと笑う。笑って滝壺の首筋に手を運ぶ。
 濡れた手で首筋を擽られると反論できなくなる。でも反論できないだけで納得したわけではない。
 滝壺理后は普段茫洋としているが一度決めたことは決して曲げない。
 弱きもの汝の名は女なり、とシェイクスピアで有った台詞回しだが少なくとも滝壺理后には通用しない。
 恋する乙女ほど強いものはこの世に存在しないのだから。


「――しあげは、しずりが大声で泣いたこと知らないんでしょ。わんわん子供のように泣いたこと知らないんでしょ。」


 そしてとてつもなく卑怯だ。
 同じ屋根の下にいて、今皮膚を重ねていないもう一人の恋人のことを口に出す。
 黙っていろと言われたが、やはり黙っていることなんてできない。
 瞬間的直情的な判断だが、それでも僅かに策略が混じる。

 滝壺理后は感情を表に出すことがとても苦手だ。
 かつてのフレンダのように喜怒哀楽を表現することができない。
 何も感じていないわけではないのだけれども大人しい性質は到底情感あふれるとは言い難い。
 感情を発散できないのだ。
 その分だけ一度発した感情はとても強くて濃いものになる。


「次の日がデートだからってすっごくニコニコしてて。嬉しそうに着ていく服を選んでたのに。
 電話で病院に駆けつけて手術室の明かりを見たときには自分の足で立ってられないぐらいに弱々しかったんだよ?
 ボロボロ涙零して、神様なんてものにまで縋って。小さくて消えちゃいそうだった。
 あんなに幸せそうだった沈利をあんなにも傷つけたしあげのことを私は絶対許さない」


 裏返せば。
 デートの為に滝壺はそれほど感情を出していない。手術室の前で慟哭もしていない。
 だからと言って傷ついていないわけではないのだが、どうしても比べてしまう。
 その劣等感が言葉に篭る。
 幼子のように泣きじゃくった麦野沈利を支えるぐらいに冷静だった自分が憎い。


「あんなに強かった女(ヒト)なのに、あんなに弱くなっちゃった。仕上がいないと沈利はもう一分だって生きていけない。
 酷いよ。
 優しくして、心地いい居場所作って、自分で飛べなくなってからその場所を奪うの?
 これからずっとその恐怖を抱えて生きていかなきゃいけないの?
 ヒーローってそこまでしてなりたいものなの?」


 だからこれは八つ当たりでもある。
 自分の心をうまく言葉にできない葛藤でもある。
 愛の詩でもある。
 復讐ですらあって懇願ですらあって陳情ですらあった。

 この胸の中にある大きなものに気づいて。
 取り除いてよ。
 私は、自分の心をうまく形に表せない。

 卑怯すぎる悲鳴を上げる。
 自分のことなんか一言も言っていないのに自分のことをわかれと求める。
 滝壺理后は今駄々をこねる子供に過ぎない。
 この一週間心の傷の上に鎮座している重荷が苦痛だと嘆いているだけだ。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/01(木) 22:38:27.01 ID:7xKWHC0Go


 だが


「――なんか沈利に変なコンプレックス抱いてるだろ、理后」


 ヒーローとは万能の救世主だ。ハッピーエンドのための発条式天使人形である。都合がいいほどに物語を改変してしまう。
 少なくとも浜面仕上は世界中でたった二人のためだけのヒーローの資格があった。
 愛嬌のある顔に戸惑いを浮かべながら浜面仕上は腕の中の恋人の悲鳴を正確に読み取る。
 ガシガシと濡れた手で滝壺の頭を撫でると髪を纏めていたタオルが解けて湯船に落ちた。
 すくい上げて放り投げる。
 こんなものいらない。


「似てるよな。二人は。俺みたいな奴と付き合ってる趣味の悪さからして仕方ねぇんだけど」


 麦野沈利は滝壺理后にコンプレックスを抱いている。
 この場所を教えてくれたという負い目ではなく、積極的に浜面の手を取れる積極性に、だ。
 羞恥心が先立って愛情表現ができていないのではないかと恐れている。
 馬鹿馬鹿しい話だ。
 伝達に形は必ずしも必要ではない。
 自身が無能力者であることに深い葛藤があった浜面はその方面に関してだけ言えば人一倍の洞察力があった。

 肌も重ねれば情も湧く。愛は粘膜が作り出す幻想だ。足りなければいくらでも注げばいい。
 余計なものなんていらない。
 深く抱きしめて唇を奪う。
 滝壺理后は一瞬抵抗するも瞬時に力を抜いて甘える。
 優しく両の唇を啄んで艷やかな髪に指先を強引な櫛とした。
 一分ほどそうして、ゆっくり口を離す。
 細い唾液が空中に筋になって消えた。


「俺は、二人がいてくれるだけでいい。俺のことを嫌いになっても構わない。
 二人がこの世にいてくれて幸せであってくれればそれだけでいい。
 全部俺の腕でやりたいというのはただの我儘だ」


 言った言葉に滝壺は睨みつける。
 何も分かっていないと目を剥く。
 しかし言葉は終わっていない。


「でももうこの我儘を我慢しない。呆れるぐらいに幸せにしてやる。
 お前らの気持ち何かこれっぽっちも考えない。二人が幸せになるためだったらなんだってしてやる」


 言って抱きしめた。
 奇妙な顔で真面目な表情をしている。
 あ、この顔が好きなんだ、と滝壺理后は今更思う。


「わかってないじゃない」

「ああ、わかんないね。わかんないさ。でも幸せにしてやる。俺の我儘だ。
 だから俺の我儘を叶えるために言うぞ。そんな顔をしないでくれ。
 二人が互いに抱いている幻想なんて、俺は全く気にしてないんだから」

 
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/01(木) 22:38:57.04 ID:7xKWHC0Go

 柔らかな胸を強く押し付ける。
 この男に抱かれるようになってどれほど育っただろうか。
 だとしたらこの中に詰まっているのはなんだろう。きっと、なにか切なくて温かいものに決まってる。

 重荷は取れていない。
 そう簡単にコンプレックスが解消されてたまるものか。
 でも、今の言葉でそれは動いた。
 少しだけ、心が軽くなった。


「ねぇ、しあげ? まだできる?」


 だからその石をもっと力強く押して。追い出して。
 何時ものようにこの心を大気圏の外まで打ち上げて。
 ドキドキでいっぱいにして。
 五回も十回も誤解も述懐も関係ないの。
 今幸せにしてよ。

 ほう、と丸い息を吐いて滝壺理后が男の腕に抱かれたまま湯船の中の男の性器を撫でる。
 強引に限界まで使われて敏感なそれはふにゃふにゃと柔らかいままだったが過敏に反応した。


「おいおい。もう二十回もしてるんですよ。性欲将軍浜面さんでも流石に厳しいかと」

「でもしたくなっちゃった。お腹いっぱいで足腰立たないのに。しあげのせいなんだからね?
 責任とってよ。
 大丈夫、いっぱい応援してあげるから」


 唇の端に舌を躍らせて滝壺理后が淫らに笑う。
 彼以外の前では決してしない顔。
 東洋美人がエロティックに溺れてみせる。


「してくれたら今回のこと、許してあげる。笑顔になってあげる。
 あ、でも私だけだからね?
 沈利には沈利できちんと謝るんだよ? 欲しいって言ったらちゃんと抱いてあげてね?」


 ふしだら極まりない。
 淫猥な仕草にぞぞっと浜面仕上の背筋に鳥肌が立つ。
 可愛いと思ってしまうともう止まらない。
 命と若さが性欲に変換される。


「よぉ言った。吐いた唾飲まんようにしとけな」


 おどけた言葉で歯を見せて笑う。むくりと逸物が膨れ上がる。
 夜明けはもう近いというのに無限に力が湧いてくる。
 腕の中の恋人が愛おしくて堪らない。
 どんなことがあってももう恋人たちを悲しませたりしないと浜面仕上は強く誓う。

 少なくともこの瞬間の浜面仕上は本気でこの誓いを守ろうと決意していた。
 二十分後に足腰立たないままで浴室までやってきた麦野沈利が散々嬌声を上げている二人を見て大泣きしてしまうという結果によりこの誓いは容易く破られてしまうのだが、それはまた別の話。 
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/01(木) 22:47:54.95 ID:7xKWHC0Go
以上です

ローラの口調がよくわからない
タイミング的にはみさきち編が終わる前にショタ条と絡めて書かなきゃいけないんだけどどうにも判らない 
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/04(日) 00:07:48.79 ID:bmdlj5Koo
浜面の描写を褒められると嬉しいですね
あと風呂場シーンが多いのは私が風呂好きだからかもしれない

みさきち編投下します 
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/04(日) 00:08:43.60 ID:bmdlj5Koo
 射精して縮んだペニスを御坂美琴が嬉々として口に含むとさほどの時間も必要なく大きく育った。
 硬さと大きさを取り戻した肉塊は隆々と大きさを誇っていた。
 黒い皮膚が美琴の唾液でてかっている。


「小さくなってるのを大きくするのってすっごく楽しい」


 赤くなった頬で上条を見上げて、無意識に下腹部を撫であげて言う。
 潤んだ瞳を浴場の色に染めながら淫蕩な笑みを浮かべる。


「息子、なんて言い方するけどさ。この子の兄弟だったりするのかな」

「馬鹿、んな訳あるかよ」

「そうよね。この子の兄弟はインデックスに産んでもらわないとね」


 言って、美琴が操祈を見た。目が何かを語っている。
 その目を見て操祈の顔が耳まで真っ赤に染まった。
 剥き出しのヒップをインデックスに撫でられながら仰向けに寝かしつけられる。
 童顔を火照らしたインデックスが無邪気な顔で操祈に愛撫を加える。そのような事の意味も無く、操祈の秘肉は湿っていた。
 おぞましかった。怖かった。
 しかし口での奉仕は操祈の雌の部分を確かに刺激していた。
 雄の精液を飲み干しながら犯して欲しいという想いが胸の中で膨れ上がっていた。
 もちろん恐怖はある。
 快楽をまだ与えられていないのだ。
 だからこそ期待もある。
 二律背反事項に操祈の心は大きく揺れていた。
 あの熱い肉を当てられたらどうなるだろう?


「みさきのここ、ぐちょぐちょだよ」


 白魚のような指を躍らせながらインデックスが淫蕩に笑う。
 跳ねる水音が操祈の耳にまで届いていた。
 冷やかすような言いように否定したいと思うが快感が強すぎて反論できない。
 興奮しているのだ。
 本当は気づいている。期待して濡らしていることを。
 だが淫らすぎて到底言葉で認めることなんてできない。


「いや――言わないで――きひぃっ!」


 陰核を捻られて悲鳴を上げる。パーフェクトボディの操祈が自分の手で快楽に歪むさまをインデックスは楽しんでいる。
 強烈な快感が脳にまで抜けて膝ががくがく揺れてしまう。甘い吐息が抜けた。


「あんまり可愛がりすぎちゃダメよ、インデックス。操祈は当麻に可愛がってもらうんだから。今のままじゃ挿入た瞬間イっちゃうじゃない」


 美琴の声に、ぶぅ、と不満そうな顔をしながらインデックスが操祈から身体を退ける。
 淫蜜に濡れた自分の指を美味しそうに舐めとって、その液を口に含んだまま操祈に唇を重ねた。


「んむぅ――!」


 自分の体液をキスで流し込まれて操祈が抵抗する。流石に嫌悪感がある。
 しかしインデックスとキスをしていると思うとその嫌悪感は氷のように溶けた。
 胃の腑から湧き上がってくる精液の生臭さもあって、それが普通なんだとすら思えてきていた。
 艷やかに操祈の瞳が色づく。
 唇が離れたとき、あは、と嬉しそうな二人の視線が絡み合った。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/04(日) 00:10:12.43 ID:bmdlj5Koo

「さてと、そろそろ本番ですよ?」


 キスの後、横たわった操祈の足の間に上条が居た。
 大きく膨れ上がった逸物が柔らかで敏感な肉の割れ目に押し当てられる。
 亀頭の先端が数ミリ押入れられて操祈が甘い声を上げる。


(いやよ……こんなに淫乱になってる……私……)


 ペニスの先端で割れ目を撫でられるともう堪らない。早く、一秒でも早くと願ってしまう。弱気な自分が男に縋ってしまいそうになる。
 怖いのに。どうしようもないぐらいに怖いのに。
 どうしても期待が膨らんでしまう。
 だって、気持ちいいって言ったから。何倍も気持ちいいって言うから。
 快楽漬けにされて、その上を提示されて、操祈の心は絶望よりも希望に甘えていた。
 一晩過ごしただけの男、自分をレイプした男を憎いと思えない。
 とくん、と子宮から蜜が溢れた。

 潤んだ瞳で見上げる。
 今までに見たことがないように優しい瞳で上条当麻が微笑んだ。
 どくん、と心臓が跳ね上がる。
 ちらちらと舌を伸ばす炎のトカゲが胸の中で息づいていた。
 次の瞬間、熱い肉塊が操祈の胎内に押し込まれた。


「あひっぃ!!!! あああああああAAAAAAAHHH!!!!」


 細いウエストを鷲掴みにした上条が異様な光の瞳で腰を突き刺した。
 同時に操祈の口から獣のような絶叫が爆ぜる。
 巨大な肉塊がずぶずぶと飲み込まれる。抵抗なく沈み込む。
 目の前に火花が飛び散るような快感に操祈はたまらず背を逸らして嬌声を上げる。
 恥ずかしい悲鳴と共に視界が赤くなる。
 高級で肌心地のいいベットの上で食蜂操祈はただの雌に成り下がった。


「かっ……は……」


 内臓が苦しくなる。巨大な肉塊をねじ込まれて余裕がなくなる。強烈な圧迫感に息が詰まる。口を開けたまま微動だにできない。
 子宮を押し上げながら上条が操祈の美しい金髪を撫でた。
 乱暴な男の手のひらの熱。
 目と鼻の距離で覗き込まれて、操祈の顔が赤くなる。
 今更の様に別の痛みが胸に湧いた。

 すると動きを止めていた上条がゆっくりとかすかに腰を動かした。途端に膣肉がきゅうと締まる。締まって、熱い肉が自分の体の中にあることを知る。


(ああ、やだ、私――犯されているのに――凄く気持ちよくなってる――)


 丸い息を吐く。
 切なくて堪らない。
 昨日の今日だ。正直痛みはある。しかしそれ以上に膣肉が疼く。
 大きく張り出したカリ首でこすられて蕩けるほど気持ちよくて声が漏れてしまいそうになる。


「あはああぅ――やめてぇ――声が出ちゃうからぁ――」


 細い指先でシーツに深いシワを刻みながら操祈が懇願する。
 しかし動きが止まる道理はない。
 すぐ隣りで横たわって操祈の顔を覗き込んでいる美琴とインデックスが淫らな顔で笑っている。


「我慢することはないのよ? 気持ちいいんでしょ? いっぱい声出していいのよ」

「聞かせて欲しいんだよ。みさきの気持ちいい声。いっぱいいっぱいインデックスに聞かせてくれると嬉しいな」


 上条と操祈の身体に挟まれて潰れた胸を二人が責めてくる。
 柔らかく大きく母性すらあるそれは最早性を昂らせる道具でしかなく、先端の蕾は痛いほど尖っていた。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/04(日) 00:11:52.34 ID:bmdlj5Koo

「ああっ――くぅ、お願い、やめてぇ――」


 ねっとりと腰を回しながら上条が操祈の首筋を吸う。
 ロストヴァージンの時もそうだったがこの男は首筋を責めるのが好みらしい。
 白く細い首があっという間にキスの跡で染められる。


「ひんっ、や、ああんっ」

 柔肌を責められる。一皮剥けたかのように敏感になってしまう。
 耳たぶを噛まれて、耳の穴に舌を入れられる。信じられないぐらいに感じてしまう。
 おわん型の乳房が切なく疼いた。


「ひいぃっ、やぁっ、許して、許してぇ――」

「気持ちいいんだろ? どんどん濡れてきてるぞ? 感じてること隠さなくたっていいんだから」


 耳たぶを甘噛みされながら軽く肉棒を抜き差しされるとぬちゃぬちゃという水音がした。
 元々濡れてはいたが、確かにインデックスの愛撫の時よりも濡れている。快楽の粒が全身に満ちて弾ける。
 超能力者の優れた思考能力の全てのメモリが食いつぶされる。
 肉体の快楽に脳が追いつかない。


「みさき? 凄いでしょ? 物凄く気持ちいいよね?」

「アンタ、素直になりなさいよ。素直になればもっと気持ちいいわよ?」


 二人の少女がじっと操祈を凝視している。感じているさまを見ている。
 その視線には喜びと、嫉妬と、若干の蔑み。操祈の中の後暗い部分を刺激している。
 双眸から涙が溢れた。



「操祈。アンタはいやらしい女なの。認めなさい。淫らな牝犬なの。認めちゃえばずっと一緒にいられるわよ」

「私はみさきに一緒にいて欲しいな。みさきのこと、好きだもの」


 火照った乳房を揉みしだきながら勝手なことを二人が言う。聞えよがしに耳打ちする。
 反論しようにもその心が動かない。
 淫らだというその一言を否定できない。
 いやらしい女だと自分でも思っているから。
 だから弱々しく哀願する。


「見ないで――お願い、見ないで――ひゃうっ!」


 ひときわ甲高い声で鳴いた。
 限界ギリギリまで引き抜かれたペニスが一気に奥底まで貫いたからだ。そのまま腰をねっとりと回される。
 一時、三時、六時、と不特定に不特定数の突きが入れられる。たまらず背筋をそらせると尖った顎を掴まれて唇を奪われた。


「あ、いや、無理にしな――んむぅ!」


 反論は許されない。逃げることもできない。唇を舐め回されながら喘ぐしかない。
 亀頭の先端で子宮口を弄られながら無意識のうちに舌を受け入れていた。
 口内をしゃぶられる。汚辱感とそれ以上の満足感が操祈に襲いかかる。涙をホロホロ流しながら熱い唾液を受け入れた。
 反射的な嘔吐感。それを含めて嚥下する。精液を受け入れたのちに唾液を受け入れるという矛盾も気にならなかった。
 そのまま軽く腰を使われながら延々ディープキスを受け入れる。嗚咽を漏らしながら男の唾液を受け入れる。
 それなのに肉体は熱く、快楽は強かった。背骨が溶けてしまいそうになる。次第に脳がじーんと痺れて何も考えられなくなる。
 そして、完全に思考能力を奪われた頃、上条当麻による本格的な抽送が開始した。
 大量の蜜液を蓄えている膣璧を大きなカリで擦られて操祈が堪らず唇から逃れて大きな声を上げた。


「うわぁっ! あんっ あんっ! そこだめぇ!!!」


 女王と呼ばれた少女の嬌声が響きわたる。
 昨夜ヴァージンを奪われたばかりの膣肉はまだ痛みを抱えている。しかしその痛みをはるかに上回る悦楽が操祈を塗りつぶしている。
 熟しつつある女体が悦んでいる。二人の少女の視線も心地よかった。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/04(日) 00:13:30.13 ID:bmdlj5Koo

「ほら、自分から迎え入れて? はしたないぐらいに腰を使うの。堪らないでしょ?」


 興奮した美琴が淫らに笑う。上条の鼻息が粗い。興奮している。
 弱々しく首を振って受け入れを拒む。
 素直でない操祈に憤慨したのか、上条の腰使いが乱暴に切り替わった。
 おっぱいを揉む美琴とインデックスの両手も雑然な使いに変わる。
 勃起した乳首を強く摘まれると強烈な快感電流が全身に流れた。


「あ、あ、ごめんなさい、もう、許して! 私、もう、耐えられない!」


 剛直で弄られて理性がなくなる。気が狂いそうなほど快楽が膨れ上がる。
 何時の間にか美琴とインデックスのことが脳から消え去っていた。セックスのことしか考えられない。ペニスが身体の全てになってしまう。
 身体が蕩けてドロドロになってただの性器に作り替えられてしまう。もう、快楽を否定できない。


「くぅ! イかせてやる! 思う存分イかせてやるからな!」


 ロングヘアの金髪を振り回して喘ぐ姿に上条の性感も高まっていた。美琴とインデックスから操祈の乳房を取り上げて両手で鷲掴みにする。
 なんの遠慮もなしに腰を使う。杭打ち機としてただただ腰を前後させる。


「ひあっ、ひぃ、ひいぃあっ! あ、あ、いやぁ! こんなの、私の耐久力でも壊れちゃう!」


 パンパンと音を立てて腰を打ち付けられる。此処にいるのはオスとメスに過ぎない。無意識に、不格好に腰を浮かせて少しでも深く受け入れようと操祈の肉体が反応する。
 恐ろしいほどの快楽の大波がやってきて全てを飲み干そうとする。


「すごっ、もう真っ白になる! おかしくなるっ!!」


 本能が理性を食いつぶす。絶頂が迫っている。
 確かに、美琴が言うとおり、それはこれまで二人の少女に与えられたものと違っている。
 圧倒的すぎて、漆黒で、重くて、押しつぶされてしまいそう。ちかちかと瞼の裏側が光る。全てが崩壊する。


「なぁ! 何処に欲しい! 何処に出して欲しい!」


 汗まみれの顔で品なく笑いながら上条当麻が食蜂操祈の顔を覗き込んだ。
 圧倒的な雄の顔をしながら白い歯を見せている。その肉体は引き締まっていて力強く、操祈の全てを支えている。

 視界の端に御坂美琴が居ることを思い出す。
 その腹部を。あんな幸せそうな顔を。

 インデックスのことを思い出す。
 あんなに幼い少女なのに、ナカダシを必死に迫っていた姿を。

 おかしい。おかしくなる。
 どう考えても理性的ではない。
 好みの音楽すら知らない男なのに。
 憎悪すべき男なのに。
 身体が求めている。
 心なんかでは支配できない肉体という器が欲しいと絶叫している。


「なか、中にしてぇ! いっぱい中に出してぇ!」


 遂に雄の肉で絶頂を迎える。
 全身がバラバラになりそうな快感に膣肉が激しく収縮して精液を強請る。
 同時に上条当麻が吼えた。獣の咆哮を放ちながら操祈の膣内で肉棒を脈打ちさせた。

 どくん、という固形のように濃厚な精液が打ち込まれる。
 熱く切なく育っていた子宮が嬉しそうに受け入れる。


「うおおっ、出るぞ! 出るぞ!」

「ひあああぁぁっっ!!! 熱い、熱いっ!!!!」


 操祈は身体の奥で白濁液を受け入れながらそっと目を閉じる。
 えも言えぬ快楽の波に打ち上げられながら男の背中に腕を回してしがみつく。
 ぶるぶるとその白い腕が震えた。甲高い絶叫を上げ、操祈が崩れ落ちる。
 乱暴な息遣いをピンク色に染めながら操祈は荒すぎる余韻と鼓動とに身を委ねながら限界近い意識を手放していた。 
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/04(日) 00:17:14.06 ID:bmdlj5Koo
とりあえずは以上です

あとローラ編の出だしを投下します 
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/04(日) 00:18:40.58 ID:bmdlj5Koo

「へぎ!」


 眉目秀麗にして穏やかな微笑みを絶やさず徳は罪人をも癒やし語る言葉はハープの調べにも似て神の愛を切々と説く姿に感涙するものは後を絶たず聡明なる頭 脳は百の賢者が集まってもなお届かずされど奢らず畏まらずその仁は天下に並ぶものがないイギリス清教最大主教ローラ=スチュアートは潰されたカエルのよう な悲鳴を上げて水たまりに頭から突っ込んだ。
 お気に入りの日傘をくるくる回しながら昨日の雨で出来た水たまりにスイスイ浮かぶアメンボを見ていたところを後ろから突き飛ばされたのである。
 パシャ、と汚水が跳ねてお気に入りの花柄ワンピースが汚れる。軽そうに見えるがデザイナーズファッションの高級品である。
 もっとも、献上してもらったものなのでイギリス清教の財布は傷んでいない。しかしそんなことは事の重さとは関係ない。
 そして服よりももっと重大なことはローラの長い長い、自分の背丈の二倍は長い髪が泥を吸ったということだ。美しい金色の髪を膝まで伸ばして、そこから折り返して首筋あたりで髪留めで止めて、さらに下ろしている一国の財産にも匹敵する美しい髪が汚されたことだ。
 恐れ多くも魔術サイドの大立者、最大主教ローラ=スチュアートにこのような無礼を働くということがどういう意味を持つのか、じっくり分からせてやろうと 漫画のように青筋を立て泥まみれの顔を上げてローラが振り返るとそこには自分の胸元程の背の高さの少年が倒れていた。
 オシャレも何もない、ボサボサの短い黒髪。倒れ込んでいる状況を見ればどうやら石段の最後の階梯に足を引っ掛けたらしい。気に食わないことにどうやらローラのヒップに顔を突っ込んでいたようだ。

 描写は前後するが此処は日本の片田舎である。
 山深くの小さな温泉街で、それ以外に観光の名所らしきものはない。
 そんな田舎のさらに奥、小さな祠のある神社でローラはカメムシの仲間と戯れていたのである。
 しゃがみこんで観察している体制から思いっきり突き飛ばされることになろうとはさすがに予測していなかったが。


(こ、このガキ――あれ? 妖しきことありけるかや?)


 お前はどこで言葉を学んだんだ、とツッコミが入りそうな心の声でローラは疑問符を挙げる。
 幾らバカンス中とは言え仮にも一宗派の長でありイギリス三大派閥の長でもある。三男六女の母親でもある警護役のテオドシア=エレクトラに暇を出して (「何言ってるんでアリマス。こっちも仕事でやってるんデス。逃げるんじゃねぇよこの空気頭」「最近子供たちと逢うておらぬのであろうて? なになに、 黙ってればバレないバレないのことよ。ホラ、お小遣いあげるから飴ちゃんでも買うておいき。っていうか一応シスターなのに毎晩子作りしてるんじゃねーよ今 度で何人目だよテメーは」)のんびり羽を伸ばしていても最低限の人払いの結界ぐらいは張って行動している。
 いくら鼻歌まじりで張った結界でもローラ=スチュアートの張った結界はそうたやすく破れるものではない。それにどう見てもこの少年は魔術師には見えない。


「あ、ご、ごめんなさい! お姉さんの服汚しちゃった!」


 思春期に入ったばかりなのか、特有の高い声を上げる少年が心底済まなそうに地面に座り込んでローラを見る。
 年の頃は十を一つか二つ超えたぐらいだろうか。まだ男らしさは備わっていない。細い手足は健康的だが付いている疵痕は大地を駆け回ったにしては多過ぎる。どう考えても人の手が加わっている。
 その顔を見れば年など関係ない深い悲しみを負ったことのある瞳をしていた。
 ローラはこの瞳をよく知っている。
 魔術師になろうという輩の眼だ。
 強い挫折を味わってまだ立ち上がれないものの目である。
 ざっと身体を見てみても霊装らしきものは持ち歩いていない。夏の季節らしい短いシャツと紺地の短パンではモノを隠すところなどない。


「ま、まぁ宜しきことよ。服など髪など洗えばそれで済むだけの話なりて。そもそもこのようなところで無防備にしゃがみこんでいた私にも責任はありけるのよ」


 石段のすぐ傍でしゃがみこんでいたのはどう考えても普通の行動ではない。まぁ結界を張っていた油断もあるのだが、今この少年がナイフか何かを持っていれば防御霊装を何一つ身に纏っていないローラは殺されていたかもしれない。
 大体、階段を登ってくる足音にも気付かないとはどういうことだと自分の迂闊さを呪った。石段と言っても随分と苔むしていて足音はしないわ滑りやすいわという状況だったのはローラも経験して登ってきたのだ。気が抜けているにも程がある。


(空気頭というのも的を射ているかもしれぬ――)


 ポケットからハンケチを取り出して顔を拭っていると少年が唖然とした顔でローラを見上げていることに気づいた。
 もしかしてこの美貌に目を囚われたかや? と胸を張ると、


「お姉さんの日本語、おかしい」


 少年は子供らしいストレートな物言いでローラの口調を窘めた。


「お、おかしい?」

「うん。外国人のお姉さんだということを差し引いてもよくわかんない」

「そ、そんな――全五十二話の源氏物語絵巻を毎晩欠かさず視聴して一字一句残さず覚えたり苦労は水の泡なりしや!?」


 きょとんと見上げる少年の視界であわあわと頬を両手で挟んでうろたえるローラ。そもそもテレビで独学している時点で言葉がおかしくなることに気づくべきではあったが基本的に最大主教に常識は通用しない。
 学園都市が大きな力を持っていることもあって日本語の普及は非常に進んでおり、また一宗派の長として学園都市と交流をもつとしても日本語ができるに越し たことはないと忙しい合間を見つけては勉強して一応会話ができるまでになったローラ=スチュアートは紛れも無く才女なのだが、どうにもこうにもどこかが抜 けている。
 どよん、と顔に暗い影を指したままローラが顔の汚れを拭い取る。
 魔術を使えばこの程度の汚れはどうとでもなるのだが、まさか一般人の前で魔術を使うわけにもいくまい。幸いこの神社には手水舎がある。手を清めるのならば身を清めても構うまい。
 危なげない仕草で柄杓をとって自分の両手を濯ぐ。叱る後に泥まみれのハンケチを綺麗にして湿布にしたあとで少年に差し出した。
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/04(日) 00:21:52.99 ID:bmdlj5Koo


「膝、擦りむいているのよ。血が出ておるので清めたるのが良かろうとお姉さんは思うのだけれども?」


 にこり、と笑って少年を立たせる。ボロボロの神社の外廊下部分を椅子がわりにして二人で座って少年の膝の血を拭く。何処かが裂けているということはない。骨も影響はないようだ。
 血は泥よりも落としづらい。このハンケチはお気に入りだったんだけれどなぁ、と思いつつも慈愛の司教はそのようなことは気にしてはいけない。迷える子羊のためならばハンケチの一枚ぐらいはどうということもない。
 異教の地で、おそらくは異教の徒に尽くすのは時代背景が違うのであれば許されないことなのだろうが幸いというべきかどうか、ローラ=スチュアートは敬虔な信者ではない。
 救われるのであれば救い手が神である必要はないと考えている。

 旧約書、或いはザ・ブックとでも呼ぶべきか。
 このような話がある。
 神に息子二人を奪われた母親が嘆く。
 なぜ奪ったのだと。慈悲はないのかと。
 父親が諭す。
 神が与えたもうたものならば神が奪うのは当然のことだ、と。
 神の与えたもうた幸福も不幸も神の意思のまま受け入れなければならないと。

 本当に敬虔な信者であれば人間では到底わからない神の意思に盲目的に従うのだろうが、ローラは魔術師でもある。魔術師の長でもある。
 流した涙をもう流したくないと世界を書き換える人間たちを束ねている。
 神など、言い訳に過ぎなかった。
 一宗派、一派閥の長として与えるときは与えるし奪うときは奪う。そこに一人の人間の感情が入る余地はない。
 しかし今はただのローラだ。ただのローラ=スチュアートだ。ただの司教でただの神の娘である。


「あ、ありがとう、お姉さん――」


 少年が顔を俯けながらローラに礼を言った。その顔が赤らんでいるのは耳まで染まっているのだから見るまでもない。
 美しい年上の乙女に優しくされて照れている童顔の美少年の姿はローラの中にも温かい満足感を生み出した。
 と、同時に少年に興味も湧く。
 この場所は結界を張ったはずだ。なぜやってこれたのだろうか。
 確かに強い意思があれば結界を超えることは不可能ではない。
 しかしこの場所は元々それほど人がやってくる場所でもないし「神社に行きたい」という気持ちを減少させる効果も持っている。
 可能性はあっても不自然な行動でもあるのだ。


「坊やは何故此処に来りしの?」


 語尾を上げて、疑問文だとわかりやすくして、ローラは少年に問いかけた。
 小首を傾げて頬に人差し指を立て可愛い仕草で覗き込む。
 実にあざとい。
 ローラはもちろん外見通りの年齢ではないが、自分の外見もよく理解している。
 十八ぐらいの全てが輝くような年齢の、見目麗しい女性の色香がどれほどの魔力なのかを知っている。
 この、性が目覚めるか否かの年頃には魔女としか言いようがない。
 事実、ローラを一瞬見上げた少年は顔から水蒸気のようなものを出して固まった。顔は真っ赤で心臓が鼓動しまくりなのが手に取るように分かってしまう。
 どんな年齢になろうとも、自分の『女』が財宝であるということはローラのプライドをいたく擽る。こんな思いをさせてくれる少年が可愛くて仕方がない。

 だが、少年は一瞬のためらいの後、顔を再度伏せた。


「僕は――誰とも会いたくなかったんだ。僕がいると必ず誰かを不幸にしてしまうから」


 それは傷ついたものの独白だった。
 少年の独白は続いた。
 曰く、自分は不幸なのだと。
 曰く、自分の不幸は他人を巻き込むのだと。
 曰く、巻き込まれた誰かは自分を呪い恨み去っていくのだと。
 曰く、大人ですらも石持って自分を追い払うのだと。
 曰く、あまりもの不幸にテレビ局が面白半分に取材に来たのだと。
 曰く、テレビ局が取材してきたときにテレビ局のスタッフの詰所でもあった車にトラックが飛び込んできて大騒ぎになったのだと。
 曰く、それ以来周囲の大人が自分を完全な疫病神と決めつけたのだと。
 曰く、友達と思っていた子供たちが自分から離れていったのだと。
 曰く、それを不憫に思った両親が自分を学園都市に入学させ、この不幸の科学的解明を望んでいるのだということを。
 曰く、それでも自分の不幸は何も変わらなかったと。いつも必ず誰かを巻き込んで傷つけると。


「だから、お姉さんが泥まみれになったのは僕のせいなんだよ。僕がいなかったらこんなことにはならなかったんだ」


 言って、まるで感情を全て摩耗しきったような疲れはてた顔をした。
 ローラは黙って話を聞いていた。
 興味があった。それほど過剰なまでに不幸が訪れるというのであれば呪いを受けている可能性もある。
 この少年がどこかの魔術結社の一員であるというのならば話は別だが、何ら関係もないのに巻き込まれて呪いを受けたのであれば救ってやりたいというのが人情というものだ。
 冷酷非道な一面もあるローラだが、だからと言って誰かを救ってやりたいという心を完全に失っているわけでもない。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/04(日) 00:22:47.32 ID:bmdlj5Koo
 それに


「坊やは学園都市の人間でありけるの?」


 この点にも興味を持った。
 ローラはただいまバカンス中である。
 しかしバカンスのためだけに極東の島に訪れたわけではない。
 科学サイドの頂点に立つ大立者、フラスコの中に逆さになっている変態、アレイスター=クロウリーとの会談をしてきたばかりだ。
 男女の差が見受けられない感情の存在しない顔は今思い出しても唾棄してやまないが、それは余談である。
(余談を続ければ、アレは魔術師、アレキサンダー=クロウリーに九分九厘間違いないとローラは判断しているが何分確固とした証拠がない。しっぽを見せなければ狸を捕まえることはできないし、科学の聖地でそのようなことをすればローラの身も危ない)
 学園都市とは他生の縁があったばかりだ。
 もっとも、学園都市には百数十万の学生がいる。夏休みのこの時期に半分が帰省していたとしても日本中のあちらこちらに学園都市の人間がいておかしくはない。
 そして学園都市の学生と言えば、


「坊やも何か能力をもっておりけるの?」


 これである。
 実際には過半数の人間が無能力者に分類されているが、どうしてもイメージとしては超能力が先立つ。
 ローラは学園都市の内情にある程度詳しいが、だからこそ世間一般のイメージとしての会話を優先した。


「僕はレベル0の無能力者だよ。ちょっと変わった右手があるけど」


 少しだけ笑って、少年が右手を掲げた。


「幻想殺しって言って、どんな能力でも打ち消しちゃうんだ。でもこれがあるから僕自身の能力も打ち消されてるんだけど」


 幻想殺し。
 その名を聞いてローラの頬が僅かに引きつった。
 記憶が正しければそれは原石である。否、原石というよりも蓋である。超常たる力を持ってありえないことをありえるように『しつつ』ある効果を平らにならす力である。
 範囲は違えども考え方としては結界構築に近い。
 結界に近づく異物を排除するという積極性が異常なだけである。
 その異常性ゆえに魔術師にとって幻想殺しは天敵とも言えるし、再現研究もできない相手でもある。


(危なかった――かしらぬ)


 ローラは見た目通りの年齢ではない。しかしその外見は魔術で保っているものではない。
 正確にいえば魔術で『生命力』を高めて一番若く力強い外観年齢を維持しているだけであって魔術を解けば一瞬で老婆になるというわけではない。粗食や呼吸法で若さを保っている輩と根本的な意味では変わらない。更に言えば元々長命の種でもある。
 もし外観だけを変える魔術で若さを維持するという短絡な方法を選んでいたのなら今此処にいるのはシワだらけの生ミイラだったかもしれないと思うと背筋がゾッとする。長命種であることを差し引いても倍は老けていただろう。
 まぁ、兎も角幸運だった。ローラは何時までも過去を振り返ったりはしない。組織の長にとっても最も必要なのは決断の速さである。足踏みする癖はローラにはなかった。


「幻想殺し――ねぇ。ちょっと試させてもらってよろしきかな?」


 言って、頭頂部から一本の髪を抜く。痛い。二メートル半もあるそれを丁寧に引き抜いて編み込んでいく。幾つか不均等に結び目を作って、賞味二十センチ程の金髪造りの蝶が出来上がる。
 そっと息を吹きかけるとふわりと羽ばたいて蝶が空を舞い始めた。
 因みにローラが周囲に張った結界はこれの亜種である。


「わぁ――」


 少年が感嘆の声を上げる。
 夏の日差しの中に舞う金色の蝶は幻想的に美しい。
 太陽の光を浴びてひらひらと踊る。


「お姉さん、能力者なの?」

「そうよ。髪の毛を自在に使う能力者なりけるの」


 嘘をつく。
 方便というやつだ。
 学生都市の人間ならば魔術師ということはないし魔術のことを詳しく教える必要もない。


「でもそれにしては日本語へんだよね。能力者だってことは学園都市出身で、ってことは日本語で授業受けてたはずなのに」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/04(日) 00:23:35.05 ID:bmdlj5Koo

 ぴき、と一瞬ローラの額に再び青筋が立った。
 なにコイツ可愛くない。
 呪ってやろうかと一瞬思ったが慈愛深い最大主教様はそんなことは実行しない。

 右手を出して、と怒りを殺しながら言うと少年が素直に右手を宙に掲げる。そこに蝶を止まらせた。瞬間、ぴきんと聞いたことのない、何かが割るような音がして蝶が粉々に砕け散った。


「へぇ――本当に全てを打ち消したりけるのよ」


 感心して両手を腰に当てると隣に座った少年は寂しそうな顔をしていた。
 証明のためとはいえ幻想を殺してしまったことが悲しみの感慨を起こしてしまったのだろう。
 苦笑して、ローラは少年の頭を撫でた。


「お姉さんがやったことなりて、坊やが気に病むことはあらねどよ。アレは蝶の形をした髪の毛。意味があるとしたら坊やが一瞬でも笑顔になったことなりければ」

「でもそんな幻想も壊しちゃうんだ。この右手は」

「あら、でもお姉さんはその右手のおかげで坊やと仲良くなれると思いたるのだけれども」


 言って、ふと思った。
 何時までも泥かぶりの姿のままでは居られない。一度宿に戻らなくては。
 そういえばこの少年は何処の宿に止まっているのだろう?
 地元の少年ということはあるまい。学園都市の人間なのだから。
 帰省しているという可能性よりも久方に合う両親と旅行している方が可能性は高いだろう。
 これで同じ宿ならばそれこそ正しく縁だ。
 試してみようと問いかけた。


「坊やは何処の宿に腰を落ち着けたるの?」

「えっと、――ってところ」

「あら、お姉さんもなりよ。偶然ねぇ」


 偶然などではない。否、偶然に意味を見出すのが魔術でありオカルトである。仏の教えにある縁という言葉が胸に心地よい。
 因みにローラがその宿を選んだ理由は美肌になると有名な温泉があるからなのだ。というか、そもそも日本に用事を見つけてやってきたのも温泉に入りに来たからである。
 欧州にも温泉がないわけではないがどちらかと言えば飲泉が多くゆったりとつかれる湯は少ない。ましてや秘湯という文化が発祥するほどではない。
 そういえば混浴であったなぁ、と思う。


「お姉さんは一度宿に戻ろうと思うておるの。汚れたりし故に湯浴みも所望しておるので。坊やも一緒に入りたいかな?」


 言うと、少年は顔を真っ赤にした。真っ赤にして頭から湯気を出した。そのまま人形のように首を振る。
 単純に可愛いとローラは思う。
 まだ幼い少年に女としてみられるのは心地よい。
 久方にローラの中の女の部分が疼いた。


「じゃあ、約束」


 右手を、小指を立てて差し出す。
 少年は一瞬躊躇する。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/04(日) 00:24:01.13 ID:bmdlj5Koo

「その右手がなんでもかんでも消せると思うてはいけなくてよ?」


 左手で少年の右手を引き寄せた。おどおどしながらも結局黒髪の少年はローラと小指を交わす。


「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます」


 これは一種の呪いである。祝福でもある。
 当然幻想殺しには何一つ意味はない。
 しかし、心には届くだろう。
 魅了の瞳は魔術であると同時に人の内側に作用するのだ。
 ローラは楽しくなってきた。
 新しい玩具を見つけた気分だ。
 この内向的な少年を書き換える。
 右手が不幸だけを呼ぶのでないと思い込ませる。
 別に何かしらの負い目があるわけではないのだが、迷える子羊への導き手たるのが修道女の役目だ。
 というよりも、一個の人間として見られる快感を思い出したのかもしれない。

 バカンスには男がつきものだろう。
 そして男を育てることほど楽しいゲームは存在しない。
 なにも男と女の間柄は性的なことに限られるわけでもあるまい。
 男というのは少々物足りない幼い少年を見て微笑む。

 ローラは言う。


「幻想殺しは神様のご加護すら打ち消してしまう――そんな話もありけるわ。
 されど、全知全能たる神様のなすことがそんな穴だらけな訳はないのよ。
 坊やはまだ使い方を知らないだけ。いとここらお話しましょう? あぢきなし忍びごとに涙することはなくてよ?」


 幻想殺し。恐らくは件を隠す蓋。
 アレイスターが何を考えているか、その見当はまだ付いていないが手段の一つである可能性は高い。
 しかしそのようなこととは何一つ関係なくローラはこの少年に興味を持った。
 救いたいと思った。
 神は自らを救うものこそを救う。
 ならば必要なのは自信だ。
 幻想殺しで不幸な目に合っていることは間違いないだろう。神の加護を消すのは幻想殺しの副次的作用だ。
 だがそれは日常でのこと。戦場において圧倒的な幸運を得る代償として日常での不運があるだけだ。
 誰かが絶望に喘いでいるときその腕を握り地獄から救い出せる物語の主人公としての能力。
 必要なのはその一歩を踏み出す勇気。
 教えてあげればいい。
 男に勇気を与える手段など元々限られているではないか。

 ローラは本当に楽しくなってきた。
 この少年に自分への恋心を植え付けるのだ。
 それは絶対の自信になる。
 なに、そんなに難しいことではない。事実熱の篭った目をしている。
 ただ気づいていないだけだ。
 それはアレイスター=クロウリーに対しての切り札になるかもしれない。ならないかもしれない。
 いや打算はいい。
 惚れられて悪い気のする女はいない。それが純真な少年ならばなおさらだ。
 薔薇の花弁の形をした紅い角砂糖を口に含んだような甘さがじわりと広がる。
 最大主教の名を言い訳にして唯一人のローラは聖母のように微笑んだ。 
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/04(日) 00:25:45.27 ID:bmdlj5Koo
とりあえず今回はここまで
ローラの口調が古語なのかアホ言語なのかがよくわからないんですよねぇ
なんとか脳内補正をしてもらえるとありがたいです 
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/08(木) 21:30:32.50 ID:jWiIwS6jo
 この国には魔術的な記号が実に多い。言ってみればごった煮だ。文化的に濃縮されている。それなのに統一的な宗教がないのが実に不思議だ。
 強いていえば穏やかなアミニズムと言えるがそれも的を外しているように思える。
 八百万の神々という言こそが真理か。
 なるほどジーザスもアラーもブッダもこの国では一柱の神でしかない。
 もっともローラにとってはさほど重要なことではなかった。
 ただ、この国の中では使える魔術が実に多いという点は便利だと思っている。

 宿に戻ったローラは日傘を仕舞ってワンピースを脱いだ。
 肩を露出させたままトランクをあさり折り紙を取り出す。
 それは黒い一枚。


(オリガミ――織神――色紙――シキガミ――)


 心の中で韻を践みながらパタパタと折っていくとやっこという形におり上がる。
 それをワンピースの懐にしのばせると袖口から細い腕がすっと伸びてきた。


「袖の手、ねぇ。大した魔力も使わずに使い魔が作れるのだからこの国は実にあらまほしきよ」


 首も腰から下もない、ただ腕だけが生えているピンクのワンピースに自身の汚れを落とせと命じるとローラは部屋の備え付けのシャワールームへと足を運ぶ。
 下着は途中で脱ぎ捨てた。一糸まとわぬ生まれたままの姿でローラは髪を解く。
 目的は温泉だが流石に誰かがいる前でこの長い髪は洗えない。
 銀の髪留めを魔力で変形させてブラッシングさせる。イメージとしてはウォルト・ディズニーの世界か。
 本来なら自分でじっくり時間を掛けてやりたいところだが今回は手早く済ませる。
 シャワー前のブラッシングは重要だ。
 ブラッシング後にお湯で流すだけで汚れの七八割は落とせる。その分だけ余計な薬液を使わずに済むし髪与えるダメージも減る。もっとも今回は使わないが。
 そんなローラの脇を腕だけで歩行するワンピースが通り過ぎて器用にシャワーを浴び始めた。
 黒い折り紙の指し示すのは水。
 故に袖の手は自身の汚れを問題なく落としきる。
 その頃にはただのワンピースに戻っているだろう。
 あとは軽く絞って日陰で干すだけである。
 二メートルを超える長い金髪に櫛を通す感覚を感じながらローラは一人心地る。


「あの少年の名前を聞かざるままであったなぁ」


 通りの良い髪に手を晒して小一時間まで話をしていた少年のことを思い出す。
 特段に目立つ容姿ではなかったものの歳相応に美少年と呼んでよい風貌。東洋人特有の子供じみた顔つきの、更に幼い姿は母性を掻き立ててやまない。
 外見で中身を判断するほどローラは愚かではないがだからといって湧き出る衝動を無理に押さえつけもしない。
 ローラは快楽主義者である。
 清貧を重んじる十字教徒としては恥じるべきであるがローラは拘泥しない。
 花を見て美しいと感じ美味に舌鼓を打ち音楽に酔いしれ一杯のワインに夜の夢を見る。
 神は財布を捨てよとは言っていない。欲は必要なのだ。
 そもそも産めよ育てよ地に満ちよという命題を欲望なしに成し遂げることなど不可能だ。
 ただ、かつての羅馬の如く欲を正当化することだけに執心し民から搾り取り修道の名のもとに心の贅肉を増やし続けるような輩は唾棄してやまないがそれは別の話である。

 そもそも魔術師とは身勝手なものだ。
 通常の手段では成し得なかったことを超常の力をもって為そうとする人の群れから外れた生き物だ。
 その中に誰かを救いたいというものもいる。真理を極めたいというものもいる。ただただ知識欲に囚われたものもいる。
 さればローラを束縛するものは存在しない。
 唯我独尊我が道を行く最大主教が救うと決めたのだ。救うことを楽しむのだ。
 勿論代価は取り立てる。
 あの少年の、恐らくは初恋を自分のものにする。
 なんて楽しいのだろうとローラは微笑む。
 そしてその瞳に一瞬剣呑な光が宿る。


「幻想殺し――か」


 その意味をイギリス清教最大主教は知っている。
 全ての異能を無効化する、というのは副次的な効果に過ぎない。
 その副次的な効果だけでも正しく一矢なのだが本質はまさに世界を食い尽くす力だ。
 ホモンクルスが如くフラスコの閉じた世界で逆さまに詐りを見ている男――形状的にはビーカーとでも呼称すべきだが魔術師には錬金術にこそ用いられたフラスコという表現の方が意識として強い――が何を考えているのかは掴めていない。
 しかしろくでもないことにはかわりあるまい。
 しかしだからと言ってあの少年は人間であることに変わりはない。
 自身も時には奪い尽くし蹂躙尽くす存在ではあるけれども、だからと言って誰かを救ってはならぬという理屈は成り立たない。
 気まぐれでいい。我儘でいい。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/08(木) 21:31:12.66 ID:jWiIwS6jo

 銀の髪飾りがブラッシングを終えた頃にはワンピースはバスルームの床に落ちていた。既に白い腕はもうない。そのままシャワーが流れ続けている。
 濡れた黒い折り紙を取り上げる。
 そのままシャワーヘッドに取り付ける。湯が微妙に輝き始める。
 ワンピースを使わないタオル掛けに引っ掛けてローラはシャワーを全身に浴びた。
 熱い湯が髪へのダメージを最小限にするように調整されて滝の如く落ちてくる。
 足元に渦巻く金色の髪の全てから汚れが落ちる。
 ブラッシングと魔術との効果で女の命は艷やかなまま輝きを取り戻した。
 ノズルを逆にひねって湯を止める。
 豊満な肢体に張りのある白い肌。うっすらと紅を指したような肉体は何処までも若々しい。
 満足そうに微笑んだ後、ローラが何かを口ずさみながら髪飾りに触れる。すると身長の倍近い髪の毛がするすると巻き上がる。
 そして膝の辺りで一旦折り返したのちに後頭部で更に折り返すといういつもの髪型になる。
 当然のように髪は乾燥し終わっていて余計な癖もついてはいない。
 まるで金糸で織られたドレスのよう。
 鼻歌交じりで身体についた水滴をバスタオルで拭き取る。豊かな女の肉がたわわに揺れる。
 浴衣という民族衣装を身に付けて舞踏着のように軽く一周する。脱衣室の姿見に映る自分の姿を確認する。
 うん、悪くない。
 デート前に服装をチェックするかのように姿見の少女が目を細めた。



 夕食はそれなりに楽しめた。
 鮎という魚は正直食べづらかったが味は良かった。麦烏賊という小ぶりの烏賊はジューシーで香りも良かった。
 セリのたっぷり入った猪鍋は英国ではまず食べられないものだった。
 マグロの刺身は英国でも食べられるが山葵と木の芽の香りで食べると一段と違う味わいだった。
 一流料理店でシェフが時間をかけて作る料理とは違うが、ローラは実に楽しく食事をすることができた。

 夕食後、浴衣姿で地下に足を運ぶ。地下は土産物屋やゲームセンターが設置してある。
 特にゲームセンターにはあの少年がいるのではないかという淡い期待を抱いていたが会うことはなかった。まぁ仕方がない。
 缶ビールを三本ほど購入して部屋に戻る。
 戻ってきた頃には夕食は片付けられていて布団が敷かれていた。
 柔らかな布団を見て、まさかね、と思いながらも少年をここに引きずり込むことを夢想する。そして自嘲の笑みを浮かべる。流石にそこまでは考えていない。

 酒の肴は夜の月。見事に満ちて溢れんばかりの朧月。
 あの月が中天にきたらあの少年と同じ湯に入る。
 ほろ酔い気分で夜風を楽しむ。障子窓は大きく開いている。ピンクのワンピースがハンガーに掛かって揺れている。
 今ローラは肩に重さを感じない。何一つとして感じない。
 魔術師たちを束ねることもイギリス三大派閥の問題も、何もかもも。
 このまま姿を消してしまおうかという誘惑も湧いてくる。
 もしあの少年がもう少し大人で、自分の手を引いて逃げようといったのならば。
 そんな妄想を浮かべて唇の端を釣り上げた。
 いつか、あの少年がそんなことを、自分でない誰かの為に言えるようにしたい。
 自分にその言葉を言ってくれた人はもう居ないけれども。

 大人とは卑怯なものだ。自分にできないことを子供に押し付ける。
 その、子供からの一歩をこの手で導きたい。
 二本目のビールが空になった時点でローラは髪を五本ほど引き抜いた。
 少し涙目になりながら五匹の蝶を織り上げる。ひらひらと宙に待って結界を形作る金色の蝶。
 あの少年には通用しないが、少年以外には通用する。
 つまりは二人だけの空間をつくるための金糸作りのナイトたち。
 そっと夜風に躍らせた。
 二つ折りの恋文のように夜空に舞って吸い込まれていく。
 行き着く先は決まっている。そうなるように織っている。


 いつか遠い昔に一人のラプンツェルだったときに己の両目を失っても自分を求めてくれた王子様と逢瀬を重ねたように。


 いまやラプンツェルを閉じ込める魔女となったローラが自虐的に笑う。
 酔い過ぎだ。
 酒と孤独に酔い過ぎている。
 最後の一缶は開けないまま冷蔵庫に放り込んだ。
 男と会うのに酔いどれているわけにもいくまい。
 甘い月夜の恋心に焦がれているのはあの少年か、それとも自分なのか。
 やっと乾いたワンピースを取り込みながら一睡に溺れる夢をローラは垣間見た。 
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/12(月) 00:44:25.74 ID:5RehY2imo
 ほろほろと月夜の鳥が啼く。さわさわと虫が鳴く。
 車のエンジン音などよりも何倍も耳には心地よいはずの音だが文化の違いはこれをたやすく騒音に書き換える。
 幸いなことにローラは鳥や虫の声を楽しめるだけの風情を持っていた。
 頭の両脇に二つ、大きな貝殻のように纏めた金色の髪。ボリュームが有りすぎるのも一驚だが幸いというか、今この風呂にはローラの他には一人しかいない。
 否、そうなるように組み込んだ。
 この露天風呂の周囲に飛ぶ金色の蝶たちが結界を作っている。ローラと、この少年だけが入れる聖地を構成している。
 ローラは一糸も纏わぬまま少年の隣に腰掛けている。
 岩を削って盛った、さも無造作に造りましたと言わんばかりの湯船。そこに肩まで浸かりながら肩を寄せ合うように隣り合っている。
 少年は両手を足の間に挟んで女の子のように座っている。
 その顔が赤いのは湯の熱さばかりではあるまい。
 腰のクビレも、太腿に続くまろやかなラインも、そして大振りな乳房も何もかも隠さず、照れも痴情も見せずにっこり笑うローラの姿に何かを感じているのは間違いない。


「お父さんとお母さんにことわりておるのかしら?」


 肌は白く瞳は大きく、そして化粧など当然していないものの赤みさす頬と匂い立つような色気。整った鼻梁とすっと引き締まった顎のライン。その二つの間にある愛らしい唇。
 そしてそこから目を落とせば自然と目に入る豊かな双乳。湯船に浮かぶそこに紅色の乳輪が硫黄の色に見え隠れしている。ローラが口を開くだけで揺れるのだが、少年はローラと視線を合わせないように顔を下に向けながら時々その白い乳房を盗み見ている。


「お姉さんがうとしきかしら? そうだと少しばかりこころづかぬのだけれども」


 少しばかりだけ、演技として怒りの声色を使えば、少年は瞬間顔を上げてローラの言葉を否定するように顔を左右に振る。
 そして、ローラの視線が自分を見て笑っていると知ると子供っぽくおどおどとしながらまた視線から逃れようとした。


「お姉さんのこと、嫌い?」


 子首をかしげて、少しばかり悲しそうな顔をして。当然のように演技なのだが少年は幼すぎてそれを見抜けない。


「そんなことないよ!」


 思わず大声を上げて少年が反応した。
 両腕を上げて感情を表現する。
 照れくささが全身に発露していて心臓をドキドキさせているのだということが一目だけでも見て取れた。


「ありがとう。お姉さんとっても嬉しいかも」


 言って、コケティッシュに笑って少年の腕に擦り寄った。それだけでただでさえ真っ赤な顔がより真っ赤になる。ほぉ、っとローラが感心したように、


「結構逞しき腕ね。筋肉質なんだ」


 童顔の少年が思った以上に男であることに呟く。
 そして、思っていたことを口に出す。


「これじゃ坊やなんて戯れでも言えぬのよ。お姉さんも教えるから名前を教えてくれる?」

「え、あ、うん――」


 名前を言おうとする少年の唇を指先で抑える。戸惑う少年に微笑みかける。


「問いかける方から名を言うのが礼儀というものよ?
 だからお姉さんから。
 ローラ。ローラ=スチュアートといいけるの。イギリスの――そう、寮の管理人かな?」


 イギリス清教の最大主教には当然ながら様々な役職を兼ね備えている。その中でももっとも一般的で個人を特定されにくいものをローラは選択した。
 シスター達が過ごす寮に住んでいるわけではないが名目上の管理人は当然のごとくローラである。
 宗教上の役割や魔術師云々などを教えるつもりは毛頭ない。
 それは場合によってはこの少年をいらぬ闇に引きずりこむことになる。
 一夜の火傷の代償としてはそれは大きすぎる。
 それに、流石にこんな幼い少年と身体を重ねるつもりもない。からかうのは楽しいし女として見れらるのは快感ではあるけれども。

 しかしながら。
 少年の次の一言がローラを制御不能に追い込んだ。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/12(月) 00:45:33.28 ID:5RehY2imo


「僕は、当麻。上条当麻」


 それは多種多様な名称をもつ日本の姓名では決して珍しくはない名前だった。
 だが、ローラにとってその響きは特別だった。


「トーマ?」


 それは嘗て自分をただ一人のローラとして愛してくれた人の名前。
 明日が来ることに怯えていた日々を、次の逢瀬のための待ち遠しい明日に書き換えてくれた人の名前。
 ローラの初恋の相手で、そして叶わなかった恋の嘆き人の名前。
 こんな自分のために命さえも投げ出して、結果としてローラをただの魔女に追い込んでしまった呪うべき愛しき人。
 決して珍しい名前ではないけれども。
 でも、それだけにローラにとっては特別だった。


「え――?」


 す、と一筋の涙が溢れて落ちる。豊かな胸に落ちる。湯に落ちて小さな波紋を作り出す。
 何十年もの間押さえ込んできた想いがその、たった一言で零れた。

 好きだった。好きだった。狂おしいばかりに愛していた。
 死が二人を別って何十年も経つけれども。
 この想いはまだ消えていない。
 もし許されていたのならば。
 皺くちゃの老婆になって、同じぐらい皺だらけになったトーマの隣に座って。
 子供とたくさんの孫たちと囲まれて。ただそれだけで笑っていられて。あの人も笑ってくれて。
 どこにでもあるようなありふれた小さな幸せを手に入れていたのかもしれない。
 そんな夢を今でも見るほどに愛している。
 例え一人の魔女に堕ちようとも、この想いだけは捨てられない。この想いを捨てるには人生というのは短すぎる。例えローラ=スチュアートであろうとも。

 この極東の島国で。
 何故同じ名前を持った人間と出会うのだろう?
 そういえば似ている。この少年はトーマとどこか似ている。
 だからなのか。だから路傍の石のごとく捨て置けなかったのか。
 ローラの心臓が早馬の如く暴れ出した。


「おね――ローラさん? 僕なんか変なこと言った?」


 少年――上条当麻が慌てる。ローラが涙を流したことに当惑している。
 ローラは熱い涙を手で拭いながら先程のように何事も無く笑った。


「なんでもないの――なんでもないのよ――」


 それなのに。
 ローラの胸の中に熱いシコリのようなものができてきつくローラを責め立てた。
 今、この少年の前で演技をすることが辛い。


「懐かしい人と同じ名前だったから驚いただけ――それだけだから――はづかしきことね――」


 懐かしい。
 それは現在と古語では意味が違う。
 古語では「ずっと傍にいたい」という意味を持つ。
 ローラは無意識のうちに混同していた。
 少年は――上条当麻はそれを理解できない。理解できる知識がない。
 自分の言葉に、大和言葉に当然ながらローラは気付く。
 だから、上条当麻が理解する前に必死に泣きやもうとする。


 ――出来なかった。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/12(月) 00:46:35.00 ID:5RehY2imo
 とても大切なココロの欠片だから。どうしても溢れてきてしまう。
 思わず少年にしがみついていた。
 自分よりも身体の小さな上条当麻にしがみついて呆れるほど泣いた。
 ローラ=スチュアートを知る者がこの光景を見れば、たった一人を除いて己の目を疑うだろう。
 これがイギリス清教の最大主教か。
 晩餐がわりに血肉を啜る化生のような魔女の姿か。
 目的のためには手段を選ばない悪党の姿か。
 それでいながら無邪気に善行を行う人格破綻者の姿か。
 たった一人、ローラの本当の姿を知る者はもうこの世にいない。
 魔女ではない、ただの囚われのラプンツェルであることを知る者はもういないのだ。
 驚愕する幼い上条当麻だったが、半ば無意識のうちにローラが逞しいと評した両腕を細いローラの身体に回して抱きしめた。
 金色の髪から香る匂いが少年の鼻を擽る。
 全ての幻想を破壊して喰らい尽くす右腕も、この幻想は殺せない。
 逞しい腕の心地よさにローラは泣きじゃくる。


 例え記憶が無くなっても心は忘れない。心が壊れても肉体が覚えている。


「うわあああああああああっ――」


 嗚咽が響く、続く。胸の中が撹拌されてもう感情がわからない。
 後悔と、諦めと、諦めきれなかったこれまでの時間と。
 ローラはただ一人のローラとして、少女として泣く。

 アルコールの性か。
 それとも孤独に酔いすぎていたのか。
 反則のようなこの出会いがローラを壊す。

 そして、僅かながらに時間が過ぎてローラは落ち着きを取り戻した。
 互いに抱きしめ合うような形で自分を支えてくれたもう一人のトーマに照れながら笑いかける。


「――ごめんね。大人なのにこんなにうたりまごうて。偲ばねばならないのに」


 目を真っ赤に染めながらそれでもローラは笑う。
 年を経た猫にもプライドはある。弱い自分をここまでさらけ出してしまったことがローラには恥ずかしかった。


「なんで謝るの? トーマって人のこと、ローラさんはそれだけ好きだったんでしょ?
 悪いことなんかじゃないよ。僕はまだそんな経験ないけど、大切なことなんじゃないの?」


 柔らかな乳房を押し付けられていたからか、少年の顔は赤い。しかし真剣だった。真剣に怒っていた。ローラの言葉に怒りをあらわにしていた。ほのかな月明かりの元でもローラにはその表情がくっきりと見えた。
 傷だらけの腕。
 絶望し切ったような瞳。
 この少年はこの少年で見たくもない世界を見てきているはずだ。
 魔術師たちに言わせればどんなに浅い地獄だろうと、慰めにはならないほど疲れはてていたはずだ。
 癒してやろうとしたのに。
 それでもこの少年はローラの為に怒ってくれる。
 優しいのだな、とローラは思った。


「そうね。大好きだった――わ。でも私のせいでトーマは隠れて――死んでしまったの。
 ずっと一緒にいたいと思ったけれども――望まなければきっとトーマは死なないですんだのよ――」

「それは違うよ」


 はっきりとした断定の声。
 その力強さにローラは驚いた。


「何があったかはわからないけれども、僕がトーマって人だったら後悔なんかしてない。
 ううん、後悔しているんだったらローラさんを悲しませていることだけなんじゃないかな。
 その人にとってはローラさんの望みを叶えるために命をかけるのは当たり前のことだったんじゃないかな。
 ローラさんと一緒にいたいってその人も思っていたはずだよ。命をかけるぐらいに」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/12(月) 00:47:00.66 ID:5RehY2imo

 当然ながらローラはこの想いを誰にも話したことはない。話そうとも思わなかった。
 ずっと心の奥底にしまい込んでいた。
 だからこそ甘く苦く辛い痛みを抱え続けていた。
 恨んでいただろうか? 憎んでいただろうか?
 彼の死の間際の想いを怖くて何十年も自問自答し続けていた。

 それを、こんな子供のようなチープな台詞であろうとも。
 否定されるのはローラには心地よかった。
 悲しませたことだけを悔やんでいる、という言葉が染みた。
 まるで、あの人のようなことを言ってくれるこの少年が愛おしくなった。

 偶然に意味を見出すのが魔術である。
 韻を踏むのが魔術である。
 ならば、魂という未だに存在が不明瞭なものの転生を、信じてしまうのは魔術師として仕方がない性であろう。
 転生の魔術というものはあるがあれは正確には記憶を乗っ取ることであり複製を作るものでしかない。
 陰陽道の奥義、泰山府君法という人を蘇らせるというものもあるがあれだって魂は証明できていない。
 もちろん、ローラには分かっている。
 あの人とこの少年は別人だ。
 この少年は自分を救ってくれる人間ではない。
 もっと他の、魔女なんかよりも素晴らしいお姫様がきっとどこかで彼を待っている。


 だけど一晩だけの火傷なら許されるのかもしれない。


 幻想殺しがローラ=スチュアートという幻想をコロス。
 ただ一人のローラが全ての衣を剥ぎ取って一人の女に戻る。
 女に、なりたい。


「――ふふ。ミイラ取りがミイラになるってところなりか?」


 ローラが自嘲の笑みを浮かべる。自分がこんな弱い女だったとは。
 ずっと心の内側から彼女を突き上げてきた想いが、ガスの抜けた風船のように縮む。
 無くなったわけではないのだけれども、苦しさが少しだけ緩和される。
 その『少しだけ』が大きすぎて、心の中に空洞ができている。
 きっと、今、この空洞を埋めなければまた苦しみで埋まってしまう。


 だから


「ごめんね、当麻。甘えさせて。私を、ローラを、一瞬だけでも――」


 出会ったばかりの幼い少年に。
 ローラは唇を押し付けていた。 
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/16(金) 00:07:53.35 ID:4pWQ/Flgo
 唇を離したとき、少年の頬はこれ以上にないほどに染まっていた。
 月明かりしかなくともローラにはよくわかった。
 涙で濡れた瞳で愛おしそうに見つめる。
 肩筋から胸元までの綺麗なラインが艶めかしく動いて少年の欲情を加速させる。


「ごめんね。いきなりこんなことして」


 小声でローラが謝罪する。
 熱湯というほど湯は熱くなく、肩から上は涼しげに風に晒されている。決して不快ではなかった。
 互いの肌の触れ合い、まさに肌心地がよい。
 それでも少年――上条当麻はこの状況を楽しめるほど大人ではない。


「うん、いや、その――驚いたよ。やっぱり、初めての経験だし――」


 言って、熟れたトマトもかくやというほど顔を染めあげる。初々しい姿勢がローラの大人の部分を擽る。
 それだけではないことは少年も自覚している。
 豊満な肉体の持ち主が自分の首に腕をかけているからだ。
 ローラはその手をほどいて少年の手を握ってきた。


「え――」

「ごめんなさい。これから言う独り言は上条当麻に対するものではないの。でも、聞いていて――」


 月光を美しく纏った金色の髪。ローラが悲しく微笑む。
 優しく問いかけた。


「何時の頃だったか――夏の季節であったね――森の動物たちが怖いって言ったら優しく手を握ってくれた
 ――臆病な癖に、震えてた癖に、必死になって守ってくれたね――」


 そんなこともあったのだろうか。
 少年は自分が代替に過ぎないことを知っている。だから記憶になくとも頷いて見せた。
 そっと、肘のあたりを撫でられる。
 少年の背に、ぞぞっ、という感覚。
 まさしく性感であったのだが少年はまだ知らない。
 ローラもそんなつもりはなかった。
 ただ、懐かしさに動いただけだ。


 だが、


(触られただけなのに気持ちいい――!)


 幼少期を過ぎて、距離の取り方を覚えて、それでもなお距離を踏破して接触される。
 その快感に上条当麻は興奮した。
 驚きだった。


(こ、こんなの――知らないよ!? 一度でも知っちゃったらこれなしに眠れなくなっちゃうんじゃ――)


 湯船の中で思わず少年が距離を取ろうとする。
 しかし、小首を傾げたローラが悲しそうな顔をするとその動きは止まってしまう。
 外見だけでも年上の女性が、上条は愛おしく思えてきていた。
 美人だということもある。ミステリアスな雰囲気を湛えていながら優しくも見えたということもある。だが今は儚いぐらいに脆いのだということが心を動かしている。
 オルタナティブだとしても、彼女の脆さを救えるのは自分だけだという事実。誰かを支配するような快感。
 ずっと、周囲に居場所がなかった、疫病神扱いされてきた上条当麻にとって、自分に救いを求めてきている誰かというのは初めての存在だった。
 見捨てることなんてできない。
 その一方で湯船の中で幼い性器が痛くなるほどに勃起していた。


 少年の知る性的な快楽にはまだまだ奥がある。
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/16(金) 00:10:40.29 ID:4pWQ/Flgo

 一方で、ローラは甘えることで甘えさせ方を思い出しつつあった。
 少年が男であることを思い出す。
 涙を纏いながらもサディスティックな微笑みを浮かべる。


「ふふ、なんかもやもやしちゃったかしら?」


 細い指を上条の胸元に掛ける。そしてゆっくりと下へ滑らせていく。ぽちゃんと湯の音が鳴った。


「だ、駄目だよ!」

「少し触れるだけなりて、構わぬのよ、ね?」


 当麻は抵抗しようとするも突然のことで全身が硬直してしまう。そして一か所だけ硬直の意味が違う場所があった。
 ローラの細い指がそこに絡まる。
 まだろくに陰毛も生えそろわない幼い性器が自己を主張していた。
 隆起した肉茎をまさぐりながらローラが淫らな口調で囁く。


「トーマはこうされるの好きだったのよ、ね?」

「だ、駄目だよ。こんなこと! トーマさんだって、その――」

「好きことよ。男として当然のことなりて。それとも女として魅力ないかな?」

「そ、そんなことないよ! で、でも――」

「いいから、好きにさせて。お願い――」


 ローラの白くて細い指が湯の中で何度も往復する。
 その刺激だけで上条のものは熱を持ち、これまでになかったほどにむくむくと成長する。
 指先の柔らかさ。湯の中でも伝わる温かさ。
 そして嬉しそうなローラの顔。


「つらそうになっておるのよ?」


 甘い吐息を近づけながらローラが笑う。
 事実その通りだった。
 仮性包茎の皮を内側から限界近くまで引き上げる勃起力とそれを知らない皮の力がせめぎ合っている。
 なにより、自慰の仕方もろくに知らない幼い上条は露出した亀頭を撫でられるのが刺激的すぎた。
 一応、知識として皮の内部に垢がたまって匂うことがあるということを知っているから最低限シャワーで綺麗にする程度のことはしているが、彼の日常においてここまで性的に責められたことはない。
 ぞくぞくぞく、と太股の内側に鳥肌が立つ。
 さらに、前髪が触れ合うほどにローラの顔が近づいた。
 そっと目を閉じると長い睫毛に見惚れてしまう。


「こういうときは待たせてはいけなくてよ?」


 小さな唇でそう言われると、もはや魔法にかけられたように少年は自らの意思が薄弱になりながら唇を重ねた。
 甘い、なんて言葉では足りない。
 蜂蜜を濃厚にして、クリームをさらにかき混ぜて、はじけそうな赤が胸の内側で膨らんでいく。

 そして、下半身も熱を帯びていた。
 少し触れられているだけなのに妙な汗をかいている。

 二度目のキスが終わる。
 少年の脳は芯まで白濁していた。

 その耳元でローラが甘える。


「当麻がどれくらい大人なのか、見せてほしいな」

「え、そんなの――」
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/16(金) 00:11:15.01 ID:4pWQ/Flgo
 いやだ、と言おうとして少年の言葉が停止する。
 ローラの声色に、どことない真剣味を感じたからだ。透明感があって飄々としていて悲しい恋を抱えていて。そんな彼女と違う彼女を見て言葉が出てこない。
 緊張、という言葉がやっと脳裏に浮かぶ。
 いつの間にか視線を合わせていた。
 熱っぽいそれ。
 湯の熱気とは全く違う、じんわりと全身を包みこむような女の目。振り払おうとしていた手首を強く掴まれていた。
 どくん、と強く心臓が鳴る。
 上条当麻の情欲が羞恥を超えた。


「あっ、あっ」


 細い指が、今度は強く握ってくる。びくりと腹の肉が震える。
 まるで少女のような悲鳴を上げながらローラから与えられる快感を上条当麻は表現した。
 恥ずかしい、よりも気持ちいのほうが強い。
 すっすっと扱くというよりも軽く擦るというような緩やかさ。しかししっかりと握ったままで。
 過剰な皮が巻き込まれてまた快楽の鍍になる。優美な指先が踊るたびに少年は官能の声を上げる。表面に脈打つほど太くない血管に大量の血液が流れ込む。その筋をなぞるように指先が伝った。



「すごく熱くて硬いね――ふふ、いわけなきのにろうたくなるの――」


 細い指が皮の内側に滑り込む。
 もう片方の手が皮を抑え込んで露出したカリ首に細い指先が二度三度と触れる。
 先端から湯と違う粘度の液体が溢れてきていて、それを亀頭全体に塗すと少年の喉は悲しいまでに鳴いた。
 結界を張っているから誰もここにはやってこない。
 とはいえ、流石のローラも一瞬背筋をひんやりとさせる。
 と同時にこれほど感じさせていることに興奮と満足を覚える。

 最初は自分がされるばかりだった。
 自分が知らない自分の身体をよく知っている彼に、彼の過去に嫉妬した。
 負けないように技術を身に付けた。
 考えてみれば、誰かのために積極的に身に付けた技術などこれだけかも知れない。
 魔術など、統治など、一軍の長であることなど、結局のところ歩いている道を歩くためだけの道具でしかなかった。

 もう使うことなんか考えてもいなかったけれども。


 それは酷くローラを満足させた。


「うっ……あ……」


 顎を上げて喉を見せつけて、上条当麻がふるふると震えた。
 白い肌と金色の髪と、しだれない肉体をもつローラは、


「出ちゃった、かな?」


 などとおどけながら問いかける。


「ち、違うよ!」

「そう? でもまもりてみねばとあやなきことかもしれぬのよ?」


 恥ずかしがる少年を野趣の塊のような岩の上に腰かけさせると幼い勃起が天を向いていた。零れ出た先端の滴が淫らに光っている。一度剥けたエラは大きく張っていた。ピンク色のそこが切なそうに揺れている。
 そこに、ローラは無邪気に顔を近づける。
 美しい金色の髪がまるで宝石箱のように輝いて、ティアラを纏ったお姫様のよう。
 月明かりと女の髪の匂い。
 上条当麻がくらくらと揺れる。
 零れ出た先端を白い指先が這うとやはり女の子のような悲鳴を上げた。


「う、わ、それ、駄目!」

「ふふ、感じちゃうんだ」

「駄目だよ! ローラさん、気持ち良すぎて!」

「さん、はいらなくてよ? ローラと呼んで?」

「ろ――ローラ」

「ふふ。よく出来ました。りっぱなおち×ち×にもご褒美あげるのよ?」
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/16(金) 00:12:30.83 ID:4pWQ/Flgo

 思春期の少年は性器を見られる恥ずかしさと性器を弄られる快感の狭間に立っている。両方の波にのまれそうになっている彼を微笑みでローラは見ている。
 親指と人差指とで輪を作り、肉茎に絡める。そして輪を萎めて上下に動かす。
 指を性器に見立てて少年を扱く。


「うふふ、こんなに硬くして、痛くなきかな?」


 まだ変色のないペニスは肌色で、亀頭だけがピンク色をしている。しかし足をつけた半身浴のせいか、それ以外のせいか、赤みが増している。
 一方のローラも、興奮によって胸の先端の乳首が硬く尖っていた。見えはしないが陰核も同じだろう。久方ぶりに感じる切ない鼓動が吐息を荒くさせる。
 瞳の中に固形物のように濃い炎が垣間見える。
 少年と彼とは同じではない。第一、年恰好が違う。ローラとあったとき、彼の人は十の頃半ばだった。
 だからこそ、会えなかった彼を責めているようにローラは錯覚する。
 有り得なかったIF。
 翼が生えているかの如く地面を駆け回る世代の彼に女として接する。
 違う。当麻はトーマではない。
 だから、これは一晩の火傷。
 火傷ならば熱くなければ意味がない。
 もっと。もっと。

 出し抜けに、ローラの指が少年の幼い睾丸を弄んだ。小ぶりのクルミが二つ入ったような袋を優しく揉み解す。
 痛みが強くとも快楽を得る場所ではない、と判断していたはずなのに上条当麻は切なげに痺れた。
 とろり、と先端から粘液が垂れる。


「ふふ。指が濡れちゃうぐらいに零れておるのよ。そんなに興奮しておるの?
 すっごくいやらしいおち×ち×ね」

「だ、だってそんな触り方されたら――うあっ!」


 悲鳴。唸り。
 上条当麻の口から出るものは全てローラの支配下にある。
 零れた液体を幹全体に馴染ませながらローラの指が前後する。そのたびに少年の腰がびくびくと動いていやいやするように顔を左右に振る。
 必死に両手を握って快楽に耐えようとするも悲鳴は抑えきれない。嬉しそうに愛おしそうに亀頭を撫でると身も世もない程に切なく上条当麻が啼いた。


 しゅ――きゅ、きゅ――


 縦方向だけではない、横に引っ張るような動きと亀頭への刺激。少年の瞳には爆発する星の光景が鮮やかに映る。力なくだらしなく開いた唇からは涎が零れていた。そして、快感の嬌声。


「あらあら。もう指がぬるぬる。本当にいやらしい子――」

「だ、だって、ローラさんの指がいやらしくて、気持ちよくて――」

「さん、はいらないと言うたでしょう? もう、こっちは素直なのに言うことを聞いてくれないのね」

「だ、だって――あうっ!」


 新鮮で鮮烈な刺激。
 上条当麻はまだ精通していない。
 股間を弄ることで快感を得る、という体験はしているがそれは触れてはいけないものだと思って一度しかしていない。
 せいぜいが保健体育の授業レベル。
 だが、むずむずと這いあがってくる感覚は本能的に察していた。
 じわじわと燻されるように肉体の細胞全てが叫んでいる。


 ――したい、と。


 それが何なのかがわからない。きっとローラは知っている。
 切ない視線で訴えても、淫らに笑ったローラは上条を責め立てるだけ。
 広がった傘の上を手のひらで撫でられて、上条の何かが狂い始める。
 少女は指の動きを激しくする。くちゃ、ねちゃと粘液と皮膚の間で甘く淫らな音がする。


「ううっ、で、出ちゃうよ!」


 少年はそれを排尿欲求だと勘違いした。
 実際、ぶるぶると下腹部が揺れて切なくて仕方がない。


 それなのに


 ローラはさも当然のようにその白い指から上条当麻の肉茎を解放した。 
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/16(金) 23:48:29.72 ID:4pWQ/Flgo
「え?」


 高ぶった波の上で放り出されて、上条当麻は困惑した。
 何が起きたのか理解できなかった。
 狂おしいほど性感が高ぶっているのに、そこまで引き上げた綱がぶつんと切れたような、それでいながら落下せず宙にとどまり続けるような感覚。
 だが、ローラは攻撃をやめたわけではなかった。
 つつ、と細い人差指でびくびくと震える肉茎を下からなぞって上からなぞり返す。
 何を遊んでいるんだ、と反論したいのに少年の口からは空気しか出てこない。
 絶頂間際の肉竿には指先の刺激は物足りなさすぎた。
 あの、輪っかにして扱く形でないと何もかもが足りない。
 そんな弱い刺激でも上条当麻のバルブは少しづつ開放されていく。身体が勝手に熱を持って高ぶっていく。


「うふふふ。男の子って愛しきものだったのね。つたなかったわ。
 こんなに反り返って、ぶるぶるってして、げにあやしきワザね――」


 むき出しの亀頭をくに、とつねられる。
 ブドウ味のグミのような肉に痛いほどの圧力が加わって、それに加えて傘の部分を柔らかな指の腹がそっと撫でた。じん、と甘い痺れが上条当麻の下腹部に広がる。
 絶頂寸前にまで高められていた少年にそれは刺激的すぎた。
 感覚に身を任せて、股間が弾ける。


 びゅる―――びゅるるっ―――


「でちゃうようぅ――!」


 絹を切り裂くような悲鳴とともに、少年の生まれて初めての精が尿道を駆け抜けて空気の中に舞い上がる。ぶるる、と尻肉が震えて、そのたびに白いラインが弧を描く。
 量としては大したものではなかったがそれはまるで狙ったかのようにローラの顔とまとめた金色の髪とにぶちまけられた。


「あはっ☆」


 淫蕩の魔女が嬉しそうに笑う。
 汚された、などとは欠片も思っていない。
 むしろトロフィーだとすら思える。
 狩猟において獲物の首を切り落として剥製にして壁に掛けるような。
 ああいう、あからさまな勝利の形。
 結果ではなく経過を楽しむローラでも嬉しくないわけがない。
 ローラの女としての本能を大いに満足させる。
 それは当然ながら次の行動にローラを牽引する。


「ふふ。げにここら出したものね。顔がべとべとよ?」


 陰嚢をやんわりと揉んでもっと射精させようというのか、すっかり小さくなった肉茎をローラは弄る。
 生まれて初めて誰かに体験させられた絶頂に上条当麻はまさしく魂の抜け殻のような状態となりつつもそんなローラの手を振り払おうとした。
 快感が放出されて理性が戻ってきたのだろう。


「い、いいよ! もういいってば!」

「あれ? しつこすぎたかしら? 喜んでもらいたかったのだけれども」

「え――」


 白い濁った、異臭を放つ液体を掛けられながらも笑っていたローラの顔が曇ると上条当麻は途端に不安になる。まるで何か悪いことをしてしまったかのような居心地の悪さを感じる。
 捨てられた子猫に水を浴びせて喜んでいるような、そんな醜悪な自分を感じてしまう。
 それはまさしく少年の性根のよさだったのだが、少女の残酷さをも備えているローラには好い獲物にしか映らない。


「そ、その――すごく気持ちよかったけど――」

「そう? それならばよいのよ。当麻が気持ちいいと私も嬉しいのだから」


 そして、まるで猫のように悪戯そうな瞳になって。
 顔中に放出された液体を指ですくって。
 見せつけるように舐め干してしまう。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/03/16(金) 23:50:04.32 ID:4pWQ/Flgo

「そ、そんな! 汚いよ! だって、それ、僕のせーえき――」

「そうよ? 当麻の精液だから舐めてあげるの。汚いなんて思わなくてよ?」


 ぞぞり、と音を立てて舐めとる。
 その白魚のような指が射精したばかりの敏感な肉を捉えて、両手を布のように扱って優しく丁寧に掃除していく。
 その結果としての両手も、ミルクを舐める子猫のようにローラは舐めとった。淫らすぎる光景に少年の喉が干上がる。
 それなのに大量の唾液が口内に溜まっていて無意識のうちに喉を大きく動かして飲み込んでいた。
 ごくり。
 豊満な肉体に視線が釘付けになる。
 内側から盛り上がる乳肉は柔らかそうで先端のピンク色の突起は実に美味しそうだ。
 湯の波に隠れた下半身も、茂みの中の秘密の場所も、上条当麻はその気になれば覗ける位置にいる。
 そのことを改めて確認する。
 目の前がちかちかした。
 綺麗な球面から目を離せない。


「もしかして昼間からそんな目をしていたのかしら?」

「そ、そんなこと――」


 ローラがからかうと、上条当麻は反論しようとして、途中で言葉を誤魔化した。
 嘘が言えない。
 夢みたいな今がほんのちょっとした嘘で壊れてしまいそうで。
 幻想を容易く殺してしまいそうで。
 それはきっと少年の善性なのだろう。ローラはそれだけで嬉しくなる。
 岩に腰かけている少年。その隣に身体を擦りつけるように座った。
 しっかりと張り出した胸と細い鎖骨のライン。腰骨から太股へと続く艶めかしいライン。半身浴で湯の中にある健康的な脹脛から細い足首へと連なるライン。
 全てが少年の心臓を加速させる。青臭い性臭はまだローラの顔や口から漂っている。それなのに不快に感じない。
 唇を奪いそうになる誘惑が渦巻く。まるで二人の心臓がハーモニーしているかのような錯覚すら漂う。


「いいのよ? 好きにして――」


 大振りの乳房。とん、と可愛らしく咲いている二つの乳首。
 ローラは少年の手を導く。
 力強く、全ての幻想を[ピーーー]右手。
 しかしそれではローラは殺せない。
 ローラの微笑みは殺せない。
 嘗てのあの日よりも積極的で、余裕すら感じる。
 無意識に動かした少年の手のひらの中で乳肉が柔らかく形を変える。


「こ、こんなの駄目だよ――」

「あら? あんなにいと吐き出しておいて今更そんなことを言うのかしら?
 好きことよ、スキンシップ。甘えさせてくれるのでしょう?」


 乳房が母性だということを上条当麻は初めて体験した。
 もちろん、母親のそれに触れたことはあるだろう。しかしそれは遠すぎる記憶で思い出すことはできない。
 学園都市に居を構えてからそんな機会は当然ながら一度もない。
 信じられないほど柔らかく、熱く、手のひらにくっついて、神経を全てべりべりと剥がして新しい何かを埋め込むような、癖になりそうな感触。
 くにゅんと手のひらの中で果肉が踊る。すぐに跳ね返してくる。弾力は強い。
 それなのにそれだけではない。好きにしていい、という言葉に促されるように先端突起に指を伸ばすと甘い体臭がローラから広がったような気がした。


「好きにしていいと言ったけれども、最初は外側からね? そこは一番最後なの――」


 つん、と額を指先で突いてローラが言う。
 淫らな女教師の指摘に少年は真面目な顔で、真っ赤になりながら言葉通りの仕草へと切り替える。
 当然、それは拙いものだったし肉体的にはローラには物足りなくもあったが性的なことを教授するという状況そのものがローラを高ぶらせる。
 少年の手が、両手になって乳房を外側から――脇の下から重力に引かれて肉の谷間となっている部分をくくって、両胸の狭間を通って円を描くようにこねあげる。
 形を保っているのが不自然なほど柔らかなそこは少年の動きの全てを受け入れる。手の平には到底収まらないボリューム。
 何度も何度も円を描いて上条当麻の色に変えていく。不格好で物足りない刺激が薄紙を重ねるようにしっかりとしたものに進化していく。
 淡い色の乳首に再び指がたどり着いた時にはローラの胸は全体そのものが痛いぐらいに張っていて、特にその先端は顕著だった。
 少年の手の甲にローラの手が重ねられる。甘い吐息が、した。
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/16(金) 23:50:49.32 ID:4pWQ/Flgo
 とくん、とくん、とくん――
 心臓の音がつかめそうな距離。
 つきたての餅のような乳肉は乱暴に扱ってもすぐさま優美な弾力を返してくる。
 その幻想は甘美過ぎて到底幻想殺しには殺せそうになかった。


「ふふふ。当麻、すっごく上手ね――嬉しくなっちゃう。
 もっと触っていいのよ? 大丈夫、逃げないから――」

「う、うん――」


 頷きながらローラの顔を見ると思わず唾液を呑み込んでしまう。
 月明かりのローラの顔は致死量の媚薬だ。
 美しすぎて心を奪われてしまう。
 そんな美しい顔が上気して汗ばんでいる。
 半身浴だからではなく、自分が胸を愛しんだからだと上条当麻は確信した。


「ローラさん、顔、赤い――」

「もう、さんはいらぬと言っても聞かぬのねぇ――それはね、きっと当麻のおち×ち×触ってたからよ。
 女ですもの、いやらしい気持にもなってもおかしくはないわ」


 そして、また改めてローラが上条自身に手を伸ばす。
 びくん、と震えるも今度は抵抗しない。
 むしろ少年は自分からローラに身体を寄せていった。
 ローラは少年の首筋に顔を埋める。
 ちろり、と赤い舌を出してまだ細い首筋を舐める。


「ひ、あ!」


 無防備な首筋を舐められるたびに少年が踊る。子犬に舐められるようにこそばゆいのに切ない気持よさが響く。
 肘もそうだったが、性器でない部分を責められて心地よいということを幼い上条は叩きつけられている。
 ねろりと唾液を塗りこめられるたびに肘の内側に漣が走る。
 このヒトは自分の知らないことをいっぱい知っている――
 少年は驚愕する。
 それはきっと同年代の誰もが知らないことで、上条当麻だけが一歩先に進んでいること。
 小さなイジメなんて、どうでもよくなっていた。
 今、少年は自分を不幸だなんて思っていない。
 そんなメモリは欠片も残っていない。
 一バイトたりともそんな余裕はない。ポインタでもアドレスを確保できない。
 流れた唾液が鎖骨の内側にまで溜まるころには少年の勃起は新しい段階へと踏み込んでいた。


「ろ、ローラさん――」


 ふふ、と白い歯を覗かせてローラが笑う。誘蛾灯のようにひかれて唇を近づける。
 しかし、ローラは受け入れない。
 つん、と少年の唇を人差指で突いて、笑う。


「ねぇ? もっと女の身体を知りたいとは思わなくて――」


 その甘すぎる言葉に、上条当麻の認識は混乱した。
 そんな彼の髪をローラが湯に浸した手で犯す。
 濡れ髪がツンツンと尖っていた。


「こちらの方が大人びて見えてよ?」


 しなやかな腕が雌豹のように上条当麻の首筋にかかる。
 嘗ての想い人の髪型にローラは笑う。
 彼と此とが重なっていく。
 もはやローラのときめきは上条当麻のものだった。
 もう、魔女ですらない。
 だから、


「大人のこと、いっぱい教えてあげる――」


 月と金色の蝶だけが知っている逢瀬の中で。
 三回目の接吻は、やはりローラから少年にささげられるものだった。  
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:36:02.22 ID:8NIf3Vexo
 妖艶にローラが微笑む。
 落ちる寸前のトマトの実のように真っ赤になって少しつつくだけで弾けそうになっている少年は言葉を返せない。



「学園都市の女の子は怖いもの。当麻はいとおしいからすぐにでも誰かに襲われてしまうかも。
 どこの馬の骨ともわからない安い女にどうこうされるぐらいなら今ここでお姉さんが教えてあげるのよ?
 性質の悪い女に引っかかる前に免疫つけておかないと」


 すっかり固まってしまった上条当麻の目の前に熟れた女の肉体がある。
 少女のようにあどけなく娼婦のように淫らで、巫女の如く神聖にして森厳な、女の身体。
 ローラは上条当麻の腕を引っ張って洗い場の方へと移動する。
 硬く冷たい床は決して心地よい寝床とは言えなかったが、そんなことはもう関係ない。
 ぺたんと腰をおろして膝を開く。月明かりの下でローラは全てを見せつける。


「よく見えるようにしてあげるのよ」


 ローラは自分で指を添えて、宝石箱でも開くかのように優しく静かに粘膜を左右に割り開いて見せた。
 細い陰毛に飾られた白い肉の中にローラの性器は佇んでいる。微妙に左右が不ぞろいで縁に色が付いていたが汚らわしいとかおぞましいとか、そういった負のベクトルを感じさせるものではない。
 少年は小陰唇という言葉を知らなかったがさらに広げて見せつけられたピンク色の粘膜には息を呑むしかなかった。
 それはすごく柔らかそうで、溶けてしまいそうで、弱弱しくさえ見えて複雑な構造をしていて、とても人間の肉体を構成するものだとは思えなかった。
 少年の視線を感じてか、ぴくん、と粘膜がひくつく。微細なくぼみの中からきらりと光る粘性の蜜が一滴顔を覗かせた。熟した果実のような甘い匂いを上条当麻は感じる。
 敏感になった幼いペニスが痛いほどに勃起していた。
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:36:33.71 ID:8NIf3Vexo


「ふふ。興奮してくれたかしら?」

「あ、う、うん――で、でも、ローラさん、こんなの――」

「誰も来ないのよ。二人だけの秘密なの。それとも私の身体じゃ駄目かな?」

「そんなこと! そんなことないけど!」

「じゃあ好いじゃない――甘えさせてくれる約束でしょう?」


 そして、ローラは少年の右腕を引っ張る。立ったままの少年がよろけて膝から座りこんだ。さらに転がりそうになるところを大きな胸と両腕で受け止める。


「ねぇ? 一回だけでいいから、さん、をつけないで呼んでほしいな」

「――ろ、ろーら」

「うん。やっぱり素敵」



 ローラが嬉しそうに笑いながら、華奢でいながら太く成長しつつある少年の肉体を抱きしめる。
 上条当麻に余裕なんて元々なかったが、それが完全に塗りつぶされる。
 まるで天上の園を歩いているような浮遊感。切ない達成感。不安になってローラを見つめるとやはり微笑んでいた。
 ローラは抱きしめながら上体を起こして少年を下に覆いかぶさるような体勢になる。
 天を向いて屹立する、少年の幼い性器にまっすぐ下腹部を降ろした――
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:37:09.31 ID:8NIf3Vexo


「あうっ!」


 童貞喪失の瞬間、上条当麻は悲鳴を上げた。
 可愛らしいと表現せざるを得ない呻きを上げた。
 ローラは唇を真一文字に結んで眉間に深い皺を刻んでいた。
 何十年振りかの交合に、肉体の準備が整っていなかった。
 まるで処女のようにみりみりと音を立てて呑みこんだ勢いは快楽よりも痛みが勝った。
 しかしもう遅い。
 成熟した尻を更に深く落とす。


「あ、熱い!」


 上条当麻は生まれて初めての感覚に感動していた。二重螺旋に刻まれた本能が幼い雄にも圧倒的な充足を覚えさせる。
 想像していた、穴に入っていく感覚ではない、何かを掘り進むような感覚と思わず言葉に出したローラの熱。
 幻想などでは決してない。


「あ、どうしよう? 僕、セックスしちゃってる――」


 思わず恐怖して腰をずらそうとするも大人の女に組み伏せられていては逃れられない。


「うわっ!」


 ずぼっ、と深く肉に食い込む。未熟な性器は小ぶりだ。だとしても空間的な余裕があるわけではない。
 細い腰と丸い尻が完全に上条当麻を呑みこんでいた。
 亀頭の先に僅かなりとも先があることを感じるが強く握りしめてくるような圧力が亀頭と肉茎全体を覆っていてそれどころではなかった。
 おでんにあるちくわに突っ込んだらこんな感じなのか、と素っ頓狂な考えすらも浮かんでくる。



「く、うう――すごいよ、ろーら――」


 さん、という言葉は噛み殺す。きっとそれを望んでないから。
 んんっ、とローラ=スチュアートが嬉しそうに唇を小さく開いた。朝焼けのように染まった頬に汗が滲み出ている。
 滑らかな肌をすっと落ちて少年の口のすぐそばに落ちた。思わず舌先でそれを舐めとる。
 しょっぱいはずなのになぜか甘く感じた。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:37:44.70 ID:8NIf3Vexo

 にぅ、と女肉が熱く締め上げてくる。まだ腰の上下運動は行われていない。
 ぎゅっと縮んで全体がぬるぬるとした粘液に侵されていく。
 小ぶりな肉茎はもうこれ以上は進めない。もうかき分ける様な感覚はない。ただただ熱さを感じる。

 本能として腰を動かすのはわかる。誰に教わることなく知っている。
 しかし上条当麻は自分がそれをできるとは到底思えなかった。
 体位の問題もあるにせよ、柔らかでスプリングの利いたベットでないということもあるけれども。
 自分の思い通りになんかなりそうにない。

 みり、みり、という締め付けてくる感覚。
 それがローラの心臓の鼓動と同じタイミングだということに気づくと思わず、腰を押し上げていた。


「きゃうっ!」


 途端、これまで常に少年をリードしてきた女が女としての悲鳴を上げた。
 硬く冷たい石の床で腰が痛いけれども、それ以上の喜びが少年の内側に満ちてくる。


「んもぅ、いけない子ねぇ。ちょっとびっくりしたかも」


 小首を傾げて頬を染めて。女であることを誇らしげに言う姿に少年は見惚れる。
 脈打つように収縮したり広がったりする膣肉。それをペニス全体で受け止めて上条当麻の鼓動と体温とが何処までも加速していく。
 心臓の鼓動に合わせてぴくぴくと肉竿が動いた。


(きつい、のに柔らかい――)


 そして


 ゆっくりと腰が持ち上がって、まろやかな肉が下ろされる。
 引きずり出されて呑みこまれて、竜巻がその中心点に全てを収束させていくように、引き込まれていく。
 そして、たぷんたぷんと豊かなローラの胸が揺れる。
 一滴のフレッシュでコーヒーが濁るように、上条当麻が書き換えられていく。
 過程は異なったがローラの目的は確かに達成されつつあった。
 少年は『男』へとメタモルフォーゼしつつあった。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:38:16.54 ID:8NIf3Vexo


 奥歯を噛みしめながらローラが腰を動かすたびに全てが溶けそうになる感覚。いや、感覚という言葉で収まりきれるかわからない。ローラもまたゆっくりと狂っていく。


「あ、は、は、トーマ、久しぶり、本当に、本当に――」


 まだごつごつともしていない肉の塊。膣肉に扱かれて硬く大きく成長していく。微細な粘膜がさわさわと戦慄いて鳴動して強く揉みこむ。
 ぐぐっと体積が膨らむ。
 時間として一分も経っていなかったが、再び射精欲がわきあがっていた。
 切なそうな瞳をして上条当麻がローラ=スチュアートを見上げる。
 幼くとも、この状態で射精すればどうなるかぐらいは知っている。


「で、出ちゃうから! ろ、ローラさん、どいてよ! このままじゃ!」

「我慢などしなくともよいのよ? そのまま出して?」

「だ、だって!」

「大人の女はね、そういうものもきちんとコントロールできるものであるのよ?」


 続く否定の言葉は出せなかった。
 ローラは上条当麻の上で少しだけ腰を浮かせて再び腰を下ろす。柔らかい肉に包まれながらくちゅりと粘液が泡立つ音がする。溶けたチーズの中を潜らせるような堪らない感覚。少年が反射的に腰を揺すると少年をつつみこむローラの肉が息をするようにひくつく。


「も、もう――こんなことされて―――、ぼ、僕、もう!!」


 限界だった。
 繰り返すが時間としては一分かそこらである。
 初体験の彼にそれ以上を求めるのは酷なのかもしれない。否、一度ローラの手で射精に導かれているからこれだけ耐えられたのかもしれない。


 あっさりと、玩具のように。


 ローラの軟肉が上条当麻のペニスに絡まりつく。
 しなやかな腰の内側で、少年の未熟な性器がぴくぴくと痙攣する。頭蓋骨の中身を全て吐き出してしまいそうな快楽の塊が一気に背骨を駆け下りてきて細い尿道を上っていく。
 下腹部全体が痺れてマグネシウムライトのように意識が全て真白に染まった。


「いいのよ、当麻。私の中でイって――ほら、全部受け止めてあげるから――」


 銀の大皿を血塗れにして預言者の首を掲げて踊るサロメの如く。
 その官能は残酷なまでに美しかった。
 ローラの唇が三日月のように凶る。
 彼女は今間違いなく少年を見ていてもう一人の彼を見ていた。
 失われた過去を取り戻そうという欲求が肉体の全てに満ちていく。

 自然と髪留めが落ちた。
 大振りな貝殻のような二つの塊が重力に引かれて世界に満ちていく。
 ディアナもかく照覧あれとばかりに月光を受けて魔法のように輝く。

 少年の見ている光景は完全なる金色の園。
 意識は胡乱な白銀の世界。
 二つが幻想的に溶け合って、その中をローラが見つめていた。
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!桜_res sage]:2012/03/22(木) 20:39:17.96 ID:8NIf3Vexo




 ――あはっ
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:39:43.42 ID:8NIf3Vexo


 精神的な充足。
 どぷん、どぷんという音がローラの内側で響く――ような気がした。
 幼い精液がローラの使われなかった子宮の――赤ん坊のゆりかごをノックする。
 腰をしっかりと落として一滴たりとも逃さないと言わんばかりに身体を動かさない。
 最強の魔術師たるものが出会ったばかりの、往年の出会いの少年の体液を受け止めている。


 ――どくん、どくん


「う、あああっ、気持ちいい――」


 少年が踊る。
 無意識のうちに下から腰を突きあげて最後の一滴までローラに注ごうと絞り出す。
 身体の内側に溜まっていたドロドロの粘性のもの――それは一つの不幸であったり、二つの不幸であったり、誰かを巻き込んでしまう不幸であったり、誰かから嫌われる不幸であったり、或いはその全てを閉じ込めたもの――が流されていく。
 一汗を流すことで精神的な苛立ちを解消するような爽快感。

 熱い吐息を少年は繰り返す。
 荒い息を無理やり整える。
 一方のローラはむしろ心地良さそうに自身の呼吸を楽しんでいた。
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:42:54.96 ID:8NIf3Vexo


 やがて、ローラがゆっくりと腰をずらす。
 柔らかくなった陰茎がまだきつい膣からするりと抜けた。精液が膣肉と亀頭とを繋いでいた。
 甘い息吹を繰り返すローラの我儘な肉体は赤く火照っている。大きな乳房と肌の張った太股とが淫らに輝いている。
 長く美しい金色の髪はまるでタオルケットのように少年の身体を包んでいた。


「疲れちゃったかしら?」


 ローラが優しく少年の火照った頬を撫でると照れくさそうな顔をして少年が頷いた。
 肉体的なことは当然ながら精神的な疲労も大きいのだろう。
 男と女の差はあれども初体験が緊張することには間違いはない。


「でも気持ち良かったでしょ、セックス。中に出すの、いと心地よかったでしょう?」


 悪戯っぽくローラが唇を歪めると上条当麻は不安そうに見上げてきた。
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:43:21.04 ID:8NIf3Vexo

「でも大丈夫なの? 赤ちゃんできちゃうんじゃ――」

「ああ、うん。そうね。
 将来ほかの女の子とするときはきちんと気をつけるのよ? 特に経験のない子はね。
 学園都市でも学生の妊娠はちょっとした問題となりておるのではなかったかしら。
 高校生でもよくはないけど中学生とか妊娠させては行けなくてよ?
 そうでなくとも病気とかの問題もありけるし」


 ま、でも。
 とローラは続ける。


「私は大丈夫なのよ? ちゃんとした大人の女なのだから避妊も問題ないし病気だって持ってないもの」


 正確には若干異なる。
 しかし説明の必要はなかろう。
 嘘も方便という言葉が示すとおりだ。
 とりあえず、少年はほっとしたように大きく息を吐いた。


 だが


「けれども、もし当麻が本気で望むのだったら妊娠してあげてもよいかしら、なんて思ってみたり」


 などとローラがおどけて見せた。
 えっ、と虚を突かれたように少年が困惑する。眉を歪めて返答に迷う。


「ふふふ、冗談であるの。困った顔しないで。
 されどね、今の戸惑いは覚えておいてね。女にとってはそれこそ人生の全てを賭ける様な事なのよ?
 それを無碍にしたりしないでね?」


 更に言葉を繋げる。
 金色の髪で世界を覆い尽くして少年の顔に自分の顔を近づける。


「それにね、まだ終わりではなくてよ?
 私はまだ満足しておらぬもの。もう少し当麻と触れていたいのよ」

「ご、ごめんなさい――僕、自分が気持ち良くなっただけで――」

「それは良いのよ? 今度はもう少しだけローラのことを考えてくれれば」


 夜はまだまだ長く。
 月はまだまだ高い。
 金色の蝶による結界は破られることはない。

 もっと、癒えないほどの火傷が欲しい。

 一夜限りの恋人かも知れなくとも。
 それでもその瞬間は心が通じ合っていると思う。

 その代価がカラス金で三千世界の全てが鳴いて利子が天文学的に膨れ上がるものだとしても。
 きっとローラは後悔はしない。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:44:09.82 ID:8NIf3Vexo

 自分の髪を御座代わりにしてローラが腰を落とす。
 そして再び膝を開いて性器の肉を指先で広げて見せる。


「その右手で――感じさせてくれる?」


 とろり、と白濁した液体が溢れた。
 それが自分の精液だとわかって上条は羞恥に顔を染めるも視線はそらさなかった。
 恥ずかしいという想いよりも好奇心のほうが上回っていた。


「う、うん――でもできるかな? 自信ないよ」

「大丈夫、教えてあげるのよ」


 骨格に筋肉が搭載されつつある右手をローラは自分の陰部へと導く。


「ここ、クリトリスというのよ? すごく敏感だからいきなりは触っては駄目よ?
 周りから優しく撫でて?」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/03/22(木) 20:44:30.69 ID:8NIf3Vexo


 おずおずと少年の人差指が鞘の根元に触れた。柔らかな指腹の肉でゆっくりと押す。爪の内側に見える肉の色の種が押されて顔を出した。
 根元を触るだけでも刺激的なのだろう、ローラが甘く鼻を鳴らす。
 白濁の蜜を溢れだす花は妖しい匂いを放って男を誘った。
 生ぬるい空気が漂って、続けていいのだとローラが笑う。
 先ほど乳房と触れたときのように夢中になりながら、それでも理性の蓋で衝動的にならぬよう気をつけて少年が初めての愛撫を行う。
 恐る恐る指を近づけて肉芽に触れる。尖った乳首のように硬く、ぬるぬるとしていて、それでいて滑らかで。


「もう、強くしては駄目と言うたでしょう? もっと優しくして」


 眉をひそめて困ったような顔をしてローラが上条を窘める。
 びくん、と肩をすくませたがやはり好奇心が勝ったのか少年は愛撫を続ける。
 優しく、触れるか触れないかの距離で。
 空気を薄皮一枚分だけ挟んで、ただ温度だけが伝わるように。そんなイメージで。
 ゆっくりと、ゆっくりと。優しく、優しく。

 実際に動いた距離は全部合わせても一センチあるかないか。
 そんな微細な指の動きに上条当麻は没頭する。
 ピンセットで帆船を組み立てるような正確さと集中力と。

 そして、だんだんとローラの吐息が荒くなっていった。 
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:25:05.37 ID:3KkOD82Ko

 本能的な嫌悪感はあったが、ローラは舐めてくれた。
 だから上条当麻は迷わなかった。
 右手だけでは自分が満足できなかった。
 知識はなくとも自然と身体が動いた。

 ローラは嬉しそうに眺めている。

 自身の放った雄の性臭が漂う女性器に口を運ぶ。
 れろり、と自身の精液ごとそこを舐める。
 生臭さと苦さとチーズのような臭いがした。
 とろり、と女の透明な蜜が溢れてくる。舌先で感じるその液体も熱を持っていた。


「あはっ☆ 気持ちいいわ、当麻。そう、下から上にすくう感じで、ね」


 何度かそれを繰り返す。そのたびにローラの甘い嬌声が響く。
 ぞわぞわと脇のあたりになにかが蠢いてペニスが硬くなった。
 舌先を膣口に差し込む。飲茶の蒸し器、あれの蓋をあけたときのように一気に匂いが強くなった。
 どろり、とまだ奥の方にあった精液が垂れてくる。
 それでも上条は舐め続けた。


「ああん、もう、いけない子――」


 舐め続けたまま視線だけで見上げるとローラの頬は赤く染まっていて肩がびくりと震えていた。
 大振りの乳房が気持ちよさそうに上下し、興奮していることがうかがえる。
 視線が合うと、柔らかな笑みで愛しそうに微笑む。
 嬉しくなった。
 このヒトを喜ばせたい。上条の中で奉仕の感情が暴れまくる。
 稜線に夕日が沈んで夜になるように上条は女体を責める喜びを知りつつあった。
 湯船上りと違う、細かい汗が額にも頬にも鼻の頭にも浮いているローラの朱い顔。
 それだけではない。舌先を迎え入れてくれるローラの内側も戦慄いている。
 ゼリーのように透明感のあるプルプル震える粘膜が上条の舌の奉仕の続きを催促している。
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:25:30.35 ID:3KkOD82Ko

「当麻の舌、ざらついているのね――」


 どこで感じたのかどこでそれを知ったのか。そんな踏み外した当たり前に上条の本能が赤くなる。
 細く白い指が上条の頭に触れる。優しく髪を梳く。
 ただそれだけでどうしようもないぐらいに気持ち良かった。
 頭皮から首筋までが溶けそうになる。
 おかえし、とばかりに上条は舌の動きを速くした。
 うっ、うっ、とローラの白い喉が小さな呻きをあげる。
 粘液がより一層強くあふれ出てきた。
 二人の粘膜が溶けあって一つになってしまったかのようで。


「もう、そこばっかりでのうてもっといっぱいいとおして。女の感じる場所はそこだけではなくてよ?」


 言われるままに膣口を舐め続けながらもその両脇に指を伸ばした。
 性器の両サイド、大陰唇の部分を撫でる。
 そこはほとんど毛が生えていない。白磁のように滑らかで透明感すらある。
 次に内側の小陰唇に触れる。赤い肉は花弁の様で柔らかくしっとりと蜜に溢れている。
 まるで人を狂わす芥子の花のようだった。
 そして一番感じると言われた肉芽にも。
 硬いそこを優しく撫でる。摘む。転がす。
 ぴくん、と上条の頭に触れているローラの手が動いた。
 より甘く切羽つまったような嬌声が聞こえた。
 両の太股が強く上条の頭を挟みこむ。


「んぐぅ!」


 女の肉付きのいい太股。突然の攻撃に上条は思わず口を離してしまった。
 数秒。背を反らしたローラがびくんと震えて、上条を圧迫する。
 そして、力尽きたように拘束が緩んだ。

 少年の淫液でてかる口元。瞳が残念だと泳いでしまう。
 反射的に両手を床について上体を支える。
 M字開脚のローラの両膝の間の空間で彼女を見上げた。


「ごめんね、当麻。気持ち良すぎてローラ、イってしまったわ。
 本当、すごく気持ちよかった。当麻の彼女になれる女は幸せ者ね」


 少しだけだらしなく溢れた唾液を拭いとり、ローラがおかしそうにくすくすと笑う。
 瞼が若干だが下がっていて余韻を漂わせている。
 少年は心外だと言わんばかりに表情を曇らせた。
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:26:06.09 ID:3KkOD82Ko

「でも、今のトーマはローラだけのものよ? もっと欲しいの。ずっとずっと寂しかったんだから。
 一人で頑張って、余計なものも背負って歩いてきたけどずっと寂しかったのよ。
 だからいっぱいちょうだい。全部トーマのものにして?」


 性的な絶頂を迎えたばかりの女の肉体。
 濃厚な体臭が漂っている。
 性器が濡れているのは少年の唾液だけではあるまい。
 上条当麻の幼い身体がジンジンを震えた。

 くすり、とローラが嬉しそうに笑って。
 くるりと身体をひっくり返した。両手と両膝をついて四つん這いの形になる。
 金色の長すぎる髪はそれでもシーツのように広がっていて。
 丸く綺麗なヒップが上条に突き出された。


「おしり、ぷるんって――」


 プリンを揺らしたように、柔らかく溶けそうで、それでいながらしっかりと密度もあって。
 そんな魅力的な尻肉に幼い上条のペニスは限界まで膨張してしまった。
 自分でも知らないぐらいに硬く、大きく。
 そして尻肉の狭間に淫らな女の花弁が息づいていて少年を誘う。

 犬のような光景。だが神々しさすらある。
 月光を纏った白い肌。
 最高のギフト。


「好きにしてよいのよ? 今のローラはトーマだけのものなりて。だから、いっぱい気持ちようなって欲しいな」

「でも、僕、うまくできないかも――」

「構わなくてよ? 乱暴でもいいの。どんな形でもいいの。トーマが男でローラが女でさえあれば他はどうでもいいの」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:26:57.32 ID:3KkOD82Ko

 つい先ほどの初体験は自分で自由にはできなかった。
 あれも素敵でときめくような体験だったけれども。
 自由にできる。たったそれだけが追加されただけなのに心臓の鼓動は限界を超えて加速し続ける。
 塊のように粘度のある唾液を無理矢理飲み込んだ。

 痛いほど屹立している未成熟で小ぶりなペニスを膣口に当てる。
 二度射精していなかったらそれだけで達していただろう。
 場所が分からなくて右往左往していたらローラが股の間から手を伸ばして導いてくれた。
 そのまま、ゆっくりと差し込んでいく。両手がローラの腰をつかむ。下腹部を押しこんでいく。
 
 硬さだけはある亀頭が肉を割り開いていく。先ほどよりも熱く滑っている。少年を迎え入れる。
 膣粘膜が亀頭をこすって行くたびに質量をもちそうなほど濃厚な快楽が少年の肉体を駆け跳ねた。


「ローラ、さ――ローラ、凄い――」


 さん、という言葉を嫌がる。
 だから言いなおした。
 しかしそれだけではなかった。
 まるでこの素晴らしい女性を支配しているかのような幻想を少年に与えた。

 先ほどよりも蠢いている。
 先ほどよりも戦慄いている。
 先ほどよりも強く咥えこんでくる。
 少年の幼い口奉仕に、ローラの肉体に火がついたのだろうか。


「あああ――」

「トーマの、いっぱい入ってくるのよ――」


 ウェディングケーキの入刀。二人の共同作業。
 そんな馬鹿げたお伽噺すら見えてきてしまう。
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:28:00.71 ID:3KkOD82Ko

 ぷっくらと膨らんだ女の粘膜が歓喜に震えながら少年を呑み込んでいる。
 四方から舌で舐められているかのような世界。
 幹も亀頭も全てを熱くきつく柔らかく溶けそうなほどに包みこんでいる。
 騎上位とは違って自分の支配が強いという満足も得られていた。


「あはぁぁあ」


 たっぷりと情感を込めてローラが熱く息を吐く。
 上条はゆっくりと腰を沈めていく。ペニスを埋没させていく。
 魅力的な肉体は少年の未熟な雄を駆り立ててやまない。
 微細な肉の粘膜はそれだけでも一つの生き物のように少年を快楽へと引きずり込もうとする。


「うう、僕、僕――」


 なんとか奥まで入れた。
 奥にはまだ空間があるが、上条では届かない。
 それが悔しいと思う反面、これ以上入れたらたちまちにして射精してしまうと察していた。


「どう? 後ろから犯してみて。ローラ、トーマのものなのよ? そう思えなくて?」

「うん。僕のだ、僕のものだ、ローラ――すごく、綺麗だよ――」

「あはっ☆ 嬉しい、そんな言葉聞けるなんて――」


 絹のような手触りの美しい髪の持ち主が、さっと頬も耳も薔薇色に染める。
 素直になれている。
 偽らなくていい。
 それが堪らなく嬉しい。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:28:40.59 ID:3KkOD82Ko

 少年は腕を伸ばす。
 背後からたっぷりとしたローラの乳房を掴む。
 熱した保温ジェルを詰め込んだぬいぐるみのように手触りがいい。
 いや、そんな偽物なんか比べ物にならない。

 ローラが恥ずかしそうに身をくねらせる。
 背後からぴったりと覆いかぶさって逃そうとはしない。
 少年の荒い息がローラの首筋で弾けた。

 もう少し背が高ければよいのに、と少しだけローラは不満を覚える。
 こればかりは仕方ないのだけれども。
 この形でキスしてくれたらどんなに素敵だろうか。

 でも。


「ああ、素敵よ、トーマ。ローラ、こんなに感じていいのかしら?」


 幸せだった。

 一晩の火傷では済まないかもしれない。
 彼に何一つ荷を負わせるつもりはないのだけれども。
 この一夜のために死んでもいい。
 いつか彼がこの命を欲しいと言ってきたのであれば。
 喜んで死のう。

 ぎゅう、とローラの秘裂が少年のペニスを強く吸った。
 動いていいのか、まだじっとしていたほうがいいのか、少年は強く惑った。
 実り豊かな乳房を揉まれながらローラが甘えた声で強請る。


「トーマ、好きにしてよいと言うたわよ。いっぱい動かして。気持ち良くなって。それが一番嬉しいの。
 身体がおぼつかなくてよ。もっといっぱい欲しいの」


 技巧なんか何もない。
 ただ後ろからかぶさって乳房を揉んでいるだけ。
 だが久方の交わりはローラを強く感じさせている。

 そして幸せそうに啼いた。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:29:15.34 ID:3KkOD82Ko

 くちゃ、と湿っぽい音がする。
 くちゃくちゃ、くちゃ――


「ああ、溶けそうで気持ちいい」

「ローラも、凄いの、よ。いっぱいかき回して!」
 
 
 少年は腰を動かす。ぶつけるように乱暴に腰を打ちつける。
 稚拙で、幼稚で、ただ本能のままに。
 細かく戦慄く肉が甘く優しく上条を包んで離さない。
 うねるひだをがめくりかえるように奥に侵入して巻き込んでいく。

 うまくは動けない。
 思った通りのピストン運動なんてできない。
 シルク以上に滑らかなヒップが淫らに揺れる。

 こりっ。

 勢いが、長さを補った。
 アワビの肉のようにコリコリした子宮口に亀頭が届く。


「ふわあああぁぁあんっ!!!」


 途端、ローラが甲高い悲鳴を上げた。
 上条も一瞬わけがわからなくなるほどの快感を感じる。
 びりっとした痺れが腹の奥にあって両脚の付け根から全身に熱いものが広がる。

 射精した、と勘違いするほどだった。
 二度ことを終えているからか、そこまでは至らなかったが匹敵するほどの快感だった。


「あはぁ――トーマったらいけない子――こんなに感じさせてしまうのだから――」

394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:30:03.40 ID:3KkOD82Ko

 だらしなく口を開いて甘えた声で。
 上条は初めてローラを、ただ一人のローラを見たような気がした。
 飄々とした顔もボロボロと泣いた姿も、達観したような人格の広がりも関係ない。
 きっと他にいろんな重いものを背負っていて、演じすぎていて、仮面をつけすぎていて。
 潰されてしまったローラの本当の顔。

 かっ、と脳が赤くなる。
 年の差なども忘れた。
 可愛いと思った。
 もっと見たいと思った。

 熟した女の肉体が揺れる。限界近くの性感を無視して腰を振る。
 勢いをつけて奥を狙う。
 唇を噛みしめて射精を必死に耐える。
 ローラはこらえようともせずに嬌声をあげる。
 それに合わせる様に女肉がぎゅぎゅと締め付ける。

 とん。
 奥にまで届いて。

 ローラの腰が持ち上がった。
 ぐ、と背中が反り返る。
 腕立て伏せの途中のような格好でぶるっと震えた。
 うっ、くっ、と呻いて身体を硬直させた。


 えっ――


 少年が驚く。
 締め付けが僅かに緩くなった。
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:30:53.24 ID:3KkOD82Ko


「あは、少しだけイっちゃった――やだ、恥ずかしい――」


 赤い顔で肩越しに振りかえる、金色の髪に隠れたローラ。
 幼い上条の中で何かが充実していく。
 自信が形になる。

 だから我儘に計画もなく身に付けた挿入方法を再開した。


「ひゃあんっ! んも、う、乱暴なのね――」


 くちゃくちゃ、くちゃ――ずん、ずん、ずん――

 ペニスと膣肉が絡み合う。
 魂も概念もすべて吸い込まれてしまいそうな錯覚に上条は囚われる。
 射精に向けて肉棒が硬直していく。

 ローラの腕が崩れて上体が落ちる。
 軽い絶頂の後の敏感な肉体が少年の原始的すぎる杭打ちに対抗できない。
 大振りの乳房が体重で柔らかく潰れる。
 少年の手はそれでも離れない。
 ローラの瞳が泳いで甘く光った。

 腰の動きに合わせたようにローラの首筋から背中に大粒の汗が浮かぶ。
 密着しているからぬるぬるとそれを感じてしまう。
 それが少年を興奮させる。

 均整のとれた美しい肢体のローラが乱れる。透明に輝く汗を撒き散らす。
 二人の呼吸は荒くなっていながらもシンクロしている。
 脈打つように締め付けるローラの性器を味わいながら抉るように腰を遣う。
 繋がっているから体温も筋肉の脈動も心臓ポンプの音だって伝わってくる。
 柔らかな脂肪。しなやかな骨格。健康的な内臓の色ですら見えるようで。
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:31:30.60 ID:3KkOD82Ko

「ひゃん、あん、あん、あぁん――」


 リズムよく紡がれるローラの嬌声。
 同時に締め付ける女の肉。
 ミミズ千匹、なんて言葉を上条は知らない。が、もし聞いたらその通りだと即答するだろう。
 四方八方から舐められているかのよう。

 二人とも人間であるまえの獣に戻っていた。


「ロ、ローラさ――凄い! ぎゅうってしめつけてきて、ぎゅうって――」

「トーマのも硬いし、熱いし、奥にまで、とんって――」


 上条の右手が尖りきったローラの乳首を摘む。
 奇襲のような刺激にローラの喉が鳴る。
 膨張しきったペニスがローラのこりこりした子宮口を叩く。
 そのたびにローラの腰が左右に揺れる。
 逃さないとばかりに少年は幼い腰を振る。
 カリの内側の敏感な部分に女の襞が絡みつく。責め立てる。
 もっともっと。欲しい欲しい。ちょうだいちょうだい。
 陰脳の底のあたりに塊のような快楽があった。


「うわああ、出る! 僕もう出ちゃうよ!」

「出してェ! 一番奥! 奥がいいのぉ!!! ローラを全部トーマのものにしてぇぇぇえええ!!!」


 太陽炉で鉄の塊が瞬時に溶解する。
 いつかテレビで見た光景を少年は思い出す。
 科学の力よりも自然の力の方が恐ろしいと思った、あの瞬間。

 あの熱さをローラの中に感じる。
 きつく締まって限界点を超えさせていく。
 精神が、学園都市すらも見えないほど高い場所へと打ち上げられる。
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:32:22.15 ID:3KkOD82Ko

「ああ、出るっ!」


 一度目はどくんと出た。
 噴出の快感に全身を震わせた。
 背筋から脳天に甘い痺れが走った。


「あああっっ! 出てる! ローラも、イくぅうぅ!!!!」


 ぎゅぎゅぎゅ、と女の肉が締まった。
 形のいい尖った顎を天空に向けるように背を反らす。少年が覆いかぶさっていて二人とも仰け反る形になった。
 大量の射精とペニスの膨張を受けてローラの肉体が歓喜した。
 限界を超えてもっともっととせがむ。


「うわぁぁあ!!! まだぁ!!!」


 二度目は更に大量に。
 正確には一度も二度もないのだろう。しかしローラが達する前と後の僅かな時間。
 上条当麻の主観では別物としか言いようがなかった。
 亀頭をぎゅうぎゅうと締め付ける膣粘膜、かき分けるように打ちこまれる固形物のように硬い雄の液体。

 ぶるぶるるっ!!! ぐぅぅっ!!! どくどくどくっ!!!

 どろり、とまさにゼリーのような半固形物。
 濃厚すぎる液体をローラの子宮は嬉しそうに飲みほしていく。
 滴り落ちる大量の汗。
 きっと誰も見たことのない長すぎる金髪で隠されていた白く美しすぎるうなじ。
 反り返ってきたローラを無意識に支えていた。

 左手と、すべての幻想を殺しつくす忌まわしい右手で。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:33:09.68 ID:3KkOD82Ko

 消えない。
 ローラは消えない。
 腕の中にいる。

 はあはあと熱い呼吸を繰り返す。
 肉棒を飲み込んだままの膣粘膜はまだ貪欲に動いている。
 一滴残らず絞りとろうとしている。

 そして、それにこたえる様に上条当麻の肉棒は硬さを失わなかった。

 少しだけ澱んだ眼をしたローラが上条を見る。
 高さが合わない。
 ペニスを離さないまま器用に左足を畳んでくるりと回転した。
 異常なまでに柔軟な身体。伸ばしきった両脚。
 長い髪が捻じれて不自然にまとまった。


「トーマぁ……いっぱいいっちゃったよぉ……おかしくなっちゃったあぁ……もっとしてぇ……」


 威厳なんてない。
 この姿を誰がイギリス清教最大主教だと信じるだろう。
 ただの発情したメス犬の姿。

 ずっと、ローラがなりたかった姿。
 ただ、甘えて気持ち良くなって愛されたかった。
 他には何にも要らなかったのに。

 こんな幻想、卑怯すぎる。
 魂まで火傷してしまった。
 この感情に名前を付けるとしたら愛以外に何があるのだろう。

 わかっている。
 夢は必ず覚める。
 悪夢のような現実に最愛の彼を引きずり込むことなんてできない。

 でも、夢だとわかっているのならば。
 まだ夜は明けないのだから。
 狂って狂って狂ってしまってもいいじゃないか。

 痛みを覚えるほどの射精をした少年も、満足なんかしていなかった。
 欲しい。欲しい欲しい。
 ローラが欲しい。
 瞳に火が灯った。

 どちらともなく唇を重ね腰を動かす。
 白い月光の下で二人だけの宴は二人だけで続けられた。
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:33:37.85 ID:3KkOD82Ko

          *



 少年はこの日から変わった。
 どんなに辛いことがあろうとも暗い瞳をすることはなくなった。
 自分が世界で一番不幸だなんて思わなくなった。
 救いを求めて手をさしのばしている誰かを救うために行動できるようになった。

 ヒーローになった。



          *

400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:34:20.08 ID:3KkOD82Ko

 夏の日の日差しは強い。
 日傘越しでも太陽はローラをいじめてくる。
 長い髪をいつものように折り返してまとめている。
 太陽の光を反射して黄金そのもののように光った。

 息を吸えば田舎の臭い。硫黄の臭い。
 田舎の駅のホームには二人以外に誰もいない。

 必死になって涙を堪えている一晩だけの恋人に視線の高さを合わせてローラは笑った。
 はしゃいだ声で、本当に楽しみだと。


「またね。トーマが大きくなって素敵な男性になったらまた会いましょう?」


 明るい色のワンピースと白い日傘と、着替えの入ったキャリーバックと。
 とびきりの最高の笑顔。

 彼女と上条当麻との、二人だけの約束。
 メールアドレスは既に交換してある。
 そのまま別れてしまうのは二人には辛すぎたから。

 それでも空はつながっていて見上げる太陽も月も同じもので。
 だから絶対また会える。

 例え二度と会えなくてもきっと一生愛し続ける。
 だから寂しくなんかない。
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/08(日) 20:34:42.09 ID:3KkOD82Ko

「いつか絶対に迎えに行くからね! 僕はローラをお嫁さんにするんだ!」

「どうかしら。きっともっと素敵な人が現れると思うのだけれども。
 でも、もし本当にずっと好きでいてくれるのなら、大人になった時にもう一度その言葉を言って。
 そうしたら、お嫁さんになってあげる」

「絶対だからね!」


 ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのます。
 本当に幸せそうにくすくす笑いながらローラは少年とゆびきりをした。

 右手で。

 幻想は殺される。
 ローラはそれをわかっていた。
 わかっていても夢を見たかった。

 だから最後にもう一度だけ唇を重ねた。

 音を立てて列車がやってきた。
 それは本当に別れの時間。
 手を振って列車に乗った。
 車両が動き始めても少年は手を振ってくれた。

 嬉しくて切なくて悲しくなる。
 ありがとう、こんな想いをくれて。
 ごめんね、せっかく言ってくれた言葉を私は信じていない。

 女の命である自慢の長い髪をうっとおしいように流して椅子に座る。
 ことんことんと定期的鳴るレールの音は昨晩の疲労が残る身体には心地よすぎる子守唄だ。
 まだ、子宮には彼の思い出が残っているはず。
 両手を腹の前で組む。

 子供を産んで家事をして夫の帰りを待つのを楽しみにする。
 脚本に載りもしないごくごく普通のどこにでもあるような一人の女に自分がなる。
 絶対に存在しない人生。
 そんな夢を見たいとローラはそっと目を閉じて彼の温もりを思い出していた。

402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/08(日) 20:41:28.94 ID:3KkOD82Ko
ローラ編しゅうりょう
口調がめちゃくちゃわかりづらかったです
でっちあげている感が半端ない、ペンデックスもそうだけど
最愛ちゃんとか素のインデックスぐらいが一番口調が書きやすいような 
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/18(水) 18:05:58.34 ID:YmvRN5axo






起点/7月20日
 
 
 
 
 
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:06:30.68 ID:YmvRN5axo

 上条当麻の夏休み初日はいつものように不幸だった。

 前日電撃ビリビリ姫と命がけのトムとジェリーごっこ(ただしトムが反撃を食らうことはない)を切り抜けた。
 そのままのハイテンションでベットについてもろくに眠れず、やっと眠りが見えたかと思うと熱さで目を覚ました。
 暑い、ではない。熱い、である。

 ただでさえアスファルトが敷き詰められて地面の気化熱が薄い学園都市だ。
 湿気も考慮すれば不快指数はとんでもないものになる。
 しかもその上、冷房が機能していなかったのだ。
 それがわかっているのならばせめて窓を開けたりなんなり方法はあったものの。


「はぁ……不幸だ……」


 巨大な雷が落ちたため、家電の八割がいかれていた。
 冷蔵庫の中身はこの暑さのために当然ながら全滅。
 空けた瞬間に酸っぱい臭いがして「いや、ごちになってます」と細菌さんたちがルンルン気分で野菜を蝕んでいる。

 朝食にしようと考えていた焼きそばパンも酸っぱかった。思わず放り投げた。
 こういうときのための非常食のカップ焼きそば(でもこれって茹でそばだよな?)はお約束のように流し台にぶちまけた。
 外食しようかと財布を捜していたらキャッシュカードをぱりんと踏み抜いて足から少し血が出た。

 ぐすん、もういいやい。
 夢の中では幸せになってやると不貞寝しようと思ったら『上条ちゃーん、馬鹿だから補習ですー♪』という実年齢不詳の見た目幼児の担任教師からのありがたい連絡事項。
 はああ、とため息をつくしかない。
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:07:06.54 ID:YmvRN5axo

 しかし上条ちゃんは強い子。負けないのよ。
 壊れていなかった家電、いや家電ではないか、の携帯電話を開ける。
 ゆーがっためーるの点滅光。
 昨晩送ったメールの返信だ。


『まったく、毎度毎度おっかけられてなんで殺されかけないといけないんですかね。
 あのビリビリ娘、上条さんに何の恨みがるんでしょうか。
 まるで親の敵ですよ。ご両親にあったこともないのに』


 とのメールに


『その子はトーマのことが好きであるのよ。まだ気づいていないのだろうけど。愛らしきことね。
 デートでも誘ってみたら?
 賭けてもよくてよ? 最初は顔を真っ赤にして断るかもしれないけど三回ぐらい言えば絶対にうんって言うから」


 と実にありがたいお言葉が返ってきていた。

 はは、と上条は苦笑する。
 そんなわけがないだろう。照れ隠しに一軍を屠れる火力をぶつけてくるなんてツンデレはこっちからお断りです。
 それに


『俺は今でもローラが好きです』


 とだけメールに書いて、一瞬躊躇って、返信した。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:07:35.04 ID:YmvRN5axo

 画面が待ち受けに切り替わるとそこには大輪の花を浮かべたような愛しい彼女の写真が上条に笑いかけてきてくれた。
 数時間で天候の変わる、大きな川の近くで霧が出やすい倫敦の、それでも晴れの日を選んで取ってくれた写真。

 上条の大切な宝物。

 上条はずいぶんと背が伸びて肉付きもよくなったけれども。
 彼女は何も変わらない。
 少しだけ髪が伸びたけれども、あれだけ長かったのだからたいした差はないだろう。


「でも、ローラって本当は年幾つなんだろう?」


 誰からも返ってこない問いかけを上条は一人口にする。
 母親の詩菜も担任の月詠小萌も年齢不詳だ。どちらも三十×ぐらいのはずなのに下手したら上条と同じか年下に見える。

 ローラもその類なのかもしれない。
 下手したら詩菜より年上かもしれない。
 場合によっては嫁が実母より年上になるのか。


「ま、愛に年の差とか国境なんて関係ありませんのよ」


 国境云々の前にお前は一生鎖国していろ、というレベルの言語能力の上条だったが、幸い問題がないにせよローラは日本語が話せる。
 おかげでメールでのやりとりもできているわけだ。

 でも、この夏休みあたりに一度イギリスに行こうかと考えている。
 不幸で貧乏極まりない上条当麻だったが、高校生になってから時間を見つけてはアルバイトをしてきたのだ。
 それだけではまだ足りないので両親に懇願しようとは考えているけれども。
 タイミングがあれば父の刀夜のイギリス出張に便乗できるかもしれないし。

 そのことはまだローラには秘密だ。
 まだ大人に慣れたとは言い切れないけれども、気持ちは変わっていない。
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:08:40.70 ID:YmvRN5axo

「……さてさて、とりあえずはカードと冷蔵庫について考えるか」


 能力開発には薬の投薬が必須だ。
 流石に空腹というわけにはいくまい。
 バナナでもあれば簡単なんだがと思う。
 が、不幸な上条は自分が皮を踏みつけてすっころぶシーンが嫌でも思い浮かぶのであまりバナナを買うつもりになれない。
 コンビニでサンドイッチでも買いますか、と頭をかく。

 せめてふかふかの布団で寝ますか、と両手で布団を抱えてベランダに歩くとぎゅぬ、という足裏の感覚。
 恐る恐る下を見たら上条にぶん投げられた焼きそばパンが彼に地味な反撃をしてくれていた。


「……まぁ、いいや。ともかく夕立とかはなんねぇよな、流石に。
 学園都市の天気予報は十全なのに上条さんの不幸はそれを上回るとかないよな」


 いやぁな予感を感じつつ足で器用に網戸を開けるとそこにはすでに白井布団が干されていた。


「?」


 学生寮である。そもそも一人暮らしの上条だ。誰かが先に布団を干していた、なんてことはない。
 しかしよくよくみればそれは布団ではなかった。

 真っ白な絹作りのローブ。さらさらと細く長く光り輝いている銀色の髪が顔を隠している。
 華奢な作りの。


「はぁ?」


 両手に抱えていた布団がばさりと落ちる。
 女の子。上条より年は一つ二つ下か。どう見ても外国人。透き通るような白い肌の。


「うわ、シスターさんだ。いや、妹ではなくて」

411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:09:40.81 ID:YmvRN5axo
 修道服? なのか。でも上条の知っている黒いそれではなくシルクの光沢を持つ、金糸で刺繍の入った修道服。
 フードをかぶっているが前髪は隠しきれていない。

 ぴくん、と女の子の白魚のような指先が動く。
 どうやら気を失っていたらしい彼女が目を覚ますようだ。
 だらりと下がっていた顔がゆっくりとあがる。けっこう、いやかなり可愛らしい顔が見えてくる。白い肌。エメラルドの瞳。
 お人形のようであり、特徴は似ていないはずなのだがどこかしらローラ=スチュアートを思い出させる。

 どきん、と心臓が甘く鳴った。


(ちょ、ちょっと待ちなさい! 上条さんはローラ一筋なのになんで時めいているのでせう!?)


 驚愕と自己嫌悪。そして英語をしゃべれないという困惑。
 どぎまぎしながら彼女の言葉を待った。


「お――」


 女の子の小さな可愛らしい唇からこれまた可愛らしい声が漏れる。
 思わず一歩、後ろに下がった。ぐにゅり、と先程踏みつけた焼きそばパンが嫌な音を立てる。


「おなかへった」

412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:10:53.12 ID:YmvRN5axo

「はい!?」


 一瞬、上条はとうとう言語スキルが崩壊したかと思った。
 聞き間違いだと思った。

 しかし。


「おなかへったって、言ってるんだよ?」


 白いシスターの言葉は間違いなく日本語。
 ベランダに干されたままというよくわからない格好のまま小首を傾けてむっと頬を膨らます。


「えっと、あなた、行き倒れ?」

「倒れ死にとも言う」


 日本語ぺらぺらだった。
 と同時に上条は安堵する。

 なんだ、ローラとは似ても似つかないじゃねぇか。

 ともかく、これはいったい何かはわからないが、彼女にはどこかの誰かによって幸せになってもらおう。もっと遠いところで。
 ラップに包まれた上に二度も踏まれた焼きそばパンを突きつける。

 ほらほら、上条さんはこんなにひどい男ですよ?
 か弱い誰かを救うためのヒーローたる彼にしては少々子供じみた劇場だったが、ローラと勘違いした自分に多少気が立っていたのだろう。

 酸っぱい焼きそばパンは、そう、あれだ。「ぶぶづけでも召し上がれ」というやつだ。

 だが。


「ありがとう。そしていただきます」


 がぶり。

 ラップも、そして不幸を運んでくる右腕も丸ごと、小さく可憐だった口に噛まれた。
 丸ごと。

 あれか? デビルフィッシュみたいに顎が特殊な構造をしているのか?

 しかしそんな疑問が脳に浮かぶ余裕もなく。
 上条は今日一日最初の悲鳴をあげた。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/18(水) 18:11:45.11 ID:YmvRN5axo





 ――科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――


 これから上条がインデックスという少女のために命を賭けて戦い、結果記憶を失うことになる。
 その戦いの中で彼とローラとを結ぶ携帯電話は破壊され、彼と彼女とを結ぶ糸は存在しなくなった。





414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)[sage]:2012/04/18(水) 21:42:57.08 ID:ackER26zo


ローラとインデックスと上条の関係がややこしくなってきた
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/04/18(水) 23:13:21.60 ID:iqB0zRBDO

こないだのペンデックスの話も良かったよ 
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:38:29.97 ID:qgno8Zj4o


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 とうまの上に跨って思いっきり腰を動かすとおちんちんが出たり入ったりして身体が熱くなる。


「あんっ……はぁ、はぁ……うぅん……」


 胸もお腹も大きくなったから身体が少し重いかも。
 腰を上げるのは大変だけど下ろす時は二人ぶんの体重が一気にかかってきて凄いんだよ。
 おちんちんを抜くときよりも深く入ってるときの感覚のほうが私は好き。
 離れるよりも一つになるほうが気持ちいいのは当たり前なんだよ。


「んあっ……んっ、っふ、あぁんっ」


 とうまが気持ちよさそうな顔で私を見上げてる。
 少し目が濁っているけれども、私の知っているとうま。

 私はリズムをつけて腰を上下させながら誰にも話していないことを頭に浮かべる。

 最後の決戦。
 科学も魔術も木原もグレムリンも関係ない、『知らない戦争』の終末。
 暴走したとうまの中の『ドラゴン』の力をお母様は命を捨てて封じた。
 重要なのはそのことであって、アレイスターの計画とかエイワスとか、そういうことはついでの問題でしかないんだけれども。
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:39:07.54 ID:qgno8Zj4o

 お母様は死んだ。
 とうまの目の前で。

 とうまはお母様の記憶を失っていた。覚えてなんか居なかった。

 それでも魂が覚えていたんだよ。お母様を本当に愛していたんだよ。

 とうまの精神はおかしくなった。
 一見するとこれまでのとうまなんだけれども、ブレーキが壊れたようになってしまった。

 手加減ができなくなった。

 お母様が自分の死を起動条件として私の中に残していたプログラム。
 私の中の二つの人格を融合し、封印されていた記憶を呼び戻し、脳に忘却という機能を取り戻し、さらには遠隔操作霊装が私を支配できなくなる。
 お母様が死んだときに、完成された魔神としての私がとうまを守れるように仕組まれていた。

 忘却は、それでもとうまが私を選ばなかったときに私が暴走しないための安全装置。

 そもそも吸血鬼であるお母様の子供である私を通常の人間とするために必要だった十万三千冊の魔道書の知識。
 それを保管し保持するためにでっちあげられた禁書目録というシステム。
 魔術サイドもイギリスという国家も騙して作り上げられた本物の魔術兵器。

 恨んだよ。辛かった。苦しかったよ。
 でも、それでもお母様の気持ちは痛いほどわかったんだよ。
 とうまに幸せになってほしいって。

 とうまがドラゴンに飲み込まれないように自分の命も私の命もとうまの命だってチップとしたことを私は責められない。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:40:07.30 ID:qgno8Zj4o

 不思議なんだよ。
 でも、きっと断腸の思いだったと思うんだよ。
 少なくとも私はそう思っている。

 だってもし私が今一人になってこの大きくなったお腹を抱えていたらどれほど不安なんだろうって。
 お母様はそんな思いをして私を産んでくれて、でも私はそんな思いをしていないんだよ。

 とうまは私だけを見てくれているわけじゃないけれども。
 私は一人じゃない。

 こんなにたくさん気持ちいいことをしてくれるとうまのことが大好き。
 みこともみさきも、きっと同じ気持ちだと思う。


「どうしたんだ? 嬉しそうだな」

「だって……気持ちいいんだよ……すごく安心できるのかも……」


 とうまがいてくれて本当に良かった。
 私はこんなにも安心していて、幸せになれている。


「気持ちいいことって?」


 とうまが私に意地悪を言ってくる。わかってるくせに。酷いんだよ。えっちなんだよ。
 本当、呆れちゃうんだけれどもとうまが望んでいるから私は笑顔で答える。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:41:31.54 ID:qgno8Zj4o


「せっくす、なんだよ。中に出してもらって、いっぱいせーしだしてもらって妊娠して……すごく幸せなんだよ……」


 ぎゅ、ってお尻に力を入れた。
 かつやくきん、っていう筋肉が繋がっているからこうするとおまんこが締まるんだよ。
 いっぱいしたから、ね。


「そうか、幸せか、インデックス」

「んんっ、もちろんだよ。私、とっても幸せかも」


 みさきはお母様とどこか似ている。
 同じ色の金色の髪、というだけじゃない。
 纏う空気が似てるんだと思うんだよ。

 家族を失って孤独になって、生きるために虚構の権威を振りかざして。
 すっごく強そうに見えて、内側はどうしようもないぐらいに脆い。

 それにね。
 お母様が死んだときに、もし魔術で自分自身の意識を保存しようとしたのならば。
 それはきっとこの学園都市で一番心理系に特化した人間を選ぶと思うんだよ。
 人格を乗っ取るほどのことは出来ないだろうけれど、みさきが私に好意を抱いてくれたのはきっとそのせいなんだよ。

 だからとうまはみさきを自分のモノにした。
 まだお母様を求めているんだよ、きっと。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:42:10.03 ID:qgno8Zj4o

 だからお母様と何一つ繋がりのないはずのみことがとうまに選ばれているのは凄いことなんだと思う。
 みことがとうまのお嫁さんになるのは当然の事なんだよ。

 でも、私はかまわない。
 だって、とうまの赤ちゃんが産めるんだから。

 とうまに出会わなければきっと知らなかった。
 他の誰かに同じことされてもきっとこんなに気持ちよくはない。
 自分で慰めてみても、寂しいだけだった。

 でも、とうまは違う。とうまとだけは違う。
 気持ちいい。セックスがとてつもなく気持ちいいんだよ。
 体中が満たされて呼吸することだって幸せを感じられる。

 なによりも、ね。
 この大きくなったお腹に新しい命が宿っていることが一番幸せ。



「あはっ……んんっ……んはっ……うぅんっ……」


 何度も何度も膣内射精してもらって、やっと授かった命。

 みことが妊娠して、産むって決めたとき、私は凄く嫉妬したよ。
 私だって産みたいって思った。
 とうまを好きって気持ちで負けたくないから。

 とうまがおかしくなって、お母様が封印した記憶が戻ってきて、わけがわからなくなって。
 私は自分がシスターってところを拠り所にしていた。

 だからずっとお尻でえっちしていて処女を守っていたんだけれども。
 馬鹿だったよね。
 とうまが好きってことだけで十分だったんだ。
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:42:36.77 ID:qgno8Zj4o

 みことの妊娠から半年以上遅れちゃったけれども、何回も強請って、私も妊娠できた。
 赤ちゃんを身篭ったとき自分のすべてがとうまのものになれた気がした。

 妊娠をとうまも喜んでくれたし、みことだってみさきだって喜んでくれた。
 みことの妊娠に嫉妬していた私は本当に子供だったよね。

 それに、ひとりっきりで私を産んだお母様がどんなに寂しかったのかも良くわかったよ。

 あと、残念だったのは安定期まではおまんこでセックスできなかったことかな。
 お尻も好きだけど、やっぱり前でしたほうが形がわかって好き。


「ねぇ、とうま? 大丈夫かな、ゆるくなってないかな」

「ゆるくなんかなってないぞ。でももっと尻に力こめるといいな」

「んんっ、じゃあ、これで、どう?」

「おうっ、いい締め付けだぞっ」

「んぅっ、良かった……んんっ……気持ちいい……」


 ぐちゅぐちゅっていやらしい音がする。
 いっぱい濡れてる。
 奥のほうから本気で溢れてきている。
 赤ちゃんのゆりかごが降りてきている。
 とうまの硬さ、熱さ、形が手に取るようにわかる。
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:43:16.15 ID:qgno8Zj4o


「あぁぁんっ! んんぅっ! んはっっ! とうまっ! とうまもうごいてっ!」


 自分で腰を動かすだけだと物足りない。
 下から突き上げてもらってもっともっと気持ちよくなりたい。
 私が求めるととうまが応えてくれた。


「こうかっ! これがいいのか、インデックスっ!」

「あぁんっ! そうだよっ! それがいいのっ! ああんっ!!! おまんこ気持ちいいっ!!」


 赤ちゃんの子宮を押し上げるようにおちんちんが突き上げてくる。
 子供を産むために緩くなっている子宮口に先っぽが入りそうな勢い。


「当たってるんだよっ! 奥までみっしりで、当たってるっ! あっ、あっあっ、あっ……ああんっ! 当たってるんだよぉっ!!!」


 股間から脳天まで快感が突き抜けていく。
 こんなにすごいこと、きっととうまとでないと出来ない。


「あぁんっ! 赤ちゃんがびっくりしちゃうよっ! いっぱい突き上げてるっ!」

「そんなにいいのか、インデックスっ!」

「ひぃんっ! そこ、そこも気持ちいいっ!」


 とうまの手が私の腰を掴んだ。
 がんがん突き上げてくる。
 思いっきり中を擦られて何も考えられなくなる。

 じゅぶじゅぶって私の腰も動きまくる。
 思いっきり腰を弾ませて勢いをつけて出し入れする。
 赤ちゃんの重さが私をもっと気持ちよくしてくれる。
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:43:52.96 ID:qgno8Zj4o


「んああっ! あっ、あっ、あーっ!」


 お母様も、とうまとこうしたかったはずなんだよ。
 こうやって頭を真っ白にして愛して欲しかったはずなんだよ。
 とうまの赤ちゃんを産みたかったはずなんだよ。

 意識が白くなりながら私はお母様の切なさを思ってしまっていた。


「んんっ!! あ、ああっ! イっちゃうっ!!!」


 不意に、全部がばらばらになるような感覚。
 快楽の大きな波が押し寄せてきて私を飲み込んでもみくちゃにして、一気に引いていく。
 ぎゅう、っておちんちんを締め付けているのがわかる。


「ぐうぅ!」


 とうまがかみ締めるような声を上げた。
 気持ちよさそうな声。

 だけどまだ出してもらっていない。
 いっちゃったけれども、満足できなかった私はそのまま腰を動かし続ける。

424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/22(日) 00:44:51.26 ID:qgno8Zj4o

「んはっ、はあっ、あんっ、んんっ……」


 いったばかりだから凄く敏感。
 それでも出来るだけ激しく動かし続ける。

 絶頂が連続して私を襲ってくる。
 意思なんて関係ない。
 何度も、何度も。

 ごめんなさい、お母様。
 あなたのことを忘れてこの快感に飲み込まれてしまう私を許して欲しいんだよ。


「あぁんっ! あっ、ああっ! いいっ!!! すごくいいんだよっ! いっぱい突き刺さってるのっ!!!」


 上下する腰の動きが加速する。
 右に回したり左に回したりする。

 赤ちゃんの重さがとうまのおちんちんをぐりぐりと押しつぶす。
 あふれ出したいやらしい液がとうまのおちんちんまわりの毛をべたべたにする。


「ぐぅ……い、ん、でっくす……」


 何かをかみ[ピーーー]ようなとうまの声。
 大きなお腹越しに見る顔は凄く気持ちよさそう。
 嬉しくなって私はどんどん腰を動かした。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:45:46.58 ID:qgno8Zj4o


「はあんっ、またいっちゃうんだよぅ……」


 身体は重いのに浮き上がっていく。そんな感覚。信じられないような絶頂感。
 馬鹿みたいに腰を動かし続ける。
 とうまの目がぎらっと光った。


「……そろそろ、出すぞ」

「うんっ! 出して欲しいんだよっ! いっぱい出してっ! 私の赤ちゃんにいっぱいミルクを飲ませてっ!」

 とうまにはもう赤ちゃんがいる。
 みことの産んだまことと、みさきのお腹にいるまさきと。

 でも、えこひいきでも私はお腹のローラを可愛がってもらいたい。
 栄養たっぷりのミルクをいっぱい飲んで元気に生まれてきて欲しい。

 私の言葉に驚いたのか、とうまが一瞬目を丸くする。
 すぐに苦笑した。


「はははっ、しょうがないなっ! じゃあ出すぞっ! 出すからなっ!!!」

「うんっ!!!」

426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:46:40.21 ID:qgno8Zj4o

 とうまが私の腰を引き寄せた。
 重いお腹が揺れる。
 おちんちんのさきが子宮口の窪みに押し付けられた。 
 くわ、って先っぽが膨らむ。


 ―――どくん、どくんどくどくん


 火傷するほどに熱い精液が私の中に流れ込んだ。
 子宮で収まりきらないぐらいにいっぱい。繋がった部分からあふれ出してしまう。

 もったいない、な。


「やだよぉ……漏れちゃう……」


 せっかくいっぱいだしてもらえたのに。赤ちゃんに飲ませてあげたいのに。

 悲しくなった。
 嬉しいのに、気持ちいいのに。

 でも。
 とうまのおちんちんはまだまだ硬いままだった。
 悲しい気持ちがそのまま幸せに反転する。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:47:25.89 ID:qgno8Zj4o


「あはっ……まだ出るんだよね?」


 射精を終えたばかりのおちんちんをぎゅって絞る。軽く腰を振る。
 とうまが呆れたような目で私を見た。


「うんっ! まだ欲しいんだよ! 赤ちゃんにいっぱい飲ませて欲しいんだよっ!!!」


 お尻の穴に力をこめる。
 きゅ、きゅって緩急をつける。
 下腹部に力を入れて下から上に絞る。
 いっぱいいっぱいおちんちんを刺激する。
 硬いおちんちんがどんどん逞しくなった。
 思わず無意識のうちに腰が動いていた。


「あ、ああっ! んっ! はぁあぁあぁっ! いいっ! 気持ちいいんだよっ!」


 しっかりと締め付けたまま上下に腰を動かして出し入れする。 
 ゴムひもで縛って扱くイメージ。
 それにあわせてとうまが腰を動かしてくれる。
 子宮がちゅうちゅう精液をすすっているのがわかった。
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:49:08.32 ID:qgno8Zj4o
 とん、とん、とん


 子宮を小突かれるたびに気持ちよくなる。
 だらしなく口をあけて涎を零す。
 快楽がどんどん蓄積されていって凄い勢いで利息を増やしていく。


「んはっ! ああんっ! もう、おかしくなっちゃうんだよっ! とうまっ! おねがいだからっ! 出してっ!!!
 いっぱい出してっ!!! お腹の中の子も妊娠させてぇ!!!!」


 ちかちかと目の前に光がともる。
 どんどん激しくなるとうまの腰の動き。
 ぐちゅぐちゅという二人の交じり合った音が私を興奮させる。

 どろどろに溶けていく。
 どろどろに熱くなる。
 ぱんぱんに膨らんだ風船が破裂するように、その瞬間はやってきた。


「ああああっ!!! だめっ、だめなんだよっ!! いっちゃうっ! いっちゃうのぉ!!!
 ああ! イクイクっ!!! いくぅ!!!!!」


 真っ白になる。
 爆発する。
 どこかに飛んでいってしまいそう。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:49:47.87 ID:qgno8Zj4o


「ああああああ」


 ぎゅうと膣が収縮した。
 一滴残らず搾り取ろうとしてる。
 少し遅れて、とうまが射精した。
 熱くて大きなおちんちんの先端から私の中に流れ込む。


 どくん、どくん、どくん


 もういっぱいになっている中に追加される熱い大量のミルク。


「あはああ……」


 絶頂の余韻に弛緩する肉体と精神との中で私はその熱さを魂で感じる。
 お腹の中のローラも、きっと喜んでいる。


「私の……赤ちゃん……」


430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/22(日) 00:50:18.97 ID:qgno8Zj4o

 私の意識はどろりと攪拌されていた。
 まるでクリームみたい。
 もうなにもかもがわからない。
 でも幸せだってことだけはわかるかも。

 産まれて来るまでそんなに時間はないけれども、もっと飲ませてあげようと思うんだよ。
 この子が産まれたらまた妊娠させてもらいたいんだよ。

 とうまは壊れてしまったけれども。
 私がとうまを好きってことは何も変わらない。

 それにね、まことが生まれてからとうまはずいぶんと落ち着いてきてる。
 飢えているって感じはしなくなっている。
 きっと、魂のかけている部分をまことが埋めているんだよ。

 血の繋がった子供、だからかな。
 だからまさきもローラも可愛がってあげてね、とうま。

 私はもっと産むから。
 お母様が出来なかった分も、私が産んであげるから。

 大きくなったお腹ごと私はとうまに倒れこんだ。
 太く逞しい腕が抱きしめてくれる。

 私だけの男性じゃないけど、私の一番大切な人。
 ありがとう、お母様。
 この人を守ってくれて。

 きっと世界中の誰からも唾棄される悲しい魔女である産みの母に感謝する。
 誰にもいえない秘密を抱えながら私はこの至福の時間を心のそこから噛み締めていたんだよ。

431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)[sage]:2012/04/22(日) 11:08:14.49 ID:Yt5tIr/jo


ローラ編の流れからするとインデックスの父親って
インちゃんマジチート アウレオルス哀れ過ぎ 
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/29(日) 11:45:55.45 ID:ff0K8NX4o
ゴールデンウィークですがちょっとネタがないもので
世界観は別物です
上条さんはまとも(?)なキャラです 
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/29(日) 11:46:40.43 ID:ff0K8NX4o


「一の組織を束ねるためには、はむ、うぐうぐ。
 プライドを捨ててごっくん美学を身につけなければならぬのだよけぷぅ」

「のうのうとよく顔を出せたな。とりあえず上条さんの非常食の魚肉ソーセージから口を離せ。
 というかしゃべりながら食うな」


 学校から帰ってきたらどこかで見かけたトンデモガールが冷蔵庫を開けて魚肉ソーセージを頬張っていた。

 肩にかかる程度のカールのかかった短い金髪。
 白いブラウスとスカートに黒いガーターストッキングという服装。
 十二歳の少女という外見と裏腹にイギリスの黄金系魔術結社「明け色の陽射し」を束ねる魔術師。
 残忍にして狡猾、ブレーキの代わりにアクセルがもう一つ備え付けられているような情け容赦ない女。

 レイヴィニア=バードウェイである。
 ちなみに胸が薄いことは禁句だ。


「まぁそう硬いことを言うなもしゃもしゃ。私とお前の仲じゃないかむしゃむしゃ」


 そうそうと二本目に突入するその顔には反省の色など欠片もない。
 あけっぱなしの冷蔵庫の前からしゃがみ込んで動こうともしない。

 こいつに謝罪をさせるよりはミドリガメにダンスを覚えさせる方が何倍も楽だと上条は嘆息した。

 そもそも食いしん坊キャラは一人だけでたくさんである。
 ただでさえ空気と呼ばれているインデックスさんから魔術の解説役だけでなく食欲魔人の座も奪うつもりか。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:47:34.20 ID:ff0K8NX4o
 紳士を自称する割には男女平等に右手を顔面に叩き込む印象の強い上条。
 だが、それは戦闘においてそれしか手段が無いからそうなっているだけで別に暴力主義者ではない。
 事実、決闘というよりもじゃれ合いが強い御坂美琴との戦いで彼女を殴ったことはない。
 誰か他人のために怒りが湧いた時でなければ拳を握れないのだ。

 つまり、今の上条はバードウェイに対して無力である。
 もっとも、上条が本気になったところでこの小娘に敵うとも思えないのだが。



「で、なんのようだ。インデックスはどーした」

「禁書目録なら『こもえのうちで焼き肉パーティなんだよ!』とか言って出掛けたが。
 つまり私は留守番を頼まれている訳でこの程度の、ごっくん、報酬は頂いても文句はなかろう、と思うのだが」

「だったら外で待ってればいいだろうが」

「なにを言う。『部屋の中で待っていればいいんだよ』と禁書目録から許可も貰ったぞ」


 インデックスはハワイでバードウェイが行ったことを知らない。
 説明していないからだ。
 それに裏切りをしたものが厚顔無恥に表れるなんてことを彼女は信じていない。

 善人はみんなが善人だと信じる。
 色々と怪しいところはあるがインデックスはシスターなのだ。
 そういうところに付け入るバードウェイの態度が上条には気に入らない。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:48:58.12 ID:ff0K8NX4o


「繰り返すぞ。なんの用だ」

「んー」


 強く上条が言葉を重ねるとバードウェイが少しだけ眉間に皺を作った。
 二本目の魚肉ソーセージを平らげてだらしなくゲップを出して言う。けぷぅ。


「実はだな、とうとうマークが切れてしまってな。ちょっと帰りづらいのだ。
 まったく、私の命令よりもデートなどというものを優先しおって。
 思わずお仕置き代わりにデート中に召喚爆撃かましただけなのに二代兼定、通称ノ定を振り回してくるんだぞ。
 困ったものだ」

「帰れ」


 つかつかと歩み寄って右手でぐわしと襟首を掴む。そして引きずるように上条はバードウェイを玄関の外に放り投げた。
 すると猫のように寮の廊下の壁を蹴ってすとんと着地、両手を腰に当てない胸を張りバードウェイが上条の前に立った。
 見上げる形で見下している。
 もちろん彼女は土足で人の家に入るというイギリス式マナーと日本式との違いを心得ているから足は来客用スリッパである。


「いいじゃないか。私とお前の仲だろうに」

「わざわざ日本に来るな。イギリスでもどこでも潜伏していればいいじゃないか、マークさんの気が落ち着くまで」


 上条は黒い礼服の二十代金髪の男を思い出す。

 特にこれと言って強い印象はないがその分悪印象もない。
 上条を裏切って学園都市協力機関を離反させたという意味では目の前の少女と何も変わらないのだが違いはなんだろうか。
 傲岸不遜を地でいくこの少女の理不尽極まりない命令にこき使われている姿に哀愁を感じたからだろうか。
 結構楽しそうでもあったが。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:49:48.37 ID:ff0K8NX4o

「いやいや、マークはあれで結構優秀なんでな。少なくとも欧州にいたら感づかれる。
 人脈がかぶっているのが厳しいな。
 何分、私とマークとを天秤にかけて後者を取る連中が多すぎるんだ酷いと思わないか」


「酷いのはお前の性格だ。頭の一つでも下げてみろ。人生が随分と変わるぞ」

「残念だが、組織の長が持っている権威というのは個人が壊してよいものではないのでな」


 とは言いつつも、上条は靴も履いていない少女をマンションのような寮の廊下にいつまでも放りだせる人間ではなかった。
 これで靴を叩きつけられれば人生もう少し楽なんだけどなぁ、と再度のため息をつく。
 仕方ない、と身体をずらして室内を見せる。道を作る。


「うむ。最初からそうしていればいいのだ。余計な手間暇をかける必要などなかったのだぞ」

「会釈程度でもいいから頭を下げるという発想はないんだな」

「無用なものは無用だ」


 玄関マットの上で一度スリッパを手に持ってパンパンと叩いて、バートウェイが室内に入る。
 かぽかぽと再度スリッパを履きなおした。
 うっとおしそうに後ろ髪を掻きあげて上条を見上げる。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:50:36.57 ID:ff0K8NX4o

「この国の湿気は髪に悪いな」

「じゃあ湿気のない国に行け。南極なんかどうだ、サハラ砂漠より乾いてるぞ上条さんお勧め」

「馬鹿を言え。湿気をものともせずお前に会いに来たんだ。泣いて喜ぶがいい」


 部屋主の意向も伺わず軽い足取りで座布団を取り出して座った。
 絨毯の上だからスリッパは脱いでいる。
 この彼我の距離でいちいち履いたり脱いだりするところは良識的だろう。

 M字を潰して脚の間に両手を置くような女の子座り。
 こたつと兼用するケーブルに顎を乗せた。
 意外なことだが何故か似合っている。

「インスタントでいいぞ。いくら貧乏でもその程度あるだろう?」


 バードウェイがはつらつとした声でコーヒーを強請る。
 ふんふんと軽い鼻歌を奏でながら言う姿はなるほど愛らしい。

 中身さえなければ。
 本当、中身があれでさえなければ振り向く男はそれなりにいるだろうに。
 白い奴とか。白い奴とか。あと白い奴とか。


「コーヒーが飲みたければ一方通行のところに行けば良かっただろうに。アイツはそれなりにコダワリあるし。
 上条さんちにあるのは実家に贈られたお歳暮の残りですよ」

「それがいいんじゃないか。日本人の発明したインスタントコーヒーを日本人の風習で飲む。贅沢というやつさ」


 はぁ、と何度目か数えるのも面倒になったため息をつきながら上条はマグカップを手に取った。

 節電のためにポットは使っていない。電気ケトルに水道水を注して電源を入れる。
 学園都市も水道水は軟水だ。コーヒーを淹れるのには向いている。
 そして二人分のコーヒー程度の湯量なら一分もあれば沸くのだ。
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:51:06.08 ID:ff0K8NX4o

「これを飲んだら帰るんだぞ」

「話を聞いていなかったのか? スポンジ脳だというのはわかっていたがここまでとは。
 一晩と言わず好きなだけ泊って行けとは言わんのか。
 可憐な乙女が寝床を探しているんだぞ。膝まづいて手を取ってキスしてもいいんだぞ」

「どれだけわがままだよお前。うちにはインデックスという居候が既にいるんですぅ。
 貴重なカロリー源喰いやがって。出てけ出てけ」

「滞在費用ぐらいは出すぞ? 貧乏なんだろう?」


 費用という金銭にかかわる言葉を聞いて、ぴくり、と上条の肩が震えた。
 にんまりとバードウェイが笑う。


「一日に付き日本円で一万出そうか。なに、ホテルで過ごすことを考えれば格安だ。
 うまい事やりくりすれば現金収入にもなるぞ、ヒーロー?」


 ぴくぴく。
 上条の肩が震え続ける。

 座敷童も裸足で逃げ出すようなエンゲル係数の上条家はいつだって金銭が不足している。
 なるほど魅力的だ。しかし魅力的な餌には強力な罠が仕掛けられているものだ。

 根っからのサディストであるこの少女を近場に置いておけば絶対に不幸が訪れる。
 上条当麻とて馬鹿ではない。いや、馬鹿だが百パーセントの馬鹿ではない。金星人ではない。
 少しは学習するのだ。


「断る」


 瞳が泳いで戸惑ったが上条ははっきり断言した。

 絶対にろくなことにならない。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:51:37.52 ID:ff0K8NX4o


 とうまはまた女の人をつれこむんだねがるるるる。


 アンタ! その女がなんでこんなところにいるのよ! びりびり!


 目に浮かぶようだ。上条さんの不幸になる世界が。
 第一この少女にどんな目にあわされたのかを思い返してみるがいい。


「ふぅむ。金では駄目か? なんだったらこの身体でどうだ?」


 コーヒー入りのマグを二つ持ってきた上条にバードウェイがシナを作って見せた。

 ちなみに砂糖は入っていない。

 テーブル九十度横の座布団に胡坐をかきながらはんと上条は鼻で笑う。
 冗談にしても笑えない。


「フレメアに負けているようなナイスバディで上条さんを誘惑? ブラいらずの癖に?
 一方通行じゃあるまいし、上条さんはロリではありませんのことよ?」


 驕りがあったかもしれない。
 弱みを見せているバードウェイを軽んじていたのかもしれない。
 手酷い目にあわされている少女を見返したかったのかもしれない。

 上条は虎の尾を踏んでしまっていた。
 コーヒーの香ばしい湯気が漂う。その向こうで意志の強い顔の少女が怒りを露わにしている。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:52:35.26 ID:ff0K8NX4o

「ほ、ほう? 仮にも『明け色の陽射し』の首領であるこのレイヴィニア=バードウェイを前にしてそんなことを?
 あんなくそちんまいガキより魅力が劣ると言うのか?
 今ならジャパニーズ正統謝罪作法DO☆GE☆ZAで許してやらんこともないぞ?」


 額に青い血管が浮かぶ。
 唇が引きつる。

 しかし上条は一本取ってやったとばかりに勝利の美酒代わりに右手でマグを取ってコーヒーに口をつけた。
 にやにやといやらしく笑う。

 踏み抜いた。踏み抜いてしまった。
 繰り返すが、今彼の右手はマグカップを持っている。
 簡単に振り回せる状態ではない。
 残酷で冷静な、そして怒りに燃えている眼がそれを見ていた。

 レイヴィニア=バードウェイの得意技の一つに「召喚爆撃」がある。
 本来必要な準備を敢えて省略し、自らの腕と勘を頼りに即席で発動させる火属性大規模魔術。
 つまりは魔術の手順を省略して発動させるという行為が誰よりも得意なのだ。
 ましてや、のんびりとコーヒーを飲んでいる上条は隙だらけだ。


「――――!」


 バードウェイが自分のマグカップに指を突っこんだ。
 引き抜いてテーブルに陣を描く。簡単に座標を定義するような低レベルなものだが彼女には関係ない。

 ぽん、とバードウェイの小さな手がテーブルを叩いた。
 魔術が発動する。
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:53:36.85 ID:ff0K8NX4o

「――――!?」


 瞬間、上条の身体に電流が流れる。全身に強力な痺れが起きた。
 崩れていく身体。力を無くして落ちていく。視界がかすんで上条が倒れ込んでいく。

 コーヒーが零れることはなかった。崩れおちる途中の上条からマグをバードウェイが取り上げたから。
 何か起こったかわからない。そんな顔をしながら上条の意識が朦朧となる。

 バードウェイが残酷に微笑んでいた。
 上条が口をつけていたコーヒーをさも美味しそうに飲み干す。


「いーだろ。光栄に思うがいい。
 宿代替わりに私がフレメアなんてクソガキよりよっぽど性的な魅力に溢れていることを証明してやる」


 上条は忘れていた。
 バードウェイという少女がどういう存在なのかを。

 か細い華奢な肢体と裏腹に凶暴なものを内側に秘めている。
 目的のために手段は選ばない。
 そして敵と判断してものに一切の容赦をしない。

 そのうえで人間としての感情を強く持っている。
 常識なんて関係ない。
 誰かの手綱なんかに操られない。
 にやりと歯を見せて笑った。
 まるで虎のようだと朦朧とした意識の中で上条は思った。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:54:15.73 ID:ff0K8NX4o


――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――


(ここは……)

 上条が意識を取り戻した時辺りはうす暗かった。
 ぼんやりとしたオレンジ色の光が揺らめいている。
 それがランプの明かりだと気付くのに少々時間がかかった。

 蒸し暑い。
 まるで石造りの地下室のよう。
 天井に換気装置が見える。そんなに古びたものではない。
 だがコンクリートは打ちっぱなしで装飾なんかなかった。

 妖しいものも見える。
 天井から吊るされた鎖。産婦人科で使うようなM字開脚にさせられる背もたれつきの診療台。
 三角木馬(重り付き)。壁に掛けられたさまざまな鞭。磔用の十字架。
 鉄の処女。


「へ?」


 まるで中世の拷問部屋である。
 魔女という名目で十字教会が一般市民から財産を奪い拷問した暗黒時代の遺物。
 そんな場所に上条はくくりつけられていた。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:55:00.61 ID:ff0K8NX4o

「な、なにが起きたのでせう? 上条さんは一体!?」

「起きたようだな」


 ランプの光の届かない部屋の隅、その暗闇から小柄な少女が現れた。
 レイヴィニア=バードウェイ。
 その姿はまさに異形だった。

 いわゆるボンテージスタイル。
 ガーター付きの黒ビスチェにやはり黒のヒールの高いブーツ。小柄な彼女の背を伸ばしている。
 小さな股間に張り付くような下着もやはり黒。揺れるランプの光で僅かに縦筋の陰影が現れる。
 腕にはロンググローブ。これもまた黒。
 素材はすべて皮のようだった。

 ローティーンの女王様。
 知人の青い髪の変態ならば泣いて喜ぶ状況だろうが、上条にその気はなかった。


「そ、その姿は一体……」

「まずは自分の情けない姿を確かめてみるんだな」


 くすり、と笑う姿は獰猛さを隠さない。
 踏みつぶす寸前の小虫を見るような目で見つめる先につられるように上条が自分の体に視線を移す。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:55:40.98 ID:ff0K8NX4o

「え? えええ?? な、なんで! どうして!?」


 全裸だった。
 正座の状態で手枷足枷が嵌められている。それぞれの先に重りが付いていた。
 反射的に股間を隠そうとするも両手を動かすことはできない。


(いったい……なにが……そう、確かバードウェイにコーヒーを淹れてやって……)


 かつんかつん。
 硬質な音を立てながらバードウェイが近づいてくる。


「まったく、厄介だったぞその右手。魔術が使えないと本当に不便だな。この街にはタクシーも少ないし、苦労したぞ」

「ど、どこだここは! どうしてこんなことを!」

「ここは、ま、ラブホテルの一室ってやつだ。随分と趣味がいいな学園都市。
 で、どうしてというのはアレだ。私の魅力というやつを鈍感な気様に骨の髄まで叩き込むためだ」


 見下ろしてくる瞳には憎悪が灯っている。


「貴様の節足動物並みの脳でも理解できるようにたくさん反省してもらうぞ。なに、安心しろ。最後は私に感謝しているさ」


「せ、先生……節足動物には脳はありません。はしご状神経節です……」


 どす黒いオーラを隠さないバードウェイに上条は素っ頓狂な突っ込みを入れる。
 背筋が凍るような状況に置いて上条当麻はなお上条さんだった。
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:56:12.35 ID:ff0K8NX4o


「ほほう。よっぽど私にいじめてほしいようだな」


 絶対零度の微笑み。ぞぞっと背中に恐怖を感じてしまう。
 エターナルフォースブリザード。上条さんは死ぬ。
 そうなっていれば楽だったかもしれない。

 冗談を言っている眼ではない。狂気が混じっている。
 もともと戦闘戦斗において周囲の被害を気遣わない非常識な少女だ。
 目隠しをしたままアクセルを限界まで踏み込む。そのことに喜びを感じる。

 それなのに妙に色っぽいのは何故だろう。
 頬が桜色に染まっている。ランプの焔が艶やかさを引き出しているのだろうか。
 高揚している。女を感じる。たかだか十二歳の少女に、この状況で、上条当麻はメスの色香を感じ取っていた。


「随分と人のことをガキ扱いしてくれたが、お前も随分とガキの様だな、上条当麻」


 股間も隠せない上条の前につかつかと歩み寄ってバードウェイが乱暴に股間を掴んだ。
 そこは委縮していて完全に皮の中に包まれている。


「ええ、おい。ガキのまんまじゃないか。日本には割礼の風習はないんだったな。
 こんな粗末なものじゃ女の経験なんかないんだろう?」


 ぐりぐり、と握る。
 少女の小さな手と熱い体温、そして皮に包まれた未熟な少女の匂い。
 上条のペニスはたちまちにして大きくなった。
 赤い亀頭が顔を出して雄の匂いを放つ。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:56:53.41 ID:ff0K8NX4o


「ほう? やればできるのだな」


 余裕しゃくしゃくで手を離したバードウェイだが、その頬は赤い。むしろ言動に不自然さを感じる。
 そのことに気づかないまま上条はまだしゃがみ込んでいる少女に言う。


「おい! ふざけるんじゃない! 一秒も早く上条さんを解放しなさい!」

「安心しておけ。禁書目録ならコモエの家で一晩お世話になるようだ」


 そうして、バードウェイはレザーショーツの左右についている金属ボタンを外した。
 甲高い音が二つ。
 脚を上げなくとも自然に下着がむき出しのコンクリートに落ちる。


「ご褒美だ。見たことなんかないんだろう? じっくりと見せてやる」


 やめ、と言いかけて上条が息を飲んだ。
 見たいという強烈な欲求がある。雄として当然の欲求が。

 薄暗くてよく見えないが、ちらりと焔が瞬くと白い肌がオレンジ色に映えた。
 毛は生えていない。
 白磁のように美しい肌に作り物のような一本線が刻まれていた。
 僅かにもりあがる肉の丘に刻まれているそこは複雑な機構を何一つ見せていないのに淫らだった。
 股間部分だけの下着が無いという異様な状況に上条は思わず興奮する。
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:57:43.23 ID:ff0K8NX4o


「まぁ、まだ毛はないが……内側はきちんと大人だぞ? あんな小娘どもとは違ってな」


 拘束した上条の前でバードウェイが少し間抜けに脚を広げる。
 両方の手でその場所を開くとピンクというよりも赤い肉が現れた。
 むっ、とすえた匂いが漂う。

 傲慢、高慢、唯我独尊。
 そんなバードウェイが自ら性器を開いて上条に見せようとしている。
 ものごとは急展開過ぎてついていけないが、瞬きを忘れたように上条は目を離すことができない。

 ごくり、と喉が鳴った。
 バードウェイの言葉と違ってまだ未成熟のそこは襞が大きいわけではなかった。
 ただ粘膜と粘液の光沢が見える。
 小さな可愛らしいクリトリスは既に顔を出していて溶けそうなほどに熟していた。
 白百合のような外見と違い内側は濡れた薔薇のように艶やかだった。


「どうだ? 初めて見せたんだ。光栄だろ? これでも私を子供というのか?」


 バードウェイは小柄だ。ちびっこと言い換えてもいいだろう。
 大体まだ十二歳前後だ。
 そんな彼女が、それでいて尊大極まりない彼女が自分は大人だと背伸びをしている。
 上条の中で何かがときめく音がした。


「お前を脱がしているとな、こうなんて言うか、興奮してしまってな。
 濡れてしまったよ。細かい傷跡が多いし。股間は子供のくせに体つきは大人なんだな上条当麻」


 そして、上条が見ている前で小さな膣口からとろりと蜜が溢れ出た。
 大粒の滴になってつぅと太股の方へと流れていく。
 それを視線で追うと自然と二人の視線は上条の股間へと移った。
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:58:40.90 ID:ff0K8NX4o


「――っ! あれが最大ではなかったのか!?」


 嗜虐的な色が一瞬消えた。本当に驚愕したようにバードウェイが息を飲む。
 何もかもを知っているはずの少女に怯えの色が走った。

 肉棒は硬直して膨張して先ほど彼女が手で刺激した時よりも一回りは大きく成長していた。
 二人の視線の先で赤黒い亀頭がエラを張っていた。
 少女の秘密の部分を覗いた、その正直すぎる反応に見せた側の少女が息を飲む。

 年相応に、いやこの状況でそれもないが、顔を赤めた。
 思わず性器を開いていた手をひっこめた。
 黒いブーツのつま先部分でつついてくる。
 興味半分恐怖半分といったところか。ただ持ち前の勝気がバードウェイを動かしている。


「こ、こら! なんてことを!」

「反省するのはお前だろうが。こんなに大きくして。だが、正直なのは嫌いじゃないぞ?
 ――ちょっと驚いたが」


 上条が認めるかどうかは別として。
 事実として女性の肉を見て、上条の肉体は興奮した。欲情した。
 あの赤い谷間に包まれたいとペニスは自己主張している。
 恥ずかしいという気持ちはもちろんあるが、隠すことすらできない。
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:59:06.49 ID:ff0K8NX4o

 手枷は皮のバンドでその先に数十キロはありそうな鉄の塊がぶら下がっている。
 両腕は開かれたまま。
 いくらすべての異能を打ち砕く右手でも拘束からは逃れられない。
 もちろん、股間を隠すことは当然できない。

 そして、あの濡れそぼった粘膜はあまりにも美味しそうだった。


「いや、だってこれは――」


 だから仕方ない。
 上条当麻だって健康な青少年なのである。
 女性の肉体に興味が無いわけではない。

 ただ、肉付きが豊かな女性を好んでいると自己分析していた上条は凹凸の少ないスレンダーボディに欲情する自分を認めたくなかった。
 ましてや年頃を考えれば異性として考えるのもはばかられるような幼さなのだ。

 確かに精神年齢は上条を超えているだろう。
 魔術師としての云々よりも一派閥を率いているという点において上条はバードウェイを評価している。
 アニェーゼもそうだが、カリスマというものを持って誰かの上に立つには相当の精神力が必要だろう。

 だからと言って子供であることに変わりはないのだ。
 子供を性欲の対象として見るのは変態のすることである。
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 11:59:37.03 ID:ff0K8NX4o

「口答えするな。それに――視線を感じるぞ、ずっと」


 どこに、とは言わなかった。
 言わなくても上条は理解する。当たり前だ。ずっと幼い性器に視線は釘付けだ。


「それに、ほら――」


 もう一度、ブーツでつつかれた。
 肉棒が嬉しそうに揺れる。敏感な刺激となって上条の腰のあたりに甘い感覚が跳ねた。


「止めろ馬鹿! 痛いだろうが!!!」


 痛い、だけではない。心地よかった。
 だが上条は認める訳にはいかない。

 しかし多くの人間の上に立つものは心の動きが自然と読めるようになる。
 にやぁ、とレイヴィニア=バードウェイが笑った。
 嗜虐的な不遜さがカマをもたげている。


「正直じゃないな。なぁヒーロー。素直さは美徳だと思うぞ? なに、安心しろ。私はそこのところもわかっている女だからな」


 どこか嬉しそうな顔をしてバードウェイが上条から離れた。
 ブーツで突かれることはなくなった。
 安堵するとともにどこかしら残念な気持ちが上条の中に湧く。
 先ほどの刺激が心地よかったのだ。


(はは――笑えねぇ――変態ですか上条さんは――)


 自覚する感情を飲み込む上条の前でバードウェイが片方のブーツを脱ぎ始めた。ストッキングも脱ぐ。
 白い足がするりと抜け出てくる。
 走り続けてつま先が広がった足ではない。細くまとまった、しかし中国の纏足のような不自然さを感じさせない足。
 王族や貴族のように人の上に立つ者の足。
 上条のごつごつした足なんかと違って実に柔らかそうだ。
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:00:12.45 ID:ff0K8NX4o

 しばらくそうしてみて、高さが合わないともう片方のブーツも脱ぐ。
 黒いガーターベルトと白い素足。そのコンストラクトは淫美過ぎて風紀委員を呼んでしまいそうなぐらいだ。
 そしてバードウェイが見下すように上条の前に立った。


「こういうのが好きなんだろう?」


 言って、バードウェイが上条の性器を裸足の方の足で踏みつける。


「――!!??」


 驚愕する。
 これまで感じたことのない感覚に上条の呼吸が止まる。

 親指と人差し指。二本の指が開いて亀頭のあたりを挟む。
 土踏まずの柔らかい部分がしっとりと幹を踏みつけてかかとの硬い部分が尿道の付け根に押しつけられる。
 硬い、といっても皮膚は柔らかい。しっかりとした骨組みを感じるのだ。
 ほれほれ、とからかうようにバードウェイが踏みつけると前後に開かれた足の間で幼い性器が花開いている。


「足こき、だったか? ジャパニーズ・ヘンタイはブリティッシュでも有名だぞ。 
 なに、私は天才だからな。初めてだって上手くやってみせるさ」

「ぐあっ……」


 踵が睾丸を踏みにじる。
 五本の指が器用にペニスを扱く。
 痛みと快感がごちゃ混ぜになって上条の脳を焼く。
 シルクのような滑らかで冷たい肌。触れ続けているとそれが暖かさに変貌する。
 踏むだけでは飽き足らないのだろうか。バードウェイが親指の下で筋裏を擦る。


「あうっ……」


 痺れるような快感。異常なシチュエーション。早く射精したいとばかりに睾丸がひきあがる。
 だが、その動きは踏まれているバードウェイには丸わかりだった。
 高慢な笑みで勝ち誇る。
 牙をむき出しにして微笑んだ。
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:00:41.52 ID:ff0K8NX4o

「まだまだ。もっと楽しませろよヒーロー」


 ぐりぐりと捻じるように。
 身悶えするほど硬直した上条の肉茎の先、紅い亀頭から先走りが滔々と溢れる。

 バードウェイの足裏を汚して踏まれる摩擦ににちゃにちゃという下品な音が混ざる。
 目の前に突きつけられるようなバードウェイの肉筋。
 そこが太股にかけて光っていた。


「なんだ? こんなことをしていっぱい膨らませて。いやらしい目つきで私の割れ目を見つめて。
 変態だな。変態だ。卑しい虫けらだ。
 性器を踏まれて感じているのか?」


 侮蔑。興奮。そして同じぐらいの強い愛情のような。
 そんな視線でバードウェイが上条を見下ろしている。

 ぐい。

 親指の腹で尿道口が抑えられた。これでは射精ができない。
 上条当麻が情けない顔で悲鳴を上げた。皮膚が裏返りそうなほどの強烈な快感だった。
 尿道に丸ごと指を突っ込まれたかのようにすら感じる。


「もっとだ、もっといい顔になるんだ」


 はあはあ。

 バードウェイの呼吸が荒くなる。目が血走っている。
 間違いなく興奮していた。
 責める行為に酔っていた。
 もともとS気の強いバードウェイである。無理もなかった。
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:01:14.46 ID:ff0K8NX4o

 くいっと足の位置が変わる。
 五本の指で竿を掴み、上下に擦り始めた。
 器用なことに片足一本で立っていながらバードウェイはその行為を行う。
 バランス感覚が優れているのだろう。

 より前後に脚が開かれて狭間の花は淫らに光っている。
 上条の視線が釘付けになる。


「ははっ☆」


 バードウェイが勝ち誇った。
 強く擦りあげた。


「――――っ!」


 目の前が真っ白になる。
 上条当麻が奥歯を噛むと同時に。

 ―――どくん、どくんどくん―――

 ペニスが跳ねる。少女の柔らかな足裏にめり込もうとする。
 どろりと濁った白い液体をぶちまけて汚そうともがく。あがく。
 汚液で足裏も甲も汚された。

 ―――どくん、どくんどくん、どくん―――

 するり、と親指と人差し指の間から亀頭が出て遠く高く放物線を描く。
 第二射は遠くバードウェイの腹のあたりにまで飛んだ。
 つぅと垂れて股間の幼い性器へと滑ろうとする。

 しかしそれはならなかった。
 バードウェイが指ですくって舐めたから。


「ンむぅ――苦いな、それに凄く濃い。変態め。こんなことで喜びおって」


 もちろん初めての経験だ。比べる相手なんかいない。
 それでもバードウェイが『濃い』と判断した。そしてそれは間違っていなかった。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:01:39.90 ID:ff0K8NX4o

 ぜいぜいと上条が荒い息をつく。
 魂が全て抜け落ちてしまったかのような快楽に脳の処理が追いつかない。
 しかし、同時に異常なまでの冷静さを取り戻している。
 異常な状況に酔っていた意識は明瞭に覚醒していた。


「―――もう、充分だろ。こんなこと好きでもない相手にするんじゃねェよ」


 びくん。

 レイヴィニア=バードウェイ。
 傲岸不遜自信過剰。無礼千万の少女の肩が震えた。

 上条は言葉を続ける。
 無様な格好で精液を撒き散らした彼にはもう言葉しか残っていない。


「確かにさ、興奮した上条さんがどうこう言える権利はないかもしれないけれども。
 こういうのは好きな相手とするもんだろう?
 もっと自分を大切にしろよ、馬鹿」


 上条は自身が今どんな格好をしているかを理解している。
 SMとかは分からないけれども、確かに足で踏まれて性的に興奮した、そういった需要があることは身をもって体験した。
 でも性的なことはそれなりに大切なものであってジャンクフードを食べる感覚で味わうものではないという観念がある。

 少なくともご褒美などという名目で好きでもない相手に女性器をさらけ出すような真似をバードウェイにして欲しくはなかった。
 そういった空気がバードウェイを怒らせる。
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:02:21.94 ID:ff0K8NX4o

「ほほう? 随分と勝手なことを想像して人を判断してくれるな。
 この私が、男と見れば尻を振るビッチだと思ってるのか。この私が。
 冗談じゃない。レイヴィニア=バードウェイを甘く見るな」


 バードウェイの視線が怒りに染まった。禍々しいオーラが背中から溢れてくる。
 上条の精液で濡れた足で再びペニスを踏みつけた。
 ぐぅ、と上条が呻く。


「ええ、おい。こんなことをして喜んでいたお前が偉そうにこの私に説教を垂れようというのか?
 下らない。何がヒーローだ。勝手に幻想を押しつけてくるんじゃない。
 お前は快感に喘いでいればそれでいいんだよ」


 否定するのだったら反応しないで聞き流せばよかったのだ。
 だがバードウェイは反応してしまった。
 プライドを傷つけられたからなのか、真実なのかは分からない。
 だが反応してしまった。

 言い訳は通用しない。
 それがわかっているからバードウェイはより強く踏みつける。


「ほらほら、びくびくしてるぞ。あれだけ出したばかりだというのに。ほら……ほらぁ……」


 ぐりぐりと踏まれると上条を鈍い痛みと鋭い快感が襲う。再び局部を嬲られて身体が喜んでいる。
 責めているようで、責められているようで、縋られている。
 ぐ、と奥歯を噛んだ。
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:02:52.18 ID:ff0K8NX4o


「なんだ、その目は? まだ足りないのか? もっとして欲しいのか?」


 サディストの女王様は言葉を強めるがどこか自信なさげだ。
 あっという間に元の硬さを取り戻し精液の潤滑油で扱いかれているペニスを踏みながらも不安の色が瞳に宿る。
 怒り顔が泣き顔に見えた。


「――お前は、それで、満足なのかよ」


 上条が言葉を短く区切りながら言う。
 性感は強い。暗闇の中、ランプの焔、足で踏まれるという状況。異常すぎる。
 だがそれでも言いきった。


「そうやって、自分の価値を貶めて。自分が子どもだってことも認めずに大人のふりをして。
 素直に泣けよ、喚けよ。癇癪を起こせよ。
 それぐらい――俺が聞いてやるから」


 上条は再び虎の尾を踏んだ。竜の逆鱗に触れた。
 レイヴィニア=バードウェイは上条が考えるより遥かにプライドが強かった。

 高いのではない。強いのだ。
 自分が見下されていると感じた。
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:03:44.31 ID:ff0K8NX4o


「この……偉そうに! ガキの癖に! ガキのくせに! なにもわかってないくせに! 鈍感野郎が!」


 足を退ける。
 バードウェイが先ほどのように近づいて上条の顔に自分の性器を見せつける。両手で開く。

 正座状態で拘束されている上条の目に先ほどよりもよほど湿っている性器の内側が見える。
 つるつるの土手はやけに色っぽく、内側の色も赤みを増している。
 しっかりと濡れた光沢。
 甘酢っぽい香り。
 小さな尿道口すらも見える。
 自身を伸ばしている真珠のようなクリトリス。
 男を頬張るための機能があるとは思えない小ぶりな膣口。


「ここで、お前を大人にしてやるよ上条当麻。感謝しろ。私が大人で女だってことをお前で証明してやる。
 光栄に思え」


 尊大で傲慢。己が一番だと信じて疑わない。
 だからこそ自信過剰だ。自信過剰を演出する。

 正座させられている少年の膝の上でM字開脚して腰を下ろす少女。
 上条の首に手をかけて支点とし開かれた花弁を巨塊になっているペニスに当てる。


「ん――」


 少しだけ緊張したような声。
 躊躇せずぐい、と自ら腰を下ろした。体重をかけた。


「―――――!!!???」


 いくら上条が男性としては背が低い方とはいえバードウェイと比べれば大柄だ。
 だから膝の上に乗る形になられても視線の高さは変わらない。
 ペニスが狭苦しい肉についばまれた瞬間、声なき悲鳴を上げるバードウェイの顔は薄暗くてもよくわかった。
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:04:26.41 ID:ff0K8NX4o

「ぐ――」


 痛い、と言わないのはプライドが強いからだろう。
 しかし肉体の方は彼女の意思ほどではないようだ。

 ぽろぽろと眦から大粒の涙が浮かんでは落ちる。
 上条の首筋に掛けられた両手がぶるぶると震えた。

 レイヴィニア=バードウェイは今自分の意思で大切なものをどぶに捨てた。
 アクセルだけがある彼女にブレーキは存在しない。
 例え自らの判断だろうとも、その姿は上条には悲しいものにしか映らなかった。
 ぐ、と一度唇を噛んで、言う。


「なんで、ここまでやるんだよ! 少し子供扱いされたからってここまでする意味あるのかよ!」

「お前が、私を子供扱いするからだろうが! 私だって女なんだ!」

「だからって――」

「特別なんだよ、お前は! それぐらいわかれこのクソ鈍感野郎!
 世界中どこにだって行けたのになんであの狭い部屋に来たと思ってるんだ!」


 睨みつけられる。
 涙で濡れた目で憎々しげに見つめられる。
 そして、突き飛ばされるような勢いで唇を奪われた。


「んむぅ――?」


 困惑する、目を回す上条。たっぷり一分程も唇を重ねてバードウェイが上条を解放する。
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:05:03.37 ID:ff0K8NX4o


「これでもわからないのか、馬鹿!」


 上条が驚いてバードウェイを見る。その瞳は怒りに燃えていて、それでいながらもう一つの想いを覗かせていた。
 瞬間、理解する。同時に信じられなくなる。


「え――、おま、バードウェイ、お前――」


 言葉はそこで途切れる。
 もう一度唇を奪われたから。

 亀頭の半分程度を膣口に埋めて苦痛に耐えている少女に抱きつかれて唇を奪われる。
 鈍感すぎる上条でもいい加減に理解した。


「――ごめん。わかったよ。わかったから、もう止めよう? 痛い思いをするだけだ」

「いやだ――さいごまでやる――」

「――っ、じゃあ、痛いことだけは止めよう。最後までやるよ。わざわざ辛い思い出を作る必要はないだろう」

「ふざけるな――わたしは――」

「レイヴィニア=バードウェイ。ただの女の子だよ」


 ぶるぶると震えている。
 涙がぼろぼろと落ちている。

 バードウェイに対する愛情は薄い。それなのに応えようとしている。
 それは同情と同義だが、上条はだからといって放っておけるほど残酷ではなかった。
 優しさではない、甘さだと誰かは言うかもしれない。
 それでも上条は震える少女を見捨てることができない。

 外道だ。レイヴィニア=バードウェイは滅ぶべき悪党である。
 矛盾してる。だが上条はその矛盾が嫌いではなかった。
 覚悟を、決める。
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:05:37.13 ID:ff0K8NX4o


「外せよ。手と足の枷を。逃げねぇよ。最後まで抱いてやるよ。女だって認めてやる。
 このままじゃ抱きしめてやることだって出来ねぇ」

「―――生意気なんだよ。皮かぶりのガキのくせに」

「オボコが言うな」

「もう、違う」


 ぶるぶると震える両腕。おそるおそる腰が持ち上げられ、赤い血がつぅと太股を流れる。

 裂けたのだろう。
 多少は濡れていても本格的ではなかったのだ。
 処女膜に痛覚はない。男を受け入れる準備の整っていなかった膣が傷ついたのだ。
 ぼろぼろと涙をこぼしながらバードウェイが上条の枷を外していく。

 皮作りの拘束具。
 シンプルなつくりだが震える指先では少々時間がかかった。
 手足が自由を取り戻して、上条が立ち上がる。


「ホテルだって言ったな。柔らかいベットはあるのか?」

「――隣の部屋に」

 別人のように大人しくなったバードウェイ。痛みで歩けないようだ。
 裸のままの上条は隆々とペニスを勃起させたまま彼女を抱えた。
 所謂お姫様だっこ。

 ひゃ、と可愛らしい悲鳴を上げるバードウェイは羽のように軽い。
 腕の中で震えている女王様が可愛らしいと上条は思った。
 ふわふわの髪。つぶらな瞳。小さな唇。バランスの取れた顔。勝気すぎるところが珠に傷だがそれさえも可愛らしい。

 隣の部屋はコンクリートの打ちっぱなしの調教部屋と違っていた。
 しかし壁の色は黒でベットのシーツまで黒であるところはやはりいささか趣が異なる。

 小柄なバードウェイをそっと横たえた。
 震えている。
 獰猛さは欠片も見当たらない。
 枕元にあるスイッチで部屋を明るくした。
 レイヴィニア=バードウェイは暗い場所で横になることを強く嫌う。
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:06:14.22 ID:ff0K8NX4o

 上条はそんな彼女の膝を割り、傷ついた性器をむき出しにして顔を近づけた。
 毛も生えていない白磁造りのような艶やかな肉の筋。
 ちろり。


「ひあっ!」


 上条が舌を這わすとバードウェイが乙女のような悲鳴を上げた。
 小水の臭いがする。血の味がする。いやらしい女芯の匂いがする。自分の飛ばした精液の残滓がある。

 少し開いた割れ目の内側の赤い粘膜。
 上条は募る想いを感じながら舌を動かしていく。

 ふちゃ……ぺちょ、ぺちゃ……ちゅる……

 肉の裂け目に舌を潜り込ませていく。


「ふわっ、あ、あ、そこ……いいっ!」


 バードウェイが上条のツンツン頭を抑え込んだ。
 強く股間に押し当てる。

 片方だけのガーターストッキングと素の白い太股とが上条の耳のあたりを柔らかく挟みこんだ。
 圧迫される鼻孔。呼吸が制限される。圧倒的なメスの香りを強制的に嗅ぐ形になる。
 僅かに息苦しいが、あの高慢なバードウェイにこんな官能的な声を上げさせているのだと思うと上条のペニスは強く勃起していた。

 バードウェイの熱気と湿気が顔面を襲う。
 むっとする女の匂い。
 くらくらした。
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:06:41.39 ID:ff0K8NX4o

 べちょ……ぬちゅ……ぬちゃ……

 一心不乱に舌を動かす。傷ついた粘膜を少しでも癒そうとする。
 ピンク色に染まった大陰唇も小さく畳まれている小陰唇も、紅真珠のようなクリトリスも、ゼリーのような尿道口も、膣口も。
 無毛のすべすべとした肌がしっとりと唇に調和する。張り付いてくる。
 愛らしい肉筋の中の蜜が溢れだしてシーツにまで垂れる。舌で味わうように絡ませる。
「あ、はぁっ、はっ、な、なんだよ、変態! 変態!! こんなに
、舌遣い、上手いなんてっ! はあんっ!!!」


 ちゅる、ずっ……

 溢れ出る淫蜜を啜ってやるとバードウェイは身も世もないほど切なく鳴いた。
 滔々と蜜を吐き出す膣口に舌を伸ばす。
 ずいぶんと消えたがまだ若干鉄の味がする。


「はぁ、はぁ……そんなに美味しいのか? いやらしく舐めて……」


 少しバードウェイの強気が戻ってきた。
 痛みが引いてきたのだろう。
 腰を浮かして上条に押しつけてくる。
 やはり支配する悦びの方が強いらしい。

 だがそれは同時にレイヴィニア=バードウェイが一人の女で一人の男として上条当麻を求めている証左でもあった。
 要求されるまま上条はクリトリスを唾液でべとべとにする。
 元々濡れていたが自分色に染め上げる。
 そのたびにバードウェイが嬉しそうに切なそうに啼いた。
 十二歳相当の未熟な身体は外見と裏腹にしっかりと女だったのだ。
 肉体が嬉しそうに淫蜜を溢れだし上条の顎をべとべとにしていく。
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:07:10.40 ID:ff0K8NX4o

 奉仕する悦び、のようなものが上条の中に浮かんでくる。
 隷属しているつもりはないがどんなわがままでも聞き届けてやろうという気分になる。
 同時に、それ以上に男根が強くこの場所を支配したいと訴えていた。
 上条当麻も健康な青少年である。性欲は強い。

 ちゅ、ちゅぶ……ちゅぶ……

 クリトリスに吸いつきながらバードウェイの顔を伺う。
 黒いレザー衣装の向こうの白い顔は赤く火照っていて男を誘った。
 だらしなく口を開いて快感に酔っている。
 視線が、絡んだ。


「―――いいぞ、もう。たぶん大丈夫だから」


 レイヴィニア=バードウェイが言う。
 なにが、を言わない。
 言う必要が無い。
 侮蔑していたはずの瞳の色はどこにもなかった。

 無数の糸を引きながら上条がバードウェイの股間から顔を離した。
 そして顔を耳まで真っ赤に染めながらバードウェイが両膝を抱える。
 M字開脚の形になる。

 花弁はいやらしいほど咲き誇っていて上条を誘う。
 開かれたそこを見て上条のただでさえ反り返っていたペニスが限界以上に膨らんだ。
 愛らしいと思った。妖艶な笑みを浮かべている傲慢な少女が。
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:07:37.92 ID:ff0K8NX4o


(ああ、上条さんは本当にロリコンになってしまうのですね――)


 ほんの僅か残った理性が悲鳴を上げたがこの状況では本能の方が強かった。
 ぎし、とベットのスプリングを鳴らしながら上条がバードウェイに重なる。
 ペニスに手を添えてヴァギナの穴に押し当てる。


「―――――!?」


 二度目の挿入の時もやはりバードウェイは悲鳴を上げなかった。
 ただ、苦痛の色は驚くほど少なかった。
 亀頭が熱い体温に包まれる。ぬちゃ、と淫らな水音を立てて吸いこまれる。


「小さい――な――」


 思わず上条が感想を漏らした。
 M字開脚から上条の腰に足首同士を絡ませたバードウェイが睨みつける。


「小さくて悪かったな。発育不良で申し訳ないな。そんなに脂肪の塊が好きか馬鹿野郎。
 たかだか脂肪の有無程度で女の魅力が左右されてたまるかなんだこの野郎私を誰だと思ってやがる」

「いや、そういう意味でなくてな」


 どうやら胸が小さいことはよほど気にしているらしい。
 ボンテージ衣装に隠れている慎ましい膨らみを両手で隠しながらバードウェイが怒りを露わにした。

 上条は苦笑する。
 小柄な身体が震えている。
 淫蜜に濡れた女芯は既に縦筋ではない。上条のペニスの形に丸く膨らまされている。

 強い興奮状態。
 痛みはさほど感じていないようだ。
 黒と白の足に力を入れて上条にしがみつく。首の後ろに手を回す。腰を入れろと誘う。
 恐れなんて微塵もない。自信に溢れて顔を火照らせる彼女はレイヴィニア=バードウェイだった。
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:08:20.22 ID:ff0K8NX4o

 ずず、と少し少し飲み込まれていく。
 本能は一息に奥まで入れてしまいたいと訴えているが流石の上条もそれはできなかった。
 それに、せっかくの美処女を性急に味わってしまってはもったいないという思いもあった。
 甘いため息を吐いて妖艶にバードウェイが笑う。


「ほら……もう全部入るぞ……」


 初めてなのにしなやかに自分から腰と足とを使った。
 小ぶりな女性器に上条の極太ペニスが飲み込まれていく。
 眉間を寄せて、バードウェイが歯を食いしばる。
 苦痛が少ないとはいえゼロではない。第一、小柄な彼女に上条のペニスは大きすぎるのだ。

 ぬぷっ、ぬぷぅっ!

 結合した部分からぬちゃりと水音が立つ。淫蜜が飛び散る。
 バードウェイの瞳が細くなって艶やかな唇が甘く開いた。


「ひ、はぁぁ……はいったぞ、お前のが、全部……はいったぁ……」


 柔らかな膣口が歪む。誰も足を踏み入れたことのない処女地が踏破される。
 二人の分泌液を潤滑油にして受け入れられる。奥の粘膜がきゅうきゅうと啼く。
 肉茎に絡む粘液に血の色が再び混じった。

 奥の赤ん坊のゆりかごを初めて突かれる感覚にバードウェイはすべてが入ったと勘違いした。
 だが正確ではない。まだ上条のペニスは余裕を残している。四分の一ほどが外部に露出したままだ。
 首筋に手をまわして抱きついてくる少女の甘い体温。はあはあという荒い息遣いとが心地よい。
 カールした金色の前髪が汗で張り付いている。いや、顔そのものが汗まみれだ。


「わ、私の中で、こんなにおちんちんおっきくして、この、変態が……んはっ、あっ……びくびくしてる……
 気持ちいいのか……なぁ?」


、くちゃくちゃ、と濡れた肉に周囲全てを舐められるような感覚に上条は短く呻きをあげる。
 その姿にバードウェイは満足そうに微笑む。
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:08:51.21 ID:ff0K8NX4o

 貪欲に快楽を味わいたがっている上条は必死になって腰を動かしたいという衝動をこらえていた。
 小さな身体だ。無理をさせている。
 その禁忌に上条はときめいてしまっている。
 不敵で尊大な少女にそこまで耐えさせているという事実に感動している。
 だが、きつく締めつけてくる膣肉だけでは物足りないと若い肉体は訴えていた。


「……動かせばいいだろ。動かしたいんだろ? はぁ……お前は足で踏まれて喜ぶ変態なんだから、んっ、正直になれ、よ……」


 左手を首裏にかけたまま、右手で上条の頬を撫でる。
 虎のようだった少女が猫のように甘えている。素直ではないだけで。


「いいんだな?」

「くどいぞ。んっ……二度も言わせるな、馬鹿……あっ」


 ぬぷっ……ぬぷっ……ぬぷっ……

 上条がバードウェイの真っ白な尻肉を掴む。
 掴んで腰を動かす。
 隙間なくペニスを締め付けてくる膣肉の甘さと狭さと柔らかさ。
 亀頭に絡みつく柔らかい肉の刺激に痺れるような快感が走る。
 肉棒が埋まる膣穴が捲りあげ押し込まれるたびに強気な少女が快美と苦痛に眉を顰める。

 一種の被虐的な喜びなのだろうか。
 苦痛があっても抱きついている男が喜んでいるという状況にバードウェイは優越を感じつつある。

 ずぷっ、ずぷっ、ずぷっっ。

 足を絡まれているからそれほど派手には動けない。
 しかし徐々に上条の腰が加速していく。

 やがて白と黒の足が解ける。切なそうにバードウェイが啼く。
 上条はガーターストッキングに包まれた黒い足を肩に担ぐ。

 屈曲位の変形。脚を広げられる形になって上条の腰が大きくバードウェイに打ちつけられる。
 より大胆な動きにバードウェイの淫蜜がより増量した。より滑らかに激しくピストンが行われる。
 膣肉がペニスを頬張って喜んでいる。

 汗まみれになりながら二人は愛欲の泥沼に塗れていく。
 欲求を吐き出したいという思い。全てを受け止めたいという願い。
 馬鹿馬鹿しいほどにシンプルなそれが純度を高めて結晶になっていく――
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:09:13.57 ID:ff0K8NX4o


「同情で、抱いてくれた、のは、わかるけど、一緒にいて、くれないか?」

「それに、『はい』って、今答えるのは、卑怯すぎるだろ」

「ふん……足で踏まれて喜ぶ変態が……私以外の、はんっ、誰に、相手、されるっていうんだ……」

「そうかも、な。でも嘘をつきながら側にいたくはないな。あんなことはもうたくさんだ」


 とある少女に記憶喪失のことを隠し続けていた。
 嘘を貫くために嘘を重ねて、結局ふわふわとしたスポンジのような土台のままで拳を振るった。
 かつての上条当麻を裏切っては行けない、という薄紙を重ねてぼやけた『今』の自分。

 自分自身を基準に置くことができなかったから誰かからの好意に一つも気付けなかった。
 今の今まで、この不敵な少女に薄紙を剥がされるまで。


「いいさ……嘘を、本物に、変えてやるよ……私は、レイヴィニア、んっ、バードウェイ、なんだぞ?」


 傲岸に笑った。
 不遜に笑った。
 レイヴィニア=バードウェイはこうでなくてはいけない。
 いついかなるときも。
 例え断頭台にくくりつけられていても。
 例え上条たちを裏切り学園都市協力機関の離反を促しても。
 そして、ただ一人の少女として組み伏せられて女の顔をしていても。


「はははっ」


 上条は笑った。
 こういうところは好きになれそうだ。

 大げさに腰を振りながら顔を近づける。
 当然黒い足は逸らされる。柔らかくシーツの上に沈む。
 一瞬、紅い顔が更に赤くなったがバードウェイは黙って静かに瞼を閉じた。
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:09:47.82 ID:ff0K8NX4o


「んっ――」


 性衝動激しい行為の最中の、子供のようなキス。
 ただ唇を重ねるだけ。
 それは契約のしるしだった。

 ぬぢゅ、ぬちゅ、ずぼっ、ぬぢゅ、ぢゅぶっ!!!

 ぎゅっと抱きついてくるバードウェイ。もはやその顔に苦痛の色はない。
 密着される心地よい温もりと下半身に起こる強烈な肉悦に溶かされていく。


「当麻! 上条当麻! あっ!」


 上条の筋肉質の太股の狭間でバードウェイの白い尻がゴム毬のように弾む。
 ベットのスプリングが揺れる。
 ぷちゃ、ぷちゃとメスの汁が弾けて散った。
 柔肌すべてから玉のような汗が浮かぶ。


「バードウェイ……」

「馬鹿者、んっ、こんなときぐらい、あんっ……名前で呼べェ!」

「レイ、ヴィニアっ!」


 名前を呼んだだけで湧きあがってくる狂おしいほどの愛おしさ。
 抱きしめながら抱きしめられている充足。


「ぁひぃんっ! 初めて、なのに、こんなに、感じてるぅっ! 変態の、マゾ、ちんぽ、なのにぃ!!!
 ぐちゃぐちゃになるっ! もう、何も、考えられないっ!」


 割れ目が泡立つほどの高速ピストン。苛烈なまでに打ちつけられている。
 そのことにバードウェイ、否、レイヴィニアは痛みを感じたりはしていない。
 亀頭のカリ首を摩擦するようにしっかりと絡みつく柔らかい膣肉が上条を快感のうねりに突き落とす。
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:10:24.79 ID:ff0K8NX4o

 レイヴィニアもまた突き落とされつつあった。
 打ちあがっていくのに頭からまっ逆さまの錐揉み状態で螺旋を描きながら落ちていく感覚。
 飛行機が落下するときに中の乗客が感じる無重力のような、矛盾。
 上条もまた上りつめている。このまま中にすべてをぶちまけてしまいたくなる。


(それだけは、ダメだな――俺には責任取れないからな、まだ――)


 だが、察したのだろうか。
 バードウェイの白と黒の足が先ほどのように上条の腰に絡んだ。
 強くしがみつく。
 上条の腰を離そうとしない。


「ば、馬鹿、お前!」

「はーっ、はーっ、だって、身体が、勝手に……欲しがってるんだ、お前を、当麻を、欲しがっていてしょうがないんだっ!
 だって、痺れちゃうっ! これ、全部、私のぉぉお!!!」


 後頭部をベットに押しつけてレイヴィニアが仰け反る。
 それでいながら胸は強く押し付けられる。
 レザー地のごつごつした感触の向こうにつつましい乳房の柔らかさを知ってしまう。


「出してっ! まだ誰も汚したことのない、子宮を、全部、当麻色にしてぇっ!!!
 このままどびゅどびゅって! 一滴だって漏らさないからぁ!!!」


 カールのかかった艶やかな金髪が淫らに激しく揺れる。
 前髪の下の瞳は勝気でありながら完全に欲情していた。メスの顔をしていた。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:10:53.36 ID:ff0K8NX4o

 ぬぷっ、ぬぷっ、ぬぷぷぅっ!

 上条の腰がこれまでよりも深く激しく突き入れられる。
 濡れた摩擦音と男と女の嬌声がラブホテルの一室を満たしていく。響き渡る。奏でられる。
 二人の身体から滲んだ汗が混じり合って絡み合って一つになる。

 猥雑で性的な粘膜の臭気が何も考えられない。
 ぱんぱんと打ちつけられる上条の腰。極太のペニスが幼い肉体に容赦なく打ちこまれる。
 連続する音とともにレイヴィニアの中の炎が一層大きく燃え上がった。
 瞳が先ほどと異なる涙で濡れる。


「いいっ! 凄くいいんだっ! あっ……はぁんっ! 体中の穴が開いちゃう! 溶けちゃうっ!!!
 とうまっ! 一緒にイかないとっ! お仕置き! だからなぁあ!!!」


 ぎゅっ、きゅるきゅるっ!

 膣肉が強く締め付けられた。
 絶頂が近くなって男の肉を貪ろうとしていた。
 反発するようにペニスが限界を超えて太くなる。
 上条の脳が真っ赤に染まる。
 もう、射精することしか考えられない。


「出るっ! 出すぞっ!!!」


 ―――どくん、どくん、びゅるっ!!!


 が、と思わず息を飲むほどの快楽が駆ける。レイヴィニアの狭苦しい膣内でペニスが暴れて灼熱の液体をぶちまける。
 腰を限界まで打ちつけて、余るほどの長さのペニスをすべて飲み込ませて、上条が快楽の全てを吐き出した。
 濁流のような射精。目の内側が痛くなるほどの。


「AHHHHH! I’m  coming! Aoooohhhh!!!]

 レイヴィニアの唾液が飛び散った。
 Oの字に広げられた口が赤い舌を覗かせる。
 泣き出しそうな顔が仰け反って上条に白い喉を見せた。

 強張りが溶けて子宮に流れ込むような感覚に上条はだらしなく溶けていく。
 最後の一滴まで子宮に絞りとられるような貪欲な肉粘膜にペニスはしゃくりあげ続ける。
 その腕に強く抱かれながらレイヴィニアはいつまでも終わることのないような絶叫の声をあげて快楽の性悦に打ち上げられた。

 少女の小柄な身体が痙攣しながら硬直する。
 淫蜜まみれの膣口はひくつきを止めずぶしゅぶしゅと淫蜜を吐き出して上条の陰毛を濡らす。
 時間にして実に十分ほども絶頂し続けたレイヴィニア。
 疲れ果てて力も抜けた彼女を上条は優しく抱きしめながら自分の中に確かにある愛おしいという気持ちが本物であることを確認していた。
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:11:19.19 ID:ff0K8NX4o

――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――


 学校から帰ってきたら愛しいトンデモガールが冷蔵庫を開けて魚肉ソーセージを頬張っていた。
 肩にかかる程度のカールのかかった短い金髪。
 白いブラウスとスカートに黒いガーターストッキングという服装。
 十二歳の少女という外見と裏腹にイギリスの黄金系魔術結社「明け色の陽射し」を束ねる魔術師。
 残忍にして狡猾、ブレーキの代わりにアクセルがもう一つ備え付けられているような情け容赦ない女。
 レイヴィニア=バードウェイ。
 胸が薄いことを上条は誰よりもよく知っている。


「いきなりだな。インデックスはどうした」

「ん? 邪魔だから焼肉食べ放題のチケットを渡して消えてもらった。
 しかしあれだな。敬虔で清貧を尊ぶはずのシスターがあんなに欲望に忠実でいいのだろうか」


 むしゃむしゃ。
 上条家の貴重なカロリー源である魚肉ソーセージをバードウェイは容赦なく頬張っている。
 まったく、どちらが欲望に忠実なのかわからない。

 あの後、抱きしめ合うように互いの体温を確認しながら眠りに就いた。
 そして上条が目を覚ますと彼女はいなくなっていた。
 ただ一枚、『マークに謝ってくる』というメモを残して。
 上条が右手で触る懸念があったのか、ごくごく普通のメモ用紙。
 ピンクでちょっとしたキャラクターデザインが入ったものだった。
 女の子らしいメモ帳の持ち主が上条の起きるのを待たなかったのは恥ずかしかったからなのか。
 そういう弱みを見せたくなかったかもしれない。
 宿代、なんて言葉も矛盾して。
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:11:51.30 ID:ff0K8NX4o

 少し寂しさを覚えつつも、まるで猫のようだ、と上条は笑った。
 気まますぎて捉えられない。
 一度は虎と例えた彼女だがどうやらその系統で間違いはないようだ。
 そして猫科の彼女が今目の前にいる。


「知っているか? この国では代替品、廉価品で通っている魚肉ソーセージだが欧米ではヘルシーなものとして人気があるんだぞ。
 カニカマとかもそうだ。ローカロリーで大人気だ。戒律でカニが食えない猶太人も大喜びで食ってるんだ。
 まったく、この国の人間は自分たちが作り出したものの価値を知らなすぎる。
 ああ、そうそう。猶太人といえばチーズと牛肉の組み合わせは駄目だったり金曜日に肉を食べてはいけなかったりと色々あるんだ。
 ハンバーガー屋のフィッシュバーガーがそのために開発されたのを知ってたか?」


 けぷ、とだらしないゲップをしてバードウェイが即席の講義をする。
 やれやれ、と上条は欧米人のように肩をすくめた。


「で、なんのようだ? また何かしでかしたのか?」

「酷いな、私をなんだと思っている。
 実は最近パトリシアが中華料理に凝りだしてな。
 私が辛いものが苦手だとわかっているのに山椒たっぷりの麻婆豆腐なんかつくるんだぞ。
 しかも三日連続だ。おかげで舌が痛いこと痛いこと。
 まぁ、クリア寸前のセーブデータを私が上書きしたのを根にもってるのかもしれないが」


 いや、それは根にもっているんだろう。
 額に手をついて上条が天を仰ぐ。

 まったく、このトラブルメイカーが。
 厄介事しかできないのか。
 それなのに、微笑ましい。

 そしてそういう風に思える自分自身を上条はどこか嬉しく思った。
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/29(日) 12:12:17.40 ID:ff0K8NX4o


「というわけでしばらく厄介になるぞ。なに、安心しろ滞在費用は出してやる。
 ――なんなら永久就職でもこっちは構わんのだが?」


 呆れる上条にバードウェイはつかつかと歩み寄って、一歩にも満たない距離で見上げる。

 華奢な身体。細い肢体。
 勝気で不敵な顔つき。頬が赤く染まっている。


「惚れさせると言ったよな。私は目的のために手段を選ばんのだ。ほら、宿代の手付分だ」


 言って、目を瞑る。
 腰の前で両手が硬く握られる。少し震えている。少しだけ、怯えている。
 世界のすべてを敵に回したって笑って戦える少女が、上条当麻の答えに怯えている。
 突き放されるんじゃないか、と。
 それぐらいに、華奢で、細くて、か弱い。
 きっと、上条だけが知っている。


「ったく。ホント勝気なお姫様だな」


 笑いながら上条は気ままな猫のような少女に優しく唇を重ねた。

476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/29(日) 12:17:37.37 ID:ff0K8NX4o
バードウェイ姉妹ってどっちも12歳表記なんですよね
レイヴィニアは12歳「ぐらい」だから違うかもしれんけれども
年子なのか二卵性の双子なのかさてどっちだか 
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/06/04(月) 16:44:10.69 ID:DSTpLeAlo
スイマセン、のんきな話ですが投下します
なにやってるんだとか思うかもしれませんが 
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:44:53.45 ID:DSTpLeAlo

 本当に、不覚でした。
 超、無様でした。

 久方ぶりの浜面とのデートでしたから少し無理をしていたんだと思います。
 頭が痛かったしお腹も痛かったし。
 未経験だったからってそれ相応の知識だってあったはずです。

 でも、全部抜け落ちてました。自分には関係ないことだと思ってたんです。

 だって、いくら今は平穏に暮らしているからといったって私は暗部出身の人殺しです。
 置き去りで、両親の顔なんて超知らなくて、暗闇の五月計画で実験漬けで、友達なんかいなくて。
 そしてずっと殺しばっかりやってきていて。

 世間、なんてものに染まれると思っていなかったしそんな自分が超想像できませんでした。

 私はただの私で環境の赴くまま生きていくことができればそれでいいんであって、適応ができても本質が変化することなんて超考えられませんでした。

 ずっと、力だけがあればいいんであって、ときどき楽しみにしている映画の世界で遊べればそれで満足していたはずです。
 別に長生きしたいなんて思ってなかったし自分が成長するなんて概念そのものが超欠けていました。
 ただ今日生き延びられればそれだけで良かったんです。

 久々の映画で、楽しみで。
 少しぐらい無理をしてもいいかなって。

 映画は当たりでした。ショートフィルム八本のうち二本は十分なものです。
 でも終わりの方になると頭がくらくらしてよくわからなかったと思います。
 最初の方でよかったですよ。
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:45:22.95 ID:DSTpLeAlo

 浜面はいつか麦野と滝壺さんがプレゼントした白いスーツでした。
 コーラとかかからないようにかなり気を使ってました。
 大切にしているのがよくわかったから一瞬手に持ってるメロンソーダぶっかけてやろうなんて思ったりもしました。
 体調不良で超いらいらしてましたし。

 でも、やっぱり大切なものを汚すのは私には超できません。

 できないんですよ。

 映画が終わってどっかで軽食でも済まそうかって話になって、麺類だとソースが跳ねちゃいますね、なんて話をしてた時。
 劇場が明るくなって誰もいない上映室に二人で立ち上がった時。

 つぅって。

 私の股間から血が流れました。

 え? って正直困惑しました。
 誰かから攻撃を受けた? その感覚はありません。
 私の窒素装甲は物理的な攻撃に関して言えばほぼ無敵の能力ですが、物理の壁を越えてくる能力に関しては超役に立ちません。
 空間転移系の攻撃を受けたのかと疑いました。

 逆に浜面が冷静でしたね。
 いえ、確かに驚いて困惑してましたよ?
 でも私なんかよりよっぽど現実を理解していました。

 急いで私を抱きかかえてトイレに連れてってくれました。
 女子トイレでしたけどどうせ客なんかいない映画館です。誰もとがめませんでした。
 そして浜面が「薬は持ってるか」「用具はあるか」「着替えを用意した方がいいか」って聞いてきて。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:45:54.42 ID:DSTpLeAlo

 正直、超わけがわかりませんでしたよ。

 だって、私は自分のことだったのに自分に初潮がきたんだって理解してなかったんですから。

 三分ぐらい上の空で浜面のこと見ていて、やっとそれに気づいたとき。
 大声で泣いてしまいました。
 わんわん泣いてしまいました。
 この状況で泣いたらどうなるかなんて超思いつきませんでした。

 不安だったんです。
 超怖かったんです。
 そしてこんな私を浜面に見られたことが辛くてしょうがなかったんです。

 だって、だって。
 本当に怖かった……
 自分の体なのに自分の知らない現象が起きていて、そんな不安定な自分を一番見られたくない人に見られている。
 こんなの耐えられる道理がありません。

 流石に従業員の人が来ちゃうって判断したんでしょうね。
 一瞬だけためらった浜面がスーツのジャケットを脱いで私の腰回りに巻いて両腕で私を抱えました。
 抱えて走りだしました。

 怖かったけど、その行為に超違和感を覚えました。

 だって、大切にしているのに。
 ジュースの汚れだって気をつけているぐらいなのに。
 こんなことしたら私の経血がついちゃいます。
 白いスーツに血なんて絶対に落ちない。
 浜面が一番大切にしているものを私が汚しているって。

 怖くて不安でもうどうしようもなくって。
 浜面の腕の中で思いっきり暴れました。
 私の能力ならショートアッパーで浜面の顔面がミートソースになります。それぐらい超わかってます。
 それでも暴れました。
 逃げたかったんです。超逃げたかったんです。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:46:20.23 ID:DSTpLeAlo

 だけど浜面はそんな危険物そのものの私を離しませんでした。
 強い腕で私を抱きかかえたまま思いっきり汗だくだくになるまで走って。
 浜面たち三人が住む昔のアジトまで運んでくれました。

 その後のことはよく覚えてません。

 滝壺さんは生理が重いらしく痛み止めを常備していたからそれを飲まされて、あとは大きかったですけど滝壺さんの下着とジャージに着替えさせられました。
 裸を見られるのは嫌でしたけど半分無理矢理に浜面に着替えさせられました。
 足を拭かれて、制服のスカートと靴下はすぐさまクリーニングに出されました。
 あの、白いジャケットと一緒に。

 そしてそのままぐっすりです。
 疲れてたんですよね、やっぱし。
 浜面に一言のお礼もお詫びも言わないで眠っちゃいました。

 目が覚めると滝壺さんと麦野が居ました。
 浜面から大体の話を聞いたみたいです。
 麦野なんてすっごく優しくて、私超安心してしまいました。

 浜面のスーツを汚したこと、謝りました。
 大切にしていたのにもう取れない汚れが付いてしまったんです。
 白だから、もう着れません。

 そうしたら滝壺さんが、リネンが半分はいってるから汚れが落ちやすい生地だって言ってくれました。
 慰めてくれたんです。
 けど、血液って、無理だと思いますよ。
 学園都市の技術でも落とせるかどうか。分子単位で絡みつくのに。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:46:47.33 ID:DSTpLeAlo

 浜面が大切にしていて、それはきっと二人からのプレゼントで、私はそんな思いに泥を塗ったのに、なんで怒らないんですかね。

 素直にそう聞くと、麦野が、浜面にとっては服よりもあんたの方が大切だったからに決まってるでしょ、って。
 そういうふうに判断したことを責めたりしたら私が浜面に怒られるじゃないって、笑って。

 なんで笑えるんですか?
 おかしいじゃないですか、浜面が自分たちよりも私を選んだんだったら責めてくださいよ。詰ってくださいよ。
 なんでそんなに自信満々なんですか。

 力があるからですか?
 私が人生のすべてを奪われて身に付けた大能力ってものが毛虫ほどの価値もないほど強い能力者だからですか?
 昔だったら少しのミスでも氷のような目で処断してたじゃないですか。

 大体、なんで麦野が浜面の隣に普通に居るんですか。
 そのことを滝壺さんが不満に思わないんですか。
 自分の男が自分じゃない女を見ていて不快に思わないんですか?

 私は、滝壺さんを守る浜面が好きだったのに、なんでこんなことになってるんですか。
 おかしいじゃないですか。超おかしいじゃないですか。

 自分でも止められませんでした。
 ずっと思っていたことが堰を切ったように溢れだしてました。
 浜面も、滝壺さんも、そして麦野のことも私は何一つ理解できない。そのことが超不安で超怖くて、私という形は壊れかけてました。

 やっぱり、不安だったんですね。

 ぼろぼろと涙がこぼれて、しゃっくりが止まらなくなって、自分がどんどん小さくなってしまいそうで。
 自分という土台がぐらぐらと揺れている音が聞こえました。
 そして、自分が不安だからってその鬱憤を晴らすように誰かを詰る自分が矮小すぎて滑稽でした。

 なのに滝壺さんは私のことを抱きしめてくれました。
 暖かかったです。
 こんなときと全然関係ないはずなのにおっぱいも見た目以上に大きくて、すごく女性的でした。
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:47:19.67 ID:DSTpLeAlo

 そして、私に語ってくれました。
 あの時ロシアで何があったのかを。
 麦野は口一つはさみませんでした。

 ひとつひとつ、数珠玉を重ねていくみたいな言葉で、しっかりと確かめるように。

 最後、もう崩壊寸前の麦野を浜面が抱きしめるシーンを見ていて、もう勝てないなって思ったって、滝壺さんは言いました。
 浜面は麦野を殺すことができない。これから先の未来、どんなことがあっても麦野を守ろうとするって確信したって。
 自分も守ってくれるだろうけど、もし麦野を切り捨てたら浜面はいつか絶対に後悔するだろうって。
 その後悔した顔を見たら自分が自分でなくなっちゃうって。

 もし、本当に心の底から好きな人が絶対後悔するってわかっちゃったら、たとえ自分だけ見てくれないってわかっても。
 その人が後悔しない選択をさせてあげたいって。

 自分の分の自分なんかいらないから。
 苦しくても辛くても大切な人が苦しむよりはましだからって。

 最後に、勘違いしないでよ、って滝壺さんは付け加えました。
 今、とっても幸せだよって。
 自分が好きな人を好きでいてくれる人がいて、その人が自分の大切な人のことを幸せにしてくれているって、そのことが幸せだって。

 なんですかそれって、思わず笑っちゃいました。
 下手な日本語ですよ。超へたくそです。ゲシュタルト崩壊してるじゃないですか。

 でも、少しだけ三人の関係が理解できたような気がしました。
 いつか、麦野が一生分の恋をしてるって言いましたけど、それだけじゃないって。
 そんなことだけじゃないって。
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/06/04(月) 16:47:54.56 ID:DSTpLeAlo

 私は、いつか自分が大人の女性になった時に、浜面が見てくれるような存在になるんだって、なんとなく思ってましたけど。
 勝てませんね、こんなんじゃ。
 あはは、子供じゃないですか、私。超子供です。
 すごい差を感じました。
 見ている視線が違いますよ。

 ……ふざけないでくださいよ。
 なんですか、これ。
 どれだけ私を惨めにすれば気が済むんですか。
 どんなに頑張ったって私はそういう風にはなれない、なれっこない。
 自分の中のちっぽけな自分のために生きてきたんですよ。現実ってやつに追い回されながら、誰も救ってくれなくて、だから必死に逃げてきたんです。

 それなのに、私の存在を否定するようなことを言わないでくださいよ。
 私だって守ってほしかった! 誰一人として甘えることなんてできなかった!
 浜面だけは優しかったのに!
 でも、浜面は私なんかには似合わないから、だから今は滝壺さんを守ってくれてればよくって!
 いつか、私がもっと強い大人になったら!
 そうしたら!!!

 でも、こんなの、勝てっこない。
 だって、私はどこまで行っても私のことしか考えられないのに、二人とも、きっと、自分のことよりも浜面のこと考えてる。
 自分の胸を見下ろすと、ぺたんこで、到底大人の女なんかじゃない。
 悔しいじゃないですか。超惨めじゃないですか。
 もし隣にいたって、この枠の中に入れたって、辛くなるだけじゃないですか。

 救いがないのはきっと私の中の物語で、二人はちっとも悪くないのに。
 私は思いっきり泣きじゃくりました。
 泣いている理由なんて言えませんでした。
 それなのに滝壺さんも麦野も優しくて、そのことがますます私を惨めにさせていったんです。

495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/07/26(木) 21:42:15.75 ID:vNtzS52Po
 超やってられません。

 何なんですか、一体。

 なんで黒夜にまで慰められているんですか、私は。
 あのモノクロが抱き枕にしているイルカのヌイグルミとかなんで押し付けられてるんですか。
 超体臭が移ってますよ。

 なんか足元がふわふわして超落ち着かないんですよ。
 そりゃ確かに失敗しましたよ。
 あんなに感情を吐き出したのは産まれて初めてでした。
 もしかするとこれから一生ありえないのかもしれません。


 不覚、でした。


 私は私の中で大切に思っていた距離を自分で踏み抜いてしまったことが怖かったんです。
 それはもう理解しています。
 自分が情けないほどに子供だったって、鏡に鼻先押し付けるほどに理解してますよ。
 そしてまだ立て直せていません。


496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/07/26(木) 21:43:15.38 ID:vNtzS52Po

 今私は婦人科に来ています。
 病院に足を運んだことはたくさんありますがここに来たのは初めてです。
 いやなロストバージンですね。

 学園都市は学生ばっかりの街で思春期前後の女の子が半分近くいるんですから婦人科そのものはたくさんあります。
 まぁ、ここは産科も兼ねてますけど。ちょっと珍しい、はずなんですよね。
 私も超詳しいってわけじゃありませんけど。

 正直乗り気じゃないんですけど、超不幸なことに身体測定と被ってます。
 身体測定は基本的にサボれません。
 ですが今の私ではきちんと能力が出せるかどうか、自信がありません。
 常盤台は女子校ですからね、そこら辺については融通が利きます。

 ですがその融通のためには病院で診断書をもらってこなければいけないというわけです。
 超面倒くさいです。
 けれども、これから頓服する薬の相談もありますので超仕方ありません。
 流石に学内に病院抱えているわけじゃありませんので学区外まで出向いてきてるわけです。
 気分が良ければ帰りに映画でも見ていきたいところなんですが、ね……


「あら、なかなか見かけない顔ねぇ」


 いきなり声をかけられました。
 図々しく隣に座ったのは金色の髪の妊婦さんでした。


 ?


 どこかで見たことのあるような顔なんですが超思い出せません。
 これだけの美人さんなら覚えていそうなものですが。


「ごめんなさいね。懐かしい制服見かけたものだからぁ」


 なんですかその鼻をくぐったような語尾は。
 超いらっときます。
 超馴れ馴れしいです。
 ですが話の流れから先達であることはわかりました。
 私はこれでも礼儀を重んじる可愛い絹旗最愛ですので表情はグッと抑えます。


「超先輩ですか?」

「そうね。ま、昔は常盤台の名門力に少しばかり貢献したことがある、ってところかしらぁ」


 なんですか、名門力って。
 日本語が超おかしいです。
 私だって人のこと超言えるわけでもないんですが。

497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/07/26(木) 21:43:47.30 ID:vNtzS52Po

「で、その先輩が何の御用ですか?」

「用、ねぇ。貴方がなんとなく気になった、ではだめかしらぁ?」

「超ダメです」


 私が言い切ると「あら、ふられちゃった」とキョトンとした顔をしました。
 なんか目がすごいキラキラしてますね、この人。
 まるで星が入ってるみたいです。
 レースの手袋なんてしてるし、成程、本物のお嬢様なんですね。

 まぁ、常盤台出身なら常識ってものが欠けていても仕方ありません。
 籠の中だけで世界の全てを分かったような顔をしている連中ばかりですから。

 あー、クソ。なんかこう思考が尖ってますね。
 超ダメダメです。
 これから一ヶ月に一回はこんな気分になるんですか。超最悪です。


 ―――そういう意味ではこの目の前の女を尊敬します。
 こんな重いものを抱えてその果てに子供を授かって。
 すべからずの女性、とは言いませんがこういうふうに生きられるんでしょうか。


 考えてみれば、クローンとかの例外を除けば人はみんな女から産まれてくるんですよね。
 こんな辛い思いを毎月繰り返して、誰か大切な人と出会って、その人とのつながりを宿して。
 きっと想像もできないほどの痛みを乗り越えて産み落とす。


 ―――どんな悪人だってそれは変わらない。


 これまで散々意味も価値もない、ただ誰かが命じたから、状況がそうなったからって理由だけでたくさん殺してきましたけれど。
 全員、女の腹から生まれ落ちているんです。

 ―――最悪ですね、私。
 自衛のため、身を守るため、生きていくため。
 命じられたから。そうしないと自分が生きていけないから。
 なんて、そんなくだらない理由で命を奪ってきた。

 刈り取った命は誰が収穫するかは知りませんし、それはきっと私が一生かけても顔を見ることもできないような存在なんでしょうけど。

 種を蒔いた母親はこんなふうに殺されるために子供を産んだわけじゃない、と思います。

498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/07/26(木) 21:44:13.73 ID:vNtzS52Po

 なんなんですか、これは。
 超らしくありません。
 身体が子供を産む準備を整えて、それを成し遂げつつある出会ったばかりの誰かがいるからですか。

 ダメです。
 ダメダメです。
 私、多分、壊れちゃいます。


 滝壺さんならいざ知らず、麦野はなんで辛くないんですかね。
 傲慢で不遜だとしても想像力がない人間じゃありません。
 怖く、ないんですか?

 黒夜はどうなんですか?
 殺した数だけならきっと私ほどじゃないにしても、背負っていないわけはないんです。


 ああ、だからあんなに自分より強い浜面に抱かれたいって言ってたんですか?
 麦野も、滝壺さんも、浜面がいるから怖くないんですか?
 でも、でも、私は、多分、ダメなんですよ?


「ダメなんかじゃないと思うわ、貴方」


 突然、思考に割り込まれました。

 隣に座った金髪の妊婦さんが私の顔を覗き込んでいました。

 思わず混乱してました。
 思考に落ちる前の状況を瞬間的に思い出し、自分で言った「超ダメです」という言葉に繋がる返答だと―――


「それは違うんだけどなぁ」


 ―――また、割り込まれました。


 なんで?
 なんでわかるんですか?

 ―――!?
 精神系能力者!?


「まぁ、それは正解なんだけどぉ、言っておくけど私は超能力を使ってないわよぉ?」


 身構えようとしました。
 幸い、私の窒素装甲は常に発動しているレアな能力。
 目で認識して脳で解読して最適な能力を発動する―――と言った一連の流れは不要です。
 ただ腕を振るうだけでいい―――はずだったのですが。

499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/07/26(木) 21:45:13.27 ID:vNtzS52Po

「こらこらぁ、いくら私の忍耐力でもぉ、いきなり攻撃されたりしたらちょっとむかっときちゃうわよぉ?」


 それができませんでした。

 こんな、こんなの―――私に干渉できるなんて、大能力者以上の精神操作能力者じゃないですか。
 窒素装甲は物理攻撃にはほぼ無敵ですが、その枠を超えた攻撃には対抗できません。
 相性の問題です。
 最強のグーでもパーには勝てないんです。


 殺――される?


「だぁかぁらぁ、そんなこと考えてないわぁ、私。
 それともなにかしら、そんなに殺気立ってるかなぁ。ストレス溜まってないと思うんだけどぉ」


 わざとらしく小首を傾げる女は敵意のない表情をしました。
 ですが、だからってここで私の敵意が消えたのであればそれこそこの女の攻撃が完了し私の敗北が決定したということになります。
 必死に敵意をかき集めました。

 すると、はぁあ、とわざとらしい溜息をされました。


「もう、いいわよ。攻撃ができないのと私の正体がわからない、というところ以外は全解除してあげるわぁ。
 後輩の悩みを少し軽減してあげたいだけなのに、嫌われたものねぇ。
 私の相談力って経験値不足なのかしら」


 ねー、と自分の大きなお腹に語りかける女。
 その言葉の通り、攻撃こそ出来ませんが体の自由は取り戻しました。思考も特に問題はありません。
 ―――問題がない、と自分で認識するように調律されていたら自分自身ではもう分かりませんけれど。

 ですが、私の心象が完全な信頼や依存に陥っていない、という点においてだけこの女の言葉を信じることにしました。


「―――それで、なんのようですか。こんなところで待ち構えていて」

「別に待ち構えてなんていないわよぉ。この子を診てもらいに来ただけ。
 言ったでしょ? 後輩がこんなところにいて興味があったのよ。
 平日の朝早くに婦人科くる患者さんって少ないもの。それが常盤台の後輩なんですもの、私の運命力がピンときたのよね」

「アナタ、馬鹿ですね。超馬鹿ですね」

「ひっどいなぁ。単純な頭の中身だけなら貴方より上よぉ?
 まぁ、今は昔ほどそんなこと気にしなくなっちゃったけどぉ」


 飄々とした態度には毒は感じられません。
 ですが、それこそが相手の狙いかもしれません。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/07/26(木) 21:45:39.39 ID:vNtzS52Po

 ―――まぁ、いいです。
 恨みを買っているのは知ってましたし、こうなったらなるようになれ、です。


「なんでこんなに信じてもらえないのかしらぁ。貴方が背負ってる殻がそれだけ重いってことなんでしょうけど。
 常識とか思い込みとか、傷つきたくないとか、そういったジャンプできない言い訳、外してみたらきっと楽になるわよ?
 もちろん、私は貴方の事情なんて知らないしぃ。外野からの勝手な分析でしかないんだけれど。
 個人的な経験から言わせてもらうとね、殻の中は確かに居心地がいいのだけれど、でも殻を破壊されてみると自分ががらっと変わるわよ?
 対面とか、プライドとか、そういうのが失くなった素直な自分になると世界が明るくなるの」


 偉そうに、胸元に手を当てて演説を始めました。
 こう、手を使って自分の話に抑揚をつけるのってヒトラーの手段でしたっけ。
 アジテーターは得てして具体的な論拠から妄想的な展開をするものですが、この女は最初っから妄想的ですね。

 ですが、殻を壊せば、という言葉にはちょっと気が惹かれました。

 麦野も、滝壺さんも、常識って殻を壊したんでしょうか。
 だからあんなに笑えるんでしょうか。
 馬鹿面だってそうなんでしょうか。


「少し表情が変わったわねぇ。勿論、殻を壊せば今までの世界には住めないわよ?
 同じ空間と同じ位相と同じ社会だとしても、もう明確に自分の世界ではなくなるの。
 私は無理矢理だったけれどぉ、もう昔の私には絶対に戻れないわねぇ。
 頭の中に新しいサーキットが刻まれて、完全に別の生き物になっているもの。
 それは進化とも呼べるし堕落とも呼べると思う。けどね、苦しくってしょうがないのならばそういう生き方もできるって覚えておいたほうがいいんじゃないかしら」


 そんなに簡単に人間が変化できるわけないじゃないですか。
 イニシエーションによってのパラダイムシフトなんて宗教の洗脳です。
 仮にも科学の街の科学の申し子である私が、そんなくだらない概念に逃げることなんて―――
 でも、そのくだらない概念で救われるんですか?
 こんな辛い思いしなくて済むんですか?
 私だけがハブられて一人寂しくて泣き出したくなったりしなくて済むんですか?


「少なくとも、私は一人ではなくなったのよ?」


 ―――!?


 気がついたら周囲には誰もいませんでした。
 目の前の蛍光番の表示が私の持っている番号札のモノになっていて、診察の順番が来ていて。
 でも、やっぱり誰もいない。


 夢、だったんですか?


 額に細かい汗がびっしり張り付いていました。
 ハンカチで拭いて、荒くなった息を整えて。
 気だるい頭を抱えて診察室へ行きました。


 けど、少しだけ、体が楽になっていた―――そんな気がしました。

501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/07/26(木) 21:46:56.20 ID:vNtzS52Po
いじょうです

一ヶ月ぐらい他にやることがあったので「あー、もうなかったことになってるだろうな」とは思ってましたがカルマがまだ内側に残っていたみたいなのでこっそり投下
作中では殺しなんてファッションでしかないのでこういう風に考えてるキャラはまずいないんでしょうが 
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)[sage]:2012/07/27(金) 20:45:17.64 ID:ncG+5cmjo

後悔とか始めちゃったら潰れちまうよなあ
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/08/15(水) 00:18:05.86 ID:Zk6Umjsio
まだかな~
504VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/09/10(月) 00:20:30.92 ID:JFN9NGvmo
待ってる 

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