2014年6月20日金曜日

垣根「守りたい人?」

 
 ※未完作品
 
2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/25(水) 01:20:16.07 ID:5rvXplpt0
ああ・・・ 


俺は死んだのか・・・


ちくしょう・・・


やりてえことがあったのによ・・・


まあ、「暗部にいればいつかこうなるかも」なーんて思ってはいたが・・・


まさか本当にこうなっちまうとはな・・・


普通の生活してみたかった・・・


友達と遊んだり、彼女作ったり、デートしたり・・・


どうしてこんなんになっちまった・・・


死にたくねえな・・・


俺が殺してきた人間も皆こんなこと思ってたのか・・・


ハッ、自業自得か・・・

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/25(水) 01:29:43.66 ID:5rvXplpt0
11月17日 学園都市 第7学区  地下研究所


研究者A「それにしても、本当に興味深い能力だね」

研究者B「ああ、普段は危険なレベル5だが、この装置に入れておけば我々の思いのままだしね」


ここは第7学区の地下研究所。

この研究所では主に学園都市のレベル5達に関する研究が行われている。

第三次世界大戦で浜面達を襲った仮面の部隊の仮面もここで生み出された物だ。


この地下研究所には一際大きな装置が1つある。

正面はガラスのようになっていて中の様子が見えるよう設計されている装置。

そしてこの中には人が入っていた。


垣根帝督。

学園都市レベル5の第二位、未元物質という能力を扱い、アレイスターのスペアプランに君臨する男。


彼は10月9日に学園都市レベル5の第一位、一方通行と相対し、敗北した。

その際に肉体はズタズタに引き裂かれてしまった。

普通なら死んでもおかしくない状況だがすぐにアレイスターの命令によって回収され、現在は生命維持装置によってなんとか生存している状態だ。

しかし生きてはいるが意思が今の彼は無い。

研究者たちの実験道具となっているのだ。

機械に向かって命令するだけで能力を発動するような道具に。

おそらく一生このままだろう。

その方が研究者にとっても都合が良いからだ。




・・・しかし、彼は普通の人間ではない。

学園都市レベル5の第二位であり、アレイスターのスペアプラン・・・

約1ヶ月かけて、彼は、垣根帝督は


新たな制御領域の拡大を取得することに成功する。



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/26(木) 00:23:28.30 ID:lWyhHZnV0
未元物質による人体細胞の構築。

これにより人間の体に関するあらゆる部分の再生が可能となる。

内臓、脳などの生成。


垣根帝督はもはや科学の枠を脱した手にしていた。


そして、それにより


装置の中の彼とは別の場所に管理されている三分割された脳も今の彼には不要となった。


もちろん、生命維持装置も同様に。



ドォォォォン!!!

研究所に響く爆発音。


研究者A「ば、ばかな!?」

研究者B「あ・・・あ・・・」


垣根「よお、エリート研究員さんよぉ」


研究者2人はただただ目の前の怪物に恐怖していた。


殺される。

自分達はこのレベル5を約1ヶ月実験動物のように扱っていた。

この怪物にとっては[ピーーー]理由には十分すぎるはずだ。


研究員2人は死ぬ覚悟を決めた。

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/26(木) 00:24:19.81 ID:lWyhHZnV0
垣根「礼を言うぜ」


垣根「わざわざ回収してくれてよ」


そう言うと彼は口元をゆがめ・・・


垣根「おかげでやり直せるチャンスが掴めたってもんだ」


そう垣根は独り言のようにつぶやき研究所を出ようと研究員たちに背を向け歩き始める。


研究者「(なんだかよくわからないが・・・  助かった・・・ 助かったぞ!)」


研究員は心の中で歓喜する。


・・・が


「ああ、そういえば・・・」



「よくもまあ俺を道具みてえに扱ってくれたな。犬野郎ども」


この日、学園都市内の研究所の1つが壊滅した。


13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/27(金) 01:32:05.81 ID:anJu92rA0
垣根「あーあ、またやっちまったよ。」


垣根帝督は第六学区に来ていた。

第六学区はアミューズメント施設が多い学区で今も多くの学生でにぎわっている。


垣根「あんな奴ら[ピーーー]必要なんてなかったのにな。 何やってんだか、俺」


垣根はアミューズメント施設には興味のかけらもない。


「ねえねえ、あの人かっこよくない?」
「ホントだー! 背も高いし」
「なんかオーラ見えない?」
「風格あるねー」

中学生だろうか? 2人組の女子学生が話している。


垣根「(ちっ ガキに言われたって嬉しくねえよ)」


垣根「さて、どうすっかな。 何もすることねえ」


アイツはどうしてるだろうか。

垣根「アイツと連絡取ろう」


しかし自分と一緒に回収されたのか、携帯が無くなっている。

垣根「面倒だな、仕方ねえな。 一度家帰ろう」


とりあえずやる事が決まった垣根は第三学区へ向かう・・・




18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]:2012/04/27(金) 12:51:26.12 ID:gu4VZZYV0
垣根の自宅は第三学区にある

第三学区は高級マンションなどが多い学区のため、生徒の姿はほとんど見えない。

垣根は第三学区の高級マンションの中でも有数のマンションに1人で暮らしている。

何故そんなに学生が金を持っているのかと言えば、彼がレベル5だからである。

レベル5は多くの実験に貢献するのでレベル4とは比べものにならないほどの金額が支給される。

しかし、彼の場合は今までしてきた暗部の汚れ仕事の報酬の総額の方が大きい。


垣根「1ヶ月くらいか。 久しぶりだな」

垣根は1ヶ月ぶりの自宅へと足を踏み入れる。

垣根「マジかよ‥‥‥」


床や家具がほこりだらけとなっていた。

片付けなければ‥

垣根「そうだ、ついでだしアイツに掃除を手伝わせるか」 
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/28(土) 20:50:54.97 ID:DJKeJ0AL0
そう言うと垣根は自宅の電話を使う。

少し待つとアイツが出た。


垣根「ちょっと俺の家来てくれ」


心理定規「悪いけどどなたかしら?」


垣根「ばーか[ピーーー]。 リーダーの声も忘れちまってんのか?」


心理「あ・・・あなたもしかして・・・」


垣根「ああ、垣根だ」

心理「いつ意識が戻ったの?」


垣根「ついさっき」

心理「そう・・・ 私、昨日もあなたの所へ行ったけど、相変わらずだった」


心理「本当によかった・・・」


垣根「ちょっと待て、昨日も・・・だと?」

心理「そうよ、あなたが一方通行に負けて回収されてから毎日よ」


垣根「(この1ヶ月間、俺の事が心配であの研究所へ通っていた・・・?)」


垣根は信じられなかった。

心理定規とは確かにかなり長い付き合いだが、あくまで暗部での話だ。

まともな会話などろくにした試しが無かったはずだ。


それなのに・・・

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/28(土) 20:51:56.05 ID:DJKeJ0AL0
心理「・・・それで、あなたが私に何の用?」


垣根「あ、ああ。 家の中がほこりだらけでよ、掃除を手伝ってくれ」

心理「(それくらい自分で・・・) いいわ、今日だけよ」

垣根「ありがとよ。 早く来いよー」


そう言い電話を切る。


垣根「アイツ、あんな奴だったっけ?」

もっと素っ気ない性格だったはずだ。と垣根は思う。


垣根「深く考えようとするだけ無駄か、アイツ来るまで寝てるか」


さすがにほこりだらけのベッドで寝る気にはなれないので、リビングのソファだけ掃除して垣根は横になる。


垣根はソファの上に横になるとすぐに眠った。


23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2012/04/28(土) 20:52:25.25 ID:DJKeJ0AL0
☆    ☆    ☆    ☆    ☆


垣根帝督。


誰だ・・・お前は。


一方通行との戦いの最後、君は覚醒を遂げた。


無視すんじゃねえぞ。


さらに新たな力も手に入れた。

もう我々の時代の力を手に入れられるかもしれんな。

グレムリンもじきに来るだろう。

そこで君はrkslbpqを目にするだろう。

いや、別の法則と言うべきだったな。

まあいい。

もっと私に君の価値を見出させてくれ。

また会おう。


☆    ☆    ☆    ☆    ☆

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/29(日) 01:31:12.90 ID:YmzrSS4H0
「ちょっと!どうしたの!?」


誰かの声がする


垣根「ん・・・ あれ?いつの間に来てたのか」


心理「大丈夫? だいぶうなされてたわよ?」


垣根「お前が来るまで寝てようと思って寝てただけなはずなんだけどな」


垣根「変なもの見た」


心理「変なもの?」


垣根「ああ」


垣根は気持ちの悪い物でも見たかのような顔をしながら言う。


垣根「金髪で、女みてえな顔つきで、勝手に言うだけ言って消えやがった」


心理「そう・・・ 今日は早く休んだ方がいいわよ?」


垣根「そうだな。 とっとと掃除して今日は寝ちまうか」


そうして1時間ほどかけて2人は掃除を終わらせた。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/29(日) 01:31:52.23 ID:YmzrSS4H0
今はリビングでソファに座りドレスの少女は紅茶を、垣根はコーヒーを飲みながら話している。


この光景を端から見れば、誰もが仲のいい学生だと思うだろう。


しかしこの2人は学園都市上層部を前に戦いを挑もうと企てた学園都市暗部組織「スクール」のメンバーなのだ。

しかも片方の金髪でガラの悪そうな少年は「スクール」のリーダーなのだ。


普通の人間には到底理解、想像すらできない深い深い闇の領域。

一度堕ちてしまえば、抜け出せない。


垣根「そういえば「スクール」はどうなったんだ? やっぱり解散扱いか?」


心理「解散も何も今の学園都市に暗部は存在しないわよ」


垣根「は?」



27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/29(日) 15:51:26.62 ID:YmzrSS4H0
垣根「どういうことだよ!ありえねえ! 学園都市の闇が消えた? ハッ、冗談もたいがいにしろ!」


思考回路がうまく回らない。

アレイスターが消した?

それはない。と垣根はすぐに訂正する。


そして、垣根の頭の中に1人の男が浮かぶ。


垣根「(まさかな・・・ アイツは最後の最後ですげえ悪を見せた。)」


あそこまでの闇を背負ってる奴が闇を消せるはずがねえんだ。と垣根は思う。


心理「一方通行よ。 彼が学園都市の闇を消したらしいわよ」


垣根「・・・・・・」


心理「信じられない? 私も信じられないわよ。」


でも、とドレスの少女は言い、

心理「彼くらい力がないと学園都市の闇は消せないんじゃないかしら」


心理「せっかく消しちゃってくれたんだし、もう闇に関わるのはやめにしない?」


心理「今からでも普通の生活に戻ることはできるはずよ。 アイテムだってそうしてるらしいし」


垣根「俺が暗部でしてきたことは」

垣根「俺が暗部で見てきたものは」

垣根「こんなに簡単に消えちまうモノか!?」


垣根「人をゴミみてえに殺してきた俺たちが普通の生活に戻れるわけねえだろうが!」












31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/01(火) 03:27:31.97 ID:FKTASxM10
そう吐き捨てるように言うと垣根は家を出て行ってしまった。


心理「ここあなたの家なのに・・・」

心理「・・・」

心理「疲れたからここで寝ちゃおう」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/01(火) 03:28:09.95 ID:FKTASxM10
学園都市 第7学区

 
垣根「あー、ちくしょう。 ムカつく」


別にドレスの少女がムカつくのではない。

勝手に熱くなっている自分がムカつくのだ。


垣根「・・・腹減ったな」


時刻は5時30分を回っていた。


垣根「(家には戻りずらい・・・ 仕方ねえ、ファミレスで我慢するか)」


暗部に堕ちてからはファミレスには行っていなかったな。と垣根は思い出す。


ファミレスに入ると、学生だらけで一目見る限り席が空いてない。

忙しいからか店員が近くにいないので、席が空いていないか店内を歩き回る。


すると、知り合いがいた。

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/01(火) 03:28:49.25 ID:FKTASxM10
知り合いといっても・・・


麦野「お前は・・・なんでこんなところにっ!?」


絹旗「超驚きました・・・」


暗部組織「アイテム」のメンバーの「窒素装甲」の少女とリーダー麦野沈利だった。


垣根「へえ、生きてたのかお前ら」


2人にこんなところで出会ったことに垣根は驚いた。


麦野「それはこっちのセリフだ第二位。 あんな状態だったのになんで何も無かったかのようにこんなとこいやがる!」


垣根「いやいや、俺の能力は俺が想像してた以上に常識が通じないらしくてな」


垣根「俺は第四位様なんかと比べられるもんじゃねえよ」


わざと挑発するかのように話す垣根。




36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]:2012/05/02(水) 15:19:05.17 ID:Vi7z4au+0
麦野「言ってろ第二候補。 私はもうそんな数字なんて気にしてないんだよ」


垣根「あ? 暗部無くなったから自分はもう一般人ですってか?」

麦野「‥‥‥」

垣根「笑えるな。 俺はお前らとは違う。」

垣根「暗部が無くなったなら」

垣根「また作ればいいだけだ」

麦野「やめといた方がいいわよ」

垣根「なんだと?」

麦野「暗部なんて作れば一方通行が潰すに決まってるわ」

絹旗「闇を超毛嫌いしていますからね」


垣根「そうかよ‥‥‥ 確かに俺はアイツには勝てないだろうな」

垣根「だが俺は闇の中以外で生きていくつもりはないんだよ」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]:2012/05/02(水) 22:50:28.12 ID:OTdmnBIG0
麦野「アンタさぁ、もう止めなよ」


垣根「何を?」

麦野「闇を抜け出せたんだ、わざわざ戻る必要ないじゃない」

垣根「‥‥‥」

麦野「普通の生活に戻りなよ」

垣根「あー、それ聞き飽きた」

麦野「私たちだって元は普通の人間だった」

麦野「暗部で変わりすぎただけなんだよ」

垣根「確かにな」

垣根「俺たちは暗部になんて堕ちてなければ今頃は普通の学生として生きてただろうな」

麦野「そうよ、だから今からでも遅くない」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]:2012/05/04(金) 00:17:03.20 ID:pf9BE/ed0
垣根はその言葉には返答せずに店員を呼び、料理を注文する。

垣根「ミラノ風ドリア1つで」

店員「かしこまりました!」

高校生くらいに見える店員は垣根に対して明るい笑顔で応対した。


垣根「でもよ、俺たちはたくさんの人を殺した」

垣根「そういう罪を忘れて生きていくつもりなのか?」


暗部の人間は多くの人を殺してきた。

垣根や麦野のようなレベル5ならなおさらだ。


麦野「忘れようとしたって罪は消えない」

麦野「でも、暗部にいればもっと多くの人達を傷つけてしまう」

麦野「だから私達はもう闇には関わらない」

麦野「逆に闇に関わろうとする人間を連れ戻していくつもりよ」


垣根「だから俺も?」

麦野「関わらさせない」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]:2012/05/04(金) 13:38:35.32 ID:qIqk/TUo0
垣根「そうかい」

これが麦野なりの決意なのだろう。と垣根は理解した。

自分も戻れるのか‥‥‥

こんなクソ野郎が‥‥‥


ふと、垣根の脳裏に白髪の男が浮かぶ。

一方通行の周りにもこういう人がいたのだろうか?

アイツは今どうしているだろうか?

彼なりの平和を手に入れ、平穏に暮らしているのだろうか‥‥‥


見てみたい。と垣根は思った。


垣根「一方通行がどうしているのか見たい‥‥‥」

垣根「その上で「答え」を探すさ」

そう告げると麦野は少し笑顔になって言った。


麦野「そうか、がんばりな」

垣根「ああ、ありがとよ。」

そう言って垣根はいつの間にか置かれていたドリアを
さっさと食べ、ファミレスを出た。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2012/05/04(金) 20:40:26.95 ID:MjBzk9v00
☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆


垣根「入りづれえ・・・」


垣根は第三学区の自宅マンションのドアの前にいた。

鍵がかかってはなく、連絡もないことからドレスの少女はまだ自宅にいるだろう。


垣根「(仕方ねえ、腹くくるしかねえな)」


垣根は覚悟を決めドアを開ける。

垣根「・・・ただいま」


・・・返事がない。


鍵かけないで帰ったのかと思ったが違った。


寝ていた。

ベッドの上で。


垣根「・・・マジかよ」

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2012/05/05(土) 23:09:20.51 ID:vGJeQXC90
垣根はパニックに陥りかけたが、深呼吸をして落ち着く。


垣根「こいつ・・・なんで俺のベッドで・・・」

垣根「しかしこいつ、いっつもドレスなんだな・・・」


垣根はこの少女がドレス以外の服を着ているのを見たことが無かった。

垣根「(何か自分の中での決まりごとにでもなってんのか。)」


しかし垣根は深くは考えない。

まだ時間は夜の8時を過ぎたばかりだったが、眠気が垣根を襲っていた。


垣根「さっさと風呂入って寝るか」


そう言うと垣根はバスルームへと入り、久しぶりの風呂の時間を楽しんだ。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2012/05/05(土) 23:23:47.27 ID:vGJeQXC90
☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆


こうなるのは予想外かい?


・・・・・・。


そもそも最初から悪人の人間などいない。

悪の道を走る者には皆何かしらの理由がある。


プランにこれ以上誤差が生まれなければいい。


誤差が出ないとでも? 彼は「第二候補」だろう?

話を戻そうか

そして、悪人の誰もが心の底では戻りたいと思っているんだよ。

元の、本当の自分にね。


・・・・・・。



☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/11(金) 18:41:02.14 ID:y7b2MAla0
垣根「すっきりした」

垣根は風呂から上がり、リビングのソファに座っていた。


垣根「・・・・・・」

視線をベッドに移すとまだ彼女は寝ていた。


垣根「ったく・・・」

ドレスの少女は未だに気持ち良さそうに寝ている。

起こすのも気が引ける。

今日はそのままソファで寝よう。と垣根は渋々心に決めたのであった。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/11(金) 18:41:32.17 ID:y7b2MAla0
垣根は横になり、これからの目的を整理する。

垣根「(まずは一方通行を探す。話はそれからだな)」


垣根「(一方通行に会って話を聞く)」


垣根「(話し合いではすまねえだろうがな)」


垣根と一方通行はつい先日殺し合いを演じたばかりだ。


俺を見た瞬間殺しにかかる可能性だってある。


その上でどうやってアイツから聞き出すか


なぜアイツは悪党を辞めたのか

なぜアイツは闇をぬけたのか

闇から抜け出した今は、表の世界は、楽しいのか・・・


垣根は色々と思いを巡らしていた。


その時・・・・・・

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/11(金) 18:42:13.55 ID:y7b2MAla0
垣根を違和感が襲った。


垣根「(なんだこの感じ・・・)」


垣根は何かを心の底で感じた。


言いようのない違和感


何かこれから起きるのではという不安


学園都市では感じるはずのない



まるで


異物

  が   ここ  に
   
    存在

 する か   よう  な・・・・・・


垣根は気持ち悪さを感じて


気を失った。

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/05/12(土) 00:44:01.01 ID:Fx+MGgIj0
☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆


思ったより進んでいるな


だんだん馴染んできている


まあ君には実感はないだろうがね


今の時点で君はかなり近づいている


あとは君が本当の理解を手にするだけだ


もうじき始まるよ


学園都市でね


オティヌス


この名前を覚えておくといい


・・・・・・くれぐれも死なないでくれよ


☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆
55 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/12(土) 00:48:42.63 ID:Fx+MGgIj0
11月18日  ―― グレムリン ――


明るい日の光が垣根を照らし、まぶしさから目が覚める。


リビングの壁にかかっている時計を見ると昼の12時になったばかりだった。


垣根「もう昼か・・・」


もう少し寝ていたかったが、仕方なく起きる。

そして目線をベッドに移すとドレスの少女はいなかった。


垣根「なんだよアイツ。 何も言わずに出ていきやがって」


いったいどこに行ったのやら。と垣根が思うと同時に異変があった。


ドオォォォォォォォォォンッ!!


垣根「あ?」


爆音が外から聞こえた。


垣根は窓から音のした方向を見る。


見えたのは煙だけ。

しかもだいぶここから離れている。
56 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/12(土) 01:17:20.61 ID:Fx+MGgIj0
垣根「何だ? 何が起こってる?」


そしてなぜか自然とある単語が発せられた


垣根「グレムリン?」


垣根はなぜこの言葉が出てきたのか疑問に思ったがすぐに切り替える。

テーブルに書き置きがあった。

おそらくドレスの少女が書き残したもの。


「外部から侵攻があったみたい。 レベル3以下の生徒は避難らしいわ。 私は様子を見てくる」


垣根「・・・ふざけんなよ」


嫌な予感がした。


そして同時に怒りの感情が湧く。


なぜアイツが行く必要がある

そういうのは俺でいいじゃないか

もうアイツがわざわざ危険を伴うことをする理由はない

・・・・・・


垣根「ちっ」

垣根は舌打ちをしながらも、すぐに戦地へと向かう。

59 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/12(土) 14:54:30.67 ID:Fx+MGgIj0
第7学区   ―― その姿は ――


case 1


一方通行は第7学区へと来た。


その目的は学園都市に侵攻してきたグレムリンの排除。


一方通行「あいつらに傷は負わせねェ」


一方通行「ここで潰す」


彼の守るための戦いが始まる。


 
case 2 


御坂「こんなにも早く襲ってくるなんてっ!・・・」


御坂美琴は第7学区に着いて早々黒子と連絡をとる。

初春と佐天さんは無事で今は黒子と一緒に行動していると聞いてひとまず安心する。


御坂「これ以上は好き勝手やらせない!」


case 3


どうやらすでに始まっていたようだね。

どうする?三手に分かれるか?

いや、私は単独で行動するよ。君は彼と行動してくれ。

分かった。・・・俺様がサポートする。

すまない。

――ここで終わらせる

60 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/12(土) 15:58:14.63 ID:Fx+MGgIj0
垣根「ここだな」


垣根帝督は第7学区に来ていた。

窓の無いビルがあるこの第7学区がおそらく戦闘が起きている場所だった。


しかし垣根が降り立った場所には誰もいなかった。


とりあえず翼を消し、侵入者を探す。


垣根「さーて、どこで暴れてるのやら」


するとすぐに反応はあった。



ドォッッ!! という爆音が聞こえると同時に垣根の視界が炎で埋まる。


垣根「ッ!!?」


炎はそのまま垣根を燃やし尽くす。
61 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/12(土) 15:59:08.48 ID:Fx+MGgIj0

「あっけないな」

全身を黒いダイバースーツのような物で覆っている人間。


声からすると男だった。

5人いて全員同じ格好だった。

未だに燃えている炎を見ながら男達は言う。

「この調子じゃ、すぐに終わりそうだな」

「いくら能力者と言っても、所詮は戦争を知らないガキってことだよ」


男達は余裕からか、談笑していた。


そこが戦場にも関わらずに


「ん?」

男達はそこで異変に気付く。

おかしい。

普通ならすでに灰になっているはずだ。

にも関わらず未だに炎は衰えることなく燃えている。
62 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/12(土) 15:59:50.77 ID:Fx+MGgIj0
しかも、炎の中から声が聞こえた。


堕天使を想像させるかのような、どこまでも冷たい声。


「あー、熱い熱い」

その声が聞こえると同時に炎が一瞬にして消える。


男達は驚愕し、畏怖した。


垣根が生きていたことにではない。

男達の視線は垣根の背中から生えている翼に集中していた。


垣根「いやいや、これ普通の炎じゃねえな。 消えねえから少し焦ったぜ」


垣根「解析したらなんてことなかったけどな」


「そんな・・・ なんで・・・」


垣根「お前ら下っ端には用はねえ。」


その瞬間、垣根の翼が爆発的に展開される。

約2,3mだった翼は一瞬で約50m程にまで伸びる。


それを見て男達は抵抗は無意味だと悟ったのか、全く動かない。


垣根は口元を歪ませ言う。


垣根「太陽の光でも浴びてな」


男達に垣根の翼を通った太陽の光を浴びた瞬間、男達は跡形もなく消えてしまった。


垣根「すげえな、こりゃ」


一方通行との戦いの時よりもはるかに威力が増している。


垣根「グレムリン・・・オティヌス・・・」


なぜか記憶にある単語を言いながら垣根はさらなる敵の排除へ向かう。



65 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/15(火) 16:02:11.01 ID:iGS9/wF+0
心理「はぁ・・・はぁ・・・」


ドレスの少女は第7学区のビルとビルの間の狭い路地にいた。

心理「(なんなのあいつらは・・・)」

ドレスの少女はすでに外部勢力と3回出くわしていた。

そしてどの敵にも彼女の能力、他人との心の距離を調節できる「心理定規」がまともに通じなかったのだ。


心理「(あいつらは全く心の内が読めない。)」


本当はすぐに垣根の元へ戻る予定だったのだが、追いつめられるような形で今現在この場に身を隠していた。


心理「彼は無事かしら・・・」





彼女は垣根の身を心配している場合ではなかった。


彼女は知らない。


すぐ近くに



魔神が姿を現したことを。

66 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/15(火) 16:39:56.13 ID:iGS9/wF+0
垣根は第7学区の表通りを歩いていた。


垣根「(それにしてもさっきの奴らは何を使ったんだ?)」


さきほど垣根が駆逐した男達。

その1人が放った炎が能力者の物とは確実に質が違った。


垣根「あれ解析してからなんか気持ち悪くなったし、さっさと終わらせねえとな」


そんなことを言っていると突然音が聞こえた。


垣根「ッッ!? 人が走る音?」


垣根の予想通り、向こうから人が走ってきていた。

67 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/15(火) 16:40:37.74 ID:iGS9/wF+0
3人いて、皆が制服を着ていた。


垣根「(ん? なんだガキか。)」


逃げ遅れだろう。と適当に推測した。


相当急いでいたのか、突然1人が地に膝をつき、動かなくなってしまった。


垣根「何やってんだか・・・」


垣根は3人の元へ歩く。


垣根が3人の元へ着くまでツインテールの学生は倒れそうな学生を支えながら話を聞いていた。


垣根「大丈夫かな? どうかしたのかい?」


垣根は自分に似合わないと理解しているさわやかな(?)笑顔をしながら聞く。


すると返答は垣根が予想していないものだった。
68 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/15(火) 16:41:13.05 ID:iGS9/wF+0
「あなた、初春に何をしたんですの!?」

垣根「は?」


垣根は初春と呼ばれる学生を見て、思い出す。


あの日、打ち止めと一緒にいた少女。

垣根が殺そうとした少女。


垣根「ああ、思い出したよ。 そいつは前に俺の邪魔をしてね、だから殺そうとしただけだよ」


とんでもないことをさわやかスマイルを崩さずに告げる垣根。




78 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/16(水) 00:26:19.75 ID:i/UvRf2O0
あの時の垣根は間違いなく自分の意志で動いた。


別に悪いことをしたとも思っていなかった。


ただ、垣根は心のどこかをチクリと刺されたような気持ちになった。


垣根は自分の手を胸に当てる。


垣根「(なんだよこの感じは・・・?)」


垣根「(まさか・・・悪かったと感じてるとでも言うのか・・・?  俺が?)」


垣根に自分の変化を深く感じられるほどの時間は無かった。


垣根「ッッ!?」


突然殺気めいたものを感じたのだ。


垣根は視線を少女達に戻す。


しかしツインテールの少女だけがいなかった。


垣根「まさか・・・」
79 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/16(水) 00:28:33.54 ID:i/UvRf2O0
そのまさかですの」


ツインテールの少女は一瞬で垣根の背後に回っていた。


そして金属矢を背中に突き付けて少女は言う。


「初春はあなたを見てから突然ああなってしまいましたの」

「あなたでしたのね、10月9日に初春に暴力を振るったのは・・・」


垣根「だから何だよ」


「・・・少なくともこのままにはしておけないですわね。 ここで拘束して警備員に引き渡しますの」


本当はボコボコにしたいんですけどね。と少女は付け足す。



垣根「・・・フフ」


「?」


ツインテールの少女は疑問に思った。


この少年がこの状況で笑っていることに。

80 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/16(水) 00:54:32.61 ID:i/UvRf2O0
目の前の少年は言う。


垣根「空間移動系能力者か・・・ いやいや、油断しちまった」


垣根「・・・でもよ、背後とったくらいで調子乗るなよ」


「ッッ!?」


一瞬の出来事。


ドォン!! という音とともに少女は数十メートルも吹き飛ばされたのだ。



「あ・・・あぁぁぁぁぁッ!!」


激痛。


少しでも気を抜いたら気を失ってしまう程の。


少女は何が起きたのか理解できなかった。
81 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/16(水) 00:55:14.27 ID:i/UvRf2O0
ただわかったことは、ほぼ体全体に衝撃を受けたこと。


目にも見えない。


「(なんなのですの・・・ 能力? でもこんな能力聞いたことないんですの・・・)」


垣根「もう終わりか?」


「ッ!?」


いつの間にか目の前に少年がいた。


少年の背中には6枚の翼が生えていた。


「なんですの・・・? その翼はっ!?」



垣根「・・・教えねえよ」


その言葉を聞いて少女の意識は途絶えた。 
85 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/16(水) 23:52:26.65 ID:i/UvRf2O0
一方「アイツもグレムリンだろォな・・・」


一方通行は窓の無いビルの目の前にいた。


彼の視線の先には人がいた。


魔女を連想させる鍔広の帽子。

右目を覆う眼帯。

黒い革の装束を纏ったその少女からは禍々しい何かが感じられた。


そして、その少女はドレスを着た少女をを引きづりながら歩いていた。


おそらく学園都市の能力者だろう。

一方「(窓の無いビルに用か・・・?)」


この少女と戦えば間違いなくタダではすまないことは容易に想像できる。


でも・・・


やらなければならない


大切なものを守るために
86 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/16(水) 23:53:00.67 ID:i/UvRf2O0
一方「ここで潰すッ!!」


同時に彼の背中から白い翼が現れ、彼の頭の上には天使の輪のようなものが発生する。


「なんだあれは・・・?」


向こうも気づいたらしい。


一方通行は翼をはばたかせ、一気に目の前の敵へと接近する。


「ッッ!!?」


黒装束の少女は引きづっていたドレスの少女を横へ放り投げ、応戦体勢になる。


学園都市最強の怪物を魔神の戦いが始まる。 
97 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:14:28.66 ID:UD+NXJsQ0
>>86に誤字がありましたね・・・

×  学園都市最強の怪物を魔神の戦いが始まる。 


○  学園都市最強の怪物と魔神の戦いが始まる。


です。


遅くなりましたが投下します。     
98 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:15:16.84 ID:UD+NXJsQ0
  ―― 変化 ――


垣根「やっぱり手加減ってのは疲れるな」


そう言いながら近くに転がっている少女に視線をやる。


垣根がそうなるように威力を調節したおかげで少女は気絶しているだけだった。



先ほど垣根が放った攻撃・・・

素粒子を集め、その巨大な質量をぶつける不可視の攻撃。


本当は傷をあたえずに行動不能にする手もあったが、この少女に少しばかりイラついたのでこの方法をとったのだ。


垣根「さて・・・」


垣根は視線を初春という少女に向ける。


初春は泣きじゃくっていた。

彼女のそばにいる黒髪の少女はこっちを睨みつけながら初春を慰めていた。


そんな2人の元に垣根は歩み寄る。

99 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:15:58.16 ID:UD+NXJsQ0
垣根は軽い口調で言う。


垣根「そう泣くなって、アイツは気絶してるだけだ。 殺しちゃいねーよ」


それを聞き、黒髪の少女が声を荒げる。

「アンタッ・・・ 最低よッ!!」


垣根「・・・・・・自覚はある。 そんなことよりアイツ起こして早く逃げろよ。 ここは危険だからな」


それと・・・、と垣根は一度言葉を切り、


垣根「          」


きちんと声になっていたか不安だったが、垣根は第7学区の中心部へと向かう。



100 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:16:35.46 ID:UD+NXJsQ0
―― LEVEL5 No.5 ――




垣根「あれは・・・」


交差点で1人の女学生が黒服の集団に囲まれていた。


垣根「チッ」


下手に遠距離から攻撃はできない。


まずい、と垣根は思った。


しかし、すぐに垣根は気付く。


黒服の奴等は棒立ちしていて、全く襲う気配がないことに。



垣根「(・・・・・・?)」



垣根は少女を見る。


そしてその風貌には見覚えがあった。

101 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:17:10.68 ID:UD+NXJsQ0
長めの金髪。 肩に掛けたバッグ。 手に持っているリモコン。



大覇星祭で選手宣誓をしていたレベル5ではなかっただろうか。


垣根自身選手宣誓に誘われた身でもあったので、他のレベル5がどんな人物なのか興味があって、選手宣誓だけはモニターを通して見ていた。


名前は確か食蜂だっただろうか。


垣根「心理掌握、ね・・・」



おそらく黒服の奴等は操られたのだろう。と垣根は推測する。



「アナタはどっちの人?」


どうやら、食蜂もこちらに気付いたようだった。

102 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:17:37.45 ID:UD+NXJsQ0
垣根「どっちってなんのことだよ」


食蜂「えー? アナタ知らないの? 魔術サイドか科学サイドかってことだゾ☆」


垣根「(魔術サイド? よくわからねえが、単純に考えて今攻めてきてるのは魔術サイドか・・・)」


垣根「いや、俺は科学側の人間だ」


食蜂「ふーん。 ならいいんだけどぉ」


垣根「レベル5のお前ならほっといても大丈夫か・・・ じゃ、俺は行くんで」


食蜂「へぇー、私のこと知ってるんだぁ☆ そぉーいうアナタは?」


垣根「(・・・知ってるわけねえか)」
103 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:18:47.19 ID:UD+NXJsQ0
レベル5の中でも多くの人に顔が知られているのは第3位、第5位、第7位くらいだろう。


そもそも顔が知られてもろくにメリットがなく、デメリットだらけなのだ。


垣根「いやいや、たいしたことねえよ。 ちょっとこの先に知り合いがいてな、これから助けに行くだけだ」


ここでレベル5第二位であることを明かすとやっかいなことになりそうな予感がしたので本当のことは言わない。


垣根「じゃあな、死ぬなよ」


食蜂「そっちこそねぇー☆」


まるでここが戦地であることを忘れてしまうかのような軽い調子でレベル5達は別れたのであった。



104 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/22(火) 00:19:24.92 ID:UD+NXJsQ0
 ☆



食蜂「おっかしいなぁー」


長身の少年と別れた食蜂の頭の中には1つの疑問があった。


食蜂「(私の干渉力が効かなかった・・・)」


あの少年と話している最中に何度か仕掛けたのだが全く変化がなかったのだ。


他にも食蜂の干渉力が効かない存在は知っているが、それらとは何かが違った。


何かの能力で邪魔されたのとは違う違和感があったのだ。


食蜂「・・・・・・名前聞けばよかった」



 ☆ 
108 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/25(金) 22:12:53.01 ID:V5jByJcr0
 

 第7学区  窓の無いビル



意外とプランは進んでいるのではないかね?


・・・かもしれないな


一方通行がここまでやれるとはね


あなたは垣根帝督を過大評価しすぎでは?


そんなことはない・・・ 今現在私の興味が彼にあるというだけだよ


あなたは出ないのか?


場合によっては私が出ざるを得ないかもしれないが、必要はないと思うがね

109 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/25(金) 22:13:54.17 ID:V5jByJcr0
すいません書き忘れました(汗

少し投下します
110 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/25(金) 22:14:43.80 ID:V5jByJcr0
―― 不思議な力 ――



垣根「久しぶりだな」


浜面「垣根・・・帝督?」


垣根は浜面と出くわしていた。


無理もないことだが浜面はかなり警戒していた。


垣根「なんでお前がこんなところにいやがるんだ? さっさと逃げろよ」


浜面「・・・また、見逃してくれるのか?」


垣根「は?何言ってんだ、お前なんか殺す意味ねえだろうが」


それよりさっさと質問に答えろよ、と垣根は言う。


浜面「滝壺を探してるんだ。 見つけたら第7学区から避難する」


垣根「滝壺理后だと? もう死んだんじゃねえのか」


浜面「アンタが教えてくれたおかげさ・・・ ロシアで治療できたんだ」


垣根「・・・・・・」


垣根は純粋に驚いていた。
111 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/25(金) 22:15:53.94 ID:V5jByJcr0
浜面はレベル0の無能力者のはずだ。


その浜面がレベル5の麦野を戦闘不能にし、さらに垣根が救うことはできないと断定した滝壺理后までもを救ったのだ。


垣根「・・・何が」


浜面「?」


垣根「・・・何が・・・お前にそこまでの行動をさせてやがる?」


そう垣根が絞り出すように疑問を放つと、浜面は言う。


浜面「守りたいもの、いや・・・人がいるからだ」


垣根「・・・・・・」


浜面「たったそれだけの理由に思えるかもしれないけど、俺にとっては大きなことなんだ」


守りたい人がいる。


垣根もそういう言葉が言えるだろうか。

きっと言えないだろう。


これから先も。
112 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/25(金) 22:16:21.89 ID:V5jByJcr0
しかし、


浜面「アンタだってきっと言えるようになるさ」


垣根「な、んだと・・・?」


浜面「アンタはきっと根は優しいはずだ。 そうじゃなければあの時に俺や滝壺、絹旗だって殺してた。そうだろ?」


垣根「・・・・・・」


放つ言葉が見つからなかった。


浜面「・・・俺はもう行く。 アンタも死ぬなよ!」


垣根「・・・ああ」


浜面は行ってしまった。


垣根「(守りたい人、か・・・)」


垣根は頭が少し混乱してしばらくその場を動けなかった。

118 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/29(火) 00:29:15.88 ID:1Uh+BGLu0
―― 北欧の悪神 ――



襲撃は唐突だった。


垣根の視界が炎で埋め尽くされたのだ。



垣根「ッ!!?」


垣根はすぐさま翼を展開し、炎を防ぐ。


垣根「どこにいやがる、出てきやがれッ!!」


??「上だよ、上」


垣根「あ?」


垣根はすぐに声の主を視界に収める。


美しい男だった。


金髪に整った顔立ち。

服装は黒のYシャツに黒のスラックスと、黒で統一されていた。


男の垣根から見ても「美しい」という表現しかできない。


そして男は空中を「歩いていた」。



??「俺の名前はロキだ、よろしく」


垣根「ロキ、だと?」


垣根もその名は聞いたことがある。


ロキ。

北欧神話において悪神とも言われる悪戯好きの神。

119 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/29(火) 00:29:44.71 ID:1Uh+BGLu0
垣根「おいおい、神様気取りかよ。 恥ずかしい奴だな」


ロキ「まあ、そんなところだ。 正確には、ロキの名を冠するってだけなんだけど」


垣根「で、お前は俺を殺しにきた。ってところか」


ロキ「正確には全てを壊しにきた」


ロキ「あのクソ魔神野郎が弱点を克服できねえようにな」


垣根「魔神、だと・・・?」


ロキ「隻眼のオティヌス」


ロキ「アイツは俺らを従えているんだけどよー、気に食わねえからここで殺しちまおうっつー話」


気に食わないから殺す。

たとえ魔神であろうと。

何か勝算でもあると言うのか
120 :5rvXplpt0[saga]:2012/05/29(火) 00:33:02.12 ID:1Uh+BGLu0
垣根「バカだな、そいつに付き従ってる時点で勝てませんって言ってるみてえなもんじゃねえか」


ロキ「魔神の特性も知らねえお前が調子乗るんじゃねえよ」


ロキ「魔神っつーのはな、完全すぎるがゆえに負ける可能性も十分にあるんだよ」


ロキ「つまり複数人でゴリ押しすれば勝てるんだよ」


ロキ「だから俺は他のメンバーにも話を持ち掛け、5人が賛同してくれた」


ロキ「今はまじめに学園都市の連中を排除しつつ、機会を待ってるってわけ。 わかるかなぁ?」


ロキは鬱憤を晴らすかのように次々と語る。


ロキ「12かそこらのガキのくせによぉ、魔神になりやがって・・・」


ロキ「アイツは死ぬのが怖いからこんな計画を遂行してるんだろうなぁ」


垣根「おい」


ロキ「あー、早く殺してえ。 恐怖で歪むアイツの顔を拝みてぇ!」


ロキ「快感ゴへッッ!!!?」


空中にいたロキが地面に叩き付けられる。


ロキ「な、何が・・・」


垣根「御大層にごちゃごちゃ語ってくれてありがとう」


垣根「俺は自分を最低の人間だと自覚してきたけどよ・・・」


垣根「俺以上にクズな野郎がいると知って生きる希望ができたわ」


垣根「だから」


垣根は嬉しそうに、それでいて怒りを感じさせるような声で言う。


垣根「お礼としてテメェにここで死ぬ権利をくれてやるよ!!」



悪神と悪党の戦いが始まる―――


128 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/01(金) 23:39:23.36 ID:xrPczWRK0
―― 火の化身 ――



ロキ「なんなんだよッ!!? その翼はッ!?」



垣根「お前みたいなクソ野郎に教えてやるほど俺は優しくねえよ」


ロキ「舐めやがってぇ・・・」


その瞬間ロキに変化が起きる。


ロキの体の端々がまるで炎のようにゆらゆらと揺らめき始めたのだ。



垣根「(アイツが火に変化した・・・?  これも魔術とやらの力ってか!?)」


さらに変化が起き続ける。


直径40m程の炎の円が垣根とロキを囲むように出現したのだ。


しかも高さが果てしない。 たとえ垣根が翼で空を飛ぼうとも逃げることはできないだろう。


垣根「ば、かな・・・」


ロキ「はははははははッッ!! テメエはここで終わりだ!!」



129 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/02(土) 01:50:01.67 ID:Y/aaQ5Fs0
そう言うとロキは垣根を囲む炎の輪の中へと飛び込む。


垣根「ッッ!!?」


垣根「(これも魔術か・・・)」


完全にロキは炎に溶けるように垣根の視界から消えてしまった。



垣根「そうか・・・そういやそうだったな」


ロキは北欧神話の伝承で火を神格化した存在とも言われている。


また、空や水の上を歩く靴を所有しているとも言われる悪神だ。


おそらく出会い頭に空中にいたのはそういうことだろう。と垣根は仮定する。



この炎の規模は超能力で表すならレベル5相当だろう。

130 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/02(土) 01:50:48.50 ID:Y/aaQ5Fs0
だが・・・いや、だからこそ垣根は冷静だった。


垣根「便利なもんだな、魔術とかってのは」


垣根が炎に溶け込んでいるのであろうロキに語りかける。


垣根「でもよぉ・・・  それくらいの炎は解析済みだぜ?」


その瞬間、垣根を囲う炎の輪が消し飛ぶ。


ロキ「バカな・・・」


ロキの表情が驚愕に染まる。


ロキ「り、理屈がわからない・・・ どうなってやがるッ!!」


垣根は退屈そうに言う。


垣根「教えてやってもいいけどお前なんかに理解できるか?」


垣根「俺の未元物質はこの世に存在しない物質、厳密には素粒子を生み出す能力だ」


垣根「運がいいことによ、さっき殺したお前らの部下が炎の魔術を使ってたんだよな」


垣根「あとは簡単でよ。それを消すのに解析した結果をそのままお前の使う炎にも適用して素粒子を生み出せばいい」


垣根「消えるか心配だったが、予想通りだった・・・ってわけだ」

133 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/15(金) 00:34:10.26 ID:z5E4ulq50
ロキ「・・・・・・」


垣根「あ? どーした、勝てねえことが理解できて絶望したか?」


ロキはうつむいたまま垣根の質問に答えない。


垣根はため息をつき、言う。


垣根「じゃあさよならだコラ」



垣根は6枚の翼をロキの急所6点に叩き込む。
134 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/15(金) 00:34:48.66 ID:z5E4ulq50
・・・・・・が、


垣根「なッ・・・!?」



翼を叩き込んだと同時にロキの体が炎となって消えてしまったのだ。



さらに今度の炎は今までの炎と明らかに性質が違うものだった。



赤黒い炎。


赤く、それでいて黒い。


そしてその赤黒い炎は垣根の翼にそのまま燃え移る。



垣根「ば、かな・・・」



炎の魔術の解析を終え、無効化できているるはずの翼が燃えた。
135 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/15(金) 00:35:35.12 ID:z5E4ulq50
つまりこの赤黒い炎は他の炎の魔術とは明らかに性質が違うということだ。


垣根「(再演算が必要か・・・)」


垣根は舌打ちし、燃えている翼を分散、直後に再構成させる。



垣根「あの野郎ッ、どこに行きやがった!?」



辺りを見回すがロキは見当たらない。



不意打ちを警戒しながらも、垣根は第7学区の奥へと歩んでいく。



第一の目的である心理定規を見つけるために。



136 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/15(金) 00:36:50.07 ID:z5E4ulq50
―― 覚醒による代償とは ―― 


ふ、ふふふ・・・


じつに興味深い。


彼は気付いていない。


脳を形成したことにより彼の中の重要な記憶が失われていることに。


それにまだまだ伸びしろもあるようだ・・・


さあ・・・もっと見せてくれ


垣根帝督・・・


君の力の底を。


137 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/15(金) 00:38:56.20 ID:z5E4ulq50
次回は垣根の過去編その1です

少し長めになるかもですが、どうかよろしくお願いします。 
140 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:45:09.98 ID:Paqq+kgk0
―― 崩壊の序曲 ――



垣根帝督は中学生になるのを機に学園都市にやってきた。


そこで垣根はたった一度の脳開発でレベル5に認定されてしまう。


まだ具体的な順位や能力名は決まっていないが、そのことは学園都市中の人間を驚かせた。


レベル5になったことが垣根の学園都市での生活は崩壊していくのだが。
141 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:46:12.89 ID:Paqq+kgk0
―― 垣根帝督という人間 ――




その日垣根帝督は自宅近くのコンビニにいた。


時刻は午後8時頃で、店内に客は少ない。



垣根「おいおいマジかよ・・・」


垣根の目的は新発売の缶コーヒーだったのだが、棚には1つもない。


垣根「そんなに注目されてた物なのかよっ!?」


垣根「ちくしょー・・・ 誰だ買い込みやがったのは・・・」


こんなことになるなら昼に買っておくべきだった・・・と垣根は小さく後悔したのであった。
142 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:46:57.41 ID:Paqq+kgk0
・・・そういうわけで、垣根は弁当のみを買い帰路についていた。



垣根の住む家は第7学区の学生寮に住んでいる。


レベル5の超能力者は実験などに協力することによって大金を手にすることができる。


しかし、垣根は全く今まで通りの生活を送っていた。


その理由として、垣根の能力がほとんど解明されていないことにあった。


明らかにされているのは何らかの素粒子を生み出しているということだけで、今現在その素粒子が何たるかを解明している最中らしい。



垣根「なんで能力の詳細がわかってねえのに俺がレベル5に認定されたんだ!?っていう話だよなぁ・・・」


垣根は1人で夜道を歩きながら呟く。


その時だった。
143 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:47:29.35 ID:Paqq+kgk0
「ちょっと、そこのお前止まれや」


見るからにガラの悪い男に話しかけられた・・・いや、絡まれた。


男「お前、最近レベル5に認定された奴だろぉ?」


垣根「・・・そうだけど、何か用が?」


男「ムカつくなぁー、お前」


男は明らかにイライラした顔で続けて言う。


男「・・・まぁ、チョーシ乗らないように締めに来た、ってわけだ」


ゲラゲラと笑いながら男は勢いをつけ垣根に殴りかかろうとする。

144 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:48:18.64 ID:Paqq+kgk0
・・・が、


男「ごっっ!!?」


逆に男は垣根を殴ることなく3m近く吹き飛ばされる。


垣根はかなり威力を抑えていたのだが。


男「な、んだ・・・?」


男の表情は驚愕に染まっていた。


垣根がレベル5だという事実は知っているはずなのに。
145 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:51:37.61 ID:Paqq+kgk0
垣根「・・・わかるよ。」


垣根は言う。


垣根「俺がムカつくんだろ? ロクな努力もなしにレベル5になった俺が」


男「・・・・・・、」


垣根「でもよ、だからって俺に当たるのは間違ってるだろ。 その前にすることがあるはずなんだよ!」

146 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 01:59:54.14 ID:Paqq+kgk0
男は不思議な物を見るような目で垣根を見る。


垣根「まあ・・・俺が言うと嫌味にしか聞こえねえかもしれねえがよ、あきらめずに努力してみろよ」


男「ど、努力・・・?」


垣根はニヤリと頬を緩ませながら男に言う。


垣根「そうだ、努力だ。 努力は必ずいつか報われる、ってのが俺の持論でね」


垣根「努力すればレベル5にだってなれる!・・・はずだっ!!」


男「・・・かなり適当に聞こえちまう」


垣根「う、うるせーよ。 見逃してやってるだけありがたく思えよ!」


夜の学園都市に響き渡る口論。


垣根帝督という男はなぜ変わってしまったのだろうか。
147 :5rvXplpt0[saga]:2012/06/29(金) 02:03:13.17 ID:Paqq+kgk0
約2週間かかってこれだけです・・・泣


次回からまたグレムリン戦に戻ります


まだ先ですが自分の構想では垣根がまさかのあの人を保護します


いったい誰でしょうか・・・


ではありがとうございました! 
149 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:28:24.06 ID:TqEFXiOS0
―― 第一位 vs 魔神 ――



爆音が途絶えることなく響き続ける。


学園都市第一位の男、一方通行は魔術を極めすぎて神の領域にまで足を踏み入れてしまった魔神と死闘を繰り広げていた。



オティヌス。


魔女のような風貌で眼帯をつけた少女。


見た目は12~13歳ほどだが、魔術師としての力は圧倒的で、まともに相対できるのは成り損ないのオッレルスくらいだ。



オティヌスは全く一方通行の事など恐れてはいなかった。

150 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:30:09.50 ID:TqEFXiOS0
魔神の厄介な特性を視野に入れても、だ。


だから現在の状況はオティヌスにすれば大誤算だった。



魔神の力が全く歯が立たないのだから。



オティヌス「なん、だ・・・コイツは・・・?」


魔術が全て跳ね返される。


原典に記載されている魔術でさえも。


ならば、と接近戦をしかけるも無駄、いや失敗だった。

151 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:55:57.41 ID:TqEFXiOS0
音速を超える速度で一気に接近し、殴りかかるも、それすら跳ね返される。


右腕はひしゃげたようになり、激痛がオティヌスを襲う。



オティヌス「ぐ・・・あああぁぁぁッ!!」


ここはひとまず逃げよう、とオティヌスは即座に判断する。
152 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:56:25.28 ID:TqEFXiOS0
魔術も物理的攻撃も効かないのだから、その判断は正しいとは言える。



・・・が、


一方通行には逃がす気などさらさら無かった。


二枚の白い翼が無数に分かれ、オティヌスを捕まえようと襲ってくる。


オティヌス「ッッッ!!?」


避ける、迎撃するも絶妙な時間差をつけてくるため対応しきれずに捕えられてしまう。
153 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:57:04.17 ID:TqEFXiOS0
オティヌス「くそッ・・・」


殺される、とオティヌスは確信した。


しかし、そう分かっていても何もできない。


それほどまでにこの白髪の男は圧倒的だった。


白髪の男は言う。


一方通行「お前が何の用でここを襲ったのかは知らねェが、何にせよやりすぎた・・・ 報いは受ける覚悟があってやったンだろォな?」



オティヌス「・・・・・・、」



一方通行「何も言う気はねェってか・・・ ならここで死ぬンだな」


そう言って白髪の男は片方の翼の照準をオティヌスへと向ける。


そして一気に翼が振り下ろされる。
154 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:57:34.38 ID:TqEFXiOS0
オティヌス「くッッ・・・」


オティヌスは思わず目を瞑った。


魔神と言えども、中身は少女なのだから当然のことだろう。



轟ッッ!!という音。



オティヌス「・・・・・・えっ・・・?」



死んで・・・いない?
155 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 00:58:15.49 ID:TqEFXiOS0
自分は未だに捕えられた状態で、攻撃を受けていなかった。


オティヌスは自分の周りの状況が読めないほどに混乱していた。


ふと、白髪の男を見下ろすと、男は自分とは全く違う方向を見ていた。


それも信じられないといった表情で。


オティヌスは白髪の男の視線の先を見る。



156 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/01(日) 01:01:28.91 ID:TqEFXiOS0
そこには長身の男がいた。


明るい茶髪で


まるでホストのような服装で



何より一番目についたのは



男の背中から生えた6枚の翼だった。


長身の男は言う。


いかにも気怠そうに。



「でっけーの釣れちまった」


ここから何が始まろうとしているのか・・・


それはオティヌスにも全く分からない。





・・・ここから変わる。


何もかもが。

162 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:08:29.40 ID:HfoIUWNI0
―― 第一位vs第二位 ――



垣根帝督はその少女を助ける気など全く無かった。


奇抜な服装からして魔術サイドの人間だろう、とも推測したからだ。


それと同時に、一方通行の圧倒的な力を目の当たりにして少しだけ恐怖も感じていたのだ。


あの怪物に敗北した時の記憶が脳裏に浮かぶ。


―― 勝てるのか、アイツに・・・


垣根「(アイツは守って見せた、俺は・・・)」



思い出したくはない過去までもが頭の中で鮮明に再生される。
163 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:09:00.48 ID:HfoIUWNI0
垣根「ッ・・・」




垣根は自分に向けて舌打ちし、一方通行らを見る。



そこで垣根はようやく気付く。



――― 少女の顔。

164 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:09:32.06 ID:HfoIUWNI0
その少女の顔は似ていた・・・あの女に。


かつて垣根が救えなかったあの女に。


それを見て思わず言葉が出る。


垣根「ハッ、―――償えってか・・・?」



学園都市第一位の男は垣根の言葉を無視し、くだらなさそうに言う。


一方通行「・・・どォでもいい。 お前がなんで生きてンのかも、お前がどォしてこンな真似をすンのかも」


垣根「あ? 別にテメエには教えるつもりなんてねえよ」



このような状況になってしまった以上、この2人は言葉だけでは収まらない。



確実に、死闘となるだろう。
165 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:09:58.17 ID:HfoIUWNI0
先に動いたのは一方通行。



二枚の白翼を垣根に向けて叩き付ける。


その勢いで少女も垣根に向けて放り投げられた。


垣根「ちッッ!!」


垣根は一度は解除していた翼を展開、白翼を紙一重でかわし空中に放り出されていた少女をキャッチする。


166 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:10:24.14 ID:HfoIUWNI0
少女はボロボロだった。


右腕はひしゃげ、他の部位も含めて見ればとても満足に動けそうな状態ではなかった。



しかし少女は鋭い眼光で垣根を睨みつけながら言う。


少女「貴様、第10位の聖人・・・か?」


垣根「セイジン?なんだそれ、俺は普通の人間だ」


そもそも何者だお前、と垣根は少女に聞く。


すると、すぐに答えが返ってくる。

167 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:11:29.34 ID:HfoIUWNI0
少女「私はオティヌス、隻眼のオティヌスだ」


垣根「オティヌス、だと・・・?」


わけのわからない天使みたいな奴や、ロキも言っていた言葉。


垣根「・・・魔神ともあろうお方があんな奴にボコボコされるなんてな」


垣根の皮肉混じりの言葉を発した直後 ―――――、


一方通行が追い打ちをかけてきた。


操られた大気のベクトルによって無数の竜巻が生み出され垣根に向かってくる。


それに対して垣根は6枚の翼を弓を引き絞るようにしならせ、空気に叩き付け烈風を発生させる。

168 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:17:39.55 ID:HfoIUWNI0
ドォォォォォォッッ!!


爆発したかのような音が第七学区に響き渡る。


垣根はそのまま6枚の翼を一方津通行へと叩きつけようとする。


それを見て一方通行は言う。

169 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:18:25.24 ID:HfoIUWNI0
一方通行「・・・忘れたのか?」


垣根「あ?」


一方通行「お前の公式の世界は掌握済みだ。 ・・・つまり、その翼だっていつでもお前への凶器になりえるンだよ」


垣根「そうかい」


一歩通行は垣根の言動から何か違和感を察したが、すでに翼は目の前まで迫っていた。


本来なら反射されるはずの垣根の翼 ――


170 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:19:04.59 ID:HfoIUWNI0
しかし結果は違った。



ゴリゴリゴリッッッッ!!!と、鈍い音ともに一方通行に翼が炸裂する。



一方通行「ご、はぁっ――――!?」


一方通行の体から大量の血がこぼれるように溢れ出る。


垣根はその光景を理解できない、といった顔をしているオティヌスに一方通行の能力を大まかに説明する。


垣根「あの野郎は周囲のベクトルを操る能力者だ。 だからまあ、普通の攻撃なんて大抵ははね返されちまうんだよ。 ――― あとは面倒だ、自分で
   考えな。」


オティヌス「貴様は・・・何者なんだ?」

171 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/09(月) 01:22:24.97 ID:HfoIUWNI0
垣根はとても怠そうな顔をしたまま、


垣根「・・・別に、俺はただの――― クソ野郎だ。 それにまだアイツはくたばっちゃいねえ、こっからが問題だ」


答えになっていないとでも言いたげなオティヌスだったが、一方通行の方を見る。


血だらけの一方通行は立っていた。


ボロボロにも関わらず、強く、強く立っていた。


・・・死闘は続く。 


どちらか一方が立てなくなるまで――――
183 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:23:44.77 ID:CkJFmwgf0
――― 未知なる世界 ―――



垣根「ったく、なんであれ喰らって平気なのかねテメエはよぉ」


実際には明らかにダメージは負っているのだろうが、あえて垣根はおちょくるように言う。


一方通行「うる・・・せェな」


垣根「あん?」


一方通行「ごちゃごちゃしゃべってンじゃねェよ」


同時に、一方通行の白翼が数百mほどの長さまで爆発的に展開する。


一方通行「・・・・・・一撃で終わらせてやる」



ビュオッッッ!!と大気を切り裂いたような音とともに一方通行が一瞬で垣根との距離をつめ、一撃で仕留めるべく拳を振りかざす。

184 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:31:41.35 ID:CkJFmwgf0
当たれば人を殺せる攻撃に対しても垣根は余裕を保っていた。


垣根は翼で烈風を起こし一方通行の進路を阻む。


垣根「ダークマターって知ってるか?」


垣根はそのまま下2枚の翼を動かし一方通行に追撃し、それを一方通行が脚力のベクトルを操作し避ける。


垣根「この場合、暗黒物質の方のダークマターだな。」
185 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:32:18.56 ID:CkJFmwgf0
垣根は太陽の光を6枚の翼に接触させ「回折」を起こし一方通行へと照準を定める。


一方通行「ッッ!!?」


一方通行は地面から一気に高層ビルの屋上へと飛び、眩しい光を放つ光線を紙一重でかわす。


一方通行が元にいた場所は光と接触した瞬間、地面が焼け、燃え始めた。


コンクリートが太陽の光で燃えるなど、おかしな光景だった。


一方通行「(あの時よりも威力が上がってやがるのか―――!?)」


垣根帝督はその現象が当然の事であるかのごとく興味が無さそうに炎を見入り、話を続ける。
186 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:32:49.39 ID:CkJFmwgf0
垣根「暗黒物質には色々な候補があるが、その中の1つに惑星がある」


ま、俺のは少し違うがな。と垣根は言い、


垣根「今からとっておきを見せてやるよ」


垣根帝督がそう言った時だった。


いつの間に辺りが暗闇に包まれている。


垣根、オティヌス、一方通行の3人の近辺だけが光を当てられているかのように明るい。
187 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:33:17.93 ID:CkJFmwgf0
さらに垣根帝督と一方通行の翼が消えていた。


一方通行「なンだここは・・・」


垣根は抱きかかえていたオティヌスを下ろして言う。


垣根「ここはな、テメェが化け物から一般人になれる空間だ。 あらゆる物理法則を俺の意志に従って生み出し、既存の法則に上書きしていく。 ―――どういうことかわかるな?」


そう言うと垣根は一方通行を殴りつける。


――――素手で。


一方通行は顔を殴られ血を吐いている。


一方通行「(反射が効いてない――いや、それだけじゃねェ。 ベクトル変換自体が作動しない―――ッ!?)」
188 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:33:59.53 ID:CkJFmwgf0
おそらく垣根帝督はあらゆる物理法則を生み出す空間―――つまり、一方通行のベクトル変換を何かしらの法則で無効化しているのだろう。


しかし、そんなことは可能なのか、どういう原理で無効化しているのか全く理解できない。


まるで木原数多の時と同じようだ、と一方通行は思った。


一方通行の頭が混乱する中、垣根は一方通行の元へ歩み寄りながら言う。


垣根「理解できねーよなぁ? そりゃそうだ、俺だってどんどん更新されていくこの能力に頭の中が追いきれてねえんだからな」


突然、地面にうつ伏せになっている一方通行を激痛が襲う。


垣根が一方通行の背中を踏みつけているのだった。
189 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:34:29.24 ID:CkJFmwgf0
垣根はそのまま足で何度も無防備となった一方通行を踏みつける。


ゴキィッ!!という音とともに肋骨が一本折れる。


一方通行の絶叫には興味が全く示さずに垣根は言う。


垣根「何だよテメェ、弱くなっちまったんじゃねーか。 ダメじゃねえか、――――善人が、ヒーローがそんな弱っちくちゃよッ!!」



一方通行「・・・お前は、わかっちゃいねェ・・・。 ヒーローが強くなくちゃいけねェなんてことはねェんだ」


途切れ途切れ言葉を紡ぐ一方通行。
190 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:34:58.06 ID:CkJFmwgf0
一方通行「・・・・・・大事なのは助けたい、守りたいっつー意志の強さなンだよ。」


垣根「・・・・・・ッ」


その言葉に垣根は過去を思い出し、喉が異常に干上がった。


それ以上言葉を続けるな、と言おうとするも言葉がうまく出てこない。


一方通行は垣根をまっすぐに見据え告げる。


一方通行「お前は・・・・・・間違ってる」


垣根の頭が沸騰した。

191 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:35:24.41 ID:CkJFmwgf0
垣根「――――ッ!! うっせんだよおおおおおおッッ!!!」


垣根帝督は叫び、うつ伏せの一方通行の側頭部を思い切り蹴り飛ばして意識を刈る。



――――終わった。



怪物同士のこの戦いは垣根の圧勝に。



暗闇が消え、辺りは先程までと同じ景色に戻っていく。



垣根「・・・・・・案外あっけなかったな」


垣根は残念そうな顔をして呟く。
192 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:36:06.27 ID:CkJFmwgf0
そこには先程までの垣根はなく、とても平坦だった。


今までの一幕を見守っていたオティヌスが垣根に問う。


オティヌス「なんだ、お前はわざわざ傷を負いたがる、いわゆるドMとか言うやつなのか」



聞き捨てならないことを聞いた気がすんな、と垣根は適当に反論だけして歩み始める。



オティヌス「どこへ行く気だ」


垣根「・・・俺は元々は人探しでここまで来たんだよ。 お前見たことねぇか? 金髪でドレス着たガキだ」
193 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:36:39.38 ID:CkJFmwgf0
ティヌスはそれを聞いて少し驚いたような表情をし垣根に言う。



オティヌス「悪かったな、多分そいつならさっき私が気絶させた」


垣根は一瞬オティヌスに敵意を向けるもすぐにそれを止める。


垣根「気絶してるだけなら別に許してやるよ。 ・・・・・・もっとも、俺が今キレてお前と戦おうとも、お前には勝てねえだろうが」


ほぉ、とオティヌスはその言葉に興味を持ったのか、続けろと言わんばかりに垣根に対して指図をするかのように顎を上げる。



垣根「はー、分かったよ。 教えてやるから先に場所を案内してくれよ」


オティヌス「・・・チッ、分かった。案内しよう。 で、そいつはどうする?殺すか?」
194 :5rvXplpt0[saga]:2012/07/24(火) 01:37:07.80 ID:CkJFmwgf0
オティヌスは地面にうつ伏せになって気絶している一方通行を指さして言う。


垣根「いや、一方通行は殺さねえ。 そこに放っておけばいーだろ」


・・・そうか、とオティヌスは少し名残惜しそうに言った。


さらに続ける。


オティヌス「私がそいつを気絶させたのはこいつと戦う前だ。 その場所からは戦闘中にかなり離れている」


垣根「なるほど、まあいい。 さっさと行くぞ」


オティヌス「・・・・・・フン」


こうして垣根はオティヌスと共に少しの間だが行動することになったのだった。

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