- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県)[saga]:2012/10/08(月) 23:01:00.74 ID:OsM07NBco
- 「そこのおねーさん! お茶しない?」
終業式を午前中に終え、夏休みに入ったばかりの“学園都市”の午後。
大通りを歩く学生たちの足取りは軽く、その表情は等しく笑顔で弾んでいる。
しかし、それは当然だ。陰鬱な期末考査を終え、青春の代名詞ともいえる夏休みに入ったのだ。浮かれない学生はいないだろう。
だから、こんな光景は“学園都市”のいたるところで見る事ができた。これからの夏休みを、さらに素晴らしいモノにすべく、彼女の居ない男子学生がする行為――
即ち、ナンパである。
「あん…?」
声をかけたのは、ツンツン頭が特徴的な、やや垂れ目の男子学生。
声をかけられたのは、ロングコートに緩やかウェーブのロングヘアが特徴的な、ややキツ目の年上系美人。
ここに、王子様とお姫様の邂逅が果たされる…
. - 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県)[saga]:2012/10/08(月) 23:01:45.41 ID:OsM07NBco
- 「…ナンパ? 悪いけど、他を当たって」
声を掛けられた美人さんは、しかし、今にも「シッシッ」と手を振りそうな態度で、すげなくお断りを入れる。
だが、こんな事でめげていてはナンパなど成功しない。ツンツン頭の少年は、持てる笑顔のパターンを総動員して彼女の気を惹こうとする。
「いやいやいや! 絶対に退屈させませんって! この上条さん、別にナンパ使用と思ってお姉さんに声を掛けたわけじゃ無いんですよ!? お姉さんがあんまりに美人だったから、口と身体が勝手に動いたわけでして… うわっ、間近でみるとすっげぇ美人!」
商売人であったら揉み手をしているであろう卑屈な態度で、あらん限りの言葉で美人を褒めちぎる。もちろん、おべっかだとは相手も分かっているだろうが、8割本気の言葉は意外と相手に響くものだ。
「はいはい、ありがと。でも、お姉さん暇じゃないし、君みたいな年下の子と付き合う気は無いの。じゃあね」
「お昼! お昼まだでしょ!? 奢りますって! ほら、近くに17学区の学食街あるし、もう少し足を伸ばせば23学区のレストラン街あるし! もちろん俺が奢りますから、お昼だけでも!」
パシン! 拝むように両手を合わせて、チラリと美人を仰ぎ見る。ちなみに、彼のカードはここまでである。
「はぁ… メンドクセー……」
それまで努めて視界に入れようとしていなかった美人だが、いよいよ豪快に振ってやろうと、ツンツン頭の少年を睨みつける。
元々、彼女は気が短い。つまり、しつこい男は嫌いなのだ。
「あのさぁ… 暇じゃないって言ってるでしょ? 痛い目みたくなかったら……」
そう言い掛けると、美人の懐で小さな着信音が響いた。ムッとした顔で言葉を飲み込んだ彼女は、流れるような動作で携帯電話を取り出し耳に当てる。
「…はい、麦野だけど」
『あ、麦野ですか、絹旗です。超手短に言いますが、予定が超変更になりました。対象がポイントから超離脱したようです』
耳に入った声に、さらに表情を険しくし、声を小さくする美人。
「…何よ、情報が漏れた?」
『その可能性は超ゼロですね。向こうの運が超良かった。そういうことでしょう。滝壺さんの追跡は超続行中ですが、向こうが腰をすえないと、完璧な襲撃は無理そうです。ですので…』
「どっかで時間を潰しとけって?」
『はい。まー、ファミレスかなんかで待機して置いてください。補足したら私も超急行しますので』
「…チッ、了解」
機嫌が悪そうに携帯を閉じる。ふと気付いて目をやると、ツンツン頭の少年はまだ拝んだままだ。
軽く息を吐いて、不機嫌な表情を取っ払うと、悠然と腕を組んで少年を頭のてっぺんからつま先まで観察する。
(顔は条件付きで丸、明らかに年下、体型はアスリートタイプ… 何かスポーツでもやっているのかしら? …ふん、遊んでやるか)
「……奢ってくれるって?」
口の端をほんの少し吊り上げて、キツ目の美人が、少年にとってはこの上ない言葉をこぼす。
その言葉に、バッ、と弾かれたようにツンツン頭の少年が顔を上げると、満面の笑顔で「もちろんですとも!」と叫んだ。
. - 9 : ◆WR1lHxDh9No6[saga]:2012/10/08(月) 23:03:29.16 ID:OsM07NBco
- 「じゃ、ちょっと高いトコ奢ってもらおっかなー?」
「うっ… いやいや、ちょっと高くてももちろんオッケー!
で、でも、良ければ私めにお店のチョイスをさせて頂けませんか?」
「えー、その店、良い所なんでしょうね? あ、私、麦野ね」
ナンパをされるのは初めてではない。どうせ今日限りの関係なんだからと、キツ目の美人――麦野沈利は本名を明かす。
「任せてください! えっと、麦野さん! 俺、上条当麻って言います」
一方のツンツン頭の少年――上条当麻はドキドキものである。はっきり言えば、玉砕覚悟で臨んだ相手なのだ。
「上条クンね。キミ運が良いわ、こんな美人捕まえたんだから。頑張って楽しませてちょうだい」
「は、はい……!」
(うわー、自分のこと美人って言い切っちゃってるよこの人……)
もちろん、麦野の端麗な容姿から声を掛けたのだが、こうもはっきり言われるとかなり緊張する。
(男慣れしてんだろーなー…)
対して自分は彼女居ない暦=年齢だ。だが、一応の計画は頭の中にあった。
「えっと、有名なトコじゃないんですけど、美味いオムライスを食わせる洋食屋があってですね…」
「オムライスねー… ま、いっか」
第二関門突破。これでチェーン店や身の丈にあってない高級店を言うようだったら、麦野は即サヨナラするつもりだった。
そういうテンプレな対応は彼女の好みでは無い。
「よ、よかった… えっと、店、近いんで、こっから歩いていけますよ」
. - 10 : ◆WR1lHxDh9No6[saga]:2012/10/08(月) 23:04:21.23 ID:OsM07NBco
- 「ふむ、ふむ、ふむ…」
「ど、どうすか?」
注文し、運ばれてきたオムライス(鮭入りライス)を頬張る麦野を、心配そうな顔で上条が見つめる。
彼女の好みに合わなかったら、当然、そこでアウトである。
「……ま、合格かな」
「よ、よかったー!」
実は密かに麦野の好みどストライクを当てていたのだが、そんな事を知らない上条は、もはや何度目か分からない安堵の息を吐く。
(普通に美味いわね… 鮭が良い感じにライスに馴染んでるわ…)
そうやって、当たり障りの無い会話を挟みつつ、オムライスを食べ終わると、麦野はチラリと携帯の着信を確認した。
(絹旗からの連絡は、まだ無い、か… チッ、早くどっか一箇所に固まりなさいよ…)
ふぅ、と軽く息を吐くと、対面に座る上条ににっこり微笑みかける。本日初めての笑顔に、上条の顔がたちまち赤面する。
「あ、あの、麦野さん…?」
「これからはどーしよっかなー? まだ暇な時間が続きそうなんだけど?」
第三関門突破。上条は高鳴る鼓動を必死に抑えつつ、必死に頭を回転させる。
昨日のプランと今の状況を懸命に照らし合わせて口を開く。
「腹いっぱいになったし、ちょっと身体動かせる遊びしません? この近くにボウリング場がありまして…」
「ぷっ!」
いかにも学生的な上条の発案に、思わず麦野が噴き出す。まさかボウリングとは予想外だった。
「あはは、ボウリングかぁ… 当然、そこの払いは…」
「わたくしが持ちますとも! もちろん!」
あまりに必死な上条の様子に、麦野がケラケラと笑う。
「冗談、冗談よ。そこまでお姉さんも鬼じゃないわ。割り勘で良いわよ」
「よ、よかったぁ~」
予算的にギリギリだったのか、心底ホッとした表情を見せる。
麦野は、そんな上条を不覚にも少しかわいいと思ってしまった。
. - 13 : ◆WR1lHxDh9No6[saga]:2012/10/08(月) 23:06:36.60 ID:OsM07NBco
- かこーん!!
シリコンボールが激突し、ピンが空中に舞う。
ボールがその場で手に合わせて成型されたり、ボールの起動がレーンに記録されたりと、
所々ハイテクな仕掛けは用意されてはいるが、基本、アナログなルールは変わっていない。
2投して多く倒した方が勝ち。単純だが、ちょっとコツを掴めば、女性でも男性と競い合えるのがボウリングの魅力の1つだ。
「そーれっ!」
専用に調整されたボールを、やや角度をつけて麦野が投げる。
ボールは吸い込まれるように1ピンと2ピンの間に激突し、本日何度目か分からないストライクのコールがボウリング場に響き渡る。
「よっしゃ!」
「つ、つえー…」
上条が青ざめた顔でスコアを見る。
すでに3戦目の10フレームだが、麦野とはほぼダブルスコア。
上条も一応は100アップを軽く超えているのだが、麦野が当たり前のようにターキーやフォースをだすので、まるで追いつける気がしない。
「ふっふっふー、どんなもんじゃー? もしかして、勝とうとか思ってたかにゃー、上条クン?」
男子を叩きのめす快感からか、弾んだ声で麦野が言う。
言われた上条は、愛想笑いもそこそこに、やおら真剣な表情になってボールを構える。
流石に彼とて男子の意地がある。ここまでコテンパンにやられていては流石に面白くないのだ。
「……せいっ!」
真っ直ぐ振り切ったボールは、1ピンやや左寄りに激突するも、惜しくも10ピン残し。
焦った上条はスペアも逃し、3戦目も麦野の勝利に終わった。
「上条クン、よっわーい!」
彼女にしては珍しく上機嫌な声を出す。とにかくこの美人さん、相手を実力で見下すのが大好きなのだ。
「俺が弱いんじゃなくて、麦野さんが強すぎなんスよ! …もしかして、やりこんでるクチ?」
「ばーか、こんな疲れるコト、やりこむわけないじゃん。
入射角とボールの回転を計算して、後はまっすぐ投げるだけ。簡単なスポーツよ」
「んな簡単って言われたって…」
流石に面白くないのか、上条が口を尖らせる。
機嫌が悪いと癇に障る仕草だが、今はスルーするぐらいの精神的余裕がある。 - 14 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:08:32.19 ID:OsM07NBco
- (まぁ、意外と楽しませてもらってるし、少しサービスしてあげようか…)
心の中でチロっと舌をだして、麦野はコンソールを操作して、ゲームを練習モードに切り替える。
ボール速度・軌跡、接触角度、投球アクションが記録できる優れモノ機能だ。
「ほら、ちょっと投げ方見てあげるから、構えてみて」
「え、投げ方?」
「後ろで見てるとさ、上条クン、体軸ブレブレなのよねー。まぁ、それを意識して中心線狙ってるんだろうけど…」
少し呆然とする上条の手を強引に引っ張って、投球レーンに立たせると、麦野は上条の背中からピッタリと胸を密着させた。
「ちょッ! ちょッ!!」
慌てふためく上条を尻目に、抱きかかえるように麦野が上条の身体に手を回す。
「こ・ら。視線は真っ直ぐ、先頭のピンを見て。ブレ無いように腰を支えて――?」
何の気もなしに腰に回した麦野手が、上条の腹筋に触れた瞬間止まる。
元々筋肉質だとは感じていたが、掌から伝わる感触はかなり鍛えた筋の弾力だ。
(鍛えてる? スポーツか、それとも……)
ほんの少し、麦野が思考を回転させるが、上条の方はたまったものではない。
後ろから抱き付かれているせいで、麦野の見事な豊乳が自分の背中に押し潰されている。
下着と上着を間に挟んでいるにも関わらず、圧倒的な質量のおかげで何がどうなっているのかがはっきり分かる。
(やべッ、やべぇ!!)
いくらなんでも、これは思春期の男子学生にとっては刺激が強すぎる。
しかも、麦野が動かないものだから、余計に神経が背中の豊乳を感じてしまう。
血液が下半身に一気に集中する。しかも、麦野の手は上条の下腹部をさわさわと撫ぜ回している。
天国のような、あるいは地獄のような数瞬が過ぎた。いい加減、上条が声を出そうとした瞬間、麦野が唐突に上条から離れた。
「え、あー……」
「…ふふ、なーに残念そうな声出してんのよ。ほら、腰がブレないように投げてみて」
その言葉で、上条は投球を開始するが、投球フォームは見事なへっぴり腰。力なく投げられたボールは、当たり前のようにレーンの溝を掃除した。
「あはは! 何それ! 腰が引けちゃって、かーわいー!」
「だ、だって! 麦野さんがッ!」
「ん~~、アタシがどうしたのかにゃ~?」
心底楽しそうに、麦野がニヤニヤと上条を見つめる。
「アンタがおっぱいを当てるから」とは当然言えるはずもなく、上条は顔を真っ赤にして「いえ、その…」と口篭った。
「良い思いしたでしょ?」
「えっと、はい……」
妙に優しい声色で言われて、思わず上条が素直に頷いた。
その背伸びをしていない少年の表情を見て、麦野の表情が益々喜色ばむ。
「ふふ、素直で良いわ。頑張って楽しませてくれたご褒美よ… さて……」
そう言って、麦野はチラリと携帯の着信を確認する。絹旗からの着信はまだ無い。
あるいは、今日中の決着は無理なのかもしれない…
(なんか、そういう気分じゃなくなったしねー。良いおもちゃも見つかったし…)
ほんの少し悩むと、麦野は携帯を操作して非常時以外の着信拒否に設定した。
(決めた、暗部の仕事は今日は無し! たまにはこんな休日も良いわね)
まだ呆然としている上条の横に立つと、麦野は楽しそうに上条の腕に絡みついた。
「うぇ!?」
「上条クン、動いて疲れたから、甘いもの食べたいなー」
. - 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2012/10/08(月) 23:09:26.30 ID:KffiNGls0
- 上琴とか上インと違って緊迫感があるのがいいな
- 16 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:10:46.20 ID:OsM07NBco
- 「ごちそうさま」
目に止まった喫茶店で頼んだケーキセットを食べ終わると、麦野はさりげなくレシートを自分の方に手繰り寄せた。
「あ…」
「ねぇ、上条クンのレベルはいくつ?」
何か言いかけた上条だったが、それに被せるような麦野の質問に気勢を削がれる。
「えっと、笑いません?」
「返答しだいかなー」
「いや、こーゆー前フリだから分かると思いますけど… レベル0っす」
「ふーん、ま、学園都市に居る学生の半分以上はレベル0なんだから、別に笑ったりしないわよ」
麦野がそう返答すると、上条は少し安心した表情になった。
学園都市において、レベルは絶対なものだ。
それは、単に学力の話だけでは無く、もらえる奨学金の額、研究機関からの報奨金と、財政上でも差が出てくるのだ。
ゆえに、学園都市においてレベル0は常にコンプレックスを抱えて生活している。上条が少し卑屈な態度を取ったのもそのせいだ。
「麦野さんは?」
「んー、レベル3。粒子変化に関する能力よ」
「す、すげー… 美人でスポーツ万能でレベル3かよ…」
レベル3(強能力)は全体のレベルで言えば真ん中あたりだが、レベル0の上条にとっては、もちろん雲の上の存在だ。
「ふふふ、凄いでしょー。こうやってアタシの時間取ってるの、ありがたく思いなさいよ」
「もちろんですとも!」
麦野の言葉に、やけに力強く反応する上条。
なんと言うか、犬のようである。
(ちょっと気の利く年下クンかー、キープしとくかなー)
実のところ、麦野沈利は陽の当たる道を堂々と歩く人間ではない。
はっきりと言えばイリーガルな人間である。
だから、恋愛などは遠い過去の産物だし、いまさら恋人が欲しいとも思わない。
思わないのだが、こうやって楽しい時間を過ごしてしまうと、ついつい欲が出てしまうのだ。
麦野はケーキセットの紅茶を一口飲むと、軽く身を乗り出して上条に話しかけた。
「ね、上条クン。まだ時間ある? アタシ、ちょっと買い物したいんだけど?」
古今東西、女性のショッピングに男が付き合うとロクな目に会わない。
無論、これも麦野のテストなのだが、上条は躊躇うことなく頷いた。
「あ、良いッスよ。荷物持ちっしょ? いくらでも付き合いますって」
そういって、ニカッ、と笑う。
決して洗練されていない、素のままの笑顔だったが、それが麦野には快く思えた。
(いいわ~、弟キャラを被ってるのかもしれないけど、こうも分かり易いと対応が楽ね。うん、キープしとこ)
「良かった。それじゃ、行くわよ」
そう言うと、当然のようにレシートを掴んで麦野は席を立った。
上条が慌てて「あ、自分の分は…」と言いかけるが、麦野はレシートをひらひらと振って答えた。
「これからこき使うんだから、ここの支払いは任せなさい。その代わり、絶対に泣き言は言わないこと…!」
美脚が自慢の某金髪トラップ娘がこの光景をみたら、思わず偽者かと疑うような笑顔を浮かべ、麦野沈利は歩き出した。
. - 17 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:12:14.79 ID:OsM07NBco
- 「これ良いわ~、キャミは何枚持ってても足りないしね… ん~、夏は暖色系少ないのがネックね… あ、パンプスめっけ…」
(まだ買うのかよ……)
麦野がショッピングを始めてすでに数時間が経過していた。
夏と言えども、外は茜色に染まっている。
すでに上条の両手には、数を数えるのも馬鹿らしいほどの買い物袋がぶら下がっている。
飛んでいったマネーカードの額など考えたくも無い。
(レベル3って、金持ってんだなー…)
それが、レベル0である上条の偽らざる本音である。
一方の麦野は、恐ろしいほどの上機嫌である。
「お、リップも夏の新作がでてんじゃーん。どれにしよっかなー。ねぇ、上条クン、どの色が似合うと思う?」
店頭に並ぶ色取り取りのリップを指差して麦野が笑う。
その目は半ば試すようだ。
もちろん、上条には女性化粧品の知識はほとんど無い。だからと言って、何も答えないのは当然ご法度だ。
「えっと、麦野さん、暖色系好きなんですよね…?
あー、だったら、あんまり派手な色じゃなくて、そのコートに合うような薄いヤツが良いんじゃないと、上条さんは思うのですが…」
なんとか絞りだすように上条が答えると、意外と満足したのか、麦野は「そう? じゃ、そうしようか」と答えて、迷いの無い手つきで数種類のリップを選び出した。
さらに消費されるマネーカード。金額にして、すでに6桁は軽く超えている。
「さて、と…… 次はー、あ、タイツの新色見なきゃ」
(後悔はしねぇ、後悔はしねぇぞ!)
強く自分に言い聞かせて、上条は汗で滑る買い物袋を握り直した…
. - 18 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:14:26.57 ID:OsM07NBco
- 麦野の散財が終わったのは、外の陽もどっぷり暮れてからだった。
終わりごろには上条の身体は買い物袋で埋め尽くされていて、散々麦野に笑われたり写メを撮られたりした。
この格好でどこまで歩かされるのかと恐怖した上条だったが、麦野はあっさりと集積センターに行き、荷物の全てを自宅に宅急便送りにしてしまった。
「上条さんの苦労はいったい…」
流石に愚痴の1つも言いたくなったが、「纏めて送らないと二度手間でしょ?」という麦野の台詞に、上条は苦笑いと共に愚痴を飲みこんだ。
「ふふ、まぁ、根性見せてもらったし、夕食もアタシが奢るわよ。お店、こっちで勝手に決めちゃうけど、良い?」
「えっと、はい。ていうか、夕飯まで良いんですか?」
軽くなった身体を軽くほぐしながら上条が言う。
「もちろん良いわ。今日は本気で楽しかったわー。 …ま、最近仕事で嫌なことが続いていてねー。良いストレス発散になったわよ」
まだまだ笑顔の麦野が言う。
買い物にはギブアップだった上条だが、そういう笑顔を向けられると、苦労も報われた気分になれる。
「楽しんでくれたんなら、俺も嬉しいです。まー、別れるのが寂しくなっちまいますが…」
細心の注意を払って、可能な限りさりげなく上条が言った。
「んー、まぁね…」
敏感に言葉の裏を読み取った麦野は、さて、どうしようかと頭を巡らせる。
(メルアド教えるのは確定で良いわよね。表用の捨てアドだから、いくらでも変更利くし…
あとは、今日はどこまで『許しちゃう』か、ね…)
麦野は不意に上条の正面に立つと、最初にそうしたように、上条の頭のてっぺんからつま先までをじーっと見つめた。
「えっと、麦野さん?」
「んー、ちょっと黙ってて」
困惑する上条の言葉を切って捨てると、麦野はどんどん思考を進めていく。
(別に食べちゃってもいいけど、童貞だったときが面倒よねぇ…
でも、直感だけど、この子は肉体関係持ったら、無茶苦茶懐いてきそうよね。どことなく犬っぽいし…)
麦野の実年齢からしてみれば行き過ぎた思考だが、彼女の本質から見れば全く違和感は無い。
麦野沈利はこういうオンナなのだ。
「…食べちゃうか」
「はい?」
麦野がぼそりと呟いて、よく聞こえなかった上条が思わず聞き返した、その瞬間、
Pipipipipipipipipipipi!!
麦野のポケットから、けたたましいアラーム音が鳴り響いた。
. - 19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]:2012/10/08(月) 23:15:04.98 ID:PVjNYkYt0
- 読みにくい。改行しろ
- 20 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:16:33.93 ID:OsM07NBco
- 「……クソがッ!!」
さっきまでの笑顔を一瞬で消し去ると、麦野は小さく毒づいて荒々しく携帯を耳に当てた。
「……はい、こちら麦野」
『あんたってばー!! なんで着信拒否してんのさ!! 今日は仕事の日でしょーがッ!!」
携帯からは、聴き慣れた、しかし、不快さだけは変わらない女性の声が響いた。
「はぁ? 今日は休日、アタシが決めた。用が無いんなら切りますけどー?」
『こいつらときたらッ!! アンタね! 絹旗が何言ったか知らないけど、状況は依然進行中なの!
子犬くん食べようとか、盛ってんじゃないわよ!』
「切りまーす」
『ちょっと待てぇ!! 緊急コールだっつってんだろうが!」
「だったら、とっとと用件言えよ…ッ!!」
思わずドスの利いた声を出して、しまったと上条のほうを見る。
が、彼はなぜか麦野の方を見ておらず、暗い路地裏の先を凝視している。
(ほっ、よかった…)
自分でもワケの分からないため息を吐くと、麦野は改めて電話先に問い質した。
「で、何?」
『……今日アンタに処理を依頼した男だけど、何やったヤツか知っているわよね?』
「ああ、元々はアタシたち『アイテム』の下部組織の人間で、対立組織にエスとして潜り込んだけど、いつの間にか裏切ってた馬鹿だろ?」
『そう、で、こっちに裏切りがばれて、しかも対立組織にもエスだとばれて逃亡したその馬鹿なんだけど、
組織内のNo.2を丸め込んで、クーデターを起こしたのよ』
「で」
興味なさそうに麦野が答える。そんなの、上手くいかないに決まっている。
『当然失敗して、その馬鹿はNO.2共々組織からも追われる身になったんだけど…
運の良いことに組織から逃げ出すのには成功したみたい』
「それじゃ、状況変わって無いじゃん。
腰を落ち着けたら滝壺が補足、アタシか絹旗が襲撃して終わりじゃん」
『いやー、アタシもそう思って、たった今滝壺にサーチしてもらったんだけどさ。
滝壺が変な事言うのよ。『麦野とそろそろ出会う』って』
「は?」
ひどく嫌な予感がして、麦野は視線を巡らす。今、彼女が立っているのは大通りから外れた路地裏一歩手前。
通行人は全く居ない。
『でね、アンタのGPSと馬鹿の現在地を照会したら、ばっちり逃亡ルート上にアンタが居るのよ。いやー、偶然って怖いわねー』
「ばっ、馬鹿野郎!! 最初にソレ言えよ!!」
電話の先で、絶対にコイツは笑っている。そう確信した麦野は、即座に電話を切ると、神経を尖らせて周囲を索敵した。
が、それは無駄な行為だった。
「あんたら誰だよ、俺らに何か用か?」
妙に落ち着いた上条の言葉が聞こえ、そちらに目を向けると、上条の視線の先に、いかにも柄の悪そうな学ラン姿と、神経質そうなスーツ姿の2人の男立っていた。
「お、お前…ッ!!」
スーツの男――元エスの馬鹿が、麦野の姿を確認して絶句する。
「畜生… テメェのせいで俺がこんな目に……」
彼の中でどういう超理論が展開されているのかは分からないが、どうも、ここまで追い詰められているのは麦野のせい、と彼は思っているようだ。
「こうなったら… ここで刺し違えて……」
物騒なことを口走る。今日一日で相当神経をすり減らしたのだろう、その声に余裕は全く無かった。
(まずいまずいまずいまずいーーーッ!!)
対する麦野も相当に動揺していた。身の危険を感じたわけではない。彼女が本気を出せば、ほんの数秒で馬鹿を含めた2人組を消し炭に変えることが出来る。
問題なのは……
(それをやったら、上条クンまで処理しなきゃならないじゃない……!!)
麦野沈利。外見はちょいキツ目の美人さんだが、その正体は、学園都市の暗部組織『アイテム』に所属する闇の掃除屋だ。
さらに、彼女は学園都市でも7人しか居ないレベル5の第4位。「原子崩し(メルトダウナー)」を操る超能力者なのだ…!
. - 21 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:17:58.07 ID:OsM07NBco
- (どうするッ!?)
もちろん、もっともベターな方法はこの場から上条もろとも逃げ出すことである。
そうして、改めて体勢を整えて襲撃をすれば良い。その方が楽だ。
だが、万が一。いや億が一、この馬鹿どもを取り逃がしてしまったら?
(ない、とは言い切れないわね… 実際、コイツはアタシ達から半日逃げ回っていたんだし…)
背中を冷たい汗が流れ落ちる。
暗部の基本は『目撃者すら残さない』だ。それに従えば、当然、上条も抹殺対象となり得る。
(……はぁ、柄にも無いことしちゃったわね。もう、二度とナンパの誘いに乗るのは辞めよう…)
ほの暗い暗部の常識が彼女を縛る。恐ろしいほどの能面を被って、麦野が右手を上げた。
(せめて、一瞬で…)
目標は上条当麻。彼女の超能力である
その能力が、発動しようとしたその時、上条当麻が不意にしゃべりだした。
「なぁ、何の用かって聞いてんだけど。おっさん達、耳、聞こえてる?」
何気ない足取りで2人組に歩を進める。
「うるせぇ! 俺たちゃ、その女に用があるんだッ! ガキは引っ込んでろ!!」
元スパイがそう怒鳴る。すると、上条は首だけ麦野に向けて、落ち着いた声で聞いた。
「麦野さん、こいつら知り合い?」
「えっ、いや、知り合いってー言えば、知り合いだけど…」
「ふーん、友達?」
「んなわけね…… ないわよ!」
思わず地が出た麦野だが、上条は気にせず再び視線を2人組に向けた。
「つまり、お前ら麦野さんに迷惑かけてるわけか…」
「ごちゃごちゃ言ってねぇでそこをどきやがれ!」
学ラン男が怒鳴る。恐らく、彼がクーデターに失敗したNo.2なのだろう。
しかし、上条はそれに取り合わず、ポケットから掌大の薄いフィルムシートを2枚取り出すと、それを手際よく両手甲に貼り付けた。
「……テメッ、やる気か!?」
それを見た学ラン男が俄かに身構える。
上条が貼り付けたフィルムシートは、一般学生には馴染みが薄い物だが、裏家業に生きる彼らにとっては馴染み深い物だ。
厚さ、たった数ミリのフィルムだが、その正体は学園都市の超科学で作られた高効果衝撃吸収シートだ。
このシートを貼り付けていれば、たとえ鉄の扉を殴ったところで、手指へダメージを受ける事は無い。
つまり、上条は無言で「いまから殴り合いをします」と宣言したのだ。
上条は2人組から視線を外さないまま、左手をやや前方に突出させ、左足を半歩進めた前傾姿勢を取った。
「…大人しく逃げるんだったら、このまま見逃すぜ?」
いやに低い声で上条が言う。その台詞2人組も覚悟を決めたのか、学ラン男が一歩前に出る。
「か、上条クン、危ないわよ!」
「麦野さんには、指一本触れさせませんから」
今度は振り返らずに言う。中々に決まった台詞だが、麦野には大馬鹿の台詞に聞こえた。
(確か、前に渡された資料では、組織No.2のあの学ランはレベル3の強能力者…!)
あんなフィルムシートを常備しているくらいだから、上条も多少は喧嘩の心得があるのだろう。しかし、能力者が相手なら話は全く違う。
能力の種類にもよるが、とうていレベル0の上条が敵う相手ではない。自分で殺そうとしたくせに、麦野は上条のことを本気で心配した。
「お望み通り、テメェから火達磨にしてやるッ!」
学ラン男が空中の一点を注視するように自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を構築する。
(あいつの能力は、確か…ッ!?)
事前に読んでいた資料を思い出す。資料に書いてあった学ラン男の能力は発火能力(パイロキネシス)レベル3。能力の中でも、比較的戦闘に向く能力だ。
「駄目よッ、上条くん!!」
とっさに麦野が叫ぶ。しかし、それが合図になったかのように、上条が弾かれたように学ラン男に向かって走り始めた…!
. - 22 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:20:15.70 ID:OsM07NBco
- 発火能力(パイロキネシス)とは、意外に定義の広い能力である。
一般的には、任意の場所を発火できる能力を指すが、発火までの過程が多岐にわたる。
指定した空間の微細なチリを発火させるもの、対象物の温度を急激に上昇させるもの、など、方法は様々だ。
学ラン男の場合は少し厄介な手順が必要なものだった。
(一瞬で丸焼きにしてやる…ッ!!)
学ラン男の暗く激しい思考が現実を侵食する。
右手人差し指と中指に嵌めたセンスの悪い指輪を、突進する上条に向ける。
すると、彼だけに見える“AIMの道”が出現する。
彼の能力名は『酸素回廊(オキジジェンルート)』。空中の酸素を集約・圧縮し操る能力だ。
コントロールされた圧縮酸素は、細い糸となって上条の身体に纏わりついた。
「セット完了… 燃えろッ!!」
学ラン男が、火打石代わりの指輪を擦り合わせると、小さな火花が弾け、それはすぐに圧縮された酸素に引火。
たちまち火線が上条に走る!
後は上条の服が燃え上がって勝負は決まる。学ラン男は自分の勝利を疑わなかった。
しかし、
「シッ!!」
短い吐息と共に、上条が左手を素早く前に突き出す。
上条が差し出した左手は、高速で走る火線を見事に掌で受け、そして、
火線はあっけなく消失した。
「…は?」「……ッ!!」
学ラン男が間抜けな声を出す。そして、後ろで今の現象を見ていた麦野も息を飲む。
「………ぉおお!!」
一人、上条だけが動揺も無く動く。一気に学ラン男との距離を詰めると、左足を大きく前に踏み出し、体幹の強烈な右回旋と共に、左手を振りぬいた!
ドゴッ!!
左スマッシュが、正確に学ラン男の鳩尾を捉える。
「あッ、がっ…!!」
腹部からの強い鈍痛に、学ラン男の体がくの字に折れる。
「おぉ!」
上条はさらに引く左手の勢いで体幹左回旋し、右足を大きく一歩踏み出すと共に、右手を高速で突出させる。
ズッ!
重軽い音がして、学ラン男の首が強制的に後ろに折れる。
綺麗なフォームの、まるでお手本のような右ストレートだ。
学ラン男が、がくっ、と両膝をついたのを確認すると、今度は上条は元スパイに突進した。
「ちょ、お、お前ッ!!」
明らかに動揺した元スパイが、片手を後ろに回す。おそらく、そこに拳銃でも隠し持っているのだろうが、上条はそれが取り出されるより早くクロスレンジに入ると、小さく身を屈めて、体重の乗ったボディストレートを放った。
「ぐぁ…!」
胸骨の下らへんを痛打された元スパイの顎が下がると、今度は狙い済ました右アッパーカットが元スパイの身体を跳ね上げた。
一瞬、完全に身体が宙に浮いて、元スパイは頭から崩れ落ちて失神した。
「………ふっ」
しばらく油断無く身構えていた上条は、2人が完全に倒れたことを確認して、ようやく全身から力を抜いた。
. - 23 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:22:00.44 ID:OsM07NBco
- (………さて、)
自分をひっかけたナンパ学生が、一応は百戦錬磨のはずの2人をのした。
それはそれで驚く内容だが、麦野には看過できない1つの現象があった。
(確かめるか…)
麦野は軽くうなずくと、足取り軽く上条に近づいた。
「あっ、麦野さん、あとは警備員(アンチスキル)に連絡… でいいスか?
こいつら、レベル0の俺に能力使ったし、武器も持っているみたいだし…」
何か勘違いしているのか、上条が確認を取るように麦野に言う。しかし、麦野はそれに答えず、素早く上条の左手を両手で持った。
「あ、あの…?」
動揺する上条に、麦野は今日一番の笑顔を見せた。
「あは、上条クンって、凄く強いのね。カッコ良かった!」
「えっ、いや、そ、それほどでもないですよ……!」
上条にとっては、狙い通りの効果だが、流石にこの反応は予想できずに身体が固まる。
そして、左手を包む柔らかい感触にドギマギする。
しかし、上条には完璧に隠しているが、麦野の眼は全く笑っていない。
(『原子崩し(メルトダウナー)が発動しない…ッ!?)
実は麦野は、手から極少出力の『原子崩し(メルトダウナー)』を放出しようとした。
極少といっても、本来は鉄壁をもぶち抜く威力の『原子崩し(メルトダウナー)』だ。熱いどころでは済まない。
それなのに、上条に異変は無い。
(厄介だけど、面白いわね…)
心の中でにやりと笑うと、麦野は己の舌で右上第3臼歯を軽くなぞる。
一定の手順を繰り返すと、精巧に作られた義歯から、幅数ミリの極少カプセルが舌の上に落ちた。
ともすれば、存在を触り失いそうになるそのカプセルを舌の上で構えると、麦野は一気に上条と唇を合わせた。
「………!?」
あまりの行動に酷く仰天する上条を無視し、舌を使ってカプセルを強引に上条の口腔に流し込む。
唾液と共に送られたソレを、上条は知らずに飲みこんだ。
「…えっと、あの、え、ご、ご褒美とか… ですか? はは、やりぃ…… って、はれ……?」
顔全体を喜色で埋めた上条が、一瞬にして意識を失い崩れ落ちた。
麦野が使ったカプセルには、速効性の睡眠剤が封入されていたのだ。
「薬は効く、と……」
お情け程度で上条の身体を支えた麦野は、コクコクと納得するように頷くと、携帯を取り出してどこかしらに電話を掛け始めてた……
. - 24 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:24:03.54 ID:OsM07NBco
- 目覚めは最悪だ。
「ここ… どこだよ……?」
上条が、ようやく深い睡眠から目が覚めると、そこは全く知らない景色だった。
そこは誰も使っていない部屋のようだった。
12畳ほどベッドだけの空間に、上条は一人後ろ手に縛られて、ベッドの上に転がされていた。
しかも、
「パンイチかよ……」
上条の格好はボクサーパンツ1枚のみだ。
空調はしっかり管理されているのか寒さは感じないが、流石にこれは落ち着かない。
「てゆーか、何でこんな目にあってるんでせう…? 上条さんは下心アリアリでナイト役をやっただけなのに…」
むしろソレが悪かったとは考えたく無い。
上条があれやこれやと妄想をしていると、部屋のドアが唐突に開いた。
「…あ、超起きてますね。超うぜー」
ドアの外から顔を覗かせたのは、ローティーンのパーカー姿の少女だ。
彼女は詰まらなさそうに上条を一瞥すると、すぐに顔を引っ込めてドアを閉じた。
「いや、誰なんだよッ!?」
思わず叫んでしまう上条。
すると、ドアの外から「うっさいわねー」と今日一日で聞きなれた声がした。
「目ぇ、覚めた?」
ドアから登場したのは、当然、麦野沈利だ。
昼間被っていた、キツ目美人の仮面は完全に脱いでおり、素の乱暴な口調である。
「ったく、テメェのせいで大した苦労だよ。ちっ…」
不機嫌を隠そうともせず、麦野が頭をガシガシと擦る。
その変貌ぶりに目が丸くなる上条。
「あ、あのぉ、麦野さん…」
「まず、質問に答えなさい」
なんとか会話しようと声を掛けた上条だが、それに被さるように麦野が詰問を開始した。
「アンタ、レベル0って嘘でしょ?」
「い、いや… 上条さんは正真正銘のレベル0なんです、けど……」
答える上条の声がどんどんと小さくなる。それもそのはずで、言っている途中から、麦野の眉尻がキリキリと吊り上ったからだ。
絶句する上条の前で、麦野は上条から剥がしたであろうフィルムシートをひらひらと舞わせた。
「あ、それ…」
「素直にしゃべらねぇと、こうなるぞ?」
麦野が能力を発動すると、フィルムシートが一瞬で灰に消えた。
あのシートは耐衝撃性だけでなく、耐火性にも優れている。それを一瞬で灰にできる能力など、上条は知らない。
「いやッ! 嘘っつーか、嘘じゃないっつーか!」
「アンタのシステムスキャンの結果は知っているわ。その上で聞いてんだよ…!」
「わ、わかりましたッ! 話します、話しますからッ!」
さらに麦野が凄むと、観念したのか、上条がぶんぶんと首を縦に振った。
. - 25 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:27:32.91 ID:OsM07NBco
- 「だ、誰にも話さないでくださいよ… 実は…」
上条は、しぶしぶ、といった風に己の秘密を暴露した。
いわく、自分の左手には、あらゆる異能を打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っており、これまで打ち消せなかった能力はないとのこと。
「レベル0なのは、システムスキャンの機器の性能も打ち消してるんじゃないかって… 中学ん時の担任が言ってました」
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』ねぇ… で、この秘密を知っているのは?」
「えっ、そこまで話すんスか? うぅ… 中学と高校の担任と、仲の良い友達2人の4人だけです。名前は、勘弁してください!」
「ふん… まぁいいわ」
努めてどうでも良い風に麦野が言う。だが、内心では口の端が吊り上りそうになるのを抑えるのに必死だ。
(コイツは拾いモンだな… カモネギっつーか、立ってるだけでこんなのが釣れちゃうなんて、美人は罪ねー)
そう思ったら耐え切れず、麦野は口に手を当てて「ククッ」と短く笑った。
その笑いが、いかにも悪役じみていて、上条は背筋が冷たくなるのを感じた。
「あの… お姉さん、もしかして、ヤバイ人ですか…?」
へらへらと愛想笑いを浮かべて尋ねる。
「んー、上条くんはどう思う?」
表情を昼間の笑顔に戻して言うが、上条には悪魔の笑顔に見えた。
「もしかしなくても、暗部の人…?」
この学園都市には、開発された能力を使って、あるいは使わされて、学園都市を統べる統括理事会からの汚れ仕事を行う集団、通称『暗部』が存在する…
一般学生、特にレベル0の間でまことしやかに流れる噂だが、友人を通じてスキルアウトとも多少のつながりがある上条は、その存在が真であることを知っていた。
麦野は、ふぅ、と軽く息を吐くと、上条の顔を覗きこんだ。
「正解。どこでどう聞いたのかは知らないけど、だいたい、想像している通りで間違い無いわよ。私は暗部組織『アイテム』のリーダーで、レベル5の超能力者、麦野沈利よ」
「れべるふぁいぶ…ッ!!」
そのあまりのレベルの高さに絶句する。レベル3でも雲の上の存在なのだから、レベル5だともはや別の星の話だ。
「上条クンの能力も、正式に評価すればレベル5相当だと思うけどね。ま、それはどうでも良いわ」
そういうと、麦野はやおら縛られた上条を仰向けに転がすと、馬乗りになって右手を上条に向けた。
「うわっ!」
「はい、説明はここまで。さて、上条クンには2つの選択枝があります。私の下僕になって生き延びるか、拒否してこのまま一生を終えるか… さぁ、どっち?」
「いきなりですかー!?」
思わず逃れようと身体をジタバタ動かすが、重心に乗られているせいか、思うように身動きが取れない。
「あ、それ以上暴れるなら、答えを聞かずに焼却処分だから♪」
楽しそうな、しかし、ドスの効いたその台詞に、上条の動きがピタリと止まる。
恐る恐る麦野の表情を見上げるが…
(こ、こえぇぇ…!)
目端も口の端も吊り上ったその笑顔は、まさしく肉食獣の笑みである。上条は本能的にこの女には逆らえないと理解した。
(けど… 暗部の一員!? そ、それは嫌だッ!! 上条さんは気楽な一般学生で居たいのに…!)
やはり、己の分をわきまえず、こんな美人をナンパしたのが間違いだったのか… 明日から夏休みだからといって、浮かれた自分が悪かったのか…
「あ、あのー… 質問とかは…?」
「あと5秒ー、ごー、よーん、さーん……」
「うわぁぁ!! な、なります! 下僕になりますッ!! 犬とお呼びください、麦野さま!!」
反射的に叫んで死ぬほど後悔したが、実際に死んでしまっては元の子も無い、と上条は無理やり納得することにした。
「そう… アタシは殺ると言ったら本気で殺すから。今から長い付き合いになるかもしれないんだし、よく覚えておいてね」
満足そうにそう言うと、麦野はゆっくりと立ち上がった。
上条は、かなり本気で引いたが、今は頷くしかない。
「絹旗ー、おっけーだってさ」
「…うげぇ、素直に超殺されていてくださいよ… 男を入れるとか、超面倒です…」
麦野が隣室に声をかけると、先ほどチラリと顔を見せたフードの少女が、なにやら色々な機器を持って入ってきた。
「まぁ、麦野が良いって言うんなら、超従いますが… あー、絹旗最愛です。
たった今から超クソッタレな毎日が始まりますが、運命だと思って、超諦めてください」
ほとんど投げやりにそう言うと、絹旗はペンシル型の注射器を上条の右腕に当て、躊躇い無く注入スイッチを押した。
プシュ、と軽い音がして、極微量の液体が上条の体内に入り込んだ。
「痛ッ! え、なんだよ、今の…?」
「専用のAIMにだけ反応するナノデバイスです。
まぁ、主に所在地確認と超裏切り防止ですね。
あと、『アイテム』専用の携帯端末と、偽の学生証が3つと偽造免許が1つ…
あ、これはウチのメンバー超謹製のスタングレネードです。男の人なんで、数珠タイプにしときました。
あと、20万ぐらい入っているマネーカードが5枚。使うときは、きっちり領収書貰って、あとで申告してくださいね。
活動外で使ってもかまいませんが、超節度は持ってください。それと…」
「あのー、まずは縄を解いてもらえないでしょうか…?」
機関銃のように説明する絹旗を遮って上条が懇願する。流石に体勢がきつい。
「…らしいですけど、麦野?」
「しばらくそのまま」
「だ、そうです。超ご愁傷様です。最後に、この携帯端末に『アイテム』の組織名簿が載っています。
しかし、閲覧したら超記録が残るので、超注意してください。超安易に開くなっってことです。
では、他に質問は? 無いですね。それでは、私は上に結果の報告と調整を行ってきますが… 麦野?」
「基本的に、立ち位置はアタシの盾、場合によっては滝壺の盾。左手については当然秘密にしといて」
「…超了解です。やれやれ、あの喧嘩の映像から加工が必要みたいですね… それじゃ、私は超失礼します、あとはごゆっくり…」
言うだけ言うと、絹旗は部屋から出て行った。さらに、玄関らしきドアの音も聞こえたところから、完全に屋外に出て行ったようだ。
. - 26 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:28:47.28 ID:OsM07NBco
- 「さて、と…」
絹旗が完全に出て行ったことを確認して、麦野はベッドの端に腰掛けて上条の顔を覗きこんだ。
「混乱してる?」
「当たり前ッス」
若干拗ね気味に上条が答える。
「クスクス、ごめんなさい。でも、こうでもしないと、上条クンを処理しなきゃいけなかったんだから、まずはアタシに声を掛けた不幸を呪いなさい」
「はぁ、不幸だ……」
うなだれる上条を見て、麦野の笑みが悪戯っぽいものに変わる。
「ねぇ、『アイテム』に入るのはそんなに嫌?」
「そりゃ… 暗部って噂にしか聞いたことないですけど…
……人殺しとかする、裏の掃除屋でしょ?」
かなり躊躇いながら上条が言う。しかし、そこは最も気がかりな点だ。
「結果として人殺しになることはもちろんあるわ。でなきゃ、こっちがやられちゃうからね。けど、上条クンには人殺しはさせないわよ」
そう言うと、麦野はさらに顔を上条に近づけた。
「上条クンさぁ… アタシのマジカレになんない?」
「は…?」
この流れからどうしてその発言なのか? 上条の頭にハテナマークが無数に飛び交う。
「あの… 上条さんは基本馬鹿なんですけど… どういうことでせうか?」
「何言ってんの、そのままの意味じゃん。アタシと付き合わないか、ってこと。あれ、脈無し?」
「い、いや、突然すぎてビックリっつーか、この状況で理解しろっていうのが無理っつーか…」
混乱する思考をなんとか整理しようとする。
目の前に居る女性は、今日ナンパした美人さん。
しかし、美人さんはただの美人さんではなく、学園都市暗部に所属する危険な美人さんだった。
それにほいほい声をかけて、しかも良いとこ見せようとした自分は、一転、危険な契約を交わしてしまった。
そして、抵抗できない状態で『付き合わない?』と切り出される。
…どう考えても美人局である。
「あの… なんで俺なんスか…?」
いろんな意味を込めてそう問う。
「ふむ… 『丁度良い』とか、『便利そう』とか、そんな感じかしら?
キミの左手の能力は盾に丁度良いし、今日のデートを見る限り、気も利くし便利そうだから」
身も蓋も無いとはこの事である。 - 27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)[sage]:2012/10/08(月) 23:30:34.60 ID:EOZuFrSao
- 左手?
- 28 :エロ入りマース(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:31:02.44 ID:OsM07NBco
- 「丁度良い便利キャラっすか、はは…」
「意外と重要な要素だと思うけどね。それに…」
麦野が笑う。
「一回のデートでアタシを落としたつもり? こっちは続きもオッケーって言ってるのに、据え膳食わないの?」
そう言うと、麦野は片手を伸ばして上条の腹筋を撫ぜ始めた。
「鍛えてるわね… ボクシング部?」
「いや、違います… ほとんど独学と、あとは友達からたまにコーチを受けて…」
「へぇ、朝ランとかしてるの?」
「は、はい、毎朝10km走ってます。 …あの、麦野さん?」
上条の声が震える。腹部を撫ぜていた麦野の手が、どんどんと下に降りて行ったからだ。
「アタシ、筋肉質な子って、好きよ… 逆に嫌いなのは、ホストタイプや、もやしタイプ。やっぱり男には力強さを求めたいわね…」
言いつつ、麦野の手がとうとう上条の股間に触れる。
「うぁ…」
「あは、固くなってんじゃん」
弟の悪戯を見つけた姉のように、麦野が楽しそうに笑う。
麦野の手が、股間の形を確かめるように大胆に動く。
「む、麦野さん、ソレ以上は…ッ!!」
「アタシの男になるんだったら、今すぐ『ソレ以上』もできるんだけどなー…」
上条の喉が派手に「ゴクリ」と音を立てる。
その誘いは明らかに罠だ。完全な色仕掛けだ。
だが、思春期真っ盛りの上条少年が、その誘惑に耐え切れるはずも無かった。
「なりますッ!! 盾でも何でもいいので、付き合ってくださいッ!!」
上条、魂の叫びである。
その叫びに、麦野は、にたぁ、と笑うと、股間を撫ぜ回していた手を突然離した。
「えっ…?」
不安そうに声を上げる上条を見下ろすと、麦野は静かに顔を寄せて、上条と唇を合わせた。
「ん…」
薬を飲ませた不意打ちのファーストキスと違って、それは、長く、静かな、情熱の篭ったキスだった。
上条の唇を丹念に愛撫し、おずおずと差し出された舌を唇ではむ。
そっと両手で上条の頭を挟むと、大量の唾液を口腔内に流し込む。
それは恐ろしく興奮する味だ。
「じゅぷ… ぢゅ……!」
散々舌を絡めてから、麦野がゆっくりと顔を引き離すと、2人の唇の間に、銀色の糸が伸びた。
「すげぇ……」
夢見心地、といった風に上条が呟く。
「言っとくけど、アタシは結構キミに本気なんだ。
上条クンが今日みたいにアタシを守ってくれるなら、アタシは絶対に貴方を裏切らない…」
麦野が着ている服を脱ぎ捨てる。
形の良い豊乳があらわになり、上条の眼が釘付けになる。
「アタシの男になるんだから、この身体は上条クンのモノよ。だから、失望させるような事はしないでね」
手を伸ばして、上条のボクサーパンツを一気に抜き取る。
散々お預けを食らっていた上条のペニスが天に向かって反り上がる。
「ふふ、おっきいじゃん…」
邪魔にならないように片手で髪をかき上げて、棒が暴れないように片手でそっと包んで、麦野はペニスの先端を躊躇なく咥えこんだ。
「嘘ッ! マジで!!」
上条にとってはフェラチオ初体験だ。
生暖かい口腔の感触に、思わず暴発しそうになるのを必死に堪える。
じゅぶ、じゅぷ、ぢゅ……
唾液を丹念にまぶすように、ペニス全体を舐めまわす。
時折、顔を上げて上条の表情を確認すると、クスッ、と悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「ん… じゃ、こっちも準備してもらおうかな…」
いったん身体を離すと、麦野はショーツをスルスルと脱いで、ペニスを掴んだまま上条の身体に跨った。
いわゆる、シックスナインの体勢だ。
「濡らし方、わかる?」
「は、はい!」
目の前に突き出された淫靡な器官に、上条は迷うことなくむしゃぶりついた。
「ン… もっと優しく… そう、良いわよ…」
手コキで暴発しないように刺激しながら、麦野が上手く腰を動かして上条を誘導する。
(ふふ、ホント、犬っころみたいねぇ…)
経験的に、男はクンニを嫌がるものだ。
そういう状況に麦野が追い込んだにしても、上条の一生懸命な奉仕は心地良いものだった…
. - 29 :エロデース(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:33:09.40 ID:OsM07NBco
- 「…もう良いわよ」
そろそろ上条の顎が疲れ始めたとき、麦野はそう言って体勢を入れ替えた。
上条に正対して馬乗りになる形… つまりは騎乗位だ。
「入れるわ」
「…はい」
短い応答の後、麦野は腰を屈めて上条のペニスをヴァギナに飲み込んだ。
ズブ、ズブ、と卑猥な音を立てて上条のペニスが麦野の腟内に消えていく。
麦野の太ももが上条の身体に触れ、互いの陰毛が触れ合うと、コツン、という感触があって、ペニスの先端と子宮口が接触した。
「すご… キミのチンポ、アタシにぴったりじゃん……」
流石に余裕が無くなってきたのか、粗く息を吐きながら麦野が言う。
相当に感じている様子だが、それは上条も同じだ。
「なんだコレ… 気持ちよすぎる……ッ!」
(ナカが… すげぇ温けぇ… チンポの先が融けたみたいだ…)
麦野の膣壁は、例えるならば肉のヤスリだ。
上条のペニスをあらゆる方向から削り、刺激し、絞り上げている。入れた瞬間に射精しなかったのが奇跡だ。
だから、こういうことをされたら耐えられなくなる。
「動くよ… 遠慮なく腟内でイッていいから…」
麦野が腰を前後に動かす。
男にとって、騎乗位ではコレをやられるのが一番効く。
肉ヤスリがペニス全体を擦りあげて、しかも軽いピストン運動も入るのだ。
当然、上条は我慢できなかった。
「うっ、駄目だ! 我慢できねぇ!!」
最後の理性で麦野から逃れようともがくが、逆に麦野にがっちり抱きつかれて小刻みに腰を動かされてしまう。
「……出るッ」
麦野の最奥で、上条は盛大に射精した。
それは、上条がこれまで体験したことの無いような、長く、激しい射精だった。ペニスの先端が爆発したような感触だ。
麦野も、吐き出された精液の量がわかったのか、驚いたように目を丸くする。
「うわー、すっごい出てる… なぁにぃ、溜まってたの…?」
「まさか… 麦野さんだから…」
本心から上条が言う。こんな気持ちのいい膣壁なら、出ないほうがおかしい。
「ありがと、これで一応、恋人同士ね」
「一応、すか…」
「ま、会って12時間しか経ってないしねぇ…」
そういうと、麦野は精液がベッドにこぼれないように、ハンカチで秘所を押さえて立ち上がった。ついでに、上条を縛っていた縄を能力で焼き切る。
「シャワー浴びてくるから、上条クンは隣の部屋の冷蔵庫から何かてきとーに料理作って。簡単なもので良いから」
そう言われて、夕食がまだだったことを思い出す。
「…ヨロシク」
色々な意味を込めて、麦野が言った。
. - 30 :エロデース(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:34:51.47 ID:OsM07NBco
- 夕食の後は第2ラウンドだった。
「あっ、あっ、あっ、そこッ!! 突いてッ、もっとッ!!」
四つん這いになった麦野をバックからがんがん突く。
パンッ、パンッ、パンッ!!
上条の下腹部が、麦野の形の良いお尻にぶつかり、小気味の良い音を立てる。
そのたびに、かなり大きな麦野の豊乳がぶるんぶるんと揺れた。
「はぁ、はぁ、はぁ… くっ、締まる…ッ!!」
手形が付く位、麦野の腰を両手で掴んで、激しく腰を打ち付ける。
麦野の膣の締まりは相当で、ペニスを引き摺り出すにも軽い苦労が必要となる。
「良いよ、上条クン、気持ち良い… ホントに2回目?」
夕食の席で確認したが、上条は童貞ではなかった。
しかし、それも単に「1回目は、なんかノリで…」経験しただけで、テクニックや耐性はゼロに近い。
「ホントに麦野さんが2回目ですッ! こっちは、必死です…ッ!!」
パン、パン、パンッ…!
リズムカルな音が段々とペースを上げる。
上条の限界を感じた麦野は、顔を後ろに向けると、「いいよッ、腟内でッ!」と短く言った。
「だ、出しますッ!!」
これが最後と、思いっきり腰を前に突き出して、上条はまたしても麦野の最奥に射精した。
「すっげぇ気持ち良い… 腟内射精って、すっげぇ気持ち良い……」
だらしない表情で上条が呟く。よくよく見れば、口の端によだれも見える。
「あ、今抜かないでね…」
こちらも肩で息をしていた麦野が、繋がったまま器用に身体を半回転させる。
繋がったまま正常位に移行すると、麦野は微笑んで両手を上条に向けた。
「だっこ」
「…あぁ」
意味を理解した上条が、抜けないように注意しながら麦野の背中に両手を差し込み、ゆっくりと麦野の状態を起こす。
「あん… 深いぃ……ッ」
体勢的にさらに最奥を突かれるカタチになって、麦野が桃色の吐息を漏らす。
2発目を出したばかりだが、上条の分身はまだまだ元気だ。
. - 31 :エロデース(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:36:14.15 ID:OsM07NBco
- 「何回出すつもり、ねぇ?」
「んなこと言ったって、麦野さんのナカ、すっげぇ気持ちいいし…」
2発出した事で少しは余裕が出来たのか、上条が口を尖らせて言う。
「…ね、キスしてよ」
麦野がねだると、上条はややぎこちなく麦野と口唇を合わせた。
「ン…… ギュっとして…」
言われるがままに、背中に回した手に力を込める。勃起した乳首が胸板にあたり、コリコリとして気持ち良い。
「力強くて良いわ… もっと……」
上条がさらに力を込めると、麦野はその長い両脚を上条の腰に絡め、腹筋を小刻みに収縮させた。
「うっそ…! マジでッ!?」
上条が「信じられない」といった表情で言う。
麦野の身体は全く動いていないが、腟内だけは別の生き物のように、うねうね、と締緩を繰り返し始めたのだ。
「どうじゃー、気持ちいいだろー」
してやったりな表情で麦野が言う。上条は白旗を揚げるように天を仰いだ。
「…世の中には、こんな気持ち良いコトがあるんだなぁ… と上条さんはしみじみと感じていますです…」
「おっさんくさ… 若いんだから、もっとがっつきなさいよ」
麦野が不満げに言うと、上条は「それなら…!」と麦野を押し倒す。
内心、「コレ、許してくれるかなー」と思いつつも、麦野の身体を180度折り曲げ、いわゆるまんぐり返しの体勢を取らせる。
「ふーん…」
それでも余裕綽々な態度の麦野に、上条の男のプライドが疼く。
さっきのバックも麦野にリードされっぱなしだったのだ。そろそろリードを奪いたい。
「思いっきり行きますッ!!」
「どうぞ」
上条が、すぅーーっ、と大きく息を吸う。ボクサーだけあって、その肺活量は相当なものだ。
ずずっ、とゆっくりペニスをカリまで引き抜くと、確認するように麦野と視線を合わせ…
ズンッ!
思いっきり麦野を貫いた。
「はぁぁぁぁぁッッ!!」
凄まじい衝撃に、たまらず麦野のおとがいが反る。
軽く達したようで、膣壁が、ぎゅぅ、と締まる。
それを敏感に感じ取った上条は、イカせた喜びに染まり、さらに乱暴に腰を打ち付けた。
バンッ!! バンッ!! バンッ!!
「あッ!! あッ!! あッ!! あぁんッ!!」
麦野の身体がベッドの上で激しくバウンドする。本能的な恐怖を感じたのか、両手がひき千切るようにシーツを掴んだ。
「…………ッ!!」
動く上条も必死だ。無酸素運動のラッシュは練習でも本番でもやったことがあるが、これはそれ以上にキツイ。
下半身の快感など感じる暇は無い。ただ、衝撃と悦楽にゆがむ麦野の表情と艶声を糧に、激しく腰を動かす。
「やっ、すごっ、はげしぃッ!! すごいよ、上条クン!! すごいッ!!」
麦野にしても、上条がここまでやるのは嬉しい誤算だ。
テクニックなど欠片も無いが、勢いと、なによりスタミナが素晴らしい。こんなに力強く、激しく、長く動いてくれる男はなかなか居ない。
「イク、イク… イクよ… イッちゃう!!」
「お、俺も… もう、出ますッ!!」
お互いに絶頂を確認し合うと、上条は最後の力を振り絞って麦野の最奥にペニスを打ちつけた。
その瞬間、本日3回目、抜かずの2発目が麦野の子宮を直撃した。
「ーーーーーッ、あああぁぁぁぁッ!!」
まるで呼吸の仕方を忘れたかのように、麦野がぎこちなく肺腑の中身を吐き出す。
それでも、両脚はいつの間にか上条の腰に絡められていた。
「うわ… チンポの先が、ビクビク震えて…!」
(イッた後のマンコって、こんなに気持ちいいんだ…)
ただでさえ敏感な射精直後の亀頭が、絶頂の痙攣で揺れる膣に優しく翻弄される。
この快感は一生忘れない。上条は根拠も無くそう確信した。
「ん…」
麦野が軽く目を閉じると、既に意を得た上条は、すぐに口唇を寄せて麦野のキスの雨を降らせた。
「ん~~♪」
その行為に満足したのか、麦野がにっこりと笑った。
それは、上条は今日初めて見る事の出来た、麦野の素の笑顔であった。
. - 32 :エロ終わりデース(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:36:58.50 ID:OsM07NBco
- 「はぁ~~~……」
流石に限界、という風に麦野がバタリと大の字に寝そべる。
弾みで、ずるり、と上条のペニスが引き抜かれ、麦野のヴァギナから、都合2回の精液がごぽごぽと溢れだした。
「いっぱい出したわね… 妊娠するかも……」
ボソッと呟くと、同じく肩で息をしていた上条が真顔で言う。
「責任、取る覚悟は出来てるよ」
「ぶっ!」
その台詞に、麦野が「ぎゃはははっ!」とはしたなく笑う。
よっぽどおかしかったのか、腹を抱えて悶絶し、痙攣するたびにゴポゴポと新しい精液が溢れる。
「なんスか、そんなにおかしいですか?」
上条が拗ねて口を尖らせる。
その様子に、麦野はさらに爆笑したが、上条が本気でいじけそうになっているのを見て、「馬鹿ね…」と上条の額にデコピンを打った。
「いてっ」
「オンナがナカで良い、って言ったんだ。きちんと計算してるに決まってるでしょ。ま、逆の計算もあるかもだけど、信じなさい」
そう言うと、麦野は自分の横をぽんぽん叩いて、「うで枕」と言った。
上条が仰向けになり左腕を横に伸ばすと、麦野が嬉しそうに腕の上に頭を置いた。
「えっと… もしかして今日はこのまま…?」
「いえーす、今からシャワー浴びるのもタルイでしょ? とりあえず、今日はおやすみなさい…」
そう言うと、麦野はすやすやと寝息を立てて眠ってしまった。
動こうにも動けなくなった上条は、翌朝痺れて使いものにならない左手を見つめて呟いた。
「嬉しいけど、不幸だ……」
夜が、ようやく更けようとしていた……
. - 33 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/08(月) 23:39:24.04 ID:OsM07NBco
- 翌朝、上条は腕の痺れと大きな物音で目を覚ました。
隣で寝ていたはずの麦野は、既に起きたのか居なかった。
「う… うぁー、やっぱ痺れてら… う~ん、目覚めがやけに爽快… って、あんないい思いをしたんだから当然か…」
昨日のセックスは、思い出すだけで勃起しそうになるほど強烈だった。
しかも、昨日の麦野の言葉通りなら、自分が頑張れば、あの身体をいくらでも味わうことが出来るのだ。
上条は顔が自然とにやけるのを感じた。
「暗部だろーが何だろーが、上条さんはやってやりますよ! っと、しかし、そろそろ服が欲しいな…」
今の上条は丸裸だ。とりあえず、脱ぎ捨ててあったボクサーパンツを履くと、隣室のドアが開いた。
「あ、麦野さん…?」
「超残念ですが、違います。ていうか、超どいてください。タンスを入れますので」
その声と共に入ってきたのは、妙に見覚えのあるタンスだった。そう、あれはまるで…
「……俺の部屋のタンスじゃねーかッ!!」
「はい? 何、超当たり前のことを言ってるですか?
こちとら、麦野にアサイチで叩き起こされて気が立ってるんです。
手伝う気が無いのなら、部屋の隅でぶるぶる震えていたください」
タンスが完全に部屋に入ると、それを両手で支えている絹旗が見えた。
大人の身の丈はあるタンスを、ローティーンの少女が一人で抱える姿は、ひどくシュールだ。
「よっこいしょ」
全く息を乱すことなく、絹旗はタンスを部屋の隅に置いた。
「タンスの場所は超ココでいいですか?」
「は…? いや、何で上条さんに聞くのでせう?」
「何でって… あぁ、なるほど… それじゃ、勝手にレイアウトを決めますね」
そう言うと、絹旗はどんどん家具を部屋に持ち込んだ。
参考書や漫画入りの本棚。布団に包まれた大量の衣類。ラジカセ・テレビ・他こまごました小物が入ったままのメタルラック…
それらがどんどん運び込まれ、殺風景だった部屋が一気に男子学生の部屋になった。
「おい! なんで俺の部屋の荷物がココに運ばれてるんだよッ!」
流石にたまりかねて上条が詰問すると、絹旗は心底、哀れな者を見る目つきで言った。
「麦野は… 見た目どおり気難しいオンナなんで、超努力してご機嫌をとってください。
1に麦野、2に麦野、2,4がなくて超麦野。それぐらいの扱いで超お願いします」
「いや、答えになってねーし…」
「あぁ、終わったわね」
上条が唖然としてると、麦野が姿を現した。
昨日の乱れた姿はどこへやら。既にばっちりメイクも決めて、見事なまでの美人さんである。
「食器とか、ここと重複する物は処分したわ。冷蔵庫は迷ったけど、2ドアだったから要らないわよね。
あと、ベッドはそれ使った。整髪料とか、そこらへんの消耗品は今日買いに行きましょ… なによ、なんで変な顔してるの?」
麦野が訝しげに2人の表情を伺う。
上条と絹旗はお互いに目配せをし合うが、絹旗が黙って首を切るジェスチャーをしたので、上条は恐る恐る尋ねた。
「あのぅ… もしかして、上条さんはココに住むんでせうか?」
「はぁ? なに寝ぼけた事言ってんの?」
麦野の台詞に一縷の希望を見出す上条、しかし…
「そんなの当たり前でしょ? アンタは私の盾なんだから、四六時中一緒に付いてもらわなきゃ困るじゃない」
「ま、マジで…ッ!?」
上条の顔面が蒼白になる。いくらなんでも行動が突飛で、しかも早すぎる。
「ま、とりあえず、タンスから服を出して、シャワー浴びてきなさい」
右手の親指を、クイ、とドアの外に向けて麦野が言う。
片目を瞑ってにやけている所を見ると、上条の反応は期待通りのものだったようだ。
「ま、これから超よろしくお願いします。
…それと、超ご愁傷様です」
絹旗がポンと上条の肩を叩くと、それを合図に上条は崩れ落ちて呟いた。
「不幸だ…… - 35 :(熊本県) ◆yEFBo3BAb.2012/10/08(月) 23:41:50.34 ID:OsM07NBco
- 以上デース。
改行はスンマセン。
読み易く改行する技術が身に付いてないのです。
とりあえず、1週間で書いた分を月曜夜に投下します。
筆が乗れば、キリがいいところで投下します。
それでは、もし読者の方がいらっしゃったら、また次週… - 63 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:02:22.32 ID:TvcmjPEho
- 「補習~~~ッ?」
絹旗も交えた朝食の席で、麦野が心底呆れた声を上げた。
「…いつ?」
「えっと、今日の10時から…」
「サボれ」
発端は、朝食後にショッピングに行く気満々だった麦野に、上条が勇気を振り絞って「あのぅ… 上条さんは今日から補習なんですが…」と訴えたことだ。
「だいたい、上条クンの学校って、特にレベルが高いわけじゃないんでしょ? なんで補習なんて受ける必要があるのよ?」
「いや、単純に期末考査で赤点を取ったからなんですが…」
麦野が半目になり、しらー、とした雰囲気が流れる。
ほとんどの場合、能力のレベルと学力は正比例する。
こう見えても、麦野沈利は頭に超がつくほどの秀才だし、隣の絹旗も天才少女と言っても過言ではない。
しかし、だからこそ学力底辺の事情は、感覚的に理解できないのだ。
「…サボれ」
再び麦野が静かに、しかし、迫力を込めて言う。
思わず従ってしまいたくなりそうな上条だが、脳裏に浮かぶのは、担任である幼女教師の泣き顔だ。
「そ、それは…」
「麦野、それは超不可能かもしれません」
シリアルをパクついていた絹旗が、面倒そうに言った。
「…なんで?」
「ツンツン頭の学校を調べたときにわかったことですが、彼の担任がかなりの難物です。
警備員(アンチスキル)や統括理事会とも深いつながりがありますし、『幻想殺し』のことも知っています。
さらに、非常に面倒なことに熱血教師です。私生活を劇的に変化させると、痛い腹を探られる可能性があります」
「ちっ… マジ?」
麦野がジトーッと上条を睨む。
上条は、まさかのフォローに驚きつつ、あわてて頷いた。
「ま、マジですッ!! 子萌先生は超過保護で、理由も無く休んだ生徒には家庭訪問するんスよ!」
嘘ではない。家出少女をわざわざ見つけて、自宅で保護するほどの博愛精神溢れる教師なのだ。
「うぜー…」
麦野の眉根がどんどんと寄り上がる。
危険を察した絹旗が、麦野に見えないように高速ウィンクを上条に送る。
(超なんとかしてフォローしてくださいッ!)
(そ、そんな無茶な!)
だが、上条もレベル5の怒りなど買いたくない。
必死に頭を巡らせてなんとか言葉をひねり出す。
「ほ、補習は昼過ぎに終わりますから、そこから第7学区で落ち合いません? 13時には必ず…」
必死の思いでそう言うと、麦野はもう一度大きく舌打ちをして、頭をガシガシと掻いた。
「…それで良いわ。ただし、次に赤点とったら容赦しねぇぞ…!」
ドスが効いた声で通告され、上条は冷や汗だらだらで何度も頷いた。
. - 64 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:03:33.73 ID:TvcmjPEho
- 「…であるからでしてー。む、上条ちゃん、ちゃんと聞いてますか?
先生の話をきちんと聞かないと、すけすけみるみるの追加ですよー?
まったく集中できない補習授業をなんとか切り抜け、そそくさと教室を出ようとした上条の背中に、とある生徒の一人が声を掛けた。
「かーみやーん、今朝の騒動はどういうことよ?」
「ああ、土御門か…」
本心は第23学区にダッシュしたいところではあるが、ここはきっちり対応しておかなければならない。
声を掛けた生徒、土御門元春は上条が住んでいたアパートの住民、元お隣さんなのだ。
「いやー、いきなりちっこい中学生がかみやんの部屋のドアぶち抜いて、次々と家具を運び出したときはびっくりしたぜい。
まさしくエクストリーム引越し。つーか、なんで引越しなんかしたん?」
土御門の眼が、サングラスの奥でキラリと光る。
「いや、親が勝手に新しい部屋見つけてきてさぁ。ホントは前から決まってたらしいけど、連絡きたのが昨日なんだよ。騒動かけてわりぃな」
片目を瞑って軽く拝む動作をする。
もちろん、本当のことなど言えるはずも無い。
「ふーん…」
サングラスに隠れて表情は見えないが、口調は何でもなさそうに土御門が言う。
「じゃ、学校にはもう連絡いってるん?」
「…! いや、新学期に連絡するよ」
内心、冷や汗をかく。
担任教師が今の家に襲来するなど、考えただけでも恐ろしい。
「さよか。まぁ、筋トレはさぼんなよ。俺たちゃ、基礎体力が命なんだから…」
何を隠そう、この土御門が上条の格闘の師匠だ。
ひょんなことからスキルアウトに襲われていた上条を助けて以来、土御門は親身になって上条に格闘術を教えているのだ。
「おう、しっかり鍛えとくよ。それじゃ、また今度な!」
上条が片手を軽く上げ教室を出る。
それを最後まで見届けた土御門は、おもむろに携帯端末を取り出すと、少し苛々した動作で画面を叩き始めた…
. - 65 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:04:57.63 ID:TvcmjPEho
- 「そっか… 学校にはどう連絡をしたらいいんだ…?」
新たな問題にげんなりしつつも、上条は麦野との待ち合わせ場所に急いだ。
現在時刻は12時30分で、だいぶ余裕があるにはあるのだが、できるだけ『あの麦野』は待たせたくない。
「ちっくしょー、もっと学校に近い所を指定しときゃ良かったぜ…」
後悔しながらも足を速める上条に、またしても、そして今度は黄色い声が背中から掛かった。
「ちょっと! アンタよ、アンタッ!! 待ちなさいってば!」
その声に、上条がギクリと背筋を伸ばす。この状況では絶対に聞きたくない声だった。
「とうとう見つけたわ… まだアンタとの勝負はついてないわよッ!!」
「おめーかよ、ビリビリ中学生……」
上条に向かって、ずんずん、歩いてくるのは、名門・常盤台中学の制服に身を包んだ、茶髪の女子中学生だった。
「ビリビリじゃない! 私の名前は御坂美琴! いったい、いつになったら覚えるのよ!」
「いや、だって第一印象がそれだし…」
「クッ… ムカつく…ッ!」
この少女との不毛な関係は、少女が不良学生に絡まれているのを、よせばいいのに上条が助けようとしたことから始まった。
絡まれた少女を連れてとっとと逃げようとした上条だったが、その時に発した「こんなガキに盛るなよ」という台詞が、いたく御坂美琴のプライドを傷つけたらしい。
「ここで会ったが百年目ッ!! 今日こそ決着をつけてあげるわ! 遺産分配やっとけやゴラァ!!」
怒りのあまりか、茶髪の先端から、バチバチ、と火花が散る。
御坂美琴、人呼んで『常盤台の超電磁砲(レールガン)』。
麦野沈利と同じく、学園都市で7人しか居ない、能力者の頂点であるレベル5の一人だ。
「決着って… なに馬鹿なこと言ってんだよ、おめーは… 」
上条がげんなりした表情で言う。
初対面の対応は、確かにマズッた自覚はあるが、だからといって、ここまで難癖をつけられると流石に辟易する。
「そもそも、レベル0の上条さんがレベル5に敵うわけないでしょ? ハイハイ、俺の負け、俺の負け。納得したならどっか行ってくれ、お前にかまってる時間ねぇんだよ」
「ふ・ざ・け・ん・な・ぁ!!」
御坂美琴の身体から電撃が迸り、小規模な雷となって上条を襲う。
「……ッ!!」
常人ではよける事など出来ない攻撃だ。
しかし、ある程度予期していたこと、それと、毎日の研鑽の成果により、が、ほぼ無意識に反射防御が行われた。
「…ッと!! あぶねぇ…」
野球のキャッチボールのように、上条は左手で雷を受け流すようにキャッチする。
その瞬間、雷は霞のように宙に消え去った。
「…まだよ!」
防がれたとわかって、御坂美琴がさらにボルテージを高める。
放電の余波で街路灯の電球が短絡するが、そんなのはお構いなしだ。
さらに高出力の雷を上条に向かって放射する!
「チッ!!」
舌打ちと共に上条は左半身になり、左手を肩まで軽く上げる。
さらに集中力を励起させ、襲い来る電撃を悉く左手で打ち落とす。
「おおぉぉ!!」
超高速で迫る電撃をパリィング。
それは既に常人の域を超えた技であった。
. - 66 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:05:46.94 ID:TvcmjPEho
- 上条当麻は基本的に無力なレベル0である。
人口230万人のほとんどが学生である学園都市では、ややもすれば若者が暴走しやすい土壌であるとも言える。
事実、武装集団化した無能力者の集まりである『スキルアウト』や、心無い能力者によって行われる『無能力者狩り』など、学生に端を発する問題はいくらでも存在する。
上条も、『無能力者狩り』の被害にあった一人だ。
当時の上条は中学2年生。友達の友達の、さらに友達が開いた集会に興味本位で参加し、そこで『無能力者狩り』に襲われた。
そのときは、前述の土御門元春の活躍で難を逃れた上条だったが、生まれて初めての生命の危機に、何かのスイッチが入ってしまった。
以来、上条は自身を鍛えることにした。
土御門からボクシングの基礎を教わり、毎日の少なくない時間を鍛錬に使った。
スキルアウトとも繋がりを持った。構成員とはならなかったが、それでも組織間の小競り合いに巻き込まれることはそれなりにあり、いくつかの鉄火場も潜り抜けた。
彼の能力者に対する防御技法は、そういった日常によって培われ、洗練されていったのだ。
. - 67 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:06:23.17 ID:TvcmjPEho
- 「ちくしょう……」
当たれば昏倒する電撃をすべて防がれ、御坂美琴は悔しさのあまり歯軋りをする。
大人げないことをしているのは分かっている。
だが、レベル5の矜持と、本人にも理解不能のもやもやとした感情が、彼女を実力行使に駆り立てる。
それは、もはやある種の脅迫観念だ。
「なんでアンタがレベル0なのよ…ッ!!」
「んなの俺が知るかよッ!! テメェの事情ばっか押し付けやがって…」
上条も上条で、相手のことを単なる『無能力者狩り』としか認識していない。
相手が女子中学生ではなかったら、問答無用で殴り倒しているところだ。
「終いにゃ、本気で怒るぞ…ッ!!」
「今までは本気じゃなかったってワケ!? 人を舐めるのも大概にしなさいよ!」
ディスコミここに極まりである。
「舐めてるのはテメェだろうが…!!」
上条の声に本気でドスが効きはじめる。
ビンタぐらいなら良いか… 右の拳を軽く開くと…
「かーみじょークン、彼女を待たせて、他の女となに乳繰りあってるのかにゃー?」
今、一番聞きたく無い声が上条の耳に届いた。
. - 68 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:07:06.27 ID:TvcmjPEho
- 「……ィェ」
消え入りそうな声で意味不明の単語を呟くと、上条は油の切れたロボットの様に、ギギギ、と首を声のほうに向けた。
濃いブルーのヘソ出しタンクトップに薄いクリーム色のカーディガン、美脚が眩しいホットパンツに少々派手な薄紅色のサイハイソックス、日差しを意識しての鍔の広いキャップにレイバンのサングラス。
全身から美人オーラを放つ麦野沈利がそこに立っていた。
「聞こえてる、上条クン? あと、今何時かわかってる?」
それまで操作していたのか、携帯端末をポケットにしまいながら麦野が言う。
問われた上条は、慌てて腕時計の時刻を確認する。
…12時55分。待ち合わせ時刻ではないが、上条の背筋に冷や汗が流れる。
「デートの一時間前までに… とか無茶は言わないけどさぁ。朝はアタシが折れたんだから、出来る限り早く来るのが礼儀ってやつじゃない?」
口調は意外に優しげであるが、眼が完全に笑っていない。
「す、すいません! 変な中学生に絡まれちまって…」
「へ、変とは何よッ!!」
置いてけぼりを食らった御坂美琴が叫ぶが、麦野はそれにとりあわず、片手を、にゅ、と伸ばして上条の耳をつねりあげた。
「いたたたたたたッ!!」
「そんなの、アンタが構うからだろうがッ! 彼女待たせてる時は! たとえ世界の軍隊に追われていても振り切って来なさいッ!! 良いわねッ!!」
言い放って、抓った手離すと、返す手で思いっきり上条の頬に平手打ちを食らわす。
「ぐはっ!!」
ぱしーーーん!! と非常に良い音がして、上条がキリキリと舞い崩れる。
目から火花が散り、朦朧とした意識の中で、なんとか「すみませんでした…!」とだけ声を絞り出した。
. - 69 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:08:07.82 ID:TvcmjPEho
- 「な、な、な……」
予想外の展開に御坂美琴が絶句していると、麦野が、ジロリ、と睨みつけてきた。
「…ヒトの男に汚い唾つけないでくれる?」
「き、汚いですってッ!?」
一瞬沈下したボルテージが瞬間的にマックス入る。
だが、麦野はあくまで冷静に「ああ、そうだ」と答える。
「構ってもらいたいんなら、他に適当な男を見つけて頂戴。これは昨日から私のモノだから、今後、ちょっかい掛けたら承知しないから」
静かに、しかし、はっきりと宣言する。
「…うぅ、あー、麦野さん… 相手は中学生だし…」
頭を振って上条が立ち上がる。中々にタフだ。
「中学生でもオンナはオンナよ。アンタも、もうこんな小娘に構うんじゃないわよ」
「黙って聞いてりゃ勝手なことを!!」
怒りが再び頂点に達したのか、美琴の髪から火花が散る。
が、麦野は「はぁ…」とため息をつくと、腕時計をみて「そろそろ来るかしら…?」と呟いた。
その瞬間、
「風紀委員(ジャッジメント)ですのッ! って、あら、お姉さま…?」
何も無い中空から、これも常盤台の制服を着たツインテールの少女が出現した。
その腕には、有志によって構成される学園都市の治安部隊『風紀委員』の腕章が見える。
「く、黒子、何でここに…?」
「い、いえ… 一般人に能力を行使して暴れている能力者が居ると通報があったものですから…」
ツインテールの少女が、かなりバツの悪い顔で言う。
「あ、通報者は私ね。そこの中学生がアタシの彼にこれでもかってぐらい雷飛ばしてたわ。とっとと連行してちょうだい」
冷たくそう言って、自分は立ち上がった上条の腕に絡みつく。
「アタシら被害者だし、もう行っていいでしょ? 経緯が知りたきゃ、そこの短絡してない監視カメラのログを見て頂戴。…さ、上条クン、いこ」
そう言って、麦野はまだ動きの固い上条をひっぱって歩き出した。
その2人の背中に、御坂美琴は何か声を発しようとして、しかし、何を言えばいいのかわからず、片手を追うように前に突き出し、表情を歪ませ、ようやく「…待ってよ!」と声を絞りだした。
「か、彼女って、本当…?」
泣きそうな声で上条に問う。
しかし、上条がそれに答えるよりも早く、麦野がそれに反応した。
「ふふ…」
明らかな勝者の笑みを見せると、麦野は素早く上条と口唇を重ねた。
「ん…ッ」
唖然とする常盤台の2人を尻目に、くちゅくちゅ、と音がするぐらい情熱的にキスを交わす。
悪趣味だなーとは思いつつも、後が怖いので上条も無言で応える。
「ぷはっ…!」
ようやく口唇を離すと、麦野は完全に美琴から視線を外して、
「さようなら」
と、言い放ち、今度こそ上条を引っ張って美琴の前から立ち去った。
「お、お姉さま…」
流石に色々と察した黒子が、遠慮がちに美琴に声を掛ける。
しかし、それが契機となってしまった。
「う… うぐ… うゎぁぁ… あああぁぁぁぁ…」
おそらく、その時初めて自覚したであろう恋心に、そして破れた恋心に、御坂美琴は声を震わせて慟哭した……
. - 70 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:09:02.37 ID:TvcmjPEho
- 「ぎゃはははっ、あの顔!! 見たぁ、上条クン!? 『え、嘘でしょ?』ってな感じでさぁ!!」
「いや、流石に趣味悪いですって…」
上条が控え目に言うと、麦野はそれでも上機嫌に「いーんだよ!」とばっさり切り捨てた。
2人が居るのは雑居ビルにあるカラオケの一室だ。
あの後、すぐに麦野が「そこ、入るわよ」と言って、目に付いたカラオケボックスに上条を連れ込んだのだ。
「アイツあれだろ? 常盤台の超電磁砲だろ? はン、第三位があんな小娘だとは思わなかったわ。痛快だわー」
どうも、麦野は御坂美琴に対して、なにやら鬱積した感情があったようだ。
それが思わぬ形で解消されて、恐ろしくハイになっているらしい。
「あー、気分が良いわ。上条クン、アンタあの娘の恋心に気付いてなかったの?」
「いやぁ、全然… うぜぇ、としか思ってなかったし…」
その答えがドツボに入ったのか、麦野はソファの上で、「うぜぇだって!? カワイソーッ!!」と笑い転げた。
「ヒッ、ヒッ……! あぁ、一ヶ月分ぐらい笑ったわ… アンタサイコー! どんだけアタシを楽しませてくれるのよ…!」
そう言われても、自分がどんなファインプレイをしたか気付いていない上条は、ただ「はぁ…」と愛想笑いを浮かべた。
「ふぅ… ま、今日のペナルティはアレでチャラにしといたげるわ。ううん、むしろ大きなプラスポイントね… ね、ね。何かおねだりして良いよ?」
本当に上機嫌らしく、麦野が上条にしなだれかかって甘い吐息をかける。
今日の麦野はタンクトップだから、形の良い豊乳が、ぐにゃり、と上条の身体に押し付けられるのが、視覚的に大変よく分かる。
「え、おねだり…!?」
「なんでもいーぞー? ここ、カメラ無いみたいだし…」
麦野がチラリと周囲を確認して言う。
(これは、あれだよな… 誘われてるよな…)
ゴクリと上条が唾を飲み込んで麦野の服に手を掛けようとすると、突然麦野が、
「あ、でも本番は無しね。アタシ、今はピル持っていないし、服を汚したくないから」
という言葉に、力を失う。
だが、
「だ・か・ら、お口でシテあげる… 今日は特別、口の中に出して良いよ…」
妖しく、扇情的に上唇をぺロリと舌で舐めると、麦野は躊躇わず上条のズボンのチャックを引き下げた。
. - 71 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:09:46.10 ID:TvcmjPEho
- 麦野の白く細い指が、社会の窓に進入したかと思うと、次の瞬間には上条のペニスが顔を覗かせた。
「わぉ、もうガチガチじゃん?」
「そりゃ、この状況で勃たない男はいないですよ」
上条が興奮と期待とが入り混じった声で言う。
「そりゃそっか… 上条クンは楽にしててね……」
そう言うと、麦野はペニスに顔を近づけて、大きく膨張した亀頭の先端を、チロ、と舌で舐めた。
「…ふふ」
軽く笑って、さらに、チロチロ、と亀頭を小刻みに舐める。
「うぉ…」
昨日の初フェラではいきなり咥えられた。
あれもあれで強烈な快感だったが、こうやってチロチロ舐められるのもまた違った快感だ。
「チロ、チロ、チロ… ん、カウパー出てきた…」
舐めると同時に竿をごしごし擦られると、鈴口から透明な液が絞りだされる。
麦野はそれを舌ですくい上げるように舐めると、上条がよく見えるように、わざと、コクリ、と喉を動かして飲み込んだ。
「麦野、さん…ッ!」
「ククッ、期待してな」
男だったら誰しも想像するであろう素晴らしい未来予測に、上条の興奮がさらに高まる。
「次はココ…」
竿をしごく手の動きをいったん緩めると、麦野はペニスの根元の2つある袋のうち1つを口に含んだ。
「……嘘ッ!?」
上条の頭が電撃が走ったように仰け反る。
[田島「チ○コ破裂するっ!」]でも使った事の無い、未知未感の性感帯だ。
そんな上条の反応に気を良くしたのか、麦野は口の中の大事な玉を、激しく、しかし慎重に舌の上で転がす。
「やべぇ… それ、本気でやばいッス……」
全く耐性の無い上条が、即座にギブアップすると、麦野はあっさりと玉を口から吐き出して、
「それじゃ隣ね♪」
もう片方の玉を咥えて転がした。
「――――ッ!!」
最早、上条は言葉も出ない。
しかし、ここで果てると麦野の身体に精液が掛かってしまう。
それだけは避けたい一心で射精を我慢する。
(麦野さんは「服を汚したくない」って言ってた… だから、もしかしたら…)
淡い期待を糧に、念仏を唱える勢いで下半身の快感に抗う。
それは1つの拷問だった。
. - 72 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.2012/10/13(土) 23:11:24.00 ID:TvcmjPEho
- 「……ぢゅぅぅぅぅぅ!!」
麦野が玉袋に口をつけて、音を立てて激しく吸い上げる。
狂ってしまいそうな快感に、上条は奥歯が鳴るほど歯を食いしばって耐えた。
「あは… 耐えてる上条クン、かっわいー。そうか、そうか… そんなにおねーさんの口の中に出したいか…」
ペニスを弄る手はそのままに、悪戯っぽい笑みを浮かべて上条を仰ぎ見る。
その上目遣いに心から屈服した上条は、
「出したいですッ!! 麦野さんの口の中に出したいですッ!!」
と、プライドをかなぐり捨てて頼み込んだ。
「…そう、素直ね。素直な男の子は大好きよ。これからも素直で居てね…」
自然な笑みでそう言うと、麦野は手早く長髪をゴムで後ろに束ね、両手で上条のペニスを捧げ持った。
「いいわ、たくさん口に出して… 飲んであげる…」
そう言って、大きく口を開けて上条のペニスを飲み込む。
深く、深く……
顎が外れんばかりに大きく口を開いて、咽頭がえずくほどに喉の奥まで、
とうとう、鼻先が上条の陰毛に触れる場所まで麦野はペニスを咥えこんだ。
「すげぇ…」
快感よりも感動で上条が呟く。
おそらく、今、麦野は呼吸もままならず、生理的な嘔吐感を強引に押さえつけているのだろう。
その証拠に、麦野の眉根が苦しそうに震える。本当はペニスを吐き出して咳き込みたいに違いない。
「ぉぐ… ごっ… ぐぅ…」
それなのに、麦野は上条の腰に両手を回すと、抱きしめるようにさらに顔を押し付けた…!
上条のペニスの先端が、柔らかくて狭いナニカを突破する。
「もう無理だッ 射精します!!」
既に我慢の限界を超えていた上条が、その刺激にとうとう屈服する。
ドクッ! ドクッ! ドクッ!!
耐えに耐えてられてきた精液の勢いは凄まじく、咽頭の壁に抵抗無くぶち当たったそれは、当たり前の様に鼻腔側に跳ね返って、麦野の双鼻口から精液が吹き出る。
「おごぉ… ごぐ… ぐ…」
気道に入らないかと心配になるくらい、麦野が必死に精液を嚥下する。
慌てて上条が腰を引こうとするが、腰に回された麦野の手がそれを許さない。
「麦野さん…ッ 離して!!」
振りほどこうにも、腰に上手く力が入らない。
結局、射精が完全におさまるのを確認して、麦野がゆっくりとペニスを吐き出し始める。
いつの間にか額には玉のような大汗をかいており、それが麦野の苦しみを表していた。
「ありえねぇ… 凄すぎる…」
もはや上条の口からは感嘆の単語しか出ない。
麦野の唇が雁口まで後退する。
(ああ、ようやく終わる… いや、終わっちまう… 終わりだ…)
と、上条が思った瞬間、
「ぢゅるるるるるるッ!!」
麦野が最後の力を振り絞って、尿道に残った精液を吸い上げた…!
「あ……ッ!! ああああぁぁぁぁぁ!!」
不意打ちに特大の快感を叩き込まれて、上条が無意識に大音声で叫ぶ。
まるで『おこり』のように上条の身体が、ビクッ、ビクッ、と痙攣する。
「ぢゅぅぅ… んぅ… ごく… ぷはっ、すううううううううぅぅぅううぅぅ…… はぁぁぁぁあああああああああ……」
最後の一滴まできっちり飲み干して、麦野が深く深く深呼吸を行う。
「はぁぁぁぁぁ… しんだーーーー……!!」
そのまま、ぐたっ、と上条の身体に倒れこむと、緩慢な動作で紙ナプキンを手に取り、びぃぃぃ…! と鼻腔内の精液を吹き出した。 - 73 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/13(土) 23:12:39.36 ID:TvcmjPEho
- 「うげぇ、血ぃ出てる… はぁ、錯乱したわー、やっぱこの技は封印だわー、リスクでかすぎ…」
ひとしきりえずき、咳をし、呼吸を整えた麦野は、ぐったりとしてピクリとも動かない上条を見た。
「おーい、上条クン、生きてるー?」
返事が無い。不審に思って顔を覗きこむと、
…上条はこれ以上ないくらいのだらしない笑顔で失神していた。
「ぶっ!!」
あまりの表情に思わず麦野が吹き出す。
「この子は、なんでこうもアタシのツボに入ることばっかりするのかしらねー。…本気になりそう」
一瞬だけ、暗く冷たい表情を覗かせる。
「……なわけねぇよ、アタシがお前に本気になるか、ボケ…」
誰に言うわけでもなく呟くと、麦野は頼んでおいた烏龍茶をストローに含ませ、上条の鼻の穴に遠慮なく流し込んだ。
「…………ぅがッ!! ゴホッ!! ゴホッ!!」
強制的に覚醒させられ、上条が激しく噎せながら目を醒ます。
「がはッ… うぇ?」
「こーら、寝てんじゃないわよ」
目を白黒させた上条が、慌てて焦点を合わせると、麦野がやんちゃな弟を見るような目で苦笑していた。
「あ、す、すみません!! あんな良い目にあったってのに、俺は……」
本気で情けなく思っているのか、口をへの字に歪めて頭を下げる。
麦野は軽く肩を竦めると、上条の額に軽いデコピンを打った。
「痛ッ!!」
「ばーか、アタシのテクが凄かっただけだろーが。なぁにぃ? 昨日からエッチ続きで、自信持っちゃった感じ?」
「いや、そんなことは…!」
「そういうの、やめてね。自分の役割はきっちり把握しておきなさい。アタシと長く付き合うコツよ…」
少し、ほんの少し感傷めいた言い方をする。
上条は何かを言いたくて、しかし、言う方法がわからずに、ただ、
「はい…」
とだけ答えた。
. - 74 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/13(土) 23:13:42.68 ID:TvcmjPEho
- 風紀委員活動第一七七支部。
主に能力者によって構成された、学園の治安を守る学生間組織。
その拠点のひとつに御坂美琴は居た。
「…記録、照会終わったわ。申し訳ないけど、確かに御坂さんは能力を行使しているわ」
言葉を発するのは、眼鏡と巨乳が特徴的な女子生徒だ。
場の雰囲気から、この場所の責任者のようである。
「どんな事情があったか知らないけど、一般生徒、しかもレベル0に能力を行使するのは重大な校則違反よ。御坂さんとも有ろう人が、知らないわけはないでしょう?」
内容は厳しいが、口調は優しい。
それもそのはずで、御坂美琴は、知り合いらしきツインテールの風紀委員に連れられてこの部屋に入ってから、今の今まで号泣していたのだ。
泣きやんだ、というより涙も涸れた状態の今は、精神的にひどく不安定に見える。
「…はぁ、白井さん、どんな状況だったの?」
「は、はい… わたくしがその場に急行したときには、既に事態は収束に向かっておりまして…」
白井と呼ばれたツインテールの少女が、あの時の事を遠慮がちに語る。
聞いた眼鏡の風紀委員は、「失恋かー…」としみじみと呟いた。
「まぁ… 私も経験あるけどねぇ。好きな相手の恋心を自覚できずに暴走しちゃうこと…」
「固法先輩がですか…?」
驚いたように白井が言う。
いかにもお堅いイメージがある彼女には、似つかわしくないように思えた。
「そりゃ、この歳になれば、恋愛の1つや2つはしてるわよ。失恋もね…」
少し遠い目をして語ると、固法は改めて美琴に話しかける。
「御坂さん、風紀委員としても貴女の行動は看過できないし、知人としても貴女を放っておけないわ」
話しかけられ、ひどく緩慢な動作で美琴が顔を上げる。
その表情は、まるで幽鬼のようだ。
「お姉さま… ああ、おいたわしや…」
「白井は少し黙ってて。もし、もしもよ…? その男の子のことが諦めきれないのなら…」
いったん、言葉を置く。
「私は立場的にチャンスをあげられるかもしれない。それをどうするのかは、御坂さん次第よ」
美琴の表情に困惑の色が浮かぶ。
どうして彼女はそんなことを言うのだろう?
「まぁ、ぶっちゃけると、一方の当事者である女性の行動が、かーなーり、癪に触るからね。あんな自意識過剰な見せ付け女に負けちゃ駄目よ、御坂さん」
風紀委員・固法美偉。
痛恨のおせっかいが、今始まる。
. - 75 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/13(土) 23:14:24.61 ID:TvcmjPEho
- 「あーあーあー、はいはい、聞いてるってばよー」
整髪剤だのマグカップだの、細々とした買い物をすませ(勿論、支払いはすべて麦野である)、目に付いたファミレスで遅めの昼食を摂っていると、突然、麦野の携帯が鳴り出した。
面倒そうに電話に出た麦野は、明らかにテンションがダウンした状態で机に突っ伏し応答している。
「あのさー、今日は月の日だから出動なしにしてくんねーかなー?」
『こいつときたらッ!! 昨日、さんざん子犬クンに跨ってアンアン喘いでたじゃないの!! そんな嘘、通るかボケェェェ!!』
「うざー… 昨日は逃亡犯を見事捕まえたじゃん。ボーナス休暇ぐらいあっても良いでしょ。そうよ、それが良いわ」
『逃亡犯ノシたのは子犬クンじゃんw アンタはただ盛って腰振ってただけじゃんw かみじょークーン、すっごーい、てな感じィ??』
「…あー、適当に10°ずつ角度を変えて『原子崩し』を撃ったら、いつかアンタに当たるかしら…? 何発目ぐらいで当たると思う?」
『っざけんな!! 一発撃った時点で、暗部総動員でテメェミンチだコノヤロウ!!』
どんどんと険悪な雰囲気になる会話に、しらず上条の背筋に冷や汗が流れる。
『ウダウダ言ってないで、さっさと仕事に取り掛かれッ!! 5分後にフレンダが合流するから、あとはヨロシクッ!!』
ブツッ、と電話が切られる。
麦野はのろのろと身体を起こすと、無言で上条の頭をはたいた。
「あいたッ! えぇ!?」
「ごめん、叩いた」
頭にハテナマークを浮かべる上条に対して、麦野がぶっきらぼうに言う。
(こ、これは麦野さん式の甘えかたなんでせうか…?)
一応、それで正解である。
「上条クン、昨日の今日でなんだけど、お仕事入ったわ。準備できてる?」
冷静に上条に言う。
「準備つっても… 俺の準備は麦野さんに勝ってもらったメリケン・シールぐらいですよ」
上条がポケットから、昨日使ったフィルム・シートと同じものを取り出す。
「なら、良し。今から『アイテム』の一人と合流するから、話はそれからよ」
そう言うと、麦野は携帯とは別の個人端末を取り出して、猛烈な勢いで画面を叩き始めた。
(いよいよか…)
今夜が暗部としての上条のデビューとなる。
軽い興奮と、どうしても感じる後ろめたさ、そして、麦野に良い所を見せたいという虚栄心…
いろんな思いがない交ぜになって、上条は軽く拳を握りしめた…
. - 76 :麦野がビッチで何が悪い? ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/13(土) 23:15:09.45 ID:TvcmjPEho
- ちなみに―――
とあるアパートのとある無人の部屋のベランダに引っかかった、とある銀髪シスターは、
とあるド派手な2人組に回収され、
とある物語は始まる事なく終了した……
. - 77 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/13(土) 23:17:40.91 ID:TvcmjPEho
- はい終わりです。
次はまた書き溜めが進むか、
次々週の月曜日に。
saga忘れて肝心なシーンで伏せ字の体たらく。
一気にしょぼん。
あと、今回改行入れてみましたが、
反応しだいじゃ次回は直すかも。
では次回に会いましょう。 - 123 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:01:34.27 ID:1LVFMyPLo
「体晶を強奪~~~~~?」
麦野沈利が、眉根を歪めて素っ頓狂な声を上げる。
フレンダ・セイヴェルンと名乗る金髪碧眼の少女が語った仕事の内容が、麦野にとっては意外だったようだ。
「なーんで、うちらがそんなこすい真似しなきゃならないの?」
「結局、裏ルートで出回った体晶は、極力回収しなきゃならない訳」
やれやれ、と言った風にフレンダが言う。
「ウチらにお鉢が回った理由は、まぁ、滝壺が居るからよね。回収したら、そのまま使えってことじゃん?」
「しょーもねぇ……」
完全にやる気を無くした麦野が机に突っ伏す。
「…体晶って、なんなの?」
完全に話に置いてけぼりになっている上条が、対面に座るフレンダに聞く。
「まぁ、一種の能力強化薬? 相性とかあるし、誰が使っても効果があるものじゃないけど」
フレンダが親切に説明をする。
なぜかは分からないが、上条に対しては好印象のようだ。
「へぇ、そんな便利な薬があるんだ」
「結局、能力を暴走させているだけだし、副作用もあるし、カラダぼろぼろになるし、そんな便利なものじゃないって訳」
フレンダがドリンクバーのメロンソーダを、ズズッ、と啜る。
「…はぁ、もうちょっと詳しい内容」
ようやく、のろのろと頭を上げた麦野が、面倒そうに言う。
やる気は相当に無いようだ。
「はいはい、第11学区にシリンダー・コスモっていう燃料系の研究機関があるんだけど、そこが使ってた柄の悪い連中が居てね」
学園都市の研究機関のほとんどは、その内部に黒い非合法な部分を有する。
元々の技術の根管が『人体実験』の成果だからなのかもしれない。
よって、様々な荒事が発生する場合に備えて、それぞれが独自に私設部隊を持つ場合がある。
「ま、本人たちは『私設部隊』のように思っていたようだけど、結局はただの『スキルアウト』な訳」
私設部隊の質は様々だ。
警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)と互角に戦える場合もあれば、街の不良集団に毛が生えただけの存在もある。
「結局、そいつらが、『シリンダー・コスモ』側から得た『体晶』を横流ししようとしたから、あっさり粛清が決まった訳」
「それじゃ、その内ゲバのドサクサに紛れて、『体晶』を回収しろってこと?」
「そーいうことだね」
フレンダがメロンソーダを飲み干すと、物足りなさそうに再びドリンクバーに向かう。
「あー、強奪かぁ……」
内容を聞いた麦野が、上条を見つめて面倒そうに考え込む。
本心では、「上条さんは何をすればいいんでせう」と聞きたくてたまらない上条だが、ここはぐっと堪えて麦野の言葉を待つ。
.- 124 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:02:01.17 ID:1LVFMyPLo
- 「…デビュー戦に気合が入っているところ悪いけど、上条クンは待機ね」
「あ、やっぱりそういう流れですか…」
多少、予想はしていたが、肩透かしを食らって上条が力を抜く。
「んー、相手は武装しているし、『体晶』の現物を見たこと無い上条クンは足手まといになる可能性があるわ。
逃走用の車で待機していてちょうだい。朝にもらった免許証を忘れないようにね」
「あ、あのー、上条さんは自動車を運転したことないんですが…?」
「はぁ? 学園都市の車はほとんどオート制御でしょ? 技能なんて必要ないわよ」
「そ、そうですけど…」
麦野の言うとおり、学園都市の車は、そのほとんどが衛星とリンクした自動制御となっている。
運転手の役割は旧来のものから大きく変わり、『とりあえず無人でないことの証明』ぐらいでしかない。
だが、確かに柔軟な走行を得るためにはハンドルを握らなければならない。
「麦野ー、流石にトーシロが座ってるクルマに乗りたくないんだけどー」
ドリンクバーから戻ってきたフレンダがフォローを入れる。
麦野は再び考え込む表情を見せる。
「…ちっ、じゃ浜面も呼ぶか。アイツら暇だろうし、上条クンの良いお手本になるかもね」
「だね。結局、『滝壺いるかもー』って匂わせれば、馬車馬の様に働くって訳」
2人は上条の知らない名前で盛り上がる。
よく分からないが、浜面という人と一緒に仕事をすればいいらしい。
「おし、それじゃ、浜面を呼ぶから、到着次第、移動・潜伏。
アタシがフォワードでフレンダがバックアップ。
フレンダぁ、先行して下調べと仕込みを済ませときな」
「了解、結局、事前準備が一番重要って訳…」
2杯目のメロンソーダを飲み干してフレンダが立ち上がる。
去り際に上条だけ分かるようにウインクをすると、口の動きだけで「がんばってね」と言う。
「………ッ」
反応すると麦野が怖いので、目線を合わせず頷く。
どうも、朝に会った絹旗という少女と違って、フレンダは上条に対して好意的なようだ。
(多分、麦野さん関係なんだろーなー……)
まだ『アイテム』に関してほとんど何もしらない上条だが、リーダーの麦野に対しては、メンバーの間で様々な感情があるのだと思った。
. - 125 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:02:38.43 ID:1LVFMyPLo
- ――――『コスモ・シリンダー』が所有するとある廃工場跡。
過去に廃棄されたその施設は、所有者を変えることなくその役割だけを変えていた。
即ち、非合法な人員・装備の拠点としての役割である。
「や、約束通り… 一人で来ました……」
既に日は落ちて当たりは闇色。
そんな薄暗い廃工場には、全く似つかわしくない少女が、一人、居た。
年恰好はローティーンの、ロングの髪に花柄の髪留めが印象的な少女だ。
「おぉ… 入ってくるところ、誰にも見られていないだろうな…?」
「は、はい… 十分に注意しました」
応対をしているのは、リーダーらしき鋲の入った革ジャンを着た青年だ。
2人の周囲には10数人ほどの柄の悪い男たちがたむろしている。
会話する2人を見ている者も居れば、周囲を油断無く警戒している者も居る。
「カネ、用意できた?」
「はい… 10万、ですよね……」
少女がハンドバックを探って、かわいらしいレターセットを取り出す。
本来は、友達に向けて他愛の無い手紙が入るそれには、今は少女が持つ全財産が入っている。
「あぁ、今から保管場所に連れて行くから、ソレは大事に持っときな。『体晶』と交換だ」
そういって歩き出す青年に、少女が慌てて付いて行く。
少女の名前は佐天涙子。
どこにでも居る女子中学生で、そして、どこにでもいる無能力者だ。
「初めに言っとくが、コレを使ったからって、能力が得られるとは限らないからな。全くのムダになることもある。それでも良いんだな?」
「…はい。アタシ、何やっても能力が発現しなくて… もう、コレに頼るしか……」
少女――佐天の悩みは、学園都市の無能力学生にとって共通のものだ。
自分にどんな超能力が眠っているのか―――。
己と、家族の期待を背負ってはるばる学園都市にやって来て、そして、無能力者の烙印を押される。
学生の大多数がそうであるとは言え、多感な少年少女にとっては、容易に受け入れがたい現実だ。
「少しでもチャンスがあれば、それに賭けてみたいんです…」
悲壮な表情で佐天が呟く。
それを、革ジャンの青年は憐れみの混じった目で見つめる。
(『体晶』で発現した能力が、まともな訳ないだろうに…)
青年――儀房秀隆という――が心の中で吐き捨てる。
今では、コスモ・シリンダーの使いっ走りとして活動しているが、青年はある程度将来を期待された強能力(レベル3)の能力者だった。
しかし、能力開発に行き詰まり、怪しげな非合法実験に参加したことを契機に、研究機関の闇に身を置く羽目になってしまった。
(『体晶』を売りさばいた金と、『コスモ・シリンダー』の社外秘データを使って、もっと良い企業に潜り込めれば…)
それがこの青年の目的だ。
今のままでは企業の使いっ走りとして切り捨てられる。
そう切実に感じたからこその行動だったが、それが見事に裏目に出たことを、彼は知らない。
. - 126 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:03:06.71 ID:1LVFMyPLo
- 『ターゲットは企業側が用意した囮と一緒に奥に引っ込んだわ。突入班の無線を傍受したけど、目標の移動が終了したと同時に突入するみたい』
四輪駆動の大型バンのスピーカーから、フレンダの声が響く。
携帯端末で廃工場のマップを確認していた麦野が、フムフム、と頷く。
「了解、フレンダは引き続き馬鹿どもを監視。戦闘が始まったら、上手くやつらを足止め・誘導してね」
『りょーかい。結局、楽勝な訳よ』
ブツッ、という音と共に通信が終了する。
「さて、と…」と呟いた麦野が車内を見回すと、上条が助手席に、そして運転手席に金髪に鼻ピアスが特徴的な青年が座っていた。
「浜面ぁ、アタシは騒ぎに紛れて進入するから、上条クンとしっかり留守番してんのよ」
「あいよ、暖気して待っとくわ。あとさ… 今日は滝壺いねぇの?」
「いねぇよ、ばーか」
「ちくしょー、騙された……」
それなりに気心が知れているのか、浜面と呼ばれた青年が軽く応答する。
「上条クン、ま、分からないことがあったら、そこの馬鹿に聞いてね」
「あ、ああ…」
遠慮がちに浜面を、チラリ、と見ると、いつものことなのか、浜面は軽く肩をすくめて苦笑する。
「それじゃ、行って来るわ」
そう言うと、麦野は片耳に小さなインカムをつけて、バンから降りた。
「あ、麦野さんッ!」
「なに?」
麦野が足を止める。
「あの… 気をつけて…」
「…ふふ、心配は自分にしときなさい」
麦野は手を、ひらひら、と振ると、何気ない足取りで夜の闇に消えて行った…
. - 127 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:03:33.73 ID:1LVFMyPLo
- 「儀房ッ!! 侵入者だッ!!」
廃工場の奥深く。
『体晶』や儀房が密かに集めていた『本社』のデータが保管されている、通称『金庫室』
『体晶』が納められている金庫を解錠しようとしたとき、儀房はその報告を受けた。
「何だって、どこの誰が…?」
近くのコンソールを操作して、スクラップに偽装してある監視カメラを起動する。
壁に無造作に置かれたモニタに灯が入ると、そこには十数人の完全武装の集団が廃工場の門扉に張り付いているのが見えた。
「この廃工場の場所は『本社』の連中も知らねぇんだぞ…? ……ッ!?」
弾かれたように佐天を見る。
何かを察した彼女は、慌てて、千切れんばかりに首を振る。
「わ、私じゃない!! い、言われた通りのルートを通ったし、誰にも言ってません!! ほ、ホントですッ!」
「…何も言ってねぇよ、勘違いすんな」
取り繕うように儀房が言う。
一瞬、この少女がスパイか、とも思ったが、だとしたら少女が取り残されているのがおかしい。
(いや… コイツはただ何も知らなくて、『虫』を付けられた使い捨てって事も考えられるか…)
その考えに思い至り、儀房は「クソッ」と吐き捨てた。
「…迎撃するぞ」
「逃げねぇのかよ!!」
チームの一人が叫ぶ。
「逃げるにしたって、『体晶』やデータを持ち出す時間が居るだろッ! お前とお前、ここで『本社』のデータを持ち出せるようにしとけ」
矢継ぎ早やに指示を出して、コンソールを操作する。
この部屋に至るまでの通路が電子ロックされ、廃工場が迷宮と化す。
「これで少しは時間が稼げる… データのアウトプットが終わったら、6番通路で待機しておいてくれ」
「あ、あのッ、私はッ!?」
状況の急変についていけない佐天が叫ぶ。
詳しいことは分からないが、ここにいたら危険だとは分かる。
不安で不安で胸が潰れそうだ。
「お前は… ここに居ろ。下手に動いたら戦闘に巻き込まれる。いいか、『体晶』のこととか全部忘れて、浚われた一般人を装え、分かったな!」
とうとう涙を浮かべ始めた佐天が、コクコク、と何度も首を縦に振る。
「よし… データのアウトプット、早めにな。いくぞッ!」
儀房が残りのメンバーを促して部屋を出る。
残された佐天は、恐怖と後悔で、腰を抜かして床にへたり込んだ……
. - 128 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:04:00.23 ID:1LVFMyPLo
- 「ナンパぁ!? あの麦野を!? なんて命知らずなヤツ……」
「いや、まさか暗部のエージェントとか思う分けないでしょ!?」
麦野を待つバンの中では、上条と浜面が砕けた口調で話をしていた。
意外と相性は良いようである。
「そりゃ、アイツは黙ってたら美人だけど、それ以上に近寄りがたいオーラがあるじゃん?」
「そこらへんが、上条さんの好みのどストライクというか…
「お前の好みって、何よ?」
「……寮の管理人のお姉さん?」
「ありえねーッ!! 麦野が管理人とかありえねーッ!!」
思わず絶叫する浜面。
「そんな寮があったら、住人全員がストレスで10円はげ作るわ。断言するね」
「え、麦野さん、優しいじゃないスか…?」
浜面が信じられないモノを見たような目つきをする。
「優しいって、え、なに… あのモンスターが…? …お前、精神系の能力使われて無いか?」
「んなわけねー!!」
今度は上条が絶叫する。
「…まぁ、いいさ。よくよく考えれば、これから、麦野の暴走は止めるのはお前の役割なんだからな… 頼むぜぇ、彼氏さんよぉ…」
浜面が拝むように手を合わせる。
「暴走って… 電車やバスじゃあるまいし…」
「そっちの暴走の方がまだかわいーよ!
…あー、多分、そろそろかなぁ…」
浜面がバンのラジオ(に偽装した通信機器)を操作する。
「おーい、フレンダ、そろそろ突入?」
『ザザッ あ、あー… 今、麦野に通信送ったところよ。突入側は門扉の解除に成功、これから突入ね。防御側は果敢にも迎撃に出るみたい』
「オーケー、撤収気をつけてな」
それだけ通信してスイッチを切る。
「見てな、そろそろ派手な花火が上がるぜ」
浜面が麦野の消えた方角を指差す。
上条がつられて目をこらした、
その瞬間、
―――極太の白色光が煌めいた。
ズガァァァァァッ!!!!
「え、なに…!?」
一瞬遅れて、何か大きな破壊音が聞こえる。
そして、さらにそれは連続した。
ズガァァァァァッ!! ドゴォォォォォッ!!
白色が煌めくたびに大音声の破壊音が聞こえる。
「もしかして… 麦野さんがコレを…?」
「ああ、これが学園都市の超能力者(レベル5)、麦野沈利の『原子崩し(メルトダウナー)』だ。
これで、数割の出力っていうから恐ろしいぜ」
既に遠目からでも、廃工場の一角が残骸と化しているのが分かる。
上条は、釣り上げた魚の大きさに、改めて戦慄した。
. - 129 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:04:26.25 ID:1LVFMyPLo
- 佐天涙子は後悔の真っ只中に居た。
新学年になり、次々と能力を発現させる同級生。
担任教師の同情と諦めに満ちた表情。
その何もかもが嫌になって、普段なら軽くスルーするダイレクトメールに目を止めてしまった。
『能力の暴走過程で生まれた、能力強制発現薬』
その煽り文句を真に受けた佐天は、恐ろしく厳重なメールの遣り取りにさらに信頼を強めてしまい、結果として、この部屋で震える破目になってしまった。
(早く家に帰りたい…ッ!! 怖い、怖いよ…ッ!!)
チラリと顔を上げると、いかにも柄の悪い男2人が、怒鳴りあいながらコンソールを操作している。
声の調子からして、どうにも上手くいってないらしい。
「おいッ! データはどこまでアウトプットするんだよッ!?」
「ンなもん、全部に決まってんだろうが!!」
「アホか! データが重すぎて、ここにあるメディアだけじゃ足りねぇぞ!!」
部屋の中に響く怒鳴り声に、思わず耳を塞ぐ。
(早く誰か助けに来て…)
佐天はヒーローの登場を心から願った……
. - 130 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:04:58.69 ID:1LVFMyPLo
- 「あ、ボクシングするんだ」
「ほとんど我流ッスけどね。『ホーリーランド』が上条さんおバイブルです」
「あー、わかるわー、それ。俺もそれ読んでアマレス囓ったもん」
「アマレス、強いですよね~」
「いや、ボクシングもつえーよ。俺、喧嘩の時、タックルにショートフック合わせられたことあるし」
「え、マジッスか? どうなんったんです?」
「一発で気絶。いやぁ、ボクサーのカウンタースキル、やばすぎるわ…」
「俺からしてみたら、アマレスの低タックルとか、本気で嫌ですけどね…」
「そうかぁ…? …今度、マスでもしてみる?」
「あ、いいスね。どっかの公園の砂場でやりましょうか……」
……男2人は、ほのぼのとした雰囲気の中、格闘技談義で盛り上がっていた。
. - 131 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:05:24.96 ID:1LVFMyPLo
- 「クソッ!!」
ガンッ!!
『金庫室』に残った2人のうち、メッシュ髪の男がコンソールに拳を打ち付ける。
「何やってンだよ!!」
残る1人、スカジャンを来た男があわてて詰め寄る。
「やっぱりデータがデカすぎンだよ!! HDDぶっこ抜いても足りねぇ!! つーか、そんな時間もねぇ!!」
「…前に儀房が言ってた。セキュリティを突破して『金庫室』まで行くには、最低20分はかかるって…」
部屋の隅でがたがた震えていた佐天が思い出す。
確かに、この部屋まで来るのには恐ろしく時間が掛かったし、なにより、どこをどう歩いたか分からないほど、通路が入り組んでいた。
「儀房たちが足止めもしてくれてる… 少なく見積もっても、30分ぐらいは猶予があるんじゃねぇか…?」
スカジャンが楽観的な予想を立てる。
その予想に少し落ち着いたのか、メッシュが大きくため息を吐いて椅子に身を沈める。
「…クソッ、何でこんなことに…」
「『体晶』のウリがやっぱマズかったんだよ… ありゃ、マジの厄ネタだったんだ」
後悔を口から吐くようにスカジャンが声を絞りだす。
「…厄ネタっつーなら、ソコにも居るぜ?」
メッシュがギラリとした眼光を部屋の隅に向ける。
蹲っていた佐天の肩が、ビクリ、と震える。
「なぁ、おい、嬢ちゃんよォ!! とんでもねぇことしてくれたなぁ!!」
「ヒッ… わ、私、何も知らないです… 本当です… ごめんなさい、ごめんなさい…」
小さく小さく、「ごめんなさい、ごめんなさい……」と繰り返す。
その謝罪が、男の神経を逆撫でする。
「知らないで済むかよッ!! あぁ!!」
ゴンッ!!
再び、コンソールに拳が打ち付けられる。
「いやぁ… ごめんなさい、ごめんなさい……」
佐天に出来ることは、ただ小さく震えることだけだ。
「…おい、データ移行の指示は済んでるのか?」
突然、スカジャンがメッシュに言う。
「ん…? あぁ、つっこめるだけのメディアはつっこんだし、HDDもあとはぶっこ抜くだけだ」
「じゃ、時間あるな……」
スカジャンがギラつく瞳を佐天に向け、にぃ、と笑う。
「なぁ、嬢ちゃん名前は何?」
「え… さ、佐天涙子です…」
名前を言うのも恐ろしいが、言わないのはもっと恐ろしい。
「佐天ちゃんかー。じゃ、さ…、佐天ちゃんに、代償を支払ってもらおうぜ……」
明確に、『金庫室』の雰囲気が変わる。
「おっ! やっべ、気がつかんかったわ、それ」
メッシュが「へへへ…」と野卑な笑いを浮かべる。
「あああああ…………」
佐天の恐怖が最高潮に達した。
. - 132 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:05:58.22 ID:1LVFMyPLo
- 「駒場さんって… あの、独特なしゃべり方をする人?」
「なんだよ、ウチのリーダー知ってるのかよ? お前、どこのチーム?」
「いや、俺はどこのスキルアウトにも入ってないけど、青ピって知らね? 声がすんげぇ野太い」
「ああ、あの馬鹿?」
「そそ、その馬鹿。そいつの関係で、ちょいと出入りに参加したことあって」
「青ピって、アイツなんなの? 不死身系能力者? 殺しても死なないって、どーゆー理屈なんだよ…?」
「本人曰く、『ボクはボクが認める属性の娘の攻撃しか効かないんや~』って言ってたけど……」
「はぁ? それ、軽くレベル4以上あるんじゃねーの?」
「いや、それが、本人は能力発現未満のれっきとしたレベル0なんだ……」
「マジでナニモノなんだよ……?」
……バンの中では、すっかり仲のよくなった2人の、馬鹿なダベリ話が続いていた。
. - 133 :惨奴逸痴 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:06:43.16 ID:1LVFMyPLo
- 「嫌ぁぁぁぁぁぁッ!!」
声のあらん限り叫ぶ佐天を、メッシュが背後から羽交い絞めにする。
ニヤニヤと下品な笑いを浮かべたスカジャンが佐天の前に立つと、佐天の上着の襟元に手をかけた。
「ここ、完全防音だから、いくら叫んでも無駄だぜ…!」
ビリィィィィ!!
声と共に、上着を力任せに引き千切る。
可愛らしいデザインのブラジャーが露わになり、佐天の顔が羞恥に染まる。
「やめてぇぇぇぇぇ!!」
「うっはー、たまんねー!!」
声に興奮したのか、メッシュが手を伸ばして佐天の胸を荒々しく掴む。
「ヒッ!!」
「お、けっこー胸あるじゃん。コイツはアタリかも…!?」
「マジ? 佐天ちゃん隠れ巨乳?」
スカジャンも空いた片乳を乱暴に掴む。
すると、下品な笑みがさらに歪んだ。
「へへ… 楽しめそーじゃん…!」
スカジャンが強引にブラジャーを剥ぎ取ると、歳の割りに大きいおっぱいが、ぶるん、と飛び出る。
メッシュが「いいじゃん、いいじゃん!」と語気を強める。
「触らないでッ!!」
あまりの羞恥に恐怖が振り切ったのか、佐天が正面のスカジャンを右足で蹴り上げる。
が、か弱い女性の筋力では、ぺし、という音を発するだけだ。
「お、足上げてくれるなんて、協力的だね~」
自分勝手な解釈をすると、スカジャンは一気に、下着もろとも佐天の下衣を剥ぎ取った。
まだ無毛の、幼い割れ目が外気に触れる。
「なんだ、ここはまだガキンチョかよ…」
「馬ッ鹿! 巨乳で無毛とか、そっちの方がソソルじゃん!」
ガチガチガチ…
既に、佐天の歯の根は合わず、顔面は蒼白で今にも意識を失いそうだった。
. - 134 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:07:09.30 ID:1LVFMyPLo
- 「ネコミミむぎのん…」
「ナシナシナシ! カワイイ系はないですよ!!」
「んじゃ、ナースむぎのん…」
「う~ん、ギリナシ?」
「えー、注射とか似合いそうじゃん?」
「似合いすぎて怖いデスヨ…」
「それもそうか… ほんじゃ、そっち」
「婦警むぎのん、とか?」
「メスポリとか呼ばれてそーだな、アリだ」
「女教師むぎのん」
「かなりアリ! タイトスカートの癖に、足の太さを気にして色の濃いタイツとか履くんだぜ、きっと!」
「ボンテージむぎのんは……?」
「あー、そりゃナシ。似合いすぎてつまらん」
「それじゃ… あ、バニーむぎのん…?」
「……………………………」
「……………………………」
「「アリアリアリアリアリアリアリッ!!」」
……バンの中はやっぱり平和だった。
. - 135 :惨奴逸痴 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:07:41.62 ID:1LVFMyPLo
- 「ほんじゃ、ご開帳~」
既に抵抗をやめた佐天の太ももを、スカジャンが強引に開く。
大陰唇すら閉じた秘裂が、わずかに口を開く。
「あ、あ……」
それを見る佐天の瞳は空ろだ。
まるで、他人事のように光が無い。
「パイパンのタテスジ、たまんねぇな…」
「なんだよ、お前ロリコンかぁ?」
「締まりがすげぇってことだよッ!!」
スカジャンが、わずかに盛り上がった秘裂の端を両の親指で押さえると、軽く力を入れて「くぱぁ」と左右に開く。
見事なサーモンピンクの肉壁が顔を覗かせた。
「…ゴクッ」
二次性徴直後の青い肉体を蹂躙する暗い喜びに、スカジャンの興奮が否応無しに上がる。
どう考えても処女だ。生理用品すら挿入れたことがないだろう。
「わりぃな… 濡らしてる暇がないんでよ……」
やや緊張に震えた声でスカジャンが言う。
それを聞いたメッシュが、引きつった笑みを浮かべた。
「お前、鬼畜だなぁ、おい…」
「…そっちも穴が空いてるぜ?」
欲情とストレスが、理性の枷をあっさり外す。
スカジャンがさらりととんでもない『提案』をすると、メッシュも、ゴクリ、と唾を飲み込む…
「コイツ、発狂死するかもな…」
「構うこたねぇよ、自業自得だ…」
2人の男が佐天を拘束したままズボンを下ろす。
佐天の耳には2人の会話が入ってきているが、心がその理解を拒絶する。
(これは夢…、悪い夢……ッ!!)
現実を逃避し、心の中で何度も念じる。
防衛機制としたは、当然の逃避であるが、しかし、その為に、
佐天は決定的な抵抗のチャンスを逃してしまった。
. - 136 :惨奴逸痴 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:08:23.04 ID:1LVFMyPLo
- ピト……
薄汚く、凶悪に勃起したスカジャンのペニスが、佐天の秘裂に接触する。
そのおぞましい感触に、ようやく佐天の意識が現実に戻る。
だが、それは最悪のタイミングだった。
「お、お願いします… グスッ、やめて… やめてェ……」
嗚咽交じりの懇願を、正面のスカジャンに行う。
万人の心を動かしそうなその行為は、しかし、この場面においては完全に逆効果だ。
「やだね……!」
皮肉なことに、佐天の懇願がスカジャンの行動のスイッチを押した。
ペニスを強引に佐天の秘裂に食い込ませる。
亀頭が秘裂に半分まで喰い込むと、ようやく佐天の身体が動き始めた。
「イヤッ!イヤッ!! 嫌ぁぁぁぁッ!!!!」
思い切り叫び、身体を捻る。
しかし、前後から男たちに挟み込まれていては、満足な抵抗などできない。
「けけっ、暴れるのがちっと遅いぜ… さぁ、ぶち抜いてやる…ッ!!」
スカジャンが佐天の腰をガッチリ掴み、強引に腰を突き上げ、そして…
ぶちぶちぶちぶちッ……!!!!
少女の身体には完全に規格外のペニスが、秘裂を入り口に佐天の身体を貫通する。
「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!」
激痛。あまりにもの激痛に佐天があらんかぎりの絶叫を上げる。
(痛いッ!! 痛いッ!! 痛いッ!!!!)
佐天の意識が激痛に染まる。
生まれてこのかた、経験したことのない『内臓を裂かれる』痛み。
それまで、経血しか流れたことの無い細い膣道を、大質量のペニスが強引に逆流する。
. - 137 :惨奴逸痴 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:08:49.27 ID:1LVFMyPLo
- 「……………ぁ、……………ぁッ!!」
酸素を求める金魚のように、佐天の口が、パクパク、と開閉を繰り返す。
激痛により腹筋が痙攣し、上手く空気を吸うことが出来ない。
「うぉ… 締まる……ッ 最高だぜ、このガキ……ッ!!」
佐天の苦悶などお構いなしに、スカジャンが腰を揺する。
それまで膣道で堰きとめられていた破瓜血が零れ落ちて、鉄さびの匂いが佐天の鼻に届く。
(血の匂い… あたし、死んじゃうの……ッ!?)
死への恐怖からか、激痛に固くなった佐天の身体に、少しだけ力が戻る。
正面のスカジャンから逃れようと、必死に地面を、スカジャンの身体を、手と足で押そうとする。
「おいおい、もうぶち込んでんだから、暴れるんじゃねーよ」
しかし、スカジャンは逆に佐天を抱きしめるように拘束すると、両手を佐天のお尻にまわし、強引に割り開いた。
セピア色の、可愛らしい菊座が外気に触れ、驚いたように、ひくひく、と痙攣する。
「おら、とっととぶち込めよ」
「別にソッチの趣味は無いんだけどなー」
台詞と口調とは裏腹に、顔全体で醜悪な笑みを浮かべたメッシュが、佐天のアナルを指で弄る。
「……………え?」
驚愕、疑問、悲哀、、不安、逃避……
様々な感情を顔に浮かべ、佐天がゆっくりと背後のメッシュを振り返って見る。
「なに、するんですか……」
聞きたくない、知りたくないのに、口が勝手に開く。
佐天の性知識は、年齢・性別相応のものしかない。
アナルセックスや二穴挿入など、想像すらしたこともない。
「…ケツ、緩めとけよ」
佐天の質問には答えず、メッシュはお情け程度にだ液をアナルと亀頭に塗りこむと、ペニスを手でしっかりと固定して佐天のアナルに押し当てた。
「あ、あは… あはは……」
ようやく、背後の悪魔が何をしようとしているのかに気付いた佐天が、乾いた笑い声を上げる。
股間の激痛はすでに鈍痛に変わっていて感覚はほとんど無いのに、お尻の穴に触れた汚らわしいペニスの体温が、やけにはっきりと感じられた。
「あんたたち、人じゃない… ひとでなし… ひとでなしぃ……」
それまで出番を忘れていたかのように、佐天の瞳から涙が次々と零れ落ちる。
「ちっ、うっせーな……!」
少女の批判に、メッシュが静かに逆上する。
「こんな所にほいほい来たテメェの責任なんだよ…ッ!!」
声をと共に、ペニスを強引にアナルへ突き刺す。
メリメリメリメリッ……!!
「……………ぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
指さえ入るのが怪しい小さな菊座に、赤黒い勃起したペニスが突き刺さる。
佐天は瞳と口とを限界まで拡げ、必死に伸ばした手でと何も無い空を掴む。
………ピシッ。
強引な挿入でどこかが裂けたのか、佐天の肛門から、たらたら、と鮮血がしたたり落ちる。
その量は破瓜血の比ではない。
「へへっ、滑りが良くなってちょーど良いや……」
メッシュの言葉は、既に佐天には届かない。
佐天は気絶一歩手前の状態で、ただひたすら股間の鈍痛と異物感に耐えている…
. - 138 :惨奴逸痴 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:09:20.99 ID:1LVFMyPLo
- 「お、入ってきたのがわかるな…」
「うぇ、チンポの先がぶつかっちまった。気持ち悪ぃ…」
いったい、どこにそんなスペースがあるのだろうか?
少女の細い腰の中に、長大なペニスが2本も埋め込まれている様は、ひどく現実感のない光景だった。
「時間もねぇし、早めに済ませようぜ」
「おぉ、勝手にイカせてもらうわ」
ズリッ、ズリッ、ズリュッ!!
男2人は視線を交わすと、てんでばらばらに腰を動かし始めた。
リズムもタイミングもバラバラなその動きは、かえって佐天の激痛を増悪し、不規則な衝撃に佐天の身体が下手糞な操り人形のように跳ねる。
不意に、
ズンッ!!
「がッ…… はッ!!!」
偶然に2人が腰を突き出すタイミングが合い、佐天の身体が下から上に突き上げられる。
その衝撃で、それまで必死に身体を支えていた両足が地面から離れ……
佐天の身体が完全に宙に浮いた。
「ぐぁ…… あぁ…… し、ぬ……!!」
それは、まさしく串刺し刑だ。
全体重を股間で支える羽目になり、佐天の激痛が最高潮に達する。
それは、少女の我慢の限界をとうとう越え、
一度、「はぁぁぁ……」と肺に残った空気を吐き出すと、佐天の眼球が、クルリ、と上に回転し…
佐天涙子は意識を喪失した。
. - 139 :れいぽう終わり ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:09:48.09 ID:1LVFMyPLo
- 『もしもーし、馬鹿言ってないで、周辺の哨戒ぐらいしておきなさいよ~』
バンの中でほのぼのと会話をしていた上条と浜面に、フレンダから通信が入った。
「ん、何か動きあった?」
『突入側が迎撃側の戦力の大半を無力化したわねー。
迎撃側はリーダーがけっこう頑張ってたけど、今は散り散りになって逃げてるわ』
「麦野は?」
通信先で、何かしらの機器を操作する音が聞こえる。
『工場内は電波の通りが悪いけど、そろそろお宝に到着するみたい。
ま、結局、麦野に心配は不要って訳よ』
「おーし、そんじゃ、そろそろクルマを暖めておくか…」
浜面が運転席の電子ロックを外して、クルマのエンジンを掛ける。
エンジンが駆動し、バンが小さく揺れる。
『んじゃ、アタシもそろそろ離脱して… あっ!!」
「うん? どうしたん?」
通信先で変な声を上げたフレンダに、浜面からつっこみが入る。
『このアホが… あー、浜面、聞いてる?』
「おお、何かトラブルか?」
『いますぐバンを移動して! 迎撃側のリーダーが麦野の『原子崩し』で空けた穴から逃亡しようとしてるわ!』
「げぇ、マジか…」
迎撃側のリーダー、儀房は高位の能力者だ。
無能力者である浜面にとっては、接触は避けたい相手だ。
「それじゃ、第2ポイントに移動するか…」
「待てよ、麦野さんに連絡はつくのか?」
バンを移動させようとした浜面に、上条が疑問をぶつける。
「あー、どうなん、フレンダ?」
『……だめね、電波が通じてない。まぁ、麦野なら何とかすると思うけど…』
フレンダの声が尻すぼみになる。
(麦野は心配じゃないけど、勝手にバンの位置を変えたら、後でオシオキされるかも……)
フレンダの背筋を冷や汗がタラリと流れる。
『…あー、浜面、さっきの取り消しね。その場で麦野を待っててちょうだい』
「はぁ!? 能力者とやりあうのはごめんだぜ!!」
『うっさいなー、私が急いでソッチに戻るから、それまでやり過ごしててよ!!』
「あ、ゆっくりで良いぜ。敵が現れたら、俺が対処するよ」
上条が拳の感触を確かめるように、ゴンゴン、と両拳を打ち付ける。
「…できンのか? この業界、油断と慢心はすぐに命取りになるぜ」
「リーダーの資料はさっき読んだし、向こうがコッチを無視するなら突っかからねぇよ」
上条が冷静に答える。
浜面は「ふむ…」と納得するように頷くと、無線機に語りかけた。
「つーことだ、フレンダ」
『りょーかい。…麦野に良いトコ見せたいとか、そーゆーこと、考えるんじゃないわよ』
「出来ることをやるだけですよ」
上条が、リラックスした笑顔で応えた。
. - 140 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:10:14.08 ID:1LVFMyPLo
- パンッ、パンッ、パンッ……
『金庫室』の陵辱劇はまだ続いていた。
スカジャンは満足したのか、煙草を喫いながらデータの移行を監視している。
「…チッ、反応無くてツマンネーな…」
・ ・ ・
既に、2人に何度か射精されたのか、佐天の股間は出血と精液でまだらピンクに染まっている。
今は後背位でメッシュに犯されているが、身体全体が脱力していて、呼吸もひどく浅い。
「………うっ!」
程なく、短く呻いたメッシュが何度目かの射精をする。
佐天は声1つ上げない。
「おーい、満足したなら、そろそろ引き揚げの準備しようや」
「ふぅ… そうだな、『体晶』を金庫から出しとくか……」
そう言って、メッシュが何気なく視線を金庫に向ける。
すると、その横顔が眩い光に照らされた。
「…………あ?」
光の方へ向くと、壁の一箇所が同心円状に発行し、白熱があっという間に進んだと思ったら…
ドガァァ!!
メッシュの見つめる壁が一瞬で崩壊し、その先から一条の光線が光速で飛来し、
ズァ…!
メッシュの頭部が、一瞬で蒸発して消えた。
. - 141 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:10:55.87 ID:1LVFMyPLo
- 「な、な、何だッ!?」
相棒が一瞬にして物言わぬ肉槐に姿を変え、スカジャンは狼狽して光線の大本を凝視した。
「…ん、ようやく目的地に到着したかな?」
綺麗に丸く穴の空いた壁から、ひどく場違いにのんびりした声が聞こえ、果たして、麦野沈利がその端正な顔を見せる。
「あー、誰かに当たってたか… 『体晶』も消し飛んでないでしょうねー」
麦野はメッシュやスカジャン、それに佐天の姿を視界に入れてはいるが、
『金庫室』の惨劇などお構い無しにキョロキョロと周囲を観察した。
「お、あの金庫か、情報通りね。さて、頂いていきましょう……」
その、完全にスカジャンを無視した言動が、怒りの導火線に火をつける。
「舐めやがってッ!!」
部屋に隠していたサバイバルナイフを手に取ると、スカジャンはいまだ自分を無視する麦野に突っかかった。
「死ねぇぇ!!」
ナイフの切っ先を麦野の顔面に突き出す。
万人が身構えそうなその突撃に、しかし、麦野は全く慌てるそぶりを見せずに、ただ、うるさそうに掌をナイフに向けた。
ポワ…ッ
麦野の掌が淡く発光する。
「……………ッ!!」
最早勢いを殺せないスカジャンは、そのまま麦野の掌目掛けてナイフを突き出し…
ナイフもろとも、片手が前腕まで消失した。
. - 142 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:11:32.26 ID:1LVFMyPLo
- 「………へ?」
スカジャンが、己の消えた四肢を不思議そうに見つめる。
そこにあったはずの片手は消え去り、白い前腕骨と、沸騰して湯気を立ててる太い血管が見える。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
痛みが一拍遅れでやって来て、スカジャンが悲痛な叫び声を上げる。
麦野が『原子崩し』を掌に展開し、スカジャンの攻撃を受けたのだ。
例えるなら、数千度の溶鉱炉に素手をつっこんだようなものだ。
「ああ、うるさい」
ズァ…ッ!
麦野が軽く手を振ると、『原子崩し』がスカジャンの頭部から胸部までを貫き、スカジャンは絶命した。
「やれやら… これだからやっすい仕事は… ん? この娘は何かしら?」
その時点で初めて気付いたのか、麦野が虫の息の佐天を発見する。
「あーらら、輪姦されちゃったのか… ん~……」
突入前に読んだ資料を思い返す。
(確か、企業側が用意した囮が居たわね… それがこの娘か…)
金庫の扉を『原子崩し』で焼き切り、中にあった『体晶』を確保すると、麦野はしばらく思案に暮れた。
「ほっといてもいーんだけど……」
なんとなく、なんとなくだが、そうすると上条に嫌われるような気がする。
そういう思考に至ったことを不快に思いながらも、麦野は佐天を強引に担ぎ上げた……
. - 143 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:12:01.92 ID:1LVFMyPLo
- 「クソッ、クソッ、クソッ!!」
廃工場の中を1人で走りながら、儀房秀隆が何度も毒づく。
迎撃に出て、侵入者が『本社』である『コスモ・シリンダー』の私兵だと気付いた。
自分達が切り捨てられたことを知った儀房は、逃走ルートに指定した6番通路に向かうこともできず、絶対絶命の窮地にあった。
「データや『体晶』は諦めるしかないのか…ッ」
今から『金庫室』に戻るのは自殺行為だ。
部屋に残した2人が上手く逃走していてくれるのを強く願うが、合流するための手段が残されていない。
「ちくしょう… なんなんだよ、この大穴は…ッ!?」
儀房が、麦野が侵入するときに空けた『原子崩し』の照射後を忌々しげに見つめる。
記憶が確かなら、この大穴の先は『金庫室』に繋がっているはずだ…
「…誰かが強引に『金庫室』に侵入した。しかも、こんな大穴をいくつも空けるヤバイ奴だ… 接敵はできねぇ…」
素早く思考し、決断を下す。
「…外部から侵入したのなら、この大穴は外に繋がっているはずだ。そこには、侵入者の足があるかもしれん」
儀房は賭けに出ることにした。
この穴の先に脱出手段があることを信じて、大穴を潜る。
「…あの娘は無事だろうか」
『金庫室』に残してきた佐天を、この工場内でただ1人、儀房は心配した。
. - 144 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:13:06.97 ID:1LVFMyPLo
- 果たして、儀房は敷地の外で、あからさまに改造されたバンを発見する。
「…十分だな」
周囲の環境を確認し、バンにゆっくりと近づく。
バンの運転席には人の姿は無い。
すると、後部座席のドアが空いて、ツンツン頭の男子学生が降りてきた。
相手の姿が分かるまで近づくと、ツンツン頭が声を掛けた。
「何か用スか?」
きさくな口調だが、儀房はそんな芝居に付き合うつもりはなかった。
「誰かは知らんが、そのクルマは頂くぜ」
会話に乗ってきてくれず、ツンツン頭――上条は密かに全身を脱力させる。
「…だいぶ能力使ってるみたいだじゃねーか。こっちは無視して、とっとと逃げたら?」
「ああ、そのクルマを頂いてからなッ!!」
瞬間。儀房が己の「自分だけの現実」を展開する。
目標は、懐に隠し持ったペットボトル。
彼がソレを地面に滑り落とすと、地面に当たる瞬間、
中の水が弾けた――ッ!!
. - 145 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:13:33.17 ID:1LVFMyPLo
- 「おっとッ!!」
はじけた水の一部は高速で上条に飛来し、上条が慌てて避ける。
「水系は、マジで便利だよな……」
資料に書いてあった儀房の能力名は『純変粘水(スターチシロップ)』。
その効果は、範囲内の水塊を固体・液体・気体のいずれにも属さない粘体へと変え、自由に操るものだ。
水操作系としては比較的ポピュラーな能力だが、儀房の能力の真髄はその粘水の汎用性だ。
固くして殴ればちょっとしたハンマーとなり、あるいは、相手の顔に貼りつかせれば容易に剥がれず、相手は窒息する。
張り付きは左手の『幻想殺し』で解除できるが、水のハンマーで殴られるのはまずい。
さらにこちらは徒手空拳だ。近づかないことには話にならない。
だから、上条は儀房に向かって猛然とダッシュした。
「……ッ?」
不審に思いながらも、儀房が水槐のハンマーを上条に叩きつける。
ドコォ!!
水槐を左側に受けた上条が、横に吹っ飛んで倒れる。
「………驚かせやがって」
あまりにあっけなく決着がついたことを怪訝に思いながら、儀房はバンに近づこうとする。
倒れた上条との距離が最小となった瞬間、
「………!!」
上条が跳ねるように立ち上がって儀房に右手で殴りかかった。
「……アホかッ!!」
しかし、それを完全に予想していた儀房が、水をまとわりつかせた腕でパンチをガードする。
「あら…?」
「そんなバレバレな『死んだフリ』に騙されるわけねーだろ!!」
儀房が腕を振る。
手から伸びた水がフレイルのように変則的な動きを見せ、上条の身体に激突する。
「ぐぅ…」
「大人しく気絶しとけ!」
窒息目当てに上条の顔に水槐を貼り付かせる。
「ごぼぉッ!!」
呼吸を止められ、上条が再び地面に転がる。
暫く観察して、上条が向かってこないことを確認してから、儀房が改めてバンに目を向けた。
その瞬間――、
ピカッ!!
「うぉ!!」
バンのハイビームが突然煌き、儀房の網膜を光に染めた。
運転席に隠れていた浜面の操作だ。
視界を急に奪われて、思わず身体をくの字に折った儀房に…
「おおッ!!」
左手で張り付いた水を解除した上条が、高速のワン・ツーを叩き込む。
左手のジャブが側頭部を、右手のストレートが正確に顎の先を捉えて、儀房の脳が激しく揺らされる。
「あ、が……」
脳幹からの信号が一時的に遮断され、儀房が失神する。
多少、鼻から水が入ったのか、激しく咳き込んだあと、上条は「ふぅ…」と大きくため息をついた。
. - 146 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:14:07.89 ID:1LVFMyPLo
- 「おぉ、なかなかやるじゃ~ん!」
浜面と2人で儀房を縛り上げていると(当然、隠し持っていたペットボトルは全部回収している)、離脱に成功したフレンダが小走りに走り寄ってきた。
「ソイツ、『上』に引き渡せばボーナス貰えるかもよ」
「お、マジ? いやぁ、上条サマサマだな!」
浜面が嬉しそうに言う。
「いやぁ… 浜面さんが上手く協力してくれたからですよ」
実際、上条としてはかなりの綱渡りだった。
ハイビームのタイミングが早くても遅くても、儀房の隙はつけなかっただろう。
「あとは麦野さんだけか…」
上条が、麦野が消えた方角を見る。
「向こうから連絡は?」
「結局、無し。表の戦闘も終わったッぽいし、そろそろ引き揚げたい所だけど…」
その時、縛られている儀房がわずかに身じろぎし、目を醒ました。
「……うぅ」
「あ、起きた? 能力使わないでよ。使った瞬間、コイツを爆発させるから」
フレンダが儀房の耳の穴に粘土状の物体をねじ込む。
小さな起爆発信機がついたそれは、フレンダお手製のプラスチック爆弾だ。
「結局、アンタは負けた訳よ。大人しくしててね」
ニヤリとフレンダが笑う。
儀房は何も言わない。
何も言わず、とある行動に集中した。
. - 147 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:14:50.96 ID:1LVFMyPLo
- (…使うか)
訓練によって調節された内外尿道括約筋を弛緩させ、少量の尿を気付かれず排泄する。
排泄された尿をコントロールし、自分のヘソの穴に仕込んだとある粉末を吸収させる。
慎重に尿を口元まで移動させ、粉末が混じった尿を、儀房は躊躇わず飲み込んだ。
「………ッ!! なに飲んだテメェ!!」
儀房の嚥下に気付いた浜面が慌てて儀房の喉を押さえようとする。
しかし、それよりも早く、儀房が能力を解放する。
ドゴォォォォォン!!
まるで爆発の衝撃波を食らったように、上条、浜面、フレンダの三人が吹っ飛ばされる。
「…な、なんだッ!?」
苦痛に顔を歪めて上条が立ち上がると、いかなる手段か、拘束していた縄を切断した儀房も、ゆらり、と立ち上がっていた。
「おおおおオオオオッッッッ!!」
ヒトのものとは思えない咆哮が、儀房の口から漏れる。
野生的な戦慄を得た上条が、仲間の無事を確認するために声を上げる。
「浜面さん、フレンダさんッ!!」
「つ~~、俺は大丈夫だ!」
「アタシも!! くっそ~、多分、『体晶』を飲みやがったんだ!!」
フレンダの発言に一応得心する。
とすれば、今の衝撃波は能力の応用なのだろう。
「周囲の水分を操って、放射線状に弾けさせた…?」
頭を捻るだけ捻って、一応の結論を得る。
だとしたら、不用意に近づくのは危険だ。
「うわ~、結局、これってピンチな訳!?」
フレンダが毒づく。爆発させないことを見ると、プラスチック爆弾も解除されたのだろう。
「ああああああアアアアアッ!!!!」
再び儀房が叫び、大気中の水分が一瞬で集まり、散弾のように弾ける!!
「……ぐぉ!」
上条とフレンダは、距離もあり何とか避けたが、浜面がダメージを食らう。
「浜面ぁ!!」
「クソッ!! おい、上条!! 当たると痛ぇぞ!!」
「そんなの分かってますよ!!」
上条が歯軋りする。
左手で散弾をキャンセルしようにも、範囲が広すぎる。
(どうするッ! どうするッ!?)
必死に頭を働かせていると、
「…結局、新人にばっかり頼ってちゃいけない訳よ!」
フレンダが動いた。
. - 148 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:15:30.74 ID:1LVFMyPLo
- フレンダ・セイヴェルンは『アイテム』内唯一のレベル3(強能力者)だ。
その能力名は『取り寄せ(アポーツ)』。
範囲限定・重量限定・大きさ限定・よく知っているモノ限定、と様々な制約があるが、効果範囲の物品を掌に瞬間的に『取り寄せ』ることが出来る。
(相手は『体晶』で強化したといっても、結局は『水使い』ッ! だったら、いくらでも打つ手は有るって訳よッ!!)
フレンダが意識を集中し、『自分だけの現実』を現出させる。
掌に取り寄せたものは、上条が台所でよく見るものだった。
「は… 小麦粉…?」
「どりゃ!!」
フレンダが取り寄せた小麦粉の袋を投擲する。
それは空中で飛散し、儀房の周囲を白く染める。
「まだまだァ!!」
恐らく、儀房の対策にと、バンに大量に溜め込んでいたのだろう。
次々と小麦粉の袋を取り寄せて儀房に投げつける。
「ぐぐぐぐグググッ!! この、アマッ!!」
暴走した意識の中で、儀房が歯軋りする。
今の彼の演算力では、液体であれば何でも操る自信がある。
それが大気中に微細にしか存在しない水分でもだ。
しかし、これだけの小麦粉が大気中に飛散すると、それがすべてチャフとなり、演算力が追いつかない。
「ぃぃぃぃよっしゃぁ!!!」
フレンダがガッツポーズを取る横で、上条が身を低くして走る。
「フレンダさんナイスッ!!」
「おおオオッ!!」
小麦粉粉まみれになった儀房が、それでも大気中の水分を操ろうと集中する。
しかし、それよりも速く、上条が高速のステップインで距離を詰める。
「今度は痛ぇぞ!!」
ダッキングからの体幹の戻しを利用して、左ショートフックを儀房の肝臓に叩き込む。
とんでもない激痛が走ると同時に、次は右のショートアッパーが鳩尾に突き刺さる。
「か… はっ!!」
悶絶し、儀房がさらに身体を折ると、
「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
地面スレスレを上条の拳がかすり、そのまま天頂方向に軌道を変えたアッパーが儀房の顎を打ち貫いた…ッ!!
儀房の身体が宙を舞い、背中からバタリと倒れる。
「…終わった、よね?」
緊張が解けたのか、ガッツポーズのまま固まっていたフレンダが、脱力して、へなへな、とその場に崩れ落ちた。
. - 149 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:16:03.53 ID:1LVFMyPLo
- 「ん~、頑張ったみたいね。うむうむ、大儀であった」
麦野がバンに帰還すると、どっと疲れた表情の3人が出迎えた。
儀房は協力な睡眠薬で眠らせてある。
「あ、一番の殊勲はアタシだかんね。麦野ぉ、ギャラの増額ヨロシク♪」
「アンタは… まぁ、ボーナスは申請しといてあげる」
「やったー!! …で、麦野の『お土産』はなんなの?」
フレンダが、いまだ意識の戻らない半裸の佐天を指差して言う。
男2人が、どう扱っていいか分からずにあたふたしている。
「アタシのマンションに滝壺と絹旗を呼んでちょうだい。
とりあえずは、2人に治療させてから考えるわ。
アンタはソコの男を『上』引き渡してちょうだい」
「うぃ、了解。なーに買おっかなー♪」
嬉しそうにフレンダが小躍りする。
それを見て苦笑した麦野が、不意に真面目な顔をして佐天を見る。
(ホント、どうしたもんかしら……?)
自分が起こした気まぐれを扱いかねて、麦野はこっそりとため息を吐く。
そして、「とりあえず、毛布を…!!」「膣洗浄とかした方がよくねッ!?」と騒いでる男の片割れを見る。
……自分が佐天を担いで現れたとき、上条は何か救われたようなホッとした表情をした。
それを、なぜだかその表情を大事にしたい、と、麦野は脈絡も無くそう思った……
. - 150 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:16:33.65 ID:1LVFMyPLo
- ――ぼんやりとした意識の中で、佐天が会話を聞く。
自分は助かったのだろうか、それとも、いまだ闇の中なのだろうか?
夏休み初日が、終わろうとしていた……
. - 151 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/22(月) 00:18:16.75 ID:1LVFMyPLo
- 以上。
むぎのんエロは次回にまわします。
それでは、またキリのいいところか来週の月曜日に投下します。
あと、二回目の安価でうえのみだと佐天さん死んでました。 - 166 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:02:26.10 ID:022wO7Y+o
シャァァァァ……
「……………ぁ」
肌を打つ熱量と、股間の刺すような疼痛に意識が覚醒する。
網膜から送られた光情報を、ようやく後頭葉が知覚すると、佐天の周囲には湯気が漂っていた。
「お、超気が付きましたか? よかったです。このまま植物人間かと、超心配しました」
佐天の正面から声がする。
ぼやける焦点を必死に合わせると、自分の股間に蹲っている栗毛色の髪が見えた。
「―――ひっ!!」
一瞬、悪夢の続きかと誤解し、慌てて身を引こうとすると、背中にとても柔らかい感触が、ぽわん、と弾んで、
「だいじょうぶ、きれいにしているところだから」
と、のんびりした声が耳元で聞こえた。
「え、えっと…」
混乱した頭で周囲の状況を確認する。
むっとする湿気を帯びた小部屋に、自分を含めた裸の女性が3人。
「おふろ…?」
「はい。医療用ビデを使っての膣洗浄は超終了しましたので、次はお尻の穴です。
少々裂けてますので、滲みると思いますが、超我慢してください」
声と共に、自分の肛門に生暖かい液体が掛けられる。
「……痛ッ!!」
宣言された通り、滲みるような痛みがあって、佐天が呻く。
すると、背後の女性が、佐天が動かないように優しく抱きしめた。
背中の感触で分かるかなり大きなおっぱいが肌に潰れて気持ち良い。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ… 綺麗にした後はお薬塗るからね?」
構図的には、レイプされたときとあまり変わらない状況だが、穏やかな口調と、温かいお肌の触れあいが佐天の緊張をとく。
「酷いことを……」
肛門を洗浄する栗毛の少女――絹旗がポツリと漏らす。
「けっこう強い薬を使ってはいますが、しばらくはトイレが地獄になると思います。必ずウォッシュレットで洗浄するのを忘れないで下さい」
絹旗の言葉に、自分が何をされたのかを改めて思い出す。
「ひっく… ひっく…!」
あの時の恐怖が想起され、佐天の瞳から涙がこぼれる。
「よしよし、怖かったね……」
背後から抱きついた少女――滝壺理后が、優しく佐天の頭を撫ぜた。
.- 167 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:03:09.45 ID:022wO7Y+o
- 「…済んだ?」
24畳はあるだだっ広いLDK。
その中央のソファに座った麦野が、バスルームから出てきた3人に声を掛けた。
「はい、治療は超終わりました。けど、明日、きちんと医者に見せたほうがいいですね」
「それはその娘の判断ね」
場所は麦野の高級マンション。
この場に居るのは、家主の麦野、佐天の治療のために呼び出された絹旗と滝壺、治療を受けた佐天、それと、強制的にこのマンションに引っ越した上条。
さらに、「帰れ」と言われたのに、やや強引に上がりこんだ浜面の6人だ。
「…グスッ、あ、ありがとう、ございます… グス… グス…」
まだまだ、泣き止みそうにない佐天が、しかし、頑張ってお礼を言う。
治療した2人に、自分を助けた恩人が、このきつい目の美人だと教えられていたからだ。
しかし、麦野の反応は冷淡だった。
「別に… たんなる気まぐれだし……」
麦野の言葉に、佐天の背筋が、ビクッ、と伸びる。
「おいおい、麦野よぉ…」
浜面が軽く抗議しようとするが、麦野に冷たい目を向けられて、しゃべる姿勢のまま固まる。
「つーか、テメェなんで居るんだよ? 帰れつっただろ?」
「いや… その娘が心配だったし…」
「はぁ? 輪姦された後に、男に心配されてもうれしくねーだろ? 下心アリアリの癖にうぜぇ…」
麦野の台詞に、佐天が思わず浜面から距離を取る。
「あっ!! いやいや、マジでそんなこと考えてないから! 誤解だから!!」
浜面が慌てて否定する。
と同時に、なんでこの女は、いきなりこうも不機嫌なのだろうか、と考える。
(現場から撤収するときは機嫌良かったよなぁ… あの娘がバスルームに消えて、『上』に事後処理の報告を受けてからか…)
『仕事』の後始末などの連絡を受けるのは、いつもリーダーである麦野の役割だ。
共有が必要な情報だったら教えてくれたりもするが、基本、麦野はあまり『上』からの報告を語らない。
(何か、癇に障ることをいわれたのか、な…?)
冷や汗だらだらでそう思い、近くに居る上条に目線でヘルプを送る。
上条も、今日一日で親しくなった浜面をフォローしたいが、不機嫌な麦野を見るのは慣れていないため、どうにも躊躇ってしまう。
いやーな雰囲気が流れて、お互いが気まずそうに顔を見合わせていると、
麦野が突然頭を、ガシガシ、と乱暴に掻いて言った。
「……シャワー浴びてくる。滝壺と絹旗、悪いけど、その娘の面倒、最後まで見てやって。アタシは…無理」
それだけ言い残して、麦野沈利はバスルームに消えた。
「……はぁ、麦野は、超拾ってきた猫の育成を母親に任せるタイプですね」
「それだけやさしいんだよ」
ここに居る誰よりも麦野との付き合いが長い2人には、麦野の心情がある程度分かるようだった。
滝壺が、「とりあえず、すわろ?」と佐天を促し、絹旗が「キッチン、超勝手に使いますよ」とキッチンをあさり始めた。
. - 168 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:05:34.78 ID:022wO7Y+o
- 「『体晶』で能力発現ですか… 超申し訳ありませんが、それは完全に詐欺ですね」
「そうなん、ですか…」
絹旗が作ってくれたホットミルクを啜りながら、佐天は、ほぅ、と溜息を吐いた。
「そうだね… それに、あれは無闇に使うものじゃないよ…」
滝壺がやけに重い口調で言う。
それもそのはずで、彼女の『能力追跡(AIMストーカー)』は、『体晶』による能力増幅が前提条件となる能力だ。
そのため、稀にでは有るが、確実に『体晶』を使用するケースがあり、『体晶』のデメリットも熟知している。
「使った後は、丸一日ふらふらするし、熱出るし、良い事ないよ」
「まぁ、ああいう滝壺は見たくねぇな。痛々しくてよ」
佐天から一番離れた席に座った浜面が言う。
…あそこまで麦野に言われたのに、それでも帰らない浜面を、上条はすごいと思った。
「…半分は詐欺だと思っていました。けど、少しでも可能性があるならって…」
「すべて他人任せの可能性なんて、超失敗するに決まってますよ」
言い訳めいた佐天の思考に、絹旗が釘を打つ。
「…はい、迷惑をかけてすいません」
「ま、麦野もああ言ってますし、超出来る限りのフォローはします。
…『精神洗浄』とか、やる覚悟があるならツテを紹介しますよ?」
絹旗が言う『精神洗浄』とは、薬、ないしは高位能力を用いての記憶操作だ。
心的外傷や情報の忘却などに使われるもので、一般人には馴染みが薄いものだ。
もちろん、方法によっては後遺症も存在する。
「えと、えっと……」
佐天の瞳が迷うように揺れる。
そして、その頚が縦に振られようとしたとき、滝壺の制止が入った。
「だめ、忘れちゃだめ」
柔らかく、しかし有無を言わせぬ言葉だった。
絹旗が軽く肩をすくめ、浜面が静かに頷いた。
「まぁ、そうだな… 俺も忘れないほうがいいと思うぜ。失敗は投げ出したり忘れたりするもんじゃねぇ、向き合うもんだ」
重々しく言う、が、芝居臭い。
「くさっ! 滝壺がいるからって、背伸びしすぎです…」
絹旗が鼻をつまんで顔の前で、ぱたぱた、と手を振る。
「あ、強引に残っているって、そーゆー…」
「ば、ばか、ちっげーよ!!」
上条が得心したように手を打ち、浜面が慌てて否定する。
「しかも、彼女を心配するフリしてダシに使っています。超最低ヤローです」
「むぅ… これは上条さんもフォローできねぇ…」
絹旗がさらに追い討ちをかけ、上条もそれに同調する。
「お、お前ら…」
狼狽し、しかし、なんとか笑顔だけは崩さないまま、浜面が、ちらちら、と滝壺を見る。
彼女は、にこにことした笑顔を崩さずに言った。
「だいじょうぶ。最低ヤローなはまずらも応援している」
「いや、応援しないでくれ…」
がっくりとうなだれる浜面。
それを見て、佐天の顔にようやく微かな笑みが浮かぶ。
「ふふ…」
それを見た絹旗と上条が目線を交わし、そっと溜息を吐いた。
. - 169 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:07:18.27 ID:022wO7Y+o
- 「…まだ居るし」
ほどなくして、タオルで頭にターバンを巻いた、バスローブ姿の麦野が現れた。
(うーん、すごい… 美女ってこういう人を言うんだろうなぁ…)
その余りにもの『らしさ』に、佐天が素直に感嘆する。
同級の中では、発育は良い方だと思っているが、これから、どう成長してもこの雰囲気を出せるとは思わない。
「あー、それじゃ、俺はそろそろ…」
「ねぇ、むぎの。今日は泊まっていっていいでしょ?」
流石にこれ以上は無理だと判断した浜面が腰を浮かせるが、それに被せるように滝壺が言った。
「え?」
「ね、ここのソファで寝るから」
滝壺の提案に、麦野がげんなりとした顔を作る。
ほぼ、麦野沈利の意思で動く『アイテム』だが、唯一、麦野に意見を言えるのが滝壺だ。
滅多に自己主張をすることはないが、だからか、たまに言う意見は中々曲げることはない。
「…勝手にしなさい。アタシはもう寝るから、騒がないでよ」
本当に興味がなさそうに麦野は言って、自分の部屋のドアを開けた。
そして、上条を、ジロリ、と睨むと、人差し指を手前に、クイクイ、と曲げて「上条クンはこっち」と言う。
「あ、はい……」
半ば予想はしていたが、流石にこの人数の前での指名は恥ずかしくて、なるべく他の顔を見ないようにして麦野に駆け寄る。
「あの、俺… うわっ!」
何か言いかけた上条を、突き飛ばすようにして部屋に放り込む。
微妙な顔をした面々をチラリと見ると、麦野は一言「おやすみ」と言って、ドアを閉めた。
「……ま、あとは超哀れな彼氏に任せましょう。っていうか、滝壺は何を持ってきたんですか?」
嘆息する絹旗が滝壺を見ると、彼女はかなり大きなリュックをがさごそと漁っていた。
「えへへ、じゃ~ん、みんなでやろうとおもってたんだ」
滝壺が取り出したのは、一昔前――ただし、学園都市の外ではまだギリ現役――の家庭用ゲーム機だ。
「あー、そういえば、この前、第7学区で買ってましたね…」
「人数がそろうチャンスをまってたの」
「うわー、懐かしいです……」
興味がある風の女性3人に混じって、1人浜面はあぶら汗を流す。
(えっと… 多分、ドアの向こうじゃ麦野が上条とヨロシクやってて、俺はここでかわいい女の子3人と朝までゲーム…!?)
「はまづらもやるよね?」
好きな女の子の可愛い笑顔。
これは楽園なのだろうか、それともハニートラップの入り口なのだろうか。
どこまで理性が持つのか分からないまま、浜面は性欲との戦いを決意した……
. - 170 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:09:08.87 ID:022wO7Y+o
- 部屋に入るなり、麦野はベッドに腰掛けると、枕元のサイドボードから小さなポーチを取って上条に投げ渡した。
「おっと…!」
上条がポーチをキャッチして怪訝そうな顔をすると、麦野は長いおみ足を上条に向けた。
「ペディキュア剥がして、ネイルケアしてちょうだい」
麦野の言葉に上条は戦慄する。
当然、女性の爪のケアのやり方など知らない。
「えーっと…」
「心配しなくても、そのポーチに道具一式とやり方書いたメモがあるから。…丁寧にやりなさいよ」
そう言われて、ポーチの中身を物色すると、様々な化粧道具と、雑誌の切り抜きが丁寧にスクラップされた小さくて可愛いノートが出てきた。
その、あまりにも女の子なノートを見て、麦野沈利にもこんな側面があるのだと感心する。
(鼻歌を歌いながら、ファッション雑誌のスクラップを作る麦野さん… うん、アリだな、アリ)
「なにニヤケてんのよ、早くしなさい」
そう言うと、麦野は、ドサッ、と上体をベッドに倒す。
ベッドに仰向けになって、足だけ投げ出した格好だ。
麦野に急かされて、上条は慌てて麦野の足を持ち上げた。
ノートの1ページ目を凝視して、恐る恐る『non acetone』と書かれた除光液を取り出す。
「あ… 下準備がいるのか……」
除光液のキャップを開ける前に、麦野の足指の間にスポンジを挟み込む。
(うーん… なぜだか知らんが興奮するな……)
麦野の足はひと目で分かるほど形が良く、――変態的だと思うが――思わず舐め回したい衝動を覚える。
「除光液をティッシュに浸み込ませて……」
恐る恐る、鮮やかオレンジに染まった爪にティッシュを当てる。
しばらく時間を置いてティッシュをずらすと、気持ち良いくらいにペディキュアが剥がれた。
「お…!」
やってみると意外と楽しい。
コツを掴んだ上条は、ただし極めて慎重に、残りの爪のペディキュアも一気に剥がす。
「次は、えーと、爪磨きか……」
ぺらぺらしたプラスティックの研磨シートをつまみ、『コレを参考に磨く!!』とメモ書きされた写真を横目に、一心不乱に麦野の爪を磨く。
こしこしこしこしこし……
しばらく静かな時間が流れる……
麦野は、天井を仰ぎ見たまま何も言わない。
上条も、沈黙の雰囲気を感じ取り、何も言わない。
. - 171 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:13:11.97 ID:022wO7Y+o
- 不意に、麦野が言葉を作った。
「………ねぇ、上条クン?」
「………はい?」
手の動きを休めず上条が答える。
「あの娘、可哀想だと思う?」
「それは…………」
上条が言葉を選んでいると、麦野が上体を、むくり、と起こす。
その拍子に、バスローブの袷が開いておおきなおっぱいがこぼれたが、麦野は隠そうともしない。
「おべっか使わなくていいから、素直に答えて。上条クンの本音が聞きたいの」
真剣な目で言う。
「そりゃ… そうスね…… やっぱり、可哀想だと思います。無能力者の劣等感って、クラスメイト見てりゃこっちも感じますし。
自業自得かもしれないけど、初体験がレイプだなんて、許せないです」
麦野の目をみてしっかりと言う。
「そう、そうよね…」
予想通りだが期待はずれ、そんな雰囲気ありありで麦野が口を尖らせる。
「麦野さんは、そうは思わないんですか?」
上条が踏み込んで問う。麦野は聞かれたがっている。そう感じたからだ。
「………………………」
麦野が顔を不機嫌にしかめる。しかし、その不快感は上条に向けられたものではなかった。
「……この学園都市において、無能力者(レベル0)であることがどんなに幸せなことか、あの娘はそれが分かってないのよ」
独白するように、麦野沈利が一気に言う。
「どういう、ことですか?」
麦野の言葉の意味が分からない。
この学園都市では、レベルは学生のヒエラルキーそのものだ。
それなのに、頂点に立つ超能力者(レベル5)である麦野がそんなことを言うのはおかしいと思った。
しかし、麦野は上条の質問には答えず、逆に上条に聞き返した。
「上条クンは、どうして自分の能力を秘密にしていたの?」
「えっ? ああ、いや、大した理由じゃないんですけど……」
上条の脳裏に、優しい目をした老教師の顔が思い浮かぶ。
「…俺は中学のときのシステムスキャンで無能力者(レベル0)だということが分かったんですけど、ひょんなことからこの『幻想殺し』があることを知りました」
じっと、自分の左手を見つめて言う。
「そん時は、嬉しくて… で、まず最初に一番親しい友達、そして、担任の先生に報告したんです」
その教師は、定年をはるかに過ぎて、なお教壇に立っていた老教師だった。
しかし、その教師は喜ばなかった。それどころか、これまで見せたこともない、鬼の様な形相でこう言った。
『上条くん、この能力のことは、誰にも言ってはいけない。
君は、最後まで無能力者を装ってこの実験都市を出て行きなさい…!』
この言葉は忘れることができない。
普段は温厚な老教師が見せる鬼の形相に、幼い上条は、自分がとんでもない能力を宿していることを知った。
「……そっか、良い先生に出会えたわね」
「はい… でも、なんで秘密にするように言われたのかはさっぱりで…」
「わからないの?」
麦野にそう言われ、上条は必死に頭を捻る。
捻って捻って捻りまくって、しかし、マンガのような理由しか思い浮かばない。
「か、解剖されちゃうとか…?」
ハハ、と引きつった笑いを浮かべて言う。
冗談のつもりだが、麦野に通じなかったらどうしよう、と上条が冷や汗を流す。だが、
「なんだ、わかってるんじゃん」
予想外の回答がきた。 - 172 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:14:21.21 ID:022wO7Y+o
- 「へ…?」
「その先生は、この学園都市の闇を少なからず知っていたんでしょうね…
いえ、『実験都市』なんて言い方するくらいだから、相当深いところまで知っていたのかもしれないわ」
呆然とする上条を尻目に、麦野が言葉をつなげる。
「あらゆる能力をキャンセルする能力だなんて、どんな系統にも属さない、オンリーワンでミラクルな能力よ。
…研究者が知ったら、涎どころか、精液垂れ流すんじゃないかしら」
麦野の下品な表現で上条が我にかえる。
「じゃ、じゃあ、先生がああ言ったのは…!」
「非人道的な研究から、キミを守るためでしょうね…」
そう言って、麦野が心に微妙な感情を作る。
(そうやって、いろんな人が守ってきた子を、私が拐かしたわけか…)
彼女としては本当に珍しいことに、麦野沈利は少しだけ自分の行動を悔やんだ。
「上条クン… 貴方が考えている以上に、この学園都市の闇は深くて、濃いの。
外より10年以上進んだ科学を、『ノーリスク』で享受できることが、幸せ以外の何だと言うの?」
麦野が、上条の瞳を、じっ、と見て言う。
「…考えたこともなかったです」
「今からはよく考えなさい。必要になるから…」
そう言って、麦野は上条がケアした足の爪を、ためつすがめつ眺めた。
「…ン、初めてにしては上出来かな……?」
「え、そうですか? よかった……」
上条はホッと胸を撫でおろし、自然な笑顔を浮かべた。
声色から、多少は麦野の機嫌が直ったことを感じたからだ。
そんな上条の仕草を見て、麦野は複雑な感情のうねりを感じる。
(…贖罪? それとも、彼に媚でも売ってるのかしら…?)
彼女の機嫌が突然悪くなった理由。
それは、『上』から儀房の処理が完了したと報告を受けたからだ。 .・ .・ .・
そして、『上』が通達した儀房の末路は、元鞘の『コスモ・シリンダー』研究部預かりになる、というものだった。
(一生、研究者の実験動物になるのか… それとも……)
そこまで考えて、麦野沈利は思考を止めた。
そして、このことは決して上条には言わないと決めた。
(…人殺しはさせないって、約束したからね)
どうして自分でもそんな約束を守ろうとしているのか……
麦野沈利は、分かっていることを分からないことにすると、はだけたバスローブを脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿になった。 - 173 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:14:48.83 ID:022wO7Y+o
- 「あ、麦野さん……!」
期待と興奮で声が上擦る。
隣の部屋には、浜面はじめ4人の男女がいるが、この裸体を見たら、羞恥など吹き飛んでしまう。
「今日は疲れているし、昼間にたっぷりサービスしてあげたから、今夜は全受けでいくわ。
アタシが満足できるように、頑張ってリードしてね」
そう言うと、今度は両足そろえてベッドに仰向けに寝そべる。
形の良いおっぱいが、重力に逆らって天を突く。
「…わかりました、頑張りますッ」
上条とて、リードされっぱなしは男として嫌なものだ。
リードした経験など全く無いが、男子学生の嗜みとして読み漁った各種参考書――つまりはエロ本――の内容を真剣に思い出す
(まずは、Aからだよな…)
昨夜のセックスで、麦野がキス魔であることは何となく理解していた。
上条は、「麦野さん、キスします…」と声を掛けると、静かに目を閉じた麦野と口唇をあわせた。
柔らかい… 昨夜は興奮しすぎて感じられなかった口唇の感触に、上条の鼓動が速くなる。
「ん… ちゅ… ちゅ……」
啄ばむようなキスを暫く繰り返すと、上条は舌を麦野に這わせながら、ゆっくりと頭を下げていった。
程なく、目標地点である豊乳の先端に到達する。
「……私のおっぱい、好きなの?」
わずかに潤んだ瞳で麦野が言う。
上条はそれには答えず、麦野のおっぱいにむしゃぶりついた。
「あン… あぁ…!」
敏感な乳首に吸い付かれ、麦野がたまらず息を吐く。
その反応に手ごたえを感じた上条が、さらに乳首を舌で嬲る。
じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……!
舐め続けていると、乳首がわずかに勃起したのが分かる。
(麦野さん、感じてるんだ……!)
軽い感動が上条の心に生まれ、ペッティングにますますのめり込んで行く。
片方の乳首を舌で転がしながら、もう片方の乳首を手で愛撫する。
固くしこった乳首を、指で挟んで弄ると、麦野の身体が小さく震えた。
「はぁん… くぅ…」
何かを堪えるように麦野が呻く。
口での愛撫をそのままに、手でおっぱいを鷲掴みにして掌で乳首を、ゴリッ、と刺激する。
「…ンッ!!」
麦野の身体が明らかに跳ねる。
(激しいのが好きなのかな…?)
試しに、口に含んだ乳首を上下の歯で捉えて、コリコリ、と甘噛みをしてみる。
「あん! そこぉ……」
効果は劇的だった。
麦野は、もう離さない、といった風に上条の後頭を両手で押さえる。
頭を拘束された上条は、それならいっそ、と一心不乱に乳首を責める。
じゅぷ、カリ、コリ…!
全身から麦野の鼓動を感じる。
十分に麦野が昂ぶったと感じた上条は、唯一フリーな片手をそっと麦野の股間に回す。
「……ン」
太ももを遠慮がちに撫ぜると、麦野はその行動を待っていたかのように股を開いた。
女性器の形状を必死に思いだして手で探ると、柔らかい陰毛の先に複雑な器官に触れ、
ぐちゅり…
麦野沈利が濡れていることを知った。 - 174 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:15:14.30 ID:022wO7Y+o
- 濡れた性器を指で弄り回す。
偶然、指が敏感なクリトリスを爪弾いて、麦野の身体が跳ねる。
「あッ… そこは優しく扱ってちょうだい……」
滅多に聞けない麦野の懇願。
そこに支配する喜びを感じた上条が、やや乱暴にクリトリスを指で押し潰す。
「きゃん!! もぅ、駄目じゃない……」
口ではそう言っていても、麦野は抵抗する素振りを見せない。
それを無言のメッセージだと感じた上条は、中指で膣口を探り、そのまま、ずぶずぶ、と指を根元まで押し込んだ…!
「はぁぁぁぁぁ…!」
努力呼気を全開にして麦野が悦楽の声を上げる。
ここが勝負どころだと感じた上条は、膣に埋まった中指を引っ掻くように動かし、親指でクリトリス押し潰す。
さらに、両の乳首も口と指で刺激を加え続ける。
「ああッ!! それ、駄目ぇ!! おかしくなるッ!!」
予想外な4点責めに、麦野の快楽のメーターが一気に振り切れる。
「ひぃ! あっ、あっ、あっ… あぁぁぁぁぁ!!!!」
頭を掴んでいた両手をベッドに叩きつけ、シーツを滅茶苦茶に掻き毟る。
おとがいが限界まで反り上がる。
「イク… イクぅ……ッ!!」
一瞬、ブルリ、と大きく身体を震わせ、おこりに掛かったように身体を突っ張らせた後、麦野は糸が切れたように脱力した。
「……っ、は~~…」
全力の愛撫で疲労した上条も、ようやく一息をつく。
膣から指を引き抜くと、麦野をつぶさないようにベッドに倒れこむ。
「ふぅ… はぁ、はぁ……」
荒い息をゆっくりと整えると、はにかむような笑みを上条に見せる。
「…イカされちゃった、馬鹿ぁ」
初めて見せた麦野のその笑顔は、再び上条の身体に灯を入れるに十分な破壊力を持っていた。 - 175 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:16:07.43 ID:022wO7Y+o
- 『麦野さんッ!!』
『きゃ、もぅ… イッたばかりなんだから、最初はゆっくりね……』
ドアの向こうからやけにはっきりと声が聞こえる。
「あぅあぅ… 声が大きすぎますよ……」
ひたすらゲーム画面を凝視することに集中し、他からの情報をシャットダウンしようとするが、どうしても耳が音を拾ってしまう。
「あぁー!! そこのエリアは私の店が3軒あるのに! 絹旗、超卑怯ですッ!!」
「ふふふ、株の相乗りはいたストのきほんだよ」
絹旗と滝壺は慣れているのか、隣室の艶声などどこ吹く風でゲームに集中している。
「…あの、みなさん、平気なんですか?」
顔中を真っ赤にして佐天が呟く。
絹旗と滝壺は、「ん?」とお互いに顔を見合わせると、絹旗が諦め顔で、ぱたぱた、と手を振る。
「麦野は超アノ時の声が大きいですからねぇ… もう、超慣れっこです」
「きもちよさそうだよね、むぎの」
少女2人がなんでもないように言う。
ちなみに浜面は、
「あれは父ちゃんと母ちゃんのセックス… あれは父ちゃんと母ちゃんのセックス……!」
と念仏のように呟くことで、なんとか平静を保っている。
「てゆーか、今の段階で超ギブアップですか? これからが超凄いんですけど…」
絹旗が何気なく言った言葉に、佐天と浜面が石像と化す。
「………え、なんで?」
「だって、これから本番みたいですし、麦野、超ケモノな声を出しますよ」
ぼん!
ブレーカーが落ちたように佐天が側面に倒れこんだ。 - 176 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:17:05.87 ID:022wO7Y+o
- 「あんッ! あんッ! あんッ!! もっとッ! もっと、おまんこ突いてぇ!!」
折り畳まれた屈曲位で激しく腰を打ちつけられた麦野が吼える。
時折、お互いの陰毛が絡み合うまで深く腰を打ち込んで、情熱的なディープキスを交わす。
前戯によって充分に潤った麦野の膣からは、ペニスとの摩擦で白濁した愛液が吹き出す。
「はぁ、はぁ… うっ… 出る…ッ!!」
「いいよ! 腟内に出してッ!!」
ドクッ、ドクッ、ドクッ……
子宮口に直接ぶっ掛ける勢いで射精する。
体奥に暖かい奔流を感じ、麦野は多幸感を感じた。
「薬のんでなきゃ、絶対妊娠してるわ、これ……」
下腹部を撫ぜながら麦野が言う。
「…ゴム着けろって言われたら、ゴム着けますよ、俺?」
避妊薬が少なからず母体へ影響を及ぼすことを考え、上条が躊躇いがちに言う。
「アタシは腟内射精が好きなのよ。生ハメもね」
妖艶な笑みを浮かべて言う。
「アンタは変なこと考えないで、どばどば精液を注ぎなさい」
そう言って、麦野の膣が妖しく収縮する。
「…それじゃ、次はバックで行きます」
瞬く間に硬度を取り戻したペニスを埋め込んだまま、ゆっくりと麦野の身体を半回転させる。
「……ガンガンいってね」
麦野の言葉を合図に、手形が付くほど麦野の腰を掴んだ上条が、ガンガン腰を振り始めた。
. - 177 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:17:36.02 ID:022wO7Y+o
- 『ああ! 凄いッ!! 上条クンのおちんちんが子宮突いてるッ!! 気持ちいいッ、おまんこ融けちゃう!!』
相変わらず、リビングには丸聞こえだった。
「おーおー、今日は超特に激しいですねー。流石、我が『アイテム』が誇るビッチむぎのんです」
コントローラーをかちゃかちゃ動かしながら絹旗が言う。
「きもちよさそーだねぇ」
行為の内容を分かっているのかいないのか、滝壺が無表情にそう呟く。
「こーなると向こうが終わるまで眠れませんから、ゲームの存在は超ありがたいですね… よっしゃ、ボンビーのなすり付けに成功ッ!!」
「ぐ… きぬはた、卑怯……」
「なーにいってるんですか、超常套手段です♪ はい、次は貴女の番ですよ」
絹旗が傍らの佐天にコントローラを差し出す。
「………あ、ども」
先ほどまでは顔を真っ赤にして「うひゃあ…」とか、「すご…」とか呟いていた佐天が、妙に神妙な顔をしてコントローラを受け取る。
「……? 超どうかしましたか?
「いえ…… 本当はあんなに気持ち良いものなんですね、セックスって……」
その台詞に、絹旗と滝壺が顔を見合わせる。
「はぁ… まぁ、世間的には超そーゆーもんでしょう。しかし…」
チラッと絹旗を見る。
「私も滝壺も超処女ですから、超アレがどんだけ気持ちいいのかは、よく分かりませんけどね」
「そう、なん、ですか……」
内心の動揺を隠して佐天が言う。
自分より年下に見える絹旗はともかく、明らかに年上で、お風呂で豊満なおっぱいを堪能した滝壺が処女とは意外だった。
「……あ、ねぇねぇ、はまづら?」
その滝壺が、最早地蔵のように表情を固めた浜面に話しかけた。
「………………は、なに、滝壺……?」
殆ど唇を動かさずに、極力、滝壺を見ないように浜面が言う。
が、しかし、滝壺は強引に浜面の視界に入るように身をくねらせて近づくと、ほんのり微笑をたたえて言った。
「はまづらも、女の子を気持ちよくさせたことあるの…?」
「ぐはぁぁ!!」
血を吐くような叫び声を上げて、浜面が真横に倒れ込む。
「鬼だ… 超鬼が居ます……」
戦慄の表情で絹旗が呟く。
「はまづらどうしたの…? おなかいたいの…?」
突然倒れた浜面に慌てたのか、滝壺が心配そうに擦り寄る。
・ ・ ・ ・. ・ .・
そして、何をと勘違いしたのか、その白く華奢な手で浜面の下腹部らへんを撫ぜ始める。
「どこかな? ここ? ここが痛いの?」
「はぅぅッ!!」
ビクッ、と一瞬ひどく身体全体を痙攣させて、浜面が動かなくなった。
「あれ…? はまづらねちゃった?」
不思議そうに首をかしげた滝壺は、「お…」と何か閃いたように指を立てると、「どっこいしょ」と倒れた浜面の顔を持ち上げた。
「まくらがあった方がいいよねぇ」
とすん、と浜面の頭部を正座した自分の太ももの上に乗せる。
しかも、浜面の顔が自分の中心を向くような角度である。
「…………………………いっそ、殺せ」
天国か地獄か、夢か現か、甘い女の子の体臭に包まれた浜面が、低く呟いて全身を弛緩させた……
. - 178 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:18:17.49 ID:022wO7Y+o
- ―――翌朝。
「お世話になりました」
身支度を整えた佐天が、朝シャンを終えてラフな格好でダイニングに座る麦野に頭を下げた。
「…ン」
オレンジジュースを口につけた麦野が、視線だけで返事をする。
「今日はどうすんの?」
麦野の朝食を作っていた上条が、カウンター越しに話しかける。
「絹旗さんが口の堅いお医者さんを紹介してくれるそうで…」
取り敢えずの応急処置はしてあったが、朝起きたら股間に当てたガーゼは真っ赤だった。
それを見た絹旗が、「一度、超しっかりと医者に診てもらうべきですね」と言ったのだ。
「そっか… あんまり、気にするんじゃねぇぞ」
少し躊躇いつつも、上条の性格では言わずにはいられなかった。
しかし、佐天は意外にもさっぱりとした顔で返事をした。
「ありがとうございます。昨日のことは、犬に噛まれたとでも思うことにします」
「あ、そう、か……」
少し拍子抜けに上条が言う。
「はい。 ……お2人のおかげです」
「は?」
より具体的に言うと、麦野の嬌声のおかげだが、流石にそれを言う度胸は佐天には無い。
(初めては痛いって言うし、これからどんどん気持ちよくなっていくのかな…?)
昨日のレイプは悪夢でしかないが、セックスという行為自体には、より興味を持ってしまった。
(夏休みだし… ソッチの方向で、ちょっと背伸びしてみようかな……)
上条が作ったフレッシュサラダを、むしゃむしゃ、と食べている麦野を窺う。
「………なに?」
「いえ、本当にありがとうございました」
再び頭を下げる。
(凛としてて、エロカッコよくて、たぶん、高位の能力者で、こんな高いマンションに住んでて、可愛くて甲斐甲斐しい彼氏さんが居て……
麦野さんって、凄いんだなぁ……)
一晩明けて、麦野の印象が畏怖から憧憬に変わった気がする。
能力者としては無理でも、女性として麦野を目標にするのは、なかなかに心躍るものがあった。
(まずは素敵な彼氏作りだ…!)
佐天涙子の夏休みが始まる……
. - 179 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:19:15.09 ID:022wO7Y+o
―――――とある処女達のお化粧タイム。
「……けっきょく、昨日もはまづらは襲ってくれなかった…」
「えっ!? あれ、超誘ってるつもりだったんですかッ!?」
「わたし、がんばったのに… ぐす… わたしに魅力が足りないのかなぁ…」
「い、いや… あの状況で襲ったら、私が超殴り倒してますよ……」
「…そうなの?」
「浜面、超不憫な……」
第一話 了- 180 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:22:02.49 ID:022wO7Y+o
- はい終了。
10分後に佐天産に関する安価だすね。
あと、アニレー2期万歳。
麦野が動く姿が早くみたいぜ。 - 181 :1話ラスト ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/10/29(月) 00:34:19.23 ID:022wO7Y+o
- 誰もおらんか、まぁいいや。
佐天の相手。
1.ぶりっと
2.ゆうき
3.たすく
4.りょうと
下1 - 182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/10/29(月) 00:37:26.39 ID:V+QJZZ8Jo
- 乙
安価下 - 183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)[sage]:2012/10/29(月) 00:38:09.06 ID:0v/h750No
- 更新きたのか、乙
佐天さんがレイプされたのが悲しすぎる
安価下 - 189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県)[sage]:2012/10/29(月) 00:47:43.86 ID:022wO7Y+o
- はい、2ですね。
ユウキか、なるほど…
まぁ、出るかどうかはわかりませんけどね。
単に、佐天さんのセカンドバージンを書きたいだけなので。
それと、適当な既存キャラが居ませんので、佐天さんの相手はオリキャラです。
基本的に一穴一棒で行くつもりです。
それでは、次の日曜らへんに。 - 202 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 16:41:28.76 ID:pw17oXPGo
- あんま納得できなかったけど、まぁ書けたので今日の19時に投下予定。
ちなみに今回から第2話。
タイトルは、うーん、「恋敵」?
1話とは違って、ラブラブでエロエロな話になる予定。あくまで予定。予定は未定。
むぎのんの恋のライバルも登場するよッ!
ツンデレが可愛いあの娘だよッ!
あ、佐天さんの登場シーンは今のところ考えていません。多分、2話には出ない。
もし、登場シーンを増やして欲しかったら、↓1にむぎのんのライバルを予想して当ててください。
ではでは。 - 208 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:33:23.97 ID:pw17oXPGo
S-1 第7学区 緑化公園
「はっ、はっ、はっ、はっ…・・!!」
シン… と静まり返った真夏の早朝。
第7学区の緑化公園内には、早朝ランナーがポツリポツリ居るぐらいだ。
その公園に、自主トレに励む1人の少年が居た。
「フゥ… シュッ!!」
小刻みなステップワークをなぞった後、軽く左手のみでシャドーを行う。
ブンッ、ブンッ、っと肉体が音を立てる。
「………うしッ!!」
感触を掴んだら、今度は本格的なシャドーを行う。
基本は左、右のワン・ツー。
時折、左右のフック、左手のスマッシュ、右手のロングフック、アッパーを交える。
「……………………ぉお!!」
約30秒ほどシャドーを繰り返して、最後は右ストレートで締める。
「はぁ… はぁ… はぁ……」
膝に手をついて大きく深呼吸を繰り返す。
首にかけたタオルで汗を拭うと、目の前に、にゅ、とペットボトルのミネラルウォーターが差し出された。
「よーやく、自主トレに復帰かよ、かみやーん」
少年―――上条当麻はバツが悪そうに笑みを浮かべて、土御門元春の差し出したペットボトルを手に取った。
.- 209 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:34:12.46 ID:pw17oXPGo
- 「3日もサボるなんて、いっくら夏休みといえどもたるんでるにゃー」
「いや、ワリィ… ちょっと、それどころじゃなくてさ…」
この数日、夜には必ず麦野と肌を重ねており、ぶっちゃけ、朝錬の時間に起きれなかったのが真相だ。
昨夜は、麦野が早々に自分の部屋に引き揚げたので、いつもの朝錬の時間に起きることができたのだ。
「にゃー、トレーニングは3日サボると、取り戻すのに1週間はかかるぜい?」
「や、すまん、このとーり」
拝むように土御門に両手を合わせ、上条がにへらと笑う。
「…で、新しい暮らしはどうよ?」
「あー、刺激的であることは間違いねぇな…」
上条が慎重に言葉を選ぶ。
己の身分の隠し方については、昨日の昼から夕方にかけて、麦野からとっくりとレクチャーを受けている。
驚くことに、麦野や上条が住むマンションは一種の『セーフハウス』であり、あのマンション丸々一棟が麦野の持ち物であるらしい。
しかも、書類上は上条はあのマンションではなく、第7学区にある別のアパートに住んでいることになっており、
そのアパートは専門のスタッフによって、毎日『男子学生が生活した空間』を演出しているらしい。
(どんだけ金が掛かってんだよ…)
そのため、友人などに家を訊かれた場合はこのアパートの住所を教えれば良いらしい。
突然訪ねてこれられても、それは単なる留守であり、約束を取り付けられたら、実際にアパートに居れば良いのだ。
「…つーことで、尾立荘っていう所に住むことになったよ。来るときには連絡入れろよ」
「んー、まぁ、そのうち伺わせてもらうぜい」
土御門が興味なさそうに言ったことに、上条が胸を撫で下ろす。
…色々と恩があるこの男は、あまり騙したくないのだ。
「あ、でもかみやん。学校に引越しを届けるんなら、早くした方がいいぜい?」
「あー、やっぱり子萌先生には早めに言っとくか…」
今週1週間は補習である。
風の噂では、担任の月詠子萌教諭は、補習終了後には各生徒に家庭訪問をするという。
それが本当なら、それまでには伝えておいたほうが良いだろう。
「にゃー、子萌先生もだけどにゃー。アイツ、昨日来たぜ。前のかみやんの部屋に」
「アイツって… まさか……」
上条が問い返そうとしたとき、土御門のポケットから、Pririririi...と携帯の着信音が響いた。
着信画面を見た土御門は、軽く眉を歪めると、「ワリ、ちょっと急用みたいだ」と軽く手をあげて上条から離れた。
「おい!」
「ほんじゃ、今日の補習でな~」
流れるような動作で、土御門元春は上条の前から消え去った…
. - 210 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:35:22.93 ID:pw17oXPGo
- 「……チッ、こっちは中学からのダチと立ち話しただけだっつーのッ!!」
電話に出た土御門は、挨拶の言葉もなしに電話口に毒づく。
『監視対象は、既に貴方の管理下から外れているのですよ? 以後の管理は『アイテム』が担うと通達があったはずです』
「だからって、3年間ほぼ毎日顔を合わせてた友人と、いきなり絶交しろってか? アホか…」
普段の軽薄な口調とは全く違う、険のある口調で言う。
『距離の取り方などいくらでもあるでしょう? それに、貴方が不用意に接触しようとしなければ、監視対象が勝手に貴方を避けてくれるはずですよ?』
「ごくろーなことだよ…ッ」
実際、今日会ってみて、上条が自分を避けようとしてる雰囲気は感じられた。
(カミやんは友人想いだからな… )
暗部に友人を巻き込まないための努力を、土御門ははっきりと感じていた。
(だからって、放っとけるかよ……!)
土御門元春も、学園都市に蠕く暗部の一員である。
しかも、上条が所属した『アイテム』などより、もっと深い、イリーガルな組織に所属している。
上条と友人関係であるのも、最初は『暗部』の任務であった。
しかし、多感な時期に多くの時をともに過ごした観察対象は、いつしか本当の親友へと様変わりしていた。
「とにかくッ! お前らの邪魔をするつもりは無い! 立ち話ぐらいでいちいち煩いんだよ!」
『……わかりました。ただし、こちらの障害となれば、警告無しで排除させていただきますが?』
「…ああ、そうしろ。そんなヘマは踏まんがな」
熱くなっている。と土御門は柄にも無く感じた。
. - 211 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:36:19.63 ID:pw17oXPGo
- S-2 麦野のマンション「Melt kiss」
「ただいまーっす…」
時刻はまだ早朝と言える朝の7時。
麦野がまだ寝ている可能性も考えて、小声でマンションに戻った上条だが、
「おかえりなさい」
麦野はばっちり起きていたらしく、タンクトップにスパッツのラフな格好でダイニングテーブルの前に座っていた。
テーブルには、今日の新聞やファッション雑誌、学園都市が発行するTOWN誌などが積まれている。
「おはよ」
「おはようございます」
軽く目を合わせると、上条は麦野に近づいて軽く唇を合わせた。
『朝、顔を合わせたら必ずキスすること』とは、麦野が上条に課した様々な注文のうち1つだ。
「ん、よし。トレーニング?」
「はい、マメにやっとかないと、身体が鈍るんで」
「マッサージとか出来る?」
「ええと、ストレッチぐらいなら…」
上条が躊躇いがちに答えると、麦野は「よしよし…」満足げに頷いた。
「それなら今度やって貰うわ。今日の朝食はアタシが作るから、上条クンはシャワー浴びてらっしゃい」
「え、良いんですか?」
『朝食は基本的に上条担当』も麦野が決めたことだ。
「良いわよ。けっこう臭うから… 汗臭い男は嫌いじゃないけど」
「ありがとうございます」
上条がペコリと頭を下げると、なぜか麦野が不満げに眉を寄せた。
「2人きりの時は我慢するけど、外で一緒に居るときは敬語はやめてね」
「は… あ、あぁ…」
麦野の言葉に、「はい」と言おうとしたのを慌てて言い直す。
しかし、この怖くて美しいお姉さまに、敬語以外のどんな言葉で話していいか分からない。
「えと、タメ口で良いの…?」
「いーのよ、アンタはアタシの彼氏なんだから。デート中に敬語しゃべったらひっぱたくからね」
真顔でそう言われ、上条はそのシーンを想像して「はは…」と苦笑した。
. - 212 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:36:54.45 ID:pw17oXPGo
- 「うめぇ…」
ダイニングテーブルに並べられたフレンチとトーストをガツガツを頬張る。
上条も1人暮らしが長いので、色々と料理には自信があるつもりだったが、このフレンチトーストは味を再現できそうにない。
「オトコノコって感じねぇ」
ダイニングに頬杖をついた麦野が言う。
彼女はフレッシュジュースとサラダだけだ。
「むぐ… 麦野さん、料理うまいッスね」
「ちょっとハマッた時期があってね、その名残。あんまり他人に作ったことがないから、味が合ってよかったわ」
「…俺の朝食は、きちんと作れてます?」
「サラダをまずく作れる人間が居たら会ってみたいわねー」
麦野がフレッシュジュースを口につける。
遠まわしに及第点を与えられて、上条が密かに胸を撫で下ろした。
「いやぁ、メシマズって、マジで居ますよ? サラダは流石に無いでしょうが、クソ不味い目玉焼きなら食ったこと有ります」
麦野のプレッシャーにだいぶ慣れたのか、上条の口が滑らかに動く。
「はぁ? 目玉焼きをどーやって不味く作んの? あんなの焼くだけじゃん?」
「いやぁ… 『健康に良い菜種油』とか『頭が良くなるカルシウムスパイス』とか、
そういう、怪しげな健康サプリメントを入れたがるヤツが居て……」
その時の味を思い出したのか、上条の顔が微妙に歪む。
「加熱時間とかはきっちり計っているから、焼き具合は完璧なのに、
肝心の味が駄目駄目っつー、ある意味、芸術品が生まれまして…」
「ふ~ん…」
上条の話を軽く聞いていた麦野が、瞬間、にやっと表情を変える。
「それって、前カノの話?」
「ぶはっ!!」
突然投下された麦野の爆弾発言に、上条が思わず吹き出す。
「…当たりか。やーねぇ、今カノの目の前で、前カノの話するなんて。デリカシー欠けてんじゃない?」
「い、いやいや、彼女とかじゃ全然ないッスよ! 仲の良い女友達っつーか!!」
「でも、初体験って、その娘となんでしょ?」
麦野の鋭い指摘に上条が絶句する。
女のカンは鋭いというが、なぜにたったこれだけの情報でわかるのだろうか?
「……でも、マジ彼女じゃないです。今でも、なんであんな事になったのかよくわかんねーし」
神妙な顔つきになって上条が言う。
『触れて欲しくない』という雰囲気がありありである。
しかし、
「詳しく話しなさい」
「………ハイ」
麦野には逆らえなかった。
. - 213 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:38:20.10 ID:pw17oXPGo
- 「ソイツとは中学からの同級生で、まぁ、腐れ縁みたいな感じの女友達なんですが……」
「へぇ… 女友達ねぇ…」
上条の一言一言に麦野の突っ込みが入る。
なんと言うか、いじめっ子な口調である。
「マジで女友達です! …少なくとも、中学卒業まではずっとそうでした。
俺もアイツもそう思っていたはずです」
コイツほんとにニブいんだなー、と麦野はしみじみと思う。
「好意に気付いて無かっただけじゃないの? ホラ、ツンデレとかさ」
まさか、と上条が手を、パタパタ、と振る。
「いやいや、デレとか1回も無かったですよ。
いっつもデコ光らせてイライラしてたから、陰で『イラ子』って呼んでたし…」
当時の光景を思い出したのか、上条がウンザリした表情を作る。
「ま、すっげぇウルサイ奴、かつ仕切り魔で、委員長でもないのに、クラス行事は大抵は『イラ子』が仕切っちゃうんです。
俺にも、あーだこーだと毎日口うるさくて… なんつーか、クラスのオカン? みたいな感じ」
「口うるさいのはアンタだけ?」
暫く思い出すように考え込んで、首を横に振る。
「いや… 『イラ子』に毎日小言を言われてたのは、俺の他に男が2人いたッス。…ソイツらも中学1年からずーっと一緒でした。
『イラ子』を合わせた4人とも、幼馴染って言って良いのかもしれないです」
声のトーンがわずかに下がる。
前フリが終わり『その時』の事を話すようだ。
「えっと、中学卒業して、卒業パーティーみたいなのを開いたんですよね、その4人で」
「結局、仲が良いんじゃん」
「いや、ホントは男3人で飲む予定だったんだけど、なんでか知らないけど、アイツが後から来たんですよ」
「『イラ子』ちゃんが?」
「……はい」
答えにくそうに上条が頷く。
「なんかわかんねぇけど、男2人のどっちかが呼んだみたいで、強引に参加したっつーか」
「口うるさい娘なのに、『飲んでる』ことを注意しなかったの?」
麦野の突っ込みに、上条が、きょとん、とした表情になった。
「……………そーいや、珍しくアイツ何も言わなかったな。
つか、率先してアイツが飲んでた…」
「はーーーーーーン…」
気持ちいいくらい、にやにや、と小馬鹿にした笑みを麦野が浮かべる。
「え… 『それに気付けよ』みたいな感じ?」
「さぁねぇ… それより、さっさと続き」
時間稼ぎに問い詰めたいが、麦野にそう言われては、先を話すしかない。
「それで、4人でぐだぐだ飲んでたんですけど、男2人が先にダウンしちまって、
『イラ子』とサシになっちまったんですよ」
「あー、はいはい、予想できるわ」
「ぐぬぬ…」
(このコ、本気で気付かなかったのかしら…?)
ここまで『お膳立て』が揃っているのにソレに気付かないのは、
鈍感を通り越して、精神を洗脳されていたのではないかと、本気でそう思う。
. - 214 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:38:46.53 ID:pw17oXPGo
- 「はい、続き続き」
「うぅ… そ、それで… 2人で飲んでるうちに、イラ子が、『上条、アンタ童貞…?』とか言い出して…」
「『経験ないなら、わ、私としてみる…ッ!?』」
妙に演技がかった声で麦野が言う。
「な、なんでわかったんスか?」
「むしろ、分からない方がおかしいでしょうが…」
麦野はその『イラ子』に対してほんの少し同情した。
同じ女として、目の前の少年は完全に有罪である。
「それで、ヤッたんだ。上条クン、サイテー、好きでもない娘とセックスするなんてー」
「だ、だってッ! すっげぇ興味あったし、アイツ、脱ぐしッ! おっぱいでけぇし!!」
完全に余裕が無くなって来たのか、上条が狼狽した声で叫ぶ。
「うっさい! もっと先を予想してあげましょうか?
……上手くできなかったんでしょ?」
「そ、そこまで分かりますか……」
上条が完全にうなだれる。
中学卒業したて、しかもアルコールも入っていた。
相手を気遣う余裕など、当時の上条少年には無かった。
「えっと、俺も初めてだったし、『イラ子』も初体験だったみたいで…
挿入までは何とかできたんだけど…」
「アンタでかいもんねぇ。あまりの痛さに、『イラ子』ちゃんが泣き叫んで暴れた、でしょ?」
「……はい。けど、俺、もう止まんなくて。サルみたいに腰振っちゃって」
『昨日の夜もサルだったけどね』とは、流石の麦野も口にしない。
麦野だけが知っているが、上条のセックス時の腰使いは相当激しい。
慣れている自分でなければ、受け入れるのには苦労するだろう。
「気付いた時には、腟内射精してて… そしたら、『イラ子』が顔をくしゃくしゃにして泣いてて…」
話しているうちに、当時の情景が思い浮かんでくる。
春にしては蒸し暑かった室内、隣室で眠る男2人のやけにはっきりとしたイビキ、
そして、股間を真っ赤に染めて、静かにむせび泣く『イラ子』……
「とんでもない事したって気付いて、慌ててフォロー入れようとしたんですけど…」
あの時、涙で顔を歪めた彼女は、こう言った。
『上条当麻ッ!! あんたサイテーッ!! 2度と私に近寄らないでッ』
あの声と表情は、中々忘れることができない。
「そう言うと、『イラ子』はそのまま帰りました… 俺は、ワケわからなくて…
誘ったのはアイツの方なのに…」
「アンタ、ホント、サイテー」
「ぐっ…」
吐き捨てるように麦野が呟き、上条が言葉に詰まる。
上条も、自分が『駄目な事』をしたことは分かっていた。
しかし、そうなってしまった『過程』を理解していないから、どう行動して良いのか分からなかったのだ。
「でーぇ、それからどうしたの?」
「翌日謝りに行ったんですけど、会ってくれなくて…」
「あったりまえだろーが、ボケ」
それで当然、と麦野が言い捨てる。
「翌日とか馬鹿じゃないの? 一晩泣いた後の顔なんて、見せたくないに決まってるじゃない」
「そ、そうか…」
初めて気付いた、という風に上条が冷や汗付きで納得する。
(意識的には気遣いができるけど、無意識的には気遣いできない子なのね、上条クンは…)
心の中で嘆息する。
しかし、少なくとも2人以上の女性から一方的な好意を寄せられているのだ。
このツンツン頭には、女を惹きつける不思議な魅力があるのだ。
. - 215 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:39:59.55 ID:pw17oXPGo
- 「…それで、その娘とは縁が切れた、と…」
「いえ… 今もクラスメイトッスけど……」
「はぁ!?」
珍しく仰天した表情で、麦野が素っ頓狂な声を出す。
「クラスメイト!? なんでッ!?」
「『イラ子』、成績は良かったはずですけど、なぜか俺とおんなじ高校に入学したんです」
「なんつー健気な……」
額に手を当てて麦野が呟く。
「…気まずかったでしょ?」
「そりゃもう! 春休みはメールもガン無視でしたから、クラスでばったり会って、すっげぇビックリしました」
しかも、クラスで再開した『イラ子』は、「いつも通り」に上条に接したのだ。
「俺、ビックリして何も言えなかったら、イラ子が『上条当麻! 入学式の手順は把握しているの!?』って、突然突っかかってきて…」
「ごーいんに関係を元に戻した、と」
(そこまで行動力あるのに、なんで告白しねぇんだよ、その馬鹿は)
気付かなかった上条も上条だが、その『イラ子』も相当に馬鹿だと思う。
「それから?」
「それからは、中学と一緒っつーか、普通にクラスメイトです。
…流石に俺から、あの時のことは話題にできなくって」
「へたれ」
「ぐっ…」
「…けど、まぁ、しゃーないか」
麦野が呆れ顔で嘆息する。
(こんな無神経な朴念仁に釣られたとは……)
というよりも、常盤台の超電磁砲といい、話に出てきた『イラ子』といい、
極めて身近に彼女候補が居ながら、どうして上条が自分に声を掛けてきたのかが気になった。
「ねぇ、もし、その『イラ子』ちゃんから告白されたらどーすんの?」
極めて軽く、しかし、内心ひどく真剣に麦野が尋ねる。
しかし、上条はあっさりとその質問に答えた。
「そりゃ、麦野さんが居るんだからきっぱり断ります。二股とかありえないです」
「あ… そ、そう…」
悩む素振りの無い上条の返答に、麦野が珍しく狼狽する。
もちろん、期待していた通りの答えだが、ここまで素早く言い切られると、妙にドキドキしてしまう。
「俺、麦野さんのこと、好きですから」
「わ、分かってるわよ!」
さらに、上条の無意識な追撃に声を荒げる。
そして、なんとなくだが、上条について1つ理解した。
(この子、善意に裏が無いのね… だから、他人をよく惹きつけるけど、見返りを期待しないから、他人の好意に気がつかない、か……)
不本意ながら嬉しいと思ってしまう。
そして、顔も名前も知らない『イラ子』に対して、優越感と対抗心とが複雑に混ざり合った、微妙な感情を抱いた。
. - 216 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:41:51.90 ID:pw17oXPGo
- >、:::::::::::, '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ソ、
<::::::::::::, '::::::::::::::::,;:::::::::::::::;:::::::::::::::::::>ー‐
>、::,:::::::::::::::://l:::::::::::::/l:::i:::::::::::::::::>z_ そりゃ、
zソ::,:::::::/:::,l://._l:::::/ソ:' l::'l:::::::::::::::::::>、
<::::::ノ::::,'/:/_l:'ィイ,'::// >ーヤ!::::::::::::::::::::>ー 麦野さんが居るんだからきっぱり断ります。
 ̄>:::::::l ! ぞ! / !ぞ!\¨l::::::::::::::zー'
>l ;l ー‐' . ー-' .l::,ヽ::::::::\ 二股とかありえないです
 ̄ニ! i : ,' ノ::< ̄
∠.::、 _ _ _' イ:ー≠ー
、 r_ _ヽ イ::::::へ' ,_
_ .l\ イ,'V'¨ ヽ / ノ ィ-‐‐フ
/ >: : : : .へ、_ , ' 〈_ , ' ノ >ーy'
_ イ / .}: : : l /ヽz_ / ; > ィ
< ̄ 癶 / l: : :〈 、 /\ \ ヽ { . ' イ ‐-、
/ V' >‐イー‐ ' )/ー \ノ :.∧ l / __,ナ‐、
l ゝ , ' .: >、\ ; ; l \ : } .l / ___,ノ
. .l У .: \ l; /〉 ./ .: : ェ、 l . l
l 、: . : l l; l / ,' l , l n _n_◎ _,n_ n _n_◎ _,n_
l : : : l;l ノ 〔ニニ〕, ,' V ,l l l└i七 7/,ニ、 l l└i七 7/,ニ、
LK⊆T 〈/r三ュ LK⊆T 〈/r三ュ
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. -‐-: : :- . ノし
. /: : : : : : : : : : : __: \ て
. /: : : : : : : : : : : : : : :ト: : ヽ (
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|: : : : |-‐=ミく / _..ニ._ |: : :リ
. : : : :.:l:、 {り {り ` |: : :|
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/: : : :八 lj /′ 厶|: : :| あ…
ノ: : : :///ヽ .: :八: : \
: : : .:///ハ :\ ―-‐ イ: :/.:∧: : : :\ そ、そう……
: : .://////} : :>-<{: : :|.:∧/:∧: : : : : \
.://////リヽ\ `ーァ⌒ー---―ュ : : \
:. :://厶イ__.:. \ /7 / / ヽ: : ヽ
-r<__ヽ r、- ` ´/ / / i : : : .
/―…ミヽi / / / |: : : i
: i二二 :、 \__../ / {/ | : : :|
: }└‐‐ 、 ヽ__// |: | : : :|
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く::::::::::::::::::::ヽ :. | : : : :.
\:::::/、 ⌒ヽ 八 |: : : : :\ \
. - 217 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:42:19.21 ID:pw17oXPGo
- 浜面は麦野の事をこう評する。曰く、
「テレビゲームをノーミスクリアできないと気が済まず、少しでもミスがあったら怒り狂って、たとえエンディングを見ても納得しない人間。
それを帳消しにするためにハイスコアを更新して満足するタイプ」と。
学園都市の頂点に君臨する超能力者(レベル5)であり、類稀なる美貌とほぼ完璧な肢体を持つ麦野は、あらゆる面で『勝ち組』と言って良い人間である。
しかし、現実の麦野は、『アイテム』という学園都市の暗部に所属し、イリーガルな非日常にその身を置いている。
どんな言葉で飾っても、所詮は闇の掃除屋に過ぎない。
同じ超能力者である御坂美琴のように、大多数の人間から憧憬を受けたり、賞賛されたりすることは、決して無いのだ。
正道を歩めない代償を、麦野沈利は常に欲している。
それは同じ超能力者(レベル5)への歪んだ対抗心や、一般的でない過大な浪費、所有物・縄張りへの異常な執着心、
そして、依存とも思えるほどの異性との肉体関係。
麦野の気性、境遇をある程度理解している他の『アイテム』メンバーは、だから、麦野の奔放な性生活について何も言わない。
フレンダが上条の存在を歓迎したのも、それが麦野の精神安定の一助になると喜んだからだ。
ゆえに、上条の真っ直ぐな好意を持て余す。
麦野沈利は、「好きだ」という言葉の裏づけを、別の方法で求めてしまうのだ。
. - 218 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:43:26.13 ID:pw17oXPGo
- 「……補習まではまだ時間があるわね」
「え、はい…」
ちらりと壁の時計を見る。
時計の針は8時過ぎ、『一回戦』ぐらいはできそうだ。
「話しにくいことを話してくれたお礼、してあげる」
妖艶に微笑んで上条が座る椅子の前まで行くと、膝をストンと落としてしゃがむ。
「ちゃーんと洗ったの? すっごい匂いよ…」
上条の股間に鼻を近づけて麦野が言う。
無論、これは麦野の冗談なのだが、さっき「汗臭い」と言われたばかりの上条は動揺する。
「も、もう一回シャワー浴びて…!」
「ばーか。オスの匂いがそう簡単に落ちるかってーの」
トランクスごと麦野が上条の短パンを引きずりおろすと、まだ萎えた上条のペニスが顔を出した。
「こぉら、なんで萎えてんのよ…!」
「無茶言わないで下さいよ…」
たはは、と上条が苦笑する。
そんな上条を、チラリ、と見上げると、麦野は手を伸ばしてサイドボードからベビーローションを取り出した。
「仕方が無いわね、おねーさんが勃たせてあげる…」
タンクトップを脱ぎ捨て、就寝用のスポーツブラを外す。
形の良い豊乳が露わになると、麦野は乳の谷間にベビーローションを垂らした。
「……期待しているなら、ワンと吠えること」
「ワンッ!!」
「ぷっ、はえーよ、おい…」
ニヤニヤ楽しそうに笑うと、麦野は上条のペニスを乳の谷間に挟み込んだ。
. - 219 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:44:14.78 ID:pw17oXPGo
- 「うっわ…」
まだ柔らかいペニスが、もっと柔らかいゴムマリにサンドイッチされる。
ベビーローションの潤滑を上手く使って、麦野は両腕で挟んだ豊乳をリズムカルに動かした。
ぬちょ、ぬちょ、ぬちょ……
肉のプレスに攪拌されて、上条のペニスが一気に硬度を増す。
最初は完全に乳の谷間に隠れていたペニスが、次第にその存在感を増し、ついには谷間からひょっこりと亀頭を覗かせた。
「すっごい膨張率よねぇ… 倍以上になってんじゃん」
「や、これで勃たない男なんていませんよ… すっげぇ、気持ち良い…」
「ふふん、とーぜん」
誇らしげに言うと、麦野は首を思いっきり前に倒して、そのまま上条のペニスにかぶりついた。
「うおッ!!」
「ぢゅ、ぢゅ、ぢゅぅ~~~」
上条のペニスは平均よりはるかに長大だが、それでも流石に先端を咥えるのがやっとだ。
それなのに、亀頭の先をしゃぶっているだけで、上条はペニス全体に快感が広がるのを感じた。
「すご…」
もう麦野とは何度となく肌を重ねているが、そのたびに麦野のテクニックに翻弄されてしまう。
いったいどれだけの引き出しを持っているのだろう。
「ぢゅぱ… ふぅ、上条クンの大きいから、先っちょ咥えるだけでも大変ね…」
「…でかいと、やっぱ嫌ですか?」
密かに気にしていることを問う。
だが、麦野は笑ってそれに答えた。
「太くて長くて、そして固ーいおチンチンが私は好きよ。あ、ユルマンってわけじゃねーからな」
「麦野さんがユルマンとか、何の冗談ですか」
上条も笑う。 タメ
実際、麦野に挿入して10分持った例しがない。
「麦野さんのオマンコはサイコーっす」
「くっく… ようやく下品な台詞が出てくるようになったじゃん」
そう言うと、麦野は仕上げをするようにダイナミックにおっぱいを躍らせて、上条のペニスをしごき上げた。
そして、スッ、と立ち上がると、ベビーローションを己の秘所に塗りこんだ。
「濡らす暇がないから、ズルしてごめんね」
「そんな… 全然平気ですよ…!」
珍しく殊勝な態度の麦野に、思わず胸が、ドキッ、と高鳴る。
外見は『綺麗なお姉さん』なのだから、はにかむような笑みがとてもよく似合う。
(…やべっ!)
上条のペニスに、限界以上の血液が集中する。
「うそ… またおっきくなった!? また泣かされちゃうわね、私…」
麦野が興奮を隠しきれない声で呟くと、抱きつくように座った上条の腰に跨った。
. - 220 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:45:03.14 ID:pw17oXPGo
- 「いちいち許可いらないから、腟内にだしなさいよ… ねッ!!」
ずぶずぶずぶ……!!
長大なペニスが、小陰唇を巻き込みながら、麦野の秘唇に突き刺さる。
早すぎず、遅すぎず…
ペニスが膣道を押し広げる感触を楽しむようにして、麦野が丁寧に腰を降ろす。
(デカ… やっぱ、このチンポ、最高だわ……)
麦野の殿部が上条の太ももに着陸すると、麦野は軽く痙攣して「あああぁぁぁはぁぁぁ……」と長い長い吐息を漏らした。
ハ
「どこまで挿入いってるの、コレ…? 口から飛び出そうよ…」
麦野が慈しむように下腹部を撫ぜる。
「麦野さん…」
「ん……」
2人の視線が交錯し、自然と舌を絡めあう。
互いに貪るように口唇を吸い合うと、たまらない、とった風に麦野が身体をくねらす。
コツッ、ゴツッ!
「……ッ!! んあっ!!」
麦野の動きに合わせて上条が軽く腰を突き上げると、タイミング良く麦野の子宮を亀頭がノックした。
麦野はひどく感じているようで、上条は秘所の体奥から熱い愛液が降りてくるのを感じた。
「やば、やば…ッ!」
不安定な男の腰の上では、一度バランスを崩すと中々体勢を整えることができない。
ペニスと秘唇でつながり、長い両脚を左右に広げた姿は、まるでヤジロベーのようだ。
「あぅ、あぁ… ちょ、ちょっとタイム…!」
必死に足を伸ばして床の支持を得ようとするが、つま先がかするばかりで上手く行かない。
却って、その足掻きがさらに体奥をペニスで抉る結果となり、麦野は背筋が痺れる快楽に口唇を噛んで堪えた。
「か、上条クン… そ、そろそろ…」
「…麦野さん、すいません」
一言謝ると、上条は麦野の背中と殿部に手を回して、優しく、しかししっかりと麦野の身体を把持した。
. - 221 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:45:52.64 ID:pw17oXPGo
- 「え、ちょっと!」
「よっ、と!!」
鍛え上げた背筋と腹筋、下肢筋をフルに使って、慎重に慎重に麦野を持ち上げる。
いわゆる、駅弁スタイルだ。
「きゃッ!」
いきなり持ち上げられた麦野が、落下するのではないかという本能的な恐怖を感じ、悲鳴を上げて上条に抱きつく。
ところが、両手を首の後ろに回し、逞しい胸板に顔を密着させると、なぜか混乱した心が一瞬静まった。
「あ…」
背中とお尻に回された手が暖かい。
自分の身体がオトコに取り込まれたような錯覚を得た麦野は、無意識のうちに両脚を上条の腰に絡ませ、しっかりと上条を大好きホールドした。
「…動きますッ!!」
完全にイスから立ち上がった上条が、麦野を落とさないように細心の注意を払って身体をゆする。
麦野は女性の中でも身長が高く、さらに豊満であるがゆえにそれなりに体重もある。
いくら全身を鍛え上げてる上条でも、駅弁スタイルはかなりの重労働だ。
「あッ、あッ、あッ、上条クン、凄いッ!! 奥、奥にきてるッ! 私ッ、融けちゃう!!」
だが、自分の体重の大部分を結合部で受け、しかも小刻みに体奥を突かれる麦野はたまったものではなかった。
上条が腰をゆするたびに極彩色の火花が脳ではじけ、そのたびに膣と身体とが痙攣する。
(コレッ! 本気でヤバイ…ッ!)
もう、何回イッたか覚えていない。
体奥を何度も突かれて、子宮が完全に降りてきているのが分かる。
(今、腟内射精されたら……ッ!?)
きっと、とんでもないことになる。
「あッ、あッ、かみ、じょうクン… ナカ、ナカは…ッ!」
「くぅ、はい… 腟内に出しますッ!!」
「ち、ちがっ、そうじゃなくてッ! あ、ダメッ、ダメッ!!」
保っていた余裕が全部吹き飛ぶ。
「出しますッ!!」
「だめーーーーーーーッ!!」
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ!!
「ああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!」
麦野の子宮に、マグマのように熱いザーメンが叩きつけられる。
同時に、脳髄が融け堕ちるかのような快楽が突き刺さる。
「ゃぁ… らめぇ……」
信じられないオンナの多幸感と、オトコに隷属する暗い満足感が、麦野を優しく包み込む。
(気持ちいい……)
煩わしい現実の一切合財を今だけは忘れて、麦野は全身を脱力させた。
. - 222 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:46:32.42 ID:pw17oXPGo
- 「うおっと!!」
背中に回されていた麦野の手が一瞬で解け、ダラン、と力無く垂れ下がる。
大好きホールドしていた脚も力を失い、上条は危うく麦野を落としそうになった。
「ええと…」
両腕の腕力だけで麦野を保持すると、上条はとりあえずリビングのソファに麦野を寝かせた。
仰向けに寝かされた麦野は、いまだ浅い痙攣を繰り返していて、視線は宙を彷徨い、口角からは涎が零れ落ちている。
「や、やりすぎたかな…?」
上条は麦野の惨状を見て後悔したが、後の祭りである。
(よくよく考えてみたら、これって『イラ子』の時とおんなじ状況じゃ…!)
上条の背中を冷たい汗が流れる。
『イラ子』と違って麦野は超能力者(レベル5)。
しかも、これまでの付き合いから分かる通り、苛烈な性格の持ち主だ。
(ふぉ、フォローしないと殺されるかも…!)
上条があたふたしていると、不意に麦野がもぞりと動いた。
「ん… んぁ… あーー…」
軽く頭を振って目の焦点を合わせると、首を廻らせて上条を発見する。
緩慢な動作で起きようとするが、
「あ、ら…? げ、腰が抜けてら…」
下半身が脱力しきっている様で、仕方なく麦野は半身を起こした状態で上条を手招きした。
「上条クン、来て」
「は、はいッ!!」
何をされるのか分からないが、「とりあえずここは従っとけ」という本能の囁きに従い、上条は麦野のそばに立った。
「えっと、麦野さんッ、す、すいません、やりすぎちゃって…!」
「うん? なに言ってんの? ほら、綺麗にしてあげるから、おチンチン出しなさい」
麦野はそう言うと、上条の股間に口をよせ、一回の射精で少し硬度を下げたペニスを頬張った。
ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ…
愛液にまみれた竿や玉袋も丁寧に舐める。
尿道に残っていた精液も残らず吸い上げて飲み込む。
「はぁ…」
上条が思わず溜息を吐く。
麦野の本気フェラとは全く違う、別の快楽がそこにあった。
「ちゅぱ… まぁ、こんなもんかな?」
御掃除フェラを終えると、麦野は、ちょいちょい、と手で合図をして上条を屈ませた。
てっきりキスをするかと上条が口を寄せると、不意に麦野が上条の首筋に吸いついた。
「えっ!? なんで!?」
驚く上条を尻目に、麦野は思いっきり「ぢゅぅぅぅ!!」と首筋を吸引する。
ほどなく麦野が口唇を離すと、浅黒く焼けた上条の肌でもはっきりと分かるほど、
真っ赤なキスマークが上条の首に刻まれていた。
「…あー」
麦野の行為にやっとで気付いた上条は、キスマークを手で触れて「やられたー」という表情をする。
「そろそろ補習でしょ? アタシのことは気にしないで行ってらっしゃい。
あと、当然だけど、隠しちゃダメだからね」
悪戯っぽい笑みで言う。
上条当麻は、嬉しくもあり、誇らしくもあり、
そしてやっぱり大半は恥ずかしさで、顔を赤く染めた。
. - 223 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:47:22.00 ID:pw17oXPGo
- S-3 「とある高校」
「お、終わった…」
正午ちょうど。
ギリギリで駆け込んだ補習は、表面上は何事も無く終了した。
ただ、授業をすべく教室に入ってきたロリロリしぃ担任教師が、上条を見たとたん大仏の様に無表情になったり、
土御門元春が無言で(しかし頭に怒マークをつけて)ケータイを高速タッチしたり、
その他大勢の落ち零れクラスメイトから「裏切り者」呼ばわりされたりはしたが、
おおむね、混乱も無く終わった。
「恥ずかしくて死にそうだ……」
クラスメイトからの追求は何とか避けたが、担任のロリ教師からは職員室への出頭を命ぜられてしまった。
当然、シラを切るつもりだが、今日も午後から麦野とお買い物の予定なので、なんとか短時間で済ませたいところだ。
「…失礼しまーす」
適当に頭を下げて職員室に入り、担任教師の机を目指す。
すると、そこには先客が居た。
「「あ…」」
上条と先客は、同時に互いを発見し、そして、同時に同じ声を上げた。
背中まで伸びるロングの黒髪、利発で意思の強そうな瞳、さらさらのおでこ、スカートのポケットから覗く健康食品の袋…
「吹寄… お前なんで…?」
「……居たら悪いの? 上条当麻……!」
吹寄制理、通称『イラ子』。
上条当麻の『初体験』の相手がそこに居た。
. - 224 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/05(月) 18:50:54.89 ID:pw17oXPGo
- はい、今週はこれで終了です。
>>205さん大当たり、むぎのんのライバルは、アニメでおっぱい増量に成功した吹寄です。
あと次回か次々回は美琴が出ます。
彼女にもチャンスが微レ存?
それではまたキリのいいところで投下します。 - 240 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 16:47:43.37 ID:I0fdTQjao
- 気付いたら40k近くになっちゃった。
全部、吹寄が可愛いのが原因です。
というわけで、本日18:30ごろに投下します。
あと、美琴の出番とか言ったけど、ありゃ嘘だった。全部吹寄に食われた。
でわ。 - 243 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:29:11.26 ID:I0fdTQjao
- S-4 「とある」学校 職員室
「…なんでお前がここに居るんだよ?」
「別に居たっていいじゃない…?」
教務机に向かって座る、担任の月詠子萌教諭を挟んで正対、
ぶっきらぼうに訊く上条に、同じぐらい不機嫌そうに吹寄が答える。
「あ、上条ちゃん、ちょうど良いところに来ましたね!
たった今、吹寄ちゃんに聞いたんですけど、引越ししたって本当ですか?」
キィ、とイスを軋ませ振り向いた外見年齢約10歳のロリロリしぃ教師が、上条を見上げて質問口調で言う。
「えっと、え… 吹寄から?」
「昨日、貴様のアパートに『たまたま』立ち寄ったら、もぬけのカラだったのを発見したのよ!
隣室の土御門元春に聞いたら、引越ししてるって言うじゃない…」
「お前… なんでわざわざ俺んちまで来たんだよ…」
「た、たまたまって言ってるじゃない! たまたまよッ!!
…な、なによその目は!?」
妙に取り乱す吹寄に、上条が疑惑の目を向ける。
「いや… たまたまでどーして…」
「う、疑ってるの!? そ、そんな風に思うのは、体内のイオンバランスが崩れているからよ!
ホラ、この『3秒でイオンチャージ! 塩味風わたあめ』を食べなさい!」
「い、いらねーよ!!」
スカートのポケットから、駄菓子風の栄養食品(サプリメント)を取り出そうとする吹寄をあわてて制止する。
「はいはい、吹寄ちゃんもそれくらいにするですよー。それで、どうなんですか上条ちゃん?」
パンパン、と手を叩いて同級生2人の漫才を止めると、月詠教諭は上条に詰問した。
「は、はい… 親父が知り合いの不動産屋から紹介されたみたいで… 向こうも急に決まったみたいで、学校への連絡が後々になっちゃって…
親父から連絡来ていませんか?」
これも麦野(正確には麦野の指示を受けた絹旗)が演出した偽装工作だ。
複数のルートを最終的に1つのルートにするやり方で、父親である上条刀夜名義での封書が届くことになっている。 - 244 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:29:37.50 ID:I0fdTQjao
- 「来てはいますがー、きちんと本人からも確認を取らねばと思ったんですよー。
住所とか経緯とか、しっかり先生に教えてください」
「はぁ…」
少し腑に落ちないものを感じながら、上条は(スパルタ指導で)仕込まれた嘘をスラスラと語った。
「………っていうことで、尾立荘って所に住んでます。やっぱ、家庭訪問とかするんですか?」
「しますよー、と言いたいところですが、ちょっと先生が忙しいので、今は未定ですねー」
手元のメモ帳を、ふむふむ、と確認しながら月詠教諭は言う。
「分かりました、間違いないようですね。…そういうことですので、吹寄ちゃん、上条ちゃん家の確認お願いしますね」
「「はぁ!?」」
上条と吹寄が同時に声を上げる。
「ど、どうして私が…」
「どうしてコイツと…」
互いに指を突き付け合いながら2人が言う。
「今言った通り、先生忙しいですからー。緊急で特別補習のスケジュールを組まなきゃならないんですよー」
「今日は飲みの約束があったのに残業なんですよー…」と、ぶつぶつ呟いて、月詠教諭は2人にA4サイズの特別なシートを手渡した。
半透明なプラスチックの下敷きのようなソレは、特殊な刺激を与えると、向けた風景を画像として表示・保存する、いわば『インスタント風景撮影デバイス』だ。
写真と違ってサイズも大きいし、強度も高いのでファイリングがし易いという利点がある。
これで、上条の新アパートを撮って来い、ということらしかった。
「撮ったら、上条ちゃんが明日の補習のときに持ってきてください。それじゃ、お願いしますねー」
話は終わりとばかりに、月詠教諭は2人に背を向けて、机の上のノートPCに向かった。
上条と吹寄は、ぎこちなく目線を交わすと、不承不承といった感で「はい…」と了承した。
「それじゃ、失礼します…」
麦野にどう説明しよう… と、そう考えながら退出する上条に、月詠教諭が振り向かずに声をかえた。
「そうそう。上条ちゃん、不純異性交遊はほどほどにしてくださいねー」
「…………ハイ」
背中に冷や汗だらだらで上条は答えた。
. - 245 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:30:05.57 ID:I0fdTQjao
- S-5 「とある」高校 職員室前の廊下
「上条当麻……ッ!!」
職員室を出た瞬間、吹寄がドスの効いた声で上条を呼ぶ。
「不純異性交遊ってどういう事よッ!?」
「こ、子萌先生のジョークだよ!」
「き、貴様ッ! あの夜のことを月詠先生に話したんじゃないでしょうね!?」
あ、そっちか… と上条は肩透かしを食らった気分になる。
そして、ひょんなことから絶好のチャンスが巡って来た事に気付いた。
「…話してねーよ。それと、あのさ、吹寄……」
「な、なによ…?」
突然、神妙な顔になった上条にドギマギしながら吹寄が答える。
「あの夜のこと、お前を傷つけちまって、マジでごめん。ずっと謝りたかった。この通りだ!」
「へっ… えぇぇ!?」
真剣に吹寄に頭を下げる。
突然の謝罪に吹寄がたじろぐ。
「ごめん、吹寄……」
「そ、そ、そ、そんなこと突然言われたって…!」
可愛いぐらいに狼狽した吹寄が、わたわた、と両手で空気を掻きまわす。
しかし、一向に頭を上げない上条に「うぅぅぅぅぅぅぅ……!」と唸り声を上げると、やおら、腕組みをして顔を横に向けた。
「……べ、別に怒ってないからッ! に、逃げちゃったのは私だし……」
「……そうなのか?」
「そ、そうよ!!」
ぷい、と顔を横に向けたまま吹寄が言う。
その顔は加熱された薬缶のように赤い。
「そっか…… よかった……」
ホッとした上条が顔を上げる。
「あのさ… し、心配してくれてたの……?」
「そりゃそうだろ? お前泣いてたし…」
「わ、忘れてッ! そういうのは全部忘れてッ!!」
「ああ、そうだな… あの夜のことは、全部…」
「だ、駄目ッ!! あの夜のことは忘れないでッ!!」
「…どっちだよ?」
そう聞かれても、吹寄だって困るのだ。
. - 246 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:30:43.78 ID:I0fdTQjao
- 吹寄制理は上条当麻のことが、現在進行形で好きだ。
意識し始めた切欠はあまり思い出したくないが、好きだと自覚した時のことは良く覚えている。
確か、初めて中学2年の『一端覧祭』の実行委員に立候補したときだ。
あの時に色々と邪魔されたり、逆に手伝ったりしてもらって、吹寄制理は恋に落ちたのだ。
それからずっと、恋の花を育てに育て、ついに結実したと思ったのがあの夜の出来事だ。
土御門元春ともう1人の悪友にノセられて、アルコールの手助けもあって処女を捧げることに成功した。
…本当ならば、セックスの前後に告白して、恋人同士になるはずだったのだが。
(あんまり痛くて、逃げちゃって… しかも、ショックで数日寝込んじゃって… 私の方も告白するチャンスを逃しちゃって…)
吹寄にとっても、あの夜は不本意な結果なのだ。
しかし、好きな人に処女を捧げた記念の夜でもある。
忘れたくはないし、忘れて欲しくはない。
「……忘れないで。できれば、覚えていて」
「……ああ」
神妙な顔で上条が吹寄を見つめて頷く。
恋する乙女は、それだけで心の中をハート色に染まる。
(心配… してくれてたんだ……)
幸せで胸がいっぱいになる。
絶対に嫌われたと思っていたから、上条の言葉は何よりも嬉しい。
(脈ある… まだ脈はある…!!)
夏休みは始まったばかり、しかも、これからこの男は自分と行動を共にする。
いや、それどころか、まだクラスの誰も知らない新居に一緒に行くのだ。
(これ、チャンスじゃん… あたし、今、チャンスじゃん…!)
ニヤケそうになる顔を必死で抑えて、吹寄はいつもの不機嫌な表情を作って言った。
「それじゃ、この話は終わりにして、とっとと上条の家に行きましょう。遠いの?」
「えっと、歩いて15分くらいだけど… ちょっと待ってくれ、予定入れてたんで、遅くなるって電話入れるから」
「ん、わかった、早くしなさいよね」
密かに幸福度がマックス振り切れそうな吹寄は、上条の連絡先まで気が回ることがなかった。
. - 247 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:31:26.76 ID:I0fdTQjao
- 「…ん?」
化粧台に置いた携帯が音を立てる。
午後に備えた化粧に余念のない麦野が、着信音を聞いて軽く眉を細める。
「上条クンに設定した『お仕事用』の着信音…? なんかトラブルにでも巻き込まれたのかしら?」
アイテムのメンバーは、個々に様々な電話番号を持っている。
それは、様々な偽装を円滑に行うための小細工であり、今回の着信番号は「カバーストーリーに小トラブル」というものだ。
「…はい、アタシよ」
『あ、ども、俺です…』
この回線では、名詞はすべて代名詞に代えることとなっている。
『俺の部屋、やっぱり学校からつっこみ入りました。今から、同級生の女子と確認してきます』
「あーあ、やっぱりか… で、どれくらい?」
『まぁ、すぐすぐ、といったところっス』
『すぐ』1回で30分。
つまり、今回は1時間ぐらいということだ。
「了解、じゃ、あとは適当に…」
そこまで言って、麦野の脳裏に1つの考えが閃く。
「…ねぇ、おおよそ理解したから、『もう一回かけて』」
『えっ? あ、はい。了解です…』
麦野の意図を把握した上条が一旦電話を切ると、すぐに―今度は通常回線で―電話が掛かってきた。
「ねぇ、その同級生って、『イラ子』ちゃん?」
『……麦野さんって、実は精神系の能力者じゃないですか?』
電話の向こうで上条が絶句する。
「うっさい、ちっ、『同級生の女子』なんて呼び方するからよ。ちょっと、余計な事言って無いでしょうね!?」
電話を通して、上条が躊躇う雰囲気が伝わってきた。
『えっと… 別に変な事は言ってないっスけど…
単にこの前の夜のことを謝っただけです、けど…?』
「謝った!? 『この前の夜はごめん、心配してた』って!?」
『は、はい……』
麦野の剣幕に上条がたじろぐ。
「馬鹿ッ、アホッ、間抜けッ! アンタ、また地雷踏んだわよ!」
『えっ、な、なんでッスか?』
(この男は本気でタチ悪いわ……)
思わず天井を仰ぎ見て、麦野が溜息を吐く。
「……試しに、その子に『おい、お前、顔がニヤケてるぞ』って言ってみなさい。不意打ちで」
. - 248 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:31:59.87 ID:I0fdTQjao
- 「えっ… は、はぁ、ワカリマシタ…」
引きつった笑みを浮かべて上条が吹寄の方を向く。
吹寄せはおっぱいを支えるように腕組みをして、そっぽを向いている。
「…おい」
「なによ?」
「お前、顔がニヤケてるぞ?」
「………ふえ!?」
言われた吹寄が、可愛いくらいに狼狽して、さわさわ、と自分の頬を撫でまくる。
「う、嘘ッ!」
吹寄の表情がどんどんと崩れ、泣いているような、笑っているような、不思議な表情になる。
「見ないでッ! 見ないで上条!!」
とうとう、両手で顔を覆って吹寄がしゃがみこむ。
膝小僧、おっぱい、両手の、見事なトーテムポールが出来上がった。
「お、おい……」
あまりに分かり易すぎる反応に、上条は自分が地雷を踏んだことをはっきり自覚した。
. - 249 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:33:01.77 ID:I0fdTQjao
- 「どう?」
『…えっと、なんか、しゃがんで震えてます』
上条の声には力が無い。
「はぁ… ちょっとは想像しなさいよ。処女を捧げた好きな男から、『心配した』なんて声を掛けられたら、そりゃ、恋する乙女は舞い上がっちゃうでしょうが」
諦めた口調で麦野が話す。
(とりあえず、今日の夜はお仕置き確定ね...)
『すいません…』
「…早めに合流するわよ。部屋で待っていなさい」
『はい…』
電話を切って、また一度溜息を吐く。
「ったく! あの男わ~~~」
腹立ちまぎれに、携帯をベッドに放り投げる。
上条の鈍感さにも腹が立つが、夏休みだからと接触の可能性を考えなかった自分にも腹が立つ。
「……トドメ、刺しとくか」
物騒な台詞を呟くと、麦野は暫く額に手を当てて何かを考え…
今まで施した化粧を全部落とし始めた。
. - 250 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:34:42.09 ID:I0fdTQjao
- S-6 偽装アパート 尾立荘前
「着いた、けど……」
学校から歩いて数十分。
夏の日差しの下、2人は何の変哲もない鉄筋2階建てのアパートの前に居た。
上条がアパートを指差すと、長髪で表情を隠した吹寄が、無言で『風景撮影デバイス』を取り出す。
「……こ、この風景で良い?」
「ん? ああ…
吹寄がデバイスを構えて言うと、上条が「どれどれ…」と横からデバイスを覗き込む。
自然と上条と吹寄の顔と顔が近づくが、馬鹿は気付かない。
「………ゴクッ」
「えーと、俺の部屋があそこだから… ああ、この角度でいいぜ」
「じゃ、じゃあ、撮るからこれ持っててよ…」
デバイスを上条に持たせると、吹寄が刷毛状のトリガーを取り出す。
「動かないでね…」
デバイスを構える上条の背後から、胸を背中に押し付けるようにして上条に密着する。
ボリューミーな巨乳が、ぐにゃり、と上条の背中で押し潰される。
「ふ、吹寄…!」
「う、動くなって言ってるでしょ!」
デバイスの撮影は、特殊線維でできた刷毛で裏側をなぞることで完遂される。
そのため、それほど大きくない刷毛でA4サイズのデバイス全体をなぞる必要があり、
吹寄は小刻みに身体を動かしながら刷毛を滑らせる。
当然、動きに合わせて吹寄のでっぱいが、打ち粉の上で職人にこねられるうどん生地のように、ダイナミックにその形を変える。
(こ、こいつ… わざとやってるんじゃねーだろーな…!?)
上条は、どうしようも無く股間に沸き起こるオスの本能を必死で抑えた。
. - 251 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:35:08.93 ID:I0fdTQjao
- 吹寄制理の行動は勿論わざとである。
(あたしには、女としての可愛げがない…!)
曰く、『美人なのにちっとも色っぽくない鉄壁の女』。
さらに、幼馴染から『イラ子』と呼ばれるほど吹寄は口うるさく怒りっぽい。
それは吹寄も理解していることで、しかし、同時に矯正は難しいとも感じていた。
考えるより先に、口や体が動いてしまうのだ。
(だから、肉体で釣るしかッ!)
吹寄制理はかなりスタイルが良い。
女子にしては高身長だし、足もスラリと長い。
おっぱいは、トップが3桁に届こうかというバストサイズで(もちろん、アンダーとの落差も相当なロケットおっぱいである)、
陰でクラスメイト男子から『メロンっぱい』と呼ばれるほどの爆乳である。
なんと言うことか、あの麦野沈利よりも巨乳なのだ。
(一度セックスした仲なんだし、もう一度襲われて、既成事実を作り直してやる…ッ!!)
吹寄制理、完全に肉食系女子の心理である。
「か、上条、ずれちゃったからやり直すわね…」
何がずれたのか上条からは判別できないが、吹寄は刷毛を裏返してせっかくデバイスに写した風景を消去していく。
「は、早めに済ませてくれ…」
鈍感な上条は、当然のように吹寄のボディランゲージを解することができない。
しかし、
(鈍感なのは覚悟の上。今は出来るだけ興奮させて、家に上げてもらってからが勝負よ…!)
妄想と願望と、恋慕と情愛が暴走した吹寄の、過激なスキンシップはそれから10分以上続いた。
. - 252 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:35:45.24 ID:I0fdTQjao
- 「こ、こんなモノかしら…?」
都合3回。デバイスの撮影が終わり、ようやく吹寄が上条との密着を解くと、
上条の背中のワイシャツには、見事に顔並みの大きさの汗の染みが2つ出来上がっていた。
「はー、はー、お、終わったか…?」
直立不動で五感から伝わる吹寄の『オンナの体』に耐えた上条が、ようやく緊張を解いて大きく息を吐く。
「じゃ、じゃあ、用も済んだだろ? 今から会う人が居るから……」
「の、喉が渇いたわね! 上条当麻! 貴様は協力したクラスメイトに茶もださないの!?」
「いや、そりゃ、出すのが当然だけど…!」
背中(吹寄のおっぱいが当たってなかった部分)に冷たい汗が流れる。
上条の性格では、「世話になったな、上がって冷たいの飲んでけよ」と言うのが普通である。
しかし、まごまごしていると、怖いお姉さんがここにやってきてしまう。
(ビリビリの二の舞だけは避けないとッ!)
少し恋慕を見せた御坂美琴ですら、あそこまで悪趣味な手でぶちのめした麦野である。
一度手を出したことを告白している吹寄には、どんな手段を弄するか想像もつかない。
脳裏に、御坂美琴の号泣した姿と、あの夜の吹寄が重なる。
さすがに、幼馴染のあんな姿は、もう見たくない。
「…なぁ、吹寄」
「な、何よ、急に真面目な顔になって… ドキッとするじゃない!」
上条のやけに真剣な顔に、吹寄の顔が、カーッ、と紅潮する。
ついでに、
(き、来たッ! 釣れたっ!)
と、いらん勘違いもする。
「俺さ、お前のこと、もう傷つけたく無いと思ってるんだ…」
「よ、ようやく理解したの? 貴様は、もっとあたしに優しくすべきよ!(良い流れ!)」
「一応、俺、けっこう気を使ってるつもりなんだぜ?」
「それなら、もっと行動に示すべきでしょ!(さぁ、早く家に上げなさい!)
「行動、か… でも、強引にすると、またお前怒るだろ?」
「し、してみないとわからないじゃない!(今度は絶対に逃げないから!)」
「そうなのか? 強引にしちゃって良いのか?」
「そうよ! やってみれば良いのよ(よっしゃ、既成事実再ゲットぉぉぉ!!)」
「そうか……」
何かを決心したかのように上条が呟き、姿勢を正して吹寄の正面に立つ。 - 253 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:36:12.07 ID:I0fdTQjao
- 「吹寄…!」
「ひゃ、ひゃい!」
思わず吹寄の声が裏返る。
『メロンっぱい』の奥の心臓が、ドクドクと鼓動を限界まで速める。
(も、もしかして、ここで告白までいっちゃうのッ!?)
乙女煩悩が思考を爆発的に加速させ、コーナーを曲がりきれずにコースアウトする。
「上条… 良いよ……」
「ああ、吹寄……!」
何が良いのか良くわからないが、上条当麻は覚悟を決める。
そして、勢いよく身体を動かし、
ガバッ!!
「……ッ!! ……………ん?」
上条の動きに思わず目を瞑った吹寄が、恐る恐る開眼すると、
「………へ?」
上条当麻は、見事に腰を90°曲げた、深々としたお辞儀をしていた。
「吹寄さん! 今日のところは帰ってください!!」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
瞬間的にこみ上げた怒りに任せて、吹寄が、サラサラおでこのヘッドバットを上条の後頭部に叩き込む。
ゴチンッ!! と、非常に良い音がして、上条が声も上げれずに地面に前のめりに倒れた。
「いったぁぁぁ…!」
もちろん、吹寄もただでは済まず、両手で額を押さえて苦悶する。
そうして、2人でアパート前で悶絶していると、
「…なーにしてんの?」
上条が、今、一番聞きたくない声がした。 - 254 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:37:03.97 ID:I0fdTQjao
- 「………ハイィィ!!」
その声を聞いて、きっかり3秒後に、上条がまるでバネ仕掛けのように跳ね起きる。
「あ、あのッ! これはその、アレがソレでコレがアレで………はい?」
上条が支離滅裂な言葉を口走ったあと、声の持ち主―麦野―を見て困惑した声を出す。
「そんなに慌てなくてもいいじゃない。私がビックリしちゃうわ」
「あ、ああ… え…?」
上条当麻が絶句する。
その原因はたった一つだ。
「麦野、さん… そのカッコ……」
「あら、何か不思議なことでもあるの?」
麦野沈利は、紺色のブレザーに、同色のスカート姿、化粧も控えめのナチュラルメイク、
つまりは、女子高生ルックだったのだ……!
「あの… 貴女、誰ですか…!?」
麦野の存在感に圧倒されつつも、吹寄が詰問する。
しかし、麦野はその質問自体には答えずに、赤くなった顔よりさらに赤い吹寄せのおでこを、さわさわと撫ぜた。
「女の子が暴力は駄目でしょ。赤くなってるから、家に上がって冷やしましょ」
そう言って、2人をアパートへ誘導する。
喉まで出かかった「アンタ、誰だよッ!」という台詞を何とか飲み込んで、
上条は無言でガクガクと頷いた。
. - 255 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:37:50.52 ID:I0fdTQjao
- S-7 偽装アパート 尾立荘 上条の部屋(偽)
「う、つめた……」
冷凍庫の氷とビニール袋、タオルで作った即席の氷嚢を額に当てる。
丁寧に作られたそれは、麦野がテキパキと作ったものだ。
「落ち着いた?」
「は、はい… ありがとうございます……」
まだ頭が混乱したままだが、とりあえず吹寄が麦野に礼を言う。
「当麻クン、また何か女の子に失礼なことを言ったんでしょ?」
「ィェ、ソンナマサカ……」
色々なことに全力で突っ込みたい。
突っ込みたいが、突っ込んだら、恐らく自分の命は無い。
「こんな暑い日に女の子を立たせて… もっとデリカシーを持つようにって、いつも言ってるでしょ?」
「はい、ごめんなさい…」
構図としては、まさしく弟的立場の男の子を叱る、年上のお姉さんである。
そして、大変に意外なことに、そういう仕草が不思議なほどに麦野に似合った。
「さて、と… それじゃ、今日もお昼ご飯作るから、貴女も食べて行ってね?」
そう言うと、麦野は部屋のクローゼットを開け、なぜかそこに有る、可愛いフリルのついたエプロンを手に取る。
手早くそれを見に付け、麦野が1Kのキッチンに移動しようとすると、とうとう我慢の限界を超えた吹寄が声を上げた。
「あ、あのッ!! 貴女は上条君と、どういう関係なんですかッ!?」
「吹寄、それは…」
思わず答えようとする上条を、吹寄が睨みつけて黙らせる。
「どうなんですかッ!?」
恐らく、フレンダか浜面辺りがこの場に居れば、「ぶち殺し確定、アーメン」と十字を切っただろう。
・ .・ ・ .・ ・ ・ .・ ・ .・ .・ .・ ・ ・ .・ .・ ・ .・ ・ .・ .・ .・ .・ ・ .・ .・
しかし、麦野は、恥ずかしそうに目を伏せると、はにかんだ笑みを浮かべた。
「そういうの、大声で他人に言うもんじゃないし… 恥ずかしいわ……」
上条の顎が、かくん、と落ちた。
. - 256 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:38:23.69 ID:I0fdTQjao
- (失礼な態度とりやがって、アイツは~~~!)
台所に立った麦野が、心の中で毒づく。
無論、麦野の変貌はわざとである。
自分でも、キャラではないと十二分に理解しているが、まぁ、やってやれないことではない。
(なるべく、穏便に退場願いたいからね…)
強引に上条から引き離しても良いが、禍根を残すのは、上条の学校生活から考えると良くは無い。
そのため、自然と吹寄から身を引くようにもって行きたいのだ。
吹寄について麦野が知っていることは、今朝、上条から聞いた、メシマズ、世話焼き、怒りっぽい、といった点である。
そこで、麦野が狙ったのが、自分が『優しくて料理の上手い年上の彼女』を演じ、吹寄の劣等感を煽るというものだ。
(処女を捧げたくせに、最後まで『押せない』へたれ女なら、これで充分でしょ)
麦野が余裕綽々な、かつ、思わせぶりな態度をとって女としてのレベルの差を見せ付け、
吹寄が勝手に誤解(ある意味誤解では無いが)をして、上条を諦めるのが狙いだ。
大雑把で穴のある作戦だが、ゴリ押しすればいけるだろうと麦野は考えていた。
(まぁ、たまには女子力あるトコ魅せとかないとね)
料理の腕を見せ付けるのだから、昼食にはそれなりの料理を出さねばならない。
冷蔵庫の中は先ほど確認したが、一通りの野菜と牛肉があったから、サクッと肉じゃがを作ろうと考えている。
(えーと、お出汁は流石に取る時間が無いから、料理酒を使って……)
テキパキと麦野が材料を並べていると、スッ、と違う影が台所に立った。
吹寄だ。彼女は麦野が並べた食材を見ると、輪ゴムと取って長い髪を後ろで束ねた。
「……手伝います。話はそれから」
有無を言わさぬ口調に、麦野がカチンと来る。
が、今の設定は『優しいお姉さん』だ。いつものように切れるわけには行かない。
「あら、座ってて良いのよ? 当麻クンと何か話をしていたら?」
「けっこうです」
そう言うと、吹寄は「肉じゃがですね? 野菜は私が下ごしらえします」と言って、玉ねぎの皮を剥き始めた。
(……おい!)
その滑らかな手つきを見て、麦野が上条に視線を送る。
睨まれた上条が、慌てて吹寄に声を掛けた。
「ふ、吹寄、お前、料理できるの?」
「はぁ? 学園都市で1人暮らししてるんだから、出来て当然でしょ」
「だって… お前の作る料理って……」
言い難そうに上条が言うと、吹寄はしばらく考え込んで、それから何かを思い出して言った。
「……もしかして、中学の調理実習のときのアレ? あれはね、はじめっから『ああいう味』を狙って作ったのよ。
あの健康調味料、それが特徴なんだから」
「…え、そうだったん?」
そうなのである。
吹寄が過去に作ったメシマズ料理は、もちろん、怪しげ健康食品のせいで不味い料理に仕上がったのだが、
あの味は、『健康』を維持するための摂食制限を演出するものなのである。
「そもそも、料理が作れないんだったら、あんな健康調味料使わないわよ」
「まじかよ……」
上条が絶句して麦野をチラ見する。
麦野はにこやかな笑みを浮かべて、「それじゃ、お願いしますね。助かるわ」と朗らかに答えているが、
目が全く笑っていない。
「ふ、不幸だ……」
恐らく、今夜執行されるであろうお仕置きを想像して、上条は力なく呟いた。
. - 257 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:39:20.49 ID:I0fdTQjao
- 「はい、お待たせしたわね」
リビングのちゃぶ台に3人分の昼食が並ぶ。
薄く湯気をたてた料理は、健康な少年の胃袋を大いに刺激した。
「う、美味そう…」
麦野の恐怖を一瞬忘れて上条が呟く。
すると、吹寄が悔しそうに言った。
「…お料理、上手なんですね」
「あら、貴女も充分なんじゃない? お野菜の形、すごく綺麗よ」
「…そういう、切ったり計ったりは得意なんですけど、アレンジ、苦手なんです。だから、テンプレートな味しかできなくって」
「自分の好みを押し通すのがアレンジとは言わないわ。誰かに食べてもらって、感想を言ってもらうのが一番よ」
「味見とか、どういうタイミングですれば?」
「そりゃ、もちろん、味を整える前後にやるのが良いわよ」
「適量って、どういう風に解釈すれば?」
「もっとファジーに考えて大丈夫よ。アレは単に好みで量が変わるだけだから」
自然と会話が続き、麦野沈利が奇妙な気持ちになる。
「えっと……」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。吹寄です、吹寄制理。貴女は…」
「あー… 麦野よ… 麦野沈利」
「麦野さん、ですか……」
噛み締めるように麦野の名前を呟く。
麦野の想定通りの状況ではあるが、どうにも麦野には嫌な予感がした。
「…とりあえず、食べましょう?」
「…はい、頂きます」
麦野と吹寄が示し合わせて、そして上条が慌ててそれに倣って昼食が始まった。
が、会話が発生しない。
(空気が重てぇ…)
上条が女子2人をチラチラ見ると、吹寄は遠慮無しに麦野をジッと見ていて、
麦野は、見られていようが平静を保っている(ように見える)
そして、そのまま続いた無言の団欒の終わり際、吹寄が突然言った。
「…結婚まで考えているんですか?」
「………ングッ!!」
吹寄のあまりな発言に、上条が喉を詰まらせる。
麦野も内心、(手順をどんだけすっ飛ばすんだ、この娘…)と戦慄しながらも、『お姉さん』の仮面をきっちり被って上条の背中をさする。
「…すこし、びっくりしちゃったわ。吹寄さん、そういうことを考えるのはまだ早いんじゃない?」
「そう、ですか…? でも……」
一瞬、口ごもり、そして、一気に言い切る。
「あたしと上条は、親公認の許婚同士なんです。そういう覚悟が無ければ、譲れません」
この日、吹寄、最大級の爆弾発言が投下された。
. - 258 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:39:49.03 ID:I0fdTQjao
- 「い、許婚ッ!?」
一瞬だけ『お姉さん』の仮面が外れて、麦野が驚きの声を上げる。
「どういうことよッ!?」
「し、知りませんッ! 上条さんは何も知りません!! っつーか、テキトーなこと言ってるんじゃねぇよ!」
「て、テキトーじゃない! 中学のときの『中域短期父兄参観』で、ちゃんと上条のご両親に挨拶したの!!」
麦野が上条を、ぎらり、と睨む。
だらだらと滝汗を流す上条が、必死に記憶を探る。
「え、えっと… 確かに、あん時は、お前とウチと、家族全員でメシ食ったけど、そんな話は出なかっただろ…?」
「で、出たもん!!」
吹寄が必死に主張する。
だが、『許婚』は真っ赤な嘘だ。
上条の両親から『制理ちゃん、ウチの当麻をよろしくお願いします』と言われたことを、無理やり拡大解釈して言っているのだ。
(どうしよう… あたし、とんでもない事言ってる……!)
実のところ、冷静そうに見える吹寄制理の脳内は、限界ぎりっぎりまでテンパっているのだ。
この部屋から逃げ出したくてたまらない。いかにも仲の良さそうな麦野と上条を見て居たくない。
麦野の思惑は見事に効果を発揮して、吹寄制理の劣等感をこれ以上ないくらいに刺激した。
いや、刺激しすぎたのだ。
だから、吹寄制理は無謀ともいえる嘘を口走ったのだ。
そして、一度、嘘をついて自暴自棄になった吹寄の口から、あれだけ躊躇っていた言葉が暴発する。
「か、上条… もうこうなっちゃったから言うけど、あたし、アンタが好きだからッ! ホント、好きだからッ!!」
「吹寄……」
誰にとっても最悪のタイミングでの告白だった。
気がつけば、吹寄の目から大粒の涙が溢れている。
「………あぁ、もう」
滅多にないことに、思考が一時フリーズしていた麦野が再起動する。
『許婚』という単語に動揺したが、その後の吹寄の態度からそれを嘘だとわかった。
ならば、確認してしまえば良い。
「当麻クン、ご両親と連絡を取ったら? そうすれば分かることでしょ?」
その台詞に、上条は安堵の表情を見せ、吹寄がビクリと身体を振るわせる。
「うぅ… 上条、やめて……」
「ごめん、吹寄… でも、流石に大切なことだから…」
上条が携帯を取り出して実家にコールする。
麦野がジェスチャーで『ハンディホンにしろ』と指示をだし、上条が操作すると、呼び出し音が部屋中に響いた。
. - 259 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:40:22.16 ID:I0fdTQjao
- S-8 上条の実家 リビング
Prrrrrrrr……
「おーい、お母さん電話。今、ちょっとお土産出すのに手が離せなくてー」
「あらあら、また呪い関係のお土産ですか?
……はい、もしもし上条です。 …あら、当麻さん? どうしたの…?
…え、吹寄さん家の制理ちゃん? もちろん覚えているわ。
あちらの奥さんとは、毎週フィットネスクラブをご一緒してるのよ? 制理ちゃんの話もよくするわ。
………え、許婚? 当麻さんと制理ちゃんが?」
上条当麻の母親たる、上条詩菜の眼光がキラリと光る。
その視線の先は、怪しげな人形を棚に飾ろうとしている夫の姿がある。
唐突だが、上条当麻の父親、上条刀夜は大変女性にモテる。しかも、自覚無しに。
そして、それは確実に1人息子である当麻にも遺伝していて、本人以上に母親である詩菜がそれを実感していた。
(当麻さんも、もう高校生… 制理ちゃんなら、良いお目付け役になれるんじゃないかしら?)
学園都市に1人暮らしで、痴情のもつれで刃傷沙汰でも起こされたらたまったものではない。
詩菜は素早く計算を完了すると、悪魔のような笑みを浮かべて受話器に話しかけた。
. - 260 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:41:02.54 ID:I0fdTQjao
- S-9 偽装アパート 尾立荘 上条の部屋(偽)
『ええ、そうよ。親同士で勝手に決めて申し訳ないけど、吹寄さんとは、そういう風に話を進めているわ~』
「「「はぁ!?」」」
携帯電話からの、あまりにも予想外な回答に、3人が三者三様の驚愕の表情を取る。
「か、上条さんッ! そ、その話はッ!!」
『あら、その声は、もしかして制理ちゃん?
当麻さんに伝えてなくてごめんなさい、これからもヨロシクね~』
電話越しの詩菜の言葉に、泣き顔だった吹寄が喜色に染まる。
「はいッ! お義母様ッ!!」
『うん、良いお返事でママ嬉しいわー。
それじゃ、当麻さん、制理ちゃんと仲良くねー』
プツ、ツーツーツー……
電話が唐突に切られ、部屋の中に一時の静寂が生まれる。
「……改めてお聞きします。麦野さんは当麻とどういう関係ですか?」
「恋人よ」
吹寄が事務的に問い、麦野が抑揚無く答える。
「わかりました、それでは、今日のところは帰ります。
……親の認可を貰ったからって、当麻があたしを見てくれないんだったら、本末転倒ですから…」
吹寄が、スッ、と立ちあがる。そして、麦野に深々と頭を下げる。
「宣戦布告です。絶対に当麻を貴女から取り戻してみせます」
それだけ言うと、吹寄は呆然とする上条の方を向いた。
「あたし、貴方を絶対振り向かせてみせるから…!」
そして、溢れる愛情を示すように、上条の頬にキスをして、顔を真っ赤に染める。
「それじゃ! 首を洗って待ってろ、上条当麻ッ!!」
そう言い残し、吹寄制理は去った。
. - 261 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:41:54.86 ID:I0fdTQjao
- S-8 麦野のマンション Melt kiss リビング
「がぁぁぁぁぁぁ、ムカつくッ!! 何が『宣戦布告』だッ! あの小娘が、調子に乗りやがって……ッ!!」
あれから、昼食もそこそこにマンションに戻ると、麦野沈利は怒りを爆発させた。
何か声を掛けようとした上条は、ボディに前蹴りを食らって悶絶している。
「…クソッ、ここまで計算を外したのは久しぶりね……」
実のところ、麦野が怒っているのは自分自身のミスについてだ。
結局、プレッシャーを与えすぎて吹寄を暴発させたのも、上条に電話を掛けるように指示したのも麦野なのだ。
「あー、腹立つ!!」
ドカッ、とソファに腰を降ろす。
そして、ようやく悶絶から回復した上条を、ちょいちょい、と手招きで呼ぶ。
「ハイ、ナンデショウ?」
「私はアンタを手放すつもりはこれっぽっちも無いから。アンタは私のオトコ。おっけー?」
「…オッケーです」
バツが悪そうに上条が言う。
流石に鈍感な彼も、自分のこれまでの態度が原因だとひどく後悔していた。
「俺がなんとか話をつけて…」
「ばーか、アンタから動いたら、火に油を注ぐようなもんでしょ? しばらくは様子見に徹しなさい」
「はい…」
「はぁ…」とため息を吐いて、麦野が膝を立てて膝小僧を抱える。
いまだにブレザー・スカート姿なので、足の隙間から白いショーツが見えているが全く頓着しない。
上条を『アイテム』に引き入れてから、出来るだけ敬遠していた思考が麦野を襲う。
麦野自身は絶対に否定するが、彼女は『暗部』であることに劣等感を感じている。
ゆえに、性欲や支配欲に代償を求めるが、その犠牲になったモノに対して、少なくない負い目を感じているのだ。
(私があの時、上条クンを『アイテム』に引き入れなかったら、幸せなカップルが出来上がってたんでしょうね…)
所在なげに佇む上条を眺める。
「……突っ立ってないで、横に座りなさいよ」
自分の横の席を、ポンポン、と叩く。
上条がぎこちない動作で座ると、麦野が上条の肩に頭をもたれさせた。
. - 262 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:42:25.27 ID:I0fdTQjao
- 「…麦野さん?」
「ちょっとこのまま…」
(あー、まずい、まずい…)
麦野の中の小さな負い目が、『考えてもどうしようもないのに考えてしまうこと』を食べて成長する。
(…どうしてこうなっちゃうんだろう?)
麦野の身体が小さく震えだす。
麦野沈利の心は強い。
仕事と割り切れば躊躇わず人を殺すことができるし、どんなプレッシャーでも笑って跳ね除ける強い意志もある。
だが、それらは少しずつ、だが、確実に麦野にダメージを与えていた。
そして、吹寄制理に感じた、日向を歩く少女への劣等感が、
ついに麦野沈利の鉄の心を折り曲げてしまった。 - 263 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:43:03.16 ID:I0fdTQjao
- 「……ぐす、ぐす」
上条は、最初、麦野が笑っているかと思った。
なにやら良からぬことを思いついて、暗い情動に笑っているのかと。
しかし、よくよく聞いてみると、それは確かに泣き声で…
「む、麦野さん……」
「ばかぁ、こっち見るなぁ…」
上条の腕が、ぎゅ、とつかまれる。
手入れされて形の良い爪が、上条の肌に食い込む。
「……ごめんね」
「え?」
細く、小さい声が聞こえる。
「人生、めちゃくちゃにしちゃって、ごめんね…」
「………」
上条は絶句して、思わず麦野を見た。
見てしまった。
そこには、ブレザーを着た少女が、膝小僧を抱えて泣いていた。
普段見せる大人びた余裕などカケラも感じない。
等身大の麦野沈利がそこに居た。
「見るなって… ちょっと、やぁ……」
上条は腕を伸ばすと、麦野の身体を自分に押し付けるように抱い寄せた。
「離してよぉ…」
「すいません、でも、離せないです」
さらにぎゅっと、麦野の身体を抱き寄せる。
不謹慎だが、初めて見せる麦野の『弱さ』を、上条はたまらなく可愛く思ってしまった。
同時に、そんな麦野をめちゃくちゃに犯したいという、暴力的な劣情も強く感じた。
「俺、麦野さんと一緒に居て、楽しいですから」
「そんなこと無い、嘘……」
「嘘じゃねぇよ……」
上条は麦野の後頭部を優しく手で把持すると、優しく、しかし強引に口唇を合わせた。
麦野の瞳から流れる涙が、口に入って少し塩辛い。
「ん… ふ…」
舌を絡めあうようなディープキスではなく、お互いの吐息を交換し合うような、深くて長い口付け……
どうしようもない劣情に逆らえず、上条はキスをしたまま麦野をソファに押し倒した。
. - 264 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:43:54.68 ID:I0fdTQjao
- 長い口付けを離して身を起こすと、泣き顔のブレザー少女に馬乗りになる。
「……泣いてる女に欲情するとか、サイテー…」
「泣き顔、すっげぇ可愛い」
「…サイテー」
麦野が、ぷい、とそっぽを向く。
その、一つ一つの仕草が、上条の暴力的な劣情を刺激する。
「犯すぞ…」
「好きにしなさいよ……」
麦野のその許可が、完全に上条の理性を崩壊させる。
ブレザーの前ボタンを外すと、中のブラウスを両手で掴んで左右に引きちぎる。
ブツブツブツッ、と小さなボタンが弾け飛んで、白いブラジャーが顔を見せる。
外す手間も惜しいのか、上条がブラジャーを強引にたくし上げると、麦野の綺麗な豊乳が姿を現した。
上条は無言で豊乳を鷲掴みすると、飛び出た乳首を乱暴にしゃぶる。
「ん… あん… もっと、乱暴に、シテ……」
上条の口技がさらに加速する。
自然と、繊細さよりも勢いを重視した愛撫となり、所々、上条の歯が麦野の乳首に当たる。
そのたびに、麦野に軽い疼痛が走るが、逆にそれが麦野のマゾヒスティックな快感を助長した。
「……噛んで」
耳を疑うような台詞が麦野の口から零れる。
一瞬、上条は躊躇したが、すぐに思い返して麦野の乳首を前歯で、ガリッ、と噛んだ。
「…………ッ!」
ズキッ、とした痛みが、乳首から全身に広がる。
しかし、今の麦野にとっては、痛みこそが心地良い。
「……もっと、もっとぉ!」
リクエストに応えて、強く、強く乳首を噛む。
さらに、空いている手でもう片方の乳首を強く捻る。
ギリ、ギリ、ギリ……ッ!!
乳首から発生する激痛に、麦野の顔が大きく歪む。
しかし、それはどこと無く陶酔した表情だった。
. - 265 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:44:22.31 ID:I0fdTQjao
- 「麦野さん、けっこうマゾ入ってるんだな」
「…そんなわけねぇだろ、馬鹿ッ!」
「いや、本当だぜ… ほら…?」
スカートの中に手を突っ込んだ上条が、ショーツのクロッチ部をまさぐる。
「…もう濡れてる」
「いちいち言うな、馬鹿ぁ…」
口ではそう毒づくが、身体は裏腹に腰を上げて、上条がショーツを脱がせやすいようにする。
ショーツを片足にひっかけ、スカートをめくると、すでにガチガチに勃起したペニスを秘所に当てる。
一瞬、麦野と視線が交叉すると、それを合図に、上条は強引に、そして一気にペニスを挿入した。
ズブズブッ!!
「…………ぃたぁ」
濡れ方が足りてなかったのか、麦野が苦痛の呻きを上げる。
だが、上条はそんなことはお構いなしに、ピストン運動を開始する。
ズリッ、ズリッ、ズリッ…!
上条の長大なペニスが、肉の槍となって麦野の身体を抉る。
歯を食いしばって、その痛みと衝撃に耐えていた麦野だが、次第にその表情に変化が生じ始めた。
「ぐっ、ぐぅ… はぁぁぁ…… ぁん、あぁん……」
いくら乱暴にしていても、ここ数日で幾度と無くセックスをした2人だ。
自然とお互いの腰の動きが同調し、2人が最も気持ち良い動きに変化する。
「はぁ、はぁ、はぁ…… あぁん、んぁあ!!」
結合部から、じゅぶじゅぶ、といやらしい水音が響く。
「…前から思ってたけど、濡れすぎ」
「アンタこそ、チンポでかすぎ… 吹寄ちゃん、よく裂けなかったわね」
イラっときたのか、ピストン運動が速まる。
「あっ、あっ、あっ!! 駄目、もうイクッ!!」
「イッちゃえよッ!! 俺も、くぅ……!」
両手を互いに絡ませて、口唇を互いにあわせて塞いで、
上条と麦野は同時に絶頂に達した………
. - 266 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:45:46.77 ID:I0fdTQjao
- 「…ありがと」
それから数度、体位を変え場所を変え、激しいセックスを終えると、
麦野はいくらか落ち着いた声で上条に言った。
「…オトコの前で泣いたのは初めてだわ」
「俺の前だったらいつでも良いぜ」
「ぷっ…!」
上条当麻の、あまりにもの気障っぽい台詞に思わず吹き出す。
「ばッッッかじゃねーの? セックスのしすぎて、頭がサルになってない?」
「ひっでぇ! 自分だってセックス好きなくせに…」
「あン!?」
「事実じゃん!」
軽く睨みあって、そして、麦野が相好を崩す。
「…敬語、ようやく抜けたね」
「えっ!? あー、まー、そーかも……」
「そっちの方が良いわ、ずっと……」
そう言うと、麦野沈利は破れたり汚れたりしている服を全部脱いで、股間から精液が垂れないようにハンカチを当てた。
「ねぇ、一緒にシャワー浴びよっか。髪の洗い方教えたげる」
「爪の次は髪ですか、へいへい…」
上条も手早く学生服を脱ぐと、不意をついて麦野をお姫様抱っこした。
「きゃッ!」
「そんじゃ行くか」
「もう、調子のんなよ、テメェ……」
口を尖らせながらも、どことなく嬉しそうに麦野が笑った。
―――十数分後、バスルームから再び麦野の嬌声が響いた。
「あ、そうそう、お仕置き決めて無かったわね。
今からしばらくブロウジョブサービス中止ね」
「………地味に辛ぇ」
第2話「恋敵」 了
. - 267 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:48:45.68 ID:I0fdTQjao
- はい以上。
吹寄のあまりにものヒロイン力に圧倒されて、
強引に麦野へシフトした結果がこれだよ。
後悔先に立たず。
2話はこれで終了なので、次から3話。
長めの話になる予定です。
でわでわ。
それと、ブレザー・女子高生ルックの麦野を想像して、
「BBA、無理すんな」と思った奴、
正直に挙手な。
ノ
ちょっと次回予告。あと、上条さんのチンポのサイズは、太さの長径5cm、長さ16cmね。 - 269 :第2話「恋敵」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/12(月) 18:49:47.90 ID:I0fdTQjao
次回予告。
先の見えない哀れな逃走劇。
『暗部』に下る非情なハンティングゲーム。
ターゲットは、単価18万円の哀れな人形。
「―――俺様がやっても良いが、ハッカーを確保する必要があるな」
「―――悲恋か、やりきれねぇな…」
次回「妹編」
書き忘れてたけど、3話はダークなエログロになります。(予定)- 281 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/14(水) 01:18:56.16 ID:13nDQ9Xuo
- ちょっと安価。
今回は詳しく説明。
「次回開始時に既に暗部堕ちしているキャラを選んで」
性格改変をノリノリで行います。
好きなキャラをあえて外すのもありか?
1.こんごーさん : 漫画版の性格をベースに、裏社会にどっぷり染まった強かさをブレンドします。
2.わんない&あわつき : 表面上の性格はそのままで、中身はキマシタワー、的な性格破綻レズカップルにします。
3.やなぎさこあおみ : 固法先輩のルームメイトの風紀委員。暗部との二重スパイにします。当然性格はほぼオリジナル。
ちょっと遠めに↓3
もしくは、本日10:00:00以降初めてのレス。 - 282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/11/14(水) 01:20:14.90 ID:2T/C69MSO
- こんごーさん熱望
- 283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/11/14(水) 01:21:36.87 ID:hCSqUg5Eo
- 1
- 284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/11/14(水) 01:21:59.39 ID:mQFSCzaYo
- 1
- 286 : ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/14(水) 01:27:32.21 ID:13nDQ9Xuo
- …このスレって監視されてんの?
そして圧倒的婚后さん人気にワロタ。
1つ聞きたいが、
超電磁砲8巻、177ページの5コマ目で、
お前ら興奮した? - 307 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 08:59:30.89 ID:pqA5z8+3o
S-1 DAY マイナス1
PM23:00 マンション「Melty kiss」 絹旗命名 「インランの間」
ギシギシギシギシッ…
クィーンサイズのベッドの上で、若い男女が互いを貪りあう。
その豊かな双乳に夥しいキスマークをつけられたキツ目美人の女性は、
ツンツン頭の少年の激しいピストン運動に、喜悦の涙を流す。
「あンッ、あンッ、あンッ!! あぅッ!!」
ピストン運動のたびに、かなり大きめな豊乳が、ぶるんぶるん、と盛大に揺れ、
5,6回突かれるごとに、形の良い顎を反らして絶頂に達する。
「ぅ、締まる…… 沈利、またイッた?」
「さっきからッ、イキっぱなしよ…! 当麻クン、耐えすぎ…ッ!」
既に何回か腟内射精されているのか、結合部から精液と愛液が混ざった液体が吹き零れる。
上条と麦野、通算何度目になるか分からない、ガチセックスの最中だ。
「流石に3発目だからな…! これで長持ちしなかったら、怒るだろ…ッ!!」
ズリッ、ズリッ、ズリッッ!!
四方の膣壁を擦るように、細かい変化をつけてピストン運動を繰り返す。
擦られる膣壁で感じ方が違うのか、麦野の反応も微妙に変化する。
「…あ、ソコッ! ソコ良いわ…!」
「ん、ココ?」
新たに発見した性感帯を、ペニスの上カリでごりごり擦ると、麦野が声にならない悲鳴を上げる。
「―――ッ!! すご… ソコ、良い……ッ!」
「それじゃ、これでラストにするぜ…ッ!!」
新たな弱点を見つけた上条が、その場所をピンポイントに責める。
「………ぉぉおおおおああああああああ!!!!」
シーツを引き千切らんばかりに掴んで堪えていた麦野が、耐え切れなくなって獣のような唸り声を上げる。
「…出すぞ、沈利ッ!!」
麦野の限界を悟った上条が、奥の奥までペニスをぶち込んで勢い良く射精を始める。
子宮のみならず、脳にまで精液をぶっ掛けられたような感覚を経て、麦野沈利はようやく脱力を得た…
.- 308 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:00:50.70 ID:pqA5z8+3o
- 「うぁーーー、すっげぇイッたぁ……」
上条が秘裂からペニスを、ずるり、と引き抜くと、抑揚の無い口調で麦野が呟いた。
下品な物言いだが、こういう言い方をするときは彼女の本心が出ている証拠だ。
「……あー、なぁ沈利」
麦野が上機嫌なのを確認して、上条が躊躇いがちに声を掛ける。
「あのさ、そろそろ、解禁してもよくね? …お掃除フェラ?」
吹寄の件からフェラ禁止になってから1週間ほど。
あの時の充足感が忘れられない上条は、麦野の機嫌の良いときにおねだりをしようと、タイミングを計っていたのだ。
しかし、麦野は無言で自分の秘裂に人差し指と中指を突っ込みと、ぐちゅぐちゅ、と盛大に腟内を掻き回す。
そして、精液と愛液が付着して、湯気が立つほどにふやけた指を上条の前に突き出した。
「舐めて」
「………っえ?」
「はい、ブ~~~!! 『己の欲せざる所人に為す勿れ』ってかぁ?
テメェができねぇことを、彼女に強要させんじゃねーよ」
口調はそこまで激しくないが、ガン拒否である。
「いやッ! 舐める舐める、舐めさせていただきますッ!!」
「遅いっての。つーか、ちっとは我慢しろよ」
やや呆れた口調で麦野が言う。
「くそぅ… あれ、マジですげー感動するんだけどなぁ…」
「こんな良いオンナに、生ハメ中出ししてんだから、ぜーたくなこと言うな、バカ」
零れた精液がシーツを汚さないように、麦野がティッシュで秘裂を押さえる。
「はい、抱っこ」
麦野が片手を上条に伸ばすと、心得た上条が麦野を軽々とお姫様抱っこをする。
いつものパターンでは、このままバスルームに直行して一緒にお風呂を入るのだが、今回は無粋な電子音がそれの邪魔をした。
Pipopipopipo......
独特な電子音に、麦野の表情が「げぇ…」と歪む。
「…ぜってぇ、タイミング計ってやがったな、覗き見ヤローめ…」
憎々しげに呟いて、傍らの携帯電話を取る。
とりあえず、上条が麦野を抱っこしたままベッドに腰を降ろすと、麦野は電話の通話スイッチを押した。
. - 309 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:01:26.02 ID:pqA5z8+3o
- 『や、先ほどはお楽しみでしたね♪』
「ブチ殺されたくなかったらとっとと用件を言え」
予想通り、電話の主は『アイテム』に仕事の斡旋をする、通称『指示役の女』だ。
『へーんだ、可愛い子犬ちゃんと昼夜問わず盛っちゃってさぁ… この淫乱女めッ!!』
「そういうアンタは、もしかしてクモの巣張ってんじゃないの? 早く使わないと、オンナやめるハメになるぞ?
……あ、もしかして、すでに閉経しちゃってる?」
『こ、こいつときたら…… なんでそう下品な言葉がポンポン出やがるんだ……!?」
「うっさい、良いから、とっとと用件を言えッ!!」
『指示役の女』は、それでもまだブツブツと文句を言っていたが、間を取るように、「あ~ごほん」と咳払いをして話し始めた。
『…今回のお仕事は『奪還・回収』よ。まぁ、よくある『外』への技術流出の阻止ね。
詳しくは後から説明するけど、アンタらにはハンター役をやってもらうわ』
「ちっ、めんどくせーな… つうか、即応しなくて大丈夫なのかよ?」
学園都市の『10年以上先を行った』技術は、学園外の科学者にとっては垂涎の的だ。
当然、技術の流出には気を使うし、事前に察知しているのなら、即応部隊が即確保するのが通例だ。
『それが色々と複雑っつーか、やっかいな事情があってねぇ。アンタらに動いてもらうのは明後日になるんだわ』
「…げぇ、嫌な予感しかしねぇぞ?」
『あ、それ多分当たってる。
今回のメインは、当然、トチ狂った科学者の逃亡阻止と技術奪還なんだけど、
裏にもう一つ目的があって、逃亡者を泳がせて、逃亡を幇助する反学園都市の組織を把握するわ』
「だりぃ… 悪いけど、アタシはパスね。とっとと目標を確保して終わらせてもらうわ」
『コイツときたら… ま、普通に仕事をやる分には文句は言わないわよ。
敵対組織のあぶり出しは、『他の暗部』がやってくれるでしょーから』
『指示役の女』の言葉に、麦野の表情が歪む。
「『暗部』を総動員するつもりか… よっぽど上質の餌なんだな?」
『それは資料を読んでから判断してください。それでは、健闘を祈ります』
電話は唐突に切れた。
麦野は忌々しげに携帯をベッドに放り投げると、上条の耳に口を寄せて言った。
「お風呂で楽しんだら、皆に連絡してちょうだい。けっこうでかいヤマになりそうよ…」
日常が終わり、非日常が幕を開けようとしていた……
. - 310 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:02:32.66 ID:pqA5z8+3o
- S-2 DAY -1
同時刻 とある路地裏
学園都市の路地裏を、大きなスポルディングバッグを肩から下げた、中肉中背の壮年男性が歩いている。
あまり運動慣れしていないのか、それともバッグが相当に重いのか、ぜえはあ、と肩で息をしている。
フルチューニング
「マスターマスター、マスターの鼓動が頻脈です。適切な休憩が必要です、と、ミサカ00000号が申し上げます」
「……うるさい、休憩はあとだッ!」
男の3歩半後ろを、一人の女性が歩く。
この女性も、大きめのバッグを肩に架け、両手にボストンバッグを下げる重装備だが、男と違って息の1つも上がっていない。
「『暗部』が動き出す前に、ある程度の仕込みを済ませておかねばならん。休んでいる暇は無い…!」
男は1つ気合を入れると、傍らの女性を見た。
その女性は男よりも少し背が低く、162cmほどの身長で、身体の線が見えない緩めのワンピースを着ている。
頭にはつばの広い麦わら帽子を目深にかぶっているため、表情を探ることは出来ない。
「マスターマスター、わたくしめの計算では、小休止を取った方がより効率的です。と、ミサカ00000号が申し上げます」
「…うるさい、黙って私について来い… 命令だ!」
「マスターマスター、命令を『統合・解釈』いたしました。発語を休止し、マスターに追随します。と、ミサカ00000号が申し上げます」
「…ああ、それで良い」
『マスター』と呼ばれた男は、しかし、足を止めて少女を見た。
(くそ… どうして私は、こんなことを……)
男の表情が、形容しがたい形に歪む。
後悔をベースに、諦観と愛想と、そして決意をミックスしたような表情だ。
発語を禁止されているためか、女性が首をかしげて疑問を向ける。
「…なんでもない、行くぞ」
男は女性の疑問には答えず、踵を返して歩き始めた。
女性も、それ以上追求しようとせず、きっちり3歩半下がった位置で、男に従って歩き始めた。
男の名前は天井亜雄。
数日後には、学園都市の『暗部』ほぼすべてから狙われる、哀れな研究者だった……
. - 311 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:04:33.42 ID:pqA5z8+3o
- S-1 DAY 0
PM1:00 「とある」ファミリーレストラン
「超電磁砲(レールガン)の複製人間(クローン)~~!?」
とある昼下がりのファミリーレストランに、フレンダ・セイヴェルンの素っ頓狂な声が響く。
「ふれんだ、こえがおおきい」
「あ、ゴメン、滝壺。 …でも、どーしてそんな物が作られた訳?」
窓際19番のファミリー席には『アイテム』全員が揃っており、黒一点な上条はどうにも居心地が悪い。
「『どうして』かは、超簡単にわかるでしょう。
レベル5を量産できれば、学園都市のパワーバランスが、超ひっくり返りますから」
絹旗の言うとおり、超能力者(レベル5)は、それ1人だけで一国の軍隊に匹敵すると言われている。
その量産が可能ならば、世界征服も夢ではないだろう。
「問題は、なぜ『超電磁砲』か、ということね。
資料によると、クローン作成に使われたDNAマップは、超電磁砲が10歳のときのものらしいわ。
その時、あの小娘はレベル1にも達していなかったそうよ」
あまり興味の無い風に麦野が言う。
「ワケわかんねぇな。学園都市側は、ビリビ… 御坂がレベル5になるのが分かっていたって言うのか?」
『ビリビリ』と言い掛けた時、麦野に、ギロリ、と睨まれて、上条はあわてて言い直した。
うっかり失言をして、また要らないフラグを建てないように、麦野によるデリカシー強化訓練である。
「DNAマップ提供の目的は、筋ジストロフィーの治療となっているけど、可能性としてはそれも有るわね……
アタシだって、最初からレベル5をめざした特別カリキュラムを経てレベル5になったんだし」
珍しく麦野が遠い目をして言う。
麦野はあまり自分の過去を語らない。
それは『暗部』であることからの戒めなのか、それとも、別の理由なのかは定かではない。
ただ、漠然と『聞くべきではない』と、上条は感じていた。
「……それで、こんかいのたーげっとは?」
停滞した雰囲気を、やんわりとした滝壺の声が破る。
「…えーと、『天井亜雄』 量産型能力者計画、通称『レディオノイズ』計画の超責任者ですね」
「『レディオノイズ』計画は、御坂美琴の体細胞クローンの作成に成功するも、
その性能はオリジナルの1割に満たなかったため、計画は凍結……
結局、レベル5の量産は失敗に終わったって訳」
「つまり、あまいさんの研究はしっぱいにおわった?」
「結論から言うとそうね。
私財を投じた研究が失敗に終わり、巨額の負債を抱え、ニッチもサッチも行かなくなった哀れな天井研究者は、
唯一の『研究成果』を手土産に、学園都市外部に亡命しようとした、と」
「そして、その『研究成果』がこの娘か……」
上条の手の中には、掌大の撮影デバイスがある。
そこには、過去、彼に何度も勝負を挑んできた少女、御坂美琴に良く似た少女が写っていた。
研究成果とは、即ち、1体だけ生産されたクローンのプロトタイプである。
. - 312 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:05:16.85 ID:pqA5z8+3o
- オリジナル
「ミサカタイプ・クローンか… どー見ても御坂美琴本人よりも肉体的に成長してるわね」
「クローンですから、実年齢は数歳程度でしょうね。…精神年齢が何歳かが気になりますが」
デバイスに写る少女は、上条や麦野が遭遇した御坂美琴よりも若干大人びて見える。
「能力は強能力(レベル3)の劣化電気(レディオノイズ)。
出力は超電磁砲の1割未満みたいだけど、『電気使い(エレクトロマスター)』としては充分な能力ね。
電気的なトラップや追跡手段は使えないと見て良いわ」
麦野が冷静に分析する。
「ですが、ウチには滝壺が居ます。
これは超大きなアドバンテージでしょう」
絹旗が滝壺を見ながら言う。
滝壺の能力である『能力追跡(AIMストーカー)』は、たとえ地球の裏側に居ようとも、能力者であれば完全にその位置を補足できるものだ。
『体晶』のサポートが必要とはいえ、かなり強力な能力だ。
「…まかせて」
注文したパフェをもぐもぐ食べながら、絹旗が言う。
「でも、結局動けるのは明日からなんでしょ? めんどくさー…」
フレンダが呆れたように両手を挙げる。
絹旗、滝壺も同様の感想のようで、互いに頷きあう。
「どうも、学園都市側は今回のヤマを特別視しているみたいね。
ドクター天井の逃亡も仕組まれた匂いがするわ」
「というと?」
「…具体的な結論を出すには情報が少なすぎるわね。
とりあえず、今日は各自情報を頭に入れて、明日から行動を開始するわよ」
上条の質問を微妙にはぐらかし、麦野が会話を締める。
何か用事でもあるのか、フレンダが一番に席を立った。
「とりあえず、アタシは浜面通じてスキルアウトに探りを入れておくわ。
妹の様子も見ておきたいしね」
そう言って、お気に入りの帽子を被るフレンダに、麦野が声を掛けた。
「フレンダ、それならコレも連れていってちょうだい。
スキルアウトにツテもあるみたいだし」
麦野が上条が指差して言う。
事前に話してあったのか、とくに動揺も無く上条が立ち上がる。
「…ま、別に良いけど、妹に色目使わないでよ?」
「しませんって、上条さんをどんな風に見てるんですか…?」
「性獣」
「……ひどい誤解だ」
顔に手を当てて落ち込む上条を、麦野が頭をはたいてどやしつける。
「変に気にすんじゃねぇよ、余計に怪しいだろうが。とっとと行って来い」
「へーい、そんじゃ、フレンダさん、ヨロシク」
「あいさー。いやー、上条が居てくれると助かる訳よ」
何が嬉しいのか、満面の笑みを浮かべてフレンダが言う。
「…フレンダぁ、手ぇ抜いてトチったら、容赦なく処分するからな。調子のんなよ?」
「う… 分かってるわよ。仕事はきっちりこなすから…!」
ドスの効いた麦野の台詞に、フレンダは思わず冷や汗を流した。
. - 313 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:05:54.89 ID:pqA5z8+3o
- S-4 DAY 0
同時刻 某ホテル最上階ペントハウス。
「相手は『電気使い(エレクトロマスター)』だからな、
俺様がやってもいいが、ハッカーを確保する必要があったわけだが…」
学園都市を一望できる高級ホテルの最上階。
機能的な生活空間や、それと不釣合いなほど電子化されたシステムスペースがあるペントハウスに、特徴的な男女4人が居た。
「それで、塔下くんがナンパしたのが彼女なの?」
最初に言ったのは端正な顔立ちをした長身の青年で、
それに応えたのは、小柄な、しかし、大人が着るようなイブニングドレスを見に纏った少女だ。
「ナンパっつーか、ネットに複雑な暗号キーを置いて釣っただけですけどね。
まさか、こんな娘が釣れるとは思っていなかったです」
そう言ったのは、天使の輪のような金属環が頭部をとりまいている少年だ。
少年―塔下―が見下ろした先には、ソファに横になったローティーンの少女が居る。
その少女は、たくさんの花をかたどった髪飾りで頭を飾っている。
「この小娘が『守護者(ゴールキーパー)』だってか。弱能力者(レベル1)なんだろ?」
「僕も信じられないですが、状況証拠的に真実のようです。
現に、垣根さんが構築して、僕がアレンジしたデコイをあっさりと解析していますし」
塔下が肩をすくめる。
それで納得したのか、青年がドレスの少女に目線を送る。
「まあいい、確認してみりゃ分かることだ、『心理定規(メジャーハート)』を使ってくれ」
・ .・ .・ ・ .・ .・ .・ ・ ・ .・.・ .・ ・ .・ .・
「了解。戦闘能力はないみたいだから、貴方と距離単位5まで縮めるわよ」
ドレスの少女が、花の少女に近づき覚醒パッチを鼻に当てる。
わずかな身じろぎと共に、花の少女が目を開くと、ドレスの少女が「パーソナルリアリティ(自分だけの現実)」を展開した。
「…………………………ぁ」
目覚めたばかりで状況が理解できない花の少女は、周囲をキョロキョロと見回して、最終的に視線を青年に向けた。
「よう、良い夢を見れたか? ちなみに俺は垣根帝督という。あんたの名前は?」
花の少女の視線を真っ直ぐ受け止め、青年―垣根帝督―が微笑む。
その笑みをどう解釈したのか、花の少女の頬がみるみる紅潮し、恥ずかしそうに視線を落とす。
「う、初春、初春飾利です… 垣根さん……」
飴玉を転がすような甘ったるい声で、初春飾利は答えた。
. - 314 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:07:36.24 ID:pqA5z8+3o
- 「初春か、面倒だから呼び捨てにするぞ、いいな」
「はい… かまいません……」
垣根に見つめられるのが余程恥ずかしいのか、初春は人差し指を、もじもじ、と擦り合わせて視線を合わせようとしない。
(相変わらず、えげつねー能力だなー)
その様子を見て、塔下が戦慄ともとれる感情を抱く。
『心理定規(メジャーハート)』は精神感応系の大能力(レベル4)で、
その効果は「人の心の距離を自在に調節できる」という恐ろしいものだ。
効果の強度は、彼女が独特に用いる『距離単位』という単位で設定し、
距離単位5は、例えるなら、そのアイドルの為に100万単位の金銭を惜しみ無く浪費する熱狂的なファンほどの距離だ。
「そんなに緊張することは無いさ。少しお前に手伝ってもらいたいことがあってな。それで、ここに呼んだわけだ」
「は、はいッ! 何でも言ってください!!」
今の初春にとって、垣根は親、親友以上に心を許す相手だ。
その場で愛の告白をしてもおかしくない心理状況なのだ。
「じゃ、頼みごとの前に1つ確認だ。
初春は、『守護者(ゴールキーパー)』と呼ばれる凄腕のハッカーだよな?」
「はい、そうです。 …どうして、垣根さんがそのことを?」
「そこは気にするな」
「はい、わかりました」
疑問に思って首をかしげるが、垣根がその疑問を一蹴し、初春が素直に頷く。
「頼みごとってのは、とある犯罪者の追跡だ。
学園都市の技術を『外』に流出させようとしている悪い奴だ。
そいつの足取りを追ってくれ」
垣根の言葉を、コクコク頷きながら聴いていた初春は、納得したように、最後に大きく頷いた。
「なるほど、よく分かりました。
ということは、垣根さんは『警備員(アンチスキル)』、もしくは『風紀委員(ジャッジメント)』ですか?」
「…いや、そうじゃない。これは俺様の私的な頼みごとだ」
魅了しているとはいえ、凄腕のハッカー相手に嘘をつくのは不味いと判断し、垣根ははぐらかした。
しかし、それが致命的なミスとなった。
「それでは、お引き受けできません」
「……なに?」
相変わらずもじもじと、しかし、はっきりした口調で初春は拒絶した。
「…もう一度言うぞ、犯罪者の追跡に協力してくれ」
「すみません… 垣根さんの私的な用件であるなら協力できません。
犯罪者の追跡ならば、『警備員(アンチスキル)』に任せるべきです」
さらに拒絶を受け、どういう事か、と垣根はドレスの少女を見た。
「……おそらくは、『どんなに親しい相手でも譲れない一線』が彼女にはあるんでしょうね」
「見た感じですが、『ハッカーとしての能力を悪用しない』とか決めてるんじゃないんですかね」
ドレスの少女と塔下が順番に言う。
垣根は「チッ… ムカつくぜ…」と1つ舌打ちをすると、
「初春、そうなのか?」と初春に尋ねた。
「はい、私のハッキング技術は限定された状況でしか使いません。
些細な頼みごとならば状況により行いますが、犯罪者を追跡するような高度な操作を私用で使うわけにはいきません」
初春の回答に垣根は天を仰いで嘆息した。
『心理定規(メジャーハート)』の高い能力は垣根もよく分かっている。
それなのに、自己を曲げない初春の克己心が凄まじいのだ。
「ドジ踏んだぜ、クソ…… 能力を解除してくれ」
ドレスの少女が、肩をすくめて能力を解除する。
すると、それまで熱視線を送っていた初春が、始めは呆然と、次第に理解へ、
そして、最後に憤怒の表情を作って垣根を睨みつけた。
. - 315 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:09:47.33 ID:pqA5z8+3o
- 「人の心を…… なんてことを……ッ!!」
「おいおい、素直に協力してくれれば、最後までお前はハッピーだったんだぜ? 自業自得だ」
怒りを押し殺した声で言う初春に対して、垣根が吐き捨てるように答える。
その声には、若干の怒りが含まれていた。
「貴方がたは何者ですか…?」
「『スクール』。もしかしたら知っているかもしれんが、学園の『暗部組織』だ」
あっさりと垣根が言い、初春の表情がより険しくなる。
「…内実は知りませんが、非合法な組織の存在は確認しています」
「そりゃ結構… じゃ、正気の初春に再度お願いだ。俺たちに協力してくれ」
「まっぴらごめんです…!」
今度は明確に初春が拒絶する。
ドレスの少女と塔下が、互いに顔を見合わせて「あちゃー」という表情を作った。
「貴方がたがどんな目的で活動していらっしゃるのかは分かりませんが、
非合法な活動に手を染めることはできません!!」
「オーケィ、オーケィ。わかったから耳障りな声で喚くな、喧しい」
垣根帝督が不機嫌そうな声をだして、ギロリ、と初春を睨む。
しかし、なおも初春が言い募ろうとした、その瞬間、
「………………!?」
初春の口から発語が止む。
それは、まるで声が口から出る前に『見えない壁』に吸い込まれているかのようだった。
驚き、身体を動かそうとするが、今度は手足が見えない枷でも嵌められているかのように動かない。
動作と声を封じられた初春が、青ざめた表情で垣根を見た。
「まぁ、予想はつくだろうが能力を使わせてもらった。テメェがどんな手段を用いようが解除はできねぇ。
――俺の未元物質(ダークマター)には常識が通用しねぇからな」
垣根帝督、学園都市の頂点である超能力者(レベル5)の第2位である青年が、残忍な笑みを浮かべる。
「…どうするんですか?」
「搦め手が効かねぇなら、正攻法で責めるしかねぇだろ」
垣根の言葉を聞いたドレスの少女が、「可哀想に…」と呟く。
「初春よ、ギブアップするなら早めにな、俺だって趣味じゃねぇんだからよ」
低く、無機質に調整された声色に、初春は確かな恐怖を感じた……
. - 316 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/19(月) 09:12:27.74 ID:pqA5z8+3o
- はい終了。
次回は丸々初春回の予定。
予告どおりエログロ(作者の中では)やります。
初春にしたい、あーんなことやこーんなことをレスしてたら、
もしかしたら文中で実現するかも!?
それではまた次回。 - 342 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:29:21.74 ID:MJ7IQNoso
S-5 DAY 0
13:30 ペントハウス
「~~~~~~~~~~ッッ!!!!!」
ペントハウスに声無き絶叫が響く。
絶叫の主は初春だ。
いったいどういう能力干渉を受けているのか、彼女はソファの上で両手両足を支離滅裂に動かし、
両目の瞳孔を限界まで拡げ、苦悶の表情で千切れんばかりに首を振る。
「えぐい… 気が触れるんじゃない?」
「いったん止めるか」
無表情にのたうちまわる初春を見下ろしていた垣根が、指をパチンと鳴らす。
すると、あれほど暴れていた初春が、糸の切れた人形のように、くたり、と動きを止めた。
「意識有るか、おい」
垣根が初春の肩を軽く足蹴すると、初春はのろのろと顔を上げて焦点を垣根に合わせた。
「…なにを、したん、ですか………?」
今にも消え入りそうな弱々しい声で初春が尋ねる。
「あん? 別に難しいことじゃねぇよ。
てめぇの『感覚』を『未元物質』で全部インターセプトしただけだ。
言ってる意味、分かるか?」
垣根の言葉に、初春が激しく震えだす。
感覚を遮断する。
それはつまり、五感を含めたすべての体性感覚、深部感覚が無くなるということだ。
何も見えず、何も聞こえず、何も言えず、何も感じない…
暗闇よりももっと恐ろしい『何か』に、初春は叩き込まれたのだ。
「よし、理解したならもう一回だ。今度は長く時間を取るぞ」
「ま、待ってくだッ」
初春の制止もむなしく、垣根帝督は冷酷に「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開した。
.- 343 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:30:01.48 ID:MJ7IQNoso
- はじめは闇。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚を奪われ、完璧な闇が初春を包み込む。
人間は本能的に闇に恐怖を抱く。
頭で理解していても、それでもゾクリとした恐怖が初春を襲う。
次に不可触。
触覚が完全に遮断されると、それまで触れていたものすら知覚できなくなる。
結果、それまで座っていたソファを認識することができず、支持面の喪失を脳が認識するが、現実の身体はソファに座っている。
認識の齟齬が発生し、脳が混乱する。
最後に自己の喪失。
人間は運動覚、位置覚と呼ばれる深部感覚によって、自分がどこに居るのか、自分の身体がどんな位置にあるのかを認識している。
しかし、その感覚を喪失してしまうと、自分で自分の身体を認識できなくなる。
・ ・ ・
結果、初春は無感覚の渦に溺れた…!
(怖いッ、怖いッ、怖いッ、怖いッ!!
助けてッ!! どこになにがあるのッ!? 私はどこッ!? ここはなにッ!?)
わずかでも感覚情報を得ようと、初春が手足をやたらめったらに振りまわす。
しかし、どんなに足掻いても手足は何も知覚してくれない。
いや、そもそも振り回している手足の情報すら脳に伝達されない。
初春には、自分が何をしているのかすら理解することができない。
(声が出せない…ッ 何も触れない…ッ 手足を感じない…ッ 体温も感じない…ッ!!
私、死んじゃったの……ッ!!)
形容するなら『幽霊の感覚』だろうか。 ・ .・ ・
思考だけが明確に維持されているが、まるで手足が落とされただるまのようだ。
何もかもが混乱し、思考が滅裂となる。
直接は操作を受けていない呼吸すら不規則になり、脳が乏血に陥る。
・ ・ ・
とうとう、手足を動かすことすら不可能になり、おこりのような痙攣が初春を包んだ。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!」
狂う… 初春の残された理性が、その二文字を思い描いたとき、
唐突に感覚が元に戻った。
「………………っはぁああああああああああッ!!!!!」
いっぺんに感覚が脳に伝達され、初春が少女とは思えない呼気を発する。
全身の汗腺が一気に開き、気持ちの悪い油汗がぐっしょりと肌を濡らし、そして…
ちょろろろろ………
あまりにもの恐怖に膀胱括約筋が緩んだのか、初春はカエルが潰れたような体勢で失禁した。
. - 344 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:30:59.61 ID:MJ7IQNoso
- 「花飾りのセーラー少女、拷問の末の失禁かぁ… 絵になるなぁ、激写激写っと…」
塔下が嬉しそうに初春の痴態をデジタルカメラで撮影する。
「悪趣味… 近寄らないで、ヘンタイ」
「弱み弱み、脅すカードは多い方がいいでしょ?」
そう言って撮影を続けていると、フラッシュの光が眩しかったのか、初春が薄く目を開いた。
「…ギブアップするか?」
垣根が短く尋ねるが、初春は黙ったまま小さく首を振る。
その反応に、塔下は「ヒヒ、そうこなくっちゃ」と卑屈に笑い、ドレスの少女が額に手を当てて嘆いた。
「…初春さん。悪いこと言わないから、強情張らないで協力してちょうだい。本気の本気で、ただじゃ済まないわよ?」
「……駄目です、みさなん、警備員(アンチスキル)に出頭してください…」
初春の回答に、ドレスの少女ががっくりと肩を下ろす。
「この期に及んでこの娘は… 偉いっつーか、馬鹿っつーか……」
「風紀委員(ジャッジメント)なんでしょ? そーゆープライドが高いのかもですよ」
「風紀委員だろうがなんだろうが、馬鹿に変わりはねぇな。せっかくの技能を無駄に潰してやがる。
弱能力者(レベル1)つーのも、納得できるぜ」
吐き捨てるように垣根が言うと、彼はゆっくりと初春に近づくと、セーラー服の襟首を掴んで、強引に初春の顔を引き寄せた。
「いいか、てめぇは最後にはギブアップする。そういう拷問を俺たちがするからだ。
ダメージの少ないうちに協力するのがクレバーな対応だったんだよ」
互いの呼吸が感じられるまで顔を近づけて言う。
初春は気丈に垣根と視線を外さないが、その表情は不安に満ちている。
「だが、ムカつくことにてめぇは最も愚かな選択をした。だから俺も容赦しねぇ。」
言い終わると、垣根は初春の身体をなぜるように手を振った。
すると、どんな能力干渉が行われたのか、初春の服が、熱せられたアスファルトの上の氷のように、融けて消えた。
「ひ、ひゃああ!!」
流石に慌てた初春が両手で胸を覆い、太ももにぎゅっと力を入れる。
歳相応の慎ましい胸が、一瞬だけ露わになった。
「さて、と。月並みな言葉だが言わせて貰うか…」
口の端を釣り上げて垣根が笑う。
「女に生まれたことを後悔させてやる…」
耐えられないかもしれない。
ヒビ
磨耗した意識の中で、初春は精神に皹が入るのを感じた。
. - 345 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:31:58.54 ID:MJ7IQNoso
- 「塔下、てめぇの出番だ。動きは制限してるから存分にやりな」
垣根がそう言って初春から離れる。そして、そのまま部屋から出て行った。
悪魔が居なくなって、初春は身体を動かそうとしたが、手足が鉛のように重くなってその行動を縛る。
(これも能力でしょうか… なんてインチキ…)
初春がそうやって無駄な抵抗をしていると、塔下と呼ばれた少年が嬉々とした表情で近づいてきた。
「さぁて、久々に全力で行きますか……」
いつの間にか用意したのか、塔下が自分の頭に装着している金属環と同じものを持ち、
初春の隣には小さな冷蔵庫ほどのワークステーションが設置されていた。
金属環とワークステーションは絹糸のような細い導線で繋がれており、付属しているモニタには様々な数字が踊っている。
「初春ちゃん、動かないでねー。ちょっとプスっといくから…」
塔下はそう言うと、金属環を初春の頭周にセットし、ワークステーションのコンパネを叩く。
シュ… という軽い発射音と共に、金属環から計8つの導針が伸び、初春の頭部に接着される。
痛みは無いが、頭部に花飾り意外の物が装着されることに、ひどい違和感を感じる。
「んー、パルス確認… 次は脳波っと……」
モニタに表示される矩形波を見ながら塔下がちょこちょこと操作を行い、やがて大きく納得したように頷く。
「おっけー、出力はこれで良し、と。そんじゃ、入力機器を挿入しよっか」
そう言うと、塔下は初春にとある細長いモノをかざして見せた。
それは、ありていに言ってしまえば、男性器をかたどった張り型で、底部からやはり細い導線が伸びている。
「……それで、私を犯すつもりですか?」
流石に予想もしていたし、覚悟もしていたのか、動揺を押し殺した声で初春が言う。
しかし、塔下は笑顔で首を振った。
「え、いや、そんな酷いことしないよ。やっぱり処女喪失はホンモノが良いでしょ?
これは別の穴専用。その方がパルスを入力しやすいから」
そうして、塔下が新たに取り出した物を見て、今度こそ初春の顔が引き攣る。
塔下が取り出したのはイチヂク浣腸器だ。
「や、やめてください……」
「いきなり挿入したら裂けちゃうしー、中にブツが残っているとノイズが多いんだよね。
さ、さ、いよいよ乙女の花園がご開帳ですよ~」
おどけた口調で、しかし、有無を言わせぬ力で塔下が初春の太ももを割り開いた。
初春も必死に力を入れて太ももを閉じようとするが、上手く力を入れることが出来ない。
「嫌ぁ!」
「ひひひ、いい悲鳴だねぇ~。でも、残念でした~」
「……死ねよ、ヘンタイ」
傍らに立つドレスの少女が、ボソッ、と呟く。
同性としては、流石に不快感が強いのだろう。
しかし、そんな声もどこ吹く風で塔下は初春の股を開帳し、一気に初春の身体を折り曲げた。
微かに尿臭がする無毛の割れ目、ほんの少しセピア色にくすんだ菊座が、完全に露出した。
「初春さん、お願いだからギブアップしてちょうだい。コイツはガチでやばいヘンタイよ。本気で壊されるわよ」
「余計な事言うなよ、エセキャバ嬢! あ、死ぬ事はないから安心してね、初春ちゃん」
初春の歯の根が、カチカチと音を立て始める。
悪党に自分のスキルを悪用されるのは、学園の秩序を取り締まる風紀委員(ジャッジメント)としても、
超A級ハッカーとしても、そして、初春個人としても、死んでも拒否したいことだ。
しかし、自分の心を存分にもてあそんだドレスの少女。
その少女が「ガチでやばい」というこの男に何をされるのか……
決意と覚悟が、恐怖によって大きく揺らぎ始めた。
. - 346 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:32:42.83 ID:MJ7IQNoso
- 「はい、注入~」
何のためらいも無く、塔下が初春の肛門にイチヂク浣腸を突き刺し、中の液体を腸内に注入する。
冷たい液体が腸内を逆走する感覚に、初春が「ひっ…」と短い悲鳴を上げた。
「コレ、無駄にハイテクな学園都市謹製の浣腸液だから、便臭は全部消えるから安心してね」
何をどう安心すれば良いのか分からない。
ただ、注入された浣腸液はすぐにその効果を発揮し、初春は腸が蠕動運動を始めるのを感じた。
(お、お通じ… 前はいつでしたっけ…!?)
確実に訪れるであろう惨劇に、初春の心を絶望感が覆う。
「さーて、トイレの準備~」
鼻歌を歌いそうなハイテンションで、塔下が1m四方の厚手のシートを取り出し、初春の殿部に敷いた。
それの意味することを悟った初春が思わず叫ぶ。
「……ッ、まさかッ!?」
「うん、これが初春ちゃんのトイレ。さっきも言ったけど、臭いは消えるから、安心して出して良いよ」
そう塔下は言うが、冗談ではない。
先ほどの失禁は、ほとんど無意識の粗相だったが、今は意識もクリアだ。
人前で排泄など、人間としてのプライドが許さない。
「と、トイレに行かせてください…!」
次第に強くなる便意に顔を歪ませて初春が懇願する。
「おぉ、テンプレ通りの台詞を自分から言ってくれるなんて、初春ちゃん分かってるね~。
…でも、もちろんだーめ」
心底嬉しそうに塔下が言う。
「女の敵が……」
ドレスの少女が、心配そうな表情で初春に近づいた。
「初春さん覚悟を決めて。
身体に悪いことじゃないし、コレをしておかないと、後が本気で辛いから…
早めにギブアップしなさいよ」
ドレスの少女が、初春の下腹部を優しく撫ぜる。
暖かい手の掌で撫ぜられて、便意が少し軽くなる。
(……そうです、直接痛めつけられるわけではないですから、恥ずかしさを我慢すれば)
浅く息を整えて、冷静になろうと初春が首をめぐらす。
そうして、とある一点を見つめた瞬間、目が大きく開かれて、ぎょっとした表情に変わった。
「ソレ… 何ですか……?」
「ん、コレ? 勿論カメラだよ。あ、お尻の下に置いているのは指向性の集音マイク。
初春ちゃんのトイレシーン、クリヤーに撮影・録音するから安心してね」
あっけらかんとした死刑宣告に、初春は己の耳を疑った。
「…………いやぁぁぁぁぁぁ!!」
とうとう耐え切れなくなって抵抗しようとするが、手足は思うように動いてくれない。
逆に、無理やり身体に力を入れたせいか、腹部の鈍痛が悪化する。
「あ、あ、あ……!」
ナニかが下腹部から一気に滑り堕ちる感覚。
必死に肛門括約筋を締めようとするが、
間に合わない。
「だめぇぇぇぇぇ、見ないでぇ、撮らないでぇぇ!!!!」
ぶりゅ、ぶりゅ、りゅ……
始めは押し出されるようにココア色の便塊が顔を覗かせ、次第に活火山のマグマのように断続的に噴出を繰り返す。
「いやぁ… いやぁ……」
惨めだった。どこかに消えてしまいたかった。
だが、初春はまだ知らない。
これが、ただの準備段階に過ぎないことを…… - 347 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:34:08.81 ID:MJ7IQNoso
- S-6 DAY 0
14:00 ペントハウス
「…さて、綺麗にしたから本番と行きますか」
塔下がいくらかテンションを押さえた声で言う。
塔下が少し不機嫌なのは、初春をもう少し言葉で嬲って撮影を続けるつもりが、
ドレスの少女がさっさと汚物を片付け、初春の殿部を綺麗に洗浄したせいだ。
「まったく、せっかくのチャンスを……」
「あぁン…?」
ぶつくさ言う塔下を、ドレスの少女が睨む。
「……初春ちゃん、リキまないでねー」
ドレスの少女の威圧感に怯んだ塔下が、矛先を初春に向ける。
先ほどの張り型にたっぷりとローションを付けると、無遠慮に初春の肛門に突き刺した。
「あああぁぁぁぁ………」
浣腸液とは違い、明らかな固形物の逆流に初春が悲鳴を上げる。
肛門が弛緩しているせいか、あるいは潤沢に塗られたローションのせいか、痛みは全くない。
しかし、狭い直腸を張り型に拡張される嫌悪感は相当なものだ。
「コレ、一個32万もするディルドゥなんだぜ? しかも俺が心血注いでカスタマイズしてるからさー」
べらべらと塔下が喋るが、初春にそれを聞く余裕は無い。
「ええっと… 初春ちゃんの陰部神経叢は… お、あったあった、そいじゃ神経針を打ち込んで、と…」
塔下がコンパネを操作すると、腸内の異物感が増悪する。
「…嘘、もしかして、私の神経に直接信号を送るつもりなんですか…!?」
塔下の台詞を理解した初春が恐怖の声を上げる。
「そうだよー。あ、今のうちに聞いておきたいけど、初春ちゃんはオナニーの経験、ある?」
「知りませんッ!!」
恐怖の裏返しか初春が声を荒げる。
「あ、そう? それじゃ、まずは『むず痒い』を体験してみよっか」
瞬間、初春の身体が、ビクリ、と震える。
(…え、なんですか、これ……?)
腸内の異物感が、ふっ、と掻き消え、代わりに絨毛で擦られるような痛痒感が初春の股間を被う。
チクチク、カリカリ、耐えられないことはないが、ひどく気になる感覚。
「と、止めてください……」
「あっはー、感度良好みたいだねー。ほんじゃ、次は『温快感』いってみよっか」
それまで感じていた痛痒感が消え、今度は股間全体がお風呂にはいったかのような暖気に包まれる。
「………あ」
「へへ、これ、気持ち良いっしょ? 半身浴みたいな感じで」
(く、悔しいけど、そうかも…)
塔下の言った通り、それはまるで半身浴のような気持ちよさだ。
初春の白い裸体が俄かに暖色を得る。
. - 348 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:35:14.75 ID:MJ7IQNoso
- 「んじゃ、どんどん気持ちよくしていこっか!」
「……ふぁ?」
強制的にリラックスしていた初春が、思わず気の抜けた声を出す。
しかし、瞬間、
「ふぁ!!」
ビクンッ! と初春の身体が震える。
口が半開きになり、可愛くて小さな舌がほんの少し顔を出した。
「らに、らんれすかぁ……?」
その原因は、もちろん股間からの刺激だ。
快感。まさしくそう形容するにふさわしい感覚が初春を蹂躙している。
塔下には誤魔化したが、初春は自慰をしたこともなければ、当然、絶頂の経験も無い。
初めて感じるには、その快感は強烈過ぎた。
「やぁ… だめですぅ… らめぇ……!」
ぴったりと閉じた無毛の割れ目から、半透明の液体がじわじわと滲み出る。
「お、愛液出始めてるじゃん。モニタの反応は…
……へぇ、初春ちゃん感じやすいんだ。快感の出力が平均値より全然高いよ」
その塔下の台詞を聞いたドレスの少女が、慌てて初春の耳元で怒鳴る。
「初春さん! 今すぐギブアップして!! ココロが壊されるわよ」
「ふぁ、あぁ、れも、れも… らめれす、協力はぁ…」
「馬鹿ッ 生死が掛かってるのよ!」
「ちょいちょーい、余計な事言わないでよね」
おどけた声で、しかし、有無を言わせず塔下がドレスの少女を押しのける。
「今から言いトコなんだ、邪魔すんなよ、な…?」
塔下が凄惨な笑みを浮かべる。
ドレスの少女は、忌々しげに舌打ちを打つと、不承不承初春から離れた。
「…やばくなったら止めるわよ」
「あっはー、ヨロシクぅ。 それじゃ、『倍化』してみっか!」
嬉しそうに塔下がコンパネを叩く。
初春の地獄が始まった。
. - 349 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:36:02.39 ID:MJ7IQNoso
- 「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!! らめぇぇぇぇ! らめぇぇぇぇぇぇ!!」
潰されたカエルのような格好で、初春が悲鳴を上げる。
快感に侵襲された秘裂は愛液を撒き散らし、シーツにぐっしょりとした染みを作る。
「やぁぁ!! くる、くるッ、なにかきちゃうッ!! んきゃあああああッ!!」
初春の身体が2,3度激しく痙攣し、モニタを見ていた塔下が「お~」と感嘆の声を上げた。
「おめでとう! 初春ちゃん、初イキだね」
「はつ、イキ……?」
「絶頂、つうか、つまり『イク』ってやつ。体中が敏感になってるでしょ?」
塔下が、初春の全く膨らみの無い洗濯板のおっぱいの、しかし、それだけは痛いぐらいに勃起して存在感を増している乳首に指を近づけた。
そのまま、ピンッ、と乳首を指で弾くと、またも初春の身体が痙攣する。
「ひっ…! さ、触らないでくださいッ! 感じすぎちゃう…!」
「あーあ、そういうこと言っちゃうと、こんなことしちゃうんだぜー」
塔下は両手で初春の両乳首を摘むと、コリコリ、と乳首を捻った。
「~~~~ッはぁ!! つねらないでくださぁい…!」
それまで気にも留めていなかった胸からの快感に初春が悶える。
「はい、胸イキたっせーい。ホント、感度が良いんだね。まだクリ系は弄ってないのにさぁ」
塔下が嬉しそうに呟くが、初春にはそれを聞く余裕が無い。
堪えても堪えても、快楽の波が思考を塗りつぶす。
(馬鹿になる…ッ 馬鹿になっちゃいます…!!)
ドレスの少女が「壊れる」といった理由がよく分かった。
初春のココロの皹がさらに深まる。
もし、これ以上の快感を与えられたら……
「…塔下、まだ続ける気?」
ドレスの少女が口を挟む。
「ん~、モニタを見る限り、まだまだ初春ちゃん余裕があるよ?」
「そう言って、これまでに何人壊してきたのよ。とっとと終わらせなさい」
ドレスの少女が鋭い口調で言う。
塔下は、「う~ん…」と頭を掻いた後、「しゃーない」と呟いた。
. - 350 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:36:48.71 ID:MJ7IQNoso
- 「まぁ、これで最後じゃないし… ほい、初春ちゃん、ギブアップする?」
「…………………!」
塔下の問いかけに、散々躊躇ったあとに初春が首を振る。
その反応に塔下は口の端を釣り上げて笑うと、小さな導子を手に取った。
「それじゃ、一気にレベルを上げるね」
抑揚の無い声でそう言うと、塔下は初春の股間をまさぐり、クリトリスを摘んだ。
初春のソレは、処女であることを示すように完全に皮を被っているが、これまでの快感に痛いほど勃起していた。
「…すぐにギブアップしろよ」
これまでのおどけた口調とは、明らかに違うドスの効いた声を出し、塔下は導子を初春のクリトリスに突き刺した。
「ヒッ…!」
「さあ、イッちゃいな」
塔下がコンパネを叩く。
導子から指向性のパルスが流れ、それは初春のクリトリスを通り抜け、神経に直接信号を叩き込む。
興奮した初春の感覚神経は、圧倒的な速さで脊髄の後根から入り、中枢、脳へとパルスを伝えた。
結果、
初春の脳内で、極彩色の火花が散った。
「きゃぁあああああああッッッッッ!! 死ぬッ、死ぬッ、死ぬぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
動かないはずの初春の身体が弓なりに反る。
眼球がクルンと回転して白目を剥き、舌をこれでもかと言うほど前方へ突出させる。
ぷしゅ……
夥しい量の愛液が秘裂から噴出し、またも、ちょろちょろ… と尿を失禁する。
「止めてッ、止めてッ、止めてぇ! 止めてくだしゃいぃぃぃぃ!!!」
初春が気力を振り絞って懇願する。
だが、塔下は耳に手を当てて聞こえないフリをする。
(ホントに壊れる…ッ!? でも、これを耐えればッッッ!!)
恐らくこれが最大レベルなのだ。
初春は自分にそう言い聞かせて、耐える決意をした。
しかし、恐ろしい塔下の台詞が聞こえてしまった。
「あ、20秒耐えたらパルスが倍増するから。ちなみに天井知らずにね。えーと、あと6秒で倍増だね」
初春の心が、完全に折れた。
「やりますぅぅぅぅぅ!! 協力しますから止めてくださいぃぃl!!!!!」
涙と鼻水と涎を撒き散らしながら初春が叫んだ。
塔下は面白くなさそうに「あ~あ、つまんねぇ…」と呟き、ドレスの少女が、ホッと胸を撫で下ろした。
「そいじゃ、停止…と。 う~ん、数値的にはまだまだ耐えられたんだけどなー」
「黙れヘンタイ。初春さん終わったから安心して」
ドレスの少女が、ハンカチで優しく初春の顔を拭う。
初春は子供のように「ひっく、ひっく……」と泣きじゃくっている。
(ごめんなさい、固法先輩… 白井さん……)
先輩や同僚の顔を思い出し、初春は涙を流し続けた。 - 351 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:37:53.42 ID:MJ7IQNoso
- S-7 DAY 0
15:00 ペントハウス
「終わったか?」
しばらく経って、垣根が姿を現した。
何かの作業をしていたのか、だるそうに肩を回している。
「はい、喜んで協力してくれるそうです」
ワークステーションの終了処理をしながら塔下が答える。
ちなみに、張り型や導子は初春に装着されたままだ。
「……あの、早くコレを外してください」
快感信号が止まったせいで、股間の異物感が復活した。
一刻も早く取って欲しかった。
しかし、垣根の冷酷な声がそれを許さない。
「……塔下、鍵つけとけ」
「ひひっ、了解でぇす」
塔下は下卑た笑みを浮かべると、ゴテゴテとベルトや金具のついた革パンツを取り出し、無理やり初春に穿かせた。
貞操パンツとでも言うのだろうか。
その革パンツはクロッチ部に小さなファスナーが付いていて、排尿をするのには不自由ないが、
肛門へは全くアクセスを許さず、挿入された張り型を完全に固定している。
初春は排泄を封じられてしまったのだ。
「な、何をするんですか…ッ!」
「このヤマが終わったら外してあげるから、それまで我慢ね」
嫌がる初春を押さえつけて、塔下が所々にある南京錠を施錠する。
数秒後には、股間は完全に塞がれてしまった。
「酷い……」
「まぁ、保険みたいなもんだ。お前がしっかりと協力してくれたらすぐに外してやるよ」
垣根はそう言うと、南京錠の鍵を掌に握りこむ。
すると、どういう作用が働いたのか、3個あった鍵が知恵の輪のように複雑に絡みあってしまった。
「その南京錠も俺様の『未元物質』で強化してあるから絶対に壊れねぇぞ。
…ああ、トイレが我慢できなくなったら、その時だけ外してやる」
「…どうしてこんな酷いことができるんですか?
人の尊厳をここまで貶めて、いったい何がしたいんですか…ッ!」
怒りのこもった声で初春が言う。
垣根が激昂しないかと、塔下とドレスの少女が、内心ハラハラさせたが、
意外に垣根は冷静に答えた。
「何がしたい、か… 言葉にするのは少し億劫だな。
まぁ、最終的な目標は学園都市に復讐することで、今はそれの準備段階といったところかな…?」
そう言うと、垣根は薄く笑って初春を見つめた。
「『スクール』へようこそ、初春飾利…」
暗部に堕ちた少女は、自分がもう陽の下に戻れないことを、直感的に悟った……
. - 352 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/23(金) 23:40:36.92 ID:MJ7IQNoso
- ハイ以上。
次回はフレンダ回の予定。
予定は未定。
ちなみに初春の快感入力装置は、感度は落ちるが遠隔操作もできる設定。
あと、帝春? ウチには期待せんといてくれ。
では次回。 - 359 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/26(月) 19:21:03.74 ID:Iioitgqho
- 前回投下を読み直して、出来に納得できないので初春陵辱をリテイクします。
本編はこのまま続け、合間にちょこちょこ書いて、出来たら投下する予定。
ということで、封印箇所を安価。
1.π
2.栗
3.エイヌス
4.マリア
↓1
もちろん複数あり。ゼロは全とみなすんでソコントコヨロシク。 - 360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/11/26(月) 19:21:48.33 ID:WR4hC95IO
- 全部
- 361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[sage]:2012/11/26(月) 19:28:01.04 ID:EiZ+jaWoo
- もっと鬼畜でいい
- 362 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/26(月) 22:53:16.99 ID:Iioitgqho
- おk。
長くなるかもだが、頑張るわ。 - 377 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:54:15.83 ID:eorSXb68o
- S-8 DAY 0
PM2:00 第5学区 とある「路上」
「…つーことで、うちら姉妹は『置き去り(チャイルドエラー)』だった訳」
夏の日差しがこれでもかと照りつける道路上、上条は道すがらフレンダの身の上話を聞いていた。
フレンダの言う『置き去り(チャイルドエラー)』とは、いわゆる捨て子のことで、
親が『入学金』だけを支払い子供を『学園都市』の寮に入れ、その後行方をくらますことだ。
ほとんどの『置き去り』は施設に預けられるが、不幸な場合は『学園都市』の実験動物として扱われる場合もある。
「アタシは12歳で、妹は6歳。
ぶっちゃけ、野垂れ死ぬ寸前のところを、駒場の旦那に拾ってもらった訳よ」
「あの人そういうことしそうだよなー。外見と中身の完全な不一致というか…」
2人が話題にしている『駒場利徳』という人物は、そこそこに大きな『スキルアウト(武装無能力者集団)』を率いるリーダーだ。
いわゆる、無法者のまとめ役的存在で、お世辞にも法に則って生きている人間とは言えないが、
奇特なことに、私的に社会的弱者を匿ったり、支援したりしている人間だ。
「外見はともかく、結局、あの喋り方が問題な訳よ。
…で、まぁ、アタシは偽造身分で能力開発を受けて、なんとかレベル3の能力を発現したんだけど、
結局、あとは学校をばっくれて、なんだかんだあって、駒場の旦那つながりの裏の仕事を請け負っていたら、
色々あって、いつの間にか『アイテム』の一員になっていたって訳」
口調は飄々としているが、『なんだかんだ』『色々あって』の部分にに言い難い苦労があったのだろう。
上条は、ふむふむ、と頷きながら、この娘も苦労してんだなー、と内心思った。
「しっかし、上条連れてけって、どういう魂胆な訳?」
「この前しず… 麦野さんと相談したんだけどさ。
知り合いのスキルアウトにはヤバいバイトをしていることを伝えておけってさ」
フレンダが「ほほぉ…」とニヤニヤ笑うが、とりあえず無視をする。
「『暗部』やってりゃ、そのうち嫌でも関わり合うことになるから、その時に余計な混乱をしないためだって。
もちろん『アイテム』関連の話は伏せるけど、アリバイ作りの一環だってさ」
「ああ、そりゃそうね。そのスキルアウトってクラスメイトだっけ?
だったら、学校にアリバイも作りやすいって訳よ」
フレンダが大きく頷く。
『アイテム』に協力する浜面のように、それと知らなくても『暗部』に協力するスキルアウトは多い。
その多くは金銭目的であるが、中には浜面のように奇妙な連帯感を持つ者も居る。
「んで、上条の知り合いってどんな奴なのよ? 浜面は『変な奴』って言ってたけど?」
「いや、そのまんま。すっげぇ、変なヤツ」
上条が友人を想像して言う。
「とりあえず、会えば分かると思うぜ。ま、駒場さんとアポとってからの話だけどな…」
要領を得ず、首をかしげるフレンダを見て、上条は申し訳なさそうに苦笑した。
. - 378 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:55:02.10 ID:eorSXb68o
- S-9 DAY0
AM10:00 第9学区 公衆多目的トイレ
「……よし、設置は完了した。 そっちはどうだ、00000号?」
一定額の料金を払い使用する多目的トイレ。
トイレという名称ではあるが、その広さは12畳ほどあり、トイレ機能のほかに簡易医療キット、洗浄装置、休憩スペースなどがあり、
簡易病室と言っても差し支えない機能が備わっているリラックススペースである。
ここに、スーツ姿の天井亜雄と、00000号と呼ばれる御坂美琴によく似た少女が居た。
天井はトイレの背面になにやら手のひら大の物体を設置し、00000号は能力「劣化電気(レディオノイズ)」を使用してこの部屋の防犯システムをハッキングしていた。
「はい、マスター、マスター。 わたくしめの操作は完了しております、とミサカ00000号は申し上げます」
00000号が表情の無い顔で言う。
天井のスーツ姿に合わせてだろうか、彼女もパンツスーツを着用して、変装用か薄いサングラスをかけている。
「よし、それなら移動するぞ… 次の目標は第11学区だ……」
ふー、と大きく息を吐いて天井が言う。
しっかりと睡眠をとってはいるが、慣れない作業・環境に疲労が溜まる。
(…しっかりするんだ、今が正念場なんだぞ…!)
疲労に萎える気持ちを強引に奮い立たせる。
彼と彼女は、朝からずっと各学区ごとに、こうやって多目的トイレに『細工』を施しているのだ。
「……行くぞ」
傍らに置いたボストンバックを天井が手に取ると、00000号がそっと手を重ねた。
「マスター、マスター。昨日から申しておりますが、マスターの疲労が顕著です。
この環境は休息に適しておりますので、適切な休憩をとられては如何ですか? と、ミサカ00000号は奉ります」
「時間が無いんだ。それに、私は疲れてはいない…!」
苛々した口調で天井が言うが、00000号はゆっくり首を振った。
「いいえ、マスターは大変に疲労されていらっしゃいます。
これ以上の強行は、真剣にマスターのお体が心配です。それに……」
00000号が天井に近づき、そっ、とその身体に抱きついた。
「わたくしめは昨日も一昨日も『ご奉仕』をしておりませんし、『施し』も受けておりません。
マスターはわたくしめの事がお嫌いになられましたか…?」
00000号のその言葉に天井の顔が極めて複雑に歪む。
「いや… 違う、そうじゃない……」
「マスター、マスター。それでしたら、ここでわたくしめに『ご奉仕』をさせて頂けませんか?
そして、マスターさえよろしければ、卑しい雌豚に『施し』をお与えください。と、ミサカ00000号は奉ります」
恭しく、言葉通りに主人に仕える奴隷のように、00000号が天井の前に跪く。
何かに気圧されるようにして、天井が休憩スペースのベンチに、ドスン、と腰を落とすと、
ミサカ00000号は慣れた手つきで天井のスラックスのベルトを外した。
. - 379 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:55:29.32 ID:eorSXb68o
- チャックを開け、細く白い手を開いた窓に差し込むと、ムッ、とする臭いと共に、まだ萎えているペニスが引っ張りだされる。
「マスター、マスター。『ご奉仕』させて頂きます。と、ミサカ00000号が申し上げます」
天井のペニスを、まるで神像か何かのように熱い視線で見つめると、ミサカ00000号は躊躇わずにソレ全体を口の中に飲み込んだ。
「んぐっ、ぢゅぷ… ぢゅ……」
頬の動きだけでそれとわかる激しい口戯に、天井のペニスがあっという間に硬度を増す。
ぢゅ、ぢゅぅぅぅ………
頬がへこむほど激しい吸引をして、そのまま顔を上げてペニスから離れる。
天井のペニスが勃起していることを目視すると、00000号はスーツとブラウスの前ボタンを外し、ブラジャーをたくし上げて胸を露出した。
ぶるん、という擬音がつきそうなほど、豪快に00000号のドでかいおっぱいが顔を出す。
御坂美琴(オリジナル)とは、文字通り桁違いのその爆乳の乳首には、意匠化されたハートマークのピアスが光っている。
「マスター、マスター。雌豚の醜く肥大した胸で気持ちよくなってください。と、ミサカ00000号が懇願します」
むにゅ、と00000号が巨乳の間に天井のペニスを挟みこむ。
ゆるゆる、と巨乳を手で上下に動かして調子をみると、だらしなく開いた口から大量の唾液を滴らせる。
水飴のようにペニスに掛かった唾液を潤滑液にして、そしてそれをペニス全体にまぶすように巨乳でペニスをしごき上げる。
「うぁ…」
それまで、何かを堪えるように無口だった天井亜雄が、思わず喜悦のうめき声を上げる。
「マスター、マスター。ようやく声を出していただいて嬉しいです。と、ミサカ00000号は奴隷の喜びを申し上げます」
口の端をほんの少し引いて薄い微笑を浮かべると、00000号はさらに大量の唾液を口から垂らした。
痛いくらいに勃起した天井のペニスが、鈍く光るほど濡れたのを確認すると、ミサカ00000号は天井から離れて、パンツをショーツごと足首まで引き下ろした。
その秘所の陰毛は完全に剃られており、下腹部には形の崩れた英文で『slave』と刺青が施されている。
そんな、少女にはあまりにも不釣合いなパーツを恥じらいもせず、00000号は天井に背をむけて壁に手を着いた。
. - 380 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:55:56.78 ID:eorSXb68o
- 「マスター、マスター。前は使用できませんので、こちらの穴に『施し』をお与えください。と、ミサカ00000号が申し上げます」
ミサカ00000号はそう言うと、片手を臀部にまわして尻ぼたを割り開いた。
よほど使い込まれているのか、わずかに隆起したアナルは、軽く拡げられただけでその妖しく菊口を開く。
「……くそッ」
天井は短く、何に対してか分からない悪態を吐くと、ゆらり、と立ち上がって00000号に近づいた。
片手で頭を、片手で腰を乱暴に掴み、ペニスを00000号のアナルに近づけると、示し合わせたように00000号が天井のペニスを掴んで己のアナルへと導いた。
「どうぞ、ご挿入くださッ、いいぃぃぃぃッ!!」
00000号が言い終わらないうちに、天井が00000号のアナルにペニスを突き刺す。
ズッ、ズッ… と音を立ててペニスが飲みこまれていく。
挿入に確かな快楽を得ているのか、ミサカ00000号が「あはぁぁぁぁ……」と歓喜の声を上げる。
「マスター、マスター… わたくしめのけつまんこは気持ち良いですか? と、ミサカ00000号がうかがいますぅ…」
「…あぁ、最高だ。お前は最高だよ00000号…」
「ありがとうございます… マスターのおちんぽも気持ち良いです……」
一番奥までペニスを突き刺した後、緩やかに天井が抽挿を始める。
本来は排泄器官であるはずの直腸・肛門なのに、驚くほどスムーズにペニスが出し入れされる。
「ますたぁ、ますたぁ……」
ミサカ00000号が桃色の吐息を漏らす。
本気で感じていることを証明するかのように、ピアスで飾られた乳首が固く勃起する。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
天井の息遣いが荒いものとなり、次第に抽挿のスピードが早くなる。
最初は両手を壁について体を支えていた00000号が、背後からの衝撃にそれだけでは支えきれずに顔と爆乳を壁に押し付ける。
「ますたぁ、ますたぁ…! イキます… イキますッ! ますたぁのおちんぽでイッてしまいます! とぉ、ミサカ00000号はアヘ顔で申しあげますぅ!」
言葉の通り、だらしなく半開きになった口から舌を垂らして、ミサカ00000号が絶頂を迎える。
同時に天井も果てたのか、強く歯を食いしばって「うぅ…!」と呻くと、00000号の腸内に2日分の精液を注ぎ込んだ。
「……マスター、マスター。わたくしめは、今、幸せを感じております。と、ミサカ00000号は多幸感に包まれながら申し上げます…」
「ああ、そうだな…」
ずるり、と天井がペニスを腸内から引き抜くと、00000号は小さな布切れを取り出して丸めると、強引に己のアナルにそれを押し込んだ。
「ん、んぅ…」
「…おい、ちょうど便器があるんだから出していけよ」
「マスター、マスター。マスターから頂いたザーメンをトイレに流すなど、バチが当たります。と、ミサカ00000号は照れくさそうに申し上げます」
恥ずかしそうにそういって、ミサカ00000号は衣類の乱れを素早く直す。
「これはしばらくわたくしめの宝物です。と、ミサカ00000号は宣言いたします。さて、それではお掃除をいたします」
射精して力なく垂れた天井のペニスを手で持ち上げると、さっきまで腸内に入っていたそれを、ミサカ00000号は躊躇い無く口に咥えこんだ。
再び勃起させないように、極力刺激をしないようにお掃除フェラを行う。
だが、注意していても天井には刺激がいっているようで、天井の腰がびくりと震えた。
「…00000号、もういい。催してきたから顔をどけろ」
次第にこみ上げてきた射精後の排尿欲求に天井がそう言うと、00000号は逆に天井の腰に両手を回して抱きついてきた。
「……おい」
その意味を察して天井が00000号を見下ろすと、00000号は潤んだ目で天井を見上げた。
「……出すぞ」
いろんなものを諦めたように天を仰いだ天井が、陰部の緊張を解く。
ちょろろ… と緩やかに鈴口から流れ出る尿を、00000号は躊躇いもせずに、ごくごくと喉を鳴らしてすべて飲み込んだ……
. - 381 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:57:00.51 ID:eorSXb68o
- S-10 DAY 0
PM 2:30 第8学区 駒場利徳の「アジト」
「おー、大体お姉ちゃんの彼氏?」
居住スペースが併設された4階建ての複合ビル。
表向きは運送会社の支社ということになっているし、ある程度の業務も行っている。
ここが『スキルアウト』駒場利徳の本拠地だ。
上条とフレンダが居住スペースに入ると、出迎えたのはフレンダを幼児化したような金髪碧眼の幼女だった。
「アホなこと言ってるんじゃないよフレメア、ちゃんといい子にしてた?」
そのまま抱きついてきたフレメアの頭を、よしよし、と撫ぜてフレンダが言う。
「……今日は何の様だ?」
部屋の奥から、のっそりと身長2m近い大男が現れた。
コピー用紙を吐き出すような独特なかすれ声のその男が、スキルアウト(武装無能力者集団)のリーダー、駒場利徳だ。
「あー、フレメアの顔見に来たのと、それとちょっとした情報収集かな?」
「だったら、もう少し頻繁に顔を出せ。姉らしく妹の面倒をもっと見ろ」
駒場の言葉に、フレンダがバツが悪そうに頭を掻く。
フレンダも妹のことが嫌いではないが、必ず一緒に居る駒場の説教が苦手なのだ。
「だいたいだな、もう充分に自活できるカネは稼いだんだろ? 姉妹で新しく部屋を借り直して、付属小のある高校に入りなおしたらどうだ?」
「だいたいだなー」
「や、はは… ちょっと散財あって、あんま溜まってないっていうかさー、あはは……」
頭を掻き掻きフレンダが誤魔化す。
フレンダが裏の仕事に染まるようになったのは、もちろん、フレメアを含めた姉妹の生活費を求めてのことだった。
しかし、そのあまりにも高額な報酬に、フレンダは辞め時を見失ってしまったのだ。。
当分、仕事を辞める気は無いし、そのためには、妹は比較的安全な駒場の下で預かってもらいたいのが本音だ。
駒場もその辺りは薄々感付いているが、自分も裏の人間であるから、あまり強くは言えないのだ。
「まぁいい、それで、お前はなんでコイツに着いて来てるんだ、上条?」
駒場が顔をめぐらして上条を見る。
上条は小さく頭を下げて、「チワス」と駒場に挨拶した。
「えっと、色々あって、俺、今、フレンダさんと一緒にバイトしてるんスよ」
「…別に他人の事情にどうこう言うつもりはねぇが、早まったんじゃねぇか?」
スキルアウトのリーダーとしての側面か、駒場がわずかに険のある口調で言う。
「はは… なんつーか、流れで…」
流石に、脅されてハメられて篭絡されたとは言えない。
「…ま、いいか。別にメンバーでもねぇお前に説教してもしかたねぇか。
つーか、お前タイミング良いな。奥に居るヤツにはきちんと説明しろよ。
駒場が部屋の奥を親指で、クイッ、と指す。
なんだろう、と上条とフレンダが覗きこむと、奥のドアから浜面と、そして特徴的な青い髪に耳ピアスの少年が出てきた。
. - 382 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:57:41.91 ID:eorSXb68o
- 「え、青ピ? なんでココに居んの?」
上条が、あっけに取られた表情で言う。
「なんやのん、カミヤン水臭いな~。
最近、いろんな人が『カミヤンがおかしい』って言ってたから、ボクなりに色々と探り入れとったんよ。
そしたら、仕上クンがなんや知ってそうな『予感』がしたから、こうやって聞きにきたわけなんよ」
青髪ピアス、通称青ピ、本名不詳。
上条当麻の幼馴染であり、駒場とは別組織のスキルアウトのリーダーだ。
「『予感』って、相変わらず謎な能力だな……」
システムスキャンによると、彼の能力は無能力(レベル0)である。
にも関わらず、彼は他人から見ると超能力かと見紛う奇想奇天烈な思考・行動を行うことで有名だ。
「ま、ま、でも、仕上クンから色々聞いて安心したよ。カミヤンも男の子なんねぇ、吹寄にはあんなにツレナイ態度とってたのに…」
「いや、きっかけは俺だったし… って言うか、浜面さん喋ったの!?」
一応、『アイテム』は学園都市の『暗部』組織であり、一般人(とは言えないが)には極秘の組織のはずだ。
上条の言葉に、ハッ、とした表情になった浜面が見る見る青ざめる。
「あれ… 俺、なんで……!」
「お前、マジで能力者なんじゃねぇのか……?」
狼狽した浜面の声にあわせるように、駒場が低い声で誰何する。
「ちょ、ちょ、ちょッ! ボクが聞いたら仕上クンが話してくれたんやん!
能力とか使ってへんよ。そりゃ、色々と詳しく質問はしてけど」
本気で慌てた素振りで、青ピが両手を振る。
上条、浜面、駒場が互いに顔を見合わせあって、三者それぞれ溜め息を吐く。
「…こういうやつなんスよね」
「誘導尋問とかされたわけでもねぇのに…」
「絶対にコイツとは敵対しねぇ」
「いやいやいや、なに深刻そうな顔してますのん! あ、わかった! お口チャック!? お口チャックなんね!
仕上クンから聞いたことはお口チャックするから、マジで!!」
青ピが口の端を指で摘んで、真横に引く動作を繰り返す。
その仕草をガン無視し、上条が浜面に耳打ちする。
「で、どこまで話したんスか?」
「『アイテム』の名前は出しちゃいねぇけど、麦野の名前は出しちまった…
あくまで、お前の彼女っていう紹介だけど……」
「ご愁傷様です… せめて一瞬で逝けるように祈っておきます…」
「不吉なことを言うなよ!!」
ボソボソと小声の相談を終えると、上条は青髪ピアスに向き直った。
「まぁ、つーことで、彼女が出来てさ… その彼女が、たまにヤバい仕事に関わることがあるから、それを手伝うことになったんだ」
「ふーん、そのこと、吹寄は知ってるのん?」
「…なんでそこで吹寄が出てくるんだよ?」
「ええから」
恐ろしく平静な声で青ピが促すと、上条の口が自然に開いた。
「彼女――麦野のことは知ってるけど、仕事のことは知らないよ。なんか許婚宣言とかして、前より構うチャンになっているけど…」
ハッ、と口を押さえるが、時すでに遅しである。
「ははぁ… 吹寄は一足遅かったわけやねぇ… まぁ、後はイラ子の頑張り次第かぁ」
微妙な表情になっている上条を尻目に、青髪ピアスはしたり顔で頷く。
「うん、吹寄を巻き込まないんならいいんとちゃう? けど、学則法はしっかり把握しとくんやで?
ああいう仕事は実入りはええけど、受け方1つ間違うと、子萌ちゃん無くだけじゃすまへんからな」
青ピなりに真面目な表情を作って言う。
上条も真剣な表情になり、「ああ、吹寄は巻きこまねぇ」と頷いた。
. - 383 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:58:12.71 ID:eorSXb68o
- 『カミヤンの無事も確認したし、ほんならボクは帰るわ~。
駒場さん、仕上クン、カミヤンのことヨロシクな~』
得た情報で満足したのか、青髪ピアスはそう言ってさっさと帰って行った。
残されたフレンダ姉妹含む5人は、とりあえず場所をリビングに移して話を進めていた。
「…ってことで、結局、明日から『狩り』が始まる訳。
やらないとは思うけど、逃亡幇助とかしないでね。反学園都市勢力として粛清されちゃうから」
フレンダが『学園都市がとある人物のクローンを餌にした反勢力のあぶり出しを行う』という部分を上手く説明した。
もちろん、クローン元の情報や、天井の名前などは一切出していない。
「ゾッとしねぇ話だな…… 人助けがご法度か……」
駒場が不機嫌そうに言う。
「駒場さんが一番心配な訳よ。アタシら保護したときみたいに、ほいほい孤児を連れ込んじゃ駄目な訳」
「でもな…… そういうの、ロジックじゃねぇんだよ……」
「それは百も承知してるけどさぁ…… アタシ、駒場さんと対立したくない……」
「……わかった、とりあえず、それっぽいの見かけたらお前に連絡することにするよ。それでいいか…?」
「うん、お願い」
フレンダが心からホッとした表情を見せ、隣に座らせたフレメアの頭を撫ぜた。
難しい話がよく分かっていないフレメアは、不思議そうに「にゃあ?」と鳴いた。
「…それじゃ、用事も済んだし帰るか?」
そういって上条が席を立ったが、フレンダは軽く首を振った。
「上条は帰って良いよ。アタシは折角だからもちっとここに居るわ」
「…いいのか?」
「コールかかったらすぐ行くし、結局、今日はこれ以上の動きは出来ない訳でしょ?」
フレンダの言葉に、上条は「なるほど、そうか…」と呟いた。
「そんじゃ、俺は帰るわ。駒場さん、浜面さん、お邪魔しました。フレメアちゃんも」
「おお… あ、俺も出るわ。これから半蔵と会う約束してっから」
「そうか……」
浜面も腰を上げ、さらにフレメアをちょいちょい、と手招きした。
「フレメアちゃん、今日は半蔵とメシ食う日だったろ?」
「……大体、浜面にしてはよくおぼえていた。行く行く、すぐ行く」
少しの逡巡の後、フレメアがフレンダの手を、スルリ、と抜けて浜面に駆け寄った。
「ちょっと、フレメアぁ。お姉ちゃんと遊ばないの?」
「大体、お姉ちゃんとはいつでも会えるけど、浜面メシは今日しかない訳。行こ行こ、すぐ行こ」
フレメアが浜面のすそをグイグイ引っ張る。
浜面は駒場に意味ありげな視線を送ると、上条を促して部屋から出て行った。
. - 384 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:58:44.05 ID:eorSXb68o
- 「姉ちゃんと遊ばなくても良かったのかー? メシも大事だけど、姉妹のコミュニケーションも大事だぞー?」
浜面と2人でフレメアを『捕まったうちゅーじんごっこ』していた上条が言うと、フレメアが歳に似合った背伸びした表情をした。
「大体、このおにーちゃんは鈍感だー」
「いやー、あの流れで空気読めんかね、お前?」
フレメアと浜面に呆れた声で言われ、はた、と上条がとある可能性に思い至る。
「……えっと、もしかして、残してきた2人って?」
「ま、フレンダの片想いだけどなー。コイツやアイツの生い立ちって、知ってる?」
浜面が、フレメアと出てきたビルを親指で指差し言う。
「『置き去り』出身ってことは、まぁ…」
「なら話は早い。
右も左も分からない近未来都市に放り込まれた外国人姉妹、それでも、お姉ちゃんは妹だけでもと、一生懸命生きるための努力をする。
けれども、世間の風は冷たい。どんなに努力しても生活は楽にならず、とうとう進退窮まるところまできた。
…そんなときに、優しく手を差し出して2人を助けたのが駒場だぜ? 惚れるなっつーのが無理な話だ」
「大体、駒場が自覚無さすぎ」
浜面が訳知り顔で説明し、フレメアがそれに同調する。
上条はひどく納得しながら、駒場とフレンダをそれぞれ頭に思い浮かべてみた。
「…惚れた理由は分かったけど、サイズ、違いすぎじゃね?」
「…そこが一番のネックなんだよな」
そう言って、上条と浜面は互いに顔を合わせて、にへ、と笑うと、片手を上げて別れた。
. - 385 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 13:59:24.88 ID:eorSXb68o
- 「……やめろ」
アジトの中に駒場の声が低く響く。
目線を下げると、座った駒場の膝の上に跨るようにフレンダが腰を降ろし、顔をうずめるように駒場に抱きついている。
「……やめろよ、フレンダ」
「やだ」
まるでマタタビを与えられた猫のように、その匂いと感触がご褒美とばかりにフレンダが駒場の身体をまさぐる。
「せっかく妹からもらったチャンスだもん、確実にモノにする」
フレンダの身体が伸び上がり、両手を駒場の首に絡め、口を耳元に寄せる。
「ねぇ、抱いてよ」
「……駄目だ」
「なんでよ……!」
声にはっきりと分かるほどの苛立ちを含んで、フレンダが無理やり駒場を口唇を重ねた。
激しくいバードキスを繰り返しながら、全身を使って駒場の身体を刺激していくが、駒場利徳は彫像のように動かない。
そんな駒場の様子に、フレンダが明らかに意気消沈して肩を落とす。
「…結局、便女穴には欲情しないって訳?」
「違う、そうじゃない……!」
「だってそうじゃん!」
フレンダが叫ぶ。
「結局! 使用済みの汚れたカラダは抱く価値無いって訳でしょ!」
「違う! そんな風に自分を卑下するな…… しないでくれ……」
駒場の大きな手が、フレンダの頭をそっと包む。
フレンダが駒場に救われたのは13歳の時だ。
12歳で『置き去り』にされてからの1年間、フレンダは『少女娼婦』として春を売って生きていた。
しかし、建前上、学生の街である『学園都市』において、風俗産業は表向き禁止されている。
そのため、フレンダは素行が劣悪の『スキルアウト』に身を寄せ、斡旋される変態どもに、毎夜、その身体を捧げていた。
金髪碧眼で見るからに天使のような少女は異常に人気が高かったが、それだけに身体の酷使が激しかった。
さらに、フレンダは客のみならず、所属していた『スキルアウト』にすら性処理人形として扱われていた。
全ては妹と共に生きるためだが、フレンダの肉体と精神は確実に磨耗していた。
そこに現れたのが駒場だった。
すでに対立するスキルアウトのリーダーだった彼は、少女売春の話を聞いて胴元のスキルアウトを襲撃し、
薄汚い不衛生なトイレで精液漬けになっているフレンダを見つけたのだ。
『クソがッ! クソがッ!!』
その時にしか聞いたことの無い罵り声を上げて、駒場はそれまでフレンダを犯していたスキルアウトを一撃で蹴り殺し、
目から光を失いかけた汚液まみれのフレンダを、その身体に抱いて保護したのだ。
. - 386 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 14:00:05.55 ID:eorSXb68o
- 「あの時からずっと… アタシは貴方のことだ大好きなの…… 惚れて当然じゃん……」
「……そういう計算で、助けたわけじゃない」
「じゃあ、どういうつもりだったのよ……!」
「……言っただろう、ロジックじゃねぇんだ。売春の話を聞いて、身体が勝手に動いたんだ」
僅かに照れが入った口調で駒場が言うと、フレンダは不機嫌そうに口を尖らせた。
「そんなの当然じゃん… 恋がロジックとか、アホか…」
完全にあきれた口調でそう言うと、フレンダは膝乗りのまま上着とスカートを素早く脱いだ。
雪のように白い肌と、力いっぱい抱きしめたら折れそうなスレンダーな肢体が露わになる。
「じゃあさ、聞き方変えるよ。アタシの身体、綺麗?」
「そりゃ、お前…… 綺麗だよ……」
正面からの視線に耐え切れず、駒場が横を向いて言う。
「抱きたいって思う?」
「……思わねぇ」
「嘘吐け、バカ!」
フレンダが白くて細い手で駒場の股間を探ると、固いジーンズが確かに隆起している。
「いい加減、覚悟して白状してよ。なんで抱いてくんないのよ…? アタシのこと嫌い?」
「嫌いじゃねぇよ……」
「だったらなんでよ…… 結局、汚いって思ってるんじゃん……」
とうとう、フレンダの瞳に涙が浮かぶ。
それを見た駒場が、観念したように溜め息を吐いて言った。
「……多分、入んねぇから」
「……は?」
「入らねぇよ、お前のカラダにゃ……」
その言葉を聞いたフレンダが、素早く駒場のジーンズのチャックを開けると、一瞬の躊躇いの後に駒場のペニスを引っ張りだした。
「……うぉぉぉ」
ソレを見た瞬間、フレンダの顔が青ざめる。
比喩でもなんでもなく、駒場の一物はフレンダの前腕と同じ大きさだった。
「い、良いモン持ってんじゃない……ッ!」
「……無理すんな、お前にゃ無理だ」
確実に照れが入った口調で駒場が言う。
しばらく「うぐぐ…」と唸って、駒場のペニスを見つめていたフレンダが、覚悟を決めて口を大きく開く。
「あーーーーーん!!」
「おい!」
口を限界まで広げて先端だけでも咥えようとするが、自分の握り拳を口に入れようとしているものだ、当然入らない。
「……デカッ!」
「……無理だ、って言ってんだろ? 諦めろ」
駒場がペニスをなおそうとすると、表情を消したフレンダが、「フィストなら…」と小さく呟いた。
「……ん?」
「フィ、フィストぐらい経験あるって訳よッ! 元・娼婦舐めんなよゴラァ!!」
気合を入れるように叫ぶと、フレンダはショーツを乱暴に脱ぎ捨てて、精神を集中させた。
『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が展開されると、フレンダの手の中にボトルローションが現出する。
「……待て、お前、それをどっからアポーツした……?」
「こちとら周到に準備してんのよ! サイズは予想外だったけど、『デカくて入らない』は予想済みって訳!」
粘度がやけに高いローションを掌に取ると、フレンダは駒場の巨大ペニスに両手でそれをなすりつけた。
「やめろッ! 裂けるぞッ!!」
「結局! 裂けてでも入れたるって訳よ!!」
自分の秘所にも大量のローションを塗りこむと、フレンダはペニスの先端を秘所にあてがって、大きく深呼吸をした。
. - 387 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 14:00:32.86 ID:eorSXb68o
- 「…暴れないでね、そしたら確実に裂けるから……」
「……ぬ」
言葉で駒場の動きを封じると、フレンダはゆっくりと、しかし力強く腰を落とし始めた。
「ぐ、ぎぎ……!!」
口にすら入らなかった亀頭が、フレンダのヴァギナにめり込む。
杭打ちとか、そういうレベルのイメージではない。
例えるならば、ぎゅうぎゅうに詰めたリュックの口に、1.5リットルのペットボトルを強引に詰め込んでいるようなものだ。
「ふー、ふー、ふー……!!」
腹圧を下げるようにフレンダが腹式呼吸を繰り返す。
ズズッ、ズズッ、と亀頭の半分まではなんとか入ったが、それから先が中々進まない。
「……もう止めろフレンダ。コレを咥えた女はこれまで誰もいねぇんだ。元々、体が小さいお前には無理だよ」
駒場が諦めたように言うが、その台詞のある部分にフレンダが反応する。
「……ちょっと待って、つーことは、もしかして利徳って童貞な訳?」
「……挿入したこと無いって意味じゃ、そうだ。 …なんだよ、悪ぃのかよ?
「いや、気合が入った」
スゥーーーー、ハァーーーー、とこれまで以上にフレンダが深呼吸を繰り返す。
「裏技、使わせてもらうわ……」
「……何をする気だ?」
フレンダが片手を自分の下腹部に、片手を手の甲を下にして駒場の下腹部に置く。
1つ、覚悟を決めたように「…うし」と気合を入れると、極限まで精神を集中させ『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を展開する。
「……お前、まさか!?」
「恋するオンナをなめんなぁ!!」
フレンダの身体が一瞬、ビデオのコマ送りのようにブレ、そして、ドンッ、という音と共にフレンダの臀部が駒場の下腹部と衝突した。
その瞬間、駒場は自分のペニスが、これまで体験したことの無い『道』に挟まれ、恐ろしく狭い『門』をぶち抜いた感触を得た。
「がッ… はっ……」
肺腑の空気を絞り出すようにフレンダがうめき声を上げる。
そして、愛しげに自分の下腹部を撫ぜると、そこは不自然に盛り上がっている。
「てへ、挿れてやったぜ、ちくしょー……」
「……無茶しやがって」
フレンダが行ったのは、己の身体の『引き寄せ(アポーツ)』だ。
手掌にしか物体を出現できないことを利用して、駒場の身体と自分の身体を一瞬で引き寄せたのだ。
当然、異物である駒場のペニスは、空いた空間であるフレンダの膣と子宮に強引に収まる格好になったのだ。
「はぁはぁ… どう、初セックスの味は…?」
「……まぁ、なんつーか、嬉しいよ、フレンダ」
完全に照れたその声に、フレンダが安心したように笑う。
「よかった、よかった…」
「ああ…… ところで、だ」
幸せそうなフレンダに対して、ひどくバツが悪そうに駒場が言う。
「……どうやって抜くんだ、これ?」
「……………………ッ」
フレンダの表情が一瞬で引き攣る。
「……再演算は?」
「い、痛くて、無理……」
「だろうな…」
色々と諦めた顔でそう言うと、駒場は大きく大きく「はぁ~~」と溜め息を吐いた。
. - 388 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 14:01:32.63 ID:eorSXb68o
- S-11 DAY 0
PM 3:00 麦野のマンション「Meltykiss」
一足先にマンションに戻った麦野が、今回の資料を読み返していると、携帯電話の着信が鳴った。
「…フレンダ? はい、もしもし」
『……あ、麦野? えーと、その……』
電話から聞こえる声は、ひどく弱々しく、麦野の直感が嫌な警告音を出す。
「どうした? 一般回線で大丈夫な会話なの?」
『あ、別に襲撃とか、そんなんじゃないんだけど…
アタシ、明日からの仕事、もしかしたらパスするかも…』
麦野の眉根が訝しげに寄る。
「…説明しろ」
『あのね、怒らないで聞いてね。ふぅ……』
何かを堪えるような溜め息を挟んで、フレンダが続けた。
『せ、セックスしたら、抜けなくなっちゃった、えへへ♪』
「ふれんだぁーーーッ!!!!」
マンション中に、麦野の絶叫が響いた。
. - 389 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/11/30(金) 14:03:17.75 ID:eorSXb68o
- はい終了。
次回は久々に美琴が出る予定。
それでは次回。 - 450 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:02:06.84 ID:vjbfLIZ+o
- S-12 DAY 0
PM 3:00 第7学区 風紀委員『第一七七支部』
「…ようやく終わったぁぁぁぁ!!」
「ご苦労さま、よく頑張ったわね」
部外者立ち入り禁止の風紀委員詰め所に、御坂美琴の疲労に満ちた声が響いた。
労う声は固法美偉のものだ。
彼女は美琴から10数枚のレポート用紙を受け取ると、1枚1枚その中身を確認した。
「お姉さま、お疲れ様ですわ!」
「ありがとー、くろこー……」
御坂美琴がもたれかかる様にイスに座る。
彼女が提出したレポートは、『反省文及びボランティア活動報告書』だ。
それは、上条当麻に対して行った能力使用に対するペナルティで、
ボランティアの内容は、『能力を使わずに1週間の公共施設清掃活動』というものだった。
『能力使用不可』が前提であり、かつ『罰』の側面を持たせるために、反省文はなんと手書きである。
「もう、しばらくはペンを握りたくない……」
「前世紀の学生はみんなやってたことだけどね… でも、これでようやくこのメモを御坂さんに渡せるわね」
固法はそう言うと、御坂にB6サイズの小さなメモを差し出した。
「はい、初春さんが調べてくれた、上条さんちの住所。最近引っ越したみたいよ」
固法の声を聞いた途端、それまで消沈していた美琴が、ガバッ、とその身を起こす。
「ど、どうして…!?」
「あら、迷惑をかけた本人に直接謝罪するのは、当然のことでしょ?」
固法が悪戯っぽく片目を瞑り、隣に居る白井黒子が肩をすくめて苦笑した。
「私としてはあまり気乗りしませんが…」
美琴を懸想する黒子としては、美琴があまり異性と接近するのは好ましくない。
しかし、ここ数日、元気の無い美琴の姿を見るにつけ、考えを柔くしたのだ。
.・ .・ ・ ..・ ・ ・ ・ ・ ・
「今回はあくまで謝罪だから、白井さんにも同行してもらいます。いい、御坂さん、今回はあくまで謝罪よ」
美琴の両肩を、がっし、と掴み、固法が強弁する。
「けど、夏休みは始まったばかり。謝罪が済んだら、あとはルール無用のヴァーリトゥードよ。あらゆる手段を用いて、愛しの彼をゲットするのよ、オッケー!?」
「は、はいッ!」
勢いに押されて、美琴が勢い良く返事をする。
そして、渡されたメモを改めて読むと、そこに2つの住所が書いてあることに気付いた。
「あの、これ、2つ住所がありますけど?」
「下のほうは『自宅に居なかったら、多分コッチに居ます』って初春が言っていたから、多分、あの女の家なんじゃない?」
「ああ… あの性悪女の……」
黒子が忌々しげに言う。
美琴に直接ダメージを与えた麦野のことを、当然、黒子は快く思っていない。
「……今日は初春さん居ませんね、非番なんですか?」
あまりあの時のことを思い出したくない美琴が、話題を変えるように言う。
「初春は非番、と言うよりも、今日はなにやら個人的な調べ物をしているようですわ。 なんでも、昨日、怪しいコードを発見したとのことで、それを追っていますの」
「そうなんだ… 初春さんだけで大丈夫なの?」
心配そうに美琴が言うが、黒子は立てた指を横に振って得意げに言った。
「お姉さま、初春だって一人前の風紀委員(ジャッジメント)ですの。
危険はあるかもしれませんが、それの対処は心得ているはずですわ」
相棒を信用しているその言動に、美琴は素直に感心した。
…実際は、この瞬間に初春の心はぽっきりと折れてしまっているのだが。
「そうなんだ… うん、折角初春さんが調べてくれたんだから、しっかり謝らないとね」
いくらか元気を取り戻した声で言うと、美琴は勢い良くイスから立ち上がった。
「それじゃ、黒子いこっか。アンタ、暴走はしないでよね」
「それはこちらの台詞ですわ。お姉さまも、重々、ご自制なさってくださいませ」
少女2人が微笑み合うのを見ると、固法は満足そうに何度も、うんうん、と何度も頷いた。 - 451 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:02:46.16 ID:vjbfLIZ+o
- S-13 DAY 0
PM 3:30 偽装アパート 尾立荘前
「で、案の定留守かい……」
勢い込んで来たものの、(当然だが)上条のアパートには誰も居なかった。
「お姉さま、両隣もお留守のようですわ。…どうしましょう?」
隣室のメーターを確認した黒子が、遠慮がちに美琴に言う。
「…気は進まないけど、もう一つの住所を訪ねるしかないわね。一応、これ謝罪なんだし…」
本当に気が進まない口調で美琴が言う。
あの麦野沈利とは顔も合わせたくないが、仕方がない。
美琴とて、『上条に会ってとにかく謝りたい』という気持ちは強い。
「わかりましたわ、それでは移動を… て、あら…?」
黒子が踵を返そうとすると、上条のアパートに向かって、1人の女性が歩いてくるのが目に入った。
タンクトップに包まれたでっぱいを盛大に揺らし、さらっさらのオデコを光らせ歩くのは、自称・上条当麻の許婚、吹寄制理だ。
「……どちら様?」
上条の部屋の前に立つ少女2人を、吹寄が不機嫌そうに誰何する。
この一週間ほど、あまり上条が携帯電話に出てくれないので、足しげく上条のアパートに通うのが日課になっているのだ。
ちなみに、この吹寄の行動はしっかりと上条に報告されており、2回だけ吹寄を部屋に上げている。
「…その部屋の人に何か用事?」
なかなか口を開かない2人に苛々した様子で吹寄がさらに問う。
しかし、美琴も黒子も、とある一点を凝視してフリーズしている。
その一点とは、言わずもがな、吹寄のおっぱいだ。
((でかい……))
自分たちの頭ほどありそうなド巨乳に、言い知れぬ敗北感を抱く。
「あのね…… ん?」
いい加減焦れた吹寄が、2人の視線に気付くと、面倒そうに、ふんっ、と鼻を鳴らした。
「あんまり見てると、見物料取るわよ?」
「……ハッ!? ご、ごめんなさい、つい……」
正気に戻った美琴が頭を下げ、遅れて黒子も「す、すみませんですの!」と頭を下げる。
「別に良いから、こっちの質問に答えてくれない?」
「あー、えっと、私たちは…」
「わ、私たち、以前、上条さんにご迷惑をおかけしてしまって…!」
口ごもった美琴の代わりに、黒子が口を開いた。 - 452 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:03:18.68 ID:vjbfLIZ+o
- 「迷惑?」
「は、はい! こちらのお姉さまは高位の電撃使い(エレクトロマスター)でいらっしゃいますが、
お姉さまが能力を行使されたときに、不幸なことに、上条さんがお巻き込まれになられて……」
「そ、それで、謝りにきたんです!」
何とか復帰した美琴が同意する。
それを聞いた吹寄は、やや表情から険をとって、「ふぅん…」と頷いた。
「そういう話、聞いたことないけど、まぁ、自分から不幸話を話すタイプじゃないしね、当麻は」
はぁ、と吹寄が溜め息を吐く。
しかし、その台詞の中には、御坂美琴にとって聞き捨てならない言葉が含まれていた。
「あ、あの… 上条、さん、とは、どんなご関係ですか…?」
勢い込んで尋ねる。
対して吹寄は、美琴のことを何も知らないので、なんでもないように答えた。
「え? 許婚よ、親公認の」
「「は、はぁぁぁぁ!?」」
美琴と黒子が口をあんぐりと開けて叫ぶ。
その反応になぜか悦を感じたのか、吹寄が胸を反らせて、ふふん、と勝ち誇る。
「ま、高校生ともなると、そういう関係も有るってことよ… で、留守なんでしょ?」
放心状態の美琴が、かくかく、と頭を上下に振る。
「はぁ… どうせあの女のところでしょうね…」
「あ、あの女って、あのオンナですか……?」
つい、ポロリと美琴が口に出してしまうと、耳ざとく吹寄がそれに反応する。
「…麦野さんのこと、知ってるの?」
「えっと、いや、その、名前は知らないんですけど…… あっ、一緒に歩いているのを見たんで……」
しどろもどろに美琴が答えると、吹寄は納得したように頷いた。
「ああ、なるほどね。…悔しいけど、許婚はアタシだけど、今の彼女はあの人なのよ。 …なに、その顔? やっぱり知り合いなんじゃない?」
「い、いえ、本当に知らないです… 名前だって今知ったし……」
しばらく、じとー、と美琴を見ていた吹寄だが、やにわに小さく肩をすくめると、「まぁ、いいわ」と呟いた。
「当麻にはアタシから言っておくから、貴女たちはもう気にしなくても良いわよ」
その言葉を聞いて、美琴がポケットに入れたメモを手で強く握る。
(…なんかムカつく)
このデカチチには、絶対麦野の住所は教えないでおこう。
そう、美琴は心の中で誓った。 - 453 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:04:25.04 ID:vjbfLIZ+o
- S-14 DAY 0
PM 4:00 麦野のマンション「Meltykiss」 リビング
「つーことで、フレンダは今回リタイアだ。まったく、あの馬鹿は…… あ、ソコソコ……」
いつものマンションのいつものリビングでは、床に敷いたマットレスに麦野が腹ばいになり、その麦野に馬乗りになって上条がマッサージを行っている。
上条はポロシャツに部屋着の短パン、麦野はスポーツブラにスパッツというラフな格好だ。
「ていうか、フレンダ大丈夫なん? 裂けたりとかしてんじゃねぇ?」
麦野の脊柱に沿って、翼を広げるように両手を動かしてマッサージを行う。
女性らしい、ふにふに、としたお肌の下にある、しなやかな筋を慎重に伸張する。
「恥を承知で医者に行くらしいわ、繋がったまま… あ~、いいわ、それ……」
「駒場さんもなんと不幸な……」
笑えばいいのやら、哀れめばいいのやら、判断のつかない表情で上条が言う。
(つーか、あの体格差だったら、フレンダが駅弁スタイルで抱きついて、駒場さんがコートを着れば上手く隠れるかも……?)
思わずそんなシーンを想像してしまい、ぷっ、と吹き出す。
「なぁにぃ? 面白いことでもあったぁ?」
マッサージが気持ち良いのか、麦野がだらけた声で言う。
「いや、なんでも。ケツ揉むよ?」
「いーよー……」
上条が両手の手掌を使って、麦野の臀部をぐにぐにと圧迫する。
(えーと、骨盤がここだから、大臀筋はこのあたりか……)
土御門から習った解剖学を頭に思い浮かべて、形良く発達したお尻を優しくマッサージする。
麦野が着ているのは薄いスパッツ1枚のみだから、殆ど裸尻を揉んでいるようなものだ。
段々と上条の手の動きが熱を帯びてくる。 - 454 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:04:56.33 ID:vjbfLIZ+o
- 「…手つきがやらしーぞー?」
ほんのり桃色の吐息と共に麦野が言う。
「いえいえ、上条さんはマッサージをしているだけですよ、っと…!」
そう言いながらも、上条は五指を蠢かせるように臀部を揉みしだく。
うつ伏せに寝る麦野の吐息が、緩やかにその間隔を短くしていく。
(沈利はお尻も最高だなー… 揉んでて飽きねぇ……)
思わず、両足の付け根に指を伸ばしたくなるが、そこはぐっと我慢する。
代わりに、親指をそろそろとお尻の中心に降ろし、窄まりの周囲を優しくマッサージすると、麦野の身体がピクッと震えた。
「……興味あるの?」
「え、何に?」
「お尻、アナルセックス」
そういう目的で触ったわけではないが、多感で欲望満載な男子学生としては安易に否定できない事柄だ。
「…んー、ぶっちゃけると、ある、かな? でも、無理はしたくない」
上条の脳裏に、後穴をレイプされて裂傷を負った佐天涙子の姿が浮かぶ。
想像はできないが、麦野のああいう姿を見たくはない。
だが、麦野は特に動揺するでもなく、上条の言葉に答えた。
「…ま、そのうちね」
『無理』とか、『嫌』とか言わないあたり、麦野沈利である。
「いいの?」
「しばらく使ってないから、準備要るし。アタシも嫌いじゃないし。
ま、マンネリ予防とでも思っておきなさい。それより……」
言葉と共に、麦野の手が、スッ、と伸びて上条の手を取り、スパッツの上から秘裂に押し当てた。
ちゅく… と汗と共にもっと粘ついた液音が微かに聞こえた。
「テメェの触り方がやらし過ぎるから、火が着いちまっただろーが」
顔を上げて、上気した頬と潤んだ瞳で上条を見る。
「責任とれ、コラ」 - 455 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:05:22.74 ID:vjbfLIZ+o
- S-15 DAY 0
PM 4:10 麦野のマンション「Mwltykiss」玄関前
「ここがあの女のハウスですわね…」
目の前にそびえる高級マンションを見上げて黒子が言う。
美琴は、まだ失言のショックが尾を引いているのか、若干元気の無い様子だ。
「黒子… 今日はもう『ごめんなさい』だけ言って帰るわよ…」
「ええと、はぁ、そうですわね…」
美琴を異常なほど崇拝している黒子にとって、異性との接近は止めて欲しいのだが、こうも元気が無い様子を見るのも苦痛である。
「…思うにお姉さま、しばらくあの殿方とは距離を置いた方がよろしいのでは無いでしょうか?
果報は寝て待て、という言葉もございますし……」
「うん…… でも、許婚とかいるみたいだし……」
許婚の存在がかなり強烈だったせいか、なんだかよく分からない焦燥感を美琴は感じていた。
「大変失礼ですが… お姉さまはあの殿方のことを、本当に好いていらっしゃるんですの?」
黒子が、おずおず、といった風に美琴に訪ねる。
問われた美琴は、眉間を指で摘むと、「う~~~~~む……」と低く唸った。
「なんて言うか… あの女があの馬鹿にキスしたときに、無茶苦茶悔しくて、無茶苦茶悲しかったのよね… さっきのデカチチの人の時も」
自分でもよく分かっていない微妙な気持ちを、必死に説明しようとする。
「正直に言うと、アイツのことが好きかどうかはよく分かんない… けど、胸がモヤモヤしてるの、ずっと……」
胸の辺りを苦しそうにさする。
「…だいたい、アイツが私のこと無視すんのがムカつくのよ!
恋とかそういうのとは別に、とりあえず私のことを名前で呼べっつーのよ!」
美琴の髪の毛から、微弱な放電現象が起こる。
どうも、上条のことを考えるにつれて、段々と腹が立ってきたらしい。
「それにこのままだと、あの麦野って女や、デカチチの許婚に負けた感じがしてすっごい嫌。
私はそんなに軽い存在じゃないわよ……!」
はっきりと分かるほど美琴の髪が放電する。
黒子は、本当なら、ここで宥めるのが自分の役目だと分かっていたのだが、それまでの沈んだ美琴を見ていたせいか、ついついノッてしまった。
「その通りですわ! あの類人猿はお姉さまの魅力に気付いていませんのよ!」
「そう? …そうよね。うっし、謝るだけはなし! 一言、『名前で呼べ』ぐらいは言ってやろうじゃないの!」
完全にテンションを戻した美琴が、大きく自分に気合を入れる。
そして、美琴と黒子は互いに頷き合うと、マンションの自動ドアを潜って、オートロックのエントランスに足を踏み入れた。
かくして、御坂美琴はルビコンを渡る。
. - 456 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:06:15.04 ID:vjbfLIZ+o
- S-16 DAY 0
PM 4:10 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング
「あんッ、あんッ! ソコ、ソコ弱いのッ!! ソコばっかり卑怯よぉ……ッ!」
リビングでは、ストレッチマット上でまんぐり返しになった麦野が、屈曲位で上条に激しいピストン運動を食らっていた。
「へへ… せっかく沈利のGスポット見つけたんだから、責めなきゃ損だろッ? つーか、沈利も気持ちいいからいいじゃん…ッ」
この前発見した、麦野の新たな性感帯を、ペニスで激しく擦り突く。
抽挿のたびに白濁した愛液が秘裂から飛び散り、麦野が長い髪を振り乱してよがる。
「駄目ッ! 感じすぎて、おかしくなるぅ!」
本能的な安楽を求めてか、麦野が上条に抱きつくように両手を伸ばす。
だが、上条は意地悪そうに笑うと、麦野の両腕を両手でマットに押さえつけると、さらにピストンのスピードを上げた。
バンッ、バンッ、バンッ、バンッ!!
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!! だめぇぇぇぇぇぇ!!」
四肢を完全に抑えられた麦野が、絶頂と共に悲鳴を上げる。
本イキしたとわかるほど膣道が収縮し、上条は思わず麦野の体奥で射精した。
「うっ… あー、出ちまったか… 沈利のマンコ、気持ちよすぎ、我慢できねぇ」
「馬鹿ぁ… ちょっとは手加減しなさいよぉ…」
イッた後の顔を見せたくないのか、両手で顔を隠して、しかし目線だけはチラッと出して麦野が言う。
その仕草から、普段の傍若無人な態度と真逆の可愛さを感じて、上条は再び下半身に力が集まるのを感じた。
「……さーる」
「沈利だって、1回じゃおわらねぇだろ?」
麦野に覆いかぶさるように身体を密着させ、愛の篭ったディープキスをする。
じゅぷ、じゅぷ… と互いの唾液をこれでもかと交換する作業に没頭すると、次第に麦野の身体から力が抜け、くたり、と脱力し始めてた。
「やっべぇ、幸せ感じちゃってる……」
ディープキスで出来た銀色の糸を断ち切り、沈利が呆然と呟く。
その台詞に、言いようの無い充実感を得て、上条は麦野の背中に手を回した。
「沈利、足を絡めて」
「うん、だっこして……」
麦野の長い足が、しっかりと腰を大好きホールドしたのを確認すると、上条は麦野と繋がったままゆっくりと身を起こし始めた。
「うあぁぁ… 奥まで刺さるぅ…」
自然と体重でペニスが最奥まで突き込まれる。
この前試して以来、麦野はこの駅弁スタイルに病みつきになっていた。
とにかく、密着感と挿入角度が良いらしい。
「あっ、あっ、あっ… あぅぅぅ……」
上条がリビングを、のっしのっし、と歩くと、麦野の身体が小刻みにバウンドする。
数毎に軽い絶頂を迎え、麦野の頭の中に小さな火花が次々と炸裂する。
(あー、こりゃヤバイ… 意識跳ぶかも……)
軽い絶頂は深い絶頂の前ぶれだ。
今は小刻みに突かれているが、一度でも深く激しく突き込まれたら、はしたないあえぎ声を上げてイッてしまうだろう。
上条が麦野のそんな些細な変化を敏感に感じ取り、抱えなおす動作で深く突きこもうとしたその瞬間……
ぴんぽ~ん……
部屋のチャイムが甲高い音を立てて鳴り響いた。 - 457 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:07:23.61 ID:vjbfLIZ+o
- 「……え、誰?」
反射的に上条が答えてしまったが、それが不味かった。
無駄にハイテクな麦野のマンションは、チャイムの応答は音声認識になっている。
これは、部屋に生活する人間の音声を勝手にサンプリングし、その人の声色によって応答・拒否を判断してくれる優れモノだ。
が、しかし、優れすぎたその技術は、今の上条の声を応答と判断したらしく、リビングの60インチモニターに来訪者の顔がデカデカと映し出された。
「………げっ!」
モニターが映したのは、当然、エントランスでチャイムを鳴らした御坂美琴と、お供の白井黒子だった。
対面で繋がっているおかげか、まだ麦野にはモニターが見えていない。
「……だれぇ?」
首をめぐらそうとする麦野を慌ててキスで止めて、上条の頭が高速回転する。
映像は単方向(ワンウェイ)だが、音声は双方向(ツーウェイ)だ。
今の状態では、こちらの声もあちらの声も筒抜けになってしまう。
(あのビリビリが訪ねてきたなんて知れたら、超能力者(レベル5)の全面対決になっちまう……ッ!!)
そこまで考え至った上条は、画面の御坂美琴が口を開くより前に怒鳴った。
「あの…」
「15分!!!!!!」
突然の大声に、画面の中の御坂美琴が、ビクッ、と震える。
「15分たったら降りてくるからッ! 黙ってロビーで待ってろ!!」
麦野に聞かれないように、麦野の身体を思いっきり抱きしめて上条が叫ぶ。
画面の美琴が神妙に、コクコク、と頷いて、これで落着と上条は思った。
が、
「やっ、それ、だめぇ…」
急に怒鳴り、体位を弄ったのがまずかったのか、上条は麦野の体奥をペニスで突きこむ格好となってしまったのだ。
ゆえに、麦野はあえぎ叫ぶ。
「やだぁ!! 死ぬ、死んじゃうよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
御坂美琴がモニターの中で驚きの顔をすると共に画面が消失する。
(聞かれたッ!? いや、しかし、このまま沈利を放っては……!)
非常に幸運なことに、麦野はまだ来訪者の正体に気付いていない。
上条は断腸の思いで麦野とのセックスを切り上げることを決意すると、一旦ペニスを引き抜いて、麦野をダイニングテーブルに腹ばいにさせた。
「あん… もうバック?」
「後ろからされるのも、好きだろ?」
「うん、好き… いっぱい突いて……」
男を受け入れるために、麦野が精液と愛液でぐちゃぐちゃになった秘裂を自らの手で開く。
内心、冷や汗をかきながら、上条は勢い良くペニスを突きこんだ。
「あっはぁぁぁぁぁ!!」
(…まぁ、どうせ上には上がってこれねーし、早々にお帰りいただくか…)
麦野の嬌声をBGMにそう決意した上条は、トドメを刺すべくピストンのピッチを上げた。
. - 458 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:08:07.26 ID:vjbfLIZ+o
- S-17 DAY 0
PM 4:15 麦野のマンション「Meltykiss」 エントランス
しかし、事態とは常に悪い方に転がるものである。
「く、黒子、今の声!」
「はい、間違いなく女性の悲鳴でしたわ!」
言うや否や、白井黒子が能力を発動してテレポートする。
残った美琴はポケット端末を取り出して、エントランスの入出力装置に接続、マンションの防犯システムに侵入する。
「あのバカ… 何やってんのよ……ッ!」
完全に勘違いした御坂美琴が、己の能力を駆使して状況を把握しようとする。
しかし、
「…何コレ!? 普通のマンションの防犯システムじゃ無い!!」
このマンションは、暗部組織『アイテム』の拠点の1つであるから、当然、電気能力者のハッキングに対するシステムも構築してある。
だから安易に、かつ早急にダイブした美琴が弾かれたのだが、そのことが却って美琴の疑念を強める結果となってしまった。
外からマンションの外観を確認してきた黒子が、美琴の隣に再びテレポートしてきた。
「お姉さま! このマンションの階層構造は一般的ですわ! 内部へのテレポートは可能です!」
「こっちは駄目だったわ。エントランスドアを開こうとして潜ったら、あっさり弾かれちゃった。なんとか通報システムにはばれなかったけど、再挑戦は無理ね…
普通のマンションじゃないわよ、ここ。」
「まさか… どこかの組織の隠れ蓑だと…!?」
少女2人のボルテージが段々と上がっていく。
「でも、中枢に近いエントランスは開かなくても、各部屋のドアを個別に開くことはできるかも…」
「それでしたら、わたくしがドアの前までエスコートいたしますわ! お姉さま捕まってくださいまし!」
美琴が黒子の肩を掴むと、黒子が素早く「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開する。
外から見たマンションの階層構造から11次元のベクトルを計算し、エントランスから目的の部屋までの空間をつなげる。
「跳びますッ!」
次の瞬間、美琴と黒子は何の変哲も無い、両開きのドアの前に出現した。
「ナイス黒子! ここなら…ッ!!」
最早、ポケット端末を使わずに、御坂美琴がドアの電子ロックを解錠する。
コクリと黒子に頷くと、いつの間にか『風紀委員(ジャッジメント)』の腕章をつけた黒子が、勢い良くドアを開けた。
「ジャッジメントですの!」
美琴と一緒に玄関を上がり、短い廊下を走りぬけてリビングへ通じるスライドドアを開く。
その瞬間、
「とうまぁぁぁぁぁぁぁ!! 好きぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「くっ… 出すぞッ! 沈利の子宮に全部出してやるッ!!!!」
恋人2人の激しいセックスが終了し、遠目でも分かるほどの激しいフィニッシュが行われる。
つの字が2つ重なったような格好の2人が、ゆっくりと視線をドアに向け。
……4人の8つの眼が点になった。
. - 459 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:09:05.30 ID:vjbfLIZ+o
- S-18 DAY 0
PM 4:20 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング
「ッッッっざけんなぁぁぁぁぁぁl!!!!」
瞬間的に『ぷっつん』した麦野が理性のタガをあっさり放す。
繋がってのしかかっている上条を乱暴に背中から振り落とすと、無意識のリミッターを解放する。
(まずいッ!!)
ぞわっ、とした恐怖を覚えた上条が、全身の筋をフルに収縮させてフローリングの床を蹴る。
何人もの能力者と対峙してきた戦士としてのカンが、麦野の状態が危険だと囁く。
「死ねよやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
超能力者(レベル5)麦野の『原子崩し(メルトダウナー)』がフルパワーで放たれようとした瞬間、
必死の思いで接近した上条が、その左手で腕を掴んだ。
「…………あッ!?」
無意識に練り上げられた麦野の「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」が四散する。
期待していた結果を得られなかった麦野は、「チッ!」と舌打ちすると、忌々しげに上条を見た。
「……なんで止めんだよ!?」
「……暴走したら、やばいんだろ?」
視線だけで人を殺しそうな形相の麦野に、上条が出来るだけ平静を装って答える。
以前、絹旗や滝壺から聞いていたが、麦野の能力である『原子崩し(メルトダウナー)』は、ひどく不安定な能力らしい。
その破壊力は折り紙つきだが、最大出力で能力を行使すると、麦野本人すら消し飛ぶほどの出力を出してしまうのだ。
上条が『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で止めていなかったら、ドアで固まっている美琴と黒子はもちろん、上条や麦野すら一瞬で消滅していただろう。
「……クソが」
能力の暴走を自覚して少し冷静になったのか、麦野がややトーンの落ちた声で悪態を吐く。
「……離せよ、とりあえずはキレねぇから」
やや乱暴に上条の左手を振り払うと、ゆっくりとした歩みで美琴と黒子に近づいた。
「あ、あの… その……」
とんでもなくショッキングな光景に美琴が何も言えないでいると、目の前に来た麦野が全裸のまま腰に手を当てて仁王立ちした。
注がれたばかりの上条の精液が、股間から、ぼたぼた、と落ちるが気にも留めない。
「意趣返しのつもりかよ、コラ……ッ!」
頭半分低い美琴を見下ろす体勢で詰問する。
普通ならこういう物言いをされると、カチン、ときて言い返す美琴だが、流石にこの情況では何も言えない。
. - 460 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:09:31.39 ID:vjbfLIZ+o
- 「も、申し訳ありません!! じ、事件性を感じて、風紀委員であるわたくしの独断で……」
美琴に代わって、黒子が腰を90°に曲げて謝罪する。
「あぁッ!! 風紀委員は学内の事件担当だろうが!! 管轄外でナニ越権行為してんだよッ!!」
「そ、それは……」
麦野の言ったことは事実で、黒子たち風紀委員(ジャッジメント)は、本来、学校内の治安維持を行う組織だ。
学外の担当は、教師で構成させる警備員(アンチスキル)が担当となる。
「返す言葉もありませんの… 非礼の段、深く、深く謝罪いたします。本当に申し訳ありません!」
段々と黒子の口調が焦ったものになる。
というのも、チラリと横目に見た美琴の様子が明らかにおかしいからだ。
「うそよ… そんな…… ささって… 垂れて……」
「と、とにかく、このような状況では、きちんと謝罪も出来ませんの! 日を… 日を改めて謝罪を!」
「ざけんなよッ! テメェらの顔なんざ二度と見たくねぇよ!!」
麦野が吐き捨てるように言い、美琴を睨みつけると、震える彼女の視線が自分の股間に集中していることに気付いた。
「…あン?」
釣られて視線を落とすと、股間から太ももにかけて、上条の精液が白い道筋を作っているのを発見した。
ふん、と1回鼻を鳴らすと、麦野は右手の人差し指で太ももの精液を掬い、美琴に良く見えるように突きつけた。
「なーに、見てんだよ? ナカ出しのザーメンがそんなに珍しいのかよ、あぁ?」
そのまま精液まみれの指を自分の口に持っていき、びちゃびちゃ、と下品な音を立てて舐めしゃぶる。
黒子の顔が引き攣り、美琴の震えがいっそう加速した。
「…沈利、もう勘弁してやれよ」
いつの間にか服を着た上条が助け舟を出す。
腹を立てているのは彼も同じだが、これ以上美琴たちが責められるのを見るのは、流石に気分が悪い。
「あぁ!? アンタ、この小娘の肩持つ気!?」
「そうじゃねぇよ。俺だって頭きてるけどよ、そこのツインテールが言う通り、仕切り直さねぇと、話しできる状況じゃねぇだろ?」
上条の言葉に、黒子が、コクコクッ、必死にと頷く。
「………マジ、ふざけんなよ…… 良いカンジにイケてたっていうのに……」
不満たらたらにそう呟くが、ひとまずの怒りは収まったらしい麦野が、くるり、と踵を返す。
「…シャワー浴びてくる。後は勝手にしろ…」
すたすた、とリビングに散乱した自分の衣類を回収し、床に零れた精液を綺麗にハンカチで拭うと、麦野はバスルームへと消えて行った。
. - 461 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:10:30.59 ID:vjbfLIZ+o
- 「……はぁ」
麦野が視界から消えると、それまで何とか気を張っていたのか、美琴の膝が、カクン、と折れた。
「お、お姉さまッ!」
隣の黒子が慌てて美琴を支える。
普段なら、『ぐへへ、役得ですわ!』ぐらいは思う黒子だが、流石に今はそんな余裕はない。
「……15分、って言ったよな?」
完全に疲れた表情で上条が言う。
黒子は美琴に肩を貸したまま、バツが悪い顔で再度頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんの… 女性の悲鳴が聞こえたので、てっきり事件かと……」
「それで人の家に突撃かよ… つーか、何しに来たんだよ?」
「…この前の騒動のお詫びに……」
「お前ら、無駄に行動力と実行力ありすぎ……」
ハハハ、と乾いた笑いを浮かべ、どんよりとした視線を茫然自失の美琴に送る。
「…もう帰れ、と言いたいけど、ビリビリをソファに寝かせるぞ。休んでけよ」
「それは…… これ以上、あの方の勘気を被るのは…」
「沈利は俺が宥めるよ。それに、いくら沈利でも、本気で弱ってる人間を嬲る趣味は… あるっぽいけど、させねぇから、俺が」
あまり頼りにならない台詞ではあるが、確かに今の美琴では歩行も怪しい。
自分がテレポートで運ぶのも良いが、今は空間移動のストレスも美琴にはかけたくなかった。
「お言葉に甘えさせていただきますわ… さ、お姉さま…」
黒子が苦労して脱力した美琴をソファに寝かせる。
手伝おうと手を伸ばしかけた上条だが、却って悪い結果になると思い、手を引っ込めた。
(夏休み前だったら、何も考えず手を出してただろうなー)
こういう行為がトラブルの原因なのだと、ようやく上条は自覚するようになっていた。
「つーか、お前らここの住所、どうやって知ったんだよ?」
「そ、それは……」
黒子が明らかに目線を泳がせる。
相棒である初春飾利が、意外に腹黒いハッカーであることを知っているだけに、余りまっとうな手段でないとは想像している。
それだけに、本当は隠しておくつもりだったが、こういう状況になってしまってはシラを切るのは難しかった。
「…わ、わたくしが風紀委員のデータベースから調べまして……」
「嘘つけ。学内担当の風紀委員に学外のデータベースがあるかよ」
上条の鋭い突っ込みに、黒子が返答に窮する。
「……友人のハッカーに調べてもらいましたの。方法はわかりませんし、名前は、その……」
「ハァ… その友人にどうやって調べたのか詳しく聞いて俺に教えてくれ。それが名前を教えない条件な」
まだあまり実感はないが、上条とて暗部組織『アイテム』の一員なのだ。
『アイテム』のセーフハウスである麦野のマンションが、いとも簡単に所在を割ったことについては追求せざるを得ないのだ。
最も、初春の現在の境遇から、そんな心配は杞憂なのだが。
「わかりましたの、必ず連絡いたします。 えぇと…」
「いちおー、俺のメルアド。絶対に他の人間に教えるなよ」
適当なメモにメールアドレスを走り書きして黒子に渡す。
神妙な顔でそれを受け取ると、黒子は視線を美琴にむけた。 - 462 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:10:56.79 ID:vjbfLIZ+o
- 「…こんな事をしでかして図々しいとは思いますが… お姉さまを責めないでくださいまし。罰はしっかりと受けますから……」
「まぁ、コイツがこういう行動するのも、元を正せば上条さんの自業自得な所もあるからなー…」
頭をポリポリと掻いて、上条は声色を慎重に整えて美琴に声を掛けた。
「あー、御坂美琴だよな? お前、もう俺を追うの止めろ。お前が辛いだけだよ。見てらんねぇよ」
その言葉が引き金になり、とうとう美琴が、ぐすぐす、と嗚咽を漏らし始める。
可哀想だとは思うが、ここははっきり言っておく必要があると上条は感じた。
「……あのな、今の俺は麦野の彼氏なんだ。御坂のことは好きでも嫌いでもないけど、麦野のことは好きなんだよ……」
言い終えて、上条が「ふぅ…」と大きな溜め息を吐いた。
例え傷つける結果になっても、吹寄にもこう言うべきだった。
上条は自分の優柔不断さに嫌気が差した。
「傷つけるようなこと言ってわりぃ… けど、これが本心だから……」
何かがぽっきりと折れるのを黒子は感じた。
そして、それは美琴も同様だったのだろう。
泣き腫らした目を小さく開けて上条を見ると、小さな小さな声で「わかった…」とだけ呟いた。 - 463 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:11:27.62 ID:vjbfLIZ+o
- S-19 DAY 0
PM 4:30 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング
「どーゆーことだ、あン?……」
髪は洗わずに身体だけ流したのか、タオルターバンをした麦野がバスローブ姿でリビングに現れた。
再び怒気を発しそうな麦野に、黒子がリビングの床に正座をして深々と土下座をする。
幾分回復したらしい美琴も、ソファの上でしっかりと頭を下げた。
「ご気分を害して本当に申し訳ありませんでした。このお詫びは必ずいたしますわ」
「いらん、帰れ。風紀委員にも報告すんなよ、面倒だ」
「しかし…」
「アタシは帰れって言ったの…ッ!」
なおも言い募ろうとする黒子を一喝すると、黒子は諦めたように美琴を見た。
「お姉さま、今日のところは…」
「うん…… ごめんなさい、ごめんなさい……」
ふらつく足どりでソファから立ち上がり、美琴は何度も麦野と上条に頭を下げた。
優しい言葉を掛けたいところをぐっと抑えて、上条は短く「ああ…」とだけ答えた。
そうして、美琴と黒子が支え合うようにして玄関から出ようとした瞬間、
「……待ったッ!」
意外なことに麦野が2人の足を止めた。
「あの… 何か…?」
黒子が怪訝そうな表情で言うと、麦野はチラリと美琴を見て言った。
「コイツは『常盤台の超電磁砲』。レベル5の第3位、御坂美琴で間違いないのよね?」
「えっと、はい、そうですが…?」
訳もわからず黒子が同意する。
美琴も麦野がなぜそんな確認をするのか分からず、薄ぼんやりとした表情で頷いた。
「つーことは、ひょっとしたらAIMも似通っている可能性があるか……」
顎に手を当ててブツブツと呟くと、麦野は視線を上条に向けた。
「当麻、こいつら連れていつものファミレスに行って来て。それで、1時間ぐらいだべってて」
言いつつ、上条にだけ分かるように、素早く2回ウインクする。
意図を察した上条は、多少戸惑いながらも「ああ、わかったよ」と返した。
「あ、あのー、一体…」
「アタシに負い目感じてるんなら言う通りにしな。そうしたら、今日の件は水に流してやる」
凄まじく意外な麦野の言葉に、美琴と黒子が目をパチクリさせる。
「ふぁ…ファミレスで1時間だべれば良いんですの?」
「ああ。それと、ここに来てからファミレス出るまでのことは、一切合財他言無用、良いな?」
2人にとっては、奇妙な条件だが、それで家宅侵入を許してもらえるなら願ったり叶ったりだ。
美琴と黒子は互いに顔を見合わせると、おずおず、と視線を麦野から外さないで頭を下げた。 - 464 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:11:55.12 ID:vjbfLIZ+o
- S-20 DAY 0
PM 5:00 「とある」ファミリーレストラン
「まったく… あの性悪淫乱女はどういうつもりなんですの…!?」
折角なので、と頼んだパフェを食べ終えると、口火を切るように白井黒子が憎々しげに呟いた。
麦野のマンションから出てからずっと、彼女は不機嫌な表情のままだ。
御坂美琴はと言うと、喪失状態からは回復したらしく、正面に座る上条の顔をチラチラと見ながらパフェを食べている。
「お前… ちっとは歯に布着せろよ。また拗らせたいのか?」
「元々はアナタが原因でしょう!?」
黒子がテーブルを、ドンッ、と叩いて怒りを露わにする。
マンションでは状況的に平謝りだった彼女だが、それだけに鬱積した思いが溜まっていたらしい。
「アナタがお姉さまを誘惑するから……」
「してねーッ! …っつうのは、俺の主観なんだろうな……」
上条が軽く息を吐いてドリンクバーのコーヒーを啜る。
吹寄の一件で上条も多少は成長していた。
自分のいらん行動が、自分が思っているよりも他人に対して影響を与えていると、身を持って実感したからだ。
「……あのさ」
それまで、ずーっと黙ったままだった美琴が、おずおず、と口を開いた。
「…迷惑、だった?」
「どれを指してんのかわかんねーけど、追いかけっこやガチンコ勝負は、そりゃ迷惑だった」
「そ、それは分かってるわよ! 自覚してるわよッ! そうじゃなくて……」
視線を泳がせて顔を真っ赤に染める。
「…ゎたしが、アンタのこと、す、好きだったこと……」
ガンッ!!
ファミレスに鈍い音が鳴り響く。
白井黒子が突然、額をテーブルに打ち付けたからだ。
どうも、『聞きたく無いワード』を耳にした瞬間、脳が拒絶のあまり意識を強制的にカットしたらしい。
「お、おい… ツレ、大丈夫かよ…?」
「黒子にはさ… 胸のもやもやとか言ったんだけど…」
「無視かよ、ひでぇな…」
黒子の奇矯な行動に悪い意味で慣れている美琴が、全く気にするそぶりも見せず話し続ける。
「あ、アンタがあの女と、その… せ、セックスしているの見て、う、羨ましいなって思っちゃったの…
キ、キスの時だってそう… 羨ましいなって… アンタとキスできて良いなって…」
ショッキングな出来事が続いて何かのスイッチが入ってしまったのか、真っ赤な顔のまま美琴が喋りまくる。
「ねぇ、これってやっぱり、アンタのことが好きだったってことだよね? ねぇ?」
「俺に聞くな… てゆーか……」
やれやれ、と上条が嘆息する。
この少女は、失恋によって恋を学んだのだ。
(すっげぇバイタリティ… 立ち直りが早いっつーか、なんつーか……)
「……俺のことはもう良いんだな?」
「うん…… アンタの言葉、痛かったけど、なんだか胸が軽くなったから……」
なんとも奇妙な、しかし、どことなく居心地の良い空気がテーブルに満ちた。
「そっか… わりぃ」
「謝んなくていいわよ、悪いことばっかりしてたの、アタシだし…」
御坂美琴が、ようやく笑った。 - 465 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:12:27.86 ID:vjbfLIZ+o
- 同時刻、同店内、上条たちのテーブルからほぼ死角となるテーブル。
「おおっとー、麦野の犬と第三位が超微妙に良い雰囲気ですねぇ… これは後で麦野に超報告しないと…」
「だめだよ、絹旗。麦野がかわいそう」
4人がけのテーブルを占拠しているのは、『アイテム』構成員の絹旗最愛と滝壺理后だ。
2人は麦野からの指示で、上条たちに見つからないように潜んでいるのだ。
「で、ソッチのほうは超いけそうですか?」
「うん、これだけ近ければ体晶の使用も少なくてすみそうだよ」
滝壺が小さなガラスケースから取り出した白い粉末を手の甲に乗せ、ちびちびとソレを舐める。
見るからにアレな風景に、何も知らない他人が見たら勘違いしそうである。
「………捉えた。ターゲットのAIM拡散力場は記憶した。これで、もーまんたい」
「アレは傑作でしたねぇ… それじゃ、仕込みはこれで超終了ですね。あとは明日勝負です…!」
滝壺の大能力『能力追跡(AIMストーカー)』は、たとえ地球の裏側に居ようとも、検索対象を探し出す強力なものだが、
一度、検索対象のAIM拡散力場を記憶しなければならない。
そして、御坂美琴のAIM拡散力場を記憶したのは、今回の任務に依るものだ。
『クローンっつーことは、いくらかはAIM拡散力場も似る可能性がある。保険の意味も含めて記憶しておけ』
というのが麦野の指示だ。
「フライングして、今から超検索したら大きなアドバンテージなんですが……」
「これでも十分フライングだって、麦野が言ってた。焦らずいこう…」
滝壺が若干気だるそうに言う。
体晶の使用は身体に悪影響を与え、さらに性質の悪いことに蓄積する。
滝壺は文字通り『命を削って』能力を行使しているのだ。
「……使用回数が超少ない方が良いですから」
「そだね、ありがとう、絹旗」
友人の気遣いに、微笑みを浮かべて滝壺が頷いた。
. - 466 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:12:56.65 ID:vjbfLIZ+o
- S-21 DAY 0
PM 6:00 第11学区 貸し倉庫街
物資の搬送が盛んで、そのために大きな貸し倉庫が整然と立ち並ぶ第11学区。
複雑な倉庫群の迷路を、みょうちきりんなルートで延々と歩き、壮年と少女の2人組が1件の貸し倉庫へやってきた。
「ここか… 尾行を警戒してのこととはいえ、流石に疲れたな……」
疲労感で満たされた声で言うのは天井亜雄だ。
彼とは対照的に、ミサカ00000号は涼しい顔で貸し倉庫の認証キーを入力した。
「141060561310000と… 何か意味があるのでしょうか? と、ミサカ00000号は当然の疑問をマスターに申し上げます」
「さぁな… それよりも、これからお前はあまり喋るなよ。ボロが出ると面倒だ」
「マスター、マスター。かしこまりました。今よりミサカ00000号はお口チャックです。と、ミサカ00000号はマスターの命令を遵守いたします」
両手の人差し指で口の前にバッテンを作って、ミサカ00000号が口を閉じる。
「よし… それでは入るぞ…」
物資搬入口よりもずっと小さい通用門のドアを開けて2人は中に入った。
貸し倉庫の中は様々な物資が積まれ、さらに光量が絞られており、目が慣れるのに少しの時間が必要だった。
ようやく目が慣れてきた天井が、誰か居ないかと口を開きかけると、突然、眩いライトが天井の顔に向けられた。
「うわっ!!」
「………………ッ!!」
悲鳴を上げてのけぞる天井をガードするように、ミサカ00000が無言で前に出る。
「あ、ごめんねー、驚かせちゃった?」
物資の隙間から、若い女の声がした。
続いてもう一つ。
「お姉さま、悪戯はお客人に対して失礼ですわよ。ましてや、こちらはご依頼人なのですから…」
「はいはい、みっちゃんは真面目ねぇ…」
ゆらり、と物資の陰から2人の少女が現れた。
1人は、冬服のミニスカートに、サラシにブレザーを肩に掛けただけという扇情的な衣装の少女、
もう1人は、艶やかな緑髪が美しい、デザイン着物を着た日本人形の様な少女だ。
「一応、符丁を確認しましょうか。『沈黙の巨人』」
「『とろみのついた日本酒』…」
天井が緊張を隠し切れない声で言うと、少女2人は満足したように頷いた。
「はい、オッケー。自己紹介をするわね。私たちは『グループ』。こっちは相棒の婚后光子」
「はじめまして、婚后光子と申します。そして、こちらのお姉さまが、学園都市第6位の超能力者(レベル5)……」
婚后がもったいぶった仕草で、手に持った扇子で隣の少女を指した。
「『座標移動(ムーブポイント)』の結標淡希ですわ」
結標は、にっ、と歯を見せて笑うと、手に持った軍用の懐中電灯をくるりと回した。
. - 467 :第3話「妹編」 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/18(火) 16:18:09.33 ID:vjbfLIZ+o
- ハイ終了。
というわけで、あわきんとみっちゃん登場でようやくキャラが揃いました。
ちなみに、あわきんは最初からパーフェクトあわきんなので、どんだけ自分をテレポートさせようが吐き気1つ感じません。
あと、今回で美琴の上条フラグは作者的に完全に折ったつもりです。
原作の美琴は、行動原理が上条or妹達しかないので、それからの脱却狙い。
コレで自由に動いてくれるんじゃないでしょうか。
さて、次回からようやく第3話の本編突入です。
予定してるエロは、あわきん×みっちゃん、天井クン×00000号、塔下君×初春、そして、上条さん×むぎのん
では、キリのいいところまで書けたら投下します。では。 - 480 :第3話「妹編」番外 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/21(金) 23:55:33.19 ID:Waw+ZP+Ho
- なんか2時間暇だったから小話書いた。
投下。 - 481 :第3話「妹編」番外 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/21(金) 23:55:58.52 ID:Waw+ZP+Ho
- Status フレンダ・セイヴェルン、駒場利徳
「…うん、何とかなったね。外科手術に至らなくて良かったね」
消毒液の匂いが染み付いたとある病室。
脊椎損傷などの患者に使われる、大掛かりな牽引装置のあるその部屋で、
長時間の結合から解き放たれた大小アンバランスなカップルが、同時に溜め息を吐いた。
「……とりあえず、トイレ行って来るわ……」
非常に大変疲れた顔と声で、駒場がぼそりと言い、病室の外へ消える。
フレンダの無理な挿入から早数時間。
我慢に我慢を重ねた彼の膀胱は破裂寸前だ。
「うん… 行ってらっしゃい……」
対するフレンダも疲労困憊だ。
自分の腕ほどの肉棒を長時間胎内に埋め込んでいたせいで、太腿の筋肉が疲労の極みに達している。
さらに言えば、おまんこ穴はがばがばである。
「愛に暴走するのも結構だけどね、やっぱり、限度があるよね?
今回は間歇的牽引で何とかなったけど、以後は十分に気をつけてね?」
どことなくカエルを思わせる風貌の医者が、やや呆れた口調で言う。
その言葉に、フレンダは「ハハハ…」と笑って返した。
「でも… 結局、ヤルためには入れるしかない訳で……」
「全部挿入しようとするから無理がでるんだよ。亀頭だけでも挿入は十分だよね?」
「む、むぅ……」
冗談のつもりが真面目に返されて、フレンダが戸惑う。
「とにかくお疲れ様だね。今日診察できたのはラッキーだったね、明日は予約の患者が来るから、1日遅かったら、確実に切開だったよ?」
「げぇ… それはラッキーだったわ……」
「……何が?」
トイレをすませた駒場が入ってくる。
フレンダと目が合うと、どちらとも無く気恥ずかしそうに視線を外した。
「はいはい、治った患者は出てった出てった。いちゃいちゃは自室でやってね?」
「いや、先生、別に俺ら……」
「了解っすー。行こ、利徳」
ベッド上でフレンダが両手を広げる。
俗に言う、『だっこしてポーズ』だ。
「…何のまねだ?」
「アタシ、足に力が入らないし、股間がすんごい痛くて歩けない」
色んなモノを含んだ盛大な溜め息を吐き出して、駒場はしぶしぶフレンダに両手を伸ばした。
. - 482 :第3話「妹編」番外 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/21(金) 23:56:28.31 ID:Waw+ZP+Ho
- Status 御坂美琴、白井黒子
PM10:00、常盤台学生寮。
「今日は散々な一日だったわね……」
「ですわね……」
順番にシャワーを浴びて、共にベッドに倒れ伏した2人がしみじみと呟く。
ファミレスで上条と別れた後、2人で話し合った結果、今日の出来事は2人の胸に仕舞おうという結論に達した。
固法には「失敗しました。フラれました」とだけ連絡してあるし、住所を書いたメモは焼却した。
「…初春さんには連絡とったの?」
「はいですの。件の住所は、デジタルデータに残していないとのことですの。 …どうやって入手したのかは、言えたものではありませんわ……」
風紀委員として、同僚の違法ギリギリのハッキングは頭痛の種だ。
上条にはメールで事の次第を送ってある。
「あっそ……」
2人の間に微妙な空気が流れる。
「………黒子」
「………お姉さま」
同時に声を掛けて、お互いが虚を付かれる。
しばらくして、黒子の無言の「どうぞどうぞ」ジェスチャーにより、美琴が躊躇いがちに話し出す。
「見ちゃったわね……」
「見てしまいましたわね……」
2人が言う「見た」とは、上条と麦野のセックスシーンだ。
歳相応の性知識しかない美琴と、耳年増でしかない黒子にとって、あの光景はそんな簡単に忘れられるものではない。
「く、黒子はさぁ…… その…… アレが見たの初めて…?」
「も、勿論ですわ!! そういうお姉さまは…?」
「アタシだって初めてよ!! あの、その… ズブって感じがすっごいリアルっつーか…」
顔全体を真っ赤に染めて美琴が赤裸々に語る。
いつもなら「お姉さま、はしたないですわ!」と内心はともかく注意をする黒子だが、今日は違った。
「抜くときも凄かったですの… ズボッ、ヌポッ、という感じで、ズルズルっと……」
「黒子… 言い方がやらしいわよ……」
「お、お姉さまだって…!」
よくよく見てみると、黒子も顔が真っ赤だ。
微妙な沈黙が2人を包む……
「き、気持ち良かったのかな……」
口火か切られた。 - 483 :第3話「妹編」番外 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/21(金) 23:57:01.12 ID:Waw+ZP+Ho
- 「い、イク、とか仰ってましたわね、あの方…」
「ていうか、男の人の精液見ちゃったんだ…… ホントに白いのね……」
「それを舐めるとか、想像を絶しますわ……!」
「そうそう! 舐めるもんなの、あれ!? マズイんじゃないの!?」
「く、黒子に言われましても… も、物の本によると、女性の愛液と味自体はあまり変わらないと載っていましたが……」
ハッ、と白井黒子の脳裏に戦慄が走る。
「お、お姉さま…?」
「く、黒子は舐めたことある…? っていうか… その、ぉなにぃの経験はある…?」
「ぐほっ!」
オネエサマ
憧れの御坂美琴から出た突然の猥語に、黒子が鼻血を垂らして悶絶する。
「………ノーコメントですわ」
「あ、あるんだ……」
「ノーコメントですわ!!」
完全に否定しない事が、明らかな肯定ではあるが、流石に女性として明言はできない。
「…それってやっぱり、アタシを想像したりして……」
「お姉さま! お姉さま!! 先ほどから発言が過激すぎますわ!!」
「だ、だって! 興味出ちゃったんだから仕方が無いじゃない!!」
再び、微妙な沈黙が2人を包む。
「……………舐めたことはありませんわ…」
石臼で小麦粉を擂り出すような抑揚の無い声で黒子が言う。
「自分のを舐めるのは、流石に抵抗がありますの……」
ゴクリ、と、どちらか、もしくは双方の喉が鳴る。
「きょ、興味、ある…?」
「きょ、興味、ございます…?」
三度、微妙すぎる沈黙が2人を包む。
「…そっち、行くね」
ギィ… とベッドが軋む音がして美琴が床に立つ。
黒子は心臓が喉から飛び出るかと思うくらい胸を高鳴らせて、その瞬間を待った。
ぽすん、と横寝している黒子の正面に美琴が横たわる。
紅潮した頬と、ひどく色っぽく潤んだ瞳が、黒子の目の前に現れた。
「ああ… お姉さま……」
「一応、傷心の身なんだからね… 慰めてよ、黒子……」
それを免状と理解した黒子は、暴れまわる欲望を必死に抑えて、互いに震える口唇をゆっくりと近付けていった。
「………………ちゅ」
美少女2人の口唇が重なる。
男子禁制の女子寮に、新たな百合の花が加わった……
. - 484 :第3話「妹編」番外 ◆yEFBo3BAb.[saga]:2012/12/21(金) 23:57:28.73 ID:Waw+ZP+Ho
- 終わり。
気が向いたら本番シーン書きます。では。 - 485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/12/21(金) 23:59:01.96 ID:SS8LfboSO
- 予想外だ……乙
- 486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]:2012/12/21(金) 23:59:59.43 ID:iTa0MjFQo
このたいみんぐであらわれるとは- 487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/12/22(土) 00:13:50.57 ID:e7d5hyOSo
- なぜ更新を本番と分けた
乙
2014年7月20日日曜日
上条「そこのおねーさん! お茶しない?」 麦野「あん?」 1
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とある魔術の禁書目録,
上条,
麦野
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