2013年2月6日水曜日

あまくさっ!? ~ただいま。~ 3

186第④話(15話)―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 18:23:34.71 ID:BgaX9rQi0
 ―――とある日、PM07:00、学園都市第7学区、ファミリーレストラン「Joseph's」・・・(浜面side)・・・


学校帰りの学生たちで賑わうこの時間、ファミレスのとある一角に自分達は居た。
もはや俺達――『アイテム』の定位置と化している窓際の一つに、今日は三人のメンバーが集まっていた。



何故三人かというと、普段はポケーっとしている『彼女』が珍しく主体的にこの面子を招集した為である。


滝壺「……このままじゃいけない」ムンッ!

浜面・フレンダ「「……は?」」ポカーン・・・


真剣な眼で胸を張り俺達二人に告げる滝壺さん。
おニューのジャージが似合ってます。真剣な顔もキュートです。


フレンダ「うわぁ気持ち悪い浜面。キモいじゃなくて気持ち悪い訳よ浜面キショい」ジトー・・・

浜面「るっせぇ黙ってろ! えっと、滝壺。具体的には何がいけないんだ?」

フレンダ「というか結局、何で私達だけ集められたか分からない訳だけど。麦野と絹旗は?」

滝壺「うん。順を追って話すよ」


そう言って、まず何故この面子かを告げる滝壺。


滝壺「最近仕事ないとはいえ、あの二人、引き籠り過ぎだよ」

浜面「え? うん、まぁそう言われてみれば」

フレンダ「別に良いんじゃない? 個人の勝手だし」

滝壺「良くないよ。お家から出ないって大問題だよ? ご飯は全部デリバリー。生活規則も凄く適当」

フレンダ「今に始まった事じゃないわ。絹旗なんて元々結構ヒッキーだった訳だし」


そういえば俺がアイテムに混じる前、絹旗は相当根暗だったらしい。
確か誰かに依存しないと生きていけないとか、極度の人見知りだとか。


滝壺「それが駄目だって言ってるの。このままじゃきぬはた、ますますコミュニケーション障害持ちの社会不適合者さんになっちゃうよ」ムゥ・・・

浜面「コミュ障って……随分な言い方だな」タラー・・・

フレンダ「まぁでもリーダー的には仕事出来るなら何でも良いんでしょ? 結局、麦野が放任してるんだしOKな訳じゃない」

滝壺「そのむぎのも最近ヒッキーさんだよ。チームメイトとして心配でしょう」


仲間思いの滝壺さんマジ聖女だなぁ……おい、フレンダ。そんな目で見る 
187 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 18:43:11.99 ID:BgaX9rQi0
ふと、疑問が生まれた。
麦野は如何でも良いとして、絹旗はアイテム入る前何処に住んでたんだ?


フレンダ「研究所の施設って言ってたわね」

浜面「……それから麦野と暮らす様になったのか? アイツ自分のアパート無いの?」

滝壺・フレンダ「「……、」」タラー・・・


聞いちゃ拙かったのか。


フレンダ「絹旗は、その……、」

滝壺「……一人暮らし出来ないよ」

浜面「え……何それ?」

フレンダ「親無し。更に学校行ってない。オマケに『仕事』と『能力開発』以外研究所で学んでないときてる訳」

浜面「い、いやいや。流石に最低限のマナーとか生活能力とかあるだろ?」

滝壺「今はね。でもアイテム来るまで自立能力0だったよ。私達で徐々に教えていったんだもん」


……それほどか。


フレンダ「だから結局、主に麦野監視下で生活してる訳。部屋代も浮くしね」

浜面「そうだったのか。でもよ……麦野の監視下って、ちょっとアレじゃないか?」


滝壺か、最悪フレンダと共暮らしの方が良かったと思う。


滝壺「経済的に一番豊かなのはむぎのだよ。それに……うん。色々と」ムゥ・・・

浜面「俺には教えられない事か?」

フレンダ「結局……教育方針の問題な訳よ。私放任。滝壺は朗らかに自立支援。麦野は絹旗を立派な殺人鬼に育てたい」

滝壺「それから……きぬはたが日常で間違って乱雑開放(ポルターダイスト)起こした時、対処出来るのむぎのだけだから」


……麦野の『飴と鞭』って事か?


フレンダ「『鞭』は合ってるけど『飴』は違う訳。結局のところ『制御炉』ってとこじゃない?」

浜面「居なきゃ『もしも』に対処出来ないと……そりゃ仕方ねぇな」


確か絹旗が『乱雑開放』ってのを起こすと、仮説では『N2爆弾』に成りかねないんだったな。おっかねぇ。

188 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 19:03:45.60 ID:BgaX9rQi0
とりあえず麦野の方針は嫌が応にも絶対という訳だ。それは認めざるを得ない。


滝壺「うーん。でも最近のきぬはたなら……そろそろ自立させても良いって思う」

フレンダ「まぁ結局、誰かさんの御蔭で根暗では無くなった訳だからね」チラッ・・・

浜面「は?」ポカーン・・・

滝壺「何でもないよ。気にしないで、はまづら」フフッ


とりあえず……話を逸らしておいて悪いが、本題に戻ろう。


滝壺「あ、うん。そうだね」

浜面「えっと、麦野と絹旗の引き籠りを如何にかするって事だよな」

滝壺「うん」

フレンダ「仕事入れば元に戻るわよ。結局放っておいても問題無い訳よね」サラッ・・・

滝壺「それじゃ駄目でしょ。二人は機械じゃないんだから」ムンッ


……良い事言うなぁ。あの麦野相手でも真面目にそう言う滝壺さんマジ可愛い。


フレンダ「浜面少し黙ってろ。あのねぇ滝壺……忠告しとくけど、あんまり麦野怒らす様な事考えるのは止めなさい。分かるでしょ?」

滝壺「……、」

フレンダ「麦野のする事にケチつけんのは結局御法度な訳。加えて絹旗の教育方針も然り、じゃない? オーライ?」

滝壺「でも……さ」ムゥ・・・チラッ

フレンダ「ヒッキーで結構。死にはしないわよ。機械なら機械でもいいじゃない」


俺としては滝壺の考えに同意したい。だがフレンダの言い分も確かだ。


滝壺「ねぇフレンダ」ボソッ

フレンダ「まだ何か?」

滝壺「もしも……妹ちゃんが……ヒッキーで機械人形でコミュ障な社会不適合者になったら、如何する?」ジー・・・

フレンダ「……フレメア殺して私も死ぬ」ドヨーン・・・


うわぁこの人怖い。純粋に怖い。

189 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 19:48:38.70 ID:BgaX9rQi0
シスコンさんはさておき、滝壺さんの意見を聞きたい。


滝壺「殺しはしないけど、気持ちは同じだよ。むぎのにもきぬはたにも真っ当な生活して欲しいの」

浜面「真っ当な、ねぇ」

フレンダ「ブツブツブツブツブツブツブツブツ・・・」ドヨーン・・・

浜面「……おい、フレンダ。そろそろ戻れ」ビシッ

フレンダ「……あ、うん」


気持ちは分かった。だが如何する?


滝壺「きぬはたに関しては大丈夫だと思う。むぎのは引き籠りを放置してるだけで拘束してる訳じゃないから」

フレンダ「まぁね。絹旗が結局勝手に外出るなら止めない訳よ」

浜面「問題は麦野だろ? アイツも外出すのか?」

滝壺「……私に良い考えがある!」ムンッ!


何か失敗フラグ臭がプンプンしますけど。


滝壺「大丈夫。協力者を呼ぶから」フフッ

浜面「協力者?」

フレンダ「誰々?」

滝壺「それは後々のお楽しみ。むぎのもきぬはたもちゃんと外に出てくれる筈だから!」b"


サムズアップ。


滝壺「それで、フレンダとはまづらには色々と動いて貰いたいの。頼んでいい?」ジー・・・

フレンダ「まぁ出来る範囲なら」

浜面「ああ。可能な限り協力するよ」


そして滝壺参謀は作戦の説明を始めた……―――

191 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 21:32:43.68 ID:BgaX9rQi0
 ―――とある翌日、AM10:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・







相も変わらず我が家に集まってる馬鹿姉共を傍目に、僕は『あるモノ』に魅入っていた。


香焼「ふふっ……ふふふ」ニンマリッ


まだ何にも触れてない鋭さ。この手にしっくりくる重さ。持ち歩き安いコンパクトさ。そして顔が写る程洗練された光り具合……業物だ。


五和「……うわぁ。何か今日のコウちゃん変だよ」タラー・・・

浦上「放っておいてあげなヨ。堅物にもそういう日もあるんだって」

神裂「ふむ……ところで何故変なのですか?」


人を変人扱いするなボケ……と普段なら怒ってる所だが、今日は機嫌が良い。説明してやろう。


五和「勝手に一人で盛り上がってる。怖いわぁ」

浦上「まぁまぁお姉……そんで?」

香焼「フフフフフ。特別に見せてやろう」スッ・・・

神裂「……これは?」ジー・・・


見ての通り『短刀』です。


神裂・五和・浦上「「「……、」」」

香焼「えへへ。良いでしょ」ニコニコッ

浦上「満面の笑みだヨ……可愛い顔して何言ってんでしょうネ」タラー・・・

五和「このままコウちゃんが順調に刃モノ収集家になったら、やっぱ姉さんの所為ですからね!」ギロッ!

神裂「わ、私の所為じゃないでしょう! 彼自身の問題です!」アタフタ・・・

浦上「まぁ……趣味なら構わないでしょ。犯罪に使う様な馬鹿な真似はしない筈デスから。ぶっちゃけ悪趣味だけどね」ハァ


悪趣味言うな。カオリ姉さんだって日本刀とか鎧集めるの好きでしょうに。


五和「ほれ見ろ」ジトー・・・

神裂「ぐっ……べ、別に良いでしょう! ねー香焼」フンッ

浦上「うわぁ開き直った。流石姉様。あざといですネ」ハハハ


五和みたいに支給されたビックスクターの改造で金掛けてるヤツに悪趣味とか言われたくありません。

192 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 22:49:28.22 ID:BgaX9rQi0
五和「そ、そんなに弄ってないもん! フレーム変えたくらいだもん!」アタフタ・・・

香焼「はいはい。本部の車両維持費で変えたフレームはさぞ綺麗なんでしょうねー」ジトー・・・

神裂「……五和」ギロリ・・・


ざまぁみろ。姉さんから説教喰らえ。


浦上「どうどう。それで香焼。その短刀だかナイフの何が良いのカナ?」

神裂「見た目は両刃の軍用ナイフですね。しかしグリップが……機械仕掛けでしょうか?」

香焼「あ、はい。えっと……、」ポチッ


『仕掛け』を押す。


神裂・五和・浦上「「「……ん?」」」ポカーン・・・


まぁ見た目では分からないだろう。


香焼「五和。側面部触ってみ。刃には絶対触れるなよ」スッ・・・

五和「側面?」スッ・・・

浦上(何で疑いも無く触るかなぁ馬鹿姉)タラー・・・

五和「えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわぁ熱ッッ!!?」バッ!!

神裂「なっ!?」


ナイスリアクション。


五和「な、何これ!? すっごく熱いよ!?」ギョッ・・・

香焼「視覚では分からないくらい微振動してるからね。熱振動効果ってヤツっすよ」ハハハ

浦上「熱振動って、ダイヤモンドカッターとか溶接とかに使う?」

香焼「ウォーターカッターとか超音波カッターとはちょっと違うけど大体合ってる。振動で物を切る、って効果は同じっすよ」

神裂「……都市製ですか」タラー・・・


その通り。小遣い溜めて一括で買った。0が五つあったが、悪くない買い物だろう。おまけで専用研ぎ石手入れセットも付けてくれたし。
並大抵の物ならスッパリで、立方晶窒化炭素やロンズデーライト、多分ハイパーダイヤモンドだって時間を掛ければ切れる筈。


香焼「あ、長刀タイプもありましたよ。高周波ブレードだっけ? 姉さんも買いませんか!?」キラキラ・・・

神裂「え、遠慮しておきます……七天七刀ありますから」ダラダラ・・・


残念。100万切る安値で売ってたのに。


浦上「……姉様。やっぱりちょっと危ないですヨ。都市の最新ナイフにまで手を出すなんて」ボソボソッ・・・

神裂「う、うん……業物や儀礼刀ならまだしも、アレはちょっと」タラー・・・

五和「やっぱり姉さんの所為ですからねっ。責任取って下さいよっ」ゴニョゴニョ・・・


何か言われてる気がするが、放っておこう。多分このナイフの評価についてに決まってる。きっと高い評価だろう。

193 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 23:25:49.79 ID:BgaX9rQi0

 ・・・・・寸・・・・・


自分がナイフ磨きに没頭している最中、姉さんの電話が鳴った。


神裂「ん? 固法さん……はい」Pi!

固法『あ、もしもし。こんちには。神裂さん、今何処にいた?』

神裂「香焼の家にいました。遊びの御誘いですか?」

固法『うん。遊びというか、お願いというか』アハハ・・・

神裂「お願い?」

固法『えっと私じゃないんだけどね。麦野さんの後輩の滝壺さんって知ってる?』

神裂「滝壺さん……話には伺ってます。直接お会いした事は有りませんけど」


滝壺、という名を聞き顔を上げる。確か最愛が溺愛している姉分だった筈。


固法『その滝壺さんからお願いされたの』

神裂「はぁ。何を?」

固法『最近、麦野さん部屋から出ようとしないから引っ張り出して欲しいって』

神裂「……へ?」

固法『仕事無くて暇なのはしょうがないけど、堕落し過ぎだから。だそうよ』

神裂「はぁ。まぁ何とも」ポリポリ・・・


苦笑する姉さん。何言われたんだ?


固法『それからついでに最愛ちゃんもなんだって』

神裂「最愛……絹旗さんですか」チラッ


最愛?


固法『麦野さんに影響されてか、彼女と一緒にゴロゴロモード入っちゃってダメダメ状態らしいの』

神裂「姉妹揃ってという訳ですか。度し難いですね」

固法『それでね……―――』


ふむふむ、と話に聞き入る姉さん。凡そ20分くらい続いた。何か深刻な話だろうか。



194 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/30(火) 23:58:29.72 ID:BgaX9rQi0
五和がそろそろお昼の準備しよう、と立ち上がった時、姉さんの電話が終わった。


浦上「随分とまぁ長電話でしたネ」

神裂「ええ、ちょっとね……、」ムゥ・・・


さて、と僕の方を向く姉さん。


神裂「香焼」

香焼「はい、何か」

神裂「今日の予定は?」

香焼「え? うーん……特に無いかなぁと。宿題は終わってるし、報告書も少ないし」

神裂「よろしい」コクッ・・・


真面目な顔。
自分と五和、浦上もその雰囲気を察しその場で畏まってしまった。


神裂「これから特別任務を与えます」

香焼「と、特別任務?」


仕事?


神裂「いえ。私用ですが、任務です」

香焼「は、はぁ」キョトン・・・

五和「……何事ですか?」

神裂「今から私と一緒に出かけてもらいます」

浦上「ドチラに?」

神裂「第7学区のホテル『アレクサンダー』です」


……へ?


五和「ね、姉さん!! 駄目です! そ、そんな……義姉弟ですよ!!」カアアアァ///

浦上「お姉。喧しい」


オマエは話を拗らせるから黙ってろ。


神裂「うん。詳細は向う最中に話しますが、兎に角急ぎましょう。善は急げ、だそうです」

香焼「善、すか」ポリポリ・・・

浦上「私達は?」

神裂「助力が必要な時は後ほど連絡します。それでは香焼、準備を」


よく分からないが、付き合うしか無かろう。最愛も関わってる事みたいだし。
数分後、五和と浦上に見送られ、第7学区の高級ホテルに向かう事となった……―――



195 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 00:25:59.99 ID:3+gO496P0
 ―――とある翌日、AM11:45、学園都市第7学区、ホテル『アレクサンダー』、とある一室・・・・・



麦野「……だるぅ」ゴロゴロ・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「あ……もうお昼だ」チラッ・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「絹旗ー。お昼ピザで良い?」グデェ・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「おーい、絹旗ー。聞こえてないのー?」グダァ・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「……おい。ゲーム止めろ」チッ・・・

絹旗「……え」ピコピコ・・・ピタッ

麦野「……お昼。ピザで良いでしょ」ゴロン・・・

絹旗「またですか?」ハァ・・・

麦野「だってメンドイもん。ホテルのサービスとどっちでも良いけど」

絹旗「じゃあ……ホテルのサービスで」スッ・・・ピコピコ・・・

麦野「そんじゃあ電話よろー」グデェ・・・

絹旗「麦野してくださいよ。私だって超面倒です」ピコピコ・・・

麦野「オマエ、誰の金で食うと思ってんの? 誰の金で此処泊まってるの? 誰のゲームで遊んでるの? あぁん?」ジトー・・・

絹旗「チッ……はいはい。やりゃいいんでしょう」ピタッ・・・

麦野「そうそう♪ 素直で宜しい」フフッ・・・

絹旗「やれやれです。メニューは?」グダグダ・・・Pi!

麦野「ヘルシー鮭定食とダイエットコーラ三本。あとアイス適当に」ゴロゴロ・・・

絹旗「そのメニューなら浜面にスーパーかコンビニで買って来させりゃ良いじゃないですか」ハァ・・・

麦野「だって浜面今日忙しいっつーんだもん。おまけにフレンダと滝壺もいないし……アンタ買ってくる?」ジー・・・

絹旗「超勘弁です。外出るの超面倒ですから」エー・・・

麦野「ひっきー。絹旗のひっきー」ベー・・・

絹旗「どの口言いますか……あ、すいません。鮭定食塩分控えめ冷やし中華一つずつ。あとコーラ5本と苺シャーベット2個で」Pi!

麦野「ダイエット!」ンモー

絹旗「ハァ……コーラ2本、カロリーオフ3本で訂正でお願いします」ガチャッ・・・

麦野「うい。そんじゃあ飯来るまで寝よっかなー」ゴロン・・・

絹旗「麦野ー、ルームサービスの対応くらいはしてくださいよ。流石に歩かないと牛に成りますって」ピコピコッ・・・

麦野「余計な御世話だ糞ガキ」フンッ・・・

196 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 01:05:48.48 ID:3+gO496P0

 ・・・・・壁・・・・・



固法「うわぁ……これは拙い」ジー・・・  ←  ※透視能力使用中。

滝壺「はい。困ってます。梃子でも動こうとしないんです」

浜面「日に日に堕落してってるよな……絶対仕事にも支障出るって」

フレンダ「絹旗はまだしも、麦野があの状態なのは異常な訳よね。部屋から出ないって、結局絹旗のヒッキー伝染った訳かな?」

固法「麦野さんも最愛ちゃんも、メールしてる分には普通だったから気付かなかったわ」ムンッ

滝壺「……このりさん。むぎのの事、頼めますか?」

固法「うん。こうなってるの知らずに放置してた私にも責任あるし。今助っ人呼んでるから無理矢理連れ出すわ」b"

フレンダ「なっ! む、麦野を無理矢理!?」ギョッ・・・

浜面「馬鹿っ。デカい声出すなっ……気付かれるぞ」シー!

固法「その点は大丈夫よ……問題は最愛ちゃんだけど」ウーン・・・

フレンダ「絹旗は真正ヒッキーよ。滝壺、如何すんの?」

滝壺「……このりさん」チラッ・・・

固法「多分大丈夫だと思うわ。ちゃんと2人来れば、だけどね」

浜面・フレンダ「「2人?」」ポカーン・・・

固法「とりあえず麦野さんはまず外で食事させるわ。最愛ちゃんもそうさせる様お願いしましょう」

滝壺「そうですね。お願いします」ペコッ

浜面「……なぁ。俺らは何すれば良いんだ?」

滝壺「追々伝えるよ……このりさん、あとどれくらいで着きますか?」

固法「もう直ぐそこまで来てる筈よ。もうちょっと待ちましょう」


197 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 02:01:11.28 ID:3+gO496P0

 ――一方・・・・・



 マイドアリガトウゴザイマーッス・・・・プシュー・・・



香焼「着いた……相変わらずデカいホテルっすよね」ジー・・・

神裂「……出来れば此処に来たくないんですよ」ハァ・・・

香焼「え?」

神裂「だって隣にアレイスター居るんですよ?」チラッ・・・


・ホテル『アレクサンダー』 ←  100m  → 『窓のないビル』


香焼「は、はぁ」

神裂「正直言って不気味です……今は行かざるを得ませんけどね」フム

香焼「そ、そうっすか……何階でしたっけ?」

神裂「確か最上階の二つ下と言っていました」

香焼「……麦野さん。お金持ちだなぁ」キョトン・・・

神裂「御嬢様らしいですからね。それに超能力者(レベル5)です。色々我儘が効くのでしょう」

香焼「軍覇とは大違いっすね」ハハハ・・・

神裂「さておき、先程の手筈通りです。貴方は貴方の仕事をしてください。私は私の仕事をしますから」

香焼「了解っす。でも……もあい必要でした?」スッ・・・


もあい「んなー」ヒョコッ


神裂「連れて来てくれと言っていました。役に立つのでしょう。この子(もあい)もこの子の役割があるという事です」

香焼「……だってさ」ナデナデ・・・

もあい「にゃ?」ジー・・・

神裂「それでは……鋼糸(ワイヤー)良し。飛針(投げ針)良し……※菊一文字時貞(模造刀)良し! 完璧です」ビシッ!


※ねーちんが態々地元の名匠に頼んで造ってもらった。天草四郎の名を冠した菊一文字派の模造刀。七天七刀を持ち歩けない際、使用する。


香焼「ちゃんと隠して下さいよ。それ生身で持ったままホテル入れませんからね」ハァ・・・

神裂「分かってますよ。香焼こそ……まぁ心配は要りませんか。貴方は暗器隠すの天才的ですからね」

香焼「……さぁ」ハハハ・・・

神裂「まったく服の下にナイフ何本隠してるんだか……さっきの最新式の短刀も持ってきたのですか?」ジトー・・・

香焼「あはは。内緒っす」

神裂「やれやれ……暗殺部隊に配属させなくて正解でした。容姿的に実は一番向いてますが、性格が難ですからね」ボソッ・・・

香焼「へ?」

神裂「何でもありません。気にしないで下さい。そろそろ行きましょう。固法さん達も待ちかねている頃合いです」カツカツカツ・・・

香焼「そうっすね。急ぎましょう」カツカツカツ・・・


198 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 02:45:17.91 ID:3+gO496P0
 ・・・・・室内・・・・・



 ぐだぐだぁ~・・・・



麦野「……まだ来ないのー?」グデェ・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「絹旗ー。フロントに電話掛けてみてよー」ゴロッ・・・

絹旗「……え」チラッ・・・

麦野「電話よ。催促の電話ー」ジトー・・・

絹旗「……一食抜いたって死にませんよ」スッ・・・ピコピコ・・・

麦野「……まぁそれもそうね。じゃあもう一眠りするわ」ファアァ・・・

絹旗「おやすみ」ピコピコ・・・




 ・・・・・壁(扉)・・・・・




固法「……あ。また寝た」ハァ・・・

ホテルボーイ「あのぉ……お食事は如何すれば宜しいでしょうか」ポリポリ・・・

フレンダ「此処に置いてってOKよ。私達が中に持ってくから」

ホテルボーイ「はぁ。では失礼します」テクテク・・・

浜面「態々さーせん……っておい、コーラ5本……アイツら昨日買い溜めしたヤツ飲み切ったのか?!」エ・・・

滝壺「デリバリーにコーク中毒。完っ璧、駄目人間と化してる筈だよ。むぎのもきぬはたも手遅れになる前に何とかしないと」ムゥ・・・

固法「二人とも下着姿でゴロゴロと……まさか数日間お風呂入ってないんじゃ」タラー・・・

フレンダ「い、いや、麦野に限ってそれは……絹旗は分からないけど」


※因みに、固法さんしか室内覗き見できてません。


滝壺「……はまづら」チラッ・・・

浜面「た、滝壺。何を勝手に想像してるか分からんが、俺は決して厭らしい事なんぞ考えてないぞ」タラー・・・

滝壺「……誰もそんな事言ってないのに……はまづらのスケベ」ジトー・・・

浜面「」チーン・・・

フレンダ「黙ってなさい馬鹿ップル。爆発しろ」フンッ・・・

固法(神裂さん、香焼くん……急いで頂戴)ハァ・・・
199 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 03:14:55.85 ID:3+gO496P0

 ――一方・・・・・



香焼「おぉ。中広いっすね」キョロキョロ・・・

神裂「見とれてる暇は有りませんよ。エレベーターへ急ぎます」カツカツカツ・・・

香焼「はい。(因みにいつもの服の所為で殆どの人に見られてる……何でこっちの服装で恥ずかしくないかなぁ)」ハァ・・・



 ウエヘマイリマス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウォーーーーーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チンッ!


神裂「此処ですね」

香焼「部屋は?」

神裂「階に4つしかない筈なのですぐ見つかるでしょう」キョロキョロ・・・

香焼「こ、この広いフロアに部屋4つって……どれだけ豪勢なんすか」タラー・・・

神裂「……ん。こっちです」ピンッ

香焼「へ?」

神裂「固法さんから部屋番が来ました。急いでくれとも」

香焼「あ、はい」


 カツカツカツ・・・ゴニョゴニョ・・・


滝壺「……あ。やっと来た」チラッ・・・

固法「え。あ、ホント……んもー。遅いわ」ハァ

神裂「すいません。準備に手間取りました」コクッ

フレンダ(な、何か凄い恰好の美人来た!?)タラー・・・

神裂「彼女らは部屋の中に?」

固法「ええ。麦野さんは今からまた寝そうで、最愛ちゃんはずーっとゲームをピコピコピコピコ」ハァ・・・

香焼「最愛……メールじゃ分からなかったっす」

固法「私も麦野さんの変化に気付かなかったもの。仕方ないわ」

神裂「兎角、さっさと乗り込みましょう。彼女の根性を叩き直せば良いんですね?」キランッ・・・

浜面「た、叩き直すって……麦野を?」ダラダラ・・・

固法「多分、神裂さんなら出来るかも」ハハハ・・・

滝壺「待って。今から作戦の詳細を説明するから……―――」ビシッ


 少女説明中・・・・・


滝壺「―――……以上。かんざきさんがむぎのを無理矢理如何こうできれば、多分、成功する筈」コクッ

香焼「あのー、自分は?」

滝壺「君は逐一きぬは担当だよ。大丈夫。きぬはたに関しては絶対成功するから」b"

香焼「はぁ」ポリポリ・・・

滝壺「よし。それじゃあ頑張ろー!」ビシッ!

一同『おー!』ビシッ!



200 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 04:02:15.71 ID:3+gO496P0
 ―――とある翌日、PM00:30、学園都市第7学区、ホテル『アレクサンダー』、とある一室・・・・・






麦野「……あー畜生。やっぱ腹減って寝れないわ」グデェ・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「糞っ。何で浜面居ねぇんだっつの、使えねぇな……オイ絹旗。やっぱ飯よ」ジトー・・・

絹旗「……、」ピコピコ・・・

麦野「おい、コンセント引き抜くぞ! 無視すんな」ギロリ・・・

絹旗「……私は要りません」ピコピコ・・・

麦野「私が欲しいっつってんの。早く頼めよ」イライラ・・・

絹旗「……はぁ」ピタッ・・トテトテ・・・

麦野「フロントに、さっきの注文まだ来てないんだけどって言えばOKよ。ったく……どんだけ遅刻してんだよ」ケッ・・・

絹旗「やれやれ。私が電話しますから、麦野が服着て対応してくださいよ。それくらいは働いて下さい」ジトー・・・

麦野「まんどくせー」ゴロゴロ・・・


 ピンポーン・・・・・


絹旗「……来ましたよ」チラッ・・・

麦野「はぁ? 何でこのタイミングなんだっつの糞が……ったく、苦情言ってやりたいわ」フンッ!

絹旗「麦野ー。服着てくださいよー」アーア・・・

麦野「……アンタ行ってよ。私メイクしてないし人前出たくないわ」ゴロンッ・・・

絹旗「はぁ?」

麦野「良いからさっさと行け。私のシャツでも羽織ってけば問題無いでしょ。ワンピ代わりになるわ」

絹旗「んもー……はいはい。今行きますよーっと」テクテク・・・


 ガチャリ・・・・・


絹旗「あのですねぇ。ウチの姉分が超キレてま、す……よ……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」ピタッ・・・


201 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 04:20:46.81 ID:3+gO496P0
固法「……こんにちわ。最愛ちゃん」ゴゴゴゴゴ・・・・・

神裂「……、」ドドドドド・・・・・

香焼「さ、最愛、その……服着なよ」ポリポリ・・・///

絹旗「」チーン・・・


麦野「おーい。絹旗ー。如何したのー? 早く飯持って来なさーい」グダグダ・・・


絹旗「こ、香焼!? 姉貴さん!? ちょ、え! む、む、麦、む、麦nんむぐぅ!!?」ジタバタッ!

固法「最愛ちゃん、ごめんね。少し大人しくしてようか」ギュッ・・・

香焼「固法さん……そのホールドだと(胸の所為で)最愛が息出来ないっすよ」ムゥ・・・///

固法「あ、ごめんごめん。最愛ちゃん、少しの間大人しくしててね。麦野さんと貴女の為だから」ツンッ

絹旗「え、は、な……はい???」ポカーン・・・

固法「それじゃあ……神裂さん。お願いね」チラッ・・・

神裂「……、」コクッ・・・カツカツカツ・・・


フレンダ「あわわわわ……あの残念美人のお姉さん、結局殺されちゃう訳よ」アタフタ・・・

浜面「だ、大丈夫だろ。一応、友達みたいだし……固法さんが自信持って頼ったんだから」ウーン・・・

滝壺「静かに。私達は見つかっちゃ駄目なんだよ。忘れたの?」メッ!

浜面・フレンダ「「……さーせん」」タラー・・・

滝壺「よろしい……そろそろかんざきさんのむぎの成敗が始まるみたいだよ」ジー・・・

フレンダ「神裂さんとやら何する気なの? もしかして麦野と相性良い能力者な訳?」タラー・・・

浜面「さぁ……てかあの人能力者なのか?」ジー・・・

滝壺「分からないけど……あの人からAIM拡散力場の放出はそんなに見えないよ。多分無能力者(レベル0)じゃないかな」ジー・・・

浜面・フレンダ「「はぁ!?」」ギョッ・・・


絹旗「へ? ……はぇ??」ポカーン・・・

香焼「……と、とりあえず自分のパーカー着ておきな」スッ・・・///

固法「あら優しい。男の子ね。さて……問題はコッチよ。頑張れ、神裂さん」クスッ・・
 
202 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/08/31(水) 04:47:16.44 ID:3+gO496P0
麦野「絹旗ー……おい、絹旗っ」イライラ・・・


 カツカツカツ・・・


麦野「アンタ料理貰うのにどれだけ時間かけてん、の……よ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なっ!?」ピタッ・・・


神裂「……ごきげんよう」ゴゴゴゴ・・・

もあい「にゃー」トコトコ・・・


麦野「な、え、ま……き、絹旗が痴女になった……、」キョトン・・・

神裂「早速斬りましょう」シャキンッ・・・

麦野「ちょ、ま、待て待て待て待てっ!! な、何で火織が此処居んのよ!?」アタフタ・・・

神裂「居てはいけませんか?」ジトー・・・

麦野「い、良い訳無いでしょ! 私の借り部屋だっつの! ああもう意味分かんない……何かのドッキリ企画?」アタフタ・・・

神裂「違います。ですがそう捉えて貰っても結構です……さぁ麦野さん。出かけましょう。ご飯食べに行きますよ」ジー・・・

麦野「え、あ、はい?」タラー・・・

神裂「麦野さん、最後に部屋の外へ出たのはいつですか?」

麦野「え、えっと……1週間前くらいかな?」

神裂「その1週間の間で固法さんの御誘いメールを何度嘘書き誤魔化しました?」

麦野「な、何でそれを……え? み、美偉も居るの?! え、ど、絹旗は!?」ポカーン・・・


 イルヨー・・・イマスヨー・・・


神裂「絹旗さんも外に出します。さぁ観念なさい。さもないと根性叩き直しますよ」ジトー・・・

麦野「ぐ、ぬぬぅ……喧嘩しても良いけど、この恰好じゃ[ピーーー]がかかる。こんにゃろ~……覚えてなさいよ」ギリリ・・・

神裂「良いでしょう。ですがその前に風呂に入って服を着なさい! 乙女たるモノ、身嗜みには気を付けなさい」フンッ!

一同(オマエが言うな)


浜面「ふぅ……何とか血が出ずに済んだな」

滝壺「むぎのだって普通の女の子だもの。友達にダラしない恰好見られたら恥ずかしいよ」

フレンダ「結局、怒りより羞恥心が勝ったという訳ね」

滝壺「さて。あとはこうやぎくんに頑張って貰いましょう」フフフ・・・

203 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/08/31(水) 05:18:11.50 ID:3+gO496P0
固法「ふふっ。アッチは大丈夫みたいね。さて……最愛ちゃん」ジー・・・

絹旗「は、はい」ビクッ・・・

固法「最後に外に出たのはいつ?」

絹旗「え、えっと……香焼。前回会ったのいつでしたっけ?」

香焼「大体二週間ま……ええええぇ!? さ、最愛! 二週間外出てないの!?」ギョッ・・・

絹旗「うっ……べ、別に問題ありませんでしたよ」

香焼「大問題っすよ! 何で……ああもう!」ガシッ!

絹旗「っ!」ビクッ・・・///

固法「こらこら。とりあえず香焼くんも、私も先輩も気付いてあげられなかった。最愛ちゃん、ごめんね」ポンポンッ

絹旗「……どうして姉貴さんが謝るんですか?」ポカーン・・・

固法「どうしても。とりあえず麦野さんのシャワー終わったら次入りなさいね」

絹旗「別に入らなくても……、」

固法「はぁ……最愛ちゃん。彼、居るのよ? 最後にお風呂入ったのいつ? 昨日? 一昨日?」ボソッ

絹旗「え、ぁ……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッ!!」カアアアァ///

香焼「ん?」ジー・・・

絹旗「あ、お、おひゅろ入って来ます!」バタバタ!

香焼「おひゅろ?」ポカーン・・・

固法「お風呂。シャワーでしょ。しかし……貴方も大概ニブチンね」クスッ・・・

香焼「はぁ」ポリポリ・・・

固法「とりあえず浜面くん達のところ行ってなさい。女の子の着替え覗きたいの?」チラッ・・・

香焼「い、いえいえ! 部屋出てます!」アタフタ・・・///

固法「うふふ。二人とも真っ赤。若いって良いわね」クスクスッ


麦野「ちょ、何でアンタも入ってくるのよ!?」ギョッ・・・

絹旗「超広いんだから2人くらい超余裕でしょう! それより早くシャワー貸して下さいよ!」アタフタ・・・

麦野「シャワーは1つだけだボケナス! 蛇口捻って水でも被ってろ!」ガー!

絹旗「了解です!」ジャバー!

麦野「ちょ、馬鹿! マジでやんな!」ウワッ?!



 ギャーギャーギャー・・・・・



固法「やれやれ。困ったものね……兎に角、私達は麦野さんをしっかり引っ張りだしましょう」フフッ

神裂「ええ。そうですね」コクッ

204 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/08/31(水) 05:56:17.88 ID:3+gO496P0
香焼「最愛……何で今まで気付かなかったんだろ」ハァ・・・

滝壺「深く悩まないで。今回悪いのはきぬはたなんだから」ポンッ

香焼「……、」

浜面「しかしなぁ……麦野は何か吹っ切れたみたいだから良いとして、絹旗は如何すんだ?」

フレンダ「結局、いつもみたいに公園で野良猫達と絡んでくる訳?」

滝壺「ううん。今回はそれ禁止だよ」メッ

香焼「え?」

滝壺「……こうやぎくん。これを期に言っておくけど、私はきぬはたを自立させたいの」

香焼「自立って……その」ポリポリ・・・

滝壺「きぬはたが極度の人見知りで軽くコミュ障気味なの知ってるでしょ?」

香焼「……はい」

フレンダ「それに加えて、結局あの子通常生活も一人じゃまともに暮らせない訳よ。今回分かったでしょ? 放置すれば動かないって事」

浜面「まぁ死にそうになったら嫌でも動くだろうが……それじゃ遅いんだよな」ポリポリ・・・

滝壺「うん。あの子が自立して、一人立ち出来る様応援したいんだ」

香焼「それは……自分も同じっす」コクッ

滝壺「ありがとう。とりあえず、その為には『友達作り』だったり『買い物』だったり、出来なきゃいけない事沢山有る」

フレンダ「そうね。『買い物』、『友達』、『料理』、『掃除の仕方・整理整頓』、『文系科目』などなど」

浜面「まぁ一番は『一般常識』だろうな。言っちゃ悪いがアイツは非常識だ」

滝壺「『生命倫理』については……今は如何にも出来ないから、触れないであげて」

香焼「はい。分かってます」コクッ・・・

滝壺「うん。よろしいっ」ポンポンッ

フレンダ「ふむふむ……ねぇ滝壺。この子アイテム(ウチ)に入れられない訳? それが結局、絹旗にとって一番の安定剤じゃん」

滝壺「……、」チラッ・・・

フレンダ「……じょ、冗談だって。まず麦野がOKしないよね」アハハ・・・

浜面「もっとマシな冗談言えっつの。まぁその坊主、頑張れや」ポンッ

滝壺「よし。それじゃあ……きぬはたの事よろしくね……君が責任取れる程度なら、好きにして良いから」フフッ

香焼「はい……え? な、はいいぃ!?」カアアアァ///

フレンダ「あははー。真っ赤ー。可愛いー」ケラケラッ!

浜面「あんま虐めんなよ。今から大変なんだからさ」ヤレヤレ・・・

滝壺「ふふっ。ごめんごめん。でも、信じてるから。君にきぬはたの事任せる。逃がしちゃ駄目だよ」ジー・・・

もあい「んなー」プラプラ・・・

香焼「はぁ……可能な限りは頑張ります。サポートよろしくっすよ……―――」コクン・・・

213第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 18:19:30.78 ID:3+gO496P0
 ―――とある翌日、PM01:15、学園都市第7学区、ホテル『アレクサンダー』、とある一室・・・・・







何だかんだの悶着がありまして、数分後……。


麦野「あーもう!」パタパタ・・・

神裂「麦野さん、化粧なんて最小限で良いですから。早く外出しましょう」ハァ

麦野「うっさい! 押し掛けてきて命令すんな! 外出てやるだけでも有難いと思え!」グヌヌ・・・

固法「んもー。喧嘩しないの」メッ

麦野「ったく、この暇人共め……てか火織! その服装何とかしなさい! 一緒に歩けないわよ」ジトー・・・

神裂「へ?」ポカーン・・・

固法「……同意します」アハハ・・・


『何で!?』的な顔をする姉さん。エロいって自覚が無いから面倒だ。
というか普段着でいる方が恥ずかしいって、如何いう神経してるんだろう。


麦野「適当な服貸すからまともなの着て。じゃなきゃ外出てやらないわ」ジトー・・・

神裂「……えー」タラー・・・

固法「まぁまぁ。神裂さん、本人の提案だし服借りましょう」アハハ・・・

麦野「奥の部屋にあるから美偉選んでやって。まったく……、」ブツブツ・・・


見てる分には普通に綺麗な我儘御嬢様なんだけどなぁ。何で性格破綻者なんだろう。


フレンダ「それが結局麦野のアイデンティティって訳よ」アハハ・・・

浜面「坊主。言ってる事は正解だが口にするなよ。殺されるからな……八つ裂きにされるぞ? 素手で」タラー・・・


……肝に銘じよう。


固法「……あ! この服可愛いー! 神裂さん、この花柄ワンピ着ようよ」フフッ

神裂「せ、背中と脇が丸見えじゃないですか! 恥ずかしいですよ!」カアアアァ///

麦野「今のアンタの恰好の方が恥ずかしいわ! 黙ってそれ着なさい! あーもう……いっそ水着で街中歩かせようかしら」ハァ


勘弁して下さい。そこまで踏み込んだ痴女の義弟でいたくないです。


麦野「……よしっ。準備出来た」ヤレヤレ・・・

神裂「こ、こんな服じゃ外出れません! スカート短いし、ブラ見えるし、胸キツい!」カアアアァ///

麦野「人の事連れ出そうとしてるくせに、自分が出れねぇだ? しかも胸キツいって……火織、屋上」クイッ・・・


流石おっぱい聖人。その服装で上条さんのとこ行けば高感度アップですよ。

214 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 18:33:21.95 ID:3+gO496P0
結局、今度は姉さんが駄々を捏ねる形となってしまった。


固法「ワイヤレスのフリーサイズブラも借りましょう。そうすれば問題無いわ」ワシワシ・・・

神裂「か、勝手にブラのホックを外さないで! ちょ、麦野さんまで何してんの!?」カアアアァ///

麦野「……あーだこーだ抜かしつつ下着は艶っぽいじゃないの、変態女。上も下も白基調のラメ入りよ?」ニヤニヤ・・・

神裂「そ、それは先日貴女達と行った時買わされたヤツです! ちょ、固法さん! やめて!」カアアアァ///

固法「ふふふ。このままでもいっか。ワイヤーも御洒落だし……大丈夫。行きましょう」クスクスッ


……その、頑張ってください。


浜面「おー……オマエの姉ちゃん凄いな色んな意味で」ジー・・・///

滝壺「……じー」ギリリ・・・


浜面さん。めっちゃ滝壺さんに睨まれてますよ。


固法「……はい。OK! 行きましょう!」

神裂「イーーーーヤーーーーでーーーーすーーーーーーーーっ!!」ウワアアァン///

麦野「うっさいお黙り! 美偉、引っ張ってでも行くわよ!」グイッ!

固法「了ー解」フフッ・・・


立場が逆転し、姉さんは2人に引き摺られながら部屋を出て行った。
土御門とか他の若い教徒に見つからない様頑張ってください。


滝壺「……さて。そろそろきぬはたの番だね」チラッ・・・

フレンダ「私達は出れないから、君が御誘いしに行くのよ。ほら、早く行ってきなさい」フフッ


止むを得まい。自分は主不在のVipルームの中に歩を進め、最愛を呼びに行った。


香焼「さいあーい。出かけよ……あれ?」


いない?


浜面「坊主ー。絹旗の部屋、その鏡の隣だぞ。ドア開いてるだろ」ボソッ

香焼「あ、はい。最あ、い……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」ピタッ・・・


絹旗「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」ピタッ・・・ ← 着替え中。


香焼・絹旗「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」」ダラダラダラ・・・/////


もあい「にゃーん」トコトコ・・・


後ろから生温かい視線を3つ程感じた。

215 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 18:48:35.58 ID:3+gO496P0
落ち着いた黄緑の下着。今袖を通そうとしていたのは水色のデニムワンピ。
とりあえず……何で部屋のドア開いてるの?


絹旗「ふ、普段……じょ、女性陣かバカ面だけですから」カアアアァ///

香焼「そ、そう……、」カアアアァ///

絹旗「で、そ、その……見ないで、もらえませんか」カアアアァ///

香焼「あ、ご、ごめんっ!!」バッ///


急いで部屋を飛び出し、3人の下へ急いだ。


香焼「ちょ、な、なああああぁっ!!」カアアアァ///

浜面「だははははははっ!! オマエ天才だ!!」ケラケラケラッ!!

フレンダ「ひ、ヒヒヒヒッ! 少し考えれば着替え中って分かるでしょ!」アハハハッ!

滝壺「ふふふっ……大丈夫、そんなうっかりスケベさんなこうやぎくんときぬはたを私は応援してる」ニヤニヤ・・・


確信犯共! 誰か止めろよ!


フレンダ「アハハ……あーウケる。ほらほら、私達のとこ居ないで絹旗の近くに居なさいな」クスクスッ

香焼「……んもー」ムゥ・・・///

滝壺「私達が見てる事気付かれちゃダメでしょ。リビングできぬはたの事待ってて」ポンッ


今度騙したら許しませんからね。


絹旗「……こ、香焼。着替え、終わりました」イソイソ・・・///

香焼「う、うん……今行く」ポリポリ・・・///

浜面「頑張れよー」クスクスッ


もうこの人達を頼ったら負けかもしれないな。
リビングへ入ると先程のデニムワンピを着た最愛が待っていた。もあいを抱えながらベットの上に体育座りしている。


香焼「そ、その……ごめんね」ポリポリ・・・///

絹旗「……次見たら、死刑ですからね」モジモジ・・・///

香焼「うん……気をつけるよ」コホンッ・・・


雑念は払い、本題に移ろう。

218 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 19:08:22.43 ID:3+gO496P0
もあいを抱きながら俯く最愛に話しかける。


香焼「最愛。何で言ってくれなかったの?」

絹旗「……何をですか?」

香焼「外に出てない事。仕事無くて暇なのは聞いてたけど、如何して外出てなかったの?」

絹旗「そんなの、香焼に言う必要無いじゃないですか」ムゥ・・・


そりゃ御尤もだが、それでもだ。


絹旗「というか何で外出なきゃいけないんですか?」ジー・・・

香焼「……外出たくないの?」

絹旗「超如何でも良いです。猫達は定期的に見に行ってるので大丈夫ですから」

香焼「佐天さん、春上さん達誘わなかったの? 固法さんの家にご飯食べにいかなかったの?」

絹旗「……私の超勝手でしょう」ジー・・・

もあい「なー」ペロペロ


成程、ヒッキーというより井の中の蛙に近いのかもしれない。
基本、言わなきゃ行動しないのだ。こうなるとそれを知ってる滝壺さん達の所為にも思えてくる。


香焼「滝壺さん達、心配してたっすよ」ジー・・・

絹旗「……滝壺さんに聞いたんですか?」エ・・・

香焼「『日の下に出てくれないから心配だ』って……最愛、外行こうよ」スッ・・・

絹旗「超余計なお世話を……日陰で良いですよーだ」ムゥ・・・

香焼「怒るよ?」ハァ・・・

絹旗「香焼なんか怖くないです。超甘ちゃんのくせに。ねー、もあい」ブーブー

もあい「みー」コクコクッ


この駄目駄目モアイコンビめ。


絹旗「……じゃあ部屋の中でゲームしましょう。一人用ですけど交代しながら」ニカッ

香焼「こ、の……駄目! とりあえずご飯食べに行くよ!」ハァ

絹旗「出前取りましょう。お金は私が出しますから」Pi!

香焼「それじゃ駄目っすよ。ずっと同じ物食べてるんでしょ」

絹旗「コーンたっぷりピザ。超美味しいですけど」

香焼「太るぞ」

絹旗「仕事が入れば嫌が応にも痩せますから大丈夫ですにゃー」ナデナデ

もあい「にゃー」ハムハムッ


……いい加減、頭に来た。

219 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 19:20:09.11 ID:3+gO496P0
遂にベットの上に寝転がり、もあいとジャレ出した最愛……こんにゃろ。


香焼「最愛……、」ノソッ・・・

絹旗「え? ちょ、な、何ですか!?」ドキッ!!


両肩を掴み、告げる。


フレンダ「お!? や、ヤる訳!?」ドキドキ・・・

浜面「最近のガキはやる事早ぇな……尊敬するぜ」ドキドキ・・・

滝壺「おばかさん。あの子にそんな度胸無いよ……はまづらと同じでチキン臭するから」ハァ・・・


何か何処かで馬鹿にされてる気がするが気にしない。


香焼「行くよ」グイッ!!

絹旗「……へ?」ポカーン・・・

もあい「にゃ?」ポカーン・・・


強引に引っ張り、腕を引いた。


絹旗「な、何すんですか!?」ワトト・・・

香焼「ご飯!」グイッ・・・テクテク・・・

絹旗「ちょ、待、か、勝手に決めないで下さいよ!」ヨタヨタ・・・

香焼「もあいも行くよ!」チラッ・・・

もあい「……なぅ」トコトコ・・・

絹旗「イーーーーーヤーーーーーでーーーーーすーーーーーーっ!! はーーーーなーーーしーーーてーーーーーーっ!!」ジタバタッ!


・・・・・・。


香焼「分かった」パッ・・・

絹旗「……え」ピタッ

香焼「……もう知らない」テクテク・・・


さよなら。


絹旗「ちょ、え……な……、」キョトン・・・

香焼「言っただろ。怒るって……もあいも連れてく」テクテク・・・

絹旗「え……そ、そんな……、」オドオド・・・

もあい「……、」キョロキョロ・・・


戸惑う最愛を後目に『演技』を続ける。こういう時は一旦突き放すのも手だ、と浦上が言っていた。
220 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/08/31(水) 21:18:08.40 ID:jrwB9+JC0
自分は最愛の顔を一切見ずに、話を続けた。


香焼「そんなに部屋の中が良いなら出てくるな。自分はもう押し掛けないから」

絹旗「……、」ムスー・・・

香焼「もあい。おいで」チラッ・・・

もあい「……なぅ」キョロキョロ・・・

絹旗「……、」ウルウル・・・

もあい「……みゃぅ」ジー・・・

香焼「もあい」ホラ・・・

絹旗「……もあい……行って、良いですよ」グスン・・・


涙を溜めて唇を噛む最愛。


浜面「アイツ、感情表現できない幼稚園児みたいだな」タラー・・・

滝壺「実際そうなんだよ。きぬはたはアイテム(私達)以外、まともに人付き合いしてないもん」ジー・・・

フレンダ「それにしてもあの坊や……相当なジゴロね」アハハ・・・


最愛が感情表現が下手な事くらい知っている。今は何を言って良いのか分からない状態なんだろう。
そろそろか、と自分は振り返り最愛の前へ戻った。


香焼「……最愛」ハァ・・・

絹旗「……、」ウルウル・・・

香焼「おいで」ポンッ

絹旗「……人、超いっぱいいます」ウルウル・・・

香焼「誰も最愛の事虐めないよ。一緒に行こう。離れないから」ナデナデ・・・

絹旗「……、」ウルウル・・・

もあい「にゃー」ヒョコッ・・・ペロペロ

絹旗「もあい……、」グスッ・・・


見捨てられたものが救われる瞬間、最早理由は如何でも良くなる。
卑怯な手段だが『宗教勧誘』の手法を使わせて貰った。


絹旗「……離れないで下さいよ」ウルウル・・・

香焼「分かってる。だから行こ」クスッ・・・

絹旗「……はい」コクッ・・・


頭にもあいを乗せる最愛の手を引き、僕らは外へ向かった……―――




滝壺「……ふぅ。一段落だね」ハァ

浜面「それにしてもよ……あの坊主、ちゃっかりプロポーズしてないか?」ハハハ・・・

フレンダ「いや、してたのは絹旗でしょ。どっちにしろ……充てられるわ。爆発しろ」ボソッ・・・

滝壺「……きぬはた。ファイト!」オー!

221 :>>1 [saga]:2011/08/31(水) 21:31:07.61 ID:jrwB9+JC0
すいません。中途半端ですが明日早いので今日は此処まで。ごめんなさい。
次回こそホントに外出るのでアンケ協力お願いします。

それではまた! ノシ"
238 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 21:33:23.36 ID:6Qf3/TJO0
 ―――とある翌日、PM02:00、学園都市第7学区、街中・・・・・



人が溢れる街中を背丈同じほどの少年少女(僕と最愛と1匹)が進む。
最愛は家を出てから一言も話さず、ただ黙々僕の斜後ろにピッタリついて歩いていた。
もあいは何とも器用に彼女の肩の上に座り、彼女がずっと被っているフードを突いたり撫でたりしていた。

しかし、なんとか彼女を部屋から引き釣り出せたまでは良いが、特にプランは立ってない。


香焼「とりあえずご飯だね。食べてないんでしょ?」

絹旗「……、」コクン・・・

もあい「なー」プラプラ・・・


小さく頷く最愛。何故言葉を発しないんだ?


絹旗「……まだ怒ってますか」ボソッ・・・

香焼「え?」

絹旗「……、」

香焼「い、いや怒ってないよ。気にしてたの?」

絹旗「……、」ジー・・・


成程。主人の顔色を伺う猫みたいだな。


香焼「もう怒ってないよ。悪い事したら怒るけど、何も悪い事してないでしょ?」

絹旗「さっき」

香焼「さっきはさっき。今は今。OK?」

絹旗「……はい」コクッ

香焼「あとフード取りなさい」

絹旗「超変態」ボソッ


何故?


絹旗「人に見られます……超変態です。変態香焼」ムスー・・・


意味がわからないよ。まるでイスリムかヒンドゥー教徒の様だ。


絹旗「……馬鹿」フンッ

香焼「まったく、極度なシャイガールだね」ハァ


困ったものだ。

239 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 21:41:56.14 ID:6Qf3/TJO0
さておき、兎に角ご飯を食べさせねば。


香焼「何食べたい?」

絹旗「何でもいいです」

香焼「いいから」

絹旗「……じゃあ、ファミレスで。超山盛りフライド食べたいです」


却下。


絹旗「何でですか?」ジトー・・・

香焼「最近ジャンクばっかりなんでしょ。駄目だよ」

絹旗「……じゃあワクドナルド。ホットポテトパイとホットアップルパイが」

香焼「話聞いてた?」

絹旗「もー……じゃあ勝手にして下さい。超我儘なんですから」フンッ

もあい「にゃん」プイッ


どっちがだ。
仕方ないので、僕が選ぼう。出来れば健康的な物を食べさせたい。


香焼「それじゃあ……―――


                 >>241(食べ物。ゲテモノ以外)

240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/02(金) 21:43:43.88 ID:GcSCxtkDO
待ってた! 麻婆豆腐!
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/09/02(金) 21:44:08.56 ID:0PbzrgGpo
とろろ
242 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 22:01:10.52 ID:6Qf3/TJO0
そういえば近くで珍しく産直フェアがやってたな。


香焼「地下の産直行ってみようか」

絹旗「サンチョク??」ポカーン・・・

香焼「えっと、産地直送フェアってやつだよ」

絹旗「……山地直装??」


何その山登りの恰好しますよ的な四字熟語。


香焼「とりあえず行けば分かるっすよ。地下街降りよう」

絹旗「地下の方が超混んでますよ」エー・・・

香焼「グチグチ言わないの。自分だって人混み好きじゃないけど、慣れてかなきゃ」

絹旗「……はぁ」ヤレヤレ・・・


こっちが溜息吐きたいよ。
兎も角、地下街の入り口はすぐ近くにもある。サクサク歩こう。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




浜面「大丈夫かよ、アイツら」ジー・・・

フレンダ「今のところはダイジョブじゃね? 結局あの子って人に絡まれない限りは問題無い訳だし」ジー・・・

滝壺「……何か障害があったら、はまづら、ファイト!」ジー・・・

浜面「排除しろと?!」エッ!?

フレンダ「妹分が頑張ってんのよ。当然でしょ」ツンツン・・・

浜面「……何もありませんように」ハァ・・・

滝壺「あ。移動するよ。追おう」コソコソ・・・

フレンダ「そんなピッタリくっ付かなくっても、結局、アンタの能力なら大丈夫な訳でしょうが。焦るな焦るな」ヤレヤレ・・・

滝壺「見てなきゃ意味無いよ。ほら、進めー」トコトコ・・・

フレンダ「はぁ、ノリノリね……ほら、浜面。行くわよ」テクテク・・・

浜面「……帰りたい」ハァ・・・

243 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 22:21:06.76 ID:6Qf3/TJO0
 ―――地下街・・・・・



やはりというべきか、混んでいる。


香焼「最愛。迷子にならないでよ」チラッ

絹旗「そんな子供じゃありません」ムッ!

香焼「どうだか……もあい落とさない様に気を付けてよ」

絹旗「落とす訳無いでしょう。にゃんこマスター嘗めないで下さい」フンッ

もあい「にゃっ」シャー!


何その自信……かなり心配だ。

数分歩いた所に開けたホールブースが見えてきた。多分、あそこが会場だろう。
最愛がキチンと付いてきているのを確認し、お店を回る事にした。


香焼「色々あるね」キョロキョロ・・・

絹旗「……人、超いっぱいいます」ボソッ

香焼「大丈夫だよ。誰も虐めたりしないから」

絹旗「……、」ジー・・・


自分の背中で顔を隠す様にして歩く自称にゃんこマスター。
貴女はお忍び観光中の女優か何かかっての。


香焼「えっと……消化に良さそうな物は」ジー・・・

絹旗「じゃあワックのシェイクを」

香焼「ファーストフードから離れろ……あ。ワックじゃないけどシェイクある」ジー・・・

絹旗「それが良いです」キッパリ・・・

香焼「ご飯じゃないだろ。えっと、青森ブースだね。座って何か食べよう」

絹旗「……、」ムゥ・・・


そんなに嫌な顔しないで下さい。まるで自分が誘拐犯みたいだろ。


絹旗「香焼誘拐犯で私人質です」キッパリ・・・

香焼「……もうそれで良いや。最愛、食べれないモノある?」ハァ・・・

絹旗「何でも食べれるし御残しもしません。ご飯を残すと妖怪超メルヘン☆エンジェルが出るって麦野が言ってたので」

香焼「何それ怖い」タラー・・・

絹旗「私も見た事無いので分かりません。とりあえずアレルギー等も無いのでお任せします」

もあい「みゃう」クンカクンカッ


一々ツッコんでたら負けだな。早いとこお昼を選ぼう。
244 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 22:36:18.11 ID:6Qf3/TJO0
どれもこれも美味しそうなモノばかりで、選ぶのに梃子摺る。


絹旗「……香焼」ボソッ

香焼「ん? 食べたいのあったの?」

絹旗「……超座りたいです。超疲れました」ハァ・・・


ヒッキー貧弱っ娘め。普段能力に頼り過ぎてるからそうなるのだ。


絹旗「違いますよ。一週間近くゲームしかしてなかったからです。私の能力は関係ありません」フンッ

香焼「威張るとこじゃないよ……じゃあ先に席確保しよっか」ハァ

絹旗「はい」


という訳で席を探す。だがしかし、何処も満席。空いていても相席になるやもしれない。
ぶっちゃけ究極人見知り生物の最愛には見ず知らずの人と相席出来る勇気はないだろう。


絹旗「……うー」ジー・・・

香焼「困ったね……やっぱり他の場所に―――」Prrr・・・


電話が鳴った。相手は……滝壺さん?


絹旗「誰です?」

香焼「―――え、あ、い、五和っす。ちょっと出るね」Pi!


最愛に聞こえぬ様音量を調整し電話に出る。


香焼「如何したんすか?」コソコソ・・・

滝壺『相席ごー』

香焼「……はい?」

滝壺『空いてる席に相席しなさい』

香焼「な……最愛には無理でしょ?」

滝壺『だからだよ。何の為のおでかけ?』

香焼「……あ」


そういえばそうだった。最愛の人見知りを治す為、自立を促す為の外出だ。


香焼「……了解っす」

滝壺『こうやぎくん、ファイトだよ』Pi!

絹旗「香焼ー。電話終わったんなら早く他の場所行きましょうよー」

香焼「……えっと、やっぱり此処で食べよ」チラッ

絹旗「……え」ピタッ・・・


そりゃそうなるだろう。だが、譲らない。

245 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 22:53:05.77 ID:6Qf3/TJO0
香焼「最愛。相席探すよ」テクテク・・・

絹旗「な……超ヤです」タラー・・・

香焼「意地悪しないから」

絹旗「……、」ジー・・・


固まってしまう最愛。仕方ないな。


香焼「……ほら」スッ・・・

絹旗「……え」キョトン・・・

香焼「行くよ」パシッ

絹旗「っ……にゃぅ!?」///

もあい「にゃ?」キョトン・・・


手を引く。


香焼「一緒に行けば大丈夫だから」テクテク・・・

絹旗「そ、そういう問題じゃなくて……超馬鹿香焼」ボソッ・・・///

香焼「馬鹿で良いよ。えっと……、」キョロキョロ・・・


辺りを見渡す。最愛が畏縮し過ぎない様、出来れば優しそうな人と相席したい。
親子連れか、女子生徒辺りがベストだろう。


香焼「うーん……あそこの女子高生2人なら大丈夫かな」テクテク・・・

絹旗「……年上好きですか。女子高生好きですか。この超変態香焼」ムスー・・・

香焼「は?」ポカーン・・・

絹旗「……、」トコトコ・・・

香焼「なんだよ、もう……あの、すいません」


黒髪ロングのお姉さん2人。多分、上条さんの学校の生徒さんだ。


香焼「……って、あ」ピタッ・・・


姫神「……ん?」チュルチュル・・・

吹寄「おや?」モグモグ・・・


案の定、知り合いだった。

246 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 23:16:50.94 ID:6Qf3/TJO0
膝裏くらいまで長く伸びた黒髪。物静かにうどんを啜る女性。


香焼「吸血殺(ディープブラ)――」

姫神「……、」ギロッ・・・

香焼「――っ……姫神さん。こんにちは」ペコッ


危ない危ない。


姫神「……如何したの?」

香焼「あ、えっと……お願いというか、頼みがあるんすけど」

姫神「頼み?」

香焼「そこの席、空いてますか?」

姫神「空いてるけど。座りたいの?」

香焼「ええ。相席出来れば是非2人分」ペコッ

姫神「良いわよね」チラッ

吹寄「ああ。構わないよ」


良かった。この人相手なら大丈夫だろう。


香焼「最愛、お邪魔しよう」

絹旗「……、」ジー・・・

香焼「この人は自分の知り合いっすから大丈夫だよ」ポンッ・・・

絹旗「……、」コクン・・・

もあい「にゃっ」フリフリ・・・


オドオドと席に着く猫娘。とりあえず一安心だ。僕は最愛と自分の分の食事を買ってこよう。
そう考えて席を立とうとした瞬間……服の端を掴まれた。


絹旗「……、」ジー・・・

香焼「……大丈夫だってば」

絹旗「……、」フルフル・・・


困った。これではいつまでもご飯を買えない。

247 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 23:33:13.56 ID:6Qf3/TJO0
そんな僕の表情を察したのか、おでこのお姉さんが尋ねてきた。


吹寄「どうした少年」

香焼「え、あ、その……ちょっと」アハハ・・・

絹旗「……、」ジー・・・

吹寄「……ふむ」ポリポリ・・・


最愛を見遣るおでこのお姉さん。そして優しく、最愛に話しかけた。


吹寄「こんにちは、お嬢さん」

絹旗「……、」ナデナデ・・・

もあい「にゃー」クシクシ・・・

吹寄「可愛い猫だな。名前は何ていうんだい?」

絹旗「……もあいです」ボソッ

吹寄「も、あい? 変わった名前だな『君』は。だけど私は嫌いじゃないよ」フフッ

絹旗「猫(こっち)が『もあい』……絹旗……絹旗最愛です」ムゥ・・・

吹寄「もあい?」


あーあ。


絹旗「……香焼ぃ。私この人……超怖いです」チラッ・・・

香焼「え、えっと……うん」ポリポリ・・・

吹寄「ははは。冗談だよ。最愛(さいあい)ちゃんだね。『最も愛する』……良い名前じゃないか」スッ・・・

絹旗「っ!」ビクッ!!


最愛の頭を撫でようとするおでこのお姉さん……あ、ヤバい!?


吹寄「ん? うおっ!?」ボンッ!

姫神「っ!!?」ギョッ・・・

香焼「最愛っ!!」グッ・・・

絹旗「っ……、」ピタッ・・・


伸びてきた手に驚いて『自動防御』とやらが発動した。


吹寄「……手が、弾かれた」ポカーン・・・

香焼「あ、そ、その……彼女の能力で、ビックリしちゃうと勝手に発動するんすよ」アタフタ・・・

吹寄「そうか……うん、急に触ろうとして悪かったよ。頭を撫でようとしただけなんだ。許してくれ。最愛さん」ペコッ

絹旗「……はい」コクン・・・


良かった。落ち着いてくれた様だ。

251 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/02(金) 23:56:46.37 ID:6Qf3/TJO0
ふと、姫神さんが冷たい声で僕に尋ねた。


姫神「……彼女は?」チラッ・・・

香焼「……最愛は『普通』の友達っすよ」コクッ

姫神「そう。『彼』とは関係無いのね」

香焼「ええ。都市で知り合った友達っす。ね、最愛」チラッ

絹旗「……はい」コクン・・・

もあい「みゃー」ジー・・・


へぇ。と最愛を見て、優しい表情をする姫神さん。彼女の強張った気が消えた。
そりゃまぁ彼女は『色々』あったらしいし、必要悪の教会のメンバーに会ったら身構えてしまうのも仕方なかろう。


姫神「ごめんなさい。まずは疑ってかからないと痛い目見るって。土御門君に忠告されてたから」

香焼「正しい判断っすよ。あ、すいません。自分、この子の分お昼買ってくるので相手して貰ってて良いっすか?」

姫神「ええ。任せて」コクッ・・・

香焼「最愛。大丈夫、その人達は絶対に虐めないから安心して」ポンッ・・・

絹旗「……、」コクッ・・・


やっと納得してくれた。さて、何を買ってこようか。


吹寄「そういう事なら少年。とろろそばがお勧めだ。とろろそばにしろ。いいか? うどんじゃないぞ」ビシッ

姫神「また健康食っぽいものを。この子達。子供よ?」ハァ・・・

吹寄「美味しいだろ、とろろ。子供でも問題無い。美味いもんは美味いんだ」フムッ

絹旗「……子供じゃないです」ムスゥ・・・


変な所で意地を張るな。


香焼「自分は食べれるけど、最愛。とろろ食べれる?」

絹旗「……ト○ロ?」ポカーン・・・

香焼「とろろだよ……まぁ良いや。最愛食べれなかったら別の買うから、一応2つ買ってくるよ」テクテク・・・


3人(と1匹)を後目に、とろろそば2つと林檎シェイクを買いに店へ向かった。



  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



浜面「物買ってから座れよ。要領悪いなぁ」モグモグ・・・

滝壺「まぁまぁ。相手は優しそうな2人だし、大丈夫だよ」モキュモキュ・・・

フレンダ「はい、あーん」アー

フレメア「にゃー」パクッ・・・

浜面・滝壺「「……、」チラッ・・・

フレンダ「美味しい? あ、口の周り汚れてるぞ~……って何よ」ジロッ

浜面「(ドサクサに紛れて妹連れてきてやがる)……いや、何でもない」タラー・・・

滝壺「(ツッコんだら負けだね)……ごゆっくりどうぞ」タラー・・・

フレメア「うーん。美味しいよー」モキュモキュ・・・

252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 00:02:46.44 ID:EDdqdWcDO
> フレメア「にゃー」パクッ・・・


な、何だってえええぇっ!!?
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/03(土) 00:12:55.00 ID:XcUOaYYk0
フレメアww
254 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 00:23:28.87 ID:KdZPNJTE0
>>248・・・間違ってたらごめん。吹寄って上条以外と話す時以外は中性的な口調じゃないっけ? あと姫神って吹寄の事何て呼ぶのかな?


 **********


一寸後、トレーに商品を乗せて席に戻る。一応もあいが好きそうなマグロフレークも買ってきた。


香焼「おまたせ、って……えっと」タラー・・・

吹寄「ふふふ。可愛いなぁもう」ナデナデ・・・

絹旗「……香焼ぃ」チラッ・・・


頬を緩ませながら最愛の頭を撫でるおでこのお姉さん。一方、最愛は半べそ掻いてる。


姫神「私は止めたわよ」ハァ

香焼「あはは……とりあえずご飯食べよ」スッ・・・

姫神「制理。それくらいにしなさい。彼女。ご飯食べられないわ」

吹寄「そうか。あ、最愛ちゃん、溢しちゃダメだぞ。口周りに残すと被れるからね」

絹旗「え……あ、なんか超白い超ネバネバしたのが乗ってます」ウヘッ・・・

吹寄「……もう一回言ってくれないか?」ハァハァ・・・

絹旗「はい?」ポカーン・・・

姫神「止めなさい。三馬鹿(デルタフォース)と発想が一緒よ」バシッ!

吹寄「ハッ!? す、すまん……彼女が愛くるしいから、つい」ムムッ・・・


佐天さん(ストレート)と白井さん(スプリットフィンガーファーストボール)を足して割った様な反応だな。
兎角、彼女達の最愛に対する印象は良い様だ。助かる。


姫神「貴方も。そろそろ食べなさい。制理は私が押さえとくから」

香焼「あ、はい。すいません」ペコッ


それでは頂こう。




  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




滝壺「くっ……きぬはたに対するそのポジションは私の役目なのにぃ」ギリギリギリ・・・

浜面「た、滝壺さん!?」ギョッ・・・

フレメア「白くてネバネバー」ニャー

フレンダ「ふ、フレメア!? 変な言葉覚えないの!! ……だけどもう一回だけ言って」ハァハァ・・・

浜面・滝壺((うわぁ……気持ち悪い))タラー・・・



255 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 00:56:53.66 ID:KdZPNJTE0
自分達が食事をしている間も、既に食べ終えている2人がまだ残っていた。
多分おでこのお姉さんの意向だろう。


吹寄「ふむ。しかしまぁ……2人とも可愛いな。小学生高学年くらいか」エヘヘ・・・

姫神「ぷっ!」プルプル・・・


畜生。笑った姫神さんも同罪ですからね。


絹旗「私は中学生です」ムゥ・・・

吹寄「ん。それはすまない。えっと、少年は」ジー・・・

香焼「香焼っす」

吹寄「こうやぎ……香焼、くんだな。うん、覚えた。もしや生まれは長崎か?」


地名が名字じゃ推測されても止むを得まい。


姫神「あら。一度会ったじゃない。『わ○わ○ざぶーんin学園都市』で。淡希と一緒に居た子よ(※)」      ※1st's・特別編

香焼・吹寄「「……え?」」ポカーン・・・

姫神「え?」


会ったっけ?


姫神「覚えてないの?」

吹寄「うーん……会った様な、会ってない様な……あの時、結標さんと居たのは少女じゃなかったっけ?」フム・・・

香焼「自分は記憶に無いっすよ」ウーン・・・


もしかして、アニェーゼの『忘却』魔法の練習台に付き合わされた時に記憶が吹っ飛んだのかも。


吹寄「まぁ良いや。私は吹寄制理です。彼女と同級生だ。よろしく」ペコッ

香焼「月詠さんのクラスなんだ。じゃあ上条さんや土御門と同じクラスなんすね」ヘー・・・

吹寄「む……この子、何でこんなに知ってるの?」チラッ・・・

姫神「うーん……、」チラッ・・・


あ……しまった。拙かったか。


姫神「土御門くんの『バイト仲間』で。上条くんの『弟子』で。淡希の『愛玩ペット』だからよ」フフッ・・・

吹寄「はぁ!? ちょ、か、上条当麻の弟子だと!? 止めておけ止めておけ! 毒されるぞ!!」ガタッ!!

絹旗「……香焼。『愛玩ペット』って、何ですか?」ギロッ・・・

香焼「ひ、姫神さん?! え、ふ、二人とも! 嘘っすから!」アタフタ・・・

姫神「ふふふ……でも。大体合ってるでしょ?」クスクス・・・


黒い笑みを浮かべ、楽しそうにホラ話をする姫神さん。この人怖いです。

257 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 01:15:39.63 ID:KdZPNJTE0
十数分掛け2人を説得し、漸くご飯に戻った。


吹寄「成程。上条当麻達とはバイト先で知り合ったのか」フム・・・

香焼「そんな感じっす。だから弟子なんかじゃ……恐れ多い」アハハ・・・

吹寄「……恐れ多い?」ピクッ

姫神「制理。何言っても無駄よ。その子。上条くんにベタ惚れだから」クスクス・・・

絹旗・吹寄「「っ!!?」」ギョッ・・・


いや、惚れるなんて……それすらも恐れ多いですから。


吹寄「しゅ、衆道というヤツか」アワワ・・・

絹旗「む、結標の超売女(ビッチ)の方がまだ許せますよ」タラー・・・


誰がBLだ阿呆。てか姫神さん、いい加減にして下さい。


姫神「ふふっ。ごめんごめん。やっぱり淡希が言うとおり。面白い子ね」フフフッ

香焼「淡希さん……はぁ」ヤレヤレ・・・

絹旗「……、」イライラ・・・

吹寄「まぁアレだ。此処で会ったのも何かの縁だし、困った事があったらいつでも言ってくれ。最愛ちゃんもね」ポンッ・・・

絹旗「……ソバが食べれませんよ」ムゥ・・・

もあい「ふにゃ」モグモグ・・・


先にもあいの方が食べ終わりそうだな。    (※注意:良い子は地下街で猫に餌を与えないで下さい。というか猫を連れ込まないで下さい)


姫神「うーん……個人的には。友人の淡希を応援すべきだけど……『攻略』頑張ってね。絹旗さん」ニッコリ・・・

絹旗「ぶヴぁっ!!」ゲホッ!!

香焼「最愛!?」エ?!

絹旗「な、何言ってんですか!? って、超痒いです!!」ウワーン・・・///

香焼「ああ、もう素手で擦っちゃダメっすよ。今ティッシュあげるから」ンモー・・・フキフキ・・・

絹旗「こ、子供じゃないんですからティッシュくれるだけで良いですよ!」カアアァ///

吹寄「あははは。では私も拭いてあげよう」フフッ

絹旗「超結構です!」カアアァ///

姫神「あらあら」クスクス・・・

吹寄「ふむ……やっと元気に話してくれたね。個人的にはそっちの方がもっと可愛く思えるぞ」ポンッ

絹旗「あ……きゅぅ」カアアァ///


うん……やり方は多少強引だったかもしれないけど、少しは人見知り克服への経験値に成った筈だ。
吹寄さん、姫神さん。ありがとうございます。

258 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 01:30:44.15 ID:KdZPNJTE0
 ―――とある翌日、PM03:00、学園都市第7学区、地下街・・・・・



あれから少し話した後、2人が先に帰り自分達だけのテーブルとなった。
最愛も食べ終わったし、自分達もそろそろ移動しようか。

そう考えた瞬間、また電話が鳴った。相手は勿論滝壺さん。


香焼「最愛、ごめん」チラッ・・・

絹旗「構いませんよ。じゃあ私トレー片付けに行きますから」ナデナデ・・・

もあい「んなー」ゴロゴロ・・・


最愛が席を立つ。


香焼「はい」

滝壺『うん。第一ステージクリアってところかな』

香焼「後は自分から話しかけてくれると良いんすけどね」

滝壺『それはまだ早いかも。とりあえず移動しようか』

香焼「何処行けば良いんすか?」

滝壺『任せるよ。こうやぎくんのお友達の所とかでも良いし。ただきぬはたが知らない子でね』

香焼「それは……いないかな」タラー・・・


自分で言うのも何だが、僕は友達が少ない。


滝壺『うーん……じゃあセブンスミストでも行って買い物してきて』

香焼「服屋っすか?」

滝壺『うん。小物も売ってるから何かきぬはたに買ってあげてよ。ただし選ばせるのは自分でやらせてね』

香焼「何故?」

滝壺『自立の為だよ。それじゃあ引き続きよろしくね』Pi!


成程。自立か。


香焼「僕だって自立してないのに、他人の自立援助かぁ」ハハハ・・・

もあい「なー」ペシペシッ


変な話だ。
259 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 01:39:14.36 ID:KdZPNJTE0
最愛が戻って来てから次の目的地を告げる。


絹旗「セブンスミスト、ですか」タラー・・・

香焼「うん。此処から近いだろ?」

絹旗「……此処より人多いです。超々多い」ウーン・・・


此処が平気だったんだ。あとは何処行っても人混みくらい平気だろう。


絹旗「……うーん」ムゥ・・・

香焼「とりあえず移動しよう。怖く無いっすよ」ポンッ

絹旗「……はい」コクッ・・・


最愛が逸れない様手を引き、地上へ戻った。



  **************



建宮『安価。次に会う人物。学園都市に居る人物限定なのよな。複数人でも可!    >>262    』


                 
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
260VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/09/03(土) 01:45:05.79 ID:qt//y+9Go
あおぴ
261VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 01:45:24.47 ID:VJefn6Ljo
青ピ、土御門、上条
262VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 01:46:46.39 ID:nXOVE1gmo
砂皿とステファニー
263 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 02:37:11.25 ID:KdZPNJTE0
建宮『何つー人選……、』


 **************


 ―――一寸後、セブンスミスト・・・・・


特に問題も無くサクサク歩く。
最愛も人混みには多少慣れた様で、自分の横を歩ける様になっていた。


絹旗「お店、超いっぱいありますけど」チラッ・・・

香焼「えっと……ちょっと待って」カチッ


前に佐天さんからセブンスミストの紹介をされた覚えがある。
確か屋上に露天雑貨が売っている筈だ。


香焼「服も良いけど、先に小物見たいから雑貨見に行こう」

絹旗「分かりました」

もあい「にゃー」


人が賑わう中、エレベーターまで移動し屋上へ上がる。
ヒーローショーか何かやっていたのか、それなりの混雑だ。

イベント台の様な場所が子供で賑わう一方、反対側は大人がチラホラ。此方が雑貨店だろう。


最愛「おー」ジー・・・

もあい「みー」ジー・・・

香焼「最愛こっち……って、あらら」ハハハ


屋上から街を眺め出した大猫と子猫。そんなに珍しいのか。


絹旗「ええ。昼間の屋上なんかそうそう来ませんから」キョロキョロ・・・

香焼「昼間の?」

絹旗「まぁ仕事では超嫌という程超高い所に……いや、何でもありません」

香焼「……、」


それを言ったら自分も『同じ』だ。監視や旗取り(諜報)でいつも高い所に登る。
だが今は互いにプライベート。『そういうの』は抜きだ。


香焼「……最愛、雑貨見よう」

絹旗「……そうですね」


このままでは滝壺さんに怒られる。今日は楽しみつつ、彼女を成長させるのが目的なのだ。



264 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 03:11:38.58 ID:KdZPNJTE0
様々な種類の雑貨がある。
ネックレス、ブレスレット、指輪、ピアス、髪止め……メジャーブランドではないが、それなりに御洒落だ。

しかし、最愛はただ眺めるだけで、どれも興味無しといった御様子。


絹旗「ジャラジャラつける趣味無いですから」

香焼「成程ね」アハハ・・・


だが、それでは駄目だ。仕方ないので切っ掛けを与えてやる。


香焼「何か買ってあげるよ」

絹旗「……え」キョトン・・・

香焼「此処らのそんなに高くないし、興味あったら買ってあげるよ。プレゼントね」

絹旗「……、」ジー・・・


何故か戸惑う最愛。自分からプレゼントなんて貰いたくないか。


絹旗「ち、違います! 欲しいです!」コクコクッ!

香焼「それじゃあ好きなの選んで」

絹旗「えっと……じゃあ……うーん」キョロキョロ・・・

香焼「そんなに焦って選ばなくても大丈夫っすよ」アハハ

絹旗「んー……どれにしよう」ジー・・・


一転して宝物探しの様に忙しくなる最愛。自分は邪魔しない様少し離れていよう。


香焼「最愛。何か飲み物買ってくるね。何が良い?」

絹旗「超炭酸メ○トスソーダで」キッパリ!

香焼「……そんなの売ってるの?」タラー・・・

絹旗「CMでやってました。最初だけ超大変ですけど、味はそれなりです……うーん」キョロキョロ・・・


仕方ない。それ買ってこよう。
自販機コーナーはそんなに混んではいない様で、すぐに目的のゲテモノ販売機まで辿り着けた。自分の分のカフェオレと最愛の劇物を購入。
因みに『超炭酸何たら』のボタンを押す瞬間、何故か周りがざわついた。本当に大丈夫か、これ?


  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
浜面「あれ、美味いの?」タラー・・・

滝壺「美味しいとか美味しくないの問題じゃないよ。ネタ商品だから」アハハ・・・

浜面「ネタって……ん? フレンダは?」キョロキョロ・・・

滝壺「……あっち」スッ・・・


フレメア「ゲコキュア頑張れー!」オー!

フレンダ「ふふふ。頑張れー」カタグルマー!


浜面「……好きにしろ」ハァ・・・


266 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 03:37:33.64 ID:KdZPNJTE0
購入後、最愛の方はというと……まだ悩んでた。
普段は興味無いが、いざ選ばなければって事になると凝ってしまうタイプか。大変だな。


香焼「……座って待ってよ」


ベンチを探す。何故か喫煙エリア付近にしかない。


香焼「まぁ良いや。煙慣れてるし」


馬鹿神父の御蔭(所為)だ。とりあえず、一番端に座ってカフェオレでも―――


??「うわっ!!?」パンッ!!


―――飲もうとした瞬間、目の前で煙草を喫っていた男性のペットボトルが破裂した。
まさかのテロか、と辺りに神経を配り最悪に備え身構える。

だが、おかしい。誰も先の破裂に恐れ戦いていない。寧ろ喜劇を見るような眼で男性を見ている。何故だ?


香焼「だ、大丈夫っすか!?」アタフタ・・・

??「……そう見えるか?」ハァ・・・

香焼「水質操作系の能力者か? いや、超小型の爆弾? まさか狙撃……窓のないビルの屋上くらいしか狙えない。有り得ない」キョロキョロ・・・

??「……、」ジー・・・

香焼「何にしろ怪我人が出なかった以上、第二派が……結界を張るべきか」グッ・・・

??「……少年」トンッ

香焼「っ……は、はい」ビクッ・・・


何だ? 実はこの人が賞金稼ぎに狙われる悪モノでーした、とかいうオチか?


??「気にするな。爆発物フェチの馬鹿に騙されただけだ」

香焼「……へ?」


自分が首を傾げた刹那、馬鹿笑いが聞こえた。


??????「あはははははっ!! マジで騙されましたねー! 見事な腑抜け面っぷりでしたよ!」ケラケラケラ・・・

??「……さっきの、もう一本買ってきてお前の目玉にでも突っ込んでやろうか?」

??????「くっはっはっはっ! 負っけ惜しみ~。砂皿さん可愛いですねー」フフフ・・・

砂皿「……屋上からダイブした経験は?」テクテク・・・

??????「ははは。無いに決まって……ちょ、な、何で私の肩引っ張るんですか!? まさか落とす気!? うぎゃー! ヘルプミー!」

砂皿「まったく……どうしようもない転婆女郎だな」ハァ・・・


砂皿と呼ばれた男は濡れた顔を拭いながら、ヤレヤレと再度ベンチに腰掛けた。


267 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 03:55:53.31 ID:KdZPNJTE0
自分は茫然状態で動けず仕舞い。一体何が起きたのだ?


香焼「え、えっと……ペットボトル破裂しましたよね」タラー・・・

砂皿「……君も分からなかった口か」フム・・・

香焼「へ?」

??????「やれやれ。流行に疎いですねー。メ○トスソーダ、開け方失敗すると大爆発するんですよーだ」ハハハ

香焼「……これ?」エ・・・


最愛に頼まれた飲み物。


??????「あらら……君も物好きですねぇ。チャレンジャースピリット? 日本人特有のカミカゼ魂ってヤツですか」フフッ

砂皿「ステファン、喧しい。少し黙れ……少年、驚かせて済まなかった。この馬鹿の所為だ」クイッ

ステファニー「略さないで下さいよー。ステファニーです。ステファニー=ゴージャスパレス。良い名前でしょ?」ニカッ!

香焼「は、はぁ」ポリポリ・・・


とりあえず、何の問題も無いなら良いや。


砂皿「待て」スッ・・・

香焼「はい?」ピタッ・・・

砂皿「少年。先程……色々物騒な事を口走ってたな」カチッ・・・フゥ・・・

香焼「え、あ、いや……テロか何かと勘違いしたので」アハハ・・・

砂皿「ほお……オモチャ飲料に騙されて、か。互いに難儀だな。流行を知らないのは時に危ないという教訓を学べた」ジジジ・・・

香焼「は、はぁ」ポカーン・・・


何だ、この人。


ステファニー「むむっ!? やけに饒舌ですね、砂皿さん。は!? もしやこの子に……『ガチ』は駄目ですよ! 『ガチ』は!」アワワワ・・・

砂皿「……やっぱりダイブするか?」ギロッ・・・

ステファニー「ジョウダンデスヨ」ダラダラ・・・

砂皿「……少年。もう一つ、質問を」ジー・・・

香焼「え、あ、はい」タラー・・・

砂皿「何故、この建物が『窓のないビル』からしか狙撃出来ないと思った」

香焼「え……純粋に高さと角度と……あと、電力プロペラのこの時間帯の風向きを……、」ピタッ・・・


待て。何かおかしい……悪寒が走る。


268 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 04:18:01.24 ID:KdZPNJTE0
ふと、砂皿という男を見ると何故かニヤニヤと微笑んで自分を見ていた。


砂皿「じゃあ『第二派』って、何だ?」クスクス・・・

香焼「……もう一回、あるかなぁと。深い意味は無いっすよ」

砂皿「深い意味も無きゃ『二回目』なんか考えなねぇよ」ジジジ・・・

ステファニー「え、えっと……砂皿さん?」ポカーン・・・


紫煙が昇る。


砂皿「……少年」ジー・・・

香焼「……見たまんまの中学生っすよ。学生証見せましょうか」

砂皿「必要無い……ま、関係無いか。野暮な事聞いて悪かったな」

ステファニー「あー、あれ? もしかしてミリオタ少年ってヤツですか?」キョトン・・・

砂皿「ミリオタか。ミリオタが空気まで読めるとは大したもんだ」フフッ


この人は……何だ?


砂皿「学生さんは遊ぶのが仕事だろう。俺に構わず買い物なりゲーセンなり行って来い。引き留めてすまなかった」

香焼「……はい。失礼します」

ステファニー「えー。折角面白そうな子見つけたのに帰すんですかぁ? 良い具合の塩梅な厨二病ミリオタ少年ですよー」ジー・・・

砂皿「初対面の人間にお前は……、」ハァ・・・

ステファニー「中々居ませんって。ミリオタ少年って何かよくないですか? オフの時楽しいですよ! FPSとかオンラインで」

砂皿「何言ってんだか分からん。兎に角迷惑掛けるな。さっさと帰してやれ」

ステファニー「うーん。勿体無い……あ、そうだ! 少年、オンラインゲームやる派ですか?」

香焼「え、まぁ、偶に」

ステファニー「良し! じゃあメアド交換しましょう! 結構コアな海外のオンラインFPSゲーあるんですよ! 今度一緒に――」スッ・・・


彼女が携帯を取り出し、自分に近づけた刹那……後ろから、恐ろしい視線を感じた。もはやそれは殺気に近い。


ステファニー「――……あらら」チラッ・・・

砂皿「……、」ジジジ・・・フゥ・・・

香焼「……最愛?」タラー・・・


絹旗「……、」ギロッ・・・


親の仇でも見る様な眼で、2人を睨んだ。


269 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 04:35:09.65 ID:KdZPNJTE0
最愛は何も言わず、自分の前に歩み出る。


香焼「さ、最愛?」

絹旗「黙ってて下さい」

香焼「……、」タラー・・・


ステファニーさんは何故かニヤニヤ微笑み、砂皿さんは我関せずで煙草を吹かしている。


絹旗「……何してんですか?」ジー・・・

ステファニー「別にぃ。私達が屋上遊園地でメリーゴーランド乗ってちゃダメなんですかぁ?」

絹旗「……超つまらないジョークです。B級、いやC級D級以下ですね」

ステファニー「アンタは相変わらずチンマイんですねー。身長も器も」フフフ・・・

絹旗「っ」ギッ・・・

香焼「さ、最愛!」ガシッ・・・


喧嘩腰の最愛。あまり宜しくない知り合いか?


ステファニー「まぁ昔の話ですよ。普通怒るのはこっちの筈なんですけどねぇ。私、大人ですからー」フフフ・・・

最愛「超腹立ちます……塀の外に投げ出してやりましょうか? 紐無しバンジーさせてやりますよ」ジー・・・

砂皿「ほら、ステファン。やっぱ皆お前の屋上ダイブが見たいんだ。やってやれよ」ククク・・・

ステファニー「なっ!? どっちの味方ですか!?」ウガアアァ!!

砂皿「冷静なヤツの味方だ。敢えて言うなら少年の味方だよ」ジュッ・・・


煙草を灰皿に入れ、立ち上がる砂皿さん。


砂皿「帰るぞ」テクテク・・・

ステファニー「ちょ、砂皿さん!?」キョトン・・・

砂皿「子供のデートを邪魔するオジさんにはなりたくないんでな。悪態吐かれる前に退散する」

ステファニー「な、ちょ……ええぇ」タラー・・・

絹旗「逃げるんですか? というか……逃がすとでも?」ギロッ・・・

砂皿「……、」チラッ・・・


僕の方を向いて溜息を吐く砂皿さん。


砂皿「少年が許さんだろ?」

絹旗・ステファニー「「……、」」チラッ・・・

香焼「……、」コクッ・・・


砂皿さんが目で訴えるとおり、バカな真似は止めて欲しい。冗談は抜きだ。


270 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 04:54:07.15 ID:KdZPNJTE0
女性2人は渋々といった感じで、気を納めてくれた。


ステファニー「やれやれ。命拾いしましたね。クソガキ」ジトー・・・

絹旗「そっくりそのままお返ししましょう。糞女」ジトー・・・


どっちもどっちだ、馬鹿女郎。
結局、ステファニーさんは頭を掻きながら人混みの中へ消えて行った。


砂皿「……すまなかったな」チラッ・・・

香焼「え、い、いや。此方こそ」

絹旗「……、」ジー・・・

砂皿「嬢ちゃんも『今』は、すまなかった。勝手に少年を引き留めていた事は謝ろう」

絹旗「……え」キョトン・・・


拍子抜けといった感じに口を開ける最愛。


砂皿「良いボーイフレンドを持ったな。大事にしろよ」フフフ・・・

絹旗「なっ! と、友達です!」カアアァ///

砂皿「だからフレンドと言ってるだろ」クククッ

絹旗「ぐ、ぬぬぅ」///

砂皿「……少年。演技とポーカーフェイスの練習しろよ。全部顔に出てる。駄々漏れだ」ハハハ

香焼「なっ!? ……精進します」タラー・・・


だから心を読まれるのか。


砂皿「……じゃあな」ポイッ

香焼「わっ……え?」パシッ

砂皿「迷惑料のマネーカードだ。ジュース代の足しにでもしろ」

絹旗「香焼。ソイツの言う事信用しちゃダメです」ジトー・・・

香焼「最愛」メッ・・・

砂皿「心外だな。オレは女みたいに戦闘狂(バトルジャンキー)じゃない。公私は区別する。常識だろ」


御尤も。成程、最愛に足りないモノの一つが分かった気がする。


砂皿「それから少年。今、何処に就いてるか知らんが、そこに飽きた様なら誘ってやる。色々教えよう」テクテク・・・

香焼「は?」タラー・・・

砂皿「じゃあな……またいつか」テクテク・・・


ステファニーさんを探しに行ったのか、彼もまた人混みに消えて行った。

271 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/03(土) 05:24:52.28 ID:KdZPNJTE0
彼らが去った後、ポツンと残された自分達。
突然の嵐の様な出来事で何が何だか理解できぬまま終わってしまったが、一体彼らは何者だったのだ。

最愛にそれを尋ねようとした瞬間、ガシリと肩を掴み返された。


絹旗「……超馬鹿! 超朴念仁!」ギリリ・・・

香焼「痛だだだだぁっ!! な、何すんの!?」アタフタ・・・

絹旗「何であんな自然に……いいですか? 一度しか言いませんから。もう一度言います。一度しか言いません」


2回言ってるじゃん。


絹旗「アイツらは所謂傭兵です。金次第で何でもやる人間です」ジトー・・・

香焼「……そうだったんだ」

絹旗「男の方は凄腕の狙撃手(スナイパー)。女の方は好きの火薬大好き爆弾魔(ボマー)です」

香焼「能力者っすか?」

絹旗「多分、無能力者です。でも超危険です。香焼くらいならあっと言う間に消せるでしょう」


そんなに凄い人達だったのか。


絹旗「そんなにって……何でそんなに危機感無いんですか!? 目ぇ付けられたかもしれないんですよ!」

香焼「大丈夫だよ。砂皿さん、大人だし」

絹旗「なっ……、」


公私の区別がつかない内は子供だ。それが分かった。


香焼「最愛こそ、場所考えなよ。周り見れば分かるでしょ」

絹旗「……、」ジー・・・


反省したのか、それとも腹の虫が修まらないのかやけに静かになる最愛。


香焼「勝手に慣れ慣れしくしてたのは謝る。だけど『常識』の範囲内でだ」

絹旗「……超分かってますよ。だから超腹立つんです」ギリッ・・・

香焼「最愛……、」

絹旗「もういいから行きますよ。此処に居る必要無いでしょう」


これまた確かに。そういえば最愛がプレゼント探ししてたんだったな。忘れてた。
という訳で急いで最愛が選んだお店へ向かう事とした。

因みに、先程渡されたマネーカードの裏にちゃっかり電話番号が書いてあった。まったく、抜け目ない人だ……―――


272>>1 [saga]:2011/09/03(土) 05:27:10.32 ID:KdZPNJTE0
すいません。一度寝ます。起きたらすぐ続き。

因みに安価! 絹旗が買いたかった小物とは?


      >>275


それじゃまた次回! ノシ”


273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 05:32:14.75 ID:D9sB4rxY0
メリケンサックにしか見えない何か
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/03(土) 07:28:35.46 ID:3EaO5vDT0
わ、藁人形・五寸釘セット
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/03(土) 07:42:17.46 ID:gCZG0G3AO
酢昆布
287 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/04(日) 20:18:57.68 ID:R182AJ140
 ―――とある翌日、PM03:45、学園都市第7学区、セブンスミスト、屋上・・・・・








選んだプレゼントを確認しに、最愛の後を追う。
女の子らしい可愛い小物か、はたまた、背伸びしたがってネックレスなんかを選ぶのか。楽しみだった。

彼女が向かう先は先の雑貨露店……ではなく、何故か出入り口付近・自動販売機コーナーの方。


香焼「え……最愛?」

絹旗「こっちです」


ピタリと彼女が立ち止まる。そして指差す先には、数名の子供達が群がっている……


香焼「ガチャポン?」

絹旗「はい。ガシャポンです」


正式名称、カプセル自動販売機&カプセルトイ。通称、ガチャポン・ガシャポン・ガチャガチャ・ガチャンコ・ガチャ。
その……言葉に困る。一体何を選んだのだ?


絹旗「これです」

もあい「にゃ」

香焼「……なぁにこれ」

絹旗「見て分かりませんか。お菓子ガチャです」


見れば分かる。何故これを選んだのか俳句にして答えろ。


絹旗「え、えっと……おかしたべ たいよーっておもった んですです」アタフタ・・・

香焼「無茶ぶりした自分が悪かった。謝る」ハァ・・・

絹旗「くっ……今回は調子が悪かっただけです」グヌヌ・・・


ステイルに禁煙を求めてない様に、貴女にも国語力を求めてません。安心して下さい。
さておき……話を戻そう。


香焼「最愛。他にも色々あっただろ? 何でこういうのを」

最愛「香焼は『好きなの選んで』って言ったじゃないですか。私は選んだだけですけど」

香焼「…………、」ハァ・・・

最愛「……そんな顔するなら始めから私に選ばせないで下さいよ。自分で選べば良いのに」ジトー・・・


御尤もな意見だが、何か腑に落ちないな。
とりあえず一回百円だし、これとは別に後で何か買ってプレゼントしてやろう。


288 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/04(日) 21:30:16.63 ID:R182AJ140
お小遣いを渡す父親気分で、最愛に百円を渡す。
楽しそうに目的の販売機に硬貨を投入して、ガチャンガチャンと2回レバーを回した。
カコンと呆気無い音と共に落ちてくるカプセルを拾って、宝箱を開けるかの如く2色の半球を分離させる少女。


絹旗「む。と……都(と)こんぶストラップです」ジー・・・

香焼「都(みやこ)こんぶっすよ」

絹旗「し、知ってますしぃ! 香焼を試しただけですしぃ!」カアアァ///


はいはい。
最愛の残念漢検はさておき、ストラップをよくよく見遣る。どうやらゲコ太の着せ替えストラップの類みたいだ。
内封されている説明書を読むと、懐かしの駄菓子キャンペーンの様なものらしい。


香焼「へぇ……でも懐かし?」

絹旗「そうなんじゃないですか? この街に駄菓子やなんてありませんよ」

香焼「自分の地元はまだ何件かあるよ」


尤も、内装は新しくなってるが今でも昔ながらのお菓子が売ってたと思う。
海外生活が続く天草教徒(日本人組)にとって、欠かせないアイテムだったりする。
探せばこの街にもレトロ店の様なものはある気がするが、如何なのだろう。今度佐天さんに聞いてみよう。


絹旗「私は麦野が何処かから持ってきたお菓子パックでしか見覚えありませんよ」

香焼「今度買ってきてあげるよ。日本人に買ってくるお土産じゃない気もするけどね」アハハ・・・


駄菓子類は英国組にもウケが良い。因みに、都こんぶはアニェーゼの好物と化している。


香焼「……だけど、本当にそれで良いの?」

絹旗「はい」

香焼「百円だよ?」

絹旗「百円だろうが0円だろうが油田だろうが、香焼のプレゼントには変わりありません」

香焼「…………、」ポリポリ・・・

もあい「みー」


そう言われると、弱い。


絹旗「じゃあもあいにも何か買ってあげて下さい」

香焼「……後でモンポチ(高級猫缶)買ってあげるよ」


良かったねー、ともあいを撫でる最愛。
何だか釈然としないが、彼女が喜んでいるので良しとしよう。


289 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/04(日) 22:03:46.11 ID:R182AJ140

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


浜面「……あれで良いのか?」

滝壺「きぬはたがそう思ったんなら、そうなんでしょ」

浜面「でもよぉ」

滝壺「はまづら。『物』じゃなくて『贈り物』に意味があるんだよ」

浜面「……そんなもんか」

フレメア「女心が分かってなーい」ニャー

フレンダ「ふふっ、そうだねー。浜面は相変わらず馬鹿だねー。偉いぞフレメアー」ナデナデ・・・

浜面「うっせ。んで、滝壺。次は如何するんだ?」

滝壺「一応こうやぎくんにメール送ったよ」

浜面「指示の?」

滝壺「大型のゲームセンターに行くようメールした」

浜面「ゲーセン? 多分混んでるぞ? それに絹旗のヤツ、ゲーセンとか如何なんだ?」

滝壺「行った事無いだろうけど興味はあると思うよ。麦野とかフレンダの話聞いてるし」

フレンダ「そういえばゲーセンを狩り(マンハント)場と勘違いしてたわね、あの子」

浜面「……え」タラー・・・

滝壺「フレンダ、嘘言わないの。大丈夫。きぬはた、そこまで非常識じゃないから」

フレメア「私もゲームセンター行きたーい」ワー

フレメア「よーし! プリクラ撮りましょうねー」

浜面「……まぁ良いや」

滝壺「心配しないで。今度の目的は純粋に『楽しむ』事だから。B級映画以外の楽しみも覚えなきゃダメでしょ」

浜面「それで黒妻の兄貴みたいにパチンコ・スロットに嵌り出したら終わりだけどな」ハハハ・・・

滝壺「その時はこのりさんに連絡して色々責任取って貰うから大丈夫だよ」フフフ・・・

浜面「何が大丈夫なんだよ……あ、移動したぞ」

滝壺「それじゃあ追跡再開」テクテク・・・

フレンダ・フレメア「「おー」」テクテク・・・

浜面「……何だかなぁ」ハァ・・・


290 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/04(日) 22:19:44.78 ID:R182AJ140
安価。ゲーセンで会う人物(複数もあり)。

  >>293
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 22:34:48.08 ID:4LrrlfSDO
一通止め+美琴!
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/09/04(日) 22:37:53.67 ID:OTi4pbhDo
3馬鹿デルタフォース
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 22:54:40.17 ID:coArrEuAo
↑+超電磁砲4人娘
294 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/04(日) 23:39:53.13 ID:R182AJ140
>>293・・・テラカオスwww一応、超電磁砲組は春上さん含め『5人』とします。


******************


 ―――とある翌日、PM04:30、学園都市第6学区、とあるアミューズメントパーク・・・・・






バスに乗って第6学区に向かう。


絹旗「今度は何処に行くんでしょうか?」

香焼「多目的アミューズメントエリアっすよ。ゲーセンとかバッティングセンターとかボーリングとかカラオケとか」

絹旗「……んー」

香焼「行った事無いかな?」

絹旗「……夜のボーリング場には行きました。仕事で」


それじゃ駄目だ。楽しんで無いだろう。


香焼「最愛、何してみたい?」

絹旗「超映画みたいです」キッパリ!

香焼「映画館もあるけど却下」サラッ・・・

絹旗「……むぅ。超意地悪です」ムスー・・・


少しは別の楽しみも覚えなさい。


絹旗「浜面虐……弄りは超楽しいですよ」ニパー!

香焼「……金輪際止めなさい」ハァ・・・

絹旗「えー」ブーブー


大人しそうな顔してサディストなんだから、困ったものだ。


香焼「とりあえずもう着くから……色々回ろう。きっと楽しいよ」

絹旗「……もう十分楽しいですよ」ボソッ・・・

もあい「にゃー」

香焼「じゃあもっと楽しもうよ。遊びを覚えるのも学生の仕事っすよ」

絹旗「そういう意味じゃなくて……はぁ。超鈍感」ムスー・・・


何とでも言え。滝壺さん達の期待に応えられる様、連れ回してやる。


295 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 00:03:58.32 ID:QOBVy/KK0
室内アミューズメントパーク『イシムラランド』。
全天候型、そして50を越える内部施設のバリエーション。休日でなくとも人が賑わっているテーマパークだ。


絹旗「……やっぱ超人多いですよ」ウゥ・・・

香焼「もう慣れたんじゃない?」

絹旗「……まぁそれなりに」ハァ・・・


慣れた、というよりも基本的に話しかけられねば最愛は平気なのだ。
しかしそれでは人間関係が築けない。


香焼「とりあえず、ゲームセンター行ってみよう」スッ・・・

絹旗「…………、」コクッ・・・

もあい「みー」


何も言わず頷き、手を取る最愛。僕達は始めに見える大型のゲームセンターに入る事にした。



 <ゲーセン>



人が五月蠅いというよりも、機械音とBGMが喧しい。
まぁそれがゲーセンの醍醐味といえば醍醐味なのだが、最愛には少々キツかったかもしれない。


香焼「最愛、大丈夫?」

絹旗「……超うっさいとこですね。この中に居る人達不快じゃないんですか?」ジー・・・

香焼「それは、ほら。こういう雰囲気を楽しむ所だからね」ハハハ

絹旗「……その神経が信じられません」ウヘー・・・


貴女のB級趣味が多くの人に理解されないのと同じだと思って下さい。


香焼「とりあえず何しよっか。やってみたいものある?」

絹旗「そう言われても勝手が分かりません。超サッパリです」

もあい「にゃぅ」ジー・・・


確かにそうか。それじゃあ最初に……――  >>297  ――をしてみよう。     


※安価。ゲーセンでするもの。


296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/05(月) 00:06:41.32 ID:oLpZALwg0
ブレイブルー
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/09/05(月) 00:08:53.29 ID:qIA4AWkZo
ドラムマニア
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/05(月) 00:09:00.34 ID:0QWDBNFAO
「さあ、始まるドン!」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 00:09:40.57 ID:nOg+BHyDO
UFOキャッチャー
300 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 00:28:03.16 ID:QOBVy/KK0
僕は何つーもんを選んだんだ……


絹旗「香焼。楽器出来るんですか?」ヘー

香焼「……和楽器とピアノなら」タラー・・・

絹旗「へ?」ポカーン・・・


こんな事なら牛深さん辺りからドラム習っておけば良かった。
因みに、野母崎さんはギター。対馬さんがキーボード。建宮さんがギターを弾けたりなんかする。天草の大人凄ぇ。


香焼「最愛は……楽器出来ないの? (話逸らして別なとこ行かなきゃ)」アタフタ・・・

絹旗「超からっきしです。楽器触った事ありませんから。それより早くやって見せて下さい」ジー・・・

もあい「んなー」

香焼「うっ……、」タラー・・・


やるしかない。硬貨を投入して、選曲。
どの難易度が優しいか選んでいる最中、ある事に気付く……何故か周りに人が集まってきた。


香焼・絹旗「「っ!!?」」ギョッ・・・


そういえば浦上に聞いた覚えがある。『下手に音ゲーに手を出すな』と。
ゲーセンの音ゲー類というものは初見さんお断りで、実際の演奏者、自宅でやり込んだ人間達、ツレが玄人の新人がするものだと。
ぶっちゃけ自分はどれでもない。


絹旗「こ、香焼……」オドオド・・・

香焼「う、うん」ダラダラ・・・


『早くしろよ』、『子供じゃね? 出来んの?』、『彼女の前で恰好つけたい小学生でしょ?』、『リア充爆発!』。
後ろからのプレッシャーが半端無い。

結局、一番難易度イージーの一番初めの曲を選んでしまった。


絹旗「は、始まりましたよ」ドキドキ・・・

香焼「…………、」グッ・・・

もあい「みー」ドキドキ・・・


始まったからにはやるしかない。要は修行の様なモノだ。
撥は短刀。皿(プレート)は目標。音に合わせて……切る!!


 ・・・・・寸・・・・・


香焼「」チーン・・・

絹旗「……ど、ドンマイです」タラー・・・

もあい「……みゃぅ」フゥ・・・


最初は何とかクリア出来たが、二曲目の選択で欲張ってちょっと難しめのを選んで撃沈した。
後ろからクスクス笑われてる……めちゃくちゃ恥ずかしい。


301 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 01:39:35.46 ID:QOBVy/KK0
蔭口にも似た嘲笑が周りから聞こえる。
僕だけじゃなく、最愛まで真っ赤になっていた。心成しかもあいも萎縮している様に見える。
普通であれば憤怒の念が沸く所だろうが、恥ずかしくてそれどころではない。直ぐにでも退散せねば。

椅子から立ち、振り返った瞬間……固まった。


香焼「なっ……ぇ」ピタッ・・・


大爆笑をこらえている、グラサン野郎。


土御門「ぷっ……おま……くひっ……、」プルプル・・・

香焼「」チーン・・・

上条「ま、まぁそんなに笑うなって」タラー・・・

青髪ピアス「あれ? カミやんの知り合いですか?」ジー・・・


しかも上条さんまで……見られてたのか。
顔から火が出そう。いっそ死にたい。


土御門「ひひひっ……彼女に良い恰好見せようとして……にわか丸出しだぜぃ!」アハハ!

絹旗「…………、」ムゥ・・・///

香焼「な、ん……でもないっす」ハァ・・・


自分でも何でこのゲームを選んだか分からないが、結果的にそう見えてもおかしくない。
悔しいが、土御門の言うとおりだ。


香焼「……最愛。ごめん」

絹旗「何で謝るんですか……私がやってみてくれって頼んだんでしょう。謝らないで下さい」

香焼「……ごめん」

絹旗「……此処、離れましょう」

もあい「にゃぅ」ショボーン・・・


兎に角、この場を離れようという意見には賛成だ。これ以上恥を晒したくない。


上条「……香焼」ポンッ・・・

香焼「……え」キョトン・・・

上条「あんまり気にすんな。オレだってコイツらに無理矢理やらされてしょっちゅう恥掻いてるしな」ハハハ

香焼「…………、」

上条「そして土御門」チラッ・・・

土御門「うひゃひゃひゃ! こりゃ傑作! 後でステイルにでも……ん、って痛たたたたっ!!」ギュウウゥ・・・

上条「あんまり後輩虐めるなよ。初心者だって分かんだろ? 遠い目で見てやるのが大人だろ」ッタク・・・


これが神か……いや上条さんか。この人は偉大だなと、改めて思った。


302 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 02:07:39.78 ID:QOBVy/KK0
状況が把握できずキョトンと目を丸くしている最愛。


絹旗「……こ、香焼」ボソッ・・・

香焼「あ……うん。大丈夫っす。次、行こうか」アハハ・・・

土御門「カミやん酷いぜよ……あらら、香焼ちゃん。もうお帰りですたい?」ニシシ!

香焼「……ええ。別のとこ、回ってきます」


相変わらず彼の、人を取って食ったような態度は苦手だ。


土御門「まぁまぁそう言わず。玄人ってのがどんなもんか見てくにゃー……ほれ、青ピ」ポンッ

青ピ「へ?」ポカーン・・・


土御門と同じ様な悪ガキ風。180cmを越していると思われる長身男性。


土御門「さぁさぁ青髪先生。お手本をどうぞ~」フヒヒ!

青ピ「えー……ギャラリー多いやないですかぁ」

土御門「そう言わずにぃ。ほら、俺の金でプレイして良いからにゃー」チャリンッ

青ピ「やれやれ……ほな、リクエストは?」

土御門「じゃあ『100sec(100秒)』で」ニシシ・・・

青ピ「疲れるやん……まぁ期待しないで見て下さいな」ハァ・・・


瞬間、周りからどよめきが起こる。


絹旗「一体何が始まるんです?」ポカーン・・・

香焼「さぁ」タラー・・・

上条「まぁ見てれば分かるよ……授業サボってゲーセンばっか行ってるヤツの本気って所かな」ハハハ・・・

青ピ「カミやん、それは言わないお約束ー」アハハ・・・


苦笑する大男さん。土御門と似た感じでヘラヘラしてそうな人だが……画面が切り替わると共に、雰囲気が変わった。
そして、僕達は『神速』を目の当たりにした……――



  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

浜面「なっ!? 『The Least 100sec』だと!?」 ギョッ・・・

滝壺「何それ?」ポカーン・・・

浜面「通称『百秒』。鬼難だ」

滝壺「兎に角ヤバいって事だね……あ、始まった。え、えっと……画面追えないよ。アレって叩けてるの?」

浜面「凄ぇ。パネぇ……まだミス無し……あ、間違えた……でもまだ序盤か……でも此処からだぞ。『虹色の滝』は」

滝壺「うーん……コンボ数っての見れば良いのかな? って、うわぁ! 青が棒!」

浜面「ミスらない……だと……600オーバー!?」ギョッ・・・

滝壺「あの人、高位の能力者かなぁ」ムゥ・・・


フレンダ「やったー。フルコンボー! フレメア、天才だー!」スゴーイ!

フレメア「にゃー!」ドンッ!


303 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 02:28:44.98 ID:QOBVy/KK0
愕然としてる間に、演奏は終わった。
結果680コンボ。もう凄いんだか凄くないんだか分かんないけど、トンデモないって事だけは分かった。

終了後にはさも当然という様に、感嘆の声や小さな拍手が起こっていた。


青ピ「あー。700行かなかったかぁ」アハハ

土御門「にゃはは。ドンマイ。お疲れちゃんにゃー」

絹旗「ちょ、超凄いです……目で追えませんでした」タラー・・・

香焼「自分も」タラー・・・

もあい「にゃー」フー・・・


ヨッコイショと親父臭く席を立つ大男さん。


上条「お疲れ。流石マルチゲーマー。何でも来いだな」ハハハ

青ピ「ははは。まぁ競馬ゲーからエロゲーまで何でも来いですよ」

土御門「ふふふ。見たかー、チビっ子! これが玄人の実力だぜぃ! 素人にわかは大人しく太鼓でも叩いてにゃー!」


何でお前が威張るんだ。


絹旗「……何かの能力でしょうか?」ジー・・・

上条「絹旗、青ピの能力は誰も知らないぞ。本人が教えてくれないからな……ただ高位の能力じゃないってのは確からしい」

絹旗「へぇ……でも幻想殺し(貴方)みたいな超意味不明な希少能力者(レアスキル)だっているでしょう?」

上条「ははは。如何だかな」


この街では常識に捉われてはいけない。誰かが言ってたな……って、その前に、今不思議な会話を聞いたぞ。


香焼「……最愛。この人知ってるの?」エ・・・

絹旗「幻想殺しでしょ、超有名人です。またの名を超不幸人」チラッ

上条「あははは。まぁ色々繋がりあってな。俺、無駄に顔だけは広いから。もあいも知ってるぞ。スフィンクスと仲良しだ」ポリポリ・・・

もあい「ふにゃぁ」フシフシ・・・


流石というべきか。最愛に人見知りされないとか、上条さんマジぱねぇっす。


上条「とりあえずもう引き留めたりしないからデートの続きでもしてこいよ。神裂と麦野さんには黙っといてやるからさ」クスッ

絹旗「で、デートじゃないですよー!」カアアァ///

土御門「やーい。ロリショタカップルのデートだにゃー!」ニシシ!

青ピ「そのシュチュ、とっても美味しいです」<^q^>

上条「こらこら。からかって悪かったよ。香焼、早く連れてってやれ」ポンッ

香焼「あ、はい。何か気を使って貰ったみたいですいませんでした」

上条「良いからさ。絹旗も頑張って香焼の事扱き使ってやるんだぞ」ハハハ

絹旗「超余計なお世話です! お前もどっか行け!」キー!


やれやれ。兎に角、自分の失敗を誤魔化して貰えた事には感謝だ。いずれ礼はしよう。


304 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 02:36:44.72 ID:QOBVy/KK0
では次の場所へ移動しよう。


絹旗「今度は香焼が出来るゲームにしてくださいね」

香焼「最愛が出来るゲームを探したいんすよ。女の子なんだからプリクラとか興味無いの?」

絹旗「アイテム……仲間と一度撮った事はありますけど、別段面白いとは思いませんでした」


サバサバしてらっしゃる。


香焼「じゃあUFOキャッチャーとかは?」

絹旗「あれって興味有る景品の問題じゃないんですか?」

香焼「そうだけど……最愛、何か欲しいのないの?」

絹旗「じゃあ少し歩かせて下さい。見て回ります」

もあい「なー」


という事で、UFOキャッチャーコーナー。


絹旗「…………、」キョロキョロ・・・

香焼「良いのあった?」

絹旗「少し待って下さいよ……あ」ピタッ

香焼「ん?」


ふと立ち止まり、台を指差す最愛。その先にあった景品とは……―― >>306
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 02:43:23.03 ID:I+mQmlcIO
お菓子の詰め合わせ
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 02:43:42.87 ID:bqBvH/ryo
ゲコ太(等身大)ぬいぐるみ
307 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 03:05:20.19 ID:QOBVy/KK0
絹旗「これ」ビシッ

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・デカぁっ!!?」ギョッ!!


まるで作業用クレーンかというくらい大きなUFOキャッチャー。一回なんと1,000円。
景品は学園都市でメジャーなマスコットキャラ、ゲコ太。ただし一般的なぬいぐるみサイズではない。

所謂『着ぐるみ』というヤツだ。


絹旗「コレ、やってみたいです」ジー・・・

香焼「ちょ、えぇ!? いきなりこれ!?」タラー・・・

絹旗「はい。超欲しいです」ジー・・・

香焼「最愛、UFOキャッチャーやった事ないんでしょ? だったら普通のでまず」

絹旗「大きい方が演算しやすいでしょう」


出た。能力者特有の何でも演算・計算論。


香焼「でも、一回1,000円だよ?」

絹旗「お金はあります。給料殆ど使って無いので」

香焼「そういう問題じゃ……まぁ良いや。やってごらん」ハァ・・・

絹旗「はい」コクッ


一度痛い目見れば覚えるだろう。
最愛は近場の両替機で万札を千円札に崩し、巨大キャッチャーに挑戦し始めた。


香焼「あの着ぐるみ。ホントに取れるのかなぁ」ジー・・・

もあい「にゃぁ」ジー・・・


ふと気付くと、再びギャラリーが増えていた。どうしてこう目立つゲームを僕らはチョイスしてしまうのだろうか。
これでは最愛が緊張して……と思いきや案の定そうでもないらしい。ガッツリ集中している様だ。


香焼(興味持ったことへの集中は凄いんだな)ヘェ・・・


その興味が向う先が一般的なモノであれば、此方としては助かるのだが。


香焼「最愛、取れそう?」

絹旗「……縦軸横軸は完璧の筈です。後は深さとアームの回転次第でしょう」ジー・・・


流石、大能力者(レベル4)。理数系を語らせれば、それ相応の優等生に見える。


308 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 03:24:23.74 ID:QOBVy/KK0
微調整を終え、アームを降ろす。
本人の言うとおり縦横軸は大体合ってると見える。問題は深さだ。


絹旗「脇の下を斜めにホールドすれば釣り上げられる筈です」

香焼「……うーん」ジー・・・


目標に向かって一直線に降りるアームを見て観衆もざわめく。
だがしかし、何故だろう……取れる気がしない。


絹旗「深さは……此処です!」ポチッ!!

香焼「最愛……えっとさぁ」

絹旗「静かに! このまま釣り上げれば…………ああぁ!!」ビクッ!


ボトリと着ぐるみが落ちた。しかも勢いで横に倒れる。


絹旗「あ、アームの強度超弱過ぎなんですけど!」フルフル・・・

香焼「最愛。話は最後まで聞いてよ……UFOキャッチャーのアームってそういう作りなんだよ」

絹旗「ぐ、ぬぬぅ……もう一回です!」ガチャッ!!


今度は強度と、ついでに重力計算も如何こうと難しい事をブツブツと呟きながら二回目を始めた。
縦横については相変わらず完璧。問題は此処から。


絹旗「次は超余裕です」フンッ

香焼「…………、」ポリポリ・・・

もあい「みー」ジー・・・

絹旗「アームを袈裟掛けに……あっ! な、何で!?」ボトッ・・・


周りからも溜息が漏れる。仕方なかろう。今のは良い所まで行った気がする。


香焼「って、最愛! もう二千円使ったよ!?」ギョッ・・・

絹旗「まだまだイケます!」ガチャ・・・

香焼「止めとこうよ……お金無くなっちゃうよ」ウーン・・・

絹旗「次で取れるんです! 三千円で着ぐるみが買えます。安いモノでしょう」グヌヌ・・・


ダメだこりゃ。
結局、両替した1万札が全て無くなるまで最愛は意地を張り続けた。


309 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 03:44:52.08 ID:QOBVy/KK0
数分後……レバーの前で力無く項垂れる最愛の姿があった。
ギャラリーも、もう無駄だろうと蜘蛛の子の様に散り散りと消えていく。


香焼「最愛。もうお終い。これ以上は駄目だよ」

絹旗「……あと一回」ボソッ・・・

香焼「駄目。こんなのに一万円以上も使ったら勿体無いよ」

絹旗「次は取れる筈なんです……首と、胴体を分離させて片方ずつコーナーに入れれば」

香焼「最愛」メッ・・・

絹旗「…………、」ムゥ・・・

もあい「みゃー」ペロペロ・・・


最愛にはギャンブル類をやらせちゃ駄目だな。一度嵌るとスッカラカンになるまでお金を注ぎ込むタイプだ。
ジュースでも奢るから、と肩を叩こうとした時、自分達に近づいて来る足音が聞こえた。


香焼「……あ」チラッ・・・

御坂「まったく。十回も無駄にチャレンジしちゃうなんてお金の無駄よ」フフッ

絹旗「……超電磁砲(第3位)」


この街のトップ7、その第3位……御坂美琴さん。


佐天「御坂さん。まさか挑戦する気じゃ……ってあら。香焼くん、最愛ちゃん」ア!

白井「これはこれは……デートですの? お若いですわねぇ」ホホホ

香焼「白井さんと同い年っすよ」ハァ

春上「デートは否定しないみたいなの。良かったね、最愛ちゃん」フフフ・・・

絹旗「……違いますよ」ムゥ・・・

初春「あらら。いつもみたいに力強く反論されるかと思ったら、案の定ふにゃふにゃですね」


UFOキャッチャーであれだけ負ければ、気弱にもあるだろう。


御坂「さっきのプレイ見てたけど、アンタ達だった訳ね。まったく策も無しに勿体無い」ハァ

絹旗「むっ……策はありましたよ。ちゃんと計算して」

御坂「そんな事言ってる時点で素人丸出しね。UFOキャッチャーをまるで分かっちゃいない」

香焼「まるでプロみたいな言い方っすね」

佐天「あはは。まぁ御坂さんは学校サボってゲーセン行くほどのむぐぅ!!」

御坂「余計な事言わなくて良いからっ」シー!


噂には聞いていたが、この人も大概不良少女だな。


310 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 04:06:31.75 ID:QOBVy/KK0
佐天さんを黙らせた所で、さてさてと最愛の下へ向かう御坂さん。


御坂「退いて」

絹旗「え」

御坂「クレーン。私やってみせるから」スッ・・・


言われるがままに数歩下がる最愛。


御坂「コーナーまで9mかぁ……1万あれば余裕ね」ガチャッ・・・

佐天「出た。ブルジョア御坂さん。金銭感覚違いますねぇ」アハハ・・・

白井「お姉さま! こんなキチガイ染みたレートのゲームをなさるおつもりですの!?」

御坂「まぁまぁ。普通で買ったら5万以上するゲコ太着ぐるみを低価格で買えると思えば」フフフ・・・キランッ!

春上「欲望丸出しなの。流石御坂さん。そこに痺れる憧れない!」

御坂「あ、あれよ! 打ち止め(いもうと)が喜ぶからプレゼントしてあげようかなぁって!」アハハハ・・・

初春「はい、今言質取りましたからね」ニヤニヤ・・・

御坂「ぐぬぬぅ……二つ取れれば問題無し!」ポチッ・・・


操作を始める御坂さん。そういえばこの人、電撃使い(エレクトロマスター)だけどズルとかしてないのか?


白井「お姉さまはそんな真似しませんの……ギリギリまでは」ボソッ・・・

初春「あはは。意地になったら台蹴り出しますからねー」


それで良いのか超能力者(レベル5)。
さておき、狙いの人形はコーナーから9mくらいの横に倒れているヤツの様だ。アームは人形の真上……ではなく少し縦横浅い場所で止まる。


絹旗「全然ポイント定められてないじゃないですか。超駄目駄目です」

御坂「うっさい。黙ってみてなさい」ポチッ・・・


アームは最深まで下がり、人形を持ち上げ……る事無く、転がすだけに終わった。


絹旗「ふんっ。超大きい口叩いた割には大した事無いですね」ジトー・・・

佐天「さ、最愛ちゃん。一応先輩なんだから」

御坂「…………、」ガチャ・・・


再度チャレンジする御坂さん。今度は……ん?


香焼「今度も、同じ様な位置?」エ・・・

春上「御坂さん、また失敗しちゃったの」アララ・・・

絹旗「ぷふー! 散々人を無策扱いしといてそれですか? どっちがお金の無駄でしょうねー」ハハハ

白井「…………、」ジー・・・フーン・・・


そして、また転がるだけ。続け様にもう一度挑戦したが、また転がるだけだった。
これで3回連続である。一体如何いうつもりだ?


311 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 04:25:08.24 ID:QOBVy/KK0
無言で4回目のお札を投下する御坂さん。


香焼「……意味が分からないっす」ジー・・・

白井「あら。まだ気付きませんの?」

一同『え?』


アームは『また』同じポジションを取り、アームは『また』着ぐるみを転がすだけに終わる。


絹旗「……あ」ギョッ・・・

御坂「今頃気付いた?」フフッ・・・


転がっていた着ぐるみのコーナーまでの距離……残り1,5m。


佐天「け、計算してたんですか!?」

御坂「計算っていうか慣れと勘。UFOキャッチャーってのは色々種類と取り方あるのよ」

香焼「種類と取り方?」

御坂「これは一般型だけど、金を注ぎ込んだだけ取り易くなる累計(注ぎ込み上限)型。店員を呼ばないと当たりが来ない接待型とかね」


知らなかった。常盤台のお嬢さんって凄い勉強するんだなぁ。


白井「それはマジで言ってやがりますの?」タラー・・・

初春「まぁまぁ。それより取り方は?」

御坂「一般的にはキャッチ。次にメジャーなのが押し込み。あとは玉突きとか色々あるけど……今やってるのは見た目通り、転がしね」

香焼「す、凄い」タラー・・・

御坂「まぁ能力使ったり、空間移動能力者(黒子)の演算能力借りれば『一発でも』取れるけど、それじゃ無粋でしょ」ガチャッ・・・


最後のトドメだと言わんばかりに札を投下する御坂さん。
最後は縦横ピッタリに位置を取り……持ち上げ(キャッチ)。


御坂「いくらアームの力が弱くても、この程度の距離なら余裕よ」ポチッ


浮かぶゲコ太の着ぐるみ。アームは直ぐにでも力尽きそうだが……それでも十分。
ガタンッという音と共に、着ぐるみが落ちた。
いつの間にか沸いていたギャラリーが大歓声を上げる。御坂さんは苦笑しつつ景品を貰いに行った。

一方……


絹旗「…………、」ムスー・・・

もあい「なぅ……、」ジー・・・


此方はご機嫌斜めだった。


312 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 04:52:20.57 ID:QOBVy/KK0
ゲコ太着ぐるみを背負う満面笑みの不思議な女子中学生が此方に戻ってくる。
正直無関係者を決め込みたい。あれは恥ずかしい。


御坂「いやぁ。取れちゃったわぁ。3人目だそうよ」フフフ・・・

初春「さ、3人目!? 御坂さん以外に2人もゲットしてるんですか!?」

御坂「何でも一人目は杖付いた白髪野郎で、もう一人は茶髪のホスト崩れだってさ」

白井「はぁ。お姉さま以外にも物好きがいるんですね」


ワイワイ楽しそうな連中を余所に、最愛は……俯いたまま固まっていた。


春上「……最愛ちゃん」

絹旗「…………、」ウルウル・・・

佐天「……御坂さん。それ、打ち止めちゃんに渡すんですよね」チラッ・・・

御坂「ヴぇ!? あ、うん、で、でもほら……打ち止めにこのサイズは大きいかなぁってちょっと後悔して」アハハ・・・


態と臭ぇ。


御坂「し、仕方ないから私がコレ貰うしかないなぁ! あはは、置き場に困るわぁ」フフフ・・・

絹旗「…………、」ウルウル・・・

春上「じゃあ……それ最愛ちゃんにプレゼントしてあげるの」ニパー

佐天「そうだね。それが良いと思いますよ」フフッ


・・・・・。


御坂「え・・・・・・・・・・・・・・・・・うぇえええええええぇっ!!?」ギョッ・・・

絹旗「……え」キョトン・・・

佐天「だって最愛ちゃんにお手本見せる為にチャレンジしたんでしょう? だったらプレゼントしてあげても良いんじゃないですか?」

御坂「そ、それはそうだけど……、」ダラダラ・・・

絹旗「……良いんですか!?」パアアァ・・・

御坂「うっ……で、でも、5,000円も使ったし」ボソッ・・・


佐天さんに春上さん……ありがとう。


香焼「御坂さん。自分からもお願いっす……後ほど倍返しでお礼はします。あと良い情報も教えましょう」ボソッ・・・

御坂「な、何よ」タラー・・・

香焼「上条さん。近くで見た様な気がするなぁ」ボソッ・・・

御坂「ッッ……そこのおチビちゃん! UFOキャッチャーは日々訓練! 理屈だけじゃダメ。時には勘や経験も必要。OK!?」ビシッ!

絹旗「え、あ……はぁ」

御坂「よろしい。では今回はこれを授ける。いつか自力で取って見せなさい! あとはまぁ、打ち止めと仲良くして貰ってるお礼よ」ボソッ・・・

絹旗「……ありがとうございます!」パアアアァ!!


やれやれ。何だかんだで良い人揃いなんすね。この人達も。
321 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/05(月) 23:08:27.85 ID:QOBVy/KK0
 ―――とある翌日、PM05:00、学園都市第6学区、とあるアミューズメントパーク・・・・・



御坂さんに上条さんの居場所を売った後、僕達はゲーセンから出る事にした。
レースゲームや格ゲー、シューティングゲームをやってみても良かったが、最愛が貰った着ぐるみの所為でそれどころではない。

ぶっちゃけ、かなりデカい。とても目立つ。

郵送して麦野さんの部屋に送ろうと言ったのだが、何故か手放さない。そんなに気に入ったのだろうか。
終いには運ぶの面倒だから着るとか言いだすし……困ったものだ。


絹旗「じゃあ香焼着て下さい」

香焼「勘弁してよ……第一、サイズ合わないっす。それ160~180㎝用だろ?」

絹旗「えー」

もあい「みゃー」


僕も最愛も……残念ながら着れない。多分、抱き枕になるか浜面さん辺りに着せるのが妥当だろう。


香焼「てか、悠々背追ってるけど重くないの?」

絹旗「能力使えば問題無しです」


流石パワー系。本人超貧弱だが、能力は羨ましい。


香焼「超目立ってるけど気にならないの?」

絹旗「別に。声はかけられないでしょう。虫除けになります」

香焼「確かに声掛け辛いけど……写メ取られてるっす」

絹旗「…………、」ピクッ・・・カアアァ///


お馬鹿。


絹旗「どどど、ど、どうしましょう!!?」モジモジ・・・///

香焼「やっぱ郵送しようよ」

絹旗「で、でも、麦野達にばれたら」アタフタ・・・

香焼「着ぐるみ買ってきたからって怒らないでしょ……呆れられるかもしれないけど」

絹旗「むぅ……、」ジー・・・


とりあえず無理矢理説得し、妥協点で『自分の部屋(香焼宅)』へ郵送する事になった。
きっと五和と浦上のオモチャにされるのがオチだな。


322 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/05(月) 23:26:27.71 ID:QOBVy/KK0
さておき、次の目的地へ。


香焼「何処行きたい……って聞いても無駄かぁ」

絹旗「じゃあ聞かないで下さい。阿呆みたいですよ?」

香焼「…………、」ハァ・・・


イラっとくる娘だやぁ。主体性無いわ世間知らないわ……やれやれだ。


絹旗「……超失礼な人ですね」ジトー・・・

香焼「ごめんごめん。それじゃあ……スポーツパークにでも行ってみる?」

絹旗「良いですよ」

香焼「苦手じゃないの?」

絹旗「能力使えばどんなスポーツだって超余裕です」フンッ!


無い胸を張る最愛。貴様は全世界のスポーツマンを敵に回した。


絹旗「無い胸って……変態香焼。そーろーのくせに」ジトー・・・

香焼「ヴぁっ!!? な、何言ってんだアホ!!」カアアァ///

絹旗「この前お邪魔した時、五和が言ってました」

香焼「適当な事を……意味分かって言ってんの?」チラッ・・・

絹旗「え、えっと……は、早いんでしょう」モジモジ・・・///

香焼「何が」ジトー・・・

絹旗「そ、え、せ、セク……せ、セクハラです!! 超セクハラ! 何聞いてんですか! セクハラ香焼! 浜面と同類です!」カアアァ///

香焼「はぁ……悪かったね」ポリポリ・・・

絹旗「ったく……女の子に何聞いてるんでしょう。この超そーろー」ジトー・・・///

もあい「みー」ベシベシッ


あまり連呼するなよ無い胸。とりあえず、後で馬鹿一号説教だな。


香焼「まぁ良いや。行くよ」テクテク・・・

絹旗「んもー」ブツブツ・・・///


さて、スポーツを馬鹿にした彼女の腕前とやらを見せて貰おうか。


323 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 00:42:52.07 ID:ooU393vg0
 <スポーツセンター>



さて、何からしようか。


絹旗「スポーツゲームは皆でよくやりますよ。野球とかサッカーとかテニスとか」

香焼「ゲームって……実際した事は?」

絹旗「ないですよ。でも私が作ったチームは毎年優勝してます! 超最強です!」ドヤッ!


コイツ……嘗め過ぎ。


香焼「じゃあバッティングセンターかな」

絹旗「あ、知ってますよ! ボールがビューンって出るヤツですよね」

香焼「それを打つんだよ。まぁ良いや、行こう」


豪語する彼女の、まずバットすら握った事が無かろう腕前が楽しみで仕方なかった。


 ******************


安価! バッティングセンターで会う人物!  >>325

324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 00:54:55.45 ID:EQJg4yxBo
黒妻さん
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 00:56:47.98 ID:kpxzrjULo
↑+半蔵、郭(死んでなければ駒場も追加で)
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 00:57:16.86 ID:TFen4CZDO
垣根!
327 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 01:18:24.92 ID:ooU393vg0
※駒場が生きてると浜面のポジションが変わっちゃうので、スイマセン。



 ****************



ガヤガヤとBGM・機械音が五月蠅い待合フロア。
まずは一番遅いスピードでチャレンジさせてみよう。と、その前に。


香焼「最愛」

絹旗「はい?」

香焼「バットの握り方知ってる?」

絹旗「…………、」ポカーン・・・


やっぱりか。とりあえず握ってみろ。


絹旗「はい……こう?」

香焼「それは剣道握りっす。間詰めなきゃ」

絹旗「ふむふむ」グッ・・・

香焼「そうそう。それで脇締めてスイングするの。振ってみ」

絹旗「んー……ねぇ香焼。これ……バット振るのに、どうやって能力使えば良いんでしょうか?」チラッ・・・


…………。


香焼「何でもかんでも能力頼っちゃダメ!」ンモー・・・

絹旗「え、あ、すいません……、」ポリポリ・・・


これじゃあまずボールにも当たらないだろうな。


絹旗「むぅ。そんなん言うなら先に香焼がお手本見せて下さいよ」ジトー・・・

香焼「え」

絹旗「出来るんでしょう。素人虐めは超恰好悪いです」フンッ

もあい「にゃっ」フシャー!


そう言われればそうか。仕方ない。自分からやってみせよう。


328 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 01:37:19.55 ID:ooU393vg0
もあいを最愛に預け、パッキーを機械に入れる。スピードは100㌔。所謂初心者レベルだ。


絹旗「あ、動きましたよ! 何かRWS(無人銃架・砲塔)みたいです!」オオォ!


物騒な事言わないで下さい。
さておき、まずは軽く当てよう。飛び出してきた軟球をそのままワンバウンドで返したやった。


絹旗「……ボール。超遅いですね」

香焼「まぁ100㌔程度だからね」

絹旗「なーんだ。銃弾の半分以下じゃないですか」


だから物騒な話は止めろというに。


香焼「……でも、これを打ち返すのが難しいんすよ」

絹旗「何で打ち返す必要があるんですか?」

香焼「最愛はバッティングセンターの意味を根本から否定する気?!」

絹旗「へ?」ポカーン・・・

香焼「はぁ……まぁ良いや。次から真面目に打つよ」


天草式の男衆はそれなりにスポーツ好きが多い。無論、野球も例外ではない。
地元に帰れば朝野球に無理矢理参加させられる事だってある。


香焼「ふッ」グッ・・・


ピッチャー返し。


絹旗「おお!」ジー・・・

もあい「にゃ!」ジー・・・

香焼「そらッ」ブンッ・・・


センターライナー。


絹旗「へぇ……凄いですね」パチパチ

香焼「慣れてるからね」ハハハ

絹旗「じゃあ部活入れば良いんじゃないでしょうか?」

香焼「ははは。この街の部活のレベルは……別次元っすから」タラー・・・


此処のバッティングマシーンの種類の多さを見れば分かる。ざっと30だ。
漫画の世界の変化球が実在するチート学園都市。正直、やってらんない。

とりあえず、20球程打った所でマシンは止まる。一度外に出て、最愛と交代だ。


329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/06(火) 01:56:17.19 ID:6sb6kjT90
侍巨人や庭球王子様、超次元蹴球まで再現可能なのか……
恐るべし、学園都市
330 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 02:08:42.97 ID:ooU393vg0
最初は特に何も教えず立たせる。


絹旗「こうですか?」グッ・・・


典型的な女子初心者の構え。まぁ打てない事もないだろう。


絹旗「良し! じゃあスタートです!」ポチッ・・・


意気揚々とパッキーを投入する最愛。自分ともあいがハラハラと彼女の打席を見守る。アームがゆっくり動き……発射。


絹旗「ふんッ」ブンッ!!

香焼「なっ!!?」ギョッ・・・

もあい「みゃ」ギョッ・・・


ボールには当たらなかったが、プロ野球選手並みのスイングをする最愛。ブォンッとバットが風を斬る。


絹旗「む……これは中々」フーム・・・

香焼「……能力使ってスイング速くなるもんなんすか?」タラー・・・

絹旗「まぁ色々と。バット自身に『装甲』かけたり」


なんつー反則技。さておき、二球目。


絹旗「えいッ」ブンッ!!


コツンとヘボい当たり。やはり能力だけでは如何こう出来ないか。


香焼「最愛。ボールには当たってるよ。後は角度とか」

絹旗「……演算すれば良いんですね」フムフム・・・

香焼「……もうそれで良いや」ハァ


確かにデータと計算でスポーツは出来そうだが……何か腑に落ちない。
三球目が来ようという時、何を考えたか、バットを地面に付ける最愛。


香焼「なっ!?」

絹旗「計算上、これならイケるかと!」キリッ・・・


ボールが来る。そして……


絹旗「ふッッ」ガンッ!!


斜め下35度からの変則超アッパースイング。打球は途轍もないドライブ回転が掛り、ネットへ突き刺さった。


絹旗「ふぅ。なるほどなるほど……次はあのホームランゾーンに当ててみましょう」グッ・・・

香焼「さ、最愛……その打ち方、止めようよ」タラー・・・

絹旗「へ? 何でですか?」ポカーン・・・

香焼「その、野球への冒涜臭い」ポリポリ・・・

絹旗「そんなの知りません。打てれば良いんでしょう」フンッ


御尤もだが、納得いかん。
結局、能力者特有の演算(不格好)打法でホームランゾーンにブチ当て、満足げな最愛さん。何だかなぁ。

331 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 02:33:45.16 ID:ooU393vg0
マシンが止まり、浮かれ気分で打席から出てくる最愛。
色々ツッコみを入れたいが……楽しそうだから我慢しよう。


絹旗「ふふふ。次は200㌔やりましょうか! あ、重力ボールってのも打ってみたいですね」ニコニコッ

香焼「200って……打てる人いる……からあるのか」ハハハ・・・


一般人じゃ無理だろう。というかバットとキャッチャーが悲鳴を上げそうだ。


絹旗「じゃあ行きましょうよ。打ってみたいです!」キラキラ・・・

香焼「はぁ」ポリポリ・・・

もあい「なー」ジー・・・


ノリノリな最愛に連れられ、200㌔打席へ向かう。常識に捉われた発想をしつつ、移動して隣に先客が居るのに気付いた。
快音を響かせながらボールを打ち返している。


香焼「『音速球』って……打てる人いるんだ」ヘェ・・・

絹旗「筋力強化の能力者でしょうか。それとも視力強化かも……何にしろ強化系でしょうね。銃弾級の速さ打ち返せるのは」

香焼「まぁ能力者前提だよねー」アハハ・・・


まぁ確かに、自分も魔術を駆使すれば打てない事もない。
余談だが女教皇様なら弾道ミサイル(約2万8千Km/h)レベルを打ち返せるだろう。


絹旗「当たり前じゃないですか。無能力者が……あ」ピタッ・・・

香焼「……まぁね。気にしなくて良いっすよ」アハハ・・・

絹旗「い、いえ……その……あの人」ジー・・・

香焼「え」ピタッ・・・


打席に立っている人物を指差す最愛。浜面さんより少し大きいくらいの背丈で、髪を結んでいる男性。
実に綺麗なスイングで200㌔を打ち返している。革ジャン着ながらよく打てるなぁ。


絹旗「……えー」タラー・・・

香焼「如何したの?」

絹旗「……無能力者って何なんでしょうね」タラー・・・


意味不明な事を言いだす。何が如何したというのだ。無言の最愛を余所に、バッティングを終了させ打席から出てくる男性。
ふと、此方に気付き……近づいてきた!?


332 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 02:49:42.21 ID:ooU393vg0
??「よう」テクテク・・・

絹旗「……無能力者(レベル0)の筈ですよね」タラー・・・

??「あはは。まぁ無能力者嘗めんなって事さ」ククク・・・


いきなり最愛と会話を始める男性。最愛も普通に話しかけてるし。知り合いか?


絹旗「ああ、えっと……兄貴さんです」チラッ・・・

香焼「兄貴さ……は?」

??「その紹介は無いだろ。最愛ちゃんの兄貴じゃないんだし」ハハハ

絹旗「じゃあえっと、アレです。分かり易く言えば、姉貴さんのヒモの兄貴さんです」サラッ

??「……えいっ」ゴチンッ・・・グググ・・・

絹旗「自動防御ありますもんねー。って……痛だだだだだだぁっ!! 装甲の上から頭押し潰さないで下さい」キャー!!


非常識な動きをする男性。誰ですか?


??「黒妻。黒妻綿流。オマエは?」カチッ・・・フゥ・・・

香焼「え、あ、香焼っす」コクン・・・

??「あー……あれか。銭湯で会った坊主か」ハハハ

香焼「え?」


銭湯……あ。      ※前作・第4話(結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」)参照。


黒妻「結標ちゃんの弟分な」ハハハ

絹旗「……またあの超破廉恥女(ビッチ)の名前」ギロリ・・・

香焼「えっと、淡希さんとは仲良いっすけど、弟分って訳じゃ」

黒妻「まぁまぁ照れんなよ」ハハハ


何故か最愛さんが睨んでます。怖いから止めて下さい。


黒妻「ところで最愛ちゃん」

絹旗「はい、何でしょう」

黒妻「最近いつも以上に引き籠ってたらしいが……今日はデートか?」ニヤリ・・・

絹旗「ヴぁっ!? な、ち、違います!!」カアアァ///

黒妻「あはは。こっちも照れてらぁ」ケラケラケラ


学生には見えない強面そうな男性は最愛の頭をワシワシしながら楽しそうに笑った。
そんな彼の下に2人の男女が近づいて来る。


333 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 03:14:14.63 ID:ooU393vg0
??「兄貴、お疲れ様です。データは取れましたよ」

?「しかし『テーピング』してるとはいえ、視力は普通。よく打てましたね」タラー・・・

黒妻「……まぁな」チラッ・・・

??・?「「……あ」」ピタッ・・・


黒基調の変則ラッパーみたいなファッションの男性と……派手な間違いました風の和服に身を包んだ女性。


?「……これはこれは。黒妻兄さんの娘分さん。こんにちわ」ペコッ

黒妻「娘じゃねぇよ」ケッ

絹旗「え、えっと……クロエさん。こんにちわ」ペコッ・・・

?「……お姉さんはそんなブランド染みた名前じゃないですよ」ハハハ・・・

??「だはは! 良いじゃん。お前今からクロエに改名な」ケラケラケラ!

?「んもう! 半蔵様! 私は『郭』って名前(コードネーム)気に入ってるんですよ!」プクウウゥ・・・


半蔵・郭。この街には珍しい純和風な名前だな。
それにしても最愛が人見知りしないなんて珍しいな。やはり此方も知り合いなのか。


絹旗「コッチの2人は浜面の友達です。というか兄貴さんが浜面の兄貴さんなので兄貴さんなんです」

香焼「もうちょっと分かり易く教えて」タラー・・・

黒妻「俺が仕上(浜面)の知り合いって事だ。その繋がりでこの子と知り合った」

半蔵「俺らも似た様なもんだ。尤も、黒妻の兄貴とチームは違うけどな。前の頭(ヘッド)と付き合い長かったからよ」

香焼「チーム? ヘッド?」

郭「武装無能力集団(スキルアウト)ですよ。御存じありませんか?」

黒妻「オイこら。オレはOBだっつの。一緒にカウントさせんな」ケッ


武装無能力集団。所謂、この街のアウトロー。
半蔵さんと郭さんはそういう風に見えないが、黒妻さんは確かに……某『烏達』、『最低』の○装戦線に出てきそうな雰囲気をしている。


半蔵「○木恵三ですね分かります」ククク・・・

黒妻「うっせ! ったく……オレらはデートの邪魔なるからとっとと帰るぞ」スタッ・・・

絹旗「だからデートじゃないですよー!!」カアアァ///

黒妻「はいはい。美偉にも報告しとくからなー」ハハハ!


吸い掛けの煙草を揉み消し、立ち上がる黒妻さん。
展開に追い付けず忘れていたけど、この人無能力者なのか……え? さっき音速打ってなかった!?


絹旗「……何故でしょうね。超不思議です」タラー・・・


アレか。軍覇と同じ部類の人間か。

334 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 03:33:49.65 ID:ooU393vg0
黒妻「んな⑦と一緒にすんな。オレはあそこまで根性論で動いてねぇ」

香焼「はぁ。すいません」

絹旗「私からすれば似た様なものだと思いますけどね」ハハハ・・・


というか軍覇まで知ってるのか。


黒妻「アイツっつーか、アイツの研究所の所長と色々な。さて、オレらは帰るよ。またな」テクテク・・・

半蔵「失礼するよ……兄貴。新型『テーピング』のテストですが、もう少し続けても?」テクテク・・・

黒妻「……やっぱスポーツパークでテストすんのは間違いだと思うんだが、如何よ? 今の実際何の意味あるの?」ハァ・・・

半蔵「アレ打てれば銃弾叩き落とせますし……まぁ視力云々は改善しましょう」ボソッ・・・

香焼(……最愛と繋がりあるって事は、やっぱり『裏』の人なんすね)ジー・・・

郭「やれやれ、男はすぐ仕事の話……娘氏。姐さんには内緒にしとくよう口止めしといてあげますからね。安心してデートして下さい」フフッ

絹旗「だ、だから娘でもデートでもないですよー!」フシャー///


笑いながら去っていく三人。変わった人達だな。


絹旗「まったく……おっぱい大きい女の人って如何して性格変人なんですかね!」プンスカッ!

香焼「人によるだろうけど……大いに同意するよ」タラー・・・


確かに多い。まともなのはギリギリで女教皇様とオルソラさんで、固法さん、滝壺さんくらいだろう。


絹旗「滝壺さんと姉貴さんは確かに良い人ですよねー。おっぱい大きいのに」

香焼「最愛は胸に不満でもあるの……って、ん?」

絹旗「あるに決まってるでしょう! 言わせないで下さい、外道!」フシャー!

もあい「シャー!」ペチペチッ


外道て……じゃなくて、姉貴さん?
そういえば前々から気になっていたのだが、何故最愛は固法さんの事を姉貴さんと呼ぶのだ?


絹旗「何でって、兄貴さんの奥さんだからですよ」

香焼「……は?」

絹旗「だから兄貴さんの奥さん。まぁ兄貴さんは学生じゃないのにヒモですけど」

香焼「……兄貴さんって、黒妻さんの事?」タラー・・・

絹旗「私、彼以外を兄貴さんって言いませんよ」


…………。


香焼「ええええええええええええええええええぇ!!?」ギョッ・・・

絹旗「きゅ、急に何ですか!?」ドキッ・・・

香焼「だって、風紀委員の固法さんだよ!?」

絹旗「だから何なんですか。相変わらず意味分かりませんねぇ」ハァ・・・


確かに意味が分からない。理解できない。

335 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 03:52:36.60 ID:ooU393vg0
そういえば家でカオリ姉さんが『固法さんの彼氏さんが――』とかいう話をしているのを思い出す。
更に結標さんが銭湯を出た先で言っていた事も思い出した。


香焼「……マジ?」タラー・・・

絹旗「何か変ですか? 私からすれば超お似合いカップルですけど」

香焼「……そうなんだ」ヘェ・・・

絹旗「人は見た目で判断しちゃダメなんですよ。ソレ、偏見ってヤツです」ジトー・・・


いや、悪いとは言ってないが以外だなぁと。


絹旗「男女の仲だけは理屈じゃねーんだよー、って麦野が言ってました」

香焼「いやはや、まったく」

もあい「にゃー」


まさに『ヤンキーくん○眼鏡ちゃん』か。


絹旗「ところで……さっき兄貴さんが打ってたヤツ、私も打ってみたいです」

香焼「え、それ音速だけど」

絹旗「……超試してみたいですね」ニヤリ・・・

香焼「そ、そう」タラー・・・


まぁデッドボールの心配は無いから大丈夫か。
パッキーを購入し、最愛に手渡す。自分ともあいが心配そうに彼女(主人)を見詰める中、アームが動き出した。


香焼「アームはゆっくりなんだ」ジー・・・

絹旗「バネは新素材のチタンゴムでしょうね……一球見ましょうか」ジー・・・


刹那―――雷が落ちた様な轟音が鳴り響く。


もあい「ふにゃ!?」ギョッ・・・

香焼・絹旗「「…………、」」ピタッ・・・


マットにボールが当たった音だ。多分、マットも超低反発威力吸収素材みたいなのを使ってるのだろう。
更に、今の轟音で興味を持った人々が視線を向ける。何だかさっきから目立つ事しかしてないな。


香焼「……最愛。見えた?」

絹旗「辛うじて。ボールが大きい御蔭ですね。弾丸クラスだったら流石にお手上げです」

香焼「……うん」


物騒な事を……と言うべきだろうが、自分も同じ感想だ。何とか眼で追えたレベルである。


336 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 04:19:45.74 ID:ooU393vg0
さて、問題はどうやって打つか。


香焼「策は?」

絹旗「……二つほど」コトッ・・・


先と同じ様にバットを地面に付ける最愛。演算打法か。


絹旗「……ふッ!」ブンッ!


スイング。だがしかし……またもマットに響く轟音。


香焼「そんな大振りじゃ当たらないっすよ。まず当ててみないと……バントは、危険かなぁ」

絹旗「……バントですか」スッ・・・


華奢な最愛の身体じゃ当たった瞬間、重心を保てなそうだが、そこは能力でカバーするのか。


香焼「来るよ」

絹旗「アームの角度から微調整を……ッ」グッ・・・


最早バットに当たるボールの軌道を計算している感じだ。
音速のボールが発射され……ギンッと嫌な音がし、ファールボールとなって横に弾かれた。
最愛はというと不動の姿勢のまま、立ってた位置から無理矢理押しズラされていた。

周りから当てただけで称賛の声が上がっているが、本人はまだまだ不満らしい。


絹旗「仕方ありません。最終手段です」グッ・・・

香焼「なっ!? ちょ、危ないよ!?」ギョッ・・・

絹旗「大丈夫ですよ。まぁ見てて下さい」ニヤリ・・・


バットをかなり短く握り、しかも何故か右手一本で持ち、半身で空手の引き手を取る様な構えを見せる最愛。
何だアレと言った声が飛び交う。

そして第4球目。


絹旗「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッッ!!」ググッ!

香焼「ちょっ!!?」ギョッ・・・


スイングじゃない……これは右ストレートだ!
ボールがグリップ(右手)の『装甲』にめり込み、歪な音を上げている。


絹旗「ッ……てぇええええええええええええゐっ!!」バガンッ!!

観衆『っ!?』アゼーン・・・


最終的に、そのまま打ん殴りやがった。
打球と呼んで良いのか分からないそれは、綺麗な無回転ライナーとなり、ネットを突き破ってどっかに消えて行った。


337 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 :2011/09/06(火) 04:37:49.02 ID:ooU393vg0
……言葉が出ない。


絹旗「痛てて……こりゃ肉潰れそうになりますね」フーフー・・・

香焼「な……や、止めろよ」タラー・・・

絹旗「ええ。言われなくても止めるつもりでした。コレどうやって終了させるんです?」


20球終わるまで止まりません。


絹旗「……えー」

香焼「ったく……放っておいていいから出てきなよ。店員さんに謝っておくから」

絹旗「うーん……折角ですから香焼打ってみたらどうです? 残り10球は有りますし」

香焼「なっ!?」ギョッ・・・


止まらないマシンから放られる殺人球が、うねりを上げている。
最愛は既に打つ気は無いので無法状態。轟音が鳴り響く。


絹旗「ほら。削板が言う根性試しですよ」

香焼「…………、」テクテク・・・

絹旗「それじゃあ私出ますね」フフッ


マシンは止まっていないが選手交代。
多分、最愛は僕が打てないだろうと思っているに違いない。

まずは一球見逃す……やはり早い。


香焼(魔術……使おう)キュッ・・・


今身に付けている『モノ』で術式を練る。


香焼「動体視力は上がった……当たるかな」ジー・・・


音速球をバントしてみる。が……


香焼「い”っ!!?」ガギョンッ!!

絹旗「おお! 当たりましたよ!」ヘェ・・・

もあい「にゃ!?」ジー・・・


ボールと共にバットまで弾かれてしまった。流石殺人ボール。痺れで手が砕けそうだ。


338 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 05:06:28.73 ID:ooU393vg0
さぁ問題は此処からだ。この球を如何打ち返す。
とりあえず視覚でボールは捉えた。筋力は魔力で補うしかあるまい。
だが自分の魔力は高が知れてる。女教皇様や建宮さん、五和クラスなら容易に打ち返せるのだろうが、自分では難しい。


香焼「だけどそれは普通のスイングをしてたらだ」グッ・・・

絹旗「え!?」ギョッ・・・


右手でバットを逆手持ち。所謂、居合抜きの構えだ。
最早野球じゃないのは承知の上。


絹旗「ちょ、こ、香焼!?」

香焼「……試しにっすよ」ジー・・・


一番手慣れた握り方。短刀の逆手持ち。ボールに合わせ、右手一本でスイング!


香焼「ふッッ」シュッ!


衝撃。


絹旗「あ、当たった!?」ギョッ・・・


が……ファール。


香焼「痛てて……やっぱ片手じゃ無理っすね」アハハ・・・

絹旗「…………、」ポカーン・・・

香焼「ちゃんと左手(引き手)も添えなきゃダメかぁ……長モノ(刀)は得物じゃないんだけどなぁ」グッ・・・

絹旗「ちょ、こ、香焼! もう止めて下さい! 十分超凄いの分かりましたから!」アタフタ・・・

香焼「もう一球だけっすよ」ジー・・・

絹旗「な……もう!」ムゥ・・・

もあい「みー」ジー・・・


インパクトの瞬間に左手を扱ぐ様にして引けば、前に飛ぶ筈。
第4球目に挑もう。


絹旗「……私が言うのも何ですけど、馬鹿ですよ」ジトー・・・

香焼「あはは。まぁアレだよ。根性論」フフッ

絹旗「はぁ……削板(あんにゃろ)の⑦が伝染った訳ですね。後で説教です」ジトー・・・

香焼「お手柔らかに……ッ」


ボールが発射される……踏み込み、右手を押し出す。
今度は逆手短刀斬りとは違い、逆手ドス斬りのスタイル。


香焼「ッッ!」グイッ・・・


衝撃。そして……

339 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 05:20:50.94 ID:ooU393vg0
香焼「い……けえええぇっ!!」グンッ!!

絹旗「っ!!」


引き手。ボールは……なんとか前に、ボテボテと転がった。


絹旗「ほ、ほえ……、」ポカーン・・・

香焼「ツゥ~~~~~~~ッッ……なんとかなるもんすね」ハハハ・・・


バットを降ろし、打席を出た。


香焼「あー、手の皮剥けちゃったよ……バッティンググローブすれば良かった」フーフー・・・

絹旗「…………、」キョトン・・・

香焼「最愛?」

絹旗「……え、あ、うん」ポカーン・・・


口をあんぐり開けたまま、茫然状態の最愛。変な顔。


絹旗「い、いやいや……おかしいでしょ。超ありえません」タラー・・・

香焼「何でさ」

絹旗「だ、だって香焼、無能力者でしょう!?」

香焼「……能力者とか無能力者とか関係無いっすよ。黒妻さんだって打ってただろ?」

絹旗「で、でも……兄貴さんはバケモノだからで」

香焼「人をそんな風に言うもんじゃないっすよ……人間、やろうと思えば何でも出来るってことかな」ハハハ・・・

もあい「なー」


魔術の事は言えないが、その言葉は間違いではないと思う。


香焼「互いに満足したし、あとは帰ろ。流石に疲れたでしょう」

絹旗「う、うん」ポカーン・・・


何やら納得いかない表情……仕方なかろう。
自分の『非常識』を『常識(と勘違いしてる)』にひっくり返されたのだ。無理もない。


絹旗「……手、消毒しなくていいんですか?」チラッ・・・

香焼「『豆』になるから空気に当てとくんすよ」

絹旗「香焼……意外と根性系だったんですね。ぶっちゃけ超インテリ系だと思ってました」

香焼「ははは。よく言われるよ。この前佐天さんに言われた」クスッ

絹旗「……見直しました」

香焼「あらら。ありがと」フフッ

もあい「みゃー」コクコクッ


帰り際にジュースを買い、貴重な体験が出来たバッティングセンターを後にした。

340 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 05:35:27.63 ID:ooU393vg0

 ・・・・・寸・・・・・


時刻は6時半頃。日も暮れて周りは帰路につく人が増えてきた。
自分達はパークの出入り口付近で休憩し、次の場所を考える事にした。
次の場所、というより、時間も時間なのでそろそろ帰った方が良いのかもしれない。

そんな事を考えた刹那、携帯が鳴った。
相手は勿論滝壺さん。最愛に一言告げ、トイレに向かうフリをして少し離れた場所へ移る。


香焼「はい」

滝壺『お疲れ様』

香焼「いえいえ。すいません、自分も遊んでしまいました」ポリポリ・・・

滝壺『別に良いよ……というか、見てたんだけど、こうやぎくん。本当に無能力者?』

香焼「あはは……一応」タラー・・・


僕は確かに無能力者だ。嘘は吐いてない。


香焼「えっと、次は如何したら良いっすか?」

滝壺『……如何したい?』

香焼「え?」

滝壺『私達はきぬはたの事、貴方に任せたんだから、こうやぎくんがしたい様にすれば良いと思うよ』


そんな事を言われても。


滝壺『えっと……うんうん……あのね。フレンダが「明日まで貸す」って』

香焼「はぁ!?」

滝壺『だからきぬはたを明日まで貸すってよ』


意味が分からない。最愛は物じゃないですよ。


滝壺『当たり前だよ。だから……貸すの』

香焼「……えっと」タラー・・・

滝壺『とりあえず夕飯は必ず一緒に食べてね』

香焼「はぁ」

滝壺『場所は指定しない。任せるよ……後はメールします。でも多分、指示のメールじゃないから』


如何いう意味だ。


滝壺『きぬはたは今日十分頑張ったよ。もう無理はさせない。だから指示も出さない』

香焼「まぁ、確かに」

滝壺『後は2人で楽しみなさい。節度は守ってね』フフッ


それじゃあ、と意味深な〆句を残し電話を切る滝壺さん。一体何なんだ?


341 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 05:51:00.40 ID:ooU393vg0

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・数十メートル後ろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


       Pi!


滝壺「さて、こうやぎくんへの支持は終わりだよ」フフッ

浜面「人見知り克服云々は終わりって事か」

滝壺「十分頑張ったからね。見ての通り、もうあんまり人混みは気にしてないでしょ」

フレンダ「確かに。最後の方、存外堂々と歩いてたわね」ジー・・・

浜面「まぁな。でも坊主が一緒だからじゃないのか?」

滝壺「それはまた次の作戦で考えるよ。さて……後はきぬはたへの御褒美だね」フフッ

浜面「は?」

滝壺「頑張った御褒美だよ」カチカチ・・・

フレンダ「……じゃあさ」ゴニョゴニョ・・・

滝壺「ふむふむ。なるへそー……じゃあ……こうすれば……、」カチカチ・・・Pi!

浜面「メールか……変な事考えるなよ?」

フレンダ「ふふふ。普通よ、普通」クスクス・・・

滝壺「―――……OK。後は私達は関与しません」フフッ

浜面「あっそ。まぁお前らと坊主を信じるさ……さて、じゃあ飯行くか。何食いたい?」

フレンダ「え? 浜面の奢り?」ニヤリ・・・

浜面「馬鹿言うな。お前らの方が金有んだろ」ジトー・・・

フレメア「おすしー♪」ニャー!

浜面「ハァ!?」ギョッ・・・

滝壺・フレンダ「「おすしー★」」ニヤリ・・・

浜面「た、滝壺まで」ガーン・・・

滝壺「ふふっ。まぁ奢りは冗談だけど私達は私達で食べに行こう。多分むぎの達、朝まで飲み会コースだろうし」

フレンダ「風紀委員いるんでしょ? 呑みなんて」

浜面「……固法さんは黒妻の兄貴並に呑めるぞ。普通に俺より強ぇ」タラー・・・

フレンダ「……それでいい訳?」タラー・・・

滝壺「まぁまぁ。ぶれいこーぶれいこー。むぎのが楽しいなら良いんだよ」フフッ

浜面「何か間違ってる気もするが……良いや」

フレメア「それじゃあおすし行くよー」ワーイ!

滝壺・フレンダ「「おー」」ワーイ!

浜面「やれやれ……財布、足りるかなぁ」トボトボ・・・


342 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 06:01:14.78 ID:ooU393vg0
※誤字: 支持 → 指示


 ***************************



電話を切った後、最愛の下へ戻る。


香焼「お待たせ」

絹旗「……はい」ウーン・・・

香焼「どうしたの?」


何やら悩ましげな顔。


絹旗「……実は今、滝壺さんからメールが来て」

香焼「へ? 滝壺さん?」ギョッ・・・


二重指示だと!?


絹旗「……帰れなくなりました」ハァ・・・

香焼「な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だって!?」What!?

絹旗「何か、部屋掃除入ったそうです。二週間以上ルームメイキング入って無かったので」ハァ・・・

香焼「そ、それが今日入ったと」タラー・・・

絹旗「はい……私達が出張った後、すぐに」


それは確かに仕方ない事だが……まだ終わらないのか?


絹旗「部屋のサイズ見たでしょう。アレ、半日以上かかるんです」

香焼「な、なるほど」

絹旗「それで……麦野はアレですし、滝壺さん達もご飯一緒出来ないそうなので……、」ジー・・・

香焼「あ、うん。良いよ。食べに行こう」

絹旗「はい。それから……その……、」チラッ・・・モジモジ・・・


まだ何か、と聞こうとした瞬間……最愛がメールを見せてきた。



  『お友達の家に、お泊りしてきてね♪』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?


絹旗「……香焼ぃ」ウルウル・・・

香焼「うっ」タラー・・・

絹旗「どうしましょう……私、友達いませんよ」ウルウル・・・


……どうしろと?


343 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 06:22:47.73 ID:ooU393vg0
一向に動けないまま、数分が過ぎる。無言が苦しい。
こうなったら佐天さん辺りにお願いして、最愛を泊めてもらおうか……そんな事を考えた瞬間、メールが来た。

勿論、滝壺さん。


『よろしく』


短く四文字。何が『よろしく』なんでしょう?


香焼「え、えっと……とりあえず、ご飯食べよ」

絹旗「…………、」ジー・・・

もあい「にゃぅ」ペロペロ・・・


立て続けにメール……『きぬはたを よろしく』……何度も送るな。


香焼「お腹空いたでしょ? ファミレスでもワクドでも良いからとりあえずは」

絹旗「…………、」


あの部屋でゴロゴロして一日を過ごすというスタイルが崩れた瞬間、生活応用が効かなくなったのか。
そしてまたメール。


『こうやぎくんの家でご飯食べれば良いんじゃないかな? 第1学区、近いでしょ?』


どうしても最愛を我が家に泊める気か?こうなったら返信してやる……『最愛は女の子で、自分は男でしょう』……はい、論破。
10秒後返事が来る。早いな、オイ。


『何かする気? そんな度胸無いでしょ(苦笑)』


勿論そうだが……非常に腹が立つ。更に立て続け、もう一通来た。


『うん。信じてるよ♪ by滝壺。    Bまでなら許す☆ byフレンダ。    まぁ……頑張れ。by浜面。』


神は死んだ。


香焼「だあああああああああああああぁっ!!」

絹旗「っ!」ビクッ・・・

香焼「くそぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」ハア・・・

絹旗「こ、香焼?」


仕方あるまい。五和と浦上が居れば大丈夫だ。


香焼「最愛……ウチ、来る?」ハァ・・・

絹旗「え」キョトン・・・

香焼「多分、五和と浦上も来るっす。一緒にご飯食べよう」

絹旗「い、良いんですか!?」パアアァ!

もあい「にゃん!」フリフリ!


満面の笑み。ノーとは言えませんよ。
という訳で……僕らはスーパー経由(夕飯の買い出ししてから)で我が家へ向かう羽目となった……―――

344 :第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 06:49:21.01 ID:ooU393vg0
      <おまけっ!>


 ―――居酒屋:ブラックウィドゥ・・・・



麦野「――……だからさぁ……火織は勿体無いのよ!」ジトー・・・

神裂「は、はぁ」ポリポリ・・・

麦野「身体っつー武器を活かし切れてない……ちょっと聞いてるの!?」ニャー!

神裂「き、聞いてますよ。聞いてますから」タラー・・・

固法「麦野さん、飛ばし過ぎよ。まだ8時前なんだから、ちゃんとご飯食べてね」トントンッ

麦野「ん……美偉、あーんしてよ。あーん」アー

神裂「完璧酔ってる……麦野さん、お酒弱いんでしょうか?」

固法「さ、さぁ……でもまだお酒入れてないわよ。全部コーラだし」

神裂「雰囲気で酔うタイプですか……厄介ですね」タラー・・・

麦野「ちょっと美偉! 早く入れて! それとも彼氏以外にはあーん出来ないっていうの!? 私にゃあーん出来ないと!?」ジトー・・・

固法「そんな事無いですよー。今上げますからねー。はい、あーん」

麦野「……むきー! 勝ち組の余裕かああぁっ!! 説教だ説教! 黒妻くんも呼びなさい! 2人纏めて説教してやる!」ギャーギャー!

固法「先輩今晩は仕事よ。暇じゃないの」ンモー・・・

麦野「むぐぐ。逃げたなぁ……この牛乳(うしちち)が憎たらしいぞー!」モニュンッ!

固法「ちょ、や、何してるの!?」カアアァ///

麦野「むむむ……美偉、またデカくなったわね。遂に90台突入……こりゃ将来確実に火織級になるわ」モミモミ・・・

固法「バスト100も要りません! セクハラは止めてってば!」イヤイヤッ///

神裂「こ、固法さん……店内です。大声でそんな事言わないで」カアアァ///

麦野「火織のおっぱい星人! バスト100なんて羨ましいぞおおおぉ!! 少し分けろー! こーん畜生!!」グワシッ!!

神裂「ひっ!! ちょ、麦野さん!」カアアァ///


五和「こんばんわー……って、姉様!?」ギョッ・・・

浦上「あらら……キマシタワーってヤツですか? 上条さんに見向きされないからって、遂に」ホエー・・・


神裂「なっ!? ふ、2人とも!? 何故!?」カアアァ///

五和「滝壺さんに此処へ向かう様指示されたんです」ボソッ・・・

神裂「……ふむ。『アチラ』の動きは大丈夫でしょうか」ボソッ・・・

五和「…………、」コクン・・・

345第④話―――滝壺「きぬはたの事よろしくね」 香焼「はいぃ?!」 [saga]:2011/09/06(火) 07:05:29.58 ID:ooU393vg0
浦上「多分、問題無いですヨ……それよりこのお店御洒落ですネー。麦野さんチョイスですか?」

固法「私よ。此処、昔の『スキルアウト(チーム)』仲間のお店なの」チラッ・・・


店員「…………ども」ペコッ・・・


麦野「えぇっとぉ……『悪名轟く紅蓮団!』だったっけ? 黒妻くん頭(ヘッド)でしょー」トローン・・・

固法「危ないから止めて! ビッグスパイダーよ……彼は先輩と同期だから20くらいね」ハァ・・・

神裂「ほぅ……それにしても固法さんは不思議な方ですね。風紀委員であり、この手の繋がりもあり、と」クスッ・・・

固法「それは言わないお約束でしょ。空気を読めるとか切り替え上手な女って言って欲しいわね」フフッ

五和「おお……何だかワイルドですね。峰○二子的な!」

浦上「お姉ぇ、それは違うっしょ」

麦野「細けぇ事は良いのよ! それより……五和ちゃぁん。こっち来なさーい」ニヤリ・・・

五和「な、何ですか」タラー・・・

麦野「五和ちゃんも、火織ほどじゃないけど良いおっぱいしてるわよねぇ」ワキワキ・・・

五和「ひ、ちょ!?」ビクッ・・・

麦野「お姉さんが触診してあげましょう! ほれほれほれー!」ワーイ!

五和「い、いやあああああぁっ!!」キャアアアァッ!!

浦上「あはは……頑張れ」タラー・・・

固法「やれやれ……あ、折角だし結標さんも呼びましょうか?」

神裂「良い案ですが、来ますかね?」

固法「無理矢理よ。月詠先生に言えば叩きだしてくれるわ」フフッ

浦上「ありゃりゃ……風紀委員に教師でしょ?」ジトー・・・

固法「空気が読める、ね。友達優先よ」クスッ

神裂「まったく詭弁ですが、反論できないのも事実ですね」ハハハ・・・

麦野「楽しけりゃ良いのよ! 楽しけりゃ!」ニャハハ!

五和「ひええぇ。姉さーん! ウラー! 助けて下さいよ~!」ウニャアアァッ!!

神裂「ブリっ子止めたら助けましょう……あと、五和浦上。呑み過ぎは駄目ですからね」

浦上「分かってますヨ。程々にネ!」            ※お酒は二十歳になってから! 未成年飲酒は犯罪です!

固法「あ……結標さん来れるって。月詠先生が叩きだしてくれたみたい」フフッ

神裂「流石月詠さんですね。上手く彼女を説得してくれたのでしょう」クスクスッ

固法「でもほぼ下戸だから程々にしてあげて、だそうよ。OK?」チラッ・・・

麦野「分ーってるわよ! 結標んにゃろーをグデングデンにすりゃ良いんでしょ?」ヘヘヘ・・・

固法「……心配だわ」ハァ・・・

神裂「まぁ節度を守って楽しくやりましょう。(きっとアチラも楽しくやれてるでしょうしね……香焼、頑張って下さい)」フフッ


346>>1 [saga]:2011/09/06(火) 07:19:28.23 ID:ooU393vg0
うい。お疲れさまでした。次回は絹旗お泊り回! 
しかしまぁ、やっちまった……こんな流れになるとは思ってなかったのになぁ(笑) 


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