- 532 :>>1 [saga]:2011/09/14(水) 17:35:11.97 ID:fA4FX24l0
- こんばんわ。アンケはサーシャに決定です。>>529さん、まとめありがとね!
因みに構想練ってたらまたまた長めの話になりそうなのでご了承を。
あとオリキャラ・半オリキャラが数名でます。そこんとこ多めに見て下さい。
では投下! - 533 :第⑥話(17話)―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 18:15:20.47 ID:fA4FX24l0
- ―――とある1日目、PM03:00、ロシア・モスクワ、プーシキン造形美術博物館、館内・・・・・
救世主ハリストス大聖堂の北、ヴォルホンカ通りをはさんだ場所にあり、ヨーロッパ最大の美術館……プーシキン記念美術館。
サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館に次いで世界2位の収蔵品数約10万点を誇る。
その館内に収蔵されている『とある絵画』の前で一人のスーツ姿の男性が、サングラスを外しそれを観賞していた。
見目中年に思えるその男性。優しそうな、しかし威厳のある風貌。
彼の周りに沢山の人が居れば絶対にその威圧感(オーラ)に気付くだろう。だが生憎、人の数は少ない。
精々絵と若造りが好きな中年サラリーマンくらいにしか思われていないのだ。その証拠に外国人観光客は彼に挨拶すらしない。
観賞を始めて数分後……彼に近づく足跡が二つ。男は振り向かず、ゆっくりとサングラスを掛けた。
ワシリーサ「あら、ごめんなさい。待たせてしまったようね」カツカツ・・・
??????「いや、そんなに待ってはないよ。私も今来たところだ」チラッ・・・
サーシャ「…………、」ペコッ・・・
??????「ん? この子は?」ジー・・・
彼女が連れと一緒に現れるのは珍しい。
ワシリーサ「んー……私の娘よーん♪」フフッ
サーシャ「ふざけんな糞ババア」ギロッ・・・
??????「ハハハハ。面白い冗談だ。ワシリーサ、ちゃんと紹介してくれよ」クスクスッ
ワシリーサ「んもー。ツレないわねぇ……まぁ私の部下でボディガード……いえ、同じ教会のシスターよ」チラッ・・・
サーシャ「こ、こんにちは……サーシャ・クロイツェフです」ペコッ・・・
緊張した面持ちで男に挨拶する少女。男性と女性は顔を合わせ苦笑した。
ワシリーサ「サーシャちゃん。そんなに緊張する事ないわよ。彼もまた私達の洗礼を受けた教徒、所謂『同志』なのだから」フフッ
??????「ふむ。クロイツェフ……御両親は君が生まれた瞬間『色々』間違えたのかい? それとも産科医の『診断ミス』かな?」クスッ
ワシリーサ「んもー。ヴァロージャったらー。セクハラよーん」ペシッ!
ヴァロージャ「ハハハハ。ジョークだよ。気を悪くしないでくれ、サーシャ」ナデナデ・・・
サーシャ「い、いえ。気にしません。首し……ヴァロージャさん」アタフタ・・・
彼女は此処でのタブーを思い出し、急いで口を紡いだ。
だがヴァロージャと呼ばれた男はそのタブーをさほど気にせず、気さくに微笑み、少女の頭話優しく撫でた。
- 534 :第⑥話(17話)―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 19:07:31.11 ID:fA4FX24l0
- サーシャは一介の修道女であり、ロシア国民だ。
確かに『殲滅白書(Annihilatus)』というロシア成教内部のエリート部隊に所属しているが、それを除けば普通の少女である。
故に……彼を目の前にするという事は、どれほど恐れ多い事か自負している。
ワシリーサ「ところで、何を見ていたの?」チラッ・・・
ヴァロージャ「女王イザボー……退廃の象徴だよ」チラッ・・・
ワシリーサ「ふーん……じゃあ貴方が嫌いそうな絵じゃない」ジー・・・
ヴァロージャ「だからこそ己に喝が入る。こうはしてはいけない、とね」ジー・・・
女王イザボー。確か15世紀はじめのブルゴーニュ公国・ヴァロワ朝フランス王国時代の人物だ。
フランス側のシャルル6世の妻であり、英国のヘンリー5世の妻である「キャサリン・ザ・フェア(麗人キャサリン)」の母。
悲劇の薄幸美人で有名なキャサリン(カトリーヌ)の方が多分有名ではあるが、
知識人からすると此方のイザボーの方が興味深い人物だと云う者も屡(しばしば)。
ヴァロージャ「昨今の我が国の退廃は酷いモノだ。何でもかんでも合衆国(アンクル・サム)の真似事をしようとする」ハァ・・・
ワシリーサ「そうかしら。『東』だろうと『西』だろうと、荒むのは結局個人のエゴよん」ジー・・・
ヴァロージャ「だが……止めよう。子供の前でする話じゃないな。すまない、サーシャ」チラッ・・・
サーシャ「い、いえ。お構いなく」フルフル・・・
ある程度の政治経済知識は身に付けているが、しかし、まだまだ若輩者の身。
彼や彼女ほど知識も無ければ経験、思慮もない。
ヴァロージャ「ん……少し歩こうか。ベンチで一服しながら話の続きでもするとしよう」チラッ・・・
ワシリーサ「ええ。そうね。サーシャちゃん、行きましょう」フフッ
サーシャ「はい」ペコッ・・・
言われるがまま館内を出る。途中自販機でカップコーヒー(サーシャはココア)を購入し、木陰になっているベンチへ向かった。
因みにベンチは詰めれば3人座れる程度の一般的なもの。
まさか自分が同じ席に座す訳にはいかないと、サーシャは立って待つ事にした。
ヴァロージャ「ん? ハハハ。サーシャ、いいから座りなさい」クスッ
サーシャ「し、しかし」アタフタ・・・
ヴァロージャ「良いから。レディファーストだよ。こればかりは古今東西万国共通だからね……あ、東洋は別か」ハハハ
サーシャ「…………、」タラー・・・
ワシリーサ「座りなさいな。彼は60にもなるくせに元気な男の子のままだから」フフッ
ヴァロージャ「わ、ワシリーサ」ポリポリ・・・
ワシリーサ「ふふふ。リューダから『色々』聞いてるもの……たーとーえーばー」ニヤリ・・・
ヴァロージャ「ああ、もぅ私の負けだ。勘弁してくれ……しかし妻の名前を出すのは些か反則だぞ」ジトー・・・
ワシリーサ「ふふふ。私からしてみれば『冷酷な紳士』ではなく、ただの坊やよ♪」ニヤリ・・・
この御方相手に、お前マジ何者だよ……サーシャは内心毒づくと共に、正体不明な己の上司に恐怖した。
- 535 :第⑥話(17話)―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 19:46:49.73 ID:fA4FX24l0
- それから暫く雑談をした後、ワシリーサが『じゃあ、そろそろ本題に』と真面目な口調で彼を見た。
サーシャは息を飲み、一度その場を離れようとした。
ワシリーサ「あ、良いのよ。サーシャちゃんも聞きなさい」ポンッ
サーシャ「し、しかし」タラー・・・
ワシリーサ「ヴァロージャ……良いわよね?」チラッ・・・
ヴァロージャ「え、あ……まさか、彼女が?」ジー・・・
ワシリーサ「御名答~」フフッ
目を見広き、唖然とする男性。
ヴァロージャ「だが、ふむ」ジー・・・
ワシリーサ「こらこら。いくらサーシャちゃんが可愛いからってそんなにジロジロ見ないの。それともこの修道服が気になる?」メッ
サーシャ「てめっ……し、失礼」コホンッ・・・
ヴァロージャ「君の趣味くらい把握済みだよ……って、そうではなくてだなぁ」ムゥ・・・
ワシリーサ「あら……『子供兵士』って言いたい訳かしら?」ジー・・・
ヴァロージャ「……ふむ」チラッ・・・
言われ慣れている。もうそれに対して如何こう反論する気はない。
だが、見縊らないで欲しい。仮にもエージェントであると自負している。
ワシリーサ「安心なさい。彼女は私が手塩にかけて育てた修道女だもの。将来は私を越えて我が国最強の『魔女』になるわ」フフフ・・・
ヴァロージャ「……サーシャ」チラッ・・・
サーシャ「はい」
ヴァロージャ「君は……素人ではないのだな?」ジー・・・
サーシャ「第1の解答ですが、その通りです。自分は既に何度も死地を経験しています」コクッ・・・
ヴァロージャ「そうか……私が如何こう言えた義理ではないが、末恐ろしい世の中だな」ハァ・・・
そういう世の中にした原因の何割かは貴方よ、とワシリーサが黒い笑みを浮かべ皮肉った。彼は苦笑するのみ。
一寸後、彼はカップの中身を全て飲み干し、私達に語り出した。
ヴァロージャ「ドニエストル(共和国)、知っているね?」
サーシャ「第2の解答ですが、知っております」コクッ・・・
子供に語りかける優しい口調で、サーシャに告げる。
ウクライナとルーマニアの間国……モルドバ共和国。その東部ドニエストル川東岸のウクライナ国境に接する地域が沿ドニエストルだ。
現在、国際的には国家として承認されていないが、我が国(ロシア)はそれを認めている。
ワシリーサ「故に、紛争が絶えない地域よ」
紛争。何かと問題の多いロシアで暗躍活動するサーシャにとって、もはや聞き慣れた言葉だ。
- 536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/14(水) 19:50:21.15 ID:iXgfhFrDO
- 今日は早いなー、とか思ったらなんか難しい事書いてる。
しかもこのヴァロージャってプーt‥‥おや? 誰か来たようだ。 - 537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/14(水) 21:20:49.98 ID:WMxI4KL/0
- サーシャついに来た━━━(゚∀゚)━━━!!
- 538 :第⑥話(17話)―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 21:36:13.97 ID:fA4FX24l0
- 男の話は進む。
ヴァロージャ「まぁ今更紛争の経緯などは話さない。長くなるし、子供に聞かせられない話もあるからな」
サーシャ「はぁ」ポリポリ・・・
ヴァロージャ「とりあえず、現状の問題……ワシリーサ。君を頼る理由を言おう」
ワシリーサ「はいはい。おばちゃんに話してみなさい」フフフ・・・
茶目っ気を見せるワシリーサとは対称に、至って真面目な表情を崩さないヴァロージャ。
ヴァロージャ「まず、我々(ロシア)はドニエストル側だ。そして敵……というのもCIS(独立国家共同体)内なので語弊はあるが」
ワシリーサ「要はモルドバ政府という事ね」
ヴァロージャ「ああ……しかし、大きく見ればウチ(ロシア)とEU(欧州連合)・合衆国が睨み合ってる形となる」
WWⅡ(第2次世界大戦)の名残か。未だに東西で冷戦紛いの事をしている。
多分、自分が生きている間でも解消する事の無い問題なのだろう……サーシャは内心苦笑した。
ワシリーサ「それで?」
ヴァロージャ「ふむ。これは睨み合いでなくてはならない問題なのだ……何故だか分かるかい?」チラッ・・・
サーシャ「……第3の解答ですが、ルーマニアでしょう。失礼ながらそのくらいは幼稚園児でも分かります」
ヴァロージャ「ハハハ。これは手厳しい。うん、西側に身を売った狗……おっと、君の前でそんな言い方はいけないな。兎角、ルーマニアだ」
ソ連・WTO(ワルシャワ条約機構)の表上の崩壊後、NATO(北大西洋条約機構)に乗り換えたルーマニア。
主に暗躍・工作活動で我が国と対立している。
ワシリーサ「ふーん。ルーマニアねぇ……大体読めたわ」フフフ・・・
ヴァロージャ「流石話が早いな。だがもう少し続けよう。まだ彼女はピンと来ていない様だ」ポンッ・・・
サーシャ「え、あ、すいません」ショボーン・・・
ヴァロージャ「いいや、構わない。この程度で分かれと言う方が無理だ……ワシリーサが敏感なだけだよ」フフッ
ワシリーサ「あらエッチぃ。奥さんと娘さんに言いつけるわよー」ニヤリ・・・
ヴァロージャ「続けよう。つまりは、今回の厄介事は我が国と彼の国の問題となっている」ジー・・・
ワシリーサ「あらら。無視するのね。おばちゃん悲しいわー」ムムム・・・
ちょっと黙ってろ。
サーシャ「第1の確認です。とりあえずモルドバ・ドニエストル内紛の代理工作としてロシア・ルーマニアが対立している」
ヴァロージャ「肯定だ。代理工作、というよりも牽制し合いだがな……その辺は君が知る必要はない」ポリポリ・・・
子供扱いか……だが『彼』にそうして貰える内は華だ。甘んじよう。
- 539 :第⑥話(17話)―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 22:02:39.95 ID:fA4FX24l0
- ふと、疑問が浮かんだ。今の何処に本題があったのだろう。
ヴァロージャ「ふむ……歳を取ると、どうも話が長くなっていけないな。すまない、サーシャ」ペコッ・・・
サーシャ「い、いえ。続けて下さい」アタフタ・・・
ヴァロージャ「うん。実は……FSV(対外情報庁)の人間がモルドバで殺害された。今のところ8人だな」
殺害という言葉に、サーシャは身を引き締めた。
ヴァロージャ「これはルーマニアとの情報戦の最中に起こった事なのだが……幾つか問題が生じている」
サーシャ「第1の推測ですが、死者が出た事でしょうか」
ヴァロージャ「それは勿論なのだが、彼らも国の為に働く『同志』だ。覚悟はあっただろう」
同志、か。重い言葉だ。
ヴァロージャ「だが問題はそこではないのだ。それは……ワシリーサ」チラッ・・・
ワシリーサ「ふふっ。そうね、貴方が口にするのは拙い事かもね」クスクスッ
サーシャ「はい?」ポカーン・・・
ワシリーサ「じゃあ此処からは私が代わりに話しましょう」コクッ
男は『頼む』と一言告げ、女に委ねた。
ワシリーサ「問題は『FSV』がモルドバで殺された事。多分、『FSB(連邦保安庁)』の人間は含まれていないんでしょう?」チラッ
ヴァロージャ「仰る通り。皆、FSVの人間なのだ」
ワシリーサ「うん。まずこれが第1の問題ね……でもまぁ私達には関係無いテーマ」
解説すると、CIS諸国内でFSVが活動する事は認められていない。故にCIS内ではFSBが動かねばならないのだ。
今回の殺人事件(?)はモルドバで起きた事……つまりCIS内で起きた問題となる。
ワシリーサ「まったく、厄介な事を……だから前々からKGBに戻して一括りにしろって言ってるじゃなーい」ムンッ!
ヴァロージャ「ワシリーサ。無茶言わんでくれ……我が国だって一枚岩ではないのだし、国連が五月蠅いんだ」ハァ・・・
ワシリーサ「今アメリカなんて大した力持ってないんだから大丈夫よ。ちゃっちゃと変えちゃえ☆」ニパー!
ヴァロージャ「ま、前向きに検討するが……勘弁してくれ」タラー・・・
サーシャは本格的に我が上司の素性が気になった。
- 540 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 22:05:42.76 ID:fA4FX24l0
- ごめん! ・訂正: FSV ⇒ SVR
車じゃねぇよ……これは酷い - 541 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 22:29:44.10 ID:fA4FX24l0
- さておき、話を戻せ。
ワシリーサ「はいはーい。えっとじゃあ……これはニュースにはなってないんでしょ?」
ヴァロージャ「出来る訳が無いだろう。これが表立てば大事だ」
ワシリーサ「ですよねー」ハハハ
ヴァロージャ「だが、ルーマニアの連中はこれを大々的に発表しようとしている」
そうなると今回の牽制し合い、確実にルーマニアが優勢となるだろう。
ヴァロージャ「そうなられては困るのだ。今、プロパガンダで負ける訳にはいかない……これでは停戦している紛争が再び起きてしまう」
ワシリーサ「そうねぇ。これを期にモルドバがドニエストル奪いに掛るわ。川東岸はやっぱ欲しいものね」
ヴァロージャ「無論、モルドバを武力で黙らせる事も出来るが……それでは旧時代と何ら変わりない」
流石に冷戦時の事は多少なりとも反省している様だ。
まぁ政治屋やマスコミがいない、信頼している彼女の前だから溢せる本音だろうけど。
ワシリーサ「話を続けて良い? 多分、此処からが本題の核心。サーシャちゃんに必要な情報よ」
サーシャ「……どうぞ」コクッ・・・
ワシリーサ「今回の件、私を……殲滅白書(Annihilatus)を頼った理由」
ヴァロージャ「ああ。そうだな……此度の8人の死者は、まず間違いなくルーマニア側の刺客だろう。ワシリーサ、如何思う?」
ワシリーサ「……貴方の勘がそう言ってるなら、アタリでしょうね」コクッ・・・
成程。我が国を不利にさせる為の工作か。
ワシリーサ「ルーマニアで活動しているSVRの人間を、何らかの形で殺害。またはモルドバ内で直接殺害し、死体を置いた」
ヴァロージャ「しかも態々御丁寧に『猟奇的』な方法でな……アレは人間業じゃない」ハァ・・・
サーシャ「…………、」チラッ・・・
ワシリーサ「ふふっ。ビンゴ~♪」ニコニコッ
そういう事なら我々の出番だ。
ヴァロージャ「『君(ワシリーサ)』を否定する訳ではないのだが、どうも今回の件(オカルト)は専門外でね」ポリポリ・・・
ワシリーサ「いいえ、ヴァロージャ。正当な思考よ。『彼らと対峙するのも、また彼ら』……前に教えたでしょ」フフッ
ヴァロージャ「ああ、すまない……兎角、今回の件はSVRやFSB、更に私お抱えの探偵を雇ってもパァなのだ」
サーシャ「えっと……僭越ながら第1の質問ですが、何故ルーマニアの仕業だと?」
その質問にワシリーサはクスリと笑い、ヴァロージャは渋い顔をした後……『決まってる』と呟き―――
ヴァロージャ「『バケモノ』といえば、ルーマニアだろう」ハァ・・・
―――割と子供みたいな事を告げた。なんか可愛い。
- 542 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 22:50:08.39 ID:fA4FX24l0
- それから少しばかり、サーシャだけその場を離れ、ワシリーサとヴァロージャが内談を始めた。
暇なのでポケットに入れていた日本製のガムを噛み始めてから数分後、2人が戻ってくる。
ワシリーサ「お待たせー」カツカツ・・・
サーシャ「いえ……大して待ってません」コクッ・・・
ヴァロージャ「すまないね。君にも色々迷惑を掛ける」ペコッ・・・
サーシャ「い、いえ! 頭を上げて下さい!」アタフタ・・・
『この人』に頭を下げられたら、ロシア国民として立場が無い。
ワシリーサ「ふふっ。相変わらず固いわねぇ。私くらいフランクで良いのに」ハハハ
サーシャ「お前は自重しろ馬鹿!」ギロッ
ヴァロージャ「いやいや。ワシリーサは本音を話せる数少ない友達だからね……君も私の事を気軽にオジさんとでも呼んでくれ」ポンッ・・・
サーシャ「え、あ、い、いや、その」オドオド・・・
出来る訳無かろう。
ワシリーサ「しかしねぇ……一人くらい近衛職員付けて歩きなさいな、プライベートとはいえ、立場を考えなさい。ヴァロージャ」チラッ・・・
ヴァロージャ「美術館敷地外に待たせているよ。敷地内は君が居れば十分過ぎる程の戦力だ。本気を出せば一人でルーマニア潰せるだろ?」ハハハ
ワシリーサ「んもー。レディに向かって失礼よ」ペシッ!
ヴァロージャ「あ痛」ハハハ
サーシャ「てめぇ首し……ヴァロージャさんに手ぇ上げてんじゃねぇ!!」ゴツンッ!
ワシリーサ「痛たたたたたぁっ!! か、金槌で殴るとか……場所考えなさいっ!!」イターイ!
喧しい。貴様こそ相手考えろ。
ヴァロージャ「ハハハハ。中々ユニークなお嬢さんだ。今度我が家に遊びにおいで。歓迎しよう」ナデナデ・・・
サーシャ「も、勿体無いお言葉です」アタフタ・・・
ワシリーサ「あー! ヴァロージャったらサーシャちゃんの事FSBに勧誘しようとしてるでしょ! 駄目よ! この子は私のだから!」メッ!
『私の』とか言うな。殲滅白書(Annihilatus)所属だ。
ヴァロージャ「君の所有物じゃなかろう。強いて言うなら子供は国の宝だ……それに、こんな可憐な少女を引き抜きなんか出来ないさ」
ワシリーサ「わー、ロリコーン」ジトー・・・
ヴァロージャ「失敬な。相変わらず辛辣だなぁ、君は」ハァ・・・
安心して下さい。後でボコっときます。
- 543 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 23:05:50.44 ID:fA4FX24l0
- 一寸後、迎えの黒服が数名現れた。
ワシリーサ「次は使いを寄越しなさいな。貴方の怖い顔を見ると、サーシャちゃんが怖がっちゃうから」フフッ
ヴァロージャ「それでは君と話す機会が減るだろう。それに新しい友達もできたしな」フフッ
サーシャ「と、友達、ですか。恐縮です」ダラダラ・・・
ヴァロージャ「ふむ……やっぱり怖いかな」ポリポリ・・・
そういう問題じゃありません。
ワシリーサ「それはさておき、ホント、立場を考えてね。家族ぐるみの仲とはいえ『身分』は外せないのよ」チラッ・・・
ヴァロージャ「分かっているさ……とりあえず、詳細と正式な指令書は教会を通す。頼んだよ、ワシリーサ」コクッ
ワシリーサ「ええ……同志」コクッ
ヴァロージャ「……サーシャも、無理しない程度に」ポンッ・・・
サーシャ「了解です。同……ヴァロージャさん」ペコッ・・・
彼は微笑み、この場から去っていった。
サーシャ「……はぁ」グデェ・・・
ワシリーサ「緊張したの?」フフフ・・・
サーシャ「しない訳無いでしょう。ボケナス」ジトー・・・
『お出かけするから連いてきてー』と軽く言われ、来た結果がコレだよ。
サーシャ「まさか彼が居るとは……しかもワシリーサの友達って……色々質問したい事があるんですがー」ジトー・・・
ワシリーサ「うんうん。どーぞどーぞ」フフフ・・・
サーシャ「……多過ぎてできません。兎に角、第1の納得が『貴女は正体不明』って事で片付けます」ハァ・・・テクテク・・・
ワシリーサ「んふっ♪ せいか~い★ 謎多き少女なのよ~ん」ニコニコッ
何が少女だ。歳考えろBBA。
それからサーシャは、ワシリーサの思い出話や自慢話を聞かされながら、頭を抱えて教会に戻った。
- 544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/09/14(水) 23:19:22.27 ID:JWxSWIV+0
- うん?
つまり・・・どういうことだってばよ?? - 545 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 23:35:52.30 ID:fA4FX24l0
- ―――とある1日目、PM09:00、ロシア・モスクワ、救聖主ハリストス大聖堂のとある一角、殲滅白書(Annihilatus)部署内・・・・・
教会に戻ると、既に指令書が届いていた。
ワシリーサを筆頭に資料班やら残留思念解析班やらが大慌てで動き出す。
まぁ無理も無い。大統領直属の命令だ……というか何で首相ではないのだろう。
ワシリーサ「彼の名前で動けないのよん。それに、大統領を動かした方が便利なの」ジー・・・
如何してかは教えてくれない。多分『一枚岩ではない』由縁なのだろう。
サーシャ「第1の提案ですが、何か手伝いましょうか?」
ワシリーサ「んー……じゃあマッサージを。性的な意味で」
サーシャ「…………、」ガチャンッ!!
ワシリーサ「嘘。ごめん。お願いだから都市製の工具向けないで」ダラダラ・・・
プ○ズマカッターの餌食にしようと思ったのに、残念だ。
ワシリーサ「とりあえず、戦闘メインの子はおやすみしといて。もしかするとすぐに緊急招集かけるかもしれないから」チラッ・・・
サーシャ「……了解」クルッ・・・
ワシリーサ「あ。あとサーシャちゃん」チラッ・・・
サーシャ「はい?」ピタッ・・・
一枚の紙を見せつけてきた。
サーシャ「……これは?」
ワシリーサ「ヴァロージャ坊やから。『出来れば、あの子を戦場に送らないで欲しい』だって」フフフ・・・
サーシャ「へ?」ポカーン・・・
ワシリーサ「ふふっ。まったく……変な所で甘いのよねぇ」クスクスッ
どこぞの甘ちゃんみたいな事を……拍子抜けだ。
ワシリーサ「でも、だからこそ彼はあの位置に居るのよ」ジー・・・
サーシャ「……はぁ」ポリポリ・・・
ワシリーサ「でも私は残酷だから命令するわよん」クスクスッ
勿論だ。その為の私……殲滅白書(Annihilatus)の期待(ホープ)は伊達じゃないという所を見せてやる。
- 546 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/14(水) 23:57:16.59 ID:fA4FX24l0
- ―――とある2日目、AM09:00、ロシア・モスクワ、救聖主ハリストス大聖堂のとある一角、殲滅白書(Annihilatus)部署内・・・・・
翌朝、召集が掛る。結構大がかりな招集だ。
ワシリーサ「皆おはよー」ファアァ・・・
全員集合後、遅れて礼拝堂に現れる隊長。
ワシリーサ「さーて、集まって貰った理由だけど……ま、大きい話はいいっか。皆知ってるよね」ドサッ・・・
あくまで適当。だが真面目な話。
ワシリーサ「そんじゃあ先に、今回の『目的』を告げまーす。クーちゃん、説明よろしく」チラッ・・・
クーニャ「はい。ええっと……今回の目的は『モルドバ内における、ルーマニアからの< >の殲滅』です」ペラペラ・・・
スクーグズヌフラ「はい? え……< >?」ポカーン・・・
クーニャ「は、はい」コクッ
何だそれは。
ワシリーサ「申し訳ないのだけど、まさに『アンノーン』なの」ハハハ
サーシャ「第1の意見ですが、それでは手の打ちようが無いのでは?」ジトー・・・
ワシリーサ「それがそうでもないのよねぇ……クーちゃん。続けてー」チラッ・・・
クーニャ「はい。次に< >についてです」
そこが最重要だ。だが正体不明(アンノーン)なのでは?
クーニャ「確かに正体不明ではありますが、現場の写真と殺害方法の特徴から見て、幾つか確証を得ました」
現場の写真が移動式スクリーンに映し出され、確証という名の仮説が資料として配られる。
スクーグズヌフラ「あちゃー……エグいわ」ジー・・・
肉食獣が草食獣を喰らう様に、人間が喰われていた。
辺りは肉片が飛び散り、念入りに心臓や動脈部を食い荒らされた跡がある。一般人なら、もはや目も当てられないだろう。
- 547 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 00:25:47.33 ID:AWvx1/jf0
- 進行役の修道女は話を続けた。
クーニャ「予想では、ウクライナのウポル系かルーマニアのヴァルコラキ系の『妖』かと思われます」タラー・・・
ワシリーサ「要は吸血鬼の類ね。まぁでも……それを模した魔術師の仕業でしょうけど」フフフ・・・
ウポル……変身能力と馬を乗りこなす能力をもっている。普通、馬は吸血鬼を嫌うのでこれは珍しい種類とされる。
ヴァルコラキ……多くの伝承が残されており伝承によって姿も能力もまちまちである。悪霊や妖怪の総称と捉えた方がわかりやすい。
犬、竜、青い顔をした人間の姿だったり魂を肉体から遊離させて空を食い荒らし日蝕を起こすともいわれている。
洗礼をうけないもの、不浄な行いをしたもの、未婚の母から生まれたもの、
真夜中にろうそくなしで糸を紡いだ女性などヴァルコラキになる理由も実にいろいろある。
ふと、吸血種専門の戦闘修道女が手を上げた。
アスワン「質問を。< >の行動は夜?」フム・・・
クーニャ「不明です。ただデイウォーカーでは無いのではと……隊長が」チラッ・・・
ワシリーサ「うーん。というか死霊魔術(ネクロマンサー)な気もするのよねぇ」
アスワン「死体を操って……人を喰らわせていると?」
ワシリーサ「さぁ」フフフ・・・
あの糞ババア……何か知ってるくせに、隠してるな。
クーニャ「え、えっと……実はローマも動いているそうです」ポリポリ・・・
スクーグズヌフラ「はぁ!? 管轄違いじゃない。何で首突っ込んでるのよ!」ジトー・・・
クーニャ「わ、分かりませんよぅ」タラー・・・
ワシリーサ「まぁローマも……一枚岩じゃないもの。『誰かさん』が勝手に動いたんでしょ? 異端排除とかの目的で」フフーン
正教会然り、聖堂騎士団然り、番号課(ナンバーズ)然り……神の右席然り。
我が国の軍事政治と同じで面倒臭い連中だ。
クーニャ「ええっと……それで……その」アタフタ・・・チラッ・・・
スクーグズヌフラ「何よ。早く言いなさい」ジー・・・
クーニャ「は、はい……隊長ー……自分で言って下さいよぅ」タラー・・・
ワシリーサ「あーはいはい。弱虫クーちゃん……じゃあ発表しまーす」コホンッ
いきなり立ち上がり、冷淡な声で告げた。
ワシリーサ「ローマは今回の件を『吸血種』の仕業と断定した……って御爺ちゃんが言ってたわ」ニコニコッ
御爺ちゃん……マタイ=リースの事だろう。
それに気付いた面々は『また勝手な事を!』とか『メル友感覚で重要機密聞き出したんだろ!』とかワシリーサを罵倒する。
重鎮面々はいつもの事だと、内心苦笑するだけに留めた。
- 548 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 00:50:49.39 ID:AWvx1/jf0
- 一同の野次罵倒が収まり、話は続いた。
クーニャ「続けます……ローマは吸血種と決めつけた様ですが、我々はまだ断定出来ません」
アスワン「そうね。専門家が行ってみない事にはどうも胡散臭い」
スクーグズヌフラ「まぁ魔術師の仕業って線が辺りでしょうけどねぇ」
ワシリーサ「ただねぇ……この世には死徒化しようとする魔術師もいるんだもの。括りはつけられないわ」
実際、魔術師は『吸血鬼』という単語を極度に嫌う傾向がある。異端故ではなく、その魔力量故にだ。
もしその『御伽噺の化け物』がこの世に実在して、魔術師を兼任でもしたら……最強最悪の悪魔になりかねない。
ワシリーサ「ただアチラさんが『吸血種』としたのは、あくまで大きな括りとしてよ」
アスワン「でしょうね。『吸血鬼』だなんて定めでもしたら、十字教的に大問題です」
ワシリーサ「そそ。『血を吸う類』であって、魔術とは関係ナッシング。だからアチラさん、実際は深くまで動けないでいるのよねぇ」
動いてしまえば『吸血鬼』として認めた様なモノ、という訳か。
あくまで血と肉を喰らう『何か』として異端排除に動くとなれば話は別だが……所詮は詭弁だ。
ワシリーサ「でもぉ……私達は動くわよ」チラッ・・・
一同『…………、』ゴクリ・・・
ワシリーサ「国と、そして怯える教徒の為に」ジー・・・
我々、殲滅白書(Annihilatus)の目的は心霊現象の解析と解決だ。よって他の十字教にない特長は『オカルトの検閲と削除』である。
分かり易くいえば、『在らざるモノ』である<霊>や<化ヶ物>、<妖>といった分野を専門とする所謂ゴーストバスターズ。
『生前を語るのは悲しみにつけいる偽物か天国にも地獄にも行けない罪人である』という判断から、
『生前を語る存在はすべて殲滅対象』という方針の下に活動する。
そして何より……ロシアとその同盟国国民を、ロシア成教徒を、<オカルト>の恐怖から守る事が目的だ。
ワシリーサ「吸血鬼だかエイリアンだか地底人だか知らないけど……我々の敵となった事を精々後悔させてあげましょ」フフフ・・・
一同『了解』コクッ・・・
ワシリーサの不気味な喝で気を引き締める修道女一同。何だかんだ言って、ワシリーサは隊長としてのカリスマを備えている。
沢山の意味で『色者揃い』のこの部署を纏め上げられるのは、結局彼女しかいないのだ。
- 549 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 01:23:43.40 ID:AWvx1/jf0
- 一寸後、作戦会議が終了し今回の割り当て作業が開始される。
アスワンを中心とした『対吸血種想定部隊』と、死霊魔術専門のコシチェスカ率いる『対< >部隊』が今回の主体部隊だ。
今晩から動き出すらしい。一同、着々と準備を始める中……サーシャは動けないでいた。
自分の、名前が無い。
まさかワシリーサが彼の通知を読み、再度考えを改めたというのか。
クーニャ「シスター・サーシャ……此方に」ボソッ・・・
サーシャ「え、あ、はい」コクッ・・・
クーニャに連れられ、別の個室に。そこにはワシリーサが待っていた。
色々文句を言ってやろうと思ったが、それより先に彼女が口を開く。
ワシリーサ「言いたい事は分かるわ……でもね、貴女には特別任務を与えます」コクッ・・・
サーシャ「特別、任務」ジー・・・
ワシリーサ「ええ。単刀直入に言うわ……学園都市に入りなさい」
……え。
クーニャ「隊長、イキナリ過ぎますよぅ。ちゃんと説明しなきゃ」ンモー
ワシリーサ「そう? これくらいが丁度いいかなーって」ハハハ
いや、全然分かりません。
ワシリーサ「えっとねぇ……ぶっちゃけ、今回の件、あやふや過ぎて手の打ちようが無いの」
サーシャ「まぁ、確かに」
ワシリーサ「最悪長期戦になるわ。でもそれだけは避けたい……だけど急ぐとなると、無関係者まで巻き込む事となる」
手段を選ばず、という意味だろう。手当たり次第怪しいモノを『審問』していったらキリがない。
ワシリーサ「と、いう訳で……一種の賭けよ」
サーシャ「賭け、ですか。第1の質問ですが、何を用いて賭けるのでしょう?」
ワシリーサ「…………、」スッ・・・
一枚の写真と、数枚の資料を渡された。
写真には日本人らしき女性が写っている。まさに黒髪長髪のまさにヤマトナデシコといった感じの女性だ。
ワシリーサ「吸血殺し(ディープブラッド)」ボソッ・・・
サーシャ「っ!!」ギョッ・・・
ワシリーサ「姫神秋沙……能力者ではなく『原石』よ。今彼女は複雑な立ち位置に居る」
クーニャ「学園都市(アレイスター)の監視下であり、英国清教の所有下になっています」
噂には聞いていた。だが……彼女を如何『賭け』にするのだ。
- 550 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 01:49:34.57 ID:AWvx1/jf0
- クーニャが説明を受け持った。
クーニャ「言葉通り、『彼女自身』が必要です……最悪彼女の『血』だけでも、と付け加えます」
サーシャ「第2の質問ですが……まさか、彼女を殺せと?」ギロッ・・・
クーニャ「い、いえ! は、話は最後まで聞いて下さい」アタフタ・・・
ワシリーサ「要は交渉よ。『理由は言えませんが、御同行願えますか?』、もしくは『血を頂けませんか?』ってね」
成程……だが、それなら英国側や都市側に直接頼めば良いのではないだろうか。
クーニャ「それが……都市には断られました」ハァ・・・
サーシャ「え?」
クーニャ「『姫神秋沙は我々の研究対象であり、大事な検体である。外部には貸し出せない』との事」タラー・・・
ワシリーサ「まぁ一応、能力開発(カリキュラム)を受けているらしいもの。しかも『原石』となれば……ねぇ」ハハハ・・・
他国に使わせる訳にはいかない、か。では英国側は如何なのだ。
クーニャ「『貸し出しは許可する。だが一切の手伝いはしない』……勝手にやれって事です」ヤレヤレ・・・
サーシャ「か、勝手にって」タラー・・・
ワシリーサ「手前でアポ取るなり、菓子折り持って挨拶行くなりしろって事よ」ポリポリ・・・
成程。だから……私に行けと。でも何故私が?
血液を取りに行くだけなら、本人の許可無しで軍部の工作員辺りに研究所内へ潜入させれば良いのではなかろうか。
ワシリーサ「無理ね。学園都市を嘗めちゃダメよ。クレムリン以上に強固だもの。それに全盛期のヴァロージャなら兎も角……、」ウーン・・・
クーニャ「今のSVRじゃ頼りないです……それに、なるべく温厚に済ませたいですよね」ハハハ・・・
サーシャ「それには同意しましょう。それで第3の質問ですが、何故、私なのですか?」チラッ・・・
ワシリーサ「キーマンが『彼』だからよ……『幻想殺し(イマジンブレイカー)』」ジー・・・
上条、当麻か。
クーニャ「『幻想殺し』と『吸血殺し』は親しいと聞きます。情報によると同じ学校の同級生(クラスメイト)だとか」
サーシャ「第2の意見です……じゃあ直接彼に説得して貰える様頼んでは?」
クーニャ「それが……都市側がジャミングを掛けてきました。我が国からの通話類は一度統括理事会に通されます」
つまり、私達だと分かった瞬間『プツン』か。
ワシリーサ「ええ。謂わば、当たって砕けろ……じゃないか。言葉通り直接交渉が必要なのよね」
だから諸々の意味で適役である、私、というわけか。こりゃ大変だな。
- 551 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 03:20:19.40 ID:AWvx1/jf0
- ふと、資料を見て思い付く。
清教のマグヌスや土御門とも交流があるようだが、彼らには頼めないのだろうか。
クーニャ「英国経由で、という事ですか……多分無理ですね」ハァ・・・
サーシャ「何故?」
クーニャ「先程言った通り『助力はしない。個人間で行え』だそうです」
……じゃあ私が直接マグヌスに電話してやる。
ワシリーサ「こら、お馬鹿」ポコッ
サーシャ「っ!?」ドキッ・・・
ワシリーサ「あのねぇ……友達は大事よ。でもね、駄目。言わなくても分かるでしょ?」
私情は挟むなという事か。
よくよく考えれば、アチラは主教補佐の身。都合良く私の話に耳を傾けてくれないだろう。
ワシリーサ「それに……そういうのは『最後の手段』。友達ってある意味『切り札(ジョーカー)』なのよ」フフフ・・・
サーシャ「……肝に銘じます」コクッ・・・
ワシリーサ「よろしい。それじゃあ詳しい話に入りましょ」ナデナデ・・・
資料を捲りプランを見た。
まず今晩20時頃に新型のチャーター機でモスクワ(ドモジェドボ空港)を発つ~~(約7時間半)~~翌朝8時半頃にハバロフツクに着く。
それから3日目(その日)の16時にハバロフツクを発つ~~(約3時間)~~19時頃に学園都市上空付近に入る。
クーニャ「モスクワ~ハバロフツクは問題無い筈です。荷物の積み込みも悠々済みます」
サーシャ「しかし、第1の問題はハバロフツクからでしょう。どうやって都市に?」
クーニャ「その点は次の資料を。現地で貴女を待っている『同志』と、具体的な『突撃方法』についてです」
『同志』という事は軍部の力を借りるという事だ。詳しくは書いてないが殲滅白書(Annihilatus)クラスの特殊部隊らしい。
それから突撃……というか、突入方法。軍用ヘリの非公式型を使用するのか。
クーニャ「はい。Mi-17(Hip-H)の特注機2台と護衛のミル(ハインド&ハヴォック)を2台ずつ付けます」
サーシャ「今のを聞いた第1の感想ですが……電撃戦(ブリッツ)でもするのかと」タラー・・・
クーニャ「あはは……そうなるかも。えっと、もっと詳しい作戦はサーシャがハバロフツクに着く頃に命令行くと思うよ」ポリポリ・・・
サーシャ「やれやれ。了解」ハァ・・・
これは大分骨が折れそうだ……しかし、よく軍部を借りれたな。ワシリーサ恐るべし。
- 552 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 03:40:09.68 ID:AWvx1/jf0
- それから数点チェックをして、クーニャの話が終わる。
クーニャ「他のメンバーとは違って本当にスパイみたいな仕事だけど……健闘を祈るわ」
サーシャ「了解」コクッ・・・
ワシリーサ「あ。そうそう、忘れてた」ピンッ!
補足補足ー、とワシリーサが軽口を言う様に……重大な事を話す。
ワシリーサ「リミットは3日間(7日目)。それまでに交渉が出来なかった場合は貴女の任務は終了よ」
サーシャ・クーニャ「「はぁ!?」」ギョッ・・・
ワシリーサ「プロパガンダ操作、限界なの」
サーシャ「……むぅ」タラー・・・
ワシリーサ「余裕を持っても後10日前後……『吸血殺し』が此方に届いてから、利用するまで~結果が出る時間を考えれば妥当でしょ」
確かに反論は出来ない。
ワシリーサ「兎に角ルーマニア側が雇った魔術師または『吸血種』が釣れれば良い……そうすればルーマニア成教に圧力を掛けられる」
クーニャ「成程……あそこの成教は強いですからね。政治にも口出しできます」コクッ・・・
ワシリーサ「その代わりプライドも高いから交渉は難しいけどね……兎に角、貴女が便りよ。サーシャちゃん」ジー・・・
サーシャ「任せて下さい」コクッ・・・
久しぶりに上級の任務か。武者震いがしそうだ。
ワシリーサ「それでぇ余談だけど……成功した暁には休暇あげちゃいまーす」フフフ・・・
サーシャ「……は?」ポカーン・・・
ワシリーサ「『吸血殺し』、または彼女の『血』が確保できた場合、貴女が持ちかえってくる必要はないものね」
サーシャ「ええっと」ポリポリ・・・
クーニャ「つまり交渉成功後には何方かの『同志』が、貴女の代わりに『吸血殺し(血)』を持ち帰ってくるって事」
なるほど、なるほど。
ワシリーサ「その辺の詳しい作戦(後始末)についても、ハバロフツクに送るわ。とりあえず、1週間くらい楽しんできなさい」
サーシャ「そ、そんなに!?」ギョッ・・・
クーニャ「サーシャの任務は急ぐ割に内容濃いもの。終了後は暇が出来ちゃうわ。有意義にしちゃいなよ」フフッ
何ともまぁ、フランクですこと。
- 553 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 04:06:44.07 ID:AWvx1/jf0
- とりあえず特別任務の説明は終わりだ。後は追って伝えるとの事。
では、とクーニャが個室から先に出る。
ワシリーサ「……ごめんなさいね」ポンッ・・・
サーシャ「第1の進言ですが、謝らないで下さい。これは任務でしょう」
ワシリーサ「そうなんだけど……危険な真似させちゃって」
サーシャ「いつもの事です」
ワシリーサ「今回は状況が違うわよ。貴女一人なら如何とでも潜り抜けるでしょうけど……、」ウーン・・・
言葉を選んでいる様だ。
ワシリーサ「都市へ突入する際、魔術じゃなく『科学勝負』になっちゃうわ。対地戦ヘリ対対空砲火のね」
サーシャ「…………、」コクッ・・・
ワシリーサ「現地の『特殊部隊』を信頼してない訳じゃないけど、如何足掻いても科学の面では都市に勝てないから」ハァ・・・
サーシャ「第1の提案ですが……最悪、私が対地魔術をブっ放しましょう」キリッ!
ワシリーサ「アハハ。その手があったか……まぁ後で指示するわよーん」ポリポリ・・・
チャラけているが、表情は難しそうだった。
ワシリーサ「それと、電子類の使用禁止だけど……大丈夫? 都市に入ってからは携帯使えないわよ」
サーシャ「その点は大丈夫です。私なりに考えがあります……第3の意見ですが、私なりのコネを使おうかと」
ワシリーサ「あらら。いつの間にコネなんか……大人になったわね。お母さん、複雑よぅ」オロオロ・・・
誰が母親だボケ……因みに、現地に居るという『特殊部隊』については?
ワシリーサ「んー……隊長はちょぉっと難しい娘でね。良い子なんだけどチェーカー嫌いなの。まぁ私もチェーカー苦手なんだけどねぇ」ハハハ
サーシャ「そういう話を聞いているのではないのですが」
ワシリーサ「今回は大統領命令だったから動いたけど首相だったら多分……あ、腕の話? 実力は本物よん♪」
サーシャ「というと?」
ワシリーサ「戦争したくて堪らない……あ、何でもない。えっと、兎に角いつでもWW(世界大戦)を想定している部隊、かな」クスクスッ
戦闘狂(戦争病)軍人という訳か。
ワシリーサ「ええ。それに私達と同じ『陽の下に出られない』部隊だから……安心して頼りなさい」ポンッ・・・
サーシャ「……了解」コクッ・・・
まさに『同志』か。それから2,3留意点を聞き、任務の準備に移る。
ワシリーサは成教(東方成教会)のトップ陣と英国凄教と話をしてくると告げ、スィーっと消えて行った。
さぁて……一仕事、頑張りますか。
- 554 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/15(木) 04:19:16.85 ID:AWvx1/jf0
- ―――一方その頃、香焼は……
教師「―――……である。この条例はテスト出すよ」カキカキ・・・
香焼(眠いなぁ……あ、ステイルからメールだ……煙草をイギリスへ送れ? 自分で買いに来い阿呆!)Pi!
教師「―――……よし。それじゃあ……香焼。能力開発人道法の3条、言ってみろ。教科書見るなよ」ジトー・・・
香焼「え、あ、はい……『生徒及びその保護者の許可無く能力開発は行えない』だったと思います」
教師「……正解だが、机の下でカチカチやるのはよろしくないぞ。次やったら在らぬ方向に折り曲げるからな」ジトー・・・
クスクスクス・・・
香焼「……気を付けます」
普通に学生していた。 - 555 :>>1 [saga]:2011/09/15(木) 04:23:23.74 ID:AWvx1/jf0
- はい今回は此処まで。次回、都市に入るか入れないかくらいまでかな。
色々訳分からん事あると思いますが、質問してくれると助かります。
今後解説しながら進めて行けるので、はい。
しかしまぁ『あまくさっ!』の面々が出て来なかったな。まるっきりサーシャ回だw
とりあえず質問意見感想リクエスト罵倒など、コメントお願いします! それじゃおやすみ! ノシ” - 556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 08:40:00.48 ID:hhY6SsFEo
- これでナチの残党が出てきたら、アレな感じのやつになるな
- 557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/09/15(木) 09:14:38.36 ID:8NhpI/nAO
- チェーカー嫌いで第三次大戦に備えてるってこたぁ顔に火傷を負ったアラレちゃんか
- 566 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 18:44:49.01 ID:UaUTwu/f0
- ―――とある2日目、PM05:00、ロシア・モスクワ、救聖主ハリストス大聖堂女子寮、サーシャの個室・・・・・
空港に向かう数時間前、私はある人物へ連絡を取る為、英国・必要悪の教会(ネセサリウス)女子寮へ電話を入れた。
直接携帯でやりとりできれば良いのだろうが、彼女の電話番号を知らないので仕方の無い作業だった。
数コールの後、電話が繋がる。
オルソラ『はいはい。此方必要悪の教会女子寮でございますよ』ガチャッ
サーシャ「もしもし」Pi!
オルソラ『あら、サーシャ。此方に電話を掛けて来られるとは珍しいのでございますね。お元気でございますか』
サーシャ「ええ、まぁ。今日は少々頼みがあり」
オルソラ『はいはい、アニェーゼでございますね。少々御待ちを』
サーシャ「いえ、アニェーゼではなく」
オルソラ『あら。ではアンジェレネでございましょうか? それともレッサー……ああ、彼女なら貴女は直接携帯の方へ電話を――』
駄目だ、この人。会話が出来ない。
サーシャ「あ、あの……オルソラ=アクィナス。第1の意見ですが、とりあえず話を聞いてください」ハァ・・・
オルソラ『―――え、あ、ごめんなさいね。自分の事をベラベラ話したくなるのは年輩者のクセでございます』フフフ・・・
貴女の年齢については死んでも触れません。
サーシャ「はぁ……第1の質問ですが、今日、其方へオリアナ=トムソンは出張っていますか?」
オルソラ『オリアナ? はて、午前中は来ていた様でございますが今はもう此処には居ないのでございます』
サーシャ「そうですか……では第1の依頼として、彼女の連絡先を教えてもらいたいのですが」
オルソラ『はいはい。少々お待ちを』
一寸後、彼女の携帯の電話番号を入手。
サーシャ「ありがとうございます」
オルソラ『いえいえ。それより……何やら忙しそうでございますね』ボソボソ・・・
サーシャ「ええ、まぁ……第2の質問です。やはり其方にも例の噂が?」フム・・・
オルソラ『知っている者は極少数でございますけどね。最大主教様も人が悪いのでございますよ。手を貸して差し上げれば良いのに』
サーシャ「……いえ、交渉権の承諾を得ただけでも十分ですよ」
大人な返事をしておく。尤も、苦労する私個人としてはイチャモン塗れな心情だが。
- 567 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 19:10:37.95 ID:UaUTwu/f0
- それではと電話を切ろうとした時、待てと止められた。
オルソラ『サーシャ。今交代するのでございますよ』スッ・・・
サーシャ「へ?」
アニェーゼ『ういうい」』ヨッ!
カルテッ娘(我らが)リーダー、もとい、ローマ正教所属英国清教預かりの身―――アニェーゼ=サンクティスの声。
アニェーゼ『何やら忙しそうじゃねぇですか』フンフンッ
サーシャ「ええ……第1の心情ですが、ぶっちゃけ嫌になりますよ。なーにが『吸血種』ですかってね」ハハハ
アニェーゼ『吸血鬼ぃ? んなオカルト通り越してSFな存在を、よくもまぁ其方のまとめ役が認証しやがりましたね』
サーシャ「いえ。第1の訂正ですが、吸血『種』です。それに成教的には『そんなもの』認めていませんから。認めつつあるのはローマです」
アニェーゼ『んな細けぇ事は、どぉでもいいですよ……でもまぁ学園都市ねぇ』フーン・・・
そこがネックなのだ。謂わば絵本の中に飛び込む覚悟である。
アニェーゼ『早めに言ってくれりゃぁ手伝えたものの』フム・・・
サーシャ「第1の確認ですが、貴女は今英国側預かりの身でしょう。私に加担出来ない筈です」
アニェーゼ『ばーか。中途半端な位置に居る不良部隊の頭だからこそ、勝手な真似できるんですよ』ハハハ!
サーシャ「やれやれ……貴女らしいといえば貴女らしい解答です」フフッ・・・
アニェーゼ『それにまぁ、ダチ公のピンチとなりゃ話は別です。「柵」なんぞ糞喰らえってね』クスッ
彼女は何というか……情に厚い。そういう部分が人を率いる素質・カリスマ性に繋がるのだろう。
アニェーゼ『ふむふむ……とりあえず都市(アッチ)着いたら無理矢理にでも「ワンコ」頼りなさい』
サーシャ「ワンコ……彼を? それは無理なのでは。第2の確認ですが、彼の凄教は確実に英国傘下ですし」
アニェーゼ『うっせ。頼れ。これ命令。アイツが断ったらアイツ死刑』
サーシャ「……あはは」タラー・・・
横暴な。
アニェーゼ『あとは出来得るサポートはしてやります。アンジェレネと一緒に不良神父(ステイル)揺すりますから』ハハハ
サーシャ「ほ、程々に」タラー・・・
アニェーゼ『ええ……サーシャも無理すんじゃねぇですよ。あと、あの服で行くのは止めとくべきですね』クスッ
サーシャ「第1の同意です……でも、わの糞上司が……、」プルプル・・・
『アレ、制服だから強制よ』とか『動きやすいでしょ?』とか……マジいつか殺す。
それから少々雑談をして、電話を切った。
- 568 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 19:41:21.17 ID:UaUTwu/f0
- 次は先程教えて貰った電話番号でオルソラに掛ける。
すぐ出れば良いのだが……彼女も忙しい身だ。あまり期待できないかもしれない。
サーシャ「しかし、彼女が頼りなんですよね」ムゥ・・・
逃走と嘗役のスペシャリスト。一度切ろうかと思った時……電話が繋がった。
????『はい、シエラ探偵事務所です。私は担当のオーリアでございます。御用件をどうぞ』ガチャッ
サーシャ「え? あ、す、すいません。間違いました」Pi!
あれ? おかしい……掛け間違えたか?
もう一度電話番号を確認して、コールする。
????『はい、此方シエラ探偵事務所。私は担当のオーリアです』ガチャッ
サーシャ「え……あれ?」タラー・・・
????『……もしもし?』
サーシャ「えっと……間違っていたらすいません。第1の確認ですが、これはオリアナ=トムソンの携帯番号ではないのですか?」
????『あら? サーシャ?』ポカーン・・・
サーシャ「へ? あ、はい。肯定です」ポカーン・・・
よくよく聞くと……オリアナの声だ。
オリアナ『あらら。まさか貴女が掛けてくるとは、お姉さんビックリだわ』フフフッ
サーシャ「え、いや、第1の心情ですがビックリしましたよ」ホッ・・・
オリアナ『そりゃまぁ隠れ蓑と偽名よん。そう易々と私とはアポイント取れない様にしているもの……てか、誰から聞いたの?』
サーシャ「第1の解答ですが、オルソラ=アクィナスです。所用が合って連絡させて頂きました」
オリアナ『あのノンビリ女め……勝手に……まぁロシア政府じゃなくて良かったわ』
厄介な事に、我が国(SVR)の力を使っても貴女の連絡先は入手できなかったのですよ。
オリアナ『それで……まさか私用じゃないわよね。それならそれで嬉しいけど♪ 御姉様、大人の遊びを教えて欲しいの的な?』フフッ
サーシャ「……失念でした。そういえば貴女はワシリーサと『同類』でしたね」ハァ・・・
オリアナ『ふふふ。冗談よ。まぁビジネスでしょ?』クスッ
サーシャ「肯定です」コクッ・・・
彼女はフリーの魔術師である。故に英国・ロシア・学園都市といった『柵(しがらみ)』など無い。
今回は情報提供者として協力して貰うべく、連絡したのだ。
- 569 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 20:35:01.18 ID:UaUTwu/f0
- 彼女には今回の件を話しても大丈夫だろうと、詳細を告げた。
オリアナ『―――……ふーん。要は元KGBの連中のメンツがヤバいって事かしらね』
サーシャ「第4の解答ですが、分かりかねます。私に政治云々の情報開示はされてませんよ」
オリアナ『あはは。そうね……それで? 私に何を聞きたいの?』
サーシャ「はい、二点ほど」
まずは『潜入』について。そして嘗帳(都市内マップ)だ。
オリアナ『一つ目から話すわ。潜入は容易いわよ。人払いとか気配遮断の術式展開しとけば良いんだもの』
サーシャ「第1の確認ですが、それは逃走においても同様ですか?」
オリアナ『うーん……私は運悪く「坊や」達に見つかっちゃったんだけど、今回は敵じゃないんでしょ?』
サーシャ「はい。ただ味方でもありませんが」
オリアナ『じゃあ安心なさいな。ただ忠告しといてあげるけど、携帯とか記録の残る電子機器は使うの控えなさい。すぐ傍受されるわ』
サーシャ「ふむふむ」カキカキ・・・
オリアナ『あと中に入ったら極力魔術も控えなさい。都市内だとアレイスターや何人かの潜伏している魔術師達に勘付かれる』
中々ハードなミッションだな。まぁ潜入(スニーキング)作戦とはそういうものだろうけど。
オリアナ『じゃあ次に二つ目だけど……嘗帳要る? SVRからマップ貰ってるんでしょ?』
サーシャ「いえ。第2の願望として、その様な当たり前のマップではなく……移動経路としてです。貴女は見てきてるのでしょう?」
オリアナ『そういう事……あんまり教えたくないのだけど』ウーン・・・
サーシャ「安心して下さい。第1の提示として、礼金はたんまり弾みますから」
オリアナ『あはは。子供の口からそんな事言われちゃ、大人のお姉さんとしては形無しね……良いわ、教える。一回でメモりなさいよ』
オリアナの説明が始まる。いくつかのルートがあるようだ。
オリアナ『目的地は学園都市第7学区の南側でしょ? 進入ルートってか突撃口の予定は?』
サーシャ「今のところはありません」
オリアナ『だったら最南の第10学区から侵入すべきね……でもハバロフツクからかぁ。やっぱ北口かしら?』
サーシャ「第5の解答です。作戦本部から指揮は私と突撃部隊の隊長殿に任されています。2人で決める予定です」
オリアナ『うん。じゃあ可能であれば南口から。もし北口からなら第19学区がオススメよ』
サーシャ「ふむふむ……では第4の質問です。避けた方が良い学区は?」
オリアナ『第2,3,7,8,11,13,18,23学区よ……でも第7学区には行かなきゃダメなのよね』
サーシャ「肯定です」
行かなければ話が始まらないのだ。仕方なかろう。
- 570 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 21:16:09.93 ID:UaUTwu/f0
- 他数点、都市侵入での心構えを聞いた後に、礼金の支払い方法等を決め、電話を切ろうとした。
オリアナ『ちょっと待ちなさい』
サーシャ「何か?」
オリアナ『今回、英国は協力不可らしいけど……「坊や」は別なんでしょ?』
サーシャ「第4の確認ですが、上条当麻の事ですか? そうであれば肯定です」
オリアナ『いや、その坊やじゃないわよ……分かってるんでしょ?』フフフ・・・
この人も言うか。
サーシャ「……コーヤギーですか?」ハァ・・・
オリアナ『あと五和や浦上もね。天草の若い子達、学徒として潜入してるんでしょ? 無碍にはしない筈よ』
サーシャ「如何でしょう……第2の予想ですが、多分私の監視役に回されるでしょうね」
オリアナ『ええ。あくまで監視ね。でも止めはしない筈よ……因みに貴女、野宿するつもりだったでしょ?』
サーシャ「はい。何か?」
オリアナ『坊やの家、泊まっちゃいなさい♪』フフッ
盛大に噴いた。
サーシャ「で、出来る訳ないでしょう!!」カアアァ///
オリアナ『じゃあ幻想殺しの坊やのとこ泊まる? 多分、禁書目録(インデックス)居て落ち着けないわよ』
サーシャ「……もとより、彼の所に泊まるつもりはありません」
オリアナ『じゃあ決まりね♪ ビジネスホテルは止めなさいよ。足跡(アシ)付くから。でも野宿もダメ。回復できないわよ』
サーシャ「し、しかしですね」タラー・・・
オリアナ『安心なさい。それくらいの説得、お姉さんが神裂にしとくから』フフッ
はぁ……もう何言っても無駄だ。無視しよう。
サーシャ「……とりあえず、情報提供感謝します。礼金は後ほど」ハァ・・・
オリアナ『いえいえ……あ』
サーシャ「まだ何か」ポリポリ・・・
オリアナ『……私用だけど、良いかしら。伝言よ』
サーシャ「伝言?」
オリアナ『ええ……――――……吸血殺しに伝えて。匿名でいいから』
サーシャ「はい……了解です。では」Pi!
電話を切る。それにしても……『謝罪』か。
軽い様に見えて、存外義理がたい人なのだな。レッサーも同じ部類だが……大人という事だろう。
さておき、資料と荷物を纏めてそろそろ空港へ向かおう。
- 571 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 21:58:57.70 ID:UaUTwu/f0
- ―――とある2日目、PM08:00、ロシア・モスクワ、ドモジェドボ空港・・・・・
モスクワを発つ時刻。
チャーター機前には私と、見送りのワシリーサとクーニャだけ。
クーニャ「気をつけて。都市に入って任務が終わるまでは連絡できなくなると思うけど、その後は何とか連絡出来る様努力してみます」
サーシャ「ええ。よろしくお願いします」
ワシリーサ「あと、この写真を」スッ・・・
姫神氏とは別の女性。眼鏡を掛けたロングウェーブの掛った黒髪女性。
ワシリーサ「もし、この女性を見かけたら逃げなさい。これは命令」ジー・・・
サーシャ「え? 第1の質問ですが、超能力者か何かでしょうか」
ワシリーサ「いいえ。私達『魔術師』の天敵よ。宛ら『人工天使』ってところかしら……コードは『ヒューズ=カザキリ』」
サーシャ「人工……天使?」
ワシリーサ「尤も、既にアレイスターの飼い犬では無い様だけど油断は禁物ね」
サーシャ「……気を付けます」
どうして私は天使云々に縁が濃いのだろう。まったく、神職の身とはいえ嫌になる。
サーシャ「それでは行ってきます」
ワシリーサ「はーい。御土産よろしくねー」ノシ
クーニャ「隊長……貴女という人は」ハァ・・・
ワシリーサ「無事帰ってくるって信じてるからよ。あ、幻想殺しにもよろしくー。何れ私が直接挨拶行くって言っといてねーん♪」
無視無視。
クーニャ「ええっと、とりあえずハバロフツクまでは携帯使えるから、音楽でも聞きながらリラックスして行ってらっしゃい……幸運を」
サーシャ「ありがとう」コクッ
十字を切り、飛行機に乗った。さぁ……長い3日間が始まる。
- 572 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 22:37:00.72 ID:UaUTwu/f0
- <ワシリーサside>
クーニャ「……行きましたね」
ワシリーサ「ええ……さーて、私は引き続き頭の固いルーマニア成教の阿呆共と交渉かぁ」
クーニャ「隊長、それより前線で指揮を取って頂いた方が」
ワシリーサ「街二つくらい潰していいならねー」クスッ
クーニャ「ハァ……まぁ前線組がドニエストルに入りさえすれば< >もそう活動できないでしょう。抑止にはなります」
ワシリーサ「うーん。どうだか。結局サーシャちゃん待たないと今回の事件は動きが出ないわね」
クーニャ「サーシャ任せ、ですか……何だかんだで一番大変な枠ですね。アレイスターが如何動くか」
ワシリーサ「あら。動けないわよ」チラッ
クーニャ「え?」キョトン・・・
ワシリーサ「私が何の為にサーシャちゃんを送ったと思ってるの?」
クーニャ「そ、それは吸血殺しと親交が深い幻想殺しの……え? 違うんですか?」タラー・・・
ワシリーサ「勿論それもあるわ。でもね……それこそ抑止よ」
クーニャ「と、言いますと?」
ワシリーサ「こんな言い方したくないけど、謂わば冷戦戦法ね。私は都市へ『核』を送りだしましたとさ」
クーニャ「……は?」
ワシリーサ「無論、穏便に事を運ばせたいの。だから『核』レベルの力を持つサーシャちゃんを都市内で潜入活動させる」
クーニャ「……暴れられたら一大事、という事ですか」タラー・・・
ワシリーサ「都市の半分は消え失せるわね」ハハハ
クーニャ「しかし……それこそ『ヒューズ』が出てきたら」
ワシリーサ「だから『冷戦』なの。ロシアの核vs学園都市の核。もしサーシャちゃんが殺されても被害は一人」クスクス・・・
クーニャ「しかしサーシャは抵抗して、ドチラにしてもアチラは多大な損害と……隊長。発想が悪魔です」ジトー・・・
ワシリーサ「ま、サーシャちゃんが死なないって信じてるから出来る作戦なんだけどねー。何事も穏便に済むものよ」フフフ・・・
クーニャ「しかし、それは突入出来てからの話でしょう。大丈夫なんでしょうか?」
ワシリーサ「まぁ突撃部隊は実質囮だもの。アチラに届く作戦書を読んで、サーシャちゃんがそこまで頭が回らなくとも、彼女は回るわ」
クーニャ「特別部隊、でしたっけ?」
ワシリーサ「ええ……FSBやデルタ、MI:6なんかよりも、ずぅっと頭が切れる娘よん♪」フフフ・・・
クーニャ「その方とお知り合いなのですか?」ジー・・・
ワシリーサ「んー……とあるシスターとの間持ちをしてあげたのよ。ドイツ生まれローマ正教のシスター。魔術の業界でも有名な名前だわ」
クーニャ「……やっぱり、隊長の素性が謎です」タラー・・・
ワシリーサ「ふふふ。私の秘密を詮索すると食べちゃうわよー! まぁさておき……私達は今出来る事をしておきましょ」テクテク・・・
クーニャ「了解です」コクッ・・・
- 573 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 23:30:23.37 ID:UaUTwu/f0
- ―――とある3日目、AM08:30、ロシア・ハバロフツク、ハバロフツク空港・・・・・
空の上で7時間半の移動。もはや飛行機という文明の利器に慣れ切ってしまった自分が恐ろしい。
物事が便利になるという点で科学の発展は良いモノだ。だが踏み台として必ず戦争というものが付き纏う、と何処かの偉人が言ってた気がする。
さておき、空港内に着いた。今回は最低限の荷物しか持ってきていないので、入港審査は手間取らない。
ただ、馬鹿上司の趣味の所為で着せられている拘束着(ユニフォーム)を隠す為、必死に赤い外套の袖を掴みながらセキュリティを潜った。
まったく恥ずかしい……こんな場所で目立ったら物笑いの種にしかならない。
サーシャ「確か、9時に東口の大ホール付近でしたね」キョロキョロ・・・
迎えの人間がそこに居ると伝えられていた。電話ボックス前のベンチで童話『蛙の王女』を読んでいるらしい。
合言葉やら何やら面倒だが、仕方あるまい。秘密度の高い任務だ。
数分後、目的の場所に到着。電話ボックスも発見。迎えの人間は……居た。30前後の男性だ。
無言で近づき、隣の席に座る。何故か不思議な目で見られた後、微笑まれたが、気にはしない。合言葉を告げよう。
サーシャ「おはようございます……ヴァロージャ小父さんも、麗しのワシリーサが好きなんですよ」チラッ・・・
男性「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」キョトン・・・
あれ? 違ったか? もう一度だけ確認しよう。
サーシャ「……ヴァロージャ小父さんも、麗しのワシリーサが好きなんですよ」ジー・・・
男性「な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ、かよ」タラー・・・
やはり違った様だ。もしかしたらトイレにでも行っていて遅れているのかもしれない。
少し場所を変えてみよう。
サーシャ「むぅ……あ、すいません。独り言ですので忘れて下さいね」ペコッ・・・スッ・・・
男性「……あ、ちょ!」アタフタ・・・
サーシャ「はい?」チラッ・・・
男性「ヴぁ、ヴァロージャさんとは懐かしい名前だよ……っ……元気かい?」コクッ・・・
何だ。当たってるじゃないか。
サーシャ「はい。美術館で見た時は元気そうでした」ジー・・・
男性「そ、そうかい……荷物を持つよ」スッ・・・
サーシャ「結構です……行きましょう」スッ・・・
男性「はぁ」ダラダラ・・・
目を丸くする男性。何がそんなに不思議なのか……まさか外套(マント)の中を見られたか!? だとすれば、当然の反応だ。恥ずかしい。
さておき、私達は会話も無く、外に待機してあった黒塗りの車に乗って、目的地まで移動する事とした。
- 574 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/16(金) 23:54:27.79 ID:UaUTwu/f0
- 一寸後、車内にて。
サーシャ「…………、」カチカチカチ・・・
男性・運転手「「…………、」」タラー・・・
何故か得体の知れない緊張が走っていた。
とりあえず私は携帯を弄ってれば時間を潰せるので如何でも良いのだが、前二人が異様に緊張している。
偶にミラー越しに此方を見ては、無言で双方アイコンタクト。何か言ったら如何なのだ。
男性「あ、あの……つかぬ事をお聞きしてもよろしいでしょうか」タラー・・・
サーシャ「はい。どうぞ」コクッ・・・
男性「既に車内に乗せているというのに、こんな事を聞くのも恐縮ではありますが……サーシャ=クロイツェフ特尉殿で間違いありませんか?」
そういえば『特尉』扱いだったな。忘れていた。
サーシャ「第1の解答ですが、肯定です」コクッ・・・
男性「…………、」タラー・・・
サーシャ「……何か?」ジー・・・
男性「い、いえ……その……、」ダラダラ・・・
サーシャ「第1の提案です。そんなに畏まらなくても良いですよ。特尉といっても、貴方達が思っている通り小娘でしょうから」フフッ
男性「い、いえ! すいません!」アタフタ・・・
成程……生粋の軍人さんという訳か。SVRやFSBの連中とも雰囲気が違う。
サーシャ「私からも質問、よろしいですか?」
男性「は、はい」タラー・・・
サーシャ「では第1の質問ですが、お名前と階級……軽く自己紹介を」
男性・運転手「「え」」キョトン・・・
サーシャ「名前を聞いただけですよ。そんなにオカシイ事でしょうか?」
男性「い、いえ。その……予想外でした」アハハ・・・
運転手「バスカフ……先に言ってくれよ」タラー・・・
男性「ちょ!? な、何かその、パニクってて……兵長。先頼みます。アンタの娘くらいの歳でしょ」タラー・・・
サーシャ「……ドチラからでも良いですよ」クスッ
自己紹介までに5分以上掛ってしまった。男性はバスカフ二等兵、31歳。運転手はイァーク兵長、36歳。
サーシャ「ふむふむ……では改めて……サーシャ=クロイツェフです。歳は13。性別は女ですので間違えぬよう」クスッ
男性・運転手「「は、ははは」」タラー・・・
現地の『同志』とのコミュニケーションは大事にしておけ、というワシリーサの言葉を思い出す。
良い印象を持ってもらえたら幸いだが……如何だろう。
- 575 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 00:16:43.30 ID:Ee66Y1gU0
- 空港から南東へ2時間程走り、軍事飛行場の様な場所に着いた。多分非公式なモノだろう。
因みに、結局車内では大したコミュニケーションを取れなかった……残念である。
もっとフランクに話すべきだったか。今度アニェーゼとレッサー辺りにコツを教わろう。勿論、下ネタ抜きで。
バスカフ「到着です……特尉殿。少々車でお待ちして頂いても宜しいでしょうか?」チラッ・・・
サーシャ「え?」
バスカフ「その『大尉殿』……我々の上司に報告を」アタフタ・・・
サーシャ「第3の提案ですが、私が直接挨拶に行きます。それが余所者としての筋でしょう」ジー・・・
バスカフ「そ、その心構えは立派なものですが……その……すいません。そうまず報告に来いと命令されているので」タラー・・・
ふむ。それなら仕方ない。
バスカフ「申し訳ありません。では……兵長。よろしく! (頑張れ!)」チラッ・・・
イァーク「おま……覚えてろ」ボソッ・・・
急いでプレハブの様な場所へ駆けていくバスカフ一等兵。ではこの内に質問しておこう。
サーシャ「兵長。第6の質問です……大尉殿、と言ってましたがどのような方ですか?」
イァーク「え!? あ、はい……そうですね。会えば分かりますが、女傑、とでも言うのでしょうか」
サーシャ「ふむ。女性とは聞いていましたが……特殊部隊のリーダーが男性を率いる女傑、と。驚愕と共に憧れますね」キラキラ・・・
イァーク「あ、あはは……(コッチの方が驚きだっつの!)」タラー・・・
ワシリーサの知り合いというくらいだから相当肝も座っているのだろう。会うのが楽しみだ。
数分後……プレハブからぞろぞろと兵隊が出てくる。私も挨拶の準備をする為、外套をキッチリ締め、スピーチを考えたりなんかしてみたり。
その中からバスカフ一等兵が此方に歩み出し、後部ドアを少し開け、話しかけてきた。
バスカフ「……特尉殿」チラッ・・・
サーシャ「出迎え、ですか……態々申し訳ありません」タラー・・・
バスカフ「あの、その……後先に謝っておきます」
サーシャ「はい?」
バスカフ「……何があっても、気を悪くされないで下さい。我々なりの歓迎だと思って」タラー・・・
サーシャ「はぁ」キョトン・・・
イァーク「……邪険にするつもりはないと思って下さい。多分、その……色々驚き故の事ですから」タラー・・・
何やら良く分からないが、サプライズでもしてくれるというのだろうか。
私はバスカフ一等兵が開けてくれたドアから、ヒョコリと、車を降りた。
- 576 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 00:39:47.68 ID:Ee66Y1gU0
- 刹那―――空気が固まった。
一同、まるで私を北方領土に居る日本人ドクターを見る様な眼で、私を見詰める。
兵隊A「嘘……だろ」タラー・・・
兵隊B「ちょ、な、待……え!?」ギョッ・・・
兵隊C「ヒューッ……こいつぁ驚きだ。俺らは本国のドッキリ企画にでも当てられたのかい?」アハハ・・・
兵隊D「うわぁ……賭け金パァだ。全部、大尉と軍曹とバスカフに行くのかよ」タラー・・・
バスカフ「だから言ったろ……大尉の前で嘘言えるかっての」ハァ・・・
逆にアチラがサプライズを受けた様な顔をしているのは何故だろう。
軍曹「全員、気をつけ!」ゴッ!
一同『っ!』ザッ・・・
強面の軍曹と呼ばれた男性の一言で一気に軍隊らしくなる一同。
『傾注』という言葉が続き、後ろの方から……軍用コートを着た身長170前後の女性が前に出てきた。
軍曹「一同、敬礼!」ジー・・・
一同『っ!』ザッ!
サーシャ「あ、え……っ!」ザッ!
私も見様見真似で敬礼をしてしまう。そんな私を見て苦笑の表情を浮かべる……っ!
大尉「ようこそ特尉殿。我々の様な『死者の部隊』へ」フフッ・・・
サーシャ「っ……サーシャ=クロイツェフ特尉であります。よろしく、お願いします」ペコッ・・・
大尉「ええ。よく挨拶できたわね。緊張しながら偉いわよ……『ロリータ』」ポンッ!
サーシャ「な!? ろ、り!?」タラー・・・
瞬間、噴き出す兵士が数名。軍曹殿に睨まれて引き締め直してはいるが……軍曹殿も自分の脇腹を抓ってらっしゃる。
大尉「私は部隊長の……そうだな……ヴラディリーナとでも呼んでくれ。長けりゃ大尉でも良いよ」ナデナデ・・・
サーシャ「は、はぁ……あの……大尉殿」チラッ・・・
大尉「ん? 何かな?」ナデナデ・・・
サーシャ「第1の要望ですが……手を、その」アタフタ・・・
大尉「頬にでも充てて欲しい? もしかして寒かったのかしら。無理もないわね」スッ・・・
サーシャ「ち、違います! 離して下さい!」カアアァ///
大尉「あら、ごめんなさい。そうね。もう13だものね。思春期真っ盛りの子供に私ったら……これは失礼」ニコニコッ
遂に強面の軍曹殿まで噴き出す始末……何なんだ。この不良部隊は!
- 577 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 01:02:56.72 ID:Ee66Y1gU0
- 流石に頭にきたので、一言言ってやろうかと思った、矢先……大尉殿に先を越された。
大尉「諸君、直っていいぞ」チラッ・・・
軍曹「一同直れ!」
一同『はっ!』ザッ!
未だにクスクス笑う不良軍人共の頭は『やれやれ』と一言告げ、私に提案してきた。
大尉「いやはや、とりあえず文句はプレハブの中で聞こう。此処は冷える。軍曹、あとバスカフ、イァーク三名は連いてこい」カツカツ・・・
軍曹「はい。さぁ特尉殿。此方へ」スッ・・・
サーシャ「……はい」テクテク・・・
バスカフ・イァーク「「…………、」」タラー・・・
歩きながら大尉殿は私に話しかけた。
大尉「特尉殿……いや、サーシャと呼ぼうか」チラッ・・・
サーシャ「ドチラでも」ムスー・・・
大尉「そう怒るな。可愛い顔が台無しだぞ……まぁ今貴女が抱いている感情と私の感情は似ているよ。理解できるかしら?」カツカツ・・・
サーシャ「え?」キョトン・・・
大尉「そうか。生粋の『子供兵士』か……相変わらず世界は優しくないらしい。まるで『双子』の時と変わらない」ボー・・・
軍曹「……大尉殿」コホンッ・・・
大尉「ん。すまん……所属は何処だ? 言えるなら教えてくれ」チラッ・・・
一応、ワシリーサの部下とだけ言っておく。
大尉「成程、例の……納得した。もう深くは言うまい。彼女には借りがある」カツカツ・・・
サーシャ「はぁ」ポリポリ・・・
大尉「しかしなぁ……『サーシャ=クロイツェフ特尉』とだけ報告書で来たものよ。無論、写真はおろか、年齢性別すら無しで」クスッ
サーシャ「なぁ!? っ……ワシリーサ殺す」ンギギ・・・///
大尉「ハハハハハ! やっと理解したのかしら! まぁ構わない。大事な『同志』だ。歓迎するわよ、サーシャ」ポンッ・・・
そういう事か! 名前と軍籍だけでは、私がFSBかSVRの特任将校辺りに思われても仕方あるまい!
大尉「一応、自分が『お嬢さん』と呼ばれても仕方ない事には気付いてるのね。だったらまだ『やり直し』は効くわ」ジー・・・
サーシャ「肯定です、が……やり直し?」ハテ・・・
気にしないで頂戴、とサクサク前に進む大尉殿。周りの3人の表情を見たが軍曹殿以外は苦笑。
さておき、切り替えねば……私は特別任務の事を思い出し、頭を仕事モードに切り替え大尉殿の後を追った……―――
- 578 :>>1 [saga]:2011/09/17(土) 01:04:55.96 ID:Ee66Y1gU0
- はい。今日は此処までです。時系列はあんまり考えないで下さいね……色々と。
さて、次こそ香焼と合流させてあげたいですね。
もしかしたら安価取るかもしれないからその時は協力よろしく。ではまた次回! ノシ” - 579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 01:53:38.03 ID:4m/1QPcHo
- どこぞのスカーフェイスが出てくるぜ……
- 580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 02:17:55.22 ID:iMg1JTQDO
- 乙! 世界一おっかない姐御キター! ヴラディレーナって日本で使ってた偽名だよね?
常識的に考えりゃ大尉達の考えの方が正しいよなー
まぁチャイルドソルジャー駄目なんつったら禁書どころか殆どのフィクション無くなるけど
>>579
スカーフェイスだと筋肉男Ⅱ世か蝙蝠男のヴィランになるぞww - 581 :>>1 [saga]:2011/09/17(土) 19:13:47.19 ID:Ee66Y1gU0
- こんばんわ。続き投下!
- 582 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 19:39:32.73 ID:Ee66Y1gU0
- ―――とある3日目、AM11:45、ロシア・ハバロフツク、シホテアリニ山脈北部・非公式空軍キャンプ・・・・・
プレハブに入り、さて早速作戦会議を……と思った矢先『まぁ座りなさい』と促された。
それから軍曹殿に目配せをし『昼食を先に』と告げた。
軍曹殿は短く『了解』ですと告げ、バスカフ・イァーク両名を連れ、プレハブから出て行った。
サーシャ「あの……大尉殿。第1の提案ですが、すぐにでも作戦を立てるべきでは」チラッ・・・
大尉「やれやれ。仕事熱心は感心するけど、疲れてるのでしょう? 休憩がてら昼食でも取りましょう。少し話も聞きたいし」フフッ・・・
サーシャ「……はぁ」ポリポリ・・・
大尉「焦っても仕方ないわよ。正直、今回の作戦は大幅な見直しも必要だと思ってるからね」スッ・・・
サーシャ「見直し……ですか」ジー・・・
大尉「ええ……おっと、子供の前で葉巻を喫うものではないな。これは失敬」コトッ・・・
構いません、と承諾をしたのだがポリシーみたいなものを持ってるらしい。感心した。
さて、大尉殿がロングコートを壁に掛けた頃、ランチパックが運ばれてくる。ホカホカのスープ付きだ。
軍曹「お待たせしました。二つ分になります」スッ・・・
大尉「ご苦労軍曹。さぁ、サーシャ。暫く温かいモノを食べてないのでしょう? 食べれないモノは無いわよね。どうぞ召し上がれ」チラッ・・・
サーシャ「……えっと」ジー・・・ジュルリ・・・
大尉「女2人だけだ。背を伸ばしてくれ……まぁ軍曹は気にするな。置き物だと思え」フフッ
サーシャ「では、お言葉に甘えます……―――」コクッ・・・
軽く食前の『祈』を済ませる。
サーシャ「―――……頂きます」スッ・・・
大尉「ええ、どうぞ」コクッ・・・
スプーンに手を伸ばし、スープを掬う……温かい。
大尉「ふふっ。やっぱり普通の子供ね」クスクスッ
サーシャ「むぅ……いけませんか?」ジトー・・・///
大尉「いやいや、その方が『らしい』よ。軍曹、お前もそう思うだろ」チラッ・・・
軍曹「ええ。同意します」コクッ・・・
馬鹿にされてるのやら、可愛がられてるのやら、複雑な心境だった……まぁ今は食事を楽しもう。
- 583 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 19:58:22.65 ID:Ee66Y1gU0
- そろそろ食事を終えようかという時、大尉殿が話しかけてきた。
大尉「サーシャ。いつから『この世界』にいる?」ジー・・・
サーシャ「え? あ、はい。第1の確認ですが、『この世界』とは、その……えっと」タラー・・・
大尉「ふむ……では質問を変えよう。初めて『処女』を切ったのはいつ頃だ?」
サーシャ「…………、」ジー・・・
覚えていない。幾多の魔術師・異端者を葬ってきたのだ……あまり昔の事を思い出したくない。
大尉「そうか。すまない」モグモグ・・・
サーシャ「いえ」モグモグ・・・
大尉「それじゃあ別の質問。学校はどうしてるの?」
サーシャ「第2の解答ですが、一昨年くらいまでにモスクワの修道院で高校課程相応までは終えました」
大尉「飛び級というヤツかしら? それは凄いわね……でも質問に応えてないわよ」フフッ・・・
サーシャ「え?」ポカーン・・・
大尉「勉学ではなく『学校』よ。貴女の歳なら今は中学校に通う頃でしょう」
サーシャ「…………、」フム・・・
そんなモノ、知らない。
大尉「そう……私は教会の云々は知らないけど、意外と腐っていたのね」スッ・・・
サーシャ「否定はしませんが……肯定も出来ません」ジー・・・
大尉「そういう答えは可愛くないわよ。達観し過ぎね」ハハハ・・・
乾いた笑いを溢す大尉殿。何故、そんな児童相談員の様な質問ばかりするのだ。
大尉「サーシャ……今の私の質問は『常識』だ。違うか?」
サーシャ「……分かりません。ですが否定はしません」
大尉「子供に武器を……まぁ武器ではないかもしれないけど、危険な事をさせる世界はオカシイとは思わないかしら」
サーシャ「その点は同意します。ですから、第1の補足として、その様な世界にしない様、少しでも我々が」
大尉「自分が勘定に入っていないのか。まるで機械だな」ハァ・・・
憐みの目。ヴァロージャさんにもその目を向けられた……だが私は折れない。
彼女達を否定はしないが、己も否定しない。
- 584 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 20:18:34.94 ID:Ee66Y1gU0
- 物思いに耽っていると、大尉殿は既に食事を終えていた。私も早めに切り上げねば。
大尉「急がなくても良い。ゆっくり食べなさい」クスッ・・・
サーシャ「い、いえ。すいません」パクパク・・・
大尉「……可愛いのだか、恐ろしいのやら」ハハハ・・・
大尉殿の話を片耳に、食事を全て掻き込んだ。
サーシャ「―――ごちそうさまでした。とても美味しかったです」ペコッ・・・
大尉「うん。そう言って貰えると配膳係が喜ぶよ……軍曹、トレーを頼む」フフッ
軍曹「了解です」コクッ・・・
大尉「……さて、サーシャ。先の話は忘れろ」
サーシャ「え?」ポカーン・・・
大尉「私と貴女では根本からして違う事が分かった。文句は魔女(ワシリーサ)に言う事にする」
意味深な事を告げ、苦笑する大尉殿。さて、とコーヒーを淹れに立ち上がった。
大尉「砂糖とミルクは増し増しよね?」チラッ・・・
サーシャ「……肯定です」コクン・・・
大尉「ふふっ、素直で宜しい……そういえばサーシャ」Pi!
サーシャ「はい」
大尉「上司や同僚はいる様だが『友達』はいるのかしら?」ジー・・・
サーシャ「第3の解答ですが……多分、います」コクッ・・・
刹那、大尉殿の腕が止まり『嘘!?』みたいな目を私に向けた……心外だな。
大尉「あはは。ごめんなさい……いや、でもよく友達を作れたわね。仕事仲間じゃなくてよ?」
サーシャ「肯定です。第2の補足として、教会繋がりで色々と……アチラが友達と言ってくれるんです」ポリポリ・・・///
大尉「そう……良かった。殺戮人形では無いのね。安心した」フフッ・・・
サーシャ「それは否定できませんが、人形ではありませんよ……御心配、感謝します」ペコッ・・・
大尉「いえいえ。当たり前の事を言ったまでよ……コーヒー、置くわね」コトッ・・・
良い香りがする……こんなコーヒーを淹れられる人間になりたいものだ。
しかし、彼女は見た目や職務と裏腹に、非常に人間味のある大人だと感じる。久しぶりに常識的な『非常識』に会えた。
- 585 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 20:56:06.64 ID:Ee66Y1gU0
- では、少し私も質問をしよう。
サーシャ「大尉殿。改めて、質問があります。宜しいですか?」チラッ・・・
大尉「ええ。任務の話以外ならね。私は切り替え下手な人間は嫌いよ。今はリラックスタイムだもの」フフッ・・・
サーシャ「では、改めて第1の質問です。大尉殿の部隊は『何』なのですか? 答えられれば、教えて頂きたい」ジー・・・
大尉「んー」スッ・・・
コーヒーカップを傾けながら、壁に掛けてあるコートを指差す大尉殿。
サーシャ「え?」キョトン・・・
大尉「衿章。紋章とか色々見てみなさい」
言われた通り確認する……遊撃隊(ヴィソトニキ)? というか、これ……鎌とハンマー!?
大尉「ふふっ。だからさっき『死者の部隊』って言ったでしょ」クスクスッ
サーシャ「きゅ、旧連邦(ソビエト)ですか!? え、えっと……その」タラー・・・
大尉「勿論、伊達や酔狂で着てる訳ではないわよ。『死者の誇り』とでもいえば良いかな……まぁ貴女が生まれる前の『国』だものね」フフッ
サーシャ「は、はい。第1の感想ですが、正直実感が沸きません」ウーン・・・
大尉「……でも我々はその軍属だったの。子は親を選べない様に、兵も生まれる国を選べないの。修道女だって同じでしょ?」
サーシャ「……はい」コクッ・・・
この人は、後悔しているのか?
大尉「ははは、まさか。貴女は成教に所属している事を後悔してるの?」
サーシャ「第4の解答ですが、する訳がありません」
大尉「そういう事よ。結局、私達は連邦国民であり、同志なの」ボー・・・
サーシャ「第2の感想ですが……難しいです」ジー・・・
大尉「ええ。そう思えるのが当然よ。貴女の年頃で気付いてしまってはいけないの……例え自分が『国に裏切られても』」ボソッ・・・
サーシャ「え?」
大尉「ん。何でも無い……とりあえず、今したは内密にね。ベラベラ口外する様ならドラグノフの7.62mm弾でオシオキするから」フフッ・・・
サーシャ「了解です。トップシークレットという事で保管しておきます」フフッ
良い子だ、と微笑まれた。
生粋の軍人とまともに話したのはこれが初めてだが、皆が彼女の様な考えを持っていれば、世界は少しでも優しくなれるのかもしれない。
- 586 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 21:36:33.93 ID:Ee66Y1gU0
- ―――とある3日目、PM01:30、ロシア・ハバロフツク、シホテアリニ山脈北部・非公式空軍キャンプ・・・・・
それから大尉殿の喫煙タイムの後、本題に移る事にした。
『先とは違ってバリバリ叩くからね』と黒い笑みを向けられ、それ相応の覚悟をして会議に臨む。
ただ会議と言っても、私と大尉、軍曹、書記官の4名だけの小規模なものだった。
大尉「さて……では始めよう。軍曹、まず現段階の予定を」チラッ・・・
軍曹「はい」コクッ・・・
軍祖殿が今後の予定を読みあげる。
16時にハバロフツクを発つ~~(約3時間)~~19時頃に学園都市上空付近に入る。
移動に用いるのは、Mi-17(Hip-H)の特注機2台と護衛のミル(ハインド&ハヴォック)を2台ずつ。
大尉「しかし、よくもまぁ軍も気前良くハインドなど貸してくれたものだ……まるで戦争の許可が下りた様だな」フフッ・・・
軍曹「御命令とあらば、いつでも」コクッ・・・
何で、キチガイ染みた発想してるんだ?
大尉「冗談だ。上からの指示が下りるまでは自重する……軍曹、続きを」
軍曹「はい。我々は都市上空を『そのまま通過』し、横須賀自衛隊基地に移動します」
サーシャ「え? 自衛隊、ですか?」タラー・・・
大尉「既に許可は下りている。日本政府とも……アメ公のお偉いさんともな。まったく忌わしい話だ」フンッ・・・
その話は初耳だ。という事は、言葉通り『都市上空』を真っ直ぐ通過するのだろう。
大尉「さて……此処で問題が生じる。特尉、分かるか?」
サーシャ「む……第1の予想ですが、日本政府と学園都市理事会は別モノ、という事でしょう」
大尉「その通り。日本政府は許可していても都市の理事会だか議会だかが公認していないのだ」
つまり……都市の領空圏への越権行為となる。
都市とロシアとの関係がギクシャクしている今、まさかその旨を良しとはしないだろう。
それが可能であれば、何なく第23学区から『こんばんわ』ができるのだ。
大尉「他には?」
サーシャ「第2の予想ですが、私を降ろすタイミングかと」
大尉「馬鹿者。そんなものいつでも出来る。お前をヘリからブン投げれば良いだけの話だからな」
サーシャ「…………、」タラー・・・
何とも厳しいお言葉をどうも。
- 587 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 22:04:27.87 ID:Ee66Y1gU0
- 大尉は軍曹殿を一寸見て、代弁させる。
軍曹「降下ポイントであります、特尉殿」
サーシャ「成程」フム・・・
大尉「此方ではある程度目処を点けていたが、特尉は如何だ?」
サーシャ「改めて第1の確認ですが、都市外周部ですよね?」
大尉「敵のど真ん中に降ろせだなんて最高のジョークを言うつもりだったのなら、実行してやろう。遠慮はいらん」ジトー・・・
勿論、そんなつもりはない。蜂の巣になるのは勘弁だ。
サーシャ「では第2の確認です。外周部なら何処でも可能ですか?」
大尉「肯定だが、第2学区や第23学区付近に降ろされたいか? 敵の警察本部目の前だぞ?」
サーシャ「改めて第1の解答ですが、同意しかねます。可能であれば第10学区か第19学区付近に降ろして頂きたいかと」
大尉「ほぅ……それなりに勉強してきてはいるのだな」
尤も、オリアナ=トムソンの受け売りだが。
大尉「他には陸輸口の第11学区から荷物に紛れ込む。第21学区の水道水路パイプから潜入する……その辺が妥当だろうな」
サーシャ「成程」フムフム・・・
大尉「しかし問題は此処からだぞ、特尉。何処から入ろうが構わないが、そこからのプランが大事だ」
サーシャ「……はい」コクッ・・・
大尉「どのルートを取る? いつまでに、何処で『目標』と接触する?」
サーシャ「…………、」タラー・・・
大尉「都市からの脱出や電子機器を使わない連絡手段の算段は立ててあるから気にするな。特尉はルートと接触の事だけを考えろ」
サーシャ「はい……あの、第1の要望ですが……少々時間を頂けませんか。そう長くは掛けません」
大尉「良いだろう。15分以内だ。それ以上は私が勝手に決める」
分かりましたと頭を下げ、一度プレハブの外に出て考える事にした。
- 588 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 23:03:26.28 ID:Ee66Y1gU0
- さて、ルートの件だが……大尉の提案してくれた第21学区のルートは外させて貰おう。
申し訳無いが、まるで把握していない水路を移動するのは無謀である。
となると南側の第10,11学区か、北側の第19学区となる。
サーシャ「後は『目標』接触との兼ね合いですね」ジー・・・
急ぐのであれば第7学区に近い南側がベターだろうが、行った所でいきなり赤の他人の私に無理難題振られても、門前払いの可能性が高い。
となると、まず仲介として『幻想殺し』と接触しなければなるまい。
因みに住所は把握済み。とある学生寮の○棟XXX号室だ。
サーシャ「……よし!」コクッ・・・
善は急げ。第10学区から潜入し、即、幻想殺し宅を目指そう。
指針を決定し、大尉達にその旨を伝えに行く。
サーシャ「大尉殿。決まりました」テクテク・・・
大尉「ん。言ってみろ」
サーシャ「はい。第1の進言ですが、第10学区から潜入し、即、仲介役・協力者の下に向かいたいと思っております」
大尉「ふむ……まぁ良いだろう。ただ、その仲介役とやらは確実にそこに居るのだな?」
サーシャ「第2の解答ですが、8割以上の確率でそこに居ます。その日不可能でも二日以内には必ず居るでしょう」
大尉「最悪のケース、その二日、やり過ごせるのだな?」
サーシャ「肯定です」
大尉「宜しい。では軍曹。都市内での注意事項と連絡手段、そして脱出プランを確認しろ」
軍曹「はい。特尉殿、此方に目を」スッ・・・
まずは注意事項。
・極力戦闘は控える事。武器『等』は現地調達。侵入時以外『マジック』の禁止。電子機器(PC・携帯等)は使用禁止。
大尉「『マジック』だか何だか良く分からんが、本部からは特尉にだけ分かれば良いと言われている」
サーシャ「はい。大丈夫です。理解しました……(侵入時だけは人払いと気配遮断を行いましょう)」フム・・・
軍曹「では次に連絡手段を」スッ・・・
・第3,14学区中間にある『ホテル・オホータ(オホーツク)』滞在の『同志』に報告書、可能であれば『血』も提出せよ。
・連絡は三日以内に必ずする事。尚、音沙汰無しの場合は任務失敗と判断する。
サーシャ「……これだけ、ですか」タラー・・・
大尉「ああ。接触方法と合言葉は後で渡す。それとソイツから追って指示も出すらしい」
サーシャ「第3の確認ですが、同志は此の隊の隊員でしょうか?」
大尉「いや……SVR(対外情報局)の人間だ」ハァ・・・
心底嫌そうな顔をする大尉殿。チェーカー嫌いは本当らしい。
- 589 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/17(土) 23:29:53.11 ID:Ee66Y1gU0
- しかし私情は挟んでられん、と大尉は続けた。
大尉「特尉の自己判断で『何らかの連絡手段』を見つけられた場合は、それを用いても構わん」
サーシャ「と、いいますと?」
大尉「仲介役のPCや携帯、他に協力者がいるならその者の通信機等で、という意味だ。後で私達の部隊への連絡方法を教える」
サーシャ「感謝します」
軍曹「では次に、脱出方法です。これは『目的のモノ』が有るか無いかでケースが変わります」スッ・・・
・有……『ホテル・オホータ』の同志に渡し、第23学区から通常の空路で帰国。
・無……自力で横須賀基地まで退却。
サーシャ「第1の感想ですが、待遇が大分違いますね」
大尉「当たり前だ。負けた上に楽して帰れると思うなよ。観光を楽しみたかったら無事成功させる事だな」
サーシャ「……御尤もです」
大尉「うん。ただ……この『同志』というのが良く分からない。正直、私は信用して無いぞ」
サーシャ「何故です?」
大尉「今はまだ『勘』の段階だ。探りを入れている最中でな……兎角、安易に心を許すな。良いな?」ギロッ・・・
サーシャ「了解です……では第2の提案として、私が『ブツ』を持ってそのまま横須賀まで逃げましょうか」
大尉「最悪、それも頭に入れといてくれ。何か分かり次第、私の隊からも使者を送る。何としてでも特尉と合流させ、報告させよう」
サーシャ「感謝します」
とても心強い。
大尉「さて……以上か、軍曹」チラッ・・・
軍曹「はい。後はヘリの中でお伝えする事だけです」
大尉「宜しい……では特尉。少し休め。仮眠を取りたいなら寝ても良い。後で起こそう」スッ・・・
サーシャ「大丈夫です。休憩だけで足ります」
大尉「分かった……では、軍曹。ライディノフ一等兵。皆にプランを伝えに行ってくれ」
了解です、と軍曹殿と書記官はプレハブの外に出て行った。
残った大尉は首を数回回し、コーヒーを一啜り。そして私を見て……溜息の様な、失笑の様な、複雑な顔をした。
- 590 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/18(日) 00:27:30.93 ID:Fsztry7g0
- 何か言いたそうな面持ち。遠慮をしている感じだ。
サーシャ「大尉殿。第2の要望ですが、言いたい事は言って貰って結構ですよ」コクッ・・・
大尉「いや……軍人らしからぬ事を言いそうになってな。私も歳という事だろう」フフッ・・・
サーシャ「いえ、第1の意見ですが、大尉殿はまだまだお若いですよ」
大尉「ははは。世辞は要らないよ。どうせ『この顔』だ。年齢なんて関係無いもの」クスッ
サーシャ「……すいません」ペコッ・・・
大尉「何で謝るの? 日本人みたいな子ね」ハハハ
この人はやはり、大人だ。器量が大きい。
大尉「私が貴女くらいの年齢の時は……ピオネールに所属してたわね」フム・・・
ピオネールとは、簡単に説明すると、ソビエト連邦時代にあった志願制のエリート青少年ボーイ・ガールスカウトである。
サーシャ「それは凄い。エリートだったのですね。私的の第2質問ですが、専攻は何を?」
大尉「競技射撃だよ。五輪にも出れそうだった」ハハハ
サーシャ「だった、とは……聞いてもよろしいですか?」
大尉「良くある話だ。とある年に国が五輪出場を放棄する。我が国に限った話では無かろう……ある意味運が悪かったわね」
サーシャ「…………、」ペコッ・・・
大尉「憐れむ必要はないわよ、聖職者さん。私、こう見えても神より金の方が大事なタイプだから。あ、見た目通りね」フフフ・・・
ポジティブ……悲しい程に、明るい。
大尉「やはり歳だな。若い子に昔語りをし出したらアウトだろう……これじゃあベイブに笑われる」クスッ
サーシャ「いえ。修道女として、色々と考えさせられました」コクッ・・・
大尉「そう。なら良かった」フフッ・・・
サーシャ「第2の意見ですが、貴女の様な人が我が国の指導者なら不条理は減るでしょうね」
大尉「いいや、増えるよ。まず真っ先にWWⅢを起す算段を立てるもの」ハハハ
サーシャ「……撤回します」ハァ・・・
私が生粋の子供兵士というのであれば、貴女は生粋の軍人なのだろう。
- 591 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/18(日) 00:55:47.54 ID:Fsztry7g0
- さておき、気を使ってくれたのか一人でゆっくりと休め、とプレハブから出て行こうとする大尉殿。
が、出る直前『そういえば』と声を上げ、私の方に近づいてきた。
サーシャ「何か?」キョトン・・・
大尉「失礼……そら」バサッ!
サーシャ「なぁっ!!?」カアアァ///
いきなり外套を捲られた。
サーシャ「な、ななな、何をするのですか!?」カアアァ///
大尉「やっぱマトモな服着させてもらってなかったのね……あの魔女、相変わらずセンスが狂ってる」ハァ・・・
サーシャ「ど、同意しますが……何も捲る事はないでしょう! 男性が見ていたらどうするのです!」モジモジ・・・///
大尉「2人きりだからそうしたんでしょ。それより貴女も照れる事あるのね」フフフ・・・
サーシャ「よ、余計なお世話です!」ムゥ・・・///
ずっとニヤニヤしている大尉殿。セクハラという点ではワシリーサと同類です。
それより何故写真を取ろうとしてるのですか? 訴えますよ?
大尉「えー。タイに戻ったら面白いコスプレ少女が居たってネタにしようと思ったのにー……てか二丁拳銃にそれ着せたら儲かりそうね」フフフ・・・
サーシャ「はぁ?」ポカーン・・・
大尉「まぁそれは良いとして……貴女、その恰好で侵入したり降下したりする気?」
サーシャ「え、あ、はい。慣れてますから」コクッ・・・
大尉「普段どんな任務受けてるのよ……ったくSSサイズの制服あったかなぁ」ポリポリ・・・
サーシャ「え?」
大尉「的にして下さいって言ってる様なものじゃない。それでも着るの? それともその服に愛着でも沸いた危ない子?」ジトー・・・
いえ、変えて貰えるなら大いに変えて下さい。ワシリーサざまぁ見ろ。
大尉「そんじゃあ余ってるコート貸すわ。男モノだけど外套(マント)よりはマシでしょ」キョロキョロ・・・
という訳で、レア物のソ連エンブレム入りのコートを手に入れた。これは自慢できそうな代物だ。
後でこおの礼をしなければなるまいな。考えておこう。
- 592 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/18(日) 02:41:42.45 ID:Fsztry7g0
- ―――とある3日目、AM07:00・、英国・ロンドン(PM03:30、ロシア・ハバロフツク)、イギリス清教第零聖堂区、最大主教執務室・・・・・
一方その頃、ロンドンにて。
朝食前、ステイル=マグヌスと神裂火織の両名は最大主教(アークビショップ)ローラ=スチュワートに呼び出されていた。
何故呼び出されたかは抱いて良見当がついている。多分、ロシア成教が今抱えているいざこざについてだろう。
ステイル「それにしても……もうちょっと後でも良いだろうに。腹が減ったよ」ハァ・・・
神裂「仕方ありません。我々がこうしてる間に、アチラには行動があるかもしれないのです」
ステイル「はいはい、優等生な解答どうも……最大主教。主教補佐、並び補佐次席参りました」コンコンッ・・・
『ういー』というかったるい返事。一発殴ってやろうかと思いつつ、中に入る。
最大主教は椅子に腰掛け……パソコンを弄っていた。随分利器的なものを使う。
ローラ「おはよ」ファアアァ・・・
神裂「おはようございます。早朝からPCですか? 目が悪くなりますよ」
ステイル「安心しろ。コイツは既に目が腐ってるし、加えて老眼だ」
ローラ「黙れED野郎……さておき、今朝早くから呼びけりはロシアの件なるものの所為よ」
ステイル「ぐっ……誰が不能だ糞ババア」ギロッ・・・
神裂「あーもう落ち着いて。それで、主教。詳しくお願いします」ハァ・・・
苦労人が一人だと疲れる。神裂は心中嘆いた。
ローラ「ふむ。我々のロシアに対する方針は昨夜述べたとおり『協力せず』。覚えているわね」
神裂「はい」
ローラ「うん。じゃあ追加しけるわよ」
ステイル「追加だと?」
無関与の筈では無かったのか。
ローラ「うーん。それでも良いのだけど『吸血殺し』はやっぱり一応、必要悪の教会(ウチ)の所有物になりけるのよ」
ステイル「それは同意しよう。で? だから何だ?」
ローラ「……ステイル。今回、誰が『吸血殺し』への交渉に行くと思われり?」
ステイル「…………、」ピタッ・・・
ローラ「じゃあ神裂」チラッ・・・
神裂「それは……、」タラー・・・
2人の頭の中には同一人物が浮かんだ。無論、ローラも同じ考えなのだろう。
- 593 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/18(日) 03:47:04.01 ID:Fsztry7g0
- 敢えて名前は出さない。だが十中八九『彼女』だろう。
ステイル「……それで」ジー・・・
ローラ「私は最悪を危惧しとおるのよ。何か分かる?」
ステイル「吸血殺しについてか? 吸血鬼の存在云々とかほざいたら燃やすよ」ジトー・・・
ローラ「質問に質問で返す低脳なりけるのよ。神裂」チラッ・・・
神裂「……十字架、でしょうか」
ローラ「ビンゴ」コクッ・・・
姫神秋沙の『力』を押さえるケルト十字。アレの破棄、もしくは『鞍替え』が怖い……という事か。
ローマ「故に、『接触者』に監視をつけりよ。神裂」
神裂「はぁ……どうやって? アレイスターに協力は仰げないでしょうし、土御門は姫神さん本人に着く筈ですから」
ローラ「お馬鹿。何の為の潜入学徒にあられるか?」
神裂「あ、五和達」フム・・・
成程。天草式の若衆を使えば容易い事。
ローラ「ただ、あくまで監視。それ以上の手出しは御法度になりにけるわ」
神裂「分かっています。では早速建宮に指示させましょう」コクッ・・・
ステイル「…………、」タラー・・・
神裂「ではこれで……ステイル?」チラッ・・・
ステイル「あ、いや……何でも無い。今行くよ」カツカツ・・・
刹那、彼の表情が翳ったのをローラは見逃さない。
ローラ「ステイル」ボソッ・・・
ステイル「……何だ」ピタッ
ローラ「公私分け」ジー・・・
ステイル「……言われるまでも無い」カツカツ・・・
一度も上司の顔を見ず、部屋を出る少年。神裂は溜息をつき、一礼後、執務室を出た。
そして直ぐに、彼に追い付く。
- 594 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/18(日) 04:02:08.75 ID:Fsztry7g0
- 非常に困った様な顔をするステイル。神裂は思い切って如何したのか聞いてみた。
ステイル「まさか、僕があの娘の事を心配している様にでも見えるっていうのかい?」スッ・・・カチッ・・・
神裂「成程。ステイルはサーシャが心配なんですね」ヘー
ステイル「ゲホッゲホッ……燃やすぞ?」ジトー・・・
じゃあ何なんだ。ハッキリ言えば良い。
ステイル「僕が心配しているのは君の所の若衆と、女子寮の御転婆娘共の事だ!」フンッ
神裂「五和達? それからオルソラ達ですか?」
ステイル「如何してピンポイントで外してくるかなぁ……チビとチビとチビとチビの事だ!」ッタゥ・・・
そりゃ貴方から見れば皆チビでしょう、とは言わないでおく。とりあえず言いたい事は理解した。
ステイル「あの馬鹿共……絶対手助けするぞ。口酸っぱくして忠告しておけ」ジー・・・
神裂「ふむ……しかしアニェーゼの暴走やレッサーの勝手は手に負えませんよ?」
ステイル「……一番ネックなのは彼女達じゃない。香焼だ」
神裂「あー……まぁ……はい」タラー・・・
任務とはいえ、もし彼女が怪我でもしそうな場合は駆け付けてしまうだろう。
神裂「いや、でも、あの子も天草式の一員ですから。公私の区別はちゃんと」
ステイル「公私とかじゃない。『あの男』が公私関係無く動く様に、香焼もそう動いてしまうんだ。一緒に居ればそのくらい分かるだろ」ハァ・・・
神裂「……確かに」アハハ・・・
ステイル「チッ……今回の監視任務、香焼だけには知らせるな。絶対に知らせるな。そして誰かを香焼の監視に付けろ」チラッ・・・
神裂「そこまでしますか?」フム・・・
ステイル「最悪、サーシャの手助けをしたら外交問題では済まないんだぞ」ジトー・・・
神裂「……では浦上をつけましょう」コクン・・・
マジで頼むぞ、と頭を掻く弟分の友人に内心苦笑する神裂。
本来なら気の赴くまま香焼のやりたい様にやらせてやりたい気持ちはあるのだが、これも仕事の内。
兎角、この事を建宮に伝えに行こうと、神裂は自室に戻る。ステイルは御転婆娘共に釘を刺す為、食堂へ向かった……―――
- 606 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/19(月) 19:20:06.77 ID:sWFnvcNp0
- ―――とある3日目、AM07:15、英国・ロンドン(PM03:45、ロシア・ハバロフツク)、『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・
アニェーゼ=サンクティスは情に厚く、頭の切れる少女である。
これは彼女と親しい者であれば誰でも知り得る事であり、本人もそうあろうと自負している事である。
さて、朝食前のこの時間。いつもなら寝坊ギリギリまで寝ているのだが、今朝は違った。
妹分のアンジェレネ、そして悪友のレッサー、その連れのランシスと共にまだ人気の無い食堂で何やら話し込んでいる。
アニェーゼ「さて、如何したモノか」フムフム・・・
レッサー「考え過ぎじゃないですか? サーシャだって素人じゃないんです。余計な御世話だと思いますけど」ジー・・・
アニェーゼ「余計なお世話上等です。何て言うんですかねぇ……私は英国、というより最大主教の方針が気に喰わねぇんです」フンッ・・・
アンジェレネ「あはは……でも、大人の決めた事だし、私達がゴチャゴチャ言う訳にも」ウーン・・・
話し合いは、先日から話題になっているロシア成教の動きについて。
自分達の『友人』が何とも肩身の狭い任務を押しつけられているという事で、何か手助けが出来ないだろうかと考えていたのだ。
レッサー「手助けっつってもなぁ……ランシス、何かあります?」
ランシス「まず私が此処に居る意味が分からない。どうして私まで早起きさせられた上に、意味不な話し合いに参加せにゃならんの?」ハァ・・・
レッサー「こんの人でなし! それでもカルテッ娘のリザーバーですか!」ムギュウウゥ・・・
ランシス「ひ痛ふぁふぁふぁ! か、勝手過ぎるよぅ!」ヒエェ・・・
アニェーゼ「うっせ。茶番なら余所でやれってんです」ジトー・・・
レッサー「ほら、怒られましたよ。ランシスの所為です」ジトー・・・
そんなぁ、と嘆くランシス。理不尽。絶対に理不尽。
アンジェレネ「んー……とりあえず、今出来る事って何でしょうね」ジー・・・
レッサー「いっそ学園都市に飛びましょうか? そんで直接手伝う、と」ビシッ・・・
ランシス「あほ。あの街は個人で如何こう入港できる場所じゃないでしょ。時間的にも間に合わないだろうし」ジー・・・
レッサー「うっ……な、生意気ですよ! ランシスのくせに!」ムニュウウウゥ!
ランシス「ひゃんっ!! 何処掴んでんだ変態っ!!」ムギャアアァ!
アニェーゼ「だから黙れボケ! 声デケェですよ、糞っタレ」ジトー・・・
さーせん、と頭を垂れる英国人2人。アニェーゼはやれやれ、と自分の考えを述べる事にした。
- 607 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 00:42:52.34 ID:tjHrp3ic0
- アニェーゼ「まぁ現地の人間に手伝ってもらうしかねぇでしょうね」フム・・・
アンジェレネ「現地の? アニェーゼちゃん、誰か知り合い居るの?」キョトン・・・
アニェーゼ「わんこ」サラッ
瞬間、本人以外は固まった。彼女が言う『わんこ』とは、天草式十字凄教の香焼の事である。
レッサーが無言で『頭大丈夫?』のジェスチャーをして……蹴られた。
アンジェレネ「えっと……天草式は、英国の傘下ですよ」タラー・・・
アニェーゼ「んな事ぁ知ってますよ。でも、んな事ぁ関係無ぇんです」フンッ・・・
レッサー「痛たた……大いに関係ありでしょう。『関与するな』って言われてるじゃないですか」ハァ・・・
アニェーゼ「百も承知。でもですねぇ、きっとサーシャは泊まる場所も無く独りでポツンと科学の街に放置されるんです」
アンジェレネ「…………、」ウーン・・・
確かに……だが、それは仕事だから止むを得ないだろう。潜入・工作任務が過酷なモノだというのは分かり切っている事である。
アニェーゼ「まぁ勿論、任務の手伝いをしてやるって言ってんじゃねぇんです。せめて『宿』くらいは提供してやろうって話ですよ」ビシッ
アンジェレネ「あー……成程」ハハハ・・・
ランシス「それも十分協力になると思うよ」ハァ・・・
レッサー「ふむふむ……まぁそうなると二ヶ所でしょうね」ジー・・・
一つは幻想殺し宅。もう一つは『わんこ』の小屋。
アニェーゼ「あのウニ頭の住所は分かってるんでしょうけど、コーヤギん家の住所知ってんですかねぇ」フム・・・
アンジェレネ「さぁ……ていうか、私も知らない。アニェーゼちゃん、知ってるの?」
アニェーゼ「うんにゃ。レッサー」チラッ・・・
レッサー「ランシス」チラッ・・・
ランシス「レッサー達が知らないのに私が知ってる訳無いでしょ」ハァ・・・
お手上げ。知ってそうなのは、天草式の連中とステイルくらいか。
アニェーゼ「うーん……神裂と不良神父がそう易々と教えてくれるとは思えませんね。此方の考えくらい読んでそうです」チッ・・・
レッサー「でしょうねー。となると……直接本人から聞くか、あの2人以外の天草式メンバーから聞き出すか」コクッ・・・
アンジェレネ「天草式の人達は止した方が良いかも。下手に動くと勘付かれますよ」タラー・・・
アニェーゼ「そんじゃ……決まりですね」ビシッ・・・
直接本人に電話してやろう。
- 608 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 00:57:16.41 ID:tjHrp3ic0
- レッサーの携帯を使い、香焼に電話を……しようとした時、アニェーゼが待ったをかけた。
レッサー「何ですか? サクっと終わらせちゃいましょう。サクっと」ムゥ・・・
アニェーゼ「あんぽんたん。考え無しに電話すんじゃねぇですよ」ジトー・・・
レッサー「ポンタンなんて使ってませーん。あ、ごめん、睨まないで下さい」タラー・・・
アニェーゼ「チッ、俗物が……レッサー、アンタ、香焼に何て言うつもりでした?」ジトー・・・
レッサー「え? 何てって……サーシャの事を」フム・・・
アニェーゼ「お馬鹿」ハァ・・・
既に都市に潜入している天草式の若衆にも、この件が伝わっているかもしれないのだ。
今この事を率直に伝えたら香焼が困るだけで、元も子も無いだろう。
レッサー「じゃあ如何するんですか?」ジー・・・
アニェーゼ「うーん……、」ジー・・・
少女考え中.....
アニェーゼ「……誰か良い案無ぇですか?」チラッ・・・
アンジェレネ「うーん……コォヤギくんの住所を聞き出すんですよね?」ジー・・・
アニェーゼ「はい。なるべくサーシャの事と関係無い感じで」ビシッ
ランシス「贈り物するから、とかで良いんじゃないの?」ハァ
アニェーゼ「それです!」b"
適当言っただけなのに、とランシスは苦笑した。
レッサー「ふむふむ。良くやりました。やはり私の部下なだけはありますね!」ツンツン!
ランシス「誰が部下だ、このトンマ」ジトー・・・
レッサー「良し! それじゃあ今すぐ!」カチカチ・・・
ランシス「あ……待って」ボソッ・・・
レッサーの手が止まる。まだ何かあるのか。
ランシス「何かっていうか、レッサーじゃない方が良いんじゃない?」ジー・・・
レッサー「はぁ?」ポカーン・・・
ランシス「いや、その……信頼問題的な話」ハハハ・・・
その言葉にアニェーゼとアンジェレネは噴き出す。
逆にレッサーはピキリっと来たので、とりあえずランシスの色々を揉みしだく事にした。
- 609 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 01:21:28.66 ID:tjHrp3ic0
- ランシスがヘニャった所でアニェーゼが仲裁に入る。
アニェーゼ「まぁそうですね。レッサーからの贈り物なんて言われたら、正直まず疑って入っちまいます」ハハハ
レッサー「ぐぬぬ……これが日頃の行いというヤツですか」ジトー・・・
アンジェレネ「あ、自覚あるんだ」アハハ・・・
口を尖らせ、机に突っ伏すレッサー。
アンジェレネ「えっと、それじゃあとりあえずレッサーちゃんが電話して、アニェーゼちゃんが代われば良いんじゃないかな」
ランシス「ふにゃぁ……私はアンジェレネが良いと思うよ」グテー・・・
アニェーゼ「……何でですか」ジトー・・・
ランシス「別に大した意味は無いけど。安心的な問題で」ハァ・・・
腑に落ちないが確かに、とアニェーゼ、レッサーは納得した。
アニェーゼやレッサーが如何しても駄目という訳ではないが、アンジェレネ『であれば』疑いはしない。
ただ、逆にアンジェレネは突然の振りに驚いてしまった。
アンジェレネ「わ、私ですか!?」ドキッ!
アニェーゼ「まぁ妥当でしょうね。贈り物は『私達から』っつー事にしても良いですから、とりあえずアンジェレネが電話で伝えて下さい」
アンジェレネ「で、でも」アタフタ・・・
レッサー「そんじゃポチっとな!」Pi!
アンジェレネの了承を待たずにコールを掛ける。
今日本は午後4時前後。多分、電話には出るだろう。
アンジェレネ「ど、どうしよう……何て言えば良いのかな」ハラハラ・・・
レッサー「もしヤバかったらカンペ出しますよ。ランシスが」チラッ・・・
ランシス「だから巻き込むなと」ハァ・・・
アニェーゼ「既に共犯です。逃げたらヒン剥きますからね」ジトー・・・
ランシス「……不幸だぁ」グデェ・・・
レッサー「はいはい。そういう役回りなんですよ、アンタは……あ、出ますよ!」
『シー!』と人差し指を立て、三人に合図する。
香焼『レッサー? おはよう。そっちまだ朝でしょ? こんな早くに珍しいっすね』Pi!
電話越しに聞こえる、少々訛りが入った英語。声変わりしていない少女か少年か曖昧な……彼の声だ。
- 610 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 01:35:48.16 ID:tjHrp3ic0
- 三人に目で合図をし、レッサーは話し始めた。
レッサー「おはようございます。いやー、コウヤギが疚しい事してないかチェックの電話を入れたんですよー」アハハ
香焼『はい?』
レッサー「綺麗なお姉さん2人と同棲してるからって馬鹿な事ばっかしてちゃ駄目ですよぅ?」ニシシ!
香焼『しないっつーの……それだけ?』ハァ・・・
レッサー「いえいえ。まぁ冗談はこれくらいにしといて……何でも、愛しのアンジェレネ嬢がコウヤギにプロポーズしたいらしく」フフフ・・・
香焼『はぁ?』ポカーン・・・
アンジェレネ「れ、レッサーちゃんっ!!?」カアアァ///
ニヤニヤと現状を面白がるレッサー。度が過ぎるのでアニェーゼの『仕置き(半分妬み半分)』の鉄拳が入った。
レッサー「痛たた……えっと、まぁとりあえずアンジェレネに携帯代わります」イヂヂ・・・
香焼『あ、うん』
アンジェレネ「今の流れで如何代われば良いっていうの!」アタフタ・・・
ランシス「大丈夫。彼は今の、レッサーの軽ノリ程度にしか聞いてないから」ボソッ・・・
アニェーゼ「ほら、アン」チラッ・・・
アンジェレネ「う、うん」タラー・・・
たどたどしくレッサーの携帯を受け取り、電話に出た。
アンジェレネ「も、もしもし。コォヤギくん」タラー・・・
香焼『おはよう。どうしたの?』
アンジェレネ「お、おはよう。えっと、その・・・あのね」チラッ・・・タラー・・・
香焼『うん。何?』
三人にヘルプを求める。するとランシスがラジオの構成作家よろしく、速記でカンペを作った。
アンジェレネ「えっと……この前送るって言ってた物、郵送したいんだけど……コォヤギくんの住所が分からないんです」アセアセ・・・
香焼『え? 送る? えっと……そんな約束してたっけ?』ポカーン・・・
無論、嘘である。だが『押し通せ』と命令が来たからにはそうせねばなるまい。
- 611 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 01:56:57.96 ID:tjHrp3ic0
- アンジェレネは『贈り物』についてはボカし、兎角『住所』を聞き出す事にした。
ランシスもそれを手伝うかのように、サササとペンを走らせる。
アンジェレネ「あー……ほら。この前の駄菓子のお礼です。送るって言ったよね」
香焼『え? うーん、そうだったっけ? でも、英国で貰うよ』
アンジェレネ「え!? あ、いや……ほら。都市のお友達にも分けて欲しいなぁって。賞味期限が中途半端だから」アハハ・・・
香焼『別に気を使ってくれなくても良いのに……、』フム・・・
拙い。何やら悪い方に行ってる気がする。
アンジェレネは助けを求め、ランシスをチラ見した。一寸悩み……ランシスの手が動く。
書いてある言葉を見て、三人はドキッとしたが、最早『賭け』だと考え了承した。
アンジェレネ「えっと、ほら。ドチラにしろ、今後贈り物したい時に住所知っておくと便利だし……教えておいて貰えませんか?」
香焼『んー、別に自分なんかに贈り物なんて』フム・・・
アンジェレネ「『別に』『自分なんか』は禁止だよ。いつもお世話になってるんだから素直に受け取りなさい」メッ
香焼『……うん、ごめん』
アンジェレネ「大丈夫。悪用なんかしないから」フフフ・・・
香焼『アンにその心配はしてないよ。レッサーだったら別だけどさ』ハハハ
アンジェレネの後ろで露骨な歯軋りが聞こえた。
兎角、何とか住所をゲット。これで一安心だ。
アンジェレネ「……うん、ありがとう。じゃあお礼送りますね」フフッ
香焼『うん。楽しみにしてるよ』
それじゃあ、と電話を切ろうとした時……アニェーゼが電話を貸してくれと目で合図をしてきた。
アンジェレネは頷き、香焼にその旨を伝え、交代した。
アニェーゼ「もしもし。おはようございます」
香焼『おはよう。寝坊助三人がこんな朝早くにビックリだよ。雪でも降るんじゃないかな』ハハハ
アニェーゼ「悪ぅござんしたね……さて、コーヤギ」
香焼『ん?』
一寸間を置き、トンデモない事を告げた。
アニェーゼ「『主は貴方に試練を課すでしょう』……OK?」ニヤリ・・・
香焼『はぁ?』ポカーン・・・
アン・レッサー・ランシス「「「っ!?」」」タラー・・・
唖然。何を言ってんだ、この馬鹿シスターは。
- 612 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 02:24:17.35 ID:tjHrp3ic0
- アニェーゼは続ける。
アニェーゼ「一応、私はアンタを信じてます」
香焼『え、と……ありがとうって言うべきなのかな?』ポカーン・・・
アニェーゼ「もし『試練』が訪れたら天草式(コーヤギんとこ)の『教義』、思い出しやがってください」
香焼『え? ウチの?』
アニェーゼ「ええ……とりあえず以上です。『贈り物』、楽しみにしてて下さいな」フフッ・・・
意味深に『そうあれかし』と言い残し、電話を切った。
レッサー「あ、アニェーゼ……アンタねぇ」ハァ・・・
アニェーゼ「大丈夫。まぁあの朴念仁が任務とサーシャを天秤に掛けそうになった時、私達の思惑通りに運ぶよう『呪い』かけただけですよ」
ランシス「呪い? 呪術?」ポカーン・・・
アニェーゼ「んな大それたモンじゃねぇですよ」ハハハ
アンジェレネ「……そんな事しなくても、コォヤギくんはサーシャちゃん助けてくれると思いますよ」フム・・・
アニェーゼ「そうでしょうね。でも神裂やステイルに釘刺された場合は、流石に悩まされる筈です……でも、さっきの呪いなら」フフフ・・・
皆まで言わず、余裕の笑みを浮かべるアニェーゼ。
アニェーゼ「まぁ結果は『贈り物の蓋』を開けてからのお楽しみですね」ニヤリ・・・
レッサー「やれやれ……とりあえず私は次の手、打ちますよ。さっきの住所、メールで送っとけば良いんですよね?」チラッ・・・
アニェーゼ「その通り。サーシャなら住所さえあれば如何とでも潜入できます」
アンジェレネ「うーん。怪我しないで、コォヤギくん家まで辿り着ければ良いんですけどね」ハァ・・・
ランシス「ん……因みに、コゥヤギの住所だって事は教えるの? それともコッチで勝手に調べた安全地帯(セーフハウス)って事にする?」
ランシスが言った意味は……香焼宅と伝えてしまえば、サーシャ自身が彼に迷惑を掛けまいと遠慮する可能性がある。そういう事だろう。
アニェーゼ「ふむ。『安置』でOKです。『止むを得なく』という状況を作っちまえば、両者共、受け入れざるを得なくなるでしょう」コクッ・・・
アンジェレネ「そうですね……ランシスちゃん、助言ありがと」ペコッ・・・
ランシス「……別に、大した事してないよ」ポリポリ・・・
レッサー「ほぉ。ランシスがデレました。凄く珍しいです」ニヤニヤ・・・
ランシス「オマエはくたばれ」ジトー・・・
結局、ランシスにメール文章を作って貰い、送信した。これで何とかなるだろう。ガッツポーズ。
余談だが、後になって『2人』が『ストックホルム的』な一夜を共にする事の重大さに気付いてしまい、三人は非常に焦ったのだった。
- 613 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 03:09:10.98 ID:tjHrp3ic0
- ―――とある3日目、PM03:50、ロシア・ハバロフツク、シホテアリニ山脈北部・非公式空軍キャンプ・・・・・
大陸を発つ凡そ10分前。ヘリのローターは既に回転をしており、兵士達も次々に搭乗を始めていた。
サーシャも必要最低限の荷物を軍用ショルダーバックに詰め込み、特注Hip-H1号機の乗り込んだ。
所定の席に座る……が、やはり隊員達からは物珍しい目で見られてしまう。
大尉「こら、貴様ら。いくら特尉殿がマスコット的だからといってジロジロ見るな」フフフ・・・
サーシャ「た、大尉殿」アタフタ・・・
大尉殿がヘリの外で煙草を喫いながら、再び私をおちょくる。作戦前のジョークといった所か。周りから笑いが起きた。
大尉「それにだ。歳は如何あれ、同じ『土台』に立ったからには同胞。子供扱いするなよ」チラッ・・・
サーシャ「…………、」コクン・・・
大尉「……さて、そろそろ離陸だ」ジー・・・
時計はもう直ぐ16時。
ふと、周りを見渡すと自分以外にもパラシュートを背負った兵が何人か居る事に気付く。
大尉「囮だよ。1号機6人、2号機5人の囮だ。都市外周に均等となる様降下させる」
サーシャ「成程……助力感謝します」
大尉「なに。作戦を成功させる確率を上げるだけだ」コクッ・・・
ではさて、と大尉殿は煙草を踏み消し、通信機を持った。
大尉「諸君。時間だ。今回の任務は戦闘ではないが、繊細な工作任務となる」
ヘリの座席で背筋を伸ばし、大尉殿の話を真剣に耳を向ける一同。
大尉「気を抜くな。少女一人の護衛も出来なくて、何が『WWⅢ』だ。何が対アメ公、学園都市だ」
サーシャ「…………、」ビリビリ・・・
大尉「ヤツらは最新鋭のAI兵器や何やらを投入してくるだろう……認めよう。『科学』という点では彼らが上だ」
世界一の科学力……学園都市。
大尉「だが、所詮は道具に頼っているだけだ。我々の経験に敵う筈が無い。違うか?」
一同『肯定です!』ザッ!
大尉「よろしい……格の違いを見せつけよう。行くぞ諸君。機械仕掛けの都市を見る良い機会だ。全力で……翻弄してやるぞ」ギロッ・・・
一同『ураааааааааaaaa!!』オオオォ!!
これが、軍人……サーシャは今まで味わった事の無い謎の威圧感を彼らから感じた。
- 614 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/20(火) 03:43:37.91 ID:tjHrp3ic0
- 勝鬨から一寸後、ヘリはハバロフツクを発った。
ヘリの中は特に会話も無く、雑動も無い。ただただ機械音とローター音だけが喧しいのだ。
サーシャも元より寡黙な性格である為、この環境は丁度良かったのだが、やはり独特のプレッシャーには気押されるモノがある。
ふと、私の横に座る大尉殿が話しかけてきた。
大尉「寒くは無いか?」
サーシャ「改めて第1の解答ですが、大丈夫です。コートの御蔭で特に辛さは感じませんよ」コクッ・・・
大尉「そうか。贈った甲斐があって良かったよ」フフッ
幾らかでも和ませてくれようとしているのだろう。
大尉「後の話をするのは良くないかもしれんが、暇が出来たら連絡しろ」スッ・・・
サーシャ「え、あ……名刺、ですか」キョトン・・・
大尉「何か困った事が有れば連絡を寄越せ。尤も、魔女(ワシリーサ)程の『裏』までは扱えんがな。政治とか軍関係で困った時だ」
サーシャ「……感謝します」ペコッ
ヴァロージャさんといい、大尉といい、此処数日は良い大人に恵まれる。運が良い。
大尉殿は口調を崩したまま、話を続けた。
大尉「ま、後は長期休暇でも出来たら遊びにおいでなさい。歓迎するわ」フフフ・・・
サーシャ「遊びに、ですか? 改めて第1の質問ですが、大尉殿の部隊にという事でしょうか?」
大尉「ふふふ。違うわよ……そうね。タイのとある寂れた港街。私はそこにホテルを持ってるの」
サーシャ「ホテルですか。改めて第1の確認ですが、オーナーという意味でしょうか?」フム・・・
大尉「そんなとこね。街は無頼漢(アウトロー)と娼婦(ビッチ)とヤク中(ジャンキー)の吐き溜め見たいな場所だけど、ホテルは立派よ」
その紹介で誘うのは如何なモノだろう。
大尉「ははは。そうだな、普通の人間が来る場所じゃないさ」クスッ
サーシャ「では、その……むぅ」ポリポリ・・・
大尉「だが、今回の任務を平気な顔で乗り越えられるような肝を持ち合わせているのであれば……社会科見学という事で遊びに来い」ニヤリ・・・
世界の底辺よりも更に『下』というモノを見せてやる……と黒い笑みを浮かべ、私の戸惑う表情を大尉殿は楽しそうに観賞していた。
今まで任務で死霊に荒された街などを見てきているのだが、それよりも酷いのだろうか。
余計な好奇心と、これからの不安を抱きながら、私は鋼鉄の揺り籠の中で降り落とされる時間を待った……―――
- 615 :>>1 [saga]:2011/09/20(火) 03:45:32.79 ID:tjHrp3ic0
- すいません。今回は此処まで。8時くらいから投下できなかったね。いつもの月1かな?
とりあえず次回こそ頑張る! では! ノシ - 616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/20(火) 07:43:07.72 ID:WvGYjjUAO
- >>1乙
ロアナプラ√も面白そうだな…… - 617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 08:32:39.25 ID:JwNZMeSho
- ますますバラライカ姐さんにしか見えなくなってきた
まあ元ネタなんだろうけどwwwww - 618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/20(火) 14:54:46.45 ID:hznCwS6DO
- 乙。まさかランシスがカルテッ娘入りしてるとは! 五人なのにカルテットとは、これいかにww
それにしてもまた香焼は女の子と二人きりになるのかー‥‥いつ頃、刺されるんだろうね! - 619 :>>1 [saga]:2011/09/21(水) 18:39:23.82 ID:bBzDPXqF0
- こんばんわ。ボチボチ書きます。
・ロアナプラと学園都市はある意味真逆ですよねー。リアリティと年齢層的な問題で。
・5人でカルテット……あれです。3人でツイン天使と同じ理屈です(笑)
そんじゃ投下! - 620 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 19:02:27.42 ID:bBzDPXqF0
- ―――とある3日目、PM04:30、日本・学園都市、第7学区、ファミレス『Joseph's(ジョセフs)』・・・(五和side)・・・
今更説明する必要もないが、天草式の若衆は学園都市に『情報収集』という名目で潜入している。
一般の学生に紛れ、何かしら『魔術』的なイレギュラーが無いか探るのが主な役目だ。
その若衆の筆頭として役職を与えられているのが私―――五和である。
学生として年長という立場でもあり、先輩方が私の実力を評価して下さっている故、今の立場に居るといった所だろう。
五和(……でもなぁ)ハァ・・・
正直、柄じゃないと思う。
基本的に自分は人を使うという管理職は苦手だし、逆に指示されていた方が楽で良いと思っている。
加えて立場上、お偉いさん(苦手な部類の人)とも顔を合わせなければならないのだ。
因みに、現在その立場上『上司』と待ち合わせ中。授業が終わり次第、即ファミレスで待ち合わせとの事。
一寸後、その『上司』が現れる。
土御門「いよぅ。待たせたな」ノシ
結標「…………、」テクテク・・・
潜入学徒の監視役―――土御門元春。私が現場の指揮云々役だとしたら、彼が管理監督役だ。
五和「こんにちは……って、結標さん?」ポカーン・・・
土御門「こっちは気にすんな。この後すぐ『ビル』行かなくちゃならねぇからにゃ」チラッ・・・
結標「ったく……香焼くん家で会うならまだしも、仕事でアンタと顔合わせるのは何か嫌ね」ハァ・・・
まったくだ。
土御門「さて。何で呼び出されたか分かるか?」ジー・・・
五和「仕事以外で貴方が私を呼び出すとは思えませんけど」
土御門「その仕事内容だぜぃ。まぁその様子だと分かってないみたいだな……結標、コーラ持って来い」フム・・・
結標「小間使いにすんな。テメェで持ってきなさい」ジトー・・・
五和「あ、私が持ってきますよ。結標さんは何が良いですか?」スッ・・・
土御門「五和っち……相変わらず、その性格はリーダーに向かないぜよ」ハァ・・・
五和「はい?」キョトン・・・
結標「ハァ……私が持って来るわよ。話続けときなさい」ッタク・・・
よく分からないが、すいません結標さん。
- 621 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 19:19:35.91 ID:bBzDPXqF0
- 結標さんが立った所で、土御門が話を始める。
土御門「先程、英国から連絡が来た……昨今のモルドバ情勢は知ってるな?」
五和「え、はい。国と沿ドニエストルが紛争停止中とか。それが何か?」
土御門「そこに魔術師の介入があった……多分、魔術師だ」
五和「多分、ですか?」
土御門「まだ分からないんだ。分かっているのは『吸血鬼』だか『吸血種』だかの影」
吸血鬼……魔術の世界では禁忌とされる存在。
五和「ふむ……それが今回の件と如何関係が?」
土御門「ロシアが動いてる。SVRか成教かは知らんが、学園都市(ウチ)に向かってな」
五和「はぁ」ポリポリ・・・
何故、科学の街に向かっているのだ。あからさまに『オカルト』の領域だろう。
土御門「……吸血、だぞ」
五和「吸血? えっと……あー……え?」タラー・・・
土御門「分かったな」ジー・・・
五和「う、嘘ぉ」エー・・・
つまり、居るか居ないかアバウトな存在の為に『吸血殺し(姫神秋沙)』を確保しに掛るという訳か。
五和「だ、だって、彼女を連れ去る? 血を取る? 如何かは分かりませんけど、意味分かりませんよ」
土御門「まぁそれだけならな……だが俺は別な所に目的が有ると思ってる」
五和「別、ですか?」
土御門「ヤツら、これを期に……吸血鬼関係にも手を出すつもりだろう」
成程。ロシア成教は他の十字教と比べ『退魔』の色が濃い。
吸血殺しの『血』は、そんな彼らにとって喉から手が出る程手に入れたいモノなのだろう。
土御門「まぁ詳しい話はこのUSBに入ってる。後で見ろ……今話すのは具体的な任務内容についてだ」
五和「……はい」コクッ・・・
結標さんが土御門にコーラを手渡す。そのまま彼の横に座るが……良いのだろうか。
もしかして協力者かもしれないし、私が知った話ではないな。
- 622 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 19:37:33.83 ID:bBzDPXqF0
- 都市の地図を広げ、任務の解説を始めた。
土御門「兎に角、英国の指針は『監視』だそうだ。ロシアから誰が来ても『監視』のみ」
五和「えっと……上条さんと禁書目録の監視は?」
土御門「続ける。多分、嫌が応にもカミやんは関わってくるからな」
五和「あはは……確かに」タラー・・・
彼に自重してくれと言っても、『事件の方』から勝手に彼に関わるのだ。如何しようもあるまい。
土御門「兎角、都市外周を中心に監視ポイントを置く。それから五和、オマエはカミやんの所に直接居座れ」
五和「え、あ、はい。(ヒャッホオオオオゥイッ!!)」エヘヘ・・・
土御門「あくまでカミやんをロシアから『使者』に近づかせない為だ。公私混同したら、ねーちんに告げ口すっからな」ジトー・・・
五和「やったぁ! 夕飯の準備してってあげよー!(しませんよー。仕事なんですから)」エヘヘ・・・
結標「うわぁ……五和、本音と建前逆になってるわよ」ジトー・・・
いけないいけない。涎を拭い、話に戻る。
土御門「それから『使者』も発見次第監視をつける。あくまで監視だぞ」
五和「『使者』ですか……SVRと成教、どっちの人間でしょうか」
土御門「十中八九、成教だろうな……個人特定も大体出来てる」
五和「個人……あはは。サーシャとか言ったら笑いますよー」フフフ・・・
土御門「…………、」タラー・・・
五和「あはははは、ははは……はは……え?」タラー・・・
うそーん。
土御門「……俺が考えてる悩みの種を当てて見ろ」ハァ・・・
五和「コウちゃん……香焼です」ハァ・・・
土御門「正解だ、糞ったれ」グデェ・・・
そりゃまぁ……上条さん並に首突っ込もうとしますから。おまけに、仲良しときてる。
土御門「はい。んじゃ、おさらい。監視対象言ってみろ」
五和「上条さん+暴食シスター。ロシアからの使者(多分、サーシャ)。吸血殺し(姫神秋沙)……香焼です」ハァ・・・
土御門「……パーフェクト」ビシッ
何で身内が監視対象になるんだか……まったく、嘆かわしい。
- 623 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 19:59:41.41 ID:bBzDPXqF0
- 呆れ顔の私と土御門の隣で、結標さんが苦い顔をしていた。
結標「てかさぁ……何で私に聞かせんのよ」ジトー・・・
土御門「今回お前には勝手に動いて貰いたいからな」
結標「……意地の悪い事を」ジトー・・・
そういえば結標さん、コウちゃんとも仲良いし、確か姫神さんとも仲良かった筈だ。
今回一番複雑な立ち位置だろう。
土御門「いいか? 今回の任務、香焼には知らせるな。ヤツにもカミやん同様監視をつけろ」
五和「うーん……でも仕事でしょう? サーシャの手助けをする様な真似はしないと思いますが」
土御門「100%とも言い切れないだろう。兎角、不安要素は取り除いとく。OK?」
五和「……はい」コクッ・・・
結標「何だったら、私が香焼くんの事監禁……じゃなかった。監視しようか?」ニッコリ・・・
五和・土御門「「…………、」」タラー・・・
結標「……冗談よ」アハハ・・・
偶に、冗談に聞こえないのが怖いんです。
土御門「まぁ……そうだな。香焼が言う事聞かない時はオシオキとして、縛ってひん剥いて、コイツにくれてやっても良いぜぃ」ハァ・・・
五和「ヴぁい!?」ブッ!!
結標「じょ、冗談だって言ってるでしょ! そんな状態のあの子渡されても困るだけだし」アタフタ・・・///
魅力的な提案(?)に怖気付く結標さん。案外チキンだな。
さておき、都市側の動きは如何するのだろう。それに合わせて此方の動きも変わるのだが。
土御門「それを今から直接アレイスターに聞きに行くつもりだった」
五和「はぁ……もしかして迎撃でしょうか」
土御門「有り得るな。警備員に監視をさせつつ……暗部で迎撃退治。抹殺」
その言葉に身を引き締める。
五和「しかし相手が本当にサーシャなら、一筋縄ではいきませんよ」
土御門「ああ。最悪、超能力者(レベル5)3人の内どれかが投入されるかもな」
結標「そんな凄いのが相手なの? 私とか海原じゃ相手出来ないとか」
土御門「お前じゃケチョンケチョン。海原でドッコイ。持久戦になりゃ一方通行でもキツいな」
コウちゃんの話だと純粋な実力でマグヌス神父とドッコイだと聞く。
そこに噂の『神の力』が加われば……女教皇様とドッコイだ。ぶっちゃけ『能力者』では碌に立ち打ち出来ないだろう。
尤も、御使堕し(エンゼルフォール)の事件以降、彼女が『神の力』を使いこなしたという話は聞かないが……
しかし、魔術・科学の両サイドから見て、要注意人物である事には変わりないのだ。
- 624 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 20:41:33.36 ID:bBzDPXqF0
- とりあえず、土御門との話は終了。
後は私が家に戻り若衆を直接割り振りする。
五和「でも、香焼如何しよう」ハァ・・・
土御門「ホント頼むぞ。こんな下らない用件でアレイスターに小言言われるのは勘弁だからな」
五和「……はぁ」ポリポリ・・・
土御門「そんじゃ行くぞ。結標」チラッ・・・
結標「はいはい。それじゃあまたね」スッ・・・
伝票を持って立ちさる2人。
五和「やれやれ……とりあえずウラに連絡だなぁ」ハァ・・・
香焼云々に関してはあの子に任せよう。私より上手く立ち回る筈。
五和「それにしても『吸血殺し』ねぇ」ムゥ・・・
原石。オカルト中のオカルト。学園都市の技術、著名な魔術研究所の力を持ってしても不明瞭。
そして……姫神秋沙という個人。
五和「上条さんに知らせない様にかぁ……大丈夫かな」ハァ・・・
多分、知られた『後』の事を考えねばなるまい。そんな気がして止まない。
五和「……兎に角、帰って作戦案作らないと」スッ・・・
頭を抱えつつ、鞄を持って、自宅へ帰る。頼むから『全て』穏便に済んで欲しいモノだ……―――
- 625 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 20:59:45.15 ID:bBzDPXqF0
- ―――とある3日目、PM06:40、日本、新潟上空・・・・・
日が落ちる。ヘリの上から見る日本を挟んだ太平洋側の俯瞰情景は幻想的だ。
出来る事なら長時間、この眺めを楽しみたいものだが、そういう訳にもいかない。
軍曹「そろそろ目的地に到着します」
大尉「了解だ……諸君、準備は良いな」チラッ・・・
パラシュート部隊が頷く。
大尉「間違えても都市内部には落ちるなよ。ハチの巣死体にされた諸君と対面するなんて事態は勘弁願いたいからな」
失笑。
大尉「特尉も……慣れていないからといって、敵さんに手加減してくれなんて言い訳は通用せんからな」
サーシャ「無論です」コクッ・・・
大尉「宜しい。では最終確認を」チラッ・・・
軍曹殿が説明を開始する。今から数分後、我々は埼玉~神奈川上空を通過。
その間、輸送1号機は時計周り、2号機逆時計回り、護衛兼囮のハインド・ハボックは都市真上を通過。
大尉「尚、任務が終了し次第、休暇をやろう。神奈川の近くには良いオンセンがあると聞いている。少しゆっくりしようか」ハハハ
魅力的な話だ。是非とも御一緒したい。
大尉「さて……ではそろそろランデブーポイント。気を引き締めろ」コクッ・・・
パラシュートの最終確認をし、降下を待った。
- 626 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 21:20:22.64 ID:bBzDPXqF0
- 数分後……埼玉に入る。
日本政府からの無線が入り、それは難なくクリアするのだが、まるでそれをジャックするかの様に、別の信号が入ってきた。
通信兵「大尉殿。『都市』からの電波です……日本語ですが、如何しますか?」チラッ・・・
大尉「やはり『ヤツ』を連れてくるべきだったな……まぁ良い。英語で返してやれ」
頷き、英語で応答する。すると都市側も英語で返答をし『責任者を出せ』とせがんできた。
やれやれ……と大尉殿が通信機を取る。
都市外交員『―――ら―――す――――――……此方、学園都市理事会。此方学園都市理事会』ガガガ・・・
大尉「此方責任者。聞こえている……何用だ」
外交員『貴殿の部隊は何者だ。所属を問う。繰り返す。貴殿の部隊は何処の部隊だ。所属を問う!』
大尉「それに応えたとして、如何するつもりかね」
外交員『貴殿の部隊は我が学園都市の領空圏を通過するルートを通っている様に思われる。許可は取っているのか』
大尉「だから何だ。我々は日本政府の許可を取っている。確認してみろ」
外交員『学園都市が独立自治権を持っている事くらい知っているだろう。都市理事会の正式な許可無く――』
大尉「喧しい。世の中には貴様らのSF都市を独立都市だなどと認めていない国家は五万と居よう」
一同苦笑。確かに『学園都市は日本とは別モノ』と認めていない国家は沢山あるのだ。
日本は好きでも学園都市は嫌い。良く聞く話だろう。
外交員『……国際法に基づいて、我々は都市を置いている』
大尉「そうか。それは済まなかったな。だが日本政府は許可したのだ。我々はそれに従おう」
外交員『貴殿らの部隊、撃ち落とされても文句は言えないぞ?』
大尉「おお怖い……では精々『ミサイル』をブチ込まぬ様、気を付けて通過するよ」ハハハ
外交員『……所属を述べよ。国際裁判所に訴訟してやる』
大尉「そうだな……ソビエト、とでも言っておくよ」クスクス・・・
外交員『はぁ!?』キョトン・・・
大尉「さて……話はそれだけか? では切るぞ」Pi!
外交員『ちょ、待―――』プツン・・・
まるで喧嘩腰。本当にミサイルをブチ込まれたりしないだろうな。
大尉「安心なさい。此方が手を出さない限り、アチラは絶対に手を出さない。仮にも『日本』だ」
成程。本当に怪我をしてからでなければ手を出さない日本人特有のヘタレという訳か。納得。
- 627 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 21:54:52.49 ID:bBzDPXqF0
- 通信を切って数分後……一層眩しい街明かりが見えてきた。
アレだけでどれ程の電力を消費しているのかというくらい煌びやかだ。
軍曹「降下用意!」ザッ!
ハッチが開く。物凄い風が吹き込んできた。
都市側の動きはまだ無い。一応、外壁に向け機銃担当が銃口を向ける。
軍曹「囮部隊。くれぐれも都市の人間には掴まるな。気を付けて横須賀まで逃げて来い」
囮部隊『了解』ザッ・・・
大尉「高度は極めて低い。ベースジャンピング(低高度パラシュート)実戦の良い機会だ。怪我はするなよ」フフフ・・・
まるで任務を楽しんでいる様な口振り。まぁこの人達だからなぁと内心苦笑する。
最初の隊員が第3学区と第14学区の外壁周辺に降下した。続いて2号機の一人目……第17学区付近に降下する。
軍曹「大尉殿。予想通り『六枚羽』が出てきました」チラッ・・・
大尉「やはり来たか……ハインド2機及びハボック2機、行動開始! 都市内をチャフをバラ撒きながら飛んでやれ! 有りっ丈喰らわせろ!」
学園都市最新鋭の無人攻撃ヘリ数十機が出張ってくる。
護衛のハインドらは電波欺瞞紙(チャフ)をふんだんに捲きながら高度を上げ、そこから曲芸軌道を取り、散会していった。
敵方の無人機は此方の変則軌道と、電波欺瞞紙による探知妨害でアタフタしながらその場にホバリングしている様だ。
大尉「よし。この調子だ……囮部隊、降下を急げ」
隊長も隊員も手際良く行動している。まさに玄人軍人といった所だろう。
一寸後、私の番がやってくる。
大尉「特尉! 準備は良いな!」チラッ・・・
サーシャ「勿論です……助力感謝します」ペコッ・・・
大尉「そういうのは全て終わってからするモノだ……気を付けろよ。我々が関わって子供が死んだという情報は勘弁だからな」ポンッ・・・
サーシャ「…………、」コクッ・・・
必要最低限の荷物が入った軍用バックを前にかけ、パラシュートパックを背負う。
杖(バール)を構え、防風術式を展開。
軍曹「特尉殿、どうぞ」チラッ・・・
サーシャ「了解です……サーシャ=クロイツェフ、出ます!」バッ・・・
大尉「幸運を祈る。『魔女の子』! 無事帰って来い!」ニカッ!
機床を蹴り、地上へ向けてダイブした。
- 628 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/21(水) 22:38:56.62 ID:bBzDPXqF0
- 防風術式を展開しても尚、風の音が止まない。
地面までの距離は100mを切っている……だがギリギリまで我慢だ。成るべく住宅地は避けて着地する。
サーシャ「ふぅー……っ!!」グッ!!
林の様な公園の様な場所を見つける。凡そ70mを切った所でパラシュートを急展開。
ベースジャンピング専用のパラシュートなので非常にコンパクトだが、減速効果の大きい。無論、ベルトに強い付加が掛り身体が痛む。
サーシャ「っ……減、衝撃術式……っ!」ズザザザァ・・・
枝葉に切り揉みされ滑り転がりながら、着地。術式を敷いても重力には敵わない。凄い勢いで地面に弾かれた。
もしいつもの外套を羽織っていたなら身体中磨り減っていただろう。
サーシャ「痛つつ……スカイダイビングは二度とゴメンですね」ヌギヌギ・・・
弱音を吐いてはいられない。急いで現在地を確認せねばなるまい。
パラシュートパックを外し、軍用バックの中から携帯を取り出す。GPSを用いて……現在地詳細をチェック。
綱嶋……どうやら東京~神奈川の境らしい。一番近い都市外周から凡そ10km。かなりポイントがずれたか。
サーシャ「ふむ……では行きましょうか」スッ・・・
パラシュートは後ほど外部協力者が回収してくれるらしい。
GPSの現在地データを送信し、近場にあった工事用ブロックの中に詰め隠して、都市方面に向かった。
数分歩いた所で、気付く。
サーシャ「うーん……結構遠いですね」タラー・・・
仮にも日本の都市圏だ。『学園都市』外周とはいえ、住宅地はかなり多い。
サーシャ「だからゴジャゴジャした都市圏は苦手なんです……とりあえず今の内に携帯チェックでも済ませておきましょうか」
出来るだけ人気の無い道を進みながら、携帯チェックを始めた。
ワシリーサからのしつこい励ましメールと……レッサーからのメール。
サーシャ「……これは住所でしょうか?」フム・・・
『第1学区』と頭にある。多分、都市内部の何処かだろう。文末には『セーフハウスを確保してあげましたよっ(>ω<)ノシ”』と書いてある。
……何だコレ?
サーシャ「まぁ最悪、頼りますよ」フフフ・・・
メールで短く『ありがとう』と返信し、電源を切る。
さて……外壁に急ごうか……―――
- 629 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 00:18:19.66 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM07:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・香焼side・・・
もあいが頻りにベランダに出ようとする……何やら外が騒がしい。
テレビを点ければ分かる様に『テロ』紛いな事が起きてる様だ。
浦上「いやはや……物騒だネ。結構高い高度で動いてるみたいだけど……武装ヘリかな??」ボリボリ・・・
香焼「お前は平和だな……非常時だっていうのに」ハァ・・・
浦上「まぁ都市の防衛は完璧だからネー。こと軍事に関しては」
確かに。
香焼「調べに行かなくて良いのかな?」
浦上「警備員が出張ってるっしょ。もしくは……暗部がネ」
香焼「…………、」
浦上「あー、香焼が気にしてる様な心配は無いと思うヨ」
香焼「……は?」
浦上「誰かちゃんの事、気にしてんでしょ?」ニヤリ・・・
……否定はしない。
浦上「まぁあんなに高い所でドンチャンやってるからネー……最愛ちゃんは狩り出されないっしょ」
香焼「……さぁね」テクテク・・・
もあい「んなー」カリカリ・・・
TVで部屋から出るなという注意のテロップが出ているにも関わらず、ベランダに出る。
香焼「本当に、テロなのかな? 犯行声明は出てるのかな」ジー・・・
浦上「さぁ。でも声明なんか出したらテロっぽくないじゃん」
香焼「……とりあえず、自分達に連絡が来ないって事は魔術側によるテロじゃないんだね」
浦上「ハハハ。まぁ魔術師が武装ヘリ乗って奇襲しかけてきたらマジ爆笑モノだよ」フフフ・・・
香焼「いや。今の時代、魔術魔術しい輩の方がマイナーっすよ。文明の利器を使いつつ、如何こうするってのがメジャーだってば」
浦上「まぁねー……とりあえず、命令が来るまで大人しくしとこ。必要であれば嫌が応にも土御門さん辺りから連絡来るだろうし」
下っ端が勝手に調べに行ける話では無いという事か。今は黙って報告を待とう。
- 630 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 00:57:57.38 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM08:30、日本、神奈川県相模原某所~学園都市第10学区外壁・・・・・
数キロ歩き『あ、これもう迷ったわ』と現状に気付いてしまって、タクシーを拾ってしまった。
任務に支障が出るかと多少悩んだりもしたが、まさか敵の工作員が市営タクシーを利用するとも思うまい。
感じの良さそうな中年男性が『ガイジンさん』とやけに楽しそうだったのが記憶に新しい。
そんな与太話はさておき、やっと外周付近に辿り着いた。
予定時刻より大分オーバーしてしまったが、仕方あるまい。あと二日以内に蹴りを点けよう。
サーシャ「さて……まずは潜入ですね」フム・・・
まともに関所は通れない。
となると、外壁を乗り越えるか、強襲をしかけるしかないのだが……事は荒立て無い方が良かろう。
気配遮断の術式を自身に掛け、地脈を用いて人払いの結界を広めに展開する。
幸い、日本という島国はふんだんに地脈や龍脈といった魔術的パイプが張り巡り易い土地なので、結界を張るには好都合だ。
サーシャ「……予想通り、このブロック付近の警備は甘い様ですね」ジー・・・
第10学区の更に第11学区側。逆の第2学区側なら警備がキツかったのだろうが……これは御の字だ。
定期的に訪れるサーチライトの数が多いだけで、人気は少ないと見える。
サーシャ「では、行きましょうか」スッ・・・
加速し一気に跳躍する……外壁の中頃に特製の『釘』を打ち込み、それを踏み台に、もう一度跳躍。
あっさりと侵入成功。
サーシャ「防衛システムは……作動して無い」ホッ・・・
一息吐き、結界を解く。以後、魔術の使用は極力控えねばならない。
サーシャ「まさか魔術師でありながら軍人宛らの潜入任務(スニーキング)をするとは……やれやれですね」ハハハ・・・
嘆きたい所だが、止まってはいられない。
幸いこの第10学区は隠れる場所(廃屋)が多そうなので、敵に見つかる確率は低かろう。
近場の廃倉庫に潜り込み、バックの中の整理を始める。
・杖(バール)。金槌。折り畳み式の鋸鉈。金杭。 ← 武器類
・携帯電話(使用不可)。地図(紙)。注射器(『血』採取の為)。カ(21)ーメイト。 ← その他。
サーシャ「OK……では行きましょうか」コクッ・・・
何事も無く事が進むのを願う。私は覚悟を決め、歩み出した。
- 631 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 01:19:02.10 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM08:40、学園都市、第7学区、窓のないビル、内部・・・・・・
アレイスター『ヘリが遠ざかる……そろそろかな』フム・・・
土御門「ん……分かるのか?」ジー・・・
アレイスター『魔術反応は無いが、戦略的に考えれば潜入したんだろうね。既に都市中にオジギソウを展開させてるよ』
土御門「囮は引いた、か……オジギソウなんて危険なモノを使わんでも良いだろう」
アレイスター『保険だよ。「水」の魔力が使われたら、其方に集中するようにしている』
土御門「そりゃオッカナくて俺もオチオチ魔術は使えないぜぃ」ハァ・・・
アレイスター『君はそうそう使わないだろう』クスッ・・・
土御門「ところで『風斬』は出すのか?」チラッ・・・
アレイスター『暴れるようならね。だが基本は警備員と暗部に任せるよ』
土御門「警備員は表向きの監視として……暗部は何処を出す?」
アレイスター『ふむ……何処という括りは無いが、とりあえず君以外だな。少しなりとも情が入ってしまうだろう?』フフフ・・・
土御門「阿呆抜かせ……何処でも良いが、対魔術師戦なら人選に気を付けろよ」
アレイスター『となると超能力者を向かわせたい所だが……彼らは派手だからね。まったく困ったものだよ』
土御門「海原辺りに手伝わせるか? 魔術勝手を分かってる方が分が良いだろう」
アレイスター『その辺が妥当だろう……下手にアイテムやスクールを動かしても返り打ちにされかねないからね』
土御門「まぁな……(その方がやり易いぜぃ)」ホッ・・・
アレイスター『ふむ……では彼と「妹達(シスターズ)」を数名付けようか。「妹達」の人選は君に任せるよ』
土御門「アイアイサー。そんじゃ帰るぜぃ」テクテク・・・
アレイスター『そうそう。土御門』ボソッ・・・
土御門「……ん?」ピタッ・・・
アレイスター『今回はあくまで、学園都市(ウチ)の利益の為に動いてくれよ』フフフ・・・
土御門「仰ってる意味がまるで分からないぜぃ、統括理事長殿」クイッ・・・
アレイスター『なぁに。自分の為に動く君だ……同級生の「血」を悪い様に使われたくは無いだろう? そういう事さ』フフフ・・・
土御門「……ふんっ」テクテク・・・
アレイスター『……日和ったね、土御門』クスクス・・・
- 632 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 01:32:05.84 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM09:00、学園都市、第7学区、『ビル』付近の公園・・・・・・
あからさまに機嫌の悪そうな表情で『ビル』から出てきた土御門。
演算狂うからボソボソ恨み辛みを吐き出すのは勘弁願いたい。
土御門「糞っタレ……今に見てろ、あのバケモン野郎」ペッ!
結標「完全に小悪党のセリフよ、それ……そんで如何なったの?」ハァ・・・
土御門「……海原を出す。『妹達』を数名付けてな」テクテク・・・
成程。私や一方通行が嫌う『対オカルト』部隊の出番という訳か。
結標「アンタは勝手気ままに動くんでしょうけど私と一方通行(アイツ)は如何すりゃいいの? 今回、グループの仕事みたいなもんでしょ」
土御門「アイツは待機で十分だ。お前はさっきも言った通り勝手に動け」チラッ・・・
結標「勝手ねぇ」ポリポリ・・・
土御門「ただ『使者』との接触探索は勧めない。するなら姫神の監視か、香焼の監視にしろ」
結標「海原と一緒に動くなって事ね……じゃあ帰って寝ても良い?」
土御門「とか言いつつ、どうせ訳分かんねぇ動きすんだろ?」
あらら、ばれてーら。
土御門「兎に角、都市に不利益な動きはするな。不利益=『姫神の不幸』だと思え」ジトー・・・
結標「そう言われちゃ、黙ってらんないわね」テクテク・・・
土御門「因みに、姫神自身に気付かれない様動けよ。事は全て水面下で起きている。面に出られたら……その時点でアウトだ」ジー・・・
結標「ラジャ」テクテク・・・
軽く手を上げ、我が家(月詠家)に戻る。さて……私の『平穏』の為に一肌脱ぎますか。
- 633 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 02:02:59.69 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM09:15、学園都市第10学区北部・・・・・・
大通りと裏通りを避け、中規模な道を進む。
こういう場合、大通りは勿論、裏路地も索敵対象になりかねない。故に中くらいの道を行くのが丁度良いのだ。
しかし、この街の様子は酷い……まるでモスクワのカザン駅周辺くらい治安が悪い。
サーシャ(何処の都市にもスラムは形成されるのですね)テクテク・・・
並のスラムより性質が悪いのは殆どが未成年者だという所か。
酒、煙草、クスリ、売春……警察組織が見放した場所……というより、汚れ仕事をこなし易い場所として放置しておいているのやもしれない。
サーシャ(それにしてもこの服装……助かりました)フム・・・
ソ連マーク入りのコート。悪ガキ共から見ればセイスの良いファッション程度にしか思われていない。
因みに、追剥やカツアゲ的な不良が近寄ってきたが、魔術を使わず道具だけで『適当』にあしらってやった。軟弱者共め。
サーシャ(本当はタクシーを探せれば早かったんですが……高望ですね)ハハハ・・・
先のタクシー作戦は上手くいく。特に個人民営のタクシーに乗り合わせれば、足は付かずに目的地まで飛べるのだ。
まぁ治安の悪そうなこの学区に、そういった『足』を望むのは無理難題だったな。
いや、いっそ其処ら辺に屯している旧車やローライダーの不良達に運賃を払って送迎を頼もうか。
……止めておこう。絶対別の場所に連れて行かれる。
サーシャ(さて……そろそろ第10学区ですね)チラッ・・・
明るい通りが増えてくる。此処までは順調だ。
サーシャ(しかし、此処からが問題ですね)フム・・・
問題の第7学区。アレイスターの御膝下。だがしかし『彼』の家は此処からそう遠くない筈。
近場のコンビニを探し、店内の地図で現在地を確認する。残り1kmも無い様だ。
目立つ建物……常盤台中学女子寮。その東側を行けば、『彼』のアパート。
サーシャ(急ぎましょう……迎撃部隊の展開が遅れている様ですし、今がチャンスです)スッ・・・
流石に都市の連中も私が『吸血殺し(姫神秋沙)』本人ではなく、『幻想殺し(上条当麻)』と接触するとは思うまい。
『直接』ではなく『間接』的にという案は中々名案だろう。
サーシャ(少しはワシリーサを褒めてやりましょうか……あ、やっぱ調子乗るから駄目ですね)ハハハ・・・
何て下らない事を考えながら、人気の少ない通りを進む。
- 634 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 02:43:44.08 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM09:30、学園都市第7学区、常盤台中学女子寮付近・・・・・・
御坂妹『―――此方上条宅付近、異常無し。とミサカ10032号は定期連絡を済ませます。オーバー』
御坂丸『―――同じく病院付近異常無し。とミサカ10039号は定期連絡を終えます。オーバー』
御坂.jp『―――同様に第7学区北部「ビル」付近もそれらしき人影無し。とミサカ13577号は定期連絡を(ry』
御坂春子『―――ファミリーサイド付近も以下同文、とミサカ14510号は説明を端折ります』
御坂漢子『―――春子。お前、私用でそこ居るんじゃないんだぞ? とミサカ14889号は「誰かさん」の家ばかり覗く春子に注意をします』
御坂春子『し、してません! そんな事言ったら妹だって「誰かさん」の家ばかり覗いてるでしょう! とミサカは10032号に話を振ります!』
御坂妹『ばっ!! 違いますー! 私は任務ですー! 私(ミサカ)とどっかの春厨を一緒にしないでください!』
御坂蛇「……どっちもどっちだろ。とミサカ17600号は呆れます」ハァ・・・
御坂5's「同感だ。とミサカ15555号も2人に呆れます」ッタク・・・
海原「まぁまぁ。得物が網に引っ掛かるまでは暇とはいえ、気を抜いて貰っては困りますよ」フフフ・・・
妹達(お前も好んで常盤台女子寮付近居るだろうが!)ジトー・・・
御坂緑『はぁ……というかこの回線、運営様(最終信号)に聞かれても大丈夫なんでしょうか、とミサカ19090号は変な心配をします』
御坂家無『別に大丈夫では? 仕事出し……ヤバいのは春子だけだろうけどね。とミサカ19296号は仕事でも無いのに回線に割り込んでみます』
御坂春子『ちょ! ホームレスタレント!!』アタフタ・・・
御坂漢子『ショタグリーンの心配は18456号が何とかしてた筈だよ。とミサカはうろ覚えな情報を流します』
御坂妹『ふむ……というか今日はやけに人が集まりましたね。とミサカは暇人共に苦笑してみせます』ハッ!
御坂百合『っ(鏡)……とミサカ14444号は妹の自虐ネタを笑います』ハハハ
海原「やれやれ、賑やかですね。(……僕、こんなに妹達招集してないけどなぁ)」ポリポリ・・・
御坂蛇「とりあえず、金は理事会持ちだし、集められるだけ集めようかなぁと。ミサカは小切手の0の数を増やす作戦を立てました」フフフ・・・
海原「……スネーク」ハァ・・・
御坂5's「まぁ此処に変態(20000号)が居ない事を感謝しま………………ん……スネークマスター」ボソッ・・・
海原「ん、はい……来ましたか」チラッ・・・
御坂蛇「良し。私達(お前ら)、魚が網に掛ったぞ。とミサカは妹達に報告します」
妹達『了解!』Pi!
御坂5's「南ルートから来ましたか……まぁ妥当でしょうね、とミサカは判断します」ジー・・・
海原「しかし複数潜入の可能性も拭えません。北部班は引き続き警戒を……僕らは先行して『使者』を追います」
御坂蛇「臨界点は上条宅アパート団地入口まで。妹、踏み込んだら警告に入れ。とミサカはマニュアルを伝えます」
御坂妹『分かってます……銃の使用は控えるんでしたね? とミサカは確認を取ります』
海原「ええ。必要な時は許可を出します……僕が到着するまで交渉を。多分、話が分かる相手です。引き延ばして下さい」
御坂妹『了解。動きます』スッ・・・
- 635 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 03:02:44.93 ID:zaIuiHZo0
- ―――とある3日目、PM10:00、学園都市第7学区、とある学生寮(上条アパート)・・・・・・
特に何事も無く、目的地周辺まで到着。
このまま『彼』の家のベルを鳴らしたい所だが……そういう訳にもいかない様だ。
アパートの敷地に入る直前で踏み止まる。
数回周りを確認した後、静かそうな駐輪場を方へ進んだ。
サーシャ「……ふむ」ピタッ・・・
コートの中のバールを握る。
御坂妹「あら……こんばんわ。とミサカはフランクに話しかけます」スッ・・・
サーシャ「こんばんは」ペコッ・・・
御坂妹「そんなに怖がらなくても良いのですよ。とミサカはベンチに座ってポムポムと貴女を誘ってみせます」ポンポンッ・・・
サーシャ「疲れている私にとって嬉しい御誘いですが、遠慮しておきます……第1の質問です。先程からつけてましたか?」ジー・・・
御坂妹「うーん。つけていたといえばつけていました。私(ミサカ)といえばミサカですし、私じゃない(番号違い)といえば私じゃない」
サーシャ「……ぇ???」ポカーン・・・
何かの言葉遊びか?
御坂妹「まぁ些細な事です。気にしないで下さい……ブドウ糖舐めますか? とミサカは甘味をチラつかせてみます」ホラホラ・・・
サーシャ「む……純粋な甘味とは……卑怯なり。都市の人間!」ムムム!
御坂妹「ほらほらー。2個か? いや3個か? 3個が良いのか? このイヤしんぼめ! とミサカはテンプレを告げてみます」ホレホレ!
サーシャ「ぐ、ぬぬぅ……しかし! 私はカ(21)ーメイトを持っています!」バンッ!
御坂妹「ほぉ……プロスネークなら『良いセンスだ!』と褒めている所ですね。とミサカは冷静に受け流します」アッソ!
こやつ、中々手強い。
御坂妹「さて……確認がまだでしたね。貴女はロシアからの『使者』でしょうか? とミサカは質問します」ジー・・・
サーシャ「ふむ……違ウウアル。ワタシ、もんごる人ニダ」
御坂妹「うわぁ何その滅茶苦茶解答……考えたの貴女ですか? とミサカは気を疑います」エー・・・
サーシャ「ち、違います! 第1の解答ですが、今のは上司が困った時に使いなさいと教えてくれた言葉で」アタフタ・・・
御坂妹「あーはいはい。上司ねー。上司さんの所為って事にしておきましょうねー。とミサカは生温かい目で応対します」ハイハイ・・・
サーシャ「ぐ、ぬぬぅ……ワシリーサ殺す!」ムキー!
やっぱあの上司は信じられん。私の思うとおり行動しよう。
- 636 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 03:29:19.93 ID:zaIuiHZo0
- 兎角、アチラのペースに呑まれてはいけない。
サーシャ「使者とか何とか、意味が分かりませんが、私はこの先へ向かいたいだけです」
御坂妹「ふむ……困りましたね」ポリポリ・・・
サーシャ「第2の質問ですが、いけない事でしょうか? ただの訪問ですよ? まぁ時間は時間ですがね」ハハハ
御坂妹「……此処、男子寮ですよ? とミサカはちょっとアレな返答をしてみます」フフフ・・・
サーシャ「あー……まぁ、ね」フフフ・・・
この際、夜這だろうが何だろうが構いはしない。
御坂妹「明日も学校でしょう。今からの夜這では遅刻しかねませんよ? ミサカは金土のニャンニャンを提案してあげます」クスクス・・・
サーシャ「確かにそれが妥当でしょう……しかし第2の解答ですが、最近付き合い始めたモノで……盛んなんですよ」フフッ
御坂妹「あらあら羨ましい。ミサカもそんなセリフを言える彼氏が欲しいものですね」
サーシャ「第1の予想ですが、すぐ出来ますよ。貴女は綺麗な女性ですから」
御坂妹「あら、御上手」クスクス・・・
さて、そろそろ通して貰いたいのだが。
御坂妹「うーん……ミサカ個人的には通して差し上げても宜しいのですが、クライアントがねぇ」ポリポリ・・・
サーシャ「クライアント?」ムッ・・・
御坂妹「……丁度、今、着いた頃ですよ。とミサカは貴方の背後を指差します」スッ・・・
サーシャ「っ!!」ビクッ・・・
振り向く……1人の男性と、2人の……っ!?
サーシャ「お、同じ顔」タラー・・・
御坂妹「はははは。予想通りの驚き有難う御座います。ミサカは最早既にテンプレと化したこの流れを微笑ましく思いますよ」クスクス・・・
御坂5's・蛇「「…………、」」テクテク・・・
海原「ふふっ。こんばんは。良い夜ですね」クスクス・・・
胡散臭い笑みを浮かべた男性と、全く同じ顔をした3人の女性。
サーシャ「の、能力者……超能力というモノでしょうか」タラー・・・
御坂妹「分身能力者ですか? そんな能力者居たら見てみたいものですね。とミサカは苦笑します」
御坂5's「というか今の発言でこの街の素人丸出しだな。とミサカも苦笑します」
御坂蛇「良くある話だろう。国際法に触れる人体クローン……フィクションとでも思えば良い。とミサカは助言します」
サーシャ「く、クローン……そんな、禁忌を」タラー・・・
十字教の人間からすれば、死体操作くらい禁断の業だ。それを目の当たりにするとは思わなかった。
- 637 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 03:44:19.95 ID:zaIuiHZo0
- 3人の女性に目を奪われる最中、男性が口を開いた。
海原「こらこら。困らせてはいけませんよ」フフフ・・・
サーシャ「……貴方は?」ジー・・・
海原「うーん。今はこの街の人間ですよ、とだけ……ところで先程楽しそうに話をしていましたね?」クスクス・・・
サーシャ「…………、」タラー・・・
御坂妹「どうやら彼女はこの寮に居る殿方との逢引が目的らしいですよ。とミサカは報告します」フフッ
海原「それはそれは。引き留めてすいません」
演技ったらしく微笑む男性。ワシリーサの仮面っぽい笑顔に通じるモノを感じる。
海原「ところで……お相手は上条当麻さんでは無いですよね?」ニヤリ・・・
サーシャ「っ!!?」ギョッ・・・
海原「でしたら今は控えた方が良い。今、彼の部屋には別の女性が2人ほど居ますから」フフフ・・・
2人、だと……禁書目録とは別に誰かが居るのか。
御坂蛇「まったく、フラグを立てては回収せず立てっ放しとは……ミサカは度し難く感じますよ」フフフ・・・
サーシャ「…………、」ダラダラ・・・
海原「さて……ロシア成教所属、サーシャ=クロイツェフさん」フフッ
サーシャ「っ……そこまで」タラー・・・
海原「我々も馬鹿ではありませんからね。敵の素性くらい察しがついています」
これは、拙い。
海原「しかし……此方とて事を荒げたくは無い」ポンッ・・・
サーシャ「……はい」コクッ・・・
海原「大人しく引いて頂けませんか? 深追いする様な事は致しません。貴女が観光をしたというのであれば、それはそれで歓迎しましょう」
御坂5's「無論、監視付きですが、ただ遊ぶ分には何も言いませんから。とミサカは微笑みます」
サーシャ「魅力的な御誘い感謝します……ですが、仕事ですので」ジー・・・
海原「やれやれ」フム・・・
心底残念そうな表情をする3名。バンダナを付けた女性は、如何でも良さそうに煙草を咥え出した。
コイツら……まったく意図が読めない。
- 638 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 04:05:18.75 ID:zaIuiHZo0
- さておき、言われっ放しも何なので此方からも提案してやる。
サーシャ「では第1の提案です。貴方方の監視の下、彼と交渉する……如何でしょうか?」
海原「僕個人の意見としてはOKですが、依頼者は首を縦に振らないでしょう」
サーシャ「第2の提案ですが、金銭で解決出来得るなら、それにも応じましょう」
海原「可能なら、貴女が此処まで来る必要はありましたか?」
悔しいが御尤もだ……仕方ない。
海原「おっと。魔術の使用は控えて下さいね。死人を出したくない」スッ・・・
サーシャ「っ」ピタッ・・・
海原「厄介なので説明を省きますが、魔力に反応して襲ってくるナノサイズの殺人兵器がバラ撒かれているらしいですよ」
サーシャ「っ……忠告、感謝します」チッ・・・
嘘では無かろう。アレイスターが作った対魔術師兵器の中にそういったデータがあったという話を聞いている。
海原「さて……如何しますか? もし飛行機を所望ならチャーター機を。観光を所望ならビジネスホテルを紹介しますけど」
サーシャ「…………、」タラー・・・
海原「抵抗されない事を勧めます。貴女の周りには戦術にして戦車級の能力者が5人程囲んでいますから」
辺りを見回す。寮舎の上に……2,3の人影。多分スナイパーライフルを構えているのだろう。
彼の言葉が本気だとすれば、今の私の武装では突破は不可能だろう。
海原「抵抗しなければ『使者』としてそれなりの応対をさせてもらいますよ」
御坂妹「無論、抵抗すれば『テロリスト』として扱わせて貰います。とミサカは警告します」ジー・・・
御坂5's・蛇「「…………、」」ジー・・・
現状は圧倒的不利。こうなったら……一旦引くしかあるまい。
サーシャ「第3の質問です……出直す、という選択肢は?」
海原「うーん……結局同じ事ですよ? 監視は付きますし、貴女は『目的』には辿り着けない」
サーシャ「……捕虜にはしないのですか?」
海原「M気質ですか? その考えは無かったですよ。対峙か、即刻退去を予想していたのでね」アハハ・・・
御坂蛇「捕虜にするなら任せて下さい。それ相応の設備が整っている場所を知っています、とミサカは師匠に提案します」ニヤリ・・・
御坂妹「それ、半分スネークの趣味でしょう……とミサカは呆れます」ハァ・・・
海原「スネーク。彼女から聞き出す事は何も無いんですから拷問したって無意味でしょ」ハァ・・・
やっぱ、何処かオカシイ連中だ。逆に遣り辛くて堪らん。
- 639 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 04:19:02.39 ID:zaIuiHZo0
- しかし、現状では動けぬまま。此処は脱出する以外無かろう。
サーシャ「……それでは引かせて貰います」コクッ・・・
海原「良かった。無駄な血が流れずに済みますね」ホッ・・・
では投降を、と手を差し伸べてくる彼には目もくれず振り返る。
4名共にキョトンとした表情。
サーシャ「引くと言ったでしょう」
海原「え、あ……投降はされない、と」ポリポリ・・・
サーシャ「第3の解答ですが、流石に科学の街で投降するのは些か不安なモノでしてね」
御坂5's「海原氏(スネークマスター)。彼女、自分の立場分かっているのでしょうか? とミサカは苦笑します」ハア・・・
海原「あはは……まぁその、実を言えば僕も魔術側の人間ですので、信用して貰いたいのですけどね」
なら尚更信用できまい。一度魔術を裏切っている男を信じられるか。
御坂蛇「はははは。御尤もですね。ミサカは彼女の意見に同意します。裏切りモノは何度も裏切る。定説ですよ」クスクス・・・
海原「す、スネーク」ハァ・・・
サーシャ「兎角、帰らせて貰います。第1の願望ですが、生易しい対応ついでに、監視も緩めて貰えないでしょうか?」フフッ
海原「まったく……女性は我儘でいけない……残念ながらその望みは叶える事は出来ませんね」
サーシャ「でしょうね」ポリポリ・・・
仕方ない……やれやれ、と頭を掻きながら帽子を外し、その『裏』に隠しているモノを掴んで―――
サーシャ「では……丁寧な応対をして下さったお礼です」コロンッ・・・
海原・妹達『……なっ!?』ギョッ・・・
―――地面に転がし、急いで逃げた。
- 640 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/22(木) 04:38:32.39 ID:zaIuiHZo0
- <海原side>
彼女の置き土産―――都市製の特殊閃光爆音手榴弾は目にモノ喰らった。
まさかロシアからの使者が我が方の武器を使ってくるとは思わなかった。
御坂蛇「っ……師匠……無事ですか。一応、ミサカが確認を取り……つつ」ヨタヨタ・・・
海原「あはは……一杯喰わされましたね……目と耳が、痛い」タラー・・・
御坂5's「くっ! 抜かりました……外部に居た妹達の追跡の応援を頼みました……とミサカは、報告します」キーン・・・
御坂妹「ま、拙いですね……今の音で……周辺住民が気付きます、とミサカは、3人に伝えます」ヨレヨレ・・・
とりあえず、警備員が駆け付ける前に撤収か。
御坂妹「それがベストでしょう。彼女は他のミサカ達に任せるべきです」キーン・・・
御坂5's「大丈夫。我々の追跡から逃れる事は出来ない筈です……とミサカは自信を持って宣言します」テクテク・・・
海原「ええ、信用しています」アハハ・・・
兎に角、自分は土御門に報告をせねばなるまい。
そう考えた矢先、本人から電話が掛って来た。
海原「はい……もしもし」Pi!
土御門『お前は阿呆か? 何ウチの目の前で爆発騒ぎ起こしてんだボケ!!』ウガー!!
海原「これはこれは、失礼しました」
土御門『ったく……状況は?』ハァ・・・
海原「『使者』と接触。交渉の末、痛い手土産を頂いて逃げられました」
土御門『手土産だと? 魔術か?』
海原「いえ。残念ながら……都市製の『パイナップル』ですよ」
土御門『な、に……何でだ』タラー・・・
海原「知りませんよ。英国の御友達か誰かに貰ったんじゃないでしょうか」ハァ・・・
無言。これは心当たりがあるっぽいな。まったく……鼓膜破れてたら責任はソッチ持ちですよ。
土御門『……兎に角、追跡を続けろ。サーシャ以外の潜入員の存在も気を付けてな』Pi!
海原「はいはい……やれやれ。大忙しですね」ハァ・・・
電話を切り、妹達が手配したバンに乗り込む。
まったく不本意ながら『魔女狩り』の続きといきましょうか……―――
- 641 :>>1 [saga]:2011/09/22(木) 04:39:59.79 ID:zaIuiHZo0
- あい。今回は此処まで。次回やっと香焼と合流です。
何か糖分が足りないので……多少甘めにしたいです。
そんじゃまた次回。ノシ - 642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/22(木) 10:41:35.50 ID:7APJI3c40
- 乙です。
シリアスな話のはずなのにミサカズが出てくると良い意味で締まらないな - 643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/22(木) 12:40:52.43 ID:BmkzWO0Fo
- この適当なユルさが>>1の書く作品のいいところだよな
- 644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/22(木) 12:43:41.46 ID:lP2w4XPDO
- 乙! やっぱ>>1のシスターズは個性が強くて好きだ。とりあえず迎撃が好戦的な暗部連中じゃなくて良かったよ。
しかし主役の香焼もだが、物語の中心が出てこないなー‥‥頑張れ姫神! - 645 :>>1 [sage]:2011/09/23(金) 19:45:06.15 ID:OY42Yv3r0
- こんばんはー。ボチボチ投下します。
- 646 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 20:15:23.47 ID:OY42Yv3r0
- ―――とある3日目、PM10:30、学園都市第7学区中部、とある大通り・・・・・・
状況は最悪。気分も最悪。隊長はそこそこ悪く、疲労は最高潮といった所だ。
『彼』のアパート周辺から逃げる為に都市製スタングレネードを使ったのは良いが、まさか自分にまで多大なダメージを受けると思わなかった。
我武者羅に走り、時折物陰に隠れながら逃げ、現在大きな通りに出た。
サーシャ「さて……如何しましょうか」ハァハァ・・・
敵しかいないこの街で、一晩以上も逃げ切れる自信は正直殆ど無い。
しかも敵方は科学の最先端を駆使して来、おまけに自分は魔術を使えない。
サーシャ「ホント……長い夜です」フゥ・・・
兎に角、遠くに逃げなければ。
ふと思い出したが、確か第3学区の『ホテル・オホータ』に『同志』がいると大尉殿が言っていた。
ホテル内に入る事は出来なくても、その周辺まで逃げ切れば何とかなるやもしれない。
サーシャ「更に、第3~第14学区は外国人が多いと聞きます……変装すればやり過ごせる筈です」スッ・・・
そうと決まれば目的地に急ぐまで。『彼』と『吸血殺し』については、明日明後日の機を見よう。
私は物陰から飛び出し、英語で『A taxi stand(タクシー乗り場)』と書かれた看板の方へ走った。
先の双子(三つ子? クローン姉妹?)の気配は無い……急いでタクシーを選ぶ。
サーシャ「出来れば個人タクシーが……っ」タラー・・・
無い。全て都市営……噂には聞いていたが、本当に何でもかんでも政府(理事会)の監視下に置いている様だ。
だが贅沢は言ってられない。一番先頭のタクシーが『よっしゃ! 客!』と聞こえんばかりに、後部座席のドアを開けてくれていた。
サーシャ「ふぅ……お願いします」サッ・・・
運ちゃん「はいはい。おや? ガイジンさんかい? こりゃまた別嬪さんだねぇ! どっから来たの? 観光? 留学生?」ガハハ
サーシャ「あ、えっと……その」タラー・・・
運ちゃん「あ、英語じゃねぇと駄目か。うぇあー、あーゆー、ふろむ? おーけー?」
サーシャ「あの、第1の要望ですが、急いでいます。飛ばして下さい……あと日本語話せますから」ハァ・・・
運ちゃん「おろ!? 凄ぇなぁ! ぐろーばるってヤツだな! ダハハハ!」ケラケラ!
サーシャ「…………、」イライラ・・・
このオジさん面倒臭ぇ……タクシージャックしてやろうか。
フツフツと沸き上がる怒りと焦りを押さえつつ、さっさと目的地を告げ、タクシー発たせた。
- 647 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 20:49:53.61 ID:OY42Yv3r0
- タクシーを拾って数分後、アレイスター=クロウリーが居ると噂される『窓のないビル』の全高が見えてきた。
威圧感……というよりも、不自然さ。アレを見ていると不快になる。まるで神々に逆らって建築されたバベルの様だ。
そんな暗い思考とは逆に、タクシー運転手の話は止まらない。
この街の昔話や、自分が此処で運転手を始めた経緯、更には離婚した妻との思い出話まで……黙ってくれないだろうか。
正直、早口過ぎるのと方言(べらんめぇ口調)が強くて聞き取れないです。
運ちゃん「―――てな事でよぉ……おっと、退屈だったかな?」チラッ・・・
サーシャ「い、いえ……その、第1の訂正です。日本語話せるとは言いましたが、やはり慣れていなくて」アハハ・・・
運ちゃん「そうか。悪ぃ悪ぃ。あー、目的地は第3~第14間のホテルだったな?」
サーシャ「肯定です。再度、第1の要望ですが出来るだけ急いで下さい」
運ちゃん「あいよー。そうだ、お嬢ちゃん飴舐めるか? 黒飴ナメナメってな」スッ・・・
真っ黒い飴。何だコレ?
サーシャ「え、えっと……、」タラー・・・
運ちゃん「あ、そっか。ガイジンさんには馴染は無ぇよな! そんじゃあ煎餅やるよ! ほれ!」スッ・・・
もう相手するの疲れるから、全部ハイハイ言っておこう。
だがしかし、自分の事ばかり話す相手にこの方法は禁物。余計調子に乗り出した。マジ五月蠅い。
実は昼間の騒ぎは宇宙人の仕業だとか、オーツク河(オホーツク海)に関して日本の政治家はヘタレ過ぎるとか、知るかっての。
だがまぁこのまま何事も無く目的地まで着ければ問題は無い。我慢しよう……そう考えて話を流し続けて数分後……異変が起こる。
運ちゃん「―――そんでな! って……ん?」ジー・・・
サーシャ「…………、」チラッ・・・
運ちゃん「おろ? 故障信号? おかしいな。昼間チェックしたばっかなのに」ウーン・・・
サーシャ「……大丈夫ですか?」タラー・・・
運ちゃん「ライトが落ちかけてるって事ぁバッテリー系か? 困ったなぁ……お嬢ちゃん、急ぎなんだろう?」チラッ・・・
サーシャ「はい」ムゥ・・・
運ちゃん「ふーむ……ちょっと待ってろ。今同業者呼んでやる。近くに居るヤツ呼びゃすぐさ」ハハハ
一応、気前は良い人みたいだ。見識を改めてやろう。
運ちゃん「もしもし。此方17号車、応答を……え?」タラー・・・
サーシャ「……まだ、何か?」
運ちゃん「あー……無線も落ちたか。そんじゃ携帯で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あらら?」タラー・・・
サーシャ「…………、」ダラダラ・・・
運ちゃん「……駄目だ。通じねぇ。オカシイなぁ。何で携帯のアンテナが立たねぇんだ?」ウーム・・・
色々弄くり回している様だが、無駄らしい……私も困った。
- 648 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 21:17:12.10 ID:OY42Yv3r0
- 運転手が『同僚に電話するからもしアンテナが立ってたら携帯を貸してくれ』と頼んできたのだが電池が切れているという事にして誤魔化した。
そこまでしてもらう義理は無いし、これ以上手間取りたくは無い……此処から歩こう。
サーシャ「えっと……第2の要望ですが、此処から歩きますので会計をお願いします」ペコッ・・・
運ちゃん「あー、そうだな。歩いて貰った方が早いかもしれねぇ。もう第7学区の北だしな」フム・・・
サーシャ「はい。では」スッ・・・
運ちゃん「いやいや。お題は要らねぇよ。迷惑料だ。こんなんで金取ってたら別れた女房にまた怒られちまうからな」ハハハ
サーシャ「……では、お言葉に甘えます」ペコッ・・・
何だか申し訳無いのだが、これで余計な足が着かなくて済む。嬉しい誤算と捉えておこう。
では、と手動でドアを開けようとした瞬間―――
運ちゃん「うをっ!!?」ガクンッ!!
サーシャ「っ!!?」ガクンッ!!
―――車体が大きく左に傾いた。何事だ。
運ちゃん「ぱ、パンクか!? ぽ、ぽるたぁ何たらってヤツか!?」ギョッ・・・
サーシャ「ポルターガイストって……パンクなら……ぇ」ハァ・・・
此処で気付く。此処に来て初めて……気付く。
こんなにも事故が続くだろうか。あまりに不運偶然が重なり過ぎてはいないだろうか。
そう考え、車の外を見ると―――
サーシャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」ギョッ!!
―――後方歩道から『彼女達』の一人らしき女性が歩んでくるのが見えた。
更にその後ろの立体駐車場から、ライフルらしきモノを構える『彼女達』の一人がボンヤリと見える。
サーシャ「っっ!! お、お代置いていきます! ありがとうございました!!」バンッ!!
車道側のドアを抉じ開け、車から飛び出す。
運ちゃん「あ、ちょ! って……多い多い!! お嬢ちゃーん、多過ぎだってばぁ!!」アタフタ!
その金で車修理して下さい……畜生、余計な出費だ。都市での観光資金が殆ど飛んだぞ。
- 649 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 21:53:48.41 ID:OY42Yv3r0
- 色々怒鳴り立ててやりたい所だが……愚痴も言ってられたい。
私が車から飛び出したのに気付いた一人が、ダッシュで駆けてきた。
しかもソイツはインカムの様なモノを着けているのか、何やらボソボソと口を動かしている。応援を呼ばれたか。
兎角『ビル』の位置から現在地は把握できる。路地裏に飛び込んでやり過ごそう。
御坂.jp「春子。威嚇射撃を、と追跡するミサカ13577号はスナイプ係のミサカ14510号に指示します」タッ・・・
御坂春子「了解っ」グッ・・・
数歩先の地面が削れた。スナイパーが撃ってきたのだろう。だが、当てる気は無い様だ。
サーシャ「でも……それも今だけ」チッ・・・
時間が経てば身体に当てて行動不能にさせようとするだろう。兎に角スナイパーが厄介。そう考え、裏路地の更に奥へ奥へと進んだ。
そこは第10学区の様に浮浪者や不良の巣窟となっている場に見えたが、構ってなどいられない。
後方からは未だに彼女達の一人が追って来てる。
御坂.jp「漢子……其方に……見えましたか? と先方の18456号に確認を取ります」チラッ・・・
御坂漢子『現在ビルの上……見えた。13577号が走ってる12m程先のコートを着た少女だな? とミサカは返答します』ジー・・・
御坂.jp「肯定です」コクッ・・・
御坂漢子『では、全く人気の無い路地かビル内に入ったら援護に入りましょう。とミサカはビルの上から並走します』タッ・・・
御坂.jp「了解。妹(10032号)達が来る前に片付けちゃいましょう……では後ほど」Pi!
後方の一人は一定の距離を保ちつつ離れない。多分、此方に主たる攻撃手段が無いと分かっている故だろう。
私の純粋な体力など正直、大した事は無い。彼女がその気になれば身体の大きなアチラが有利な筈だ。
サーシャ(近接戦なら行けるか?)ムゥ・・・
サシの勝負となれば話は別だ。一応、杖(バールの様なモノ)は隠してあるのでやれるかもしれない。
そう考え、人気の無さそうな建物へ跳び込んだ。無論、彼女もついてくる。
ドアノブを壊し、更にその先のドアノブをも壊して、どんどん奥へ進む。
そして真っ暗な部屋に入る。これはチャンスと、真横に飛び、彼女がこの部屋に入ってきた瞬間奇襲を掛けようと杖を構えた。
サーシャ「フー……ふー……、」タラー・・・
数分待った……だが、入って来ない。
サーシャ「警戒、してるんでしょうか」ダラダラ・・・
ではこのままこっそり、この部屋から抜けよ――――
御坂漢子「ドチラへ?」ウォン・・・
サーシャ「ッ!!?」ビクッ!!
―――……目の前に、彼女が居た。先の彼女か分からぬが、彼女が居た。最早自分でも何を言っているのか分からない。
スコープらしきものが青白く光り、私を見詰めている。多分アチラからは此方が丸見えなのだろう……これは拙い。
- 650 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 22:18:33.69 ID:OY42Yv3r0
- だが怖気付いてなどいられない。
後ろからの奇襲を拒む為壁を背にし、スコープを着けた彼女に杖を向け、対峙する。
御坂漢子「ふむ……大人しく投降しては頂けませんか? とミサカは交渉します」ジー・・・
サーシャ「改めて第1の……でいいのでしょうか? 兎角、第1の返答ですが……返事は分かっているのでしょう?」ハァハァ・・・
御坂漢子「はぁ……ところで、銃は怖くないのですか? とミサカは原始的な戦闘法を取ろうとする貴女に尋ねてみます」ジー・・・
サーシャ「第2の返答ですが、怖くない訳無いでしょう。逆に第1の質問ですが、貴女は怖くないのですか?」
御坂漢子「さぁ。怖いと言えば怖い、とミサカは曖昧な返答をします」フフッ・・・
ヴォン……と揺らめくスコープの明かりが不気味だ。
御坂漢子「まぁ出来れば無傷で捕えよとの命令が下っているので、銃は使いません。とミサカは貴女を安心させます」ユラリ・・・
サーシャ「それはそれは。お優しいですね……ですが感謝はしませんよ」グッ・・・
御坂漢子「ええ。だって……、」ビジ・・・バジ・・・
サーシャ「っ!!?」ビクッ・・・
スコープとは別の青白い光が走る。
御坂漢子「……私達は『能力者』ですから。とミサカは銃より強力な己の『力』を貴女に見せつけます」フフフ・・・
サーシャ「チッ……学園都市……忘れてました」ギリリ・・・
御坂漢子「何度目かは分かりませんが、ミサカは貴方に投降を呼びかけます。手荒な真似はしたくないのです」ビジバジ・・・
サーシャ「ふー……ふー……、」ダラダラ・・・
御坂.jp「そして……状況は悪化するばかりですよ? とミサカは貴女に勧告します」ビリ・・・ビリビリ・・・
サーシャ「っ……第3の、返答ですが……投降は出来ません」ダラダラ・・・
妹達『では、荒療治です。とミサカは先に謝っておきます』ビジバジビリビリ・・・
如何する……圧倒的ピンチ……切り抜けるには、魔術を使うしかあるまい。
だが、先に会った優男の話では『対魔術師兵器』が大気に散布されているらしい。
急場を凌ごうと策を考えた瞬間―――杖が『青白い光』で弾き飛ばされた。
そして、それを持っていた右手が痺れる。弾かれた振動による痺れではない。何というか……痛さが違う。
サーシャ「電気……ですか」タラー・・・
御坂漢子「正解です……次は貴女に直接当てましょう。とミサカは警告します」テクテク・・・
御坂.jp「投降を。今ならまだ、悪い様にはされない筈です……とミサカは忠告します」ビジバジ・・・
嘘を吐け。
英国のシェリー=クロムウェルの話では、捕まった魔術師はモルモットにされる、との事だぞ。
- 651 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 22:55:01.94 ID:OY42Yv3r0
- 最早、青光りの所為で彼女達の姿がはっきり見える。
ユラユラと近付いてくる彼女達の姿は『☆戦争』のシディ●ス卿宛らの恐怖だった。逃げねば。戦闘よりも逃走。今はそれが優先。
サーシャ「っ!!」バッ・・・
御坂漢子「……やれやれ」スッ・・・ビジバジッ!!
サーシャ「ふんっ!」バララ・・・
御坂.jp「なっ! 何と……、」フム・・・
彼女達が『青白い光』を放った瞬間、持ち合わせていた金杭を宙にバラ撒いた。
所謂、簡易チャフ。無論、全ての『光』を騙せる訳ではないが、囮程度にはなった……もしかして本当に電気だったのだろうか。
兎角、彼女達が呆気に取られているうちに、痺れる身体に鞭打ちながら隣の部屋へ隣の部屋へと逃げ込んだ。
御坂.jp「あのおチビさん、中々頑張りますね。とミサカは意外な展開に驚いています」フフッ・・・
御坂漢子「馬鹿言ってないで追いますよ。確かこの先は『蛇(プロスネーク)』達が待っています、とミサカは確認を取ります」Pi!
御坂.jp「はいはい……ところで、漢子」チラッ・・・
御坂漢子「ん?」
御坂.jp「あの子、本当に何も武器持ってないのでしょうか? まるで工作員とは思えません、とミサカは率直な意見を伝えます」
御坂漢子「うーん……如何でしょう。蛇の師匠(海原)さんが何やら知っている様ですが、特に心配はするなと言ってましたね」トミサカハ・・・
御坂.jp「……何だか一般人の少女を追い駆け回してる様な気がしてきましたね。とミサカは苦笑してみます」ハハハ・・・
御坂漢子「特殊閃光爆音手榴弾を放ってくる娘が一般人な訳無いでしょう。とミサカは貴女の発言に呆れ返ります」ハァ
何やら後方の動きが遅い。このままこの廃屋から出てしまおう。
考えを改めたが、多少なりとも人気があった方が彼女達は攻撃できないと見た。
サーシャ「ハァハァ……あの窓からっ」グッ!
ボロそうな窓を蹴破り、外に転がり出る。
現在地は分からないが、兎に角スナイパーに気をつけながら大通りに出よう。此処よりはマシだ。位置確認も出来る。
コートの中に手を入れ、残りの金杭を握りながら、大通り方面へ走―――
海原「……随分とボロボロですね」フフッ・・・
―――月を背景にビルの屋上から私に話しかける優男。なんてキザな登場だ。
態々上ったのか? 狙ってるのか? 恰好良いと思ってるのか? ぶっちゃけキモいぞ?
海原「いやはや、手負いのキツネはジャッカルより何たらだ……ってスネークが良く言ってましたね」チラッ・・・
御坂蛇「…………、」ガチャッ・・・
御坂5's「海原(スネークマスター)。私が出ましょうか? とミサカは進言します」チラッ・・・
海原「うーん。15555号の雷華崩拳、強力過ぎますからね。手加減出来ますか?」ウーン・・・
御坂5's「そこのうろ覚えCQC使いよりは上手くやれますよ。とミサカは微笑みます」フフッ・・・
御坂蛇「……後で泣かせる」ボソッ・・・
海原「こらこら。喧嘩しないでください…とりあえず、10032号。前方を塞いじゃって下さいな」ハァ・・・
御坂妹「了解です」スタッ・・・
私から見て前方にネックレスを掛けた『彼女』。右上に優男とバンダナをし、スナイパーライフルを構えた『彼女』。
左上に鉢巻きと穴開き手袋をした『彼女』。そして……後方から追って来ている筈の『彼女』が2人。
マジ、ピンチ。
- 652 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 23:04:25.65 ID:OY42Yv3r0
- 優男が投降を促す。前方からはネックレスの彼女が、後方からは先程の2人が近づいてくる。
サーシャ「投降は、できません」タラー・・・
この絶望を乗り切る為の手段として、私は―――
①『魔術』を使う。
②戦えるだけ『戦う』。
③助けを『叫ぶ』。
>>655 - 653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/09/23(金) 23:05:22.55 ID:UQ8R2WFAO
- ③
- 654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/09/23(金) 23:11:34.55 ID:5EAHEORAO
- いち
- 655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/23(金) 23:13:23.90 ID:vyIrrpJDO
- ③
- 656 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/23(金) 23:40:03.93 ID:OY42Yv3r0
- ―――とある3日目、PM11:30、学園都市第7学区北部、とあるビル屋上・・・・・・
天草の若衆はサーシャ=クロイツェフの行動を唯只管監視していた。
知り合いである彼女がボロボロになる姿を見続けるだけという酷な任務だったが、公私は混同出来ない。
2人組(ツーマンセル)でも監視。現在、一番近場に居るのは浦上と同じくらいの年齢の男女。
時津「―――……此方、セル5。現在『水魔(サーシャ)』は都市の暗部と交戦中。6対1……いや、7人に増えた。圧倒的不利だ」Pi!
長与「同じく、セル5……多分、捕獲されるわ。ヤングボス(五和)……良いの?」ボソッ・・・
五和『此方ヤングボス……仕方ないわ。監視を続けなさい』Pi!
残酷だが、英国側は監視の命令しか出していない。
これはロシアと学園都市の問題故に、関与できないのだ。
長与「……サーシャ。如何なるのかしら」ジー・・・
時津「さぁな……捕虜にされてその内釈放されるかもしれねぇし、モルモットにされるかもしれねぇ」ジー・・・
長与「モルモットって……シェリーさんが昔受けたっていう、実験とかの」タラー・・・
時津「それだけで済まないかもな。情報に寄れば『天使(神の力:ガブリエル)』とも縁深いんだろ? アイツ……リアル解体とか」フム・・・
長与「っ……そんな非人道的な事……その時は、多分、女教皇様が助けに入るわよね」チラッ・・・
時津「分かんねぇよ……兎に角、見守るしかねぇだろ」ハァ・・・
此処に、我らが末弟分が居なくて良かった。彼なら命令も聞かず、あの中に突っ込んでいっただろう。
時津「ん……2人動いた。格闘に出るつもりだな」ジー・・・
長与「抵抗するかしら?」チラッ・・・
時津「するだろう。捕まったら如何なるかくらい検討は付いてるだろうし……何よりアイツにも任務がある」ジー・・・
長与「……無事、逃げる事出来れば良いけど」ムゥ・・・
彼女の無事を祈る事しか出来ない。
だが相手は暗部……そして戦闘のプロと云われる超能力者第3位のクローン兵団、妹達(シスターズ)。正直、魔術を用いても難しい。
遠目から見遣る彼ら。半ば諦めかけた……その時―――
サーシャ「っ……キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!」イヤー!!
―――叫んだ。
時津「んなっ!?」ギョッ・・・
長与「ま、まさか……何で!?」キョトン・・・
関係者一同、誰もが目と耳を疑った。彼女が叫んだのだ。
まるで暴漢に襲われた、か弱い少女の様に。
- 659 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 00:05:52.66 ID:ptH58nqY0
- しかし、サーシャは叫ぶだけ。決して身じろいだりしていない。至って冷静模様。
長与「な、ど、如何いう事!?」タラー・・・
時津「……警備員(アンチスキル)か」ジー・・・
長与「え?」ポカーン・・・
時津「簡単な話だ……今の絶叫を聞いて、警備員や風紀委員(ジャッジメント)が黙ってる訳無いだろう」チラッ・・・
長与「あ……成程」コクン・・・
だが、それは賭けだ。もし近くに警備員が居なければ元も子もない。
時津は周辺の若衆に確認を取った。
時津「此方セル5。『震源地』周辺に警備員、または風紀委員らしき影はあるか?」Pi!
セル6『此方セル6……無いです。不良ばっか』
セル7『此方セル7。居るには居るが……武装無能力者集団(スキルアウト)の対応に回ってる』
セル4『此方セル4。風紀委員らしき人影があるが……多分、暗部のフェイクよ。聞いてないフリしてる』
時津「了解……駄目そうだな」フム・・・
長与「無駄骨、なのね」ハァ・・・
五和『此方ヤングボス。セル5……監視を続けなさい。良いわね……現状報告を』
長与「分かってます……現在、『水魔』が叫びました。多分、公の助けを求めたのでしょう。ですが、無駄みたいです」ハァ・・・
時津「っ……『震源地』に変化有り! 今の叫びに危機感を持ったらしく、妹達が攻勢に出た!」
4人の妹達がサーシャに電撃を浴びせる。
サーシャは金杭をバラ撒きながら抗戦しているが、屋上のスナイパーからの銃撃を腕に喰らった様だ。
防弾繊維(ケブラー加工)なのか、貫通はしないモノのかなり吹っ飛ぶ。同時に、鉢巻きをした一人が彼女に近づいていった。
時津「……水魔が一時ダウン。捕まるのも時間の問題だ」
五和『そう……セル5。彼女達の移動先までしっかり監視しなさい。後ほど捕えられた場所を上に報告します』
長与「了解、です」Pi!
サーシャは難とか立ち上がり、折り畳み式の刃モノを開き、対峙する。だがその姿は如何見ても満身創痍。
無論妹達の電撃は止まない。それどころか、鉢巻きを着けた一人が格闘に打って出た。
サーシャは転がる様に逃げる……もう無理だな、と2人が諦めたその時―――
セル7『こ、此方セル7! 此方セル7!』Pi!
時津「……如何した?」
セル7『非常事態! 其方にイレギュラーが向かった! 繰り返す、イレギュラーだ!』アタフタ・・・
長与「イレギュラー!? 警備員が来たの!?」ホッ・・・
セル7『違う違う! もっと面倒なヤツがソッチに向かった! 如何すんだよ、これ!!』アタフタ・・・
セル5の2人はセル7の戸惑う声に、緊張した。鬼が出たのか蛇が出たのか……はっきり伝えてくれ。
- 660 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 00:22:24.45 ID:ptH58nqY0
- 五和がセル7を落ち着かせ、報告を急がせる。
五和『それで、セル7。イレギュラーって何なの?』
セル7『7番目だよ! 超能力者第7位だ!』ガアァ!!
一同『なっ!!?』ギョッ・・・
セル7が居る方角は東。
時津「ちょ、超能力者第7位って……、」タラー・・・
五和『そ、削板くん!?』ゲッ!!?
またしても、末弟関係者……一同動揺する最中、追い打ちが掛る。
セル4『此方セル4! よ、良く分からないけど……こっちもイレギュラーかも。震源地、向かってるわ』タラー・・・
長与「こ、今度は何?」タラー・・・
セル4『え、えっと……バイク? 異常なスピードでそっち向かってる! ゴリラみたいな体格の男よ!』
時津「え、な、た、只の走り屋じゃないのか?」
セル4『そうかもしれないけど……顔が……その』タラー・・・
時津「何だよ?」
セル4『あれって……禁書目録と同じよね』エー・・・
言ってる意味が分からない。顔が禁書目録と同じ? ゴッツいガタイで? そんな人物想像したくない!
セル4『違うわよ! 被りモノってかマスク!? 何て言ったっけ……ほら、あれ! 修道服!』
五和『もしかして「歩く教会」の事?』
セル4『それよ! 「歩く教会」みたいなマスクしてるの! 刺繍とか似てるわ』
何だそれは? 自分達は聞いた事もないぞ。
長与「そ、そういえば……新しい都市伝説で『弱き者の為に行き帰ったゴーストライダー(スキルアウトのリーダー)』っていうのが」タラー・・・
時津「阿呆抜かせ! んなオカルト通り越したデマ話信じられっかっての!」アセアセ・・・
五和『落ち着きなさい、セル5……兎に角、監視を続けなさい。出来るだけ実況して』ハァ・・・
セル5の2人は一度大きく深呼吸し、監視に戻る。
その目と耳には……東の空からやってくる『根性野郎』と、爆音を響かせる『バイク』の音が入ってきた。
- 661 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 00:41:40.89 ID:ptH58nqY0
- <サーシャside>
疲労困憊の最中、私は驚愕した。
彼女達の動きが急に止まった事と……空から男子が落ちてきたからである。
サーシャ「あ、え……ぁ」ポカーン・・・
削板「……ふんっ!」ドッシィーーーーンッ!!
白い制服に、白い鉢巻き。
削板「大丈夫か?」チラッ・・・
サーシャ「え、えっと……はい」タラー・・・
削板「うん、そうか……俺が来たからには、もう安心しろ」ニカッ!
何故か安心できない満面の笑みを向けられる。
海原「……えー」タラー・・・
御坂妹「うわぁ……⑦(バカ)が来ました。とミサカは心底呆れてみます」ハァ・・・
削板「さて……またオマエらか。今度は6つ子だな。やっぱアレか? ○ョッカーの戦闘員的なキャラなのか? オマエらは」ヤレヤレ・・・
御坂蛇「……チッ」バンッ!!
海原「っ!? スネーク! 止めなさい!」ギョッ・・・
サーシャ「っ!!?」ギョッ・・・
間髪置かず、暑苦しい男に対してトリガーを引いたスナイパー。
弾丸は彼の脳天に直撃し、倒れ……倒れ……倒れ、ない。
削板「いぃッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っつてええええぇなぁっ!!! 何すんだボケぇ!!」ウギャアアアァッ!!
御坂.jp「うわぁ……相変わらず非常識です。とミサカはドン引きしてみます」エー・・・
海原「スネーク、止めなさい……気持ちは分かりますが、こうなった以上、手出しは出来ません」タラー・・・
御坂蛇「チッ……了解です」ハァ・・・
御坂漢子「ふむ……5's(ファイズ)ならいけるのでは? とミサカは提案してみます」チラッ・・・
御坂妹「そういえば5's、彼とやりあった時居ませんでしたね。もしかしたら……とミサカは期待を寄せてみます」フフッ・・・
御坂5's「……スネークマスターの指示に従う。とミサカは其方を見ます」チラッ・・・
海原「えっと……非常時マニュアルには『№7と遭遇した際には撤退する事』となってるんですがねぇ」ハハハ・・・
削板「ったく、ゴチャゴチャ五月蠅ぇな……俺が悪党を逃がすとでも思ってるのか?」ギロッ・・・
海原「はぁ……ドチラかといえば、悪党はその子ですよ」ヤレヤレ・・・
と言っても信じるタイプの男じゃなさそうだ。現状、如何見たって、悪モノは彼女達の方だ。
彼が本物の『英雄』なら、これは……本当に助かったかもしれない。
- 662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/09/24(土) 00:42:12.19 ID:jHYFSTrAO
- 香焼かと思ったら、メチャクチャ面倒なやつらが来やがったwwww
- 663 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 01:02:26.47 ID:ptH58nqY0
- 兎角、彼の後ろから離れず、逃げる隙を図る。
彼女達は彼の歩が進む度、後ろへ下がる。一見お馬鹿そうにみえる男だが、実力は本物なのかもしれない。
削板「何だ? 掛って来ないのか?」ジー・・・
海原「撤退します、と言ったら?」ハァ・・・
削板「追い駆けてケチョンケチョンにしてやらぁ」グッ・・・
海原「やれやれ。仕方ありませんね……スネーク、作戦を伝えます。妹達に流して下さい」ゴニョゴニョ・・・
御坂蛇「……了解」チッ・・・
隣のスナイパーに耳打ちする優男。そして何を思ったのか、下へ降りてきた。
削板「てめぇが……敵の親玉か? いや、死神博士ってとこだろう」
海原「何でも良いですよ。好きに呼んで下さい……5's、戦闘を許可します。全力でブツかって下さい。彼死にませんし、殺しはしませんから」
御坂5's「……了解」ニヤリ・・・テクテク・・・
削板「ん……オマエ……大能力者だな。他とは違ぇ」ジー・・・
御坂5's「さぁ。自分でも分かりませんよ。ただ他よりちょっと格闘に特化しているだけですから。とミサカは説明します」フフフ・・・
削板「へぇ……そりゃ楽しみだ」ニヤリ・・・
緊張が走る。そして……―――
御坂5's「来い! コッチだ! とミサカは壁を蹴って屋上に上がります!」バッ!!
削板「面白ぇ! 地面じゃ狭すぎる! 行くぞオラァっ!!」バッ!!
―――……えー。
御坂妹「やっぱ⑦でしたね。助かりました、ミサカは安堵します」ハハハ
海原「という訳で……残念でしたね」フフッ
サーシャ「改めて、第1の質問ですが……こういう時、『不幸だー』って言えば良いんでしたっけ?」ハァ・・・
海原「お好きにどうぞ」ニヤリ・・・
御坂.jp「貴女の絶望は変わりないですけどね。とミサカは某ライダー風に言ってみせます」ビシッ!
再び、青白い光とライフルを構える彼女達。優男も何やら短刀の様なモノを……っ!?
サーシャ「黒曜石のナイフ……魔力……魔術、師、ですか」タラー・・・
海原「ええ。さっきも言った筈ですけどねぇ……まぁ貴女が最後の手段(魔術)を使わない様、保険を掛けただけです。基本僕は戦いません」
悪役も楽しいモノですね、と微笑む優男。
私は鉈を構えたが、それもライフルでフッ飛ばされた……これで……終わりか……
- 664 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 01:22:43.16 ID:ptH58nqY0
- せめて条件をつけて降伏しようと、全ての武器を降ろそうとした刹那……彼女達の一人が告げた。
御坂蛇「っ……マスター! 春子から連絡……『仮面』だ! 間違いない! V-MAXだ! ミサカは叫びます!」チッ・・・
海原「今度は、また……何故……、」タラー・・・
御坂妹「スネークマスター。厄介事になる前に、蹴りをつけましょう。とミサカは提案します」チラッ・・・
海原「そうですね……サーシャ=クロイツェフ。最後の忠告です。投降を」ジー・・・
サーシャ「…………、」ジー・・・
良く分からないが、彼らは焦っている。不都合でも起きたのだろう。
つまり……もう少し粘れば勝機があるかもしれない。
サーシャ「……もう少しだけ、頑張りますよ」ユラッ・・・スッ・・・
海原「そうですか……残念です」スッ・・・
金槌一本彼らに構え抵抗する。優男の合図と共に、彼女達が『光』を放ってきた。
痺れる。熱い。苦しい。痛い……だがもう少し我慢だ。きっと逃げ道はある。
握力が無くなり、金槌を落としてしまう頃に、それはやってきた。
御坂蛇「マスター! 来てしまったぞ! ミサカはヤツに銃を向けます!」ガチャッ!!
海原「ッ!! 皆! 攻撃を止めなさい!!」バッ!!
サーシャ「っ……ハァハァ……助かっ、た」フラフラ・・・
バイクの音……ネイキッドの様な、アメリカンの様な、独特な重低音。
何故こんな狭い路地に入ってきたかは知らぬが、多分、私にとっての蜘蛛の糸だろう。
海原「……こんばんわ」コクッ・・・
ライダーがゆっくりと、バイクから降りる。
ゴリラの様な体格。真っ黒のライダースーツ。真っ黒なライダースパンツ……それとは対照的に、神々しいまでに白い手袋と……仮面。
??「…………、」カツカツ・・・
何も言わず、此方に向かって歩いてくる。
海原「土御門からは何も聞いていないのですか? 何故、此方に?」キョトン・・・
??「…………、」カツカツ・・・
海原「くr……駒場さん?」タラー・・・
『駒場』と呼ばれた大男は、無言で、私の下まで歩み寄ってきた。
- 665 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 02:08:32.17 ID:ptH58nqY0
- 彼女達は戸惑いを隠せぬまま、大男に武器を向ける。
敵意が無いのは伝わるが、彼が此処に居ては困る様だ。優男も同意見の模様。
大男は私に手を伸ばし……頭にポンっと手を乗せた。
駒場「……大丈夫か」
サーシャ「え、あ……はい」ポカーン・・・
駒場「……そうか」ナデナデ・・・
帽子越しにでも分かる大きな手。
海原「……駒場さん」ハァ・・・
駒場「オレは……半蔵に言われて、来た。街の中で……騒いでいる者達が、居るといわれてな」チラッ・・・
海原「服部さんですか……まぁ第7学区(此処ら辺)の顔役ですから仕方ありませんね」ヤレヤレ・・・
駒場「…………、」キョロキョロ・・・
御坂妹「うっ……、」タラー・・・
御坂漢子「こ、コイツは? とミサカは問います」タラー・・・
御坂蛇「コイツは――」
海原「スネーク」チラッ・・・
御坂蛇「―――っ……駒場、利徳。死人です、とミサカは説明します」チッ・・・
死人、という言葉に一同驚愕する。
海原「まぁ君達が深く知る必要な無い方ですよ」ハァ・・・
駒場「ところで、海原……街中、この子を追い回した理由は、あるんだろうな? 返答次第では……分かっているだろう」ジー・・・
海原「勿論。というか土御門から直接聞かれた方が早いですよ。貴方、今回服部さんの頼みだけで動いたのでしょう?」
駒場「いや……後は『所長』だ。『軍覇がいきなり飛んでいった』と、言われてな。追い駆けろ、と言われた」フム・・・
海原「あの所長ですか……面倒な。『原石』関係の問題だというのに」ヤレヤレ・・・
私、空気。
海原「兎に角、土御門に連絡してみてください。貴方が納得するまでは僕達も手出しはしませんから」ハァ・・・
駒場「…………、」スッ・・・
耳に手を当て、ゴソゴソ呟き始める大男。ちょっと待て……今、土御門と言ったか!?
海原「勘違いされては困りますが、彼はヒーローじゃありませんよ。問題解決屋(トラブルバスター)に近いでしょうね」
サーシャ「なっ……っ!」ギョッ・・・
御坂蛇「正統性がドチラに有るか分かれば、此方に協力する。とミサカは冷静に告げます」フンッ・・・
拙い。必要悪の教会(ネセサリウス)と学園都市の多重スパイ―――土御門は、多分、今、私の『敵側』だ。
この大男がその協力者だとしたら……チェックメイトだぞ。
- 666 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 02:29:42.82 ID:ptH58nqY0
- 不安を抱きながら、大男を見詰める。逆に優男達は安堵の表情。
緊張が走る中、徐々に大男の声が大きくなってきた。
駒場「―――……つまり……都市にとって、敵だと?」フム・・・
大体会話が想像できたが……非常に拙い。
駒場「姫神の……原石の血? それは……所長に話が通ってるのか?」ボソッ・・・
海原「……ぇ」タラー・・・
駒場「理事長の意向? 原石の監督は、所長に一任されている筈だ……所長に、連絡を取れ」ボソッ・・・
海原「ちょ、待、こ、駒場さーん」ダラダラ・・・
雲行きがおかしい。大男は耳から手を遠ざけ、優男の方を向いた。
駒場「……所長判断が先だ」ジー・・・
海原「なっ……し、しかしですねぇ。彼は……、」アタフタ・・・
駒場「真面目に話を通して無いな? まずは、所長を通せ。その後……処理を決めろ」チラッ・・・
サーシャ「え、あ」フラフラ・・・
海原「が、外交問題なんですよ。個人の如何こうではなく」タラー・・・
駒場「中心に居るのが、姫神秋沙(原石)だ。彼女に、この旨を……説明するのが、筋だろう。違うか?」ジー・・・
海原「それを僕に問いますか? 一介の兵隊に過ぎないのですよ?」ハァ・・・
駒場「知った事か……兎角、全て終わるまで、彼女の監督は任せてもらう。所長の下に送るぞ」チラッ・・・
海原「こ、困りますって」タラー・・・
駒場「知るか……忘れている様だが、俺の活動指針は『無能力者(弱き者)の為』だ……無能力者だろ?」チラッ・・・
サーシャ「は、はい」コクン・・・
海原「っ~~~~~~ハァ」ポリポリ・・・
天を仰ぐ優男。彼女達も、リーダー格の彼がこの様子では戸惑う一方だ。
海原「……では、せめて監督は我々が受け持ちます。貴方が出張ってくると、上に報告できないんですよ」マッタク・・・
駒場「知らん。最大の譲歩として、黄泉川か、手塩のドチラかに預けるなら……その案を認めよう」
海原「2人とも部署違いです! 困らせないで下さい!」ンモー!
駒場「では……連れて帰る……来い……あー、名前は?」チラッ・・・
サーシャ「……サーシャ。サーシャ=クロイツェフ」コクン・・・
駒場「サーシャ、か……北欧か、ロシア辺りだな。行こう。バイクに、乗った事は?」ポンッ・・・
サーシャ「だ、第1の返答ですが、乗馬ならあります」
駒場「……多分、大丈夫だ」テクテク・・・
大男に手を引かれ、バイクへ向かう。
だが……彼女達も引けない理由があるようだ。未だ武器を降ろしてくれない。
- 667 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 02:45:38.34 ID:ptH58nqY0
- 優男が、多少低めの声で此方に告げる。
海原「申し訳ありませんが……阻止させてもらいますよ」スッ・・・
駒場「…………、」ジー・・・
海原「貴方の言う事が理に適っている。それは認めましょう。だが、我々は兵隊だ。政治家じゃない」ジー・・・
サーシャ「……それは、私も同じです」ジー・・・
駒場「…………、」フム・・・
海原「貴方は良いかもしれません。理事と権力者と大多数の『無能力者』がバックにいますからね……でも僕らのバックは理事長なんです」
考え込む大男。だが一寸の事。
駒場「だから、何だ? 貴様は、上条当麻にも、同じ事が言えるのか?」ジー・・・
海原「っ……皆、構えなさい」スッ・・・
妹達『……了解』ザッ・・・
サーシャ「っ……、」ビクッ・・・
駒場「大丈夫だ……安心しろ」ポンッ・・・
見た目とは裏腹、優しい掌。
海原「お願いします……この人数相手では流石の貴方もキツいでしょう。彼女を僕ら渡し――」
駒場「『No』だッ! 俺は絶対に妥協しない!!」ギロッ・・・
海原「―――て……っ……、」ジー・・・
駒場「分かっているだろう『海原光貴』……俺は『駒場利徳』だ。貴様は、海原。俺は、駒場だ」ギロッ・・・
海原「……交渉決裂ですね」サッ・・・
優男の手が降りる。彼女達が『光』……ではなく、拳銃を構えた。
駒場・海原「「…………、」」ジー・・・
一触即発。大男のジャケットの裾を掴み、身構えた……瞬間―――
- 668 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 03:02:27.32 ID:ptH58nqY0
- ―――爆音。上からである。
海原「っ!?」バッ!
御坂妹「今度は何ですか!? とミサカは頭上に銃口を向けます!」バッ!!
二つの影。
削板「どっ……ッ、せええええええええええええええええぇいいっ!!」ガゴンッ!!
御坂5's「ちいぃ!!」スタッ!!
御坂漢子「ふぁ、5's!?」ギョッ・・・
何故か5色の爆発をバックに、先程の2人が戻ってきた。
御坂5's「くぅ……す、すいません……コイツ、化け物です。とミサカは報告します」ハァハァ・・・
海原「チッ……仕方ありません。引く口実が出来ました」ハァ・・・
削板「ケッ……次は幹部のテメェって事だな」ギロッ・・・
海原「僕は無抵抗ですよ。引くと言ってるでしょう」タラー・・・
削板「聞く耳持たん! すごいパーンチ」ブンッ!!
やる気の無い掛け声とは裏腹、まるでマグヌス級の特大魔術(?)の様なモノをブっ放す少年。
御坂蛇「マスター!!」ギョッ・・・
サーシャ「っ!!?」ギョッ・・・
一同、固唾を呑み煙が晴れるのを待つ。
削板「ふんっ……って、ありゃ?」キョトン・・・
海原「ケホケホッ……まったく、どうもです」ハァ・・・
無言で優男の前に立ち、少年を睨みつける大男。
削板「あらら……兄(あん)ちゃん、居たの?」キョトン・・・
駒場「調子に乗り過ぎだ、馬鹿野郎……少し落ち着け。所長から言われて来てみれば、まったく、いつもコレだ」ジトー・・・
削板「んー……これはアレか? 裏切りシュチュエーションってヤツか!!」ヨッシャー!!
一同『話聞いてねぇし』タラー・・・
何故か勝手にテンションを上げて盛り上がってる少年。もう誰が敵で味方なんだか分からない。
そんな最中、大男が懐から煙草(?)の様なモノを取り出し……マスクの下半分を上げ、口に咥えた。
そしてさっきの余波で、傷付いたバイクのフレームを見詰めながら一言……少年に告げる。
駒場(?)「……死ねボケ」ギロッ・・・
まるで違う口調。まるで別人。
- 669 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 03:13:59.42 ID:ptH58nqY0
- 合図は無かった。いきなり大男が少年に近付いたのだ。
サーシャ「え!?」ギョッ・・・
御坂妹「み、見えなかった」タラー・・・
海原「あーあ……もう知りませんよ」ハァ・・・
瞬く間に少年の目の前に移動した巨体。少年もポカーンとする間に……ゲンコツを喰らっていた。
削板「痛たたたたたたたぁっ!! ちょ、マジ裏切ったのかよ!?」イデー!!
駒場「黙れボケが! テメェ誰のバイクに傷付けてんだゴラァ!!」グイッ!!
削板「放せ煙草臭ぇ!! あのバイク借りモンだって言ってたろ! そんなに怒るなよ!」ギロッ・・・
駒場「五月蠅ぇ糞ったれ! 借りモンだからこそ傷付けちゃなんねぇだろぉが!!」ゴンッ!!
削板「ツゥ……んな小さい事でキレてんじゃねぇ! てか何しに来たんだコラ!!」ゴンッ!!
あー……何か喧嘩始まった。
駒場「その子助けにと、テメェに説教くれに来たんだよ駄阿呆! 所長に言われなきゃテメェの所なんか来ねぇっつのボケカス!」ゲシゲシッ!!
削板「ジジイめ、余計な真似を……てか殴り過ぎなんだよ、コンニャロー!!」ボカーン!!
一同『おわっ!!?』ボンッ!!
謎の爆発。敵味方関係無く、全員吹っ飛ぶ……だが見た目の割に痛くない。誰も怪我はしてない。
それからSF映画宜しくの大喧嘩が始まった。
何故か優男や彼女達は私には目もくれず、2人の仲裁に入り出したので……この隙にこっそり逃げ出す事に成功した。
一応、2人には感謝しよう。不幸中の幸いだ。
- 670 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 03:34:25.00 ID:ptH58nqY0
- ―――とある4日目、AM00:30、学園都市第1学区、とある道路・・・・・・
最早、疲れと痛さで思考が回らなかった。
ただフラフラと人目も気にせず大通りを進む。現在、第1学区に入った頃だろう。
先程からサイレンの音が喧しい……多分、あの2人の所為か。まぁ見なかった事にしよう。
サーシャ「っ……第3学区まで、あと、どれくらいでしょう」ハァハァ・・・
そう遠くは無い筈。だが……もう歩けない。仕方ないので、近場の公園で野宿でもしよう。
そう考えた矢先、ふと、レッサーからのメールを思い出す。
サーシャ「安全、地帯(セーフ、ガード)」グッ・・・
この近くの住所だった筈。確か『ニューディレクターズ』という名のビルだかアパートだかマンションだか。
冷静に考えれば、理事会(ディレクターズ)とある時点で疑うべきなのだが、思考が回らなかった。
こんなに疲れてたのは、シベリアで行った『殲滅白書(Annihilatus)』入隊の最終試験の時くらいか。
サーシャ「もう、少し」ハァハァ・・・
藁にも縋る思いというのは、この事だろう。
目的のマンションが見えてきた。オートロックの様だが、裏から回って、こっそり塀を乗り越えればばれないモノだ。
此処まで頭が回らなくなっていた自分に後々、反省した。
サーシャ「っ!!」ビイイィ!!
身体に鞭打ち、塀を乗り越えた瞬間、防犯ブザーが鳴り響いた。
こんな初歩的なミスを犯すとは……最早エレベーターは使えない。警備員が来る前に、急いで目的の階まで駆け上がる。
サーシャ「っ……ハァ……ハァ……もう、すぐ……そこっ」フラフラ・・・
数戸、玄関を開けて外を確認する世帯もあったが、運良く私が侵入者だとは気付かれなかった様だ。というか気付いても声は掛けまい。
サーシャ「この、部屋……です」フラフラ・・・ジー・・・
電気メーターが回っている。人が住んでいるという事はレッサーが準備した協力者か。
もう誰でも良い……寝かせてくれ……満身創痍の身体。無理矢理、ベルを鳴らし……扉の前で倒れた……―――
- 671 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/24(土) 03:46:36.26 ID:ptH58nqY0
- <香焼side>
ピンポーン・・・・・
香焼「え? こんな真夜中に?」キョトン・・・
浦上「お姉……な訳無いか。誰だろう?」キョトン・・・
香焼「えっと……カメラにも写らない」ウーン・・・
浦上「あー。さっきの侵入者云々だったりしてー」アハハ
香焼「止めてよ。物騒な」ポリポリ・・・
もあい「……にゃ?」ピクッ・・・
香焼「もあい?」チラッ・・・
もあい「…………、」トコトコ・・・
浦上「……ん。玄関向かうみたいだネ」ジー・・・
香焼「やっぱ誰か居るのかな」ウーン・・・テクテク・・・
浦上「アレじゃないの? 幽霊的な」ニャハハ
香焼「はいはい……一応、警戒してかないとね」フム・・・
もあい「なぅ」カリカリ・・・
香焼「玄関のドア……外に居るの? 穴からじゃ見えないけど」ウーン・・・
もあい「にゃん」カリカリ・・・
浦上「あ、ながよん(長与)からメール来てたヨ…………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う、そ―――」タラー・・・
香焼「開けてみるか」ガチャッ・・・
もあい「みー」スッ・・・
浦上「―――っ!! 香焼!! 駄目!!」バッ!!
香焼「え? な―――」
ドサッ・・・・・
香焼・浦上「「―――っ!!?」」ギョッ・・・
サーシャ「……ハァ……ハァ」グデェ・・・
もあい「みゃー」ペロペロ・・・
香焼「さ、サーシャ!!?」バッ!!
サーシャ「っ……こ、やぎー……何、で」グデェ・・・
香焼「コッチのセリフだよ……何でこんなボロボロな姿で……っ……浦上! 風呂!」
浦上「え、ぁ…………、」タラー・・・
香焼「早く!!」ギロッ・・・
浦上「……はぁ」ヤレヤレ・・・
サーシャ「……ごめ、ん……なさい」ハァハァ・・・
もあい「んなぅ」フシフシ・・・
- 672 :>>1 [saga]:2011/09/24(土) 03:50:35.22 ID:ptH58nqY0
- はい。今回は此処まで。やっと香焼宅到着です……設定懲りすぎた結果がコレだよ。
オリキャラ数名だしたけど、どうか寛大な心で許してね。
それではまた次回! ノシ” - 673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/09/24(土) 04:21:08.69 ID:jyZ7VLbR0
- >>1乙
ナンバーセブンとくr・・・駒場さんの掛け合いが可愛くて仕方ないどうしてくれる
めずらしく浦上がミスったねーサーシャがんばれ・・・ッ!! - 674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/24(土) 05:53:22.63 ID:NlIfzXfz0
- 乙
きちんと車の修理代を置いていくサーシャ……うん、やっぱり良い娘だ - 675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/24(土) 10:20:43.08 ID:3N2lD2/AO
- 乙です
さぁ、盛り上がって参りましたよ - 680 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 21:26:17.65 ID:r8rHMdqR0
- ―――とある4日目、AM10:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・・
温かい……あと、何だかくすぐったい……
サーシャ「―――・・・・・・・・・・・・・ぁ」スッ・・・
もあい「なぅ」ペロペロ
目が覚めた。
知らない天井。着替えた覚えの無い服装。しかし……知ってる猫。
サーシャ「…………、」モゾッ・・・
本来、『知らない場所』で目が覚める様な事があってはならない。
大体の場合は『その事態=任務失敗』を意味するからだ。
サーシャ「……だけど」チラッ・・・
もあい「にゃん」トコトコ・・・
昨晩意識が途絶える前の記憶……私は『彼』の顔を見た。
そして、この猫は彼が飼っていた筈の猫。という事はつまり。
サーシャ「コーヤギーの、家……でしょうか?」ポケー・・・
高確率で、その考えは当たってそうだが納得できない。
少々状況整理をしよう。まず昨晩、学園都市に侵入し『幻想殺し』へ接触しようとしたが、失敗した。
圧倒的不利な状況で、第3学区に居るという同志の下を目指して進んだのは良いが、『色々』あって、ヘトヘトになった。
それから確か第1学区辺りで限界に達して……レッサーから送られてきたメールに書いてあった住所を、思い出し、それから。
サーシャ「……え」タラー・・・
此処がもし、メールの住所で正しいとすると……つまり?
サーシャ「は……え、な……はい?」ポカーン・・・
駄目だ。状況が飲み込めない……非常に困ったぞ。
- 681 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 22:00:36.63 ID:r8rHMdqR0
- 兎角、動かなければなるまい。部屋を見回し、電子時計を発見する。
日にちは都市任務2日目。時刻は午前10時前……若干の安堵。昏睡して丸1日経つという事態は免れた様だ。
次に自分の荷物は……ソファに置いてある。これまた安堵。
サーシャ「……あとは」キョロキョロ・・・
もあい「みー」カリカリ・・・
サーシャ「ん」チラッ・・・
猫さんがテーブルを引っ掻いている。
サーシャ「食事と……手紙?」キョトン・・・
ラップが掛ったパンとサラダ、そしてスープ。
手紙は……やはり、コーヤギーのものだ。律義に英語で書き置きしてくれていた。
『学校に行ってきます。何があったかは帰ってから聞くよ。机の上の食事、食べて下さい。
16時前には帰るから、なるべく大人しくしてる事。出歩いちゃダメだよ! 香焼』
まるで何も知らない風な書き置き。如何いう事だ?
まさに『別世界』に飛び込んでしまった私には、何とも判断しかねる状況。
サーシャ「……動くべきか、動かぬべきか」ムゥ・・・
無論、任務遂行の為に動き出すべきなのだろうが、下手に動けない。
彼が私を保護(?)してくれたのなら、もしかしてロシア本国と英国の間で、新しいやり取りがあったのかもしれない。
しかし携帯の使用と、魔術の使用を禁止されている今、それを確認する手段が無い。
サーシャ「ふむ……単独潜入任務の難点ですね」ハァ・・・
とりあえず服ぐらい着替えよう。そう考え立ち上がった瞬間……部屋のドアが開いた。
サーシャ「っ!!」ビクッ!
五和「あ……おはようございます、サーシャ」ガチャッ・・・
サーシャ「い、五和……ですか」ホッ・・・
浦上「私も居るヨ」ヒョコッ
天草式の教徒が2人。彼女達は立場上微妙なラインに立っている筈だが……安心して良いものか。
五和「えっと……とりあえず着替えます?」ジー・・・
サーシャ「え、あ、はい。そうしたいです」コクン・・・
五和「分かった。ウラ、サーシャの服持ってきてあげて」チラッ・・・
浦上「はいはい。そんじゃ、お姉はスープ温めてあげて。多分もう冷たくなってるでしょ」テクテク・・・
五和「りょーかい」テクテク・・・
さも当たり前の様に動いてくれる2人。まるで敵意は無い……今は純粋に安堵して良い様だ。
- 682 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 22:24:37.19 ID:r8rHMdqR0
- 一寸後、私の服を持って浦上が戻ってきた。
着替えようと思ったが、先にご飯を食べろというのでその指示に従う。
五和「あとついでに……現状知りたいでしょう?」チラッ・・・
サーシャ「……はい」コクン・・・
もしかして全てを聞ける訳ではないのかもしれないが、聞ける分だけ聞いておこう。
私はダボダボのパジャマ(?)を羽織ったまま、椅子無しテーブルの前にチョコンと座る。
五和はレンジで温めたスープを私に出すと、そのまま反対側に座る。浦上は猫さんを抱え、窓の近くで私達を見詰めていた。
五和「食べながらで良いよ」コトッ・・・
サーシャ「はい。感謝します」ペコッ・・・
五和「ううん……じゃあ何から話そうか……いや、貴女から質問して頂戴」ジー・・・
浦上「あ。因みに、英国・学園都市・ロシアの関係は変わってないからネ。それを踏まえて質問すると良いヨ」ナデナデ・・・
もあい「んなー」フシフシ
食前の祈を済ませ、パンを千切り頬張る。
口の中でパンを噛み締めながら、浦上の言った事を頭の中で反芻させ、質問を始めた。
サーシャ「ん……では第1の質問です。此処は何処ですか?」モグモグ・・・
五和「日本、学園都市第1学区―――マンション『ニューディレクターズ』○○○号室……コウちゃ……香焼宅です」コクン・・・
サーシャ「……やっぱり、そうなんですか」ムゥ・・・
浦上「その表情をしたいのはコッチもなんだけどネ」ハハハ・・・
スプーンでスープを啜り、次の質問を考える。
サーシャ「第2の質問です。何故、私は此処に居るのでしょう? あ、任務とかそういう意味では無く……えっと」ウーン・・・
五和「それはコッチが聞きたいですよ」ハァ・・・
浦上「サーシャ、昨日の夜遅くに此処尋ねて来たんだヨ。覚えてないの?」ジトー・・・
サーシャ「それは……覚えています」コクン・・・
五和「……それじゃあ私からも質問。何で此処に来たの? というか此処が香焼の家って知ってたの?」ジー・・・
サーシャ「いえ。第1の回答ですが、まるで知りませんでした」ジー・・・
五和「じゃあ何故此処に? もしかして香焼に住所教えて貰ってたのかしら?」
サーシャ「…………、」ムゥ・・・
スプーンを置き、一寸迷う。素直にレッサーから送られて来たメールに、と言って良いモノだろうか。
サーシャ「第2の回答ですが……その……ち、知人に……此処の住所を教わって」タラー・・・
五和・浦上「「は?」」ポカーン・・・
サーシャ「で、でも本当に! コーヤギーの家だとは知りませんでした!」アタフタ・・・
言い訳に聞こえるかもしれないが、私は誰の協力も仰がずに、この任務を遂行しようとしていた。これは事実だ。
- 683 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 22:42:14.60 ID:r8rHMdqR0
- 焦る私を余所に、2人で顔を見合わせ、コロコロと表情を変えるコーヤギーの姉分達。
一寸後、大きな溜息を吐いて……呆れた様に呟いた。
浦上「……アニェーゼだよネ」ハァ・・・
五和「いや、カルテッ娘の中で携帯持ってるのはサーシャとレッサーよ」ハァ・・・
サーシャ「っ!!?」ドキッ!!
浦上「……びんご~」ヤレヤレ・・・
もあい「にゃぅ」トコトコ・・・
五和「あの……馬鹿娘ぇ」グヌヌ・・・
険しい表情をして頭を抱える五和。他方、終始苦笑状態の浦上。
五和「あーもぅ……ウラ。私、教皇代理に電話してくるから……あと宜しく」ハァ・・・ユラユラ・・・
浦上「……にゃはは」ポリポリ・・・
幽鬼の様にフラフラとベランダに出て行く五和。これは拙いかも。
サーシャ「だ、第1の意見ですが、だ、誰もレッサーとは言ってませんよ!」アタフタ・・・
浦上「神に誓って?」ジトー・・・
サーシャ「うぐっ!!」タラー・・・
卑怯なり。
浦上「まぁアレだヨ……あの子については最悪、マグヌス神父が何とかしてくれるから安心しときなって」アハハ・・・
サーシャ「…………、」ハラハラ・・・
浦上「とりあえず、質問の続き。有るでしょ?」フフッ
サーシャ「で、では……第3の質問を。昨晩、私が意識を失った後、何故コーヤギーは私を保護してくれたのですか?」
浦上「それはドッチの意味カナ? 英国側の人間として? それとも香焼の姉として答えれば良い?」
サーシャ「第1の要望ですが……出来れば、両方を」コクン・・・
浦上「あいヨ……んーでもそれはまず、お姉が戻って来てから話そうか。今の内にご飯終わらせちゃいなよ」コクン・・・
もあい「にゃー」ペシペシ
サーシャ「……了解です」スッ・・・
英国側……香焼……一体何が如何なっているのだ。
頭の中の整理整頓が追い付かない。折角彼が準備してくれたスープやサラダの味も、何だか今一よく分からなかった。
- 684 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 23:02:29.30 ID:r8rHMdqR0
- 数分後、私の食事終了と同じ頃に、五和が戻ってきた。
心成しかゲッソリしているように見受けられる。
浦上「にゃはは……色々怒られた?」チラッ・・・
五和「もぅ……何で私が……この案、提案したの土御門だってのに……むぅ」ブツブツ・・・
サーシャ「ええっと……御馳走様でした」ペコッ
五和「あ、うん。お粗末さまでした」ハァ・・・
元居た場所に座り、浦上が準備していたグリーンティー(緑茶)を啜りながら、大きな溜息を吐いた。
浦上「戻って来て早速悪いんだけど、何で香焼が自分を保護してくれたか聞きたいんだってサ」フフッ
五和「あ、うん……えっと、半分禁則事項なんですけど」ポリポリ・・・
サーシャ「第2の要望ですが、言える範囲でお願いします」ペコッ
五和「ん……まず、さっきも言った通り英国側の姿勢は変わってません。貴方達、ロシアの動きに関しては『関与しない』の放心です」
サーシャ「はい……では、何故彼が?」ジー・・・
五和「それは、その……うーん」ポリポリ・・・
浦上「……お姉。この程度なら言っても大丈夫だヨ。サーシャ、誰にも言わないって約束できる?」ジー・・・
サーシャ「95%保証します」
五和「はぁ……えっとね。『関与しない』といっても、ロシアからの潜入員(貴女)の『監視』はする事になったんです」
浦上「そうそう。私達、天草式の若衆……所謂『潜入学徒』陣が、って事ね」ビシッ
サーシャ「え? 第1の矛盾です。その理屈だと……コーヤギーは私を保護出来ないでしょう?」キョトン・・・
浦上「まぁまぁ。此処から先が重要なのサ」ズズズ・・・
五和「サーシャ……さっき貴女は『何故、香焼が自分を保護し(助け)たのか?』って聞きましたね」ジー・・・
サーシャ「肯定です」コクン・・・
五和「では、あの子の姉としての答えから……今回の件……特にサーシャが都市で危険を冒しているを知った際、香焼は如何しますか?」
サーシャ「え?」ポカーン・・・
浦上「要は、香焼の性格上、冷酷になって貴女の監視を続けられるかって事だヨ。サーシャの知る香焼はどんな人カナ?」フムフム
サーシャ「それ、は……えっと」ム・・・
多分、頼んでも無いのに首を突っ込む。それは私が一番危惧していた事だ。
五和「貴女が妹達(シスターズ)……クローン兵達にボコボコにされてるという情報を聞いたら、香焼が黙ってられる訳ないでしょう」ハァ・・・
サーシャ「…………、」タラー・・・
何も言えない。多分、私の口から言ってはいけない事なのだ。
- 685 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 23:24:17.25 ID:r8rHMdqR0
- 彼女達の話は続いた。
五和「とりあえず貴女が察するように、私達もそれを危惧した。土御門も、女教皇様も、マグヌス神父も」
浦上「だからネ……あの子には申し訳ないけど、任務から外したの。いや、外したっていうかこの件を伝えてないヨ」
サーシャ「……ごめんなさい」シュン・・・
浦上「うーん……謝られると困るなぁ。私達も複雑な心境だし」アハハ・・・
五和「まぁサーシャが此処に来た事については既に都市側にばれてるだろうけど……女教皇様とマグヌス神父が言い訳してくれる筈だから」ハハハ・・・
つまり、彼女達は英国側だとしても『香焼個人』は何処にも属さない一般人扱いという事で処理するつもりか。
五和「悪いのはレッサー……と、多分アニェーゼ達もよ。まったく余計な真似を」ハァ・・・
浦上「その審判については清教本部に任せましょ。私達は任務を続けるだけだって」ハハハ・・・
五和「……そういう事よ。サーシャ、悪いけど香焼が帰って来るまではこの家から出ては駄目です」ジー・・・
サーシャ「え? 何故です。第1の予想ですが、私が此処に居ては彼に要らぬ心配を」
五和「逆よ。貴女が出て行った方が心配するに決まってるでしょ。都市中、貴女の名前を呼びながら探しまわる筈よ」ハァ・・・
浦上「『力尽きて倒れた所、運良く一般人の友達に救われた』……そう処理させてくださーい」タラー・・・
そういう事か……なら仕方あるまい。
五和「良い子にしてね。私もこれ以上怒鳴られたくないから……はぁ」ドヨーン・・・
浦上「因みに、お姉は昨日折角の『泊まり』だったのに、貴女が此処に転がり込んだって情報聞いて泣く泣く素っ飛んできたんだヨ」ハハハ
五和「ヴぁッ!! う、ウラ!!」カアアァ///
浦上「あ、コレもオフレコね」ニヤリ・・・
サーシャ「は、はぁ……すいません」ポリポリ・・・
昨日優男が言っていた『幻想殺し』の家に居たという『2人の女性の片方』が、五和だったのか。
五和「わ、私の事は如何でもいいでしょ! サーシャ、他に質問は!?」モゥ・・・
サーシャ「ええっと」ポリポリ・・・
彼女達の『私の任務に関与しない』という命令に触れない質問は……そうだ。昨晩の事!
サーシャ「第4の質問です。昨晩、私が倒れた後の事を教えて下さい」ジー・・・
五和「え、あ、それくらいなら大丈夫ね」フム・・・
浦上「……でもさぁ」ジー・・・ニヤリ・・・
サーシャ「何か」
浦上「いやぁ……本当に聞きたいのカナ?」ニヤニヤ・・・
もあい「んな?」コロコロ・・・
嫌な予感がするが……状況を把握する為には、一応、聞かねばなるまい。
- 686 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/25(日) 23:40:44.51 ID:r8rHMdqR0
- 浦上は黒い笑みを浮かべつつ、何故か楽しそうに頷き、昨晩の話を始めた。
浦上「まずはネー。香焼が倒れたサーシャを御姫様抱っこでリビングまで運んだヨ」フフフ・・・
サーシャ「そ、そうですか」タラー・・・///
浦上「そんでネー。満身創痍、更に冷え切った身体の貴女を見て……まずは風呂に入れなきゃって思ったらしいの」ニヤリ・・・
サーシャ「ふ、風呂(バス)ですか!?」ギョッ・・・///
五和「へぇ……それからそれから?」ワクワク!
浦上「うん。私が風呂を溜めたのは良いけど、よくよく考えたら、私は『英国側』の人間な訳じゃん」フフフ・・・
サーシャ「ぁ……っ!!? ちょ、う、浦上! これ以上は結構です!」アタフタ・・・///
五和「続けてどうぞ」フムフム・・・
サーシャ「な、待、え、五和?! ひ、必要無いですから! 大きな流れだけ教えてくれれば、詳細要りませんから!」アタフタ・・・///
浦上「んとネー……面倒だから回想どーぞ!」バンッ!!
五和「いぇーい♪」ワーイ!
もあい「みゃー」フリフリ・・・
サーシャ「や、止めてえええぇ!!」キャアアアァ///
止めろ! 先の展開が読めた! 態々私に教えるな!
私の叫びも虚しく、浦上は心底楽しそうに赤面する私と興奮する五和に対し、回想を始めた……―――
- 687 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 00:01:13.80 ID:BCs1ctww0
- ――<浦上回想>――とある4日目、AM00:45、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・・
サーシャを慌ててリビングに運んだ香焼は、一言『ごめん』と告げ、彼女が着ていたコートを脱がせ、インナーを露わにさせる。
嫌な予想は当たり、満身創痍の上、身体は冷え切っていた。
香焼「っ! 浦上! 風呂沸いた!?」バッ!!
浦上「も、もう少しで沸くヨ……(何で、サーシャが此処に)」タラー・・・
サーシャ「ハァ……ハァ」グデェ・・・
香焼「じゃあサーシャを風呂に入れて! 僕は布団敷いて、救急道具と回復術式の準備しとくから!」アタフタ・・・
もあい「なーぅ」ペロペロ・・・
浦上「……え、と」ダラダラ・・・
香焼「早く!!」ギロッ・・・
無我夢中でサーシャを助けようとする香焼。一人称が『僕(素)』に戻ってるのがその証拠。
ボロボロになった彼女を見た私も、無論、彼女を助けてやりたい気持ちで山々だったが……冷静になって考えると非常に拙い事態だ。
頭の中をフル回転させ、冷酷に演技をして、対処する。
浦上「あ、分かっ……え?」チラッ・・・
香焼「何してんの! 早くしろ!」アタフタ・・・
浦上「ちょ、ちょっと待ってヨ……嘘でしょ……建宮さんから!?」ギョッ・・・
香焼「そんなの後にしてさっさと!」バッ!!
浦上「え、緊急事態の電話なんだヨ! ああ……もう!」Pi!
香焼「だったら自分が電話出るからサーシャを先に!」ダッ!
浦上「もしもし! 私です……え、あ、ちょっと今立て込んでいて……少々御待ちを……香焼! アンタが彼女の世話しなさい!」チラッ・・・
香焼「なっ!!?」ギョッ・・・
浦上「今、コッチも拙いの! あ……えっとスイマセン。今静かな所に出るので……頼んだヨ」ガチャッ・・・
もあい「みー」トコトコ・・・
香焼「ちょ、ちょっと! ふざけんなよっ!!」ギロッ・・・
サーシャ「う、ぅ……ハァハァ……、」ダラダラ・・・
香焼「く、そ……っ……やるしか、ない」グッ・・・
急遽、緊急の電話が掛って着たフリをし、難を逃れた。
私がサーシャの看護をしたとなったら、英国が干渉したという扱いになりかねない。
サーシャ「……ごめんネ」ハァ・・・
残酷だが上からの指示が出ない今、香焼に終始を任せるしかなかった。
- 688 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 00:30:59.51 ID:BCs1ctww0
- 私は、五和と建宮さんに送る現状報告メールを作成しつつ、香焼の様子を伺っていた。
まず香焼は、ソファの上の彼女を再度抱きかかえ、風呂場へ運んだ。
それから意を決して彼女の服を脱がせようとした、が……脱がせ方が分からない様子。
香焼「ああ、もう! 何でこんな面倒臭いインナー着てるの!!」ウガアアァ!!
サーシャ「うぅ……ハァ……わし、り……殺、す……ハァ」グデェ・・・
香焼「くそっ……サーシャ……ごめんよ」ギリッ・・・
何やら覚悟を決めたらしく歯を食いしばり、背中からナイフを取り出す香焼。
そして静かに……一閃。
香焼「っ……ごめん。なるべく、見ないから」ジョギン・・・ジョギン・・・
サーシャ「う、うぅ」パラッ・・・パラッ・・・
香焼「首輪とか腕輪とか……チッ……これは仕方ないか」グググ・・・
サーシャ「うっ……げほげほっ!」ブルッ・・・
香焼「ご、ごめん……ッ!!」ドキッ///
まるで奴隷市場で売られる裸体の少女の様な恰好になるサーシャ。
香焼はなるべく見ない様に、と局部にタオルを掛けてやった。
サーシャ「ハァ……ハァ」グデェ・・・
香焼「っ……待ってろ」ヌギヌギ・・・
自身も上半身裸になり、急いでサーシャを風呂場に運んだ。
そこから2人が風呂場から出てくるまで、声とシャワーの音しか聞こえなかったが―――
サーシャ『うっ……あぅ……っ』ビクッ・・・
香焼『ゆっくり入れるから……(傷沁みるて)痛いかもしれないけど、我慢して』チャプッ・・・
サーシャ『ハァハァ……ハァ……っ……ッッ!!』ビクッ!!
香焼『ご、ごめん……(風呂の温度)キツかったかな……(髪)濡れるけど、ごめん』チャプッ・・・ジャボッ・・・
サーシャ『ぁ、ぅ……っ……ぃ、アアアアアァっ!!』ビクンッ・・・ジャバッ!!
香焼『っ! ご、ごめん! でも(温度に)慣れるまでは我慢して! 少し身体(拭くから)動かすよ』フキフキ・・・
サーシャ『アアゥ……ハァハァ……っ……ううぅ……い、たぃ……痛ぃょ……っ』グッ・・・ポロポロ・・・
香焼『っ……痛くて、泣いてるの? ご、ごめん……サーシャ、我慢して……すぐ終わらせるから』チャポッ・・・チャポチャポ・・・
サーシャ『ッッ……ぐ、ぅ』ビクッ・・・
―――身体が勝手に動いてICプレイヤーの録音ボタンを押していた。スマソ。
- 689 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 00:54:20.42 ID:BCs1ctww0
- ―――とある4日目、AM11:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・・
ニヤニヤ顔でICプレイヤーを再生しやがった馬鹿女。
五和「や、やだ……ひy」カアアァ///
サーシャ「イヤアアアアアアアアアアアアアァっ!!」ウガアアアアァ///
浦上「にゃははは……(因みに音声加工して()の中を消してるのは内緒だヨ!)」フフフ・・・
五和「そ、それで? 続きは?」ドキドキ・・・///
サーシャ「も、もう止めてください!! 羞恥心で死にそうです!!」カアアァ///
浦上「あはは。とりあえず、こんな感じで御風呂は終わった訳ですヨ……私は手伝えなかったから仕方ないネ」フフフ・・・
最早そういう問題では無い。ぶっちゃけ悪意塗れだ。
浦上「そんでまぁ、ビショビショになった2人は風呂から出てきてぇ」ウンウン・・・
サーシャ「言い方代えろ!! てかもう良い! 回想止めて下さい!」ウガー///
浦上「香焼はその場でパンツ交換してー……サーシャには私の御ニューのパンツとキャミソール着せてー」ニヤニヤ・・・
サーシャ「っ!!?」バッ!
寝巻き(?)の前を開ける。今まで着た事の無い可愛らしい下着を着けていた。
これを……コーヤギーが……着せた!?
浦上「しかしまぁあの子は最近意図せずして女の子の下着を着せる機会が増えてますネー」ニャハハ
サーシャ「っ!!?」ギョッ・・・///
五和「あ、あのさぁ……その……コウちゃん、サーシャを着替えさせた時……えっと……ご、『御起立』してた?」ドキドキ・・・///
サーシャ「何聞いてんですかあああああぁ!!」ウガアアアァ///
浦上「あははは! そりゃもうビンビンのギンギンでしたネー」ニャハハ!
五和「お、おおぉ」カアアァ///
サーシャ「」ボンッ・・・////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
浦上「でもまぁ上手い事『ポジション』変えて、サーシャの治療に移ったヨ」ニヒヒ!
回復術式(ヒーリング)とか、傷薬、包帯などの応急処置とかね……と苦笑した。
そういえば現在紅潮している身体の至る所に、包帯や絆創膏が張ってあるのはその為だろう。
浦上「あ。安心して。秘所とか乳首には何も張ってないみたいだからサ。香焼、そういう特殊趣味無いみたいだし」ニャハハ!
サーシャ「んな心配してませんっ! というかアレか! お前らはワシリーサと同類だったかっ!!」ウガアアァ///
もあい「みー」パシパシッ
暴れてやろうと思ったが、彼の部屋だという事を思い出し、怒りと羞恥で紅潮したまま私は黙り込んだ。
- 690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/26(月) 00:58:33.99 ID:k3YPAIhDO
- >>688
何か初Hの時みたいだな
ウッ!‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ふぅ‥‥ - 691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/26(月) 01:15:00.90 ID:IQjWpjtco
- >>690
落ち着けよ童貞 - 692 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 01:31:54.24 ID:BCs1ctww0
- 因みに浦上は『着替え中と治療中の音声も録音してるけど聞きたい?』とか阿呆抜かした。
問答無用で都市製最新機のICプレイヤーを圧し折らせて貰った。
浦上「とほほ……買ったばっかなのにぃ」ウルウル・・・
サーシャ「第1の疑念ですが、どうせ悪事にしか利用しないのでしょう? 当然の報いです」フンッ///
浦上「まぁPCにデータ移した後だったから良かったモノを……、」ハァ・・・
サーシャ「第5の質問です。PCが何処だ? 叩き壊してくれる!」ギロッ・・・
五和「ま、まぁまぁ落ち着いて……ウラ、さっさと続きを」ヤレヤレ・・・
浦上「はいはい。そんで、五和のパジャマの上着せて、布団に寝かせて……終わりって感じかな」
これは五和の寝巻きだったか。そりゃ大きい筈だ。
五和「別に私の服云々程度で『関与』にならないから気にしないでね」
サーシャ「はい、感謝します」ペコッ
もあい「なー」カリカリ・・・
ところで……その後、浦上は如何したんだろう?
浦上「その後? えっとー、色々連絡してサーシャが床に着いてから15分後くらいにリビング戻ったヨ」
サーシャ「第2の予想ですが、それからもしかして……香焼に……色々言われたのでは?」タラー・・・
浦上「はははは……まぁ『薄情者』とか『出てけ』とか言われちゃったネ」ポリポリ・・・
サーシャ「……すいません」ペコッ
浦上「良いの良いの。仕方ない事だし。朝になったら『サーシャの様子見に来て』ってメールも寄越したから」コクン・・・
それで来てくれたのか……先の件は置いておいて、手間を掛けた。
浦上「まぁそれだけじゃないけどサ……一応、監視対象なんだヨ。貴女はネ」
五和「監視対象たる貴女に、監視している事実がばれた以上、遠目で監視する必要は無くなりました……意味、分かりますね?」
目先の監視下に置くという訳か。仕方あるまい。
五和「無論、任務に口出ししたり引き留めたりはしない。でも都市の刺客が貴女を襲っても助けない……良いですね?」チラッ・・・
サーシャ「了解です。説明感謝します」ペコッ
浦上「感謝される様な事じゃないんだけどネー」アハハ・・・
しかし、現にこうやって親切に応対してくれている。終始黙秘されるより気分は良いだろう。
- 693 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 02:10:37.18 ID:BCs1ctww0
- さて、聞きたい事は大分聞けた。後は追々浮かんだ質問を聞いていく事にしよう。
サーシャ「あ、そうだ。第6の質問ですが、私の修道服(インナー)は如何しましたか?」キョロキョロ・・・
浦上「香焼が切り破いたヤツ? 悪いけど着れる状態じゃなかったから処分しといたヨ」
サーシャ「構いません……が、しかし第7の質問です。私は何を着れば良いのでしょう?」
五和「香焼が自身の服を貴女に、と用意しました。サイズは合う筈。他の衣装が欲しい場合は自分で調達でもしてください。関与はできません」
サーシャ「成程、そういう線引きですか。分かり易い……では第8の質問。2人はずっと此処に居るのですか? 私の監視という意味です」
五和「そうしたいのは山々ですが、そんなに暇ではありません。貴女の周りには常に複数人の監視者が居ますからね」
浦上「まぁでも目下に置ける時はなるべく、そうするつもりだヨ」
窓の外を見る。もしかしたら『望遠』で数名の天草式若衆が此方を見ているのかもしれない。
五和「私は今から土御門と話し合いがあるので一旦帰ります。浦上も一度何処かで帰る筈です」
浦上「色々準備があるからネー。あ、でも香焼が帰ってくる前にはもう一度此処来るから」
サーシャ「了解です……大丈夫です。第1の宣言ですが、コーヤギーが帰って来るまではこの家から出ません」
五和「ええ、宜しく。あ、因みに香焼にこの任務の詳細を伝えるかどうかは貴女に任せますよ。私共からは伝えませんからね」
サーシャ「……了解です」
中々酷な事を言う。仕事だから仕方ないが……遣る瀬無いな。
それではそろそろ、と五和が立ち上がった。
五和「あ、そうだ。ウラ、最後に質問!」バッ
浦上「私? 何カナ?」
五和「さっきの話の続きだけど……コウちゃん、昨日、一人でシてた?」ムフフ・・・///
サーシャ「ヴぁあぁっ!!?」ブッ!!
浦上「さぁ。自室(開かずの間)に入ってったからねぇ……でも、50%の確率でしてると思うヨ」ニシシ!
五和「お、おう」ポッ・・・///
消えろ。さっさと帰ってしまえ。そして2度と来るな。
五和「男の子だねぇ……あ、え、こほんっ! さておき……最後に情報を伝えますよ」
サーシャ「え? はい、何か」
五和「もしかすると、現在の3国の立ち位置が変わる可能性だってあり得ます。もし英国側が『協力』と宣言した場合だけ関与しますから」
浦上「余談だけど、今夜回線を使って統括理事長殿や英国からの代表、ロシアの代表がミニ会議をするかもしれないそうですヨ」
サーシャ「ふむ。了解です」コクン・・・
もあい「みゃん」トコトコ・・・
吉と出るか凶と出るか……それ次第で私の動き・処遇も変わってくるだろう。
私は近づいてきた猫さんを抱き上げ撫でて、とりあえず、時間が過ぎるのを待った。
早く『彼』に帰って来て欲しい……別に他意はありません。早くこの部屋からの拘束が解かれます様に、という意味です。
……そこの2人。ニヤニヤしないで下さい。本気で怒るぞ?
- 702 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 22:35:05.67 ID:BCs1ctww0
- ―――とある4日目、AM05:30、英国ロンドン、ランベス宮、女子寮(PM02:30、日本)・・・・・
まだ日が昇りきらず、朝靄が霧散するロンドン。
夜勤を終えた者達は帰路に着き出し、母親達や目を覚まし家事を始める時間帯。
此処、英国清教本部、必要悪の教会も食堂が稼働しだし、早起きの修道女達が身嗜みを整え出す。
いつもの風景。いつもの日常……だが、しかし。
ステイル「アニェーーーーーーーーーゼぇええええええぇっ!!」ドタドタッ!!
女子寮に在ってはならない男性の怒鳴り声が飛び込んできた。
寮住みの修道女一同が『何事だ! 非常事態か!?』と目を覚ましてしまった。
ステイル「アニェーゼっ!! アニェーゼ=サンクティス!!」バタバタッ!!
神裂「す、ステイル! 落ち着きなさい。時間帯を考えて」アタフタ・・・
ステイル「喧しい! いいから叩き起こせ!!」ギロッ・・・
飛び込んできたのは、主教補佐(ステイル)と補佐次席(神裂)。
ステイルは怒りと寝不足で目が真っ赤。他方、神裂も疲労と寝不足で目が真っ赤だった。
早起きの修道女―――オルソラやシェリーが、朝っぱらから人騒がせな主教補佐に対し、不機嫌半分同様半分の目を向ける。
神裂は擦れ違い様、ステイルの代わりに2人に謝り、彼の後を追う。
目指すはアニェーゼが寝ている個室。
ステイル「アニェーゼっ!!」バンッ!!
勢い良く扉を開く。同室(ルームメイト)のアンジェレネが突然の異変に驚き、ビクりと飛び起きる。
一方、当の本人は未だ爆睡。どんだけ図太い神経してるんだ、と神裂は苦笑した。
アンジェレネ「なっ!? な、何ですか!!」バッ・・・
ステイル『グルルルルルルルルルルルルッ……、』フシュウウゥ・・・ ← ※アンジェレネのイメージ。
アンジェレネ「ひいいいいぃ!!?」ビクッ・・・
神裂「あ、おはようございます。ご迷惑おかけしてすいません」ハァ・・・
アンジェレネ「か、神裂……え、あ、と……ステイル、くん?」ドギマギ・・・ボー・・・
アニェーゼ「ぐぅ……んがあぁ……くぅ」zzz...
これだけ騒いでも起きないアニェーゼに御立腹のステイル。
しまいには、ルーンのカードを取り出し、髪の毛燃やして無理矢理起こそうとしだした。
神裂「す、ステイル! 落ち着きなさい! 私が起こしますから!」アタフタ・・・
アンジェレネ「な、ど、如何したんですか!? す、ステイルくん、何してるの!? こ、此処、女子寮っていうか私達の部屋で」アワワワ・・・
ステイル「チッ……君は……『くん』付けするなと何度言えば分かるんだ」ギロリ・・・
アンジェレネ「ひゃ、ひゅえぇ!!」ビクッ!!
神裂「こら……ステイル。睨まないの……ごめんなさい、彼気が立ってるんです」ハァ・・・
恐怖のあまり布団を被って丸まるアンジェレネ。一体何が起きているのか全く理解できない。
何で彼は鬼の様な形相をしているのだ。というより、何故朝っぱらのこの時間、私達の部屋にカチコんできたのだ?
ステイル「くそっ……アンジェレネ。君にも聞きたい事がある。起きて貰うぞ」ギロッ・・・
丸まるアンジェレネの布団を剥ぎ取ろうとするステイル……何も知らない者がその光景を見たら、非常に危ない場面に思うだろう。
- 703 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 22:52:18.10 ID:BCs1ctww0
- 恐々と身を振えさせ縮こまっている身長150cm弱の少女に、2m越えの大男の手が伸びる! (※同年代です)
ステイルの手が布団を掴んだ……その時だった。
アニェーゼ「てんめぇ……何勝手にアンに朝這い掛けてやがんだセクハラ神父っ!!」ガアアアァッ!!
ステイル「ぎっ!!?」ゴガンッ!!
神裂「あ、起きた」チラッ・・・
アンジェレネのピンチ(と察した)に飛び起きて、犬猿の仲である身長差50cm以上の立場上上司を厚底ヒールで打ん殴るアニェーゼさん。
ステイルは体勢を崩し、勢い良くアンジェレネのベットの角に額をぶつけた。
アニェーゼ「こんの糞ボケ変態チンカス木偶の坊不良ド助平ゲロ阿呆ド腐れ馬鹿不良外郎っ!!」ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!
ステイル「あッ! がッ!! ちょ、止ま、やめ、ストッ!」イダダダダァ!!
アニェーゼ「五月蠅いウルサイうるさああああぁいっ!! 死ねっ! 死ねっ! 千回死ねっ! いや、殺すっ! 万回殺すっ!!」ギャースッ!!
神裂「あ、アニェーゼ! 止まりなさい!! ステイルが死んでしまいます!!」ガシッ!!
アニェーゼ「はーーーーーなーーーーーしーーーーーやーーーーーがーーーーーれーーーーーっ!!」グルルルルッ!!
暴れる猛獣を羽交い絞めにして止める聖人。無言でベットの上に転がった木偶の坊。
我を忘れF口調全開となり本気で殺しに掛ろうとするバイオレンス少女。未だにベットの上でガクブル状態の少女。
アニェーゼ「おまっ! アンのベットに転がんなっつーのっ!! 汚ぇ! 穢れる! 腐る!」ウガアアァ!!
神裂「じ、事情があって来たのです! ただ彼は頭に血が昇っていて、多少我を忘れていた為に此処一番で飛び込んできた訳で」アタフタ・・・
アニェーゼ「うっせぇ!! てっめぇ……待ってろ! 今ルチア呼んできて手前のブツをブった切って貰いますっ!!」ウガアアァ!!
神裂「落ち着きなさいっ!! あぁもう! 誰か手伝ってええぇ!!」ウワーン!
ステイル「」チーン・・・
アンジェレネ「あわわわわ……、」ガクガクブルブル・・・
結局、オッカナイ管理人のお姉さん(的存在)のオルソラさんが収集をつけるまで、迷惑騒ぎは続いた。
- 704 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 23:30:13.76 ID:BCs1ctww0
- 一寸後……サロンで、笑顔のオルソラさん(自称永遠の17歳)の前で正座する4名の姿があった。
オルソラ「…………、」ドドドドドドドド・・・・・
何事だ、と修道女たちが寝巻きのまま野次馬として集まる。
オルソラ「マグヌス神父……今何時でございましょうか? 時計読めますか?」ニコニコ・・・
ステイル「……6時ちょい過ぎだ」ズタボロ・・・
オルソラ「ええ。『朝の』6時でございますよ。それから此処は何処でございましょう?」ニコニコ・・・
ステイル「……必要悪の教会、ランベス宮内、女子寮のサロンだ」タラー・・・
オルソラ「パーフェクトでございますねぇ……自分がどれだけ異端な存在か分からない訳無いのでございましょう」ニコニコ・・・
ステイル「……訳有りだよ」ボソッ・・・
オルソラ「まぁまぁ……言い訳なさるおつもりでございますか?」ニコニコ・・・ドドドドドドドド・・・・・
ステイル「……いえ。ごめんなさい」ダラダラ・・・
額から血をダラダラ流すステイルさん(14)。その隣でビクビクするかおりん(18)。
オルソラ「それから……シスター・アンジェレネ……殺人未遂容疑で少年院に送られたいみたいでございますね」ニコニコ・・・
アニェーゼ「……だって……その下郎神父が……アンに」ゴニョゴニョ・・・
オルソラ「『限度』って言葉を知っていますでしょうか?」ニコニコ・・・
アニェーゼ「……うるせぇです、ぼけばばー」ボソッ・・・
オルソラ「アニー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・後で『大事なお話』があるのでございます。『2人』でトイレの用具室に行きましょうね」ニコニコニコ・・・
アニェーゼ「な、何も言ってねぇです!! ご、ごめんなさいぃ!!」ダラダラ・・・ヒイイィ・・・
滝の様に冷や汗を流すアニェーゼ(13)。隣で未だに現状を把握できず震えているアンジェレネ(12)。
アンジェレネ「あ、あの……わ、私達、何でこんな状況になってるんですか?」アタフタ・・・
シェリー「私も聞きたい。主教補佐殿はいつから女子寮の目覚まし時計役になったんだ?」ジトー・・・
ステイル「……だから、訳有って来たと言うに」ハァ・・・
アニェーゼ「うっせぇです変態。超変態。この強姦魔。去勢しろボケ。誰かルチア呼んできて下さい。こいつ審問です、審問」ボソボソ・・・
ステイル「喧しい非常識チビ。貴様の所為でこんな厄介な状況になってるんだボケナス。反省しろ……いや、各所に土下座して回れ」ボソボソ・・・
アニェーゼ「皆さーん。コイツ神父の皮被った悪魔でーす。チ●コの皮だけじゃなく聖職者の皮も被ってますねー。性職者ですよー」ジトー・・・
ステイル「黙れ淫売娘。香焼と一緒にするな。僕が性職者なら貴様は雌猫だ。野郎にケツを振ってイチモツを誘う娼婦娘だな」ジトー・・・
神裂「いや、香焼はああ見えて下の方はそれなりに……うーん……あんなに小さかったんですが男の子はすぐ大きくなるものですね」フムフム・・・
アンジェレネ「神裂……その言い方だと多分、変な意味で捉える人が出てきますよ。あと、きっとコォヤギくん泣いてますね」ハァ・・・
ツッコミ不在の恐怖。
アニェーゼ「てめぇ……表出やがれってんです、おいゴラァ」ギロッ・・・
ステイル「こっちのセリフだ糞チビ。灰にしてやる」ギロッ・・・
オルソラ「2人とも……姫様も、呼んで来た方が静かにするのでございましょうかね?」ニコニコ・・・
ステイル・アニー「「ごめんなさい。静かにします」」ペコッ・・・
これ以上、怖い人を呼ばないで下さい。
- 705 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/26(月) 23:46:12.70 ID:BCs1ctww0
- 一同、落ち着いた所でオルソラが促す。
オルソラ「さて……ステイル神父。本題をどうぞ。あくまで冷静にお願いするのでございますよ。熱くならずに、ね」チラッ・・・
ステイル「……ああ」ギロッ・・・
アニェーゼ「あん? ガン飛ばしてんじゃねぇです、クソボケ」ジトー・・・
また喧嘩になりそうだったが『姫様』の一言で、大人しくなる2人。
もう面倒なので神裂が口を開いた。
神裂「アニェーゼ。率直に聞きます……サーシャに香焼の住所を教えましたね?」チラッ・・・
アンジェレネ「っ!!」ビクッ!!
アニェーゼ「……だとしたら?」フンッ
ステイル「国際問題だ、馬鹿女郎」ジトー・・・
然も如何でも良さそうに『あっそ』と言い放つアニェーゼ。
アニェーゼ「知らねぇです。何の事やら」ケッ
神裂「……アンジェレネ。何か知りませんか?」チラッ・・・
アンジェレネ「え、あ、その……えっと」アタフタ・・・
アニェーゼ「アンも知らねぇです!」フンッ!
ステイル「貴様は黙ってろ。アンジェレネ、本当の事を話せ」ジトー・・・
アンジェレネ「え、と……うーん……あぅ」タラー・・・チラッ・・・
アニェーゼ「…………、」フルフル・・・
アンジェレネ「ぇ、う……し、知りませんよ」ダラダラ・・・
明らかに、しらばっくれる2人。ステイルは『チッ……もう良い』と立ち上がる。
ステイル「なら責任はレッサー一人に取らせよう。行くぞ神裂」スッ・・・
アニェーゼ「なっ……テメェ……待てってんです」ギロッ・・・
ステイル「何だ? 知らないのだろう? ではそれで構わない。香焼とレッサーを裏切り者として処分すれば良いだけの話だからな」クルッ
アニェーゼ「……根性腐ってやがりますね」ギロッ・・・
神裂「もう一度聞きます……サーシャにメールを送りましたね?」ジー・・・
アニェーゼ「……チッ」ケッ・・・
アンジェレネ「お……送りました」シュン・・・
鎮まる4人。ざわめく野次馬。溜息を吐くオルソラ。
- 706 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 00:22:06.83 ID:aOOsrV5h0
- 予想通りの答えにステイルは頭を掻きながら煙草を咥え……オルソラに睨まれる。
火は点けないので、と咥えたまま話出した。
ステイル「大問題だよ。如何責任を取るのか教えて貰いたいものだね」フンッ
アニェーゼ「責任も何も無ぇですよ。別に悪い事してねぇですから」ハッ
ステイル「子供の理屈だ。現に英国・学園都市・ロシアの上層部は大慌てだぞ」ジトー・・・
アニェーゼ「ふんっ。ただコーヤギの住所教えただけで……御偉いさん方はケツの穴小せぇんですよ」ジトー・・・
ステイル「…………、」イライラ・・・
自分の眉間を指で抓むステイル。
次口を開けば、また汚い言葉が飛び交うだろうと予想した神裂は、代わりに続けた。
神裂「五和と土御門が機転を利かせて、香焼を監視任務に参加させていなかったので、言い訳はできますが……所詮は詭弁です」ハァ・・・
アニェーゼ「あっそ」フーン・・・
ステイル「まるで、他人事だな……糞チビ」ギリリ・・・
アニェーゼ「あん?」ギロッ・・・
アンジェレネ「あ、アニェーゼちゃん……ステイルくんも……穏やかにしよう」アタフタ・・・
ステイル・アニー「「……チッ」」フンッ・・・
神裂は頭痛がしてきた。そんな最中、ルチアが現れる。
何事か尋ねてきたので、オルソラが簡単に説明をした。
ルチア「貴女達は……また問題事を……、」キリキリ・・・
アニェーゼ「ルチアは黙ってて下さい。部外者でしょう」チラッ・・・
ルチア「ぶが……っ」ギロッ・・・
アンジェレネ「あわわわ……、」ガクガク・・・
サロン内が更に険悪な雰囲気になる。
アニェーゼ「つーか、英国は何でサーシャの事手伝わねぇんですか?」ジトー・・・
ステイル「外交関係上の問題だ。貴様とて知らない話ではなかろう」ジトー・・・
英国と学園都市は、大分前から『深い部分』で繋がりがある。『裏』に住むものなら常識たる了解だ。
しかし……それが気に喰わない。
アニェーゼ「馬鹿みてぇです。一応、『ローマ正教』所属の私からしてみれば小せぇ話ですね」ハッ!
ステイル「何、だと」ギロッ・・・
アニェーゼ「私は今から正論を言ってやります。耳の穴かっ穿って良く聞きやがれってんだ、英国人」ジトー・・・
アニェーゼは正論という名の『屁理屈』を語り出した。
- 707 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 01:04:48.00 ID:aOOsrV5h0
- まず、何処で調べたのか、現在ロシア(CIS内部)で起きている問題をぶっちゃけ出す。
アニェーゼ「吸血鬼でしたっけ? 吸血種? まぁどっちでも良いですけど……んな良く分かんねぇモノがうろついてんでしょ」ハハハ
ステイル「……だから何だ」
アニェーゼ「まぁどっかの魔術師の仕業でしょうけど。何にしろルーマニア人の馬鹿が十字教にあるまじき行いしてんでしょうね」
異端、と言いたいらしい。
アニェーゼ「多分、スペイン星教の『異端審問軍』もドニエストルに向かったでしょう?」
神裂「はい、それが?」
アニェーゼ「こっからは予想ですが、ローマ本部の『代行者』も操作に向かったでしょうね」ハッ
一同、アニェーゼの言葉にざわめく。
ローマ正教内に存在する極めて大きな派閥、スペイン星教の『異端審問軍』。十字軍の名残がある、極右部隊。
そして『代行者』。ローマの中でも異端審問に特化した精鋭。そして『異端狩り』であり、『エクソシスト』としても噂される退魔師達。
アニェーゼ「今の私じゃ調べられねぇですが、アンタら2人なら簡単に調べつくでしょう」ケッ
ステイル・神裂「「…………、」」タラー・・・
アニェーゼ「代行者が出張ってる事態だとしたら、完璧、十字教の異端問題です。つまり……分かりますね?」ジトー・・・
オルソラ「……三大旧教の英国が、異端審問(調査)に参加しないのはおかしい、と」フムフム・・・
アニェーゼ「ビンゴ。ロシア、ローマが出てる。じゃあ何故英国は不参加なんでしょうね」ハハハ
痛い所をつく……だがステイルとしては、そう簡単に折れる訳にはいかない。
ステイル「先にも言ったが外交問題だと」
アニェーゼ「あっそ。十字教より外交を取りますか。まぁアンタの勝手ですけど……神父騙るの辞めろ。政治屋にでもなれば?」ジー・・・
ステイル「…………、」イライラ・・・
神裂「……確かに、貴女の言う事も一理あるのでしょう。ですが……此方にも事情があるのです」ムゥ・・・
アニェーゼ「勿論、子供じゃねぇですから分かりますよ。だけどねぇ……神裂、アンタがそれを言っちゃいけないと思いますよ」ジー・・・
神裂「何故?」
アニェーゼ「アンタが『救われない者(サーシャ)』に手を伸ばす事を諦めてっから、都市の若衆は困ってんじゃねぇですか?」ジトー・・・
神裂「っ」グッ・・・
アニェーゼ「図星でしょう? でもアンタは諦めきれなかったからコーヤギっつー『最後の救い』を残した。意図せずにね」フフフ・・・
歳不相応に微笑むアニェーゼ。彼女のカリスマに周りは呆気に取られた。
- 708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/27(火) 01:08:06.06 ID:Z/r0vNGSO
-
スレチ
削除依頼出してくるわ
- 709 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 01:30:39.63 ID:aOOsrV5h0
- 別に神裂が香焼を任務から外した訳ではないのだが、認証したのは確かだ。
彼が問題を起こす可能性が低くなったという安心があったのは確かだが、アニェーゼがいう『期待』は意図して無かった。
しかし……心の何処かで、何か手助けをしてくれるのではないかと思う部分があったのかもしれない。
アニェーゼ「まぁステイルに不良不良言いますが、私だって相当不良です。だからこんな暴論吐けるんですけどね」ハハハ
神裂「……貴女は」タラー・・・
アニェーゼ「どっち着かずの半端者隊長ですよ。ただ間違った事は言ってねぇ筈です」
ステイル「……ふんっ」テクテク・・・
神裂「ステイル」チラッ・・・
ステイル「戻る……処遇については後ほど告げる。とりあえずこれ以上騒ぎは起こすなよ。2人とも、暫く謹慎だ」テクテク・・・
アニェーゼ「へいへい。覚悟してますよーだ」ベー
そそくさと女子寮から消えたステイル。
アンジェレネ「えっと……アニェーゼちゃん。その、ステイルくんも多分……サーシャちゃんの心配してる筈ですよ」チラッ・・・ゴニョゴニョ・・・
アニェーゼ「……さぁね」ケッ
神裂「…………、」ジー・・・
アニェーゼ「神裂。アンタは戻んなくて良いんですか?」チラッ・・・
神裂「あ、はい。戻ります……どうもお騒がせしました」ペコッ・・・
仮にも一、女教皇の自分がこれではいけないな、と悩みながら神裂は席を立った。
2人が消えた後……アニェーゼはグデェっとその場に転がった。
アニェーゼ「やべぇ……マジでビビったぁ」ホッ・・・
アンジェレネ「……ふぇあ」フニャン・・・
ぶっちゃけ、ブラフだった。あくまで『屁理屈』。正当性など有りゃしない。
オルソラ「やれやれ……そうでございますね。間違ってないだけで、正しくもございませんからね」フフッ
アニェーゼ「まぁねぇ……てか、どうせオルソラ、私よりでしょう? 途中で助けて下さいよ」ハァ・・・
オルソラ「あらあら。悪い事をしたのは確かでございますから、手出しはしなかったのでございますよ。あと……ババアって言ったでしょ」
アニェーゼ「うっ……言ッテナイデス」ダラダラ・・・
ルチア「ハァ……兎角、少しは反省してください」マッタク・・・
2人を小突く姉貴分。苦笑するアニェーゼはルチアに尋ねた。
アニェーゼ「でも恰好良かったでしょう?」ニヤリ・・・
ルチア「調子乗るな」コツンッ
アニェーゼ「あはは……ねぇ、ルチア……私、間違ってます?」チラッ・・・
アンジェレネ「アニェーゼちゃん」ジー・・・
真面目な顔。至って真剣……ルチアは苦笑し、答えた。
ルチア「貴女の好きな様になさい……『友達』の為なんでしょう。私が如何こう言える問題じゃありません」フフッ・・・
アニェーゼ「あんがと」ヘヘヘ
友達想い、仲間想い……それが彼女の美点だ。
とりあえず部屋に戻って着替えて来い、と2人をサロンから追い出して、代わりに書く始末書の詳細を考え始めた。
- 710 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 01:59:54.37 ID:aOOsrV5h0
- ―――とある4日目、PM03:30、学園都市第7学区、窓のないビル・・・・・・
統括理事長に呼び出され、嫌々この場所に訪れる多角スパイ―――土御門元春。
何を言われるかは大体察しがついているが、それでもヤツの小言など聞きたく無かった。
土御門「……で?」ハァ・・・
アレイスター『分かっているのにそういう聞き方をするのは馬鹿というものだよ』ジー・・・
土御門「うっせ……俺だって身内の馬鹿の所為で頭痛ぇんだ」ハァ・・・
アレイスター『まるで他人事だな。人質(天草若衆)の総監督は君の役目だろう』
土御門「……悪ぅござんした」ヤレヤレ・・・
彼は学徒潜入している天草若衆の事を『人質』と呼ぶ。言葉通り、英国清教に対する人質扱いだ。
若衆ら自身は、都市の裏を掻くのが任務だと思っているが、実際は彼の掌上で転がされている。
英国との間で、何か不都合があれば『切る事が出来るカード』として、都市内での活動を許可しているのだ。
アレイスター『ケジメはつけるんだろうね?』
土御門「分ーってるっつの……それより、呼びだした理由はそんな小さな事じゃねぇだろ?」
アレイスター『ああ……今から話し合いだ。君も参加してくれ』
土御門「話し合い?」
次の瞬間、彼と自分との間にホログラムウィンドウが浮かんだ。
映ったのは……英国清教最大主教―――ローラ=スチュワート。
ローラ『ふぁあぁ……眠い。もうちょっと後で話し合いを設けたりしたもうてほしいわね』ムニャムニャ・・・
アレイスター『其方の不始末から生じた問題だよ。少しは誠意を見せて欲しいね』
ローラ『ぶっちゃけ末端まで私が面倒見きれる訳じゃ無かろう事なるの……土御門で十分じゃなきて?』チラッ・・・
土御門「ぐっ……(糞ババァ)」グヌヌ・・・
上司の屑。皆そう呼ぶ。
ローラ『まぁでも言い分は分かる……だから補佐と次席に任せたりと思うておるのよ』ジー・・・
アレイスター『君がそれで良いのであれば』フフフ・・・
ローラ『あいあい。それじゃーねぇ♪』プツッ・・・
かなり適当。多分、今回の件は如何でも良いと思っているのだろう。
英国と自分自身の問題以外は関係無し。まさに魔女といっても過言ではない女だ。
- 711 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 02:21:57.10 ID:aOOsrV5h0
- ローラのウィンドウが閉じて一寸後、新たに3つのウィンドウが開かれる。
彼女が言った通り、主教補佐と補佐次席の顔。そして……ロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』のまとめ役―――ワシリーサの顔。
土御門「なっ!?」ギョッ・・・
アレイスター『やぁ。麗しのワシリーサ』フフフ・・・
ワシリーサ『はぁい。アレクサンドル。そっちはこんにちわの時間帯よね?』フフフ・・・
至ってフランク。飄々と微笑する2人に、英国の3名は戸惑った。
アレイスター『さて。色々言いたい事があるのだが……誰から言うべきか』フム・・・
ワシリーサ『うーん。私と貴方の間じゃ、もう何も言う事無い筈だけど』アハハ
アレイスター『戦略兵器(サーシャ=クロイツェフ)を送り込んでおいて、よく言うよ』クスクス・・・
ワシリーサ『あらぁ酷い。サーシャちゃんは象徴兵士(マスコット)だとしても、兵器じゃないわよん』ムー
あくまで軽口。3名は呆れた。
ワシリーサ『ところで、サーシャちゃん元気かしら? もしかして捕まえちゃったとか?』ジー・・・
アレイスター『捕まえても良いのかい?』
ワシリーサ『凌辱は……ゲフンゲフンッ!!……拷問するのは駄ー目。もししたら私が直接、都市に入っちゃうぞ★』ニヤリ・・・
アレイスター『それは勘弁願いたいね』ハハハ
土御門「……アレイスター。コイツを呼んだ意味有るのか?」
アレイスター『ふむ……ローラが呼べと言うのでね。だが当の本人が消えたとなっては、困ったものだ』クスクス・・・
一体如何しろと……土御門は頭を掻いた。
アレイスター『兎角、君は後でだよ……では先に、ステイル。神裂』チラッ・・・
ステイル・神裂『『…………、』』
アレイスター『今回の件、如何始末をつけるつもりだい?』
ステイル『……先程データで送った通り、例の天草式若衆は今回の任務を知らない無関係者だ』
アレイスター『詭弁だね』
ステイル『そう思えるかもしれないが、実際此方としてもイレギュラーな事態に困っているんだ』ハァ・・・
アレイスター『では、神裂』チラッ・・・
神裂『私の……監督不行です。金銭で解決できるのであれば、私が賠償しましょう』コクン・・・
頭を下げる神裂。だが、それが通る相手では無いという事は分かっていた。
- 712 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 02:37:38.38 ID:aOOsrV5h0
- アレイスターは神裂の姿を鼻で笑い、言葉を続けた。
アレイスター『此方としては「関与無し」から「敵性排除」として動いて貰いたいね』
ワシリーサ『あのー……状況が読めないのだけれどもー』ウーン・・・
神裂『それは……その』グッ・・・
ワシリーサ『もしもーし』オーイ
アレイスター『さもなくば、それ相応の対処をさせて貰うよ』
ワシリーサ『……無ー視でーすか?』ショボーン・・・
少し黙ってて下さい。
ステイル『アレイスター……此方も少々考えが変わった節がある』
アレイスター『ふむ。言ってみてくれ』
ステイル『今回の件、ローマも動いてると聞く。噂では代行者も出たそうだ』
アレイスター『……それで?』
ステイル『つまり「異端」……いや「人外」の存在の可能性が非常に高いと思われる』
要は『吸血鬼』を肯定する訳か。
ステイル『そうまでは言っていない……そちらの部長殿』チラッ・・・
ワシリーサ『はいはーい♪ なぁに? あ! 貴女、最近サーシャちゃんと仲良くしてくれているらしいわね! いつもありがとー!』ニコニコ!
ステイル『ッ~~~……質問に、答えるだけにしてくれないかな』ビキビキ・・・
アレイスターの疑いというか、生温かいというか……微妙な目が痛い。
ステイル『とりあえず……ドニエストル捜査で分かった事をデータとして送ってくれ』
ワシリーサ『えー。貴方達、味方じゃないのにぃ?』ブーブー!
ステイル『……送れ。でないと状況は変わらんぞ』ギロッ・・・
ワシリーサ『んもー。我儘なんだから……クーちゃーん。捜査報告書のデータ流してー』
面倒臭い女、と3人は思った。まるでローラを相手にしている気分だ。
この場に2人もウザいのが居なくて助かったと考えるべきだろう。
- 713 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 03:17:02.21 ID:aOOsrV5h0
- 一寸後、報告データが回る。
・死者数10人。(5日前から2人増。死者はスペイン星教の異端審問軍から1人。民間人1人)
・交戦回数:殲滅白書3回、異端審問軍7回、代行者2回、その他1回。
・うち代行者が交戦の際、『< >』の捕獲に成功。ローマ本国(バチカン)に輸送。
土御門「捕獲しただと? じゃあ任務終了か」
ワシリーサ『うーん、残念だけど< >は一匹じゃないのよん』ハァ・・・
ステイル『他にも、そのバケモノ自体のデータもあるのだろう? それを見せろ』
ワシリーサ『はいはい。まったく、サーシャちゃんの言ってた通り可愛くない14歳ね』ジトー・・・
余計な御世話だ、と苛立ちを堪える為煙草を咥えるステイル。
・< >について:危険度は大。増殖する恐れ有り。
・見た目は人間。だが生気は無し。死霊操作かホムンクルスの可能性も。ゾンビ、グールの可能性も。(後者の可能性が高いと見ている)
・故に、メジャーな死霊魔術師や異端錬金術師の可能性は低い。
ワシリーサ『本当はバチカンが情報開示してくれると助かるんだけどねぇ……ところで、アレイスター』チラッ・・・
アレイスター『何かな』
ワシリーサ『人間の躯に限界を感じた魔術師って……吸血鬼とかに憧れるものなのかしらねぇ』ニヤリ・・・
アレイスター『そういう魔術師もいるのかもしれないね……だが不死の君が、それを言うかい?』フフフ・・・
ワシリーサ『イヤねぇ。一応、死ぬわよん。聞いてみただけ♪』フフフ・・・
聖人の神裂でさえ、この2人を不気味と思った。
ステイル『……部長殿。兎に角「人外」の可能性は高いんだな?』
ワシリーサ『んー。まぁ何を人外と称するかにもよるけど……バチカン的に言わせれば確実に「異端(人外)」でしょうね』
ステイル『因みに、吸血鬼との関連性は?』
ワシリーサ『0では無い。例え魔術師の仕業だとしても、それはかなり「危ない実験」をしている魔術師の筈ね』
それこそ吸血鬼(死徒)化しようとしている魔術師かも……とワシリーサは黒い笑みを浮かべた。
ステイル『アレイスター。そういう訳だ。その報告データと彼女の話が事実だとすれば……必要悪の教会としても見逃せない』ジー・・・
神裂『いずれ、英国にも危険が及ぶ問題やもしれませんからね……学園都市とて例外では無い筈ですよ』ジー・・・
アレイスター『…………、』フム・・・
思う所があるのか、少々悩むアレイスター。
土御門は頭の中で優先順位を計算しながら、今回は英国側に乗るべきと判断し、追い打ちを掛ける事にした。
- 714 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 03:31:55.22 ID:aOOsrV5h0
- 少し良いか、と手を上げ、アレイスターの注意を引く。
土御門「話は変わるが、この件、『所長』に通して無いだろ」ジー・・・
アレイスター『「彼」かい? 通す必要があるとでも?』
土御門「まぁ一応『原石』の問題だしな。多分、怒ってるぜぃ?」タラー・・・
今度は魔術師3人がキョトンとする。『原石』は何となく分かるが、『所長』とは何だ?
土御門「2人にはその内教える。今は黙ってろ」
ワシリーサ『あらん。私は?』
土御門「……申し訳無いがNGだ」
ワシリーサ『酷いわねぇ』ムーン・・・
無視無視。
アレイスター『……少し待て』フム・・・
土御門「待てないな。お前が俺らを急かせたんだろ?」
アレイスター『……風斬』ハァ・・・
土御門の1m先くらいの空間が揺らぎ……一人の少女が現れた。
風斬「―――……何ですか? 土御門くんを如何こうしろって命令なら……聞きませんよ」ジー・・・
アレイスター『随分反抗期になったものだね……まぁいい。そうではないよ』ジー・・・
風斬「では何を」
アレイスター『「彼」の研究所に回線を繋いでくれ。私がやると少々時間が掛り過ぎる』
風斬「そういう事なら、協力します」Pi!
虚空をボーっと見詰める風斬。一寸後、もう一つのウィンドウが展開され、1人の男性が映った。
アレイスター『突然すまないね。土御門が如何しても君を呼べと言うものだから』フフフ・・・
土御門「ちょ、てめぇ!」アタフタ・・・
所長『……何の様だ』ジー・・・
顔中傷だらけ。猛禽類を思わせる様な目付き。如何見ても警備員の一員か、暗部の一員にしか見えない男
『原石』担当の理事―――貝積継敏から、その研究を任されている大学の『所長』である。
- 715 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 03:48:44.99 ID:aOOsrV5h0
- 土御門はアレイスターに目配せし、司会を始めた。まず始めに今回の件を短く説明する。
所長『ああ、データで送って来たアレか』フム・・・
土御門「見たんなら電話の一本でも寄越せっての……御蔭で俺がセンセに怒られたし」ブツブツ・・・
所長『知らん。そっちから連絡するのが筋だろう。アレイスター』チラッ・・・
アレイスター『これはこれは。手厳しいね』クスクス・・・
統括理事長相手にこの口の聞き方。ただの研究者ではないという事は明らかに分かった。
土御門「そんで、此方がクライアントのロシアのお偉いさんだ」チラッ・・・
ワシリーサ『どうもー♪』ニコニコッ
所長『……で?』
ワシリーサ『んー。お願いがあるの。「吸血殺し」ちゃんを貸して欲しいなぁって。もしくは彼女の「血」を、ね』コクッ
所長『俺に聞くな。本人に聞け』フンッ
英国側とまるで同じ事を言う。ステイルと神裂は、彼が本当に『原石』の研究者なのか疑った。
アレイスター『勝手な事を言うね。仮にも都市の子供だよ』ジー・・・
所長『子供の前に個人だ。好きにさせてやれ』
ワシリーサ『わぁい♪ ありがとう』ホッコリ・・・
アレイスター『ワシリーサ。私は許可して無いよ』ジトー・・・
ワシリーサ『えー。超KYだわぁ』ジトー・・・
魔女がKYとか言わないで下さい。
神裂『アレイスター。僭越ながら私個人としても、本人の意思を尊重すべきかと思います』
アレイスター『一応、「吸血殺し」は君達が所有を主張している「モノ」でもあるのだよ?』
神裂『……「モノ」ではありません。彼女は人でしょう』
アレイスター『綺麗事を』フフッ・・・
この場で綺麗事を謳う様な人間は神裂1人だ。
だが土御門と風斬は……一、友人として姫神秋沙の事を見ている。故に同情はしていた。
- 716 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 04:16:07.80 ID:aOOsrV5h0
- だがしかし、アレイスターよりトンデモない事を所長は言い放つ。
所長『失礼な。彼女は「原石」だ。人間などの一緒にするな』ジー・・・
ステイル・神裂『『はぁ?』』ポカーン・・・
所長『というかアレイスター、土御門。こいつらは何だ?』ジトー・・・
魔術師(オカルト)と言っても構わない人間なので、素直に教える。
所長『ふんっ。人間である事から逃げた者か』ジトー・・・
ステイル『随分な言い方だな』
土御門「ステイル、押さえろ。この人の口の悪さはデフォだ」
所長『悪かったな、辛辣で』
本題に戻る。
土御門「アレイスター。所長がOKを出している。交渉する権利くらいはやったら如何だ?」
アレイスター『君は「原石」の重要性と危険性が分かってないようだね。アレらは―――まぁ良い』チラッ・・・
ワシリーサ『……あら、お構いなくどうぞ』フフフ・・・
ステイル・神裂『『…………、』』
沈黙が走る中、所長が大きく溜息を吐き……アレイスターに告げた。
所長『貴様こそ、勘違いをしているぞ。アレイスター』ヤレヤレ・・・
アレイスター『…………、』チラッ・・・
所長『「原石」の意志は世界の理だ』サラッ
トンデモ理論に、一同絶句。
彼の言葉は続く……『原石』とは―――この宇宙を創造するエネルギー体であり、エネルギーで在りながら、意志を持った『存在』である。
『原石』は、この宇宙に存在する物質、生物、エネルギー、はたまた精神体や空間、時間のように形の無いモノの代弁者である。
そして、その全てが宇宙の中で有機体を生み出している。
『原石』に選択されたモノの中には『草や木が何故そこにあるか』『何故あの時友人が死んだのか』『全てが解る』と言う者も居る。
それは全てが『原石』の支配の中にあり有機性を持ち『原石』は個でありながら全だと言うことに他ならない。
故に『原石』にはその全てが解り全ての進化の記憶を持っている。
太古の昔地球を征服していた恐竜が滅び、猿に過ぎなかった人類が急激な進化を遂げたのも『原石』の成せる業。
これは『原石』が人類こそ繁栄すべきと選んだ種族だという裏づけである。
よって人類が絶滅の危機に直面した時、『原石』はそれを察知し、より強く意志を表し、それを許さない。
その際に『原石』は、己の能力を駆使し、人間の夢の中で語りかけたり幻影を見せるなど、何かしら人間に危機を伝えている。
そして『原石』自身が己の能力を用い、その危機を取り除き、人類に更なる飛躍を促す事もある。
ステイル『それは、その……何かの宗教かな?』タラー・・・
所長『馬鹿言え。この世の理だ』フンッ
大真面目にそう言い放つ、所長さん。とりあえず……一同聞かなかった事にした。
- 717 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 04:41:32.17 ID:aOOsrV5h0
- 土御門は何とか間を繋ごうと、アレイスターに話を振った。
土御門「と、兎角、所長の許可は出た。後はアンタ次第だぞ」タラー・・・
アレイスター『先の説明では何の説得にもなっていないよ』ハァ・・・
所長『アレイスター。貴様には分かるまいな……俺とて理解しきれてないのだから』フンッ・・・
アレイスター『前々から言っているが、君のその理論は科学に反する考えだよ。私は「原石」をそうは捉えていない』
所長『何?』ジトー・・・
アレイスター『第一……君は所詮「置いていかれた」人間だろう。君自身は所詮「人間」なんだ。所詮、「原石」に選ばれてない』
所長『分かってるさ……だが、貴様とて同じだぞ。アレイスター』ジー・・・
アレイスター『だが、私はそれを肯定し、科学的かつ魔術的な理論として考えている。君は「行ってしまった」仲間の影を追い駆けてるだけ』
所長『アイツらの話をするな……殺すぞ』ギロッ・・・
アレイスター『やれるものならね』フフフ・・・
土御門「い、いいから返答をくれ!」アタフタ・・・
喧嘩なら地球外でやってくれ。
アレイスター『……そうだな』ムゥ・・・
所長『ふんっ……どうせ「計画」には支障無いのだろう。素直に認めてしまえ』ジトー・・・
アレイスター『それを言われると、弱いな』ジー・・・
ステイル「アレイスター。面子云々の話をしているなら、そんなもの捨て置けよ。僕は捨ててきた」ジー・・・
アレイスター『…………、』ボー・・・
静寂。そして、一寸後。
アレイスター『ワシリーサ……あくまで交渉を認めるだけだ』チラッ・・・
ワシリーサ『さっすがぁ! アレイスター大好きぃ♪』フフフ・・・
アレイスター『無論、研究や「血」を悪用する事は認めないよ。分かってるね?』
ワシリーサ『あいあいさー』フフフ・・・
所長『その場合は俺と軍覇……超能力者がロシアに乗り込むぞ。覚悟しておけ』ギロッ・・・
ワシリーサ『はーい』ニコニコ・・・
ステイル『ついでに……彼女の十字架を外すのも禁止させて貰おう。というよりも、彼女はアレを外したがらない筈だ』
土御門「そうだな……言っておくが、今からお前らは姫神秋沙のトラウマに触れる。交渉が簡単にいくとは思うなよ」
ワシリーサ『分かってますよー。大丈夫、交渉権さえ頂ければサーシャちゃんが善戦するから』フフフ・・・
面妖な微笑み。軽い口振りで、ワシリーサはウィンドウを閉じた。
- 718 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 05:04:03.88 ID:aOOsrV5h0
- 続けて所長もウィンドウを閉じ、残るはステイルと神裂だけ。
土御門「ふむ……それじゃあサーシャ=クロイツェフには天草式の若衆筆頭から連絡させるぞ」
アレイスター『任せるよ。ただし、くれぐれも手助けはせぬ様に。それから監視は続けてくれ』
神裂『了解しました。土御門、引き続き、監督をお願いします』
一段落。神裂は内心安堵し、ウィンドウを切ろうと―――
アレイスター『待て』
―――呼び止められた。
アレイスター『戻る前に……今メールで送った文章を読んで、承認して貰おう』
神裂『え、あ、メール? 承認?』キョトン・・・
ステイル・土御門『「…………、」』
アレイスター『なぁに……今回の落とし前。ケジメだよ。忘れたとは言わせないさ』ニヤリ・・・
神裂の下にメールが届く。慣れない手つきでクリックし文章を読んだ。
神裂『……っ!!』ドキッ・・・
アレイスター『当然だろう。因みに、ステイルと土御門は同意してるよ』フフフ・・・
神裂『っ』ギロッ・・・
ステイル『……恨んでくれて構わない。だが、僕は良い薬だと思っている』ジー・・・
土御門「同意だ。結標の時も言ったが……少し痛い目見ろ」コクッ・・・
神裂『……私が代わりに!』バッ!
アレイスター『何の意味もないだろう……私は良いケジメだと思うよ。因みに、これを承認しなければロシアの交渉も認めない』
土御門「そうなればサーシャは勿論、ドニエストルでの死傷者、そしてNATOとWTO間での軍事的犠牲者と拡大していくぞ」
対極の問題を提示される。長い沈黙……そして。
神裂『卑怯です……3人とも』カチッ・・・
同意をクリック。
アレイスター『ふふふ……では、後はご自由に』ニヤリ・・・
神裂『…………、』ギロッ・・・ギリリ・・・
ステイル『戻るぞ……ヤツ当たりなら受けてやる』チラッ・・・
神裂『っ……アレイスター。この件、忘れませんよ』プツンッ・・・
アレイスター『私も、覚えておこう』フフフ・・・
回線を切る神裂。続いて頭を抱えながらステイルも消えた。
- 719 :第⑥話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」 [saga]:2011/09/27(火) 05:31:36.08 ID:aOOsrV5h0
- 部屋に残ったのは土御門とアレイスターのみ。風斬はいつの間にか消えていた。
アレイスター『アレも、聖人で有りながら勿体無い性格をしているね』フム・・・
土御門「美点だよ、ねーちんの」チラッ・・・
アレイスター『……美点、か』フフフ・・・
土御門「そんじゃ俺も帰るぜぃ」
アレイスター『ああ。監視は続けさせてくれ』
それからケジメもね、とアレイスターは微笑んだ。
土御門「……分かってる」
アレイスター『君が出来ない様なら、別の暗部を出そう。そうだな……成績優秀者は……窒素装甲なんか如何だい?』ニヤリ・・・
土御門「っ! アレイスター……オマエは地獄も生温い。意地が悪すぎるぞ」テクテク・・・
アレイスター『ふふっ。冗談だよ……キチンとこなしてくれ』フフフ・・・
気味の悪い気配を背に土御門は部屋を去った。
一寸後、『案内人(結標)』を呼び出し、『ビル』の外に出る。外には……何故か風斬も待っていた。
結標「随分長かったわね」
土御門「……まぁな」
結標「機嫌悪そうだけど、如何なったのかしら?」
土御門「交渉権を認めた。都市側の妨害はもう無しだ」
結標「あら、穏やか。意外ね」フフフ・・・
だが、晴れない表情の土御門。
結標「何か不服なの?」
土御門「別に……それより、オマエは何してたんだ?」
結標「主に秋沙の周辺監視をしてたわ。特に怪しいヤツはいないみたい。侵入者は1人みたいね」
風斬「はい……彼女以外の魔術師は……多分、侵入してません、SVRの人間も無しですね」コクッ・・・
コイツらはコイツらなりに行動してたか。
結標「ま、今日は別の動きするから。とりあえずアンタは学校行きなさいよー」ノシ
土御門「けっ、もう学校終わってるっつの……風斬は?」テクテク・・・チラッ・・・
風斬「戻ります……あの、土御門くん」モジモジ・・・
土御門「何だ?」チラッ・・・
風斬「ケジメ……私……代わる?」チラッ・・・
土御門「……気にするな。身内の処理は此方で行う……それよりさっさと戻れ。色々小言言われるぞ」テクテク・・・
土御門は頭を掻いた後、軽く手を上げ、帰路に着く。その背中は何処か煤けている。
風斬は、無言でその背中を見詰め『何も出来なくてごめんなさい』と、嘆き、呟いた……―――
- 720 :>>1 [saga]:2011/09/27(火) 05:33:01.28 ID:aOOsrV5h0
- はい。此処まで。次回は、やっと香焼とサーシャのほのぼのです。
ではまた! おやすみ! ノシ - 721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/27(火) 08:20:01.10 ID:jyuwVP6U0
- 乙!
ケジメか……海の家で上条さんボコッた時みたいに、土御門が悪役演じるのか?
後、>>704殺人未遂はアニェーゼの方だと思うんです
アンジェレネは朝這いの被害者 - 722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/27(火) 10:15:49.49 ID:ES20x/Wh0
- 乙です!
けじめ、ねぇ。
どんなものだか今後の展開が楽しみっす - 723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 11:40:44.37 ID:z5oANi/DO
- 乙。アニェーゼ△! あと、香焼(ショタ)にまでフラグ立てられる上条さんマジぱねぇっすww
>>716:『原石の選択』
むむ!!? そうか! 原石よ‥‥そういう事だったのかっ!! - 724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 16:27:02.18 ID:6t/nI1ZDO
- ケジメ……
こーやぎに堕天使エロメイドコスで女装でもさせるのか?ww
- 725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/09/27(火) 19:15:25.63 ID:jyuwVP6U0
- >>724
それだと風斬が「代わろうか?」って言ってたのがわからない
風斬が堕天使エロメイド着てもけじめにならない
……個人的には見てみたいけどさ
2013年2月8日金曜日
あまくさっ!? ~ただいま。~ 5
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