2013年5月12日日曜日

固法「おやすみ、先輩」 1

1>>1にかわりまし てカキネがお送りします2010/10/30(土) 23:56:12.71 ID:EKMcDaA0
・アニメ版『とある科学の超電磁砲』と原作の混合です
・時系列が多少オカシイ所もありますが、仕様で
・たまに、アンケート有り

・①『先輩、おかえりなさい』と②『先輩、いってらっしゃい』、③『先輩、おはようございます』の設定を引き継いでたり、いなかったり……

・今回から地の文入れるかも。では、宜しくです。 
2VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/10/31(日) 00:05:23.46 ID:UmT.iMAO

あまくさっ! が面白くて困るww
3VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/10/31(日) 00:14:25.13 ID:GoEaysAO
おやすみときて先輩が後ろ…何を暗示しているんだ
4>>1にかわりまし てカキネがお送りします2010/10/31(日) 00:21:39.65 ID:2J6dQus0
 ―――とある日、AM09:30、学園都市第7学区、とあるアパート一室(黒妻家)……


 ブロロロロォ・・・・・


固法「先輩、準備できましたよ」ガチャガチャ・・・

黒妻「ん。花とか茶水はアッチで買えばいいよな」テクテク・・・

固法「ええ」パタパタ・・・


世間的に言えば、何も無い休日。一般人であれば適当に過ごしているであろう凡日。


固法「あの……先輩」

黒妻「何だ」

固法「……ホントに私達だけで良いんですか? 浜面くんや半蔵くんも一緒の方が」

黒妻「構わないさ。半蔵には個人的に行くと伝えてある」

固法「そうですか……」

黒妻「黄泉川さんも二人だけで行って良いっつってくれた……行くぞ。オレのバイク一台でいい。後ろ乗れ」

固法「……はい」


今から向かうのは、第10学区の……共同墓地。『ある男』に会う為。

自分――黒妻綿流と、彼女――固法美偉が休みを取れた。そして、こんな日には『誰もいないだろう』という考え。
それだけの理由でこの日を選んだ。

自分にとってホームグラウンドでもある第10学区。しかし里帰りは実に久しぶりである。
相変わらず荒れているのだろうなと、昔の様子を脳裏に蘇らせ、嘗ての根城に単車を走らせた。



『ある男』は其の地で眠っている……
5 :>>1にかわりまし てカキネがお送りします2010/10/31(日) 00:45:16.36 ID:2J6dQus0
 ―――同日、同刻、学園都市第7学区、とある病院地下、特級精神障害者隔離病棟……


テレスティーナ「……あー、暇だわ」モクモク・・・

垣根「じゃあ抜け出そうぜ。オレも暇だ!」ニシシ!

テレス「直ぐ連れ戻されるの分かってて抜け出す程、間抜けじゃないわよ」ハァ・・・

垣根「んだよ、連れねぇなぁ……てかこのだだっ広い空間にオレらだけってのも可笑しいんだっつの。あのジジイめ」グヌヌ・・・

テレス「自業自得でしょ……私も、アンタも……」フゥ・・・


此処に居るのは私――テレスティーナ・木原・ライフライン、自身の意志である。
本来、好き勝手やっていれば統括理事会の手駒……つまりは『暗部』とやらで飼い狗にされていたであろう、我々。


垣根「まぁ……アレイスターの狗でいるのは簡便だがよぉ……でも暇だ」ハァ・・・

テレス「じゃあ先生に言いなさいな。僕を実験道具にしていいよ、って。そしたら暇は一瞬にして消えるわ」フンッ・・・

垣根「……人体実験はんたーい。この『木原』思考が!」

テレス「……」ボー・・・


文句は言えない。実際私達――木原は『実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す』ことを信条とする。
私個人的には今尚、そのつもりだ……まぁ最早それ以前に、実験等をする気力が湧かないが。


冥土返し「……垣根くん。そんなに暇なら看護師の真似事でもしてみるかい? 年中人手不足だから助かるよ」カツカツ・・・

垣根「おう。そりゃ良い案だ! ヒース・レジャー顔負けのナースになるぜ! オレは!」カカカ!

テレス「笑えないわ、そのジョーク……」


まぁ確かにコイツは『道化(ジョーカー)』っぽいけど……とは言わないでおく。直ぐ図に乗るのは見え見えだ。


冥土返し「冗談はさておき……テレスティーナ」クルッ

テレス「なぁに? まさか私には本気でナースさんやらせる気? ピンクのナースさんかしら?」ククク・・・

冥土返し「それは魅力的だが……今回は真面目な御客さんだよ。さぁ、入って」ガチャッ・・・

テレス・垣根「「ん?」」ジー・・・


見知った、『チビ』がいた……
6 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 00:56:29.86 ID:2J6dQus0
テレス「冥土返し……御客っつーのは、フレンダみたいなダチの事言うのよ? コイツは『客』じゃないわ」フンッ・・・

冥土返し「そう言うな。数カ月の間、自力で君の居場所を探してたらしい」

垣根「……何だ、この金髪嬢ちゃん。テレスティーナ、テメェに似てるな」ハハハ!


垣根の不配慮は言葉に、私と、『チビ』は同時に否定した。


テレス・那由他「「似てない!」」ギロッ

垣根「くくく! ああ、うん。似てないねー……同じだ!」ゲラゲラゲラ!


檻が無かったら打ん殴ってた。


テレス「……それで、何のようかしら? 我が姪よ」ジー・・・

垣根「ほら見ろ! 親族じゃねぇあbbbbbbbbっ!!」ビジバジ!

冥土返し「君は少し黙ってようか……さぁ、那由他くん」ポチッ


ナイス教授。


那由他「……久しぶりね」

テレス「そう? 私はついこの間の事の様に覚えてるわよ。ああでも……あの時は黒髪だったかしら?」ククク・・・

那由他「っ……変わらない奴」ギリッ・・・


私の姪――木原那由他。
進んで自分の体を研究の実験体として提供し続ける木原の異端児。
金髪などといった一見すると外人に見えるその外見も、実験に自らの身を提供し続けた結果である。
一族によるエリート教育を受け、幼い頃から高度な実験も行っていた。
しかし『実験体を壊すことで限界を研究するのが第一歩』と考える一族の中で彼女の実験は「実験体の安全まで完全に配慮していた」為、
一族内では落ちこぼれ扱いを受けている。欠陥品扱いされることもしばしば。


テレス「んで、何? 殺しに来たの?」

那由他「っ……」グッ・・・
7 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 01:12:44.24 ID:2J6dQus0
まぁまぁ私の事を打ち殺したいだろうね、と心中嘲笑った。

己を『こんな身体(サイボーグ)』にした身内一族の唯一生き残りであり……
自分の友人達を巻き込んだ『暴走能力の法則解析用誘爆実験』の責任者である私は、地獄の果てまで追い駆けてでも殺したい畜生だろう。


那由他「……殺してやりたいのは、山々よ」グッ・・・

テレス「へぇ。でも、アンタにできるの? 倫理的な意味でも……力的な意味でも?」ニヤリ・・・

那由他「……力なら、有る」ギロッ

テレス「でぇも……それ―――」ビシッ


那由他の肩を指さす。


テレス「―――風紀委員でしょ? アンタ」ニコッ・・・

那由他「ええ、だから……人の血肉を食う事しかできないアンタらと一緒にしないでね」フンッ・・・

テレス「キヒヒ! まったくだ! オマエは良い子(出来そこない)だよ! 伯母ちゃん嬉しいわ!」アハハ!


一頻り嘲笑ったところで、冥土返しが私に話を聞くよう促した。
那由他は泣きそうな顔をしながら歯を食いしばり、私に言い放つ。


那由他「……運転、して」ボソッ・・・

テレス「は?」

那由他「……第10学区まで」ウルウル・・・

テレス「第10学区? なんで私があんなゴミ町に?」


有るモノといえば、墓。危険研究施設。少年院。実験動物処分場。原子力関連施設……そしてストレンジ(スラム街)。


冥土返し「テレスティーナ。今日から二日、自由をあげる。彼女に付き添いなさい」

テレス「ちょ、ま、何でよ?」

冥土返し「……まず檻から出す。僕の部屋で詳しく話そう」テクテク・・・


そう言われ、私達は薄暗い地下の大広間から光溢れる冥土返しの研究室に案内された。
8 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 01:28:38.90 ID:2J6dQus0
テレス「……墓参りだぁ?」ポカーン・・・

冥土返し「ああ。行ってきなさい」


つまり……可愛い義弟(ゲロカスな義弟――数多)、尊敬する御爺様(最低最悪の糞ジジイ――幻生)の墓参り。那由他と線香上げに行けと。


テレス「……意味分かんないわ。別にあんな奴ら」

冥土返し「……テレス」

那由他「っ」グッ・・・

テレス「うっ……」


理解できない。
墓を蹴倒して来いというなら喜んで跳んで行くが、撚りにも寄ってあのカス身内共に線香上げろと?


テレス「那由他。何のつもりかしら」ギロッ

那由他「……別に」ボソッ・・・

テレス「さっきからボソボソと……ハッキリしない餓鬼だねぇ」イライラ・・・

冥土返し「テレスティーナ。大人の対応をしなさい……仮にも伯母だろう」キッ

テレス「ホント、何で伯母なのかしらね。仮『でも』」ハァ・・・

那由他「……一回で、いいから」

冥土返し「君達の御爺さん、幻生くんの所在は不明だが、残念ながら最悪……亡くなってるかもしれない」

那由他「ねぇ……アンタが知ってるんじゃないの?」ジー・・・

テレス「……さぁ」シレッ


この状況で上目遣いされたって、何も出ない。あのジジイの消息については……『禁則事項』だ。絶対に。
兎角、私達は――私は嫌々だが――敬っても無い故人の為に、墓参りに行く事となった。
10 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 01:45:00.76 ID:2J6dQus0
 ―――AM11:10、学園都市第10学区、共同墓地……


 ブロロロォ・・・キキィ・・・・・


黒妻「……やっぱ人少ないな」カツカツ・・・

固法「でもチラホラいますね」スタッ


学園都市、共同墓地。宗教は関係無い。
死者を弔う。ただ、それだけの地だ。

能力開発を受けた生徒の殆どは、常人とは違う身体の造りとなる。
例えその骨であっても門外不出でなければならない、というこの街の暗黙了解(ルール)は甚だ非人道的に感じられる。


黒妻「この街で育った人間なら、生まれた地でなくともいいのかな」

固法「どうでしょう……私は家族と同じ墓に入りたいです」ポンッ

黒妻「……ああ、そうだな」ポンッ


無論、その理屈からいえば置き去り(チャイルドエラー)や親族共にこの街に居る人間であれば、問題無かろう。

さておき、オレらは『K』ブロックを目指した。『男』はそこにいるからだ。


黒妻「……此処か。オレらだけだな」

固法「はい……あ。奥の花が沢山ある墓石じゃ」ピッ

黒妻「『こ』だから、多分そうだな。ん……」ジー・・・


死して尚、人望は消えず。


黒妻「……駒場」ザクザク・・・


偉大な男が、そこに眠っていた。
11 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 02:12:50.48 ID:2J6dQus0
駒場利徳。


何かと問題事の多い第7学区の路地裏を纏め上げていた、武装無能力集団(スキルアウト)の……『元』リーダー。
その厳つい顔に似合わず、コピー用紙を吐き出すような話し方をする、ゴリラのような大男だった。


固法「お花が、沢山ですね」ニコッ・・・

黒妻「……ああ」コクッ


心無い能力者から無能力者を守るためにスキルアウトを纏めていた。
自分と同じく――自分で言うのは恥ずかしいが――『善』のスキルアウト。

子供が好きで、意外と洒落が利くノリの良い奴。


黒妻「先に……掃除するか。花が散って、見っとも無くなってる」

固法「はい……あら?」

黒妻「ん」

固法「綺麗なカーネーション。真っ白な造花です」

黒妻「供え華に造花たぁ、何とも乙なこって……まぁいいさ。水汲んでくる」テクテク・・・

固法「私は御茶買ってきますね」テクテク・・・


御供え物をしてくれた連中には悪いが、見栄えを必要だ。オレらは忙々と掃除を始めた。

……昔話をすれば限が無いが、色々と思い出深かった。


黒妻「……死ぬこた、無かったのにな」サッ・・・サッ・・・

固法「……」ジー・・・


彼女の言わんとする事は何となく分かった。

……一歩違えば、オレも石の下に眠っていただろうよ。
12 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 02:34:27.25 ID:2J6dQus0
 ―――一寸・・・・・



黒妻「まぁ、こんな感じか」フゥ・・・

固法「ええ。墓石も拭きましたし……あ、造花はそのままにしておきましたよ」

黒妻「ああ」


一通り見栄えを良くし、静かに……線香をあげた。


黒妻「……美偉。どうして、コイツ……死ななきゃいけなかったのかなぁ」ボソッ・・・

固法「……私が知ってるのは書庫(バンク)のデータだけです」


思わず、呟いた。


固法「……『人質救出及び暴力行為による正当防衛』にて、警備員が止む追えず」

黒妻「……」

固法「でも……詳しくは聞き出せませんでしたが、私も……多分、先輩と同じ考えです」


ああ……コイツは人質を取る様な下衆なんかじゃない。取るとしても、理由が合って悪人を捕えていた筈だ。


黒妻「『本格』のシノギは……オマエの後にちゃんと続いてるぜ」ボソッ・・・

固法「……先輩」


女は、少しだけ……男の背中が消えそうに思えて……また、居なくなりそうに思えて……抱きしめたくなった。


黒妻「っ……」グッ・・・

固法「……お手洗い、行ってきます」

黒妻「……ああ」コクッ・・・


でも、今は……彼の顔を見る事は許されない気がした。ああ。男とは、何て難儀な生き物なのだろう……
13 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 02:48:43.18 ID:2J6dQus0
―――女が戻る頃には、男は墓前で煙草を二本消費していた。


固法「不謹慎です」

黒妻「……そうだな」


そう言って、新しい煙草を取り出し少しばかり火種を点けて……線香入れに、並べた。


黒妻「懐かしいな……コイツとつるんでた頃、美偉まだ中坊だっけ?」

固法「でしたっけ? もうちょっと大人だった気もしますけど」

黒妻「そうだな……オレが消える前に、ギリギリ郭ちゃんとは絡んだんだっけな。あの頃、仕上も新人で……」


それ以上、言葉を紡げなかった。


固法「……先輩は」ボソッ・・・

黒妻「……」

固法「もう、消えないでください……ね」ギュッ・・・

黒妻「……」コクッ・・・


墓前から、『イチャつくな』という声が聞こえそうだったが今は我慢して貰った。


黒妻「っ……あはは。悪いな、何か……そう言えば、黄泉川さんもあの頃は、エースじゃなかったな」

固法「え? そうなんですか? てっきり万年エースかと」

黒妻「いや、あの人の前にもっとスゲェ人いたんだよ。オレは黄泉川さんに指導(しょっ引か)された事は無ぇが……あの人は凄かった」

固法「どんな人?」

黒妻「今となっちゃ恥ずかしいが、オレを三回捕まえたよ……確か名前は……手塩さんだ。手塩、恵未」

固法「手塩、さん……聞かないなぁ。警備員ですか?」

黒妻「おう。あの人は強いぞ。どうして警備員の女性は強い人ばっかかなぁ。悪出来ないっつの!」アハハ!

固法「だから、不謹慎ですって……」ハァ・・・


本当に、懐かしい事ばかりだ……
14 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 03:06:46.31 ID:2J6dQus0
それから一頻り昔話をして、もう一度線香をあげた後……オレらは墓地を去ろうとした。すると―――意外な顔を見た。

黒妻「……ん?」ピタッ

固法「先輩? ……あ」ピタッ

黒妻「……テレスティーナ」ジー・・・


まるで魅了の魔法を使っているかのような美貌の女。犯罪者――テレスティーナ・木原・ライフライン。
首には首輪――ファッションなのか――を付けている。隣には、テレスティーナと同じ金髪の小さな少女。


テレス「……ん。面倒臭い顔がいるわね」ジトー・・・

固法「……こんにちは」ペコッ


霊前で争い事はしたくない。


黒妻「精神病患者になったんだってな」

テレス「はんっ。超電磁砲から聞いたか? まぁ迫が落ちちゃったわよ」

固法「まさか……お墓参りなの? 貴女が?」

テレス「私が墓参りしちゃダメなのかい? 尤も、する気はなかったが……この子が」ホレッ


隣の少女を小突く。少女は嫌そうに、前へ出て一礼した。


固法「貴女は先進教育局、特殊学校法人RFO所属の……」ジー・・・

那由他「……木原、那由他です。コレとお知り合いで?」ペコッ

テレス「コレ言うな」ペシッ!

那由他「叩かないで!」バシッ!

黒妻「落ち着けよ……墓前だぜ?」


一喝され、大人しくなる金髪二人。両方とも、残念な美人の匂いがした。
15 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 03:14:55.82 ID:2J6dQus0
黒妻「……『木原』の『K』か?」

那由他「ええ……貴方達も此方に?」

固法「奥の方にね」


数奇な運命だ。


テレス「那由他……さっさと探しなさい。早く線香上げて帰るわよ」

那由他「分かってる。箒とバケツ持ってきた?」

テレス「何でよ」

那由他「……普通掃除するでしょ?」

テレス「はぁ?! 馬鹿じゃねぇの?」ポカーン・・・


……どうやら、常識がなってないらしい。


黒妻「あー……アレか? オマエさん、日本式の墓参り出来ないとか?」

テレス「馬鹿にすんな……まぁ墓参りなんて来た事ないが」

固法「……お、御手伝いしようか」アハハ・・・

那由他「……結構です。行くよ、テレスティーナ」テクテク・・・

テレス「チッ……じゃあね」テクテク・・・


お節介かもしれないが、ちゃんと墓参りできるかどうか心配だった。仮にも霊前。荒すのは御霊に悪かろう。


黒妻「……美偉」

固法「はい……ちょっと帰るの待ちましょう」


少しばかり、彼女達の動きを見る事にした。
16 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 03:26:17.90 ID:2J6dQus0
 ―――テレスSide……


だから、来たくなかった……


那由他「……っ」ジー・・・

テレス「……」カチッ「……ふぅ」ジッ・・・

那由他「……煙草なんか吸ってないで、手伝え」ボソッ・・・

テレス「喫いたくもなるわ……この有り様みたら」ハァ・・・


酷い。この一言だった。

動物や災害によって御墓が荒されるのであればまだ頷ける。しかし、これは……


テレス「……『やったね!』、『死んでくれてありがとう!』、『死すら生温い!』……他には?」ジー・・・

那由他「読むな!」ゴシゴシ・・・


……これが私達(木原)だ。


那由他「……っ……うぅっ……ぇっく……っ」ポロポロ・・・

テレス「馬鹿馬鹿しい」フンッ・・・


今だけ、心底生きてて良かったと思う。死んでたらこの下だ。死して尚、安堵は無かろう。


テレス「立派な墓石も欠けちゃって。生ゴミ捨てんのは簡便よねー」アハハ

那由他「っ……でづだえ……」ゴシゴシ・・・

テレス「無駄ね。今片付けてもまた同じよ? てか、スプレーとか畜生の糞とかどうしようもないでしょ?」

那由他「えっぐ……ううぅ……っ……」ポロポロ・・・


折角の綺麗な黒ワンピースが見る見る汚れていく。どうしてそこまでするか、大人の自分には理解できなかった。
17 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 03:41:45.57 ID:2J6dQus0
黒妻「……嬢ちゃん。素手で掃除するのは良くないぞ」テクテク・・・

那由他「……っ……え」ポロポロ・・・

テレス「……」ジー・・・


どうも、まだ御節介屋がいたらしい。


固法「私達の掃除道具貸してあげるわ。管理人さんから落書き除去洗浄剤借りに行きましょう」ニコッ・・・

那由他「他人の……っ……手を借りる、訳には……」ヒック・・・

黒妻「馬鹿。子供が遠慮すんな。とりあえず管理人とこ行って来い。道具ありゃ数分で終わる」パタパタ

那由他「っ……すいま、せん……うぅ……」ポロポロ・・・

固法「もう泣かないの。ほら、まず顔洗いに行こうか」テクテク・・・


私は、何もしなかった……


黒妻「ドント、じゃなく……キャント、だろ?」セッセ・・・

テレス「……何すればいいのよ」ボソッ・・・

黒妻「とりあえずゴミ拾って、雑草抜け。線香上げれる環境作れ」パタパタ・・・

テレス「……ったく」テクテク・・・


どうして自分の家の墓前で、赤の他人の言う事聞かなきゃならんのだろう……正直、トンヅラしたかったのだが。


黒妻「……人間は、何処までも非道になれるんだって思わされるな」ゴシゴシ・・・

テレス「自業自得の最たる例なのよ。此処は」ジー・・・

黒妻「……神も仏も無いってか? まったく、ふざけんなよ」ゴシゴシ・・・


死者に鞭打ち。されるべくして、された刑なのだ。

一般人が私達木原にそう簡単に仕返しなど出来っこない。ささやかなる抵抗なのだと、私は鼻で笑えるのだが……那由他は違ったらしい。
18 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 03:53:49.59 ID:2J6dQus0
 ―――一寸・・・・・


黒妻「ふぅ……まぁこんなもんだろ。欠けちまった石や燈籠は戻らないがな」

固法「一応管理人さんにしっかり見てもらえるよう言っておいたわ。もー……何の為の墓守か分からないじゃない」ハァ・・・

那由他「ありがと……ございます」ポロポロ・・・

固法「もう泣かなくていいのよ。ね?」ニコッ・・・

テレス「……ふんっ」フイッ


兎角、見た目古い程度の御墓になった。まぁ私達だけではこうも出来なかっただろう。
泣く那由他を無理やり引き摺って、病院に帰っていたに違いない。


黒妻「ほら。線香やるんだろ」

那由他「……」コクッ・・・

テレス「ったく……花は何処に供えんのかしら? 真横に二つで良いの?」テクテク・・・

固法「ええ……あ、先輩」

黒妻「ん? ……それは?」


風紀委員の女は、手に白い造花を持っていた。


テレス「……おいおい。態々そこまでしてくれなくてもいいわよ。木原の身内と勘違いされるわよ」

黒妻「オマエちょっと黙ってろ」ギロッ

固法「……カーネーション。御供えしてありました」


奇妙奇天烈。ウチの御墓に花を飾る馬鹿もいるらしい。


黒妻「……駒場のと、同じ奴か」ジー・・・

固法「ええ……供えますか?」

黒妻「オレに聞くな。こっちに聞け」クイッ

那由他「え……」ビクッ

テレス「……」チッ・・・
19 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 04:05:30.17 ID:2J6dQus0
 ―――黒妻Side……


金髪の女性と少女は戸惑う素振りをみせた。
一寸、互いの顔と造花を見直した後、少女が呟いた。


那由他「……供えてあげて」

固法「うん、分かった」コクッ・・・


美偉はそっと、花挿しに造花を添えた。
その後、渋々ながらテレスティーナが花を供えた。多少粗っぽかったが、目を瞑ってやる。


黒妻「……火、有るか?」

那由他「一応……テレスティーナ」フッ

テレス「……ほら」スッ


マッチだけを取り出す非常識女。蝋燭は無いらしいので、オレらのを貸してやった。


テレス・那由他「「……」」ナムナム・・・

黒妻「……何だかな」ジー・・・

固法「普通の、家族に見えますけどね」ジー・・・


『普通』……重い一言だった。
暫く顔を伏せていた後、少女が消えそうな声で語り出した。


那由他「運命って、残酷ですね」ボソッ・・・

黒妻「ん」ジー・・・


小学生程の少女が言うには重い言葉である。
20 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 04:22:45.10 ID:2J6dQus0
那由他「……揺り籠と墓場を選べないんです」

固法「那由他ちゃん……」

テレス「……」ジー・・・


オレはコイツら――木原、といったか――についてはよく知らない。


那由他「割り切れと、教育されてきたよ……でも……っ……無理だよ、こんなの……」ウルウル・・・

固法「……っ」ギュッ・・・


ふと――沈黙を保っていたテレスティーナが、まるで目の前にいる悪霊達にでも話しかけるかのように、紡ぎ出した。


テレス「特にね……私と、この子は……実験体なのよ。特に、私に心は過去にある」

黒妻「……実験体?」

テレス「私を絶対能力者にしようとしたり……この子を『未知なる力(オカルト)』との融合体にしようとしたり」

那由他「テレスティーナ……他人の前よ。止めて……」グッ

テレス「……木原の人間はね。裏とか表とか関係なく、『血』が……存在自体が罪なの」

那由他「止めて!」フルフル!

固法「那由他ちゃん……」ギュッ・・・


独白は続く。


テレス「石を投げられない方法は何か? 精々愛想と賄賂を振りまく。もしくは己の心を狂わせて、現実を誤魔化す」

黒妻「……ただの逃避だ」

テレス「じゃなきゃやってられないのよ……今更何やったって、無駄」

那由他「ううぅ……ゃだ……っ……よぉ……」ポロポロ・・・

テレス「表を歩くと決めたなら現実を見なさい、那由他。私と……私達と違う道を行くんでしょう?」キッ

固法「テレスティーナ!!」ギロッ


誰も、彼もが……悲痛だった。
21 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 04:42:56.53 ID:2J6dQus0
 ―――テレスSide……


私は、実験体であり、科学者だった。


過去の私は、祖父の実験により『能力体結晶』――通称『体晶』――の投与実験体第一号だった。
簡単に言えば、クスリで能力を無理やり引き出す。底上げする。オーバーヒートさせる。

当時は大好きだった祖父に、『科学の為』と言い聞かされて喜んで我が身を預けていた。

しかし……


テレス「所詮……モルモットだったわ」カチッ・・・フゥ・・・


既に傷は癒えた。学園都市の医療は大したものだ。
ただ悲劇のヒロインを気取るつもりはないが、精神(こころ)は癒える訳が無かった。

結果……歪んだ(木原の)科学者――テレスティーナ・木原・ライフラインが生まれる。


テレス「私の科学者としての道は言わなくても知ってるわね? 表沙汰に成るほどだもの」ボー・・・

黒妻・固法「「……」」ジー・・・

那由他「……テレスティーナ。もういい……帰ろう」グッ・・・


この子は―――まるで過去の私。


初めて存在を知った時、人は同じ過ちを繰り返すのだと実感できた。清々しい程に。

那由他は、この街とは異質の力(オカルト)――ただし『黄金錬金』を理解できた私には異質ではないが―――を注ぎ込む実験を受けた。
その際、あちこちが爆発して吹き飛ぶ重傷を負う。冥土返しの尽力によって一命は取り留めたが、全身の七割以上が義体だ。
そしてその義体すらも、実験の一部であり、木原一族謹製の技術で作られたAIM拡散力場制御義体なる物である。


テレス「救いが……ないのよ」ボソッ・・・


そりゃ煙管も喫いたくなるわ。
22 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 04:56:37.75 ID:2J6dQus0
テレス「風紀委員……那由他じゃないわよ。そっちの」

固法「え」

テレス「その子抱きしめてるけど、違和感無い?」

固法「……別に」

那由他「テレスティーナ……もういい……」フルフル・・・

テレス「7割義肢よ。水晶みたいな目もね」クスッ・・・

固法「え……」

那由他「……っ」ポロポロ・・・


人間は、何処までも残酷になれる……


テレス「詳しくは言えないけど……その子もモルモット」

黒妻「……人体実験か」

テレス「そうそれ。普通死んでるのにねぇ……冥土返し様様よ。本当に、私達は彼に迷惑掛けっ放しだわ」ハァ・・・

那由他「うぅ……ぇぅ……っ……」ポロポロ・・・

固法「……っ」ギュッ・・・


風紀委員の女は、一層強く那由他を抱きしめた。それがその子を苦しめると分からないのだろうか。


テレス「……私も、この子も……あの時死んでた方が良かったのかもね」

那由他「っ、うええええぇ……あああぁ……っ……」ボロボロ・・・

固法「ッ……テレスティーナっ!!」ポロポロ・・・ギロッ


他人の為に……どうして泣けるか。


テレス「死んでても活きてても……同じなのよ」ボソッ・・・


ああ……木原(そう)なのだ。
23 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 05:07:12.30 ID:2J6dQus0
黒妻「おい……」クルッ


男が私達を呼んだ。
正直、此処まで捻くれた私を殴り殺してくれるかもと期待したが……まぁいい。
コイツには『見っとも無くても生きる』と言ったからな。殺してはくれまい。


黒妻「付いて来い」テクテク・・・


女達は男の行動が分からなかったが……とりあえず後を付けた。
そう時間は掛らず、一分足らずで其処に着いた。

同じ敷地内――『K』ブロックの『く』の列。


テレス「……此処は?」

固法「っ」ドキッ・・・

那由他「っ……お墓、なの?」ジー・・・


気に入ったのか、先ほどから風紀委員の女――以降、革ジャン女――にべったりの那由他が呟く。
そこには墓があるのに、何も無かった。蛻(もぬけ)の殻、とでも云うのだろうか……


黒妻「……オマエらは生きたいんだろ?」

テレス・那由他「「え」」

黒妻「どうだ?」スッ・・・


煙草を咥える男の質問に、私達は唖然した。


テレス「……死にたかったら、当に首を括ってるわ」

那由他「っ……私は……死にたくない」

黒妻「そっか」ニコッ・・・


不気味な笑顔だった。まるで……死者を無理やり笑わせたような……
24 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 05:16:18.60 ID:2J6dQus0
黒妻「さっき、生きてるのも死んでるのも同じって言ったな。テレスティーナ」チラッ・・・

テレス「……ええ」

黒妻「那由他ちゃんは、どう思う?」

那由他「私は、同意したくない……けど……」


この子も一族の人間だ。血で理解してしまう。


黒妻「ふむ……成程。んじゃあ、ちと難しい話をするが……」カチッ・・・フゥ・・・


男は紫煙を見詰めながら……ぼそりと告げた。


黒妻「『死者』は生きてちゃいけないか?」

テレス・那由他「「……は?」」ポカーン・・・

固法「っ」ギュッ・・・


意味不明。理解不可能。


黒妻「……オレは『死者』が歩いててもいいと思うぞ? ああ、言葉が悪いな。『いない者』って言えばいいか」

テレス「いや……分かんないわ」

那由他「ご、ごめんなさい。私も……」

黒妻「まぁだろうな」ニシシ!


そう言って、男は目の前の墓を二三叩いた。


黒妻「コレは、オレの墓です」ポンポン

テレス・那由他「「」」ポカーン・・・

固法「先輩っ!!」ギロッ


まったく以て、頭が回らない。どういう事だ……
25 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 05:31:22.19 ID:2J6dQus0
黒妻「あー……オレ、一回死んで戸籍消えてんの」

テレス「……だから、意味分かんないって」

那由他「え……え?!」

黒妻「申請最中だからまだ戸籍出来てないけどよ……今オレは死者だぜ」カカカ!

テレス「……言いたい事は、何?」


彼が無戸籍なのは分かった。だからと言って、話が見えない。


黒妻「今のオレの状態は捨てられたばかりの『置き去り』と同じって訳だ」

固法「……先輩、それは違う」フルフル・・・

黒妻「美偉、ちょっと黙ってろ……那由他ちゃん。さっき揺り籠と墓場の話をしたな」

那由他「う、うん……」

黒妻「確かに、揺り籠は選べない。だろ? 科学者さん」チラッ


そう。それは必然。


黒妻「だが……墓場は選べる」

テレス「……如何?」

黒妻「手段は簡単さ。善行然り、結婚然り……そう難しくは無い」

那由他「でも……私達は、絶対許されないんだよ」

黒妻「誰が決めた。そんな事」ギロッ

那由他「っ……ご、ごめんなさい」シュンッ・・・

固法「先輩……いい加減に」キッ・・・


……むさ苦しい男。
26 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 05:50:11.54 ID:2J6dQus0
黒妻「オレは聖人君主じゃ無ぇがな……認められない行いは無い。那由他ちゃん、風紀委員だっけ?」

那由他「……うん」コクッ・・・

黒妻「君が仕事してて、石を投げつける輩はいるか? 陰口を叩く輩はいるか?」

那由他「……少し」

黒妻「じゃあ、ソイツらの方が歪んでる。逆に君を認めてくれる人はいるか?」

那由他「……少し」

黒妻「ソイツらは正しい」


オマエは馬鹿か?


黒妻「ああ、バカだ。でもな……人間行きつく処、単純馬鹿だよ。二極端さ、全て」

那由他「でも……御家のレッテルは消えないよ」

黒妻「君個人と如何関係有る。まぁ否定する必要も無いとは思うがよ」

那由他「……」

黒妻「さっきの話に戻るけど、『偉人』ってのは死者の一人歩きだ。善悪関係無くな。これが『死者が生きる』の答えだ」

那由他「……善に、なれと?」

黒妻「好きな方を選べ。簡単だろ? まぁ、君はもう答えを出してる……そっちと違ってな」チラッ


言ってくれるよ、単純脳味噌。


黒妻「身内の恥なんてのは、自分で鍵錠両方持ってるのと同じだ。外そうと思えば外せるのに、気持ち一つで鎖に囚われたままさ」

那由他「……逃げれるかな?」

黒妻「違うよ。立ち向かえ……オレにゃ応援する事しか出来ないが、出来得る限りの事はさせてもらうよ」ニカッ

固法「……もう、バカ」ニコッ・・・


……腹が立つ程、筋の有る男だ。
31 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 16:24:25.32 ID:2J6dQus0
 ―――PM00:15、学園都市第10学区、共同墓地……黒妻Side……



それから、四人して『K』ブロックを後にした。
那由他ちゃんは美偉に懐いたのか、ずっと話相手をしている。元々、彼女が子供好きなのもあって互いに仲良くなれたのだろう。

一方、残念な美人さんはただ上の空で煙管を吹かしていた。


黒妻「……大人になっちまうと、割り切れないものなのか」

テレス「さぁね。英雄は子供の頃限定の職業って……誰かが言ってた気がするわ」

黒妻「成程な」クスッ


オレも一本煙草を取り出し、紫煙を上らせた。


テレス「あんな糞みたいな身内でも、研究から離れれば普通の家族だったわ。怖ろしい程のギャップよ」

黒妻「へぇ。でもまぁ、大抵そんなもんだろ。公私を付けれるプロだったんじゃねぇの?」

テレス「存外アンタはポジティブだね……『義姉貴。たこ焼きパーティーするから材料持って来い』って言われた時は吃驚したわ」

黒妻「……たこ焼き?」

テレス「ええ。でも私がタコ買うの忘れて―――」


そこから……家族の昔話をする彼女は、普通の女に見えた。
義弟がプロ野球選手の折れたバット貰ってはしゃいでたとか、祖父が何時まで経っても新聞を箸で摘まむとか。
他の家族の話もチラホラされた……

とても明るいのに――悲しく震えた声だった。


テレス「―――……不思議ね。こんな普通の一族なのに、スイッチ一つで……狂人よ」フゥ・・・

黒妻「……」フゥ・・・

テレス「でも、それも……私で終わり。那由他には背負わせる必要は無いかな」ハハハ・・・


そこにいたのは、ただただ、優しい一人の姪を思う伯母の姿だった。
32 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 16:42:03.39 ID:2J6dQus0
黒妻「なぁ……狂人非道言うが、アンタらの研究は誰かの為になって無いのか?」

テレス「わかんないわ。でも犠牲の方が多くて、恨まれ事の方がデカいのよ」クスッ

黒妻「悔いてんの?」

テレス「犠牲を? さぁ、どうかしらね……」


暫く空を見て、ふと語り出した。
木原の力は『人』の為ではなく、『科学』の為だという。成程、科学者(人)が科学に操られてる。本末転倒だ。


テレス「ま、深くは考えないようにしてるわ。今更私に出来る事があるとも思えないし。病院の地下でひっそりくたばる事にしようかしらね」

黒妻「……ふん」フゥ・・・

テレス「誰かの為でなく、自分の為に生きてきた人間ってのは悲しいわねー」カツカツ・・・

黒妻「『あの子』の為は?」

テレス「……無理よ。互いに嫌ってるもの。あの子からしてみたら、本当は私を殺したい程憎んでるのよ?」

黒妻「そうは見えないが」チラッ


無邪気に微笑む那由他ちゃんを見遣った。


テレス「私がやった実験の犠牲者に、あの子の友達が居たのよ」

黒妻「……ほう」

テレス「私は謝らないし、あの子もそれを要求しない。一生膠着状態ね」

黒妻「小せえ女」フンッ・・・

テレス「そうね。私は所詮小物よ」フフフ・・・


時計を見る。もう正午過ぎ……先ほどから見上げる空色は灰色。今にも雨が降り出しそうだった。
33 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 17:08:15.11 ID:2J6dQus0
 ―――美偉Side……


どうも最近、私は子供に好かれるらしい。
個人的に子供は嫌いでは無いので問題いないが、何だかもう『母親』役が板に付いてしまった気がする。


那由他「固法さんも風紀委員なんですよね。研修合宿で御名前だけは窺ってました」ペコッ

固法「いいよ。そんなに謙んなくっても。私も那由他ちゃんの噂は聞いてたわ」ニコッ

那由他「それは……」シュンッ・・・

固法「……勘違いしないの。大人顔負けで仕事頑張ってるチビッ子風紀委員がいるって事よ」ナデナデ

那由他「あ……えへへ」ニコッ・・・


ただの小学生にしか見えない。どうして、その身に余る重いモノを背負って生きている様に見えようか。


固法「さっき先輩が言ってたでしょ。見てる人は見ててくれてるの。自身を持ちなさい」

那由他「う、うん……」ペコッ

固法「もし誰か悪口言うようなら私が指導してあげるから。あ、じゃあ私の連絡先教えてあげる。何かあったら連絡するのよ」

那由他「あ、ありがとう」コクッ


きっと普段は強い子なのだろう……最愛ちゃんと打ち止めちゃんの中間くらいの年齢だろうか。
抱き締めれば崩れてしまいそうな小さな身体でよく頑張っている。


固法「はい……OKっと。今度遊びにおいで。同じくらいの子供達も偶に来るから」

那由他「え、あ……でも……」

固法「……大丈夫。肩書きで人を判断する様な悪い子じゃないわよ。安心して」


人の善意に慣れていないのか、もじもじと指を弄り、小さく頷いた。
後に、これが素――普段はバリバリの厳しい規律人――だと知るのは、また別の話。
35 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 17:29:03.29 ID:2J6dQus0
那由他「あの気になってたんですけど……固法さんは、黒妻さんの彼女さんなの?」

固法「え、あ、そ、そうね……あはは」ハズイィ!


そりゃまぁ年相応の男女が二人で墓参り来てたら、そうにしか見えまい。


那由他「さっき黒妻さんが言ってたね。結婚もお墓に入る方法だって」

固法「ま、まぁお墓に入りたいから結婚する訳じゃないけど」

那由他「二人は……同じお墓に入る?」


それを答えるのは非常に恥ずかしいのだが……先輩は向こうで上の空の様なので、小さな声で『イエス』と答えた。
那由他ちゃんは私の顔を見てクスリと笑った。とんでもなく、真っ赤だったのだろう。


那由他「……いいなぁ」

固法「そんなに深く考える必要は無いわよ。お墓は最後。好き合って、一緒に暮らして、子供が出来て……それで……」


どちらかが、最初に死んでしまう。


那由他「それは……人間だもん。仕方ないよ」

固法「そうね……」


私は、今、あの人が消えてしまわないかどうか心配……
私の不安な表情を察したのか、那由他ちゃんは私の手を握ってきた。普通の手に見えるが、義手らしい。


那由他「でも、私は恋とか出来ないから……」フッ・・・

固法「……まだ家の事気にしてるの? それは違うわよ。恋愛ばかしは理屈じゃ無いって」ニコッ

那由他「えっと、違くてね」モジモジ・・・


那由他ちゃんは、二三小首を捻り、呟いた。
36 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/10/31(日) 17:43:05.70 ID:31Wty2AO
あぁ 切ない…
ちょっとタコ焼き買ってくるわ
37 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 17:45:59.47 ID:2J6dQus0
那由他「私の身体、一生大きくならないから」

固法「……え」

那由他「固法さんの胸とか、テレ姉……じゃなかった。テレスティーナの胸とか羨ましいもん」ジー・・・

固法「え、な、あ……」


身体の7割が……義肢。


那由他「ああ、いいの。こればっかしは本当に割り切ってるから」ニコッ・・・

固法「……」

那由他「例え好きな人が出来ても……その人の赤ちゃんは産めない。奇跡的に子供が出来ても、おっぱい(母乳)はあげられない」

固法「……っ」ポンッ・・・

那由他「……やれやれだよ」ハァ


この歳にして、恋愛に絶望。信じられない。
私は暫く無言になり、優しく、那由他ちゃんを引き寄せた。慰めが逆に彼女を傷つけているかもしれないが……そんなの関係無い。

この子は、子供なのだ。


固法「那由他ちゃん」ギュッ・・・

那由他「ん」フッ

固法「確かに、身体が大きくならなかったり赤ちゃんが出来ないのは悲しい事かもしれないけど……それは、恋愛とは別問題よ」ナデナデ・・・

那由他「……死ぬまで小さな私を好きになるモノ好き、いるの?」キョトン・・・

固法「この街には、身長135センチ・外見十二歳の教師がいるのよ。しかもヘビースモーカー」

那由他「……赤ちゃんは?」

固法「養子という手もあるわよ。この街の技術だったら、代理出産だって頼めるわ。悲観にならないの」ニコッ

那由他「よく、分かんないや」ハテ・・・


ええ。恋愛ばかりは……理屈じゃ無いものね。
38 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 18:06:37.38 ID:2J6dQus0
那由他「理屈じゃ無い、かぁ……でも誰かが言ってました。私の容姿を好きになるのは、変態さんだって」


誰だこの子にそんな馬鹿な話を植え付けたのは。


固法「え、えっと、ち、小さくて可愛らしいわよ」

那由他「……でも欲情したり昂奮するのは、変態さんなんじゃない?」

固法「う、うーん……」


どうしたものか……

私がロリコンと幼児体型女性を好きになった男性(既婚)の違いについて頭を悩ませてると、那由他ちゃんはクスクス笑い軽く謝った。


那由他「ごめんごめん。分かってます……中身を好きになってくれる相手を探せって事だよね」フフフ

固法「そ、そう言う事よ…… (ぐぬぬ……嵌めやがったわね)」モゥ・・・

那由他「うーん、でも自分で改造方法覚えてナイスバディにできないかなぁ。残り3割が成長したら其処に合わせて……」ペタペタ

固法「あ、あはははは……」


そりゃまぁチートな身体ですこと。実際出来たら世の中の女性が羨んで、己の身体も改造しろと言いかねない。


固法「と、とりあえずもうお昼だし、そろそろ出ましょう。近くにレストラン喫茶あるからそこで食事でもどうかしら?」ニコッ

那由他「あー……テレスティーナが良いって言えば。あ、そうだ。黒妻さんにもお礼言いたいです」コクッ

固法「いいのに……兎に角、行こっか」ギュ


私達は手を繋ぎ、先輩のもとに向かう。
仲の良い母娘……には見えないかもしれないが、少しでもこの子に母性を与えたかった。
40 :>>39よ。そのたこ焼きをナユタンに渡すんだ。2010/10/31(日) 19:31:48.29 ID:2J6dQus0
 ―――黒妻Side……



那由他「く、黒妻さん!」テトテト・・・

黒妻「ん? どうした」


那由他ちゃんが美偉に手を取られ、歩いてきた。


那由他「その……今日はありがとうございました」ペコッ

黒妻「いやいや、いいさ。同じブロックの好(よしみ)だよ」

那由他「……如何お礼をしたらいいか」

黒妻「子供が遠慮すんな。お礼なら、コッチから請求するからよ」ニシシ!

テレス「ざけんな、若造」フンッ・・・

那由他「テレスティーナはケチですから。定期的にマーブルチョコ買い与えないと言う事聞かないよ」

テレス「オマエもふざけんな」ワシワシ!

那由他「や、やめろよーぉ」ウニャッ!


何だかんだ言って、この二人は上手くやっていけるだろう。そんな気がした。


固法「……仲良くして欲しいですね」クスッ

黒妻「大丈夫だろ。コイツらは『家族』さ」テクテク・・・フッ


何時の間にか、曇天が青みを帯びてきた。雲の隙間から光が刺し幻想的に見える。
天使なんてモンがいるとしたら、ああいう中から降りてくるんだろうなと……柄にもなくメルヘンな事を考えてしまった。

そういえば、駒場の奴もメルヘン思考なところがあった気が……詳細を思い出すのは止めておこう。彼の名誉の為に。
41 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 19:46:24.19 ID:2J6dQus0
 ―――PM00:30、学園都市第10学区、共同墓地……



那由他「黒妻さん達のお墓参りした人はどんな人なの? 大人? それとも……」

黒妻「ん? そうだな……オレと同い年か、ちょい下くらいの奴だったよ」

テレス「……へぇ。そりゃまぁ随分と」フンッ・・・


若いよな、と付け足す。


黒妻「……さっき、『死者が生きる』って話しただろ? 偉人の話」

那由他「うん」

黒妻「アイツこそ、『生ける死者』なんだ……世間的には、犯罪者として葬られたよ。テロ首謀者みたいな感じかな」

固法「先輩……」

黒妻「でもな……そうじゃない、筈だ。詳細は知らないがアイツを知る輩は皆、アイツが誰かの為に死んだと知っている」

テレス「……スキルアウトの仲間か? それとも学生運動過激派の連中?」

黒妻「前者だ……アイツは無能力者の平和の為に戦っていた」


力無き者達の平等を願っていた。


黒妻「その『意志』は……アイツの舎弟達にちゃんと受け継がれている」

那由他「……故人が、生きてる」

固法「死んで尚、残せるモノもあるの。だから……諦めないで」ナデナデ・・・

那由他「……うん」ペコッ・・・

黒妻「……オマエさんも、な」チラッ

テレス「ふんっ……さぁね」ツーン・・・


まったく、素直じゃない女性だ。
42 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 20:06:06.72 ID:2J6dQus0
??「あー……ちょい、ええかいの?」カツカツ

黒妻「ん?」パッ


駐車場へ向かおうとしてたオレらに、声をかける老人。プルプル震えながら杖をつき、此方に近づいてきた。


固法「此処の管理人さんです。墓守の」ボソッ・・・

黒妻「そうか……おい。ジイちゃん。ちゃんと御墓見てやってな。悪戯させちゃ駄目だぞ」

管理人「あいよぉ。時に、オマエさん、あの奥の仏さんの身内かえ?」プルプル

黒妻「仏って、オレらがさっき線香あげた所か?」クイッ

管理人「んんよ。供華仰山あった」コクコク

黒妻「まぁ……身内っちゃ、身内だが」


どうしたというのか……


管理人「あんのぅ、誰も遺品取りに来てないのな」カツカツ・・・

黒妻「は?! いや、半蔵達取りに来たろ……」

管理人「残りもんだがよ……服の下にあったから、誰も持ってってないのず」


そりゃ、遺品のパンツまで取りには来まいて。


管理人「違うくてな……ま、ええからこっちゃ来い坊主」カツカツ・・・

黒妻「何でオレが?」ポカーン・・・

固法「あはは……待ってますから、行ってきて下さい」

那由他「私も待っててあげるから」ニコッ

テレス「……帰るっつの」テクテク・・・

那由他「テレスティーナ……」スッ・・・
43 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 20:12:02.77 ID:2J6dQus0
何かのボタンの様なものを取り出す那由他ちゃん。テレスティーナはそれを見て、動きをピタリと止めた。


テレス「ぐっ……汚いわよ」チィ・・・

那由他「結構」ニコッ

固法「……何、それ?」

那由他「アレの――」ピッ


テレスティーナの首を指さす。


那由他「――電流スイッチ」ニコッ

テレス「けっ……何でガキに持たせるかわかんねぇ」ハァ

黒妻・固法「「」」アゼーン・・・


仮にも精神障害者兼犯罪者であるが故、この措置。
冥土返しは意外とえげつないと、今この瞬間思ってしまった。


黒妻「と、とりあえず、行ってくる」テクテク・・・

固法「え、ええ……」アハハ・・・

那由他「いってらっしゃーい」フリフリ

テレス「畜生……覚えてなさいよ。あんのジジイ」ハァ・・・


自業自得だけどな。
45 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 21:13:19.01 ID:2J6dQus0
オレは管理人の爺さんを追い駆け、遺留品保管の為の倉庫に着いた。
割かし綺麗にしているのか、それともまったくと言って良い程手をつけていないかは知らないが、目的の物は直ぐ取り出せた。


管理人「ほら、これよ」スゥ・・・

黒妻「……いや、袋渡されても」

管理人「開けてええって。ほれ」グイッ・・・

黒妻「まったく……っ」ハッ・・・


袋の中には……包帯があった。
それは、タダの包帯では無い。


黒妻「……軍用の、発条包帯(ハードテーピング)?」

管理人「火葬業者から遅れて送られたんよ。一緒に燃やせないからって、後になりましたって」

黒妻「……」ジー・・・


超音波伸縮性の軍用特殊テーピング。筋肉を補強することができる。
関節を外側から引っ張る人口筋肉で、筋力そのものも強化している。所謂キネシオテープの延長、加え人工筋肉だ。

サイズから見て、駆動鎧に使われている身体強化を行う部分のみを取り出したようなものであろう。


管理人「足腰の至る所に捲いたあったてよ。御蔭でこの量だや」

黒妻「捨てなかったのか……まぁいい。預かるよ、爺さん」


一礼し踵を翻そうとした時、待てと呼びとめられた。


管理人「あー、坊主。折角だ。これも持ってってけね?」

黒妻「これはっ!? 何で此処にある?」バッ

管理人「いや、お仲間なのかえ? そのガキ共が『兄貴の墓に添えてくれ』言うたんで、預かったけんどな」ムー・・・

黒妻「……いや、無理だろ」

管理人「だろ? 革だから、鳥虫に突かれっちまうのよ。申し訳無ぇが、これも頼んでええか?」


頷く。オレは、駒場の……黒い革ジャンを受け取った。
46 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 22:09:24.31 ID:2J6dQus0
 ―――PM00:50、学園都市第10学区、共同墓地……



黒妻「待たせたな」

固法「いえ。それで……随分と大きな袋ですね」

黒妻「まぁな」


オレは発条包帯と革ジャンが入る大きな袋を貰い、彼女らに見せぬ様戻った。
管理人の爺さんも暇なのか――暇だろうが――オレの後ろを付いて来る。


黒妻「じゃあ、行くか。二人も昼飯行くだろ?」

那由他「うん」チラッ

テレス「わーった。分かりましたよって……ハァ」

黒妻「あいよ」クスクス・・・

固法「じゃあ御爺ちゃん。墓守しっかりしなきゃ駄目ですよ」

管理人「あいよ」

那由他「お願いします」ペコッ

管理人「あや? お嬢ちゃんの家だったかえ? 申し訳無かったのぅ……気をつけるよ」ヘコヘコ

那由他「……はい。是非に」


刹那……


テレス「……ウチの馬鹿共の骨。せめて落ち着かせてやってて下さい」ペコリ・・・

一同『っ』キョロッ

管理人「うお。もう一人の姉ちゃんも身内さんだったか。悪いのぉ……」ヘコヘコ


初めて見る、テレスティーナの大人な対応だった。
47 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 23:07:33.41 ID:2J6dQus0
那由他「テレ姉……」

テレス「……行くよ」クルッ


慣れない事をして気まずくなったのか、魔女の様な女はそそくさと歩を進めた。
後を追おうとした那由他ちゃんが『あ』と一声あげ、立ち止り、管理人に問うた。


那由他「御爺ちゃん、最後に質問良い?」

管理人「何じゃい?」

那由他「ウチの御墓に供えてあった白い造花……どんな人が置いてったか分かんないかな?」

黒妻・固法「「っ」」ハッ


そう。駒場の御墓にあった造花と同じもの。


管理人「んー……どうだったかのぉ」ハテ・・・

黒妻「爺さん。多分、駒場……『コレ』の墓にも同じのがあった。同一人物じゃないか?」

管理人「ふむ……」

固法「白いカーネーション。造花です」


暫時頭を悩ませた後……ハッと顔を上げ、オレらの問いに答えた。


管理人「ああ! そうそう、同じ人だったよ。うんうん」

那由他「どんな人?」

管理人「えとな、男だか女だか良ぅ分からん子だった。全体的に……白っぽいガキだったかえ」

黒妻「白……っ」

固法「他には?」

管理人「んー……杖ついとった。ああ、あと特徴的なのは真っ赤っかの瞳だのぅ!」


ああ……成程、な。
48 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/10/31(日) 23:28:53.78 ID:2J6dQus0
管理人「此処の外にも、いくつか花持ってったぞい。随分故人に知り合い多い子だなて思てな」

固法「……先輩」

黒妻「ああ……あの馬鹿だろう」グッ


オレに、駒場からの意志遺書(メッセージ)――『無能力者襲撃・要注意人物リスト』を渡した男。
そして打ち止めちゃんの保護者役――超能力者第一位、一方通行。


黒妻「……爺さん、ありがとよ。誰か分かった」

管理人「そうかえ。御役に立てて何よりじゃけな」カカカ

那由他「……黒妻さん。後でその人にお礼が言いたいです。教えて下さいね」

黒妻「……ああ。何時かな」コクッ・・・


教えられるかどうか分からないので、答えを濁らせてしまった。
コレはオレが教えていい問題じゃない。アイツ(一方通行)が打ち明けるべく、問題だ。


固法「……行きましょう。テレスティーナ、イライラしてるみたい」

那由他「あ、ええ。お願いしますね」

黒妻「ハァ……やれやれだぜ」フゥ・・・


その後、4人で近くのレストラン喫茶に向かい昼食を取る事になった。
目の前の金髪伯母姪娘が、少しでも仲良くなってくれれば僥倖。
そう考え、オレは二人にデザートのコーヒーゼリー&焼きプリンセットを奢ってやる事となったとさ……美偉の目が痛い。


そんな楽しげな風景とは裏腹に、オレは大きな悩みで頭を圧迫されそうだった。
元々今日は『それ』を決断する墓参りであった筈なのだが……やはり、美偉の顔を見ると、決められなかった。




 ―――駒場の……遺志を継ぐか、如何かを……
49 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/10/31(日) 23:33:34.17 ID:2J6dQus0
はい。今日は此処まで。次回は日常編ですね。
アンケ!


①いっしょにトレーニング! あいてむ編。

②あまくさっ! 悩みの三男、香焼くん編。

③黒妻家。一方通行御邪魔します編。

④その他!(具体的に人とイベントを書いてくれると嬉しいかも)


お願いします! では意見感想質問要望罵倒をドシドシ、下さい、では! ノシ
50 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/10/31(日) 23:36:59.09 ID:PGVvkIAO
まず乙!

私は三番がいいっすね。
51 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/31(日) 23:48:00.50 ID:t0wiXgSO
乙ん
ユーまとめてやっちゃいなYO!
52 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/10/31(日) 23:49:47.92 ID:31Wty2AO
>>1 に惜しみない乙を
 コーヒーゼリー&焼きプリンに感動した、ありがとう!

③ 一方&黒妻一家が食事の材料を買いにいくが、そこに那由他がいた。って感じで
65 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 20:05:31.08 ID:vKeS1Tg0
こんばんは。アンケートの結果③ですね……②も多いです。一緒にやっちまうかww

・那由他ちゃんの画像は探しても無いね。PIXIVにもあんま無い……
  イメージ的には『こじか』のリンちゃんちょっと成長させた感じかなぁ? 違うかな?

んじゃ書くよ!

68 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 20:45:50.01 ID:vKeS1Tg0
※今回は黒妻サイド、香焼サイド、そして神裂サイドでお送りします。



 ―――新オルソラ教会建設から遠くない数日後、PM04:00、香港某ホテル……神裂side……


旧英国領。中国南海部、香港。


世界でも有数の夜景スポットである○○ホテルの高層階一室で、私、神裂火織は上に提出する報告書を書いていた。
内容は先日完成した新オルソラ教会(英国領・改変)建設に当たっての、我々、天草式十字凄教の備品班としての勤務報告。
そして新たに情報が入った、香港で活動中らしい反英国(旧領主)過激派の魔術結社の動向についての捜索報告である。

前者は教皇代理、建宮斎字が殆ど纏め上げていてくれてたのでスルリと終了。
関係無いが……書類関係を担当していたアニェーゼ・サンクティスは、泣きながら監視付き二日貫徹で報告書をこなしたらしい。ああ、無情。

さて、今は後者の魔術結社について筆を走らせている。因みに文字通り、『筆』だ。PCタイプは……苦手なのだ。
魔術といっても、此処東洋圏では呼び方が微妙に異なったりする。
現在分かっている情報によると、奴らは自らの組織を『魔道』だか『魔導』公社と謳ってるらしい。
しかし詳細を知らない関係者からすれば、そんなこと如何でも良い些細な事であるのだが。

兎角、早く今行っている任務を片付けて、本国(英国)に帰りたい。やはり慣れ親しんだ寮のベットでぐっすり休みたいものだ。

その前に、多分、日本へ寄ると思うが……深い意味は無い。うん。


 コンコン。


神裂「ん? はい……どちら様でしょう」クルッ,テクテク・・・


ノック音。私は手を止め、ドアスコープのスイッチを入れた……流石にコレくらいの電子機器操作は出来ます。
ただし、オートロック部屋から置き鍵で締め出されるのは一泊に付き××回というのは内緒。

映ったのは歳の頃、13~14程の少年。天草(略)教徒の一員、香焼だった。


香焼『女教皇様。お疲れのところ、すいません』

神裂「いえ、大丈夫ですよ。どうしました?」

香焼『えっと、その……申し上げにくいのですが、ご相談が』タラー・・・


何やら御悩みのご様子。
教徒の心身相談も教皇としての役目であろうと、私はドアを通すことにした。
69 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 21:13:09.59 ID:vKeS1Tg0
神裂「どうぞ」ガチャッ

香焼「失礼しま……    ブなぁッ?!」テクテ・・・クルッ!

神裂「え?」ポカーン・・・


後ろを向いたまま直立不動、声が裏返ってる香焼。どうしたというのか。


香焼「ぷ、女教皇様……恰好を……」ビシッ・・・カアアァ///

神裂「ん? ……っ!!」バッ


不味い。薄い水色の浴衣(※下着扱い)……部屋着のままだった。


神裂「す、すいません! 今少し待って下さい!」バタンッ!

香焼「っ……ハァ。また牛深さん達に妬まれるとこだった」ドキドキ・・・


 ――一寸・・・・


神裂「ええ、コホンッ……どうぞ」ニコッ

香焼「え、あ、ええ、はい……失礼します」ハァ・・・


今度はデニムジャケット(特注&自前カット)を羽織り、冷静を保って対応した。


神裂「えっと、すいません。普段部屋を訪ねて来るのは女性しかいないものですから……」アハハ・・・

香焼「い、いえ…… (部屋だと髪降ろしてるんすね……)」ポリポリ・・・


うん……やはり、先ほどの恰好は思春期真っ盛りの少年には少し過激だったやも知れぬ。正直、だらし無かった。ごめんなさい。


神裂「それで……どうしました? あ、適当に座って下さい。あと、飲み物は何が良いですか?」パタパタ

香焼「え、いや、お構いなく」ビシッ

神裂「……」ジー・・・


……どうして、この子は他の教徒に比べて堅いかなぁ。他の男性陣はセクハラ紛いでフランクだというに。
70 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 21:39:15.27 ID:vKeS1Tg0
神裂「もぅ……こんな時ばかりは、年上の言う事を聞きなさい。建宮達と接している様にでいいですから」ニコッ

香焼「あ、ぇ……そ、その……では、水で」ペコッ・・・スチャッ

神裂「ふふっ。じゃあ諫早から貰った蜜柑ジュースで。 (緊張しないで欲しいのになぁ)」ガチャッ

香焼「す、すいません……頂きます」ヘコッ


やっとこ砕けた感じ――しかし、まだまだ堅い――になった少年の前方45度の所へ腰掛けた。
リラックスした相談事の対応はこれが好いと本に載っていた気がする。


神裂「それで?」ニコッ

香焼「あ、あの……二点、ご相談がありまして……」カチコチ・・・

神裂「緊張しなくていいですって。上下関係はありますが、同じ人間ですよ?」フフッ

香焼「は、はい。スイマセン。まず……」


冷蔵庫@香港「アレだ! 童貞坊やに『こういうお店初めて?』とか聞くベテランホステぶへらぁっ!!」ザシュンッ!!


神裂「……続けて」ニコッ・・・

香焼「え、ええっと……はい」アハハ・・・


大分緊張は解れたみたいだ。良かった良かった。


香焼「一つ目は、自分の学園都市での任務についてっす」

神裂「学園都市での……ああ。学徒潜入ですか。香焼の場合、『特別対象(テレスティーナ)監視』の任もでしたね」

香焼「はい」コクッ


天草の若手数名は偽戸籍(ダミーID)で学園都市の学校・生徒の中へ紛れ込んでいる。
コレは英国清教の命であり、また、アレイスター(あちら)側の意向でもあった。

表向き――無論、一般的には裏である――英国側としては学園都市の動向を探るスパイ。
しかし、裏向きには――若手(彼ら)には悪いと思っている――……アレイスター監視下に人質を置くという意もある。
勘の良いこの子等は気付いているだろう、本当に申し訳ない。出来る事なら代ってあげたいが……立場上無理だった。
72 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 22:09:10.10 ID:vKeS1Tg0
香焼「特別監視の方は問題無いっす。報告書通りで」

神裂「冥土返し監視下の特別精神障害扱いでしたか……まぁ彼なら信頼足るでしょう」

香焼「ええ、同意っす……それで、本題なんすが……」タラー・・・


香焼は数度視線を逸らし、ぼそぼそ話し始めた。


香焼「自分の、アパートを……替えて欲しいっす」

神裂「アパートを? 何故?」ハテ・・・

香焼「……えっと」ウウン・・・


何やらはっきりしない。
確かこの子は、第一学区の理事会直属の付属中学『▲▲▲学院』――所謂、統括理事・官僚養成校――に振り分けられてた筈。
加えて、彼のアパートといえば潜入学徒の中で最も立派な仮部屋だったと記憶しているが……


神裂「アパート『ニューディレクターズ』……3LDKベランダ付き、更には最新電気機器完備……」フムフム・・・

香焼「ええ。条件は文句無しっすよ。庶民の自分には勿体無い程っす」アハハ・・・

神裂「ま、まぁ折角与えられたのですから満喫しては如何です?」

香焼「そうっすね。普通なら喜んで暮らしたいんすけど……」ドヨーン・・・

神裂「ん?」


もしかして広すぎて寝れないとか、壁が薄くて隣が五月蠅いとか……夜な夜なラップ音が聞こえるとかだろうか。
それとも、遠回しに学校がキツいという暗示だろうか。確かに、理事養成学校となると負担も大きい筈。


香焼「いや、部屋自体は全然問題無いっす。学校も……最初は大変だったっすけど、今はそれなりに勉強してるっす。自分の為にも」

神裂「それは良い事ですね。あの街の学業レベルは世界でも類を抜いていますから、きっと力になるでしょう」

香焼「はい……それで、ですが」

神裂「うん。遠慮しないで」ニコッ


そして香焼は、苦難の日々を語り出した……
73 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 22:46:03.39 ID:vKeS1Tg0
香焼「実は、五和と浦上なんす」

神裂「……はい?」

香焼「『問題点』が!」キッパリ


完璧身内じゃまいか、おい。


神裂「……えっと、二人の何が問題なのですか? 客観的ではありますが、貴方達は小さい頃からの馴染みでしょうに」フム?

香焼「それが問題で……アイツら、ウチに来るんすよ」プルプル・・・

神裂「へ? う、うん……それが問題?」

香焼「大問題っす! アイツらだって良いとこ住んでんのに、態々ウチに上がり込むんすよ!」キッパリ!


明らか怒りを露わにする香焼。確か、五和と浦上は……第7学区、『学舎の園』内にある学園所属だったと思う。

『学舎の園』は5つのお嬢様学校が作る共用地帯で、並みの学校の15倍以上の敷地面積を持っている。
内部は極めて小さくはあるが『街』となっていて、周りは大きな柵が張り巡らされており部外者を寄せ付けない作りだ。

尤も、あの二人からすれば柵など有って無い様なモノだが……さておき。


神裂「きっと貴方の事を心配して足を運んでくれているのだと思うのですが」

香焼「確かに自分も、最初はそう思って我慢してきました。でも……もう限界なんす」プルプル

神裂「こ、香焼?」

香焼「アイツらこっちのプライバシー御構い無しで、オレの家を自分家と勘違いしてやがるっす!」ガアアァ!

神裂「あ、あはは……」タラー・・・


初めて、この子が『オレ』なんて言ったのを聞いた。大人になったもんだ。


神裂「ええっと、もしそういう個人間のトラブルであれば建宮に相談してみましたか? 彼が解決してくれると思いますが」

香焼「ぐっ……教皇代理は、『カミやん病』が如何こう言って……牛深さん達も……」ウウゥ・・・


ふむ……この様子だと、相変わらずおフザケが過ぎてる様だ。うちの教皇代理様と男性陣は。
まともな男はこの子と諫早くらいか。まぁ共に悪乗りはするが。

近い内説教せねばなるまい……うん。今度は絶対、口で負けない。
74 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 23:14:03.70 ID:vKeS1Tg0
 ―――PM04:40、香港・某ホテル……香焼side……


自分は意を決して、あの二人の暴挙について話を始めた。


香焼「始まりは振り分けからだったっす。女教皇様、最初あの二人のドチラかを『▲▲▲』学院に入れる予定でしたよね」

神裂「ええ……確かに中学生になったばかりの香焼ではキツいかなと思いまして」

香焼「その時、アイツら最もらしい事言って逃げたの覚えてるっすか?」

神裂「逃げ……え?」


まぁ、このお方は基本御人好しだから気付かないのも無理は無い。自分はあの時の事を振り返り、詳細を教えた……



 **回想**



建宮「―――……という訳で、潜入任務だ。遊びで学生やらせるんじゃないのよ。いいか?」キッ

天草若手陣『はい』

建宮「あと、間違っても能力開発カリキュラム受けるなよ。身体検査(システムスキャン)もだ!」

対馬「じゃあ、女教皇様から振り分け先を発表して頂きます……女教皇様、どうぞ」

神裂「はい。ではまず……―――」


割と締まった雰囲気で始まった振り分け。数名の若手がダミーIDを配布され、都市の学生となる。
自分は最初、第7学区の柵川(さくがわ)中学という所に振り分けられ、土御門の近くにアパートを借りる筈だった。


神裂「―――……では最後に、五和と浦上」

五和「……はい。 (お願い! 上条さんと同じ高校!)」ドキッ

浦上「はい。 (無理だって……人選、女教皇様もやってんだよ? 建宮さん応援してるからって、ねぇ)」ハァ・・・

神裂「貴女達には、第1学区の『▲▲▲』学院へ潜入ってもらいます」

五和・浦上「「……はい?」」ポカーン・・・


二人とも、固まっていた。無理も無い……能力開発関係抜きで言えば都市の中でも、最高級に難しい学校だ。
75 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 23:35:12.13 ID:vKeS1Tg0
建宮「オマエら、栄転なのよな」ニシシ!

五和「ちょ……ぐっ。 (謀りましたね、建宮さん!)」グヌヌ・・・

浦上「え、ええっと…… (そりゃ無いってばぁ……)」ウウゥン・・・


確かに、栄転だ。一番ハードルの高い所に廻されるのだから。

勉強は辛いといえ、理事養成学校に居れば普段のコネクションには困らないし、『色々』と知る(アクセス)権利も増えてくる。
加え、何より女性であれば、理事坊ちゃん等の御曹司達と玉の輿を狙えたりする学校でもある。

しかし、二人は不服だった。


五和(第7学区ですらないとは……上条さん……)

浦上(ちょ、折角の学園都市なのに勉強と御偉いさん方との接見に拘束?! 冗談止めてよ!)

神裂「二人とも?」ハテ・・・


この時、二人と付き合いの長い自分には分かった。コイツら悪い事考えてる、と。
案の定その勘は当たって、しかも自分に火の子が振り掛かってしまう。そればかしは流石に予想外だった……


五和「ぐっ……ぷ、女教皇様! (チッ……ウラ。やるよ!)」チラッ

浦上「教皇代理も、お話があります! (OK、お姉! 把握した!)」チラッ

神裂「はい。何でしょう」

建宮「……言ってみ。 (ほぅ……如何逃げるか、御手並み拝見なのよな)」ククク・・・

五和「私達が理事養成学校に選出された事、非常に嬉しく思うと共に、とても名誉有る事だと受け止めます」キリッ

浦上「選んで下さった方々には心から感謝します。実家の家族にも自慢できる程でしょう」ニコッ

神裂「いえ。貴女達にはそれをやってのける力があると考え、選ばせて貰いました。自身を持って下さい」ニコッ

建宮「……ふむふむ」ニヤッ


ああコイツら、心にも無い事を言ってるな……と、傍から聞いてる自分は思った。
76 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/01(月) 23:58:39.41 ID:vKeS1Tg0
五和「しかし……残念ながら、不安があります」シュン・・・

神裂「不安、ですか? ええ、まぁ最初はそうでしょう。でも貴女達だけではないのですよ」

浦上「いえ、並の不安なら乗り越えられたでしょう……しかし此度のケースは解決出来ないのです」

神裂「と言うと?」フム?


すると、この馬鹿姉共はトンデモ無い事を宣うた。


五和・浦上「「性別です」」キッパリ!

神裂「……はぇ?」ポカーン・・・

建宮「如何いう事だ。言ってみろ、二人とも。 (芸術的『屁理屈』なら助け舟を出してやるのよな)」フフッ・・・

五和「はい。では僭越ながら……『▲▲▲』学院といえば、理事養成学校」コホン

浦上「理事養成学校といえば、官僚予備軍更には次代の学園都市統括理事会を育てる学校です」


まぁ、子供でも分かる話だ。


五和「無論、私達はそこでやっていける程の自信はありますし、付いていける様努力もするつもりです」

浦上「ですが……どうしても、越えられない事があるのです……」シュン・・・

神裂「それが、性別ですか?」

五和「はい。聞いた話によると、彼(か)の学校は教師・生徒・事務員……殆どの在校人員のが男性との事」

浦上「女性は二割居るかどうか、だそうです」

神裂「ふむ……確かに心細いかもしれませんが、性差別をするような学校でもないでしょう」

建宮「男女参画平等自由(ジェンダーフリー)は学園都市の売りの一つよな」


実際に都市のトップ7――所謂、超能力者(レベル5)――の中に、女性は3人もいる。
努力すれば誰でも報われる……というのは大袈裟だが、立ち廻り次第では上に登れるのが、学園都市だろう。
78 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 00:56:50.70 ID:pHAkHE.0
五和「はい。世界的にも女性キャリア進出の盛んな街だというのは分かっています……ですが……」シュン・・・

神裂「どうしました?」

浦上「正直、不安も宛ら……怖いのです」

神裂「怖い?」

五和「……あの学校、まず女性は嘗められるそうです」

建宮「うん。まぁ……エリート坊ちゃんが集まってる学校だからな。教師も何故か男根主義が多いのよ」


確かに官僚・政経学校なんて何処もそういうもんだ。何故か古今東西問わず、女性のエリート進出を嫌がる輩が多い。
悪習とも言うべきか、政治と力比べの場に女が出てくるなと仰る馬鹿(男)が殆どだ。

ただ、それでも負けじと頑張る女性が増えてきているのは、これまた事実。
現に学園都市では超能力者の例もいるし、理事でも親船最中理事――女性政治家――等活躍している人間はいなくもない。


神裂「うーん……それは、まぁ……」ムムム・・・

浦上「(おっし! もう一押しよ、姉者!) ……ええ。勿論、そんな逆境にも負けず頑張るつもりではいます」

五和「(畳み掛けるわよ! 妹者!) 親船理事は尊敬に当たる女性で、土御門も頼っていると聞きますしね。目標にしたいです」

浦上・五和「「でも……」」ウルウル・・・

神裂「ど、な、え……どうしました!?」アワワワ・・・


しかし、コイツら役者だなぁと思う。ふと教皇代理、対馬さん達大人組の顔を見るが、多分自分と同じ顔をしていた。総じて苦笑。
女教皇様は慌てているが……仕方ない。何だかんだで、自分らと同年代(18歳)なんだもの。


五和「……セクハラが」ボソッ

浦上「怖いんです……」ボソッ

神裂「っ……」ハッ・・・


大多数男性。しかも『政治』関係の学校……有るっちゃ、有る。権力馬鹿の横暴が。
79 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 01:21:32.62 ID:pHAkHE.0
女教皇様は非常に悩んでおられた。
自身『教皇』という身ではありながらも、殻を外せば花盛りの少女。二人の不安(※演技です)は理解できる。

ただ……冷静に考えれば、コイツら二人が坊ちゃんエリート及び変態教師共にセクハラ敢行を許す訳が無いと分かる筈なのだが。
女教皇様は甘くて、優しい方だった。

次第、二人は決定打を放つ。


五和「いえ……ごめんなさい。我儘が過ぎましたね。女教皇様……」ウウゥ・・・

浦上「いいんです……私達が礎(いしずえ)になれば、天草の為にも、英国の為にもなります」ウウゥ・・・

神裂「……貴女達」

五和「大丈夫です。きっと上手くやってみせます……御命令とあらば……っ……ぇっく……」ゴシゴシ・・・

浦上「私達の……犠牲(働き)……っ……ううぅ……無駄に、しないで……」ゴシゴシ・・・

神裂「っ……」グッ・・・

五和「彼を……っ……ぇぅ……上条さんを、お願いします……ね…… (フフフ、決まったな)」グシグシ・・・ニコッ・・・


うわっ。エグッ……女教皇様、胸押さえてるよ。


浦上「っ! 女教皇様……お願い。やっぱり、五和を別の学校に……私は如何なってもいいから! フェアじゃないです!」ガッ!

五和「駄目よ浦上……いいの。貴女一人を置いてはいけない……大丈夫、女教皇様は素晴らしい方だもの……っ……きっと、彼を……」ウルウル・・・

浦和「ッ……五和姉さん! 穢れるのは私だけで十分。想い人がいる貴女は……駄目だよ…… (はーい。更に駄目押しよ)」ギュッ・・・

五和「ああ、浦上……堕ちるなら、黄泉まで一緒よ。 (さぁ、変更しろ! 上条さんの学校に!)」ギュッ・・・

浦上「あ、あああぁ……姉さんッ…… (私は学舎の園辺りがいいなぁ……何でも揃ってるし!)」ポロポロ・・・

神裂「あ……っ」ウルッ・・・


はい、私は心の中で盛大な拍手を送りました。どっかの劇団入れよ、オマエら。

結局、それで以て、女教皇様は折れた訳で……
81 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 01:42:54.33 ID:pHAkHE.0
神裂「っ……建宮……ちょっと」テクテク・・・

建宮「あー、はい…… (最後ちょっと臭かったが……まぁ及第点よな。変えてやる)」チラッ


女教皇様と教皇代理(トップツー)は早足で物陰へ移動して行った。
女教皇様が一人の乙女となってしまった以上、最早権限は教皇代理に移されたといっても過言じゃないだろう。
因みに後から教皇代理に聞いたが、女教皇様、ボロ泣きだったらしい。馬鹿の所為で、可哀そうに。

その間、例の馬鹿二人はというと……


五和「ふぅ……まずまずよね」ニコッ

浦上「イエ~イ♪ いやぁ、堪んないよねー。折角の学生なのにさぁ」ウフフ


ルンルンとハイタッチなんかしてやがる。呆れてモノも言えなかった。
ただ、大人組兼女性陣を代表して対馬さんが二人に近寄り、説教開始。ざまぁ。


対馬「ったく……女教皇様(あの人)の性格知ってるでしょ? 堅物相手に、どうしてそういう事するかなぁ」ンモー

五和「あはは……すいません」ペコッ

浦上「でも、対馬さんだって行きたくないでしょ? もし理事秘書で任務入れって言われたら如何します?」

対馬「私は行くけど」サラッ

五和・浦上「「うわぁ……」」ジトー・・・


ポカッと良い音。ゲンコツされてやんの。


対馬「ホント、いい加減しなさいっての……まぁ若いアンタらの気持ちは分かる。黙っといてやるけど、次は無いわよ」ギロッ

五和「痛ぅ……はい」

浦上「酷いなぁもう……」


数分後、凛々しい顔をしたトップツーが戻ってきて、結論を述べた。
82 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 02:06:50.96 ID:pHAkHE.0
何時の間にか、また演技モードに入ってる馬鹿姉。
互いの手を握りながら泣き真似までしてる。いい加減、オーバーだっつの。


建宮「二人とも、配属校変更だ……女教皇様、お願いします。 (感謝しろよ)」チラッ

五和・浦上「「え…… (イィヨッシャアアアァっ!!)」」フッ・・・


アイツらの心の声が聞こえる。女教皇様が可哀そうでならない。


神裂「まず、五和。浦上……すいませんでしたッ」ペコッ! フカブカー・・・


……あちゃー。


五和「ぷ、女教皇様!?」ドキッ

浦上「あ、頭上げて下さい!」ヤバッ

神裂「いえ、私が悪いのです……本来、歳の近い私が最初に気付いてあげなければならなかったものの、貴女達を苦しめてしまって」シュン・・・

五和「そ、そんな、私達……気にしてませんから…… (予想以上に効き過ぎたみたいね……)」

浦上「そうです。寧ろ、女教皇様を悩ませたみたいで…… (やべぇ……大人達に睨まれてるよーぅ!)」

神裂「違います。女教皇では無く……一、神裂火織として謝っています。お姉さんとして失格ですね……」フルフル・・・


……どうして、この人は此処まで御人好しなのだろう。見てるコッチが泣きたくなってきた。
馬鹿姉二人も流石に不味いと思ったらしく、顔を曇らせていた。


建宮「(まったく……この人の美徳であり、欠点なのよねぇ……) ……女教皇様。配属校を」サッ

神裂「ええ、そうですね……二人には第7学区の『学舎の園』に入って貰います」ニコッ・・・

浦上「ほ、本当ですか!? (うっひゃー……何か悪いなぁ)」パアァ・・・

五和「別名、『お嬢様の街』…… (まぁ文句は言えないかぁ。ベストじゃないけど、ベターだね)」フゥ・・・

神裂「観察対象としては極めて重要なポイントです。学校名は追って連絡します。何分、急遽の事でしたから……すいません」ペコッ

五和・浦上「「いえいえ」」フルフル


女教皇様、ホント、もう謝んなくていいから。終いに、ソイツら図に乗ります。
83 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 02:27:39.59 ID:pHAkHE.0
世の中、良い事がある人もいれば、悪い事が振り掛かって来る人もいる訳で……地獄が、やって来た。


建宮「ああ、そうそう……それで申し訳無いんだが、『▲▲▲』学院は如何しても押さえておきたいポイントなのよな」

神裂「しかし、二人……他の女性達も振り分ける事は出来ません」

建宮「そこで、だ……」チラッ


まさか……今、自分と、目が合ったか?


建宮「ほれ。コッチ、来い」クイクイ・・・

香焼「……」キョロキョロ・・・

五和「香焼ー。後ろ誰もいないよー」シレット

浦上「手招きしてるの香焼だってば」シレット


……嘘だろ。


神裂「香焼」

香焼「はいっ!!」ドキッ・・・

神裂「別枠で任務を与えていて大変だと思いますが……話し合いの結果、『▲▲▲』学院へ行って貰いたいという事になりました」トンッ


耳が痒い。幻聴が聞こえる。


神裂「学力的に貴方があの二人の次に高いという点と、今までの活躍を評価させてもらいました」

建宮「高校生より、中学入り立ての方が連中らに怪しまれないという点も有る。適任なのよね、香焼」ニカッ

香焼「ッッッ……~~~ (おかしいですよ建宮さあああぁぁんっ!!)」チラッ!!


『ダハハ、悪い』。といった顔のクワガタ。


神裂「厳しいのは分かりますが、何卒、お願いできないでしょうか?」

建宮「勿論、バックアップはしっかりするし、給金休与も増やすのよね。 (愛しの最終兵器彼女に会う時間増やしてやったぞ?)」ニヤッ

香焼「ぐっ…… (最愛関係無いだろぉが今よぉ……)」ギリリ・・・
85 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 03:31:19.11 ID:pHAkHE.0
暫時、精一杯何か良い言い訳は無いか考えたが……畜生。浮かばない。
それどころか、究極過虐馬鹿姉二人がコールド点叩きこんできやがった!


五和「あ、香焼なら安心して跡釜任せられます!」キリッ

浦上「彼、努力家ですし負けん気の強い子ですから」ニコッ

香焼「ッ?!?!?! (ザケンナアアアアァッ!! 誰の所為だと思ってやがんだ、オイっ!)」ギロッ?!

神裂「香焼、どうかお願いできませんか?」ペコッ、フカブカァ・・・

香焼「うっ……」タラー・・・

建宮「……香焼《※下の名前》。男だろ? ……これ以上言わせるな、命令だ。 (悪ぃな)」キッ


あぁ、非情かな……もう何も言えなかった。自分はただ、『イエス』と頭を項垂れるしかなかった。


浦上「キャリアが増えるよ!!」ニコッ!  ゜☆。.:*:・ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ。.:*:・”★'  五和「やったねこうちゃん!」ニコッ!

香焼「」ビキビキビキビキッ・・・・#・ω・)……チョット…コッチコイ、テメェラ。

五和・浦上「「真顔怖っ……」」ウッ・・・


グイッと首根っこ取っ捕まえて連行。


五和「いやぁ!! 暴力はんたーいっ!!」キャー

浦上「弟にー犯されちゃうよーっ!!」キャー

香焼「イッペンマジ黙れオイ」テクテク・・・グイッ・・・グイッ・・・

五和・浦上「「ぐえっ!!」」ギュッ・・・


この後、女教皇様に見つからないよう馬鹿姉二人をウォータールー駅下水溝(地下鉄)まで引き摺り、そこで我を忘れて盛大に喧嘩しました。
騒ぎを聞き付けて止めに来てくれた天草の仲間(※クワガタ除く)、アニェーゼ、アンジェレネ、ステイルにはマジで感謝してます。はい。



 **回想終了**



香焼「以上っす。 (※因みに……口頭説明では、流石に今後の関係に差支える事は省かせて貰ったっすよ)」ハァ・・・

神裂「」チーン・・・
97 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/02(火) 23:48:27.78 ID:2XjtXFs0
 ―――PM05:20、香港・某ホテル……香焼side……



一通り学徒潜入振り分けの事実を話し、自分は女教皇様から頂いたオレンジジュースで一息ついた。
まったく、思い出しただけでも髪が白くなりそうな話だ。

一方、女教皇様は・・・・・・


神裂「・・・・・・香焼」プルプル・・・


昔流行ったCMのチワワみたいに震えていた。


神裂「もう、何と言っていいか・・・・・・ごめんなさい!!」ガバァッ!

香焼「えええぇっ!? い、いや、振り分けに関してはもう大丈夫っすよ。大分前の事っすから」アタフタ・・・

神裂「今更変えてあげることも出来ません・・・・・・こんな愚かな教皇を許してください」ウルウル・・・

香焼「え、えっと、許すも何も女教皇様の所為じゃないっすから・・・・・・」アハハ・・・


困った。このお姉さん、度し難い堅物だ。


香焼「さ、さっきも言いましたが、あの学校に入ったお陰で実際自分の力は付いてるっす」

神裂「・・・・・・」ウルウル・・・

香焼「俗ながら、給金と休与の数も増やして頂いています。その件に関しては、もう文句はありませんから」ニコッ

神裂「・・・・・・そう言って貰えると、助かります」ペコリ・・・

香焼「ええっと、だから頭を・・・・・・」ウウゥン・・・


誰かに見られたら、面子が立たない。


香焼「それより、本題を・・・・・・」ハハハ・・・

神裂「そうでしたね。あの二人・・・・・・」ハッ


そう。馬鹿姉二人が今回の問題なのだ。振り分けは序の口。
そして自分は再び、あの二人の暴虐っぷりを語り出した・・・・・・
98 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 00:44:08.66 ID:SS/tP860
香焼「まぁ色々ありすぎるので、最近のを一つ」

神裂「はい」コクッ

香焼「アレは教会建設終了から近い後日の事っす」


教会建設を終えた自分達は、英国本国から一週間ほどの休暇を貰った。
ある者に本国へ帰りのんびり過ごし、ある者は多くの教徒の実家がある長崎へ帰郷し、ある者は学園都市周辺で観光を行う、等など。


香焼「女教皇様は久しぶりに上条さんとこ行ったんすよね」ニコッ

神裂「うっ・・・・・・ま、まぁ私の事は良いじゃないですか」タラー・・・

香焼「ははは、すいません。では続けるっす」


そんな中、数名の若手組は学園都市に残り、自らが所属する学校の方へ足を運んでいた。

大分ややこしい話だが、今、天草若手陣には大きく二つの任務がある事になる。
一つは先程から述べている学徒潜入任務。もう一つは天草本隊が行う全体任務だ。優先度は勿論、後者。
ただし、全体任務が無い時は一般学生――のフリをして――極力都市に居なくてはならない。

因みに、今回の教会建設の全体任務終了の際には本格的に休暇を取る事を許された。
実際、故郷の彼女彼氏に会いに行きたいなんていう若手教徒(勝ち組)もいたりしたのだが・・・・・・


神裂「貴方は都市へ残ったと」

香焼「はい。学院へ提出する宿題(レポート)がありました」

神裂「れ、レポートですか・・・・・・黒妻さんの所ではなく? (この子は、ホント真面目ですね)」アハハ・・・

香焼「それは後ほど・・・・・・まぁ、やらなきゃやらないでも進級できるっすけど、折角の学生っすから」アハハ・・・


というのも、要は体の良いズル。
天草本隊や土御門、更には英国本国による『何かしら』の働き掛けで、出席日数と点数操作を行ってもらえる。
要領良く賢い(狡い)若手なんかは、学業そっちのけで『別の事』してたりするらしいのだが、それは言わない。

無論、とんでもなく悪い事じゃないけど・・・・・・言った瞬間、女教皇様泣くから。


香焼「それで、自分が書き物やってるとこから話は始まるっす」

神裂「ええ、お願いします」
99 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 01:34:46.89 ID:SS/tP860
香焼「本来、その日は一人静かにパソコンと睨めっこの後、昼寝でもしようかと思って筈なんす」ハァ・・・

神裂「パソ・・・・・・貴方もやはり現代っ子ですね」

香焼「女教皇様・・・・・・いい加減、タイプ打ち覚えましょうよ」ヤレヤレ・・・

神裂「む、むぅ・・・・・・」ポリポリ・・・


さておき、教会建設は終わり、自分も別枠で任されていた『残業』も終了した。


神裂「ああ、リメエア様のお供・・・・・・いや本当に助かりました。我々ではどうも、あの方から離れていってしまいますから」アハハ・・・

香焼「いえ、本来護衛なんて必要無いお方っすよ。逆にアニェーゼ達の保護者役をやって頂いたので申し訳なくて」ハァ

神裂「そう・・・・・・アニェーゼとアンジェレネは未だに?」

香焼「はい。姫をミス『リーア』だと思ってるっす」


二人には、姫の意向で正体をばらしていない。まぁ姫の気持ちは分からんでもないが、何ともなん。
その後、三人は都市観光を満喫し、お土産を山ほど購入して――全部、姫持ち――英国へ帰国された。

やはり王家は懐が違った。『安田○平』方式で講座貯金が振り込まれるらしい。ぶるじょあじー。


香焼「そしてそれからステイルと・・・・・・」ボソボソ・・・

神裂「・・・・・・え?」ジー・・・

香焼「仲直りして・・・・・・」ボソッ・・・

神裂「・・・・・・へぇ。 (可愛いのう。ステイルにも聞きましょう)」ニヤニヤ

香焼「ッ! な、何でも無いっす! と、とりあえず休む暇なく潜入任務に戻ったんすよ!」カアァ・・・///


まぁ任務といえば格好良いかもしれないが、何てことは無い。宿題作業だ。
ただし、宿題といえど侮る事無かれ。エリート集団の中で、宿題すらこなせない『馬鹿』は居ないも同然の扱いだ。
すると結果コネなんか作れず、潜入任務という大極にも支障が出てしまう。
ただ、逆に成績だけ良ければいいという訳でもない。それも社会に出て通用しない『馬鹿』扱いされてしまうだろう。

故に、理事養成校である自分の学院で必要とされ、モノを言うのは成績と論述・スピーチ力だ。
成績は勿論の事、論述・スピーチが強いというだけで相手を捻じ伏せられる。
エリート集団、プライドの高い人間――生徒も教師も――が集まる理事養成学校での『言葉』と『書く』力。
信用関係(コネクション)と情報筋を作るには、それらが必要不可欠だった。


神裂「・・・・・・ふ、ふーん。 (香焼、中学生ですよね?)」タラー・・・
100 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 02:24:14.21 ID:SS/tP860
香焼「今時、小学生でも表現・アウトプット力は求められますから」アハハ・・・

神裂「大変なのですね・・・・・・私は勉学は、うん・・・・・・修行ばかりで」ウウゥ・・・

香焼「え、えっと・・・・・・心中お察しします」タラー・・・


教皇、更には聖人であるこの御方は、学校に通う暇など無かったに違いない。
兎角自分は、問題の日の話を始めた・・・・・・



  **回想**



 ―――教会建設終了から近い後日、AM10:30、学園都市第1学区、香焼のアパート……



中々捗(はかど)らない。
ディスプレイと睨めっこし、シフトキーをリズム良くゆっくり叩きながら、宿題の歴史論述に頭を悩ませていた。

テーマ・・・・・・『邪馬台国が何処に在ったか、自身の仮説を述べよ』である。
正直ブン投げたいほど面倒臭い課題だったのだが、畜生。顔を覚えられてしまった。
社会・歴史の豚みたいな先生が福岡博多出身らしく、同じ九州出身の自分をえらく気に入ってしまったらしい。

因みに、この学校の教師は理事・官僚から天下り誘致してきた文系エリートが多いが多い。

更に余談。黒妻さんが言っていたが、官僚の天下りは古今東西の慣習であり、彼らの権利らしい。
『学生の時、青春捨てて死ぬ程勉強したんだろ? 加えて国の為に働いてきた輩だ。政治家とは違うさ』とか。
あの人らしいタカ派意見・・・・・・自分が言うのもなんだが、あの人も絶対中卒とは思えない頭を持っている。

話を戻そう。


香焼「まぁ、レベルは高いけどさぁ・・・・・・意味無いよ、このテーマ。何の役に立つの?」ハァ・・・


『邪馬台国』なんてハッキリしてない王国の仮説を立てろなんて、無理難題吹っ掛けて来る基地外教師め。
見た目通り、豚小屋へ戻っちまえ・・・・・・なんて、口が裂けても言えないけどね。

・・・・・・まぁ、別の事考えていても仕方が無い。大人しく課題をこなそう。

顔を二三叩き、参考書とインターネットを開きながら、自分は指を動かした。
101 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 03:01:58.81 ID:SS/tP860
  **中途**・・・・・・神裂Side・・・・・・


おい、待てやコラ。


神裂「・・・・・・邪馬台国?」ハァ?

香焼「中学一年の範囲っす」

神裂「いや、それは分かりますが・・・・・・『何処に在るか仮説』をなんて、大学の論文ですか?」

香焼「いえ、まぁ超難関中学っすから・・・・・・もう慣れたっす」アハハ・・・

神裂「し、しかし・・・・・・有力は近畿説と、九州説ですか」ウーン・・・


香焼の似非中学生疑惑はさて置き、彼の課題を考える。何か引っ掛かるが・・・・・・


神裂「・・・・・・あ、思い出した」ハッ

香焼「何か?」

神裂「そういえば昔、禁書目録(あの子)が『魏志倭人伝』と『日本書紀』で本当の所在地を割り出した事がありましたね」サラッ

香焼「・・・・・・それ、チートっす。努力を無駄にしたくないから聞きません」ハァ・・・

神裂「あはは・・・・・・それで、貴方はどうしたのですか?」

香焼「えっと結局、先生が自分に望んでる答えは九州説だって分かってましたから、そっちで」ハイ・・・

神裂「ふむ。興味はありますね」コクッ

香焼「『卑弥呼=天照大御神』説を使いました。宮崎の天岩戸をベースに、記紀神話を用いて」

神裂「天ノ岩戸ですか・・・・・・良い思い出は無いですね」ハハハ・・・

香焼「思い出?」

神裂「修行で行きました・・・・・・ほら。結界張ってて入れない場所あるでしょう。あそこで、うん・・・・・・」


先代から無理難題言われて『神降ろし』の練習をさせられた。出来るわけ無ぇだろ巫女じゃねぇし交霊術すら勉強してねぇっつの。

・・・・・・ああ、不味い不味い。先代を悪く言っちゃいけないですね。


神裂「兎角、成る程。テーマを神道と結びましたか。多角宗教融合型の天草(我々)にとって十八番の手です。考えましたね、香焼」ニコッ

香焼「えへへ。どうも・・・・・・それから娘の臺與(いよ)を熊襲・隼人の伝記である百襲姫、更に綿津見神の娘である豊玉姫と―――」
102 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 03:24:00.58 ID:SS/tP860
それから数分経って気付いた・・・・・うん。拙い、突っ込みすぎた。この子歴史マニアだ。


香焼「―――で、実家から資料を・・・・・・あ、え、女教皇様?」

神裂「あー・・・・・・うん。そうですね・・・(ごめん、聞いてない)・・・それより香焼。本題を忘れていますよ」タラー・・・

香焼「あ、そうでしたね。スイマセン・・・・・・そのレポート後でお渡ししますね」ニコッ

神裂「え、ええ・・・・・・」アハハ・・・


それ何万文字? 感想言わなきゃ駄目?


香焼「えっと・・・・・・何処まで話したっすけ?」

神裂「確か宿題を再開した辺りからです。キーボードを叩き出したとか何とか」

香焼「ああ、そうそう。プロット作成をしてた頃なんすが・・・・・・―――」


やっと、回想が再開した・・・・・・



  **回想**・・・・・・香焼Side・・・・・・


目次から第9章までのプロットを立て終えた時、ガチャッと勢い良く玄関の開く音が聞こえた。
というか、チャイムを鳴らさないって事は・・・・・・


五和「ただいまー」テクテク・・・

浦上「うぃ・・・・・・疲れたよー。あれ? 香焼いないの?」テクテク・・・


悪魔が来た。五和よ、『ただいま』じゃねぇ『お邪魔します』だろ。浦上さん、居なきゃ鍵開いてないからね。
てか我が物顔で普通に入ってくるな、馬鹿女郎共。


五和「あー、炭酸無いや・・・・・・麦茶で我慢かな」ゴソゴソ・・・

浦上「五和。床下の『非常食・水』の箱に、CCミカン有った筈」ゴソゴソ・・・

五和「マジ? ・・・・・・おお! てかお菓子もいっぱいだ!」ヤッホゥ!


貴様らは『非常食』の意味を知らないのか? てか誰のウチだと思ってんの?
自分は流石に痺れを切らせ、自室からリビングに乗り込んだ・・・・・・奴らを退治しに!
107 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 17:37:12.85 ID:ac58U6g0
自分はワザと大きな足音を立て、リビングでグータレる悪者の元へ向かった。


香焼「おい」ドタドタ


一声。しかし・・・・・・


五和「―――そしたら、教皇代理さぁ。『いやあのね、ニュートラル入れてたのよね』っつって!」ゲラゲラ!

浦上「え?! それ・・・・・・」プクク!

五和「そう! んで、『そして、それ知らないでセカンド発進だと思ってそれなりにスロットル回したら――」

浦上「――動かないからアレッと思ってギアいじったっけ、ロー入っちゃって、もうウィリーなのよさ』ってか!」アハハ!!

五和「うん。そうそう! 建宮さん意外とオッチョコチョイだよねー」ケラケラケラ!

浦上「あー、もうアレだね。教皇代理と居る時はビデオ回してなきゃ駄目だね!」プハハ!


聞いてないし。


香焼「・・・・・・おい!」ドンッ!

五和・浦上「「ほえ?」」キョトン・・・

香焼「何してんのさ」ジトー・・・

五和「香焼居たの? 何って・・・・・・何?」チラッ

浦上「お昼前のティータイムかな? 正午ティー飲んでるけどね!」ドヤッ!

香焼「・・・・・・」プルプル・・・


打ん殴って良いですか?


五和「だって気配しないんだもん。人払い術式でも掛けてた?」

香焼「しないんだもん、じゃねぇっす! オマエら人ん家入る時、『お邪魔します』の一つ言えないの?」

浦上「言ったじゃん。『ただいまー』って」


ふざけろ。貴様らに『お帰り』なんぞ言ってやらん。この妖怪我が物顔女共め。
109 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 17:56:10.34 ID:ac58U6g0
五和「あー、ほら。よく言うじゃない。勝手知ったる他人の家ってさ」


それ今使う場面じゃなかろう。


香焼「図々しい奴らめ・・・・・・ってか、はしたない格好するの止めろっす! Yシャツの上3つボタン閉めろ!」ッタク・・・


コイツら学校の制服で来た癖に、人ん家入った瞬間放っぽりやがって。
仮にも独身男性の家だぞ。礼儀があろう、馬鹿者。


五和「きゃー、コウちゃんえっちー」キャー

浦上「何処見てんのよー」キャー


 ゴチンッ。ゴチンッ。


五和・浦上「「痛い!!」」アウチッ!


自分は黙って二人のブレザーをハンガーに掛けた。
まったく、皺くちゃにして・・・・・・後でアイロン掛けなきゃいけないじゃないか。


香焼「あのなぁ・・・・・・来ちゃ駄目っつってんじゃない。でも常識的に考えて、マナーがあるっすよ?」ジトー・・・

浦上「おチビちゃんがマナーとか言っても説得力無いっすー」ニシシ!


真似すんな。馬鹿女郎。


香焼「来る前に連絡するとか、菓子折り持ってくるとか、玄関では靴揃えるとか―――」

五和「ウラぁ。リモコン取ってー」モグモグ・・・

浦上「お姉の方近いじゃん。てかスナック食べた手で触らないでよー」ムシャムシャ

香焼「―――・・・・・・人の話聞けぇ! ボケナス!!」ガアアァッ!!

五和・浦上「「話ながーい」」ブーブー


カチンときた。再び、拳骨・・・・・・スッカラカンな音が二発響いた。
112 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/03(水) 21:29:53.05 ID:CjxBwe.0
まったく、困ったものだ。というか、オマエ達どうして此処に居るんだ。
本格的全体休暇なのだからもっと有意義に過ごせないのか。
潜入先の学校行けとは言わないから、せめて年相応の女子らしくショッピングなり、レジャーなり行けばよかろうに。


浦上「香焼、それは偏見よ。私達だって何もしないでのーんびりしたいもの」ウンウン

香焼「だったら何故自分のアパートでのんびりしない? 此処はオマエ達の家じゃないっすよ?」ギロッ

五和「前から言ってるじゃん。学舎の園のアパートだと偶に巡回あって面倒臭いのよ」

浦上「それに此処の方が立派だしねー」ネー

五和「ずるいねー」ネー


その条件を蹴ったのは貴様らだ。このトンチンカン共。


香焼「……五和。オマエ、上条さんとこ行くって言ってなかったすか?」ジトー・・・

五和「う……」


片方にキツい一発御見舞してやった。


五和「……」シーン・・・

香焼「どうしたよ。何も言えないっすか?」フンッ


すると、段々……五和の目が据わってきて……


五和「女教皇様に……」ボソボソ・・・

香焼「何?」ハ?

浦上「馬鹿。あのね、お姉、女教皇様に『公平な』ジャンケン負けて今日は行かないって決まったのよ」ンモー


……下らねぇ。知るかそんなモノ。
とはいえ、五和が超ネガティブモード入ったので今はコレ以上突っ込めなかった。こん畜生め。
113 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/03(水) 21:45:32.45 ID:CjxBwe.0
   **中途**

神裂「もしかして……それ、私の所為ですか?」

香焼「……続けます」アハハ・・・

  **回想再開**


 ―――AM11:00、学園都市第1学区、香焼のアパート……



馬鹿に構っていた所為で、レポートの事を忘れてしまっていた。来週末提出だというのに。
自分は、二人が『非常食・水』置き場から取り出し貪っていた菓子・ジュースを取り上げ、冷凍庫に入っていたチューペットを与える。
どちらが長い方を食べるかという不毛な争いをしていたが、アホ臭いので無視して、宿題の続きに入ろうとした。その時……


 Prrrrr・・・・・


香焼「ん?」

五和・浦上「「むぉ?!」」チューチュー


自室に置いてある自分の携帯が鳴った。


浦上「私出る!」タッ!

五和「あ、ズルっ!」ノソッ

香焼「家電じゃ無ぇ!! 勝手に携帯取るな!!」ウワアァ!!


トチ狂った浦上のポニテを掴み動きを止め、その間に急いで自室に籠った。無論、鍵を閉める。


浦上「開ーけーてー!!」ドンドンドン!

五和「ひーどーいー!!」ドンドンドン!

香焼「いい加減にしろ、まったく! ……黒妻さん?」ジー・・・


後ろからのノック音が喧しいのだが、無視して電話に出る事にした。
114 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/03(水) 21:59:46.19 ID:CjxBwe.0
香焼「もしもし」Pi!

黒妻『おう、お疲れさん。今、忙しいか?』

香焼「いえ、大丈夫っすよ」

黒妻『ん。オマエ、学園都市(コッチ)居るのか?』

香焼「はい。前回の『仕事』が終わって、本格的に休暇を出されたっす。自分のアパートで学校の課題やってました」

黒妻『課題? ……「色々」と大変だな。オマエも』

香焼「あはは……」タラー・・・


一応この人にはある程度フィルターを掛けて、自分の立ち位置・行動を教えてある。


黒妻『それでだが……なぁ、何か五月蠅くないか? 本当にオマエん家?』


えっと……


五和「良し……もうちょっと……」カチャカチャ・・・

浦上「おお! 流石天草のジル・バレ○タイ○! キーピックは基本技能だね!」スゲェ!

香焼「何やってんだ馬鹿共ぉ!!」ゲエェ!!


目を離すと直ぐコレだ。勘弁してくれ……


香焼「あー……『仕事』仲間……姉、みたいな連中が今上がり込んでるんすよ」ハァ・・・

黒妻『へぇ。道理で姦しい声がする訳だ。ぷりえすて、さん?』

香焼「それを言うなら女教皇様(プリエステス)っすよ……アイツらと女教皇様比べたら申し訳が立たないっす」

黒妻『あはは。神裂さんじゃないのか』


女教皇様が自分の部屋に来る訳が無い。うん、絶対。
115 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/03(水) 22:19:13.19 ID:CjxBwe.0
浦上「おい、香焼! 今お姉ちゃん達の事侮辱したでしょ!」キー!


そんなの何時もの事だろうが。


五和「うん、これで……うしっ! 開い……てない!? 中に南京錠とチェーンロック?!」ナントォ!?


嘗めるな、変態姉妹。


香焼「ハァ……えっと、すいません。それで如何しました?」

黒妻『ん。今日家(ウチ)来れないか?』

香焼「大丈夫っすよ。何時くらいに?」

黒妻『今すぐでも良いぞ。昼飯食べて無いだろ。オレが炒飯作ってたぜ。洋風チャーハン』


黒妻さん。それピラフです。


香焼「あー、でも……二人に餌(夕飯)やらなくちゃいけないんで」

黒妻『別に増えてもいいぞ? 今日は新客も来るし、沢山作ってたから』

香焼「絶対駄目っす。お恥ずかしくて、人前に出せるような奴らじゃないっすから」キッパリ

五和・浦上「「行ーきーたーいー!」」エー!

香焼「お黙る!! ……兎に角、頃合い見計らって二人捲いてからお邪魔します」

黒妻『そ、そうか。分かった』


実際、馬鹿姉共は見知らぬ他人の前ではキャラ作るから大丈夫である。
だが自分の前だけ堕落極まりない恰好を見せるコイツらに、黒妻家まで付いてきて欲しく無かいのが本音だ。
最愛や打ち止めちゃんに有る事無い事吹き込まれたら、堪ったもんじゃない。


香焼「そういえば、新客って?」

黒妻『おう。まぁ新しい「妹分」だと思え。どんな娘かは、来てからのお楽しみだ』ニシシ!


……黒妻さん、固法さん。また子供『出来た=仲良くなった』のか。
116 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 22:34:10.75 ID:CjxBwe.0
五和「南京錠は外れた! ウラそっちは?」ガチャンッ!


……オイ後ろ、まだやってんのか。


浦上「うーん……11桁って多過ぎだよ。香焼、ヒント!」ウー・・・

香焼「ステイルの電話番号」ボソッ

五和「良し、調べるわよ!」


オマエら、持ってないだろ。
自分は気にせず電話を続けた。


香焼「最愛と打ち止めちゃんも来てるんすか?」

黒妻『……は?』

香焼「え?」


自分、今何か可笑しな事言っただろうか。


黒妻『……オマエ、最後何時最愛ちゃんに連絡した?』

香焼「何時って……昨日の夜メールしたっすよ」

黒妻『その時何も言われなかったか?』

香焼「はい?」


如何いう事だ?


黒妻『……最愛ちゃん、倒れて入院中だぞ』

香焼「っ!!?」ドキッ!

黒妻『オマエらが第三学区のホテル行った日だ……「仕事」前に、過労だとよ』


まさか……あの日(※③参照)に……
117 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 22:43:29.02 ID:CjxBwe.0
いてもたってもいられなくなった。


香焼「ッ……何処の病院っすか!!?」バッ!

黒妻『待て香焼』

香焼「だって!」

黒妻『駄目だ。教えられない』キッパリ!

香焼「どうして!?」

黒妻『……面会は可能だが、もう退院直前だ。考えてみろ。最愛ちゃん、入院してる事オマエに隠してたんだろ?』

香焼「っ……」グッ・・・

黒妻『まぁそれだけなら向かわせたが、もう一つ』


まだ何かあると言うのか。


黒妻『あの子は置き去り(ドロップアウト)で身内がいない。病院に同行したのは「仕事(アイテム)」の仲間だ』

香焼「……」

黒妻『悪いが、仕上に聞いた……今のオマエと麦野さんを会わせてやれない』


悔しいが……確かに。


黒妻『何知らぬ顔で接してやれ。それが兄だろう』

香焼「……分かったっす」ボソッ


自ら分かる程、空返事だった。


黒妻『その件に関しても、ウチに来たら詳しく教えてやる。兎に角、待ってるぞ』

香焼「……了解っす」


そうして、自分は電話を切った。
118 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 22:55:49.09 ID:CjxBwe.0
最愛は如何して自分に黙ってたのか。そんなの後ろめたいのか……
自分は幽鬼の様にフラフラと自室から出た。


浦上「くそぅ……ステイルの電話番号なんて必要悪の教会の殆どが知らなあ痛ぁっ!」ゴンッ!

五和「ステイル友達少ないから……っておっと!」ヒョイッ!


開けた瞬間ドアにぶつかる浦上。
普段なら、ザマぁ見ろと笑ってやったが……気分じゃ無かった。


香焼「……退いて」ボソッ

浦上「痛た……う、うん……」エ?

五和「こ、香焼。大丈夫? 顔色悪いけど」ジー

香焼「平気っす……悪いけど、二人で昼飯食べてて貰えるっすか。冷蔵庫の物勝手に使って良いから」ボソボソ・・・

五和「わ、分かった…… (様子変ね)」コクン

浦上「何処か行くの? (どうしよう、シリアル苦手……)」

香焼「ちょっと……出かける。夕飯も食べてくるかも」テクテク・・・

五和「姉ちゃんも付いてっちゃ…… (シリアスだよ。ウラ)」


その時の自分の目は、マジギレした時の教皇代理の目に似てたという。


五和「い、行ってらっしゃい……」アハハ・・・

浦上「気をつけてぇ……」タラー・・・

香焼「……帰る時、鍵閉めてよ。どうせ二人とも、勝手に合鍵作って持ってるんだろ」ギロッ

五和・浦上「「あ、あはははは…… (ばれていらっしゃる!!?)」」ドキッ!


何でもお見通しだっつの。

そして自分は、黒妻家に向かった……
119 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/03(水) 23:08:17.70 ID:CjxBwe.0
   **中途**



シーン……と沈黙が走る。


香焼「……話が逸れましたが、取り敢えず一区切りっす。 (※無論此方でも、今後の関係に差支える事は省かせて貰ったっす)」

神裂「そ、そう。大分横暴ですね…… (てか、その後の黒妻さん家如何なったの?)」タラー・・・

香焼「それで、帰ってからまたあの二人―――」

神裂「ちょ、え、待ちなさい香焼」ピタッ

香焼「―――が……え?」ポカーン・・・

神裂「……其処まで聞かされたら、気になるんですが」

香焼「……」ジトー・・・

神裂「うっ……そ、そうですよね……いくら教徒だからって、プライバシーは守るべきですよね」

香焼「……ハァ。まぁ話してしまった自分が悪いっす。少しですがお話しします」

神裂「す、すいません……」ペコッ

香焼「その代わりと言っては何ですが……お願いがあるっす。馬鹿姉二人の件以外で」

神裂「はい、何でしょう?」

香焼「始めに二点相談が有ると言ったっすが、その二つ目……固法さんが会って話をしたいと言ってました」

神裂「固法……ああ、黒妻さんの」

香焼「何に関してかは分かりませんが……良いでしょうか?」

神裂「ふむ……都合を付けましょう。後ほど伝えます」

香焼「ありがとうございます。では……―――」


甚だプライベートではあるが、自分はアパートを出てからの話を始めた……
137 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/05(金) 22:56:10.46 ID:MtW23n60
  **回想再開**


 ―――AM11:15、学園都市第1学区、香焼のアパート……



それから、二人を無視して急いだ。
リメエア様から買って頂いた、ファー付きのパーカー羽織り、そしてタイトの半ズボンを穿いて玄関に向かう。


香焼「行ってきます」

五和・浦上「「……」」


空気を読んだつもりか、馬鹿姉共は何も言わなかった。
何時もの様に馬鹿騒ぎしてくれれば良いモノの……その時だった。


冷蔵庫「外は冷えるぜ? 短パンでいいのか?」


冷蔵庫(天の声)。


冷蔵庫「せめてレギンスかタイツ穿いていけ。最近じゃ男でもファッションだぜ」

香焼「……上下の術式(スタイル)に合わせてるんすよ。余計なお世話っす」ピタッ

冷蔵庫「あっそ。勝手にしろ……なぁ。病院行く気だべ?」


……喧しい家電だ。


冷蔵庫「あの男の言葉を無碍にするな。あれは最良の選択をした」

香焼「……如何いう意味っすか」

冷蔵庫「今行けば、テメェは絹旗以上に『長期入院』する事になる。最悪、死ぬなぁ」


超能力者……麦野、沈利(原子崩し)。


冷蔵庫「誰が得する? テメェの自己満足だろ? 黙ってあの男の家に行け。今はそれがベターだぞ」


何も、言えなかった。
138 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/05(金) 23:13:40.02 ID:MtW23n60
五和「……もし」ボソッ


沈黙を保っていた馬鹿姉の片方が口を開く。


五和「香焼が傷付いたら……私達は、悲しいわ」

香焼「……」テキパキ・・・

浦上「それに、多分……相手の子も、今以上に傷付くと思うな」

香焼「……」カチャカチャ・・・


二人の言葉が、自棄に胸に響いた。


香焼「……火の元だけは、気を付けて頂戴っす」ガチャッ・・・


それだけ伝えて、自分は家を出た。



 ―――AM11:30、学園都市第7学区、黒妻宅……(※回想では無く、別side③本編)



土御門「いやしかし、急に冷え込んできたにゃぁ」フンッ! フンッ!

黒妻「ああ。異常気象の所為で山が色付く前に葉が散るらしいぞ」フンッ! フンッ!


御近所とベランダ越しでの会話。まるで主婦の様だ。
ただ、普通一般的な主婦とは違うのは……


禁書目録「……何で二人とも、ベランダの手摺で筋トレしてるの?」ジー・・・


二人だけの筋トレ大会を開いていたのだ。
土御門は柵に足を引っ掛け腹筋。オレは上の階(上条家)のベランダ足場に指を掛け懸垂。
傍から見れば心中自殺願望者男性二人に見えるやも知れないが、まず双方とも、落下する心配は無いだろう。

筋骨隆々。寒さをも物ともしない身体。プロボクサーだと言っても別に疑いはしない引き締まり方だった。
139 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/05(金) 23:36:24.61 ID:MtW23n60
黒妻「人生日々トレーニングだぜ。インデックスちゃん」フンッ!

禁書「そんな紐無しロッククライミングみたいな真似、願い下げなんだよ……てかウチのベランダ使ってるし」ハァ・・・

土御門「おや? 何時からカミやん家はオマエの家になったんだにゃー? タダ飯喰らいのシスターさんよ」ククク!

禁書「……五月蠅い」ブスゥ・・・


身体を45度の所でストップさせ、ニヤリと笑い毒づく斜め上のサングラス道化。
痛い所を付かれたらしく、口をイカタコの様に尖らす上の階の居候。


土御門「にゃはは。悪い悪い。機嫌直せ、シスター・ベルゼブブ。ねーちんが旨い飯作ってくれてるんだろ?」

禁書「うー……つちみかどは意地悪するから嫌いなんだよ」ムゥ・・・

黒妻「ははは。嫌われちまったな、土御門」ハハハ!


片手を離し宙ぶらりんの恰好になるオレ。
上の居候を危ない危ないと騒いでいるが、オレ自身と土御門は何事も無いかのように会話を続けた。


土御門「えっと、それで何だっけ? 新しい御子さんが出来たんだってにゃ。舞夏から聞いたぜぃ」グンッ・・・

黒妻「『出来た』とか言うな。まぁな……オマエなら多分、噂くらい聞いた事ある子だろう」グイッ・・・

土御門「……また、『訳有り』息子娘か?」ピタッ・・・


身体をグニョンと反り、声を顰める道化師。


黒妻「女の子だ……木原那由他ちゃん。聞いたこと有るか?」1・・2・・3・・・

土御門「……へぇ。『木原』か。モノ好きだねぇ、黒妻センセ」フーン・・・

黒妻「五月蠅ぇ。ま、言いたい事は有るかもしれねぇが……オレは打ち止めちゃん達と同じように接してやるつもりだよ」7・・8・・9・・・

土御門「文句なんて別に無いぜよ? アイテムの『窒素装甲(おチビ)』飼いならしてる時点でセンセの力量は認めてるにゃー」クルッ・・・グイッ


腹筋から背筋の体勢に移るピエロ。グラサンが落ちそうだが、良く見たらスポーツグラスだ。多分、何種類も持ってるんだろう。
話は変るが……オレは偶にコイツの人間を人間扱いしない所が嫌いだ。コイツこそ人間味が無い様に感じられてしまう。
140 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/05(金) 23:49:12.20 ID:UZDdfIDO
ぬをっ! 来てる! ④!
141 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 00:06:32.30 ID:SCRRGlU0
黒妻「ふんっ……そういえば、インデックスちゃん」グイッ

禁書「んー?」スッ・・・

黒妻「まず、指つつくの止めてくれ。くすぐったい……何やら上賑やかだな。どうした?」

禁書「かおりが来てるんだよ。お昼作ってるの」

黒妻「かおり?」ハテ・・・


上条の新しい○キタレか?


禁書「柿タレ?」What?

土御門「ジャパニーズスラングだにゃ。気にするな……そういう言い方すると歳の差がばれるぜよ、センセ」ニャハハ


今、カ○タレって使わないのか?


土御門「オレとカミやんと青ピは童貞戦線代表だにゃー……んでまず、かおりってなぁ神裂のねーちんの事さ」

黒妻「ああ。神裂さんか」フム


香焼の上司であり、母であり、姉である『らしい』女性。詳細不明。興味無し。
ただしかし……美偉は知りたがってるので止めてある。女の詮索屋癖とは、困ったもんだ。


禁書「かおりの料理は屈指の旨さだからね! 楽しみなんだよ!」ワクワク!

黒妻「ははは。そりゃ良かったな。その内、分けてくれ」

禁書「くろづまに喰わせるラーメンは無いんだよ!」キリッ


日頃昼飯を食わせてやってる恩人に投げる言葉じゃ無かろうに。
数十秒後、上条の昼飯コールと共に上の居候は部屋に戻って行った。何とも、忙しいんだか暇なんだか分からない娘だ。

さて、と……野郎二人きりでってのも何だが、本題だ。


土御門「まず、センセ。先日のバイト代『半分』は振り込んだぜぃ。確認してみてくれ」ググッ・・・

黒妻「ん……」ピタッ・・・


オルソラさんとシェリーさんの『上乗せ』を含め、占めて○○万……ちと多い気がするが、目を瞑らせて貰おう。
142 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 00:34:58.01 ID:SCRRGlU0
土御門「んで、残りの半分だがまず……ほれ」ヒュイッ

黒妻「さんきゅ」バシッ


ベランダ越しでのキャッチボール。
オレは懸垂から足懸垂(※良い子は絶対真似しないでね)の体勢になり、土御門から渡された袋を開いて中身を確認した。


黒妻「……何だ、コレ?」バサッ

土御門「何って、発条包帯(ハードテーピング)だにゃ」ビシッ

黒妻「……入ってるのはタイツとアンダーシャツだぞ?」ジトー・・・

土御門「だーかーらー、新作だぜよ。苦労したんだぜぃ? 軍用からかっぱらうの」ジトー・・・

黒妻「む……」タラー・・・


何でも、最新の発条包帯は衣服タイプらしい。理由は利便性と耐久性。
旧型(テープ)の利点は部位補強可能という事だが、デメリットは一回でかなりボロボロになる事だ。
無論、新型(タイツ・アンダーシャツ)タイプも襤褸くなれば交換だが、大分長持ちするらしい。


土御門「まぁしかし、使えば身体ボロボロになる事は変わりないぜぃ? そこんとこ、御気を付けてにゃ」ニヤッ・・・

黒妻「わーってる……あんがとよ」スッ・・・


元々、人間の為に作られた物ではない。言ってしまえば、一般者にニトロを入れる様なモノだ。


土御門「何するつもりか分からねぇけど、他の『武器』なんかは揃ってるのかにゃー?」ニヤニヤ・・・

黒妻「武器なんかいらねぇよ。物騒な事言うな」ギロッ

土御門「おお、怖っ。まぁセンセの勝手だぜぃ」ニシシ・・・


勿論、そのうちコイツにはばれてしまうだろう……オレがしようとしてる事は。
それから美偉の呼ぶ声がするまで、暫く、硬直状態だった。
143 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 00:46:39.45 ID:SCRRGlU0
オレが戻ろうとする際、道化師が呟いた。


土御門「まぁオレじゃなくて、服部の方が『装備』は任せられるってとこかにゃ?」チラッ

黒妻「……ふん」クルッ・・・


服部……半蔵の事か。勘の良いヤツ。というか、知り合いなのだろうか。


土御門「それとも雲川の女郎かにゃ?」ククク

黒妻「勝手に言ってろ……てか、女郎とか言うな。学校の先輩だろう」スタッ

土御門「つっても油断ならない女だにゃ。アッチも俺の事嫌ってるし……てか、今のスゲェな!」オー!


音を立てずに、自分のベランダに着地。土御門は、おお!、と感嘆の声を上げた。慣れれば誰でも出来るっつの。


土御門「宛ら『蜘蛛男』だぜぃ! ムービー撮っていい?」

黒妻「ざけんな」フンッ

土御門「いけずぅ……」ブーブー・・・


五月蠅いヒョウキン男を背に、部屋に戻ろうとする。
すると土御門は待った待ったとオレを呼びとめた。まだ何か有ると言うのだろうか。


土御門「まぁまぁ。センセは良いパトロン持ってるんだ。特に先の二人は大事にしな」キリッ

黒妻「……一転真面目になりやがって、ピエロが。てか嫌いじゃなかったのかよ」フンッ

土御門「嫌う程『キレる』女って事だぜ、雲川は。服部は勿論の事だよ」フフッ


土御門。半蔵。雲川。
コイツらが『何の関係』なのかは知らないが……オレは別に利害関係無く、付き合うつもりでいる。


土御門「優しい(甘い)にゃぁ、センセ」ニコッ

黒妻「じゃかあしい」ッタク・・・
144 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 00:51:06.89 ID:82IrPMAO
>>142
「一般車」が一般「者」に…
145 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 01:21:24.07 ID:SCRRGlU0
>>144・・・おうふ。指摘感謝!

 ****

土御門「ああ、そうそう因みに……」クルッ

黒妻「ん?」

土御門「『原石』という言葉に聞き覚えは?」


声だけが聞こえる。土御門もクルリと自分の部屋に戻ったようだ。

『原石』……何やら、半蔵と郭ちゃんが話をしていたが、オレは聞かない振りをしてやった。
なので、オレは奴の問いに正直に答えてやることにした。


黒妻「興味無い」キッパリ

土御門「……そうかい」ハァ・・・


そういう事が聞きたかったんじゃ無いのに、という土御門の心の声が聞こえてきた。


土御門「まぁいいさ。俺もねーちんの料理を頂戴しに上がる事にするぜい」

黒妻「愛しの舞夏ちゃんは?」

土御門「学校。休日でも忙しいヤツだぜぃ……」ハァ・・・


心底溜息。
コイツの義妹は平日や不思議な時にフラフラしてる癖に、如何して普通の休日は居ないのだろうか。

兎角、二人して部屋に戻ろうと……


土御門「あ! 待った!」ガッ!

黒妻「……それ、どんな体勢だよ?」ビックリシタ・・・


土御門が斜め45度の角度で身を乗り出してきた。重力無視してやがる……


土御門「サービス忘れてたぜぃ」ニヤリ・・・

黒妻「押し売りなら結構だ。どうせ碌でも無い事だろう。オマエの『サービス』は」キッパリ

土御門「そう連れない事言うなって。善意だぜぃ? 善意!」ニシシ!
146 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 01:52:03.63 ID:SCRRGlU0
土御門「センセがこれから『何を』しようとしてるか知らないが……身元ばれちゃいけないんじゃないの?」フフッ・・・

黒妻「……」スッ・・・


何事も無い様に煙草を咥える……図星である事を察しさせない為。


土御門「煙草逆だにゃ!

黒妻「……指摘どうも」フンッ

土御門「仮面(マスク)、プレゼントするぜぃ?」ニヤッ

黒妻「……仮面?」


そういえば考えてもみなかった。確かに、素性はばれたくない……美偉には特に。
オレはもう誤魔化さず、しかし濁して土御門に言った。


黒妻「……仮装パーティー様に、一つ貰おう」ジジジ・・・

土御門「どんなのが良い? 初期ライダー? 名前通り、蜘蛛男?」

黒妻「考えとく。一本喫うか?」ホレ・・・

土御門「御遠慮。能力(肉体再生)が鈍る……んじゃまたにゃー!」バイバーイ!


道化師が消える。
オレは『仮面(マスク)』という言葉を頭に残し、煙草を吹かし続けた。


黒妻「素性、ねぇ……半蔵には相談するか」フム・・・


既に『事を』打ち明けるつもりでいる後輩が頭をよぎった。
数分、ボーっと空を仰いで考え事をしていると……目の前に、彼女が居た。


固法「また煙草喫ってる……吸い過ぎですよ」モー・・・

黒妻「ん。悪い」フゥ・・・

固法「そう思ってるなら火消す! もう那由他ちゃん来ますよ」マッタク・・・


そうだそうだ。子供の前で煙草は控えよう。絶対実行不可能な決意を心の表面上で考えた。
147 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 02:04:21.28 ID:SCRRGlU0
 ―――AM11:55、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……



黒妻「ふむ……ん?」

打ち止め「……」ジー・・・


部屋に戻ると、末娘が何も言わずに近づいてきて、ズボンのポケットから煙草を取り上げた。
一瞬の出来事。呆気に取られ動けなかったが、気付いた時にはもう遅い……

 ―――ジャー・・・・・

まだ17本残っていた禁制煙草(ジョーカー)が汚水道へ流れていった。
また最近値上がりしたというのに……


黒妻「……無言で煙草捨てるのは止めようぜ?」ハァ・・・

打ち止め「もう日課だよ……ってミサカはミサカはそれでも止めないクロヅマに呆れかえってみたり」ハァ・・・

黒妻「……同じくらい牛乳飲んでるし」

打ち止め「関係無いし、ってミサカはミサカは睨みつけてみたり」ジトー・・・

固法「そうね。言ってやりなさい」フフフ・・・


畜生。敵ばかりだ。

悔しいから背中マッサージ(踏み)の刑を打ち止めちゃんに伝えると、喜んで飛び乗ってきた。
打ち止めちゃんの体重くらいが丁度良い。美偉はもう無理ね。


固法「……えいっ」ドサッ

黒妻「ギッ! 腰は……勘弁だ!!」グエッ…


オレをソファー代わりにしやがる彼女。つられてキャッキャと美偉の膝に乗る末子。
ゲフゥ・・・・・と肺の奥から息が漏れた。苦しい。

そんな時、救世主が現れた……
149 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 02:16:49.41 ID:SCRRGlU0
 ―――ピンポーン・・・・・


打ち止め「はーい! ってミサカはミサカは反動付けて出迎えに行ってみる!」グイッ!

黒妻「ぐぇっ!」

固法「潰れたカエルみたいな声ですね」フフフ

黒妻「いいから、退けろ……てか新客さまだろう。打ち止めちゃん行ったら驚くぞ」

固法「あ、そうですね。打ち止めちゃん、待ったー」テクテク・・・


ようやく解放。リアルに腰が痛い。今夜は絶対美偉と寝ない(断言)。
夜の情事は兎も角、オレも二人の後を追った。

予想通り、打ち止めちゃんより少し年上くらいの少女が玄関に居た。


打ち止め「む? ……どなた? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」フム・・・

固法「そういう言い方しないの。いらっしゃい、待ってたわ」ニコッ


休みなのにランドセルを背負った金髪ツインテールの少女は緊張した面持ちで、頭を下げた。


那由他「こ、こんにちは! ほ、本日は御忙しい中御招き頂きありがとうございまちゅ!」イダッ!

黒妻・固法・打ち止め「「「……」」」アー・・・


噛んだ、らしい。


黒妻「……い、いらっしゃい」アハハ・・・

固法「そ、そんな畏まんなくたっていいのよ」ウフフ・・・

打ち止め「わ、我が家だと思って寛いでね。ってミサカはミサカは噛んだ事は触れずにニコリと微笑んであげてみたり」ニコッ・・・


オマエの家じゃ無いよとは突っ込まない。


那由他「は、はい……お、お邪魔します」ペコッ


少女はまだまだ堅苦しいまま、黒妻家に上がり込んだ。
150 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 02:45:58.07 ID:SCRRGlU0
>>148・・・仮面については後ほど、アンケート取るのでその時に!

 ****

まず家に上がった那由他ちゃんは、打ち止めちゃんに案内され洗面所に手を洗いに行った。
もう打ち止めちゃんもすっかり我が家の一員だなと、美偉と二人で苦笑する。兎角、それからオレ特製の洋風チャーハンを……


固法「先輩、だからそれピラフですって」ハァ・・・

黒妻「あー、聞こえない」アーアー!

打ち止め「クロヅマは偏屈屋さんだね……ってミサカはミサカは呆れてみたり。それより、お兄ちゃん待たないの?」

黒妻「おう、そうだったな」


忘れてた。というより……アイツ、真直ぐ此処来ればいいが。
今になって思う。迎えに行くべきだったと。


固法「そうね。香焼くん待ちましょう。そういえば二人はちゃんと御挨拶したの?」

打ち止め「まだだよ。あ、じゃあ私から! ってミサカはミサカは姿勢を正してみる!」(`・ω・´)シャキーン

那由他「ははは。ど、どうぞ」ペコッ


年下に謙ってる那由他ちゃん。まぁ何れ逆転するだろう。


打ち止め「ミサカの名前は最終信号・打ち止め(ラストオーダー)っていって、MNW(ミサカネットワーク)の上位んぐうっ!?」

黒妻「あはははは。えっと、文字通り電波っ娘なんだ。この子。 (初対面の相手と美偉の居る前で素性明かさないの!)」タラー・・・

那由他「え、ええっと……ミサカ・打ち止めちゃんなのかな?」アハハ・・・

固法「……」ジー・・・


完全に疑いの眼の美偉。言い訳考えねば……


打ち止め「むぅ……じゃあ黒妻家末っ娘、打ち止めです。ってミサカはミサカは簡潔に伝えてみたり」ムフゥ

那由他「す、末っ子さんなんだ……野暮な事聞くけど、もしかして上のお姉さんってのは御坂美琴さん?」

打ち止め「それは御姉様(オリジナル)であって『お姉ちゃん』では無いかも。ってミサカはミサカはきっと解読不能な説明をしてみたり」


その説明だと、オレも意味分からない。うん。
151 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 03:04:52.40 ID:SCRRGlU0
固法「那由他ちゃん、御坂さんと知り合いなの?」

那由他「知り合いというか、自販機を蹴ってたので風紀委員として注意を。 (『本当の事』は言えないからなぁ)」アハハ・・・

固法・打ち止め「「……そう」」ジトー・・・


瞬間、美偉と打ち止めちゃんの目が据わった。超電磁砲、南無三。


那由他「あと、まぁ……テレスティーナが彼女の事、大好きだからね。シツコイ位に話聞かされるよ」マッタク・・・


テレスティーナと超電磁砲のラブは『殺し愛』で歪んでるからな、とは言わないでおく。
それから次に那由他ちゃんの自己紹介が始まった。


打ち止め「それじゃあ次、ナユタンの番ね。ってミサカはミサカはワクワクしてみる!」ウフフ!

那由他「う、うん……えっと……」チラッ


何か気まずい様にオレを見る那由他ちゃん。ああ、成程……


黒妻「気にしなくて良いぞ。この子は偏見持ちしないから」ニコッ

那由他「そ、そう……えっと……木原……那由他です」ペコッ

打ち止め「うん」ニコッ

那由他「……あ、れ?」ポカーン・・・

黒妻「な?」ニカッ

固法「多分、打ち止めちゃん。知らないわよ」フフッ


というか、知ってても気にも留めないのだろう。
那由他ちゃんは目を丸くした後、我に戻り、自己紹介を続けた。


那由他「え、えっと……あとは風紀委員四九支部所属で、先進教育局付属の小学校に通ってるよ」

黒妻「先進教育局付属って、スゴいの?」ポカーン・・・

固法「少なくとも、先輩の中学校よりは勉強難しいですよ」アハハ・・・


ぐっ……畜生。中卒嘗めんな。
152 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 03:19:06.16 ID:SCRRGlU0
打ち止め「クロヅマは学歴関係無い人間だけどねー、ってミサカはミサカは『黒妻綿流』という男を評価してみたり!」ニャハハ!

黒妻「……ううぅ。ありがとう」ジーン・・・


良い娘だ……何でも買ってあげたくなる。上手いなぁ、この子は。


打ち止め「まぁミサカの場合は小学校にも行って無いリアルニートなんだけどね! ってミサカはミサカはぶっちゃけてみたり」アハハ・・・

固法「……黄泉川さんに、連絡するわ」


うん、そうしよう。


打ち止め「さておき、よぉし! じゃあ一番重要な質問しちゃうぞ! ってミサカはミサカはドキドキしてみたり!」フフフ・・・

那由他「ふぇ?!」ドキッ


オレと美偉は顔を見合わせる。一体何のことだろう。


打ち止め「ずばり……何歳?! ってミサカはミサカは詰め寄ってみたり!」グイッ

那由他「え、あ、何歳って……1●歳だけど」タラー・・・

打ち止め「あうちっ!! まだ末っ子じゃん! ってミサカはミサカは項垂れてみる」ハァ・・・

固法「あはははは……なんだ。そういう事なの」


というか、打ち止めちゃん実際、生後■ヵ月だろうが。


打ち止め「むー、結構大事な事だよぅ……ってこうなったらミサカはミサカはミィとクロヅマの子のお姉ちゃん枠待つしかないね!」ニヤッ・・・


赤面する美偉と那由他ちゃん。この増せガキめ……前言撤回だ。ジュースも買ってやらん。

それから香焼からの連絡が来るまで、ペチャクチャと姦しい御喋りが続いた。
153 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 03:54:07.18 ID:SCRRGlU0
 ―――PM00:10、学園都市第7学区、とある道路……香焼side……(※香焼sideは回想扱い)



寒い。やはり家電の言うとおり、術式(バランス)を弄ってでもレギンスかタイツを穿くべきだったか……
そんな物思い半分耽りながら小走りしていた。

やはり第7学区は人が多い。理由は良く分からないが、『ビル』が関連してるのだろう。そう推測した。
確か今日、ステイルは『あの中』に行っている筈。本当に同年代には見えないほど、大人びてる奴だ。


香焼「世渡り的にも、強さ的にも……か」ハァ・・・


虚しくなる。

前回(※③『おはようございます』参照)豪語したものの、自分に力が無いのは確かである。
この都市(能力強度)的に言えば、異能力(レベル2)、もしくは良くて強能力(レベル3)くらいだろう。

体術やナイフ捌きも達人レベルとまではいかない。悔しいが、女性である五和に勝てない。
確かに五和は天草一般女性陣の中ではエース格かもしれないが……それでも彼女に勝てないのは、男として悔しいモノがある。


香焼「喧嘩じゃ最愛に勝てない。アニー(アニェーゼ)に勝てない……多分、アン(アンジェレネ)にドッコイっすね」ハァ・・・


よくよく考えると、自分の周りの女性は強いなぁと思う。
自分よりか弱い女の子なんて打ち止めちゃんくらいだろう……佐天さんと初春さんもそうか。
固法さんは何だかんだで強い人だし、超電磁砲や白井さんは話だけだと悪魔の様に強いらしい。


香焼「天草じゃ真ん中程度っすし……弱いなぁ……オレ」ハァ・・・


溜息ばかり。

数分後、分岐点に着く。真直ぐ行けば黒妻さん家。階段を上がれば……病院だ。


香焼「……」グッ・・・


自分は……――
154 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 04:46:12.84 ID:SCRRGlU0
 Prrrrrr・・・・・


ふと、足を踏み出そうとした瞬間電話が鳴った。
黒妻さんか固法さんからの今何処コールだろうか。そう思い、携帯を開いた。

 ――女子寮。

相手先は、必要悪の教会女子寮。つまりは英国、国際電話だ。
まぁ電話代を気にする様なケチな事を言うつもりは無いのだが、九時間時差があるアチラから電話を掛けてくるような奴といえば……


香焼「……もしもし」Pi!

アニェーゼ『コーヤギイィ……眠ぃですよおぉ……』ウワアァン!

香焼「……あはは」タラー・・・


予想通りアニェーゼだった。現在英国、午前三時。


アニェーゼ『書類終わんねぇですよぉ……手伝ってぇ……』グデェ・・・

香焼「は、はは……頑張れ」


アニェーゼは前回(※)建設資料をルチアさんに任せっ放しだったばかりに、現在そのツケを廻されている。
何でも、IRA(アイルランド共和軍暫定派)のバックについてる魔術結社の洗い出し作業の書類纏めだとか。


アニェーゼ『カトリックが暫定でプロ公(プロテスタント)が義勇軍で北欧結社が介入して……眠ぃ……』ウトウト・・・

香焼「アニェーゼさん。どうしても無理な時は布団で寝るっすよー」マッタク・・・

アニェーゼ『昔は……ローマが手を出してたんですけどぉ……今は騎士派の連中がちゃんとした軍隊へとぉ……』ウトウト・・・


駄目だ。聞いてない。てかアニェーゼ、この状態でどうやって電話してきたんだろう。


香焼「アニェーゼさーん。寝なさいよー」オーイ・・・

アニェーゼ『アニーって言ってくれないと寝ねぇですよぅ……』コックリコックリ・・・


コイツは何を言ってるんだ、まったく……
155 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 05:38:55.05 ID:SCRRGlU0
香焼「もう……自分に電話掛けてくる気力あるんならベットに向かいなさいっての」ハァ・・・

アニェーゼ『アンジェレネにはアンって言うくせに……ばか』ボソッ

香焼「何だって?」What?

アニェーゼ『何でも無い! 目ぇ覚めました!』フンッ!


良く分からない娘だ。


香焼「それじゃあパジャマ着て、歯磨いて寝るっす。御菓子食べちゃ駄目だよ」ビシッ

アニェーゼ『ノルマ前に寝たらルチアが水掛けてきやがりますよ……』ハァ・・・


うわぁ……なんつー拷問。


香焼「……頑張れ」アハハ・・・

アニェーゼ『だずげでよぅ! ねぶいよぅ!』ウギャァ!

香焼「じゃ、じゃあアンジェレネにも手伝ってもらえばいいじゃないか。二人とも、ルチアさんに怒られてるんだろ?」

アニェーゼ『アンジェレネの奴、廊下で寝やがりました』ハァ・・・


ルチアさーん。今すぐ担架でベットに運んでやりなさーい。
自分はルチアさんに代わって貰い、二人をベットに向かわせるよう説得。
王女護衛(リメエア様の御供)の任務の大変さを熱弁し――尤も、二人は知らないので遊び感覚だが――何とか納得して貰った。
御蔭で今度ルチアさんの買い物に付き合う事になったが……仕方無かろう。

兎角、アニェーゼ達は寝れる事となったようだ。


アニェーゼ『コーヤギぃ、サンキューですよぉ……』グデェ・・・

香焼「分かったから、もう寝なさいっての」ハァ・・・


まったく、世話の焼ける子供が此処にも居る。困ったものだ……コレで自分より強いんだからな。参った参った。
……考えて、悲しくなった。
156 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/06(土) 05:40:38.93 ID:SCRRGlU0
すいません。中途半端ですが、今日は此処まで。

アンケート……美偉さんにやってもらいたい事。イベント。絡ませたいキャラ。その他!

んでは、まずまた! ノシ
157 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 05:48:16.65 ID:R.RdKMDO


神崎さんじゅうななさい
固法さんじゅうななさい
麦野さんじゅう○○さい

による乙女達のお茶会(このりんが2人に会いたがってたから)
158 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 05:58:14.19 ID:e5L2nwDO
乙!


中の人的に麻雀ネタを‥‥ww

無理なら半蔵・郭あたりスキルアウトとの絡みをキボンヌ。
159 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 06:03:33.81 ID:utgM7EAO
>>157
固法先輩による非処女無双で二人がヤバい
レベル3が聖人とレベル5をフルボッコで学園都市がヤバい
166 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 19:57:00.96 ID:SCRRGlU0
香焼「それじゃあしっかり休むっすよ。明日も書類仕事あるんだろうから」

アニェーゼ『うん……ねぇ、コーヤギ』

香焼「うん?」

アニェーゼ『……何かあったんですか?』

香焼「っ……何も無いっすよ」ハハハ・・・

アニェーゼ『そうですか。何処となく元気無い様な気がしやがったんですが、気の所為ですね』フム


いや……女の勘というのは怖ろしいモノだ。
自分は本当に何気なく、重要な事を呟いてしまった。


香焼「ねぇ、アニェーゼ」ボソッ

アニェーゼ『んー?』ネムネム・・・

香焼「超能力者に勝てるかな」

アニェーゼ『……何だって?』ハァ?!


やはり、驚かせてしまったようだ。無理も無い。


香焼「いや……何でも無い。ごめん」アハハ・・・

アニェーゼ『ちょちょちょ! 待った。其処まで言ったら話しやがれってんです』

香焼「アニェーゼ、眠いんでしょ。いいよ、忘れて」

アニェーゼ『喧しい。言いなさい』キリッ・・・


困った。切るに切れなくなった。今切ったらまた掛けてくるだろうし、無視したら無視したで、帰ってから怖い。


香焼「……んじゃあ、例えばだけどさ」

アニェーゼ『ええ。どうぞ』フムフム・・・
167 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 20:11:23.47 ID:SCRRGlU0
香焼「自分の自己満足で誰かを助けに行っちゃいけないのかな」

アニェーゼ『んー……ケース次第。如何いう状況ですか?』

香焼「だから、超能力者を相手に……って言って分かる?」アハハ・・・

アニェーゼ『ピンと来ねぇですよ』


無理も無い。魔術側に『超能力』と言っても一概には分からないだろう。


アニェーゼ『誰を助けてぇのかは知りませんが……その魔王役が超能力者さんとやらなんですね?』ファアァ・・・

香焼「大体合ってる、かな……」アハハ・・・

アニェーゼ『んで? どんぐらい強ぇんですか? ああ、魔術(コッチ)側指数でいいからアバウトで』


と言われると、悩む。
実際自分も彼女――麦野沈利(原子崩し)の力を目の当たりにした事は無い。ただ、情報や噂だけで比べると……


香焼「聖人のちょっと手前、かな。オリアナさんやビアージオくらい、かも」

アニェーゼ『……バケモンじゃねぇですか』ハァ?


化け物。そう、最愛はその彼女の下で働いているのだ。


アニェーゼ『あー、んで? そのバケモンの所に乗り込みたいと?』

香焼「まぁそうなんだけど……」


言えば止められるのは分かっていた。ただ、その程度で揺るぐ気は……


アニェーゼ『コーヤギ。眠いから素でたらすまねぇです』ウーン・・・

香焼「……」エ?


……素? などと、頭を捻らせた瞬間、彼女のラッシュが始まった。
168 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 20:24:51.07 ID:SCRRGlU0
アニェーゼ『コーヤギ、手前の力量分かってる?』

香焼「……アニェーゼより、弱いっすよ」

アニェーゼ『ええ。多分、アンジェレネとどっこい。良くてルチアくらいでしょうね」


悔しいが、その通りだと思う。


アニェーゼ『ハッキリ言って、コーヤギの話聞いてるとRPGで2、3ツ目の村に辿り着いた主人公が裏ラスボスに挑む様なもんですよ』

香焼「分かってる……けど!」


アニェーゼ『うっせぇ、分かってんなら止めろっつの馬鹿狗』ガッ・・・


香焼「っ……」グッ

アニェーゼ『どうせ手前が死んでも気持ちが伝わればOKなんて綺麗事考えてんじゃねぇの? ざけんなよ甘ちゃんが』フンッ・・・


成程。アニェーゼはスラム出身だと聞く。その時代の名残……『素』か。
低く、重く、響く。


アニェーゼ『日和見主義者のアンタが随分殊勝な事言うと思っちまったけど、やっぱ馬鹿だわ。タダの自殺願望者じゃねぇかよ』

香焼「……ごめん」

アニェーゼ『謝ってどうすんの? 止めちまうの?』

香焼「……分かんない」

アニェーゼ『優柔不断な野郎だ』


まったくもって、その通りだろう。だから如何したら良いか悩んでる……


アニェーゼ『あー……ごめん。言い過ぎちまいました』アセアセ・・・

香焼「ん……良いよ。自分が悪いから」ハハハ・・・
169 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 20:44:37.52 ID:SCRRGlU0
アニェーゼ『えっとね……コーヤギが英雄願望気質なのは、分かってんの。でもさぁ、力がその幻想に及んで無ぇです』


……結局、それが全てだろう。


アニェーゼ『ステイルが良くコーヤギの事、ディック・○レイソン呼ばわりしますけど、力有ってこそのヒーローなんですよ』

香焼「……だから、ヒーローなんかじゃないってば」

アニェーゼ『んな事ぁ些細な話です。気にすんな……それで、急ぎなの? その化け物退治は』

香焼「急ぎたいけど……『分水嶺(ぶんすいれい)』」はまだ先っす」ギリッ・・・


そう。分水嶺は……麦野沈利が最愛を『捨駒』にする前。


アニェーゼ『じゃあ、簡単じゃねぇですか』ハハハ!

香焼「簡、単?」

アニェーゼ『強くなればいい。単純明快でしょう!』ケラケラ!


それこそ簡単に言ってくれる。
強くなるのがどれだけ難しいか、その手の『世界』に足を突っ込んでる自分らには分かり切ってる事だろう。


アニェーゼ『じゃあ言葉と理屈だけで戦う、インテリ坊やに成りやがりますか?』

香焼「……いや」

アニェーゼ『ああ、なら修行しやがれってんです。模擬戦なら何時だって付き合ってやりますよ。きっとアンジェレネやステイルも、ね』フフッ


……ありがたい。


香焼「ふふふ。ありがと、アニェーゼ」

アニェーゼ『いえいえ、友達、でしょう?」ニコッ

香焼「うん」ニコッ


持つべきものは何とやら、だね。
170 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 20:57:52.70 ID:SCRRGlU0
アニェーゼ『えっと、まぁそれより……口悪いとこ聞かせてしまってすいません。ルチアには黙ってて下さいね』アタフタ

香焼「ははは。気にしてるんだ」

アニェーゼ『うっ……だって女の子っぽく無ぇじゃねぇですか』ハァ・・・


驚いた。アニェーゼの口から『女の子っぽい』なんて言葉が聞けようとは。


香焼「ううん。何時よりヤンチャっぽくて可愛かったよ」サラット・・・

アニェーゼ『ッッ~~~!!? ば、馬鹿狗っ!!』カアァ・・・///


何故か、怒らせてしまった様だ。褒めたのに。


アニェーゼ『と、兎に角! 何でも一人で解決しようとしない事!』キッ

香焼「はいはいプリンセス。御助言をありがとうっす。良い女っすね、アニェーゼさんは」ニコッ

アニェーゼ『も、もう~~~ッ……馬鹿にしやがって!』フンッ!


揶甲斐(からかいがい)のある娘だ。
女の子ってのは集まると面倒臭いがマンツーマンだと、どうして違うものか……ただし馬鹿姉共(五和・浦上)は別。


アニェーゼ『とりあえず、良い?! 私の言った事、肝に銘じて置きやがれってんですよ! 分かった!?』ガアァ!!

香焼「了解っす」ビシッ

アニェーゼ『良し。それじゃあ……ふぁああぁ……おやすみ、コーヤギ』ニコッ


うん。おやすみ。


香焼「良い夢を」Pi!「……うん」キリッ


自分は病院へ向かう階段から足を上げ……真直ぐ黒妻さんの家に、走った……―――
171 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 21:48:24.18 ID:SCRRGlU0
 ―――PM00:30、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……


香焼が遅い。電話を掛けてみたが、通話中。
そろそろチビ共の腹の虫が鳴く頃だ。美偉も心配している。


打ち止め「お兄ちゃん遅いね……ミサカはミサカはちょっと心配してみたり」

固法「先輩……」

黒妻「……オマエら先に食べとけ。オレが待っててやるから」


と、言うものの誰も動こうとはしなかった。まったく、優しい女ばかりだ。
唯一香焼を知らない那由他ちゃんでさえも、年下の打ち止めちゃんに合わせてる。
……こりゃ説教確定だな、香焼。


那由他「えっと、今来る香焼さんってどんな人なの?」

打ち止め「えっとねぇ、ごく普通のお兄ちゃんなんだけど……何処か不思議な感じのする人だよ。ってミサカはミサカは教えてみたり」

那由他「不思議?」

固法「うーん。香焼くん、基本都市に居ないのよ。年の半分以上は海外で過ごしてるらしいから」

那由他「へぇ。グローバルな人なんだね」


三人には、アイツの所属等は教えられない。知ったら……どんなリアクションをするか分からん。
兎角、昼飯前ではあるがチビ共に菓子を与え、香焼を待つことにした。


打ち止め「――……あのね! 御姉様がどるーん! って!」ミサカハミサカハ!

那由他「相変わらずメチャクチャなんだね、超電磁砲は」アハハ・・・


どうやら、新しいお姉ちゃんとは仲良くやれるらしい。
オレと美偉は顔を見合わせホッと溜息をついた。
173 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 21:59:54.22 ID:SCRRGlU0
那由他「そういえば、打ち止めちゃんも電撃使い(エレクトロマスター)なの?」

打ち止め「うん。欠陥電気(レディオノイズ)っていうの。ミサカはミサカはビリビリ見せてみたり」ビリビリ!

那由他「……」スッ

固法「っ!? 危ない!」バッ

打ち止め「へっ!?」ドキッ


何を考えたのか分からないが、打ち止めちゃんの簡易スタンガンへ右手を突っ込もうとする那由他ちゃん。
慌てて美偉が止めに入った。がしかし……


那由他「えっと、大丈夫だよ」ニコッ

固法「だ、大丈夫って……」ハラハラ・・・

那由他「そういう『手』なんだ。アース機能付き」ニコッ

打ち止め「へ? じゃあ電気逃げちゃうの? ってミサカはミサカは首を傾けてみたり」ハテ?

那由他「うーんと……実は私、サイボーグなんですー! ……とか言ったら驚く?」アハハ・・・


知ってる人間からすれば、笑えないジョークだ。


打ち止め「機械人間? 半分人の心?」

黒妻「打ち止めちゃん、本当は何歳だ?」

固法「……那由他ちゃん。ちょっといいかしら」キッ

那由他「あ……はい」シュンッ


美偉さんの御説教が始まるようだ……まぁ此処は母親役に任せよう。
174 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 22:18:54.04 ID:SCRRGlU0
固法「あのね、那由他ちゃん。例えどんな身体であろうとも、自分を大切にしなきゃ駄目」

那由他「……でも、大丈夫だよ」

固法「ううん。大丈夫じゃ無い。機械の身体でも、傷付くのを見れば悲しい人はいる。分かるでしょ?」

那由他「……」コクッ

固法「この家に居る限りは、普通の女の子で居る事。それが約束事よ。私達も貴女の事を普通の女の子として見ます」


香焼も、最愛も、打ち止めも……そして君も、皆そうだ。


那由他「……はい。ごめんなさい」シュン・・・

固法「うん。分かれば良いの。今は私の御小言だけで済んだけど、度が過ぎると先輩がゲンコツかますからね」メッ


その子にゲンコツ効くのか、という野暮な質問はせず、ただ美偉が那由他ちゃんも撫でる様子を見守った。
打ち止めちゃんがズルいズルいと騒いでいる。まったく……良い親娘達だよ。


打ち止め「ふむ……ナユタンの右手はビーム出るの? ってミサカはミサカは目をキラキラさせてみたり」キラキラ!

固法「この子は言った傍から……打ち止めちゃん。那由他ちゃんは普通の女の子なの」ハァ・・・

那由他「あはは。まぁ言ってしまった私が悪いよ。確かに、気になるよね」クスッ


正直、オレも気になります。


那由他「流石にビームは出ないなぁ。でも目は光るよ」ピカー!

打ち止め「うおおおぉっ!! 恰好良い!! ミサカはミサカは憧れてみる!」スゲェ!

那由他「あと手から注射かな」シャキンッ!

打ち止め「な、なんと……ろ、ロケットパンチは出来ないの!? ってミサカはミサカはナユタンの不思議ボディに期待してみる!」ワクワク!

固法「いい加減にしなさい。那由他ちゃんも調子合わせないの」メッ!


ロケットパンチ、気になるのに……あ、ごめんなさい。何でも無いです。
175 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 22:35:12.08 ID:SCRRGlU0
那由他「あはは……まぁAIM拡散力場制御義体って程だから、弄れば手くらい飛ぶかもしれないけど」

黒妻・打ち止め「「おおおっ!」」キラキラ・・・

固法「もう……」ハァ・・・


美偉さん、スイマセン。ロマンなんですよ。


黒妻「ドリルとかは?!」

打ち止め「火炎放射気は!?」

那由他「ははは。テレスティーナに頼めば、何とか」タラー・・・

固法「……」テクテクテク・・・


スパンッ。スパンッ。ゴチンッ!


那由他「ほぇ?!」キョトン・・・

打ち止め「あ痛ぁ!?」アウチッ!

黒妻「ガぁ……オレだけ、フライパン……」ガクッ・・・

固法「この話は止め。もっと普通の話をしなさい!」ギロッ

打ち止め・那由他「「は、はい」」ガクガク・・・


家庭的な彼女に熱血ロマンは通用しなかったらしい。


打ち止め「じょ、ジョークなのに……」

固法「冗談でも駄目」ビシッ

那由他「ははは……流石、問題事の多い場を任されている第一七七支部の委員長さん」

黒妻「痛つぅ……美偉は変な所で堅物だからなぁ」

固法「……」ジトー・・・


フライパン片手に睨みつける彼女。おっかない……ごめんなさい。何でも無いです(二回目)。
176 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 22:39:24.87 ID:82IrPMAO
火炎放射「気」…強そうだな
177 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 22:57:09.47 ID:SCRRGlU0
>>176……新種のパイロキネシスでいや何でも無い、誤字です。スイマセン。

 ****

 ―――ピンポーン。


美偉のオレ撲殺計画を目の当たりにしている最中、またしても神タイミングでチャイムが鳴った。
やっと来たか……


打ち止め「あ、はーい!」テクテク

固法「もう……子供たち帰ってから説教です」ジトー・・・

黒妻「勘弁して下さい」ペコッ


凶器(フライパン)を降ろし、玄関に出迎えに行く美偉。助かった。


香焼「こんにちはー。遅れてスイマセン!」ハァハァ・・・

打ち止め「どるーん!」マッター!

香焼「っ!?」グゥ・・・「……きょ、今日は受け止めたぞ。打ち止めちゃん」グフゥ・・・

固法「こら! それ挨拶じゃないって何回言えば分かるの!」モウ!

打ち止め「えへへ。つい」ペロッ☆


走ってきたのか――加え、タックルダメージ――お疲れの様子の香焼。
兎に角、ようやく揃った。


香焼「えっと、すいません。遅れたっす」ペコッ

黒妻「オレは良いよ。チビ共が腹空かせてただけさ」クイッ

香焼「えっと……ごめんなさい」ペコッ

那由他「わ、私は大丈夫ですよ」アハハ・・・

打ち止め「許せぬ! 後日私の買い物に付き合い荷物持ちの刑に処す! ってミサカはミサカはお兄ちゃんの背中によじ登ってみたり」ンショ!

香焼「ははは…… (買い物約束ばっかだなぁ)」タラー・・・


さて、洋風チャーハン(※)頂こうか。
180 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 23:16:39.38 ID:SCRRGlU0
 ―――PM00:45、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……



一同『いただきまーす』


全員揃って、洋風チャ(ryを食べる。我ながら良い出来だ。
ピラフ? 何それ美味しいの?


固法「今食べてるじゃないですか。しかも我ながら美味しいって言ってるし」モグモグ

黒妻「うるへぇ。レシピ見ないで作ったんだから、オレが命名していいんだっつの」モグモグ

打ち止め「トンデモない俺様主義だね。ってミサカはミサカは我武者羅クロヅマを評価してみたり」モグモグ

那由他「……」モグモグ

黒妻「……如何した那由他ちゃん」モグモグ

那由他「え? いえ、何でも」ジー・・・

香焼「……ん? 自分?」ピタッ


先ほどから香焼を見詰める那由他ちゃん。何か面白い事でも発見したのだろうか。


那由他「えっと、香焼さん」モグモグ

香焼「呼び捨てていいよ。那由他ちゃん」モグモグ

打ち止め「若しくは長男様、兄々、兄や、兄さまでも可! ってミサカはミサカはお兄ちゃん呼び名いっぱい計画を提案してみたり」ビシッ


それは色々と不味い。


那由他「じゃ、じゃあ香焼お兄さんで」アハハ・・・

香焼「……やっぱ『兄』扱いされるのいいなぁ」ジーン・・・


オマエも変な所で感動するな、香焼よ。見ろ、美偉が呆れてる。
181 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/06(土) 23:35:51.25 ID:SCRRGlU0
>>178>>179・・・テレスがいれば、如何とでも弄れます。無論、本人の意思尊重で。

 ****

良く分からない感動に胸を撃たれている香焼へ、那由他ちゃんは問うた。


那由他「えっと、お兄さん。自動防御系の能力持ってるの?」ジー・・・

香焼「え? いや……自分は無能力者っすよ」ハテ?

那由他「うーん、オカシイなぁ」モグモグ・・・

固法「どうしたの?」ピタッ

那由他「私の能力、『AIM拡散力場と、その力そのものを「見て」「触れる」事ができる』の」ジー・・・


さっぱり分からん。要約頼む。


那由他「えっと、例えば固法さん……何か『目』に関する能力でしょ?」ジー・・・

固法「ええ。透視能力よ」

那由他「やっぱり。分かりやすく言えば、『能力をオーラ化』して見れるんだよ。美偉さんなら『目』に集中してる」

黒妻「……んじゃ何か。香焼に『能力』のオーラみたいなのが見えんのか? (それはおかしい……)」フム・・・

那由他「一応ね……でも打ち止めちゃんみたいに『静電気』の様なオーラじゃないの。良く分かんない」

香焼「…… (この子、何者だ?)」ジー・・・


香焼は、オレら都市の人間には理解できない『何か(オカルト)』を使うらしいが……『能力』は使えない筈。
オレと香焼は顔を見合わせ、首を捻った。如何いう事だ……


固法「……はい。そこまで」ピシッ


またもや家庭的な彼女が間に入った。今のは良いブレイクだったと思う。流石オレの嫁。


固法「お約束事。忘れたの? 守らなきゃ駄目です!」メッ!

一同『はい』ペコッ


またしても黒妻家に謎が増えたが取り敢えず、美偉が居る限りは平和は続くだろう。
無論、オレも続かせる……オレが続かせる。そう決めているのだから……―――
182 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/06(土) 23:39:14.02 ID:SCRRGlU0
はい、今日は此処まで。


アンケートは引き続き……美偉さんにやってもらいたい事。イベント。絡ませたいキャラ。その他!

もう一つ……ナユタンに付いてて欲しい素敵オプション!


宜しくね! んではまた次回! ノシ
183 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 23:42:20.26 ID:6nbUqGA0
乙!!
明日も楽しみにしてる!
184 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 23:47:27.49 ID:XVM3LL6o
乙でした

オッパイミサイルを・・・いやなんでもないです
185 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/06(土) 23:58:30.87 ID:82IrPMAO
ひたすら超乙!
黒妻△なぁ

「美偉先生の若妻お料理教室」
生徒…打ち止め 絹旗 那由多
(絹旗がダメなら美琴で)
生徒ver.2…美琴 黒子 初春 佐天
(作者の好みで +αあり)
「那由多」
サーモグラフィ、超絶みじん切り、レーザー、光学迷彩
191 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 19:00:39.77 ID:7PH5aag0
 ―――PM02:00、学園都市第7学区、黒妻宅……香焼side……



自分達は昼飯を取った後、特別な事をする訳でもなく何時もの様に、『普通』に遊んだ。
相変わらずトランプで勝てない黒妻さん。年相応にはしゃぐ打ち止めちゃんと那由他ちゃん。そしてその様子を見て微笑む固法さん。

自分は、この一時、己が何者であるか忘れてしまいそうになる程、楽しい時間を過ごした。
だがしかし……


 ――……まったく、そんなんだから超香焼なんですよ!


香焼「……」ボー・・・


歳の近い妹分の事が気になって仕方が無かった。


那由他「……」ジー・・・

香焼「……ん。どうしたの?」

那由他「え、いや。何でも無い」ニコッ


先程から時折、那由他ちゃんが不思議そうな眼差しで見詰めてくる。
自分から発しているらしい『オーラ』とやらが珍しいのか、あるいは……無意識のうちに出てしまっていた憂いの表情が気になったのか。


黒妻「……香焼、来い」クイッ

香焼「え、あ……はい。ごめん、ちょっとタンマね」スタッ・・・

打ち止め「うー。じゃあミィが代理で! ってミサカはミサカはお兄ちゃんの手札を押し付けてみる!」グッ!

香焼「あはは。すいません、固法さん」チラッ

固法「・・・・・ええ。さぁ、代打固法です。負けないわよ」ニコッ

打ち止め「うん! あ、でもミィ能力使っちゃダメだからね! ミサカにミサカに勝算が無くなる!」チート!


少女三人での神経衰弱を横目に、自分はベランダへ向かった。
192 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 19:27:06.22 ID:7PH5aag0
黒妻「……静かにな」ボソッ

香焼「ええ、分かってるっす」ボソッ


腕を組んで柵に寄り掛る黒妻さん。携帯を取り出し、数回コールして、ポケットにしまった。


黒妻「……まずだ。上手く役者になれよ。さっきみたいな顔、三人には見せるな」ジー

香焼「……」

黒妻「那由他ちゃんの言った事を気にしてるのか……最愛ちゃんが気になるのか、分からねぇが。今オマエは二人の兄貴分なんだ。いいな」チラッ

香焼「……はい」ペコッ


やはり、憂いが表情に出ていたか。


黒妻「それで、さっきの那由他ちゃんの発言だが……身に覚えは?」

香焼「いえ。自分は能力開発受けて無いっす。AIM拡散力場は生じない筈」

黒妻「……じゃあ、何だ。例の不思議(オカルト)パワーとやらか?」

香焼「……可能性としては。しかし、科学側の人間が魔術(此方)の力を捉えられる訳が無いっす」

黒妻「『此方』ってのがドチラさんなのかは知らねぇが、類似してるから見えるとか無いのか?」


それはない。科学と魔術じゃ基盤が違う。

『才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為の技術』、それが魔術(此方側)。
『才能ある人間』、所謂能力者――最近の調べでは、先天能力者『原石』――に対抗する為に生まれた経緯がある。
『才能ある人間』、能力者が使用しようとすると身体に過負荷がかかり、その結果死んでしまうことも珍しく無い。

黒妻さんには言えないが……土御門がいい例だろう。


黒妻「頭の悪いオレでも分かる。その理屈なら、能力開発でも同じだ。凡人が異能の力を身に付けるだろ?」

香焼「確かに。魔術式(此方)と能力開発の違いは『異世界の法則』か『現世界・科学法則』だけっすから」

黒妻「は? ……異世界?」ポカーン・・・


まぁ言っても分からないだろう。正直、自分達だって理解しえて無い。
『異世界(それ)』を理解する事はつまり、『原典』や『真理』といった『アカシックレコード』を知る事と同義なのだから。
193 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 19:41:14.56 ID:7PH5aag0
二人して暫くフリーズしていると、斜め上からひょうきんな声がした。


土御門「いやぁ、素晴らしい中二病だなぁ香焼ちゃん」ニシシ!

香焼「そりゃまぁ、そういう世界っすから……あと自分、中学生っす」ハァ・・・


何故居る。


土御門「何故って、俺が俺の家に居ちゃいけないのかにゃ?」

香焼「いや、そうじゃなく……」

黒妻「オレが呼んだ。悪く思うな」

土御門「そゆこと。5コールは呼びだしサイン♪ ってね」ニコッ


なら、仕方あるまい。彼は苦手だけど。


土御門「まず最初にだけど……香焼、話し過ぎ」ギロッ


……自分でも分かってた。すいません。


土御門「まぁ本質には触れて無いようだが、黒妻センセを引き込むなよ?」

黒妻「別に手前らの難しい世界に足突っ込む気は無ぇよ。オレが気にしてるのは身内の問題だ」

土御門「ういうい。成程にゃー……んで、何聞きたいの?」ニコッ


一寸、黒妻さんは頭を捻り、土御門に問うた。


黒妻「那由他ちゃんが言った……香焼から『オーラ』っぽい何かが出てると」

土御門「……ほぅ」キラン・・・


土御門はサングラスをクイッっとあげ、ベランダから更に身を乗り出した。
194 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 20:02:01.93 ID:7PH5aag0
黒妻「那由他ちゃんはAIM何たらが見えるらしいが、コイツは能力開発を受けて無い」

香焼「それで、自分の微々たる術式(魔翌力)と関係有るのか……という話をしてたっす」

土御門「成程成程」フムフム


土御門はベランダに宙吊りの状態になり、身体を反らせて会話を続けた。


土御門「要は類似点。それがキーなんじゃないかと考えてるわけだにゃ?」

黒妻「異世界の力だの科学立証可能だの……んな事は如何でもいいからな」

香焼「……小難しくて悪かったっすね」ブスー・・・

黒妻「オマエの話は理屈っぽいの」ビシッ

香焼「あうっ!?」デコピンッ!


黒妻さんの3割でこピン。自分にミミズ腫れが出来る程のダメージ。


香焼「痛いなぁ、もう……」サスサス・・・

土御門「にゃはは。どうやら香焼のお話はスルーだったようだぜぃ」アハハ

黒妻「スルーじゃないが……理解できない」

香焼「まぁされても困るっすからね」ハァ・・・

土御門「確かに。それで、本題だが……科学と魔術(コッチ)側の共通性。それは『後天的』って事だぜよ」クイッ

黒妻「後天的?」


正しくは、能力開発と魔術式である。


黒妻「じゃあさっき香焼が言ってた、『才能ある人間』ってのが先天的なのか?」

土御門「まぁそういう事になりますたい」ニタッ


所謂、『原石』と呼ばれる人間達だ。
195 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 20:29:13.44 ID:7PH5aag0
土御門「まぁセンセは、その『先天性』が何の事か知ってらっしゃると思うぜぃ?」ニヤリッ

黒妻「……さっきも言ったろ。興味無い」フンッ

香焼「黒妻さん……『原石』を知ってるんすか?」

黒妻「……どうでもいいだろ、んな事」ワシャワシャ・・・

香焼「うわっ」


頭を撫でられ、誤魔化された。


土御門「まぁセンセの考えを纏めりゃ、『原石(先天能力)』に近い、『能力・魔術(後天技術)』が見える。そんなとこかにゃ」

黒妻「あくまで仮説だがな。因みに、先天的能力ってのは『X-○EN』で、後天的が『○パイダーマン』で合ってるか?」フム

香焼「またアメコミ……大体、合ってるっす」

土御門「『蜘蛛男』は意図せずしてだがにゃ、後天的には違いない。『力』を求めるか求めないかは問わないぜよ」

黒妻「じゃあこの街は『Top10』だな……悪い、話が逸れた」ポリポリ


そう。本題は那由他ちゃんだ。


香焼「土御門。那由他ちゃんに関するデータは無いんすか?」

土御門「探せばあるぜよ。オマエのも、黒妻センセのも、打ち止めや固法さん……アイテムのおチビのもな」ニヤッ

香焼「っ……」グッ・・・


やはり、コイツは信用できない。
多重スパイで本籍を何処に置いてるのか分からないという噂は本当だろう。


黒妻「オマエがタレコミ屋なのは分かった。必要なのは、あの子の情報だ」

土御門「……本人に訊けばいいんじゃないのかにゃ?」ジトー・・・

黒妻「本人が知らざる本人の情報ってのも有るだろ」

土御門「……違いない」ニヤッ・・・


土御門は不気味に微笑んだ。
196 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 20:53:41.70 ID:7PH5aag0
土御門「……アンタらがあの子の『真実』について調べる方法、幾つかあるぜよ」グンッ!


そう言って、隣の部屋(上条宅)――自分らの上の階――のベランダに飛び移る土御門。
上条当麻と女教皇様、禁書目録の驚嘆する声が聞こえた。


土御門「始めに言っとくが、俺は教えない」

黒妻「何故だ」

土御門「利が無い。情報料貰っても良いが……『木原』に関する代金はオマエさん方が払える値じゃないぜ」ニヤッ

香焼「黒妻さん、基本、彼に頼み事するのは無理っすよ……こういう人間っす」

黒妻「…… (何か、嘘を言っている気がする)」ジー・・・

土御門「カカカ! 良く分かってるじゃにゃいの、香焼。まぁ手掛かりくらいはサービスするぜぃ……一つ。テレスティーナに訊く」

香焼「テレスティーナ? テレスティーナって、あの……」ハテ・・・

黒妻「……那由他ちゃんの伯母だ」

香焼「っ……成程」


テレスティーナ・木原・ライフライン。木原の一族。
『0808事変』……アウレオルス・イザードの作りだしたブラックボックス、『三沢塾』から『黄金錬成』を理解した女性。
彼女の作りだした『C・D(キャパシティ・ダウン)』や『能力体結晶(体晶)』、『疑似超電磁砲』は理事からしてみれば眉唾もの。
必要悪の教会にて保護しようと試みたが……案の定、冥土返しの管理下という位置で落ち着いたらしい。


土御門「アレなら木原那由他の秘密も知ってるぜぃ」

黒妻「……話してくれるかどうかは別だがな」

土御門「そゆこと。んで次は……『書庫』を使って、木原の実験を調べる」

黒妻「オレら、書庫へアクセスする権限は無いだろう」

土御門「まぁにゃ。んじゃあ、あと思い浮かぶのは……香焼」ジー・・・

香焼「……何か?」


土御門は意外な人物の名前を告げた。
197 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 21:20:32.11 ID:7PH5aag0
土御門「シェリー・クロムウェル。奴に訊け」

黒妻・香焼「「シェリーさん?」」ポカーン・・・


必要悪の教会所属、シェリー・クロムウェル。


香焼「どうして……シェリーさん?」

土御門「さぁねぇ、コレ以上は言えない……ま、これくらいかにゃ」ニコッ

黒妻「……分かった、もういい。ありがとよ」クルッ

土御門「どういたしましてー」バイバーイ


土御門の顔を見ず、部屋の中へ入っていく黒妻さん。その後ろ姿は『もう如何でも良い』といったものだった。


香焼「……土御門」ボソッ

土御門「それ以上、聞くな……正直、コレ以上深入りして欲しく無い」


一転、真面目な口調になる道化師。


土御門「残酷な事を言うが……黒妻綿流には利用価値がある。だから情報を流してやってる。仲良くしておきたいからな」

香焼「っ……アンタ」グッ・・・

土御門「怒るな。オマエは怖くないが『オマエの周り』は怖い。アイテムのガキ然り、アニェーゼんとこ、ステイル……」

香焼「……」ギリッ・・・

土御門「ねーちんに天草の輩、最近じゃリメエア姫もか? そして……黒妻綿流」


まただ。また自分は……無力だ。


土御門「他力本願……悔しいだろ」ニコッ

香焼「……悔しくない訳無いだろ」ギロッ・・・


自分は、弱い。
198 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/08(月) 21:47:07.05 ID:lh.kOgAO
>>196
冥土「返し」×
冥土「帰し」○
よくあるよくある。子萌と小萌みたいな永遠の課題ですね
199 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました2010/11/08(月) 21:47:57.89 ID:7PH5aag0
土御門「だったら、強くなれ」

香焼「……簡単に言ってくれるっすね」ジトー・・・

土御門「まぁな」ニヤッ


そう言って、土御門は上条家のベランダによじ登る。


土御門「兎角、興味があるならシェリーに聞け。『木原那由他』と『魔術』に関してと言えば、分かる筈だ」テクテク・・・

香焼「ま、魔術?!」ハェ?


 ―――ガラララ・・・・・


那由他ちゃんが魔術に関連してるというのか。途轍もない不安が過ぎった。


上条『何で人ん家のベランダから入って来るんだよ!!』ガアァ!

土御門『にゃはは! 悪い悪い!』ケラケラ!


ふざけた土御門の声がヤケに怖ろしく感じられる。
自分は、携帯で必要悪の教会女子寮の電話番号を確認し……コールはせず、部屋に戻る事にした。


   **中途**

神裂「あの日の事でしたか……」

香焼「はい」

神裂「香焼、彼の言う事は気にしなくても良いです……焦って力を求めても碌な事はありませんよ」ジー・・・

香焼「……」グッ

神裂「然るべき時に然るべく力が付きます。それを忘れないように」ニコッ

香焼「……続けます」

  **回想再開**
200 :>>198、指摘感謝っす!2010/11/08(月) 22:27:38.61 ID:7PH5aag0
 ―――PM03:00、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……



それからまた、打ち止めちゃん達との遊びを再開。

部屋に戻った時は美偉に疑わしい目で見られたが、今は止せと呟き、子供達に集中させた。
香焼は一層元気が無くなっていた。土御門に何を言われたのか分からないが……此方も、演じきれ、と呟き何時もの兄貴分に戻らせた。

無論、オレだって色々と思う所はある。
だがそれを見せる訳にはいかない。この家の主として、コイツらの為に。


打ち止め「あ、そうだ。ナユタン腕相撲しよう! ってミサカはミサカは準備してみたり!」ウンショウンショ!

那由他「腕相撲?」ハテ・・・

固法「あはは……えっと、打ち止めちゃん。この家で一番強いから」チラッ

那由他「あ、ええ……そういう事ですか」クスッ


黒妻家、腕相撲序列ナンバー1。打ち止め……勿論、全員が手を抜いてる。
打ち止めちゃんが腕相撲で奮闘する姿は、此の家屈指の微笑ましい光景だ。


打ち止め「よーし! これまで私に腕相撲で勝った事があるのは『あの人』だけだぞ! ってミサカはミサカは威張ってみたり!」エヘン!

黒妻・固法((一方通行、大人げ無っ))タラー・・・

那由他「あはは。いいよ……審判さんは?」

打ち止め「お兄ちゃん!」ビシッ

香焼「あーはいはい。どうぞ」ニコッ


それから、良い感じで接戦を装い……那由他ちゃんが負けた。まったく以て、良いお姉さんだ。


那由他「あー、残念」クスッ

打ち止め「ふっふっふっ! また無敗神話を更新してしまったよ! ってミサカはミサカは黒い笑みを浮かべてみたり!」ニヤリ・・・


やったやったとピョコピョコ跳ね回る末っ子の姿は、やはり見ているだけでも微笑ましかった。
202 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/08(月) 22:42:11.89 ID:7PH5aag0
はしゃぐ姿を横目に、オレは香焼へ目を配らせた。


黒妻「……香焼」スッ

香焼「え、あ、はい。お願いします」スッ


二人して向かい合い、腕を立てた。
因みに実際の序列は、『能力有り』最愛≒オレ>>>香焼(何か使っているのかは不明)>美偉>最愛>打ち止め、である。


黒妻「何か分からんが、『使って』良いぞ……那由他ちゃんの反応も見たい」ボソッ

香焼「……」コクッ

黒妻「美偉、審判頼むぜ」

固法「はいはい……レディ……ゴー」パッ


初っ端から5割。何時もなら瞬殺なのだが……


黒妻「ほぅ……力付いたな」グッ

香焼「っ……鍛えてますから」プルプル・・・


『何かしら』の力の御蔭か、それとも、本人の努力か。


黒妻「……7割だ」グイッ

香焼「ぐっ!! (強化式……いや耐久じゃないと、負ける!)」ググググ・・・

打ち止め「おお! お兄ちゃん、何時もより粘るね! ってミサカはミサカは感嘆してみたり!」

那由他「……ん?」ジー・・・


やはり、香焼の『何か』に反応している。
それから数十秒力を入れたり抜いたりし、香焼の『何か』を動かしてみせた。


黒妻「……そろそろ。OKだ」ニコッ

香焼「え―――あ」ハッ・・・


 ―――ゴンッ・・・
203 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/08(月) 22:54:08.01 ID:7PH5aag0
威勢良く、叩き付けた。


香焼「ッッ~~~」ブンブン

黒妻「あ」

固法「先輩、やり過ぎ! ちょ、香焼くん。冷やすからコッチ来て」アタフタ・・・

香焼「す、すいません…… (肉体強化の術式でも、あの人には勝てない……)」シュン・・・


美偉に連れられ、台所へ行く香焼。やり過ぎました。スイマセン。


打ち止め「おお。流石序列2位! ってミサカはミサカは褒めてみたり」

那由他「……黒妻さん。後でお話が。 (香焼さん……無能力者というのは嘘だね)」ボソッ

黒妻「ん」コクッ


どうやら、此方も喰いついたようだ。どうするか考えておこう。


打ち止め「ねぇねぇ、次はクロヅマとナユタンの勝負だね! ってミサカはミサカは審判の準備をしてみたり!」ハッケヨーイ!

黒妻「打ち止めちゃん、それただの相撲」アハハ・・・

那由他「ええっと……します? 腕相撲」チラッ

黒妻「いいぜ。本気で来てみ」ニコッ

那由他「本気は……駄目だよ」アハハ・・・

黒妻「……那由他ちゃん。オレは手加減されるのが一番嫌いだ」スッ

那由他「うーん……じゃあそれなりに」スッ・・・


双方、腕を立てる。
那由他ちゃんの小さな手は、その見た目とは裏腹にズッシリと重たい感じがした。
204 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/08(月) 23:12:32.34 ID:7PH5aag0
打ち止め「それじゃあ準備は良い? ってミサカはミサカは……はっけよーい……のこ―――」



 ―――バキンッ!!



打ち止め「―――った……って、何これ?!」What?!

固法「な、何?! 何したの?」バッ!


開始と同時にテーブルが割れた。


黒妻「……あー。やっちまった」ヒジイテェ・・・

那由他「く、黒妻さん……に、人間ですか?! 肉体強化大能力者並に力ですよ!?」

黒妻「えー……学園都市の俵○七こと黒妻綿流です」ニコッ

固法「そういうコアなネタいいから! 早くテーブル片付けなさい!」ンモー!


オッカナイ嫁さんの言うとおり、歪に割れたテーブルをベランダへ移動させる。
打ち止めちゃんが壊れたテーブルの木材で工作しようと、那由他ちゃんの身体にしまってあるウォーターカッターを取り出そうとしたが……
修理するから止めてくれと慌てて懇願し、事を収めた。


固法「まったく……また腕相撲でテーブル壊して。あと何回壊す気ですか」ジトー・・・

黒妻「だはは。悪い悪い」タラー・・・

那由他「え。初めてじゃないの?」ハ?

黒妻「えっと、あの写真の……香焼くらいの女の子と、全力全快で勝負したら……」アハハ


危なく負けそうになったので、テーブルの端を掴んじまったら、バキリと割れた。
打ち止め審判が言うに、最後両手の力を使おうとしたからクロヅマの負け! だそうだ。今でも、納得いかない。
207 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/08(月) 23:39:41.03 ID:7PH5aag0
香焼、最愛ちゃん、打ち止めちゃんの三人が写った写真を見詰める那由他ちゃん。


那由他「……その人は?」

打ち止め「絹旗最愛お姉ちゃんだよ。今は入院中……ってミサカはミサカは教えてあげる」ボソッ

那由他「そう……」ジー・・・


もしかして知っているのか。それとも、何か思う所があるのか。


打ち止め「お姉ちゃんは優しいから、ナユタンの事も可愛がってくれるよ! ってミサカはミサカは確信してみる!」ニカッ

那由他「うん……そうだといいね」ニコッ


……最愛ちゃんが帰ってきたら、4人の写真を撮ってやろう。
そんな事を思っていると、美偉と手の甲に湿布を貼った香焼が戻ってきた。


香焼「那由他ちゃん力持ちなんだね」アハハ・・・

那由他「ま、まぁそん所そこ等の輩には負けないよ」

打ち止め「でもナンバー1はミサカだけどね! ってミサカはミサカは踏ん反り返ってみる」ドヤッ!

黒妻「ははは。違いねぇ」ワシャワシャ


そう……この子が此の家の『支え(ナンバー1)』だ。
オレと美偉の、香焼の、最愛の、そしてこれから那由他もそうなるであろう……平和の象徴。
アイツ―――一方通行がこの子に支えられていると同じように、オレらもまたこの子の御蔭で繋がってられるのである。


固法「……この子の為にも」ギュッ

黒妻「ああ……平穏は崩さない。絶対にだ」ポンッ

打ち止め「あー! ズルいー! ミサカもミサカもミィにギュってする! もふんっ!」タユンッ!

固法「こ、こらっ!」

黒妻「おバカ。美偉はオレんだ!」ベー!

固法「なッ~~///」カアァ・・・///

香焼「……流石、黒妻さん」ハハハ・・・

那由他「き、聞いてるコッチが恥ずかしいね」ポッ・・・
221 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 20:58:50.75 ID:aIGj.PU0
 ―――PM06:30、香港・某ホテル……香焼side……



話を聞いてどれほど経っただろうか……外は既に、色取り取りのネオンに照らされている。

香焼は何とも感情豊かに彼の者の家で起きた事を話してくれた。
話が一区切りした頃合いに、ジュースを注いでやる。喋りっ放しで喉も乾いたであろう、香焼は一気に一杯分を飲みほした。

しかし、まぁ、こうして身の上相談をする香焼を見れば普通の少年にしか見えない。
確かに『普通に雑じる』のが『天草』なのだが……やはりシノギである我々。こういった素の彼を見るのは初めてだった。


香焼「ふぅ。ありがとうございます」ペコッ

神裂「いえいえ。それにしても、相変わらず面白い方ですね。彼は」クスッ

香焼「まぁ、不思議な人っすね」ハハハ


土御門が気に掛けるのも納得がいく。

私は、新しく淹れたコーヒーを一啜りし……話の中で出た『疑問』を尋ねる事にした。


神裂「それで……シェリーには?」

香焼「はい、先日英国に帰った際に聞いたっす」コクッ

神裂「……話して、貰えますか」ジー・・・


甚だ越権行為だというのは分かっている。しかし、近い未来の為に……何故か知っておかねばならぬような気がした。


香焼「他言無用で」ジー・・・


頷く。

そして、香焼はシェリー=クロムウェルから訊いた、『木原那由他と魔術』に関しての情報を私だけに話してくれた……―――
222 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/09(火) 21:02:31.64 ID:toQWxhI0
きたきたー
223 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 21:21:47.76 ID:aIGj.PU0
香焼「先に二つ確認させて貰うっす。一つ目……シェリーさんが都市で『テロ』を起こしたのは知ってるっすか?」

神裂「ええ、『0901事件』ですね。科学世界と魔術世界に戦争を起こす為のテロイズムだったと記憶してます」


幻想殺し、禁書目録、風斬氷華(正体不明・カウンターストップ)などを戦の発破材料(標的)とし攻撃を仕掛けたが……


神裂「上条当麻達の手により、失敗でしたね。で、今の半謹慎状態の身の筈」

香焼「はい……それで『テロ』を起こした原因も御存じですか?」


確か、亡き友――エリス――の為。


神裂「我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)……でしたね。彼女の魔法名は」ボソッ

香焼「……」コクッ


起きてしまった事ではあるが、彼女もまた、救われない者であった。


神裂「……それで、それが何か?」

香焼「まず最後まで聞いて欲しいっす。二つ目……土御門について」

神裂「土御門?」

香焼「はい。彼の能力を知ってるっすか?」

神裂「それは、『どちら』のでしょう?」


そう。彼は……両面者(トゥーフェイス)である。


香焼「科学側」

神裂「肉体再生(オートリバース)、無能力者(レベル0)でしたね」


無能力であるのに、能力持ちという科学側の定義も私には理解できないが……今は関係無かろう。話に集中する。
225 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 21:53:42.10 ID:aIGj.PU0
香焼「そう。ただ……彼は本来魔術(コチラ)側の人間っす」


土御門元春。

普段おちゃらけてはいるが、十代半ばという若さで陰陽博士として最高位魔術師(陰陽師)であり、特に風水を得意とする『天才』。
しかし、学園都市潜入の為に能力者となり、魔術使用に大きく制限を受ける。その代償に得た能力が『肉体再生』だ。


神裂「それが?」

香焼「今の二人の共通点は?」


土御門と、シェリーの亡き友という意味だろう。
私は少々思案し……答えを出した。


神裂「……狭間」

香焼「はい。科学と魔術の、ね」コクッ


通常、『才能ある人間(能力者)』が魔術を使用しようとすると身体に過負荷がかかり、その結果死んでしまうことも珍しく無い。
シェリーの亡き友がその最たる例だ。土御門であっても身体がボロボロになっている。

以前、彼がおふざけで話していた、俺の寿命は残り5年くらいかにゃー! は……存外、本当なのかもしれない。


香焼「エリスさんの『狭間』に至った理由を、勝手ながら調べさせて貰ったっす……酷過ぎる」グッ・・・


20年ほど昔に学園都市とイギリス清教のそれぞれ一部で起こった、『新たな能力者を作り出す』実験の被験者。
魔術と超能力を共に使いこなす者を作り出そうとしたが、『騎士団』の乱入により被験者はシェリーを除き全滅。
その際エリスはシェリーを逃がそうと魔術を行使するも、拒絶反応を起こし自爆……直後に騎士のメイスで殴打され死亡した。

悲劇以外の何物でも無いだろう……
226 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 22:09:16.49 ID:aIGj.PU0
立て続けに香焼は続ける。


香焼「今から言う事は特に内緒にして欲しいっす……実はシェリーさん、今でも何時でも『牙』を向けるつもりでいるっす」

神裂「っ……いえ、まぁ……私やオルソラはそれに気付いています」


復讐の獅子は、一度牙を抜かれたくらいで引きはしない。


香焼「此処で本題に繋がるっす。土御門は誰よりも早くシェリーさんの動きに気付いてたっす」

神裂「ふむ……テロの?」

香焼「無論それも。しかしもう一つ……彼女は『狭間』の人間が世界に存在していないか如何か目を光らせてるらしいっす」

神裂「……つまり、被験者の早期発見と保護を?」

香焼「保護は今の彼女にとって難しいっすが、発見は常に」コクッ


きっと、『彼』に壊された『幻想』から新たな『理想』を見つけたのだろう。
『狭間』の救出。それが今のシェリー=クロムウェルの正義なのだと思えた。


香焼「シェリーさんが言ってたっす。土御門の事を」

神裂「な……彼の事も調べ上げていたのですか?!」


静かに頷く香焼。


香焼「『狭間』に至った理由は本人から訊いた訳では無いので分かんないらしいっすが……彼の能力開発については調べてたっす」


驚きだ。
単に最大主教の命でノホホンと能力開発を了承し、適当に能力発生させたもの――故に、無能力――だと思っていたが、裏があるらしい。
227 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 22:48:28.42 ID:aIGj.PU0
香焼「土御門の能力開発はカナダで行われていた『超人兵士開発計画』を真似たものだと」

神裂「……ん?」

香焼「何でも『超回復(ヒーリングファクター)』、強度にして大能力(レベル4)程にしようとしていたらしいっす」


香焼は言葉を選んで話してくれたが、いくら角を削った言葉にしようともその実験が悲惨であった事は伝わった。

確かに……『肉体再生』の高レベルともなれば魔術・科学問わず、誰しもが欲する力だろう。
言ってしまえば不老不死に近い。これは『原典』並の力だ。

噂によれば最大主教(ローラ)や学園都市統括理事長(アレイスター)、ロシア成教殲滅白書隊長(ワシリーサ)はコレに触れたと言うが……


神裂「ハッキリ言いましょう。レベル4? いえ、禁忌(オーバーテクノロジー)です」

香焼「ええ。科学の言葉を借りれば『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』っす。一種の絶対能力者(レベル6)っすよ」


死なない。アンデット。ノーライフマン……
人の身にして黄泉の力を手に入れる事、禁忌以外の何物でも無かろう。


神裂「しかし……実験は失敗」

香焼「はい。単なる肉体再生無能力者が誕生っす」

神裂「それで、晴れて今の間諜・土御門が誕生ですか」

香焼「まあ順序や必要悪の教会との協定は詳しく分かんなかったっすけど、そこからはあっさりっすね」

神裂「研究者達も、終わったモルモットはポイッですか。科学者はこれだから……」


だが、まだ生き残れただけマシである。シェリーの友人は……亡くなったのだから。


香焼「……えっと土御門の話をしてしまったっすけど、そろそろ話しの『中心』に入るっす」

神裂「ん、そうでしたね」コクッ


そう。本題は……木原那由他だ。
228 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 23:14:58.82 ID:aIGj.PU0
コップ半分程ジュースを注いでやり、それを一口含んだ後、香焼は紡ぎ出した。


香焼「此処まで言えば、自分が何を言うか分かったっすよね」

神裂「彼女……那由他さんも『狭間』である、と」


少年は静かに頷いた。


香焼「彼女の本来の能力は『AIM拡散力場と、その力そのものを「見て」「触れる」事ができる』というものでした」

神裂「ごめんなさい……科学側の言葉は疎くて」

香焼「えっと、簡単に言えば科学側の魔翌力……『マナ』じゃなくて『オド』の方っす」

神裂「個人的な魔翌力……能力値・能力量という事ですか」

香焼「うーん……詳しく説明すると3時間はかかるので、それでいいっす」


馬鹿にされた気がするが、今は不問にしてやろう。


香焼「話を戻すっす。それで彼女の能力に目を付けた『木原(彼女の身内)』が、ふと、考えました。『異質の力(魔翌力)』も若しや、と」

神裂「魔翌力を『見て』『触れる』様に? 愚かな真似を……」

香焼「まったくっす……でも、奴等はまるで実験動物に試すかの様に、ソレを那由他ちゃん『で』実験したんす」


人は何処までも非道になれる。人は同じ過ちを繰り返す。


香焼「結果……彼女の身体は、文字通り爆散しました……」グッ・・・

神裂「ッ!!?」ギョッ・・・


爆、散……?
229 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 23:34:11.29 ID:aIGj.PU0
香焼「身体の7割が吹き飛び、生死の境界を彷徨ったそうっす」

神裂「十歳ほどの子供を……何て、惨い」

香焼「先生……冥土帰しがいなければ、確実に死んでたと」


カエル顔のあの医者……彼こそ真の英雄なのかもしれない。


香焼「皮肉にも研究者(身内)の高性能義体……これすらも実験っすが、それを填めて彼女は生きています」

神裂「……残酷、という言葉しか出てきません」

香焼「ええ……それで、先程話した彼女が自分に見た『オーラ』っすけど、多分実験の後遺症じゃないかと思うっす」

神裂「後遺症……魔翌力を無理やり通した事で、術式がオーラ化して見えたという事ですか」

香焼「あくまで自分とシェリーさんの仮説っすけどね」コクッ


幸か不幸か、実験の成果はあったらしい。
木原那由他の実験秘話が終わり、暫時二人とも無言だった。自分で言うのも何だが、無理も無い。あまりにショッキングだ。

どれ程経ったか……ふと、香焼が口を開いた。


香焼「シェリーさんに、言われたっす」

神裂「……はい」

香焼「『あの子を守れ』と」グッ

神裂「……そうですか」

香焼「『土御門は既に魔術・科学双方から良い様に使われちまってる。本人の知りえない内にだ……同じ道を歩ませるな』って」


魔術と科学……言いかえれば、ローラ=スチュアートとアレイスター=クロウリー。


神裂「残念ながら、公に……それすらも裏でしょうが、あの街と交流がある魔術組織は必要悪の教会(ウチ)だけです」

香焼「……分かってるっす」ギリッ・・・


何て……運命。
232 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/09(火) 23:49:32.44 ID:aIGj.PU0
小刻みに揺れる少年の肩。ぶつけようの無い怒りが目に見えた。


香焼「さっきも言いましたが、シェリーさんは……同じ過ちを繰り返させない様、動いてるっす」


例え、徒労に終ろうとも、それが彼女の挑む道。


香焼「……微力ながら、手伝うつもりっす」

神裂「……頑張りなさい」


それが貴方の正義なら―――救われぬ者に救いの手を。

己の教徒がテロリストになるやもしれない発言を、今は肯定するしかなかった。
ただ、この少年は間違った方向に『力』を使わない……何故かそう信じられる。

一寸沈黙が走る。香焼は話す事を話した、という顔で困った様に苦笑していた。


香焼「ははは……湿っぽくなったっすけど、取り敢えずこんな所っすね」

神裂「ええ」ニコッ・・・

香焼「うーんと……」アハハ・・・


後は私が五和と浦上の処罰を決めれば良いだけなのだが……折角、乗り掛かった船だ。


神裂「香焼……良ければその日の続きを聞かせて貰えませんか?」ニコッ

香焼「え、で、でも後は大した事ないっすよ。つまらない話で」タハハ

神裂「構いませんよ。さっきも言ったでしょう。五和達の様に、一、姉として日常生活を聞かせて下さいな」フフッ

香焼「(うッ~~……このギャップはドキッとするよ、女教皇様) え、えっと、打ち止めちゃんの保護者が現れたくらいかなぁと」

神裂「保護者、ですか?」

香焼「第一位っす」サラット


大分大きなイベントだと思うのですが。私は香焼を促し、話の続きをお願いした……―――
240 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 00:25:07.19 ID:C9hwyC.0
 ―――PM04:30、学園都市第7学区、『ファミリーサイド』二号棟一三階某室……一方通行side……



……久しく家に帰ると、リビングで女性二人が死ンでいた。


芳川「いや、死んでないわよ……」グデェ・・・


と、宣う黄泉川家の穀潰しニート。


芳川「に、ニートじゃない……研究手伝いの給料、一回当たりなら愛穂より多いし。しかも通信学生よ、こう見えても」

一方通行「テメェの事情なンか興味無ェっつの。何で居間の床で女二人寝そべってンのかが疑問だ」フンッ


同性愛(アブノーマルな)プレイで盛ってたのか。そンな事は割かし如何でも良いので、我が家のババァを無視。もう一方を見遣る。


木山「お、お邪魔してるよ……」グデェ・・・

一方通行「別に構わねェが……人ン家で半裸になンのがテメェのルールなのか?」

芳川「春生ぃ……だから何時も服脱ぐなって言ってるじゃない」モー・・・

木山「むぅ……しかし、苦しいし熱いんだよ」モゾモゾ


ああ、成程。噂の脱ぎ女(ルールブレイカ―)か。残念な女性ランキングでトップ取れンぞ。
しかし本当に何でグダッてンだ、オマエらは。


芳川「あーちゃん、マッサージぃ」グダグダ

一方通行「誰が『あーちゃん』だ糞アマ。俺ァ何でテメェらがトドみてェにブっ倒れてンのか聞いてンだがよォ」ギロッ

木山「トド……可愛い顔して存外酷い事を言うね、君は」ウー・・・


……さァ、如何してくれようか。


芳川「ちょ、あ、一方通行! 今暴力無しよ! リアルに死ぬって!」ギャー!
241 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 00:43:04.01 ID:C9hwyC.0
一方通行「だから如何したって聞いてンだっての」ツンッ

芳川「ぴぎゃああああぁ!!」ビクッ!

一方通行「うをっ?!」ビクッ!?


軽く脇腹を蹴ってやっただけなのだが、まるで此の世のモノとは思えない程の絶叫。
続けて杖で二、三発。


芳川「ひぅっ!! やぁっ!! めッッ!!」ビクンビクンッ!


……面白いので継続しよう。そう思った刹那、半裸女――木山春生というらしい――が口を開いた。


木山「ジムに行って来たんだ。それでW筋肉痛」ウウゥ

一方通行「はァ?! ジムだァ? このグータラがか?」ツンツン

芳川「ひゃぅっ!!」ビクッ!


信じられない。芳川桔梗という女はアクティブと真逆にいる人間だ。


芳川「わ、私だって、こんなになるって分かってたら行かなヒギィッ!!」ビグンッ!


楽しいな、コレ。


芳川「む、麦野さんと……はうぅっ! 一緒に……ひゃぁ! トレーニングしたら、こう……アグゥっ!!」ビタバタ!

一方通行「麦野……第四位だァ?!」ピタッ

木山「そうだよ。彼女は我々の友人だからね」ニコッ


超能力者第四位……原子崩し・麦野沈利。全身殺人ビーム砲(ゲーマル⑨)女とお友達とは、如何いう了見だ?
242 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 01:30:34.91 ID:C9hwyC.0
芳川「春生……冷静に会話しないで助けてよぅ」

木山「ああ、そうだったね。芳川くんの動きが面白くて、つい」アハハ

芳川「くぅ……薄情者め!」

一方通行「あーはいはい。ンで? 如何いう経緯でお友達してるンですか、テメェらは」スゥ・・・

芳川「つ、杖向けないでってば……私と春生は同じ大学の通信なの。教職の、前に言ったでしょ」ドキッ


聞いた様な、聞いて無ェ様な。


木山「それでもって、バイトというか……――先生。君には『冥土帰し』と言った方が分かりやすいかな。彼の下で共に手伝いをしているんだ」

一方通行「あのジジィのねェ」フーン・・・

芳川「因みに彼をジジィ呼ばわりするのはこの街でアンタと垣根くんだけよぅうぎゃああぁっ!!」ゴロンッ!


気持ち悪い事言うな、糞ババァ。


木山「兎に角、そこで定期健診中の麦野くんと知り合ったんだ。名目は実験だが……私達は『そういうの』、嫌いだからね」フッ・・・

一方通行「そこで仲良し固良しっつゥ訳か……ふーン」ジー・・・

木山「……さ、流石にあからさまに肢体を見られるのは、恥ずかしいよ」ギュッ・・・///

芳川「こ、このムッツリスケベめ!」ギロッ

一方通行「ざけンなボケナス」グリッ!

芳川「ひぎィイイイィィぃっ!!」ビクンビクンッ!!


木山、ねェ……この女も『訳有り』って事か。
俺は床でノソノソと奇妙な動きをしている半裸の木山女史に、其処ら辺に落ちてた黄泉川のジャージを掛けてやった。


木山「ありがとう……でも煙草臭いな」ウー・・・

一方通行「注文多いなァ、オイ……上からファブってやろうかっつの」ハァ・・・

木山「え? アレは香水の類じゃないのかい?」ポカーン・・・

一方通行・芳川「「……」」タラー・・・


本格的に、常識破りらしい。残念過ぎる。
243 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 02:04:29.46 ID:C9hwyC.0
しかし、まァ詳細は知る気も無ェが第四位と『友達』とは、俄かに信じられない。


芳川「あ、アンタだって最近じゃ友達いるじゃなあ痛たたたたぁっ!!」ビグッ!

一方通行「芳川ァ……ドMらしいな、余程虐められてェと見える」

芳川「ごめ、マジ無理! 麦野さんのトレーニングの後にアンタの拷問は死ぬって!」イタイイタイ!

一方通行「……第四位のジムトレってのも気になるな。厳しいのか?」

木山「お尻が痛くて椅子に座れないレベルだよ」サスサス・・・

芳川「愛穂のトレーニング並よ……今度アンタも友達誘っていぎいいぃっ!!」ビクンッ!


このドMが……誰の事、言ってるのかは知らンが『そいつら』は利害の一致で行動を共にしてるだけだ。他意は無い。


木山「君はアレだね。ツンデレって奴だろ、あーくん」ニコッ


 バチンッ!


木山「きゃんっ!!」ビクンッ!

一方通行「誰がツンデレだって? 誰が『あーくん』だって?」ペシペシッ

木山「ひうっ! じょ、女性の臀部を叩くなあうっ!! それに、君名前を聞いてなきゅぅっ!!」ビクビクッ!


俺は、突くと羽を捥がれたトンボみたいにのた打ち回る残念美人二人を弄りながら少々話を続けた。


一方通行「一方通行(アクセラレータ)だ、覚えとけ。しかしお友達ごっこたァ……アイツもテメェらも如何いう風の吹き回しだよ」グリグリ

芳川「ご、ごっこじゃないわ……ぴぃ! 彼女だって、人間……あぅ! ……だもの」ハァハァ・・・

一方通行「人間、ねェ……アレが?」ゲシゲシ

木山「失礼な人だな君は……アンっ! 彼女はああ見えてお茶目なんだぞ……ミゥっ!!」ビグビグッ!


一暗部のリーダーがお茶目たァ、笑わせる。
ふと、芳川が歯を食い縛りながら俺を睨みつけ、言い放った。


芳川「超能力者(レベル5)だって、暗部だって……っ……『普通』の人であってもいいでしょ」ギロッ
244 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/11/10(水) 02:06:49.24 ID:LZ3tyMDO
セロリうらやま、ゲフンッゲフンッ、けしからん! テンテー虐めんな!


……ふぅ。
245 ::>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 02:29:45.98 ID:C9hwyC.0
一方通行「テメェ芳川……それは、誰に言ってンだ」ジリッ・・・


暫時の睨み合い……沈黙に耐えきれなくなった木山が、間に入り込ンだ。


木山「ま、まぁまぁ……ほら。現に御坂くんなんかは友達多いだろう」

一方通行「ふンっ……アイツはそうじゃなきゃなンねェンだよ」チッ


超能力者第三位―――超電磁砲・御坂美琴は、所謂この街の看板娘だ。
低能力者(レベル1)から超能力者(レベル5)に上がったという意味でも、表の鑑(アイドルヒロイン)という宣伝でも。

メディアからすれば俺や垣根、麦野や削板なンかよりもアイツの方が取り上げやすい。
黒く言えば、営業効果的に超電磁砲を花形にすべきなのだ。


一方通行「まァ超能力者(俺ら)の中で一番『まとも』で社交的なのはアイツだからな」

芳川「……出た。ネガティブ恰好付け」ベー!


 どすんっ!


芳川「う、あ……ちょ……お腹乗るのは、駄目……」プルプル・・・

一方通行「興醒めした。その話は終わりな。ンで、木山さンは何でウチ居ンの?」ドッセイ

木山「ジムから私の家より此処の方が近かったからね。麦野くんのドライバーの負担を和らげる為にも、此処で休ませて貰う事にしたんだ」

芳川「ふた、りとも……お、ぶって……貰ったけ、ど、ね……」ピクピク・・・


……浜面(チンピラ)、お疲れさンだ。


芳川「ちょ、マジ……愛穂と打ち止めに……言い付けるわよ……」プルプル・・・


そういえば、二人程居ない。何処行った?
246 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 03:18:56.58 ID:C9hwyC.0
芳川「愛穂は……溜まってた、書類の整備……警備員のも学校のも、両方……」ウップ・・・


黄泉川は数日前まで入院していて、最近やっと復職できるようになった。
入院原因は……警備員の仕事上での『事故』だ。(※②「いってらっしゃい」参照……書いた>>1自身トラウマ)

『手当』も出るのだからまだ休んでろと言ったが、あの脳筋馬鹿は人の制止も聞かず、仕事再開しやがった。


芳川「折角最近……愛穂に、べったり……甘えられたの、にねぇおうぶっ!!」ズシンッ!

一方通行「……糞ガキは?」

芳川「く、ろ……づま……くん、ち……」チーン・・・


ああ、アイツか……なら別に良い。


木山「あ、あーくん……芳川くんが青褪めてきたぞ」タラー・・・

一方通行「ン? ……じゃあ交代か」ヨイショッ

木山「へ?」ポカーン・・・

芳川「たす、かた……」プハァ・・・


俺をふざけた渾名で呼びやがる痴女に制裁を加えながら、晩飯の事を考え出した。
今日は飯食う為に此の家来たンだがなァ……


一方通行「芳川。飯準備してンのか?」ドッセイ

木山「ひゅ、わアアぁアぁッ!! ちょ、あく、く、だ……むきゅうっ!!」イタイイタイ!

芳川「こ、のドSが……店屋モノ頼むつもりだったわよ、この有り様だし。まぁ春生もいるからね。二人とも何が良い?」

木山「よし、か……モノ見て、言って……ヒャんっ!」ビクビクッ!

一方通行「ンー……また店屋モンかァ」ハァ・・・


最近仮眠室(セーフハウス)でもそればっかだから、此処来たんだがなァ……決してホームシックとかじゃ無ェ。
248 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 03:36:45.50 ID:C9hwyC.0
芳川「……そう。じゃあちょっと待ってて」スッ・・・


携帯を取り出し何処かにコールするダボダボジャージ女。


芳川「……あ、もしもし。お元気かしら? ――私? 部屋で死んでるわ」アハハ!

一方通行「誰に電話してンだ、芳川?」ハテ?

木山「分からな、ちょ……いい加減、降りて……お願い」ウルウル・・・


そういう顔すンなっつの……もっと虐めたくゲフンゲフンッ、もとい俺が虐めてるみたいじゃねェかよ。


芳川「うん――うん。そう、ウチの子もう一人頼めるかしら? ―――OK? ありがとう!」ニコッ

一方通行「オイ、糞ババァ。テメェ一体何処に電話―――」

芳川「ん」グイッ・・・

一方通行「―――して……ハ?」ポカーン・・・

芳川「今日のアンタの夕飯提供者よ。挨拶しときなさい」グイッ


何だそりゃ……訳分かンなかったが、相手に失礼だと無理やり電話を押し付けられた。


一方通行「チッ……はい」ボソッ


黒妻『よぉ。久しぶ――』ブチッ


 プープープー・・・・・


一方通行「さて、店屋モンの注文するか」PPP・・・

芳川「待てい社交性0人間! アンタいきなり人の電話切るとか何考えてんの!?」ガアアァ!


五月蠅ェ説教が始まっちまった……畜生。
249 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 04:07:20.69 ID:C9hwyC.0
 ―――PM05:00、学園都市第7学区、『ファミリーサイド』二号棟一三階某室……一方通行side……



結局、芳川に散々言われ――コッチは筋肉痛あちこち突いてやったが――折り返し俺が革ジャン野郎に電話する事になった。
因みに木山さンはシャワー。芳川はソファーでグダってる。


 Prrrrr・・・・・


一方通行「……もしもし」Pi!

黒妻『ん、おう。さっきは如何したんだ? 芳川さんの携帯、急に切れたが如何した?』

一方通行「あー、芳川が『空飛ぶスパゲティ』が如何こう絶叫し出したンで黙らせてた」

芳川「てめ、誰がチンチクリン宗教信者よ!」

黒妻『あはは。なら仕方ないな』ハハハ!


仕方ないンだ、空飛ぶスパゲティ。
まぁ取り敢えず、他人家で飯食う程図々しく有りたく無ェから丁重にお断りを―――


黒妻『んで、今日夕飯来るか? ウチは構わないぞ。焼き肉だしな! 和牛だぞ、長崎和牛!』

一方通行「―――……島原の?」ゴクッ……

黒妻『おう良く知ってるな! 焼き肉セット特A級御土産でもらったんだ。香焼に』カカカ!


―――しようと思ったが、待った。
確か結標が適当に買ってくる『ワクワク☆仲良し焼き肉パーティーセット』の2、3倍の値段の肉。

それをタダで食える……


一方通行「何時からだ?」

黒妻『ははは! 折れたか。七時くらいから開始だぞ』

一方通行「(クッ……まだだ!) 因みに何人くらい居るンだ」

黒妻『オレ、美偉……オマエ合わせて6人だ。あと二人くらい呼んでも大丈夫だぞ。結標ちゃんでも呼ぶか』

一方通行「絶対駄目。真面目に駄目だ」キッパリ


どうせ打ち止めの『お兄ちゃん』も居るのだろう。アイツは駄目だ。
250 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 04:27:08.28 ID:C9hwyC.0
黒妻『そこまで言うなら別の機会にな。ああ、そうそう。ホントは上条も呼ぼうと思ったんだが……』

一方通行「っ」||・ω・´)ピクッ!!

芳川「何でだろう。一方通行に尻尾が見える……パタパタ振ってる」

黒妻『アイツ、外食らしい。まぁインデックスちゃんの事考えると助かったけどな』アハハ

一方通行「……そォなのかァ」(´・ω・`)…ショボーン

黒妻『代わりに土御門を』

一方通行「結標以上に駄目」キッパリ!


アイツと一緒に飯を食うと……高級料理が酢豚のパイナップル単品みたいな味になる。


黒妻『んー……御坂ちゃん達も寮出れないってからなぁ』


それは助かる。超電磁砲が目の前に居ると思うと、胃が……


黒妻『あそこの寮監さん、オッカネェからなぁ! 知ってるか?! あの人昔、オレの』

一方通行「あー、どうでも良い……結局、コレ以上誰も来ないってンなら御邪魔します」

黒妻『そうかい。んじゃ迎え行く。マンションで待ってろ』Pi!

一方通行「ハ? え、ちょ、オイ! ……切りやがった」ハァ・・・


人の話を聞かない野郎だ。


芳川「良かったわね。美味しいモノに有り付けて」ニコッ

一方通行「……ふンっ」テクテク・・・ドサッ!

芳川「うげぇ! ちょ、腰は……駄目!」ウギャアアゥ!


まったく、困ったもンだ。俺も丸くなったな。
251 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 04:42:00.79 ID:C9hwyC.0
 ガララ・・・・・


一方通行・芳川「「……え」」ポカーン・・・

木山「……あ」ピタッ・・・


目の前に痴女が現れた。


芳川「一方通行」

一方通行「視覚、聴覚、嗅覚シャット」ピシャッ!

木山「すまない……自分の家の感覚で歩き回ってしまった」アハハ・・・

芳川「ちょ、そんな恰好で出て来ないの! 家でもそうなの?!」カアアァ・・・///

木山「違うよ。ただ換えの下着がなかったからね」ハァ・・・


裸Yシャツなんてもンが、実際に存在するとは思いませンでした。はい。


芳川「ちゃっかり見てんじゃないの!」バシッ!

一方通行「てめ、神経反射集中させてンだから叩くなボケ! 痛いっつの!」

木山「芳川、何でもいいから下着を」

芳川「あーもう! 一方通行! 黒妻くんにコンビニで女性下着買ってきてくれるよう連絡しなさい!」

一方通行「オマエはアホか?! 俺とアイツを変態に仕立て上げる気かっつの!」

芳川「新しいショーツなら買って帰すよ。何でも良い」


普通は人の下着穿きませン。垣根並に常識飛ンでやがる、この女。


芳川「あー、もう! 卸して無い下着、男性モノのボクサーしかないわよ!」

木山「それで良い」

一方通行「それ俺ンだろ!? 良くねェっつの!」


結局、俺がフラッシュ=⑧マン宜しく、光の速さでコンビニまで生き恥を晒しに行き、事無きを得た。マジ勘弁してくれ……
252 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 05:06:38.36 ID:C9hwyC.0
木山「うーん……ちょっとキツいよ。筋肉痛には堪える」ムゥ・・・

一方通行「贅沢言うな引ン剥くぞ露出狂」ギロッ


残念女を横目に、自分専用の冷蔵庫(ブラック缶コーヒーのみ)から、一昨日出たばかりの新作を一本取る。
芳川もシャワーを浴び終え、今は再びソファーで寝そべっていた。


芳川「私、偶に春生が科学者だっての信用出来なくなるのよね」ハァ・・・

木山「元、だよ。君もだろ」ニコッ


黄泉川のスウェットの借り、長い髪をポニーテール状にしている木山さン。何をする訳でもなくチョコンと芳川の横に座っている
客人に対し、まったく動く気無い芳川の代わりに、仕方なく俺がコーヒーを出してやる事にした。


一方通行「木山さンも科学者……何の研究してたンだ」テクテク

木山「ありがと……まぁ下らない研究さ。春生の研究に『似てた』、と言えば君なら分かるかな」ニコッ・・・

一方通行「……そうか」コクッ


やはりコイツも闇持ち、か。


木山「そんな顔をしなくてもいい……ただ、君は本当に私を知らないのかい? 私の事件は公になったのだが」クスッ

芳川「春生……自虐的にならないの」コラッ

一方通行「ンー……知らね」

木山「ははは。情報には疎いタイプみたいだね……『0724事件』だよ」

芳川「……春生。その頃、この子は『私の研究』で忙しかったの。そのくらいに」キッ

木山「あ……すまない」ペコッ


そういう顔されると、逆に困ンだけどなぁ……
253 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 05:26:27.46 ID:C9hwyC.0
一方通行「ふン。別に俺ァもう吹っ切れてる……無論罰は受け続けるつもりだが、それをベラベラと他人であるテメェに話す程口は軽く無ェ」

木山「そう……か。うん、すまない」ニコッ・・・


まったく、やれやれだ。


芳川「えっと……そうそう! 春生はこの街唯一の多才能力(マルチスキル)体現者なのよ!」

一方通行「多才……多重(デュアル)じゃなくか?」


二つ以上の能力を持つ多重能力については、特力研に居た頃嫌になる程聞かされた。
だが、多才能力というのは聞いたことが無い。


木山「ま、まぁ……幻想御手(レベルアッパー)という言葉に聞き覚えは?」

一方通行「……無理やり能力上げる音楽だったか? 表も裏も仕切になって一人歩きした曲回収してるっつってたぞ」


『C・D』、そしてこの『幻想御手』が都市内で一人歩きしてしまっている。曲媒体というのは、ダビング可能だからな。


芳川「……それ、春生が製作者」ボソッ

一方通行「ブウゥっ!! ……はい?」ダラダラ・・・

木山「す、すまない……」ペコッ


身近な所に、意外な人。俺は噴出したコーヒーを拭きながら、話に耳を傾けた。


木山「訳有って、『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の使用申請を23回申し込んだんだが全て却下されて……」

芳川「終わった事だから時効よ、時効。代替の演算装置を得るために幻想御手を作成したんでしょ」

一方通行「……オイ、それまさかよォ」


量産型能力者(レディオノイズ)計画。つまり……俺の所為か?
ふと芳川の顔を見遣った。しかし、慌てる様子も無くただ、微笑みやがった。
254 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 05:50:24.45 ID:C9hwyC.0
芳川「春生には量産型能力者(レディオノイズ)の話をしてるし、絶対能力進化(レベル6シフト)の話もしてる」

木山「その過程で『樹形図の設計者』を使用していたという話も聞いたよ。君の噂程度も、ね。家族としての紹介だが」


何処か悲しげに、微笑む木山。


木山「成程と思ったね。都市にとってモルモットである置き去り(ドロップアウト)数名より、絶対能力(レベル6)一人の方が大事だろう」

芳川「お金、掛けたからね」クスッ


……どうして、コイツらが平然としてられるかが分からねェ。


芳川「大人、なのよ……無論怒りは有るわ。でもね、騒いでるだけじゃ解決しないの」

木山「やはり、君は優しい子なんだよ。こういう話を聞いて、そういう顔が出来るって事はね」


俺は一介の悪党だよ。


芳川「ダークヒーローでいたがるのは大人になりかけてる子供の証拠」コツンッ

一方通行「……ふン」

木山「君なら成れると思うよ。私の様な多才能力者(紛いモノ)とは違う、正しい意味での絶対能力者にね……第一位くん」ニコッ


……子供扱いすンなっつの。


芳川「あるぇ~? 女の子みたいな白い肌が真っ赤っかだー」ニシシ!

木山「アレだ。初春くんが言ってたクーデレだ」クスクス!

一方通行「っ……」テクテクテク・・・         ガシッ! ガシッ!

芳川「へ……って、うぎゃああっ!! ちょ、筋繊維刺激してるでしょアンタ!!」イダダダダ!

木山「ひ、あああ……ひゃんっ! ダっ、め……ひんっ!! らめ、て……おねひゃい……くぅんッ!!」ビクンビクンッ!!

一方通行「……痛がれ」チッ


黒妻綿流から到着の連絡が来るまで、二人の筋肉を十分に解してやった。俺は何て優しいガキなんでしょう。
255 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 06:09:02.32 ID:C9hwyC.0
 ―――PM05:30、学園都市第7学区、『ファミリーサイド』二号棟一三階某室……一方通行side……


 Prrrr・・・・・


一方通行「ン。やっと来たか……コレくらいで勘弁してやる」

芳川・木山「「」」チーン・・・


腑抜けて軟体動物の様になってる二人を後目に、俺は携帯を取った。


一方通行「ん」Pi!

黒妻『おう。準備良いか?』

一方通行「何時でも良い。今降りる」

黒妻『ああ。オマエが来るって分かったら打ち止めちゃん、何時にも増してはしゃぎ出してよぉ』ハハハ

一方通行「ふン……五分くらいで下に行く。待っててくれ」Pi!


さて、出かける前に……目の前のイカ共を如何にかしないといけない。と言っても、数秒で終わるのだが。
俺は二人の頸動脈と脇下に指を突っ込み、血の流れを操作……OKだ。


一方通行「……行ってくる。ちゃンと飯食えよ」

芳川「アンタに、言われたく無いわ……この、鬼ぃ」グヌヌ・・・

木山「此処まで、凌辱されたのは……初めてだよ」ゼェゼェ・・・

一方通行「鬼とか凌辱とか言うなっつの……じゃァな。チェーンだけは掛けんなよ。入れなくなる」テクテク・・・


研究機関のスポンサーだかから貰った新作のダウンジャケットを羽織り、家を出た。




芳川「覚えてなさ……アレ? 動ける。しかも、スッキリ!」クイクイッ!

木山「……か、彼の凌辱にはそんな効果が?!」ドキッ・・・///

芳川「違うわよ天然! ……何だかんだ言って、やっぱりツンデレなのかもね」クスッ
256 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 06:28:15.91 ID:C9hwyC.0
 ―――PM05:40、学園都市第7学区、『ファミリーサイド』駐車場……一方通行side……



奴の居場所は一目で分かった。ゴツいフォルムに、喧しい1000ccクラスの並列4気筒DOHCエンジンの音。


一方通行「……Z1000何てロートル。今時テメェくらいしか乗って無いだろうな」ハンッ

黒妻「うっせぇ。文句付けんな! Zシリーズ嘗めんなよ!」

一方通行「愛車の文句はオレに言えってか? 典型的な族じゃねェかよ」

黒妻「走り屋と言え。走り屋と……つかダウンでいいのか? バイクだと風圧凄いぞ」


俺の能力を何だと思ってやがる。


黒妻「リアルチート……この劣化版Dr.マ○ハッタ○が」

一方通行「カカカ! 言ってろチンピラ」


毒づき合い、俺は単車のケツに乗った。


一方通行「そういやァ、アイテムのジャリ娘と不思議坊主来てンのか」

黒妻「……最愛ちゃんは、入院中だ」

一方通行「ン? ……仕事でヘマったのか? 珍しいな」

黒妻「いや、過労だ。あと、微妙に情緒不安定だってよ」

一方通行「そりゃ……麦野のヤツ、酷使し過ぎたンじゃねェのか」


しかし、原因があの夜(※③「おはようございます」参照)の超電磁砲による尋問だと知るのはまた後である。
257 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/10(水) 06:56:38.46 ID:C9hwyC.0
しかし、窒素装甲が居ないとなると……もう一人は誰だ。


黒妻「ああ。会ってからのお楽しみだが……オレと同じく、オマエに感謝したがってる人間だよ」

一方通行「感謝だァ? 身に覚えが無ェな……恨みは山ほど有ンだがよォ」ククク・・・

黒妻「ふっ……ま、後で分かる」ギュッ


ガチンッ、とギアがローに入る音がした。


黒妻「……オマエとは一度、じっくり話がしたかったからよ」


急に何だ。気持ち悪ィ。


黒妻「おふざけじゃなくな……前に貰った駒場の『書類』についての、話もある」

一方通行「……駒場。あのフランケンシュタインか」


俺が、殺した、スキルアウトのリーダー。コイツはその事実を知らない……筈。


黒妻「ははは! まあ全部飯食った後にな。酒は呑めるだろ? 最近果実酒作ってみたんだ。ネットで作り方探してよお」ハハハ!

一方通行「俺未成年なンで」キッパリ

黒妻「……そ、そっか」(´・ω・`)…ショボン


まるでお預けを喰らった犬の様にガッカリする黒妻さン○○歳。まったく……


一方通行「チッ……コーヒーにしろ。安っぽいので良い」

黒妻「土御門から貰ったイノダコーヒーがある!」

一方通行「言った傍から名品かよ! てか土御門からコーヒーってのも変な話しだなか、アイツ実家京都かよ」

黒妻「かもな。土御門だし。それじゃあ行くぜ……しっかり掴まってろよ!」ニカッ!


俺らは出発した。街中公道を常時70㌔で走るデッドロード……ベクトル操作があってもリアルに死ぬかと思った。
そして、その後黒妻宅で……予想だにしなかった人物と出来事が、俺を待ち受けていた……―――
273 :>>1にかわりましてカキネがお送りしまそ2010/11/12(金) 21:45:33.55 ID:tJ8t5b60
 ―――PM06:00、学園都市第7学区、黒妻宅……香焼side……



自分が子猫二名に弄られ始めた頃、黒妻さんが外に飛び出してった。何でも……第一位を連れてくるらしい。正直あの人、嫌いなんだが。
黒妻さんが購読してる週刊誌を、床に寝そべり読みながらそんな事を思った。


香焼「……それで、打ち止めちゃん」ジー・・・

打ち止め「んー?」ピコピコ

香焼「まずコントローラ置きなさい……そして自分の上から下りて。重いっす」

打ち止め「レディに対して重いとか言っちゃいけないんだよ! ってミサカはミサカは根性無しのお兄ちゃんを叱ってみる」メッ!


さも当たり前かの様に自分の背中を敷物とする妹どの。根性如何こうじゃなく、自分を座布団にすること自体が間違ってるとは思わんのか。
一方……


那由他「……」ペタペタペタ・・・

香焼「……那由他ちゃん」タラー・・・

那由他「ん?」ペタペタ

香焼「何も言わずに自分の身体触ったり摩ったり抓ったりするの、やめて」クスグッタイ

那由他「じゃあ、触るよ」ペタペタ・・・ギュッ!

香焼「痛ぁっ!! 耳引っ張るな!」イダダダ!


しきりに自分の身体――此の時は、『魔翌力≒オーラ』だと気付かなかった――を触診する新顔。
うにょーんって伸びるんだ、とか訳分かんない事宣ってる。勘弁してくれ。

頼みの綱の固法さんは、ホットプレートを探して忙しない。まったく困ったもんだ。


那由他「弛緩剤で身体ふにゃふにゃにすれば……んー、でも……」ムニムニ・・・シャキンッ!

香焼「ちょ! 那由他ちゃん! 心の声聞こえてるっす! 止めて!!」ギャー!

那由他「あ、ごめん。つい」シュ・・・エヘヘ

打ち止め「お兄ちゃん五月蠅ーい。ってミサカはミサカは……あー! ハイパーボール投げちゃった!!」ギャー!


マジ助けて最愛。
275 :>>1にかわりましてカキネがお送りしまそ2010/11/12(金) 22:09:57.70 ID:tJ8t5b60
香焼「はぁ……そういえばさっき言ってたけど、那由他ちゃん風紀委員だっけ?」

那由他「え、あ、うん」ピタッ


やっと手を止め話を聞く気になった那由他ちゃん。
何やら注射器のような物をしまったのが見えたのだが……自分の気のせいか?


香焼「その歳で風紀委員ってのも凄いね」

那由他「そうかなぁ? 何人かは居るよ、小学生の風紀委員」

香焼「そうなんだ。でもやっぱり、小学生だと任される仕事は簡単なの?」

那由他「うーん……」タラー・・・

固法「風紀委員になった以上は一律、皆同職務よー」ゴソゴソ


キッチンの下棚を漁りながら、自分の質問に答える固法さん。まだプレート見つからないのか?


固法「風紀委員の試験と研修、理事養成学校に通ってる香焼くんなら分かるんじゃない?」ゴソゴソ

香焼「えっと、詳細内容は覚えて無いっすけど概要は……――」


生徒(能力者)によって形成される、学園都市第二の警察組織。因みに第一は警備員。
基本的に校内の治安維持にあたる為、メンバーは各学校から選出されるが、正式に風紀委員になるには9枚の契約書にサイン。
更に十三種の適正試験と4ヶ月に及ぶ研修を突破しなければならない。


香焼「――……だったかな?」

固法「流石『▲▲▲』学院。エリートさんね」クスッ

香焼「ま、まぁ模擬テストで偶に風紀委員の問題出されるっすから。 (任務の為、勉強したとは言えない)」アハハ・・・

那由他「え!? 兄さん、『▲▲▲』なの?!」ビックリ!

香焼「あ、あはははは……」タラー・・・


また、『隠れ蓑』によるプレッシャーが大きくなってしまった。畜生。
276 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/12(金) 22:54:56.39 ID:tJ8t5b60
固法「でも……試験や書類とは関係無い点で凄い人達も居るかな」ゴソゴソ

香焼「関係無い?」ハテ?

固法「例えば初春さん。彼女、低能力者(レベル1)だけど、PC関係全般に長けてるから結構重宝されたりしてる」

打ち止め「えー! お花のお姉ちゃんが?! ってミサカはミサカは驚愕のあまり……うにゃぁ!! 穴抜けひも使っちゃったぁ!!」ギャー!


打ち止めちゃんがオーバーアクションする度、自分の腰が悲鳴を上げるのが分かる今日この頃。
それにしても、あのおっとりした子が重宝というのも確かに意外だな。


固法「白井さんだってあんな性格だけど、大能力者(Lv.4)の空間移動(テレポート)だから……でも問題児には変わりないか」ハァ

香焼「問題児? 白井さんが? 特に変な様子は無かった気が。アニェーゼ達にも親切にしてくれたし……」


瞬間、打ち止めちゃんの動きがピタリと止まった。


打ち止め「……『御姉様(ミサカ)』の『私(ミサカ)』の『妹達(ミサカ)』の、『天敵』の本性を知らないからそんな事が言えるんだよ」

香焼「へ?」ポカーン・・・

固法「あ、あはは……まぁそれだけじゃなく虞犯少年、犯罪者の補導・検挙率も高いから彼らから『悪魔』呼ばわりされたり。所謂エースね」

打ち止め「『変態』と書いて『エース』だね、分かるよ! ってミサカはミサカは超苦手なアイツから事実から目を反向けてみたり」


……白井さん、何したの? ← ※③「おはようございます」のプールで、黒子の美琴・打ち止めに対する行動を見てない。

と少々逸れた疑問を抱いてしまったが、固法さんが手を止め――探すのを諦めたのか――此方に寄って来た。


固法「そして……那由他ちゃんも、先進教育局(特殊学校法人RFO)所属のエース風紀委員よ」ナデナデ

那由他「え、あ、ぅ……」カアアァ・・・///

香焼「……そっか。凄いね、那由他ちゃん」ニコッ

那由他「あ、ありがと……」モジモジ


褒められるのに慣れていないのだろう、那由他ちゃんは頬を赤くし、恥ずかしそうに下を向いた。
この小学生程の少女がエースとは……まぁ馬鹿にはできない。力だけなら黒妻さん以上かもしれないのだから。
277 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/12(金) 23:28:09.24 ID:tJ8t5b60
暫く撫でられてる那由他ちゃんを見て、打ち止めちゃんが携帯ゲーム機から手を離した。


打ち止め「むぅ、ナユタンだけズルいぞー! ってミサカはミサカはうわっと!!?」グラッ

固法「はいはい。まず香焼くんから退けようねー」ヨイショ

打ち止め「むー……むぎゅっ!」モフンッ


固法さんに抱えられ、打ち止めちゃんはやっと退いた。
しかし、目の前でそういうセクシャルな事しないで頂きたい。自分は健全な青少年です。


固法「だから胸揉まない!」ゴチンッ!

打ち止め「あうちっ! って……ミサカはミサカは多分また大きくなったミィの牛乳(うしちち)マジマジ見詰めてみたり」ジー・・・

固法「そういう事すると、白井さんと二人きりにするわよ」メッ!

打ち止め「ごめんなさい」キッパリ


即答0,02秒。何者なんだ、白井さん……


固法「兎に角、この子も立派な風紀委員なのよ。小学生だから如何こうっていうのは当てはまらないわ」

香焼「成程ね。那由他ちゃんも立派なんだ」

那由他「べ、別に立派って訳じゃないよ。正しいって思う事をやってるだけだから」アハハ・・・


その『正しいと思う事』をするのが難しいのだ。那由他ちゃんのやっている事は十分誇れる事だと思える。


那由他「こ、香焼兄さんの『▲▲▲』所属の方が凄いと思うよ。入試なんか風紀委員のテストの数倍難しいじゃない」ポリポリ

香焼「あ、あはは……そうでも、ないっす……(比喩ではなく、『裏口』入学っす。ごめんなさい)」タラー・・・

那由他「やっぱ理事希望? お役人? それとも学者さん?」

打ち止め「お兄ちゃんが理事になったら豪邸住みだね! ってミサカはミサカは将来のコウヤギ宅に期待を寄せてみる!」ヒャッハー!

固法「そうねー。でも理事より官僚の方が儲かるかもね。打ち止めちゃん、那由他ちゃん。何でも好きなモノ買って貰いなさい」ニコッ

打ち止め・那由他「「わぁい!」」ウッシッシ!


何その期待。無駄に怖いんですけど。てか多分オマエら、自分より金持ちだろうが。
278 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/12(金) 23:59:40.13 ID:tJ8t5b60
まったく、悪乗りが過ぎる。もし此処に最愛がいたら……


香焼「……」

打ち止め「じゃあねぇ、ミサカはゲコ太フォームカナミンの……ってお兄ちゃん?」

香焼「え、あ、何でもないっすよ」ニコッ

那由他「え、えっと、冗談だからね。真に受けないでよ」アハハ・・・

香焼「う、うん。大丈夫……それより、固法さん。プレートは?」

固法「あ。いけない! 探すの忘れてた!」

打ち止め「というか、有るの? ってミサカはミサカは甚だ疑問に思ってみたり」


そういえば黒妻さん、引っ越してきてプレートなんて使う機会あったのか。もしかして無いんじゃ……


固法「……ちょっと上条くんとこから借りてくる」パタパタ

香焼「上は外食で留守っぽいっす」

固法「……土御門くんは?」

香焼「どうだろう。居るかも」

固法「行ってきます!」ガチャッ!


土御門に固法さん……何か嫌な予感しかしないなぁ。まるで女教皇様と土御門を一緒に置いておくかの様な、そんな予感。
急ぎ足で飛び出してった固法さんに手を振り、打ち止めちゃんがまた無言で自分の上に座った。ギャフン。


香焼「打ち止めちゃん、せめて膝の上にして。腰痛い」

打ち止め「クロヅマは私背中に乗っけて腕立てしてるよ。ってミサカはミサカはお兄ちゃんに期待の眼を向けてみたり」キラキラ・・・


……腕立てしろと?


打ち止め「出来ないのー? ってミサカはミサカはこちょがしてみたり!」コチョコチョコチョ!

香焼「わ、わかった! わーった! やる! やーりまーす!」ギャアア!


那由他ちゃん、苦笑してないで助けて下さい。
280 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 00:53:07.80 ID:GxlEO5c0
結局、奮闘の末11回で倒れた。体重差あるとはいえ黒妻さん、一体何回出来るんだ……


香焼「もう、無理」ムキュー

那由他「あはは……いや兄さんくらいの並の男の子なら、十回越したら凄いよ」

香焼「そう言って貰えると……っていい加減退けて! 打ち止めちゃん!」

打ち止め「んー……○リゴン2が進化するまで。ってミサカはミサカはレベル上げに勤しんでみたり」

香焼「○やしいパッチを持たせて通信交換するまで終わらないの?!」

那由他「あ。私の○ローンと交換する?」


お腹からDS出した気がするが気のせいだろう……てか、最近の小学生は○ケモン常備なのか?
兎も角、救いの神現る。


打ち止め「○ローニャ持ってるから要らない、ってミサカはミサカはレベル上げに集中してみる」ピコピコ

香焼「畜生! だからレベルじゃ進化しないってば!」


憐れ。自分と、要らない子扱いのゴ○ーニャ。


打ち止め「あの人ならプロアクションリプレイで好きなモンスターくれるのに! ってミサカはミサカは……」ピコピコ・・・

香焼「……打ち止めちゃん。ズルは駄目っすよ」ハァ・・・


流石リアルチートもとい第一位。やる事が違った。


那由他「最近じゃアクションリプレイ類、取り締まり対象ですから気を付けてね」

香焼「風紀委員厳しいなオイ!」

那由他「いや昨今違法ソフト系の取り締まり厳しいんだよ。兄さん、理事校なのに知らないの?」

香焼「え、あ、いや……司法系はまだ専攻してないからなぁ」アハハ・・・


危ない危ない。ボロが出るとこだった……
281 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 01:24:33.01 ID:GxlEO5c0
よくよく考える……いや、アクションリプレイは違法じゃないんじゃ。


那由他「だから今は規制程度。流石に学園都市も大手ゲーム会社、無闇に敵に回したくないでしょ」

香焼「んー……確かに。子供の街の此処は良い金蔓っすからね」

那由他「悪く言えばね。ただ違法やチートソフト関係は出回り激しいから。ほら、データ媒体でしょ」

香焼「うん。共有ソフトとかネット内で落とせるってヤツ?」

那由他「そう。結局それが原因で『幻想御手(レベルアッパー)』なんてものが流行ったりしたし」

香焼「……幻想、御手」


その件については資料上でしか知らない。事件当時、自分はまだ潜入任務に着いていなかった。

幻想御手(レベルアッパー)。
その正体は共感覚性を利用して使用者の脳波に干渉する音声ファイルで、用途は名前通り能力者の強度(レベル)を上げるもの。
同じ脳波のネットワークに取り込まれることで能力の処理速度が向上し、その幅と演算能力が一時的に上がる。
また同系統の能力者の思考パターンを共有する事で、より効率的に能力を扱えるようになることから結果的に発現する能力が増大する。

だが使用者は他人の脳波を強要され続けるため、最終的にはネットワークに完全に取り込まれて脳の自由を奪われ、意識不明となるらしい。
実際、それが公となる大事件となるまでに発展した――『0724事件』――らしい。


那由他「ええ。既にワクチンがあるとはいえ、曲媒体ですから一人歩きしちゃってるの」

香焼「……所謂『呪いのDVD現象』っすね」

打ち止め「呪いのDVD? ビデオじゃないの? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」ポカーン?

香焼「うん。VHS媒体で『ダビング』しなきゃ呪いは広まらない筈っすよね。でも一度DVDに書き落とすと……」

那由他「PCに『感染』。そこから共有ソフトで一人歩き……という訳ね」

香焼「御名答。つまり共有ソフトに一人歩きした『幻想御手』は今も何処かで誰かに『感染』してるかもしれない、って事かな」

那由他「流石エリート学生さん。大した推察力」ヘー!


まぁ土御門の報告書に書いてた事なんだけどね。
しかし、これを完全消去するのはかなり骨が折れる作業となるだろう。頑張れ学園都市。
282 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 02:16:43.95 ID:GxlEO5c0
香焼「音楽ソフトかぁ……『C・D(キャパシティ・ダウン)』も確かそうだよね」

那由他「アレは一種の音響兵器だよ。アレだけは苦手かな」アハハ・・・

香焼「ん?」

那由他「……まったく、動けなくなっちゃう」

香焼「へ?」

那由他「えっと……さっき、私は義体使ってるって言ったよね」


そういえば聞かされた。サイボーグ少女だ、と明るく話していたが結構シビアな問題だろうに。


那由他「機能が特殊で『力場』と連動して動くから……あの音聞くと『ふにゃん』ってなるよ」

香焼「ふ、ふにゃんかぁ……大変だね。 (ふにゃんって、可愛いな)」アハハ・・・

那由他「テレね……伯母と喧嘩すると『C・D』流してきてさぁ、ズルいよねー。まぁ負けないけど」フン!


どんな伯母だ。それは。
てか意外と血の気多いんだね、那由他ちゃん。負けん気強いというか……


那由他「む。心外だよ。風紀委員である私がそんなに喧嘩早い訳ないじゃん」

香焼「あはは。そうだね」


喧嘩早い女の子なんかそうそういないだろうからなぁ。少なくとも魔術側の知り合いにはいない。


打ち止め「御姉様は戦闘狂(バトルジャンキー)だけどねー。ってミサカはミサカは身内のストリートファイターっぷりを恥じてみたり」ハァ・・・

香焼・那由他「「……」」タラー・・・

打ち止め「はぁ……15555号(ファイズ)や14332号(三重サカ)なんか、偶に御姉様の悪いとこ似ちゃってミサカはミサカは困ってるよ」

香焼・那由他「「……はい?」」ポカーン・・・


打ち止めちゃんが何言ってるか分からないけど……あの人、上条さん以外にも手出すんだ。知らなかった。

何故だか……あの日拷問(トラウマ ※③参照)が蘇ってきた。そういえば第一位今から来るんだよなぁ……ヤダなぁ。
283 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 02:32:19.28 ID:GxlEO5c0
那由他「えっと……兄さんは超電磁砲(レールガン)、さん知ってるの?」


那由他ちゃんが無理やり微妙な空気を切ってくれた。ナイス。


香焼「まぁ一応……あまり良い思い出はないけど。那由他ちゃんは?」アハハ・・・

那由他「私も良い思い出は無いかな。職務質問しようとして……まぁ私が悪いかもしれないけど……」アハハ・・・

香焼「う、うん。自分も……自分が悪いかもしれないんだけどさ」

那由他「何て言うか……そこまでやるか? って感じだよね。あの人」タラー・・・

香焼「自分の場合は兎に角、恐怖、だったかな」タラー・・・


御坂美琴。『悪』では無いが……自分の筋があるらしく、基本己を曲げない。故に徹底的。
所謂、精神的超人に近いだろう。
いや確かに、超能力者ともなれば自分だけの現実(パーソナルリアリティ)が確固としているだろうから、それであってるのか。


那由他「強いしさ。そりゃ手加減されたくないけど……身体直すのにもお金掛るし」

香焼「自分もトラウマが……―――」


 パタンッ!


香焼・那由他「「っ!?」」ドキッ!

打ち止め「……」ジトー・・・


しまった。本当の『妹様』が居た……


香焼「―――……ら、打ち止めちゃん。その……ごめん」タラー・・・

打ち止め「……」ゴソゴソ・・・カパッ


無言で携帯ゲーム機をしまい、徐に携帯電話の電話帳をスクロールする妹様。
そして……『おねーさま(おりじなる)』の名前をクリックなさった。
284 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 02:47:17.22 ID:GxlEO5c0
香焼「打ち止めちゃん! ちょ、待、ごめんって!」ヤバッ!!

那由他「あわわわわ……光速コインが飛んでくるよー!」ギャー!


 Prrrrr・・・ガチャッ・・・・・


御坂『はい、もしもし。愛しの御姉様だよー。どったの?』Pi!


……死んだ。


打ち止め「……御姉様」ジトー・・・

御坂『はいは――[ち、小姉様お元気ですの?! 最近お顔を御見せにならないので黒子はもう心配で心配であぶじゃっ!!]――うっさい!』

打ち止め「……白井黒子(天敵)は寝かせといて。真面目なお話なの! ってミサカはミサカはお兄ちゃんに上に正座してみる」キリッ


背骨がイイ感じにメシメシ逝ってます。はい。


御坂『ほいほい。まぁたアイツと喧嘩したのね? 大丈夫よ、放っておけば「俺はオマエしか居ないンだァ!」とか言い出すから』アハハ!

打ち止め「御姉様」キリッ・・・

御坂『あーそうそう! 前に送ったアロエ茶飲んだ? クッソ不味いでしょ! 前に暴食シスターにゴーヤ茶飲ませた時よりは――』

打ち止め「御姉様!」ドッ・・・

御坂『――大変、じゃ……ど、どうしたのよ。ホントに真面目ねぇ』タラー・・・

打ち止め「……正直に答えてね。ってミサカはミサカは御姉様に詰め寄ってみる」

御坂『詰め寄るって、電話越しに……』

打ち止め「屁理屈言わない!」メッ!

御坂『う、ううぅ……はい。何だか打ち止めが怖いよぅ』タラー・・・


獅子を捩じ伏せる子猫。打ち止めちゃん最強説、ハジマタ。
285 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 04:00:23.33 ID:GxlEO5c0
打ち止め「御姉様……お兄ちゃん虐めたでしょ。ってミサカはミサカはドスの入った声で尋ねてみる」

御坂『い゛っ……何で……』ドキッ!

打ち止め「……虐めたんだ。ふーん……ミサカはミサカは御姉様の沈黙が痛々しい程分かっちゃうよ」

御坂『い、いや、虐めて無いわ。ただ打ち止めのお兄ちゃんお姉ちゃんがどんな人なのかお話しようと……』

打ち止め「へぇ……ミサカのミサカの知らない所で」フーン・・・

御坂『ち、違くてさ……ってか、オイ! そこに居るんでしょ、香焼クン(チクリ魔)!』ギャーギャー!


わー、怖い(棒)。


打ち止め「お兄ちゃんは関係無いの! ってミサカはミサカは悪者御姉様を叱ってみたり!」メッ!

御坂『うぅ……だってさぁ……』モジモジ・・・

香焼「ら、打ち止めちゃん。御坂さんも君の事を思ってやった事だし、そんなに――」

打ち止め「お兄ちゃんは黙ってて! ってミサカはミサカは正座を崩しながら怒鳴ってみたり!」

香焼「――言わなくうげふっ!」ゴキゴキ・・・


リアルに腰と背中がヤバい。そして体育座りはやめてくれ。臀部二点が痛い!


打ち止め「まだ余罪があるよ! 御姉様、ナユタンも虐めたでしょ! ってミサカはミサカは追撃してみたり!」

御坂『香焼くん、今度会ったら黒焦げに……』ボソボソ・・・『……え? な、ナユタン? 何それ?』ポカーン・・・

打ち止め「ナユタンはナユタンだよ。ってミサカはミサカはナユタンのナユタンっぽいナユタンのナユタ――」

御坂『ごめん、打ち止め。日本語で話そ。御姉様が悪かったから』ウーン・・・

那由他「えっと、打ち止めちゃん……多分覚えてないからいいよ」タラー・・・

打ち止め「そしたらもっと悪い! ってミサカはミサカは風紀委員の職務質問から逃げた御姉様に憤怒してみたり!」ムンッ!

那由他「いや、現行犯で逃げられたんだけどさ」アハハ・・・


何やってんすか、御坂さん。
286 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 04:43:20.67 ID:GxlEO5c0
御坂『風紀委員……なゆたん……どんな娘?』モシカシテ・・・

打ち止め「……金髪ツインテのお人形さんみたいに可愛い子だよ。ってミサカはミサカはナユタンの客観を述べてみたり」

那由他「お人形さんみたいって……照れるなぁ」エヘヘ・・・


那由他ちゃん、照れてる場合じゃありません。


御坂『……あー!! あのカラクリっ子! 打ち止め、アンタ知り合いなの?!』

那由他「か、カラクリ……」

香焼「表現古いね……」

打ち止め「知り合いも知り合い! 一緒に黒妻家でご飯を食べる仲だよ! ってミサカはミサカは説明してみたり!」

御坂『あーうん……あの子無事?』タラー・・・

打ち止め「や・は・り! 虐めたんだね! ってミサカはミサカはムキー! 許さないよ、御姉様!」

御坂『いやぁ、だってさぁ……アッチから売ってきた喧嘩だったし……』ブーブー・・・

打ち止め「自販機蹴ったんでしょ! 器物破損も分からないの?! ってミサカはミサカは御姉様の非常識っぷりに怒りを通り越して呆――」

御坂『壊したんじゃ無くてジュースを貰おうと……』


自販機からジュースを『貰う』という発想が、狂ってます。御坂さん。
まぁよく黒妻さんもやってるけど内緒で。


打ち止め「――れを通り越そうと思ったけど、いやもうそれじゃ済まない! 御姉様それ窃盗だからね!
             ってミサカはミサカはナユタンに何て謝れば良いのか……ホント、身内が御迷惑を」ウルウル・・・

御坂『ぐっ!』

那由他「い、良いよ。もう時効だから……あの時の寮監さんに宜しく言って下さい、とだけ」アハハ・・・

打ち止め「うううぅ……ナユタン良い子だねぇ。ってミサカはミサカは感激してみたり……
              しかし御姉様! ナユタンは許してくれるけどミサカがミサカが許してないからね!」

御坂『うー……ごめんってば……』シュンッ・・・


成程、御坂さんも悪いとは思ってる訳だ。でもどうせまたやるんだろうなぁ……
287 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 05:29:18.39 ID:GxlEO5c0
それから数分間、打ち止めちゃんの説教は続いた。流石の超能力者(レベル5)も、ただの姉になってしまえば型無しの様である。
それにしても、固法さん遅いなぁ。


打ち止め「――……分かった? ってミサカはミサカは御姉様に最後の勧告をしてみる!」キッ!

御坂『……すいませーん』ブツブツ・・・

打ち止め「じゃあ、二人に代わるから謝りなさい! ってミサカはミサカは携帯をお兄ちゃんにパスしてみたり」

香焼・那由他・御坂「「『え!!?」」』


いや、急に渡されても何を言えば良いか……


打ち止め「はい」パスッ

香焼「わ、え、な……えっと……あの、もしもし……」タラー・・・

御坂『え……もしもし』

香焼「その……御無沙汰っす」

御坂『ええ。変わりない様ね……ちくりやがってテメェ覚えてろよ。 (打ち止めに言われたわ。ごめんなさい)』

香焼「心の声と本音が逆転してるっすよ……」

御坂『チッ……ふんっ、別にいいわよ。アンタに謝る気なんか毛頭無いから』


こうまで開き直られると、清々しいな。まぁ原因はコッチだけど。


御坂『……ところで「お姉ちゃん」は如何したのよ』

香焼「っ……」ギリッ・・・

御坂『何よ』


よくも、しゃあしゃあと……
288 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 05:41:40.39 ID:GxlEO5c0
香焼「入院中っす」

御坂『は? え、何? ケガ?』

香焼「過労と精神的なストレス……」

御坂『ふーん……自業自得ね』


同意するが、共感はしない。


御坂『何時?』

香焼「アンタに『虐められた』後っす。『バイト』前に、倒れた」

御坂『……そ』

香焼「……自分に頭を下げる必要は無い。でも最愛には謝れ。心的ストレスの原因の一端はアンタだ」

御坂『……』

香焼「アンタの所為だ。乱雑開放(ポルターガイスト)起こさせたのは知ってるっすよ。やり過ぎだよ、超電磁砲」

御坂『……考えとくわ』フンッ


目の前に居たら、打ん殴ってやりたかった。
コレ以上会話を続ければどんな暴言が飛び出すか分からないので、一度打ち止めちゃんに電話を帰した。彼女の前で醜態は見せたくない。

二人は二言ほど会話を紡ぎ、次に那由他ちゃんへ電話を渡した。


那由他「あ、えっと……もしもし」

御坂『あー、うん。その節はどーも』

那由他「ええ。御活躍は聞き及んでるわ」

御坂『そりゃうれしいわね。で? アンタもチクったの?』

那由他「勿論。風紀委員である以上、法を犯す者は許さないから。しっかり固法さんにも、ね」ニコッ

御坂『ちょ! それは、マジ勘弁してってば!』ウギャー!


ざまぁみろ。いい気味だ。しっかり説教されてしまえ。
289 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 06:02:20.23 ID:GxlEO5c0
那由他「さておき……ありがと、ね」

御坂『え……何が?』

那由他「……今は言わない。でも近い内必ずお礼はするわ。貴女は一応、私の恩人らしいから」ニコッ・・・

御坂『うーんと、身に覚えが無いんだけど……』

那由他「じゃあ改めて自己紹介しとく……私は先進教育局(特殊学校法人RFO)所属の風紀委員、木原那由他よ」

御坂『……先進教育局って木山の……それに、木原って』

那由他「そゆ事。偶に『伯母』に会ってあげて。ずっと暇してるから。『超電磁砲と喧嘩してぇー』とかボヤいてるしね」クスッ

御坂『ちょ……まさか!?』ハッ!

那由他「以上。続きはそのうち、会う機会があったらね」ニコッ・・・「はい、打ち止めちゃん」パスッ


……何やら意味深な会話だが、彼女達のプライバシーだ。聞かなかった事にしよう。


打ち止め「はーいっと……良い? 御姉様、もう悪い事しちゃダメだからね! ってミサカはミサカは釘を刺してみたり」

御坂『……うん。近い内に、御邪魔するわ。打ち止めの「お兄ちゃん達」、改めて紹介してね。お話したい』ニコッ・・・

打ち止め「仲良くするなら大歓迎だよ! ってミサカはミサカは約束と確認の意味を込めて強調してみる」ジトー・・・

御坂『わ、分かってるってば……そんなに信頼無いかなぁ、私』ウウゥ・・・

打ち止め「約束破ったら『上の階(英雄さん)』に御姉様の悪態を全部伝えるから。ってミサカはミサカは究極の脅しを行使する準備を……」

御坂『にゃ、にゃんですとー!!? ら、打ち止め!! それだけは……御勘弁を……』カアアァ・・・///


成程。良い手を見つけた。


打ち止め「分かれば宜しい。じゃあまたメールね、御姉様! 白井黒子(天敵)には気を付けてって、ミサカはミサカは忠告してみる」

御坂『言われるまでも無い。それじ――[ああぁん! 小姉さまが私の事をお気に無さって下さっであbbbbb]――喧しい!』

打ち止め「……バイバーイ。ってミサカはミサカは何事も無かったかのようにエンドボタンをポチリ」Pi!


超電磁砲。苦手なモノは妹と英雄と固法さん。


那由他「常盤台女子寮の寮監さんもだね」ニコッ

香焼「成程、良い事覚えた。何時か仕返ししてやるっす」ニコッ
290 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/13(土) 06:48:54.64 ID:GxlEO5c0
それから数分後……固法さんが大そう疲れた表情で帰って来た。ちゃんと手にプレートは抱えてある。


打ち止め「ミィお帰り。って……どったの? ミサカはミサカは何故かお疲れのミィに理由を聞いてみる」

固法「何でも無いわ……先輩達来る前にテーブルに準備しちゃいましょ」ハァ・・・


そう言って、せっせと既に切ってあった野菜や自分が持ってきた和牛セットをテーブルに並べる固法さん。
無論、自分らも手伝うが……如何したのだろう。自分はこっそり聞いてみた。


香焼「何かあったんすか?」ボソッ

固法「いえ……ただ、あの義兄妹……」

香焼「土御門?」


……一体何したアイツ。


固法「『今夜はスタミナ付けて……ムフフかにゃぁ? お子さんの手前なんだから程々にしとくんだぜぃ』って……」カアアァ・・・///

香焼「あのセクハラ軍曹……」

固法「『兄貴、そういうのは言わないの! 覗いた時ばれてしまうぞー!』だって……冗談抜きで、泣きたい」ウウウゥ・・・///

香焼「固法さん、訴えるっす。それ勝てるから」


土御門は兎も角、舞夏さんまでコレとは……あの義兄妹はもう駄目だ。色々と。
今日は多分、固法さんにもお酒が入るなぁと考えていると、単車のエンジン音が聞こえた。ようやくアチラも着いたみたいだ。


固法「丁度良いわね。プレート温めておきましょうか」

打ち止め「ミ~ィ~。ナユタンのお箸はー? ってミサカはミサカはゴソゴソ漁ってみる」

固法「新しい箸卸しても良いし、割り箸でも良いわよ」

那由他「どっちでも良いよ」

打ち止め「じゃあ今日は割り箸ね。今度ミサカと黒妻家に置くお箸買いに行こう! ってミサカはミサカはデートの約束してみたり。きゃっ!」


きっと歯ブラシとスリッパも増えるんだろうな、と微笑ましい事を考えつつ皿の準備をした。
何故か7枚、準備してしまったのだが……ふと一人居ない事に気が付き、静かにそれを戻した……―――
301 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 02:03:04.85 ID:/ZF6Kj60
 ―――PM06:20、学園都市第7学区、黒妻宅……香焼side……


 ガチャッ・・・・・


黒妻「……ただいま」


ようやく大黒柱が帰って来た様だ。随分時間がかかった気がするが、そんなに遠かったのだろうか。


固法「お帰りなさい。遅かったですね」

黒妻「まぁな……お! もう準備は出来てるのか」

打ち止め「クロヅマが遅いから野菜だけだよー。ってミサカはミサカはお手伝いしたのを良い事にデカい顔してみたり」フンッ!

黒妻「あはは、悪い悪い。ほれ、入れ」スッ


黒妻さんの後ろに、杖をついた目付きの悪い白いイメージの少年。


固法「いらっしゃい」ニコッ

一方通行「……ン」カツカツ・・・ペコッ


軽く頭を下げて、何を言う訳でもなく玄関付近で立ちつくす超能力者第一位。無愛想極まりない。


打ち止め「こらっ! 人の家に上がる時はきちんと『お邪魔します』って言いなさい。
             ってミサカはミサカはマナーを知らない非常識過ぎる野獣上がりみたいなアナタを躾けてみたり!」メッ!

一方通行「うっせェ。オマエこそ他人ン家で我がモノ顔してンじゃねェぞ、非常識糞ガキ」フンッ

打ち止め「むきー! 何て言葉の悪い兎ちゃんなんでしょう! ミサカはそんな風に教育した覚えはありませんよ!
                            ってミサカはミサカは微動だにせず突っ立ってるアナタをんぐぅ?!」ガシッ!

黒妻「はいはい、愛しの彼が来てはしゃぎたいのは分かるが今はそこまでな。ま、適当に座れよ」ニカッ

一方通行「……」テクテク・・・チラッ


自分と目が合った。どうしよう……気まずい。
302 :>>300・・・英雄は何時だって独善屋さんなんだよ。2010/11/14(日) 02:40:09.02 ID:/ZF6Kj60
香焼「……どーも」ペコッ

那由他「こ、こんにちは」ペコッ

一方通行「……よォ」コクッ


今は何も言わないでおこう。というか、極力、会話したくない。
それから黒妻さんと第一位は手を洗いに行き、自分達は飲み物を準備した……固法さん、焼き肉で牛乳飲むの?

二人が戻ってきてから改めて席決定。黒妻家のテーブルは居間にある円卓なので……
黒妻さん・固法さん・打ち止めちゃん・那由他ちゃん・自分・第一位、の順となった。


黒妻「それじゃあ焼くか……香焼、肉持ってこい!」

香焼「はいはい。自分の実家から送られてきた和牛っすよー」


 カパアァ・・・・・


一同『おおおぉ!』


自分が開けた焼き肉セットに、第一位まで目を輝かせていた。やはり美味しいモノはどんな人が見ても、見惚れるモノなのだろう。
実はこれとは別に五和と浦上の分も送られてきたのだが、まるでくれてやる気が無かったのは内緒。

全員分の飲み物とタレが行き渡ったのを確認し、黒妻さんが打ち止めちゃんに挨拶を促す。


打ち止め「こほん! では皆さま、手を合わせて。ってミサカはミサカは豆錬金術師の如く率先してみる」パンッ!


一人を除いて手を合わせた。環を乱すのは、勿論……


打ち止め「どうしてアナタは、協調性を持とうとしないの? ってミサカはミサカは怒りを通り越して呆れてみたり」ハァ・・・

一方通行「……チッ」ポンッ


コレ以上は流石に迷惑を掛けるだろうと手を合わせる第一位。一応年長なんだから始めからそうしろ、と言いたいが怖いので止めとく。


打ち止め「はい、良くできました! ってミサカはミサカは褒めてみたり」ニコッ

一方通行「ッ……早くしろっつの。肉酸化させンな」フンッ!


存外可愛いな……ツンデレータ。
304 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 03:49:52.79 ID:/ZF6Kj60
一同『いただきまーす』


さて、兎にも角にも夕餉が始まる。


黒妻「さぁて……美偉、ビール」

固法「駄目」キッパリ

黒妻「……一杯だけ」ボソッ

固法「絶対駄目」キッパリ

黒妻「……うぃ」(´・ω・`)…ショボン


まぁ気持ちは分かる。
呑める人間であれば、焼き肉の場で飲まない手はないだろう。建宮さんや諫早爺、対馬さん、牛深さん、野母崎さん辺りも飲むからね。
因みに馬鹿姉妹も未成年の癖に飲もうとする。飲まない女教皇様を見習え。


一方通行「……」ジー・・・

打ち止め「どうしたの? ってミサカはミサカは割り箸すら割らないアナタの受け皿に焼けた肉を入れ良妻アピールしつつ訪ねてみたり」ホイホイ

一方通行「それまだ焼けて無ェっつの……なァ。アイツら結婚してンだっけ?」ジー・・・

黒妻・固法「「ごほっ!!」」ゲホゲホ・・・


……まぁそう思えるよねー。


那由他「え!? 結婚してたの?!」ビックリ!

黒妻「ちょ、待て!」エ?!


感染したし。


打ち止め「実はそうなの。ミィのお腹には既に二ヵ月の赤ちゃって痛ぁっ!」ゴチンッ!

固法「~~~ッッ!!」カアアァ・・・///

一方通行「……へェ」フーン・・・

固法「そ、その微妙な顔止めて……」マッカッカァ・・・

打ち止め「もー、ミィは恥ずかしがり屋さんだね! ってミサカはミサカはニヤニヤしてやったり!」2828・・・
305 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 04:07:14.82 ID:/ZF6Kj60
赤面する黒妻夫妻(予定)。見てて楽しいなぁ。


黒妻「い、良いから肉取れ! ほら、打ち止めちゃん野菜食えよ!」ヒョイッ!

打ち止め「うわぁっ!! テレ隠しでピーマン入れてきたし! ってミサカはミサカはムンクの如くショックを受けてみたり!」ガーン・・・

一方通行「イイ加減好き嫌い無くせっつの……あ、ソレ後裏返すの早ェぞ」

那由他「え、あ、はい!」ドキッ!


それ能力使ってるの?


固法「そういえば、二人とも自己紹介まだじゃない?」

黒妻「そうだったな。ほれ、挨拶しちまえ」モグモグ・・・

那由他「あ、はい……」ジー・・・

一方通行「……ン」モキュモキュ


那由他ちゃんが恐る恐る第一位を見上げた。その直後、一瞬チラリと黒妻さんを見る……
ああ、成程。自分の時もそうだったが気にしてるのか……『苗字』を。考え過ぎだろうに。


黒妻「大丈夫だ。そいつも何か言うような小せぇ男じゃない筈」コクッ

那由他「そう……えっと……」モジモジ・・・

打ち止め「もー、ナユタン。この人は見た目オッカナいけど小さい娘には優しいから大丈夫だよ! ってミサカはミサカは風評をあ痛ぁっ!!」

一方通行「……誤解される様な事言うンじゃ無ェ、糞ガキ」ゴチンッ


成程。結標さんがメールで言ってた『第一位ロリコン疑惑』は本当なのかもしれない。


黒妻「あれ? オマエ、年上好きじゃなかったの? 黄泉川さん然り、結標ちゃん然り」

一方通行「『テメェの肉』で焼き肉すっかコラっ」(#^ω^)ビキビキッ

黒妻「あはは。体脂肪率7%のオレの肉なんか旨くないぞ」ハハハ


……第一位が言うと冗談に聞こえないから怖いけど、あっさり流せる黒妻さんも凄いな。
306 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 04:49:56.83 ID:/ZF6Kj60
那由他「那由他、です……木原、那由他……」

一方通行「……」ピクッ・・・


一瞬、片眉を引き上げた気がするが……


一方通行「……一方通行(アクセラレータ)って呼べ」ボソッ

那由他「え、あ……はい」キョトン・・・


互いに反応が薄い。まぁ問題が起こるよりもいいだろう。


黒妻「おう。じゃあ肉食え。沢山食え。山ほど食え」モグモグ

固法「……先輩。さっきから半焼けのばっかり食べてますね」ハァ・・・

打ち止め「クロヅマの胃袋は鋼鉄だから問題無いんだよねー!
                ってミサカはミサカはお肉の生焼け分を能力で焼きながらクロヅマ暴食説を訴えてみたり」ニヤッ

黒妻「上のベルゼブブ(インデックス)ちゃんと一緒にすんな」モグモグ・・・ゴックン


禁書目録は底無しだからなぁ……色々なキャパシティ的な意味で。そんな事を思いつつ、自分も箸を伸ばす。
因みに修行の関係上、噛む回数や定期的な飲水はもはや慣れたものだ。

固法さんが何とも手際良く焼けた肉を全員に分配する最中、那由他ちゃんが疑問を口にした。


那由他「あの、もしかして……一方通行さんって、あの『一方通行』なの?」モニュモニュ

一方通行「……他に『一方通行』が居るってンなら是非とも見てみてェな。あと『さン』付けしなくていィ」モキュモキュ

那由他「す、凄い……第一位とも知り合いなんだね。黒妻さん」ヘー!

黒妻「そういえばオマエ凄ぇ奴だったな」アハハ

一方通行「そのナンバー7と似たテンション止めろ。腹立つ」モキュモキュ

那由他「な、№7って……削板軍覇も知ってるの?!」スゲェ!

一方通行「……さァな」ゴックン


そういえば昔(※①「おかえりなさい」参照)、助けられたんだっけ。まぁあの人と第一位は、性格的に対極だから苦手なのかな。
307 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 06:36:14.29 ID:/ZF6Kj60
それから暫く、それなりに楽しい食事が進んだ。
黒妻さんと固法さんが皆に話しかけ、唯一仏頂面の第一位にも打ち止めちゃんがワンヤワンヤと絡む。
自分や那由他ちゃんも自然と微笑んでいたようだ。

ただ、ここで……やはり周りが能力者なんだなぁと感じさせられる事もチラホラとあったのだ。例えば……


香焼(……この牛タンはそろそろ)スゥ・・・

固法「香焼くん、それ表だけ。中はまだまだよ」キュイイイィ・・・

香焼「え」


自分の動きがピタリと止まる。


那由他「固法さん……能力使ってるの?」アハハ・・・

固法「だって先輩は良いけど、アナタ達のお腹壊させる訳にはいかないもの」キッパリ


固法さん……目、怖いです。


黒妻「うわ、冷てぇ女……」モグモグ・・・

打ち止め「あ、じゃあ……えい!」ビリビリ!「ミサカがミサカがその牛タンを中まで焼いてみせたり!」ジュゥ・・・

一方通行「周りの家電ショートすっから止めろっつの、まったく……やっぱ姉妹だな、オマエと超電磁砲」モキュモキュ

打ち止め「ミサカは御姉様ほどガサツじゃないもーん。ってミサカはミサカは電流を微調整してみる」ピリピリ・・・

一方通行「待てっつゥに……後18秒待って裏返せば、丁度だ」


電気通した肉って、食えるの?


香焼「……逐一計算して飯食ってんすか? 第一位」タラー・・・

一方通行「計算する必要も無ェ。肉の厚さとプレート温度見りゃ目算出来ンだろ、この程度」モキュモキュ

那由他「いや、そんな芸当出来るの一方通行だけだよ」タラー・・・


やはり天才は違った。言い換えれば、ただみみっちい男だなと呆れてしまった。
308 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 07:51:14.61 ID:/ZF6Kj60
黒妻「しかし……ウチにホットプレートなんて有ったっけ?」ゴックン

固法「……え?」

黒妻「いや引っ越した時、んなもん買わなかった気がすんだけどよぉ」ジュー・・・


今、それ言いますか。


固法「……皆で焼き肉焼こうって言ったの先輩でしたよね?」

黒妻「まぁな。でも正直無いものどうすっかなぁとか考えてた」ジュージュー

固法「打ん殴っていいですか?」ギリギリ・・・

黒妻「へ?!」ギョッ!?

香焼「こ、固法さん! 押さえて!」ワーワー!


心中お察しできますが、二人きりの時喧嘩してください。


黒妻「わ、悪かったな……」タラー・・・

固法「反省してください」キッ

黒妻「へい……んで? どっから持ってきたの、プレート(これ)」

打ち止め「ツッチーから借りてきたんだよー。ってミサカはミサカは教えてみたり」

黒妻「成程成程。助かったな、客人居たし」


この人は時々、トンデモなく無計画なところがある。らしいといえばらしいが……大きなミスを犯して欲しく無いモノだ。


一方通行「……オイ、糞ガキ。まさかその愉快なニックネームは元春くンの事じゃあるめェな」ギロッ

打ち止め「うん、マイカのお兄ちゃんの事。ってミサカはミサカは黒妻家の一員として御近所情報をアナタに流してみたり」

一方通行「……このプレート、盗聴器とか入ってねェよな? 若しくは爆破機能付きとか」

固法「有ったらあの義兄妹ネンショー送りにしてます」キッパリ


どんだけ信用無いんだ、あの義兄妹……まぁ自分も信用サラサラしてないけどね。
314 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 21:36:45.62 ID:/ZF6Kj60
 ―――PM06:45、学園都市第7学区、黒妻宅……香焼side……



食も進み、少女二人が満腹感を感じだした。
自分もそろそろいっぱいかなと思った辺りに、固法さんが黒妻さんに問うた。


固法「そういえば、どうして先輩達遅くなったんですか?」

黒妻「ん……いや、アレだ。混んでた」タラー・・・

固法「この街、渋滞なんて殆ど無いですけど」

黒妻「……ガソスタ寄って来た」フイッ・・・

固法「……先輩」ジー・・・


明らかに固法さんから目を背ける黒妻さん。そこにビーンボールを投げつけるチクリ魔。


一方通行「警備員と愉快なカーチェイスになっとこだったンだ。後ろに俺乗ってンのによォ」モグモグ

黒妻「ちょ、オマ!?」

固法「……何キロ出してたの?」

一方通行「公道で70~90。路地裏逃げてからも50オーバー」

固法「……」ジトー・・・


黒妻さん顔面蒼白。


一方通行「まァナンバー見られてないだろォから、大丈夫じゃねェか?」

那由他「……黒妻さん」ジトー・・・

黒妻「あ、あれだ! 時効だ時効」アハハ・・・

固法「2、3時間前を時効扱いする警察組織が此の世にありますか?」

黒妻「ろ、ロア○プラ……」タラー・・・


あそこは別だ、『此の世』じゃない。
その後大黒柱は風紀委員二人にガッツリ説教されて、心なしか小さくなっていた。ギャフン。
316 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 22:01:34.14 ID:/ZF6Kj60
那由他「―――……本来なら免停だよ!」ガミガミ!

固法「―――……ホント、暫くバイク禁止にしようかしら」キッ!

黒妻「・・・・・・・・・・・・・すません。勘弁して下さい」ショボーン・・・


まぁ、自業自得だろう。
しかし、そんなに跳ばしたいなら警備員にでも入ればいいのではなかろうか。黒妻さんならコネもあろうに。


打ち止め「いやぁ、ナユタンの御蔭で黒妻家の風紀は一層良くなるね! ってミサカはミサカはクロヅマの更生増員に喜んでみたり」ニヤリ

一方通行「……オマエ、風紀委員なのか?」モキュモキュ

那由他「え、まぁ」コクッ


この状況でモクモクと肉を食べ続けていた第一位が呟いた。てか、貧弱そうに見えて意外と食べるんだな。


一方通行「……何処の学校所属だ?」ジュー・・・

那由他「……先進教育局」

一方通行「あそこから風紀委員出してンのか。驚きだな」フーン・・・

固法「那由他ちゃんはエース級よ。一方通行くんも悪い事して捕まんないようにね」フフ

一方通行「……へいへい」モキュモキュ


この人を捕まえられる人間はいないのでは……
と考えた刹那、この空気を読まない第一位さんは爆弾発言を繰り出した。


一方通行「よく家族許したな」モキュモキュ

一同『っ!!?』バッ!


一寸沈黙。というか、食うのを止めろ。


那由他「……何で」

一方通行「深い意味は無ェよ。ただオマエの苗字(木原)は『家族規模』でこの街に居ンだろ。外から来たンなら別だがな」ズズズ・・・

那由他「……誰か知り合いいるの? (この人も……まさか被験者?)」

一方通行「さァ。どうだったかなァ…… (喋り過ぎたか……ま、いいや)」モキュモキュ
317 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 22:17:38.34 ID:/ZF6Kj60
暫し、沈黙が走ったが……黒妻さんが微笑んで那由他ちゃんに告げた。


黒妻「……コイツ、オマエの伯母さん助けてくれたんだぞ。 (※②「いってらっしゃい」参照)」

一方通行「ブゥッ!! ……は?」ダラダラ・・・

打ち止め「汚ーい。ってミサカはミサカはそう言いつつもアナタの口元を拭いてあげる。何て良い奥さんなんでしょう」ポッ

一方通行「ちょ、黙れっつの」フキフキ


那由他ちゃん、フリーズ。


那由他「え、あ……テレスティーナを?」ポカーン・・・

黒妻「おう。恰好良かったぜ」ニヤッ

一方通行「ざけンな。俺はただ甘ったれた事言ってたバカに文句付けてやっただけだっつの」フンッ

那由他「……」ジー・・・


何とも言えない表情。複雑なのだろうか……


固法「……ほら! そろそろ御馳走様でも良いんじゃない? 打ち止めちゃんと那由他ちゃんお腹いっぱいでしょ。箸進んで無いわよ」ニコッ

那由他「あ……うん」コクッ

打ち止め「……そうだね! ミィ、本日のデザートを寄越したまえ! ってミサカはミサカは敢えて図々しい態度を取ってみる」エッヘン!

固法「はいはい。雪見大福マカロン味でいいわね」

打ち止め「わー……って○ッテはまた良く分からない商品を出したのかい!
                    ってミサカはミサカは虚空に突っ込んでみたり。ナユタンも食べよう!」テウィッ!

那由他「う、うん」ニコッ


こういう時……この母親役の女性は最高に良い女なのだ、という黒妻さんの言葉を思い出す。
第一位よ。少しは空気の読み方見習え。
318 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 22:24:16.34 ID:/ZF6Kj60
KY発言から数分後……打ち止めちゃんと那由他ちゃんは満腹になったようで、仕上げのアイスを美味しそうに食べている。
お肉の方はまだ残っていたので自分達はもう少し、夕餉を続けた。


一方通行「……タレ取って」モキュモキュ

香焼「……ん」スッ・・・

一方通行「ン……」パシッ

黒妻・固法「「……」」ジー・・・

香焼「温度上げて欲しいっす。ホルモン焼けない」モグモグ

一方通行「ン」キュッ

香焼「ども」ジュー・・・

黒妻・固法「「……」」タラー・・・


何か……気まずい。


黒妻「……お前ら、何かあったの?」ジトー・・・

香焼・一方通行「「別に」」キッパリ

固法「そ、そう……」タラー・・・


少女二人はテレビのバラエティに喰いついて楽しそうだというのに……此方は最早折角の高級和牛の味も分からなかった。


黒妻「そ、そういえば黄泉川さんと芳川さん元気か?」

一方通行「普通」モキュモキュ

黒妻「……おう」

固法「す、スープおかわり要る?」

一方通行「いらない」モキュモキュ

固法「……そう」


オマエは幼女を通してしか会話できんのか? 誰か、コイツに人間関係何足るかを教えてあげて下さい。
319 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 22:40:55.33 ID:/ZF6Kj60
一方通行「……ジャリン娘とは連絡取ったのか?」モキュモキュ

香焼「え……い、いや」ピクッ


最愛の事か。いきなり何を言うかと思えば、それかよ……と睨みつけたかった。


一方通行「……オマエらは?」チラッ

黒妻「……一応、オレは見舞い行った。美偉は行かせてない」

固法「行きたかったんだけど、浜面くんと理后ちゃんが今は控えてくれって……でもせめて先輩だけはね」ニコッ・・・


それは、初耳だ……


香焼「……どうでした?」

黒妻「顔色は良かったよ。ただ今は能力使わない方が良いってだけだったから、安静状態だ……何でも乱雑開放起こした様子だとか何とか」

一方通行・香焼「「っ……」」


やはり、あの電波女の所為か……


香焼「……こ――」ギリッ

一方通行「押さえろ、糞ガキ……あ。固法さン、茶ァ下さい」モキュモキュ

固法「あ、うん。どうぞ」スッ

黒妻「……オマエ、敬語使えるんだな」ポカーン・・・

一方通行「……ふン」ズズズ・・・

香焼「―――……っ」グッ・・・


原因の一端に止められた……といっても、実際この人の立場が分からない。
気の所為かもしれぬが、第一位はやけに最愛に優しいというか、甘い気がする。何か有るのだろうか……
320 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 23:18:38.93 ID:/ZF6Kj60
 ―――PM07:30、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……



その後、全員で後片付けをした。といっても第一位が居た御蔭で食器洗いは一分足らずで終了した。
一家に一人、一方通行。

今女共は姦しく風呂に入ってる。男共は居間で一息いれていた。


黒妻「……んで、オマエら何があった?」ズズズ・・・

一方通行・香焼「「……」」シーン・・・


さっきからこの調子だ。


黒妻「『そっち』の話だってんなら詮索はしないが、もし打ち止めちゃんが関わってるなら教えろ。それであればオレが知り得る権利だ」

一方通行「……別に、喧嘩って訳じゃねェよ」

香焼「超電磁砲……御坂さんに、説教されたんす。自分と最愛が……第一位はその場に居ただけっす」

黒妻「そうか。だが様子見る限りでは解決してないようだが」

香焼「……良いっす。自分達の立場を分かった上での結果っすから」

一方通行「あのジャリン娘も同じだ……最も、俺も人の事如何こう言える立場じゃ無ェがな」フンッ


成程。思春期の悩み相談みたいだな、と心中苦笑した。


黒妻「多分だが、例え御坂ちゃんに何言われてもお前らの気持ちはそうそう変わらないんだろ?」

香焼「ええ、そのつもりっす。第一位には悪いけど」チラッ

一方通行「だから別に俺はオマエらに如何こう言わねェっつの。あのアマがグチグチ騒いでただけだろ」ッタク・・・


様は御坂ちゃん(女)のヒステリックで、自分ら(男)は関係無いってわけか。


一方通行「ハッ! 良ィ例えだ」カカカ

香焼「……ええ、まぁ」ハハハ・・・
321 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 23:28:06.39 ID:/ZF6Kj60
それならそうでいい。喋りが過ぎる男は恰好悪いからな。


黒妻「……で? 何かそちらから、質問は?」

一方通行「……それはあの『木原』ンガキについてか?」

黒妻「何でもいいぜ。オレの知ってる限りはな」フフッ


無論、オマエからも教えて貰うが。


一方通行「……別に。アイツの一族とは縁があるってだけだ」

黒妻「ん」

一方通行「それよりオマエが何処でアイツを拾って来たかが気になンだがよォ」ジー・・・

黒妻「……墓場だ」

一方通行「は? 何ですか? ホントに捨てられてたってか?」ポカーン・・・

黒妻「……テレスティーナといた」

香焼・一方通行「「っ!?」」


そりゃ驚くよな。


黒妻「オレと美偉が『ダチ』に線香上げに行った時、同じブロックに居た」

香焼「それってまさか」

黒妻「ああ。あの子の家の墓だ」

一方通行「……」

黒妻「……一方通行。後で話がある。那由他ちゃんとオレとの三人でだ。いいな」キッ

一方通行「……ああ」コクッ


そろそろ三人が上がって来る頃だ。もう少し待とう。
322 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 23:39:32.12 ID:/ZF6Kj60
そして三人が上がってきた。
香焼を風呂に行かせ、美偉に打ち止めちゃんの相手をするよう頼み、オレらはベランダへ移動した。

パジャマ姿で髪をおろしている那由他ちゃんは何処かテレスティーナに似た雰囲気があった。


那由他「話って?」

黒妻「ん……あの日の話だ。墓参りの」

一方通行「……」


一方通行はただ、目を瞑って柵に寄り掛っている。
オレは癖で煙草を取り出しそうになったが、那由他ちゃんの居る手前、抑えた。


黒妻「あの日、オレと那由他ちゃんはKブロックに墓参りに行った」

那由他「……うん」コクッ

黒妻「その時だ……互いの墓に、同じ供花を見つけたんだ」


白い造花の、カーネーション。


黒妻「……オマエだな」

那由他「え……」ドキッ

一方通行「……さァ」フンッ

黒妻「管理人の爺さんが言っていた。杖をついた白っぽい少年……オマエ以外いないだろう」


駒場の墓と……『木原』の墓。


一方通行「……寒ィ。中に戻る」クルッ・・・

那由他「待って!」グイッ!

一方通行「……」キュインッ!

那由他「あ」カキンッ!


反射させやがった。このままでは戻る……仕方ない。『奥の手』を使う。
323 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/14(日) 23:48:18.11 ID:/ZF6Kj60
黒妻「……待て」ガシッ!

一方通行・那由他「「っ!!?」」


オレは一方通行を『掴んだ』。


一方通行「テメェ……」グッ・・・

那由他「な、え、ど、どうやって……」キョトン・・・

黒妻「……逃げるな」ギロッ


打ち止めちゃんから聞いていた。
もし、コイツが何か取り返しのつかない事をしそうな時は……首のチョーカーから伸びてるスイッチを握れ、と。


黒妻「話をしてやれ」

一方通行「っ……」

黒妻「オマエだけだったんだ……この子の『救い』になったのは」ギロッ

那由他「あ、ぅ……」


墓荒しにあった『墓』の中、唯一、凛と在ったカーネーション。


黒妻「オレが居て話し辛いなら出ていく。ただ……この子にだけは真実を話せ!」グイッ!

一方通行「ぐゥっ!!」ヨロッ・・・

那由他「く、黒妻さん!」


我に戻り、スイッチから手を離す……障害者相手にやり過ぎたか。


黒妻「……話してやれ」

一方通行「チッ……」ギリッ・・・

那由他「……お願い、します」ペコッ


そして、悲劇を聞かされた……―――
337 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/15(月) 21:18:58.55 ID:838sEwI0
 ―――PM07:45、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……



静寂。

中途半端に掛けた月が、二人を照らしている。
オレは丁度月光から陰になっている隣のベランダとの塀に寄り掛り、二人を見守った。何時の間にか紫煙を吹かしていたが、御愛嬌。

秋口の澄んだ空気の中、先に言葉を発したのは……那由他の方だった。


那由他「誰に、お花をくれたの? 最近なら幾途兄? 兆過姉? それとも……大爺様」

一方通行「……」

那由他「アナタは……被験者だったの?」


物々しい言葉が飛び出た。しかし、口は出さない。
一方通行の能力開発については、正味は知らねど、風体を芳川さんに聞かされている。

第一位は暫く無言の後……微かな声で呟く。


一方通行「特力研」ボソッ

那由他「え」

一方通行「虚数研、叡智研、霧ヶ丘付属……アイツが居たのは、確か……―――だったな」

那由他「―――……じゃあ」

一方通行「……木原、数多」


少女は、目を丸くした。


那由他「そう……数多オジさんの……」

一方通行「……まァ、アイツも俺を制御しきれなかったがよォ。『悪党』何たるかは、耳タコで叩き込まれたぜ」ククク・・・

那由他「……そう」


歪な笑みを浮かべる一方通行。それを見て、嬉しそうな、悲しそうな、複雑な表情を浮かべる那由他。
もし話を掴めずただ単に傍から二人を見ていれば、実に可笑しな光景だっただろう。
338 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/15(月) 21:42:38.47 ID:838sEwI0
突如だった。


那由他「……ごめんなさい」ペコッ

黒妻・一方通行「「っ!!?」」


第一位に頭を下げる那由他。その行動にオレらは動揺を隠せなかった。


一方通行「何で、謝ンだ」

那由他「……オジの『やり方』は知ってる。一族の中でも暴走児って呼ばれてたもの。まさに……最盛期の大爺様(幻生)そのものだ、ってね」

一方通行「……大した事ァ無ェよ」フンッ

那由他「でも、ごめんなさい」ペコリ・・・


少女は再度、今度は更に深く、頭を下げた。
少年はそれを見た後……何も言わず、カーテンが掛かって見えないリビングの方を向く。美偉と打ち止めの声がした。


一方通行「死因は、知ってンのか?」

那由他「え、えっと……」チラッ


オレの方を向く那由他。何だ?


一方通行「ソイツなら気にすンな。曲りなりにも元スキルアウトの頭張ってた男だぜ。『裏』が何なンかぐれェ知ってらァ」


ああ、そういう事か……って、おい。煙草落としそうになったっつの。


黒妻「馬鹿言え。オレは真っ当なカタギだっつの」フゥ・・・ジジジ・・・

一方通行「カカカ! どうだか」ククッ・・・

黒妻「ったく……まぁ外せっつぅなら外すぞ」チラッ

那由他「……大丈夫」コクッ


そして、少女は紡いだ。
339 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/15(月) 22:18:14.88 ID:838sEwI0
那由他「とある暗部の特殊部隊隊長だった。『0930』事件、いえ、アレはテロね……兎角、その最中殉職とだけ」

一方通行「……『魔女(テレスティーナ)』かジジィ(冥土帰し)から、何か聞かされてンのか?」

那由他「何も……二人とも何か隠してるっぽいけど、教えてくれないよ」

一方通行「……だろォな」フンッ


オマエは、知ってるのか。


那由他「知っているなら、教えて」

一方通行「……」

那由他「あんな人でも、身内なの……お願い」ペコッ

一方通行「……チッ」スッ・・・


頭を下げる少女。黙ってそれを見詰める少年。
何も言わない第一位をオレが再び強請ろうかと考えた、次の瞬間……


 ――カチッ・・・・・


黒妻・那由他「「っ!?」」


……何を思ったか、第一位は自身で首下に手を伸ばし、スイッチを『オフ』――後で知ったが、能力のオンオフらしい――の状態にした。
そして静かに、告げる。




 ―――俺が、殺った―――




那由他「なッ……」ズキッ・・・

黒妻「……っ」


驚愕の事実。那由他の肩が小刻みに揺れ出した。しかし、一方通行は動じない。
少女は声を震わせながら、少年に問うた。
341 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/15(月) 23:24:36.34 ID:838sEwI0
那由他「ど、して……」

一方通行「……あン時、俺の『敵』だった。それだけ――」


 バチンッ!!


一方通行「――が、ァ……っ」グッ・・・

那由他「ハァ……ハァ……ッ」キッ!


少女の張り手が物凄いスピードで少年の頬を捉えた。
反射は、無い。
口端から、血……『鋼』の一撃は、一方通行の絹の様に脆そうな口内を切らせるには十分以上。

己の力量と、自我の冷静さを忘れた那由他は、まだまだ目の前の殺人鬼を殴ってやろうと、勢い良く押し倒し馬乗りになって胸倉を掴む。

……流石に、止めねばなるまい。


黒妻「そこまでだ、那由他」ガシッ!

那由他「ッ」グググッ!


大の男の制止を振り解こうとする、機械少女の馬力。


黒妻「っ……冷静に慣れ。死ぬぞ」グイッ!

那由他「……あ」ピタッ

一方通行「……ふンっ」ペッ


我を取り戻し、少年から手を離す少女。少年は押し倒された状態で、口内に溜まった血をベランダの下へと吐き捨てた。
那由他を引き離し、直ぐ、オレは言った。


黒妻「第一位。さっきのじゃ理由になって無い」

一方通行「……」ジー・・・

黒妻「オマエが『何方』にいて、那由他のオジさんが『何方』にいたのか、立場を教えろ」
342 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 00:34:35.69 ID:R/A2aXA0
暫時、少年の戸惑いが読み取れた。

今更だが……コイツがカタギ(真っ当な人間)ではないのは知ってる。
那由他のオジに『限らず』、人を殺してきたのやもしれない。
しかし、殺生たる所以は別だろう。シリアルキラーじゃあるまいに、理由も無しに人を殺めん。


黒妻「教えられない程、疚しい理由か?」

一方通行「……」ボー・・・


少年は、カーテンが掛る部屋の方を見遣るだけ。
長い沈黙の後……呟いた。


一方通行「俺は、『アイツ』の為なら何だってしてやらァ」ボソッ

黒妻「……」チラッ

一方通行「例えアイツが望まなくても、アイツを守る為なら人だって殺せる」


……そういう事か。


黒妻「……那由他」

那由他「ぁ……ぅ、そ……」ブルブル・・・

一方通行「信じなくても良い、殺した事実は変わンねェ」


那由他のオジが、打ち止めを……襲ったのか。
刹那、ペタリと膝をつく音がした。同時に、小さな嗚咽。


那由他「オジ、さんが……っ……打ち止め、ちゃ……を……ぅ……」ズルッ・・・

一方通行「……ふンっ」チッ・・・


やり場の無い感情。そして、ただただ残酷な会話。
343 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 00:58:45.53 ID:R/A2aXA0
那由他「ううぅ……っ……ぇっぅ……」ポロポロ・・・

黒妻「那由他……」グッ・・・

一方通行「……」ボー・・・


オジが打ち止めを襲った。そして、そのオジが打ち止めの『守り人』に殺された。
怒りと悲しみ。幼い那由他には重すぎる。
感情が処理できず、ただ泣き崩れるのも仕方が無い。

オレは吸い掛けの二本目の煙草を揉み消し、静かに、那由他を抱擁してやった。


一方通行「オマエになら殺されても仕方が無ェンだろォが……生憎、死ンでやれねェんだ」

那由他「えぅ……ごめっ……ひっく……なさぁ……っ……うぅ……」ポロポロ・・・

黒妻「泣くな……残酷だが、『何も』覆らねぇよ」


されど泣き止まず。義眼からも、透明な雫が流れていた。
今出来る事、それはこの壊れてしまいそうな少女を暫く抱いてやる事だけだった……―――



 *  *  *  *  *  *  *  *  *



固法「…… (また、内緒話なんですね)」グッ・・・

打ち止め「ミィ?」

固法「ん、あ、いや。何でも無いわよ。さ! 次もスピードで良い?」

打ち止め「うーん……そろそろお兄ちゃん来るからちょっと休憩! ってミサカはミサカは背伸びをしてみたり」ンンー!

固法「……ふふっ」ニコッ・・・



冷蔵庫「……はぁ」ウィイイィン・・・・
344 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 01:35:57.50 ID:R/A2aXA0
 ―――PM08:00、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……




黒妻「……落ち着いたか」ポンッ

那由他「ええ……っ……ごめん」グズッ


御蔭でお気に入りのロンTがグチャグチャだが、大した事はない。うん。
さておき、少女と少年は再び向き合った。


那由他「……始めに」ジー

一方通行「ン」フイッ

那由他「きっと、私はアナタを許せない。一生ね」

一方通行「あァ……構わねェよ」コクッ

那由他「でも、それ以上に……オジを許せない」

黒妻「……」カチッ・・・ジジジ


併し、天瓶の一方にはもう何も無い。


那由他「死者に鞭打ちだけど……自業自得だもの。アナタをモルモットに。そして純粋無垢な打ち止めちゃんをターゲットにした」

一方通行「……俺が嘘付いてンのかもしンねェぞ」

那由他「帰ったら先生(冥土帰し)に聞く。それで嘘だと分かったら……その時はその時」

一方通行「……」

那由他「でも多分、ホントなんだと思う。オジの性分を考えれば……」

一方通行「……御人好し」フンッ


オレも、コイツが嘘を言ってるとは思えない。目を……『視線』を見れば、分かる。
ずっとカーテン越しの『守るべき』少女を見遣っていた。
345 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 02:06:54.84 ID:R/A2aXA0
那由他「そして……一番は、やっぱり……ごめんなさい」ペコッ

一方通行「っ……頭上げろ。テメェは何もしてねェ」チッ

那由他「良いの……決めたてるから。どうやっても『縁』はね、切れないの。テレスティーナが言ってた」


縁(えにし)、か。一族の事だろう。


那由他「あんな人でも、オジなのよ……もうアナタに謝れる人間は私かテレスティーナしかいない。だから、ごめん」

一方通行「……」フンッ

黒妻「……」フーン・・・


まぁ、どうしていいか分からないだろうな。素直じゃねぇ人間にとっては。


那由他「……言いたい事は沢山あるよ。でも、一つに纏める」

一方通行「……何だ」

那由他「約束して」キッ・・・


第一位より頭一つ小さい少女が、グイと詰め寄った。


那由他「極力人を傷つけず、打ち止めちゃんを守る事」

一方通行「あー……無理」キッパリ

那由他「そ、即答しないでよ」エー・・・


だろうなと、オレも苦笑。


那由他「えっと……彼女が『何者』であるかは分からない。事情があるようだから今は聞かない」

一方通行「あァ。首は突っ込まない方が良ィな」フンッ

那由他「……でも、人を傷つけないで」


きっと彼女の美学……いや、義学だ。風紀委員エースだけあり『正義』観が並々では無いのやもしれぬ。
346 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 03:36:02.33 ID:R/A2aXA0
一方通行「……努力する。だが約束は不可能だなァ、とだけ言っとく」

那由他「そう……道を誤らないでね。オジの様な人間になっちゃダメだから」

一方通行「はンっ! そりゃ無ェぜ」カカカ


歪な笑みだが、信用できる気がした。


那由他「うん……」コクッ

黒妻「大丈夫だ。何だかんだで、コイツは小さい子との約束は守るタイプ」ニヤッ

一方通行「どォいう意味だテメェ」ケッ


深い意味は無いよ、うん。


那由他「私も……守れる限り、あの子を守るから」ニコッ

黒妻・一方通行「「……」」ピタッ

那由他「姉妹っていうか……何なのかな。分かんないや」ヘヘヘ・・・

一方通行「……オイ。やっぱまた子供出来てンじゃねェか、ワカメ」


禁句を言ったコイツに脊髄反射的グーパン。


一方通行「効かねェ」カチッ

黒妻「て、め……ざけやがって」キュインッ! ガキンッ!


あー、やっぱさっきスイッチ壊しときゃ良かったな。畜生。


那由他「兎に角、打ち止めちゃんの為にも簡単に命を奪わない事。協力するから……お願いね」ニコッ

一方通行「……ふン」ポリポリ・・・


このツンデレーターめ。後ろ向いて赤面してやがる。
347 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 03:54:38.05 ID:R/A2aXA0
 一寸・・・・・


那由他「とりあえず、私の話は終わり。今度テレスティーナにもアナタに礼を言わせるから」

一方通行「止めろ、アレとは逢いたくねェ。もれなく疫病神(垣根)が付いて来っから」タラー・・・


その疫病神に毎日会ってる気がするが……どうしてだろう。主に家電的な意味で。
もとい、そろそろ寒かろう。話を纏めて中に入れるか。


黒妻「良かったじゃねぇか。味方が出来て」

一方通行「……要らねェっつの。ンなの」ケッ


まだ捻くれるか。思春期を殺した少年気取りめ。


黒妻「オマエはもっと人を頼れ……特に打ち止めに関しては、だ」

一方通行「……」

黒妻「『深い』意味じゃねぇぞ。それも、必要ならば頼まれなくても手を貸すが」


少女も、頷く。


黒妻「黒妻家(ウチ)の全員も、黄泉川家(オマエ)んとこも……御坂ちゃんも、打ち止めちゃんの味方なんだ」

一方通行「……」クルッ・・・

黒妻「それはオマエの味方でもあるよ……何かあれば頼りな」

一方通行「……考えとく」カツカツ・・・


それだけ告げて、部屋に戻る第一位。照れ隠しか……愛い奴め。
じゃあ、オレらも戻るとするか。


那由他「ふふふ。うん……あ」ピタッ

黒妻「どうした?」

那由他「……黒妻さんの方、聞いたっけ?」


……忘れてた。
348 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/16(火) 04:17:41.40 ID:R/A2aXA0
いや、ふと気付いたが後でいいだろう。何故なら……


黒妻「……出刃亀が」ボソッ・・・クルッ

那由他「……へ?」ポカーン・・・


再度、外側に顔を向けたオレに呆気取られる那由他ちゃん。


那由他「どうしたの?」

黒妻「……いや、何でも無い」ニコッ


そして那由他ちゃんを中に入るよう促し、自分も後に続く。だが、部屋に戻る前に一言。


黒妻「そうそう……オレは打ち止めちゃんを世話してくれる、『近所のメイド見習いさん』の味方でもあるつもりだぜ」ボソッ


ああ寒い寒い。風呂入る前に、話の続きがてら第一位とコンビニまで中華まんでも買いに行くかな。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *



まったく、裏を掻くのは好きだが掻かれるのは好きではない。まして私情では尚更なのだが。

舞夏の……味方。
今まで、自分以外いなかったな。そんな明確に言う人間。


「あにきー。何時までトレーニングしてるんだー?」

「……ん。今戻るぜぃ。一緒にお風呂入るかにゃぁ? それとも一緒にトレーニングの続きが良ーい?」ニシシ!

「両方一分3万だよー」

「お願いします」キリッ!

「や、やっぱ冗談……早く風呂入っちゃって」

「にゃはは。あいよぅ」テクテク・・・


身内の味方は『味方』、か。オレは……―――
349 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました[saga]:2010/11/16(火) 04:19:21.56 ID:R/A2aXA0
はい。此処までっすね……お休み。

次回は小ネタでも挟むか。リクある? では! ノシ
350 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/16(火) 07:40:22.75 ID:A5atLAAO
超乙ゥ!
切ない…けど、
なんとか互いに理解・和解できたかな

リクは 一方さんの「きまぐれ」で那由多の風紀委員の仕事を手伝ってあげる。なんだかんだ言って
351 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/16(火) 17:30:56.07 ID:D7d4BoDO
あわきん分が足りない。もしくはくぎゅーゼ分ww
353 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 01:15:43.49 ID:4hH5FWU0
こんばんわ。短いの投下。


>>350は短いの難しいっす。一方さんには先に駒場の方のキマグレしてもらわんと。

>>351、アニェーゼは近い内書きます。あわきんは、どんなあわきんがいいのん?


という事で>>329をちょこっと書くよ!
354 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 01:40:46.92 ID:4hH5FWU0
 ―――とある日、とある夕方、黒妻宅……香焼side……



何でも無い日。自分は例の如く黒妻さんの家にお邪魔した。
理由が無くて訪れるのは何やら申し訳ない気もするが、黒妻さんや固法さんから言わせれば些細な事らしい。

現在、自分は一人で留守番。
というのも大黒柱はお仕事(バイト)に出かけていて、固法さんと打ち止めちゃん、那由他ちゃんは夕飯の買い物をしている。
最愛は後々来ると連絡が来たが……どうだろう。忙しいみたいだからな。

兎角、自分は一人で部屋に置いてあった誰のか分からない漫画に読み耽っていた。


 ピンポーン・・・・・


香焼「ん?」ピクッ・・・


最愛か?


香焼「はいはい。どーぞ」ガチャッ・・・

舞夏「いぃっよっす! 何だ一人な―――」


 バタンッ!


……苦手(厄介)な人が見えた。気の所為だろう。


 ピンポーン・・・ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン・・・・・


香焼「五月蠅ぇ! 近所迷惑っす!」ガアァッ!

舞夏「―――……いや、無視は無いと思うぞー。御近所さんだろうが」プンスカッ!

香焼「いや、土御門妹。アンタ、繚乱の女子寮だろうが」

舞夏「気にしたら負けだぞー。香焼ちゃんだって実際は別のお家だろー」


まったく、ああ言えばこう言う。それで、何の用なんだ。
355 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 01:58:01.85 ID:4hH5FWU0
舞夏「何って訳じゃ無いよ。そこで義妹さんと一緒になったから来たのだよ」

香焼「……は?」


気付く。舞夏の後ろに呆れ顔の最愛がいた。
まぁきっと、この掃除用ロボにチョコンと乗っかったメイド見習いさんに付き纏われたのだろう。お疲れ様です。


絹旗「ど、どうも。今日書類仕事だけだったので早めに来ました」エヘヘ

香焼「う、うん。そっか……おかえり、最愛」ニコッ

絹旗「た、ただいま」ドキッ・・・


おかえり。ただいま。そんな当たり前の言葉すら中々吐けない学園都市。
自分達にそれを言わせる場を設けてくれている黒妻さんと固法さんには、幾ら感謝してもし足りないと思う。


舞夏「……ふーん。 (これはこれは、中々)」ニヤニヤ

香焼「……な、何すか?」

舞夏「いやいや。良い『義兄妹』だねぇと思ってさー」

香焼「悪いかよ?」ジトー・・・

舞夏「滅相も無い! 寧ろGJと讃えたいねぇ」

絹旗(兄妹、かぁ……)ハァ・・・


本当にこの義妹といい、あの義兄といい道化師だと思う。
自分は溜息をついた後再びリビングへ戻った。後ろから最愛が付いて来る足音……とプラス一。


香焼「……」ジロッ

舞夏「なぁに?」ニコッ

絹旗「あ、あはははは……」タラー・・・


なぁに、じゃ無ぇよ。何勝手に上がってんだアンタ。
若干、馬鹿姉共と同じ臭いがするこの土御門妹に対し、軽くキレそうになってしまった。
356 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 02:29:35.99 ID:4hH5FWU0
舞夏「いや、モノ荒しって訳じゃないんだぞー」

香焼「じゃあ何すか」ジトー・・・

舞夏「漫画だよ。黒妻さん家の若奥様に貸してたからさー。勝手に持ってって良いよってね」

絹旗「姉貴さん、舞夏さんから本を借りたんですか? (どんなのか超想像できない……)」

舞夏「そだよ。あのお姉さん、ああ見えて際どいジャンル好きみたいだからねぇ」ニシシ!


……止めて下さい。身内のそういう話聞かせるな。
そんな事を思いつつ、メイド見習い殿は辺りを見回し始めた。


舞夏「ああ、それそれ」ピシッ

香焼「え、それ……」


自分がさっき呼んでいた漫画だ。


香焼「別に際どくないっすよ、それ」

舞夏「……」ジトー・・・

香焼「な、何だよ……」

舞夏「香焼ぃ……戦闘とか熱いとこ優先速読して、内容とか設定把握後回しにするタイプだろー」

香焼「ま、まぁ……確かに」

舞夏「……ま、いいや」


まさか、そんなに際どい内容だったのか?


舞夏「主人公(旦那)の浮気を知ってるけど、家族と自分の前では最高の夫であるから黙ってる……ってのがヒロインの設定」

絹旗「……うわぁ。 (麦野、超疑われてる証拠ですよねー)」タラー・・・


止めて下さい。黒妻家はとてもアットホームな家族です。
357 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 02:50:13.72 ID:4hH5FWU0
舞夏「まぁまぁ。フィクションだぞー、真に受けるなよぅ」アハハ

絹旗「も、勿論ですとも」アハハ・・・


用が済んだらお帰り下さいませ。貴女は自分らには毒な気がする……


舞夏「毒も使い方を帰れば薬だよ。それじゃあ……あ」ピタッ


まだ何か?


舞夏「そうそう。これ」ドサッ

絹旗「……別の漫画、ですか?」

舞夏「打ち止めとナユタンが貸してくれーってね。安心してよ、健全だから。スポ魂少女もの」ニコッ


当たり前だ。あの二人(小学生)が不健全なもの読むものかっての。


舞夏「香焼の健全・不健全の境界線が知りたいところだけど止めとくぞー」

香焼「兄貴(元春)と同じような事聞くな!」ガァ!

絹旗「(あのグラサンって……普段こんな感じなんですかねぇ) そういえば、舞夏さん超沢山漫画持ってますよね」

舞夏「お。最愛も貸して欲しいか? 漫画の相談は、この舞夏お姉さんにするといいぞー」エヘンッ!

絹旗「き、機会があれば是非に……」タラー・・・


きっと貴女に相談事をするのは、貴女のお兄さんが馬鹿やり過ぎて手に負えない時だけでしょう。


絹旗「そういえば、姉貴さん達は買い物でしたっけ?」

香焼「うん。後少しで帰って来ると思うけど……ん?」bbbb!


携帯が鳴ってる。メールの様だ。


香焼「『二人がアクセサリー店寄りたいって言うから、ちょっとだけ遅れます by母より』……だって」

絹旗「は、母って……」アハハ・・・

舞夏「ほぉう……」ニヤニヤ・・・
358 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 03:15:05.07 ID:4hH5FWU0
という事は、夕飯は少し遅れるな。適当に御菓子でも摘まむか。


舞夏「話をしよう」

香焼・絹旗「「っ!?」」ビクッ!

舞夏「あれは何時だったかなぁ……そうだ、兄妹になって2、3ヵ月って頃だったかな」

香焼「い、いきなり何を……」

舞夏「始めは他人行儀だったんだけど、徐々にそれも無くなってきて……でもまだ気まずかったなー」

絹旗「お、お兄さんとの話ですか?」

舞夏「……さぁ」ニヤリ・・・


茫然と立ち尽くす自分らの周りを、ゆっくりテクテク一周する舞夏。


舞夏「ただ、二人とも思春期だったんだよ……兄は黙ってればイケメン。加えて大抵家でなんか話す訳無いだろー」

絹旗「……それで」ゴクッ

香焼「ちょ、さ、最愛?!」

舞夏「いやぁ基本寡黙だったぞー。だからといって陰険という訳でも無い。まぁそれなりに優しいの兄だと思ってたね」

香焼(土御門が、寡黙? ……本当かなぁ)

舞夏「でもね、ある日気付いたんだ……その優しい兄は皆でいる時の兄だったんだって」クスクス・・・

絹旗「う、うんうん……」ドキドキ・・・

香焼「……あー、うん。御菓子出すね」テクテク・・・

舞夏「『二人きり』。そんな状況が中々無かった……今思えば、兄はその機会を待っていたのかもしれない」

香焼「御茶で良いっすか? コーヒー?」

絹旗「超黙っててください! 話が聞こえません!」


……勘弁してくれ。
359 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 03:15:38.61 ID:4hH5FWU0
という事は、夕飯は少し遅れるな。適当に御菓子でも摘まむか。


舞夏「話をしよう」

香焼・絹旗「「っ!?」」ビクッ!

舞夏「あれは何時だったかなぁ……そうだ、兄妹になって2、3ヵ月って頃だったかな」

香焼「い、いきなり何を……」

舞夏「始めは他人行儀だったんだけど、徐々にそれも無くなってきて……でもまだ気まずかったなー」

絹旗「お、お兄さんとの話ですか?」

舞夏「……さぁ」ニヤリ・・・


茫然と立ち尽くす自分らの周りを、ゆっくりテクテク一周する舞夏。


舞夏「ただ、二人とも思春期だったんだよ……兄は黙ってればイケメン。加えて大抵家でなんか話す訳無いだろー」

絹旗「……それで」ゴクッ

香焼「ちょ、さ、最愛?!」

舞夏「いやぁ基本寡黙だったぞー。だからといって陰険という訳でも無い。まぁそれなりに優しいの兄だと思ってたね」

香焼(土御門が、寡黙? ……本当かなぁ)

舞夏「でもね、ある日気付いたんだ……その優しい兄は皆でいる時の兄だったんだって」クスクス・・・

絹旗「う、うんうん……」ドキドキ・・・

香焼「……あー、うん。御菓子出すね」テクテク・・・

舞夏「『二人きり』。そんな状況が中々無かった……今思えば、兄はその機会を待っていたのかもしれない」

香焼「御茶で良いっすか? コーヒー?」

絹旗「超黙っててください! 話が聞こえません!」


……勘弁してくれ。
361 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 03:37:48.97 ID:4hH5FWU0
舞夏「兄は意外と忙しい人中々家には居なかった。兄、だけではなく家族全員なんだけどねー……基本妹は家政婦さんと二人きりだったよ」

絹旗「そ、それでそれで」コクッ

舞夏「うん、ある日ね。家政婦さんがお休み貰いたいって言ってきたの。まぁ幸い妹も一人で家事が出来る様にはなってたし、OKだった」

香焼「じゃあ何で家政婦なんか雇ってる――」

絹旗「五月蠅い! 舞夏さん。つ、続けて下さい!」

香焼「―――ん、だ……はぁ。コーヒー置いとくよ」コトッコトッ

舞夏「どーも。それで……妹は何をする訳でもなく家に居た。テレビも付けず、漫画も読まずねー。ご飯も食べる気がしなかった」

絹旗「うんうん」ドキドキ

舞夏「夕暮れ時、リビングに一人で物思いに耽っていた。新しい家の事、新しい親の事……そして新しい兄の事」

絹旗「……っ」コクコクッ!


最愛、完璧話の虫だよ。


舞夏「その時! ……静かながらも、足音がした。今、家には自分しかいない筈!」

絹旗「あわわ……」ドキドキ・・・

舞夏「瞬時に後ろを振り向くと其処には……兄」

香焼「いや、自分の家なんだから居ても可笑しく――」

絹旗「静かに!」

香焼「――……はいはい。出てきますよー」テクテク・・・

舞夏「何時帰って来たの、と聞こうとしたが……兄の雰囲気が可笑しい。一体如何した―――」

絹旗「そ、それで!?」ドキドキ!


まったく、本当だか嘘だか分かんない話に本気なっちゃって。

自分はこのアパートの立ち入り禁止の屋上(屋根)に行く事にした。この時間ならステイルがいるかもしれない。
直ぐ戻ると言い置き、ポートバックを持って玄関を出た。
364 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 04:32:53.63 ID:4hH5FWU0
 ―――とある日、とある夕方、黒妻宅……絹旗side……



それから暫くの間、私は舞夏さんの話に釘付けだった。


舞夏「――……そう。結局は『血は水より濃い』。もしくは『兄弟は他人の始まり』の両極端しかないんだよ!」

絹旗「お、おお!」ドギマギ!

舞夏「とりあえず、私の話は終わりだよー……まぁ上手くやりなよ、絹旗最愛」ニヤリ!

絹旗「にゃ、にゃぜ!」

舞夏「ふふ~ん、舞夏お姉さんにはお見通しだぞー。大丈夫。私は『歪み・禁断・略奪・等々…』愛は応援するぞー」ニヤッ

絹旗「~~~ッッ!!」カアアァ・・・///


別に、香焼とはそういうアレじゃ……


舞夏「むふふ。まぁ私は傍観に徹しますかなー……あ、そうそう」ピタッ

絹旗「な、何ですか!?」ドキッ

舞夏「香焼、最近大人っぽくなったと思わないかー?」

絹旗「え!?」

舞夏「いやぁ、体つきというか喋り方とか……何でだろうねぇ? エリート校の学生なのに」

絹旗「……」

舞夏「誰か、守りたい人でも出来たのかなー……なんて。舞夏は舞夏はメルヘンチックな事言ってみたりー」ニヤニヤ

絹旗「っ!!? ら、打ち止めちゃんの真似で超意味不明な事言わないで下さい!」

舞夏「へいへい。まぁでも……気を付けなよー」

絹旗「な、何が……」

舞夏「『兄』も……『男』だよぅ? 加えて大人になったら……フヒヒ」ニタァ・・・


不気味な事を言って、メイド見習いは部屋から出ていった……男、かぁ……
366 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 06:15:38.24 ID:4hH5FWU0
ふと、考えてみる。私と香焼の関係は何だ?

友人? 兄妹? それとも……


絹旗「な、何を馬鹿な事を……」カアァ・・・///


深い意味は無い。しかし、舞夏の話は実際濃いものがある。
それに、前にアニェーゼに『タダの友達』と言われた際、正直イラっとした。


絹旗「い、いや、でも……」ドキドキ・・・

『香焼、最近大人っぽくなったと思わないかー?』

絹旗「そ、それは、皆のお兄ちゃんとして……」


でも、それなら最近口調が厳しいのは何故だ。
前は優しいというか、なんかナヨナヨした雰囲気だった気がする。


絹旗「ち、違う! ちょ、ちょっと意識し過ぎですよね……きっと舞夏さんの話の所為です」ウンウン


だと、いいのだが……



 *  *  *  *  *  *  *  *  *



 ガキンッ! ボワッ! シュンッ!


香焼「ハァ……ハァ……」スタッ

ステイル「……このぐらいで良いんじゃないか? 意外と時間経ったよ」フゥ

香焼「……フゥ。そうっすね。ありがとう」スッ・・・


アパートの屋上(屋根)に軽い人払いの結界を張って、ステイルとトレーニング。
といっても、模擬実戦形式なので自分がステイルの胸を借りるというものだ。
367 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 06:40:43.32 ID:4hH5FWU0
最近、時間を見つけてはステイルやアニェーゼ、アンジェレネ等とトレーニングをしていた。
皆、自分より強い連中ばかりなので、アチラにとって準備運動程度にしかなってないだろうが……恥を忍んでお願いしている。


ステイル「まぁ、強くなってるんじゃないか? 少なくとも低級火炎は捌けてる」スッ・・・

香焼「……どうだか」ハァ・・・

ステイル「鋼糸? だったか、あのワイヤーの使い方は悪くないよ。ただ強度を計算に入れるべきだね」カチッ・・・カチッ・・・

香焼「助言どうもっす」スゥ・・・カチッ

ステイル「ん。サンキュ」ジジジ・・・フゥ・・・


慣れない手付きで百円ライターを弄るステイル。炎のルーンで火を点ければ良いモノの、節度調整難しいのだろうか。

ステイルは高い確率でこのアパートの屋根にいる。此処に居なくても近くの……要は『彼女』が見える場所に駐在している。
故に日本に居る時はこうやって相手をして貰えるのだ。

五和か浦上辺りにもお願いすれば稽古をつけてくれそうだが……ハッキリ言って、お願いしたくない。


ステイル「やれやれ。しかし努力家というのも、この業界では珍しいね」フゥ・・・

香焼「皆してるんすよ……ただ故に『それ以上』しなきゃ、追いつき追い越せないからね」スッ・・・

ステイル「……暑苦しいヤツ」シュッ

香焼「ステイルに言われたくないっす……てか、マッチあるなら始めっから自分のもそれで点けろよ」ジジジ・・・フゥ

ステイル「はいはい」ククク・・・


自分の喫煙姿を、何故か嬉しそうに見詰める身長2mオーバーの同年代。


ステイル「いやぁ、そりゃ嬉しいさ。煙草の味が分かる輩は必要悪の教会には少ないからね」ニカッ

香焼「一緒にするな。ヘビースモーカー」ジトー・・・


自分は一日4本程度だ。何時でも止めれる。


ステイル「ははは。いいねぇ、初心喫煙者(ビギナースモーカー)の言い訳は自然と笑みが出るよ」ニヤニヤ

香焼「……誘っといてそれっすか」ハァ・・・


煙草の話になると、まるで活き活きとするステイル。それ如何なのさ、14歳よ。
368 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 06:59:44.06 ID:4hH5FWU0
煙草一本分、他愛無い無駄話をし自分は下に戻る事にした。


香焼「それじゃあまた」タバコケシケシ・・・

ステイル「ああ。基本近くに居る」

香焼「ちゃんと夕飯喰うっすよ」スタッ

ステイル「はいはい」


放っておくと、煙草とコーヒーで夕飯を済ませた気でいやがるヘビースモーカー。
後で何か持ってきてやるか……

兎角、自分は気持ばかしの手洗いとガムを噛んでから、部屋に戻る前に戻るのだった。


香焼「って、大分遅くなったかも……ベランダから戻るか」


鋼糸を使って、ベランダから入る事にした。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *



絹旗「香焼遅いなぁ……」

香焼「(良かった、固法さんまだ帰って無い) ……」スルルル・・・スタッ

絹旗「っ!!?」バッ!

香焼「つ、土御門妹帰ったんすか」スット・・・

絹旗「え、ええ。ってどっから帰ってきてるんですか! (音も立てずに戻って来る……こ、これはさっき言ってた兆し!?)」ドキッ!

香焼「え、えっと……ごめん。 (何か、気まずいなぁ)」ポリポリ・・・

絹旗「い、あ……うん。 (どどど、どうしよう……久しぶりに二人きりです!)」ドキドキ・・・


冷蔵庫「……」282828・・・
369 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/17(水) 07:22:37.64 ID:4hH5FWU0
絹旗「な、何か飲みますか? (何かしなきゃ)」アタフタ・・・

香焼「えっと、じゃあ麦茶お願いするっす。 (嗽してないや……大丈夫かな)」

絹旗「わ、分かりました」テクテク・・・


 暫時・・・・・


香焼・絹旗「「…… (きまずい)」」タラー・・・


香焼(……どうしよう。固法さん、まだかなぁ)チラッ

絹旗(あ、兄貴さんみたいに接したらベタベタだし。浜面みたいに接したら超失礼でしょうし……)チラッ


香焼・絹旗「「っ! (め、目ぇ合った!!?)」」ドキッ!


香焼「あ、あはは…… (さっきのはフィクション! 最愛は妹、最愛は妹、最愛は妹、最愛は妹、最愛は妹、最愛は妹……)」ドキドキ・・・

絹旗「え、えへへ…… (現実! 意識し過ぎ、意識し過ぎ、意識し過ぎ、意識し過ぎ、意識し過ぎ、意識し過ぎ……)」ドキドキ・・・

香焼「さ、寒くなってきたっすねぇ…… (そうそう。普通の会話をすればいいんだよ)」アハハ・・・

絹旗「そ、そうですね。超寒いですねぇ…… (よ、よし! 問題無い!)」ハハハ・・・

香焼「うん、寒いね…… (普通の、会話……)」ア、ハハ・・・

絹旗「はい、超寒い…… (問題、無い……)」ハハッ・・・

香焼「……うん」コクッ

絹旗「……はい」コクッ・・・モジモジ


香焼・絹旗((話が続かない!! どうしよう!!?))ドキドキドキドキ・・・




冷蔵庫「……フヒヒ」ニヤニヤ・・・
379 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 22:05:55.62 ID:PYP1jwM0
 ―――とある日、とある夕方、黒妻宅……絹旗side……



時計の音。窓の外からの生活音。上の階の住人のドタバタ音。
それらがヤケに五月蠅く感じられた。

香焼と私。正座で向かい合って互いに超無言。はっきりいって、顔見れない。


香焼「……皆、遅いね」

絹旗「ふぇ?! あ、う、うん……そ、だね」

香焼・絹旗「「……」」

香焼・絹旗((う、動けない!!))


誰でも良い。寧ろ冷蔵庫でも良い。何か言って欲しい。
そんな事を思ってどれ程経ったか分からないが、神の声……


「にゃー」テトテト・・・

絹旗「っ!!?」ビクッ!

スフィンクス「なー」テクテク

香焼「ね、猫」


上の階の猫だ。確か名前はマーライオン。


香焼「最愛……スフィンクスっすよ」アハハ・・・

最愛「にぇっ!?」カアアァ・・・///


超恥ずかしい。穴があったら超隠れたい。


スフィンクス「にゃーぉ」スリスリ・・・

絹旗「うわっ!」ビクッ!

スフィンクス「なー」スリスリ・・・


猫が私の脚の上に乗ってきた。どうしよう……動物慣れてないのに。
380 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 22:21:15.67 ID:PYP1jwM0
香焼「ふふっ。気に入られたみたいっすね」クスッ

絹旗「そ、そんな……」ジー・・・

スフィンクス「にゃぅ」スリスリ・・・


触っても、大丈夫なのだろうか。


絹旗「……」スッ・・・

スフィンクス「なー」オスワリィ・・・

絹旗「……えへへ」ナデナデ・・・ニコッ

香焼(はぁ……良かった。ナイスっす、スフィンクス)ホッ


とりあえず、気まずい空気は脱出出来たようだ。


スフィンクス「にゃーお」ゴロゴロ

絹旗「超にゃー」ナデナデ・・・

香焼「……ぷっ」クスクス・・・

絹旗「にゃ……あ、ぅ」カアアァ・・・///

香焼「ふふふ……いや、可愛いなぁって」

絹旗「にゃ、にゃ、な、何をっ!! ば、馬鹿な事言わないで下さい!!」ウニャアアァッ///


か、可愛いって……言われちゃいました。どうしよう……


スフィンクス「なぅ」ペロッ・・・

絹旗「ひゃ、て、手ぇ舐めたぁ!!?」ビクッ!

香焼「ははは。最愛猫初めてなの?」

絹旗「だ、だって……」ウウゥ・・・


職業柄、自分でペットを飼おうと思った事など無い。その為見た事はあっても、此処まで懐かれた事は無かった。
でも……可愛いモノだな、と思ってしまう。思わず能力を忘れて抱きしめてしまいそうな気がした。
382 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 22:54:30.72 ID:PYP1jwM0
スフィンクス「なー」スリスリ・・・

絹旗「ううぅ……どうしましょう。動けません」

香焼「そのままでも、いいんじゃないっすか?」クスクス・・・

絹旗「でも……」アワワ・・・

香焼「ははは。分かった分かった。ほら、こっちおいでスフィンクス」クイクイ

スフィンクス「にゃ」ピタッ


名前を呼ばれて反応する猫。
だけど首だけ振り向いて、また私の膝上に顔を埋めてしまった。


香焼「む……おいで」スッ・・・

スフィンクス「……なぉ」クンクン・・・イヤイヤ!

絹旗「……嫌だって」クスッ

香焼「可笑しいな。何時もなら懐かれるんすけど」ハテ・・・

スフィンクス「にゃー」スリスリ・・・

香焼「むぅ…… (煙草の匂い残ってたかなぁ?)」ジー・・・


一向に退ける気配のない猫さん。御蔭で正座が超厳しくなってきた。


香焼「仕方ないなぁ……ほらっ」ガシッ

スフィンクス「んにゃぁ!」ジタバタッ!

香焼・絹旗「「うわっ!?」」

スフィンクス「にゃごっ!」ガジッ!

香焼「痛っ!」ウワッ!

絹旗「ちょ、こ、香焼! こっち倒れないで!」ドサッ!

スフィンクス「なー!」トンッ!

香焼「ちょ、ご、ごめっ……あ」ドサッ!


香焼が猫さんに噛まれた拍子に、互いの正座が崩れた。その直後、猫さんが香焼を跨ぎ……そして……
383 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 23:16:02.81 ID:PYP1jwM0
香焼「……あ」ピタッ

絹旗「……う」ピタッ

スフィンクス「なーぅ」スタッ

香焼「ちょ、おま、背中乗るな!」


私の上に香焼が四つん這いで覆いかぶさってしまった。


絹旗「こ、香焼……その……」ドキドキ・・・

香焼「ちょ、ご、ごめん……」ドキドキ・・・

香焼・絹旗「「っ……」」ドクドクドクドク・・・


顔超近い。息掛ってくる。香焼の顔超真っ赤だけど、きっと私の顔も超真っ赤。
互いに無言。この状況で何を言えようか。


『兄っていってもねぇ……男なんだよなー』


繰り返される御近所さんの言葉。


『そういえば、最愛。上条当麻の部屋で香焼とムフフだったんだって?』 ← ※③「おはようございます」参照


悪ふざけが過ぎた、あの時。
私から誘惑したけれど、香焼は手を出さなかった。しかしアソコは……うん。御立派になってた。


『最愛は……妹っす』


……何故か、悔しかった。


『タダの友達なんでしょう』


アニェーゼの言葉も……悔しい。
384 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 23:25:22.16 ID:PYP1jwM0
私は思い切って、目を瞑った。


香焼「さ……最愛」ドキッ

絹旗「っ……」ドキドキ・・・


誰も……見てない。


最愛「……兄っていっても、男。だそうですよ」ドキドキ・・・

香焼「っ」ゴクッ・・・

絹旗「この前は……ヘタレなんて言って、ごめんなさい」ドキドキ・・・

香焼「最、愛」ドキドキ・・・


自分は何を言ってるんだ。何を期待しているのだ。
これじゃまるで……また誘ってるみたいじゃないか……


絹旗「……タダの、友達なんですか? タダの妹分、なんですか?」ドキドキ・・・

香焼「それ、は……」ドキドキ・・・

絹旗「……任せます」ドクドク・・・

香焼「っ……」スッ・・・


頬に触れられた。


香焼「……最愛」ゴクッ・・・スッ

絹旗「……香焼」ゴクッ・・・ドキドキ・・・///


吐息が掛る。そして、数秒後……―――
385 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 23:34:43.77 ID:PYP1jwM0
禁書「スフィンクスー。何処ー? また、みぃの家?」ヌッ!

香焼・絹旗「「っ!!?」」ギョッ!!

スフィンクス「なー」

禁書「あ! やっぱり居、た……んだよ……」ジトー・・・

香焼・絹旗「「……」」ドキドキ・・・


上の階のベランダから現れた、妖怪宙ぶらりん超大食い修道女。


禁書「……」ジー・・・

香焼・絹旗「「……え」」バクバク・・・

スフィンクス「……にゃぅ」テクテク・・・

上条「おい、インデックス。危ないぞ」


今頃香焼の背中から降りた猫さん。そして聞こえる猫と妖怪の飼い主の声。


上条「ベランダにぶら下がる病でも持ってるのかオマエ? 何だ、居たのか?」

禁書「……とうま」

上条「ん?」

禁書「……かおりに電話」

香焼「ちょ、ま、い、禁書目録!!?」

上条「なんだってそん……な、こと……」ヌッ・・・

香焼・絹旗「「……」」タラー・・・

上条「……えっと」タラー・・・

禁書「やっぱり、いつわの方がいいね」


他人に……見られた。
386 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 23:44:21.27 ID:PYP1jwM0
 ―――とある日、とある夕方、黒妻宅……香焼side……



香焼「あ、の……上条さん」アハハ・・・

上条「……責任取らなきゃ駄目だぞ。香焼」キリッ

香焼「じ、事故っす! 事故なんすよ! お宅の猫がぁ!! 最愛からも何か言って!」ワーワー!

絹旗「……」ボー・・・

香焼「ちょ、さ、最愛!!?」


何故固まる。


禁書「いいからまず離れたら」ジトー・・・

香焼・絹旗「「っ!」」バッ!


刹那、自分と最愛は我に戻り真っ赤になった。


禁書「……けいたい、ってどうやって使うんだっけ?」PPP・・・

上条「えっと」

香焼「わー! 実家の野菜送るっす!」

禁書「……倍プッシュだよ」ジトー・・・

香焼「米も付ける! 持ってけ泥棒!」

上条・禁書「「あざーっす!!」」スッ!


やっと自分の部屋に戻った出刃亀。


香焼「え、えっと……」タラー・・・

絹傍「……あはは」タラー・・・


兎に角、気まずい……
その後、固法さん達が帰って来るまで互いに部屋の両端で体育座りをする羽目になった。
387 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/19(金) 23:52:14.31 ID:PYP1jwM0
 ―――ゆうはんっ!



打ち止め「―――……ってミサカはミサカは御姉様の恥ずかしい秘密を赤裸々にばらしてみたり!」

那由他「あはは……言って良いのかな、それ?」タラー・・・

固法「ほら。まずご飯たべてからね」

打ち止め「はーい!」

黒妻「……ん?」ジー・・・

香焼・絹旗「「……」」モグモグ・・・

黒妻「……香焼」

香焼「っ!!? な、何か?」タラー・・・

黒妻「何かあったか?」

香焼「べ、別に……何も……」

固法「最愛ちゃんも……何か苦手なモノでも入ってたかしら?」

最愛「っ!!? い、いえ!! ちょ、超美味しいですよ!!」アハハ・・・

黒妻・固法「「……???」」ハテ・・・


 ――にゃー。


打ち止め「あ! マーライオン! ってミサカはミサカは――」

香焼・絹旗「「っ!!?」」ガタッ!!

黒妻・固法・那由他・打ち止め『――……へ?』ポカーン・・・




冷蔵庫「フヒヒ……ぎゃふんっ!」オワレ!
388 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました[saga]:2010/11/19(金) 23:53:38.75 ID:PYP1jwM0
はい! 短編終われ! 次回は本編ね!


では例の如く、意見感想質問罵倒リクエストお願いしゃっす! では! ノシ
389 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/20(土) 00:10:26.32 ID:ZS.NGe.o

自分も天草に入ってみんなと一緒に香焼をからかいたいです><
あ、あとあまくさっ! 楽しみにしてますねww
402 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/24(水) 18:30:09.61 ID:Imygq/M0
 ・本編―――PM08:20、学園都市第7学区、黒妻宅……黒妻side……




打ち止め「―――それでねそれでね! ヨミカワってば・・・――」キャッキャッ!

那由他「……あの警備員さん、そんな危険な事するんだ」アハハ・・・


煙草を一本消費し、部屋に戻ってみるとチビ二人が賑やかに雑談をしていた。
美偉と香焼は御茶――美偉は勿論、牛乳だが――を啜って寛いでいる。
第一位は打ち止めちゃんの隣でチョコンと置物の様に座っていた。


固法「あ……」ジトー・・・

黒妻「ん……」タラー・・・「……」シー・・・

固法「……」ジー・・・「……はぁ」コクッ・・・


二人だけで目の信号。美偉の言いたい事は分かるし、オレの伝えたい事も伝わる。
要は……何話してたの? → 今は聞くな。 → ……また隠し事しますか、ハァ。
という具合である。

さて。小休憩入れた所で自分の――駒場の件――話もしておきたいのだが、如何したものか。


打ち止め「――この人、リンスの消費量月5ℓなんだよー、ってミサカはミサカは暴露……ふぁああぁ・・・ん」グシグシ・・・

一方通行「余計な事言うなっつの。 (こりゃ、オネムだなァ)」

那由他「た、確かに髪綺麗だもんね、一方通行さん。 (ご、5ℓ……打ち止めちゃん、眠そう)」


……チャンスだな。


黒妻「……打ち止めちゃん、今日泊るだろ?」

打ち止め「うん。始めっからそのつもりだよ、ってミサカはミサカはお気に入りのパジャマを見せびらかしてみたり!
                     実は御姉様と御揃なのは内緒ね、ってミサカはミサカは人差し指を立ててみる」シー

一方通行「糞ガキ。そう毎度毎度人様ン家に厄介なれねェっつゥの」

打ち止め「えー……もうお風呂入っちゃったしー。ってミサカはミサカは……くふぁああぁ……むぐ」シバシバ・・・


限界だろ、こりゃ。
403 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/24(水) 18:54:39.43 ID:Imygq/M0
固法「ふふっ。別に構わないわ。遠慮しないで」クスッ

一方通行「……すンませン」ペコッ


コイツの敬語は、違和感バリバリだ。気持ち悪い。


一方通行「……大丈夫だ。絶対ェ、テメェにゃ使わねェから安心しとけ」ジロッ


可愛くない奴。まぁいいさ……


黒妻「打ち止めちゃん泊るんだから、オマエも泊るだろ?」

一方通行「……ハ?」ポカーン・・・

黒妻「いや、だって今から黄泉川さんとこ戻って大丈夫か?」

一方通行「……」


予想だが……姦しく、そして酒臭い部屋だぞ? 絡むぞ? 脱ぐぞ?


一方通行「グッ……」チラッ

固法「私は大丈夫よ」クスクス

一方通行「……世話なります」ペコッ

黒妻「……家主、オレなんだけど」アノー・・・

一方通行「チッ」ハァ・・・


あからさまに舌打ちすんな。そして溜息吐くな……打ん殴んぞ。


打ち止め「やったぁ! アナタも一緒にお泊まりなのね! ってミサカはミサカは専用抱き枕に抱き着いてみたり!」ムギュー!

一方通行「だあああァ! ウゼェ! ベタベタすンな、糞ガキ!」グヌヌ・・・

打ち止め「そんな事言ってぇ、嬉しい癖に! ってミサカはミサカはツンデレータさんにもっと抱アウチっ!!」キュインッ!


反射で転がるおチビさんと若干顔が赤い消極素直(ツンデレータ)。一同苦笑。
まったく、見てて微笑ましい二人だ。
404 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/24(水) 19:20:37.20 ID:Imygq/M0
さて、じゃあ丁度良いな。


黒妻「煙草切れた。買ってくる」スタッ

固法「え? いつもカートンじゃ?」

黒妻「さっき見たら、わざわざ業者発注したダンボール。水浸しにされてた」チラッ


計云万円が御釈迦状態。犯人は勿論……


打ち止め「……煙草、駄目、絶対。ってミサカはミサカは煙草廃絶計画を企ててみる」ジトー・・・

固法・香焼「「……あはは。 (私・自分の見つかって無いよね?)」」タラー・・・


困ったものだ。


黒妻「兎に角、コンビニ行ってくる……オイ、付き合え」チラッ

一方通行「……ン」スタッ

固法「…… (また隠し事ですか?)」ジトー・・・


彼女の視線が痛いです。更にもう一方……


那由他「……この時間、学生の深夜徘徊は」キリッ


オレ、未成年じゃ無ぇし。


那由他「ぐっ……遅くなり過ぎないように」ムゥ・・・

黒妻「へいへい。風紀委員殿」

固法「あ、バイク駄目ですよ」ジトー・・・

黒妻「……はいはい。風紀委員殿」ハァ・・・


泣けるぜ……肩身狭いもんだ。
405 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/24(水) 20:44:33.91 ID:Imygq/M0
香焼「……あ。自分も行くっす」

黒妻「ん? ……何か欲しいなら買ってきてやるぞ? コイツん金で」クイッ

一方通行「ざけンな、バァロゥ」ケッ

香焼「いえ……今日は御暇します」

固法「あら。泊っていかないの?」

香焼「え、えっと……家に『野獣』二匹放置したままなので。どうしても帰らねば……」ハァ・・・

一同『へ?』ポカーン・・・


よく分からないが、香焼もコンビニまでは一緒になるらしい。別に、問題無かろう。


黒妻「分かった。そっち方面で近いコンビニ目指すか……って」ジー・・・


短パン、寒くないか?


香焼「……平気っす」タラー・・・

黒妻「いや、見てるコッチが寒いんだが」

固法「香焼くん。お風呂入っちゃったでしょ? 湯冷めで風邪引くわよ」

黒妻「デカイかもしれんが、オレのジャージ穿いてけ」

香焼「え、えっと……」


美偉がタンスからジャージを一着引っ張り出し、香焼に渡した。
……かなりデカイが、大丈夫だろうか?


固法「風邪引かれるよりマシです。はい」スッ・・・

香焼「……申し訳無いっす。次来る時、帰すんで」


そう言って、洗面所に移動する香焼。誰も見ないっつの。
相変わらず他人行儀だ……それとも身内でもケジメをつけるタイプだろうか。どちらにしろ、シャイなのだと思う。

香焼が準備する間、美偉達から買い物リスト――主に御菓子とアイス――を受け取り、野郎共は玄関に向かった。
407 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/24(水) 21:57:30.45 ID:Imygq/M0
第一位がトロトロ靴を履くので時間が掛る。まったく困ったものだ。


一方通行「テメェ、俺が障害者だって分かってて言ってンのか?」ギロッ


オマエの様なオゾマシイ障害者がいてたまるか……さておき、準備は整った。


固法「遅くなり過ぎない様」ジー・・・

黒妻「……うい」タラー・・・


毒々しい視線だ。


香焼「それじゃあ、また」ペコッ

打ち止め「お兄ちゃん!」

香焼「……ん?」フッ

打ち止め「お休みなさい。今度は『四人』で遊ぼうね! ってミサカはミサカは約束してみたり!」ニカッ!

香焼「っ」グッ・・・


一瞬の、陰り。だが……


香焼「……っ、うん。約束ね。那由他ちゃんも、お休み」ニコッ・・・

那由他「ええ。お休み、兄さん」ニコッ


香焼は、二人の前で笑顔で……『兄』であり続けた。ただ無論、その一瞬で、オレと美偉には一人の『少女』の姿が読み取れてしまった。


固法「気を付けて」ポンッ・・・

香焼「……お休みなさい」クルッ・・・テクテク・・・

一方通行(兄貴、か……俺の柄じゃ無ェわな。テメェが頑張れ。狂信家)フンッ・・・カツカツ・・・

黒妻「……行ってくる。何かあったら連絡しろ」ニコッ・・・

固法「はい。気を付けて」ニコッ・・・


女子達に見送られ、オレらは出発した。
409 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/24(水) 23:39:10.46 ID:Imygq/M0
 ―――PM08:45、学園都市第7学区、とある道路……香焼side……



……気まずい。
何故か無言。二人とも黙々と歩く。第一位の杖の音だけがやけに五月蠅かった。

態々、第一学区方面へ歩いて貰ったのはいいが、このままコンビニに着くまで無言のつもりだろうか。
いや、確かに自分は第一位と積極的に話したいとは思わない。でも、黒妻さんまで真似する必要あるのか?

悔しいがこんな時、普段はウザ喧しい馬鹿姉妹が愛おしく感じられてしまったではないか。一生の不覚。

兎角、気を紛らわす為辺りを見回してみた。静か……ではない。夜中だというに。特に後方から5,6人……

そいつらは自分達が多少開けた道路に出るまで尾行を続けてきた。
多分、二人も気付いているのだろうが無視し続けているので自分も相手にしない事にしよう。

小規模の商店街のような場所に出る。殆どの店が閉まり、街灯と自販機、中くらいのビルにポツポツと灯るくらいの明かりだけ。

再度見回す。

深夜徘徊、少ない明かりの前に屯(たむろ)する不良達。
何をする訳でもなくシャッターの前に座り込んでいる少女。
そして少し路地裏を覗けば、猛禽類の様な目付きをしたスキルアウト達が固まっていた。

……この街も、『都市』というわけか。最先端と謂えど『腐敗(アウトロー)』は例外無く、溜まるらしい。


黒妻「気になるか?」テクテク・・・

香焼「えっ!?」ドキッ

黒妻「顔に書いてるよ……何時も通る道じゃないのか?」

香焼「普段は屋根の上か、地下走って帰るんで……こういう道は久しいっす」アハハ・・・

一方通行「テメェは忍者か何かかっつの……」ジトー・・・カツカツ・・・


失礼な。ただのゲリラ的十字教徒だ……因みに忍者との違いは信仰の有無である。
それに、話は戻るが、こういった光景は『しょっちゅう』見る。


香焼「ロンドン……パリ、東京、福岡……此処は少ない方っす」テクテク・・・


そう。規模は変わるが、この国は恵まれているのだ。
そしてこの学園都市なら尚の事――


黒妻「そいつぁー、どうかな?」テクテク・・・
410 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/25(木) 00:08:24.68 ID:wtdJPD.0
香焼「……え?」

黒妻「香焼、第10学区とか19学区行ったことあるか?」

香焼「いえ。だけど、資料上では知ってるっす」


共通点は、学園都市の中でも治安が悪いという事くらい。
だが同じ都市内にある以上、風紀委員や警備員だって配属してる筈だ。


一方通行「アー……仮にも理事校生偽ンなら実際見とけ。凄ェぞ」カカカ・・・

香焼「凄い?」

黒妻「ああ。例えば……ほれ」クイッ


路地裏……良く良く見ると喧嘩をしている様だ。


香焼「……蛮俗な」

黒妻「まぁまぁ。アレくらいなら可愛いもんだ。人に迷惑掛けてねぇ」

香焼「え?」

黒妻「オレの出身……第十のストレンジじゃ日常茶飯事だ。昼間の公道でアレやってる」ハハハ!

香焼「」チーン・・・

一方通行「ストレンジ懐かしいな! あそこの輩、何処で手に入れたか知らねェがグレネード屋上からブッ放してきやがったぜェ!」ヒャハハ!

香焼「」カーン・・・

黒妻「警察組織(警備員・風紀委員)もマトモに機能しねぇのな! アイツら足元見て、袖口広げやがって!」ダハハ!


賄賂……この街で、汚職なんてあるのか?


一方通行「つゥかよォ……無ェ訳無ェだろ、楽天家。ストレンジに限らず、叩きゃァ何処っらでも出てくらァ」フンッ!

黒妻「ただ特にストレンジは○アナプラ……いや○ッサムか○.T.Aの世界をまるで真似しましたみたいな所なんだ」ククク・・・


……学区間の貧富の格差だけではなく、警察が機能しないのは、やはりマズイな。改めてそう感じた。
411 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/25(木) 00:34:44.22 ID:wtdJPD.0
だが、ふと思い出す。
風紀委員や警備員は『厳選』されたメンバーの筈だ。そう易々と腐ってしまうものなのだろうか。


一方通行「厳しいテストや試験、書類審査。ンなもン通っちまえば! ……っつゥ裏も有らァ」ケッ


先天的にか後天的にかは別とし……公務を司る人間が、邪まな感情を抱くとは。
確かに歴史上では少なくないだろう。だがしかし、この街はそうではないと思い込んでいた。


一方通行「ンでまァ結局、警察頼りになンねェからよォ。『コイツ』みてェな自警団紛いの武装無能力集団(スキルアウト)出てくンだ」クイッ

黒妻「……別にオレは自警目的でチーム作ったんじゃねぇよ」フンッ


ビッグスパイダー、といったか。黒妻さんの元スキルアウトチーム。


黒妻「ただ、スキルアウトってな非合法集団だ。ヤクザのシマ持ちと似たようなもんだよ」

香焼「私兵、っすか」

黒妻「そういうのもいるな。ウチは『族』みたいなもんだったが……スキルアウトについてはその内教えてやる。聞きたきゃ聞け」テクテク・・・


今はどうでも良いといった風。多分突っ込めば『暗部』との関わりも探れるのだろうが……今は聞かないでおこう。第一位もいる。


一方通行「兎ォに角、此処いらの連中はそれなりに『マナー』みてェのがある。『警察』も五月蠅ェし、『自警』も多い」


マナーは表立つ程人に迷惑を掛けない。警察は、固法さん達――多分、主にツインテの悪魔――の御蔭や黄泉川さんの力。
では『自警』とは?


一方通行「……」キョロキョロ「……ン」ビシッ!

香焼「え?」


何やら遠く……一番大きいビル――窓のないビル――の屋上を杖で指した。


黒妻「あー……アンテナの上にピッ○ロ立ちしてる奴な」ハハッ!

一方通行「カカカ! 馬鹿と煙は高いとこっつゥだろ!」キヒヒ!


望遠術式で目を凝らす……⑦がいた。
412 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/25(木) 01:25:27.75 ID:wtdJPD.0
削板「ん? こっち見てる……第一位と『いつか(※「おはようございます」参照)』の熱い少年か! おーい!」…(*ω*)ノシ”;・ブンブン!


  *   *   *   *   *   *


一方通行「……無視しろ。無視」プイッ

香焼「あ、あはははは……」タラー・・・


数キロ越しに軽く会釈だけしてしまった。何か凄い喜んでる……どうしよう?


一方通行「放っとけ……ンでまァ、アイツが此の学区の……いや都市のだな、自警(ヒーロー)筆頭って所だ」カツカツ・・・

香焼「……やっぱ自警、なんすか」

一方通行「後は超電磁砲(御坂美琴)とか、第7学区で『一番でけェ』スキルアウト集団も自警側だな」

黒妻「紙一重なんだよ、アイツらやってる事……御坂ちゃんは知らんけど。ま、半蔵達馬鹿やったらぶっ飛ばすのオレだけどな」ハハハ!


冗談に聞こえないから、怖い。


黒妻「とりあえず、平和な地区だよ。此処は……比較的、な」テクテク・・・

一方通行「クスリも武器もギャンブルも女も、流すにゃ厳しい。一般人からしてみりゃ住み易いったらねェぜ」カツカツ・・・

香焼「でも、前にストレンジの方も一斉に『清掃』行ったって……」

黒妻「まぁなー。蛇谷の野郎、能力者狩りなんて馬鹿な事考えやがって。御蔭でオレが『ケジメ』つけて、しょっ引かれたしよぅ」ブーブー・・・

一方通行「コイツの豚箱話はさておきィ……オイ、理事校生。都市部におけるスラムやストレンジってなァ、そう簡単に綺麗なっか?」


吐き溜めは、何時まで経っても、吐き溜め……と言いたいのか。


一方通行「さァな。それを良くすンのが政治家(理事)の仕事だろォが」フンッ

香焼「……他人任せな」

一方通行「俺がやっても良いけどよォ……地図から第十学区が消えンぞ?」キヒヒ!

黒妻「うわぁ……出たよ。この劣化版Dr.マ○ハッタ○め!」ケッ!


やっぱ、コイツは嫌いだ!
413 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/25(木) 01:57:53.80 ID:wtdJPD.0
それからコンビニの見える通りまで二人の治安論(?)を聞かされっ放しだった。
一度火が点くと止まんないんだから、もう……


黒妻「――……まぁモラトリアム気分の輩なら問題無いが、『一線』を越えちまってる馬鹿も山ほどいる。それはこの学区も然り、だ」

一方通行「――……ケッ! 流石元スキルアウトリーダー様は言う事違うねェ。存在と言論が矛盾してらっしゃるよ」カカカ!

黒妻「ハハハ! そんなに褒めるなよ」ポリポリ・・・


黒妻さん、多分貶されてます。

しかし、なんやかんやで後数十mでコンビニに到着なのだが……その前に心配の種の確認をしておこう。


香焼「ハァ……因みにアレは?」チラッ

黒妻「……知らん」キッパリ!


さっきからついてきてる連中。8人くらいに増えてるし……


一方通行「あァ。ありゃ、俺ン客だ」カツカツ・・・

香焼「……客?」

一方通行「まァ、俺ァ仮にも『有名人』らしいからよォ……『取り巻き』多いンだ」チッ・・・

黒妻「それは何とも、良い『御身分』で」ククク!

一方通行「……ふンっ」カツカツ・・・


何という皮肉り合戦。


一方通行「一人じゃ何もできねェカス共だ。加えテメェらがいる所為で、肝玉が余計に縮みこンでやがる……可愛いもンですねェ」ケッ!

黒妻「……半蔵のとこのじゃないな。もしあのチームだったら、半蔵に腹切らせてたぜ」

香焼「……慣れてんすね」ジトー・・・

一方通行「通り越して呆れだっつの。自分らでケンカ売っといて、ンでもって恨み辛みを俺にぶつけてきやがる。生産性の無い自慰マニアだ」

香焼「ハァ……God^amn・・・・・・」トボトボ・・・


言い過ぎだが……違いない。一同苦笑。
414 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/25(木) 05:02:15.78 ID:wtdJPD.0
黒妻「まさかコンビニの中まで来ないとは思うが……」ウーン・・・

一方通行「多分、出た瞬間タコ殴りにしようって魂胆だろォよ」ケッ

香焼「てか、アンタの所為で自分と黒妻さんまで目を付けられた気がするっすよ……」ハァ・・・


先程から一定の距離を崩さない第一位の熱狂的『ファン』の方々。
御目当ての『アイドル』を前に我慢できず、興奮して地面に『何か』の金属を擦らせたり、折り畳み的な『何か』を出し戻ししてらっしゃる。

そして何故か第一位は杖を自分(香焼)の頭上に振り上げていらっしゃる……


一方通行「誰がアイドルだァこの似非○トバス主人公がァッ!」ガツンッ! ← ※リ○バスはあわきんから借りました。

香焼「だぁ痛あぁ!! つぅぅ~……お、ま、心の声まで入ってくんな! てか、似非り○ばす主人公ってなんだよ?」ギロッ・・・

一方通行「ゥ……ン”ンっ! (あ、危ねェ……)」プイッ!


エセリト=バス? エ・セリト・バス……主人公? 何かのスラングなのか?
その時、天の声が聞こえた……


近くの自販機「とある大手アダルトゲームブランドのとある作品の主人公だ。
             ○枝理樹……あんまオマエに似てない気がするけど、ショタっ気は近いぞ」ウィイイイィン・・・


一方通行「ちょ、テメっ!! 垣根死ね!!」ガンッ!!

香焼「はぁ?! あ、アダルトゲーム……第一位、アンタまさか……」ヒキィ・・・

一方通行「オ、俺のじゃ無ェぞ! 結標のヤツが押し付けてきやがって……ED一つクリアにつき、仕事変わるっつーからよォ」タジタジ・・・

香焼「女性がアダルトゲーム持ってるわけ無いっす! 言い訳すんな! ましてや結標さんが? 電話で聞けば分かるんすよ!」アワキンバンゴォ!

一方通行「ホントだっつの! アイツ、『鍵』っつたか? ゲーム殆ど持ってンだ!! 後その電話番号は即行消せ。危ねェぞ!!」アタフタ・・・

香焼「そうやって自分の友達馬鹿にして……○ヴァのヒロイン足して二で割ったような容姿してるくせに!」ガアァッ!


可愛い見た目と裏腹に、腐った根性持ちやがって……


一方通行「だから可愛いとか訳分かんねェ事言うなガキ!! テメェの方が可愛いっつの!!」

香焼「馬鹿にするのもいい加減にするっす! 自分見て可愛いとか考えるって頭可笑しいんじゃないっすか?」


黒妻「え……褒め殺しあい?」ポカーン・・・
415 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/25(木) 05:10:52.25 ID:wtdJPD.0

一方通行「テメェの身を案じてやってンだよォ!! てか、まだ女扱いする気かテメェ!」ギロッ!

黒妻「……香焼。早●漏●は、経験で克服できるからな」ポンッ・・・

香焼「な、何の話っ!!? 違、ちょ、ええぇ?! しかも黒丸……じゃなくて論点ズレてるっす!!」ソーローチャウワー!!

黒妻「第一位はヒロインじゃなくて……たまに上条見詰める目から察するに、○ヲル臭がするけどね」ボソッ・・・

一方通行「るっせェな、黙ってろォ!! ○装戦線初代総長がァッ!!」ダレガモーホージャー!! ← ※クロ○ズ&ワ○ストは黄泉川の愛読書☆

黒妻「オマ……タブーだぞ、おい。実際モデルにしてたらどうすんだよ、○渕恵三を?!」ハラハラ・・・

一方通行「知るかボケェッ!! つゥかよォ自分で言ってンじゃねェかダアホッ!! しかも小○じゃねェ、鈴○だァホっ!」ダアアァッ!!

香焼「黒妻さんに総理とか無理っす」キッパリッ



       ビキッ・・・・・



黒妻「」ブチッ・・・     香焼「」シャキンッ・・・     一方通行「」カチッ・・・



とか何とかメタい事やってる間に、『ファン』方々が幅寄せしてきたが……

突然自分がうろ覚え七教七刃を放ち、それを反射する第一位。更にその乱反射の間を縫って殴り掛って来た駆動鎧並の動きをする黒妻さんとの、
三竦み特撮バトルを見た瞬間、口をあんぐり開け回れ右して逃げて行った。

因みに数十秒後、第七位が飛び込んで彼なりの『火消し』をしてくれたて即刻解決。無駄に疲れてしまった……



あ、えっと……自分、▲早▲漏じゃないよ。うん……多分……
423 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 21:55:28.41 ID:UmX6vsg0
 ―――PM09:10、学園都市第7学区、とある道路……香焼side……



……寒い。何故自分らはこんな夜中、こんな寒空の下、コンビニの前で正座させられてんだ?


削板「―――……んで。誰悪いの?」ハァ・・・

黒妻「早●漏野郎(香焼)」ビシッ

香焼「男の娘(一方通行)」ビシッ

一方通行「わかめ(黒妻)」ビシッ

削板「わぁ、綺麗な一方通行(いっぽうつうこう)……じゃねぇよ、馬鹿野郎共! 人の所為にすんな!」スゴパ!

三人『……スンマセン』ペコッ


言ってしまえば全員大人げなかった。
壊した場所は『チート大工(第一位)』が修復したから良いモノの、危なく辺りに居た不良達を巻き込む所だった。


削板「俺が来なかったら警備員にしょっ引かれてたぞ、まったく……」ハァ・・・


さっきの会話の『マナーの無い輩』が、完璧自分達に当て嵌まってしまった。本当に面目無い。


削板「んじゃ、俺行くからな。仲良くしろよ」テクテク


颯爽と消えていく⑦(第七位)……今、空飛ばなかった?


黒妻「……ケッ」フンッ

一方通行「アイツの変態パンチ反射し辛ェから面倒臭ェな、ホント……」ペッ


まるで反省して無い自分達。基本自分勝手だからなぁ、仕方ないね。


黒妻「だぁ、もう……煙草買ってくる」テクテク・・・

一方通行「オイ、コーヒー6缶も。ブラックなら何でもいい……宿賃代わりだ。俺のカード使え」ブンッ


キャッシュカードを黒妻さんにブン投げる第一位。意外と義理堅いらしい。
だが、黒妻さんも流石に年上。カードを手にするも渋い顔を見せる。
424 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 21:58:45.34 ID:UmX6vsg0
黒妻「……いいよ。年上に任せろ」パシッ

一方通行「いいから、金持ちに任せろ」

黒妻「金持って……オマエ借金有るんじゃねぇの?」

一方通行「直ぐ返せっから問題無ェっつの」フンッ


その歳にして借金ってのも、可笑しなものだ。詮索はしないが。


黒妻「……じゃあ、御言葉に甘える」テクテク

一方通行「テメェも好きなモン買ってきて良いぞ」チラッ


え……何で急にデレたの?


一方通行「やっぱ駄目だ」ギロッ

香焼「あー嘘っす。嘘。ありがとう、第一位様様」テクテク

一方通行「ケッ……あ、Yポイントカードも持ってけ。ポイント使うなよ」スッ

香焼「豪快なんだか、マメなんだか……」

一方通行「うっせェ。さっさと行けっつゥの」フンッ


やっぱりコイツは苦手だ……とりあえず、促され店内に入る。
黒妻さんは既に籠一杯――籠の半分、牛乳――に適当ブチ込んでいたいたので、自分も一緒に突っ込ませて貰った。
会計の際に黒妻さんがいつもの煙草と適当な種類を幾つか、自分が馬鹿姉共への餌(リンゴまん)二つ買って買い物終了。

意外とあっさり終わった。


バイト「ありがとっしたー」テンテンテンテンテンテッテー♪

黒妻「何で夜勤のバイトってやる気無い挨拶なんだろうな」

香焼「いや、人によるんじゃ……」アハハ・・・


まぁバイトでしょうしね。店長やマネージャー見てなきゃ真面目にやらないでしょう……え? 違う? 真面目にやるの?

さておき、店前のベンチにチョコンと待っていた第一位の所に戻る。ホント、コイツは黙ってるとマネキンみたいな奴だ。
425 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 22:16:20.37 ID:UmX6vsg0
黒妻「ほれ、コーヒー」

一方通行「ン」


黒妻さんはコーヒーを三本取り出し、第一位と自身、そして自分に渡す。
ついでに自分の中華まんも別に貰った紙袋を移してもらう。


黒妻「やっと煙草喫える……てか水浸しになった煙草どうしよう」チラッ

一方通行「流石に知らン。つゥかよォ、俺も煙草嫌いだからな」フンッ

黒妻「黄泉川さん喫ってんだろ」

一方通行「他人に迷惑掛けないよォにな……ったく、喫うなっつってンだがよォ」ハァ・・・

香焼「へぇ……家族の身体気遣ってんすね」ニヤニヤ

一方通行「黙ンねェと全身の血管破裂させっぞ糞ガキ」

香焼「はいはい。ごめんなさいね」


兎にも角にも、自分は此処でさよならだ。


香焼「それじゃあ、自分はそろそろ」

黒妻「香焼……ほれ」ポイッ

香焼「え、あっと……へ?」ポカーン・・・


ペロキャン一袋、渡された。


黒妻「まぁそれで我慢しとけ。12個は入ってるだろ。ガムの方がいいか?」

香焼「ん?」ハテ?

黒妻「いや、さぁ……オマエ煙草始めたろ?」

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?!」ドキッ!!

一方通行「……」ジトー・・・


バレて、らっしゃるの?
426 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 22:29:56.02 ID:UmX6vsg0
香焼「何、で?」アハハ・・・

黒妻「ハハハ、美偉に言われて気付いたけどな。しかも比較的最近だろ? 前まで無かったのに、とか言ってた」


透視されてたらしい……よく固法さんが怒らなかったものだ。


一方通行「……若ェくせに、馬鹿みてェ」ケッ

黒妻「まぁまぁ。オレも人の事言えないから怒れないけど、那由他ちゃんや打ち止めちゃん五月蠅いだろうから止めとけ」

香焼「うっ……固法さんは?」タラー・・・

黒妻「美偉は……あー、うん……煙草に関しては、オレが怒るって言ったから……あはは」タジタジ・・・

香焼「……そうなんすか。すいません」ペコッ


自分は、紙袋にペロキャンを突っ込んだ。


黒妻(美偉も本数少ないとはいえ喫煙者とは教えられねぇからなぁ……)アハハ・・・

一方通行「……」ジトー・・・

黒妻「急には止めらんないと思うからよ……ガムなり飴なりで徐々に、な」タラー・・・

一方通行「テメェもな」フンッ

黒妻「オレは成年だから良いんだっつの……」ウッ


……まぁまだヘビーじゃないから簡単に止められるだろう。


一方通行「始めたばっかりだからガム飴で簡単に止められるとか、どんな言い訳だっつゥのォ」ジトー・・・

黒妻・香焼「「ぐっ……」」タラー・・・


ブッラックコーヒーをがぶ飲みするカフェイン中毒者に毒づかれる。
結局、カフェ中がチビチビ二本目飲み終えるまで何も言い返せなかった。畜生。

そして、また一言。


一方通行「まぁマナーっての守るんなら文句は言わねェがな……」

香焼「……悪かったっすね」ブスゥ・・・
427 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 22:47:49.76 ID:UmX6vsg0
黒妻「止められるなら止めとけ。うん……金も馬鹿になんねぇしよ」アハハ・・・


御尤もだが、煙草咥えてらっしゃる人に言われると説得力の無いセリフ。だがとりあえず頷いといた。
さて、これ以上文句を言われる前に退散しよう。


香焼「それじゃあ、飴どうもっす……おやすみなさい。第一位も」ペコッ

一方通行「ン」ノシ”

黒妻「……香焼」

香焼「はい?」クルッ


先程とは一転、低い声。真面目な顔。


黒妻「……勝手に病院には、行くなよ」

香焼「だから早●漏●ちゃうっすわ、変態」ビシッ

一方通行「何時まで引っ張ンだ、そのネタ。しかも黒丸の位置に悪意感じンだけど」ハァ・・・

黒妻「じゃかあしいボケ。素でボケんなテメェら……ったくよぉ……最愛ちゃんとこだっつの」カチッ・・・フゥ・・・

香焼「あ……っ」ズキッ・・・


何も、言えない。


黒妻「今は、近づくなよ……いや、麦野さんとの接触は控えろ。どうしてもって言うなら、いずれあの人と取持ってやる。いいな?」フゥ・・・

香焼「……」グッ・・・

一方通行「……」フーン・・・


第一位も何か言いたそうだったが……口は挟まない。『家族』の問題と、そう捉えてくれているのやもしれん。


黒妻「どうしても気になるってんなら……メールで周りに誰もいないっての確認して、電話しろ」

香焼「……おやすみなさい」


電話、か……
そして自分はコンビニを後にし、屋上を駆けて自分のアパートに向かった。
428 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 23:04:07.76 ID:UmX6vsg0
 ―――PM09:45、学園都市第1学区、とある道路……香焼side……



コンビニから出て数十分。もう少しで家に着く。
だが黒妻さんに最愛の事を言われ、気になって仕方が無かった。このまま蟠りを残して家に帰りたくない。

携帯を取り出す。電話帳を開き、彼女の名前を見遣る。

もう寝てるだろうか……


香焼「……メールだけ、なら」カチカチカチ・・・


まだ10時前。しかし病院。
だが最愛は自分に入院していないと嘘をついたら。

とりあえず『今、暇?』とメールを打ってみた。もし寝てたら寝てたで仕方が無いが……


香焼「……」Prr・・Prr・・・


……早ぇよ。

『超t々Tこ”ァっ(>ω<)ノシ”!!』と書いてある……暗号文? 『何だって?』と返す。
『t=ヒ。々=マ。Tこ”=だ。です(^^;』との事。始めからそう送ってくれれば良いモノの。
『ギャル文字、雑誌で覚えたんですよ。兄貴さんは直ぐ解読するのになぁ(@ω@)ゞポリポリ』。あの人は異常です。

兎角、探る為『今家?』と送ってみる。少し時間をおいてから……

『はーい。そうですっ(*ー*)b”!』……と返信が来た。


香焼「……嘘付き」グッ・・・


自分は最愛の周りの確認をせずに、『電話して良い?』と送ってしまった。
暫くしてから、『何で?』の一言。


香焼「……」Pi!


我慢できなかった。最愛の電話番号に発信。多分此の時、自分は軽く怒っていたと思う。

一分経っても出ない。もう一度……二分待っても出ない。もう一度……三分鳴らしても出ない……

四度目の発信をしようと思った矢先、メールが来た。
429 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 23:20:59.50 ID:UmX6vsg0
『一体どうしたんですか? 超急用?(・ω・;』 ……無論急ぎではないが、最早躍起だった。
『いいから出て。それとも出られない理由でもあるんすか?』と、意地悪く返信。

すると数分後、アチラから電話が掛って来た。やっとか……


香焼「……もしもし」Pi!

絹旗『も、もしもし。どうしたんですか?』

香焼「……」

絹旗『……香焼?』

香焼「今、何処?」

絹旗『え!? えっと……ベランダですけど』

香焼「何で、嘘付くの?」

絹旗『っ?!』


そんなに後ろめたいのか。


香焼「病院」ボソッ

絹旗『うっ……あ、あはは……ばれちゃってました? 兄貴さんですか? もぉ……言うなって言ったんですけどね』タラー・・・


そんな気遣い、余計だというに。


香焼「……超電磁砲の所為っすか」

絹旗『んー……超自分の所為ですよ』アハハ・・・

香焼「仕事で?」

絹旗『……何とも。多分、普段の体調管理の所為って、先生に言われちゃいました』


つまり、第四位の所為じゃないか。


絹旗『超私の所為ですよ。誰の所為でも無い』

香焼「……」

絹旗『黙らないで下さいよー……そういう反応されるの超分かってたから内緒にしてたんじゃないですか』ブーブー・・・
430 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/26(金) 23:54:19.71 ID:UmX6vsg0
香焼「……ごめん」


電話を掛けても、迷惑を掛けただけだった。


絹旗『謝らないの、お馬鹿香焼』ハハハ

香焼「お馬鹿は余計っす。最愛こそ、約束破りのくせに」ムッ

絹旗『うっ……それは、その……うん。ごめん』アハハ・・・


互いに苦笑。電話越しだが、彼女の困った笑顔が浮かんだ。


香焼「……でも、良かったっす。存外元気そうで」

絹旗『まぁねー。実際超休養しろって言われて入院させられてるようなものですから』

香焼「そっか。退院の詳細は?」

絹旗『一応今週中にはですね。お仕事は超休んどけって言われてますけど……どうだかね』ハハハ・・・


無理はして欲しくない。きっと今回の二の舞になりかねないだろう。
こんな時、『止めろ』と言えない自分の弱さが無性に腹立たしい。何とも悔しく、歯痒いものだ。


香焼「……多分、見舞いはいけないっす。ごめん」

絹旗『いいですよ。私が兄貴さんに来ない様、超頼んでたんですもの』

香焼「……っ」ギリッ・・・

絹旗『香焼。あまり麦野を邪険にしないでください。ああ見えても、私の「姉」の様な人なんです……お願いします』ハァ


ごめん。多分、無理だ。


絹旗『麦野だって香焼の事超嫌ってる訳じゃないんですよ? 香焼は良い子だと思うって言ってます。でも今はタイミングが超悪いです』

香焼「別に好かれたくなんか無いっす」フンッ

絹旗『まったく、超意固地なんですから……皆仲良く行きましょうよ。少なくとも、今は「平穏」なんですから』


仮初の平穏だ。危うい橋の上に居るには変わりない。
自分はそれがやはり、第四位(麦野沈利)の所為であると固定観念付けている。そう易々と覆せないだろう。
432 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 00:32:32.85 ID:wXSfMS.0
絹旗『うー……香焼。やっぱ超暗いです』ショボーン・・・


我に戻る……これ以上はいけない。最愛を傷つけてしまいかねないだろう。


香焼「ごめん。兎に角、退院した時にでも改めてね」ニコッ・・・

絹旗『はい。そうしましょ』ニコッ


それから数十分、自分らは他愛無い話をした。
自分の最近。新しい妹(那由他)の事。入院中知り合った人々の事。先程の暇で読んでた雑誌の事。
黒妻さんと固法さんの事。打ち止めちゃんが御見舞に絵を書いてくれた事。そして、互いの『仲間』の事を遠回しに……


香焼「―――ははは。浜面さんってあの強面(こわもて)の?」

絹旗『ええ。超馬鹿面ですよ。兎野郎ですから! あ、でも兎フェチなだけで本人はハイエナか狼あたりですね。兎は滝壺さん』アハハ!

香焼「兎かぁ。じゃあ最愛は……犬っすか?」フム?

絹旗『私は超猫ちゃんですよー。犬は香焼でしょ? わんこーやぎ』(U^ω^)mワンワンオ!


アニェーゼみたいな事言いやがって、こん畜生。


絹旗『ははは! やっぱりアニェーゼとは超気が合いますね』クスクス


そりゃ何処となく似てるからなぁ……とは言わないでおこう。どうせ『如何いう意味ですか?』とか言われるに違いない。


絹旗『あーうん……香焼。暫く学園都市(コッチ)いるんですか?』

香焼「うん、一応ね。長期休暇扱い。でも急遽英国から召集される可能性もあるっす」

絹旗『そっか……こっち居る内もう一回くらい、会いたいです』ボソッ

香焼「え」ドキッ・・・

絹旗『あ』ドキッ・・・『え、あ、わっ! そ、そんな深い意味じゃないですよ?! ほ、ほら……「皆」で、会いたいなって。ね?』アハハ・・・

香焼「あ、う、うん。黒妻さん家でね!」アハハ・・・


暫時止まってしまったが、勿論、『黒妻家』という意味だ……自分は兄。最愛は妹として。うん。
433 :>>431…このSSはアメコミネタをそれなりに使っていきます![saga]:2010/11/27(土) 01:26:20.27 ID:wXSfMS.0
また気まずい沈黙が流れてしまった。最低だが、今ばかりは目の前に最愛が居なくて良かったと思う。
自分がどんな顔してるか想像つかない。最愛の顔も想像できない。


絹旗『あ……えっと、そろそろ部屋戻らないと』アハハ・・・

香焼「あ、うん……そうっすね。ごめん、長引かせて」

絹旗『ううん。いいよ……一応、電話してくれて超嬉しかったです。ありがと』クスッ

香焼「此方こそ蟠りが緩んだっす……ありがと」ニコッ


電話越し、今度は二人で微笑んだ。


香焼「あ……最愛」

絹旗『それじゃ……ん?』


本当は前の様に『無茶するな』と言いたかったがもう、言えない。正直最愛との『約束』事は守って貰えないモノだと思う。
だから、逆に自分が約束する。約束してやる。


香焼「……強くなるよ」ボソッ・・・

絹旗『……え』ハ?

香焼「最愛よりも、麦野沈利よりも……自分は強くなる」キッパリ

絹旗『っ……』ドキッ・・・『……超弱いくせに』グッ・・・

香焼「今はね。でも、強くなってみせるっすよ」ニコッ


自分でも青いと思う。でも、曲げない決意。


絹旗『ふふっ……超楽しみにしてますよ。無能力者(レベル0)さん』クスッ

香焼「うん。何時になるか分からないけど、待ってて」フフッ


あの日(※③「おはようございます」参照)沢山の人に誓った『約束』。全員守る。必ず助ける。これ以上はもう何も言わない。


香焼・絹旗「『……おやすみ』」Pi!


数秒目を瞑り、ペロキャンを一本咥える。そして冷えた中華まんを両手に抱え、アパートへ駆けた。
435 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 02:41:05.16 ID:wXSfMS.0
 ―――PM08:00、香港・某ホテル……神裂side……



まっすぐな強さ程難しいモノは無い。それを堂々と言える勇気は若さ故だろう。
確かに、私とこの子では10歳も違わないが……それでも曲らない少年の決意が羨ましかった。

『彼』に正され、割り切りで生きる事に疑問を持った人間である私とステイル。だが、これ程まで正直にはなれない。
妬ましい程に、畏敬の念を抱いてしまう。


神裂「……頑張りなさい」

香焼「はい」コクッ


既に、入ってきた時のオドオドした様子は微塵もなかった。男子(おのこ)は瞬く間に変わるのだ、そう実感できる。


香焼「あはは……でも、偉そうな事言って。さっきも言った通り自分は脆弱っすけどね」ポリポリ・・・

神裂「努力は報われる、ですよ。誰が見て無くても、自身に嘘を付かず行きなさい」

香焼「ええ。そうするっす」ニコッ


年相応……より多少幼く見える香焼の笑顔。男子のまっすぐな笑顔は純粋に良いモノだ。
他の野郎共、もとい男性陣の若い衆――土御門とかステイルとか――歳近い癖に歪んだ笑いを見せるからなぁ。

さて、気付けば時刻も八時を回った。それそれ引き留めるのは……


香焼「……んで、話を戻すっす」キッパリ!

神裂「……へ? (戻る? 何が?)」ポカーン?

香焼「……女教皇様。自分が何で相談に来たか忘れたっすか?」ハァ・・・

神裂「あ」ハッ!


五和に浦上……あの二人。まだ終わって無かったのか。


神裂「え、うん……ごめんなさい。その後、帰ってからまた何かあったのですか?」タラー・・・

香焼「……続けるっす」ポリポリ・・・


呆れられた。本当に申し訳無い……兎角、話しの続きをお願いした―――
436 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 03:38:25.06 ID:wXSfMS.0
 ―――PM10:10、学園都市第1学区、香焼のアパート……香焼side……



随分遅くなってしまった。もしかしてアイツらは帰ってしまったかもしれない……出てくる時、邪険にしすぎたかな。
だが、それならそれでもいい。正直、今自分は相当疲れている。出来る事なら相手しないで寝たい。

エレベーターに乗り自分の部屋へ……喧しくは無いが、微かに音がする。やはりまだ居たか。まぁ仕方ない。
ドアはオートロック。電子キーを錠に近づけ扉を開く。


香焼「ただい」ガチャッ・・・ピタッ・・・


酒臭い。只管(ひたすら)酒臭い。

急いで靴を脱ぎ、リビングへ……


五和「はふぇ……い?」チラッ・・・ボー・・・・

浦上「みゅ……にぇ?」クルッ・・・ジー・・・


貴様ら……


五和「あー。こーちゃん、おはえり」ニタニタ・・・

浦上「うー……おほいにょー」グダグダ・・・


どっから酒を……


冷蔵庫「コンビニで買ってきたらしいぞ。年齢誤魔化して」ハァ・・・「オレの中にストック10缶以上ある」ウィイイイィン・・・


マジ、勘弁してくれ……


五和「ちょっと、こーちゃん! コッチ来なしゃい!」グデェ・・・

浦上「へいざだよ! へいざ!」ダラーン・・・


少しでも心配してやった自分が馬鹿だった……ガチでキレていい?
437 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 03:55:12.43 ID:wXSfMS.0
五和「こーやん! はやくくる!」ビシッ・・・

浦上「はりーなっぷ!」ビシッ・・・

香焼「呂律回って無いぞ、おい」ハァ・・・


テーブルの周りに散らかってる空き缶の山が事の詳細を物語っている。
まったく……溺酔状態のコイツらに今は何を言っても無駄だ。そう悟る。


香焼「……説教は明日にしてやるから、さっさと寝るっす。自分も今日はもう寝るから」マッタク・・・

浦上「んもー! そうやって話そらすし!」ンガー!

五和「こっち来い!」ガウー!


……どうしろと?


五和「あのねぇ、遅くなるなら連絡せんといかんのよー? 分かると?」

香焼「はいはい、寝ようね。立てるっすか? 此処まで布団持ってくる?」

浦上「じゃめ! お話聞くよー? 何で聞かんのー?」


お前ら、口調キモいぞ。面倒臭ぇ。


五和「そりゃ、こうちゃんは楽しくやってきて良かったでひょ? でも私達は女二人で寂ひく放置プレイっそ!!」

香焼「あーうん。そうだねー、ごめんねー」

五和「流すなー!」


まったくこんな姿、上条さんに見られた日には……


浦上「ひょっと香焼」ジトー・・・

香焼「あ?」

浦上「……ん」ビシッ・・・


浦上の指さす先に……瞼に涙一杯溜めた五和がいた。
438 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 04:12:45.79 ID:wXSfMS.0
五和「うぇ……」ウルウル・・・

香焼「」チーン・・・

浦上「お姉、今日一日我慢してんのよ? 分かる?」ジトー・・・


いや……自分の所為じゃないだろ、それ。


浦上「今頃女教皇様が上条さんに堕天使でエロエロな給仕してるかもしんないんよ!?」カワイソー・・・

五和「うわああああぁんっ!! みんなバカぁああぁっ!! 爆発しちゃえええぇー!!」ビエエエェンッ!!


ああもう……いっそ、放っといて耳栓して寝ようか。


浦上「慰めんとー!? それでもきゅーしゅー男児にゃのぉ?!」ウウウゥ・・・

香焼「知らない。もう構ってらんない」クルッ・・・テクテク・・・

五和「ああああぁんっ!! 上条さんだけじゃなく、こーちゃんにまで見捨てられたー!!」ビエエエェッ!!


歩を止める。人聞きの悪い、見捨てたとか言うなよ……こうなったら仕方が無い。多少強引に面倒覚悟で寝かせるしかないな。


香焼「……ちょっと黙れっつってんだろ! 糞アマっ!!」ギロッ・・・

五和・浦上「「っ!!?」」ヒック・・・エック・・・

香焼「……あー、もう」ポリポリ・・・


……第一位のF口調が移ってしまったかもしれない。反省だ。

兎に角、まず二人に水を出す。そして――何故か自分の部屋に常備してる――パジャマを渡す。
そして二人分の寝具を居間に運び、テーブルやら空き缶やらを片付け、即寝かせられる状態を作ってやった。


香焼「……自分シャワー浴びてくるから、着替えとくっす。愚痴なら後で聞く」テクテク・・・

浦上「……ふぁい」シュン・・・

五和「……ごめん、なさい」シュン・・・


まったく……これじゃあまるで、自分が悪者みたいじゃないか。畜生め。
439 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 04:45:17.11 ID:wXSfMS.0
パパッとシャワーを浴び、パパッと寝間着に着換え、リビングに戻ってやった。


香焼「……」ハァ・・・


布団の上でパジャマのまま、黙って体育座りしている二人。


香焼「……今日はもう寝るっす」

五和「……」イヤイヤ・・・

浦上「……眠くない」ムゥ・・・

香焼「酔ってるだろ?」

五和・浦上「「酔って無い」」キッパリ・・・


酔いが一周しやがったらしい。余計厄介だよ、まったく。


香焼「……ちょっと待ってろ」テクテク・・・


電子レンジで冷えた中華まん(リンゴまん)を温め、二人に渡す。多分蒸し器程美味しくないだろうが、文句は言うな。


浦上「……御土産?」ポカーン・・・

香焼「一応。ほら」スッ

五和「あんがと……」パクッ・・・


膝を崩して小動物の様にムシャつく二匹。不覚に一瞬でも、可愛いと思ってしまった自分を恥じる。


香焼「……食べたら寝ること」

五和・浦上「「む」」ムシャムシャ・・・フルフル・・・

香焼「……」ハァ・・・


……どうしろというのだ。まさか本当に愚痴を聞けと?
440 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 05:05:23.65 ID:wXSfMS.0
香焼「……何か言いたいことあるんすか?」

五和・浦上「「……」」ムゥ・・・ジー・・・

香焼「何か言えよ」ハァ・・・

五和・浦上「「……」」シーン・・・


今日何度目になるか分からないが、何度でも思ってやる。面倒臭ぇ。


香焼「五和。上条さんが女教皇様に……いや、そう易々と女性に手ぇ出すタイプだと思うんすか?」

五和「……」シーン・・・

香焼「そう思ってんなら、彼の事貶してると同意っすよ」

五和「……違う、もん」ムゥ・・・


分かってるじゃないか、まったく。


香焼「浦上も、どうしてそう言ってやらないっすか? 教皇代理達と同じ立場で見てきてるんだから分かるだろう?」

浦上「……」シーン・・・

香焼「それとも、女教皇様が上条さんに情事を迫るとでも? 禁書目録(あの子)がいるのに? 差し置いて?」

浦上「それは……無いよ」シュンッ・・・


あのお方は、上条さんと禁書目録を天瓶に掛けたりしない。少なくとも『今は』絶対に。


香焼「信じてあげようよ。爆発しろ、なんてバカ言わないでさ……確認するけど『自分達』は何すか?」

浦上「……天草式十字凄教、教徒」ボソッ

香焼「うん。確かにメッキを外せば普通の学生っす。でもそのメッキは簡単に剥がれるもんじゃないだろ?」


何で自分は教皇代理みたいな事言ってんだか……いや、この二人に対しては対馬さんの仕事か。


香焼「五和……五和が上条さんの家に行った時の、女教皇様の気持ち分かるよね」

五和「……」コクッ

香焼「うん、良かった。ハテナ顔してたらブッ飛ばしてやってたっすよ」キッパリ
441 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/27(土) 05:26:20.02 ID:wXSfMS.0
五和「……ごめんなさい」ショボン・・・

香焼「自分に謝ってどうすんのさ……いいよ。三人だけの内緒にしとくっす」

浦上「ごめんね、こうちゃん……」ショボン・・・

香焼「もういいっての。お酒の件だけは許せないっすけど……これも内緒っす」


此の時、自分の煙草については完璧に棚に上げていた。
兎に角、話は終わりだ。


香焼「……もう寝る事。流石に電気消す」

五和「……」ジー・・・

香焼「何すか。まだ何か?」ジトー・・・

浦上「香焼……大人になったね」ビックリ・・・


お前らが演技派猫被りのガキなだけだ。


五和「でも……こうちゃんの悩み聞いてない」ジトー・・・

香焼「は?」ポカーン・・・

浦上「……不公平だよ。姉ちゃん達ばっかじゃなくて、香焼の悩みも聞いてやらなきゃ」ウンウン・・・


チッ……まだ酒残ってやがったか。面倒臭い。余計な御世話だっつの。


香焼「オマエらの文句あげたら老衰するまで終わらないっす。んじゃお休―――」

五和「そういう事じゃない……あーもう、確保!!」ガシッ!!

浦上「にゃぁっ!!」ガシッ!!

香焼「なぁっ!!?」ズデンッ!!


足と胴体を掴まれ、盛大にドチラかの布団の上にこけてしまった。
うつ伏せ状態の自分に……五和が背中半分に乗って胸を押し付け、浦上が尻に軽く手を乗せ肩に顎を乗せてくる。

コイツら酔い回って、どんな恥ずかしい恰好で自分に乗ってるか気付いてない! これは……非常に、ヤバいっ!! 主に体勢が!!

所謂、理性のピンチだった……―――
442 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました[saga]:2010/11/27(土) 05:54:39.42 ID:wXSfMS.0
はい。今回は此処まで。明日は書けないかもです。楽しみにしてくれている少数の方々、スイマセン。


《アンケートっ!》……香焼バスt、げふげふっ。If.香焼ストーリーの『アニェーゼ・アフター』編のシュチュエーションについて。

・A:初夜  B:数回目(具体的な回数とかあると助かる)
・①普段通り強気  ②若干デレてる  ③裏腹マゾっ気  ④その他(kwsk!)


今後の展開として。とりあえずこの章を終えたら、例の『仮面』何ちゃらを予定。次にでもアンケを出します。

で、その次一つワッフル♪ものだけど……
上の『アニェーゼ・アフター』か、『兄貴正史介入。瀕死から回復して絶望状態の麦野と―――』です。多分後者かな?
ただ『絹旗アフター(※③「おはようございます」≫472を参照)』やった手前、どうしようか悩んでます。

え? 女教皇様と禁断? 五和・浦上と三人遊び? 無いよ(笑)


では例の如く、質問意見感想罵倒リクエストも宜しくお願いします。お休み! ノシ”
443 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/27(土) 07:53:57.24 ID:7UEl3QDO
>>1乙なんだぜい

香焼バスターだと、何か筋肉バスターみたいに聞こえて……


あにぇーぜにゃふたーに関してだが
Bでちょっと慣れてきた4~5回目
④で最初精神的な立場がアニェ×香だったのが香×アニェになってく感じにデレで(実際の行動での攻め受けは>>1に任せる)

444 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/27(土) 08:39:00.72 ID:qVbazsDO
乙!
これ酒乱馬鹿姉3Pフラグじゃねぇのww そういえば最初のスレで誰か神裂×香焼投げてたっけなwwww


>あにぇーぜにゃふたー ← >>443、天才だ!
アンケはBの二・三回目の初々しい頃ってのと、④でぎこちなくも頑張るが結局主導権を握られるアニーちゃんで!
445 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/27(土) 08:44:53.68 ID:rW1V02AO
4、アニェーゼめっちゃデレデレ

ってか、アフターはifってことにすれば良いでしょね。おれはそう思ってた。
ということで、五和・浦上アフターというものを是非
446 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/28(日) 16:48:15.86 ID:9r7NJWUo
①の普段どおりのドSプレイを
448 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 03:01:13.94 ID:zz519b60
うぃ。遅くなりました。


>>443
垣根「アレはキン○マンがするから筋○バスターであって、香焼が仮に筋○バスターをしても(ry」

アウレオルス「異議有りッ!! 過去に○シュラマンが○シュラバスターを(ry」

香焼「……自分は筋○バスターなんて出来ないし、絶対にしません」ハァ・・・

結標「また筋肉筋肉~♪ って言ってー!」

香焼「……結標さん。もういいから」


>>444
初めの「おかえりなさい」で香焼の変な方向性が付いたアレですね、覚えてますww
アニェーゼが『にゃふー!』とか言ってもねぇ……あら? いいかもww


>>445
五和「だ、駄目だよコウちゃん……姉ちゃんには心に決めた人がっ」キャー!

浦上「こ、香焼は弟なんだよ! そんな事しちゃ駄目だよぅ……」ドキドキ・・・

香焼「……何してんの?」

浦上「え? 何って……○ルバニアファミリーでドロドロ家族ごっこ」

五和「混ざる?」

香焼「帰れ」ハァ・・・


>>446
蓮の杖(ロータスワンド)プレイですね。何てレベルの高い少年少女なんだ! (笑)


んじゃ、短いけど書く。
449 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 03:23:20.38 ID:zz519b60
 ―――PM10:40、学園都市第1学区、香焼のアパート……香焼side……



あらすじ。女教皇様……自分はピンチです。終わり。


香焼「で、済むかああああああぁぁっ!!」ギャー!

五和「こうちゃん! 姉ちゃんは真面目にお話してるんだよ!」ムニュンッ!

香焼「ひっ!?」ビクッ!

浦上「ほら、話して御覧。ね……優しく聞くから、さ」モニュンッ!

香焼「い”ぁっ?!」ビクッ!


この状態で何を話せと!? ← ※>>441


香焼「いや、マジでお前ら酔って思考働いてないっすよ!? まず離れて――」

浦上「お黙る! 酔ってない!」ギュッ!

香焼「―――ひぎぃっ!!? ちょ、冗談抜きで……退けて……」ピコーン…ピコーン…

五和「話すまで退きません」キッパリ!


勘弁してくれ。何か心の中でカラータイマーが鳴っている気がする。
兎に角、此処は誤魔化してでも逃げなければ危ない。色々と。


香焼「わ、分かった……分かったから。このままじゃ話せないっすよ? まず退けて……」

浦上「離したら逃げるでしょ。姉ちゃんには分かるんだから!」

香焼「にぃっ……にょ……」ピコンピコンピコンッ!

五和「ほら、こっち向く!」グイッ!

香焼「ぎゃあああああぁっ!! 待、今、駄目……んぬぬぬぬぬっ!!」ガシッ! ギギギギ・・・


必死で布団にしがみ付く。引き離されてなるものか!
表を向けない。何故とは、言わない。
450 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 03:59:44.35 ID:zz519b60
浦上「こっち、向けええぇ……」グヌヌ!

香焼「い・や・だっ!」ギニニ!


今二人の方を向いたら死ぬ。絶対、死んじゃう。
いや死んでもそっち向きたくない。
コイツらに少しでも欲情してしまった事実を知られた日には、金輪際表を歩けない。

因みに現在2時の角度。何が、とは言わない。


五和「じゃあもうそのままでも良いから言いなさい」ムニュンッ・・・

香焼「きゅぅっ!!? ……い、言ったら、離れるんだな?」ギロッ!

浦上「多分っ」グググ!


仕方ない。暈して話すか……少しでも言えば気が済むだろう。


香焼「……強くなりたいんすよ。それだけ!」ギギギギ・・・

五和「……へ?」グイグイッ!

浦上「強く?」グイグイッ!


嘘では無い。全てひっくるめて言えば、そういう事だ。


五和「……弱いから、って事?」ギュッ・・・

香焼「そうっすよ……もういいだろ。てか、いい加減む、む……ね……離せ!!」

五和「……」ンー・・・


考え込みやがった。コッチの話聞く気無いだろオマエ。


浦上「別に香焼弱くないよ? 何でさ?」サスサス・・・

香焼「いや、弱いだろ……少なくとも五和より。って、浦上も色んなとこ摩るな!!」

浦上「……」ンー・・・


ああ、誰でもいいから開放して下さい。
451 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 04:33:07.77 ID:zz519b60
五和「……虐めっこか?」ピタッ

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」ポカーン・・・

浦上「香焼……虐められてるの?」ピタッ

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?」ポカーン・・・


如何曲解した貴様ら。
いや、まぁ近いモノはあるかもしれないが、それを受けてるのは自分じゃないし『虐め』ではない。


香焼「虐めじゃないっすよ。でも勝ちたい人がいるってのは、そうかもしれないけど」

五和「……誰?」ギロッ

香焼「いや、そこまで言う筋合いは」ナイナイ

浦上「言いなさい」ムニュッ!

香焼「にょ?! ににゃにゃ! (※訳『ちょ?! いやだ!』)」ンギギ!

浦上「ハッキリ言いなさい!」ムチッ!


頬を引っ張るな阿呆。


浦上「香焼を困らせる悪いヤツなのね。そっか……」ジトー・・・

五和「ふーん……」ジトー・・・

香焼「んぎっ! ……いや、困るっていうか何ていうか」ヒリヒリ・・・


目が据わってらっしゃる。
正直、アンタらの方が厄介極まりないです。


五和「……やっつけてやる」キリッ!

浦上「お姉、やろう!」キリッ!

香焼「ざけんなバカ女郎!!」ギャー!


相手は言えないが自分達じゃ敵わない。せめて女教皇様くらいでなければ……てか、今はオマエ達をやっつけたくて仕方が無いぞ。
結局、二人を宥める為に数十分程費やす羽目となってしまった。
452 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 05:04:05.29 ID:zz519b60
 ―――一寸・・・・・


香焼「―――……そろそろ理解しろ」ハァ・・・

五和「……ん」ウトウト・・・

浦上「にゃ……」ウトウト・・・


助かった。もうすぐコイツら勝手に寝てくれそうだ。


五和「でもさぁ……どんな人くらいかは、教えてくれたっていいんじゃないの?」ムゥ・・・

香焼「だから凄く強い、らしい人だってば。さっきから言ってるだろ」

浦上「私達じゃぁ敵わないって? ……三人でもぉ?」ムゥ・・・

香焼「……三人でも敵わない。でもあの人に自分が、『サシ』で勝てなきゃ意味無いっす」

五和「……分かんない」

浦上「また、男の子の意地っ張りってヤツ?」


それならそれでもいい。引けないモノも有る。


五和「そん所そこ等の連中には負けないつもりですよー? 姉ちゃんはさー……」サラリ・・・

浦上「まさか超能力者(レベル5)相手にしてる訳でも無いんだし、大袈裟な……」サラリ・・・

香焼「……」ピクッ・・・

五和・浦上「「……ん?」」ピクッ

香焼「その『まさか』だったら?」ギロッ・・・

五和・浦上「「……」」( ゚д゚)ポカーン・・・

香焼「……だったら、どうする?」ハァ・・・

五和「あ、あはははは……バカねぇ。姉ちゃん騙されないぞー」アハハ・・・

浦上「そ、そうだよねー! いくら早期中二病患者である香焼だって、そんなバカな事言う訳無いよねー……」アハハ・・・


ああ嘘だよ、と、嘘をつく。
悪かったな畜生。好き勝手気楽に言ってくれる……相手が並大抵なら『今の』自分だってやり様はあるっての。
453 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 05:32:53.12 ID:zz519b60
五和「因みに……男、だよね?」ジトー・・・

香焼「どっちでも良いだろ、そんなの……」ハァ・・・

浦上「いや、良くないよ! 結構重要!」ウンウン!

香焼「何でさ?」

浦上「男の子同士であーだこーだなら、青春っぽいなぁと思える。でも女の子だったらさぁ……」

五和「何か、ねぇ……」


そういえば……自分は麦野沈利を女性として考えた事が無かった。
確かによくよく考えれば、自分は女性に手を上げようと言っているようなモノである。だが……


香焼「……自分より強いヤツに女も男も無いっすよ」


黒妻さんに聞かれたら打ん殴られそうな一言。


五和「それは……遠回しに、姉ちゃんを女性扱いしてないということなのかな?」ニコッ・・・

香焼「今の今まで一度も無いがあ痛ぁっ!!」ゴチンッ!!

浦上「今のは香焼が悪い」ウンウン・・・

五和「あのね……女性はどんな人であっても女性なの。覚えておきなさい」ジトー・・・

香焼「つつぅ……だから、さぁ。話戻すけど……『勝ちたい』ってのに女性も男性も無いだろ?」

浦上「何ていうか……だから、ケースが分かんないよ」


此方も、そこまで言う義務は無い。


香焼「詮索すんなっつの……オマエらだって秘密にしておきたい事の一つや二つあるだろ?」ジトー・・・

五和・浦上「「……」」シーン・・・

香焼「分かったら退け。じゃなきゃ女教皇様や対馬さんに言いつけるっすよ」ジトー・・・

五和・浦上「「うっ」」タラー・・・


まったく……やれやれだよ。
454 :>>1にかわりましてカキネがお送りします2010/11/29(月) 06:10:35.92 ID:zz519b60
すっかり御通夜雰囲気になってしまった。
まったく、黙って寝るならまだしもこんな風になるとは、実に面倒臭い奴らめ。


香焼「……もう大人しく寝る事。いいっすね」

五和・浦上「「……」」コクッ・・・


此処まで静かにされると、何か居心地が悪い。
畜生、仕方ないな……


香焼「……心配してくれるのは、嬉しい」

五和・浦上「「……え」」ピクッ・・・

香焼「……ありがと」ポリポリ・・・

五和・浦上「「……」」パアアァ!


……二度と言わない。


五和「こうちゃんが……デレた!」キラキラ・・・

浦上「イィヤッホオォーゥッ!!」キラキラ・・・

香焼「うっさい! 寝ろ!」ダーモウ!


一々癪に触る馬鹿共め。
しかしまぁ、とりあえず一段落か。やっと寝れる……と思ったのが甘かった。

動けない。コイツらが邪魔とかじゃなく……御察し下さい。


五和「うふふ。感謝されちゃったー♪」ウキウキ・・・

浦上「えへへ。やったね☆」ニコニコ

香焼「あ、あはははは……」タラー・・・


神は死んだ。
455 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 06:27:44.04 ID:zz519b60
五和「ふふっ。じゃあ寝る! って……もう退いていいよ、コウちゃん」ン?

浦上「何々? 一緒に寝たいって? 仕方ないなぁもう!」ウフフ!

五和「えっ?! そんな……駄目だよ。姉ちゃんには心に決めた人が……」カアァァ・・・///

浦上「お姉。そのネタ好きだねぇ」フヒヒ!

五和「あはは。冗談冗談……いいよ。川の字で寝る? あ。でもコウちゃん、もうウラより背大きくなっちゃったかな?」ンー?

浦上「いやいや。まだ負けないよー」アハハ!

香焼「あ、あはは……あはははは……」ピンチッ!


後生です。堪忍して下さい。


五和「まぁとりあえず退いて。毛布の上に寝ないの。ほら……掛けて、あ・げ・る、から♪」クスッ・・・

浦上「やだぁ! お姉エッチぃ! じゃあ私も……一緒に入って、あ・げ・る♪」ニコッ・・・


お願いします。理性とは別の所で何かが暴発しそうなので、逃がして下さい。
あ、やっぱ今は逃がしちゃ駄目っす。


浦上「ほら、香焼。お姉さん達が恋しいのは分かったからとりあえず退くこと。お楽しみは、そ・れ・か・ら♪」ツンツンッ!

五和「うわっ! 今のオリアナさんっぽかったよウラ! そっか『お姉さん』を付ければ良いんだね!」オオオォ!

香焼「……いっそ殺せ」フコウダー!


この変な方向にノリノリな変態二人を騙し騙し時間を稼ぎ、『おさまった』瞬間、急いで部屋へ逃げた。
何がとは言わない。

最初はまたも部屋の鍵を抉じ開けようとする馬鹿共だったが、結局、眠くなったようで早めに戻っていった。助かった。
無論コイツらは、次の日の夕方過ぎまで寝ていたので良い迷惑であった。


  *   *   *   *   *   *


香焼「終わりっす」ハァ・・・

神裂「」チーン・・・
456 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 07:23:47.82 ID:zz519b60
 ―――PM08:30、香港・某ホテル……神裂side……



神裂「……コメントし辛い」

香焼「ですよねー」アハハ・・・


何というか……彼女達の意を汲んでやりたいとも思える内容だが、やはり、変だ。(※香焼は喫煙及び飲酒の件については暈しています)


神裂「まぁその……うん。頑張りなさい」アハハ・・・

香焼「頑張りなさいって……解決して欲しくて相談来てるんすけどね」タラー・・・

神裂「そ、そうでしたね……うーん」タラー・・・


どうしたものか。正直、建宮あたりに管理については任せたい部分があるのだが……
こういった歳が近い故の問題は、一、天草の姉として何とかしてやりたいとは思う。


神裂「と、とりあえず、彼女達が貴方の心配をしているのは分かりましたよね?」

香焼「……まぁ」ブスゥ・・・

神裂「あはは……察して上げなさい。 (ちょこっと怒る姿、可愛いな……って何考えてんですか、私は)」アハハ・・・


難しい年頃なのだろう。後々、年配の配慮が分かって来る筈だ。


神裂「……そういえば、男女の括りについて悩んでましたね」

香焼「え、あ、まぁ……そうっすね」

神裂「ふむ……敵(かたき)は女性の超能力者、ですか」


確かに難題だろう。
奢りかもしれないが、聖人である私でも対策無しでは超能力者とは戦えまい。
加えこの子の場合、相手が女性だ。それを分かっていれば、手を挙げ辛いだろう。しかし……


神裂「いいのでは?」

香焼「……え」ポカーン・・・


無論、『士』である私からの言葉に過ぎないが、言ってやる。
457 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 07:43:28.24 ID:zz519b60
神裂「例えばですが……私は殿方に手加減されたいタイプに見えますか?」

香焼「上条さん限定であ痛ぁっ!!」ゴチンッ!

神裂「~~~ッッ!」カアアァ・・・///

香焼「たぁっ……じょ、冗談っすよぅ……」サスサス・・・


やはりこの子も天草の野郎共という事か。悲しい。


香焼「えっと、女教皇様は御強い方っすから」

神裂「はっきり言って、並大抵よりはそうでしょう。はっきりと自負できます」


ただ、それと『ただ力が強い事』は別だ。


神裂「私は聖人じゃ無くても、手加減はされたくないですよ」キッパリ

香焼「……そういうもんなんすか?」

神裂「ええ。人による所はあるでしょうが、そういう女性も多いでしょう。現に貴方の周りはそういう女性が多いのでは?」

香焼「まぁ……そうっすね。特殊っすから」

神裂「その超能力者も、多分私と同じように『誇り』の様なモノは有る筈です……これ以上は説明し辛いかな」


強い女。


香焼「……んー」

神裂「そうですね……では貴方に必要な事を教えましょう」

香焼「え、はい」コクッ

神裂「平等」

香焼「へ?」

神裂「全てにおいて。例えば正義も悪も、強きも弱きも、自分も他人も、そして男も女とも……立ち向かう勇気です。ちょっと難しいかな」


即ち自分のポリシーをも殺し、ただ目標の為に力を行使する。ただ使い方を誤れば、両刃となる幽鬼だが。
458 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 07:56:37.09 ID:zz519b60
神裂「時に冷酷になる……無論、不殺(ころさず)の上で」

香焼「……」

神裂「女性を殴る事に疑念を持つなら、これを得る事ですね。その上で『力』を付ける」


何と難しい事だろう。


香焼「……努力するっす」コクッ

神裂「ええ。頑張りなさい」ニコッ


言ってやることしかできない。この子の勝負に私は手を出せないのだから……ステイルの時(※③『おはようございます』参照)の様に。


香焼「あ、因みに……さっき言ってた事っすけど。あの固法さんの件」

神裂「ん? ああ、会って話がしてみたいという事ですか。その件なら時間を見つけます。先方にもそう伝えて下さい」

香焼「どうもっす。それで多分なんすけど……一緒の場に、その超能力者も行きます」

神裂「……え」

香焼「……固法さん。自分と最愛の、『保護者』って言い方失礼っすけど、三人で話したいって」


如何いう了見か分からないが……


神裂「良いでしょう。私もその御二人に会ってみたい。必要であれば一筆書きますか?」

香焼「そ、そこまでして頂かなくても大丈夫っすよ! ありがとうございます。伝えておくっす」ペコッ・・・

神裂「ふむ……では宜しくです」


さて、長々と話したがコレで終わりだ。


神裂「五和と浦上については私から言っておきます……演技も見破れるよう、努力しましょう」

香焼「……」ジトー・・・


信用できないという目をされてる。悲しい……私だって言う時はキチンと言いますっての。
459 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 08:09:53.19 ID:zz519b60
香焼「いや、正直ズバッと処罰的なものを決めて貰いたいんすけど」

神裂「うっ……それは、建宮や首脳陣と話し合いで決めないと。私だけの天草(組織)じゃないですから、独断では……」タラー・・・

香焼「ハァ……了解っす」ムスゥ・・・


ぷくぅ、と擬音が付きそうな顔をする香焼。ふと馬鹿な事を思いつき、口走ってしまいそうだ。


神裂「……可愛いですね」ニマッ

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

神裂「あ……いえ、何でもないです!」アハハ…


危ねぇ。


神裂「ん、ごほん。そうそう。前に聞いて思ったのですが、香焼……『オレ』っての似合いませんよ」

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

神裂「……え? 変な事言った?」

香焼「……いえ。ただ女教皇様も、周りの輩と同じ事言うんだなぁって」

神裂「それは、良い事なのでは?」

香焼「いや、勝手っすけど……自分の呼称も自分の勝手じゃないっすか……」ムゥ・・・


そうだけど、香焼に『オレ』は似合わないかなと。ステイルと交換させれば丁度良いと思う。


香焼「……自分が『僕』って言うんすか?」ハァ?

神裂「うん……凄く、良いと思いますよ」ニコッ

香焼「丁重にお断りさせて頂くっす」キッパリ

神裂「えー……」

香焼「すいません、女教皇様。ノリが馬鹿姉共に似てきたっすよ」ジトー・・・


何だろう……


神裂「分かった! 禁書目録(あの子)を軽く怒らせた時の感じに似てます!」アアァ!
460 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 08:22:09.17 ID:zz519b60
香焼「……」ジトー・・・

神裂「あ、ぅ……ごめんなさい。ふざけが過ぎましたね」コホンッ

香焼「……別に、慣れてるっすから」ムゥ・・・


苦笑するしかなかった。五和と浦上の気持ちが少しだけ分かった気がする。


香焼「とりあえず、失礼するっす」

神裂「はい……悩むのは良い事ですが、悪い方へ行かない様に」

香焼「御助言助かりました。失礼します」ペコッ・・・


恭しく礼をされる。だがしかし、最後の方で嫌な女だと思われたかもしれない。申し訳無かった。


 ―――コンコンッ・・・


神裂「ん?」クルッ

香焼「客っすかね」クルッ

神裂「いや……そうか。そういえばもう九時近くでしたね。約束がありました」


ドアを開けてやる。一人の童顔の大男。


ステイル「少し早かったかい? 先客が居たようだが」チラッ

神裂「いえ、丁度終わった所ですよ」

香焼「あれ? ステイル」

ステイル「ん? 香焼か。まさか神裂のところで会うとはね」


そういえば、最近二人は仲が良かったな。
確かにステイルにとって、最も歳が近い男子は香焼だろうと勝手に納得した。
土御門は……うん。まぁ友? なのかな、と疑問を持たざるを得ないですから。
461 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 08:39:07.06 ID:zz519b60
ステイル「どうして此処に?」ハテ?

香焼「ちょっとした相談っすよ。ほら、前にステイルにもしたろ? 五和と浦上の」カクカクシカジカ・・・

ステイル「ああ、部屋の件か……ぷっ」ククク・・・

香焼「何で笑うんすか」ジトー・・・

ステイル「だって、彼女には解決無理だろ」チラッ・・・クスッ・・・


……失礼な、


香焼「まぁ……えっと、期待だけは持たせて貰うっす」アハハ・・・


……ガキ共め。


香焼「ステイルは?」

ステイル「僕は任務の件だ。九竜(カオルン)辺りで新情報が入ったらしくてね……君の問題に比べれば、簡単な問題だよ」ククク!

香焼「またオレの事馬鹿にして……」ジトー・・・

ステイル「あはは! 悪い悪い!」ハハハ!


……やはり、一人称交換すべきでしょう。うん。


ステイル「あ! そうそう! 思い出したんだ!」

神裂・香焼「「え?」」

ステイル「香焼、前に煙草でルーン魔術が如何こう言ってただろう」 ← ※①「おかえりなさい」参照

香焼「……え」タラー・・・

ステイル「調べたんだよ。ローラの書斎勝手にね。そしたら有ったんだ! F(アンザス)のルーンの応用だそうだね!」

香焼「ちょ、す、ステイルさん……」タラー・・・

ステイル「いやぁ、考えたヤツは凄いよ。理論は単純なんだ。ただ発想は出来なかったね! 君でもコツを掴めば簡単に使えるよ」コクコクッ


……煙草?
462 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 08:51:59.67 ID:zz519b60
香焼「オマ、だ……後ろに……ヤバいって……」ダラー・・・

ステイル「見たいか? 見たかろう! 折角だ、見せてやる。僕の葉巻だと扱い易いよう仕込んだから君にも一本……ん?」チラッ

神裂「……香焼」ジトー・・・

香焼「あ、あはは……ち、違うんすよ? これは、ステイルが、勝手に……」タラー・・・

ステイル「……何だよ、神裂」パクッ・・・ボッ!

神裂「……何故人の部屋で煙草喫ってるのですか?」プルプル・・・

ステイル「此処VIPフロアだから喫煙OKだろう。調べてある」ジジジ・・・フゥ・・・

香焼「ば、止め、堂々と……」ダラー・・・

ステイル「別に怒られたって気にしないさ。いつも神裂の前で喫ってるしね」プカァ・・・


この、ニコ中が……


ステイル「君にも一本……ほら」スッ

香焼「」チーン・・・

神裂「ステイル! 友人が出来たのは良い事ですが、未成年である彼に煙草を勧めるのはいけません!」

ステイル「……は?」ポカーン?

神裂「……ん?」

香焼「」カチコチ・・・

ステイル「……知らない、と?」

香焼「」モウ、ソレクライニシテ・・・


……まさか。


神裂「……香焼くん。其処に」スッ・・・

香焼「」ハイ・・・

ステイル「オイオイ。喫煙くらいでそんなに――」

神裂「黙れ手遅れ不良! この子はまだ更生の余地があります! 口出しすんなボケ!!」ギロッ!

ステイル「――……ハァ」フゥ・・・
463 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 09:09:53.36 ID:zz519b60
神裂「香焼……いいですか?」ジー・・・

香焼「う、は、はい…… (オマエの所為っすよ!)」ビクビク・・・・チラッ

ステイル「…… (いや、煙草に関しての罪悪感は僕には無いね)」ジトー・・・

神裂「ハッキリ言います。まず友達は選びなさい」ギロッ!

ステイル「……言ってくれるじゃないか、神裂」ピクッ・・・


ええ、言いますとも。


香焼「え、えっと、ステイルは良いヤツですし……色々相談にも乗って貰ってるっすから」タラー・・・

神裂「ええ。確かに良い点もありましょう。しかしですよ、この阿呆野郎のニコチン漬けが貴方に移ってしまっては困ります」

ステイル「……」ピキッ・・・

神裂「アレは成長を止める麻薬なのです。つまり其処の木偶の様に無駄にデカくなったボケナスは寿命と等価交換で成長を抑制してるだけ」ジロッ

香焼「ぷ、女教皇様。い、言い方が……」

神裂「何か?」ギロッ!


言い過ぎなモノですか。『言っても無駄』な奴には、『言っても大丈夫』と同義です。過剰なくらいが丁度良い。


ステイル「……神裂。喧嘩売ってるのかい?」フウウゥ・・・

神裂「けほけほっ!! ……貴様っ」チャキッ!

香焼「い”ぃっ!!?」アタフタッ!


近くにあった七天七刀を手にする。糞ガキ……ワザと煙かけやがって!


神裂「この……」プルプル・・・

ステイル「ふんっ……丁度良い、香焼。さっき言ってたルーン魔術、見せてやる」スッ・・・


ステイルが空に煙草で文字を描こうと、私が鋼糸(ワイヤー)に手を掛けようと……刹那だった。


香焼「待ったあああああぁっ!!」ガシッ!

ステイル「ぬっ!?」ドンッ!
464 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 09:24:50.05 ID:zz519b60
香焼がステイルの腰回りを掴んだ。


ステイル「香焼! 邪魔を――」

香焼「場所! 場所考えろ!」アタフタ!

神裂「……」ムゥ・・・

ステイル「――……関係無いね。部屋を焼かずに其処の発情猫を消し炭にする事なんか容易い」

神裂「死ねえええぇぇっ!!」シュンッ!

ステイル「ふんっ!」ボオォゥッ!

香焼「こ、の……行くぞ馬鹿野郎!」フコウダー!


激突、かと思った瞬間、香焼がステイルの手を引っ張って走り出した。
ステイルの魔術は小さな火炎球となり、テーブルの上を少々焼くだけに終わる。私の鋼糸も目標を逸れ、空を切るに終わった。


ステイル「香焼! 離せ!」バシバシッ!

香焼「いいから今は大人しくしろ! 部屋出るぞ!」ダッ!

神裂「香焼! 話は終わって無いですよ!」

香焼「す、すいません! また今度お説教受けるっす! 失礼しました! ステイルは後でお返しするっす!」ガチャッ!

ステイル「ぐぉっ?!」ガンッ!「か、ンザキ……覚えてろ……」フラフラ・・・

神裂「ま、待ちなさい!!」ダッ!


香焼に手を引かれ部屋から出て行く二人。ステイルが出る瞬間、鼻を強打したように見えた。ざまぁない、良い気味だ。
私は廊下まで二人を追ったが……案の定、エレベーターに乗られてしまった。逃がしたか。


神裂「ハァ……大人気なかったですね」


我が身を振り返る。カッとなってしまった……反省。
ただ、香焼の喫煙については諚(しかと)追求、説教させて貰う。ステイルは……まぁ半殺しくらいで許す。
465 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 09:37:31.19 ID:zz519b60
神裂「……部屋、戻ろう」クルッ・・・


仕事残ってたし。


神裂「……あ」ピタッ・・・タラー・・・


扉が閉まってる。開かない。オートロック。


神裂「……」アタフタ・・・


鍵は中。フロントに行かねば。


神裂「……この、恰好で?」タラー・・・


下着同然の浴衣に、特注デニムジャケット(自前カット)を羽織っただけ。軽く痴女っぽい。


神裂「誰かに頼む……」ピタッ・・・


携帯も中。このフロアには私以外の教徒はいない。


神裂「……香焼……戻ってきて下さい」ジトー・・・


結局、暫く二人が戻って来る気配が無かったので自分でフロントまで行った。色んな人に驚愕の目を向けられた。羞恥心で死ねる。

しかも、何とか部屋を開けてもらい、戻ってから気付いた……テーブルの上の書類が焼けてた。


神裂「……不幸だ」シクシク・・・










中国製冷蔵庫「終われッ! ……でも黒妻編は終わらないッ!」ビシッ!
466 :>>1にかわりましてカキネがお送りしました[saga]:2010/11/29(月) 09:44:37.15 ID:zz519b60
はい。お疲れ様でした。神裂・香焼sideは終わりです。残るは黒妻・一通sideだけです。

因みにもう一回だけアンケ取らせて貰います。御協力お願いします。


《アンケートっ!》If.香焼ストーリーの『アニェーゼ・アフター』編のシュチュエーションについて。其の一・二は別個に。

・其の一……A:初夜  B:数回目(具体的な回数とかあると助かる)

・其の二……①普段通り強気  ②若干デレてる  ③裏腹マゾっ気  ④その他(kwsk!)


宜しくです! あと、次回は別のアンケ取ります。
例の如く、質問意見感想罵倒リクエストも宜しくお願いします。では! ノシ”
467 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]:2010/11/29(月) 14:57:48.86 ID:wo69cYUo
乙です
2回目の③で

ねーちんは普段でもなかなか露出過多だよなw
468 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/29(月) 16:10:57.95 ID:LO0J12AO
禁書、小萌、香焼がステイルに好かれる共通点が垣間見えたような話だったww
469 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/11/29(月) 18:08:29.66 ID:c8bFcoko
乙!

2桁回後(慣れた感じ)で③かな
なぜかベッドの上では従順なアニェーゼみてみたい
474 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/02(木) 19:44:29.60 ID:5TSHDHs0
こんばんわ。多少投下。



>>467
神裂さんのアレは魔術的な意味合いでしょうが……ねぇw


>>468
知らないウチにそうしちゃってましたね。小さい者が好きなんですよ、きっと。ただ香焼に関しては……うんw


>>469 >>471
二桁という発想はしてなかった。そういうのも有るのか……要検討。


>>470
初春「」チーン・・・

冷蔵庫「……明後日までにネーム書いてね」ボソッ

初春「」ムリムリ・・・

冷蔵庫「……友情モノでいいから。エロいらないから」ハァ・・・

初春「」コクコクッ・・・


白井「……初春の花が心成しか枯れて見えますの」

佐天「凄い数の○々打破だね……ちゃんと風紀委員の仕事やってるの?」


>>472
そのうちネタで使わせて貰いましょうw


>>473
「いってらっしゃい」は大事な回ですけど途中打ち切り臭が堪んなかったので伏せてましたが……やっぱキチンと回収します。
今回、前に言ってた一通さんと黄泉川センセのお風呂介護も書こうかなぁと思ってます。ロシアは……考え中!



という訳で、書くよ!
475 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/02(木) 19:59:38.77 ID:5TSHDHs0
 ―――時は遡り、PM09:30、学園都市第7学区、とある道路……一方通行side……



帰り道。
俺の歩くペースに合わせ、黒妻もゆっくり歩いていた。

見た目まるで対称的な俺らが共に歩く様は、傍から見て異様に思われていたかもしれない。

片や白い虚弱体型のシノギ、片や黒い筋骨隆々のカタギ(元シノギ)である。
尤も、黒妻が本当にシノギを『引退』しているのか如何かは甚だ疑わしいが。

さておき、随分歩きアパートは目の前……そろそろ本題か。


一方通行「オイ」カツカツ

黒妻「ん」テクテク

一方通行「話は」ジー・・・

黒妻「……したいのか?」チラッ

一方通行「いや、聞きてェから誘ったンじゃねェのかよ……」ハァ・・・


態々このクソ寒い中、買い物付き合わせたくせに。


黒妻「ははは。まぁな……でも、何となくよ」

一方通行「……」ジトー・・・


何だというのだ。


黒妻「いや……じゃあ知りたいのは一つだけだ」ポリポリ・・・

一方通行「ン」コクッ・・・

黒妻「供花、オマエが?」チラッ

一方通行「……供え、か」ボー・・・


駒場利得の墓前に、という事だろう。
476 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/02(木) 20:32:03.06 ID:5TSHDHs0
一方通行「……だったら?」

黒妻「は? オマエ馬鹿か? オレぁ単に『事実』だけ聞いてんだけど」ジトー・・・


オマエ此処は疑うとか裏探るとか……シリアスだろ。何その⑦(削板)的テンション。


黒妻「いや、だって暈す必要無ぇっつの。一つだけって言ったろ」ハァ

一方通行「だから何つゥかよォ……ハァ……」


絡み辛ェ……『真実』的なモノはいいのか?


黒妻「どーでもいー」ヘッ!

一方通行「……」


予想外過ぎる。


黒妻「いいから兎に角教えろ。那由他ん家の墓の供花と同じ奴(白いカーネーション)置いたの、オマエか?」

一方通行「ったく……あァ、俺だ」ハァ・・・

黒妻「うん、そ。ありがとよ」ニコッ


一切曇りの無い笑顔……それだけか?


黒妻「おう」コクッ

一方通行「……俺とアイツ(駒場)の関係聞いたりしねェのかよ」ハァ…

黒妻「言いたいの?」ン?


別にそういう訳ではないが、あまりに素っ頓狂な反応。正直、コイツマジ面倒臭ェ。


黒妻「……オレは那由他程ガキじゃ無ぇ。んな詮索しねぇよ」フンッ

一方通行「……」ジトー・・・


真意が読み取れない。
485 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 20:05:58.53 ID:1.xAx320
一方通行「死因は知ってンのか?」

黒妻「『人質救出及び暴力行為による正当防衛』にて警備員が止む追えず射殺、だったか……『表向き』は」


表向き、な。


黒妻「無論嘘ってのは分かってる」

一方通行「何故」

黒妻「二つ」カチッ・・・


紫煙が昇る。


黒妻「まず、スキルアウトの……特に『頭』の死因ってなぁ、大抵偽装される」ジジジ・・・フゥ・・・

一方通行「偽装ねェ……」

黒妻「戸籍無しや死人扱いの方が、『裏』として使い易い」フゥ・・・


暗部という意味だろう。しかし……


一方通行「ンじゃ、実は死ンでませンでしたァってか? ……テメェみてェに」ジトー・・・

黒妻「ははは! オレは色々、な。機会があれば教えてやる……」チラッ・・・

一方通行「ン……」フム・・・


そういえば、コイツ……2,3年『空白』あるらしい。詮索する気は無いが興味はある。


黒妻「兎角まぁ……駒場はオレと違って本当に死んじまったみてぇだが、な」モクモク・・・

一方通行「……実は裏で働かされてるっつゥのは、考えねェのかよ?」


我ながら演技臭い質問を投げる。


黒妻「駒場が暗部に入るとは思えない……アイツは単に犯罪者『として』葬られた。残念ながらな」フゥ・・・


心成しか、黒妻の顔が曇って見える。ただ、目だけはとても冷ややかだった。
486 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 20:32:10.03 ID:1.xAx320
黒妻「んー、理事か暗部か……兎に角、厄介な輩に喧嘩売って『消された』ってとこだろうよ」ボー・・・


……大体合ってるだろう。
理事の連中はスキルアウトの『悪戯』程度、普段は何とも思わないだろうが『時期』が悪かった。
アイツが死ンだのは、代表格『駒場利徳』だったというだけ。

それに俺が一番、アイツの『最後』を知っている……目の前に居たのは、俺なのだから。


黒妻「んでもう一つの理由は……」フゥ・・・ケシケシ・・・


携帯灰皿を取り出し、煙草を詰め、淡々と告げる。


黒妻「腑に落ちねぇのよ」ギュッ・・・

一方通行「……何がだ」

黒妻「全部。って言えばキリ無ぇが……人質の件、テロの件……真相を教えない仕上と半蔵達」


駒場の部下(手下か?)のチンピラ共の事だろう。無論、真実を知っている筈。


黒妻「暗部絡みってのは見え見えだがよ……『兄貴には言えません』だってさ。ったく……」ポリポリ・・・


ソイツらは賢明だと思う。コイツが暗部・理事(俺)に『復讐』するのを恐れたのだろう。
加え、『本当にテロ紛いを企てて駒場は殉職しました』とは言いにくい筈。


一方通行「テメェは、無理にでも聞かねェのか」

黒妻「……まぁ理由有んだろ。アイツらには聞かない。詮索屋は嫌いだぜ」

一方通行「成程な……そンで、諦めたと」

黒妻「……」ムゥ


態と臭い質疑をしてやる。


黒妻「知ろうと思えば……知れるのさ。アイツらを暴力で強請ったり、『裏』に近いコネに聞いたり。する気は無いけどな」

一方通行「『裏』に近いコネ?」ム・・・


何だ、それは。
487 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 20:48:24.74 ID:1.xAx320
黒妻「ははは! んな簡単に教えられねぇさ。ただ、コイツらは『裏の裏』を行ってる」


裏の裏……アレイスターに近い、という意味か。
俺の知る限りそンな人間は土御門くらいだ。海原と結標も別の意味で近いのかもしれないが。


黒妻「そんな大袈裟じゃねぇよ。まぁ、理事事情。スキルアウト事情。犯罪事情……ゴシップ(オカルト)事情ってな感じかな」

一方通行「……土御門の馬鹿かァ?」

黒妻「どーだろーねー。 (黄泉川さんに半蔵……まぁ雲川と土御門は条件次第で情報リークしてくれるからなぁ)」ククク・・・


棒読みが腹立たしい。


黒妻「話戻すが……多分、聞きはしないが麦野さん(アイテム)辺りも真実、知ってるのかもしれない……存外近くに『答え』は有るな」ハハッ

一方通行「オマエ……」ピクッ・・・


もしかすると、実は、既に……


一方通行「……知ってンのか」

黒妻「……」スッ・・・カチッ・・・


無言の煙草。どうでもいいが、喫い過ぎだ。


黒妻「……さっきも言ったが、どうでもいい」フゥ・・・

一方通行「冷てェ奴」

黒妻「結構。だからアイツのダチだったんだ……フランクだろ?」ニヤッ

一方通行「……軽過ぎだっつゥの」フンッ


不気味なニヒル笑い。


黒妻「オマエがアイツとどんな関係だったかは知らねぇ」フゥ・・・


ゆっくりと近くのガードレールに背を預け、呟くように告げる。
488 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 21:00:22.11 ID:1.xAx320
黒妻「ただ……オマエはアイツに感化された。そうだろう?」ジジジ・・・

一方通行「ハ?」ポカーン・・・


何言ってンだ、コイツ。


黒妻「コレ」ゴソゴソ・・・ピラッ


一枚の紙を取り出す……俺が渡したリスト。『無能力者襲撃・要注意人物リスト』と『異常スキルアウト・犯罪者リスト』だ。
前者は駒場の携帯から、後者は黄泉川の書類から『拝見』させて貰った。


黒妻「ボランティアだか何だか知らねぇけど、オマエは『リスト(コレ)』の名前を減らしてくれてる」

一方通行「……」

黒妻「どんだけ減ったか、後で聞かせてくれ。オレが『減らした』分と照らし合わせたいからな」フゥ・・・


『リスト』の中には大能力強度(レベル4)の輩もいた筈。無能力者のコイツが相手をしたというのか。


黒妻「なぁに。黄泉川さんだって暴走能力者相手に対等以上さ……それにオレ一人でこなしたわけじゃねぇよ」ジジジ・・・

一方通行「……」ジトー・・・

黒妻「ま、オレにゃ分が悪いってなりゃオマエに頼むしな」チラッ

一方通行「知らね」フンッ

黒妻「ツンデレめ」ハハハ


相変わらず、癪に障る野郎だ。


黒妻「兎に角、オレはオマエを悪く思って無いさ……オマエも駒場(アイツ)の意志を継いでる一人だからな。仕上達と同じな」ハハハ!

一方通行「きめェ」ジトー・・・

黒妻「言ってくれるな、白モヤシ……んでまぁ、オレはオマエの味方だよ」ニカッ

一方通行「……味方の味方ってか」フンッ


何て、楽天家。
489 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 21:07:45.30 ID:1.xAx320
俺は、シノギだ。


黒妻「今更だな。だから?」


殺しだってする。


黒妻「オレに最愛を嫌えっつーのか? 無理だな。香焼だって無理っつーぜ」ハッ

一方通行「っ……」グッ・・・


随分と歪ンだ器だ、チンピラ風情が。


黒妻「良く言われるさ」ハハハ


善人で、狂人。


黒妻「とりあえず駒場の件はもういい」

一方通行「……」チッ・・・

黒妻「まだ何か?」

一方通行「……ケッ」スゥ・・・


まるで何処かの『英雄』を見てるみたいで腹が立った。いや、正直妬ましい。
俺は何故か、チョーカーに手を伸ばした。木原の時に続き何故そんな事をしてしまったか、自分が自身を一番疑っている。
そして……



『答え』だ。                               カチッ・・・



自動反射を『オフ』に……木原那由他に見せた答えと、同じモノ。


黒妻「……ッ……」フゥ・・・


黒妻は目を丸くし、咥えた煙草を落としたそうになったが、直ぐに平静を装う。
そして、黙って煙草を吹かし続けた。
490 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 21:30:06.47 ID:1.xAx320
黒妻「……そうされっとなぁ」ハァ・・・

一方通行「……」ジー・・・


心底困った素振り。数度俺の顔を見直し、溜息交じりの煙を吐きながらぼやいた。


黒妻「スイッチ戻せ……辛いんだろ?」フゥ・・・

一方通行「……」ジロッ

黒妻「オレはオマエに如何こう出来ねぇよ……オレだけが、っていうのかな」ポリポリ・・・


答えを知っても、経過は聞かないのか。


黒妻「どっちが悪いとかあったのか?」ギロッ・・・


それは、無い。強いて言うならどちらも悪。正義ではない。


黒妻「多分だが、オマエ死人に鞭打たないタイプだろ」ジー・・・

一方通行「……」ピクッ

黒妻「真実……出て来ねぇ気がする。駒場が本当にテロ屋やってたとしても、オマエは汚名を被ろうとする。違うか?」


何も、言えない。
反論してやってもいいが……多分言い返されるだろう。今俺の中で、それに対する言い訳が出て来ない気がする。


黒妻「……アイツの分まで、アイツの為にも、生きろ……それしか言えない」ボソッ・・・


暫時の沈黙。
互いに動く気が無い……俺はスイッチを戻し、告げた。


一方通行「……ダチが目の前の鬼畜に殺されてンだぞ。許すのか?」


ピクリと反応。
煙草がフィルターまで掛り、ポロリと灰が落ちたと同時に……黒妻は答えた。
491 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 22:16:32.44 ID:1.xAx320
黒妻「打ち止め」ボソッ

一方通行「っ……」ピクッ

黒妻「『あの人(オマエ)は色んな人に恨まれて生きてる。善人とは程遠いからね……この街で恨まれるよう育っちゃったみたい』」

黒妻「『中でも……最終信号(私)と御姉様(御坂美琴)は、誰よりもあの人を恨んでいると思うよ』」


10,022人の、犠牲。


黒妻「『だからミサカ達の……特に私の特権なんだ。あの人を許(はな)さないのはね』、だとさ」フフッ・・・

一方通行「っ」グッ・・・

黒妻「オマエを許す許さねぇってのを、一人占めしたいって……何てエゴだ。妬けるじゃねぇか」ハハハ!


打ち止め……許(はな)してくれないってか。


黒妻「……オマエが傷付いて悲しむ人間もいる。自虐自傷的な真似はすんな」

一方通行「……」フンッ


何時もなら阿呆抜かせと一蹴してやるところだが、言葉が出なかった。先程スイッチを切った所為か、ヤケに鼻奥喉奥が痺れている為だろう。


黒妻「……涙目の第一位って題でどっかの写メコン送って良いか?」ニコッ

一方通行「っせェ!! 死ね!!」ガァ!

黒妻「ははは。冗談冗談」ハハハ


畜生。喰えねェ奴だ。


黒妻「ま、いいんじゃねぇか。オマエみたいな生き方、嫌いじゃないぜ。恨まれながらも誰かの為に、ってなぁ悪か無ぇよ」ククク

一方通行「意味分かンねェっつゥの……」ハァ・・・

黒妻「なぁに……俺も美偉の為なら、最悪、殺しも問わないって事よ」ハハハ!

一方通行「知るか、ボケ」フンッ


マジで言ってるのか冗談で言ってるのかは知らないが、そンな恥ずかしい事をよくもまぁしゃあしゃあと言えるモノだ。呆れる。
492 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 23:08:22.35 ID:1.xAx320
黒妻「とりあえず、寒いだろう。そろそろ家戻ろうぜ」スタッ


まったくだ。コーヒーまで冷めてやがる。
さっさと帰って風呂入って直ぐ寝てやる。


黒妻「寝かせねーよーだ。『リスト』の埋め合わせやった後、色々質問攻めだぞー」ニシシ!

一方通行「意味分かンねェよ、ボケナス」ケッ

黒妻「いやぁ……詮索は嫌いだが、流石に確認済みの情報を根掘り葉掘りすんのは好きなんだよ」ニコッ

一方通行「ハ?」ポカーン・・・

黒妻「オマエ、年上好きなんだろ?」ニヤニヤ・・・

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だって?」ハァ?!


理解が、追いつかない。


黒妻「正直年下好き……つーか最初、ロリコン? とか最悪ペドって噂、聞いてたんだけどよ」プフゥー!

一方通行「爆ぜろ」ブンッ!

黒妻「アブねぇっ!!?」ヒュンッ!

一方通行「チッ……避けやがった」カツッ・・・

黒妻「いや、杖で眼球狙うとか禁止技もいいとこだっつの……噂だ、噂。冗談でも目は止めてくれ」ヒュー・・・


本気で狙ったっつの。


黒妻「いや、兎に角帰って聞くよ……黄泉川さんとか、結標ちゃんとか」テクテク・・・

一方通行「何故ソイツらが出てくンだっつゥのよォ!!? ザケンなワカメ」ギロッ

黒妻「はいはい。モヤシモヤシ」テクテク・・・


暖簾に腕押し。糞ったれ。
結局、ワカメだのモヤシだの罵り合いながら黒妻の家まで戻る羽目となった。勘弁してくれ……
493 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/07(火) 23:33:20.35 ID:1.xAx320
 ―――PM10:00、学園都市第7学区、黒妻家……一方通行side……



黒妻「ただいまー」ガチャッ

固法「遅い!」チェイサー!

黒妻「あ痛っ!」ポコッ!

固法「30分で終わる用事に何で1時間半もかけてるんですか」ンモー・・・

黒妻「あはは……悪い」ペコッ


何だ、この……何だ?


固法「もう……一方通行くんも先輩の暴走許しちゃ駄目よ。甘やかしたらすぐ悪い事するからね」ハァ・・・

一方通行「あァ、身に染みた」コクッ

黒妻「……オマエら」ハァ・・・


身から出た錆だっつゥの。


黒妻「ガキ共は?」

固法「二人仲良くベットでお寝むです」チラッ

黒妻「そっか……まぁ昼からずっとはしゃいでたからな」フム


部屋に上がり奥を見遣る。
チビ二人が小さな寝息を立てて横になっていた。こういう姿は子供らしく可愛らしいと思えるのだが……普段が普段だからな。


黒妻・固法「「……」」ジー・・・

一方通行「……ンだよ」タラー・・・

黒妻「いや……」プッ

固法「そんな顔も出来るのね」クスッ


喧しい。余計な御世話だ、馬鹿夫婦。
494 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 00:04:08.38 ID:okRwvTA0
とりあえず、牛乳夫婦が騒がしいので先に風呂に入る事にした。
ワカメが、一緒に入るか? とありえない暴言を入れてきたので華麗にスルー。
ついでに能力の無駄遣いと名高い全自動高速洗濯もして、私服兼寝巻も颯爽と確保。これで、風呂上がったら即行寝てやる。
一寸経ち……台所へ戻った。


一方通行「……良い湯加減で」テクテク

黒妻「おうよ」

固法「牛乳飲む?」

一方通行「コーヒーブラックで」


苦笑され、目の前のテーブルにホットコーヒーが出される。
土御門から貰ったという例のコーヒーだろう……正直、安物の缶コーヒーの方が好きなのだが。


黒妻「んじゃ第一位様の残り湯に浸かってくるかなー」テクテク

一方通行「うわァ、マジ気持ち悪い。キモいじゃなくて、気持ち悪っ」ヒクワー・・・

黒妻「ははは。ナイスリアクション」ニカッ!

一方通行「いや、冗談抜きで生理的に引きました。さっさと行け、変態」ジトー・・・

固法「まったく……ごめんね。あんなんでも、真面目な時は真面目な人だから」ハァ

一方通行「……まァ」ポリポリ

固法「さて、と……どーしよっかなぁ」ニコッ・・・

一方通行「……」ズズズ・・・タラー・・・


何か凄い見られてる。御蔭でコーヒーの味がしませン。かァなァり、気拙い。


固法「んー、色々聞きたい事は有るのよ。打ち止めちゃん(あの子)の事とかね」クスッ

一方通行「……別に。俺から話せる事ァ、そンなに無ェ。黄泉川辺りに聞いてンだろ?」

固法「そういう事じゃなくて、貴方個人的なっていうのかな?」

一方通行「……俺個人の感情なンぞ知っても、面白くねェだろ」ッタク・・・

固法「そう? 興味有るわよ」フフッ


……夫婦揃って喰えない輩。困ったもンだ。
495 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 01:13:01.23 ID:okRwvTA0
固法「貴方と打ち止めちゃんはどういう関係なのかなって。兄妹的? それとも父娘的?」

一方通行「知らね。ンな事ァ、どうでもいい」フンッ

固法「あら、つれないのね」クスッ


……何だコイツ。読心能力でも使う気か?


固法「疑い深いのね。純粋な質問よ」

一方通行「……やっぱ変な奴」

固法「そういうのは思っても言わないの。特に女の子にはね」ニコッ


何が女の子だ。完璧熟女の貫録じゃねェか。


一方通行「結構ですってェの。黄泉川と同じくれェじゃねェか。 (主に胸が)」

固法「じゅ……随分失礼なのね。やっぱり老けて見えるのかしら……ショックね。これでも高校生なんだけど」ハァ・・・

一方通行「……エ?」ピクッ


正直、大学生かそれ以上だと思ってました。スイマセン。


固法「……ハァ」ショボーン・・・

一方通行「あー……アレだ。大人っぽいっつってンだよ。 (面倒臭ェ……)」タラー・・・

固法「いいわよ。どーせオバさんっぽいですよーだ」フンッ

一方通行「ったく……ほら。麦野ン奴も似た様な雰囲気だし」

固法「……」ピクッ・・・


動きが止まった。


固法「……やっぱ麦野さん、か」ボソッ・・・

一方通行「……」タラー・・・


目が据わってらっしゃる。何やら地雷を踏ンでしまったようだ。更に気拙くなる……話題を変えよう。
496 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 01:42:27.20 ID:okRwvTA0
一方通行「えっとよォ……兎に角、アンタも学生なンだろ」

固法「兎に角、は余計です」ハァ

一方通行「はァ……ガキ共の面倒見ンの、大変じゃねェのか?」

固法「そう思う?」

一方通行「いや……まァ言っちゃ悪ィが……」

固法「ママゴト気分って?」クスッ・・・


そういう事になる。


固法「そうね……でも、そういうのって駄目かしら」

一方通行「……俺にゃ、よく分かンェな」

固法「香焼くんを除いたら、この子達、最愛ちゃんを含めね……家族『ごっこ』すらした事無いみたい」

一方通行「……ン」コクッ

固法「最愛ちゃんは『置き去り』。那由他ちゃんは家族(一族)に甘えられなかった。打ち止めちゃんは……」


まるで生まれたばかり、とでも言いたいのだろう。


固法「だけど、今では黒妻家(ウチ)に黄泉川さん(アナタ)のとこ、二つの家族があるわね。羨ましいわ」クスッ

一方通行「……羨ましい、ねェ」ズズズ・・・

固法「あの子達には、母性が必要……」スッ・・・


立ち上がり、布団を蹴飛ばしている打ち止めの腹にそれを掛ける固法さン。姿は宛ら母親だった。


固法「結局は……私の自慰行為みたいなものよ。先輩も、子供達も……無意識にかな、私の我が儘に付き合ってくれてる気がするわ」ニコッ・・・

一方通行「……分かンねェが、ガキ共は喜ンでンじゃねェか?」フンッ

固法「……だと、良いけどね」フッ・・・


難しい。家族とは無縁の俺にとっては、次元の遠い話に聞こえてしまう。
497 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 02:03:45.76 ID:okRwvTA0
固法「遠くは無いでしょ。貴方にも家族……って言っていいかどうか分からないけど、近い人はいるじゃない」

一方通行「……黄泉川や芳川は、観察者だ。下手な牢屋より黄泉川ン下の方が世の中が安心できるっつゥこったろ」ケッ

固法「ふふっ。照れ屋さんね」ニコッ


まるで黒妻と同じ反応しやがる。勘弁してくれ。


固法「でもね。例えば愛情の無い家族より、仮初でも愛の有る『ごっこ』の方が良い事だと思わないかしら」

一方通行「まァ自分のガキ殺したり虐待したりする連中よりは、な」

固法「極論はそうだけど、育児怠慢や放棄……はっきり言って、この街はそれの集大成かも」


確かに言われてみれば、小学校、早ければ幼稚園のウチからこの街に子供単身で入れられる。
どっかの社会学者がこのシステム自体、早期の育児放棄だと訴えていた気がする。


固法「この子達は、なんて言わない。でも少なくとも私は恵まれてるわ。エゴだけどね」

一方通行「……良いんじゃねェの。俺自身の慣れ合いは苦手だが、アンタみてェな人には合ってるぜ」フッ・・・

固法「貴方も一匹狼気取ってないで、もっと周りに甘えればいいのに」クスッ

一方通行「柄じゃ無ェよ」ケッ・・・


今は、誰かに甘えられる人間じゃない。


固法「まるで第二次反抗期なりたての男の子みたいね」クスッ

一方通行「遠回しに中二病って言いてェらしいな、畜生め」ッタク・・・

固法「ははは。面白いわね、第一位さん」ニコッ

一方通行「五月蠅ェ」ズズズ・・・コトッ

固法「やっぱり面白い。おかわりは?」

一方通行「……頼ンます」スッ

固法「はいはい」スッ・・・


……家庭的な女。今まで会った事無ェタイプだと考えた。
501 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 09:19:34.71 ID:okRwvTA0
 ―――PM10:30、学園都市第7学区、黒妻家……黒妻side……



風呂から上がると何やら美偉が楽しそうだった。


黒妻「殴っていい?」ニコッ

一方通行「その台詞の意味が理解出来ませン」ハ?

固法「先輩ったら」クスッ

一方通行「ジェラシーってかァ? 案外可愛い野郎だな、テメェも」カカッ

黒妻「五月蠅ぇ。違うってぇの」フンッ・・・


スウェットと大きめのセーターを羽織り、美偉から渡された牛乳を受け取る。
本来は今の暖房の下でゆっくり話がしたかったが、諦めよう。喧しいと、ガキ共が目を覚ます。


黒妻「さて……何を話そうか」スッ・・・

一方通行「……もう何も話す事ァ無ェだろ」

黒妻「んな事ぁ無い。聞きたい事だらけだよ」ニコッ・・・

一方通行「ホンットお前ら二人、似てンよ……言う事が同じだ」ケッ


褒め言葉として受け取っておこう。


一方通行「ンじゃァ何か……シノギの話でもすっかァ?」ニヤッ・・・

黒妻「……目の前に居る人は仮にも風紀委員のお姉さんだぞ、馬鹿野郎。冗談でも言葉選べ」フンッ・・・

固法「……」ピクッ「でも……極道の妻になる覚悟はあるんよ。旦那様」クスッ・・・


美偉が疑い半分、誘惑半分の瞳でオレを見遣る。ふざけるなっつの、オレはカタギだ。


一方通行「京弁上手ェな……まァどォでもいィがよォ、テメェは家にガキや客が居てもイチャつくのか?」

固法「あら、失礼」オホホ・・・


やれやれ、だ。
502 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 13:00:59.07 ID:okRwvTA0
一方通行「ったく……コレ飲ンだら寝る。つゥか、俺ら寝るスペースあンのか?」

固法「貴方はベットの横で寝ていいわよ」

一方通行「……テメェらは?」

黒妻「ん」ポチッ


リモコンを押す。すると……


一方通行「台所の天井から……何コレ?」ポカーン・・・

黒妻「ハンモック。サバイバル通販で買ったんだ。恰好良いだろ!」ニコッ

一方通行「ガキ共泊る時何時もそうなのか? ……馬鹿だろオマエら」ハァ

固法「普段は先輩か香焼くんが此処寝るんだけどね。貴方は足辛そうだし、布団に寝て頂戴」

一方通行「ハァ……」ポリポリ・・・


ハンモックはロマン。半蔵が一晩で取り付けてくれました。


一方通行「何つゥかよォ……もっと広いアパートマンション借りるか、もう家買っちまえ。4児のパパ」

黒妻「んな金無ぇし。激安で良い物件あるなら教えろっつの。家賃は月4以内な!」ハハハ!

一方通行「バイクと煙草止めりゃァ、余裕で良いとこ借りれンだろォが」ハァ・・・


無理です。断言。


一方通行「兎に角……甘えさせて貰う。布団は借りンぞ」スタッ

黒妻「おっと、まだだぜ。帰り道、話したろ」ニヤニヤ・・・ニヤッ

一方通行「……ハァ?」タラー・・・


コイツの痴話話。


固法「あ。ちょっと興味有るかも」クスッ

一方通行「」チーン・・・
503 :>>1にかわりましてカキネがお送りします[saga]:2010/12/08(水) 15:10:07.77 ID:okRwvTA0
という事で……


黒妻「PN.『ツッチー』さんからのタレコミと……PN.『専門蛇』さんからのリーク情報どっちの話が良い?」

一方通行「意味分かンねェ……」ハァ・・・

固法「前者が結標さんで、後者が黄泉川さんの情報ね」

一方通行「」チーン・・・


更に白さが拍車掛る第一位。



冷蔵庫「①あわきんとのプチイチャイチャ。 ②黄泉川センセのお風呂介助。


         アナタなら、どっち!」ビシッ!
504>>1にかわりましてカキネがお送りしました[saga]:2010/12/08(水) 15:10:51.57 ID:okRwvTA0
という事で、プチアンケ協力宜しく。

また夜に書きます! ノシ
505 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/12/08(水) 15:38:12.90 ID:8RAfsgDO
>>1


あわきん一択でお願いします


今後も頑張って
506以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/12/08(水) 15:42:04.12 ID:Lwc8ysAO

京都弁は中の人ネタかな?

黄泉川先生で。実は介助のネタを思い出してフったの俺なんだww
507 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/12/08(水) 16:36:16.97 ID:C./h2..o
>>1乙!

大丈夫、私は>>1が①も②も両方書いてくれるのを応援してる
508 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/12/08(水) 16:38:12.87 ID:8Ei5nADO
乙! やっぱこのりん、良い女だぜぃ。

黄泉川さんがいいにや~(2828

でも後であわきんも見たいにー!
509 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage]:2010/12/08(水) 17:25:12.23 ID:tkECW2c0
きたかッ!
乙乙乙。あわきん!あわきん!

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