2013年10月28日月曜日

ロールシャッハ「HURM……ここがハンター試験会場か」

1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:04:20.27 ID:xcyTgqFb0
SS書くの初めてなので変なところがあるかもしれません 
 
7 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:23:59.45 ID:Fj+srWVE0
日誌 ロールシャッハ記
1998年 12月23日

この日誌を書くにあたって、日付はこの地の新聞を参照した。
現在のニューヨークとは異なっている可能性が多分にある。

南極のカルナックでDr.マンハッタンに俺が消されてから、おそらく13日が経過した。
俺の記憶する限りの経過日数だ。

今俺のいるこの場所があの世なのだろうか?
しかし新聞売りの男も、その隣の黒人少年の姿もここにはない。

ヴェイトの陰謀は?
ニューヨークにて失われた300万の魂は奴を裁きにかけたのだろうか?

俺に知る由はない。ここはアメリカではないし、
アメリカという国が存在した形跡すらない。 
8 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:27:01.54 ID:Fj+srWVE0
何もかもが奇妙に歪んだ土地だ。
言葉を話す獣や、蟹の脚の生えた魚を見た。
空には人間の顔をした鳥や毒々しい模様の飛行船が幻覚のように飛んでいる。

幸いにも言葉は通じるが、それは英語ではない。
なぜ俺がそれを理解できるのかもわからない。
だが少なくとも英語で書かれたこの手記を、他人に読まれる心配はない。

問題はこの地にヒーローと呼ぶべきものは存在していないらしく、
かといって警察も大して機能していない。
この地のギャングと思しき連中はのさばる一方だということだ。

ギャングを数人捕らえて尋問にかけたところ、
ハンター・ライセンスなるものの提示を求められた。
クズどもの言うことに耳をかたむける気などないが、聞くところによれば、
その資格さえあればクズどもを片端から掃除する援助を受けられるシステムが
この地には存在するらしい。
肩書きなどに興味はない。だが、それが俺の手助けになるならば悪くはない。

この街もニューヨークと同じだ。
通りの誰もが気づかなくとも、俺にはわかる。
終末は近い。


ロールシャッハ「HURM……」

ロールシャッハ「ここがハンター試験会場か」
9 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:32:12.33 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「このプレートが受験番号だな……406番か」

トンパ「やあ、あんた、ハンター試験は初めてかい」

ロールシャッハ「試験というものすら初めてだ。俺がロールシャッハになってからはな」

トンパ(なんだこいつ……変なマスクだとは思ったが、中身もイッちまってるのか?)

トンパ「俺はトンパ。もう35回も受験してるベテランだから、わからないことがあったらなんでも聞きな」

ロールシャッハ「35回も落ち続けているというのにまだ受験するとは、
        その精神力には尊敬を認めよう」

トンパ「ま、まあこいつはお近づきの印だ、受け取ってくれ」
10 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:33:56.52 ID:rpD866z20
自他共に容赦ないロールシャッハさんキター
11 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:34:50.47 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「ジュースか。まずお前が飲んでみろ」

トンパ「やだな、そんなに警戒すんなって。ほら」グビ

トンパ(なんちゃって、俺のは下剤ナシの普通のジュースだよーん)

ロールシャッハ「HUNH……とりあえず受け取っておく。
この先で水分補給に使わせてもらおう」

トンパ(なんだよ今飲まねーのかよ……あとあとタネがわかって
    目をつけられても厄介だ、近づかねえようにしよう)

ロールシャッハ(ハンターは警察に近しい組織だと思っていたが、
       周りの連中を見る限りクズの方が多そうだ)
12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:37:22.93 ID:Fj+srWVE0
ハンゾー「おい、あんた変わったマスクしてるな!」

ロールシャッハ「何の用だ」

ハンゾー「いや俺実は忍者でよ、あんたも同業かと思って」

ロールシャッハ「ニンジャか。サムライは大嫌いだがな」

ハンゾー「あ、サムライも知ってんの。サムライと言えばよー俺こないだよー」

ロールシャッハ「うるさい失せろ」

ハンゾー「なんだアイツ……」

ロールシャッハ(一概にクズだけとは言えんようだな)
       
       (なんだ、あれは……子供のようだが)
13 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:39:33.39 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「おい、なぜここに子供がいる」

ゴン「え、俺のこと?」

ロールシャッハ「そうだ」

ゴン「おじさん、なんかすごい臭いがするよ」

ロールシャッハ「質問に答えろ」

レオリオ「おいおいあんた、いきなり突っかかってきて何の用だ?」

クラピカ(このマスク……そしてこの臭い……とにかくただものではなさそうだな)

ゴン「俺、ゴン! こっちはレオリオとクラピカ。
俺、父さんと同じハンターになって、父さんに逢いにいくんだ!」

ロールシャッハ(父か……)
     
       (俺も俺の父と同じく、アメリカを守る仕事を目指した)
       (この少年より、ずっと遅かったが)

ロールシャッハ「いいことだ。だが、深淵は深く見つめすぎるな」
15 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:42:06.56 ID:Fj+srWVE0
ゴン「よくわかんないけど……おじさん、名前は?」

ロールシャッハ「名乗る必要などない」

レオリオ「おいてめえ! 急にたずねてきてそりゃねえんじゃねえか?」

ロールシャッハ「こちらから名前を聞いた覚えなどない」

レオリオ「んだとこのロールシャッハ野郎!」

ロールシャッハ「!……このマスクの意味がわかるのか?」

レオリオ「そりゃな。これでも医者志望だからよ。もっとも、心理学は専門外だがな」

ロールシャッハ(この地においても、この模様の持つ意味は変わらないらしい)

ゴン「ろーるしゃっは……? なにそれ」

クラピカ「インクを垂らした紙を、二つに折ってできる左右対称の模様のことだ。
     それがなんに見えるかによって、重犯罪者などの心理状態を調べるものだよ」
19 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:45:24.73 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「決まりだ。これからは勝手にロールシャッハって呼ぶぜ」

ロールシャッハ「構わん。それが名前だ」

レオリオ「え、そうなの?」

ロールシャッハ「ああ」

クラピカ「なぜそのようなマスクを?」

ロールシャッハ「答える義務はない。少なくともその珍奇な仮装よりは美しい」

クラピカ「そうか。なかなか高尚な趣味をお持ちのようだな」
     (こいつ……クルタ族の民族衣装を愚弄する気か?)

ゴン「ロールシャッハ……さんは、どうしてハンターを目指すの?」

ロールシャッハ「それについても答える義務はない。
        俺はここに慣れ合いを求めに来たわけじゃない」

レオリオ「こいつ! すんげー嫌味な野郎だ! ちょっとぶっ飛ばしたる!」

クラピカ「やめておけ、レオリオ。確かに彼の言うことももっともだ。
我々は受験生。ここにいる者すべてが、そのライバルなのだからな」
22 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:48:04.84 ID:Fj+srWVE0
ジリリリリ!

ロールシャッハ(開始か……)

サトツ「只今を持ちまして、受付時間を終了とさせていただきます。
    同時に、第287期ハンター試験、一次試験を開始致します」

ロールシャッハ「HUNH」

サトツ「申し遅れましたが私、一次試験官のサトツと申します。
    二次試験会場まで私のあとについてくること。それが一次試験です」

ロールシャッハ「ただのマラソンか。造作もない」

ロールシャッハ「ガリ、ガリ、ガリ」

レオリオ「おいロールシャッハ、あんたそれ何喰ってんだ?
まさかドーピングってんじゃ……」

ロールシャッハ「角砂糖だ」

レオリオ「か、角砂糖って……」

ロールシャッハ「やらんぞ」

レオリオ「いらねーよ!」
25 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:50:21.11 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「これならばやろう」スッ

レオリオ「缶ジュース……? どっかで見たような」

クラピカ「トンパに渡されたものだ。
     ロールシャッハ、わかってるとは思うがそれは罠だぞ」

レオリオ「おい、こんな奴に教えるこたあ……」

ロールシャッハ「やはりか。ハハハ、そうだろうと思っていた」

ゴン「ロールシャッハさん、そのマスク、模様が動くんだね」

ロールシャッハ「ああ。これが俺の顔だからな」

レオリオ「ゴン、やめとけ、こんな奴に関わるな!」

ロールシャッハ「……ひとつ聞かせてくれ」

レオリオ「ああん!?」

ロールシャッハ「ハンターとは、クズの集まりなのか?」

レオリオ「てめえほどのクズはそうそういねえよ!」
26 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:53:39.16 ID:Fj+srWVE0


クラピカ「お前の言うクズが何を意味するのかはわからないが、善人ばかりではないようだ」

ゴン「そんなわけないよ。だって父さんの仕事だもん」

ロールシャッハ「クズが多いように見えるが、そうではない者がちらほらいる。たとえばあんた方だ」

レオリオ「慣れ合いはしねえんじゃなかったのか?」

ロールシャッハ「客観的に見てそう言っている」

レオリオ「んじゃ、客観的なあんたの目ん玉から、一番クズに見えるのはどいつだい?」

ロールシャッハ「そうだな……」

ロールシャッハ「あのスケボーの子供だ」
29 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 20:55:48.72 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「ぬあ、あいつ反則じゃねえか! 確かにあいつはクズだぜ!」

ロールシャッハ「そういうことを言ってるのではない」

キルア「おいおっさん、俺のどこがクズだって?」シャー

ロールシャッハ「……子供は子供らしくしろ。それだけだ」

キルア「これでも充分、子供らしくしてるつもりだけど」

ロールシャッハ「お前は、自分では気づいていない」

キルア「…………俺も走ろっと」タッ

ゴン「君、歳いくつ? 名前は?」
30 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:02:12.87 ID:Fj+srWVE0
ヌメーレ湿原入口

ロールシャッハ「到着か?」

ロールシャッハ「ガリ、ガリ、ガリ」

レオリオ「はあ、はあ、なあロールシャッハ、やっぱりそれひとつくれよ」

ロールシャッハ「今ので最後だ」

レオリオ「何ィ!?」

レオリオ「飲むな! 口ん中残ってるだけでもよこせ!」

ロールシャッハ「断る。お前はゲイか?」

クラピカ「やめろレオリオ、みっともない」
31 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:05:11.79 ID:Fj+srWVE0
サトツ「ここが中間地点になります。
    引き続き、私のあとについてきてください。くれぐれも私の姿を見失わないように。
    ここの生き物はありとあらゆる手段で人を欺きます」

   「だまされると死にますよ」


試験官「ウソだ! そいつはウソをついている!」

試験官「ヌメーレ湿原に棲息する人面猿!
    こいつらお前ら皆殺しにして、喰うつもりだぞ!」

レオリオ「おい、ロールシャッハさんよ、その目玉で判断してくれねえか」

ロールシャッハ「あとから来た者が偽物だ。クズの臭いが染みついている」

レオリオ「だってよ。目ん玉なくても、自分もカビくせえからわかんのかね」

クラピカ「体臭は関係ないと思うぞ」

ゴン「でも、キルアもそうだとは思えないんだけどな……」

キルア(この男……)
34 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:07:27.00 ID:Fj+srWVE0
シュッ
カッ
試験官「がっ……」

ロールシャッハ「!」

ヒソカ「これでわかったねえ。そっちが本物。
    試験官がこのくらい受け止められないわけ、ないものねえ◆」

サトツ「誉め言葉と受け取っておきましょう。ただしこれ以上は、反逆行為と見なしますよ」

ヒソカ「はいはい◆」

ロールシャッハ(あの男…………)ダッ

レオリオ「おい、待てロールシャッハ!」

ロールシャッハ「なぜ止める? お前にそんな義理はないはずだ」

レオリオ「あんただってあのニセ試験官を殺されて、怒る義理はねえだろう!」

ロールシャッハ「あるとも。あの道化の男は救いようのないクズだ。殺す必要がある」
35 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:10:51.14 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「あいつはやべェんだよ! あんたが来る前から他の受験生獲物にしてやがんだ!」

ロールシャッハ「ならなおさらだ」

レオリオ「あんたの勝てる相手じゃねえ!」

ロールシャッハ「勝てる勝てないではない。やるしかないんだ」

レオリオ「試験に受かってからやりゃあいいだろう!
     俺はそんなにぽんぽん人に死なれるのはたまんねェーんだ!」

ロールシャッハ「UUUMM……」


サトツ「……トラブルが起きましたが、先を急ぎますよ」
36 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:12:58.49 ID:Fj+srWVE0
先がまだ相当長いです


ロールシャッハ「このあたりは怪物だらけだな。
        このようなところを走らせるなど、ハンター協会というのも腐ってるらしい」

クラピカ「……先ほどのことといい、貴様は何か大きな執念があるようだな」

ロールシャッハ「あんたには関係ない」

クラピカ「……私は幻影旅団という盗賊を追っている。奴らに殺された同胞の復讐のために」

ロールシャッハ「クズの掃除というなら、力を貸すぞ」

クラピカ「気持ちだけ受け取っておく。貴様も、何か似たような境遇にあるのではないか?
     そのマスクや言動、正気の沙汰とは思えない」

ロールシャッハ「…………」
レオリオ「……って、なんかしゃべれよ! 『答える義務はない』ってか?」

ロールシャッハ「……空の上に神などいない。俺たちは孤独のまま霧の中をさまよっている」

レオリオ「へっ、今まさにそうしてるよ!」

ロールシャッハ「虚無から生まれ、人生という拷問に歯を喰いしばって耐えてから、
        また虚無に戻る」

レオリオ「哲学の勉強かァ?」

クラピカ「レオリオ、少し黙っていてくれ」
37 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:15:06.33 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「……レオリオ、お前にはこの顔の模様がなんに見える?」

レオリオ「今度は精神科医かよ! 二頭の魔獣が左右から女を引き裂いてる! これで充分か?」

クラピカ「医者志望とは思えぬほど、凶悪なことを考えてるんだな」

レオリオ「この方がこいつ相手にゃいい答えだろうよ!」

ロールシャッハ「恐ろしいのは、その答えではない」
       「本当に恐ろしいのは、この模様に何の意味もないことだ」

レオリオ「か――っ、わかんねェ! 俺の方がどうにかなっちまうぜ」

クラピカ「…………」
38 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:17:42.26 ID:Fj+srWVE0
キルア「ヒソカからは離れた方がいい。あいつ、霧に乗じてかなり殺るよ」

ゴン「なんでわかるの?」

キルア「匂いでわかるんだ。あいつと俺は、同類だから」

ゴン「ロールシャッハさんは? あの人も匂いがどうとか言ってたけど」

キルア「カビくさいのとは関係ないけど、あいつも結構ヤバそうな匂いだ。
    でも俺やヒソカとは違う。なんつうか、今まで嗅いだことのない匂いかな」



ロールシャッハ(前方の連中とはぐれたらしいな)

ロールシャッハ(他の受験生の悲鳴が聞こえる……あの道化の男が暴れだしたのか)
40 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:20:14.42 ID:Fj+srWVE0
霧の中からカードが飛来し、レオリオの腕に突き刺さる。

レオリオ「……ってェ――!」

ロールシャッハ(カード……やはりか)

レオリオ「てめェ……なにしやがる」

ヒソカ「ククク……試験官ごっこ◆」


受験生「ふざけやがって……二度と試験を受けられねえ体にしてやるぜ!」

ヒソカ「んー……君たちまとめて……これ一枚で充分かな◆」

ロールシャッハ(信じられん……あの数の男たちをこうもたやすく……)

ロールシャッハ(勝てない。どうあがいても、今の俺では勝てない。
       やつらとともに飛びかかることさえできなかった)

ヒソカ「残るは君たち三人だけだねえ、どうする?◆」
41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:22:25.54 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「…………」
クラピカ「…………」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ「俺が合図したら、三人ばらばらに逃げろ」

クラピカ「!…………」

ロールシャッハ「ここで三人とも死ぬ必要はない」

ロールシャッハ「……今だ」
レオリオ「チッ」ダッ
クラピカ「……」ダッ

ロールシャッハ「…………」

ヒソカ「あれェ――? 君は逃げないのかな◆」

ロールシャッハ「クズを目の前にして、俺が逃げるわけないだろう」

ヒソカ「いいねェ◆」
42 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:25:42.91 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「……行くぞ」

飛びかかるロールシャッハ。しかしヒソカはその猛攻を難なくかわす。

ガシィッ
ロールシャッハ(UUK、速い……一瞬で……首をつかまれた)

ヒソカ「面白い顔してるねェ、キミ。
    そのマスクどこで売ってるのか教えてくれたら逃がしてやってもいいよ◆」

ロールシャッハ「EHUK,EHUK……」

ヒソカ「でなきゃ、さっきの二人に助けを求めてごらん。それでもいいよ、見逃してあげる◆」

ロールシャッハ「HEH……笑わせるな」

ヒソカ「残念残念。キミは不合格◆」
45 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:28:33.21 ID:Fj+srWVE0

レオリオ「おおいちょっと待った!」
ヒソカ「?」

ロールシャッハ(バカ者……せっかく助かった命を)

レオリオ「やられっぱなしってのは我慢ならなくてなあ!それで戻ってみりゃ、
     時間稼ぎなんかしてくれようとしてる大バカ者がいるじゃねえか!」

クラピカ「君も充分バカだ……私も、だが」

ヒソカ「みんな戻ってきちゃったのか。うーん……持つべきものは友達だねえ◆」

パ
ドサッ
ロールシャッハ「HAH,HAH,AHUHH……」

ロールシャッハ「……バカどもが。死にに来たのか」

レオリオ「それはお前のセリフじゃねえだろ!」
46 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:30:37.34 ID:Fj+srWVE0
そのとき、赤い球がヒソカ目掛けて飛んでくる。
シュッ
ドゴォッ
ロールシャッハ(この赤い球は……ゴンの釣り竿!?)

ヒソカ「っ……」

ロールシャッハ(釣竿を飛び道具にするとは……なかなかセンスがある)

ゴン「はあ、はあ、はあっ……」
ヒソカ「……やるねェ、ボーヤ◆」

ロールシャッハ「道化、お前の相手はこっちだ」
ボッ
ロールシャッハの渾身の拳が、ヒソカの無防備な腹に炸裂した。
吹っ飛ばされるヒソカ。

ヒソカ「うぐっ……」

レオリオ「いいぞおロールシャッハ! やれ! そのままやっちまえ!」

ヒソカ「……なかなかいいねェキミも。ん――……
……合格。君たちみんな合格だ◆」

ロールシャッハ(もう立ち上がれるとは……)
47 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:32:38.77 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「それが捨て台詞か、このモーロックもどきめ」

ヒソカ「まさか。これ以上やってたら、
    キミたちみーんなここで、殺したくなっちゃうもの◆」

ロールシャッハ「ッ……」ゾクッ

ヒソカ「じゃあね。いいハンターになりなよ◆」

ゴン「みんな、大丈夫!?」

クラピカ「ひとまず、身の危険は去ったようだ」

レオリオ「ロールシャッハ、俺あんたを誤解してたぜ。あんた意外と熱いんだな」

ロールシャッハ「……笑わせるな」
49 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:34:42.09 ID:Fj+srWVE0
日誌 ロールシャッハ記
1999年 1月7日

これほどの死体の山を肉眼で目のあたりにするのは初めてだ。
ニューヨークの惨状にはほど遠いが、これが一人の男の、
それもカード一枚によるものだということには戦慄を覚える。

一次試験は終わった。あの男は合格したのだ。あれだけの殺戮を犯しておきながら。

あのような男にハンターという称号が認められるのだろうか?
だとするなら、つくづくこの世界は狂っている。
なんとしてもあの手合いは地獄に送らねばならない。それもできるだけ早急に。
そしておそらくこの世界には、似たような者が数多く存在するだろう。
クラピカという男――女だろうか? 確証は持てない――
が言っていた『幻影旅団』というものも気になる。

俺の手には負えないかも知れない。
再びニューヨークでの惨状を繰り返すことになるかも知れない。

それでもやるしかない。
やるしかないんだ。


クラピカ「ロールシャッハ、何を書いているんだ?」
ロールシャッハ「日誌だ」
クラピカ(この男の日誌か……気になるな)

クラピカ「後ででいいんだが、少し見せてくれないか」
ロールシャッハ「断る」
クラピカ「だろうと思ったよ……」
52 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:39:18.72 ID:Fj+srWVE0
ビスカ森林公園

メンチ「二次試験は料理よ! あたしたちに『おいしい』」と言わせたら合格!」

ロールシャッハ「淫売が何を言ってるのだ」ボソッ

レオリオ「い、淫売って、お前な」

ロールシャッハ「あのような格好をした女はみな淫売に決まっている」

ゴン「いんばい、ってなあに?」

キルア「聞くな、ゴン。体臭がうつるぞ」

ブハラ「まずは俺の指定する料理を作ってもらい」
メンチ「その合格者にあたしの指定する料理を作ってもらうわ」

ロールシャッハ「メシなど豆で充分だ、淫売にブタめ」ボソッ
レオリオ(こいつ口だけは本当に悪いな……)
53 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:42:38.19 ID:Fj+srWVE0
>>50 どうにかしてやりました

ブハラ「まず俺が指定するのは――」
   「ブタの丸焼き! 俺の大好物! ブタの種類は自由!」

ロールシャッハ「その中には、お前自身も混ざっているのか?」ボソッ

クラピカ「いい加減にしろ、ロールシャッハ」
ロールシャッハ「HUNH……」


レオリオ「ブタの丸焼きってんなら簡単だな」
ゴン「ブタ捕まえて焼くだけだもんね!」

ロールシャッハ(捕まえたのはいいが……)

       (黒焦げになってしまうとは思わなかった……)

ロールシャッハ「……Hurm」
54 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:44:39.36 ID:Fj+srWVE0
キルア「うえっ、炭のかたまりじゃん、あんた料理もしたことないのかよ」

ロールシャッハ「…………」

キルア「おいおっさん、さっきそのブタ、素手で倒してただろ」

ロールシャッハ「それがどうした」

キルア「あんたについてちょっと知りたくてさ。会う前から悪口言われたし」

ロールシャッハ「キルアとかいったか。俺はお前が嫌いだ。あっちに行け」

キルア「むかつくおっさんだな」

ロールシャッハ「俺にとってはむかつくガキだ。ガキはガキらしくしろ。ブタは焼けたのだろう?
        なら俺になどかまわず、他のガキと一緒に遊んでればいい」

キルア(けっ、そうしたきゃしてるっつーの)
55 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:46:51.56 ID:Fj+srWVE0
ブハラ「うん、うまい、これもうまい、この焦げてるのも苦みがあってなかなかうまい」

ロールシャッハ「ブタがブタを喰うとは、滑稽だな」ボソッ
レオリオ「あの黒焦げ、お前んだろ?」

ロールシャッハ「ブタに味覚などあるものか」ボソッ
レオリオ「……」


メンチ「終――了――! 二次試験前半、71名合格!」
   「後半は厳しくいくわよ! あたしの指定する料理は……」

   「スシよ!」

ロールシャッハ(スシか……ダニエルが喰ってるのを見たことがある)

メンチ「スシはスシでもニギリズシよ! ヒントは中にいくらでも用意されているわ」

ロールシャッハ(包丁……いくらかもらっておこう)
       
       (EHHH.角砂糖もある……)
56 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:49:14.31 ID:Fj+srWVE0
ゴン「ライスだけで作るのかな? クラピカ、何か知らない?」

クラピカ「……ある島国の民族料理だと聞いている。酢飯と魚を」
ロールシャッハ「アボカドだ」

クラピカ「アボカド?」

レオリオ「なんだよロールシャッハ!
     喰いもんなんざどうでもいいみたいなこと言いながら知ってんじゃねえか」

ロールシャッハ「喰ったことはないが、見たことはある。その島国についてもある程度知っている。
        おそらくあのニンジャはスシについて俺以上に知っているだろう」

ゴン「どんな料理なの?」

ロールシャッハ「魚肉、キュウリ、アボカドなどを米で巻いてある」

レオリオ「魚にキュウリにアボカドだあ!? いくらなんだって多すぎやしねえか!?」
クラピカ「声がでかい!」

受験生「「「「「魚、キュウリ、アボカド!!」」」」」ドドドドド

ハンゾー「アボカド!? 実は俺の知ってるスシとは違うのか!?」
ロールシャッハ(……?)
58 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:51:18.51 ID:Fj+srWVE0
ゴン「キュウリとアボカドはなかったけど、食べられる実ならなんでもいいよね!」

ロールシャッハ「ああ、スシに決まった具材はないはずだ」

キルア「ほんとにあてになんのかよ、こんな奴。大体米で巻くって、それ握ってないじゃん」

ロールシャッハ「できた」

レオリオ「ほんとか? ちょっと見せてくれよ」

ロールシャッハ「ダメだ」


ロールシャッハ「さあ、喰え」

メンチ(なんかこいつすごい臭いするけど……)
   「どれどれ……」
   「形がすごい悪いけど……独創的なデザインかも……」
   「っていうか、埃ついてるじゃない! あんた、その手袋したままやったわけ?」

ロールシャッハ「そうだ」

メンチ「喰えるか」

ロールシャッハ「淫売のくせに注文の多い奴だ……」ボソッ
60 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:53:27.61 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「形がダメだって言われたぜ」

ゴン「俺も」

クラピカ「……私もだ」

キルア「このおっさんの言うこと、やっぱ間違ってたんじゃねーの」

ロールシャッハ(そんなバカな……)


クラピカ(ロールシャッハはおそらくあてにならない)

    (ニギリズシという名称……試験官の持つ道具と皿から察するに、
     大きさはコロッケやハンバーグ以下……)

    (さらに新鮮な魚肉と果実を加えるとなれば……)

クラピカ「これだ!」

米の中でうごめく魚、周囲に果実のつけ合わせ

メンチ「喰えるか」

クラピカ「!…………」

ロールシャッハ「お前は賢いが頭が悪いな」
61 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:55:33.72 ID:Fj+srWVE0
ハンゾー「ほら、これがスシだろ!」

ハンゾー(頼む、そうであってくれ! 俺のスシ概念を覆さないでくれ……!)

メンチ「うん、ようやくそれらしいのがでてきたわね」

ハンゾー「よし!」

メンチ「ダメおいしくない」

ハンゾー「何ィッ!」

ロールシャッハ「いちいち腹の立つ女だ……」
62 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 21:57:38.14 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ(あのヒス女のおかげで、一時、合格者は0)

ロールシャッハ(会長だという謎の老人のはからいで追試験となり、
       クモワシという鳥の卵を手に入れ合格し、そしてそれを喰わされたはいいが)

レオリオ「すげえうめえ! なんだこの卵」

クラピカ「この濃厚でとろけるような舌触り……市販のとは格段に違う!」

トードー「お、俺にもくれ!」

ゴン「はい、俺の半分あげる!」


ロールシャッハ(まったく違いがわからん……)
63 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:00:03.51 ID:Fj+srWVE0
日誌 ロールシャッハ記

1999年 1月8日

美食ハンターなるものの意義が、俺には理解できない。
同様の意見を持つ何名かの受験者は追試験のあとその考えを改めたように見えたが、
それでも俺にはまったく理解できない。

これほどの疎外感を味わったのは初めてだ。

ニューヨークでは人々はみなガンガ・ダイナーのタンドリー・チキンや
バーガー&ボルシチの生ゴミを喰らって生きていた。
だが、それでもニューヨークがこの地ほど腐敗していたとは思えない。
食物が人間に与える影響など微々たるものらしい。
俺は豆缶と角砂糖で充分だ。

あのブタと淫売の身体能力の高さは認める。
だが美食などにうつつを抜かし、強欲と傲慢にあふれた者など信用に値しない。

我々の乗る飛行船は三次試験の会場へと向かっている。
次なる試験が、このようなくだらぬものでないことを祈ろう。

 .┓┏. この記号は豆の汁で書いてやった。


ロールシャッハ「ペチャ、クチャ、ング」
65 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:02:09.41 ID:Fj+srWVE0
トリックタワー屋上

ロールシャッハ「ここが三次試験の会場か」

ゴン「なんにもないね」

レオリオ「この絶壁を下って降りろってか?」

クラピカ「いや……なにかあるはずだ」

ロッククライマー「この程度のとっかかりがありゃ、
一流のロッククライマーなら楽勝だぜ」

キルア「すげーなあいつ。もうあんなとこまで」

ゴン「あ、あれ見て!」

怪鳥「きいいいいいい」
ロッククライマー「な、なんだこの鳥っ……」

レオリオ「喰われちまった。こりゃ壁を下るのは無理そうだな」


ロールシャッハ「HURM……」
コトリ
ロールシャッハ「!」
66 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:04:12.49 ID:Fj+srWVE0
ゴン「ねえ、さっきからロールシャッハさんの姿が見えないけど」

キルア「大方、足滑らして落ちたんじゃねーの」

クラピカ「まさか。あいつに限ってそんなこともあるまい」


ロールシャッハ「UUK……」
       「床に仕掛けがあったとは……」
       (多数決の道……)
       (この表示を見る限り、5人そろわないと進めんようだな……)
       
       (誰でもいいから来い、でなければ先へ進めない)

ロールシャッハ(………………………)


ロールシャッハ(…………遅いな……)
67 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:06:19.69 ID:Fj+srWVE0
クラピカ「では、しばしの別れだ」

4人「いち、にの、さん!」

レオリオ「いてっ」

ゴン「なんだ、みんな同じところか」

クラピカ「……短い別れだったな」

キルア「先客がいるぜ」


ロールシャッハ「遅かったな」
68 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:08:23.10 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「『遅かったな(キリッ』」

レオリオ「とか言っちゃってよー、実はさみしかったんじゃねえの?」

ロールシャッハ「やめろ。俺に触れるな」

リッポー「ようこそ、トリックタワーへ」

アナウンスが流れる。

リッポー「君たちの道は多数決の道。互いの協力が必要になる難コースだ」

ロールシャッハ(協力……厄介な道を選んでしまったようだ……)

ゴン「でも、俺たちなら大丈夫だね、そういうの!」

レオリオ「ったりめえよお!」

ロールシャッハ(ゴンか……少年らしいまっすぐな瞳だ……)

       (父の背を追うのはいいことだが)

       (その瞳が陰ることがないといいがな)
70 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:10:26.67 ID:Fj+srWVE0
『どっちに行く? 右⇒○ 左⇒×』

レオリオ「ちっ、決まってんだろこんなもん……」

『○ 3 × 2』

レオリオ「おいおい! こういうときは普通左だろ?」

クラピカ「確かに人は、こういう場合左を選びやすいとされている。
     しかし、左を選びやすいからこそ右なのだよ。試験官はおそらく、左に難関な道を配置している」


レオリオ「へえへえ、明晰な判断でございますねェ。ロールシャッハ、あんたもそう思うのかい?」

ロールシャッハ「適当に押しただけだ」

ロールシャッハ「その先がどんな道だろうと関係ない」

レオリオ「おいおい、それじゃ困るんだよォ!」
71 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:12:32.06 ID:Fj+srWVE0
トリックタワー リング

ベンドット「我々は貴様ら受験者を試すために雇われた。
      ここから先、一対一の勝負で我々5人を倒さねば先へ進めない」

ゴン「あの人、強そうだね」

クラピカ「手枷があるところを見ると、受刑者か何かだろう」

ベンドット「一人につき一度しか戦えない。受けるなら○、受けないなら×だ」

レオリオ「そんなもん受けるに決まってんだろ! 見ろ! こっちは満場一致だ!」

ベンドット「一番手は俺だ。そっちは?」

ロールシャッハ「俺が行こう」

レオリオ「待てよ、あいつの身長、お前の1.5倍はあるぜ」

ロールシャッハ「気にするな。少しは年長者を頼れ」

ロールシャッハ「クラピカ。受刑者と言ったな」

クラピカ「……おそらくな」

ロールシャッハ「なら、遠慮なく殺せる」

クラピカ「待て!」

キルア「やめときな、あいつ聞く耳持たねータイプだ」
73 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:16:34.49 ID:Fj+srWVE0
ベンドット「方法はデスマッチだ。相手が負けを認めるか、死ぬか」

ロールシャッハ「いいだろう」
       「確認したいことがある。お前は囚人か?」

ベンドット「ああ」

ロールシャッハ「何をした?」

ベンドット「……強盗殺人。他にも聞くかい?」

ロールシャッハ「充分だ」

ベンドット「では……勝負!」

ロールシャッハ「HUNH」
75 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:18:44.32 ID:Fj+srWVE0
ベンドット攻勢。かわし続けるロールシャッハ。

ロールシャッハ(最初に狙うのは喉笛か。負けの宣言をさせないためだな)

ベンドット「ちょこまかと動きおって!」

ロールシャッハ(巨体のくせに素早い、特に腕力には目を見張るものがある)

       (倒す方法は四つ)

ロールシャッハ、背後に回って跳躍し、ふところから肉切り包丁を取り出す。

ベンドット「な……!」
ザク

ロールシャッハ(包丁を使った)
76 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:21:36.37 ID:Fj+srWVE0
>>74ロールシャッハの年齢など細部が異なります。
ビジュアル的には映画がいいと思いますが(OP大好き)
映画が面白かったら原作読んで損はないでしょう。

ザクッ ザクッ ザクッ
ロールシャッハ、肉切り包丁を数度叩き下ろす。

ベンドット「…………」

レオリオ「おいおい、ヤバそうな奴だとは思っていたが、これほどまでとは……」

キルア(……素人の殺しだな。いい動きはしてたけど)
クラピカ「もうよせ! 相手はとうに死んでいる!」

ロールシャッハ「……わかっている」

ロールシャッハ、ベンドットの体を抱え、場外へ突き落とす。

ロールシャッハ「1-0。そっちの番だ。出てこい」
77 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:24:02.96 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「おいバカ、お前が戻るんだよ! ひとりにつき一度ずつだって聞いただろ」

ロールシャッハ「なら多数決で決めよう。このまま俺でいいと思う者は○を」

       (……何も表示されない)

ロールシャッハ「HURM」

リッポー「……面白い」パリッ



マジタニ「おいなんだよあいつ! あんな化け物がいるなんて聞いてねえぞ!」

レルート「馬鹿ね、もうあいつは出てこないわ。
     でもあんたも調子こいて、方法はデスマッチとか言わないことね」
81 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:28:07.37 ID:Fj+srWVE0

ゴン「……どうして殺したの? 殺さなくても済んだはずでしょう?」

ロールシャッハ「あいつのルールに従ったまでだ」

ゴン「でも、負けを認めた場合、とも言っていたよね?」

ロールシャッハ「これでもかまわないはずだ」

ゴン「で、でも」

ロールシャッハ「ゴン。お前は目の前で死ぬ人間をとうに見たはずだ」

ロールシャッハ「これもそれと同じだ。
        試験に臨むからには、相応の覚悟があると思ったが」

ゴン「…………」

ロールシャッハ「……俺のような大人になるな」


セドカン「さあ、二番手は僕だ。そっちは?」
82 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:30:42.09 ID:Fj+srWVE0
座り込むロールシャッハ。
ロールシャッハ「AAAH……」

クラピカ「ロールシャッハ。貴様の言い分は正しいが、納得できない部分もある」

ロールシャッハ「何が言いたい」

クラピカ「貴様は奴に負けを認めさせる闘い方もできたはずだ。なぜそれをしなかった?」

ロールシャッハ「お前は確か、『幻影旅団』というものを口にしていたな。
        彼らに復讐を果たすと」

クラピカ「……ああ」

ロールシャッハ「お前は連中と対峙したとき、同じ行動をとるだろう。
        仮に奴らが天を見上げてこう叫ぶ」

       「『助けてくれ』」

ロールシャッハ「そのとき、見下ろしてお前は答える」

       「『いやだね』」

ロールシャッハ「俺の憎むものは、お前にとっての『幻影旅団』とやらと同じだ」

ロールシャッハ「少しは納得いったか?」

クラピカ「…………」
84 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:32:57.06 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ(二回戦は難なくゴンが勝利した。顔つきは穏やかではなかった)

      (原因は俺だということはわかっている)

      (しかしゴンにも、いずれ是が非でも殺さなければならないほど
       憎むべき敵が現れるだろう)


ロールシャッハ(そのとき、この瞬間を思い出してくれれば幸いだ)



マジタニ(残りはガキが二人にひょろそうなのが一人……)
    (大丈夫、大丈夫だ……)

マジタニ「さ、三回戦は俺だ。そっちは誰だ?」
85 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:35:54.64 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ(クラピカを見くびっていた)

       (クルタ族という民族特有のものらしいが……
       瞳が一瞬赤くなったそのときの殺意は、相当の怒りを周囲に伝えていた)

       (俺がロールシャッハになった瞬間を、端から見ているようでもあった)

ロールシャッハ(だがとどめを刺さなかったのはいただけない)

レオリオ「おいクラピカ、さっさととどめ刺しちまえよ!
     あいつあのまま気絶したふりして、こっちの時間を削ろうとしてやがる」

クラピカ「戦意のない相手と闘うことは、私にはできない」

キルア「……怖いの? 人を殺すの」

クラピカ「殺しを、怖い怖くないで考えたことはない」

ロールシャッハ「なら殺すがいい。でなければ俺が殺しに行く」

クラピカ「貴様は黙っていろ!」
86 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:38:31.20 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「先ほどの言葉は訂正する必要があるかも知れない。
        このままではきっと、自らの復讐の標的と対峙したときも同じことになるだろう」

クラピカ「……立て、ロールシャッハ」

ゴン「クラピカ!」

ロールシャッハ「いいだろう」

レオリオ「ちょっと、やめろお前ら!」

ロールシャッハ「レオリオ、お前はどっちの味方だ?」

レオリオ「うるせえ! 今はそんな喧嘩してる場合じゃねえんだよ!」

キルア(あーあ、仲間割れが始まった)

    (ここらが限界かな)
87 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:40:54.81 ID:Fj+srWVE0
クラピカ「貴様はヒソカと同じだ! ただの快楽殺人者でしかない!」

ロールシャッハ「……俺は世界のすべての罪に復讐する。お前と同じだ。
        ターゲットの数の差に過ぎない」

レオリオ(……このままじゃ埒があかねえ)

レオリオ「おい、こちらから提案がある!」

レルート「なに?」

レオリオ「三回戦の勝者を賭けて、四回戦に進むんだ!
     あんたらだってただ待ってんのは退屈だろ!?」

レルート「……いいわ。四回戦は私。そっちは?」

レオリオ「…………俺だ!」
88 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:43:19.24 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ(レオリオの提案は危機を逃れたように見えたが)

        (彼自身は大敗を喫した)

        (彼にはギャンブルの才能が小指の先ほどもないらしい)

        (少なくとも、彼がゲイではないということはわかった)

ロールシャッハ(これで2-2。問題はキルアだ。だがおそらく心配などいるまい)

レオリオ「すまねえっ! お前の分も負けにしちまった!」

クラピカ「いいさ、レオリオ。状況は少なくとも進んだからな」

ロールシャッハ「お前があのブ男を殺していれば、この時間は有効にタワーの攻略に使えたのだがな」

クラピカ「ッ……!」

レオリオ「やめろってロールシャッハ! 無駄に煽るな!」
90 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:45:19.88 ID:Fj+srWVE0
キルア(次は俺か……)

ジョネス「……久々にシャバの肉がつかめる」

レオリオ「!」
    「キルア、俺たちの負けでいい。あいつとは闘うな」

ロールシャッハ(それは杞憂というものだ)

        (あの男より、キルアの方がより多くの狂気をはらんでいる)

        (それにしても、このキルアという少年は何者だろう)

ロールシャッハ(ゴンとそう変わらぬ歳でありながら、その瞳に少年らしい輝きは見られない)

ジョネス「返し……」

キルア「殺人鬼ったってアマチュアじゃん? 親父なんかもっとうまく盗むぜ」


ロールシャッハ「暗殺一家のエリート?」
ゴン「うん、ゾルディック家っていうんだって」

ロールシャッハ(調べておく必要があるな……)
91 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:47:49.69 ID:Fj+srWVE0

トリックタワー 待機室

リッポー「この部屋で、君たちには負け分の50時間を過ごしてもらうよ」パリッ

レオリオ「ここで50時間か……すまねえ」

クラピカ「気にするな。残り時間内にゴールできればいい」

ゴン「そうだよ。まだ失格になったわけじゃないし」

キルア「ま、どっかのおっさんがまた嫌味でも言わなきゃな」

ロールシャッハ(さすがに疲れた。一次試験から寝ていない)

        (時には休息も必要か……)

ロールシャッハ「ZZZZZ……」
92 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:50:23.23 ID:Fj+srWVE0
ゴン「ロールシャッハさんって、いい人なのかな?」

レオリオ「わっかんねーよ。熱くなったり残酷になったり、
     まるきりつかみどころがねえぜ。このうねうねのマスクみてえだ」

キルア「俺はっきり嫌いって言われたしなー。ちょっと闘ってみたい気もするけど」

クラピカ「それについてなんだが……」

クラピカ「彼は、精神的超人なのだと思う」

ゴン「超人? 超能力があるってこと?」

クラピカ「違う。古い哲学書の言葉だ。己の信念にただひたすら殉じ、
     それを曲げることなく、一切の妥協を許さない。
     私もそうした人物を見るのは、彼が初めてだ」

キルア(あの匂いはそのせいか?)
94 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:52:57.99 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「でも確かにこいつ、喰うもんつったらクソまずい豆缶と角砂糖だしよ、
     この服もどれだけ洗ってないのかわかんねーし、自分の目的以外一切無頓着って感じだぜ」

クラピカ「それだ、レオリオ」

クラピカ「そもそもこの男がハンターになる目的を、この中の誰か一人でも聞いたか?」

レオリオ「そりゃ、『答える必要などない(キリッ』の一点張りじゃねーか」

クラピカ「そう。だが私は先ほど、
    『世界の罪に対して復讐する』という彼の言葉を聞いた」

レオリオ「そういや、『神などいない』ー、とか、『やるしかないんだ』、とか言ってたな」

キルア「あたまがおかしいんだよ、きっと」

ゴン(本当にそれだけなのかな……?)
97 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 22:55:51.26 ID:Fj+srWVE0
クラピカ「これは私の推測だが……
     彼はこの世の『悪』と呼ばれるものに対して憎悪を抱いているのだと思う。
     単身ヒソカに立ち向かった件や、先ほどの殺人行為……
     ……彼の行動理念がそうだとしたら、どれも納得いくものではないか?」

キルア「『悪』ねえ。何がそう決めるんだか。テレビの見すぎで変になったんだろ」

クラピカ「それを決めるのはきっと彼自身だ。彼のマスクを見てくれ。
     これも私の推測にすぎないが、このマスク……
     白と黒とが動いて対称形を形成しているが、決してその二つが灰色には混ざることはない。
     これは彼の目を通して見た世界……白が善、黒は悪という、彼の信念の表れなのだと思う」

レオリオ「つまり何が言いたいんだ、クラピカ」

クラピカ「彼は聖者にも悪魔にもなり得る、ということさ。私は彼は優秀なハンターになるとは思う。
     ただもしかすると彼の行動如何によって……」

クラピカ「世界の命運が決定されるときが来るかも知れない」

レオリオ「せかいのめえうんだあ? 話が大袈裟なんだよ」
100 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:07:42.00 ID:Fj+srWVE0
クラピカ「世界というのは客観的なこの世のすべてという意味ではない。
     私の見る世界、ゴンの見る世界、キルアの見る世界、レオリオの見る世界……
     そこに多大な干渉をもたらしてくるように思う。
     それがいいことなのかどうかは、私にはわからない」

キルア「そんなことよりさ、このおっさんのマスク脱がしてみようぜ。
    もっとおっさんについてわかるかも知れないじゃん」

ゴン「あ、それちょっと賛成!」

レオリオ「お前らそれはやめとけって。目を覚まして逆上されたらどうすんだ」

クラピカ「彼の持ち物には、私も興味がある」

レオリオ「お前までか……」
101 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:09:49.31 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「そっとだぞ……そっとだ」

キルア「なんだ、ただの不細工なおっさんじゃん」

ゴン「思ったよりおじさんだったね」

レオリオ「歳は大体……35ってところか?
     でもなんか見たことあるような顔だなー、西部劇とかで」

クラピカ「これが彼の日誌か……」
ペラ

クラピカ(よ、読めない……これはどこの文字だ? というかそもそも、文字なのかこれは?)


ロールシャッハ「ZZZZZ……俺の顔を……返せ……」

レオリオ「やべ、起きた?」

ロールシャッハ「ダニエル……すまない……お前は友達だ……ZZZZZ」

ゴン「寝言だよ」

キルア「俺の顔ねえ。このゴムのマスクがそうなのか?」
103 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:14:33.70 ID:Fj+srWVE0
日誌 ロールシャッハ記
1999年 1月X日

飛行船の中はどうも喉が渇く。
便所の水を飲む気にはなれなかったので、自販でコーラを買った。

コーラを飲むのも久しぶりだ。
このコーラが祖国アメリカのものと大して変わらない味であることを、
少しばかり嬉しく思う……

我々5人は三次試験を無事通過した。
三次試験は料理教室などと違って、実りが大きかったと言える。

最後の二択には最も困らされたが、ゴンの機転により制限時間内に通過することができた。
我々5人……いや、俺を除いた4人は結束力を持ったいいチームであるようだ。

囚人との対決の際には、俺も少し地を出しすぎてしまった。
非礼については詫びたいが、あいにく俺はダニエル以外の人間への謝り方を知らない。

以下、4人についての俺の見解を記す。
それが今後役に立つかどうかはわからない。
107 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:18:12.97 ID:Fj+srWVE0
ゴン。
純朴な田舎育ちの少年といった風合いで、
野性的な勘と人を不思議と引き寄せる力を持ち合わせている。
父はハンターだと言っていたが、おそらくその父も崇高な男であるに違いない。
奴ほどの年のころ、俺はああまで奔放ではなかったはずだ。
そうした境遇にあることを羨ましくも思い、同時にその行く末に不安を抱いてしまう。
それがまさに杞憂であるならば幸いだ。

レオリオ。
医者志望の男だが頭の回転が鈍く、もし俺が病に伏した患者であっても奴にかかりたくはない。
ただし他人の痛みという点については非常に繊細な感覚を持っている。
その感覚と肉体的な能力を鑑みても、奴はすぐにでもヒーローになるべきだ。
コメディアンにも匹敵するよきヒーローになることだろう。
ハンター試験の目的を金と連呼し利己的で強欲な男を装うが、
それは本心ではないことは俺にもわかる。偽悪者とでも言ったところか。
108 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:20:31.81 ID:Fj+srWVE0
クラピカ。
明晰な頭脳と優れた身体能力、それと風変わりな民族衣装は、思い出したくもない、
かのオジマンディアスを彷彿とさせる。
奴は同族の復讐のため、『幻影旅団』という組織に対して強い執念を見せている。
俺としてはもっと視野を広げるべきだと思う。
仮にその復讐が果たされたのち、どこへ向かうというのだろう。
『幻影旅団』がどのような組織であれ、
世界には罰すべき者が無数にいるということに目を向けてほしい。

キルア。
4人の中で最も俺に近しい人物としては、こいつの名があげられるだろう。
ただしその方向性はまったく異なっていると言っていい。
奴は空虚だ。威勢がいいのは、それをひた隠しにしている証拠だ。
ゾルディック家なる暗殺一家の生まれであるというが、その性分はそれが原因であると思われる。
奴は自分がまだ子供であることを理解し、その肉体に相応しい魂を取り戻さない限り、
不幸な少年時代を送ることになるに違いない。

その4人が口々に、「ダニエル」とは誰かとたずねてきた。
聞けば俺が寝言で漏らしていたという。俺も女々しくなったものだ。


ダニエル・ドライバーグ。俺の唯一の友達。

そして二度と逢うことはないだろう。
109 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:22:35.51 ID:Fj+srWVE0
飛行船内

キルア「あ、いたいた」

ロールシャッハ「お前か……何の用だ」

キルア「前はゆっくり話せなかったからさ」

ロールシャッハ「話すことなど何もない。あっちに行け」

キルア「なんでそんなに俺を嫌うわけ?」

ロールシャッハ「ガキのくせに殺し屋をやっていて、態度がでかくて生意気だ。
        顔も見たくない」

キルア「態度がでかいってのはシャッハのおっさんに言われたくないなあ。
    それに、俺だってお菓子もゲームも好きだぜ。
    子供らしい子供の範疇に、充分入ってると思うけど」

ロールシャッハ「それは演技だ。お前は与えられたものだけの中で、
        ずっとそのように過ごしてきたのだろう」

キルア「――ッ!」
111 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:25:28.08 ID:Fj+srWVE0
キルア「あ、あんたに、何がわかるんだよ!」

ロールシャッハ「わかるさ。お前ほど恵まれてはいないが、
        俺も俺なりに不幸なガキの時分を過ごしていたからな」

       「お前には夢も希望もないだろう。何かを成し遂げたいという願いが。
        俺もそうだった。世界が偶然のカタマリで、
        俺たちはその偶然の中で必死に走り回ってるだけだと気づくまで」

       「俺は一人の罪なき少女の死によって、ようやくそれに気づかされた。
        白紙の空虚な世界に自らのインクを垂らしてやると決めたんだ」

ロールシャッハ「……お前には、今の俺の顔がなんに見える」
112 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:27:31.10 ID:Fj+srWVE0
キルア「……さ、さっきから、何言ってるかわけわかんねーよ!」

ロールシャッハ「話を求めたのはお前だ」

キルア「……あ、おっさん、友達いねーだろ。あ、いや、いたっけ、ダニエルとか言うの」

ロールシャッハ「ああ。だがもう逢えない」

キルア「死んだのかよ?」

ロールシャッハ「違う。死んだのは俺の方だ。
        今の俺には、奴が無事に暮らしていると祈ることしかできない」

キルア「やっぱ何言ってるかわかんねーけど、そいつは気の毒にな」

ロールシャッハ「お前にはいるのか? 友達は」

キルア「い、いるよ……ゴンだ!」

ロールシャッハ「なら俺などと話すより、奴の元へ行け。
        俺のように、二度と逢えなくなるときが来るかも知れん」

キルア「……言われなくたって、そうするっつーの」

キルア「……けっ」

ロールシャッハ「……それでいい」
113 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:29:36.95 ID:Fj+srWVE0
レオリオ「おーい、ロールシャッハ、何してんだ」

ロールシャッハ「今度はレオリオか……ひとりにしてくれ」

レオリオ「ダチのことでも考えてんのか?」

ロールシャッハ「そうだ」

レオリオ「正直、トリックタワーではまたお前のことあぶねー奴だと思ったけどよ……」
    「ダチを大事にする奴に、ワリー奴ァいねーよなあ」

ロールシャッハ(それは嘘だ……アカどももリベラルどももマフィアも、皆そうだ)

(だが、この男にそうは言わない方がいいに違いない……少なくともこの男は……善人だからだ)

ロールシャッハ「……お前の言うとおりだ」

レオリオ「あんたにはまだ話してなかったけどよ、俺がハンターを目指すのもそれがきっかけでよ……
     ……って、あんたにはつまらねー話かな」

ロールシャッハ「構わん」
       「続けろ」
レオリオ「へへ、そうかい。俺のダチの、ピエトロって奴はな……」
119 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:46:33.43 ID:Fj+srWVE0
海上 ゼビル島へ向かう船内

リッポー「四次試験はゼビル島で行われる。
     今引いてもらったクジに記された番号が君たちのターゲットだ」

    「ターゲットのプレートは3点。それ以外のプレートは1点。
     そして君たち自身のプレートは3点。
     6点以上を確保して、終了時刻までそれを守り通せば合格だ」


カラ(辛気くせェーしカビくせェー……)


ロールシャッハ「この札がターゲットの番号か……」

       「……404」

       「見覚えのある数字だ……」

ロールシャッハ「UUUUMM……」
121 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:50:19.83 ID:Fj+srWVE0
ゼビル島 奥地 密林

トンパ「水……水……」

トンパ「くっそー……四次試験まで来たっつうのに、支給された水がもう底をついちまった」

トンパ「川も見当たんねーし……こんな状況で襲われたらさすがにやべえな……」

ロールシャッハ「こんばんは。トンパと言ったな」

トンパ「!」

トンパ(こいつは確か……406番のロールシャッハ)

トンパ(ルーキーで奇妙な出で立ち……あまり接触はしてないが、戦闘力は相当あるはず……)
123 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:52:37.58 ID:Fj+srWVE0
ロールシャッハ「警戒するな。俺のターゲットは貴様じゃない」

ロールシャッハ「これが俺のターゲットだ」

トンパ「404……クラピカか。ルーキーだな」

ロールシャッハ「奴とはこれまでもともに行動してきたが、なかなかに隙のない人物だ。
        お前についても調べさせてもらった。『新人潰しのトンパ』、
        お前の分析能力が欲しい」

トンパ「……手を組むってことか?」

ロールシャッハ「不本意だが、そうせざるを得ない。代わり俺はお前の力になろう」

トンパ(よし! 変な野郎だが、こういう奴と手を組めるのはラッキーだぜ!
   もしヒソカに襲われても、こいつならきっとどーにかしてくれる!)
124 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/24(月) 23:55:00.71 ID:Fj+srWVE0
トンパ「……いいぜ、決まりだ! ついでといっちゃあなんだが、あんた水持ってないか?」

ロールシャッハ「これでよければくれてやる。飛行船の自販機で買ったものだ」

ロールシャッハ、ペットボトルを投げてよこす。

トンパ「サンキュー! ありがてえぜ」
グビ ゴクゴク
トンパ「!」

トンパ「この味……もしかして」

ロールシャッハ「そうだ。お前が俺に渡したものを詰め替えておいた」

トンパ(こいつ、あれをずっと持ってたのか……!)

ロールシャッハ「うまいか? 俺は口にしてないからな」

トンパ「や、やべえ、腹が! 腹が!」

ロールシャッハ「新人潰しの異名の割に、騙される方には慣れてないと見えるな。
        35回という経験は無意味だったようだ」
129 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:06:27.93 ID:9rVJQ9OW0
まずい、さるさんが出た


トンパ「く、クラピカの情報がほしいんじゃないのかよ!」

ロールシャッハ「お前の力など最初から欲してはいない」

トンパ「ひい、ひいいいいいいい」

ロールシャッハ「……クソまみれで脱落とは、クソ野郎らしい最後だ……」

ロールシャッハ「……とりあえずこのプレートはいただいておく」


ロールシャッハ「ガリ、ガリ、ガリ」
134 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:09:28.25 ID:9rVJQ9OW0


ゼビル島 密林 樹上

クラピカ(? 向こうの茂みで何か光ったようだが……)

シュバッ
クラピカの頬を三又のフックがかすめる。

クラピカ(!……フック!?)

     (私を狙う者か? ならば今のうちに仕留めておくべきかも知れない……)

     (このような武器を使う者は覚えがないが、肉体派ではないだろう)

クラピカ、樹々を飛び越えて光の地点へ。

クラピカ(誰もいない……なんの気配もない……)

     (なんだ? メモ?)

カサリ
『BeHinD yOU .┓┏.』
137 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:14:51.34 ID:9rVJQ9OW0
ドゴッ
背後から飛び出したロールシャッハ、クラピカを押さえつける。

ロールシャッハ「まさかお前がこんな簡単な手に引っ掛かるとは思わなかった」

クラピカ「……メモは演出のつもりだろうが、お前の文字はまったく読めん。
     こんなときくらい丁寧に書くべきではないか?」

ロールシャッハ「HURM」

ロールシャッハ「俺の日誌を見たな」
クラピカ(しまった……)

ロールシャッハ「まあいい。どうせ読めなかっただろう」

ロールシャッハ「あいにくだが俺のターゲットはお前だ。指を折らせてもらう」
138 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:17:02.06 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「……どうした。さっさとプレートを奪うがいい」

ロールシャッハ「必要ない。お前のがなくとも、もう規定分以上のプレートは集めてある」
       「お前の元へ来たのはプレートを奪うためではない。単なる俺の意志だ」
       「『幻影旅団』について聞かせてもらおう。俺が潰すべき連中でもあるようだ」

クラピカ「手助けなど無用だと以前言ったはずだ。必要ない」

ロールシャッハ「手助けなどではない。それもすべて俺の意志だ」

クラピカ「貴様に言うことなど何もないっ! 奴らは私の手で捕らえる!」

ロールシャッハ「お前は勘違いをしている」
       「今お前の命を握っているのは俺だ」

クラピカ「――私も貴様の憎む『悪』か……?」

ロールシャッハ「…………HURM」
139 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:19:12.71 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ(『幻影旅団』)

(それについて、結局クラピカの口から何も聞きだすことはできなかった)

(指を折る気にもなれなかった。この先の試験でもきっと必要になるだろうから)

(少なくとも、奴はクズどもの掃除に一役買ってくれる人物であることは間違いない)

(奴を殴り失神させ、持ち物から引いた札を探り、
運よく俺の余分なプレートの中に該当するものがあったのでそれを忍ばせておいた)

(誰のものだったかはわからん)

(そうでもしなければ、奴は受け取らない)

(尾行している試験官はこの行為について奴を失格にはしないだろう。
奴にも充分な資質があることは、すでにわかっているはずだ)

(6点分はすでにある。残る時間は、ヒソカの居所を探ろう)

ロールシャッハ(闘うのはまだだ。奴について深く知る必要がある)
141 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:21:28.26 ID:9rVJQ9OW0
日誌 ロールシャッハ記

1999年1月17日

次が最終試験となる。それまで再び飛行船の中で缶詰だ。

船内でレオリオに出くわした際、彼は有無を言わず殴りかかってきた。
適当にいなしておいた。原因は俺がクラピカに対して行ったことだろう。
だが、俺は間違ったことなど何もしていないし、それはレオリオには何の関係もない。
奴を組み伏せて説得を試みたのち、奴は去り際に「風呂に入れ」とだけ言い残した。

仕方なくこれを書く前に冷水のシャワーを浴びた。
最後に入浴したのは、確かシンシン刑務所だったと思う。
ホースから吹き出る高圧の水で洗浄され、消毒薬をかけられた。
この飛行船内でそのようなことはなかった。
ただなにも考えることなく、水を浴びた。
142 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:24:20.39 ID:9rVJQ9OW0
ヒソカについて少しだけわかったことがある。

奴の投げたカードを一枚入手した。

奴の手から放たれた際にはカミソリのように鋭かったが、
俺の手の中ではまるきりただのカードに過ぎなかった。
これはカードの扱いの技量の差などでは決してない。
奴はDr.マンハッタンと同じく――無論、彼ほどではないにしろ――
我々を超越する力を持っている。

奴と親しい間柄であると思われる、ギタラクルというクズも同様だ。奴らは人間ではない。

奴らがI.F.チェンバーで分解されたというのでなければ、俺もその力を得られるかもしれない。

とするなら、俺はそれを得なければならない。
そのとき、俺は奴らと対等以上に渡り合えることになるだろう。

そして罰さねばならない。
144 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:31:38.33 ID:9rVJQ9OW0
飛行船内

ロールシャッハ「お前のターゲットがヒソカだったと?」

ゴン「うん。くじ運悪かった」

ロールシャッハ「プレートは奪えたのか」

ゴン「一度はあいつのプレート奪えたんだけど、そのあと別の人に取られちゃって。
   そしたらヒソカが、そのプレートを取り返してきて」

   「俺がいらないって言ったら、ヒソカに殴られてさ。
   『今みたいに一発殴ることができたら、そのプレートを受け取ろう』って。
    すごく悔しかったけど、でも殴り返せなかった」

ロールシャッハ(……やはりヒソカという男は戦闘狂らしい)

ロールシャッハ「……経緯はどうあれ、無事に合格できたのだからよしとしろ」

       「その借りを返すチャンスは、お前ならこの先いくらでもあるはずだ」

ゴン「……うん……!」

ロールシャッハ(そして俺も、奴と同じことをした)
147 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 00:33:45.28 ID:9rVJQ9OW0
飛行船内 また別の場所

レオリオ「おうクラピカ。わりィわりィ。ロールシャッハの奴ぶん殴ってやろうと思ったんだが、
     あいつやっぱ強くて無理だったわ」

クラピカ「いいさ。その気持ちだけ受け取っておく。大体にしてそれは私がやるべきことだ」

レオリオ「……試験を辞退するとか、言わねえよな」

クラピカ「考えなかったわけじゃないが、彼について悩むのは合格してからと決めたよ。
     何より時間が惜しい」

レオリオ「あいつだって悪い奴じゃないんだ、ただちょっと強情すぎるっていうかな」

クラピカ「わかっている。ただ、私は彼とは永遠に相容れないと思う」

202 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:11:40.07 ID:9rVJQ9OW0
飛行船内 受験生待機室

ハンゾー「最初はすし詰め状態だったこの船も、10人となるとさすがに閑散としてんなあ」

ロールシャッハ(再び俺たちの前に姿を現した会長は、試験は3日後、
        内容は極秘と残して去って行った)

ロールシャッハ(さすがにここまで来るとクズというのは少ない。残ったのは二人)

       (ヒソカとギタラクル)

       (非常にタチの悪いクズどもだ)

       (7名が輪を囲む中、そこを外れているのは奴らと俺)

ロールシャッハ(同類視されているというのか……このクズどもと)
203 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:12:53.97 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「しかしあのネテロじいさんの口ぶり、気になるぜ」

ハンゾー「ここは経験者に聞いてみるのが手っ取り早いかも知れねえな」

ロールシャッハ(そうだ……それがいい。さあ、俺の代わりに早く聞け)

ポックル「おお、俺はダメだよ、最終選考に残ったのはこれが初めてだから!」

ロールシャッハ(使えない奴だ……もう一人は、ボドロという武闘家か……)

ボドロ「去年、一次試験で落ちた」

ロールシャッハ(…………)

レオリオ「ダメじゃん……」

ボドロ「しかしこれまでの試験内容から推測することはできる」

   「……これら四つの試験において未だ試されていないもの……それは……」

ボドロ「……ペーパー・テストッッッ!」

一同「「「!!!」」」

ロールシャッハ(…………OOH)
205 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:14:23.99 ID:9rVJQ9OW0
飛行船 試験官室 おやつタイム

ネテロ「10人中7人がルーキーか。今年は豊作じゃのう」
   「みんな、誰に注目しとるかね?」

メンチ「あたしは294番(ハンゾー)ですかねー、唯一まともなスシ知ってたし」

ブハラ「俺は44番(ヒソカ)かなァ……ルーキーではないけど、いやでも目につきますよ」
メンチ「殺気すごかったもんねー、あいつ」

サトツ「私は断然99番(キルア)ですね」

ネテロ「ふむ、彼は見どころがあるのう」

リッポー「私は……406番(ロールシャッハ)です」
210 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:18:47.15 ID:9rVJQ9OW0
メンチ「えェーッ、406番ってあのくっさいの? あたしダメ! 絶対ダメ!」

「ボソボソ暴言吐いてくるしさー、全部聞こえてるっつーの」

ブハラ「手袋したままゴハン握ってたしね……」

サトツ「しかし確かに、彼の異常なまでの執念には目を見張るものがあります」

ネテロ「ふむ。その執念とは、何に対するものであったかね?」

サトツ「言い表しにくいのですが、おそらく彼の憎むすべてのもの……」

リッポー「いや、あれは狂気ですよ……会長、ビノールトという男を覚えておいででしょうか?」

ネテロ「もちろんじゃとも」

リッポー「彼はおそらく、ブラックリスト・ハンター志望と思われます。
素晴らしいハンターになる資質を感じますが、
同時にビノールトのような末路をたどる気配もあります」

ネテロ「……ふむ」


ネテロ(406番、ロールシャッハ。本名も不明、経歴も不明か……)
211 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:20:31.51 ID:9rVJQ9OW0
飛行船 図書室

ロールシャッハ(文学と宗教学に関しては自信があるが、それはアメリカでの話だ)

       (この地のことはほとんど何もわかっていない)

ポックル「…………」
ハンゾー「…………」
レオリオ「…………」

ロールシャッハ(俺もこいつらと同類か)

レオリオ「オルドビス……オルドビス……オルドビス」カリカリ

ロールシャッハ「レオリオ、何をしている」

レオリオ「んー、いやちょっとノートをだねェ……」

ポックル「……お前これカンニングペーパーじゃねーか!」
213 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:21:50.09 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ「…………」スッ
ビリビリビリ
レオリオ「あーっ! お前それ作んのにどんだけかかったと思ってんだ!」

ロールシャッハ「不正行為は許さん」

ポックル「そーだもっと言ってやれ!」

レオリオ「お前別に試験官じゃねーだろ! 許すも許さないも関係あるか!」

ロールシャッハ「あるとも。なぜなら、カンニングは悪しき行いだからだ」

レオリオ「うるせー! 悪しくねえときもあるんだ! ばーか!」
214 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:23:11.08 ID:9rVJQ9OW0
ハンゾー「…………」ガタッ

ロールシャッハ「おいニンジャ、どこへ行く」

ハンゾー「…………知れたこと。試験官の部屋だ」ブルブル

ハンゾー「本当に筆記試験なら、問題があるはず……さらば!」
レオリオ「抜け駆けは許さん!」
ポックル「待て貴様ら!」
ロールシャッハ「ペンすら持てなくなりたいか」

ハンゾー「やめろ放せ! ウンコ帽子! パンダマスク!」

レオリオ「っしゃあ! どさくさに紛れて殴ってやったぜ! どうだ、ロールシャッハ」
ロールシャッハ(………迂闊だった)
215 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:24:15.27 ID:9rVJQ9OW0
ピンポンパンポーン

アナウンス「受験生の皆様にお伝えします。これから番号を呼ばれた方から一人ずつ、応接室まで来てください」

ポックル「まさか、最終試験?」
レオリオ「早すぎる……」
ハンゾー「天は我を見放した……」
ロールシャッハ「……AAAK」

ロールシャッハ(残された時間では書物を脳に詰め込むこともできない)

       (3人は応接室へ偵察に向かった。無駄なことだ)

       (俺は気を落ち着かせて待つとしよう)
218 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:26:00.22 ID:9rVJQ9OW0
応接室

ロールシャッハ(とうとう俺の番か。ニンジャは面接だと言っていたが)

ネテロ「まあ座りなされ」

   「最終試験の参考に、二、三質問させてもらうぞ」

ロールシャッハ「……」

ネテロ「……わし、誰かわかってる?」

ロールシャッハ「わかる。あの美食ハンターとやらの淫売を卑猥な目つきで見ていたじいさんだ」

ネテロ(鋭い上に口の悪いガキじゃのー。話に聞いていたとおりじゃ)

   「まあよいわ。さて、お主はなぜハンターを目指すのかな?」

ロールシャッハ「答える義務はない」

ネテロ「あるじゃろ」
219 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:28:07.59 ID:9rVJQ9OW0
ネテロ「……ふむふむ、なるほどな。お主の強烈な執念はそこから来るものであったか」

ロールシャッハ「…………」

ネテロ「では次、この中で一番注目しているのは?」

ロールシャッハ「注目とはどういう意味だ」

ネテロ「好きなようにとりなさい」

ロールシャッハ「HURM」

ロールシャッハ「44番。こいつを合格させるというなら、あんたらは心底ヘドの出る連中だ」

ネテロ「ふむ。一番闘いたくないのは?」

ロールシャッハ「99番と405番。子供とは闘いたくない。特に405番だ」

ネテロ「よし、下がってよいぞ」
223 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:35:00.28 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ(会長に根掘り葉掘り聞かれた。
       これほどまでに自分のことを話す必要に迫られたのは、
       マルコム・ロングとの一件以来だ)

ロールシャッハ(気分が悪い。風に当たりに行こう)
224 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:36:12.84 ID:9rVJQ9OW0
ネテロ、応接室でひとり、即席で作ったロールシャッハ・カードを見ている。


ネテロ(ふーむ)

(人智を超えた生命体の活動……)

(そしてそれを灼く閃光の形、か……)
226 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:41:13.54 ID:9rVJQ9OW0
飛行船内 どこか風の吹く場所

ロールシャッハ「HOO……」

ロールシャッハ(来たか)

クラピカ「ロールシャッハ。話したいことがある」

ロールシャッハ「…………」
        「ゼビル島のことか」

クラピカ「これから話すことと、その次第によっては」

ロールシャッハ「…………あっちに行け」

クラピカ「断る」
ロールシャッハ「UUUUM」
231 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 18:58:20.54 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「会長との面接は終わったのだろう?」

ロールシャッハ「ああ」

クラピカ「聞かれたはずだ。貴様がハンターになるその目的について」
     「なんと答えた?」

ロールシャッハ「…………」

クラピカ「答える義務がないとは言わせない」

ロールシャッハ「…………」
        (今の奴の目は青い。少しも赤くなどない)
        (しかし強い殺気を感じるのは確かだ……)

ロールシャッハ「お前ならとうにわかっているはずだ。この世から悪を残らず一掃する。
         ハンターという肩書き自体はどうでもいい。その援助となるものを求めている」

クラピカ「……己の理想郷のためには、なんでも許されると思うのか?」

ロールシャッハ「……以前、俺がいた国のことだ」
233 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:02:00.12 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ「俺は今と変わらず、クズどもを殺して生きていた。
        罰さねばならない者は無数にはびこり、人々は憎み合い、
        その国は終末への道を歩んでいた。
        たかが俺一人が、その世界を少しでも変えようと必死にあがいていたんだ」

ロールシャッハ「だがそうはならなかった。世界を変えたのはある狂気の男のジョークだ。
        己の理想郷というタイトルのな。
        ジョークの山場で俺の街の無辜の民は虐殺され――」

        「生き残った奴らが手を取り合い、平和になるのがオチだった」

        「俺は認めなかった。罪なき市民の死体の上の、偽装された平和などは」
235 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:04:32.70 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ「その国へはもう行けない。俺の意志はその地で拒絶されたからだ」

       「そして迷い込んだこの地にも、罰さねばならない者が無数にいる」

       「俺はもう一度最初から、俺のやり方で世界を変えようと試みている」

       「今はその途中だ」

ロールシャッハ「妥協する気はない」
236 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:06:24.37 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ(彼の話のどこまでが事実なのかはわからない)

    (彼のいた国とはどこか見当もつかないが、そのような事件は聞いたことがない)

    (ただし彼がもっと早くここへ来ていたなら……)

    (……クルタ族は私一人にはならなかったかも知れない……)

クラピカ「……お前の話が聞けたことには感謝する、ロールシャッハ」

ロールシャッハ「そうか」

クラピカ「ただし、お前のやり方を認めたわけではない。
     お前に与する気もないし、私の復讐に手を出させる気もない。
     そしてゼビル島での借りも必ず返す」

ロールシャッハ「HUNH」
237 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:08:01.46 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「……日誌を盗み見たことについては謝罪しよう」

ロールシャッハ「構わん。どうせ読めなかったのだろうからな」

クラピカ「……ひとつだけ、解読できた一節がある」

ロールシャッハ「HURM」

クラピカ「“誰が見張りを見張るのか”――本文ではなく、
      ページの端に書いてあったが、一体どういう意味だ?」

ロールシャッハ「気にするな」
       「ただの落書きだ」

すると第三者の足音が聞こえる。

レオリオ「おーい、クラピカーっ、さっきロールシャッハの奴殴っといてやったぞー」

クラピカ「あのバカ……」

レオリオ「げェ、ロールシャッハ! なんでここにいんだよ!」

ロールシャッハ「HUNH」
239 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:12:11.90 ID:9rVJQ9OW0
日誌 ロールシャッハ記

1999年 1月20日

最終試験は明日。試験に備えて、これを書き終えたら眠る。

面接の質問から察するに、何か一対一の勝負を迫られるのだろう。
その準備はもう済ませた。
俺はクズ二人のどちらかに当たることは間違いない。
今の俺ではおそらく敵わない。
そこで命を落とすことになるかも知れない。だが仮にその瞬間が来ても、
そいつの人生の道中に俺という男がいたことを刻みつけてやるつもりだ。
意味もなく生涯を終えることなど、俺にあってはならない。

自分の話を一日に二人もの人間に聞かせる羽目になってしまった。

ネテロとクラピカ。
クラピカにまで話してしまったのは、直前のネテロとの会話をひきずった結果だと言える。
奴と対峙し、話をさせられたとき、何か言いようのない奇妙な感覚が俺の全身を包んだ。
あれももしかすると、ヒソカやギタラクルの力に関係あるのかも知れない。
ともに口外などしないと思うが、一番の問題はレオリオか、
他の誰かが立ち聞きしていた可能性がないことを祈る。
240 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:14:00.41 ID:9rVJQ9OW0
クラピカは日誌の一部を読み解いた。
あれは落書きだ。ニューヨークのガキどもが壁に残していた。

誰が見張りを見張るのか。

それは見張りに見張られている者だ。
ヴェイトの理想郷をアメリカに遺してきた今となっては、俺にはそう思える。
無関係を装う愚かな市民は、自らの踏みしめる地になんの疑いも持たなかった。
その結果が、あのジョークだったのだ。

気分が悪い。今夜は悪夢を見るかも知れない。
だが早く眠ろう。
241 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:15:35.50 ID:9rVJQ9OW0
最終試験 会場

ポックル「……いよいよか……」
レオリオ「筆記なら完璧だぜ……」
ネテロ「最終試験は……」
   「一対一のトーナメントで行う!」

ハンゾー「と、トーナメントォ!?」
レオリオ「筆記試験じゃないのかよ!?」
ネテロ「筆記? 誰じゃ、そんなデマを流したのは」

ボドロ「ん!…………フーン」

ロールシャッハ「HUNH」

ネテロ「ではトーナメントの組み合わせを発表する」

一同「「「!!!」」」

ロールシャッハ(! これは……)

ロールシャッハ(合格者は一人!?)
243 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:18:11.97 ID:9rVJQ9OW0
ネテロ「ほっほっほ。勘違いしとるようじゃが、諸君らは一勝だけすればよい。
     負けていった者が上へと進むシステムじゃ」

ハンゾー「つまり、不合格者がひとりってわけか……」

ロールシャッハ(俺は第一試合……相手は44番……)

ロールシャッハ「……ヒソカか……」

レオリオ「ロールシャッハ、絶対負けろよ! あいつ上に上げんじゃねーぞ!」

ロールシャッハ「黙れ、レオリオ」

ネテロ「ルールは単純! 相手に負けを認めさせたら勝ち!
     武器OK、反則ナシ!
     ただし、相手を死に至らしめたら失格。その時点で残りの者を合格とする!」

ロールシャッハ(ここで奴は殺せない、か……)

ロールシャッハ(しかしそれは奴も同じことだ)
244 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:23:05.97 ID:9rVJQ9OW0
立合人「では第一試合! 44番、406番、前へ!」

レオリオ「おい、絶対負けろよ!」

ゴン「大丈夫、ロールシャッハさんなら絶対勝てるよ」

クラピカ「ああ、奴なら心配いらない」

レオリオ「いやそうじゃねえって」

キルア「…………」

キルア(少しは面白そうかな……)

ロールシャッハ「……HUNH」
246 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:25:04.71 ID:9rVJQ9OW0
ヒソカ「……久しぶりだねェ、キミと闘うの◆」

サトツ(史上最悪の奇術師と、狂気に取りつかれた男……)

メンチ(実力ではおそらくヒソカが上だけど、
   あのカビくさ男もただものじゃないわ。どう闘うか見ものね)

ブハラ(腹へってきちゃったな……)

立合人「それでは第一試合……始め!」


ヒソカ「ククク……◆」

ロールシャッハ(対等以下の闘いというのは俺に向いていない)

       (肉体的にはおそらく無理でも、心理的にこちらが優位に立つ必要がある)

       (奴の絶対的な自信さえ砕ければいい)
255 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:47:57.90 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ(不思議と落ち着いている……)

        (初戦の際のプレッシャーはともあれ、ヴェイトと対峙したときの比ではない)

ロールシャッハ、ヒソカの側面より攻撃を仕掛ける。

ヒソカ「おやおや、いつかの勝負じゃ全力を出し切れなかったと見えるね」

ロールシャッハ(……俺の拳のすべてが受け流される。このままでは当てられない)

        (だがまだ手はある)
256 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:50:12.00 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ、ヒソカから離れ立合人のサングラスを奪い、手の中で砕く。

立合人「何を……!」

再び全力でヒソカとの間合いを詰め、
砕いたサングラスで目潰しを仕掛けるロールシャッハ。

ヒソカは予想外の動きに反応が遅れ、目潰しを喰らう。

破片ごとヒソカの顔面に叩き込まれるロールシャッハの拳。

ロールシャッハ「RRAAAAARRRL!」

ヒソカ「くっ……」
258 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:52:25.83 ID:9rVJQ9OW0
シュッ
ヒソカ、後退しながら数枚のカードを取り出す。

ゴン「危ない!」
ロールシャッハ(このカードが厄介だ……)

ロールシャッハ、跳躍し後退。放たれるカード。

ロールシャッハは観戦するメンチの背後に回り込む。

メンチ「え、ちょっ……」

メンチ(何考えてんのこいつ!?)
    (あたしを盾にする気!?)

メンチ(しょうがないわね……)

メンチ、自らの包丁を抜き、飛んでくるカードを切り落とす。

ロールシャッハ(よくやった、淫売女)
260 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:54:16.60 ID:9rVJQ9OW0
ヒソカ「……なるほどねェ◆」

ヒソカ、メンチの背後から出てくるロールシャッハに向かう。

ロールシャッハ(次はお前だ、ブタ)

ロールシャッハ、ポケットから先端をよく尖らせたビスを抜き、上の空のブハラの尻に突き刺す。

ブハラ(ランチまだ……いっ、いててっ)

突然のことに驚くブハラは前へ飛び出し、ヒソカはその腹に跳ね飛ばされる。

ヒソカ「!……」

メンチ「ちょっとブハラ! あんた、なにいいように使われてんのよ!」

ブハラ「ごめんよォ、腹が減るとぼおっとしちゃって」

サトツ「メンチさんも彼に使われてますよ」

リッポー「本当に彼は面白い……」
263 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 19:57:06.84 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「すげえぞロールシャッハの奴! あのヒソカを圧倒してる!」

クラピカ「確かにすごいが……なんというか、実にせこい攻撃だな」

サトツ(狂気や執念という彼の特性から、猪突猛進な闘いをすると思いましたが……)

サトツ(ヒソカ以上にトリッキーな闘い方が真打ちですか)

ハンゾー「おい、反則じゃねーのかあんなやり方!」

キルア「話聞いてなかったのかよ。反則はナシ、つってたじゃん」

ポックル「しかし、あれはどう見ても他人の手を借りてるだろ」

ネテロ「うむ。一見試験官らが手を貸したようにも見えるが、」
   「彼らにその意志はない。
    これは彼が周囲の環境すべてを自分の味方につけた闘いをしていると言える」

   「よって不問じゃ」

ネテロ「とは言えこんなやり方をしてくる奴がいるとは、わしも想定してなかったがの、ほっほっほ」
264 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:02:21.60 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ、包丁を抜く。

ロールシャッハ(殺すことはできない)
        (だが片腕はもらおう)

昏倒するヒソカの腕に向けて振り下ろされる肉切り包丁。
だが、一瞬早く体勢を立て直したヒソカはその刃をカードで受け止める。

ロールシャッハ「UUUUUUMM」

ヒソカ「なかなか面白かったよ◆」

ヒソカが自らの傷ついた顔面を撫でつけると、その傷が消えていく。

ロールシャッハ「!?」

        (なんだ……今何をした……奴にはまだ他の超能力が……)

ロールシャッハ(ダメだ。動揺するな。耐えろ……)
267 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:05:18.95 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「傷が治っちまうだとォ!? それじゃいくら闘っても勝ち目ねーじゃねえか!」

キルア(兄貴とおんなじだ……あの感覚……)

ヒソカ、ロールシャッハを蹴り飛ばし、その首を締め上げる。

ヒソカ「前と同じような結果になっちゃったねェ。どうする? このまま続けるかい?◆」

ロールシャッハ「EHUK…………」

ロールシャッハ「……殺すなら殺せ」

ヒソカ「キミ、話を聞いてなかったのかい? そんなことしたらボクが不合格になっちゃうじゃないか◆」

ロールシャッハ「ここで殺さねば、俺は必ずお前を殺す。
         どこに隠れようと、俺はどこまでもお前を追い詰める。
         …………お前は死ぬべきだ」
268 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:09:23.22 ID:9rVJQ9OW0
ヒソカ(!)ゾクッ

ヒソカ(いいねェ……顔が見えないのが残念だけど◆)

    「でももう打つ手ナシ◆」

    「さっさとギブアップを宣言しちゃいなよ◆」

ロールシャッハ「いや……」

ヒソカの手に自分の手を重ねるロールシャッハ。

ロールシャッハ「まだ、お前の指をつかむことができる」

ググッ
ヒソカ「やだなァ、奇術師にとって指は命なのに◆」

手を放すヒソカ。同時にフック銃を抜くロールシャッハ。

ロールシャッハ(このときばかりはダニエルに謝ることはない)

ロールシャッハ(こいつは人間じゃない)
269 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:13:52.41 ID:9rVJQ9OW0
放たれるフック。ヒソカの胸に炸裂。

ロールシャッハ(人間なら胸骨が砕ける)

ロールシャッハ(人間なら、な)

よろめきながら立ち上がるヒソカ。

ヒソカ「…………」

ロールシャッハ(どうした……奴の様子がおかしい……)
        (薬の禁断症状かなにかか?)

ヒソカ「鎮めなきゃ……鎮めなきゃ……鎮めなきゃ……」ガクガク

立合人「どうした44番。試合中だぞ」

ヒソカ「……ボクの負けでいいよ◆」
271 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:18:01.62 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ「……なんだと?」

ヒソカ「そういうことだから◆」

    「……合格、おめでとう◆」

立合人「……勝者、406番、ロールシャッハ!」

レオリオ「おいなんだかよくわかんねーけど、あいつヒソカに勝っちまったぜ!」

ロールシャッハ「…………」

部屋の隅に向かって歩くロールシャッハ。

レオリオ「やったなロールシャッハ!」

ハイタッチを求めるレオリオ。無視するロールシャッハ。
レオリオ「…………オイ」
273 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:21:43.61 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ(いや……ヒソカは完全に負けを認めたわけではない……)

ゴン「すごいね、あんな闘い方、初めて見たよ!」

キルア「あんなせこい闘いする奴、シャッハのおっさんくらいしかいねーよ」

ロールシャッハ「…………HUNH」

レオリオ「ん……ちょっと待てよ、ロールシャッハが勝ったってことは……
      ヒソカが上に上がっちまうじゃねーか!」


ヒソカ(参ったなァ◆)

    (あれ以上やってたら本当に殺したくなっちゃう◆)

    (本当に来てよかったなァ……ハンター試験◆)
279 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:25:28.44 ID:9rVJQ9OW0
立合人「――第二試合は30分後! 294番、405番、それまでに準備を整えるように!」


ロールシャッハ(ゴンはニンジャ相手に健闘した)

        (あのマヌケニンジャの動きも相当なものだったが)

        (真に驚嘆すべきはゴンの精神力だろう)

        (それも当然か。なにしろヒソカから一度はプレートを奪ったほどなのだから)

        (ゴン自身は最後にニンジャに殴られて失神し、医務室へ連れて行かれた)

ロールシャッハ(子供相手に全力で殴るとは、あのニンジャも大人げない)
280 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:28:51.53 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ(その後の試合で、クラピカはボドロに惜しくも敗退した)

        (そしてその後、レオリオ相手に勝利した)

        (問題は、ヒソカ対ギタラクル)

        (ギタラクルは一切の戦意を見せることなく、ヒソカの勝利に終わった)

        (クズはクズ同士、結びつきが強いということか。絡み合う木々の根のように)


ヒソカ「うーん……やっぱり持つべきものは友達ということかな◆」


ロールシャッハ(奇妙にも、ギタラクルは同様のことをレオリオに対しても行った)

        (レオリオとの間に関係があるとは思えない)

ロールシャッハ(……奴には他に目的があるのだろう)
281 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:30:42.78 ID:9rVJQ9OW0
最終戦 キルア対ギタラクル

ロールシャッハ(これだ……奴の目的はおそらく、この一戦だ……)

立合人「99番、301番、前へ!」

レオリオ「おいおい大丈夫かよ、あいつもヒソカに負けず劣らずヤバそうだぞ」

キルア「おっさん、あいつに勝ってんじゃん」

レオリオ「つっても不戦勝だぞ。俺はラッキーだけどよォ」

クラピカ「ロールシャッハ、お前はどう見る?」

ロールシャッハ「あのギタラクルという男は、こうなることを予測していたのだろう。
         当然今回は勝ちに来る」

        「だがこの試合が目的だとしても、なんの意図かまではわからん」
284 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:32:42.17 ID:9rVJQ9OW0
立合人「……始めェッ!」

ギタラクル「……キル、気づかなかったのかい?」

キルア「……?」

ロールシャッハ(その後の光景に、息を呑んだ)

        (ギタラクルは顔中の針を抜き始め……)

        (その顔を醜く歪ませながら変えていった)

        (そして最後に残った顔に埋まっていた目玉は)

ロールシャッハ(……キルアにそっくりだった)
286 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:34:46.29 ID:9rVJQ9OW0
イルミ「……ふう」

キルア「……兄貴……!」

イルミ「俺も次の仕事の関係で資格がほしかったんだけど……
     奇遇だね。まさかキルがハンターになりたかったなんて」

イルミ「でも最終戦で当たって安心したよ。これでお前の不合格は確定だ。
     お前はハンターになれない」

キルア「……別にハンターになろうと思ったわけじゃない」

イルミ「そうか。それを聞いて安心したよ。お前の天職は殺し屋なんだから」
288 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:36:40.05 ID:9rVJQ9OW0
キルア「…………」

ロールシャッハ(キルアが異常に動揺している)

        (あのガキがあれほど動揺するなど、初めて見た)

イルミ「……お前は闇人形だ」

    「自身はなにもほしがらず、なにも望まない」

    「だってお前は、俺と親父にそう育てられたんだ」

キルア「…………」

    「なにもほしがらず、なにも望まない、か」

    「…………なんか、どっかで聞いたことあるセリフだな」

イルミ「……?」

キルア「俺にだって、希望くらいあるさ」
289 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:37:47.37 ID:9rVJQ9OW0
イルミ「なんだい、言ってごらん」

キルア「ゴンと、友達になりたい」

イルミ「無理だね、お前に友達なんてできっこないよ」

イルミ「彼のそばにいたら、お前はいつか彼を殺したくなるよ?
    お前はそう育てられたんだから」

キルア「……!」

ロールシャッハ(やはりこいつはクズだ。吐き気をもよおすほどのクズだ。
        無垢であったはずの心を、邪悪に染め上げようとは)

ロールシャッハ(唯一救いがあるとすれば、ここにゴンがいないことか)

ロールシャッハ、一歩前に踏み出す。
293 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:42:19.59 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「よせ、ロールシャッハ! 手出しはできない。
      お前の合格も取り消されるかも知れない」

ロールシャッハ「合格など最早どうでもいい」

クラピカ「レオリオ、手伝え! 飛び出しかねない!」

ロールシャッハ「放せ。あの男を殺す」

暴れるロールシャッハ。

レオリオ「ボドロさん! ハンゾー! あとポックルも! みんな手を貸してくれ!」

ボドロ「承知!」

ハンゾー「ったくしょーがねー野郎だなー」

ポックル「麻酔薬……麻酔薬……」ゴソゴソ
    「やべ、切らしてら」
295 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:45:27.78 ID:9rVJQ9OW0
イルミ「おやおや、キルのためにみんな頑張ってくれてるね」

    「もうみんなとお友達になっちゃったのかな?」

    「……じゃあ、みんな殺しといた方がいいね」

ヒソカ「……」ピク

キルア「……!」

ロールシャッハ「AAAAAK!」

レオリオ「ロールシャッハ。お前の気持ちは俺もわかる。俺だって黙って見てるつもりはねェ」

ロールシャッハ「…………」

レオリオ、ロールシャッハから手を放し前へ進み出る。

レオリオ「おい、キルアの兄貴だがなんだか知らねえが言わせてもらうぜ!」
     「そいつはバカ野郎でゲス野郎だ! 聞く耳持つな!」
     「いつもの調子でさっさと倒して合格しちまえ!」
     「ゴンと友達になりたいだァ!? 何寝ぼけたこと言ってやがる」
     「てめえらとっくにダチ同士だろうがよォ!」
297 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:47:12.52 ID:9rVJQ9OW0
キルア「っ…………」

イルミ「ふーん。ゴンももう友達でいる気なのか」

    「じゃあゴンも殺そう」

ロールシャッハ、押さえつける手を振り払う。

ハンゾー「おい! レオリオ! カッコつけてねーでお前も押さえろ!」

ロールシャッハ、もがきながら口を開く。

ロールシャッハ「キルア」

ロールシャッハ「レオリオの言うとおり、その男はゲスだ。
         お前が兄として尊敬すべき存在ではない」

ロールシャッハ「安心しろ。俺が殺させん」

キルア「……!」
302 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 20:56:59.42 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「おうよ! そんときゃ、俺も相手になってやらァ!」

クラピカ「……無論、私もだ」

ハンゾー「……ほんっと、しょーがねー連中だなァったく!」

     「いいぜ! 俺もだ!」

ボドロ「年長者が、見て見ぬふりをするわけにはいかないな」

ひとり、またひとり、ロールシャッハの体から手を放す。

ロールシャッハはもうその場から動かない。

レオリオ「いいかゲス野郎! ゴンを殺すってんなら、ウルトラハイパード新人の、
      このハンター勢が相手にならァ!」

ポックル「……もしかして俺も入ってんの?」

レオリオ「ったりめえだろ!」
303 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:01:00.15 ID:9rVJQ9OW0
イルミ「……やだなあそういう熱っ苦しいの。苦手なんだよね」

ヒソカ「ゴンを殺したら、」

ヒソカ「……ボクもただじゃおかないよ◆」

イルミ「…………」
307 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:18:36.32 ID:9rVJQ9OW0
ロールシャッハ「キルア」


ロールシャッハ「あとはお前が決めろ。そのゲスに従うか」


       「それとも、お前が自分のインクを垂らすのか」



キルア、ロールシャッハの顔を見る。

キルア(この顔がなんに見える、か……)


キルア(向かい合う、二人の、子供……)
308 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:20:43.29 ID:9rVJQ9OW0
キルア「決めた」

イルミ「?」

キルア「ガキらしく生きるよ。そこの、シャッハのおっさんの言うとおり」

イルミ「……キル。自分で何を言ってるのか、わかってるのかい?」


キルア「イル兄の方こそ、子供の扱いってわかってる?」

   「ガキはワガママ言うもんだぜ」

ロールシャッハ(そうだ)

       (それでいい)
310 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:22:03.19 ID:9rVJQ9OW0
日誌 ロールシャッハ記

1999年 1月21日

すべての試験が終わった。

キルアはギタラクルとの接戦ののち、惜しくも敗れて不合格となった。
だが不快な表情をしていたのはギタラクルの方だ。

キルアはむしろなんの未練も残さぬ表情をしていた。
初めて逢ったときより、ずっと子供らしい顔つきに見えた。
クラピカやレオリオの目がやや鋭くなっていることと比べると、
まるで逆の現象が起きていたと言える。

試合後、奴から一言「ありがとう」と言われた。
なんのことかたずねると「うるせえさっさと風呂入れ」と悪態をつかれた。

子供から礼を言われるのは、いつ以来だろうか。
315 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:24:30.55 ID:9rVJQ9OW0
合格者講習会

ビーンズ「次に、このハンターライセンスについてですが、まず、民間人の入国禁止の国の90%と」

ロールシャッハ「くだらん講習だ」

クラピカ「静かにしろ、ロールシャッハ」

ロールシャッハ「民間人のいないところに用などない。ケダモノにも俺は興味がない」

ポックル(こいつなんでハンターになったんだ……?)

ビーンズ「……で、売れば人生7回くらい遊んで過ごせます」

レオリオ「マジか!?」

ロールシャッハ「売る気か?」

レオリオ「いやいやいやいや、売らねーよ!」
317 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:26:09.22 ID:9rVJQ9OW0
ネテロ「ロールシャッハ君」

ロールシャッハ「なんだ」

ハンゾー「会長相手にあの態度かよアイツ」
レオリオ「そーゆー奴なんだ」

ネテロ「ハンター試験に合格した者にとって、最も重要な心得はなにか述べよ」

ロールシャッハ「興味ない」
ネテロ「持てよ」
318 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:27:23.10 ID:9rVJQ9OW0
合格者講習会 終了時刻

ネテロ「あー、ロールシャッハ君だけ残るように。あとの者は退室してよろしい」

ロールシャッハ「なぜだ」

ネテロ「わかるじゃろ」

ハンゾー「けー、ロールシャッハの奴バッカでェ、残らされてやんの」プププ

ボドロ「お前も忍者とは思えないほど野放図だな」


レオリオ「じゃあ俺たち、キルアの奴を迎えに行って、
     そのあとロビーでぶらぶらしてっから、終わったら来いよ」

クラピカ「今度はちゃんと話を聞くんだぞ」

ロールシャッハ「……HUNH」
320 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:28:38.68 ID:9rVJQ9OW0
講習室 居残り中

ビーンズ「本来、人と自然の秩序を守るのがハンターの役目であり……」

ロールシャッハ(相変わらずくだらん……)

講習室のドアが開き、ギプスをしたゴンが入ってくる。

ロールシャッハ「ゴン、もういいのか」

ゴン「うん、ロールシャッハさんが一人だけ残されてるから
   一緒に受けなさいって、サトツさんが」


ゴン「試合のこと、サトツさんから聞いたよ」

ロールシャッハ「サトツ……あのヒゲ男め」

ゴン「キルアの兄ちゃんってのをへこましてやったって」

ロールシャッハ「本当は殺したかった。子供を歪ませるゲス野郎だったからな」
322 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:29:54.81 ID:9rVJQ9OW0
ゴン「……ほんと言うと、キルアってとっつきづらいところがあったんだ。
   苦手とかそういうんじゃなくて、生きてる世界が違うのかな、って」

ゴン「でもあのあと俺のところに来てくれたんだ、
  『俺、落ちた!』って、俺も見たこともないくらい笑顔だった」


ゴン「キルアが落ちちゃったのは、残念だけど……なんていうか、
   俺が言うのも変だけど、ロールシャッハさん、ありがとう!」

ロールシャッハ「…………HEH」

ネテロ「おーい、二人とも、聞いとるかね」

ゴン「ちゃんと聞いてまーす!」
ロールシャッハ「聞いている」

ネテロ(やれやれ)

ネテロ(今年は豊作じゃったが、とんだ問題児ぞろいだったようじゃな)

325 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:31:04.03 ID:9rVJQ9OW0
ホテル ロビー

キルア「おーい、遅いぞ! 二人とも」

ゴン「ごめんごめん」

ロールシャッハ「HUNH」

レオリオ「ったく、キルアの奴にジュース何本おごるハメになったと思ってんだ」

キルア「ケチケチすんなよ、ハンター試験受かったんだからさー」

レオリオ「お前それをネタにずっとたかる気か!? 家は大富豪のくせに!」

328 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:35:06.38 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「ロールシャッハ、ハンター試験に合格した者にとって、
     最も重要な心得はなにか、言ってみろ」

ロールシャッハ「興味ない」

レオリオ「お前、居残りの意味ねえじゃねえか!」

ロールシャッハ「……HUNH」

ロールシャッハ「合格がゴールではない。ハンターになって何を成したかが重要……か?」

クラピカ「……正解だ」

ロールシャッハ「そんなことは当然だ。改めて聞かされるまでもない」

ロールシャッハ「試験はスタートではない。合格もゴールではない。
        俺たちは生まれおちた瞬間から死に至る瞬間まで」

レオリオ「お前の講釈はいらねェ! レセプションが始まるんだ、さっさと行こうぜ」
330 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:36:37.75 ID:9rVJQ9OW0
レセプション会場

ビーンズ「それではみなさん、最後の一夜を存分にお楽しみください」

ハンゾー「ほらみんな集まって! はい、チーズ!」

キルア「ゴン、あっちにもまだたくさん料理あるぜ!」

ゴン「よし行こう!」

レオリオ「おいおい、キルアは合格者じゃないんだから、もっと慎めよ」

キルア「あ、おっさん、そういうこと言って子供いじめるんだ?」

レオリオ「あ、いやそういうことじゃねーけどよお」
332 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:37:41.31 ID:9rVJQ9OW0
キルア「いいじゃん、どうせすっげえいっぱいあるんだからさ!」

ボドロ「そうだ。子供は我慢するものではないぞ」

レオリオ「ボドロさん……」

キルア「さっすが! 年長者はハンパなおっさんと言うことが違うぜ!」

レオリオ「ハンパなおっさんって、お前なあ」

ボドロ「いいじゃないか。今はあの子も、試合のときの険がまったく感じられん」

レオリオ(ま、俺がとやかく言うことじゃないか)

    (充分、ガキを満喫してるって感じだし)
336 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:40:18.66 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「おおいロールシャッハ! 飲んでるかよ!」

ロールシャッハ「酒は飲まん。毒の水だ」

レオリオ「こんなときくらいハメはずしやがれってんだ、ちくしょー!」

ハンゾー「ささ、ドレスアップしたメンチさんも一枚どうぞ!」

メンチ「あんたねー! 先輩に対してなれなれしいのよ!」

ハンゾー「ままま、そう言わずに」

メンチが酔ってるのをいいことに、ドレスの中まで撮影するハンゾー。

ロールシャッハ「おいニンジャ、何をしている」
339 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:41:19.81 ID:9rVJQ9OW0
ハンゾー「んー? ドレスアップしたメンチさんの可憐な姿を……」

カメラを奪い、握り潰すロールシャッハ。

ハンゾー「ぬああ――ッ! てめえ!」

メンチ「ちょっとカビくさ男! なにしてくれてんのよ!」

ロールシャッハ「淫売女め。ポルノハンターの片棒をかつぎおって」

ハンゾー「ポルノハンターって、俺のことか?」

ロールシャッハ「他に誰がいる」
341 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:43:10.72 ID:9rVJQ9OW0
メンチ「あんたずっと淫売とかなんとか言ってくれてるけどねえ!
    あたしは合格なんて認めないわよ! 殴る! 今日という今日は断固殴る!」

ブハラ「みっともないからやめなよメンチ……ほら、キミも早く離れて」

ロールシャッハ「HUNH」

ハンゾー「てめー、カメラ弁償しやがれ! そして撮り直せ!」
ロールシャッハ「断る」

ポックル「なにやってんだあいつら……」
344 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:44:15.47 ID:9rVJQ9OW0
ヒソカ「大事な弟を取られちゃったねェ◆」

イルミ「別にいいよ。すぐ取り返すから」

ヒソカ「わかってるとは思うけど……◆」

イルミ「ああ、ゴンとその他3人ね。
    あのロールシャッハ・マスクだけは殺そうかと思ってるんだけど」

ヒソカ「…………」ギロ

イルミ「しょうがないなあ」
346 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:46:13.72 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「ロールシャッハ、礼装というものは持っていないのか?」

ロールシャッハ「お前もその珍奇な服をいつまで着てるつもりだ」

クラピカ「これはクルタ族の民族衣装だ。殺された同胞の恨みを忘れぬよう、
     特に問題がなければ着ている」

ロールシャッハ「なら俺のコートも同じだ。
        洗濯しないのは、少女を喰った犬の血が洗い流されないためだ」

クラピカ「お前はブラックリストハンターになるのだろう?」

ロールシャッハ「それがどうした」

クラピカ「雇い主を探すというのは……」

二人の元に、気配もなく男がひとり現れる。

リッポー「それについてだが……」
349 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:48:03.08 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ(この男は……リッポー!)

ロールシャッハ「なんだ、モロコシ男」

リッポー「二人ともブラックリストハンターを志望していたね。
     君たち二人の資質は高く買っている。
俺でよければ雇い主を紹介しよう。きっとすぐにシングルハンターになれる」

クラピカ(…………)

ロールシャッハ「雇い主などいらない」

クラピカ(……そうだろうな。そう言うと思っていた)

ロールシャッハ「誰かの指図で動くなんて些細なことだ」

       「俺は俺のやり方でやる」

リッポー「そうか。そちらの君は?」

クラピカ「……残念だが、私も遠慮させてもらう。雇い主がいらないとは言わないが、
     自分の力でそれを探すのもハンターの務めだと思う」

リッポー「……なるほど、優秀なわけだ……」
350 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:49:13.76 ID:9rVJQ9OW0
クラピカ「改めて言うがロールシャッハ、私の復讐に手を出すようなことは……」

ロールシャッハ「俺も改めて言うが、お前の復讐など関係ない。
        試験の前も、そのあとも、俺のやることはひとつだ」

クラピカ「…………そうか」

    「お前はやはり、なにを言われようが無駄のようだな」

    「お前のインクは拭えないらしい。私にも、他の誰にも」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ「……HUNH」
352 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:50:30.88 ID:9rVJQ9OW0
ホテル前 バス停

レオリオ「で、これからどーするんだ、お前ら」

キルア「一度家に帰れってさ。子供にも門限ってもんがあるからな」

   「そんで、来年また試験を受けようと思う」

キルア「今度は暇つぶしとかじゃなくて、友達と対等になりたいから」

ゴン「俺はキルアについて行くよ。そのあとで、一緒にくじら島に帰る。
   あとヒソカにプレートも返さなきゃ!」

ロールシャッハ「ヒソカの潜伏先がわかるのか?」

ゴン「あ……」

クラピカ「それなら私が知っている」

クラピカ「講習のあとに言われた。『9月1日、ヨークシンシティで待つ』とな」
353 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:51:49.38 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「なにかあんのか、その日」

クラピカ「オークションが開催される。
     その日ヨークシンシティは、世界のどこよりも、金の集まる場所となる」

ロールシャッハ「金か……加えてギャングどもも集まる」

ロールシャッハ「……HURM」

レオリオ「じゃ、この5人での再会は9月1日、ってことか」

キルア「それまで修行だな、ゴン」

ゴン「うん!」

クラピカ「忙しいな、ゴンは。私は雇い主を探すつもりだ。レオリオ、お前は?」

レオリオ「俺は医大受験だ。これから猛勉強だぜ」
356 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:57:26.31 ID:9rVJQ9OW0
ゴン「ロールシャッハさんは?」

ロールシャッハ「変わらん。街に戻って、犯罪者どもを狩り続ける」

レオリオ「なんかあんただけ試験前と全然変わってねえよなあ。
     ちったあ丸くなれよ、ダチじゃねえか!」

ロールシャッハ「友達になどなった覚えはない」

ゴン「俺はそう思ってるよ。俺が勝手に、だけど」

キルア「ああ、俺も言おうと思ってた。俺も勝手に思っとくぜ、シャッハのおっさん」

クラピカ「商売敵、ということにもなるかも知れないがな」

レオリオ「そういうことだ! 電話番号、渡しとくぜ」

ロールシャッハ「HUNH」

ロールシャッハ、何も言わず歩き出し、その場を立ち去る。
357 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 21:58:49.05 ID:9rVJQ9OW0
レオリオ「あんの野郎、さよならもナシかよ!」

クラピカ「奴はそんなこと言うタイプじゃないだろう」

レオリオ「……だな」

    「……それじゃ俺もこれで。あばよ!」

クラピカ「私も、長居は無用だな」

ゴン「……元気でね」

キルア「行こうぜ、ゴン!」
359 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 22:01:04.11 ID:9rVJQ9OW0
数十分後

クラピカ「次のバスは……」

クラピカ、時刻表を見ている。その後ろから長身の男が来る。

レオリオ「おいおいおいおい、なんだよお前、
     あいつらが心配で戻ってきたのか? 大したバカ野郎だぜ」

クラピカ「……互いにな」

レオリオ「なァに、ゾルディック家ともなりゃ帰省も大変だろうからよ……
     しかしもう一人、大バカ野郎の姿が見えねーな」

クラピカ「それならさっき私が戻ったとき、これが置かれていたよ」

レオリオ「なんだこりゃ。メモ……?」

クラピカ「……開けてみろ」

レオリオ「…………?」



カサリ


『 .┓┏. 』
360 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 22:03:17.13 ID:9rVJQ9OW0
――――――――


日誌 ロールシャッハ記

1999年 8月31日


約束の日を明日に控えた。
これほど明日を待望するのは初めてだ。その意味がどうあろうとも。

ヨークシンシティ。ここはかつていたニューヨークの地によく似ている。

往来の無関心な市民。
路地裏の落書き。
娼婦と賭博師とプッシャー。
ダニエルと二人で駆け回った下水道。

いつでもそこが俺の狩場だった。

ヒソカやギタラクルの使っていた力の正体はわかった。修得も一段落終えた。

念…………この力の修得が、ハンター試験の裏試験だとも知った。
気がかりなのは、この修得によって俺がDr.マンハッタンやヒソカなどのように、
人間性を失ってしまわないかということだ。
あるいはヴェイトもそういうタイプだった。

力の修得と代償に、人間性を失うなどということはあってはならない。
そのことは誰よりも理解しているつもりだ。
362 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 22:04:30.75 ID:9rVJQ9OW0
ヒソカ、ノストラードファミリー、十老頭、そして幻影旅団。

明日、悪の根がここヨークシンシティに集結する。
この力はそのためのものだ。それを引き抜き、焼き尽くすためのものだ。


修行のため師事した盲目の男が、俺の念能力に名前をつけた。


『     廃墟の街
(ザ・ハート・アタック・マシーン)』。

この力は、きっと俺の行く先に強く貢献してくれる……
364 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 22:05:51.40 ID:9rVJQ9OW0
追伸。

レオリオから連絡があった。

シャルルサーチが夏限定の香水を発売したというので、
再会に備えて買っておけとのこと。
これを書き終えたら買いに行くつもりだ。
ノスタルジアが終わってしまったのでちょうどいい。
幸いにもまだ日はまたいでいない……

ノスタルジア。あの香りをもう一度匂うことも、
祖国の地を踏むことも、
ダニエルとともに悪を追うことも二度とないだろう。

だが俺は後悔などしていない。



日誌 ロールシャッハ記
1999年 8月31日


.┓┏.



370 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 22:08:20.36 ID:BGkfgsWp0
371 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] : 2013/06/25(火) 22:09:08.47 ID:X6P4JWihP
お疲れ様ー!
楽しかった
MAFEXシリーズで出来の良いロールシャッハのフィギュア発売して欲しいなーと思った
同じサイズぐらいのフィギュアあるみたいだけど可動がイマイチぽいんだよなぁ
372 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] : 2013/06/25(火) 22:10:41.46 ID:xSvC7ESZ0
乙です。

383 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 22:16:35.64 ID:9rVJQ9OW0
終わりです。

あとがきというか、二、三補足を。

ウォッチメンは俺のバイブルみたいなもんですので当然手元にありますが、
ハンターハンターのコミックスは持ってないので、旧アニメ版を参考にしました。

ペーパーテストなどもそのせいで、
ボドロを生かしたのもそのくだりが面白くて気に入ってしまったためです。
軍艦島をやるとトンパがクズじゃなくなるのでやめました。

あと>>361の方が心配してくれてるにも関わらず書いちゃいますが、
これを投下してる最中に、「誰が見張りを見張るのか」の見張りである
ロールシャッハがハンターになるなら、
「誰がハンターを狩るのか」ということになるわけで、

「……ハンターハンター!」と思って一人笑ってしまったことをつけくわえておきます。
423 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 23:13:12.80 ID:0pS16G+t0
面白かったよ
424 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2013/06/25(火) 23:16:56.96 ID:8ztha+QYO
いつの間にか終わってた
>>1乙!

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