- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/14(金) 17:48:24.93 ID:Soqvzj6DO
- 前スレ
垣根 「ほら、笑って笑って!」
【1スレ目のあらすじ】
第三次世界対戦後、冥土帰しの手によって元の身体を手に入れた垣根帝督
そんな彼に告げられたのは余命3ヶ月という死の宣告だった
原因は自らの能力『未元物質』による脳の汚染……
しかし彼は意外にも前向きで「3ヶ月もある」と言ってのけた
こうして、残された時間で綺麗な思い出を作ろうと頑張る垣根の青春(?)の日々が始まるのであった――
- 2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/14(金) 17:49:19.36 ID:Soqvzj6DO
- 【登場人物】
・垣根帝督
主人公。暗部時代の面影を感じさせないくらい明るくなった爽やか能天気自由野郎。最早別人の域
首に下げた一眼レフカメラは思い出作りに欠かせない相棒
いつも一緒にいる仲間(垣根フレンズ)を始め、事ある毎に様々な人を巻き込んでいく
黄泉川には勝てない
・麦野沈利
垣根フレンズその1。且つ、彼の被害者第1号
色々あって性格は若干丸くなったが、相変わらず口は悪い
垣根の変貌っぷりに戸惑いながらも何だかんだで仲良くやってる
が、ある日を境に彼に対する何かが芽生え始めた。彼女自身も分かってない様子だが果たして……?
むぎのんマジ乙女
・一方通行
垣根フレンズその2
ふとしたきっかけで彼と再会し、気がついたらアラ不思議、お友達になっちゃった!
渋々付き合わされてるかと思えば急に悪ノリしだしたり、弄ったり弄られたりと忙しい人である
一般人との会話スキルが壊滅的である事が発覚。コミュ障とか思った奴血液逆流なァ
・上条当麻
垣根フレンズその3
みんなのヒーローそげぶマン!なのだが、何故か垣根フレンズで一番立場が弱い感じになってる
インデックスが家事スキルを身に付けて帰ってきた為、生活は少し楽に
最近ハッピーターンにハマっている
垣根と何の繋がりもないように見えて、実は大きな部分で関わっていた
・心理定規
垣根フレンズその4
一番年下な筈なのに物腰が誰よりも大人っぽいという少女らしくない少女。むぎのんが幼く見えるよ
垣根を“気になる人”と明言し、彼の行動や振舞いを興味津々に見つめる。その真意は…?
一度だけ自分の本名を明かそうとしたが、結局教えずに秘密のままとなってしまった
いつか明らかになる日が来るかも?
いずれも、垣根の病について知る由もない……
- 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/14(金) 17:50:17.15 ID:Soqvzj6DO
- 前スレ読むのめんどい人の為に
【垣根の足跡~1スレ目~】
・<11月17日(水)>
上条、冥土帰しに呼ばれ病院へ
ある患者の治療に幻想殺しを用いるも失敗
・11月20日(土)
垣根復活。偶然出会った麦野とカメラ買いに電気屋へ
垣根の活躍(?)により、麦野が過去の過ちから立ち直る
・11月21日(日)
公園にて散歩する一方通行を発見。街歩きに強制参加
途中麦野とも出くわし、3人で遊び歩く
・11月24日(水)
垣根、麦野、一方通行、上条の高校へ訪問
一方通行を倒した上条に興味を抱き、家まで押し掛ける
インデックス帰還。そしてハッピーターンに目覚める
・11月29日(月)
垣根に恨みを持つ2人組が彼を襲う
能力がうまく使えない中何とか退ける事に成功
負けを悟った2人組は最後に自爆
・12月4日(土)
元同僚の心理定規と再会、何故か遊園地デートに誘う
それを知った麦野は上条、一方通行を連れて尾行
おや、むぎのんのようすが……?
・12月7日(火)
麦野が風邪をこじらせ、垣根が押し掛け看病に行く
気がつけば垣根フレンズ勢揃いで看病していた
まさかのラッキースケベ
・12月11日(土)
黄泉川に謝り、その後お出掛け(デート?)
その頃一方通行は水族館でハーレムやってた
黄泉川先生マジ聖母
・12月13日(月)
垣根フレンズ、幼稚園へ(上条も強制参加)
麦野、一方通行、心理定規のコミュ障発揮(特に一方通行)!
結標淡希が実習に来てた。でも真面目に勉強してます(心の奥底はショタハァハァ)
・12月16日(木)
垣根、猫の日常観察にスフィンクスを選ぶ
スフィンクスは子猫という名のおっさん
猫の視点で話が進む為、喋りまくるし猫いっぱい出る
タイムリミットは2月20日
彼はどうなってしまうのか……
- 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:16:06.35 ID:6dQBYPxDO
- よし、誰もいないな
皆が寝てる間に投下
小ネタですよ - 16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:16:47.28 ID:6dQBYPxDO
- 閑話~とある日記の切れ端~
―――――――――
またこうやって過ごせる日が来るとは思わなかった
アイツのお陰……か?
それにしても、一体何がどうなってあんな性格になったんだ
もしかしたら、あれがアイツの素の姿?
そうだとしたら、“アッチ”がどれだけ凄惨なとこだったか実感出来るわね
第一位も何だかんだで満更でもなさそうだったし、もっと素直に楽しんだらいいんじゃない?
……って、私もか
とりあえず、明日は“素直”に浜面をパシるか
- 17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:17:25.78 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
ヤバいヤバいヤバいヤバい、テンション上がりっぱなしだ!
帰ってきた、アイツが帰ってきた!
もう思わず抱きしめちゃったよ!そしたらアイツ「きゃっ!?」とか可愛い声あげてさー……全力で噛み付かれました
もう2度と帰ってこないんじゃないかと思ってた、ホント
なんか、いないと寂しいんだなーて思い知った
こう……家族って印象が近いようで遠いような……
うーん……分からん
それと、今日はあの一方通行が妹達関係以外の人物と仲良くしてるのを見た
アイツも普通の生活に慣れてきたのかな?良いことだ
- 18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:18:29.01 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
……
駄目だ、書く気が起きない
- 19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:20:40.81 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
驚いた、もう色々と
彼も彼の周りも、全部が嘘だったみたい。正直、本当に彼なのか疑わしいわね
まぁ退屈しなさそうだし、これはこれでアリかもね
……何であんなことしたのかしら
私自身が見せたかったとでもいうの?
でも、やっぱり駄目。まだ怖い
もし皆が本当の私を知ったら、また……
- 20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/22(土) 03:21:08.25 ID:K90sJl6I0
- >>1乙━━━(・∀・)━━━ッ!!!!
- 21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:21:25.55 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
あー、大分治まってきた
しかし情けねぇな、熱なんか出しちまって……
丈夫さには自信があったんだけどなー
……分からん
何だろう、このモヤモヤした気持ち。熱もあって余計気持ち悪い
あの野郎、まさか変な薬飲ましたとかじゃねえだろうな?
そう思うとあの顔が憎たらしく見えてきた。今度仕返ししてやるから覚悟しとけよ
……
でもまぁ、わざわざ来てくれたのは嬉しかった……かも
- 22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:22:59.12 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
人って温かいんだなー
しかも異性に抱きしめられるってそうそうないぜ?
変わってるよなーアイツ。そりゃ一方通行も勝てない訳だぜ
あんな人が近くにいたんじゃ、嫌でも変わっちまうわな
いいなーちくしょう
……俺も会えてよかった
アイツの前じゃ、俺も只のガキに成り下がるしかねぇよ
ちょっとだけ甘えたくなった……なんて言える訳ないけど
たまにご飯食べにお邪魔するくらいなら許してくれるよな?
あー、俺もああいう家庭が欲しいなー
- 23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:23:30.53 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
……クソッ
俺は普通の人間じゃねえ……分かってはいた
けど、あそこまで酷いとは思ってなかった!
あまつさえ、その醜態を同僚にも見られるとかあああァァァァァァ!!
こんな筈じゃなかったんだ!俺の頭ん中では最高のシミュレーションが出来上がっていた!
なのに、いざ実行しようとした途端頭が真っ白になってgkdmwuaek惨gvjfq
……まぁ、ガキと遊ぶのはそれほど悪くなかった
打ち止めで慣れてるからか?アイツはもっと大きいが
それに、アイツ何気に自分の道進んでたんだな
俺もいつまでものんびりしてられねぇってか?
- 24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:24:29.33 ID:6dQBYPxDO
- ―――――――――
今日、我が家で怪現象が起きた
1つは冷蔵庫に閉まってあった牛乳が減ってた事
1つは棚のハッピーターンが2個減ってた事
今日は日中誰も家にはいなかった……いや、1匹いた。家の飼い猫スフィンクスだ
だが、スフィンクスが棚や冷蔵庫を開けるとは思えないし、ハッピーターンを食べるのも考えにくい
空き巣……にしては荒らされた跡もなく、金目のものは盗られてない(もとからない)し、戸締りもしてあった
まさか、魔術師の仕業!?……と思って土御門に聞いてみたが、「はぁ?」の一言だった
いよいよ訳が分からなくなった俺は遂に……
考えるのをやめた
- 25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/22(土) 03:26:14.74 ID:6dQBYPxDO
- 以上です
次から本編に入ろうと思います
次回も来週ぐらいになるかも - 41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:42:49.57 ID:7GOoQBhDO
- ―――――――――
―――――
―――
――こういう子がどこへ行ったか、知らないかな
……そうか
テメェが最終信号と一緒にいた事は分かってんだよ、クソボケ
…………
良いだろう
まだ協力を拒むって判断したのなら、それはもう仕方がねぇ
ここでお別れだ――
- 42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:43:24.51 ID:7GOoQBhDO
- ―――――――――
―――――
―――
12月20日(月)
ここは230万人もの学生が集う学園都市
日本にありながら日本とはどこか孤立した、1つの国とも呼べる場所
そんな学園都市も冬休みが訪れようとしていた
年末年始は家族の元へ帰りたいと願う生徒達に、職員や関係者達は外出手続きに追われるのが容易に想像出来る
先の戦争もあって、より家族に会いたいという気持ちが強まっているだろう事を考えると、彼らは一睡も出来ないのではないか?
……なんて事を考える人はどこにもなく、肌を刺すように冷たい風に震えながら、学生達は今日も学び舎へと行く
- 43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:44:08.50 ID:7GOoQBhDO
- 「はぁ……」
その中の1人、初春飾利という少女はどこか暗い表情を浮かべていた
今日は彼女の通う中学校の終業式。校長の長話を聞くだけという楽な日
同じ制服を着た周りは楽しげに冬休みの予定を話し合ったりしてるというのに、何故初春だけはこの調子なのか
心なしか、頭に乗せた花飾りも元気がない様に見える……
「う・い・は・るーーー!!」
突如、背後から彼女を呼ぶ声と同時に初春のスカートが勢いよく捲れ上がった。同じ中学の佐天涙子の仕業だ
初春 「きゃあ!?もうやめて下さいよ佐天さーん!」
怒る彼女を余所に佐天は今日は水玉!とか何とかはしゃいでいる
- 44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:45:18.29 ID:7GOoQBhDO
- 彼女の悪戯はいつもの事だが、さすがに冬は勘弁して欲しい
タイツを穿いているとはいえ、風がスースーして寒いから……と、半分慣れてしまった自分が恐ろしくなる
佐天 「で、どうしたの?終業式なのに元気ないね」
初春 「ちょっと、嫌な夢見ちゃいまして……」
佐天 「頭の花飾りに食べられちゃう夢とか?」
初春 「そんなのだったら良かったんですけど……」
初春は右肩を抑える
初春 (忘れられたと思ってたのに……)
塞がりかけの傷口を抉られるように、またあの日の出来事を思い出してしまった……
10月9日――
その日、彼女が風紀委員<ジャッジメント>として培ってきた能力、人格、矜持、それら全てが1人の男によって無惨に打ち砕かれた
自分に戦う力は備わっていない
運動能力は低いし、頼みの超能力は定温保存<サーマルハンド>と、触れた物の温度を一定に保つだけだ
そんな自分が本来得意とする分野はコンピューターを駆使した情報の取得や分析といったもの
その才能は学園都市でも抜けており、一部の人間からは守護神<ゴールキーパー>と称されている
故に、現場で行動するよりも遠距離から仲間を補助するというのが主な役割だ
- 45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:45:52.99 ID:7GOoQBhDO
- だからといって、目の前の悪を見過ごす訳にはいかない。このか細い身を呈してでも、誰かを守らなければならない時がある
そうした無茶をする度に同僚に怒られた。でも、止めようとは思わない
何故なら、自分は学園都市の秩序を守る風紀委員だから
初春飾利の正義であり誇り。腕につけた腕章が何よりの証……
それも、あの時ばかりは児戯に等しかった
違ったのだ。今まで経験してきたそれとは
理不尽なまでの暴力に、圧倒的な悪意に押し潰され、涙を流す事しか出来なかったのを覚えている
初春 「……うっ」
あの時外された右肩の痛みまで蘇ってきそうで吐き気がした
あの男の顔は、きっと生涯忘れる事ないだろう
夢に出てくる度に自分を虫けらのように踏みにじり、あの冷めた視線を向けるのか
……そういえば、最近でもあの顔を……
- 46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:46:21.35 ID:7GOoQBhDO
- 佐天 「初春!」
初春 「はひっ!?」
佐天の大声で我に帰る初春
佐天 「大丈夫?さっきから具合悪そうだけど……」
は、はい、大丈夫ですよ!と答える初春の苦しそうな笑顔を、彼女は見逃さなかった
佐天 「嘘、絶対何か無理してる」
初春 「そんなことないです!ホントですから!」
嘘が下手だなぁ…と思いつつ、無理に聞くのも良くないだろうからこれ以上は止めておこう
でも内心ショックだ。例え大した事じゃないとしても、やっぱり何かしら相談に乗りたかったりする
初春の親友として、出来る事なら何だってやってやる
それが無能力者、佐天涙子の誰にも負けない唯一の取り柄だ
- 47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:47:19.39 ID:7GOoQBhDO
- 初春 「……あれ?」
不意に歩みを止めた初春は、足下に何かが落ちてるのに気付いた
佐天 「どうしたの?」
初春 「これは……」
拾い上げたそれは長さ白い長方形の紙だった
裏返すと、そこには1人の人物の姿が写し出されている
佐天 「写真みたいだね、誰かが落としたのかな?」
初春 「……」
初春は暫く無言で写真を見つめる
初春 (この人って……)
- 48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:49:07.32 ID:7GOoQBhDO
- ―――――――――
~とある病院~
冥土帰し 「……これが、今の君の頭の中だ」
そう言うとカエル顔の医者、『冥土帰し』はパソコンからある映像を取り出した
円形のパイプ椅子に座り、腕を組みながらそれを見つめる患者……
名は垣根帝督。学園都市第二位を冠する男だ
例の“病”発症から丁度1ヶ月が経つ
改めて自分の置かれている状況を確認するために朝早くから病院へ訪れたのだ
いつものおどけた雰囲気はなく、その眼から微かな真剣ささえ感じ取れる
彼が見ているのは、自分の脳の現在の様子をCGで再現したもの
学園都市は科学の進歩に比例し、医療の面でも外より優れている
これ1つで手術の方法、症状の進行度合いや悪い箇所の先の様子までシミュレート可能なのだ
冥土帰しが垣根の“命日”を導き出したのもこれによるもの
- 49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:49:37.96 ID:7GOoQBhDO
- 冥土帰し 「この黒い染みのようなものが君の能力だ。1ヶ月前に予測したものと状態はほぼほぼ一致している」
君の能力、即ち『未元物質』。垣根帝督の第二位たる所以
この世にない物質を生み出すという奇抜さでは第一位に勝るとも劣らない
それが今、持ち主に刃を突き立てているというのだ
冥土帰し 「今日で脳の表面の3分の1が黒く塗り潰された」
マウスを動かすとそれに合わせて脳の向きも変わる
上下左右どの角度から見ても黒い染みが見つかり、一部は脳の内側を僅かに進んでいる
垣根は依然無口のまま画面を凝視し続けていた
冥土帰し 「で、この黒い部分なのだが……」
カチッ、と細いクリック音と同時に矢印の箇所の拡大図が出てきた
- 50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:50:20.17 ID:7GOoQBhDO
- 冥土帰し 「ざっくり言えば、ここ一帯の脳細胞はこの物質によって“拘束”されてるね?」
拘束……?と、垣根は目で言った
冥土帰し 「この物質が脳細胞の中枢である細胞体内で生まれ、爆発的に増殖する」
冥土帰し 「そうして満たされていくと細胞の身動きがとれなくなり、更に外部からの信号を遮断してしまうようだ」
話を纏めるとこうだ
要するに、脳細胞が死んだという訳ではないが、一切の機能が働かなくなる為脳全体が死んだとみなすらしい
この物質は発生源から隣接する細胞へと移動し、徐々に侵攻を拡大していくとの事
そして、全ての脳細胞が“拘束”されれば実質的な“脳死”となる……
冥土帰し 「……それが分かった所で、僕に治す事が出来ないのが悔しいね」
あの冥土帰しが治せない
腕がちぎれようが心臓が撃たれようが、その手で全て治してきた彼の敗北宣言
彼は病気にではなく、“患者”に負けたのだ
そもそもこれは患者……垣根本人の意思で起こしたもの
学園都市に利用され続ける己を守る為にかけた死の呪いは、自由を手にした今でも解けずにいる
彼が垣根帝督として生きる限り誰にもそれを止める事は出来ない。彼もまたその1人だ
- 51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:51:01.46 ID:7GOoQBhDO
- 気まずい沈黙が部屋を包む中冥土帰しが見せた3ヶ月目の映像では、脳が只の黒い塊にしか見えなかった
文字通り暗黒物質<ダークマター>と呼ぶに相応しいぐらいの、光を知らぬ様だ
1ヶ月が経った今、垣根は何を思うのだろう……
垣根 「ふーん」
これが彼の第一声。何とも間抜けな声だこと
予想外な発言に冥土帰しは思わず「えっ」と漏らしてしまった
垣根 「状況は何となく分かった。まだ大丈夫そうで安心したぜ」
本当に分かっているのか少々不安だが、変に気を落とすよりかはマシかもしれない……と心の中で納得する事にした
垣根 「いやさ、今色んな企画考えてんだけど、それやる前に倒れるのだけは勘弁してほしいのよ」
無口から一変、途端に饒舌に語る垣根。何だかさっきまでの重苦しい空気が嘘のようだ
垣根 「となると、1月20日までが勝負ってとこだな」
ポケットから取り出したメモ帳に何かを書いている
少し覗いてみると、そこには隙間がないくらい字で埋め尽くされていた。文字が小さくて何が書いてあるかは分からない
- 52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/10(木) 17:52:18.94 ID:7GOoQBhDO
- 垣根 「……よし。あ、そうそう、これ見てくれよ!」
今度は隣に置いてある鞄からファイルのようなものを取り出した
冥土帰し 「それは?」
垣根 「アルバム!今日はこれを見せたくてさ~」
何でも、カメラを使って色んなものを撮ってるんだとか
今日はついでにその宝物である写真アルバムを自慢しに来た模様
嬉々としてファイルをめくり、思い出話に夢中になる様子は顔に似つかわしくない幼い印象だった
彼のような人物を“人生を楽しんでる”と言うのだろう
だが、自覚がなきにしろ、その心のどこかでは常に死を望んでいる
寝ても覚めても、自分への攻撃に演算を組んでいる
垣根の本心は一体どれなのか……?
垣根 「……あれ?」
違和感を感じた垣根の手がピタリと止まる
そのページには不自然な空白が1箇所あった
冥土帰し 「どうしたんだね?」
少し遅れて答える
垣根 「……写真が、1枚足りない」
- 71 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:50:58.73 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
午後1時、市街地は終業式を終えた学生で少しの賑わいを見せていた
周りの制服からして、今日が終業式の学校は初春の通う柵川中学を含めおよそ3校
学業から暫しの解放を約束された学生達は見るからに浮かれきっている
こういう時に非行は起きやすい。初春は1人気を引き締め、風紀委員として都市内をパトロールする
それは、個人的な人探しまで兼ねていた
初春 (えっと、確か……)
スカートのポケットから取り出したのは今朝拾った1枚の写真
誰かの落とし物だとしたら、きっと困っているに違いない。どうにか持ち主へ届けられないものか……
そう思い、ひとまず写真の人物を探す事に決めた
- 73 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:51:33.56 ID:uYGBME0DO
- この人のものかもしれないし、そうでなくても持ち主について何か知っている可能性がある
それに加え、初春には気になる事がもう1つ……
初春 (……)
実は、写真の人物に見覚えがあった
何故なら、思い出したくもない10月9日の、あの状況から救ってくれた人だからだ
悪を払ったのはもう1つの“悪”――
だがあの時の初春にとっては“ヒーロー”だった
この人に会ってあの日のお礼を言いたい。風紀委員の仕事よりもこっちに気持ちが半ば傾いていた
初春 (いえいえ、パトロールもしっかりしないと!)
そこは真面目な彼女。仕事を疎かにしてはいけないと自分を叱る
初春 「……それにしても」
写真を見つめながら初春はクスリと笑う
初春 「変な写真ですね」
- 74 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:52:39.67 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
~大通り~
一方 「……」
垣根 「悪いなー手伝ってもらって」
一方 「前々から言いたかったンだけどよォ……」
垣根 「?」
一方 「何オマエは人ン家をさも当然のように出入りしてンだ」
垣根 「黄泉川がいつでもおいでって……」
一方 「限度ってもンがあンだよ!やれ晩飯だやれ風呂だで押し掛けて来やがって!」
垣根 「大丈夫、事前に断り入れてるから」
一方 「そういう問題じゃねェ!毎度オマエのテンションに付き合わされるこっちの身にもなれ!」
垣根 「はーい」 キョロキョロ
一方 (チッ、住人共がウェルカム的なノリだから追い出し難いったらありゃしねェ)
- 75 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:53:24.32 ID:uYGBME0DO
- 一方 「……で、どこで落としたか見当はついてンのか?」
垣根 「全然」
一方 「だろォな。てか、探すより作り直した方が早くねェか?」
垣根 「それでもいいけど、一方通行のデレ顔写真が誰かに拾われちまうぜ?」
一方 「は?」
垣根 「学校見学ん時見せたあの……」
一方 「」
垣根 「思い出した?」
一方 「さっさと探すぞ」
垣根 「お、珍しくやる気だな!助かるぜー」
一方 「オマエの為じゃねェ、俺のイメージの為に探してやるンだよ!」
垣根 「またまたそんな事言って~」
一方 「この野郎……」 ピキピキ
垣根 「とりあえず来た道を辿ってみるか」
一方 「飛ばすぞ垣根ェ!」 カチッ
ウワ、トップウダ!
スカートガメクレチャウー!
オーモーレツー
垣根 「……俺より先に行ってどうすんの」
- 76 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:57:04.75 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
~黄泉川宅前~
垣根 「ないなー……」 キョロキョロ
一方 「朝から人ン家の前に何しに来たンだよ」
垣根 「内緒」 キョロキョロ
一方 「内緒だァ?また下らねェ事企ンで……」
垣根 「もしかしたら誰か拾ってたりして。おーい!」 ガチャ
打止 「なーに?ってミサカはミサカは特に驚きもせず応えてみたり」 トテトテ
一方 「おい」
- 77 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:58:12.86 ID:uYGBME0DO
- 垣根 「この辺に写真落ちてなかった?」
打止 「ううん、見てないよ?」
垣根 「そっか、もし見つけたら教えてくれ。一方通行のデr「今日は寒いから家で大人しくしてろォ!いいな!!」 バタン
ハーイッテミサカハミサカハ……
一方 「余計な事すンじゃねえよ!」 バシッ
垣根 「痛っ!杖は痛いって!」
一方 「下手に喋ンじゃねェぞ、コイツは俺とオマエだけで探すンだ」
垣根 「え~、身内に見られたっていいじゃん。どうせあの子にはデレデレなんだろ?」
一方 「かァーーーきィーーーねェーーーー?」
垣根 「分かった分かった、そんな怖い顔しないで」
- 78 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:59:04.93 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
~麦野宅~
麦野 「はぁ~寒い寒い。本格的に冷え込んできたわね」
麦野 「……」
麦野 (12月20日……アイツと出会って1ヶ月か)
麦野 (あの時のお礼、まだしてないな)
麦野 (でも、具体的に何したら……)
麦野 「プレゼント……そうだ、もうすぐクリスマスじゃねえか」
麦野 「24日のクリスマスイブに何かプレゼントしてやろう。これなら周りに怪しまれないだろうし」
麦野 「……ん?まぁいいや、そうと決まれば着替えて……」
ネーナー
ナンノモクテキガアッテコンナトコ…
麦野 (何だ?ベランダから声が……)
- 79 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 21:59:36.87 ID:uYGBME0DO
-
ナンカオチテンゾォ
ッ!コ、コレハ…///
麦野 (この声、まさか) ガララ
垣根 「おわっ!?む、麦野……」
麦野 「テメェら、人ん家のベランダで……」
一方 「あー言いてェ事は分かる、でも堪えてくれ。今大事なもン探してっから」
垣根 「こ、こんなとこにパンツなんか落としてんじゃねぇよ///」 ポイ
麦野 「」
一方 「ここにもなさそォだな、次行くぞ」 カチッ
垣根 「そうだな……///」 バサッ
イツマデテレテンダキモチワリィ
ナンデオマエハヘイキナノ?
オレンチキテタンナラワカンダロ?
麦野 「」
- 80 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:01:52.01 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
~常磐台中学学生寮前~
寮監 「何だお前、また来たのか」
垣根 「いやーちょっと大事な物を無くしちゃって」
寮監 「余り部外者を出入りさせたくないのだがな……」
垣根 「申し訳ない、コイツの名誉(?)に関わる事なんだ」
一方 「……」 プイッ
寮監 「……しょうがない、10分だけだぞ?」
垣根 「ありがとう!流石常磐台の母、心が広い!」
寮監 「本来なら有無を言わさず叩き出してるって事を忘れるな」
垣根 「はい、以後気を付けます!」
一方 「……ここって女しかいないとこだよなァ?」
垣根 「ああ、それもお嬢様みたいな子がいっぱい」
- 81 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:03:28.38 ID:uYGBME0DO
- 一方 「いくらオマエだからって、やっていい事と悪い事の区別くらい……」
垣根 「なっ!?そんなやましい考えはしてねぇよ!」
一方 「どォだか、さっきも麦野の家に行ったくらいだしィ?オマエも所詮は男だしィ?」 ニヤァ
垣根 「ここぞとばかりに責め立ててきやがる……!」
一方 「まァいい、あの女にシバかれる前に探すとすっか」
垣根 「らしくない事言うな」
一方 「あの女から黄泉川に似た臭いを感じる、俺でも勝てねェかもな」
垣根 「そいつは恐ろしい」
寮監 「もしもし」
『――お久しぶりです、寮監』
寮監 「おお、久しぶりだな!」
- 82 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:03:59.94 ID:uYGBME0DO
- 『……』
寮監 「どうした?」
『あの人は……』
寮監 「……彼女なら相変わらずだ。私も手を焼いてるよ」
『そうですか……』
寮監 「常磐台へ戻って来るつもりは?」
『今はまだ……』
寮監 「そうか」
『それに、私にはもう一緒に笑い合える友達がいる』
寮監 「それはよかった。でもな……」
『?』
寮監 「私としては、もう一度彼女と仲直りして欲しい」
寮監 「彼女はあなたの事が大好きなの。愛情表現が苦手だっただけで……」
『……』
寮監 「もう許してやってくれないか?だって……」
- 83 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:05:24.19 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
~本屋~
一方 (アイツが今日何をしていたかは置いといて、移動範囲が広すぎンだよ……) チラッ
アノヒトナニシテルンダロ?
ナンカアヤシイヨネ…
一方 (周りの視線が妙に気になる……もう拾われたか?) ダラダラ
一方 「おい、そっちは見つかったか?」
垣根 「お、これは……」 ペラッ
一方 (あ・の・ク・ソ・メ・ル・ヘ・ン・がァ~~~!!!) プルプル
「あのー……」
一方 「あ゙ァ!?」
「ひっ!?」 ビクッ
一方 「……俺に何か用か?」
「え、えっと……探し物してそうだったので」
一方 「だったら?」
「それってもしかして、写真だったりします?」
一方 「!」
- 84 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:07:12.08 ID:uYGBME0DO
-
「はじめまして、あたし佐天涙子。柵川中学の1年生でーす!」
一方 「……一方通行だ。で、そこで伸びてンのが垣根帝督」
垣根 「」
佐天 「だ、大丈夫ですか?」
一方 「心配すンな、脳ミソだけでも生きてられる奴だから」
佐天 (この人って……)
垣根 「うーん……」 ムクッ
一方 「チッ、もう起きやがったか」
佐天 「あ!あの時黄泉川先生と一緒にいた人!」
垣根 「?君は……」
佐天 「佐天涙子です。覚えてませんか?黄泉川先生に助けてもらった……」
垣根 「あー、あの……っ!」
佐天 「どうしたんですか?」
垣根 「い、いや、何でもない。ところで、俺達に何か用?」
佐天 「実は今日登校中に写真を拾ったんですけど、写ってた人がこの人に似てたからもしやと思いまして」
垣根 「拾ってくれてたのか!よかった~」
一方 (助かったが、あの写真を見られたって思うと手放しに喜べねェ……)
佐天 「友達が預かってるんで、今から連絡しますね」 パカッ
- 85 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:09:06.86 ID:uYGBME0DO
- ―――――――――
初春 「――はい、分かりました。じゃあ本屋に向かいます」
そう言って通話を終える初春
難儀しそうだと思っていたが、友人の佐天涙子が運よく持ち主を見つけてくれたお陰ですんなり解決した
これで、あの時のお礼を言える
初春の頭はそればかりでパトロールどころではない
初春 「急ぎましょう」
遂に彼女は風紀委員の仕事を投げ出してしまった。一瞬先輩の怖い顔が頭をよぎったが今は気にしない
あの人に会えば、きっと10月9日の恐怖も忘れられる。夢の中でも助けてくれるような気がした
凍てつく空気を切りながら、初春は目的の場所へと駆けていく……
- 86 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:10:58.05 ID:uYGBME0DO
- 佐天 「おーい、こっちこっち!」
――そして
初春 「え……」
――彼女は出会った
一方 「あァ?」
――10月9日の奇跡と
- 87 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 22:12:03.49 ID:uYGBME0DO
-
垣根 「……」
――その隣に立つ悪夢に
- 97 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:32:07.90 ID:uAkCo3SDO
- ―――――――――
12月11日……あれは何かの間違いだと思った。そうあって欲しかった
単なる見間違い、他人の空似、果ては白昼夢
あれこれ理由をつけて何とかごまかしていた。震えるその身に言い聞かせるように
大丈夫だ初春飾利、あれはもう存在しない
だって、正義のヒーローがやっつけたんだから
……ホントに?
- 98 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:33:08.58 ID:uAkCo3SDO
- そして今日、12月20日――
初春 「な…んで……」
それが幻想ではない事を思い知る
- 99 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:34:25.07 ID:uAkCo3SDO
- ――一方通行は安堵していた
ごく一部の人間しか知らない、自分らしからぬ表情を不特定多数の人間に見られずに済んだのだから
……若干2名に見られたものの、彼女らには見なかった事にしてもらおう。軽くビビらせて
そして奴より先に写真を奪い、その場で塵にしてやる。現像し直しも学園都市最強の名に懸けて全力で阻止だ
佐天 「おーいこっちこっち!」
等と考えているうちに持ち主がやって来た
一方通行達の方向へ走って来る紺のセーラー服を着た少女、頭の上には花が咲いている
何とまぁ季節感のない……
一方 「あァ?」
彼は疑問に思った
初めて見た筈なのに、どこかで見覚えがあるような……
- 100 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:35:03.36 ID:uAkCo3SDO
- 過去の記憶を探ろうとした時
佐天 「初春?」
同じくセーラー服の少女、佐天の声で一方通行の思考が遮られた
前を見ると、さっきの少女が5m程の距離を残して立ち止まっている
それだけならさして気にする事でもなかったのだが……
一方 「……」
遠目からでも分かるくらい表情が強張り、たったの今まで纏っていた和やかな雰囲気が感じられなかった
そんな彼女の視線の先には――
- 101 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:36:59.70 ID:uAkCo3SDO
-
失礼、お嬢さん――
だから俺はこう尋ねたんだぜ――
この俺にお前を殺させるんじゃねぇ――
- 102 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:38:31.57 ID:uAkCo3SDO
- レストラン、ホスト風の男、人探し
初春 「あ…ああ……」
周囲の悲鳴、冷たい床、激痛、恐怖、悪意、無力感
初春 「いや……」
記憶のフラッシュバック
やはり見間違いなんかじゃなかった
必死に騙してきた脳も、もう抑えが効かない
初春の中に住む夢魔が頭蓋を割り、脳から記憶を次々と引きずり出していく
それを、目の前の男は楽しんでいるかのように錯覚した。ケタケタと笑いながら……
- 103 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:40:02.20 ID:uAkCo3SDO
- 初春 「やめて……!」
見たくもないのに、それから目を離せない
心臓が破裂せんが如く脈打ち、普段の呼吸のリズムすら忘れてしまうくらい混乱していた
何しにここへ来たの?今立ってるのは何処?どうして地面が揺れてるの?
逃げろ、逃ゲロ!!いや、怖イ!タスけて!嫌い!!イタイ!誰か!
身体の全機能を以て危険信号を発信するが、身体が言う事を聞いてくれない
涙が止めどなく流れ落ち、視界もぼやけてきた
何も見えない、何も聞こえない
初春 「助け……て」
すぐそこに親友がいるのに……命の恩人がいるのに……
その中に混ざる異物がそれらを黒く塗り潰していく
- 104 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 17:41:37.58 ID:uAkCo3SDO
-
……そして彼女の視界は漆黒に染まり、沈黙の海へと誘う
- 114 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:07:02.24 ID:+dWqxeIDO
- ―――――――――
~とある病院~
診察室、この狭い一室には何百人にも及ぶ患者のデータが保管されている
本立てに整えられた幾つものファイル。医者は治療だけでなく、この膨大な情報量も管理しなければいけない
診察室で思い浮かぶのが、医者が患者親族に余命を宣告する場面
手遅れの域に達しただとか治療法がないだとか言われ、それでも親は涙ながらに助けを請う
そんなの映画やドラマだけだと思っていたが、いざこういう局面に立つとそんな事ばかり考えてしまう
来客用の無機質な椅子に座る患者の親族……ではなく友人、佐天涙子は下唇を噛みしめ、医者の告知を待っていた
- 115 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:10:10.70 ID:+dWqxeIDO
- 机の前の医者、冥土帰しは先程看護婦から貰ったカルテに目を横へ横へと動かしている
人が突然倒れるなんてそうそう起きない
脳裏にちらつくドラマのワンシーンも相まって緊張感が高まる
もし何か重大な病とかだったりしたら?
暖房の効いた部屋が息苦しい。膝に置いた握り拳が小さく震え、変な汗が年相応の柔肌に貼り付く
この10数秒の沈黙が何10分にも感じたのは後にも先にもこれっきりだろう
ようやく冥土帰しは顔を佐天に向けると、表情を和らげて開口する
冥土帰し 「――貧血による失神だね?目立った外傷もないし、少し休めば元気になるよ」
佐天 「よかった~……」
瞬間、それまでの診察室の空気や佐天にまとわりついていた重圧その他諸々が消えて無くなった
色んなものから解放された佐天から気の抜けた声が漏れる
- 116 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:11:49.79 ID:+dWqxeIDO
- 佐天 (でも……)
朝、初春の様子がおかしいのは何となく分かっていた
あの時もっと彼女を気にかけていたら……
佐天 (私、初春の親友失格だな)
安心感と責任感が混ざり、結局佐天の心に靄が残る事になった
突然気を失った初春……アスファルトに倒れたとなると、打ち所によっては大怪我に繋がる
しかし初春は無傷、かすり傷1つ見当たらなかった
崩れ落ちる刹那に彼女を受け止めてくれた人がいたからだ
それは寸前まで隣にいたのに、次の瞬間には目の前で初春を抱き抱えてた
彼女が気絶したと判断出来たのはその直後で、佐天は半ばパニックに陥りながら急いで救急車を呼び、現在に至る
まるでこうなる事を予測していたかのような反応だった
その人が垣根帝督。今日初めて知り合った男
どんな能力かは知らないが、その背中には白い羽……正に天使のような人だった
- 117 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:13:13.42 ID:+dWqxeIDO
- 冥土帰し 「彼女、相当なストレスを抱えていたようだけど、何か心当たりはあるかね?」
佐天 「それが、私にもよく……」
ストレスを抱えるような事……風紀委員の仕事、学校の勉強、人付き合いとか?
風紀委員の仕事……大変だけどやりがいがあっていい、と前に言っていた
学校の勉強……勉強が難しいと聞いた事はない。寧ろ自分が彼女に宿題を見せて貰うくらいだ
人付き合い……彼女の人柄から周りはいい人でいっぱいだからこれもなさそうだ
それに、あれは積み重ねによるものというより発作に近い感じだった
開けてはいけない蓋を開けてしまったというか……
少し考えた後、佐天はある事を思い出す
- 118 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:15:14.56 ID:+dWqxeIDO
- ―――――――――
とある病室の前に2人の少年がいた
長椅子に腰を落とすのがその洒落た風貌に似合わないカメラを首にぶら下げた少年、垣根帝督
その向かい側の壁に腕を組んでもたれ掛かっているのが髪も服も雪のように白い少年、一方通行
時折一定のリズムでスリッパを床に擦らせる音が響くのみで、廊下はしんと静まり返っていた
一方通行は垣根の顔を観察するような目で見る
いつもの能天気ではない、彼も初めて見る何かを抱えた面持ち……
こんな顔するんだなぁと思うと同時に、それが何故だか気に食わない
きっとその姿に自分を重ねているからなのだろう
一方 (一丁前に人間臭い事考えやがって……)
どれ程人が変わろうと、、本質は何も変わらない
所詮俺達は前科持ちのクソ野郎なんだと彼は再確認する
今、扉の奥にあの垣根を悩ませる“種”が存在する事も……
入口には初春飾利という札が掛かっていた
- 119 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:16:27.25 ID:+dWqxeIDO
- 垣根 「あのさ……」
一方 「?」
その時、テンポの早い足音がこちらに向かって来るのを感じ、2人はそちらに目を向けた
黒髪が長く綺麗に伸びた少女、佐天涙子だ
佐天 「初春は……」
垣根 「この中に……」
医者は大丈夫だと言ったが、心配なのに変わりはない
いても立ってもいられない彼女は初春が待つ病室へ急ぐ
スライド式ドアのノブに手を掛けた時
垣根 「ちょっと待ってくれ」
左から佐天を呼び止める声がした
佐天 「垣根さん?」
声の主は下を見たまま続ける
垣根 「……君に、話しておかなきゃならない事がある」
初春を守った時に見せた時と同じ、苦しそうな表情だった――
- 120 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:17:50.99 ID:+dWqxeIDO
-
佐天 「そんな事って……」
佐天は信じられなかった
さっき初春を守った彼が、前に彼女を深く傷付けた事
極めて残忍冷酷で、人を人とも思わないような仕打ちをした事
それを助けたのが一方通行だという事
……これで辻褄が合う
以前初春の挙動がおかしくなったのも、今日彼女が倒れたのも
全ては彼が原因だった
一方 「だから見覚えがあったのか……」
初春を真の意味で助けた一方通行は彼女を殆ど覚えていなかった
黄泉川以外にも手を出していたのは覚えているが、それが初春だったとは……
- 121 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:20:47.45 ID:+dWqxeIDO
- 垣根 「この前会った時からずっと気になってたんだ。あの子がどうしているのか……」
懺悔ともとれる告白を、佐天は黙って聞いていた
垣根 「君に会った瞬間、もしかしてって思った。あの子に会って話が出来るかもしれない」
しかし、いざ対面してみればこの様だと乾いた笑みをこぼす
垣根 「このままじゃああの子はずっと俺に怯えて暮らさなきゃならねぇ」
それを見ぬふりして思い出作りなんか出来ない。必ず悔いが残る
垣根 「どうすりゃいいんだ……」
黄泉川があっさり許してくれたのが不思議だった
今思えば、それだけ彼女には広く強い心があったからかもしれない
何せ、一方通行すら丸め込んでしまうのだから
そういう意味では、本当に一般人の初春の反応が妥当なのだろう
一方 「……」
やれやれ……と言いたげなため息の後、一方通行は壁に預けていた背中を起こす
そのまま垣根の下へ歩み寄ると……
- 122 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:22:31.91 ID:+dWqxeIDO
-
一方 「どうすべきか、もう分かってンだろ」
その一言に垣根ははっと顔を上げる
一方 「オマエは周りが何と言おうが、やりたいと思ったらやる男だ。今更躊躇なンざしてンじゃねェよ」
いつも振り回される身としては、今の垣根の態度が気に入らない
この男は自分と同類。だから考えてる事も大体分かる
やってしまった事は覆らない……その後どう取り返すか、大事なのはそこだ
“母”は言った。どんなに下らない事でも、その積み重ねが負債を返していくと――
一方 「オラ、さっさと行ってこい」
この男は自分と同類、故に多くを語る必要はない
結論は既に出ているから
垣根 「……へっ」
今度の笑みに渇きは感じなかった
まさか、あの男に活を入れられるとは……
お陰で目が覚めた
- 123 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:24:54.01 ID:+dWqxeIDO
- 垣根 「佐天ちゃん、頼みがあるんだ」
垣根は腰を上げ、佐天の前に立つ
何だか、さっきより大きくなったように見えた
佐天はまだ思うところがあるのか、何かを躊躇っている
佐天 「……その話が本当なら、きっと私は垣根さんを二度と初春に近付けさせないようにすると思う」
佐天 「でも、それじゃお互いの為にならないんだろうなー」
ずっと迷っていた。彼に対して何と言ってやればいいのかを
怒りのままに罵声を浴びせればいいのか?彼女に代わってその顔に張り手を食らわせればいいのか?
では何故、誰よりも早く初春を守ってくれたのだろう
言葉通りの人間ならそんな事しない筈……少なくとも、今の彼からはそんな雰囲気は見られない
憎もうにも憎めないのが彼女の率直な心境だ
佐天 「……」
初春の為に、自分はどうしたらいいのか……
- 124 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 21:25:40.63 ID:+dWqxeIDO
-
佐天 「分かりました」
佐天は決心する。この人に宿る良心を信じてみようと
- 140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:22:15.08 ID:nYlxMekDO
-
――それは不思議な感覚だった
全てを漆黒に委ねる直前、世界が白く瞬いた
同時にふわりと温かい温度に包まれ、嘘みたいに気持ちが和らいでいく
もう大丈夫だ、この温もりが私を守ってくれる――
- 141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:24:03.27 ID:nYlxMekDO
- ―――――――――
初春 「……」
目を覚ませば、身体はまだ温もりに包まれていた
それがあの時とは別のものだと気付くのに時間はかからなかった
温めてくれていたのは厚みのある綿としなやかなナイロン
上体を起こし、布団の白と夕日のオレンジが淡く混ざり合った景色をぼーっと眺める
初春 (随分寝ちゃったな……)
窓際に置いてある花飾りは彼女の健康状態などお構い無しに満開で少し憎らしい
いつも栄養を分け与えているというのに……と下らない事を考えてしまう辺り、落ち着きも取り戻したようだ
ガララ……。病室のドアが開く音が聞こえ、初春はそちらへ顔を向ける
初春 (まさかあの人が……!)
途端に空気が張り詰め、不安の波が一気に押し寄せる
今来たらどうする?
大声で叫ぶか?意を決して逃げるか?中学生の頭を捻り、何とか脱出法をと……
- 142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:24:57.73 ID:nYlxMekDO
-
佐天 「初春!」
しかし、全て徒労に終わる
初春 「佐天さん!」
緊張から解放された拍子に出た間抜けな声に佐天は思わず吹き出してしまった
初春 「わ、笑わないで下さいよー!」
2人だけの世界に朗らかな風が吹き込んでいく。この一時の何と心地好い
佐天 「ごめんごめん!体の調子はどう?」
初春 「はい、すっかり元気になりました」
その言葉と笑顔を見て、佐天は改めて安心したと胸を撫で下ろす
その後、申し訳なさそうに目を泳がせながら……
佐天 「初春、元気になったところ悪いんだけど……」
初春 「はい?」
佐天 「……落ち着いて聞いてね?」
- 143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:27:46.90 ID:nYlxMekDO
- やけにもったいぶる彼女に焦れったくなり、「何なんですか!」と急かす初春
佐天 「実は今、あの人達が部屋の前にいて……」
初春 「えっ……」
佐天 「それで、初春と話がしたいって……」
佐天が言い終わる前に初春は声を荒げる
初春 「帰らせてください!!話す事なんてありません!!」
景色が歪む。息が苦しい
佐天が何か言ってるが、全て初春の喚き声にかき消された
どうしてそんなことを言うのだろうか。あの光景を見ていたにも関わらず……
初春 「もう嫌なんです……思い出したくないんです怖いんです!」
目に涙を溜めながら心の内をぶちまける彼女に胸が痛くなる佐天
彼の頼みを受けたのは間違いだったのか……
佐天 (……駄目、私が弱気になっちゃ駄目!)
追憶するは幻想御手<レベルアッパー>事件
己の無力を呪い、禁忌を犯した自分を最後まで支えてくれた
体力が優れている訳でもないのに、傷だらけになりながら奔走する初春は本当に頼れる存在だった
その彼女が目の前で苦しんでいる。ならば今度は私が支えにならねば――
- 144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:29:38.48 ID:nYlxMekDO
- これで最後にしたい。その一心で佐天は初春を宥めるように語りかける
佐天 「垣根さんに聞いたんだ。10月9日の事……」
佐天 「この前会って以来、ずっと初春の事探してたの。悪い事したって言ってた」
初春 「そんなの嘘です……」
佐天 「私もそう思った。あんな事しておいて何を言ってるんだろうって」
でも……と佐天は一呼吸置いて続けた
佐天 「話してる時の目が、嘘に見えなかった。自分のした事に向き合ってるっていうか……」
初春 「信じるんですか!?」
佐天の発言にショックを受ける。彼女は一体どちらの味方なのか?
佐天 「だって初春が倒れた時、あの人が初春を受け止めてくれたんだよ?」
初春 「……!」
あの温もりの正体が彼だなんて、初春は信じたくもなかった
あれは初春の知る彼の人物像と似ても似つかない。嘘でもやめて欲しい
佐天 「無茶苦茶言ってるのは分かる。でも、ここで目を逸らしちゃったらずっとこのままだよ!?」
初春 「……」
黙り込む初春をそっと抱き締める
佐天 「初春の辛そうな顔を見てると、私も辛くなるの」
優しい声で囁きながら、未だ震える身体をより一層包み込んでいく
- 145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:31:51.85 ID:nYlxMekDO
-
佐天 「大丈夫、私も一緒に戦うから」
初春 「佐天さん……」
再び初春の目に涙が込み上げる
恐怖ではない、友の優しさに心打たれたから
こんなに親身になってくれる人間と出会えて本当に良かった――
今なら……2人でならあの恐怖に向き合えるだろうか
零れ落ちそうになるのを耐え、やがて安心したように表情が柔らかくなっていった
初春 「……私、頑張ります」
- 146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:33:20.11 ID:nYlxMekDO
- ―――――――――
扉の前へ行くには10歩程歩かねばならない。この僅かな距離がどれだけ長く感じた事か
佐天は初春の手を握り、1歩1歩確かめながら歩んでいく
3……4……
端から見たらさぞや滑稽な絵だろう
病室の扉の前に立つ……たったこれだけの為に2人は悩み苦しんだなど、誰が考えつこうものか
5……6……
彼女はもう一度初春の横顔を見る
不安と緊張の中に決死の思いが入り乱れた複雑な表情。視線は一直線、前しか見えていない
7……8……
ここで佐天が歩みを止めた
2人は目を見合わせ、小さく頷く
この先からは初春の力だけで進まなければならない
固く握られた手もその役目を終え、ゆっくりとほどけていく
そして初春だけが前へ……
- 147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:34:26.34 ID:nYlxMekDO
-
9……
佐天はまるで別れを惜しむように彼女の背中を見守る
右手には、まだ彼女の温度が残っていた
10
長い道のりを経て、初春はようやくこの時を迎える
この何の変哲もない人口物の隔たりの向こうには、嘗て自分をどん底の淵へ突き落とした張本人が待っている
正直、今も怖い。それだけに、1人じゃ決して辿り着けなかっただろう
これが終われば、もう一度彼女と抱き合おう。満面の笑みと共に――
息を吸って……そして吐いて……
- 148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:35:12.21 ID:nYlxMekDO
-
コン、コン
今、悪魔を呼び覚ます天使のラッパが鳴らされた――
- 149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:38:10.40 ID:nYlxMekDO
- 『……久しぶり、だな』
初春 「私のこと……覚えてたんですね」
『ああ』
初春 「……」
『……』
初春 「……」
『本当なら面と向かって話したかったけど……』
初春 「また、私が倒れるかもしれないからドア越しに?」
『……ああ』
初春 「……ずるいです。何で今になってそんな事するんですか」
『……』
- 150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:39:24.95 ID:nYlxMekDO
- 初春 「私がどれだけ辛い思いしたかなんて、分かる訳ないですよね」
初春 「あなたの顔を見るだけで、何度もあの瞬間を思い出してしまうんです」
初春 「体は震えて吐き気もして、肩の痛みまで戻ってくるんじゃないかって……」
初春 「分からないですよね……私があなたにどれ程の恐怖を抱いているかなんて」
『……分からない』
『こうしてる今もアンタは怯えてるかもしれないし、今まで以上に怖がらせちまったかもしれない』
『これからもアンタは俺に怯えながら暮らしていくんだろうな……』
初春 「そう思うなら……」
『だから、俺に忘れさせてくれ』
初春 「!」
- 151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:40:47.69 ID:nYlxMekDO
- 『はっきり言って、俺は自分勝手だ』
『人の気持ちを理解するのも苦手だし、自分の気持ちを伝えるのも下手糞だ』
『だから、アンタがどんな思いで過ごしてきたかなんて分かりっこねぇ』
初春 「……」
『俺が幾ら謝罪の意を示したところで、アンタには微塵も伝わらないと思う』
『それだけの傷を、俺はつけちまった……』
『だったら、それを忘れるくらいアンタを笑わせてやりたい』
『嫌な思いをさせたんなら、その何倍も楽しい思いをさせてやる』
- 152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:42:33.75 ID:nYlxMekDO
- 初春 「それって、つまり誤魔化すって意味ですか?」
『そう捉えても構わない。でも、俺は俺なりに過去の落とし前をつけるつもりだ』
『俺の手でアンタを笑わせてやる。何としてもな』
初春 「……」
『……俺からの話は以上だ。まだ何か言いたい事はあるか?』
初春 「……鬼です」
初春 「あなたを見るだけで気絶したんですよ?そんなことされても困ります」
『……』
初春 「でも、私の友人は一緒に戦ってくれると言いました。だから、私は逃げません」
初春 「笑わせられるものなら、やってみてください」
『……いいだろう』
初春 「もういいですか?」
『ああ』
初春 「……」
『……ここに手紙を置いておく。後で2人で見てくれ』
『じゃあ、俺達はこれで――』
- 153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:46:16.74 ID:nYlxMekDO
-
『ごめんな』
- 154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:48:11.39 ID:nYlxMekDO
- ―――――――――
しばらくの間、初春はその場で固まって動かなかった
そして……ぷつん、と糸を切った人形のように力なく崩れ落ちる
佐天 「初春!」
ずっと後ろで見守っていた佐天が慌てて駆け寄ると……
初春 「すみません、何か安心したら力が抜けちゃって……」
恐怖に立ち向かった――
勝利したとは言えなくとも、それまでより彼女の顔に精気が戻っていた。十分な成果だろう
佐天 「よく頑張ったね、初春」
偉い偉い、と彼女の健闘を労い頭を優しく撫でた
初春はくすぐったそうに肩をすくめ「えへへ……」と顔を綻ばす。佐天がこの日初めて見る“いつもの初春”だ
- 155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:48:56.10 ID:nYlxMekDO
- 初春 (……でも、まだ終わった訳ではありません)
そう、まだ彼女からあの呪縛が解き放たれた訳ではない
本当の戦いはこれから。あの男との、言うなれば自分との戦いは……
そして近い将来、またあの顔を見る事になるのだろう
ピエロが次に届けに来るのは笑声か悲鳴か――
佐天 「……手紙、読んでみる?」
初春の頭を撫でるのをやめ、目の前の扉を見る
この薄い壁の向こうから人の気配はしない
だが、2人の間には微かな緊張感が再び芽生えた
初春 「……はい」
心の準備は出来た……と目の訴えを聞き入れ、佐天は立ち上がりドアノブに手を掛ける
ガララララ……
- 156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:50:50.32 ID:nYlxMekDO
-
その先には誰もいなかった。白い少年も、初春のトラウマも……
代わりに、床に1枚の紙が落ちていた。小さくとも存在感のあるレターサイズの赤い封筒だ
初春 「それが……?」
佐天 「……みたいね」
佐天が拾い、それを初春に渡す
佐天 「開けてみて?」
一体どんな事が書かれているのか?初春は恐る恐る封を解いていった
そこに書かれていたのは――
- 158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:52:09.20 ID:nYlxMekDO
- ―――――――――
垣根 「はぁ~寒い寒い」 ブルッ
一方 「……おい」
垣根 「ん?」
一方 「あれでよかったのか?」
垣根 「……ああ」
あの時交わしたやり取りはほんの数分。互いの顔も見えないままで、どれだけの事が伝わっただろう
償い……と言えば語弊があるかもしれないが、これから彼女にやらんとする行為には少なからずそういった意味が含まれている
垣根 「お前は俺を見てどう思う?」
一方 「さァな。正しいとも間違ってるとも思わねェ、何とも言えねェよ」
それを言ったところで彼には意味がない事を知ってるから
垣根 「あの子には随分辛い思いをさせちまった……」
垣根 「今度は目一杯、楽しく笑ってもらわないとな」
誰が何と言おうとも、やりたいと思ったらやる
それが、良い意味でも悪い意味でも垣根帝督の本質なのかもしれない
一方 「……つくづく変な奴だな、オマエ」
垣根 「知ってる」
12月20日の夕焼けは、今日も彼らを優しく導いてくれる
- 159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/06(金) 18:53:05.27 ID:nYlxMekDO
-
この日に並々ならぬ思いを抱えた者がいるなど露とも知らずに――
垣根 「あれ、なんか忘れてるような……?」 - 171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:29:13.23 ID:SxqcFJIDO
- ―――――――――
―――――
―――
12月24日
~上条宅~
『今日はクリスマス・イヴ!という事で町の至るところにはカップルが……――…―!』
禁書 「ねぇとうま、どうして日本のクリスマスは恋人同士で過ごすの?」
上条 「さぁ」
禁書 「イギリスだと大半が家族と家で過ごすんだよ。ケーキとか七面鳥とかおいしいものがいっぱい……」 ジュル
上条 「ふーん」
禁書 「……」
上条 「……」
禁書 「とうま、今日はいつも以上にそっけないね」
上条 「そうか?普通だと思うけど」
禁書 「絶対おかしい。今日はクリスマス・イヴだよ?もうちょっと浮かれたっていいと思うの」
上条 「そんな年でもないだろ。それにうちは見ての通り貧乏、クリスマスを祝う余裕なんてありません」
禁書 「……」
上条 「……」
禁書 「とうま、辛い事でもあった?」
上条 「何にも」
禁書 「じゃあ何でいつまでも風呂場から出ないの?」
- 172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:31:19.00 ID:SxqcFJIDO
- 上条 「……」
禁書 「冷えるから部屋に戻ろうよとうま」
上条 「やだ」
禁書 「何で?」
上条 「あそこへ行っても辛い現実が待ってるだけだ」
上条 「テレビを点けたらクリスマスクリスマス、外へ出たらカップルカップル……みんな幸せそうだよなー」
上条 「対する俺は金はないし彼女もいない。あるのは倍に増えた宿題だけ」
禁書 「……」
上条 「今日ほど生きてるのが辛いと思う日はないだろう」
上条 「だから今日はここでクリスマス・イヴをやり過ごすんだ!許せインデックス!」
禁書 「……ふーん」
上条 「どうした?インデックス……」
禁書 「もういいんだよ」 バタン
上条 「……?」
- 173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:31:46.39 ID:SxqcFJIDO
-
禁書 「もう、とうまのバカ!私の気も知らないで!」
ピンポーン
禁書 「あ、誰か来たんだよ」 トテトテ
ガチャ
禁書 「……誰もいない」
禁書 「ん?何かなこれ」 ヒョイ
- 174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:33:41.30 ID:SxqcFJIDO
- ―――――――――
~麦野宅~
麦野 「遂に来たクリスマス・イヴ……」
絹旗 「今年はみんなで超楽しくしましょう!」
麦野 「ところが浜面の奴、滝壺と2人きりで過ごしたいとか抜かしやがった」
絹旗 「浜面の癖に生意気な……!」
麦野 「あの野郎、滝壺に手ぇ出したらそのきったねぇ×××二度と使えなくしてやるからな」
絹旗 「寧ろ、今からやっちゃいます?」
麦野 「よし行くか……って違う違う、今日はまともな1日を過ごすんだよ」
絹旗 「でも、クリスマス・イヴって具体的に何をして過ごすのですか?」
麦野 「うーん……クリスマスツリーを飾るとか?ケーキ食ったり七面鳥焼いたり……」
絹旗 「2人だけで?」
麦野 「何か問題でも?」
絹旗 「いえ、あのー……超言いにくいんですけど、何か寂しくありませんか?」
麦野 「じゃあ誰か誘えばいいだろ」
絹旗 「……誘えるような人がいません」
麦野 「……ごめん」
絹旗 「謝らないで下さい、超余計に惨めです!麦野はいないんですか、誘えそうな人が!?」
- 175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:34:15.51 ID:SxqcFJIDO
- 麦野 「うっ、そう言われれば私にも誘える奴が全然……ん?」
麦野 (あれ、こういう日にうってつけの奴がいるじゃねぇか)
麦野 「ちょっと待ってて」 パカッ
prrrr……
麦野 「……出ない」
絹旗 「誰にかけてるんです?」
麦野 (アイツ、何やってんだ?こういう日は何かしらアクションを起こしに来る筈だが……)
麦野 (まさか、個人的にクリスマスの予定があるとか?)
麦野 (こっちはどうやって過ごすか悩んでるってのに……なんかムカついてきた) ムカムカ
絹旗 「麦野、顔が超怖いです」
麦野 「あ、ごめん。ちょっと出ないもんだからつい」
ピンポーン
絹旗 「誰でしょうか」
麦野 「見てくる」 スタスタ
ガチャ
麦野 「いない……イタズラか?」
麦野 「あ、何か落ちてる」 ヒョイ
- 176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:35:36.29 ID:SxqcFJIDO
- ―――――――――
心理 「――折角だけど、遠慮させていただきます」
心理 「……ふぅ」 パタン
ワイワイ
心理 (クリスマスか……多宗教国家は便利でいいわね。私は興味ないけど) テクテク
ナニガクリスマスヤー!チュウシセー!
ソウダソウダー
心理 (只の祝日に一喜一憂するのなんてこの国くらいじゃない?1人の何がいけないんだか……) テクテク
ナンヤツッチー、ノリガワルイナー
エー、ダッテ…
心理 (クリスマスケーキ……) ピタッ
心理 (美味しそう……でも、1人じゃ食べきれないサイズね)
心理 (こういうのは家族とかと一緒に食べるからいいのよ)
心理 (……)
- 177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:36:43.99 ID:SxqcFJIDO
-
ヌケガケハユルサンデーコノシスコン!
アイスルカゾクトスゴシテナニガワルイニャー!
ツッチーカラハヤマシイナニカヲカンジルンヤ!
心理 (麦野さんは今日何をしてるのかしら) カチカチ
prrrr……
麦野『もしもし?』
心理 「麦野さん、今何してる?」
麦野『何って……家でゴロゴロしてる』
心理 「そう」
麦野『寂しいとか言うんじゃねぇだろうな?』
心理 「いえ、私も似たようなものだから」
麦野『そういうアンタは何してんのさ』
心理 「買い物、ってとこかしら」
麦野『ふーん、じゃあアレはまだ読んでないのか』
心理 「アレ?」
麦野『家に帰ったら分かるよ。多分そっちにも来てるだろうし』
心理 (一体何なの……?)
チクショーコノウラギリモノメー!
チョットマツニャー!
- 178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:37:34.46 ID:SxqcFJIDO
- ―――――――――
~初春宅前~
佐天 「メリークリスマース!」 バサッ
初春 「きゃあ!?」
佐天 「白と緑の縞パンとは、今日にピッタリのカラーですな~」
初春 「へ、変な事言わないでくださいー!」
佐天 「そういえば白井さんと御坂さんは?」
初春 「何でも、常盤台の人達だけで大きなクリスマスパーティーを開くそうですよ」
佐天 「お嬢様だらけのクリスマスかぁ……お祈りとか捧げてそう」
初春 「ここは科学の街ですよ?」
佐天 「それを言ったらクリスマスってイベント自体が矛盾してるじゃない」
初春 「まぁそうですよね。結局、宗教だの何だのどうでもいいんですよ、ワイワイ過ごせれば」
佐天 「それに尽きるね」
- 179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:39:03.64 ID:SxqcFJIDO
- 初春 「……」
佐天 「行くんでしょ?」
初春 「やっぱり私……」
佐天 「なーに言ってんの!あの時頑張るって言ったでしょ?」
初春 「そ、そうですけど……」
佐天 「はい決まり!じゃあ早く着替える着替える!」 グイグイ
初春 「ちょ、ちょっと待って下さい佐天さーん!」
佐天 「どうせ最初からそのつもりで来たんだし、諦めなさいー!」
初春 「そんな~!」
バタバタ
佐天 「これでよし、と」
佐天 「……それにしても」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『俺のクリスマスに常識は通用しねぇ!』
この手紙を読んだ君!今年のクリスマスはいつもと違う楽しみ方をしてみないか?
【日時】
12月24日
【開催時間】
11:00~16:00
【場所】
第7学区○○マンション△△△号室
何をやるかは来てからのお楽しみ♪
素敵なプレゼントが貰えるかも!?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
佐天 「常識の通用しないクリスマスってどんなのかなぁ……」
- 180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:40:27.82 ID:SxqcFJIDO
- ―――――――――
~マンション入口~
禁書 「ここだよ!」
上条 「スゲー、ここってかなり高級で有名なマンションだぞ」
禁書 「結構人が集まってるね、みんなこの手紙を読んで来たのかな?」
上条 「だと思うけど……」
麦野 「やっぱりアンタも来たのね」
上条 「あ、麦野」
絹旗 「この人達は?」
麦野 「主に奴に巻き込まれる被害者その3、てとこだ」
上条 「上条当麻だ。よろしく」
絹旗 「絹旗最愛です。モアイって読んだら超怒りますよ」
禁書 「……」 ジー
上条 「な、何だよ」
禁書 「とうまはやっぱりとうまなんだね」 プイ
上条 「はぁ?」
麦野 「あら、この子が前に言ってたシスター?」
禁書 「インデックスって言うんだよ!」
麦野 「麦野沈利よ、よろしくね可愛いシスターちゃん」
一方 「……」
打止 「どうして不機嫌そうなの?ってミサカはミサカは尋ねてみる」
一方 「こういう場合、大体がある男の仕業だったりすンだよなァ」
打止 「もしかしてあのお兄ちゃん?ってミサカはミサカはあなたの考えをズバリ言い当ててみたり!」
一方 「……顔触れからしてな」
- 181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:41:15.95 ID:SxqcFJIDO
-
結標 「ここね」 ヒュン
心理 「ありがと、送ってくれて」
結標 「いいのいいの、1人だけで行くのも不安だったし、知ってる顔がいてホッとしたわ」
心理 「でも、ざっと見た限り知ってる顔ばかりなのよね」
結標 「ホントだ、幼稚園で会った人達がいる……」
一方 「あァ?オマエまで呼ばれてたのか」
結標 「一方通行も呼ばれてたのね」
一方 「……」
結標 「……」
一方 「似合わねェとか思ったろ」
結標 「いいえ?」
一方 「俺はこのガキが連れてけってうるさいから来ただけだからな?」
結標 「何も言ってないわよ」
一方 「そういういうオマエこそ、こンな場所に来るなンて似合ってねェンじゃねェか?」
結標 「なっ、私だってこの子に誘われたから来たのよ!そうよね!?」
心理 「えっ?」
一方 「本当か?」
心理 「えっと……」
打止 「なになにどうしたのってミサカはミサカはオロオロしてみたり……」
心理 「私もよく分からないのよね……」
上条 「一方通行達もいるし、これはもしや……」
麦野 「だろうね」
- 182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:42:07.02 ID:SxqcFJIDO
-
垣根 「メリーーークリスマーーース!!」 ビューン
上一麦心 「「「「やっぱり」」」」
- 183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:42:44.35 ID:SxqcFJIDO
- 垣根 「よく来たお前ら!俺は信じてたぜ!」 スタッ
麦野 「何その格好」
垣根 「見ての通りサンタクロースだ。髭は偽物だけどな」
上条 「もう1つ気になったんだけど、その両脇に抱えてるのは……?」
滝壺 「逃げられなかったね、はまづら」 プラーン
浜面 「」 プラーン
絹旗 「浜面と滝壺さん!?今日は2人でデートなんじゃ……」
垣根 「コイツらの家にも送ったのに読んでないと来たもんだから連れてきたんだよ」
結標 「連れてきたって……」
垣根 「当然だろ?俺が企画したイベントなんだから来なきゃ駄目なの」
禁書 「ていとくってかなり強引な人なんだね」
打止 「あなたもあれくらい強引になってみたら?ってミサカはミサカは暗に引っ張って欲しいと仄めかしてみる」
一方 「ありゃ強引を越えて自分勝手なだけだ。迷惑極まりねェ」
- 184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/18(水) 17:44:09.05 ID:SxqcFJIDO
- 滝壺 「えっと、そろそろ降ろして欲しいなー」
垣根 「おぉ、悪い悪い」 パッ
浜面 「畜生、折角色々計画を練ってたのに……」
垣根 「そう言うな、夕方には帰してやるから」 ポイッ
浜面 「へぶっ!?」 ドサッ
絹旗 「超微粒子レベルで同情しますよ浜面」
麦野 「アイツに目をつけられたのが運の尽きね」
垣根 「さーてこれで全員……あれ?」
一方 「何だ、まだ来てない奴がいるとか言うンじゃねェだろォな」
垣根 「うーん……」
心理 「どうしたの?」
佐天 「ま、間に合ったー!もう、遅いよ初春!」 ゼーハー
初春 「だ、だって~!」 ゼーハー
一方 「……そォいう事か」
結標 「見ない顔ね、中学生くらいかしら?」
佐天 「ど、どうも~」 アハハ
初春 (あの人はどこに……)
垣根 「おおー!待ってたぜお前ら!」
佐天 「か、垣根さんそれサンタクロースですか?」
初春 (あれ?何でだろう、あの時みたいな気分にならない。サンタクロースの格好をしてるから?)
垣根 「いやーよかったよかった!これで全員揃ったな」
初春 「え、えっと……」
垣根 「さぁそれではお待ちかね、素敵で愉快なクリスマスパーティーへとご招待しよう!」
佐天 「楽しみだね、初春!」
初春 「うー……」
- 206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 18:54:59.11 ID:yyohDRMDO
- ―――――――――
~垣根宅~
垣根 「トマト大好きトマト姫♪とっても内気な照れ屋です♪」 ペンッペンッ
垣根 「お日様浴びて♪冠緑♪真っ赤なお顔が可愛ーいーねぇーーー♪」 ペンッペンッ
垣根 「おネギ大好きネギ王子♪とってもスマート紳士です♪」 ペンッペンッ
垣根 「背高ノッポで♪御髪は緑♪真っ白スーツが素敵だーなぁーーー♪」 ペンッペンッ
垣根 「人参大好きにん爺さん♪お城のお馬に大人気♪」 ペンッペンッ
垣根 「夕焼けお空に♪想い出浮かべ♪オレンジフェイスだ♪優しそーおぉーーー♪」 ペンッペンッ
垣根 「皆揃って台所!誰がいつ頃食べ頃!」 ジャン
垣根 「油断大敵!賞味期限ーーーーー!!」 ジャーン
上条 「」
一方 「」
麦野 「」
心理 「」
- 207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 18:56:07.13 ID:yyohDRMDO
- 垣根 「きゅうり大好ききゅうり姫♪糠のお布団お気に入り♪」 ペンッペンッ
垣根 「ぐっすり眠れば漬け物♪待てずに食べちゃううつけーもーのぉーーー♪」 ベベベーベーベーン
垣根 「なすがままだよナスビーナス♪なさねばならぬがなすすベナス♪」 ペンッペンッ
垣根 「おナス大好きナスナース♪嫁に食わすな秋ナーあぁーースぅーーー♪」 ペペンッペンッ
垣根 「じゃがいも大好きじゃが大臣♪大豆大好き大豆ぃん(大臣)♪」 ペンッペンッ
垣根 「どちらも一目置かれるが♪当の二人は会った事がないぃーーー♪」 ペイィーン
垣根 「すごく詰まった栄養!空と大地の抱擁!」 ジャジャジャジャン
垣根 「煮ても焼いても!そのままでもーー良いぃーーーーー!!」 ジャーン
浜面 「……プッ」
滝壺 「……」
絹旗 「……っ」
結標 「……!」 プルプル
- 208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 18:57:29.66 ID:yyohDRMDO
- 垣根 「ほうれん僧侶♪らっ教師♪レタスチュワーデス♪か坊っちゃま♪」 ジャジャジャジャン
垣根 「アボガドクター♪たけのCOP!!」 ジャジャジャジャン
垣根 「パプリ係長♪あかか部長♪青じ村長♪クレ村長♪」 ジャジャジャジャン
垣根 「にラッパー♪おくラッパー♪大豆ぃん♪」 ジャジャジャジャン
垣根 「ピーマントヒヒ♪だいコング♪ブロッコリー犬♪大豆ぃん♪」 ジャジャジャジャン
垣根 「everything♪anything♪」
初春 「……」
佐天 「……ゲホッ」 プルプル
禁書 「……」 ジュルリ
打止 「~♪」
垣根 「皆ーいーるーーー♪皆ーーー生ーきーてーるぅーーー♪」 ジャンジャカジャカジャカ
垣根 「君がーーー食ーべーれーばぁーーー♪君とーーー生ーきーてーるーーー♪」 ジャンジャカジャカジャカ
垣根 「幼女大好き自然薯♪」 ペンッペンッ
一方 「……」 イラッ
垣根 「年上大好きかいわれ♪」 ペンッペンッ
上条 「……」 ドキッ
垣根 「鮭が大好きかいわれ♪」 ペンッペンッ
麦野 「かいわ……」 ピクッ
垣根 「スイーツ大好きベーコぉーーーン♪」 ペンッペンッ
心理 「……?」
- 209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 18:58:52.72 ID:yyohDRMDO
- 垣根 「お野菜王国台所!皆今こそ食べ頃!」 ジャジャジャジャン
垣根 「サラダにスープに!ジューースぅーーーーー!!」 ジャンジャカジャカジャカ
垣根 「野菜があればそれで良い!肉も魚もあれば良い!」 ジャジャジャジャン
垣根 「皆おいしい!あとパンか米ぇぇぇぇーーー!!」 ジャンジャカジャカジャカ
垣根 「パースぅータぁぁぁぁーーー!!パースぅータぁぁぁぁーーー!!パースぅータぁぁぁぁーーー!!」 ジャンジャカジャカジャカ
ジャンジャンジャンジャンジャッジャッジャン
垣根 「これで開会式は終了だ。ようこそ我が家へ!今日は存分に楽しんでくれ!」 パーン
打止 「わー!ってミサカはミサカは盛り上げようとはしゃいでみたり!」 パチパチ
一方 「……」 チラッ
心理 「……私は何も言わないわよ」
垣根 「さて、ちょいと準備があるから鍋でもつついて待ってな」 ガチャ
- 210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:00:35.74 ID:yyohDRMDO
- ―――――――――
結標 「クリスマスに鍋……」
麦野 「鶏鍋鴨鍋蟹鍋……クリスマスをどう捉えてんだアイツは」
滝壺 「はまづら、あれ取って」
浜面 「これか?」
打止 「あつーい!ってミサカはミサカは舌を出して冷やしてみたり!」 ヒー
一方 「バッカ、ちゃンとふーふーしてから食えよ」
禁書 「鍋は昔からある日本の料理だね。今みたいに発達したのが江戸時代で、一般的に普及したのが明治時代からなんだよ」 ペラペラ
禁書 「鍋の出汁は美味しいから締めに色んなものが入るよ。ご飯とかうどんとか……とうま、豆腐入れて!」
上条 「あんまがっつくなよー、ほら」
禁書 「む、それくらい分かってるもん!」
上条 「それにしても広いなーこの家、5人くらい平気で住めるぞ」
禁書 「ていとくってお金持ちなのかな?でも1人じゃ広すぎるね」
絹旗 「あれってクリスマスツリーじゃないですか?」
心理 「しかも本物の樅の木ね。どこから持ってきたのかしら」
- 211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:01:50.54 ID:yyohDRMDO
- 佐天 「来て良かったね初春!」
初春 「は、はい……熱っ!」
佐天 「もー、私がふーふーしてあげるから」 フーフー
初春 「大丈夫ですよ佐天さん!」
心理 (あの2人、とても仲がいいのね。まるで姉妹みたい)
垣根 「お待たせー」 ガチャ
浜面 「やっと来たみたいだな」
垣根 「今日のメインイベントはこれだ!」 バンッ
結標 「すごろく?」
垣根 「ルールは簡単。計100マスある道をサイコロの出た目だけ進み、先にゴールに着いたチームの勝ちだ」
垣根 「チームは二人一組の六組。勝者には素敵なプレゼントを用意してるぞ!」
打止 「プレゼントだって!頑張ろうね!!」
一方 「プレゼントに興味はねェが、勝負である以上勝つしかねェよな」
滝壺 「何が貰えるのかな?」 ワクワク
浜面 「さあな、でも期待は出来そうだ」
麦野 「でも、すごろくってなんか地味じゃねえか?」
垣根 「まぁそれは始めてからのお楽しみだ」 ククク
心理 (どうせ普通じゃないんでしょ……)
- 212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:03:54.97 ID:yyohDRMDO
-
1番目:上条・禁書
2番目:麦野・絹旗
3番目:浜面・滝壺
4番目:佐天:初春
5番目:心理:結標
6番目:一方:打止
垣根 「チームと順番も決まったな。それじゃ、レッツ・スタート!!」
―――――――――
~1巡目~
上条 「まずは俺達からだな」 ポイ
禁書 「初めが肝心だよとうま!」
上条 「だあぁ!いきなり1かよ!」
禁書 「運が絡むととことん不利になるね……」 ハァ
佐天 「よく見たらどのマス目にもテープが貼ってある」
初春 「止まるまで何が起こるか分からないって事ですか」
垣根 「……」 ニヤニヤ
一方 (あのバカが作ったゲームだ、碌でもねェ事が書いてあるに違いねェ)
一方 (三下には悪いが、先に犠牲になってもらうぜ)
【運のない奴め、出直して来い!!――振り出しに戻る】
上条 「ふ、不幸だ……」
絹旗 「超ついてないですね」
麦野 「意外と普通?」
心理 「まだ分からないわよ」
浜面 「皆は一体何を恐れてんだ?」
滝壺 「はまづら、蟹剥いて」
浜面 「え?あぁ……(まだ食べてたのか)」
- 213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:05:28.05 ID:yyohDRMDO
-
麦野 「次は私達ね」 ポイ
絹旗 「1は超出さないでくださいよ……!」
麦野 「4か、まぁまぁだな」
絹旗 「何が書いてあるんでしょう」 ペリペリ
【お題:ピータン食え】
麦野 「は?」
垣根 「お題マスに止まったら書いてあるお題をクリアしなきゃならねぇ。1人でも2人協力しても構わない」
垣根 「但しクリア出来なかったら移動は無効だ。という訳でピータン食え」 コトッ
絹旗 「な、なんですかこの超変な物体は!!それに臭い!」
禁書 「皮蛋(ピータン)はアヒルの卵を強いアルカリ性の条件で熟成させた中国の食べ物だよ」 ペラペラ
禁書 「独特な匂いがするけど、これは溏心皮蛋の方だから匂いが弱めで味もいいかも」 ペラペラ
浜面 「鍋の時といい、あのシスター食通なのか?」
上条 「大食いだけど蘊蓄まで身に付けたみたい」
麦野 「絹旗、食べられる?」
絹旗 「ごめんなさい、超無理です……」
麦野 「食わず嫌いは良くないわよ?一口だけでいいから食べな!」
絹旗 「そ、そんな~」
- 214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:07:52.84 ID:yyohDRMDO
-
浜面 「よし、ゴール目指して頑張るぞ!」 ポイ
滝壺 「おー」
結標 「大丈夫?」
絹旗 「私、ピータン駄目みたいです……」 シクシク
浜面 「5か、幸先いいな」 ペリペリ
【速さが足りない――更にもう一度サイコロを振る】
浜面 「お、ついてんな!調子いいぜ!」 ポイ
一方 「チッ」
滝壺 「また5だよはまづら」
浜面 「1、2、3、4、5……と」 ペリペリ
【お題:クイズに答えろ】
浜面 「クイズ?」
垣根 「問題は俺が出す。それに答えられなかったら振り出しに戻ってもらうぞ」
滝壺 「絶対正解しようね」
浜面 「おう、バッチ来い!」
垣根 「じゃあ問題、これは一体誰のでしょ~か?」 ヒョイ
- 215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:09:52.73 ID:yyohDRMDO
-
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『バニーの真髄、ここに極まる』
マニア垂涎!!これ1冊でバニーの全てが分かる!
【概要】
世界各国のバニーガールを150ページに渡って網羅
更に現役バニーガールの貴重なインタビューも収録!
袋とじには彼女達のあられもない姿が……
【特集】
~バニーの起源とこれから~
【応募者プレゼント】
本誌オリジナルバニーセット10名
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
浜面 「」
佐天 「な、何あれ///」 カァ
初春 「知りませんよ!///」
打止 「ねぇ、何で目を隠すの?見えないよーってミサカはミサカはあなたに聞いてみたり」
一方 「ガキは見なくていいンだよ」
心理 「『バニーの真髄、ここに極まる』……相当マニアックね」
浜面 「な、何でお前が……!!」 パクパク
垣根 「俺もざっと目を通したけど、かなり濃い内容だったぜ///」
上条 (ちょっと気になる……) ドキドキ
- 216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/26(木) 19:11:52.15 ID:yyohDRMDO
- 麦野 「あー難しいなー誰のだかさっぱり分からねぇわー。正解出来たら凄いんじゃね?」 チラッ
絹旗 「私も超分かりませーん」 チラッ
垣根 「さぁどうなんだ?答えられねぇか?」
浜面 「ぐっ……!」
垣根 「5、4、3、2、1……」
浜面 「……お」
垣根 「お?」
浜面 「俺のだよぉぉぉぉぉーーー!!」
垣根 「正解!答えは浜面のでしたー」 パチパチ
滝壺 「……」 ジー
浜面 「ち、違うんだ滝壺!これは……」
滝壺 「ごめん、そんなはまづらは応援できないなー」 ニコッ
浜面 「」
- 230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:16:17.58 ID:0E/bPToDO
-
初春 「何だか緊張しますね」 ドキドキ
佐天 「うん、新しい感覚のすごろくだね」 ポイ
心理 「大丈夫?」
浜面 「死にたい……」 シクシク
初春 「5ですよ、もう一度進めます!」
佐天 「よーし!」 ポイ
初春 「……」 チラッ
垣根 「~♪」 パシャッ
初春 (あの人、ですよね……)
垣根 「?」
初春 「っ!」 サッ
佐天 「2だって。あまり進めなかったなー」 ペリペリ
【お題:お互いの似顔絵を見本無しで書け】
垣根 「これはチームの仲間を顔を見ずに書くんだ。俺がいいと判断したらクリアだ」
禁書 「記憶を頼りに書けばいいのかな?」
結標 「見慣れてても、いざ似顔絵を書けって言われると難しいわね」
垣根 「画用紙とペンだ、じゃあお互い背を向けて!」
- 231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:17:02.23 ID:0E/bPToDO
- 佐天 「書けるかなー?」
初春 「私、絵を書くの苦手なんですよね……」
垣根 「はい、これ」
初春 「……どうも」
垣根 「そんな緊張しなくていいから、リラックスリラックス!」
初春 (そんな事言われたら余計緊張しちゃいますよ……)
垣根 「よーし、どっちも書けた……ブホッ!」
上条 「どうした?」
垣根 「な、何でもない。じゃあまずは初春から」 プクク
初春 「えっと、こんな感じでしょうか……」 スッ
- 232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:20:57.24 ID:0E/bPToDO
-
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´ ヽ / /
/ ゝ /
/ {´} ', /
,' ,ォ ≠ミ ィ≠ミ丶⌒o⌒ l /
/ |〃yr=ミ:、 !/行ミt .( 人 ) | /
`'-.,jイ {_ヒri}゙ ゙ ヒrリ.》 |
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⌒ヽ ../ / / / Y⌒ヽ
人.(_/.::::: .::::::(_つ: ノ⌒ヽ 人
Y⌒ヽ)⌒ヽ Y⌒ヽ Y )⌒ヽ
- 233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 17:21:41.99 ID:cOO0Q/+r0
- これはwwwwwwひどいwwwwwwwwwwwwwwwwww
- 234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:22:05.85 ID:0E/bPToDO
-
佐天 「ちょっと、何これ!?」
初春 「ご、ごめんなさい~!気が付いたらこんな事に……」
佐天 「いや、頭から足生えてるよ!?それに何か怖いし!」
心理 「でも特徴は大体捉えて……ふっ」
麦野 「アイツが吹き出すなんてそうそうないぞ」
絹旗 「下手なC級ホラーよりも恐ろしいですね。ある意味才能を感じます」
垣根 「やば、これ撮っとこう」 パシャッ
佐天 「ちょ、ちょっとー!」
垣根 「じゃあ次は佐天ちゃん」
佐天 「全然似てないけど大丈夫かな……?」 スッ
- 236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:23:17.58 ID:0E/bPToDO
-
i'⌒! _i⌒)-、
f゙'ー'l ( _,O 、.ノ
| | /廴人__)ヽ _/\/\/\/|_
ノ "' ゝ / ,ォ ≠ミ ', \ /
/ "ゝノ {_ヒri}゙ } < サテンサン!! >
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い _/ `-、.,, 、_ i
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`` ` ! 、、\
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- 237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:23:59.63 ID:0E/bPToDO
-
初春 「」
全員 「」
佐天 「どうしても似顔絵が書けなかったから初春っぽい動物ならいいかな~って……駄目?」
初春 「これのどこが私っぽいんですかー!!」
浜面 「何から突っ込めばいいのか分からんぞ」
打止 「あ、頭のお花がそっくりだねーってミサカはミサカは無理矢理共通点を見つけてみたり!」
一方 「無理しなくていいぞォ」
佐天 「因みに犬を描いたつもりだったんだけど……」 アハッ
結標 「人としても犬としても脱線してるわこれ」
垣根 「……っ、………!!」 プルプル
初春 「いつまで笑ってるんですか!」
垣根 「ひぃ、ふぅ……!すまんすまん、これも撮っとこ」 パシャッ
滝壺 「この子達からはセンスしか感じない」
垣根 「えーっと結果だが、面白いからクリア!」 パチパチ
佐天 「やったー!」
初春 「うーん……」
- 238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:25:03.39 ID:0E/bPToDO
-
心理 「私達の番よ」
結標 「サイコロを投げるのが怖いわね」 ポイ
心理 「3……変なお題が来なければ良いけど」 ペリペリ
【オンドゥルルラギッタンディスカー!――次の番まで会話はオンドゥル語で】
結標 「何これ?」
垣根 「2人でじゃんけんして、負けた方が次の番までオンドゥル語でしか喋れないんだ」
心理 「オンドゥル語って何よ」
垣根 「後で教えてやる、さあじゃんけんして!」
結標 「嫌な予感しかしないから絶対勝つわよ」
心理 「私も、何故だか負けたくないわ」
結心 「「じゃーんけーんぽん!」」
結標:パー
心理:グー
結標 「勝ったー!」
心理 「負けた……」
垣根 「よし決まったな。じゃあ今から簡単に教えるからちょっとついてきてくれ」 スタスタ
- 239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:26:30.49 ID:0E/bPToDO
-
垣根 「お待たせ」
心理 「……」
絹旗 「黙り込んじゃってますけど?」
垣根 「心理定規、さっき教えたように自己紹介してみな」
心理 「……わ」
結標 「……」 ゴクリ
心理 「ワタジドナバエバベヂャ-バ-ドゥヨ、ヨドジグ」
全員 「」
打止 「やっと番が来たねってミサカはミサカはサイコロをポーイしてみたり!」 ポイ
一方 「6か、まだ誰も踏んでねェ場所じゃねェか」
一方 (クソッ、下手に地雷を踏むより振り出しに戻されるかピータン食ってる方がマシだったが……)
一方 (頼む、変なのだけは止めてくれ!) ペリペリ
- 240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:27:46.17 ID:0E/bPToDO
-
【 】
一方 「……はァ?」
麦野 「何これどういう事?」
垣根 「あー、それは特に何もないな。セーフってやつ?」
一方 「そォか……」
上条 「6マス進んで何も無しかよ、いいなー」
心理 「ルラャバジイワ」
打止 「えー、ミサカも何かやりたかったなーってミサカはミサカはちょっと物足りなかったり」 ブー
一方 (……これを望ンでた筈なのに、手放しに喜べねェのは何故だ?)
- 241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:29:21.03 ID:0E/bPToDO
- ―――――――――
~2巡目~
浜面 「このままリードを守りきるぞ!」 ポイ
滝壺 「2だね。今度は何が出るかな」 ペリペリ
【たまには運動もしなきゃね☆――ペアを組んでツイスターゲーム】
浜面 「ツイスターゲームって、あの?」
垣根 「そう、2人が向かい合わせに立って指定された色を指定された手足でタッチするゲームだ」
垣根 「進むにつれて難易度があがり、最終的にもみくちゃになるから異性とやると超盛り上がるよね!」
一方 「ふーン」
上条 (やってみたいなー)
浜面 「って事はつまり、俺は滝壺と……」 ドキドキ
滝壺 「……///」 ドキドキ
垣根 「いや、どっちが誰とやるかは俺がくじ引きで決める」
浜面 「えっ」
- 242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:30:23.09 ID:0E/bPToDO
- 絹旗 「つまり、浜面が私とやる可能性も超否定出来ないって事ですよね!?」
麦野 「殆どが女だぞ、コイツにやらせるのは間違ってんじゃねぇか?」
垣根 「んー……でもそこは公平にしたいからくじ引きで決めるわ」 ガサゴソ
結標 「ちょ、ちょっと!」
垣根 「はい、浜面お前に決定な」
浜面 「マジかよ!?」
滝壺 「……」 ジー
浜面 「そ、そんな目で見ないでくれよ~。なぁ、やっぱ止めにしようぜ?」
垣根 「お相手はー……」 ガサゴソ
浜面 「おーい!!」
佐天 「わ、私だったらどうしよう……」 ドキドキ
一方 「ガキと一緒になったらどォなるか分かってンだろなァ」 ゴゴゴ
麦野 「女に指一本でも触れたら即オブジェな」 ゴゴゴ
浜面 (誰と当たっても絶望的じゃねぇか!頼む、滝壺を引いてくれー!)
垣根 「コイツだ!!」 バッ
- 243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:32:58.31 ID:0E/bPToDO
-
垣根 「――はい、じゃあ次は『左手』の『青』」 パシャッ
一方 「おいィ!こっちにケツ向けてンじゃねェぞ!!」 ガクガク
浜面 「んなこと言ったって、こうでもしないと無理だって!」 プルプル
垣根 「んじゃ次『左足』の『緑』」
一方 「ソレを近付けンなァァァ!!」 ガクガク
結標 「一方通行、体折れそうね」
滝壺 「がんばれー」
打止 「あなた、もうちょっと足伸ばしてーってミサカはミサカは的確な指示を出してみる!」
麦野 「どの女ともせずに済んでよかったわ」
上条 「見てるこっちも辛いんだが……」
心理 「ダンゼイカラジデヴィレバヅライディヂョルベ」
絹旗 「……慣れたんですかその口調」
垣根 (ま、最初から男と女で分けてたんだけどな)
- 244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:36:22.71 ID:0E/bPToDO
-
その後も垣根お手製すごろくは皆を一喜一憂させていく
―――――――――
~5巡目~
【お題:ジングル・ベルを英語で歌え】
上条 「じ、ジングルベージングルベー、ジングルオーザウェーイ?」
一方 「俺に聞くな」
禁書 「もう、英語が下手だね。私が歌うんだよ」
禁書 「――Jingle bells! Jngle bells! Jingle all the way!」
禁書 「Oh, what fun it is to ride in a one-horse open sleigh!」
初春 「すごい!英語がとても上手ですね!」 パチパチ
垣根 「歌唱力もあるとはこれまた驚いた」 パチパチ
禁書 「えへへ、お粗末様でした」
上条 「一応イギリス人だからな」
禁書 「一応は余計かも」
【お題:箱の中身を当てろ】
佐天 「ひぃ~何かヌルヌルする~!」 ペタペタ
滝壺 「こんなのとても触れないね」
結標 「何も知らない方がいいかも」
佐天 「変なこと言わないでくださいー!」
初春 「佐天さん、アレですよアレ!」
佐天 「アレじゃ分かんないってばー!」
- 245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:41:05.84 ID:0E/bPToDO
- ―――――――――
~10巡目~
【お題:絶対笑うな】
いいぜ ヘ(^o^)ヘ
|∧
/
てめえが
何でも思い通りに
出来るってなら
/
(^o^)/
/( )
/ / >
(^o^) 三
(\\ 三
< \ 三
`\
(/o^)
( / まずは
/く そのふざけた
幻想をぶち殺す
一方 「……」
上条 「……」
- 246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:42:32.16 ID:0E/bPToDO
- ヘ(^o^)ヘ いいぜ
|∧
/ /
(^o^)/ てめえが何でも
/( ) 思い通りに出来るってなら
(^o^) 三 / / >
(\\ 三
三 (^o^) < \ 三
三 <( )> One-way 迷走してく
(^o^) 三 //
<( )> 三 本命ラ.ラ.ラ. LOVE
\\ 三
一方 「……っ」 プルプル
上条 「……」
(/o^) 水着が波にさらわれた!
( /
/ く
一方 「ブフッ!」
垣根 「はい笑ったー、移動失敗」
一方 「三下ァァァァァ!!」
麦野 「あ……アンタ、笑い殺す気か……!」 プルプル
打止 「残念ーってミサカはミサカは渋々駒を戻してみたり……」
結標 「あなた、何で平気でいられるの?」 ヒー
心理 「何でかしら」 ケロッ
垣根 「心理定規」 ポンポン
心理 「?」 クルッ
- 247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/30(月) 17:44:12.47 ID:0E/bPToDO
-
,.. .-‐ ''' ‐-. / /
/ \ / /
´ ヽ / /
/ ゝ /
/ {´} ', /
,' ,ォ ≠ミ ィ≠ミ丶⌒o⌒ l /
/ |〃yr=ミ:、 !/行ミt .( 人 ) | /
`'-.,jイ {_ヒri}゙ ゙ ヒrリ.》 |
,'  ̄´ ' __|
丶 {ニニニィ | | _/\/\/\/|_
` f⌒ ー 、i. ''゛、| \ /
/` ' 、_ `ミ 、__ノ ._,. ゝ''" | < ウィハルー!!!>
j /~゛゛''' ‐||- '''" `、 | / \
j /. u \ |  ̄|/\/\/\/ ̄
| ノ > )
| / 。 / /
⌒ヽ ../ / / / Y⌒ヽ
人.(_/.::::: .::::::(_つ: ノ⌒ヽ 人
Y⌒ヽ)⌒ヽ Y⌒ヽ Y )⌒ヽ
心理 「や、やめなさい!それは……ふふっ!」
佐天 (あれは笑うんだ……何か複雑)
- 262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:08:16.11 ID:54XxbliDO
- ―――――――――
~12巡目~
【ドッキドキだね!――チーム内でポッキーゲーム】
絹旗 「な、何でポッキーゲームまであるんですかー!」
垣根 「もしかしてプリッツ派?よかったらそっちに替えるけど」
浜面 「蝉の抜け殻食べさせられた俺と比べりゃマシだろ」
絹旗 「そういう問題じゃ超ありません!」
麦野 「さぁ、早く来なはい」 フリフリ
絹旗 「うぅー……」 パクッ
【愛を叫べ!――皆に自分の好きなものを1つ告白する】
結標 「こ、告白……」
垣根 「何でもいいぞー、心から好きなものならな」
心理 「心から好きな……」 チラッ
麦野 「?」
打止 「ミサカはね、ミサカはねってミサカはミサカはミサカの心から好きなミサカを……あれ?」
一方 「落ち着けクソガキ」
- 263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:09:23.23 ID:54XxbliDO
- 結標 「じ、じゃあまずは私から……」 スーハー
結標 「皆、私は子供が好き。特に男の子が大好き」
結標 「幼稚園生が好き、小学生1年生が好き、2年生が好き、3年生が好き、4年生が好き、5年生が好き、6年生が好き、中学生が好き」
結標 「お家で、公園で、街中で、学校で、施設で、キャンプ場で、病院で、遊園地で、海で、山で」
結標 「この地上で生きるありとあらゆる男の子が大好きなの!」
結標 「靴ひもの結び方が分からなくて「むーっ」って唸る男の子が好き!」
結標 「1から丁寧に教えてあげて初めて蝶々結びが出来た時に「やったー!」って満面の笑みで言われた時なんて心踊るわ!!」 ハァハァ
禁書 「そ、そんなに子供が好きなんだね」
初春 「何か怖い……」
垣根 「お前の愛は十分伝わった。もういいぞ」 パシャッ
結標 「え、そう?///」
垣根 「さ、次はお前だ」
心理 「結標さんの告白が強烈過ぎて話し辛いわ」
滝壺 「あれを聞いた後じゃね」
垣根 「気にしない気にしない!はい、早く!」
心理 「急かさなくても言うわよ」 ハァ
上条 (あの子ってあんまり自分の事話したがらないから気になるな……)
麦野 (あんな成してても中身は中学1~2年だもんな。ぬいぐるみとか可愛いものが好きだったりして)
- 264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:11:05.07 ID:54XxbliDO
- 心理 「垣根」
垣根 「ん?」
心理 「好きよ」
垣根 「えっ」
全員 「」
佐天 「えっ、何々?告白ってそっち!?」 ヒソヒソ
初春 「ど、どうなんでしょう……」 ヒソヒソ
心理 「あなたのその衣装」
垣根 「あ、これ?お前サンタ服が好きなの?」
心理 「正確には赤っていう色ね。赤色は私の足りない部分を補ってくれる」
心理 「『情熱』とか『愛』とか、激しさを表すのに一番適してるでしょ?」
心理 「でも赤い炎は見た目に反して青い炎より温度が低いの。ある意味私にピッタリよね」
垣根 「へぇー、いつも赤い服着てんなーって思ったらそんな理由があったのか」
心理 「こんな感じでよかった……って、何皆固まってんのよ」
上条 「えっと、俺はてっきり垣根が好きだと言ったのかと思って……」
絹旗 「私も超思いました」
浜面 「俺も」
心理 「あら、誤解を招いてたようね。別にそんなのじゃないわ、嫌いではないけど」 クスッ
麦野 「……」
- 265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:12:08.10 ID:54XxbliDO
-
色んな人の素顔が見え隠れしたすごろくも遂に終わりを迎え……
―――――――――
~16巡目~
打止 「やったー!ゴールだよーってミサカはミサカは歓喜してみたり!」 ピョンピョン
一方 「ヒャハ!運においても最強ってなァ!」
禁書 「前の番で振り出しに戻されなかったら勝てたのにね」
上条 「ゴール目前で振り出しに戻されるなんて誰も思わねぇって……」 ズーン
垣根 「おめでとう!じゃあ約束のプレゼントだ、この箱開けてみな?」
打止 「何が入ってるのかなーってミサカはミサカはワクワクしながら開けてみる!」 パカッ
- 266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:13:25.10 ID:54XxbliDO
-
ミ\ /彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
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ミ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ | | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄彡
ミ____ \ |. .| / ____彡
/ ̄ ̄\|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i|/ ̄ ̄\
/ / ̄| || ̄\. \
/ / |〕 帝凍庫クン .|| ´\ \
/ │ ..| || | \
/ /│ |___________j| |\. \
彡 / │ ./..| -―- 、__, |ト、 | ´\ ミ
彡/ │ ../ | '叨¨ヽ `ー-、 || \ | \ ミ
│ / ..|〕 ` ー /叨¨) ..|| \|
r、 |/ ! ヽ, || \ \ ,、
) `ー''"´ ̄ ̄ / | `ヽ.___´, j.| ミ \  ̄` ー‐'´ (_
とニ二ゝソ____/ 彡..| `ニ´ i| ミ |\____(、,二つ
| 彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
\彡 | .|| ミ/
|〕 メリークリスマス ||
| ..||
|___________j|
- 267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:14:45.48 ID:54XxbliDO
- 一方 「」
垣根 「名付けて“帝凍庫クン”!この日の為に俺が一晩かけて作ったキャラクターだ」
浜面 (あれだけ恥ずかしい思いをして、その見返りがこれかよ)
滝壺 (可愛い……)
上条 (これは正直言って……)
一方 「……い」 プルプル
垣根 「?」
一方 「いるかァァァァァァァァァーー!!!!」 ガシャーン
アー、テイトウコクンガトンデッターッテミサカハミサカハ……
ハマヅラ、アレトッテキテ
エェ!?
一風変わったクリスマスパーティーは一方通行の咆哮で幕を閉じた――
- 268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 18:14:57.34 ID:Uzan9wA40
- これはトラウマになるレベル
- 269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:16:04.47 ID:54XxbliDO
- ―――――――――
浜面 「本当は1日滝壺と2人きりで過ごしたかったけど、こういうのも悪くないな」
滝壺 「……まだ時間はあるよ」 ギュッ
浜面 「えっ」 ドキッ
滝壺 「イルミネーション、見に行こ?」
浜面 「……あぁ!」
しかし、今日という日はまだ終わっていない
禁書 「みてみて!クリスマスケーキだよ!」
上条 「今日は色々食べたんだし、もういいだろ?」
禁書 「……!」 キラキラ
上条 「……」 ポリポリ
上条 「しょうがない、一番安いのなら買ってあげるよ」
禁書 「ホント!?じゃあ早く行こ!」 グイグイ
上条 「分かったから引っ張んなって!」
ここからはそれぞれのクリスマス・イヴが待っている
- 270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:17:08.11 ID:54XxbliDO
- 絹旗 「浜面達は行っちゃいましたし、これから2人でどっか行きます?」 テクテク
麦野 「そうね、映画でも見に行くか」 テクテク
絹旗 「麦野にしては超珍しいですね!今なら……!」
麦野 「……」
麦野 (焦ってた?何に?)
街を彩るイルミネーション
結標 「よかったら家に来る?」
心理 「いいの?」
結標 「小萌なら快く迎え入れてくれるだろうし、秋沙も帰って来る頃だからまた皆で楽しくやりましょ?」
心理 「じゃあお言葉に甘えさせて貰おうかしら」
結標 「小萌を見たらきっとビックリすると思うわよ~」
いつもより豪華な食卓
- 271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:17:48.81 ID:54XxbliDO
- 佐天 「どうだった?」 テクテク
初春 「まぁ、楽しかったのは楽しかったです」 テクテク
佐天 「前みたいに怖がってなかったもんね」 テクテク
初春 「でも、まだ怖くなくなった訳ではありません」 テクテク
初春 「サンタの格好だったから髭に隠れて顔が分かりにくかっただけですし……」
佐天 「意外とそれを狙ってたりして」
初春 「まさか……」
初春 (写真、また返しそびれちゃったな……)
それぞれの大切な人と共に、今日を祝おうではないか
垣根 「これで終わりだと思うなよ~」
聖夜は、これより始まる――
- 272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:19:59.86 ID:54XxbliDO
- ―――――――――
深夜~学園都市上空~
垣根 「あぁ、この時を待ちわびてたぜ……!」 バッサバッサ
垣根 「俺がサンタの格好をしてた真の目的は、この為だったんだよなー」 バッサバッサ
垣根 「サンタクロースといえばプレゼント配り!サンタなんていないとか思ってる奴らをビックリさせてやるぜ~」 バッサバッサ
垣根 「トナカイと橇を用意出来なかったのは悔しいが、まぁいいか。まずは誰の家に行こうかなー」 ビューン
―――――――――
~上条宅~
垣根 「まず最初に来たのが上条の家だが……肝心のアイツが見当たらねぇ」 キョロキョロ
禁書 「……」 スースー
垣根 「ベッドにはシスターちゃんしかいないし、どこで寝てんだ?」 ガチャ
上条 「……」 スースー
垣根 「風呂場とは、なかなかやるな」
- 273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:21:45.73 ID:54XxbliDO
- 垣根 「そうだ、寝顔撮っとこう」 パシャッ
上条 「うーん……」
垣根 「よし、後はプレゼントだな。コイツには布団でもやろう」 ドサッ
垣根 「んで、シスターちゃんには洋服を……」 スッ
禁書 「おかわりー……」 ムニャ
垣根 「可愛い奴め、じゃあな」 バサッ
―――――――――
~黄泉川家~
垣根 「次は一方通行んとこに来てみたぜ」 ガララ
黄泉川 「誰じゃん?」
垣根 「うぉっ、黄泉川!?」 ビクッ
黄泉川 「垣根?どうしたのこんな時間に」
垣根 「見ての通りだ。あちこちでクリスマスプレゼントを配ってんだよ」
黄泉川 「それでウチにも来たって訳か……」
- 274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:23:56.60 ID:54XxbliDO
- 垣根 「まさか、黄泉川も同じ事を?」
黄泉川 「そう、打ち止めや番外個体はサンタクロースがどんなのか知らないじゃん」
黄泉川 「だから、私がサンタになってあの子達に夢を見せてあげようと思ってね。勿論、一方通行にも」
垣根 「そうか……どうやら俺が渡す必要はなさそうだな」
黄泉川 「気持ちだけでも嬉しいじゃん」
垣根 「あ、じゃあ代わりに黄泉川にプレゼントやるよ」 ガサガサ
黄泉川 「私は別に……」
垣根 「いいからいいから、はいこれ」
黄泉川 「これは……?」
垣根 「土鍋炊飯器。これでまた皆に美味いもんでも作ってやってくれ」
黄泉川 「あ、ありがとう」
垣根 「じゃあな。あ、この事はアイツらに秘密な」 バサッ
ビューン
黄泉川 「……いい友達を持ったじゃないか、一方通行」
- 275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:24:49.75 ID:54XxbliDO
- ―――――――――
~絹旗宅~
垣根 「今度は絹旗ん家に来てみた」
絹旗 「……」 スヤスヤ
垣根 「何か雑誌がいっぱい積んであるな、どれどれ……」 パラッ
垣根 「映画の情報誌か、それもかなりコアなのばっか」 パラッ
垣根 「あ、寝顔撮っとかないと」 パシャッ
絹旗 「超……」 スヤスヤ
垣根 「コイツ、やたらと超を付けたがるよな」
垣根 「よし、じゃあ絹旗には『超兄貴』というゲームをやろう。コイツも相当コアだぜー」 スッ
垣根 「じゃ、よい夢を」 バサッ
絹旗 「超…兄貴……」 スヤスヤ
―――――――――
~浜面宅~
垣根 「はーまづらぁー」 ガララ
浜面 「……」 グーグー
滝壺 「……」 スースー
垣根 「一緒に寝てやがる、まさかコイツらもう……///」
- 276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:26:23.80 ID:54XxbliDO
- 浜面 「……へへ」 ニタァ
垣根 「これは写真に納めて、後日麦野と会議だな」 パシャッ
垣根 「コイツらにはそうだな……YES・NO枕でも贈ろう」
滝壺 「む……」 ギュー
垣根 「見せつけやがって、本当に寝てんのか?」 ツンツン
垣根 「てめぇには勿体ない女だ、絶対離すんじゃねぇぞ?」 バサッ
―――――――――
~初春宅~
初春 「……」 スースー
佐天 「……」 グーグー
垣根 「この2人も同じベッドに……相当仲がいいんだな」 パシャッ
垣根 「それとも、そういう事なのか?///」
佐天 「今日はくまさんだ……」 ニヤニヤ
垣根 「……」
初春 「……」 スースー
垣根 「今日は、来てくれてありがとう」
垣根 「まだ俺を不信に思ってるだろうけど、楽しんでくれたみたいで嬉しいぜ」
垣根 「また、誘ってもいいか?」
初春 「……」 スースー
垣根 「っと、プレゼントを渡さねぇと……2人にはお揃いのブレスレットをやる」 スッ
垣根 「またな、初春」 バサッ
- 277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:27:38.14 ID:54XxbliDO
- ―――――――――
~月詠宅~
垣根 「随分傷んだアパートだなー」
小萌 「……」 スースー
垣根 「子供?……って、確か上条の教師だっけか」
小萌 「上条ちゃ~ん、話聞いてますか~……」 ムニャムニャ
垣根 「夢でも心配されてちゃ世話ねーなアイツ」
垣根 「さて、結標はここかな?」
結標 「……」 スヤスヤ
姫神 「……」 グーグー
垣根 「あれ、この子は?」 パシャッ
垣根 「えーっと確か上条と同じクラスの……誰だっけな」 ウーン
垣根 「まぁいいや、ついでにプレゼントあげよう」 ガサガサ
姫神 「……ひどい」 ウーン
垣根 「お、俺の事か?悪かったって……」 ドキッ
垣根 「結標には育児本を、この子にはマジシャンセットでも贈るか」 ポン
小萌 「誰か起きてるんですかー?」 ムクッ
垣根 「やべっ、バレる前に早く出ねぇと!」 バタバタ
- 278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:29:37.72 ID:54XxbliDO
- ―――――――――
~麦野宅~
垣根 「寝てるかなー?」 ソロー
垣根 「あれ、いない。出掛けてんのか?」 キョロキョロ
垣根 「これじゃあ只の不法侵入じゃねえか……」
垣根 「仕方ない、布団の上にプレゼント置いとくか。サプライズ感半減だけど」 ガサガサ
垣根 「麦野には……特大鮭の縫いぐるみで」 ポフ
垣根 「よし、何かスッキリしないけど次行くか」 バサッ
―――――――――
~心理宅~
心理 「……」 スースー
垣根 「寝顔、結構可愛いな」 パシャッ
垣根 「普段もこれくらい可愛げのある表情なら印象良くなるのに……」
- 279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:31:26.01 ID:54XxbliDO
- 垣根 「プレゼントは、今後色んな表情を見せてくれる事を願って12色クレヨンだ」
垣根 「赤だけと言わず、青も黄色も見せてくれよ?」
心理 「……」 スースー
垣根 「しかし、コイツはホントに謎が多いというか……」 チラッ
垣根 「ん?これって心理定規か?」
垣根 「一緒に写ってるのは?それにこの制服……暗くてよく分からん」 ジー
心理 「うーん……」 ゴソッ
垣根 「おっと、起きちまいそうだから退散するか」 バサッ
その後も垣根は学園都市の至る所を巡り、眠る学生達にプレゼントと夢を配って回った――
―――――――――
~垣根宅前~
垣根 「ふぅ、何とか全部配れたな」 スタスタ
垣根 「しかし1人は寂しい……トナカイがいればよかったのに」
麦野 「げっ、何でお前が……!」
垣根 「麦野?何してんのこんな時間に」
- 280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:34:10.80 ID:54XxbliDO
- 麦野 「そういうてめぇこそ何してたんだよ」
垣根 「それは秘密」
麦野 「あっそ」 ツカツカ
垣根 「?」
麦野 「ほらよ」 バシッ
垣根 「これは?」
麦野 「じゃあな」 ツカツカ
垣根 「あっ……行っちまった。何なんだアイツ?」
垣根 「箱、開けてみるか」 パカッ
垣根 「お、マフラーかぁ……っと、これは手紙か?」 カサ
『11月20日のお礼だ、黙って受け取っとけ』
垣根 「お礼、ねぇ……」
垣根 「……」 マキマキ
垣根 「……あったけー」
麦野 「クソッ、バレずに渡そうと思ったのに。まぁ手紙でバレるだろうが」
麦野 「……」 ドキドキ
麦野 (何だよこれ、心臓がうるせぇ)
麦野 (緊張したのか?たったあれだけの事で?)
麦野 (アイツが押し掛けて来た時もこんな事があったような)
麦野 (……でも)
麦野 「あまり嫌じゃないかも、これ」
- 281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/03(金) 18:34:49.26 ID:54XxbliDO
- 垣根 「裏にも何か……?」 クルッ
『ありがとう』
垣根 「……よせよ」 フッ
その日の朝、あちこちで「サンタクロースが来た」と騒ぎになったのは言うまでもない――
- 306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:01:46.74 ID:RYpkG+dDO
- ―――――――――
―――――
―――
「今年ももうすぐ終わりねぇ」 テクテク
「そうですね」 テクテク
「あなた達は家族の元へ帰るんでしょ?」
「はい、こうして離れて暮らすと実家が恋しくなります」
「パパ、元気にしてるかなー」
「……」
「女王様も家族の元へ?」
「『帰っていいよ』」
「「「では、失礼致します」」」
「はぁ……」
「何が「元気にしてるかなー」よ、あんな話するんじゃなかったわぁ」
「っ!あれは……」
ナァナァ、イマノモッカイヤッテクレヨー
ショクジチュウクライカメラオキナサイ
「……うふっ」
「みぃーーつぅーーけたぁーーー☆」
- 307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:03:07.69 ID:RYpkG+dDO
- ―――――――――
―――――
―――
12月27日(月)
垣根 「今年もあと4日だなー」
横断歩道を渡る垣根帝督は、手帳を見ながら呟いていた
垣根 「出来ればもっと色々やりたいけど、みんな家族のとこへ帰るんだもんな……」
今日から学生達の帰省ラッシュが始まった。その為街中はいつも以上に慌ただしい
学生は荷造りやお土産を買いに走り、教師は手続きに追われ……といった具合にてんてこ舞いだ
学園都市の出口は長蛇の列を作り、警備員総動員で学生達のサポートに努めている
その分内側が手薄になりそこを狙って犯罪が起きる可能性もある為、風紀委員が補う形でパトロールを強化
しかしその風紀委員も帰省の準備にかかる人で数は減っていき、残りの人員がますます苦労する羽目になる
こんな風に街全体がバタバタしているのを尻目に、垣根はのんびりと考え事をしていた
- 308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:04:54.17 ID:RYpkG+dDO
- 垣根 (上条は実家、一方通行は黄泉川んとこへ、麦野は帰りたくない風な事言ってたけど説得して帰らせて……)
垣根 (心理定規は……)
どん
前をちゃんと見ていなかったせいで通行人とぶつかってしまった
垣根 「あっ、ごめ……」
「大丈夫ですかぁ?」
その拍子に落とした手帳を拾ってくれ、ついた砂ぼこりを手で払うと垣根に差し出した
垣根 「ありがとう」
ぶつかったのは少女。来ている服は学園都市でも名門とされる女学校――常盤台中学の制服だ
背中にまで伸びる長い金髪に長身痩躯、そして豊満な乳……誰もが中学生である事に疑問を抱くプロポーションである
垣根 「じゃあ、これで……」
恥ずかしさからか、垣根がそそくさと立ち去ろうとした時……
「待ってよ」
少女が逃がすまいと腕を掴んできた
- 309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:05:31.49 ID:RYpkG+dDO
- 垣根 「へ?」
予想外の出来事に間抜けな声が漏れる
「あなた、よく見るとカッコいいわねぇ」
垣根 「そ、そうか?///」
星の入った瞳が垣根の顔を捉えて離さない
そして少女は肩から提げた鞄から“何か”を取り出すと、悪戯な微笑みを向けて言った――
「ねぇ、『これから一緒に遊ばない?』」
- 310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:06:57.58 ID:RYpkG+dDO
- ―――――――――
心理 (クリスマスの次は正月か……切り替えの早いこと)
心理 (でも、家族のいない『置き去り』は?)
心理 (彼らは一体どんな気持ちで街を見てるのかしらね……)
心理 「あら、あそこにいるの垣根じゃない」
心理 「もう、余所見してるから人とぶつかっちゃっ……」
心理 (……嘘)
心理 「何で、あの人が……!」
「お兄さん写真撮るの好きなのぉ?」 テクテク
垣根 「ああ、これで色んなもん撮ってアルバムを作っていくんだ」 テクテク
垣根 「今で4冊分出来上がってる、あと何冊までいけるかなー」
- 312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:09:01.12 ID:RYpkG+dDO
- 「そんなの撮り続けていれば幾らでも作れるじゃない?」
垣根 「ま、まぁそうなんだけど、目標の日以内にどこまで作れるか挑戦してんだよ」
「へぇー、じゃあ『私も撮ってくれる?』」 キャピッ
垣根 「お安い御用」 パシャッ
「ふふーん♪私のようなナイスバディを撮影出来たあなたは幸せ者よぉ?」
「かもしれないな」 ハハッ
(見た目はチャラいけど、話してみると全然チャラくないのね)
(ま、私の手にかかればそんなの関係ないけど☆)
「ねぇねぇ、私お兄さんのお友達とも遊びたいなぁ~」 ギュッ
垣根 「えぇ!?ちょっ、どうしたのいきなり?///」
「いいでしょ?『今から呼んで?』」
垣根 「仕方ないなー」 パカッ
(ほーら、やっぱりあなたも私の言いなりになる)
(何にせよ、もうすぐ会えるのね……!)
- 313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:09:36.99 ID:RYpkG+dDO
-
心理 (いつから目をつけてたの?)
心理 (もっと気を付けるべきだった。私が彼との距離を必要以上に縮めてしまったばっかりに……)
心理 (こうなったからには、もう皆と一緒にはいられない)
心理 (全部、忘れられてしまうのね……)
心理 「食蜂操析……!」
- 314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:11:31.00 ID:RYpkG+dDO
- ―――――――――
上条 「あのさ、俺溜まりに溜まった課題をやらないといけないんだけど……」
一方 「家の大掃除してェンだけど」
垣根 「と言いながら来たってのは、あんまりやる気がなかったからだろ」
麦野 「で、その子がどうかしたの?」
垣根 「遊んでほしいんだって。遊んであげようぜ?」
一方 「オマエが遊びたいだけだろが」
食蜂 (意外、上条さんと面識あったんだぁ)
食蜂 「みなさんよろしくね☆」 ギュッ
垣根 「こらこら、あまりくっつかない!///」
麦野 (何だぁこのアマ……) イラッ
上条 「君、常盤台の学生なんだ」
食蜂 「はい、話は色々聞いてますよぉ上条さん?」
- 315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:13:17.18 ID:RYpkG+dDO
- 上条 「俺の事知ってるの?」
食蜂 「そりゃあなんてったって御坂さんの知人ですものねぇ」
一方 (余計な事まで知られてなけりゃいいが……)
垣根 「あともう1人呼んでみたんだが、どうも連絡がつかねぇみたいだ」
食蜂 「そうなの、残念だわぁ」
食蜂 (もしかして私に気付いちゃったぁ?ま、この人らの記憶を覗けば家くらい分かるか)
食蜂 (……もうすぐこの人達は全てを忘れる)
食蜂 (当然よねぇ?あなたを誑かしたこの人達が悪いんだから☆)
食蜂 (待っててネ、今度こそお姉ちゃんが守ってあげるから!)
食蜂 (……その前に、この人達がどんな人なのか知っておこうかな☆)
垣根 「やっぱ予定変更!まずはコイツん家の大掃除でも行くか!」
一方 「はァ?」
- 317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:16:26.13 ID:RYpkG+dDO
- ―――――――――
~黄泉川家~
打止 「あなたったら勝手に家を飛び出してー!ってミサカはミサカは怒りを露にしてみたり!」 ブー
一方 「助っ人呼ンで来たンだからいいだろォ」
食蜂 (小さい御坂……さん?)
番外 「このミサカが掃除してやってんだからモヤシも手伝いなさいよねー」 パンパン
食蜂 (こっちは大きい御坂さん?)
上条 「何でいきなり掃除しようなんて思ったんだよ」 サッサッ
垣根 「いやー何か先に面倒な事済ませておいた方が思いっきり遊べるだろ?」 フキフキ
麦野 「この子完全に置いてけぼりだぞ」 ゴー
垣根 「悪いな嬢ちゃん、これと上条の宿題を手伝ったら遊ぼうな」
食蜂 「別に構わないけどぉ……」
上条 「え、手伝ってくれんのか!?助かるぜ!」 ウヒョー
- 318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:21:20.13 ID:RYpkG+dDO
- 打止 「はいどうぞってミサカはミサカは便利な掃除道具『マツイ棒』を差し出してみたり!」
食蜂 「あ、ありがと……」
食蜂 (掃除なんていつも誰かにさせてたからどうすればいいか分かんないよぉ)
芳川 「皆手伝ってくれてありがとう。これ差し入れね」 ガサッ
番外 「おー気が利くねー」
一方 「たまには役に立つじゃねェか芳川」
芳川 「失礼ね、私だってこれくらいはするわよ」
食蜂 「ねぇ、これってどうやって使うの?」
垣根 「ああ、これは確k 「これはこうやって窓の隅っことかを掃除するんだよ!手が汚れなくて済むからいいだろ?」 ゴシゴシ
食蜂 「え、えぇそうなの……?」
麦野 「はい、じゃあアンタはそこの窓やって」
垣根 「?」
- 319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/07(火) 23:22:12.54 ID:RYpkG+dDO
- ―――――――――
~上条宅~
一方 「あァ?こンなのも分かンねェのかよ」
麦野 「アンタ学校へ何しに行ってんの?」
垣根 「こりゃあちょっとまずいんじゃね?」
上条「すいません、すいません……」
食蜂 「あ、これくらいなら私にも出来るわよぉ」
上条 「中学生より出来ないとは泣けてきますよ……」 ハハッ
食蜂 (皆頭いいのねぇ、長点上機の人達なのかしら)
食蜂 (能力使えば一発なんだけどぉ、たまには推理するのも悪くないわねぇ)
垣根 「ベッドの下には何が入ってんのかな……?」 ゴソゴソ
上条 「や、やめろ!そこは不可侵領域だ!」
- 344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:38:58.24 ID:ClipytpDO
- ―――――――――
上条 「いやー助かった、お陰で半分以上も片付いたよ」
垣根 「ったく、遊んでばっかいねぇで勉強しろ勉強」
麦野 「誘ってんのはアンタでしょ」
垣根 「する事も済んだし、今からなにすっかなー……君は何がしたい?」
食蜂 (いざ聞かれると思いつかないわねぇ。いつも周りに誰か引っ付いてたからぁ女王らしい事(?)しか出来なかったし……)
一方 「何つーか、遊びを知らなさそォな顔だよな」
上条 「分かる、如何にも常磐台らしいというかお嬢様らしいというか……寧ろ女王様っぽい?」
食蜂 (ちょっとまずいかなぁ?変に話し続けられる前にさっさと決めちゃおっと)
食蜂 「はーい!じゃあ私ゲームセンターに行きたいで~す☆」
垣根 「ゲーセンとは意外だな」
食蜂 「そうなのぉ、私実は一回も行ったことがなくてぇどんなのがあるか気になってたのよぉ」
麦野 「今時の中坊にしては珍しいわね、友達に誘われたりしないの?」
食蜂 「皆そういうの興味ないんだって」 ブー
垣根 「そうか、じゃあ今から行くぞ!」
- 345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:41:24.70 ID:ClipytpDO
- ―――――――――
~常磐台女子寮~
寮監 「……」
『結局、あの人から逃れる事は出来ませんでした』
寮監 「待て、まだ全てが決まった訳じゃ……」
『私は誰よりもあの人の傍にいました』
『あの人は私の事ならどんな些細なものでも真剣になってくれる。それは素直に嬉しかった』
『子供っぽくて純粋なあの人らしい優しさだと思ってる、思ってるけど……』
『その“優しさ”が、私を苦しめた』
寮監 「それは……」
『今回もそう、あの人は必ずやるわ。私に親しみを持つ者なら例外なく……』
寮監 「彼女を、憎んでるのか?」
『……』
寮監 「私は、お前達に昔のような関係に戻って欲しい。彼女や君の為に……」
寮監 「気持ちは分かる、でも君がいなければ彼女はいつまで経っても独りのままだ」
寮監 「だから頼む、一度でいいから彼女に会ってくれ」
『……寮監は変わってます。私達なんかの為に悩んでくれて』
『でも、きっと何も変わらないわ。私には分かる』
寮監 「そんな……」
- 346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:42:32.40 ID:ClipytpDO
-
『だから、もう終わりにします』
- 347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:44:38.53 ID:ClipytpDO
- ―――――――――
~ゲームセンター~
食蜂 「わぁー!何か騒がしいとこねぇー」
垣根 「帰省の準備とかで人は少ないみたいだなー」
麦野 「帰省ね……」
食蜂 「ねね、あれやってみたい!」 グイッ
垣根 「ちょ、待って……!」
上条 「連れてかれちゃったな」
一方 「折角来たンだ、適当に遊ンでくか」 テクテク
上条 「そうだな。まずは……」 テクテク
麦野 「……」 ジー
一方 「何やってンだ?」
麦野 「いや、なんでも」 テクテク
食蜂 「あーん、取れないよぉ」
垣根 「こういうのは1回で取ろうとするからダメなんだよ」 チャリン
垣根 「でかいぬいぐるみなんかはちょっとずつ動かしていって……な、取れたろ?」
食蜂 「すごいすごぉーい!ありがとう!」 キラキラ
食蜂 (あの子もこんな事してもらってたのかな……?)
垣根 「じゃ、次はどれやる?」
食蜂 「あ、うーんとねぇ……」
- 348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:45:58.95 ID:ClipytpDO
-
上条 「ふんっ!」 ドゴン
121キロ
麦野 「へぇー、結構やるじゃない」
一方 「そォかァ?」
上条 「あ、能力使うの禁止な」
一方 「このフラフラの身体で杖ついたままでやれってか、中々無茶言うじゃねェか三下よォ」
上条 「やっぱ無理?」
麦野 「じゃあ私がやろっかなー」 チャリン
上条 「麦野が?」
麦野 「何よ、女の子だって殴りたくなる時ぐらいある……のっ!」 ドゴン
109キロ
上条 「すげぇ……」
一方 「どっからそンな力出てくンだよ」
垣根 「ホント、これはビックリしたぜ」 パシャッ
麦野 「うぉっ、こんなもんまで撮ってんじゃねーよ!」
食蜂 「すごい力ねー、女の人とは思えないわぁ」
垣根 「君もやってみる?」
食蜂 「私は止めとく、腕が折れちゃいそうだからぁ~」
麦野 「……もう1回だけやろう」
- 349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:48:27.48 ID:ClipytpDO
-
垣根 「ただ普通にホッケーやるのもいいが、今日は古今東西ゲームも混ぜてやるぞ」
食蜂 「古今東西ゲーム?」
上条 「お題を1つ出して、それに当てはまるものを言っていくやつだっけ」
垣根 「そう、ホッケーで点が入っても古今東西ゲームで失敗してたらそれは無効だ」
垣根 「俺は見てるだけでいいから、チームは男女に別れてー」
食蜂 「よろしくね☆」
麦野 「ああ……」
一方 「足引っ張ンなよ?」
上条 「気を付ける」
垣根 「じゃあ古今東西『“ん”で始まるもの』でスタート!」
麦野 「ん?んー……ンジャメナ!」 カン
一方 「ンドゥール」 カン
食蜂 「んーっと、ん・ん・ん・ん・ん!」 カン
上条 「は?んで始まる言葉なんて……あ!」 ガシャン
垣根 「はい、女の子チーム1点獲得ー」
食蜂 「やったぁ!」
- 350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:50:32.58 ID:ClipytpDO
- 上条 「ちょっと待てよ!んなんて全然思い付かないって!」
垣根 「いやいや、他にもン・パカマーチとかン・ダグバ・ゼバとか結構あるぞ?」
上条 「これ以上頭を使わせないで下さい……」
一方 「学生が頭使わなくてどォすンだ」
食蜂 (楽しい……こんな感覚初めて)
食蜂 (あの子もこうして楽しくやってたのかな。だから私からどんどん離れて……)
食蜂 (やっぱり嫌、あの子は私の大事な……)
垣根 「じゃあ次、古今東西『EUに加盟している国』~!」
- 351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:51:39.33 ID:ClipytpDO
- ―――――――――
垣根 「いやー楽しかった」
上条 「頭が痛い……」
麦野 「普段から勉強しないからそうなるのよ」
上条 「いや、それとこれは関係ないかと思う」
垣根 「これでお前らとは暫くお別れかー……」
一方 「オマエのうざってェ絡みがない方がゆっくり出来ていいンだがな」 ハッ
麦野 「私はあんなとこへ帰るつもりはないわよ」
垣根 「ダメダメ!帰れる時ぐらい帰らないといつ会えるか分からねぇぞ?」
麦野 「別に会えなくったっていいし、あんな親……」
垣根 「今になって反抗期かー?捨てられたんじゃあるまいし、とにかく帰るんだ」
麦野 「テメェに指図される筋合いはねぇぞ」 ギロ
垣根 「うわー麦野が睨んでくるー怖いよー」
- 352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:54:17.42 ID:ClipytpDO
- 食蜂 「……」
垣根 「君も実家へ帰るんだろ?」
尋ねた方を向くと、彼女は無言で俯いていた
食蜂 「そうしたいんだけどぉ、もう1人連れてかなきゃならない人がいるの……」
上条 「もう1人?」
食蜂 「そう、あなた達もよく知る人よ?」
そう言うと、食蜂はゆっくりと顔を上げる。その表情にはついさっきまでの無邪気な笑顔がなかった
今までが全て演技だと言わんばかりの雰囲気に、その場の誰もが怪訝に思う
食蜂 「ねぇ、返して?」
彼女の言葉は垣根達に向けて放たれた
感情の籠っていないそれは下僕に命令を下す女王のようにも見える
垣根 「えっ?」
言っている意味が分からないと首を傾げる垣根
食蜂 「だからぁ……」
少女の手に握られたリモコンが垣根達に向けられ……
- 353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:55:08.59 ID:ClipytpDO
-
心理 「待って!」
1人の叫びが、空を切り裂いた――
- 354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:57:23.72 ID:ClipytpDO
- 麦野 「アンタ……」
麦野が捉えたのは赤いコートを身に纏う少女――『心理定規』だ
垣根 「おぉ心理定規、どうしたんだ急に?」
食蜂 「心理定規……?」
垣根の呼んだ『心理定規』という名前に引っ掛かり、食蜂は2人を交互に見る
そして答えを理解した彼女は口角を上げて言う
食蜂 「なーんだぁ、名前は教えてなかったのネ!」
心理 「……」
心理定規はキッと食蜂を睨む
食蜂 「そんな目しちゃ駄目よぉ?折角の可愛い顔が台無しじゃない☆」
心理 「ふざけないで」
食蜂 「やっと再会できたってのに、つれないねぇ」
一方 「どォいう事だ?」
食蜂と心理定規のやり取りを見て一方通行が疑問を吐露する
食蜂 「そうね、どうせ全部忘れるんだし教えてあげよっか」
- 355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/15(水) 17:58:40.87 ID:ClipytpDO
-
食蜂 「彼女の名前は食蜂 凪差〈しょくほう なぎさ〉――私の自慢の妹よ」
- 391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:32:11.25 ID:uoVobDMDO
- 上条 「妹……?」
心理定規は黙ったまま、しかし否定しなかった
食蜂 「そう、そして私が姉の食蜂 操析<しょくほう みさき>」
またの名を
超能力者第五位――心理掌握<メンタルアウト>
垣根 「第五位……っ!?」
瞬間、垣根の膝がガクンと曲がり、その場にへたり込んでしまった
事態を少し遅れて認識した彼が立ち上がろうと試みるが……
垣根 (力が入らねぇ……!)
心理 「彼に何をしたの!?」
声を荒げる彼女に対し、食蜂はおどけた態度で答える
食蜂 「大丈夫よぉ~、脳の電気信号を弄くって全身麻痺にしただけ☆」
- 392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:38:12.34 ID:uoVobDMDO
- 麦野 「テメェ……!」
身構える麦野に待ったをかけんばかりに続ける
食蜂 「下手に私を殺しちゃうと彼、二度と動けなくなっちゃうかもよぉ?」
食蜂 「あなたも、余計な動きはしないでね?」
一方 「……ッチ」
学園都市第五位ともなればどんな仕掛けを施しているのか分からない
おまけに体の内側をいじくられている。例え彼女を倒したとしてもそれが治る保証もない
結果、一方通行もチョーカーの電源を入れようとした手を下ろした
食蜂 「じゃ、皆大人しくしててもらおっかな!」
リモコンのボタンを押したと同時に一方通行、麦野、上条の3人も崩れ落ちる
食蜂 「凄いでしょ?私の心理掌握は精神や脳に関わる事なら何だって出来ちゃうのぉ」
彼女の能力『心理掌握』は精神感応系能力の最高峰
念話から始まり思考の読み取り、洗脳、記憶の改竄など脳に直接作用する能力だ
戦いに関しては物理的な力がない為肉弾戦には滅法弱い
反面、脳に干渉さえ出来ればどんな相手だろうと“戦わずして勝つ”事が可能な恐ろしい力である
- 393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:40:40.38 ID:uoVobDMDO
- 偶然、ここには超能力者が4人もいる。更に幻想殺しも……
順位では1番下であるが、彼らとは違うベクトルの力を有する故に正確な実力を測る事は難しい
麦野 「クソッ……!」
だが今、誰もが食蜂操析の前に跪いている。あらゆる能力を打ち消す幻想殺しすら例外ではなかった
少なくとも、この時点で彼女が圧倒的優位に立っているのは事実だ
人を支配する能力に気品のある出で立ち……それらから彼女はこう呼ばれている
“常磐台の女王”と――
上条 「どうしてこんな事を……」
食蜂 「決まってるじゃなぁい、凪差を取り返す為よ」
リモコンを持つ手をクルクル回し、唯一食蜂の支配を受けない少女を一瞥する
- 394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:43:25.45 ID:uoVobDMDO
- 心理 「違うわ!彼らは何も悪くない。私が彼らを利用しようと近づいただけで、それ以上の関係なんてないわよ!」
食蜂 「じゃあその程度の関係の人間にどうしてムキになるの?」
心理 「それは……」
やっぱり、とため息と共に吐くと垣根達の方を見やる
食蜂 「半年以上前から凪差が行方不明になってね、それはもう必死になって探したわ」
食蜂 「色んな人を操ってちょっとでも手掛かりを……なんてやっても、結局見つからず終い」
食蜂 「もし死んでたら……て考えた時は頭がどうにかなりそうだった」
垣根 「……」
でも!と上擦った声をあげ、更に食蜂の話は続く
食蜂 「ついに凪差を見つけた!私だけの可愛い妹、愛する家族!」
高らかに発せられた言葉に、心理定規は肩をビクッとさせる
- 395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:44:53.43 ID:uoVobDMDO
- 食蜂を突き動かしているのは心理定規――凪差への限りない“愛”
女王の風格など捨て、同じ血を分かつ存在の為に一心不乱になる様は見る者の涙を誘うだろう
現に、質問した上条は彼女を妹思いの優しい姉だと感じ始めていた
それに伴い、何とかこの状況を打開しようと働かせていた思考も段々薄れていく
その“愛”が妹を苦しめたとは知らずに……
食蜂 「あなた達なんかに凪差は渡さないわ、返して貰うわよぉ」
ゆっくりと、愛する妹のもとへ歩み寄る。1歩、また1歩……
食蜂 「会いたかったわ、凪差……」
星の光る瞳は、心理定規の顔のみを映し出す
食蜂 「さ、お姉ちゃんと帰ろう?」
話したい事は沢山あるが、今はこの一言で留める食蜂
心理 「……」
- 396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:49:48.98 ID:uoVobDMDO
- 彼女は目を逸らし、何かを躊躇していた
姉の後ろで横たわる『友達』……もう会えないと分かると心が軋む
姉から離れて以来、彼女は付かず離れずの一定の距離で他人と接してきた
初めてだった。他人でありながらもっと近付きたいと思ったのは……
心理 「分かった……でも」
体の奥底で火が点いたような気がした
それが、全てを諦めようとした彼女を奮い立たさんと燃え広がっていく
心理 「皆の記憶は消さないで」
――妹、食蜂凪差は生まれて初めて姉、食蜂操析に反発した
- 397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:52:36.57 ID:uoVobDMDO
- ―――――――――
―――――
―――
物心ついた時には既に学園都市にいた
両親は事故で死んだと聞かされたが、何故か全く記憶に残っていない
代わりにある女の人が保護者代理として私達の面倒を見る事になった
私の家族は凪差只1人。岬の下で静かに波打つ内気な妹
幼いながら私はあの子を心から愛し、護ると誓ったわ
あの子が笑ったらもっと笑わせた、あの子が泣いたら泣き止むまで頭を撫でた
他人と関わるのが苦手な凪差はいつも私にベッタリ
女の人は「仲がいいんだな」と言って笑う
思えば、凪差以外の人間で仲が深かったのはこの人だけだろう
口うるさいしたまに拳骨とかしてきたけど、何だかんだで優しい人だった
それ以外はどうでもいい道端の石ころ。私には一緒の顔にしか見えない
別に他人と無理して関わらなくたっていいよ、所詮は他人だし
凪差は私だけを見ていればいい。私も凪差しか見ないから
- 398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 01:54:20.81 ID:uoVobDMDO
- この3人で過ごす空間が、私の“世界”だ
「なぎさ♪」
「なぁに?おねえちゃん」
「呼んでみただけぇ~」
もっとお姉ちゃんって呼んで、凪差――
超能力が芽生えた日から、私の中で『嘘』という言葉がなくなった
相手の考え、思っている事が透けて見える。益々他人と関わるのを避ける私
後に凪差も能力を得る、それも私と似たような能力を……
でも、何故かあの子は私ほど他人を避ける事はなかった
そしてもう1つ、あの子の考えだけはどうしても読み取れない
それが、逆に不安だった……
- 399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:00:53.30 ID:uoVobDMDO
- 「お姉ちゃん?」
「へ?」
「さっきから私の事じーっと見てるけど……」
「あっ、な、何でもないわよぉー♪」
「……?」
そうだ、何も心配する事はない。凪差は私の妹、心は繋がっている
……
でも、不安は残った
常磐台中学に入学して2ヵ月――
気付けば私の周りは人で一杯だった
どうやら私は学園都市で第五位の力を持っていたようで、羨望の眼差しをぶつけられる日々を送っていた
同時に、保護者代わりをしていたあの人は常磐台女子寮の寮監となり一層厳しくなる
常磐台らしく品格を持てだの金の無駄遣いするなだの小言ばっか聞かされて、よく喧嘩したっけ
でも何か憎めないのは昔から一緒だったから?
- 400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:02:35.91 ID:uoVobDMDO
- どこへ行くにしても誰かが付いてきて、正直鬱陶しい
「ちょっと1人になりたいんだけどぉ」
そう念じて言うとみんな付いて来なくなった
「……ふーん」
私は人の意思を操れるようだ……そう思った瞬間、初めて他人への興味が沸いた
1年が経ち、凪差も常磐台へ入学
私は嬉しくて毎日凪差の所へ会いに行った
周りの人間なんてどうでもいい、とにかく凪差と一緒にいたい
でもある日……
「ごめんなさい、友達が呼んでるからまた後でね」
“友達”――この言葉が私の心を貫いた
「えっ……?」
“友達”と笑いながら、凪差は私から遠ざかっていく
“世界”が欠け落ちた――
- 401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:04:26.65 ID:uoVobDMDO
- 「どう…してぇ……?」
いつも私に引っ付いていた凪差が、繋がっている筈の妹が、私の前から消えていく……
嫌、そんなの嫌!
ねぇどうして!?
私が嫌いになったの?
何か悪い事でもした?
嫌よ、行かないで!
私には凪差が必要なの!
ごめんなさいごめんなさい!!
お願い戻って来て!
怖いよなぎさ!
イヤだ!!
嘘って言って!
凪差ぁ!!
謝るから許してよぉ……
……
違う、凪差は私を嫌ったりなんてしない
「友達……」
そう、あの“友達”……彼女達が凪差に何かしたんだわ
私だけの渚を他人が踏み荒らすなんて許せない
- 402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:05:58.26 ID:uoVobDMDO
-
渚は、岬から臨むだけでいい
- 403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:08:06.12 ID:uoVobDMDO
- ―――――――――
―――――
―――
食蜂 「……」
心理 「私はもう昔とは違う。色んな人と関わって、もっと広い世界を見てみたいの」
心理 「あなたは、彼らと居て楽しいと思わなかった?」
食蜂はこれまで甘えられてきた妹の反抗を前に何も言えずにいた
心理 「私は楽しかった。いつも思いつきで行動して周りを巻き込んで、でも最後は皆楽しそうに笑うの」
心理 「ちょっと見回してみれば、素敵な事なんていっぱいあるのよ!」
心理定規の訴えは、垣根達にも届いていた
麦野 「アイツ、単にクールに振る舞ってただけなのかもな」
一方 「あー冷えてきた、さっさと解放してくンねェかなァ」
上条 「こんな時に何を……折角あの子の本心が聞けるってのに」
一方 「うっせェ、早くオマエの右手で何とかしやがれ!」
落ち着きを取り戻したのか、会話をする3人に緊張感が抜けつつある
垣根 「……」
そして正座をするように座っている垣根は終始無言で彼女の言葉に耳を傾けていた
- 404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:12:28.11 ID:uoVobDMDO
- 心理 「だからあなたも……」
食蜂 「もういい」
心理定規の言葉を遮り、食蜂は踵を返す。向かうは自由を奪われた友人達
顔を動かせない4人は足音で察知し、彼女がいるだろう方向へ意識を向ける
数秒の沈黙の後、口を開いたのは食蜂だった
食蜂 「凪差に何をしたの?」
その声は冷やかで鋭く、彼らに見えない刃を突きつける
食蜂 「凪差はあんな事言わない!内気で穏やかで、私に甘えん坊なの!!」
今までとは一変し、狂ったように怒鳴り散らす彼女
妹の“成長”が理解出来ない食蜂は垣根達が何かを吹き込んだと信じて疑わなかった
麦野 「おい何言って……」
食蜂 「うるさい!」
語尾を伸ばす癖も忘れる程彼女に余裕はなかった
食蜂 「あなた達は危険過ぎる、これ以上凪差を狂わせてたまるもんですか……!」
うふふと不適に笑い、リモコンを4人へと向ける
心理 「やめて!私の話を聞いて!」
これから起こる事を悟った心理定規が食蜂を止めるべく走る
- 405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:19:03.73 ID:uoVobDMDO
-
彼女の視界がスローモーションに動く
たった数mが何kmにも感じるくらい時がゆっくり流れているようだ
その空間をもがくように、少女は駆ける
早く!もっと早く!
- 406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/23(木) 02:20:23.16 ID:uoVobDMDO
-
――しかし
食蜂 「『凪差の事は全部忘れなさい』」
時は平等で、無情だった――
- 441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 15:57:11.54 ID:uUzQgVCDO
- ―――――――――
―――――
―――
「どちら様ですか?」
それは、人見知りする私が勇気を振り絞り、ようやく出来た初めての友達に言われた一言
付き合いはまだ2週間程度だったけど、初対面のような反応に戸惑いを隠せなかった
そんな事がありえるの……?
「あっ……ごめんなさい、私、食蜂凪差って言うの。あなたは?」
私はそれまでをなかった事にして、1から関係を築き直す事にした。何らかの病気なのかもしれないと理屈を付けて
簡単に手離したくなかった。操析に引っ付き虫な私を変えたかったから……
「どちら様ですか?」
これで5回目……私は段々怖くなってきた
他の人は覚えていて、何故私だけ忘れられるの?実は忘れたふりをしてる?私が嫌いだから?
「いえ……何でも…ない……です……」
それからというもの、私が話し掛けた人は悉く翌日には全て忘れられていた
どんなに親しくなっても結果は同じ。あなた誰?初めまして――
- 442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 15:58:31.56 ID:uUzQgVCDO
- ついに耐えきれなくなった私は今までの事を操析に泣きながら話した
「ひどぉーい!今度私が懲らしめてやるんだから!」と息を巻く彼女が、何だか頼もしかった
結局、また私は操析に甘えている……変わろうと思ってたのに
「心配しないで、凪差には私がついてるから」
頭を撫でる手からは確かな温もりを感じる。昔から変わらない“優しさ”は私を安心させるのに充分だった
同時に、このままでは駄目だとも思った
いつまでも操析に依存する訳にはいかない。彼女の腕に抱かれながら、私は再び頑張ろうと決意の炎を燃やす
よもや、それが操析によって吹き消されるなど露とも知らずに……
放課後、忘れ物を取りに教室へ戻ろうとした時の事だった
(あれは……)
教室には3人の生徒、それも私が新たに声を掛けた人達が誰かと話していた
そしてその相手が……
(お姉ちゃん?)
「あなた達も凪差を惑わせるつもりぃ?」
じりじりと、高圧な態度で詰問する彼女が少し怖かった
私に見せた事のないその姿が、“女王”と呼ばれる所以の1つなのかもしれない
「そ、そんなつもりは!」
3人は怯え、迫る操析から1歩1歩と後退りする
- 443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:00:12.26 ID:uUzQgVCDO
- そして壁に行き着き、逃げ場を失った3人に対して彼女はリモコンを取り出すと……
「『凪差の事は忘れなさい』」
この瞬間、私は悟った
(そんな…どうして……?)
何故皆が私だけを忘れるのか
――操析が、記憶を消していたのだ
今まで私にくれた“優しさ”は嘘だったの?いや、そんなはずはない
私の為?私はこんなの望んでない!
あなたは一体、何を考えてるの!?
「あ、凪差じゃな~い!」
「ひっ……!!」
私は逃げた。食蜂操析から、常盤台から、人間から……あらゆるしがらみから逃れる一心で街を駆け抜ける
もう1人でいい。誰とも関わりたくない……
「……何だお前」
そんな思いとは裏腹に、私は出会ってしまった
- 444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:01:12.66 ID:uUzQgVCDO
- ―――――――――
―――――
―――
心理 「あ……」
――終わった
食蜂 「~~♪」
彼らと過ごした日々……あの日からようやく進んだ時間
その過程が今、無に帰した
心理 「あぁ……」
失意が彼女を飲み込み、立つ力さえも奪っていった
食蜂 「これでもう大丈夫……」
誰に向けた言葉なのか、肩で息をしながら口を歪ませる
これで妹を狂わせる障害は無くなった――そう確信し、食蜂は彼らの拘束を解いた
麦野 (身体が動く……)
『忘れなさい』と言われたが、どういう事だろう?
特に何かされたという感覚はない。各々体の感触を確かめながらゆっくりと立ち上がる
一方 「ッチ、さっきはよくも……」
食蜂 「さっきはごめんなさぁい☆あなた達、あの子が誰だか知ってるぅ?」
一方通行の言葉に被せて言う
食蜂が指差す先には道端に座り込む少女の姿
金髪に赤いコートの、中学生とおぼしきそれは俯いており、重々しい雰囲気をそこはかとなく感じ取っていた
- 445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:02:10.54 ID:uUzQgVCDO
- しかし……
麦野 「……いや、私には分からないわ」
――分からない
一方 「誰だ?」
――誰?
上条 「うーん、俺も見た事ないなー」
――見た事ない
他意はない、彼らは本気で言っている
故に、それらは彼女の心を串刺しにしていった
心理 (もうやめて……)
自分の訴えは伝わらないばかりか、彼女を暴走させる結果となってしまった
あれだけ誓ったのに……心を開いてみればこれだ
虚無感の後に訪れた後悔と自責の念が、満身創痍の彼女に追い打ちをかける
顔も上げられない。今彼らの顔を見てしまうと、何もかもをぶちまけてしまいそうだったから
心理 (馬鹿ね、まだ皆に気を遣っているなんて……)
これからまた“家族”に寵愛されて生きていく
だから早く私の前から消えて――
- 446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:03:28.16 ID:uUzQgVCDO
-
垣根 「お前、まさか泣いてる?」
そんな思いとは裏腹に、またしても出会ってしまった
- 447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:04:10.22 ID:uUzQgVCDO
- 心理 「えっ?」
反射的に顔を上げる。そこには男が心配そうな顔をしてしゃがんでいた
互いの顔の近さに驚き、また反射的にのけ反る
垣根 「泣いてねぇみたいだな。しっかし、お前の感情的な一面を見れたのは貴重だった!」
記念だとか言って呆然とする彼女の顔にシャッターを切った
心理 (どういう事……?)
さっきまでとの温度差に思考が働かない
心理 「あなた、私を覚えて……」
垣根 「何言ってんだよ、忘れる訳ねぇだろ?あんだけ色々やったんだから」
さも当然のように豪語するが、余計に理解出来なくなるばかりだ
あの瞬間、誰もが心理掌握によって彼女に関する記憶を全て消された
上条 「垣根、その子の知り合い?」
その証拠に上条は垣根の事はしっかり覚えていて、未だ彼女の事は知らない様子だ
身体の自由を奪われていたともあって、演技とはとても考えにくい
更に食蜂と最初に出会った垣根は既に洗脳されてる可能性が高かったというのに、何故……?
食蜂 「あなた、覚えてるの……?」
食蜂も予想外の展開に口をパクパクさせている
垣根 「あー、アイツらは効いてたんだっけ。上条、右頬汚れてんぞ」
上条 「え?」
垣根の指摘に気付き、汚れを拭こうと“右手で”顔を触った
- 448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:04:58.79 ID:uUzQgVCDO
- 上条 「……あっ!」
垣根 「思い出したか?」
幻想殺しが持ち主の頭の“何か”を壊したと同時に、欠けていた記憶のパズルが埋まる
その後上条は誰の指示を受けるでもなく麦野、一方通行と右手で頭を触っていった
食蜂 「えっ、えぇ?」
目眩く変わる状況に置いてけぼりになる食蜂
垣根 「ったく、友達の顔も忘れるとはこの薄情者共め」
一方 「そもそもオマエが罠に引っ掛かるのが悪いンだろォが」
麦野 「ごめんねー、女1人に野郎共がみっともなくやられたせいで」
上条 「反省してます……」
心理 「みんな……」
彼女の周りは、いつもの『友達』で囲まれていた
何だかんだ言いながら、いつも皆と一緒にいる一方通行
姉御肌を醸し出し、内に乙女の心を秘める麦野沈利
弱腰ではあるが唯一『光』を知り、新しい風を届けてくれた上条当麻
そして、元同僚にしてきっかけとなった存在――垣根帝督
- 449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:06:27.56 ID:uUzQgVCDO
- そんな彼らの和やかなやり取りを遠くから眺める者が1人
食蜂 「……」
ようやく理解した時には、全てが元通りとなっていた
食蜂 「……嫌よ」
心理掌握が通用しない者がここにもいたとは……
これではいくら周りを変えたとしても結果は変わらない
それはつまり、妹を取り返せないという事――
広大な地、果てのない荒野に思考が佇む中彼女は敗北を噛み締めていた
……だが、どうしても諦められない
食蜂 「嫌!!」
垣根達が一斉に振り向いた時には食蜂はこちらへ走って来ていた
彼女の狙い、能力の効かなかった垣根に掴みかかると……
食蜂 「返して!私の凪差を返してよぉ!」
決壊したダムは止まる事を知らない。頬を伝うものなどお構い無しに食蜂はありったけを放つ
食蜂 「凪差は私の家族よ!?あなた達がどうこうする資格なんてないわ!
私には凪差しかいない!凪差にも私しかいない!
どんな時も凪差の事だけを考えて生きてきた!あの子が泣かないように、あの子が笑っていられるように!
私には凪差を守る責任があるの!!
これまで、どんな思いで過ごしたかなんて分かる訳…ないでしょう!?
凪差以外の…人間なっ、んて……必要ない!
だから……グッ…だから返じて!!ヒッ……お願…い…返……し………!」
放水が終わると、彼女は力なく崩れ落ちた
“女王”の風格など微塵も残されていない。整った顔立ちも涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ
肌寒い空間に嗚咽だけが鳴り続く
上条 「えっと……」
何と声を掛けるべきか、上条は言葉に迷っていると
心理 「ねぇ、皆は先に帰っててくれない?」
口火を切ったのは、泣きじゃくる少女の家族であった――
- 450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:08:16.00 ID:uUzQgVCDO
- ―――――――――
今日の仕事を終えた公園には斜陽が差し、ゆったりとした時間が流れる
その片隅に置かれたベンチに、2人は腰を下ろしていた
心理 「はい、これ」
食蜂 「……ありがとぉ」
手渡された缶ジュースを開け、そのまま喉へグイッと流し込む
水分が不足した体は快く受け入れ、潤いを得んと活動を活発させていく
やがてそれが全身に行き渡ったのを感じると、満足と言いたげに吐息を漏らす。あっという間に中身は空になってしまった
心理 「落ち着いた?」
食蜂 「……うん」
食蜂は彼女を見ようとしない。先程の自分の醜態が今になって恥ずかしくなったのか、腫れた目を下に向けている
心理定規は何も言わず手に持つ缶コーヒーを一口飲んだ
心理 「私は、決してあなたを嫌いになった訳じゃないわ」
突然発せられた言葉にピクリと反応する
心理 「あなたが記憶を消したのを見た途端、あなたの考えてる事が分からなくなったの」
- 451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:09:35.92 ID:uUzQgVCDO
- いつも一緒だった家族の知らない一面、それも黒みを帯びたものを目にした時、彼女の心の安定は崩壊した
見えていると思っていた心、信じて疑わなかった心、あれは嘘だったのか?
疑い――人間関係が極端に狭かった彼女には大きすぎるひび割れ
そして瓦解。以後彼女は全ての人間に距離を置くようになり、他人を知る事も自分を出す事も止めた
皮肉にも、たった1つの心の繋がりを示す力によって――
心理 「ずっと優しい人だって思ってたから余計に怖かった……」
食蜂 「……ごめん」
いいの、と首を振って尚も言葉を紡ぐ
心理 「今日やっとあなたの心が見えたから」
食蜂 「えっ?」
心理 「知らず知らずの内にあなたを追い詰めてた。自分が弱いばっかりに、優しい姉を強いたのね」
食蜂 「そんな事ないわぁ!」
心理 「いいえ、私はあなたの心を何一つ分かってなかったわ。そしてあなたも、私の心を分かってない……」
――近すぎるからこそ見えなかった
心理 「人見知りな私がどうして友達を作ろうとしたか知ってる?」
食蜂 「それは……」
声をどもらせ、恐る恐る答える
- 452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:10:43.33 ID:uUzQgVCDO
- 食蜂 「私が……嫌い、だからぁ?」
心理 「あなたを安心させたかったの」
予想外の返答に食蜂は思わず彼女を見た
心理 「いつも私を気にかけて自分の事を疎かにしちゃうあなたが逆に心配になって……」
心理 「私自身も、いい加減あなたから卒業しなきゃって思ってた」
食蜂は全く知らなかった。まさか彼女がここまで考えていたなんて……
それに引き換え、自分は凪差凪差と縛り付け、寧ろ自分が妹に依存していたのではないか?
彼女は確かに成長している。では自分は?
心理 「今の私を見て、面白い人達に囲まれてるでしょ?あれが私の友達」
食蜂 「……」
心理 「私ならもう大丈夫、だから今度は……」
食蜂 「でも私は嫌!」
聞きたくないと声を張り上げ、言葉を遮る
この後に及んでまだそんな事言うのか。自分の卑しさに心底腹が立つ
食蜂 「凪差が離れちゃったら、私1人ぼっちだよぉ……」
情けないと分かっていても、彼女には本当に凪差しかいない
さっき補充した水分が再び漏れ出しそうな、また泣きそうな雰囲気を纏う食蜂を諭すように言った
- 453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:11:14.35 ID:uUzQgVCDO
- 心理 「何言ってるの、大事な人を忘れてない?」
彼女が示唆するのは幼い頃の2人をここまで育ててくれた存在……『闇』に身を置いた時でも繋がりを保っていた者
心理 「それに、これくらいで私が離れると思う?」
そっと、食蜂の手を取る。ひんやりしたそれを暖めるように両手で包み込んだ
心理 「私はいつだって、あなたと一緒よ」
今度は自分の為に生きて欲しい――
食蜂 「凪差ぁ……!」
結局堪えきれず、泣きながら妹の身体を抱き締めた
心理 「ありがとう。それと心配かけてごめんなさい」
心理定規も背中に手を回す。ようやく家族のもとへ帰還したのだ
岬と渚、近そうで遠い距離
初めて対立し、初めて心を通わせた姉妹にはより強い絆が結ばれた
夕日はそんな2人の成長を祝福するように、柔らかな光を降り注ぐ――
- 454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:11:53.48 ID:uUzQgVCDO
- ―――――――――
上条 「あの子、大丈夫かな?」 テクテク
垣根 「心配ねぇよ、姉妹の問題は姉妹で解決させるに限る」 テクテク
麦野 「これからアイツの事、何て呼んだらいいんだろ」 テクテク
垣根 「今まで通りでいいさ。名前で呼んで欲しいってんならそうするけど」 テクテク
上条 「本人の口から聞いた訳でもないしな」 テクテク
一方 「ずっと気になってたンだけどよォ、何でオマエだけ効いてなかったンだ?」
麦野 「私も気になる。成り行き的に既にかかっててもおかしくないのに……」
上条 「まさか俺まで効くなんて思いもしなかったぞ」
垣根 「うーん何でだろなー……俺が電波だから?」
一方 「バカには効かねェのかもな」
麦野 「変ねぇ、その理屈なら上条も効かない筈なんだけど」
上条 「それはまた違う意味でのバカでして……じゃあ動けなくなったのは何なんだ?」
垣根 「まーいいじゃん、結果オーライって事で!」
麦野 「そうね、考えても分からないし」
- 455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:13:17.93 ID:uUzQgVCDO
-
デ、ドォイウイミデノバカナンダァ?
クソー!ミンナシテオレヲバカニシヤガッテ!
垣根 (病気のお蔭……とか?)
あの程度で出し抜かれるたぁ、垣根帝督も落ちたもんだな
垣根 「っ!?」 ピタッ
麦野 「どうした?」
垣根 「……いや、何でもない」
- 456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/03(土) 16:17:14.18 ID:uUzQgVCDO
- 以上です
変に詰め込み過ぎてみさきちの会話が見辛くなってしまった……
次回も一週間前後を目安にします - 457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/03(土) 16:41:47.51 ID:5D3DcdJX0
- ありがとう!!
続きも楽しみに待ってる - 458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 17:11:42.98 ID:3CZv5ZB60
- 乙
- 459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 19:02:37.12 ID:2d6AeZ2N0
- もしかして未元物質に人格が・・・・原本ならともかくそれはねーかwwwwwwwwww
乙
2013年11月8日金曜日
垣根 「ほら、笑って笑って!」~2ヶ月目~ 1
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