- 793 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:10:07.14 ID:X9gv6zs0
- 外典【サーシャによる福音書】
この物語はサーシャ・クロイツェフの日常を淡々と描くものです。
過度な期待はしないでください。 - 794 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:11:40.98 ID:X9gv6zs0
- 【フィアンマの動く天空の星ベツレヘム】
フィアンマ「………」
サーシャ「………」
フィアンマ「暇だからしりとりでもしようか」
サーシャ「……しりとり(ボソッ)」
フィアンマ「リス」
サーシャ「スクリュードライバー」
フィアンマ「馬刺しソーダ」
サーシャ「そんなカクテルありませんよ」
フィアンマ「あるんだなこれが」
サーシャ「マジですか?」
フィアンマ「マジだ」 - 795 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:12:59.98 ID:X9gv6zs0
サーシャ「分かりました……ダンロップは先に行く」
フィアンマ「クリスマスキャロル」
サーシャ「ルパンはとんでもないものを盗んでいきました」
フィアンマ「タイ焼き」
サーシャ「キスしてください」
フィアンマ「イヴァン・イリイチ」
サーシャ「近くに居ても良いですか」
フィアンマ「カーテナ・セカンド」
サーシャ「どうして私の気持ちに気付いてくれないのですか」
フィアンマ「カラカス」
サーシャ「好きになっても……いいですか?」
フィアンマ「お前さっきから『か』ばっかじゃないか」
サーシャ「ダメですか?」
フィアンマ「ダメだ」- 796 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:13:58.64 ID:X9gv6zs0
サーシャ「では仕切り直しましょう。しりとり」
フィアンマ「リング」
サーシャ「グノーシス派」
フィアンマ「遥か心に刻んだ夢も未来さえ置き去りにして」
サーシャ「天上天下」
フィアンマ「限界など知らない」
サーシャ「意味無い」
フィアンマ「この力が光散らす」
サーシャ&フィアンマ「「そーのーさーきにー遥かな―想いをー♪」」
フィアンマ「やるな、さすがは俺様が目を付けただけの事はある」
サーシャ「第一の解答ですが、あなた伊達に神の右席のリーダーを名乗っているわけではないみたいですね」
たぶん誘拐後にこんなやりとりがあったのでしょう- 797 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:15:51.21 ID:X9gv6zs0
ルチア「……」
サーシャ「……」
ルチア「シスターサーシャ?」
サーシャ「何でしょうか?」
ルチア「なぜあなたのお腹はそんなにも膨らんでいるのでしょうか?」
サーシャ「第一の解答ですが、受胎テロです」
【サーシャが妊娠しました】
サーシャ「そんなわけないでしょう」
サーシャ「第一の解答ですが、あれは今から10時間前、いえ1時間前でしたっけ?とにかく私にとってはつい先程の事です」
サーシャ「それは五和に会いに日本人街へ遊びに行った、その帰りの事でした」- 798 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:16:51.52 ID:X9gv6zs0
【回想】
サーシャ「……」
サーシャの目の前には、どこかの食品会社の商号が記されたダンボール箱があった
しかし彼女はどこぞの蛇ではないので、ダンボールの事などどうでも良い。
問題はそのダンボールの中身である。
サーシャ「捨て猫でしょうか?」
猫「にゃー」
サーシャ「首輪が付いてますね」
どうやらこの捨て猫、元は誰かに飼われていたみたいである
大きさから言うと、生まれてまだ1年もたっていないだろう- 799 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:18:24.62 ID:X9gv6zs0
猫「うにゃん(じーっ)」
西洋では不吉と呼ばれていた黒猫。実際、魔術的な観点から見てもそれは単なる迷信である。
例えばここイギリスでは、昔のケルトでは黒猫は不思議な力を持っており、人知を超えた予知能力があるとされていた。
他にも自宅の玄関先に見知らぬ黒猫がいたら繁栄がもたらされる。結婚する時に黒猫が横切ると幸せになる。
黒猫が道を渡ったり、自宅に入ってきたら大変縁起が良い。
結婚祝いに黒猫を送ると、新婦に幸せが訪れる。
黒猫が住みついたら、幸運がやってくる。
などなどと、イギリスでは幸運の猫とされている
イギリスだけでなく、フランスやドイツ、ベルギーでも似た様な逸話があるのだが。
黒猫が不吉の原因として嫌われていたのは主に魔女狩りが行われていた時代であり、
上記の様な黒猫の神秘性が仇となってこんな扱いを受けたのかもしれない。まあ何にせよ、
やたら持ち上げられたり迫害されたりと、人間の都合に振り回されっぱなしな黒猫にとってはかわいそうな話である。
「ただご飯を食べて日向ぼっこしながらお昼寝して、たまに飼い主に甘えるだけの俺達が何でこんな目に遭わなくちゃならないんだ!」
と叫びたい気分だろう。いやはや風評というか迷信というか、人間の思い込みや扇動というのは恐ろしいものだ。
話が逸れたが、この黒猫さん、不思議なのはその瞳である。
サーシャの赤い瞳とは対照的とも言える青い瞳。宝石で言えばアクアマリンの様な淡い色である。
その淡いスカイブルーの瞳が、サーシャの赤い瞳をじーーーーーーーっと覗き込む
サーシャ「………」
猫(じーーーっ)- 800 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:19:15.70 ID:X9gv6zs0
どうだい?このしなやかな筋肉は?
飼いたいだろ?飼いたくてたまらないだろ?
サーシャ「いえ、第一の解答ですが、私の住まいは寮なのでペットは…」
アンタ、シスターなんだろ?
ここで可愛い子猫が飢えて死ぬのを見過ごすのかい?
迷える子猫には神様の御慈悲ってヤツぁねぇのかい?
サーシャ「し、しかし…」
ああ、もうすぐ冬かぁ…
このままじゃ寒さで凍え死ぬかもなぁ…
ああ、なんだか目の前が暗くなってきた……
サーシャ「むむむ……」
さあ、どうする?- 801 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:20:49.02 ID:X9gv6zs0
ルチア「……」
サーシャ「……」
ゴソゴソ
ルチア「底抜けに元気な赤ちゃんみたいですね…」
サーシャ「神の子2号ですから」
ゴソゴソ(胸の方に移動)
サーシャ「……」
ルチア「数秒見ない間に随分と立派に育ちましたね」
サーシャ「成長期ですから」
猫「みゃあ!」
ルチア「……」
サーシャ「……」
ルチア「元気な子猫が産まれましたね」
サーシャ「第二の解答ですが、実は私の父親は猫なのです。ですから私は猫娘というわけで、猫の遺伝子が……」
……
サーシャ「ダメですか?」
ルチア「私にその父親を紹介できたら考えてあげなくもないですよ?(にこっ)」- 802 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:22:47.51 ID:X9gv6zs0
【サーシャの部屋】
サーシャ「というわけで、どうやらダメみたいです」
サーシャ「ですが、ルチアは厳しい人ではありますが、冷たい人ではありません。
引き取り先が見つかるまでここで飼っても良いという事になりました」
猫「そうか。それは良かった」
サーシャ「……」
……………
サーシャ「気のせいですね」
猫「ああ、気のせいだ」
………
猫「どうかしたのか?」
サーシャ「今すぐあなたを捨てたくなりました」
猫「あの女よりお前の方が100倍冷たくないか?」
サーシャ「第一の解答ですが、あなたが喋った時点でアガペーゲージが0になりましたよ」
猫「猫が喋るのはそんなにおかしいか?」
サーシャ「その幻想をぶち[ピーーー]!」ガシッ!
猫「ちょっ!やめろ!窓から投げようとするな!!動物愛護法違反だぞ!!」
サーシャ「お前の様な動物がいるか」
猫「居るから!天界には普通に居るから!!」
サーシャ「……天界?」
猫「あっ……」- 803 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:24:20.83 ID:X9gv6zs0
猫「驚くな。実は私はガブリエルなのだ」
サーシャ「へぇ」
猫「反応薄いな。もっと驚けよ」
サーシャ「第一の解答ですが、驚くなって言ったじゃないですか」
猫「やっぱ驚け」
サーシャ「うひゃあ(棒)」
猫「そこはかとなくムカツク」
サーシャ「第一の質問ですが、なぜ大天使がここに居るのですか?しかも猫に乗り移って」
猫「不思議な事に、この猫は大天使のテレズマを納めるだけの器があったみたいだ。お前と同じ様にな」
猫「性質は私と同じ後方の青。この猫の目が青いのは、その性質のせいだろう」
サーシャ「ていうかぶっちゃけ誰でも良いんじゃないですか?」
猫「そんな事は無い。お前の器は確かな才能の証だ」
サーシャ「フィアンマ戦で無茶をしたせいで、アックアみたいに器がボロボロになってしまいましたけどね」
猫「ドンマイwwwwww」
サーシャ「やっぱ捨てるか」
猫「お前は結論を出すのが音速過ぎる」- 804 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:25:41.88 ID:X9gv6zs0
猫「それに、お前には恩があるはずだ。私がお前と力をリンクさせた事で、お前は幾度と無く死の運命を逃れてきた」
サーシャ「第一の解答ですが、私は過去にこだわらない女ですから」
猫「最悪だコイツ。あの女子寮の戦いでもお前に力を貸してやっただろ?お前の仲間たちを蘇生させてやったのを忘れたのか?」
サーシャ「そう言えば、そんな事もありましたね」
猫「なんかさらりと流されたけど、あれマジ大変だったから」
猫「あの後ぼっちゃまには怒られるわ、死者を管理するウリエルにはネチネチと文句言われるわでストレスがマッハだったから。分かる?」
サーシャ「第二の質問ですが、ロシアでは私を殺そうとしてましたよね?ていうか裏切ってフィアンマに寝返ったのを忘れたのですか?」
猫「あれは仕方ない。私はフィアンマに操られていたからな」
サーシャ「原作では自分から協力していた様に書かれていた覚えがありますが」
猫「………」
サーシャ「お帰りはあちらですよ。窓からでも結構です」- 805 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:27:38.90 ID:X9gv6zs0
猫「頼む!匿ってくれ人間!私はあのピチピチマッチョとウニ頭と赤目もやしにやられてバラバラにされたんだ!
だからこのままでは天界に帰れない!」
サーシャ「でっていう」
猫「この大天使様が人間ごときに頭を下げてるんだぞ?」
サーシャ「第二の解答ですが、それが人に物を頼む態度ですか?」
猫「何でだよ!!何で誰も私を助けてくれねェンだよ!!オマエは十字教徒だろォが!
神の子の教えを信じる十字教徒なンだろォが!!だったら助けろよ!!神様を信仰してンなら、
そいつをちっとは使いっパシリの私にも向けてやれってンだよ!!
私みてェな高貴な大天使が今まで立ち上がっていた方がおかしかったンだよ!!
どォみたって場違いだろォがよ!!何をどォしたって、私は血みどろの解決方法しか選べねェンだよ!!
何で私がこンな事しなくちゃならなかったンだ!!四大属性が歪んでなければ、最初からこンな間違いなンか起こらなかったンだ!!
私だって、こンなに苦しむ事はなかったンだよォォおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
サーシャ「あの人と違って随分と自分本位な主張ですね」- 806 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:29:11.83 ID:X9gv6zs0
アニェーゼ「サーシャ?サーシャの部屋から雄叫びが聞こえましたが、誰か居るんですかい?」
神裂「物凄いテレズマを感じるのですが」
ちょっとガブリエルがお邪魔してます
サーシャ「なんて言えるわけないでしょう!静かにしてください!」
猫「何で?」
サーシャ「ここであなたが大天使だとばれたら神裂に真っ二つにされますよ?」
猫「別に良い。私自身はもうバラバラだし、被害を受けるのはこの猫だけだから」
サーシャ「あなたはそれでも天使ですかこの外道が!!」
猫「神裂くゥゥゥゥゥゥン!!!!かかってこいやァァァァァ!!!!」
サーシャ「分かりました!分かりましたから静かにしてくださ!!」- 807 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:30:22.52 ID:X9gv6zs0
猫「さて、今日からここでお世話になるわけだが」
サーシャ「あなたの事はなんて呼べばいいのでしょうか?」
猫「普通にガブリエル様と呼べば良いだろう」
サーシャ「死んでも様なんて付けたくはありませんが、さすがにガブリエルなんてそのまま過ぎるでしょう。
あなたが大天使だとバレたら、前述の通りガ/ブ/リ/エ/ルになりますよ」
猫「五分割!?でもこの名前は神から与えられたものだから、勝手に変えるわけにはいかないんだよ」
サーシャ「第一の解答ですが、神の命令無しに人を殺そうとしてたあなたが今更何を言ってやがりますか」
猫「人命なんか興味無いし」
サーシャ「悔い改めろよこの悪魔」
猫「天使だから。そんな事より、私の名前はどうするのだ?」
サーシャ「第ニの解答ですが、キキでどうですか?」
猫「何そのジブリみたいな名前」
サーシャ「フィアンマもハウルに似てますし、問題無いでしょう」
猫「せめてフィアンマが魔女っ子だったらな。つーかガブリエルと関連性が無いから駄目だ」- 808 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:31:02.47 ID:X9gv6zs0
- サーシャ「では、借り暮らしのガブリエッティで」
猫「だからジブリから離れろよ」
サーシャ「となりのガブリ」
猫「聞けよ!人の、いや猫の話を聞けよ!」
サーシャ「耳をすませガブリエル、千と千尋とガブリエル、紅のガブリエル、
平成天使合戦ガブガブ、風の谷にガブリエル、フィアンマの動く星」
猫「監督の作品で遊ぶなこの愚か者が!あと最後のはもう私の名前すら無いだろ!!」
サーシャ「ああおもしれぇwwww」
猫「もうやだこのSS」 - 809 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:32:26.30 ID:X9gv6zs0
サーシャ「第一の解答ですが、ガブリエルはイスラム教ではジブリールと呼ぶそうです」
猫「まあそうだな。コーランの内容をムハンマドに教えたのは私だし」
サーシャ「というわけで、略して“ジブリ“でどうですか?」
猫「どうあってもスタジオジブリから離れられないみたいだな」
サーシャ「これが嫌ならもう好きにしてください」
猫「分かった。仕方ないからジブリで手をうってやる」
サーシャ「ジブリ、お手」
ジブリ「にゃん」バリッ!
サーシャ「誰がひっかけと言いましたか」- 810 :1 [sage]:2010/09/29(水) 13:33:44.64 ID:X9gv6zs0
アンジェレネ「あっ、猫ちゃんだ♪」
アニェーゼ「サーシャの頭の上に乗ってるソレですね、ルチアが言ってたのは」
オルソラ「青い目の黒猫は珍しいのでございます。通常は種としては確立されていないので、
シャム系の遺伝子が入っている場合に稀に見られる事があるのでございますよ」
神裂「……あの子猫から違和感を感じるのは私だけでしょうか?」
サーシャ(さすが神裂、できる女ですね…)
ジブリ「おい、ジロジロ見てんじゃねぇぞ堕天使エロメイド」
神裂「!?」
アンジェレネ「あれ、今その猫しゃべ…」
サーシャ「気のせいです!」
アニェーゼ「そ、そうですよね!猫が喋ったりするわけねぇですよね!」
猫「わん!」
………
神裂「今わんって鳴きましたよね?」
オルソラ「あらあら、とても芸達者なのでございますね」
サーシャ(自重しないと本当にドッグフード食わせますよ)
猫(人間って面白ッ)
こうして女子寮に新しい仲間が増えたのでした- 816 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:46:12.51 ID:3Cla.gs0
- 最近ちょっと遅れ気味で申し訳ありません
まだSSが出来上がってないのですが、とりあえず過去のメモからひっぱり出してきた下書き
を投下します
もしも「サーシャが学園都市に亡命したら」あのときBが選択されていたらこんな感じでした - 817 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:48:12.57 ID:3Cla.gs0
【とある暗部のマジ天使】
サーシャ「第一の解答ですが、ご飯とかくれると嬉しいです」
一方通行「……」
サーシャ「第一の質問ですが、聞いてますか?第二の質問ですが、なぜ無視するのですか?
なぜ無かった事にして部屋に戻ろうとするのですか?」
一方通行「俺ァ何も見なかった。ベランダに変な服着た女なンて引っかかってなかった」
一方通行「全ては暗部の仕事で疲れに疲れ切った俺が見た幻覚だ……戸締り良し」
一方通行「簡単なンだよ現実逃避なンざ、俺を誰だと思ってやがる…」
ガシャン!!
幻覚はバールと金槌で窓ガラスをぶち破る
一方通行「ひィっ!!!」
サーシャ「ご飯くれるとうれしいです」- 818 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:50:01.42 ID:3Cla.gs0
一方通行「ったく、どーすンだよこの惨状。しかも誰だよ?なンだよ、なンのプレイだよその格好はよォ」
サーシャ「第一の解答ですが、ロシアから亡命してきました。かれこれ三日間何も口にしていません」
一方通行「解答も何も俺の質問とか総スルーじゃねェか。腹へってンなら、
そこらじゅうに散らばってるガラスの破片でも食ってろよ」
サーシャ「第二の解答ですが、それができたらすでにあなたの部屋のガラスというガラスを全て食べ尽くしてますよ」
一方通行「それはそれで図々しい野郎だなオイ」
サーシャ「第三の解答ですが、ばたり」(バタッ)
一方通行「テメェの最期の答えは倒れる擬音かよ!!なンなンだよクソがッ!!!」- 819 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:51:34.15 ID:3Cla.gs0
サーシャ「第一の解答ですが、施しに感謝します」
サーシャは一方通行が買ってきたサンドイッチや弁当にパクついている。
三日間も食べていないというので、かなりの勢いでガッつくと思っていたが、
意外と食べるスピードは遅い。まるで小動物でも見ている様な気分だ。
一方通行(クソッタレ、なンで俺がこンな事…)
本来ならば迷うことなくベランダから放り捨てていただろう。
しかし、こんな怪しい拘束衣を着た死体が自分の住んでるマンションの真下で発見され、
さらには自分がその怪しい拘束衣を着た死体を放り投げる瞬間を目撃したという人物が現れたとしたら…
どんな事になるかは想像に難くないだろう
仕方ないのでコンビニで適当に食べ物を買ってきてやったわけだが
せめてもの嫌がらせに、飲み物は「練乳いちごコーンポタージュ」という謎のゲテモノドリンクを買い与えてやった
俺がここまでこの変な女に振り回されてンだ、せめてこの変な飲み物で悶絶する姿でも拝まなきゃ割に合わねェ。と言ったところか。
サーシャ「私見ですが、この練乳いちごコーンポタージュというのはなかなか美味ですね」
一方通行「……」
その日、学園都市最強の能力者は、上条当麻と木原クンの時以来の敗北感を味わった- 820 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:53:59.14 ID:3Cla.gs0
サーシャ「第一の解答ですが、ありがとうございました。この恩は忘れるまで忘れません。」
一方通行「忘れねェ努力をしろ」
サーシャ「第二の解答ですが、空腹が満たされた事により睡魔が襲ってきました」
一方通行「今ここで寝たらもう次に目を覚ます事はねェぞ。確認するが、
まさかテメェは俺が食後の寝床を用意してやる様な親切な善人に見えンのか?」
サーシャ「Да」
一方通行「Нетだ馬鹿野郎。食い終わったンならさっさと出てけ」
サーシャ「第一の質問ですが、私はどこへ行けばよいのでしょうか?」
一方通行「ンな事俺がしるかっつーの。…そういや、オマエ亡命してきたとか言ってたな?」
サーシャ「はい」
一方通行「そォかそォか。じゃあ今から俺が、オマエを引き取ってくれる親切な奴をここに呼ンでやるから、それまで寝てろ」
サーシャ「第二の質問ですが、大丈夫なのでしょうか?」
一方通行「何が?」
サーシャ「第三の解答ですが、寝ている間に襲われないかと」
一方通行「そンときゃ俺がなンとかしてやる」
サーシャ「そうではなくて」
一方通行「あン?……テメェ、まさか俺が襲うかもしンねェとかそういう話か?」
サーシャ「第四の解答ですが冗談です、ロシアンジョークです」
一方通行「寝てェならさっさと寝ろ!!クソガキがッ!!」
サーシャ「zzzzzzzz ...」
一方通行「早ェなおィ!!」- 821 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:56:13.42 ID:3Cla.gs0
一方通行「ったくよォ……」
prrrrrr
一方通行「黄泉川、俺だ。不法侵入者を捕まえたから引き取ってくれ。そンでもって、
今度は二度とここに来れない様なとこに飛ばしてやれ。ああ、大至急な。」
pi
一方通行「やれやれ、とンだ災難だったな。ま、一件落着ってことd」
携帯電話「おい、仕事だ、早く出ろよ。おい、仕事」(ピッ)
一方通行「……テメェか。で?今回は何の仕事だ?」
土御門「迷子の子猫捜しだにゃー」
一方通行「グループはいつからボランティア団体になったンだ?」
土御門「まあ聞けよ、そいつは学園都市の人間じゃない。いわゆる不法侵入者ってやつだ」
一方通行「そンなもンよくある話じゃねェか。だいたい、この街は対不法侵入の警備態勢が馬鹿みてェに甘ェンだよ」
土御門「ああそうだな。けどそんな事はどうでもいい。問題は、そいつがどういう人物かって話ぜよ」- 822 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/10/09(土) 23:57:37.78 ID:3Cla.gs0
一方通行「俺ら暗部組織が動かなきゃならねェほどのVIPって事か。相手は大統領か何かか?」
土御門「そんな代えの利くレベルの人間じゃない。そいつは、ロシアおよびローマにとってはかなりの重要人物だ」
一方通行「戦争相手か、なるほど話が見えてきやがった。で?そいつの特徴は?」
土御門「そうだな、肌は白、髪は金髪の女の子だ。打ち止めが後2、3年くらい成長した姿ぜよ」
一方通行「なンでそこでガキが出てくンだよ。つーか、その重要人物ってのもガキか?」
土御門「ただのガキじゃないぞ。まあ、魔術に疎いお前に言っても分からんだろうが」
一方通行「マジュツ?特徴はそれだけか?外人なンざ別に珍しくねェだろ」
土御門「これが一番特徴的なんだが、そいつは変な服を着てる」
一方通行「あン?」
土御門「なんつーか、ベルトだらけの拘束衣みたいな服だな」
一方通行「……」
サーシャ「zzz」
一方通行は何気なく、泥の様に眠っているサーシャの方を見た
一方通行「土御門、そいつはロシアからの亡命者とかじゃねェよな?」
土御門「ああそうだが、あれ?お前にその事説明したか?」
一方「ビンゴだクソッタレ。すぐに下っ端をよこせ。場所は、人材管理が住ンでたマンションだ」
土御門「おい、アクセラ」(ピッ)
一方「こいつはまたフザケタ展開を用意してくれたもンだ。クソッ!どうする!?」- 823 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/10(日) 00:00:58.66 ID:2oBjgr.0
サーシャ「という感じでした」
サーシャ「ちなみに、私のガブリエルの翼は、実は一方通行の黒い翼による影響が大きいのです。
禁書最強の武器と言えば、やはり翼ですからね」
サーシャ「え?第三の腕?それは食べ物ですか?」
イギリス編でのサーシャは、一方通行みたいに仲間が居ながらも打ち止めを守るために孤軍奮闘する姿を参考にしていました。
イギリス清教の仲間を裏切って新たなる光と手を組んでクーデターに参加しながらも、
楽しかったイギリス清教での日々を取り戻すために、一人で最大主教と交渉したりキャーリサと戦ったりと色々と立ち回っていましたね。
でも新たなる光も利用しているだけでなく、彼女達も大切な仲間として認識している所は
一方通行とは180度違うヒーロー像です。基本的に表面を参考にしただけであって、
本質そのものは全く別の主人公として描けたかなと思っています。
エイワス的には、生まれ持った意思に従って戦った結果、人々からヒーローと讃えられる上条さん。
過去に犯した過ちと善への渇望が原動力である一方通行。力は無くとも誰かのために戦う浜面。
サーシャの場合はどれに当たるのでしょうか?
よくよく考えたら、サーシャの立場は脇役的な感じがしないでもありませんが…
サーシャ「22巻を読んだ方は、このSSのロシア編はどの様な感想を持ったのでしょうか?
全体的には外れていますが、当たってる部分が無い事も無いというのが私見です」
サーシャ「まあ一番の誤算は、フィアンマが……やめておきましょう。公式発売日ではなですからね」
サーシャ「第一の解答ですが、それではまた後日」- 826 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:21:15.42 ID:j0zq2VE0
- 久しぶりに投下します
- 827 :テッラの診療所2 [sage]:2010/10/22(金) 00:24:00.92 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「ふああぁぁぁ……」
ソファーの上で少女は身を起こして軽く背伸びをすると、ぼやけた視界をクリアにするために軽く目を擦った。
自分が横たわっていた場所に手を置くと、
そこで寝ていた自分の体によって暖められ続けた温もりが、未だ冷めずに残っているのを感じられる。
どうやら自分はかなりの時間をここで惰眠を貪る事に費やしてしまったらしい。
アンジェレネ「………」
修道服の衣擦れが印象的に聞こえる程のシンとした静寂。
ここはそれなりに多くの人間が住んでいる寮だ。
ならば何かしら誰かが居る様な気配を感じるのが普通である。
しかし、それを微塵も感じられない。物音一つしない。
まるで、たったたった一人だけこの世界に取り残されてしまったかのように……
もしも今が真っ暗な夜だったら、とてもじゃないが孤独という恐怖に打ち勝つ事などできず、
一人で震えながら同僚のルチアやアニェーゼの名を呟いていただろう。
幸いにも今は……時計を確認してみると、ちょうど午後3時だ。
怪談話をするには早すぎるし、真昼のオバケなど想像するだけでマヌケ過ぎて笑いがこみ上げてくる。- 828 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:27:46.25 ID:j0zq2VE0
- ちゃんと名前を1に変えたはずなのになぜ変える前の名前に戻ってる?
気にしないでください。
そう言えば、ちょっと小腹が空いた気がする。
寝ていただけとは言え、それでも人間はカロリーを消費するのだ。
でなければ、寝ていれば永遠に死なないと言う無茶苦茶な理論が成立してしまうだろう。
となれば、やる事は一つ。
アンジェレネはソファーからとび上がり、食糧を漁るために食堂へと足を運ぶ事にした。
食堂に近づくにつれ、美味しそうな匂いが鼻腔を擽る。
どうやら、誰かが料理をしているみたいだ。
それはつまり、食糧を漁るという計画の破綻を意味している。
しかし食糧を漁るのがダメなら、味見という名目で食べ物をお腹に入れる事ができればそれで良い。柔軟な発想が大切だ。
オルソラ「まあまあ、アンジェレネさん。夕食の時間には少し早いのでございますよ?」
アンジェレネ「お手伝いは必要じゃありませんか?」
ニヤニヤとしながら少女は露骨に味見を要求した。
この少女の食欲はすでに周知の事実である。
オルソラも特に嫌な顔をせず、ニコニコと笑いながら皿にスープを注いだ。 - 829 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:29:22.46 ID:j0zq2VE0
オルソラ「本日の料理は特性のスープでございます、パンにつけて食べるとより楽しめるのでございますよ」
オルソラはニコニコと笑いながら、輪切りにしたパン持った皿と、スープをアンジェレネの座るテーブルにそっと差し出した。
アンジェレネ「良い匂いですねー」
口調がどこかの右席みたいになっているが、アンジェレネは視線は目の前のスープに釘付けだ。
この真っ赤なスープはトマトだろうか?
粒がひとかけらも無くサラサラとしているが、おそらくそうなるくらいに丁寧に濾したのだろう。
表面に散らされた緑色のバジルが色どりを鮮やかにしている。
アンジェレネは赤い液体を救ったスプーンにそっと口をつけた
アンジェレネ「美味しいです!」
オルソラ「うふふ、喜んでいただけて何よりでございます」
ほのかで心地の良い酸味が良い感じだ。
隠し味は相変わらずオリーブオイルであるが。- 830 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:30:41.55 ID:j0zq2VE0
具はどうやら肉だけの様だ。まあこれだけふんだんにトマトが使われているのだから、栄養面では問題無いのだろう。
アンジェレネはスプーンで肉を救い、咀嚼する…
少し硬くて酸味が強い。鶏肉でもない牛肉でもないこれは…
アンジェレネ「シスターオルソラ、これは何のお肉ですか?」
オルソラ「はい、そのお肉はですね……」
………………
カラン!とスプーンが床に落ちた
アンジェレネ「冗談……ですよね……?」
オルソラ「ですから、特性のスープですと言ったではございませんか」- 831 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:32:08.49 ID:j0zq2VE0
あまりにも信じられなさ過ぎる言葉を聞いたアンジェレネは、驚愕で目を見開き、顔を強張らせている。
それとは対照的に、オルソラは相変わらず「美味しいですか?」とでも言いたそうな顔でニコニコと笑っている。
しかし違う…
半開きになっているその目には光が無い。口は両端を釣り上げ、緩やかなカーブを描いている。
狂気と言う言葉以外に思い浮かばないそれは、アンジェレネの知っているオルソラの笑顔では無かった。
ガン!と椅子を倒しながら、アンジェレネはオルソラから逃げる様に食堂から飛び出す。
誰か!誰でも良いからこの事を知らせなきゃ!!- 832 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:33:50.00 ID:j0zq2VE0
アンジェレネは必至になって廊下を走っていた
途中、自分が食べてしまった物を思い出し、凄まじい吐き気に襲われる。
それを美味しいと思ってしまった事への深い罪悪感という名の刃物に心をズタズタに引き裂かれそうになる。
それでもこみ上げてくる胃液と赤い液体に耐えながら、アンジェレネはこの事実を話せる誰かを探して必死に走り続けた。
そして…
アンジェレネ「ルチアッ!!!」
背の高い見知ったシスターの後ろ姿。
厳しい性格だが、アンジェレネにとっては本当の姉の様な存在だ。
ルチア「アンジェレネ? どうかしたのですか?あと廊下は走ってはいけませんよ」
アンジェレネ「ごほっ! はぁ、はぁ……」
ルチア「大丈夫ですか? 一体何があったのです?」
涙目になりながら息を切らし、せき込むアンジェレネの背中をルチアは優しく撫でる。- 833 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:34:54.47 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「大変なんです! オルソラが!! オルソラが…」
ルチア「オルソラが?」
アンジェレネ「あっ…ごぼっ!」
次の言葉が出てこない。
思い出してしまった。ルチアに会えた喜びで忘れかけていたそれを…
強烈な吐き気がアンジェレネを襲う。
むしろ吐き出してしまいたい。全部吐き出せば、まだ戻れそうな気がする……
アニェーゼ「どうしたんですかアンジェレネ?」
アンジェレネ「アニェ…ゼ……」
顔を上げると、そこには自分と同じくらいの背丈の少女が立っていた。
ズルズルと何か重たい物を引きずりながら…- 834 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:35:55.99 ID:j0zq2VE0
- アンジェレネ「アニェーゼ…それは……?」
おそるおそる聞いてみる。
だがはっきり言って知りたくない。その赤黒い肉の塊が何かなんて知りたくは……
アニェーゼ「こいつはただの豚の死骸ですよ」
それが本当だったらどれだけ救われた事だろう。
だが、そんなはずはない。
赤黒く変色したそれは、所々パーツこそ欠けているが、まだそれが何なのか判別できるくらいには原型を留めている。
?「う……あ……?」
アンジェレネ「ひっ!!」
醜い肉塊がかすれた唸り声を上げ、アンジェレネは思わず後ずさってしまった。
アニェーゼ「まだ生きてやがったんですか」
ドゴッ!と肉塊に蹴りを入れる。すると、肉塊は赤黒い汚物を吐き出しながらもぞもぞと蠢いた。 - 835 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:36:44.32 ID:j0zq2VE0
- ルチア「ちゃんと殺しておかなかったんですか?」
アニェーゼ「新鮮な方が美味しいじゃないですか」
アンジェレネ「何…これ……?」
もう限界だ。いい加減頭がどうにかなりそうだ。
目の前に居るのはルチアやアニェーゼじゃない。似てるけど違う、あれは悪魔だ。ルチアとアンジェレネの姿を借りた悪魔だ。
アンジェレネ「あは…あははははっ……」
引き攣った顔で苦笑いしながらアンジェレネはゆっくりと後ろに下がる。
ダメだ、この寮はもうどこにも安全な場所などない。早く外に逃げないと……
そして、アンジェレネは足の裏の違和感に気付いてしまった。
後ずさっている時に何かを踏んでしまったらしい。
感触からして何か金属的な硬い物の様だが……
おそるおそる足を上げてみると、それは銀色のロザリオだった。
誰もが知る六端の十字架。十字教の象徴にして神聖なる教徒の証。
それを踏みつけてしまった。 - 836 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:38:21.33 ID:j0zq2VE0
バッ!!と同時にこちらを振り向くルチアとアニェーゼ。
その目はもはやその少女を同僚のアンジェレネとして見てはいなかった。
まるで、この世で最も汚らわしい生物を見る様な憎悪と嫌悪の入り混じった眼差し。
ルチア「失望しました。アンジェレネ、まさかあなたがこんな事をするとは…」
アニェーゼ「知ってますか? 異教徒は人間じゃねぇんですよ? 豚やロバと同じ家畜、いいや、あなたはそれにも劣る醜い肉塊です」
アンジェレネはふと、アニェーゼが引きずっていた肉塊を見た。
もうそれは動くのをやめ、スーパーに並ぶ前の清肉場で屠殺された家畜の様になっている。
自分もこれと同じ……?
自分もあんなふうになってしまうのか……?
さあ、異端審問の始まりですよ……
- 837 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:40:16.74 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「えっ…」
気が付くと、いつの間にか風景が変っていた。
薄暗い石造りの部屋。鼻を付く血と汗の匂い。冷たい鉄の感触。
アンジェレネ「ここは…処刑塔……?」
アンジェレネ「どういう事ですか!? いつの間に!?」
椅子から立とうとするが、体が動かない。
良く見ると、胴体をロープで縛られ、腕が机に固定され、さらには両手の五指の一本一本が丁寧に開かれ拘束されている。
逃れようと抵抗してもガチャガチャと拘束具の軋む音が虚しく響くだけだった。
アニェーゼ「さあ、異端審問の始まりですよ」
アニェーゼの手にはペンチの様な物が握られている
アンジェレネ「そんな! 私は異端者なんかじゃありません!!」
アニェーゼ「それはこれからゆっくりと問いただしていきましょう」- 838 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:41:28.47 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「な、何をする気ですか? それは一体…」
アニェーゼ「これから右手の爪を1つ1つ丁寧に剥いでいきましょう」
アンジェレネ「つ…え……」
アニェーゼ「それが終わったら今度は左手の指に一本ずつ釘を指して潰していきます。
それから足に鉄の靴をはかせてバラバラに、両手の手首を切断して神経をほじくり出して……」
全身を虫が這いずる様に恐怖が体中を駆け巡る。
両手を拘束している金具がガタガタと音を立てている。
別にわざとやっているのではなく、震えが止まらないのだ。
アニェーゼ「ルチア、アンジェレネの手を押さえて下さい」
ルチア「はい」
アンジェレネ「ひっ…いや…ああ……」
ガチガチと歯がリズムを刻みながら音を立てる。
悲鳴を上げたいが、恐怖で喉が潰れて言葉がでない。
アニェーゼ「さて、始めましょうか」
アニェーゼはペンチの先端を開き、アンジェレネの爪の先端部分に噛み合わせた。- 839 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:45:45.69 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「ルチア! アニェーゼ! あれは違うんです! 間違えて踏んでしまっただけなんです!!」
いやだ……
アンジェレネ「ごめんなさい!!懺悔しますから許して下さい!!!ルチア!!アニェーゼッ!!!」
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだこわいこわいこわいこわいこわいこわい…
死にたくない、あんな醜い肉塊になりたくない…
ベキッ!と爪の割れる音がした
だがお構いなしに、そこからゆっくり丁寧に、爪と指の肉をゆっくりと剥がして行く…
アンジェレネ「いぎっ!! ああああッ!!!」
アニェーゼ「うるさいですよ、まだ半分も剥いでないじゃないですか」
アンジェレネ「ひぐっ!!」
爪を剥がされる痛みよりも、これから延々と続くであろうさらにおぞましい激痛と、
それで人間として欠落していく事の恐怖がアンジェレネから全てを奪って行く。- 840 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:50:53.67 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「いぎゃっ! あぐっ!……あハ……ハハ…ハ…」
ダメだ……もう……もう戻れない……
ナニモカンガエラレナイ……
アハ……アハハハッ!!
恐怖に負け、考える事をやめ、全てを捨て、狂った叫び声を上げるだけの人形になる
そうすれば楽になれる。
どうせあんな無様な肉塊になって生き延びても仕方ないし、最後は食べられてしまうだけなのだから……
思考と肉体を繋ぐ最後の紐に、ハサミを開いて二つの刃を宛がう。
生きる希望とも言うべき最後の繋がりを自分の手で断ち切ろうとした。
そして二つの刃を閉じる、そのほんの一瞬手前
ゴン!!と目の前に衝撃が走り、喜々としてアンジェレネの爪を剥がしていたアニェーゼの体が吹き飛んだ。- 841 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:52:57.66 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「……え?」
「どうやら間にあったみたいですね」
目の前には自分達と同じ修道服を着た、そして自分と同じくらいに小柄な少女。
金髪で長い前髪が特徴。その手にはバールが握られている。
そして、彼女の肩には青い目をした黒い子猫が乗っかっていた。
アンジェレネ「サーシャ……?」
サーシャ「ジブリール、補助を頼みます」
ジブリ「もって1分だ。それ以上は助けてやれんぞ」
サーシャ「10秒あれば十分です」
突然、周囲の空気が変った。
天使の力(テレズマ)が満ちて行く。
血の匂いが充満した薄暗い拷問部屋が、神聖な儀式を行うための空間に変貌していく。
そして、アンジェレネは輝くように白い翼をサーシャの背後に見た。
覚えているのはそこまで…- 842 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:53:57.52 ID:j0zq2VE0
バッ!!とアンジェレネはソファーの上で飛び起きた
そして辺りをキョロキョロと見回す
あれは……夢?
時計を確認してみると、ちょうど午後三時。夢で起きた時間と全く同じだった。
アンジェレネはソファーから勢いよく立ち上がり、食堂へ向かって走り出した。
オルソラ「まあまあ、アンジェレネさん。夕食の時間には少し早いのでございますよ?」
アンジェレネ「はぁはぁ…」
オルソラ「?」
息切れをしているアンジェレネを“どうしたのか?”と首を傾げて見るオルソラ- 843 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:54:41.00 ID:j0zq2VE0
- アンジェレネ「あのッ!オルソラ!あの…」
オルソラ「うふふ、わかっているのでございますよ」
アンジェレネ「え?」
…………
アンジェレネ「なし崩しで食卓に座らされましたけど…」
オルソラ「お待たせしましたのでございます」
アンジェレネの前のスープとパンが差し出された。
スープは真っ赤な…ではなく、琥珀色のコンソメスープだ。
固形状の素を使ったものではなく、最初から丁寧に作ったものだ。具も肉だけでなく野菜もちゃんと入っている。
はっきり言って匂いも見た目も美味しそうだ。だが、それが逆に恐かった。
アンジェレネ「あの、シスターオルソラ、これは何のお肉ですか…?」
オルソラ「はい、そのお肉はですね……」
………
アンジェレネ「あはは、ですよね……鶏肉ですよね」
オルソラ「もちろんでございますよ」 - 844 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:55:44.21 ID:j0zq2VE0
アンジェレネ「ふぅ…」
スープとパンで満たされたお腹をさすりながら、アンジェレネは廊下を歩いていた。
別にどこかへ行く宛があるわけではないが、なんとなく夢の事を考えるとそうすべきかなと思ったのである。
余談だが、あんな夢を見た後で普通に食事ができるアンジェレネは意外と神経が太いのかもしれない。
アンジェレネ「あっ、ルチア」
ルチア「おやアンジェレネ、お菓子は持っていませんよ」
アンジェレネ「じゃあ悪戯しますよ? っていうか、それじゃあ私がいつもお菓子をねだっている食いしん坊みたいじゃないですか!」
ルチア「違うのですか?」
アンジェレネ「違いますよ! まあ貰えるなら欲しいですけど」
アニェーゼ「ルチア! アンジェレネ!」
アンジェレネ「アニェーゼ、その引きずっているものは…?」
それは、赤黒く変色した肉塊
ではなく、サーシャ・クロイツェフだった。- 845 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:56:54.93 ID:j0zq2VE0
サーシャ「……」
アニェーゼ「何かわからねぇですけど、玄関で寝てやがったんですよ。重いんで運ぶの手伝ってください」
サーシャ「重くない…」
アンジェレネ「………」
玄関で寝ていた?
そう言えば、夢の中で最後に出てきたのはサーシャだった。
アンジェレネ「ッ…?」
その時、いきなり人差し指にチクッとした痛みを感じた。
慌てて確認してみると、爪が割れて少しだけ剥がれている。
あれは夢? それとも現実?
ルチア「どうしましたアンジェレネ? 顔色が良くないみたいですが」
アンジェレネ「いえ、なんでもない…です…」
得体の知れない恐怖に身を震わせながら、アンジェレネはルチアの修道服の袖をちょこんと掴んだ。- 846 :1 [sage]:2010/10/22(金) 00:58:46.62 ID:j0zq2VE0
イギリス清教は異端審問に特化した宗派である。
異端審問とは何か?例えば魔女狩りや悪魔狩りなど、神の敵とされる者を葬る事。
または主の教えに背く異教徒を裁く事などをそう呼ぶ。
広義的に言えば民族浄化、例えばナチスのホロコーストなんかも異端審問の一形態として位置づけられる事もあるのだが…
まあ要するに、非常に見識が狭いのか、あるいは神への強い信仰がそうさせるのか、
不寛容であるがゆえにそれ以外を認めないという考えがその根底にあるのだろう。
繰り返すが、イギリス清教は異端審問に特化した宗派である。
血ぬられたそのページを紐解けば、十字教世界の闇を知る事となる。
処刑塔の拷問部屋の壁や机に残された血の跡を見れば、遥かな時を超えて異端者の悲鳴が聞こえてくるだろう。
そして…
凄惨な拷問を受け、異端者として殺された救われぬ者達の魂は、今もどこかを彷徨いながら虎視眈々と狙っているのかもしれない。
自分達をこんな目に遭わせた憎き十字教徒に復習する機会を……- 847 :1 :2010/10/22(金) 01:03:19.50 ID:j0zq2VE0
【オマケ】
ジブリ「……ふむ」
サーシャ「ジブリール、何をしているのですか?」
ジブリ「とある魔術の禁書目録22巻を読んでいるのだ」
サーシャ「第一の解答ですが、あまりメタな発言はしないでください」
ジブリ「よし! ちょっと北極海に行ってくる!」
サーシャ「やめろ」
以上です。今回はソフトホラーな感じにしてみました。- 852 :1 [sage]:2010/11/19(金) 08:15:28.58 ID:tWqhuVI0
【神の力】
透き通る様な輝きを持つ青く長い髪は、青系統の美しいグラデーションになっている
細くしなやかなでガラス細工を思わせる様な痩駆
端正な白い顔はこの上無く美しいものであるが、それは無垢な子供を思わせる様なあどけなさも兼ね備えている。
その左手には「純潔」の象徴であるⅠメートルほどの長さと大きさの真っ白な百合の花
その右手には「正義と真理」の象徴たるひと振りの銀色に輝く剣
そして、背中には一対の真っ白な翼
そう、彼女は神の使い、すなわち天使である- 853 :1 [sage]:2010/11/19(金) 08:17:00.34 ID:tWqhuVI0
その天使は溜め息が出るほどの美しさであり、また呼吸さえも忘れてしまいそうなほどの美しさでもある
触れる事も声を掛ける事すらも罪を感じてしまう程の神聖な存在
しかし、それは荘厳なものではなく、ただ彼女の姿を見るだけで心の奥底まで光が満ち溢れそうな程の慈愛の塊の様である
そして、その美しい女性の姿をした天使は、ゆっくりと前に歩む
天使の目に映るのは、一人の若き女性
彼女はただの人間であり、そして後の世で聖なる母として崇拝される者
いきなり目の前に現われた天使に戸惑いの表情を見せる女性
その女性の足元に、優美に跪く天使
そして、天使は美しい鈴の様に澄んだ声でこう言った
「おめでとう、幸運な人よ。主があなたと共におられる」- 854 :1 [sage]:2010/11/19(金) 08:19:08.30 ID:tWqhuVI0
サーシャ「………」
目が覚めると、美しい青い天使も、その天使を膝まずかせた女性も居なかった。
あれは何の夢だろう? あの夢に出てきた天使と女性は…
おめでとう、幸運な人よ。主があなたと共におられる…
それは受胎告知の一説。
天使とは本来、性別の概念が無い。なぜなら彼らは神の道具であり、子を産み、
種を存続させるという生物にとっては当たり前の事をする必要が無いからだ。
宗教画では、天使は大抵、男性の姿で描かれている。
だが、その中で唯一、女性の姿で描かれている天使がおり、神学的にもその天使は女性であると主張する者達も居る。
それが受胎告知で有名な大天使ガブリエル(神の力)だ。- 855 :1 [sage]:2010/11/19(金) 08:20:46.50 ID:tWqhuVI0
実際のところ、聖書にその様な記述は無いが、ロシアでフィアンマがサーシャの体を利用して不完全な形で
召喚したミーシャ・クロイツェフは確かに女性的な体つきをしていた。
無論、あの全身が布に覆われた奇妙な姿ではなく、夢に出てきたガブリエル(神の力)はもっと人間に近い姿をしていたが。
サーシャ「奇妙な夢をみてしまいましたね…」
ジブリール「たぶん私の記憶がお前に流れ込んだのだろう」
サーシャ「……」
ジブリール「起きたかネボスケ」
サーシャ「……」
見知らぬ女性が上から自分の顔を覗き込んでいる。
それは夢に見た天使と全く同じ女性。
そう言えば、そもそもいつの間に寝てしまったのかも覚えていないが、どうやら自分はこの女性に膝枕をされながら寝ていたようである。- 856 :1 [sage]:2010/11/19(金) 08:22:17.54 ID:tWqhuVI0
ジブリール、いやガブリエル(神の力)
生命の樹(セフィロト)の第九セラフであるイェソド(知恵)の守護者
エデンの統治者にして最後の審判で死者を復活させ、神の国へと導く者。
司るのは真理、慈悲、復活、そして死。
真理を司る天使ゆえに神の言葉(真理)を人に伝える啓示の役割も担っており、
ムハンマドにコーランの内容を教え、また聖母マリアに神の子を身に宿した事を伝えた。
ちなみにエリザベトに洗礼者ヨハネを身籠った事を告知したのもこの天使である。
そして死を司る天使は、かつて堕落したソドムとゴモラを硫酸の雨で滅ぼし、
またこの女子寮で死んでいったはずの仲間達を死の運命から解き放った。- 857 :1 [sage]:2010/11/19(金) 08:23:56.90 ID:tWqhuVI0
ガブリエル「どうした? 私の美しさに見惚れてしまったか?」
サーシャ「第一の質問ですが、これはどういう事ですか?」
ガブリエル「なに、これが私の本当の人型バージョンだ」
サーシャ「いえ、繰り返しますが、なぜあなたがその様な姿に?」
ガブリエル「ちょっとお前から生命力を根こそぎ吸収しただけだ」
サーシャ「第一の解答ですが、何てことしてくれてんですかあなたは」
なるほど、だから寝ていたのか。
しつこいようだが、ガブリエル(神の力)
天使の中でも最上級の存在で、神の後方に座し、月を守護し、水の象徴とされている。
だが一度だけ、その不品行により神の恩寵を失い、天界から追放されている。- 861 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:33:38.95 ID:tWqhuVI0
- 【最大主教と神の力】
ローラ「ふぅ…お茶が美味しいのよ…」
侍女「最大主教様、年寄り臭いですよ」
ローラ「うるさきかな。このダージリンの香りに彩られた優雅な昼下がりに水を差すような事を言うべからずなのよ」
侍女「最大主教様、それはアールグレイです」
ローラ「……下がりなさい」
侍女「はい」 - 862 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:34:41.14 ID:tWqhuVI0
ローラ「ふぅ……」
ローラ「いや、別に変な意味じゃなきことよ? お茶が美味しいのよ?」
サーシャ「第一の私見ですが、名より実を取るあなたらしいですね。紅茶の香りよりティータイムそのものを楽しむタイプですか」
ガブリエル「このシュークリーム美味いなぁ…」もぐもぐ
ローラ「……」
ローラ「ちょっと待たれい!!」
ガブリエル「あん?」
ローラ「お前達はいつの間にここに来たりける!? てかいつからそこに居た!?」
サーシャ「第一の解答ですが、あなたがダージリンとアールグレイを間違えたとこかr」
ローラ「人のミスを笑うな! 傷を抉るべからずなのよおおお!!!」
ガブリエル「愉快な人間だな」
サーシャ「そうですね」
ローラ「ぐぬぬ…」- 863 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:36:33.80 ID:tWqhuVI0
ローラ「まったく、折角のお茶の時間に奇妙な客を招いてしまいたものね」
ローラは指先で小さなベルをつまみ、チリンチリンとそれを鳴らした。
すると、先ほどの侍女が現れた。
ローラ「この者達にお茶の用意を」
侍女「畏まりました」
ガブリエル「おいボンヌドダーム、ついでにケーキとか甘いものを大量にもってこい」バクバク
ローラ「……」
優美で壮麗な見た目とは裏腹に、不遜な言葉遣いと態度でもって、ジャムを塗りたくったスコーンを頬張りながら侍女に命令する大天使。
その大きすぎるギャップは、傍から見ているローラを唖然とさせる程である
侍女「畏まりました」
不品行により神の恩寵を失ったというのも、あながち嘘ではないのかもしれない。- 864 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:37:49.26 ID:tWqhuVI0
ローラ「こほん…ところで、お前達は何しに来たるの?」
サーシャ「第二の解答ですが、このガブ…ガブリエーレが甘い物が食べたいとほざいたので」
ローラ「それならばどこぞの駄菓子屋でも行けばよかろう」
サーシャ「第三の解答ですが、どうせなら偉そうにしている人間にたかりに行こうと彼女が言ったので」
ローラ「良い性格したるわね…」
ガブリエル「ケーキうめえ…」
ローラ「……なるほど」
ローラ「聖書ではしばし甘味の快楽を語れらたるけど、天使も御多分に漏れずそうなのかしら?」
サーシャ「!?……気づいていたのですか? テレズマは相当抑えられているはずですが」
ガブリエル「そりゃそうだろ」
ローラ「クスクス……これは本当に面白い客を招いてしまったものね」- 865 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:40:02.40 ID:tWqhuVI0
ガブリエル「言っておくが、お前に協力するつもりはないぞ」もぐもぐ
ローラ「それは残念ね、ケーキの代金くらいは払ってもらいたきことなりけるのだけど」
ガブリエル「見返りを求るなとイエス様から教わらなかったのか?」
ローラ「別に大した事を求めてるわけじゃなきにつき」
ローラ「ただ十字教を信ずる一教徒として、本物の天使との与太話を楽しみたきことなのよ」
ガブリエル「私の話でも聞きたいのか? だが、私にも言える事と言えない事がある」
ローラ「そんな“真理“だの“啓示“なんて堅苦しいものじゃないの。例えば、受胎告知の話とか聞いてみたいわね」
ガブリエル「受胎告知…ああ、あれか。そんな面白い話じゃないと思うが」
狡猾に権謀術策を張り巡らす清教派のトップであるローラ・スチュアート。
だがこの時の彼女は、純粋に知的好奇心からこの目の前の天使に興味を持っていた。
それもよくよく考えてみれば普通な事だろう。目の前にさり気なく現れてケーキを頬張ってはいるが、
天使が人間の前に現れる事など特別な、それこそ聖書に伝説として記されるほどの事態なのである。
普通の十字教徒であれば、泡を吹いて倒れていてもおかしくはない状況なのだ。- 866 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:42:17.20 ID:tWqhuVI0
ガブリエル「そうだな…あれは初めて私がマリアに出会った頃の話だが…」
【回想】
ガブリエル「おめでとう、幸運な人よ。主があなたと共におられる」
マリア「え?」
ガブリエル「ご懐妊おめでとう」
マリア「いや、私は処女なのですが…」
ガブリエル「おめでとう」
マリア「いえですから、私は処女でございます! それに婚約中に妊娠すると死刑になってしまいます!」
ガブリエル「家族が増えるよ! やったねマリアちゃん!」
マリア「おいやめろ」
マリア「ですから、私は殿方と交わった覚えはございませんし、それに結婚前にその様な事をすると
ユダヤの法で死刑になってしまうのでございますよ」※ユダヤの衆議会には死刑の権限はありませんでしたが、
私刑により殺すという事が行われていました。
ガブリエル「大丈夫だ、問題ない」
マリア「問題しか無いでしょうが!」
ガブリエル「ほら、エリサべトだってあの歳でヨハネを身籠ったから大丈夫だよ」
マリア「いえですからそういう問題では…というか、なぜ偉大なる主は私などに主の御子を?」
ガブリエル「神って意外と地味で素朴で優しい娘が好きみた…おっと、やめておこう。色々言うと後が怖いし、何より神は絶対だからね」
マリア「?」- 867 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:43:17.95 ID:tWqhuVI0
ガブリエル「まあとりあえず何かあっても神が絶対に守ってくれるし、大丈夫だ、問題ない」
マリア「本当でございますか?」
ガブリエル「神は絶対だかr」
マリア「そのネタはもう良いのでございます」
ガブリエル「ルシフェル元気かなぁ……あ、そうそう、生まれてくるのは男の子だから。名前はヨシュアって付けなよ」
マリア「それは主の意向でございましょうか?」
ガブリエル「ああ、彼の言う事には逆らえないよ。神は絶対だk」
マリア「ああ、なんという事でございましょう、主がこの私などに…」
ガブリエル「神の子だからちゃんと育てなよ? 健康な赤ちゃんを産める様にしっかり栄養をトルノデス」
ガブリエル「ま、こんな感じだったかな」
ローラ「聖書と違ってかなり軽いのね」
サーシャ「それよりもネタが寒すg」
ローラ「面白い話が聞けて満足なのよ」
ガブリエル「喜んでもらえて何よりだ」- 868 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:44:41.77 ID:tWqhuVI0
ローラ「ところでイェソド(知恵)の守護者は、もっと面白い話を沢山知りたるのかしら? 私はもっとそなたの話を聞いてみたきことなのよ」
ガブリエル「……先ほども言ったが、私は話せる事と話せない事がある」
ローラ「別に難しき事ではないのよ。私が知りたき事は、そう…まずは…」
ローラ「神浄とは何か、教えてもらおうかしら」
サーシャ「神…浄…?」
ガブリエル「ふむ…私にとって話せるか否か、ギリギリの所だな。そうか、なるほどね」
ローラ「なんの事かしら? それに、未来の事は話せないのではなくて?」
ガブリエル「これを話してしまう事が未来に何らかの影響を与えてしまうかもしれない。神はそれを望まない」
ローラ「話せる範囲で良きことよ」
サーシャ「…?」- 869 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:47:14.72 ID:tWqhuVI0
ガブリエル「十字教とやらでは、右手は神聖なものとされているな。まあ、ある意味自然な事なのかもしれないが」
ガブリエル「だが、あの少年の右手を十字教の規範で捉えると、その本質を見逃してしまう」
ローラ「それはどういう意味なのかしら?」
っ
ガブリエル「簡単な事だ。あの右手があって初めて力が備わったのではない。右手の奇跡なんてものに囚われるな。
あの少年の中に潜む力があって、初めて幻想殺しが宿ったと考えるべきだろう」
サーシャ「……それで、つまるところ神浄とは?」
ガブリエル「…お前はなぜ、四大元素が歪んだと思う?」
サーシャ「それは…第一の解答ですが、私には分かりません」
ガブリエル「だろうな。魔術を当然の様に行使する十字教徒には、なぜこの世界が歪んだのかは理解できまい」
ガブリエル「そもそも魔術とは、異世界の法則によりこの世界に現象を起こしている。
思い出せ、そもそもこの世界には本来、魔術など存在しないという事を」
ローラ「……異世界の法則をこの世界に無理矢理引っ張ってくる事は、この世界と異世界の境界を曖昧にし、歪みを生じさせる」
ローラ「つまり、神浄とは、異世界とこの世界の歪みを正すこの世界の法の様な存在であり、異能の力を打ち消す幻想殺しはその副産物だと?」
ガブリエル「さあな、すべては神のみぞ知るってところか」
ローラ「重要な所をはぐらかしたるとは、本当に良い性格をしたるわね」
ガブリエル「これでもギリギリのところまで話したんだ。むしろ感謝してもらいたい」- 870 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:49:43.94 ID:tWqhuVI0
ローラ「ではもう一つだけ質問したるのよ。アレイスターの目的は、そしてエイワスとは一体何者なの?」
ガブリエル「一つじゃなくて二つだな。その質問をしてくるという事は、お前はアレイスターの正体に気がついたという事か」
ローラ「……」
ガブリエル「アレイスターの目的は話せない」
ローラ「……やはりそう答えたるか」
ガブリエル「そしてエイワスについてだが、あれも実のところ、私にもよく分からない。
というのも、あれは神が生み出したものではない、我々とはフォーマットが異なる存在だからな。
そもそも、あれを天使と呼んで良いのかどうかすら疑問だが」
ガブリエル「まあ、守護天使の意味をどう解釈するかにもよるが、私はあれを、オブザーバーの様な存在だと見ている」
ローラ「つまり、エイワス自身には目的は無いと?」
ガブリエル「いや、目的はあるのだろう。だがそうだとしたら、アレイスターという男も哀れなものだな……」
ローラ「………」- 871 :1 [saga]:2010/11/19(金) 20:51:35.48 ID:tWqhuVI0
ガブリエル「まあ、それでも奴は面白い事をしている。超能力と言ったかな?
あんな力を開発するとは、なかなか観察者としては面白い方向に世界は動いているのだろう」
サーシャ「第一の質問ですが、どういう意味ですか?」
ガブリエル「超能力の開発……能力者は、“自分だけの現実”というのを現象を起こすための拠り所としているらしいな。
実に面白い話じゃないか。聖書でも神話でもなく、自分の意思で現象を起こすのだからな」
サーシャ「…?」
ガブリエル「超能力も魔術も現象そのものは異世界のものだが、問題は法則だよ。私に話せるのはここまでだ」
ガブリエル「さて、アレイスターはセレマという言葉をよく使っていたな。セレマと超能力の関係は?
超能力と魔術の違いは? なぜ奴は十字教の時代は終わったと言った? そしてなぜこの世界は歪んでいる?
それを考えれば、もしかしたら真相の片鱗くらいは見えてくるかもな」
ローラ「そうか…実に参考になりけるのよ。感謝するわ大天使」
ガブリエル「おいボンヌドダーム、ケーキのおかわりだ。全種類持ってこい」
サーシャ「……」
何やらローラは納得したようだが、サーシャには何の事だか全く分からなかった。
ローラは何をしようとしているのか? 学園都市統括理事長アレイスターの正体?
第三次世界大戦が終わった今、この世界に何が起きようとしているのか……- 878 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:23:17.54 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「第一の質問ですが、まだ食べる気ですか? 最大主教のティータイムに乱入して散々ケーキを貪っておきながら」
ガブリエル「甘味は神の恵みと良く似ていてな、天使にとっては大好物とも言えるのだ」ムシャムシャ
ローラとのお茶会の後、”もっと甘味を食わせろー!”と駄々をこねるガブリエルの我が儘により
サーシャとガブリエルは現在とあるケーキショップに居た。
そしてガブリエルはテーブルに並べられた大量のケーキに舌鼓を打っているのであった。
サーシャ「それにしても食べすぎでは?」
ガブリエル「大好物なのだ」ムシャムシャ
サーシャ「……第一の解答ですが、請求書は最大主教宛てにしておきますから良いですが…」
サーシャ「ところで第二の質問ですが」
ガブリエル「ケーキにも様々な種類があるのだな。全く良く考えつくものだ人間も」
サーシャ「神様は、どんな姿をしているのでしょうか?」
ガブリエル「……」
その質問をした瞬間、ガブリエルのケーキを貪っていたフォークがピタリと止まった
サーシャ「……あの」
ガブリエル「気になるか?」
サーシャ「それは誰でも気になるでしょうが」
ガブリエル「ふむ……」
ガブリエル「……」もぐもぐ
再びケーキを食べ始めるガブリエル- 879 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:24:22.45 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「……あの」
もしかして、聞いてはいけない質問だったのだろうか?
だが、ガブリエルは再びフォークを止め、手放した。
そして、紅茶を一口啜り、サーシャの顔をじーっと真っすぐに見つめた。
サーシャ「……」
深い青色の瞳の様であり、淡いアクアマリンの様な瞳でもあり、青紫色にも見える不思議な瞳。
見方や角度、光の当たり具合によって、まるで宝石の様に天使の目はその見え方が変わってくる。
その目は本当に自分の顔を見ているのだろうか? それとも遠い過去か、遥かな未来か、或いは違う世界を見ているのか。
人とは違い、人よりも遥かに高い位置に存在する彼らの価値観など、人である自分には知る由も無い。
ガブリエル「私が神だ」
サーシャ「……」
サーシャ「what?」
ガブリエル「という冗談はさておき」
サーシャ「……」- 880 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:26:12.02 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「そうだな…まあ別に冗談でも無いのかもしれない。ガブリエル…英語表記ではそう発音するらしいな。
もともとは神が人間どもに与えた古代ヘブライ語、或いは我々天使が使う天使の言語……お前達が言うところの
エノク文字の方がより我らに近いものではあるのだが」
ガブリエル「だがそんな事はどうでも良い。私に与えられた名は“神の力”」
サーシャ「それは十字教徒であれば誰でも知っている事です」
ガブリエル「そうだな。私が司る属性は四大属性における水だ。象徴する色は青、そして月と後方」
ガブリエル「まあ後者はともかく、なぜ私が水を司り、神の力と呼ばれているのか分かるか?」
サーシャ「第一の解答ですが、考えた事が無かったです」
ガブリエル「神が神罰を下し、神の命令により、神は本来なら人を助けるはずだった天使に人を殺させた」
サーシャ「ソドムとゴモラに降った硫黄の雨ですね」
ガブリエル「そうだ…そしてもうひとつ、神が多くの人間を殺した出来事があっただろう」
サーシャ「私見ですが、神が人を[ピーーー]事自体があまり考えられないのですが…」
ガブリエル「ノアの箱舟」
サーシャ「……あれは…あれもあなたが?」
ガブリエル「良く考えてみろ、なぜ神は大洪水などという方法で人を地上から消した?
全能の神ならば他にも数多の手段があったはずだ」
サーシャ「第一の解答ですが、それゆえに水を使った方法で地上の浄化を行ったわけですか…」- 881 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:27:54.49 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「おそらく私ほど人間を殺した天使は居ないだろう。だから私は神の力という名を冠せられている……という見方もできるな」
サーシャ「第二の私見ですが、だとしたら」
ガブリエル「そうだ、神は直接その手で人を殺してはいない。創世記において地上を作って以来、直接手を下した事は無い。
バベルの塔も“言葉を分ける”のは神の意志であるが、実際に行ったのはどこかの天使かもしれない。
モーセの出エジプトも、海を割ったのはとある天使の所業だ」
サーシャ「かもしれないとは、曖昧な言い方ですね」
ガブリエル「天使とは言え、全てを知っているわけではないんだ。秘密を司る天使が別に居るくらいにな」
ガブリエル「まあつまりだ、神は例えるなら、このケーキのクリーム…いや、砂糖と言うべきかな。
神はテレズマという名の砂糖であり、その砂糖を分けて色んなケーキを作った。そのケーキが我ら天使だ」
サーシャ「第二の解答ですが、神は人間と似ているのではないのですか?」
ガブリエル「似ているじゃないか。神は自分の持つ素晴らしい物を沢山人間に与えてくれた」
サーシャ「そうなのでしょうか?」
ガブリエル「そうなんだ。神は人間を愛し、人間は神に愛される物を内に備えている。まあ問題はそれについてだ」
サーシャ「そう言えば、聖書にもそんな記述がありましたね」
ガブリエル「神は人間に様々な物を与えた。だが一つだけ、神が与えなかったものがある。何か分かるか?」
サーシャ「第三の私見ですが、それは力や知恵と言った類のものですか?」
ガブリエル「いいや違う、もっとお前達人間にとっては身近なものさ」
ガブリエル「人間はそれを“意思“と呼んでいるな」
サーシャ「意思…?」- 882 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:30:26.64 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「神の意思は我ら天使の意思であり、我ら天使の意思は神の意志を超える事は許されない。
私達天使は常に神のために動いている」
ガブリエル「例えばロシアの戦争で、或いは初めてお前の体に降りてきた時、私ことミーシャ・クロイツェフは天に還るために暴れたが、
これは神の意思から外れる事を防ぐための一種の自動修正機能と言えるな」
ガブリエル「天使はラジコンと同じ、自らの意思を持つ事は許されない。そして神の意志から外れ、
自らの意思を持ってしまった時、天使は堕天使になる」
サーシャ「原作でもフィアンマが言ってましたね」
ガブリエル「そういうメタ発言もキャラが書き手の意思を外れたがゆえの所業……いや違うか」
ガブリエル「まあともかく、神は人に意思を与える事は無かったが、
代わりに人は自らの内なる物から沸き上がる自分だけの意思を手に入れた。それは、我ら天使には無いものだ」
どこか遠い目をしながら、ガブリエルは紅茶にミルクを注ぐ
澄んだ赤錆色の液体が白いミルクと混ざり合い、混ざり合い、混ざり合い…
あっと言う間に瑪瑙色の柔らかに濁った液体に変わった
元の色はどんな色だったか?
紅茶もそれを覚えてはいないのだろう…
その様子を見ながら
ガブリエル「大切にしろよ…自分の意思を…」
神の意思に塗り潰された天使はポツリとそう呟いた- 883 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:33:25.60 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「神はどんな姿をしているのか? だったな」
ガブリエル「神はどこにでも居る。水にも、炎にも、風にも土にも。しかし、それでいてどこにも居ない神は、
私達にその意思で語りかける。神はエーテルかもしれないし、或いはテレズマの塊なのかもしれない…」
サーシャ「つまり…どういう事ですか?」
ガブリエル「分からんって事だ」
サーシャ「第三の解答ですが、やはりその結論に落ち着くわけですか」
ガブリエル「仕方ないだろうが。分からないものは分からないんだ。要するに、この世界を動かす意思の塊なんだと私は思う」
サーシャ「第一の質問ですが、それが神様が作ったこの世界のシステムの正体という事ですか?」
とサーシャは質問するが、ガブリエルは答えない
その代わりに、美しい鈴の様な声色に、ある種の厳正さを宿らせ
ガブリエル「人間よ」
今までの無垢な顔を、まるで世界の危機を救う者に啓示をしに来た時の様に、真剣な表情に変えて天使はサーシャに告げた
ガブリエル「我々は神の意思を与えられたが、自分の意思という物は与えられなかった。
だが、人間はそれを持っている。だから天使達はそれを妬み、堕天した者も居る。それをよく覚えておけ」
サーシャ「……」
ガブリエル「さて…」
ガブリエルは空になったティーカップを置く
いつの間にか彼女の顔は、今まで幸せそうにケーキを頬張っていた時の様な顔に戻っていた- 884 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:35:37.27 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「そろそろ日も暮れてきた。行きたい所があるんだが良いか?」
サーシャ「?…ええ」
一瞬だけ天使が、まるで異様なまでの緊張感に包まれた儀式を司る司祭の様な顔になったのはなぜだろう?
天使は自らの意思が無く、神の意思を超える事を許されない。だからこそ、自分の意思を持つ人間を羨ましく思う
もしかしたらこの天使もそうなのだろうか…
………………
サーシャ「……ここは」
ガブリエル「お前にとっては馴染みのある場所だったな」
店を出た後、サーシャは“少し目を閉じてろ”とガブリエルから言われ、その通りにした。
ただそれだけ。気が付いたら、いつの間にか時計塔の最上階に居たのだ。
運ばれていた感覚はまるで無い。空を飛んでいる時の様に風を切る様な感触も無かった。
目を開けたらいつの間にかここに居て、例えるなら自分を中心に周囲の景色が変わってしまった様な感じである。- 885 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:37:25.87 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「今夜は…月が良く見える…」
ガブリエルはバルコニーの手すりに両手を付き、遠い遥か空に浮かぶ丸い月を見上げていた。
少女の様な白い瑞々しい肌が月の光に照らされ、あどけない顔立ちが妖艶に彩られる。
青いグラデーションの髪が月光の優しい光を注がれる様に浴び、上質な絹の様にキラキラと、夜風に棚引きながら神秘的な輝きを放っている。
綺麗だった。
可愛いとか、異性に恋心を抱くとか、そういう類ではない。
ただ言葉を失い、それを表現する事が何よりも愚かな事だと思えてしまう様な神秘的な美しさだった。
ガブリエル「この世界か、あるいはもっと違う神の国か…」
ガブリエル「今からほんの少しだけ前の話だが、私が生まれた時、初めて見たのは月だった」
サーシャ「……」
彼女の言うほんの少しとは
きっと、まだアダムとイブが生まれるよりもずっと昔なのだろう
遠い遠い、どんなお伽噺よりも聖書よりも遠い昔の話- 886 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:38:22.81 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「あの時と同じ、月は変わらない……いつも同じだ……」
美しい鈴の様な声色は、昔を懐かしんでいる様であり、またどこか寂しさを含んでいる。
そして、唐突に彼女は語りかけてきた。
ガブリエル「なあ、お前は月を見た時、懐かしさを感じた事は無いか?」
サーシャ「……第一の解答ですが」
思い出す
始めてイギリス清教の女子寮に来た時、そしてみんなと別れる決意をした時
そう…
サーシャ「……確かに何かあった時、悩んでいる時、思いつめた時、私は月が見たくなりました」
あくまでも漠然とだが、そんな感覚はあった。
それがノスタルジックなものだったかどうかは分からないが…- 887 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:40:03.85 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「染まっているのだろうな……人ならざる存在に……」
サーシャ「第一の質問ですが、それはどういう事でしょうか?」
ガブリエル「考えた事は無かったのか? なぜお前に天使が降りたのか。
なぜお前がそんな器を持って生まれ、なぜお前が天使の力を使えたのか」
サーシャ「………」
ガブリエル「かつて、人の身から天使になった者が居る。それは偶然なのか、或いは神がそう運命を定めたのか。
神の子もそうだろう。神の子でありながら、彼は人間として生まれ、殺された」
サーシャ「第一の質問ですが、一体何が言いたいのでしょうか?」
疑問を投げかけた瞬間に、ガブリエルはサーシャの目の前に現れた。
動作は一切無く、知覚と共にそこに出現するかの様に
ガブリエル「サーシャ、私はお前に嘘を吐いた」
サーシャ「えっ…?」
ガブリエル「天に還れないというのは嘘だ。本当は…」
ガブリエルはそこで一瞬言葉を詰まらせた
サーシャ「……」
唖然とした顔で、長い前髪の向こうから大きな瞳でこちらを見つめるサーシャ
そのサーシャの赤い瞳を見つめなおし
ガブリエル「本当は、お前を迎えにきたんだ」
伝えたかった大切なフレーズを、天使は喉の奥から絞り出す様にそう言った- 888 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:42:26.17 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「……第一の解答ですが、言ってる事の意味がよくわからないのですが…」
突拍子も無い話だ。なんで天使が自分を迎えに来たなどと言うのだろうか?
まるで死んでお迎えが来たようで、あまり聞こえの良い話ではない。
ガブリエル「もう分かってるはずだ。お前は人として越えてはいけない領域を超えた。
革命の時に初めて私の力を使い、フィアンマとの戦いで、お前は完全な天使になった」
ガブリエル「……指の震えは、まだ残っているか?」
サーシャ「……」
御使下しの時に莫大な天使のテレズマを取り入れた影響か、魔術師がサーシャに近寄ると、
サーシャは不自然な指の震えと、胸の圧迫感を感じていた。
だが、最近はそれがない。むしろ、今ガブリエルが言及した事で改めてそうだったと思い出したくらいだ。- 889 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:44:03.94 ID:oTfmLrQ0
器は所詮器。自分が人である所以は、自分が器だけで天使としての力は持ち合わせてはいないから…
だが、あのフィアンマとの戦いの時に、彼女は莫大なテレズマを取り込み、自分の物にし、そして氷の翼を真っ白な翼に変えてみせた。
ガブリエル「指の震えが収まってきたのは、お前が力に慣れてきたという事だろう」
サーシャ「第二の解答ですが、私はフィアンマに力を返したはずですよ」
ガブリエル「そんなものは関係ない。もともとお前には器があった。にも関わらずそこに力が備わらなかったのは、
お前の人間としての境界線が、力が流れてくるのをせき止めていたからだ。例えるなら、水をせき止める関門の様にな」
ガブリエル「最初にその門に穴が空いたのは、ベイロープという少女を助けるために騎士に立ち向かった時……
そう、お前が初めて力を手にした時だ」
そしてベツレヘムの星で、人間という境界線の門は完全に決壊した。
後は単純な話。水が高い所から低い所へ流れていく様に、そして湖に水が貯まる様に。
予定調和と同じ様に、そうあるべき場所にそうあるべき力が集まっていく。- 890 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:45:08.60 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「……だから…」
否定したい。だが、思い浮かぶ節がある。
最近はもう、人間の魔術が殆ど使えないのだ。
拷問用霊装の様に予め魔術的な処理を施されていたものはともかく、自分の力で生命力を魔翌力に変換し、人間の魔術を使う事がもうできない。
まるで最初からやり方を知らなかったかのように、どうやって魔術を使っていたのかが思い出せないのだ。
ガブリエル「今はまだ、お前の力を収めるための器が回復していない。だが、それも時間の問題だ」
サーシャ「私は…天使になるのですか?」
ガブリエル「いいや、もう天使と同じだよ、お前は」
サーシャ「……」
当然な話だが、受け入れられなかった。
本物の天使が目の前に現れて驚くだけの人間が、どうしていきなり“お前は天使なんだ”と言われて納得できようか- 891 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:46:35.11 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「突然の事で受け入れられないのは分かる。だが、そう長く待っていられるほどの時間は無い」
ガブリエル「だから…」
月を背後に立つ天使は、とてもこの世のものとは思えない、形容しがたいほどの神々しさだった。
その天使が、ゆっくりとこちらに手を差し伸べて
ガブリエル「お前の意思を聞かせてもらおうか」
まるで本題をはぐらかす様にそう言った。
サーシャ「……第一の質問ですが、なぜですか?」
ガブリエル「……」
サーシャ「私を天使としてあなたの世界に導く……それが神の意思だと言うのなら」
サーシャ「なぜあなたは、私の意思を尋ねる様な言い方をするのですか?」- 892 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:47:54.80 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「……そうだな、確かに不思議だ」
そう言うと、ガブリエルは子供の様に無垢な笑顔を浮かべながら
ガブリエル「私はお前を天に連れていくためにここに来た。御使下しとは違う、
神の意思があるからこそ、私は今こうして人間の世界に居られる」
ガブリエル「だが本当は、お前に興味を持ったからここに居るのかもしれないな…」
サーシャ「…それは、どういう事ですか…?」
ガブリエル「お前が好きだという事だろう…」
サーシャ「!?」
あまりに衝撃的な告白に、サーシャは再び唖然となった。
だがそんなサーシャの事など気にも留めずにガブリエルは話を続けた。
ガブリエル「世界のシステムは、神がこうあるべきと定めた予定調和により成り立っている。
人は予め神が定めた法則により、神が定めた運命に従う事で、世界は元々そうあるべきだった軌道を回る様に作られている」
ガブリエル「だが、人は“意思”の力によりそれを捻じ曲げてしまう。四大属性が歪んだのも同じ類の現象だ」
ガブリエル「サーシャ、お前とてそれは例外ではないのだぞ?」
サーシャ「私が…ですか?」- 893 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:49:46.39 ID:oTfmLrQ0
ガブリエル「もしもお前が天使の力を手にしなかったら、イギリスでお前の仲間達と出会わなかったら」
ガブリエル「そして、もしも亡命なんて考えなかったら、世界はどんな軌道を描きながら回っていたんだろうな?」
サーシャ「……それは分かりません。ただ…」
サーシャ「第一の解答ですが、私は私の一連の行動に対し、なんの未練も後悔もありません。
理由はどうあれ、あの時亡命を決意したから、私は素敵な仲間達に巡り合えたのですから」
ガブリエル「そうか…そうだな。それはきっとお前の意思なのだろう」
ガブリエル「もしかしたら、それ以外にも意思の力が働いていたのかもしれない。
今までの事を思い出せ。お前が自分で決断し、苦難の道を歩いて来た事をな」
サーシャ「第二の解答ですが、苦しかった思い出は、あまり思い出したくはありません」
ガブリエル「そうか。まあつまりだ、私はお前に興味を持った。お前の意思が神の意思で定めた運命を塗り替えていくのがとても面白くてな…」
サーシャ「それはつまり、あなたは私を試しているのですか?」
ガブリエル「お前を連れていくのが神の意思なら、お前がそれを断るという事は、お前が神の意思を乗り越えるという事になる…」
ガブリエル「ああ、そうか……もしかしたら、こうしたいと願うのは、私の意思なのかもしれない……
なんて素晴らしいのだろう、自分の意思とは、自分で物事を決められるというのは……やはり人間は羨ましい…」
なぜか恍惚の表情を浮かべながら、天使は自分勝手な言葉を垂れ流していた。- 894 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:52:21.57 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「第二の質問ですが、もしも私があなたの申し出を断ったとしたら、どうなるのですか?」
ガブリエル「そうだな…例えば、アンジェレネという少女が居ただろう?」
ガブリエル「以前、あの少女はイギリス清教に恨みを持つ古い亡霊にとり憑かれた。
だがあの亡霊自体、もともとはそんな力など無かったはずだ。ましてや神に仕えるシスターが襲われるなんて事はな。
だから、今まではあんな事件など起きなかったはずだろう?」
サーシャ「もしかして、あれはあなたがした事なのですか?」
ガブリエル「意図的にではないがな。そもそも、私の様な天使がこの世界に居る事自体が本来なら異様な事であり、
特別な事情が無い限りあってはならない事なのだ。いくら力を抑えても、天使の存在は世界のシステムを掻き乱し、
予定調和を大きく捻じ曲げる」
ガブリエル「かつて御使下しが起きた時、私は天に戻るために神の意思に反して世界中の人間を殺そうとした。
そのくらいに天使が世界に及ぼす影響というのは大きいのだよ」
ガブリエル「もしかしたら私が居た事で、取るに足らない亡霊が力を得たのかも知れんが…
そんな事はどうでも良い。結論だけ言わせてもらうが…」
サーシャ「……」
ガブリエル「このままだと、お前の大切な仲間達に危害を及ぼす事になる。あのアンジェレネという少女の様にな」
サーシャ「……」
サーシャ「……そうですか…言いたい事はそれだけですか?」
ガブリエル「……サーシャ?」
取り乱すわけでもなく、落胆するわけでも嘆くわけでもない
なぜか天使の言葉を聞いた時、サーシャはクスクスと笑っていた- 895 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:54:55.63 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「ジブリ…いえ、ガブリエル。第一の解答ですが、私は今まで色々な物に巻き込まれてきました」
サーシャ「初めは上司から着せられた変態的な衣装。次は極めて政治的な事情、そしてクーデター、
挙句の果てには世界大戦にフィアンマの世界浄化計画……世界の事情にまで巻き込まれたのです」
サーシャ「私はみんなと一緒に居たかった。大切な友人の傍に居たかった。ただそれだけを望んでいたはずなのに、
ありとあらゆるものが邪魔をしてきた。ですが、さすがにもうこれで終わりだと思っていました…」
ガブリエル「……」
ただ静かに、サーシャは過去を語る。
子供に絵本を読み聞かせる様に感情を込めたものではなく、まるで淡々と事務的に説明していくかの様に
だが、それは内から湧き上がってくる炎の様な感情を抑えようと、必死に抵抗しているだけであった。
サーシャ「にも関わらず、世界の事情の次は神様の事情と来ましたか………クスっ…あはっ、はははっ………はは………」
サーシャ「ふざけるもたいがいにしろッ!!!!!!!」
突然目を見開き、吠え、激昴し、ガブリエルに掴みかかった- 896 :1 [sage]:2010/12/12(日) 05:58:18.92 ID:oTfmLrQ0
サーシャ「一体何様だ!? 何の権利があってどいつもコイツも私の邪魔をするんですか!? 一体私が何をしたって言うんですか!!?
天使を収める器? 御使下し? なんだってそんな下らないものに私が振り回されなくちゃならないんですか!? 答えろよ大天使ッ!!!!」
サーシャ「そんなに凄い才能なら、どこかの勇者やヒーローにでも授ければ良かったじゃないですか!!
なんだって私なんかにこんなものが備わっているんですか!!! 私である必要なんかないでしょうが!!!
本当は、本当の私は、ヒーローみたいに戦える様な人間なんかじゃない!!!!!!
天使だなんて呼ばれる様な存在なんかじゃない!!!!! 私はッ!!!!!」
そして、サーシャは目の前の天使に縋りつく様にその場に崩れ落ちた
サーシャ「私は……ロシア成教のシスター……そして、五和の友達のサーシャ・クロイツェフなんですよ…ただそれだけなんですよ!!!!!」
もはや天使の服を掴む力すら無い
サーシャはその場にへたり込み、そして…
泣いた
彼女が感情的になったのは、決まって誰かが傷ついた時だけだ
いつも無表情で、冷静で、感情を表に出す事も無ければ、それを他人にぶつける事も滅多に無かった。
どんなに辛い事があってもけして自分の事情で他人に八つ当たりしたりせず、いつも全てを自分の中に押し込めて処理してきた。
そんなサーシャが、初めて自分の全てを曝け出した。- 897 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:00:35.41 ID:oTfmLrQ0
次々と沸き上がり、溢れていく感情を抑える事ができなかった。
全てを押し込めていた壁が破られ、噴き出す血の様に、雪崩の様に今まで抑えていたものが一気に流れ出してきた。
自分よりも辛い想いをしている人間などいくらでも居る。辛いのは自分だけじゃない。
アニェーゼは両親を殺され、アンジェレネは捨てられて孤児になった。
シェリーは実験に巻き込まれて大切な友人を失った。神裂は生まれ持った幸運により、周囲を不幸にしてしまうという業を背負っていた。
それでも彼女達は前を見て生きている。そんな強い彼女達を尊敬し、仲間である事を誇りに思っていた。
だが、もう限界だ。
天使などと呼ばれても、自分はそんなに強い人間じゃない。
サーシャ「アニェーゼ! アンジェレネ! オルソラ! ルチア! 神裂! シェリー! 五和ぁッ!!!ああああああああ!!!!!!」
まるで子供の様に、いや、本来なら彼女くらいの年齢の少女なら当たり前の様に、サーシャは声を上げて泣いた
ガブリエル「……」
大天使と戦うという事は、それはこの世界にある全ての水と戦うという事に等しい。
アックアが力を削り、上条が儀式場を破壊し、学園都市が生み出した天使と学園都市最強の能力者が協力し合い、
やっとの思いで大天使を構成するテレズマを分散させる事ができた。
あくまでも分散させた程度に過ぎず、[ピーーー]事はできなかった。大天使とはそれほどに次元の違う存在である。
だがそんな大天使にも、目の前で泣く少女をどうにかするすべなど無い
ガブリエルはサーシャの前で膝を付き、泣き叫ぶサーシャの震える体をそっと抱き締めた- 898 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:02:38.41 ID:oTfmLrQ0
……………
どれくらい泣いただろう
これほど泣いたのは、もしかしたらこの世に生を受けて産声を上げた時以来じゃないだろうか
サーシャ「……」
サーシャはガブリエルの顔を見上げた
もともと赤い目をしているが、それでも彼女が泣いていた事が分かるくらいに赤くなっていた。
だが、全ての感情を吐き出し、洗い出した後の彼女の顔は、どこか憑き物が堕ちたかのようにスッキリとした表情をしている
そして、サーシャは決断した
サーシャ「第一の解答ですが、私は天使になります」
ガブリエル「……本当にそれで良いんだな?」
サーシャ「第二の解答ですが、私は神に仕えるシスターです。神の意思ならば、それに従うしかないでしょう」
そうは言うが実のところ、もはや付き合いきれないというのが本音だ。- 899 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:05:11.91 ID:oTfmLrQ0
ここで神に逆らっても、その後本当に天使になってしまった自分はどうやって生きていけばいいのだろうか。
天使という立場は、言ってしまえば人間である教皇や最大主教よりも遥かに上を行く地位である。
そんな立場に立ってしまった自分が、今まで通り皆と一緒に楽しく過ごす事など出来るはずがない。
それだけではない。神の意思を外れた天使がどの様な目に遭うのか、
きっと今までとは比較にならないほどの苦しみが待ち受けているのだろう。
ならばもういい。もうこれ以上の苦しみに立ち向かえるほど強くは無いし、立ち向かおうと思う様なマゾヒストではない。
それに、これは自分だけの問題ではない。自分が居る事で、大切なみんなを巻き込んでしまうのだから。
ここで終わりにしよう。これほど諦めるという選択が最良だと思えたのは、これが初めてだ。
だから、もう迷いは無かった。
ガブリエル「それがお前の意思か。まあ、それが正しいのかもしれんな…」
サーシャ「第一の質問ですが、この後私はどうすれば良いのでしょうか?」
ガブリエル「別に特別な事は必要無い。器が回復していなくとも、翼はあるはずだ。
ならば、今すぐにでもお前はこの世界から飛び立つ事ができるぞ」
サーシャ「そうですか…」
迷いは無い。だが、未練はある。
サーシャ「第二の質問ですが、最後にこの世界でしなければならない事があります」
ガブリエル「構わんよ。決断したのなら、時間はまだ十分にあるからな」
そう言うと、天使は少し屈んで顔を近づけ
そして…
サーシャ「…!?」
サーシャの唇に自分の唇を重ねた- 900 :1 [sage]:2010/12/12(日) 06:08:43.54 ID:oTfmLrQ0
驚き目を見開くサーシャだったが、すぐに彼女の意識は自分の背中に集中した。
ムズムズとした感触の後に、バサッ!と空気を叩く音が響く
サーシャの背中に、再び眩しい程に輝く純白の翼が生えた
そして、頭上にはどういう仕組みで光っているのか理解できない様な丸い輪が浮かんでいる。
ガブリエル「ふぅ…、いや何、お前から奪った力を返しただけさ」
ガブリエル「今までのお前は、あのフィアンマという男と同じミカエルの性質を持つ器だったが、
その翼を手に入れた事をきっかけに、根底から器の性質が変わってきている」
ガブリエル「多分、最初は瞳の色の変化に気がつくだろう。その頃にはきっと、おまえは…」
そこまで言いかけたところで、天使の体は解ける様に霧散した
サーシャから奪った力を返した事で、ガブリエルは自分の体を維持できなくなったのだ
サーシャ「……」
ガブリエルの言う事が本当なら、タイムリミットは自分の目の色が変わるまでという事になるのだろうか
だが別に構わない。
どれだけ共に長い時間を過ごし、思い出を積み重ねてきたとしても
別れなど、いつも突然やって来て一瞬で終わってしまうのだから…
- 901 :1 [saga]:2010/12/12(日) 06:23:17.76 ID:oTfmLrQ0
- 以上で神の力編を終わります
今までサーシャを月と合わせて神秘的な存在に見える様に描写した事は何度かありましたが(文章力はともかく)
今回はそれを回収して昇華させようと試みたという感じです。
特別な力があるという理由で世界を救おうと使命感に燃えたフィアンマとは、ここでのサーシャは対照的ですね
よくよく思い返してみれば、サーシャは主人公でありながら大事な場面ではやられ役や脇役に徹していたわけで
実のところ、あまりヒーロー的な書き方はしてきませんでした。
一応展開は考えていますが、本当に天使になってお別れというのもSSの結末としては無い事もないかなと思ってもいます。
では続きはまた後日
ワシリーサ「ところでサーシャちゃん、私は?」
サーシャ「第一の解答ですが、すっかり忘れていました」 - 902 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 06:46:19.06 ID:HN2cvUAO
- 乙なんだよ!
- 903 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 00:26:54.76 ID:A5R4Q8oo
- 乙! あとこれを言わないといけない気がした
サーシャちゃんマジ天使 - 907 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:36:18.40 ID:SfEol+250
- ようやく書き貯めできそうな時間が取れそうなフラグ。
久しぶりに投下します。 - 908 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:40:41.68 ID:SfEol+250
- 【サーシャの日常】
話はサーシャが再びイギリス清教に復帰し、そして天使になってしまうまでにあった普通の日常に起きた普通の出来事。
【前髪】
アニェーゼ「サーシャは前髪が長いですね。あれでちゃんと前が見えてるんですかね?」
サーシャ「……」テクテク
アニェーゼ「お、噂をすれば幼女」
サーシャ「……」テクテク
アニェーゼ「サーシャ、そのまま歩いてたら壁にぶつかっちまいますよ……なんてベタな展開が」
サーシャ「ぜぶらっ!!」ゴチン!!
アニェーゼ「……」
サーシャ「っ………」
アニェーゼ「なぜにシマウマ?」
サーシャ「なぜここに…いつから壁が!?」
アニェーゼ「強いて言うなら私が来る前からありました」 - 909 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:42:59.88 ID:SfEol+250
サーシャ「私見、まさかこれは魔術師の仕業!?」
アニェーゼ「そんな魔術師はイヤだ」
サーシャ「敵襲じゃあ!であえー!であえー!!」
アニェーゼ「日本の時代劇でも見たのでしょうか? 最近よく天草式の方へ遊びに行ってますし…」
五和「親方様!!」
アニェーゼ「正確にはお屋形様ですね」
五和「どうなされました!?」
サーシャ「五和! 第一の解答ですが敵襲です! こんなとこにいつの間にか壁ができていました。
これはきっと魔術師の仕業に違いありません!!」
五和「おでこをぶつけたんですか?」
サーシャ「……そうとも言います」
アニェーゼ「いやそうとしか言わんでしょ。混じりっ気なしドジ100%だよ」
五和「イタイのイタイのとんでけー」さすさす
サーシャ「五和、それは天草式の魔術ですか?」
五和「そうです。日本に古来から伝わる回復魔術です」
サーシャ「第一の解答ですが、なんだか痛みが引いてきました…」
サーシャ「ありがとうございます五和」
五和「いえいえ♪(やべぇ、お持ち帰りしてぇ…)」
アニェーゼ「……」
アニェーゼ「サーシャって、実は物凄くアホ?」- 910 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:44:50.68 ID:SfEol+250
【職業柄】
アンジェレネ「はふぅ…午後のティータイムは良いですねぇ…」
サーシャ「そうですね」
アンジェレネ「イギリスの紅茶はとても美味しいですよね」
サーシャ「第一の解答ですが、色合いがとても綺麗です。まるで血の様で」
アンジェレネ「飲んでる最中に血とか言わないでください…」
サーシャ「すみません」
アンジェレネ「オルソラの焼いてくれたクッキーもすごく美味しいですよ。ブルーベリージャムを付けてたべるとまた絶品です♪」
サーシャ「ブルーベリージャムを見るとアレを思い出しますね。拷問用霊装のペンチで“在らざるもの“の肉を潰した時の様な」
アンジェレネ「サーシャ!!」
サーシャ「すみません」- 911 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:46:17.25 ID:SfEol+250
アンジェレネ「うぅ…もしかしてわざと言ってません?」
サーシャ「第二の解答ですが、職業病の様なものです。切ないですね…」
アンジェレネ「サーシャ…そうですよね、沢山の怪物と命懸けの戦いをしてきたんですよね…」
サーシャ「ええ、もはやドラーバーをぶっ刺して金槌でかち割ってバールでくり抜いてノコギリで引きちぎる様な作業にも慣れて(ry)」
アンジェレネ「いいです!!もういいですから!! そんな詳細事項なんて知りたくありません!!」
サーシャ「そうですか…」
アンジェレネ「何で残念そうなんですか…?」
サーシャ「第一の質問ですが、このシュークリームもオルソラが?」
アンジェレネ「はい、とても美味しいですよ」
サーシャ「中身はカスタードですね」
サーシャ「第三の解答ですが、このカスタードクリームの色合いが肉を引き裂いた時に見える脂肪の様で…」
アンジェレネ「う、うわああああああん!!!」
アンジェレネは逃げ出した
サーシャ「フフフ…」
その後、しばらくの間アンジェレネの食欲が減退したらしい。- 912 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:48:15.41 ID:SfEol+250
【市場価格は2万から30万らしい】
五和「ただいま戻りましたー」
対馬「おかえり五和」
五和「アレ?」
対馬「ああ、サーシャね。あなたに会いに来たみたいだけど」
サーシャ「すぅ……zzz」
対馬「どうやら疲れてたみたいで、途中で寝ちゃったのよ」
五和「サーシャちゃん……サーシャちゃんが私以外の女の膝で寝るなんて…」
対馬「いや、膝枕で嫉妬されても…」
五和「やっぱ美脚ですか? サーシャちゃんも美脚が良いんですか?」プニプニ
サーシャ「ううん…zzz」- 913 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:50:53.23 ID:SfEol+250
対馬「それにしても、外人の娘って何でこんなにも可愛いのかしらね?」ナデナデ
サーシャ「んっ……zzz」スヤスヤ
対馬「最近じゃこの子、天草の間でラッキーパーソンになってるわよ」
五和「ラッキーパーソン?」
対馬「サーシャを見かけた日は良い事があるって。最近よく日本人街へ来るからね」
五和「へぇ…」
対馬「ちょっとしたアイドルになってるわよ」
五和「……」
対馬「もしかして、拗ねてる?」
五和「別にそんな事ないですよ…」
五和「でも、例えるなら自分が応援してたマイナーなグループがメジャーデビューして人気者になってしまった時の様な、そんな感じです」
対馬「分からないでもないわ、それ」
サーシャ「うーん……いつ…わ」
対馬「あらあら、どうやらあなたの夢を見てるみたいよ?」
五和「私の夢を?」
対馬「どんなに人気者になっても、結局はあなたが一番って事なのかしら?」
五和「サーシャちゃん…////」- 914 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/26(水) 15:52:01.13 ID:SfEol+250
サーシャ「いつわ…どうして……どうしてですか……zzz」
五和「……なんかうなされてるみたいですけど…」
対馬「五和、この娘に何かしたの?」
五和「えっ!? い、いえ! まさかそんな!!」
対馬「なんで動揺してるのかしら…」
サーシャ「いつわ…どうしてアロワナなんかになって……」
五和「……」
対馬「……」
対馬「五和、どうしてアロワナになったの?」
五和「私に聞かれても…でもなんでアロワナ?」
対馬「良かったじゃない。アロワナって高いのよ」
五和「これっぽっちも嬉しくないです!」
サーシャ「いつわ…だいじょうぶ……例えあなたが魚でも、私はずっと…ともだちです……むにゃzzzz」
対馬「ですってよ。良かったわね」
五和「嬉しいけど何か引っかかる…」- 921 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:36:56.93 ID:q5y8azw00
- 大事なことなので二回書きました。
べ、べつにミスしたわけじゃないんだからね!
【サーシャの日記】
「日記」。日を記すと書いて日記と読む。英語で言うとダイアリー。ロシア語でДневник。
今、私の手には一冊の日記帳がある。何てことはない、本屋に行けば普通に購入できる様な普通の日記帳である。
とは言っても、これは私が実際に本屋に足を運んで買いに行ったものではなく、オルソラがくれたものである。
突然に、何のフラグも前触れも無く。
要は気まぐれであり、特に意味があるわけでもないし、なぜ彼女は私に白紙の日記帳をくれたのかも良くわからない。
そう、特に意味は無いのだ。今回の話は私が日記を書くという事が大切なのであり、
その理由も、オルソラがくれたという事すらもどうでも良い。
単なる気紛れ。だから、この話も流す様に、考えず適当に目を追う程度に見てほしい。
サーシャ「さて、何を書くべきでしょうか…」
こういう表現の仕方もどうかとは思うが、私は日記を書くことに関しては初心者だ。
いや、書き慣れていないという表現の方がどう考えても適切であろう。
ただその日あった事を書けば良いだけなのだが、いざ書くとなると中々ペンが進まない。
そう言えば、最近ではブログというものがあり、紙の束ではなくネット上に日々の出来事を書くというのが流行っているらしい。
そして奇妙な事に、書き手はそれを不特定多数の誰かに見てもらう事でエクスタシーを感じるのだとか。
あまり私には理解できない。Twitterなど尚更だ。 - 922 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:38:28.03 ID:q5y8azw00
まあよくよく考えてみれば、新約聖書も神の子の使徒や、そのまた弟子の日記を合わせて混ぜて作った様なものだ。
歴史的に見ても、遠き偉人の書き遺した日記は重要な価値を持っている。
そう考えると、私が書き残した日記も、いつかはどこかの博物館にでも展示されるのだろうか?
【外典サーシャによる福音書】なんて…
いやいやさすがに考えすぎですね。
さて、妄想もこの辺にして何か書くとしましょうか。
サーシャ「………」
………
10月×日
オルソラから日記を貰った。
サーシャ「……」
我ながら何も無い一日だった。
なんとなく寂しい。
きっと、これからはもっと書くことが増えるはずだ。
継続は力なりと言う。とりあえずは続けてみよう。- 923 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:42:14.14 ID:q5y8azw00
10月×日
変な猫を拾った。黒猫だ。
名をガブリエルと言うらしい。
実はさっさと捨てたくてたまらない。もはや当初の愛情など欠片も無い。
どうやって処分しようか。
そう言えば、神は白い鳩を自分の御使いとしていた。これは聖書にもよく出てくる。
ちなみにこのガブリエルも神の御使いとして有名なのだが、そのガブリエルの御使いは猫なのだろうか? 聖書にそんな記述は無い。
余談だが、神の子と同じ身体的特徴や魔術的記号を持って生まれた者を聖人と言う。
世界に20人と居ない類まれなる才能であり、神裂やアックアがそれに該当する。
だが、それとは別に、天使と同じ魔術的記号を持つ人間も居る。
聖人と比べて貴重な才能なのかどうかは判断できかねるが、例えば神の右席がそれに当たるだろう。
フィアンマの聖なる右はミカエルと同義の魔術的記号であり、それを生まれながらにして有しているという事は、
ある意味聖人以上の才能だと言える。
身近な人間で言えば、おそらくアニェーゼ。
アドリア海の女王というローマ正教が誇る霊装があるのだが、そのアドリア海の女王が使う術式に、「刻限のロザリオ」というものがある。
どうやらそれは前方のヴェントが調整したらしいが、その「刻限のロザリオ」の使用者としてアニェーゼが選ばれたとか。
前方のヴェントの性質は、四大天使のウリエル。その彼女が調整し、そして適格者として選ばれたのがアニェーゼだと言うのなら、
アニェーゼにはアドリア海の女王や刻限のロザリオに対する親和性があるはずである。
もしかしたら、アニェーゼにはウリエルと同じ魔術的記号があるのかもしれない。
とは言え、聞いただけで実際にその場に居たわけではないので、これはあくまでも私の推測である。
何となくタイムリーな話題の様な気がしないでもない。
そしてこの日記を書き、この様な事を語っている私自信がどうやらミカエルと同じ魔術的記号があるらしい。
しかも私の場合は特別で、莫大なテレズマをこの体に収める事ができるが、あくまでも収めるだけで力を使う事はできないとの事である。
それでも革命編で多少は使える様になったのだが。
しかし、私はミカエルの性質を持ちながら、ガブリエルの水の力を使っていた。
どうやらこれは四大属性の歪みに原因があるらしく、ガブリエルがその名を偽り、本来はミカエルの名前を示す「ミーシャ・クロイツェフ」と
名乗っていた様に、水の属性が火の属性に強く浸食されていた。
だからミカエルの性質を持ちながら、私はガブリエルと同じ術式を使っていたのだ。
水翼、氷の剣、果ては神戮や傷ついた人間の応急処置まで。
不思議な事だが、私はこれらの魔術をどの様に使っていたのか、全く分からない。
本来ならばそれはあり得ない事である。魔術とは聖書や神話との親和性を元に理論的に術式を組み込まなければならないのであって、
その理論や記号を知らなければ、魔術は発動しない。私達は本来なら何の力も持たないはずの普通の人間なのだから。
そう、まるでガブリエルの力を使っている時は、自分が人間ではなくなってしまった様な、そんな不思議な感覚であった。
今日はここまでにしよう。今までのおさらいだ。あまり長々と書いても仕方ない。
最後に、ガブリエルは、あの猫が自分と同じ性質で、私の様に莫大なテレズマを収める器があるとか言っていたが、
そんな馬鹿な話が有るわけないだろう。一体何を企んでいるのやら。- 924 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:54:04.94 ID:q5y8azw00
10月×日
ワシリーサから手紙が届いた。
とても可愛らしい柄の便箋だった。
中身を見る前に燃やしたので何が書いてあったのかは分からない。
10月×日
この日は五和の居る日本人街へ遊びに行った。
何度か足を運んでいるため、天草式の面々にも顔を覚えられているみたいだ。
10月×日
この日も日本人街へ行った。
五和に和服というものに着替えさせられた。
和服と言っても大正時代の女学生風で、はかまとブーツという和洋混合の服らしい。
髪は三つ編みにするのが正装だと言われ、その通りにした。
五和を含め、天草式の者たちは何やら嬉しそうに写真を撮っていた。
一体何なのだ…?
10月×日
アンジェレネが転んだ。つられて私も転んだ。
おのれアンジェレネ。
10月×日
寒い
11月×日
アニェーゼ、寒いなら修道服をミニスカにするのをやめればいいでしょう。
私は黒いニーソをはいてるから良いのです。寒いけど。
11月×日
日本人街へ行った。今日は神裂と一緒だ。
ランチを御馳走になった。とても美味しかった。日本食も良いものだ。
そう言えば、五和に貰ったお菓子を食べた後、異様な眠気に襲われた。
そのまま寝てしまったのだが、特に何も無かった。
帰り際に神裂から気を付けてくださいを言われたが、何を気をつけろと言うのだろう。
後で鏡を見て、自分のほっぺたに、猫の髭の様にマジックで三本の線が描かれていたのを見て理解した。
水生マジックだったので許そう。こんな事で怒るほど私は子供ではない。- 925 :1 [sage]:2011/01/28(金) 12:57:16.76 ID:q5y8azw00
11月×日
ルチアの胸がまた大きくなったらしい。
11月×日
ジブリールにお菓子を奪われた。
そろそろ捨てようか。
ちなみにジブリールとは、ガブリエルのイスラム圏での呼び方である。
イスラム教と十字教は経典の民と呼ばれ、同じ神を信仰しているという点では変わらない。
違うのは神や天使に対する考え方であり、あちらではムハンマドが預言者、こちらでは神の子が救世主なのである。
救世主と預言者の違いは……面倒だ。
せっかくだから、御使降しについておさらいしよう。御使降し、エンゼルフォール。その名の通り、天使を降す大規模な魔術である。
どうやらこの魔術は日本で発動されたらしいが、その影響を受けた私はガブリエルに体を乗っ取られたのだ。まったく迷惑な話である。
御使降しを説明する前に、生命の樹について説明する。
生命の樹とは、エデンの園の中央に植えられた命の樹である。
ちなみにこの生命の樹は、エデンの守護者であるガブリエルによって守られている。私のお菓子を強奪したガブリエルによってだ。
近代西洋魔術においては、この生命の樹を10のセフィラと22のパスに分けてその内部構造について研究が行われていた。
まず10のセフィラだが、上から順番にケテル(王冠)、コクマー(知恵)、ビナー(理解)
、ケセド(慈悲)、ケブラー(峻厳)ティファレト(美)、ネツァク(勝利)、ホド(栄光)
、イェソド(基礎)、マルクト(王国)の10階層に分かれている- 926 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:00:07.95 ID:q5y8azw00
この10のセラフィは四つの世界を形成する。
まずケテル、コクマー、ビナーの三つのセフィラで構成されている世界を「アツィルト」という。
これは根源の世界であり、完全な世界、神性界とも言う。まさに神の国とも言える領域であろう。
そして第二層はコクマー、ビナー、ケセド、ケブラー、ティファレトの五つのセフィラから成る「ブリアー」という世界だ。
この世界は創造界と呼ばれ、「アツィルト」で生まれた魂はここで様々な「個」に分かれ、個性というものが形成されるらしい。
そう、人の精神や魂は、もともと一つだったのだ。
第三階層は、ケセド、ケブラー、ネツァク、ホド、イェソドで構成される「イェツラー」。
ここは形成の世界と呼ばれている。イェソドという単語を覚えていてほしい。
そして第四階層がネツァク、ホド、マルクトで構成される「アッシャー」だ。
ここは物質界と呼ばれ、人は不自由な肉体まとって生きる。つまり、生命の樹では、ここが私達の住む世界なのである。
では御使降しとは何なのかというと、この術式は生命の樹をベースにして発動された術式である。
ならば当然この術式の対象となるのも、十字教における四大天使としてのガブリエルの立場ではなく、
生命の樹におけるガブリエルの役割が対象となるのだ。
つまり、生命の樹が示す、私達の住む世界の「アッシャー」に、上位世界である「イェツラー」からガブリエルが引きずり下ろされてしまったという事。
もっと詳しく言えば、「イェツラー」を構成する「イェソド」からである。このイェソドを守護するのはガブリエルなのだ。
これが御使降しにおいてガブリエルが地上に落ちてきた理由であると思われる。
しかし、これほどの高度な術式を一体だれが行使したのか?きっとその魔術師はただ者ではないはずだ。- 927 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:02:48.26 ID:q5y8azw00
11月×日
天使になった夢を見た。
正直やめてほしい。
きっと、昨日生命の樹や天使について長々と書いてしまった事が原因なのかもしれない。
11月×日
ヴェロニカからメールが来た。アドレスを教えた覚えは無いのですが。
どうやら最近、クランツ総大主教がワシリーサの餌食になっているらしい。
私の不在で溜まっている欲望の捌け口がそちらへ向いてるのだとか。
まあ私としては、ワシリーサの鬱陶しいスキンシップから解放されるのならば、総大主教の貞操がどうなろうと知った事ではない。
そろそろ戻ってこないかと言われたが、話はこちらの最大主教を通してくれと突っぱねた。
第三次世界大戦の影響でイギリス清教は事実上、魔術サイドの頂点を握ったに等しいのだ。
もはや私を邪魔するものは何もない。
11月×日
シェリーの作品作りの手伝いをした。
ここだけの話だが、私はシェリーが好きだ。
彼女を見るとなぜか嗜虐心の様なものが沸いてくる。
本当にここだけの話だ。
11月×日
ワシリーサからメールが来た。
削除した。アドレス拒否もした。
11月×日
最近、五和の私を見る目が怖い。気のせいだろう、多分。
11月×日
最近やたら“在らざるモノ”が増えた気がする。
どういう事だろうか?一体何が起きているのか…- 928 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:03:49.91 ID:q5y8azw00
11月×日
魔術の行使に失敗した。
おかしい、単なる人払いなのに、なぜ失敗した?
どうも最近、魔術を使いづらい気がする。
生命力を魔翌力に転換する事すらも違和感を覚えるくらいに。
11月×日
ワシリーサから手紙が来た。
燃やした。
11月×日
上条当麻の事を考えると胸が苦しくなる……
と五和から相談を受けた。
心筋梗塞の疑いがあると答えたら嫌な顔をされた。なぜ?
11月×日
そろそろ髪を切ろうか。
前髪が鬱陶しい。- 929 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:06:03.20 ID:q5y8azw00
11月×日
夢を見た。謎の女性が出てきた。
17、8くらいの美少女だ。全体的に青い印象だった。
彼女は一体誰なのだろう。
11月×日
アンジェレネが“在らざるモノ”に襲われた。
しかも人間の精神に憑依し、内側から蝕んでいく厄介なタイプのだ。
このケースでは、普通は憑依された人間の精神に介入し、攻撃する術式を使う。要はエクソシスト的なアレだ。
だがどういう事か、今の私の魔術は安定していない。下手をすればアンジェレネの精神を壊してしまう恐れがある。
非常に不本意ではあるが、ジブリールの力を借りてアンジェレネと私の精神を交差させた。
以前も説明したが、生命の樹の上位の世界はアツィルトと言い、ここは神性界、完全な世界、または精神の集合体とも呼ばれている。
もともと人の精神というのは一つだったのだ。できない事は無い。
余談ではあるが、このさらに上の世界は000000。つまり、原因なき原因の世界であり、神そのものでもあり、天上の意思とも呼ばれている。
どういうわけか、生命の樹においてこの世界は意図的に省かれている。
この世界に辿りついた者は、例えば部屋に引き籠って居ながら、もうひとつの肉体を現出させて外出するという事ができるのだろうか?
“神ならぬ身にて天上の意思に辿りつく“事のできない私には想像し得ない話である。
話が逸れたが、アンジェレネは無事救出できた。あの猫もたまには役に立つ。
でも早く捨てたい。
11月×日
キャーリサから何か良くわからないパーティーの招待状が送られてきた。
ドレスも一緒に送られてきた。無論全て燃やした。
社交界など興味は無い。
11月×日
キャーリサが私の謁見を要求しているらしい。
そもそも私はあの王女の事は好きではない。むしろ嫌いだ。
傾国の女にフランスパンで殴られて[ピーーー]ばいいのに。- 930 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:09:47.86 ID:q5y8azw00
11月×日
五和に誘われて郊外へ遊びに行った。
思い返せば、初めて五和と出会った日、彼女は何の理由も前触れも無く私を友達だと言った。
今でもこれに関しては良くわからない。だが、私にとっては嬉しい事なのには変わりない。
私と五和は歳が離れている。とは言え、10も20も離れているというわけではないが、それでも彼女は私に気さくに接してくれる。
そう言えば、五和は妹が欲しかったと言っていた気がする。彼女は私を妹の様に思ってくれているのだろうか?
だが、私は五和を姉の様に感じた事は無い。
彼女は比較的、真面目でしっかりとした性格であり、面倒見が良くまたお人よしでもある。
異性に対して恋心を抱いているが、上手くそれを伝えらず、やきもきして歯痒い思いをするなど、年相応と言おうか、青臭い少女の様な、
子供っぽい性格でもある。
対照的に、私は真面目かどうか主観では判断が付かないが、私生活は彼女ほどしっかりしているとは言い難い。
自分でズボラと言うのも情けないが、様式美よりは機能性を求めるタイプなのだ。整理整頓も必要性を感じなければやらない。
その必要が無いものはそのまま放置する。栄養豊富で見栄えの良い食事よりもインスタントを好む。
言葉使いさえも、趣旨さえ伝わればそれで良いと思っている。
“第一の○○ですが“というのはけしてキャラ作りではない、そういう意図があるのだ。
いや、よく考えてみると、これは機能性を求めているのではなく、私は単にめんどくさがりなだけではないだろうか?
まるでダメ人間ではないか。ちなみにいくら機能性を求めるとは言え、さすがに変な拘束衣とかを着るのは勘弁願う。
こうして日記に書いてみるというのは、意外と面白い事を発見できる。
自分を客観的に見る事ができるのだ。あなたとはちがゲフンゲフン。
こうして見ると、私はなんとも人間味の無い人間に見える。まるで機械の様で、実に可愛げが無い。対して五和は普通だ。
普通。悪く言えば地味。良く言えば、実に純粋に人間らしいと言える。
対照的だ。だからこそ友人になれたのだろうか?
まるでだらしない人間が真面目な人間に助けを求めすがる様に。いや人間味の無い者が、逆に人間らしい人間というのに興味を持った様に。
そして逆に、人間が流行りの機械(オブジェクト)を求める様に、私達は惹かれ合ったのだろうか。
いや違う、それは否定させてもらう。
私は五和のためなら命をかける事ができる。そして五和も私のために体を張ってくれた。
確かに私はつまらない人間だ。別れ際に泣いてくれた彼女とは対照的に、私は泣けなかった。
悲しいと思う前に仕方のない事だという気持ちの方が先行していた。
いや本当に、私は実に人間味の無いつまらない人間だ。
だがそれでも五和が私の事を友人だと言ってくれるのなら、私も彼女の友人で在り続ける。
天上の神がそれを許す限りにおいては。
今日はずいぶんと長く書いてしまった。こんな日記程度で夢中になってしまうとは不覚だ。
11月×日
とうとうキャーリサが乗り込んできた。
一体何なんだあの王女は。
あんな女にイギリス国民の血税が使われているのかと思うと、イギリスの9000万の国民に同情せざるを得ない。- 931 :1 [sage]:2011/01/28(金) 13:10:44.15 ID:q5y8azw00
- ここで区切ります。
次回は11月×日のキャーリサ来襲。 - 932 :1 [saga]:2011/01/28(金) 13:11:54.51 ID:q5y8azw00
- age忘れました。たぶんこのスレだけだと終わらないかな、このペースだと…
- 933 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:07:28.51 ID:q5y8azw00
- キャーリサ来襲の前に、別のネタを投下します。
- 934 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:09:11.78 ID:q5y8azw00
【とあるロリなシスターさん達】
サーシャ「……」
さて、唐突ではあるが、何から話せば良いのやら…
アンジェレネ「アニェーゼ、そのチョコは私のですー!!」
アニェーゼ「うるせーです、アンジェレネはさっき食べたでしょう」
ルチア「それでもあなた達は神に仕えるシスターですか。チョコよりも神への祈りを!」
サーシャ「……」
セリフだけでは分からないだろう。
私の口から直接言わせてもらう。
みんな幼女になった。
サーシャ「…………」
みんなロリだ。某学園都市最強の能力者の定義的にもロリだ。中学生以下だ。- 935 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:10:38.90 ID:q5y8azw00
サーシャ「しかし、なんと言うか…」
ルチア「サーシャ、早く教会へ行きましょう! 今日も迷える子羊のために祈るのです」
アニェーゼ「賛成です」
アンジェレネ「帰りにタイ焼き食べてもいいですか?」
サーシャ「……」
見た目はロリだ。まごうことなくロリだ。
あの巨乳で長身のルチアでさえ、見た目10歳程度のロリだ。
私よりも小さいロリだ。
しかしなんと言うか、ロリ化しても、いつもと言ってる事が変わらない。
セリフに変化が無い。つまらない。
三つ子の魂百までとはいうが、もっとこう、ロリロリしたセリフを吐けないのか?
ちなみにアンジェレネはいつも通りだ。きっと10歳の頃から精神が成長していないのだろう。うつけ者が。
サーシャ「はぁ…」
ルチア「サーシャ、早くしなさい!」グイグイ
サーシャ「第一の回答ですが、分かりました。分かりましたからスカートを引っ張らないでください」
そう言えば、彼女たちは孤児だ(ルチアは知らないが)。リアルに外見10歳の頃から修道院に入り、そして魔術の訓練していた。
なるほど、ロリでも性格がたくましいのはこのためか。- 936 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:12:19.01 ID:q5y8azw00
サーシャ「そう言えば、神裂やオルソラはどうなったのでしょう?」
【こうなった】
オルソラ「うふふ、紅茶が美味しいのでございます…」
サーシャ「……」
オルソラだ。いや、ロリソラだ。胸が大きくないロリソラだ。
いつもより若干髪が長くなってセミロングになっているがロリソラだ。
ロリソラは食堂で紅茶を嗜んでいる。
オルソラ「まあまあサーシャさんではございませんか。ご一緒にお茶でもいかがですか?お菓子もありますよ♪」
アンジェレネ「わーい♪」
サーシャ「待て」グイッ!
アンジェレネ「あーん!」ジタバタ!!
首根っこを掴んだ。暴れてる。猫かお前は。
ルチア「ダメです。私達はこれから主に祈りを捧げるために教会へ行くのです」
オルソラ「まあまあ、そうでございますか。それは御苦労さまなのでございますよ」
ルチア「オルソラ、あなたも紅茶など飲んでいる場合ですか。修道女なら神への祈りを第一義とすべきです」
あなた本当に10歳ですか?- 937 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:14:12.83 ID:q5y8azw00
オルソラ「私はこれから寮の掃除をしなければならないのでございますよ。
それに例えどこにいても、例え牢獄の中でも主に祈る事はできるのでございます。」
オルソラ「聖書が無ければ口伝で伝えれば良い。教会が無いのなら、どこでも祈りの場に変えてしまえばいいのでございます」
ルチア「うぐっ…」
良い事を言いますね。そして論破されたロリルチアは若干涙目です。
オルソラ「しかし、ルチアさん」
いつの間にかオルソラはルチアの目の前に立っていた。瞬歩か?
オルソラ「あなた様のように、主への真摯な祈りを常に忘れない修道女は、とても立派なのでございますよ。
私も見習わなければならないのでございます」
ルチア「オル…ソラ…」
オルソラはそう言いながら、ルチアの手を両手で包む様に握った。
オルソラ「ルチアさん、どうか教会へ行けない私のこの祈りも、あなた様が主へ届けていただけませんか?
あなた様に、私の祈りを託させてはいただけませんか?」
女神の様な笑顔だ。後ろに後光すら見える。
ルチア「分かりました…シスターオルソラ……この祈り、あなたのこの気持ち、必ずや主へと届けて見せましょう!!」
なぜかルチアは感動の涙を流している。- 938 :1 [sage]:2011/01/28(金) 21:16:24.70 ID:q5y8azw00
サーシャ「……」
ぶっちゃけるとつまりは、「面倒だから代わりに教会へ行って祈っといて」という事だ。
いや、オルソラにも事情があるのだから、けして怠惰ゆえに教会へ行かないというわけではないのだろう。
彼女はこれでも聖パウロのごとく異邦人への布教に努めた立派な修道女だ。
彼女の名誉のためにも訂正しておかなければならない。
それにしてもまあ、弁舌も聖パウロの如きだ。あのルチアを見事に言いくるめてしまった。
それだけではない、論破した後も相手の自尊心を落す事無く、優しく手を差し伸べて相手を懐柔している。見事としか言いようがない。
オルソラ…いや、ロリソラ、おそろしい子…!!
サーシャ「ですが、やはりあなたは10歳でもおばあちゃんですね」
オルソラ「何かおっしゃいましたか?」ゴゴゴゴゴ
サーシャ「いいえ」
お母さんに訂正しておこう。
何となく笑顔が黒い、怖い。ロリなのに…
アニェーゼ「空気だ…」- 939 :1 [saga]:2011/01/28(金) 21:18:07.68 ID:q5y8azw00
ところで神裂はどうなったのだろうか?
もともと見た目が結婚適齢期ゲフンゲフン
神裂「うーん…」ズルズル
サーシャ「……」
ロリだ。ロリ神裂さん。
しかも何かを重たそうに引きずっていらっしゃる。
神裂「しちてんしちとうが重いのです。どうしてこんなに重いのですか」
ああ、そのやたら長い刀。子供には重いですよね。
神裂「どうして私はこんなものを引きずっているのですか? 重いよぅ…」
と若干涙目になりながら一所懸命に刀を持っている。
かわいい。まさにロリ大和撫子。日本人形みたいだ。
サーシャ「昔の神裂は、可愛かったのですね…」
今では洗濯機などにうつつを抜かしているが。- 945 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:30:17.04 ID:oNjbz9XQ0
【とあるロリなシスターさん達2】
ロリシェリー「うわあああん!!!エリス!!エリスー!!!」
サーシャ「……」
この泣いてる小麦色の肌に金髪の少女は誰ですか?
彼女はシェリーです。ロリシェリーです。
シェリー「エリスー!! エリスがいないの!!」
サーシャ「……」
ロリなシェリーが泣いている。泣き叫んでいる。
普段の凛々しい顔が、幼く歪んでいる。
そして私は思い出した。シェリーの部屋にある失敗作を。
そうだ。彼女は昔、大切な友を失ったのだ…
我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)
シェリー「エリスは、エリスはどこ!!?」
そう叫びながら、彼女は私の修道服の裾を強く引っ張る。すがりつくように…
しかし、無いものは無い、知らないものは知らない、答えられないものは答えられない。
どうしようもないものは、本当にどうしようもないのだ……- 946 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:31:59.26 ID:oNjbz9XQ0
シェリー「エリスっ…ぐすっ、ひぐっ…」
私は何て声をかければ良い。
救いを求める者に手を差し伸べるのが、神に仕える修道女のはずなのに。
私には、彼女を癒すための言葉が見つからない。見つけられない。
サーシャ「シェリー…」
ロリソラ「まあまあシェリーさん、どうして泣いているのでございますか?」
ロリソラが現れた。ほんとこの人は何の前触れもなく突然に現れる。
シェリー「エリスが…エリスが居ないの…」
ロリソラ「あらあら、それは大変でございますね」
シェリー「うん…エリス……エリスー!!うわああああん!!!」
ロリソラ「よしよしなのでございますよ」ぎゅっ
シェリー「ぐすっ…」- 947 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:34:38.93 ID:oNjbz9XQ0
ロリソラ「大丈夫なのでございます。きっとエリスさんは何か御用事があるだけで、すぐに帰ってくるのでございますよ。
ですからどうか泣きやんでください」
シェリー「…ほんと?」
ロリソラ「ええ」
シェリー「……」ぎゅっ
サーシャ「ロリソラ…」
言葉に説得力は無い。無責任だ。
だが、それでも彼女は人の温もりを知っている。
死んだ人間を求める人を納得させようなど、ましてや相手が子供となれば、所詮はどんな言葉を並べようが正答など存在しないわけで。
どうしてもそれは子供騙しにしかならない。
自分の持つ生と死の価値観を延々と語っても、大切な人を失った子供の心にはどれだけ届くのだろうか。
そんな100万弁の言葉も、人の温もりの前には、悲しい時に誰かが傍に居てくれる事の心強さには敵わないのだろう。
オルソラは、人の温もりを知っている。その力を知っている。
ペンは剣よりも強し。そして鋭い言葉は1000の軍よりも強い。しかし、人の温もりはそれを超える力がある。それを知っている。
ただ言葉で説得する事に長けているのが、彼女の魅力ではないのだ。
やはりオルソラ、あなたはロリでも大した人ですね…
サーシャ「ロリ…いえオルソラ、シェリーを任せても良いですか?」
オルソラ「はい、私にお任せくださいなのでございます」- 948 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:36:16.14 ID:oNjbz9XQ0
さて、色々と省略させていただきましょう。
私とロリ三人は、教会へ行きました。いつも私達が働いている教会です。
そして主への祈りを捧げました。これもいつも通り。
しかし、私達はシスターなのであり、お祈りを済ませるだけで帰るというわけにはいきません。教会で仕事をしなければならないのです。
とは言うものの、第零聖堂区ネセサリウスに所属する私達の仕事は、魔術に関わる事。
つまりは武闘派組織であり、こういった普通の修道女がする様な仕事にはあまり関わりません。
ですから、ぶっちゃけると教会で仕事をする必要はあまり無いのです。
ニコチンと香水の匂いに塗れていても許される様に、
こう言った表の仕事で必要とされる清廉なシスターや神父のイメージを堅持する必要が無いくらいに。
まあつまり、フレックスタイム制ならぬフレックスジョブ制です。サボっても良いのです。
それでもルチアやアニェーゼはまじめなので(アンジェレネは知らないが)、こう言った表のシスターとしての仕事もきちんとこなしています。
私は…ですか? 第一の解答ですが、そんな事は今はどうでもいいでしょう。
しかしながら、この娘達は今現在進行形でロリ化しています。
教会の神父や他のシスター達に、どう説明しろと言うのでしょう?
そんなわけで、本日の仕事はサボりです。お祈りだけして帰りました。
- 949 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:38:00.74 ID:oNjbz9XQ0
アンジェレネ「たいやきたいやき~♪」
サーシャ「第一の解答ですがアンジェレネ、あまり手を振りまわさないでください」
先頭はアニェーゼが歩いている。やはりリーダーだからだろうか。
そしてアンジェレネは私と手を繋いでいるのだが、ブンブンと振り回されて痛い。
そして後ろからルチアがついてくる。
ルチアとも手を繋ごうとしたが、拒否された。
……いや、別に私自信が拒否されているというわけではないのだろう。たぶん恥ずかしがり屋さんなのだ。そう信じたい。
アンジェレネ「えーっと、私はあんことカスタードとカレーと…」
サーシャ「それは全種類買えという事になりますね。ダメですよ」
アンジェレネ「うぅ~」
そんな残念そうな顔をされても困る。
というかなぜロンドンでタイ焼き?今さらだけど…- 950 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:39:48.94 ID:oNjbz9XQ0
アニェーゼ「アンジェレネ、私と半分こです」
アンジェレネ「頭の方が良いです」
アニェーゼ「はい、尻尾」
アンジェレネ「アニェーゼの方が大きくないですか!?」
アニェーゼ「そんなことねぇです。気のせいです」
サーシャ「ルチアは私と半分にしましょう」
ルチア「……」
もちろん、私はルチアに頭の方をあげた。しかも大きめにだ。
今は私がお姉さんだ。お姉さんが食い意地を張るのは良くない。
ルチア「いりません」
拒否された。また拒否されました。
ルチア「そもそも、私達は主への祈りを捧げに行ったはずです。なのに、その帰りに買い食いをするなど、
そんな不品行を主が許すはずがないでしょう!!」
サーシャ「ルチア…」
ロリルチア。10歳の頃から生真面目だ。融通が利かない。
いや、これはこれで模範的なのだろうけど。- 951 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:44:03.75 ID:oNjbz9XQ0
ルチア「シスターサーシャ、あなたもあなたです!! あなたがついていながら、なぜこのような事に!!」
タイ焼きを買ってあげただけなのに凄く責められています。
ロリルチア厳しいです。
しかし、ここで引くわけにはいきません。
目には目を、歯には歯を、シスターには聖書を、そしてロリっ娘には無邪気な笑顔と少しの恥じらいをです。
サーシャ「第一の解答ですが、聖書にこの様な話があります」
サーシャ「かつて最後の晩餐、すなわち神の子がユダヤ衆議会に逮捕される前の夜に、マリア(聖母マリアとは別人)は、
敬愛する神の子のために、非常に高価な高油を塗ってあげました」
ルチア「……」
サーシャ「しかし、それを見た弟子達は憤慨しました。“この香油を買うだけのお金があれば
一体どれだけ多くの人の食事を賄えるのか!!どれだけ多くの人間を飢えから救えるのか!!”と」
サーシャ「おそらくその香油は、マリアが一生懸命貯金して買ったものなのでしょう。
確かに、貧しい者達を救おうとする彼らが怒るのも分かります。それは間違ってはいないのかもしれません」
サーシャ「ですが、神の子は、憤慨する弟子達にこう言いました。“マリアを責めてはならない。彼女は私のために施してくれたのだと。
あなた達はいつも貧しい人達の傍にいてあげられる。しかし、私はもうあなた方の傍には居てあげられないのです“と」
- 952 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:45:54.18 ID:oNjbz9XQ0
サーシャ「もう二度と会えない。そんな神の子のために、マリアは財産を投げ打って高価な香油を施してあげた。
そんなマリアの気持ちを、一体誰が否定できるというのでしょう」
ルチア「………」
サーシャ「確かに、私達は欲望に走るのを抑え、常に清廉を心がけなければなりません。
しかし同時に、隣人のために施したいと願うその心を無碍にしてもいけないのです」
サーシャ「誰かのために何かをしてあげる。それはとても尊い事であると神の子は人々に教えてきたはずですよ。違いますか?」
ルチア「そ、それは…」
サーシャ「第一の質問です。ルチア、私の気持ちを受け取っていただけませんか?」
私はもう一度、ルチアにタイ焼きを差し出した。
中身はカスタード。
ルチア「……はい」
ルチアは少し戸惑いながらも受け取ってくれた。
そして、おそるおそるタイ焼きに口を付ける。
ルチア「美味しい…です……//////」
かわいい。ロリルチアかわいいですよ。
やはり子供は素直なのが一番です。
そしてタイ焼きはとても美味しいです。エキゾチックジャパニーズカルチャー。- 953 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:47:45.68 ID:oNjbz9XQ0
アンジェレネ「~♪」
サーシャ「楽しそうですね」
アンジェレネは相変わらず、鼻歌を歌いながら、握った私の手をブンブンと元気よく振り回している。
アニェーゼ「アンジェレネ、また音程を外しやがったですね」
アニェーゼは先頭を歩く。頼もしいリーダーだ。
ルチア「……」
ぎゅっ
サーシャ「ルチア?」
ルチア「……」
ルチアはそっぽを向いたまま、もう片方の私の手を握ってきた。
なるほど、生真面目とツンデレは表裏一体なのですね。
寮のみんなにもタイ焼きを買って行ってあげようかと思ったが、アニェーゼ部隊だけでも250人を超える大所帯だ。さすがに無理です。
ちなみに描写はしていませんが、他のシスター達もみんなロリになっていました。
つまり、あの寮でロリでないのは私だけという事です。
いえ、厳密には私もまだロリの範疇に入るのかもしれませんが……- 954 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:50:06.83 ID:oNjbz9XQ0
さて、みんながロリになった衝撃で忘れていましたが。
事象があるのなら、そこには原因というものがあるはずです。
サーシャ「第一の質問ですが、三味線と剥製はどちらがお好みですか?」グイッ
ジブリール「待て!! 離せ!! 離せば分かる!!」
離す前に話せ。このバカ猫天使。私的に嫌いな天使ランキング堂々の5週連続第一位よ!!
事の顛末は、ジブリール、いえガブリエルのテレズマの暴走らしい。
もはや何でもありですねテレズマ。テレズマでみんなロリになるのですね。パナいです。
ちなみに私がロリ化しなかったのは、テレズマに対する免疫みたいなものがあるからだとか。
確かに、ガブリエルのテレズマをガンガン使ってバトルしてきましたね。
夜が明けたら、みんな元の姿に戻っていました。どうやらロリ化していた時の事は覚えていないらしいです。
とりあえず、ジブリールは三味線にする事にしました。天草式に作り方を教わるとしよう。- 955 :1 [saga]:2011/01/29(土) 21:51:12.45 ID:oNjbz9XQ0
- 以上です。
お姉さんなサーシャも良いと思います。
2014年2月3日月曜日
サーシャ「亡命します」 3
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