- 22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 21:12:34.63 ID:YhcoD7+d0
-
―――月が満ちる。
夜、今日は明日に備え、各々自由に行動しようというのはシエルの案であった。
タタリが一度発動すれば、後はもうなるようにしかならず
つまり二度とその夜を越えられない場合だってあるのだ
脱落…すなわち死者だって出るのかもしれない
ならば前夜くらい、己の自由に過ごせば良いというシエルの気遣いの下、各々はそれぞれの気持ちのままに動いていった。
―――少し、彼らの決戦前夜を覗き見ることにしよう。 - 23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 21:13:53.31 ID:YhcoD7+d0
-
―――――――
月を見上げる。
普段から月などよく見ることなんてないのだが、今夜は妙にそこに目がいってしまう。
今夜が特別な時間だから、なのか
俺こと上条当麻は、自身にあるその疑問を解決できないまま、そのままとある公園のベンチに座ることにした。
「…………」
とても、静か。
昼になればここははしゃぐ子供や、飲み物欲しさに自販機へ回し蹴りを喰らわす犯罪一歩手前な中学生などがよく見られたりするのだが、今の時間帯にそういったものが見られるはずもなく。
時間が、止まったかのような錯覚を覚えるほどに、この公園は今静かだった
と、そこに
「あ、アンタ――。ここにいたのね」
一人の来客がやってきた。 - 24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 21:19:53.59 ID:YhcoD7+d0
-
「御坂…か。どうしたんだよお前、寮の門限はいいのか?」
確か常盤台中学の寮とは、厳しくて有名だったはず。
そこにいる寮監が中でも厳格を象徴したような存在で、数々の強能力者や大能力者を葬ってきたとか、なんとか。
「寮の門限なんてかれこれ1週間近く守れてないわよ。留守中は普段黒子が誤魔化してる」
だがその寮の規律を軽々と無視する彼女は更に恐ろしい存在なのだろうと、御坂美琴という人物の大きさを俺は再確認した。
そのまま御坂は、飲み物を買うと(流石に深夜での回し蹴りは気が引けたのか)俺の横に座り、プルタブを開け一口喉を鳴らす。
そのあとのぷはぁ~!なんて声が、おっさんみたいに聞こえた。 - 25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 21:33:26.55 ID:YhcoD7+d0
-
「それにしても黒子ったらさ」
御坂が突然そんな事を口にした、表情はどこか暗い。
「『お姉様がまた大きな問題に巻き込まれているのを黒子は存じていますの。黒子はお姉様を信じています。ですので、必ずかえってきてくださいな』
だってさ。参っちゃうわよね、こちとら色んな策練ってなんとかバレないようにしてたってのに全部パーよ」
と言って御坂は苦笑する。
それは、自分の詰めの甘さについての苦笑なのか俺には判断しかねた。
「いい後輩に恵まれたじゃないか、御坂」
「ん。そうね、少し変態なのがたまにキズだけどそれでも、私の自慢の後輩だわ、黒子は」
それだけは間違いない。と御坂の強い意志が込まれたしの言葉には、そんな言葉が含まれていた。 - 26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 21:48:41.28 ID:YhcoD7+d0
-
御坂のそんな意思を読み取れたからこそ、俺は言った。
「――帰らなきゃな。絶対に」
「――!…えぇ、誰も死なせはしないわ。吸血鬼なんてふざけた物、必ずぶっ倒してやりましょ」
と、俺の言葉に強く頷いて見せた御坂美琴のその目は、誰にも、何にも負けないというそんな強さが見てとれた。
上条当麻は、禁書目録や土御門を結果的に守ってみせるために
御坂美琴は、己の帰りを待つ少女やその先にある生活を守るために
気持ちを再確認し、明日の戦いを臨んだ―――― - 27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 22:10:26.48 ID:YhcoD7+d0
-
そんな時間を同じくして、離れ学区
そこには教会の代行者シエル、アトラスの錬金術師シオン、聖盾の騎士リーズバイフェがそれぞれそこにいた。
思えばこの3人、立場も国も違い、全くバラバラの方向性を持った3人なのだ。
そんな彼女らが志を一つに協力して吸血鬼を倒す。
そう考えるとこの状況は、歪を通り越してどこか面白かった。
「ようやく、この任務もあと1日になりましたね」
「あぁ、だが早くタタリを倒して安心したいと思う反面、少し名残惜しくもあるな。
ここでの数日は、なんだかんだで楽しかったよ」
「ですがまだ終わりではありません。油断が死を招くこともあります。気を抜くのはまだ早いというものでしょう二人とも」
と三者それぞれ思ったことを述べる。三人が共通していえるのは全員少しの名残惜しさは感じている。ということだった。 - 28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/21(火) 22:25:46.77 ID:YhcoD7+d0
-
「シエルは、この任務が終わったらどうするんだ?」
と、リーズバイフェが突如、シエルにそんな疑問を問いた。
「私ですか?そうですね。一度教会へ戻ってからそのあと再び三咲町に行こうと思っています。あそこの死徒問題は、まだ解決してませんからね」
「へー…?」ニヤニヤ
「代行者、素直じゃありませんね」
と何故か質問されたので答えたまでのシエルが、怪しい視線に晒されることになった。
「な、何ですかその反応は!それにですね、あそこには未だあのあーぱー吸血鬼がいます!ちょっと目を離せば何をするかわかったもんじゃありません!なので首に縄をつけにいくんです!」
シエルは普段の表情からでは考え付かないような赤くした顔でそう否定する。そしてリーズバイフェは更に付け加えるように
「あと、直死の魔眼にも会えるしね」
と面白そうにそう言った。
更に顔を真っ赤にするシエル。
- 36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 23:40:37.16 ID:Y9YFUXKA0
-
「シエルは、この任務が終わったらどうするんだ?」
と、リーズバイフェが突如、シエルにそんな疑問を問いた。
「私ですか?そうですね。一度教会へ戻ってからそのあと再び三咲町に行こうと思っています。あそこの死徒問題は、まだ解決してませんからね」
「へー…?」ニヤニヤ
「代行者、素直じゃありませんね」
と何故か質問されたので答えたまでのシエルが、怪しい視線に晒されることになった。
「な、何ですかその反応は!それにですね、あそこには未だあのあーぱー吸血鬼がいます!ちょっと目を離せば何をするかわかったもんじゃありません!なので首に縄をつけにいくんです!」
シエルは普段の表情からでは考え付かないような赤くした顔でそう否定する。そしてリーズバイフェは更に付け加えるように
「あと、直死の魔眼にも会えるしね」
と面白そうにそう言った。
更に顔を真っ赤にするシエル。
- 37 :あ、やべ重複[saga]:2011/06/21(火) 23:42:06.45 ID:Y9YFUXKA0
-
「それにしても――」
いよいよシエルが容量オーバーで熱を吹き出しそうになっていたその時、ふとシオンが呟いた。
「うん?どうしたシオン。君も遠野志貴に会いたくなったのかな?」
と言われ違いますと即座に否定するシオン。
シエルはああいう態度を私も身に付けるべきだなと心密かに思う。
「いえ、大したことじゃないんです。ただ今回のタタリ討伐、気付けば主戦力は両方とも協力者になってしまっていたなと思っていたんですが…」
その言葉を聞いて先程の空気が少し変わる。
これについてはリーズバイフェもシエルも、何か思うところがあるようだった
「――しょうがないですよ、シオン。何せ相手が相手です。
今回はたまたまイレギュラーが出揃っただけっていう話ですよ。私達の役割は別にある」
姿を現したタタリ
この余りにも強大なイレギュラーに立ち向かうには、同じイレギュラーでなくては駄目なのだ。
直死の魔眼や幻想殺しが、そこに当てはまる。
「そうだな、彼らのサポート。いかに彼らの能力でタタリを倒すかが、今回のポイントになる――。私もガマリエルを用いて、全力で彼らを助けることをここに誓おう」
「私も同じく、誓います。
シオン、あなたの気持ちは私なりに察しているつもりです。何せワラキアは、あなたの――」
「代行者、その心配は杞憂だ」
シエルが何か言いかけたところで、それを遮る。
シオン「私は以前の三咲町の経験を通じ、ワラキアとは決別することができた。もう私個人の復讐はおわっているんですよ。
だから、大丈夫―――」
「シオン――」
以前とは違う、シオンの強い言葉
それは三咲町の件により、確実に成長をした彼女を暗に表していた。
なんだかそれが少し嬉しくて、リーズバイフェはクスリと笑った。
「明日は、勝ちましょう。ワラキアを討伐し、この学園都市に平和を――」 - 38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 23:43:05.56 ID:Y9YFUXKA0
-
――――――――――
そして少女は、一人上を見上げ星を見ながら、色々な事を振り返り、そして考えていた。
それは、とある少女との約束であったり
明日の事やこれからの事などと本当に色々なこと。
自身が事故に巻き込まれはや数週間。さまざまな出来事があった。
そして明日、それら全ての出来事に終止符が打たれるのだ、どのような形であっても。
――不思議と、怖くはなかった。
それはもうなるようにしかならないというある種の悟りと、必ず勝ってやるという強い意思。
その二つが混ざりあって生まれた、心の静寂であった。
――わかりました、待っています。
と一言だけ呟いた彼女。
必ず、帰ってやらなくちゃと思った。
- 39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/21(火) 23:55:41.62 ID:Y9YFUXKA0
-
そして時間は過ぎていく――。
死徒27祖その第13位
『正体不明』、タタリ。
それは徐々に形を見せていく。
タタリの集めた不安、この街の噂、都市伝説――――。
色々なものがタタリにより形を模され、そして出現していく。
ソレは、事実危機感を覚えていたのだ。
それは形を持ってしまうことに対しての事に対してでもあり。
この学園都市の異質感そのものに対してでもある。
あらゆるものが、彼を色々な感情で張り付けていった。
「キ、キキキ―――」
彼は鳴く。負の感情にどんどんと飲み込まれながら。
「キキキイーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
一夜限りの幻影の夜は、もうすぐそこまで迫っていた。
- 47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 12:26:49.01 ID:ZVlFDL+00
-
そして、一夜限りの夜は姿を現した―――――。
時刻はちょうど日付を越えた辺り
気が利いている。ここ深夜の学園都市には人っ子1人の姿さえ見受けられない。
この夜では死者さえもその姿を晒し、本来ありえない物すらも形を成す。
それはなんというか、宴のような賑やかさを持っていた――――。
「いいですね、皆さん」
そう声にあげるのは、代行者シエル。声にはいつもに増して緊迫した様子が宿る。
離れ学区とは違う場所にある中央区。いつもとは違う場所での集まりに、あの人のいない薄暗い場所に未練のようなものが生まれているのは、全員同じようだった。
そう思うとやはりどこか名残惜しさができてしまう。
―――だが、そのくらいの未練があった方がいいのかもしれない。
未練とはそれすなわち。この夜から生きて帰りたいという原動力になるからだ。
ほんの僅かな未練でもいい、それで戦う力になるというなら、それで。
「これより、タタリ討伐を開始します―――!!」
声は強く。
全てに決着をつけるため、それぞれの想いを抱えた者達は、今―――――。 - 48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 12:28:42.90 ID:ZVlFDL+00
-
そして同じく、中央区。
そこには四人の少女たちがいた。
だが姿形こそは少女のそれであったが、その様子はどこか相応ではない冷たいものが感じられる。
少女の一人――とはいっても既に高校生かそれ以上の体格をしている彼女――麦野沈利は言った。
「……今日、何かおかしくない?」
と。それに反応した残りの少女達もそれぞれに声をあげる。
「確かに、言われてみればそうですね。騒がしそうな空気に見えて、その実全く静か――っていった感じでしょうか。いや超意味わかりませんけど」
「絹旗…。自分で言って意味がわからないってどういう訳よ…」
「仕方ないよフレンダ。私達にもわからないんだし。大丈夫だよきぬはた、私はそんな意味わからないきぬはたを応援してる」
「滝壺さんって、たまに超残酷ですよね…」
それぞれに滝壺、フレンダ、絹旗と呼ばれた少女達は、中々に個性的な会話を広げていく。
コイツらはこんな状況でも相変わらずだな、と麦野は心の中で思ったがそれを口にするのは今更と思い。無視して会話を続ける。
「はいはい絹旗が意味わからないのは相変わらずってことで。それで私が言った変ってのはこの空気だけじゃないのよ」
「それってどういう意味ですか?あと私が意味わからないって更にどういう事ですか」
- 49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 12:30:36.95 ID:ZVlFDL+00
-
「いやね、今日も任務片付けてこうして一息ついてるじゃない?」
「なーんかその間通りすぎる連中がちらほらいた気がするんだけどさ。おかしいのよ」
勿体ぶらないでよ、とフレンダが口を開こうとする前に彼女は言いはなった。
「通りすぎる人が一々ね。知ってる顔なのよ」
と。
意味がわからず首を傾げる四人。
「知り合い……ですか?」
「そんな大層なもんでもないけどね、でもおかしいのはここから。その顔見知りってのが奇妙な事に
今まで私達が任務で倒していった奴らだったりするのよ」
彼女達から血の気が引かれる。 - 50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 12:31:55.64 ID:ZVlFDL+00
-
「……あ、あはは。麦野、怪談話好きだったっけ?やめてよね、こんな時に話されると妙に――」
「私だって嫌いよ怪談話なんて。でも、すれ違ってるのは本当」
その言葉にフレンダの笑みが消える。
「えっと、つまり麦野は先程から私達がこれまで片付けてきた連中が見えるってわけですか?そんな事が…」
「ありえないならこんな話してないわよ。それに――」
「………あっちに、誰かいる」
とそこで、滝壺が建物の裏側を指差した。
「…………私には感じないけど、本当?」
「うん。二人いるんだけど両方AIM拡散力場は感じられない」
ならば無能力者か。と麦野は先にその方向へ足を踏み出す。
「ちょっ!麦野ヤバいって!その話が本当だったら……!」
フレンダは慌てて麦野を制しようとするが
「戦いになるでしょうね恐らく。でもたかが無能力者なんて目じゃないわ。上等じゃねえか……!」
麦野は若干戦闘モードに入りながら足を進めていく。
それに引き続き絹旗や滝壺も後をついていく。
「(なんだって皆、怖くない訳よーー!?)ちょっと待ってってば麦野ー!私もいくからーー!!」
進んでいく『アイテム』の四人は、これから起こる事態を知る術はなかった。 - 51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 12:33:13.79 ID:ZVlFDL+00
-
―――そして上条当麻が異変に気付いたのは、作戦開始宣言からしばらくし、とあるセンタービルまで足を運んでいた時だった。
「な、あれ。御坂?シエルさん?」
見渡せば相変わらずの無人の中央区。だがそこには今の今まで一緒に行動していた仲間の姿までもが無くなっていたのだ。
「はぐれた…?にしては妙だな、今まで一緒に走ってたんだから。ふっと消えたようなそんな感覚。一体何が…」
と彼が思考を張り巡らせていたその時だった。
空気が、変わる――――。
先程までの静寂から一変し、街の中央であるにも関わらず辺りの音が消え、上条の周りが無音になった。
突然の感覚に驚く上条、そして
「よう、そこの。随分と慌ててどうしたんだい」
と、ここに。ありえない存在がいた - 59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 18:01:22.61 ID:Jdx5f4tN0
-
――――――――――
「―――!?」
声が聞こえた方を凝視する。
「おいおい、随分と驚いてくれるねえ幻想殺し。俺とお前は初対面なんだぜ?もう少し別の反応があってくれてもいいだろうに」
学生服の少年は、そう言って唇を歪ませた。
「お前――――タタリか」
「あぁいかにも。俺の名は七夜志貴。この一夜においてただ殺すために呼ばれたものだよ」
七夜――そう自己紹介した目の前の少年は、懐からナイフを取り出す。
「―――!?」
「お前が記念すべき一人目だ、幻想殺し。嬉しいねえ、お前みたいな奴が相手だと殺す価値が出てくるよ!」
「くっ――そ!」
言いたい事は終わったのか、七夜は早いスピードで上条に向かいナイフを突き刺しにいく。
それをかろうじて回避し、近付いては危険なのを本能的に察知した上条は2、3歩下がり、間を取った。
「さあ夜は長い、互いの魂が極彩と散るまで存分に殺しあおうじゃないか!!」
「――――ちくしょう!!!」
月が満ちる夜、両者は互いを潰さんがためにぶつかりあう――――。
――――――― - 60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 18:08:53.17 ID:Jdx5f4tN0
-
「――あれっ?アイツどこ行ったのよ!?」
中央区、センタービルまで徐々に近づいていく中、御坂美琴は幻想殺しの少年がいないのに気付き、声をあげた。
「なっ!上条君、まさかタタリに――」
「だが捜してる暇はないぞ、こうしてる間もいつ民間人が襲われてるかわからないのだから」
理屈ではわかっている。
だが幻想殺しは対ワラキアの最大の武器でもあったのだ。
作戦の中心核がいなくなった状態では、勝率も落ちる。
「ですが、それでは作戦に―――」
「――私がやります!!」
そして佐天涙子のこの言葉に、全員が驚愕した。
「佐天さん、あなた――」
「はい、上条さんよりは確かに勝てる確率は下がると思います。ですけどそれでもさせてください!私も皆さんの力になりたいんです!」
と佐天は強く言った。
だがシエルは中々頷かない。やはり相手に物理的な攻撃を加える必要がある直死の魔眼では心許ないというのが、彼女が上条当麻を選んだ理由の一つでもあるのだ。 - 62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 18:21:50.38 ID:Jdx5f4tN0
-
だが
「いいんじゃないか?涙子で。私は賛成するぞ」
と、リーズバイフェは賛成の意思を見せた。
「リーズバイフェ!?やはり無茶です!魔眼があるからといって生身で死徒とやりあうなど―――」
「だからといって、私達では勝ち目が薄いのも事実だろう?それよりは、十分適役になるだろうと思うんだが」
「それはそうですが、しかし――」
「いいえ代行者、時間がありません。それでいきましょう。――それとも、代行者ともあろう人間が足を引っ張ると?まさかそれはないですよね?」
と、軽い挑発も混ぜるシオン。
そして―――
「あぁわかった。わかりましたよ!こうなればヤケです!突入班はシオン、リーズバイフェ、佐天さんに変更!これでいいんですね!?」
「―――ありがとうございます!シエルさん!」
と佐天は礼を言った。
その姿は一昨日までの彼女とは違う、強い姿になっていた。
- 63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 18:43:23.60 ID:Jdx5f4tN0
-
そして―――。
「おらおら、動きが鈍いぞ幻想殺し!」
「くっそ…!」
七夜のナイフが縦横無尽に、上条を襲う。
今のところ全て流すかかわせている上条だったが、体力はどんどん削られていった。
「ったく、がっかりさせるなよなオイ。わざわざこっちから出向いてやったというのに肝心の相手がこれでは萎えるというものだな。
少しは俺を興奮させて欲しいものだが―――!!」
そう言いながら七夜は構えを落とし、そして――
「消えた!?」
上条の視界から一瞬の内に消える。
「―――閃走」
そして次の瞬間。
上条の目の前に現れ、そのまま胸ぐらを掴んだ七夜はそのまま勢いを振り、上条を地面へと叩き伏せた。
「――一風。どうだ?七夜に伝わ体術の味は」
「がっ――は」
そのままナイフを喉元に突きつけられる上条。そして彼は感じた
「(コイツ……強い)」 - 64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 18:51:48.78 ID:Jdx5f4tN0
-
基本的な身体能力も去ることながら、彼はどうも人を殺すような技術に長けているようだった。
実際に先程から狙われている部分は心臓、頭――そして今刺されそうな喉だったりと、なにかと急所が多い。どうも彼には人を殺す――ということに躊躇いはないようだった。
そして加えて相性が悪い。
上条がタタリ騒動で今回相手した相手達は、全て何かしらの異能を頼りに戦っていたのが殆どであった。
垣根帝督なんかがいい例だ。
だがそれに対してこの七夜という少年は、異能など持ち得ず、ひたすらに己の能力だけで戦っていた。
実力差に加え、相性の悪さ。
今までにない程、上条はこの相手に苦戦を強いられていたのだった―――――。 - 65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 18:53:27.40 ID:Jdx5f4tN0
- >>63
伝わる→○
伝わ→× - 66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 19:04:56.10 ID:Jdx5f4tN0
-
だがこのままでは確実に死ぬ。
それだけは避けなければいけなかった上条は、今目の前に迫る死だけでも避けようと思い、自分を奮い立たせた。
「この、野郎――!どきやがれ!」
今にも喉を突きそうだった七夜を足で蹴り飛ばす。
「おっと――。へえ…」
だが七夜はなんとその蹴りに瞬時に反応し、ジャンプをして空中で回りながら後ろへ着地する。
既に人間の身体能力を遥か超えていた。
そんな彼は上条を見て、笑う。
「ははっなんだよやればできるじゃないか!いいぞ、その調子だ…。
精々この俺にこの目を使わせるように頑張ってくれよ幻想殺し!」
だが上条は、七夜のその言葉を聞いて固まった。
「お前の、目―――?」
上条には、思い当たる節があった。 - 67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 19:15:36.41 ID:Jdx5f4tN0
-
「うん?」
七夜は意図が掴めず首を傾げた。
「だから、お前の目だよ!なんかあんのか!」
そして上条のその言葉にあぁ成る程、と納得した七夜は、ふっと鼻で笑った。
「何がおかしいんだよ」
「いやなに、敵に向かって教えてくれだなんて、おめでたい奴だなと思ったのさ」
その言葉に少し苛立ちを覚える上条だったが、挑発とわかっているためなんとか堪える。
「だが、まあいいか。ハンデだ、教えてやるよ。
お前も恐らく勘づいてる通り、この目に宿すのは全てに平等の死を与える眼――そう、直死の魔眼だ」
やはりか、と上条は苦虫を噛み潰したような表情で顔を落とす。 - 77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 20:05:25.65 ID:Ys+V9ieO0
-
その上条の様子を見て七夜は少し眉を潜めた。
「……どういう経緯でかこの眼の事を知っているようだな、幻想殺し。
だがまあいい。どっちしろ殺せば変わらないからな」
七夜は笑ってそう言った。
その表情には余裕が見てとれる。
「はっ!要は当たらなけりゃいいんだろ!?直死の魔眼だか何だか知らないが、んなもん自慢した所で――!?」
そこまで言って、上条は身構えた。
それというのも七夜が静かに、ナイフを持ち構えたからだ。
「やれやれ、先刻の閃走・一風すら避けられない奴が何を言うんだかね。
――――どれ、一つこの眼の使い方を教えてやろう」
七夜の眼が鋭く光る。
- 81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 20:28:42.77 ID:Ys+V9ieO0
-
そしてそれからの出来事は、上条にとってあまりに一瞬で何が起こったのか視認できなかった。
「え――?あ、――」
ただわかるのは腹部を2線、切りつけられたということ。
そして、その衝撃で宙に打ち上げられたという事実のみだった。
そして七夜はこちらを見ながら再度笑った。
「――――閃鞘・迷獄沙門」
一つ、呟く。
「……だが、抜けているな俺も。
二つとも線から外れるとは、耐え難い失態だよ。ホントにさ」
そして言い終えたと同時に、上条当麻の身体が地面へと叩きつけられたのだった。
- 82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 20:37:56.76 ID:Ys+V9ieO0
-
「(………俺じゃ勝てない)」
そう、上条は悟った。
先程まではまだなんとかなると思っていた。
今までに色々な敵を打ち倒し、数々の問題を解決してきた自分なら、きっとこの敵にも勝てると思っていた。
だがそれは、余りにも残酷な間違いだった。
真実として、七夜という少年は依然無傷。本気で戦ってるどころかまだ実力の半分すら出していないように思える。
さっきの技だって線を切れなかったのか、線を切らなかったのかはわからない。
対して上条は心身傷だらけ。
おまけに先程受けた傷によりもう満足に身体も動かせなくなっている。
何より最初から彼は防戦一方。ただの一撃も相手にダメージを負わせられなかった。
差は、火をみるより明らかだった。
- 85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 20:52:30.56 ID:Ys+V9ieO0
-
「……つまらん、この程度か幻想殺し」
「ぐっ……!」
「もう少しやってくれるんじゃないかと期待していたが……。興醒めだな。何が幻想殺しだ」
そう七夜は本当につまらなそうに吐き捨てた。
彼の目から、期待が消える。
「もういい、ここで[ピーーー]。
俺はお前を殺し、また別の標的見つけにいく」
標的とはすなわち、殺しの的のことだろう。
殺人鬼――。上条の頭にそんな単語が浮かんだ。
「やらせる、かよ…。俺はまだ、がぁ!?」
「喋るな、偽善者が。……全く、これならまだ俺と戦った時の方が、愉快だった」
「…………?」
何の事を言ったのか上条にはわからなかったが、それどころじゃない。
それよりも、ゆっくりと心臓に迫る死を彼は――
「ちょい待った。思い切りよすぎるんじゃない?それは」
ふと、そんな声が聞こえた。 - 95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 21:31:08.77 ID:Ys+V9ieO0
-
――――――――
「はぁ、はぁ…!」タッタッタ
彼女――佐天涙子は今現在、街中を走り抜けていた。
当然横には頼もしい仲間リーズバイフェやシオンも一緒だ。
「――思ったよりも時間掛かるものだな、センタービルまで行くのは。これなら集合場所をもっと近くにした方がよかったんじゃないか?」
とリーズバイフェは愚痴を漏らす。
というのも
「仕方ないでしょうリーズ。何せ想定外の事態です。美琴もシエルも――来ました!10時の方向です!」
そこでシオンは叫ぶ、その方向からは先程から彼女達の進路を妨害する"者達"が再びやってきていた。
―――――大量の、死徒
だが死徒といってもそれは27祖クラスの怪物ではなく、むしろそれによって生まれた下位クラスの死徒であった。
故に個々の力は大したことはない。
しかしだった。
- 97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 21:51:38.91 ID:Ys+V9ieO0
-
「ふん、何人群れようが所詮は雑魚にすぎない―――なっ!」
リーズバイフェは己の武器――。
概念武装ガマリエルを構え、それを横に薙ぎ払った。
それにより死徒の数人が吹き飛ばされる。
「えぇ、ですが数が数です。確認できるだけでも50――いや100はいる。
先程からから少しずつ、人数を増しているようです!」
シオンも拳銃――ブラック・バレル・レプリカで的確に打ち倒していく。
―――だが、やはり数が多すぎだった。
個を停止させようとも相手は群。今のやり方ではきりがないことを彼女達は既に理解している。
だが、こうする他ないのだ。御坂美琴とシエルは現在、他の場所で被害が出ていないか確認して回っている。なので助けはこない。
銃で撃ち抜き、盾で弾く。
負けることはないが、このままでは勝てもしない戦いがそこにあった。
- 98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 22:20:00.63 ID:Ys+V9ieO0
-
「(わ、私も何かしなくちゃ…!)」
そう思い、佐天はポケットからナイフを取りだし敵の群れを睨み付けた。
「(でも……怖い)」
何しろ彼女の初戦闘がこれだったのだ。
何度かリーズバイフェとシオンから手ほどきは受けているが…やはり実戦のそれはあまりにも違う
そんな時だった。
「ッ!?涙子!危ないっ――」
「!――が、ああ!!」
気付いた時には遅し、佐天は死徒の一撃を生身に受けてしまったのだ。
そのまま吹き飛ぶ佐天。
「涙子!!!」
リーズバイフェが声を掛けるが、その声は彼女には届かない。 - 102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 22:41:37.48 ID:Ys+V9ieO0
-
「(わ、私も何かしなくちゃ…!)」
そう思い、佐天はポケットからナイフを取りだし敵の群れを睨み付けた。
「(でも……怖い)」
何しろ彼女の初戦闘がこれだったのだ。
何度かリーズバイフェとシオンから手ほどきは受けているが…やはり実戦のそれはあまりにも違う
そんな時だった。
「ッ!?涙子!危ないっ――」
「!――が、ああ!!」
気付いた時には遅し、佐天は死徒の一撃を生身に受けてしまったのだ。
そのまま吹き飛ぶ佐天。
「涙子!!!」
リーズバイフェが声を掛けるが、その声は彼女には届かない。 - 104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 22:51:05.80 ID:Ys+V9ieO0
-
「(私……駄目だなあホント)」
佐天はそう自虐的に笑う。
それは改めて認識した己の力の無さからだ。
「(こんな眼があっても……私自身が、こんなんじゃ……)」
吹き飛ばされながらも、手に拳を作る。
こんなちっぽけな自分がたまらなく今は憎たらしい。
そして佐天は数メートル飛び、そこにあった壁に打ち付けられた。
口からは血が吹き出す。
けれど、拳は握られたままだ。
彼女はふらふらになりながらも立ち上がる。
そして、再び敵を睨む。
「駄目だ――。私は、戦うって決めたんだ!!!」
- 106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 22:58:10.12 ID:Ys+V9ieO0
-
その様子を、二人は確かに見た。
「涙子……?」
だが呼び掛けに反応はない。
ゆっくりと彼女の眼鏡が彼女自信によって外される。
「………………………」
そこに宿るのは、死の概念そのもの。ゆらりと煌めく虹色は、敵の視線を集めるには十分な恐怖であった。
「――――――!」
声にならない死徒の攻撃が、佐天に襲いかる。
だが佐天はそれを避け、後ろに隙を見せた死徒に向かい
「―――――躊躇わない!」
そこに彼女だけが見える『死の点』を手に持つナイフで、突き刺した。 - 107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/22(水) 23:06:22.42 ID:Ys+V9ieO0
-
そして、点を突かれた事により問答無用で消滅する死徒。
佐天は、その様子を見て理解する。
―――――あぁ、これが『死』なんだと。
だがその出来事は、他の群れを刺激することとなった。
死を恐れ、一斉に佐天に襲いかかる群れ――。
リーズバイフェやシオンが駆けつけようとするも惜しく叶わない。
万事休すか、とリーズバイフェが目を瞑ったその時だった――
「―――お待たせ、佐天さん。あとは私に任せて」
と、無数の雷撃が死徒の頭上から襲いかかった。 - 109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/22(水) 23:21:42.21 ID:Ys+V9ieO0
-
「御坂さん―――!?」
「美琴!!」
「馬鹿な、彼女は代行者と――」
と三人は口々に彼女の登場に驚く。
しかし――――
「御坂さんだけでは無いですよ」
と、三人の頭上から声が聞こえた。
「シエルさんも!」
佐天の驚きの言葉に対し「来ちゃいました♪」と笑って言う彼女。
そしてそれもすぐ、黒鍵を持ち真剣な表情となる。
「…逃しませんよ。
―――主よ!この不浄を清めたまえ!」
シエルが叫ぶ。
彼女から投げられるのは無数の黒鍵。しかし狙いが甘い。
敵を討つことなく、そのまま黒鍵は地面に―――――
「火葬式典――。
あなた方にはこれが相応しいでしょう」
とその瞬間、一帯が火の海と化した。 - 119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 00:19:23.34 ID:UzlfZT980
-
「御坂さん!」
そして死徒らが一掃された辺りで、佐天は美琴に近付いていった。
「あ、ありがとうございます御坂さん、助かりました。でもどうしてここに?」
「それがね、シエルさんが宛もなくタタリを捜すよりも、佐天さん達と一緒にいた方が色々と都合がいいって。それで戻ってきたんだけど―――どうやら正解だったみたいね」
美琴はニッコリと笑い、そう言った
その笑顔はこの夜に似合わないような眩しい笑顔だった。
「えぇ、完全に私の失策でした。どうも現在、タタリの殆んどは佐天さん達に向かってきているようですね」
いつの間にかこちらに居たシエルは
言葉の後で、すみませんと謝った。
「だけど、全員無事でよかった。代行者も美琴も、助かりました」
「あぁ何よりだ、感謝する」
リーズバイフェとシオンも口々に言う。
「しかし後は上条君だけですが……大丈夫でしょうか。危険な目に合ってなければいいのですが」
「大丈夫よ、アイツなら」
美琴は、キッパリそう言った。 - 120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 00:29:10.18 ID:UzlfZT980
-
そのまま美琴は続ける。
「確かにアイツには右手しか無いし、無能力者ではあるけど―――」
そこには彼女の、普段は絶対に見せないような絶対の信頼が読み取れた。
「それでもアイツならなんとかしちゃう。そう思うのよ、以前私を実験から救ってくれた時みたいに…どんな不利でも、絶対に大丈夫なんだって」
その言葉はどこか、自分に言い聞かせてるようにも聞き取れた。
「―――だから、先に進みましょ。アイツなら、すぐに戻ってくるわ」
美琴はそう言うと、歩き出す。
そしてシエル達も、美琴のそんな気持ちを理解し、美琴の後をついていくのだった――――。 - 134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 18:46:05.35 ID:rSmKbl/k0
-
―――――――――
「ちょい待った。思い切りよすぎるんじゃない?それは」
聞こえたのは女性の声
七夜のナイフが止まる。
視線は既にそちらに向けられていた。
「うん?おいおい誰だ。俺のお楽しみでもある解体ショーを邪魔する奴は」
「……………」
そして彼女は現れた。
季節に似合わない半袖コートを着込んでいるのが特徴的だ。
そして互いに沈黙。
丁度そんな時だった。
「麦野ぉー!」
彼女が来た同じ方向から、更に金髪の少女がやってくる。
「麦野歩くの早すぎな訳よ…。もう少しこう――」
「フレンダ」
しかしフレンダと呼ばれた少女の声は、麦野と呼ばれた女性に遮られた。
そして麦野はこう言った。
「絹旗とフレンダを連れて撤退しなさい。この男、ヤバいわ」
- 135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/23(木) 18:53:15.39 ID:rSmKbl/k0
- フレンダ→×
滝壺→○ - 136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/23(木) 19:01:46.62 ID:rSmKbl/k0
-
「―――――!?」
フレンダは麦野のその言葉に困惑した。
「ちょっ!ちょっと麦野!?いきなりそんな――!」
「わからない?私が仕留めるっつってんの。フレンダ達がいたら、私の能力も制限掛かるでしょ」
だが麦野の平淡な口調は揺るがず。
――やがて諦めたのか納得したのか。彼女はこう言った。
「―――――わかったよ麦野。後は任せるね」
そしてそのあと、やってきた絹旗と滝壺を連れて、フレンダ達は去っていった。
「――――は」
七夜が一つ、笑う。
「何が可笑しいのよ」
「いやなに、美しい友情ごっこだと思ってね」
そう言う七夜の口調は、とても嫌みたらしいものだった。 - 137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 19:17:48.88 ID:rSmKbl/k0
-
―――だが、そんな言葉に麦野は表情を歪ませ。
「はっ――ははは!!友情ごっこぉ!?お前みたいな奴が何言い出すかと思ったらさあ!!こ、こりゃ傑作だわ!」
ツボにでもハマったのか、急に笑い出した。
七夜は会話にならないな、と今まで上条に向けられていたナイフを麦野に向け――――!
「まあ、いいさ。とにかく殺せば関係ないしなぁ!!」
と、彼女に向かい襲いかかった――!だがまずい!と思う上条をよそに彼女は
「あらあら、節操ないのね。でもまあ嫌いじゃないわそういうの。
だから―――――」
ブ・チ・コ・ロ・シ・カ・ク・テ・イ・ネ
と、極めて静かにそう言い放ったのであった。 - 138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 19:33:24.22 ID:rSmKbl/k0
-
――――――――――――
「ここが、センタービル…」
そして、麦野と七夜が対峙したとほぼ同時刻。
佐天涙子やリーズバイフェ、そしてシオンはここ、目的地でもあるセンタービルへとたどり着いたのであった。
ちなみに、御坂美琴とシエルはここに向かってくるタタリから、佐天達を守るためにあの場に留まり、今も戦闘の真っ最中である。
「えぇ…そしてここに、今回の事件の根源。ワラキアの夜がいる」
と、シオンはビルを睨み付けながらそう付け加えるように言った。
「ここに入ればもう後には引き返せないな……。なにがあるかわからないし。涙子、シオン。覚悟はできたか?」
というリーズバイフェの言葉に二人は
「はい。分割思考、高速思考、共に万全です。いつでもいけます」
「――えぇ。大丈夫です。ちょっと緊張するけど…でも行きましょう」
と、それぞれに強気な覚悟を以て答えた。
期待以上の答えをもらったのか、リーズバイフェは笑顔で応える。
「そうか、ならばもう言葉はいらないな。――――行こう二人とも、虚言の夜を今度こそ、滅ぼそう」
そして三人は、センタービルへと足を踏み入れた。 - 139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 19:47:04.85 ID:rSmKbl/k0
-
―――――
センタービルの中は、外より涼しげな空気が満ちていた。
シオンが言うにはワラキアは最上階、つまり屋上にいるらしく、そこまで行く必要があるとのことで、佐天達三人は向かいにあったエレベーターに乗り、そこまで行くことになった。
「涙子」
「え?なんですかシオンさん」
エレベーターの中、シオンはふと佐天に話し掛けた。
シオンは大事な事を忘れてました、と言いながら懐から、見えない何かを取り出す。
それで佐天はあっ!と小さく叫んだ。
「――エーテライト」
何度か特訓でも使ったことのあるそれを、佐天は思い出した。
「えぇ、つけ忘れていましたね。今貴女に取り付けますので」
と言うと、シオンはその見えない極細の繊維を、佐天の額に刺し込んだ。
刺し込む、といっても痛みを伴うことではないのだが。
「ところで、作戦を確認しておこうか」
ふと、リーズバイフェがそんな事を言った。
- 140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 20:19:18.18 ID:rSmKbl/k0
-
――作戦の内容は簡単に言えばこんな感じだった。
最初に、シオンとリーズバイフェがワラキアにダメージを与えていく。
その間佐天は回避に専念。
それから、弱ったところでシオンのエーエライトでワラキアを拘束し、捕縛する。
そこで最後に佐天が死の点を突き、ワラキアを倒す―――――というものだ。
これはいかに直死の魔眼を持った佐天といえど、無闇にワラキアに近付いては殺されるだけだと思ったシオンが考えた、現状で最善の作戦でもあった。
「……いけますかね、私」
佐天はシオンの説明を改めて聞き、それ故ため息を吐く。
やはりどれだけ心を強く保とうが、隙というのは生まれてくるらしい。
「えぇ、大丈夫ですよ涙子」
だがしかしそんな佐天のため息に対して、シオンは妙に自信に満ちた声で言った。
「貴女はここまで、数々の困難を乗り越えてきた」
- 142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 20:35:20.26 ID:rSmKbl/k0
-
「―――――!」
シオンは、言葉を続ける。
「貴女は元々ただの一般人で…その目ができるまでは普通の中学生として過ごしてきた」
「ですからこのような血生臭い日常など、耐えがたいものが幾つもあったでしょう。――ですが、それを貴女は乗り越えて、ここまでやってきた」
「シオン、さん――」
「だから、きっと貴女は大丈夫です。自信を持ちなさい佐天涙子。
ここにいる私たちは皆――貴女の頑張りを知っているのですから」
その言葉に、佐天はどこか救われたような気がした。
再び、ゆっくりと佐天は眼鏡を外す。
そして彼女は言った。
「ありがとうございますシオンさん、リーズさん。最後です、もう迷いません。
―――――必ず、ワラキアを倒しましょう」
その眼に映る色は、虹。
そしてその目に宿す想いは、決意。
もう、彼女は迷わなかった - 145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 21:26:49.13 ID:rSmKbl/k0
-
そして、機械音の後でゆっくりと扉は開かれた。
「――――ワラキア!」
殺風景な屋上。
エレベーターを降りたシオンは、早々にそう叫ぶ。
すると
「――――やあ。また君か、娘よ」
「!?」
突如、何もないところから人が現れた。
「ワラキア…!いや、ズェピア・エルトナム・オベローン。現れましたね」
「え?エルトナムって確か――」
そのシオンの言葉に、佐天が尋ねようとしたときだった。
佐天の身体が硬直する。
「―――え?あ、アイツは…」
彼女は、ワラキアと呼ばれる彼の姿に見覚えがあった。
- 147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 21:38:52.56 ID:rSmKbl/k0
-
ワラキアは、そんな彼女を見て目を見開いた。
「君は――。ふっ、ははははは!そうか!中々愉快な脚本じゃないか!!」
佐天の身体は、震える。
そうだ、アイツは―――!
「まさか『私が襲った人間が、その後で私と対峙する』ことになるとはな!!なんという偶然!悲劇から復讐劇!キ、キキキ!!素晴らしい!!」
そう、あの日彼女、佐天涙子を襲った真犯人とはワラキアの夜の事だったのだ。
だがこの事実を知らないのは佐天ぐらいなもので、他の協力者も気を遣い、話されることはなかった。
それが今、彼により吐露される。
「いけません涙子!気をしっかり持ってください!!確かに貴女を襲ったのは彼、ワラキアの夜ですが今は迷わないで!!」
その言葉に
「―――!そ、そうですねシオンさん。すみません!」
と我を取り戻す佐天。
気を取り直して、ナイフを構える。
- 148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 21:59:08.40 ID:rSmKbl/k0
-
その様子にほう…?と笑みを浮かべるワラキア。
「まあいい。その脚本は悲しくもバッドエンドで終わらせてやろう。
―――だが、妙だな。私は確かに異能のない人間を襲った筈なのだが、彼女は今こうして私に立ちはだかっている。この矛盾は――」
何やら考え事を始めるワラキア。
そこへ
「無駄話はそこまでです!ワラキア!あなたはこの街の特殊な力によって現象には戻れなくなっている。
――今日、私達はここで貴方を滅ぼすことを宣言します。覚悟しなさい!」
拳銃――ブラックバレル・レプリカを彼へと向けそう高々に言った。
それに気付き、思考を中断する。
「シオンか――。あの街では随分とやってくれたが、今回は少しは成長を――。盾の乙女も一緒か」
「あぁ、リーズバイフェ・ストレンドヴァリ。今度こそシオンとそして涙子の盾になり、貴様を滅ぼす事をここに誓う!」
そう言いながら、リーズバイフェも聖盾ガマリエルを構える。
三人の戦士が今それぞれの得物を構え、ワラキアに対峙する。
ワラキアも結構、十分じゃないかというとそのまま――。
「結構結構!!キャストも揃え舞台も整った!故に相手をすることを認めよう!
―――我が名はワラキアの夜!現象となった不滅の存在だ!!!」
爪を立て、驚異のスピードで佐天達に襲いかかった。
――――最後の戦いは、こうして幕を開いた。 - 151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 22:34:23.04 ID:rSmKbl/k0
-
――――――――――
無人の街に、爆発音が轟いた。
「は、くぁ――!」
その爆発音の中を駆け回る少年、その少年からは先程まで浮かべていた余裕というものが、消えている。
そして――
「はっはぁ!!ちょろちょろと逃げ回ってんじゃねえぞ童貞野郎!童貞ならそれらしく私に身を委ねてなあああああああああ!!!!」
この罵声と暴力を含んだ言葉を発する彼女こそが、七夜志貴から余裕の笑みを消し去った張本人であり―――――
「おらっ!もういっちょお!!」
「ぐっ――!なんだ、その異能は――!?」
彼女の手に光が集まる。
そして
「『原子崩し』。これが私の持つ能力だ―――――!」
瞬間、白い極太の光線が七夜に向かい放たれた。
彼女こそが、この爆発の原因であったのだ。 - 152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 22:50:11.78 ID:rSmKbl/k0
-
「(『原子崩し』――)」
学園都市に住む者として、上条は当然この名前を知っていた。
「(ということはアイツ、超能力者なのか――!)」
学園都市で七人しかいない超能力者。そしてその第四位。原子崩し
――――それが、彼女『麦野沈利』に付けられた称号であった。
上条は驚愕する。
まさかこの短期間で更に二人の超能力者に出会ってしまったことに。
そして
「――ふん!中々派手な異能をお持ちで。こりゃ、解体しがいがあるな――!」
「はっ!私を解体ですって?10年早いんだよ童貞野郎!!今の状況確認してみなあ!!」
そして、彼女の余りの能力の強大さに。
再び麦野の手が光に包まれる、そして――
「温い。そう何度もオモチャ見せられたら、こっちも感覚覚えるってもんだ」
だがその刹那、麦野の懐に七夜が潜り込んだ - 153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 23:09:19.66 ID:rSmKbl/k0
-
「あぁ――!?」
「おらっ―――!?っ!邪魔をするな幻想殺し」
七夜のナイフが麦野を襲う。
だがそれは横から体当たりをぶつけてきた上条により、防がれてしまう。
「はっ!テメエの好きにはさせねえ――!ってうわ!?なにすんだよアンタ!?」
だが上条が七夜を突き飛ばし、そちらに注意を向けていると背後から光線が飛んできた。
それをかろうじて右手で防ぐ。
麦野としては戦いに水を刺されたのが癪だったのだろう。
だが
「私の能力を、打ち消した――?」
予想外の展開に、麦野は困惑していた。 - 154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 23:20:22.58 ID:rSmKbl/k0
-
その様子を見て上条は何に驚いてるのか理解し、この右手について説明を――――。
「(――――あれ?)」
だがここで上条は、何かに引っ掛かった。
「(――幻想殺し、あらゆる異能を打ち消す右手、だよな。それが何で引っ掛かって――――!!」
上条はやがて気付いた。
七夜の弱点に、というよりは。
"タタリ"の弱点に。
上条は
確認を取る。
先程までの自分と七夜との争いで、それが発動されるような場面はあったか。
「(―――よし、無い。つまり、あの七夜志貴。さっきから俺の右手を――!)」
だとすれば、彼は実力を満足に出していないのではなく。
出せられなかったのだ。
彼の、上条当麻に宿る力を知っていたから。
そして
それに触れれば、自身も消滅してしまうと知っていたから―――!! - 158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/23(木) 23:55:53.64 ID:rSmKbl/k0
-
「――。馬鹿か、俺は。こんな簡単な事に…!」
わかってしまえば、後は簡単だった。
上条は七夜に向き合う。
「――!?て、テメエ!邪魔するんじゃ――!」
「流石だな。七夜」
そこには、純粋な称賛の気持ちがあった。
「まさか戦いの最中、一度も俺の右手に触らず俺を圧倒するなんてな。
それも、気付かせずにだ。凄すぎるよお前」
「―――」
七夜は口を開かない。
「だけど、もうそれも終わりだ。『幻想殺しに触れれば』消滅するっていうんなら、俺にも勝ち目が見えてきたぜ」
「――は、ならやってみろよ。面白い、ようやく興味が沸いてきた。
今のお前なら、俺を楽しませてくれそうだ」
あぁやってやるよ。と一言呟く上条。
そして
「いいぜ、俺はテメエのその幻想を――――」
「俺は貴様を――――――」
「「ぶち殺す!(殺し尽くす!)」」
月が満ちる幻影の夜。
二人は再び、ぶつかり合ったのだった――。 - 171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 11:15:21.28 ID:HTVHqr4z0
-
――――――――――
そしてこちらはセンタービル屋上。
まさに今、死闘と呼ぶべき戦いが繰り広げられていた。
「キキキィィ!!!カットカットカットォォォ!!!」
「くっ!!?」
ワラキアが繰り出すのは悪性情報の渦。
シオンはそれに巻き込まれないよう、横に転がりそれを回避する。
「――――!!」
そして無言でローリングしながら、銃を三発放つ。だがやはり相手は死徒27祖という怪物であり、あまりこれも効かず。
そこに
「下がってシオン!涙子の護衛を!!」
リーズバイフェが突撃する。
その右腕に付けられたヴァイオリンをイメージした聖盾であり銃盾――ガマリエルを突き出し、力を溜める。
- 172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 11:21:09.86 ID:HTVHqr4z0
-
「!?」
溜まりゆく力を見て不味いと判断したのか、ワラキアは標的をリーズバイフェに移した。
そしてそのままその研ぎ澄まされた爪で―――
「だが――――遅い!!」
しかし、リーズバイフェの方が幾らか早かった。
ガマリエルに溜められた力は、ワラキアに向かい放出される。
そして強烈な爆裂音が辺りに響き渡った。
「きゃあああ!?」
「くっ――流石ですね、リーズ」
二人は耳を押さえながら煙に覆われるワラキアを睨み付ける。
倒せずともダメージは通ったろうと確信する二人の前に―――
「シオン!涙子!危ない―――!」
「え?」
目の前に、ワラキアが現れた。
「――!涙子!!下がっがああ!?」
「シオンさん!!」
ワラキアは佐天だけでも引き離そうと後ろを向いたシオンを、容赦なく爪で引き裂いた。 - 173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 11:33:14.20 ID:HTVHqr4z0
-
「くっ―――」
背中から溢れる血を感じ、シオンは膝をつく。
「だがやはり…わからないな」
そしてワラキアは佐天を見ながら、戦闘中にも関わらず、ふとそんな事を口にした。
「―――何故、君がここにいるんだ。襲った時、確かに異能は持っていなかったはず。それに今のシオンの庇いよう……何かはあるみたいだが」
「―――――」
悟られてはまずいため、無言を通す佐天。
幸い距離があるので、虹色の瞳には気付かれなかった。
「となると、強力な概念武装でも渡したか……?ふむ、些か腑に落ちないが……。まあだが」
「!?いけない!リミッター――!」
「この場で君を消しておけば、疑問も無意味になるというものだ!!!」
瞬間。
彼により、あらゆるものが消し飛んだ。 - 174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 11:39:17.06 ID:HTVHqr4z0
-
「―――っ。――」
何が起こったのか佐天には理解できなかった。
目の前が黒に染まり、聴覚も上手く機能しない。
「な、なにが――。!?シオンさん!」
戻りつつある視界を頼りにシオンを探す佐天。
だがそこには―――
「―――あ、…あぁ」
全身傷だらけになり、うつ伏せるシオンの姿があった。
「素晴らしい!本当に君は演出家だよシオン!!まさか己の傷を省みず、この少女を助けるなどと!!素晴らしくも悲劇!悲しくも喜劇!!」
ワラキアはそんなシオンを見ながら、高らかに笑った。
「――る、涙子。大丈夫ですか…」
「シオンさん!どうして、私を庇って…」 - 175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 11:49:23.85 ID:HTVHqr4z0
-
「当たり前……です。涙子は私達の、希望……ですから」
そう微笑むシオンの表情は、柔らかい。
「先程……エーテライトでリミッターを外しました。これで涙子も少しは動けるように……なったでしょう」
「シオンさん!もう喋っちゃ駄目!傷が…」
「すみません、少し…離脱します」
そしてそれっきり、シオンは目を閉じ気を失ってしまった。
「…………………」
「ふん、中々の名演技だったが…いかんな。それでは興も冷めるというものだ、一体何故そこまで小娘を……ん?」
ゆっくりと、佐天が立ち上がった。 - 176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 11:54:20.39 ID:HTVHqr4z0
-
「――――ワラキア」
一言、佐天は呟く。
「歯向かうのかね?小娘。折角シオンが大事にしてくれた命を粗末に――」
「ワラキアァァァ!!!!」
だがそんな言葉も無視して、佐天は吠えた。
「許さない――シオンさんを、こんな傷付けて―!!」
「!?涙子!落ち着け、早まるんじゃない!」
だがそんなリーズバイフェの声も届かず――
「お前は私がこの手で、殺し尽くしてやる!!!」
彼女は、ワラキアに向かい突っ込んでいった。 - 177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 12:01:31.04 ID:HTVHqr4z0
-
「うあぁ!!」
佐天の闇雲に振ったナイフが空を切る。
「(線さえ…線さえ切ることができれば……!)」
それが唯一の勝算だった。
幸い、線や点は見えている。
流石に死徒というだけあって、通常のそれより薄くしか見えなかったが。
佐天はワラキアにある線を凝視する。
「おやおや、それでは無理だ小娘。リテイク!やり直したまえ!」
「――!きゃあ!!」
リミッターが外れたせいもあり、佐天はなんとかワラキアの一撃を掠める程度で避けることができた。
だが
「遅い!カカカットカットカットォ!!」
「が、あぁぁ!!?」
すぐに入ったワラキアの二撃目を、佐天は回避できなかった。
正面から喰らい、数メートル吹き飛ぶ。
力の差は、もはや見るまでもなかった。 - 178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 12:11:58.21 ID:HTVHqr4z0
-
――――――――――
佐天が吹き飛ばされ、一瞬の静寂が訪れた後、ワラキアはぽつりと呟いた。
「直死の魔眼、か――?」
「(まずい!この男、涙子の眼に気付いて――)」
「なるほど、私との一件で根源との繋がりが出来たのか――。
興味深い。実に興味深い!以前も魔眼持ちの少年と対峙したものだが、これは運命なのかな!?」
ワラキアはふと以前戦った魔眼の少年を思い出して、なんとも愉快そうに笑った。
「なるほどなるほど、シオンも君を守り抜く訳だ。
何せこの小娘こそが、このワラキアの夜を倒す唯一にして、最大の希望なのだからな!!」
「(全部、バレたか―――)」
リーズバイフェは苦虫を噛み潰したような顔で、唇を噛んだ。
- 179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 12:23:02.69 ID:HTVHqr4z0
-
「だが知ってしまった以上それも無意味!!早めに私はあの小娘を殺すことにしよう!それこそが我が勝利条件!キ、キキキ。キキキキキキキィィィィィィ!!!!!」
ワラキアはそう口にして、やがて自身を変化させ始めた。
彼は謳う。
「鼠よ回せ!秒針をサカシマに!誕生をサカシマに!世界をサカシマに!回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せ回せェェェ!!!!!」
ナイトルーラー・ザ・ブラッドディーラー
ワラキアの夜による、最大の攻撃が辺り一面を破壊し尽くした。
「(くっ!ここまでか…。涙子――――!!)」
「全ては無意味!ツマラナイナラ自滅シロ!これにて閉幕だ!役目を終えた役者は二度と這い上がってはこれまい!!キキキッ!!!」
壊れゆく景色、高らかに叫ぶワラキアの夜。
その中でリーズバイフェは、せめて彼女だけでも残っているようにと強く、強く祈っていた――――。 - 180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 12:59:50.98 ID:HTVHqr4z0
-
―――――――――――――
―――ふと、目が覚めた。
「あれ…私。そうだ、確かワラキアの攻撃で吹き飛ばされて……」
先程を思い出す。
吹き飛ばされた後、そこら周りを破壊し出したワラキアの巻き添えをくらい、崩れたビルから落ちてここに叩き付けられたのだった。
「(あぁ…。私、負けたのか)」
「(当然よね。逆上してあんな風に突っ込んでいけば…)」
「(もう、手足も動かない。指先一つ動かない)」
「(私、ここで死ぬのか)」
そう思い私は目を瞑る。
先程までの激しさがまるで嘘のように、辺りは静まりかえっていた。 - 181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 13:07:52.35 ID:HTVHqr4z0
-
思えば、あの事故――ワラキアに襲われたあの時から、どこか私の人生は狂っていたのかもしれない。
重傷から一命をとりとめたと思ったら
変な線や点が見えるようになって
そのあと、橙子さんと出会って
退院したとすぐに、吸血鬼退治――
なんだか自分のことながら、デタラメな話だと思った。
だから、もうこれでいいのかも知れない
狂った人生なんか、ここで――
- 182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 13:33:39.64 ID:HTVHqr4z0
-
――わかりました。待っています
「―――――――――――――――――――――――――あ」
そして、思い出した。
一つの約束を
それは、私の帰りを今も待つ少女との――
「そうだ、私――」
ワラキアを倒して初春の所へ帰る。
これが約束だったではないか
帰らなきゃ
- 183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 13:47:16.15 ID:HTVHqr4z0
-
「――、く、そ」
しかし、身体は動いてくれない。
もう限界が来ているらしい。相変わらず指先だって動かせやしない。
「でも、わた、し、は―――」
守らなきゃいけない約束があるんだ。進まなきゃいけない未来があるんだ。
「う、があああ―――!」
だから、私は
「――はぁ、はぁ。やっ、た――」
何度でも、立ち上がれるんだ。 - 188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:37:21.57 ID:HTVHqr4z0
-
――――――――――
「く、ハハハ!!ハハハハハ!!!拍手喝采痛み入る!!
直死の少女もこれで消えた!やはり去り際は鮮やかでないとな!!」
「そんな、涙子――」
そして屋上。
といっても屋上は半壊しており、もはやそれと呼んでいいのか怪しいものと化していた。
そんな中笑うのは、ワラキアの夜
佐天涙子を殺し、リーズバイフェこそ聖盾によって残られはしたが、もはや奴らに己を殺す手段はないと確信した彼は、ひたすらに笑っていた。
「聖盾の乙女よ、いかがかね?そこで運良く被害を逃れ横たわる我が娘シオン。そして先程私自ら消してやったあの小娘。
何も残ってはいない!もうお前を守る味方はその聖典のみ!大人しく死を迎えてはどうかね?」
「くっ!だが、まだ負けた訳では――」
そう言いガマリエルを構えるリーズバイフェ。
だがしかし、その戦力差は大きかった。
リーズバイフェも、そんなことは把握している。
- 189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:39:27.49 ID:HTVHqr4z0
-
「無駄だ、聖盾の乙女。君では私には敵わぬよ。何故ならそれはあの時に、既に決着がついているのだからね」
「だがそれでも、私は逃げるわけにはいかない!!」
リーズバイフェの強い言葉に、ワラキアはわからない子だね、と彼女にとどめを彼女に渡してやろうと――――
「――――ん?なんだこの音は」
ワラキアは、何か唸りをあげるような機械音が聞こえてくるのを感じた。
正体はエレベーターだった。
何かがこちらに向かい上がってくる。
まだ戦力がいたのか、とワラキアは意識の対象をリーズバイフェからエレベーターへ向きなおす。
そして、エレベーターが屋上に止まり、
それは再び、ここへやってきた。 - 190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:41:22.87 ID:HTVHqr4z0
-
「ば、馬鹿な―――」
最初に驚いたのは、ワラキアだった。彼はエレベーターを上がってきた彼女を、疑うように睨む。
「馬鹿な!貴様どうやってあれを逃れた!いや、それよりもどうしてまだうごけ――――」
「ワラキア」
彼女は、遮るように言った。
そして、たった一言だけ呟いた
殺す。と
その瞳は、溢れんばかりの虹色を光放っていた。 - 191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/06/25(土) 14:45:25.94 ID:vOZUSJVlo
- 暑いけどいるよ
- 192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:45:42.84 ID:HTVHqr4z0
-
―――――――――
「うおおおおおおお!!!」
「っち!貴様―――」
上条の勢いのいい右ストレートが七夜を襲う。
だが彼は、それを上条の右腕を持ち流すことで事なきを得た。
七夜である彼でこそだからできた、荒業だ。
「っとと!やっぱ簡単には触らせてくれないか――ってうわ!?」
そのまま背を向け、振り替える上条の元に七夜のナイフが今にも突き刺さろうとしていた。
狙いは死の点――くらえば問答無用で相手を『殺す』、綻びの中心だ。
本能的にやばい――と上条は右手を突き出すことで、七夜を退かせる。
「っやはり厄介だな幻想殺し。最初にその右手を切り落としてしまうか――」
「やってみろよ!その時は右手生え変わらしてでもお前を消し去ってやる!!」
そんな冗談を織り混ぜながら再び突撃していく上条。
両者、一歩も譲らない。 - 193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:50:33.09 ID:HTVHqr4z0
-
「はぁ…あほらし」
だがそんな様子を見て彼女、麦野沈利は呟いた。
「なにこの私の扱い。興が冷めるってレベルじゃないわよ、これ」
超能力者だぞ私は、と更に付け加える麦野。
だが真実、彼女は今回そういう役回りをしていた。
ピンチの時に現れ圧倒的な実力で相手を翻弄するが、徐々に押され始めるような立ち回り。
これが噛ませ役じゃなければなんだというのだ。
だが、これも真実として――七夜志貴という人物はそれほどまでに強かったのだ。単純な実力で超能力者と互角か、それ以上に渡り合えるくらいには。
そう考えると、戦いが本格化する前に引けてよかったのかもしれない。
「痛い目みる前に――か。趣味じゃねえんだけどなあそういうの」
そう言う彼女は、まるで子供のようだった。
「でもま、よく考えなくてもこんな利益のない戦いに最後まで付き合ってやる義理もないしな」
そうして無理矢理納得した(させた)彼女は、渋々ここを去ることに決めた。
戦いが激化する中、彼女は背を向け
「―――ま、二人とも次に会ったらぶち殺し確定だから、覚悟しときなさいよ」
捨て台詞を吐いて、この場を去っていったのだった。 - 194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:53:28.10 ID:HTVHqr4z0
-
そしてそんな麦野の事など二人には眼中になく、戦いは本格化していった。
上条が殴りかかり、七夜が避ける。
そして七夜が切りかかるのを上条がかわす、または右手で牽制する。
本来の実力差は圧倒的に七夜の方が上だろう。
だが七夜自身が幻想というデメリットを踏まえ、実力はほぼ互角のものとなっていた。
七夜の顔に生気が浮かぶ。
それは幾ら己が不利を抱えてたとしても、互角に戦える相手を殺したいという獣の感情によるものだった。
「(楽しい――――)」
彼は心で一人、思う。
「(楽しすぎだ、幻想殺し。ここまで俺を奮わせたのは紅赤朱以来だ。さあ、もっと俺と殺しあえ―――!!!)」
殺人鬼は悦び、今この瞬間に感謝する。
まるで、こうする事こそが自身の存在意義だと言わんばかりに――― - 195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 14:56:49.87 ID:HTVHqr4z0
-
そして戦いは続き、状況は変化した。
「はっ!――がは、ぁ」
ここに来て、上条に疲れが来たのだ。膝をつき、咳き込む。
「――――限界か。ならば、その命容赦なく断ち切らせてもらう」
「―――っ」
七夜が近付いてくる。
上条は、自らに活を入れ、自身を呼び起こそうとする。
だが、動かない。
ここに至るまでのダメージが大きかったのか、避けられるだけの気力が出ない。
そして
「今度こそ、死ね」
彼のナイフが降りおろされた。
そして七ツ夜のナイフは、上条当麻の命を奪う。 - 196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 15:00:39.09 ID:HTVHqr4z0
-
――――はずだった。
「お、まえ…」
ナイフは寸前で止まる。
彼に限っては、命を助けるような真似はしないだろう。
ならば何故――と上条が上を見上げたそこには
「時間切れ――かよ。またなの、か――!」
その存在を薄くし、それを憎らしそうに嘆く七夜志貴の姿があった。
「お前、その姿――」
まだ右手で触れてないのに何故、と言うまえに七夜は答えた。
「さあてね。恐らくうちの雇い主に何かあったんだろうさ。悪いが、この戦いはお預けだ」
「雇い主って――。ワラキアか!?」
上条の疑問に七夜は答えない。
そして
「にしても、結局誰も殺せず終いかよ。くそっ、ようやく使い魔から逃れ、羽目を外せると思ったんだがな――」
「だが、このままでは俺も殺人鬼として名折れと言うもの。ここは…」
「!?なにを―――」
上条が何か言うまえに
七夜は、己の心臓をそのナイフで突き刺した。
戦いは、こうして幕を閉じた。 - 197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 15:03:44.00 ID:HTVHqr4z0
-
――そうして後に残ったのは、七夜が来る以前にあった、静けさのみだった。
「――――アイツ、誰かを殺せないからって、自分自身を殺しやがった」
上条は、数刻前に消えていった殺人鬼を思い出しながら深く唇を噛み締めた。
生粋の殺人鬼、ただ殺すためだけの存在。
そんなどこの誰かすらわからない相手を思い出し上条は―――
「……馬鹿野郎」
一つ呟いた。
感想は、それだけだった。
――――――――――――――― - 205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/25(土) 22:21:16.58 ID:HTVHqr4z0
- ――――――――――
殺す。
その少女によるたった一つの言葉を、ワラキアは確かに聞いた。
「ふ、は、はは、ははははは!
私を殺すだと!?ただの人間に過ぎない貴様が、この私を!?
魔眼の少女よ、思い違いもいい加減に――」
そしてワラキアが言葉を言い切る前に、佐天の身体が動いた。
「―――――――!」
駈ける。
無言でワラキアの目の前まで走りきり、右手に持つナイフで線を狙う。
狙いは胴――。魔眼により切られれば即死は必須な部位だ。
「―――!?この、人間風情が。カットカットカットォ!!」
それをワラキアは佐天ごと吹き飛ばすことで防いだ。
悪性情報の渦、そこに佐天は容赦なく放り込まれ―――
「――――やあぁ!!」
はしなかった。
彼女はなんと上昇する最中、その渦にすら見える点――を刺し、これを『殺した』のだ。
- 206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 22:23:45.44 ID:HTVHqr4z0
-
「き、貴様今何を―――!」
「――――――!」
空中と地上で、絡み合う視線。
そして
「ワラキアアアアァ!!!」
落ちていく勢いを利用し、そのまま佐天はワラキアの右に視えた線を一刀両断する―――!
「ぐ、おおぉ、あぁあああぁ!!!」
悶絶。
そして佐天は反撃を警戒し、その場から数歩引いた。
「る、涙子――」
「――――リーズさん」
見れば、リーズバイフェは佐天のあまりの変わりように、驚愕していた。
だが、それは本来驚くに値しない。
――――今のは紛れもない奇襲に過ぎなかったからだ。
奇襲とは、総じて能力以上の成果を表す。
だがそれを踏まえたとて、佐天涙子にはこれ程の身体能力はなかったはずだ。
なのに、何故。
- 207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 22:25:45.15 ID:HTVHqr4z0
-
これも答えは至極単純。
先程シオンが使ったリミッター解除による潜在能力の解放によるものだ。
以上の事柄を踏まえ、佐天涙子は死徒27祖の右腕を切断することに成功する――――――!
「み、認めぬ!!貴様のような人間風情にいいいィィ!!カットカットカットカットカットカットォォォ!!」
怒り狂うワラキア。
そして
「涙子、危ない―――!」
「――――え?」
佐天が声をあげた瞬間。
「――――死ね」
いつの間に近付いたのか。
「―――――ァァア!!」
佐天涙子は身体を引き裂かれ、声にならない叫びをあげた。 - 209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 22:29:04.22 ID:HTVHqr4z0
-
ワラキアの表情が喜へと変わり、リーズバイフェの表情が悲へと変わる。
だが、両者のそれは突如、驚へと移り変わった。
「――――――!?」
「涙子が――消えた!?」
驚くのも無理はない。
爪で引き裂かれ、宙を舞った佐天が突然、幻のごとく消え去ったのだ。
幻はやがて姿を失い、消える。
「これは――エーテライト?」
ワラキアはふと、この現象に既視感を覚え、呟いた。
そうだ、確かこの現象は数年前――
その時だった。
「そこまで、です…!ワラキア――!」
眠っていたはずの彼女の声が、響いた。 - 210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 22:53:49.87 ID:HTVHqr4z0
-
「シオン―――!ではやはり先程のは」
「えぇ、私が作り上げた複製です!通常より質は落ちていましたが、正気を失ったあなたには十分だった―――!」
瓦礫から、シオンが姿を現す。
やはり先程の攻撃により多少の傷は負っていたが、そんなことは関係ないと言わんばかりに、その姿は堂々としていた。
彼女は叫ぶ。
「そして―――リーズ、今です!!ワラキアを!」
「―――――――!」
後ろを振り向く。
そこには―――
「了解した。――――――行くぞ、ワラキアの夜!!」
リーズバイフェが、立つ。
その腕には正式外典、ガマリエル
対吸血鬼用の『滅び』を備えた彼女の聖盾が、その力を存分に発揮する―――――!
「カルヴァリア――――」
「くっ――――、貴様ああああああ!!!!」
ワラキアが回避すべく跳ぶが、もう遅い。
「ディスロアーーー!!!」
リーズバイフェ最大の攻撃が、ワラキアへ命中した。
全ての決着は、今ここに―――
- 211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 23:17:06.76 ID:HTVHqr4z0
-
「――――――ワラキア」
そこで姿を現したのは、佐天涙子だ。
リーズバイフェの攻撃を受け、深い傷を負った彼を―――彼女は睨む。
「キ、キキキ!!馬鹿、なこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんなこんな事があああああああああ!?」
そして目を閉じ、神経を研ぎ澄ます。確実に、確実に奴の点を突けるように―――――!
やがて、目は開かれた。そして
駆け出した
「ワラキ、アアアァアアアァァァァ!!!」
「―――!小娘がああああああああああ!!?」
―――――そして、突き刺さるような音が屋上全体に響いたような錯覚を覚えたあと
「か……、は…」
勝負は、ここに決した
。
- 212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/25(土) 23:52:02.37 ID:HTVHqr4z0
- ――――――――――――
「はぁ、はぁ……」
佐天涙子は、肩で息をしながら目の前を見つめる。
そこには。
「ぐ、ばあ…!、おの、れぇ…!」
死の点を突かれ、血を吐き出すワラキアの姿があった。
見れば口や目に始まり、あらゆる部位から血が漏れている。
「―――――――」
そんな様子を、佐天は睨みながら見つめる。
まるで、その光景を目に焼き付けるように。
「――――ワラキア」
そこに、シオンがやってきた。
「これで今度こそ本当にお終いです。死の点を突かれたアナタは――今度こそ消滅する」
「―――――――」
依然、無言。
「……長く続いたアナタとの因縁も、ここまでです。エルトナムの――――」
「…そうだな」
そこでシオンの言葉を遮る形で、ワラキアが呟いた。
- 214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 00:29:29.95 ID:S/Gb+EDJ0
-
ヒュンッ
「――――――――え?」
シオンは一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
ただ自分の目の前を、何かが吹き飛んだ様子しかわからない。
わからない。わからない。
そんな中、目の前の吸血鬼はニヤリと笑い
「き、キキキ。死への道ずれ――。一人くらいは欲しかろう?」
そんな事を―――――言った。
そしてシオンはようやく今何が起こったのかを頭で理解した。
「涙、子―――――!?」
咄嗟にシオンは飛んでいった方向を振り向く。
そこには
「シオン!大丈夫だ、なんとか落ちずにはすんだ!」
と佐天をすんでの所で受けとめ、抱き止めているリーズバイフェの姿があった。
呆然するシオン
「は、ははは!死徒27祖として、誰も殺せずでは名折れしてしまんだよ!これは当然の――き、キキキ。タベロタベロ骨まで食い尽くせツマラナイツマラナイ人間ナンテツマラナイ救いなんてありは――――!!」
パァンッ―――――
一つの銃声が響く。
ワラキアはシオンの銃撃を受けると、そしてそのまま灰になっていった――――――
- 216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 00:59:14.32 ID:S/Gb+EDJ0
-
「――――――」
シオンは拳銃を仕舞い、佐天の元に向かって歩み出した。
感情は無。
喜怒哀楽を一切感じさせないその表情は、どこかリーズバイフェを不安にさせた。
「シオン―――」
「―――――――」
反応はない。
そしてそのまま倒れ伏す佐天の側まで歩き、彼女は屈んだ。
「――――――涙、子」
名前を一つ、呼んだ。
だがそこに返事はなく、認めたい現実が今シオンに襲いかかろうと――――
「――――――」
だが、彼女はそこで笑った。
それはワラキアもような邪悪な笑みではなく、初めて彼女と出会い、一緒に過ごした時に浮かべていた優しい笑顔だった。
そして一言だけ、彼女は呟いた
おつかれさまです、ゆっくり休んでください、と
虚言と幻影の夜は、こうして明けた
- 225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 17:07:11.31 ID:Ypt8ijOq0
-
夢を、見ていた。
それは本当に、本当になんてことのない夢
夢で見る必要がないくらいの平凡な光景
「さ――ん。私は――」
声がする
それは誰の声だったか
「お――さ―ったら――の」
わからない
わからないのだが
「黒―!アン―――い!」
酷く、懐かしい声だった
だけど、それは夢
どれほど懐かしもうが夢でしかない
叶うはずもない、夢
私はそれを、ずっと見続ける―― - 226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 17:16:06.15 ID:Ypt8ijOq0
-
「――さ―!お姉――!」
声が聞こえる。
なんだろう…人が折角夢を見ているというのに。
「お姉様、起きてくださいまし!早くしませんと学校を遅刻してしまいますわよ!?」
「―――――――え?あ」
その言葉で、ハッと目が覚めた。
あっあれ?今何時――
「8時過ぎですの!もう走らないと間に合いませんわ!?」
「―――――――うそっ!?」
時計を見る。
時刻は確かに8時を過ぎたころを指していた。
私は急いでベッドから降り、支度を始める。
「お姉様…。昨晩も夜更かしをしていたのかは存じませんが、そんな事では常盤台のエースは務まりませんわよ?」
黒子がそんな私を見て、呆れたのか溜め息を吐いていたのが見えた。
だけど今はそれどころではない。
あぁもうなんだってこんなことに―――!
- 227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 17:24:10.57 ID:Ypt8ijOq0
-
その後急いで支度を済ませた後、黒子と一緒に学校へ向かう。
黒子の能力を使えば一瞬なんだろうが、私はこれを却下
万が一寮監に見つかれば何をされるかわからないし、何よりこれ以上黒子の溜め息を聞きたくもなかったからだ。
そんな訳で私達はやや早足気味で学校へ向かう。
季節はそろそろ夏になりかけ、空はどこまでも澄み渡る青空が広がっていた。 - 228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 17:33:41.77 ID:Ypt8ijOq0
-
―――早いもので、あのタタリの夜から既に数ヵ月が経とうとしていた。
学園都市は今日も特に変わらず、その姿を保っている。
シエルさん曰く、あの夜は幻影の夜だそうで、ワラキアが消えれば誰の記憶に残るでもなく自然と忘れ去られていくものだとかなんとかを話していたのを覚えている
そう考えるとなんだか少し誰の記憶にも残らない、というものは寂しい気がした。
覚えているのは事件に関与した人物のみ、つまり私達6人だけだ。
そしてその6人のうち半分も、今やこの学園都市を既に去っていってしまっている - 229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 17:39:52.30 ID:Ypt8ijOq0
-
教会とやらの代行者として現れたシエルさんは、やはり一度今までいた町に戻るといいここを後にした。
しかし何やらここに未練があったらしく
「カレー…学園都市のカレー巡り…」
とよくわからない言葉を残して、去っていった。
やはりあの人の事は最後までよくわからなかった。
シオンさんとリーズさんもその後事件の後始末をしてからシエルさんと同じところへ帰っていった。
なんでも路地裏に待たせている友人や猫がいるとか言っていたが、これもよくわからない。
ここまでよくわからないと帰っていったその町は、実は学園都市に匹敵するぐらいの奇怪な町なんじゃないかと疑ってしまうが……どうなんだろう。
- 230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 17:48:52.77 ID:Ypt8ijOq0
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そしてあの馬鹿は、今でも変わりなくちょいちょい私に顔を見せている。
あの夜の後、傷だらけになりながら私達顔を出してきたときは驚いたが、その傷も今やなりを潜めており、以前と変わらない上条当麻の姿を私に見せてくれている。
正直、怪我がよくなって本当によかったと思う
本人の前では死んでも言えないのだが
そして、最後に彼女はというと――――――
- 231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 17:55:29.91 ID:Ypt8ijOq0
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―――――――――――
「…あ、初春さーん!」
そして学校も終わり、とある場所へと向かう途中
「御坂さん?あ、ご無沙汰しております!もしかして――アレですか?」
頭に花を大量に付けたのがあまりに特徴的な彼女――初春さんに遭遇した。
「えぇそんなとこよ。それにしても、久しぶりね初春さん、元気してた?」
「はい、こっちも色々あって大分やつれてたんですけど――。白井さんや御坂さんのおかげもあってなんとか大丈夫でした。ありがとうございます」
そう言って深々と頭を下げる初春さん。
まいったな、こっちは何もしてないんだけど――。
- 232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 18:01:35.28 ID:Ypt8ijOq0
-
と、そこで
「初春、何を言ってますの?頑張ったのは、貴女自身の力ではありませんか」
「げっ、黒子――!?」
突如、何もない空間から黒子が現れた。
彼女の能力によるものだというのは、言うまでもない。
「なんですのお姉様その『げっ、黒子――!?』というのは。私がここに来たらそんなにおかしいですの?」
「いやそんな事はないんだけど…」
「それにしても白井さん、御坂さんのモノマネ似ていませんね…」
そんな私達の様子に、「まあいいですわ」と何やら呆れた様子の黒子。
それにしても初春さんの言葉には同意だわ。
- 233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 18:04:57.29 ID:Ypt8ijOq0
-
そしてそこからは、行き先が同じということで3人一緒に行くことになった。
三人肩を並べ、目的地へ進む。
その間、なんてことのない雑談が続いた。
夏休みはどうするだとか、課題が大変だとか、黒子がこの前こんなことをやらかしただとか、色々だ。
黒子は毎日顔を合わせていたのだが、初春さんとは久しぶりということもあり、話がとぎれることはなかった。
そしてそんな感じでしばらく進んでいると、やがて目的地が見えてきた。 - 234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:09:29.68 ID:Ypt8ijOq0
-
目的地は、病院だった。
病院独特の臭いが漂う中、看護士さんに受付を取り、案内をされる。
「…………」
「……………」
「…………」
それからは不自然な程に、私達は会話をしなくなった。
ただ黙々と、歩を進める。
歩く毎に鳴り響く音が、なんだか今日に限って妙に大きく聞こえた。
- 235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 18:11:36.97 ID:Ypt8ijOq0
-
そして
「ここね……」
名札を確認する。
間違いない、この部屋だ。
そう確認すると私は数歩後ろに下がって、初春さんを見た。
そして口を開く。
「初春さん」
「は、はい?なんですか御坂さん!」
どうやら彼女は緊張してるみたいだ、まあ無理もないか。なんせ――
「貴女がここを開けなさい。あの子も、きっとそれを望んでるはずだから」
「え?御坂さん…」
「そうですわよ初春」
そして黒子も私の意図を察したのか、後に続いた。
「白井さんまで…」
「彼女は、きっとここに一番に入ってくるのは初春だって信じてるはずですわ。なら、親友としてせめてそれくらいは叶えてあげるのが…友情というものではなくて?」
その言葉にハッと顔を見上げる初春さん。
何かに気付いたようだ。
「御坂さん、白井さん…。ありがとうございます。そうですね、せめてそれを叶えてあげるのが―――。
わかりました、開けますね」
そして前に立つ初春さん。
やはり緊張してるようで、手が震えてる
私と黒子は、それを見届けているしかない。
やがて、意を決し、彼女は扉を開けた――――― - 236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 18:14:24.26 ID:Ypt8ijOq0
-
「―――――」
ここは病室でも、重傷の患者さんが来るような隔離部屋でありベッドは1つしかなかった。
窓は開いたままで、風によりカーテンが揺らめく。
私達はそのまま進み、ベッドまでやってきた。
そして―――――――
「佐天、さん…」
初春さんが、一言呟いた。
そう、私達がここに来た理由とは1つ。
数ヵ月間、寝たきりの佐天涙子のお見舞いだった。
- 237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:17:29.38 ID:Ypt8ijOq0
-
初春さんは、ベッドの側にあった椅子に腰掛けると、佐天さんの手を握った。
そこに何かするのも言うのも野暮だと思った私と黒子は、花瓶の花の水を取り替えようと部屋を出ようとした。
この場においては、初春さんを一人にさせた方がいいと思ったからだ。
花瓶を手に持ち、部屋を出る - 238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:20:37.24 ID:Ypt8ijOq0
- ――――――――――――
「佐天さん―――」
あれから数ヵ月、彼女は一度も目を覚ますことはなかった。
あの約束の翌日、佐天さんを待っていた私に一本の電話が鳴った。
着信先は御坂さん。
内容は、佐天さんが再び意識不明の重体に陥り、病院に搬送されたというものだった。
そこで生まれて初めて、私は御坂さん、いや誰かに怒鳴った。
知っていたのだ私は、御坂さんも佐天さんと同じ大きな何かに巻き込まれていたのを。
だからこそ、許せなかった。
御坂さんは学園都市の超能力者、そんな大きな力をもった人が側にいながら、どうして佐天さんを守ってやれなかったのだ。と
だがそれも前の話で、今はさっきのように普通に話せている。
これについては本当によかったと思った。
「――――――」
こんな事を思い出してる間も、彼女が動く気配はない。 - 239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:23:23.96 ID:Ypt8ijOq0
- ――――――――――――
「それにしても、驚きましたわ」
「は?何よ黒子、突然」
水道から花瓶に水を入れ、キュッと栓を閉める。
そしてそろそろ部屋に戻ろうかなと思って腰をあげたときに、黒子がそんなことを呟いた。
「何もこうもありませんわ。お姉様があの日、朝帰りしたときの話ですの」
と、誤解されかねない言葉を並べ、黒子は不満そうな表情を浮かべた。
あー…まああの時は流石にね…
そして、病院内だというのに急に黒子が叫びだした。
「あの日私は確かにお姉様を待ってましたわ!お姉様はきっと大きなものに巻き込まれて、それでも私の元に帰ってきてくれると!!」
「ちょっちょっと黒子ここ病院――!」
だが私のそんな言葉も聞かず、黒子は続けた。
「いえ、結果としてはお姉様は帰ってきましたわ!!黒子の願いを聞き遂げてくれましたわ!!だけども、だけどもおおおおおお!!!」
「くっ黒子――!いい加減にしなっ――」
「だけども帰ってきたお姉様は全身切り傷に痣だらけ!!おまけに佐天さんは意識不明の重体って、黒子は、黒子はああああああああああああ―――――あべしっ!?」
そして私は黒子の頭に、容赦なく拳を叩き付けた。 - 240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 18:25:08.70 ID:Ypt8ijOq0
-
「―――すみませんですの、少々取り乱しましたわ…」
「まったく、この子は――!」
そして花瓶を持って歩き出す。
後ろには大きな頭を押さえながら黒子がついてくる。
自業自得なので、特には何も言わなかった。
「それにしても―――」
まだ何か言うか!?と私が黒子を睨んだ瞬間
「いいんですの?初春に、あの事言わなくて」
と、そんな抽象がかった事を黒子は言ってきた。
意味がわかる私は、一瞬動きが止まる。
「―――――まあ。今にもわかることでしょうしね。それに――」
「?」
窓に顔を向ける。
そこには一面の青空が、青く澄み渡る大きな空が―――
そして私は苦笑を浮かべ、こう言った。
「ああいう人でしょ、彼女って」
そのなんとも間抜けな答えに、黒子はなんですのそれは、と笑った。
- 241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:26:36.22 ID:Ypt8ijOq0
-
そして――――――
「まったく、いつまで経っても泣き虫だなあ、初春は」
「―――――え?」
初春は、そんな懐かしい言葉を聞いた。
「久しぶり、初春。ちょっと遅れちゃったけど――――」
涙が、溢れる。
数ヵ月、どれほどこの声、この言葉を待ったか――――
「約束、なんとか守れたかな?」
確かに、彼女は目を覚ましていた - 242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]:2011/06/26(日) 18:28:42.87 ID:Ypt8ijOq0
-
こうして物語はここで幕を引く。
戦いに赴いた者達はあるべき場所に帰り
約束をした少女はそれを果たした
一夜限りの夜は明け、朝が来る
少女達はいつまでもそれを
噛み締めた―――――
いつまでも一緒だよ、初春!
――はい、佐天さん!
終わり
- 245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:33:32.27 ID:Ypt8ijOq0
- 終わりましたねえ…
ツッコミ所満載ですが、そこはご容赦を
とにかく長かったです。
何回挫折しそうになったかわかりません。でも、無事こうして終わらせることができました。
この場でもう一度
ありがとうございました。
批判でも長ったらしい感想でも書いてくれると、泣いて喜びます - 246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/06/26(日) 18:34:11.57 ID:1kfpn5Qp0
- 乙
- 252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/26(日) 18:47:27.62 ID:Ypt8ijOq0
- 構想30分、プロット1時間、文は大体思い付きの超問題作を読んでいただきありがとうございました
んでこのスレどうしようか…削除依頼もいいけど余りまくってるし…
………誰か、何か書いていかない?
無いなら落とします。予定より長引いたからちょっとこれ以上書けませんすみません - 275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/27(月) 01:24:29.34 ID:GJDsfnhz0
- ありがとうございます、予想外に皆読んでくれてて
幸せですwwww
さてなんか結構要望もあるので、短編暗い書こうかと
思っています
また明日なに書くか聞こうと思うのでよろしくお願いいたします - 287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/27(月) 22:35:55.71 ID:OpnGQ0Jk0
- とりあえず皆さんの意見聞きたいと思います
1.月姫系短編SS
2.fate 系短編SS
3.とある系SS
4.佐天「直死の魔眼?」の外伝的なもの
5.そんなもんいらねえ!
だったらどれがいいですかね?
どれにしても更新は遅くなっちゃいますけど
- 299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/28(火) 00:20:22.35 ID:69ojQvh50
- よし決めた、4のシリアス路線でいく
題は佐天「夢に招く化け猫?」
です
短いし前回以上に不定期になりそうだけど見てやってくれ - 304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 07:51:22.72 ID:7kfvd9w70
- 昨日全く書けなかったなすまん
夜ごろにプロローグまるまる投下するからご期待! - 314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 23:07:17.61 ID:iQA5q7fX0
-
・短編なので短い
・佐天「直死の魔眼?」から数ヵ月後の設定
・ほのぼのなんだかシリアスなんだかよくわからない、つまりそんな感じ
・今回は一人称
・学園都市の外に出るけど気にしない!(重要)
・2日に一回投下予定
以上注意事項です、それではどうぞ - 315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:08:52.56 ID:iQA5q7fX0
-
それは、とある魔眼の少女のその後の話
約束を果たし、再び日常へ戻っていった彼女
季節は夏から更に移り、秋
彼女は、再び非日常と顔合わせした
そんな小さな、物語
- 317 :プロローグ「とある町にて」[saga]:2011/06/29(水) 23:14:52.08 ID:iQA5q7fX0
-
秋、三咲町
暑かった夏もようやく終わり、そろそろ季節の流れを感じさせるこの時期。
俺こと遠野志貴は、街を歩いていた。
「ん……」
昨夜寝不足だったこともあり、眠気を払うため背伸びをする。
だがあまり効果は得られず。
仕方ないなと思いながらも、そのまま目的地へと向かうことにする。
- 318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:16:15.25 ID:iQA5q7fX0
-
そして歩くこと数十分、ようやくたどり着いた。
「ここだここだ、ええとあいつの部屋は…」
ついたのは、一件のマンション。
そのまま自動ドアをくぐり、記憶を頼りに上へと登っていく。
「というかアイツ、家にいるんだろうな。いやまあ昼は苦手な奴なんだけども…」
だけどアイツの場合、突然何をし出すかわかったもんじゃない。
なので捕まえるのも一苦労なんだよなと一つ愚痴をこぼしてみたり。
そしてそんな事を考えてる間に、部屋の前についた。
俺は部屋を確認すると、呼び鈴を押す。
- 319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:20:10.69 ID:iQA5q7fX0
-
ピンポーン
……来ない。まさか日中だというのに外で遊び回っているのかアイツは
と、俺が溜め息を一つ吐こうとした時
ガチャッ
扉が開いた。
「はいはーいどちらさまー…ってあれ、志貴じゃない!どうしたの突然?」
「お前にちょっと訊きたいことがあるんだよ。今ちょっといいか?」
出てきたのは金髪赤眼のあーぱー吸血鬼、俺の知り合いの中でもダントツNO.1で変人のアルクェイド・ブリュンスタッドだ。
いつもなら突然あっちから現れて俺をこの部屋に連行するのが普通なのだが、今回は事情によりこっちから来る形になった。
アルクェイドは訊きたいこと?と首を一瞬傾げるも
「まあいいや、中で聞く。とにかく上がって上がって!お茶くらいなら出すからさ!」
と言って俺を部屋に促していった。
俺もそれに乗っかり、部屋にあがる。 - 320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:23:41.22 ID:iQA5q7fX0
-
そして
「なあ」
恐ろしく謎な疑問があったのでアルクェイドに尋ねてみる。
「ん?なあに志貴」
「何で俺がお茶出してんだよ、お前に」
そう言いながら湯飲みをアルクェイドに手渡す俺は、きっと間抜けに違いない。
「えーなんでよ志貴。だっていつも出してくれるじゃない、今日はケチなのね、貴方」
その言葉に何か言いかけた俺だったが、やめた。
何故なら今までこういう討論になってアルクェイドを言い負かしたことなど、数えるぐらいにしかないからだ。
諦めて溜め息を一つ吐く。
とその時
「それで、訊きたいことって何なの志貴。なんか大事なこと?」
不意に、アルクェイドが尋ねてきた。 - 321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:27:52.76 ID:iQA5q7fX0
-
――――――――――――
事の発端は、数時間前に遡る。
「あれ?翡翠、レン知らないか?」
午後過ぎ。
俺は遠野の屋敷で今日もレンと琥珀さんお手製ケーキを頂いていた。
しかし途中でふと気がつけば、今まで隣で一生懸命になってケーキを食べていたレンの姿が見当たらないことに俺は気付いた。
なので、先程から俺達が食事する様子を眺めていた翡翠にそれを尋ねてみたというわけだ。
しかし翡翠は首を横に振り
「いえ、私も存じません。今しがた少し目を離していた間に見失ってしまいました」
ということを申し訳なさそうに言っていたり。
涙目な姿がちょっとキタのは内緒だ。 - 322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:32:27.04 ID:iQA5q7fX0
-
そしてその後も、色々探してみたりしていたのだが結局見つからず。
琥珀さんも秋葉も知らないなんていうから完全に手詰まりだ。
なので、ひょっとしたら自分以外のもう一人の飼い主でもある、アルクェイドのところにいったんじゃないかと思い、こうしてきたわけなのだ。
これが、今回アルクェイド宅をわざわざ訪れた理由である。
―――――――――――――
「へえ、レンがねえ…」
俺がその辺の説明をし終えた後、アルクェイドはまるで他人事のようにそう呟いた。
「何だよその反応は。自分の使い魔がいなくなったんだからもうちょっと心配したって―――」
「大丈夫よ、あの子なら」
と、やけに自信ありげな顔でアルクェイドは俺の言葉を遮り、そう呟いた。
なんだろう、コイツの真面目な表情ってのは何だか違和感がありまくる気がする。
まあ普段が普段だからなんだろうけど。
- 323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/29(水) 23:55:10.45 ID:iQA5q7fX0
-
「大丈夫って、なんで――――」
「あの子も気まぐれだからね。
突然いなくなって、突然現れるものよ」
と、なんだか納得していいのか悪いのかよくわからない返答が帰ってきた。
あーまあでも、レンが気まぐれっていうのは、何となくだけどわかるような気がする。
何せペットは飼い主に似るもんだからな、気まぐれなとこが似たって――
「志貴。貴方なんだか今物凄い失礼なこと考えてない?」
「へ?あ、思ってない思ってない。気にしないでくれ」
と、咄嗟に嘘をついてみる。
バレたらまた血生臭い話が始まるに決まってるしな。
アルクェイドはふーん…?と何だか怪しげな表情で俺を凝視していたが
「ま、いいわ」
と一言だけ言うと、俺から視線を外した。
なんとか緊急回避成功です。
- 324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]:2011/06/30(木) 00:19:50.94 ID:rglJecK80
-
そして訊きたい事も聞いてしまい、
それから数分の間が空いた後。
「ねえ志貴、これから出掛けよ!」
アルクェイドは、突然そんな事を言ってきた。
いつもの事だからもう突っ込まないけど、本当いつもに突然だよなコイツ。
「出掛けるって、どこに――」
「シエルのとこ!何でも今日遠くからシエルのお友達がやってくるらしいのよ!」
なんて満面の笑みで俺の腕を引っ張るアルクェイド。
あぁでも確かにシエル先輩そんな事言ってたな。
何でも数ヵ月前、一緒にタタリを倒した友人だとかなんとか――――――って、ちょ!?
「アルクェイド!?わかったから腕離せよ!俺もいくから―――」
「早く早く!何でも今日の夕方には着いちゃうらしいから、急がないと間に合わないわ!」
そう言いながら、尚も彼女は俺の腕を引っ張っていく。
そして俺は彼女に引きずられながら、今日もコイツに振り回されるのかと、これからの自分に同情の念をおくるのだった―――。
――――――――――――――― - 325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/30(木) 00:21:06.32 ID:rglJecK80
- とりあえずここまで、続きは明後日になります。
次はプロローグ~第一章まで
ところでトリってどうやって付けるんだ? - 335 : ◆.tOhXMZZwM2011/07/01(金) 18:50:25.79 ID:Y44JyoG20
-
―――――――――――――
………揺れる。
ガタンゴトンという音は、どこまでも私、いや私たちを揺らす。
「うおお…なんというか、新鮮だ…」
一時の激しい揺れにより、外れかけた眼鏡を整えそんな感想を漏らす。
学園都市のコレはもう少し静かに動いてくれるものなのだが、どうやら外のコレはそうはいかないらしい。
なんというか逆に物凄い新鮮ですハイ。
そしてふと、横にいる同行人達を見る。
「ちょっ、何よこのポンコツ!揺れすぎじゃない!?事故とか起こさないかしら……」
「お姉様!!もしそうなった場合はこの黒子が愛の逃避行…じゃねーやご自慢の能力で見事生還させてみせますのでご安心くださいですの!!」
「白井さん内心駄々漏れです…あと私と佐天さんもちゃんと、ってきゃあ!?」
……それぞれ何だかんだ楽しんでる(?)様子が窺えた。
そう、私達は今、学園都市の外にいる。
- 336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/01(金) 18:57:37.87 ID:Y44JyoG20
-
きっかけは、一通の手紙だった。
メールが使えるこの時代に手紙なんて珍しいなと開いてみると、そこにはこんな事が書かれていた。
『お久しぶりです佐天涙子さん。といってもまだ数ヵ月しか経ってないんですけども。
シエルです、いかがお過ごしですか?実は、今回手紙を送ったのは貴女にお願いがあるからなんです。その内容は』
―――――――!
そこまで読んで、私は手紙を閉じた。
まず、驚いた。
送り主はあの事件で知り合った教会の代行者、シエルさんからだったのだ(ちなみに
未だに教会の代行者がなんなのかは知らない)
そして、手紙の内容――。
どうやらわざわざ手紙を送ってまで私にお願いしたいことがあるみたいだ。
シエルさんのお願いしたいこと…。
なんだろう、また半分不死身の吸血鬼が現れたとか自分じゃ手におえない吸血鬼が現れたとか吸血鬼にやられたので助力してほしいとか美味しいカレー屋さん教えろとかそんなんじゃないのか―――――――!?
と、私は半分パニック状態になりながらも続きを読むことにした。 - 337 : ◆.tOhXMZZwM2011/07/01(金) 19:01:19.23 ID:Y44JyoG20
-
そこには
『実は貴女に、私の住んでる三咲町まで足を運んでもらいたいのです。』
と、何やら意外な内容が書かれていた。
続けて読む。
『先日のタタリの一件で貴女は傷を負い、数ヵ月眠っていました。
傷自体はもう完治したと聞き及んでますが、まだタタリの悪影響がないともいえません。ですので一度こちらに来て、その辺りを調べさせてほしいんです』
――――というのがシエルさんからの手紙の内容だった。
あとはその三咲町までの詳しい道のりと、折角ですから旅行気分でお友達誘っても構いませんよーという旨が書かれていて、そこで内容は終わっていた。
- 338 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 19:05:40.42 ID:Y44JyoG20
-
まあそれで私はあの事件の協力者でもあった御坂さんや、初春や白井さんを誘って、シエルさんが住んでいるという三咲町へと向かうため、今こうして電車にのっているという訳なのだ。
ちなみに、初春や白井さんにはあの事件の事は勿論、眼の事も話していない。
退院直後は頻繁に聞かれたりもしたが、最近では減った。
なので今回の事については、単なる旅行という事になっている。
まあこれも夏休み後に何故!?と突っ込まれたりしたのだが、いいや。
そして私がこんなことを説明している間に、電車は三咲町へと着いた。 - 339 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 19:07:35.60 ID:Y44JyoG20
-
荷物を持ち、改札を出る。
「んー!やっと着いた!
しかしなんというか田舎ね、ここ。まあ学園都市と比べればそりゃそうかもだけどさ」
「ちょ、御坂さん。駅員さんが睨んでますって!そういうこと言うのは慎んでください!」
私の言葉にあはは、ごめんごめんと謝る御坂さん。
この人、たまに出るんだよなあこういうの…。
「まあ仕方ありませんの。お姉様は学園都市の外に出る機会があまり多くありませんので、自然とこういう発言も多くなってしまうんですわ」
「…ちょっと、黒子。それだと私がまるで世間知らずのお嬢様みたいに聞こえるんだけど?
というかそれはアンタも同じでしょうが!」
そこでパリパリと電気を纏う御坂さん。
学園都市外では超能力の使用は禁止されていたので、慌てて私と初春で止めることになった。
大丈夫かなぁこのメンバー。
そのまま駅を出る。
- 340 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 19:12:34.75 ID:Y44JyoG20
-
「それで…ここからどうするんですっけ?もう辺りも暗いですけど、ここからその佐天さんのお知り合いのところへいくんですか?」
「あーでももう夜だしねー…今夜は適当に泊まって明日訪ねた方がいいかも。御坂さんはどう思います?」
「まあいいんじゃない?それで。別に急ぐ必要はなさそうだし」
そしてそんなこんなで宿泊できそうな施設を探すことにする。
- 341 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 19:15:21.33 ID:Y44JyoG20
-
そして
「…………」
「………………」
「………見つからない、ですわね」
歩くことかれこれ一時間、それらしい建物すら見つからないとはこれ如何に。
「あ、あはは。このまま野宿ってことになるんですかねーこれ」
乾いた笑いしか出ませんハイ。
「い、いいですね佐天さんそれ!そうと決まったらテントを――」
「馬鹿を言わないでくださいまし初春。そんなの死んだって御免ですわよ」
「でも黒子、だったらどうするのよ」
「それは……」
全員の間に沈黙が訪れる。
そして
「あ、ねえそこの四人組ーーー!!!」
向こうから、なにやら私達を呼ぶ声がした。 - 348 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 21:11:39.25 ID:YDkInoqR0
-
「?」
言葉に釣られ、振り向く
そこには――――――――
「ねえ貴女たち、ちょっと訊きたいことあるんだけど、今いいかしら」
う、わ
そこには物凄い美人な女性がいた。
「え、と。あの……」
驚いて咄嗟に言葉が出ない。
金髪や顔立ちから、外人だとは思うけど――
ってあれ、前にもこんなことあったような。
「……………」
御坂さん達も、突然のことに言葉が出ないみたいだ。 - 349 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 21:18:10.65 ID:YDkInoqR0
-
そして外人さんは、そんな私達の様子を見て怪訝な表情を浮かべた。
「えっと、もしもし?」
「え?あ、すみません。それでなんでしたっけ?」
代表して私が尋ねる。
こういうのは二回目なので他の人よりは早く反応できた。
「だから、訊きたいことがあるのよ。貴女たち、この辺で黒猫見かけなかった?首のとこにリボンがついてるんだけど」 - 350 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 21:26:31.44 ID:YDkInoqR0
-
…黒い猫か
飼い猫かな?だけどさっきまで宿泊施設を探して上ばかり見ていた私達は知るはずもなく
「いえ、すみませんけど見ていませんね」
としか言うことができなかった。
外人さんはその言葉に残念そうな表情を浮かべ、そっかと呟くと
「わかったわ、もう少し探してみる。ありがとね貴女たち!」
見るものを虜にするような笑顔で彼女は言った。
正直、どきっとしたのは内緒だ。
- 351 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 21:38:56.01 ID:YDkInoqR0
-
そしてまあここからまた宿探しを再開しなくてはいけないので、外人さんとは別れることになった。
探すのを手伝いたいのは山々だが、こっちも早くしないと本当に野宿になってしまう。
なので私達は背を向けて――
「あ、待って」
だがそこで、呼び止められた。
そしてまだ何かあるのかなと振り返ろうとした矢先
「面白い眼鏡ね、それ」
そんな事を、言われた - 352 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/01(金) 22:09:37.67 ID:YDkInoqR0
-
「―――――――!?」
勢いよく振り返る。
しかし彼女はそんな私の様子を見て
「あぁごめんなさいね、驚かすつもりはなかったの。
ただ珍しい眼鏡だったから、ちょっとね」
不敵な笑みを浮かべる。
この人、私の眼に気がついてる…?
そこで私は、ある言葉を思い出した。
『わかるんだよ。何が普通で何が異能なのかが』
それは、あの事件をともに戦ったあの人の言葉だ。
なら、この人も異能に関わって――
言葉通りなら問題ない。
ただ、明らかに彼女の含んだ笑いには、言葉以上の何かが感じられた。
- 360 : ◆.tOhXMZZwM[saga]:2011/07/02(土) 19:23:43.37 ID:eUicDQOr0
-
そして私がそれに追求しようとしたところで
「おーーい、アルクェイドーーー!!」
という声が、向こうの方から聞こえてきた。
アルクェイドというのは、この外人さんの名前みたいだ。
そして外人さんもその声に反応して、
「あっ志貴だ。おーーい!」
などと手を振り返す。
やってきたのは、細身の男性だった。
「おーい、じゃありません。
お前レン探すのか先輩のとこ行くのかハッキリしろよな!
お陰で見失ったじゃないか!」
その男の人の言葉に「なによー!」なんて言って子供みたいにごねるアルクェイさん。
……なんなんだろう、この人達
「さ、佐天さん…。この人達…」
「初春、気持ちはわかるけど今は黙って見届けてあげよう」
私は痴話ケンカらしきものをし始めた二人を心配している初春に、一言だけそう伝えた
- 365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/06(水) 16:54:41.02 ID:pqw/5KoDO
- まだかなー
- 366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/11(月) 11:58:01.20 ID:iL78vdFAo
- もう続かないのだろうか
- 368 : ◆.tOhXMZZwM2011/07/12(火) 00:31:42.82 ID:OYvL8Hfp0
- ぐごご…皆すまんのう
だが投げ出すことはせんから安心してくれ、時間掛かってもこれは書き終える
事情で最近書き込めなかったんだすまねえ
楽しみにしててくれよな! - 385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/08/16(火) 07:54:37.23 ID:NngoKnYHo
- まだなの?
- 393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/09/15(木) 14:33:26.83 ID:Fpx1tiyDo
- 2ヶ月音沙汰無しか・・・
2014年4月22日火曜日
佐天「直死の魔眼?」
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