2014年6月16日月曜日

ペンデックス「魔力生成のためにご協力をお願いします」上条「」

1VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/12(木) 00:26:09.02 ID:G5bnKV1co
注意事項とかいいわけ


1.どこかで見たやつを若干の加筆修正したもの 一部の方向性だけ変えてあります

2.エロ アナルありスカなし 21歳未満お断り

3.ヒロインはペンデックス(?)

4.大体50k 地の文構成です
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/12(木) 00:26:49.96 ID:G5bnKV1co


「――警告、第七十七章第三節。起床を促します。起きてください上条当麻」


 ゆさゆさと揺さぶられながらうっすらと瞳を開ける。
 そこでツンツン頭の不幸少年上条当麻が見たのは着古した自分のワイシャツをパジャマ代わりにした銀髪碧眼の少女、インデックスの姿だった。
 ほえ、と寝ぼけ眼で毛布にくるまったまま上半身をあげる。
 狭苦しい浴槽の中でまるまっていたからいつものように身体の節々が悲鳴を上げていることを確認しながら明かりとりの窓を見ると外はまだ暗い。


「なんだよ、まだ真っ暗じゃん。腹が減って眠れない夜食作れとか言うのはやめてくれよな」


 まだ焦点の合わない上条。しかし徐々に側にいる少女がいつもと様子が違うことに気づく。


 とうまは私のことを食欲しかないと思っているのかな? お仕置きが必要かもかちんかちん。

 だってお腹がすいたんだもん。なんでもいいから作ってほしいんだよとうまの頭が噛み砕かれる前にぐるるるるる。


 どちらでもない、どちらとも言わない。
 どういうことだ?

 赤髪黒服香水と煙草に包まれた長身バーコード神父がみたら「焼き殺したいほどに間抜け面だね」と評価するような顔をして上条がぽかんと口をあける。
 疑問に対する回答は少女の口から発せられた。


「私はイギリス清教必要悪の教会所属の魔道書図書館、Index-Librorum-Prohibitorum。"禁書目録"
 その付属人格である自動書記、ヨハネのペンです」


 淡々とハンコを押していくような言葉は明るくぽんぽんと言葉が飛び出てくるいつものインデックスとはまったく異なっている。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/12(木) 00:27:29.76 ID:G5bnKV1co


「――懇願、今回はあなたに協力をお願いしたい事項があって現出いたしました。
 このことは本人格、あなたがインデックスと呼称する存在は知覚しておりません」


 付属人格? 本人格?
 なんじゃそりゃ状態の上条。


 イギリスのクーデター終了時に右方のフィアンマの操作する遠隔操作霊装によって別人格のインデックスが存在することをいやというほどに知らされてはいる。
 が、あの時のインデックスは間違っても「お願い」などという単語が出てくるようなキャラクターではなかった。
 実際には彼が記憶を喪失する出来事の当事者、というか張本人として対面したことがあるのだが当然ながら記憶を失った上条がそのことを覚えている道理はない。


「はぁ、まぁその――インデックスなのか? 違うのか?」

「肉体的にはあなたの呼称する”インデックス”ですが人格的には同一であり別個であると回答します。
 同一のオペレーションシステム上の別アプリケーションと例えるのが科学サイドのあなたには理解しやすいと判断します」

「えっと、つまり、今のインデックスは食欲魔人だったり噛みつき魔人だったりするインデックスさんではないのうでせう?」

「――あなたが本人格をどのように認識しているかを理解しました。
 余談ですが同一の肉体である以上記憶の交錯の可能性があることにご注意ください」


 科学関係にまったく知識のないインデックスからOSだのアプリだの違和感のある単語が飛び出る。
 おかげで、こいつはインデックスじゃないんだな、と上条は悟ることができた。


「ん――つまり、この、なんて呼べばいいのか」

「自動書記、或いはヨハネのペンとお呼びください」

「じゃあペンデックス」

「――精神的な障害を確認。自己修復開始。成功。
 名前など装飾に過ぎません。が、もう少しまともな発想はないのでしょうか」

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/12(木) 00:28:05.84 ID:G5bnKV1co

 付属人格にセンスを否定される。
 嘆くべきか悲しむべきか、少なくとも喜ぶシーンではない。
 上条は完全に覚醒した頭をぼりぼりとかきむしった。
 ドライヤーも使わず乾かした髪は寝そべっていていつものスタイルではない。


「で、ペンデックスさんはなんの御用でせう? 聞き間違いでは無ければ上条さんに何か頼みがあるようなのですか」

「その呼称で定着するのですか。
 付属人格に感情は付与されていません、が本人格の感情が最低限反映されています。
 ――結論。あなたは本当に馬鹿ですね」

「うわぁい、インデックスよりも明確に人格否定されたぜひゃっほう。女王様とお呼びすべきですかべいべー」

「わたしはクイーンではありませんし赤子でもありません」


 映画の中の筋肉男のように白い歯を輝かせてはじき出したジョークもあっさりスルー。
 男はタフじゃなければ生きていけないが優しくされないと上条さんは生きていけないのだ。
 がっかりと肩を落とす。


「よろしければリビング、或いはベットへと移動しませんか。
 毛布にくるまっているあなたにはわからないかもしれませんがここは少々冷えます」


 誰のせいだよ、と一瞬思うもインデックス自身はいつだってきちんとベットに上条の居場所を用意してくれている。
 自分の理性が信用できないからバスルームで寝ているのはあくまで上条自身の判断だ。
 あくびを噛み殺しながら素直に言葉に従った。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:28:49.64 ID:G5bnKV1co

 リビングに到着。明かりをつける。やはり冷え冷えとしているがバスルームよりはましだ。
 どんと床に胡坐をかいて座れば上条言うところのペンデックスは西欧人の苦手な正座をして対面に座った。

 ちなみにここで彼女の服装を再表現すれば下着に上条のワイシャツを纏っているだけである。
 つまり、正座をすれば秘密のデルタゾーン(レモンイエロー)がワイシャツの余り布の狭間からちらちらと見えたりする訳で。


「ちょ、ちょっとペンデックスさん? その座り方はやめて! せめてお膝かけを!」

「――確認。どこを見ているのですか?」

「確認も何も、見えちゃうでしょ!
 紳士たる上条さんだって健全なる青少年なんです! 少しは恥じらってください!」

「わたしは本人格と異なり恥じらいという感情は存在しません。ですが会話の障害となるのであれば隠します。
 座布団でよろしいですか?」

「何でもいいから鼻血が出る前に早く!」


 上条はそっぽを向きながら自分の座っている座布団を押しつける。
 自分の座布団を使おうとしていたらしいペンデックスは困惑の表情――表情というほどのものではないが――を浮かべながら上条の座布団を受け取った。
 細くて白い太股の上にちょこんと乗せる。
 考えてみればそこはスフィンクスの特等席だな、と上条が思えばくだんのネコは部屋の隅で軽い寝息を立てていた。


「こちらを向いてください。障害は対応しました。横を向いていても会話は可能ですがあなたが理解しているかどうかを判断する材料が不足します」


 言われて上条がペンデックスの方を向く。
 耳まで真っ赤になっている上条に対してペンデックスの顔色は何一つ変わらない。小憎らしいほどだ。
 ちらりと太股を見ればそこはきちんと隠されていてほっとする一方で心のどこかに残念な気持ちがわく。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:29:37.73 ID:G5bnKV1co

「――警告。第二十三章八節、真実を語っても真実は伝わらない。
 これからする話はすべて真実であり真実を否定をしないことを約束してください」

「うん? いやはや真実だったら否定はしませんよ。違うんだったら違うというけどさ」

「では。まずあなたは個体名御坂美琴に告白をされ恋人になった。違いますか?」

「違わない。うん、まさか上条さんに春が来るとは思いませんでしたよわはは」


 事実である。

 つい先日、いつもいつも電撃を浴びせてくる常盤台のエースに呼び出されていい加減殺されるかとびくびくしていたら突然告白されたのだ。
 常日頃のおこないから嫌われてこそいなくとも好かれているとは思わなかった。
 そして女子からの積極的な告白など一度も受けたことが無い(スル―しまくっていたともいう)上条は一発でKOされた。

 特段するほど美人ではないがクラスで一二を争うレベルの可愛らしさを持ち、努力家で正義感の強い真っ正直な性格。
 そのような御坂美琴が顔を真っ赤にして付き合ってくださいと言ってきたのだ。破壊力は折り紙つきだ。
 かくしてめでたくも一組のカップル、古い言い方でツガイが誕生したのである。爆発すればいいのに。

 なはなはとだらしなく顔を歪める上条をペンデックスは一刀両断する。


「中度の精神的損傷を確認。自己修復開始。成功。
 ――警告。のろけ話は聞きたくありません。
 それ以上続けると本人格の影響により上顎と下顎であなたを噛み砕きたいという衝動を抑えられなくなります」

「ああ、うん。ごめん」

「続けます。そのことにより本人格に過大なストレスがかかっています」

「はい? インデックスにストレス? だってちゃんとおめでとう応援するって言ってくれたぞ?」

「――驚愕。正真正銘の馬鹿ですねあなた。女の子の発する言葉が常に真実な訳ではありません。
 事実、本人格は嫉妬しています」

「嫉妬? うぅん、確かに構ってやる時間は少なくなったけれども」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:30:51.04 ID:G5bnKV1co


「そういうことを言っているのではありません。端的に言います。
 本人格はあなたを男性として見ているのです。女性として愛してほしいのです」

「アイ? あいって?」

「脳味噌カニみそですね。LOVEですよらぶ」


 沈黙。上条は絶句する。
 三点リーダーがごく普通の男子寮の空間を飛び回る。
 時間にしてたっぷり一分たった後、上条は完全にねじが抜け落ちた顔で口を開いた。


「え? マジ?」


 外見は完全にインデックスである、いやインデックス本人に「インデックスは上条当麻に惚れています」と言われて上条は困惑した。せざるを得ない。
 確かに随分と甘えてきているしわがままも言うし噛みついてきたりもする。
 噛みつきは嫌だが少なくとも他の誰かにしているところを見たことはないので自分が特別なのだろうという自覚はあった。

 しかしそれは兄妹愛、家族愛のようなものであって男女の仲とは想像できなかったのだ。
 本当にこの男はその部分のねじが抜け落ちている。いや、元々ねじ穴もないのかもしれない。


「マジですよマジ。大好きな男性を他の女に取られて、それを嬉しそうにその男性の口から語られています。
 本人格には耐えられないほどのストレスです。付属人格の私にまで影響が出てきています」

「いや……そうなのか。上条さんは確かに馬鹿でした。美琴のことはインデックスの前では言わないようにしよう」

「ことはその段階を通り越しています。付属人格である私を維持する魔力が生成できていません」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:31:44.85 ID:G5bnKV1co

「え? インデックスは魔力がないんじゃ」

「本人格には魔力は存在しません。
 しかし私、Index-Librorum-Prohibitorumの付属人格ヨハネのペンは十万三千冊の魔道書の保持のための魔力が常に必要であるように構築されています。
 ――質問、あなたは本人格が大量に食事を摂取している割にはまったく肥満にならないことを疑問に思ったことはありませんか?」

「いや、あれって体質だと思ってたぞ。後背筋につく脂肪細胞が燃焼しやすい形質だとか。
 そうか違うのか」

「間違いではないでしょう。しかしこの会話の本質はそこではありません。
 私を維持するための魔力が不足しているという点です」

「えー? まだ食べるの? 上条さん家の家計簿はもうこれ以上赤くなりませんのことよ?」

「食事ではありません」


 ここまで話してきて、ペンデックスがふいに顔をそむけた。
 ほとんど変わっていない顔色だが心なしか赤くなっている。


「深刻な精神的損傷を確認。自己修復開始。自己修復中。成功。
 ――困惑。私にもこのような現象が起きるとは。しかし交渉のために言わざるをえません。
 上条当麻。私と、その、せ、せ……」

「せ?」

「セックスをしてください。お願いします」


 横を向いていても会話は可能だが相手が理解しているかどうか判断できない。
 そういったはずのペンデックスは顔をそむけたまま。
 もちろん、土下座をするなんてことはしていない。
 しかし湯気が立ちそうなほどに顔が真っ赤なのは横目でもわかる。無表情のままなのに。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:32:23.87 ID:G5bnKV1co

「ぐ……む……」


 上条当麻は絶叫しかけた口を、そして先ほど出かかっていた鼻血がぽたぽた落ちるのをすべての幻想を例外なく殺す右手で必死に押さえつけていた。

 真夜中である。
 大声を出せばばれる。
 おもに隣の家の多重スパイに。
 いや、今の衝撃の一言だって聞かれているかもしれない。

 思わず薄い壁に目をやる。ぱっとみ穴があいているようには見えないが何分ここは学園都市。
 外の技術だって窓の振動から部屋の中の会話を傍受する装置が作られているのだ。
 いや、絶対に聞かれている。覗かれているに決まっている。
 あいている左手でティッシュを取って鼻に詰めて、そしてくぐもった声で反論した。しようとした。


「あ、あのですねペンデックスさん。女の子がそういうことを冗談でも口にしては――」

「冗談ではありません。カバラやカーマスートラ、理趣教真言立川流など有名なものから土着信仰まで含めて性は魔術の基本です」

「あ、その、えっと――」

「男根信仰はインドのシヴァ神が有名ですがこの国にも多種多様な信仰があります」

「えっと、ですから――」

「そもそもオシリスからホルスへとの時代変貌にはイシスの存在が必須ですがイシスは性行為によりオシリスを復活させようと――」

「わかった! わかりました! わかったからちょっと黙って!」


 魔術に関してはど素人である上条が十万三千冊の魔道書を頭に搭載するペンデックスに反論できるわけがない。
 そのうえ次から次へと畳みかけられてはもう頭を抱えるしかない。
 非常に残念なことに上条の脳味噌に搭載されているメモリは少なすぎてすぐ容量不足を訴える仕様になっている。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:32:59.95 ID:G5bnKV1co

「おっしゃることはよぉくわかりましたが、他に方法はないんでせうか。その、性行為以外で」

「ありません。本来ならば飲食により賄われるはずですが過度のストレスにより機構が一部破壊されています。
 上条当麻に対するもっとも効率的な提言方法を検索。
 卑怯な言い方ですがあなたが本人格を傷つけなければこのような状況には追い込まれませんでした」

「効率的な、とか、卑怯な、とか言わないでくれませんかね!?
 ようするに俺がインデックスの気持ちも考えずに浮かれてたのがいけないんでせう!?」

「物事の起因はそうなります。ご協力いただけますか」


 了承も何もない。
 いくら一級フラグ建築士とはいえどもセックスしてください、らじゃ―了解となるわけがない。

 上条当麻は童貞である。年頃の男の子である。
 確かに性的な事柄に興味まっしぐらではあるがだからといってできたばかりの恋人を裏切ることなんてできない。

 いや、それ以前にインデックスに対して欲情を抱くことに抵抗を感じている。
 天真爛漫でありながらどことなく清浄な空気を纏っているシスターを性欲の対象としてみることに恐れを抱いているのだ。


「なぁ、それってやらないとどうなるんだ?」

「十万三千冊の魔道書の管理が不可能である場合、半径二千キロメートルを破壊殲滅したのちに自爆します」

「って、おいいぃい!」


 真夜中であるにもかかわらず思わず上条は叫んだ。土御門のことなど忘れていた。
 半径二千キロ。日本列島どころか中国やロシアまで含まれてしまう。いや、余波で人類が滅びるかもしれない。
 しかも自爆となれば当然ながらインデックスは死んでしまう。
 そんなことをさせる訳にはいかない。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:33:34.16 ID:G5bnKV1co

 目の前の可憐なシスターが戦術核以上の危険物であることを改めて知って上条の背筋が寒くなる。
 だからといって嫌いになるとかそういうことではないのだが。
 そして、そんなことを言われたって発情できるかと問われれば否と答えるしかない。


「繰り返しますが、ご協力いただけませんでしょうか?」

「と言われてもなぁ。俺には美琴がいる訳だし浮気はできないよ」

「浮気ではありません。緊急避難とお考えください。人工呼吸を浮気と定義しますか?」

「うーん」


 腕を組み上条は悩む。
 ここでインデックスを抱かないと世界が滅ぶ。
 しかし恋人を裏切りたくはない。
 それにインデックス本人が知らないところで自分の身体が穢されるなんてことが果たして許されるだろうか。

 性欲だけに従えば美味しい話である。
 可愛らしい女の子から性交渉を持ちかけられ、しかも大義名分もある。
 だからといってそんなものに乗れるほど上条は大人ではなく汚れてもいなかった。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:34:16.52 ID:G5bnKV1co

 何分かの沈黙の後、ペンデックスが静かにつぶやいた。すくっと立ちあがる。
 ぺとんと膝の上の座布団が落ちた。
 透明感すらある白い足が上条の目に映り、それを振り払うように無表情のインデックスの顔を見上げる。

 血の気の引いたように青く透き通っていて人間味を感じさせなかった。


「仕方ありません。次善の策を用いることとしましょう」

「次善の策? あんのかよ。あるんならそれで――」

「スキルアウトという存在はこの時間でも活動していると聞き及んでいます。彼らに協力を――」

「ちょっとまちなさい!」


 思わず手を掴んだ。
 一歩踏み出そうとしたインデックス、否ペンデックスを引っ張って座らせる。
 そんなバカなことをさせる訳にはいかない。


「――質問。上条当麻はこの島国の破壊殲滅がお望みなのでしょうか」


 引っ張って座らせた。そのせいで向かい合って座るというよりも抱きかかえられるような形になったペンデックスが無表情のまま腕の中で上条を見上げた。
 薄紅色の唇に思わず視線が釘付けになる。
 ごくり、と唾を呑んだ。

 まだキスは一回だけ。御坂美琴に告白された日の一度きり。
 彼女ではない少女の、しかし憎からず思ってくれている少女の唇の小ささに上条の心の一部が踏みぬかれた。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:34:44.06 ID:G5bnKV1co


「えっと、だな――こんなことを女性に聞くものじゃないが、インデックスは処女なのか?」

「――警告、第零章零節。女性に性経験を聞くのはタブーです。常識が通用しないのは美点ではありません」

「いいから答えろ」

「ありません。本人格に記憶はありませんが幼少時より神の娘としての教育を受けたためこの肉体はまぎれもなく生娘です」

「じゃあ流石にまずいだろ」

「性行為には膣だけではなく口腔や直腸を用いたものもあります。
 本来ならばソドムとして神の教えに禁じられた行為なのですが緊急時です。それでは如何でしょう」

「えっと、それはフェラとかクンニとかアナルセックスってこと?」

「少しはボカすということをしてほしいのですが」


 抱きしめる、というほど力は込めていない。
 しかし高い体温と華奢な身体、女の子特有の甘い香りが上条の理性を揺さぶる。
 いつもの無邪気な、性的なことをまったく連想させない明るい笑顔のインデックスではない。

 無表情の、機械のような、理屈でしか構築されていない、それでいながら体温のあるインデックス。
 股間の経験のない性器に肉体のポンプが血流を送る。

 ごくり、と再び唾を飲み込む。
 御坂美琴に告白された日にひそかに買った避妊用のゴムが財布の中に収まっていることを今更のように思い出す。
 0,01ミリ。超ごく薄。持っていればいざという時に安心。
 いざって、いつさ?
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:35:17.58 ID:G5bnKV1co


「繰り返しますがこれは緊急避難です。故に浮気には当たりません。
 最初の性行為の相手に御坂美琴を選びたいとしても膣腔を用いないのであれば問題はないのではありませんか」


 問題はありまくりだ。
 しかし穴だらけの論理でも言い訳にはなる。
 上条の中の理性と情欲に揺れた天秤に錘が乗せられる。
 くらくらと目眩がした。


「それに、まったく経験が無い二人が性交渉に及びうまくいかず別離を選択することはよくある話です。
 私や本人格に経験はありませんが月詠小萌の部屋においてあった雑誌にはそのように記載されていました」


 とん、と見えない錘がまた一つ。


「あなたは御坂美琴に嫌われたいのですか?」


 とん、と見えない錘がまた一つ。
 そしてぐらりと傾いた。
 嫌われたくなんかない。これは仕方がないことなんだ。いつものように世界を救うだけの話。

 そう、誰も困らない。

 常識で考えればおかしい。
 結論まで飛び火しすぎている。
 しかし腕の中の少女はあまりにも愛らしすぎた。
 そして結論が決まっていて後は言い訳だけなのだから、どんなに変だろうと上条当麻だけが納得すればいい。

 ぎろり、と上条の血走った眼が回る。
 肉体全てが勃起するかのように心臓が高鳴る。


「どうかご協力をお願いします」


 鈴を転がすような甘い甘い、セイレーンの歌声。
 再度再度の懇願に、答えは言葉にする必要すらなかった。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:35:56.74 ID:G5bnKV1co

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「おお、とミサカはミサカは初めて目のあたりにする男性性器に感嘆の声をあげてみたり」

「ってキャラがちげーし。感情が無いと言う割にはギャグもやるのかペンデックス」

「ごほん。お願いした状況に違いはないのですがあまりにも衝撃的な光景に思わず付属人格に障害が発生しました。
 修正は完了しましたのでお気になさらないでください」


 鼻血はなんとか収まった。間抜けに鼻孔からティッシュが覗いている訳でもない。

 下半身丸出しとなった上条がインデックス――否、従属人格であるヨハネのペンの前に性器を突き出している。
 未経験ゆえに淫水焼けなど欠片ほどもない肌色でピンク色の亀頭が露出した性器は雄々しく臍にまでとどかんとしている。

 もちろん上条に羞恥心が無いわけではないが物事には勢いというものがある。
 パンツごとパジャマのズボンを下ろすと窮屈を訴えていたペニスは弾けるように飛び出した。
 幼少時の記憶が無い上条にとっては初めて誰かに見られる経験ということになる。

 確かに学校の男子トイレで「かみやん意外と可愛いんやね」「いやいや、膨張力がすごいんだにゃー」などという体験はある。
 そのあとに「火星人? 広東人? いいクリニック知ってるぜよ」なんて言ったアホを本気で殴り飛ばしたが。
 もちろんそんなくだらないもの数の内には入らない。

 そして常日頃皮のうちに隠れているそれが三倍以上に膨らんで銀髪碧眼のシスターがマジマジと見つめている訳である。
 感情が無いと言ったペンデックスもバグが起こるほどに衝撃的なようだ。
 膝をついて鼻先のペニスを見つめている。

 おずおずと手を伸ばして握るとひんやりとした柔らかい手のひらの感触が上条を包み込んだ。
 両手で掴んで軽く前後に動かす。
 多少余っている皮がカリ首のあたりを前後した。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:36:26.54 ID:G5bnKV1co


「ううっ……」


 上条が短く呻く。

 年頃の少年として当然ながら彼も自慰の経験はある。
 ペニスを前後に扱くという点では同じはず。

 否、自分のリズムで動かせるだけ自分でした方が気持ちいいはずなのにインデックスの手のひらは何倍も気持ちいい。
 ほんのりと頬を染めながらも表情を変えないペンデックスが上条を見上げた。
 生々しくグロテスクな肉塊をおぞましいと思っていないようだ。


「これでよろしいでしょうか。魔道書に書かれているのは概要なので繊細な調整は実施中に行わなければならないのですが」

「いいよっ、気持ちいい――」


 黙々とペンデックスは手を動かす。
 どこを触れば少年が感じるのか、その表情を一つたりとも見逃さないよう注意深く上条を見ている。

 少し、少し、重ねるように力を強く、速くしていく。
 心なしかペンデックスの吐息が早くなった。

 当然ながら彼女の肉体はインデックスと同一である。インデックス本人である。
 大輪の向日葵が似合うような明るく笑う彼女が自分の性器に奉仕している姿に上条の心臓は高鳴る。
 恋人たる御坂美琴に対する疾しい気持もある。それが気にならないぐらいに気持ちがいい。
 は、は、と興奮した犬のように呼吸が荒くなる。


「ペンデックス、そろそろ――」


 あむ。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:37:23.67 ID:G5bnKV1co

 言葉が終わる前に小さな口が開かれてペニスが飲み込まれた。上条が情けなく相好を崩す。
 当然ながら生まれて初めての体験である。そのはずである。
 咽るほど喉の奥にまで呑みこんで、ペンデックスは顔を前後に動かし始めた。


「ん……ちゅう……ん……はむぅ……きもち、いいですか……ちゅう」


 歯を当てないように、舌を動かし絡ませる。
 唇がいやらしく動いてペニスを扱く。


「すごい……ちゅう……味が……んむぅ……します……口の中がいっぱい……です……チロっ」


 舌が滑るたびに淫らに唇が揺れる。溢れた唾液がつぅと下顎にまで伝わって糸を引いて床に落ちる。
 とても初体験とは思えない。

 ぞくぞくと上条の背筋が鳴った。音は立たないがその音を聞いた。
 ペンデックスの、インデックスの小さな口。泡立った唾液が唇の端で白く光る。


「ペンデックスの口、上条さんのをめちゃくちゃ吸い込んでいやらしくて気持ちいい――」

「んちゅぅ……ンぐぅ……ん……さきっぽから、熱い、おつゆが……んむぅ」


 最初に僅かながらに灯っていた困惑の光が淫蕩なそれに変わる。ペンデックスの無表情な瞳に光る。
 唇をすぼめ上条の存在をより一層深く咥えた。

 いかなる魔道書に記載されているのか、本当に魔法のような快楽に上条は震える。
 右手で小さな頭に触れても快楽は消えない。


「ペンデックス、そんなに荒々しくしゃぶられたらっ」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:38:09.28 ID:G5bnKV1co

 まるで吸盤。
 強く甘く蕩けるように舐められ転がされる。


「んにゅ――ふみゅ――あふ――」


 脊髄から脳髄まで快楽の信号が駆け巡る。
 泣きそうな笑いそうな上条の表情にペンデックスの無表情が僅かだが満足げに微笑んだ。ように見えた。
 唇を割るペニスは唾液まみれでぬれていない場所などどこにもない。


「んむ……付属人格の、私に、感情はない、はずですが、可愛いですね、上条当麻―――」


 口をもごもごと動かしながら頭全体を前後させる。


「可愛い、です……んぢゅ……もっと、震えて、ください……」


 ディープスロート。

 喉の奥、食道に飲み込むほどの。

 生まれて初めてみる――記憶喪失の前にもありはしない――新鮮すぎる光景。


 いやらしい唇、あどけない顔。無表情でありながらほんのりと染まった頬。滑らかな舌の動き。
 めくりあがる唇。人形のような愛らしい顔。笑い顔によく映える綺麗な頬。快楽すぎる舌の動き。
 あふれだす唾液の様すら愛おしく見える。
 それは快楽がもたらす擬似的なものではある。
 しかし恋人に対する疾しい気持ちと同量の黄金のような快楽がちかちかと目の前で踊る。

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:38:46.78 ID:G5bnKV1co


「んちゅうぅっぅ――第九十、八章、七、十二節、えっちな味、します――」


 上目づかいで見上げる瞳。細い前髪が額に張り付いている。
 無表情のはずなのに、性的なことを一切感じさせないインデックスの顔なのに匂いたつほどに官能的な視線。
 コケティッシュな魅力にメスの存在。

 フレッシュを入れたコーヒーのようにマーブル模様が目に見える。
 小鼻を膨らませながらペンデックスが奉仕を続ける。
 火がついたように淫らな水音を立て喉奥まで吸いこもうとする。
 魔力を得ているのか、快楽なのか、走らせた馬に水を与えているかのように止まらない。
 あだっぽく、淫らで、懇願しているかのよう。

 上条の性感は限界だった。
 舌がうねる。唇が潰そうとする。軽く歯を立てられる。


「溶けちまいそうだっ」

「あう……んむぅ……魔力補給のため、射精は、口内でお願いします……はむぅ」

「わかっ、ああっ、出ちまうぞっ」

「はいっ、いっぱいだしてくださいっ」


 人形のような美貌を歪ませてペンデックスが根元までかぶりつく。
 食いちぎられる、ではない。
 溶かしつくされる、ような快楽。

 どびゅっ、びゅるるっ、どくん。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:39:20.56 ID:G5bnKV1co


「んむぅ……ん……」


 ぶるると上条の太股が震えた。
 脳味噌をすべて打ち出すような快楽が尿道を抜けて吐き出される。

 鮮やかなピンク色をした口内でペンデックスは男の汚濁を一滴残らず受け止め、細い喉を鳴らして嚥下する。
 頭が真っ白になって上条はしゃがみ込みそうになるのを必死でこらえた。

 その股間でインデックスの顔をしてインデックスの声で囁いた少女は濃厚な白濁汁を受け止め続ける。
 あまりにも生々しい光景。
 最後の最後、尿道にのこった僅かな残滓もちゅうちゅうとすすってペンデックスが満足したかのように上条の萎えたペニスから口を離した。


「す、凄かった……上条さん溶けるかと思いましたよ……」


 ぜいぜいと荒い息をつく上条当麻。その顔は快楽の余韻に酔っている。
 一方のペンデックスは相変わらずの無表情だが頬の色は確実に赤かった。
 生臭い息を吐きながら上条を見上げる。


「――報告、必要な魔力の三割を補給しました。安定稼働にはまだ不足です」


 赤く、朱く、紅い頬と耳。
 銀色の髪にエメラルドの瞳の少女が言う。


「引き続きご協力をお願いします。上条当麻」


 わざとだろうか、無意識だろうか。
 擬似人格がちろりと上唇を舌先で舐めた。
 その仕草にぞっとするほどの色香を上条は感じた。
 濃厚なムスクの香りにも似て。
 ぞくり、と喉が一瞬で乾く。ぞわわと全身の皮膚があわだつ。
 同時に萎えたはずの肉棒がむくりむくりと元の硬さを取り戻し始めていた。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:40:20.53 ID:G5bnKV1co
――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――


 魅力的だと思った。
 四つん這いの丸い尻。何一つ身にまとっていない。

 最初にぐるりと周囲を回った。
 長い髪が四方に広がるさまは美しいの一言だった。

 真っ白でつややかな白い肌がほんのりと桜色に染まっている。
 湯上りの肌のような艶めかしさを全身から発している。
 興奮も度を越してしまうと鼻血が出てこなくなるようだ。


「――注進、どうかしましたか? 早く油を塗りこんでください」


 上条は今手に食用油を持っている。

 まさかこんなことに使うことがあろうとは思いもよらなかった。
 たぷんと肉のついた白い臀部はハートを逆さまにしたように細い腰へとラインを描いていて中央にくすんだ色の蕾がある。

 それは当然ながら排泄に用いるための器官でセックスのための部位ではない。
 故に潤滑材を分泌する機能はないためその代替物として油を使うのだが――

 このような恥ずかしい姿をさらしながらまったく羞恥の色を見せないペンデックスと異なり上条の心臓はがんがんと高ぶっていた。
 浮かべた笑みも思わず引きつってしまう。
 細いと思っていた身体だが腰回りからヒップへつながるラインは豊かで魅力的だ。

 ヒップのすぐ下にインデックスの性器がある。
 まともに陰毛も生えそろっていない芸術品のような一本線。陶器づくりのようなラインでありながらきっと柔らかいのだろう。
 おそらく頼めば見せてくれるのだろうが、今の上条はそうなったときに理性を保てる自身が無かった。
 いや、今でも十分狂っているかもしれない。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:40:47.44 ID:G5bnKV1co


「――警告、十分な潤滑材が無ければ損傷し本人格が異変に気づく恐れがあります。過剰と思えるほどに塗り込めてください」


 言われるがまま油をインデックスの肛門に垂らす。

 冷たいのか、ひく、と背中が震えた。
 塗り込めるという言葉通りに可憐な蕾に指を添える。
 本当に入るのか、と上条は一瞬恐ろしくなった。


「いいんだよ――な?」

「構いません。必要な措置です」


 未成熟なメスの香りがする。
 ひそかに呼吸するようなアナル穴に上条は幻想を殺しつくす右手の小指を滑り込ませた。


「はうっ」


 ペンデックスが短い悲鳴を上げる。

 意外と思うほどに抵抗は少なくするりと指は飲み込まれた。
 くすんだ桜色の内側を油まみれの指でなぞる。そのたびに白い背中が波打った。

 もう片方の左手を尻肉に触れさせるとしっとりとした感触が手のひらに伝わる。
 滑らかで凹凸の激しさはないが触り心地がいい。


「け、けいこく、十六章四十九、節――エゼキエル書より、肛腔で交わるときには、指の、二本、は――」


 ペンデックスの言葉が乱れる。
 上条は小指を引き抜いて次に太い指――薬指を肛門に差し込んだ。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:41:17.79 ID:G5bnKV1co

 次第に黒くて赤い喜びが心の内側に湧いてくる。
 彼とて性的なことに興味を持つ青少年に違いはない。
 可憐な少女を弄んでいるという事実は興奮を誘う。
 同時に切ないぐらい御坂美琴に対する贖罪の意識が湧きあがっていた。


(上条さん、こんなことしてたらいつか美琴のこと壊しちゃうんじゃないだろうな――)


 ただでさえ不幸に他者を巻き込むのを嫌う優しさのある上条である。
 自分が田舎のロバでなくなったときにブレーキを踏めなくなるのではという意識を本能が感じていた。

 しかし目の前の状況はあまりにも美酒だった。
 インデックスのヒップは青少年には甘すぎた。
 なにより、今こうしなければ世界は滅んでしまうのである。


(ごめん、美琴。上条さん変態になっちゃうかもしれません)


 小鳥の囀りのような透き通る甘い嬌声。指を出し入れするたびに聞こえるペンデックスの声色が心地よい。
 電流を流されたかのようにぴくんと背筋が震えている。
 当然それはインデックスの声でインデックスの背中で、触れてはならない硝子細工のような脆さと美しさを感じさせる。
 本当に当然なことなのに、インデックスの肛門に指を突っこんでいる上条当麻は気付けない。
 ただ夢中になって淡い色の肛門に指を出し入れしている。

 摩擦する肛門部と蠢かせる指の腹。もう中指の第二関節までが飲み込まれていた。
 太い指が乱暴にかきむしる。しかしペンデックスは苦痛の声を上げない。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/12(木) 00:41:43.33 ID:G5bnKV1co


「ひああああっ」


 肛悦に鳴いた。
 つつ、とペンデックスの性器から一筋の液体が太股を伝って流れる。

 ごくり、と上条は何度目かわからない唾を飲み込む。一度肛門から指を引き抜いて伝った淫液を掬いとって肛門に塗り込めた。
 白い背中はもう汗まみれだ。瞬きすら忘れて見惚れてしまう。


「二本、いくからな」


 上ずった声で上条が人差指と中指を肛門に添える。
 男の太い指を到底のみこめなさそうな小さな場所に。

 僅かに口を開いてひくついているそこにダメージの内容にゆっくりと慎重に入れていった。


「ぎっ!」


 一瞬、歯車が砂を噛んだような悲鳴をペンデックスはあげる。
 思わず上条の動きが止まる。硬直する。歯車が止まってしまう。砂を噛んだように。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:42:16.72 ID:G5bnKV1co

「し、失礼しました。問題はありません。どうぞ続けてください」

「問題ないって――どう考えても今の声――」

「問題はありません。強いて言うのならばもう少し油を足してくれるとよろしいかと」


 四つん這いのまま肩越しに振りかえるペンデックスの表情は変わらない。
 しかし顔面には細かい汗がびっしりと張り付いていた。

 インデックスと同じ顔。よく笑い怒り噛みつき、悲しい時には本当に悲しそうになる顔を見て上条の心がきゅうと引き締められる。


「いいのかよ、本当に」

「再度言いますが問題はありません。事実、指が一本の時に性的な快感をこの肉体は感じていました」

「――っ、おまえ、ペンデックス。本当に恥ずかしがらないのな」

「私にそのような感情は存在しないと何度も申し上げておりますが」


 しれっと、何の感慨もなくペンデックスは応答する。しかしその額には新しい大粒の汗が浮かんでいた。
 羞恥はなくとも痛みは感じるのだろうか。


「あなたに心痛を与える様な行動をとってしまったことは謝罪します。
 ですが第十八章二十八節により正しい行動をとるものは最後までやり遂げなければなりません。
 あなたは協力を承諾したのですから私の魔力が補充されるまで行為を続ける義務があります」


 ぎゅう、と上条の心が痛む。
 しかし心を鬼にする。

 もちろん、そこに疾しい気持を持つ自分自身を認めたうえで。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:42:47.84 ID:G5bnKV1co

「――いいぜ、どうしても魔力の補給が必要だって言うなら最後までやってやるよ。
 ただし、お前に辛い思いをさせないっていう条件でだ」

「感謝、します――」


 上条は一度指を引き抜いた。
 そして改めて腫れぼった肛門粘膜に指を添える。ただし今度は挿入しない。

 慎重に、そして大胆に周辺の敏感な粘膜を揉みほぐしていく。
 さほど広がりはないにせよ、粘膜であることに違いはない。


「ひあっ」


 寒気にもにたびりびりする感覚がインデックスでもある体内を駆けた。
 一撫でするたびにその甘い声が鳴る。皺が撫でられるたびに淫蜜が溢れてくる。
 自覚こそなかったがペンデックスの乳首は硬く尖っていた。


「ま、魔力が形成されています! ひあっ、気持ちいいです!」


 感情が存在しない、と言っていたがどうやらそれは嘘らしいと上条は思った。
 恐らくは御坂妹と同じく感情の発露の仕方がわからないだけなのだろう。

 同じハードウェア上の人格なのだからインデックスのように欲望に忠実であってもいいはず。
 淡々と事実と状況だけを語っているはずのペンデックスの口調がだんだんと色に染まってきているのがその証拠だ。

 この穴を犯して獣のように鳴かせたい。
 上条の脳がかっと赤くなった。
 ずきん、と心臓が痛くなる。今の上条のことを知れば御坂美琴は激怒するだろうか号泣するだろうか。
 しかし一度崩れた理性の壁は本能に容易く乗り越えられてしまった。

 左手を淫裂に添える。割れ目をこする。ぬるぬるとしていたそこが嬉しそうにひくつく。
 肉芽を見つけ出し指先で転がす。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:43:25.93 ID:G5bnKV1co


「はぐっ、ひやっ、ひぅっ、そ、そこを触ってしまうと個体名御坂美琴への裏切りとなる可能性が――」


 元々快楽機関。快楽器官。そしてアナル弄りで火照っていた肉体。乾いた大地に水がしみ込むようにペンデックスは快楽に溶けていく。
 前髪の生え際に大粒の汗が浮かぶ。前髪が張り付く。わずかに眉間にしわが寄る。
 まるで後ろめたさを感じているかのように瞳が揺れ動いた。

 そして。


 ずぶっ。


 再度行われるアナルへの二本指の挿入。
 今度はペンデックスの悲鳴はない。


「はひゃあぁぁあああっ!?」


 ただ妖しい疼きに悩めかしいメスの声をあげる。
 同時に少女らしい丸みを帯びた美脚がぴんと張った。四つん這いの状況から膝が浮く。
 アナルに指を咥えこんだまま床を蹴っ飛ばした肉体はぴくぴくと痙攣した。
 無表情であるはずの瞳が快楽に澱んで気だるそうに口元を緩ませる。だらしなく涎が飛び散る。


「ほ、ほうこく――た、大量の魔力が生成、さ、れました――必須魔力の、八割が、補給されま――」


 とてん、と重力に引かれてペンデックスが床に転がった。衝撃でアナルから指が抜ける。
 ちゅぽんという間抜けな音。
 ひくひくとひくつく穴は物おしそうに何かを強請っている。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:44:26.72 ID:G5bnKV1co

 上条の脳裏でアナルに剛直を突き刺す光景がフラッシュした。
 ペニスは痛いほど勃起している。
 がんがんと心臓が痛いほど胸の内側を叩いている。

 視線はペンデックスの――すなわちインデックスの排泄の、性交の穴に釘付けだ。
 まるで一輪の花のように可憐に咲いているそこはひくひくと淫らに男を誘っている。
 内側にオイルで滑っている赤い粘膜が見えた。
 瞬間、何もかもを忘れていた。


「イン――デックス――」


 避妊或いは病気予防のためのゴムもやっかいなお隣さんも可愛い勝気で泣き虫な恋人も。
 自動書記もヨハネのペンも。世界を救うというお題目も。
 すべてが櫛の歯のように抜け落ちて。

 残った抜け殻がプログラミングされた自律行動を起こす。
 上条当麻は無意識のうちに脱力したペンデックスの腰を引き寄せ屹立し先走り液を流すペニスを熱い肛門に押しつけていた。
 灼熱のような亀頭をぐいと押しこむ。


「うひゃあああっ!?」


 めちめち。

 酸漿の実の様に赤く丸い亀頭がペンデックスの肛門に飲み込まれていく。
 拡張の効果は確かにあったようだ。
 悲鳴においてキャラクターの崩壊が始まっていたペンデックスが更に頓狂な悲鳴を上げた。


「――け、警告――、す、既に魔力は過剰なまでに補給され、ていま――」

「どうせすぐに足らなくなるんだろう。インデックスの心が治るまで」

「そ、そうですが――ひあっ! だ、駄目です! 予想以上です! 太すぎます、裂けてしまいます!」

「全然そんな気配ないぞ。うまそうに頬張ってひくついている」

「そんな訳が――ひあっ!」

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:45:02.19 ID:G5bnKV1co

 大輪の向日葵のような青空が似合う笑顔の眩しいインデックス。
 そんな彼女が、人格は異なれども排泄の穴で上条を受け入れている。

 抵抗は少ない。欠けていたパーツを埋めるがごとく当たり前のように入っていく。
 ずくんとペニスがみなぎる。有り得ないほどのエネルギーを感じる。
 大きく尻穴を開いて自分を受け入れるペンデックスに上条は妖しいトキメキを否定できなかった。

 だが痛みを与えたい訳ではない。
 油を自身の肉茎にも垂らす。


「インデックスのケツの穴に上条さんのが入ってますよ。約束通り最後の最後までやってやるからな」


 心を奪われてしまった女性の秘密の穴。
 清浄にして神聖なる、性的な匂いを一切感じさせないインデックスの肉体。
 そのはずなのに娼婦のように女の匂いを撒き散らしている。

 上条当麻が初めて感じる女の体の内側に悦楽も興味も幾何級数的に加速していく。
 肛門周辺の肉を巻き込みながらペニスが埋没していく。
 異物を受け入れるようにはできていないはずの排泄専門器官。
 しかしオイルとマッサージの効果、そして強引な上条の挿入でもはや三分の二を受け入れていた。


「ん……むぐぅ……はぁ……熊野比丘尼によると肛性交は――はうっ!」


 ずん。

 最後の三分の一が一気に埋め込まれる。
 病のように解説をしようとしたペンデックスが口を開いたために一瞬括約筋から力が抜けたのだ。


「あううっ! は、はいりましたっ!」


 ペンデックスの尻肉が上条の腰に押しつぶされて開かれて。
 その状況にペンデックスが背中をそらせてか細い悲鳴を上げる。
 ぷるぷるとか細い肢体が震えてダイレクトに上条のペニスに伝わる。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:45:37.16 ID:G5bnKV1co


「わ、私の中に、お、大きいのが、大きいのがはいってま、す――」


 唇の端から涎を垂らし体内に感じる異物に驚愕するペンデックス。
 当然ながら初めて受け入れた男性性器にインデックスとペンデックスの肉体が歓喜の歌を奏でている。

 苦痛はない。
 だが大きな肉の塊が自分の内側にあることへの戸惑いは隠せない。
 いかなる魔道書にもこのような記載はなかった。
 知識と経験は別物なのである。
 しかし神裂火織をしてまぎれもなく天才と言わしめた彼女の脳はこの妖しい感覚の手綱を既に握りしめていた。


「ぐぅ、イン、デックス――」


 もはや上条にインデックスとペンデックスの区別はついていない。
 いや、同一人物なのだからそもそも区別が必要だったのだろうか。
 別人格とはいえども守らなくてはいけない少女に変わりはない。

 無数の輪ゴムで縛りつけられているような強烈な締め付け。オイル越しに伝わる熱い体温、柔らかい粘膜の感覚。
 ほんの十数センチに過ぎないペニスがまるで上条の全身になったかの如く苦痛と快感を訴えている。
 混乱という言葉が一番状況説明に適していた。


「大きくて、息が、苦しいです――」


 異物感に小柄な少女が嘆息する。
 常日頃は小ぶりだが三倍以上に膨れ上がる上条のペニスは極太と呼称するに足る。
 しかしペンデックスの、インデックスのアナルは限界近くまで引き延ばされながらもどこも出血していない。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:46:09.39 ID:G5bnKV1co

 そして、この違和感は徐々に快楽へと変換されていく。


「ふあっ……あ……へ、変です。息苦しいのに、なにか、すごく、熱いです。ああっ、気持ちいい――」


 直腸壁が戦慄き始める。蠢く。お尻の肉が肉棒をきゅっと抱きしめる。
 そして無意識のうちにか、ペンデックスがゆっくりと腰を動かし始めた。
 徐々にスピードが上がり肉の摩擦を楽しみ始める。

 同時に、上条も腰を動かし始めた。
 初めての経験だ。やり方なんかわからない。それでも本能に焼き付いていた。


「インデックス――インデックス――」


 肉棒をつつむ直腸の熱が心地よすぎる。ただただ肉の槍でインデックスの肛門を突き刺す。
 絡みついてくる腸壁、締め付けてくる肛門。初めてのアナルセックスは少年を虜にする以上に度数の強い美酒だった。

 ―――ずん、じゅん、ず、じゅずぅっ

 潤滑油のおかげで抵抗は少なくなっている。
 それでも肛門はきつく締めつけて少年を甘く誘惑する。
 上条は無意識のうちにペニスを肉壁に押しつけるように挿入していた。


「はきゅっ、ひぃ、き、きついです、上条、とうまっ!」


 ペンデックスの身体も前後に動く。動かざるを得ない。直腸だけでは乱暴なピストン運動を受け止められない。
 華奢な身体が嵐の草花のように流され乱される。
 月光のような銀色の髪が甘く開いた。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage]:2012/04/12(木) 00:46:50.09 ID:G5bnKV1co


「おし、お尻が、こんなに気持ちいいなんて! か、神がメキドの業火を用いるほどの禁断であることが、理解、できます!」


 後ろの処女。つまりは性器として認められている。

 元々排泄口と性器は同一のものだということぐらいは上条の薄い知識にも記載されている。
 空を飛ぶ鳥などは完全にそれが同一化していることを。
 つまり、直腸で快感を感じるのは生命が本来搭載している機能。

 処女と童貞はいきなり禁断の果実をかじってしまった。
 しかし上条の顔に嫌悪感はない。
 絶対的に興奮している雄の表情だけがある。もう夢中だ。二人とも完全に肛門快楽に囚われている。


「けいこ、あひっ、だ、駄目です、声が、抑えられません! 気持ち良すぎます、あうっ」


 無表情の仮面はもう剥がれおちている。
 そこにいるのはメスの顔をした一人の少女。
 インデックスと同じ肉体と顔をして、そして男を誘う淫婦。

 子孫を残すための機能という意味では花は性器とみなすことができる。
 ならば大輪の向日葵をイメージさせるインデックスは性的であったのだろう。
 きっと、清浄すぎて気付かなかっただけで。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:47:29.58 ID:G5bnKV1co

「可愛いな、インデックス――」


 背中からのしかかり、思わず呟いた。
 それは心からのもので、だからこそペンデックスにも強く響いた。
 ひあっ、と可愛らしい悲鳴が漏れる。


「ひ、卑怯です。今そのようなことを言われると、わたし、は――」


 快感に惚ける呆けるあどけない顔。
 インデックスの顔なのにインデックスと違う。
 そして可憐に開いている桃色の唇を見て、瞬間上条は唇を奪っていた。


「んむっ――」


 キスは。
 キスだけは我慢しようと思っていた。

 しかし耐えられなかった。完全に酔っぱらっていた。
 ずきん、と今更のように御坂美琴が泣いている光景が浮かぶ。
 あの鉄橋での寂しく笑いながらも助けを求めていた細い少女。
 自分は今彼女を裏切っている。

 顔面にストレートを食らったかのように脳を貫く。罪悪感が上条を塗りつぶす。
 それなのに身体は止まらなかった。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:47:56.47 ID:G5bnKV1co


 くちゅくちゅと唾液を交換する。舌と舌を絡める。甘い。甘すぎる。
 その間も腰の動きは止まらない。

 ペンデックスの、インデックスの肉体は正直だった。
 直腸の壁は蠢いてペニスを扱き美味しそうに頬張っている。
 上条に彼女を気遣う余裕などない。ただただ自分の快楽のためだけに腰を振っている。
 カリ首の段差まで引き抜いて一気に押し込んで甘い直腸粘膜を味わっている。甘い摩擦を味わっている。
 白い尻肉が真っ赤になるほどに音を立ててぱんぱんと腰を打ちつけていた。


「んむっ、はむっ、はんっ」


 その間も舌と舌を絡めて。
 濡れた瞳。媚びるような視線。唇が離れるとものおしそうにちろりと赤い舌が上唇を舐めて。
 その仕草に上条は加速させられる。誘蛾灯に惹かれる羽虫のように、意思などもはや存在しない。

 呼吸する暇も厭うほどに再び乱暴に唇を奪う。
 幼い顔。圧倒的な色香。そのギャップが上条の脳を甘い電流で焼く。
 肉竿が膨らんで睾丸が引き上げられ、熱い塊が今にも飛び出そうだ。


「可愛いぞ、可愛い、気持ちいいぞインデックス――もう出そうだっ」

「い、いいです! 出してください! いっぱい、奥に出してください!
 あひっ、あふぁっ、わらひのおひりに、いっぱい、らしてぇえええ!
 ああ、わらひもイっちゃいます! 性的な、絶頂が、来ちゃいます!
 わらひ、付属人格で、こんな気持ちいいこと、搭載されてなひ、はずらのにひぃぃ!」


 銀色の髪が揺れる。白く細いうなじが見える。
 きめ細かい肌の背中が反り返って肛門が限界近くまでペニスを飲み込んだ。
 全身が噴き出す汗で鈍く光っていた。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:48:23.73 ID:G5bnKV1co


「出る! 出すぞ!」

「はひぃい! 来て、きてくださひぃぃ!!! 、、い、イクっ! イっちゃう! わらひも、イクぅ!!!」


 腰が溶けるほどの快楽を味わいながらペニスをぎりぎりまで引きずり出して一気に奥底まで突き刺した。
 濃縮された雄のリキッドが塊になって銀髪碧眼の少女の腸粘膜に打ち込まれる。

 ―――どくん、どくん、どくん


「ふわあぁああぁぁぁ、おひりが、あついれふっ! やけどしちゃ、あひっ、気持ちいい!!!」


 直腸への中出しに華奢な肉体が仰け反る。
 後背位で上条にのしかかられていて、空間はそんなにないが、その中で大きく強く絶頂を迎える。
 全身を痺れさせ蕩けたような顔をして、糸が切れたマリオネットのようにとすんと床につっぷした。


「あひぃぃい、おしり、さいこうれふ……すごい、まりょく、れふ……けど、こわれちゃひます……」


 ふわりと広がる柔らかな銀色の髪。汗まみれの白い背中。甘い少女の体臭。
 上条も無意識のうちに重なった。
 快楽の余韻に酔いながら重ねた肌の温もりを感じる。

 荒い息と苦しい心臓の鼓動。それすらも二人分重ねながら上条は自分が何をしたのかを今更のように理解して背筋を冷たくしていた。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:49:00.72 ID:G5bnKV1co
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 おう、いっつあ賢者たーいむ。

 思いっきり射精をして冷静さを取り戻した上条を待っていたのは悔恨と懺悔の世界だった。

 当たり前である。
 最初はともかくとして最後の方は自分からペンデックスを求めていた。
 唇を奪って唾液を交換していた。
 心を完全に奪われていた。

 つまりは一言の弁解も許されない浮気である。
 緊急避難も何もない。
 経験があればいざ鎌倉という時に美琴を不安にしなくても済む、なんていうお題目に意味が無いことは上条自身が知っている。

 あれから二人してシャワーを浴びて汗を流した。

 ペンデックスは魔法を使い自身の腫れた肛門粘膜を治療した。その光景を見た。
 曰く、自分自身の使った魔法であれば本人格も気づかないでしょう。それよりも違和感を覚えられる方が危険です。

 治癒魔法が全く効かない、そもそもその必要のない上条だったがペンデックスから放尿をしておくように強く言われた。
 避妊具もなしに肛門に突っ込んだのである。尿道炎になってもおかしくはない。
 亀頭を包茎の皮で包んで内部に放尿して洗う酸漿洗いという手段もあるとか。

 ちなみにこれも魔道書の記載事項。
 なに考えているんだ魔術師。おかしいと思わなかったのか魔術師。
 言われるままトイレで用を足そうとするも上条さんちの一人息子はわんぱくでたくましすぎて少しも言うことを聞こうとしない。

 痛みを覚えるほどまげて放尿し終えるとペンデックスが歯を磨いていた。
 曰く、精液の匂いがするから、と。本人格に気づかれては困ります、と。

 生々しい情事の後始末に苦笑しながら上条は再びバスタブの寝床に横になった。


「本来の魔力生成機構を修復するまでの魔力を補充できました。ご協力に感謝いたします。
 ――宣言、今後私が出現することはないでしょう」


 それだけを言い残してベットに戻るペンデックスの後姿がまぶたに焼き付いている。
 まるで何事もなかったかのようにすたすたと歩く彼女を少しだけ寂しいと思う。

 それでも上条は目をつぶった。
 太陽が昇るまでの僅かな時間。
 興奮冷めやらぬ肉体を必死に眠りに就かせた。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:49:46.02 ID:G5bnKV1co
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 数時間後。

 起床。

 学園都市でもちゅんちゅんと雀は鳴く。
 田園があるわけでも虫が豊富な訳でもないが生き物はタフなのだ。


「ふわああああ」


 大きなあくびを隠さないまま上条はじりりとなる携帯電話の目覚まし機能を止めた。
 見れば、ゆーがっためーるのランプが点灯している。

 開けるとそこには一件。恋人である御坂美琴より。


『おはよう。今日は朝ご飯つくりに行くね』との一文。


 ばわっ、と起きて駆けだすようにリビングに向かえば美味しそうな味噌汁の匂いとともにカエル模様のエプロンを纏った少女がそこにいた。
 エプロンの下は名門常盤台の制服。肩口で整えられた柔らかそうな茶色の髪。白い花弁の髪飾り。


「やほー。お目覚めみたいね。寝癖ついてるわよ」


 にこっと笑うのは愛しい恋人の御坂美琴。
 もちろんここに彼女がいるのは合鍵を渡しているからである。
 インデックスの事情に関しては了承済みだ。

 どくん、と上条の心臓が鳴った。きりりと痛んだ。


「や、やほー。朝ごはん作ってくれたのか。忙しいのに悪いな」


 視線を微妙にそらしながら美琴に返答する上条。
 ドロドロしたコールタールのような罪悪感が染みついて離れない。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:50:17.43 ID:G5bnKV1co


 ほんの数時間前、ここで、インデックスの別人格と嬌楽を繰り広げていた。
 そのことが痛いほど心に刺さる。


「ん? どうしたの? なんか調子悪いのかな?」


 小首をかしげて人差指で頬を突いて。そんなあざとい恰好をして下から上条を覗きこむ。
 可愛い、と思う反面黒いものがある上条は何とも言えない顔をした。


「いやなんというか、その――」

「もしかして照れてるのかしら。それとも見惚れちゃった? 惚れなおした?」

「――っ」


 小さく唾を呑む。
 まずい。
 どちらかわからないにせよ今の自分ではろくなことにならない。
 息苦しい時間の中で何とか言葉を紡ぎだそうとする。
 しかし。


「あーあ、朝っぱらからごちそうさまなんだよ。砂糖はきそう」


 そこに白生地に金糸の刺繍の入ったシスター装束に着替えたインデックスが現れた。
 もちろん、数時間前の痴態の面影などない。
 性的な匂いなど一切させない幼くあどけなく清浄なインデックス。いつものインデックスだ。
 うんざりとした表情で両手を腰に当てている。
 ぷんすか、という子供じみた効果音が背景に舞っていそうだ。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:51:07.37 ID:G5bnKV1co


「い、いんでっくす?」


 ぎぎぎ、とオイルの切れたブリキロボットのように不自然に上条が首を動かす。インデックスを見る。
 いつもの、いつものインデックス。
 一瞬あの嬌声嬌勢を重ねるもイメージが一つにならない。
 それぐらいに違和感がある。
 本当にいつもの性的な匂いを一切放たないインデックスだ。


「おはよーの一言ぐらい欲しいかも。
 あとみこともご飯作ってくれるのは嬉しいけど朝っぱらからいちゃいちゃしないでほしいかも」


 ぶすー、と言わんばかりに頬を膨らませて食台の席に座った。
 おいでー、と声をかけてスフィンクスという名前のネコを膝の上に誘う。
 御坂美琴の電磁波に怯えていた子猫は素直に従った。


「とうま。おはようは?」

「お、おはようインデックス」

「? 変なとうま。なんかきょどきょどしてるんだよ」


 インデックスは怪訝な顔をしていぶかしむもすぐに興味をなくす。
 テレビのリモコンを手にとって電源をつけてチャンネルを切り替え始めた。


「今日の占いはどうなってるのかな。あ、とうまはいいことがある日だって」


 きゃっきゃとはしゃぎながら笑う姿はいつものインデックスだ。
 数時間前のことが本当にあったのか、と思わず思ってしまうぐらいに普通の、いつもの光景。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:51:39.74 ID:G5bnKV1co

 はは、と上条は笑う。
 あれは夢だったんだな、と。
 淫夢と割り切ることはできないがもう終わったことなんだ。
 恋人である美琴に対する申し訳ない気持ちはまだまだあるが、それは時間が解決してくれるだろう。

 ゆっくりと息を吐いて、とりあえず顔を洗って寝癖を直すことにした。
 洗面台に向かう。
 ぬるぬるして気持ち悪くなっている歯も磨く。
 朝食後にも行うことを考えると二度手間だがすっきりしたかった。目を覚ましたかった。
 整髪剤で髪をいつもの上条さんスタイルに整えてリビングに戻る。


「当麻ー、運ぶの手伝ってー」


 恋人の一言で上条は朝食を運んだ。
 ご飯、豆腐とわかめの味噌汁、アジの開き、納豆。
 どこにでもありそうな和風の朝食。
 ちょっと違うのはどでかいどんぶり飯が一つあることだがあまり説明の必要はないだろう。
 ちなみにインデックスさんは欧米諸国の人の中では例外的に大豆発酵食品も大好きである。

 小さな食台に食器を並べていく。
 こうした朝食はもう三度目になるだろうか。
 常盤台のお嬢様は意外と家庭的なのだ。ちなみに味噌はお隣さんの手作り品である。
 更に余談を言えば上条の弁当とインデックスの昼食も作ってあったりする。
 将来は素敵な奥さん間違いなしの御坂美琴の到着を待って三人が箸を持った。
 美琴とインデックスは正座、上条さんは胡坐である。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:52:07.29 ID:G5bnKV1co


「じゃあ、いただ――」


 さぁ食事というその前に。


「ちょっとごめんね、みこと。とうまに言っておきたいことがあるんだよ」


 インデックスが流れを止めた。
 二人の疑問符が空間に浮かぶ。
 小さな猫がにゃーと鳴いた。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:52:53.64 ID:G5bnKV1co
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ごちそうさま、なんだよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[!red_res]:2012/04/12(木) 00:55:28.65 ID:G5bnKV1co
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ちろり、と赤い舌で上唇を舐めて。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:56:02.05 ID:G5bnKV1co

 瞬間、上条の背中に冷たいものが流れる。脊髄に氷の塊を突っこまれたかのような。


 ――同一の肉体である以上記憶の交錯の可能性があることにご注意ください――


 そんなことを言っていなかったか? その口が言っていなかったか?

 いや、違和感が無かったか?
 アナル弄りで最初にペンデックスが達した時「魔力が発生した」と言っていたけれども。
 幻想を殺しつくす右手で触れていたのに魔力が発生するのか?
 魔術で肛門粘膜を癒したようではあるけれども、確認なんかできたか?
 本当に魔術を使っていたのか?
 使ったふりをしていただけではないのか?


 全部、幻想なのではないのか?


 そもそも、ペンデックスなんて本当に「存在」したのか?
 インデックスの演技なのではないのか?

 なにもない。
 なにも寄り辺が存在しない。
 上条当麻は魔術師ではない。魔術としての当たり前の、常識を知らない。
 知らないから不安になる。
 足元がガラガラと崩れていく音を感じる。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:56:41.30 ID:G5bnKV1co

「ん?」


 なんのことだろうと御坂美琴がいぶかしむ。が、インデックスはその時間を与えなかった。


「いただきますなんだよ! みことのご飯はとうまのより美味しいから好きかも!」


 がつがつむしゃむしゃ。
 漫画のような大喰らい。どんぶり飯とおかずとがブラックホールに飲み込まれていく。
 漫画のように、まるで演出のためにどこかしら省略されているかの如く自然すぎる不自然。
 インデックスという記号を過剰に見せびらかしているような。

 はは、と思わず上条が反射的に笑った。笑うしかない。


「当麻? 食べないの? やっぱり体調がおかしいの?」


 心配そうに自分をうかがう恋人に上条は何とか作り笑いを見せる。
 美琴は知らない。知られちゃいけない。


「大したことではありませんのことよ?
 いやぁ、ちょっと上条さん調子悪いから美琴たんの美味しい手料理で元気取り戻しちゃうぞー」

「たん言うな」


 お椀と箸とを手にとってさも美味しそうに上条は食べ始める。
 嬉しそうに御坂美琴がその姿を見ている。自分の男を自分の味で餌付け、絵付けする女の顔。
 その幸せな幻想を上条が殺せるわけがない。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga]:2012/04/12(木) 00:57:33.09 ID:G5bnKV1co

 インデックスの食欲はいつもの通り。
 それでいながら剣呑な光で上条を見ている。そう感じてしまう。
 心なしか頬が赤いような。
 そしてあの唇に――フェラチオをさせて精液を飲ませてキスをしたあの唇に――目がいってしまう。


 瞬間、赤い舌がちろりと上唇を舐めた。


 思わずむくむくとペニスが頭をもたげた。
 膝と膝とを近づけてパジャマの股間の布に余裕を持たせる。
 ちゃぶ台に隠れて今は見えないけれども、もしこんなところを見られてしまえば。


(ふ、不幸――とは、口が裂けても言えない!)


 素敵な一日になるという占いはあっさり外れた。
 踊れ踊れ。船板の下は極寒の海だ。それを知っててなお踊れ。
 カードゲームに紛れ込んだアルカナはハングドマン。
 持ち続けなければゲームオーバー。コールをされてもゲームオーバー。
 一歩踏み抜けば地獄に落ちる。とんでもない爆弾を抱えていては味なんかわかるわけがなかった。

47VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/12(木) 00:59:42.94 ID:G5bnKV1co
以上でした
最初はインデックスの演技している可能性がもう少し少なかったんだけれども、そこを増やした方が話として完成度が高くなるのではと思ったんです。
ではhtml化依頼出してきます 
48VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2012/04/12(木) 01:04:38.65 ID:h7Fv0RoGo
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/04/12(木) 01:28:46.89 ID:keJfsCzDO
ペンデックスのえろってはじめて何じゃね?
乙ですよ
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)[sage]:2012/04/12(木) 08:55:54.23 ID:rdwFr0mAO
グレート 
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:12:29.37 ID:HJb5FERto
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
蛇足
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:13:04.69 ID:HJb5FERto

 上条が制服に着替えている間に美琴とインデックスとで食器を洗った。
 機械的な事柄は苦手だがシスターの教義にはある程度の炊事洗濯も含まれている。
 食事に関しては食べる専門のインデックスだが後片付けぐらいはできるのだ。
 掃除機が使えないから効率が悪いがはたきと箒ちりとりとで最低限の部屋の掃除もしてくれている。
(もっとも、スフィンクスという猫がいる以上これをやらないと室内がとんでもないことになる)

 着替えるといっても上条の通う高校は規律がゆるい。
 Tシャツに詰襟の上下を揃えるだけだ。
 あとは美琴の作った弁当を置き勉していて空っぽの学生鞄に突っ込めば終了である。

 三人分の食器洗濯と上条が着替え終わるのは大抵同じタイミングになる。
 三度目の今回もそうは変わらなかった。
 布巾で食器の水滴を拭っているインデックスを置いて上条当麻と御坂美琴の二人は玄関で靴を履いた。
 上条は動きやすいラフなシューズだが、同じぐらいにアクティブな美琴の足元が革靴なのは靴も常盤台の制服に含まれているからである。
 ルーズな靴下を巻き込まないように小さな足を靴に納めて美琴がインデックスに言った。


「じゃ、あとお願いね」

「任せておくんだよ。拭いたら食器棚に入れておくだけなんだから簡単なんだよ」

「出かけるときは鍵閉めておいてくれよな」

「わかってるんだよ、とうま。でもあんまり遅くならないで欲しいかも、これはみことにも言ってるんだけど」

「あはは、ごめんごめん。でもちょっとは勘弁して欲しいかな」


 なにぶん、成立したばかりのカップルでしかもお互い初めての恋人だ。
 世間一般に言うバカップルになってしまうのは仕方のないことだろう。
 放課後のちょっとした時間を二人っきりで過ごすぐらいは大目に見なくてはならない。
 インデックスもそれをわかっているから強くは言わない。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:13:38.32 ID:HJb5FERto

「じゃあ、いってきます」

「お邪魔様でした」

「いってらっしゃいなんだよ、とうま。また来るんだよ、みこと」


 インデックスに見送られて二人は玄関を出る。
 学園都市でよく見かけるマンションタイプの学生寮は廊下の部分が外部に晒されていてその端にエレベーターがある。
 これまでの上条当麻ならせっかちにボタンを押してエレベーターを呼び出していたが今はそうでもない。

 学び舎の園にまで戻らなくてはいけない美琴のためにいつもより早く部屋を出ているので時間的な余裕があるのだ。
 それでも途中で「不幸」に巻き込まれて遅刻したことがある(まだ今回で三回目だから確率はわからない)上条だが余裕があるのは間違いない。
 余裕というのはまだ他の生徒がエレベーターを使用していないということだ。
 つまり、狭い箱の中は二人っきりだ。

 ちん、と古風な告知音がして上下する金属箱が扉を開けた。
 案の定、中には誰もいない。
 滑るように入り込んで「閉」のスイッチを押す。

 完全に閉まりきる前に美琴が上条に抱きついた。


「当麻分ほじゅー」


 美琴がぎゅう、と思いっきり抱きついてくる。えへへ、とテレながら嬉しそうに。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:14:04.87 ID:HJb5FERto

 彼女が通い妻のごとく朝食を作りに来る理由のひとつがこれだ。
 エレベーターが上から下まで行くわずか数秒。その数秒の密室のためにわざわざ早起きして通っているのだ。
 もちろん、それだけではないのだけれども。
 恋する乙女にコストパフォーマンス云々の経済学は通用しない。

 そして。


「今日は元気ないから特別」


 ちゅ。

 淡く桜色で、わずかにリップの乗った甘い唇が上条のそれと重なった。

 二回目。だけど三回目のキス。
 嬉しく思うとともに上条の中に拭いきれない黒いものがあることを再確認させられる。
 こんなに可愛いい彼女を裏切ってしまったという事実。

 一瞬、自分にキスを受ける権利があるのかと悩むも反射的にここで躊躇いを見せれば絶対に怪しまれると本能が判断した。
 体温を感じるほど近くにある美琴の顔が赤く染まっている。
 わずか数秒。
 その間だけでも抱きしめようと上条が彼女の背中に手を回す。

 が。

 ちーん。

 その前にエレベーターは一回フロアに到着していた。


「じゃ、ね。放課後いつもの場所でね」


 突き放すように上条から離れた美琴は照れくさいのか、一度も振り返らず全力で駆け出していった。
 フロアの自動ドアを抜けて左に曲がったと思ったらあっという間に消えてしまう。
 上条は呆然としながら視線だけでいなくなった美琴を追うしかなかった。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:14:43.48 ID:HJb5FERto


「はは……」


 枯れた笑いが自然と湧き上がる。
 何をしているのだろう、という思い。
 もちろん、あの状況で自分がしたことが最善だとは思っていない。
 しかし最悪の一手だったとも思っていない。

 魔術の知識がない上条にインデックスの嘘は見破れなかったし、そもそも嘘と決め付けることもできない。
 第一、どちらの確率がより高いかすらわからない。
 本当に魔力不足でペンデックスが現出していたのであればああしなければ人類が滅んでいたのかもしれない。
 インデックスが自分自身が認識しないところで純潔を散らしていたのかもしれない。

 だが、それでも浮気だ。

 上条当麻はあの瞬間、銀髪碧眼の人形のような少女に欲情していたし心を奪われてもいた。
 それに、もしもう一度迫られたとしたらそれを跳ね除ける自信はない。
 ペンデックスの口淫も肛門もあまりにも甘美過ぎて火傷してしまっている。
 火傷の痕がじくじくと傷む。
 あれをもう一度味わえるとして、美琴を裏切らないなんて言い切れるはずがない。


「最悪だ、俺……」

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:15:21.30 ID:HJb5FERto

「ほんとーに最悪だ。死ね」


 が、と上条が背中から衝撃を食らった。
 どう、という一撃に思わず弓なりになり半歩足が前に出て支えようとするも勢いを殺せず床に無様に叩きつけられる。
 反射的に受身を取るも肺が酸素を吐き出して呼吸が苦しくなる。

 痛みに耐え上体を起こし振り返るとそこにはメイドさんが仁王立ちで怒りを露わにしていた。


 土御門舞夏。


 隣人土御門の愛してやまない義妹であり御坂美琴の友人でありインデックスの友人でもある。
 このタイミングで出てきたということは夕べは義兄の部屋に泊まっていたのだろう。
 ということは、つまり――

 上条はすっかり忘れていた事実を思い出した。
 この寮の薄い壁。
 厄介な隣人。
 土御門元春。
 学園都市の能力者であり陰陽師であり科学サイドと魔術サイドの二重スパイ。
 そして口の軽い厄介な友人。


「なっ――」


 自分が置かれている状況が更に酷いものだと気づいて上条は絶句した。
 そんな上条をまるで汚物を見るような目で舞夏は見下ろす。


「できるメイドはな、秘密は守るんだ。だから私は何も言わない。言わないけどお前はさいてーだ最悪だ死んでしまえ」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:19:56.80 ID:HJb5FERto

 いつもの語尾を延ばす甘い口調ではなく断罪するかのような強い語尾。
 そして言葉の内容。
 舞夏は当然深夜のことを知っている。
 そして舞夏が知っているということは――

 絶句したままの上条を置いて舞夏は消えていく。
 どすどすという彼女に似合わない足音を立てながら。
 左に曲がったのは行き先が常盤台中学だからなのか、違うのか。
 常盤台に行かないでくれと上条は願ってしまった。


「おはよう、かみやん。舞夏のドロップキックの味はどうだったかにゃー?」


 次に現れたのは当然ながら土御門元春。
 長身に金髪アロハのサングラスという『外側の記号』だらけの存在だ。
 特徴のありすぎる記号群は彼の本質がたやすく見抜けないことを意味している。

 土御門は倒れたままの上条に手を伸ばし強引に立たせた。
 そして鞄を持たないほうの手で上条の尻を叩き歩かせる。
 エントランスにすぐ次の生徒が現れるかもしれない。


「夕べはお楽しみだったかにゃー? って顔じゃないな。真っ青だ」

「土御門――お前――どこまで聞いた?」


 軽薄な友人に血の気のない顔で上条は尋ねる。
 サングラスの向こうの瞳が少しだけ怪しく輝いた。
 どっちにしろ、嘘はこの相手には通用しない。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:20:36.49 ID:HJb5FERto

「大体は。んでもって聞きたいことがあるとは思うんだが流石にここで魔術云々の話はしたくないにゃー。
 長くなりそうだし。昼休みに屋上でどうですたい」

「わかった」

「あと先に言っておくが必要悪の教会に所属していても俺は自動書記についてのことはほとんど知らん。
 知らないこともスパイの武器だからな。知りたいのならステイルにでも聞いてくれ」

「じょうだ――いや、冗談じゃないな。焼き殺される覚悟で聞かないとダメか」

「どうだろうなー。どっちが本当だとしても、インデックスの命を救った、或いはインデックスの望みを叶えたかみやんを殺すかなぁ。
 手足の一本ぐらいはもぎ取るかもしれんが」

「うう、自業自得だが胃が思い」


 すっかり肩を落とす上条当麻。
 力なく街路樹の陰を出入りするように先へ先へと歩いていく。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]:2012/04/13(金) 12:21:18.29 ID:HJb5FERto

 そんな彼を見下ろしているのは銀髪碧眼のシスター。
 寮の上条の部屋の前。開かれた廊下の手摺から顔を出してじっと見ている。

 先ほど、ここから見ていてもわかる位にピンク色のオーラを出した御坂美琴が嬉しそうに走っていった。
 先ほど、不機嫌極まりないといった土御門舞夏が通りすがりの清掃ロボットを捕まえて乗り回していた。


「――けいこく。固体名御坂美琴による対象への積極的接近を推測可能。本人格に構造的なダメージが発生しました。
 ――けいこく。固体名土御門舞夏の挙動により昨晩の行動を察知されたと推測可能。本人格に構造的ダメージが発生しました。
 ――けいこく。けいこく。けいこく――」


 ハシリドコロを投薬された兵士のように開いた瞳孔で機械的に『けいこく』を繰り返すインデックスの姿をした少女。
 彼女が自動書記なのかそうでないのかは少なくとも外見からだけでは見抜けない。

 そもそも『インデックス』という人格が彼女本来の人格だと何故言い切れるだろう。
 本来の人格が『ペンデックス』であり『インデックス』は『ペンデックス』の一部でしかない可能性も否定できないのだ。
 本人格付属人格など所詮『彼女』の口から出ている単語に過ぎない。
 そしてこの仮定が正しいのであれば『インデックス』の感情を『ペンデックス』も当然有している。
 上条当麻への思慕の念を『ペンデックス』も抱いている。

 赤い舌が上唇を舐めた。

 感情が見えないはずの顔が薄っすらと上気している。


「――考察。やはりこのダメージの修復には魔力が不足しています」


 感情が見えないはずの瞳に熱い情欲の炎がともった。


「前言を撤回することになりますが今晩も上条当麻に協力を願う必要があります」


 そして再び、インデックスの人形のような華奢で可憐な肉体が、ちろりと赤い舌で上唇を舐めた。
67VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2012/04/13(金) 12:26:10.28 ID:HJb5FERto
蛇足なので本筋と関係ないです
御坂がちょっと可哀想だったんで土御門とあわせて追記しました
語源どおりこれで蛇でなくなったかもしれないので、ダメだったら無視してください 
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)[sage]:2012/04/13(金) 12:39:37.55 ID:Sdsik3wv0


淫デックスさん怖すぎワロエナイ
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)[sage]:2012/04/13(金) 16:29:34.53 ID:xSBOpWLp0
おつ
あのまま終わっても勿論良かったがこれはいい蛇足
でも淫さんこわい超こわい 

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